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特開2024-23151部品分離を向上させるために三次元印刷において印刷スタンドオフ距離を活用すること、並びにそのシステム及び方法
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  • 特開-部品分離を向上させるために三次元印刷において印刷スタンドオフ距離を活用すること、並びにそのシステム及び方法 図1A
  • 特開-部品分離を向上させるために三次元印刷において印刷スタンドオフ距離を活用すること、並びにそのシステム及び方法 図1B
  • 特開-部品分離を向上させるために三次元印刷において印刷スタンドオフ距離を活用すること、並びにそのシステム及び方法 図2A
  • 特開-部品分離を向上させるために三次元印刷において印刷スタンドオフ距離を活用すること、並びにそのシステム及び方法 図2B
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  • 特開-部品分離を向上させるために三次元印刷において印刷スタンドオフ距離を活用すること、並びにそのシステム及び方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023151
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】部品分離を向上させるために三次元印刷において印刷スタンドオフ距離を活用すること、並びにそのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/30 20210101AFI20240214BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240214BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240214BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240214BHJP
   B22D 23/00 20060101ALI20240214BHJP
   B22F 10/22 20210101ALI20240214BHJP
   B22F 12/50 20210101ALI20240214BHJP
   B22F 12/30 20210101ALI20240214BHJP
   B22F 10/38 20210101ALI20240214BHJP
【FI】
B22F10/30
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B22D23/00 E
B22F10/22
B22F12/50
B22F12/30
B22F10/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】36
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023126386
(22)【出願日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】17/883,088
(32)【優先日】2022-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ディネシュ クリシュナ クマール ジャヤバル
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA14
4K018CA33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】第1の層が、印刷中にビルドプレートと良好に接着し、同時に印刷完了後に部品の解放を可能にする、3D印刷方法及び印刷システムを提供する。
【解決手段】第1の条件下で印刷システムを第1のスタンドオフ位置に位置決めすることを含む、三次元印刷部品を形成する方法が開示される。方法はまた、第2の条件下で印刷システムを第2のスタンドオフ位置に位置決めすることを含む。三次元印刷部品を形成する方法は、第1の条件及び第2の条件のうちの一方が、印刷材料滴が基材の表面上に吐出されることを含み得る場合を含み得る。印刷材料滴は、金属、金属合金、又はそれらの組み合わせを含み得る。この方法を用いた印刷システム及び三次元印刷部品も開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元印刷部品を形成する方法であって、
第1の条件下で印刷システムを第1のスタンドオフ位置に位置決めすることと、
第2の条件下で前記印刷システムを第2のスタンドオフ位置に位置決めすることと、
を含む、三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項2】
前記第1の条件及び前記第2の条件のうちの一方が、印刷材料滴が基材の表面上に吐出されることを含む、請求項1に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項3】
前記第1の条件及び前記第2の条件のうちの一方が、三次元印刷部品の所定の場所に印刷材料滴を吐出することを含む、請求項1に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項4】
前記第1の条件及び前記第2の条件のうちの一方が、三次元印刷部品の離脱層に関連付けられた表面上に印刷滴を吐出することを含む、請求項1に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項5】
三次元印刷部品を形成する間に、前記印刷システムのノズルを第1のスタンドオフ位置から第2のスタンドオフ位置まで移動させることを更に含む、請求項1に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項6】
前記ノズルをz方向に前記第1のスタンドオフ位置まで移動させることを更に含む、請求項5に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項7】
前記ノズルをz方向に前記第2のスタンドオフ位置まで移動させることを更に含む、請求項5に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項8】
基材をz方向に前記第1のスタンドオフ位置まで移動させることを更に含む、請求項5に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項9】
基材をz方向に前記第2のスタンドオフ位置まで移動させることを更に含む、請求項5に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項10】
