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特開2024-23172光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023172
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20240214BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20240214BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20240214BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20240214BHJP
   A61B 5/1459 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G02B6/02 A
G02B6/02 461
G02B6/44 321
G02B6/32
G02B6/02 411
G02B6/02 416
A61B34/20
A61B5/1459
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023175305
(22)【出願日】2023-10-10
(62)【分割の表示】P 2021510442の分割
【原出願日】2019-08-19
(31)【優先権主張番号】62/723,508
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】フレックスマン モリー ララ
(72)【発明者】
【氏名】バイドロン トーレ ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ルブ ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】バン ダー マーク マルティヌス ベルナルドゥス
(72)【発明者】
【氏名】ト ホーフト ゲルト ウィム
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリクス ベルナルドス ヘンドリクス ウィルヘルムス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】形状感知能力及び組織感知能力両方を有する高度に可撓性の機器を使用することによって、最小限の侵襲的介入を可能な光学装置を提供する。
【解決手段】光学装置200は、外側ジャケット230と、共通クラッド220と、複数の単一モードファイバコア210とを含む。共通クラッド220は、外側ジャケット230が共通クラッド220をクラッドするように、マルチモードファイバとして使用され且つ外側ジャケット230内にある。単一モードファイバコア210は、共通クラッド220が複数の単一モードファイバコア210をクラッドするように共通クラッド220内にある。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側ジャケットと、
前記外側ジャケットが共通クラッドをクラッドするように、マルチモードファイバとして使用される前記外側ジャケット内にある前記共通クラッドと、
前記共通クラッドが複数の単一モードファイバコアをクラッドするように前記共通クラッド内にある前記複数の単一モードファイバコアと、
を含む、光学装置。
【請求項2】
前記共通クラッド内の前記複数の単一モードファイバコアは、1つの中心コア、及び、前記1つの中心コアの周りに螺旋状に巻かれた少なくとも1つの外側コアを有する、少なくとも2つの単一モードファイバコアを含む、請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
各単一モードファイバコアは、対応する光ファイバブラッグ格子を含む、請求項1に記載の光学装置。
【請求項4】
前記共通クラッドの屈折率は、前記外側ジャケットの屈折率よりも高い、請求項1に記載の光学装置。
【請求項5】
前記複数の単一モードファイバコアは、光学形状感知に使用される光を伝送し、
前記共通クラッドは、スペクトル組織感知に使用される光を伝送する、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項6】
前記複数の単一モードファイバコアに光を集束させる第1のレンズをさらに含む、請求項1記載の光学装置。
【請求項7】
前記第1のレンズは、GRINレンズを含む、請求項6に記載の光学装置。
【請求項8】
前記複数の単一モードファイバコアに光を集束させる第2のレンズと、
前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間に配置され、光学形状感知に使用される第1の光を、スペクトル組織感知に使用される第2の光から分離するビームスプリッタと、
をさらに含む、請求項6に記載の光学装置。
【請求項9】
前記複数の単一モードファイバコア、前記共通クラッド及び前記外側ジャケットの端部に適用され、光学形状感知に使用される波長の第1の光を実質的にキャプチャし、第2の光を実質的に透過する吸収材料をさらに含む、請求項1に記載の光学装置。
【請求項10】
前記吸収材料は、400nm~1300nmの間で実質的に透過的であり、1535nm~1555nmで実質的に吸収性である、請求項9に記載の光学装置。
【請求項11】
命令を格納するメモリと、
前記命令を実行するプロセッサと、
外側ジャケットと、
前記外側ジャケットが共通クラッドをクラッドするように、マルチモードファイバとして使用される前記外側ジャケット内にある前記共通クラッドと、
前記共通クラッドが複数の単一モードファイバコアをクラッドするように前記共通クラッド内にある前記複数の単一モードファイバコアと、
を含み、
前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、光学システムに、前記共通クラッドを通過する光に基づいてスペクトル組織感知を行うことを含むプロセスを実行させる、光学システム。
【請求項12】
各単一モードファイバコアは、対応する光ファイバブラッグ格子を含み、
前記複数の単一モードファイバコアは、光学形状感知に使用される光を伝送し、
前記共通クラッドは、スペクトル組織感知に使用される光を伝送する、請求項11に記載の光学システム。
【請求項13】
前記複数の単一モードファイバコアに光を集束させる第1のレンズをさらに含む、請求項11記載の光学システム。
【請求項14】
前記複数の単一モードファイバコアに光を集束させる第2のレンズと、
前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間に配置され、光学形状感知に使用される第1の光を、スペクトル組織感知に使用される第2の光から分離するビームスプリッタと、
をさらに含む、請求項13に記載の光学システム。
【請求項15】
前記外側ジャケット、前記共通クラッド及び前記複数の単一モードファイバコアの端部に適用され、光学形状感知に使用される波長の第1の光を実質的にキャプチャし、第2の光を実質的に透過する吸収材料をさらに含む、請求項13に記載の光学システム。
【請求項16】
前記吸収材料は、400nm~1300nmの間で実質的に透過的であり、1535nm~1555nmで実質的に吸収性である、請求項15に記載の光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001] 介入医療処置は、針やカテーテルなどの介入医療機器を用いて、血管など体内への介入を伴う医療処置である。
【背景技術】
【0002】
介入医療処置は、常に、何らかの形態のナビゲーションを必要とし、また、正しい組織が処置されることを確実にするためなどに、直接的なリアルタイムの組織フィードバックを必要とすることが多い。
【0003】
[002] 例えば、心臓血管処置は、多くの場合、血管系を通ってナビゲートされるカテーテルが病変組織に到達し、適宜、病変組織を処置することを必要とする。ナビゲートする1つのやり方は、介入医療機器に光学形状感知(OSS)ファイバを統合するやり方である。光学形状感知(OSS)はまた、ファイバベースの形状感知又はファイバ感知としても知られており、光ファイバ内の干渉パターンと相関する、温度又は歪みの変化などの明確な状況下で反射光の波長が異なるという原理に基づいている。光学形状感知は、「Optical Position and/or Shape Sensing」なる名称のFROGATTらの米国特許第8,773,650号、及び「Compensating for non-ideal multi-core optical fiber structure」なる名称のKLEINらの米国特許出願公開第2012/0069347号に説明されている。
【0004】
[003] これとは別に、リアルタイムの組織フィードバックは、スペクトル組織感知(STS)を用いて可能になる。拡散光学分光法は、白色光を組織に送り、反射光を測定する技術である。反射光は、組織と相互作用する光子の吸収及び散乱により、特定のスペクトル分布を有する。これらの変化は、組織組成によって決定されるので、この技術は、組織識別を提供する。このスペクトル組織感知は、介入医療機器にマルチモード光ファイバを組み込んで、介入医療機器の先端におけるリアルタイムの組織フィードバックを提供することによって達成できる。
【0005】
[004] 外科用デバイスにおいて光学形状感知及びスペクトル組織感知を統合することは、光学形状感知及びスペクトル組織感知を行うことができるように、2つの異なる分離したファイバを一体化する外科用デバイスを必要とする。しかしながら、多くの介入医療処置は、小さな曲げ半径を可能にするために、小さな横方向寸法及び高い可撓性を必要とする。2つの異なる分離したファイバを統合することは、外科用デバイスがより堅くなり、それによって曲げ半径を妥協するか、又はファイバの少なくとも一方が曲げによるかなりの量の歪みを受けるかのいずれかを意味する。加えて、光学形状感知ファイバのコアは単一モード使用のために設計されている一方で、スペクトル組織感知はマルチモードファイバを必要とする。したがって、光学形状感知及びスペクトル組織感知は、例えば、スペクトル組織感知にも適合された単一の統合された光学形状感知ファイバには統合されない。
