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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023065
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】太陽光発電のための光電変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/055 20140101AFI20240214BHJP
【FI】
H01L31/04 622
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126622
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130395
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰造
(72)【発明者】
【氏名】奥村 健一
(72)【発明者】
【氏名】富澤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】山田 昇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151AA03
5F151AA05
5F151AA08
5F151AA10
5F151AA11
5F151EA01
5F151HA13
5F151HA17
5F151JA21
5F151JA22
5F151JA23
5F251AA02
5F251AA03
5F251AA05
5F251AA08
5F251AA10
5F251AA11
5F251EA01
5F251HA13
5F251HA17
5F251JA21
5F251JA22
5F251JA23
(57)【要約】
【課題】 太陽光を集光して光電池セルに照射し、光電池セルにて太陽光発電を実行する光電変換装置に於いて、太陽光からできるだけ多くの電力の得られる構成を提供すること。
【解決手段】 光電変換装置1は、太陽光を吸収して蛍光を放出する蛍光物質が分散され且つ外部と屈折率が異なる材料から形成された板状構造を有し、その一方の面から太陽光が入射すると、蛍光物質から放出される蛍光が縁面に集光されて出射する蛍光導光板2と、蛍光導光板の上面に載置されて太陽光の照射を受けて発電する第一の光電池セル3と、外部より屈折率の高い透光性の材料からなり、蛍光導光板の上方にて、蛍光導光板の側に凸状に湾曲し、蛍光導光板に接触しないよう配置され、外表面から入射した光が第一の光電池セルへ集光されるよう構成された集光層4と、蛍光導光板の縁面から出射した蛍光の照射を受けて発電する第二の光電池セル5とを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換装置であって、
第一の面と、第二の面と、前記第一及び第二の面の周縁を接続する縁面とから成る蛍光導光板にして、その内部又は前記第一若しくは第二の面上に照射光の少なくとも一部の成分を吸収して蛍光を放出する蛍光物質が分散され且つ外部と屈折率が異なる材料から形成された板状構造を有し、前記第一の面から太陽光が入射すると、前記蛍光物質から放出される前記蛍光が前記縁面に集光されて出射する蛍光導光板と、
前記蛍光導光板の前記第一の面上に載置されて太陽光の照射を受けて発電する第一の光電池セルと、
前記蛍光導光板の前記第一の面側にて前記第一の光電池セルの上方に配置された集光層にして、その外部より屈折率の高い透光性の材料からなり、その前記蛍光導光板の前記第一の面に対向する面とは反対の側の外表面から入射した光が前記第一の光電池セルへ集光されるよう構成された集光層と、
前記蛍光導光板の前記縁面上に載置されて該縁面から出射した蛍光の照射を受けて発電する第二の光電池セルと、
前記第一の光電池セル及び前記第二の光電池セルのそれぞれにて得られた電力を取り出すための電力出力手段と
を含み、
前記集光層に於ける集光をする部分が、前記蛍光導光板の前記第一の面に対向する面側に凸状に湾曲した形状を有し、前記集光層が前記蛍光導光板の前記第一の面に接触していない装置。
【請求項2】
請求項1の装置であって、前記集光層に於ける集光する部分が、複合放物面型集光器、複合楕円面型集光器、複合双曲面型集光器又はVトラフ型集光器の構成を有し、その出射面の各々が前記第一の光電池セルの受光面に接している装置。
【請求項3】
請求項1の装置であって、前記集光層と前記蛍光導光板の前記第一の面との
間が空気層である装置。
【請求項4】
請求項1の装置であって、前記集光層が、その外表面へ入射する光の入射角が所定角を下回るときに前記集光層により集光された光が前記第一の光電池セルの受光面に照射されるよう構成されている装置。
【請求項5】
