IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 松本油脂製薬株式会社の特許一覧

特開2024-23135タイヤ内面用離型剤組成物及びその利用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023135
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】タイヤ内面用離型剤組成物及びその利用
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/56 20060101AFI20240214BHJP
   B29C 33/58 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B29C33/56
B29C33/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106563
(22)【出願日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2022126157
(32)【優先日】2022-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松村 佳澄
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AB07
4F202AB10
4F202AB16
4F202AB17
4F202AB25
4F202AH20
4F202CA21
4F202CM46
4F202CM54
4F202CM64
4F202CM69
4F202CM75
4F202CM82
4F202CM90
4F202CU01
4F202CU12
4F202CZ04
(57)【要約】
【課題】 本発明は平滑性及び離型性に優れるタイヤ内面用離型剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 下記成分(A)~(D)を含む、タイヤ内面用離型剤組成物。
成分(A):タルク(A1)及び繊維状無機粉体(A2)から選ばれる少なくとも1種
成分(B):タルク(A1)及び繊維状無機粉体(A2)を除く無機粉体
成分(C):融点が200℃以下の滑剤
成分(D):界面活性剤
前記成分(B)の含有量100重量部に対して、前記成分(A)の含有量が10~5000重量部であり、前記成分(C)の含有量が1~2000重量部であると好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(D)を含む、タイヤ内面用離型剤組成物。
成分(A):タルク(A1)及び繊維状無機粉体(A2)から選ばれる少なくとも1種
成分(B):タルク(A1)及び繊維状無機粉体(A2)を除く無機粉体
成分(C):融点が200℃以下の滑剤
成分(D):界面活性剤
【請求項2】
前記成分(B)の含有量100重量部に対して、前記成分(A)の含有量が10~5000重量部であり、前記成分(C)の含有量が1~2000重量部である、請求項1に記載のタイヤ内面用離型剤組成物。
【請求項3】
前記成分(C)が金属石鹸及びワックス類から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載のタイヤ内面用離型剤組成物。
【請求項4】
前記成分(B)がマイカを含む、請求項1又は2に記載のタイヤ内面用離型剤組成物。
【請求項5】
さらに下記成分(E)を含む、請求項1又は2に記載のタイヤ内面用離型剤組成物。
成分(E):疎水性シリコーン
【請求項6】
請求項1又は2に記載のタイヤ内面用離型剤組成物を、場所(I)及び場所(II)の少なくとも一方に付着させる工程1と、
前記工程1の後に、工程(2-1)又は工程(2-2)を行うことで、成形型内面に生タイヤの外面を押し当て、生タイヤを加熱して加硫する工程2を含み、
前記場所(I)が前記生タイヤの内面であり、前記場所(II)がブラダー表面又は金属製内型表面であり、
前記工程(2-1)が成形型内で前記生タイヤの内面側に位置された前記ブラダーを膨張させることであり、前記工程(2-2)が成形型内で前記生タイヤの内面側に位置された前記金属製内型を成形型内面へ移動させることである、タイヤの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ内面用離型剤組成物及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造工程において、未加硫の生タイヤの加硫成型は、通常、ブラダーと呼ばれるゴム製袋を生タイヤ内側で温風、熱水または蒸気で膨張させることで、金型内に未加硫生タイヤを圧入成型することによって行われる。
通常、この工程を円滑に行うために生タイヤのインナーライナー面(以下、生タイヤ内面)にあらかじめ離型剤(タイヤ内面用離型剤)が塗布される。タイヤ内面用離型剤には主に、生タイヤ内面とブラダーとの間に良好な潤滑性を与える性能(平滑性)、ブラダーと生タイヤ内面に入り込んだ空気を逃し両者を密着させる性能(空気透過性)が必要であり、また、加硫終了後にブラダーを収縮させるときにはブラダーと生タイヤ内面とが円滑にはがれる性能(離型性)が求められる。
タイヤ内面用離型剤としてはマイカやタルクなどの無機粉末とシリコーンの水性エマルジョンからなる組成物が主に使用されている。
【0003】
特許文献1では、シリコーンの水性エマルジョンに、少なくともマイカを含む無機粉体を含有させるとともに、該マイカの平均粒径を55μm~95μmの範囲としたことを特徴とするタイヤ加硫成形用の離型剤が例示されている。また、特許文献2では、マイカやタルクなどの無機粉末、界面活性剤及びシリコーン成分を含み、特定の嵩密度を有するタイヤ内面用離型剤が例示されている。
しかし、特許文献1、2で示されているような従来のタイヤ内面用離型剤では、タイヤの高性能化に対応できず、工程通過性が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-193448号公報
