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特開2024-23213サイトカイン関連障害を治療するためのJAK1経路阻害薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023213
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】サイトカイン関連障害を治療するためのJAK1経路阻害薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240214BHJP
   A61K 31/4155 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/4155
A61K31/437
A61K31/519
A61K31/56
A61K31/573
A61K39/395 N
A61P37/06
A61P43/00 111
A61P29/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023187800
(22)【出願日】2023-11-01
(62)【分割の表示】P 2020543559の分割
【原出願日】2019-02-14
(31)【優先権主張番号】62/710,446
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/631,825
(32)【優先日】2018-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505193450
【氏名又は名称】インサイト・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INCYTE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・オニール・モンゴメリー
(72)【発明者】
【氏名】アーマッド・ナイム
(72)【発明者】
【氏名】スーザン・スノッドグラス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】CAR-T細胞関連脳症症候群を治療するための医薬を提供する。
【解決手段】JAK1経路阻害薬を含む医薬であって、前記JAK1経路阻害薬が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルまたはその薬学的に許容可能な塩である、前記医薬とする。前記医薬がトシリズマブおよび/またはコルチコステロイドと組み合わせて投与されることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のサイトカイン関連疾患または障害を治療する方法であって、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩が、JAK2、JAK3、及びTyk2よりもJAK1に対して選択的である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サイトカイン関連疾患または障害が、サイトカイン放出症候群(CRS)、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、またはCAR-T細胞関連脳症症候群(CRES)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記サイトカイン関連疾患または障害が、サイトカイン放出症候群(CRS)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記サイトカイン関連疾患または障害が、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記サイトカイン関連疾患または障害が、マクロファージ活性化症候群(MAS)である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記マクロファージ活性化症候群(MAS)が、全身型若年性特発性関節炎に関連する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記サイトカイン関連疾患または障害が、CAR-T細胞関連脳症症候群(CRES)である、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記JAK1経路阻害薬が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルまたはその薬学的に許容可能な塩である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記JAK1経路阻害薬が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルアジピン酸塩である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記JAK1経路阻害薬が4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容可能な塩である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記JAK1経路阻害薬が4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドリン酸塩である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記JAK1経路阻害薬が((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリルまたはその薬学的に許容可能な塩である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記JAK1経路阻害薬が((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル一水和物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
トシリズマブを前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
コルチコステロイドを前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
プレドニゾンを前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
トシリズマブ及びコルチコステロイドを前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、JAK1経路阻害薬及びサイトカイン関連疾患または障害を治療する際のその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
サイトカイン関連疾患または障害は、免疫の過剰な活性化を特徴とし、サイトカイン放出症候群(CRS)、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、マクロファージ活性化症候群(MAS)及びCAR-T細胞関連脳症症候群(CRES)を含む。
【0003】
サイトカイン放出症候群(CRS)とは、超生理学的なレベルの免疫活性化によって引き起こされる炎症性サイトカインの過剰産生の直接的な結果であり、発熱、悪心、疲労、筋肉痛、倦怠感、低血圧、低酸素症、毛細血管漏出などの一連の臨床症状として現れ、それにより、潜在的な多臓器毒性をもたらす。
【0004】
CRSは、例えば、がんなどの重篤な疾患状態に対する免疫療法の望まない副作用である。CRSを引き起こす可能性のある免疫療法には、モノクローナル抗体(mAb)の投与、ごく最近ではがんに対する養子T細胞療法が含まれる。Lee et al.Blood.2014,124(2):188-195。例えば、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、改変されたT細胞を使用してがんを標的とし、特定の形態である難治性非ホジキンリンパ腫及び小児再発性リンパ芽球性白血病(ALL)での使用がFDAによってすでに承認されている。
【0005】
CRSに関与するサイトカインプロファイルには、主要な2つの細胞源が含まれる。それは、インターフェロンガンマ(IFN)-γ、IL-2、IL-6、可溶性IL-6受容体(IL-6R)及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含むTリンパ球由来サイトカインと、IL-1β、IL-6、IL-12、IL-18及び腫瘍壊死因子(TNF)-αなどの主に単球及び/またはマクロファージから分泌されるサイトカインである。Xu XJ,Tang YM.Cancer Lett.2014;343:172-8。 Zhang Y.,et al.Sci China Life Sci.2016;59:379-85。Brentjens R.,et al.Mol Ther.2010;18:666-8。
【0006】
CRSをもたらす過剰なサイトカイン応答の調節は、重要な臨床的便益をもたらす可能性を有している。例えば、IL-6受容体(IL-6R)に対する抗体であるトシリズマブは、重度のCRSの発症率を低下させ、CRSでの使用は、FDAによって承認されている。しかしながら、トシリズマブの作用機序は、抗IL-6Rのみに限るものである。
【0007】
血球貪食性リンパ組織球症(HLH)は、過剰または制御されない免疫活性化のもう1つの症候群であり、主に出生から生後18カ月の幼児が発症するが、成人も発症する場合がある。HLHには、一次性(家族性)または二次性のものがあり、これは他の感染性、悪性、リウマチ性または代謝性の条件において発症することを意味する。HLHの症状には、血球減少症、肝脾腫、及び発熱が含まれる。Schram,A.and Berliner,N.Blood.2005.125(19),2908-2914。
【0008】