前記印刷材料滴が、金属、金属合金、又はそれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項11】
三次元印刷部品を形成する方法であって、
印刷システムを、前記印刷システムのためのエジェクタのノズルが基材に対して第1のスタンドオフ位置にあるように位置決めすることと、
前記ノズルから複数の液体金属印刷材料滴を吐出して、前記基材上に三次元印刷部品の第1の層を形成することと、
前記ノズルが前記第1の層の上部表面に対して第2のスタンドオフ位置にあるように、前記印刷システムを位置決めすることと、
前記三次元印刷部品の1つ以上の層を、前記第2のスタンドオフ位置から前記第1の層上に印刷することと、
を含む、三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項12】
前記基材から前記三次元印刷部品を取り外すことを更に含む、請求項11に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項13】
前記基材が、酸化ニッケルを含む上部表面層を含む、請求項12に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項14】
前記ノズル又はプリントヘッドをz方向に移動させて、前記第1のスタンドオフ位置に調節することを更に含む、請求項11に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項15】
前記ノズル又はプリントヘッドをz方向に移動させて、前記第2のスタンドオフ位置に調節することを更に含む、請求項11に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項16】
前記基材をz方向に移動させて、前記第1のスタンドオフ位置に調節することを更に含む、請求項11に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項17】
前記基材をz方向に移動させて、前記第2のスタンドオフ位置に調節することを更に含む、請求項11に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項18】
前記液体金属印刷材料が、金属、金属合金、又はそれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項19】
前記液体金属印刷材料が、大気条件において前記複数の液体金属印刷材料滴のうちの1つ以上の外部表面上に酸化物層を形成する、請求項18に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項20】
前記液体金属印刷材料が、アルミニウムを含む、請求項18に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項21】
周囲酸素の量を制御して、前記複数の液体金属印刷材料滴のうちの1つ以上を、それらが吐出されるときに酸化させることを更に含む、請求項11に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項22】
前記第1のスタンドオフ位置が、前記ノズルと前記基材との間で約25mm~約50mmである、請求項11に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項23】
前記第2のスタンドオフ位置が、前記ノズルと前記三次元印刷部品の前記第1の層の上部との間で約8mm~約10mmである、請求項11に記載の三次元印刷部品を形成する方法。
【請求項24】
支持構造と三次元印刷部品との間に離脱層を形成する方法であって、
印刷システムを、前記印刷システムのためのエジェクタのノズルが支持構造の上部層に対して第1のスタンドオフ位置にあるように位置決めすることと、
前記ノズルから複数の液体金属印刷材料滴を吐出して、前記支持構造上に離脱層を形成することと、
前記ノズルが前記離脱層の上部表面に対して第2のスタンドオフ位置にあるように、前記印刷システムを位置決めすることと、
前記三次元印刷部品の1つ以上の層を、前記第2のスタンドオフ位置から前記離脱層上に印刷することと、
を含む、支持構造と三次元印刷部品との間に離脱層を形成する方法。
【請求項25】
前記ノズルから複数の液体金属印刷材料滴を吐出して、前記支持構造上に追加の離脱層を形成することを更に含む、請求項24に記載の支持構造と三次元印刷部品との間に離脱層を形成する方法。
【請求項26】
前記第1のスタンドオフ位置が、前記ノズルと支持構造の前記上部層との間で約25mm~約50mmである、請求項24に記載の支持構造と三次元印刷部品との間に離脱層を形成する方法。
【請求項27】
前記第2のスタンドオフ位置が、前記ノズルと前記三次元印刷部品の前記離脱層の上部との間で約8mm~約10mmである、請求項24に記載の支持構造と三次元印刷部品との間に離脱層を形成する方法。
【請求項28】
印刷システムであって、
基材と、
印刷材料を前記基材上に噴射するためのエジェクタと、を備え、前記エジェクタは、
内部空洞を画定する構造と、
前記内部空洞と接続し、かつ液体印刷材料の1つ以上の液滴を吐出するように構成されている、ノズルオリフィスと、を備え、
前記エジェクタが、前記基材に対して第1のスタンドオフ位置から三次元印刷部品の第1の層を印刷するように構成されており、
前記エジェクタが、前記第1の層の上部表面に対して第2のスタンドオフ位置から前記第1の層上に1つ以上の残りの層を印刷するように構成されている、
印刷システム。
【請求項29】
前記印刷材料が、金属、金属合金、又はそれらの組み合わせを含む、請求項28に記載の印刷システム。
【請求項30】
前記印刷材料が、大気条件に暴露されると酸化物層を形成する、請求項29に記載の印刷システム。
【請求項31】
前記基材が、酸化ニッケルの上部表面層を含む、請求項28に記載の印刷システム。
【請求項32】
前記印刷システムが、基材制御モータを更に備える、請求項28に記載の印刷システム。
【請求項33】
三次元印刷部品であって、
基材上に配設された金属印刷材料の第1の層と、
前記金属印刷材料の前記第1の層上に配設された前記金属印刷材料の第2の層と、を備え、
前記金属印刷材料の前記第1の層が、酸化金属を含み、
前記基材の表面が、酸化金属を含む、
三次元印刷部品。
【請求項34】
前記金属印刷材料が、アルミニウムを含む、請求項33に記載の三次元印刷部品。
【請求項35】
前記基材の前記表面が、ニッケルを含む、請求項33に記載の三次元印刷部品。
【請求項36】
