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特開2024-23093光透過型光学素子モジュール及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023093
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】光透過型光学素子モジュール及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/00 20060101AFI20240214BHJP
   G03B 21/16 20060101ALI20240214BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20240214BHJP
   H04N 9/31 20060101ALI20240214BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20240214BHJP
   G02F 1/133 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
G03B21/00 E
G03B21/16
H04N5/74 Z
H04N9/31 440
G02F1/1333
G02F1/133 580
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126684
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】門谷 典和
(72)【発明者】
【氏名】内藤 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】宮下 智明
(72)【発明者】
【氏名】中西 政信
【テーマコード(参考)】
2H189
2H193
2K203
5C058
5C060
【Fターム(参考)】
2H189AA83
2H189AA84
2H189AA85
2H189AA87
2H189AA88
2H189HA06
2H189MA07
2H193ZH18
2H193ZH33
2H193ZH62
2H193ZH66
2H193ZH68
2H193ZH72
2H193ZH73
2H193ZH74
2H193ZH75
2H193ZR04
2K203FA23
2K203FA34
2K203LA03
2K203LA15
2K203LA37
2K203LA38
2K203LA39
2K203MA12
5C058EA26
5C058EA52
5C060DA00
5C060JA28
5C060JB06
(57)【要約】
【課題】光学素子を急冷できる光透過型光学素子モジュール及び電子機器を提供する。
【解決手段】光透過型光学素子モジュールは、入射する光を出射する光透過型光学素子、及び、光透過型光学素子の熱を伝達する熱伝達面を有する光学デバイスと、熱伝達面に接触する接触部、及び、接触部から延在する延在部を有し、受熱した熱を拡散させる熱拡散器と、延在部に接触する第1面、及び、第1面とは反対側に配置される第2面を有し、延在部から伝達される熱を第1面にて吸熱して、吸熱した熱を第2面から放熱する熱電変換デバイスと、第2面に接触する冷却器と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する光を出射する光透過型光学素子、及び、前記光透過型光学素子の熱を伝達する熱伝達面を有する光学デバイスと、
前記熱伝達面に接触する接触部、及び、前記接触部から延在する延在部を有し、受熱した熱を拡散させる熱拡散器と、
前記延在部に接触する第1面、及び、前記第1面とは反対側に配置される第2面を有し、前記延在部から伝達される熱を前記第1面にて吸熱して、吸熱した熱を前記第2面から放熱する熱電変換デバイスと、
前記第2面に接触する冷却器と、を備える、ことを特徴とする光透過型光学素子モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光透過型光学素子モジュールにおいて、
前記熱拡散器は、気相と液相とに変化する作動流体を内部に収容した密閉筐体を有するベイパーチャンバーであり、
前記接触部及び前記延在部は、前記密閉筐体に設けられている、ことを特徴とする光透過型光学素子モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の光透過型光学素子モジュールにおいて、
前記熱拡散器は、グラファイトシート及びグラフェンシートのうち少なくとも一方のシートを含む熱伝導体である、ことを特徴とする光透過型光学素子モジュール。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光透過型光学素子モジュールにおいて、
前記冷却器は、ヒートシンクである、ことを特徴とする光透過型光学素子モジュール。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光透過型光学素子モジュールにおいて、
前記冷却器は、液体冷媒が内部を流通するコールドプレートである、ことを特徴とする光透過型光学素子モジュール。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光透過型光学素子モジュールにおいて、
前記熱電変換デバイスは、ペルチェ素子である、ことを特徴とする光透過型光学素子モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載の光透過型光学素子モジュールにおいて、
前記光透過型光学素子は、液晶層を有し、第1方向に入射する光を前記液晶層によって変調し、変調した光を前記第1方向に出射する液晶パネルであり、
前記熱拡散器は、前記ペルチェ素子から供給された熱を、前記接触部を介して前記液晶パネルに伝達する、ことを特徴とする光透過型光学素子モジュール。
【請求項8】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光透過型光学素子モジュールを備える、ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光透過型光学素子モジュール及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像情報に応じた画像を形成し、形成した画像を投射するプロジェクターが知られている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に記載のプロジェクターは、入射する光を変調する液晶パネルと、液晶パネルを冷却する冷却装置と、を備える。冷却装置は、光学素子保持部と、液体圧送部と、供給タンクと、熱交換ユニットと、複数の管状部材と、冷却ファンと、を備える。これらのうち、光学素子保持部は、内部に冷却液体が流通する流路を有し、液晶パネルを保持する。熱交換ユニットは、複数の管状部材を介して光学素子保持部と接続されている。熱交換ユニットには、光学素子保持部から冷却液体が流通する。熱交換ユニットは、受熱部、熱電変換素子としてのペルチェ素子、及び、ヒートシンク等を備える。受熱部は、液晶パネルの熱を光学素子保持部及び冷却液体を介して受熱し、ペルチェ素子は、受熱部が受熱した熱をヒートシンクに伝導させる。そして、冷却ファンは、ヒートシンクに冷却空気を送風して、ヒートシンクの熱を放熱させる。
このように、特許文献1に記載のプロジェクターでは、液晶パネルである熱源を液体冷媒によって冷却することから、液体冷媒の温度が低い場合には、冷却空気を流通させて熱源を冷却する冷却方式と比べて、熱源の冷却効果は高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-108697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液体冷媒の比熱は比較的高いので、液体冷媒の温度を熱源の冷却に適した温度に低下させるまでに時間を要する。このため、特許文献1に記載の構成では、液体冷媒の温度が、熱源の冷却に適した温度よりも高い場合に、熱源を急冷することが難しいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1態様に係る光透過型光学素子モジュールは、入射する光を出射する光透過型光学素子、及び、前記光透過型光学素子の熱を伝達する熱伝達面を有する光学デバイスと、前記熱伝達面に接触する接触部、及び、前記接触部から延在する延在部を有し、受熱した熱を拡散させる熱拡散器と、前記延在部に接触する第1面、及び、前記第1面とは反対側に配置される第2面を有し、前記延在部から伝達される熱を前記第1面にて吸熱して、吸熱した熱を前記第2面から放熱する熱電変換デバイスと、前記第2面に接触する冷却器と、を備える。
