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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023124
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20240214BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20240214BHJP
   A47C 7/30 20060101ALI20240214BHJP
   B60N 2/70 20060101ALI20240214BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20240214BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20240214BHJP
   A47C 27/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B60N2/68
A47C7/62 Z
A47C7/30
B60N2/70
B60N2/56
A47C7/74 C
A47C27/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032793
(22)【出願日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】63/395,958
(32)【優先日】2022-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】鷹嘴 弘
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3B096
【Fターム(参考)】
3B084JA07
3B084JC01
3B087DB03
3B087DB06
3B087DB09
3B087DB10
3B087DE09
3B096AC12
(57)【要約】
【課題】所定の方向に対する撓みの発生が抑制された支持部材を備える乗物用シートを提供する。
【解決手段】乗物用シートSは、骨格となるシートフレームFと、シートフレームFに取り付けられ、着座者を支持する支持部材25と、を備え、支持部材25は、弾性変形可能な弾性材により形成されると共に、網目状の支持面25aを形成する複数の線状部30を有しており、複数の線状部30は、円弧状に形成される第1円弧部31と、第1円弧部31と交差すると共に円弧状に形成される第2円弧部32と、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格となるシートフレームと、
該シートフレームに取り付けられ、着座者を支持する支持部材と、を備え、
前記支持部材は、弾性変形可能な弾性材により形成されると共に、網目状の支持面を形成する複数の線状部を有しており、
前記複数の線状部は、円弧状に形成される第1円弧部と、該第1円弧部と交差すると共に円弧状に形成される第2円弧部と、を含むことを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記複数の線状部は、シート前後方向又は上下方向に直線状に延びる直線部が含まれることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記直線部は、前記第1円弧部と交差することを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記直線部は、前記第2円弧部と交差することを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第1円弧部を形成する円弧の第1中心点と、前記第2円弧部を形成する円弧の第2中心点とは、前記支持部材が占める領域の外に位置していることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記複数の線状部は、前記第1円弧部と交差し、前記第2円弧部を形成する円弧の第2中心点とは異なる第3中心点を有する、円弧状に形成される第3円弧部を有し、
前記第3円弧部は、前記直線部と交差することを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記支持部材は、前記着座者の着座状況を検知する圧力センサと、シート幅方向に延びる横ワイヤと、を有し、
前記横ワイヤは、前記圧力センサの近傍に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記支持部材は、前記横ワイヤと直交し、シート前後方向又は上下方向に延びる縦ワイヤを有することを特徴とする請求項7に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記圧力センサは、前記横ワイヤと前記縦ワイヤとの交点の近傍に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の乗物用シート。
