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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023100
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】試験装置及び試験方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/06 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G21C17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126695
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大和 正明
(72)【発明者】
【氏名】村上 望
(72)【発明者】
【氏名】小方 宏一
(72)【発明者】
【氏名】清水 勇希
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA05
2G075BA20
2G075CA38
2G075DA10
2G075FA13
(57)【要約】
【課題】燃料集合体の性能を評価することができる。
【解決手段】燃料集合体の燃料棒から飛散する燃料の飛散状態を試験する試験装置であって、燃料ペレットに相当する粒子が充填された試験対象管と、試験対象管の周囲に、燃料集合体を模擬して配置された模擬燃料棒と、を含む試験体と、試験体を移動させる移動装置と、試験体の移動範囲に配置された加熱炉と、移動装置の移動を制御し、加熱炉による試験体の加熱状態を制御する制御装置と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料集合体の燃料棒から飛散する燃料の飛散状態を試験する試験装置であって、
燃料ペレットに相当する粒子が充填された試験対象管と、前記試験対象管の周囲に、前記燃料集合体を模擬して配置された模擬燃料棒と、を含む試験体と、
前記試験体を移動させる移動装置と、
前記試験体の移動範囲に配置された加熱炉と、
前記移動装置の移動を制御し、前記加熱炉による前記試験体の加熱状態を制御する制御装置と、を含む試験装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記移動装置の移動を制御し、LOCA発生の前記燃料集合体の加熱状態を模擬して前記試験体を加熱し、前記試験対象管を破裂させる請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記燃料集合体を模擬した前記試験体に配置された温度センサを有し、
前記制御装置は、前記温度センサの検出結果に基づいて、前記試験体の加熱状態を制御する請求項1に記載の試験装置。
【請求項4】
前記加熱炉は、電気炉である請求項1に記載の試験装置。
【請求項5】
前記加熱炉は、鉛直方向に延在し、下方が開放された炉心管を有する請求項1に記載の試験装置。
【請求項6】
前記試験体は、前記試験対象管と前記模擬燃料棒が配置された空間の周囲を覆う飛散ガードを有する請求項1に記載の試験装置。
【請求項7】
前記移動装置は、前記試験体の移動方向の両端の少なくとも一方に配置された断熱材を有する請求項1に記載の試験装置。
【請求項8】
燃料集合体の燃料棒から飛散する燃料の飛散状態を試験する試験方法であって、
燃料ペレットに相当する粒子が充填された試験対象管と、前記試験対象管の周囲に、前記燃料集合体を模擬して配置された模擬燃料棒と、を含む試験体を、移動装置に固定するステップと、
前記移動装置で、前記試験体を加熱炉に対して移動させ、前記加熱炉による前記試験体の加熱を制御し、前記試験対象管を破裂させるステップと、を含む試験方法。
【請求項9】