【0006】
本開示の第2態様に係る電子機器は、上記第1態様に係る光透過型光学素子モジュールを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態におけるプロジェクターの構成を示す模式図。
図2】第1実施形態における透過型液晶パネルを示す斜視図。
図3】第1実施形態における透過型液晶パネルを示す斜視図。
図4】第1実施形態における透過型液晶パネルを示す分解斜視図。
図5】第1実施形態における透過型液晶パネルを示す分解斜視図。
図6】第1実施形態における透過型液晶パネルを示す断面図。
図7】第1実施形態における透過型液晶パネル及び駆動部を示す側面図。
図8】第1実施形態における透過型液晶パネルの他の構成及び温度調整装置の構成を示すブロック図。
図9】第2実施形態におけるプロジェクターが備える透過型液晶パネルを示す斜視図。
図10】第2実施形態における透過型液晶パネルを示す分解斜視図。
図11】第2実施形態における温度調整装置の構成を示すブロック図。
図12】第1及び第2実施形態における熱拡散器の変形を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態について、図面に基づいて説明する。
[プロジェクターの概略構成]
図1は、本実施形態に係るプロジェクター1の構成を示す模式図である。
本実施形態に係るプロジェクター1は、内部に設けられた光源装置31から出射された光を変調して画像情報に応じた画像光を形成し、形成した画像光をスクリーン等の被投射面に拡大投射する画像表示装置である。プロジェクター1は、本開示の電子機器の一例である。
プロジェクター1は、図1に示すように、外装筐体2と、外装筐体2に収容される画像投射装置3と、を備える。この他、図示を省略するが、プロジェクター1は、プロジェクター1の動作を制御する制御装置、プロジェクター1を構成する電子部品に電力を供給する電源装置、及び、プロジェクター1を構成する冷却対象を冷却する冷却装置を備える。
【0009】
[画像投射装置の構成]
画像投射装置3は、制御装置から入力される画像情報に応じた画像光を形成し、形成された画像光を投射する。画像投射装置3は、光源装置31、均一化光学系32、色分離光学系33、リレー光学系34、画像形成装置35、光学部品用筐体36及び投射光学装置37を備える。
【0010】
光源装置31は、均一化光学系32に照明光を出射する。光源装置31の構成としては、例えば、励起光である青色光を出射する固体光源と、固体光源から出射された青色光のうちの少なくとも一部を、緑色光及び赤色光を含む蛍光に変換する波長変換素子と、を有する構成を例示できる。なお、光源装置31の他の構成としては、超高圧水銀ランプ等の光源ランプを有する構成、或いは、青色光、緑色光及び赤色光を個別に出射する発光素子を有する構成を例示できる。
均一化光学系32は、光源装置31から出射された光を均一化する。均一化された光は、色分離光学系33及びリレー光学系34を経て、後述する透過型液晶パネル353の変調領域を照明する。均一化光学系32は、2つのレンズアレイ321,322、偏光変換素子323及び重畳レンズ324を備える。
色分離光学系33は、均一化光学系32から入射される光を赤、緑及び青の各色光に分離する。色分離光学系33は、2つのダイクロイックミラー331,332と、ダイクロイックミラー331によって分離された青色光を反射させる反射ミラー333と、を備える。
【0011】
リレー光学系34は、他の色光の光路よりも長い赤色光の光路に設けられ、赤色光の損失を抑制する。リレー光学系34は、入射側レンズ341、リレーレンズ343、反射ミラー342,344を備える。本実施形態では、リレー光学系34に赤色光を導くこととした。しかしながら、これに限らず、例えば他の色光より光路が長い色光を青色光とし、青色光をリレー光学系34に導く構成としてもよい。
【0012】
画像形成装置35は、入射される赤、緑及び青の各色光を変調し、変調された各色光を合成して、画像光を形成する。画像形成装置35は、入射される色光に応じて設けられる3つのフィールドレンズ351と、3つの入射側偏光板352と、3つの透過型液晶パネル353と、3つの出射側偏光板354と、1つの色合成光学系355と、を有する。
【0013】
透過型液晶パネル353は、光源装置31から出射された光を、制御装置から入力する画像信号に基づいて変調する。具体的に、透過型液晶パネル353は、入射側偏光板352から入射する色光を、制御装置から入力する画像信号に応じて変調し、変調された色光を出射する。3つの透過型液晶パネル353は、赤色光用の透過型液晶パネル353R、緑色光用の透過型液晶パネル353G、及び、青色光用の透過型液晶パネル353Bを含む。透過型液晶パネル353の構成については、後に詳述する。
【0014】
色合成光学系355は、透過型液晶パネル353B,353G,353Rによって変調された3つの色光を合成して、画像光を形成する。色合成光学系355によって形成された画像光は、投射光学装置37に入射する。本実施形態では、色合成光学系355は、略直方体状のクロスダイクロイックプリズムによって構成されているが、複数のダイクロイックミラーによって構成されていてもよい。
【0015】
光学部品用筐体36は、上記した均一化光学系32、色分離光学系33、リレー光学系34及び画像形成装置35を内部に収容する。なお、画像投射装置3には、設計上の光軸Axが設定されており、光学部品用筐体36は、光軸Axにおける所定位置に均一化光学系32、色分離光学系33、リレー光学系34及び画像形成装置35を保持する。光源装置31及び投射光学装置37は、光軸Axにおける所定位置に配置される。
投射光学装置37は、画像形成装置35から入射する画像光をスクリーン等の被投射面に投射する。投射光学装置37は、例えば、図示しない複数のレンズと、複数のレンズを収容する鏡筒371と、を備える組レンズとすることができる。
【0016】
[透過型液晶パネルの構成]
図2は、光入射側から見た透過型液晶パネル353を示す斜視図であり、図3は、光出射側から見た透過型液晶パネル353を示す斜視図である。図4は、光入射側から見た透過型液晶パネル353を示す分解斜視図であり、図5は、光出射側から見た透過型液晶パネル353を示す分解斜視図である。
透過型液晶パネル353は、光透過型光学素子モジュールに相当する。透過型液晶パネル353は、図2図5に示すように、光学デバイス4、熱拡散器5、保持部材6、熱電変換デバイス7及び冷却器8を備える。熱電変換デバイス7は、後述する温度調整装置9の構成要素の1つでもある。
以下の説明では、互いに直交する三つの方向を、+X方向、+Y方向及び+Z方向とする。本実施形態では、+Z方向を、透過型液晶パネル353に入射する光の進行方向とする。+Y方向が上方向と一致するように透過型液晶パネル353を+Z方向に沿って見た場合の左方向を+X方向とする。図示を省略するが、+X方向の反対方向を-X方向とし、+Y方向の反対方向を-Y方向とし、+Z方向の反対方向を-Z方向とする。すなわち、透過型液晶パネル353に対する+Z方向は、透過型液晶パネル353に対する光出射側であり、透過型液晶パネル353に対する-Z方向は、透過型液晶パネル353に対する光入射側である。
また、+X方向又は-X方向に沿う軸をX軸とし、+Y方向又は-Y方向に沿う軸をY軸とし、+Z方向又は-Z方向に沿う軸をZ軸とする。
【0017】
[光学デバイスの構成]
図6は、透過型液晶パネル353のYZ平面に沿う断面を示す図である。
光学デバイス4は、入射する光に作用する装置である。光学デバイス4は、図6に示すように、光透過型光学素子41と、FPC(Flexible printed circuits)42と、保持枠43と、を備える。なお、光透過型光学素子41を光学素子41と略す場合がある。
【0018】
光学素子41は、入射する光を出射する。詳述すると、光学素子41は、入射する光の進行方向に沿って、入射する光を出射する。光学素子41は、透過型液晶パネル353における熱源である。光学素子41は、光学作用部411と、光学作用部411をZ軸において挟む入射側防塵基板415及び出射側防塵基板416と、を備える。
【0019】
[光学作用部の構成]
光学作用部411は、液晶層412と、液晶層412をZ軸において挟む対向基板413及び画素基板414と、を有する。
液晶層412は、対向基板413と画素基板414との間に封入された液晶分子によって形成されている。
