(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002315
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】減衰バルブおよび緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/34 20060101AFI20231228BHJP
F16F 9/508 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
F16F9/34
F16F9/508
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101427
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】濁澤 輝
(72)【発明者】
【氏名】土屋 明寛
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 功
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069DD47
3J069EE02
3J069EE10
3J069EE28
3J069EE31
3J069EE64
(57)【要約】
【課題】全長を短縮化でき、安価で組立性を向上できるバルブおよび緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明の減衰バルブ1は、環状の凹部2dと、凹部2dの底部2d1に開口するポート2cと、凹部2dの外周から立ち上がる環状の弁座2eと、環状であって凹部2dに臨む内周面を有する対向部2fとを具備する弁座部材2と、凹部2d内に凹部2dの底部2d1から離間して配置されており、環状であって外周面と対向部2fとの間に環状隙間Pを形成するとともに外周側が自由端として凹部2d内で弁座部材2に対して離間する方向への撓みが許容されるサブバルブ3と、環状であってサブバルブ3の反弁座部材側に軸方向で離間して積層されるとともに外周側が自由端として撓みが許容されて弁座2eに離着座可能なリーフバルブ4とを備えている。。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の凹部と、前記凹部の底部に開口するポートと、前記凹部の外周から立ち上がる環状の弁座と、環状であって前記凹部に臨む内周面を有する対向部とを具備する弁座部材と、
前記凹部内に前記凹部の底部から離間するように配置されており、環状であって外周面と前記対向部との間に環状隙間を形成するとともに、外周側が自由端として前記凹部内で前記弁座部材に対して離間する方向への撓みが許容されるサブバルブと、
環状であって前記サブバルブの反弁座部材側に軸方向で離間して配置されるとともに外周側が自由端として撓みが許容されて前記弁座に離着座可能なリーフバルブとを備えた
ことを特徴とする減衰バルブ。
【請求項2】
前記弁座部材は、前記対向部と前記弁座の前記リーフバルブが離着座するシート面との間に傾斜面を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項3】
前記弁座部材は、前記凹部を形成する外周側の外壁に装着されるリングを有し、
前記対向部は、前記リングの内周面で形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項4】
前記弁座部材は、前記凹部内に収容される有底筒状のカップを有し、
前記対向部は、前記カップの筒部で形成され、
前記サブバルブと前記カップの底部との間および前記サブバルブと前記リーフバルブとの間にそれぞれ環状であって前記サブバルブより小径な間座が介装され、
前記弁座部材、前記カップ、前記サブバルブ、前記間座および前記リーフバルブの内周を保持する軸部材を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項5】
前記サブバルブと前記リーフバルブとの間に前記サブバルブと離間して配置され、環状であって外周側の撓みが許容されるとともに、前記サブバルブの外周が前記弁座部材から離間する方向へ撓んで当接すると前記サブバルブの撓みを規制する環状のバルブストッパを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項6】
筒状のアウターシェルと、前記アウターシェル内に移動可能に挿入されるロッドとを有して伸縮可能な緩衝器本体と、
請求項1から6のいずれか一項に記載の減衰バルブとを備え、
前記弁座部材は、前記緩衝器本体内に前記ポートによって連通される二つの作動室を区画している
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰バルブおよび緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、減衰バルブは、例えば、緩衝器の伸縮時に生じる液体の流れに抵抗を与えて減衰力を発生するのに利用されている。また、そのような減衰バルブの中には、内周がピストンロッドに固定されて外周の軸方向の両側へ撓みが許容される環状弁体と、環状弁体の外周に対向して液体の通過を許容する隙間を形成する環状対向部を有するカップ状のバルブケースと、環状弁体の内周を支持するための間座と、環状弁座の撓みを規制するバルブストッパとを備えたものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
このように構成された減衰バルブによれば、緩衝器の伸縮速度(ピストン速度)が低く、環状弁体が撓まない速度領域では、環状弁体の外周とバルブケースの環状対向部との間にできる隙間が狭い状態に維持される。他方、緩衝器のピストン速度が上昇して環状弁体の外周側が撓むと、環状弁体の外周端が環状対向部から離間するために前記隙間が広くなる。
【0004】
よって、前述の減衰バルブを減衰力の発生に利用した緩衝器では、伸縮速度が低速よりも低い微低速域では減衰係数を高くして減衰力を伸縮速度に比例させて速やかに立ち上げ、低速域では減衰係数を微低速域よりも小さくでき、車両の乗心地の向上に適した減衰力特性を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の減衰バルブは、緩衝器が微低速域で伸縮する際に減衰力を発生するために利用されており、緩衝器が低速以上の伸縮速度で伸縮する際に減衰力を発生するリーフバルブと直列に設置されている。
【0007】
具体的には、減衰バルブは、緩衝器におけるシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンに対して、当該ピストンに設けたポートを開閉する積層リーフバルブとともに積層されてピストンロッドの外周に装着されている。
【0008】
よって、このような減衰バルブがピストンおよびリーフバルブに対して積層されて緩衝器に設置されており、ピストン、リーフバルブおよび減衰バルブを含めたピストン部の全長が長くなるため、緩衝器におけるストローク長が短くなってしまう問題がある。
【0009】
また、シリンダ径の異なる緩衝器を製造するためには、シリンダ径に応じたバルブケースを複数用意しておかねばならず、部品管理が面倒であり製造コストも高くなってしまう。
【0010】
さらに、減衰バルブが環状弁体とバルブケースの他にも間座やバルブストッパといった多くの部品で構成されているため、減衰バルブの組立性が悪く減衰バルブの組立に手間がかかってしまう。
【0011】
