(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023168
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/75 20180101AFI20240214BHJP
A47C 7/54 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B60N2/75
A47C7/54 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129441
(22)【出願日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】63/395,930
(32)【優先日】2022-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邉 仁一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 生佳
(72)【発明者】
【氏名】芳田 元
(72)【発明者】
【氏名】小堤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山口 貢載
(72)【発明者】
【氏名】島田 俊明
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DC02
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】アームレストを有する乗物用シートにおいて、入力装置に荷重が加わらない。
【解決手段】乗物用シート1は、シートクッション2と、シートクッションに支持されるシートバック3と、シートバックから前方に延びるアームレスト5とを有する。アームレストは、骨格をなすアームレストフレーム74と、アームレストフレームに支持されるアームレスト本体部75と、アームレスト本体部に支持される入力装置79とを有する。アームレスト本体部は、上方から下方に凹む凹部75Eを有する。入力装置は、凹部に収容される。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートであって、
シートクッションと、
前記シートクッションに支持されるシートバックと、
前記シートバックから前方に延びるアームレストとを有し、
前記アームレストは、
骨格をなすアームレストフレームと、
前記アームレストフレームに支持されるアームレスト本体部と、
前記アームレスト本体部に支持される入力装置と、を有し、
前記アームレスト本体部は、上方から下方に凹む凹部を有し、
前記入力装置は、前記凹部に収容される、乗物用シート。
【請求項2】
前記アームレスト本体部の内部には空間が形成され、
前記空間には、前記入力装置に接続されたハーネス及び前記アームレストフレームが配置される請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記アームレスト本体部は、前記空間を画定する内周面に沿って配置される補強部材を更に有する請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記アームレスト本体部は、前記空間を左右方向に分割する仕切り壁を更に有し、
前記アームレストフレームは、前記左右方向の一方の側の前記空間に配置され、
前記ハーネスは、前記左右方向の他方の側の前記空間に配置される請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記凹部は、底部と、前記底部の左右の端部から上方に延びる左右一対の側壁部とを有し、
左右の前記側壁部の上端部は、前記入力装置の上端よりも上方にある請求項4に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えばエアコン又はオーディオ等の操作を行うための車両用操作装置を有する車両を開示している。車両用操作装置は、各種操作を受け付けるための複数のスイッチ部(入力装置)を有する。各スイッチ部は、運転席(乗物用シート)のアームレストに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、各スイッチ部がアームレストに支持される具体的な構成が記載されていない。乗員がアームレストに腕を置いたとき、荷重がスイッチ部に加わる虞がある。したがって乗員の意図しない操作が受け付けられる虞がある。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、アームレストを有する乗物用シートにおいて、入力装置に荷重が加わらないことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、乗物用シート(1)であって、シートクッション(2)と、前記シートクッションに支持されるシートバック(3)と、前記シートバックから前方に延びるアームレスト(5)とを有し、前記アームレストは、骨格をなすアームレストフレーム(74)と、前記アームレストフレームに支持されるアームレスト本体部(75)と、前記アームレスト本体部に支持される入力装置(79)と、を有し、前記アームレスト本体部は、上方から下方に凹む凹部(75E)を有し、前記入力装置は、前記凹部に収容される。
【0007】
この態様によれば、アームレストに加わる荷重は、アームレスト本体部に伝達される。したがって入力装置には荷重が加わらないため、乗員の意図しない操作が抑制される。
【0008】
上記の態様において、前記アームレスト本体部の内部には空間(75D)が形成され、前記空間には、前記入力装置に接続されたハーネス(79)及び前記アームレストフレームが配置されてよい。
【0009】
この態様によれば、アームレストフレームを配置する空間を利用してハーネスを取り回すことができる。したがって簡素な構成によってハーネスが配置される。
【0010】
上記の態様において、前記アームレスト本体部は、前記空間を画定する内周面に沿って配置される補強部材(76)を更に有してもよい。
【0011】
この態様によれば、補強部材はアームレスト本体部に加わる荷重を受けることができる。したがって、アームレスト本体部の剛性が向上する。
【0012】
上記の態様において、前記アームレスト本体部は、前記空間を左右方向に分割する仕切り壁(77)を更に有し、前記アームレストフレームは、前記左右方向の一方の側の前記空間に配置され、前記ハーネスは、前記左右方向の他方の側の前記空間に配置されてもよい。
【0013】
この態様によれば、ハーネスとアームレストフレームとの干渉が抑制される。
【0014】
上記の態様において、前記凹部は、底部(75F)と、前記底部の左右の端部から上方に延びる左右一対の側壁部(75)とを有し、左右の前記側壁部の上端部は、前記入力装置の上端よりも上方にあってもよい。
【0015】
この態様によれば、入力装置がアームレスト本体部の上端よりも下方に配置されるため、アームレストに加わる荷重は、アームレスト本体部に伝達される。