【特許文献2】特開2019-136895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高性能タイヤ製造時に生産効率が低下する原因を調査した結果、タイヤ内面に使用されているゴム中のブチルゴム組成比率が高くなることにより、タイヤ内面とブラダーとの密着傾向が大きくなり、従来のタイヤ内面用離型剤では離型性が不足することが判明した。また、タイヤの高性能化に伴い、その形状が従来よりも低扁平のタイヤが主流となってきたため、平滑性が不足することも判明した。
よって、本発明は平滑性及び離型性に優れるタイヤ内面用離型剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、鋭意検討を行った結果、特定の成分を有するタイヤ内面用離型剤組成物であれば、上記目的を達成することを見出した。
すなわち、本発明のタイヤ内面用離型剤組成物は下記成分(A)~(D)を含むものである。
成分(A):タルク(A1)及び繊維状無機粉体(A2)から選ばれる少なくとも1種
成分(B):タルク(A1)及び繊維状無機粉体(A2)を除く無機粉体
成分(C):融点が200℃以下の滑剤
成分(D):界面活性剤
【0007】
本発明のタイヤ内面用離型剤組成物は、前記成分(B)の含有量100重量部に対して、前記成分(A)の含有量が10~5000重量部であり、前記成分(C)の含有量が1~2000重量部であると好ましい。
本発明のタイヤ内面用離型剤組成物は、前記成分(C)が金属石鹸及びワックス類から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
本発明のタイヤ内面用離型剤組成物は、前記成分(B)がマイカを含むと好ましい。
本発明のタイヤ内面用離型剤組成物は、さらに下記成分(E)を含むと好ましい。
成分(E):疎水性シリコーン
【0008】
本発明のタイヤの製造方法は、上記タイヤ内面用離型剤組成物を、場所(I)及び場所(II)の少なくとも一方に付着させる工程1と、前記工程1の後に、工程(2-1)又は工程(2-2)を行うことで、成形型内面に生タイヤの外面を押し当て、生タイヤを加熱して加硫する工程2を含み、前記場所(I)が前記生タイヤの内面であり、前記場所(II)がブラダー表面又は金属製内型表面であり、前記工程(2-1)が成形型内で前記生タイヤの内面側に位置された前記ブラダーを膨張させることであり、前記工程(2-2)が成形型内で前記生タイヤの内面側に位置された前記金属製内型を成形型内面へ移動させることである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタイヤ内面用離型剤組成物は平滑性及び離型性に優れる。
本発明のタイヤの製造方法は上記タイヤ内面用離型剤組成物を使用しており、効率的にタイヤを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のタイヤ内面用離型剤組成物(以下、単に離型剤組成物ということがある)は、特定の無機物質である成分(A)と成分(B)、特定の滑剤(C)及び界面活性剤(D)を含むものである。
まず、離型剤組成物を構成する各成分を詳しく説明する。
【0011】
〔成分(A)〕
本発明の離型剤組成物は下記成分(A)を含む。成分(A)は離型剤組成物の平滑性と離型性に寄与する成分である。
成分(A):タルク(A1)及び繊維状無機粉体(A2)
【0012】
タルク(A1)(以下、単に成分(A1)ということがある)の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.5~50μmである。該平均粒子径が0.5μm以上であると分散性が向上する傾向があり、50μm以下であるとスプレーガンなどを用いて塗工する工程で、スプレーガンノズルの閉塞が抑制される傾向がある。
なお、成分(A1)の平均粒子径は、レーザー法粒度分布測定機を用いて、JIS R 1629に準拠して測定した粒度累積分布曲線から読み取った累積量50重量%の粒径値(メディアン粒子径D50)から求められる。レーザー法粒度分布測定機としては、例えば、株式会社堀場製作所製「LA920」等により測定できる。
【0013】
繊維状無機粉体(A2)(以下、単に成分(A2)ということがある)としては、例えば、セピオライト、アタパルジャイト、アタパルガスクレー、ワラスナイト、パリゴルスカイト等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0014】
本発明における成分(A2)は、平均繊維長が0.5~50μmであり、平均繊維径が0.01~50μmのものである。成分(A2)の平均繊維長及び平均繊維径は、電子顕微鏡の撮影像から任意に10個の成分(A2)を選び、個別の一次粒子の長さと径を測定し、その平均値を算出することにより求めた値である。
【0015】
成分(A2)の平均繊維長の下限は、好ましくは1μmである。一方、該平均繊維長の上限は、好ましくは30μmである。
成分(A2)の平均繊維径の下限は、好ましくは0.05μmである。一方、該平均繊維径の上限は、好ましくは30μmである。
【0016】
〔成分(B)〕
本発明の離型剤組成物は下記成分(B)を含む。成分(B)は離型剤組成物の離型性と空気透過性に寄与する成分である。
成分(B):タルク(A1)及び繊維状無機粉体(A2)を除く無機粉体
【0017】
成分(B)としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト;ベントナイト;ジ-バーミキュライト、トリ-バーミキュライト等のバーミキュライト;ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト、クリソタイル等のカオリン;パイロフィライト、マイカ(マスコバイト、セリサイト)、マーガライト、クリントナイト、白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母、フッ素雲母、パラゴライト、フロゴパイト、レピドライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等のフィロ珪酸塩;アンチゴライト等のジャモン石;ドンパサイト、スドウ石、クッカイト、クリノクロア、シャモサイト、クロライト、ナンタイト等の緑泥石等;(重質)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物;ベンガラ;珪藻土;珪酸アルミニウム;カーボンブラック;グラファイト等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