マクロファージ活性化症候群(MAS)は、HLHと同様の様式で臨床的に呈し(さらに、二次性または後天的なHLHと見なされる)、感染、リウマチ性疾患または悪性腫瘍に関連する炎症の増加により発症する。Borgia,R.E.et al.Arthritis Rheumatol.,2018,doi:10.1002/art.40417(発表前)。MASは、はじめは若年性特発性関節炎に関連すると記述されたが、小児期発症全身性エリテマトーデス(cSLE)などの他の疾患の合併症としてもますます認識されている。Shimizu M.,et al.Clin Immunol.2013 Feb;146(2):73-6。MASの発症は、多数の炎症促進性サイトカインの実質的増加すなわち、サイトカインストームによって特徴づけられる。Borgia,R.E.et al.Arthritis Rheumatol.,2018,doi:10.1002/art.40417(発表前)。MASは高い死亡率、概して、小児の自己免疫病では8~22%、cSLEを合併しているMASでは10~22%を示す、重篤な状態である。Borgia,R.E.et al.Arthritis Rheumatol.,2018,doi:10.1002/art.40417(発表前)。
【0009】
CAR-T細胞関連脳症症候群(CRES)は、CAR-T細胞療法に関連するCRSに次いで2番目に一般的な有害事象である。CRESは通常、錯乱及びせん妄の症状を伴う中毒性脳症の状態、ならびに機会発作及び脳浮腫を特徴とする。CRESの症状は二相性で、細胞免疫療法の最初の5日以内及び/または3~4週間後に生じ得る。病態生理学的機序には、CAR-T細胞療法で治療された患者の脳へのサイトカインの受動拡散が含まれると考えられている。この機序の低下または排除は、そのような患者にとって有益であり得る。Neelapu,et al.Nat Rev Clin Oncol.2018,15(1)47-62。
【0010】
したがって、サイトカイン関連疾患または障害を治療するための新規治療法を開発する必要がある。本出願は、このニーズ及び他のニーズに対応するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】抗CD3抗体誘発サイトカイン放出症候群の間に、血液区画内に化合物1を投与する際のIL-6濃度の用量依存的阻害を示す(実施例Bを参照のこと)。
図2A】コンカナバリンA誘発サイトカイン放出症候群の間の化合物1の投与時におけるT細胞由来サイトカイン(すなわち、IL-6)の用量依存的阻害を示す(実施例Cを参照のこと)。IL-6の阻害を示す。
図2B】コンカナバリンA誘発サイトカイン放出症候群の間の化合物1の投与時におけるT細胞由来サイトカイン(すなわち、IFNγ)の用量依存的阻害を示す(実施例Cを参照のこと)。IFNγの阻害を示す。
図2C】コンカナバリンA誘発サイトカイン放出症候群の間の化合物1の投与時におけるT細胞由来サイトカイン(すなわち、GM-CSF)の用量依存的阻害を示す(実施例Cを参照のこと)。GM-CSFの阻害を示す。
図3A】コンカナバリンA誘発サイトカイン放出症候群の間の化合物1の投与時における単球及び/またはマクロファージ由来サイトカイン(すなわち、IL-12)の用量依存的阻害を示す(実施例Cを参照のこと)。IL-12の阻害を示す。
図3B】コンカナバリンA誘発サイトカイン放出症候群の間の化合物1の投与時における単球及び/またはマクロファージ由来サイトカイン(すなわち、IL-1β)の用量依存的阻害を示す(実施例Cを参照のこと)。IL-1βの阻害を示す。
図3C】コンカナバリンA誘発サイトカイン放出症候群の間の化合物1の投与時における単球及び/またはマクロファージ由来サイトカイン(すなわち、IL-18)の用量依存的阻害を示す(実施例Cを参照のこと)。IL-18の阻害を示す。
図4】サイトカインIL-5がコンカナバリンA誘発サイトカイン放出症候群の間の化合物1の治療に対して無影響であることを示す(実施例Cを参照のこと)。
【発明の概要】
【0012】
本明細書では、治療が必要な対象におけるサイトカイン関連疾患または障害を治療する方法を提供し、その方法には、その患者に治療上有効な量のJAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩を投与することが含まれる。
【0013】
本明細書では、治療が必要な対象におけるサイトカイン関連疾患または障害を治療するためのJAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0014】
本明細書では、治療が必要な対象におけるサイトカイン関連疾患または障害を治療する際に用いる薬物を製造するためのJAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0015】
本発明では、とりわけ、治療が必要な対象におけるサイトカイン関連疾患または障害を治療する方法を提供し、その方法には、その対象に治療上有効な量のJAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩を投与することが含まれる。
【0016】
本明細書に記載の方法は、JAK1経路阻害薬、特にJAK1選択的阻害薬を利用する。JAK1選択的阻害薬は、JAK1活性を他のヤヌスキナーゼよりも優先的に阻害する化合物である。JAK1は、調節不全の場合に、疾患状態をもたらし得るかまたはそれに寄与し得るような多くのサイトカイン及び成長因子のシグナル経路において中心的な役割を果たす。例えば、IL-6レベルは、関節リウマチで上昇し、この疾患において、IL-6は有害な効果があることが示唆されている(Fonesca,et al.,Autoimmunity Reviews,8:538-42,2009)。IL-6は少なくとも部分的にJAK1を介してシグナリングするので、IL-6は間接的にJAK1の阻害を介して存在し、潜在的な臨床的便益をもたらす(Guschin,et al.Embo J 14:1421,1995;Smolen,et al.Lancet 371:987,2008)。さらに、いくつかのがんにおいて、JAK1は変異しており、恒常的に所望されない腫瘍細胞の増殖及び生存をもたらす(Mullighan,Proc Natl Acad Sci U S A.106:9414-8,2009;Flex,J Exp Med.205:751-8,2008)。他の自己免疫病及びがんにおいて、JAK1を活性化する炎症性サイトカインの全身レベルが上昇することにより、その疾患及び/または関連症状にも寄与し得る。したがって、そのような疾患の患者は、JAK1の阻害により恩恵を受け得る。JAK1の選択的阻害薬は、他のJAKキナーゼを阻害することによる不必要かつ潜在的な所望されない効果を回避する一方で、有益であり得る。
【0017】
JAK1経路阻害薬、具体的には化合物1(すなわち、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、表1を参照のこと)は、CRS関連の炎症性サイトカインの非常に効果的な用量依存的な調節を達成する(例えば、実施例B及びCならびに図1、2A~2C及び3A~3Cを参照のこと)。驚くべきことに、この治療特性は、複数の病原性サイトカインを含み、IL-6/IL-6R系のみに限ることではない(例えば、トシリズマブは異なる)。CRSの発病に臨床的に高い関連があるT細胞及び単球/マクロファージに由来するサイトカインを阻害することにより、有効性が達成される。さらに、JAK1阻害薬化合物1に関連して本明細書に提示されたデータは、治療の利益が、広範なサイトカイン免疫抑制なしに達成されることを示している(IL-5レベルが変化しなかったことにより実証されている通り)(図4)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
いくつかの実施形態において、サイトカイン関連疾患または障害は、サイトカイン放出症候群(CRS)、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、またはCAR-T細胞関連脳症症候群(CRES)である。
【0019】
いくつかの実施形態において、サイトカイン関連疾患または障害は、サイトカイン放出症候群(CRS)である。
【0020】
いくつかの実施形態において、サイトカイン関連疾患または障害は、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)である。
【0021】
いくつかの実施形態において、サイトカイン関連疾患または障害は、マクロファージ活性化症候群(MAS)である。いくつかの実施形態において、マクロファージ活性化症候群は、全身型若年性特発性関節炎に関連する。いくつかの実施形態において、マクロファージ活性化症候群は、小児全身性エリテマトーデスに関連する。
【0022】
いくつかの実施形態において、サイトカイン関連疾患または障害は、CAR-T細胞関連脳症症候群(CRES)である。
【0023】
いくつかの実施形態において、本出願は、対象のサイトカイン放出症候群を治療する方法を提供し、この方法は、その対象にCAR-T細胞療法及びJAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む。いくつかの実施形態において、治療とは寛解または阻害することである。いくつかの実施形態において、治療とは予防することである。
【0024】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、CAR-T細胞療法と同時に投与される。
【0025】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、CAR-T細胞療法の投与後に投与される。
【0026】
いくつかの実施形態において、CAR-T細胞療法は、アキシカブタゲン・シロロイセルである。
【0027】
いくつかの実施形態において、CAR-T細胞療法は、チサゲンレクルユーセルである。
【0028】
いくつかの実施形態において、対象はB細胞悪性腫瘍に罹っている。
【0029】
いくつかの実施形態において、対象は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、形質転換した濾胞性リンパ腫または急性リンパ芽球性白血病に罹っている。
【0030】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、JAK2、JAK3及びTYK2よりもJAK1に対して選択的である(すなわち、JAK1選択的阻害薬)。例えば、本明細書に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、1種または複数種のJAK2、JAK3及びTYK2よりもJAK1を優先的に阻害する。いくつかの実施形態において、化合物はJAK2よりもJAK1を優先的に阻害する(例えば、JAK2/JAK1 IC50比>1)。いくつかの実施形態において、化合物または塩は、JAK2よりもJAK1に対して約10倍選択的である。いくつかの実施形態において、化合物または塩は、1mM ATPでIC50 を測定することによって計算すると、JAK2よりもJAK1に対して約3倍、約5倍、約10倍、約15倍または約20倍選択的である(例えば、実施例Aを参照のこと)。
