(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002309
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】コントローラ、楽音発生システム、方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G10H 1/34 20060101AFI20231228BHJP
G10H 1/00 20060101ALI20231228BHJP
G06F 3/0346 20130101ALI20231228BHJP
G06F 3/038 20130101ALI20231228BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20231228BHJP
G06F 3/048 20130101ALI20231228BHJP
【FI】
G10H1/34
G10H1/00 Z
G06F3/0346 421
G06F3/038 310A
G06F3/01 510
G06F3/048
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101416
(22)【出願日】2022-06-23
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MIDI
(71)【出願人】
【識別番号】320005501
【氏名又は名称】株式会社電通
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(74)【代理人】
【識別番号】100220423
【弁理士】
【氏名又は名称】榊間 城作
(72)【発明者】
【氏名】田中 直基
(72)【発明者】
【氏名】村上 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】九鬼 慧太
(72)【発明者】
【氏名】藍 耕平
【テーマコード(参考)】
5B087
5D478
5E555
【Fターム(参考)】
5B087AA09
5B087CC33
5B087DD03
5D478CC22
5D478CC36
5D478HH02
5D478KK03
5D478KK12
5E555AA02
5E555AA03
5E555AA04
5E555AA64
5E555BA02
5E555BA16
5E555BB01
5E555BB16
5E555BC17
5E555CA17
5E555CA41
5E555CB65
5E555CC03
5E555DA01
5E555DA21
5E555DB03
5E555DB06
5E555DB18
5E555DC13
5E555DC25
5E555DC43
5E555DC57
5E555DC85
5E555DD02
5E555EA07
5E555EA25
5E555FA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】身体の動きが制限されたユーザが楽音発生装置を容易に制御するコントローラ、楽音発生システム、方法、プログラム及び記憶媒体を提供する。
【解決手段】楽音発生システム1において、楽音発生装置を制御するコントローラは、ユーザの視線情報を取得する取得部と、楽音発生装置の制御コマンドに関連付けられた複数の操作子を表示部に動的に表示するとともに、取得部により取得した視線情報に基づいて、操作子を選択するためのポインタを表示部に表示する表示制御部と、複数の操作子のうちポインタの少なくとも一部と重なる操作子の選択を決定する決定部と、決定部が選択を決定した操作子に対応するMIDI規格に準拠した情報を楽音発生装置に送信する通信部と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽音発生装置を制御するコントローラであって、
ユーザの視線情報を取得する取得部と、
楽音発生装置の制御コマンドに関連付けられた複数の操作子を表示部に動的に表示するとともに、前記取得部により取得した前記視線情報に基づいて、前記操作子を選択するためのポインタを前記表示部に表示する表示制御部と、
前記複数の操作子のうち前記ポインタの少なくとも一部と重なる操作子の選択を決定する決定部と、
前記決定部が選択を決定した操作子に対応するMIDI規格に準拠した情報を前記楽音発生装置に送信する通信部と、
を有することを特徴とするコントローラ。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記表示部に3次元空間の映像を表示し、前記3次元空間で移動するように前記複数の操作子を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記3次元空間の奥から手前に移動するように、前記複数の操作子のうちの少なくとも一つの操作子を前記表示部に表示することを特徴とする請求項2に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記ポインタの近傍に前記楽音発生装置により演奏される楽曲の1小節に対応する所定時間の経過を示すインジケータを表示することを特徴とする請求項1に記載のコントローラ。