請求項1の装置であって、前記集光層の外表面から入射して前記第一の光電池セルの受光面から外れた光線が前記蛍光導光板へ進入するよう構成されている装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの装置であって、前記蛍光導光板の前記第二の面が光を実質的に透過させずに反射する反射ミラー層にて覆われている装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかの装置であって、前記蛍光導光板の前記縁面の前記第二の光電池セルが載置されていない部分が光を実質的に透過させずに反射する反射ミラー層にて覆われている装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電池セルを基板上に担持する光電変換装置に係り、より詳細には、太陽光を集光して光電池セルへ照射するよう構成された光電変換装置に係る。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムに於いて、太陽電池セルなどの光電池セル当たりの発電量を増大し、或いは、システムに於ける発電効率を向上しつつ、利用する光電池セルの数を少なくして、システムのコスト若しくは寸法の低減を図るために、そのままでは強度の低い太陽光を集光して光電池セルへ照射するための太陽電池モジュール或いは光電変換装置の構成が種々提案されている。例えば、本願出願人による特許文献1に於いては、太陽光を集光して光電池セルに照射し、光電池セルにて太陽光発電を実行する光電変換装置として、図7(A)~(C)に例示されている如く、太陽光SLを吸収して蛍光FLを放出する蛍光物質6が分散され且つ外部と屈折率が異なる材料から形成された板状構造を有し、その一方の面から太陽光SLが入射すると、蛍光物質6から放出される蛍光FLが縁面2eに集光されて出射する蛍光導光板2と、蛍光導光板2の面上に載置されて太陽光SLの照射を受けて発電する第一の光電池セル3と、蛍光導光板2と第一の光電池セル3との上に重畳され、外表面から入射した光が第一の光電池セル3へ集光されるよう構成されたレンズ層4’と、蛍光導光板2の縁面2eから出射した蛍光FLの照射を受けて発電する第二の光電池セル5とを含む装置1が開示されている。かかる光電変換装置1では、レンズ層4’によりそのレンズ面4’aに照射される太陽光SLを第一の光電池セル3の受光面へ集光すると共に、第一の光電池セル3の受光面から外れた光を蛍光導光板2にて蛍光物質6で吸収して蛍光FLに変換し、その蛍光FLを蛍光導光板2の縁面2eに配置された第二の光電池セル5へ集光し、これにより、太陽光SLの向きが変化しても、できるだけ多くの太陽光エネルギーが回収されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-062642
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Srikanth Madala, Robert F. Boehm, “Effect of reflection losses on stationary dielectric-filled nonimaging concentrators,” J. Photon. Energy 6(4), 047002 (2016), doi: 10.1117/1.JPE.6.047002.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7(A)~(C)に記載されている光電変換装置1に於いて、上記の如く、第一の光電池セル3の上方に載置されたレンズ層4’の上面から入射した光のうち、第一の光電池セル3から外れた光線は、蛍光導光板2に進入し、そこに於いて、蛍光物質6に吸収され、蛍光FLとして蛍光物質6から全方位に放出される。かかる蛍光FLのうち、蛍光導光板2の上面2a(レンズ層4’との界面)及び底面2bへ向かう方向の光線は、上面2aと底面2bとにて反射を繰り返して、縁面2eに到達することとなる。この点に関し、底面2bに於いては、蛍光導光板2の外部は、通常、空気であるので、蛍光導光板2内に対して屈折率が十分に低く、全反射が発生しやすく、また、底面2bでは、光を透過させる必要がないので、全ての光線が反射されるように反射ミラーを貼付することも可能である。これに対し、上面2aに於いては、レンズ層4’から太陽光を受光する必要が有ると共に、かかる界面に於ける屈折率差が、空気の場合よりも小さく、臨界角が比較的大きいので、全反射が発生しにくく、その分、光線が板外へ逃げ易くなっており、太陽光エネルギーの回収量も低減することとなる。そこで、もし上記の如く蛍光導光板2の上面2aに載置された光電池セル3へレンズ層4’により照射光を集光する構成の光電変換装置に於いて、蛍光導光板2の上面2aに於ける板の内外の屈折率差をより大きくできれば、太陽光エネルギーの回収量をより増大することができ、有利である。
【0006】