【0006】
[005] 光学形状感知において、ファイバブラッグ格子(FBG)は、光学形状感知ファイバのファイバコアの短いセグメントにおける反射体として作用する歪みセンサである。FBGは、特定の波長の光を反射し、他のすべてを透過する。反射/透過特性は、ファイバコア内に屈折率の周期的変動を加えることによって達成でき、これは波長別の誘電体ミラーを生成する。したがって、FBGは、特定の波長を反射し、他のすべてを透過するために、インライン光反射体として使用できる。
【0007】
[006] FBGは、針又はカテーテルの3次元(3D)形状をリアルタイムで追跡するために使用される。それぞれが対応する統合FBGを有する3つ以上のファイバコアを一緒に利用して、ファイバの3D形状をリアルタイムで追跡できる。具体的には、単一モードファイバの複数コア内のFBG歪みセンサを用いて、単一モードファイバに沿った任意の点が空間内にどのように配置されるかを決定する。光ファイバ及びFBGの特性は曲率により変化し、3つ以上のファイバコアの各々におけるFBGの相対的変化を感知することにより、位置の3D変化を決定できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[007] 図1Aは、FBGを使用するファイバコアを有する既知の光ファイバを示す。図1Aでは、FBGは、特定の波長を反射し、他のすべてを透過するインライン光反射器として示されている。図1AにおけるFBGの動作の背後にある基本原理は、屈折率が変化する各界面におけるフレネル反射である。波長によっては、様々な周期の反射光が互いに同位相であるため、反射に対して建設的干渉が存在し、その結果、透過に対して相殺的干渉が存在する。
【0009】
[008] 図1Bは、図1AのFBGを使用する既知のファイバコアの屈折率プロファイルを示す。図1Bでは、図1Aの既知のファイバコアに沿った屈折率の変化が屈折率プロファイルとして示されている。
【0010】
[009] 図1Cは、図1AのFBGを使用するファイバコアを有する既知の光ファイバのスペクトル応答を示す。図1Cでは、各チャートのX軸は、波長λを表し、Y軸は、左のチャートでは入力(例えば強度)を、真ん中のチャートでは結果としての透過成分、及び右チャートでは結果としての反射成分を表す。
【0011】
[010] 図1Cの右のチャートでは、ブラッグ波長はλとして示されている。ブラッグ波長は、温度だけでなく歪みにも敏感である。FBGセンサでは、測定すべき量はブラッグ波長のシフトΔλを引き起こす。加えられた歪み(ε)及び温度の変化(ΔT)によるブラッグ波長の相対シフトΔλ/λは、近似的に次式で与えられる:
【数1】
係数Csは、歪み係数と呼ばれ、その大きさは、通常、約0.8×10-6/με(又は絶対量では約1pm/με)である。係数Cは、センサの温度感度を記述し、熱膨張係数と熱光学効果とで構成される。その値は、約7×10-6/K(又は絶対量として13pm/K)である。
【0012】
[011] 図1Dは、複数のファイバコア及び対応するFBG歪みセンサを有する既知の光ファイバを示す。光学形状感知においてFBGを使用することの主な利点の1つは、様々なFBGをファイバの長さにわたって分布させることができることである。介入医療機器に埋め込まれたファイバの長さに沿って様々なFBGを有する3つのコアを組み込むことにより、そのような介入医療機器の3D形態を正確に決定することが可能になる。この状況を図1Dに示す。3つのFBGセンサは、様々な位置でファイバの長さに沿って位置付けられている。合計で4つのコアが使用され、4つのうちの3つは、中心コアとして第4のコアの周りに螺旋状に巻かれた外側コアとして使用される。これにより、2方向におけるコモンモード、ツイスト、及び屈曲を測定することができる。各FBGの歪み測定値から、介入医療機器の湾曲をその位置で推測できる。多数の測定された位置から、光ファイバの3D形態が決定される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[012] 本開示の一態様によれば、光学装置が、外側ジャケットと、共通クラッドと、複数の単一モードファイバコアとを含む。共通クラッドは、外側ジャケットが共通クラッドをクラッドするようにマルチモードファイバとして使用され且つ外側ジャケット内にある。単一モードファイバコアは、共通クラッドが複数の単一モードファイバコアをクラッドするように共通クラッド内にある。
【0014】
[013] 本開示の別の態様によれば、光学システムが、メモリと、プロセッサと、外側ジャケットと、共通クラッドと、複数の単一モードファイバコアとを含む。メモリは命令を格納する。プロセッサは命令を実行する。共通クラッドは、外側ジャケットが共通クラッドをクラッドするようにマルチモードファイバとして使用され且つ外側ジャケット内にある。単一モードファイバコアは、共通クラッドが複数の単一モードファイバコアをクラッドするように共通ファイバ内にある。プロセッサによって実行されると、命令は、共通のクラッドを通過する光に基づいてスペクトル組織感知を行うことを含むプロセスを光学システムに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
[014] 例示的な実施形態は、添付の図面と共に読まれるとき、以下の詳細な説明から最も良く理解される。様々な特徴は、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことが強調される。実際、寸法は、説明を明確にするために任意に増減され得る。適用可能で実用的である限り、同様の参照番号は同様の要素を指す。
【0016】
図1A】[015]図1Aは、FBGを使用するファイバコアを有する既知の光ファイバを示す。
図1B】[016]図1Bは、図1AのFBGを使用する既知のファイバコアの屈折率プロファイルを示す。
図1C】[017]図1Cは、図1AのFBGを使用するファイバコアを有する既知の光ファイバのスペクトル応答を示す。
図1D】[018]図1Dは、複数のファイバコア及び対応するFBG歪みセンサを有する既知の光ファイバを示す。
図2】[019]図2は、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバを示す。
図3】[020]図3は、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバのための光学形状感知ファイバ装置を示す。
図4A】[021]図4Aは、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバのための別の光学形状感知ファイバ装置を示す。
図4B】[022]図4Bは、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバのための別の光学形状感知ファイバ装置を示す。
図4C】[023]図4Cは、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバのための別の光学形状感知ファイバ装置を示す。
図5A】[024]図5Aは、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための金金属錯体を示す。
図5B】[025]図5Bは、代表的な実施形態による、図5Aの光学形状感知及びスペクトル組織感知のための金金属錯体の吸収スペクトルを示す。
図6A】[026]図6Aは、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための1500nmの最大吸収波長を有する金金属錯体を示す。
図6B】[027]図6Bは、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための1670nmの最大吸収波長を有する金金属錯体を示す。
図7】[028]図7は、代表的な実施形態に従って光学形状感知及びスペクトル組織感知におけるスペクトル組織感知の方法が実施され得る、一般的なコンピュータシステムの例示的な実施形態である。
図8】[029]図8は、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバのための光学形状感知ファイバシステムを使用するためのプロセスを示す。
図9】[030]図9は、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための2つの統合型ファイバの配置を示す。
図10A】[031]図10Aは、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知における血液、水、及び脂肪の吸収スペクトルの対数プロットを示す。
図10B】[032]図10Bは、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知におけるコラーゲン、エラスチン、NADH及びFADの固有蛍光曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[033] 以下の詳細な説明では、限定ではなく説明の目的で、特定の詳細を開示する代表的な実施形態が本教示による実施形態の完全な理解を提供するために記載される。代表的な実施形態の説明を曖昧にすることを避けるために、既知のシステム、デバイス、材料、動作方法、及び製造方法の説明は省略されてもよい。それにもかかわらず、当業者の視野内にあるシステム、デバイス、材料、及び方法は、本教示の範囲内であり、代表的な実施形態に従って使用され得る。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことを理解されたい。定義された用語は、本教示の技術分野において一般に理解され受け入れられている定義された用語の技術的及び科学的意味に追加される。
【0018】
