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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023209
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】組成物、その製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20240214BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240214BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240214BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240214BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240214BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240214BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240214BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240214BHJP
【FI】
C01G53/00 A
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/36 A
H01M4/66 A
H01M10/0562
H01M10/052
H01M10/0585
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023187413
(22)【出願日】2023-11-01
(62)【分割の表示】P 2020554303の分割
【原出願日】2019-04-02
(31)【優先権主張番号】1805627.5
(32)【優先日】2018-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】515189520
【氏名又は名称】イリカ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ローラ パーキンス
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム リチャードソン
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ターナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス リスブリッジャー
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル グエリン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ヘイデン
(72)【発明者】
【氏名】オワイン クラーク
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ノーブル
(72)【発明者】
【氏名】ジーン-フィリップ スーリエ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ケイシー
(72)【発明者】
【氏名】キリアコス ジャグログロウ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】容量及びサイクル寿命といったリチウムイオン電池において有利な特性を有する結晶配向を有するコバルト酸リチウム組成物を提供する。
【解決手段】(a)R-3m空間群に属する岩塩構造の層状混合金属酸化物による主相で、成分元素として45~55原子%のリチウムと、20~55原子%の、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルトの遷移金属と、0~25原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、銅、ルテニウム、亜鉛、モリブデン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムの追加ドーパント元素と、を含有する主相と、(b)前記層状混合金属酸化物の結晶構造を有しない金属酸化物で、前記層状混合金属酸化物に含まれる、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトを含有する副次相と、を有する組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(a)R-3m空間群に属する岩塩構造を有する層状混合金属酸化物によって与えられ
る主相であって、前記層状混合金属酸化物が成分元素として、前記層状酸化物中の酸素を
除く全原子に対する%で原子%を表した場合に、
45~55原子%のリチウムと、
20~55原子%の、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、及びそれらの組み
合わせからなる群から選択される1種以上の遷移金属と、
0~25原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウ
ム、バナジウム、銅、ルテニウム、亜鉛、モリブデン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム
、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる
群から選択される1種以上の追加ドーパント元素と、を含有する主相と、
(b)前記層状混合金属酸化物の結晶構造を有しない金属酸化物によって与えられ、前
記層状混合金属酸化物に含まれる、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトから
なる群から選択される前記遷移金属のうちの1種以上を含有する副次相と、を有し、
前記主相が前記組成物の総質量の90%~99.5%を与え、前記副次相が前記組成物
の総質量の0.5%~10%を与える、組成物。
【請求項2】
前記副次相が1原子%未満のリチウムを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記副次相がリチウムを実質的に含まない、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記層状混合金属酸化物が、
45~55原子%のリチウムと、
40~55原子%の、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、及びそれらの組み
合わせからなる群から選択される1種以上の遷移金属と、
0~5原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム
、バナジウム、銅、ルテニウム、亜鉛、モリブデン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、
スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群
から選択される1種以上の追加ドーパント元素と、を含有する、請求項1~3のいずれか
一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記層状混合金属酸化物が、
45~55原子%のリチウムと、
45~55原子%の、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、及びそれらの組み
合わせからなる群から選択される1種以上の遷移金属と、を含有する、請求項4に記載の
組成物。
【請求項6】
前記副次相が前記組成物の総質量の1%~10%を与える、請求項1~5のいずれか一
項に記載の組成物。
【請求項7】
前記副次相が前記組成物の総質量の2.5%~10%を与える、請求項1~6のいずれ
か一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、上面と底面とを備え、前記上面と前記底面との間の高さが1~50μm
である薄膜層である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記副次相が、前記底面に沿うシード層の形で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記層状混合金属酸化物が、一般式LiCo1-2yMnNiを有し、前記
副次相が、コバルト、マンガン及びニッケルからなる群から選択される1種以上の遷移金
属を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記層状混合金属酸化物が、一般式LiMn1-yを有し、Mが、クロム、
ニッケル、鉄及びコバルトからなる群から選択される遷移金属である、請求項1~9のい
ずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記層状混合金属酸化物が、結晶性コバルト酸リチウム又は結晶性ドープコバルト酸リ
チウムであり、該結晶性酸化物が成分元素として、前記結晶性酸化物中の酸素を除く全原
子の%で原子%を表した場合に、
45~55原子%のリチウムと、
20~55原子%のコバルトと、
0~25原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウ
ム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、ルテニウム、ニッケル、亜鉛、モリブデン
、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリ
ニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種の追加ドーパント元
素と、を含有し、
前記副次層がCoである、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項14~79及び152のいずれか一項の特徴を更に有する、請求項12に記載の
組成物。
【請求項14】
組成物であって、
(a)Coと、
(b)結晶性コバルト酸リチウム又は結晶性ドープコバルト酸リチウムと、を含有し、
該結晶性酸化物が成分元素として、前記結晶性酸化物中の酸素を除く全原子の%で原子%
を表した場合に、
45~55原子%のリチウムと、
20~55原子%のコバルトと、
0~25原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニ
ウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、ルテニウム、ニッケル、亜鉛、モリブデ
ン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガド
リニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種の追加ドーパント
元素と、を含有し、
前記組成物の総質量の0.01%~10%がCoであり、
前記組成物の総質量の90%~99.99%が、結晶性コバルト酸リチウム又は結晶性
ドープコバルト酸リチウムであり、
前記組成物が底面及び上面を備え、
前記結晶性コバルト酸リチウム又は結晶性ドープコバルト酸リチウムが、以下のパラメ
ータ(a)~(c)
(a)前記結晶構造の少なくとも一部が、前記底面に平行な平面に対し、(101)
、(104)、(110)、及び(012)からなる群から選択される結晶配向を有する
こと、
(b)484cm-1のバンドと、593cm-1のバンドと、690cm-1、5
26cm-1、及び625cm-1からなる群から選択される少なくとも1つのバンドと
(前記バンドのそれぞれについて±25cm-1)を有するラマンスペクトル、
(c)Cu Kα X線を用いて測定された2θ(±0.2°)が37.4°、39
.1°、45.3°、及び66.4°からなる群から選択される少なくとも1つのX線粉
末回折ピーク、のうちの少なくとも1つによって特徴づけられる結晶構造を有する、組成
物。
【請求項15】
組成物であって、
(a)Coと、
(b)結晶性コバルト酸リチウム又は結晶性ドープコバルト酸リチウムと、を含有し、
該結晶性酸化物が成分元素として、前記結晶性酸化物中の酸素を除く全原子の%で原子%
を表した場合に、
45~55原子%のリチウムと、
20~55原子%のコバルトと、
0~25原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニ
ウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、ルテニウム、ニッケル、亜鉛、モリブデ
ン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガド
リニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種の追加ドーパント
元素と、を含有し、
前記組成物の総質量の0.01%~10%がCoであり、
前記組成物の総質量の90%~99.99%が、結晶性コバルト酸リチウム又は結晶性
ドープコバルト酸リチウムであり、
前記組成物が底面及び上面を備え、
前記結晶性コバルト酸リチウム又は結晶性ドープコバルト酸リチウムが、以下のパラメ
ータ(a)~(c)
(a)(101)、(104)、(110)、及び(012)からなる群から選択され
る少なくとも1つの結晶配向、
(b)484cm-1のバンドと、593cm-1のバンドと、690cm-1、52
6cm-1、及び625cm-1からなる群から選択される少なくとも1つのバンドと(
前記バンドのそれぞれについて±25cm-1)を有するラマンスペクトル、
(c)2θ(±0.2°)が37.4°、39.1°、45.3°、及び66.4°か
らなる群から選択される少なくとも1つのX線粉末回折ピーク、のうちの少なくとも1つ
によって特徴づけられる結晶構造を有する、組成物。
【請求項16】
前記結晶性酸化物が、前記結晶性酸化物中の酸素を除く全原子の%で原子%を表した場
合に、
45~55原子%のリチウムと、
40~55原子%のコバルトと、
0~5原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム
、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、ルテニウム、ニッケル、モリブデン、亜鉛、
ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニ
ウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種のドーパント元素と、
を含有する、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
前記結晶性酸化物が、前記結晶性酸化物中の酸素を除く全原子の%で原子%を表した場
合に、
45~55原子%のリチウムと、
42.5~55原子%のコバルトと、
0~2.5原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニ
ウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、ルテニウム、ニッケル、モリブデン、亜
鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガド
リニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種のドーパント元素
と、を含有する、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項18】
前記結晶性酸化物が、前記結晶性酸化物中の酸素を除く全原子の%で原子%を表した場
合に、
45~55原子%のリチウムと、
45~55原子%のコバルトと、を含有する、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項19】
前記結晶性酸化物が、前記結晶性酸化物中の酸素を除く全原子の%で原子%を表した場
合に、
47.0~53.0原子%のリチウムと、
47.0~53.0原子%のコバルトと、を含有する、請求項14又は15に記載の組
成物。
【請求項20】
前記結晶性酸化物が、前記結晶性酸化物中の酸素を除く全原子の%で原子%を表した場
合に、
47.5~49.1原子のリチウム%と、
50.9~52.5原子%のコバルトと、を含有する請求項14又は15に記載の組成
物。
【請求項21】
前記結晶性酸化物が、式LiCo1-2yMnNiを有する、請求項14又
は15に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物の総質量の0.5%~10%がCoである、請求項14~20のいず
れか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物の総質量の1.0%~10%がCoである、請求項14~20のいず
れか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物の総質量の2.5%~10%がCoである、請求項14~20のいず
れか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記上面及び前記底面のうちの少なくとも一方が、10~250nm、好ましくは30
~250nm、より好ましくは50~250nmの平均表面粗さ(R)を有する、請求
項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物の総質量の0.01%~5%がCoである、請求項14~20のいず
れか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物の総質量の5%~7.5%がCoである、請求項14~20のいずれ
か一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物の総質量の7.5%~10%がCoである、請求項14~20のいず
れか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物の総質量の0.01%~0.05%がCoである、請求項14~20
のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物の総質量の0.05%~0.1%がCoである、請求項14~20の
いずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物の総質量の0.1%~0.5%がCoである、請求項14~20のい
ずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物の総質量の0.5%~1.0%がCoである、請求項14~20のい
ずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物の総質量の1.0%~1.5%がCoである、請求項14~20のい
ずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記組成物の総質量の1.5%~2.0%がCoである、請求項14~20のい
ずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物の総質量の2.0%~3.0%がCoである、請求項14~20のい
ずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記組成物の総質量の3.0%~4.0%がCoである、請求項14~20のい
ずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物の総質量の4.0%~5.0%がCoである、請求項14~20のい
ずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物が、前記上面及び前記底面を備え、高さが1~50μmである薄膜層である
、請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
前記組成物が、基板上の層として設けられる、請求項1~38のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項40】
前記組成物が、前記上面及び前記底面を備え、高さが1~50μmである薄膜層であり
、該薄膜層がCoのシード層を含む、請求項14~37のいずれか一項に記載の組
成物。
【請求項41】
前記シード層が、前記底面からの前記高さの75%以内にある、請求項40に記載の組
成物。
【請求項42】
前記シード層が、前記底面からの前記高さの50%以内にある、請求項40に記載の組
成物。
【請求項43】
前記シード層が、前記底面からの前記高さの25%以内にある、請求項40に記載の組
成物。
【請求項44】
前記シード層が、前記底面からの前記高さの10%以内にある、請求項40に記載の組
成物。
【請求項45】
前記シード層が、前記底面からの前記高さの5%以内にある、請求項40に記載の組成
物。
【請求項46】
前記シード層が、前記底面からの前記高さの2.5%以内にある、請求項40に記載の
組成物。
【請求項47】
前記シード層が、前記薄膜層の前記底面を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項48】
前記シード層の厚さが0.1~100nmである、請求項40~47のいずれか一項に
記載の組成物。
【請求項49】
前記シード層の厚さが0.1~50nmである、請求項40~47のいずれか一項に記
載の組成物。
【請求項50】
前記シード層の厚さが0.1~25nmである、請求項40~47のいずれか一項に記
載の組成物。
【請求項51】
前記シード層の厚さが0.1~10nmである、請求項40~47のいずれか一項に記
載の組成物。
【請求項52】
前記シード層の厚さが1~50nmである、請求項40~47のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項53】
前記シード層の厚さが1~25nmである、請求項40~47のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項54】
前記シード層の厚さが1~10nmである、請求項40~47のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項55】
前記シード層の厚さが1~5nmである、請求項40~47のいずれか一項に記載の組
成物。
【請求項56】
前記結晶性酸化物が、(101)、(104)、又は(110)から選択される1、2
、又は3つ全ての結晶配向を有する、請求項40~55のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項57】
前記結晶性酸化物が(101)の結晶配向を有する、請求項40~55のいずれか一項
に記載の組成物。
【請求項58】
前記結晶性酸化物が(104)の結晶配向を有する、請求項40~55のいずれか一項
に記載の組成物。
【請求項59】
前記結晶性酸化物が(110)の結晶配向を有する、請求項40~55のいずれか一項
に記載の組成物。
【請求項60】
前記結晶性酸化物が、(101)及び(104)、(101)及び(110)、又は(
104)及び(110)の結晶配向を有する、請求項40~55のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項61】
前記上面の少なくとも2.5%が、(101)、(104)、(110)、又はこれら
の組み合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である、請求項40~55の
いずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
前記上面の少なくとも4.5%が、(101)、(104)、(110)、又はこれら
の組み合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である、請求項40~55の
いずれか一項に記載の組成物。
【請求項63】
前記上面の少なくとも5%が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの組
み合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である、請求項40~55のいず
れか一項に記載の組成物。
【請求項64】
前記上面の少なくとも7.5%が、(101)、(104)、(110)、又はこれら
の組み合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である、請求項40~55の
いずれか一項に記載の組成物。
【請求項65】
前記上面の少なくとも10%が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの
組み合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である、請求項40~55のい
ずれか一項に記載の組成物。
【請求項66】
前記上面の少なくとも25%が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの
組み合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である、請求項40~55のい
ずれか一項に記載の組成物。
【請求項67】
前記上面の少なくとも50%が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの
組み合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である、請求項40~55のい
ずれか一項に記載の組成物。
【請求項68】
前記上面の少なくとも75%が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの
組み合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である、請求項40~55のい
ずれか一項に記載の組成物。
【請求項69】
前記上面の少なくとも80%が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの
組み合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である、請求項40~55のい
ずれか一項に記載の組成物。
【請求項70】
前記上面の少なくとも90%が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの
組み合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である、請求項40~55のい
ずれか一項に記載の組成物。
【請求項71】
前記上面の少なくとも95%が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの
組み合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である、請求項40~55のい
ずれか一項に記載の組成物。
【請求項72】
前記上面の95%超が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの組み合わ
せから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である、請求項40~55のいずれか一
項に記載の組成物。
【請求項73】
前記上面の97.5%超が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの組み
合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である、請求項40~55のいずれ
か一項に記載の組成物。
【請求項74】
前記上面の99%超が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの組み合わ
せから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である、請求項40~55のいずれか一
項に記載の組成物。
【請求項75】
前記上面の99.5%超が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの組み
合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である、請求項40~55のいずれ
か一項に記載の組成物。
【請求項76】
前記結晶性酸化物が、(101)配向、(104)配向、(110)配向、(101)
及び(104)、(101)及び(110)、又は(104)及び(110)の結晶配向
を有する、請求項40~55のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項77】
前記結晶性コバルト酸リチウム又は結晶性ドープコバルト酸リチウムが、空間群R-3
m(166)の結晶菱面体構造を有する、請求項14~37及び40~76のいずれか一
項に記載の組成物。
【請求項78】
前記結晶性酸化物が、不規則な柱状晶構造と、ランダムに配向した板又はクラスタ状の
角錐を含む上面とを含有する、請求項40~55のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項79】
前記結晶性酸化物が、Cu Kα X線源を用いて測定された2θ(±0.2°)が3
7.4°、45.3°、又は37.4°及び45.3°の両方から選択されるX線粉末回
折ピークを含むX線粉末回折パターンを示す結晶構造を有する、請求項14~37及び4
0~64のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項80】
請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物の作製方法であって、
-リチウムの供給源と、
-クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される遷移金
属の供給源と、
-酸素の供給源と、
-任意選択で、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム
、バナジウム、銅、ルテニウム、亜鉛、モリブデン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、
スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群