成分(B)は特に限定はないが、マイカを含むと本願効果を奏する点で好ましい。
【0018】
成分(B)の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは1~50μmである。該平均粒子径が1μm以上であると分散性と空気透過性が向上する傾向があり、50μm以下であるとスプレーガンなどを用いて塗工する工程で、スプレーガンノズルの閉塞が抑制される傾向がある。
なお、成分(B)の平均粒子径は、例えば、成分(A1)と同様の方法にて測定することができる。
【0019】
〔成分(C)〕
本発明の離型剤組成物は下記成分(C)を含む。成分(C)は離型剤組成物の平滑性に寄与する成分であり、離型剤組成物の塗工後に得られる塗工物の平滑性の変動を抑制できる。
成分(C):融点が200℃以下の滑剤
【0020】
成分(C)である滑剤の融点は200℃以下である。該融点が200℃超であると、塗工物の表面粗さを調整できず、平滑性の変動を十分に抑制できない。該融点の上限は、好ましくは170℃、より好ましくは150℃、さらに好ましくは130℃である。一方該融点の下限は、好ましくは70℃、より好ましくは90℃、特に好ましくは100℃である。該融点が70℃以上であると、タイヤの成型加硫時において、離型剤組成物の塗工後に得られる塗工物の平滑性が向上する傾向がある。
なお、成分(C)の融点は、JIS K 0064に準拠した方法で測定されるものである。
【0021】
成分(C)は特に限定はないが、金属石鹸及びワックス類を含むと、離型剤組成物の塗工後に得られる塗工物の平滑性の変動をより効率的に抑制でき、好ましい。また、成分(C)は後述する疎水性シリコーンを除くものである。
金属石鹸としては、例えば、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、トリオクタデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム、オクタデカン酸カルシウム、オクタデカン酸亜鉛、オクタデカン酸マグネシウム、オクタデカン酸バリウム等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0022】
ワックス類としては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、ほほば油、シュガーワックス、ベイベリーワックス、オーキュリーワックス、エスパルトワックス等の植物性ワックス;みつろう、ラノリン、鯨蝋等、昆虫ろう、セラックろう等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス;ポリエチレンワックス、変性ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、ペトロラクタム、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系ワックス;硬化ひまし油、12-ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、N-ヒドロキシエチル-12-ヒドロキシステアリルアミド、N,N’-エチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、N,N’-ヘキサメチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、N,N’-キシリレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、メチル-12-ヒドロキシステアレート、プロピレングリコール-モノ-12-ヒドロキシステアレート、エチレングリコール-モノ-12-ヒドロキシステアレート等の水素化ワックス等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0023】
成分(C)としては金属石鹸やワックス類の他にも、例えば、ミリスチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、パルチミン酸、アラギニン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸;ステアリルアルコール、ココナッツアルコール、セチルアルコール、メリシルアルコール等の高級アルコール等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0024】
成分(C)は特に限定はないが、粉体状であると好ましい。
成分(C)の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは1~50μmである。該平均粒子径が1μm以上であると分散性が向上する傾向があり、50μm以下であるとスプレーガンなどを用いて塗工する工程で、スプレーガンノズルの閉塞が抑制される傾向がある。
【0025】
〔成分(D)〕
本発明の離型剤組成物は下記成分(D)を含む。成分(D)は離型剤組成物を塗工した際に、液はじきを防止する特性(濡れ性)に寄与する成分である。また、後述する成分(E)の乳化物における乳化剤としても機能する成分である。
成分(D):界面活性剤
【0026】
成分(D)は、非イオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であればよく、好ましくは非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である。
【0027】
