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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023062
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】顎部及び顎部を有する顎部組立体
(51)【国際特許分類】
   B02C 1/04 20060101AFI20240214BHJP
   B23D 25/14 20060101ALI20240214BHJP
   B02C 1/10 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B02C1/04
B23D25/14 A
B02C1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126618
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000103655
【氏名又は名称】オカダアイヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】上野 明
【テーマコード(参考)】
3C039
4D063
【Fターム(参考)】
3C039EA43
4D063AA09
4D063AA19
4D063GA02
4D063GA10
4D063GD04
4D063GD12
4D063GD13
(57)【要約】
【課題】本開示に係る顎部は、物体の硬度が高い場合でも、交換可能であり損傷しないセンターツースを有する顎部を提供できる。
【解決手段】本開示に係る顎部は、本体部を備え、本体部は、第1サイドツースと、第2サイドツースと、センターツースとを収容し、センターツースを収納する収容部と、当該収容部の一方の側面の先端側に第1先端孔と、当該収容部の他方の側面の先端側に第2先端孔とを有し、前記収容部は、長手方向に平坦な受圧面を有し、センターツースは、先端側にセンターツース孔を有し、センターツースピンが第1先端孔と、第2先端孔と、センターツース孔とに挿入されて、センターツースがセンターツースピンを中心として回動可能であり、センターツースが前記収容部に収納された場合、センターツースの上面と受圧面とが接触するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を解体する顎部組立体の一対の顎部の一方に用いられる顎部であって、
両側に配置された第1サイドツース及び第2サイドツースと、第1サイドツースと第2サイドツースと間に配置されたセンターツースと、本体部とを備え、
本体部は、第1サイドツースと、第2サイドツースと、センターツースとを収容し、センターツースを収納する収容部と、当該収容部の一方の側面の先端側に第1先端孔と、当該収容部の他方の側面の先端側に第2先端孔とを有し、
前記収容部は、長手方向に平坦な受圧面を有し、
センターツースは、先端側にセンターツース孔を有し、
センターツースピンが第1先端孔と、第2先端孔と、センターツース孔とに挿入されて、センターツースがセンターツースピンを中心として回動可能であり、
センターツースが前記収容部に収納された場合、センターツースの上面と受圧面とが接触する顎部。
【請求項2】
本体部は、第1先端孔側の前記収容部の側面に第1サイドツースを収容する第1サイドツース収容部と、第2先端孔側の前記収容部の側面に第2サイドツースを収容する第2サイドツース収容部とをさらに有し、
センターツースの上面と受圧面とが接触する面積が、第1サイドツースと第1サイドツース収容部とが接触する面積、又は第2サイドツースと第2サイドツース収容部とが接触する面積より大きい請求項1に記載の顎部。
【請求項3】
第1先端孔と、第2先端孔と、センターツース孔とに配置され、センターツースピンが挿入される偏心ブッシュを有する請求項1又は2に記載の顎部。
【請求項4】
センターツースの歯は、先端側に先が尖った先端歯と、後ろ側に後端歯とを有し、