【0031】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬は、表1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩である。表1の化合物は、選択的JAK1阻害薬である(JAK2、JAK3及びTYK2よりも選択的)。1mM ATPで実施例Aの方法により得られたIC50値を表1に示す。
【0032】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
+ 平均≦10nM(アッセイ条件については実施例Aを参照のこと)
++ 平均≦100nM(アッセイ条件については実施例Aを参照のこと)
+++ 平均≦300nM(アッセイ条件については実施例Aを参照のこと)
エナンチオマー1のデータ
エナンチオマー2のデータ
【0033】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0034】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルアジピン酸塩である。
【0035】
{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル及びそのアジピン酸塩の合成及び調製は、米国特許出願第2011/0224190号(2011年3月9日出願)、米国特許出願第2013/0060026号(2012年9月6日出願)及び米国特許出願第2014/0256941号(2014年3月5日出願)で確認でき、これらの各出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0037】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドリン酸塩である。
【0038】
4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド及びそのリン酸塩の合成及び調製は、例えば、米国特許出願第2014/0343030号(2014年5月16日出願)で確認でき、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬は、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリルまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0040】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬は、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル 一水和物である。
【0041】
((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリルの合成ならびにその無水物及び一水和物の形態のキャラクタリゼーションは、米国特許出願第2014/0121198号(2013年10月31日出願)及び米国特許出願第2015/0344497号(2015年4月29日出願)で記載されており、これらの各出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
いくつかの実施形態において、表1の化合物は、米国特許出願第2011/0224190号(2011年3月9日出願)、米国特許出願第2014/0343030号(2014年5月16日出願)、米国特許出願第2014/0121198号(2013年10月31日出願)、米国特許出願第2010/0298334号(2010年5月21日出願)、米国特許出願第2011/0059951号(2010年8月31日出願)、米国特許出願第2012/0149681号(2011年11月18日出願)、米国特許出願第2012/0149682号(2011年11月18日出願)、米国特許出願第2013/0018034号(2012年6月19日出願)、米国特許出願2013/0045963号(2012年8月17日出願)及び米国特許出願第2014/0005166号(2013年5月17日出願)で記載された合成方法によって調製され、これらの各出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬は、米国特許出願第2011/0224190号(2011年3月9日出願)、米国特許出願第2014/0343030号(2014年5月16日出願)、米国特許出願第2014/0121198号(2013年10月31日出願)、米国特許出願第2010/0298334号(2010年5月21日出願)、米国特許出願第2011/0059951号(2010年8月31日出願)、米国特許出願第2012/0149681号(2011年11月18日出願)、米国特許出願第2012/0149682号(2011年11月18日出願)、米国特許出願第2013/0018034号(2012年6月19日出願)、米国特許出願2013/0045963号(2012年8月17日出願)及び米国特許出願第2014/0005166号(2013年5月17日出願)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩から選択され、これらの各出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬は式Iの化合物
【化1】
または、その薬学的に許容可能な塩であり、式中、
XはNまたはCHであり、
LはC(=O)またはC(=O)NHであり、
Aは、フェニル、ピリジニル、またはピリミジニルであり、そのそれぞれは、1つまたは2つの独立して選択されたR基で任意に置換されており、さらに
各Rは、独立して、フルオロまたはトリフルオロメチルである。
【0045】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0046】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、4-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-N-[4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン-1-カルボキサミドまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0047】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、[3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(1-{[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]カルボニル}ピペリジン-4-イル)アゼチジン-3-イル]アセトニトリルまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0048】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬は式IIの化合物
【化2】
または、その薬学的に許容可能な塩であり、式中、
は、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C3-6シクロアルキル、またはC3-6シクロアルキル-C1-3アルキルであり、ここで、このC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル及びC3-6シクロアルキル-C1-3アルキルは、フルオロ、-CF及びメチルから独立して選択される1、2、または3つの置換基で任意に置換され、
はHまたはメチルであり、
はH、FまたはClであり、
はHまたはFであり、
はHまたはFであり、
はHまたはFであり、
はHまたはメチルであり、
はHまたはメチルであり、
10はHまたはメチルであり、さらに
11はHまたはメチルである。
【0049】
いくつかの実施形態において、式IIの化合物は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0050】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬は式IIIの化合物
【化3】
または、その薬学的に許容可能な塩であり、式中、
Cyは、CN、OH、F、Cl、C1-3アルキル、C1-3ハロアルキル、シアノ-C1-3アルキル、HO-C1-3アルキル、アミノ、C1-3アルキルアミノ及びジ(C1-3アルキル)アミノから独立して選択された1または2つの基で任意に置換されたテトラヒドロ-2H-ピラン環であり、ここで、このC1-3アルキル及びジ(C1-3アルキル)アミノは、F、Cl、C1-3アルキルアミノスルホニル及びC1-3アルキルスルホニルから独立して選択された1、2または3つの置換基で任意に置換され、
12は、-CH-OH、-CH(CH)-OHまたは-CH-NHSOCHである。
【0051】
いくつかの実施形態において、式IIIの化合物は、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリルまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0052】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、遊離塩基基準で、1日に約100mg~約600mgの量が投与される。したがって、いくつかの実施形態において、選択的なJAK1経路阻害薬は、遊離塩基基準で、1日に約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mgまたは約600mgの量が投与される。
【0053】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、遊離塩基基準で、1日に約200mgの量が投与される。
【0054】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、遊離塩基基準で、1日に約300mgの量が投与される。
【0055】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、遊離塩基基準で、1日に約400mgの量が投与される。
【0056】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、遊離塩基基準で、1日に約500mgの量が投与される。