から選択される少なくとも1種のドーパント元素の供給源と、
を少なくとも含む、前記組成物の各成分元素のそれぞれの蒸気源を提供する工程と、
基板を約30℃~約900℃で加熱する工程と、
前記各成分元素の流束を前記基板上に供給する工程であって、前記成分元素が前記基板
上で反応して、R-3m空間群に属する岩塩構造を有する層状混合金属酸化物によって与
えられる第1の相を形成する工程と、
少なくともクロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される
前記遷移金属と前記酸素との流束を前記基板上に供給する工程であって、前記遷移金属と
前記酸素とが前記基板上で反応して、前記第1の相の結晶構造を有しない金属酸化物によ
って与えられる第2の相を形成する工程と、を有する方法。
【請求項81】
前記方法が、
前記基板上に前記第2の相をシード層として堆積させる工程と、
前記シード層の上に前記第1の相の膜を堆積させる工程と、を有する、請求項80に記
載の方法。
【請求項82】
前記方法が、
前記基板上に前記第1の相の第1の膜を堆積させる工程と、
前記第1の層上に前記第2の相をシード層として堆積させる工程と、
前記シード層上に前記第1の相の第2の膜を堆積させる工程と、を含む、請求項80に
記載の方法。
【請求項83】
前記基板上に前記第1の相と同時に前記第2の相を堆積させ、前記第1の相と前記第2
の相とを含む混合物層を形成する工程を有する、請求項80に記載の方法。
【請求項84】
前記混合物層が前記基板上に堆積される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記混合物層が、前記第1の相の既存の膜上に堆積される、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記混合物層の上に前記第1の相の膜を堆積させる工程を更に有する、請求項83~8
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記基板が、約150℃~約700℃、好ましくは約200℃~700℃に加熱される
、請求項80~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記基板が、約200℃~500℃、好ましくは約300℃~500℃に加熱される、
請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記成分元素のうちの1種以上の前記流束を変化させて、前記第2の相の形成量を増加
させる工程を有する、請求項80~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記リチウムの流束を減少させるか又はなくす工程を有する、請求項89に記載の方法
【請求項91】
クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される前記少なく
とも1種の遷移金属元素の前記流束を増加させる工程を有する、請求項89又は請求項9
0に記載の方法。
【請求項92】
前記酸素の流束を減少させる工程を有する、請求項89~91のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項93】
窒素又は希ガスなどの不活性ガスと共に酸素を供給する工程を有する、請求項89~9
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記蒸気源はコバルトの供給源を含み、
前記第1の相が、リチウム、コバルト、任意選択で前記ドーパント元素のうちの1種以
上、及び任意選択でクロム、マンガン、鉄、及びニッケルからなる群から選択される1種
以上の更なるドーパント元素を含有する結晶性酸化物であり、
前記第2の相がCoである、請求項80~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
請求項96~121のいずれか一項の特徴を更に有する、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
請求項14~79又は請求項152のいずれか一項に記載の組成物の作製方法であって

前記組成物の各成分元素のそれぞれの蒸気源を提供する工程であって、該蒸気源は、コ
バルトの供給源、リチウムの供給源、酸素の供給源、及び任意選択でマグネシウム、カル
シウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、
ルテニウム、銅、モリブデン、ニッケル、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ
、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から
選択される少なくとも1種のドーパント元素の供給源を少なくとも含む工程と、
基板を約30℃~約900℃で加熱する工程と、
前記基板上に前記各成分元素を共堆積させる工程であって、該成分元素が基板上で反応
して、リチウム、コバルト、及び任意選択で前記ドーパント元素のうちの1種以上を含有
し、上面及び底面を備える結晶性酸化物を形成する工程と、
前記基板上に前記コバルトと前記酸素とを共堆積させる工程であって、前記コバルトと
前記酸素とが前記基板上で反応してCoを生成する工程と、を有する方法。
【請求項97】
前記結晶性酸化物を含有する請求項14~79又は請求項152のいずれか一項に記載
の組成物の作製方法であって、
前記結晶性酸化物の各成分元素のそれぞれの蒸気源を提供する工程であって、前記各成
分元素が、コバルトと、リチウムと、酸素と、任意選択で、マグネシウム、カルシウム、
ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウ
ム、銅、モリブデン、ニッケル、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビ
スマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択され
る少なくとも1種のドーパント元素とを含む工程と、
基板を約30℃~約900℃で加熱する工程と、
前記基板上に前記各成分元素を共堆積させる工程であって、該成分元素が基板上で反応
して、リチウム、コバルト、及び任意選択で前記ドーパント元素のうちの1種以上を含有
し、上面及び底面を備える結晶性酸化物を形成する工程と、
前記基板上に前記コバルトと前記酸素とを共堆積させる工程であって、前記コバルトと
前記酸素とが前記基板上で反応してCoを生成する工程と、を有する方法。
【請求項98】
前記方法が、
前記基板上に前記Coをシード層として堆積させる工程と、
前記Coシード層の上に、リチウム、コバルト、及び任意選択で前記ドーパント
元素のうちの1種以上を含有する結晶性酸化物の層を堆積させる工程と、を有し、リチウ
ム及びコバルトを含有する前記結晶性酸化物は、該結晶性酸化物の前記底面に平行な面に
対し、(101)、(104)、(110)、又はそれらの組み合わせから選択される結
晶配向を有する、請求項96又は97に記載の方法。
【請求項99】
前記方法が、
前記基板上に、リチウム、コバルト、及び任意選択で前記ドーパント元素のうちの1種
以上を含有する前記結晶性酸化物の第1の層を堆積させる工程と、
リチウム及びコバルトを含有する結晶性酸化物の前記第1の層上に前記Coをシ
ード層として堆積させる工程と、
前記Coのシード層の上に、リチウム、コバルト、及び任意選択で前記ドーパン
ト元素のうちの1種以上を含有する結晶性酸化物の第2の層を堆積させる工程であって、
リチウム及びコバルトを含有する結晶性酸化物の前記第2の層は、前記結晶性酸化物の前
記底面に対し、(101)、(104)、(110)、又はそれらの組み合わせから選択
される結晶配向を有する工程と、を有する、請求項96又は97に記載の方法。
【請求項100】
リチウム、コバルト、及び任意選択で前記ドーパント元素のうちの1種以上を含有する
前記結晶性酸化物と同時に前記Coを堆積させ、前記Coと、リチウム、コ
バルト、及び任意選択で前記ドーパント元素のうちの1種以上を含有する前記結晶性酸化
物とを含有する混合層を形成する工程を有する、請求項96又は請求項97に記載の方法
【請求項101】
前記基板上に、リチウム、コバルト、及び任意選択で前記ドーパント元素のうちの1種
以上を含有する前記結晶性酸化物と同時に前記Coを堆積させ、前記Co
、リチウム、コバルト、及び任意選択で前記ドーパント元素のうちの1種以上を含有する
前記結晶性酸化物とを含有する混合層を形成する工程を有する、請求項100に記載の方
法。
【請求項102】
リチウム、コバルト、及び任意選択で前記ドーパント元素のうちの1種以上を含有する
結晶性酸化物の既存の層上に、前記混合層を堆積させる工程を有する、請求項100に記
載の方法。
【請求項103】
Coと、リチウム及びコバルトを含有する結晶性酸化物との前記混合層の上に、
リチウム、コバルト、及び任意選択で前記ドーパント元素のうちの1種以上を含有する結
晶性酸化物の層を堆積させる工程を有し、前記混合層の上のリチウム、コバルト、及び任
意選択で前記ドーパント元素のうちの1種以上を含有する結晶性酸化物の前記層は、上面
及び底面を備え、前記底面に平行な平面に対し、(101)、(104)、(110)、
又はそれらの組み合わせから選択される結晶配向を有する、請求項100~102のいず
れか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記方法は、
(a)前記結晶性酸化物の各成分元素のそれぞれの蒸気源を提供する工程であって、前
記各成分元素のそれぞれの蒸気源が、リチウムの供給源と、酸素の供給源と、コバルトの
供給源と、任意選択でマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウ
ム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、銅、モリブデン、ニッケル、亜鉛
、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリ
ニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種のドーパント元素の
供給源とを含む工程と、
(b)基板を実質的に30℃~900℃に加熱する工程と、
(c)前記リチウムの流束、前記酸素の流束、前記コバルトの流束、及び任意選択で前
記少なくとも1種のドーパント元素の流束を供給する工程と、
(d)前記供給源から、前記リチウム、前記酸素、前記コバルト、及び任意選択で前記
少なくとも1種のドーパントを前記加熱した基板上に共堆積させ、前記成分元素を前記基
板上で反応させて、リチウム、コバルト、及び任意選択で前記少なくとも1種のドーパン
ト元素を含有し、上面及び底面を備える結晶性酸化物を形成する工程と、
(e)前記(d)の共堆積中、又はその前に、前記加熱した基板上に前記供給源から前
記コバルトと前記酸素とを共堆積させ、前記供給源からの前記成分元素を反応させてCo
を形成する工程と、を有する気相堆積法である、請求項96~103のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項105】
前記結晶性酸化物が、前記底面に平行な平面に対し、(101)、(104)、(11
0)、又はそれらの組み合わせから選択される結晶配向を有する、請求項104に記載の
方法。
【請求項106】
前記基板が約150~約700℃に加熱される、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記基板が約200~約700℃に加熱される、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記基板が約200~約500℃に加熱される、請求項106に記載の方法。
【請求項109】
前記基板が約300~約500℃に加熱される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記方法が、前記成分元素のうちの1種以上の前記流束を変化させて、前記Co
の形成量を増加させる工程を有する、請求項96~109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記リチウムの流束を減少させるか又はなくす工程を有する、請求項110に記載の方
法。
【請求項112】
前記リチウムの流束を減少させる工程を有する、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記コバルトの流束を増加させる工程を有する、請求項110~112のいずれか一項
に記載の方法。
【請求項114】
前記酸素の流束を減少させる工程を有する、請求項110~113のいずれか一項に記
載の方法。
【請求項115】
前記酸素を不活性ガスと共に供給する工程を有する、請求項110~113のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項116】
前記不活性ガスが窒素又は希ガスを含有する、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記コバルトの流束が、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物の堆積に必要なコバルト
の流束のレベルに対して増加され、前記リチウムの流束が、リチウム及びコバルトの結晶
性酸化物の堆積に必要なリチウムの流束のレベルに維持される、請求項110に記載の方
法。
【請求項118】
前記コバルトの流束が、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物とCoとの混合物
の堆積に必要なコバルトの流束のレベルに増加され、前記リチウムの流束が、リチウム及
びコバルトの結晶性酸化物の堆積に必要なリチウムの流束のレベルに維持される、請求項
110に記載の方法。
【請求項119】
前記コバルトの流束が、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物の堆積に必要なコバルト
の流束のレベルに維持され、前記リチウムの流束が、リチウム及びコバルトの結晶性酸化
物の堆積に必要なリチウムの流束のレベルに対して減少される、請求項110に記載の方
法。
【請求項120】
前記コバルトの流束が、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物の堆積に必要なコバルト
の流束のレベルに維持され、前記リチウムの流束が、リチウム及びコバルトの結晶性酸化
物とCoとの混合物の堆積に必要なレベルである、請求項110に記載の方法。
【請求項121】
前記加熱した基板上に前記成分元素を共堆積させる工程が、前記基板上に支持されてい
る1層以上の材料層上に前記成分元素を共堆積させることを含む、請求項96~120の
いずれか一項に記載の気相堆積法。
【請求項122】
請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物の作製方法であって、該方法が、
リチウムと、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、及びそれらの組み合わせか
らなる群から選択される1種以上の遷移金属と、任意選択で、マグネシウム、カルシウム
、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、銅、ルテニウム、亜鉛、モリブ
デン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガ
ドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される1種以上のドーパント元素とを
含有する混合金属酸化物を含有するスパッタリングターゲットを提供する工程と、
前記第1のスパッタリングターゲットに含まれる、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、
及びコバルトからなる群から選択される前記遷移金属のうちの1種以上を含有する金属酸
化物相を含む更なるスパッタリングターゲットを提供する工程と、
前記スパッタリングターゲットと、前記更なるスパッタリングターゲットとをスパッタ
リングして組成物を作製する工程と、を有するスパッタリング堆積法であり、前記組成物
が、
任意選択で前記ドーパント元素のうちの少なくとも1種がドープされた、リチウムと、
クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される前記遷移金属
のうちの1種以上との層状混合金属酸化物によって与えられ、かつR-3m空間群に属す
る岩塩構造を有する第1の相と、
前記第1相の結晶構造を有しない金属酸化物によって与えられ、前記層状混合金属酸化
物に含まれる、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択され
る前記遷移金属のうちの1種以上を含有する第2の相と、を含む、方法。
【請求項123】
前記スパッタリングターゲットをスパッタリングして前記第1の相の膜を生成する工程
を有し、該工程の前に、前記更なるスパッタリングターゲットをスパッタリングして前記
第2の相の膜を生成する工程が実行される、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記組成物をアニールする工程を更に有する、請求項122又は123に記載の方法。
【請求項125】
前記スパッタリングターゲットが、(a)コバルト酸リチウム、又は(b)マグネシウ
ム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、銅、ルテニウム
、亜鉛、モリブデン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン
、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種
のドーパント元素、及び/若しくはクロム、マンガン、鉄、及びニッケルからなる群から
選択される少なくとも1種のドーパント元素を含有するコバルト酸リチウム、の供給源を
含み、
前記更なるスパッタリングターゲットが酸化コバルトを含有し、
前記スパッタリングターゲットと前記更なるスパッタリングターゲットをスパッタリン
グする工程が、Coと、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物とを含有し、任意選
択で前記ドーパント元素のうちの少なくとも1種がドープされている組成物を生成する、
請求項122~124のいずれか一項に記載の方法。
【請求項126】
請求項14~79又は152のいずれか一項に記載の組成物の作製方法であって、該方
法が、
酸化コバルトを含有する第1のスパッタリングターゲットを提供する工程と、
(a)コバルト酸リチウム、又は(b)マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、
チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、銅、モリブデ
ン、ニッケル、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン
、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種
のドーパント元素を含有するコバルト酸リチウムの供給源を含む第2のスパッタリングタ
ーゲットを提供する工程と、
前記第1のスパッタリングターゲットと前記第2のスパッタリングターゲットとをスパ
ッタリングして、Coと、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物とを含有し、任意
選択で前記ドーパント元素のうちの少なくとも1種がドープされている組成物を生成する
工程と、を有するスパッタリング堆積法である、方法。
【請求項127】
前記方法が、
酸化コバルトを含有する第1のスパッタリングターゲットを提供する工程と、
(a)コバルト酸リチウム、又は(b)マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、
チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、銅、モリブデ
ン、ニッケル、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン
、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種
のドーパント元素を含有するコバルト酸リチウムの供給源を含む第2のスパッタリングタ
ーゲットを提供する工程と、
前記第1のスパッタリングターゲットと前記第2のスパッタリングターゲットとをスパ
ッタリングして、Coと、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物とを含有し、任意
選択で前記ドーパント元素のうちの少なくとも1種がドープされている組成物を生成する
工程と、を有するスパッタリング堆積法である、請求項96又は請求項97に記載の方法
【請求項128】
前記方法が、
前記第1のターゲットをスパッタリングしてCoの薄膜層を生成し、次いで前記
第2のターゲットをスパッタリングして、任意選択で前記ドーパント元素のうちの少なく
とも1種がドープされているリチウム及びコバルトの薄膜結晶性酸化物を生成する工程を
有するスパッタリング堆積法である、請求項126又は127に記載の方法。
【請求項129】
前記方法が、
前記第1のターゲットをスパッタリングして、上面及び底面を備えるCoの薄膜
層を生成する工程と、
前記第2のターゲットをスパッタリングして、前記Coの薄膜層の前記上面の上
に、任意選択で前記ドーパント元素のうちの少なくとも1種がドープされているリチウム
及びコバルトの薄膜結晶性酸化物を生成する工程と、を含有するスパッタリング堆積法で
ある、請求項126~128のいずれか一項に記載の方法。
【請求項130】
第1のスパッタリングターゲットがCoを含有する、請求項128又は129に
記載の方法。
【請求項131】
前記方法が、任意選択で前記ドーパント元素のうちの少なくとも1種がドープされてい
るリチウム及びコバルトの前記結晶性酸化物をアニーリングする工程を更に有する、請求
項126~130のいずれかに記載の方法。
【請求項132】
前記方法が、高エネルギーイオンの供給源を提供する工程と、該高エネルギーイオンの
流束を発生させる工程とを含有する、請求項126~131のいずれか一項に記載の方法
【請求項133】
請求項1~79又は152のいずれか一項に記載の組成物を含む、電極。
【請求項134】
前記組成物が前記基板上に支持される、請求項133に記載の電極。
【請求項135】
前記組成物が前記基板上に層を形成する、請求項134に記載の電極。
【請求項136】
前記電極が、前記組成物と前記基板との間に集電材を更に備える、請求項134又は1
35に記載の電極。
【請求項137】
前記集電材が、金属又は導電性金属酸化物である、請求項136に記載の電極。
【請求項138】
前記集電材が、白金、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、金、銀、ニッケル、
モリブデン、酸化スズ、酸化インジウムスズ、及びステンレス鋼からなる群から選択され
る、請求項137に記載の電極。
【請求項139】
前記基板が、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩材料、ド
ープ酸化シリコン、ガラス、金属、及びセラミック材料からなる群から選択される、請求
項134に記載の電極。
【請求項140】
酸化アルミニウムがサファイアである、請求項139に記載の電極。
【請求項141】
前記電極が、前記基板と前記電極との間に1層以上のパッシベーション層を備える、請
求項135に記載の電極。
【請求項142】
前記少なくとも1層のパッシベーション層が二酸化シリコンを含有する、請求項141
に記載の電極。
【請求項143】
前記少なくとも1層のパッシベーション層が窒化シリコンを含有する、請求項141又
は142に記載の電極。
【請求項144】
前記集電体と前記基板との間に接着層が存在する、請求項134及び136、並びに任
意選択で請求項135及び137~143のいずれか一項に記載の電極。
【請求項145】
前記接着層が、金属及び金属酸化物から選択される、請求項114に記載の電極。
【請求項146】
前記接着層が、酸化チタン、チタン、ジルコニウム、及びクロムからなる群から選択さ
れる、請求項145に記載の電極。
【請求項147】
電気化学セルであって、
電解質と、
アノードと、
カソードと、を備え、
前記カソードが、請求項133~146のいずれか一項に記載の電極を備える、電気化
学セル。
【請求項148】
前記電解質が、オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)、硫化リン酸リチウム(xL
S-yP)、リチウムシリコンスルフィドLi-SiS、Li10GeP
12などのチオ-LISICON型イオン伝導体、ガーネット型固体電解質(例えば
、LiLa12)又はLLZO(LiLaZr12)、ホウケイ酸リ
チウムLi0.5La0.5TiO、LATP(Li1+xAlTi2-x(PO
)などのリン酸塩ベースのLISICON型固体電解質、又は固体高分子電解質を含
有する、請求項147に記載の電気化学セル。
【請求項149】
前記電気化学セルが全固体電気化学セルである、請求項147~148のいずれか一項
に記載の電気化学セル。
【請求項150】
固体電気化学セルの製造方法であって、該方法は、請求項96~132のいずれか一項
に記載の方法を用いて、請求項1~79又は152のいずれか一項に記載の結晶性組成物
の層として前記セルの電極を堆積させる工程を有する、方法。
【請求項151】
請求項147~149のいずれか一項に記載の電気化学セルを備える、電子機器。
【請求項152】
前記結晶性酸化物がHT-LiCoOである、請求項14~79のいずれか一項に記
載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩塩構造を有する層状混合金属酸化物によって与えられる第1の相と、当該
層状混合金属酸化物の結晶構造を有しない金属酸化物によって与えられる第2の相とを有
する組成物に関する。より詳細には、本組成物は、本明細書に記載のように、Co
と、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物とを含有してよく、任意選択で1種以上のドー
パント元素を含有する。また、本発明は、本組成物の作製方法及びその使用、特に、電気
化学セル、特にリチウムイオン電池における電極としての使用に関する
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、充電式電池の一種であり、リチウムイオン(Li)が放電時
に負極から正極に移動し、充電時に逆方向に移動する。非充電式のリチウムイオン電池で
は金属リチウムが使用されるのに対し、リチウムイオン電池は、リチウムのインターカレ
ーション化合物を電極材料の1つとして使用する。リチウムイオン電池の構成要素は、イ
オンの移動を可能にする電解質、及び2つの電極である。
【0003】
典型的には、リチウムイオン電池は少なくとも3つの構成要素から構成される。2つの
活性電極(アノード及びカソード)が電解質によって分離される。これらの構成要素は、
それぞれ支持基板上に順次堆積された薄膜として形成される。集電体、界面改質剤及び封
止剤などの更なる構成要素を設けることもできる。製造時には、これら構成要素を、例え
ば、カソード集電体、カソード、電解質、アノード、アノード集電体及び封止剤の順序で
堆積させることができる。
【0004】
リチウムイオンの例では、アノード及びカソードは、リチウムを可逆的に貯蔵すること
ができる。アノード材料及びカソード材料に求められる別の性質として、少ない質量及び
体積の材料からできる限り多くの貯蔵容量を重量及び体積面で得て、単位あたりの貯蔵リ
チウムイオン数をできる限り増やすことが挙げられる。これらの材料は、電池の充電及び
放電プロセス中にイオン及び電子が電極を通って移動できるように、許容できる電子伝導
性及びイオン伝導性を有する必要がある。
【0005】
多くの機器、限定するものではないが特に携帯型の電子機器は、R-3m空間群に属す
る岩塩構造を有する層状混合金属酸化物をベースとするリチウムイオン電池を使用する。
この層状混合金属酸化物は、式LiM′(M′は、クロム、マンガン、鉄、ニッ
ケル、コバルト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遷移金属)を有する
。この構造では、リチウムイオンの層と遷移金属のイオンの層とが酸化物イオンの立方最
密充填格子の八面体部分を交互に占める。リチウムイオンはリチウム面に沿って優先的に
拡散する。
【0006】
このような混合金属酸化物の例としては、LiMn1-y(Mは、クロム、
鉄、ニッケル、コバルト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遷移金属)
及びコバルト酸リチウム(lithium cobalt oxide)(LiCoO)が挙げられる。Li
CoOは六方晶層状結晶構造を有し、O‐Co‐Oのシート間の八面体部位にLi
オンが存在している。リチウム面内の空格子点ホッピングによってLiが拡散する。
【0007】
Liの移動度、したがってLiCoOの電気化学的特性が結晶配向に大きく依存す
ることが当該技術分野で知られている。(101)、(104)、及び(110)の配向
のカソードではLiの至適な拡散が生じることが文献に報告されている。コバルト酸リチ
ウムのこれらの構造は、例えば、以下に引用する非特許文献2、及び以下に引用する非特
許文献7に報告されているように、Liイオンの拡散が主として粒界領域に制限される(
003)よりも好ましい。(110)配向は、基板に対して垂直に並んだリチウム面を有
しており、この配向は、リチウムイオンに容易にアクセスして構造からの引き出しが比較
的容易であり、Liの高速な拡散と高いリチウム貯蔵容量とを可能にするため好ましい
。(101)配向及び(104)配向は、(110)配向よりわずかにリチウム面が傾斜
しているものの、Liを容易に引き出して構造に導入することができる。(003)配
向は、基板に平行に並んだLi面からなり、この配向は、リチウムイオンにアクセスし
にくく構造に効果的に捕捉されるため、あまり好ましくない。
【0008】
コバルト酸リチウムの多くの製造方法が当該技術分野で知られている。例えば、特許文
献1は、コバルト酸リチウムなどの結晶性リチウム含有化合物を作製するための気相堆積
法について記載している。基板上で成分元素が反応して結晶性材料を形成すると、基板上
にコバルト酸リチウム膜が形成される。特許文献1に記載されている堆積法は、文献(非
特許文献1)に報告されている物理気堆積(PVD)システム中で実施されている。