前記燃料ペレットに相当する粒子の前記試験体での飛散状態を計測するステップと、さらに含む請求項8に記載の試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験装置及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉の特性を評価するための技術が知られている。例えば特許文献1には、燃料棒の被覆管の性能を試験する試験方法が記載されている。特許文献1には、水素が添加された燃料被覆管試験片に内部ヒータを挿入し、燃料被覆管試験片を圧力容器内に封入し、次に燃料被覆管試験片を内部ヒータで加熱するとともに燃料被覆管試験片の内圧を所定圧まで上昇させ、圧力容器の外側に設けられた外部ヒータ及び冷却管により燃料被覆管試験片を所定温度に調節する燃料被覆管の試験方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4901630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の試験方法で、燃料被覆管の性能を評価することができる。しかしながら、原子炉の特性は、種々の特性があり、燃料被覆管以外の性能の評価が必要となる。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、燃料集合体の性能を評価することができる試験装置及び試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る試験装置は、燃料集合体の燃料棒から飛散する燃料の飛散状態を試験する試験装置であって、燃料ペレットに相当する粒子が充填された試験対象管と、前記試験対象管の周囲に、前記燃料集合体を模擬して配置された模擬燃料棒と、を含む試験体と、前記試験体を移動させる移動装置と、前記試験体の移動範囲に配置された加熱炉と、前記移動装置の移動を制御し、前記加熱炉による前記試験体の加熱状態を制御する制御装置と、を含む。
【0007】
本開示に係る試験方法は、燃料集合体の燃料棒から飛散する燃料の飛散状態を試験する試験方法であって、燃料ペレットに相当する粒子が充填された試験対象管と、前記試験対象管の周囲に、前記燃料集合体を模擬して配置された模擬燃料棒と、を含む試験体を、移動装置に固定するステップと、前記移動装置で、前記試験体を加熱炉に対して移動させ、前記加熱炉による前記試験体の加熱を制御し、前記試験対象管を破裂させるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、燃料集合体の性能を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、試験装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、試験体と加熱炉を拡大して示す拡大図である。
図3図3は、試験体の試験対象管と模擬燃料棒の概略構成を示す斜視図である。
図4図4は、試験対象管の概略構成を示す模式図である。
図5図5は、本実施形態に係る試験装置の処理フローを説明するフローチャートである。
図6図6は、試験方法の一例を説明するための説明図である。
図7図7は、評価装置の評価結果の一例を示す模式図である。
図8図8は、試験体の移動と加熱との関係の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0011】
図1は、試験装置の概略構成を示す模式図である。図2は、試験体と加熱炉を拡大して示す拡大図である。図3は、試験体の試験対象管と模擬燃料棒の概略構成を示す斜視図である。図4は、試験対象管の概略構成を示す模式図である。本実施形態の試験装置は、原子炉の冷却材喪失事故(Loss of Coolant Accident:LOCA)が発生した場合の燃料棒を模擬する試験装置である。具体的には、燃料棒の被覆管が破裂した場合に燃料棒から燃料集合体の内部に排出される燃料のペレット片の飛散を試験し、評価する装置である。試験装置10は、試験体12と、移動装置14と、加熱炉16と、制御装置18と、評価装置19と、を有する。また、本実施形態の試験装置10は、断熱材70、72を有する。なお、試験装置10は、断熱材70,72の少なくとも一方を備えていることが好ましいが、備えていなくてもよい。
【0012】
試験体12は、燃料集合体を模擬した構造体である。試験体12は、フレーム20と、試験対象管22と、模擬燃料棒24と、飛散ガード26と、温度センサ28と、を有する。
【0013】
フレーム20は、試験対象管22と、模擬燃料棒24と、を支持する構造体である。フレーム20は、試験対象管22と、模擬燃料棒24の鉛直方向下側の面を支持する板状の底面を有する。フレーム20の底面は、燃料集合体24を支持する板状部材に相当する。
【0014】
