(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023154
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】チャイルドシート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/28 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B60N2/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127845
(22)【出願日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2022126283
(32)【優先日】2022-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】田村 尚之
(72)【発明者】
【氏名】岡 拓孝
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CE06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ベースに対してシートが回転、スライド、着脱する構成の部品点数を減らして操作性の良いチャイルドシートを提供する。
【解決手段】乳幼児が着座するシート12と、車両シートに取り付けて前記シートが軸回りに回転、又は前記シートが直線状に移動するスライドの2つの動作を可能に支持するベース14を備えたチャイルドシート10であって、前記シートを前記ベースの中央位置に固定できるシート固定部60と、前記シート固定部の固定を解除する操作部材34と、前記操作部材で前記シート固定部の固定を解除したときに前記シートを前記ベース上で回転自在に支持できる回転連結部50を有し、前記回転連結部50は、前記ベース上面の凹部と前記シート下面の凸部の嵌め合い構造であり、前記凸部は前記凹部に向けて付勢されており、前記凸部の端部と前記凹部の開口周縁はいずれか一方又は両方を傾斜又は球面形状に形成したことを特徴としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳幼児が着座するシートと、車両シートに取り付けて前記シートが軸回りに回転、又は前記シートが直線状に移動するスライドの2つの動作を可能に支持するベースを備えたチャイルドシートであって、
前記シートを前記ベースの中央位置に固定できるシート固定部と、
前記シート固定部の固定を解除する操作部材と、
前記操作部材で前記シート固定部の固定を解除したときに前記シートを前記ベース上で回転自在に支持できる回転連結部を有し、
前記回転連結部は、前記ベース上面の凹部と前記シート下面の凸部の嵌め合い構造であり、前記凸部は前記凹部に向けて付勢されており、前記凸部の端部と前記凹部の開口周縁はいずれか一方又は両方を傾斜又は球面形状に形成したことを特徴とするチャイルドシート。
【請求項2】
請求項1に記載のチャイルドシートであって、
前記シート固定部は、前記回転連結部と一体的に設けたことを特徴とするチャイルドシート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたチャイルドシートであって、
前記回転連結部は、前記ベース上面に設ける環状凹部を前記シートの回転中心の同心円上に配置したことを特徴とするチャイルドシート。
【請求項4】
請求項2に記載されたチャイルドシートであって、
前記回転連結部の凹部は、開口周縁を傾斜形状とし、傾斜深さは前記シート固定部の矩形凹部の深さよりも浅くし、前記凸部は前記シートがスライドする方向の端部のみ面取りしたことを特徴とするチャイルドシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両シートに取り付けたベースに対して、乳幼児が着座するシートが回転、スライド、着脱するチャイルドシートに関する。
【背景技術】
【0002】
乳幼児を車両に乗せて運転するときは必ずチャイルドシートを使用することが法令で義務付けられている。
