(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023155
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ブレーキングシステムのための制御方法及び電子機械ブレーキングシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20240214BHJP
G01P 3/487 20060101ALI20240214BHJP
B60T 8/96 20060101ALI20240214BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B60T7/12 D
G01P3/487 C
B60T7/12 C
B60T8/96
B60T13/74 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023128344
(22)【出願日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】202210944056.7
(32)【優先日】2022-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シャオクン ツァン
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB03
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH42
3D048HH66
3D048HH70
3D048QQ07
3D048QQ16
3D048RR11
3D048RR17
3D048RR25
3D048RR29
3D246BA08
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3D246GB30
3D246GB37
3D246GC14
3D246GC16
3D246HA03A
3D246HA34A
3D246HA38A
3D246HC13
3D246JA12
3D246JB02
3D246JB11
3D246LA02Z
3D246LA15A
3D246MA06
3D246MA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ブレーキングシステムのための制御方法及び電子機械ブレーキングシステムを提供する。
【解決手段】合計ブレーキングトルクを第1のモータ及び第2のモータに分配するステップであって、|T1_t-T1_c|≦A1が真であるかどうかを判定するステップであって、真であれば、第1のモータをその動作状態に維持し、真でなければ、第1のモータを調整する、ステップと、|T2_t-T2_c|≦A2が真であるかどうかを判定するステップであって、真であれば、第2のモータをその動作状態に維持し、真でなければ、第2のモータを調整する、ステップと、|T-To|≦Aが真であるかどうか判定するステップであって、真であれば、第1のモータ及び第2のモータの両方をそれらの動作状態で維持し、真でなければ、第1のモータ又は第2のモータのいずれかを調整する、ステップと、を含む。
【選択図】
図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアルモータを有する電子制御された機械ブレーキを備えるブレーキングシステムのための制御方法であって、当該方法は、
ペダルストロークを検出して、前記ペダルストローク/合計ブレーキングトルク曲線に基づいて、必要とされる合計ブレーキングトルクTを決定するステップと、
前記合計ブレーキングトルクを前記第1のモータ及び前記第2のモータに分配するステップであって、それぞれ前記第1のモータ及び前記第2のモータに対する目標トルクT1_t及びT2_tを決定する、ステップと、
前記目標トルクT1_t及びT2_tに基づいて動作するように、前記第1のモータ及び前記第2のモータを駆動するステップと、
前記第1のモータ及び前記第2のモータの動作電流及び回転速度を監視するステップと、
前記第1のモータ及び前記第2のモータのモータ特性曲線を使用して、算出された出力トルクT1_c及びT2_cを計算するステップと、
を特徴とし、
本発明は、連結後に第1のモータ及び第2のモータの合計出力トルク(To)を較正するための方法を提供し、
前記方法は、基準較正を実行することを含み、前記基準較正は、
条件|T1_t-T1_c|≦A1が真であるかどうかをチェックするステップであって、真であれば、前記第1のモータはその動作状態を維持し、真でなければ、前記第1のモータが調整される、ステップと、
条件|T2_t-T2_c|≦A2が真であるかどうかをチェックするステップであって、真であれば、前記第2のモータはその動作状態を維持し、真でなければ、前記第2のモータが調整される、ステップと、
条件|T-To|≦Aが真であるかどうかをチェックするステップであって、真であれば、前記第1のモータ及び前記第2のモータの両方がそれらの動作状態を維持し、真でなければ、前記第1のモータ又は前記第2のモータのいずれかが調整される、ステップと、
を含み、
前記ステップは、全ての条件|T1_t-T1_c|≦A1、|T2_t-T2_c|≦A2及び|T-To|≦Aが同時に満たされるまで繰り返され、ここで、A、A1及びA2は、0乃至0.1の範囲内にある、制御方法。
【請求項2】
前記方法は、前記基準較正後、モータ制御較正を実行することをさらに含み、前記モータ制御較正は、
前記合計出力トルクの検出位置で、ギア比に基づいて、前記第1のモータ及び前記第2のモータの計算された前記出力トルクT1_c及びT2_cを、対応するトルクT1_c’及びT2_c’に変換することと、
|T1_c’+T2_c’-To|≦Bが適用されるかどうかを較正することであって、適用される場合、前記第1のモータ及び前記第2のモータの動作状態を維持し、適用されない場合、前記第1のモータ又は前記第2のモータを調整する、ことと、
を含み、ここで、Bは、0乃至0.1の範囲内である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記方法は、故障較正ステップを実行することをさらに含み、前記故障較正ステップは、
|T1_c’-To|≦C1が適用されるかどうかを判定することであって、適用される場合、前記第2のモータにおける故障を判定し、適用されない場合、前記第2のモータに故障が発生していないと判定する、ことと、
|T2_c’-To|≦C2が適用されるかどうかを判定することであって、適用される場合、前記第1のモータにおける故障を判定し、適用されない場合、前記第1のモータに故障が発生していないと判定する、ことと、
を含み、ここで、C1及びC2は、0乃至0.1の範囲内である、
ことを特徴とする、請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記方法は、
前記第1のモータ又は前記第2のモータの障害の場合に、故障信号を送信することと、
通常動作している前記第1のモータ及び前記第2のモータのうちの1つに前記合計ブレーキングトルクを引き受けさせることと、