試験体12は、フレーム20に、試験対象管22と模擬燃料棒24が、評価対象の燃料集合体の燃料棒を模擬した配置で配置される。ここで、燃焼集合体は、断面方形状に形成され、例えば、17×17のセルで構成されている。そして、17×17のセルのうち、24個のセルには、それぞれ制御棒が挿入され、集合体中心のセルには、例えば炉内核計装が挿入される。このとき、制御棒が挿入されるセルを制御棒案内管、炉内核計装が挿入されるセルを計装案内管という。また、その他のセルには、燃料棒がそれぞれ挿入される。なお、燃料集合体が沸騰水型軽水炉(BWR)に用いられる場合、燃料集合体は、その外側がチャンネルボックスに覆われる。一方で、燃料集合体が加圧水型軽水炉(PWR)に用いられる場合、燃料集合体は、その外側が開放されている。そして、BWRの場合にはチャンネルボックスの外側に、PWRの場合には燃料集合体の外側に、集合体間ギャップが存在する。
【0015】
本実施形態の試験体12は、図3に示すように、燃料棒が配置される位置の少なくとも1本が試験対象管22となる。また、試験体12は、燃料棒が配置される位置、計装案内管が配置される位置に模擬燃料棒24が配置される。
【0016】
試験対象管22は、試験時に破裂した場合、燃料に相当する粒状または破片状の物体(以下粒状体という)が飛散する。試験対象管22は、図4に示すように、被覆管30と、粒状ペレット32と、中実体34と、を有する。被覆管30は、燃料棒の燃料被覆管を模擬した筒状の構造物である。被覆管は、燃料被覆管と同様の材料で形成することが好ましいが、新件の温度条件で、LOCA時の燃料被覆管と同様の破裂が生じる材料を用いてもよい。粒状ペレット32は、被覆管30の内部に配置され、LOCA発生時に燃料棒内で、粒状体になるペレット(飛散する粒状または破片状の物体)を模擬した物質である。粒状ペレット32は、試験装置10での加熱時に液化しない材料、例えば、セラミックの粉を用いることができる。粒状ペレット32は、長辺が2mmとなる粒状の物質を用いることができる。長辺の長さは2mmに限らない。実用上想定される粒径は0.1~4mm程度、または、それ以上となる粒状の物質を用いることができる。試験では、例えば目開き1~3mmの粒状ペレットを使用する。中実体34は、被覆管30の粒状ペレット32が充填されていない領域に配置される。中実体34は、被覆管30の亀裂が発生しない領域に配置される。亀裂が発生しない領域は、試験条件に基づいて特定できる。なお、試験対象管22は、内部に中実体34を配置せずに粒状ペレット32のみを充填してもよい。
【0017】
図1及び図2に戻り、試験装置10の説明を続ける。模擬燃料棒24は、燃料棒、計装案内管に対応する外径の環状の構造体である。模擬燃料棒24は、試験対象管22の周囲の構造を燃料集合体と同様の配置とするための構造物である。模擬燃料棒24は、試験対象管22の周囲の空間に配置される、燃料集合体の燃料棒、計装案内管と同様の配置となればよく、内部が空洞の管でも、内部が中実の円柱でもよい。模擬燃料棒24は、内部にヒータや計測機器を配置してもよい。
【0018】
飛散ガード26は、フレーム20に配置され、試験対象管22と模擬燃料棒24が配置されている領域の側面の周囲を覆う筒である。飛散ガード26は、筒の内部に試験対象管22と模擬燃料棒24が配置される。
【0019】
温度センサ28は、試験体12の内部の温度を計測する。本実施形態の温度センサ28は、試験対象管22の温度を計測する。なお、温度センサ28の配置個数、配置位置は限定されない。温度センサ28は、検出結果に基づいて計算で試験体12の所望の位置の温度が特定できる位置に配置されればよい。
【0020】
移動装置14は、試験体12を支持し、試験体12を加熱炉16に対して、一軸方向56に沿って移動させる。移動装置14は、ステージ50と、駆動軸52と、駆動源54と、を有する。ステージ50は、試験体12が載置される台である。駆動軸52は、ステージ50に連結された棒状の部材である。駆動源54は、駆動軸52を一軸方向56に沿って移動させることで、ステージ50を移動させる。駆動源54は、駆動軸52を一軸方向56に移動させればよく、ステージ50の位置を制御できれば、電動の直動機構を用いても、油圧シリンダを用いても、エアシリンダを用いてもよい。
【0021】