【発明の効果】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、乗物用シート(1)であって、シートクッション(2)と、前記シートクッションに支持されるシートバック(3)と、前記シートバックから前方に延びるアームレスト(5)とを有し、前記アームレストは、骨格をなすアームレストフレーム(74)と、前記アームレストフレームに支持されるアームレスト本体部(75)と、前記アームレスト本体部に支持される入力装置(79)と、を有し、前記アームレスト本体部は、上方から下方に凹む凹部(75E)を有し、前記入力装置は、前記凹部に収容される。
【0017】
この態様によれば、アームレストに加わる荷重は、アームレスト本体部に伝達される。したがって入力装置には荷重が加わらないため、乗員の意図しない操作が抑制される。
【0018】
上記の態様において、前記アームレスト本体部の内部には空間(75D)が形成され、前記空間には、前記入力装置に接続されたハーネス(79)及び前記アームレストフレームが配置されてよい。
【0019】
この態様によれば、アームレストフレームを配置する空間を利用してハーネスを取り回すことができる。したがって簡素な構成によってハーネスが配置される。
【0020】
上記の態様において、前記アームレスト本体部は、前記空間を画定する内周面に沿って配置される補強部材(76)を更に有してもよい。
【0021】
この態様によれば、補強部材はアームレスト本体部に加わる荷重を受けることができる。したがって、アームレスト本体部の剛性が向上する。
【0022】
上記の態様において、前記アームレスト本体部は、前記空間を左右方向に分割する仕切り壁(77)を更に有し、前記アームレストフレームは、前記左右方向の一方の側の前記空間に配置され、前記ハーネスは、前記左右方向の他方の側の前記空間に配置されてもよい。
【0023】
この態様によれば、ハーネスとアームレストフレームとの干渉が抑制される。
【0024】
上記の態様において、前記凹部は、底部(75F)と、前記底部の左右の端部から上方に延びる左右一対の側壁部(75)とを有し、左右の前記側壁部の上端部は、前記入力装置の上端よりも上方にあってもよい。
【0025】
この態様によれば、入力装置がアームレスト本体部の上端よりも下方に配置されるため、アームレストに加わる荷重は、アームレスト本体部に伝達される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図4】シートバックの上部を示す側断面図(
図1のIV-IV断面図)
【
図5】シートバックの中央部を示す側断面図(
図1のV-V断面図)
【
図8】シートバックの中央部の変形例を示す側断面図
【
図9】シートバックの中央部の変形例を示す側断面図
【
図10】リクライニング機構及び回動機構を示す斜視図
【
図11】リクライニング機構及び回動機構を示す正面図
【
図12】リクライニング機構及び回動機構を示す斜視図
【
図13】右側のアームレストの後部の要部を示す斜視図
【
図14】右側のアームレストの前部の要部を示す斜視図
【
図19】アームレスト協調制御の変形例を示す側面図
【
図20】アームレストの回動機構の変形例を示す斜視図
【
図30】シートの回転の制御系の変形例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明に係る乗物用シートを自動車のシート1に適用した実施形態について説明する。以下、車両を基準として、前後、左右、及び、上下の各方向を定める。
【0028】
図1に示すように、シート1は、シートクッション2と、シートバック3と、オットマン4と、左右一対のアームレスト5と、回転装置6とを有する。シートクッション2は、回転装置6を介して車両のフロア8に設けられている。回転装置6はスライドレールを介して車両のフロア8に設けられてもよい。シートクッション2は乗員の臀部及び大腿部を下方から支持する。
【0029】
シートバック3はシートクッション2の後部に設けられている。シートバック3はシートクッション2に対して回動可能に設けられている。シートバック3は、本体部3Aと、本体部3Aの上端に一体に設けられたヘッドレスト部3Bと、本体部3Aの上部とヘッドレスト部3Bの下部との前部に設けられたネックピロー部3Cとを有する。本体部3Aは乗員の背部を後方から支持する。ヘッドレスト部3Bは、乗員の頭部を後方から支持する。ネックピロー部3Cは乗員の頸部を後方から支持する。
【0030】
オットマン4はシートクッション2の前部に設けられている。オットマン4はシートクッション2に対して回動可能に設けられてもよい。オットマン4は乗員の下腿部を前方から支持する。各アームレスト5はシートバック3の左右の側部から前方に延びている。各アームレスト5はシートバック3に対して回動可能に設けられている。アームレスト5は乗員の腕を下方から支持することができる。
【0031】
回転装置6はフロア8に設けられたベース部材10と、ベース部材10に上下方向の軸線回りに回転可能に支持された支持部材11とを有する。回転装置6は、ベース部材10に対して支持部材11を回転させる回転駆動機構12を有してもよい。
【0032】
シートクッション2は、骨格としてのシートクッションフレーム20と、シートクッションフレーム20に支持されるパッドとしてのシートクッションパッド21と、シートクッションパッド21の外面に被せられた表皮材22とを有する。シートクッションフレーム20は、例えば左右一対のシートクッションサイドメンバ23と、左右のシートクッションサイドメンバ23の前端に結合したフロントメンバと、左右のシートクッションサイドメンバ23の後端に結合したリアメンバと、フロントメンバ及びリアメンバに架け渡された受圧部材とを有する公知の構成であってよい。シートクッション2は、支持部材11に結合されている。
【0033】
図2に示すようにシートクッション2は、左右一対のサイドカバー24を有する。各サイドカバー24は例えば樹脂材から形成されてよい。サイドカバー24は対応するシートクッションサイドメンバ23の前端部を左右外方から覆う。前方から見て、シートクッションパッド21の左右の端部は、左右において対応するサイドカバー24の上方に延びている。すなわち、各サイドカバー24の上方にシートクッションパッド21の左右の端部が配置されている。シートクッションパッド21の左右の側縁は、左右において対応するサイドカバー24の左右の外縁に沿って配置されているとよい。これによりシートクッション2を幅広く見せることができる。
【0034】
図1及び
図3に示すようにシートバック3は、骨格としてのシートバックフレーム30と、シートバックフレーム30に支持されるパッドとしてのシートバックパッド32と、シートバックパッド32及びシートバックフレーム30を覆う表皮材34とを有する。またシートバック3は、シートバックフレーム30の後部に設けられたバックカバーとしてのシートバックカバー36とを有する。
【0035】
図3及び
図4に示すように、シートバックフレーム30は、上下に延びる左右一対のシートバックサイドメンバ38を有する。またシートバックフレーム30は、左右に延び、左右のシートバックサイドメンバ38の上端に結合されたアッパメンバ40と、左右のシートバックサイドメンバ38の下端に結合されたロアメンバ42とを有する。更にシートバックフレーム30は、アッパメンバ40とロアメンバ42との間を左右に延び、左右のシートバックサイドメンバ38に結合されたミドルメンバ44を有する。更にシートバックフレーム30は、アッパメンバ40から上方に延びる左右一対のピラー46と、左右に延び、左右のピラー46の上端に結合された連結部材48とを有する。シートバックサイドメンバ38、アッパメンバ40、ロアメンバ42及びミドルメンバ44は、金属板を折り曲げ成形することにより形成されている。