そこで、本発明は、全長を短縮化でき、安価で組立性の良好な減衰バルブおよび緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の減衰バルブは、環状の凹部と、凹部の底部に開口するポートと、凹部の外周から立ち上がる環状の弁座と、環状であって凹部に臨む内周面を有する対向部とを具備する弁座部材と、凹部内に凹部の底部から離間して配置されており環状であって外周面と対向部との間に環状隙間を形成するとともに外周側が自由端として凹部内で弁座部材に対して離間する方向への撓みが許容されるサブバルブと、環状であってサブバルブの反弁座部材側に軸方向で離間して積層されるとともに外周側が自由端として撓みが許容されて弁座に離着座可能なリーフバルブとを備えている。
【0013】
このように構成された減衰バルブでは、リーフバルブが離着座する弁座を備えた弁座部材に、サブバルブを収容するとともにサブバルブの撓みを許容する凹部とサブバルブの外周と対向する対向部とを設けているので、弁座部材がサブバルブとリーフバルブの双方の弁座として機能できる。このように、減衰バルブによれば、サブバルブとリーフバルブの双方の弁座を1つの弁座部材に集約でき、部品点数が減少するとともに、全長が短くなる。
【0014】
また、減衰バルブにおける弁座部材は、対向部と弁座のリーフバルブが離着座するシート面との間に傾斜面を備えてもよい。このように弁座部材が傾斜面を備えていると、サブバルブが撓んだ際にサブバルブの外周と弁座部材との間の隙間の流路面積が速やかに大きくなり、緩衝器が低速で収縮する際の減衰力にサブバルブが影響を与えないようにできる。また、弁座部材を焼結によって製造する場合、弁座のシート面とシート面に垂直な円筒面で構成される対向部との間に傾斜面を設けることで、対向部と傾斜面との間に脆弱な断面が直角の角部が形成されないので、減衰バルブによれば、弁座部材の耐久性を向上させ得るとともに、弁座のシート面に対して径方向で対向部を至近に配置できるようになり、対向部の内径およびサブバルブの外径の設計自由度を向上させ得る。
【0015】
さらに、減衰バルブは、サブバルブとリーフバルブとの間にサブバルブと離間して配置され、環状であって外周側の撓みが許容されるとともにサブバルブの外周が弁座部材から離間する方向へ撓んで当接するとサブバルブの撓みを規制するバルブストッパを備えてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、サブバルブがバルブストッパに当接しつつ弁座部材から離間する方向へ撓むと、バルブストッパの他にリーフバルブによっても支持されるので、サブバルブのうねり変形を抑制してサブバルブの疲労を軽減できる。
【0016】
そして、減衰バルブにおける弁座部材が凹部を形成する外周側の外壁に装着されるリングを備え、対向部がリングの内周面で形成されてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、弁座部材のリング以外の部位である弁座部材本体を焼結によって製造する場合、内径の寸法精度が高いリングを凹部の外壁に装着することができるので、サブバルブとリングとの間の環状隙間の寸法管理が容易となるとともに、狙い通りの減衰力特性を実現し易くなる。
【0017】
さらに、減衰バルブは、弁座部材が凹部内に収容される有底筒状のカップを有し、対向部がカップの筒部で形成され、サブバルブとカップの底部との間およびサブバルブとリーフバルブとの間にそれぞれ環状であってサブバルブより小径な間座が介装され、弁座部材、カップ、サブバルブ、間座およびリーフバルブの内周を保持する軸部材を備えてもよい。
【0018】
このように構成された減衰バルブによれば、弁座部材のカップ以外の部位である弁座部材本体を焼結によって製造する場合、筒部の内径の寸法精度が高いカップを凹部内に収容すればよいので、サブバルブとカップの筒部との間の環状隙間の寸法管理が容易となるとともに、狙い通りの減衰力特性を実現し易くなる。
【0019】
また、緩衝器は、筒状のアウターシェルと、アウターシェル内に移動可能に挿入されるロッドとを有して伸縮可能な緩衝器本体と、減衰バルブとを備えており、弁座部材は、緩衝器本体内にポートによって連通される二つの作動室を区画している。このように構成された緩衝器によれば、減衰バルブの全長を短縮化できるので、ストローク長の確保が容易となるとともに減衰バルブの部品点数の削減によって組立性も向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の減衰バルブおよび緩衝器によれば、全長を短縮化でき、安価で組立性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施の形態の減衰バルブを備えた緩衝器の縦断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態の減衰バルブの断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態の減衰バルブの一部分の拡大図である。
【
図4】本発明の一実施の形態の減衰バルブを備えた緩衝器の減衰力特性を示した図である。
【
図5】本発明の一実施の形態の第1変形例の減衰バルブの断面図である。
【
図6】本発明の一実施の形態の第2変形例の減衰バルブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1および
図2に示すように、本実施の形態の減衰バルブ1は、弁座部材としてのバルブケース2と、サブバルブ3と、リーフバルブ4とを備えており、アウターシェル14と、アウターシェル14内に移動可能に挿入されるロッド12とを有して伸縮可能な緩衝器本体10内に設けられており、緩衝器Dのベースバルブとして利用されている。そして、この緩衝器Dの場合、図示しない車両における車体と車軸との間に介装されて使用され、車体および車輪の振動を抑制する。
【0023】
以下、減衰バルブ1および緩衝器Dの各部について詳細に説明する。
図1に示すように、緩衝器本体10は、シリンダ11と、シリンダ11の外周を覆う有底筒状のアウターシェル14と、アウターシェル14内であってシリンダ11内に移動可能に挿入されるロッド12と、ロッド12に連結されてシリンダ11内に移動可能に挿入されるとともにシリンダ11内を作動室としての伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン13とを備えている。
【0024】
そして、ロッド12の
図1中上端となる基端には、ブラケット(図示せず)が設けられており、ロッド12が図外の前記ブラケットを介して車体と車軸の一方に連結される。また、アウターシェル14の底部14aにもブラケット(図示せず)が設けられており、アウターシェル14が図外の前記ブラケットを介して車体と車軸の他方に連結される。
【0025】
このようにして緩衝器Dにおける緩衝器本体10は車体と車軸との間に介装される。そして、車両が凹凸のある路面を走行する等して車輪が車体に対して上下に振動すると、ロッド12がアウターシェル14内に出入りして、ピストン13がシリンダ11内を上下(軸方向)に移動する。
【0026】
また、緩衝器本体10は、シリンダ11およびアウターシェル14の上端を塞ぐとともに、内周にロッド12が摺動自在に挿通される環状のロッドガイド15を備えている。よって、シリンダ11およびアウターシェル14内は、密閉空間とされている。
【0027】
さらに、シリンダ11の下端には、弁座部材としてのバルブケース2が嵌合されている。そして、アウターシェル14の
図1中上端は、外周側から加締め加工されて内側へ向けて折り曲げられており、アウターシェル14内に収容されるロッドガイド15、シリンダ11およびバルブケース2を底部14aとともに挟持している。
