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特開2024-23053搬送システム、搬送システムの制御方法、制御プログラム、および記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023053
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】搬送システム、搬送システムの制御方法、制御プログラム、および記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20240214BHJP
   B61B 13/06 20060101ALI20240214BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B65G1/04 555
B61B13/06 H
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126605
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】藤原 遥介
(72)【発明者】
【氏名】戸羽 浩嘉
(72)【発明者】
【氏名】田村 健二
【テーマコード(参考)】
3F022
5F131
【Fターム(参考)】
3F022AA08
3F022FF01
3F022LL12
3F022MM11
3F022NN31
3F022NN44
5F131AA02
5F131AA03
5F131CA32
5F131CA35
5F131DA05
5F131DA07
5F131DA23
5F131DA24
5F131DA43
5F131DC05
5F131DC06
5F131DD02
5F131DD12
5F131DD13
5F131DD33
5F131DD35
5F131DD52
5F131DD56
5F131DD73
5F131DD74
(57)【要約】
【課題】搬送対象物の搬送を効率よく行う。
【解決手段】搬送システム(1)は、複数の搬送対象物を搬送可能な台車(30)と、搬送前の搬送対象物Fを台車(30)に割り当てる割当処理を行う台車コントローラ(20)とを備え、台車コントローラ(20)は、台車(30)が移動可能な領域を複数のエリアに分割したとき、台車(30)が同時に搬送する複数の搬送対象物Fそれぞれの搬送先の前記エリアが同一となるとなるように割当処理を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の搬送対象物を搬送可能な台車と、
搬送前の搬送対象物を前記台車に割り当てる割当処理を行う制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記台車が移動可能な領域を複数のエリアに分割したとき、前記台車が同時に搬送する前記複数の搬送対象物それぞれの搬送先の前記エリアが同一となるとなるように前記割当処理を行う、搬送システム。
【請求項2】
前記台車は、軌道に沿って走行するものであり、
前記軌道は、前記エリア間を周回する第1周回軌道と、該第1周回軌道から分岐し、前記エリア内を周回する第2周回軌道と含む、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記エリアには、同一または近似の処理を行う処理装置が複数含まれるとともに、前記搬送対象物が前記処理装置で処理されるときに載置される装置ポートが前記処理装置毎に1または複数備えられている、請求項2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記台車が、該台車が搬送している前記搬送対象物の搬送先となる前記エリアから所定距離の範囲に入ったとき、当該搬送対象物の載置先となる前記装置ポートを引き当てる、請求項3に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記台車が前記搬送対象物を搬送中に、追加の前記搬送対象物である追加搬送対象物を搬送させる場合、前記搬送対象物の搬送経路上で取得可能な搬送対象物を前記追加搬送対象物とする、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項6】
前記搬送対象物の搬送先となる前記エリアに当該搬送対象物を載置可能な前記装置ポートがない場合、前記制御装置は、当該搬送対象物を搬送中の前記台車を前記第2周回軌道上で周回させる、請求項3記載の搬送システム。
【請求項7】
