(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023048
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】つなぎ用治具及びつなぎ用治具を用いた建物施工方法
(51)【国際特許分類】
E04G 5/04 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
E04G5/04 C
E04G5/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126597
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】林 哲平
(57)【要約】
【課題】従来よりも施工性の向上を果たすことが可能なつなぎ用治具を提供する。
【解決手段】つなぎ用治具1は、建物の躯体Bよりも外側に設置される仮設足場Sを保持するために用いられる。つなぎ用治具1は、躯体Bに取り付けられるベース部材10と、ベース部材10から仮設足場Sに向かって延びており、仮設足場Sを保持するつなぎ部材30と接続される延出部材20と、を備えている。ベース部材10は、建物の外部に面して設置される腰壁パネルB3に対向する位置に形成され、腰壁パネルの裏面に設けられた取り付け軸を取り付けるためのパネル取り付け穴と、延出部材20の基端部を連結するための連結部と、を有している。ベース部材10は、腰壁パネルB3よりも建物の内側に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体よりも外側に設置される仮設構造体を保持するために用いられるつなぎ用治具であって、
前記つなぎ用治具は、
前記建物の躯体に取り付けられるベース部材と、
前記ベース部材から前記仮設構造体に向かって延びており、前記仮設構造体又は前記仮設構造体を保持するつなぎ部材と接続される延出部材と、を備え、
前記ベース部材は、
前記建物の外部に面して設置される腰壁パネルに対向する位置に形成され、前記腰壁パネルの裏面に設けられた被取り付け部を取り付けるためのパネル取り付け部と、
前記ベース部材の幅方向において前記パネル取り付け部とは異なる位置に形成され、前記延出部材の基端部を連結するための連結部と、を有し、
前記つなぎ用治具が前記建物の躯体に取り付けられたとき、前記ベース部材は、前記腰壁パネルよりも前記建物の内側に配置されていることを特徴とするつなぎ用治具。
【請求項2】
前記ベース部材は、
前記建物の躯体に取り付けるための左右の躯体取り付け部と、
左右の前記腰壁パネルにそれぞれ設けられた前記被取り付け部を取り付けるための左右の前記パネル取り付け部と、を有し、
前記連結部は、左右の前記躯体取り付け部の間に配置され、かつ、左右の前記パネル取り付け部の間に配置され、
前記つなぎ用治具が前記建物の躯体に取り付けられたとき、前記延出部材は、左右の前記腰壁パネルの間に形成される隙間から前記仮設構造体に向かって延びていることを特徴とする請求項1に記載のつなぎ用治具。
【請求項3】
前記ベース部材は、上下方向において前記躯体取り付け部及び前記パネル取り付け部とは異なる位置に設けられ、左右の前記腰壁パネルにそれぞれ設けられた被掛け止め部を着脱可能に掛け止めるための左右のパネル掛け止め部をさらに有し、
前記躯体取り付け部は、上下方向において前記パネル取り付け部及び前記パネル掛け止め部の間に配置され、
前記連結部は、左右の前記パネル掛け止め部の間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のつなぎ用治具。
【請求項4】
前記延出部材は、
前記ベース部材に着脱可能となるように連結され、
左右の前記腰壁パネルの前記隙間を通過して前記仮設構造体に向かって延びており、
前記腰壁パネルよりも外側位置から操作されることで前記ベース部材から取り外し可能となっていることを特徴とする請求項2に記載のつなぎ用治具。
【請求項5】
前記延出部材は、
前記ベース部材に対して回動可能となるように連結され、
前記ベース部材側に収納された収納位置と、前記収納位置から前記建物の外側に向かって展開された展開位置との間で切り替え可能となっていることを特徴とする請求項2に記載のつなぎ用治具。
【請求項6】
前記延出部材が前記収納位置にいるとき、前記ベース部材及び前記延出部材は、前記腰壁パネルよりも前記建物の内側に配置され、