前記金属印刷材料の前記第1の層が、印刷システムのノズルと前記基材との間の約25mm~約40mmの距離から前記基材上に配設される、請求項33に記載の三次元印刷部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本教示は、包括的には、ドロップオンデマンド(drop-on-demand、DOD)印刷における液体エジェクタに関し、より具体的には、DODプリンタ内で使用するための三次元部品を印刷するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドロップオンデマンド(DOD)又は三次元(three-dimensional、3D)プリンタは、通常、層上に材料層を連続的に堆積させることによって、コンピュータ支援設計(computer-aided design、CAD)モデルから3D物体を構築(例えば、印刷)する。ドロップオンデマンド(DOD)プリンタ、例えば、金属又は金属合金を印刷するものは、発射パルスが印加されたときに、液体アルミニウム合金の小さな滴を吐出する。この技術又は様々な印刷材料を使用する他の技術を使用して、互いに結合して連続部品を形成する一連の滴を吐出することによって、3D部品を生成することができる。例えば、第1の層が基材上に堆積され得、次いで、第2の層が第1の層上に堆積され得る。3Dプリンタの1つの特定のタイプは、結合して層上に液体金属層を噴射して3D金属物体を形成するのに好適な磁気流体力学(magnetohydrodynamic、MHD)プリンタである。磁気流体力学とは、導電性流体の磁気的特性及び挙動の研究を指す。
【0003】
更に、3D印刷技術は、機械加工、鋳造、又は射出成形など従来の方法を使用して別様に作製することができなかった複雑な3D設計の製造を可能にすることが周知である。この能力は、全ての3D印刷プロセスが共有する共通の特徴を通して可能にされ、これは、印刷方向に沿って所与の幾何学的形状を複数の二次元(two-dimensional、2D)層に分割し、一度に1つの層を印刷することである。この手法では、コンピュータ数値制御を使用して、加熱されたビルドプレート又は基材上に溶融液滴を正確に堆積させることができる。そのような構成では、第1の層の重要性を軽視することはできず、これは、三次元部品の残りの部分を形成するための後続の層の印刷の成功が、第1の層に依存するためである。現在、強い溶着に起因して印刷後に部品がビルドプレートから解放されることができない場合があり、又は他の場合には、第1の層を印刷する間に液滴がビルドプレートに付着しない。両方の状況は、部品品質にとって有害であり、軽減されるべきである。
【0004】
したがって、第1の層が、印刷中にビルドプレートと良好に接着し、同時に、印刷完了後に部品の解放を可能にすることが望ましい。適切に保守しながら三次元部品を形成するための方法及び装置が、3D印刷部品においてより多様な特徴部を生成し、基材又は他の構造的特徴部への三次元部品の不十分な又は過剰な接着に起因する信頼性に関する課題を回避するために、必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
以下は、本教示の1つ以上の実施形態のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、簡略化された概要を提示する。この概要は、広範な概略ではなく、本教示の主要又は重要な要素を特定することも、本開示の範囲を明示することも意図していない。むしろ、その主な目的は、単に、後に提示される詳細な説明の前置きとして、1つ以上の概念を簡略化された形式で提示することにすぎない。
【0006】
三次元印刷部品を形成する方法が開示される。方法はまた、第1の条件下で印刷システムを第1のスタンドオフ位置に位置決めすることを含む。方法はまた、第2の条件下で印刷システムを第2のスタンドオフ位置に位置決めすることを含む。三次元印刷部品を形成する方法の実装形態は、第1の条件及び第2の条件のうちの一方が、印刷材料滴が基材の表面上に吐出されることを含み得る場合を含み得る。印刷材料滴は、金属、金属合金、又はそれらの組み合わせを含み得る。第1の条件及び第2の条件のうちの一方は、三次元印刷部品の所定の場所に印刷材料滴を吐出することを含み得る。第1の条件及び第2の条件のうちの一方は、三次元印刷部品の離脱層に関連付けられた表面上に印刷滴を吐出することを含み得る。三次元印刷部品を形成する方法は、三次元印刷部品を形成する間に、印刷システムのノズルを第1のスタンドオフ位置から第2のスタンドオフ位置まで移動させることを含み得る。三次元印刷部品を形成する方法は、ノズルをz方向に第1のスタンドオフ位置まで移動させることを含み得る。三次元印刷部品を形成する方法は、ノズルをz方向に第2のスタンドオフ位置まで移動させることを含み得る。三次元印刷部品を形成する方法は、基材をz方向に第1のスタンドオフ位置まで移動させることを含み得る。三次元印刷部品を形成する方法は、基材をz方向に第2のスタンドオフ位置まで移動させることを含み得る。
【0007】
三次元印刷部品を形成する別の方法が開示され、この方法は、印刷システムを、印刷システムのためのエジェクタのノズルが基材に対して第1のスタンドオフ位置にあるように位置決めすることと、ノズルから複数の液体金属印刷材料滴を吐出して、基材上に三次元印刷部品の第1の層を形成することと、ノズルが第1の層の上部表面に対して第2のスタンドオフ位置にあるように、印刷システムを位置決めすることと、三次元印刷部品の1つ以上の層を、第2のスタンドオフ位置から第1の層上に印刷することと、を含む。
【0008】
三次元印刷部品を形成する方法の実装形態は、基材から三次元印刷部品を取り外すことを含み得る。基材は、酸化ニッケルを含み得る上部表面層を含み得る。三次元印刷部品を形成する方法は、ノズル又はプリントヘッドをz方向に移動させて、第1のスタンドオフ位置に調節することを含み得る。三次元印刷部品を形成する方法は、ノズル又はプリントヘッドをz方向に移動させて、第2のスタンドオフ位置に調節することを含み得る。三次元印刷部品を形成する方法は、基材をz方向に移動させて、第1のスタンドオフ位置に調節することを含み得る。三次元印刷部品を形成する方法は、基材をz方向に移動させて、第2のスタンドオフ位置に調節することを含み得る。液体金属印刷材料は、金属、金属合金、又はそれらの組み合わせを含み得る。液体金属印刷材料は、大気条件において複数の液体金属印刷材料滴のうちの1つ以上の外部表面上に酸化物層を形成する。液体金属印刷材料は、アルミニウムを含み得る。三次元印刷部品を形成する方法は、周囲酸素の量を制御して、複数の液体金属印刷材料滴のうちの1つ以上を、それらが吐出されるときに酸化させることを含み得る。第1のスタンドオフ位置は、ノズルと基材との間で約25mm~約50mmである。第2のスタンドオフ位置は、ノズルと三次元印刷部品の第1の層の上部との間で約8mm~約10mmである。
【0009】
支持構造と三次元印刷部品との間に離脱層を形成する方法が開示される。方法はまた、印刷システムを、印刷システムのためのエジェクタのノズルが支持構造の上部層に対して第1のスタンドオフ位置にあるように位置決めすることと、ノズルから複数の液体金属印刷材料滴を吐出して、支持構造上に離脱層を形成することと、ノズルが離脱層の上部表面に対して第2のスタンドオフ位置にあるように、印刷システムを位置決めすることと、三次元印刷部品の1つ以上の層を、第2のスタンドオフ位置から離脱層上に印刷することと、を含む。