対向基板413は、液晶層412に対して光入射側に配置されている。対向基板413には、液晶層412と対向する面に対向電極が設けられている。
画素基板414は、液晶層412に対して光出射側に配置されている。画素基板414には、液晶層412と対向する面に複数の画素電極が設けられている。なお、光入射側である-Z方向から見て、光学作用部411において複数の画素電極が配置された領域は、画素領域PAであり、画素領域PAにおいて各画素電極が配置された領域によって1つの画素が形成される。
対向基板413及び画素基板414は、FPC42と接続されており、FPC42から供給される画像信号に応じて、液晶層412を形成する液晶分子の配列状態を変化させる。これにより、光学作用部411は、入射する光を変調する。すなわち、光学デバイス4は、+Z方向に入射する光を液晶層412によって変調し、変調した変調光を+Z方向に出射する液晶パネルLPである。
【0020】
[入射側防塵基板の構成]
入射側防塵基板415は、対向基板413の光入射面において画素領域PAに応じた部分に設けられる透光性の基板である。-Z方向から光学デバイス4を見た場合、入射側防塵基板415は、画素領域PAを覆うように、対向基板413の光入射面に熱伝達可能に設けられる。入射側防塵基板415は、対向基板413の光入射面に塵埃等が付着して、画像光に塵埃等の影が入り込むことを抑制する。
なお、入射側防塵基板415には、後述する熱拡散器5が接続される。詳述すると、入射側防塵基板415における光入射面415Aには、熱拡散器5の接触部54が熱伝達可能に接触する。光入射面415Aは、光学素子41の光学作用部411にて発生した熱を熱拡散器5に伝達する熱伝達面である。すなわち、光学デバイス4は、入射する光を出射する光透過型光学素子41と、光透過型光学素子41の熱を伝達する熱伝達面としての光入射面415Aと、を有する。
【0021】
[出射側防塵基板の構成]
出射側防塵基板416は、画素基板414の光出射面において画素領域PAに応じた部分に設けられる透光性の基板である。+Z方向から光学デバイス4を見た場合、出射側防塵基板416は、画素領域PAを覆うように、画素基板414の光出射面に熱伝達可能に設けられる。出射側防塵基板416は、画素基板414の光出射面に塵埃等が直接付着して、画像光に塵埃等の影が入り込むことを抑制する。
【0022】
[FPCの構成]
FPC42は、図6に示すように、対向基板413及び画素基板414から+Y方向に延出し、上記した制御装置と接続されている。FPC42は、光学作用部411を駆動させるドライバー回路421を有し、ドライバー回路421は、制御装置から入力する画像信号に応じた駆動信号を画素基板414に印加する。
【0023】
[保持枠の構成]
保持枠43は、光学素子41及びFPC42を保持する他、熱拡散器5、保持部材6、熱電変換デバイス7及び冷却器8を支持する。保持枠43は、図3及び図5に示すように、光出射側から見て+Y方向に長い矩形状に形成されている。保持枠43は、図示を省略するが、光学素子41に入射する光、及び、光学素子41から出射される光が通過する開口部を有する。保持枠43は、Z軸に沿って保持枠43を貫通する4つの貫通口431を有する。4つの貫通口431のそれぞれには、図示を省略するが、色合成光学系355に設けられた支持部材の腕部が挿入される。支持部材は、色合成光学系355において透過型液晶パネル353によって変調された色光が入射する3つの光入射面のそれぞれに設けられており、腕部を貫通口431に挿入することによって、色合成光学系355と3つの透過型液晶パネル353とが一体化される。
【0024】
[熱拡散器の構成]
熱拡散器5は、入射側防塵基板415の光入射面415Aから光学素子41の熱を受熱し、受熱した熱を熱拡散器5にて拡散させるものである。熱拡散器5は、図4及び図5に示すように、+Z方向から見てY軸に長い略矩形状に形成されており、光学デバイス4に対する光入射側に配置される。詳述すると、熱拡散器5は、光学素子41と熱電変換デバイス7との間に配置される。熱拡散器5は、第1面51、第2面52、開口部53、接触部54、延在部55、2つの孔部56、及び、2つの孔部57を備える。
第1面51は、熱拡散器5において光学デバイス4と対向する面である。すなわち、第1面51は、熱拡散器5において光学素子41と対向する面である。換言すると、第1面51は、熱拡散器5において光出射側の面である。
第2面52は、熱拡散器5において第1面51とは反対側の面である。後述する保持部材6及び熱電変換デバイス7は、第2面52と接触する。
【0025】
開口部53は、熱拡散器5が保持枠43に取り付けられたときに、光学素子41に入射する光を+Z方向に通過させる。すなわち、開口部53は、熱拡散器5を+Z方向に沿って貫通する貫通口である。開口部53は、光入射側から見て、画素領域PAに対応する略矩形状に形成されている。
接触部54は、第1面51において開口部53の周縁に設けられている。接触部54は、熱伝達面である光入射面415Aと接触して、光入射面415Aから光学素子41の熱を受熱する。
【0026】
延在部55は、熱拡散器5において接触部54から光学素子41に対する光の入射方向と交差する方向に延在する部分である。詳述すると、延在部55は、光学デバイス4において画像光を出射する画素領域PAから離れる方向に接触部54から延出した部分である。具体的に、延在部55は、Z軸に交差する+Y方向に接触部54から延在した部分である。熱拡散器5では、接触部54にて受熱された光学素子41の熱は、延在部55に拡散する。そして、延在部55に拡散された熱は、第2面52に設けられた熱電変換デバイス7によって吸熱される。
2つの孔部56は、開口部53に対して+Y方向に設けられている。2つの孔部56のそれぞれには、保持枠43に固定されるねじSCが挿通する。
2つの孔部57は、開口部53に対して-Y方向に設けられている。2つの孔部57のそれぞれには、図4に示すように、保持枠43に設けられた突起432が挿入される。すなわち、突起432は、位置決め突起であり、2つの孔部57は、位置決め孔である。
【0027】
本実施形態では、熱拡散器5は、気相と液相とに変化可能な作動流体が内部に封入された密閉筐体VC1を有するベイパーチャンバーVCである。
第1面51は、密閉筐体VC1において光学素子41に対向する面であり、第2面52は、密閉筐体VC1において第1面51とは反対側の面である。接触部54及び延在部55は、密閉筐体VC1に設けられており、接触部54は、密閉筐体VC1において光学素子41の熱を受熱する受熱部である。
【0028】
密閉筐体VC1内に封入された液相の作動流体のうち、一部の作動流体は、接触部54にて受熱された光学素子41の熱によって気化して気相の作動流体に変化し、密閉筐体VC1内を拡散する。
気相の作動流体の一部は、密閉筐体VC1において温度が低い部分に熱を伝達させる。これにより、気相の作動流体は、凝縮されて液相の作動流体に変化する。液相に変化した作動流体は、密閉筐体VC1の内面を伝って、再び受熱部に移動される。
熱が伝達された密閉筐体VC1の部分は放熱部であり、伝達された熱は、放熱部にて放熱される。第2面52において延在部55には、熱電変換デバイス7が設けられることから、密閉筐体VC1においては、熱電変換デバイス7が設けられた部分が放熱部となる。
【0029】
[保持部材の構成]
保持部材6は、図4及び図5に示すように、略矩形枠状に形成されている。保持部材6は、ねじSCによって保持枠43に固定されて、図1に示した入射側偏光板352を光学素子41に対する光入射側にて保持する。保持部材6は、開口部61、2つの腕部62、2つの固定部63、突出部64、3つの孔部65、及び、2つの孔部66を有する。
【0030】
開口部61は、矩形状の開口部であり、保持部材6が保持枠43に固定されたときに、画素領域PAに対応する位置に設けられている。入射側偏光板352から+Z方向に出射された光は、開口部61を通過し、更に熱拡散器5の開口部53を通過して、光学素子41に入射する。
2つの腕部62のうち、一方の腕部62は、保持部材6における+X方向の端部から+Y方向に突出し、他方の腕部62は、保持部材6における-X方向の端部から+Y方向に突出している。
2つの固定部63のうち、一方の固定部63は、開口部61に対して+X方向に設けられ、他方の固定部63は、開口部61に対して-X方向に設けられている。各固定部63は、-Z方向に突出しており、光入射側にて入射側偏光板352が接着剤等によって固定される。
【0031】
突出部64は、保持部材6におけるX軸の中央から-Y方向に突出している。
3つの孔部65のうち、2つの孔部65は、2つの腕部62のそれぞれに設けられ、残りの1つの孔部65は、突出部64に設けられている。各孔部65には、保持枠43に固定されるねじSCが+Z方向に沿って挿入される。