従来、種々のチャイルドシートが提案されている。特許文献1に開示のチャイルドシートは、リクラニング操作レバーによりリクライニング動作と、回転操作レバーにより回転動作が行えるものである。そして操作スイッチを設けて、一方の操作レバーの操作時に他方の操作レバーの移動を阻止している。これによりリクライニング動作と回転動作が同時に行えないようにできる。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示のチャイルドシートは、リクライニング動作と回転動作を行うための操作レバーが夫々必要であり、また同時操作を阻止するための操作スイッチも設置しなければならず、部品点数が増加して、コスト高となるおそれがあった。また、部品点数が多くなると、設計のレイアウトが制限されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、ベースに対してシートが回転、スライド、着脱する構成の部品点数を減らして操作性の良いチャイルドシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、乳幼児が着座するシートと、車両シートに取り付けて前記シートが軸回りに回転、又は前記シートが直線状に移動するスライドの2つの動作を可能に支持するベースを備えたチャイルドシートであって、
前記シートを前記ベースの中央位置に固定できるシート固定部と、
前記シート固定部の固定を解除する操作部材と、
前記操作部材で前記シート固定部の固定を解除したときに前記シートを前記ベース上で回転自在に支持できる回転連結部を有し、
前記回転連結部は、前記ベース上面の凹部と前記シート下面の凸部の嵌め合い構造であり、前記凸部は前記凹部に向けて付勢されており、前記凸部の端部と前記凹部の開口周縁はいずれか一方又は両方を傾斜又は球面形状に形成したことを特徴とするチャイルドシートを提供することにある。
上記第1の手段によれば、車両シートに取り付けたベースに対して、乳幼児が着座するシートが回転及びスライドの動作をする際に、1つの操作部材で行うことができ、操作部材の部品点数を減らすことができ、設計レイアウトの自由度を高めることができる。
またシートの取り付け時において、ベースの中央位置へ取り付けを容易に行える。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記シート固定部は、回転連結部と一体的に設けたことを特徴とするチャイルドシートを提供することにある。
上記第2の手段によれば、同一部材で形成することにより、部品点数を削減して、設計レイアウトの自由度を高めることができる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1又は2の手段において、前記回転連結部は、前記ベース上面に設ける環状凹部を前記シートの回転中心の同心円上に配置したことを特徴とするチャイルドシートを提供することにある。
上記第3の手段によれば、回転中心の同心円上を回転させることにより、回転動作時の中心軸に負荷が集中することなく同心円上に分散させることができる。
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、第2の手段において、前記回転連結部の凹部は、開口周縁を傾斜形状とし、傾斜深さは前記シート固定部の矩形凹部の深さよりも浅くし、前記凸部は前記シートがスライドする方向の端部のみ面取りしたことを特徴とするチャイルドシートを提供することにある。
上記第4の手段によれば、シートをスライド位置から中央位置に戻したときに中央位置を通り過ぎて反対方向にスライドすることがない。
【発明の効果】
【0009】
車両シートに取り付けたベースに対して、乳幼児が着座するシートが回転及びスライドの動作をする際に、1つの操作部材で行うことができ、操作部材の部品点数を減らすことができ、設計レイアウトの自由度を高めることができる。
またシートの取り付け時において、ベースの中央位置へ取り付けを容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1のチャイルドシートの分解斜視図である。
【
図6】実施例1のシートを中央位置に配置した回転連結部の接続断面図、一部拡大図である。
【
図7】実施例1のシートを中央位置に配置したシート固定部の接続断面図、一部拡大図である。
【
図8】実施例1のシート固定部を解除した回転連結部の接続断面図、一部拡大図である。
【
図9】実施例1のシート固定部を解除したシート固定部の接続断面図、一部拡大図である。
【
図10】実施例1のシートがスライドする回転連結部の接続断面
図1、一部拡大図である。
【
図11】実施例1のシートがスライドするシート固定部の接続断面
図1、一部拡大図である。
【
図12】実施例1のシートがスライドする回転連結部の接続断面
図2、一部拡大図である。
【
図13】実施例1のシートがスライドするシート固定部の接続断面
図2、一部拡大図である。
【
図14】実施例2のチャイルドシートの分解斜視図である。
【
図19】実施例2のシートを中央位置に配置した回転連結部の接続断面図、一部拡大図である。