加熱炉16は、試験体12を加熱する。加熱炉16は、筐体60と、加熱源62と、炉心管64と、を有する。筐体60は、移動装置14のステージ50の移動範囲に配置されており、ステージ50と対面する位置にステージ50が移動可能な開口が形成される。筐体60は、内部の一部が加熱領域66となる。加熱源62は、電気で発熱される電気ヒータである。加熱源62は、筐体60の加熱領域66の周囲に配置される。加熱炉16は、加熱源62の発熱で加熱領域66が所定温度に加熱される。なお、加熱領域66は、一軸方向56において、温度分布が形成されてもよい。炉心管64は、筐体66の内壁に配置された筒状の構造物である。炉心管64は、例えば、石英で形成される。炉心管64は、加熱炉16の加熱領域66を保温する。本実施形態は、加熱源62を電力で加熱される電気ヒータとしたが、加熱源62の種類は限定されない。加熱源62は、内部に加熱流体が供給される構造でも、燃料を燃焼させて昇温する構造でもよい。
【0022】
断熱材70は、試験体12の上面(移動装置14とは反対側面)、つまり試験体12の移動方向の一方の端部に配置されている。断熱材70は、試験体12の鉛直方向上側の面を断熱する。また、断熱材70は、計測機器の配線等、温度上昇を抑制したい部材を内部に保持する。断熱材72は、試験体12の下面(移動装置14側の面)、つまり試験体12の移動方向の他方の端部に配置されている。本実施形態の断熱材72は、駆動軸52に固定される。断熱材72は、試験体12の鉛直方向下側の面を断熱する。試験装置10は、断熱材70、72を設けることで、試験体12の周囲の温度を適切に管理することができる。また、放熱を低減することで、加熱に用いるエネルギーを少なくできる。
【0023】
制御装置18は、移動装置14による試験体12の移動を制御する。制御装置18は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算回路や、演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリ、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む、等を含む。制御装置18は、予め設定された条件や、温度センサ28の検出結果に基づいて、移動装置14を制御し、試験体12の加熱炉16内での位置を制御する。
【0024】
評価装置19は、試験体12の試験結果を評価する。評価装置19は、試験結果が入力され解析する演算処理装置や、試験結果の画像を取得する撮影装置、試験結果を計測する計測装置等を備える。評価装置19は、試験体12の試験結果の情報を取得し、取得した試験結果を評価した評価結果や試験結果を出力する。出力装置としては、表示装置、プリンタ等の出力装置がある。
【0025】
(試験方法)
図5は、本実施形態に係る試験装置の処理フローを説明するフローチャートである。図6は、試験方法の一例を説明するための説明図である。図7は、評価装置の評価結果の一例を示す模式図である。図5に示す処理は、作業者による作業や、制御装置18の制御、評価装置19による処理で実行される。
【0026】
まず、作業者が試験体の作製を行う(ステップS12)。例えば、作業者は、フレーム20に模擬燃料管24を配置した構造物を作成する。次に、作業者は、試験対象管22の内部に粒状ペレット22を充填し、試験対象管22を、フレーム20の所定の位置に固定する。また、試験対象管22は、断熱材70に固定し、断熱材70をフレーム20に固定してもよい。また、試験体12の必要な位置に温度センサ28を設置する。なお、試験体12は、試験対象管22以外は、再利用できるようにしてもよい。
【0027】
次に、作業者は、試験体12を移動装置14に設置する(ステップS14)。作業者は、試験体12を移動装置14のステージ50に設置する。
【0028】
次に、試験装置10は、加熱炉16の加熱を開始する(ステップS16)。加熱炉16の加熱は、ステップS14の前に行ってもよい。
【0029】
次に、試験装置10は、加熱炉16の加熱領域66が所定の温度に到達した後、試験体12を加熱炉16の加熱領域66に移動させる(ステップS18)。試験装置10は、図6に示すように、試験体12を加熱領域66に移動させる。試験装置10は、移動装置14で移動速度を制御しつつ加熱領域66に試験体12を移動させることで、試験体12の温度を制御することができ、LOCA発生時の燃料集合体の加熱状態を模擬することができる。
【0030】
次に、試験装置10は、試験体の位置の移動が必要かを判定する(ステップS20)。試験装置10は、予め設定された条件に基づいて加熱領域66内での試験体の位置の移動が必要かを判定する。また、試験装置10は、温度センサ28の検出結果と、加熱条件とに基づいて、試験体12の位置の移動が必要かを判定する。
