(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023146
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】特定装置、プログラムおよび特定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20240214BHJP
B22D 46/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G01N21/88 J
B22D46/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123816
(22)【出願日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2022126598
(32)【優先日】2022-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・ウェブサイトのアドレス http://jfs.or.jp/tokusetsu1/ 掲載日 令和5年5月10日 ・研究集会名 日本鋳造工学会 第181回全国講演大会 開催場所 近畿大学・東大阪キャンパス (大阪府東大阪市小若江3丁目4-1)およびオンライン(Zoom)によるハイブリッド開催 開催日 令和5年5月21日
(71)【出願人】
【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】矢野 健太郎
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AA37
2G051AB02
2G051EB05
2G051EC01
2G051ED21
(57)【要約】
【課題】鋳物に生じた可能性がある欠陥の種類を漏れなく特定するとともに、当該欠陥の種類の特定作業を簡易に行う。
【解決手段】特定装置(10)は、状態情報(40)を取得する情報取得部(11)と、第1基準データベース(60)を参照して、状態情報(40)の内容と基準状態情報(51)の内容との一致の程度が基準以上である基準状態情報(51)で示される一般欠陥の種類のすべてを、候補欠陥の種類として特定する特定部(12)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定対象の鋳物に生じた欠陥である対象欠陥の状態を示す状態情報を取得する情報取得部と、
鋳物に生じ得る欠陥である一般欠陥の種類と、当該種類の一般欠陥が生じたときの当該一般欠陥の状態を示す基準状態情報と、が対応付けられて登録されたデータベースを参照して、前記状態情報の内容と前記基準状態情報の内容との一致の程度が基準以上である前記基準状態情報で示される前記一般欠陥の種類のすべてを、前記対象欠陥に該当する可能性がある欠陥である候補欠陥の種類として特定する特定部と、を備えた、特定装置。
【請求項2】
前記データベースには、前記一般欠陥の種類と、当該種類の一般欠陥が生じたときの当該一般欠陥の状態を示す前記基準状態情報と、当該種類の一般欠陥の発生を低減するための有用な情報を示す基準有用情報と、が対応付けられて登録されており、
前記特定部が特定した前記候補欠陥の種類のすべてを出力部に出力させるとともに、前記状態情報との内容の一致の程度が基準以上である前記基準状態情報に対応付けられた前記基準有用情報のすべてを、候補有用情報として前記出力部に出力させる出力制御部をさらに備えた、請求項1に記載の特定装置。
【請求項3】
前記出力制御部は、前記特定部が特定した前記候補欠陥の種類のすべてと、当該種類の候補欠陥に対応付けられた前記候補有用情報と、を前記出力部としての表示部に並べて表示させる表示制御部である、請求項2に記載の特定装置。
【請求項4】
前記状態情報が前記対象欠陥の状態を複数の指標のいずれか1つで示すときの基準は、前記基準状態情報が前記一般欠陥の状態を複数の指標のいずれか1つで示すときの基準と一致しており、
前記状態情報としての前記複数の指標は、ユーザがいずれか1つを選択可能になっている、請求項1から3のいずれか1項に記載の特定装置。
【請求項5】
前記対象欠陥の状態は、当該対象欠陥の状態に関する複数の着目点のそれぞれに対する評価である、複数の対象評価で特定され、
前記状態情報は、前記複数の対象評価のそれぞれを示す評価情報で構成され、
前記一般欠陥の状態は、当該一般欠陥の状態に関する複数の着目点のそれぞれに対する評価である、複数の基準評価で特定され、
前記基準状態情報は、前記複数の基準評価のそれぞれを示す基準評価情報で構成され、
前記特定部は、
前記状態情報を構成する複数の前記評価情報のそれぞれと、前記基準状態情報を構成する複数の前記基準評価情報のそれぞれと、を照合して、当該複数の前記基準評価情報のうち、当該複数の前記評価情報のうちのいずれか1つと内容が一致した前記基準評価情報の個数をカウントした上で、
前記個数が基準数以上となる前記基準状態情報で示される前記一般欠陥の種類のすべてを、前記候補欠陥の種類として特定する、請求項1に記載の特定装置。
【請求項6】
前記特定部は、前記個数が最も多い前記候補欠陥の種類から順に、前記対象欠陥に該当する可能性がより高い前記候補欠陥の種類として順位付けする、請求項5に記載の特定装置。
【請求項7】
前記基準状態情報を構成する複数の前記基準評価情報のそれぞれは、重み付けがなされているとともに、前記一般欠陥の種類に応じて、少なくとも1つ以上の前記重み付けの大きさが他の前記重み付けの大きさと異なっており、
前記特定部は、
前記個数をカウントするときに前記重み付けを加味することで、前記基準状態情報を構成する複数の前記基準評価情報のうち、前記状態情報を構成する複数の前記評価情報のうちのいずれか1つと内容が一致した前記基準評価情報の前記重み付けをカウントするとともに、
カウントした前記重み付けの大きさを合計した合計値が基準値以上となる前記基準状態情報で示される前記一般欠陥の種類のすべてを、前記候補欠陥の種類として特定する請求項5に記載の特定装置。
【請求項8】
前記特定部は、前記合計値が最も多い前記候補欠陥の種類から順に、前記対象欠陥に該当する可能性がより高い前記候補欠陥の種類として順位付けする、請求項7に記載の特定装置。
【請求項9】
特定対象の鋳物に生じた欠陥である対象欠陥の状態を示す状態情報を取得する情報取得部と、
鋳物に生じ得る欠陥である一般欠陥の種類と、当該種類の一般欠陥が生じたときの当該一般欠陥の状態を示す基準状態情報と、が対応付けられて登録されたデータベースを参照して、前記状態情報の内容と前記基準状態情報の内容との一致の程度が基準以上である前記基準状態情報で示される前記一般欠陥の種類のすべてを、前記対象欠陥に該当する可能性がある欠陥である候補欠陥の種類として特定する特定部と、を備え、
前記対象欠陥の状態は、当該対象欠陥の状態に関する複数の着目点のそれぞれに対する評価である、複数の対象評価で特定され、
前記状態情報は、前記複数の対象評価のそれぞれを示す評価情報で構成され、
前記特定部は、特定モデルに評価情報を入力し、前記特定モデルから出力された一般欠陥の種類を取得することによっても前記候補欠陥の種類を特定し、
前記特定モデルは、複数の前記状態情報を例題データとし、複数の前記状態情報のそれぞれに基づいてユーザが実際に対策した欠陥の種類を正解データとする教師データを用いて機械学習することにより構築される、特定装置。
【請求項10】
請求項1または9に記載の特定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記情報取得部および前記特定部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項11】
特定対象の鋳物に生じた欠陥である対象欠陥の状態を示す状態情報を取得する情報取得ステップと、
鋳物に生じ得る欠陥である一般欠陥の種類と、当該種類の一般欠陥が生じたときの当該一般欠陥の状態を示す基準状態情報と、が対応付けられて登録されたデータベースを参照して、前記情報取得ステップにて取得した前記状態情報の内容と、前記基準状態情報の内容と、の一致の程度が基準以上である前記基準状態情報で示される前記一般欠陥の種類のすべてを、前記対象欠陥に該当する可能性がある候補欠陥の種類として特定する特定ステップと、を含む特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造欠陥への対策を講じるための特定装置、プログラムおよび特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋳造欠陥への対策を講じるための様々な技術が研究開発されている。例えば、特許文献1には、計算機を利用して鋳物に生じた欠陥の原因および対策を推論するときに、原因を推論するための入力情報の範囲を鋳物から得られる情報に限定して知識ベースを構築するエキスパートシステム等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたエキスパートシステム等は、特定の1種類の欠陥を同定するものである。そのため、鋳物に複数の欠陥が生じた場合、特定の1種類の欠陥以外は同定の対象外となってしまい、同定が不十分になるという問題がある。また、前述のエキスパートシステム等においては、同定を終えるまでに複数の説明画面を参照したり複数の調査を行ったりする必要があることから、同定作業に手間が掛かるという問題もある。
【0005】
本発明の一態様は、鋳物に生じた可能性がある欠陥の種類を漏れなく特定するとともに、当該欠陥の種類の特定作業を簡易に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る特定装置は、特定対象の鋳物に生じた欠陥である対象欠陥の状態を示す状態情報を取得する情報取得部と、鋳物に生じ得る欠陥である一般欠陥の種類と、当該種類の一般欠陥が生じたときの当該一般欠陥の状態を示す基準状態情報と、が対応付けられて登録されたデータベースを参照して、前記状態情報の内容と前記基準状態情報の内容との一致の程度が基準以上である前記基準状態情報で示される前記一般欠陥の種類のすべてを、前記対象欠陥に該当する可能性がある欠陥である候補欠陥の種類として特定する特定部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る特定装置は、前記データベースには、前記一般欠陥の種類と、当該種類の一般欠陥が生じたときの当該一般欠陥の状態を示す前記基準状態情報と、当該種類の一般欠陥の発生を低減するための有用な情報を示す基準有用情報と、が対応付けられて登録されており、前記特定部が特定した前記候補欠陥の種類のすべてを出力部に出力させるとともに、前記状態情報との内容の一致の程度が基準以上である前記基準状態情報に対応付けられた前記基準有用情報のすべてを、候補有用情報として前記出力部に出力させる出力制御部をさらに備えてもよい。
