(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023102
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
B42F 9/00 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B42F9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126698
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 顕裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】太田垣 力
【テーマコード(参考)】
2C017
【Fターム(参考)】
2C017TA04
2C017TC02
(57)【要約】
【課題】より簡便に操作し使用できるクリップを提供する。
【解決手段】ベース1と、前記ベース1に対して接近及び離反が可能であり、ベース1との間で紙葉類Pを挟持でき、ベースから1離反する方向に弾性付勢する補助ばね43を一体的に有する保持部3、4と、使用者が手指で操作可能であり、前記保持部3、4を前記ベース1に接近させた状態に保つ姿勢と、保持部3、4をベース1から離反させた状態に保つ姿勢とをとり得る操作レバー5とを具備するクリップを構成した。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに対して接近及び離反が可能であり、ベースとの間で紙葉類を挟持でき、ベースから離反する方向に弾性付勢する補助ばねを一体的に有する保持部と、
使用者が手指で操作可能であり、前記保持部を前記ベースに接近させた状態に保つ姿勢と、保持部をベースから離反させた状態に保つ姿勢とをとり得る操作レバーと
を具備するクリップ。
【請求項2】
前記保持部は、前記補助ばねを含むばね部材と、このばね部材が取り付けられて紙葉類を押さえる押さえ部材とを要素とする請求項1記載のクリップ。
【請求項3】
前記ばね部材が板ばねである請求項2記載のクリップ。
【請求項4】
前記保持部及び前記操作レバーはともに、その後端側を回転中心とし前端側を前記ベースに対して上下動させるように回動可能であって、
前記補助ばねは、前端側から後端側に向かって延びている請求項1記載のクリップ。
【請求項5】
前記補助ばねの後端部は、前記ベースに支持されているが、当該ベースに対して滑動可能である請求項4記載のクリップ。
【請求項6】
前記保持部及び前記操作レバーはともに、その後端側を回転中心とし前端側を前記ベースに対して上下動させるように回動可能であって、
前記操作レバーの後端側に前記保持部を押さえ付けるカムを設けている請求項1記載のクリップ。
【請求項7】
前記ベースは、紙葉類を載置することのできる面板を含む部材である請求項1、2、3、4、5または6記載のクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一枚ないし複数枚の紙葉類を挟持するクリップの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類を挟み持つことのできるクリップボード(または、用箋挟、紙挟み、ペーパーホルダ)が公知である(例えば、下記特許文献を参照)。一般に、クリップボードは、紙葉類を載置できる面板を含むボード本体と、これに取り付けられたクリップとを具備し、その本体とクリップとの間に紙葉類を挟圧して保持する。
【0003】
クリップは、ねじりコイルばね等により、ボード本体に接近する方向に弾性付勢されている。クリップボードに紙葉類を挟み、またはクリップボードに挟んでいる紙葉類を取り除こうとする使用者は、クリップを弾性付勢力に抗してボード本体から引き離すように操作しながら、紙葉類を出し入れすることになる。それ故、紙葉類の出し入れに際し、右手でクリップを持ち上げつつ左手で紙葉類を持ち動かすというように、両手で作業することが要求される。また、使用者が持ち上げていたクリップから手を離すと、弾性付勢力によりクリップがボード本体に向かって勢いよく変位し、ボード本体に衝突して大きな騒音を発することも起こり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より簡便に操作し使用できるクリップを具現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、ベースと、前記ベースに対して接近及び離反が可能であり、ベースとの間で紙葉類を挟持でき、ベースから離反する方向に弾性付勢する補助ばねを一体的に有する保持部と、使用者が手指で操作可能であり、前記保持部を前記ベースに接近させた状態に保つ姿勢と、保持部をベースから離反させた状態に保つ姿勢とをとり得る操作レバーとを具備するクリップを構成した。