【0009】
非特許文献2は、アルゴン及びOの混合ガス中でLiCoOターゲットから100
~1000nm/分の速度で交流電圧を用いてスパッタリング(RFスパッタリング)す
ることによるコバルト酸リチウム膜の製造を記載している。非特許文献2は、非常に薄い
コバルト酸リチウム膜(膜厚0.5μm未満)では、表面エネルギーを最小化するために
(003)配向が優先的に成長(RFスパッタリング)する傾向があるのに対し、厚いコ
バルト酸リチウム膜(膜厚1μm未満)では、アニーリングプロセス中に生じる体積歪み
エネルギーを最小化するために、好ましい(101)‐(104)配向が生じることを報
告している。非特許文献2は、アニーリングによって結晶化したX線非晶質膜が得られる
ことを記載している。一部の膜ではX線回折パターンにCo、Co、Li
.47Co、及びPtが観察されるものの、これらについての更なる記載は
ない。加熱前の膜がX線非晶質であると記載があるため、これらはアニーリングプロセス
の副生成物であると考えることができる。また、非特許文献2は基板温度の影響について
も論じている。高温堆積時には、結晶粒が大きくなり、空隙の割合が増加する(すなわち
、材料中の空いた空間の割合が、総体積に対する空隙の体積の割合として増加する)。非
特許文献2は、Coを膜に導入したりシーディング層として使用したりする試みに
ついては記載しておらず、膜組成の分析も行っていない。
【0010】
非特許文献3は、パルスレーザ蒸着(PLD)で成長させた膜厚0.3~0.5μmの
コバルト酸リチウム膜の配向に対する基板の影響について記載している。非特許文献3は
、ステンレス鋼(SS)基板では表面が粗くランダムな配向の膜が得られる一方、シリカ
/シリコン(SiO/Si;SOS)基板では、好ましい(003)配向を持つ比較的
滑らかな表面が得られると記載している。同文献に記載された電気化学的性質(electroc
hemistry)は、SS上に堆積した粗い膜は膜の利用度が高いのに対し、SOS上に堆積し
た滑らかな膜は容量保持能が高く、構造的に安定していることを示している。同文献は、
X線回折パターン中の基板以外のピークは全てLiCoO薄膜に起因し、XRDディフ
ラクトグラムではCoなどの不純物のピークは観察されないことを報告している。
【0011】
非特許文献4では、基板温度及び/又はLiOバッファ層を用いて、スパッタリング
によって成膜するコバルト酸リチウム層の配向を制御している。400℃で好ましい(1
10)配向又は(101)配向の膜が得られる。また、同文献は、LiOバッファ層が
(003)配向の形成を抑制し、(110)配向を促進することを記載している。
【0012】
非特許文献5は、RFスパッタリング及びPLDを用いたコバルト酸リチウム膜の作製
を記載している。同文献には、RFスパッタリングでは(110)配向の膜が得られ、P
LDで堆積した膜は(003)配向を有することが記載されている。(110)配向膜は
サイクル中に理論容量をほぼフルに利用するのに対し、(003)膜は可逆容量が低い。
(003)膜の電気化学的特性は、熱処理、ステンレス鋼基板の使用、又はリソグラフィ
ーパターニング法のいずれによって、欠陥及び凹凸を膜に導入することにより改善できる
。非特許文献5に記載の方法によれば、化学量論的組成のLiCoOターゲットからの
RFスパッタリング又はパルスレーザ蒸着(PLD)のいずれかを使用した後、膜をin
situ又はex situのいずれかで600℃でアニールする。アニーリングプロ
セス中に揮発性のLiOが揮発し、Coが生成される(Coは推定5%程
度)。
【0013】
しかしながら、同文献に教示されている長時間の高温処理による方法は、コバルト酸リ
チウム膜のモルフォロジを制御するものではない。詳細には、アニールしたRFシード層
上にLiCoOをPLDによって堆積させると、既存の(110)配向が引き継がれず
、優先的な(001)配向が過剰成長することが教示されている。しかしながら、全ての
(001)の反射が観察されているわけではないので、この膜の構造は、バルクシリコン
(blank silicon)基板上に成長させた膜のものとは異なる。
【0014】
非特許文献6は、基板上へのコバルト酸リチウム膜の形成と、その後行うアニーリング
について更に記載している。同文献は、600℃でのアニーリング中にCoが少々
生成されること、すなわち、高温で揮発性のLiOが揮発し、その結果LiCoO
転換されることを記載している。このプロセスはアニーリング処理中の酸素流を増やすこ
とで促進されたようである。LiCoOの(110)の回折ピークの最大値が、Co
の反射の増加と共に低下した。このように、同文献は、活性材料の損失を防ぐには、
アニーリング時間をできるだけ短くする必要があることを教示している。
【0015】
更に、PLDで生成した膜とRFスパッタリングで生成した膜との相互に向かう好まし
い格子方位の一貫性を調べるために、RFスパッタで形成した0.1mmのLiCoO
のシード層上にPLD膜を成長させ、600℃で30分間アニールしたことを同文献は報
告している。比較のため、同時にバルクシリコン基板上にもPLDを実施した。この比較
サンプルは典型的なPLD膜の回折パターンである(001)の格子面配向を示した。P
LD前は(110)の反射のみを示していたシード層上に堆積したPLD膜は明瞭な(0
06)及び(0012)の反射を示したが、(003)と(009)の反射は一切観察さ
れなかった。この結果は、膜構造が堆積法によって完全に決まるわけではないことを示し
ている。
【0016】
特許文献2は、コバルト酸リチウムの作製、基板表面の改変によるスパッタ膜の配向の
変更、基板表面上へのLiCoOのシード層の追加、及び/又は異なる条件下(ガス種
の変更)でコバルト酸リチウムをスパッタすることによる多層構造の堆積について記載し
ている。
【0017】
非特許文献7は、スパッタリング中の酸素/アルゴンの比の変更による、10μmのL
CO膜の結晶学的テクスチャの決定について記載している。4%のOのみの導入により
(003)配向の形成が抑制される。
【0018】
非特許文献8は、低酸素分圧下でのコバルト酸リチウム膜の堆積について記載している
。詳細には、20mTorr(pO2=5mTorr)以外の使用圧力(working pressu
re)下で堆積した膜では、HT-LiCoO相に加えてCoの第2の相が得られ
ることを記載している。しかしながら、酸素分圧が高い領域では、膜中のLi欠乏により
Co相が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第2015/104539号
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0272560号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Guerin, S. and Hayden, B. E., Journal of Combinatorial Chemistry 2006, 8,66-73
【非特許文献2】Bates et al. J. Electrochem. Soc. 2000, 147, 59-70
【非特許文献3】Ceder et al. J Alloys and Compounds 2006, 417, 304-310
【非特許文献4】Yoon et al. J. Power Sources 2013, 226, 186-190
【非特許文献5】Bouwman et al. Solid-state Ionics 2002 152,181-188
【非特許文献6】Bouwman et al. J. Electrochem. Soc. 2001, 148 (4), A311-A317
【非特許文献7】Trask et al. J Power Sources 2017, 350, 56-64
【非特許文献8】Liao et al. J Power Sources 2004, 128, 263-269
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従来の文献のいずれも、Coの濃度局在(localised concentration)を有する
結晶性コバルト酸リチウム組成物について教示しておらず、そのような濃度の存在により
、容量及びサイクル寿命といったリチウムイオン電池において有利な特性を有する結晶配
向を有するコバルト酸リチウムの作製が可能となることも教示していない。また、従来技
術のいずれも、Coの濃度局在を制御された方法で導入してコバルト酸リチウムの
結晶配向を制御できるような結晶性コバルト酸リチウム組成物の作製方法を教示していな
い。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の態様によれば、
(a)Coと、
(b)結晶性コバルト酸リチウム又は結晶性ドープコバルト酸リチウムと、を含有し、
該結晶性酸化物が成分元素として、前記結晶性酸化物中の酸素を除く全原子の%で原子%
を表した場合に、
45~55原子%のリチウムと、
20~55原子%のコバルトと、
0~25原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニ
ウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、ルテニウム、ニッケル、亜鉛、モリブデ
ン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガド
リニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種の追加ドーパント
元素と、を含有し、
前記組成物の総質量の0.01%~10%がCoであり、
前記組成物の総質量(酸素を含む)の90%~99.99%が、結晶性コバルト酸リチ
ウム又は結晶性ドープコバルト酸リチウムであり、
前記組成物が底面及び上面を備え、
前記結晶性コバルト酸リチウム又は結晶性ドープコバルト酸リチウムが、以下のパラメ
ータ(a)~(c)
(a)(101)、(104)、(110)、及び(012)からなる群から選択され
る少なくとも1つの結晶配向、
(b)484cm-1のバンドと、593cm-1のバンドと、690cm-1、52
6cm-1、及び625cm-1からなる群から選択される少なくとも1つのバンドと(
前記バンドのそれぞれについて±25cm-1)を有するラマンスペクトル、
(c)2θ(±0.2°)が37.4°、39.1°、45.3°、及び66.4°か
らなる群から選択される少なくとも1つのX線粉末回折ピーク、のうちの少なくとも1つ
によって特徴づけられる結晶構造を有する、組成物が提供される。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様に係る結晶性組成物の作製方法が提
供され、該方法は、
前記結晶性酸化物の各成分元素のそれぞれの蒸気源を提供する工程であって、前記各成
分元素が、コバルトと、リチウムと、酸素と、任意選択で、マグネシウム、カルシウム、
ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウ
ム、銅、モリブデン、ニッケル、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビ
スマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択され
る少なくとも1種のドーパント元素とを含む工程と、
基板を約30℃~約900℃で加熱する工程と、
前記基板上に各成分元素を共堆積させる工程であって、前記成分元素が前記基板上で反
応して、リチウム、コバルト及び前記ドーパント元素のうちの1種以上を任意選択で含有
する結晶性酸化物を形成する工程と、
前記基板上に前記コバルトと前記酸素とを共堆積させる工程であって、前記コバルトと
前記酸素とが前記基板上で反応してCoを生成する工程と、を有する。
【0024】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様又は第7の態様の組成物を含む電極
が提供される。前記電極は、正極又は負極であってよい。一実施形態では、前記電極は正
極である。
【0025】
本発明の第4の態様によれば、
電解質と、
アノードと、
カソードと、を備え、
前記アノード及び/又は前記カソードが、本発明の第3の態様に係る電極を備える電気
化学セルが提供される。一実施形態では、前記カソードは、本発明の第3の態様に係る電
極を備える。
【0026】
本発明の第5の態様によれば、固体電気化学セルの製造方法が提供され、該方法は、本
発明の第2の態様に係る方法を用いて、本発明の第1の態様に係る結晶性組成物の層とし
て前記セルの電極を堆積させる工程を有する。
【0027】
本発明の第6の態様によれば、本発明の第4の態様に係る電気化学セルを備える電子機
器が提供される。
【0028】
本発明の第7の態様によれば、
(a)R-3m空間群に属する岩塩構造を有する層状混合金属酸化物によって与えられ
る主相であって、前記層状混合金属酸化物が成分元素として、前記層状酸化物中の酸素を
除く全原子に対する%で原子%を表した場合に、
45~55原子%のリチウムと、
20~55原子%の、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、及びそれらの組
み合わせからなる群から選択される1種以上の遷移金属と、
0~25原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニ
ウム、バナジウム、銅、ルテニウム、亜鉛、モリブデン、ホウ素、アルミニウム、ガリウ
ム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからな
る群から選択される1種以上の追加ドーパント元素と、を含有する主相と、
(b)前記層状混合金属酸化物の結晶構造を有しない金属酸化物によって与えられ、前
記層状混合金属酸化物に含まれる、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトから
なる群から選択される前記遷移金属のうちの1種以上を含有する副次相と、を有し、
前記主相が前記組成物の総質量の90%~99.5%を与え、前記副次相が前記組成物
の総質量の0.5%~10%を与える組成物が提供される。
【0029】
実際のところ、前記副次相は前記層状混合金属酸化物の結晶構造を乱すと考えられる。
特定の実施形態では、前記副次相が非晶質であってよい。別の実施形態では、前記副次相
が、結晶であるが前記層状混合金属酸化物とは異なる結晶構造、例えば、異なる空間群に
属する結晶構造を有してよい。特定の実施形態では、前記副次相が、Fd-3m空間群に
属する結晶構造を有してよい(前記副次相が例えばCoによって与えられる場合)
【0030】
第8の態様によれば、本発明は、本発明の第7の態様に係る組成物の作製方法を提供し
てよく、該方法は、
-リチウムの供給源と、
-クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される遷移金
属の供給源と、
-酸素の供給源と、
-任意選択で、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム
、バナジウム、銅、ルテニウム、亜鉛、モリブデン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、
スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群
から選択される少なくとも1種のドーパント元素の供給源と、
を少なくとも含む、前記組成物の各成分元素のそれぞれの蒸気源を提供する工程と、
基板を約30℃~約900℃で加熱する工程と、
前記各成分元素の流束を前記基板上に供給する工程であって、前記成分元素が前記基板
上で反応して、R-3m空間群に属する岩塩構造を有する層状混合金属酸化物によって与
えられる第1の相を形成する工程と、
少なくとも前記遷移金属と前記酸素との流束を前記基板上に供給する工程であって、前
記遷移金属と前記酸素とが前記基板上で反応して、前記第1の相の結晶構造を有しない金
属酸化物によって与えられる第2の相を形成する工程と、を有する。
【0031】
第9の態様によれば、本発明は、本発明の第7の態様に係る組成物の作製方法を提供し
てよく、該方法が、
リチウムと、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、及びそれらの組み合わせか
らなる群から選択される1種以上の遷移金属と、任意選択で、マグネシウム、カルシウム
、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、銅、ルテニウム、亜鉛、モリブ
デン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガ
ドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される1種以上のドーパント元素とを
含有する混合金属酸化物を含有するスパッタリングターゲットを提供する工程と、
前記第1のスパッタリングターゲットに含まれる、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、
及びコバルトからなる群から選択される前記遷移金属のうちの1種以上を含有する金属酸
化物相を含む更なるスパッタリングターゲットを提供する工程と、
前記スパッタリングターゲットと、前記更なるスパッタリングターゲットとをスパッタ
リングして組成物を作製する工程と、を有するスパッタリング堆積法であり、前記組成物
が、
任意選択で前記ドーパント元素のうちの少なくとも1種がドープされた、リチウムと、
前記遷移金属のうちの1種以上との層状混合金属酸化物によって与えられ、かつR-3m
空間群に属する岩塩構造を有する第1の相と、
前記第1相の結晶構造を有しない金属酸化物によって与えられ、前記層状混合金属酸化
物に含まれる、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択され
る前記遷移金属のうちの1種以上を含有する第2の相と、を含む。
【0032】
本発明の第10の態様によれば、固体電気化学セルの製造方法が提供され、該方法は、
本発明の第8又は第9の態様に係る方法を用いて、本発明の第7の態様に係る組成物の層
として前記セルの電極を堆積させる工程を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態に係る方法の実施に好適な装置の例の概略図である。
図2】レーザアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)によって測定したコバルト酸リチウム中のリチウムのパーセンテージと、25℃の温度において1Cの速度で100%の放電深度(DoD)でサイクルしたときに放電容量の80%(5サイクル目)に達するまでのサイクル数との関係を示す。
図3】LA-ICP-MSによってLi:Co比を測定したときのコバルト酸リチウム中のリチウムのパーセンテージと、温度25℃での利用数(面積及び厚さで正規化した容量)との関係を示す。
図4】本発明の一態様に係る組成物を含む膜(実施例に記載の膜1)の上で測定したラマンスペクトルを示す。
図5】本発明の一態様に係る組成物を含む膜1~3と、(本発明に係るものではない)膜4とのX線回折図を示す。
図6】(本発明に係るものではない)膜4の断面ラマンスペクトルを示す。
図7】(本発明に係るものではない)膜4のLCO層の走査型電子顕微鏡(SEM)断面像及び上面像を示す。
図8】本発明の一態様に係る膜1~3におけるSEM上面像、断面ラマンスペクトル、及びコバルトに対するリチウムの平均パーセンテージを示す。
図9】本発明の一態様に係る膜1のLCO層のSEM断面像及び上面図を示す。
図10】膜の中にCo層を含む(本発明の一態様に係る)膜5のSEM上面像及び断面ラマンスペクトルを示す。
図11】本発明の一態様に係るLiCoO(膜1)を備える固体電池の断面を示す図である。
図12】(本発明の一態様に係る)膜1~3と、(本発明に係るものではない)膜4とのSEMを示し、これらのデータを表3及び表4に示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[利点及び意外な知見]
本発明の一態様によれば、本明細書に開示のさまざまな方法、限定するものではないが
、特に物理気相堆積法(PVD)によって結晶性コバルト酸リチウムを成長させる。コバ
ルト酸リチウム膜は、電気化学セル、特に固体電池に用いるために、例えば、不活性基板
上の膜として、オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)固体電解質などの電解質と組み
合わせて電極に用いられてよい。
【0035】
一般に、リチウムと、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、及びそれらの組み
合わせからなる群から選択される1種以上の遷移金属とを含有し、R-3m空間群に属す
る層状岩塩構造を有する層状混合金属酸化物が、例えばPVDにより成長されてよい。得
られた膜は、電気化学セル、特に固体電池に用いるために、例えば、不活性基板上の膜と
して、任意選択でオキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)固体電解質などの電解質と組
み合わせて電極に用いられてよい。このような層状混合金属酸化物としては、例えば、コ
バルト酸リチウムのほか、LiMn1-y(Mは、クロム、鉄、ニッケル、コ
バルト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遷移金属)が挙げられる。
【0036】
従来、電池の電極中に電極活物質(コバルト酸リチウム又はLiMn1-y
など)の量を最大に増やすことが望ましく、このため、電池の総容量に寄与しない他の相
の存在を阻止することが好ましいと考えられていた。
【0037】
例えば、酸化コバルト(Co)は、電気化学的に不活性であり、LiCoO
成物内の不純物と考えられてきた。例えば、Jo et al. 2009 J. Electrochem. Soc. 156(
6) A430-A434;Tintignac et al. 2012 Electrochimica Acta 60 121-129;Antaya et al
. J. Electrochem Soc Vol.140 No.3 31993参照。これら文献はそれぞれ、その全体を参
照により本明細書に援用する。LiCoOのカソードを備える電池の容量は、LiCo
材料の量によって規定される。したがって、LiCoO材料にCoを添加す
ると、電池の総容量が低下することになる。エネルギー密度(例えば、重量あたりの容量
(Wh/kg)を規定する重量エネルギー密度)を考えると、Coの添加は重量に
寄与するが、容量を増加させることはない。したがって、酸化リチウムの組成物にCo
を意図的に添加することは一見不利なようにみえる。
【0038】
しかしながら、本明細書に開示の方法により、結晶性コバルト酸リチウム組成物の結晶
構造中にCoの濃度局在を制御された方法で導入することが可能となり、意外にも
、これにより、従来技術で可能であったよりも組成物のモルフォロジの厳密な制御が可能
となることを本発明者らは見出した。
【0039】
一例を挙げると、以下に詳述するように、結晶性コバルト酸リチウム組成物の作製方法
が物理気相堆積(PVD)法である場合、(例えば、リチウムの流束に対してコバルトの
流束を変化させることによって、供給ガスの分圧を変化させることによって、又は堆積中
にリチウムの供給を止めることによって、)組成物の結晶構造にCoの濃度局在を
導入することにより、結晶性コバルト酸リチウム組成物のモルフォロジを制御できること
が意外にも見出されている。堆積中に、ある原子の流束に対して別の原子の流束を制御す
ること、及びこの制御が構成物のモルフォロジに与える利点は、従来技術では開示されて
いない。
【0040】
同様に、成分元素を堆積させる物理気相堆積法により、別の層状混合金属酸化物(Li
Mn1-yなど)を堆積中に、成分元素の相対流束を変化させる(例えば、リ
チウムの流束に対してマンガンの流束を変化させる、供給ガスの分圧を変化させる、又は
堆積中にリチウムの供給を止めるなど)ことにより、結晶構造の異なる別個のリチウム欠
乏相が層状酸化物中に形成されることが考えられる。
【0041】
当業者にとって明白なように、コバルト酸リチウムにCoを導入したときに観察
される効果に則り、この別個の相の存在により、層状酸化物のモルフォロジを改変するこ
とができる。
【0042】
また、典型的には、性質上均一性が低くかつ粗い、本明細書に記載の結晶配向を有する
結晶性コバルト酸リチウム組成物は、固体電池において、平坦で滑らかな結晶配向を有す
る同一組成の膜と比較して、容量及びサイクル寿命の両方に関して(限定するものではな
いが、特に、100%の放電深度でサイクルした場合及び/又は温度25℃でサイクルし
た場合)、優れた電気化学的挙動を示すことを本発明者らは意外にも見出した。液体電解
質を用いる電池への同様のモルフォロジを有するコバルト酸リチウム組成物の膜の適用が
従来技術に教示されている可能性はあるものの、所定のモルフォロジを有するコバルト酸
リチウム膜の固体電解質を用いる電池における適用、及び固体電解質と併用した場合の特
性の改善(サイクル寿命、容量、下地層への密着性、応力の制御、クラックの低減)は、
従来技術に開示されていない。
【0043】
より詳細には、滑らかな表面モルフォロジを有するコバルト酸リチウムの形成を教示す
る特許文献1の開示内容とは対照的に、コバルト酸リチウム組成物の均一性が低くかつ粗
いモルフォロジが、平坦で滑らかな結晶配向を有する同じ組成の膜と比較して、固体電池
において、容量及びサイクル寿命の両方に関する電気化学的挙動に優れ、集電体及び/又
は電解質膜に対する密着性が改善され、クラックが少ないことが意外にも見出されている
【0044】
本発明の方法を用いた膜のモルフォロジの調整及び膜表面の粗さの制御には更に利点が
ある。固体電池においては、固体電解質の薄層を、コバルト酸リチウム膜を覆うのに必要
な程度には滑らかにしつつ、Li輸送特性(高い容量及びサイクル寿命)を向上させるの
に十分な無秩序性を上記膜に導入することが有利となる。また、本発明の方法は、膜のモ
ルフォロジの基板依存性を低下させる。更に、本発明の方法では、所望の配向を有するコ
バルト酸リチウムをより低温で成長させることができる。最後に、Coをシーディ
ング層として堆積させるので、堆積プロセス中に追加の供給源を追加する必要がない。
【0045】
コバルト酸リチウムと同じ結晶構造を有する他の層状酸化物材料においても、別個のリ
チウム欠乏相を設けることにより同様の効果が得られることは、当業者にとって明白であ
ろう。
【0046】
[定義]
本明細書において、「X~Y」又は「XとYとの間」として本明細書中に記載する値の
範囲は、終端値のXとYとを含む。
【0047】
本明細書に使用する「電池」という用語は、「セル」という用語と同義であり、化学反
応から電気エネルギーを生成するか、又は電気エネルギーの導入により化学反応を促進す
ることができる装置を指す。
【0048】
本明細書に使用する「結晶」という用語は、結晶に特徴的な原子、イオン、又は分子の
規則的な内部配列を有する固体を意味し、すなわちその格子中で長い範囲の秩序を有する
ことを意味する。
【0049】
本明細書で用いる「層状酸化物」という用語は、一般に、R-3m空間群に属する岩塩
構造を有し、リチウムと、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、及びそれらの組
み合わせからなる群から選択される1種以上の遷移金属とを含有する層状混合金属酸化物
を指す。
【0050】
本明細書で用いる「結晶性酸化物」という用語は、本発明の特定の実施形態に関連して
本明細書に記載する組成物の結晶性コバルト酸リチウム又は結晶性ドープコバルト酸リチ
ウム成分を意味し、(Coも含む組成物全体を意味するものではない)。一実施形
態では、「結晶性酸化物」という用語は、結晶性コバルト酸リチウムを意味する、すなわ
ち、リチウム、コバルト及び酸素のみを含有することを意味する。別の実施形態では、「
結晶性酸化物」という用語は、ドープされた結晶性ドープコバルト酸リチウムを意味する
、すなわち、リチウム、コバルト及び酸素に加えて、(本明細書に列挙されたものから選
択される)少なくとも1種のドーパント元素も含むものを指す。
【0051】
[組成物]
特定の実施形態において、本発明は、Coと、(本明細書において定義する)リ
チウム及びコバルトの結晶性酸化物、又は(本明細書において定義する)結晶性ドープコ
バルト酸リチウムとを含む組成物を提供する。一実施形態において、本発明は、Co
と、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物とから実質的になる組成物を提供する。一実
施形態では、本発明は、Coと、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物とからなる
組成物を提供する。
【0052】
本発明の組成物において、一実施形態では、本組成物は、Coと結晶性酸化物と
の両方を含有する固体構造を有する。一実施形態では、Coと結晶性酸化物との両
方が、組成物の固体構造内に組み入れられている。一実施形態では、Coは、組成
物の固体構造の表面に存在する。別の実施形態では、Coは、膜厚1~50nmの
層として、組成物の固体構造内に組み入れられている。別の実施形態では、Co
、シード層として組成物の固体構造内に組み入れらている。
【0053】
本発明の特定の実施形態の組成物は、(本明細書において定義する)リチウム及びコバ
ルトの結晶性酸化物、又は(本明細書において定義する)結晶性ドープコバルト酸リチウ
ムを含有する。一実施形態では、コバルト酸リチウム又はドープコバルト酸リチウムの総
質量の少なくとも90質量%が結晶性である。一実施形態では、コバルト酸リチウム又は
ドープコバルト酸リチウムの総質量の少なくとも95質量%が結晶性である。一実施形態
では、コバルト酸リチウム又はドープコバルト酸リチウムの総質量の少なくとも97質量
%が結晶性である。一実施形態では、コバルト酸リチウム又はドープコバルト酸リチウム
の総質量の少なくとも98質量%が結晶性である。一実施形態では、コバルト酸リチウム
又はドープコバルト酸リチウムの総質量の少なくとも99質量%が結晶性である。一実施
形態では、コバルト酸リチウム又はドープコバルト酸リチウムの総質量の少なくとも99
.5質量%が結晶性である。一実施形態では、コバルト酸リチウム又はドープコバルト酸
リチウムの総質量の少なくとも99.7質量%が結晶性である。一実施形態では、コバル
ト酸リチウム又はドープコバルト酸リチウムの総質量の少なくとも99.8質量%が結晶
性である。一実施形態では、コバルト酸リチウム又はドープコバルト酸リチウムの総質量
の少なくとも99.9質量%が結晶性である。一実施形態では、コバルト酸リチウム又は
ドープコバルト酸リチウムの総質量の少なくとも99.95質量%が結晶性である。一実