【0057】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、遊離塩基基準で、1日に約600mgの量が投与される。
【0058】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、遊離塩基基準で、1日に1回約200mgの量が投与される。
【0059】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、遊離塩基基準で、1日に1回約300mgの量が投与される。
【0060】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、遊離塩基基準で、1日に1回約400mgの量が投与される。
【0061】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、遊離塩基基準で、1日に1回約500mgの量が投与される。
【0062】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、遊離塩基基準で、1日に1回約600mgの量が投与される。
【0063】
いくつかの実施形態において、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、そのJAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩をそれぞれ含む1種または複数種の徐放性剤形で投与される。
【0064】
本明細書では、治療が必要な対象における対象のサイトカイン関連疾患または障害を治療する方法を提供し、この方法は、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩を遊離塩基基準で、1日約100mg~600mgをその対象に投与することを含み、ここで、そのJAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、そのJAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩を含む1種または複数種の徐放性剤形で投与される。
【0065】
本明細書に記載の実施形態は、その実施形態が多項従属クレームであるかのように、任意の好適な組み合わせで合わせられることが意図される(例えば、選択的なJAK1経路阻害薬及びその用量に関する実施形態、本明細書で開示される化合物の任意の塩形態に関する実施形態、サイトカイン関連疾患または障害の個々の種類に関する実施形態及び任意の組み合わせで合わされ得る組成物及び/または投与に関する実施形態)。
【0066】
例えば、本明細書では、対象における、サイトカイン放出症候群(CRS)、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、マクロファージ活性化症候群(MAS)またはCAR-T細胞関連脳症症候群(CRES)からなる群から選択されたサイトカイン関連疾患または障害を治療するための方法を提供し、この方法には、この対象に、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルまたはその薬学的に許容可能な塩を遊離塩基基準で約200mgの用量で1日1回投与することを含み、ここで、この用量には、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルまたはその薬学的に許容可能な塩をそれぞれ含む1種または複数種の徐放性剤形が含まれる。
【0067】
徐放性剤形の{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルまたはその薬学的に許容可能な塩(表1、化合物1)は、米国特許2015/0065484号(2014年8月6日出願)で確認でき、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0068】
全ての可能な組み合わせは、単に簡潔にするために、本明細書において別々に示されていない。
【0069】
本明細書に記載される化合物は、非対称であり得る(例えば、1つまたは複数の立体中心を有する)。他に示さない限り、エナンチオマー及びジアステレオマーなどの全ての立体異性体が意図される。非対称に置換された炭素原子を含む化合物は、光学活性形態、またはラセミ形態で単離され得る。光学的に不活性な出発物質から光学活性形態を調製する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、ラセミ混合物の分割または立体選択的合成による。本明細書に記載する化合物中には、オレフィン、C=N二重結合などの多くの幾何異性体も存在することができ、全てのそのような安定した異性体が本発明において企図される。本発明の化合物におけるシス及びトランスの幾何異性体が記載され、異性体の混合物として、または分離された異性の形態として単離され得る。
【0070】
いくつかの実施形態において、化合物は、(R)配置を有する。いくつかの実施形態において、化合物は、(S)配置を有する。
【0071】
化合物のラセミ混合物の分割は、当技術分野で周知である多数の方法のいずれかによって実行され得る。例示的な方法としては、光学活性の塩形成有機酸であるキラル分割酸を用いた分別再結晶が挙げられる。分別再結晶法に好適な分割剤は、例えば、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸、またはβ-カンファースルホン酸などの様々な光学活性カンファースルホン酸のD形態及びL形態などの光学活性酸である。分別晶析法に好適な他の分割剤には、α-メチルベンジルアミンの立体異性的に純粋な形態(例えば、S及びR形態またはジアステレオマー的に純粋な形態)、2-フェニルグリシノール、ノルエフェドリン、エフェドリン、N-メチルエフェドリン、シクロヘキシルエチルアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサンなどが含まれる。
【0072】
ラセミ混合物の分割は、光学活性分割剤(例えば、ジニトロベンゾイルフェニルグリシン)を充填したカラム上に溶出させることでも実行することが可能である。好適な溶出溶媒組成物は、当業者によって決定され得る。
【0073】
本明細書に記載される化合物には、互変異性の形態も含まれる。互変異性の形態は、隣接する二重結合と単結合の交換と、同時にプロトンが移動することによって得られる。互変異性の形態には、同じ実験式及び総電荷を有する異性体のプロトン化状態であるプロトトロピック互変異性体が含まれる。プロトトロピック互変異性体の例には、ケトン-エノール対、アミド-イミド酸対、ラクタム-ラクチム対、エナミン-イミン対ならびにプロトンがヘテロ環系の2つまたはそれ以上の位置を占めることが可能な環状形態、例えば、1H-イミダゾール、3H-イミダゾール、1H-1,2,4-トリアゾール、2H-1,2,4-トリアゾール及び4H-1,2,4-トリアゾール、1H-イソインドール及び2H-イソインドールならびに1H-ピラゾール及び2H-ピラゾールが含まれる。互変異性の形態は、平衡状態である場合があり、または適切な置換によって1つの形態に立体的に固定されている場合もある。
【0074】
本明細書に記載の化合物には、本開示の同位体標識された化合物も含み得る。「同位体的」または「放射標識された」化合物とは、1種または複数種の原子が、通常天然に見られる(すなわち、天然に存在している)原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられている、または置換されている本開示の化合物である。本開示の化合物に組み込まれ得る好適な放射性核種には、H(また、ジュウテリウムとしてDともに記される)、H(トリチウムとしてTとも記される)、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、18F、35S、36Cl、82Br、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I及び131Iが含まれるが限定されない。例えば、本開示の化合物中の1種または複数種の水素原子は、ジュウテリウム原子で置き換えられ得る(例えば、式(I)、(II)、もしくは(III)または表1の化合物のC1-6アルキル基の1つまたは複数の水素原子は、-CDが-CHに対して置換されるように、ジュウテリウム原子で任意に置換することが可能である)。本明細書で使用される「化合物」という用語は、名前が特定の立体異性体を示していない限り、示された構造に対する、全ての立体異性体、幾何異性体、互変異性体及び同位体を含むことを意味する。特定の1つの互変異性の形態として名前また構造で特定されている本明細書の化合物は、他に特定されていない限り、他の互変異性の形態を含むように意図される。
【0075】
全ての化合物及びその薬学的に許容可能な塩は、水及び溶媒などの他の物質と一緒に確認され得る(例えば、水和物及び溶媒和物)または、単離され得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物及びその塩は、実質的に単離される。「実質的に単離される」によって、化合物が、それが形成または検出された状況から少なくとも部分的にまたは実質的に分離されることが意味される。部分的な分離には、例えば、本明細書に記載の化合物中で濃縮された組成物を含むことが可能である。実質的な分離とは、本明細書に記載の化合物またはその塩の重量の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%または少なくとも約99%を含有する組成物を含むことが可能である。化合物及びその塩を単離する方法は、当技術分野において通例である。
【0077】
本明細書で使用する「薬学的に許容可能な」という表現は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答もしくはその他の問題または合併症なしに、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、合理的な効果/リスクの比に釣り合う化合物、材料、組成物及び/または剤形を指す。
【0078】
本明細書で使用する「周囲温度」及び「室温」または「rt」という表現は、当技術分野で理解されており、概して、反応が行われる部屋の温度、例えば、約20℃~約30℃の温度に近い温度、例えば反応温度を指す。
【0079】