【0008】
本発明の一態様に係る特定装置は、前記出力制御部は、前記特定部が特定した前記候補欠陥の種類のすべてと、当該種類の候補欠陥に対応付けられた前記候補有用情報と、を前記出力部としての表示部に並べて表示させる表示制御部であってもよい。
【0009】
本発明の一態様に係る特定装置は、前記状態情報が前記対象欠陥の状態を複数の指標のいずれか1つで示すときの基準は、前記基準状態情報が前記一般欠陥の状態を複数の指標のいずれか1つで示すときの基準と一致しており、前記状態情報としての前記複数の指標は、ユーザがいずれか1つを選択可能になっていてもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る特定装置は、前記対象欠陥の状態は、当該対象欠陥の状態に関する複数の着目点のそれぞれに対する評価である、複数の対象評価で特定され、前記状態情報は、前記複数の対象評価のそれぞれを示す評価情報で構成され、前記一般欠陥の状態は、当該一般欠陥の状態に関する複数の着目点のそれぞれに対する評価である、複数の基準評価で特定され、前記基準状態情報は、前記複数の基準評価のそれぞれを示す基準評価情報で構成され、前記特定部は、前記状態情報を構成する複数の前記評価情報のそれぞれと、前記基準状態情報を構成する複数の前記基準評価情報のそれぞれと、を照合して、当該複数の前記基準評価情報のうち、当該複数の前記評価情報のうちのいずれか1つと内容が一致した前記基準評価情報の個数をカウントした上で、前記個数が基準数以上となる前記基準状態情報で示される前記一般欠陥の種類のすべてを、前記候補欠陥の種類として特定してもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る特定装置は、前記特定部は、前記個数が最も多い前記候補欠陥の種類から順に、前記対象欠陥に該当する可能性がより高い前記候補欠陥の種類として順位付けしてもよい。
【0012】
本発明の一態様に係る特定装置は、前記基準状態情報を構成する複数の前記基準評価情報のそれぞれは、重み付けがなされているとともに、前記一般欠陥の種類に応じて、少なくとも1つ以上の前記重み付けの大きさが他の前記重み付けの大きさと異なっており、前記特定部は、前記個数をカウントするときに前記重み付けを加味することで、前記基準状態情報を構成する複数の前記基準評価情報のうち、前記状態情報を構成する複数の前記評価情報のうちのいずれか1つと内容が一致した前記基準評価情報の前記重み付けをカウントするとともに、カウントした前記重み付けの大きさを合計した合計値が基準値以上となる前記基準状態情報で示される前記一般欠陥の種類のすべてを、前記候補欠陥の種類として特定してもよい。
【0013】
本発明の一態様に係る特定装置は、前記特定部は、前記合計値が最も多い前記候補欠陥の種類から順に、前記対象欠陥に該当する可能性がより高い前記候補欠陥の種類として順位付けしてもよい。
【0014】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る特定装置は、特定対象の鋳物に生じた欠陥である対象欠陥の状態を示す状態情報を取得する情報取得部と、鋳物に生じ得る欠陥である一般欠陥の種類と、当該種類の一般欠陥が生じたときの当該一般欠陥の状態を示す基準状態情報と、が対応付けられて登録されたデータベースを参照して、前記状態情報の内容と前記基準状態情報の内容との一致の程度が基準以上である前記基準状態情報で示される前記一般欠陥の種類のすべてを、前記対象欠陥に該当する可能性がある欠陥である候補欠陥の種類として特定する特定部と、を備え、前記対象欠陥の状態は、当該対象欠陥の状態に関する複数の着目点のそれぞれに対する評価である、複数の対象評価で特定され、前記状態情報は、前記複数の対象評価のそれぞれを示す評価情報で構成され、前記特定部は、特定モデルに評価情報を入力し、前記特定モデルから出力された一般欠陥の種類を取得することによっても前記候補欠陥の種類を特定し、前記特定モデルは、複数の前記状態情報を例題データとし、複数の前記状態情報のそれぞれに基づいてユーザが実際に対策した欠陥の種類を正解データとする教師データを用いて機械学習することにより構築される。
【0015】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る特定方法は、特定対象の鋳物に生じた欠陥である対象欠陥の状態を示す状態情報を取得する情報取得ステップと、鋳物に生じ得る欠陥である一般欠陥の種類と、当該種類の一般欠陥が生じたときの当該一般欠陥の状態を示す基準状態情報と、が対応付けられて登録されたデータベースを参照して、前記情報取得ステップにて取得した前記状態情報の内容と、前記基準状態情報の内容と、の一致の程度が基準以上である前記基準状態情報で示される前記一般欠陥の種類のすべてを、前記対象欠陥に該当する可能性がある候補欠陥の種類として特定する特定ステップと、を含む。
【0016】
本発明の各態様に係る特定装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記特定装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記特定装置をコンピュータにて実現させる特定装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、鋳物に生じた可能性がある欠陥を漏れなく特定できるとともに、当該欠陥の特定作業を簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1~第4実施形態に係る特定システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図2】第1基準データベースの一例を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る情報処理装置の入力部が選択操作を受け付ける前における、一覧画面の一例を示す図である。
【
図5】符号501および502は、前述の入力部が選択操作を受け付けている途中の一覧画面の一例を示す図である。
【
図6】前述の入力部がすべての選択操作を受け付けた後の一覧画面の一例を示す図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る特定方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る特定方法の一例を示すフローチャートである。
【
図9】前述の入力部がすべての選択操作を受け付けた後の一覧画面における他の例を示す図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係る特定方法の一例を示すフローチャートである。
【
図11】第2基準データベースの一例を示す図である。
【
図12】初期状態の学習用データベースの一例を示す図である。
【
図14】モデル構築に係る機械学習の学習結果が収束するまでの学習回数と、当該機械学習に要する計算時間と、の関係の一例を示すグラフである。
【
図15】符号1501は、本発明の第4実施形態に係る一覧画面の一例を示す図である。符号1502は、履歴画面の一例を示す図である。
【
図16】符号1602は、本発明の第4実施形態に係る一覧画面における、特定結果を表示する画面部分の一例を示す図である。符号1602は、前述の履歴画面における他の例を示す図である。
【
図17】本発明の第4実施形態に係る一覧画面における、特定結果を表示する画面部分の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1~第3実施形態について、
図1~
図11を参照しつつ詳細に説明する。第1~第3実施形態では、本発明の一態様に係る特定装置の特定対象となる鋳物(以下、「対象鋳物;不図示」)の形成材料として鋳鉄を例に挙げて説明する。なお、前述の形成材料としては、鋳鉄の他、アルミニウム、鋳鋼、チタン合金、マグネシウム合金、銅合金、亜鉛スズ合金等の種々の金属材料が想定される。また、第1~第3実施形態では、対象鋳物が砂型を用いた大気鋳造法によって製造されたものとするが、対象鋳物の鋳造方法に特段の限定はなく、種々の公知の鋳造方法を採用することができる。
【0020】
〔第1実施形態〕
<特定システムの構成>
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る特定システムST-1の構成について説明する。特定システムST-1は、対象鋳物に生じた可能性がある欠陥の種類を特定するためのシステムである。
図1に示すように、特定システムST-1は、情報処理装置100とサーバ600とで構成されている。
【0021】
(情報処理装置)
情報処理装置100は、各種情報の処理を実行可能な装置である。第1~第3実施形態では、情報処理装置100~300として、据え置き型のパーソナルコンピュータを例に挙げて説明する。なお、情報処理装置100~300は、例えばタブレット端末であってもよいし、スマートフォンであってもよい。情報処理装置200の詳細については後掲の第2実施形態にて、情報処理装置300の詳細については後掲の第3実施形態にて、それぞれ説明する。
【0022】
図1に示すように、情報処理装置100は、入力部1、表示部2、記憶部3、通信部4および制御部5を備えている。入力部1は、各種操作を受け付けるインターフェースであり、第1~第3実施形態ではキーボードおよびマウスが入力部1となる。表示部2は、各種情報を表示する出力部であり、第1~第3実施形態ではモニタが表示部2となる。なお、情報処理装置100がタブレット端末またはスマートフォンの場合、情報処理装置100は入力部1と表示部2とが一体化したタッチパネルを備えていてもよい。
【0023】
記憶部3は、情報処理装置100が使用する各種情報を記憶する。記憶部3としては、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクが挙げられる。通信部4は、情報処理装置100がサーバ600との間で各種情報の送受信を行うための部である。制御部5は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)であり、情報処理装置100の各部を統括して制御する。また、制御部5は、情報処理装置100が具備する各種機能を実現するための処理を実行する。