[034] 第1、第2、第3などの用語は、様々な要素又は構成要素を説明するために本明細書で使用され得るが、これらの要素又は構成要素は、これらの用語によって限定されるべきではないことを理解されるであろう。これらの用語は、1つの要素又は構成要素を別の要素又は構成要素から区別するためにのみ使用される。したがって、以下で説明する第1の要素又は構成要素は、本発明の概念の教示から逸脱することなく、第2の要素又は構成要素と呼ぶことができる。
【0019】
[035] 本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していない。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形は、コンテキストが別段の明確な指示をしない限り、単数形及び複数形の両方を含むことが意図されている。さらに、用語「含む」、「備える」、及び/又は類似の用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除しない。本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」は、関連する列挙されたアイテムの1つ以上のアイテムの任意の及びあらゆる組み合わせを含む。
【0020】
[036] 特に断りのない限り、要素又は構成要素が、別の要素又は構成要素に「接続されている」、「結合されている」、又は「隣接している」と言われる場合、要素又は構成要素は、他の要素又は構成要素に直接接続又は結合することができ、あるいは介在する要素又は構成要素が存在し得ることが理解されるであろう。すなわち、これら及び同様の用語は、1つ以上の中間要素又は構成要素が2つの要素又は構成要素を接続するために使用され得る場合を包含する。しかしながら、要素又は構成要素が別の要素又は構成要素に「直接接続されている」と言われる場合、これは2つの要素又は構成要素が中間又は介在する要素又は構成要素なしに互いに接続されている場合のみを包含する。
【0021】
[037] 前述に鑑みて、本開示は、その様々な態様、実施形態、及び/又は特定の特徴又はサブコンポーネントのうちの1つ以上を通して、したがって、以下に具体的に述べるような利点のうちの1つ以上をもたらすことを意図している。限定ではなく説明の目的で、特定の詳細を開示する例示的な実施形態が本教示による実施形態の完全な理解を提供するために記載される。しかしながら、本明細書に開示する特定の詳細から逸脱する、本開示に矛盾しない他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内にある。さらに、既知の装置及び方法の説明は、例示的な実施形態の説明を曖昧にしないように省略されてもよい。このような方法及び装置は、本開示の範囲内である。
【0022】
[038] 本明細書で説明されるように、光学形状感知ファイバは、共通クラッド内に埋め込まれた数ミクロンのいくつかの単一モードファイバコアからなり、共通クラッドはジャケットによって囲まれる。共通クラッドは、分光測定のためのマルチモードファイバとして使用される。光学形状感知単一モードファイバコアの/そのための共通クラッドに光をトラップするために、外側ジャケットが、分光測定のためのマルチモードファイバとして使用される共通クラッドの/そのためのクラッドとして機能する。外側ジャケットは、共通クラッドの/そのためのクラッドとして機能するために、共通クラッドの屈折率よりも低い屈折率を必要とする。本明細書で提供される教示を使用して、光学形状感知及びスペクトル組織感知は、ガイドワイヤ又はカテーテルなどの可撓性の細長いデバイスに統合され、これにより、高い可撓性及び小さい曲げ半径を可能にする。
【0023】
[039] 図2は、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバを示す。
【0024】
[040] 図2において、光学形状感知ファイバ200は、クラッド220内に4つのFBGコア210を含む。4つのFBGコア210は、単一モードファイバコアであり、それぞれ、光学形状感知において光学形状感知ファイバ200の場所/位置を特定するために個々に使用される。クラッド220は、4つのFBGコア210などの単一モードファイバコアをクラッドするために一般的に使用されるタイプであってよく、また、本明細書では共通クラッドとみなして参照される。クラッド220は、ジャケット230内に示されており、したがって、ジャケット230は外側ジャケットとみなされる。光学形状感知ファイバ200は、製造品などの光学装置とみなされる。図2において、4つのFBGコアのそれぞれは、8μmなどの直径を有する。4つのFBGコアのいずれかの中心間の最も狭い間隔は、35μmなどの間隔である。クラッド220の直径は、約125μmである。ジャケット230の直径は、約200μmである。図2には4つのFBGコアが示されているが、一実施形態における最小要件は、共通クラッド、すなわちクラッド220内に少なくとも2つの単一モードファイバコアである。
【0025】
[041] 一実施形態では、光学形状感知ファイバ200は、1つの中心コアと、中心コアの周りに螺旋状に巻かれた3つの外側コアとを含む。一例として、3つの外側コアのねじれ率は、50巻回/メートル±5券回/メートルである。3つの外側コアから中心コアまでの典型的な距離は、35μmである。共通クラッドはシリカから成り、中心コア及び外側コアはGeOドープシリカから成る。ドーピングは、開口数が約0.21であり、3つの外側コア及び中心コアにおける付随するレイリー散乱が、標準的な電気通信ファイバに比べて6dB以上増強されるように、十分に高くすべきである。クラッドの典型的な直径は125μmである。光学形状感知のために、レイリー後方散乱信号を使用する。FBGは、信号レベルをブーストするために、中心コア及び外側コアに書き込まれてもよい。スペクトル組織感知の目的のために、ジャケット230は、シリカ製の共通クラッドの屈折率よりも低い屈折率を有するべきである。一実施形態では、ジャケット230が共通のクラッド上に引き出された後にFBGの書き込みを可能にするために、ジャケット230は紫外線スペクトルにおいて透明である。換言すれば、紫外線スペクトルにおいて透明であるジャケット230は、ジャケット230を通してFBGを描画することを可能にする。共通クラッドの屈折率は1.46である。波長1550nm付近で1.3335の屈折率を有し、200μmの厚さで95%/メートルの透過率を有することから、アモルファスフルオロポリマCYTOP(商標)をジャケット230に使用することができる。あるいは、約1.40の屈折率を有し、200μmの厚さで90%/メートルの透過率を有することから、シリコーンコーティングをジャケット230に使用してもよい。したがって、シリコーンコーティングで作られる場合に、ジャケット230を通してFBGを書き込むことができる。
【0026】
[042] 図3は、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバのための光学形状感知ファイバ装置を示す。
【0027】
[043] スペクトル組織サンプリングでは、光学カテーテルのファイバを光学コンソールに接続する。コンソールは、スペクトル組織サンプリングのために光を供給し、反射光を検出する2つの機能を行う。コンソールは、光学導波管などの光学ガイドを含んでもよい。図3において、コンソールからの光学ガイドは、マルチコアコンソールファイバ301として示されている。特定の実施形態では、コンソールは、シャッタが埋め込まれたハロゲン広帯域光源の形態の光源と、光検出器を有する介入デバイスの周りのスリーブとを含む。光学検出器は、400nm~1500nmなどの波長スペクトルの可視領域及び赤外領域に実質的にある波長を有する光を分解できる。マルチコアコンソールファイバ301は、光の送受信を可能にして拡散反射率測定を可能にする。
【0028】
[044] 組織特性を抽出するための機構として拡散反射分光法が上述されているが、拡散光トモグラフィのような他の光学的方法も、複数の光ファイバ、差分光路長分光法、蛍光及びラマン分光法(又はSORS:空間オフセットラマン分光法)を使用することによって使用できる。
【0029】
[045] コンソールはまた、測定されたスペクトルを、放出光及び検出光の各ペアについての組織状態を示す生理学的パラメータに変換するプロセッサを含んでもよい。
【0030】
[046] 図3において、マルチコアコンソールファイバ301は、図示するように、光学形状感知ファイバ装置を介してマルチコアセンサファイバ302に接続されている。光学形状感知ファイバ装置は、2つの屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)、すなわち、GRINレンズ341及びGRINレンズ342と、帯域通過を有するビームスプリッタ340と、レンズ349とを含む。帯域通過を有するビームスプリッタ340は、所定の通過帯域内の光を通過させ、右上から出力されるスペクトル光を反射し、右上から入力される広帯域光を含む他の光をマルチコアセンサファイバ302に向けて反射する。上向きに反射された光は、レンズ349を通過する。
【0031】
[047] 図示されていないが、マルチコアコンソールファイバ301及びマルチコアセンサファイバ302は、図2の光学形状感知ファイバ200及び図1Aの光ファイバ190の特性、素子及び/又は特徴のうちの1つ又はすべてを含む。つまり、マルチコアコンソールファイバ301及びマルチコアセンサファイバ302は、中心コア及び中心コアの周りに配置された周辺コアなどの複数のコアを含む。マルチコアセンサファイバ302の各コアは、マルチコアセンサファイバ302の形状を光学的に感知するのに役立つようにFBGを含んでもよい。
【0032】
[048] 図3のGRINレンズ341及びGRINレンズ342は、光学形状感知のための光入力結合(incoupling)デバイスの例である。光学形状感知において、コネクタ、スプライス及びファイバ端部からの反射光は、センサファイバに沿った各点から来る比較的弱い反射信号を圧倒することを回避するために最小限に抑えられるべきである。GRINレンズは、一般に、好ましいフォームファクタと可能な低反射とを組み合わせて、光ファイバネットワーク内又はファイバセンサ用のコネクタとして適切な接続を行う。GRINレンズは、光が空気-ガラス転移では屈折せず、半径方向に屈折率分布プロファイルで屈折するため、使用される。GRINレンズの特性を使用して、接続が確立された際のすべての空気からガラスへの転移を排除する。光学形状感知ファイバ及びGRINレンズは、融着接続、接着又は他のやり方で屈折率整合させて一緒に押し付けられる。