をさらに含み、
前記合計ブレーキングトルクが前記通常動作している前記第1のモータ又は前記第2のモータの定格能力を超えるときに、前記通常動作しているモータは過負荷になる、
ことを特徴とする、請求項3に記載の制御方法。
【請求項5】
前記合計ブレーキングトルクを前記第1のモータ及び前記第2のモータに分配する前記ステップは、
ペダル移動/合計ブレーキングトルク曲線に対応するトルクを前記第1のモータ及び前記第2のモータに平均すること又は比例分配することのいずれか、又は、
前記ペダル移動/合計ブレーキングトルク曲線に対応する前記トルクを前記第1のモータ又は前記第2のモータのいずれかに最初に割り当て、第1の遅延時間の後、前記ペダル移動/合計ブレーキングトルク曲線に対応する前記トルクを前記第1のモータ及び前記第2のモータに平均すること又は比例分配すること、又は、
前記ブレーキペダル移動が第1の閾値よりも小さいときに、前記ペダル移動/合計ブレーキングトルク曲線に対応する前記トルクを前記第1のモータ又は前記第2のモータのいずれかに割り当て、前記ブレーキペダル移動が前記第1の閾値以上であるときに、前記ペダル移動/合計ブレーキングトルク曲線に対応する前記トルクを前記第1のモータ及び前記第2のモータに平均すること又は比例分配すること
を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項6】
車輪ロックを検出すると、前記第1のモータ及び前記第2のモータのうちの一方の出力トルクが一定に保持され、前記第1のモータ及び前記第2のモータのうちの他方の出力トルクが特定の範囲内で振動する、又は、
車輪ロックを検出すると、前記第1のモータ及び前記第2のモータの両方の前記出力トルクが、特定の範囲内で振動する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項7】
自動緊急ブレーキング信号を受信すると、前記第1のモータ及び前記第2のモータは、ペダルの移動に無関係に、所定の緊急ブレーキングトルクT1_e及びT2_eにより直接動作することをさらに含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項8】
前記ペダル移動/合計ブレーキングトルク曲線は、前記ブレーキペダルを押下すること及び解放することに応じてヒステリシスを表す、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項9】
電子機械ブレーキと、前記電子機械ブレーキに接続された電子制御ユニットとを備える電子機械ブレーキングシステムであって、
前記電子機械ブレーキは、
第1のモータ及び第2のモータ(11、12)と、
前記第1のモータ及び前記第2のモータ(11、12)に接続されたトランスミッションデバイス(2)と、
前記トランスミッションデバイス(2)に接続されたブレーキアクチュエータ(3)と、を備え、
前記トランスミッションデバイス(2)は、前記第1のモータ及び前記第2のモータ(11、12)のブレーキングトルクを前記ブレーキアクチュエータ(3)に伝達し、
前記電子機械ブレーキングシステムは、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法を実施する、電子機械ブレーキングシステム。
【請求項10】
前記電子機械ブレーキングシステムは、
電子制御ユニット(80)と、
前記電子制御ユニットに接続されたペダル変位センサ(84)と、
前記第1のモータ及び前記第2のモータの電流を検知するために前記電子制御ユニットに接続された電流センサ(82、83)と、
前記第1のモータ及び前記第2のモータの速度を検知するために前記電子制御ユニットに接続された回転位置センサと、
前記第1のモータと前記第2のモータとを連結した後に合計出力トルク(To)を検知するために前記電子制御ユニットに接続されたトルクセンサ(81)と、
を備えることを特徴とする、請求項9に記載の電子機械ブレーキングシステム。
【請求項11】
前記回転位置センサは、検出器と磁石とを備え、前記回転位置センサの前記磁石は、前記第1のモータ及び前記第2のモータの出力シャフト上、又は、前記トランスミッションデバイスの中間ギアのギアシャフト上、又は、前記トランスミッションデバイスのハブギアのギアシャフト上に位置決めされ、ここで、
前記回転位置センサの前記磁石は、ディスク形状の磁石部分と軸部分とを備え、前記回転位置センサの前記磁石は、前記軸部分を通して前記ギアシャフトのシャフト穴に設置され、前記ディスク形状の磁石部分は、180度離隔した1つ以上の対の磁極を含み、又は、
前記回転位置センサの前記磁石は、リング形状の磁石部分と前記リング形状の前記磁石部分の内側の軸リングとを備え、前記回転位置センサの前記磁石は、前記軸リングに嵌合することによって前記ギアシャフトの突起端部上に設定され、前記リング形状の磁石部分は、180度離隔した1つ以上の対の磁気極を含む、
ことを特徴とする、請求項10に記載の電子機械ブレーキングシステム。
【請求項12】
前記トルクセンサ(81)は、前記ブレーキアクチュエータの入力端部(311)に位置決めされることを特徴とする、請求項10に記載の電子機械ブレーキングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ブレーキングデバイスの分野に関し、より具体的には、新規な制御方法及び電子機械ブレーキングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機械ブレーキングシステムは、ブレーキングのためにブレーキキャリパを作動させる電気モータを利用するデバイスである。従来の液圧ブレーキングシステムと比較して、電子機械ブレーキングシステムは、迅速な応答、単純な構造、及び、メンテナンスの容易さなどの利点を提供する。車両が電動化及びインテリジェンスを指向するにつれ、電気制御システムとの互換性から電子機械ブレーキングシステムは、ブレーキングシステムの開発のトレンドとなってきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願は、先行技術に存在する課題を解決すること又は少なくとも軽減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
まず一方では、デュアルモータを有する電子制御された機械ブレーキを含むブレーキングシステムのための制御方法が提供され、当該方法は、
ペダルストロークを検出し、ペダルストローク/合計ブレーキングトルク曲線に基づいて、必要とされる合計ブレーキトルクTを決定するステップと、
合計ブレーキングトルクを第1のモータ及び第2のモータに分配して、それぞれ第1のモータ及び第2のモータに対する目標トルクT1_t及びT2_tを決定するステップと、
目標トルクT1_t及びT2_tに基づいて動作するように、第1のモータ及び第2のモータを駆動するステップと、
第1のモータ及び第2のモータの動作電流及び回転速度並びに第1のモータ及び第2のモータのモータ特性曲線に基づいて、算出された出力トルクT1_c及びT2_cを計算するステップと、
連結後に第1のモータ及び第2のモータの合計出力トルクToを検出するステップと、