図1に示すように、制御部5は特定装置10を備えている。
【0024】
(特定装置)
特定装置10は、対象欠陥に該当する可能性がある一般欠陥の種類を候補欠陥の種類として特定する装置である。また、特定装置10は、候補欠陥の発生を低減するための有用な情報を候補有用情報71(
図6参照;詳細は後述)として特定する。対象欠陥は、対象鋳物に生じた欠陥であり、一般欠陥(詳細は後述)は、鋳物に生じ得る欠陥である。一般欠陥には、鋳造欠陥の技術分野において公知となっている種類の欠陥の他、例えば、当該技術分野において正式には認定されていないもの、鋳物に生じ得ることが実験等で確認されているすべての種類の欠陥が含まれる。
【0025】
特定装置10は、例えば情報処理装置100内において制御部5の外部に備えられてもよいし、不図示の他の情報処理装置に備えられてもよい。
図1に示すように、特定装置10は、情報取得部11、特定部12および表示制御部13(出力制御部)を備えている。
【0026】
情報取得部11は、対象欠陥の状態を示す状態情報40(
図6参照)を取得する。また、情報取得部11は、一般欠陥の種類毎の基準情報50を取得する。特定部12は、第1基準データベース60(データベース;
図2参照)を参照して候補欠陥の種類を特定する。表示制御部13は、特定部12が特定した候補欠陥の種類を示す種類情報70(
図6参照)のすべてと、当該種類の候補欠陥に対応付けられた候補有用情報71と、を表示部2に並べて表示させる。
【0027】
情報取得部11、特定部12、表示制御部13、状態情報40、基準情報50、第1基準データベース60、種類情報70および候補有用情報71の各詳細については後述する。
【0028】
(サーバ)
サーバ600は、情報処理装置100との間で送受信可能な通信装置である。サーバ600は、情報処理装置100と無線接続されていてもよいし、有線接続されていてもよい。
図1に示すように、サーバ600は、記憶部610、通信部620および制御部630を備えている。
【0029】
記憶部610は、サーバ600が使用する各種情報を記憶する。また、本実施形態では、記憶部610は第1基準データベース60を記憶する。通信部620は、サーバ600が情報処理装置100との間で各種情報の送受信を行うための部である。制御部630は、サーバ600の各部を総括して制御する。また、制御部630は、サーバ600が具備する各種機能を実現するための処理を実行する。
【0030】
<状態情報>
第1~第3実施形態では、状態情報40は、9種類の評価情報41(
図6参照)で構成される。評価情報41は、対象評価を示す情報である。対象評価は、下記の表1に示すような、対象欠陥の状態に関する9種類の着目点(複数の着目点)のそれぞれに対する評価である。
【0031】
【0032】
対象欠陥の状態は、9種類の着目点のすべてについて、3区分に分けられた対象評価のいずれか1つで特定される。例えば、対象欠陥の状態に関する着目点(以下、「対象着目点」)が「目視」であれば、当該状態は対象評価「見える(表面)」、「見えない(内部)」または「両方」のいずれか1つで特定される。なお、対象評価の3区分については、ユーザの主観・鋳造に関する知見、および対象鋳物の大きさ・外形等によって評価結果が分かれる傾向があること、ならびに評価のし易さを考慮して、意図的に簡単かつ抽象的な内容になっている。このことは、後述の第1対象評価、基準評価および第1基準指標についても同様である。
【0033】
また、状態情報40は、対象欠陥の状態を複数の指標のうちの1つで示すものになっている。具体的には、下記の表2に示すように、9種類の対象着目点のすべてについて、3つの区分に分けられた対象評価のそれぞれが第1対象指標411で示される(
図6参照)。
【0034】
状態情報40としての複数の指標は、ユーザがいずれか1つを選択可能になっている。具体的には、ユーザが、9種類の対象着目点のそれぞれについて、3つの区分の中からいずれか1つを対象欠陥の状態を示す第1対象指標411として選択する。つまり、ユーザが、9種類の第1対象指標411のそれぞれについて、3つの区分の中からいずれか1つを選択する。これにより、9種類の対象着目点のそれぞれについて、3つの区分の中から対象欠陥の状態を示す対象評価が特定される。ユーザによる第1対象指標411の選択の詳細については後述する。
【0035】
【0036】
第1対象指標411は、対象欠陥の状態を短い文字列で示した指標である。本明細書では、文字数(数字、記号、アルファベットを含む)が10文字以下の文字列を、第1対象指標411の対象となる「短い文字列」とする。例えば、対象着目点が「目視」であれば、第1対象指標411は「見える(表面)」、「見えない(内部)」および「両方」の3つの区分となる。
【0037】
さらに、表2に示すように、9種類の第1対象指標411のそれぞれには、3つの区分毎に第2対象指標412が対応付けられている(
図6参照)。これにより、ユーザが3つの区分の中からいずれか1つを選択すれば、選択された第1対象指標411に対応付けられた第2対象指標412も自動的に選択されることになる。
【0038】
つまり、ユーザが3つの区分の中から選択した第1対象指標411と、当該第1対象指標411に対応付けられた第2対象指標412と、で評価情報41が構成される。また、ユーザが3つの区分の中から選択した9種類の第1対象指標411と、当該9種類の第1対象指標411のそれぞれに対応付けられた第2対象指標412と、で状態情報40が構成される。
【0039】
第2対象指標412は、対象欠陥の状態を「1」、「2」および「3」の数字で示した指標である。例えば、対象着目点が「発生場所1」であれば、第1対象指標411の「上部」に対応付けられた第2対象指標412が「1」、第1対象指標411の「下部」に対応付けられた第2対象指標412が「2」、第1対象指標411の「両方」に対応付けられた第2対象指標412が「3」となる。「1」、「2」および「3」の数字自体は対象着目点の種類に拘わらず同じであるが、対象着目点の種類によっては例えば「4」、「5」および「6」のように数字を異ならせてもよい。
【0040】
なお、表1および表2に示す対象着目点の個数、および各対象着目点の内容はあくまで一例であり、対象鋳物の形成材料および鋳造方法、対象鋳物がどのような製品か等に応じて任意に変更できる。このことは、後述の基準着目点についても同様である。また、状態情報40が9種類の評価情報41で構成されること、および評価情報41が第1対象指標411と第2対象指標412で構成されることは、必須ではない。状態情報40は、対象欠陥の状態を示す何らかの情報で構成されていればよい。さらには、評価情報41が第1対象指標411のみで構成されてもよいし、対象評価および第1対象指標411の各区分を、例えば4つの区分以上または2つの区分にしてもよい。但し、候補欠陥の種類の特定作業を簡易に行う観点からは、対象評価および第1対象指標411の各区分は2つの区分であることが最も好ましい。
【0041】
<基準情報>
図2および
図3を参照して、基準情報50について説明する。第1~第3実施形態では、情報取得部11が、下記の表3に挙げた28種類の一般欠陥のそれぞれに対応する28種類の基準情報50を取得する。勿論、一般欠陥の種類はこの28種類に限定されず、対象鋳物の形成材料および鋳造方法、対象鋳物がどのような製品か等に応じて変更(名称のみの変更を含む)、増減できる。
【0042】
【0043】
図2に示すように、基準情報50は、一般欠陥の種類、基準状態情報51および基準有用情報52で構成されている。基準状態情報51は、特定の種類の一般欠陥が生じたときの当該一般欠陥の状態を示す情報であり、9種類の基準評価情報53で構成される。基準評価情報53は、基準評価を示す情報である。基準評価は、一般欠陥の状態に関する9種類の着目点(複数の着目点;以下、「基準着目点」)のそれぞれに対する評価である。表1に示すように、基準着目点は対象着目点と同じ着目内容になり、基準評価は対象評価と同じ評価項目になる。
【0044】
表1に示すように、一般欠陥の状態は、9種類の基準着目点のすべてについて、3つの区分に分けられた基準評価のいずれか1つで特定されている。例えば、基準着目点が「き裂」であれば、当該状態は基準評価「あり」、「なし」または「両方」のいずれか1つで特定されている。なお、
図2に示す第1基準データベース60には、図面の簡略化の観点から7種類の基準着目点しか設けられていないが、実際には、9種類の基準着目点が第1基準データベース60に設けられている。
【0045】
また、基準状態情報51は、一般欠陥の状態を複数の指標のうちの1つで示すものになっている。
図2および表2に示すように、状態情報40が対象欠陥の状態を複数の指標のいずれか1つで示すときの基準は、基準状態情報51が一般欠陥の状態を複数の指標のいずれか1つで示すときの基準と一致している。
【0046】
具体的には、
図2および表2に示すように、9種類の基準着目点のすべてについて、3つの区分に分けられた基準評価のそれぞれが第1基準指標511で示されている。そして、28種類の一般欠陥毎に、9種類の基準着目点のそれぞれについて、3つの区分の中から一般欠陥の状態を示す第1基準指標511が特定されている。つまり、28種類の一般欠陥毎に、9種類の第1基準指標511のそれぞれについて、3つの区分のうちのいずれか1つが特定されている。
【0047】
第1基準指標511は、一般欠陥の状態を短い文字列で示した指標である。本明細書では、文字数(数字、記号、アルファベットを含む)が10文字以下の文字列を、第1基準指標511の対象となる「短い文字列」とする。例えば、基準着目点が「異物」であれば、第1基準指標511は「あり」、「なし」および「両方」の3つの区分となる。
【0048】
さらに、
図2および表2に示すように、9種類の第1基準指標511のそれぞれには、3つの区分毎に第2基準指標512が対応付けられている。第2基準指標512は、一般欠陥の状態を、第2対象指標412と同様に「1」、「2」および「3」の数字で示した指標である。そして、第1基準データベース60には、28種類の一般欠陥のそれぞれについて、3つの区分の中から特定された第1基準指標511に対応付けられた第2基準指標512が、9種類の基準着目点毎に登録されている。
【0049】
つまり、3つの区分の中から特定された第1基準指標511に対応付けられた第2基準指標512が、基準評価情報53となる。また、3つの区分の中から特定された9種類の第1基準指標511のそれぞれに対応付けられた第2基準指標512が、基準状態情報51となる。
【0050】