前記延出部材が前記展開位置にいるとき、前記延出部材は、
左右の前記腰壁パネルの前記隙間を通過して前記仮設構造体に向かって延びており、
前記腰壁パネルよりも外側位置から操作されることで前記展開位置から前記収納位置に切り替え可能となっていることを特徴とする請求項5に記載のつなぎ用治具。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のつなぎ用治具を用いた建物施工方法であって、
前記建物の躯体の所定部位に前記ベース部材を取り付ける工程と、
前記ベース部材に前記腰壁パネルを取り付ける工程と、
前記ベース部材に前記延出部材を連結する工程と、
前記仮設構造体又は前記仮設構造体を保持する前記つなぎ部材と、前記延出部材とを接続する工程と、
前記腰壁パネルよりも外側位置から前記延出部材を操作することで、前記延出部材を前記ベース部材から取り外す、あるいは前記延出部材を前記ベース部材側に収納する工程と、を含むことを特徴とするつなぎ用治具を用いた建物施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つなぎ用治具及びつなぎ用治具を用いた建物施工方法に係り、建物の躯体よりも外側に設置される仮設構造体を保持するために用いられるつなぎ用治具及びつなぎ用治具を用いた建物施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の施工時又は修繕時(補修時)において、室外側から施工作業を行うために仮設足場や仮設手摺り等の仮設構造体が設置されている。
このとき、建物の躯体よりも外側に設置された仮設構造体の安定化を図るために、建物の躯体と、仮設構造体とを連結するつなぎ用治具が利用されている(例えば、特許文献1、2参照)。
なお、つなぎ用治具は、仮設構造体に直接取り付けられても良いし、仮設構造体を保持するつなぎ部材に取り付けられても良い。
【0003】
特許文献1、2の壁つなぎ装置(壁つなぎ取り付け金物)は、建物の外部に面して設置される腰壁パネル(立ち上がり壁パネル)の上端部に取り付けられるクランプ部と、クランプ部から仮設足場に向かって延びており、仮設足場を保持するつなぎ材に接続される接続部材と、を備えている。
クランプ部は、腰壁パネルを挟み込むように取り付けられている。接続部材は、クランプ部に対して接続部材の長さを調整可能となるように接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-14812号公報
【特許文献2】特開2012-62723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2のようなつなぎ用治具は、腰壁パネルの上端部に取り付けられているため、当該腰壁パネルの構造性能(強度構造性能)に影響を与える虞があった。
詳しく説明すると、腰壁パネルの施工にあたっては、一般に腰壁パネルの下端部が建物の躯体にパネル固定具を介して固定されている。そうすると、上記つなぎ用治具の取り付け位置では、腰壁パネルの固定位置から距離が遠いため、腰壁パネルに比較的大きいモーメントが加わってしまう。その結果、腰壁パネルの構造性能に影響を与える虞があった。
【0006】
また、特許文献1、2のようなつなぎ用治具は、腰壁パネルを挟み込むように取り付けられているため、腰壁パネルの両面にある仕上げ面材を意図せず変形、損傷等させてしまう虞があった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、従来よりも施工性の向上を果たすことが可能なつなぎ用治具及びつなぎ用治具を用いた建物施工方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、従来よりも腰壁パネルの構造性能に影響を与えることがなく、仮設構造体を好適に保持することが可能なつなぎ用治具及びつなぎ用治具を用いた建物施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明のつなぎ用治具によれば、建物の躯体よりも外側に設置される仮設構造体を保持するために用いられるつなぎ用治具であって、前記つなぎ用治具は、前記建物の躯体に取り付けられるベース部材と、前記ベース部材から前記仮設構造体に向かって延びており、前記仮設構造体又は前記仮設構造体を保持するつなぎ部材と接続される延出部材と、を備え、前記ベース部材は、前記建物の外部に面して設置される腰壁パネルに対向する位置に形成され、前記腰壁パネルの裏面に設けられた被取り付け部を取り付けるためのパネル取り付け部と、前記ベース部材の幅方向において前記パネル取り付け部とは異なる位置に形成され、前記延出部材の基端部を連結するための連結部と、を有し、前記つなぎ用治具が前記建物の躯体に取り付けられたとき、前記ベース部材は、前記腰壁パネルよりも前記建物の内側に配置されていること、により解決される。