2つの孔部66は、開口部61に対して-Y方向の隅部に設けられている。2つの孔部66のそれぞれには、保持枠43に設けられた位置決め突起である突起432が挿入される。すなわち、2つの孔部66は、位置決め孔である。
このように、保持部材6は、熱拡散器5とともに保持枠43に固定され、入射側偏光板352を保持する。
【0032】
[熱電変換デバイスの構成]
熱電変換デバイス7は、熱拡散器5に接続され、熱拡散器5から吸熱して放熱する。熱電変換デバイス7は、図4及び図5に示すように、第1面71、第2面72及びリード線73を有する。
第1面71は、熱電変換デバイス7において熱拡散器5と対向する面である。詳述すると、第1面71は、熱電変換デバイス7において延在部55と接触する面である。換言すると、第1面71は、熱電変換デバイス7において+Z方向を向く面である。
第2面72は、熱電変換デバイス7において第1面71とは反対側の面である。換言すると、第2面72は、熱電変換デバイス7において-Z方向を向く面である。第2面72には、冷却器8が接触する。
リード線73は、熱電変換デバイス7における+Y方向の端部から+Y方向に延出している。リード線73は、後述する温度調整装置9の制御部92に接続される。すなわち、熱電変換デバイス7の動作は、制御部92によって制御される。
【0033】
このような熱電変換デバイス7は、リード線73から供給される電力によって、延在部55から伝達される熱を第1面71にて積極的に吸熱して、吸熱した熱を第2面72から冷却器8に放熱する。
本実施形態では、熱電変換デバイス7は、ペルチェ素子である。このため、熱電変換デバイス7の極性を反転させることによって、第1面71から延在部55に熱を供給可能である。すなわち、熱電変換デバイス7は、熱拡散器5を介して、光学デバイス4の光学素子41を加温できる。このとき、熱拡散器5では、熱電変換デバイス7から供給される熱によって、延在部55付近の液相の作動流体が気相の作動流体に変化し、気相の作動流体は、密閉筐体VC1内を拡散する。そして、気相の作動流体のうち、一部の作動流体は、接触部54に熱を伝達し、接触部54から光学素子41に熱が供給される。なお、第1面71から熱拡散器5に熱を供給する場合、第2面72は、吸熱面となって冷却器8から吸熱する。冷却器8は、熱電変換デバイス7に接続されているものの、熱拡散器5及び光学デバイス4には接続されていない。そして、熱電変換デバイス7が断熱部材となることから、熱電変換デバイス7が光学素子41を加温する場合には、熱電変換デバイス7による冷却効果は光学素子41に作用しない。
【0034】
[冷却器の構成]
図7は、+X方向から見た透過型液晶パネル353及び駆動部91を示す側面図である。
冷却器8は、熱電変換デバイス7の第2面72と接続され、熱電変換デバイス7から伝達される熱を放熱する。本実施形態では、冷却器8は、図2及び図4に示すように、複数のフィンFNを有するヒートシンクである。冷却器8は、図7に示すように、後述する温度調整装置9の駆動部91によって流通する冷却気体CAに、熱電変換デバイス7から伝達された光学素子41の熱を伝達して、光学素子41の熱を放熱する。
【0035】
[透過型液晶パネルの他の構成]
図8は、透過型液晶パネル353の他の構成及び温度調整装置9の構成を示すブロック図である。
透過型液晶パネル353は、上記構成の他、図8に示すように、温度センサー44を備える。詳述すると、光学デバイス4は、温度センサー44を備える。
温度センサー44は、例えば保持枠43に設けられ、光学素子41の温度を検出する。温度センサー44は、検出結果を温度調整装置9の制御部92に出力する。
【0036】
[温度調整装置の構成]
プロジェクター1は、上記構成の他、透過型液晶パネル353の温度を調整する温度調整装置9を備える。温度調整装置9は、図8に示すように、駆動部91及び制御部92を備える他、熱電変換デバイス7を備える。すなわち、熱電変換デバイス7は、透過型液晶パネル353を構成する他、温度調整装置9を構成して、制御部92による制御の下、光学素子41の温度を調整する。
駆動部91は、冷却器8を冷却する。本実施形態では、駆動部91は、図7に示すように、冷却器8に冷却気体を流通させる冷却ファンによって構成されている。駆動部91の動作は、制御部92によって制御される。
【0037】
制御部92は、駆動部91及び熱電変換デバイス7の動作を制御して、光学デバイス4の光学素子41の温度を調整する。詳述すると、制御部92は、温度センサー44によって検出された光学素子41の温度に基づいて、駆動部91及び熱電変換デバイス7の動作を制御する。
例えば、検出された光学素子41の温度が所定の適温範囲の上限値を越えている場合には、制御部92は、光学素子41の冷却処理を行う。冷却処理としては、駆動部91の出力上昇に伴う冷却気体の流量増加と、熱電変換デバイス7の出力上昇に伴う熱電変換デバイス7の吸熱量の増加とのうち、少なくとも一方が含まれる。
また例えば、検出された光学素子41の温度が所定の適温範囲の下限値未満である場合には、制御部92は、光学素子41の加温処理を行う。加温処理としては、駆動部91の出力低下に伴う冷却気体の流量減少と、熱電変換デバイス7による加温動作とのうち、少なくとも一方が含まれる。熱電変換デバイス7による加温動作は、熱電変換デバイス7の出力低下に伴う熱電変換デバイス7の吸熱量の低下と、熱電変換デバイス7による光学素子41の加温とのうち、少なくとも一方を含む。熱電変換デバイス7による光学素子41の加温は、熱拡散器5が、熱電変換デバイス7から供給された熱を、接触部54を介して液晶パネルである光学素子41に伝達することによって実施される。
このように、制御部92が、駆動部91及び熱電変換デバイス7の動作を制御することによって、透過型液晶パネル353の温度が上記適温範囲内に維持される。
【0038】
[第1実施形態の効果]
以上説明した本実施形態に係るプロジェクター1は、以下の効果を奏する。
電子機器であるプロジェクター1は、透過型液晶パネル353を備える。透過型液晶パネル353は、光透過型光学素子モジュールに相当する。
透過型液晶パネル353は、光学デバイス4、熱拡散器5、熱電変換デバイス7及び冷却器8を備える。
光学デバイス4は、入射する光を出射する光透過型光学素子41と、光学素子41の熱を伝達する伝達面としての光入射面415Aと、を有する。
熱拡散器5は、光入射面415Aに接触する接触部54と、接触部54から延在する延在部55と、を有する。熱拡散器5は、受熱した熱を拡散させる。
熱電変換デバイス7は、延在部55に接触する第1面71と、第1面71とは反対側に配置される第2面72と、を有する。熱電変換デバイス7は、延在部55から伝達される熱を第1面71にて吸熱して、吸熱した熱を第2面72から放熱する。
冷却器8は、第2面72に接触する。
【0039】
このような構成によれば、光透過型光学素子41にて発生した熱は、光入射面415Aと接触する熱拡散器5の接触部54から延在部55に拡散され、延在部55から熱電変換デバイス7の第1面71に伝達される。熱電変換デバイス7は、延在部55から第1面71に伝達された熱を第2面72と接触する冷却器8を介して放熱する。これによれば、光学素子41の熱の放熱面積を拡大でき、光学素子41の放熱効率を高めることができる。また、熱電変換デバイス7によって、第1面71から第2面72への熱輸送を促進させることによって、光学素子41から冷却器8への熱輸送を促進でき、ひいては、冷却器8による光学素子41の熱の放熱効率を高めることができる。従って、光学素子41の冷却効率を高めることができる。
【0040】
熱拡散器5は、気相と液相とに変化する作動流体を内部に収容した密閉筐体VC1を有するベイパーチャンバーVCである。接触部54及び延在部55は、密閉筐体VC1に設けられている。
このような構成によれば、熱拡散器5であるベイパーチャンバーVCが、接触部54にて光入射面415Aから光学素子41の熱を受熱すると、液相の作動媒体が接触部54にて気相の作動流体に変化して密閉筐体VC1内を拡散する。これにより、光学素子41の熱は、延在部55を含む密閉筐体VC1内に拡散し、気相の作動流体は、密閉筐体VC1に熱を伝達させることによって凝縮されて、液相の作動流体に変化する。このような液相の作動流体の凝縮は、密閉筐体VC1において温度がより低い部分で発生する。このため、熱電変換デバイス7が第1面71からの吸熱を行うことにより、第1面71と接触する延在部55に、気相の作動流体の熱が積極的に伝達されるとともに、気相の作動流体の凝縮が行われる。なお、気相から液相に変化した作動流体は、密閉筐体VC1内を移動し、接触部54に到達する。熱電変換デバイス7によって延在部55から吸熱された熱は、上記のように、第2面72から冷却器8に伝達され、冷却器8によって放熱される。
