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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023161
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/32 20060101AFI20240214BHJP
   B60N 2/72 20060101ALI20240214BHJP
   A47C 7/14 20060101ALI20240214BHJP
   A47C 7/50 20060101ALI20240214BHJP
   B60N 3/06 20060101ALI20240214BHJP
   A47C 7/28 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A47C7/32
B60N2/72
A47C7/14 C
A47C7/50 A
B60N3/06
A47C7/28 A
A47C7/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128814
(22)【出願日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】63/395,924
(32)【優先日】2022-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 章人
(72)【発明者】
【氏名】田邉 仁一
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 亮
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 生佳
(72)【発明者】
【氏名】富岡 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】朴 喜赫
(72)【発明者】
【氏名】小堤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】木幡 安貴
(72)【発明者】
【氏名】滝川 宜秀
(72)【発明者】
【氏名】森岡 桃子
【テーマコード(参考)】
3B087
3B088
【Fターム(参考)】
3B087DB01
3B087DE02
3B088JA02
3B088JB02
(57)【要約】
【課題】着座感を変更することができる乗物用シートを提供する。
【解決手段】乗物用シート1であって、第1フレーム11と、第1フレームに張り渡された表皮材13とを備えたシート本体3と、第2フレーム32と、第2フレームに張り渡された布部材33を備えた反発力変更装置30と、を有し、反発力変更装置は、シート本体の内部に収納され、布部材が表皮材に裏側から重なるように配置された収納位置と、少なくとも一部がシート本体から突出する突出位置とに変位可能に構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートであって、
第1フレームと、前記第1フレームに張り渡された表皮材とを備えたシート本体と、
第2フレームと、前記第2フレームに張り渡された布部材を備えた反発力変更装置と、を有し、
前記反発力変更装置は、前記シート本体の内部に収納され、前記布部材が前記表皮材に下側から重なるように配置された収納位置と、少なくとも一部が前記シート本体から突出する突出位置とに変位可能に構成されている乗物用シート。
【請求項2】
前記シート本体は、シートクッションと、シートバックとを有し、
前記反発力変更装置は前記収納位置にあるときに前記シートクッションの内部に収容され、前記突出位置において前記シートクッションの前方に突出してオットマンを構成する請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記第2フレームは、前記第1フレームに、前後方向にスライド移動可能に支持されている。請求項1又は請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記第2フレームは、前記第1フレームに、上下方向に延びる軸線を中心とする回転可能に支持されている請求項1又は請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記反発力変更装置は、前記第2フレームに支持され、前記布部材に加わる張力を変更するアクチュエータを備える請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記反発力変更装置は、所定方向に延び、前記布部材が引っ掛けられる引掛部を備え、前記引掛部が互いに近接した位置と、離反した位置とに変位可能に前記第2フレームに支持された可動フレームと、を有し、
前記アクチュエータは前記可動フレームを変位させることにより、前記布部材に加わる張力を変更する請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記可動フレームはそれぞれ、前記第2フレームに、前記引掛部の延在方向に直交する方向にスライド移動可能に支持されている請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記可動フレームは前記引掛部の端部それぞれから前記引掛部の延在方向に交差する方向に延出するアーム部を有し、
前記可動フレームは、前記アーム部の延出端において、前記第2フレームに、前記引掛部の延在方向に延び、且つ、前記延出端を通過する軸線を中心として、回転可能に支持されている請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記シート本体は、前記第1フレームに支持され、且つ、前記表皮材に覆われたパッド部材を有し、
前記収納位置において、前記布部材は前記表皮材と前記パッド部材との間に位置している請求項1又は請求項2に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、左右に離間して配置され、前後方向に延びる左右のサイドフレームと、左右のサイドフレームの前端部同士を連結するフロントフレームと、左右のサイドフレームの後端部同士を連結するリアフレームとを備えたクッションフレームを開示している。クッションフレームには、フロントフレームとリアフレームに、複数の支持部材の一例としての複数のSバネが架設されている。Sバネが設けられることによって、パッドが下から支えられるため、着座者が車両用シートに座ったときにパッドが下に沈み込むのを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-134345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシートにおいて、Sバネによる弾性力によって、着座者にはシートクッションからの反発力が加えられる。特許文献1のシートでは、Sバネの弾性を調整することができないため、それぞれの着座者の好みに合わせて座り心地を変更することが難しい。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、着座感を変更することができる乗物用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、乗物用シート(1、61、121、171)であって、第1フレーム(11、21)と、前記第1フレームに張り渡された表皮材(13)とを備えたシート本体(3)と、第2フレーム(31、91、151、191)と、前記第2フレームに張り渡された布部材(33、93、153、193)を備えた反発力変更装置(30、90、150、180)と、を有し、前記反発力変更装置は、前記シート本体の内部に収納され、前記布部材が前記表皮材に裏側から重なるように配置された収納位置と、少なくとも一部が前記シート本体から突出する突出位置とに変位可能に構成されている。