【請求項5】
前記インジケータは、前記所定時間の経過に合わせて動的に変化する円形のメーターグラフを含むことを特徴とする請求項4に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記インジケータは、前記所定時間をカウントダウン又はカウントアップするタイマを含むことを特徴とする請求項4に記載のコントローラ。
【請求項7】
前記タイマは、前記所定時間を1拍ずつカウントダウン又はカウントアップすることを特徴とする請求項6に記載のコントローラ。
【請求項8】
前記決定部は、前記所定時間の経過時に、前記ポインタの少なくとも一部と重なる操作子の選択を決定することを特徴とする請求項4から7のいずれかに記載のコントローラ。
【請求項9】
前記決定部は、前記ポインタの基準位置と重なる操作子の選択を決定することを特徴とする請求項1に記載のコントローラ。
【請求項10】
前記基準位置は、前記ポインタの略中心であることを特徴とする請求項9に記載のコントローラ。
【請求項11】
前記決定部は、前記ユーザの視線情報以外のユーザ操作なしで、前記操作子の選択を決定することを特徴とする請求項1に記載のコントローラ。
【請求項12】
楽音発生装置と該装置を制御するコントローラとを備えた楽音発生システムであって、
ユーザの視線情報を取得する取得部と、
楽音発生装置の制御コマンドに関連付けられた複数の操作子を表示部に動的に表示するとともに、前記取得部により取得した前記視線情報に基づいて、前記操作子を選択するためのポインタを前記表示部に表示する表示制御部と、
前記複数の操作子のうち前記ポインタの少なくとも一部と重なる操作子の選択を決定する決定部と、
前記決定部が選択を決定した操作子に対応するMIDI規格に準拠した情報を前記楽音発生装置に送信する通信部と、
を有することを特徴とする楽音発生システム。
【請求項13】
楽音発生装置を制御する方法であって、
ユーザの視線情報を取得するステップと、
楽音発生装置の制御コマンドに関連付けられた複数の操作子を表示部に動的に表示するとともに、前記視線情報に基づいて、前記操作子を選択するためのポインタを前記表示部に表示するステップと、
前記複数の操作子のうち前記ポインタの少なくとも一部と重なる操作子の選択を決定するステップと、
前記決定した操作子に対応するMIDI規格に準拠した情報を前記楽音発生装置に送信するステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項14】
コンピュータに、楽音発生装置を制御する方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
楽音発生装置の制御コマンドに関連付けられた複数の操作子を表示部に動的に表示するとともに、ユーザの視線情報に基づいて、前記操作子を選択するためのポインタを前記表示部に表示するステップと、
前記複数の操作子のうち前記ポインタの少なくとも一部と重なる操作子の選択を決定するステップと、
前記決定した操作子に対応するMIDI規格に準拠した情報を前記楽音発生装置に送信するステップと、
を有することを特徴とするプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のプログラムを記憶したコンピュータで読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントローラ、楽音発生システム、方法、プログラム及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、楽音発生装置から発生される楽音を制御するための演奏制御情報を操作者の身体状況に応じて生成する演奏インターフェイスが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、ALS患者等の身体の動きが制限されたユーザが使用することについては、何ら提案されていない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、身体の動きが制限されたユーザが楽音発生装置を容易に制御可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係るコントローラは、楽音発生装置を制御するコントローラであって、ユーザの視線情報を取得する取得部と、楽音発生装置の制御コマンドに関連付けられた複数の操作子を表示部に動的に表示するとともに、前記取得部により取得した前記視線情報に基づいて、前記操作子を選択するためのポインタを前記表示部に表示する表示制御部と、前記複数の操作子のうち前記ポインタの少なくとも一部と重なる操作子の選択を決定する決定部と、前記決定部が選択を決定した操作子に対応するMIDI規格に準拠した情報を前記楽音発生装置に送信する通信部と、を有する。