【
図20】実施例2のシートを中央位置に配置したシート固定部の接続断面図、一部拡大図である。
【
図21】実施例2のシート固定部を解除したシート固定部の接続断面図、一部拡大図である。
【
図22】実施例2のシートがスライドする回転連結部の接続断面
図1、一部拡大図である。
【
図23】実施例2のシートがスライドするシート固定部の接続断面
図1、一部拡大図である。
【
図24】実施例2のシートがスライドする回転連結部の接続断面
図2、一部拡大図である。
【
図25】実施例2のシートがスライドするシート固定部の接続断面
図2、一部拡大図である。
【
図26】実施例3のチャイルドシートの分解斜視図である。
【
図31】実施例3のシートを中央位置に配置した回転連結部の接続断面図、一部拡大図である。
【
図32】実施例3のシートを中央位置に配置したシート固定部の接続断面図、一部拡大図である。
【
図33】実施例3のシート固定部を解除した回転連結部の接続断面図、一部拡大図である。
【
図34】実施例3のシート固定部を解除したシート固定部の接続断面図、一部拡大図である。
【
図35】実施例3のシートがスライドする回転連結部の接続断面
図1、一部拡大図である。
【
図36】実施例3のシートがスライドするシート固定部の接続断面
図1、一部拡大図である。
【
図37】実施例3のシートがスライドする回転連結部の接続断面
図2、一部拡大図である。
【
図38】実施例3のシートがスライドするシート固定部の接続断面
図2、一部拡大図である。
【
図39】実施例4の回転連結部の中心穴240aの説明図であり、ベースのA-A一部断面拡大図である。
【
図40】実施例4の回転連結部の凸部320の説明図であり、凸部の拡大図である。
【
図41】シートを左に90°回転させたときのチャイルドシート全体図および回転連結部の拡大図である。
【
図42】シートを中央位置から左方向へスライド移動する回転連結部の拡大断面図である。
【
図43】シートを中央位置へスライド移動する回転連結部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のチャイルドシートの実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。本実施形態で前後方向(前方・後方)とは、車両のフロント・リア方向を示し、左右方向とは車両のドア側の方向を示している。
本発明のチャイルドシート10は、乳幼児が着座するシート12と、車両シートに取り付けて前記シート12が軸回りに回転、又は前記シート12が直線状に移動するスライドの2つの動作を可能に支持するベース14を備えている。そして前記シート12を前記ベース14の中央位置に固定できるシート固定部60と、前記シート固定部60の固定を解除する操作部材34と、前記操作部材34で前記シート固定部60の固定を解除したときに前記シート12を前記ベース14上で回転自在に支持できる回転連結部50を有し、前記回転連結部50は、前記ベース14上面の凹部となる中心穴24a又は凹部25又は環状凹部27と前記シート下面の凸部32の嵌め合い構造であり、前記凸部32は前記凹部となる中心穴24a又は凹部25又は環状凹部27に向けて付勢されており、前記凸部32の端部と前記凹部の開口周縁はいずれか一方又は両方を傾斜又は球面形状に形成している。
【0012】
[実施例1]一体型(回転連結部50とシート固定部60)
図1は実施例1のチャイルドシートの分解斜視図である。
図2は
図1のA-A断面図である。
図3は
図1のB-B断面図である。
図4は
図1のC-C断面図である。
図5は
図1のD-D断面図である。
図示のように実施例1のチャイルドシート10は、シート12下面にフランジ付き円盤40と、フランジ付き円盤40から突出した凸部32及び矩形部材33を備え、ベース14上面にフランジ付き円盤40が嵌るT溝20と、T溝20の底面に凸部32及び矩形部材33が嵌る矩形凹部24を備えている。矩形凹部24はベース14に対してシート12が中央位置となる箇所に設置しているが、水平方向に複数並列して配置しても良い。矩形部材33の長手方向はシート12の前後方向に沿って形成している。シート12の左右側面には操作部材34となる操作レバーを2つ配置している。
【0013】
実施例1の回転連結部50は、シート12側の凸部32と、ベース14側の凹部となる矩形凹部24の中心穴24aからなる嵌め合い構造を採用している。回転連結部50は、ベース14上の中央位置でシート12を回転可能に支持している。凸部32はシート12の回転軸上に配置した円筒部材である。矩形凹部24は、中心に凸部32が嵌る中心穴24aを設けている。さらに中心穴24aは、開口周縁を座繰り、面取りして、傾斜形状に形成している(