複数の搬送対象物を搬送可能な台車を複数含む搬送システムの制御方法であって、
搬送前の前記搬送対象物の搬送元および搬送先を含む搬送情報を取得する取得ステップと、
前記台車が移動可能な領域を複数のエリアに分割したとき、前記台車が同時に搬送する前記複数の搬送対象物それぞれの搬送先の前記エリアが同一となるとなるように、前記搬送情報を用いて、搬送前の前記搬送対象物の前記台車への割当を行う割当ステップと、を含む搬送システムの制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の制御方法をコンピュータに実行させる制御プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道に沿って走行する台車を用いて搬送対象物を搬送する搬送システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
天井に設けられた軌道に沿って台車を走行させて搬送対象物を搬送する搬送システムが知られている。例えば、特許文献1には、軌道を介して天井に取り付けられ、複数の積載手段を有する台車が記載されている。特許文献1に記載された台車は、複数の積載手段それぞれで個別に搬送対象物の積込みおよび積下ろしを行うことができる懸垂型となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-22539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の技術は、複数の積載手段を個別に用いて搬送対象物を搬送するものである。複数の搬送対象物を積載可能な台車においては、積載している搬送対象物の搬送元、搬送先によって、搬送の効率が左右される。しかし、特許文献1では、搬送対象物の搬送元、搬送先に関しては言及されていない。よって、搬送の効率化という点において改善の余地がある。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の搬送対象物を積載可能な台車を含む搬送システムにおける搬送対象物の搬送を効率よく行う搬送システム等を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る搬送システムは、複数の搬送対象物を搬送可能な台車と、搬送前の搬送対象物を前記台車に割り当てる割当処理を行う制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記台車が移動可能な領域を複数のエリアに分割したとき、前記台車が同時に搬送する前記複数の搬送対象物それぞれの搬送先の前記エリアが同一となるとなるように前記割当処理を行う。
【0007】
また、前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る搬送システムの制御方法は、複数の搬送対象物を搬送可能な台車を複数含む搬送システムの制御方法であって、搬送前の前記搬送対象物の搬送元および搬送先を含む搬送情報を取得する取得ステップと、前記台車が移動可能な領域を複数のエリアに分割したとき、前記台車が同時に搬送する前記複数の搬送対象物それぞれの搬送先の前記エリアが同一となるとなるように、前記搬送情報を用いて、搬送前の前記搬送対象物の前記台車への割当を行う割当ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、搬送中の搬送対象物の搬送先が同一のエリアとなるように台車を割り当てることができ、搬送を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る搬送システムにおける台車の軌道のレイアウトを示す図である。
図2】上記台車の構造例を示す図である。
図3】搬送システムの概要を示す機能ブロック図である。
図4】記憶部に格納される台車データの例を示す図である。
図5】搬送システムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
図6】搬送台車決定処理の詳細な流れを示すフローチャートである。
図7】台車の自車位置の送信処理の流れを示すフローチャートである。
図8】搬送対象物の搬送例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔全体概要〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。まず、図1を参照して、搬送システム1の全体概要について説明する。図1は、搬送システム1における台車30の軌道40のレイアウト示す図である。