【0007】
この構成によれば、身体の動きが制限されたユーザが楽音発生装置を容易に制御することができる。
【0008】
第2態様に係るコントローラは、上記第1態様に係るコントローラにおいて、前記表示制御部が、前記表示部に3次元空間の映像を表示し、前記3次元空間で移動するように前記複数の操作子を前記表示部に表示する。
【0009】
この構成によれば、3次元空間で移動する操作子の動きに合わせてユーザが楽音発生装置を制御することができる。
【0010】
第3態様に係るコントローラは、上記第2態様に係るコントローラにおいて、前記表示制御部が、前記3次元空間の奥から手前に移動するように、前記複数の操作子のうちの少なくとも一つの操作子を前記表示部に表示する。
【0011】
この構成によれば、3次元空間の奥から手前に移動する操作子の動きに合わせて没入感を得ながらユーザが楽音発生装置を制御することができる。
【0012】
第4態様に係るコントローラは、上記第1から第3態様に係るコントローラにおいて、前記表示制御部が、前記ポインタの近傍に前記楽音発生装置により演奏される楽曲の1小節に対応する所定時間の経過を示すインジケータを表示する。
【0013】
この構成によれば、インジケータが示す所定時間の経過にタイミングを合わせてユーザが楽音発生装置を制御することができる。
【0014】
第5態様に係るコントローラは、第4態様に係るコントローラにおいて、前記インジケータが、前記所定時間の経過に合わせて動的に変化する円形のメーターグラフを含む。
【0015】
この構成によれば、ユーザが所定時間の経過を視覚的に容易に認識することができる。
【0016】
第6態様に係るコントローラは、上記第4又は第5態様に係るコントローラにおいて、前記インジケータが、前記所定時間をカウントダウン又はカウントアップするタイマを含む。
【0017】
この構成によれば、所定時間の経過に容易にタイミングを合わせてユーザが楽音発生装置を制御することができる。
【0018】
第7態様に係るコントローラは、上記第6態様に係るコントローラにおいて、前記タイマが、前記所定時間を1拍ずつカウントダウン又はカウントアップする。
【0019】
この構成によれば、楽曲のリズムに合わせてユーザが楽音発生装置を制御することができる。
【0020】
第8態様に係るコントローラは、上記第4から第7態様に係るコントローラにおいて、前記決定部が、前記所定時間の経過時に、前記ポインタの少なくとも一部と重なる操作子の選択を決定する。
【0021】
この構成によれば、所定時間の経過時に自動的に操作子の選択が決定されるため、楽曲のリズムに合わせた楽音発生装置の制御が容易となる。
【0022】
第9態様に係るコントローラは、上記第1から第8態様のいずれかに係るコントローラにおいて、前記決定部が、前記ポインタの基準位置と重なる操作子の選択を決定する。
【0023】
この構成によれば、操作子の選択をより正確に行うことができる。
【0024】
第10態様に係るコントローラは、上記第9態様に係るコントローラにおいて、前記基準位置が、前記ポインタの略中心である。
【0025】
この構成によれば、より容易に操作子を選択することができる。
【0026】
第11態様に係るコントローラは、上記第1から第10態様のいずれかに係るコントローラにおいて、前記決定部が、前記ユーザの視線情報以外のユーザ操作なしで、前記操作子の選択を決定する。
【0027】
この構成によれば、ユーザの視線情報(視線入力)のみで操作子を選択できるため、身体の自由が制限されたユーザであっても容易に楽音発生装置を制御することができる。
【0028】
第12態様に係る楽音発生システムは、楽音発生装置と該装置を制御するコントローラとを備えた楽音発生システムであって、ユーザの視線情報を取得する取得部と、楽音発生装置の制御コマンドに関連付けられた複数の操作子を表示部に動的に表示するとともに、前記取得部により取得した前記視線情報に基づいて、前記操作子を選択するためのポインタを前記表示部に表示する表示制御部と、前記複数の操作子のうち前記ポインタの少なくとも一部と重なる操作子の選択を決定する決定部と、前記決定部が選択を決定した操作子に対応するMIDI規格に準拠した情報を前記楽音発生装置に送信する通信部と、を有する。
【0029】
第13態様に係る方法は、楽音発生装置を制御する方法であって、ユーザの視線情報を取得するステップと、楽音発生装置の制御コマンドに関連付けられた複数の操作子を表示部に動的に表示するとともに、前記視線情報に基づいて、前記操作子を選択するためのポインタを前記表示部に表示するステップと、前記複数の操作子のうち前記ポインタの少なくとも一部と重なる操作子の選択を決定するステップと、前記決定した操作子に対応するMIDI規格に準拠した情報を前記楽音発生装置に送信するステップと、を有することを特徴とする方法。