なお、基準状態情報51が9種類の基準評価情報53で構成されること、および基準評価情報53が第2基準指標512で構成されることは、必須ではない。基準状態情報51は、一般欠陥の状態を示す何らかの情報で構成されていればよい。さらには、基準評価情報53が第1基準指標511で構成されてもよいし、基準評価および第1基準指標511の各区分を、例えば4つの区分以上または2つの区分にしてもよい。但し、候補欠陥の種類の特定作業を簡易に行う観点からは、基準評価および第1基準指標511の各区分は2つの区分であることが最も好ましい。
【0051】
基準有用情報52は、一般欠陥の発生を低減するための有用な情報を示すものであり、28種類の一般欠陥のそれぞれに対応して28種類生成されている。第1~第3実施形態では、基準有用情報52は、基準現象情報521、基準原因情報522、基準対策情報523および基準画像情報524で構成される。以下、基準現象情報521、基準原因情報522、基準対策情報523および基準画像情報524を「各基準有用情報」と総称する。
【0052】
基準現象情報521は、特定の種類の一般欠陥がどのような現象なのかを規定した情報である。基準原因情報522は、特定の種類の一般欠陥が発生する原因を規定した情報である。基準対策情報523は、特定の種類の一般欠陥の発生を低減するための対策を規定した情報である。基準画像情報524は、特定の種類の一般欠陥が撮像された欠陥画像を示す情報であり、一般欠陥の種類によって基準有用情報52に含まれていたり含まれていなかったりする。
図3は、基準画像情報524の一例であり、一般欠陥の種類が「キッシュ」の場合の欠陥画像を示す。
【0053】
<第1基準データベース>
図2を参照して、第1基準データベースについて説明する。第1および第2実施形態では、基準情報50は、
図2に示す第1基準データベース60に登録されている。なお、
図2に示す第1基準データベース60には、図面の簡略化の観点から10種類の基準情報50しか登録されていないが、実際には、28種類の基準情報50が第1基準データベース60に登録されている。
【0054】
図2の例では、第1基準データベース60はデータテーブル形式である。また、第1基準データベース60には、28種類の一般欠陥のレコード毎に、基準状態情報51と基準有用情報52とがフィールドに格納されている。つまり、第1基準データベース60には、一般欠陥の種類と、当該種類の一般欠陥が生じたときの当該一般欠陥の状態を示す基準状態情報51と、当該種類の一般欠陥の発生を低減するための有用な情報を示す基準有用情報52と、が対応付けられて登録されている。
【0055】
また、第1基準データベース60および後述の第2基準データベース80(
図11参照)のそれぞれには、一般欠陥の種類を示す指標として当該一般欠陥の名称が登録されている。本実施形態ならび後掲の第2および第3実施形態では、第1および第2基準データベース60および80に、一般欠陥の名称として基本的には公知文献「日本鋳造工学会編 鋳造用語辞典(1995年)」に記載されている用語が登録されている。但し、幅広い層のユーザが理解し易いように、鋳造欠陥の技術分野において常用されている通称がある場合、前述の用語の替わりにその通称が登録されている。例えば、第1および第2基準データベース60および80には、用語「多孔質巣」の替わりに通称「ひけ巣」が登録されている。なお、一般欠陥の名称に替えて、例えば一般欠陥の種類を識別するために付与されたIDを、一般欠陥の種類を示す指標としてこれらのデータベースに登録してもよい。
【0056】
なお、
図2に示す第1基準データベース60に登録された各基準有用情報の内容はあくまで一例であり、任意に変更できる。例えばユーザの経験・知見に基づいて規定した内容を各基準有用情報の内容としてもよいし、専門書・学術書・論文等にて定義された内容を各基準有用情報の内容としてもよい。
【0057】
また、
図2に示す第1基準データベース60の例では、28種類の一般欠陥のすべてについて基準有用情報52が各基準有用情報で構成されているが、この構成に限定されない。例えば、28種類の一般欠陥のすべてについて、基準有用情報52が基準原因情報522と基準対策情報523とで構成されているなど、基準有用情報52が各基準有用情報のうちの少なくとも1つ以上で構成されていればよい。あるいは、28種類の一般欠陥の一部または全部について、基準有用情報52を構成する情報の個数および種類の少なくとも一方が、他の種類の一般欠陥における基準有用情報52と異なっていてもよい。
【0058】
<一覧画面>
図4~
図6を参照して、表示部2に表示される一覧画面21について説明する。一覧画面21は、ユーザが、9種類の対象着目点のそれぞれについて、第1対象指標411に係る3つの区分の中からいずれか1つを選択するための画面である。また、一覧画面21は、特定部12が特定した候補欠陥の種類のすべてについて、種類情報70と候補有用情報71とを表示するための画面である。
【0059】
一覧画面21は、入力部1がユーザの選択操作(詳細は後述)を受け付ける前は、
図4に示すような初期画面になっている。
図4に示すように、一覧画面21には、対象指標表示画面211と特定結果表示画面212とが設けられている。
【0060】
一覧画面21が初期状態の場合において、入力部1が、対象指標表示画面211における「状態」の欄のセル2111を押下する操作を受け付けると、当該セル2111の画面向かって右側にボタン2112が表示される。そして、入力部1がボタン2112を押下する操作を受け付けると、当該セル2111上に
図5に示すようなプルダウンメニュー2113が表示される。
【0061】
プルダウンメニュー2113には、第1対象指標411に係る3つの区分と、当該3つの区分のそれぞれに対応する第2対象指標412と、が表示される。
図5の例では、まず、
図5の符号501に示すように、入力部1が対象着目点「目視」に対応するセル2111を押下する操作を受け付けた結果、当該セル2111上にプルダウンメニュー2113が表示される。なお、
図5に示すプルダウンメニュー2113はあくまで一例であり、候補欠陥の種類の特定作業を簡易に行う観点からは、プルダウンメニュー2113に第1対象指標411に係る2つの区分が表示されるのが最も好ましい。
【0062】
そして、入力部1が、プルダウンメニュー2113に表示された3つの区分のいずれか1つを押下する操作を受け付けると、押下された区分の第1対象指標411と第2対象指標412とがセル2111内に表示される。
図5の例では、
図5の符号501に示すように入力部1が区分「1:見える(表面)」を押下する操作を受け付けることで、
図5の符号502に示すように「1:見える(表面)」がセル2111内に表示される。このようにして、
図5の符号502に示すように、押下された区分の第1対象指標411と第2対象指標412とが、「状態」の欄における9つのセル2111内に順次表示される。
【0063】
そして、入力部1が、9種類の対象着目点のそれぞれに対応するセル2111において前述の一連の押下操作を受け付けることで、
図6に示すように、ユーザが選択した9種類の第1対象指標411と第2対象指標412とが対象指標表示画面211に表示される。また、種類情報70と候補有用情報71とが特定結果表示画面212に表示される。
【0064】
ここで、9種類の対象着目点のそれぞれに対応するセル2111において、ユーザが前述の一連の押下操作を行うことが「ユーザによる第1対象指標411の選択」に該当する。また、以下の説明では、9種類の対象着目点のそれぞれに対応するセル2111において行われる前述の一連の押下操作を「ユーザの選択操作」と総称する。
【0065】
特定結果表示画面212には、「番号」、「種類」、「現象」、「原因」、「対策」および「画像」の各欄が設けられている。「番号」の欄のセルには、候補欠陥として特定された一般欠陥に付与されている番号(表2参照)が表示される。「種類」の欄のセルには、種類情報70が表示される。
【0066】
種類情報70は、候補欠陥の種類、つまり候補欠陥として特定された一般欠陥の種類(表3参照)を示す情報である。第1~第3実施形態では、候補欠陥として特定された一般欠陥の名称が、種類情報70として「種類」の欄に表示されるが、例えば一般欠陥の種類を識別するために付与されたIDが、種類情報70として「種類」の欄に表示されてもよい。
【0067】
「現象」の欄のセルには、候補現象情報711が表示される。候補現象情報711は、候補欠陥として特定された種類の一般欠陥がどのような現象なのかを規定した情報であり、基準現象情報521と同じ内容になる。「原因」の欄のセルには、候補原因情報712が表示される。候補原因情報712は、候補欠陥として特定された種類の一般欠陥が発生する原因を規定した情報であり、基準原因情報522と同じ内容になる。
【0068】
「対策」の欄のセルには、候補対策情報713が表示される。候補対策情報713は、候補欠陥として特定された種類の一般欠陥の発生を低減するための対策を規定した情報であり、基準対策情報523と同じ内容になる。「画像」の欄のセルには、候補画像情報714が表示される。候補画像情報714は、候補欠陥として特定された種類の一般欠陥が撮像された候補欠陥画像を示す情報であり、基準画像情報524と同じ内容になる。
【0069】
以上のことから、第1~第3実施形態では、候補有用情報71は、候補現象情報711、候補原因情報712、候補対策情報713および候補画像情報714で構成されることとなる。以下、候補現象情報711、候補原因情報712、候補対策情報713および候補画像情報714を「各候補有用情報」と総称する。
【0070】
図6に示すように、特定結果表示画面212には、特定部12が特定した候補欠陥の種類のすべてについて、種類情報70と当該種類情報70に対応付けられた各候補有用情報とが、画面向かって左右方向に並んだ状態で表示される。以下、特定結果表示画面212に表示される、任意の種類の候補欠陥における種類情報70と各候補有用情報との集合を、「情報群」と称する。また、特定結果表示画面212には、特定部12が特定した候補欠陥の種類毎の情報群が、画面向かって上下方向に並んだ状態で表示される。
【0071】
なお、表示部2における種類情報70および候補有用情報71の表示態様は、前述の例に限定されない。例えば、種類情報70と当該種類情報70に対応付けられた各候補有用情報とが、画面向かって上下方向に並んだ状態で特定結果表示画面212に表示されてもよい。この場合、特定部12が特定した候補欠陥の種類毎の情報群が、画面向かって左右方向に並んだ状態で特定結果表示画面212に表示される。
【0072】
また例えば、対象指標表示画面211と特定結果表示画面212が、表示部2に別々に表示されてもよい。具体的には、表示部2に対象指標表示画面211のみが表示された状態において、入力部1がユーザの選択操作を受け付けると、表示部2の表示が対象指標表示画面211から特定結果表示画面212に遷移するようにしてもよい。