このように、熱拡散器5としてベイパーチャンバーVCが採用されることによって、光学素子41の熱を速やかに冷却器8にて放熱できる。従って、光学素子41の冷却効率を高めることができる。
【0041】
冷却器8は、ヒートシンクである。
このような構成によれば、熱電変換デバイス7から伝達される光学素子41の熱を放熱する冷却器8がヒートシンクであることによって、比較的簡易な構成によって放熱面積を拡大できる。従って、光透過型光学素子モジュールとしての透過型液晶パネル353の製造コストを低減できる他、透過型液晶パネル353の小型化を図ることができる。
【0042】
熱電変換デバイス7は、ペルチェ素子である。
このような構成によれば、熱電変換デバイス7がペルチェ素子であることによって、熱拡散器5の延在部55から熱を積極的に吸熱することができ、ひいては、冷却器8に光学素子41の熱を効率よく放熱できる。従って、光学素子41の冷却効率を高めることができる。
【0043】
光透過型光学素子41は、液晶層412を有し、+Z方向に入射する光を液晶層412によって変調し、変調した光を+Z方向に出射する液晶パネルである。+Z方向は第1方向に相当する。熱拡散器5は、ペルチェ素子である熱電変換デバイス7から供給された熱を、接触部54を介して液晶パネルである光学素子41に伝達する。
ここで、液晶層412の温度が低いと、液晶の応答性が低下して、形成される画像が劣化する可能性がある。特に、フレームレートが高い画像を形成する場合には、フレームレートに画像形成が追従できず、光学素子41に入力する画像信号に応じた画像を形成できないおそれがある。
このような場合に、ペルチェ素子である熱電変換デバイス7が熱拡散器5を介して液晶パネルである光学素子41を加温することによって、液晶層412の温度を上昇させることができる。従って、液晶の応答性が低下することを抑制できる。
一方、液晶層412の温度が高い場合には、液晶が劣化しやすくなり、光学素子41の寿命が短くなりやすい。これに対し、熱電変換デバイス7が熱拡散器5を介して光学素子41の熱を積極的に吸熱することによって、冷却器8に光学素子41の熱を放熱させやすくすることができる。
【0044】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態について説明する。
本実施形態に係るプロジェクターは、第1実施形態に係るプロジェクター1と同様の構成を備えるが、透過型液晶パネルが備える冷却器の構成、及び、温度調整装置の構成が異なる点で相違する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一又は略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
[プロジェクターの構成]
図9は、本実施形態に係るプロジェクターが備える透過型液晶パネル353Aを光入射側から見た斜視図である。図10は、光出射側から見た透過型液晶パネル353Aを示す分解斜視図である。図11は、本実施形態に係るプロジェクターが備える温度調整装置9Aの構成を示すブロック図である。
本実施形態に係るプロジェクターは、透過型液晶パネル353に代えて、図9及び図10に示す透過型液晶パネル353Aを備える他、温度調整装置9に代えて、図11に示す温度調整装置9Aを備える他は、第1実施形態に係るプロジェクター1と同様の構成及び機能を備える。
【0046】
[透過型液晶パネルの構成]
透過型液晶パネル353Aは、図9及び図10に示すように、冷却器8に代えて冷却器8Aを備える他は、第1実施形態に係る透過型液晶パネル353と同様の構成を備える。すなわち、透過型液晶パネル353Aは、光学デバイス4、熱拡散器5、保持部材6、熱電変換デバイス7及び冷却器8Aを備える。
冷却器8Aは、第1実施形態に係る冷却器8と同様に、熱電変換デバイス7の第2面72と接続されて、熱電変換デバイス7から伝達される熱を放熱する。冷却器8Aは、冷却器本体8A1、流入管8A2及び流出管8A3を備える。
【0047】
冷却器本体8A1は、詳しい図示を省略するが、液体冷媒が流通可能な複数の流路を内部に有し、流入管8A2から供給される液体冷媒が内部を流通する。すなわち、冷却器8Aは、液体冷媒が内部を流通するコールドプレートである。
冷却器本体8A1は、熱伝導率が高い金属等の材料によって形成されており、第2面72に熱伝達可能に固定される。第2面72から冷却器本体8A1に伝達された熱は、冷却器本体8A1内を流通する液体冷媒に伝達される。これにより、冷却器本体8A1、ひいては、光学素子41が冷却される。
流入管8A2は、冷却器本体8A1の内部に液体冷媒を流入させる管状部材である。
流出管8A3は、冷却器本体8A1の内部を流通した液体冷媒が流出する管状部材である。
冷却器8Aに対する液体冷媒の流通は、温度調整装置9Aによって実施される。
【0048】
なお、本実施形態に係るプロジェクターは、第1実施形態に係るプロジェクター1と同様に、3つの透過型液晶パネル353Aを備える。3つの透過型液晶パネル353Aは、図11に示すように、赤色光用の透過型液晶パネル353AR、緑色光用の透過型液晶パネル353AG、及び、青色光用の透過型液晶パネル353ABを含む。
図11に示す例では、青色光用の透過型液晶パネル353ABの流入管8A2は、後述する駆動部95と接続され、透過型液晶パネル353ABの流出管8A3は、緑色光用の透過型液晶パネル353AGの流入管8A2と接続されている。透過型液晶パネル353AGの流出管8A3は、赤色光用の透過型液晶パネル353ARの流入管8A2と接続され、透過型液晶パネル353ARの流出管8A3は、後述するタンク93と接続されている。
【0049】
[温度調整装置の構成]
温度調整装置9Aは、第1実施形態に係る温度調整装置9と同様に、透過型液晶パネル353Aの温度を調整する。温度調整装置9Aは、図11に示すように、タンク93、ラジエーター94、駆動部95、管状部材96及び制御部97を備える。これらのうち、管状部材96は、内部を液体冷媒が流通可能に形成されている。
タンク93は、液冷媒体を貯留する。
ラジエーター94は、タンク93と管状部材96を介して接続されている。ラジエーター94は、タンク93から流入する液体冷媒を冷却する。
駆動部95は、ラジエーター94と管状部材96を介して接続されている。駆動部95は、ポンプであり、ラジエーター94にて冷却された液体冷媒を、透過型液晶パネル353ABの流入管8A2に圧送する。駆動部95によって圧送された液体冷媒は、透過型液晶パネル353ABの冷却器8A、透過型液晶パネル353AGの冷却器8A、透過型液晶パネル353ARの冷却器8Aを順に流通した他、タンク93に流入する。タンク93に流入した液体冷媒は、ラジエーター94を介して再び駆動部95に流入する。
【0050】
制御部97は、各透過型液晶パネル353AB,353AG,353ARの温度センサー44による検出結果に基づいて、各透過型液晶パネル353AB,353AG,353ARの熱電変換デバイス7と駆動部95とを制御して、各透過型液晶パネル353AB,353AG,353ARの光学素子41の温度を調整する。
例えば、3つの光学素子41のうち少なくとも1つの光学素子41の温度が所定の適温範囲の上限値を越えている場合には、制御部97は、光学素子41の冷却処理を行う。冷却処理としては、駆動部95の出力上昇に伴う液体冷媒の流量増加と、熱電変換デバイス7の出力上昇に伴う熱電変換デバイス7の吸熱量の増加とのうち、少なくとも一方が含まれる。
また例えば、3つの光学素子41のうち少なくとも1つの光学素子41の温度が所定の適温範囲の下限値未満である場合には、制御部97は、光学素子41の加温処理を行う。加温処理としては、駆動部95の出力低下に伴う液体冷媒の流量減少と、熱電変換デバイス7による加温動作とのうち、少なくとも一方が含まれる。熱電変換デバイス7による加温動作は、熱電変換デバイス7の出力低下に伴う熱電変換デバイス7の吸熱量の低下と、熱電変換デバイス7による熱拡散器5ひいては光学素子41の加温とのうち、少なくとも一方を含む。なお、熱電変換デバイス7による加温動作は、温度が適温範囲の下限値未満であると判定された光学素子41に対応する熱電変換デバイス7が実行し、温度が適温範囲の下限値未満でないと判定された光学素子41に対応する熱電変換デバイス7は実行しなくてもよい。
【0051】