かくして、本発明の主な課題は、太陽光を集光して光電池セルに照射し、光電池セルにて太陽光発電を実行できるよう構成された光電変換装置に於いて、太陽光から電力を得る際のエネルギーの損失をできるだけ低減する構成を提供することである。
【0007】
また、本発明の更なる課題は、上記の如き光電変換装置にして、太陽光などの照射光を蛍光導光板の上面に載置された光電池セルへ集光すると共に、光電池セルから外れた照射光を蛍光導光板へ進入させて蛍光に変換して、更なる光電池セルの配置された蛍光導光板の縁面に集光する構成の光電変換装置に於いて、蛍光導光板の内側から上面へ向かう光の反射率を増大して、光電池セルにて回収できる光エネルギーを増大することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、上記の課題は、光電変換装置であって、
第一の面と、第二の面と、前記第一及び第二の面の周縁を接続する縁面とから成る蛍光導光板にして、その内部又は前記第一若しくは第二の面上に照射光の少なくとも一部の成分を吸収して蛍光を放出する蛍光物質が分散され且つ外部と屈折率が異なる材料から形成された板状構造を有し、前記第一の面から照射光が入射すると、前記蛍光物質から放出される前記蛍光が前記縁面に集光されて出射する蛍光導光板と、
前記蛍光導光板の前記第一の面上に載置されて照射光の照射を受けて発電する第一の光電池セルと、
前記蛍光導光板の前記第一の面側にて前記第一の光電池セルの上方に配置された集光層にして、その外部より屈折率の高い透光性の材料からなり、その前記蛍光導光板の前記第一の面に対向する面とは反対の側の外表面から入射した光が前記第一の光電池セルへ集光されるよう構成された集光層と、
前記蛍光導光板の前記縁面上に載置されて該縁面から出射した蛍光の照射を受けて発電する第二の光電池セルと、
前記第一の光電池セル及び前記第二の光電池セルのそれぞれにて得られた電力を取り出すための電力出力手段と
を含み、
前記集光層に於ける集光をする部分が、前記蛍光導光板の前記第一の面に対向する面側に凸状に湾曲した形状を有し、前記集光層が前記蛍光導光板の前記第一の面に接触していない装置
によって達成される。
【0009】
上記の構成に於いて、「蛍光導光板」とは、板状構造の広い面(第一の面)から光が入射すると、内部に又は第一若しくは第二の面上に分散された蛍光物質が進入した光により励起されて蛍光を発し、その蛍光が板状構造の縁面へ導かれて集光されて出射するよう構成された板状部材である。蛍光物質から放出される蛍光は、放射方向に発せられるところ、板状構造を成す蛍光導光板の屈折率がその外部の屈折率と異なるときには、板状構造の広い面(第一の面、第二の面)と外部との界面に於いて、蛍光の一部は透過してしまうが、残りの蛍光は反射され(蛍光導光板の屈折率が外部の屈折率よりも高いときには、全反射によって相当量の蛍光が反射される。)、結果的に、板状構造の縁面へ集光し、そこから出射されることとなる。蛍光導光板を形成する材料に於いて分散される「蛍光物質」は、励起光が照射されると、その光を吸収して、蛍光を発する蛍光色素、量子ドットなどの任意の物質であってよい。なお、第一の面上又は第二の面上に蛍光物質を分散させる構成は、実施の態様に於いて、例えば、蛍光物質が分散された薄膜を第一の面上又は第二の面上に貼着又は形成することにより達成されてもよい。「照射光」とは、典型的には、太陽光であるが、これに限定されず、任意の光であってよい。
【0010】
「第一の光電池セル」は、太陽光に含まれる光成分を吸収して発電する任意の形式の光電池セル又は光電変換素子である。第一の光電池セルとしては、好適には、発電効率の優れたIII-V族多接合型太陽電池セル(InGaP/GaAs/InGaAsなど)が有利に用いられるが、CIS太陽電池、結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、ペロブスカイト太陽電池などのその他の光電池セルであってもよい。
【0011】
「第二の光電池セル」は、蛍光導光板内の蛍光物質から発せられる蛍光成分を吸収して発電する任意の形式の光電池セル又は光電変換素子である。なお、更に太陽光に含まれる光成分を吸収して発電する素子であってもよい。第二の光電池セルとしては、例えば、CIS太陽電池、結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、ペロブスカイト太陽電池などの光電池セルであってよい。
【0012】