基準較正を実行するステップであって、基準較正は、
|T1_t-T1_c|≦A1が真であるかどうかをチェックするステップであって、真であれば、第1のモータの動作状態を維持し、真でなければ、第1のモータを調整する、ステップと、
|T2_t-T2_c|≦A2が真であるかどうかをチェックするステップであって、真であれば、第2のモータの動作状態を維持し、真でなければ、第2のモータを調整する、ステップと、
|T-To|≦Aが真であるかどうかをチェックするステップであって、真であれば、第1のモータ及び第2のモータの両方の動作状態を維持し、真でなければ、第1のモータ又は第2のモータのいずれかを調整する、ステップと、
を含み、
上述の各ステップは、|T1_t-T1_c|≦A1、|T2_t-T2_c|≦A2及び|T-To|≦Aが全て確立されるまで繰り返され、ここで、A、A1及びA2は、0乃至0.1の範囲内にある。
【0005】
また、他方では、電子機械ブレーキと、当該電子機械ブレーキに接続された電子制御ユニットとを備える電子機械ブレーキングシステムが提供される。当該電子機械ブレーキは、第1のモータ及び第2のモータと、第1のモータ及び第2のモータに接続されたトランスミッションデバイスと、第1のモータ及び第2のモータのブレーキングトルクをブレーキアクチュエータに伝達するようにトランスミッションデバイスに接続されたブレーキアクチュエータと、を備える。電子機械ブレーキングシステムは、本発明の実施例による方法を実行する。
【0006】
本発明の実施例によるデバイスは、軸方向にコンパクトなデュアルモータ電子機械ブレーキングシステムを提供し、デュアルモータの協働制御を実現し、本発明に係る方法に従って様々な機能を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示のより良い理解を容易にするために図面を参照する。当業者であれば、これらの図面は、例示を提供することのみを目的としており、本出願の範囲の限定を意図するものではないことを容易に理解し得る。追加的に、同様の数字は、図面全体を通して類似の構成要素を表すために使用される。
【
図1】一実施例による電子機械ブレーキの設置図を示す。
【
図2】一実施例による電子機械ブレーキの三次元図を示す。
【
図3】一実施例による電子機械ブレーキの分解図を示す。
【
図4】一実施例による電子機械ブレーキの部分断面図を示す。
【
図5】一実施例による、ブレーキアクチュエータ部分を除く、電子機械ブレーキの分解図を示す。
【
図6】異なる角度からの、一実施例による電子機械ブレーキのブレーキモータ及びトランスミッションデバイスの三次元図を示す。
【
図7】異なる角度からの、一実施例による電子機械ブレーキのブレーキモータ及びトランスミッションデバイスの三次元図を示す。
【
図8】電子機械ブレーキの構成要素接続の概略図を示す。
【
図10】一実施例による電子機械ブレーキのブレーキアクチュエータ部分の分解図を示す。
【
図11】一実施例よる電子機械ブレーキのブレーキアクチュエータ部分の断面図を示す。
【
図12】一実施例による電子機械ブレーキのブレーキアクチュエータの特定の構成要素の三次元図を示す。
【
図13】一実施例による電子機械ブレーキのブレーキアクチュエータの摩擦ディスクブラケット及び摩擦ディスクの正面図を示す。
【
図14】電子機械ブレーキの代替的な実施例のブレーキモータ及びトランスミッションデバイスの三次元図を示す。
【
図15】電子機械ブレーキの代替的な実施例のブレーキモータ及びトランスミッションデバイスの三次元図を示す。
【
図16】一実施例による回転位置センサの磁石の図を示す。
【
図17】異なる実施例による回転位置センサの磁石の図を示す。
【
図18】異なる実施例による回転位置センサの磁石の図を示す。
【
図19】異なる実施例による回転位置センサの磁石の図を示す。
【
図20】異なる実施例による回転位置センサの磁石の図を示す。
【
図21】異なる実施例による回転位置センサの磁石の図を示す。
【
図22】一実施例による電子機械ブレーキングシステムの制御構造の概略図を示す。
【
図23】一実施例によるブレーキングシステムの制御方法のフローチャートを示す。
【
図24】一実施例によるブレーキングシステムの制御方法のフローチャートを示す。
【
図25】一実施例によるブレーキングシステムの制御方法のフローチャートを示す。
【
図26】一実施例によるブレーキトルク分配方法を示す。
【
図27】一実施例によるブレーキトルク分配方法を示す。
【
図28】一実施例によるブレーキトルク分配方法を示す。
【
図29】一実施例によるブレーキトルク分配方法を示す。
【
図30】一実施例によるブレーキトルク分配方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
具体的な実施形態
図1は、本発明の一実施例による電子機械ブレーキの設置図を示す。図は、回転シャフト91、ダンパ92、ベアリング94、ステアリングナックルアーム93、ブレーキディスク95、及び、車輪96を示す。追加的に、電子機械ブレーキ100は、一実施例によると、ブレーキディスク95をブレーキキャリパで締付することによってブレーキ力を印加するために電気モータによって駆動される。組み立ての間、電子機械ブレーキ100は、車輪96のハブ内側のコンパクトなスペースに収容されながら、ステアリングナックルアーム93上に取り付けられる。
【0009】
図2は、2つのブレーキモータ11及び12と、2つのブレーキモータ11及び12に接続されたトランスミッションデバイス2と、トランスミッションデバイス2に接続されたブレーキアクチュエータ3とを備える、一実施例による電子機械ブレーキを示す。トランスミッションデバイス2は、ブレーキトルクを2つのブレーキモータ11及び12からブレーキアクチュエータ3に伝達する。図示した実施例は、2つのブレーキモータ11及び12を含むが、この電子機械ブレーキは、より大きいブレーキングトルクを必要とする車両の前輪などの主要ブレーキング車輪のために使用され得る。車両の後輪上の電子機械ブレーキのためには、1つのブレーキモータのみが構成されるものとしてもよく、それに応じて、ハウジング及びトランスミッションデバイス2は、相応に変更される。
【0010】
電子機械ブレーキの具体的な例を、
図3及び
図4を参照してさらに説明する。
図3に示す例においては、トランスミッションデバイス2のハウジングとブレーキアクチュエータ3のハウジングとは分離可能である。トランスミッションデバイスハウジングとブレーキアクチュエータハウジング30は、一対のボルト5を使用して、トランスミッションデバイスハウジング及びブレーキアクチュエータハウジング30を共に接続するための対応する一対のボルト穴を画定するフランジ211、301を備える。追加的に、
図4に示すように、ボルト5は、トランスミッションデバイスハウジング21のフランジ211及びブレーキアクチュエータハウジング30のフランジ301を通過し、一対の軸方向ガイドロッド51の裏面のボルト穴によって受容され、それによって、一対の軸方向ガイドロッド51上のブレーキアクチュエータ3のブレーキディスクキャリア4の軸方向スライド式取り付けを可能にし、それによって、ブレーキアクチュエータハウジング30とブレーキディスクキャリア4との間の相対的軸方向の浮動を可能にする。最後に、組み立てられた電子機械ブレーキは、ブレーキディスクキャリア4のフランジ43を使用して