【0009】
上記構成により、腰壁パネルの構造性能に影響を与えることがなく、仮設構造体を好適に保持することが可能なつなぎ用治具を実現することができる。
詳しく述べると、つなぎ用治具は、腰壁パネルに取り付けられるものではなく、建物の躯体に取り付けられている。具体的には、つなぎ用治具(ベース部材)は、腰壁パネルを固定するパネル固定具の役割を兼用させたものとなっている。
そのため、腰壁パネルに影響を与えることなく、仮設構造体を好適に保持することが可能なつなぎ用治具となる。また、パネル固定具の役割を担うことで施工部材の部品点数を削減し、施工作業を向上させることができる。
また上記のように、ベース部材は、腰壁パネルよりも建物の内側に配置されている。そのため、建物の施工作業又は修繕作業を終えた後は、建物の躯体にベース部材をそのまま取り付けておき、延出部材を取り外すことで、腰壁パネルの納まり構造が良好になる。
【0010】
このとき、前記ベース部材は、前記建物の躯体に取り付けるための左右の躯体取り付け部と、左右の前記腰壁パネルにそれぞれ設けられた前記被取り付け部を取り付けるための左右の前記パネル取り付け部と、を有し、前記連結部は、左右の前記躯体取り付け部の間に配置され、かつ、左右の前記パネル取り付け部の間に配置され、前記つなぎ用治具が前記建物の躯体に取り付けられたとき、前記延出部材は、左右の前記腰壁パネルの間に形成される隙間から前記仮設構造体に向かって延びていると良い。
また、前記ベース部材は、上下方向において前記躯体取り付け部及び前記パネル取り付け部とは異なる位置に設けられ、左右の前記腰壁パネルにそれぞれ設けられた被掛け止め部を着脱可能に掛け止めるための左右のパネル掛け止め部をさらに有し、前記躯体取り付け部は、上下方向において前記パネル取り付け部及び前記パネル掛け止め部の間に配置され、前記連結部は、左右の前記パネル掛け止め部の間に配置されていると良い。
上記構成により、建物の躯体にベース部材を強固に組み付けることができる。また、ベース部材に対し延出部材を強固に連結させることができる。そのため、仮設構造体をより好適に保持することが可能なつなぎ用治具となる。
【0011】
このとき、前記延出部材は、前記ベース部材に着脱可能となるように連結され、左右の前記腰壁パネルの前記隙間を通過して前記仮設構造体に向かって延びており、前記腰壁パネルよりも外側位置から操作されることで前記ベース部材から取り外し可能となっていると良い。
上記構成により、建物の施工作業又は修繕作業を終えた後は、作業者が、腰壁パネルよりも外側位置から延出部材を操作し、ベース部材から延出部材を取り外すことができる。延出部材を取り外すことで、腰壁パネルの納まり構造が良好になる。
例えば、延出部材が、左右の腰壁パネルの隙間に形成された縦目地内に残っていると、地震等によって腰壁パネルが変形(面内変形)したときに干渉物となってしまう。そうなると、腰壁パネルの構造性能に影響を与える虞がある。すなわち、腰壁パネルが設計通りに変形(許容変位)できなくなる虞がある。
【0012】
あるいは、前記延出部材は、前記ベース部材に対して回動可能となるように連結され、前記ベース部材側に収納された収納位置と、前記収納位置から前記建物の外側に向かって展開された展開位置との間で切り替え可能となっていると良い。
また、前記延出部材が前記収納位置にいるとき、前記ベース部材及び前記延出部材は、前記腰壁パネルよりも前記建物の内側に配置され、前記延出部材が前記展開位置にいるとき、前記延出部材は、左右の前記腰壁パネルの前記隙間を通過して前記仮設構造体に向かって延びており、前記腰壁パネルよりも外側位置から操作されることで前記展開位置から前記収納位置に切り替え可能となっていると良い。
上記構成により、建物の施工作業又は修繕作業を終えた後は、作業者が、腰壁パネルよりも外側位置から延出部材を操作し、ベース部材側に延出部材を収納することができる。延出部材を収納することで、腰壁パネルの納まり構造が良好になる。