【0036】
シートバックフレーム30の内側には受圧部材50が設けられている。受圧部材50は、ランバーサポートともいう。受圧部材50は、シートバックフレーム30に架け渡された金属製のワイヤ51と、ワイヤ51に支持され、面が前後を向く板状部材52とを有する。本実施形態では、ワイヤ51は、上下方向に延びる左右一対のワイヤ縦部51Aと、左右一対のワイヤ縦部51Aの下部を連結するワイヤ下部51Bとを有するとよい。ワイヤ下部51Bはロアメンバ42に接続されている。左右のワイヤ縦部51Aの上端はミドルメンバ44に接続されている。板状部材52は、左右のワイヤ縦部51Aの上下方向における中間部に結合されている。板状部材52は樹脂材料から形成されてよい。板状部材52には、前後方向に貫通する複数の肉抜き孔55(肉抜き部)が形成されている。肉抜き孔55のいくつかは、左右方向に延び、板状部材52の左右の側縁に到達していてもよい。肉抜き孔55は、板状部材52の可撓性を高める。
【0037】
シートバックパッド32は上下方向に延びている。シートバックパッド32は、発泡性の樹脂によって形成されてよい。シートバックパッド32はシートバックフレーム30を前から覆うように配置されている。シートバックパッド32の乗員側を向く面を表面とし、相反する面を裏面とする。シートバックパッド32の裏面が後方から受圧部材50に支持されている。
【0038】
図4に示すように、ネックピロー部3Cは、シートバックパッド32の表面から前方に突出した凸部32Aによって形成されている。凸部32Aの表面は、表皮材34によって覆われている。凸部32Aは、左右方向に延びている。左右方向から見て、凸部32Aの表面は前方に向けて凸となる曲面に形成されている。ネックピロー部3Cの下端は、アッパメンバ40と概ね同じ高さに配置されている。また、ネックピロー部3Cは、ピラー46の下部と同じ高さに配置されている。凸部32Aの表面は、シートバックパッド32と異なるパッド部材53によって構成されてもよい。例えば、パッド部材53とシートバックパッド32とは、弾性率が異なる樹脂によって形成されるとよい。
【0039】
図5及び
図6に示すように、シートバックパッド32の裏面には凹部54が形成されている。凹部54はシートバックパッド32の裏面から前方に向けて凹んでいる。
【0040】
図3から
図5に示すように、シートバックカバー36は、シートバックフレーム30の後部に結合されている。シートバックカバー36は、シートバック3の後部の外面を形成する。シートバックカバー36は例えば樹脂材から形成されてよい。シートバックカバー36は中央部36Aと、中央部36Aの左右の両端から前方に延びる左右の側部36Bとを有する。中央部36Aの面は前後方向を向く。
図5に示すように、中央部36Aはシートバックパッド32の裏面に対して後方に隙間をおいて設けられている。また、中央部36Aは、受圧部材50に対して後方に隙間をおいて設けられている。左右の側部36Bの面は左右方向を向く。側部36Bは対応するシートバックサイドメンバ38を左右外方から覆う。
【0041】
図4に示すように、シートバック3には、送風装置60が設けられている。送風装置60はブロワ61と、ブロワ61に接続されたダクト62と、ダクト62に接続された送風口63とを有する。ブロワ61は例えばシロッコファンであってよい。ブロワ61は左右のピラー46の後部に取り付けられている。ブロワ61は連結部材48の後部に取り付けられてもよい。ダクト62の一端はブロワ61の吐出口に接続される。ダクト62は、左右のピラー46の間を通過して、ピラー46の前方に向かって延びている。ダクト62の他端は送風口63に接続される。送風口63はシートバックパッド32に形成される。
【0042】
送風口63はネックピロー部3Cの下縁に設けられている。送風口63はシートバックパッド32の裏面から表面に貫通している。ダクト62の他端部は、送風口63に挿入されてよい。送風口63は乗員の頸部の付近に配置されるため、乗員の体感温度を効率良く調節することができる。
【0043】
図5及び
図6に示すように、シート1はバイブレータ64を有する。バイブレータ64は、例えばコイル、マグネット及びヨークを含む公知の構成であってよい。コイルは図示しないハーネスを介して車両に設けられた図示しない電源に電気的に接続されるとよい。コイルに流れる電流の向きが周期的に変化することによってコイルが発生する磁界が変化する。これにより、マグネットが結合されたヨークが磁界の変化に応じて振動する。バイブレータ64は、その振動の向きがシートバックパッド32の表面に対して垂直になるように配置されるとよいが、その振動の向きがシートバックパッド32の表面に対して平行になるように配置されてもよい。なお他の実施形態では、バイブレータ64は、乗員に音を伝達するためのスピーカであってもよい。
【0044】
バイブレータ64は、シートバックパッド32の裏面に形成された凹部54に設けられている。バイブレータ64は、前後方向において受圧部材50と対向している。バイブレータ64は、前後方向において板状部材52と対向している。より詳細には、バイブレータ64は肉抜き孔55に対向している。これによりバイブレータ64は板状部材52によって後方から安定性良く支持される。更に、バイブレータ64は、送風口63の下方に配置されている。これによりバイブレータ64は、送風口63との干渉を避けてシートバックパッド32に配置される。バイブレータ64は、凹部54に嵌合しているとよい。バイブレータ64が凹部54に嵌合した状態において、バイブレータ64の後面はシートバックパッド32の裏面を外挿した面上に配置されるとよい。
図6に示すようにシートバックパッド32の裏面には、シート材65が凹部54及びバイブレータ64を跨いで接着されている。シート材65は、粘着テープであり、シートバックパッド32の裏面及びバイブレータ64に接着されている。
【0045】
バイブレータ64の組付方法について説明する。
図5及び
図6に示すように最初にシートバックパッド32が用意される。シートバックパッド32は成型によって成形され、裏面に凹部54が形成される。次にバイブレータ64がシートバックパッド32に設けられた凹部54に嵌合される。次に、シート材65がシートバックパッド32の裏面及びバイブレータ64に接着され、バイブレータ64がシートバックパッド32に固定される。次にシートバックパッド32が、受圧部材50が取り付けられたシートバックフレーム30に取り付けられる。シートバックパッド32はシートバックフレーム30及び受圧部材50の前方に配置される。これによりシートバックパッド32がシートバックフレーム30及び受圧部材50に支持される。次に、表皮材34がシートバックパッド32及びシートバックフレーム30に被せられる。次に、シートバックカバー36がシートバックフレーム30の後部に取り付けられる。
【0046】
図5及び