【0007】
この態様によれば、布部材が収納位置に配置されているときには、表皮材の下側に布部材が裏側から重なるように配置される。そのため、布部材を収納位置に配置することによって、着座者に加わる反発力を変更することができるため、着座感を変更することができる。
【0008】
上記の態様において、好ましくは、前記シート本体は、シートクッション(5)と、シートバック(6)とを有し、前記反発力変更装置は前記収納位置にあるときに前記シートクッションの内部に収容され、前記突出位置において前記シートクッションの前方に突出してオットマンを構成する。
【0009】
この態様によれば、反発力変更装置をオットマンとして利用することができる。
【0010】
上記の態様において、好ましくは、前記第2フレーム(31、91、191)は、前記第1フレームに、前後方向にスライド移動可能に支持されている。
【0011】
この態様によれば、反発力変更装置を、収納位置と、シートクッションに対して前方に突出した突出位置とに変位可能に構成することができる。
【0012】
上記の態様において、好ましくは、前記第2フレーム(151)は、前記第1フレームに、上下方向に延びる軸線を中心とする回転可能に支持されている。
【0013】
この態様によれば、反発力変更装置を、収納位置と、シートクッションに対して前方に突出した突出位置とに変位可能に構成することができる。
【0014】
上記の態様において、好ましくは、前記反発力変更装置は、前記第2フレームに支持され、前記布部材に加わる張力を変更するアクチュエータ(48、108)を備える。
【0015】
この態様によれば、アクチュエータによって布部材に加わる張力を変更することによって、着座面から着座者に加わる反発力をより細かく調整することができる。
【0016】
上記の態様において、好ましくは、前記反発力変更装置は、所定方向に延び、前記布部材が引っ掛けられる引掛部(46、92A)を備え、前記引掛部が互いに近接した位置と、離反した位置とに変位可能に前記第2フレームに支持された可動フレームと、を有し、前記アクチュエータは前記可動フレームを変位させることにより、前記布部材に加わる張力を変更する。
【0017】
この態様によれば、アクチュエータによって変位装置を変位させて、引掛部を近接・離反させることで、布部材に加わる張力を変更することができる。
【0018】
上記の態様において、好ましくは、前記可動フレームはそれぞれ、前記第2フレームに、前記引掛部の延在方向に直交する方向にスライド移動可能に支持されている。
【0019】
この態様によれば、引掛部が近接した位置と、離反した位置とに変位可能となるように、可動フレームを構成することができる。
【0020】
上記の態様において、好ましくは、前記可動フレームは前記引掛部(92A)の端部それぞれから前記引掛部の延在方向に交差する方向に延出するアーム部(92B)を有し、前記可動フレームは、前記アーム部の延出端において、前記第2フレームに、前記引掛部の延在方向に延び、且つ、前記延出端を通過する軸線を中心として、回転可能に支持されている。
【0021】
この態様によれば、引掛部が近接した位置と、離反した位置とに変位可能となるように、可動フレームを構成することができる。
【0022】
上記の態様において、好ましくは、前記シート本体は、前記第1フレームに支持され、且つ、前記表皮材に覆われたパッド部材(12)を有し、前記収納位置において、前記布部材は前記表皮材と前記パッド部材との間に位置している。
【0023】
この態様によれば、反発力をより効果的に変更することができる。
【発明の効果】
【0024】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、乗物用シートであって、第1フレームと、着座面を構成するべく、前記第1フレームに張り渡された表皮材とを備えたシート本体と、第2フレームと、前記第2フレームに張り渡された布部材を備えた反発力変更装置と、を有し、前記反発力変更装置は、前記シート本体の内部に収納され、前記布部材が前記表皮材に裏側から重なるように配置された収納位置と、少なくとも一部が前記シート本体から突出する突出位置とに変位可能に構成されている。
【0025】
この態様によれば、布部材が収納位置に配置されているときには、表皮材の下側に布部材が裏側から重なるように配置される。そのため、布部材を収納位置に配置することによって、着座面から着座者に加わる反発力を変更することができるため、着座感を変更することができる。
【0026】
上記の態様において、好ましくは、前記シート本体は、シートクッションと、シートバックとを有し、前記反発力変更装置は前記収納位置にあるときに前記シートクッションの内部に収容され、前記突出位置において前記シートクッションの前方に突出してオットマンを構成する。
【0027】
この態様によれば、反発力変更装置をオットマンとして利用することができる。
【0028】
上記の態様において、好ましくは、前記第2フレームは、前記第1フレームに、前後方向にスライド移動可能に支持されている。
【0029】
この態様によれば、反発力変更装置を、収納位置と、シートクッションに対して前方に突出した突出位置とに変位可能に構成することができる。
【0030】
上記の態様において、好ましくは、前記第2フレームは、前記第1フレームに、上下方向に延びる軸線を中心とする回転可能に支持されている。
【0031】
この態様によれば、反発力変更装置を、収納位置と、シートクッションに対して前方に突出した突出位置とに変位可能に構成することができる。
【0032】
上記の態様において、好ましくは、前記反発力変更装置は、前記第2フレームに支持され、前記布部材に加わる張力を変更するアクチュエータを備える。
【0033】
この態様によれば、アクチュエータによって布部材に加わる張力を変更することによって、着座面から着座者に加わる反発力をより細かく調整することができる。
【0034】
上記の態様において、好ましくは、前記反発力変更装置は、所定方向に延び、前記布部材が引っ掛けられる引掛部を備え、前記引掛部が互いに近接した位置と、離反した位置とに変位可能に前記第2フレームに支持された可動フレームと、を有し、前記アクチュエータは前記可動フレームを変位させることにより、前記布部材に加わる張力を変更する。
【0035】
この態様によれば、アクチュエータによって変位装置を変位させて、引掛部を近接・離反させることで、布部材に加わる張力を変更することができる。
【0036】
上記の態様において、好ましくは、前記可動フレームはそれぞれ、前記第2フレームに、前記引掛部の延在方向に直交する方向にスライド移動可能に支持されている。
【0037】
この態様によれば、引掛部が近接した位置と、離反した位置とに変位可能となるように、可動フレームを構成することができる。
【0038】