【0007】
特に、前記保持部は、前記補助ばねを含むばね部材と、このばね部材が取り付けられて紙葉類を押さえる押さえ部材とを要素とする。前記ばね部材は、例えば板ばねである。
【0008】
好ましくは、前記保持部及び前記操作レバーがともに、その後端側を回転中心とし前端側を前記ベースに対して上下動させるように回動可能であって、前記補助ばねが、前端側から後端側に向かって延びているものとする。前記補助ばねの後端部は、前記ベースに支持されるが、当該ベースに対して滑動可能としてよい。
【0009】
より具体的には、前記操作レバーの後端側に、前記保持部を押さえ付けるカムを設ける。
【0010】
本発明に係るクリップの構造は、いわゆるクリップボードに適用するために好適である。その場合、前記ベースは、紙葉類を載置することのできる面板を含む部材である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、より簡便に操作し使用することのできるクリップを具現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態のクリップボードを示す斜視図。
【
図2】同実施形態のクリップボードのクリップを開いた状態を示す斜視図。
【
図3】同実施形態のクリップボードのクリップの分解斜視図。
【
図4】同実施形態のクリップボードのクリップの側断面図。
【
図5】同実施形態のクリップボードのクリップの側断面図。
【
図6】同実施形態のクリップボードのクリップの側断面図。
【
図7】同実施形態のクリップボードのクリップの側断面図。
【
図8】同実施形態のクリップボードのクリップの側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に、本実施形態のクリップを適用してなるクリップボード0を示す。
【0014】
本クリップボード0は、そのボード本体1の後端部(クリップボード0の使用者から見て奥方の端部)の中央に、紙葉類Pを挟み保持するためのクリップ機構2を設置したものである。本体1は、方形薄板状の概形をなしその表面即ち上面に一枚ないし複数枚の紙葉類Pを載置することのできる面板11と、面板11の一方の側端部から上方に起立する側壁12と、面板11の後端部におけるクリップ機構2が所在しない部位から上方に起立する堤部13と、堤部13に形成した筆記具ホルダ14とを備える。
【0015】
クリップ機構2は、ベースたる本体1に支持されるとともに、面板11の上面に載置した紙葉類Pを上方から押さえ付ける。紙葉類Pは、クリップ機構2と本体1の面板11との間に挟持される。クリップ機構2の具体的な構成については、後述する。
【0016】
本体1は、例えば硬質樹脂により一体成形する。側壁12は、面板11の左側縁に沿って立設し、前後方向に沿って伸びている。この側壁12は、面板11の後端側から前端側(クリップボード0の使用者から見て手前方)に向かって徐々にその高さが低くなるような形状を有する。側壁12の内向面には、紙葉類Pの縁を突き当てることができる。
【0017】
堤部13は、面板11の後縁部に沿って立設し、クリップ機構2が所在する部位を除いて左右方向に沿って拡張している。堤部13の一方の側端即ち左側端は、側壁12の後端と連接している。堤部13の前向面には、紙葉類Pの縁を突き当てることができる。
。 筆記具ホルダ14は、堤部13の他方の側端即ち右側端に近い箇所にあって、使用者の使用する筆記具(図示せず)の軸を収容し、同筆記具を本クリップボード0に着脱可能に支持するものである。
【0018】
以降、クリップ機構2に関して詳記する。
図2及び
図3に示すように、クリップ機構2は、本体1の面板11に対して接近または離反する保持部3、4と、使用者が手指で操作可能な操作レバー5とを具備する。
【0019】
保持部3、4は、面板11に上方から相対し紙葉類Pに直接接触して紙葉類Pを押圧する押さえ部材3と、この押さえ部材3に取り付けられて押さえ部材3と一体化するばね部材4とを要素とする。
【0020】
押さえ部材3は、左右方向に沿って拡張した塊状の部材であり、例えば硬質樹脂により一体成形する。因みに、押さえ部材3に対向する面板11の上面には、上方に突出しかつ左右方向に伸びる凸条111を形成してある。押さえ部材3の前端側の中央部には、ばね部材4の前端側を装着するための被装着部31を設けている。
【0021】