上記した構成では、3つの透過型液晶パネル353Aは、透過型液晶パネル353AB、透過型液晶パネル353AG、透過型液晶パネル353ARの順に液体冷媒が流通するように接続するとした。しかしながら、これに限らず、3つの透過型液晶パネル353Aにおける液体冷媒の流通順は、上記に限定されない。
一方、青色光が入射する透過型液晶パネル353ABは、紫外線の波長に近い波長を有する青色光が入射することから、エネルギーの大きい光による劣化が最も生じやすい。また、一般的に、画像形成に好適に用いられる白色光では、緑色光の光量は、他の色光の光量よりも大きいため、温度による劣化が生じやすい。このことから、温度が最も低い液体冷媒を透過型液晶パネル353ABに流通させ、透過型液晶パネル353ABを流通した液体冷媒を透過型液晶パネル353ARよりも先に透過型液晶パネル353AGに流通させることによって、各透過型液晶パネル353Aを効果的に冷却でき、各透過型液晶パネル353Aの劣化を抑制できる。
【0052】
また、上記した温度調整装置9Aは、3つの透過型液晶パネル353Aに液体冷媒を流通させる1つの駆動部95を備えるとした。すなわち、温度調整装置9は、3つの透過型液晶パネル353Aと1つの駆動部95とを含む、液体冷媒の循環流路を備えるとした。しかしながら、これに限らず、温度調整装置9Aは、1つの透過型液晶パネル353Aと1つの駆動部95とを含む、液体冷媒の循環流路を備えていてもよい。換言すると、温度調整装置9Aは、1つの透過型液晶パネル353Aと1対1で対応する1つの駆動部95を備えていてもよい。
例えば、3つの透過型液晶パネルのうち、少なくとも1つの透過型液晶パネルは、駆動部95によって液体冷媒が流通する冷却器8Aを備えた透過型液晶パネル353Aであり、他の透過型液晶パネルは、第1実施形態に係る駆動部91によって冷却気体が流通する冷却器8を備えた透過型液晶パネル353であってもよい。この場合、温度調整装置が備える制御部が、駆動部91,95の動作を制御してもよく、温度制御装置が、制御部92,97のそれぞれを備えていてもよい。
【0053】
[第2実施形態の効果]
以上説明した本実施形態に係るプロジェクターは、第1実施形態に係るプロジェクター1と同様の効果を奏する他、以下の効果を奏する。
光透過型光学素子モジュールである透過型液晶パネル353Aでは、冷却器8Aは、液体冷媒が内部を流通するコールドプレートである。
このような構成によれば、熱電変換デバイス7から伝達される熱を、冷却器8A内を流通する液体冷媒に伝達できる。このため、冷却器8Aに十分に液体冷媒を流通させることによって、熱拡散器5による熱拡散と、熱電変換デバイス7による吸熱作用と合わさって、光学素子41を急速に冷却できる。従って、光学素子41の冷却効率を高めることができる。
【0054】
光透過型光学素子41は、液晶層412を有し、+Z方向に入射する光を液晶層412によって変調し、変調した光を+Z方向に出射する液晶パネルである。+Z方向は第1方向に相当する。熱拡散器5は、ペルチェ素子である熱電変換デバイス7から供給された熱を、接触部54を介して液晶パネルである光学素子41に伝達する。
上記のように、ペルチェ素子である熱電変換デバイス7が熱拡散器5を介して液晶パネルである光学素子41を加温することによって、液晶層412の温度を上昇させることができる。従って、液晶の応答性が低下することを抑制できる。
一方、液晶層412の温度が高い場合には、液晶が劣化しやすくなり、光学素子41の寿命が短くなりやすい。これに対し、熱電変換デバイス7が熱拡散器5を介して光学素子41の熱を積極的に吸熱することによって、冷却器8に光学素子41の熱を放熱させやすくすることができる。
また、光学素子41と直接的又は間接的に接触する液体冷媒を加温して、液晶パネルである光学素子41を加温する場合には、液体冷媒の比熱が高いため、液晶の急速な温度調整は難しい。これに対し、熱拡散器5と冷却器8Aとの間に配置される熱電変換デバイス7がペルチェ素子であり、熱電変換デバイス7は、熱拡散器5に対して吸熱又は加温するので、光学素子41の温度調節を急速に実施できる。これにより、液晶の温度調節を急速に実施でき、形成される画像が劣化することを抑制できる。
【0055】
[実施形態の変形]
本開示は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形及び改良等は、本開示に含まれるものである。
【0056】
図12は、熱拡散器5の変形である熱拡散器5Bを熱拡散器5に代えて備える透過型液晶パネル353の一部を拡大して示す断面図である。なお、図12においては保持枠43及び保持部材6の図示を省略している。
上記各実施形態では、熱拡散器5は、作動流体を収容した密閉筐体VC1を備えるベイパーチャンバーVCによって構成されるとした。しかしながら、これに限らず、熱拡散器は、ベイパーチャンバーVCとは異なる構成を備えるものでもよい。例えば、熱拡散器5に代えて、図12に示す熱拡散器5Bを採用してもよい。
【0057】
熱拡散器5Bは、図12に示すように、支持部材5B1、第1シート5B2及び第2シート5B3を備える。
支持部材5B1は、アルミニウム等の金属によって形成された平板状部材であり、第1シート5B2及び第2シート5B3を支持する。支持部材5B1は、光学素子41側の面である第1面5B11と、第1面5B11とは反対側の第2面5B12と、を有する。
第1シート5B2は、第1面5B11を+Z方向にて覆うように第1面5B11に設けられ、第2シート5B3は、第2面5B12を-Z方向にて覆うように第2面5B12に設けられている。第1シート5B2及び第2シート5B3は、グラファイトシート又はグラフェンシートによって構成されている。すなわち、熱拡散器5Bは、グラファイトシート及びグラフェンシートのうち少なくとも一方のシートを含む熱伝導体である。
【0058】
このような熱拡散器5Bは、第1面5B4、第2面5B5、開口部5B6、接触部5B7及び延在部5B8を備える。
第1面5B4は、熱拡散器5Bにおいて光学素子41と対向する面である。第1面5B4は、第1シート5B2によって構成される。
第2面5B5は、熱拡散器5Bにおいて第1面5B4とは反対側の面である。第2面5B5は、第2シート5B3によって構成される。
開口部5B6は、熱拡散器5Bを+Z方向に沿って貫通する貫通口であり、光学素子41に入射する光を+Z方向に通過させる。開口部5B6は、光入射側から見て、画素領域PAに対応する略矩形状に形成されている。
接触部5B7は、第1面5B4において開口部5B6の周縁に設けられている。接触部5B7は、熱伝達面である光入射面415Aと接触して、光入射面415Aから光学素子41の熱を受熱する。すなわち、接触部5B7は、第1シート5B2によって構成されている。
延在部5B8は、熱拡散器5Bにおいて接触部5B7から光学素子41に対する光の入射方向と交差する方向に延在する部分である。詳述すると、延在部5B8は、+Z方向に交差する+Y方向に接触部5B7から延在した部分である。第2面5B5において延在部5B8に対応する部分には、熱電変換デバイス7が接続される。
【0059】
このような熱拡散器5Bでは、光入射面415Aに接触する接触部5B7に伝達された光学素子41の熱は、接触部5B7を構成する第1シート5B2にて拡散される他、支持部材5B1に伝達されて、支持部材5B1にて拡散される。更に、支持部材5B1に伝達された熱は、第2シート5B3に伝達されて、第2シート5B3にて拡散される。熱拡散器5Bにて拡散された熱は、延在部5B8に接続された熱電変換デバイス7によって吸熱される。
【0060】
第2実施形態に係る透過型液晶パネル353Aも、熱拡散器5に代えて熱拡散器5Bを採用可能である。このような熱拡散器5Bを熱拡散器5に代えて備える透過型液晶パネル353,353Aは、熱拡散器5を備える透過型液晶パネル353,353Aと同様の効果を奏する他、以下の効果を奏する。
熱拡散器5Bは、グラファイトシート及びグラフェンシートのうち少なくとも一方のシートを含む熱伝導体である。
ここで、グラファイトシート及びグラフェンシートは、伝達された熱をシート内にて拡散させる。このため、このようなシートを含む熱伝導体を熱拡散器5Bとして採用することによって、熱伝達面である光入射面415Aから伝達される熱を延在部5B8に伝達しやすくすることができ、ひいては、熱拡散器5Bに伝達された光学素子41の熱を、熱電変換デバイス7によって吸熱しやすくすることができる。従って、光学素子41の熱を冷却器8,8Aにて放熱しやすくすることができるので、光学素子41の冷却効率を高めることができる。
【0061】
なお、熱拡散器5Bは、支持部材5B1、第1シート5B2及び第2シート5B3を備えるとした。しかしながら、これに限らず、熱拡散器5Bは、第1シート5B2及び第2シート5B3のうち、一方のシートのみを備える構成としてもよい。更に、光学素子41と熱電変換デバイス7とを接続可能であれば、熱拡散部は、当該一方のシートのみを有する構成とし、支持部材5B1は無くてもよい。