上記の態様において、好ましくは、前記可動フレームは前記引掛部の端部それぞれから前記引掛部の延在方向に交差する方向に延出するアーム部を有し、前記可動フレームは、前記アーム部の延出端において、前記第2フレームに、前記引掛部の延在方向に延び、且つ、前記延出端を通過する軸線を中心として、回転可能に支持されている。
【0039】
この態様によれば、引掛部が近接した位置と、離反した位置とに変位可能となるように、可動フレームを構成することができる。
【0040】
上記の態様において、好ましくは、前記シート本体は、前記第1フレームに支持され、且つ、前記表皮材に覆われたパッド部材を有し、前記収納位置において、前記布部材は前記表皮材と前記パッド部材との間に位置している。
【0041】
この態様によれば、反発力をより効果的に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】第1実施形態に係る乗物用シートの斜視図
図2】第1実施形態に係る乗物用シートにおいて、反発力変更装置が収納位置にあるときのシートクッションフレーム及びシートバックフレームの上面図
図3】第1実施形態に係る乗物用シートの図2の(A)IIIA―IIIA、及び、(B)IIIB-IIIB断面図
図4】第1実施形態に係る乗物用シートにおいて、反発力変更装置が突出位置にあるときのシートクッションフレーム及びシートバックフレームの上面図
図5】アクチュエータが(A)縮んだ状態及び(B)伸びた状態におけるシートクッションの断面図
図6】布部材を引掛部に結合させる場合の結合方法の例を説明するための説明図
図7】第2実施形態に係る乗物用シート、反発力変更装置が収納位置にあるときのシートクッションフレーム及びシートバックフレームの(A)上面図、及び、(B)電動モータと可動フレームとの連結部分を示す拡大図
図8】第2実施形態に係る乗物用シートの図7の(A)VIIIA―VIIIA、及び、(B)VIIIB-VIIIB断面図
図9】第1実施形態に係る乗物用シートにおいて、反発力変更装置が突出位置にあるときのシートクッションフレーム及びシートバックフレームの上面図
図10】引掛部が(A)離れた状態及び(B)近接した状態におけるシートクッションの断面図
図11】第3実施形態に係るシートクッションフレームの上面図
図12】第3実施形態に係るシートクッションフレームの斜視図
図13】第4実施形態に係るシートクッションフレームの上面図
図14】第4実施形態に係るシートクッションフレームの斜視図
図15】乗物用シートの変形例であって、ヘッドレストの(A)格納時、及び、(B)展開時のヘッドレストの形状を示す乗物用シートの上部側面図
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して、本発明に係る乗物用シートを自動車のシートに適用した実施形態について説明する。
【0044】
<<第1実施形態>>
乗物用シート1は、図1に示すように、前部座席に左右いずれか一方を構成し、車室を画定するフロア上に自動車の前方を向くように載置されている。以下、自動車の前後方向を基準として、前後、左右、上下の各方向を定めて説明を行う。また、必要に応じて、乗物用シート1を正面視で(前方から)見たときの中心線に向かう方向をシート内方、中心線から離れる方向をシート外方と、記載する。
【0045】
乗物用シート1は乗員が着座するシート本体3を備えている。本実施形態では、シート本体3は車室の底部を画定するフロア2にスライド装置4を介して接続されている。これにより、シート本体3は自動車の車体に対して、前後方向にスライド移動可能となっている。
【0046】
シート本体3は、シートクッション5と、シートバック6とを有する。シートクッション5は、着座者の臀部を下方から支持する。シートバック6は、シートクッション5の後部から上方に延びている。シートバック6は、着座者の背部を後方から支持する。本実施形態では、シートバック6の上部に、着座者の頭部を支持するためのヘッドレスト7が設けられている。
【0047】
図1及び図2に示すように、シートクッション5は、骨格をなすシートクッションフレーム11(第1フレーム)と、シートクッションフレーム11に支持されるパッド部材12(図1参照)と、パッド部材12の上面を含む表面を覆う表皮材13(図1参照)とを有する。
【0048】
図2に示すように、シートクッションフレーム11は、前後に延びる左右のシートクッションサイドメンバ15と、左右に延び、左右のシートクッションサイドメンバ15の前端に結合された前メンバ16と、左右に延び、左右のシートクッションサイドメンバ15の後端に結合された後メンバ17とを有し、上面視で四角枠状をなす。
【0049】
図3(A)及び図3(B)に示すように、本実施形態では、シートクッションサイドメンバ15はそれぞれ、左右方向を向く面を有する板状の主部15Aと、主部15Aの上端及び下端からそれぞれ内方に延びる板状の縁部15Bとを備え、折曲形成された金属板材によって構成されている。前メンバ16は、上下方向を向く面を有する金属板材によって構成され、シートクッションサイドメンバ15の前端に結合されている。後メンバ17は円筒状の金属製のパイプ材によって構成され、両端においてそれぞれ、左右のシートクッションサイドメンバ15の主部15Aに結合されている。
【0050】
本実施形態では、前メンバ16は左右のシートクッションサイドメンバ15の前面に結合された前壁16Aと、前壁16Aの上縁及び下縁からそれぞれ後方に延びる延長部16Bとを備えている。
【0051】
図2に示すように、前メンバ16と後メンバ17との間には、使用者の臀部を支持する可撓性の支持部材18が架け渡されていてもよい。支持部材18は、金属製のワイヤによって形成された、いわゆるS字ばねによって構成されているとよい。
【0052】
図1に示すように、シートクッション5の左右の側部には、サイドカバー19が設けられていてもよい。サイドカバー19は、シートクッションサイドメンバ15に支持され、パッド部材12及び表皮材13の端末を隠蔽する役割を果たす。サイドカバー19は樹脂材料によって形成されているとよい。
【0053】
図1及び図2に示すように、シートバック6は、骨格をなすシートバックフレーム21と、シートバックフレーム21に支持されるパッド部材22と、パッド部材22の前面を含む表面を覆う表皮材23とを有する。
【0054】
図2に示すように、シートバックフレーム21は、上下に延びる左右のシートバックサイドメンバ25と、左右に延び、左右のシートバックサイドメンバ25の上端に結合された上メンバ26と、左右のシートバックサイドメンバ25の下部に結合された下メンバ27と、を有している。
【0055】
シートバックフレーム21には更に、その枠内に、使用者の背部を支持するために、両端においてシートバックフレーム21に架け渡された可撓性の支持部材(不図示)や、ばね等の弾性部材を介してシートバックフレーム21に支持された板状の受圧部材(不図示)等を備えているとよい。
【0056】
左右のシートバックサイドメンバ25の下端は、リクライニング装置(不図示)を介して対応するシートクッションサイドメンバ15の後端に結合されているとよい。これにより、シートバック6はシートクッション5に対して後傾可能に接続される。
【0057】
図1及び図2に示すように、乗物用シート1は更に、シートクッション5の着座感を変更するための反発力変更装置30を備えている。
【0058】
図2に示すように、反発力変更装置30は、骨格をなす枠体31(第2フレーム)と、枠体31に変位可能に支持された一対の可動フレーム32と、可動フレーム32に張り渡された布部材33と、布部材33に加わる張力を変更する駆動機構34とを備えている。
