(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023208
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】肺炎の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/688 20060101AFI20240214BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/133 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/575 20060101ALI20240214BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240214BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240214BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20240214BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20240214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K31/688
A61K9/127
A61K9/133
A61K31/575
A61K45/00
A61K47/24
A61K47/28
A61P11/00
A61P31/04
A61P31/06
A61P39/02
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023187144
(22)【出願日】2023-10-31
(62)【分割の表示】P 2020555819の分割
【原出願日】2019-04-16
(31)【優先権主張番号】18167848.3
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519312670
【氏名又は名称】コンビオシン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アゼレード ダ シルヴェイラ ラジョニアス, サマレ
(72)【発明者】
【氏名】ラジョニアス, フレデリク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒト患者の肺炎の補助的治療に使用するための組成物を提供する。
【解決手段】空のリポソームの混合物を含む、好ましくはそれからなる組成物であって、前記空のリポソームの混合物は、(a)コレステロールを含む第1の空のリポソームであって、コレステロールの量が、少なくとも30%(重量あたりの重量)である、第1の空のリポソームと、(b)スフィンゴミエリンを含む第2の空のリポソームと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者の肺炎の補助的治療に使用するための、空のリポソームの混合物を含む、好ましくはそれからなる組成物であって、前記空のリポソームの混合物は、
(a)コレステロールを含む第1の空のリポソームであって、コレステロールの量が少なくとも30%(重量あたりの重量)である、第1の空のリポソームと、
(b)スフィンゴミエリンを含む第2の空のリポソームであって、好ましくは脂質成分として前記スフィンゴミエリンのみを含む、第2の空のリポソーム(b)と、を含み、好ましくはそれらからなり、
好ましくは前記肺炎が、ヒト患者の市中感染性肺炎(CAP)、入院感染性肺炎(Hospitalization Acquired Pneumonia)(HAP)および人工呼吸器関連肺炎(VAP)から選択される、組成物。
【請求項2】
前記空のリポソーム(a)のコレステロールの量が、45%~55%(重量あたりの重量)であり、前記第2の空のリポソーム(b)が、スフィンゴミエリンからなる、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記第1の空のリポソーム(a)が、コレステロールおよびスフィンゴミエリンからなり、前記空のリポソーム(a)のコレステロールの量が、約50%(重量あたりの重量)であり、前記空のリポソームの混合物が、少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%(重量あたりの重量)の、前記第1の(a)および前記第2の(b)の空のリポソームを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記第1の空のリポソーム(a)が、前記第1の空のリポソームと前記第2のリポソームとの1:1(重量あたりの重量-w/w)の混合物からなり、前記第1の空のリポソームが、1:1の重量比(1:1 w/w、35:65のモル比)のコレステロールとスフィンゴミエリンで構成され、前記第2の空のリポソームが、スフィンゴミエリンだけで構成され、前記第1の空のリポソーム(a)が、脂質成分として前記コレステロールおよび前記スフィンゴミエリンのみを含み、前記第2の空のリポソーム(b)は、脂質成分として前記スフィンゴミエリンのみを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記肺炎が市中感染性肺炎(CAP)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記肺炎が重症肺炎であり、好ましくは前記重症肺炎が、重症市中感染性肺炎(sCAP)および重症市中感染性肺炎球菌肺炎(sCAPP)から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記肺炎が好ましくは重症肺炎であり、前記肺炎が、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、レジュネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumanii)、ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記肺炎が、ストレプトコッカス・ニューモニエによって引き起こされる、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記治療が、抗生物質療法に対して補助的である、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記抗生物質療法が、静脈内(IV)または経口抗生物質療法である、請求項9に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記組成物が、第1の用量および第2の用量の、少なくとも2回の用量で投与され、前記第1の用量と前記第2の用量との間隔が6~96時間、好ましくは12~72時間、さらに好ましくは24~48時間、よりさらに好ましくは24時間または48時間である、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記組成物が、静脈内投与用の溶液の形態で投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記組成物が、少なくとも2回の用量で投与され、第1の用量が前記抗生物質療法、好ましくはIV抗生物質療法の開始後24時間以内に投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記肺炎、好ましくは前記重症肺炎、さらに好ましくは前記sCAPが、入院、好ましくは集中治療室(ICU)での前記患者の入院を必要とし、前記治療は抗生物質療法に対して補助的であり、前記補助的治療は、そのような治療が行われない場合の入院と比較して、前記入院の期間を短縮する、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記補助的治療による前記入院期間の前記短縮が、少なくとも1日、好ましくは2日、さらに好ましくは3日、よりさらに好ましくは4日、よりさらに好ましくは5日、よりさらに好ましくは6日、よりさらに好ましくは7日である、請求項14に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
前記肺炎、好ましくは前記重症肺炎、さらに好ましくは前記sCAPが、そのような補助的治療が行われない場合、好ましくは前記抗生物質療法に補助的なそのような治療が行われない場合と比較して、より短時間で治癒する、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
前記より短時間での治癒が、そのような補助的治療が行われない場合、好ましくは前記抗生物質療法に補助的なそのような治療が行われない場合と比較して、少なくとも1日短時間、好ましくは2日短時間またはさらに好ましくは少なくとも3日短時間である臓器機能の正常化によって表される、請求項16に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
