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特開2024-23167固体電解質シート用支持体、固体電解質シート、および全固体二次電池
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  • 特開-固体電解質シート用支持体、固体電解質シート、および全固体二次電池 図1
  • 特開-固体電解質シート用支持体、固体電解質シート、および全固体二次電池 図2
  • 特開-固体電解質シート用支持体、固体電解質シート、および全固体二次電池 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023167
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】固体電解質シート用支持体、固体電解質シート、および全固体二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20240214BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240214BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129411
(22)【出願日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2022126252
(32)【優先日】2022-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「先進・革新蓄電池材料評価技術開発(第2期)」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】兼清 浩司
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM12
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ07
(57)【要約】
【課題】自立した大面積、薄膜の固体電解質シートにおいて、シートの反りが少ない固体電解質シートを提供する。また、前記固体電解質シートを用いた全固体二次電池において、優れた大電流特性を有する全固体二次電池を提供する。
【解決手段】外層と中間層から成る積層不織布(1)を含む固体電解質シート(4)または固体電解質シート用支持体、および前記支持体または固体電解質シート(4)を用いた全固体二次電池が提供される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層不織布を含む固体電解質シート用支持体であって、前記積層不織布が外層と中間層から成る固体電解質シート用支持体。
【請求項2】
前記積層不織布において、
熱可塑性繊維層が、前記外層と前記中間層の少なくとも一方に含まれ、かつ
前記外層が、前記中間層の両面に熱圧着している、
請求項1に記載の固体電解質シート用支持体。
【請求項3】
前記外層の繊維層の繊維径が1~30μm、かつ前記中間層の繊維層の繊維径が0.1~10μmである、請求項1又は2に記載の固体電解質シート用支持体。
【請求項4】
前記積層不織布の膜厚が30μm以下である、請求項1又は2に記載の固体電解質シート用支持体。
【請求項5】
前記積層不織布の目付が1~30g/mである、請求項1又は2に記載の固体電解質シート用支持体。
【請求項6】
硫化物系固体電解質と、
請求項1又は2に記載の固体電解質シート用支持体と
を含む固体電解質シート。
【請求項7】
前記固体電解質シートの膜厚が40μm以下である、請求項6に記載の固体電解質シート。
【請求項8】
前記積層不織布の膜厚方向において、前記外層の繊維の上下それぞれに膜厚5μm以上30μm以下の固体電解質層がある、請求項6に記載の固体電解質シート。
【請求項9】
前記固体電解質シートにおいて、前記固体電解質シートの膜厚に対する前記積層不織布の膜厚の割合が、5~68%である、請求項6に記載の固体電解質シート。
【請求項10】
前記固体電解質シート中の固体電解質の体積割合が、60~80%である、請求項6に記載の固体電解質シート。
【請求項11】
請求項6に記載の固体電解質シートを用いた全固体二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質シート用支持体、固体電解質シート、および全固体二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境技術への関心の高まりに伴い、従来、携帯機器用充電池として用いられてきたリチウムイオン二次電池は、ハイブリッド自動車及び電気自動車用電池としての使用が増加してきている。
【0003】
リチウムイオン二次電池が自動車に用いられる場合、従来の携帯機器用として用いられる場合と比較して、更に大電流での使用が要求されている。また、自動車用電池には、大容量で使用されることに伴う、更なる安全性の向上も要求されている。
【0004】
現行のリチウムイオン二次電池は、電解質として主に有機系電解液が用いられているが、電解液成分の有機溶媒が可燃性であるため、安全性向上の方法の1つとして、有機系電解液に代えて不燃性の固体電解質を用いることが挙げられる。また、固体電解質はイオンの輸率が1であるため、大電流での使用にも適していると考えられる。
【0005】
一方、固体電解質を用いた全固体リチウム二次電池において、固体電解質は通常粉末で、その成形体は脆性で加工に難がある。そのため、電池製造時において固体電解質の取り扱い性が悪く、また固体電解質の成形体が厚くなることから、電池のエネルギー密度が低下するなどの問題がある。そのため、固体電解質の薄膜化、大面積化が望まれている。
【0006】
特許文献1、2では、固体電解質と支持体から成る複合体で、薄膜、大面積を有する固体電解質シートを提供する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-31789号公報