「集光層」とは、上記の如く、蛍光導光板の第一の面側にて、第一の光電池セルの上方に配置された層であって、その外部より屈折率の高い透光性の材料からなり、その外表面(蛍光導光板の第一の面と対向している面とは反対側の表面)から入射した光が蛍光導光板の第一の面上に載置された第一の光電池セルへ集光されるよう構成された層であり、特許文献1の構成に於けるレンズ層に相当する。しかしながら、特に、本発明に於いては、かかる集光層に於ける集光をする部分(集光部分)が、蛍光導光板の第一の面に対向する面側に凸状に湾曲した形状を有し、集光層が蛍光導光板の第一の面に接触しないように配置される。具体的には、集光部分は、球面レンズ、非球面レンズ、非球面-非対称レンズ、自由曲面レンズ、複合放物面型集光器(Compound Parabolic Concentrator)、複合楕円面型集光器(Compound Elliptical Concentrator)、複合双曲面型集光器(Compound Hyperbolic Concentrator)又はVトラフ型集光器(V-trough Concentrator)のいずれかの形状に形成されていてよい。
【0013】
上記の本発明の装置の基本的な構成に於いては、後に詳細に説明される添付の図面からも理解される如く、装置の集光層の外表面から太陽光などの照射光が入射されると、そのできるだけ多くの光線が集光層の集光作用によって第一の光電池セルへ照射され、そこに於いて電力に変換される。一方、照射光のうちで、集光部分から外れた光線や、入射角(外表面の法線から計った光線の方向の角度)が大きく、第一の光電池セルへ当たらなかった光線は、蛍光導光板へ進入し、そこに於いて、蛍光物質に吸収され、蛍光として放出され、蛍光導光板の縁面に集光されて、第二の光電池セルへ照射され、そこに於いて電力に変換されることとなる。かかる構成によれば、特許文献1の場合と同様に、まず、第一の光電池セルに於いては、集光層に入射し集光された照射光がそのまま吸収されて電力に変換され、高効率での光電変換が達成されるので、できるだけ多くの照射光の成分が第一の光電池セルに照射されるようにすることで、光エネルギーの損失をできるだけ抑制した態様での発電が期待される。また、第一の光電池セルの基板として、上記の如き蛍光導光板を採用し、その蛍光導光板の縁面に第二の光電池セルを配置することにより、集光部分から外れる光線や集光部分への入射角が大きく、第一の光電池セルへ当たらない光線を蛍光導光板へ導入し、そのエネルギーを第二の光電池セルにて捕集し発電に利用できるようにし、これにより、装置に於いて、より多くの光エネルギーが電力として収集することが可能となっている。換言すれば、本発明の装置に於いては、集光層と第一の光電池セルとの構成によって、より高効率な光電変換を達成すると共に、蛍光導光板と第二の光電池セルとの構成により、集光層に対する太陽光の入射角が種々変化しても、光エネルギーを電力として収集できるようにして、光電変換装置としてのロバスト性(太陽光の入射角の変化による発電効率の低下を抑制できる性能)が向上されることとなる。
【0014】
そして、上記の如き光電変換装置の構成に於いて、本発明の場合には、特に、集光層に於ける集光部分が、上記の如く、蛍光導光板の第一の面に対向する面側に凸状に湾曲した形状を有していることから、蛍光導光板の第一の面の外側が集光層に接触しないようにできることとなる。そうすると、蛍光導光板の第一の面の外側の空間の屈折率を低くすることができ、これにより、蛍光導光板の第一の面に於いて、板の内側から外側へ向かう光線が全反射する臨界角がより小さくすることが可能となるので、蛍光導光板の内部で蛍光物質から放出された蛍光のうちで第一の面を透過してしまう光線量をより低減することができ、その分、より多くの光エネルギーを第二の光電池セルにて電気エネルギーに変換して回収することが可能となる。蛍光導光板の第一の面と集光層との間の空間は、典型的には、空気層であってよいが、これに限定されない。
【0015】
上記の本発明の構成に於いて、集光層に於ける集光部分は、好適には、複合放物面型集光器、複合楕円面型集光器、複合双曲面型集光器又はVトラフ型集光器の構成を有し、その出射面の各々が第一の光電池セルの受光面に接するよう構成されていてよい。複合放物面型集光器、複合楕円面型集光器、複合双曲面型集光器、又は、Vトラフ型集光器とは、透光性の、典型的には、誘電体材料から形成され、一方の端面の面積が他方の面積よりも大きい管状形状の部材であり、面積の大きい端面(入射面)から、管状形状の中心軸線から計った角度が所定角度以内の入射角にて入射する光線が集光されて面積の小さい端面(出射面)から出射するよう構成された部材である(例えば、非特許文献1参照)。従って、集光部分に、上記の如き複合放物面型集光器、複合楕円面型集光器、複合双曲面型集光器、又は、Vトラフ型集光器が用いられる場合には、入射面が集光層の外表面となり、出射面が第一の光電池セルの受光面に接触するよう配置される。かかる構成によれば、集光層の外表面から入射して第一の光電池セルの受光面へ到達する光線は、その途中で空気層などの屈折率の低い領域を通ることがなく、従って、第一の光電池セルの受光面に届く光量の損失が低く抑えられることとなり、有利である。なお、上記の一連の集光器のうち、複合放物面型集光器の集光率(入射面から入射した光量のうちで出射面から出射する光量の割合)が最も大きいので、集光層に於ける集光部分は、より好適には、複合放物面型集光器の構成を有していてよい。