前記より短時間での治癒が、そのような補助的治療が行われない場合、好ましくは前記抗生物質療法に補助的なそのような治療が行われない場合と比較して、少なくとも1日短時間、好ましくは2日短時間またはさらに好ましくは少なくとも3日短時間である血液炎症マーカー、好ましくはCRPおよび/またはPCTおよび/またはIL-6の正常化によって表される、請求項16~17のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
前記より短時間での治癒が、そのような補助的治療が行われない場合、好ましくは前記抗生物質療法に補助的なそのような治療が行われない場合と比較して、少なくとも1日短時間、好ましくは2日短時間またはさらに好ましくは少なくとも3日短時間であるSOFAスコアの低下によって表される、請求項16~18のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項20】
前記より短時間での治癒が、そのような補助的治療が行われない場合、好ましくは前記抗生物質療法に補助的なそのような治療が行われない場合と比較して、少なくとも1日短時間、好ましくは2日短時間またはさらに好ましくは少なくとも3日短時間であるAPACHE IIスコアの低下によって表される、請求項16~19のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項21】
前記肺炎、好ましくは前記重症肺炎、さらに好ましくは前記sCAP、よりさらに好ましくは前記sCAPPの前記治療が、前記組成物の最初の投薬の8日後、好ましくは前記組成物の最初の投薬の7日後、さらに好ましくは前記組成物の最初の投薬の投与の6日後、よりさらに好ましくは前記組成物の最初の投薬の5日後に前記患者の前記SOFAスコアを少なくとも40%低下させる、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項22】
前記肺炎、好ましくは前記重症肺炎、さらに好ましくは前記sCAP、よりさらに好ましくは前記sCAPPの前記治療が、前記組成物の最初の投薬の8日後、好ましくは前記組成物の最初の投薬の6日後、さらに好ましくは前記組成物の最初の投薬の5日後、よりさらに好ましくは前記組成物の最初の投薬の4日後に前記患者の前記APACHE IIスコアを少なくとも20%低下させる、請求項1~21のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト患者の肺炎の補助的治療に使用するための、空のリポソームの混合物を含む組成物に関し、該空のリポソームの混合物は、(a)コレステロールを含む第1の空のリポソームであって、コレステロールの量は、少なくとも30%(重量あたりの重量)である第1の空のリポソームと、(b)スフィンゴミエリンを含む第2の空のリポソームと、を含む。
【背景技術】
【0002】
肺炎と重症肺炎に対する今日の最も困難な問題は、耐性菌の驚異的な増加と、最善のケアにもかかわらず、許容できないほど高い率の治療の失敗と死亡率である。抗菌薬耐性は保険医療と経済に世界的な脅威をもたらし、薬剤耐性を克服するための新しい治療戦略と抗生物質の代替品が緊急に必要とされている(O’Neill,J.,Review on Antimicrobial Resistance(2014)、Bush,K.et al.Nature reviews.Microbiology 9,894-896(2011))。新しい抗生物質の性能を遡及的に概観すると、単独では治癒率を大幅に改善することおよび/または死亡率を低下させることができないことが明らかになった(Azeredo da Silveira,S.and Perez,A.Expert Rev Anti Infect Ther 15,973-975(2017))。
【0003】
肺炎の集中治療室(ICU)患者は依然として予後が悪く、長期的で治療が困難な結果に苦しむ可能性がある。最も一般的な原因となる病原体であるストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)による例として、重症肺炎球菌肺炎に罹患している成人ICU患者の死亡率は、最善の治療と適切な抗生物質療法にもかかわらず、依然として40%に達する可能性がある (Welte,T.,et al.,Thorax 67,71-79(2012)、Torres,A.Community Acquired Infection 1,1(2017))。ストレプトコッカス・ニューモニエは、最も頻繁に同定されている市中感染細菌性肺炎の病原体であり、その重篤な形態は高い罹患率と死亡率に関連している(Blasi,F.,et al.Clinical microbiology and infection:The official publication of the European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases 18 Suppl 5,7-14(2012)。肺炎球菌ワクチンなどの予防策や現在の医療(主に抗生物質療法、単独または併用での)にも関わらず、追加の治療オプションに対する明確な満たされていない医療ニーズがある(Vernatter,J.and Pirofski,L.A.,Current opinion in infectious diseases 26,277-283(2013); Lucas,R.et al.Toxins 5,1244-1260(2013))。スタフィロコッカス・アウレウス菌血症は、1990年代以降、20%の30日死亡率と持続的に関連付けられており(Van Hal,S.J.et al.,Clinical microbiology reviews 25,362-386(2012))、およびメチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)に感染したICU患者の死亡率は、メチシリン感受性スタフィロコッカス・アウレウス(MSSA)感染で予想されるものよりも50%高い(Hanberger,H.et al.,International journal of antimicrobial agents 38,331-335(2011))。院内感染および人工呼吸器関連肺炎の最も頻繁な原因菌の1つになっており、嚢胞性線維症または慢性閉塞性肺疾患の患者の罹患率の主な原因である、多剤耐性シュードモナス・エルギノーサによる死亡率は、35%を超える(Ramirez-Estrada,S.,et al.Infect Drug Resist 9,7-18(2016))。
【0004】
例えば、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumanii)、ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、またはマイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)のような、他の細菌も呼吸器感染症を引き起こし、疾患を重症化させ、合併症を引き起こす病原性因子を生成する可能性がある。
【0005】
細菌の病原性因子は、宿主においてコロニー形成と増殖を促進し、組織の障壁を破壊し、組織への浸透と細菌の伝播を促進し、病原体に対する宿主の免疫防御を妨げる(Los,F.C.,et al.MMBR 77,173-207(2013))。細菌毒素の放出に起因する炎症誘発性および抗炎症性カスケードは、患者を致命的な合併症に導く。
【0006】
利用できる最善の治療法にもかかわらず、多くの患者は、抗生物質を開始してから数日後に、組織がすでに病原体を含まず、肺病変の進行が除かれているときに、発生する可能性がある重症肺炎の合併症で死亡する。肺炎に罹患している患者が入院すると、感染症が数日間発生し、細菌の負荷がピークに達し、毒素が大量に放出される。たとえば、細胞外培地に分泌されないが、抗生物質による細菌の自己融解または溶解によって放出されるストレプトコッカス・ニューモニエの毒素ニューモリシンは、このため抗生物質によって引き起こされる細菌の溶解に続いて大量に放出される(Lucas,R.et al.Toxins 5,1244-1260(2013)、Baumgartner,D.et al.,BMC microbiology 16,154(2016)、Hirst,R.A.,et al.,Clin Exp Immunol 138,195-201(2004))。注目すべきことに、ニューモリシンは疾患の進行、肺炎球菌の複製および侵襲性疾患の発症を促進し、重篤かつ致命的な合併症において重要な役割を果たす。実際、ニューモリシンの病原性影響は多因子的である(Lucas,R.et al.Toxins 5,1244-1260(2013)、Kadioglu,A.,et al.,Nature reviews.Microbiology 6,288-301(2008))。より具体的には、ニューモリシンは、広範囲にわたる直接的な細胞溶解および組織損傷を引き起こす。それは、肺胞毛細血管関門に影響を及ぼして、肺胞浮腫と出血に寄与し、肺胞内細菌の増殖を刺激し、肺間質へのおよび血流への肺炎球菌の侵入を容易にすることにより病原体の侵襲性を促進する。ニューモリシンはまた、炎症誘発性反応を誘発することにより、免疫細胞に直接阻害作用を及ぼすことにより、および補体を遮断することにより、局所および全身免疫応答のバランスを変化させ、それは、感染の最初の数時間における宿主の免疫応答の開始、および細菌に対する免疫防御の第一線の効果的な作用を妨げる。ニューモリシンは、抗生物質の溶菌作用と相関する毒素の大量放出に続いて、それによって抗生物質療法の免疫調節性の副作用、全身性炎症反応、および臨床的悪化にも重要な役割を果たす。毒素媒介性の合併症が発生する可能性があり、呼吸不全、膿胸、髄膜炎、関節炎、心内膜炎、急性冠症候群、心不全、骨髄炎、難聴、てんかん、水頭症、認知障害などが含まれる。