【0011】
搬送システム1は、例えば、半導体の処理工場等において、同一の処理または同一に近い近似の処理を行う複数の処理装置50が配置された搬送エリア(本実施形態ではベイと呼ぶ)間で、搬送対象物Fを、軌道40に沿って走行可能な台車30を用いて搬送するものである。搬送エリアは、台車30が移動可能な領域が複数に分割されたものということもできる。
【0012】
図1に示す例では、上記搬送エリアとして、第1ベイ101から第6ベイ106までの6つのベイが示されている。また、軌道40は、天井に沿って配置されている。そして、軌道40は、ベイ間において搬送対象物Fの搬送を行うように配置されているベイ間周回軌道41(第1周回軌道)と、ベイ内において搬送対象物Fの搬送を行うように配置されているベイ内周回軌道42(第2周回軌道)とを含む。
【0013】
より詳細には、ベイ間周回軌道41は、第1ベイ101、第2ベイ102、および第3ベイ103間において搬送対象物Fを搬送可能とするベイ間周回軌道41A、第1ベイ101、第2ベイ102、第3ベイ103、第4ベイ104、第5ベイ105、および第6ベイ106間において搬送対象物Fを搬送可能とするベイ間周回軌道41B、および、第4ベイ104、第5ベイ105、および第6ベイ106間において搬送対象物Fを搬送可能とするベイ間周回軌道41Cを含む。
【0014】
また、ベイ内周回軌道42は、第1ベイ101内において搬送対象物Fを搬送可能とするベイ内周回軌道42A、第2ベイ102内において搬送対象物Fを搬送可能とするベイ内周回軌道42B、第3ベイ103内において搬送対象物Fを搬送可能とするベイ内周回軌道42C、第4ベイ104内において搬送対象物Fを搬送可能とするベイ内周回軌道42D、第5ベイ105内において搬送対象物Fを搬送可能とするベイ内周回軌道42E、および第6ベイ106内において搬送対象物Fを搬送可能とするベイ内周回軌道42Fを含む。
【0015】
また、ベイ内周回軌道42A、ベイ内周回軌道42B、およびベイ内周回軌道42Cは、ベイ間周回軌道41Aおよびベイ間周回軌道41Bと接続している。ベイ内周回軌道42D、ベイ内周回軌道42E、およびベイ内周回軌道42Fは、ベイ間周回軌道41Bおよびベイ間周回軌道41Cと接続している。これにより、台車30は、ベイ間周回軌道41とベイ内周回軌道42とを行き来することができる。換言すれば、台車30は、ベイ間およびベイ内を効率的に移動することができる。
【0016】
台車30は、軌道40に沿って走行することにより、搬送対象物Fを搬送元から搬送先に搬送することができる。つまり、台車30は、軌道40に含まれるベイ間周回軌道41に沿って走行することにより、ベイ間の移動を行うことができ、かつ、ベイ内周回軌道42に沿って走行することにより、ベイ内の移動を行うことができる。
【0017】
第1ベイ101から第6ベイ106までの各ベイには、それぞれ同一または近似の処理を行う複数の処理装置50が含まれる。また、処理装置50にはそれぞれ装置ポート51が1または複数設けられており、処理装置50で処理される搬送対象物Fが当該処理装置50の装置ポート51に載置される。
【0018】
これにより、同一または近似の処理を行う搬送対象物Fは、同じベイに搬送すればよいことになり、同一または近似の処理を行う処理装置50が複数のベイに跨っている場合と比較して、搬送の効率を高めることができる。
【0019】
また、搬送システム1には、搬送対象物Fを保管する天井保管棚60が含まれる。図1に示す例では、ベイ間周回軌道41A、41B、41Cに沿って天井保管棚60が設けられている。
【0020】
台車30は、軌道40に沿って一方向に走行して、搬送対象物Fを搬送するものである。図2を参照して、台車30の詳細について説明する。図2は、台車30の構造を示す図である。図2の201および202は、それぞれ台車30の一例を示す。
図2の201に示す例は、台車30が2つの移載部31を備える例を示す。201に示す例では、台車30は、移載部31を2つ備え、移載部31には、昇降部311および把持部312が備えられている。昇降部311は、把持部312を鉛直方向に昇降させるものである。把持部312は、搬送対象物Fを把持するものである。
【0021】
搬送対象物Fを搬送、移載する場合、台車30は、まず、搬送対象物Fの位置で停止する。そして、昇降部311によって把持部312を降下させ、把持部312で搬送対象物Fを把持する。その後、把持部312で搬送対象物Fを把持した状態で、昇降部311により把持部312を上昇させる。この状態で、台車30は、搬送対象物Fを搬送する。搬送先に到着すれば、昇降部311で把持部312を降下させ、搬送対象物Fを載置して、把持部312を上昇させる。これにより、台車30は、搬送対象物Fを搬送元から搬送先に移載することができる。なお、図2の201では、移載部31を2つ備えているので、それぞれの移載部31で搬送対象物Fを搬送、移載することができる。