【0010】
支持構造と三次元印刷部品との間に離脱層を形成する方法の実装形態は、ノズルから複数の液体金属印刷材料滴を吐出して、支持構造上に追加の離脱層を形成することを含み得る。第1のスタンドオフ位置は、ノズルと支持構造の上部層との間で約25mm~約50mmである。第2のスタンドオフ位置は、ノズルと三次元印刷部品の離脱層の上部との間で約8mm~約10mmである。
【0011】
印刷システムが開示される。印刷システムは、基材を含む。システムはまた、印刷材料を基材上に噴射するためのエジェクタを含み、内部空洞を画定する構造と、内部空洞と接続し、かつ液体印刷材料の1つ以上の液滴を吐出するように構成されている、ノズルオリフィスと、を含むことができ、システムはまた、エジェクタが、基材に対して第1のスタンドオフ位置から三次元印刷部品の第1の層を印刷するように構成される場合を含む。システムはまた、エジェクタが、第1の層の上部表面に対して第2のスタンドオフ位置から第1の層上に1つ以上の残りの層を印刷するように構成されている場合を含む。
【0012】
印刷材料が、金属、金属合金、又はそれらの組み合わせを含み得る、印刷システムの実装形態。印刷材料は、大気条件に暴露されると酸化物層を形成する。基材は、酸化ニッケルの上部表面層を含み得る。印刷システムは、基材制御モータを更に含み得る。
【0013】
三次元印刷部品が開示される。三次元印刷部品はまた、基材上に配設された金属印刷材料の第1の層と、金属印刷材料の第1の層上に配設された金属印刷材料の第2の層と、を含み、金属印刷材料の第1の層は、酸化金属を含み得、基材の表面が、酸化金属を含み得る。
【0014】
三次元印刷部品の実装形態は、金属印刷材料がアルミニウムを含み得る場合を含む。基材の表面は、ニッケルを含み得る。金属印刷材料の第1の層は、印刷システムのノズルと基材との間の約25mm~約40mmの距離から基材上に配設される。
【0015】
説明された特徴、機能、及び利点は、様々な実装形態において独立して達成され得るか、又は更に他の実装形態において組み合わされ得、その更なる詳細は、以下の説明を参照して理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本明細書の一部に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本教示の実施形態を示し、本明細書とともに本開示の原理を説明する役割を果たす。図は以下のとおりである。
【0017】
図1A】本開示による、3Dプリンタ(例えば、MHDプリンタ及び/又はマルチジェットプリンタ)の単一の液体金属エジェクタジェットの概略断面図を示す。
図1B】本開示による、印刷システムにおけるノズルのスタンドオフ位置を明示する概略図を示す。
図2A】本開示による、三次元印刷部品のいくつかの幾何学的形状の側断面図を示す。
図2B】本開示による、三次元印刷部品のいくつかの幾何学的形状の側断面図を示す。
図2C】本開示による、三次元印刷部品のいくつかの幾何学的形状の側断面図を示す。
図3】本開示による、印刷方法を使用して部品が印刷された後の酸化物層の除去の上面図を示す。
図4A】本開示による、印刷方法を使用して印刷された三次元印刷部品の上面図を示す。
図4B】本開示による、印刷方法を使用して印刷された三次元印刷部品の上面図を示す。
図5】本開示による、三次元印刷部品を形成する方法を例解するフロー図である。
図6】本開示による、支持構造と三次元印刷部品との間の離脱層を形成する方法を例解するフロー図である。
【0018】
図のいくつかの詳細は簡略化されており、厳密な構造精度、詳細、及び縮尺は維持されるものではなく、本教示の理解を容易にするように描かれていることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、本教示の例示的な実施例を詳細に参照し、この実施例は、添付図面に例解される。可能な限り、同じ参照番号が、同じ、類似、又は同様の部分を指すように図面全体にわたって使用される。
【0020】
本開示の例は、ビルドプレート若しくは基材、又はそれらの組み合わせに対して改善された接着特性を有する三次元部品又は構成要素の印刷を可能にする印刷手法を提供する。説明されるような金属ジェット印刷における不十分な接着の問題は、高温への長期暴露後のビルドプレートの状態又は劣化から生じ得るため、過剰な接着も、ビルドプレート又は基材の他のこの経年劣化から生じ得る。本開示の方法及び装置は、印刷システムのためのエジェクタのノズルが、第1の条件中に、基材、ビルドプレート、又は限定はしないが支持構造などの他の特徴部に対して第1のスタンドオフ位置にあるように、印刷システムの調節を提供する。三次元印刷部品の形成を開始するために、ノズルがスタンドオフ位置にある状態で、基材、ビルドプレート、又は他の特徴部上に初期層を吐出することに続いて、ノズルが第1の層の上部表面に対して第2のスタンドオフ位置にあるように印刷システムを位置決めし、第2の条件中にノズルが第2のスタンドオフ位置にある状態で三次元部品の部品又は特徴部を印刷し続ける。本明細書に説明されるようなこの方法を利用して、三次元部品を印刷することができ、初期層の液滴は、基材、ビルドプレート、又は他の特徴部への適切な接着を有し、部品が完成すると、部品は、この第1の条件の間に、基材、ビルドプレート、又は別の特徴部から、過剰な力又は他の分離手段を使用することなく取り外すことができる。本開示の目的のために、第2のスタンドオフ位置は、最初に、ノズルと、基材若しくはビルドプレート、又は限定はしないが支持構造などの他の特徴部との間の公称距離として規定される。z距離が、ノズルと基材表面との間の絶対距離として規定される。部品が表面上に構築されるにつれて、z距離は、印刷ジョブ中に基材に対して増加するが、ノズルから、印刷材料が堆積されている別の層又は部品特徴部の上部表面まで一定のままである。このようにして、z距離は、部品が印刷されるにつれて層の高さのステップで増加する。第1又は第2のスタンドオフ位置は、ノズルと基材若しくはビルドプレート又は他の特徴部との間の一時的な位置又は距離であり、特定の例では、衝突する溶融金属印刷材料の滴又は液滴と、滴又は液滴が噴射される表面との間の界面接着を調節又は調整するように調節される。特定の例では、スタンドオフ位置の距離は、z距離位置又は第2のスタンドオフ位置の距離と比較してより大きい。いくつかの例では、z距離位置距離は、第1のスタンドオフ位置又は第2のスタンドオフ位置距離より大きいか、又は同じであり得る。これは、印刷材料中の特定の金属若しくは合金、又はシステム動作温度若しくは他の動作パラメータに依存し得る。部品が作製されるほとんどの時間に、一定のスタンドオフ距離が存在する。しかしながら、表面上に金属の第1の層を堆積させるときなどの特定の構築条件下では、液滴の跳ね返り又はビルドプレートへの過剰な接着などの特定の問題を克服するために、通常のスタンドオフ距離よりも長い又は高い、より高いスタンドオフ距離が使用される。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、より長いスタンドオフ距離は、液滴が表面に当たる前に冷却するためのより多くの時間を液滴に提供し得る。