図1、2参照)。
【0014】
実施例1のシート固定部60は、シート12側の矩形部材33と、ベース14側の矩形凹部24からなる嵌め合い構造を採用している。実施例1のシート固定部60はシート12をベース14上の中央位置で正面向き又は背面向きに固定できる。矩形部材33は凸部32から前後方向に沿って対称に延出して一体形成した矩形状の部材である。そして凸部32は矩形部材33よりも、シート12の下面からの突出量を長く形成している。矩形凹部24は、中心穴24aから前後方向に沿って対称に延出している。中心穴24aは矩形凹部24よりも深く形成している。
【0015】
このような凸部32及び矩形部材33は、シート12の下面から付勢手段によって、下方の中心穴24a及び矩形凹部24へ突出するように付勢されている(
図4,5参照)。凸部32及び矩形部材33は、シート12の左右側面のいずれか一方の操作部材34のレバー操作により、凸部32が中心穴24aの底面から矩形凹部の底面まで後退して、矩形部材33が矩形凹部24から外れてシート固定部によるシートの固定を解除できる(
図8,9参照)。
【0016】
図6は実施例1のシートをベースの中央位置に配置した
図1のA-A断面図(以下、回転連結部の接続断面図という)、一部拡大図である。
図7は実施例1のシートをベースの中央位置に配置した
図1のB-B断面図(以下、シート固定部の接続断面図という)、一部拡大図である。
図示のようにベース14の中央位置ではシート12の凸部32及び矩形部材33がベース14の中心穴24a及び矩形凹部24に嵌って、シート12の自由回転を制限して正面向きに固定している。
【0017】
図8は実施例1のシート固定部を解除した回転連結部の接続断面図、一部拡大図である。
図9は実施例1のシート固定部を解除したシート固定部の接続断面図、一部拡大図である。
操作部材34のレバー操作により、凸部32及び矩形部材33は、凸部32が中心穴24aの底面から矩形凹部24の底面まで後退して、矩形部材33が矩形凹部24から外れてシート固定部60によるシート12の固定が解除される。凸部32は中心穴24aに嵌った状態であり、シート12を自由回転させることができる。このとき凸部32は下方に付勢された状態であり、中心穴24aの開口周縁は、面取り又は座繰りした傾斜形状のため、回転中に何らかの原因で偏心しても中心穴24aの中心に保持されて回転操作が容易となる。
【0018】
図10は実施例1のシートがスライドする回転連結部の接続断面
図1、一部拡大図である。
図11は実施例1のシートがスライドするシート固定部の接続断面
図1、一部拡大図である。
図示のように、シート12をスライドさせる際に凸部32が下方へ付勢されている張力よりも、スライド、すなわち水平方向の力が上回ると凸部32が中心穴24aの開口周縁の傾斜形状で押し戻される。
【0019】
図12は実施例1のシートがスライドする回転連結部の接続断面
図2、一部拡大図である。
図13は実施例1のシートがスライドするシート固定部の接続断面
図2、一部拡大図である。
図示のように、さらにシート12に水平方向の力を作用させると凸部32の付勢方向の力を上回って中心穴24aから凸部32が外れて、シート12をT溝20内でスライド移動できる。ベース14の左右側面までスライドさせるとシート12を取り外すことができる。
なお、逆にシート12をベース14の中央位置に固定する際には、凸部32が中心穴24aに近づくと、中心穴24aの開口周縁の傾斜形状により凸部32が穴の中心に向けて誘導されて嵌り込む。この状態はセミロック状態でシート12を支持する使用者にクリックする感じ(クリック感)の感覚があるため、シート12をベース14の中央位置に戻す操作を容易に行える。
【0020】
[実施例2]別体(回転連結部50とシート固定部60)
図14は実施例2のチャイルドシートの分解斜視図である。
図15は
図14のA-A断面図である。
図16は
図14のB-B断面図である。
図17は
図14のC-C断面図である。
図18は
図14のD-D断面図である。
図示のように実施例2のチャイルドシート10Aは、シート12下面にフランジ付き円盤40と、フランジ付き円盤40から突出した凸部32及び矩形部材33Aを備え、ベース14上面にフランジ付き円盤40が嵌るT溝20と、T溝20の底面に凸部32及び矩形部材33Aが嵌る凹部25と矩形凹部26を備えている。凸部32及び凹部25はベース14上でシート12が自由回転する軸心上に設けている。矩形部材33Aは凸部32を通る前後方向の直線上であって、シート12の前面側に設けている。矩形凹部26は、凹部25を通る前後方向の直線上であって、凹部25を間に挟んで前後に設けている。凹部25と矩形凹部26はベース14に対してシート12が中央位置となる箇所に設置しているが、水平方向に複数並列して配置しても良い。矩形部材33Aの長手方向はシート12の前後方向に沿って形成している。シート12の左右側面には操作部材34となる操作レバーを2つ配置している。