【0013】
また前記課題は、上記つなぎ用治具を用いた建物施工方法であって、前記建物の躯体の所定部位に前記ベース部材を取り付ける工程と、前記ベース部材に前記腰壁パネルを取り付ける工程と、前記ベース部材に前記延出部材を連結する工程と、前記仮設構造体又は前記仮設構造体を保持する前記つなぎ部材と、前記延出部材とを接続する工程と、前記腰壁パネルよりも外側位置から前記延出部材を操作することで、前記延出部材を前記ベース部材から取り外す、あるいは前記延出部材を前記ベース部材側に収納する工程と、を含むこと、によっても解決される。
上記構成により、従来よりも施工性の向上を果たすことが可能なつなぎ用治具を用いた建物施工方法を実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のつなぎ用治具及びつなぎ用治具を用いた建物施工方法によれば、従来よりも施工性の向上を果たすことが可能となる。
また、従来よりも腰壁パネルの構造性能に影響を与えることがなく、仮設構造体を好適に保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】建物、つなぎ用治具、つなぎ部材及び仮設足場の外観図である。
【
図2】建物の躯体、つなぎ用治具、つなぎ部材及び仮設足場の斜視図である。
【
図3B】梁、つなぎ用治具、腰壁パネルの分解斜視図である。
【
図3C】つなぎ用治具、つなぎ部材、腰壁パネルの組図である。
【
図4】第2実施形態のつなぎ用治具、梁、腰壁パネルの組図である。
【
図5A】
図4のつなぎ用治具の斜視図であって「収納位置」を示す図である。
【
図5B】
図4のつなぎ用治具の斜視図であって「展開位置」を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について
図1~
図5Bを参照して説明する。
本実施形態は、建物の躯体よりも外側に設置される仮設構造体を保持するために用いられるつなぎ用治具であって、躯体に取り付けられるベース部材と、ベース部材から仮設構造体に向かって延びており、仮設構造体又は仮設構造体を保持するつなぎ部材と接続される延出部材とを備えており、ベース部材が、建物の外部に面して設置される腰壁パネルに対向する位置に形成され、腰壁パネルの裏面に設けられた被取り付け部を取り付けるためのパネル取り付け部と、延出部材の基端部を連結するための連結部とを有し、ベース部材が腰壁パネルよりも建物の内側に配置されていることを主な特徴とする「つなぎ用治具」に関するものである。
また、「つなぎ用治具を用いた建物施工方法」に関するものである。
【0017】
<全体構成>
つなぎ用治具1は、
図1~
図3Cに示すように、建物の躯体Bに取り付けられる連結治具であって、躯体Bよりも外側に設置される仮設足場Sを保持するために用いられる。
つなぎ用治具1は、仮設足場Sを保持するつなぎ治具としての機能と、躯体Bの本体に腰壁パネルB3を固定するパネル固定金具としての機能とを兼ね備えた部材である。
なお、つなぎ用治具1は、仮設足場Sを保持するために利用されるほか、仮設手摺り等のような転落防止用の仮設構造体を保持するために利用されても良い。
【0018】
つなぎ用治具1は、
図1、
図2に示すように、建物の躯体Bにおいて梁B1の外側面に取り付けられ、当該梁B1から出幅方向の外側に突出するように延びている。
詳しく述べると、つなぎ用治具1は、
図3A~
図3Cに示すように、躯体Bの間口方向に長尺な梁B1の外側面に取り付けプレートB1cを介して取り付けられる。そして、左右の腰壁パネルB3の間に形成される隙間を通過して仮設足場Sに向かって延びている。
取り付けプレートB1cは、
図3Aに示すように、横断面T字形状のプレートであって、梁B1のウェブB1a及び上下のフランジB1bに溶接固定されている。取り付けプレートB1cの外側面には、上下方向及び幅方向に間隔をあけて複数の取り付け穴B1dが形成されている。
つなぎ用治具1は、所定位置にある取り付け穴B1dを利用して梁B1に取り付けられている。
【0019】
なお、建物の躯体Bは、
図2に示すように、上下方向に長尺な複数の柱(不図示)と、当該柱同士を連結し、躯体Bの間口方向に延びている梁B1と、梁B1上に固定される床パネルB2と、梁B1につなぎ用治具1(パネル固定金具)を介して取り付けられ、間口方向に沿って並ぶように配置される腰壁パネルB3と、を備えている。