【0021】
本開示の印刷システムでは、ビルドプレートは、プレート及び/又は基材に熱エネルギーを提供する加熱要素を有する熱伝達ユニットの上又は上部に配置することができる。特定の例では、ビルドプレートは、黄銅から作製することができ、溶融アルミニウム液滴がビルドプレートに衝突するときに溶融アルミニウム液滴の濡れを促進するためにニッケルでコーティングすることができる。初めて使用される前に、新しいビルドプレートは、典型的には、熱伝達ユニットにわたってそれらを配置することによって、少なくとも1時間、475℃でシーズニングされる。この高温において、ニッケルコーティングは酸化を受け、ビルドプレートにわたってニッケル酸化物層を形成する。酸化物層は通常、青色、紫色、又は緑色の様々な色調を有する。特定の例において、基材又はプレート表面は、酸化金属でコーティングされる。他の例では、印刷材料は、多くの場合に高温で、大気条件に暴露されたとき、又は連続的な加熱を受けたときに酸化物層を形成する。
【0022】
図1Aは、本開示による、3Dプリンタ(例えば、MHDプリンタ及び/又はマルチジェットプリンタ)の単一の液体金属エジェクタジェットの概略断面図を示す。図1Aは、あるタイプのドロップオンデマンド(DOD)又は三次元(3D)プリンタ100の一部分を示す。3Dプリンタ又は液体エジェクタジェットシステム100は、下部ブロックとも称される、外部エジェクタハウジング102内にエジェクタ(本体又はポンプチャンバ、若しくは「ワンピース」ポンプとも称される)104を含み得る。エジェクタ104は、内容積部132(内腔又は内部空洞とも称される)を画定し得る。印刷材料126は、エジェクタ104の内容積部132内に導入され得る。印刷材料126は、金属、ポリマーなどであり得るか、又はこれらを含み得る。本開示の実施例で使用される印刷材料の性質及び特性に応じて、本明細書で説明されるMHDとは別の代替噴射技術が必要となる場合があることに留意されたい。例えば、印刷材料126は、アルミニウム又はアルミニウム合金であり得るか、又はそれを含み得、印刷材料供給部116又は印刷材料ワイヤフィード118のスプール、この場合はアルミニウムワイヤを介して導入され得る。液体エジェクタジェットシステム100は、エジェクタ104のポンプキャップ又は上部カバー部分108内に第1の入口120を更に含み、それによって、印刷材料ワイヤフィード118がエジェクタ104の内容積部132内に導入される。エジェクタ104は、ノズル110、上部ポンプ122エリア、及び下部ポンプ124エリアを更に画定している。1つ以上の加熱要素112が、ポンプチャンバ104の周りに分配されて、高温度源を提供し、プリンタ動作中に印刷材料126を溶融状態に維持する。加熱要素112は、印刷材料ワイヤフィード118を加熱又は溶融させるように構成されており、それによって、エジェクタ104の内容積部132内で印刷材料ワイヤフィード118を固体状態から液体状態(例えば、印刷材料126)に変える。三次元3Dプリンタ100及びエジェクタ104は、ノズル110の近くに位置する空気又はアルゴンシールド114、並びにノズル及び/又はエジェクタ104の温度調節を更に可能にするための水冷却源130を更に含み得る。液体エジェクタジェットシステム100は、エジェクタ104内部の印刷材料126の表面に向けて検出器ビーム136を方向付け、反射検出器ビーム136をレベルセンサ134の内部で読み取ることによって、エジェクタ104の内容積部132内の溶融印刷材料126のレベルを検出するように構成されたレベルセンサ134システムを更に含む。
【0023】
3Dプリンタ100はまた、本明細書に示されていない電源、及び少なくとも部分的にエジェクタ104の周囲に巻き付けられているポンプヒータに封入された1つ以上の金属コイル106を含み得る。電源は、コイル106に結合され、コイル106に電流を送給するように構成され得る。コイル106によって引き起こされた増大する磁場が、エジェクタ104内に起電力を生じさせ得、引いては印刷材料126内に誘導電流を生じさせ得る。印刷材料126内の磁場及び誘導電流は、ローレンツ力として知られる、半径方向内向きの力を印刷材料126に作り出し得る。ローレンツ力は、エジェクタ104のノズル110の入口に圧力を生じさせる。この圧力は、印刷材料126を1つ以上の滴128の形態でノズル110を通して噴射させる。
【0024】
3Dプリンタ100はまた、ノズル110に近接して(例えば、下方に)位置付けられた、本明細書に示されていない基材を含み得る。基材は、加熱要素を含んでもよく、又は代替的には、黄銅又は他の材料から構成されてもよい[他の基材材料を規定してください]。特定の例では、基材は、溶融アルミニウム液滴がビルドプレートに衝突するときに溶融アルミニウム液滴の濡れを促進するためにニッケルでコーティングすることができる黄銅製のビルドプレートを更に含むことができる。特定の例におけるビルドプレートは、モリブデンなどの代替材料から作製してもよい。モリブデンプレートにコーティングを塗布する必要はないが、450℃を超えて加熱されると、酸化モリブデンが形成され得ることに留意されたい。吐出された滴128は、基材上に着地し、固化して3D物体を生成し得る。3Dプリンタ100はまた、滴128がノズル110を通して噴射されている間、又は滴128がノズル110を通して噴射されている間の一時停止中に基材を移動させて、3D物体に所望の形状及び大きさを付与するように構成された基材制御モータを含み得る。基材制御モータは、基材を一次元(例えば、X軸に沿って)、二次元(例えば、X軸及びY軸に沿って)、又は三次元(例えば、X軸、Y軸、及びZ軸に沿って)で移動するように構成され得る。別の例では、エジェクタ104及び/又はノズル110もまた、若しくはその代わりに、一次元、二次元、又は三次元で移動するように構成され得る。換言すれば、静止しているノズル110の下方で基材が移動されてもよく、又は、静止している基材の上方でノズル110が移動されてもよい。更に別の例では、4軸又は5軸の位置制御が存在するように、ノズル110と基材との間に1つ又は2つの更なる軸を中心とした相対的な回転が存在し得る。特定の例では、ノズル110及び基材の両方が移動し得る。例えば、基材がX方向及びY方向に移動し、ノズル110がZ方向に上下に移動してもよい。ノズル110が移動する場合、ノズル110及び他のプリントヘッドアセンブリ構成要素は、ノズル又はプリントヘッドモータ制御(本明細書では図示せず)を含むことができる。
【0025】
