(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002307
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】融雪装置、融雪制御装置、及び、融雪システム
(51)【国際特許分類】
H02S 40/12 20140101AFI20231228BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20231228BHJP
A01N 59/06 20060101ALI20231228BHJP
G01W 1/00 20060101ALN20231228BHJP
【FI】
H02S40/12
A01P13/00
A01N59/06 Z
G01W1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101414
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】523111957
【氏名又は名称】株式会社オン
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 弘江
【テーマコード(参考)】
4H011
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
4H011AB01
4H011BB18
5F151JA15
5F151JA28
5F251JA15
5F251JA28
(57)【要約】
【課題】
新規な融雪装置、及び、太陽光発電装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
太陽光パネルの裏側に設置が可能であり、内部に流動体を有する融雪部と、前記流動体を加熱する加熱手段と、前記流動体を融雪部内において循環させる循環手段とを備える、融雪装置。太陽光パネルと、太陽光パネルの裏側に設置され、内部に流動体を有する融雪部と、前記流動体を加熱する加熱手段と、前記流動体を融雪部内において循環させる循環手段とを備える、太陽光発電装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光パネルの裏側に設置が可能であり、内部に流動体を有する融雪部と、
前記流動体を加熱する加熱手段と、
前記流動体を融雪部内において循環させる循環手段と
を備える、融雪装置。
【請求項2】
融雪部が、太陽光パネルと断熱材により外部と遮断されている、請求項1に記載の融雪装置。
【請求項3】
太陽光パネルの積雪量又は太陽光パネルの近傍の積雪量が、所定の量以上となった場合又は所定の量を超えた場合に、循環手段及び/又は加熱手段の稼働を開始する、請求項1又は2に記載の融雪装置。
【請求項4】
前記積雪量が、超音波センサにより測定される、請求項3に記載の融雪装置。
【請求項5】
太陽光パネルの表側の温度が、第1の所定の温度以下となった場合又は第1の所定の温度より低くなった場合に、循環手段及び/又は加熱手段の稼働を開始する、請求項1又は2に記載の融雪装置。
【請求項6】
流動体の温度が、第2の所定の温度以上となった場合又は第2の所定の温度を超えた場合に、循環手段及び/又は加熱手段の稼働を停止する、請求項1又は2に記載の融雪装置。
【請求項7】
循環手段が、前記流動体を循環させる方向を変更可能なものである、請求項1又は2に記載の融雪装置。
【請求項8】
太陽光パネルにより発電された電力により、循環手段及び/又は加熱手段を稼働する、請求項1又は2に記載の融雪装置。
【請求項9】
流動体が不凍性の液体である、請求項1又は2に記載の融雪装置。
【請求項10】
太陽光パネルと、
太陽光パネルの裏側に設置され、内部に流動体を有する融雪部と、
前記流動体を加熱する加熱手段と、
前記流動体を融雪部内において循環させる循環手段と
を備える、太陽光発電装置。
【請求項11】
太陽光パネルと、
太陽光パネル上の雪を融雪するための融雪部と
を備える太陽光発電装置を、土又は砂の上に設置し、
該土又は該砂に、除草処理又は防草処理を実行する、方法。
【請求項12】
太陽光発電装置が、
太陽光パネルと、
太陽光パネルの裏側に設置され、内部に流動体を有する融雪部と、
前記流動体を加熱する加熱手段と、