【0030】
この構成によれば、身体の動きが制限されたユーザが楽音発生装置を容易に制御することができる。
【0031】
第14態様に係るプログラムは、コンピュータに、楽音発生装置を制御する方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、楽音発生装置の制御コマンドに関連付けられた複数の操作子を表示部に動的に表示するとともに、ユーザの視線情報に基づいて、前記操作子を選択するためのポインタを前記表示部に表示するステップと、前記複数の操作子のうち前記ポインタの少なくとも一部と重なる操作子の選択を決定するステップと、前記決定した操作子に対応するMIDI規格に準拠した情報を前記楽音発生装置に送信するステップと、を有することを特徴とするプログラム。
【0032】
第15態様に係る記憶媒体は、上記第14態様に係るプログラムを記憶したコンピュータで読み取り可能な記憶媒体である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、身体の動きが制限されたユーザが楽音発生装置を容易に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本実施形態に係る楽音発生システム1のシステム構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る楽音発生システム1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る楽音発生システム1の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る楽音発生システム1の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5A】本実施形態に係るコントローラ2の動的に変化するユーザインタフェースの表示例を示す図である。
【
図5B】本実施形態に係るコントローラ2の動的に変化するユーザインタフェースの表示例を示す図であって
図5Aの後に変化した表示例を示す図である。
【
図5C】本実施形態に係るコントローラ2の動的に変化するユーザインタフェースの表示例を示す図であって
図5Bの後に変化した表示例を示す図である。
【
図5D】本実施形態に係るコントローラ2の動的に変化するユーザインタフェースの表示例を示す図であって
図5Cの後に変化した表示例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係るコントローラ2のユーザインタフェースに表示される複数の操作子の一例を示す図である。
【
図7】
図5Aに示すユーザインタフェースのポインタの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は繰り返さない。
【0036】
(楽音発生システムの構成)
図1は、一実施の形態に係る楽音発生システム1の概略的な構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る楽音発生システム1は、コントローラ2と楽音発生装置3とを備えている。コントローラ2と楽音発生装置3とは後述の通信インタフェース(I/F)により通信可能に接続されている。
【0037】
コントローラ2は、楽音発生装置3をMIDI規格に準拠した通信プロトコルに基づいて制御するための装置である。そして、コントローラ2は、ALS患者等の身体の動きに制限のあるユーザが視線入力により各種情報をコントローラ2に入力するためのアイトラッキング装置21と、ユーザが手動操作を行う入力装置22に接続される(コントローラ2がアイトラッキング装置21と入力装置22とを備えていてもよい)。
【0038】
アイトラッキング装置21は、ユーザの眼の動き(視線方向)を追跡し、視線情報をコントローラ2に出力する。視線情報は、例えば、ユーザの眼球像を逐次撮像した画像から瞳孔等の特徴的なパターンを抽出することにより生成することができる。本実施形態は、ALS患者が視線を動かすことができることに着目し、視線情報を用いて楽音発生装置3を制御するものである。
【0039】
入力装置22は、手動スイッチ、フットスイッチ等のユーザが操作可能な入力装置である。ユーザが入力装置22を用いて操作を行うと、その操作に応じた信号が入力装置22からコントローラ2に出力される。入力装置22は、ALS患者等の身体の動きが制限されたユーザが簡単に入力操作を行えるものであるのが望ましく、例えば入力操作はユーザの体によってスイッチを押下することである。
【0040】
楽音発生装置3は、コントローラ2から受信したMIDI規格に準拠した信号に基づいて楽音を発生させるための装置である。例えば、DAW(Digital Audio Workstation)と称される統合音楽ソフトウェアをパーソナルコンピュータにインストールして実行することにより当該パーソナルコンピュータを楽音発生装置として用いることができる。また、楽音発生装置3は、音響信号に基づいて放音するためのサウンドシステム31を備えている。