図6に示すようにバイブレータ64を収容する凹部54がシートバックパッド32の裏面に開口しているため、バイブレータ64のシートバックパッド32への配置が容易である。また、バイブレータ64は、シートバックパッド32に接着されるシート材65によって凹部54内に保持されるため、バイブレータ64をパッドに安定性良く固定することができる。これらにより、シートバックパッド32の構造を簡素にすると共に、バイブレータ64の組付け作業を容易にすることができる。シート材65が粘着テープである場合、シート材65のシートバックパッド32への接着が容易になる。
【0047】
バイブレータ64が凹部54に嵌合しているため、バイブレータ64の振動がシートバックパッド32に伝達され易くなる。また、バイブレータ64のシートバック3に対する位置が安定する。
【0048】
バイブレータ64の後方には、隙間を介してシートバックカバー36が配置されている。これによりバイブレータ64の振動音がシート1の後方に伝達され難くなる。
【0049】
バイブレータ64は、前後方向において受圧部材50と対向している。これによりバイブレータ64が凹部54から脱落することを抑制することができる。
【0050】
肉抜き孔55は、板状部材52の可撓性を高める。これにより板状部材52のバイブレータ64と対向する部分が変形し易くなり、乗員の背部によって押されたバイブレータ64が後方に移動することができる。したがって、バイブレータ64が乗員の背部に不快感を与えることが抑制される。
【0051】
受圧部材50の板状部材52の形状は、変更してもよい。例えば、
図7及び
図8に示すように、板状部材52には前後方向に貫通する開口68が設けられている。ワイヤ51は、前後方向から見て開口68と重ならない位置に設けられている。凹部54は、板状部材52に設けられた開口68と対向する位置に設けられている。これによりバイブレータ64は、前後方向から見て、板状部材52に設けられた開口68と重なる位置に配置されている。これらにより乗員の背部によって押されたバイブレータ64が板状部材52に設けられた開口68を通過して後方に移動することができる。したがって、バイブレータ64が乗員の背部に不快感を与えることが抑制される。
【0052】
上記の板状部材52に加え、凹部54の形状も変更してよい。例えば、
図9に示すように、凹部54の深さは、バイブレータ64の前後の厚さよりも小さい。これによりバイブレータ64は、凹部54からは突出している。突出したバイブレータ64の部分は、板状部材52に設けられた開口68を通過している。これらにより凹部54の深さに対してバイブレータ64の厚みが大きい場合に、バイブレータ64と板状部材52との干渉を避けて、シートバックパッド32を板状部材52に接触させることができる。
【0053】
図10及び
図11に示すように、シート1は、シートバック3をシートクッション2に対して回動可能にするためのリクライニング機構70を有する。リクライニング機構70は、左右の本体部71と、左右の本体部71に接続された駆動軸72と、駆動軸72を回転させる電動アクチュエータ73とを有する。
【0054】
各本体部71は内歯ギヤを含む第1部材71Aと、内歯ギヤに噛み合う外歯ギヤを含む第2部材71Bとを有する。外歯ギヤは内歯ギヤに対して偏心している。第1部材71Aはシートクッションサイドメンバ23の後部に結合され、第2部材71Bはシートバックサイドメンバ38の下部に結合されている。左右の本体部71は、同軸上に配置されている。駆動軸72は、左右方向に延び、左右のシートバックサイドメンバ38を貫通して左右の第2部材71Bに結合されている。電動アクチュエータ73は、電動モータ73Aと、電動モータ73Aの回転を減速して駆動軸72に伝達する減速機構73Bとを含む。電動アクチュエータ73は、右側のシートバックサイドメンバ38の左右内側に配置されている。電動アクチュエータ73は、左側のシートバックサイドメンバ38の左右内側に配置されてもよい。電動アクチュエータ73は、駆動軸72を介して左右の第2部材71Bを対応する第1部材71Aに対して回転させる。これにより、シートバック3はシートクッション2に対して回動する。
【0055】
図13及び
図14に示すように、左右のアームレスト5のそれぞれは、骨格をなすアームレストフレーム74と、アームレストフレーム74に支持されるアームレスト本体部75とを有する。また各アームレスト5は、アームレストフレーム74及びアームレスト本体部75を覆うアームレストカバー78を更に有する。左右の一方のアームレスト5には、後述する回動機構80の操作を受け付けるための入力装置79が設けられている。本実施形態では、入力装置79は、右側のアームレスト5に設けられている。入力装置79はリクライニング機構70の操作及び送風装置60の操作も受け付けてよい。
【0056】
アームレストフレーム74は、前後方向に延びている。アームレストフレーム74は、面が左右方向を向く板状に形成されている。アームレストフレーム74の前後方向の長さは、アームレスト5の前後方向の長さよりも短い。アームレストフレーム74の後端部は、後述する回動機構80の支持軸81に接続されている。アームレストフレーム74は金属板をプレス加工することにより形成されてよい。アームレストフレーム74は例えば、面が左右方向を向く主部と、主部の上端及び下端のそれぞれから左右方向に延びる側部とを有してもよい。
【0057】
アームレスト本体部75は、アームレストフレーム74の前端部から前方に延びている。アームレスト本体部75は、例えば前後方向に延び、上下方向に凹む断面コの字状に形成された一対の分割体75Aを有してよい。アームレスト本体部75は、各分割体75Aの開口が対向するように互いに結合されて形成されている。一対の分割体75Aは、例えば下側の分割体75Aに設けられた係止爪75Bが、上側の分割体75Aに設けられた係止凹部75Cに係止されることにより互いに結合されてよい。これによりアームレスト本体部75の内部には空間75Dが形成される。空間75Dには、アームレストフレーム74が配置されている。アームレスト本体部75は、例えば樹脂材料から形成されてよい。
【0058】
アームレスト本体部75は、補強部材76を更に有する。補強部材76は、空間75Dを画定する内周面に沿って配置される枠体であってよい。補強部材76は、例えば前後方向に延び、左右方向に凹む断面コの字状に形成された一対の補強部材本体部76Aを有してよい。補強部材76は、各補強部材本体部76Aの開口が対向するように互いに結合されて形成されてよい。
【0059】
アームレスト本体部75は、空間75Dを左右方向に分割する仕切り壁77を更に有する。仕切り壁77は、補強部材76の内側に設けられている。仕切り壁77は、前後方向に延び、面が左右方向に向く板状に形成されている。アームレストフレーム74は、仕切り壁77によって仕切られた左右内側の空間75Dに配置されている。仕切り壁77は、例えば面が左右方向を向く主部と、主部の上端及び下端のそれぞれから左右方向に延びる側部とを有してもよい。仕切り壁77の上下の側部の外面のそれぞれが、補強部材本体部76Aの対応する上下の内面に結合されてよい。補強部材76及び仕切り壁77は、金属から形成されてよく、アームレスト本体部75よりも硬質の樹脂材料から形成されてもよい。補強部材76及び仕切り壁77は、アームレスト本体部75に加わる上下方向の荷重を受けることができる。したがって、アームレスト本体部75の剛性が向上する。
【0060】