【0062】
上記各実施形態では、本開示の光透過型光学素子モジュールは、透過型液晶パネル353,353Aであり、透過型液晶パネル353,353Aは、液晶層412を有する光学素子41を備え、光学素子41は、液晶パネルであるとした。しかしながら、これに限らず、光透過型光学素子モジュールの光透過型光学素子は、入射する光の進行方向に沿って光を出射する光学素子のうち、他の光学特性を備える光学素子であってもよい。このような光透過型光学素子として、例えば、p偏光及びs偏光のうち、一方の偏光を透過し、他方の偏光を吸収する偏光素子、或いは、入射する光の波長を変換する蛍光体を含有する波長変換素子が挙げられる。
【0063】
上記第1実施形態では、冷却器8は、ヒートシンクであるとした。上記第2実施形態では、冷却器8Aは、コールドプレートであるとした。しかしながら、これに限らず、冷却器は、上記構成に限定されるものではない。
【0064】
上記各実施形態では、熱電変換デバイス7は、ペルチェ素子であるとした。しかしながら、これに限らず、他の構成を備える熱電変換デバイスを、光透過型光学素子モジュールに採用してもよい。
【0065】
上記各実施形態では、光学素子41が備える入射側防塵基板415における光入射面415Aは、熱拡散器5,5Bの接触部54,5B7が接触して、光学素子41の熱を熱拡散器5,5Bに伝達する熱伝達面であるとした。しかしながら、これに限らず、光学素子41において光入射面415A以外の部分が熱伝達面であってもよい。例えば、対向基板413、画素基板414、入射側防塵基板415及び出射側防塵基板416のうち、少なくとも1つの基板において光入射面に交差する側面が熱伝達面であってもよい。
また、熱拡散器5,5Bの接触部54,5B7は、光学素子41に直接接触しなくてもよい。例えば、接触部54、5B7は、光学素子41と熱伝達可能に接続される熱伝達部材に接触していてもよい。延在部55,5B8と接触する熱電変換デバイス7、及び、熱電変換デバイス7の第2面72と接触する冷却器8,8Aも同様である。
更に、光学素子41に対する熱拡散器5,5Bの配置によっては、熱拡散器5,5Bに開口部53,5B6は無くてもよい。また、熱拡散器5,5B、熱電変換デバイス7及び冷却器8,8Aは、光学素子41に対する光出射側に配置されていてもよい。
【0066】
上記第1実施形態では、プロジェクター1は、3つの透過型液晶パネル353B,353G,353Rを備えるとした。上記第2実施形態では、プロジェクターは、3つの透過型液晶パネル353AB,353AG,353ARを備えるとした。しかしながら、これに限らず、2つ以下、或いは、4つ以上の透過型液晶パネルを備えるプロジェクターにも、本開示を適用可能である。
上記各実施形態では、光透過型光学素子モジュールを備える電子機器として、透過型液晶パネル353,353Aを備えるプロジェクターを例示した。しかしながら、これに限らず、本開示の光透過型光学素子モジュールを備える電子機器は、プロジェクターに限らず、他の構成を備える電子機器であってもよい。このような電子機器として、例えば照明装置が挙げられる。
【0067】
[本開示のまとめ]
以下、本開示のまとめを付記する。
[付記1]
入射する光を出射する光透過型光学素子、及び、前記光透過型光学素子の熱を伝達する熱伝達面を有する光学デバイスと、
前記熱伝達面に接触する接触部、及び、前記接触部から延在する延在部を有し、受熱した熱を拡散させる熱拡散器と、
前記延在部に接触する第1面、及び、前記第1面とは反対側に配置される第2面を有し、前記延在部から伝達される熱を前記第1面にて吸熱して、吸熱した熱を前記第2面から放熱する熱電変換デバイスと、
前記第2面に接触する冷却器と、を備える、ことを特徴とする光透過型光学素子モジュール。
【0068】
このような構成によれば、光透過型光学素子にて発生した熱は、熱伝達面と接触する熱拡散器の接触部から延在部に拡散され、延在部から熱電変換デバイスの第1面に伝達される。熱電変換デバイスは、延在部から第1面に伝達された熱を第2面と接触する冷却器を介して放熱する。これによれば、光透過型光学素子の熱の放熱面積を拡大でき、光透過型光学素子の放熱効率を高めることができる。また、熱電変換デバイスによって、第1面から第2面への熱輸送を促進させることによって、光透過型光学素子から冷却器への熱輸送を促進でき、ひいては、冷却器による光透過型光学素子の熱の放熱効率を高めることができる。従って、光透過型光学素子の冷却効率を高めることができる。
【0069】
[付記2]
付記1に記載の光透過型光学素子モジュールにおいて、
前記熱拡散器は、気相と液相とに変化する作動流体を内部に収容した密閉筐体を有するベイパーチャンバーであり、
前記接触部及び前記延在部は、前記密閉筐体に設けられている、ことを特徴とする光透過型光学素子モジュール。
このような構成によれば、熱拡散器であるベイパーチャンバーが、接触部にて熱伝達面から光透過型光学素子の熱を受熱すると、液相の作動媒体が接触部にて気相の作動流体に変化して密閉筐体内を拡散する。これにより、光透過型光学素子の熱は、延在部を含む密閉筐体内に拡散し、気相の作動流体は、密閉筐体に熱を伝達させることによって凝縮されて、液相の作動流体に変化する。このような液相の作動流体の凝縮は、密閉筐体において温度がより低い部分で発生する。このため、熱電変換デバイスが第1面からの吸熱を行うことにより、第1面と接触する延在部に、気相の作動流体の熱が積極的に伝達されるとともに、気相の作動流体の凝縮が行われる。なお、気相から液相に変化した作動流体は、密閉筐体内を移動し、接触部に到達する。熱電変換デバイスによって延在部から吸熱された熱は、上記のように、第2面から冷却器に伝達され、冷却器によって放熱される。
このように、熱拡散器としてベイパーチャンバーが採用されることによって、光透過型光学素子の熱を速やかに冷却器にて放熱できる。従って、光透過型光学素子の冷却効率を高めることができる。
【0070】
[付記3]
付記1に記載の光透過型光学素子モジュールにおいて、
前記熱拡散器は、グラファイトシート及びグラフェンシートのうち少なくとも一方のシートを含む熱伝導体である、ことを特徴とする光透過型光学素子モジュール。
ここで、グラファイトシート及びグラフェンシートは、伝達された熱をシート内にて拡散させる。このため、このようなシートを含む熱伝導体を熱拡散器として採用することによって、熱伝達面から伝達される熱を延在部に伝達しやすくすることができ、ひいては、熱拡散器に伝達された光透過型光学素子の熱を、熱電変換デバイスによって吸熱しやすくすることができる。従って、光透過型光学素子の熱を冷却器にて放熱しやすくすることができるので、光透過型光学素子の冷却効率を高めることができる。
【0071】
[付記4]
付記1から付記3のいずれか1つに記載の光透過型光学素子モジュールにおいて、
前記冷却器は、ヒートシンクである、ことを特徴とする光透過型光学素子モジュール。
このような構成によれば、熱電変換デバイスから伝達される光透過型光学素子の熱を放熱する冷却器がヒートシンクであることによって、比較的簡易な構成によって放熱面積を拡大できる。従って、光透過型光学素子モジュールの製造コストを低減できる他、光透過型光学素子モジュールの小型化を図ることができる。
【0072】
[付記5]
付記1から付記3のいずれか1つに記載の光透過型光学素子モジュールにおいて、
前記冷却器は、液体冷媒が内部を流通するコールドプレートである、ことを特徴とする光透過型光学素子モジュール。
このような構成によれば、熱電変換デバイスから伝達される熱を、冷却器内を流通する液体冷媒に伝達できる。このため、冷却器に十分に液体冷媒を流通させることによって、熱拡散器による熱拡散と、熱電変換デバイスによる吸熱作用と合わさって、光透過型光学素子を急速に冷却できる。従って、光透過型光学素子の冷却効率を高めることができる。
【0073】
[付記6]
付記1から付記5のいずれか1つに記載の光透過型光学素子モジュールにおいて、
前記熱電変換デバイスは、ペルチェ素子である、ことを特徴とする光透過型光学素子モジュール。
このような構成によれば、熱電変換デバイスがペルチェ素子であることによって、熱拡散器の延在部から熱を積極的に吸熱することができ、ひいては、冷却器に光透過型光学素子の熱を効率よく放熱できる。従って、光透過型光学素子の冷却効率を高めることができる。
【0074】
[付記7]
付記6に記載の光透過型光学素子モジュールにおいて、
前記光透過型光学素子は、液晶層を有し、第1方向に入射する光を前記液晶層によって変調し、変調した光を前記第1方向に出射する液晶パネルであり、