【0059】
枠体31は、上面視で四角枠状をなしている。枠体31は、前後方向に延在する左右一対の左右枠35と、左右に延びて左右枠35の前部をそれぞれ接続する前枠36と、左右に延びて左右枠35の後部をそれぞれ接続する後枠37とを備えている。
【0060】
図2及び図3に示すように、枠体31はシートクッションフレーム11に変位機構38を介して結合されている。変位機構38は、図3に示すように、シートクッションサイドメンバ15にそれぞれ設けられたアウタレール39と、左右枠35それぞれに設けられたインナレール40とを備えたスライドレール機構によって構成されている。
【0061】
アウタレール39は前後に延在するように配置されて、シートクッションサイドメンバ15の主部15Aのシート内方の側面に結合されている。インナレール40もまた前後に延在するように配置されて、左右枠35のシート外方の側面に結合されている。インナレール40はアウタレール39にそれぞれ、アウタレール39の延在方向、すなわち、前後方向にスライド可能に結合されている。これによって、枠体31はシートクッションフレーム11に前後方向に変位可能に支持され、反発力変更装置30はシートクッションフレーム11に前後方向にスライド移動可能に連結される。
【0062】
これにより、反発力変更装置30は、図2及び図4に示すように、シートクッション5内に収納された収納位置(図2)と、に示すように、シートクッション5から前方に突出する突出位置(図4)とに変位可能に、シートクッション5に支持されている。
【0063】
本実施形態では、反発力変更装置30のシートクッション5前方への突出を可能とするため、シートクッションフレーム11の前メンバ16の前壁16A部分に、前後方向に貫通する開口41が形成されている。
【0064】
反発力変更装置30の前面には開口41から前方に突出するハンドル42が設けられていてもよい(図1参照)。これにより、着座者がハンドル42を把持して反発力変更装置30を引き出すことによって、反発力変更装置30を突出位置から収納位置に容易に変位させることができる。その他、反発力変更装置30とシートクッションフレーム11との間に、反発力変更装置30を変位させるための公知のアクチュエータ(不図示)が設けられていてもよい。
【0065】
本実施形態では、図2に示すように、前枠36はパッド部材12の前方に位置している。図3(A)に示すように、前枠36は左右に延びる円筒状をなしている。但し、この態様には限定されず、例えば、前枠36は板状、丸棒状、角柱状、等の形状をなしていてもよい。図3(C)に示すように、後枠37は、左右両端に設けられた円筒部37Aと、円筒部37Aの延出端それぞれから下方に延びる下延長部37Bと、下延長部37Bの下端を接続する接続部37Cとを備えている。接続部37Cはパッド部材12及び支持部材18の下方において左右に延在し、両端において下延長部37Bに接続されている。これにより、後枠37はパッド部材12の下方を通過している。このように、前枠36を後枠37とは異なり、パッド部材12の前方に配置することで、ハンドル42を前枠36の左右中央部分に結合させた場合においても、ハンドル42を低すぎず、且つ、操作し易い位置に配置できる。
【0066】
可動フレーム32は、前枠36及び後枠37の左右両側部にそれぞれ摺動可能に支持された摺動部45と、対応する摺動部45を接続する連結部46とを備えている。連結部46は前後に延在する棒状をなしている。
【0067】
本実施形態では、摺動部45は前枠36及び後枠37の円筒部37Aに嵌め込まれた環状をなしている。連結部46は丸棒状をなし、前端及び後端においてそれぞれ摺動部45に接続されている。摺動部45は前枠36及び後枠37の円筒部37Aにそれぞれはめ込まれることによって、左右方向にスライド移動可能となっている。連結部46の移動範囲を制限するため、前枠36及び後枠37の少なくとも一方に、連結部46の移動範囲を制限するためのストッパ(不図示)が設けられていてもよい。本実施形態では、下延長部37Bによって後側の摺動部45のシート内方への規制されることにより、摺動部45の左右方向の移動範囲が制限されている。
【0068】
布部材33はシート状をなし、図2に示すように、左右の可動フレーム32に掛け渡されて、両者を左右に接続している。本実施形態では、布部材33は上面視で長方形状をなし、左右側部において、連結部46の上方を通過して、左右両端においてそれぞれ、左右枠35に掛け止めされている。これにより、布部材33は左右側部において、それぞれ連結部46に引っ掛かった状態となっている。連結部46は反発力変更装置30の布部材33を引っ掛けるための引掛部を構成する。
【0069】
布部材33は反発力変更装置30の表面(上面)の少なくとも一部を構成する。図3(A)に示すように、反発力変更装置30が収納位置にあるときには、反発力変更装置30の布部材33は、シートクッション5の表皮材13に下側(すなわち、裏側)から重なるように配置される。また、布部材33は、表皮材13と、パッド部材12の間に位置している。
【0070】
駆動機構34は、可動フレーム32を変位させるアクチュエータ48と、枠体31に支持された制御装置49と、着座者からの操作入力を受け付ける入力装置50とを備えている。
【0071】
アクチュエータ48は制御装置49からの信号に基づいて伸縮する。アクチュエータ48は、モータの回転軸の回転運動を直線運動に変換することにより伸縮してもよく、また、空圧や液圧によって伸縮自在に構成されていてもよい。図2及び図3(B)に示すように、アクチュエータ48はそれぞれ、一端において左右枠35に結合され、他端において摺動部45に結合されている。
【0072】
本実施形態では、アクチュエータ48は、左側の可動フレーム32と左側の左右枠35との間と、右側の可動フレーム32と右側の左右枠35との間にそれぞれ設けられている。図5(A)及び(B)に示すように、左側のアクチュエータ48が伸長すると、左側の可動フレーム32が前枠36又は後枠37の円筒部37Aに沿って摺動し、右側(すなわち、シート内方)に移動する。右側のアクチュエータ48が伸長すると、右側の可動フレーム32が前枠36及び後枠37それぞれに沿って摺動し、左側(すなわち、シート内方)に移動する。
【0073】
制御装置49は、電子制御装置であり、マイクロプロセッサ(MPU)、不揮発性メモリ、揮発性メモリ、及びインターフェースを有する演算装置である。制御装置49はスイッチ及びアクチュエータ48にハーネスを介して接続されている。制御装置49は、不揮発性メモリに記憶されたプログラムをマイクロプロセッサが実行することによって、各種のアプリケーションを実現する。
【0074】
入力装置50は着座者からの入力を受け付ける。入力装置50が受け付けた入力に基づき、制御装置49はアクチュエータ48を制御する。入力装置50はシートクッション5やシートバック6の外面(図1参照)に設けられ、ハーネスによって制御装置49に接続されたスイッチであってよい。また、入力装置50は、シートクッション5やシートバック6の外面に設けられ、無線によって制御装置49に通信可能に構成されていてもよい。入力装置50は、その他、スマートフォン等の端末に所定のアプリケーションがインストールされることによって構成されてもよい。
【0075】