【請求項10】
送風機と、該送風機から前記着座者側に空気を送り出すダクトと、を備え、
前記支持部材は、シート幅方向に延びる横ワイヤと、前記横ワイヤと直交し、シート前後方向又は上下方向に延びる縦ワイヤとを有し、
前記支持部材には、前記横ワイヤと前記縦ワイヤとの交点の近傍に、前記ダクトが挿通する貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗物用シートに係り、特に、シートフレームに着座者を支持する支持部材を備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、着座者を支持するために、板状の樹脂部材に架設線材(ワイヤ)がインサート成形された支持部材を、シートフレーム(同文献ではフレーム部材)に備える乗物用シートが開示されている。金属板からなる支持部材と比較して、適度な可撓性を持たせることができると共に、支持部材は架設線材等により補強されているため適度な剛性を持たせることができる。
また、近年では、車両の電動化に伴い車床にバッテリを配置することから、車高を抑えるため車両用シートのさらなる薄型化・軽量化が求められるようになった。そのため、パッド部材だけでなく支持部材にもクッション性を持たせるために、軟質のエラストマ樹脂が用いられるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-161912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、支持部材を軟質のエラストマ樹脂で形成した場合、搭載される車両の加減速等の挙動により支持部材が、加減速の方向、例えば乗物用シートの前後方向に撓んでしまう場合があり、その撓みを抑制することが課題になっていた。
【0005】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、所定の方向に対する撓みを抑制することが可能な支持部材を備える乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明のシートによれば、骨格となるシートフレームと、該シートフレームに取り付けられ、着座者を支持する支持部材と、を備え、前記支持部材は、弾性変形可能な弾性材により形成されると共に、網目状の支持面を形成する複数の線状部を有しており、前記複数の線状部は、円弧状に形成される第1円弧部と、該第1円弧部と交差する共に円弧状に形成される第2円弧部と、を含むことにより解決される。
【0007】
円弧状に形成される第1円弧部と第2円弧部とを設けることで、例えば円弧の凸方向に対向する方向から受ける荷重に対抗することができ、支持部材の撓みを抑制することができる。また、第1円弧部と第2円弧部とが交差することにより、交点近傍は複数の方向から受ける荷重に対抗することもでき、延いては、所定の方向に対する撓みを抑制することが可能な支持部材を備える乗物用シートを提供することができる。
【0008】
また、上記の構成において、前記複数の線状部は、シート前後方向又は上下方向に直線状に延びる直線部を有してもよい。
乗物用シートの前後方向又は上下方向に延びる直線部を有することにより、着座者の着座時における、シート前後方向又は上下方向への伸び(撓み)を軽減することができる。
すなわち、支持部材がシートクッションに設けられた場合、乗物用シートの前後方向に伸びることが軽減され、シートバックに設けられた場合、乗物用シートの上下方向に伸びることが軽減される。
【0009】
また、上記の構成において、前記直線部は、前記第1円弧部と交差するとよい。
線状部の直線部と第1円弧部とが交差することにより、着座者の着座時において、支持部材の伸び(撓み)をより効率よく軽減することができる。
【0010】
また、上記の構成において、前記直線部は、前記第2円弧部と交差するとよい。
線状部の直線部と第2円弧部とが交差することにより、着座者の着座時において、支持部材の伸び(撓み)をより効率よく軽減することができる。
【0011】
また、上記の構成において、前記第1円弧部を形成する円弧の第1中心点と、前記第2円弧部を形成する円弧の第2中心点とは、前記支持部材が占める領域の外に位置しているとよい。
第1円弧部の第1中心点と第2円弧部の第2中心点とが支持部材の領域外に配置されることで、領域内に配置される場合と比較して円弧の曲率を大きくする、すなわち扇形の緩やかな円弧とし、適切な形状とすることで、支持部材の撓みをより抑制することができる。
【0012】