【特許文献2】特開2020-77488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2には、不織布支持体をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムあるいは鋼板に載せて固体電解質スラリーを塗布、乾燥した後にプレスして、PETフィルムあるいは鋼板から固体電解質シートを自立化させたときの固体電解質シートの反りについての記載がない。反りの発生した固体電解質シートは、全固体二次電池を作製するときに、精度よく電極と積層させることが困難になるため、反りの少ない固体電解質シートを歩留まり良く得ることは重要である。この観点から、上記従来の固体電解質シート製作時に反りの少ないシートを歩留まり良く得ることにおいて、いまだ改善の余地がある。また、特許文献1、2には、大電流での充放電についての記載もなく、この観点からも、上記従来の全固体二次電池において、いまだ改善の余地がある。
【0009】
そこで、本発明は、自立した大面積、薄膜の固体電解質シートにおいて、シートの反りが少ない固体電解質シート、および優れた大電流特性を有する全固体二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、外層と中間層から成る積層不織布を含む固体電解質シートであれば、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]積層不織布を含む固体電解質シート用支持体であって、前記積層不織布が外層と中間層から成る固体電解質シート用支持体。
[2]前記積層不織布において、
熱可塑性繊維層が、前記外層と前記中間層の少なくとも一方に含まれ、かつ
前記外層が、前記中間層の両面に熱圧着している、
項目[1]に記載の固体電解質シート用支持体。
[3]前記外層の繊維層の繊維径が1~30μm、かつ前記中間層の繊維層の繊維径が0.1~10μmである、項目[1]又は[2]に記載の固体電解質シート用支持体。
[4]前記積層不織布の膜厚が30μm以下である、項目[1]~[3]のいずれかに記載の固体電解質シート用支持体。
[5]前記積層不織布の目付が1~30g/mである、項目[1]~[4]のいずれかに記載の固体電解質シート用支持体。
[6]硫化物系固体電解質と、
項目[1]~[5]のいずれかに記載の固体電解質シート用支持体と
を含む固体電解質シート。
[7]前記固体電解質シートの膜厚が40μm以下である、項目[6]に記載の固体電解質シート。
[8]前記積層不織布の膜厚方向において、前記外層の繊維の上下それぞれに膜厚5μm以上30μm以下の固体電解質層がある、項目[6]又は[7]に記載の固体電解質シート。
[9]前記固体電解質シートにおいて、前記固体電解質シートの膜厚に対する前記積層不織布の膜厚の割合が5~68%である、項目[6]~[8]のいずれかに記載の固体電解質シート。
[10]前記固体電解質シート中の固体電解質の体積割合が、60~80%である、項目[6]~[9]のいずれかに記載の固体電解質シート。
[11]項目[6]~[10]のいずれかに記載の固体電解質シートを用いた全固体二次電池。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、提供される固体電解質シートは、自立した大面積、薄膜のシートであり、かつシートの反りが少なく、また、前記固体電解質シートを用いた全固体二次電池は、大電流特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る積層不織布の概念図である。
図2】本実施形態に係る積層不織布の一例の概略図である。
図3】本実施形態に係る固体電解質シートの一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう)について図面を参照しながら詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施することができる。
【0014】
本明細書中、段階的に記載される数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換わってよい。本明細書中、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に記載の値に置き換ってよい。図面に示される内容において、縮尺、形状、及び長さは、明確性を更に図るために、誇張して示されている場合がある。
【0015】
-固体電解質シート用支持体-
本実施形態では、積層不織布を含む固体電解質シート用支持体であって、積層不織布が外層と中間層から成る固体電解質シート用支持体が提供される。固体電解質シート用支持体は、例えば、固体電解質シート作製時の支持体として、または電解質の担持、塗布、堆積、含浸などのための支持体として使用されることができる。
【0016】
本実施形態に係る固体電解質シート用支持体は、外層と中間層から成る積層不織布を含むように構成されることによって、自立した大面積、薄膜、かつ反りの少ない固体電解質シートを提供することができ、ひいては固体電解質シートを用いて大電流特性に優れる固体二次電池も提供することができる。
【0017】
固体電解質シート用支持体は、自立した大面積、薄膜の固体電解質シートの反りを抑制するか、又は少なくするという観点から、積層不織布から成ることが好ましい。固体電解質シート用支持体の構成要素について以下に説明する。
【0018】
-積層不織布-
本実施形態の積層不織布は、外層と中間層から成る。図1は、本実施形態に係る積層不織布の概念図である。積層不織布(1)は、図1に示されるとおり、複数の外層(2,2)に中間層(3)が挟まれた多層構造でよく、または単数の外層と中間層とが積層された二層構造(図示せず)でよい。
【0019】
本実施形態に係る積層不織布は、外層の繊維層と中間層の繊維層から成る固体電解質シート用支持体であるか、または固体電解質シート用支持体に含まれる。
【0020】
一般的な単層の不織布と比較して、積層不織布は、外層の繊維層の繊維の粗密による大小の不均一な空隙を中間層の繊維層と重ねることにより、積層不織布全体として空隙を均一に近づけることができる。それにより積層不織布を用いると均一な固体電解質シートを得ることができるため、固体電解質シート用支持体として好ましい。
【0021】
また、積層不織布に固体電解質を塗布で埋め込む際に、中間層の繊維が存在することにより、裏側に抜けること(裏抜け)を抑制するため、不織布内部に好適に固体電解質を充填することが可能となる。
【0022】
図2は、本実施形態に係る積層不織布の一例の概略図である。一例として、積層不織布(1)において、外層の繊維(2)と中間層の繊維(3)の重なり、両繊維(2,3)間の空隙などが図示される。
【0023】