図1に示すステアリングアーム93上に設置され、さらにブレーキディスクキャリア4上の2つのブレーキディスクは、ブレーキディスク95の両側に位置される。
【0011】
さらに
図5乃至
図7を参照すると、電子機械ブレーキの具体的な構造が説明されている。トランスミッションデバイスハウジングは、中間ギア201、ハブギア202及び遊星ギアセット203を含む、トランスミッションデバイス2のトランスミッションギアセット20を収容する、ボルトによって接続される第1のハウジング部分21及び第2のハウジング部分22からなり得る。図示の実施例においては、第1のハウジング部分21及び第2のハウジング部分22は、実質的にH形状のトランスミッションギアセットを収容するためのH形状の空洞を画定する、概して「H」の様な形状である。2つのブレーキモータ11及び12は、第1のハウジング部分21上に取り付けられ、ピニオン111及び121に接続されたそれらの出力シャフトは、内部空洞の中に延在し、対応する中間ギア201とかみ合う。したがって、この実施例においては、ブレーキモータ及びブレーキ作動デバイスは両方とも、トランスミッションデバイス2の同一の側に位置し、結果として、電子機械ブレーキの軸方向の長さが短くなり、これは、車輪ハブの内部側のコンパクトなスペースに収容され得るが、それでも、2つのブレーキモータの存在において十分なブレーキングトルクを提供する。いくつかの実施例においては、位置センサの磁気部分112及び122は、2つのブレーキモータ11及び12の出力シャフト上に配置される。さらに、ホールセンサ(
図8)などの位置センサの対応する検出器112’及び122’は、磁気部分112及び122に対応する位置において回路基板上に配置され、磁気部分112及び122によって生成される磁界における変化を検出し、それによって2つのブレーキモータ11及び12の位相及び速度を検知する。第2のハウジング部分22はまた、車両のECUへの接続のためのインタフェース221を提供し、電子機械ブレーキとECUとの間の通信を可能にする。これにより、ECUは、2つのブレーキモータ11及び12を制御し、位置センサを通してブレーキモータの状態についての情報を取得することができる。追加的に、ブレーキモータ11及び12に対応する全トルクセンサ81及び電流センサ82、83が提供されるものとしてもよく、電子機械ブレーキの総出力トルク及び2つのブレーキモータ11及び12の電流を、ECUに伝送する。この配置においては、位置センサは、モータのロータの回転状態に関するフィードバックをECUに提供し、トルクセンサ及び電流センサは、締付トルク及びモータ電流に関するフィードバックをECUに提供する。
【0012】
図示の例においては、中間ギア201は、ハブギア202とさらにかみ合わせられ、ハブギア202は共通回転のために遊星ギアセット203の太陽ギア2031に接続される。遊星ギアセット203の複数の遊星ギア2033は、固定リングギア2032と太陽ギア2031との間に位置決めされる。複数の遊星ギア2033は、太陽ギア2031にかみ合い、かつ、太陽ギア2031の回転とともに移動する。遊星キャリア204は、複数の遊星ギア2033に接続され、かつ、複数の遊星ギア2033とともに回転する。遊星キャリア204は、ブレーキングアクチュエータの入力シャフトに接続される軸方向穴2041を備える。結果として、ブレーキモータ11及び12の回転は、低減及びトルク増幅を提供するトランスミッションデバイス2を介してブレーキングアクチュエータ3に伝達される。
【0013】
さらに
図10及び
図11を参照すると、一実施例によるブレーキングアクチュエータが詳細に説明される。ブレーキングアクチュエータは、ねじナット機構31及びプランジャ35を収容するブレーキングアクチュエータハウジング30を含む。図示の例においては、ねじナット機構のねじは、トランスミッションデバイスに接続された入力端部311と、ナット313と協働するねじ本体312とを含む。入力端部311は、例えば、四角などの断面形状を有し、四角などの断面形状は、トルクを受けるために、遊星キャリアの軸方向穴2041に合致する。追加的に、ブレーキングアクチュエータとトランスミッションデバイスとの間の封止を提供するために、封止リング36が提供される。入力端部311は、ピン33を介してその外周上に配置された支持リング32と協働する。支持リング32は、ねじ本体312の背面に対して一方の面上に支持され、スナップリング37によって軸方向に制限され、したがって、軸方向に制限されるが、ねじと共に回転させることができる。支持リング32は、ベアリング34によって支持される。一部の実施例においては、ベアリング34は、スラストベアリングである。代替的に、ベアリング34は、特に、深溝ボールベアリング、角接点ボールベアリング、又は、中心ボールベアリングであるものとしてもよい。代替的に、ねじは、ベアリングによって直接支持され得る。
【0014】
いくつかの実施例においては、ねじナット機構のナット313は、円周方向のプランジャ35と連結される。例えば、ナット313の外側は、プランジャ35上の突起又は溝と対応するように係合する溝又は突起を有するものとしてもよい。いくつかの実施例においては、プランジャ35は、円周方向における摩擦ディスク71と連結される。例えば、プランジャ35の前面は、摩擦ディスク71上の突起又は溝と対応して係合する軸方向に沿った溝又は突起を有するものとしてもよい。さらに、摩擦ディスク71は、摩擦ディスク71の円周方向の動きを制限する、摩擦ディスクブラケット4によって支持される。結果として、プランジャ35及びナット313の両方は、周方向に制限され、軸方向移動のみを可能にし、回転移動を防止する。これにより、ねじナット機構におけるナット313の周方向の制限及び軸方向の移動が達成される。したがって、ナットとプランジャとの間の円周カップリング、並びに、摩擦ディスクブラケット4によって摩擦ディスク71に提供される円周方向の制限を利用することによって、特にナットの円周方向の動きを制限することを目的とする、ハウジング内の構造を含むことは不要となる。
【0015】
さらに
図12及び
図13を参照すると、1つの例によるナット、プランジャ、摩擦ディスク、及び、摩擦ディスクブラケットの具体的な構造が説明されている。一部の実施例においては、ナット313の外周は複数の楔314を有し、プランジャ35は、ナット313の外周上に嵌合されたスリーブ部分3を有する。カートリッジ部分の背面は、複数の楔314と嵌合する複数のスロット351を有し、プランジャ35のスリーブ部分の複数のスロット351とナット313を通過する複数の楔314の嵌合は、両方の周方向の連結を達成する。いくつかの実施例においては、スリーブ部分の前面352は、複数の溝353を有し、スリーブ部分の前面352に面する摩擦ディスク71の隣接表面は、対応する複数の突起713を有する。ナットの前面352上の複数の溝353の摩擦ディスク71上の複数の突起713との連結は、それらの円周連結を達成する。ナット313、プランジャ35、及び、摩擦ディスク71は、相互に軸方向に結合されていないため、それらは相互に対して軸方向の変位を受けることが可能であることが理解されるべきである。しかしながら、複数の楔314、複数のスロット351、複数の溝353、及び、複数の突起713は、軸方向変位中にナット313、プランジャ35、及び、摩擦ディスク71が相互から外れるのを防止するために十分な軸長さを有するべきである。