前記流動体を融雪部内において循環させる循環手段と
を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
除草処理が、酸化マグネシウムを該土又は該砂に含ませる処理である、請求項11又は12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融雪装置、融雪制御装置、及び、融雪システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は、送電設備のない山岳部、農地などの遠隔地の電源や、災害時などの非常用電源として有用であることが知られている。しかし、太陽光発電は、気候条件により発電出力が左右されるため、特に、積雪地方においては、太陽光発電のパネル上に積もった雪による発電出力、発電効率の低下が課題となっている。このような課題を解決するために、太陽光発電のパネル上に積もった雪を融かすための融雪機能を備える太陽光発電装置が検討されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-27230号公報
【特許文献2】特開2012-172950号公報
【特許文献3】特開2013-053506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な融雪装置、及び、太陽光発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、
[1]太陽光パネルの裏側に設置が可能であり、内部に流動体を有する融雪部と、前記流動体を加熱する加熱手段と、前記流動体を融雪部内において循環させる循環手段とを備える、融雪装置;
[2]融雪部が、太陽光パネルと断熱材により外部と遮断されている、前記[1]に記載の融雪装置;
[3]太陽光パネルの積雪量又は太陽光パネルの近傍の積雪量が、所定の量 以上となった場合又は所定の量を超えた場合に、循環手段及び/又は加熱手段の稼働を開始する、前記[1]又は[2]に記載の融雪装置;
[4]前記積雪量が、超音波センサにより測定される、前記[1]~[3]のいずれかに記載の融雪装置;
[5]太陽光パネルの表側の温度が、第1の所定の温度以下となった場合又は第1の所定の温度より低くなった場合に、循環手段及び/又は加熱手段の稼働を開始する、前記[1]~[4]のいずれかに記載の融雪装置;
[6]流動体の温度が、第2の所定の温度以上となった場合又は第2の所定の温度を超えた場合に、循環手段及び/又は加熱手段の稼働を停止する、前記[1]~[5]のいずれかに記載の融雪装置;
[7]循環手段が、前記流動体を循環させる方向を変更可能なものである、前記[1]~[6]のいずれかに記載の融雪装置;
[8]太陽光パネルにより発電された電力により、循環手段及び/又は加熱手段を稼働する、前記[1]~[7]のいずれかに記載の融雪装置;
[9]流動体が不凍性の液体である、前記[1]~[8]のいずれかに記載の融雪装置;
[10]太陽光パネルと、太陽光パネルの裏側に設置され、内部に流動体を有する融雪部と、前記流動体を加熱する加熱手段と、前記流動体を融雪部内において循環させる循環手段とを備える、太陽光発電装置;
[11]太陽光パネルと、太陽光パネル上の雪を融雪するための融雪部とを備える太陽光発電装置を、土又は砂の上に設置し、該土又は該砂に、除草処理又は防草処理を実行する、方法;
[12]太陽光発電装置が、太陽光パネルと、太陽光パネルの裏側に設置され、内部に流動体を有する融雪部と、前記流動体を加熱する加熱手段と、前記流動体を融雪部内において循環させる循環手段とを備える、前記[11]に記載の方法;
[13]除草処理が、酸化マグネシウムを該土又は該砂に含ませる処理である、前記[11]又は[12]に記載の方法;
により、達成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる、融雪装置の構成を説明するための図である。
【
図2】
図2(a)~
図2(c)は、本発明の実施の形態にかかる、融雪部と循環部との構成を説明するための図である。
【
図3】本発明の実施の形態にかかる、融雪制御処理のフローチャートである。
【