積層不織布には、従来公知の樹脂繊維を用いてよいが、例えば、ポリエステル系樹脂であるポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなど、ポリアミド系樹脂であるナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612など、ポリオレフィン系樹脂であるポリエチレン、ポリプロピレンなど、ポリオキシメチレンエーテル系樹脂であるポリオキシメチレンなど、ポリケトン系樹脂であるポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルエーテルケトンなど、ポリイミド樹脂である熱可塑性ポリイミドなどの繊維が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0024】
積層不織布は、熱可塑性繊維層が、外層と中間層の少なくとも一方に含まれることが好ましい。外層が熱可塑性繊維層を含むこと、または、中間層が熱可塑性繊維層を含むことの少なくとも一方であり、かつ外層が中間層の両面に熱圧着すると、強度の観点から固体電解質シート用支持体としてより好ましい。また、バインダーで接着するとバインダー成分が電気特性に悪影響を及ぼすことがあるため、熱可塑性繊維層による外層と中間層の熱圧着が固体電解質シート用支持体としてより好ましい。なお、外層と中間層が熱圧着されると、中間層が外力によってより動き難くなるため、積層不織布に固体電解質を塗布で埋め込む時の、中間層の繊維が存在することでの、裏側への裏抜けをより抑制するので、不織布内部により好適に固体電解質を充填することが可能となる。
【0025】
積層不織布は、外層の繊維層の繊維径が1~30μm、かつ/又は中間層の繊維層の繊維径が0.1~10μmであることが好ましい。外層の繊維層の繊維径が大きくなると積層不織布の膜厚が大きくなりすぎ、全固体二次電池に適用した時のエネルギー密度が低下するので、外層の繊維層の繊維径としては30μm以下が好ましい。外層の繊維層の繊維径が小さくなると、プロセスでのハンドリング性が低下し、また、空隙が小さくなるので、外層の繊維層の繊維径としては1μm以上が好ましい。
【0026】
中間層の繊維層の繊維径が小さくなると表面摩擦などで毛羽立ったり、糸くずを作ったりし易くなり、品質・プロセスでのハンドリング性が低下するため、中間層の繊維層の繊維径としては0.1μm以上が好ましい。中間層の繊維層の繊維径が大きくなると、積層不織布における空隙均一性が低下するため、中間層の繊維層の繊維径としては10μm以下が好ましい。
【0027】
また、外層の繊維層の繊維径が1~30μm、かつ中間層の繊維層の繊維径が0.1~10μmであると、外層の繊維の間に中間層の繊維がより均一に配置され、空隙が均一に近づくためより好ましい。
【0028】
積層不織布の膜厚は30μm以下であることが好ましい。積層不織布の膜厚が大きくなると固体電解質シートの膜厚も大きくなり、全固体電池に使用した時のエネルギー密度が下がるため、シート膜厚および全固体電池のエネルギー密度の観点から積層不織布の膜厚は30μm以下であることが好ましい。
【0029】
積層不織布の目付は、強度、ハンドリング性および固体電解質の適用の観点から、1~30g/mであることが好ましく、3~25g/mであることがより好ましく、5~20g/mであることが更に好ましい。
【0030】
また、上記で説明された積層不織布の固体電解質シート用支持体としての使用も本発明の一態様である。
【0031】
-硫化物系固体電解質-
本実施形態の硫化物系固体電解質は、硫黄(S)を含有し、イオン伝導性を有するものであれば特に制限されることなく、公知のものとしてよい。
【0032】
特に、硫化物系固体電解質としては、リチウムを含む材料が好ましい。このような硫化物系固体電解質としては、特に限定されないが、例えば、ガラス系やガラスセラミックス系では、LiS-P、LiS-P、LiS-P-P、LiS-P-GeS、LiS-P-B、LiS-SiS、LiS-SiS-P、LiI-LiS-SiS、LiI-LiS-P、LiI-LiS-P、LiI-LiPO-P、LiI-LiS-SiS-P、LiS-SiS-LiPO、LiBr-LiS-SiS、LiS-GeS、LiS-GeS-ZnS、LiS-GeS-Sb、LiS-GeS-Ga、LiS-GeS-Al、LiI-LiS-GeS、LiS-GeS-LiPO、LiS-Ga、LiS-B、LiS-Al、LiS-SiS-Al、LiI-LiS-B、LiS-B-LiPO、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiN、LiS-P-LiBHなどが挙げられる。
【0033】
また、結晶系では、アルジロダイト型といわれるLiPSX(式中、X=Cl、Br、I)、Li7-xPS6-x(式中、X=Cl、Br、I、0≦x≦1.8)などや、LGPS型といわれるLi3.40.6Si0.4、Li9.54Si1.741.4411.7Cl0.3、Li4-xGe1-x(式中、0≦x≦1)、Li10GeP11.70.3などが挙げられる。
【0034】
上記のリチウム含有材料の中で、高いイオン伝導度を有し、電気化学的に安定である観点から、結晶系であるアルジロダイト型の硫化物系固体電解質がより好ましい。
【0035】
上記で列挙された硫化物系固体電解質は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0036】
硫化物系固体電解質の粒径は、平均粒径が小さくなると固体電解質シート作製における固体電解質スラリーの分散が難しくなり、均一な固体電解質シートが得られなくなり、また、平均粒径が大きくなると大粒径の固体電解質粒子が含まれるため、均一な薄い固体電解質シートが得られなくなるため、硫化物系固体電解質の平均粒径が0.1~10μmであることがより好ましい。
【0037】
-固体電解質シート、およびその製造方法-
本実施形態に係る固体電解質シートは、上記で説明された固体電解質シート用支持体と、固体電解質とを含むものであり、そして固体電解質としては、イオン伝導性および電気化学的安定性の観点から、上記で説明された硫化物系固体電解質を含むことが好ましい。
【0038】
本実施形態の固体電解質シートは、膜厚が40μm以下であることが好ましい。固体電解質シートの膜厚が大きくなると、全固体二次電池に使用した時のエネルギー密度が下がるため膜厚は40μm以下が好ましい。上記膜厚の測定は、従来公知のいかなる方法で測定したものでよいが、例えば、固体電解質シートの断面観察で、所定の箇所と所定の数の平均を取ることで測定することができる。
【0039】