【0073】
<特定システムの主要処理>
図6および
図7を参照して、特定システムST-1の主要処理について説明する。前提として、特定システムST-1が
図7に示すフローチャートの流れに沿って主要処理を実行する前に、表示制御部13が、一覧画面21(
図4参照)を表示部2に表示させているものとする。
【0074】
まず、
図7に示すフローチャートのステップS(以下、「S」と略記)101では、情報取得部11が状態情報40を取得する(情報取得ステップ)。具体的には、ユーザの選択操作を受け付けた入力部1が、入力された内容に基づいて状態情報40を生成する。そして、入力部1から送信された状態情報40を情報取得部11が受信することにより、情報取得部11が状態情報40を取得する。情報取得部11は、取得した状態情報40を特定部12および表示制御部13に送信する。
【0075】
なお、情報取得部11が状態情報40を取得する方法は前述の例に限定されない。例えば、状態情報40が記憶部610に記憶されており、情報取得部11が、サーバ600から送信された状態情報40を通信部4を介して取得してもよい。つまり、情報取得部11は、何らかの方法で状態情報40を取得すればよい。
【0076】
次に、S102では、情報取得部11が、第1基準データベース60から28種類の基準情報50を読み出して当該28種類の基準情報50を取得する。情報取得部11は、取得した28種類の基準情報50を特定部12に送信する。
【0077】
なお、第1基準データベース60は、例えば記憶部3に記憶されていてもよいし、特定装置10内の不図示のメモリに記憶されていてもよい。この場合、情報処理装置100単体で対象鋳物に生じた可能性がある欠陥の種類を特定することが可能となることから、サーバ600が不要となって特定システムST-1を構築する必要がなくなる。また、情報取得部11は、S101の処理とS102の処理とを同時に実行してもよいし、S102の処理を実行した後にS101の処理を実行してもよい。
【0078】
次に、S103では、特定部12が、第1基準データベース60を参照して、状態情報40の内容と基準状態情報51の内容との一致の程度が基準以上である基準状態情報51で示される一般欠陥の種類のすべてを、候補欠陥の種類として特定する(特定ステップ)。
【0079】
本実施形態では、特定部12は、状態情報40と、第1基準データベース60から読み出した28種類の基準情報50のそれぞれに含まれる基準状態情報51と、を照合する。具体的には、特定部12は、状態情報40に含まれる9つの第2対象指標412のそれぞれを、基準状態情報51を構成する9つの第2基準指標512のうちの、対応する第2基準指標512と照合する。この照合処理が、本実施形態における「特定部12による第1基準データベース60の参照」に該当する。
【0080】
ここで、「対応する第2基準指標512」とは、対応基準着目点に対する評価を示す第2基準指標512を指す。対応基準着目点は、第2対象指標412で示される評価の対象となった対象着目点と、内容が一致する基準着目点である。例えば、第2対象指標412が対象着目点「目視」に対する評価を示すものであれば、「対応する第2基準指標512」は、対応基準着目点「目視」に対する評価を示す第2基準指標512となる。
【0081】
そして、特定部12は、9つの第2対象指標412のすべてについて、対応する第2基準指標512と内容が一致した場合に、照合対象となった基準状態情報51に対応する一般欠陥の種類を候補欠陥の種類として特定する。ここで言う「内容が一致」とは、第2対象指標412の数字と対応する第2基準指標512の数字とで、値が同じになることを指す。
【0082】
本実施形態では、9つの第2対象指標412のすべてについて、対応する第2基準指標512と内容が一致することが、「状態情報40の内容と基準状態情報51の内容との一致の程度が基準以上」となることに該当する。
【0083】
次に、S104では、特定部12が、状態情報40を28種類の基準情報50のすべてと照合したかどうかカウントする。カウント結果が28種類未満の場合(S104でNO)、特定部12は、候補欠陥の種類をすべて特定していない旨の情報を情報取得部11に送信する。この情報を受信した情報取得部11は、S102の処理を再び実行する。
【0084】
一方、カウント結果が28種類の場合(S104でYES)、特定部12は、特定した候補欠陥の種類のすべてについて、種類情報70と当該種類情報70に対応付けられた候補有用情報71とを表示制御部13に送信する。また、9つの第2対象指標412と、それぞれに対応する第2基準指標512と、の内容がすべて一致する基準情報50が1種類もない場合、特定部12は候補欠陥の種類を特定できない旨の情報を表示制御部13に送信する。
【0085】
次に、S105では、表示制御部13が、情報取得部11から取得した状態情報40、および特定部12から取得した種類情報70と候補有用情報71とを表示部2に送信することにより、これら3種類の情報を
図6に示す表示態様で表示部2に表示させる。一方、特定部12から候補欠陥の種類を特定できない旨の情報を取得した場合、表示制御部13は、この情報を表示部2に送信することで「特定不可」等の文字情報(視認することで「特定不可」が理解できる図形、記号等でも可)を表示部2に表示させる。S105の処理が終了することにより、特定システムST-1の主要処理がすべて終了する。
【0086】
なお、S104とS105との処理順番は入れ替わってもよく、S105の処理の後にS104の処理が実行されてもよい。この場合、特定部12は、S103の処理の終了時点で内容が確定している情報を表示制御部13に送信する。そして、表示制御部13が、特定部12等から受信した情報を表示部2に表示させる(S105)。S105の処理の終了後、状態情報40を28種類の基準情報50のすべてと照合していなければ(S104でNO)、情報取得部11がS102以降の処理を再び実行する。
【0087】
また、表示制御部13が、状態情報40、種類情報70および候補有用情報71を表示部2に表示させることは必須ではない。例えば、表示制御部13は、これら3種類の情報のうちの1種類または2種類を表示部2に表示させてもよい。また例えば、表示部2が、これら3種類の情報のすべてを表示しなくてもよい。この場合、情報処理装置100と有線接続または無線接続された不図示のプリンタ(出力部)を特定システムST-1の構成要素に加えるとともに、特定装置10に、表示制御部13に替えて不図示の出力制御部を備えさせる。
【0088】
出力制御部は、特定部12が特定した候補欠陥の種類のすべてをプリンタに出力させるとともに、状態情報40との内容の一致の程度が基準以上である基準状態情報51に対応付けられた基準有用情報52のすべてを、候補有用情報71として前記出力部に出力させる。前述の例で言えば、出力制御部は、プリンタに対して、状態情報40、種類情報70および候補有用情報71を紙媒体に印字させて出力させる。
【0089】
<小括>
情報処理装置100においては、特定部12が、対象欠陥に該当する可能性がある一般欠陥の種類を漏れなく特定する。これにより、対象欠陥がどの種類の一般欠陥に該当するかを検討する作業(以下、「対象欠陥の特定作業」)において、漏れのない検討範囲を設定できる。また、候補欠陥の特定を繰り返す必要がなく、対象欠陥の特定作業を簡易に行うことができる。
【0090】
また、情報処理装置100においては、表示制御部13として例示された出力制御部による制御によって、表示部2として例示された出力部が、すべての種類の候補欠陥のそれぞれに対応付けられた候補有用情報71を漏れなく出力する。これにより、ユーザは、対象欠陥に該当する可能性があるすべての種類の一般欠陥について、当該一般欠陥の発生を低減するための有用な情報を得ることができる。よって、これらの有用な情報が得られない場合に比べて、対象欠陥の対策検討が容易になる。
【0091】
また、情報処理装置100においては、表示制御部13による制御によって、すべての種類の候補欠陥について、種類情報70と当該候補欠陥に対応付けられた候補有用情報71とが、表示部2に並んだ状態で表示される。これにより、ユーザは、表示部2を見るだけで、対象欠陥に該当する可能性がある一般欠陥の種類と、当該一般欠陥の発生を低減するための有用な情報と、を互いに関連付けつつ漏れなく把握できる。よって、対象欠陥の特定作業と対策検討とを同時並行で進めることが容易になり、鋳造欠陥への対応を効率的に進めることが可能になる。
【0092】
また、情報処理装置100においては、入力部1が、第1対象指標411に係る3つの区分の中からいずれか1つを選択する選択操作を受け付けるだけで、特定部12が、対象欠陥に該当する可能性があるすべての種類の一般欠陥を候補欠陥として特定する。これにより、対象欠陥の特定作業において、漏れのない検討範囲を簡単に設定できる。
【0093】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、第1実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。このことは、後掲の第3実施形態についても同様である。
【0094】
図1に示すように、本発明の第2実施形態に係る特定システムST-2は、情報処理装置200が、特定装置10に替えて、特定部12aと表示制御部13aとを有する特定装置20を備えている。この点において、特定システムST-2は、本発明の第1実施形態に係る特定システムST-1と異なる。
【0095】
<特定システムの主要処理>
図8および
図9を参照して、特定システムST-2の主要処理について説明する。前提として、特定システムST-2が
図8に示すフローチャートの流れに沿って主要処理を実行する前に、表示制御部13aが、一覧画面21aにおける不図示の初期画面(
図4参照)を表示部2に表示させているものとする。
図9に示すように、一覧画面21aは、特定結果表示画面212aに「順位」の欄が設けられている点以外、一覧画面21と同じ画面構成になっている。
【0096】
まず、
図8に示すフローチャートのS201では、情報取得部11が、
図7に示すフローチャートにおけるS101の処理と同じ処理を実行する。次に、S202では、情報取得部11が、
図7に示すフローチャートにおけるS102の処理と同じ処理を実行する。
【0097】
次に、S203では、特定部12aが、状態情報40を構成する複数の評価情報41のそれぞれと、基準状態情報51を構成する複数の基準評価情報53のそれぞれと、を照合する。具体的には、特定部12aは、