【0022】
図2の202は、台車30の別の例である台車30’を示す。台車30’は、1つの移載部31と1つの棚32とを備える。移載部31は、水平方向に移動可能であり、把持部312で把持した搬送対象物Fを台車30’内で水平方向に移動させて、棚32に載置することができる。これにより、移載部31を1つしか備えていない場合であっても、2個の搬送対象物Fを搬送、移載することが可能となる。なお、ここでは、台車30が搬送する搬送対象物Fは2個の場合を例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。台車30が搬送する搬送対象物Fは3個以上であってもよい。
【0023】
また、搬送システム1には、搬送コントローラ(制御装置)10および台車コントローラ(制御装置)20が含まれる。搬送コントローラ10は、搬送システム1における搬送処理全体の制御処理を実行するものである。また、搬送コントローラ10は、台車コントローラ20からの問合せに従い、搬送対象物Fを載置する装置ポート51を指定する処理を行う。台車コントローラ20は、搬送コントローラ10の指示に従い、台車30の制御を行うものである。搬送コントローラ10および台車コントローラ20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等からなる電子制御ユニットである。
【0024】
図3を参照して、台車コントローラ20の詳細について説明する。図3は、搬送システム1の概要を示す機能ブロック図である。図3に示すように、台車コントローラ20は、搬送情報取得部21、搬送台車決定部22、走行制御部23、装置ポート指定部24、および記憶部25を含む。
【0025】
搬送情報取得部21は、搬送コントローラ10から新たな搬送対象物Fの搬送に関する指示を取得する。搬送に関する指示とは、例えば、搬送元および搬送先に関する情報である。新たな搬送対象物Fとは、まだ搬送されておらず、搬送を行う台車30も割り当てられてない搬送対象物Fである。
【0026】
搬送台車決定部22は、搬送情報取得部21が取得した搬送に関する指示の基づき、搬送対象物Fを搬送する台車30である搬送台車を決定する。具体的には、搬送台車決定部22は、搬送情報取得部21が搬送情報を取得すると、空車、すなわち、搬送対象物Fを全く搬送していない台車30か、あるいは、当該搬送対象物Fと搬送先となるベイが同じで、搬送元が既に搬送中の搬送対象物Fの搬送経路上にある台車30のうち、搬送元に最も近い台車30を搬送台車として決定する。なお、搬送台車決定部22による処理の流れについては後述する。
【0027】
これにより、追加の搬送対象物Fは、既に搬送している搬送対象物Fの搬送経路上で取得できるものとなるので、既に搬送している搬送対象物Fの搬送効率を下げることなく、追加の搬送対象物Fの搬送を行うことができる。
【0028】
また、換言すれば、搬送台車決定部22は、搬送前の搬送対象物Fを台車30に割り当てる処理を行うということできる。また、台車コントローラ20が搬送前の搬送対象物Fを台車30に割り当てる処理を行うということもできる。
【0029】
走行制御部23は、台車30の走行制御および移載部31の制御を行う。より詳細には、走行制御部23は、台車30に対し、搬送元、搬送先への走行制御、搬送元での搬送対象物Fのピックアップ制御、搬送先での搬送対象物Fの載置制御等を行う。
【0030】
装置ポート指定部24は、台車30により搬送中の搬送対象物Fを載置する装置ポート51を指定する処理を行う。より詳細には、装置ポート指定部24は、台車30が搬送先のベイに近づくと、搬送コントローラ10に装置ポート51の問い合わせを行う。そして、搬送コントローラ10から指定された装置ポート51に搬送対象物Fを載置するよう、走行制御部23を介して、台車30に指示する。台車30が搬送先のベイに近づいたか否かは、台車30が搬送先のベイから所定距離の範囲に入ったか否かで判断することができる。
【0031】
これにより、搬送対象物Fが装置ポート51から遠い位置にあるにもかかわらず、当該搬送対象物Fに装置ポート51が割り当てられ、装置ポート51が空いているのにもかかわらず、近くにある搬送対象物Fを割り当てられないという不都合を回避することができる。