【0033】
[049] GRINレンズは、例えば「1/4ピッチ」長さで作られ、その結果、一組の平行ビームが光学形状感知ファイバのコアにおける焦点へとGRINレンズに入り、また、光学形状感知ファイバのコアにおける焦点からGRINレンズから出て行く。非常に類似した屈折率を有する何らかの余分な光学素子が導入される場合、平行ビームは、著しい後方反射なしに容易に通過する。その光学素子は、例えば窓である。図3において、光学素子は、帯域通過を有するビームスプリッタ340である。帯域通過を有するビームスプリッタ340の例としては、ダイクロイックミラー、偏光ビームスプリッタ、及び帯域通過スプリッタが挙げられる。図3において、帯域通過を有するビームスプリッタ340は、例えば、1545nmの光を透過するが、1400nmよりも短いすべての波長を反射する。追加のレンズ、GRINレンズ、光ファイバ又は他の光学部品を使用して、より短い波長の光をマルチコアセンサファイバ302の内側クラッド内に送り出すことができる。すべての素子間の良好な光学的接触が、屈折率整合接着剤によって、又は正しい屈折率のシリコーン箔などの圧縮性材料によって達成できる。
【0034】
[050] 図3に示す光路の代替として、1545nmの光を反射し、広帯域光を透過する異なるビームスプリッタを有する配置を構築することが、より実用的である。さらに、一実施形態では、ビームスプリッタが垂直な角度で配置された2つのポートを有する。別の実施形態では、ビームスプリッタが互いに垂直よりも大きいか又は小さい別の角度で配置された2つのポートを有する。
【0035】
[051] さらに、帯域通過を有するビームスプリッタ340上の帯域通過は、典型的には1520nm~1570nmである光学形状感知波長を透過し、他のすべての波長を反射する。帯域通過を有するビームスプリッタ340上の帯域通過が不完全であり、1520nm~1570nmの光の一部が反射される場合、反射光は、帯域通過を有するビームスプリッタ340上に終端を置くことによって吸収される。終端の例は、以下の実施形態で吸収材料として説明されている。
【0036】
[052] 図4Aは、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバのための別の光学形状感知ファイバ装置を示す。
【0037】
[053] 図4Aにおいて、マルチコアファイバ403がターミネータ450で終端している。ターミネータ450の反対側にあるレンズ443は、スペクトル組織感知(STS)のために光を集束又は脱集束する。ターミネータ450は、光学形状感知(OSS)ファイバ終端部であり、光学形状感知に使用される帯域幅の光を終端する。図示されていないが、マルチコアファイバ403は、図2の光学形状感知ファイバ200及び図1Aの光ファイバ190の特性、素子及び/又は特徴のうちの1つ又はすべてを含む。つまり、マルチコアファイバ403は、中心コア及び中心コアの周りに配置された周辺コアなどの複数のコアを含む。マルチコアファイバ403の各コアは、マルチコアファイバ403の形状を光学的に感知するのに役立つようにFBGを含んでもよい。
【0038】
[054] 図4Aの実施形態では、レンズ443は、組織内へのスペクトル組織感知光を平行にし、組織からの反射光を受け取るために使用される1つ以上のレンズを表す。
【0039】
[055] 図4Bは、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバのための別の光学形状感知ファイバ装置を示す。
【0040】
[056] 図4Bにおいて、マルチコアファイバ403はターミネータ450で終端しているが、ターミネータ450の反対側にはレンズ443又は他の光学素子が示されていない。ターミネータ450は、図4Aのターミネータ450であり、従って、光学形状感知に使用される帯域幅の光を終端する。ターミネータ450の反対側のスペクトル組織感知(STS)のための光は、任意の適切な態様で使用される。したがって、図4Bにレンズ又は他の光学素子がないことは、レンズ又は他の光学素子の禁止を意味するものではなく、むしろ、任意のレンズ又は他の適切な光学素子が図4Bにおけるターミネータ450の反対側に使用されてもよい。
【0041】
[057] 図4Cは、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバのための別の光学形状感知ファイバ装置を示す。
【0042】
[058] 図4A図4B及び図4Cの実施形態では、マルチコアファイバ403のコアは、2つ以上のFBGコアであってよい。図2の実施形態について先に説明したように、少なくとも1つの外側コアが、中心コアの周りに螺旋状に巻かれている。
【0043】
[059] 加えて、図4Cにおいて、マルチコアファイバ403はターミネータ450で終端している。ターミネータ450の反対側のミラー444が、スペクトル組織感知(STS)のために光を(下方に)反射する。ターミネータ450は、ここでも光学形状感知(OSS)ファイバ終端部であり、光学形状感知に使用される帯域幅の光を終端する。マルチコアファイバ403は、ここでも図4Aのマルチコアファイバ403であり、図2の光学形状感知ファイバ200及び図1Aの光ファイバ190の特性、素子及び/又は特徴のうちの1つ又はすべてを含む。
【0044】
[060] 上述の図4A図4B及び図4Cでは、ターミネータ450は様々な形態をとることができる。ターミネータ450は、光学形状感知ファイバとして使用されるマルチコアファイバ403の端部の光ターミネータである。ターミネータ450は、光学形状感知に使用される波長でマルチコアファイバ403の端部に到達する光が反射されず、かつ、透過しないことを確実にするために使用される。したがって、光吸収素子が、マルチコアファイバ403の遠位端にターミネータ450として取り付けられる。反射が確実にないように、ターミネータ450として使用される光吸収素子は、スペクトル組織感知に使用される光を吸収してはならない。したがって、ターミネータ450として使用される光吸収素子は、1545nm及び直ぐ周囲の波長の光のみを吸収すべきである。抑制は、1545nmで10万倍を超える抑制を伴ってもよい。このために、材料は、2つの特性、すなわち、
〇1545nm付近の吸収帯
〇可視光及び近赤外光、すなわち、400nm~1300nmでの十分な透明度
を有するべきである。
【0045】
[061] 上述したように、光学形状感知ファイバ200、マルチコアセンサファイバ302、及びマルチコアファイバ403は、共通クラッドに埋め込まれた数ミクロンのいくつかの単一モードファイバコアからなり、共通クラッドはジャケットによって囲まれる。共通クラッドは、分光測定のためのマルチモードファイバとして使用される。ジャケット230などの外側ジャケットは、共通クラッドに光をトラップするために、マルチモード共通クラッドのクラッドとして使用される。したがって、ジャケット230などの外側ジャケットは、共通クラッドの屈折率よりも低い屈折率を有する。
【0046】
[062] 上の図3の実施形態では、マルチコアセンサファイバ302への光の結合は、同時の光学形状感知及びスペクトル組織感知を可能にする。光学形状感知ファイバへの光の結合には、屈折率分布型(GRIN)レンズが使用される。すなわち、このGRINレンズによって光の束が光学形状感知ファイバのコアのサイズの小さなスポットにフォーカスされ、これにより光がコア内で結合される。ビームスプリッタを間に有するこれらのGRINレンズのうちの2つを使用することによって、光学形状感知に使用される光(典型的には1545nm)は、スペクトル組織感知に使用される広帯域光から分離される。
【0047】
[063] さらに、図4A図4B及び図4Cについて説明したように、光学形状感知ファイバの遠位端は、FBGを有するにコアに送り込まれた光を吸収する吸収材料で覆われている。これは、遠位ファイバ端部からの反射光が光学形状感知信号を妨害するのを防止する。光学形状感知ファイバのこの遠位端にビームスプリッタを使用することは有利ではないが、吸収材料で受け取られる光の1つ以上の帯域幅を終端するために使用される吸収材料の後に反射表面を使用することができる。レンズ又は他の光学素子(例えば、プリズム、散乱材料、偏光子、GRINレンズ)を有するビームスプリッタ(例えば、単純なミラー)が、光学形状感知ファイバから吸収材料の反対側に設けられてもよい。
【0048】
[064] 図5Aは、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための金金属錯体を示す。
【0049】
[065] 図5Aにおいて、中性金錯体が図4A図4B及び図4Cのターミネータ450として使用される材料である。図5Aの中性金錯体は、1545nm付近の帯域の光を吸収し、さもなければ、可視光及び近赤外光、すなわち、400nm~1300nmで十分に透過的である光吸収素子である。
【0050】
[066] 図5Bは、代表的な実施形態による、図5Aの光学形状感知及びスペクトル組織感知のための金金属錯体の吸収スペクトルを示す。
【0051】
[067] 図5Bにおいて、X軸は波長をナノメートル(nm)で表し、Y軸は吸光度を任意単位(a.u.)で表す。吸光度は、材料を通る透過放射パワーに対する入射の比率の常用対数によって決定できる。本明細書で説明される実施形態では、吸収材料は、400nm~1300nmで実質的に透過性であり、1535nm~1555nm、又はさらには1520nm~1570nmで実質的に吸収性であってよい。
【0052】