【0016】
いくつかの実施例においては、摩擦ディスク71は、両端部に耳部711を備え、摩擦ディスク71は、耳部711を摩擦ディスクブラケット4の側面溝45に挿入することによって軸方向に制限される。一部の実施例においては、摩擦ディスク71の耳部711と摩擦ディスクブラケット4の溝45との間にギャップがあり、ダンピング戻りばねが提供される。この場合、摩擦ディスク71はまた、耳部の内部側上に肩部712を含み、摩擦ディスクブラケット4は、摩擦ディスクの2つの端部で肩部712を支持する一対の突起46をさらに含み、それによって摩擦ディスク71の軸方向制限を達成する一方で、摩擦ディスク71が摩擦ディスクブラケット4に対して軸方向に動くことを可能にする。
図12には示されていないが、
図11に示すように、対応する摩擦ディスク72は、摩擦ディスク71に対して対向する態様で摩擦ディスクブラケット4上にも配置されることが理解され得る。対応する摩擦ディスク72は、摩擦ディスク71と類似した形状(プランジャと嵌合するための構造なし)を有し、摩擦ディスクブラケット4上において同様の方法により軸方向に移動するように配置され得る。前述のように、ブレーキアクチュエータハウジング30は、軸方向ガイドロッド51を介して摩擦ディスクブラケット4上に浮動可能に取り付けられる。組み立てられた電子機械ブレーキは、摩擦ディスクブラケット4上のフランジ43を介してステアリングナックルアーム93に固定され、その結果、摩擦ディスク71及び対応する摩擦ディスク72は、ブレーキディスク95の両側に位置する。トルクの確立の間、ブレーキモータの回転は、トランスミッションデバイス2を駆動し、親ねじナットの親ねじの回転、ナットの並進、及び、プランジャの移動を引き起こし、それによって摩擦ディスク71をブレーキディスク95に接触させる。追加的に、ブレーキディスク95及び摩擦ディスクブラケット4は固定されているため、親ねじ312上の反力は、ナット313が並進されたときに電子機械ブレーキのブレーキアクチュエータハウジング30に伝達され、ブレーキアクチュエータハウジング30を逆方向に移動させる(
図11においては左へ)。ブレーキアクチュエータハウジングのフック部分301は、対応する摩擦ディスク72を駆動して、摩擦ディスク71とともに軸方向に左に移動させ、それによってブレーキディスク95を締め付ける。ブレーキトルクを解放するときに、ブレーキディスク95の回転は、摩擦ディスク71及び対応する摩擦ディスク72を押し離し、ブレーキディスク95が次のブレーキングサイクルまで自由に回転するために十分なクリアランスを提供する。
【0017】
続いて、
図14及び
図15を参照して、本発明のさらなる例を紹介する。
図14に示す例においては、
図6における例と比較すると、ブレーキングモータの出力シャフト上にセットされた2つの回転位置センサ磁石は、ハブギア上にセットされた単一の回転位置センサ磁石206に変更され、ホールセンサは、対応するように変更される。
図15に示す例においては、中間ギア201は、同軸に相互接続された第1のギア2011及び第2のギア2012を備えるダブルギア201’に変更され、第1のギア2011はブレーキングモータの出力シャフト上の小さいギアとかみ合い、第2のギア2012はハブギア203とかみ合う。ダブルギアのギア比を変更することによって、トランスミッションデバイスのギア比は、異なるユーザ要件に応じて調整され得る。追加的に、
図15に示す実施例においては、回転位置センサの磁石207は、ダブルギア上に取り付けられ得る。モータ出力シャフト、中間ギア及びハブギアは相互にかみ合わせられるため、第1のモータ11及び第2のモータ12の回転速度及び回転位置は、モータ出力シャフト、中間ギア又はハブギア上の磁石によって直接的又は間接的に検出され得、これらのアプローチは、等価であるとみなされることが理解されるべきである。
【0018】
続いて、
図16乃至
図19を参照すると、回転位置センサ磁石の構造が図示されている。この例においては、磁石207は、ディスク形状の磁石部分2071及びシャフト部分2072を備える。シャフト部分2072は、ギアシャフト2013のシャフト穴に取り付けられ、ディスク形状の磁石部分2071、2071’は、180度離隔した1つ以上の対の磁極を含む。さらに
図20及び
図21を参照すると、回転位置センサ磁石207”の別の構造が示されており、環状磁石部分2071”及び環状磁石部分2071”の内部側の軸方向リング2072”を含む。回転位置センサ磁石は、ギアシャフトの突起端部2014上に軸方向リング2072”を嵌合することによって取り付けられる。同様に、環状磁石部分2071”は、180度離隔した1つ以上の対の磁極を含み得る。上述のように、回転位置センサ磁石は、上述の方法又は他の適当な方法のいずれかを使用して、2つのブレーキングモータ、1つ又は2つの中間ギア、又は、ハブギアの出力シャフト上に取り付けられるものとしてもよい。
【0019】
続いて、
図22を参照すると、一実施例に従った電子機械ブレーキングシステムが導入される。制御システムは、例えば、車両の電子制御ユニット(ECU)である制御方法実行デバイス80を含む。ECUは、位置センサを通して、第1のモータ11及び第2のモータ12の回転速度及び位相などの動作状態を取得する。ECUはさらに、電流センサ82及び83を通して、それぞれ第1のモータ11及び第2のモータ12の動作電流を取得する。追加的に、ECUは、ブレーキペダルデバイス840におけるペダル変位センサ84を使用することによって、ブレーキペダル841の変位を取得する。ブレーキペダル841の変位は、ペダル変位受信機84’に送信される。さらに、ブレーキペダルデバイス840は、ペダル感触シミュレーションデバイス842を含む。さらに、ECUは、例えば、トランスミッションデバイス2を通してブレーキ作動システム3に伝送される第1のモータ及び第2のモータの合計出力トルクである、連結された第1のモータ及び第2のモータの合計出力トルクを取得する。例えば、トルクセンサ81は、トランスミッションデバイス2とブレーキ作動デバイス3との間にセットされ、ブレーキ作動システム3の入力端部311でのトルクを検知し、ブレーキトルク受信機81’に送信する。代替的な実施例においては、合計ブレーキトルクは、例えば、ハブギアとブレーキ作動デバイスの入力シャフトとの間の任意の適当な位置で測定され得る。
【0020】
続いて、