【0032】
記憶部25には、台車データ251が格納されている。図4に台車データ251の例を示す。図4の台車データ251は、図2の201に示す台車30の場合のデータ例を示す。また、図4の台車データ251’は、図2の202に示す台車30’の場合のデータ例を示す。
【0033】
また、記憶部25には、第1ベイ101~第6ベイ106間、および各ベイ内を周回する軌道40のレイアウトを含むマップ情報、各ベイに配置されている処理装置50の情報等が格納されていてもよい。
【0034】
台車データ251は、台車ID、移載部Aの状態、移載部Bの状態、搬送先、および現在位置を示す。台車IDは、台車30それぞれを特定するための識別情報である。移載部Aの状態、および移載部Bの状態とは、それぞれの移載部で搬送対象物Fを搬送しているか否かを示す。ここでは、搬送対象物Fを特定する識別情報(例えば、FOUPaaaa等)が記載されている箇所は、当該搬送対象物Fを搬送中であることを示し、搬送対象物Fを特定する識別情報が記載されておらず空欄となっている箇所は搬送対象物Fを搬送中でないこと、すなわち空いていることを示す。搬送先は、搬送中の搬送対象物Fの搬送先となるベイを示す。現在位置は、当該台車30の現在位置を示す。現在位置は、軌道40を所定区間ごとに分け、台車30がどの区間にいるかということを示すものであってもよいし、台車30の移動範囲をXY平面とし、台車30の位置をXY座標で示すものであってもよい。台車30の現在位置は、所定の間隔で、それぞれの台車30から台車コントローラ20に送信される。
【0035】
図4の台車データ251に示す例の1行目は、台車ID「XXX0001」の台車30は、2つの移載部31の両方で搬送対象物Fを搬送中であり、搬送先は「第1ベイ101」であり、現在位置は「aaaaaaa」であることを示している。以下、同様に、台車データ251の2行目は、台車ID「XXX0002」の台車30は、2つの移載部31のうち一方の移載部Aで搬送対象物Fを搬送中で、他方の移載部Bは空いており、搬送先は「第2ベイ102」であり、現在位置は「aaaaaab」であることを示している。以下、同様である。
【0036】
また、台車データ251’では、台車ID、移載部の状態、棚の状態、搬送先、および現在位置を示す。棚の状態とは、棚32に搬送対象物Fが載置されているか否かを示す。ここでは、搬送対象物Fを特定する識別情報(例えば、FOUPhhhh等)が記載されている箇所は、当該搬送対象物Fが載置されていることを示し、搬送対象物Fを特定する識別情報が記載されておらず空欄となっている箇所は搬送対象物Fが載置されていないこと、すなわち空いていることを示す。
【0037】
例えば、台車データ251’の1行目は、台車ID「XXX0001」の台車30は、移載部31および棚32の両方で搬送対象物Fを搬送中であり、搬送先は「第1ベイ101」であり、現在位置は「aaaaaaa」であることを示している。以下、同様に、台車データ251’の2行目は、台車ID「XXX0002」の台車30は、移載部31は空いており、棚32には搬送対象物Fが載置されており、搬送先は「第2ベイ102」であり、現在位置は「aaaaaab」であることを示している。以下、同様である。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る搬送システム1は、複数の搬送対象物Fを搬送可能な台車30と、搬送前の搬送対象物Fを台車30に割り当てる割当処理を行う台車コントローラ20を含む。そして、台車コントローラ20は、台車30が移動可能な領域を複数のエリア(第1ベイ101~第6ベイ106)に分割したとき、台車30が同時に搬送する複数の搬送対象物Fそれぞれの搬送先の前記エリアが同一となるとなるように割当処理を行う。
【0039】
これにより、台車30が同時に搬送する搬送対象物Fの搬送先が同じエリアとなるように、台車30が割り当てられるので、搬送の効率化を図ることができる。
【0040】
〔処理の流れ〕
次に、図5図7を参照して搬送システム1における処理の流れを説明する。図5は、搬送システム1における処理の流れを示すフローチャートである。
【0041】
図5に示すように、まず、搬送コントローラ10は、搬送情報を台車コントローラ20に送信する(S101)。搬送情報とは、搬送に関する情報であり、これから搬送しようとしている搬送対象物Fの搬送元、および搬送先の情報である。搬送情報を受け取った台車コントローラ20は(取得ステップ)、当該搬送対象物Fを搬送させる台車30を決定するための搬送を行う台車の決定処理(搬送台車決定処理)を行う(S201、割当ステップ)。搬送台車決定処理の詳細は後述する。