【0016】
実施の形態に於いては、蛍光導光板の第一の面上にて複数の第一の光電池セルが間隔を置いて並置され、各第一の光電池セルの受光面に対して、集光層の集光部分の出射面が整合するように、集光部分が並置されてよい。その場合、集光層は、その外表面へ入射する光の入射角が所定角を下回るときに集光層により集光された光が第一の光電池セルの受光面に照射されるよう構成されていてよい。また、集光層は、その外表面に入射した光線のうち、集光部分を通らなかった光線或いは集光部分に於ける入射角が所定角を上回り、出射面から出射しなかった光線などの第一の光電池セルの受光面から外れた光線が、蛍光導光板へ進入するように構成されていてよい。
【0017】
更に、蛍光導光板内の光が蛍光導光板の第二の面(第一の面の裏側)から放射されないように、蛍光導光板の第二の面が光を実質的に透過させずに反射する反射ミラー層にて覆われていてもよい(「光を実質的に透過させず」とは、有意な量の太陽光又は蛍光を透光させないことを意味する。)。また更に、蛍光導光板の縁面に於いて、第二の光電池セルが載置されていない部分が在る場合には、その部分からの光の放出を防止するために、かかる部分が、光を実質的に透過させずに反射する反射ミラー層にて覆われていてよい。
【発明の効果】
【0018】
かくして、上記の本発明によれば、太陽光を集光して光電池セルに照射し、光電池セルにて太陽光発電を実行する光電変換装置であって、集光層で集光した光の多くを第一の光電池セルにて吸収し、第一の光電池セルに到達しなかった光については、蛍光導光板を介して第二の光電池セルにてより吸収し、それぞれ、光電変換により発電が実行される構成に於いて、集光層として、蛍光導光板の第一の面に対向する面側に凸状に湾曲した形状を有し、蛍光導光板の第一の面に接触していない構成のものを採用しているので、蛍光導光板の第一の面に於ける第一の光電池セルが載置されていない領域は、空気層などの低屈折率の媒質に接するようにできることとなる。これにより、本発明の装置では、蛍光導光板の内部で放出される蛍光のうちで、蛍光導光板の第一の面から透過してしまう光線を低減することができ、かくして、第二の光電池セルの配置された蛍光導光板の縁面へ集光される光量をより多くすることが可能となる。
【0019】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1(A)、(B)は、それぞれ、本実施形態による光電変換装置の一つの態様の模式的な上面図と断面図である。なお、(B)は、蛍光物質は、蛍光導光板の内部に分散されている例である。
図2図2は、図1の装置の模式的な分解図である。
図3図3(A)、(B)は、本実施形態による光電変換装置の別の態様の模式的な断面図であり、(A)は、蛍光導光板の上面(第一の面)上に蛍光物質が分散されている例であり、(B)は、蛍光導光板の下面(第二の面)上に蛍光物質が分散されている例である。
図4図4は、本実施形態による光電変換装置の更に別の態様の模式的な断面図であり、集光層の集光部分に球面レンズを用いた例である。
図5図5は、本実施形態による光電変換装置の更に別の態様の模式的な上面図であり、蛍光導光板の縁面の一部に第二の光電池セルが配置され、それ以外の部位には、反射ミラーが貼着された例である。
図6図6(A)は、光電変換装置の内部の状態を模式的に表わした図であり、蛍光導光板内での蛍光の閉じ込め作用を説明する図である。図6(B)は、複合型放物面型集光器に於ける光線の進路を模式的に説明する図である。図6(C)は、本実施形態による光電変換装置の一つの態様に於いて、照射光の入射角を変化させたときの複合型放物面型集光器の出射面(CPC)と蛍光導光板の縁面(LSC)とに於いて計測された集光率の変化を示すグラフ図である。
図7図7(A)、(B)は、従来の光電変換装置の一つの態様の模式的な上面図、断面図であり、図7(C)は、従来の光電変換装置の蛍光導光板に於いて蛍光物質から放出された蛍光の進路を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0021】
1…光電変換装置
2…蛍光導光板
2a…蛍光導光板の上面(第一の面)
2b…蛍光導光板の下面(第二の面)
2d…蛍光物質層
2e…蛍光導光板の縁面
3…光電池セル(第一の光電池セル)
3a…保護層
4…集光層
4a…入射面
4b…出射面
4c…集光部分
4’…レンズ層
4’a…レンズ部分
5…光電池セル(第二の光電池セル)
6…蛍光物質
8…反射ミラー(蛍光導光板の下面)
9…反射ミラー(蛍光導光板の縁面)
10a、10b…電力線
SL…太陽光
FL…蛍光
a…空隙層
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
光電変換装置の基本構成
