(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023118
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂
(51)【国際特許分類】
C08G 65/325 20060101AFI20240214BHJP
H05K 1/03 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C08G65/325
H05K1/03 610H
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023000017
(22)【出願日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】111129785
(32)【優先日】2022-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲テ▼超
(72)【発明者】
【氏名】呂 ▲ウェン▼華
(72)【発明者】
【氏名】陳 其霖
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA25
4J005BB01
4J005BD00
4J005BD05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な誘電特性および耐熱性を提供することができるポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂を提供する。
【解決手段】ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂(PPE‐BMI)は、縮合重合により変性ポリフェニレンエーテルジアミンと無水マレイン酸とから形成され、前記変性ポリフェニレンエーテルジアミンは、フェノール系化合物とポリフェニレンエーテルとを反応させることにより形成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合重合により変性ポリフェニレンエーテルジアミンと無水マレイン酸とから形成されたポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂であって、
前記変性ポリフェニレンエーテルジアミンは、フェノール系化合物とポリフェニレンエーテルとを反応させることにより形成される、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂。
【請求項2】
前記変性ポリフェニレンエーテルジアミンのモル数と前記無水マレイン酸のモル数との比が、1:1.1~1:1.6である、請求項1に記載のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂。
【請求項3】
前記フェノール系化合物のモル数と前記ポリフェニレンエーテルのモル数との比が、1:1~10:1である、請求項1に記載のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂。
【請求項4】
重量平均分子量が1000~8,000である、請求項1に記載のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂。
【請求項5】
前記フェノール系化合物が2以上のフェノール基を含む、請求項1に記載のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂。
【請求項6】
前記フェノール系化合物が、式(1)~式(9):
【化1-1】
【化1-2】
で表される化合物のいずれかを含む、請求項1に記載のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂。
【請求項7】
式(A):
【化2】
で表される構造を有し、
式(A)において、Lはフェノール系化合物から誘導される2価の有機基を表し、
mは0~20の整数を表し、
nは0~20の整数を表す、
ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂。
【請求項8】
前記フェノール系化合物が2以上のフェノール基を含む、請求項7に記載のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂。
【請求項9】
前記フェノール系化合物が、式(1)~式(9):
【化3-1】
【化3-2】
で表される化合物のいずれかを含む、請求項7に記載のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂。
【請求項10】
重量平均分子量が1000~8,000である、請求項7に記載のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスマレイミド樹脂、特にポリフェニレンエーテルビスマレイミド(PPE-BMI)樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
ポリフェニレンエーテル樹脂は、絶縁性、耐酸・耐アルカリ性、誘電率(Dk)、損失係数(消費率)(Df)などの特性が良いため、通常高周波プリント基板などの電子基板の絶縁材料に適用される。しかしながら、現在使用されているポリフェニレンエーテル樹脂は、安定性が不十分であり、加工性が悪いという欠点がある。
【発明の概要】
【0003】
発明が解決しようとする課題
本発明は、良好な誘電特性および耐熱性を提供することができるポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂を提供する。
【0004】
課題を解決するための手段
縮合重合により変性ポリフェニレンエーテルジアミンと無水マレイン酸からポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂を形成した。変性ポリフェニレンエーテルジアミンは、フェノール系化合物とポリフェニレンエーテルとを反応させることにより形成される。
【0005】
本発明の実施形態において、前記変性ポリフェニレンエーテルジアミンのモル数と前記無水マレイン酸のモル数との比は、1:1.1~1:1.6である。
【0006】