腰壁パネルB3は、
図3B、
図3Cに示すように、建物のバルコニー(ベランダ)を構成する矩形板状の壁部材であって、建物の外部に面して設置されている。
具体的には、腰壁パネルB3は、矩形状のパネルフレームB3aと、パネルフレームB3aの両面に固定される矩形状の仕上げ面材B3b、B3cと、を備えている。
パネルフレームB3aの下端部の裏面には、
図3Bに示すように、つなぎ用治具1(パネル掛け止め穴12)に着脱可能に掛け止める掛け止め軸B3dと、つなぎ用治具1(パネル取り付け穴13)に取り付ける取り付け穴B3eとが形成されている。
左右の腰壁パネルB3の間には、
図3Cに示すように、気温変化等による膨張を考慮して所定の隙間B4(目地)が形成されている。なお、隙間B4には、建物の施工作業又は修繕作業を終えた後、目地材(例えばシーリング材や乾式ガスケット等)が充填されることになる。
【0020】
このように、つなぎ用治具1が、梁B1(取り付けプレートB1c)の外側面に取り付けられ、左右の腰壁パネルB3の隙間B4を通過することで、腰壁パネルB3の施工作業、また施工作業後においても、仮設足場Sを好適に保持することができる。
なお、つなぎ用治具1は、梁B1の取り付けプレートB1cに取り付けられているが、梁B1のウェブB1aの外側面に取り付けられても良いし、フランジB1bの上面又は底面に取り付けられても良い。あるいは、不図示の柱の外側面に取り付けられても良い。
【0021】
また、つなぎ用治具1は、
図1、
図2に示すように、建物の躯体Bから出幅方向の外側に突出しており、仮設足場Sを保持するつなぎ部材30と接続されている。
仮設足場Sは、建物の施工中又は修繕中に用いられる仮設構造体であって、建物の躯体Bよりも外側に設置されている。
仮設足場Sは、上下方向に長尺な複数の支柱S1と、互いに隣り合う支柱S1に架け渡され、建物の出幅方向に延びている複数の連結部材S2と、互いに隣り合う連結部材S2に架け渡され、建物の間口方向に延びている複数の足場板S3と、を備えている。
つなぎ部材30は、建物の躯体Bに対して仮設足場Sを保持するために用いられる部材である。
つなぎ部材30は、建物の出幅方向において躯体B側に設けられ、つなぎ用治具1に接続される接続部材31と、接続部材31から仮設足場S側に向かって延びており、伸縮自在な伸縮部材32と、伸縮部材32の延出端部に設けられ、仮設足場S(支柱S1)に取り付けられるクランプ33と、を備えている。
【0022】
なお、つなぎ用治具1は、仮設足場Sを保持するつなぎ部材30と接続されているが、特に限定されず、仮設足場S(例えば支柱S1や足場板S3)と直接接続され、仮設足場Sを直接保持することとしても良い。
【0023】
<つなぎ用治具の構成>
つなぎ用治具1は、
図1~
図3Cに示すように、建物の躯体Bに取り付けられるベース部材10と、ベース部材10から仮設足場Sに向かって延びており、つなぎ部材30に接続される延出部材20と、を備えている。
延出部材20は、ベース部材10に着脱可能となるように連結されている。
詳しく述べると、延出部材20は、
図3B、
図3Cに示すように、左右の腰壁パネルB3の隙間B4を通過して仮設足場Sに向かって延びており、腰壁パネルB3よりも外側位置から操作されることでベース部材10から取り外し可能となっている。
【0024】
ベース部材10は、
図3A、
図3Bに示すように、例えば複数の板状の鋼材を溶接することで形成された板状部材であって、躯体B(梁B1)に当接した状態で取り付けられている。
ベース部材10は、つなぎ用治具1が躯体Bに取り付けられたとき、腰壁パネルB3よりも建物の内側に配置されている。
【0025】
ベース部材10は、梁B1(取り付けプレートB1c)に当接するベース壁部10aと、ベース壁部10aの下端部から腰壁パネルB3に向かって延びている延出壁部10bと、延出壁部10bの延出端部から下方に延びて、腰壁パネルB3に当接する当接壁部10cと、当接壁部10cの延出端部から梁B1に向かって延びている底壁部10dと、ベース壁部10aの上端部から腰壁パネルB3に向かって延びている上壁部10eと、上壁部10eの延出端部から上方に延びて、腰壁パネルB3に当接する第2当接壁部10fと、を有している。
また、ベース部材10は、上下方向に延びており、ベース壁部10a、延出壁部10b及び上壁部10eを連結する連結壁部10gをさらに有している。