非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレン硬化ひまし油;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグリセリンエーテル;ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル;アルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルアミン;オキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0028】
アニオン界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;ステアロイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNa、ミリストイルメチルタウリンNa、パルミトイルメチルタウリンNa等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシン塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N-アシルグルタミン酸塩等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0029】
カチオン界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジアルキルジメチルアンモニウム塩;トリアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
両性界面活性剤としては、たとえば、2-ウンデシル-N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N-ラウリルグリシン、N-ラウリル-β-アラニン、N-ステアリル-β-アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0030】
成分(D)のHLB値は、特に限定はないが、離型剤組成物の濡れ性の点で6~16が好ましい。該HLB値が上記範囲内であると、離型剤組成物をより均一に塗工できる傾向がある。該HLB値は成分(C)の水と油への親和性の程度を表す1~20の数値であり、数値が小さいほど親油性が高く、数値が大きいほど親水性が高いことを示す。
成分(D)のHLB値は、グリフィン法(HLB値=20×親水基部の分子量の総和/分子量)により算出することができる。
【0031】
〔成分(E)〕
本発明の離型剤組成物は、特に限定はないが、下記成分(E)をさらに含んでもよい。
成分(E):疎水性シリコーン
【0032】
離型剤組成物が成分(E)を含むと、離型性や潤滑性が向上する点で好ましい。
一方で、成分(E)を含む離型剤組成物を使用してタイヤを製造した場合、成分(E)がタイヤ内面上に残存すると、リム滑りが生じることがある。また、タイヤ内面上に吸音材料やシーラント材料等を接着、塗布する場合は、成分(E)はそれらの接着不良の問題を発生させることもあり、成分(E)を含む離型剤組成物を除去する必要が生じることもある。成分(E)を含む離型剤組成物を除去する場合、例えば、レーザー光を照射する等して離型剤組成物を除去する方法が挙げられる。
【0033】
成分(E)は、例えば、オルガノポリシロキサン類が挙げられる。また、オルガノポリシロキサン類はシリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーンオリゴマー及びシリコーンレジンから選ばれる少なくとも1種を含むものである。
【0034】
成分(E)としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルイソプロピルポリシロキサン、メチルドデシルポリシロキサン等のジアルキルポリシロキサン;メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等のアルキルフェニルポリシロキサン;メチル(フェニルエチル)ポリシロキサン、メチル(フェニルプロピル)ポリシロキサン等のアルキルアラルキルポリシロキサン;3,3,3-トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
本発明の離型剤組成物を製造する際に成分(E)を使用する場合は、成分(E)の乳化物を使用してもよい。成分(E)の乳化物を使用する場合、乳化物に含まれる界面活性剤の含有率は、上記の成分(D)の含有率に含ませるものとする。
【0035】
成分(E)は特に限定はないが、離型性の点で、分子構造が直鎖状であり、常温(25℃)で液状やペースト状の流動性を有するものであると好ましく、シリコーンオイルであると好ましい。
成分(E)の25℃における粘度は、特に限定はないが、好ましくは100~100万mm/sである。該粘度が100mm/s以上であると離型性が向上する傾向があり、100万mm/s以下であると離型剤組成物の安定性が低下する傾向がある。該粘度の下限は、より好ましくは300mm/s、さらに好ましくは500mm/sである。一方、該粘度の上限は、より好ましくは10万mm/s、さらに好ましくは50000mm/sである。
【0036】
〔その他の成分〕
本発明の離型剤組成物は上記成分以外に、水溶性高分子、多価アルコール、消泡剤、防腐剤、水等のその他の成分をさらに含んでもよい。
水溶性高分子としては、例えば、酸化でんぷん、酢酸でんぷん、燐酸でんぷん、カルボキシメチルスターチ、カルボキシエチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ、陽性でんぷん、シアノエチル化でんぷん、ジアルデヒドでんぷん等のでんぷん類;マンナン;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエーテル類;タラカントガム、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、ブリティッシュガム、グルコマンナン、ジェランガム、タラガム、ローカストビーンガム、カラギーナン等の天然ガム類;ポリアクリル酸ソーダ;ポリビニルアルコール;ポリエチレングリコール;ポリエチレンオキシド;水溶性アクリル樹脂;水溶性ウレタン樹脂;水溶性メラミン樹脂;水溶性エポキシ樹脂;水溶性ブタジエン樹脂;水溶性フェノール樹脂等が挙げられる。