ばね部材4は、金属板をプレス加工等により折曲成形してなる板ばねである。ばね部材4は、その前端側において垂下する装着部41と、装着部41から後方に屈曲した基部42と、基部42の左右両側部から後方に延出する補助ばね43と、基部42の中央部から後方に延出する被押圧部44とを有する。
【0022】
装着部41は、押さえ部材3の被装着部31に装着されて、ばね部材4と押さえ部材3とを一体化する。
図3ないし
図8に示すように、装着部41には係合片411を、被装着部31には係合爪311を、それぞれ形成しており、係合片411と係合爪311との係合を通じて、ばね部材4の装着部41を押さえ部材3の被装着部31に結合せしめ、ばね部材4を押さえ部材3から脱離しないように一体化している。
【0023】
補助ばね43と被押圧部44とは、当該ばね部材4の前端側から後端側に向かって伸び基部42まで至る切り込みによって分断されている。被押圧部44の後端は、補助ばね43の後端よりも後方に延びている。
【0024】
因みに、ばね部材4の左右幅寸法は、押さえ部材3の左右幅寸法よりも小さい。
【0025】
操作レバー5の後端側には、左右方向に突出する円柱状の回転軸51を形成している。対して、本体1の面板11の後端部の中央には、左右方向に庇の如く拡張するとともに側面視(または、側断面視)下方に開放した部分円筒状をなす軸受15を形成している。クリップ機構2を構成するにあたっては、ばね部材4を装着した押さえ部材3の上から操作レバー5を被せ、その回転軸51を本体1の面板11の軸受51に嵌め付けるようにする。これにより、ばね部材4の被押圧部44の後端側、ひいてはばね部材4と押さえ部材3とを一体化した保持部3、4が、本体1から脱離不能に組み付けられることになり、本実施形態のクリップ機構2が完成する。
【0026】
操作レバー5は、その後端側の回転軸51を中心として、その前端側を本体1に対し相対的に上下に回動させるように操作できる。それに伴い、ばね部材4及び押さえ部材3もまた、その前端側を本体1に対し相対的に上下に回動させることが可能となる。結果的に、押さえ部材3の前端側が、本体1の面板11に対し接近/離反することになる。
【0027】
その上で、操作レバー5の左右方向の中央に、下方に突出したカム52を設けている。カム52はちょうど、ばね部材4の被押圧部44に上方から接し、被押圧部44を押圧してばね部材4及び押さえ部材3を本体1の面板11に対して不動に維持する働きをする。このカム52には、側面視(または、側断面視)回転軸51を中心とした部分円弧状の外形をなすように張り出した拡径部521と、側面視拡径部521と比較してより縮径するように切り落とした形状の縮径部522とを形成してある。
【0028】
図1、
図4及び
図5に示すように、使用者が操作レバー5を操作し、操作レバー5の前端側を面板11に対し略平行となる閉じ姿勢したときには、カム52の拡径部521がばね部材4の被押圧部44に接してこれを上方から押圧し、押さえ部材3を面板11に接近させている状態、即ち押さえ部材3と面板11とで紙葉類Pをしっかりと挟持する状態を維持する。被押圧部44、さらには基部42は、紙葉類Pの枚数または厚みに応じて変形して弾性力を発揮し、押さえ部材3を紙葉類P及び面板11に向かって押さえ付ける。
【0029】
なお、このとき、
図5に示しているように、ばね部材4の補助ばね43もまたしなるように変形する。この補助ばね43は、ばね部材4及び押さえ部材3の前端側を、面板11から離反する上方に持ち上げるような弾性付勢力を発生させる。因みに、ばね部材4及び押さえ部材3の前端側は、ばね部材4の後端側を中心として揺動することになるのであるが、補助ばね43は前方から後方に向かって延びており、その足が長い。これは、補助ばね43の局所の変形量を小さくし(補助ばね43を長くすることで補助ばね43を全体的に緩やかに変形させる)、補助ばね43の耐久性、寿命を延命するための工夫である。
【0030】
本クリップボード0に新たに紙葉類Pを挟み、または既にクリップボード0に挟んでいる紙葉類Pを取り除きたい使用者は、操作レバー5の前端側に手指を掛け、操作レバー5の前端側を持ち上げるように回動させる操作を行う。
図6に示すように、操作レバー5を回動させる角度がある閾値以下であるならば、カム52の拡径部521が依然としてばね部材4の被押圧部44を上方から押圧し続けるので、クリップ2は開かず、つまりは押さえ部材3が面板11から離間せず、紙葉類Pを挟持し続ける。
【0031】
しかして、
図2、
図7及び
図8に示すように、使用者が上記の限度を超えて操作レバー5を回動させた開き姿勢としたときには、カム52の拡径部521がばね部材4の被押圧部44から離れ、カム52の縮径部522がばね部材4の被押圧部44に面するようになる。この縮径部522は、被押圧部44に近接するものの、被押圧部44を下方に押圧しない。要するに、ばね部材4及び押さえ部材3に対する拘束が解かれる。