後端歯の歯先は、先端側から順に凹部と凸部とを有するS字形状である請求項1又は2に記載の顎部。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の顎部と、当該顎部とは別の顎部とを有し、当該顎部と当該別の顎部とで一対の顎部を構成し、当該顎部と当該別の顎部とが対向して配置される顎部組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉砕および/又は切断材料のための解体ツールの分野に関連し、詳細には、こうした解体ツール用の交換用部品を有する顎部及び顎部を有する顎部組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術である粉砕および/又は切断材料(単に、物体とも言う)のための解体ツールが特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている解体ツールは、下顎部および上顎部を持つ顎部組立体を備える。上顎部および下顎部は回動可能に連結され、互いに対して移動可能である。物体は、例えば、油圧アクチュエータを使用して、上顎部および下顎部を閉じることによって粉砕又は切断される。
【0003】
顎部組立体は、物体であるコンクリート、又はその他の物体など(例えば、スクラップ鉄など)を破砕および/又は切断(単に、解体とも言う)することに適している。上顎部および/又は下顎部に備えられたセンターツース及びサイドツースは、物体と接触するので急速な摩耗を引き起こす。
【0004】
そこで、特許文献1の顎部組立体は、センターツース及びサイドツースを交換できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2018/050662
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の顎部組立体は、物体の硬度が高い場合、以下の課題を有する。
【0007】
図8は、特許文献1の顎部組立体100の概略の斜視図である。
図8に示す様に、顎部組立体100は、第1顎部(下顎部)102と、第2顎部(上顎部)108と、連結部150とを備えている。第1顎部102と、第2顎部108とは、連結部150を中心として回動可能である。
【0008】
第1顎部102は、両側に第1サイドツース113及び第2サイドツース111と、第1サイドツース113と第2サイドツース111との間にセンターツース110とを有する。
【0009】
図9は、第1顎部102の概略の分解斜視図である。
図9に示す様に、センターツース110は、垂直方向から移動させることで、第1アーム132、第2アーム134の間の空間に挿入される。具体的には、センターツース110は、第1アーム132及び第2アーム134の長手方向に、第1取付脚部116および第2取付脚部118のそれぞれが、第1取付構造体124及び第2取付構造体126のそれぞれの前方に配置されるような方法で挿入される。センタ-ツース110を取り付ける第一の段階では、第1取付脚部116、第2取付脚部118が、第1アーム132、第2アーム134の長手方向(取付方向)に沿ってセンターツース110を摺動することにより、センターツース110を第1顎部102に取り付ける。そして、センターツース110が、取付方向に第1取付構造体124、第2取付構造体126の前方に配置されるように、センターツース110を第1アーム132、第2アーム134の間の空間に挿入する。
【0010】
第二の段階では、センターツース110が第1アーム132、第2アーム134の間に挿入された後、センターツース110は、第1取付脚部116が第1取付構造体124と噛み合うために、第1取付脚部116が取付方向に沿って、後方に移動される。第2取付脚部118も同様である。センターツース110を取付方向に摺動することによって、第1取付構造体124が第1凹部120に挿入され、第2取付構造体126が第2凹部122に挿入される(図10参照)。つまり、センターツース110は、フック形状部分119bの後面が第2取付構造体126に当接するまで、取付方向に沿って移動し、第1取付脚部116の端部がプレート様の第1取付構造体124と接触する(図11参照)。この位置で、フック形状部分119a、119b、119cのそれぞれは、第2凹部122おいて第2取付構造体126と接触する。
【0011】
図11に示す様に、センターツース110の第1取付脚部116と第1取付構造体124との接触面積は、中央部で限られた面積である。図10に示す様に、第2取付脚部118のフック形状部分119a、119b、119cと第2取付構造体126との接触面積も、限られた面積である。
よって、特許文献1の顎部組立体100では、物体の硬度が高い場合、物体を解体すると、上記接触面積が小さいので、第1取付脚部116及びフック形状部分119a、119b、119cが破損し、センターツース110を壊してしまうという課題を有していた。