図4】本発明の実施の形態にかかる、融雪制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、以下にて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の趣旨に反しない限り、適宜変更をして実施することができる。
【0008】
本実施形態の融雪装置は、太陽光発電装置における太陽光パネルの受光面側に積もる雪を融雪するために用いられる。
図1は、本発明の実施の形態にかかる、融雪装置の構成を説明するための図である。本実施形態の融雪装置1は、融雪部2と、加熱部3と、循環部4とを備える。融雪装置1は、積雪量検知部5と、制御部6と、電源部7とを備えることが好ましい。
【0009】
(融雪部)
融雪部2は、その内部に流動体を有するものであって、太陽光発電装置の太陽光パネル8の裏側(受光面と反対側の面側)に設置が可能である。融雪部2の形状は、特に限定されないが、太陽光パネル8への設置しやすさの観点から、比較的薄い直方体状、つまり、板状又はシート状の形状を有していることが好ましい。融雪部2の設置の方法は、特に限定されない。融雪部2の厚さ方向に垂直な平面と太陽光パネル8の裏面とが接するように、留め具等を用いて固定することができる。
【0010】
流動体は、熱媒体として機能するものである。流動体は、融雪装置の設置される環境に応じて適宜選択できるが、冬季の寒冷地において凍結せずに利用できる観点から、不凍性の液体であることが好ましい。不凍性の液体は、例えば、0℃において凍結しない液体をいい、例えば、エチレングリコール等の融点が0℃以下の有機溶剤を含む液体であることが好ましい。
【0011】
融雪部2は、例えば、内部に配管(不図示)を備えていることが好ましい。配管内に流動体を流通させ、循環させることで、太陽光パネル8の表面の雪を効率的に融雪することが可能となる。配管の配置は特に限定されないが、例えば、融雪部2が板状又はシート状の形状を有している場合に、厚さ方向に垂直な方向において、縦方向に流動体が縦方向に繰り返し流通できるように、厚さ方向に垂直な方向に隙間なく配管を配置することができる。配管の形状は、特に限定されず、断面が円形、楕円形、長方形、正方形など、適宜設計することができる。配管の材質も特に限定されないが、熱伝導率の高いものであることが好ましい。
【0012】
融雪部2は、太陽光パネル8の裏面とは反対側に断熱材9を備え、太陽光パネル8と断熱材9により外部と遮断されていることが好ましい。つまり、太陽光パネル8の裏面を上側とした場合に、太陽光パネル8の上に、板状又はシート状の融雪部2が積層され、さらにその上に、板状又はシート状の断熱材9が積層されていることが好ましい。融雪部2が太陽光パネル8と断熱材9とにより外部から遮断される構成とすることにより、融雪部2内の流動体の温度低下が抑制されるので、流動体の加熱時間を短くしたり、加熱温度を低く設定することができ、効率的に融雪処理を実行することができる。
【0013】
断熱材9としては、公知の断熱材を用いることができる。断熱材9として、例えば、ビーズ法ポリスチレンフォーム、押出法ポリスチレンフォームなどの発泡ポリスチレン、ポリエチレンフォーム、フェノールフォーム等の発泡プラスチックを用いることができる。なかでも、加工容易性に優れ、断熱性能に優れることから、断熱材9は発砲ポリスチレンであることが好ましい。また、本実施形態の融雪装置は、太陽光パネル8の裏面に取り付けることから、他の材料よりも軽量である発砲ポリスチレンを用いることで、融雪装置の荷重による太陽光パネル8や、太陽光パネル8を地面に設置する際に太陽光パネル8を支持する支持体への負荷を軽減することができる。
【0014】
(加熱部)
加熱部3は、流動体を加熱する機能を備える。加熱部3による加熱の開始又は停止は、制御部6により制御される。加熱部3は、流動体を加熱により昇温することができる加熱装置であれば、特に限定されない。加熱装置として、例えば、シーズヒータや、セラミックヒータなど公知のヒータを用いることができる。ヒータの耐久性やコストの観点からは、加熱装置として、シーズヒータを用いることが好ましい。
【0015】
加熱部3を設置する位置は、例えば、融雪部2の内部であってもよく、融雪部2の外部であってもよい。融雪部2の外部に加熱部3を設ける場合は、融雪部2内に設けられた配管が、融雪部2の外部にまで露出しており、この外部に露出した配管内の流動体が加熱部2により加熱できる構成であればよい。