【0031】
試験装置10は、試験体の位置の移動が必要である(ステップS20でYes)と判定した場合、移動装置で試験体を移動させる(ステップS22)。試験装置10は、試験体の位置の移動が必要ではない(ステップS20でNo)と判定した場合、ステップS24に進む。
【0032】
試験装置10は、ステップS22の処理を行った後、またはステップS20でNoと判定した場合、加熱終了かを判定する(ステップS24)。加熱終了かの判定の基準としては、例えば、予め設定した時間の加熱が終了したか、試験対象管22の破裂が発生したか等を用いることができる。
【0033】
試験装置10は、加熱が終了していない(ステップS24でNo)と判定した場合、ステップS20に戻る。試験装置10は、ステップS20からステップS24を繰り返すことで、設定した条件で試験体を加熱することができる。
【0034】
試験装置10は、加熱が終了した(ステップS24でYes)と判定した場合、試験体12を加熱炉16から取り出す。試験装置10は、例えば、試験体12を図2の位置に移動させる(ステップS26)。
【0035】
次に、試験装置10は、試験体を評価する(ステップS28)。例えば、試験体12の試験対象管22の破裂の状態を計測する。また、試験体12の内部での粒状ペレット32の飛散の状態を計測する。計測は、例えば撮影装置で撮影した画像を解析することで実行できる。試験装置10は、粒状ペレット32が付着した模擬燃料棒24や、フレーム20の底板の表面への粒状ペレット32の付着状態を計測する。試験装置10は、評価装置19で評価結果を出力する。評価装置19は、例えば、図7に示す画像110を表示する。画像110は、試験体のセル(試験対象管22、模擬燃料棒24)が配置される領域に、試験対象管22の配置位置122を示す。また、画像110は、試験対象管22が破裂した方向の矢印表示124を表示する。また、画像110は、試験対象管22から排出された粒状ペレット32が検出された位置をマーク140で表示する。なお、評価結果として取得した画像を表示してもよい。
【0036】
試験装置10は、試験体12を移動装置14で加熱炉16に対して移動させることで、移動装置14の移動で試験体12の加熱状態を制御することができ、LOCA発生時の加熱状態を好適に試験することができる。つまり、加熱炉16の加熱源62の温度制御よりも高い応答性で加熱状態を制御することができ、急速な温度上昇が想定されるLOCA発生時の加熱状態を好適に試験することができる。また、加熱炉16で加熱できることで、試験対象管22の内部に膨張する気体を充填して被覆管30を破裂しやすくする等の処理を行わずに、試験を行うことができる。なお、本実施形態では、移動装置14で加熱炉16に対して試験体12を移動させたが、加熱炉16と試験体12とを相対移動させればよく、移動装置14で加熱炉16を移動させてもよい。また、移動装置14で、移動体12と加熱炉16の両方を移動させてもよい。
【0037】
図8は、試験体の移動と加熱との関係の一例を示す説明図である。図8は、横軸をステージ位置、縦軸を被覆管温度をとする。図8に示す線分180と線分182は、ステージの上昇速度が異なる場合のステージ位置を被覆管温度との関係を示している。線分182は、線分180よりも上昇速度が速い、つまり、線分182の方が、加熱領域66に早く到達する。図8に示すように、移動装置14で、試験体を移動させる速度を制御することで、試験対象管の温度上昇を異なる速度とすることができる。また、移動速度を速くする、つまり加熱領域66に到達するまでの時間を短くするので、試験体の温度を急速に上昇させることができる。
【0038】
試験装置10は、試験体12を、試験対象管22の周囲に模擬燃料棒24が配置された構造とすることで、燃料集合体で燃料棒が破損した場合の試験を模擬することができる。
【0039】
(効果)
本開示の第1態様に係る試験装置は、燃料集合体の燃料棒から飛散する燃料の飛散状態を試験する試験装置であって、燃料ペレットに相当する粒子が充填された試験対象管と、前記試験対象管の周囲に、前記燃料集合体を模擬して配置された模擬燃料棒と、を含む試験体と、前記試験体を移動させる移動装置と、前記試験体の移動範囲に配置された加熱炉と、前記移動装置の移動を制御し、前記加熱炉による前記試験体の加熱状態を制御する制御装置と、を含む。本開示によると、移動装置で加熱炉に対する試験体の位置を制御することで、移動装置の移動で試験体の加熱を制御することができる。これによりLOCA時の温度変化を好適に再現することができる。また、試験体を、燃料ペレットに相当する粒子が充填された試験対象管と、前記試験対象管の周囲に、前記燃料集合体を模擬して配置された模擬燃料棒とすることで、燃料集合体内での燃料の飛散(飛散距離、堆積量)を評価することができる。