【0007】
コレステロールおよび/またはスフィンゴミエリンで構成される空のリポソームなどのテーラード空のリポソーム、ならびに細菌感染症の治療のためのそれらの使用は、細菌毒素、酵素および毒性付属物(appendage)などの病原性因子のトラップとして機能することが最近記載されている(WO2013/186286、Henry BD et al.,Nat Biotechnol 2015;33(1):81-88、Azeredo da Silveira,S and Perez,A,Expert Rev.Anti Infect.Ther.2015;13(5):531-533)。
【発明の概要】
【0008】
本発明の好ましい組成物は、肺炎の治療についてのヒト初回投与試験において驚くほど肯定的な結果を示した。本発明の該好ましい組成物は、試験されたすべての用量レベルで安全かつ十分に許容されることが示されているだけでなく、さらに、様々な臨床パラメーターにわたって一貫した有望な有効性データが得られた。この有望な有効性データとその考えられる作用機序に基づいて、感染が疑われるまたは確認された、合併症または重症化の発症の兆候を示している、特に市中感染性肺炎、院内感染性肺炎(hospital-acquired pneumonia)、人工呼吸器関連肺炎、腹腔内感染症、皮膚および軟組織感染症、尿路感染症、または菌血症に罹患している入院患者を想定した二度目の研究の有効性は妥当であると考えられる。
【0009】
最初の研究では、重症市中感染性肺炎球菌肺炎のために集中治療室(ICU)に入院した成人患者において、本発明の好ましい組成物と標準的な抗生物質療法をプラセボと標準的な抗生物質療法と比較した。本発明の好ましい組成物の2つの異なる用量、すなわち、低用量(4mg/kg-低用量)と高用量(16mg/kg-高用量)を比較した。結果は、本発明の好ましい組成物(CAL02と名付けられた)と抗生物質治療との相乗効果を示した。
【0010】
結果として、本発明の好ましい組成物は、ひいては、重症感染症に関連している広範囲の細菌から放出される毒素を、ヒト患者の抗生物質治療と相乗的に捕捉および中和することが示された。重症で致命的な合併症の発症の原因となっているのはこれらの毒素である。したがって、本発明の好ましい組成物は、多剤耐性であるものを含む、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に対して活性である、ファーストインクラスの非抗生物質リポソーム薬物である。好ましい本発明の組成物は、標的病原体の耐性プロファイルに関係なく作用し、耐性の出現を誘発しない。
【0011】
したがって、第1の態様では、本発明は、ヒト患者の肺炎の補助的治療に使用するための、空のリポソームの混合物を含む、好ましくはそれからなる組成物を提供し、該空のリポソームの混合物は、(a)コレステロールを含む第1の空のリポソームを含み、コレステロールの量は少なくとも30%(重量あたりの重量)である第1の空のリポソームと、(b)スフィンゴミエリンを含む第2の空のリポソームと、を含み、好ましくはそれらからなり、好ましくは該肺炎が、市中感染性肺炎(CAP)、入院感染性肺炎(Hospitalization Acquired Pneumonia)(HAP)および人工呼吸器関連肺炎(VAP)から選択される。
【0012】
さらに好ましい実施形態では、該肺炎は重症肺炎であり、好ましくは、該重症肺炎は、重症市中感染性肺炎(sCAP)から選択され、よりさらに好ましくは、該重症肺炎は、ヒト患者の重症市中感染性肺炎球菌肺炎(sCAPP)である。
【0013】
本説明を続けることにより、本発明のさらなる態様および実施形態が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】プラセボ(ひし形)群、CAL02低用量(三角形)群、CAL02高用量(四角形)群でのベースライン(投与前)から8日目までの重症度スコアSOFA(
図1A)とAPACHE II(
図1B)の進展。*p<0.05、**p<0.005
【
図1B】プラセボ(ひし形)群、CAL02低用量(三角形)群、CAL02高用量(四角形)群でのベースライン(投与前)から8日目までの重症度スコアSOFA(
図1A)とAPACHE II(
図1B)の進展。*p<0.05、**p<0.005
【
図2A】プラセボ(ひし形)群、CAL02低用量(三角形)群、CAL02高用量(四角形)群でのベースライン(投与前)から8日目までの薬力学バイオマーカーの進展:C反応性タンパク質(CRP)(
図2A)、プロカルシトニン(PCT)(
図2B)、およびインターロイキン-6(
図2C)。
【
図2B】プラセボ(ひし形)群、CAL02低用量(三角形)群、CAL02高用量(四角形)群でのベースライン(投与前)から8日目までの薬力学バイオマーカーの進展:C反応性タンパク質(CRP)(
図2A)、プロカルシトニン(PCT)(
図2B)、およびインターロイキン-6(
図2C)。
【
図2C】プラセボ(ひし形)群、CAL02低用量(三角形)群、CAL02高用量(四角形)群でのベースライン(投与前)から8日目までの薬力学バイオマーカーの進展:C反応性タンパク質(CRP)(
図2A)、プロカルシトニン(PCT)(
図2B)、およびインターロイキン-6(
図2C)。
【
図3A】プラセボ(ひし形)群とCAL02高用量(四角形)群におけるICU退院までの時間(
図3A)、p<0.05、および退院までの時間(
図3B)。
【
図3B】プラセボ(ひし形)群とCAL02高用量(四角形)群におけるICU退院までの時間(
図3A)、p<0.05、および退院までの時間(
図3B)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
別段、定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0016】
本明細書で使用される「約」という用語は、±5%の意味を有するものとする。例えば、約50%は47.5%~52.5%を意味する。好ましくは、本明細書で使用される「約」という用語は、±3%の意味を有するものとする。例えば、約50%は48.5%~51.5%を意味する。
【0017】
「a」または「an」という用語が本明細書で使用される場合、他に示されない限り、それらは「少なくとも1つ」を意味する。特に、本発明による空のリポソームおよび空のリポソームの混合物を説明するための、単一の空のリポソーム、該第1の空のリポソームおよび該第2の空のリポソームに関連している用語「a」または「an」の使用は、典型的かつ好ましくは、単一の空のリポソーム(複数)、ならびに該第1の空のリポソーム(複数)および該第2の空のリポソーム(複数)を含む空のリポソームの混合物(複数)を指す。
【0018】
本明細書に開示される値のすべての範囲は、範囲を定義する値を含む、該範囲内に含まれるすべての値を指すべきである。明確にするために、たとえば、12~13の値は、12または13の値、または12~13の範囲にあるすべての値を指すべきである。
【0019】
本明細書で使用される「空のリポソーム」という用語は、20nm~10μm、好ましくは20~500nmの平均直径、さらに好ましくは20nm~400nm、よりさらに好ましくは、40nm~400nmまたは20nm~200nmの平均直径を有し、ならびに1つ以上のリン脂質二重層からなり、ならびに典型的かつ好ましくは単層ベシクルおよび多層ベシクル、より好ましくは小さい単層ベシクル(SUV)である、リポソーム、好ましくは人工リポソームを指す。好ましい実施形態では、本明細書で使用される「空のリポソーム」という用語は、典型的かつ好ましくは、薬物を組み込んでいないリポソームを指し、典型的かつ好ましくは、薬学的薬物を組み込んでいないリポソームを指す。本明細書で使用され、本発明の空のリポソームに言及する場合、「組み込まれる/組み込む」とは、典型的かつ好ましくは、リポソームの空洞内、リポソームの潜在的な二重層内、またはリポソームの膜層の一部としてカプセル化される/カプセル化することを意味する。別の好ましい実施形態では、本明細書で使用される「空のリポソーム」という用語は、典型的かつ好ましくは、本発明によるスフィンゴミエリンおよびコレステロールからなる、またはスフィンゴミエリンからなり、かつ水溶性無機化合物および/または水溶性有機分子のみをさらに含むリポソームを指し、典型的かつ好ましくは該水溶性無機化合物および/または水溶性有機分子は該本発明の空のリポソームの合成に由来し、および典型的かつ好ましくは該水溶性無機化合物は好ましくはNaCl、KCl、MgCl2から選択される無機塩であり、および、該水溶性有機分子は緩衝剤であり、好ましくは、該水溶性有機分子は、グルコースおよびHEPESから選択される。典型的かつ好ましくは、該水溶性無機化合物および/または水溶性有機分子は、本発明の空のリポソームの製造中のそれらの存在により、本発明では本発明の空のリポソームに組み込まれる。別の好ましい実施形態では、本明細書で使用される「空のリポソーム」という用語は、典型的かつ好ましくは、本発明によるスフィンゴミエリンおよびコレステロールからなる、またはスフィンゴミエリンからなり、該空のリポソームが抗酸化剤を含まないリポソームを指す。さらに好ましい実施形態では、本明細書で使用される「空のリポソーム」という用語は、典型的かつ好ましくは、本発明によるスフィンゴミエリンおよびコレステロールからなる、またはスフィンゴミエリンからなり、かつ水溶性無機化合物および/または水溶性有機分子のみをさらに含むリポソームを指し、典型的かつ好ましくは該水溶性無機化合物および/または水溶性有機分子が該本発明の空のリポソームの合成に由来し、および典型的かつ好ましくは該水溶性無機化合物が好ましくはNaCl、KCl、MgCl2から選択される無機塩であり、および該水溶性有機分子は緩衝剤であり、好ましくは、該水溶性有機分子は、グルコースおよびHEPESから選択され、および本発明によるスフィンゴミエリンおよびコレステロールからなるか、またはスフィンゴミエリンからなる該空のリポソームは、抗酸化剤を含まない。