【0028】
バルブケース2は、シリンダ11内の圧側室R2と、シリンダ11とアウターシェル14との間の環状隙間で形成されるリザーバRとを区画している。シリンダ11内の伸側室R1と圧側室R2には、液体が充填されており、リザーバR内には気体と液体とが充填されている。なお、緩衝器本体10内に充填される液体は、作動油や水、水溶液、その他の液体等とされてもよい。
【0029】
そして、緩衝器Dの伸長時にロッド12がシリンダ11から退出し、その退出したロッド12の体積によってシリンダ内の容積が増加すると、リザーバRから液体がシリンダ11内に供給される。反対に、緩衝器Dの収縮時にロッド12がシリンダ11内へ侵入し、その侵入したロッド12の体積によってシリンダ内の容積が減少すると、シリンダ11内から液体がリザーバRに排出される。
【0030】
このように、本実施の形態の緩衝器Dは、片ロッド、複筒型の緩衝器として構成されており、リザーバRからシリンダ11内への液体の給排によってシリンダ11に出入りするロッド12の体積補償をする。
【0031】
ロッド12は、先端側に設けた小径部12aと、小径部12aより
図1中上側の大径部12bとの境に設けられた段部12cと、小径部12aの先端外周に設けられた螺子部12dとを備えている。
【0032】
つづいて、ピストン13は、環状であってロッド12の小径部12aの外周に嵌合されており、ロッド12の螺子部12dに螺着されるピストンナット21によってロッド12に固定されており、ロッド12とともにシリンダ11内で軸方向となる
図1中上下方向へ移動できる。より詳細には、ピストン13は、シリンダ11の内周に摺接してシリンダ11内を
図1中上方の伸側室R1と下方の圧側室R2とに区画し、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側ポート13aおよび圧側ポート13bとを備えている。
【0033】
ピストン13の
図1中下面には、環状であってロッド12の小径部12aに内周側が固定されて外周側の撓みが許容されるとともに伸側ポート13aを開閉する積層リーフバルブでなる伸側減衰バルブ16と、伸側減衰バルブ16の撓みの支点の位置を設定する環状の間座17が重ねられている。
【0034】
また、ピストン13の
図1中上面には、環状であってロッド12の小径部12aに内周側が固定されて外周側の撓みが許容されるとともに圧側ポート13bを開閉する圧側チェックバルブ18と、圧側チェックバルブ18の撓みの支点の位置を設定する環状の間座19が重ねられている。
【0035】
これらの間座19、圧側チェックバルブ18、ピストン13、伸側減衰バルブ16および間座17は、順にロッド12の小径部12aの外周に組み付けられた後、ロッド12の先端の螺子部12dに螺着されるピストンナット21とロッド12の段部12cとで挟持されてロッド12に固定される。
【0036】
伸側減衰バルブ16は、複数の環状板を積層して構成された積層リーフバルブであって、内周が前述の通りロッド12に固定されてピストン13の
図1中下端に積層されてピストン13の伸側ポート13aの出口端を開閉するとともに、外周に常時伸側ポート13aを圧側室R2に連通させる切欠オリフィス16aを備えている。よって、伸側減衰バルブ16は、伸側ポート13aの開口端を閉じた状態では切欠オリフィス16aのみを介して伸側ポート13aを圧側室R2に連通させる。
【0037】
そして、伸側減衰バルブ16は、伸側ポート側面を正面とすると、伸側ポート13aを介して正面側に作用する伸側室R1の圧力が背面側に作用する圧側室R2の圧力より高くなり、両者の圧力の差が開弁圧に達すると外周を撓ませて開弁し、伸側ポート13aを開放する。伸側減衰バルブ16は、撓んで外周をピストン13から離間させるとピストン13との間に環状の隙間を形成し、当該隙間を介して伸側ポート13aを圧側室R2に連通させて伸側ポート13aを通過する液体の流れに抵抗を与える。なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、伸側減衰バルブ16は、緩衝器Dの伸長速度が高速域にある場合に開いて、伸側ポート13aを伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える。
【0038】
他方の圧側チェックバルブ18は、複数の環状板を積層して構成されており、内周が前述の通りロッド12に固定されてピストン13の
図1中上端に積層されてピストン13の圧側ポート13bの出口端を開閉する。そして、圧側チェックバルブ18は、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力よりも高く、両者の圧力の差が開弁圧に達すると外周を撓ませて開弁し、圧側ポート13bを開放する。そして、圧側チェックバルブ18は、外周を撓ませてピストン13から離間させると開弁して圧側ポート13bを開放し、圧側ポート13bを圧側室R2から伸側室R1へ向けて通過する液体の流れを許容する。なお、圧側チェックバルブ18の開弁圧はごく低く設定されており、圧側チェックバルブ18は、開弁時に圧側ポート13bを通過する液体の流れに対して抵抗を然程与えないように設定されている。
【0039】
なお、伸側減衰バルブ16は、複数枚の環状板を積層して構成されているが、環状板の積層枚数について緩衝器Dに発生させた減衰力に応じて任意に変更でき、1枚の環状板のみで構成されてもよい。また、圧側チェックバルブ18も複数枚の環状板を積層して構成されているが、環状板の積層枚数について任意に変更でき、1枚の環状板のみで構成されてもよい。また、伸側減衰バルブ16および圧側チェックバルブ18は、環状板で構成されるバルブ以外であってよいが、薄い環状板を用いたバルブとされることで緩衝器Dのピストン部の全長が長くならず緩衝器Dのストローク長を確保しやすくなるという利点を享受できる。
【0040】
また、伸側減衰バルブ16および圧側チェックバルブ18は、それぞれ間座17,19によって内周が支持されていて、間座17,19によって支持されていない外周側の撓みが許容される。よって、間座17,19の外径の設定によって、伸側減衰バルブ16および圧側チェックバルブ18の撓みの支点の位置を変更できる。なお、間座17,19は、複数枚の環状のワッシャで構成されてもよい。
【0041】
つづいて、減衰バルブ1は、弁座部材としてのバルブケース2と、サブバルブ3と、リーフバルブ4とを備えている。バルブケース2は、環状であってシリンダ11の
図2中下端に嵌合する基部2aと、基部2aの下端外周から垂下される筒部2bとを備えている。
【0042】
バルブケース2における基部2aには、基部2aを上下に貫く複数のポートとしての圧側減衰ポート2cと、基部2aの
図2中下端に設けられて圧側減衰ポート2cの開口端に連なる環状の凹部2dと、基部2aの
図2中下端であって凹部2dの外周から立ち上がる環状の弁座2eと、環状であって凹部2dに臨む内周面を有する対向部2fと、基部2aを上下に貫くとともに基部2aの圧側減衰ポート2cよりも外周側に配置される複数の吸込ポート2gとが設けられている。
【0043】
ポートとしての複数の圧側減衰ポート2cは、基部2aに対して同一円周上に沿って等間隔に設けられて、基部2aを上下に貫いて圧側室R2と筒部2b内の空間とを連通している。凹部2dは、環状であって、圧側減衰ポート2cの
図2中下端の開口端に連通されている。凹部2dは、
図3に示すように、圧側減衰ポート2cが開口する環状の底部2d1と、底部の内周側の壁部となる環状であってテーパ状の内壁2d2と、底部の外周側の壁部となる環状であって基部2aに対して垂直な周面を持つ外壁2d3とによって形成されており、