【0041】
(ハードウェア構成)
次に、本実施形態に係る楽音発生システム1のハードウェア構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る楽音発生システム1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0042】
コントローラ2において、CPU23は、このコントローラ2全体の動作を制御する処理装置である。ROM24は、CPU23が実行する制御プログラムや各種のデータを格納する不揮発性メモリである。RAM25は、CPU23が実行するプログラムのロード領域やワーク領域に使用する揮発性メモリである。ディスプレイ26は、各種の情報(ユーザインタフェース)を表示する表示装置である。記憶装置27は、各種の情報を記憶するための記憶手段であり、コントローラ2本体に内蔵されているものでも、記憶媒体が着脱可能なものでもよい。通信インタフェース(I/F)28は、楽音発生装置3と接続するためのインタフェースである。バス29は、上記各構成要素を相互に接続するバスラインである。
【0043】
楽音発生装置3は、本実施形態ではPCにDAWソフトウェアをインストールしたものである。該DAWソフトウェアを実行することにより、音楽制作の各種の機能(例えば、ハードディスクレコーディング機能、MIDIデータやオーディオデータの作成編集機能、ミキシング機能、シーケンサ機能など)を実現することができる。なお、本実施形態では楽音発生装置3をPCとDAWソフトウェアで構成した例で説明するが、単体のシーケンサ装置などでもよい。
【0044】
楽音発生装置3において、CPU32、ROM33、RAM34、記憶装置36、マウス・キーボード等の入力装置37及びディスプレイ38は、汎用のPCが備える基本構成である。通信I/F35は、コントローラ2と接続するためのインタフェースである。なお、通信I/F28と35は、例えば、MIDIなどの音楽専用有線I/F、USBやIEEE1394等の汎用有線I/Fや無線LANやBluetooth(登録商標)等の汎用無線I/Fである。サウンドシステム31は、デジタルアナログ(D/A)変換機能などを備えるサウンドI/Oであるコーデックから渡されるアナログ音響信号を放音する。このサウンドシステム31は、楽音発生装置3を構成するPCが備えるスロットにボードやカードを挿入する形式で付加された機能である。バス39は、上記各構成要素を相互に接続するバスラインである。
【0045】
(機能構成)
次に、本実施形態に係る楽音発生システム1の機能構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る楽音発生システム1の機能構成の一例を示す図である。
【0046】
図3に示すように、コントローラ2は、制御部200と、表示部210と、記憶部211と、通信部212とを有している。
【0047】
制御部200は、取得部201と、受付部202と、決定部204と、表示制御部203とを有している。
【0048】
取得部201は、コントローラ2のユーザの視線情報を取得する。具体的には、取得部201はアイトラッキング装置21から出力されるユーザの視線方向に関する情報(視線情報)を取得する。
【0049】
受付部202は、入力装置22(手動スイッチ、フットスイッチ等)を用いたユーザによる入力操作を受け付ける。
【0050】
表示制御部203は、楽音発生装置3の制御コマンドに関連付けられた複数の操作子(アイコン)を各種の情報とともに表示部210(
図2のディスプレイ26に相当)に動的に表示する。また、表示制御部203は、取得部201により取得したユーザの視線情報に基づいて、操作子を操作するためのポインタを表示部210に表示する。
【0051】
図5A~
図5Dは、表示制御部203によって表示部210に動的に表示されるユーザインタフェース50の一例を示す図である。表示制御部203は、時間経過とともに
図5A、
図5B、
図5C、
図5Dの順にユーザインタフェース50の表示を変化させる。
【0052】
図5A~
図5Dに示すように、表示制御部203は、ユーザインタフェース50として、3次元空間51の映像を表示部210に表示する。そして、表示制御部203は、この3次元空間51の奥から手前に向かって移動するように複数の操作子60を表示する。複数の操作子60は、3次元空間の最も手前まで移動すると消失するが、これと並行して新たな複数の操作子60が画面上に生成されて画面奥から手前に移動するように表示される。このようにユーザインタフェース50を表示することで、ユーザには複数の操作子60が表示部210の画面奥からユーザに向かって近づいてくる、あるいは、ユーザが3次元空間51を奥行方向に進んでいるかのような感覚が生じる。これにより、ユーザは没入感をもってコントローラ2を操作することができる。