[068] 厚さ1mmの石英セル中に置かれた二硫化炭素(CS)中の金錯体の0.286mM溶液を用いた試験環境での測定値から得られた光吸収スペクトル(詳細は、G.Chatzikyakosらによる論文「Nonlinear optical response of a symmetrical Au dithiolene complex under ps and ns laser excitation in the infrared and the visible」、Chemical Physics Letters513(2011)229-235を参照)。図5Aの金錯体の吸収スペクトルは、1450~1550nmの領域で高い吸収を示し、600nm及び1200nm付近の関心の波長範囲で十分に透過的である。正確な調整が所望される場合、錯体の芳香族側鎖における化学変化は、1545nmの最大吸収波長をもたらす。
【0053】
[069] 図6A及び図6Bは、図5Aに示す金錯体などの金錯体の化学構造に対する最大吸収波長依存性の例である。
【0054】
[070] 図6Aは、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための1500nmの最大吸収波長を有する金金属錯体を示す。
【0055】
[071] 図6Aの化合物は、1500nmの最大吸収波長を示し、図5Aの金錯体を化学的に変化させて、より高い最大吸収波長をもたらす態様の一例である。
【0056】
[072] 図6Bは、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための1670nmの波長における最大吸収を有する金金属錯体を示す。
【0057】
[073] 図6Bの化合物は、1670nmの波長における最大吸収波長を示し、図5Aの金錯体を化学的に変化させて、より高い最大吸収波長をもたらす態様の別の例である。
【0058】
[074] 図7は、代表的な実施形態に従って光学形状感知及びスペクトル組織感知におけるスペクトル組織感知の方法が実施され得る、一般的なコンピュータシステムの例示的な実施形態である。
【0059】
[075] コンピュータシステム700は、コンピュータシステム700に、本明細書で開示する方法又はコンピュータベースの機能のうちの任意の1つ以上を行わせるために実行可能な命令セットを含み得る。コンピュータシステム700はスタンドアロンデバイスとして動作しても、又は、例えばネットワーク701を使用して、他のコンピュータシステム又は周辺デバイスに接続されてもよい。図7のコンピュータシステム700の要素及び特性のいずれか又はすべては、従来技術の光ファイバ190、図2の光学形状感知ファイバ200、図3のマルチコアセンサファイバ302、又は図4A図4B及び図4Cのマルチコアファイバ403を通過する光に基づいてスペクトル組織感知を行うために使用されるプロセッサを有する任意のシステムの要素及び特性を表すことができる。プロセッサを有する任意のそのようなシステムは、図7に示し、以下で説明する要素のいずれか又はすべてを有してよく、また、システムの性質に応じて追加の要素を有していてもよい。コンピュータシステム700は、本明細書で説明されるプロセスを行うコンピュータ化されたシステムを表す。
【0060】
[076] ネットワーク化された展開では、コンピュータシステム700は、サーバ-クライアントユーザネットワーク環境においてクライアントとして動作し得る。コンピュータシステム700はまた、コンソール、光学コンソール、コントローラ、パーソナルコンピュータ(PC)、又はそのマシンによってとられるべき動作を指定する命令セット(シーケンシャルなど)を実行することができる任意の他のマシンなど、様々なデバイスとして完全に又は部分的に実装されるか、又はその中に組み込まれ得る。コンピュータシステム700は、追加のデバイスを含む統合システム内にあるデバイスとして、又はデバイス内に組み込まれ得る。一実施形態では、コンピュータシステム700は、ビデオ又はデータ通信を提供する電子デバイスを使用して実装され得る。さらに、コンピュータシステム700が示されているが、「システム」という用語はまた、1つ以上のコンピュータ機能を行うために1つ以上の命令セットを個別に又は共同で実行するシステム又はサブシステムの任意の集合を含むものと解釈される。
【0061】
[077] 図7に示すように、コンピュータシステム700は、プロセッサ710を含む。コンピュータシステム700のプロセッサ710は、有形かつ非一時的である。本明細書で使用される場合、「非一時的」という用語は、状態の永続的な特性としてではなく、ある期間持続する状態の特性として解釈されるべきである。「非一時的」という用語は、任意の時点で一時的にしか存在しない搬送波若しくは信号又は他の形態など飛行特性を特に否定する。本明細書で説明される任意のプロセッサは、製造品及び/又は機械構成要素である。コンピュータシステム700のプロセッサは、本明細書の様々な実施形態に説明される機能を実行するために、ソフトウェア命令を実行する。コンピュータシステム700のプロセッサは、汎用プロセッサであっても、特定用途向け集積回路(ASIC)の一部であってもよい。コンピュータシステム700のプロセッサはまた、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサチップ、コントローラ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ステートマシン、又はプログラマブル論理デバイスであってもよい。コンピュータシステム700のプロセッサはまた、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのプログラマブルゲートアレイ(PGA)を含む論理回路、又はディスクリートゲート及び/又はトランジスタ論理を含む別のタイプの回路であってもよい。コンピュータシステム700のプロセッサは、中央処理装置(CPU)、グラフィックス処理ユニット(GPU)、又はその両方であってもよい。さらに、本明細書に説明される任意のプロセッサは、複数のプロセッサ、並列プロセッサ、又はその両方を含んでもよい。複数のプロセッサが、単一のデバイス又は複数のデバイスに含まれていても、結合されていてもよい。
【0062】
[078] さらに、コンピュータシステム700は、バス708を介して互いに通信可能なメインメモリ720及びスタティックメモリ730を含む。本明細書で説明されるメモリは、データ及び実行可能命令を格納することができ、命令が格納されている間は非一時的である有形の記憶媒体である。本明細書で使用される場合、「非一時的」という用語は、状態の永続的な特性としてではなく、ある期間持続する状態の特性として解釈されるべきである。「非一時的」という用語は、任意の時点で一時的にしか存在しない搬送波若しくは信号又は他の形態など飛行特性を特に否定する。本明細書で説明されるメモリは、製造品及び/又は機械構成要素である。本明細書で説明されるメモリは、データ及び実行可能命令をコンピュータによって読み取り可能であるコンピュータ可読媒体である。本明細書で説明されるメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、電気的にプログラム可能な読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラム可能な読み出し専用メモリ(EEPROM(登録商標))、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、テープ、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、フロッピー(登録商標)ディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、又は当技術分野で既知の任意の他の形態の記憶媒体であり得る。メモリは、揮発性又は不揮発性、セキュアか及び/又は暗号化されているか、アンセキュアか及び/又は暗号化されていなくてもよい。
【0063】
[079] 図示するように、コンピュータシステム700はさらに、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)、フラットパネルディスプレイ、ソリッドステートディスプレイ、又は陰極線管(CRT)などのビデオ表示ユニット750を含み得る。さらに、コンピュータシステム700は、キーボード/仮想キーボード、タッチセンシティブ入力画面又は音声認識を伴う音声入力などの入力デバイス760と、マウス、タッチセンシティブ入力画面又はパッドなどのカーソル制御デバイス770とを含み得る。コンピュータシステム700はまた、ディスクドライブユニット780、スピーカ又はリモート制御器などの信号生成デバイス790、及びネットワークインターフェースデバイス740も含み得る。
【0064】
[080] 一実施形態では、図7に示されるように、ディスクドライブユニット780は、1つ以上の命令セット784、例えばソフトウェアを埋め込み可能なコンピュータ可読媒体782を含み得る。命令セット784は、コンピュータ可読媒体782から読み取り可能である。さらに、命令784は、プロセッサによって実行されると、本明細書で説明される方法及びプロセスのうちの1つ以上を行うために使用できる。一実施形態では、命令784は、コンピュータシステム700による実行中に、メインメモリ720、スタティックメモリ730、及び/又はプロセッサ710内に完全に、又は少なくとも部分的に常駐していてもよい。
【0065】
[081] 代替実施形態では、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理アレイ、及び他のハードウェア構成要素などの専用ハードウェア実装形態を、本明細書で説明される方法のうちの1つ以上を実装するように構築できる。本明細書で説明される1つ以上の実施形態は、モジュール間及びモジュールを介して通信できる関連する制御信号及びデータ信号を有する2つ以上の特定の相互接続されたハードウェアモジュール又はデバイスを使用して機能を実装できる。したがって、本開示は、ソフトウェア、ファームウェア、及びハードウェア実装形態を包含する。本願の何れも、ソフトウェアのみで実施される又は実施可能であり、有形の非一時的プロセッサ及び/又はメモリのようなハードウェアではないと解釈されるべきではない。
【0066】