アームレスト本体部75は、上方から下方に凹む凹部75Eを更に有する。また凹部75Eは、底部75Fと、底部75Fの左右の端部から上方に延びる左右一対の側壁部75Gとを有する。具体的には、凹部75Eは、上側の分割体75Aの上面から下方に凹むようにアームレスト本体部75に設けられている。凹部75Eの底部75Fの左右方向の幅は、上側の分割体75Aの左右方向の幅よりも狭い。本実施形態では、凹部75Eは、右側のアームレスト5をなすアームレスト本体部75に設けられている。上下方向から見て、凹部75Eに重なるアームレストカバー78の部分には開口78Aが形成されてよい。
【0061】
図10及び
図11に示すように、アームレスト5のそれぞれには、回動機構80が設けられている。左右のアームレストフレーム74は、支持軸81を介して対応するシートバックサイドメンバ38に回動可能に支持されている。左側のアームレスト5には左側回動機構80Aが設けられている。右側のアームレスト5には右側回動機構80Bが設けられている。回動機構80は対応するアームレスト5をシートバック3に対して回動させる。左右のアームレスト5は、互いに独立してシートバック3に対して回動可能である。
【0062】
左右の回動機構80は、同一の構成を有するため、右側回動機構80Bについて説明する。回動機構80は、アームレスト5のアームレストフレーム74に結合された支持軸81と、支持軸81に結合されたセクタギヤ82と、セクタギヤ82に噛み合うピニオン83(
図11参照)を含む電動アクチュエータ84とを有する。
【0063】
シートバックサイドメンバ38の右側面には、右方に突出する円筒形の軸受部85が設けられている(
図11参照)。支持軸81は、左右方向に延び、軸受部85に回動可能に支持されている。支持軸81の右端部はアームレスト5のアームレストフレーム74に接続されている。支持軸81の左端は、シートバックサイドメンバ38を貫通し、シートバックサイドメンバ38の左方に突出している。
【0064】
セクタギヤ82は支持軸81の左端に結合されている。セクタギヤ82は、支持軸81から下方に延びている。
【0065】
電動アクチュエータ84は、電動モータ84Aと、減速機構84Bと、減速機構84Bの出力軸86に結合されたピニオン83とを有する。電動モータ84A及び減速機構84Bは、シートバックサイドメンバ38の外側面に結合され、シートバックカバー36とシートバックサイドメンバ38との間に配置されている。出力軸86は、左右方向に延び、減速機構84Bからシートバックサイドメンバ38を貫通し、シートバックサイドメンバ38の内方に突出している。出力軸86は、支持軸81よりも下方に配置されている。出力軸86の先端にはピニオン83が結合されている。ピニオン83は、セクタギヤ82の下方に配置され、セクタギヤ82に噛み合っている。
【0066】
アームレストカバー78の前部の左右幅は、アームレストカバー78の後部の左右幅よりも広い。アームレストカバー78の後部の左右内側の端部は、回動機構80の電動アクチュエータ84よりも左右外方にある。アームレストカバー78の前部の左右内側の端部は、前方から見て回動機構80の電動アクチュエータ84に重なる。これによりシートバックカバー36の側部36Bの下部が回動機構80の電動アクチュエータ84を受容するべく左右外方に膨出している場合、アームレスト5はシートバックカバー36の側部36Bの下部に干渉することなく上方に回動できる。右側のアームレストカバー78の上面には、入力装置79が設けられている。
【0067】
電動アクチュエータ84は、ピニオン83及びセクタギヤ82を介して支持軸81を回動させる。電動アクチュエータ84は、アームレスト5をシートバック3に対して回動させる。アームレスト5のシートバック3に対する回動の速さは、シートバック3のシートクッション2に対する回動の速さと概ね等しくてよい。
【0068】
図10及び
図12に示すように、シートバックサイドメンバ38の内側面には、セクタギヤ82及びピニオン83を保護するブラケット88及びブラケットカバー91が設けられている。
【0069】
図10に示すように、ブラケット88は金属板を折り曲げ成形することにより形成されてよい。ブラケット88は面が左右方向を向く主部88Aと、主部88Aの側縁から左右外方に延びる複数の脚部88Bとを有する。ブラケット88は、複数の脚部88Bにおいてシートバックサイドメンバ38に結合されている。複数の脚部88Bは、シートバックサイドメンバ38に締結又は溶接されているとよい。主部88Aには、リクライニング機構70の電動アクチュエータ73との干渉を避けるために第1切欠部89が設けられている。第1切欠部89は、主部88Aの下部かつ後部に設けられているとよい。
【0070】
セクタギヤ82及びピニオン83は、主部88Aとシートバックサイドメンバ38との間に配置される。支持軸81の先端は、主部88Aに形成された軸受孔90に支持されてもよい。同様に、駆動軸72の先端は主部88Aに形成された他の軸受孔に支持されてもよい。
【0071】
図12に示すように、ブラケットカバー91はブラケット88に支持されている。ブラケットカバー91は樹脂材料から形成されてもよい。ブラケットカバー91は面が左右方向を向く第1部分91Aと、第1部分91Aの前縁から左右外方に延びる第2部分91Bとを有する。第2部分91Bの面は前後方向を向く。第1部分91Aはブラケット88の主部88Aよりも左右内方に配置される。第2部分91Bは、セクタギヤ82及びピニオン83の前方に配置されている。ブラケットカバー91には、リクライニング機構70の電動アクチュエータ73との干渉を避けるために第2切欠部92が設けられている。第2切欠部92は、主部88Aの下部かつ後部に設けられているとよい。
図15に示すように、受圧部材50の板状部材52の前面にはエアセル93が設けられてよい。エアセル93は、空気の供給を受けて膨張し、シートバックパッド32を前方に突出させる。
【0072】
ブラケット88及びブラケットカバー91により、セクタギヤ82及びピニオン83のシートバックパッド32に対する干渉が抑制される。加えて、右側に配置されたセクタギヤ82及びピニオン83のリクライニング機構70の電動アクチュエータ73に対する干渉が抑制される。
【0073】
入力装置79は、例えばタッチパネルディスプレイや、メカニカルスイッチであるとよい。本実施形態では、入力装置79は、板状に形成されたタッチパネルディスプレイである。入力装置79のディスプレイには、リクライニング機構70の角度、アームレスト5の角度、及び送風装置60の出力を設定するためのスイッチが表示されるとよい。
【0074】
図14に示すように、入力装置79は、アームレスト5に設けられた凹部75Eに収容されている。具体的には、入力装置79は、ディスプレイの面が上方を向くように、右側のアームレスト本体部75に設けられた凹部75Eに収容されている。このとき、ディスプレイの面に対向する入力装置79の下面は、凹部75Eの底部75Fの底面に当接するとよい。また、入力装置79の左右の側面は、凹部75Eの対応する左右の側壁部75Gの内面に当接するとよい。このとき、側壁部75Gの上端部は、入力装置79の上面よりも上方にある。したがって入力装置79のディスプレイの面は、凹部75Eが形成されていない上側の分割体75Aの上面よりも下方にある。入力装置79は、例えば凹部75Eの底部75Fに締結されるボルトなどの締結具によって上側の分割体75Aに締結されてよい。