【0016】
加熱部3は、上記のように、流動体を加熱して、流動体の温度を融雪機能が発揮される温度まで上昇させるが、流動体の温度が高すぎると、太陽光パネル8自体が高温になりすぎ、発電効率が低下する場合がある。したがって、流動体を加熱する場合、加熱部は、流動体の融雪部2内における温度が、例えば、30℃以上、90℃以下となるように、制御部6により制御されることが好ましい。なお、融雪部2内の流動体の温度は、融雪部2内に設置された温度センサにより測定される。
【0017】
(循環部)
循環部4は、流動体を融雪部2内において循環させる。循環部4の稼働と停止、及び、循環方向の制御は、制御部6により実行される。循環部4としては、循環ポンプが用いられる。
図2(a)~
図2(c)は、本発明の実施の形態にかかる、融雪部と循環部との構成を説明するための図である。
図2(a)~
図2(c)では、循環ポンプPの放出口4a付近に加熱部3を備える場合を例にあげて説明をする。
【0018】
図2(a)に示すように、融雪部2と循環部4の循環ポンプPとは、加熱部3により加熱された流動体を、循環ポンプPの放出口4aから接続部を介して融雪部2の流入口2aX、2bYに供給可能に構成されている。また、融雪部2に供給された流動体は、融雪部2の配管12内を移動し、融雪部2の出口2bX、2aYから接続部を介して循環ポンプPの流入口4bから循環ポンプPに吸入できるように構成されている。
【0019】
循環において、流動体の温度は、融雪部2の流入口2aX側と出口2bXとでは、流入口2aX側が出口2bX側よりも高温となり温度差を生じる可能性がある。その結果、太陽光パネル8上の融雪が均一に実行されない場合がある。このような不均一な融雪を解消するために、本実施の形態の融雪装置においては、融雪部2内の流動体を循環させる方向を変更可能であることが好ましい。
【0020】
流動体を循環させる方向の変更は、例えば、融雪部2の流入口2aX、及び、流入口2bY、並びに、出口2bX、及び、出口2aYは切替電磁弁などの弁を設け、該弁の切り替えにより実行することができる。
図2(b)は、融雪部と循環部との構成を説明するための図である。加熱部3により加熱された流動体は、循環ポンプPの放出口4aから接続部を介して融雪部2の流入口2aXに供給され、融雪部2内の配管(不図示)内を図中矢印の方向へ循環し、融雪部2の出口2bXから接続部を介して循環ポンプPの流入口4bに吸入される。循環方向が切り替えられると、
図2(c)に示すように、加熱部3により加熱された流動体が、循環ポンプPの放出口4aから接続部を介して融雪部2の流入口2aXに供給され、融雪部2内の配管(不図示)内を図中矢印の方向へ循環し、融雪部2の出口2bXから接続部を介して循環ポンプPの流入口4bに吸入される。
【0021】
循環方向の変更の頻度やタイミングは、適宜設定することができる。例えば、循環ポンプPの稼働時間に応じて定期的に循環方向を変更することができる。つまり、所定の時間が経過するごとに、循環方向を変更することができる。このほか、太陽光パネル8の表面温度や、融雪部2内の流動体の温度に応じて、循環方向を変更することができる。太陽光パネル8の表面温度をもとに循環方向を変更する場合は、太陽光パネル8の四隅に温度センサを設置し、これらの温度センサにより測定される温度が、所定の条件を満たす場合に循環方向を切り替える構成とすることができる。また、融雪部2内の流動体の温度に応じて循環方向を変更する場合は、融雪部2の流動体の流入口付近と流出口付近とに温度センサを備え、これらの温度センサが所定の条件を満たす場合に循環方向を切り替える構成とすることができる。
【0022】
融雪部2と循環部4を接続する接続部は、公知のチューブや配管等で構成される。対候性に優れ、形状を自由に変更可能な点から、シリコーン製のチューブが好適である。接続部は、その外周に断熱材を適宜設けることにより、熱効率を低下させない態様としてもよい。
【0023】
(電源部)