[082] 本開示の様々な実施形態によれば、本明細書で説明される方法は、ソフトウェアプログラムを実行するハードウェアコンピュータシステムを使用して実装され得る。さらに、例示的な非限定的な実施形態では、実装形態は、分散処理、構成要素/オブジェクト分散処理、及び並列処理を含み得る。仮想コンピュータシステム処理は、本明細書で説明される方法又は機能のうちの1つ以上を実装するように構築でき、また、本明細書で説明されるプロセッサは、仮想処理環境をサポートするために使用され得る。
【0067】
[083] 本開示は、ネットワーク701に接続されたデバイスがネットワーク701を介してビデオ又はデータを通信することができるように、命令784を含むか、又は伝搬された信号に応答して命令784を受信し、実行するコンピュータ可読媒体782を企図する。さらに、命令784は、ネットワークインターフェースデバイス740を介して、ネットワーク701を介して送受信され得る。
【0068】
[084] 図8は、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバのための光学形状感知ファイバシステムを使用するためのプロセスを示す。
【0069】
[085] 図8において、S810で、プロセスは共通クラッドで受け取った光の強度を測定することにより開始する。S815において、共通クラッドによって受け取った光にスペクトル組織サンプリングが行われる。
【0070】
[086] スペクトル組織サンプリングは、図3のマルチコアコンソールファイバ301に接続されたコンソールなど光学コンソールを介して行われる。介入医療機器のファイバは、GRINレンズ341、GRINレンズ342及び帯域通過を有するビームスプリッタ340で示される機構を介して、図3のマルチコアコンソールファイバ301に接続される。従って、介入医療機器のファイバは、光学コンソールに接続される。光学コンソールの光学ガイドは、光学導波管であり得る。光学ガイドは、放出された光を導く。反射光は、スペクトル組織サンプリングのために検出される。特定の実施形態では、光学コンソールは、シャッタが埋め込まれたハロゲン広帯域光源の形態の光源を含む。介入医療機器の周りのスリーブは、反射光を検出するための光学検出器を含み得る。光学検出器は、400nm~1500nmなどの波長スペクトルの可視領域及び赤外領域に実質的にある波長を有する光を分解できる。図3のマルチコアコンソールファイバ301及びマルチコアセンサファイバ302は、光の送受信を可能にして拡散反射率測定を可能にする。
【0071】
[087] 図7のプロセッサ710などのプロセッサは、測定されたスペクトルを、各線源-検出器ペアの組織状態を示す生理学的パラメータに変換する。図7のプロセッサ710などのプロセッサによって行われるアルゴリズムの一例は、以下のとおりである。
【0072】
[088] 生理学的パラメータを抽出するための例として使用されるアルゴリズムにおいて、取得されたスペクトルは、例えば、Matlab7.9.0(Mathworks、マサチューセッツ州ナティック)に基づくカスタマイズされたプログラムを使用して適合される。このアルゴリズムでは、広く受け入れられている分析モデル、すなわち、以下の文献に紹介されるモデルが実施され、この文献は、参考文献[1]として、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:
「Estimation of biological chromophores using diffuse optical spectroscopy: benefit of extending the UV-VIS wavelength range to include 1000 to 1600 nm」、R.Nachabe、B.H.W.Hendriks、M.V.D.Voort、A.E、及びH.J.C.M.Strenborg、Optics Express、第18巻、2010年、879-888頁。
【0073】
[089] 上記のモデルに入力される引数は、吸収係数、等価散乱係数、及び線源-検出器分離(SDS)としても知られる、プローブの先端における放出ファイバ及び収集ファイバ間の中心間距離である。拡散理論モデルの十分な説明のために、参考文献[2]として、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる以下の文献を参照されたい:
「A diffusion theory model of spatially resolved,steady-state diffuse reflectance for non-invasive determination of tissue optical properties」、T.J.Farrell、M.S.Patterson、及びB.C.Wilson、Med.Phys.19(1992年)879-888頁。
【0074】
[090] このモデルで使用される式は、主として、上記のNachabeらの研究だけでなく、参考文献[3]として、参照によりその全体が組み込まれる以下の文献の研究にも基づいている:
「Estimation of lipid and water concentrations in scattering media with diffuse optical spectroscopy from 900 to 1600 nm」、R.Nachabe、B.H.W.Hendriks、A.E.Desjardins、M.van der Voort、M.B.van der Mark、及びH.J.C.M.Sterenborg、J.Biomed.Opt.第15巻、第3号、37015-10頁、2010年。
【0075】
[091] 二重べき乗則関数を使用して等価散乱の波長依存性を記述することができ、ここで、波長λはnmで表され、λ0=800nmの波長値に正規化される。パラメータaは、この特定の波長における等価散乱の振幅に対応する。
【数2】
【0076】
[092] 式(1)において、等価散乱係数は、ミー散乱とレイリー散乱との和として表され、ここで、ρMRは、ミー対全体の等価散乱比である。ミー散乱の等価散乱の傾きはbと示され、粒径に関係する。
【0077】
[093] 均一な分布の吸収体では、全光吸収係数を、吸収体の体積分率と減光係数との積として計算できる(図10A参照):
【数3】
【0078】
[094] 吸収係数μα(λ)を、4つの関心の発色団の各濃度によって重み付けされた吸収係数の和としてモデル化する代わりに、組織吸収係数は、以下のように表される:
【数4】
[095]ここで、
【数5】
は、血液による吸収に対応し、
【数6】
は、探査される体積中の水及び脂質の両方による吸収に対応する。水及び脂質の体積分率は、VWL=[Lipid]+[HO]であるのに対して、VBloodは、150mg/mlの全血液中のヘモグロビン濃度に対する血液の体積分率を表す。
【0079】
[096] 係数Cは、色素パッケージング(pigment packaging)の効果を考慮に入れる波長依存性補正係数であり、吸収スペクトルの形状に応じて変化する。この効果は、組織中の血液は全体の体積の非常に小さな割合、すなわち血管に限定されるという事実によって説明することができる。したがって、血管の中心に近い赤血球は、周辺部における赤血球よりも光を吸収しにくい。実際には、組織内に均一に分布されると、より少ない数の赤血球が、個別の血管内に分布する実際の数の赤血球と同じ吸収を生じる。この補正係数は、次のように表すことができる:
【数7】
[097]ここで、Rは、cmで表される血管の平均半径を示す。血液に関係する吸収係数は、次のように与えられる:
【数8】
【0080】
式(5)において、
【数9】
及び
【数10】
は、それぞれ、酸化ヘモグロビンHbO及び脱酸素化ヘモグロビンHbの基本減光係数スペクトルを表す。ヘモグロビンの総量中の酸化ヘモグロビンの割合は、αBL=[HbO]/([HbO]+[Hb])と記され、血液酸素飽和率として一般に知られている。測定される組織中の水及び脂質の存在による吸収は、次のように定義される:
【数11】
【0081】
[098] この場合、脂質及び水の総濃度に対する脂質の濃度は、αWF=[Lipid]/([Lipid]+[HO])と書くことができ、ここで、[Lipid]及び[HO]は、それぞれ、脂質(0.86g/mlの密度)及び水の濃度に対応する。
【0082】
[099] 水及び脂質の体積分率を別個に推定するのではなく、式(6)に定義された吸収係数の式において水及び脂質のパラメータを関連付けるこのやり方は、適合のための基本関数の共分散を最小限に抑え、より安定した適合をもたらす。
【0083】
[0100] また、図8において、S820で、各単一モードファイバコアを介して受け取った光が測定される。S820において各単一モードファイバコアから測定された光に基づいて、S825において、光学形状感知が行われる。プロセスはS830で終了する。
【0084】
[0101] 図8において、スペクトル組織感知及び光学形状感知を並行して行い得ることが明らかであり、これは、本明細書で説明される統合された二重用途のファイバの使用からもたらされる。すなわち、スペクトル組織感知及び光学形状感知は、同時に行う必要も、同じプロセッサによって行う必要さえないが、これらを同時に及び/又は同じプロセッサによって行うことができる。
【0085】
[0102] 図9は、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知のための2つの統合型ファイバの配置を示す。
【0086】
[0103] スペクトル組織感知を用いて組織特性を定量化するために、放出及び収集OSS-STSファイバ960間の距離は既知でなければならない。この距離は、線源-検出器分離(SDS)として知られている。さらに、放出及び収集OSS-STSファイバ960間の角度、及び組織に対する角度もまた既知でなければならない。角度は、ファイバ形状として知られている。ほとんどのスペクトル組織感知用途では、放出及び収集OSS-STSファイバ960の両方を含む単一のプローブが使用される。プローブが構築されると、OSS-STSファイバ960間の距離を測定できる。しかしながら、特に、カテーテルなどのプローブのための自然のチャネルが非常に小さい組織を測定することを目的とする場合、放出及び収集OSS-STSファイバ960の位置決めについて、より可撓性を有することが有利である用途があり得る。すなわち、可撓性は、小さい気道又は血管の存在下で有利であり得る。1つのOSS-STSファイバ960が放出ファイバとして使用され、別のOSS-STSファイバ960が収集ファイバとして使用される場合、両方のファイバの正確な位置は、形状感知から決定され得、この情報は、組織特性を計算する際に、スペクトル組織感知アルゴリズムに供給され得る。この原理は、組織を通る光の反射率及び透過率の両方に適用される。図9において、この概念が反射率モードについて示されている。透過率モードでは、収集ファイバは組織の反対側にある。