【0020】
本明細書で使用される「治療する」、「治療」または「療法」という用語は、所望の生理学的効果を得る手段を指す。効果は、疾患または状態および/または疾患または状態に起因する症状を部分的または完全に治癒することに関して治療的であり得る。この用語は、疾患または状態を抑制すること、すなわちその発生を阻止することまたは、疾患または状態の改善、すなわち疾患または状態の退行を引き起こすことを指す。
【0021】
本明細書で使用する場合、「疾患の治療に使用するための組成物」で使用する「使用するため」という用語は、対応する治療方法および対応する疾患の治療用医薬品の製造のための製剤の使用も開示するものとする。」
【0022】
本明細書で使用される「肺炎」という用語は、「市中感染性肺炎」(CAP)、「院内感染性肺炎」(HAP)または「人工呼吸器関連肺炎」(VAP)を包含するべきである。
【0023】
「市中感染性肺炎」または「CAP」という用語は当業者に知られており、例えばthe IDSA/ATS Guidelines for CAP in Adults(CID 2007:44(Suppl 2)S27)を参照されたい。特に、この用語は病院外で獲得された肺炎を指す。
【0024】
「院内感染性肺炎(HAP)」という用語は、入院後少なくとも48~72時間に発症する、別の病気もしくは処置のための入院中または入院後に獲得された肺炎を指す。
【0025】
本明細書で定義されるように、「人工呼吸器関連肺炎(VAP)」は、機械式人工呼吸の48時間以上後に発症し、微生物による下部気道および肺実質への侵入を特徴とする肺炎である。VAPは深刻な病状の可能性がある。
【0026】
肺炎は、CAPに対するストレプトコッカス・ニューモニエ、ヘモフィルス・インフルエンザエ、レジュネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、スタフィロコッカス・アウレウスおよびシュードモナス・エルギノーサのような細菌、シュードモナス・エルギノーサおよびセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)のようなグラム陰性細菌、ならびにHAPに対するスタフィロコッカス・アウレウス、クレブシエラ・ニューモニエ、エシェリキア・コリ、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、アシネトバクター(Acinetobacter)種、およびヘモフィルス・インフルエンザエを含む広範囲の微生物による感染によって引き起こされる(Cilloniz et al.,Thorax.2011 Apr;66(4):340-6およびJones RN.Clin Infect Dis 2010 Aug;51(Suppl1):S81-7を参照されたい)。
【0027】
「重症市中感染性肺炎」または「sCAP」という用語は、当業者に知られている。特に、「重症市中感染性肺炎」または「sCAP」という用語は、集中治療が必要な市中感染性肺炎患者のサブグループを指す。米国感染症協会(IDSA)および米国胸部学会(ATS)は、sCAPの定義を含むCAPの管理に関するガイドラインを発行している(Mandell et al.,2007,Infectious Diseases Society of America/American Thoracic Society Consensus Guidelines on the Management of Community-Acquired Pneumonia in Adults,Clin.Inf.Dis.2007:44:S27-72(Suppl 2),Table 4を参照されたい)。IDSA/ATSガイドラインによれば、sCAPは集中治療を必要とするCAPとして定義されている。CAP患者が2つの主要な(major)基準の1つまたは両方を示している場合、または実施例1に記載され、本研究で影響を受ける、リストにある3つの小さい(minor)基準が存在する場合は、集中治療室への入院が推奨される。
【0028】
したがって、第1の態様では、本発明は、ヒト患者の肺炎の補助的治療に使用するための、空のリポソームの混合物を含む、好ましくはそれからなる組成物を提供し、空のリポソームの混合物は、(a)コレステロールを含む第1の空のリポソームであって、コレステロールの量が、少なくとも30%(重量あたりの重量)である、第1の空のリポソームと、(b)スフィンゴミエリンを含む第2の空のリポソームと、を含み、好ましくはそれらからなり、好ましくは該肺炎が、市中感染性肺炎(CAP)、入院感染性肺炎(HAP)および人工呼吸器関連肺炎(VAP)から選択され、さらに好ましくは該肺炎は市中感染性肺炎(CAP)であり、よりさらに好ましくは、該肺炎は、ヒト患者の市中感染性肺炎球菌肺炎(CAPP)である。
【0029】
別の態様では、本発明は、ヒト患者の肺炎の補助的治療に使用するための、空のリポソームの混合物を含む、好ましくはそれからなる組成物を提供し、ここで空のリポソームの混合物は、(a)コレステロールを含む第1の空のリポソームであって、コレステロールの量が少なくとも30%(重量あたりの重量)である、第1の空のリポソームと、(b)スフィンゴミエリンを含む第2の空のリポソームと、を含み、好ましくははそれらからなり、好ましくは該肺炎が、重症肺炎であり、好ましくは該重症肺炎は重症の市中感染性肺炎(sCAP)、入院感染性肺炎(HAP)および人工呼吸器関連肺炎(VAP)から選択され、さらに好ましくは、該重症肺炎は、重篤市中感染性肺炎(sCAP)であり、よりさらに好ましくは、該重症肺炎は、ヒト患者の重症市中感染性肺炎球菌肺炎(sCAPP)である。
【0030】
好ましい実施形態では、該第2の空のリポソーム(b)は、脂質成分として該スフィンゴミエリンのみを含む。
【0031】
好ましい実施形態では、該第2の空のリポソーム(b)は、スフィンゴミエリンからなる。
【0032】
好ましい実施形態では、該第1の空のリポソーム(a)のコレステロールの量は、30%~70%(重量あたりの重量)であり、好ましくは、該第1の空のリポソーム(a)のコレステロールの量は、35%~60%(重量あたりの重量)である。
【0033】
好ましい実施形態では、該空のリポソーム(a)のコレステロールの量は、45%~55%(重量あたりの重量)であり、好ましくは、該空のリポソーム(a)のコレステロールの量は、約50%(重量あたりの重量)である。
【0034】
好ましい実施形態では、該第1の空のリポソーム(a)は、コレステロールおよびスフィンゴミエリンからなり、好ましくは該空のリポソーム(a)のコレステロールの量は、45%~55%(重量あたりの重量)であり、さらに好ましくは該空のリポソーム(a)のコレステロールの量は、約50%(重量あたりの重量)である。
【0035】
好ましい実施形態では、該第1の空のリポソーム(a)は、脂質成分として該コレステロールおよび該スフィンゴミエリンのみを含む。
【0036】
好ましい実施形態では、該空のリポソーム(a)のコレステロールの量は、45%~55%(重量あたりの重量)であり、好ましくは、該空のリポソーム(a)のコレステロールの量は、約50%(重量あたりの重量)であり、および該第2の空のリポソーム(b)は、スフィンゴミエリンからなる。
【0037】
好ましい実施形態では、該第1の空のリポソーム(a)は、コレステロールおよびスフィンゴミエリンからなり、該空のリポソーム(a)のコレステロールの量は、45%~55%(重量あたりの重量)であり、好ましくは該空のリポソーム(a)のコレステロールの量は、約50%(重量/重量)であり、該第2の空のリポソーム(b)は、スフィンゴミエリンからなる。
【0038】
好ましい実施形態では、該第1の空のリポソーム(a)は、コレステロールおよびスフィンゴミエリンからなり、該空のリポソーム(a)のコレステロールの量は、45%~55%(重量あたりの重量)であり、好ましくは空のリポソーム(a)のコレステロールの量は、約50%(重量あたりの重量)であり、第1の空のリポソーム(a)は、脂質成分としてコレステロールおよびスフィンゴミエリンのみを含み、第2の空のリポソーム(b)は、スフィンゴミエリンからなる。
【0039】
好ましい実施形態では、空のリポソームの該混合物は、少なくとも20%(重量あたりの重量)の、該第1(a)および該第2(b)の空のリポソームを含み、好ましくは、空のリポソームの該混合物は、少なくとも30%(重量あたりの重量)の、該第1(a)および該第2(b)の空のリポソームを含む。
【0040】