本発明には、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容可能な塩も含まれる。本明細書で使用する「薬学的に許容可能な塩」は、開示されている化合物の誘導体であり、ここで、親化合物は、既存の酸または塩基部分をその塩形態に変換することによって改変されている。薬学的に許容可能な塩の例には、アミンなどの塩基性残基の無機塩または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩などが含まれるが、これらに限定されない。本発明の薬学的に許容可能な塩には、例えば、非毒性の無機酸または有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩が含まれる。本発明の薬学的に許容可能な塩は、従来の化学的方法により、塩基性部分または酸性部分を含む親化合物から合成することが可能である。概して、このような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、化学量論的な量の適切な塩基または酸と、水中もしくは有機溶媒中で、またはその2つの混合物中で反応させることにより調製され得る。概して、エーテル、酢酸エチル、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、またはブタノール)またはアセトニトリル(ACN)のような非水性溶媒が好ましい。好適な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418及びJournal of Pharmaceutical Science,66,2 (1977)で確認でき、これらの各出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
本明細書で用いられる場合、交換可能に使用される「対象」、「個体」または「患者」という用語は、哺乳動物、好ましくはマウス、ラット、他の齧歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマまたは霊長類を含む任意の動物、最も好ましくはヒトとを指す。いくつかの実施形態において、「対象」、「個体」、または「患者」は、上述の治療を必要としている。
【0081】
いくつかの実施形態において、阻害薬は、治療上有効な量で投与される。本明細書で使用される「治療上有効な量」という表現は、研究者、獣医師、医師または他の臨床医によって組織、系、動物、個体またはヒトにおいて求められている生物学的応答または薬物的応答を誘発する、活性化合物または医薬品の量を指す。いくつかの実施形態において、患者または個体に投与される化合物またはその薬学的に許容可能な塩の投与量は、約1mg~約2g、約1mg~約1000mg、約1mg~約500mg、約1mg~約200mg、約1mg~約100mg、約1mg~50mg、または約50mg~約500mgである。いくつかの実施形態において、化合物またはその薬学的に許容可能な塩の投与量は、約200mgである。
【0082】
本明細書で使用される「治療する」または「治療」という用語は、(1)疾患を阻害すること、例えば、疾患、症状もしくは障害の病態もしくは総体症状を経験もしくは呈している個人において、疾患、症状もしくは障害を阻害すること(すなわち、病態及び/または総体症状のさらなる発症を抑止すること)、(2)疾患を寛解すること、例えば、疾患の重症度を低下するなど、疾患、症状もしくは障害の病態もしくは総体症状を経験もしくは呈している個人における疾患、症状もしくは障害を寛解すること(すなわち、病態及び/または総体症状の進行を食い止める)、または(3)疾患、症状もしくは障害になりやすいが、まだその疾患の病態もしくは総体症状を経験もしくは呈していない個人における疾患、症状もしくは障害を予防することの1つまたは複数を指す。いくつかの実施形態において、治療は、疾患を阻害または寛解することを指す。いくつかの実施形態において、治療とは、疾患を予防することである。
【0083】
併用療法
本明細書に記載される方法は、1種または複数種の追加の治療薬を投与することをさらに含むことが可能である。1種または複数種の追加の治療薬は、同時にまたは連続して患者に投与することが可能である。
【0084】
いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、IL-6アンタゴニストまたは受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、IL-6受容体アンタゴニストはトシリズマブである。
【0085】
いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、MCP-1の阻害薬である。いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、MIP1Bの阻害薬である。いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、IL-2Rの阻害薬である。いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、IL-1Rの阻害薬である。いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、TNF-αの阻害薬である。
【0086】
いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、抗CD25抗体である。いくつかの実施形態において、抗CD25抗体はダクリズマブである。
【0087】
いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、IL-1βのアンタゴニストである。
【0088】
いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、IL1受容体アンタゴニスト(IL1Ra)である。いくつかの実施形態において、IL1受容体アンタゴニスト(IL1Ra)はアナキンラである。
【0089】
いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、コルチコステロイドである。いくつかの実施形態において、コルチコステロイドは、プレドニゾンである。
【0090】
いくつかの実施形態において、前述の追加の治療薬のいずれかは、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン)とさらに組み合わせて用いられる。
【0091】
いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、トシリズマブ及びコルチコステロイドを含む。いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、トシリズマブ及びプレドニゾンを含む。
【0092】
医薬品製剤及び剤形
医薬品として使用する場合、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩は、医薬組成物の形態で投与することができる。これらの組成物は、製薬分野において周知の方法で調製されることができ、局所治療または全身治療のどちらが望ましいか、かつ治療される領域に応じて、様々な経路によって投与されることが可能である。投与は、局所的(経皮、上皮、眼ならびに鼻腔内、膣及び直腸の送達などの粘膜へのもの)、肺性の(例えば、噴霧器などによる散剤もしくはエアロゾルの吸入もしくはガス注入によるもの;気管内または鼻腔内のもの)、経口または非経口であり得る。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内もしくは注射、または注入、あるいは、くも膜下腔内または脳室内などの頭蓋内の投与が含まれる。非経口投与は、単回ボーラス投与の形態または例えば、連続灌流ポンプによるものであり得る。局所的投与用の医薬組成物及び製剤には、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、坐薬、スプレー、液体、及び粉末が含まれ得る。従来の薬学的担体、水性基剤、粉末基剤、油性の基剤または増粘剤などは、必須であるまたは望ましい場合がある。
【0093】
本発明には、1種または複数種の薬学的に許容可能な担体(賦形剤)と組み合わせて、活性成分として、本明細書に記載されるJAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩を含有する医薬組成物も含まれる。いくつかの実施形態において、組成物は、局所的投与に好適である。この組成物を作製する際に、典型的には活性成分は賦形剤と混合され、賦形剤によって希釈されるか、または例えば、カプセル、小袋、紙もしくは他の容器の形態のそのような担体に封入される。賦形剤が希釈剤として機能する場合、活性成分のための溶媒、担体または媒質として作用する固体、半固体または液体の材料であり得る。したがって、この組成物は、錠剤、丸剤、散剤、トローチ、小袋、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、乳剤、溶液、シロップ、エアロゾル(固体媒体として、または液体媒体中)、例えば最大で10重量%の活性化合物を含む軟膏剤、ソフトゼラチンカプセル、ハードゼラチンカプセル、坐薬、無菌注射液及び無菌包装散剤の形態であってもよい。
【0094】
製剤を調製する際は、他の成分と組み合わせる前に、活性化合物を製粉して適切な粒径を提供することができる。活性化合物が、実質的に不溶性である場合、200メッシュ未満の粒径に製粉され得る。活性化合物が実質的に水溶性である場合、粒径を製粉によって例えば、約40メッシュに調整して、製剤中の実質的に均一な分布を提供することができる。
【0095】
JAK1経路阻害薬は、湿式製粉などの既知の製粉手順を用いて製粉され、錠剤形成に対して及び他の製剤型に対して適切な粒径を得ることができる。JAK1選択的阻害薬の精密に分けられた(ナノ粒子)調製物は、当技術分野で周知である方法によって調製されることが可能であり、例えば、国際特許出願第WO2002/000196号を参照のこと。
【0096】
好適な賦形剤のいくつかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ及びメチルセルロースが挙げられる。その上、製剤には、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油などの潤滑剤、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、メチルベンゾエート及びプロピルヒドロキシベンゾエートなどの保存剤、甘味料ならびに香味料を含み得る。本発明の組成物は、当技術分野において既知の方法を用いることにより、患者に投与した後に、活性成分の迅速な、徐放性、または遅延性の放出を提供するように製剤化され得る。