固体電解質シートは、上記積層不織布の膜厚方向において、外層の繊維の上下それぞれに膜厚5μm以上30μm以下の固体電解質層があることが好ましい。上記固体電解質層の膜厚が小さくなると固体電解質シートのイオン伝導度が低下する。また、上記固体電解質層の膜厚が大きくなると固体電解質シートの膜厚が大きくなり、全固体二次電池に使用した時のエネルギー密度が下がる。そのため、上記固体電解質層の膜厚5μm以上30μm以下であることが好ましい。なお、上記外層の繊維の上下それぞれに備える固体電解質層の膜厚は、互いに同一でも異なってもよい。上記膜厚の測定は、従来公知のいかなる方法で測定したものでよいが、例えば、固体電解質シートの断面観察で、所定の箇所と所定の数の平均を取ることで測定することできる。
【0040】
図3は、本実施形態に係る固体電解質シートの一例の概略図である。固体電解質シート(4)の断面または側面において、外層の繊維(2)と中間層の繊維(3)に対して固体電解質(5)が適用され、または固体電解質(5)中に外層の繊維(2)と中間層の繊維(3)が組み込まれ、または厚み方向に沿って外層の繊維の上下それぞれに固体電解質層があることが図示される。
【0041】
固体電解質シートの膜厚に対する積層不織布の膜厚の割合が5~68%であることが好ましい。上記膜厚の割合が大きいと、固体電解質シートのイオン伝導度が低下する。また、上記膜厚の割合が小さいと、固体電解質シートに含まれる支持体(積層不織布)の割合が少なくなり、固体電解質シートの強度が下がるため、製造上での取り扱いが難しくなる。そのため、上記膜厚の割合が5~68%であることが好ましい。
【0042】
固体電解質シート中の固体電解質の体積割合が60~80%であることが好ましい。上記固体電解質の体積割合が小さくなると、固体電解質シートのイオン伝導度が低下する。また、上記固体電解質の体積割合が大きくなると、固体電解質シートに含まれる支持体(積層不織布)の割合が少なくなり、固体電解質シートの強度が下がるため、製造上での取り扱いが難しくなる。そのため、上記固体電解質の体積割合が60~80%であることが好ましい。なお、硫化物系固体電解質のみの場合には、60~80体積%の硫化物系固体電解質が好ましく、複数種の固体電解質の場合には合計体積割合が60~80%であることが好ましい。
【0043】
固体電解質シートは、従来公知のいかなる方法で製造することができるが、例えば、上記硫化物系固体電解質のスラリーを上記固体電解質シート用支持体に塗布、乾燥することによって製造することができる。必要に応じて乾燥後のシートをプレスしてもよい。本実施形態に係る固体電解質シート用支持体の使用の観点から、支持フィルム法より両面塗布法が好ましい。
【0044】
スラリーの製造、塗布、および乾燥は、特に限定されず、従来公知のいかなる方法で実施することができる。
【0045】
スラリーの製造方法としては、例えば、自公転ミキサー、プラネタリーミキサー、ビーズミル、薄膜旋回型ミキサーなどが挙げられる。
【0046】
また、スラリーの塗布方法としては、例えば、ダイコート、コンマコート、グラビアコート、ロールコートなどが挙げられる。
【0047】
また、スラリーの乾燥方法としては、例えば、熱風、赤外線、ランプなどが挙げられる。
【0048】
上記乾燥後のシートのプレス方法としては、例えば、ロールプレス、平板プレス、冷間等方圧プレス、温間等方圧プレスなどが挙げられる。
【0049】
上記硫化物固体電解質のスラリーは、下記の結着材を含んでいてもよい。また、上記硫化物固体電解質のスラリーには、下記の結着材(バインダー)を溶解する溶媒を使用することができる。
【0050】
--結着材(バインダー)および溶媒--
固体電解質シートに含まれ得る結着材(バインダー)としては、上記固体電解質シート用支持体または上記積層不織布と、上記硫化物系固体電解質とを結着できる公知のものとしてよい。
【0051】
このような結着材(バインダー)としては、特に限定されることはないが、例えば、カルボキシメチルセルロースのようなセルロース、スチレン-ブタジエンの架橋ゴムラテックス、アクリル系ラテックス、ポリフッ化ビニリデン、及びフッ素ゴム、スチレン-ブタジエンの共重合体(架橋ゴム)のようなゴム系樹脂が好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0052】
結着材(バインダー)を溶解する溶媒としては、特に限定されることなく、結着材(バインダー)を溶解するが、硫化物系固体電解質に影響を及ぼし難い(例えば、硫化物系固体電解質の溶解や硫化物系固体電解質表面で反応などをしない)、低極性の溶媒であれば、あらゆる公知のものとしてよい。溶媒としては、例えば、ヘキサン、ペンタン、2-エチルヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン、トルエン、キシレン、デカリン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(テトラリン)、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)、メトキシベンゼン(アニソール)などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0053】
また、これらの溶媒は、脱水処理されていることが好ましく、水分含有量が低いことが好ましい。水分含有量は、100ppm以下、好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、さらにより好ましくは1ppm以下である。水分含有量は0ppm以上でよい。
【0054】
-正極-
本実施形態に係る全固体二次電池に用いられる正極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵及び放出可能なものであり、好適には、上記硫化物系固体電解質、導電材、集電体、結着材(バインダー)と共に、正極を構成することが好ましい。
【0055】
--正極活物質--
正極に含まれ得る正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵及び放出可能なものであれば特に制限されることなく、公知のものとしてよい。特に、正極活物質としては、リチウムを含む材料が好ましい。このような正極活物質としては、特に限定されないが、例えば、
下記式(1):
LiNi1-y・・・(1)
(式中、Mは、遷移金属元素から成る群から選択される少なくとも1種の元素を示し、0<x≦1.3、0≦y<1、1.8<z<2.2である。)
で表される酸化物、
下記式(2):
Li・・・(2)