図1(A)、(B)、図2を参照して、本実施形態の光電変換装置1は、その基本構成に於いて、板状構造の蛍光導光板2と、その第一の面(図に於いて、上面)2a上に載置された光電池セル(第一の光電池セル)3と、蛍光導光板2の上面2aと光電池セル3との上方に配置される集光層4と、蛍光導光板2の縁面2e上に配置された光電池セル(第二の光電池セル)5とを含む。なお、図示の如く、光電池セル3、5にてそれぞれ発電された電力は、電力線10a、10bにより外部に取り出されるようになっていてよい。
【0023】
上記の光電変換装置1に於いて、蛍光導光板2は、図示の如く、太陽光などの光を吸収して発電する光電池セル3の配置される基板として用いられると同時に、光電池セル3に照射されなかった光を受容して、その内部に分散された蛍光物質により蛍光に変換して、縁面に集光する機能を果たすよう構成される。蛍光導光板2の母材は、透明若しくは透光性を有する屈折率が空気よりも高い材料であり、例えば、高屈折ポリメタクリル酸メチル樹脂(屈折率1.60)、ポリカーボネート樹脂(屈折率1.59)、ポリエステル樹脂(屈折率1.60)アクリル樹脂(1.49~1.53)、シリコン樹脂(1.43)、フッ素樹脂(1.33~)、石英ガラス(1.54~1.55)などであってよい。なお、光電変換装置1が任意の物体表面に適用できるように或る程度にて湾曲変形可能であると有利であるので、蛍光導光板2の母材としては、可撓性のある材料が選択されてもよい。蛍光導光板2に分散される蛍光物質は、太陽光を吸収して、蛍光を放出する任意の物質であってよい。この点に関し、太陽光の波長帯域は、広範囲であるので、蛍光物質の吸収波長帯域もできるだけ広範囲であることが好ましい。蛍光物質としては、具体的には、例えば、Lumogen(登録商標)F Dyes Yellow083、Yellow170、Orange240、Red305などの蛍光色素や太陽光の波長成分を吸収する量子ドット(CsPbBrxI3-x)などが選択されてよい。なお、蛍光物質は、図3(A)の如く、蛍光導光板2の上面2aに蛍光物質層2dとして貼着されてもよく、或いは、図3(B)の如く、蛍光導光板2の下面(第二の面)2bに蛍光物質層2dとして貼着されてもよい(これらの場合、蛍光導光板2の内部は、透明であってよい。)。
【0024】
蛍光導光板2の上面2a上に載置される光電池セル3は、太陽光の光成分を吸収して発電する任意の形式の太陽電池セル又は光電変換素子であってよい。上記の如く、太陽光の波長帯域は広範囲であり、また、本実施形態に於いては、後に説明されるように、太陽光SLを集光層4の集光部分4cにて集光して光電池セル3へ照射するので、吸収可能な波長帯域が広く、また、比較的高い光強度が照射されたときにも発電効率の高い光電池セルが有利に用いられる。具体的には、光電池セル3としては、III-V族多接合型太陽電池(化合物3接合型太陽電池(InGaP/GaAs/InGaAs)など)が選択されてよい。なお、その他の形式の光電池、例えば、CIS太陽電池、結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、ペロブスカイト太陽電池も、光電池セル3として採用されてよい。図2に模式的に描かれている如く、光電池セル3は、電池素子の保護の目的で、保護層3aが重畳されていてよい。保護層3aは、その屈折率が蛍光導光板2の屈折率と同等若しくはそれよりも低い任意の透光性の材料(例えば、低屈折エポキシ(屈折率1.50)、シアノアクリレート(屈折率1.43)、アクリル接着剤(屈折率1.49)など)にて形成されてよい。
【0025】
蛍光導光板2の上面2a及び光電池セル3の上方に配置される集光層4は、光電池セル3の各々に対して、入射面4aから入射した太陽光などの照射光を集光して出射面4bから出射するよう形成された集光部分4cが配列された構造を有する。集光層4は、透明若しくは透光性を有する屈折率が空気よりも高い材料にて形成されてよく、その材料としては、具体的には、シリコン樹脂(屈折率1.43)、低屈折ポリメタクリル酸メチル(屈折率1.40)、ソーダガラス(屈折率1.51)が採用されてよい。
【0026】
また、本実施形態の場合、特に、集光層4の集光部分4cは、図示の如く、光線を屈折して集光作用を与える形状として、蛍光導光板2及び光電池セル3に対向した面側に凸状の形状に形成され、蛍光導光板の上面2aに接触しないように配置される。この構成によれば、後に詳細に説明される如く、蛍光導光板の上面2aと集光層4との間の空隙層aは、空気などの任意の媒質の層とすることが可能となるので、かかる空隙層aの屈折率をできるだけ低くすることができ、これにより、蛍光導光板2内に光を閉じ込め易くなることとなる。
【0027】