【0053】
図6は、ユーザインタフェース50に表示される複数の操作子60の一例を示す図である。
図6に示すように、複数の操作子60は、操作子61~69の9個の矩形の操作子を含む。これらの各操作子61~69は、楽音発生装置3(DAW)の各制御コマンドに関連付けられており、各操作子61~69をユーザが操作(選択)することにより楽音発生装置3が各制御コマンドに応じた処理を行う。
【0054】
図5A~
図5Dに戻って、ユーザインタフェース50は、上記の各操作子を操作/選択するためのポインタPを含む。ポインタPは、取得部201が取得した視線情報に基づいて表示部210に表示される。具体的には、視線情報から表示部210の画面上における注視点の位置を求め、当該位置にポインタPが表示される。
【0055】
図7は、
図5A~
図5Dに示すユーザインタフェース50に表示されるポインタPの拡大図である。
図7に示すように、ポインタPは、水平方向の基準線Pxと垂直方向の基準線Pyとを含み、基準線Pxと基準線Pyとの交点が基準位置となる。この基準位置は、視線情報から得られるユーザの注視点の位置に配置される。また、ポインタPは、矩形領域P1と、この矩形領域内に表示されるインジケータP2とを含む。矩形領域P1は、後述の決定部204によって操作子との重畳判定がされる領域である。インジケータP2は、楽音発生装置3によって演奏される楽曲の1小節に対応する所定時間の経過を示す指標である。このインジケータP2は、所定時間の経過に合わせて動的に変化する円形のメーターグラフP21と、所定時間をカウントダウンするタイマP22とを含む。タイマP22は、例えば、4分の4拍子の楽曲の場合、1小節が4拍で構成されるため、4、3、2、1の順に1拍ずつカウントダウンする。なお、カウントダウンではなく、タイマP22がカウントアップするようにしてもよいし、カウントダウン又はカウントアップは1拍ずつでなくてもよい。例えば、タイマP22が、1秒ずつカウントダウン又はカウントアップするようにしてもよい。このように、ポインタPが、楽音発生装置3によって演奏される楽曲の1小節に対応する所定時間の経過を示すインジケータP2を有することにより、コントローラ2のユーザは、楽曲のリズムに合わせて容易に楽音発生装置3を制御することができる。
【0056】
図3に戻って、決定部204は、前記タイマのカウントが満了するタイミング(所定時間の経過時)に上記複数の操作子のうちポインタPの矩形領域P1の少なくとも一部と重なる操作子の選択を決定する。これにより、アイトラッキング装置21を用いた視線入力のみで楽曲のリズムに合わせて操作子の選択を決定することができる。また、決定部204は、ポインタPの基準位置と重なる操作子の選択を決定するようにしてもよい。これにより、操作子が隣接して配置されている場合に、操作子の誤操作(誤選択)を低減させることができる。このような選択法は、視線情報のみで操作子を選択できるため、視線を動かすこと以外の動作が困難なユーザにも有用である。
【0057】
また、決定部204は、受付部202が受け付けたユーザによる入力装置22を用いた入力操作に応じて操作子の選択を決定してもよい。すなわち、ユーザは、アイトラッキング装置21を用いた視線入力で操作子を選択し、入力装置22(手動スイッチ、フットスイッチ等)を用いて操作子の選択を決定することができる。このようにすることで、楽音発生装置3により演奏される楽曲のリズムを体感しながらコントローラ2を操作することができる。このような選択法は、視線を動かすことに加え、手や足など体の一部で入力装置22の操作を可能なユーザに有用である。
【0058】
記憶部211は、各操作子に関連付けた楽音発生装置3(DAW)の各制御コマンドに関する情報を記憶する。
【0059】
通信部212は、決定部204が選択を決定した操作子に対応するMIDI規格に準拠した情報(制御コマンド情報、MIDIイベント情報)を楽音発生装置3に送信する。
【0060】
次に、楽音発生装置3の機能構成について説明する。
図3に示すように、楽音発生装置3は、オーディオ入力部301と、シーケンサ302と、レコーダ303と、音源304と、ミキサ305と、サウンドシステム306と、通信部307とを有する。
【0061】
オーディオ入力部301は、デジタルに変換したアナログ音響信号の入力や、デジタル音響信号そのものの入力を行う。
【0062】
シーケンサ302は、通信部307が受信したMIDIイベント情報を記録する。このMIDIイベント情報は、後述の音源304に供給される。
【0063】
音源304はソフトウェア音源である。音源304は、入力したMIDIイベント情報に応じてオーディオ信号を生成する。音源304から出力されたオーディオ信号は、レコーダ303やミキサ305に入力する。
【0064】