【0037】
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、マルトトリオース、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0038】
消泡剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン系消泡剤;ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油等の油脂系消泡剤;オレイン酸等の脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、コハク酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール系消泡剤;ジ-t-アミルフェノキシエタノール3-ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3-ヘプチルカルビトール等のエーテル系消泡剤;トリブチルオスフェート、トリス(ブトキシエチル)フオスフェート等のリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミン等のアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミン等のアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウム等の硫酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレン系消泡剤;鉱物油等が挙げられる。
【0039】
防腐剤としては、例えば、チアゾール、2-メルカプトチアゾール等のチアゾール類;メチレンビスチオシアネート、アンモニウムチオシアネート等のチオシアネート類;o-ベンゾイックスルフィミド、フェニルマーキュリック-o-ベンゾイックスルフィミド等のスルフィミド類;メチルジメチルチオカルバメート、エチルジエチルジチオカルバメート等のアルキルジアルキルチオカルバメート類;テトラメチルチラウムスルフィド、テトラエチルチラウムスルフィド等のチラウムスルフィド類;テトラメチルチラウムジスルフィド、テトラエチルチラウムジスルフィド等のチラウムジスルフィド類;フェリックジエチルジチオカルバメート、リードジメチルジチオカルバメート等のジチオカルバメート類;o-トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルフォンアニリド等のスルファミド類;1-アミノナフチル-4-スルホン酸、1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸等のアミノスルホン酸類;ペンタクロロフェノール、o-フェニルフェノール等のフェノール類及びこれらのアルカリ金属塩類;テトラクロロ-p-ベンゾキノン、2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン等の塩化キノン類;ジニトロカプリルフェニルクロトネート、ジニトロ-o-クレゾール等のニトロ基含有化合物類;1,3,5-トリヒドロキシエチルヘキサハイドロ-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリエチルヘキサハイドロ-1,3,5-トリアジン等のトリアジン類;フェニルマーキュリックフタレート、o-ヒドロキシフェニルマーキュリッククロライド等の有機水銀化合物;p-アミノアゾベンゼン、ジフェニルアミン等のアミン類;シンナムアニリド等のアミド類;1,3-ジヨード-2-プロパノール等のヨウ素含有化合物等が挙げられる。
【0040】
〔タイヤ内面用離型剤組成物及びその製造方法〕
本発明のタイヤ内面用離型剤組成物は、上記成分(A)~(D)を含むものであり、平滑性及び離型性に優れる。
成分(A)の含有量は、特に限定はないが、成分(B)の含有量100重量部に対して10~5000重量部である。該含有量が10重量部以上であると平滑性が向上する傾向があり、5000重量部以下であると流動性を維持できる傾向がある。該含有量の下限は、より好ましくは50重量部、さらに好ましくは100重量部、特に好ましくは200重量部である。一方、該含有量の上限は、より好ましくは4000重量部、さらに好ましくは3000重量部である。
なお、成分(A)が成分(A1)又は成分(A2)である場合、それらの好ましい含有量は上記範囲となる。
【0041】
成分(A)が成分(A1)及び成分(A2)である場合、成分(A1)と成分(A2)の重量比(A1/A2)の値は、特に限定はないが、好ましくは1~500である。該重量比が1以上であると水に分散された際に付与される粘性が適正化する傾向があり、500以下であると流動性が向上する傾向がある。該値の下限は、より好ましくは5、さらに好ましくは10、特に好ましくは15である。一方、該値の上限は、より好ましくは400、さらに好ましくは300、特に好ましくは200である。
【0042】
成分(A)~(D)の合計量100重量部に対する成分(A)及び成分(B)の合計量は、特に限定はないが、好ましくは50~99.99重量部である。該合計量が50重量部以上であると離型性が向上する傾向があり、99.99重量部以下であると平滑性が向上する傾向がある。該合計量の下限は、より好ましくは60重量部、さらに好ましくは70重量部、特に好ましくは80重量部である。一方、該含有量の上限は、より好ましくは99重量部、さらに好ましくは98重量部である。
【0043】
成分(C)の含有量は、特に限定はないが、成分(B)の含有量100重量部に対して好ましくは1~2000重量部である。該含有量が1重量部以上であると平滑性が向上する傾向があり、2000重量部以下であると分散性が向上する傾向がある。該含有量の下限は、より好ましくは5重量部、さらに好ましくは10重量部である。一方、該含有量の上限は、より好ましくは1000重量部、さらに好ましくは500重量部である。