【0075】
入力装置79のディスプレイの面は、アームレストカバー78に設けられた開口78Aから露出している。入力装置79のディスプレイの面は、アームレストカバー78の上面よりも下方にある。
【0076】
入力装置79には、ハーネス79Aが接続されている。入力装置79は、ハーネス79Aを介して後述する制御装置95に接続されている。ハーネス79Aは、アームレスト本体部75の空間75Dに取り回されている。具体的には、ハーネス79Aは、仕切り壁77によって仕切られた左右外側の空間75Dに配置されている。これによりアームレストフレーム74を受容する空間75Dを利用してハーネス79Aが取り回されるため、簡素な構成によってハーネス79Aが配置される。また仕切り壁77によって、ハーネス79Aとアームレストフレーム74との干渉が抑制される。
【0077】
以上のように構成されたアームレスト5に乗員の腕が置かれたとき、アームレスト5に加わる上方からの荷重は、アームレストカバー78を介してアームレスト本体部75に伝達される。したがって入力装置79には荷重が加わらないため、乗員の意図しない操作が抑制される。
【0078】
図16に示すように、左右の回動機構80A、80B、入力装置79、リクライニング機構70、及び送風装置60は、制御装置95に接続されている。制御装置95は、演算処理装置(CPU、MPU等のプロセッサ)、記憶装置(ROM、RAM等のメモリ)を備え、アームレスト5の回動及びシートバック3の回動に必要な各種処理を実行するように構成されたコンピュータからなる。制御装置95が各種処理を実行するように構成されているとは、制御装置95を構成する演算処理装置(プロセッサ)が、入力装置79の操作入力に従って、記憶装置(メモリ)から必要なデータ及びアプリケーションソフトウェアを読み取り、当該ソフトウェアに従って当該所定の演算処理を実行するようにプログラムされていることを意味する。制御装置95は、例えば、シートクッション2の内部、シートバック3の内部、アームレスト5の内部に設けられるとよい。
【0079】
制御装置95は、入力装置79からの信号に基づいて、左側回動機構80A、右側回動機構80B、リクライニング機構70、及び送風装置60を制御する。また、制御装置95は、シートバック3の回動に応じて左側のアームレスト5及び右側のアームレスト5の回動を回動させるアームレスト協調制御を実行する。
【0080】
図17(A)に示すように、シートバック3が起立した初期位置にあるとき、左右のアームレスト5は水平方向に延びた初期位置にある。シートバック3は、初期位置において、10~30度程度後傾しているとよい。
【0081】
入力装置79のディスプレイには、例えば、シートバック3を後方に回動させるための後回動スイッチと、シートバック3を前方に回動させるための前回動スイッチとが表示される。入力装置79は、後回動スイッチが乗員によって押されている間、制御装置95に後回動信号を出力する。また、入力装置79は、前回動スイッチが乗員によって押されている間、制御装置95に前回動信号を出力する。
【0082】
制御装置95は、
図18に示すアームレスト協調制御を実行する。最初に、制御装置95は、入力装置79から後回動信号を受けているか否かを判定する(ST1)。制御装置95は、後回動信号を受けている場合(ST1の判定結果がYes)、シートバック3を後方に回動させるべく、リクライニング機構70の電動モータ73Aを駆動する(ST2)。続いて、制御装置95は、右側のアームレスト5を上方に回動させるべく、右側回動機構80Bの電動モータ84Aを駆動する(ST3)。続いて、制御装置95は、左側のアームレスト5を下方に回動させるべく、左側回動機構80Aの電動モータ84Aを駆動する(ST4)。
【0083】
制御装置95は、後回動信号を受けていない場合(ST1の判定結果がNo)、入力装置79から前回動信号を受けているか否かを判定する(ST5)。制御装置95は、前回動信号を受けている場合(ST5の判定結果がYes)、シートバック3を前方に回動させるべく、リクライニング機構70の電動モータ73Aを駆動する(ST6)。続いて、制御装置95は、右側のアームレスト5を下方に回動させるべく、右側回動機構80Bの電動モータ84Aを駆動する(ST7)。続いて、制御装置95は、左側のアームレスト5を上方に回動させるべく、左側回動機構80Aの電動モータ84Aを駆動する(ST8)。
【0084】
制御装置95は、前回動信号を受けていない場合(ST5の判定結果がNo)、リクライニング機構70の電動モータ73A、右側回動機構80Bの電動モータ84A及び左側回動機構80Aの電動モータ84Aを駆動させない。
【0085】
制御装置95がアームレスト協調制御を実行することによって、
図17(B)に示すように、シートバック3が後方に回動するときには、右側のアームレスト5が上方に回動し、左側のアームレスト5が下方に回動する。これによりシートバック3が後傾した状態において、乗員が見やすい位置に入力装置79のディスプレイが配置される。したがって入力装置79の操作性が向上する。また、左側のアームレスト5は概ね水平に延び、乗員の左腕を支持することができる。これにより乗員は左腕を休めることができる。
【0086】
入力装置79の構成は、異なっていてもよい。例えば、
図19に示すように、入力装置96は左側のアームレスト5に設けられている。入力装置96はメカニカルスイッチである。入力装置96はリクライニング機構70を回動させるための操作を受け付けるとよい。入力装置96はシートバック3を後方に回動させるための後回動スイッチ96Aと、シートバック3を前方に回動させるための前回動スイッチ96Bとを有する。後回動スイッチ96Aは前回動スイッチ96Bの後方に設けられるとよい。
【0087】
右側のアームレスト5にはディスプレイ97が設けられている。ディスプレイ97は車内の温度等を表示してよい。ディスプレイ97の前端部は、例えばヒンジ98を介してアームレストカバー78に接続されるとよい。これによりディスプレイ97はアームレストカバー78に対して回動可能に設けられている。ディスプレイ97の回動する角度は適宜調整可能であってよい。ディスプレイ97は、アームレストカバー78の上面に沿った収納位置と、アームレストカバー78から上方に延び、乗員側を向く使用位置との間で回動する。
【0088】
制御装置95は、シートバック3の後方への回動に応じて、ディスプレイ97が設けられた右側のアームレスト5を上方に回動させ、かつ左側のアームレスト5を下方に回動させるとよい。これにより、シートバック3が後傾した状態(
図17(B)参照)において、乗員が見やすい位置にディスプレイ97が配置される。また、左側のアームレスト5は概ね水平に延び、乗員の左腕を支持することができる。
【0089】
アームレスト5のそれぞれを回動させる回動機構80の構成は変更してよい。回動機構80は、例えば
図20に示すように、アームレスト5のアームレストフレーム74に結合された支持軸81と、支持軸81に結合された第1ブラケット101と、電動アクチュエータ84の出力軸86に結合され、第1ブラケット101に連結された第2ブラケット102と、第1ブラケット101及び第2ブラケット102を支持する第3ブラケット103とを有する。
【0090】