融雪装置1の加熱部3と循環部4は、電源部7からの電力供給により稼働する。電源部としては、商用電力7aを用いることができる。商用電力7aを用いる場合、キュービクル(高圧受電設備)を介して融雪装置1の加熱部3と循環部4などへAC100Vの電力を供給する。キュービクルの規模は、太陽光発電装置の太陽光パネル8の大きさや、融雪部2の大きさ、加熱部3と循環部4などの消費電力により適宜選択すればよいが、例えば、出力3MWにつき1MWのキュービクル2台を備えることが好ましい。
【0024】
電源部7は、太陽光パネル8により発電された電力により、加熱部3及び/又は循環部4を稼働させるものであってもよい。太陽光パネル8の発電による電力が、バッテリー7cに供給されバッテリー7cにて蓄電され、バッテリー7cから電源回路7bを経由して、加熱部3及び/又は循環部4に電力が供給される。太陽光パネル8とバッテリー7cとの間には定電流回路7dを備え、バッテリー7cに必要以上の電力が供給されることを防ぐようにすることが好ましい。
【0025】
また、電源部7は、太陽光パネル8の発電による電力の供給と商用電力7aによる電力の供給とを切り替えて、加熱部3及び/又は循環部4を稼働させてもよい。電力の供給の切り替えは、電源回路7bの制御部によって行われる。電源回路7bは、機械式接点を持たない電子式のリレーである公知のソリッドステートリレー(SSR)を備え、SSRにより電力を切り替える。
【0026】
例えば、太陽光パネル8で発電された電力の供給量を基準に、太陽光パネル8の発電による電力の供給と商用電力7aによる電力の供給とを切り替える態様とすることができる。すなわち、太陽光パネル8で発電された電力の供給量が所定の値以上の場合、電源回路7bの制御部は、部太陽光パネル8による電力をバッテリー7cに供給してバッテリー7cを充電しながら、必要な場合は融雪装置1に電力を供給する。そして、電源回路7bの制御部は、太陽光パネル8による電力の供給量が所定の値未満となった場合に、太陽光パネル8による電力の供給から、商用電力7aによる電力の供給に切り替える。
【0027】
太陽光パネル8による電力を優先的にバッテリー7cに供給する態様としてもよい。この場合、商用電力7aによる電力の供給を優先した場合に比べ、電力の供給に関するコストを低減することができる。また、災害などで商用電力7aによる電力の供給が途絶えた際にも、融雪装置1を稼働して、太陽光パネル8上に雪が積もるのを防止することができる。
【0028】
また、太陽光パネル8の発電による電力の供給と商用電力7aによる電力の供給との切り替えは、安価な夜間電力が利用できる時間帯や低価格に設定された融雪用の電力等、電力の価格を基準として切り替える態様としてもよい。例えば、夜間電力を利用する場合は、電源回路7bの制御部は、所定の時間になると、商用電力7aによる電力の供給に切り替えて、商用電力7aによりバッテリー7cを充電しながら、必要な場合は融雪装置1に電力を供給する。
【0029】
(制御部)
制御部6は、加熱部3、循環部4のそれぞれに対し制御信号を送信することで、加熱部3、循環部4の稼働、停止等の制御を実行する。本実施の形態において制御部6は、積雪量検知部5による積雪量の情報や、太陽光パネル8の表側(受光面側)の温度や、流動体の温度を基準として、加熱部3及び循環部4を制御する。制御部6は、CPU、ROM、ストレージ部、RAM等から構成される。CPUは、ストレージ部に格納されたプログラムを実行する。RAMは、CPUのワークエリアである。ストレージ部は、プログラムやデータを保存するための記憶領域である。CPUは、プログラム及びデータをRAMから読み出し、プログラム実行処理を行う。
【0030】
<積雪量の情報に基づく制御>
制御部6は、太陽光パネル8の積雪量又は太陽光パネル8の近傍の積雪量が、所定の量以上となった場合又は所定の量を超えた場合に、加熱部3及び/又は循環部4の稼働を開始するように制御してもよい。
図3は、本発明の実施の形態にかかる、融雪制御処理のフローチャートである。
【0031】
まず、制御部6は、積雪量検知部5にて積雪量を検知する(ステップS1)。積雪量検知部5は、気象観測に用いられる超音波センサ(超音波の送受波器)と温度センサとを備える超音波式の積雪計や、赤外線などのレーザー光の送受波器と温度センサとを備える光電式の積雪計のほか、雪の重量による圧力を検知する積雪計や、雪を融かした水分と外気温により積雪を検知する積雪計など、公知の積雪計を用いることができる。超音波式の積雪計は、超音波センサ(超音波の送受波器)を地上2~4mの位置に設置し、送受波器から発した超音波が雪面で反射して送受波器に戻るまでの時間を計測し、温度センサにおいて測定した温度による音速補正を行い、送受波器から雪面までの距離を測定することによって積雪の深さを求める。