本開示は、上記課題に鑑み、物体の硬度が高い場合でも、交換可能であり損傷しないセンターツースを有する顎部およびその顎部を有する顎部組立体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様に係る顎部は、物体を解体する顎部組立体の一対の顎部の一方に用いられる顎部であって、両側に配置された第1サイドツース及び第2サイドツースと、第1サイドツースと第2サイドツースと間に配置されたセンターツースと、本体部とを備え、本体部は、第1サイドツースと、第2サイドツースと、センターツースとを収容し、センターツースを収納する収容部と、当該収容部の一方の側面の先端側に第1先端孔と、当該収容部の他方の側面の先端側に第2先端孔とを有し、前記収容部は、長手方向に平坦な受圧面を有し、センターツースは、先端側にセンターツース孔を有し、センターツースピンが第1先端孔と、第2先端孔と、センターツース孔とに挿入されて、センターツースがセンターツースピンを中心として回動可能であり、センターツースが前記収容部に収納された場合、センターツースの上面と受圧面とが接触するものである。
上記態様によれば、センターツースの上面と受圧面とが接触する接触面積が大きいので、物体の硬度が高い場合でも、交換可能であり損傷しないセンターツースを有する顎部を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、物体の硬度が高い場合でも、交換可能であり損傷しないセンターツースを有する顎部及び顎部を備えた顎部組立体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一態様である実施形態1における顎部組立体の概略の斜視図である。
図2】実施形態1における顎部組立体の概略の分解斜視図である。
図3】実施形態1における第1顎部の概略の斜視図で、(a)は全体斜視図を表し、(b)は分解斜視図を表す。
図4】実施形態1における顎部組立体の動作を表す動作図で、(a)は顎部が開いた状態を示す図で、(b)は顎部が閉じた状態を示す図である。
図5】実施形態1における第1顎部とセンターツースとの位置関係を表す図で、(a)はセンターツースを収容した状態の概略の斜視図で、(b)はセンターツースを収容した状態の概略の断面図で、(c)はセンターツースが受圧面から距離Bにある時の概略の断面図である。
図6】本開示の一態様である実施形態2における第1顎部の概略図で、(a)は第1顎部の概略断面図で、(b)は偏心ブッシュの概略断面図である。
図7】実施形態2のセンターツースの取付け方法を説明する図で、(a)はセンターツース10を収容部70に挿入した状態を示す図で、(b)はセンターツースの後端歯と物体とが接触した状態を示す図で、(c)は偏心ブッシュにより収容部にセンターツースが固定された状態を示す図である。
図8】従来技術の顎部組立体の概略の斜視図である。
図9】従来技術の第1顎部の概略の分解斜視図である。
図10】従来技術のセンターツースの背面から見た概略の斜視図である。
図11】従来技術の第1顎部の背面から見た概略の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示のより具体的な実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似する構成要素については、同じ参照符号を付している。
【0016】
(実施形態1)
以下、本開示の一態様を示す顎部組立体1について図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本開示の一態様を示す顎部組立体1の概略の斜視図である。
図1に示す様に、顎部組立体1は、第1顎部2(上顎部)と第2顎部3(下顎部)とを備える。第1顎部2と第2顎部3とは連結部15で連結され、連結部15を中心として、例えば、油圧アクチュエータを用いて、第1顎部2と第2顎部3との間隔が狭くなったり、広くなったりすることが可能である。
図2は、顎部組立体1の概略の分解斜視図である。
第1顎部2は、本体部20と、第1サイドツース11と、第2サイドツース12と、第1サイドツース11と第2サイドツース12との間にセンターツース10と、第1連結ピン孔25とを有している。
第2顎部3は、第3サイドツース13と、第4サイドツース14と、第2連結ピン孔26とを有している。
連結ピン16は、中央部に連結ブッシュ17を保持し、第2連結ピン孔26と嵌合する。連結ブッシュ17は、第1連結ピン孔25と嵌合する。この構成により、第1顎部2と第2顎部3とは、連結部15で連結され、連結部15を中心として回動する。