上記の如く、蛍光導光板2及び光電池セル3に対向した面側に凸状の形状を有する集光部分4cとしては、好適には、複合放物面型集光器、複合楕円面型集光器、複合双曲面型集光器又はVトラフ型集光器のいずれかが有利に用いられる。これらの集光器は、端的に述べれば、透光性の、典型的には、誘電体材料から形成され、一方の端面の面積が他方の面積よりも大きい管状形状の部材であり、面積の大きい入射面4aから、管状形状の中心軸線から計った角度が所定角度以内の入射角にて入射する光線が集光されて面積の小さい出射面4bから出射するよう構成された部材である(例えば、非特許文献1参照)。従って、かかる集光器の場合、その出射面4bに於いて、光線が集光されているので、出射面4bを光電池セル3の受光面に接触させて(保護層を介していてもよい。)出射面から出射する光線の全てを光電池セル3へ向かわせることが可能となる。そして、かかる構成の場合には、集光器4cの出射面4bと光電池セル3との間に屈折率の低い空気層などを設ける必要がないので、出射面からの光線は、出射面4bに於いて実質的に全反射することなく、出射面4bを透過して、光電池セル3の受光面に照射されることとなる。なお、上記の集光器のうちで、複合放物面型集光器が、集光率が最も高いので、集光部分4cとして、より好適には、複合放物面型集光器が採用されてよい。
【0028】
ところで、図4に模式的に描かれている如く、集光部分4cは、蛍光導光板2及び光電池セル3に対向した面側に凸状の形状を有する球面レンズ或いは非球面-非対称レンズであってもよい(図示の如く、平凸レンズであってもよいが、両凸レンズであってもよい。)。かかる構成の場合にも、蛍光導光板の上面2aが集光層4に接しておらず、空隙層aの媒質は、空気などの任意の屈折率の低い媒質にすることができるので、蛍光導光板2内に光を閉じ込め易くなる効果が得られる。
【0029】
更に、本実施形態の装置に於いては、上記の如く、蛍光導光板2の縁面2eに於いて、その面から出射する蛍光(及び太陽光)を吸収して発電する光電池セル(第二の光電池セル)5が配置される。光電池セル5としては、主として、蛍光の波長帯域の光成分を吸収する任意の形式の太陽電池セル又は光電変換素子が採用されてよく、例えば、CIS太陽電池、結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、ペロブスカイト太陽電池が選択されてよい(これらよりも高価なIII-V族多接合型太陽電池が用いられてもよい。)。図1(A)に於いては、光電池セル5は、蛍光導光板2の縁面2e全域に配置されているが、蛍光導光板2の縁面2eの一部に配置されるようになっていてもよく、その場合、光電池セル5の配置されていない部分には、光の出射を防ぐために、反射ミラー9などが配置されてよい。
【0030】
蛍光導光板2の下面2bに於いては、そこからの蛍光(又は照射光)の出射を防止するべく、蛍光導光板2の下面2bに於いて、光を反射する反射ミラー8が設けられてよい。反射ミラーとしては、例えば、アルミニウム膜(屈折率1.48)、銀膜(屈折率0.17)、ジュラルミン膜(屈折率1.48)が採用されていよい。なお、蛍光導光板2と反射ミラー8との界面に於ける光の透過をできるだけ低減するために、好ましくは、反射ミラー8の材料としては、その屈折率が蛍光導光板2の屈折率よりも低い材料が選択されてよい。
【0031】
上記の本実施形態の装置は、後に説明される如く、太陽光の入射角に対する光電変換効率のロバスト性の向上が期待されるので、移動体の屋根など、種々の形状の物体上に適用可能となることが期待される。従って、装置は、その設置場所の物体の形状に合わせて、或る程度、変形できることが好ましい。そこで、蛍光導光板とレンズ層とは、可撓性材料にて形成され、装置全体で湾曲可能となっていてよい。
【0032】
光電変換装置の作動
作動に於いて、本実施形態の光電変換装置では、特許文献1の場合と同様に、集光層4側から太陽光などの照射光SLが照射されると、まず、入射面4aから集光部分4cへ入射し、そこに於いて、屈折作用又は反射作用により集光されながら、光電池セル3が配置されている蛍光導光板2へ向かって伝播し、光電池セル3は、その光を受けて発電することとなる。この点に関し、特に、集光部分4cとして、上記の如く、複合放物面型集光器、複合楕円面型集光器、複合双曲面型集光器、或いは、Vトラフ型集光器の形状が用いられる場合、その入射面4aの法線(光軸)から測って所定の角度以内(集光器の形状と材質に依存して決定される。)の方向から入射した光線の殆ど(典型的には、90%以上)が、図6(B)に模式的に描かれている如く、入射面4aから集光部分4c内へ入射した光線の殆どが反射と屈折を繰返して、入射面4aよりも面積の小さい出射面4bに集められるので(入射した光線L1、L2は、それぞれ、出射面4bの焦点f1、f2に集められる。)、かかる出射面4bに光電池セル3の受光面を整合して配置することで、入射面4aからの光線SLが光電池セル3へ照射されることとなる。また、図4の如きレンズを集光部分4cとして用いている場合には、その光軸に沿って入射してくる光線(太陽光)SL、即ち、入射角が略0°の光線が、光電池セル3の受光面へ向かって屈折するように形成される。