【0032】
積雪量検知部5の積雪計は、太陽光パネル8の積雪量又は太陽光パネル8の近傍の積雪量を検知する。積雪量検知部5は、太陽光パネル8一基に対して1つ設置してもよく、複数を設置してもよい。太陽光パネル8一基に対して複数の積雪量検知部を設置する場合、積雪量として、複数の積雪量検知部のうちの最も積雪量が少ない積雪量を基準としたり、複数の積雪量検知部の積雪量を平均した値を基準としたり、複数の積雪量検知部のうちの最も積雪量が多い積雪量を基準とする、など基準を適宜設定して用いることができる。なかでも、複数の積雪量検知部のうちの最も積雪量が少ない積雪量を基準とする場合は、太陽光パネル8の融雪をより確実に実行できる。
【0033】
次に、制御部6は、太陽光パネル8の積雪量又は太陽光パネル8の近傍の積雪量が、所定の量以上となったか否かを判定する(ステップS2)。太陽光パネル8の近傍の積雪量とは、例えば、太陽光パネル8が設置された地面における積雪量があげられる。ステップS2において、太陽光パネル8の積雪量又は太陽光パネル8の近傍の積雪量が、所定の量以上となったと判定されると(ステップS2において、YES)、制御部6は、加熱部3を稼働して流動体を加熱し、循環部4を稼働して流動体を循環させる(ステップS3)。ステップS2において、太陽光パネル8の積雪量又は太陽光パネル8の近傍の積雪量が、所定の量以上でないと判定されると(ステップS2において、NO)、融雪制御処理を終了する。
【0034】
制御部6は、流動体の温度を検知し(ステップS4)、流動体の温度が所定の温度以上となったか否かを判定する(ステップS5)。ステップS4における流動体の温度の検知は、循環部4の放出口4a付近にサーミスタなどの温度計(不図示)を備えることで測定される。ステップS4における流動体の温度の検知は、例えば、5分毎や10分毎など所定の時間間隔で実行すればよい。ステップS4において、流動体の温度が所定の温度以上となったと判定されると(ステップS5において、YES)、制御部6は、加熱部3、及び、循環部4の稼働を停止する(ステップS6)。流動体の温度が所定の温度以上でないと判定されると(ステップS5において、NO)、再び流動体の温度の検知(ステップS4)に戻る。
【0035】
上記積雪量の情報に基づく制御において、ステップS2における積雪量についての所定の量は、加熱部3と循環部4とで、同じでもよく、異なってもよい。すなわち、加熱部3と循環部4とが同一の所定の量で稼働を開始する場合や、加熱部3と循環部4とで異なる所定の量で稼働を開始する場合が含まれる。
【0036】
上記積雪量の情報に基づく制御において、ステップS5における流動体の温度についての所定の温度は、加熱部3と循環部4とで、同じでもよく、異なってもよい。すなわち、加熱部3と循環部4とが同一の所定の温度で稼働を停止する場合や、加熱部3と循環部4とで異なる所定の温度で稼働を停止する場合が含まれる。
【0037】
また、ステップS2において、制御部6は、太陽光パネル8の積雪量又は太陽光パネル8の近傍の積雪量が、「所定の量以上」となったか否かを判定する代わりに、積雪量が「所定の量を超えた」か否かを判定する態様としてもよい。また、ステップS5において、流動体の温度が「所定の温度以上」となったか否かを判定する代わりに、流動体の温度が「所定の温度を超えた」か否かを判定する態様としてもよい。
【0038】
また、ステップS4における流動体の温度は、融雪部2表面又は内部に温度計10を備え、該温度計10による測定値を流動体の温度としてもよい。この場合、融雪処理をしている融雪部2における流動体温度を基準とすることができるので、より正確な制御をすることができる。
【0039】