【0042】
搬送台車決定処理により搬送対象物Fを搬送する台車30を決定すると、台車コントローラ20は、当該台車30に対し、当該搬送対象物Fのピックアップを指示する(S202)。
【0043】
台車コントローラ20から搬送対象物Fのピックアップ指示を受けた台車30は、当該搬送対象物Fが載置されている装置ポート51に向かい、搬送対象物Fをピックアップする(S301)。ピックアップが完了すると、その旨を台車コントローラ20に報告する(S302)。
【0044】
その後、台車30が搬送対象物Fの搬送先に進行し、搬送先の近傍に接近すると(S203でYES)、台車コントローラ20の装置ポート指定部24は、搬送コントローラ10に対し、搬送対象物Fを載置する装置ポート51の問合せを行う(S204)。
【0045】
装置ポートの問合せを受けた搬送コントローラ10は、搬送対象物Fを載置する対象となる処理装置50の装置ポート51が空いているか否かを確認する(S102)。装置ポート51に空きがあれば、当該装置ポート51に搬送対象物Fを載置するよう台車コントローラ20に指示する(S103)。当該指示を受けた台車コントローラ20は、搬送対象物Fを指示された装置ポート51に載置するよう台車30を制御し(S205)、台車30は台車コントローラ20の制御に従って、搬送対象物Fを指定された装置ポート51に載置する(S303)。
【0046】
一方、装置ポート51に空きがなければ(S102でNO)、搬送コントローラ10は、ベイ内周回軌道42を周回するように台車コントローラ20に指示する(S104)。当該指示を受けた台車コントローラ20は、ベイ内周回軌道42内を周回するように台車30を制御し(S205)、台車30は台車コントローラ20の制御に従って、ベイ内周回軌道42内を周回する(S303)。
【0047】
これにより、装置ポート51に空きがない場合、ベイ内周回軌道42を周回するので、台車30がベイから外に出ることがない。よって、装置ポート51に空きができたときに、速やかに搬送対象物Fを装置ポート51に載置することができる。また、ベイ内周回軌道42を周回することにより、他の台車30の邪魔になりにくいため、全体の搬送効率の低下を抑制できる。
【0048】
ステップS104でベイ内周回軌道42内を周回するように指示した後、搬送コントローラ10は、装置ポート51が空くのを待ち、装置ポート51に空きが出ると(S105でYES)、当該装置ポート51に搬送対象物Fを載置するよう台車コントローラ20に指示する(S106)。当該指示を受けた台車コントローラ20は、搬送対象物Fを指示された装置ポート51に載置するよう台車30を制御し(S206)、台車30は台車コントローラ20の制御に従って、搬送対象物Fを指定された装置ポート51に載置する(S304)。すなわち、台車30は、装置ポート51に空きがでるまで、ベイ内周回軌道42内を周回する。
【0049】
そして、搬送コントローラ10は、搬送対象物Fの載置を指示した台車30で搬送されている搬送対象物Fが全て装置ポート51に載置されたか否かを確認し(S107)、搬送対象物Fが残っていれば(S107でNO)、ステップS102に戻る。一方、全ての搬送対象物Fを載置していれば(S107でYES)、処理を終了する。
【0050】
なお、台車30は、搬送先のベイに入っても、台車コントローラ20から装置ポート51に関する指示を受け取れない場合、当該ベイのベイ内周回軌道42を周回する。
【0051】
〔搬送台車決定処理〕
次に、図6を参照して、ステップS201の搬送台車決定処理の流れについて説明する。図6は、搬送台車決定処理の流れを示すフローチャートである。図6に示すように、搬送台車決定処理では、まず、台車コントローラ20の搬送台車決定部22は、軌道40を走行している台車30のうち、空車、すなわち搬送対象物Fを1つも搬送していない台車30を抽出する(S211)。次に、搬送台車決定部22は、搬送対象物Fを1個だけ搬送している台車30、すなわち、さらにもう1個、搬送対象物Fを搬送可能な台車30のうち、次の条件1、および条件2を満たす台車30(搬送可能台車)を抽出する(S212)。
(条件1)既に搬送中の搬送対象物Fの搬送経路上に、新たに搬送する搬送対象物Fの搬送元が存在する。
(条件2)既に搬送中の搬送対象物Fの搬送先と、新たに搬送する搬送対象物Fの搬送先とが同じベイである。
【0052】
そして、搬送台車決定部22は、ステップS211で抽出した空車、およびステップS212で抽出した搬送可能台車のうち、最も搬送元に近い台車30を、新たな搬送対象物Fを搬送する台車30である搬送台車に決定する(S213)。