【0097】
組成物は、単位剤形で製剤化され得て、各投与量には、約5~約1000mg(1g)、より一般的には約100~約500mgの活性成分が含まれる。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳動物のための単位投薬量として好適な物理的に個別の単位を指し、各単位には、好適な薬学的賦形剤に関連して、所望の治療効果を生み出すために算出された、既定量の活性物質が含まれる。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物には、約5~約50mgの活性成分が含まれる。当業者には、これが、約5~約10、約10~約15、約15~約20、約20~約25、約25~約30、約30~約35、約35~約40、約40~約45または約45~約50mgの活性成分を含む組成物の具体化であることは、理解されよう。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、約50~約500mgの活性成分を含む。当業者には、これが、約50~約100、約100~約150、約150~約200、約200~約250、約250~約300、約350~約400または約450~約500mgの活性成分を含む組成物の具体化であることは、理解されよう。
【0100】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、約500~約1000mgの活性成分を含む。当業者には、これが、約500~約550、約550~約600、約600~約650、約650~約700、約700~約750、約750~約800、約800~約850、約850~約900、約900~約950または約950~約1000mgの活性成分を含む組成物の具体化であることは、理解されよう。
【0101】
本発明の方法及び使用において、本明細書に記載の化合物の同様の投与量を用いることが可能である。
【0102】
活性化合物は、広範な投与量範囲にわたって有効であり得るので、概して薬学的に有効な量で投与される。しかしながら、実際に投与される化合物の量は、通常、治療される症状、選択した投与経路、実際に投与される化合物、個々の患者の年齢、体重及び応答、患者の症状の重症度などを含む関連状況に従い、医師によって決定されることは理解されよう。
【0103】
錠剤などの固体組成物を調製するために、主要な活性成分を薬学的賦形剤と混合して、本発明の化合物の均質な混合物を含有する固体の予備処方組成物を形成する。これらの予備処方組成物が均質物として言及される場合、活性成分は、典型的には組成物全体に均一に分散され、それによりこの組成物は、錠剤、丸剤及びカプセルなどの等しく有効な単位剤形に容易に細分され得る。さらに、この固体の予備処方は、例えば約0.1~約1000mgの本発明の活性成分を含む、上述した種類の単位剤形に細分される。
【0104】
本発明の錠剤または丸剤は、コーティングまたは他の方法で混合することで、作用を遷延させる利点をもたらす剤形を提供することができる。例えば、この錠剤または丸剤は、内側の投与成分と外側の投与成分を含むことができ、外側の成分は、内側の成分に対して外被の形態になっている。これらの2つの構成成分は、腸溶性層によって分離できる。この腸溶性層は、胃で分解しないように機能して、さらに内側の構成成分を無傷で十二指腸に到達させたり、または遅延放出を可能にしたりする。様々な材料をそのような腸溶性層またはコーティングに用いることができ、そのような材料には、多くのポリマー酸、ならびにポリマー酸とセラック、セチルアルコール及びセルロースアセテートなどの材料との混合物が含まれる。
【0105】
本発明の化合物及び組成物を経口または注射により投与するために組み込まれ得る液体形態には、水溶液、好適に風味付けされたシロップ、水性または油性懸濁液と、綿実油、ゴマ油、ココナッツ油またはピーナッツ油などの食用油で風味付けされた乳剤と、エリキシル剤及び類似の薬学的溶媒とが含まれる。
【0106】
吸入またはガス注入のための組成物には、薬学的に許容可能な水性溶媒もしくは有機溶媒またはその混合物中の溶液及び懸濁液ならびに粉末が含まれる。液体組成物または固体組成物には、上述する通りの好適な薬学的に許容可能な賦形剤が含まれ得る。いくつかの実施形態において、組成物は、局所的効果または全身効果のために経口または鼻呼吸の経路により投与される。組成物は、不活性ガスを使用することで、噴霧され得る。噴霧される溶液は、噴霧デバイスから直接的に吸入され得るか、またはその噴霧デバイスを、顔面マスク、栓塞子もしくは断続的陽圧呼吸器に装着させ得る。溶液、懸濁液、または粉末の組成物は、適切な方法で製剤を送達するデバイスから経口的または経鼻的に投与され得る。
【0107】
局所的製剤は、1種または複数種の従来の担体を含み得る。いくつかの実施形態において、軟膏は、水と、例えば、流動パラフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、プロピレングリコール、白色ワセリンなどから選択される1種または複数種の疎水性担体を含み得る。クリームの担体組成物は、水と、グリセロールと、例えば、グリセリンモノステアレート、PEG-グリセリンモノステアレート、及びセチルステアリルアルコールなどの1種または複数種の他の構成成分との組み合わせに基づき得る。ゲルは、イソプロピルアルコール及び水を使用して、好適には、例えばグリセロール、ヒドロキシエチルセルロースなどの他の構成成分と組み合わせて製剤化され得る。いくつかの実施形態において、局所的製剤は、少なくとも約0.1、少なくとも約0.25、少なくとも約0.5、少なくとも約1、少なくとも約2または少なくとも約5重量%の本明細書に記載される化合物を含む。局所的製剤は、例えば、乾癬または他の皮膚症状などの選択された適応症を治療するための指示書を任意に付けた100gのチューブに好適に包装され得る。
【0108】
患者に投与される化合物または組成物の量は、投与されるもの、予防または治療などの投与の目的、患者の状態、投与の方法などに応じて変化するであろう。治療適用では、組成物は、疾患及びその合併症の症状を治癒または少なくとも部分的に抑止するのに十分な量で、すでにその疾患に罹患している患者に投与され得る。有効用量は、治療される疾患の症状、ならびに疾患の重症度、患者の年齢、体重、及び一般状態などの因子に基づいて担当の臨床医の判断に依存する。
【0109】
患者に投与される組成物は、上述した医薬組成物の形態であり得る。これらの組成物は、従来の殺菌技法によって殺菌され得るかまたは無菌濾過され得る。水溶液は、そのままで使用するために包装または凍結乾燥され得るが、凍結乾燥された調製物は、投与前に無菌の水性担体と組み合わされる。化合物調製物のpHは、典型的には3~11の間、より好ましくは5~9の間、最も好ましくは7~8の間であろう。特定の前述の賦形剤、担体または安定剤の使用によって、薬学的塩の製剤が得られることは理解されよう。
【0110】
本発明の化合物の治療量は、例えば、治療を行う特定の用途、化合物の投与方法、患者の健康及び症状ならびに処方する医師の判断に従って変動し得る。医薬組成物における本明細書に記載される化合物の比率または濃度は、投与量、化学的性質(例えば、疎水性)及び投与経路を含む多くの因子に応じて変化し得る。例えば、本明細書に記載の化合物は、非経口投与のために、約0.1~約10%w/vの化合物を含む水性の生理的緩衝溶液で提供されることが可能である。いくつかの典型的な投与量の範囲は、1日当たり体重の約1μg/kg~約1g/kgである。いくつかの実施形態において、投与量の範囲は、1日当たり、体重の約0.01mg/kg~約100mg/kgである。投与量は、疾患または障害の種類及び進行の程度、特定の患者の全体的な健康状態、選択された化合物の相対的な生物学的有効性、賦形剤の配合及びその投与経路などの変数に依存する可能性がある。有効用量は、in vitroまたは動物モデルの試験系に由来する用量反応曲線から外挿することが可能である。
【0111】
本発明の組成物は、化学療法薬、ステロイド、抗炎症性化合物または免疫抑制剤などの1種または複数種の追加の医薬品をさらに含むことが可能であり、その例は本明細書に収載している。
【0112】
キット
本発明には、例えば、CRSなどのサイトカイン関連疾患または障害を治療及び/または予防をする際に有用な医薬キットも含まれ、そのキットには、本明細書に記載される治療上有効な量の化合物を含む医薬組成物を含有する1種または複数種の容器も含まれる。そのようなキットは、必要に応じて、例えば、1種または複数種の薬学的に許容可能な担体を含む容器、追加の容器など、1種または複数種の様々な従来の医薬キット構成要素をさらに含むことができ、当業者には容易に明らかであろう。そのような構成成分の量を示す、挿入物としてもしくはラベルとしてのいずれかの説明書、投与のガイドライン及び/またはその構成成分を混合する際のガイドラインもこのキットに含まれ得る。
【実施例0113】
本発明を、具体的な実施例によってより詳細に記載する。以下の実施例は、例示の目的のために提供され、いかなる様式でも本発明を限定するようには意図されるものではない。当業者は、本質的に同じ結果をもたらすように変更または修正され得る、様々な重要でないパラメータを容易に認識するであろう。実施例の化合物は、本明細書に記載される少なくとも1つのアッセイにより、JAK阻害薬であることが判明している。
【0114】
実施例A:In vitro JAKキナーゼアッセイ
サイトカイン関連疾患または障害を治療するために用いられ得るJAK1経路阻害薬を、Park et al.,Analytical Biochemistry 1999,269,94-104で記載される以下のin vitroアッセイに従い、JAK標的の阻害活性について試験する。N末端Hisタグを備えたヒトJAK1(a.a.837~1142)、JAK2(a.a.828~1132)及びJAK3(a.a.781~1124)の触媒ドメインを、昆虫細胞中でバキュロウイルスを用いて発現させ、精製する。JAK1、JAK2またはJAK3の触媒活性を、ビオチン化ペプチドのリン酸化の測定によってアッセイした。リン酸化ペプチドを均一系時間分解蛍光(HTRF)によって検出した。100mMのNaCl、5mMのDTT及び0.1mg/mL(0.01%)のBSAを含む50mMのトリス(pH7.8)バッファー中の、酵素、ATP及び500nMのペプチドを含む40μLの反応物において、各々のキナーゼについて化合物のIC50を測定する。1mMのIC50測定について、反応中のATP濃度は1mMである。反応を室温で1時間行い、次いで20μLの45mMEDTA、300nMのSA-APC、6nMのEu-Py20のアッセイバッファー液(Perkin Elmer、Boston、MA)により停止した。ユウロピウム標識抗体への結合を40分間行い、HTRFシグナルをFusionプレートリーダー(Perkin Elmer、Boston、MA)で測定した。表1の化合物をこのアッセイで試験したところ、表1で見られるIC50の値を有していることが示された。