施形態では、コバルト酸リチウム又はドープコバルト酸リチウムの総質量の100質量%
が結晶性である。
【0054】
当業者に公知のように、結晶性コバルト酸リチウムは、高温相、低温相、又はその混合
物を含んでもよい。Gummow et al. Material Research Bulletin, 1992, 27, 327-337に
記載のように、高温(典型的には700℃以上、好ましくは800~1000℃、より好
ましくは約900℃)で合成されるLiCoOの高温相では、最密充填された酸素イオ
ンの平面間の別個の層にLiイオンとCo3+イオンとが含まれる。これに対し、低温
(典型的には500℃以下、好ましくは300~500℃、より好ましくは約350~4
50℃、最も好ましくは約400℃)で合成されるLiCoOの低温相では、リチウム
層中に約6%のコバルトが含まれる。
【0055】
一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に
対し、少なくとも40質量%の高温相を含む。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウ
ムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に対し、少なくとも50質量%の高温相を含む
。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に
対し、少なくとも60質量%の高温相を含む。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウ
ムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に対し、少なくとも70質量%の高温相を含む
。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に
対し、少なくとも80質量%の高温相を含む。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウ
ムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に対し、少なくとも85質量%の高温相を含む
。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に
対し、少なくとも90質量%の高温相を含む。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウ
ムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に対し、少なくとも95質量%の高温相を含む
。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に
対し、少なくとも97質量%の高温相を含む。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウ
ムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に対し、少なくとも98質量%の高温相を含む
。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に
対し、少なくとも99質量%の高温相を含む。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウ
ムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に対し、少なくとも99.5質量%の高温相を
含む。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質
量に対し、少なくとも99.7質量%の高温相を含む。一実施形態では、結晶性コバルト
酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に対し、少なくとも99.9質量%の
高温相を含む。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウ
ムの総質量に対し、100%質量%の高温相を含む。
【0056】
一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に
対し、最大60質量%の低温相を含む。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、
結晶性コバルト酸リチウムの総質量に対し、最大50質量%の低温相を含む。一実施形態
では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に対し、最大4
0質量%の低温相を含む。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバル
ト酸リチウムの総質量に対し、最大30質量%の低温相を含む。一実施形態では、結晶性
コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に対し、最大20質量%の低
温相を含む。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウム
の総質量に対し、最大15質量%の低温相を含む。一実施形態では、結晶性コバルト酸リ
チウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に対し、最大10質量%の低温相を含む。
一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に対
し、最大5質量%の低温相を含む。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶
性コバルト酸リチウムの総質量に対し、最大3質量%の低温相を含む。一実施形態では、
結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に対し、最大2質量%
の低温相を含む。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチ
ウムの総質量に対し、最大1質量%の低温相を含む。一実施形態では、結晶性コバルト酸
リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に対し、最大0.5質量%の低温相を含
む。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量
に対し、最大0.3質量%の低温相を含む。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウム
が、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に対し、最大0.1質量%の低温相を含む。
【0057】
一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に
対し、45~90質量%の高温相と10~55質量%の低温相とを有する。一実施形態で
は、結晶性コバルト酸リチウムが、結晶性コバルト酸リチウムの総質量に対し、60~9
5質量%の高温相と5~40質量%の低温相とを有する。結晶性コバルト酸リチウムの低
温相と高温相との相対量は、Tintignac Electrochimica Acta, 2012,60, 121-129に記載
のものと同様のラマンフィッティング法を用いて概算値を得ることができる。
【0058】
典型的には、組成物中に存在するコバルトの大部分が、+3の酸化状態にあり、コバル
ト酸リチウムの化学量論的組成は一般にLiCoOで表される。特定の実施形態では、
コバルト酸リチウムがリチウム欠乏状態にあり、このようなコバルト酸リチウムの化学量
論的組成はLiCoO(0<x<1)である。特定の実施形態では、コバルト酸リチ
ウムが、リチウムを高い割合で含む、かつ/又は組成物中に存在するコバルトの少なくと
も一部が+2の酸化状態にあり、このようなコバルト酸リチウムの化学量論的組成はLi
CoO(1<x≦2)である。
【0059】
本発明の特定の実施形態に係る結晶性酸化物は、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子の
パーセンテージで表した場合、45~55原子%のリチウムを含有する。一実施形態では
、結晶性酸化物は、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、
46~54原子%のリチウムを含有する。一実施形態では、結晶性酸化物は、組成物中の
酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、47~53原子%のリチウムを含有す
る。一実施形態では、結晶性酸化物は、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテ
ージで表した場合、47.0~53.0原子%のリチウムを含有する。一実施形態では、
結晶性酸化物は、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、4
7.1~52.0原子%のリチウムを含有する。一実施形態では、結晶性酸化物は、結晶
性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、47.2~51.0原子
%のリチウムを含有する。一実施形態では、結晶性酸化物は、結晶性酸化物中の酸素を除
く全原子のパーセンテージで表した場合、47.3~50.0原子%のリチウムを含有す
る。一実施形態では、結晶性酸化物は、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテ
ージで表した場合、47.4~49.5原子%のリチウムを含有する。一実施形態では、
結晶性酸化物は、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、4
7.5~49.1原子%のリチウムを含有する。
【0060】
本発明の特定の実施形態に係る結晶性酸化物は、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子の
パーセンテージで表した場合、20~55原子%のコバルトを含有する。一実施形態では
、結晶性酸化物は、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、
22.5~55原子%のコバルトを含有する。一実施形態では、結晶性酸化物は、組成物
中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、25~55原子%のコバルトを含
有する。一実施形態では、結晶性酸化物は、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセ
ンテージで表した場合、27.5~55原子%のコバルトを含有する。一実施形態では、
組成物は、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、30~5
5原子%のコバルトを含有する。一実施形態では、組成物は、結晶性酸化物中の酸素を除
く全原子のパーセンテージで表した場合、32.5~55原子%のコバルトを含有する。
一実施形態では、組成物は、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表し
た場合、35~55原子%のコバルトを含有する。一実施形態では、結晶性酸化物は、結
晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、37.5~55原子%
のコバルトを含有する。一実施形態では、結晶性酸化物は、結晶性酸化物中の酸素を除く
全原子のパーセンテージで表した場合、40~55原子%のコバルトを含有する。一実施
形態では、組成物は、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合
、42.5~55原子%のコバルトを含有する。一実施形態では、結晶性酸化物は、結晶
性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、45~55原子%のコバ
ルトを含有する。一実施形態では、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージ
で表した場合、46~54原子%のコバルトを含有する。一実施形態では、結晶性酸化物
は、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、46.5~53
.5原子%のコバルトを含有する。一実施形態では、結晶性酸化物は、結晶性酸化物中の
酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、47.0~53原子%のコバルトを含
有する。一実施形態では、結晶性酸化物は、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセ
ンテージで表した場合、49.0~52.8原子%のコバルトを含有する。一実施形態で
は、結晶性酸化物は、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合
、50.0~52.7原子%のコバルトを含有する。一実施形態では、結晶性酸化物は、
結晶性酸化物は、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、5
0.5~52.6原子%のコバルトを含有する。一実施形態では、結晶性酸化物は、結晶
性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、50.5~52.5原子
%のコバルトを含有する。一実施形態では、結晶性酸化物は、結晶性酸化物中の酸素を除
く全原子のパーセンテージで表した場合、50.9~52.5原子%のコバルトを含有す
る。
【0061】
また、結晶性酸化物は、リチウム及びコバルトに加えて、ドーパント元素も含有してよ
い。本明細書において、「ドープ結晶性酸化物」という用語は、結晶構造中のリチウム、
コバルト又は酸素が、他の元素(以下「ドーパント元素」)で置換されてよいリチウム及
びコバルトの結晶性酸化物を意味する。一実施形態では、リチウムがそのようなドーパン
ト元素で置換されている。一実施形態では、コバルトがそのようなドーパント元素で置換
されている。一実施形態では、リチウムとコバルトとがそのようなドーパント元素で置換
されている。一実施形態では、酸素がそのようなドーパント元素で置換されている。
【0062】
リチウムを置換することができるドーパント元素の例としては、ナトリウム及びカリウ
ムが挙げられる。酸素を置換することができるドーパント元素の例としては、硫黄及びセ
レンが挙げられる。
【0063】
一実施形態では、コバルトを置換するドーパント元素が2価(換言すれば+2酸化状態
)である。一実施形態では、コバルトを置換するドーパント元素が3価(換言すれば+3
酸化状態)である。一実施形態では、コバルトを置換するドーパント元素が4価(換言す
れば+4酸化状態)である。
【0064】
コバルトを置換することができるドーパント元素の例としては、アルカリ土類金属(マ
グネシウム、カルシウム、ストロンチウムなど)、遷移金属(チタン、ジルコニウム、バ
ナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、ルテニウム、ニッケル、モリブデン、亜鉛など)
、pブロック元素(ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマスなど)、及び
ランタノイド(ランタン、セリウム、ガドリニウム、ユウロピウムなど)が挙げられる。
【0065】
コバルトを置換するドーパント元素が存在する場合、ドープ原子は、ドープ結晶性酸化
物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、典型的には最大25%、例えば
最大20%、例えば最大15%、例えば最大12.5%、例えば最大10%、例えば最大
7.5%、例えば最大5%、例えば最大4%、例えば最大3%、例えば最大2%、例えば
最大1.5%、例えば最大1%、例えば最大0.9%、例えば最大0.8%、例えば最大
0.7%、例えば最大0.6%、例えば最大0.5%、例えば最大0.4%、例えば最大
0.3%、例えば最大0.2%、例えば最大0.15%、例えば最大0.1%、例えば最
大0.09%、例えば最大0.08%、例えば最大0.07%、例えば最大0.06%、
例えば最大0.05%、例えば最大0.04%、例えば最大0.03%、例えば最大0.
02%、例えば最大、0.01%、例えば最大0.009%、例えば最大0.008%、
例えば最大0.007%、例えば最大0.006%、例えば最大0.005%、例えば最
大0.004%、例えば最大0.003%、例えば最大0.002%、例えば最大0.0
01%の量で存在してよい。
【0066】
一実施形態では、ドープ結晶性酸化物は、ドープ結晶性酸化物中の酸素を除く全原子の
パーセンテージで表した場合、0~25原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロン
チウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、ルテニウム、
ニッケル、モリブデン、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、
ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なく
とも1種のドーパント元素を含有する。一実施形態では、ドープ結晶性酸化物は、ドープ
結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、0~20原子%の、
マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロ
ム、マンガン、鉄、銅、ルテニウム、ニッケル、モリブデン、亜鉛、ホウ素、アルミニウ
ム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピ
ウムからなる群から選択される少なくとも1種のドーパント元素を含有する。一実施形態
では、ドープ結晶性酸化物は、ドープ結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテー
ジで表した場合、0~15原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタ
ン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、ルテニウム、ニッケル、モ
リブデン、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セ
リウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種のド
ーパント元素を含有する。一実施形態では、ドープ結晶性酸化物は、ドープ結晶性酸化物
中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、0~10原子%の、マグネシウム
、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン
、鉄、銅、ルテニウム、ニッケル、モリブデン、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム
、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる
群から選択される少なくとも1種のドーパント元素を含有する。一実施形態では、ドープ
結晶性酸化物は、ドープ結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場
合、0~5原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウ
ム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、ルテニウム、ニッケル、モリブデン、亜鉛
、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリ
ニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種のドーパント元素を
含有する。一実施形態では、ドープ結晶性酸化物は、ドープ結晶性酸化物中の酸素を除く
全原子のパーセンテージで表した場合、0~2.5原子%の、マグネシウム、カルシウム
、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、ル
テニウム、ニッケル、モリブデン、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、
ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択さ
れる少なくとも1種のドーパント元素を含有する。一実施形態では、ドープ結晶性酸化物
は、ドープ結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、0~2原
子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウ
ム、クロム、マンガン、鉄、銅、ルテニウム、ニッケル、モリブデン、亜鉛、ホウ素、ア
ルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及び
ユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種のドーパント元素を含有する。一
実施形態では、ドープ結晶性酸化物は、ドープ結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパー
センテージで表した場合、0~1.5原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチ
ウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、ルテニウム、ニ
ッケル、モリブデン、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ラ
ンタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくと
も1種のドーパント元素を含有する。一実施形態では、ドープ結晶性酸化物は、ドープ結
晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで表した場合、0~1原子%の、マグ
ネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、
マンガン、鉄、銅、ルテニウム、ニッケル、モリブデン、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、
ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウム
からなる群から選択される少なくとも1種のドーパント元素を含有する。一実施形態では
、ドープ結晶性酸化物は、ドープ結晶性酸化物中の酸素を除く全原子のパーセンテージで
表した場合、0~0.5原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン
、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、ルテニウム、ニッケル、モリ
ブデン、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリ
ウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種のドー
パント元素を含有する。
【0067】
一実施形態では、ドープ結晶性コバルト酸リチウム中の酸素を除く全原子の%で量を表
した場合、ドープ結晶性コバルト酸リチウム成分が、45~55原子%のリチウムと、4
0~55原子%のコバルトと、0~5原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチ
ウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、ルテニウム、ニ
ッケル、モリブデン、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ラ
ンタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくと
も1種のドーパント元素と、を含有する本発明の組成物が提供される。
【0068】
一実施形態では、ドープ結晶性コバルト酸リチウム中の酸素を除く全原子の%で量を表
した場合、ドープ結晶性コバルト酸リチウム成分が、45~55原子%のリチウムと、4
2.5~55原子%のコバルトと、0~2.5原子%の、マグネシウム、カルシウム、ス
トロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、銅、ルテニ
ウム、ニッケル、モリブデン、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビス
マス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される
少なくとも1種のドーパント元素と、を含有する本発明の組成物が提供される。
【0069】
一実施形態では、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子の%で量を表した場合、結晶性コ
バルト酸リチウム成分が、45~55原子%のリチウムと、45~55原子%のコバルト
とからなる本発明の組成物が提供される。
【0070】
一実施形態では、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子の%で量を表した場合、結晶性コ
バルト酸リチウム成分が、47.0~53.0原子%のリチウムと、47.0~53.0
原子%のコバルトとからなる本発明の組成物が提供される。
【0071】
一実施形態では、結晶性酸化物中の酸素を除く全原子の%で量を表した場合、結晶性コ
バルト酸リチウム成分が、47.5~49.1原子%のリチウムと、50.9~52.5
原子%のコバルトとからなる本発明の組成物が提供される。
【0072】
本発明の実施形態の結晶性組成物は、リチウム、コバルト、及び(任意選択で)上に列
挙したドーパント元素に加えて、結晶性組成物中で負イオン源を与える酸素も含有する。
組成物は、組成物が電気的に中性となるのに十分な酸素を(酸化物イオンO2-として)
含有し、酸素の厳密な量は、組成物中に存在する他の元素の原子パーセンテージ及び酸化
状態によって決まることを理解することができる。
【0073】
本発明の実施形態の組成物の顕著な特徴は、組成物の結晶構造がCoの濃度局在
を含むことにある。結晶性コバルト酸リチウム組成物の結晶構造にCoの濃度局在
を導入することにより、組成物のモルフォロジを、従来技術よりも厳密に制御可能となる
ことを本発明者らは意外にも見出した。理論に拘束されることを望むものではないが、C
の濃度局在はLiCoOの微結晶(crystallite)層のためのシーディング層
として作用する可能性があると考えられる。また、理論に拘束されることを望むものでは
ないが、Coの濃度局在は、コバルト酸リチウムの結晶構造中に、本明細書に記載
の好ましい結晶配向を促進する欠陥を生じさせ、その結果、本明細書に記載の粗い又は不
規則な結晶モルフォロジ(例えば、大きな板状の粒を含むものなど)が生じ、当該技術分
野で公知のコバルト酸リチウム組成物よりも改善された電気化学的特性を示すと考えられ
る。組成物が膜の形態の場合、膜が典型的には0.2~3.0μm、好ましくは0.3~
2.5μmのサイズの大型微結晶を示す。一実施形態では、膜が0.7~2.0μmのサ
イズの大型微結晶を示す。一実施形態では、膜が0.5~1.0μmのサイズの大型微結
晶を示す。一実施形態では、膜が0.4~0.9μmのサイズの大型微結晶を示す。典型
的には、微結晶のサイズは、手作業で、かつ/又は適切な測定装置と適切なハードウェア
及び/若しくはソフトウェアとを備える走査電子顕微鏡(SEM)を用いて測定される。
【0074】
典型的には、膜が、膜の面内において、少なくとも0.2μm、好ましくは少なくとも
0.3μm、特定の実施態様では少なくとも0.4μmの最大寸法を有する微結晶を含む
。典型的には、膜が、膜の面内において、最大3μm、場合によっては最大2μmの最大
寸法を有する微結晶を含む。
【0075】
組成物が膜の形態の場合、膜の大型微結晶の平均面積は、典型的には0.1~2μm
、好ましくは0.2~1μmである。一実施形態では、膜の大型微結晶の平均面積は0
.8μmである。一実施形態では、膜の大型微結晶の平均面積は0.3μmである。
大型微結晶の平均面積は、典型的には、適切な測定装置と適切なハードウェア及び/又は
ソフトウェアとを備える走査電子顕微鏡(SEM)を用いて測定される。
【0076】
組成物が膜の形態の場合、膜の表面積の典型的には1~100%、好ましくは3~85
%が大型微結晶によって覆われる。一実施形態では、膜の表面積の70~90%、例えば
75~85%、例えば79%が大型微結晶によって覆われる。一実施形態では、膜の表面
積の15~35%、例えば20~25%、例えば22%が大型微結晶によって覆われる。
一実施形態では、膜の表面積の1~10%、好ましくは3~6%、例えば4.5~5.4
%、例えば5%が大型微結晶によって覆われる。大型微結晶によって覆われている膜の割
合は、典型的には、走査電子顕微鏡(SEM)により、撮像領域内の大型微結晶の面積及
び個数からハードウェア及び/又はソフトウェアを用いて測定される。
【0077】
本明細書において、「微結晶(crystallite)」との用語は、結晶格子の配向が実質的
に一定である膜領域を示すのに用いられる。したがって、隣り合う微結晶の境界は、典型
的には、格子方位の変化によって示される。1つの微結晶が副次微結晶を含み、副次微結
晶の結晶格子が全て実質的に同じ配向であってよい。典型的には、個々の副次微結晶は、
隣接する副次微結晶を種として成長し、この結果、この2つの副次微結晶の格子方位が実
質的に配向する。特定の場合には、本明細書に定義する微結晶は、当該技術分野では「粒
(grain)」と呼ばれることがある。
【0078】
表面の粗さについては、触針式段差測定法などの手法を用いて測定して平均粗さR
求めてよく、Rは、フィルタリングされた粗さプロファイルの算術平均値であり、評価
対象の長さ内での中心線に対する偏差から求められる。組成物が膜の形態の場合、膜の平
均表面粗さ(R)は、典型的には、10~200nm、例えば20~150nm、例え