図7に示すフローチャートにおけるS103の処理と同様、状態情報40と28種類の基準情報50のそれぞれに含まれる基準状態情報51とを照合する。より詳細には、特定部12aは、状態情報40に含まれる9つの第2対象指標412のそれぞれを、基準状態情報51を構成する9つの第2基準指標512のうちの対応する第2基準指標512と照合する。
【0098】
そして、特定部12aは、複数の基準評価情報53のうち、複数の評価情報41のうちのいずれか1つと内容が一致した基準評価情報53の個数をカウントする。具体的には、特定部12aは、9つの第2対象指標412のそれぞれに対応する第2基準指標512のうち、第2対象指標412と内容が一致した第2基準指標512の個数をカウントする。
【0099】
本実施形態では、S203における前述の個数をカウントするまでの一連の処理が、「特定部12aによる第1基準データベース60の参照」に該当する。特定部12aは、前述の個数をカウントするまでの一連の処理を、28種類の基準情報50のすべてに対して実行した後、S204の処理に進む。
【0100】
次に、S204では、特定部12aが、前述の個数が基準数以上となる基準状態情報51で示される一般欠陥の種類のすべてを、候補欠陥の種類として特定する。基準数は、ユーザが任意に設定できる自然数であり、本実施形態では1から8までの自然数の中から設定される。また、基準数は、記憶部3に予め記憶されていてもよいし、入力部1への入力操作によって入力されてもよい。
【0101】
本実施形態では、9つの第2対象指標412のそれぞれに対応する第2基準指標512のうち、第2対象指標412と内容が一致した第2基準指標512の個数が基準数以上になることが、「状態情報40の内容と基準状態情報51の内容との一致の程度が基準以上」となることに該当する。
【0102】
そして、特定部12aは、前述の個数が最も多い候補欠陥の種類から順に、対象欠陥に該当する可能性がより高い候補欠陥の種類として順位付けする。特定部12aが順位付けした候補欠陥の種類の順位は、
図9に示すような順位情報72となる。つまり、特定部12aは順位情報72を生成する。
【0103】
次に、S205では、特定部12aが、
図7に示すフローチャートにおけるS104の処理と同じ処理を実行する。S205でNOの場合、S202以降の処理が再び実行される。S205でYESの場合、特定部12aは、特定した候補欠陥の種類のすべてについて、種類情報70、当該種類情報70に対応付けられた候補有用情報71および順位情報72を表示制御部13aに送信する。また、第2対象指標412と内容が一致する第2基準指標512の個数が基準数以上になる基準情報50が1種類もない場合、特定部12aは、候補欠陥の種類を特定できない旨の情報を表示制御部13に送信する。
【0104】
次に、S206では、表示制御部13aが、取得した状態情報40、種類情報70、候補有用情報71および順位情報72を表示部2に送信することにより、これら4種類の情報を
図9に示す表示態様で表示部2に表示させる。具体的には、表示制御部13aは、
図9に示すように、一覧画面21aにおける「順位」の欄に順位情報72を表示させる。特定部12aから候補欠陥の種類を特定できない旨の情報を取得した場合において、表示制御部13が「特定不可」等の文字情報を表示部2に表示させる点については、第1実施形態と同様である。
【0105】
図9の例では、候補欠陥「砂かみ」が、対象鋳物に生じた可能性が最も高い候補欠陥として特定されており、「順位」の欄に可能性が最も高いことを示す「第1位」の順位情報72が表示されている。また、候補欠陥「のろかみ」が、対象鋳物に生じた可能性が3番目に高い候補欠陥として特定されており、「順位」の欄に可能性が2番目に高いことを示す「第2位」の順位情報72が表示されている。なお、順位情報72の表示態様は
図9の例に限定されず、順位付けが分かる表示態様であればどのようなものでもよい。
【0106】
S206の処理が終了することにより、特定システムST-2の主要処理がすべて終了する。なお、表示制御部13aによる、状態情報40、種類情報70、候補有用情報71および順位情報72の表示部2への表示が必須でないことは、表示制御部13と同様である。
【0107】
<小括>
情報処理装置200においては、特定部12aが、特定したすべての種類の候補欠陥に対して、第2対象指標412と内容が一致する第2基準指標512の個数が多い順に、対象欠陥に該当する可能性がより高い旨順位付けする。これにより、対象欠陥の特定作業を前述の順位付けに沿って行うことができ、当該特定作業を効率的に行うことが可能になる。
【0108】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態について、以下に説明する。
図1に示すように、本発明の第3実施形態に係る特定システムST-3は、情報処理装置300が、特定装置10および20に替えて、情報取得部11a、特定部12bおよび表示制御部13aを有する特定装置30を備えている。この点において、特定システムST-3は、本発明の第1および第2実施形態に係る特定システムST-1およびST-2と異なる。また、サーバ600の記憶部610が、第1基準データベース60に替えて第2基準データベース80を記憶している点においても、特定システムST-3は特定システムST-1およびST-2と異なる。
【0109】
<特定システムの主要処理>
図9、
図10および
図11を参照して、特定システムST-3の主要処理について説明する。特定システムST-2と同様、特定システムST-3が
図10に示すフローチャートの流れに沿って主要処理を実行する前に、表示制御部13aが一覧画面21aの初期画面を表示部2に表示させているものとする。
【0110】
まず、
図10に示すフローチャートのS301では、情報取得部11aが、
図7に示すフローチャートにおけるS101の処理と同じ処理を実行する。次に、S302では、情報取得部11aが、
図11に示すデータテーブル形式の第2基準データベース80(データベース)から28種類の基準情報50aを読み出して取得する。そして、情報取得部11aは、取得した28種類の基準情報50aを特定部12bに送信する。
【0111】
なお、
図11に示す第2基準データベース80には、図面の簡略化の観点から7種類の基準情報50aしか登録されていないが、実際には、28種類の基準情報50aが第2基準データベース80に登録されている。
【0112】
図11に示すように、基準情報50aは、一般欠陥の種類、基準状態情報51aおよび基準有用情報52で構成されている。基準状態情報51aは、基準状態情報51と同様に一般欠陥の状態を示す情報であり、28種類の一般欠陥のそれぞれに対応して28種類生成されている。つまり、第2基準データベース80には、28種類の一般欠陥のレコード毎に、基準状態情報51aと基準有用情報52とがフィールドに格納されている。
【0113】
本実施形態では、基準状態情報51aを構成する9種類の基準評価情報53(複数の基準評価情報)のそれぞれは、重み付け54がなされている。つまり、基準状態情報51aは、9種類の基準評価情報53と、当該9種類の基準評価情報53のそれぞれになされた重み付け54と、で構成されている。
【0114】
なお、
図11に示す第2基準データベース80では、図面の簡略化の観点から3種類の一般欠陥に対応する基準評価情報53にしか重み付け54がなされていないが、実際には、28種類の一般欠陥に対応する基準評価情報53のすべてに重み付け54がなされている。3つの区分の中から特定された第1基準指標511に対応付けられた第2基準指標512が基準評価情報53となる点については、第2実施形態と同様である。
【0115】
ここで、9種類の基準評価情報53のそれぞれになされた重み付け54は、基準着目点に対する評価の内容(言い換えれば第1基準指標511の内容)が一般欠陥の状態をどの程度の確率で示しているかによって、大きさが増減している。
【0116】
本実施形態では、第1基準指標511の内容が一般欠陥の状態を50%程度の確率で示すものであれば、当該第1基準指標511に対応する基準評価情報53に大きさ「1P」の重み付け54がなされる。第1基準指標511の内容が一般欠陥の状態を70%程度の確率で示すものであれば、当該第1基準指標511に対応する基準評価情報53に大きさ「2P」の重み付け54がなされる。第1基準指標511の内容が一般欠陥の状態を90%程度の確率で示すものであれば、当該第1基準指標511に対応する基準評価情報53に大きさ「3P」の重み付け54がなされる。第1基準指標511の内容が一般欠陥の状態を示している確率は、鋳造欠陥の技術分野において技術常識とされている数値でもよいし、ユーザの経験側から導き出された数値でもよい。
【0117】
また、9種類の基準評価情報53(複数の基準評価情報)のそれぞれになされた重み付け54は、一般欠陥の種類に応じて、少なくとも1つ以上の重み付け54の大きさが他の重み付け54の大きさと異なっている。
図11の例においても、一般欠陥の種類が「あれ肌」、「鋳割れ」および「押込み」のそれぞれについて、少なくとも1つ以上の重み付け54の大きさが他の重み付け54の大きさと異なっている。
【0118】
なお、
図11に示す基準評価情報53毎の大きさはあくまで一例であり、どの基準評価情報53にどの大きさの重み付け54を付与するかはユーザが任意に変更できる。また、「1P」から「3P」までの大きさの重み付け54を付与する基準も、ユーザが任意に変更できる。例えば、確率30%の場合を「1P」とし、確率60%の場合を「2P」としてもよい。さらには、重み付け45の大きさの段階もユーザが任意に変更でき、例えば重み付け54の大きさを「1P」から「4P」の4段階にしてもよい。
【0119】
次に、S303では、特定部12bが、状態情報40を構成する複数の評価情報41のそれぞれと、基準状態情報51aを構成する複数の基準評価情報53aのそれぞれと、を照合する。特定部12bによる照合処理の方法は、特定部12aと同様である。
【0120】
そして、特定部12bは、複数の基準評価情報53aのうち、複数の評価情報41のうちのいずれか1つと内容が一致した基準評価情報53の個数をカウントするときに、重み付け54を加味する。これにより、特定部12bは、複数の基準評価情報53aのうち、複数の評価情報41のうちのいずれか1つと内容が一致した基準評価情報53aの重み付け54をカウントする。具体的には、特定部12bは、9つの第2対象指標412のそれぞれに対応する第2基準指標512のうち、第2対象指標412と内容が一致した第2基準指標512(つまり基準評価情報53a)になされている重み付け54をカウントする。
【0121】