図3中下方へ向かうほど開口面積が増加する形状をしている。また、基部2aの
図2中下端であって凹部2dより内周には、環状であって平坦な面を持つ内周シート面2hが設けられている。
【0044】
弁座2eは、
図3に示すように、基部2aの下端であって凹部2dの外周から
図2中下方へ向けて突出するように設けられており、リーフバルブ4が離着座する環状のシート面2e1と、凹部2dの外周に連なる傾斜面2e2とを備え、圧側減衰ポート2cの外周を取り囲んでいる。弁座2eのシート面2e1は、基部2aの下端から下方へ突出しているので、
図2中で凹部2dの内周側の内周シート面2hよりも下方に配置されている。よって、基部2aから見ると、内周シート面2hよりもシート面2e1の方が高く、両者の間に高低差が設けられている。また、凹部2dを形成する底部2d1は、
図2中で内周シート面2hよりも上方に配置されているので、基部2aから見ると、内周シート面2hよりも底部2d1の方が低く、両者の間に高低差が設けられている。
【0045】
また、対向部2fは、本実施の形態の減衰バルブ1では、基部2aにおける凹部2dを形成して凹部2dに臨む内周面を持つ外壁2d3によって形成されている。
【0046】
複数の吸込ポート2gは、基部2aに対して同一円周上に沿って等間隔に設けられており、基部2aを上下に貫いて圧側室R2と筒部2b内の空間とを連通している。
【0047】
バルブケース2は、基部2aがシリンダ11の
図2中下端の内周に嵌合されており、筒部2bの下端がアウターシェル14の底部14aに当接している。そして、バルブケース2は、シリンダ11とアウターシェル14の底部14aとで挟持されてシリンダ11内の圧側室R2と、シリンダ11とアウターシェル14との間のリザーバRとを仕切っている。バルブケース2の筒部2bの下端には、複数の切欠2b1が設けられており、切欠2b1を介してバルブケース2の筒部2b内の空間とリザーバRとが連通されている。さらに、バルブケース2の筒部2b内の空間と圧側室R2とが圧側減衰ポート2cと吸込ポート2gにより連通されてている。このように、圧側室R2とリザーバRとは、圧側減衰ポート2cと吸込ポート2gによって連通されている。
【0048】
サブバルブ3は、本実施の形態の減衰バルブ1では、1枚の環状板とされており、基部2aの内径に等しい内径と、凹部2dの外壁2d3によって形成される対向部2fの内周面の径よりも小径な外径を持ち、バルブケース2における基部2aの下端に設けられた内周シート面2hに重ねられている。また、サブバルブ3の反弁座部材側には、内径がサブバルブ3の内径に等しく外径がサブバルブ3の外径よりも小径な間座5と、内径がサブバルブ3の内径に等しく外径がサブバルブ3の外径よりも小径であって間座5の外径より大径なバルブストッパ6と、弁座2eにおけるシート面2e1に離着座するリーフバルブ4と、リーフバルブ4が当接するとリーフバルブ4のそれ以上の撓みを規制する環状の規制部材20とが順に積層されている。前記したところでは、サブバルブ3が1枚の環状板で構成されているが、サブバルブ3を構成する環状板の枚数は変更可能であり、また、複数枚の環状板でサブバルブ3を構成する場合、環状板の外径がそれぞれ異なっていてもよい。
【0049】
バルブケース2の基部2aの圧側室側には、吸込ポート2gの
図2中上端となる開口端を開閉する環状の吸込チェックバルブ7と間座8とが重ねられている。なお、吸込チェックバルブ7は、複数の環状板を重ねて構成されており、環状板を上下に貫く透孔7aを備えている。よって、吸込チェックバルブ7を基部2aに当接しても、透孔7aによって圧側減衰ポート2cが常時圧側室R2に連通されており、吸込チェックバルブ7は圧側減衰ポート2cを閉塞しない。
【0050】
そして、間座8、吸込チェックバルブ7、バルブケース2の基部2a、サブバルブ3、間座5、バルブストッパ6、リーフバルブ4および規制部材20の内周には、頭部9aと軸部9bとを有する軸部材としてのガイドロッド9の軸部9bが挿入されており、頭部9aと軸部9bの先端に螺着されるナット30とによって、間座8、吸込チェックバルブ7、バルブケース2の基部2a、サブバルブ3、間座5、バルブストッパ6、リーフバルブ4および規制部材20が挟持される。
【0051】
サブバルブ3は、内周が間座5と基部2aの内周シート面2hによって挟持されて固定されており、外周が自由端とされて当該外周の撓みが許容されている。基部2aの内周シート面2hと凹部2dを形成する底部2d1との間に高低差が設けられており、リーフバルブ4が離着座するシート面2e1との間にも高低差が設けられている。リーフバルブ4とサブバルブ3との間には、間座5およびバルブストッパ6とが設けられており、サブバルブ3とリーフバルブ4との間には、サブバルブ3の外周の撓みを許容する空隙が形成されている。サブバルブ3は、間座5に積層されることで、凹部2d内で底部2d1から離間して配置されており、ポートとしての圧側減衰ポート2cを閉塞することなく、バルブケース2に対して離間する方向である
図3中下方向への撓みが許容されている。
【0052】
間座5は、外径がサブバルブ3の外径より小径であって、サブバルブ3に面する端面の外縁でサブバルブ3のバルブケース2から離間する方向への撓みの支点を形成している。よって、サブバルブ3は、間座5の前記外縁を支点にして外周側を
図2中下方に撓ませることができる。間座5の外径の設定によってサブバルブ3の撓みの支点をチューニングでき、また、間座5の積層枚数や厚みを変更するとサブバルブ3がバルブストッパ6に当接するまでの撓み量をチューニングできる。
【0053】
なお、サブバルブ3は、内周シート面2hの外縁を支点にして外周側を
図2中上方に撓ませることができる。サブバルブ3が
図2中上方へ撓んでも、圧側減衰ポート2cを閉塞することが無いように、凹部2dの底部2d1と内周シート面2hとの高低差が充分に設けられている。
【0054】
サブバルブ3は、撓まずに
図3に示す取付初期の状態である場合、外周面を環状の対向部2fの内周面に正対させて、対向部2fとの間に所定の環状隙間Pをあけて対向する。なお、本実施の形態の減衰バルブ1では、正対するサブバルブ3と対向部2fとの間にできる環状隙間Pは非常に狭く、その環状隙間Pの開口面積は、後述するリーフバルブ4に設けられた切欠オリフィス4aの開口面積よりも小さい。
【0055】
バルブストッパ6は、外径が間座5の外径より大径であってサブバルブ3の外径よりも小径であって弾性を備えた環状板で構成されている。よって、サブバルブ3の外周が
図2中下方へ撓んでバルブストッパ6に当接すると、バルブストッパ6は、サブバルブ3の反弁座部材側に当接してサブバルブ3を支持してサブバルブ3の撓みを規制する。
【0056】
リーフバルブ4は、複数の環状板を積層して構成された積層リーフバルブであって、内周が前述の通りガイドロッド9によって内周がバルブケース2に固定されており、外周をバルブケース2に設けられた弁座2eのシート面2e1に着座している。リーフバルブ4を構成する環状板のうち、
図2中で最上方に積層されて弁座2eに着座する環状板は、サブバルブ3の外径より大径な外径をしており、外周に切欠オリフィス4aを備えている。よって、リーフバルブ4は、弁座2eに着座した状態では弁座2eにより取り囲まれている圧側減衰ポート2cを切欠オリフィス4aのみを介してリザーバRに連通させる。
【0057】