【0115】
実施例B:Balb/cマウスにおける抗CD3抗体誘発サイトカイン放出症候群
JAK1経路阻害薬は、Ferran,C.et al.Clin.Exp.Immunol.1991,86,537-543に記載されているin vivoアッセイに従ってCRSに対する有効性について試験することが可能である。具体的には、本研究では、BALB/cマウスにおける抗CD3抗体誘発サイトカイン放出症候群(CRS)を軽減または寛解する化合物の能力を試験することが可能である。抗体、クローン145-2C11は、CD3マウス分子のε鎖に特異的なイムノグロビンG(IgG)ハムスターMoAbである(Leo,O.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1987,34,1374)。145-2C11による処理は、脾臓T細胞の表面に高親和性IL-2受容体を誘発し、腫瘍壊死因子(TNF-α)、IL-2、IL-3、IL-6及びインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)などのいくつかのサイトカインの放出をもたらす(Ferran,et al.Eur.J.Immunol.1990,20,509-515、及びAlgre,M.et al.,Eur.J.Immunol.,1990,707)。これらのサイトカインの放出は、動物の行動変化(例えば、不活動、立毛など)をもたらす。
【0116】
A.材料及び方法
【表2】
表1の化合物1または{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル及びそのアジピン酸塩の合成及び調製は、米国特許出願第2011/0224190号(2011年3月9日出願)、米国特許出願第2013/0060026号(2012年9月6日出願)及び米国特許出願第2014/0256941号(2014年3月5日出願)で確認でき、これらの各出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
B 実験デザイン
本研究の主な目的は、JAK1経路阻害薬(例えば、化合物1)が、BALB/cマウスにおいて抗CD3抗体誘発サイトカイン放出症候群(CRS)を軽減または寛解させる能力を試験することであった。このワンデイ研究には、計32匹のBALB/cマウスを用いた。試験物質を投与する前に、動物を秤量して、本実験の間モニタした。0日目、抗CD3抗体投与の1時間前に、溶媒(0.5%メチルセルロース)または化合物1を、表1Aに詳述した通り、グループ2~4の動物に強制経口投与(PO)により、単回投与した。グループ1は未投与の対照として機能するので、処置は行わなかった。溶媒または化合物1による前処置の1時間後に、グループ2~4の動物には、CRSを誘発するために、静脈内注射(IV)により10μgの抗CD3ε抗体(クローン145-2C11)を投与した。抗CD3を投与した1.5時間後に、全動物をCO吸入により安楽死させた。心臓穿刺により、KEDTA採血管に全血を収集して、血漿を処理するまで氷上で保管した。血漿を収集し、サイトカインマルチプレックスを行うまで-80℃で保存した。
【0118】
【表3】
【0119】
C.実験手順
I 試験物質の前処置
0日目に、表1Aに示すように、動物に溶媒または試験物質または化合物1を投与した。グループ2には、0.1mL/20gで、POにより溶媒(0.5%メチルセルロース)の単回投与を行った。グループ3には、0.1mL/20gで、POにより60mg/kgの化合物1の単回投与を行った。グループ4には、0.1mL/20gで、POにより120mg/kgの化合物1の単回投与を行った。グループ1は未投与の対照として機能するので、処置は行わなかった。
【0120】
II 抗CD3ε抗体の投与
試験物質投与の1時間後、抗CD3ε抗体(クローン145-2C11)を静脈内注射によりグループ2~4に投与した。グループ2~4の各動物には、0.1mLの抗CD3ε抗体10μgを投与した。
【0121】
III 生存中のモニタリング
抗CD3抗体を投与した後は、発症した全身性炎症反応による苦痛の兆候について、動物を注意深くモニタした。起き上がれなかった動物、触ると冷たい動物または瀕死の動物は、安楽死させた。瀕死の動物をCO吸入により安楽死させ、血液を心臓穿刺により採取し、血漿を保存した。
【0122】
IV 屠殺
抗CD3抗体投与の1時間半後に、全動物を、CO吸入により安楽死させた。
【0123】
V サンプルの収集
屠殺に際し、心臓穿刺により各動物からKEDTA採血管に全血を収集した。血液を遠心分離し、血漿をクライオバイアルに収集した。血漿を凍結し、下流のサイトカインマルチプレックスアッセイ用に-80℃で保存した。
【0124】
VI サイトカインマルチプレックス解析
血漿サンプルを氷上で解凍し、製造元のプロトコル(ThermoFisher)に従いサイトカインマルチプレックスに使用する。
【0125】
D 結果
化合物1は、血液区画中のIL-6濃度を用量依存的に阻害した(図1)。これは、以下の実施例Cで説明するCon Aの前臨床モデルで観察された生物活性を確認するものとして役立つ。Sidakの多重比較検定を組み込んだ一元配置分散分析(対応なし)(ANOVA)を、GraphPad Prism (version 4.00;GraphPad Software,San Diego California,USA)を用いて行った。p<0.05の値を有意であると見なした。
【0126】
実施例C:コンカナバリンA誘発サイトカイン放出症候群
コンカナバリンA(Con A)は、広範な炎症性サイトカインの放出ならびにCD4及びCD8 T細胞の増殖をもたらす選択的Tリンパ球マイトジェンである。Con-Aの注射が、サイトカイン放出症候群を誘発することが文献に示されており、サイトカイン放出症候群の治療の有効性を試験する際に用いるモデルとして役立つ(Gantner,F.at al.Hepatology,1995,21,190-198)。マイトジェン応答は、T細胞受容体の発現に依存する。動物は、発熱、倦怠感、低血圧、低酸素、毛細血管漏出及び潜在的な多臓器毒性などの行動変化を示す。
【0127】
A 材料及び方法
【表4】
【0128】
B 実験デザイン
特に、本研究では、選択的JAK1阻害薬(例えば、化合物1、表1)が、BALB/cマウスにおいてCon A誘発サイトカイン放出症候群(CRS)を軽減または寛解させる能力を試験する。本ワンデイ研究には、計40匹のBALB/cマウスを用いた。試験物質を投与する前に、動物を秤量して本実験の間モニタした。0日目、Con A投与の60分前に、溶媒(0.5%メチルセルロース)または化合物1(60及び120mg/kg)を、表2Aに詳述した通り、グループ2~4の動物に強制経口投与(PO)により、単回投与した。グループ1は未投与の対照として機能するので、処置は行わなかった。溶媒または化合物1による前処置の45分後に、グループ2~4の動物には、CRSを誘発するために、静脈内注射(IV)により20mg/kgのCon Aを投与した。Con Aを投与した2時間後に、全動物をCO吸入により安楽死させた。心臓穿刺により、KEDTA採血管に全血を収集して、血漿を処理するまで氷上で保管した。血漿を収集し、サイトカインマルチプレックスを行うまで-80℃で保存した。
【0129】
【表5】
【0130】
C.実験手順
1日目
動物を秤量し、Con-Aの用量(20mg/kg)を算出した。
溶媒及び化合物1は、対応する用量で調製した。
【0131】
0日目
I 試験物質の前処置
0日目に、表2Aに示すように、動物に溶媒または化合物1を投与した。グループ1は未投与の対照として機能するので、処置は行わなかった。グループ2には、0.1mL/20gで、POにより溶媒(0.5%メチルセルロース)の単回投与を行った。グループ3には、0.1mL/20gで、POにより60mg/kgの化合物1の単回投与を行った。グループ4には、0.1mL/20gで、POにより120mg/kgの化合物1の単回投与を行った。
【0132】
II Con-Aの投与
試験物質投与の60分後、Con-Aを静脈内注射によりグループ2~4に投与した。グループ2~4の各動物には、0.2mLのCon-A 20mg/kgを投与した。
【0133】
III 生存中のモニタリング
Con-Aを投与した後は、発症した全身性炎症反応による苦痛の兆候について、動物を注意深くモニタした。
【0134】
IV 屠殺
Con-A投与の2時間後、全動物をCO吸入により安楽死させた。
【0135】
V サンプルの収集
屠殺に際し、心臓穿刺により各動物からKEDTA採血管に全血を収集した。血液を遠心分離し、血漿をクライオバイアルに収集した。血漿を凍結し、下流のサイトカインマルチプレックスアッセイ用に-80℃で保存した。
【0136】
VI サイトカインマルチプレックス解析
血漿サンプルを氷上で解凍し、製造元のプロトコル(ThermoFisher)に従いサイトカインマルチプレックスに使用する。
【0137】
D 結果
化合物1は、血液区画中のIL-6濃度を用量依存的に阻害した(図2A)。このサイトカインは、CRSの病態生理に関連する鍵である。T細胞由来のIFNγ及びGM-CSFサイトカインも有意に阻害され、化合物1がトシリズマブにより制限された作用機序(抗IL-6Rのみ)を超える治療可能性を有することが示唆された(図2B及び2C)。
【0138】
単球及び/またはマクロファージ由来サイトカインも減少した。統計的に有意な用量依存的IL-12の減少(図3A)、ならびにIL-1β(図3B)及びIL-18(図3C)による治療効果の傾向が見られ、JAK1特異的阻害がCRSの病理に関与する免疫細胞種を超える治療可能性を有することが示唆された。
【0139】
重要なことに、サイトカインIL-5(図4)は化合物1の処置による影響を受けず、JAK1に依存せずに、CRSの病理にも関与しない。このデータは、化合物1による有効性が、広範で非特異的な免疫抑制によって媒介されないことを示唆している。
【0140】
Sidakの多重比較検定を組み込んだ一元配置分散分析(対応なし)(ANOVA)を、GraphPad Prism (version 4.00、GraphPad Software、San Diego California、USA)を用いて行った。p<0.05の値を有意であると見なした。
【0141】
実施例D:化合物1の徐放性製剤の調製