【0018】
図2に示す様に、第1サイドツース11は、基板60の上面に三角形状の第1ツース55を複数個(図2では、3個)有し、基板60の下面に第1固定孔61と第2固定孔62とを有する。
【0019】
図3は、第1顎部2の概略の全体斜視図と分解斜視図で、図3(a)は第1顎部2の概略の全体斜視図で、図3(b)は第1顎部2の概略の分解斜視図である。
図3(a)に示す様に、第1サイドツース11は第1サイドツース収容部33に収容され、第2サイドツース12は第2サイドツース収容部43に収容されている。
図3(b)に示す様に、第1サイドツース収容部33は、内部が空洞となっている箱型であり、上面に縁を持つ矩形形状の開口部29を有する。第1サイドツース11が第1サイドツース収容部33に収納される際、第1サイドツース11の第1固定孔61と第2固定孔62とが第1サイドツース収容部33に収容される。その時、第1固定孔61と第1シート孔31とが連通し、第2固定孔61と第2シート孔31とが連通する。
そして、第1サイドツース11の基板60と開口部29の縁とが接触する。その状態で、第1シート孔31及び第2シート孔32にサイドツースピン35が挿入されると、第1サイドツース11は第1サイドツース収容部33に固定される(図1図3参照)。
【0020】
第2サイドツース12、第3サイドツース13、第4サイドツース14も第1サイドツース11と同様に、基板60の上面に三角形状の第1ツース55を複数個(図2では、3個)有し、基板60の下面に第1固定孔61と第2固定孔62とを有する(図2参照)。
第2サイドツース収容部43、第3サイドツース収容部44、第3サイドツース収容部45のそれぞれは、第1サイドツース収容部33同様に、内部が空洞となっている箱型であり、上面に縁を持つ矩形形状の開口部29を有する。第2サイドツース12、第3サイドツース13、第4サイドツース14も第1サイドツース11と同様に、それぞれの基板60と、それぞれの開口部29の縁とを接触させる。そして、第1シート孔31にサイドツースピン35が挿入され、第2シート孔32にもサイドツースピン35が挿入されて、第2サイドツース12、第3サイドツース13、第4サイドツース14のそれぞれが、第2サイドツース収容部43、第3サイドツース収容部44、第4サイドツース収容部45のそれぞれに固定される(図1図3参照)。
【0021】
図4は、顎部組立体1の動作を表す動作図である。
図4(a)は、第1顎部2と第2顎部3とを開いて、第1顎部2と第2顎部3とで、物体Wを挟み込んでいる状態を示す図である。具体的には、第1顎部2のセンターツース10と、第3サイドツース13と、第4サイドツース14とで、物体Wを挟み込んでいる。
図4(b)は、第1顎部2と第2顎部3とを閉じた状態を示す図で、第1顎部2の長手方向の前方から見て、第1サイドツース11の第1ツース55と、第3サイドツース13の第1ツース55とが重なっている。そして、第1顎部2の長手方向から見て、第2サイドツース12の第1ツース55と、第4サイドツース14の第1ツース55とが重なっている。 センターツース10の下部は空洞となっており、センターツース10に対向する第1ツース55はない。
【0022】
図5は、第1顎部2とセンターツース10との位置関係を表す図である。
図5(a)、(b)に示す様に、第1顎部2の本体部20は、センターツース10を本体部20の内部に収容する収容部70を有する。収容部70は、上面には長手方向に平坦な受圧面71を有し、受圧面71と対向する下面は開口している。また、収容部70は、後方に、奥部室72を有している。
【0023】
収容部70とセンターツース10との位置決めについて説明する。
センターツース10は、後方に延びる端部59を有している(図3(b)、図5参照)。センターツース10は収容部70の下面から挿入され、センターツース10の端部59が収容部70の奥部室72に挿入され、センターツース10の右端の部分が奥部室72で支持される。
【0024】
図5(b)に示す様に、センターツース10と物体Wとが接触して、後述する後端歯58に物体の破砕力Pが加わったとき、受圧面71とセンターツース10の上面30とが広い面積で均一に接触するように、受圧面71とセンターツースピン50の中心C0との距離Aが設定されている。