ば、40~120nmである。膜の平均表面粗さ(R)は、少なくとも10nm、場合
によっては少なくとも30nm、場合によっては少なくとも50nmであってよい。場合
によっては、膜の平均表面粗さ(R)は、最大250nmであってよい。これに対し、
本発明の目的には一般に望ましくない(003)配向が支配的である滑らかな結晶表面の
膜の平均表面粗さRは、10nm未満、例えば4nmである。典型的には、平均粗さは
、触針式段差計を用いて測定され、その値Rは、平均粗さ(平均からの平均偏差)を示
す。典型的には、平均Rは、数ミリメートル間隔を空けた異なる3点での測定値から計
算され、各走査長は典型的には2mmである。
【0079】
組成物が膜の形態をとる実施形態では、Coの濃度局在は、生成される結晶性膜
の望ましい構造を促進する量で存在してよい。
【0080】
本発明の実施形態の組成物において、前記組成物の総質量の0.01%~10%がCo
である。一実施形態では、前記組成物の総質量の0.01%~5%がCo
ある。一実施形態では、前記組成物の総質量の5%~7.5%がCoである。一実
施形態では、前記組成物の総質量の7.5%~10%がCoである。一実施形態で
は、前記組成物の総質量の0.01%~0.05%がCoである。一実施形態では
、前記組成物の総質量の0.05%~0.1%がCoである。一実施形態では、前
記組成物の総質量の0.1%~0.5%がCoである。一実施形態では、前記組成
物の総質量の0.5%~1.0%がCoである。一実施形態では、前記組成物の総
質量の1.0%~1.5%がCoである。一実施形態では、前記組成物の総質量の
1.5%~2.0%がCoである。一実施形態では、前記組成物の総質量の2.0
%~3.0%がCoである。一実施形態では、前記組成物の総質量の3.0%~4
.0%がCoである。一実施形態では、前記組成物の総質量の4.0%~5.0%
がCoである。表した総質量には、酸素を含む全ての元素が含まれる。
【0081】
一実施形態では、組成物は、組成物中のCoの分布が不均質である。
【0082】
典型的には、組成物は、膜の層、特に(以下に詳細に定義するように)基板上の膜の層
の形態で形成される。一実施形態では、前記組成物は、上面及び底面を備え、高さが1~
50μmである薄膜層である。一実施形態では、層の高さが1~30μmである。一実施
形態では、層の高さが2~20μmである。一実施形態では、層の高さが、3~12μm
である。一実施形態では、層の高さが5~10μmである。一実施形態では、層の高さが
6~7μmである。
【0083】
一実施形態では、結晶性酸化物薄膜層がCoのシード層を含む。一実施形態では
、前記シード層が、底面からの高さの75%以内にある。一実施形態では、前記シード層
が、底面からの高さの50%以内にある。一実施形態では、前記シード層が、底面からの
高さの25%以内にある。一実施形態では、前記シード層が、底面からの高さの10%以
内にある。一実施形態では、前記シード層が、底面からの高さの5%以内にある。一実施
形態では、前記シード層が、底面からの高さの2.5%以内にある。一実施形態では、前
記シード層が、薄膜層の底面を含む。
【0084】
一実施形態では、前記シード層の厚さが0.1~100nmである。一実施形態では、
前記シード層の厚さが0.1~50nmである。一実施形態では、前記シード層の厚さが
0.1~25nmである。一実施形態では、前記シード層の厚さが0.1~10nmであ
る。一実施形態では、前記シード層の厚さが1~50nmである。一実施形態では、前記
シード層の厚さが1~25nmである。一実施形態では、前記シード層の厚さが1~10
nmである。一実施形態では、前記シード層の厚さが1~5nmである。
【0085】
一実施形態では、Coの濃度局在が、Coの有効層の厚さに関して規定さ
れてよい。本明細書において、「有効層」とは、濃度局在に存在する全てのCo
、層としての組成物の嵩(bulk)にわたって均一に分散したと仮定した場合を意味する。
組成物の結晶性酸化物成分の厚さに対する有効層の厚さを、濃度局在に存在するCo
の量の概算値として用いることができる。
【0086】
一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウム組成物の厚さが1~5μmであり、有効C
層の厚さが0.1~5μmである。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウム
組成物の厚さが2~20μmであり、有効Co層の厚さが0.2~500nmであ
る。
【0087】
本発明の実施形態のコバルト酸リチウム組成物の更なる顕著な特徴は、その結晶構造に
ある。上述したように、本明細書に記載のモルフォロジを有する結晶性コバルト酸リチウ
ム組成物は、従来技術に係る固体電池に用いられる結晶性コバルト酸リチウムよりも性質
上均一性が低く粗く、そのような固体電池において、平坦で滑らかな結晶配向を有する同
一組成の膜と比較して、容量及びサイクル寿命の両方に関して、より好ましい電気化学的
挙動を示すことを本発明者らは意外にも見出した。
【0088】
一実施形態では、コバルト酸リチウム組成物又はドープコバルト酸リチウム組成物の結
晶構造は、結晶格子面のミラー指数によって規定することができる。当業者に公知のよう
に、ミラー指数は、結晶学において結晶(ブラベ)格子内の平面の表記法を規定する。詳
細には、格子面群は、ミラー指数と呼ばれる3つの整数h、k、l、によって決定される
。ミラー指数は、(hkl)で記述され、hb+kb+lb(bは逆格子ベクト
ルの基底)に直交する平面群を示す。これらの整数は、典型的には、既約分数で、つまり
、その最大公約数が1となるように記述される。
【0089】
一実施形態では、結晶性酸化物、すなわち結晶性コバルト酸リチウム組成物、結晶性ド
ープコバルト酸リチウムの結晶構造の少なくとも一部が、(101)、(104)、(1
10)、及び(012)、又はそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される
ミラー指数を有する配向を有する。一実施形態では、結晶性酸化物組成物の結晶構造の少
なくとも一部が、(101)、(104)、又はその両方からなる群から選択されるミラ
ー指数を有する配向を有する。
【0090】
本発明の実施形態の組成物において、結晶性酸化物の結晶構造の結晶配向が、組成物の
底面に平行な面を基準に規定されてよい。したがって、一実施形態では、結晶性酸化物組
成物の結晶構造の少なくとも一部が、組成物の底面に平行な面に対し、(101)、(1
04)、(110)、及び(012)、又はそれらのいずれかの組み合わせからなる群か
ら選択される結晶配向を有する。一実施形態では、結晶性酸化物組成物の結晶構造の少な
くとも一部が、組成物の底面に平行な面に対し、(101)、(104)、又はその両方
からなる群から選択される配向を有する。
【0091】
あるいは、本発明の実施形態の組成物において、結晶性酸化物の結晶構造の結晶配向が
、組成物の底面に平行な少なくとも1つの格子面を基準に規定されてよい。一実施形態で
は、ミラー指数hによって規定される格子面が組成物の底面に平行である。一実施形態で
は、ミラー指数kによって規定される格子面が組成物の底面に平行である。一実施形態で
は、ミラー指数lによって規定される格子面が組成物の底面に平行である。
【0092】
したがって、一実施形態では、結晶性酸化物組成物の結晶構造の少なくとも一部が、組
成物の底面に平行な面に対し、(101)、(104)、(110)、及び(012)、
又はそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される結晶配向を有する。一実施
形態では、結晶性酸化物組成物の結晶構造の少なくとも一部が、組成物の底面に平行な面
に対し、(101)、(104)、又はその両方からなる群から選択される配向を有する
【0093】
あるいは、本発明の実施形態の組成物において、結晶性酸化物の結晶構造の結晶配向が
、結晶成長方向に垂直な面を基準に規定されてよい。一実施形態では、結晶性酸化物組成
物の結晶構造の少なくとも一部が、結晶成長方向に垂直な面に対し、(101)、(10
4)、(110)、及び(012)、又はそれらのいずれかの組み合わせからなる群から
選択される結晶配向を有する。一実施形態では、結晶性酸化物組成物の結晶構造の少なく
とも一部が、結晶成長方向に垂直な面に対し、(101)、(104)、又はその両方か
らなる群から選択される配向を有する。
【0094】
あるいは、本発明の実施形態の組成物がリチウムイオン電池内に存在する場合、結晶性
酸化物の結晶構造の結晶配向が、電池を通るリチウムイオン経路の方向に垂直な面を基準
に規定されてよい。したがって、一実施形態では、本発明の組成物がリチウムイオン電池
内に存在し、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも一部が、電池を通るリチウムイオン経
路の方向に垂直な面に対し、(101)、(104)、(110)、及び(012)、又
はそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される結晶配向を有する。一実施形
態では、結晶性酸化物組成物の結晶構造の少なくとも一部が、電池を通るリチウムイオン
経路の方向に垂直な面に対し、(101)、(104)、又はその両方からなる群から選
択される配向を有する。
【0095】
あるいは、本発明の実施形態の組成物が基板上に形成される場合、結晶性酸化物の結晶
構造の結晶配向が、基板に平行な面を基準に規定されてよい。したがって、一実施形態で
は、結晶性酸化物組成物の結晶構造の少なくとも一部が、基板に平行な面に対し、(10
1)、(104)、(110)、及び(012)、又はそれらのいずれかの組み合わせか
らなる群から選択される結晶配向を有する。一実施形態では、結晶性酸化物組成物の結晶
構造の少なくとも一部が、基板に平行な面に対し、(101)、(104)、又はその両
方からなる群から選択される配向を有する。
【0096】
一実施形態では、組成物の結晶性酸化物成分の結晶構造の少なくとも一部が、ミラー指
数が(101)である配向を有する(配向は、任意選択で上記の定義のいずれかを参照し
て規定される)。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも0.01質量%
が(101)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも0.0
2質量%が(101)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくと
も0.05質量%が(101)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の
少なくとも0.1質量%が(101)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶
構造の少なくとも0.2質量%が(101)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物
の結晶構造の少なくとも0.5質量%が(101)配向である。一実施形態では、結晶性
酸化物の結晶構造の少なくとも1質量%が(101)配向である。一実施形態では、結晶
性酸化物の結晶構造の少なくとも2質量%が(101)配向である。一実施形態では、結
晶性酸化物の結晶構造の少なくとも5質量%が(101)配向である。一実施形態では、
結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも10質量%が(101)配向である。一実施形態で
は、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも20質量%が(101)配向である。一実施形
態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも30質量%が(101)配向である。一実
施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも40質量%が(101)配向である。
一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも50質量%が(101)配向であ
る。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも60質量%が(101)配向
である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも30質量%が(101)
配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも70質量%が(10
1)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも30質量%が(
101)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも80質量%
が(101)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも30質
量%が(101)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも9
0質量%が(101)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくと
も30質量%が(101)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少な
くとも95質量%が(101)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物組成物の結晶
構造の少なくとも96質量%が(101)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の
結晶構造の少なくとも97質量%が(101)配向である。一実施形態では、結晶性酸化
物の結晶構造の少なくとも98質量%が(101)配向である。一実施形態では、コバル
ト酸リチウム組成物の結晶構造の少なくとも99質量%が(101)配向である。一実施
形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも99.5質量%が(101)配向である
。一実施形態では、結晶性酸化物組成物の結晶構造の少なくとも99.7質量%が(10
1)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも99.9質量%
が(101)配向である。これらのパーセンテージは、結晶性組成物の総質量(すなわち
、存在する全結晶配向)に対する質量で表される。
【0097】
一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも一部が、ミラー指数が(104
)である配向を有する(配向は、任意選択で上記の定義のいずれかを参照して規定される
)。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも0.01質量%が(104)
配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも0.02質量%が(
104)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも0.05質
量%が(104)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも0
.1質量%が(104)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なく
とも0.2質量%が(104)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の
少なくとも0.5質量%が(104)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶
構造の少なくとも1質量%が(104)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結
晶構造の少なくとも2質量%が(104)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の
結晶構造の少なくとも5質量%が(104)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物
の結晶構造の少なくとも10質量%が(104)配向である。一実施形態では、結晶性酸
化物の結晶構造の少なくとも20質量%が(104)配向である。一実施形態では、結晶
性酸化物の結晶構造の少なくとも30質量%が(104)配向である。一実施形態では、
結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも40質量%が(104)配向である。一実施形態で
は、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも50質量%が(104)配向である。一実施形
態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも60質量%が(104)配向である。一実
施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも70質量%が(104)配向である。
一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも80質量%が(104)配向であ
る。一実施形態では、結晶性酸化物組成物の結晶構造の少なくとも90質量%が(104
)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも95質量%が(1
04)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも96質量%が
(104)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも97質量
%が(104)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも98
質量%が(104)配向である。一実施形態では、結晶性組成物の結晶構造の少なくとも
99質量%が(104)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なく
とも99.5質量%が(104)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物組成物の結
晶構造の少なくとも99.7質量%が(104)配向である。一実施形態では、結晶性酸
化物組成物の結晶構造の少なくとも99.9質量%が(104)配向である。これらのパ
ーセンテージは、結晶性酸化物の総質量(すなわち、存在する全結晶配向)に対する質量
で表される。
【0098】
一実施形態では、結晶性酸化物組成物の結晶構造の少なくとも一部が、ミラー指数が(
110)である配向を有する(配向は、任意選択で上記の定義のいずれかを参照して規定
される)。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも0.01質量%が(1
10)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも0.02質量
%が(110)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも0.
05質量%が(110)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なく
とも0.1質量%が(110)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の
少なくとも0.2質量%が(110)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶
構造の少なくとも0.5質量%が(110)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物
の結晶構造の少なくとも1質量%が(110)配向である。一実施形態では、結晶性酸化
物の結晶構造の少なくとも2質量%が(110)配向である。一実施形態では、結晶性酸
化物の結晶構造の少なくとも5質量%が(110)配向である。一実施形態では、結晶性
酸化物の結晶構造の少なくとも10質量%が(110)配向である。一実施形態では、結
晶性酸化物の結晶構造の少なくとも20質量%が(110)配向である。一実施形態では
、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも30質量%が(110)配向である。一実施形態
では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも40質量%が(110)配向である。一実施
形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも50質量%が(110)配向である。一
実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも60質量%が(110)配向である
。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも70質量%が(110)配向で
ある。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも80質量%が(110)配
向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも90質量%が(110
)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも95質量%が(1
10)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも96質量%が
(110)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも97質量
%が(110)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも98
質量%が(110)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも
99質量%が(110)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なく
とも99.5質量%が(110)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造
の少なくとも99.7質量%が(110)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の
結晶構造の少なくとも99.9質量%が(110)配向である。これらのパーセンテージ
は、結晶性組成物の総質量(すなわち、存在する全結晶配向)に対する質量で表される。
【0099】
一実施形態では、コバルト酸リチウム組成物の結晶構造の少なくとも一部が、ミラー指
数が(012)である配向を有する(配向は、任意選択で上記の定義のいずれかを参照し
て規定される)。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも0.01質量%
が(012)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも0.0
2質量%が(012)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくと
も0.05質量%が(012)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の
少なくとも0.1質量%が(012)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶
構造の少なくとも0.2質量%が(012)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物
の結晶構造の少なくとも0.5質量%が(012)配向である。一実施形態では、結晶性
酸化物の結晶構造の少なくとも1質量%が(012)配向である。一実施形態では、結晶
性酸化物の結晶構造の少なくとも2質量%が(012)配向である。一実施形態では、結
晶性酸化物の結晶構造の少なくとも5質量%が(012)配向である。一実施形態では、
結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも10質量%が(012)配向である。一実施形態で
は、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも20質量%が(012)配向である。一実施形
態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも30質量%が(012)配向である。一実
施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも40質量%が(012)配向である。
一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも50質量%が(012)配向であ
る。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも60質量%が(012)配向
である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも70質量%が(012)
配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも80質量%が(01
2)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも90質量%が(
012)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも95質量%
が(012)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少なくとも96質
量%が(012)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物組成物の結晶構造の少なく
とも97質量%が(012)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造の少
なくとも98質量%が(012)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造
の少なくとも99質量%が(012)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶
構造の少なくとも99.5質量%が(012)配向である。一実施形態では、結晶性酸化
物の結晶構造の少なくとも99.7質量%が(012)配向である。一実施形態では、結
晶性酸化物の結晶構造の少なくとも99.9質量%が(012)配向である。これらのパ
ーセンテージは、結晶性酸化物の総質量(すなわち、存在する全結晶配向)に対する質量
で表される。
【0100】
一実施形態では、結晶性酸化物組成物の結晶構造の少なくとも一部が、ミラー指数(0
03)を有して配向している(配向は、任意選択で上記の定義のいずれかを参照して規定
される)。(003)配向のみを有する微結晶の存在は、上記の好ましい配向の結晶が持
つ粗さを持たない結晶となり、上記結晶配向を有するコバルト酸リチウムの好ましい電気
化学的特性が固体電池に備わらないため、本発明の目的から望ましくない。一実施形態で
は、結晶性酸化物の結晶構造の最大99.9質量%が(003)配向である。一実施形態
では、結晶性酸化物の結晶構造の最大99.7質量%が(003)配向である。一実施形
態では、結晶性酸化物の結晶構造の最大99.5質量%が(003)配向である。一実施
形態では、結晶性酸化物の結晶構造の最大99質量%が(003)配向である。一実施形
態では、結晶性酸化物の結晶構造の最大97質量%が(003)配向である。一実施形態
では、結晶性酸化物の結晶構造の最大95質量%が(003)配向である。一実施形態で
は、結晶性酸化物の結晶構造の最大90質量%が(003)配向である。一実施形態では
、結晶性酸化物の結晶構造の最大80質量%が(003)配向である。一実施形態では、
結晶性酸化物の結晶構造の最大70質量%が(003)配向である。一実施形態では、結
晶性酸化物の結晶構造の最大60質量%が(003)配向である。一実施形態では、結晶
性酸化物の結晶構造の最大50質量%が(003)配向である。一実施形態では、結晶性
酸化物の結晶構造の最大40質量%が(003)配向である。一実施形態では、結晶性酸
化物の結晶構造の最大30質量%が(003)配向である。一実施形態では、結晶性酸化
物の結晶構造の最大20質量%が(003)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物
の結晶構造の最大10質量%が(003)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の
結晶構造の最大5質量%が(003)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶
構造の最大4質量%が(003)配向である。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウ
ムの結晶構造の最大3質量%が(003)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の
結晶構造の最大2質量%が(003)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結晶
構造の最大1質量%が(003)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物組成物の結
晶構造の最大0.5質量%が(003)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結
晶構造の最大0.3質量%が(003)配向である。一実施形態では、結晶性酸化物の結
晶構造の最大0.1質量%が(003)配向である。これらのパーセンテージは、結晶性
組成物の総質量(すなわち、存在する全結晶配向)に対する質量で表される。
【0101】
本発明の実施形態の組成物が、薄膜層を含む場合(限定するものではないが、特に、薄
膜層がCoのシード層を含む場合)、一実施形態では、この薄膜層の上面の少なく
とも2.5%が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの組み合わせから選
択される結晶配向を有する結晶性酸化物である。一実施形態では、上面の少なくとも4.