好ましい実施形態では、空のリポソームの該混合物は、少なくとも40%(重量あたりの重量)の、該第1(a)および該第2(b)の空リポソームを含む。
【0041】
好ましい実施形態では、該第1の空のリポソーム(a)は、コレステロールおよびスフィンゴミエリンからなり、さらに好ましくは、該空のリポソーム(a)のコレステロールの量は、約50%(重量あたりの重量)であり、該空のリポソームの混合物は、少なくとも40%の、好ましくは少なくとも45%(重量あたりの重量)の、該第1(a)および該第2の(b)空のリポソームを含む。
【0042】
好ましい実施形態では、該第1の空のリポソーム(a)は、該第1の空のリポソームと該第2のリポソームの1:1(重量あたりの重量-w/w)の混合物からなり、該第1の空のリポソームは、1:1の重量比(1:1w/w、35:65のモル比)のコレステロールとスフィンゴミエリンから構成され、および第2の空のリポソームはスフィンゴミエリンだけで構成されている。
【0043】
好ましい実施形態では、該第1の空のリポソーム(a)は、該第1の空のリポソームと該第2のリポソームの1:1(重量あたりの重量-w/w)の混合物からなり、該第1の空のリポソームは、1:1の重量比(1:1w/w、35:65のモル比)のコレステロールとスフィンゴミエリンから構成され、および該第2の空のリポソームは、スフィンゴミエリンだけで構成され、該第1の空のリポソーム(a)は脂質成分として該コレステロールと該スフィンゴミエリンのみを含み、および該第2の空のリポソーム(b)は、脂質成分として該スフィンゴミエリンのみを含む。
【0044】
好ましい実施形態では、該第1の空のリポソームの平均直径は約130nmであり、該第2の空のリポソームの平均直径は約90nmである。
【0045】
好ましい実施形態では、該組成物は、肺炎の補助的治療に使用するためのものである。
【0046】
好ましい実施形態では、該肺炎は、市中感染性肺炎(CAP)である。好ましい実施形態では、該肺炎は、入院感染性肺炎(HAP)である。好ましい実施形態では、該肺炎は、人工呼吸器関連肺炎(VAP)である。
【0047】
好ましい実施形態では、該組成物は肺炎の補助的治療に使用するためのものであり、該肺炎は重症肺炎である。
【0048】
好ましい実施形態では、該組成物は、肺炎の補助的治療で使用するためのものであり、該肺炎は、ヒト患者の市中感染性肺炎(CAP)である。好ましい実施形態では、該肺炎は重症肺炎であり、該重症肺炎は重症市中感染性肺炎球菌肺炎(sCAPP)である。
【0049】
好ましい実施形態では、該組成物は、肺炎の補助的治療に使用するためのものであり、該肺炎は、ヒト患者の院内感染性肺炎(HAP)である。
【0050】
好ましい実施形態では、該組成物は、肺炎の補助的治療に使用するためのものであり、該肺炎は、ヒト患者の人工呼吸器関連肺炎(HAP)である。
【0051】
好ましい実施形態では、該組成物は、肺炎の補助的治療に使用するためのものであり、該肺炎は、ヒト患者の市中感染性肺炎球菌肺炎(CAPP)である。
【0052】
好ましい実施形態では、該重症肺炎は、重症市中感染性肺炎(sCAP)であり、好ましくは、該重症肺炎は、ヒト患者の重症市中感染性肺炎球菌肺炎(sCAPP)である。
【0053】
好ましい実施形態では、該肺炎は、ストレプトコッカス・ニューモニエ、スタフィロコッカス・アウレウス、シュードモナス・エルギノーサ、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、レジュネラ・ニューモフィラ、ヘモフィルス・インフルエンザエ、クレブシエラ・ニューモニエ、エシェリキア・コリ、アシネトバクター・バウマンニ、ボルデテラ・パータシス、セラチア・マルセセンス、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、モラクセラ・カタラーリス、またはマイコバクテリウム・ツベルクローシスによって引き起こされる。
【0054】
好ましい実施形態では、該肺炎は、ストレプトコッカス・ニューモニエ、スタフィロコッカス・アウレウス、シュードモナス・エルギノーサ、エンテロコッカス・フェシウム、レジュネラ・ニューモフィラ、ヘモフィルス・インフルエンザエ、クレブシエラ・ニューモニエ、エシェリキア・コリ、アシネトバクター・バウマンニ、ボルデテラ・パータシス、セラチア・マルセセンス、ステノトロフォモナス・マルトフィリア、モラクセラ・カタラーリス、またはマイコバクテリウム・ツベルクローシスによって引き起こされる重症肺炎である。
【0055】
好ましい実施形態では、該肺炎、好ましくは該重症肺炎は、ストレプトコッカス・ニューモニエ、スタフィロコッカス・アウレウス、シュードモナス・エルギノーサ、エンテロコッカス・フェシウム、ヘモフィルス・インフルエンザエ、クレブシエラ・ニューモニエ、エシェリキア・コリ、アシネトバクター・バウマンニ、ボルデテラ・パータシス、モラクセラ・カタラーリス、またはマイコバクテリウム・ツベルクローシスによって引き起こされる。
【0056】
好ましい実施形態では、該肺炎、好ましくは該重症肺炎は、ストレプトコッカス・ニューモニエ、スタフィロコッカス・アウレウス、シュードモナス・エルギノーサ、エンテロコッカス・フェシウム、ヘモフィルス・インフルエンザエ、クレブシエラ・ニューモニエ、エシェリキア・コリ、アシネトバクター・バウマンニ、ボルデテラ・パータシス、モラクセラ・カタラーリス、またはマイコバクテリウム・ツベルクローシスによって引き起こされる。
【0057】
好ましい実施形態では、該肺炎は、ストレプトコッカス・ニューモニエ、スタフィロコッカス・アウレウス、クレブシエラ・ニューモニエ、またはシュードモナス・エルギノーサによって引き起こされる。
【0058】
好ましい実施形態では、該肺炎、好ましくは該重症肺炎は、ストレプトコッカス・ニューモニエ、スタフィロコッカス・アウレウス、クレブシエラ・ニューモニエ、シュードモナス・エルギノーサによって引き起こされる。
【0059】
好ましい実施形態では、該肺炎は、ストレプトコッカス・ニューモニエによって引き起こされる。
【0060】
好ましい実施形態では、該肺炎は、ストレプトコッカス・ニューモニエによって引き起こされる重症肺炎である。
【0061】
好ましい実施形態では、該肺炎、好ましくは該重症肺炎は、ストレプトコッカス・ニューモニエ、スタフィロコッカス・アウレウス、シュードモナス・エルギノーサ、エンテロコッカス・フェシウム、ヘモフィルス・インフルエンザエ、クレブシエラ・ニューモニエ、エシェリキア・コリ、アシネトバクター・バウマンニ、ボルデテラ・パータシス、モラクセラ・カタラーリス、またはマイコバクテリウム・ツベルクローシスによって引き起こされる重症市中感染性肺炎(sCAP)であり、好ましくは、該sCAPは、ストレプトコッカス・ニューモニエ、スタフィロコッカス・アウレウス、またはシュードモナス・エルギノーサによって引き起こされ、さらに好ましくは、該sCAPは、ストレプトコッカス・ニューモニエによって引き起こされる。
【0062】
好ましい実施形態では、該肺炎、好ましくは該重症肺炎は、ストレプトコッカス・ニューモニエ、スタフィロコッカス・アウレウス、シュードモナス・エルギノーサ、セラチア・マルセセンス、ヘモフィルス・インフルエンザエ、クレブシエラ・ニューモニエ、エシェリキア・コリ、エンテロコッカス・フェシウム、アシネトバクター・バウマンニ、ボルデテラ・パータシス、モラクセラ・カタラーリス、またはマイコバクテリウム・ツベルクローシスによって引き起こされる院内感染性肺炎(HAP)であり、好ましくは、該HAPは、エシェリキア・コリ、スタフィロコッカス・アウレウス、クレブシエラ・ニューモニエまたはシュードモナス・エルギノーサによって引き起こされる。
【0063】
好ましい実施形態では、該肺炎、好ましくは該重症肺炎は、ストレプトコッカス・ニューモニエ、スタフィロコッカス・アウレウス、シュードモナス・エルギノーサ、セラチア・マルセセンス、ヘモフィルス・インフルエンザエ、クレブシエラ・ニューモニエ、エシェリキア・コリ、エンテロコッカス・フェシウム、アシネトバクター・バウマンニ、ボルデテラ・パータシス、モラクセラ・カタラーリス、またはマイコバクテリウム・ツベルクローシスによって引き起こされる院内感染性肺炎(HAP)であり、百日咳、モラクセラ・カタラーリス、または結核菌であり、好ましくは、好ましくは、該HAPは、エシェリキア・コリ、スタフィロコッカス・アウレウス、クレブシエラ・ニューモニエまたはシュードモナス・エルギノーサによって引き起こされる。
【0064】
好ましい実施形態では、該肺炎、好ましくは該重症肺炎は、重症市中感染性肺炎(sCAP)であり、該重症市中感染性肺炎(sCAP)は、重症市中感染性細菌性肺炎、好ましくはヒト患者の重症市中感染性肺炎球菌肺炎(sCAPP)であり、さらに好ましくは、該sCAPPは、ストレプトコッカス・ニューモニエによって引き起こされるsCAPPである。
【0065】
好ましい実施形態では、該肺炎、好ましくは該重症肺炎は、細菌感染によって引き起こされ、該細菌感染は、ストレプトコッカス・ニューモニエ、スタフィロコッカス・アウレウス、シュードモナス・エルギノーサ、ヘモフィルス・インフルエンザエ、クレブシエラ・ニューモニエ、エシェリキア・コリ、アシネトバクター・バウマンニ、ボルデテラ・パータシス、モラクセラ・カタラーリス、またはマイコバクテリウム・ツベルクローシスであり、好ましくは、該細菌感染は、ストレプトコッカス・ニューモニエ、スタフィロコッカス・アウレウスまたはシュードモナス・エルギノーサによる感染であり、さらに好ましくは、該細菌感染は、ストレプトコッカス・ニューモニエによる感染である。