そして、リーフバルブ4は、バルブケース側となる弁座部材側の面を正面とすると、圧側減衰ポート2cを介して正面側に作用する圧側室R2の圧力と背面側に作用するリザーバRとの差圧が開弁圧に達すると外周を撓ませて弁座2eから離間する。リーフバルブ4は、弁座2eから離間すると弁座2eとの間に環状の隙間を形成し、当該隙間を介して圧側減衰ポート2cをリザーバRに連通させて圧側減衰ポート2cを通過する液体の流れに抵抗を与える。本実施の形態の減衰バルブ1では、リーフバルブ4は、緩衝器Dの収縮速度が高速域にある場合に開いて、圧側減衰ポート2cを圧側室R2からリザーバRへ向けて通過する液体の流れに抵抗を与える。また、リーフバルブ4は、圧側減衰ポート2cを圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。
【0058】
また、リーフバルブ4の内周が当接するバルブストッパ6の反弁座側端となる
図2中下端より弁座2eの方が
図2中下方へ突出していて、両者の高さに差(高低差)が設けられていて、リーフバルブ4は、バルブケース2にサブバルブ3、間座5およびバルブストッパ6とともにバルブケース2に重ねられてガイドロッド9の軸部9bの外周に内周側が固定されると当該高低差によって外周が撓む。このようにリーフバルブ4は、予め初期撓みが与えられており、弁座2eに自身が発揮する弾発力で自身を押し付けている。よって、圧側室R2とリザーバRとの差圧によるリーフバルブ4を撓ませる力が前述の弾発力による押し付け力に打ち勝つようになるまでリーフバルブ4は開弁せず、この開弁時の差圧がリーフバルブ4の開弁圧となる。よって、リーフバルブ4の開弁圧は、リーフバルブ4の撓み剛性とリーフバルブ4に与える初期撓み量によって調整できる。
【0059】
なお、リーフバルブ4は、複数枚の環状板を積層して構成されているが、環状板の積層枚数について緩衝器Dに発生させた減衰力に応じて任意に変更でき、1枚の環状板のみで構成されてもよい。また、リーフバルブ4に切欠オリフィス4aを設けることに代えて、或いは、加えて、弁座2eに打刻するなどしてオリフィスとして機能する凹部を設けてもよい。
【0060】
吸込チェックバルブ7は、内周が間座8とともに前述の通りガイドロッド9に固定されてバルブケース2の基部2aの
図2中上端に積層されてバルブケース2に設けられた吸込ポート2gの出口端を開閉する。間座8は、環状であって、内径が吸込チェックバルブ7の内径と同径に設定されるとともに、外径が吸込チェックバルブ7の透孔7aを塞がない径に設定されている。よって、吸込チェックバルブ7は、間座8の弁座部材側端の外縁を支点として外周側の
図2中上方への撓みが許容されている。
【0061】
そして、吸込チェックバルブ7は、リザーバRの圧力が圧側室R2の圧力よりも高く、両者の圧力の差が開弁圧に達すると外周を撓ませて開弁し、吸込ポート2gを開放する。そして、吸込チェックバルブ7は、外周を撓ませてバルブケース2から離間させると開弁して吸込ポート2gを開放し、吸込ポート2gをリザーバRから圧側室R2へ向けて通過する液体の流れを許容する。なお、吸込チェックバルブ7の開弁圧はごく低く設定されており、吸込チェックバルブ7は、開弁時に吸込ポート2gを通過する液体の流れに対して抵抗を然程与えないように設定されている。吸込チェックバルブ7は、複数枚の環状板を積層して構成されているが、環状板の積層枚数について任意に変更でき、1枚の環状板のみで構成されてもよい。また、吸込チェックバルブ7に切欠オリフィスを設けるか、吸込チェックバルブ7が離着座する弁座にオリフィスとして機能する凹部を設けてもよい。
【0062】
本実施の形態の減衰バルブ1および緩衝器Dは、以上のように構成されている。以下、減衰バルブ1および緩衝器Dの作動について説明する。まず、緩衝器Dが伸長作動を呈する場合について説明する。
図1中でシリンダ11およびアウターシェル14に対してロッド12が上方に移動する緩衝器Dの伸長作動時では、シリンダ11に対してピストン13が
図1中上方へ移動して伸側室R1を圧縮するとともに、圧側室R2を拡大させる。緩衝器Dの伸長速度が低速の場合、圧縮される伸側室R1内の圧力と拡大する圧側室R2内の圧力との差が伸側減衰バルブ16の開弁圧に達しないため、伸側室R1内の液体は、伸側ポート13aおよび切欠オリフィス16aを通過して圧側室R2へ移動する。また、拡大する圧側室R2では、ロッド12がシリンダ11内から退出するためロッド12がシリンダ11から退出する体積分の液体が不足するが、吸込チェックバルブ7が開弁してリザーバRから吸込ポート2gを介して不足分の液体が圧側室R2内へ供給される。緩衝器Dの伸長作動時には、このように吸込チェックバルブ7が速やかに開弁して吸込ポート2gを開放するので、リザーバRから圧側室R2へ移動しようとする液体は、切欠オリフィス4a、サブバルブ3と対向部2fとの間の環状隙間Pおよび圧側減衰ポート2cを通過せずに吸込ポート2gを通過する。
【0063】
このように、緩衝器Dの伸長速度が低速の場合、緩衝器Dは切欠オリフィス16aによって液体の伸側ポート13aを通過する流れに抵抗を与えて緩衝器Dの伸長作動を妨げる減衰力を発生する。よって、緩衝器Dが低速で伸長する場合、ピストン速度に対して緩衝器Dが発生する減衰力の特性である伸側の減衰力特性は、
図4に示すように、オリフィス特有のピストン速度の二乗に比例する特性となる。
【0064】
また、緩衝器Dの伸長速度が高速になると、圧縮される伸側室R1内の圧力と拡大する圧側室R2内の圧力との差が伸側減衰バルブ16の開弁圧に達して伸側減衰バルブ16が開弁して伸側ポート13aを開放する。このように、緩衝器Dの伸長速度が高速となる場合、緩衝器Dは伸側減衰バルブ16によって液体の伸側ポート13aを通過する流れに抵抗を与えて緩衝器Dの伸長作動を妨げる減衰力を発生する。よって、緩衝器Dが高速で伸長する場合の伸側の減衰力特性は、
図4に示すように、減衰係数が低速時と比較すると低くなるとともに、ピストン速度に比例するリーフバルブ特有の特性となる。
【0065】
つづいて、緩衝器Dが収縮作動を呈する場合について説明する。
図1中でシリンダ11およびアウターシェル14に対してロッド12が下方に移動する緩衝器Dの収縮作動時では、シリンダ11に対してピストン13が
図1中下方へ移動して圧側室R2を圧縮するとともに、伸側室R1を拡大させる。緩衝器Dの収縮作動によって、圧縮される圧側室R2の液体は、圧側チェックバルブ18の開弁により圧側ポート13bを介して拡大する伸側室R1へ然程の抵抗を受けずに移動する。また、緩衝器Dの収縮作動時には、シリンダ11内にロッド12が侵入するため、シリンダ11内に侵入するロッド12の体積分の液体がシリンダ11内で過剰となり、シリンダ11内の圧力が上昇する。圧側室R2内の圧力がリザーバR内の圧力よりも高くなるため吸込チェックバルブ7は閉弁して吸込ポート2gを閉塞する。よって、過剰分の液体は、圧側減衰ポート2cを介して圧側室R2からリザーバRへ移動する。緩衝器Dの収縮速度が低速の場合、圧縮される圧側室R2内の圧力とリザーバR内の圧力との差がリーフバルブ4の開弁圧に達しないため、圧側室R2内の液体は、圧側減衰ポート2c、サブバルブ3と対向部2fとの間の環状隙間Pおよび切欠オリフィス4aを通過してリザーバRへ移動する。
【0066】
減衰バルブ1におけるサブバルブ3は、ロッド12がシリンダ11に対して収縮方向へ動き出すと撓み、サブバルブ3の撓み量は緩衝器Dの収縮速度の増加に応じて大きくなる。そして、緩衝器Dの収縮速度が動き出しのような0(ゼロ)に近い場合、サブバルブ3の撓み量が非常に小さく、微低速域から低速域の間でサブバルブ3が対向部2fの内周面に対して対向し得なくなる程度に撓んでサブバルブ3は開弁する。さらに、緩衝器Dの収縮速度が低速または高速となる場合には、サブバルブ3の外周部が間座5の外周縁を撓みの支点にして
図3中で下側へと大きく撓む。サブバルブ3が撓んで対向部2fから離間して開弁する際の圧側室R2とリザーバRの差圧、つまり、サブバルブ3の開弁圧は、リーフバルブ4の開弁圧より低く、収縮速度が低速域にある場合、サブバルブ3は前述の通り開弁するが、リーフバルブ4は開弁せず、液体は、環状隙間Pおよび切欠オリフィス4aを介して圧側室R2からリザーバRへ移動する。