また、ベース部材10は、延出壁部10b、当接壁部10c及び底壁部10dを連結する補強壁部10hと、上壁部10e及び第2当接壁部10fを連結する補強壁部10iと、を有している。
【0026】
連結壁部10g、補強壁部10h、補強壁部10iは、それぞれベース部材10の幅方向の中央部に配置されている。言い換えれば、これら壁部10g、10h、10iは、ベース部材10の幅方向において重なる位置に配置されている。
そうすることで、ベース部材10の剛性を高めることができる。
【0027】
ベース部材10は、ベース壁部10aに形成され、躯体B(梁B1)に取り付けるための左右の躯体取り付け穴11と、躯体取り付け穴11よりも下方に設けられ、当接壁部10cに形成され、左右の腰壁パネルB3(掛け止め軸B3d)をそれぞれ掛け止めるための左右のパネル掛け止め穴12と、躯体取り付け穴11よりも上方に設けられ、第2当接壁部10fに形成され、左右の腰壁パネルB3(取り付け穴B3e)をそれぞれ取り付けるための左右のパネル取り付け穴13と、を有している。
また、ベース部材10は、その幅方向の中央部に設けられ、当接壁部10cに形成され、延出部材20(連結軸22)を連結するための連結穴14をさらに有している。
【0028】
ベース部材10は、躯体取り付け穴11及び取り付け穴B1dが連通した状態で、取り付けボルト15によって梁B1に取り付けられる。
ベース部材10は、上下方向において所定の躯体取り付け穴11を利用することで、梁B1に対する上下方向の位置を適宜調整することができる。
【0029】
パネル掛け止め穴12は、腰壁パネルB3の掛け止め軸B3dをパネル掛け止め穴12内に導き入れるための第1穴部12aと、第1穴部12aから連続して形成され、パネル掛け止め穴12の中で掛け止め軸B3dを嵌合させるための第2穴部12bと、を有している。
第1穴部12aは、略半楕円形状のガイド穴であって、パネル掛け止め穴12の上端から下方に向かうに従って幅狭となるように切り欠き形成され、かつ、上下方向に対して傾斜して形成されている。
第2穴部12bは、略半円形状の嵌合穴であって、掛け止め軸B3dを着脱可能に嵌合させる縁を有しており、第1穴部12aから連続して所定の幅を有しながら下方に向かって切り欠き形成されている。
上記構成により、ベース部材10に対し腰壁パネルB3を上下方向から容易に取り付けることができる。
【0030】
腰壁パネルB3がベース部材10に取り付けられるとき、まず、掛け止め軸B3dがパネル掛け止め穴12に掛け止めされることで、腰壁パネルB3が仮固定される。そして、取り付け穴B3e及びパネル取り付け穴13が連通した状態で取り付けボルト16が締結されることで、腰壁パネルB3が本固定される。
【0031】
連結穴14は、ベース部材10の外側面に形成されたネジ穴であって、延出部材20の連結軸22が螺合されることで、延出部材20がベース部材10に連結される。
作業者は、延出部材20の延出端部(接続部23)を把持し、延出部材20を回転操作することで、延出部材20をベース部材10から取り外すことができる。
【0032】
上記構成において、
図3Aに示すように、連結穴14は、左右の躯体取り付け穴11の間に配置され、左右のパネル掛け止め穴12の間に配置され、かつ、左右のパネル取り付け穴13の間に配置されている。
また、連結穴14は、ベース部材10の幅方向において連結壁部10g及び補強壁部10iと重なる位置(中央位置)に配置されており、かつ、補強壁部10hと対向する位置(中央位置)に配置されている。
そうすることで、ベース部材10に対し延出部材20を強固に連結することができる。つまりは、つなぎ用治具1によって仮設足場Sをより強固に保持することができる。
【0033】
延出部材20は、
図3B、
図3Cに示すように、長尺な軸部材であって、ベース部材10に着脱可能に連結されている。
具体的には、延出部材20は、長尺な本体部21と、本体部21の基端部に形成され、ベース部材10(連結穴14)に連結される連結軸22と、本体部21の延出端部に形成され、つなぎ部材30に接続される接続部23と、を有している。
【0034】
本体部21は、左右の腰壁パネルB3の間の隙間B4を通過できる大きさで形成されている。
接続部23は、例えばナット部材(高ナット)であって、本体部21に溶接で接合されている。接続部23の延出端部にある接続穴23aが、つなぎ部材30の接続部材31(接続ボルト)と螺合可能となっている。