さらに、ステップS5における流動体の温度に代えて、太陽光パネル8の表側の温度が、所定の温度以上となった場合又は所定の温度を超えた場合に、加熱部3及び/又は循環部4の稼働を停止するようにしてもよい。この場合、太陽光パネル8の表側の温度は、太陽光パネル8の表面に設けられた温度計11により測定される。温度計11は、太陽光パネル8一基に対して1つ設置してもよく、複数を設置してもよい。太陽光パネル8一基に対して複数の温度計を設置する場合、基準とする温度として、複数の温度計の値のうちの最も低温であるものを基準としたり、複数の温度計の値を平均した値を基準としたり、複数の温度計のうちの最も高温であるものを基準とする、など基準を適宜設定して用いることができる。
【0040】
<太陽光パネル8の表側の温度に基づく制御>
制御部6は、太陽光パネル8の表側の温度が、所定の温度以下となった場合又は所定の温度より低くなった場合に、加熱部3及び/又は循環部4の稼働を開始するように制御してもよい。
図4は、本発明の実施の形態にかかる、融雪制御処理のフローチャートである。
【0041】
まず、制御部6は、太陽光パネル8の表側の温度を検知する(ステップS11)。太陽光パネル8の表側の温度は、太陽光パネル8の表面に設けられた温度計11により測定される。温度計11は、太陽光パネル8一基に対して1つ設置してもよく、複数を設置してもよい。太陽光パネル8一基に対して複数の温度計を設置する場合、基準とする温度として、複数の温度計の値のうちの最も低温であるものを基準としたり、複数の温度計の値を平均した値を基準としたり、複数の温度計のうちの最も高温であるものを基準とする、など基準を適宜設定して用いることができる。
【0042】
次に、制御部6は、太陽光パネル8の表側の温度が、所定の温度以下となったか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12において、太陽光パネル8の表側の温度が、所定の温度以下となったと判定されると(ステップS12において、YES)、制御部6は、加熱部3を稼働して流動体を加熱し、循環部4を稼働して流動体を循環させる(ステップS13)。ステップS12において、太陽光パネル8の表側の温度が、所定の温度以下でないと判定されると(ステップS12において、NO)、融雪制御処理を終了する。
【0043】
制御部6は、流動体の温度を検知し(ステップS14)、流動体の温度が所定の温度以上となったか否かを判定する(ステップS15)。ステップS14における流動体の温度は、上記ステップS4と同様の構成を採用することができる。ステップS15において、流動体の温度が所定の温度以上となったと判定されると(ステップS15において、YES)、制御部6は、加熱部3、及び、循環部4の稼働を停止する(ステップS16)。流動体の温度が所定の温度以上でないと判定されると(ステップS15において、NO)、再び流動体の温度の検知(ステップS14)に戻る。
【0044】
上記太陽光パネル8の表側の温度に基づく制御において、ステップS12における所定の温度は、加熱部3と循環部4とで、同じでもよく、異なってもよい。すなわち、加熱部3と循環部4とが、太陽光パネル8の表側の温度が同一の所定の温度で稼働を開始する場合や、加熱部3と循環部4とで異なる所定の温度で稼働を開始する場合が含まれる。
【0045】
上記太陽光パネル8の表側の温度に基づく制御において、ステップS15における流動体の温度についての所定の温度は、加熱部3と循環部4とで、同じでもよく、異なってもよい。すなわち、加熱部3と循環部4とが同一の所定の温度で稼働を停止する場合や、加熱部3と循環部4とで異なる所定の温度で稼働を停止する場合が含まれる。
【0046】
また、ステップS12において、制御部6は、太陽光パネル8の表側の温度が、「所定の温度以下」となったか否かを判定する代わりに、「所定の温度より低くなった」か否かを判定する態様としてもよい。また、ステップS15において、流動体の温度が「所定の温度以上」となったか否かを判定する代わりに、流動体の温度が「所定の温度を超えた」か否かを判定する態様としてもよい。
【0047】
また、ステップS15における流動体の温度に代えて、太陽光パネル8の表側の温度が、所定の温度以上となった場合又は所定の温度を超えた場合に、加熱部3及び/又は循環部4の稼働を停止するようにしてもよい。
【0048】