【0066】
好ましい実施形態では、該肺炎、好ましくは該重症肺炎は、細菌感染により引き起こされる重症市中感染性肺炎(sCAP)であり、該細菌感染は、ストレプトコッカス・ニューモニエ、スタフィロコッカス・アウレウス、シュードモナス・エルギノーサ、ヘモフィルス・インフルエンザエ、クレブシエラ・ニューモニエ、エシェリキア・コリ、アシネトバクター・バウマンニ、ボルデテラ・パータシス、モラクセラ・カタラーリス、またはマイコバクテリウム・ツベルクローシスであり、好ましくは、該細菌感染は、ストレプトコッカス・ニューモニエ、スタフィロコッカス・アウレウスまたはシュードモナス・エルギノーサによる感染であり、さらに好ましくは、該細菌感染は、ストレプトコッカス・ニューモニエによる感染である。
【0067】
好ましい実施形態では、該肺炎、好ましくは該重症肺炎は重症市中感染性肺炎(sCAP)であり、該sCAPは細菌感染によって引き起こされるsCAPであり、該細菌感染は肺炎球菌感染であり、該肺炎球菌感染は、ストレプトコッカス・ニューモニエによる感染である。
【0068】
好ましい実施形態では、該治療は、抗生物質療法、好ましくは標準的な抗生物質療法に対して補助的である。
【0069】
好ましい実施形態では、該抗生物質療法、好ましくは該標準抗生物質療法は、セフトリアキソン、スピラマイシン、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラン酸合剤、ゲンタマイシン、ピペラシリン/タゾバクタム合剤、セフロキシム、ペニシリン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、ドキシサイクリン、セフォタキシム、アンピシリン、エルタペネム、セフェピム、イミペネム、メロペネム、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、バンコマイシン、リネゾリド、モキシフロキサシンおよびゲミフロキサシンから選択され、好ましくは該抗生物質療法の該抗生物質、好ましくは該標準抗生物質療法の抗生物質は、セフトリアキソン、スピラマイシン、アモキシシリン、ゲンタマイシン、レボフロキサシン、ピペラシリン/タゾバクタム合剤、アモキシシリン/クラブラン酸合剤、セフロキシム、およびペニシリンから選択される。
【0070】
好ましい実施形態では、該抗生物質療法、好ましくは標準抗生物質療法は、静脈内(IV)または経口抗生物質療法、好ましくは標準静脈内(IV)または経口抗生物質療法である。
【0071】
好ましい実施形態では、該組成物は、静脈内投与、好ましくは静脈内注入用の溶液の形態であり、溶液1リットルあたり10~40グラムの該空のリポソームの混合物、好ましくは溶液1リットルあたり10~20グラムの該空のリポソームの混合物を含む。
【0072】
好ましい実施形態では、該静脈内投与の注入時間は最大3時間であり、好ましくは、該静脈内投与の注入時間は10分~2時間である。
【0073】
好ましい実施形態では、該組成物は、少なくとも2回の用量で投与される。好ましい実施形態では、該組成物は、第1の用量および第2の用量の、少なくとも2回の用量で投与され、該第1の用量と該第2の用量との間隔は、6~96時間、好ましくは12~72時間、さらに好ましくは24~48時間、よりさらに好ましくは24時間または48時間である。
【0074】
好ましい実施形態では、該組成物は、2~4回の用量で、好ましくは2回の用量で12~72時間にわたって、さらに好ましくは2回の用量で24~48時間にわたって、好ましくは24または48時間の間隔で投与される。
【0075】
好ましい実施形態では、該組成物は、第1の用量および第2の用量の少なくとも2回の用量で該ヒト患者に投与され、該第1用量と該第2用量との間隔は、20~28時間、好ましくは24時間である。
【0076】
好ましい実施形態では、該用量のそれぞれは、1mg/kg~64mg/kg、好ましくは2mg/kg~32mg/kg、さらに好ましくは3~25mg/kg、よりさらに好ましくは4mg/kg~16mg/mgである。
【0077】
好ましい実施形態では、該用量のそれぞれは、2mg/kg~8mg/kg、好ましくは2mg/kg~6mg/kg、さらに好ましくは3~5mg/kg、よりさらに好ましくは4mg/kgである。
【0078】
好ましい実施形態では、該用量のそれぞれは、10mg/kg~22/kg、好ましくは12mg/kg~20/kg、さらに好ましくは14mg/kg~18/kg、よりさらに好ましくは16mg/kgである。
【0079】
好ましい実施形態では、該組成物は、静脈内投与用の溶液の形態で投与される。
【0080】
好ましい実施形態では、該組成物は、好ましくは第1の用量および第2の用量の、少なくとも2回の用量で該ヒト患者に投与され、該第1の用量の該投与と該第2の用量の該投与間に20~48時間、好ましくは24時間の間隔があり、および該組成物は、静脈内投与用の溶液の形態である。
【0081】
好ましい実施形態では、該組成物は、少なくとも2回の用量で投与され、第1の投与は、該肺炎、好ましくは該CAPまたはsCAP、さらに好ましくは該sCAPPの診断後12時間以内に投与される。
【0082】
好ましい実施形態では、該組成物は、少なくとも2回の用量で投与され、最初の用量は、該抗生物質療法、好ましくはIV抗生物質療法の開始後24時間以内に投与される。
【0083】
好ましい実施形態では、該組成物は、少なくとも2回の用量で投与され、第1の用量は、該経口抗生物質療法の開始後60時間以内に投与される。
【0084】
好ましい実施形態では、該肺炎は、入院、好ましくは病院の集中治療室(ICU)での入院を必要とする。
【0085】
好ましい実施形態では、該重症肺炎、さらに好ましくは該sCAPは、入院を必要とする。
【0086】
好ましい実施形態では、該肺炎、好ましくは該重症肺炎、さらに好ましくは該sCAPは、集中治療室(ICU)、好ましくは病院の集中治療室(ICU)での入院を必要とする。
【0087】
好ましい実施形態では、該肺炎、好ましくは該重症肺炎、さらに好ましくは該sCAPは、該患者の入院を必要とし、該治療は抗生物質療法、好ましくは標準抗生物質療法に対して補助的であり、該補助的治療はそのような治療が行われない場合の入院と比較して、該入院の期間を短縮する。
【0088】
好ましい実施形態では、該補助的治療による入院期間の短縮は、少なくとも1日、好ましくは2日、さらに好ましくは3日、よりさらに好ましくは4日、よりさらに好ましくは5日、よりさらに好ましくは6日、よりさらに好ましくは7日、よりさらに好ましくは8日、よりさらに好ましくは9日である。
【0089】
好ましい実施形態では、入院期間は最大で2週間である。
【0090】
好ましい実施形態では、該肺炎、好ましくは該重症肺炎、さらに好ましくは該sCAPは、集中治療室(ICU)での入院を必要とし、該治療は抗生物質療法、好ましくは標準抗生物質療法に補助的であり、該補助的治療はそのような治療が行われない場合の集中治療室(ICU)での入院と比較して、集中治療室(ICU)での入院期間を短縮する。
【0091】
好ましい実施形態では、集中治療室(ICU)での入院期間の短縮は、少なくとも1日、好ましくは2日、さらに好ましくは3日、よりさらに好ましくは4日、よりさらに好ましくは5日、よりさらに好ましくは6日、よりさらに好ましくは7日である。
【0092】
好ましい実施形態では、集中治療室(ICU)での入院期間は最大で1週間である。
【0093】
好ましい実施形態では、該肺炎、好ましくは該重症肺炎、さらに好ましくは該sCAPが、そのような補助的治療が行われない場合、好ましくは該抗生物質療法、好ましくは該標準抗生物質療法に補助的なそのような治療が行われない場合と比較して、より短時間で治癒する。
【0094】
好ましい実施形態では、より短時間での該治癒は、少なくとも1日短時間、好ましくは2日短時間、またはさらに好ましくは少なくとも3日短時間である。
【0095】
好ましい実施形態では、より短時間での該治癒は、そのような補助的治療が行われない場合、好ましくは該抗生物質療法、好ましくは該標準抗生物質療法に補助的なそのような治療が行われない場合と比較して、少なくとも1日短時間、好ましくは2日短時間またはさらに好ましくは少なくとも3日短時間である臓器機能の正常化によって表される。
【0096】
好ましい実施形態では、より短時間での該治癒は、そのような補助的治療が行われない場合、好ましくは該抗生物質療法、好ましくは該標準的な抗生物質療法に補助的なそのような治療が行われない場合と比較して、少なくとも1日短時間、好ましくは2日短時間、またはさらに好ましくは少なくとも3日短時間である、血液炎症マーカー、好ましくはCRPおよび/またはPCTおよび/またはIL-6の正常化によって表される。
【0097】
好ましい実施形態では、より短時間での該治癒は、そのような補助的治療が行われない場合、好ましくは該抗生物質療法、好ましくは該標準的な抗生物質療法に補助的なそのような治療が行われない場合と比較して、少なくとも1日短時間、好ましくは2日短時間またはさらに好ましくは少なくとも3日短時間である、臓器機能の正常化および血液炎症マーカー、好ましくはCRPおよび/またはPCTおよび/またはIL-6の正常化によって表される。
【0098】