なお、接続部23は、本体部21に溶接されている場合に限られず、本体部21に螺合され、本体部21に対して着脱可能に取り付けられても良い。
【0035】
<つなぎ用治具の第2実施形態>
次に、第2実施形態のつなぎ用治具101について
図4~
図5Bに基づいて説明する。
なお、上述したつなぎ用治具1と重複する内容は説明を省略する。
【0036】
つなぎ用治具101は、躯体Bに取り付けられるベース部材110と、ベース部材110から仮設足場Sに向かって延びている延出部材120と、を備えている。
延出部材120は、
図5A、
図5Bに示すように、ベース部材110に対して回動可能となるように連結されている。そして、ベース部材110側に収納された「収納位置」と、収納位置から建物の外側に向かって展開された「展開位置」との間で切り替え可能となっている。
【0037】
ベース部材110は、
図5Aに示すように、ベース壁部110aと、延出壁部110bと、当接壁部110cと、底壁部110dと、上壁部110eと、第2当接壁部110fと、を有している。
また、ベース部材10は、左右の連結壁部110gと、補強壁部110hと、補強壁部110iと、を有している。左右の連結壁部110gの間には、延出部材120を収納可能な収納穴115が形成されている。
【0038】
延出部材120は、本体部121と、軸支持穴122と、本体部21の延出端部に形成された係止溝123と、を有している。
延出部材120は、ベース部材110に回動軸130を介して回動可能となるように連結されている。回動軸130は、ベース部材110(軸支持穴114)及び軸支持穴122によって軸支されている。
係止溝123は、略L字形状の溝であって、本体部121の延出端部の上面を切り欠くことで形成されている。係止溝123には、
図5Bに示すように、接続部材124が係止される。
【0039】
接続部材124は、横断面略U字形状の本体部124aと、本体部124aに軸支され、係止溝123に着脱可能に係止される係止ピン124bと、本体部124aに取り付けられ、つなぎ部材30(接続部材31)を接続するための接続穴124c(接続ナット)と、を有している。
なお、
図5Bに示すように、接続部材124は、接続穴124cが形成された接続ナットを有しているが、当該接続ナットを不要にしても良い。その場合には、本体部124aにタップを切ることで、本体部124aに接続穴124cを形成すれば良い。
【0040】
上記構成において、
図5A、
図5Bに示すように、回動軸130は、ベース部材110の上方部分に取り付けられている。そして、延出部材120は、回動軸130を中心として「収納位置」から上方に回動することで「展開位置」に切り替わる。
そうすることで、延出部材120が意図せず「収納位置」から「展開位置」へ切り替わることを抑制することができる。つまりは、延出部材120の自重によって、延出部材120が「展開位置」に移動することを抑制できる。
その結果、延出部材120が意図せず左右の腰壁パネルB3の間の隙間に入り込むことがなくなり、腰壁パネルB3の納まりに影響を与えることがなくなる。
なお、回動軸130がベース部材110の下方部分に取り付けられても良い。すなわち、延出部材120が、回動軸130を中心として「収納位置」から上方に回動することで「展開位置」に切り替わっても良い。
【0041】
また上記構成において、延出部材120が「収納位置」にいるとき、ベース部材110及び延出部材120は、腰壁パネルB3よりも建物の内側に配置されている。
延出部材120が「展開位置」にいるとき、延出部材120は、左右の腰壁パネルB3の隙間を通過して仮設足場Sに向かって延びている。そして、延出部材120が腰壁パネルB3よりも外側位置から操作されることで、延出部材120は「展開位置」から「収納位置」に切り替え可能となっている。
そうすることで、建物の施工作業又は修繕作業を終えた後は、延出部材120を収納することで、腰壁パネルB3の納まり構造が良好になる。
【0042】
<つなぎ用治具を用いた建物施工方法>
次に、つなぎ用治具1を用いた建物施工方法について説明する。
当該施工方法は、建物の躯体Bの所定部位にベース部材10を取り付ける「第1工程」と、ベース部材10に腰壁パネルB3を取り付ける「第2工程」と、ベース部材10に延出部材20を連結する「第3工程」と、仮設足場Sを保持するつなぎ部材30と、延出部材20とを接続する「第4工程」と、仮設足場Sを利用した施工作業又は修繕作業を行う「第5工程」と、腰壁パネルB3よりも外側位置から延出部材20を操作することで、延出部材20をベース部材10から取り外す「第6工程」と、左右の腰壁パネルB3の間の隙間B4に目地材を充填する「第7工程」と、を少なくとも含むものである。以下、詳しく説明する。