(式中、Mは、遷移金属元素から成る群から選択される少なくとも1種の元素を示し、0<x≦1.3、0.8<y<1.2、1.8<z<2.2である。)
で表される層状酸化物、
下記式(3):
LiMn2-y・・・(3)
(式中、Mは、遷移金属元素から成る群から選択される少なくとも1種の元素を示し、0<x≦1.3、0.2<y<0.8、3.5<z<4.5である。)
で表される酸化物、
下記式(4):
LiMn2-xMa・・・(4)
(式中、Maは、遷移金属元素から成る群から選択される少なくとも1種の元素を示し、0.2≦x≦0.7である。)
で表されるスピネル型酸化物、
下記式(5-1):
LiMcO・・・(5-1)
(式中、Mcは、遷移金属元素から成る群から選択される少なくとも1種の元素を示す。)
で表される酸化物と、
下記式(5-2):
LiMdO・・・(5-2)
(式中、Mdは、遷移金属元素から成る群から選択される少なくとも1種の元素を示す。)
で表される酸化物との複合酸化物であって、下記式(5-3):
zLi2McO3-(1-z)LiMdO2・・・(5-3)
(式(5-3)中、Mc及びMdは、それぞれ上記式(5-1)及び(5-2)におけるものと同義であり、0.1≦z≦0.9である。)
で表されるLi過剰層状酸化物正極活物質、
下記式(6):
LiMb1-yFePO・・・(6)
(式中、Mbは、Mn及びCoから成る群から選択される少なくとも1種の元素を示し、0≦y≦1.0である。)
で表されるオリビン型正極活物質、
下記式(7):
LiMePOF・・・(7)
(式中、Meは、遷移金属元素から成る群から選択される少なくとも1種の元素を示す。)
で表される化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0056】
--導電材--
正極に含まれ得る導電材としては、特に限定されることなく、電子を伝導できる公知のものとしてよい。導電材としては、例えば、活性炭、各種コークス、カーボンブラック及びアセチレンブラック等の非黒鉛炭素質材料、黒鉛(グラファイト)、並びにアルミニウム、チタン、ステンレス等の金属粉末が好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0057】
--集電体--
正極に含まれ得る集電体としては、特に限定されることなく、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス等の金属箔、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル、カーボンクロス及びカーボンペーパー等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。また、集電体の表面に上記正極導電材を備えた上記正極集電体であってもよい。
【0058】
--結着材(バインダー)--
正極に含まれ得る結着材(バインダー)としては、上記正極活物質、上記導電材、上記硫化物系固体電解質、及び上記集電体から成る群から選択される少なくとも2つを結着できる公知のものとしてよい。
【0059】
このような結着材(バインダー)としては、例えば、カルボキシメチルセルロースのようなセルロース、ポリフッ化ビニリデン、及びフッ素ゴム、スチレン-ブタジエンの共重合体(架橋ゴム)のようなゴム系樹脂が好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0060】
結着材(バインダー)を溶解する溶媒としては、特に限定されることなく、結着材(バインダー)を溶解するが、硫化物系固体電解質に影響を及ぼし難い(例えば、硫化物系固体電解質の溶解や硫化物系固体電解質表面で反応などをしない)、低極性の溶媒であれば、あらゆる公知のものとしてよい。例えば、ヘキサン、ペンタン、2-エチルヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン、トルエン、キシレン、デカリン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(テトラリン)、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)、メトキシベンゼン(アニソール)などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0061】
また、これらの溶媒は、脱水処理されていることが好ましく、水分含有量が低いことが好ましい。水分含有量は、100ppm以下、好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは10ppm 以下、さらにより好ましくは1ppm以下である。水分含有量は0ppm以上でよい。
【0062】
--正極の製造方法--
正極は、従来公知のいかなる方法で製造することができるが、例えば、上記正極活物質と、好適には上記硫化物系固体電解質、上記導電材、上記結着材を含むスラリーを上記集電体に塗布、乾燥することにより製造することができる。必要に応じて乾燥後の正極をプレスしてもよい。
【0063】
スラリーの製造、塗布、および乾燥は、特に限定されず、従来公知のいかなる方法で実施することができる。
【0064】
スラリーの製造方法としては、例えば、自公転ミキサー、プラネタリーミキサー、ビーズミル、薄膜旋回型ミキサーなどが挙げられる。
【0065】
また、スラリーの塗布方法としては、例えば、ダイコート、コンマコート、グラビアコート、ロールコートなどが挙げられる。
【0066】
また、スラリーの乾燥方法としては、例えば、熱風、赤外線、ランプなどが挙げられる。
【0067】
上記乾燥後の正極のプレス方法としては、例えば、ロールプレス、平板プレス、冷間等方圧プレス、温間等方圧プレスなどが挙げられる。
【0068】
-負極-
本実施形態に係る全固体二次電池に用いられる負極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵及び放出可能なものであり、好適には、上記硫化物系固体電解質、導電材、集電体、結着材(バインダー)と共に、負極を構成することが好ましい。
【0069】
--負極活物質--
負極に含まれ得る負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵及び放出可能な炭素材料、金属、半金属、合金、酸化物、及び窒化物から成る群から選択される少なくとも1種としてよい。
【0070】