【0040】
本開示の第2態様に係る試験装置は、第1態様に係る試験装置であって、前記制御装置は、前記移動装置の移動を制御し、LOCA発生の前記燃料集合体の加熱状態を模擬して前記試験体を加熱し、前記試験対象管を破裂させる。本開示によると、LOCA時の燃料被覆管の破裂による燃料の飛散を好適に試験することができる。
【0041】
本開示の第3態様に係る試験装置は、第1の態様または第2態様に係る試験装置であって、前記燃料集合体を模擬した前記試験体に配置された温度センサを有し、前記制御装置は、前記温度センサの検出結果に基づいて、前記試験体の加熱状態を制御する。本開示によると、試験体の温度に基づいて、位置を調整し、加熱を制御することができる。これにより、試験体をより適切に加熱することができ、所望の試験により近い試験を行うことができる。
【0042】
本開示の第4態様に係る試験装置は、第1態様から第3態様のいずれかに係る試験装置であって、前記加熱炉は、電気炉である。本開示によると、加熱を制御しやすい。また、加熱炉で温度の制御を行わないことで、電気炉を用いた場合でも、試験体を適切に加熱することができる。
【0043】
本開示の第5態様に係る試験装置は、第1態様から第4態様のいずれかに係る試験装置であって、前記加熱炉は、鉛直方向に延在し、下方が開放された炉心管を有する。本開示によると、炉心管を用いることで、加熱領域の温度を適切に管理することができる。
【0044】
本開示の第6態様に係る試験装置は、第1態様から第5態様のいずれかに係る試験装置であって、前記試験体は、前記試験対象管と前記模擬燃料棒が配置された空間の周囲を覆う飛散ガードを有する。本開示によると、飛散ガードを設けることで、試験体の外に、粒状ペレットが飛散することを抑制できる。また、試験体12の内部の環境を均一化することができる。
【0045】
本開示の第7態様に係る試験装置は、第1態様から第6態様のいずれかに係る試験装置であって、前記移動装置は、前記試験体の移動方向の両端の少なくとも一方に配置された断熱材を有する。本開示によると、断熱材を配置することで、加熱領域の温度の低下を抑制でき、試験体を効率よく加熱することができる。また、保温性が高くなり、加熱に必要なエネルギーを低減することができる。
【0046】
本開示の第8態様に係る試験方法は、燃料集合体の燃料棒から飛散する燃料の飛散状態を試験する試験方法であって、燃料ペレットに相当する粒子が充填された試験対象管と、前記試験対象管の周囲に、前記燃料集合体を模擬して配置された模擬燃料棒と、を含む試験体を、移動装置に固定するステップと、前記移動装置で、前記試験体を加熱炉に対して移動させ、前記加熱炉による前記試験体の加熱を制御し、前記試験対象管を破裂させるステップと、を含む本開示によると、移動装置で加熱炉に対する試験体の位置を制御することで、移動装置の移動で試験体の加熱を制御することができる。これによりLOCA時の温度変化を好適に再現することができる。また、試験体を、燃料ペレットに相当する粒子が充填された試験対象管と、前記試験対象管の周囲に、前記燃料集合体を模擬して配置された模擬燃料棒とすることで、燃料集合体内での燃料の飛散を評価することができる。
【0047】
本開示の第9態様に係る試験方法は、第8態様に係る試験方法であって、前記燃料ペレットに相当する粒子の前記試験体での飛散状態を計測するステップと、さらに含む。本開示によると、燃料の飛散を適切に評価することができる。
【0048】
以上、本開示の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0049】
10 試験装置
12 試験体
14 移動装置
16 加熱炉
18 制御装置
19 評価装置
20 フレーム
22 試験対象管
24 模擬燃料棒
26 飛散ガード
28 温度センサ
30 被覆管
32 粒状ペレット
34 中実体
50 ステージ
52 駆動軸
54 駆動源
60 筐体
62 加熱源
64 炉心管
66 加熱領域
70、72 断熱材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8