第1ブラケット101は面が左右方向を向く板状に形成されている。第1ブラケット101には、左右内方に延びる複数の第1連結ピン106が設けられている。本実施形態では、第1ブラケット101には2つの第1連結ピン106が設けられている。
【0091】
第2ブラケット102は面が左右方向を向く板状に形成されている。第2ブラケット102は、第1ブラケット101よりも左右内方に配置されている。第2ブラケット102には、厚み方向に貫通する第1スロット108が形成されている。第1スロット108は、電動アクチュエータ84の出力軸86の上方に設けられている。第1スロット108には、第1ブラケット101に設けられた複数の第1連結ピン106の1つが貫通している。
図20(A)に示すように、アームレスト5が水平方向に延びた初期位置において、第1スロット108は、後方に向けて下方に傾斜するように延びている。このとき第1スロット108を貫通する第1連結ピン106は、第1スロット108の後端の側に配置されるとよい。また、第2ブラケット102には、左右内方に延びる第2連結ピン109が設けられている。第2連結ピン109は、第1スロット108の後端よりも後方に配置されている。
【0092】
第3ブラケット103は面が左右方向を向く板状に形成されている。第3ブラケット103は、第2ブラケット102よりも左右内方に配置されている。第3ブラケット103には、厚み方向に貫通する第2スロット111が形成されている。第2スロット111には、第2連結ピン109が貫通している。
図20(A)に示すように、アームレスト5が水平方向に延びた初期位置において、第2スロット111は、後方に向けて下方に傾斜するように延びている。このとき第2連結ピン109は、第2スロット111の前端の側に配置されるとよい。第2連結ピン109の先端部には、ねじ山が形成されてよい。第2連結ピン109が第2スロット111を貫通した後、第2連結ピン109の先端部のねじ山にナット(不図示)が螺合されてもよい。これにより第2ブラケット102が第3ブラケット103に支持される。
【0093】
また第1ブラケット101に設けられた複数の第1連結ピン106の先端部のそれぞれには、ねじ山が形成されてよい。第3ブラケット103には、厚み方向に貫通し、且つ対応する第1連結ピン106が通過する複数の締結孔(不図示)が設けられてよい。一方の第1連結ピン106は、対応する締結孔を貫通した後、第1連結ピン106のねじ山にナット(不図示)が螺合されてよい。他方の第1連結ピン106は、第1スロット108及び対応する締結孔を貫通した後、第1連結ピン106のねじ山にナット(不図示)が螺合されてよい。これらにより、第1ブラケット101及び第2ブラケット102が第3ブラケット103に支持される。
【0094】
電動アクチュエータ84は、出力軸86を介して第1ブラケット101を回動させる。
図20(B)に示すように、第1ブラケット101の回動により、第1連結ピン106の変位及び第2連結ピン109の変位を経て支持軸81が回動する。これによりアームレスト5がシートバック3に対して回動する。
【0095】
送風装置60、バイブレータ64及びエアセル93の構成及び配置は変更してよい。例えば
図21に示すように、シートバックパッド32には、送風装置60の送風口63に接続される通気溝118を有してもよい。通気溝118はシートバックパッド32の面方向に延びている。送風口63は、前後方向から見て通気溝118の底部の一部に設けられるとよい。本実施形態では、送風口63はシートバックパッド32の上部に形成され、通気溝118は、送風口63から下方に延びるように設けられている。通気溝118は、シートバックパッド32の上下方向に延びる複数の縦溝118Aを有する。縦溝118Aは、シートバックパッド32の左右の中央部に設けられている。本実施形態では、2つの縦溝118Aが左右方向に互いに離間して設けられている。通気溝118は、シートバックパッド32の前面から後方に凹む溝であってよい。或いは、通気溝118は、シートバックパッド32の一部に被せられる板状のパッドカバー部材(不図示)に設けられてよい。
【0096】
バイブレータ64は、シートバックパッド32に複数設けられている。複数のバイブレータ64のそれぞれは、シートバックパッド32に設けられた対応する収容凹部121に収容されている。収容凹部121は、シートバックパッド32の前面から後方に向けて凹んでいる。各収容凹部121は通気溝118を避けて設けられている。通気溝118がシートバックパッド32の一部に被せられるパッドカバー部材に設けられている場合には、パッドカバー部材に収容凹部121が設けられてよい。
【0097】
本実施形態では、バイブレータ64はシートバックパッド32の左右両側のそれぞれに3つずつ配置されている。具体的には左右両側のそれぞれに配置される3つのバイブレータ64のうち、2つのバイブレータ64は、左右の縦溝118Aの外側に配置されている。左右両側のそれぞれに配置される3つのバイブレータ64のうち、残りの1つのバイブレータ64は、2つの縦溝118Aの間に配置されている。
【0098】
エアセル93は、通気溝118の前方に複数配置されている。このとき各エアセル93は、各エアセル93の全部が前方から見て通気溝118又はバイブレータ64に重ならないように配置されるとよい。
【0099】
シートバック3は、通気溝118、各収容凹部121及び各エアセル93を前方から覆うカバー(不図示)を有してもよい。カバーは面が前後方向を向く板状に形成されてよい。カバーには、前後方向に貫通する複数の貫通孔122が設けられてよい。複数の貫通孔122のそれぞれは、前後方向から見て通気溝118に重なり、且つ各エアセル93に重ならない位置に設けられるとよい。ブロワ61から送り出される空気は、ダクト62、送風口63、通気溝118及び貫通孔122を介して乗員に向けて送風される。
【0100】
送風装置60の送風口63、通気溝118、バイブレータ64及びエアセル93は、例えば
図22に示すように、シートクッション2に設けられてもよい。この場合、通気溝118及びバイブレータ64を収容する収容凹部121は、シートクッションパッド21に形成されてよく、シートクッションパッド21の一部に被せられるパッドカバー部材(不図示)に設けられてよい。
【0101】
送風装置60及びエアセル93の構成及び配置は変更してよい。例えば
図23に示すように、アッパメンバ40は、左右のシートバックサイドメンバ38の上端のそれぞれから上方に延びる左右一対の縦部40Aと、左右方向に延び、左右の縦部40Aの上端同士を連結する横部40Bとを有する。エアセル93は、左右の縦部40Aのそれぞれに配置されている。各エアセル93は、受圧部材50とシートバックパッド32との間に配置されている。各エアセル93は、流体の供給により左右方向内方かつ下方に向けて膨出する。シートバックパッド32に形成された送風口63に挿入されるダクト62の他端部は、一方のエアセル93の近傍に配置されている。本実施形態では、ダクト62の他端部は、右側のエアセル93の近傍に配置されている。またダクト62の他端部は、左右方向から見て、エアセル93と重なる。
【0102】
図24に示すように、シートバックパッド32は複数の分割体123を有するとよい。各分割体123は、シートバックパッド32に形成された枠状のスリット124の内側の部分であってよい。これにより各分割体123は、シートバックパッド32に対して前後方向に移動可能である。各分割体123は、前方から見て左右のエアセル93のそれぞれに重なるとよい。分割体123は、エアセル93に接着されてよい。