電気化学的にリチウムイオンを吸蔵及び放出可能な炭素材料としては、従来公知のものとしてよく、例えば、ハードカーボン、ソフトカーボン、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、炭素コロイド、カーボンブラック等が挙げられる。特に、コークスとしては、従来公知のものとしてよく、例えば、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等が挙げられる。また、有機高分子化合物の焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して、炭素化したものである。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0071】
金属、半金属としては、従来公知のものとしてよい。金属元素及び半金属元素としては、例えば、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)等が挙げられる。これらの中でも、リチウム(Li)、および長周期型周期表における4族又は14族の金属元素及び半金属元素が好ましく、リチウム(Li)、チタン(Ti)、スズ(Sn)及びケイ素(Si)が特に好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0072】
合金としては、2種以上の金属元素(前述)から成るものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含む。また、合金は、その全体として金属の性質を有するものであれば、非金属元素を有していてもよい。その合金の組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物又はこれらのうちの2種以上が共存する。
【0073】
酸化物としては、従来公知のものとしてよく、例えば、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化ケイ素、五酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化モリブデン、二酸化チタン、チタン酸リチウム(例えば、LiTi12等)等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0074】
窒化物としては、従来公知のものとしてよく、例えば、一般式:Li3-xN(式中、Mは、Co、Ni、及びMnから成る群から選択される少なくとも1つである)で表されるもの等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0075】
これらの炭素材料、半金属、金属、合金、酸化物、及び窒化物は、1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0076】
--導電材--
負極に含まれ得る導電材としては、特に限定されることなく、電子を伝導できる公知のものとしてよい。導電材としては、例えば、黒鉛、各種コークス、カーボンブラック、及びアセチレンブラック等の非黒鉛炭素質材料が好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0077】
--集電体--
負極に含まれ得る集電体としては、特に限定されることなく、例えば、銅、ニッケル、ステンレス等の金属箔、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル、カーボンクロス及びカーボンペーパー等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。また、集電体の表面に前記負極導電材を備えた前記負極集電体であってもよい。
【0078】
--結着材(バインダー)--
負極に含まれ得る結着材(バインダー)としては、上記全固体二次電池用負極活物質、上記硫化物系固体電解質、上記導電材、及び上記集電体から成る群から選択される少なくとも2つを結着できる公知のものとしてよい。このような結着材(バインダー)としては、特に限定されることはないが、例えば、カルボキシメチルセルロースのようなセルロース、スチレン-ブタジエンの架橋ゴムラテックス、アクリル系ラテックス、ポリフッ化ビニリデン、及びフッ素ゴム、スチレン-ブタジエンの共重合体(架橋ゴム)のようなゴム系樹脂が好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0079】
結着材(バインダー)を溶解する溶媒としては、特に限定されることなく、結着材(バインダー)を溶解するが、硫化物系固体電解質に影響を及ぼし難い(例えば、硫化物系固体電解質の溶解や硫化物系固体電解質表面で反応などをしない)、低極性の溶媒であれば、あらゆる公知のものとしてよい。例えば、ヘキサン、ペンタン、2-エチルヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン、トルエン、キシレン、デカリン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(テトラリン)、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)、メトキシベンゼン(アニソール)などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0080】
また、これらの溶媒は、脱水処理されていることが好ましく、水分含有量が低いことが好ましい。水分含有量は、100ppm以下、好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは10ppm 以下、さらにより好ましくは1ppm以下である。水分含有量は0ppm以上でよい。
【0081】
--負極の製造方法--
負極は、従来公知のいかなる方法で製造することができるが、例えば、上記活物質が金属の場合は、箔として単独、または集電体と貼り付けて製造することができる。
【0082】
また、例えば、上記負極活物質と、好適には上記硫化物系固体電解質、上記導電材、上記結着材を含むスラリーを上記集電体に塗布、乾燥することにより負極を製造することができる。必要に応じて乾燥後の負極をプレスしてもよい。
【0083】
スラリーの製造、塗布、および乾燥は、特に限定されず、従来公知のいかなる方法で実施することができる。
【0084】
スラリーの製造方法としては、例えば、自公転ミキサー、プラネタリーミキサー、ビーズミル、薄膜旋回型ミキサーなどが挙げられる。