【0067】
なお、サブバルブ3が対向部2fの内周面に正対した状態で環状隙間Pが略0になるようにすれば、緩衝器Dの動き出して直ぐに圧側室R2とリザーバRとに差圧が生じるため、緩衝器Dが伸長作動から収縮作動に切り換わる際に緩衝器Dは速やかに減衰力を発生できる。
【0068】
このように、緩衝器Dの収縮速度が低速及び高速となる場合、サブバルブ3の外周部が
図3中で下方に大きく撓んで、下方にずれたサブバルブ3と対向部2fとの間にできる環状隙間Pの開口面積が、切欠オリフィス4aの開口面積よりも大きくなる。
【0069】
よって、緩衝器Dの収縮速度が微低速域にあって0に近い場合、圧側室R2内の圧力が上昇するもののリザーバR内の圧力との差圧がリーフバルブ4の開弁圧に達しないため、リーフバルブ4は開弁せず圧側減衰ポート2cを閉塞したまま維持する。また、前記差圧がサブバルブ3の開弁圧に達しないためサブバルブ3は撓んでも外周面を対向部2fの内周の軸方向幅の範囲に対向させて閉弁状態となってサブバルブ3と対向部2fとの間の環状隙間Pの流路面積を極小さく維持する。液体は、圧側減衰ポート2c、環状隙間Pおよび切欠オリフィス4aを通過して圧側室R2からリザーバRへ移動するが、閉弁状態のサブバルブ3における環状隙間Pの流路面積は切欠オリフィス4aの流路面積よりも小さいため、緩衝器Dの収縮速度が微低速域にある場合、緩衝器Dは、主としてサブバルブ3が液体に与える抵抗によって収縮を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの収縮速度が微低速域にある場合の緩衝器Dの圧側の減衰力特性は、
図4に示すように、収縮速度が0近傍では減衰係数が非常に大きく立ち上がった後、サブバルブ3の開弁によって減衰係数が小さくなる特性となる。このように、緩衝器Dが微低速で収縮する際にサブバルブ3によって減衰力を発生させることで、緩衝器Dの伸縮し始めに振動を抑制するのに十分な減衰力が得られ、車両における乗心地を向上させ得る。
【0070】
よって、緩衝器Dの収縮速度が低速となる場合、緩衝器Dは、主として切欠オリフィス4aが液体に与える抵抗によって収縮を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの収縮速度が低速にある場合の緩衝器Dの圧側の減衰力特性は、
図4に示したように、オリフィス特有の緩衝器Dの収縮速度の2乗に比例する特性となるが、収縮速度が微低速域にある場合に比較して減衰係数が小さくなる特性となる。
【0071】
さらに、緩衝器Dの収縮速度が増加して微低速域から低速域にまで変化する間に、圧側室R2の圧力とリザーバRの圧力との差圧がサブバルブ3の開弁圧を超えるので、サブバルブ3は、外周を対向部2fの内周の軸方向幅の範囲から
図3中下方へ外れるようにして撓んで開弁し、サブバルブ3と対向部2fとの間の環状隙間Pの流路面積を切欠オリフィス4aの流路面積よりも大きくする。サブバルブ3が撓んで対向部2fに対向し得なくなると、サブバルブ3の外周が弁座2eに対向するようになる。弁座2eの内周には傾斜面2e2が設けられているので、サブバルブ3が撓んだ際にバルブケース2との間の流路面積が速やかに大きくなり、緩衝器Dが低速で収縮する際の減衰力にサブバルブ3が影響を与えないようにできる。
【0072】
また、サブバルブ3は、撓んでバルブストッパ6およびリーフバルブ4に当接してバルブストッパ6およびリーフバルブ4に支持される。サブバルブ3は、径方向でバルブストッパ6とリーフバルブ4とに当接する2箇所で弓なりに撓んだ状態で支持されるため、バルブストッパ6に内周から外周にかけて幅をもってうねるような変形が規制される。サブバルブ3がうねるように変形するとサブバルブ3に大きな応力が作用して疲労を促進してしまうが、バルブストッパ6とリーフバルブ4とでサブバルブ3の背面の2箇所を支持して前記変形を防止できるから、サブバルブ3の疲労を軽減できる。
【0073】
さらに、緩衝器Dの収縮速度が低速域を超えて高速域にある場合、圧側室R2内の圧力とリザーバR内の圧力との差圧がリーフバルブ4の開弁圧に達して、リーフバルブ4が撓んで開弁して圧側減衰ポート2cを開放する。緩衝器Dの収縮速度が高速となる場合、圧側室R2内の圧力とリザーバR内の圧力との差がサブバルブ3の開弁圧を超えているのでサブバルブ3が開弁してサブバルブ3と対向部2fとの間の環状隙間Pの流路面積が大きくなる。そして、サブバルブ3は、バルブストッパ6およびリーフバルブ4に当接したまま、バルブストッパ6およびリーフバルブ4とともに撓む。よって、リーフバルブ4が開弁して圧側減衰ポート2cを開放した状態で、サブバルブ3が圧側減衰ポート2cの流路面積を絞ってしまうことを防止できる。よって、緩衝器Dの収縮速度が高速となる場合、サブバルブ3が大きく撓んで環状隙間Pにおける流路面積よりもリーフバルブ4と弁座2eとの間の隙間における流路面積の方が小さくなる。よって、緩衝器Dの収縮速度が高速となる場合、緩衝器Dは、主としてリーフバルブ4が液体に与える抵抗によって収縮を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの収縮速度が高速となる場合の緩衝器Dの圧側の減衰力特性は、
図4に示したように、リーフバルブ4の特有の緩衝器Dの収縮速度に比例するような特性となるが、前記収縮速度が低速である場合に比較して減衰係数がさらに小さくなる特性となる。
【0074】
このように、減衰バルブ1におけるサブバルブ3は、サブバルブ3がポートとしての圧側減衰ポート2cの出口端とリーフバルブ4との間に設置されているので、緩衝器Dの収縮作動時にのみ減衰力を発生する。
【0075】
本実施の形態の減衰バルブ1および緩衝器Dは、以上の通り作動する。そして、本実施の形態の減衰バルブ1は、環状の凹部2dと、凹部2dの底部2d1に開口する圧側減衰ポート(ポート)2cと、凹部2dの外周から立ち上がる環状の弁座2eと、環状であって凹部2dに臨む内周面を有する対向部2fとを具備するバルブケース(弁座部材)2と、凹部2d内に凹部2dの底部2d1から離間して配置されており、環状であって外周面と対向部2fとの間に環状隙間Pを形成するとともに外周側が自由端として凹部2d内でバルブケース(弁座部材)2に対して離間する方向への撓みが許容されるサブバルブ3と、環状であってサブバルブ3の反弁座部材側に軸方向で離間して積層されるとともに外周側が自由端として撓みが許容されて弁座2eに離着座可能なリーフバルブ4とを備えている。
【0076】
このように構成された減衰バルブ1では、リーフバルブ4が離着座する弁座2eを備えたバルブケース(弁座部材)2に、サブバルブ3を収容するとともにサブバルブ3の撓みを許容する凹部2dとサブバルブ3の外周と対向する対向部2fとを設けているので、バルブケース(弁座部材)2がサブバルブ3とリーフバルブ4の双方の弁座として機能できる。
【0077】
よって、従来の減衰バルブでは、サブバルブとリーフバルブとのそれぞれに個別に弁座を備えたバルブケースおよびピストン等を設けているが、本実施の形態の減衰バルブ1では、サブバルブ3とリーフバルブ4の双方の弁座を1つのバルブケース(弁座部材)2に集約でき、部品点数が減少するとともに、全長が短くなる。また、減衰バルブ1によれば、サブバルブ3とリーフバルブ4の双方の弁座を1つのバルブケース(弁座部材)2に集約でき部品点数を削減できるので、組立性も向上できる。さらに、減衰バルブ1によれば、シリンダ11の径が異なる緩衝器Dを製造する場合であっても、バルブケース(弁座部材)2のみをシリンダ11の径に対応させれば済むため、シリンダ11の径が異なる緩衝器Dを製造する場合であっても、バルブケース(弁座部材)2のみをシリンダ11の径に対応させれば済むため、従来の減衰バルブに比較すれば、部品点数を削減できることによって部品管理も容易となり製造コストを安価にできる。以上より、本実施の形態の減衰バルブ1によれば、全長を短縮化でき、安価で組立性を良好にできる。