図24(A)に示すように、エアセル93が膨張していない状態では、各分割体123の前面は、シートバックパッド32の前面と同一平面上にあるとよい。
図24(B)に示すように、エアセル93が膨張するとき、対応する分割体123はシートバックパッド32に対して前方に移動する。したがってエアセル93が膨張するとき、右側のエアセル93の近傍に配置されたダクト62の他端部が送風口63から抜け出すことが抑制される。
【0103】
バイブレータ64の配置は変更してよい。例えば
図25に示すように、バイブレータ64はシートバックパッド32の左右両側のそれぞれに1つずつ配置されている。各バイブレータ64は、シートバックパッド32の後面に設けられた収容凹部(不図示)に収容されているとよい。左右のバイブレータ64のそれぞれは、前後方向から見て受圧部材50の板状部材52に重なる。バイブレータ64に対向する受圧部材50の板状部材52の部分には前後方向に貫通する複数の開口125が設けられている。また
図26に示すように、受圧部材50とシートバックパッド32との間には複数のエアセル93が配置されてもよい。このとき板状部材52に形成された開口125に重なるエアセル93の部分には前後方向に貫通する開口126が設けられてよい。これらにより乗員の背部によって押されたバイブレータ64がエアセル93に設けられた開口125及び板状部材52に設けられた開口126を通過して後方に移動することができる。したがって、バイブレータ64が乗員の背部に不快感を与えることが抑制される。
【0104】
シート1は、シートクッション2の前部を上下方向に回動させるためのチルト機構131を有してもよい。
図27に示すように、チルト機構131は例えばチルト側電動モータ132の出力軸に接続されたピニオンギヤ133と、ピニオンギヤ133に噛み合うセクタギヤ134と、セクタギヤ134に接続され、シートクッションサイドメンバ23に対して上下に回動可能な押上リンク(不図示)とを有する公知の構成であってよい。押上リンクは、左右のシートクッションサイドメンバ23の前端部に架け渡すように配置されたパンフレーム(不図示)に接続されているとよい。チルト側電動モータ132は、ピニオンギヤ133、セクタギヤ134、押上リンク及びパンフレームを介してシートクッション2の前部を回動させる。また、チルト機構131は、シートクッション2の前部の水平方向に対する角度を検出するチルト側角度センサ136(
図28参照)を有するとよい。
【0105】
シートクッション2の前部の上下方向の回動に連動して、オットマン4も上下方向に回動するとよい。シートクッション2の前部が水平方向に延びた初期位置では、オットマン4の下端部はフロア8に接触してよい。これによりシートクッション2は、回転装置6に加えて、オットマン4に支持されるため、シート1がより安定してフロア8に支持される。シートクッション2の前部が上方に回動したとき、オットマン4も上方に回動する。このときオットマン4の下端部とフロア8との接触が解除される。
【0106】
シート1をフロア8に対して回転させる回転装置6は、ベース部材10に対して支持部材11を回転させる回転駆動機構12としての回転側電動モータ12Aを有するとよい。また回転装置6は、シート1のフロア8に対する角度を検出する回転側角度センサ137(
図28参照)を有するとよい。
【0107】
図28に示すように、制御装置95には、タッチディスプレイである入力装置79、チルト側角度センサ136、回転側角度センサ137、チルト側電動モータ132及び回転側電動モータ12Aが接続されてよい。入力装置79のディスプレイには、シート1をフロア8に対して回転させるため回転スイッチが表示されるとよい。
【0108】
制御装置95は、入力装置79の信号に基づいてシート1を回転させる回転制御を実行する。
図29に示すように、最初に、制御装置95は、シートクッション2の前部を上方に回動させるべく、チルト側電動モータ132を駆動する(ST101)。制御装置95は、チルト側角度センサ136に基づいて、シートクッション2の前部の水平方向に対する回動角度が所定の角度に達したと判定した場合、(ST102の判定がYes)、チルト側電動モータ132の駆動を停止させる(ST103)。所定の角度は、オットマン4の下端部とフロア8との接触が解除される程度の角度であってよい。続いて、制御装置95は、シート1を回転させるべく、回転側電動モータ12Aを駆動する(ST104)。制御装置95は、回転側角度センサ137に基づいて、シート1の回転角度が90度に達したと判定した場合、(ST105の判定がYes)、回転側電動モータ12Aの駆動を停止させる(ST106)。続いて制御装置95は、シートクッション2の前部を下方に回動させるべく、即ち初期位置に戻すべく、チルト側電動モータ132を駆動する(ST107)。制御装置95は、チルト側角度センサ136に基づいて、シートクッション2の前部の水平方向に対する回動角度が0度に達したと判定した場合、(ST108の判定がYes)、チルト側電動モータ132の駆動を停止させる(ST109)。シート1を回転させる前に、オットマン4の下端部とフロア8との接触を解除することにより、オットマン4の下端部のフロア8に対する摩擦が回避される。したがってシート1がフロア8に対して回転するとき、オットマン4のフロア8に対する干渉が回避される。
【0109】
図30に示すように、制御装置95には、自動車のドアの開閉を検出するドアセンサ140が接続されてよい。制御装置95は、タッチディスプレイである入力装置79の信号に基づいてシート1を回転させる回転制御を実行する。
図31に示すように、最初に、制御装置95は、ドアセンサ140に基づいてドアが閉じられた閉状態であるか否かを判定する(ST201)。ドアが閉状態である場合(ST201の判定結果がYes)、制御装置95は、シート1を回転させるべく、回転側電動モータ12Aを駆動する(ST202)。制御装置95は、回転側角度センサ137に基づいて、シート1の回転角度が90度に達したと判定した場合、(ST203の判定がYes)、回転側電動モータ12Aの駆動を停止させる(ST204)。ドアが閉じられていない場合(ST201の判定結果がNo)、制御装置95は、回転側電動モータ12Aを駆動させない。このとき、制御装置95は、入力装置79のディスプレイに回転側電動モータ12Aを駆動させない旨のキャンセル通知を表示させる(ST205)。キャンセル通知には、キャンセル通知を解除して回転スイッチを再度表示させるための解除スイッチが表示されるとよい。
【0110】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、バイブレータ64はシートバックパッド32に配置されているが、シートクッションパッド21に配置されてよい。
【符号の説明】
【0111】
1 :シート(乗物用シート)
2 :シートクッション
3 :シートバック
5 :アームレスト
74 :アームレストフレーム
75 :アームレスト本体部
75D :空間
75E :凹部
75F :底部
75G :側部
76 :補強部材
77 :仕切り壁
79 :入力装置
79A :ハーネス