また、上記の構成において、前記複数の線状部は、前記第1円弧部と交差し、前記第2円弧部を形成する円弧の第2中心点とは異なる第3中心点を有する、円弧状に形成される第3円弧部を有し、前記第3円弧部は、前記直線部と交差するとよい。
第2円弧部の第2中心点とは異なる第3中心点を有する第3円弧部を有することにより、荷重に対して対抗可能な方向が増え、より撓みを抑制することが可能となる。また、第3円弧部が直線部と交差することにより、着座者の着座時において、支持部材の伸び(撓み)をより効率よく軽減することができる。
【0013】
また、上記の構成において、前記支持部材は、前記着座者の着座状況を検知する圧力センサと、シート幅方向に延びる横ワイヤと、を有し、前記横ワイヤは、前記圧力センサの近傍に配置されているとよい。
圧力センサの近傍に横ワイヤを配置することで、圧力センサ近傍の支持部材が必要以上に湾曲して着座時に圧力センサが正常に作動しないことを抑制することができる。
【0014】
また、上記の構成において、前記支持部材は、前記横ワイヤと直交し、シート前後方向又は上下方向に延びる縦ワイヤを有するとよい。
支持部材が乗物用シートの前後方向又は上下方向に延びる縦ワイヤを有することにより、着座者の着座時における、シート前後方向又は上下方向への伸び(撓み)を軽減することができる。
【0015】
また、上記の構成において、前記圧力センサは、前記横ワイヤと前記縦ワイヤとの交点の近傍に配置されているとよい。
圧力センサを、横ワイヤと縦ワイヤとの交点の近傍に配置することで、支持部材の伸びが抑制され、着座時おける圧力センサの誤作動を軽減することができる。
【0016】
また、上記の構成において、送風機と、該送風機から前記着座者側に空気を送り出すダクトと、を備え、前記支持部材は、シート幅方向に延びる横ワイヤと、前記横ワイヤと直交し、前後方向又は上下方向に延びる縦ワイヤとを有し、前記支持部材には、前記横ワイヤと前記縦ワイヤとの交点の近傍に、前記ダクトが挿通する貫通孔が形成されているとよい。
支持部材にダクトを挿通する貫通孔を形成することで、着座者側にダクトの送風口を配置することができる。また、貫通孔が横ワイヤと縦ワイヤとの交点の近傍に形成されることで、貫通孔の周囲を補強することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、円弧状に形成される第1円弧部と第2円弧部とを設けることで、例えば円弧の凸方向に対向する方向から受ける荷重に対抗することができ、支持部材の撓みを抑制することができる。また、第1円弧部と第2円弧部とが交差することにより、交点近傍は複数の方向から受ける荷重に耐えることもでき、延いては、所定の方向に対する撓みを抑制することが可能な支持部材を備える乗物用シートを提供することができる。
また、シート前後方向又は上下方向に延びる直線部を有することにより、着座者の着座時における、シート前後方向又は上下方向への伸び(撓み)を軽減することができる。すなわち、支持部材がシートクッションに設けられた場合、乗物用シートの前後方向に伸びることが軽減され、シートバックに設けられた場合、乗物用シートの上下方向に伸びることが軽減される。
また、線状部の直線部と第1円弧部とが交差することにより、着座者の着座時において、支持部材の伸び(撓み)をより効率よく軽減することができる。
また、線状部の直線部と第2円弧部とが交差することにより、着座者の着座時において、支持部材の伸び(撓み)をより効率よく軽減することができる。
また、第1円弧部の第1中心点と、第2円弧部の第2中心点とが支持部材の領域外に配置されることで、領域内に配置される場合と比較して円弧の曲率を大きくする、すなわち扇形の緩やかな円弧とし、適切な形状とすることで、支持部材の撓みをより抑制することができる。
また、第2円弧部の第2中心点とは異なる第2中心点を有する第3円弧部を有することにより、荷重に対して対抗可能な方向が増え、より撓みを抑制することが可能となる。また、第3円弧部が直線部と交差することにより、着座者の着座時において、支持部材の伸び(撓み)をより効率よく軽減することができる。
また、圧力センサの近傍に横ワイヤを配置することで、圧力センサ近傍の支持部材が必要以上に湾曲して着座時に圧力センサが正常に作動しないことを抑制することができる。
また、支持部材が前後方向又は上下方向に延びる縦ワイヤを有することにより、着座者の着座時における、シート前後方向又は上下方向への伸び(撓み)を軽減することができる。
また、圧力センサを、横ワイヤと縦ワイヤとの交点の近傍に配置することで、支持部材の伸びが抑制され、着座時おける圧力センサの誤作動を軽減することができる。
また、支持部材にダクトを挿通する貫通孔を形成することで、着座者側にダクトの送風口を配置することができる。また、貫通孔が横ワイヤと縦ワイヤとの交点の近傍に形成されることで、貫通孔の周囲を補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の乗物用シートの外観を示す、斜め前方から見た斜視図である。