本発明の実施形態において、フェノール系化合物のモル数とポリフェニレンエーテルのモル数との比は、1:1~10:1である。
【0007】
本発明の一実施形態において、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の重量平均分子量は1000~8,000である。
【0008】
本発明の一実施形態において、フェノール系化合物は、2つ以上のフェノール基を含む。
【0009】
本発明の一実施形態では、フェノール系化合物は、以下の式(1)~式(9):
【化1-1】
【化1-2】
のうちのいずれか1つで表される化合物を含む。
【0010】
ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は、以下のような式(A):
【化2】
で表される構造を有し、
式(A)において、Lはフェノール系化合物から誘導される2価の有機基を表し、
mは0~20の整数を表し、
nは0~20の整数を表す。
【0011】
発明の効果
上記に基づいて、本発明は、良好な誘電特性および耐熱性を有する、剛構造物を有するポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂を提供する。
【0012】
理解されるべき本開示の特徴および利点をより容易にするために、実施形態を以下のように詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下は、本発明の含有量を詳細に説明する実施形態である。実施形態で提供される実装の詳細は、例示の目的であり、本発明の内容の保護範囲を限定することを意図するものではない。当業者は、実際の実施の必要性に応じて、これらの実施の詳細を修正または変更することができる。
【0014】
本明細書で使用されている「2価の有機基」は、2つの結合位置を持つ有機基である。そして、「2価の有機基」は、この2つの結合位置を通じて2つの化学結合を形成し得る。
【0015】
本発明は、変性ポリフェニレンエーテルジアミンと無水マレイン酸とから縮合重合により形成されたポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂であって、フェノール系化合物とポリフェニレンエーテルとを反応させて変性ポリフェニレンエーテルジアミンを形成する、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂を提供する。
【0016】
このように、本発明のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は、立体構造を有し、このことがポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂を良好な誘電特性と耐熱性を有するものさせる。
【0017】
次に、変性ポリフェニレンエーテルジアミンについて、以下のように詳細に説明する。
【0018】
変性ポリフェニレンエーテルジアミン
変性ポリフェニレンエーテルジアミンは、フェノール系化合物とポリフェニレンエーテルとを反応させることにより形成される。
【0019】
フェノール系化合物
フェノール系化合物は、2以上のフェノール基を含むことができる。フェノール系化合物としては、下記の式(1)~式(9)で表される化合物または他の適切なフェノール系化合物のいずれかを挙げることができる。本実施形態において、フェノール系化合物は、式(1)~式(3)で表される化合物のいずれかを含むことが好ましい。フェノール系化合物は、単独または組み合わせて使用することができる。
【0020】
【0021】
ポリフェニレンエーテル
ポリフェニレンエーテルの市販品としては、具体的には、NORYL SA90(商品名、Saudi Basic Industries Corporation(SABIC)製)、重量平均分子量1600、NORYL SA9000(商品名、Saudi Basic Industries Corporation製、重量平均分子量2300)、またはこれらを組み合わせたものが挙げられる。
【0022】
本実施形態では、まず、フェノール系化合物とポリフェニレンエーテルとを反応させた後、変性ポリフェニレンエーテルの末端の基をニトロ化反応させ、(4-ハロニトロベンゼンのような)ニトロ構造を有する化合物と水素化反応させることにより、変性ポリフェニレンエーテルジアミンを形成する。フェノール系化合物のモル数とポリフェニレンエーテルのモル数との比は、1:1~10:1、好ましくは2:1~5:1である。
【0023】
<ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の製造方法>
まず、フェノール系化合物とポリフェニレンとを反応させて変性ポリフェニレンエーテルジアミンを形成する。フェノール系化合物とポリフェニレンとを反応させる方法は、特に限定されず、例えば、既知の有機合成法により合成することができるが、ここでは詳細に説明しない。次に、変性ポリフェニレンエーテルジアミンと無水マレイン酸とを縮重合させて、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂を形成する。本実施形態において、前記変性ポリフェニレンエーテルジアミンのモル数と前記無水マレイン酸のモル数との比は、1:1.1~1:1.6、好ましくは1:1.2~1:1.4である。
【0024】
前記ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は、下記式(A)で表される構造を有する。本実施形態において、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の重量平均分子量は1000~8,000、好ましくは1000~4,000である。
【0025】
【0026】
式(A)中、Lは、フェノール系化合物に由来する2価の有機基を表し、
mは0~20の整数、好ましくは1~10の整数を表し、
nは0~20の整数、好ましくは1~10の整数を表す。
【0027】
本実施形態において、Lで表される2価の有機基は、2個以上のフェノール基を含むフェノール系化合物に由来するものであってもよい。フェノール系化合物としては、上記式(1)~式(9)で表される化合物のいずれか1種を挙げることができ、好ましくは式(1)~式(3)で表される化合物のいずれか1種を挙げることができる。
【0028】
ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の実施例
ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂の実施例1~実施例3および比較例1を以下に示す:
【0029】
実施例1
式(1)で表される化合物3.5重量部、触媒としてトリフェニルホスフィン(TPP)0.45重量部およびポリフェニレンエーテル(商品名:NORYL SA90、SABIC社製)1重量部を反応溶媒としてトルエン1.5モル中に添加し、145℃の温度で120分間反応させて変性ポリフェニレンエーテルを形成した。次に、4-フルオロニトロベンゼン1.3molを加え、140℃で120分間反応させ、ニトロ化反応を行った。次に、これに水素ガスを挿入し、100℃で120分間反応させて水素化反応を行い、変性ポリフェニレンジアミンを形成した。次に、1.38モルの無水マレイン酸を加え、110℃で180分間反応させた。これに脱水剤としてメチルベンゼンスルホン酸を2モル添加した後、実施例1のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂を得た。
【0030】
実施例2~実施例3および比較例1
実施例2~実施例3および比較例1のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂を、実施例1と同様の工程を用いて作製し、その相違点は、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂のフェノール系化合物の種類を変えたこと(表1に示す通り)である。得られたポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂について、以下の各評価方法により評価を行い、その結果を表1に示す。
【0031】
【0032】
《評価方法》
重量平均分子量(Mw)
調製したポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂について、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を介して重量平均分子量を測定した。また、テトラヒドロフラン(THF)を較正標準として用いた。
【0033】
b.ガラス転移温度(Tg)
調製したポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂を、示差走査熱量計(DSC)を介してガラス転移温度(Tg)について測定した。Tgが大きいと、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は相転移に対して良好な耐性、すなわち良好な耐熱性を有する。
昇温速度:10℃/min
温度域:0℃~350℃(加熱、冷却、加熱)
【0034】
c.熱膨張係数(CTE)
作製したポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂を熱機械分析装置(TMAQ400、TA Instruments製)を用いて膨張係数(CTE)を測定した。CTEが小さいと、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は相転移に対する耐性、すなわち耐熱性が良好である。
昇温速度:10℃/min
温調レンジ:0℃~300℃
【0035】
d.誘電率(Dk)
作製したポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂を基材上に塗布し、210℃で60分間焼成し、厚さ0.25mmのシートを形成した。次に、共振空洞を介して1GHzの周波数における誘電率(Dk)についてシートを測定した。誘電率が小さいと、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は良好な誘電特性を有する。
【0036】
e. 損失係数(散逸係数/消費率/Dissipation Factor)(Df)
作製したポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂を基材上に塗布し、210℃で60分間焼成し、厚さ0.25mmのシートを形成した。次に、共振空洞を介して1GHzの周波数での損失係数(Df)についてシートを測定した。損失係数が小さい場合、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は良好な誘電特性を有する。
【0037】
<評価結果>
表1から、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂が立体構造を有する場合(実施例1~3)、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は、良好な耐熱性と誘電特性とを同時に有することが分かる。
【0038】
また、フェノール系化合物に由来する立体構造を有さないポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂(比較例1)と比較して、フェノール系化合物に由来する立体構造を有するポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂(実施例1~3)は、ガラス転移温度が高く、熱膨張率が小さい、すなわち耐熱性が良好であり、同時に良好な誘電特性を有する。
【0039】
以上より、本発明のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は立体構造を有するため、良好な誘電特性および耐熱性を有する。従って、ポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は良好な利用可能性を有する。
【0040】
以上、本発明を実施の形態に開示したが、本発明を限定するものではない。当該技術分野において通常の知識を有する者は、発明の精神および範囲から逸脱することなく、変更および修正を加えることができる。発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されるものに従うものとする。
【0041】
産業上の利用可能性
本発明のポリフェニレンエーテルビスマレイミド樹脂は、高周波プリント回路基板および他の電子基板に適用することができる。
【外国語明細書】