【0044】
成分(D)の含有量は、特に限定はないが、成分(B)の含有量100重量部に対して好ましくは0.1~500重量部である。該含有量が0.1重量部以上であると塗工性が向上する傾向があり、100重量部以下であると起泡が抑制される傾向がある。該含有量の下限は、より好ましくは0.5重量部、さらに好ましくは1重量部、特に好ましくは3重量部である。一方、該含有量の上限は、より好ましくは400重量部、さらに好ましくは300重量部、特に好ましくは200重量部である。
【0045】
成分(E)の含有量は、特に限定はないが、成分(B)の含有量100重量部に対して好ましくは10~1000重量部である。該含有量が10重量部以上であると離型性が向上する傾向があり、1000重量部以下であると流動性を維持できる傾向がある。該含有量の下限は、より好ましくは20重量部、さらに好ましくは25重量部、特に好ましくは30重量部である。一方、該含有量の上限は、より好ましくは500重量部、さらに好ましくは400重量部である。
【0046】
本発明の離型剤組成物は水に分散されてなるものであってもよい。離型剤組成物が水に分散されてなるものである場合、水の含有量は特に限定はないが、成分(A)~(D)のの合計量100重量部に対して、好ましくは30~900重量部である。該含有量が30重量部以上であると分散後の安定性が向上する傾向があり、900重量部以下であるとタイヤの製造効率が向上する傾向がある。該含有量の下限は、より好ましくは40重量部、さらに好ましくは50重量部である。一方、該含有量の上限は、より好ましくは800重量部、さらに好ましくは700重量部である。
【0047】
本発明の離型剤組成物が水に分散されてなるものである場合、25℃におけるその粘度は、特に限定はないが、好ましくは10~10000mPa・s、より好ましくは50~3000mPa・sである。
【0048】
本発明の離型剤組成物について、その製造方法としては、例えば、成分(A)~成分(D)と、必要に応じて成分(E)やその他の成分を混合する方法等が挙げられる。離型剤組成物の製造方法において、混合順序等については特に限定はなく、全成分を同時に混合してもよく、成分ごとに順番に混合してもよく、予めいくつかの成分を混合し、得られた混合物に残りの成分やその混合物を添加、混合、分散してもよい。
混合については特に限定はなく、容器と攪拌翼といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。混合を行う装置としては、例えば、ナウターミキサー、V型ミキサー、コニカルブレンダー、リボンミキサー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、ラインミキサー等が挙げられる。
【0049】
混合後の離型剤組成物が粉体状であると、貯蔵安定性や保存効率の点で好ましい。さらに、この粉体をフェザーミル、ハンマーミルなどで粉砕したあとふるいかけを行い一定の粒度に調整しておくと、粉体の計量作業などの取り扱いが行いやすくなる。
また、水や水溶性高分子化合物などのバインダー成分を添加したうえで皿形造粒機、押出し造粒機などの造粒機を使用して粒状または顆粒状にしておくと、離型剤組成物を作成する際に飛散が抑えられる点で好ましい。
【0050】
本発明の離型剤組成物が粉体、粒状又は顆粒状である場合、水の含有量は特に限定はないが、離型剤組成物全体に対して、好ましくは2~25重量%、より好ましくは5~15重量%である。水の含有量が2重量%以上であると飛散が抑制される傾向があり、25重量%以下であると離型剤組成物を使用する際に、離型剤組成物の凝集が抑制される傾向がある。
【0051】
本発明の離型剤組成物の不揮発分濃度1重量%の水分散液のpHは、特に限定はないが、7.0~10.5であること好ましい。該pHが7.0以上であると離型剤組成物の付着性が向上する傾向があり、10.5以下であると作業性が向上する傾向がある。
なお、離型剤組成物の不揮発分は、離型剤組成物を110℃で加熱し、重量が恒量となった時の残留物である。
【0052】
〔タイヤの製造方法〕
本発明のタイヤの製造方法は、下記場所(I)及び下記場所(II)の少なくとも一方に付着させる工程1と、その工程1の後に、下記工程(2-1)又は下記工程(2-2)を行うことで、成形型内面に生タイヤ外面を押し当て、生タイヤを加熱して加硫する工程2を含むものである。
場所(I)は生タイヤの内面であり、場所(II)はブラダー表面又は金属製内型表面である。また、工程(2-1)が成形型内で前記生タイヤの内面側に位置された前記ブラダーを膨張させることであり、工程(2-2)が成形型内で生タイヤの内面側に位置された金属製内型を成形型内面へ移動させることである。
本発明のタイヤの製造方法により、効率的にタイヤを製造することができる。
【0053】
〔工程1〕
本発明のタイヤの製造方法に含まれる工程1において、離型剤組成物を生タイヤの内面、ブラダー表面、金属製内型表面に付着させる方法としては、例えば、エアガンやエアレスガンによる吹き付けにより離型剤組成物を塗工する方法が一般的であるが、刷毛塗りや遠心塗装機等を用いて離型剤組成物を塗工してもよい。
また、工程1において、離型剤組成物を場所(I)及び場所(II)の少なくとも一方に塗工した後に、乾燥を行ってもよい。乾燥する際の温度は、特に限定はないが、好ましくは20~120℃、より好ましくは20~100℃、さらに好ましくは25~100℃である。
乾燥する期間は、特に限定はないが、好ましくは0.1~10時間、より好ましくは0.3~8時間、さらに好ましくは0.5~5時間である。
【0054】
離型剤組成物の付着量は、タイヤの用途やサイズなどにより様々であるが、乾燥後に10~50g/mであると好ましい。該付着量が10g/m以上であると十分な離型性を得られる傾向があり、該付着量が50g/m以下であると作業環境の汚染が軽減する傾向がある。離型剤組成物を生タイヤの内面に塗工した場合、十分乾燥するまでの間、一般的には、室温にて数十分から長い場合は数日間、生タイヤは放置される。