好ましい実施形態では、より短時間での該治癒は、そのような補助的治療が行われない場合、好ましくは該抗生物質療法、好ましくは該標準的な抗生物質療法に補助的なそのような治療が行われない場合と比較して、少なくとも1日短時間、好ましくは2日短時間またはさらに好ましくは少なくとも3日短時間であるSOFAスコアの低下によって表される。
【0099】
好ましい実施形態では、より短時間での該治癒は、そのような補助的治療が行われない場合、好ましくは該抗生物質療法、好ましくは該標準的な抗生物質療法に補助的なそのような治療が行われない場合と比較して、少なくとも1日短時間、好ましくは2日短時間またはさらに好ましくは少なくとも3日短時間であるAPACHE IIスコアの低下によって表される。
【0100】
好ましい実施形態では、より短時間での該治癒は、そのような補助的治療が行われない場合、好ましくは該抗生物質療法、好ましくは該標準的な抗生物質療法に補助的なそのような治療が行われない場合と比較して、少なくとも1日短時間、好ましくは2日短時間またはさらに好ましくは少なくとも3日短時間であるAPACHE IIスコアおよびSOFAスコアの低下によって表される。
【0101】
好ましい実施形態では、該肺炎、好ましくは該重症肺炎、さらに好ましくは該sCAP、さらに好ましくは該sCAPPの該治療が、該組成物の最初の投薬の8日後、好ましくは、該組成物の最初の投薬の7日後、さらに好ましくは、該組成物の最初の投薬の6日後、さらに好ましくは、該組成物の最初の投薬の5日後に、該患者のSOFAスコアを少なくとも40%低下させる。
【0102】
好ましい実施形態では、該肺炎、好ましくは該重症肺炎、さらに好ましくは該sCAP、さらに好ましくは該sCAPPの該治療が、該組成物の最初の投薬の8日後、好ましくは該組成物の最初の投薬の6日後、さらに好ましくは該組成物の最初の投薬の5日後、そしてさらに好ましくは該組成物の最初の投薬の4日後に、該患者のAPACHE IIスコアを少なくとも20%低下させる。
【実施例0103】
リポソーム:
卵黄からのスフィンゴミエリン(CAS No.85187-10-6)は、Sigma(S0756)、Avanti Polar Lipids(860061)またはLipoid GmbHから購入した。羊毛グリースからのコレステロール(CAS No.57-88-5)は、Sigma(C-8667)、Avanti Polar Lipids(70000)、またはDishman Netherlands BVから購入した。本発明によれば、空のリポソームの本発明の混合物に含まれるかまたはそれらからなるスフィンゴミエリンおよびコレステロールは、上記の天然源から、あるいは化学合成によって得ることができる。
【0104】
リポソームの準備:
単層スフィンゴミエリン:コレステロール(35:65モル比)およびスフィンゴミエリンのみ(100%)のリポソームを、超音波処理または顕微溶液化(例えば、高圧均質化または、水和、押出、およびダイアフィルトレーションプロセスプロトコルに従う、を使用して調製した。
【0105】
超音波処理:
脂質を1mg/mlの濃度でクロロホルムに個別に溶解し、-20℃で保存した。リポソームの調製のために、個々の脂質のクロロホルム溶液を必要に応じた割合で混合して、50~500μlの最終的な溶液をルーチン的に生成した。クロロホルムを60℃で20~50分間完全に蒸発させた。2.5mMのCaCl2を含む、50μlまたは100μlのタイロード緩衝液(140mMのNaCl、5mMのKCl、1mMのMgCl2、10mMのグルコース、10mMのHEPES、pH=7.4)を乾燥させた脂質膜を含有するチューブに添加し、そして激しくボルテックスした。脂質懸濁液をエッペンドルフサーモミキサー内で45℃で20~30分間激しく振とうしながらインキュベートした。リポソームを製造するために、最終的な脂質懸濁液を、Bandelin Sonopulsソニケーターで70%の出力で、6°Cで3x5秒超音波処理した。リポソーム調製物は、実験に使用する前に、6℃で少なくとも1時間放置した。
【0106】
水和、押出、およびダイアフィルトレーションプロセスプロトコル:
別の方法では、各リポソーム製剤はエタノール水和および押出法により作製された。脂質をエタノールとt-ブタノールに個別に溶解し、高温(約55°C)で混合した。次に、脂質溶液をPBS緩衝液(塩化ナトリウム、リン酸一ナトリウム、二水和物およびリン酸二ナトリウム、二水和物、混合中に注射用水に溶解し、必要に応じて、塩酸(HCl)または水酸化ナトリウム(NaOH)のいずれかでpH7.0~7.4に調整し、0.2μmのフィルターでろ過した)に添加し、高温(約65°C)で約30分間混合する。次いで、動的光散乱によって測定される所望の粒子サイズが達成されるまで、その後のプロセス流体を高圧および高温(約65°C)で一連のポリカーボネートトラックエッチドメンブレンを通して繰り返し押し出した(押出機の例:LIPEX(登録商標)押出機)。続いて、その後のプロセス流体を、分子量100,000のカットオフ中空ファイバーカートリッジを使用して約2倍に濃縮し、次いでPBSバッファー溶液の約10容量の交換に対してダイアフィルトレーションして、エタノールとt-ブタノールを除去した。ダイアフィルトレーションの最後に、プロセス流体を約30%濃縮して、その後に希釈して目標脂質濃度にした。希釈前に、滅菌ろ過中にフィルターを詰まらせる可能性のあるいずれかの大きなリポソームを除去するために、プロセス流体を0.2μm滅菌グレードのフィルターでろ過した。次に、PBS緩衝液を使用して、プロセス流体を40mg/mLの総脂質という目標に希釈した。最終的な製剤を、直列に2つの0.2μm滅菌グレードフィルターを通して無菌的にろ過し、ガラス管バイアルに無菌的に充填した。
【0107】
リポソーム中の個々の脂質の濃度は、常に重量あたりの重量比として与えられる。スフィンゴミエリンとコレステロールを含有するリポソームでは、1:1(重量あたりの重量)比は50%(重量あたりの重量)または35:65モル比に対応する。仕様を表1に示す。
【0108】
CURB-65スコア:
CURB基準とも呼ばれる、CURB-65は市中感染性肺炎の死亡率を予測するために検証されている当業者によく知られた臨床予測ルールである(Lim WS,et al.(2003)Thorax 58(5):377-82)。CURB-65は、肺炎の重症度の評価のために英国胸部疾患学会によって推奨されている(British Thoracic Society Standards of Care Committee (2001).“BTS Guidelines for the Management of Community Acquired Pneumonia in Adults”.Thorax.56.Suppl 4:IV1-64)。
【0109】
スコアは、測定された各リスクファクターの頭字語である。各リスクファクターのスコアは1で、最大スコアは5である。
-初発の混乱(AMTSが8以下として定義)
-7mmol/l(19mg/dL)を超える血中尿素窒素
-毎分30回以上の呼吸数
-90mmHg未満の収縮期血圧または拡張期血圧60mmHg以下
-65歳以上。
【0110】
APACHE II:
APACHE IIは、急性生理学および慢性健康評価(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation)の頭字語であり、表2(Knaus WA et al.APACHE II: a severity of disease classification system.Crit Care Med.1985 Oct;13(10):818-29)に従って計算される:
【0111】
APACHE IIスコアは、得られた総スコアに基づいて、患者または患者群の死亡率の概算を提供することを目的としている。スコアの死亡率の解釈を表3に示す。
【0112】
SOFA:
SOFAスコアは連続的臓器不全評価(Sequential Organ Failure Assessment)の頭字語であり、表4に従って計算される(S.Vosylius,J.Sipylaite and J.Ivaskevicius,Croat Med J,45 (2004),715-20)。
【0113】
実施例1
ストレプトコッカス・ニューモニエによる重症市中感染性肺炎患者の治療
その後報告された研究では、集中治療室(ICU)での管理が必要なストレプトコッカス・ニューモニエによる重症市中感染性肺炎(CAP)の患者に、標準的な抗生物質療法に加えて補助的治療として、CAL02と名付けられた本発明の空のリポソームの非常に好ましい混合物を静脈内投与(IV)する。該非常に好ましい本発明の空のリポソームの混合物(CAL02)は、該第1の空のリポソームと該第2のリポソームの1:1(重量あたりの重量-w/w)の混合物からなり、該第1の空のリポソームは、1:1の重量比(1:1 w/w、35:65のモル比)のスフィンゴミエリンとコレステロールから構成され、第2の空のリポソームはスフィンゴミエリンだけで構成されている。
【0114】
本研究の19人の患者全員(男性と女性)は、標準的な実践に従う標準治療の抗生物質療法(Mandell et al,IDSA/ATS Guidelines for CAP in Adults,CID 2007:44(Suppl 2),S27-S72)と、さらにCAL02またはプラセボ(生理的0.9%NaCl溶液)を受けた。CAL02の2つの用量レベル(4mg/kg(低用量)および16mg/kg(高用量))が試験された。
【0115】