第1先端孔21と、第2先端孔22と、センターツース孔23とに、センターブッシュ51付きセンターツースピン50を挿入して、センターツース10が回動可能となる。そして、1本のセンターブッシュ51付きのセンターツースピン50で、収容部70とセンターツース10との位置決めを行い、受圧面71とセンターツース10の上面30とが均一に広い面積で接触する。
上記態様にすることで、受圧面71とセンターツース10の上面30とが均一に広い面積で接触しているので、物体Wの硬度が高い場合でも、センターツース10が破損することなく動作することが可能である。又、1本のセンターツースピン50を取り外せば、収容部70からセンターツース10を簡単に取り外せるので、容易にセンターツース10を交換することができる。
【0025】
図5(b)に示す様に、センターツース10の第2ツース56は、先端側に先が尖った先端歯57と、後ろ側に後端歯58とを有している。後端歯58の歯先は、先端側から順に凹部と凸部とを有するS字形状である。
上記構成により、後端歯58の凸部で物体Wの一部を破砕した後、凹部で物体Wを保持しながら破砕するので、効率良く物体Wを解体できる。
【0026】
(実施形態2)
実施形態1の第1顎部2は、受圧面71とセンターツースピン50の中心C0との距離Aの精度が要求される。
図5(c)は、距離Aの精度が良くない第1顎部2の概略の断面図である。すなわち、受圧面71とセンターツースピン50の中心C1との距離Bが、距離Aより長くなっている。
図5(c)の拡大図に示す様に、センターツース10の上面30が左側になる程、受圧面71から離れて、受圧面71とセンターツース10の上面30との接触面積が小さくなっていることが分かる。
このように、実施形態1の第1顎部2は、距離Aの精度が要求され、まだ改良の余地がある。
【0027】
図6は、実施形態2における第1顎部2の概略の断面図である。
実施形態2は、実施形態1の第1顎部2のセンターブッシュ51の替わりに、偏心ブッシュ53を用いた点が実施形態1と異なる。
以下、一例として、数値を用いて説明するが、あくまで説明のためであって、数値は適宜変更可能である。
【0028】
図6(a)に示す様に、センターツース10のセンターツース孔23に、偏心ブッシュ53が挿入されている。
図6(b)は、偏心ブッシュ53の一例を示す図である。図6(b)に示す様に、偏心ブッシュ53は、センターツースピン50を挿入する偏心ブッシュ孔54を有する。偏心ブッシュ53の中心C1と偏心ブッシュ孔54の中心C2との距離L0は、水平から角度42度の左上から右下に延びる直線L1上において、約3mmずれている。この状態において、直線L1上の偏心ブッシュ53の左上の幅は5mmで、右下の幅は11mmである。
偏心ブッシュ孔54は、偏心ブッシュ53の中心C1を中心として回転する。
【0029】
実施形態2のセンターツース10を収容部70に取付ける方法(組立て方法)について、図7を用いて説明する。
図7(a)は、第1顎部2と第2顎部3とが開いた状態で、かつ第1顎部2と第2顎部3とは物体Wと接触していない状態で、センターツース10を収容部70に挿入した状態を示す図である。
この時、偏心ブッシュ53において、図6(b)と同様に、センターツースピン50の中心C2は、偏心ブッシュ53の中心C1を中心として、水平から42度傾いた直線L1上に位置する。センターツースピン50の中心C2は、受圧面71から52mm下の位置にあり、偏心ブッシュ53の中心C1は、受圧面71から54mm下の位置にある。よって、偏心ブッシュ53の中心C1とセンターツースピン50の中心C2との距離L0は、垂直方向で2mmであり、42度傾いた直線L1上で約3mmである。
受圧面71とセンターツース10の上面30とは、4mmの隙間を有している。センターツース10の端部59と奥部室72の側面とは、21mmの距離で離れており、非接触である。
【0030】
次に、図7(b)に示す様に、偏心ブッシュ53は回転させずに、第1顎部2と第2顎部3との距離を狭めて、センターツース10の後端歯58と物体Wと接触させる。この時、センターツース10は、センターツースピン50の中心C2を中心として矢印Aの方向に回転し、センターツース10の上面30の右端が受圧面71と接触する。受圧面71の左端において、受圧面71とセンターツース10の上面30とは、4mmの隙間を有している。
【0031】
最後に、図7(c)に示す様に、偏心ブッシュ53を最初の位置から反時計回りに84度回転させる。そうすると、センターツース10は、矢印Bの方向に移動し、受圧面71とセンターツース10の上面30とが、隙間なく均一に接触する。