【0055】
〔工程2〕
本発明のタイヤの製造方法に含まれる工程2は上記工程1の後に行われるものであって、上記工程(2-1)又は上記工程(2-2)を行うことで、成形型内面に生タイヤの外面を押し当て、生タイヤを加熱して加硫するものである。加硫の際に、ブラダーを使用する場合は、ブラダーを水蒸気で高温加熱し、生タイヤの外面を金型に押し当て、生タイヤを加熱して加硫し、最終的なタイヤ形状やトレッドパターン等となるようにする。また、金属製内型を使用する場合は、高温加熱した金属製内型により生タイヤの外面を金型に押し当て、生タイヤを加熱して加硫し、ブラダーと同様にタイヤ形状やトレッドパターン等となるようにする。
加硫時のブラダーまたは金属製内型の表面温度(金型温度)は、特に限定はないが、好ましくは110~190℃である。また、加硫時の圧力は、特に限定はないが、好ましくは12~30kg/cm2である。
【実施例0056】
以下に、本発明を実施例及び比較例を示して具体的に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、断りのない限り、「%」とは「重量%」を意味するものであり、「部」は「重量部」を意味するものである。また、以下の実施例及び比較例における各物性の評価は、以下のようにして行った。
【0057】
<分散性>
水分散状態の離型剤組成物又は離型剤組成物の水分散液を、目開き0.250mmの篩で濾過した際の残渣の程度を評価した。残渣がないものを○、残渣があるものを×とした。
【0058】
<塗工性>
横4cm×縦7cm×厚み0.5cmの未加硫ゴム試片に、乾燥後重量が20g/mとなるように、この上面のみに水分散状態の離型剤組成物又は離型剤組成物の水分散液を噴霧機で塗工した際の付着性を目視にて以下の評価基準で判断し、○を合格とした。
○:はじきがなく、均一に付着した。
×:はじきがあり、付着が不均一である。
【0059】
<平滑性>
横4cm×縦15cm×厚み0.5cmの未加硫ゴム試片に、乾燥後重量が20g/mとなるように、この上面のみに水分散状態の離型剤組成物又は離型剤組成物の水分散液を噴霧機で塗工し、25℃にて乾燥させて評価用未加硫ゴム試片を得た。次いで、この評価用未加硫ゴムの塗工面に沿って、横3cm×縦3cm×厚み0.5cmのブラダーゴム試片を重ね合わせ、さらに1kgの分銅を垂直荷重としてブラダーゴム試片に乗せ、ブラダーゴム試片を100mm/分の速度で12cm縦方向に引っ張った。この時の動摩擦力の平均値と、動摩擦力の変動幅δから、平滑性を以下の評価基準で判断し、○を合格とした。
○:動摩擦力の平均値が3.0N以下、δが0.3N以下
△:動摩擦力の平均値が3.0N以下、δが0.3N超
×:動摩擦力の平均値が3.0N超
【0060】
<離型性>
横4cm×縦7cm×厚み0.5cmの未加硫ゴム試片に、乾燥後重量が20g/mとなるように、この上面のみに水分散状態の離型剤組成物又は離型剤組成物の水分散液を噴霧機で塗工し、25℃にて乾燥させて評価用未加硫ゴム試片を得た。次いで、この評価用未加硫ゴムの塗工面に沿って、横4cm×縦7cm×厚み0.5cmのブラダーゴム試片を重ね合わせ、卓上型テストプレス機にセットし、温度180℃、圧力20kg/平方センチメートルで20分間加圧して加硫し、加硫済み評価ゴム試片を得た。加硫終了後、離型性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
加硫済み評価ゴム試片とブラダーゴム試片を180度に引き剥がしその際に必要な剥離荷重を引っ張り試験機で測定して、離型性を以下の評価基準にて評価した。○以上の評価を合格とした。
◎:剥離荷重が0.5N未満
○:剥離荷重が0.5N以上、1.5N未満
△:剥離荷重が1.5N以上
×:密着して測定不可
【0061】
[実施例1]
(前混合工程)
ジメチルシリコーン(25℃における粘度が10000mm/s)6部と、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.5部と、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1部を添加し、ホモディスパーにより回転数5000rpmで10分間混合後、水4部を添加し、さらに混合して、シリコーン乳化物(シリコーンエマルジョン)を得た。
(混合工程)
容量200リットルのリボンブレンダーに、タルク(平均粒子径20μm)70部、セピオライト(平均繊維長5μm、平均繊維径0.2μm)0.5部、マイカ(平均粒子径20μm)10部、ステアリン酸亜鉛(融点125℃、平均粒子径8μm)5.8部を加え、30分間混合した。その後、得られた混合物を容量200リットルのナウターミキサーに移し、混合を行いながら、オキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマー(オキシエチレン繰り返し単位数/オキシプロピレン繰り返し単位数=5/5)1.3部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル1.8部を添加し、30分間混合を続けた後、上記前混合工程で作製したシリコーン乳化物10.6部を混合しながら徐々に添加し、さらに60分間混合した後、解砕及び篩により分級して、粉末状のタイヤ内面用離型剤組成物を得た。
得られたタイヤ内面用離型剤組成物を、目開き10メッシュ、16メッシュ篩にそれぞれかけ粒度を測定したところ、10メッシュ篩上残り分が30%、10メッシュ篩通過、16メッシュ篩上残り分が30%、16メッシュ篩通過分が40%であり、取り扱い性良好であった。
【0062】
(タイヤ内面用離型剤組成物の水分散液の調製)
上記で得られた離型剤組成物50部を200リットルのステンレス製寸胴に入れ、水道水50部をこれに添加し、ホモディスパーにより回転数1000rpmで30分間溶解分散させ、離型剤組成物の水分散液を得た。得られた離型剤組成物の水分散液を使用して、上記の方法で平滑性及び離型性を評価し、分散性及び塗工性も評価した。評価結果は表1に示すとおり、平滑性、離型性、分散性及び塗工性のいずれも良好であった。
【0063】
[実施例2~14]