本実施形態では、S303における重み付け54をカウントするまでの一連の処理が、「特定部12bによる第2基準データベース80の参照」に該当する。特定部12bは、重み付け54をカウントするまでの一連の処理を28種類の基準情報50aのすべてに対して実行した後、S304の処理に進む。
【0122】
次に、S304では、特定部12bが、合計値が基準値以上となる基準状態情報51aで示される一般欠陥の種類のすべてを、候補欠陥の種類として特定する。合計値は、特定部12bがカウントした重み付け54の大きさを合計した値である。基準値は、ユーザが任意に設定でき、記憶部3に予め記憶されていてもよいし、入力部1への入力操作によって入力されてもよい。
【0123】
本実施形態では、9つの第2対象指標412のそれぞれに対応する第2基準指標512のうち、第2対象指標412と内容が一致した第2基準指標512になされている重み付け54の合計値が基準値以上になることが、「状態情報40の内容と基準状態情報51aの内容との一致の程度が基準以上」となることに該当する。
【0124】
そして、特定部12bは、合計値が最も多い候補欠陥の種類から順に、対象欠陥に該当する可能性がより高い候補欠陥の種類として順位付けする。特定部12bが順位付けした候補欠陥の種類の順位は、特定部12aによる順位付けと同様、
図9に示すような順位情報72となる。つまり、特定部12bも、特定部12aと同様に順位情報72を生成する。
【0125】
次に、S305では、特定部12bが、
図7に示すフローチャートにおけるS104の処理と同じ処理を実行する。S305でNOの場合、S302以降の処理が再び実行される。S305でYESの場合、特定部12bは、特定した候補欠陥の種類のすべてについて、種類情報70、当該種類情報70に対応付けられた候補有用情報71および順位情報72を表示制御部13aに送信する。また、第2対象指標412と内容が一致する第2基準指標512になされている重み付け54の合計値が基準値以上になる基準情報50が1種類もない場合、特定部12bは、候補欠陥の種類を特定できない旨の情報を表示制御部13に送信する。
【0126】
次に、S306では、表示制御部13aが、
図8に示すフローチャートにおけるS206と同じ処理を実行する。S306の処理が終了することにより、特定システムST-3の主要処理がすべて終了する。
【0127】
<小括>
情報処理装置300においては、特定部12bが、すべての種類の候補欠陥に対して、評価情報41と内容が一致する基準評価情報53の合計値が多い順に、対象欠陥に該当する可能性がより高い旨順位付けする。これにより、対象欠陥の特定作業を前述の順位付けに沿って行うことができ、当該特定作業を効率的に行うことが可能になる。
【0128】
また、情報処理装置300においては、基準状態情報51aを構成する複数の基準評価情報53aのそれぞれに付与された重み付け54の大きさが、一般欠陥の種類に応じて互いに異なっている。これにより、特定部12bによる候補欠陥の順位付けの精度が高まることから、対象欠陥の特定作業を確度の高い情報に基づいて行うことが可能になる。
【0129】
〔第4実施形態〕
本発明の第4実施形態について、以下に説明する。
図1に示すように、本発明の第4実施形態に係る特定システムST-4は、情報処理装置400が、特定装置10~30に替えて、情報取得部11、特定部12cおよび表示制御部13bを有する特定装置10aを備えている。この点において、特定システムST-4は、本発明の第1~第3実施形態に係る特定システムST-1~ST-3と異なる。また、サーバ600に替えてサーバ601を備えている点においても、特定システムST-4は、本発明の第1~第3実施形態に係る特定システムST-1~ST-3と異なる。
【0130】
<特定システムの特徴的構成および主要処理>
図1および
図12~
図14を参照して、特定システムST-4の特徴的構成および主要処理について説明する。本実施形態では、サーバ601は、
図1に示すように、記憶部610が第1基準データベース60および学習用データベース90を記憶している。サーバ601の記憶部610に記憶された第1基準データベース60は、図示しないものの、9種類の基準着目点のすべてについて、基準評価が区分「3(両方)」以外の2つの区分「1」および「2」で構成されている(
図2参照)。
【0131】
学習用データベース90は、後述の特定モデル641の構築に用いられる教師データである。学習用データベース90は、初期状態から出発して、特定部12cが後述の特定モデル641を用いた特定処理を実行する毎に最新の履歴情報(詳細については後述)が追加され更新される。本実施形態では、初期状態の学習用データベース90は、
図12に示すように、例題データ91と正解データ92とのデータセットとして構成されている。
【0132】
例題データ91は、ユーザが任意の期間内に入力部1を介して選択した9種類の評価情報41(
図15参照)を、それぞれ「0」または「1」に二値化した状態で構成されている。例題データ91を構成する「0」は第2対象指標412の「2」に対応しており、同じく例題データ91を構成する「1」は第2対象指標412の「1」に対応している。正解データ92は、28種類の一般欠陥のうち、ユーザが任意の期間内に特定結果表示画面212bに表示された特定結果(
図15参照)に基づいて実際に対策した欠陥の種類を「1」で表し、他の対策しなかった欠陥の種類を「0」で表したものである。前述の特定結果は、本発明の第1実施形態に係る特定方法によって特定されたものである。また、
図12の例に示すように、実際に対策した欠陥が2種類以上になるケースもある。
【0133】
つまり、初期状態の学習用データベース90は、特定部12cが第1実施形態と同様の手法で候補欠陥の種類を特定したときの特定結果を利用して生成されたものである。「第1実施形態と同様の手法」とは、具体的には、特定部12cが、第1基準データベース60を参照して、状態情報40との内容一致の程度が基準以上となる基準状態情報51で示される一般欠陥の種類のすべてを、候補欠陥の種類として特定する手法である。そして、ユーザは、第1実施形態と同様の手法によって特定された幾つかの候補欠陥の種類の中から、自身の経験および知見に基づいて実際に対策する欠陥を選択する。
【0134】
ただし、初期状態の学習用データベース90は、第1実施形態と同様の手法で特定された候補欠陥の種類を利用して生成されたものでなくてもよい。例えば、ユーザが9種類の評価情報41を特定した後、特定システムST-4を用いずにユーザ自身の経験および知見に基づいて実際に対策した場合における、対策した欠陥/しなかった欠陥の種類を正解データ92としてもよい。
【0135】
サーバ601は、モデル構築部640をさらに備えている。モデル構築部640は、学習用データベース90を用いた機械学習により、特定モデル641を構築する。特定モデル641は、
図13に示すような入力層とかくれ層と出力層とで構成された、ニューラルネットワークとなっている。入力層には、ユーザが入力部1を介して選択した選択した9種類の評価情報41が「0」または「1」に二値化された状態で入力される。「0」の評価情報41は第2対象指標412の「2」に対応しており、「1」の評価情報41は第2対象指標412の「1」に対応している。かくれ層は、入力層に入力された入力値に重みを掛け、さらにバイアス値を足した値を、シグモイド関数を通じて出力層に向けて情報伝達する。出力層からは種類情報70および予測情報73が出力される。予測情報73の詳細については後述する。
図1に示すように、モデル構築部640は、構築した特定モデル641を記憶部610に記憶させる。
【0136】
なお、モデル構築部640が行う機械学習の手法はニューラルネットワークに限定されず、サポートベクターマシン、決定木、ロジスティック回帰、ディープラーニング等の公知の手法を採用できる。また、モデル構築部640は、制御部5または630に内蔵されていてもよく、情報処理装置400と異なる他の情報処理装置(不図示)に備わっていてもよい。さらには、特定モデル641は、記憶部3に記憶されてもよく、あるいは他の情報処理装置の記憶部に記憶されてもよい。
【0137】
本実施形態では、モデル構築部640は、機械学習の学習結果が収束するまでの学習回数と計算時間との関係に基づいて、特定モデル641を構成するかくれ層の層数および節点数を調整する。具体的には、モデル構築部640は、機械学習の学習結果が収束するまでの学習回数がより少なくなり、かつ、機械学習の学習結果が収束するまでの計算時間がより短くなるという観点から、両者のバランスが取れた層数と節点数との組み合わせを1つ以上抽出する。そして、モデル構築部640は、抽出した組み合わせの中から、機械学習を複数回試行したときの学習結果の収束状況が最も良好な1つの組み合わせを、最終的な層数と節点数との組み合わせとして決定する。
【0138】
以下、モデル構築部640による層数および節点数の調整処理を、
図14を参照しつつ説明する。なお、
図14の例では、モデル構築部640は、初期状態の学習用データベース90を機械学習に用いる。まず、モデル構築部640は、層数と節点数との組み合わせを7パターンに変えつつ機械学習を行い、当該7パターンのそれぞれについて学習回数と計算時間との関係を算出する。次に、モデル構築部640は、算出結果から、「3層54節点」および「3層72節点」の2パターンを最終的な層数と節点数との組み合わせの候補として特定する。
【0139】
次に、モデル構築部640は、かくれ層が前述の2パターンで構成された特定モデル641のそれぞれに対して、機械学習を10回試行する。そして、モデル構築部640は、10回の試行結果に基づいて、最終的な層数と節点数との組み合わせを決定する。図示しないものの、「3層54節点」の組み合わせでは3回未収束となった一方、「3層72節点」の組み合わせでは10回すべて収束したことから、モデル構築部640は、「3層72節点」を最終的な層数と節点数との組み合わせとして決定する。
【0140】
図1に示す特定部12cは、第1実施形態と同様の手法によって候補欠陥の種類を特定するだけでなく、特定モデル641を用いて候補欠陥の種類を特定する。具体的には、特定部12cは、学習結果が収束した状態の特定モデル641を記憶部610から読み出し、当該特定モデル641にユーザが選択した9種類の評価情報41を入力する。そして、特定部12cは、前述の特定モデル641から出力された一般欠陥の種類を、候補欠陥の種類として特定する。特定モデル641を用いたときの特定結果は、種類情報70と、特定した候補欠陥の種類が対象欠陥である確率を示す予測情報73(