本実施形態では、入力装置50は着座者から、+、-の2段階の入力を受け付ける。図5(A)に示すように、入力装置50に+の入力があったときには、制御装置49は、左右のアクチュエータ48を駆動し、それぞれを同時に収縮させる。これにより、連結部46がそれぞれ互いに離れる方向に移動する。布部材33は左右両側部においてそれぞれ連結部46に引っ掛かっているため、左右の連結部46が離れることにより、布部材33に加わる張力が増加する。
【0076】
図5(B)に示すように、入力装置50に-の入力があったときには、制御装置49は、左右のアクチュエータ48を駆動し、それぞれを同時に伸長させる。これにより、連結部46がそれぞれ互いに近づく方向に移動する。布部材33は両縁においてそれぞれ連結部46に引っ掛かっているため、左右の連結部46が近づくことにより、表皮材13に加わる張力が減少する。入力装置50への操作入力に基づくアクチュエータ48の駆動によって、左右の連結部46が近接・離反し、表皮材13に加わる張力を変更することが可能となる。このように、可動フレーム32及びアクチュエータ48によって、布部材33の張力を変更する張力変更装置30Aが構成される。
【0077】
上記実施形態では、布部材33が、連結部46に引っ掛かって、左右の左右枠35に掛け止めされているが、布部材33は、直接、フックやロープ51等によって連結部46に結合されていてもよい。図6には、布部材33の縁部に孔52が設けられ、その孔52にロープ51を通過させることによって、布部材33が連結部46に結合された場合の例が示されている。図6には矢印によってロープ51を通す方向が、1~6の各数字によってロープ51を通す順番が示されている。
【0078】
次に、このように構成した乗物用シート1の製造方法について説明する。製造を行う作業者はまず、シートクッションフレーム11及びシートバックフレーム21を準備する。その後、作業者は、それぞれのフレームの対応する位置にパッド部材12、22を設置する。次に、作業者は、反発力変更装置30を設置するべきフレーム(本実施形態では、シートクッションフレーム11)に設置し、パッド部材12、22を覆うように、それぞれの表皮材13、23をフレームに取り付ける。この際、作業者は、必要に応じて、制御装置49や、入力装置50をハーネスによって結合させるとよい。その後、作業者はヘッドレスト7を組み付ける。これにより、乗物用シート1が完成する。
【0079】
次に、このように構成した乗物用シート1の効果について説明する。
【0080】
反発力変更装置30が収納位置にあるときに、着座者が入力装置50に+の入力を行うと、アクチュエータ48が駆動し、連結部46が左右方向に離れて、布部材33に加わる張力が増加する。これにより、シートクッション5から着座者に加わる反発力が増加する。
【0081】
着座者が入力装置50に-の入力を行うと、アクチュエータ48が駆動し、連結部46が左右方向に近接し、布部材33に加わる張力が低下する。これにより、シートクッション5から着座者に加わる反発力が低下する。本実施形態では、アクチュエータ48の駆動量を変更することによって、布部材33の張力を変更することができるため、着座者に加わる反発力をアクチュエータ48が設けられていない場合に比べて、より細かく調整することが可能である。
【0082】
このように、入力装置50への操作入力によって、シートクッション5から着座者に加わる反発力を変更されるため、乗物用シート1の着座感を変更することができ、着座者の好みに応じた着座感を提供することができる。
【0083】
反発力変更装置30はシートクッションフレーム11に対して前後にスライド移動させることによって、シートクッション5の内部に収容された収納位置と、シートクッション5の前方に突出して突出位置とに変位する。
【0084】
そのため、着座者は、反発力変更装置30を突出位置まで引き出すことによって、足を反発力変更装置30に載置することできる。これにより、反発力変更装置30を足置きであるオットマンとして活用することができる。一方、反発力変更装置30をオットマンとして使用しないときには、着座者は反発力変更装置30を収納位置に移動させることで、シートクッション5内に反発力変更装置30を収納することができる。
【0085】
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係る乗物用シート61は、第1実施形態に係る乗物用シート1に比べて、反発力変更装置90の構成が異なり、他の構成は第1実施形態に係る乗物用シート1と同様である。よって、他の構成については、説明を省略する。
【0086】
第2実施形態に係る乗物用シート61の反発力変更装置90は、第1実施形態と同様の上面視で四角枠状の枠体31と、枠体31に変位可能に支持された一対の可動フレーム92(第2フレーム)と、可動フレーム92に張り渡された布部材93と、布部材93に加わる張力を変更する駆動機構94とを備えている。
【0087】
図7(A)に示すように、可動フレーム92は、枠体31の右端と左端とにそれぞれ設けられている。可動フレーム92は、前後方向に延びる棒状の引掛部92Aと、引掛部92Aの両端からそれぞれ前後方向に交差する方向(本実施形態では、直交する方向)に延びるアーム部92Bとを備えている。本実施形態では、アーム部92Bの遊端に、それぞれ前後方向、且つ、互いに離反する方向に延びる一対の延出部92Cが設けられている。
【0088】
枠体31の右端と左端とにはそれぞれ前後一対の支持部95が設けられている。図8(A)及び(B)に示すように、支持部95はそれぞれ前枠36及び後枠37に結合され、上方に突出する基部95Aを備えている。基部95Aにはそれぞれ、前後方向に貫通する貫通孔95B(図8(B)参照)が設けられ、延出部92Cはその凹部に挿入されている。これにより、可動フレーム92はアーム部92Bの延出端において、アーム部92Bの延出端を通過し、且つ、前後方向に延びる軸線X1とする回転可能に枠体31に支持されている。
【0089】
枠体31は第1実施形態と同様に、シートクッションフレーム11に対して前後にスライド移動可能に支持されている。枠体31を構成する前枠36はパッド部材12の前方に位置し、後枠37はパッド部材12の下方を通過している。
【0090】
駆動機構94は、可動フレーム92を変位させるアクチュエータ108と、枠体31に支持された制御装置49と、着座者からの操作入力を受け付ける入力装置50とを備えている。
【0091】
アクチュエータ108は、電動モータ109を含む。電動モータ109は回転軸109Aを備え、制御装置49からの信号に基づき、その回転軸109Aを両方向に回転させる。図7(B)に示すように、電動モータ109の回転軸109Aと、一方の延出部92Cとにはそれぞれギヤ110A、110Bが設けられている。電動モータ109は、その回転軸109Aに設けられたギヤ110A、110Bが、一方の延出部92Cに設けられたギヤ110A、110Bに噛合う位置において、左右枠35に結合されている。電動モータ109の回転軸109Aが回転すると、その回転運動が2つのギヤ110A、110Bを介して可動フレーム92に伝達されて、可動フレーム92が軸線X1を中心として回転する。
【0092】
図7(A)及び図9に示すように、第1実施形態と同様に、反発力変更装置90は、シートクッション5の内部に収納された収納位置(図7(A)参照)と、シートクッション5から前方に突出した突出位置(図9参照)とに変位可能となっている。
【0093】