図2】乗物用シートのシートフレームを示す斜視図である。
図3】クッションフレームに取り付けられる支持部材の上面図である。
図4】支持部材の線状部を示す上面図である。
図5】線状部の概念を示す説明図である。
図6図3のVI-VI線に沿った断面図である。
図7図3のVII-VII線に沿った断面図である。
図8】支持部材に設けられるワイヤの別例を示す図である。
図9】支持部材に設けられるワイヤの別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、乗物用シートを構成する部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0020】
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両に搭載される車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。
また、以下の説明中、「シート前後方向」とは、乗物用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、乗物用シートの横幅方向であり、乗物用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、乗物用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。また、単に「外側」という場合は、乗物用シート単体の中心から外側に向かう方向において外側に近い方を指し、「内側」という場合は乗物用シート単体の外側から中心に向かう方向において中心に近い方を意味する。
【0021】
なお、以下に説明する乗物用シート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、乗物用シートが着座状態にあるケースを想定して説明することとする。
【0022】
<乗物用シートS>
乗物用シートの基本構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、乗物用シートSの斜視図であり、図1中乗物用シートSの一部については、図示の都合上、表皮材Tを外した構成にて図示している。図2は、乗物用シートSのシートフレームFを示す斜視図である。
【0023】
乗物用シートSは、車両の床上に載置され、車両の乗員(以下、着座者と称する場合もある)が着座するシートである。本実施形態において、乗物用シートSは、車両の前席に相当するフロントシートとして利用される。ただし、これに限定されるものではなく、乗物用シートSは、後部座席のシートとしても利用可能であり、また、前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートや三列目のリアシートとしても利用可能である。
【0024】
乗物用シートSは、図1に示すように、着座者の背部を支えるシートバック1、着座者の臀部を支持するシートクッション2、及び、シートバック1の上部に配され着座者の頭部を支持するヘッドレスト3を主な構成要素とする。なお、シートバック1、シートクッション2及びヘッドレスト3を合わせてシート本体と称する場合がある。
シートバック1は、骨格となるバックフレーム10にパッド材Pを載置し、表皮材Tで被覆されることにより構成されている。また、シートクッション2は、骨格となるクッションフレーム20にパッド材Pを載置して、パッド材Pの上から表皮材Tで被覆されてることにより構成されている。
ヘッドレスト3は、シートバック1の上方に設けられ、芯材となるヘッドレストフレームにパッド材Pを載置し、表皮材Tで被覆されることにより構成されている。
【0025】
乗物用シートSは、車体フロアに対してシート本体をシート前後方向に移動可能に支持するレール装置4を備える(図2参照)。レール装置4は、前後方向に沿ってシート本体をスライド移動させるための機器であり、公知の構造(一般的なレール装置の構造)となっている。レール装置4は、車両の床上に固定されるロアレール4aと、ロアレール4aに対してスライド移動可能なアッパーレール4bを有する。
【0026】
また、乗物用シートSは、シートクッション2に対してシートバック1を傾けるリクライニング装置5を備えている(図2参照)。リクライニング装置5は、シートバック1とシートクッション2との間に設けられており、リクライニング装置5により、シートバック1は、シートクッション2に対して、傾斜角度が調整可能になっている。
【0027】
<シートフレームF>
乗物用シートSの中には、図2に示すように、シートフレームFが設けられている。シートフレームFは、乗物用シートSの骨格となる部材であり、主にシートバック1の骨格を形成するバックフレーム10と、シートクッション2の骨格を形成するクッションフレーム20とから構成される。