【0053】
搬送台車として、空車が選択された場合、新たに搬送される搬送対象物Fは、当該台車30の1個目の搬送対象物Fということになる。また、搬送台車として、既に別の搬送対象物Fを搬送している台車30が選択された場合、新たに搬送される搬送対象物Fは、当該台車30の2個目の搬送対象物F、すなわち追加搬送対象物ということになる。
【0054】
〔台車30の自車位置の通知処理〕
また、台車30は、定期的に、自車位置を台車コントローラ20に通知している。図7に、台車30による自車位置の通知の処理の流れを示す。図7に示すように、台車30は、自車位置を台車コントローラ20に送信する(S401)。そして、所定位置を通過すると(S402でYES)、ステップS401に戻り、再度、自車位置を台車コントローラ20に送信する。このように、台車30は、定期的に台車コントローラ20に自車位置を送信している。なお、所定位置は、軌道40上に複数個所設けられており、台車30は、所定位置を通過するごとに、当該所定位置の位置情報を自車位置として送信する。
【0055】
〔搬送対象物Fの搬送例〕
次に、図8を参照して、搬送対象物Fの搬送例について説明する。図8は、搬送対象物Fの搬送例を説明するための図である。
【0056】
図8は、第4ベイ104内の装置ポート51Aに載置されている搬送対象物Fを第6ベイ106内の処理装置50まで搬送する場合の例を示す。例えば、台車30Aが搬送対象物Fを1個、搬送中であり、当該搬送対象物Fの搬送先が第6ベイ106であったとする。この場合、台車30Aは、搬送中の搬送対象物Fの搬送経路上に装置ポート51Aが存在し、かつ、搬送先である第6ベイ106も同一なので、台車30Aが、装置ポート51Aに載置されている搬送対象物Fの搬送台車となる。搬送台車となった台車30Aは、搬送経路上である装置ポート51Aにおいて、搬送対象物Fをピックアップする。そして、台車30Aはベイ内周回軌道42Dからベイ間周回軌道41Cに移り、ベイ間周回軌道41Cを走行して、第6ベイ106内を周回するベイ内周回軌道42Fまで移動する。そして、ベイ内周回軌道42Fに移り、ベイ内周回軌道42内を走行して、搬送先である第6ベイ106内の処理装置50の装置ポート51に搬送対象物Fを載置する(図8の破線矢印801)。
【0057】
このように、搬送システム1によれば、台車30Aを用いて、既に搬送中の搬送対象物Fの搬送とともに、新たな搬送対象物Fの搬送を効率的に行うことができる。なお、ピックアップする搬送対象物Fは、処理装置50の装置ポート51に載置されているものだけでなく、天井保管棚60に載置されているものであってもよい。
【0058】
〔ソフトウェアによる実現例〕
搬送コントローラ10および台車コントローラ20(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に搬送情報取得部21、搬送台車決定部22、走行制御部23、装置ポート指定部24)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0059】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0060】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0061】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0062】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0063】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 搬送システム
10 搬送コントローラ(制御装置)
20 台車コントローラ(制御装置)
21 搬送情報取得部
22 搬送台車決定部
23 走行制御部
24 装置ポート指定部
25 記憶部
251 台車データ
30 台車
31 移載部
311 昇降部
312 把持部
32 棚
40 軌道
41、41A、41B、41C エリア間周回軌道(第1周回軌道)
42、42A、42B、42C、42D、42E、42F エリア内周回軌道(第2周回軌道)
50 処理装置
51 装置ポート
60 天井保管棚
101 第1ベイ
102 第2ベイ
103 第3ベイ
104 第4ベイ
105 第5ベイ
106 第6ベイ
F 搬送対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8