図8(A)に示すように、反発力変更装置90が収納位置にあるときには、反発力変更装置90の布部材93は、シートクッション5の表皮材13に下側(すなわち、裏側)から重なるように配置されている。このとき、布部材93は表皮材13とパッド部材12の間に位置している。布部材93はその左右両側部において、引掛部92Aの上側を通過して、下方に延び、左右両端部においてそれぞれ左右枠35に掛け止めされている。
【0094】
制御装置49は第1実施形態と同様に電子制御装置によって構成され、入力装置50もまた、第1実施形態と同様に構成され、着座者から+、-の2段階の操作入力を受け付ける。
【0095】
図10(A)に示すように、入力装置50に+の入力があったときには、制御装置49は、左右のアクチュエータ108を制御し、引掛部92Aがそれぞれ上方に移動するように可動フレーム92を回転させる。これにより、反発力変更装置90の表皮材13が引掛部92Aに押し上げられ、表皮材13に加わる張力が増加する。
【0096】
図10(B)に示すように、入力装置50に-の入力があったときには、制御装置49は、左右のアクチュエータ108を制御し、引掛部92Aがそれぞれ下方に移動するように可動フレーム92を回転させる。これにより、布部材93が引掛部92Aに押し下げられて、布部材93に加わる張力が減少する。なお、図10(B)の矢印に示すように、入力装置50に-の入力があったときの可動フレーム92それぞれの回転方向は、入力装置50に+の入力があったときの可動フレーム92の回転方向に対して逆向きに設定されている。
【0097】
次に、このように構成した乗物用シート61の効果について説明する。
【0098】
着座者が入力装置50を+の入力を行うと、アクチュエータ108の駆動によって引掛部92Aが上方に移動するように可動フレーム92が回転し、布部材93に加わる張力が増加する。これにより、シートクッション5から着座者に加わる反発力が増加する。
【0099】
着座者が入力装置50を-の入力を行うと、アクチュエータ108の駆動によって引掛部92Aが下方に移動するように可動フレーム92が回転し、布部材93に加わる張力が低下する。これにより、シートクッション5から着座者に加わる反発力が低下する。
【0100】
このように、入力装置50への操作入力によって、シートクッション5から着座者に加わる反発力を変更されるため、乗物用シート61の着座感を変更することができ、着座者の好みに応じた着座感を提供することができる。本実施形態においても、第1実施形態と同様に、アクチュエータ108の駆動量を変更することによって、布部材33の張力を変更することができるため、着座者に加わる反発力をアクチュエータ48が設けられていない場合に比べて、より細かく調整することが可能である。
【0101】
第1実施形態と同様に、反発力変更装置90はシートクッションフレーム11に前後にスライド移動可能に支持され、シートクッション5内に収納された収納位置と、シートクッション5から前方に突出した突出位置とに変位可能である。反発力変更装置90には、第1実施形態と同様のハンドル42が設けられていてもよく、また、枠体31とシートクッションフレーム11との間に、反発力変更装置90を変位させるための公知のアクチュエータ108が設けられていてもよい。
【0102】
着座者は、反発力変更装置90を突出位置まで引き出すことによって、足を反発力変更装置90に載置することできる。これにより、反発力変更装置90を足置きであるオットマンとして活用することができる。一方、反発力変更装置90をオットマンとして使用しないときには、着座者は反発力変更装置90を収納位置に移動させることで、シートクッション5内に反発力変更装置90を収納することができる。
【0103】
<<第3実施形態>>
第3実施形態に係る乗物用シート121は、反発力変更装置150の構成と、反発力変更装置150とシートクッションフレーム11との結合態様が異なり、他の構成については第1実施形態と同様である。よって、他の構成については説明を省略する。
【0104】
第3実施形態に係る乗物用シート1の反発力変更装置150は、図11に示すように、骨格をなす枠体151(第2フレーム)と、枠体151に支持された布部材153とを備える。
【0105】
枠体151は上面視で四角枠状をなしている。枠体151は屈曲形成された金属製のパイプ材によって構成されていてもよい。布部材153は略四角形状のシート状(布状)の部材であり、布部材153は縁部において、やや引っ張られた状態(張力がかかった状態)で枠体151に掛け止めされている。布部材153は反発力変更装置150の上面を構成する。
【0106】
枠体151はその一端において上下方向に延びる軸線X2を中心として回転可能にシートクッションフレーム11に結合されている。本実施形態では、枠体151は長方形枠状をなす枠体151と、枠体151の一つの隅に結合されたブラケット155とを備えている。ブラケット155には上下方向に貫通する貫通孔155Aが設けられ、前メンバ16には上方に突出し、その貫通孔155Aを通過する柱体157が設けられている。図12に示すように、ブラケット155の貫通孔155Aに柱体157が挿入されることによって、反発力変更装置150はシートクッションフレーム11に上下方向に延びる軸線X2とする回転可能に結合されている。
【0107】
枠体151には、第1実施形態と同様に、ハンドル162が設けられ、そのハンドル162を前方に引き出すことによって、着座者は反発力変更装置150を回転させることができる。反発力変更装置150は少なくとも、シートクッション5の内部に収容された収容位置と、シートクッション5の前方に突出した突出位置(図11の二点鎖線参照)とに変位可能に構成されている(図11の矢印参照)。
【0108】
収容位置にあるときには、布部材153はシートクッション5の表皮材13と、パッド部材12との間に挿入されて、シートクッション5の表皮材13に下側から重なるように配置されている。突出位置にあるときには、反発力変更装置150がシートクッション5の前方に配置され、着座者は着座した状態で、足を置くことが可能となっている。反発力変更装置150の変位を阻害しないよう、図12に示すように、シートクッションフレーム11の前メンバ16には、枠体151を通過させる開口161(貫通孔)が設けられ、反発力変更装置150はその開口161を介して、シートクッション5から出没するように構成されていてもよい。
【0109】
次に、このように構成した乗物用シート1の効果について説明する。
【0110】
枠体151が収納位置にあるときには、シートクッション5の表皮材13に布部材153が下側から重なるように配置されている。よって、収納位置にあるときに着座者にシートクッション5から加わる反発力は、突出位置にあるときに比べて大きい。そのため、着座者は反発力変更装置150を変位させることで、シートクッション5から加わる反発力を変更することができ、乗物用シート1の着座感を変更することができる。よって、着座者の好みに応じた着座感を提供することができる。
【0111】
上記実施形態と同様に、着座者はハンドル162を把持して引き出すことで、反発力変更装置150はシートクッション5内に収納された収納位置と、シートクッション5から前方に突出した突出位置とに変位可能である。そのため、着座者は、収納位置にある反発力変更装置150を突出位置まで引き出すことによって、足を反発力変更装置150に載置することでき、オットマンとして利用することができる。また、反発力変更装置150を使用しないときには、着座者は反発力変更装置150を収納位置に移動させることで、シートクッション5内に反発力変更装置150を収納することができる。