この時、センターツース10の上面30と受圧面71とが接触する面積は、第1サイドツース11と第1サイドツース収容部33とが接触する面積、又は第2サイドツース12と第2サイドツース収容部43とが接触する面積より大きい。
上記態様により、受圧面71とセンターツースピン50の中心との距離の精度が要求されず、収容部70にセンターツース10を容易に設置することができる。また、受圧面の面積が大きいので、センターツース10が壊れることなく、硬い物体でも破砕することが可能である。
【0032】
尚、実施形態1及び2では、第1顎部2を上顎部とし、第2顎部3を下顎部としたが、第1顎部2を下顎部とし、第2顎部3を上顎部としても良い。
【0033】
尚、実施形態1~2に係る発明は、矛盾が生じない限り、置き換えたり、組合せたりすることができる。
【0034】
以上のように、本開示は、以下の項目に記載の顎部及びそれを備えた顎部組立体を含む。
【0035】
〔項目1〕
物体を解体する顎部組立体の一対の顎部の一方に用いられる顎部であって、
両側に配置された第1サイドツース及び第2サイドツースと、第1サイドツースと第2サイドツースと間に配置されたセンターツースと、本体部とを備え、
本体部は、第1サイドツースと、第2サイドツースと、センターツースとを収容し、センターツースを収納する収容部と、当該収容部の一方の側面の先端側に第1先端孔と、当該収容部の他方の側面の先端側に第2先端孔とを有し、
前記収容部は、長手方向に平坦な受圧面を有し、
センターツースは、先端側にセンターツース孔を有し、
センターツースピンが第1先端孔と、第2先端孔と、センターツース孔とに挿入されて、センターツースがセンターツースピンを中心として回動可能であり、
センターツースが前記収容部に収納された場合、センターツースの上面と受圧面とが接触する顎部。
上記態様によれば、物体の硬度が高い場合でも、センターツースが破損することなく動作することが可能である。又、1本の連結ピンを取り外せば、収容部からセンターツースを取り外せるので、容易にセンターツースを交換できる。
【0036】
〔項目2〕
本体部は、第1先端孔側の前記収容部の側面に第1サイドツースを収容する第1サイドツース収容部と、第2先端孔側の前記収容部の側面に第2サイドツースを収容する第2サイドツース収容部とをさらに有し、
センターツースの上面と受圧面とが接触する面積が、第1サイドツースと第1サイドツース収容部とが接触する面積、又は第2サイドツースと第2サイドツース収容部とが接触する面積より大きい項目1に記載の顎部。
上記態様によれば、物体の硬度が高い場合でも、センターツースが破損することなく動作することが可能である。
【0037】
〔項目3〕
第1先端孔と、第2先端孔と、センターツース孔とに配置され、センターツースピンが挿入される偏心ブッシュを有する項目1又は2に記載の顎部。
上記態様によれば、受圧面とセンターツースピンの中心との距離の精度が要求されず、収容部にセンターツースを容易に設置することができる。
【0038】
〔項目4〕
センターツースの歯は、先端側に先が尖った先端歯と、後ろ側に後端歯とを有し、
後端歯の歯先は、先端側から順に凹部と凸部とを有するS字形状である項目1乃至3のいずれかに記載の顎部。
上記構成によれば、後端歯の凸部で物体Wの一部を破砕した後、凹部で物体Wを保持しながら破砕するので、効率良く物体Wを解体できる。
【0039】
〔項目5〕
項目1乃至4のいずれかに記載の顎部と、当該顎部とは別の顎部とを有し、当該顎部と当該別の顎部とで一対の顎部を構成し、当該顎部と当該別の顎部とが対向して配置される顎部組立体。
上記構成によれば、物体の硬度が高い場合でも、センターツースが破損することなく動作することが可能である顎部組立体を提供できる。又、1本の連結ピンを外せば、収容部からセンターツースを取り外せるので、容易にセンターツースを交換できる顎部組立体を提供できる。
【符号の説明】
【0040】
1 顎部組立体
2 第1顎部
8 第2顎部
10 センターツース
11 第1サイドツース
12 第2サイドツース
13 第3サイドツース
14 第4サイドツース
20 本体部
21 第1先端孔
22 第2先端孔
23 センターツース孔
30 センターツースの上面
33 第1サイドツース収容部
43 第2サイドツース収容部
50 センターツースピン
53 偏心ブッシュ
57 先端歯
58 後端歯
70 収容部
71 受圧面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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