【0021】
実施例2の回転連結部50Aは、シート12側の凸部32と、ベース14側の凹部25からなる嵌め合い構造を採用している。回転連結部50Aは、ベース14上の中央位置でシート12を回転可能に支持している。凸部32はシート12の回転軸上に配置した半球形状の部材である。凹部25は、凸部32が嵌る半球形状の穴である。このような凹部25は、開口周縁が球面形状となる(
図15,16)。
【0022】
実施例2のシート固定部60Aは、シート12側の矩形部材33Aと、ベース14側の矩形凹部26からなる嵌め合い構造を採用している。シート固定部60Aはシート12をベース14上の中央位置で正面向き又は背面向きに固定できる。矩形部材33Aは凸部32から所定間隔を開けて延出した矩形状の部材である。矩形凹部26は、凹部25から所定間隔を開けて前後方向に沿って対称に形成している。
このような凸部32及び矩形部材33Aは、シート12の下面から付勢手段によって、下方の凹部25及び矩形凹部26へ突出するように付勢されている(
図17,18参照)。凸部32及び矩形部材33Aは、シート12の左右側面のいずれか一方の操作部材34のレバー操作により、矩形部材33Aが矩形凹部26から外れてシート固定部60Aによるシート12の固定を解除できる。
【0023】
図19は実施例2のシートをベースの中央位置に配置した回転連結部の接続断面図、一部拡大図である。
図20は実施例2のシートをベースの中央位置に配置したシート固定部の接続断面図、一部拡大図である。
図示のようにベース14の中央位置ではシート12の凸部32及び矩形部材33Aがベース14の凹部25及び矩形凹部26に嵌って、シート12の自由回転を制限して正面向きに固定している。
【0024】
図21は実施例2のシート固定部を解除したシート固定部の接続断面図、一部拡大図である。
操作部材34のレバー操作により、矩形部材33Aが矩形凹部26から外れてシート固定部60によるシートの固定が解除される。これにより、凸部32は凹部25に嵌った状態であり、シート12を自由回転させることができる。このとき凸部32は下方に付勢された状態であり、凹部25の開口周縁は、球面形状のため、回転中に何らかの原因で偏心しても凹部25の中心に保持されて回転操作が容易となる。
【0025】
図22は実施例2のシートがスライドする回転連結部の接続断面
図1、一部拡大図である。
図23は実施例2のシートがスライドするシート固定部の接続断面
図1、一部拡大図である。
図示のように、シート12をスライドさせる際に凸部32が下方へ付勢されている張力よりも、スライド、すなわち水平方向の力が上回ると凸部32が凹部25の開口周縁の球面形状で押し戻される。
【0026】
図24は実施例2のシートがスライドする回転連結部の接続断面
図2、一部拡大図である。
図25は実施例2のシートがスライドするシート固定部の接続断面
図2、一部拡大図である。
図示のように、さらにシート12に水平方向の力を作用させると凸部32の付勢方向の力を上回って凹部25から凸部32が外れて、シート12をT溝20内でスライド移動できる。ベース14の左右側面までスライドさせるとシート12を取り外すことができる。
なお、逆にシート12をベース14の中央位置に固定する際には、凸部32が凹部25に近づくと、凹部25の開口周縁の球面形状により凸部32が穴の中心に向けて誘導されて嵌り込む。この状態はセミロック状態でシート12を支持する使用者にクリックする感じ(クリック感)の感覚があるため、シート12をベース14の中央位置に戻す操作を容易に行える。
【0027】
[実施例3]回転連結部50がシート回転軸と同心円上
図26は実施例3のチャイルドシートの分解斜視図である。
図27は
図26のA-A断面図である。
図28は
図26のB-B断面図である。
図29は
図26のC-C断面図である。
図30は
図14のD-D断面図である。
図示のように実施例3のチャイルドシート10Bは、シート12下面にフランジ付き円盤40と、フランジ付き円盤40から突出した凸部32B及び矩形部材33Aを備え、ベース14上面にフランジ付き円盤40が嵌るT溝20と、T溝20の底面に凸部32B及び矩形部材33Aが嵌る環状凹部27と矩形凹部26を備えている。凸部32及び環状凹部27はベース14上でシート12が自由回転する軸心と同心上に設けている。矩形部材33A及び矩形凹部26はシートの回転軸上に設けている。矩形部材33Aの長手方向はシート12の前後方向に沿って形成している。シート12の左右側面には操作部材34となる操作レバーを2つ配置している。