【0112】
<<第4実施形態>>
第4実施形態に係る乗物用シート171は、反発力変更装置180とシートクッションフレーム11との結合態様が第3実施形態とは異なり、他の構成については第3実施形態と同様である。よって、他の構成については説明を省略する。
【0113】
図13に示すように、第4実施形態に係る乗物用シート1の反発力変更装置180は、第3実施形態と同様に、上面視で四角枠状をなす枠体191(第2フレーム)と、枠体191に支持された布部材193とを備える。
【0114】
図14に示すように、枠体191は、シートクッションフレーム11に、前後方向にスライド移動可能に結合されている。具体的には、左右のシートクッションサイドメンバ15のシート内方の側面にはそれぞれアウタレール39が結合されている。アウタレール39はそれぞれ前後方向に延在するように設けられ、枠体191はアウタレール39に嵌め合わされている。これにより、枠体191はアウタレール39の延在方向(すなわち前後方向)に沿ってスライド移動可能にアウタレール39に結合され、枠体191はシートクッションフレーム11に、前後方向にスライド移動可能に支持されている。
【0115】
枠体191がシートクッションフレーム11に前後方向にスライド移動可能に結合されることによって、反発力変更装置180は少なくともシートクッション5の内部に収納された収納位置(図13の二点鎖線参照)と、シートクッション5の前方に突出した突出位置(図13の実線を参照)とに変位可能となっている。枠体191のスライド移動を容易にするため、枠体191には第1実施形態と同様、ハンドル195が設けられているとよい。また、枠体191をスライド移動させるため、シートクッションフレーム11と枠体191との間に公知のアクチュエータ(不図示)が設けられていてもよい。
【0116】
収容位置にあるときには、布部材193はシートクッション5の表皮材13と、パッド部材12との間に挿入されて、シートクッション5の表皮材13に下側から重なるように配置されている。突出位置にあるときには、反発力変更装置180がシートクッション5の前方に配置され、着座者は着座した状態で、足を置くことが可能となっている。反発力変更装置180の変位を阻害しないよう、シートクッションフレーム11の前メンバ16には、枠体31を通過させる開口197が設けられ、反発力変更装置180はその開口197を介して、シートクッション5から出没するように構成されていてもよい。
【0117】
次に、このように構成した乗物用シート1の効果について説明する。上記実施形態と同様に、枠体31が収納位置にあるときには、シートクッション5の表皮材13に布部材193が下側から重なるように配置されている。よって、収納位置にあるときに着座者にシートクッション5から加わる反発力は、突出位置にあるときに比べて大きい。そのため、着座者は反発力変更装置180を変位させることで、シートクッション5から加わる反発力を変更することができ、乗物用シート1の着座感を変更することができる。よって、着座者の好みに応じた着座感を提供する。
【0118】
上記実施形態と同様に、反発力変更装置180はシートクッション5内に収納された収納位置と、シートクッション5から前方に突出した突出位置とに変位可能である。そのため、着座者は、収納位置にある反発力変更装置180を突出位置まで引き出すことによって、足を反発力変更装置180に載置することでき、オットマンとして利用することができる。また、反発力変更装置180を使用しないときには、着座者は反発力変更装置180を収納位置に移動させることで、シートクッション5内に反発力変更装置180を収納することができる。
【0119】
<変形例>
上記第1~第4実施形態では、ヘッドレスト7はシートバックフレーム21に固定されていたが、ヘッドレスト7とシートバック6との位置を変位可能とするように構成してもよい。このときには、シートクッション5及び/又はシートバック6に着座圧センサを設け、その着座圧センサの出力に基づき、体重・身長等を推定し、その推定値に基づき、着座者の体型に合うように、ヘッドレスト7の上下位置を調整するように構成するとよい。
【0120】
ヘッドレスト7を、リクライニング角度や、車両の走行状態(例えば、自動運転・手動運転等)に応じて、変形するように構成してもよい。図15(A)及び(B)には、ヘッドレスト7が変形可能に構成された場合の例が示されている。図15(A)及び(B)に示す例では、ヘッドレスト7は、折り曲げられ、前面が小さい収縮位置(図15(A)参照)と、収縮位置から展開して前面が広げられた展開位置(図15(B))とに変形自在に構成されている(図15(B)の矢印参照)。この場合には、例えば、運転操作が求められる手動運転時から運転操作が求められない自動運転時に変更されたときには、ヘッドレスト7を収縮位置から展開位置に変形させるとよい。
【0121】
その他、シート本体3は、上下方向に延びる軸線を中心として回転可能にフロア2に連結されていてもよい。この場合には、シート本体3とフロア2との間に、シート本体3を回転させる回転装置が設けられるとよい。回転装置はコンピュータによって構成された制御装置によって制御され、制御装置はシート本体3を回転することにより、シート本体3の向きを車両の走行状態に応じて変更するとよい。
【0122】
また、シートクッション5の表皮材13や、シートバック6の表皮材23、反発力変更装置30の布部材33、93、153、193は取替可能に構成されているとよい。その他、シートクッション5の表皮材13はメッシュ状をなすように構成されていてもよい。これにより、反発力変更装置30が収納位置にあるときに、布部材33、93、153、193に描かれた模様や文字が視認可能となる。
【0123】
シートクッション5やシートバック6、ヘッドレスト7を構成するフレームの少なくとも一部が筒状をなし、その筒状をなす部分によって、着座者に送風するための通気路が画定されていてもよい。また、シートクッション5とフロア2との間の隙間に、例えば、物品を収容することができる小物入れや、スピーカ等を配置してもよい。
【0124】
その他、シート本体3は、シートバック6の前面がシートクッション5の上面と面一となるまで、後側に傾倒可能なフルフラットタイプのものであってよい。
【0125】
また、シート本体3はフロア2に対して左右方向に移動し、左右側方に位置する他のシート本体3と連結可能に構成されていてもよい。このとき、互いに連結したシート本体3のシートクッション5の上面は面一をなすように構成されていることが好ましい。このように、シートクッション5の上面が面一をなすように構成されることで、車室内に左右に延びたベンチシートを構成することが可能となる。
【0126】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
【0127】
上記実施形態では、反発力変更装置30は作業者がハンドル42を把持して引き出すことによって、変位するように構成されていたが、この態様には限定されない。例えば、枠体31とシートクッションフレーム11との間に枠体31を変位させるためのアクチュエータ(不図示)が設けられていてもよい。制御装置49は、入力装置50等への操作入力に応じて、アクチュエータ(不図示)を駆動させ、反発力変更装置30を収納位置と突出位置とに変位させてもよい。
【0128】