【0085】
また、スラリーの塗布方法としては、例えば、ダイコート、コンマコート、グラビアコート、ロールコートなどが挙げられる。
【0086】
また、スラリーの乾燥方法としては、例えば、熱風、赤外線、ランプなどが挙げられる。
【0087】
上記乾燥後の負極のプレス方法としては、例えば、ロールプレス、平板プレス、冷間等方圧プレス、温間等方圧プレスなどが挙げられる。
【0088】
-全固体二次電池-
本実施形態に係る全固体二次電池は、少なくとも本実施形態の固体電解質シートを上記正極と上記負極の間に有するものであり、必要に応じて、これらを接合してもよい。
【0089】
上記正極、上記負極、および上記固体電解質シート以外の電池部材については、従来公知の電池部材を使用することができる。
【0090】
上記接合する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記正極、上記固体電解質シート、上記負極を積層して、ロールプレス、平板プレス、冷間等方圧プレス、温間等方圧プレスなどでプレスする方法が挙げられる。また、固体電解質シートと正極または負極の接合面に、イオン伝導性を有する物質、及び/又はイオン伝導性を阻害しない接着物質を配置して接合することもできる。これらは、1種のみでなく2種以上を組み合わせて接合してもよい。
【実施例0091】
以下、実施例を挙げて本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0092】
実施例1
[固体電解質スラリーの調整]
硫化物系固体電解質として、アルジロダイト型硫化物固体電解質Li7-xPS6-xCl(式中、x≒1)粉末(平均粒径0.6μm)と、硫化物系固体電解質と反応しない低極性有機溶媒にゴム系樹脂を5重量%溶解したバインダー溶液とを、硫化物固体電解質とゴム系樹脂が重量比で97.7:2.3になるように秤量し、粘度調整のため前記低極性有機溶媒を加えて、自公転ミキサーで混練して、固体電解質スラリーを得た。
【0093】
[固体電解質シートの作製]
アプリケーターの卓上塗工機上に、積層不織布(膜厚22μm、外層:ポリエステル繊維、繊維径14μm、中間層:ポリエステル繊維、繊維径2μm)を載せ、固体電解質スラリーを所定のクリアランスのアプリケーターで塗布し、常圧で温度70℃、1時間、乾燥機で乾燥させた。
続いて、前記固体電解質スラリーの塗布、乾燥後の積層不織布を、固体電解質層が塗布されてない面を上にしてアプリケーターの卓上塗工機上に載せ、固体電解質スラリーを所定のクリアランスのアプリケーターで塗布し、常圧で温度70℃、1時間、乾燥機で乾燥させた後、減圧で温度70℃、20時間乾燥機で乾燥させた。
続いて、固体電解質スラリーの塗布、乾燥後の積層不織布を所定の大きさにくり抜き、固体電解質シートが得られたが、すべて反りのないシートであった。したがって、自立化したときに反りのないシートの割合は100%であった。
固体電解質シートを圧力392MPaでプレスした後の膜厚も測定した。
【0094】
比較例1
実施例1において、積層不織布を単層ポリエステル不織布(膜厚:12μm、繊維径10μm)に変更する以外は、実施例1と同様の操作により、比較例1の固体電解質シートを作製したが、固体電解質シート内に固体電解質が埋め込まれてない部分が目視で確認でき、均一な固体電解質シートが得られなかった。
【0095】
比較例2
実施例1と同様の操作により、比較例2の固体電解質スラリーを得た。得られた固体電解質スラリーを用いて、以下のような操作で固体電解質シートの作製を行った。
【0096】
[固体電解質シートの作製]
アプリケーターの卓上塗工機上に、厚み約38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを載せ、固体電解質スラリーを所定のクリアランスのアプリケーターで塗布し、常圧で温度70℃、1時間、乾燥機で乾燥させた。その後、所定の厚みに固体電解質が塗布されたPETフィルム上に、単層ポリエステル不織布(膜厚:12μm、繊維径10μm)を載せ、固体電解質スラリーを所定のクリアランスのアプリケーターで塗布し、常圧で温度70℃、1時間、乾燥機で乾燥させた後、減圧で温度70℃、20時間乾燥機で乾燥させた。
【0097】
次に、得られた塗布シートを所定の大きさにくり抜き、圧力392MPaでプレスしてPETフィルムを剥離させようとしたが、下地のPETフィルムに固体電解質が貼りつき、固体電解質シートが得られなかった。
【0098】
参考例
比較例2において、単層ポリエステル不織布の代わりに積層不織布(膜厚22μm、外層:ポリエステル繊維、繊維径14μm、中間層:ポリエステル繊維、繊維径2μm)を用いること以外は、比較例2と同様の操作により、参考例の固体電解質シートを作製しようとしたが、作製時の取り扱い時に、支持フィルム上の固体電解質と不織布の間ではがれ、固体電解質シートが得られなかった。
【0099】
実施例2
実施例1において、固体電解質を平均粒径が3μmの固体電解質に変更する以外は、実施例1と同様の操作により、実施例2の固体電解質シートを作製した。得られた固体電解質シートはすべて反りのないシートであった。
【0100】
比較例3
比較例2において、固体電解質を平均粒径が3μmの固体電解質に変更する以外は、比較例2と同様の操作により、比較例3の固体電解質シートを作製した。得られた固体電解質シートにおいて、反りのないシートの割合が53%で、反りのあるシートの割合は47%であった。
【0101】
実施例1~2、参考例、及び比較例1~3について、詳細及び結果を表1に示す。
【0102】
実施例3
[正極の作製]
正極活物質として、表面にLiとNbの複合酸化物が形成されたLiNi0.5Co0.2Mn0.3粉末(平均粒径5μm)、アルジロダイト型硫化物固体電解質Li7-xPS6-xCl(式中、x≒1)粉末(平均粒径0.6μm)、導電助剤として、炭素繊維(昭和電工社製「VGCF」(商品名))と硫化物系固体電解質と反応しない低極性有機溶媒にゴム系樹脂を5重量%溶解したバインダー溶液を、正極活物質、硫化物固体電解質、炭素繊維とゴム系樹脂が重量比で82.6:15.3:1.2:0.9になるように秤量し、粘度調整のため前記低極性有機溶媒を加えて、自公転ミキサーで混練して、正極スラリーを得た。
【0103】
アプリケーターの卓上塗工機上に、厚み20μmのアルミニウム箔を載せ、正極スラリーを所定のクリアランスのアプリケーターで塗布し、常圧で温度100℃、1時間、乾燥機で乾燥させた後、減圧で温度100℃、20時間乾燥機で乾燥させることにより、正極を得た。
【0104】