3Dプリンタ100はまた、ガス源138であってもよいか、又はこれを含んでもよい1つ以上のガス制御デバイスを含み得る。ガス源138は、ガスを導入するように構成されてもよい。ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及び/又はキセノンなどの不活性ガスであってもよいか、又はこれらを含んでもよい。別の例では、ガスは、窒素であり得るか、又は窒素を含み得る。ガスは、約10%未満の酸素、約5%未満の酸素、又は約1%未満の酸素を含んでもよい。少なくとも1つの例では、ガスは、ガス源138から三次元3Dプリンタ100に導入される1つ以上のガスの流れ又は流量を調整するように構成されたガス調整器140を含むガスライン142を介して導入され得る。例えば、ガスは、ノズル110及び/又は加熱要素112の上方の場所に導入され得る。これは、ガス(例えば、アルゴン)が、ノズル110、滴128、3D物体、及び/又は基材の周囲にシュラウド/シースを形成して、空気シールド114の形態で酸化物(例えば、酸化アルミニウム)の形成を低減/防止することを可能にし得る。ガスの温度を制御することはまた、又はその代わりに、酸化物形成が起こる速度を制御する(例えば、最小化する)ことに役立ち得る。
【0026】
液体エジェクタジェットシステム100はまた、内容積部(大気とも称される)を画定しているエンクロージャ102を含み得る。ある例では、エンクロージャ102は、密封され得る。別の例では、エンクロージャ102は、密封されていなくてもよい。ある例では、エジェクタ104、加熱要素112、電源、コイル、基材、追加のシステム要素、又はそれらの組み合わせは、少なくとも部分的にエンクロージャ102内に位置付けられ得る。別の例では、エジェクタ104、加熱要素112、電源、コイル、基材、追加のシステム要素、又はそれらの組み合わせは、少なくとも部分的にエンクロージャ102の外側に位置付けられ得る。図1に示す液体エジェクタジェットシステム100は、典型的な液体エジェクタジェットシステム100を表しているが、様々な特徴の場所及び特定の構成並びに/又は物理的関係は、代替の設計例において変化し得る。
【0027】
本明細書に説明されるような印刷システムは、代替的に、プラスチック又は非金属である他の延性材料などの他の印刷材料を含み得る。印刷材料は、金属、金属合金、又はこれらの組み合わせを含み得る。印刷材料の非限定的な例としては、アルミニウムが挙げられ得る。本開示の印刷システムの例示的な例は、内部空洞を画定する構造と、内部空洞と接続し、かつ液体印刷材料の1つ以上の液滴を吐出するように構成されている、ノズルオリフィスと、を含む、印刷材料を噴射するためのエジェクタを含むことができ、エジェクタは、基材に対してスタンドオフ位置から三次元印刷部品の第1の層を印刷するように構成されており、エジェクタは、第1の層の上部表面に対して第2のスタンドオフ位置から第1の層上に1つ以上の残りの層を印刷するように構成されている。そのような例では、ノズルの公称印刷距離又は任意の所与の層からの第2のスタンドオフ距離は、約8mm~約10mmである。基材に対するz距離位置は、部品が構築されるにつれて増加する。
【0028】
図1Bは、本開示による、印刷システムにおけるノズルのスタンドオフ位置を明示する概略図を示す。ノズル150が印刷ベッド又は基材152上に1つ以上の液滴層を堆積させると、第1の印刷層154、第2の印刷層156、第3の印刷層158、及び第4の印刷層160が、印刷部品の一部を形成するように蓄積されて示されている。図1Bには、ノズル150と基材152との間の距離であるz高さ又はz距離162が示されている。z高さ又はz距離162は、任意の時点における部品高さ166とノズルスタンドオフ距離168との和である。層高さ164が、ノズル150を用いて印刷された各層の高さを示す。部品高さ166は、印刷された部品の任意の層の高さの合計であり、印刷された層の数と層高さ164との積と呼ぶこともできる。ノズル150と印刷部品の最上層160の上部表面との間の距離であるノズルスタンドオフ距離168が示されている。スタンドオフ距離168は、液滴がその飛行を開始する場所、いくつかの例ではノズル150と、液滴が所与の状況において着地することが意図される場所との間の距離である。スタンドオフ距離168は、印刷材料の液滴の出口位置と、液滴の意図された着地場所との間の絶対距離として更に定義することができる。したがって、三次元印刷部品を印刷又は形成する方法は、印刷システムを第1の条件下で第1のスタンドオフ位置に位置決めすることと、ノズルが第2の条件下で第2のスタンドオフ位置にあるように印刷システムを位置決めすることと、を含むことができる。第1の条件は、第1の条件及び第2の条件のうちの1つがビルドプレートの表面上への吐出であることを含むことができる。第1の条件及び第2の条件のうちの1つは、構築、印刷、又は形成されている三次元部品の所定の場所への吐出を含むことができる。第1の条件及び第2の条件のうちの1つは、構築、印刷、又は形成されているワークピース又は三次元部品の離脱層に関連付けられた表面又は基材上に吐出することを含むことができる。
【0029】
図2A図2Cは、本開示による、三次元印刷部品のいくつかの幾何学的形状の側断面図を示す。図2Aは、202上に印刷された三次元印刷部品200の例を示す。202は、黄銅又は本明細書に記載されるような代替の別の好適な材料から作製されており、ニッケルコーティング204を有し、ニッケルコーティング204は、ニッケルコーティング204上に形成された酸化ニッケルの上部表面層206を有する。図2Bは、三次元部品200がこの酸化ニッケル層の上部表面206上に印刷された後に、三次元印刷部品200に付着している酸化ニッケルの剥ぎ取られた上部表面層206Aを有する三次元印刷部品200を示す。部品200をビルドプレート202から分離するために、ビルドプレート202は、部品200とともに、室温の水を収容している浴208内に急速に沈められる。黄銅ビルドプレート202及び印刷アルミニウム部品200の熱膨張係数(coefficient of thermal expansion、CTE)値が異なるため、急速に冷却されたときの材料間の収縮の不一致は、ビルドプレート202からの部品200の解放を容易にする。このプロセスにおいて、印刷部品200の下側は、それとともにビルドプレート202の酸化ニッケル上部表面206Aの一部を取り、酸化ニッケル層206が剥ぎ取られた場所で、下にあるニッケルコーティング204がビルドプレート202上で露出される。このようにして、ビルドプレートの少量のニッケルコーティング204が各印刷ジョブ後に消費される。例示的な例では、金属間、すなわちビルドプレートと印刷部品との間のCTE値の差は、約1ppm/℃~約5ppm/℃、又は約6ppm/℃~約10ppm/℃、又は約11ppm/℃~約15ppm/℃である。
【0030】