【0087】
[0104] 他の実施形態では、2つのOSS-STSファイバ960間の線源-検出器分離は、光学形状感知情報から導出されたデバイス姿勢を使用して決定できる。少なくとも2つのOSS-STSデバイスがあり、一方がスペクトル組織感知(STS)光を放出し、他方がSTS光を収集すると仮定すると、OSS-STSデバイス間の正確な距離を取得及び使用して、組織特性を適切に定量化できる。すなわち、2つのOSS-STSデバイス間の角度及びそれらの間の距離を使用して組織特性を導出でき、これらは、光伝播アルゴリズムの入力パラメータとして使用される。
【0088】
[0105] 上述のように、図10Aは、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知における血液、水、及び脂肪の吸収スペクトルの対数プロットを示す。具体的には、本明細書で説明されるアルゴリズムでは、均一な分布の吸収体を得るために、全光吸収係数を、吸収体の体積分率と減光係数との積として計算できる。
【0089】
[0106] スペクトルの差を識別する別のやり方は、主成分分析法を利用することによる。この方法は、スペクトルの差の分類を可能にし、したがって、組織間の識別を可能にする。スペクトルから特徴を抽出することもできる。
【0090】
[0107] 拡散反射とは別に、蛍光を測定することができる。この場合、図10Bに示されるように、例えば、コラーゲン、エラスチン、NADH及びFADのようなパラメータもまた測定することができる。特に、光学レドックスパラメータと呼ばれるNADH/FAD比は、組織の代謝状態の指標であるため、興味深い。これは、M.Muller及びB.H.W.Hendriksによる「Recovering intrinsic fluorescence by Monte Carlo modeling」(Biomed.Opt.、第18巻、第2号、27009-13頁、2013年)において説明されており、がん細胞の有効な治療により変化すると考えられる。
【0091】
[0108] 上述のように、図10Bは、代表的な実施形態による光学形状感知及びスペクトル組織感知におけるコラーゲン、エラスチン、NADH及びFADの固有蛍光曲線を示す。
【0092】
[0109] 光学形状感知及びスペクトル組織感知を使用するためのさらなる例は、以下のとおりである。第1の例のコンテキストとして、典型的には、スペクトル組織サンプリングセットアップにおいて、一度に単一の点のみが測定される。しかしながら、いくつかの臨床用途では、従来のスペクトル組織サンプリングと同じ解像度で、より大きな視野を有する画像を得ることが有利であり得る。これを行う1つのやり方は、
〇単一の点プローブを使用して組織をスキャンし、
〇各場所における点を取得し、
〇後処理を行って、各点測定値が画像内のピクセルである画像を形成することによる。
【0093】
この例では、これらのスキャンを行うために正確なセットアップが必要であるか、又は光学形状感知を使用して、各測定の正確な場所を決定できる。これらの正確な位置は、画像を再構成する際に使用できる。これは、正視(en-face)イメージング、回転イメージング、又は透過照明イメージングのいずれかに使用することができる。
【0094】
[0110] 実施形態では、スペクトル組織感知における使用のために構成された光学形状感知ファイバを使用して、様々な異なる目的を達成できる。例えば、光学形状感知ファイバを使用して、組織特性と共に介入医療機器の位置を特定できる。この結果、両方の機能に光学形状感知ファイバを使用して、関心領域の3Dマップが得られる。光学的形状感知データから機器の3D座標が得られる。3D座標は、機器の長さに沿った座標及び機器の先端における座標を含み得る。スペクトル組織感知は、各サンプリング点における組織特性の知識を提供する。3D座標とサンプリングされたデータ点とを一致させることにより、関心領域の組織特性の3Dマップを作成できる。この3Dマップは、スペクトル組織感知技術の感知深さに基づく~1cmの深さの詳細を提供する一方で、表面積は、関心領域の表面に沿ってサンプリングされた点の数によってのみ制限される。さらに、結果として得られる3D組織特性マップはさらに、医用画像に位置合わせされてもよい。例えば、一例として、医用画像を3D組織特性マップと融合させて、さらなる解剖学的コンテキストを提供できる。
【0095】
[0111] 別の例では、スペクトル組織サンプリングスペクトルからヘモグロビン濃度を適切に抽出することは、血管充填率を含めることを必要とする。血管充填率は、血液は、血管を通って流れ、組織全体にランダムに分散されるわけではないという事実を考慮する。他の吸収体も、この「色素」充填率を利用する。別の話として、いくつかの報告書では、プローブの圧力がヘモグロビン及び他の吸収体がスペクトル組織サンプリングスペクトルから抽出される精度に影響を及ぼし得ることが示されている。これの1つの理由は、かなりの圧力が加えられると血液が血管から押し出されて、圧力がほとんど又はまったく加えられていないときよりも、探査体積内のヘモグロビンがはるかに少なくなるからである。この場合、血管が動いてしまっているので、血管充填率及びヘモグロビンの抽出は正確ではない。この例では、光学形状感知を使用して、コア内の軸方向の歪みを介してファイバに加えられる圧力を測定できる。光学形状感知から得られる軸方向歪み(したがって、力/圧力)を使用して、組織特性を導出するSTSアルゴリズムにおける血管充填率を補正できる。スペクトル組織サンプリングスペクトルを同時に取得しながら、光学形状感知を介して軸方向歪みを測定することは、ヘモグロビン濃度だけでなく他の吸収体の濃度を抽出するための機構(例えば、アルゴリズム)の改善につながり得る。
【0096】
[0112] さらに別の例では、光学形状感知ファイバはまた、温度変化を測定することもできる。例えば、組織が加熱又は冷却される焼灼手順では、焼灼手順中に組織の変化を知ることは、より良い/より最適な転帰をもたらし得る。現在、医師は、組織や処置中の焼灼に対するその反応についてのフィードバックがほとんどなく、これは、健康な組織の急性又は永久的な損傷をもたらす可能性がある。光学形状感知による温度測定と、スペクトル組織サンプリングによる定量的組織特徴付けとの組合せは、焼灼処置中の組織変化のモニタリングを改善できる。この例では、スペクトル組織サンプリングを使用して、組織中の脂肪、水、及び血液の割合など、組織に関する情報を導出することができ、光学形状感知は、温度を決定することによって、又は軸方向歪み又はねじれデータから、機器に加えられている力を推測することによって、組織に関する情報を提供できる。両方の技術から得られた組織特性及び組織情報を組み合わせることにより、臨床的意思決定を改善できる。例えば、組織が加熱又は冷却される焼灼処置において、局所組織の温度及び血液含有量の変化の両方を知ることは、焼灼の持続時間を決定するために、又は焼灼をいつ停止するかを決定するために使用され得る。
【0097】
[0113] したがって、光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバは、単一の外側ジャケット内などの単一の装置内で、形状感知能力及び組織感知能力両方を有する高度に可撓性の機器を使用することによって、最小限の侵襲的介入を可能にする。
【0098】
[0114] いくつかの例示的な実施形態を参照して、光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバについて説明したが、使用された用語は限定の用語ではなく、説明及び例示の用語であることが理解される。光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバの範囲及び精神から逸脱することなく、その態様において、現在述べられているように及び修正されたように、添付の特許請求の範囲内で変更を行うことができる。特定の手段、材料、及び実施形態を参照して、光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバについて説明したが、光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバは、開示された詳細に限定されることを意図するものではなく、むしろ、光学形状感知及びスペクトル組織感知のための統合型ファイバは、添付の特許請求の範囲内にあるすべての機能的に同等の構造、方法、及び使用に及ぶ。
【0099】
[0115] 本明細書で説明される実施形態の例示は、様々な実施形態の構造の一般的な理解を提供することを意図している。これらの例示は、本明細書で説明される開示の要素及び特徴のすべての完全な説明として役割を果たすことを意図したものではない。多くの他の実施形態は、本開示を検討した当業者には明らかであろう。本開示の範囲から逸脱することなく、構造的及び論理的な置換及び変更を行うことができるように、他の実施形態を本開示から利用し、導出してもよい。さらに、例示は単に代表的なものであり、正確な縮尺率で描かれてはいない。図面におけるいくつかの比率は強調されている一方で、他の比率は縮小されている。したがって、開示及び図面は、限定的ではなく例示的であると見なされるべきである。
【0100】
[0116] 本開示の1つ以上の実施形態は、本明細書では、単に便宜上、かつ本出願の範囲を任意の特定の発明又は発明概念に自発的に限定することを意図することなく、「発明」という用語によって、個別に及び/又は集合的に言及され得る。さらに、本明細書では特定の実施形態を図示し、説明したが、同じ又は同様の目的を達成するように設計された任意の後続の配置が示された特定の実施形態の代わりに使用されてもよいことを理解されたい。本開示は、様々な実施形態の任意の及びすべての後続の適合又は変形を包含することが意図される。上記の実施形態と本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態との組み合わせは、説明を検討した当業者には明らかになるであろう。