【0078】
また、本実施の形態の減衰バルブ1では、減衰バルブ1におけるサブバルブ3は、サブバルブ3が圧側減衰ポート(ポート)2cの出口端とリーフバルブ4との間に設置されており、圧側減衰ポート(ポート)2cとは逆向きの液体の流れのみを許容する吸込ポート2gを備えているので、サブバルブ3によって緩衝器Dの収縮作動時にのみ減衰力を発生させ得る。このように、サブバルブ3が緩衝器Dの伸縮作動のうち、一方のみで減衰力を発生させる片効きのバルブに設定できるので、緩衝器Dの伸長作動時の減衰力と収縮作動時の減衰力とを独立に設定できる。
【0079】
なお、本実施の形態の減衰バルブ1は、緩衝器Dのピストン部に適用されてもよい。よって、たとえば、バルブケース(弁座部材)2と同様に、前述したピストン13に伸側ポート13aの出口端に連なる凹部と、凹部の外周を取り囲むとともに伸側減衰バルブ16が離着座する弁座と、凹部に臨む対向部を設けて、凹部内で外周側の撓みを許容されるサブバルブ3を伸側減衰バルブ16とピストン13との間にして設置すれば、緩衝器Dの伸長作動時であって微低速で伸長する際にサブバルブ3によって減衰力を発生させることができる。
【0080】
このように、複筒型に設定される緩衝器Dにおけるピストン部とベースバルブ部とに減衰バルブ1を適用すれば、緩衝器Dの伸長作動時と収縮作動時の双方においてサブバルブ3によって緩衝器Dの伸縮し初めに振動を抑制するのに十分な減衰力を発揮できる。また、ベースバルブ部のバルブケース2に組み込まれたサブバルブ3は、緩衝器Dの伸長作動時の減衰力に影響を与えず、ピストン部のピストン13に組み込まれたサブバルブ3は、緩衝器Dの収縮作動時の減衰力に影響を与えないので、複筒型に設定された緩衝器Dの伸長作動時の減衰力と収縮作動時の減衰力とを独立に設定できる。また、本実施の形態の減衰バルブ1は、緩衝器Dのベースバルブに適用されているが、ピストン部のみに適用されてもよい。このように減衰バルブ1をピストン部にのみ適用しても、ピストン部の全長が短くなり、部品点数削減効果を発揮して、安価で組立性を良好にできる。
【0081】
このように、緩衝器Dは、筒状のアウターシェル14と、アウターシェル14内に移動可能に挿入されるロッド12とを有して伸縮可能な緩衝器本体10と、減衰バルブ1とを備えており、バルブケース(弁座部材)2は、緩衝器本体10内に圧側減衰ポート(ポート)2cによって連通される圧側室(作動室)R2とリザーバ(作動室)Rを区画している。このように構成された緩衝器Dによれば、減衰バルブ1の全長を短縮化できるので、ストローク長の確保が容易となり、減衰バルブ1の部品点数が削減されるので、組立性も向上する。
【0082】
なお、緩衝器Dの外殻を成すアウターシェルをシリンダとして利用する単筒型に設定される緩衝器では、ベースバルブを備えておらず、ピストン部にのみ減衰バルブを備えている。より詳細には、単筒型の緩衝器では、アウターシェルの内周にロッドに連結されたピストンが移動可能に挿入されており、ピストンによってアウターシェル内に区画した伸側室と圧側室とを同じくピストンに設けた伸側ポートと圧側ポートとが連通され、ピストンの伸側室側に圧側ポートを開閉する圧側のリーフバルブが設けられ、ピストンの圧側室側に伸側ポートを開閉する伸側のリーフバルブが設けられ、アウターシェルに出入りするロッドの体積の補償のためにアウターシェル内に圧側室に面する気室を区画するフリーピストンがアウターシェル内に移動可能に挿入される。このような単筒型の緩衝器におけるピストンに対して、凹部を設けてサブバルブをリーフバルブとピストンとの間に設置すれば減衰バルブ1の構造を単筒型の緩衝器におけるピストン部に適用できる。単筒型の緩衝器において、減衰バルブ1の構造をピストン部に適用するに当たって、サブバルブは、伸側のリーフバルブとピストンとの間と、圧側のリーフバルブとピストンとの間との一方または両方に設置可能である。また、このような単筒型の緩衝器では、サブバルブを伸側リーフバルブとピストンとの間と圧側のリーフバルブとピストンとの間との少なくとも一方に設けると、サブバルブは、ポートを伸側室から圧側室へ向かう液体の流れと圧側室から伸側室へ向かう液体の流れの双方を許容でき、外周をピストン側にもリーフバルブ側にも撓ませることができるので、サブバルブが設けられる伸側リーフバルブ或いは圧側リーフバルブにオリフィスが形成されていれば、緩衝器の伸長作動時と収縮作動時の両方で減衰力を発生するバルブとして機能できる。このように単筒型の緩衝器に減衰バルブ1の構造を適用しても、1つのピストンが弁座部材としてサブバルブとリーフバルブとの双方の弁座として機能するので、ピストン部の全長を短縮でき緩衝器のストローク長の確保が容易となる。
【0083】
さらに、本実施の形態の減衰バルブ1におけるバルブケース(弁座部材)2は、対向部2fと弁座2eのリーフバルブ4が離着座するシート面2e1との間に傾斜面2e2を備えている。このようにバルブケース(弁座部材)2が傾斜面2e2を備えているので、サブバルブ3が撓んだ際にサブバルブ3の外周とバルブケース(弁座部材)2との間の隙間の流路面積が速やかに大きくなり、緩衝器Dが低速で収縮する際の減衰力にサブバルブ3が影響を与えないようにできる。
【0084】
また、バルブケース(弁座部材)2を焼結によって製造する場合、弁座2eのシート面2e1とシート面2e1に垂直な円筒面で構成される対向部2fとの間に傾斜面2e2を設けることで、対向部2fとシート面2e1との間に脆弱な断面が直角の角部が形成されないので、本実施の形態の減衰バルブ1によれば、バルブシート(弁座部材)2の耐久性を向上させ得る。そして、バルブケース(弁座部材)2を焼結によって製造する場合、対向部2fとシート面2e1との間に傾斜面2e2を設けることで、バルブシート(弁座部材)2の耐久性が向上するので、減衰バルブ1によれば、弁座2eのシート面2e1に対して径方向で対向部2fを至近に配置できるようになり、対向部2fの内径およびサブバルブ3の外径の設計自由度を向上させ得る。なお、本実施の形態では、傾斜面2e2は、断面において一定の勾配を持つテーパ面とされているが、湾曲面とされてもよいし、段階的に勾配が変化する傾斜面とされもてもよい。
【0085】
また、本実施の形態の減衰バルブ1は、サブバルブ3とリーフバルブ4との間にサブバルブ3と離間して配置され、環状であって外周側の撓みが許容されるとともにサブバルブ3の外周がバルブケース(弁座部材)2から離間する方向へ撓んで当接するとサブバルブ3の撓みを規制するバルブストッパ6を備えている。このように構成された減衰バルブ1によれば、サブバルブ3がバルブストッパ6に当接しつつバルブケース(弁座部材)2から離間する方向へ撓むと、バルブストッパ6の他にリーフバルブ4によっても支持されるので、サブバルブ3のうねり変形を抑制してサブバルブ3の疲労を軽減できる。
【0086】
なお、前述したところでは、弁座部材としてのバルブケース2の凹部2dの外周側の外壁2d3自体をサブバルブ3の外周面に対向してサブバルブ3の外周との間に環状隙間Pを形成する対向部2fとしているが、
図5に示した第1変形例の減衰バルブ1Aのように、バルブケース2は、凹部2d、弁座2e、ポートとしての圧側減衰ポート2cを備えた弁座部材本体B1と、弁座部材本体B1における凹部2dの外周の外壁2d3の内周に対向部2fを形成するリング31とを備えてもよい。