【0028】
<バックフレーム10>
図2に示すように、バックフレーム10は全体として方形枠状に形成されており、バックフレーム10は、左右に配置される一対のバックサイドフレーム11,11と、上部フレーム12と、下部フレーム13とを備える。上部フレーム12は、一対のバックサイドフレーム11,11の間に配置され、一対のバックサイドフレーム11,11の上端を連結する。下部フレーム13は、一対のバックサイドフレーム11,11の間に配置され、一対のバックサイドフレーム11の下端を連結する。また、バックフレーム10の上側には、連結フレーム14が、上部フレーム12の左右の両端部の間に介在している。
【0029】
連結フレーム14の下方には、バック用の受圧部材16が配設されている。受圧部材16は、着座者の背部を支持する支持部材である。受圧部材16は、ワイヤ部材15を介して連結フレーム14と連接している。受圧部材16は、柔軟性を有するプレート部材であって、着座者の背部を後方から支持する。受圧部材16は樹脂製であるが、これに限定されず、受圧部材16は金属製であってもよい。
【0030】
上部フレーム12には、ヘッドレスト3のヘッドレストステーが挿通されるピラー支持部17が設けられている。ピラー支持部17は、ヘッドレスト3の保持強度を維持し、がたつきを抑制するために強度の高い金属製の部材として形成される。なお、ピラー支持部17は金属製に限らず樹脂製であってもよい。
【0031】
一対のバックサイドフレーム11,11は、上述したようにバックフレーム10の左右に配置され、基本的に左右対称の構成とされた部材である。一対のバックサイドフレーム11,11は、シート上下方向に延びた部材であり、一対のバックサイドフレーム11,11それぞれのシート前後方向の幅は、シート上方側からシート下方に向かうに従って拡幅するように形成されている。
【0032】
<クッションフレーム20>
クッションフレーム20は、図2に示すように、下面視で方形枠状に形成され、左右には、一対のクッションサイドフレーム21,21が設けられている。一対のクッションサイドフレーム21,21は、シート前後方向に延びた部材であり、基本的に左右対称となるように構成されている。一対のクッションサイドフレーム21,21は、クッションフレーム20の幅を規定するため、それぞれ左右方向に離間して配設されている。
【0033】
また、クッションフレーム20は、クッションフレーム20の前端部に位置するパンフレーム22と、一対のクッションサイドフレーム21,21の前方で連結する前方連結フレーム23と、後端部で連結する後方連結フレーム24と、を有する。前方連結フレーム23及び後方連結フレーム24は丸パイプにより構成されている。
なお、パンフレーム22の下方には、送風機51が設けられており、連結されたダクト52を通じて、シートクッション2の着座面2aに形成された送風口53にまで空気を送ることが可能となっている。
【0034】
<支持部材25>
支持部材25は、着座する着座者を支持する部材であり、着座者からの荷重を受けるため受圧部材とも呼ばれる。図2に示すように、支持部材25は板状に形成された部材である。支持部材25の前端と後端には、フック26が設けられている。フック26は前端又は後端から延び出て上に向けて凸になる略円弧状に形成されている(図7参照)。
支持部材25は、前端のフック26が前方連結フレーム23に掛止され、後端のフック26が後方連結フレーム24に掛止される。支持部材25は、軟質なエラストマ樹脂から形成されており、着座者による荷重を下方から受け止めて着座者を支持している。
【0035】
従来、着座者を支持する支持部材は金属又は硬質の樹脂で形成されていた。しかしながら、車両の電動化に伴い車床にバッテリを搭載するためにシート高を抑えるようになり、パッド材を薄く作るようになった。そのため、着座者を支持する支持部材にクッション性を持たせるため、軟質の材料で形成するようになった。
一方、支持部材を軟質の材料で形成すると、車体の加減速等の挙動により撓んでしまう可能性があった。
【0036】
本実施形態の乗物用シートSに設けられる支持部材25は、弾性変形可能な軟質のエラストマ樹脂(弾性材)により形成されている。また、図3に示すように、支持部材25は、網目状の支持面25aを形成する複数の線状部30から構成されている。
【0037】
複数の線状部30について図4を用いて説明する。複数の線状部30は、円弧状に形成された第1円弧部31(図4で二点鎖線で示される)と、第1円弧部31と交差すると共に円弧状に形成された第2円弧部32及び第3円弧部33(図4で一点鎖線で示される)を含む。また、複数の線状部30は、前後方向に延びる直線部35(図4で点線で示される)と、前後方向に対して傾斜する方向に延びる右側斜線部36と左側斜線部37(図4で一点鎖線で示される)とを含む。