なお、建物の施工にあたって、上記以外の施工工程については説明を省略する。
【0043】
「第1の工程」では、まず、作業者が、躯体Bの梁B1にベース部材10を取り付ける。
具体的には、
図3Aに示すように、作業者が、梁B1の取り付けプレートB1cに対しベース部材10を取り付けボルト15を用いて取り付ける。
【0044】
「第2の工程」では、
図3Bに示すように、作業者が、パネル掛け止め穴12に掛け止め軸B3dを掛け止めることで、腰壁パネルB3を仮固定する。その後、パネル取り付け穴13及び取り付け穴B3eに取り付けボルト16を締結することで、腰壁パネルB3を本固定する。
そして、
図3B、
図3Cに示すように「第3の工程」、「第4の工程」を経て、「第5の工程」では、作業者が、仮設足場Sを利用した施工作業又は修繕作業を行う。
【0045】
「第6の工程」では、
図3Cに示すように、作業者が、仮設足場Sを解体し、つなぎ部材30を取り外す。その後、延出部材20の延出端部(接続部23)を把持し、延出部材20を回転操作することで、延出部材20をベース部材10から取り外す。
そして、「第7の工程」では、作業者が、左右の腰壁パネルB3の間の隙間B4に目地材を充填し、腰壁パネルB3及びその周辺の施工作業又は修繕作業を終える。
【0046】
上記建物施工方法であれば、従来よりも腰壁パネルB3の構造性能に影響を与えることがなく、仮設足場Sを好適に保持することが可能となる。
なお、上記「第2工程」と、上記「第3工程」及び上記「第4工程」との施工手順を適宜変更しても良い。
【0047】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、
図1、
図2に示すように、つなぎ用治具1が、「腰壁パネルB3」のパネル固定具として機能するが、特に限定されるものではない。
例えば、つなぎ用治具1が、「外壁パネル」等のパネル固定具として機能するものであっても良い。
【0048】
上記実施形態で説明した躯体B、ベース部材10、延出部材20、腰壁パネルB3それぞれの取り付け構造や連結構造、掛け止め構造についてはあくまで一例である。これら組み付け構造の様式を適宜変更しても良い。
また、連結穴14(連結部)は、ベース部材10の下方位置ではなく上方位置に配置されても良い。
また、ベース部材10は、パネル取り付け穴13(パネル取り付け部)を有していれば、必ずしもパネル掛け止め穴12(パネル掛け止め部)を有していなくても良い。
【0049】
上記実施形態では、主として本発明に係るつなぎ用治具、つなぎ用治具を用いた建物施工方法に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
B 躯体(建物の躯体)
B1 梁
B1a ウェブ
B1b フランジ
B1c 取り付けプレート
B1d 取り付け穴
B2 床パネル
B3 腰壁パネル(壁パネル)
B3a パネルフレーム
B3b、B3c 仕上げ面材
B3d 掛け止め軸(被掛け止め部)
B3e 取り付け穴(被取り付け部)
B4 隙間
S 仮設足場(仮設構造体)
S1 支柱
S2 連結部材
S3 足場板
1、101 つなぎ用治具
10、110 ベース部材
10a、110a ベース壁部
10b、110b 延出壁部
10c、110c 当接壁部
10d、110d 底壁部
10e、110e 上壁部
10f、110f 第2当接壁部
10g、110g 連結壁部
10h、10i、110h、110i 補強壁部
11、111 躯体取り付け穴(躯体取り付け部)
12、112 パネル掛け止め穴(パネル掛け止め部)
12a 第1穴部
12b 第2穴部
13、113 パネル取り付け穴(パネル取り付け部)
14 連結穴(連結部)
15、16 取り付けボルト(取り付け部材)
20 延出部材
21 本体部
22 連結軸(被連結部)
23 接続部
23a 接続穴
30 つなぎ部材
31 接続部材
32 伸縮部材
33 クランプ
114 軸支持穴
115 収納穴(収納部)
120 延出部材
121 本体部
122 軸支持穴(軸支持部)
123 係止溝(係止部)
124 接続部材(接続部)
124a 本体部
124b 係止ピン
124c 接続穴
130 回動軸