前記熱拡散器は、前記ペルチェ素子から供給された熱を、前記接触部を介して前記液晶パネルに伝達する、ことを特徴とする光透過型光学素子モジュール。
ここで、液晶層の温度が低いと、液晶の応答性が低下して、形成される画像が劣化する可能性がある。特に、フレームレートが高い画像を形成する場合には、フレームレートに画像形成が追従できず、液晶パネルに入力する画像信号に応じた画像を形成できないおそれがある。
このような場合に、ペルチェ素子である熱電変換デバイスが熱拡散器を介して液晶パネルを加温することによって、液晶層の温度を上昇させることができる。従って、液晶の応答性が低下することを抑制できる。
一方、液晶層の温度が高い場合には、液晶が劣化しやすくなり、液晶パネルの寿命が短くなりやすい。これに対し、熱電変換デバイスが熱拡散器を介して液晶パネルの熱を積極的に吸熱することによって、冷却器に液晶パネルの熱を放熱させやすくすることができる。
なお、液晶パネルと直接的又は間接的に接触する液体冷媒を加温して、液晶パネルを加温する場合には、液体冷媒の比熱が高いため、液晶の急速な温度調整は難しい。これに対し、熱拡散器と冷却器との間に配置される熱電変換デバイスがペルチェ素子であり、熱電変換デバイスは、熱拡散器に対して吸熱又は加温するので、液晶パネルの温度調節を急速に実施できる。これにより、液晶パネルの液晶の温度調節を急速に実施でき、形成される画像が劣化することを抑制できる。
【0075】
[付記8]
付記1から付記7のいずれか1つに記載の光透過型光学素子モジュールを備える、ことを特徴とする電子機器。
このような構成によれば、上記した光透過型光学素子モジュールと同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0076】
1…プロジェクター(電子機器)、353,353A…透過型液晶パネル(光透過型光学素子モジュール)、4…光学デバイス、41…光透過型光学素子、411…光学作用部、412…液晶層、413…対向基板、414…画素基板、415…入射側防塵基板、415A…光入射面(熱伝達面)、416…出射側防塵基板、42…FPC、43…保持枠、5,5B…熱拡散器、51…第1面、52…第2面、53…開口部、54…接触部、55…延在部、56,57…孔部、5B1…支持部材、5B2…第1シート(グラファイトシート又はグラフェンシート)、5B3…第2シート(グラファイトシート又はグラフェンシート)、5B4…第1面、5B5…第2面、5B6…開口部、5B7…接触部、5B8…延在部、6…保持部材、61…開口部、62…腕部、63…固定部、64…突出部、65,66…孔部、7…熱電変換デバイス、71…第1面、72…第2面、73…リード線、8,8A…冷却器、9,9A…温度調整装置、91…駆動部、92…制御部、93…タンク、94…ラジエーター、95…駆動部、96…管状部材、97…制御部、FN…フィン、SC…ねじ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
熱拡散器5は、気相と液相とに変化する作動流体を内部に収容した密閉筐体VC1を有するベイパーチャンバーVCである。接触部54及び延在部55は、密閉筐体VC1に設けられている。
このような構成によれば、熱拡散器5であるベイパーチャンバーVCが、接触部54にて光入射面415Aから光学素子41の熱を受熱すると、液相の作動流体が接触部54にて気相の作動流体に変化して密閉筐体VC1内を拡散する。これにより、光学素子41の熱は、延在部55を含む密閉筐体VC1内に拡散し、気相の作動流体は、密閉筐体VC1に熱を伝達させることによって凝縮されて、液相の作動流体に変化する。このような液相の作動流体の凝縮は、密閉筐体VC1において温度がより低い部分で発生する。このため、熱電変換デバイス7が第1面71からの吸熱を行うことにより、第1面71と接触する延在部55に、気相の作動流体の熱が積極的に伝達されるとともに、気相の作動流体の凝縮が行われる。なお、気相から液相に変化した作動流体は、密閉筐体VC1内を移動し、接触部54に到達する。熱電変換デバイス7によって延在部55から吸熱された熱は、上記のように、第2面72から冷却器8に伝達され、冷却器8によって放熱される。
このように、熱拡散器5としてベイパーチャンバーVCが採用されることによって、光学素子41の熱を速やかに冷却器8にて放熱できる。従って、光学素子41の冷却効率を高めることができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
[温度調整装置の構成]
温度調整装置9Aは、第1実施形態に係る温度調整装置9と同様に、透過型液晶パネル353Aの温度を調整する。温度調整装置9Aは、図11に示すように、タンク93、ラジエーター94、駆動部95、管状部材96及び制御部97を備える。これらのうち、管状部材96は、内部を液体冷媒が流通可能に形成されている。
タンク93は、液冷冷媒を貯留する。
ラジエーター94は、タンク93と管状部材96を介して接続されている。ラジエーター94は、タンク93から流入する液体冷媒を冷却する。
駆動部95は、ラジエーター94と管状部材96を介して接続されている。駆動部95は、ポンプであり、ラジエーター94にて冷却された液体冷媒を、透過型液晶パネル353ABの流入管8A2に圧送する。駆動部95によって圧送された液体冷媒は、透過型液晶パネル353ABの冷却器8A、透過型液晶パネル353AGの冷却器8A、透過型液晶パネル353ARの冷却器8Aを順に流通した、タンク93に流入する。タンク93に流入した液体冷媒は、ラジエーター94を介して再び駆動部95に流入する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
光透過型光学素子41は、液晶層412を有し、+Z方向に入射する光を液晶層412によって変調し、変調した光を+Z方向に出射する液晶パネルである。+Z方向は第1方向に相当する。熱拡散器5は、ペルチェ素子である熱電変換デバイス7から供給された熱を、接触部54を介して液晶パネルである光学素子41に伝達する。
上記のように、ペルチェ素子である熱電変換デバイス7が熱拡散器5を介して液晶パネルである光学素子41を加温することによって、液晶層412の温度を上昇させることができる。従って、液晶の応答性が低下することを抑制できる。
一方、液晶層412の温度が高い場合には、液晶が劣化しやすくなり、光学素子41の寿命が短くなりやすい。これに対し、熱電変換デバイス7が熱拡散器5を介して光学素子41の熱を積極的に吸熱することによって、冷却器8に光学素子41の熱を放熱させやすくすることができる。
また、光学素子41と直接的又は間接的に接触する液体冷媒を加温して、液晶パネルである光学素子41を加温する場合には、液体冷媒の比熱が高いため、液晶の急速な温度調整は難しい。これに対し、熱拡散器5と冷却器8Aとの間に配置される熱電変換デバイス7がペルチェ素子であり、熱電変換デバイス7は、熱拡散器5に対して吸熱又は加温するので、光学素子41の温度調節を急速に実施できる。これにより、液晶の温度調節を急速に実施でき、形成される画像が劣化することを抑制できる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
[付記2]
付記1に記載の光透過型光学素子モジュールにおいて、
前記熱拡散器は、気相と液相とに変化する作動流体を内部に収容した密閉筐体を有するベイパーチャンバーであり、
前記接触部及び前記延在部は、前記密閉筐体に設けられている、ことを特徴とする光透過型光学素子モジュール。
このような構成によれば、熱拡散器であるベイパーチャンバーが、接触部にて熱伝達面から光透過型光学素子の熱を受熱すると、液相の作動流体が接触部にて気相の作動流体に変化して密閉筐体内を拡散する。これにより、光透過型光学素子の熱は、延在部を含む密閉筐体内に拡散し、気相の作動流体は、密閉筐体に熱を伝達させることによって凝縮されて、液相の作動流体に変化する。このような液相の作動流体の凝縮は、密閉筐体において温度がより低い部分で発生する。このため、熱電変換デバイスが第1面からの吸熱を行うことにより、第1面と接触する延在部に、気相の作動流体の熱が積極的に伝達されるとともに、気相の作動流体の凝縮が行われる。なお、気相から液相に変化した作動流体は、密閉筐体内を移動し、接触部に到達する。熱電変換デバイスによって延在部から吸熱された熱は、上記のように、第2面から冷却器に伝達され、冷却器によって放熱される。
このように、熱拡散器としてベイパーチャンバーが採用されることによって、光透過型光学素子の熱を速やかに冷却器にて放熱できる。従って、光透過型光学素子の冷却効率を高めることができる。