各患者は、重症疾患の診断の直後(重症CAPまたは重症市中感染性肺炎球菌肺炎(CAPP)の診断後12時間以内、および抗生物質治療の早い段階(IV抗生物質治療の開始後24時間以内(経口の場合は60時間以内)に、CAL02またはプラセボの2回の注入を受けた(これらの投与の間隔は24時間または48時間)。患者は合計29日間追跡された。
【0116】
本研究では、すべての患者が、抗生物質単独または併用で、地域のガイドラインに従って標準治療の抗生物質療法を受けた。治験責任医師により選択された該標準治療の抗生物質療法の用量および投与頻度は、それぞれの国で承認された治療法の表示に従った。
【0117】
この研究の組み入れ基準は、特に次のとおりである、
1.18歳~80歳の男性または女性が含まれ、体重40~140kgの人を含む、
2.重症CAPと診断され、胸部X線で新しい肺浸潤が見つかり、新規に獲得した呼吸器症状(咳、痰の生成)、異常な呼吸音とクラックルの聴診所見の患者
3.≧65歳の患者のCURB-65スコア≧3および<65歳の患者のCURB-65≧2
4.CAPPは、以下のリストに示されている主要なまたは小さい重症度基準に基づいて重症肺炎と診断され、集中治療室(ICU)の入院が必要である(スクリーニングは救急部門で行われ得る)。
【0118】
主要な基準:CAPの2つの次の主要な重症度基準のうち少なくとも1つを満たす患者:
i.侵襲的な機械式人工呼吸サポートを受ける
ii.適切な輸液蘇生後、収縮期血圧>90mmHg(または平均動脈圧>70mmHg)を維持または維持しようするため少なくとも2時間、治療用量(すなわち、ドーパミン>5mg/kg/分またはエピネフリン、ノルエピネフリン、フェニレフリンまたはバソプレッシンの任意の用量)で昇圧剤による治療を受ける
【0119】
小さい基準:CAPに関する以下の小さい重症度基準の3つ以上を満たす患者:
i.呼吸数≧30呼吸/分
ii.PaO2/FiO2比≦250mmHg
iii.多葉性浸潤
iv.混乱/見当識障害(鎮静剤または他の新しい向精神薬の使用前に文書化する必要がある)
v.尿素>7mM(>40mg/dL)
vi.白血球減少症(白血球数<4’000細胞/mm3)
vii.血小板減少症(血小板数<100’000細胞/mm3)
viii.低体温症(深部体温<36°C)
ix.収縮期血圧<90mmHgまたは平均動脈圧<70mmHgで、少なくとも2時間にわたり≧40mL/kgの輸液蘇生を受けた
【0120】
研究結果
5人の患者がプラセボ群、11人がCAL02高用量群、3人がCAL02低用量群に無作為に割り付けられた。主要な資格基準違反のため、高用量群の1人の患者が非盲検にされる前に削除された。すべての患者は、患者にとって適切であると見なされた抗生物質治療または抗生物質の組み合わせを受けた。全体として、セフトリアキソン、スピラマイシン、アモキシシリン、ゲンタマイシン、レボフロキサシン、ピペラシリン/タゾバクタム合剤、アモキシシリン/クラブラン酸合剤、セフロキシム、およびペニシリンがこの研究集団で使用された。
【0121】
治療時の平均APACHE IIは21.3、SOFA 7.4であった。ベースライン特性は、群全体で均一であった。ただし、CAL02群は、プラセボ群の17.4と比較して、CAL02高用量群および低用量群でそれぞれ22.1および25.3のAPACHE IIで、プラセボ群よりもわずかに重症患者であることを証明した。3人の低用量患者はすべて挿管された。
ベースライン時の特性を表5にまとめる。
【0122】
19人の患者が、S.ニューモニエに感染した。低用量コホートの1人の患者はまたエシェリキア・コリにも感染した。低用量コホートの1人の患者はまたクレブシエラ・ニューモニエにも感染した。高用量コホートの1人の患者はまた、エンテロコッカス・フェシウムにも感染した。また、3人の患者(1人は低用量、2人は高用量コホート)がスタフィロコッカス・アウレウスに感染した。
【0123】
1人の患者が各群で死亡し、死亡率はプラセボ群で20%、CAL02高用量群で10%、CAL02低用量群で33%であった。
【0124】
治癒判定(TOC)訪問は、8日目(早期TOC)、15日目から22日目まで、および研究終了時(EOS)に事前定義された。該TOCは、(臨床)治癒の判断、したがって治療の有効性が評価される医療訪問である。
【0125】
本研究の臨床治癒は、患者が肺炎の徴候および症状の消散を示したとき、標準的な検査データが正常に戻ったとき、発熱が鎮静したとき(解熱剤なし少なくとも24時間)、および患者が改善またはきれいなRxフィルムを示して抗生物質による治療が不要になるときに対応していた。
【0126】
TOC訪問時に、臨床的治癒(または臨床的結果)を以下のように評価した。
a)治癒:ベースラインに存在する肺炎の徴候および症状の完全な消散、肺炎に起因する新たな症状または合併症はない。
b)失敗:肺炎のベースライン兆候と症状の持続/進行、または治療の少なくとも2日後のベースラインの放射線学的異常、または、活動性感染症と一致する新しい肺もしくは肺外の臨床所見の発生、またはIMP以外のまたはIMPに加えて抗菌療法を必要とする新しい肺または肺外感染症の発症、または肺炎による死亡。
c)不明:上記のいずれかに分類することを妨げる酌量すべき状況。
【0127】
さらに、微生物学的結果を、TOC訪問で評価した。
【0128】
早期の治癒判定(TOC)(8日目に事前定義)では、CAL02高用量群の50%と比較して、プラセボ群では20%が治癒した。TOC(15日目~22日目間に事前定義)では、生存しているすべての患者が治癒した。治癒までの時間の中央値は、プラセボ群で10日、CAL02高用量群で8日であった(表6)。
【0129】
【0130】
CAL02群では、プラセボ群と比較してより早い臨床的回復が観察された:CAL02群では、SOFAスコアの50%減少が5日間で既に達成された(
図1A)。APACHE IIスコアも、プラセボと比較して、CAL02(高用量および低用量)でより迅速に減少した(
図1B)。
【0131】
薬力学的バイオマーカー(CRP、PCT、IL-6)も、プラセボと比較して、CAL02(高用量および低用量)で、より急速に正常に戻った(
図2)。
【0132】
ICUでの滞在期間が、プラセボ群の12日間からCAL02高用量群の5日間に大幅に短縮され(p<0.05)、入院期間も、プラセボ群の21日間からCAL02高用量および低用量群の12日間および12.5日間にそれぞれ短縮された(
図3)。
【0133】
CAL02治療の影響は、スタンドアロンまたは複合エンドポイントとして、以下についても評価された:
・肺炎の再発および/または再感染率
・胸部X線の変化による浸潤と肺炎の消散
・PaO2/FiO2比による動脈血ガスの発生
・侵襲的または非侵襲的補助換気の必要性と期間
・抗生物質療法の期間
・併用薬と救助的抗生物質の使用。
・膵石タンパク質(PSP)などの他の薬力学的マーカー
・バイタルサイン(心拍数、収縮期および拡張期血圧および深部体温を含む)
・血液学変数(赤血球数、ヘモグロビンおよびヘマトクリット、ならびに好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、血小板を含む白血球数を含む)
・臨床化学変数(ナトリウム、カリウム、CRP、総ビリルビン、血清クレアチニン、グルコース、BUN、カルシウム、無機リン、塩化物、アルブミン、アルカリホスファターゼ、総タンパク質、乳酸脱水素酵素(LDH)、コレステロール、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT=SGPT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST=SGOT)、トリグリセリドおよび尿酸を含む)
・尿検査(グルコース、タンパク質、ビリルビン、ウロビリノーゲン、亜硝酸塩を含む)
・身体検査(一般的な外観、皮膚、呼吸器、循環器、腹部、神経系を含む)
・除菌もしくは推定される除菌、または存続もしくは推定される存続、または重複感染または再発または新たな感染またはコロニー形成を決定するためのCAP(呼吸器、血液、胸水試料)の微生物学的結果
。
【0134】
結論:
これは、ファーストインクラスの広域抗毒素剤であるCAL02の可能性を評価する最初の治験である。安全性の主要エンドポイントが満たされた。CAL02で治療された患者はプラセボ群よりも重症であったという事実にもかかわらず、CAL02で治療された患者はより迅速な臨床的改善を示した。有効性の傾向は、さまざまな臨床的および生物学的パラメーターにわたって一貫しており、臓器機能不全のより速い治癒と薬力学的バイオマーカーのより迅速な減少の両方が示された。これらの観察結果は、毒素を介した臓器の損傷や炎症から保護することを目的としたCAL02の作用機序と一致している。
【0135】
実施例2
緊急治療室(ER)、中間治療室、または集中治療室(ICU)に入院した患者で、(i)抗生物質の静脈内投与と(ii)集中治療室または中間治療室での管理を必要とする感染症が証明され、または疑われる患者に、標準的な抗生物質治療に加えて、補助的な治療としてCAL02を静脈内投与する、無作為化多施設、二重盲検、プラセボ対照試験。患者は、標準的な診療に従う抗生物質療法に加えて、CAL02またはプラセボを受ける。感染症には、市中感染性肺炎、院内感染性肺炎、人工呼吸器関連肺炎、ならびに腹腔内感染症、皮膚および軟部組織感染症、70歳を超える尿路感染症、または菌血症が含まれる。