図15参照)と、で構成される。なお、モデル構築部640が特定モデル641を構築することは必須ではなく、例えば特定部12cが特定モデルを構築してもよい。この場合、モデル構築部640は不要となる。
【0141】
表示制御部13bは、特定部12cから取得した状態情報40、種類情報70、候補有用情報71および予測情報73を表示部2に送信することにより、これら4種類の情報を表示部2に表示させる(
図15参照)。
【0142】
<画面遷移、学習用データベースの更新および予測情報の精度>
図15~
図17を参照して、画面遷移、学習用データベース90の更新および予測情報73の精度について説明する。
図15の符号1501に示すように、一覧画面21bの特定結果表示画面212bには、特定部12cが第1実施形態と同様の手法で特定した結果(種類情報70および当該種類情報70に対応付けられた候補有用情報71)が、第1実施形態と同じ表示態様で表示される。
【0143】
加えて、特定結果表示画面212bには、特定部12cが特定モデル641を用いて特定した結果も表示される。具体的には、特定部12cが特定した候補欠陥の種類のすべてについて、種類情報70と当該種類情報70に対応付けられた予測情報73とが、画面向かって左右方向に並んだ状態で表示される。以下、特定結果表示画面212bに表示される、任意の種類の候補欠陥における種類情報70と予測情報73との集合を、「予測情報群」と称する。また、特定結果表示画面212bには、特定部12cが特定した候補欠陥の種類毎の予測情報群が、画面向かって上下方向に並んだ状態で表示される。
【0144】
特定結果表示画面212bに表示されたすべての予測情報73の合計値は、100%以下となる。また、表示制御部13bは、特定部12cが特定した予測情報73のうち、確率が基準値以下のものについては、当該予測情報73に対応する候補欠陥が対象欠陥である可能性がないと判断して表示部2に表示させない。前述の基準値については、ユーザが任意に設定できる。
図15の符号1501の例では、「型ずれ」、「中子不良」および「きれ」の3種類の候補欠陥のいずれについても予測情報73が30%を超えており、対象欠陥の可能性があるとして表示されている。また、これら3種類の予測情報73の合計値は98%となっている。このような表示結果になっているのは、特定部12cが初期状態の学習用データベース90で機械学習させた特定モデル641を用いたためである。
【0145】
特定結果表示画面212bには、記録ボタン213が表示される。入力部1が記録ボタン213を押下する操作を受け付けると、表示部2の表示画面が、一覧画面21bから
図15の符号1502に示すような履歴画面22に遷移する。履歴画面22には、ユーザが過去に選択した選択日時毎の9種類の評価情報41(具体的には第1対象指標411)と、当該選択日時毎の実際に対策した欠陥の種類が一覧表示される。
【0146】
表示部2の表示画面が一覧画面21bから履歴画面22に遷移した状態において、入力部1がボタン221を押下する操作を受け付けると、セル222上に不図示のプルダウンメニューが表示される。このプルダウンメニューには28種類の一般欠陥のそれぞれを示す区分が表示される。入力部1が28種類の区分のいずれか1つを押下する操作を受け付けると、押下された区分に対応する一般欠陥の種類がセル222内に表示される。
【0147】
図15の符号1502の例では、選択日時が最も直近の回の「2022年12月22日 16時19分」において、セル222内に「中子不良」が表示されている。ここで、この選択日時は、特定部12cが特定モデル641を用いて候補欠陥を特定した第1回目の日時となる。言い換えれば、前述の選択日時は、特定部12cが、初期状態の学習用データベース90で機械学習させた特定モデル641を用いて候補欠陥を特定した日時となる。なお、ユーザが、一組の9種類の評価情報41に基づいて2種類以上の欠陥を実際に対策する場合も想定できることから、前述のプルダウンメニューが表示されるセル222を選択日時毎に2つ以上設けてもよい。
【0148】
履歴画面22には、「特記事項」の欄が設けられている。「特記事項」の欄は、実際に欠陥が発生したときの当該欠陥の状況など、ユーザが気づいたこと等を自由に表示させることができる欄である。本実施形態では、便宜上、「特記事項」の欄に候補欠陥の種類を特定した回数を表示させるものとする。具体的には、「特記事項」の欄における選択日時毎のセルには、特定部12cが第1実施形態と同様の手法によって候補欠陥の種類を特定した回数が表示される。
図15の符号1502の例では選択日時が過去に遡るほど回数が増えるように表示されているが、選択日時が現在に近づくほど回数が増えるように表示されてもよい。
【0149】
また、「特記事項」の欄における選択日時毎のセルには、特定部12cが特定モデル641を用いて候補欠陥の種類を特定した回数が表示される。
図15の符号1502の例では、特定部12cが特定モデル641を用いて候補欠陥を特定した第1回目の日時が「2022年12月22日 16時19分」であることから、対応するセル内に「学習1回目」と表示される。
【0150】
入力部1が前述のような履歴画面22の操作を受け付けると、特定部12cが、履歴画面22を介して入力された最新の履歴情報をサーバ601に送信する。最新の履歴情報は、最も直近の選択日時における、9種類の評価情報41とユーザが実際に対策した欠陥の種類とで構成される。サーバ601は、受信した最新の履歴情報を記憶部610に送信し、記憶部610は、学習用データベース90に最新の履歴情報を反映させて当該学習用データベース90を更新する。モデル構築部640は、更新後の学習用データベース90を用いて特定モデル641を再学習させ、当該特定モデル641を更新する。
【0151】
図15の例において、ユーザが「2022年12月23日 9時59分」に選択操作を行い、特定部12cが更新後の特定モデル641を用いて候補欠陥の種類を特定した結果を、
図16に示す。前提として、「2022年12月23日 9時59分」の回における9種類の評価情報41の内容は、「2022年12月22日 16時19分」の回における9種類の評価情報41の内容と同一であるものとする。
図16に示すように、ユーザが「2022年12月23日 9時59分」の回で実際に対策した欠陥の種類が「中子不良」であるところ、特定結果表示画面212bに表示された3種類の予測情報73の中で「中子不良」の確率(37%)が最も高くなっている。このことから、前述の再学習によって特定部12cの特定精度が向上していることが分かる。
【0152】
ユーザは、「2022年12月23日 9時59分」の回においても「2022年12月22日 16時19分」の回と同様の操作を行う。つまり、「2022年12月23日 9時59分」の回のセル222上に表示されるプルダウンメニューの中から「中子不良」を選択し、
図16の符号1601に示すように「中子不良」をセル222内に表示させる。一方、「特記事項」の欄における「2022年12月23日 9時59分」回のセルには、
図16の符号1602のように「学習2回目」と表示される。
【0153】
その後、記憶部610が学習用データベース90を再更新し、モデル構築部640が特定モデル641を再々学習させて当該特定モデル641を再更新する。そして、ユーザが「2022年12月23日 9時59分」以降の特定日時に選択操作を行い、特定部12cが再更新後の特定モデル641を用いて候補欠陥の種類を特定した結果を、
図17に示す。前提として、前述の特定日時における9種類の評価情報41の内容は、「2022年12月23日 9時59分」の回における9種類の評価情報41の内容と同一であるものとする。
図17に示すように、前述の特定日時において実際に対策した欠陥の種類が「中子不良」であるところ、特定結果表示画面212bには予測情報73の確率が100%となる「中子不良」の種類情報70のみが表示される。このことから、再々学習によって特定部12cの特定精度がさらに向上していることが分かる。
【0154】
<小括>
情報処理装置400においては、第1実施形態と同様の手法によって候補欠陥の種類を特定するだけでなく、特定モデル641を用いて候補欠陥の種類を特定する。また、特定モデル641を用いたときの特定結果には、特定した候補欠陥の種類が対象欠陥である確率を示す予測情報73が含まれる。これにより、予測情報73を加味して対象欠陥の特定作業を行うことができ、当該特定作業を効率的に、かつ精度高く行うことが可能になる。
【0155】
〔ソフトウェアによる実現例〕
特定装置10~30及び10a(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部5に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0156】
この場合、前述の装置は、前述のプログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置とにより前述のプログラムを実行することで、第1~第4実施形態で説明した各機能が実現される。
【0157】
前述のプログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、前述の装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、前述のプログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して前述の装置に供給されてもよい。
【0158】
また、前述の各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、前述の各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより前述の各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0159】
〔付記事項〕
本発明は前述した第1~第4実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0160】
2 表示部(出力部)
10、10a、20、30 特定装置
11、11a 情報取得部
12、12a、12b、12c 特定部
13、13a、13b 表示制御部(出力制御部)
40 状態情報
41 評価情報
50、50a 基準情報
51、51a 基準状態情報
52 基準有用情報
53、53a 基準評価情報
54 重み付け
60 第1基準データベース(データベース)
70 種類情報
71 候補有用情報
80 第2基準データベース(データベース)
411 第1対象指標(指標)
412 第2対象指標(指標)
511 第1基準指標(指標)
512 第2基準指標(指標)