言い換えれば、第1円弧部31、第2円弧部32、第3円弧部33、直線部35、右側斜線部36、及び左側斜線部37はそれぞれ複数本の線状部30からなり、それらが交差することにより、網目状の支持面25aを形成している。
【0038】
<第1円弧部31>
第1円弧部31は、形成する円弧の凸方向が前方に向くように配置されている。支持部材25は、第1円弧部31のアーチ効果により、凸方向に対向する前方から受ける荷重(図4の矢印H1)に対して対抗できる。そのため、例えば車両の加速時に前方から荷重を受けた場合、支持部材25が前後方向に撓むことを抑制することできる。
【0039】
第1円弧部31を形成する円弧の第1中心点31aは、図4に示すように、支持部材25が占める領域の外側に位置している。第1中心点31aは、支持部材25の前後方向における中央線上に位置しており、第1円弧部31は、第1中心点31aを中心とした円弧に沿って延びる複数の線状部30により構成される。
【0040】
<第2円弧部32>
第2円弧部32は、形成する円弧の凸方向が左斜め前方に向くように配置されている。支持部材25は、第2円弧部32により、例えば左斜め前方から受ける荷重(図4の矢印H2)に対抗できる。そのため、支持部材25が左斜め方向に撓むことを抑制することができる。
【0041】
第2円弧部32を形成する円弧の第2中心点32aは、図3に示すように、支持部材25の領域の外側において右斜め後方に位置している。第2円弧部32は、第2中心点32aを中心とした円弧に沿って延びる複数の線状部30により構成されていて、第1円弧部31と複数の交点(例えば第1交点41)で交差している。第2円弧部32と第1円弧部31との交点の近傍では、支持部材25は、第2円弧部32と第1円弧部31との両方で荷重に対抗できるので、複数の方向に対する撓みを抑制できる。また、第2円弧部32は、直線部35とも複数の交点(例えば第2交点42)で交差するように配置されている。
【0042】
<第3円弧部33>
第3円弧部33は、形成する円弧の凸方向が右斜め前方に向くように配置されている。支持部材25は、第3円弧部33により、例えば右斜め前方から受ける荷重(矢印H3方向)に対抗できる。そのため、支持部材25が右斜め方向に撓むことを抑制できる。
また、第3円弧部33は、第2円弧部32と、支持部材25の前後方向の中心線を軸として左右対称となるように配置されている。第2円弧部32と第3円弧部33とを左右対称に配置することで、支持部材25が左斜め方向及び右斜め方向に撓むことを抑制することができる。
【0043】
第3円弧部33を形成する円弧の第3中心点33aは、図4に示すように、支持部材25の領域の外側において左斜め後方に位置している。第3円弧部33は、第3中心点33aを中心とした円弧に沿って延びる複数の線状部30により構成されていて、第1円弧部31と複数の交点(例えば第3交点43)で交差している。第3円弧部33と第1円弧部31との交点の近傍では、支持部材25は、第3円弧部33と第1円弧部31との両方で荷重に対抗できるので、複数の方向に対する撓みを抑制できる。また、第3円弧部33は、直線部35とも複数の交点(例えば第4交点44)交差するように配置されている。
【0044】
なお、第1円弧部31~第3円弧部33を形成する円弧それぞれの第1中心点31a~第3中心点33aは、上述したように、支持部材25が占める領域の外側に配置されている。第1中心点31a~第3中心点33aを領域外に配置することにより、それらが領域内にある場合と比較して円弧の曲率を大きくする、すなわち扇形の緩やかな円弧にすることができる。それにより、例えば荷重に対抗可能な適切な形状にすることができ、支持部材25の撓みをより抑制することができる。
【0045】
<直線部35>
直線部35は、シート前後方向に直線状に延びるように配置された線状部30である。乗物用シートSの前後方向に延びる直線部35を設けることにより、着座者が着座したときに、支持部材25が前後方向に伸びること(撓み)を軽減できる。
図4に示すように、直線部35は、第1円弧部31と複数の交点(例えば、第5交点45)で交差している。
また、支持部材25の中央より右側に配置される直線部35は、第2円弧部32と複数の交点(例えば第2交点42)で交差している。
中央より左側に配置される直線部35は、第3円弧部33と複数の交点(例えば第4交点44)で交差している。直線部35と、第1円弧部31~第3円弧部33とが交差することにより、着座者の着座時において支持部材25の伸び(撓み)をより効率よく軽減することができる。
【0046】
<右側斜線部36>
第2円弧部32の前方には、前後方向に対して傾斜して延びるように配置された線状部30からなる右側斜線部36が設けられている。左斜め前方から右斜め後方に向けて延びる右側斜線部36を設けることにより、左斜め前方から右斜め後方に向け入力される荷重に対して対抗することができ、撓みを抑制することができる。