次に、プレート202を乾燥させ、再び475℃の動作温度まで加熱する。露出した下にあるニッケル層204は、酸化ニッケル層の上部表面206を再び徐々に成長させる。印刷される次の部品のフットプリントが図2Aに示されるもののように小さい場合、その印刷場所は、酸化ニッケル上部表面層206が比較的無傷であるビルドプレート202の他の領域を利用するように都合よく変更することができる。多くの印刷及び水浸及び冷却サイクルを経た後、プレート202は、ニッケルコーティング204が剥き出しになり、印刷に必要な酸化ニッケル層206を形成することができなくなる。これは、ビルドプレート202のライフサイクルの終わりを示し、ビルドプレート202は、それが再び使用され得る前に、洗浄及び再コーティングのために送られなければならない。
【0031】
いくつかの例では、部品200は、強い溶着に起因して、水浴208に浸漬されている間にビルドプレート202から分離することを拒絶する可能性があり、除去を容易にするためにかなりの力を加えることは、印刷部品200又はビルドプレート202に損傷を引き起こすことが多い。これはまた、塊又は広い領域におけるニッケル層204の過剰な剥離につながり、著しい損傷を引き起こす可能性がある。また、例えば、チゼルのベベルに対応するために、丸い特徴部を有し、ツール入口点を有さない部品の場合、部品をビルドプレートから分離するために部品を活用することは、問題を引き起こす。図2Cに示されるように、印刷部品200に沿った指示線210が、上部表面206及びプレート202に対して垂直であることが意図されているが、湾曲しており、印刷後にプレート202から取り外されるときの三次元印刷部品の曲がりを示している。プレート202の上部表面206から三次元印刷部品200を取り外すのに必要な過剰な力によって、三次元印刷部品200は、指示線210によって示されるように曲げられている。印刷部品を取り外すこの手動の方法は、細長い部品、すなわち、より小さいベース面積を有するより背の高い部品に対して可能であり、したがって、部品の上部をプライヤ又は他の器具で掴み、必要な横方向の力を加えて、プレートへの小さい接着面積に起因して分離を引き起こすことができることに留意されたい。
【0032】
本開示に説明されるシステム及び方法では、プリントヘッド又はノズルの第1のスタンドオフ位置又は距離を、30mm~40mmに増加させて、新しいビルドプレートへの印刷部品の過剰な溶着、並びに、十分に使用されたビルドプレートから跳ねる液滴の両方の問題を軽減することができる。特定の例では、第1のスタンドオフ位置は、約25mm~約50mm、又は約25mm~約40mm、又は約25mm~約35mmである。スタンドオフ位置は、印刷部品の基材又は上部層に対して約8mm~約10mmの公称印刷スタンドオフ位置と比較することができる。
【0033】
図3は、本開示による、印刷方法を使用して部品が印刷された後の酸化物層の除去の上面図を示す。ビルドプレート300の上面表面には、プレート300から部品を取り外した後の、いくつかの印刷部品の底部に似た、剥ぎ取られた酸化ニッケル層のパッチが示されている。5mmの第1のスタンドオフ位置で印刷された部品についての剥ぎ取られたビルドプレート表面材料302のパッチが、5mmの第1のスタンドオフ位置で印刷された部品についての剥ぎ取られたビルドプレート表面材料304の第2のパッチとともに示されている。最後に、剥ぎ取られたビルドプレート表面材料306の第3のパッチが、40mmの第1のスタンドオフ位置で印刷された部品について示されている。図3に関して説明した部品の印刷中に留意されるように、40mmから印刷された部品を変形させることなく容易に折り取ることができた。図3に示すように、40mmのスタンドオフから印刷された部品から剥ぎ取られたビルドプレート表面材料306のパッチは、ビルドプレート300への部品のより弱い接着の結果であり、その結果、除去された酸化ニッケル層は、5mmの剥ぎ取られたビルドプレート表面パッチ302、304と比較してより弱い。
【0034】
図4A及び図4Bは、本開示による、印刷方法を使用して印刷された三次元印刷部品の上面図を示す。プレートがより古いか、又はより長い期間にわたって使用された例では、複数の印刷サイクルによる枯渇したニッケル層は、酸化ニッケル層を形成するために酸化するのに必要な十分な量のニッケルを提供することができず、これにより、図4Aに示すように、第1の印刷層404の1つ以上の滴又は液滴402がビルドプレート406から跳ね返るか又は跳ねる可能性がある。この例及び同様の欠陥を示す他の例では、プリントヘッドノズルは、印刷中にビルドプレート406から8mm離れており、基材からのこのプリントヘッドスタンドオフ距離で跳ねる液滴402は、ノズルのオリフィスの周りのより高温の領域に付着する可能性があり、潜在的に、オリフィスの周りの溶融印刷材料の望ましくない濡れに起因して噴射不良につながる可能性がある。
【0035】
前述したように、プリントヘッドのスタンドオフ距離を変化させることによって、部品の接着強度がある程度制御される。この属性は、個々に噴射された液滴のより弱い接着を意図的に作り出すために活用され得、水浴中での部品解放中に追加の又は過剰な力なしにビルドプレートから部品を取り外すことを可能にする。部品の取り外しを改善する上で使用されるより高いプリントヘッドスタンドオフ距離は、液体又は溶融金属印刷材料を用いた三次元部品印刷中に他の方法で有益であり得る。複数回の印刷及び部品分離サイクルを受けたプレートの使用中に、増加したスタンドオフ位置からの印刷は、プレート表面から跳ねる又は跳ね返る液滴を著しく減少させる。30mmの高さにあるスタンドオフ位置から印刷されたときの、図4Bに示されるような第1の層404は、同様の印刷が公称スタンドオフ位置から印刷又は噴射されたときと比較して、観察される跳ねの大部分を減少させた。
【0036】
図5は、本開示による、三次元印刷部品を形成する方法を例解するフロー図である。三次元印刷部品を形成する方法500は、印刷システムを、印刷システムのためのエジェクタのノズルが基材に対して第1のスタンドオフ位置にあるように調節するステップ502を含み、その後、ノズルから複数の液体金属印刷材料滴を吐出して、基材上に三次元印刷部品の第1の層を形成する504。次に、印刷システムは、ノズルが第1の層の上部表面に対して第2のスタンドオフ位置にあるように調節され506、三次元印刷部品の1つ以上の層が、第2のスタンドオフ位置から第1の層上に印刷される508。特定の例では、方法500は、基材から三次元印刷部品を取り外すことを含む。基材は、部分的に金属酸化物層、特に酸化ニッケルから構成された上部表面層を含むことができる。第1のスタンドオフ位置への印刷システムの調節は、ノズル又はプリントヘッドをz方向に移動させて第1のスタンドオフ位置に調節すること、ノズル又はプリントヘッドをz方向に移動させて第2のスタンドオフ位置に調節すること、基材をz方向に移動させて第1のスタンドオフ位置に調節すること、基材をz方向に移動させて第2のスタンドオフ位置に調節すること、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。特定の例では、印刷材料は、金属、金属合金、又はそれらの組み合わせを含む。他の例では、印刷材料は、印刷システムのノズルから印刷材料を噴射若しくは吐出する間又はその後に、大気条件下で滴の外部表面上に酸化物層を形成する。印刷材料は、特定の例では、アルミニウムを含む。印刷方法の特定の例は、印刷材料部品及びビルドプレートのCTEが異なる場合を含む。三次元印刷部品を形成する方法500はまた、周囲酸素又は他の大気気体の量を制御して、複数の液体金属印刷材料滴のうちの1つ以上を、それらが吐出されるときに酸化させることを含むことができる。代替的に、ある量の周囲酸素又は他の大気気体をビルドプレート又は基材に向けて送達して、プレート又は基材上の金属の表面層を酸化させることができる。例示的な例では、第1のスタンドオフ位置は、ノズルと基材との間で約25mm~約50mmである。他の例示的な例では、第2のスタンドオフ位置は、ノズルと三次元印刷部品の第1の層の上部との間で約8mm~約10mmである。