【0028】
実施例3の回転連結部50Bは、シート12側の一対の凸部32Bと、ベース14側の凹部となる環状凹部27からなる嵌め合い構造を採用している。回転連結部50Bは、ベース14上の中央位置のシート12の回転軸(回転中心)の同心円上で回転可能に支持している。凸部32Bはシート12の回転軸の同心円上に配置した半球形状の部材であり、回転軸を中心として直線上(同心円の直径上)に2つ設けている。環状凹部27は、シート12の回転軸の同心円上で凸部32Bが嵌る半球形状の穴である。このような環状凹部27は、開口周縁が球面形状となる(
図27,28参照)。
【0029】
実施例3のシート固定部60Bは、シート12側の矩形部材33Aと、ベース14側の矩形凹部26からなる嵌め合い構造を採用している。シート固定部60Bはシート12をベース14上の中央位置で正面向き又は背面向きに固定できる。矩形部材33Aはシート12の回転軸上で長手方向を前後方向に沿って形成した矩形状の部材である。矩形凹部26は、ベース14の中央位置で長手方向を前後方向に沿って形成している。
このような凸部32B及び矩形部材33Aは、シート12の下面から付勢手段によって、下方の環状凹部27及び矩形凹部26へ突出するように付勢されている(
図29,30参照)。凸部32B及び矩形部材33Aは、シート12の左右側面のいずれか一方の操作部材34のレバー操作により、矩形部材33Aが矩形凹部26から外れてシート固定部60Bによるシート12の固定を解除できる。
【0030】
図31は実施例3のシートをベースの中央位置に配置した回転連結部の接続断面図、一部拡大図である。
図32は実施例3のシートをベースの中央位置に配置したシート固定部の接続断面図、一部拡大図である。
図示のようにベース14の中央位置ではシート12の凸部32B及び矩形部材33Aがベース14の環状凹部27及び矩形凹部26に嵌って、シート12の自由回転を制限して正面向きに固定している。
【0031】
図33は実施例3のシート固定部を解除した回転連結部の接続断面図、一部拡大図である。
図34は実施例3のシート固定部を解除したシート固定部の接続断面図、一部拡大図である。
【0032】
操作部材34のレバー操作により、矩形部材33Aが矩形凹部26から外れてシート固定部60Bによるシートの固定が解除される。これにより、凸部32Bは環状凹部27に嵌った状態であり、シート12を自由回転させることができる。このとき凸部32Bは下方に付勢された状態であり、環状凹部27の開口周縁は、球面形状のため、回転中に何らかの原因で偏心しても中心穴24aの中心に保持されて回転操作が容易となる。
【0033】
図35は実施例3のシートがスライドする回転連結部の接続断面
図1、一部拡大図である。
図36は実施例3のシートがスライドするシート固定部の接続断面
図1、一部拡大図である。
図示のように、シート12をスライドさせる際に凸部32Bが下方へ付勢されている張力よりも、スライド、すなわち水平方向の力が上回ると凸部32Bが環状凹部27の開口周縁の傾斜形状で押し戻される。
【0034】
図37は実施例3のシートがスライドする回転連結部の接続断面
図2、一部拡大図である。
図38は実施例3のシートがスライドするシート固定部の接続断面
図2、一部拡大図である。
図示のように、さらにシート12に水平方向の力を作用させると凸部32Bの付勢方向の力を上回って環状凹部27から凸部32Bが外れて、シート12をT溝20内でスライド移動できる。ベース14の左右側面までスライドさせるとシート12を取り外すことができる。
なお、逆にシート12をベース14の中央位置に固定する際には、凸部32Bが環状凹部27に近づくと、環状凹部27の開口周縁の球面形状により凸部32
が穴の中心に向けて誘導されて嵌り込む。この状態はセミロック状態でシート12を支持する使用者にクリックする感じ(クリック感)の感覚があるため、シート12をベース14の中央位置に戻す操作を容易に行える。
【0035】
[実施例4]実施例1の変形例
実施例1のチャイルドシート10は、スライドさせるときにレバー操作なしでシート12をスライドさせることができる。そしてスライド位置から中央位置にシート12を戻すときに、付勢されていた凸部32の縮小が中央位置で開放されて伸長し中心穴24aに嵌合して固定できる。このとき、凸部32が中心穴24aに嵌るクリック感がありシート12が中央位置で固定されたことを実感できる。しかしスライド位置から中央位置に戻そうとした場合、中央位置を通り過ぎてしまうことがあった。この場合、凸部32の付勢を強くして中央位置に戻るときの嵌合を強くすることが考えられる。しかし、そうするとシート12をスライドさせるときの初動が重くなってしまうおそれがあった。そこで実施例4のチャイルドシートは、凸部32の付勢が弱くても(強くしなくても)スライド位置から中央位置にシート12を戻したときに中央位置を通り過ぎることがない構成とした。