レコーダ303は、オーディオ入力部301により入力されたオーディオ信号や音源304から出力されたオーディオ信号を記録する。レコーダ303に記録されたオーディオ信号は、再生の指示に応じてミキサ305に出力される。
【0065】
ミキサ305は、音源304やレコーダ303から出力されるオーディオ信号をサウンドシステム306へと供給する。
【0066】
(動作の一例)
次に、楽音発生システム1の動作の一例について説明する。
図4は、楽音発生システム1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0067】
まず、コントローラ2において制御部200の取得部201は、アイトラッキング装置21から出力されるユーザの視線情報を取得する(ステップS1)。視線情報の取得は任意のタイミングで行われてよく、例えばリアルタイムに常時行われる。
【0068】
次に、制御部200の表示制御部203は、楽音発生装置3(DAW)の制御コマンドに関連付けられた複数の操作子を表示部210に動的に表示する(ステップS2)。
【0069】
また、制御部200の表示制御部203は、取得部201により取得した視線情報に基づいて、操作子を操作するためのポインタを表示部210に表示する(ステップS3)。
【0070】
次に、制御部200の決定部204は、複数の操作子のうちポインタの少なくとも一部と重なる操作子の選択を決定する(ステップS4)。
【0071】
続いて、通信部307は、決定部204が選択を決定した操作子に対応するMIDI規格に準拠した情報を楽音発生装置3に送信する(ステップS5)。
【0072】
そして、楽音発生装置3において、コントローラ2から受信したMIDI規格に準拠した情報に基づいて各種処理(制御コマンドの実行、MIDIイベントの記録等)が行われる(ステップS6)。
【0073】
以上説明したとおり、本実施形態によれば楽音発生システム1が、ユーザの視線情報を取得する取得部201と、楽音発生装置の制御コマンドに関連付けられた複数の操作子を表示部210に動的に表示するとともに、取得部201により取得した視線情報に基づいて、操作子を操作するためのポインタPを表示部210に表示する表示制御部203と、複数の操作子のうちポインタPの少なくとも一部と重なる操作子の選択を決定する決定部204と、決定部204が選択を決定した操作子に対応するMIDI規格に準拠した情報を楽音発生装置3に送信する通信部212と、を有するので、身体の動きが制限されたユーザが楽音発生装置3を容易に制御することができる。
本明細書で述べた各機能部の任意の一部または全部をプログラムによって実現するようにしてもよい。本明細書で言及したプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に非一時的に記録して頒布されてもよいし、インターネットなどの通信回線(無線通信も含む)を介して頒布されてもよいし、任意の端末にインストールされた状態で頒布されてもよい。
【0074】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形例を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態には限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【0075】
例えば、本明細書において1台の装置(あるいは部材、以下同じ)として説明されるもの(図面において1台の装置として描かれているものを含む)を複数の装置によって実現してもよい。逆に、本明細書において複数の装置として説明されるもの(図面において複数の装置として描かれているものを含む)を1台の装置によって実現してもよい。あるいは、ある装置(例えばサーバ)に含まれるとした手段や機能の一部または全部が、他の装置(例えばユーザ端末)に含まれるようにしてもよい。
【0076】
また、本明細書に記載された事項の全てが必須の要件というわけではない。特に、本明細書に記載され、特許請求の範囲に記載されていない事項は任意の付加的事項ということができる。
【0077】
なお、本出願人は本明細書の「先行技術文献」欄の文献に記載された文献公知発明を知っているにすぎず、本発明は必ずしも同文献公知発明における課題を解決することを目的とするものではないことにも留意されたい。本発明が解決しようとする課題は本明細書全体を考慮して認定されるべきものである。例えば、本明細書において、特定の構成によって所定の効果を奏する旨の記載がある場合、当該所定の効果の裏返しとなる課題が解決されるということもできる。ただし、必ずしもそのような特定の構成を必須の要件とする趣旨ではない。
【符号の説明】
【0078】
1 楽音発生システム
2 コントローラ
21 アイトラッキング装置
22 入力装置
201 取得部
202 受付部
203 表示制御部
204 決定部
210 表示部
211 記憶部
212 通信部
3 楽音発生装置