5%が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの組み合わせから選択される
結晶配向を有する結晶性酸化物である。一実施形態では、上面の少なくとも5%が、(1
01)、(104)、(110)、又はこれらの組み合わせから選択される結晶配向を有
する結晶性酸化物である。一実施形態では、上面の少なくとも7.5%が、(101)、
(104)、(110)、又はこれらの組み合わせから選択される結晶配向を有する結晶
性酸化物である。一実施形態では、上面の少なくとも10%が、(101)、(104)
、(110)、又はこれらの組み合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物で
ある。一実施形態では、上面の少なくとも25%が、(101)、(104)、(110
)、又はこれらの組み合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である。一実
施形態では、上面の少なくとも50%が、(101)、(104)、(110)、又はこ
れらの組み合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である。一実施形態では
、上面の少なくとも75%が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの組み
合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である。一実施形態では、上面の少
なくとも80%が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの組み合わせから
選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である。一実施形態では、上面の少なくとも9
0%が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの組み合わせから選択される
結晶配向を有する結晶性酸化物である。一実施形態では、上面の少なくとも95%が、(
101)、(104)、(110)、又はこれらの組み合わせから選択される結晶配向を
有する結晶性酸化物である。一実施形態では、上面の95%超が、(101)、(104
)、(110)、又はこれらの組み合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物
である。一実施形態では、上面の97.5%超が、(101)、(104)、(110)
、又はこれらの組み合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である。一実施
形態では、上面の99%超が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの組み
合わせから選択される結晶配向を有する結晶性酸化物である。一実施形態では、上面の9
9.5%超が、(101)、(104)、(110)、又はこれらの組み合わせから選択
される結晶配向を有する結晶性酸化物である。
【0102】
上記に加えて、又は上記に替えて、組成物の結晶構造が、ラマンスペクトル中のバンド
に関して規定されてもよい。当業者に公知のように、固体物理学では、材料の特性評価、
温度測定、及びサンプルの結晶学的配向の決定にラマン分光法が使用される。
【0103】
典型的には、ラマン分光計は、レーザ光、典型的には、電磁スペクトルの可視又は近赤
外域のレーザ光(390~1000nm)、例えば450~900nm、好ましくは50
0~550nm、より好ましくは530~540nm、最も好ましくは532nmを使用
する。ラマン顕微鏡は、典型的には、5倍~500倍、好ましくは10倍~100倍の範
囲の対物レンズを備える。ラマン分光計は、典型的には、0.5~2μm、好ましくは
1μmの空間分解能(サンプル表面スポット面積として定義される)を有する。
【0104】
あるサンプルにおいては、ラマンスペクトル内のバンドが、特徴的なバンドを有する物
質の量、結晶配向及び純度に応じて、示される波数からずれることがある。一実施形態で
は、ラマンスペクトル中のバンドの波数が±25cm-1で示される。一実施形態では、
ラマンスペクトル中のバンドの波数が±20cm-1で示される。一実施形態では、ラマ
ンスペクトル中のバンドの波数が±15cm-1で示される。一実施形態では、ラマンス
ペクトル中のバンドの波数が±10cm-1で示される。一実施形態では、ラマンスペク
トル中のバンドの波数が±5cm-1で示される。一実施形態では、ラマンスペクトル中
のバンドの波数が±2cm-1で示される。一実施形態では、ラマンスペクトル中のバン
ドの波数が±1cm-1で示される。
【0105】
一実施形態では、組成物が、ラマンスペクトルにおいて(その最も広い態様又は好まし
い態様のいずれかにおいて上に示した許容誤差で)690cm-1の波数のバンドを示す
。このバンドは、典型的には、組成物中のCoのA1gモードが存在する場合に特
徴的である。
【0106】
一実施形態でが、ラマンスペクトルにおいて(その最も広い態様又は好ましい態様のい
ずれかにおいて上に示した許容誤差で)526cm-1の波数のバンドを示す。このバン
ドは、典型的には、組成物中のCoのF2gが存在する場合に特徴的である。
【0107】
一実施形態では、組成物が、ラマンスペクトルにおいて(その最も広い態様又は好まし
い態様のいずれかにおいて上に示した許容誤差で)625cm-1の波数のバンドを示す
。このバンドは、典型的には、組成物中のCoのF2gが存在する場合に特徴的で
ある。
【0108】
一実施形態では、組成物が、ラマンスペクトルにおいて(その最も広い態様又は好まし
い態様のいずれかにおいて上に示した許容誤差で)484cm-1の波数のバンドを示す
【0109】
一実施形態では、組成物が、ラマンスペクトルにおいて(その最も広い態様又は好まし
い態様のいずれかにおいて上に示した許容誤差で)539cm-1の波数のバンドを示す
【0110】
一実施形態では、コバルト酸リチウム組成物の(R-3m)結晶構造が、ラマンスペク
トルにおいて、それぞれA1gモード及びEモードに起因する(いずれも、その最も広
い態様又は好ましい態様のいずれかにおいて上に示した許容誤差で)484cm-1及び
593cm-1からなる群から選択される波数の少なくとも1つのバンドを示す。これら
の波数のラマンバンドは、典型的には、上述した好ましい配向のいずれかの結晶構造を有
するコバルト酸リチウムの高温相が存在する場合に特徴的である。
【0111】
一実施形態では、組成物が、ラマンスペクトルにおいて、(その最も広い態様又は好ま
しい態様のいずれかにおいて上に示した許容誤差で)690cm-1の波数のバンドと、
(その最も広い態様又は好ましい態様のいずれかにおいて上に示した許容誤差で)484
cm-1及び593cm-1からなる群から選択される波数の少なくとも1つの他のバン
ドとを示す。
【0112】
上記に加えて、又は上記に替えて、組成物の結晶構造が、その粉末X線回折パターンに
関して規定されてもよい。当業者に公知のように、X線結晶解析は、結晶の原子及び分子
の構造の決定に用いられる手法であり、入射X線のビームが結晶原子により多数の特定の
方向に回折される。結晶学では、この回折ビームの角度及び強度を測定することにより、
結晶内の電子密度の三次元画像を作成することができる。この電子密度から、結晶中の原
子の平均位置のほか、原子間の化学結合、原子の無秩序性などのさまざまな情報を求める
ことができる。
【0113】
典型的には、X線回折ではCu Kα X線源を用いる。典型的には、θ=11°、
θ=21°、走査時間=240秒の条件を用いて測定が行われる。一実施形態では、結
晶性酸化物の結晶構造を、X線粉末回折パターン内の測定されたピークの2シータ(2θ
)の測定値によって記述することができる。この測定値は、典型的には±0.2°、好ま
しくは±0.1°、より好ましくは±0.05°で示される。
【0114】
一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造が、2θ(±0.2°)が37.4°、39
.1°、45.3°、及び66.4°からなる群から選択される少なくとも1つのX線粉
末回折ピークを示す。
【0115】
一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造が、2θ(±0.2°)が37.4°である
X線粉末回折ピークを示す。このピークは、(101)の結晶配向のLiCoOに特徴
的である。
【0116】
一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造が、2θ(±0.2°)が39.1°である
X線粉末回折ピークを示す。このピークは、(012)の結晶配向のLiCoOに特徴
的である。
【0117】
一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造が、2θ(±0.2°)が45.3°である
X線粉末回折ピークを示す。このピークは、(104)の結晶配向のLiCoOに特徴
的である。
【0118】
一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造が、2θ(±0.2°)が66.4°である
X線粉末回折ピークを示す。このピークは、(110)の結晶配向のLiCoOに特徴
的である。
【0119】
一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造を、隣接する格子面の間隔値(d)(d間隔
値)に対応する2θの測定値によって記述することができる。この測定値は、典型的には
±0.2Å、好ましくは±0.1Å、より好ましくは±0.05Åで示される。
【0120】
一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造が、d値(Å)2.339(±0.1)に対
応する2θが37.4°であるX線粉末回折ピークを示す。このピークは、(101)の
結晶配向のLiCoOに特徴的である。
【0121】
一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造が、d値(Å)2.301(±0.1)に対
応する2θが39.1°であるX線粉末回折ピークを示す。このピークは、(012)の
結晶配向のLiCoOに特徴的である。
【0122】
一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造が、d値(Å)2.001(±0.1)に対
応する2θが45.3°であるX線粉末回折ピークを示す。このピークは、(104)の
結晶配向のLiCoOに特徴的である。
【0123】
一実施形態では、結晶性酸化物の結晶構造が、d値(Å)1.406(±0.1)に対
応する2θが66.4°であるX線粉末回折ピークを示す。このピークは、(110)の
結晶配向のLiCoOに特徴的である。
【0124】
一実施形態では、前記結晶性酸化物が、2.399Å、2.001Å、又は2.399
Å及び2.001Åの両方から選択されるd値(Å)(±0.1Å)に対応する2θが3
7.4°、45.3°、又は37.4°及び45.3°の両方から選択されるX線粉末回
折を示す結晶構造を有する。
【0125】
当業者であれば、コバルト酸リチウム組成物の結晶構造が、上記の配向のうちの2つ以
上を有する微結晶を含んでよく、したがって、組成物のあるサンプルの粉末X線回折パタ
ーンに上記のピークのうちの2つ以上が観察されてよいことを理解するであろう。
【0126】
一実施形態では、コバルト酸リチウム組成物の結晶構造は、37.4°、45.3°(
それぞれ±0.1Å)若しくはこれらの両方、及び/又は対応するd値(Å)が2.39
9、2.001(それぞれ±0.1Å)若しくはこれらの両方からなる群から選択される
少なくとも1つのX線粉末回折ピークを示す。
【0127】
一実施形態では、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物を含む組成物が提供され、本組
成物において、リチウム及びコバルトの原子%が、その最も広い態様又は好ましい態様の
いずれかにおいて上記に定義したとおりであり、組成物の結晶構造が、その最も広い態様
又は好ましい態様のいずれかにおいて、上記に定義したようにCoの濃度局在によ
って特徴づけられ、結晶構造が、更に、以下のパラメータ(a)~(c)
(a)(101)、(104)、(110)、及び(012)からなる群から選択され
る結晶配向、
(b)ラマンスペクトルの690cm-1(±5cm-1)の波数のバンド、並びに、
484cm-1及び593cm-1(それぞれ±5cm-1)からなる群から選択される
波数の少なくとも1つの他のバンド、
(c)37.4°、39.1°、45.3°、及び66.4°(それぞれ±0.2Å)
並びに/又は対応するd値(Å)が2.399、2.301、2.001若しくは1.4
06(それぞれ±0.1°)からなる群から選択される少なくとも1つのX線粉末回折ピ
ーク、のうちの少なくとも1つによって特徴づけられる。
【0128】
一実施形態では、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物を含む組成物が提供され、本組
成物において、リチウム及びコバルトの原子%が、その最も広い態様又は好ましい態様の
いずれかにおいて上記に定義したとおりであり、組成物の結晶構造が、その最も広い態様
又は好ましい態様のいずれかにおいて、上記に定義したようにCoの濃度局在と、
(101)、(104)、(110)、及び(012)、好ましくは(101)又は(1
04)からなる群から選択される配向とによって特徴づけられる。
【0129】
一実施形態では、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物を含む組成物が提供され、本組
成物において、リチウム及びコバルトの原子%が、その最も広い態様又は好ましい態様の
いずれかにおいて上記に定義したとおりであり、組成物の結晶構造が、その最も広い態様
又は好ましい態様のいずれかにおいて、上記に定義したようにCoの濃度局在と、
ラマンスペクトルの690cm-1(±5cm-1)の波数のバンドとによって特徴づけ
られる。
【0130】
一実施形態では、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物を含む組成物が提供され、本組
成物において、リチウム及びコバルトの原子%が、その最も広い態様又は好ましい態様の
いずれかにおいて上記に定義したとおりであり、組成物の結晶構造が、その最も広い態様
又は好ましい態様のいずれかにおいて、上記に定義したようにCoの濃度局在と、
37.4°、39.1°、45.3°、及び66.4°(それぞれ±0.2Å)、並びに
/又は対応する間隔値d(Å)が2.399、2.301、2.001若しくは1.40
6(それぞれ±0.1°)、好ましくは、間隔値d(Å)2.399又は2.001に対
応する37.4°又は45.3°からなる群から選択される少なくとも1つのX線粉末回
折ピークとによって特徴づけられる。
【0131】
典型的には、コバルト酸リチウムは、膜、特に(以下に詳細に定義する)基板上の膜の
形態で形成される。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウム組成物の厚さが1~30
μmである。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウム組成物の厚さが2~20μmで
ある。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウム組成物の厚さが3~12μmである。
一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウム組成物の厚さが5~10μmである。一実施
形態では、結晶性コバルト酸リチウム組成物の厚さが6~7μmである。
方法
【0132】
また、本発明は、Coと、結晶性コバルト酸リチウムとを含む組成物、限定する
ものではないが、特に本発明の第1の態様に係る組成物の作製方法を提供することができ
る。本方法は、一般に、化合物の各成分元素の供給源を提供する工程であって、当該供給
源が、リチウムの供給源、酸素の供給源、及びコバルトの供給源(及び任意選択で以下に
定義する1種以上のドーパント元素の供給源)を含む工程と、基板、限定するものではな
いが、特に約50℃~約800℃に加熱した基板上にこれらを堆積させる工程とを有する
。供給源から成分元素が基板上で反応して、(任意選択で以下に定義する1種以上の元素
でドープされた)リチウム及びコバルトの結晶性酸化物を形成し、コバルトの供給源及び
酸素の供給源から成分元素が基板上で反応してCoを形成する。
【0133】
典型的には、本方法は、結晶性コバルト酸リチウム(又は結晶性ドープコバルト酸リチ
ウム)を、膜、典型的には基板上の膜の形態で形成する。好適な基板は、当業者に公知で
あり、金属(例えば、白金、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、金、銀、ニッケ
ル、モリブデン、これらの合金であり、合金は、炭素などの非金属を含有してよく、その
例としてステンレス鋼などの鋼が挙げられる)、酸化アルミニウムなどの酸化物、特に、
酸化インジウムスズ等の導電性金属酸化物、シリコン、シリカ、酸化シリコン(ドープ酸
化シリコンを含む)、アルミノケイ酸塩材料、ガラス、及びセラミック材料などを含有す
る。
【0134】
従来技術に記載されている方法とは対照的に、本発明例の方法は、求める結晶構造を有
するコバルト酸リチウム組成物の結晶成長を可能にするような(その最も広い態様又は好
ましい態様のいずれかにおいて、上に定義した)Coの濃度局在が形成されるよう
に、本方法の1つ以上の条件が変更されるという顕著な特徴を有する。
【0135】
一実施形態では、本方法は、求める結晶構造を有する組成物の結晶成長を可能にし、か
つ、(上述のように)従来技術よりも粗さ/凹凸が大きくなるよう、Coの濃度局
在がシード層として形成されるように、本方法の1つ以上の条件が変更されることを特徴
とする。
【0136】
本方法は、一般に、化合物の各成分元素の供給源を提供する工程であって、当該供給源
が、リチウムの供給源、酸素の供給源、コバルトの供給源、及び任意選択で、本明細書に
列記したドーパント元素のうちの1種以上の供給源を含む工程を有する。この元素の供給
源は、必要な元素が含有されている限り、その厳密な性質は本発明にとって重要ではない
【0137】
化合物を形成するための成分元素の反応は、基板への堆積前の気相中ではなく、基板の
表面で生じる。理論に拘束されることを望むものではないが、蒸気の形態の各成分元素が
、加熱された基板表面に衝突して付着し、次に各元素の原子が表面上を移動し、それによ
って互いに反応して酸化化合物を形成することができると考えられる。
【0138】
一実施形態では、蒸気源は、電子ビーム蒸発器又はクヌーセンセル(K-Cell)を
備え、これらは、低分圧の材料に適している。いずれの場合も、材料をるつぼの中に入れ
、加熱することで、原子の流束が発生する。クヌーセンセルではるつぼの周囲に一連の加
熱フィラメントが用いられているのに対し、電子ビーム蒸発器では、磁石を使用して高エ
ネルギー電子ビームを材料に向けることによって加熱が行われる。
【0139】
典型的には、リチウム及びコバルトは、クヌーセンセル供給源又は電子銃(Eガン)か
ら堆積させることができる。
【0140】
一実施形態では、酸素の供給源は分子状酸素である。一実施形態では、酸素の供給源は
、(限定するものではないが、典型的には酸素プラズマ源によって生成される)原子状酸
素である。一実施形態では、酸素の供給源はオゾン源である。
【0141】
酸素プラズマ源は、プラズマ相酸素、すなわち酸素原子、ラジカル、及びイオンの流束
を供給する。供給源は、例えば高周波(RF)プラズマ源又はオゾン源であってよい。
【0142】
必要に応じて、酸素流に追加ガス(典型的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプ
トン、キセノンなどの希ガス;又は窒素;好ましくはアルゴン及び/又は窒素)が少量添
加されてもよい。1種以上の追加ガスが存在する場合、追加ガスの存在量は、合計割合で
最大10%、例えば最大5%、例えば最大3%、例えば最大2%、例えば最大1%である
。合計割合は、典型的には残留ガス分析装置(RGA)によって測定を行い、1種以上の
追加のガスの分圧を酸素分圧で割ることにより、酸素100モル%に対するモル%として
定義される。
【0143】
また、リチウム、コバルト及び酸素の各供給源に加えて、所期の組成物の結晶構造の一
部を形成する(上で定義及び例示した)他のドーパント元素の供給源も存在してよい。一
実施形態では、本方法は、更に、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、
ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、ニッケル、亜鉛、銅、
モリブデン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウ
ム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される1種以上の元素が、求め
る結晶構造を有する結晶性組成物の一部を形成するように、当該1種以上の元素の供給源
を提供する工程を有する。
【0144】
あるいは、アモルファス膜を堆積させ、次いでこのアモルファスの形態をアニールする
ために本発明の方法を使用することができる。しかしながら、この手法は、化学量論的化
合物を低い基板温度で直接生成できる点や、堆積後の高温アニーリングが不要になる点と
いった、本発明の利点を示さないため、好ましいものではない。
【0145】
本発明の一実施形態に従って用いられる一般的な方法の1つは物理気相堆積(PVD)
法である。この方法によれば、化合物の各成分元素の蒸気源を提供し、蒸気源から成分元
素を基板、典型的には加熱した基板上に共堆積させることにより、リチウム、コバルト及
び酸素の各成分元素から結晶性コバルト酸リチウム組成物が形成される。
【0146】
したがって、本実施形態では、リチウムの供給源と、酸素の供給源と、コバルトの供給
源と、任意選択で、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム
、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、銅、モリブデン、ニッケル、亜鉛、
ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニ
ウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種のドーパント元素の供
給源と、を含む、化合物の各成分元素の蒸気源を提供し、リチウムの流束、コバルトの流
束、及び、任意選択で、前記少なくとも1種のドーパント元素の流束を供給する工程と、
基板を実質的に50℃~800℃に加熱する工程と、前記供給源から成分元素を基板上に
堆積させて、任意選択で1種以上のドーパント元素を含有するリチウム及びコバルトの結
晶性酸化物を形成する工程と、を有する気相堆積法が提供され、共堆積中又はその前に、
求める結晶構造を有する組成物の結晶成長を可能にするようなCoの濃度局在が形
成されるように、気相堆積法の1つ以上の条件が変更されることを特徴とする。
【0147】
本発明の一態様に係る物理気相堆積(PVD)法は、典型的には、加熱した基板上に、
蒸気源から成分元素を共堆積させる工程を有する。一実施形態では、基板が約150~約
700℃に加熱される。一実施形態では、基板が約200~約700℃に加熱される。一
実施形態では、基板が約300~約450℃に加熱される。
【0148】
本発明の一態様に係る物理気相堆積(PVD)法は、典型的には1×10-7~1×1
-4Torr、好ましくは1×10-6~5×10-5Torr、より好ましくは5×
10-6~2×10-5Torrの圧力で実施される。
【0149】
典型的には、本方法は、膜の堆積速度が0.1~10μm/時となるように実施される
。一実施形態では、本方法は、膜の堆積速度が0.2~5μm/時となるように実施され
る。一実施形態では、本方法は、膜の堆積速度が0.3~1.6μm/時となるように実
施される。一実施形態では、本方法は、膜の堆積速度が0.4~0.8μm/時となるよ
うに実施される。
【0150】
本発明の本態様によれば、求める結晶構造を有する組成物の結晶成長を可能にするよう
なCoの濃度局在が形成されるように、気相堆積法の1つ以上の条件が変更される
。一実施形態では、1つ以上の条件の変更は、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物を堆
積させるために供給する流束比とは異なる流束比でコバルト及びリチウムを供給すること
を含む。理論に拘束されることを望むものではないが、結晶性コバルト酸リチウムを堆積
させるために供給する流束比とは異なる流束比でコバルト及びリチウムを供給することに
より、求める結晶構造を有するコバルト酸リチウム組成物の結晶成長を可能にするような
Coが(典型的にはシーディング層として)形成可能となると考えられる。
【0151】
一実施形態では、コバルトの流束が0.1~13Å/秒である。一実施形態では、コバ
ルトの流束が0.1~7Å/秒である。一実施形態では、コバルトの流束が0.4~2Å
/秒である。一実施形態では、コバルトの流束が0.5~1Å/秒である。この流束は、
典型的には基板面で測定される。典型的には、コバルトの流束は、酸素の存在下で測定さ
れる(このように測定すると、実際に測定される値は酸化コバルトの流束となる)。
【0152】
一実施形態では、リチウムの流束が0.1~26Å/秒である。一実施形態では、リチ
ウムの流束が、0.5~13Å/秒である。一実施形態では、リチウムの流束が、0.7
~4Å/秒である。一実施形態では、リチウムの流束が0.8~2.2Å/秒である。こ
の流束は、典型的には基板面で測定される。典型的には、リチウムの流束は、酸素の存在
下で測定される(このように測定すると、実際に測定される値は酸化リチウムの流束とな
る)。
【0153】
1種以上のドーパント元素が存在する場合、一実施形態では、ドーパント元素の流束が
0.1~13Å/秒である。一実施形態では、ドーパント元素の流束が0.1~7Å/秒
である。一実施形態では、ドーパント元素の流束が0.4~2Å/秒である。一実施形態
では、ドーパント元素の流束が0.5~1Å/秒である。この流束は、典型的には基板面
で測定される。典型的には、ドーパント元素の流束は、酸素の存在下で測定される(この
ように測定すると、実際に測定される値はドーパント元素に対応する酸化物の流束となる
)。
【0154】
堆積中に、各原子流束の速度を測定して変更できることにより、膜厚全体にわたる組成
物の制御が可能となり、蒸気源の条件の変化(例えば、供給源の劣化又は揺らぎ)に対処
し、かつ、リチウム-コバルトの組成を膜全体で一定に保つことや、或いは、堆積中にリ
チウム-コバルトの組成が変化する膜を生成することができる。個々の原子流束の速度は
、堆積中に供給源において直接的に、かつ/又は(堆積中の酸素分圧を測定することによ
って)間接的に測定することができる。一実施形態では、個々の原子流束の速度が、電子
衝撃放出分光法(EIES)によって測定される。
【0155】
本発明の本態様によれば、堆積中の組成物の制御された変化を、膜内にシード層を生成