図23を参照すると、第1のモータ11及び第2のモータ12の制御を調整するために、本出願によるブレーキングシステムの制御方法は、以下のステップを含み得る。ステップS1は、ペダルストロークを検出し、例えば、ペダル位置は、ペダル変位センサ84によって検出され、かつ、ECUに送信される。ペダルストローク/合計ブレーキトルク曲線に基づいて、ECUは、必要とされる合計ブレーキトルクTを決定する。ペダルストローク/合計ブレーキトルク曲線は、ユーザ要件及びECUにおける事前設定に従って調整され得る。その後、ステップS2においては、合計ブレーキトルクが第1のモータ及び第2のモータに割り当てられ、第1のモータ及び第2のモータの目標トルクT1_t及びT2_tを決定する。特定の割り当ては、ECUにおいて事前に設定し得る。例えば、最も単純な例においては、目標トルクT1_t及びT2_tは、第1のモータ及び第2のモータに均等に分配され、それぞれのモータのモータ制御ユニット(MCU)に送信される。次に、ステップS31及びS34においては、モータ制御ユニットは、目標トルクT1_t及びT2_tに基づいて、第1のモータ及び第2のモータを動作する。その後、ステップS32及びS35においては、第1のモータ及び第2のモータの動作電流及び回転速度が、それぞれ電流センサ及びモータ位置センサを使用して検出される。第1のモータ及び第2のモータの運転電流及び回転速度並びにそれらのモータ特性曲線に基づいて、計算された出力トルクT1_c及びT2_cが取得される。ステップS4においては、連結された第1のモータ及び第2のモータの合計出力トルクToは、トルクセンサ81又は類似の手段を使用して検出される。この実施例においては、検出は、ブレーキ作動デバイス3の入力端部311で実行される。代替的に、合計出力トルクは、第1のモータと第2のモータとの連結後の任意の適当な位置で検出され得る。その後、ベンチマーク(基準)較正が実行され、これには以下の手順が含まれる。ステップS33は、|T1_t-T1_c|≦A1が真であるかどうかを検証し、真である場合、ステップS61を実行して第1のモータの稼働状態を維持するが、偽である場合、ステップS71を実行して第1のモータを調整する。ステップS36は、|T2_t-T2_c|≦A2が真であるかどうかを検証し、真である場合、ステップS62を実行して第2のモータの稼働状態を維持するが、偽である場合、ステップS72を実行して第2のモータを調整する。ステップS5は、|T-To|≦Aが真であるかどうかを検証し、真である場合、ステップS61及びS62を実行して第1のモータ及び第2のモータの稼働状態を維持するが、偽の場合、ステップS71及びS72を実行して、第1のモータ又は第2のモータを、|T1_t-T1_c|≦A1、|T2_t-T2_c|≦A2、及び、|T-To|≦Aが全て真になるまで、調整する。値A、A1及びA2は、例えば、0乃至0.1の範囲内の設定値である。このベンチマーク較正ステップを実行することによって、第1のモータ又は第2のモータが正常状態であるかどうかを判定し、後続のモータ制御に役立つように較正することができる。このベンチマーク較正は、ブレーキペダルを押下する初期段階で、又は、代替的に、較正後の特定の時間間隔、特定のブレーキ時間、特定の移動距離などで実行することができる。
【0021】
続いて、
図24を参照すると、一実施例によるモータ制御較正方法が導入される。いくつかの実施例においては、基準較正を行った後、T1_tは、T1_cと実質的に等しいとみなされ、T2_tは、T2_cと実質的に等しいとみなされる。したがって、後続の制御プロセス中にこの較正を再度行う必要はなく、モータ制御較正は直接実行される。具体的には、
図24に示すように、ステップS8の前に同一の参照番号を用いるステップは、
図23に記載されるものと同様であり、ここで繰り返されない。
図23における基準較正ステップS33、S36及びS5は実行されず、ステップS8によって置き換えられる。ステップS8においては、第1のモータ及び第2のモータの算出された出力トルクT1_c、T2_cは、ギア比及びトランスミッション効率に基づいて、合計出力トルク検出位置で対応するトルクT1_c’及びT2_c’に変換される。この例においては、算出された出力トルクT1_c、T2_cは、ギア比及びトランスミッション効率の変換を通して、ブレーキアクチュエータ3の入力端子311で対応するトルクに変換される。モータ制御較正には、条件|T1_c’+T2_c’-To|≦Bであるかどうかをチェックすることが含まれ、ここで、「To」は設定値である。条件が真である場合、電子機械ブレーキングシステムが最適な稼働状態にあることを示し、ステップS6は、第1のモータ及び第2のモータの動作状態を維持する。条件が偽である場合、ステップS7は、第1のモータ又は第2のモータを調整し、Bの数値は、例えば、0乃至0.1の範囲において設定される。したがって、本発明の一実施例による制御方法は、モータの速度及び電流に基づいて計算されたトルクと、ブレーキングプロセス中の合計出力トルクとの間の比較に基づいて制御する。
【0022】
いくつかの実施例においては、
図25に示すように、
図24のステップ8における式が満たされない場合、さらなる故障較正ステップが実行され、ステップS91は、|T1_c’-To|≦C1であるかどうかをチェックする。真である場合、ステップS92は、第2のモータにおける故障を判定し、そうでない場合、第2のモータが誤動作していないと判定する。次に、ステップS93は、|T2_c’-To|≦C2であるかどうかをチェックする。真である場合、ステップS94は、第1のモータの故障を判定し、そうでない場合、第1のモータが故障していないと判定する。数値C1及びC2は、例えば、0乃至0.1の範囲における設定値である。この故障較正ステップは、ステップS7と同期して実行することができ、又は、ステップS7で数回調整した後、ステップS8の式がまだ満たされない場合に実行することができる。
【0023】
いくつかの実施例においては、制御方法は、音声警報信号などの故障信号を送信すること、及び、第1のモータ又は第2のモータにおいて故障が発生したときに、運転者用の可視表示装置上に警告灯を表示することをさらに含む。このとき、ECUは、バックアップブレーキング手順を実行することができる。この場合、第1のモータ及び第2のモータのうちの正常に機能している1つは、合計ブレーキトルクを引き受ける。即ち、ブレーキペダルストロークを受信すると、対応するブレーキトルクは、通常動作モータに直接割り当てられる。合計ブレーキトルクが通常動作モータの定格能力を超えると、通常動作モータが過負荷状態になる。コンパクトな軸方向距離を達成するために、本出願は、従来の単一のモータの代わりに2つのモータを使用する技術的解決策を採用する。合計定格電流下における2つのモータのブレーキングトルクの合計は、1gの減速に近づく又は等しいなどの極端な条件下において必要とされるブレーキング減速以下である。従来の状況では、90%より多い事例において、必要なブレーキング減速は0.25g未満である。この場合、ブレーキングトルクは、2つのモータの協働によって提供され得る。単一のモータの障害の場合には、通常動作のモータに過負荷をかけることによって、緊急事態に対処することができる。
【0024】
続いて、
図26を参照して、一実施例によるトルク分配方法を説明する。
図26及びその後の
図27乃至