【0047】
<左側斜線部37>
第3円弧部33の前方には、前後方向に対して傾斜して延びるように配置された線状部30からなる左側斜線部37が設けられている。右斜め前方から左斜め後方に向けて延びる左側斜線部37を設けることにより、右斜め前方から左斜め後方に向け入力される荷重に対して対抗することができ、撓みを抑制することができる。
【0048】
上述したように、支持部材25の支持面25aは、円弧状又は直線状に延びる複数の線状部30から構成されている。線状部30を網目状に配置することで、様々な方向からかかる荷重に対し撓みを抑制することが可能となっているが、円弧状の線状部30を含む配置には以下の効果もある。
【0049】
着座者が乗物用シートSに着座したとき、着座者の臀部がクッションシートに当接するが、このとき、臀部が圧迫されることにより、しびれや痛みを感じる場合がある。このしびれや痛みの原因は、血流疎外による酸欠であるといわれており、血が流れやすい接触とすることにより軽減される可能性がある。本実施形態では、支持部材25の支持面25aを形成する線状部30を、筋肉や体の形状に合わせることで、着座時のしびれや痛みの発生を抑制することを試みている。
【0050】
例えば、第1円弧部31は、着座時に図5の矢印A,矢印Bのように延びる着座者の梨状筋に沿うように形成されている。また、第2円弧部32及び第3円弧部33は、図5に示す矢印C,矢印Dのように延びる着座者の大殿筋や中殿筋に沿うように形成されている。
また、直線部35は、図5に示す矢印E、矢印Gのように延びる着座者のハムストリングに沿うように形成されている。
このように、支持部材25の網目を、着座者の筋線維の形状に合わせることにより、着座時のしびれや痛みを軽減することができる。特に、パッド材Pが薄くなると、支持部材25の影響も大きくなり、この効果もより発揮されるようになる。
【0051】
<圧力センサ50>
支持部材25には、着座者の着座状況を検知する圧力センサ50が設けられている。圧力センサ50は、図3に示すように、支持部材25の前側において、左右方向の略中央となる位置に配置されている。
また、支持部材25には、シート幅方向(左右方向)に延びるように配置された横ワイヤ27が設けられている。図3に示すように、横ワイヤ27は、圧力センサ50の近傍に配置されている。圧力センサ50の近傍に横ワイヤ27を配置することで、着座時に、支持部材25が必要以上に湾曲することを抑制し、圧力センサ50が正常に作動しないことを抑制できる。なお、横ワイヤ27は、図7に示すように、支持部材25に埋設して設けられている。また、横ワイヤ27は、支持部材25の側部より内側、より具体的には、側方ワイヤ29より内側に設けられている。なお、横ワイヤ27は、支持部材25の側部を超え、クッションサイドフレーム21,21まで延び、クッションサイドフレーム21,21に連結してもよい。
【0052】
支持部材25には、左右方向における中央において、前後方向に延びる中央ワイヤ28(縦ワイヤ)が設けられている。横ワイヤ27と中央ワイヤ28とは、第6交点46で直交しており、それにより、着座者の着座時において、支持部材25が伸びて撓むことを効率よく軽減することができる。
また、支持部材25には、二つの圧力センサ50が、横ワイヤ27と中央ワイヤ28とが交わる第6交点46の近傍に配置されている。横ワイヤ27と中央ワイヤ28により支持部材25の伸びが効率よく軽減される位置に圧力センサ50を配置することにより、圧力センサ50の誤作動の発生を軽減することができる。また、中央ワイヤ28が二つの圧力センサ50の間に配置されてもよい。
【0053】
なお、圧力センサ50は、横ワイヤ27又は中央ワイヤ28の上に配置されてもよい。また、横ワイヤ27又は中央ワイヤ28を下方に折り曲げて凹部を形成し、凹部の中に圧力センサ50が配置されてもよい。
支持部材25の厚みTaは、横ワイヤ27又は中央ワイヤ28がインサートされている部分では約8mm、ワイヤがインサートされていない他の部分では約6mmの大きさとなっている。また、支持部材25において、剛性を出さなくてもよい位置では、局所的に薄くしてよく、例えば約3mmの厚みで形成してもよい。
また、温熱対策のために、支持部材25の下方に緩衝部材(不図示)が配置されてもよい。
【0054】
<送風機51及びダクト52>
シートクッション2の下面には、図3に示すように、送風機51が設けられており、送風機51から延びるダクト52により、着座者に向けて風を送ることが可能となっている。送風機51は、パンフレーム22の下面に設けられており、ダクト52は送風機51から延び、シートクッション2の着座面2aに設けられる送風口53(図1参照)に繋げられている。