【0101】
[0117] 本開示の要約は、米国特許法施行規則第1.72条第(b)項を遵守するために提供され、かつ、請求項の範囲又は意味を解釈又は限定するために使用されないという理解をもって提出される。さらに、前述の詳細な説明では、開示を合理化する目的で、様々な特徴は1つのグループにまとめるか、又は単一の実施形態で説明され得る。本開示は、特許請求される実施形態が各請求項に明示的に列挙されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、本発明の主題は、開示される実施形態のいずれかの特徴のすべてよりも少ないものを対象とし得る。したがって、以下の請求項は、各請求項自体が特許請求される主題を別個に定義するものとして、詳細な説明に組み込まれる。
【0102】
[0118] 開示された実施形態の前述の説明は、当業者が本開示に記載された概念を実施することを可能にするために提供される。したがって、上記で開示された主題は、限定的ではなく例示的であると見なされるべきであり、添付の請求項は、本開示の真の精神及び範囲内にある、すべてのそのような修正、強調、及び他の実施形態を包含することが意図される。したがって、法律で認められる最大限の範囲において、本開示の範囲は、以下の請求項及びそれらの等価物の最も広い許容可能な解釈によって決定されるものであり、前述の詳細な説明によって制限又は限定されるものではない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
【手続補正書】
【提出日】2023-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側ジャケットと、
前記外側ジャケット内にありスペクトル測定用のマルチモード光伝送ファイバとして使用される共通クラッドであって、前記外側ジャケットが、前記共通クラッドをクラッドする、共通クラッドと、
前記共通クラッド内にある複数の単一モードファイバコアであって、前記共通クラッドが、前記複数の単一モードファイバコアをクラッドする複数の単一モードファイバコアと、
を含む、光学装置。
【請求項2】
医療用又は介入医療用の光学装置である、請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記共通クラッド内の前記複数の単一モードファイバコアは、1つの中心コア、及び、前記1つの中心コアの周りに螺旋状に巻かれた少なくとも1つの外側コアを有する、少なくとも2つの単一モードファイバコアを含む、請求項1又は2に記載の光学装置。
【請求項4】
各単一モードファイバコアは、対応する光ファイバブラッグ格子を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項5】
前記共通クラッドの屈折率は、前記外側ジャケットの屈折率よりも高い、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項6】
前記複数の単一モードファイバコアは、光学形状感知に使用される光を伝送する光学形状感知ファイバである、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項7】
記共通クラッドは、スペクトル組織感知に使用される光を伝送する、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項8】
前記複数の単一モードファイバコアに光を集束させる第1のレンズをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項9】
前記第1のレンズは、GRINレンズを含む、請求項に記載の光学装置。
【請求項10】
前記複数の単一モードファイバコアに光を集束させる第2のレンズと、
前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間に配置され、光学形状感知に使用される第1の光を、スペクトル組織感知に使用される第2の光から分離するビームスプリッタと、
をさらに含む、請求項8又は9に記載の光学装置。
【請求項11】
前記複数の単一モードファイバコア、前記共通クラッド及び前記外側ジャケットの端部に適用され、光学形状感知に使用される波長の第1の光を実質的にキャプチャし、第2の光を実質的に透過する吸収材料をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項12】
前記吸収材料は、400nm~1300nmの間で実質的に透過的であり、1535nm~1555nmで実質的に吸収性である、請求項11に記載の光学装置。
【請求項13】
命令を格納するメモリと、
前記命令を実行するプロセッサと、
請求項1~12のいずれか1項に記載の光学装置と、
を含み、
前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、光学システムに、前記共通クラッドを通過する光に基づいてスペクトル組織感知を行うことを含むプロセスを実行させる、光学システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
[0118] 開示された実施形態の前述の説明は、当業者が本開示に記載された概念を実施することを可能にするために提供される。したがって、上記で開示された主題は、限定的ではなく例示的であると見なされるべきであり、添付の請求項は、本開示の真の精神及び範囲内にある、すべてのそのような修正、強調、及び他の実施形態を包含することが意図される。したがって、法律で認められる最大限の範囲において、本開示の範囲は、以下の請求項及びそれらの等価物の最も広い許容可能な解釈によって決定されるものであり、前述の詳細な説明によって制限又は限定されるものではない。
以下、本願発明の各種形態を付記する。
(付記1)
外側ジャケットと、
前記外側ジャケットが共通クラッドをクラッドするように、マルチモードファイバとして使用される前記外側ジャケット内にある前記共通クラッドと、
前記共通クラッドが複数の単一モードファイバコアをクラッドするように前記共通クラッド内にある前記複数の単一モードファイバコアと、
を含む、光学装置。
(付記2)
前記共通クラッド内の前記複数の単一モードファイバコアは、1つの中心コア、及び、前記1つの中心コアの周りに螺旋状に巻かれた少なくとも1つの外側コアを有する、少なくとも2つの単一モードファイバコアを含む、付記1に記載の光学装置。
(付記3)
各単一モードファイバコアは、対応する光ファイバブラッグ格子を含む、付記1に記載の光学装置。
(付記4)
前記共通クラッドの屈折率は、前記外側ジャケットの屈折率よりも高い、付記1に記載の光学装置。
(付記5)
前記複数の単一モードファイバコアは、光学形状感知に使用される光を伝送し、
前記共通クラッドは、スペクトル組織感知に使用される光を伝送する、
付記1に記載の光学装置。
(付記6)
前記複数の単一モードファイバコアに光を集束させる第1のレンズをさらに含む、付記1に記載の光学装置。
(付記7)
前記第1のレンズは、GRINレンズを含む、付記6に記載の光学装置。
(付記8)
前記複数の単一モードファイバコアに光を集束させる第2のレンズと、
前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間に配置され、光学形状感知に使用される第1の光を、スペクトル組織感知に使用される第2の光から分離するビームスプリッタと、
をさらに含む、付記6に記載の光学装置。
(付記9)
前記複数の単一モードファイバコア、前記共通クラッド及び前記外側ジャケットの端部に適用され、光学形状感知に使用される波長の第1の光を実質的にキャプチャし、第2の光を実質的に透過する吸収材料をさらに含む、付記1に記載の光学装置。
(付記10)
前記吸収材料は、400nm~1300nmの間で実質的に透過的であり、1535nm~1555nmで実質的に吸収性である、付記9に記載の光学装置。
(付記11)
命令を格納するメモリと、
前記命令を実行するプロセッサと、
外側ジャケットと、
前記外側ジャケットが共通クラッドをクラッドするように、マルチモードファイバとして使用される前記外側ジャケット内にある前記共通クラッドと、
前記共通クラッドが複数の単一モードファイバコアをクラッドするように前記共通クラッド内にある前記複数の単一モードファイバコアと、
を含み、
前記命令は、前記プロセッサによって実行されると、光学システムに、前記共通クラッドを通過する光に基づいてスペクトル組織感知を行うことを含むプロセスを実行させる、光学システム。
(付記12)
各単一モードファイバコアは、対応する光ファイバブラッグ格子を含み、
前記複数の単一モードファイバコアは、光学形状感知に使用される光を伝送し、
前記共通クラッドは、スペクトル組織感知に使用される光を伝送する、付記11に記載の光学システム。
(付記13)
前記複数の単一モードファイバコアに光を集束させる第1のレンズをさらに含む、付記11に記載の光学システム。
(付記14)
前記複数の単一モードファイバコアに光を集束させる第2のレンズと、
前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間に配置され、光学形状感知に使用される第1の光を、スペクトル組織感知に使用される第2の光から分離するビームスプリッタと、
をさらに含む、付記13に記載の光学システム。
(付記15)
前記外側ジャケット、前記共通クラッド及び前記複数の単一モードファイバコアの端部に適用され、光学形状感知に使用される波長の第1の光を実質的にキャプチャし、第2の光を実質的に透過する吸収材料をさらに含む、付記13に記載の光学システム。
(付記16)
前記吸収材料は、400nm~1300nmの間で実質的に透過的であり、1535nm~1555nmで実質的に吸収性である、付記15に記載の光学システム。
【外国語明細書】