図30は、ブレーキペダルストローク対合計トルク曲線、ブレーキペダルストローク対第1のモータM1ブレーキングトルク曲線、及び、ブレーキペダルストローク対第2のモータM2ブレーキングトルク曲線に対応する、3つのグラフを含む。一般的に、ブレーキングトルクは、ブレーキペダルストロークの増加とともに増加する。ブレーキペダルを押下及び解放するときのブレーキトルク曲線の間には一定の差があり、これは、ペダルを押下及び解放するときの同等のブレーキングトルクを達成することにおいて差hがあることを意味する。この差hは、ヒステリシスとしても知られ、ペダルを解放するときに、ペダルが足の動きに追従しないことを確実にするために使用される。合計ブレーキングトルクを第1のモータ及び第2のモータに割り当てるステップは、ペダルストローク/合計ブレーキングトルク曲線に対応するトルクを第1のモータ及び第2のモータに平均すること又は比例分配することを含む。例えば、第1のモータ11及び第2のモータ12は、合計ブレーキングトルクの各半分を負担しており、又は、第1のモータ11及び第2のモータ12は、3:5の比率又は任意の他の適当な比率で、合計ブレーキングトルクを負担している。
【0025】
続いて、
図27を参照して、一実施例によるトルク分配方法を説明する。
図27に示す例においては、開始時に、ペダルストローク/合計ブレーキングトルク曲線に対応するトルクが、第1のモータ又は第2のモータのいずれかに割り当てられる。この実施例においては、第1の遅延時間d内において、ブレーキングトルクは、第1のモータM1が非アクティブのままである間に、第2のモータM2に完全に割り当てられる。第1の遅延時間dの後、ペダルストローク/合計ブレーキングトルク曲線に対応するトルクは、
図26において説明された仕様と同様に、第1のモータと第2のモータとの間で平均され又は比例分配される。
【0026】
続いて、
図28を参照して、一実施例によるトルク分配方法を説明する。この分配方法においては、ブレーキペダルストロークが第1のストロークよりも小さいとき、ペダルストローク/合計ブレーキングトルク曲線に対応するトルクが、第1のモータ又は第2のモータのいずれかに割り当てられる。例えば、図に示す実施例においては、ブレーキペダルストロークがwより小さいとき、第1のモータM1は、第2のモータM2が非アクティブである間、全てのブレーキトルクを負担している。ブレーキペダルストロークが第1のストロークw以上であるときに、ペダルストローク/合計ブレーキングトルク曲線に対応するトルクは、
図26において説明された仕様と同様に、第1のモータと第2のモータとの間に平均的に又は比例的に分配される。
【0027】
さらに
図29を参照すると、第2のモータM2故障の状況が図示されている。この時、全てのブレーキングトルクは、第1のモータM1によって負担されている。ブレーキングトルクに対する要求が高いときに、ECUは、第1のモータM1に過負荷をかけることができる。
【0028】
続いて、
図30を参照して、アンチロックブレーキング機能を達成するための本発明に係る制御方法が説明される。車両上のセンサが車輪ロックを検出すると、第1のモータ及び第2のモータのうちの一方の出力トルク、例えば、第2のモータM2の出力トルクは、一定に保持されるが、第1のモータ及び第2のモータのうちの他方の出力トルク、例えば、第1のトルクM1は、特定の範囲内で振動し、それによって、ブレーキペダルを激しく押下することによるタイヤのロック及び車両滑りを防止する。代替的な実施例においては、車両上のセンサが車輪ロックを検出すると、第1のモータM1及び第2のモータM2の両方の出力トルクは、図に示される第1のモータM1と同様に、特定の範囲内で振動し得る。
【0029】
いくつかの実施例においては、方法は、自動緊急ブレーキング信号(EBR)を受信すると、第1のモータ及び第2のモータが、それぞれ所定の緊急ブレーキトルクT1_e及びT2_eにより直接動作することをさらに含む。自動緊急ブレーキングは、車両上のセンサが差し迫った衝突を検出したときであり、この時点では、ブレーキペダルのストロークは考慮されない。
【0030】
さらに
図31を参照すると、例示的なモータ特性曲線が示されている。モータ特性曲線は、特定の電流に対応する。様々な電流における各モータの特性曲線は、モータ性能試験を実施することによって、又は、計算によって得ることができる。この曲線においては、モータ速度が特定の値以下であるときに、モータ出力トルクは実質的に一定であり、モータ速度が特定の値よりも高いときに、モータ速度の増加とともにモータ出力トルクは減少する。
【0031】
図32を再び参照すると、例示的なモータの断面図が示されている。このタイプのモータについては、モータ出力トルクTは、例えば、以下の式を使用して計算することができる。
【数1】
【0032】
ここで、T:モータ出力トルク、P:ロータの磁極数、
【数2】
:主流束(主磁気リンケージ)、L
d:直接軸のインピーダンス、L
q:直交軸のインピーダンス、I
d:ステータ内の主流束に平行な磁束を生成する電流、I
q:ステータにおける主流束に垂直な磁束を生成する電流である。トルクを計算する上述の方法は、単なる例示であり、代替的な例においては、各モータの出力トルクを計算するために様々な他の適当な方法を使用することができる。本発明の実施例の方法及びデバイスは、2つのモータ駆動電子機械ブレーキの調整された効率的な動作を達成することができる。
【0033】
上述の特定の実施例は、本発明の原理のより明確な理解を促進するために、個々の構成要素が明確に示され又は記述されている、本出願の原理のより明確な理解のために提供される。本出願の範囲内において、当業者は、本出願に様々な修正又は変更を容易に行うことができる。したがって、これらの修正又は変更は、本出願の特許保護の範囲内に含まれることが理解されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアルモータを有する電子制御された機械ブレーキを備えるブレーキングシステムのための制御方法であって、当該方法は、
ペダルストロークを検出して、前記ペダルストローク/合計ブレーキングトルク曲線に基づいて、必要とされる合計ブレーキングトルクTを決定するステップと、
前記合計ブレーキングトルクを第1のモータ及び第2のモータに分配するステップであって、それぞれ前記第1のモータ及び前記第2のモータに対する目標トルクT1_t及びT2_tを決定する、ステップと、
前記目標トルクT1_t及びT2_tに基づいて動作するように、前記第1のモータ及び前記第2のモータを駆動するステップと、
前記第1のモータ及び前記第2のモータの動作電流及び回転速度並びに前記第1のモータ及び前記第2のモータのモータ特性曲線に基づいて、出力トルクT1_c及びT2_cを計算するステップと、
連結後に前記第1のモータ及び前記第2のモータの合計出力トルク(To)を検出するステップと、
基準較正を実行するステップと、
を含み、前記基準較正は、
条件|T1_t-T1_c|≦A1が真であるかどうかをチェックするステップであって、真であれば、前記第1のモータの動作状態を維持し、真でなければ、前記第1のモータを調整する、ステップと、
条件|T2_t-T2_c|≦A2が真であるかどうかをチェックするステップであって、真であれば、前記第2のモータの動作状態を維持し、真でなければ、前記第2のモータを調整する、ステップと、