支持部材25には、圧力センサ50の横に貫通孔38が形成されており、貫通孔38にダクト52を挿通することで、着座面2aに設けられる送風口53にダクト52を接続することが可能になっている。なお、圧力センサ50の左右両方に貫通孔38が形成されているが、これにより、支持部材25が、運転席側又は助手席のどちらに取り付けられても対応することが可能となっている。すなわち、送風機51がパンフレーム22の左側又は右側のいずれかに設けられても、近接する側の貫通孔38にダクト52を挿通させて、送風口53にダクト52を接続させることができる。また、貫通孔38の周囲を補強するために、貫通孔38は、横ワイヤ27と中央ワイヤ28との第6交点46の近傍に配置されている。言い換えれば、貫通孔38の周囲に横ワイヤ27と中央ワイヤ28とが配置されている。
【0055】
<側方ワイヤ29>
図6に示すように、支持部材25の両側部には、パッドずれを抑制する羽部分39,39が設けられている。羽部分39,39は、支持部材25の側部がせり上がることにより形成されている。また、羽部分39,39の下方には、シート前後方向に延びる側方ワイヤ29,29が設けられており、支持部材25を補強して上下に撓むことを抑制している。
【0056】
一対の側方ワイヤ29,29の間の幅Wは一定でなくてもよく、図3に示すように、後方から前方に向かう途中で幅Wを狭くし、横ワイヤ27の端部に近くづくよう形成されてもよい。
また、側方ワイヤ29,29の形状は、これに限定されず、例えば、図8に示す一対の側方ワイヤ29A、29Aのように、連結する前方連結フレーム23及び後方連結フレーム24の近辺において、一対の側方ワイヤ29A,29Aの間の幅WAを狭くしてもよい。
【0057】
また、図9に示すように、シート幅方向に延びる一対の横ワイヤ27B,27Bを設け、それらの端部がクッションサイドフレーム21,21に係合するように設けてもよい。前方連結フレーム23や後方連結フレーム24が設けられていないシートフレームFの場合でも、支持部材25を、クッションフレーム20に取り付けることができる。
【0058】
また、本実施形態では、支持部材25は、クッションサイドフレーム21、21を連結する前方連結フレーム23及び後方連結フレーム24に係合していたが、支持部材25の前側は、パンフレーム22に取り付けられてもよい。パンフレーム22に、支持部材25を係合させる場合、パンフレーム22にパイプ状に形成された部分を追加して、支持部材を25の端部が係合するようにしてもよい。
また、パンフレーム22の下側凹み(ハーネスクリップが取り付けられる面)を支持部材25で代用してもよい。支持部材25の前端からワイヤを延ばしフック形状にして取り付けてもよい。また、支持部材25の前端をSバネ形状として取り付けられてもよい。パンフレーム22の一部を隆起させ、隆起させた部分と係合する係合部を設けてもよい。係合部に返し爪を形成し、形成させてもよい。
【0059】
以上、以上、本実施形態について図を用いて説明した。なお、上記した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本実施形態で説明した部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、クッションフレーム20に取り付けられる支持部材25を例に説明したが、支持部材25は、背部を支持するようにシートバック1のバックフレーム10に取り付けられてもよい。その場合、支持面25aを形成する直線部35は上下方向、すなわちシートバック1の延出方向に延びるように形成される。また、支持部材25の中央を通る中央ワイヤ28(縦ワイヤ)は上下方向に延びるように配置される。
【符号の説明】
【0060】
S 乗物用シート
F シートフレーム
T 表皮材
P パッド材
1 シートバック
2 シートクッション
2a 着座面
3 ヘッドレスト
4 レール装置
5 リクライニング装置
10 バックフレーム
11 バックサイドフレーム
12 上部フレーム
13 下部フレーム
14 連結フレーム
15 ワイヤ部材
16 受圧部材
17 ピラー支持部
20 クッションフレーム
21 クッションサイドフレーム
22 パンフレーム
23 前方連結フレーム
24 後方連結フレーム
25 支持部材
25a 支持面
26 フック
27、27B 横ワイヤ
28 中央ワイヤ(縦ワイヤ)
29 側方ワイヤ
30 線状部
31 第1円弧部
31a 第1中心点
32 第2円弧部
32a 第2中心点
33 第3円弧部
33a 第3中心点
35 直線部
36 右側斜線部
37 左側斜線部
38 貫通孔
39 羽部分
41 第1交点
42 第2交点
43 第3交点
44 第4交点
45 第5交点
46 第6交点
50 圧力センサ
51 送風機
52 ダクト
53 送風口
Ta 厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9