【0087】
リング31は、円環状であって、内径がサブバルブ3の外径よりも大きく、凹部2dの外壁2d3の内周に圧入されて、凹部2d内に固定されている。このようにバルブケース2は、リング31を備えており、リング31の内周面をサブバルブ3の外周面に対向する対向部としている。なお、リング31の軸方向の高さは、凹部2dの深さ以下に設定されており、リング31が凹部2dから軸方向へ突出しないようになっている。
【0088】
バルブケース2の内周シート面2hには、サブバルブ3、間座5、バルブストッパ6およびリーフバルブ4が積層されており、ガイドロッド9とナット30とによって、サブバルブ3、間座5、バルブストッパ6およびリーフバルブ4の内周がガイドロッド9の軸部9bの外周に固定されている。このように、第1変形例における減衰バルブ1Aでは、バルブケース(弁座部材)2が凹部2dの外壁2d3に装着されるリング31を備えており、リング31の内周面を対向部としている点で前述した減衰バルブ1と異なっている。
【0089】
このように構成された第1変形例における減衰バルブ1Aは、減衰バルブ1と同様に作動して、緩衝器Dが微低速で収縮作動する際にサブバルブ3によって減衰力を発生する。そして、第1変形例における減衰バルブ1Aによれば、バルブケース(弁座部材)2がサブバルブ3の弁座として機能するリング31を備えるとともにリーフバルブ4の弁座2eを備えているので、減衰バルブ1と同様に、全長を短縮化できるとともに部品点数を削減して組立性を向上できる。また、バルブケース(弁座部材)2のリング31以外の部位である弁座部材本体B1を焼結によって製造する場合、内径の寸法精度が高いリング31を凹部2dの外壁2d3に装着することができるので、減衰バルブ1Aによれば、サブバルブ3とリング31との間の環状隙間Pの寸法管理が容易となるとともに、狙い通りの減衰力特性を実現し易くなる。また、バルブケース(弁座部材)2が弁座部材本体B1とリング31とで構成されていても、リング31を凹部2d内に嵌合して装着すればよいので、バルブケース(弁座部材)2を製造できるので組立性も向上できる。
【0090】
また、
図6に示した第2変形例の減衰バルブ1Bのようにリング31の代わりにカップ32を凹部2d内に収容してカップ32を対向部としてもよい。具体的には、バルブケース(弁座部材)2は、凹部2dを備えた弁座部材本体B2と、カップ32とを備えている。
【0091】
弁座部材本体B2は、基部2aと、基部2aの下端外周から垂下される筒部2bとを備えている。基部2aには、基部2aを上下に貫く複数のポートとしての圧側減衰ポート2cと、基部2aの
図6中下端に設けられて圧側減衰ポート2cの開口端に連なる環状の凹部2dと、基部2aの
図6中下端であって凹部2dの外周から立ち上がる環状の弁座2eと、環状であって凹部2dに臨む内周面を有する対向部2fと、基部2aを上下に貫くとともに基部2aの圧側減衰ポート2cよりも外周側に配置される複数の吸込ポート2gとが設けられている。
【0092】
凹部2dは、環状であって、圧側減衰ポート2cの
図6中下端の開口端に連通されている。凹部2dは、
図6に示すように、圧側減衰ポート2cが開口する環状の底部2d4と、底部2d4の外周側の壁部となる環状であって基部2aに対して垂直な周面を持つ外壁2d5とによって形成されている。減衰バルブ1Bのバルブケース2では、凹部2dにおける底部2d4が基部2aの内周まで延長されている点で減衰バルブ1と異なっている。
【0093】
カップ32は、有底筒状であって、円環状の底部32aと、底部32aの外周から立ち上がる筒部32bと、底部32aに設けられた円弧状の複数の孔32cとを備えている。そして、底部32aの内径は、基部2aの内径と同一となっており、カップ32を凹部2d内に挿入して底部32aを凹部2dの底部2d4に載置すると、各圧側減衰ポート2cがいずれかの孔32cに対向して圧側減衰ポート2cがカップ32によって閉塞されないようになっている。また、カップ32の軸方向の高さは、凹部2dの深さ以下に設定されており、カップ32の筒部32bが凹部2dから軸方向に突出しないように配慮されている。
【0094】
弁座部材本体B2における凹部2d内に収容されたカップ32の底部32aに対して、環状であってサブバルブ3より小径な間座33、サブバルブ3、間座5、バルブストッパ6およびリーフバルブ4が順番に積層される。弁座部材本体B2、カップ32、間座33、サブバルブ3、間座5、バルブストッパ6およびリーフバルブ4は、内周に挿入されるガイドロッド9とナット30とによって挟持されて、軸部9bの外周に固定される。
【0095】
このように組み立てられた減衰バルブ1Bでは、間座33によってサブバルブ3がカップ32に対して離間した位置に配置されて、サブバルブ3の外周がカップ32の筒部32bの内周面に対向する。カップ32の筒部32bの内周面は、サブバルブ3の外周面との間に環状隙間Pを形成する対向部として機能している。また、間座33にサブバルブ3が積層されても、バルブケース2側から見てサブバルブ3の下端の高さは、
図6中で弁座2eのシート面2e1の下端の高さよりも低く、サブバルブ3の外周は、凹部2d内でバルブケース2から離間する方向への撓みが許容されている。
【0096】
以上、第2変形例における減衰バルブ1Bは、バルブケース(弁座部材)2が、凹部2d内に収容される有底筒状のカップ32を有し、対向部がカップ32の筒部32bで形成され、サブバルブ3とカップ32の底部32aとの間およびサブバルブ3とリーフバルブ4との間にそれぞれ環状であってサブバルブ3より小径な間座5,33が介装され、バルブケース(弁座部材)2、カップ32、サブバルブ3、間座5,33およびリーフバルブ4の内周を保持するガイドロッド(軸部材)9とを備えている。
【0097】
このように構成された第2変形例における減衰バルブ1Bは、減衰バルブ1と同様に作動して、緩衝器Dが微低速で収縮作動する際にサブバルブ3によって減衰力を発生する。そして、第2変形例における減衰バルブ1Bによれば、バルブケース(弁座部材)2がサブバルブ3の弁座として機能するカップ32を備えるとともにリーフバルブ4の弁座2eを備えているので、減衰バルブ1と同様に、全長を短縮化できるとともに部品点数を削減して組立性を向上できる。また、バルブケース(弁座部材)2のカップ32以外の部位である弁座部材本体B2を焼結によって製造する場合、筒部32bの内径の寸法精度が高いカップ32を凹部2d内に収容すればよいので、減衰バルブ1Bによれば、サブバルブ3とカップ32の筒部32bとの間の環状隙間Pの寸法管理が容易となるとともに、狙い通りの減衰力特性を実現し易くなる。また、バルブケース(弁座部材)2が弁座部材本体B2とカップ32とで構成されていても、カップ32を凹部2d内に収容して、これらをガイドロッド(軸部材)9で固定すれば、バルブケース(弁座部材)2を製造できるので組立性も向上できる。なお、減衰バルブ1A,1Bは、緩衝器Dのピストン部に適用されてもよい。
【0098】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1・・・減衰バルブ、2・・・バルブケース(弁座部材)、2c・・・圧側減衰ポート(ポート)、2d・・・凹部、2d1・・・底部、2d3・・・外壁、2e・・・弁座、2e1・・・シート面、2e2・・・傾斜面、2f・・・対向部、3・・・サブバルブ、4・・・リーフバルブ、5,33・・・間座、6・・・バルブストッパ、9・・・ガイドロッド(軸部材)、10・・・緩衝器本体、12・・・ロッド、14・・・アウターシェル、31・・・リング、32・・・カップ、32b・・・筒部、B1,B2・・・弁座部材本体、D・・・緩衝器、R・・・リザーバ(作動室)、R2・・・圧側室(作動室)