【0037】
図6は、本開示による、支持構造と三次元印刷部品との間の離脱層を形成する方法を例解するフロー図である。離脱層は、三次元部品の印刷された層又は複数の層であり、部品が印刷後に開裂又は分離されることが意図される界面に配置されている。この離脱層は、印刷部品の部分間の一部内に、部品と基材又はプレートとの間、部品の一部分と支持構造との間、又はそれらの組み合わせに位置付けることができる。本明細書に説明されるような方法及びシステムを利用して、支持構造と三次元印刷部品との間に離脱層を形成する方法600は、印刷システムを、印刷システムのためのエジェクタのノズルが支持構造の上部層に対して第1のスタンドオフ位置にあるように位置決めすること602と、ノズルから複数の液体金属印刷材料滴を吐出して、支持構造上に離脱層を形成すること604と、を含む。次に、印刷システムは、ノズルが離脱層の上部表面に対して第2のスタンドオフ位置にあるように調節され606、三次元印刷部品の1つ以上の層が、第2のスタンドオフ位置からの1つ以上の液滴の吐出によって離脱層上に印刷される608。方法600は、ノズルから複数の液体金属印刷材料滴を吐出して、支持構造上に追加の離脱層を形成することを含むことができる。方法600で使用される第1のスタンドオフ位置は、ノズルと支持構造の上部層との間で約25mm~約50mmとすることができ、又は第2のスタンドオフ位置は、ノズルと三次元印刷部品の離脱層の上部との間で約8mm~約10mmとすることができる。
【0038】
本開示の利点は、本開示の印刷システムのための追加の特別なセットアップ又は機器の最小化を含む。本方法は、第1の層を印刷している間、その後、後続の層の印刷中に、プリントヘッドノズルのスタンドオフ距離を位置決めすることによって、3D金属印刷システムにおいて実行されることができる。このようにして、プリントヘッドスタンドオフ距離を変化させることによって、部品接着強度を制御することができる。更に、三次元印刷部品の1つ以上の層の印刷中に跳ねる滴又は液滴は、調節された、いくつかの例ではより高いスタンドオフ距離を使用して軽減することができる。この方法は、機械的除去ツールの使用又はそれに関連する過剰な力を回避するか又は最小限に抑えることによって、部品分離中の三次元部品又はビルドプレートへの損傷を最小限に抑える。本開示で説明される方法の追加の利点は、本システム又は方法を使用せずに印刷された部品のビルドプレートへの強い接着に起因する、酸化ニッケルの塊又は広い面積の除去を最小限に抑え、プレート寿命を延ばすことを含む。第1の層のハイブリッドスタンドオフ距離による初期の第1の層の接着のこの制御された弱化は、本明細書に記載される方法及びシステムによって提供することができる。いくつかの例では、印刷動作を指示するgコードにおける1つおきの液滴は、第1のパス中に1つのスタンドオフ距離で印刷することができ、他の層内の残りの液滴は、第2及び後続のパス中に異なるスタンドオフ距離で印刷することができる。例では、液滴又は液滴の層が吐出されるスタンドオフ距離は、液滴が表面に衝突するか、又は三次元印刷部品、ビルドプレート、若しくは支持構造内の前の層、次の層、若しくは隣接する液滴に溶着するときに、冷却速度、液滴の酸化、又は部品内の結果として生じる引張強度に影響を及ぼし得る。
【0039】
本教示は、1つ以上の実装形態に関して示されているが、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、示された例に対して変更及び/又は修正が行われ得る。例えば、プロセスが一連の行為又は事象として説明されているが、本教示は、そのような行為又は事象の順序によって限定されないことが理解され得る。一部の行為は、異なる順序で、及び/又は本明細書に記載されているものとは別の他の行為若しくは事象と同時に発生する可能性がある。また、全てのプロセス段階が、本教示の1つ以上の態様又は実施形態に従う方法論を実装するために必要とされ得るわけではない。構造的物体及び/若しくは処理段階が追加され得るか、又は既存の構造的物体及び/若しくは処理段階が除去若しくは修正され得ることが理解され得る。更に、本明細書に示される行為のうちの1つ以上は、1つ以上の別個の行為及び/又は段階で実行され得る。更に、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語、又はそれらの変形が、発明を実施するための形態及び特許請求の範囲のいずれかで使用される限りにおいて、そのような用語は、「含む(comprising)」という用語と同様の方法で包括的であることが意図されている。「少なくとも1つの」という用語は、列挙された項目のうちの1つ以上が選択され得ることを意味するように使用される。更に、本明細書における考察及び特許請求の範囲において、2つの材料に対して使用される「上(on)」という用語、他方「上」の一方は、材料間の少なくとも一部の接触を意味し、一方、「の上(over)」は、材料が、場合によっては、接触が可能であるが必要とされないように、1つ以上の追加の介在材料に近接していることを意味する。「上(on)」又は「の上(over)」のいずれも、本明細書で使用される場合にいかなる指向性も暗示しない。「共形」という用語は、下にある材料の角度が共形材料によって保持されるコーティング材料を記述する。「約」という用語は、変更が、示された実施形態に対してプロセス又は構造の不適合とならない限り、列挙される値が少し変更され得ることを示す。「結合する」、「結合される」、「接続する」、「接続」、「接続される」、「と接続して」、及び「接続している」という用語は、「と直接接続する」又は「1つ以上の中間要素又は部材を介して接続する」ことを指す。最後に、「例示の」又は「例証的な」という用語は、説明が理想的であることを意味するのではなく一例として使用されることを示す。本教示の他の実施形態は、本明細書の検討及び本明細書での本開示の実施を考慮して当業者に明らかであり得る。本明細書及び実施例は、単なる例示としてみなされることが意図され、本教示の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5
図6
【外国語明細書】