条件|T-To|≦Aが真であるかどうかをチェックするステップであって、真であれば、前記第1のモータ及び前記第2のモータの両方の動作状態を維持し、真でなければ、前記第1のモータ又は前記第2のモータのいずれかを調整する、ステップと、
を含み、
前記基準較正の各ステップは、全ての前記条件|T1_t-T1_c|≦A1、|T2_t-T2_c|≦A2及び|T-To|≦Aが同時に満たされるまで繰り返され、ここで、A、A1及びA2は、0乃至0.1の範囲内にある、制御方法。
【請求項2】
前記方法は、前記基準較正後、モータ制御較正を実行するステップをさらに含み、前記モータ制御較正は、
前記合計出力トルクの検出位置で、ギア比に基づいて、前記第1のモータ及び前記第2のモータの計算された前記出力トルクT1_c及びT2_cを、対応するトルクT1_c’及びT2_c’に変換するステップと、
|T1_c’+T2_c’-To|≦Bが適用されるかどうかを較正するステップであって、適用される場合、前記第1のモータ及び前記第2のモータの動作状態を維持し、適用されない場合、前記第1のモータ又は前記第2のモータを調整する、ステップと、
を含み、ここで、Bは、0乃至0.1の範囲内である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記方法は、故障較正を実行するステップをさらに含み、前記故障較正は、
|T1_c’-To|≦C1が適用されるかどうかを判定するステップであって、適用される場合、前記第2のモータにおける故障を判定し、適用されない場合、前記第2のモータに故障が発生していないと判定する、ステップと、
|T2_c’-To|≦C2が適用されるかどうかを判定するステップであって、適用される場合、前記第1のモータにおける故障を判定し、適用されない場合、前記第1のモータに故障が発生していないと判定する、ステップと、
を含み、ここで、C1及びC2は、0乃至0.1の範囲内である、
ことを特徴とする、請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記方法は、
前記第1のモータ又は前記第2のモータの障害の場合に、故障信号を送信するステップと、
前記第1のモータ及び前記第2のモータのうちの通常動作している1つに前記合計ブレーキングトルクを引き受けさせるステップと、
をさらに含み、
前記合計ブレーキングトルクが前記通常動作している前記第1のモータ又は前記第2のモータの定格能力を超えるときに、前記通常動作している前記第1のモータ又は前記第2のモータは過負荷になる、
ことを特徴とする、請求項3に記載の制御方法。
【請求項5】
前記合計ブレーキングトルクを前記第1のモータ及び前記第2のモータに分配する前記ステップは、
ペダル移動/合計ブレーキングトルク曲線に対応するトルクを前記第1のモータ及び前記第2のモータに平均すること又は比例分配することのいずれか、又は、
前記ペダル移動/合計ブレーキングトルク曲線に対応する前記トルクを前記第1のモータ又は前記第2のモータのいずれかに最初に割り当て、第1の遅延時間の後、前記ペダル移動/合計ブレーキングトルク曲線に対応する前記トルクを前記第1のモータ及び前記第2のモータに平均すること又は比例分配すること、又は、
前記ブレーキペダル移動が第1の閾値よりも小さいときに、前記ペダル移動/合計ブレーキングトルク曲線に対応する前記トルクを前記第1のモータ又は前記第2のモータのいずれかに割り当て、前記ブレーキペダル移動が前記第1の閾値以上であるときに、前記ペダル移動/合計ブレーキングトルク曲線に対応する前記トルクを前記第1のモータ及び前記第2のモータに平均すること又は比例分配すること
を含む、請求項1に記載の制御方法。
【請求項6】
車輪ロックを検出すると、前記第1のモータ及び前記第2のモータのうちの一方の出力トルクが一定に保持され、前記第1のモータ及び前記第2のモータのうちの他方の出力トルクが特定の範囲内で振動する、又は、
車輪ロックを検出すると、前記第1のモータ及び前記第2のモータの両方の前記出力トルクが、特定の範囲内で振動する、
請求項1に記載の制御方法。
【請求項7】
自動緊急ブレーキング信号を受信すると、前記第1のモータ及び前記第2のモータは、ペダルの移動に無関係に、所定の緊急ブレーキングトルクT1_e及びT2_eにより直接動作することをさらに含む、請求項1に記載の制御方法。
【請求項8】
前記ペダル移動/合計ブレーキングトルク曲線は、前記ブレーキペダルを押下すること及び解放することに応じてヒステリシスを表す、請求項1に記載の制御方法。
【請求項9】
電子機械ブレーキと、前記電子機械ブレーキに接続された電子制御ユニットとを備える電子機械ブレーキングシステムであって、
前記電子機械ブレーキは、
第1のモータ及び第2のモータ(11、12)と、
前記第1のモータ及び前記第2のモータ(11、12)に接続されたトランスミッションデバイス(2)と、
前記トランスミッションデバイス(2)に接続されたブレーキアクチュエータ(3)と、を備え、
前記トランスミッションデバイス(2)は、前記第1のモータ及び前記第2のモータ(11、12)のブレーキングトルクを前記ブレーキアクチュエータ(3)に伝達し、
前記電子機械ブレーキングシステムは、請求項1に記載の方法を実施するように構成されている、電子機械ブレーキングシステム。
【請求項10】
前記電子機械ブレーキングシステムは、
電子制御ユニット(80)と、
前記電子制御ユニットに接続されたペダル変位センサ(84)と、
前記第1のモータ及び前記第2のモータの電流を検知するために前記電子制御ユニットに接続された電流センサ(82、83)と、
前記第1のモータ及び前記第2のモータの速度を検知するために前記電子制御ユニットに接続された回転位置センサと、
前記第1のモータと前記第2のモータとを連結した後に合計出力トルク(To)を検知するために前記電子制御ユニットに接続されたトルクセンサ(81)と、
を備えることを特徴とする、請求項9に記載の電子機械ブレーキングシステム。
【請求項11】
前記回転位置センサは、検出器と磁石とを備え、前記回転位置センサの前記磁石は、前記第1のモータ及び前記第2のモータの出力シャフト上、又は、前記トランスミッションデバイスの中間ギアのギアシャフト上、又は、前記トランスミッションデバイスのハブギアのギアシャフト上に位置決めされ、ここで、
前記回転位置センサの前記磁石は、ディスク形状の磁石部分と軸部分とを備え、前記回転位置センサの前記磁石は、前記軸部分を通して前記ギアシャフトのシャフト穴に設置され、前記ディスク形状の磁石部分は、180度離隔した1つ以上の対の磁極を含み、又は、
前記回転位置センサの前記磁石は、リング形状の磁石部分と前記リング形状の前記磁石部分の内側の軸リングとを備え、前記回転位置センサの前記磁石は、前記軸リングに嵌合することによって前記ギアシャフトの突起端部上に設定され、前記リング形状の磁石部分は、180度離隔した1つ以上の対の磁気極を含む、
ことを特徴とする、請求項10に記載の電子機械ブレーキングシステム。
【請求項12】
前記トルクセンサ(81)は、前記ブレーキアクチュエータの入力端部(311)に位置決めされることを特徴とする、請求項10に記載の電子機械ブレーキングシステム。
【外国語明細書】