するために有効に利用することができる。例えば、堆積中の膜内へのCoのシード
層の追加は、以下に記載する好ましい方法により個々の原子流束を変更することで行うこ
とができる。
【0156】
一実施形態では、1つ以上の条件の変更は、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物の堆
積に必要なリチウムの流束よりも、コバルトの流束を増やすことを含む。
【0157】
一実施形態では、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物の堆積に必要なコバルトの流束
のレベルよりもコバルトの流束を増やし、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物の堆積に
必要なリチウムの流束のレベルにリチウムの流束を維持する。
【0158】
一実施形態では、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物の堆積に必要なコバルトの流束
のレベルにコバルトの流束を維持し、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物の堆積に必要
なリチウムの流束のレベルよりもリチウムの流束を減らす。
【0159】
一実施形態では、酸素の流束を減らす。一実施形態において、酸素を(上に定義し例示
した)不活性ガスと共に供給し、酸素の流束を同じレベルに維持しつつ、酸素を希釈する
ことで酸素分圧を下げることにより制御が行われる。
【0160】
原子流束の速度の制御は、物理気相堆積法の実施形態においてコバルト酸リチウムのモ
ルフォロジの制御に用いることができる方法の1つに過ぎない。Coの濃度局在(
シード層など)を提供するために用いることができる他の方法として、リチウムのシャッ
タを閉じてリチウムイオンの流束を止める方法や、(酸素の流速を変化させるか、又はア
ルゴンなど別のガスを添加することにより)チャンバ内の酸素分圧を変化させる方法が挙
げられる。
【0161】
一実施形態では、気相堆積法において、加熱した基板上に成分元素を共堆積させる工程
が、加熱した基板の表面上に成分元素を直接共堆積させることを含む。一実施形態では、
気相堆積法において、加熱した基板上に成分元素を共堆積させる工程が、基板上に支持さ
れた1層以上の層上に成分元素を共堆積させることを含む。
【0162】
本発明の一例によれば、特許文献1に概要が記載されている気相堆積法が、求めるCo
の濃度局在を形成するために本発明の本態様に従って変更される。
【0163】
特許文献1に記載の堆積法が、50~800℃に加熱された物理気相堆積(PVD)シ
ステムで実施されているが、一実施形態では、ベア基板又は(熱に敏感な電池層を含まな
い)集電体層上にLCO膜を堆積させる場合、温度は300~450℃であることが好ま
しいが、最大800℃の高い基板温度を使用することもできる。
【0164】
一実施形態では、本方法は、堆積後に、堆積させたコバルト酸リチウム膜をアニーリン
グする工程を付加的に有する。この付加的工程は、堆積が400℃未満の温度で行われる
場合に特に有用である。典型的には、堆積済みの電池層上にコバルト酸リチウム膜を堆積
させて積層型電池を形成する場合、基板のアニール温度は好ましくは300~450℃で
ある。
【0165】
従来、リチウム、酸素及びコバルトのそれぞれの蒸気源(及び任意選択で前記ドーパン
ト元素のうちの1種以上の蒸気源)を提供し、それぞれの供給源の流束を制御して基板上
に共堆積させ、これらを基板上で反応させて結晶性酸化物を形成する方法によって結晶性
コバルト酸リチウムを堆積させることで、Coの生成を阻止することができると考
えられている(上述のように、従来、酸化コバルト(Co)は、LiCoO組成
物中の不純物と考えられていた)。したがって、本方法を使用して、Coと結晶性
コバルト酸リチウムとを含む組成物を意図的に作製することは、一見不利なようにみえる
【0166】
代替的に、本発明に係る方法が、スパッタリングによって実行されてもよい。当業者に
公知のように、スパッタ堆積法は、スパッタリングによって薄膜を堆積する物理気相堆積
(PVD)法である。スパッタリングは、必要な元素の供給源である1つ以上のターゲッ
トから材料を放出させて基板上に向け、典型的には基板上の膜として必要な材料を成長さ
せる工程を有する。
【0167】
したがって、一実施形態では、本発明の実施形態の組成物の作成方法が提供され、当該
方法は、
リチウムの供給源を含む少なくとも1つのスパッタリングターゲットと、コバルトの供
給源を含む少なくとも1つのスパッタリングターゲットと、任意選択でマグネシウム、カ
ルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄
、ルテニウム、銅、モリブデン、ニッケル、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ス
ズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群か
ら選択される少なくとも1種のドーパント元素の供給源を含む1つ以上のスパッタリング
ターゲットを含む少なくとも1つのスパッタリングターゲットを提供する工程であって、
前記スパッタリングターゲットは同じでも異なってもよい工程と、
前記スパッタリングターゲットをスパッタリングして、Coと、リチウム及びコ
バルトの結晶性酸化物とを含有し、任意選択で前記ドーパント元素のうちの少なくとも1
種がドープされている組成物を生成する工程と、を有するスパッタリング堆積法である。
【0168】
典型的には、必要な元素の供給源を提供するスパッタリングターゲットは、当該ターゲ
ットが元素の供給源と、酸素の供給源の少なくとも一部とを提供するように、その元素の
酸化物を含有する。一実施形態では、リチウムの供給源であるスパッタリングターゲット
は、酸化リチウム(LiO)を含有する。一実施形態では、コバルトの供給源であるス
パッタリングターゲットは、酸化コバルト(II)(CoO)を含有する。一実施形態では
、コバルトの供給源であるスパッタリングターゲットは、酸化コバルト(III)(Co
)である。一実施形態では、コバルトの供給源であるスパッタリングターゲットは、
Coを含有する。
【0169】
一実施形態では、スパッタリングは、リチウム及びコバルトの両方の供給源を、好まし
くは酸化物として提供する1つのターゲットを用いて実施されてもよい。この実施形態で
は、リチウム及びコバルトの両方の供給源を提供するスパッタリングターゲットは、Li
CoOを含有する。このターゲットは、リチウムの割合の高い組成物を提供するために
、任意選択で、リチウム(例えば、LiO)が追加添加されていてよい。この実施形態
では、Coの濃度を局在化させるために、組成物の堆積中に酸素分圧を変化させて
もよい。
【0170】
一実施形態では、好ましくは酸化物として、より好ましくは(任意選択でLiOが添
加されている)LiCoOとして、リチウムの供給源及びコバルトの供給源の一部を提
供する1つのスパッタリングターゲットと、典型的にはCoを含有しコバルトの供
給源の一部を提供する少なくとも1つの別のスパッタリングターゲットとを用いてスパッ
タリングが実施されてもよい。
【0171】
所期の組成物が、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム
、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、銅、モリブデン、ニッケル、亜鉛、
ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニ
ウム、及びユウロピウムからなる群から選択される1種以上のドーパント元素を含有する
場合、スパッタリングターゲットは、典型的には、当該元素の酸化物を含有する。ドーパ
ント元素の酸化物を含有するスパッタリングターゲットは、リチウムの酸化物及び/又は
コバルトの酸化物を含有するスパッタリングターゲットと同じでも異なっていてもよい。
【0172】
スパッタリングターゲットが異なる場合、これらターゲットを同時にスパッタリングし
ても逐次的にスパッタリングしてもよい。
【0173】
一実施形態では、本発明の実施形態の組成物の作成方法が提供され、当該方法は、
酸化コバルトを含有する第1のスパッタリングターゲットを提供する工程と、
(a)コバルト酸リチウム、又は(b)マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、
チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、銅、モリブデ
ン、ニッケル、亜鉛、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン
、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種
のドーパント元素を含有するコバルト酸リチウム、の供給源を含む第2のスパッタリング
ターゲットを提供する工程と、
前記第1のスパッタリングターゲットと前記第2のスパッタリングターゲットとをスパ
ッタリングして、Coと、リチウム及びコバルトの結晶性酸化物とを含有し、任意
選択で前記ドーパント元素のうちの少なくとも1種がドープされている組成物を生成する
工程と、を有するスパッタリング堆積法である。
【0174】
一実施形態では、本発明の実施形態の組成物の作成方法が提供され、当該方法は、
前記第1のターゲットをスパッタリングしてCoの薄膜層を生成し、次いで、前
記第2のターゲットをスパッタリングして、任意選択で前記ドーパント元素のうちの少な
くとも1種がドープされているリチウム及びコバルトの薄膜結晶性酸化物を生成する工程
、を有するスパッタリング堆積法である。
【0175】
一実施形態では、本発明の実施形態の組成物の作成方法が提供され、当該方法は、
前記第1のターゲットをスパッタリングして、上面及び底面を備えるCoの薄膜
層を生成する工程と、
前記第2のターゲットをスパッタリングして、任意選択で前記ドーパント元素のうちの少
なくとも1種がドープされているリチウム及びコバルトの薄膜結晶性酸化物を前記Co
の薄膜層の前記上面の上に生成する工程と、を有するスパッタリング堆積法である。
【0176】
一実施形態では、本発明の実施形態の組成物の作成方法が提供され、当該方法は、
LiO及び/又はリチウム及びコバルトの酸化物を含有する第1のスパッタリングタ
ーゲットと、コバルトの酸化物(好ましくはCo)を含有する第2のスパッタリン
グターゲットとを提供する工程と、
前記ターゲットを同時にスパッタリングして、Coとリチウム及びコバルトの結
晶性酸化物とを含有する混合薄膜層を生成する工程と、を有するスパッタリング堆積法で
ある。
【0177】
一実施形態では、本発明の実施形態の組成物の作成方法が提供され、当該方法は、
LiO或いは/又はリチウム及びコバルトの酸化物を含有する第1のスパッタリング
ターゲットと、コバルトの酸化物(好ましくはCo)を含有する第2のスパッタリ
ングターゲットとを提供する工程と、
前記第2のターゲットをスパッタリングしてCoの薄膜層を生成し、次いで、前
記第1のターゲットをスパッタリングして、前記Coの薄膜層の上にリチウム及び
コバルトの薄膜結晶性酸化物を生成する工程と、を有するスパッタリング堆積法である。
【0178】
典型的には、高エネルギー粒子が気体イオンである。一実施形態では、気体イオンはア
ルゴンイオンである。
【0179】
スパッタリング堆積法の種類の例としては、RFスパッタリング、DCスパッタリング
、パルスDCスパッタリング、イオンビームスパッタリング、反応性スパッタリング、タ
ーゲット高度利用スパッタリング(HiTUS)、高出力インパルスマグネトロンスパッ
タリング(HiPiMS)、及びガスフロースパッタリングが挙げられる。
【0180】
本発明のこの例に係るスパッタリング法は、典型的には、1×10-4~1×10-2
Torr、好ましくは5×10-4~5×10-2Torr、より好ましくは1×10
~2×10-3Torrの圧力で実施される。
【0181】
代替的に、本発明に係る方法が、化学気相堆積法によって実施されてもよい。当業者に
公知のように、化学気相堆積法は、必要とする元素を含有する1種以上の前駆体化合物を
含む、所望の物質の各成分元素の蒸気源を提供する工程と、典型的には噴霧によって、揮
発させた元素を加熱した基板上に堆積させる工程とを有する。供給源から成分元素が基板
上で反応して所望の物質を形成する。
【0182】
したがって、結晶性コバルト酸リチウム組成物(限定するものではないが、特に本発明
の実施形態の組成物)の作成方法が更に提供され、当該方法は、
化合物の各成分元素の供給源を提供する工程であって、前記供給源が、リチウムを含有
する少なくとも1種の前駆体化合物、コバルトを含有する少なくとも1種の前駆体化合物
、及び酸素を含有する少なくとも1種の前駆体化合物を含む少なくとも1種の前駆体化合
物を含有する工程と、
基板を約200℃~約1000℃に加熱する工程と、
前記加熱した基板に前記前駆体化合物を噴霧する工程と、を有する気相堆積法であり、
前記供給源から成分元素が前記基板上で反応してリチウム及びコバルトの結晶性酸化物
を形成し、
求める結晶構造を有する組成物の結晶成長を可能にするようなCoの濃度局在が
形成されるように、前記方法の1つ以上の条件が変更されることを特徴とする。
【0183】
一実施形態では、基板が250~950℃に加熱される。一実施形態では、基板が30
0~600℃に加熱される。
【0184】
本発明の本例に係るCVD法は、典型的には0.1~500Torr、好ましくは1~
100Torrの圧力で実施される。
【0185】
一実施形態では、前駆体化合物が、加熱した基板への噴霧前に混合されてゾルを形成す
る。
【0186】
前駆体化合物は、少なくとも1種の前駆体化合物がリチウムを含有し、少なくとも1種
の前駆体化合物がコバルトを含有する限り、特に限定されない。一実施形態では、リチウ
ムを含有する前駆体化合物はリチウム塩を含有し、かつ/又はコバルトを含有する前駆体
化合物はコバルト塩を含有する。
【0187】
[電極]
本発明の実施形態の結晶性コバルト酸リチウム組成物は、典型的には電気化学セル及び
燃料電池などのセルに用いる電極の形成に特に有用である。
【0188】
したがって、更なる態様によれば、本発明は、(その最も広い態様又は好ましい態様の
いずれかにおいて、上で定義した)本発明の実施形態の結晶性コバルト酸リチウム組成物
を含む電極を更に提供する。
【0189】
典型的には、本発明の実施形態の電極において、結晶性コバルト酸リチウム組成物が支
持体上に支持される。一実施形態では、結晶性コバルト酸リチウム組成物が、支持体上に
層を形成する。
【0190】
典型的には、支持体は基板であり、その上に集電材が支持される。一実施形態では、集
電材が、金属又は導電性金属酸化物である。一実施形態では、集電材が、白金、アルミニ
ウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、金、銀、ニッケル、モリブデン、酸化スズ、酸化イン
ジウムスズ、及びステンレス鋼からなる群から選択される。
【0191】
典型的には、基板は不活性基板である。一実施形態では、基板が、シリコン、酸化シリ
コン、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩材料、ドープ酸化シリコン、ガラス、金属、
及びセラミック材料からなる群から選択される。
【0192】
一実施形態では、基板はシリコン基板である。一実施形態では、シリコン基板が、1層
以上のパッシベーション層によって覆われる。一実施形態では、少なくとも1層のパッシ
ベーション層が二酸化シリコンを含有する。一実施形態では、少なくとも1層の更なるパ
ッシベーション層が窒化シリコンを含有する。
【0193】
一実施形態では、集電体と基板との間に接着層が存在する。一実施形態では、接着層が
、金属及び金属酸化物から選択される。特定の実施形態では、当該接着層が、酸化チタン
、チタン、ジルコニウム、及びクロムからなる群から選択される。
【0194】
[電気化学セル]
本発明の実施形態の結晶性コバルト酸リチウム組成物は、セル、特に電気化学セルに有
用に用いることができる。
【0195】
したがって、本発明の更なる態様において、
電解質と、
アノードと、
カソードと、を備え、
前記アノード及び/又は前記カソードが、本発明の第3の態様に係る電極を備える電気
化学セルが提供される。
【0196】
本発明の実施形態のコバルト酸リチウム組成物は、このようなセルのカソードでの使用
に特に好適であることがわかっている。したがって、上に定義したように、本発明は、カ
ソードが本発明に係る電極を備える電気化学セルを更に提供する。
【0197】
セルは、固体セル(固体電池とも呼ばれる)であってよい。
【0198】
典型的には、セルはリチウムイオン電池である。上に定義したように、リチウムイオン
電池では、リチウムイオン(Li)が放電時に負極から正極に移動し、充電時に逆方向
に移動する。したがって、上に定義したように、本発明は、カソードが本発明に係る電極
を備えるリチウムイオン電池を更に提供する。
【0199】
電解質は、電気化学セルに通常用いられるどのような電解質であってよい。しかしなが
ら、電解質が固体電解質であることが特に好ましい。本発明の実施形態のコバルト酸リチ
ウム組成物を、固体電解質を用いる電池に適用することにより、特性(特に、サイクル寿
命、容量、下層への密着性、及び応力の制御)が改善され、このような利用は当該技術分
野において開示されていない。
【0200】
固体電解質の例としては、以下が挙げられる。
-オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)
-ホウケイ酸リチウム(国際公開第2017/216532号、国際公開第2015/
104540号、及び国際公開第2015/104538号に記載のものなど)
-硫化物ベースのガラス及びガラス-セラミック電解質、例:LPS(xLiS-y
)、Li-SiS
-ガーネット型固体電解質、例:LiLa12又はLLZO(LiLa
Zr12
-アルジロダイト型固体電解質、例:LiPSX(XはCl、Br、I等のハロゲ
ン)
-酸化物ベースのペロブスカイト型固体電解質、例:LLTO(Li0.5La0.5
TiO
-LISICON型、例:Li10GeP12;NASICON型、例:Li1.
[Al0.4Ge1.6(PO]、LATP(Li1+xAlTi2-x(P

-固体高分子電解質、例:ポリエチレンオキサイド(PEO)
【0201】
一実施形態では、電解質は、オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)を含有する。
【0202】
また、固体セルの製造方法も提供され、当該方法は、本発明に係る方法を用いて、本発
明の実施態様に係る結晶性コバルト酸リチウム組成物の層としてセルの電極を堆積させる
工程を有する。
【0203】
コバルト酸リチウム組成物の堆積後、物理気相堆積法又はスパッタリングなどの気相堆
積法を用いて固体電池の更なる層を堆積させ、多層構造を形成する。PVDのみによる固
体電池の作成については、国際公開第2015/104538号に記載されている。固体
電池の好ましい層及びその製造方法を以下に示す。しかしながら、当業者に公知のように
、固体電池の層及び製造方法は、以下に記載したものに限定されない。
【0204】
【表1】
【0205】
一実施形態では、電気化学セルは燃料電池である。当業者に公知のように、燃料電池は
、燃料(典型的には水素、又はメタノール、ギ酸などの単純な有機化合物)と酸素又は他
の酸化剤との電気化学反応によって、燃料の化学エネルギーを電気に変換する電気化学セ
ルである。電池では、化学エネルギーが電池内に存在する化学物質に由来するのに対し、
燃料電池は、化学反応を持続するために燃料及び酸素の持続的な供給源(典型的には大気
)を必要とする点で電池とは異なる。燃料電池は、燃料と酸素との供給が続く限り連続発
電が可能である。
【0206】
したがって、本発明の更なる態様において、アノードと、カソードと、電解質とを備え
、前記アノード及び/又は前記カソードが、本発明の実施形態の結晶性酸化物材料を含む
燃料電池が提供される。
【0207】
また、燃料電池は、典型的には、燃料の供給源を備えるか、又は燃料の供給源に接続さ
れる。一実施形態では、燃料は水素である。一実施形態では、燃料は有機化合物であり、
その代表例としては、メタン、メタノール、エタノール、ギ酸、及び酢酸が挙げられる。
【0208】
また、燃料電池は、典型的には、オキシダントの供給源を備えるか、又はオキシダント
の供給源に接続される。一実施形態では、オキシダントは分子状酸素である。一実施形態
では、オキシダントは酸化剤であり、その例は当業者に公知である。
【0209】
また、本発明に係る電気化学セル(特にリチウムイオン電池)を備える電子機器も提供
される。このような電子機器の例は、当業者に公知であり、携帯電話などの携帯型電子機
器が挙げられる。
【実施例0210】
図1は、本発明の方法の物理気相堆積法の実施形態の実施に好適な一例の装置10の概
略図を示す。堆積は真空システム12中で行われ、これは超高真空システムであってよい
。(堆積する薄膜層の所期の目的に応じて決まる)所望の材料の基板14が真空システム
12中に載置され、ヒータ16を用いて室温を超える温度まで加熱される。真空システム
中には複数の蒸気源も存在し、所望の薄膜化合物のそれぞれの成分元素ごとに1つの蒸気
源が設けられている。第1の蒸気源18は、酸素プラズマ源などの原子状酸素の供給源を
含む。第2の蒸気源20はリチウム蒸気源を含む。第3の蒸気源22はコバルト蒸気源を
含む。
【0211】
堆積プロセス中に、それぞれの蒸気源から、各成分元素の制御された流束が、加熱され
た基板14上に放出され、基板上に各種元素が共堆積される。これらの元素は基板14上
で反応して、結晶性コバルト酸リチウムの薄膜層29を形成する。
【0212】
記載の物理気相堆積法の顕著な利点は、元素から化合物の成分を直接堆積させることで
、成分元素の堆積速度によって化合物の組成及び構造を直接制御することができる点にあ
る。各元素の流束は、それぞれの蒸気源を適切に操作することによって独立に制御するこ
とができ、それにより、必要に応じて、堆積させる化合物の化学組成を厳密な要求に従っ
て調整することができる。
【0213】
堆積中に、リチウムの流束及びコバルトの流束の速度がモニタされ、必要に応じて、そ
れぞれの蒸気源に対して適切な調整が行われる。リチウムの流束及びコバルトの流束の両
方の堆積速度は、例えば、水晶微量天秤法(QCM)又は電子衝撃放出分光法(EIES
)を用いて測定することができる。また、コバルトの流束は、残留ガス分析装置(RGA
)又はイオンゲージを用いて堆積チャンバ内の酸素圧力の安定性をモニタすることによっ
て間接的にモニタすることができる。酸素に対するコバルトの流束の反応性により、コバ
ルトの流束が変化すると酸素の圧力に逆の変化が観察される。残留ガス分析装置(RGA
)と、イオンゲージを用いて測定した全圧とを用いて、真空系に存在するガス、すなわち
酸素、窒素、アルゴン、二酸化炭素(痕跡量)、及び一酸化炭素(痕跡量)をモニタする
ことができる。
【0214】
系内に導入されているガスの圧力の変更は、チャンバ内に導入するガスの流束を変える
ことによって行うことができる。これに加えて、例えばエリプソメトリや他の光学的手法
により、堆積中に膜の成長をモニタすることもできる。
【0215】
組成が一定ではない膜の形成/シード層の追加は、例えば、欠陥を生じさせ、この欠陥
が結晶成長のための核形成部として機能して、膜の構造及びモルフォロジの制御が可能に
なるので、有利となり得る。膜の組成をこのように制御することは、周囲の層に対する密
着性といった膜の特性にも影響を及ぼし、膜内の応力を平衡させるのに有用である。本発
明の方法は、このように膜の組成を厳密に制御し、堆積中に調整して、最終的な膜の特性
を制御できるため、リチウムなどの軽い元素が損失を受けやすく、最終的な膜の組成の制
御がより困難となるパルスレーザ堆積(PLD)などの他の技術よりも有利である。
【0216】
本方法によれば、固体電池に用いる厚さ1~30μmのLiCoO膜を堆積してよい
。固体電池に用いるLiCoOを堆積させる際には、同じ方法で1μm未満(典型的に
は250nm程度)の試験用の薄いLiCoO層を堆積させ、ラマン分光法及びレーザ
アブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)でこの試験層の構造
及び組成を分析する。
【0217】
適切な試験サンプルが得られた場合、堆積時間を長くしてこの条件を繰り返し、固体電
池に用いる厚いLiCoO膜を得る。
【0218】
ラマン分光法は、さまざまな結晶構造がラマンフィンガープリントを与えるため、Li
CoOの微小構造分析に極めて有用な手法である。R‐3m(高温)相(HT-LCO
)の2つのラマンバンドと、低温(Fd3m)(LT-LCO)の4つのバンドとが観察
されることが予想される。また、Coは散乱強度が高いため、二次生成されたCo
を痕跡量/不純物レベルであってもラマン分光法により検出することができる。ラ
マン分光法はこれらの材料の研究に特に有効な方法である。
【0219】
実施例で使用したラマン分光計は、532nm(緑色)のレーザと、10倍、50倍、
及び100倍の顕微鏡対物レンズとを備えたHORIBA XploRA Plusであ
る。532nmのレーザとNA0.90/100倍の対物レンズにより、空間分解能は3
61nmであると予想される。しかしながら、ラマン顕微鏡分析の光学的プロセスは、標
準的な光学顕微鏡による観察よりもはるかに複雑である。さまざまな要因により分解能が
低下し得る。このため、代表的なラマン空間分解能は一般に1μmとされる(ただし、こ
の値は理想的な条件では改善することがある)。
【0220】
ラマン分光測定を、表2に示す取得パラメータに従って行う。上面測定では、対物レン
ズ倍率50、スリット幅50、ホール100、フィルタ2%を使用する。断面測定では、
上記と同じ設定を用いるが、対物レンズ倍率は100とし、ピッチ1μmのライン使用で
積算回数は2、点数はサンプル全体をカバーする点数である。
【0221】
【表2】
【0222】
膜中に存在するリチウムとコバルトの比は、レーザアブレーション誘導結合プラズマ質
量分析法(LA‐ICP‐MS)を用いて決定する。好ましい態様では、コバルト酸リチ
ウム膜が、わずかにリチウムが欠乏した組成、例えば、リチウム:コバルト比が、(酸素
を除く全金属原子の割合として表した場合に)リチウムが47.5~49.1%に対して
コバルトが52.5~50.9%で形成されてよい。
【0223】
しかしながら、形成される膜の特性及び性能は変動し、組成は膜の特性に影響を及ぼす
ものの、唯一の重要な因子ではないことが示唆される。図2は、多くの膜のサイクル寿命
を示し、Li:Co組成についてLiが47.5~49.1原子%の範囲では、Li:C
o組成の等しい膜であっても、(同じサイクル条件下で)サイクル寿命が長くも短くもな
り得ることを示す。利用数(面積及び厚さで正規化した容量)についても同様であり、図
3は、対象の組成範囲において利用数が広く分布していることを示す。
【0224】
堆積したLiCoO膜の結晶の性質は、ラマン分光法及びX線回折により示される。
ラマン分光法は、堆積膜がHT-LiCoO相(R-3m)(図4)であることを示し
、この高温相は、典型的には特許文献1に記載されている膜よりも低い基板温度を用いて
結晶性リチウム含有材料を堆積させることができる本合成法の性質により、400℃とい
う比較的低い基板温度で形成された。六方晶R-3m相は、(例えば、Porthault et al.