【0033】
しかしながら、集光部分4cが複合放物面型集光器、複合楕円面型集光器、複合双曲面型集光器若しくはVトラフ型集光器の形状である場合には、入射角θ(光軸から図った光線の方向の角度)が所定の角度を上回るとき、或いは、集光部分4cがレンズである場合には、入射角θが増大するほど、集光部分4cに進入した光線のうちで光電池セル3の受光面から外れる光線の量が増大することとなる。また、集光層4に於いて集光部分4cから外れた領域に進入した光線も光電池セル3の受光面から外れることとなる。
【0034】
そこで、本実施形態の装置1は、そのような集光層4に入射した光線のうちで光電池セル3から外れた光線が蛍光導光板2へ進入するよう構成される。そうすると、図6(A)に描かれている如く、蛍光導光板2に於いて、そこに分散されている蛍光物質6が、入射してきた照射光SLを吸収し、各蛍光物質6から蛍光FLが全方向に放出されることとなる。そして、かかる蛍光FLのうち、縁面2eへ向かう光線は、そのまま、縁面2eに到達し、蛍光導光板2の上面2a又は下面2bに向かう光線は、上面2a又は下面2bにて反射を繰り返しながら、縁面2eに到達することで、蛍光FLは、縁面2eに集光され、かくして、縁面2eに配置された光電池セル5が、縁面2eから出射した蛍光FLを受けて発電することとなる。
【0035】
上記の作動に於いて、本実施形態の装置1の場合には、図6(A)の如く、集光層4が蛍光導光板2の上面2aに対向する面側に凸状に湾曲した形状を有し、光導光板2の上面2aに接触しない形状となっているので、蛍光導光板2の上面2aに於いて、光電池セル3の配置されていない領域の上方の空間aは、空気などの任意の屈折率の十分低い媒質の層とすることができる。そうすると、蛍光導光板2の上面2aに於ける板の内側から外側への屈折率の低下幅を大きくなり、図7(C)の如く蛍光導光板2の上面2aがレンズ層4’に接している場合よりも、板の内側から外側への向かう光線の臨界角が小さくなるので、かかる光線の全反射が起き易くなり、これにより、蛍光導光板2の上面2aを外方へ透過する蛍光FLxtの光線量が低下し、縁面2eから出射する光線量を増大することが可能となる。
【0036】
図6(C)は、図1及び図2に記載の本実施形態の装置1の構成に於いて、集光層4の入射面4aに入射する光線の入射角(入射面4aの法線から計った光線の入射方向の角度)を変化させたときの、集光層4の出射面4bに於いて計測された集光率(CPC-実線)と、蛍光導光板2の縁面2eに於いて計測された集光率(LSC-点線)との変化を示している。集光率とは、入射面4aに照射した光の強度に対する出射面4b又は縁面2eに於ける光強度の比率(%)である。集光層4の集光部分4cは、シリコン樹脂(屈折率1.43)から成る複合型放物面型集光器の形状(出射面の寸法:2.5×2.5mm2、出射面から入射面までの高さ:5.4mm、入射面と出射面との面積比:3倍)とした。蛍光導光板2の母材には、フッ素樹脂[ルミフロン(登録商標)]を用い、蛍光導光板2内に分散した蛍光物質には、ペロブスカイト量子ドットを用いた。各部位の光強度は、パワーメーターを用いて測定した。
【0037】
同図を参照して理解される如く、入射角が0°から30°~40°の範囲に於いては、集光部分4cの出射面4bに於いて、高い集光率が得られるところ、入射角が40°を超えると、集光部分4cの出射面4bの集光率が急激に低下した。しかしながら、集光部分4cの出射面4bの集光率の低下と入れ替わりに、蛍光導光板2の縁面2eの集光率が増大することが観察された。この結果から、入射角が大きくなり、照射光が集光部分4cの出射面4bから外れたときには、照射光のエネルギーが蛍光導光板2へ進入し、蛍光に変換されて、蛍光導光板2の縁面2eにて回収できることが確認された。[入射角が50°近傍を超えたときに、蛍光導光板2の縁面2eでの集光率が低下するのは、入射面から集光部分へ実際に入射する光線量が低下するためである。]
【0038】
かくして、上記の本実施形態の構成に於いては、蛍光導光板上に載置された光電池セルへ照射光を集光する集光層として、蛍光導光板の側に凸状に湾曲した形状のものを用い、蛍光導光板上の光電池セルの載置されていない上面が集光層と接触しないようにすることで、蛍光導光板の上面に於いて透過する光の量を低減し、蛍光導光板に於ける光の閉じ込め作用を高くして、蛍光導光板の縁面から出射する光量の増大が図られる。また、かかる構成によれば、蛍光導光板と集光層とは、直接に接触しないので、
空隙層の屈折率<蛍光導光板の屈折率
空隙層の屈折率<集光層の屈折率
の関係が成立していれば、蛍光導光板と集光層との間の屈折率の大小を気にせずに、蛍光導光板と集光層の材料の選択ができ、材料選択の幅が広がる点でも有利である。
【0039】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7