図39は実施例4の回転連結部の中心穴240aの説明図であり、ベースのA-A一部断面拡大図である。
図40は実施例4の回転連結部の凸部320の説明図であり、凸部の拡大図である。
実施例4のチャイルドシートは、実施例1のチャイルドシート10とほぼ同一の構成であるが、
図39,40に示すように回転連結部の構成が異なる。その他の構成は実施例1と同様であり、詳細な説明は省略する。
実施例4の回転連結部50Cの中心穴240aは、実施例1と同様に開口周縁を座繰り、面取りして傾斜形状に形成しているが、傾斜形状の深さaは、矩形凹部24の深さbよりも浅い位置に形成している。換言すると矩形凹部24と矩形部材33のフランジ付き円盤40からの突出量は同じ深さであるため、傾斜形状の深さaは、矩形部材33のフランジ付き円盤40からの突出量(深さb)よりも浅い位置に形成している。
また凸部320は、下端(先端)の一部のみ面取りしている。具体的な面取りの形成箇所は、シート12がレバー操作なしでスライドさせたい方向の箇所であり、通常、シート12の前方に形成しているのが望ましい。下端の一部のみ面取りした凸部320のそれ以外の下端は、面取りしておらず、断面が直角に形成されている。
上記構成による本発明の実施例4のチャイルドシートのスライド操作について、以下説明する、
図41はシートを左に90°回転させたときのチャイルドシート全体図および回転連結部の拡大図である。図示のように操作部材のレバー操作で矩形部材33が矩形凹部から外れると回転が可能となり、ベース14上のシート12を左に90°回転させる。同図拡大図に示すように凸部320の先端の面取りはシート12がスライド移動する方向のみに形成されている。スライドする方向以外の凸部320の先端には面取りが形成されていない。この状態でシート12は凸部320が中心穴240aに嵌っているためスライド移動しない。
図42はシートを中央位置から左方向へスライド移動する回転連結部の拡大断面図である。図示のようにシート12をスライドさせる方向の力(矢印c)が凸部320の付勢力を上回ると中心穴240aの開口周縁の傾斜形状で凸部320が上方向(矢印d)に押し戻され、シート12を矢印e方向へスライド移動することができる。
図43はシートを中央位置へスライド移動する回転連結部の拡大断面図である。スライドした位置から中央位置にシート12を戻す場合、凸部320が中心穴240aに近づく(矢印f)と、中心穴240aの開口周縁の傾斜形状によって縮小していた凸部320が伸長して(矢印g)中心穴240aの中心に向けて誘導されて中心位置で固定される。このとき、凸部320の面取りと反対側の開口周縁は面取りしておらず、矩形凹部24の深さよりも中心穴240aの開口周縁の傾斜形状の深さが浅い。このため、中心穴240aを通り過ぎて反対方向へ移動しようとしても凸部320が中心穴240aの傾斜形状に乗り上げることがなく、スライド位置から中央位置にシート12を戻したときに中央位置を通り過ぎることがない。
【0036】
このような本発明によれば、車両シートに取り付けたベースに対して、乳幼児が着座するシートが回転及びスライドの動作をする際に、1つの操作部材で行うことができ、操作部材の部品点数を減らすことができ、設計レイアウトの自由度を高めることができる。
なお、回転連結部のシート下面の凸部の端部は、円筒、半球形状の他、円錐形状であっても良く、ベース上面の凹部は、円錐形状が嵌る形状であっても良い。
また凸部の端部と凹部の開口周縁は、実施例2,3のように両方を傾斜又は球面形状に形成する他にも、いずれか一方を傾斜又は球面形状に形成しても良く、実施例1のように凹部の開口周縁(凸部は円柱形状)を傾斜形状に形成することができる。この他にも、例えば凸部の端部を傾斜又は球状形状とし、凹部は円柱形状としても良い。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 チャイルドシート
12 シート
14 ベース
20 T溝
24 矩形凹部
24a,240a 中心穴
25 凹部
26 矩形凹部
27 環状凹部
32,32B,320 凸部
33,33A 矩形部材
34 操作部材
40 フランジ付き円盤
50,50A,50B,50C 回転連結部
60,60A,60B シート固定部