【0032】
そして、上述したように、ばね部材4の補助ばね43が、ばね部材4及び押さえ部材3の前端側を上方に持ち上げるように弾性付勢していることから、補助ばね43の変形が緩和ないし解消されつつばね部材4及び押さえ部材3の前端側が面板11から離反し、紙葉類Pを出し入れすることが可能となる。このとき、補助ばね43の後端部は、本体1に支持されているものの、本体1に対して滑動または摺動する(
図5と
図8とを比較されたい)。
【0033】
本実施形態では、ベース(ボード本体)1と、前記ベース1に対して接近及び離反が可能であり、ベース1との間で紙葉類Pを挟持でき、ベースから1離反する方向に弾性付勢する補助ばね43を有する保持部(押さえ部材、ばね部材)3、4と、使用者が手指で操作可能であり、前記保持部3、4を前記ベース1に接近させた状態に保つ姿勢と、保持部3、4をベース1から離反させた状態に保つ姿勢とをとり得る操作レバー5とを具備するクリップを構成した。
【0034】
本実施形態によれば、使用者がより簡便に操作することのできるクリップを実現できる。即ち、使用者が片手で操作レバー5の前端側に手指をかけたり摘まみ持ったりし、それを後上方に持ち上げるようにして操作レバー5を回動させることのみによって、
図1、
図4及び
図5に示すようにベース1と保持部3、4との間で紙葉類Pを挟持する状態から、
図2、
図7及び
図8に示すようにベース1から保持部3、4を離間させて紙葉類Pを挟持せず解放する状態へと容易に遷移させることができる。保持部3、4が予め、その補助ばね43によりベース1から離反する方向に弾性付勢されているからである。使用者は、もう一方の手で紙葉類Pを差し入れたり、または抜き出したりする行為を行い得る。
【0035】
クリップに挟持させるべき紙葉類Pをベース1上に載置した後、使用者は、片手で操作レバー5の前端側を前下方に押し倒すようにして操作レバー5を回動させばよい。さすれば、
図2、
図7及び
図8に示すように保持部3、4がベース1から離間している状態から、補助ばね43の発揮する弾性付勢力に抗して、
図1、
図4及び
図5に示すように保持部3、4をベース1に接近させて両者の間で紙葉類Pを挟持する状態へと容易に遷移させることができる。
【0036】
保持部3、4はあくまでも、ベース1から離反する方向に弾性付勢されており、ベース1に接近する方向には弾性付勢されていない。このことが、本実施形態のクリップの操作の容易性を向上させることに繋がっている。また、使用者が手指の力を抜くことで保持部3、4がベース1に向かって勢いよく変位し、ベース1に衝突して大きな騒音を発するようなこともない。
【0037】
付言すると、本実施形態にあって、紙葉類Pに直接接触してこれを押さえ付ける押さえ部材3と、補助ばね43を有するばね部材4とは別個の部材ではあるが、ばね部材4の前端側の装着部41は押さえ部材3の被装着部31に対して固定され(装着部41と被装着部31とは殆どまたは全く相対的に変位せず一体となっている)、互いに別体をなす両部材3、4は一体化しており、使用者が操作レバー5を回動操作することによって一体的に上下動し得る。
【0038】
ばね部材4は板ばねである。また、補助ばね43は、操作レバー5及び保持部3、4の回動中心から離れている前方から、当該回動中心に近づく後方に向かって延びている。
【0039】
操作レバー5に一体的に設けているカム52は、補助ばね43を有する板ばね部材4(の被押圧部44)に直接に接触し、これを押さえ込む。
【0040】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、保持部を、樹脂成形品の押さえ部材4と金属製の板ばね部材3とにより構成していたが、押さえ部材3を省略し、ばね部材4の前端側で直接紙葉類Pを押さえ付ける構成とすることも考えられる。
【0041】
上記実施形態にあって、補助ばね43は、金属製の板ばね部材4の一部として形成しており、ある程度の左右幅を持ち上下厚みがその左右幅よりも薄く前後に延びるものであった。これに対し、補助ばね43を線形のばね(金属線材等からなるもの)としてもよい。
【0042】
勿論、補助ばね43またはばね部材4は、樹脂成形品である樹脂ばね等であっても構わない。
【0043】
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0044】
0…クリップボード
1…本体(ベース)
11…面板
2…クリップ機構
3、4…保持部(押さえ部材、ばね部材)
43…補助ばね
5…操作レバー
P…紙葉類