化合物1を含む徐放性錠剤を、以下の表に示す量である賦形剤とともに調製した。プロトコルAは、SR1錠剤に用い、プロトコルBはSR2錠剤に用い、プロトコルCはSR3錠剤及び25mg SR錠剤に用い、プロトコルDはSR4錠剤に用いた。これらの手順は、米国特許出願第2015/0065484号で開示されており、これは化合物1の徐放性剤形に関するものである。
【0142】
プロトコルA
ステップ1 化合物1のアジピン酸塩、微結晶セルロース、ヒプロメロース(メトセルK100 LV及びメトセルK4M)ならびにラクトース一水和物を個別にふるいにかける。
ステップ2 ステップ1でふるいにかけた材料を好適なブレンダーに移して混合する。
ステップ3 ステップ2の混合物を好適な造粒機に移して混合する。
ステップ4 混合しながら精製水を加える。
ステップ5 ステップ4の顆粒を好適な乾燥機に移して、LODが3%未満になるまで乾燥させる。
ステップ6 ステップ5の顆粒をふるいにかける。
ステップ7 好適なブレンダー中でステップ6の顆粒と、ふるいにかけたステアリン酸マグネシウムを混合する。
ステップ8 好適な回転式錠剤機でステップ7の最終混合物を圧縮する。
【0143】
プロトコルB
ステップ1 化合物1のアジピン酸塩、微結晶セルロース、ヒプロメロース及びアルファ化デンプンを個別にふるいにかける。
ステップ2 ステップ1でふるいにかけた材料を好適なブレンダーに移して混合する。
ステップ3 ステップ2の混合物を好適な造粒機に移して混合する。
ステップ4 混合しながら精製水を加える。
ステップ5 ステップ4の顆粒を好適な乾燥機に移して、LODが3%未満になるまで乾燥させる。
ステップ6 ステップ5の顆粒をふるいにかける。
ステップ7 ポリオックス、ブチル化ヒドロキシトルエン及びコロイド状二酸化ケイ素を個別にふるいにかける。
ステップ8 ステップ6の顆粒及びステップ7の材料を好適なブレンダーに移して混合する。
ステップ9 ステップ8の材料に、ふるいにかけたステアリン酸マグネシウムを加えて、ブレンドを続ける。
ステップ10 好適な回転式錠剤機でステップ9の最終混合物を圧縮する。
【0144】
プロトコルC
ステップ1 ラクトース一水和物、化合物1のアジピン酸塩、微結晶性セルロース及びヒプロメロースを好適なふるいで個別にふるいにかける。
ステップ2 ステップ1でふるいにかけた材料を好適なブレンダーに移して混合する。
ステップ3 ステップ2の混合物を好適な造粒機に移して混合する。
ステップ4 混合しながら精製水を加える。
ステップ5 好適なふるいで、湿った顆粒をふるいにかける。
ステップ6 ステップ5の顆粒を好適な乾燥機に移して、LODが3%未満になるまで乾燥させる。
ステップ7 ステップ6の顆粒を製粉する。
ステップ8 好適なブレンダー中でステップ7の顆粒と、ふるいにかけたステアリン酸マグネシウムを混合する。
ステップ9 好適な回転式錠剤機でステップ8の最終混合物を圧縮する。
【0145】
プロトコルD
ステップ1 アルファ化デンプン、化合物1のアジピン酸塩、ヒプロメロース及び必要な微結晶セルロースの一部を好適なふるいで個別にふるいにかける。
ステップ2 ステップ1でふるいにかけた材料を好適なブレンダーに移して混合する。
ステップ3 ステップ2の混合物を好適な造粒機に移して混合する。
ステップ4 混合しながら精製水を加える。
ステップ5 好適なふるいで、湿った顆粒をふるいにかける。
ステップ6 ステップ5の顆粒を好適な乾燥機に移して、LODが3%未満になるまで乾燥させる。
ステップ7 ステップ6の顆粒を製粉する。
ステップ8 微結晶性セルロースの残存部分及び炭酸水素ナトリウムの半分をふるいにかける。
ステップ9 ステップ7の製粉した顆粒及びステップ8の材料を好適なブレンダーに移して混合する。
ステップ10 炭酸水素ナトリウムの残存部分をふるいにかけてステップ9の混合物と混合する。
ステップ11 ステアリン酸マグネシウムをふるいにかけてステップ10の混合物と混合する。
ステップ12 好適な回転式錠剤機でステップ11の最終混合物を圧縮する。
【0146】
SR1:100mgの徐放性錠剤の組成
【表6】
アジピン酸塩の遊離塩基への換算係数は0.7911である。
造粒後に追加した。
処理中に除去した。
【0147】
SR2:100mgの徐放性錠剤の組成
【表7】
アジピン酸塩の遊離塩基への換算係数は0.7911である。
造粒後に追加した。
処理中に除去した。
【0148】
SR3(100mg):100mgの徐放性錠剤の組成
【表8】
アジピン酸塩の遊離塩基への換算係数は0.7911である。
造粒後に追加した。
処理中に除去した。
【0149】
SR4:100mgの徐放性錠剤の組成
【表9】
アジピン酸塩の遊離塩基への換算係数は0.7911である。
造粒後に追加した。
処理中に除去した。
造粒前に一部を、造粒後にも一部を追加した。
【0150】
25mg SR:25mgの徐放性錠剤の組成
【表10】
アジピン酸塩の遊離塩基への換算係数は0.7911である。
造粒後に追加した。
処理中に除去した。
【0151】
本明細書で説明されるものに加えて、本発明の様々な修正は、前述の説明から当業者には明らかとなるであろう。そのような修正は、添付の特許請求の範囲内にも及ぶようにも意図されている。本出願において引用される全ての特許、特許出願及び刊行物を含む各参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
JAK1経路阻害薬を含む、CAR-T細胞関連脳症症候群を治療するための医薬であって、前記JAK1経路阻害薬が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルまたはその薬学的に許容可能な塩である、前記医薬。
【請求項2】
前記JAK1経路阻害薬が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルアジピン酸塩である、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記医薬がトシリズマブと組み合わせて投与される、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項4】
前記医薬がコルチコステロイドと組み合わせて投与される、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項5】
前記医薬がプレドニゾンと組み合わせて投与される、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項6】
前記医薬がトシリズマブ及びコルチコステロイドと組み合わせて投与される、請求項1または2に記載の医薬。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0151
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0151】
本明細書で説明されるものに加えて、本発明の様々な修正は、前述の説明から当業者には明らかとなるであろう。そのような修正は、添付の特許請求の範囲内にも及ぶようにも意図されている。本出願において引用される全ての特許、特許出願及び刊行物を含む各参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
また、本願は、下記の態様を包含する。
[態様1]
対象のサイトカイン関連疾患または障害を治療する方法であって、JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩を前記対象に投与することを含む、前記方法。
[態様2]
前記JAK1経路阻害薬またはその薬学的に許容可能な塩が、JAK2、JAK3、及びTyk2よりもJAK1に対して選択的である、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記サイトカイン関連疾患または障害が、サイトカイン放出症候群(CRS)、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、またはCAR-T細胞関連脳症症候群(CRES)である、態様1または2に記載の方法。
[態様4]
前記サイトカイン関連疾患または障害が、サイトカイン放出症候群(CRS)である、態様3に記載の方法。
[態様5]
前記サイトカイン関連疾患または障害が、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)である、態様3に記載の方法。
[態様6]
前記サイトカイン関連疾患または障害が、マクロファージ活性化症候群(MAS)である、態様3に記載の方法。
[態様7]
前記マクロファージ活性化症候群(MAS)が、全身型若年性特発性関節炎に関連する、態様6に記載の方法。
[態様8]
前記サイトカイン関連疾患または障害が、CAR-T細胞関連脳症症候群(CRES)である、態様3に記載の方法。
[態様9]
前記JAK1経路阻害薬が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルまたはその薬学的に許容可能な塩である、態様1~8のいずれか1つに記載の方法。
[態様10]
前記JAK1経路阻害薬が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルアジピン酸塩である、態様1~8のいずれか1つに記載の方法。
[態様11]
前記JAK1経路阻害薬が4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドまたはその薬学的に許容可能な塩である、態様1~8のいずれか1つに記載の方法。
[態様12]
前記JAK1経路阻害薬が4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドリン酸塩である、態様1~8のいずれか1つに記載の方法。
[態様13]
前記JAK1経路阻害薬が((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリルまたはその薬学的に許容可能な塩である、態様1~8のいずれか1つに記載の方法。
[態様14]
前記JAK1経路阻害薬が((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル一水和物である、態様1~8のいずれか1つに記載の方法。
[態様15]
トシリズマブを前記対象に投与することをさらに含む、態様1~14のいずれか1つに記載の方法。
[態様16]
コルチコステロイドを前記対象に投与することをさらに含む、態様1~14のいずれか1つに記載の方法。
[態様17]
プレドニゾンを前記対象に投与することをさらに含む、態様1~14のいずれか1つに記載の方法。
[態様18]
トシリズマブ及びコルチコステロイドを前記対象に投与することをさらに含む、態様1~14のいずれか1つに記載の方法。
【外国語明細書】