なお、上述した実施の形態では、太陽光パネル8の積雪量又は太陽光パネル8の近傍の積雪量、或いは、太陽光パネル8の表側の温度のいずれかだけに応じて、加熱部3及び/又は循環部4の稼働を開始するように制御することを記載したが、太陽光パネル8の積雪量又は太陽光パネル8の近傍の積雪量が、所定の量以上となった場合又は所定の量を超えた場合、及び、太陽光パネル8の表側の温度が、所定の温度以下となった場合又は所定の温度より低くなった場合のいずれかの場合に、加熱部3及び/又は循環部4の稼働を開始するように制御してもよい。
【0049】
(除草処理)
本実施の形態の融雪装置を備える太陽光発電装置を、土又は砂の上に設置し、該土又は該砂に、除草処理を実行してもよい。1の太陽光発電装置を構成する太陽光パネル8と、他の太陽光発電装置を構成する太陽光パネル8とは所定の間隔をあけて作業通路を確保するように設置されるが、この作業通路にも積雪し、除雪(又は融雪)の作業が必要となることがある。この場合、未処理の土又は砂の土には、多年草の雑草などが生育してしまうことがあり、これらの雑草が除雪作業を複雑にし、費用も莫大となる。太陽光発電装置を設置する土又は砂の上に除草処理を実行することで、作業通路の除雪作業を容易にし、費用を抑えることができる。
【0050】
除草処理とは、防草を含む意味であり、雑草等の生育を抑制する処理をいう。除草処理として、酸化マグネシウムを該土又は該砂に含ませる処理であることが好ましい。酸化マグネシウムは、弱アルカリ性であり、作業する人の人体への負担がかからず、また、土壌汚染も問題とならないことから好ましい。
【0051】
酸化マグネシウムを該土又は該砂に含ませる場合、太陽光発電装置を設置する土又は砂の上に対して、質量比で5%以上の酸化マグネシウムを含ませることが好ましい。含ませる酸化マグネシウムは質量比で10%以上であることがより好ましい。含ませる酸化マグネシウムの量の上限は、特に限定されないが、混合による効果が飽和することから、15%以下とすることが好ましい。
【0052】
酸化マグネシウムを該土又は該砂に含ませることにより、酸化マグネシウムが土壌中の水分及び大気中の炭酸ガスと反応して塩基性炭酸マグネシウムを形成し、土粒子同士の接着効果をもたらす。さらに、酸化マグネシウムと、土中のシリカやアルミナとが反応して硬化が促進され、土壌の固形化が起こり、雑草などの生育が阻止される。固形化した土壌は、収縮等に強く、ヒビ割れ等の発生が起きにくいので、数年単位の長期にわたり雑草生育の抑制が期待できる。酸化マグネシウムを含ませることにより固形化した土壌は、透水性及び保水性を備え、このような処理をしない土壌に比べて土壌の表面温度が低いので、夏場における太陽光発電装置を設置する土又は砂の温度上昇の抑制が期待でき、ヒートアイランド現象の対策にもなる。
【0053】
また、除草処理として、酸化マグネシウムを該土又は該砂に含ませる場合は、酸化マグネシウムにより、土壌に含まれる窒素、リン、カリウムなどの養分が不溶化され、その結果、雑草の発芽が抑制されて、防草効果が発揮される。
【0054】
(設置方法)
本実施の形態の融雪装置は、融雪部2及び加熱部3を太陽光パネル8の裏側に備え、循環部4その他の制御部等を太陽光発電装置の台座付近に設置するようにしてもよい。また、融雪部を太陽光パネル8の裏側に備え、加熱部3、循環部4、及びその他の制御部等を太陽光発電装置の台座付近に設置するようにしてもよい。これらの設置態様は、太陽光パネル8の耐荷重により適宜設計すればよい。
【0055】
(その他の構成)
上記の実施の形態において、太陽光パネル8一基に対して、融雪部及び対応する融雪装置を1つ備える態様を示したが、太陽光パネル8一基に対して、複数の融雪部及び/又は融雪装置を備える態様としてもよい。また、複数の融雪装置を備える場合、積雪量検知部は1の融雪装置に対して1又は複数備えてもよく、隣接する2台や3台など複数台の融雪装置をグループ化し、1のグループの融雪装置に対して1又は複数の積雪量検知部を備えてもよい。
【0056】
本実施の形態によれば、より簡便で効率的な融雪装置、及び、該融雪装置を備えた太陽光発電装置を提供することができる。また、本実施の形態の方法によれば、太陽光発電装置の設置環境における融雪を効率的に実行可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1 融雪装置、2 融雪部、3 加熱部、4 循環部、5 積雪量検知部、6 制御部、7 電源部、8 太陽光パネル、9 断熱材、10,11 温度計、12 配管