実施例2~14では、表1に示すように原料とその配合量を変更する以外は実施例1と同様にして、前混合工程によりシリコーン乳化物を得て、次いで得られたそれぞれのシリコーン乳化物を使用して粉体状の離型剤組成物を得て、評価を行った。評価の結果を表1に示す。
【0064】
[実施例15]
(前混合工程)
ジメチルシリコーン(25℃における粘度が10000mm/s)3部と、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.25部と、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05部を添加し、ホモディスパーにより回転数5000rpmで10分間混合後、水2部を添加し、さらに混合して、シリコーン乳化物(シリコーンエマルジョン)を得た。
(混合工程)
200リットルのステンレス製寸胴にタルク(平均粒子径20μm)35部、セピオライト(平均繊維長5μm、平均繊維径0.2μm)0.25部、マイカ(平均粒子径20μm)5部、ステアリン酸亜鉛(融点125℃、平均粒子径8μm)2.9部、オキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマー(オキシエチレン繰り返し単位数/オキシプロピレン繰り返し単位数=5/5)0.65部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.9部、上記前混合工程で作製したシリコーン乳化物5.3部、水道水50部を添加し、ホモディスパーにより回転数1000rpmで30分間溶解分散させ、水に分散されてなる離型剤組成物を得た。得られた離型剤組成物を使用して、上記の方法で平滑性及び離型性を評価し、分散性及び塗工性も評価した。評価結果は表1に示すとおり、分散性(評価:○)、塗工性(評価:○)、平滑性(評価:○)、及び離型性(評価:◎)であり、そのいずれも良好であった。
【0065】
[実施例16]
(混合工程)
容量200リットルのリボンブレンダーに、タルク(平均粒子径20μm)72部、セピオライト(平均繊維長5μm、平均繊維径0.2μm)2部、マイカ(平均粒子径20μm)7部、ステアリン酸亜鉛(融点125℃、平均粒子径8μm)6部を加え、30分間混合した。その後、得られた混合物を容量200リットルのナウターミキサーに移し、混合を行いながら、オキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマー(オキシエチレン繰り返し単位数/オキシプロピレン繰り返し単位数=5/5)2部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル3部を添加し、30分間混合を続けた後、水道水8部を混合しながら徐々に添加し、さらに60分間混合した後、解砕及び篩により分級して、粉末状のタイヤ内面用離型剤組成物を得た。
得られたタイヤ内面用離型剤組成物を、目開き10メッシュ、16メッシュ篩にそれぞれかけ粒度を測定したところ、10メッシュ篩上残り分が35%、10メッシュ篩通過、16メッシュ篩上残り分が37%、16メッシュ篩通過分が28%であり、取り扱い性良好であった。
(タイヤ内面用離型剤組成物の水分散液の調製)
上記で得られた離型剤組成物50部を200リットルのステンレス製寸胴に入れ、水道水50部をこれに添加し、ホモディスパーにより回転数1000rpmで30分間溶解分散させ、離型剤組成物の水分散液を得た。得られた離型剤組成物の水分散液を使用して、上記の方法で平滑性及び離型性を評価し、分散性及び塗工性も評価した。評価結果は表1に示すとおり、平滑性、離型性、分散性及び塗工性のいずれも良好であった。
【0066】
[実施例17]
実施例17では、表1に示すように原料とその配合量を変更する以外は実施例16と同様にして、粉体状の離型剤組成物を得て、評価を行った。評価の結果は表1に示す。
【0067】
[実施例18]
200リットルのステンレス製寸胴にタルク(平均粒子径20μm)20部、マイカ(平均粒子径20μm)1部、ステアリン酸亜鉛(融点125℃、平均粒子径8μm)10部、ポリエチレンワックス(融点115℃、平均粒子径8μm)4部、オキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマー(オキシエチレン繰り返し単位数/オキシプロピレン繰り返し単位数=5/5)6部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル2部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2部、水道水55部を添加し、ホモディスパーにより回転数1000rpmで30分間溶解分散させ、水に分散されてなる離型剤組成物を得た。得られた離型剤組成物を使用して、上記の方法で平滑性及び離型性を評価し、分散性及び塗工性も評価した。評価結果は表1に示すとおり、平滑性、離型性、分散性及び塗工性のいずれも良好であった。
【0068】
[比較例1~5]
比較例1~5では、表1に示すように原料とその配合量を変更する以外は実施例1と同様にして、前混合工程によりシリコーン乳化物を得て、次いで得られたそれぞれのシリコーン乳化物を使用して粉体状の離型剤組成物を得て、評価を行った。評価の結果は表1に示す。
なお、表1に記載の使用原料の詳細を表2に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
表1及び実施例18から分かるように、実施例の離型剤組成物は、タルク(A1)及び繊維状無機粉体(A2)から選ばれる少なくとも1種である成分(A)と、タルク(A1)及び繊維状無機粉体(A2)を除く無機粉体である成分(B)と、融点が200℃以下の滑剤である成分(C)と界面活性剤である成分(D)を含むため、本願課題を解決でき、さらに分散性及び塗工性にも優れる。
一方、成分(A)を含まない場合(比較例1)、成分(B)を含まない場合(比較例2)、成分(C)を含まない場合(比較例3、融点が200℃を超えるものを含む比較例4)、成分(D)を含まない場合(比較例5)は、本願の課題が解決できていない。