Vibrational Spec 62 (2012) 152-158に記載のような)交互に積層させたリチウム層と
コバルト層とからなる規則ラメラ組織からなる。
【0225】
堆積膜のX線回折(XRD)パターン(図5)は、膜は主として(001)配向である
ことを示しており、18.9°の(003)のピークが最も強度が高く、一部の実施例で
は、37.4°(101)、38.4°(006)、39.1°(012)、及び45.
3°(104)の各ピークも観察され、他の配向の微結晶の存在が示される。これらの膜
の断面ラマン分光法を実施したところ、堆積中のわずかな変化による膜の変化が示され、
このような変化は膜のモルフォロジに関連している可能性がある。
【0226】
図6は、堆積時間にわたって堆積条件を一定にした(本発明に従って作製したものでは
ない)膜(膜4)を示す。ラマンスペクトルは膜全体にわたって一定であり、膜の厚さ全
体にわたって同じ相及び組成が存在することが示される。
【0227】
作製された膜は滑らかかつ平坦で、小さな微結晶のみを含み(図7)、X線回折(XR
D)では、膜が(003)方向に優先的に配向していることを示し、(003)配向及び
(006)配向にそれぞれ対応する18.9°及び38.4°のピークのみがみられる(
図5)。LiCoOの(001)配向は、基板表面に平行に形成されたR‐3m構造の
層を持つ。基板に平行な二次元のリチウム拡散面の存在により、リチウムが長い経路を移
動しなければならず、リチウムのインターカレーションの発生速度が制限されるため、こ
の配向はリチウムの電気化学的インターカレーションに理想的ではなく、このため、理論
容量よりも容量が低くなることが示されている(非特許文献5)。事実、(本発明に係る
ものではない)膜4では強い(003)配向が観察され、記載の他の膜と同一サイクル条
件で25℃においてサイクルした場合、5サイクル目の放電まででその理論容量(13μ
Ah cm-1-2μm-1)の20%しか得られなかった。
【0228】
この膜のモルフォロジは、最密充填された緻密なものであり、基板表面に垂直に並んだ
幅100~300(±50)nm及び長さ0.1~7μm(最大値は総膜厚(6700n
m))の細い柱状微結晶からなり、性質上均一であって膜の表面は滑らかであり、上面視
によるSEM上面像では、サイズが350nm未満の小さな微結晶のみが観察される(図
7)。場合によっては、この膜は、固体電池に悪影響を及ぼし得るクラックが生じやすい
ことがわかっている。
【0229】
図8は、堆積中に堆積条件を変化させた本発明の実施形態に係る膜の3つの例を示す図
である。R-3mのLiCoO相に関連する2つのラマンバンドのみを有する膜を生成
するため、Coの流束とLiの流束とが等しい状態で堆積を開始した。堆積の途中でCo
の流束に対してLiの流束を変化させて、膜中のCoの量をわずかに増加させた。このこ
とは、ラマンスペクトルにおいて、酸化コバルト相Co1gモードに関連するこ
とが知られている690cm-1の追加のバンドが現れていることからわかる。この変更
のタイミング及び変更の大きさは、最終的な膜のモルフォロジに影響し、モルフォロジの
調整を可能にする。膜中に添加される追加のコバルトの量は少なく、この領域に存在する
LCO膜全体の平均組成はリチウムが47~49.5%となる。
【0230】
図8からわかるように、膜の堆積中に堆積条件をわずかに変更することにより、堆積膜
のモルフォロジが変化する。例えば、長さが0.4~2μmの範囲のサイズ(典型的には
0.3μm超)の大きな板状微結晶が膜内に観察され、これらの微結晶は膜の表面積の4
%超を覆っているが、上面視で表面積の80%をも覆うこともあり(表3)、膜の残りは
上述の小さな微結晶(典型的には0.3μm未満)からなる。
【0231】
表3に、図12(膜1~3は本発明の実施形態に係る膜であり、膜4は本発明に係るも
のではない)に図示した本明細書に記載のLiCoO膜の微結晶サイズの比較を示す。
膜4は非常に滑らかであるので、全体的に微結晶は観察されない。なお、膜3のサンプル
は、その上に大きな微粒子が多数存在しており、平均粗さの計算が困難であった。
【0232】
【表3】
【0233】
これらの膜のXRDパターンでは、(101)配向及び(104)配向の出現により3
7.4°及び45.3°のピークが現れており、膜が(003)配向優先でなくなること
を示し、これらピークの強度は、膜内の大型微結晶の表面積が大きくなるほど大きくなっ
ている(図5)。このようなモルフォロジの変化は、少量種として添加したCo
、(003)膜の大部分(bulk)とは異なる配向((101)及び(104))の微結晶
を種成長させるシード層として機能したため観察されたと考えられる。
【0234】
配向の異なる微結晶の添加により、基板と平行ではなく膜を通るLi拡散経路が形成さ
れる。このことは、容量(利用数)が改善し、レート能の高い材料が得られるため、リチ
ウムイオン電池での使用に有益である。また、均質性の低い膜を生成することにより、膜
応力が低下すると共に膜の密着性が向上する。
【0235】
膜の断面像においては、(上述の)膜4で観察された構造と同じ構造を持ち、基板の表
面に垂直に並んだ幅100~300(±50)nmの密に充填された微結晶からなる膜が
、基板の近くで観察される。シーディング層として機能し得る少量種のCoが形成
されるよう膜の堆積条件を変更すると、この構造が、規則的かつ小さな微結晶の構造から
逸脱し、300~2500nmの範囲のサイズが大きく規則性の低い結晶が形成された(
図9)。図9は、膜1の断面像を示し、膜厚が3000nmに達した時点で膜内のモルフ
ォロジの変化がみとめられ、この変化は、ラマン断面の変化に対応しており、Liの流束
に対するCoの流束の比を変化させた堆積条件の変更に関連している可能性がある。
【0236】
図10に示す(本発明の実施形態による)別の例は膜5であり、膜5は、Co
の関連が知られている690cm-1のピークに示されるように、膜の中央にCoに富む
領域を有して成長している。このCoに富む領域は、膜厚全体に占める割合は小さいもの
の、SEM像より、膜モルフォロジが、膜表面の大部分を覆う大型微結晶からなることが
確認でき、Coがシーディング層として作用し、その後形成したコバルト酸リチウ
ムが大きな板状微結晶として形成されていることが示される。この膜は、(結晶酸化物中
の酸素を除く全原子のパーセンテージとして表した場合に)47原子%のリチウムを含む
【0237】
上記の例は、コバルト酸リチウムの堆積中にCoとLiとの相対比を変化させることに
より膜のモルフォロジを制御できること、及び、例えば、シーディング層として作用させ
るにはCoが少量種のみでよいことを示す。Coはカソード材料ではなく、
Coの存在によりコバルト酸リチウム膜の容量が低下するので、必要なCo
は少量でよい。
【0238】
同様の効果を得るために用いることができる他の方法として、コバルト酸リチウムの堆
積の開始時にシーディング層を堆積させる、すなわち、コバルト酸リチウム膜中にCo
を少量種として点在させるのではなく、堆積中にLiの流束を短時間止めてCo
の薄層を形成する方法(膜5をより極端化した例)、コバルト酸リチウムの堆積を短時
間から最大数日、中断する方法、堆積中に基板温度を変化させる方法、堆積の開始時又は
堆積中のいずれかに追加の元素を用いてシーディング層を生成する方法などが挙げられる
【0239】
パルスレーザ蒸着(PLD)膜内に設けた同様の凹凸が、液体電解質を用いて測定した
場合に、リチウムインターカレーションの速度及び膜の容量を向上させることが先行技術
に報告されている(非特許文献5)。しかしながら、液体電解質を使用する場合、表面積
の広い膜の高いインターカレーション速度及び容量は、しばしば粗い表面に帰属される。
すなわち、表面積が広いと液体電解質との接触面積が大きくなり、Liのインターカレー
ション及びデインターカレーションに有利となる(Jung et al. Thin Solid Films 546 (
2013) 414-417)。
【0240】
本明細書に記載の測定は、液体電解質を含まない固体セルで実施したため、液体電解質
のようには電極の表面を濡らすことのない固体電解質を用いた場合には、同じ傾向が得ら
れないと考えられる。液体電解質は、微結晶間の空隙に入り込み、電極表面が粗いため表
面積の大きな電極を十分に活用することができる。しかしながら、固体電解質は電極の上
に膜として堆積されるため、(国際公開第2015/104538号に記載されているよ
うに)固体セルでは滑らかな膜が好ましいと考えられていた。したがって、LiCoO
のこのモルフォロジが、Liのインターカレーションを促進し、LiCoOの能力を向
上させるものの、これがそのまま固体セルの容量の増加につながるわけではない。更に、
不規則なLiCoO膜は、その不均一性のため研究には適さないと以前は考えられてい
た(上記非特許文献5等)。
【0241】
ここで、図に示すように、Pt/LiCoO/LiPON/Si/Ptの形で配置し
た白金集電体、LiCoOカソード、LiPON電解質、及びSiアノードからなる固
体セルに不図示の封止剤を設け(図11)、LiCoO膜の試験を行った。
【0242】
LiCoO膜中の大型微結晶(0.3μm超)の存在により、小さな微結晶(0.3
μm未満)のみが存在する場合と比べ、固体セルの利用数(容量)が改善している。しか
しながら、意外にも、試験を行った範囲においては、微結晶のサイズ又は表面被覆率を更
に高くしても、得られる利用数はさほど変化しなかった。
【0243】
固体電解質がLiCoOの表面を覆っている場合、液体電解質を用いて試験したLi
CoOに比べて、サイクルに伴う容量低下が抑制されることが報告されている。理論的
に束縛されることを望むものではないが、この容量低下は、液体電解質の劣化に関連する
と考えられる(Tintignac et al. Electrochimica Acta 60 (2012) 121-129)。
【0244】
意外にも、不規則な微結晶を含む本発明の実施形態に係る膜(膜1~3)では、小さく
均質な微結晶のみを含む本発明に係るものではない膜(膜4)に比べサイクル寿命が大幅
に延びた。表3及び表4に示すように、この効果は、大型微結晶(0.4~0.9μm)
の数が少ない(表面積の4.5%)膜でも示されている。
【0245】
表4は、上記のモルフォロジを有するLiCoO膜を備える固体セルについて、25
℃の温度において深度100%でサイクルしたときの、5サイクル目の放電容量の80%
に達するまでのサイクル数を示す。
【0246】
【表4】
【0247】
実際、表4に示したサイクル数が820サイクルの膜と190サイクルの膜とは、Li
:Co組成が同一(Li48.25原子%)と測定されたにも関わらず、膜モルフォロジ
が異なっており、この結果は、所望のモルフォロジの重要性を示すものである。
【0248】
LiCoOのモルフォロジがサイクル寿命に与える影響については多くは報告されて
はいない。(003)配向のLiCoO薄膜は容量が小さくなるものの、他の(101
)配向又は(104)配向の膜よりも容量低下の少ない安定したサイクルを示すことが文
献に報告されている(Kim et al. J. Electrochem. Soc. 151 (2004) A1062/Jung et al
. Thin Solid Films 546 (2013) 414-417)。したがって、本発明の結果とは対照的に、
(003)の配向度が高い小さな微結晶の滑らかな膜ではサイクル寿命が長くなると考え
られてきた。
【0249】
[追加の表面粗度測定]
本発明の実施例(実施例A~D)及び(本発明に係るものではない)比較例Eに係る膜
について更に表面粗度測定を実施した。この測定結果は、二乗平均平方根表面粗度、すな
わち、プロファイル高さの表面の平均線からの偏差の二乗平均平方根で示される。結果を
表5に示す。
【0250】
【表5】
【0251】
本明細書に記載した全ての文献は、参照により本明細書に援用される。当業者にとって
は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、記載した本発明の方法及びシステムの
さまざまな変更及び変形例が明らかであろう。本発明を具体的な好ましい実施形態に関し
て説明したが、特許請求の範囲に記載の本発明を、そのような具体的な実施形態に過度に
限定すべきではないことを理解されたい。実際、記載の本発明を実施するための態様につ
いて、化学分野及び材料科学又は関連する分野の当業者にとって自明であるさまざまな変
形例が下記の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成物の作製方法であって、
前記組成物は、
(a)R-3m空間群に属する岩塩構造を有する層状混合金属酸化物によって与えられる主相であって、前記層状混合金属酸化物が成分元素として、前記層状酸化物中の酸素を除く全原子に対する%で原子%を表した場合に、
45~55原子%のリチウムと、
20~55原子%の、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の遷移金属と、
0~25原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、銅、ルテニウム、亜鉛、モリブデン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される1種以上の追加ドーパント元素と、を含有する主相と、
(b)前記層状混合金属酸化物の結晶構造を有しない金属酸化物によって与えられ、前記層状混合金属酸化物に含まれる、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される前記遷移金属のうちの1種以上を含有する副次相と、を有し、
前記主相が前記組成物の総質量の90%~99.5%を与え、前記副次相が前記組成物の総質量の0.5%~10%を与える、組成物であり、
前記方法は、
-リチウムの供給源と、
-クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される遷移金属の供給源と、
-酸素の供給源と、
-任意選択で、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、銅、ルテニウム、亜鉛、モリブデン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される少なくとも1種のドーパント元素の供給源と、
を少なくとも含む、前記組成物の各成分元素のそれぞれの蒸気源を提供する工程と、
基板を約30℃~約900℃で加熱する工程と、
前記各成分元素の流束を前記基板上に供給する工程であって、前記成分元素が前記基板上で反応して、R-3m空間群に属する岩塩構造を有する層状混合金属酸化物によって与えられる第1の相を形成する工程と、
少なくともクロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される前記遷移金属と前記酸素との流束を前記基板上に供給する工程であって、前記遷移金属と前記酸素とが前記基板上で反応して、前記第1の相の結晶構造を有しない金属酸化物によって与えられる第2の相を形成する工程と、を有する方法。
【請求項2】
前記方法が、
前記基板上に前記第2の相をシード層として堆積させる工程と、
前記シード層の上に前記第1の相の膜を堆積させる工程と、を有する、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、
前記基板上に前記第1の相の第1の膜を堆積させる工程と、
前記第1の層上に前記第2の相をシード層として堆積させる工程と、
前記シード層上に前記第1の相の第2の膜を堆積させる工程と、を含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記基板上に前記第1の相と同時に前記第2の相を堆積させ、前記第1の相と前記第2の相とを含む混合物層を形成する工程を有する、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物層が前記基板上に堆積される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物層が、前記第1の相の既存の膜上に堆積される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物層の上に前記第1の相の膜を堆積させる工程を更に有する、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記基板が、約150℃~約700℃、好ましくは約200℃~700℃に加熱される、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記基板が、約200℃~500℃、好ましくは約300℃~500℃に加熱される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記成分元素のうちの1種以上の前記流束を変化させて、前記第2の相の形成量を増加させる工程を有する、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記リチウムの流束を減少させるか又はなくす工程を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される前記少なくとも1種の遷移金属元素の前記流束を増加させる工程を有する、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記酸素の流束を減少させる工程を有する、請求項1012のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
窒素又は希ガスなどの不活性ガスと共に酸素を供給する工程を有する、請求項1013のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
成物の作製方法であって、
前記組成物は、
(a)R-3m空間群に属する岩塩構造を有する層状混合金属酸化物によって与えられる主相であって、前記層状混合金属酸化物が成分元素として、前記層状酸化物中の酸素を除く全原子に対する%で原子%を表した場合に、
45~55原子%のリチウムと、
20~55原子%の、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の遷移金属と、
0~25原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、銅、ルテニウム、亜鉛、モリブデン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される1種以上の追加ドーパント元素と、を含有する主相と、
(b)前記層状混合金属酸化物の結晶構造を有しない金属酸化物によって与えられ、前記層状混合金属酸化物に含まれる、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される前記遷移金属のうちの1種以上を含有する副次相と、を有し、
前記主相が前記組成物の総質量の90%~99.5%を与え、前記副次相が前記組成物の総質量の0.5%~10%を与える、組成物であり、
前記方法は、
リチウムと、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の遷移金属と、任意選択で、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、銅、ルテニウム、亜鉛、モリブデン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される1種以上のドーパント元素とを含有する混合金属酸化物を含有するスパッタリングターゲットを提供する工程と、
前記第1のスパッタリングターゲットに含まれる、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される前記遷移金属のうちの1種以上を含有する金属酸化物相を含む更なるスパッタリングターゲットを提供する工程と、
前記スパッタリングターゲットと、前記更なるスパッタリングターゲットとをスパッタリングして組成物を作製する工程と、を有するスパッタリング堆積法であり、前記組成物が、
任意選択で前記ドーパント元素のうちの少なくとも1種がドープされた、リチウムと、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される前記遷移金属のうちの1種以上との層状混合金属酸化物によって与えられ、かつR-3m空間群に属する岩塩構造を有する第1の相と、
前記第1相の結晶構造を有しない金属酸化物によって与えられ、前記層状混合金属酸化物に含まれる、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される前記遷移金属のうちの1種以上を含有する第2の相と、を含む、方法。
【請求項16】
前記スパッタリングターゲットをスパッタリングして前記第1の相の膜を生成する工程を有し、該工程の前に、前記更なるスパッタリングターゲットをスパッタリングして前記第2の相の膜を生成する工程が実行される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物をアニールする工程を更に有する、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記副次相が1原子%未満のリチウムを含有する、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記副次相がリチウムを実質的に含まない、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記層状混合金属酸化物が、
45~55原子%のリチウムと、
40~55原子%の、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の遷移金属と、
0~5原子%の、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、銅、ルテニウム、亜鉛、モリブデン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、スズ、鉛、ビスマス、ランタン、セリウム、ガドリニウム、及びユウロピウムからなる群から選択される1種以上の追加ドーパント元素と、を含有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記層状混合金属酸化物が、
45~55原子%のリチウムと、
45~55原子%の、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の遷移金属と、を含有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記副次相が前記組成物の総質量の1%~10%を与える、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記副次相が前記組成物の総質量の2.5%~10%を与える、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、上面と底面とを備え、前記上面と前記底面との間の高さが1~50μmである薄膜層である、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記層状混合金属酸化物が、一般式Li Co 1-2y Mn Ni を有し、前記副次相が、コバルト、マンガン及びニッケルからなる群から選択される1種以上の遷移金属を含有する、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記層状混合金属酸化物が、一般式Li Mn 1-y を有し、Mが、クロム、ニッケル、鉄及びコバルトからなる群から選択される遷移金属である、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
固体電気化学セルの製造方法であって、該方法は、請求項26のいずれか一項に記載の方法を用いて、前記セルの電極を堆積させる工程を有する、方法。
【外国語明細書】