[負極の作製]
負極活物質として、天然黒鉛粉末(平均粒径16μm)、アルジロダイト型硫化物固体電解質Li7-xPS6-xCl(式中、x≒1)粉末(平均粒径0.6μm)、硫化物系固体電解質と反応しない低極性有機溶媒にゴム系樹脂を5重量%溶解したバインダー溶液を、負極活物質、硫化物固体電解質とゴム系樹脂が重量比で67.5:30.5:2になるように秤量し、粘度調整のため前記低極性有機溶媒を加えて、自公転ミキサーで混練して、負極スラリーを得た。
【0105】
アプリケーターの卓上塗工機上に、厚み10μmの表面にカーボンがコートされたステンレス箔を載せ、負極スラリーを所定のクリアランスのアプリケーターで塗布し、常圧で温度100℃、1時間、乾燥機で乾燥させた後、減圧で温度100℃、20時間乾燥機で乾燥させることにより、負極を得た。
【0106】
[固体電解質シートの作製]
実施例1において、固体電解質シート作製においてアプリケーターのクリアランスを変更し、使用した積層不織布(膜厚21μm)にしたこと以外は、実施例1と同様の操作により、実施例3の固体電解質シートを得た。得られた固体電解質シートの厚みは31μm、外層の繊維上下の固体電解質層の厚みは8μmであった。固体電解質シート厚みに対する積層不織布の厚みは68%、固体電解質シート中の固体電解質の割合は70%であった。
【0107】
[全固体電池の作製]
前記正極、前記負極、前記固体電解質シートを所定の大きさにくり抜き、正極、固体電解質シート、負極の順番に、正極塗布部と負極塗布部が対向するように重ねて、積層体を作製した。前記積層体をステンレス箔で包み、その外側をアルミラミネートフィルムで包み、減圧シールすることにより、前記積層体を包材の中に入れた。包材の中に入れた積層体を、温間等方圧プレスにて、積層体の緻密化と接合のプレスを実施した。
プレス後の積層体を包材から取り出し、正極と負極にリードタブを超音波溶接し、アルミラミネートでリードタブを取り付けた積層体を包み減圧シールすることにより、全固体電池を作製した。
【0108】
[全固体電池の充放電評価]
作製した全固体電池をステンレス製の拘束治具で圧力19.6MPaで拘束した状態で充放電評価を実施した。
【0109】
(初期充放電)
一定温度:25℃の恒温槽中で、充放電装置(東洋システム(株)製、製品名:TOSCAT-3000)を用いて、0.1C定電流の後、4.35V定電圧で終止電流が0.01Cになるまで充電した後、0.1C定電流の後、3.0Vの定電圧で終止電流が0.01Cになるまで放電した(1サイクル目の充放電)。なお、「1.0C」とは、満充電状態の電池が電気量を1時間で放電できる電流値を指す。1サイクル目と同じ条件で、2サイクル目、3サイクル目の充放電を実施した。
【0110】
(充電負荷特性評価)
初期充放電後、一定温度:60℃の恒温槽中で、充放電装置(東洋システム(株)製、製品名:TOSCAT-3000)を用いて、0.1C定電流の後、4.35V定電圧で終止電流が0.01Cになるまで充電した後、0.1C定電流の後、3.0Vの定電圧で終止電流が0.01Cになるまで放電した。その時の充放電効率(%)=[(放電容量)/(充電容量)]×100は、99.1%となった。
【0111】
その後、1C定電流で、終止電圧が4.35Vになるまで充電した後、0.1C定電流放電の後、3.0Vの定電圧で終止電流が0.01Cになるまで放電した(充放電条件A)。その時の充放電効率は、99.1%となった。
【0112】
以後、充電の電流値を2C、3C、4Cにした以外は充放電条件Aと同様に充放電を繰り返し実施した。各充電電流値での充放電効率を表2に示す。なお、各充電電流での充放電効率において、99%未満になったときに電池が短絡したと判断した。充放電評価の結果を表3に示す。
【0113】
実施例4
実施例3において、固体電解質シートの作製で使用した固体電解質を平均粒径3μmのものにしたこと以外は、実施例3と同様の操作により、実施例4の固体電解質シートを得た。実施例3と同様の操作により、正極の作製、負極の作製、全固体電池の作製、および充放電評価をした結果を表3に示す。
【0114】
比較例4
実施例3において、使用した固体電解質シートを比較例3で得られた反りのないシートにしたこと以外は、実施例3と同様の操作により、正極の作製、負極の作製、全固体電池の作製、各充電電流値での充放電効率、および充放電評価をした結果を表2および表3に示す。
【0115】
実施例5
実施例2において、アプリケーターのクリアランスを所定のギャップに調整した以外は、実施例2と同様の操作により、実施例5の固体電解質シートを作製した。
固体電解質シートを圧力392MPaでプレスした後、固体電解質シートの膜厚、および繊維上下の固体電解質層の厚みを測定したところ、それぞれ26μmと3μmであった。
[固体電解質シートのイオン伝導度の測定]
得られた固体電解質シートを10mmφの円形にくりぬき、ステンレス製のシリンダ型のイオン伝導度測定治具にセットして、196MPaで加圧しながら、交流インピーダンス法(測定周波数:7M~1Hz)によりイオン伝導度を室温(約23℃)で測定したところ、7×10―5S/cmであった。
【0116】
実施例6
実施例5において、アプリケーターのクリアランスを所定のギャップに調整した以外は、実施例5と同様の操作により、実施例6の固体電解質シートを作製した。
得られた固体電解質シートを実施例5と同様にプレスした後、固体電解質シートの膜厚、繊維上下の固体電解質層の厚み、および固体電解質シートのイオン伝導度を実施例5と同様の操作により測定した結果を表4に示す。
【0117】
実施例7
実施例5において、アプリケーターのクリアランスを所定のギャップに調整した以外は、実施例5と同様の操作により、実施例7の固体電解質シートを作製した。
得られた固体電解質シートを実施例5と同様にプレスした後、固体電解質シートの膜厚、繊維上下の固体電解質層の厚み、および固体電解質シートのイオン伝導度を実施例5と同様の操作により測定した結果を表4に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の固体電解質シート用支持体又は固体電解質シートを使用した全固体二次電池は、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、電動二輪車、電動自転車、定置用蓄電システム、移動体通信機器、携帯用電子機器などの蓄電池に利用することができる。
【符号の説明】
【0123】
1 積層不織布
2 外層の繊維
3 中間層の繊維
4 固体電解質シート
5 固体電解質
図1
図2
図3