上記実施形態では、シートクッション5の内部に設けられた反発力変更装置30が着座感を変更するための装置として機能する例を記載したが、シートバック6の内部に同様の装置を設け、背凭れ面の反発力を変更するように構成されていてもよい。
【0129】
具体的には、シート本体3は、シートバックフレーム21と、シートバックフレーム21に掛け渡され、背凭れ面を構成する表皮材23とを備え、表皮材23の裏面側(後面側、裏面側ともいう)に重なるように配置された布部材33を備えた反発力変更装置30がシートバックフレーム21に設けられていてもよい。
【0130】
このときには、反発力変更装置30は、シートバック6の内部に収納された収納位置と、シートバック6から突出する突出位置とに変位可能に構成されていてもよい。また、反発力変更装置30はシートクッション5やシートバック6から取外可能に構成されていてもよい。また、反発力変更装置30が突出位置にあるときに、例えば、物を載置することのできるテーブルを構成し、オットマン以外の機能を奏するように構成されていてもよい。
【0131】
この場合においても、反発力変更装置30は、可動フレーム32と、可動フレーム32を駆動させることにより、布部材33に加わる張力を変更するアクチュエータ48及び制御装置49と、を備えていてもよい。制御装置49は、例えば、シート本体3に設けられたスイッチ(入力装置50)への入力に応じて、布部材33に加わる張力を変更することで、背凭れ面から着座者に加わる反発力を変更するように構成されているとよい。これにより、着座者はスイッチへ入力することによって、背凭れ面を好みの硬さに変更することができる。
【0132】
上記第1実施形態及び第2実施形態ではそれぞれ、連結部46及び引掛部92Aがそれぞれ前後方向に延在するように構成されていたが、その延在方向には限定されない。連結部46及び引掛部92Aは左右方向などを含む所定方向に延在し、布部材33、93を引っ掛けることが可能であれば、いかなる構成であってもよい。
【0133】
例えば、反発力変更装置30はシートバック6に設けられている場合には、連結部46(又は引掛部92A)は、それぞれが左右に延在し、上下に対をなすように配置されていてもよく、また、左右に対をなすように構成されていてもよい。このとき、制御装置49は、その張力をシートバック6のリクライニング後傾角度(リクライニング角度ともいう)に依存する(同調する)ようにアクチュエータを制御するとよい。
【0134】
また、反発力変更装置30はシートクッション5及びシートバック6の両方に設けられていてもよい。この場合において、シートクッション5及びシートバック6に設けられた反発力変更装置30が布部材33,93に加わるに張力を変更することができるように構成されていてもよい。その場合には、制御装置49は、シートバック6のリクライニング後傾角度が所定の角度となるまでシートバック6の張力を緩める第1制御と、リクライニング後傾角度が所定の角度を超えてシートバック6が後傾するとシートバック6とシートクッション5とのそれぞれに設けられた布部材両方の張力を緩める第2制御と、を実行するように構成されているとよい。また、シート本体3に反発力変更装置30によって構成されるオットマン以外の足置きが設けられているときには、リクライニング後傾角度に依存する布部材33,93の張力の調整に加えて、そのオットマンの傾斜角度を変更し、着座者の腿下の角度を調整してもよい。これにより、腿下に加わり得る力を緩和することができる。
【0135】
また、反発力変更装置30は、その他、シートクッション5やシートバック6の内部に設けられたエアセル(エアダンパ)等によって構成されていてもよい。その場合には、シート本体にエアセルに給気・排気を行うエアポンプ(給排気装置ともいう)を設け、その給排気装置を制御装置49が制御するように構成されているとよい。制御装置49はエアポンプを制御することにより、例えば、着座者の姿勢や体格に応じて、エアセル(エアダンパ)の内部に給排気を行うように構成されているとよい。
【0136】
また、反発力変更装置30は、シートクッション5の着座面やシートバック6の背凭れ面の裏側に設けられ、内部に粉粒体(ビーズなど)の封入された袋体と、袋体に給気・排気を行うエアポンプ(給排気装置ともいう)と、を備えていてもよい。制御装置49は、エアポンプを制御することによって、袋体に給気し膨らますことで袋体を軟化させ、空気を排気することで袋体が硬化する制御を行い、着座面や背凭れ面の硬さを調整するとよい。なお、制御装置49によるエアポンプの制御は、シートバック6の倒立姿勢(運転に適した姿勢)とシートバック6後傾姿勢(リラックスに適した姿勢)との切り替えに協調して行われてもよい。具体的には、例えば、制御装置49は、シートバック6後傾姿勢にあるときに、エアポンプによって袋体に給気を行い、着座面や背凭れ面の硬さを下げる(すなわち、柔らかくする)とよい。
【0137】
その他、シート本体3や車体に異常検出センサが設けられ、その異常検出センサによって異常が検出されたときに、制御装置49は、背凭れ面や着座面の硬さを変更するように構成されていてもよい。例えば、シート本体3に加速度センサが設けられ、制御装置49はその加速度センサによって取得された加速度が所定の閾値よりも大きいときには、着座者がシート本体3に沈み込みやすくなるように、アクチュエータ48を駆動させて布部材33の張力を低下させてもよい。また、背凭れ面や着座面の硬さが硬い方がシートベルトによる着座者の拘束が良好に行える場合には、制御装置49はその加速度センサによって取得された加速度が所定の閾値よりも大きいときに、アクチュエータ48を駆動させて布部材33の張力を増加させるように構成されていてもよい。
【0138】
また、上記実施形態では、反発力変更装置30が収納位置にあるとき、シートクッション5のパッド部材12の上に布部材33が配置され、その上(表側)に重なるように表皮材13が設けられていたが、シートクッション5にパッド部材12が設けられていなくてもよい。また、反発力変更装置30の布部材33はパッド部材12の裏側(下側)に設けられていてもよい。但し、表皮材13の下側に布部材33が重なるように配置されることによって、シートクッション5から着座者に加わる反発力を効果的に変更(調整)することが可能となる。その他、シート本体3のフレームの形状を変更(例えば、左右のシートクッションサイドメンバ15の左右幅を変更する)ことによって、表皮材13に加わる張力を変更し、背凭れ面や着座面の硬さを変更するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0139】
1 :第1実施形態に係る乗物用シート
3 :シート本体
11 :シートクッションフレーム(第1フレーム)
12 :パッド部材
13 :表皮材
30 :反発力変更装置
32 :可動フレーム(第2フレーム)
33 :布部材
46 :連結部(引掛部)
48 :アクチュエータ
61 :第2実施形態に係る乗物用シート
90 :反発力変更装置
92 :可動フレーム(第2フレーム)
92A :引掛部
92B :アーム部
93 :布部材
108 :アクチュエータ
121 :第3実施形態に係る乗物用シート
150 :反発力変更装置
151 :枠体(第2フレーム)
153 :布部材
171 :第4実施形態に係る乗物用シート
180 :反発力変更装置
191 :枠体(第2フレーム)
193 :布部材
図1
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