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特開2024-23220環状RNA分子のための方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023220
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】環状RNA分子のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023188338
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2020524905の分割
【原出願日】2018-11-07
(31)【優先権主張番号】62/582,796
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500093834
【氏名又は名称】ザ・ユニヴァーシティ・オヴ・ノース・キャロライナ・アト・チャペル・ヒル
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】アソカン,アラヴィンド
(72)【発明者】
【氏名】ボーチャード,エリン
(72)【発明者】
【氏名】メガンク,リタ
(72)【発明者】
【氏名】マーズラフ,ウィリアム・エフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】環状RNA発現用のAAV組成物及び共有結合的に閉環した環状RNAを発現させる方法を提供する。
【解決手段】共有結合的に閉環した環状RNA(circRNA)をコードする核酸分子であって、a)非コーディングRNA又は翻訳可能なmRNAに転写され得る、目的遺伝子と、b)前記目的遺伝子に付随するイントロンエレメントであって、共有結合的に閉環した環状RNAをもたらすために細胞スプライシング機構によりバックスプライスされる、イントロンエレメントと、c)前記目的遺伝子から転写された翻訳可能なmRNAの翻訳を推進する配列内リボソーム進入部位(IRES)と、d)5’非翻訳領域(UTR)の内部且つ前記目的遺伝子に付随するイントロンエレメントの外部に位置するプロモーター領域と、e)3’UTRの内部且つ前記目的遺伝子に付随するイントロンエレメントの外部に位置する翻訳制御領域とを含む核酸分子を提供する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共有結合的に閉環した環状RNA(circRNA)をコードする核酸分子であって、
a)非コーディングRNA又は翻訳可能なmRNAに転写され得る、目的遺伝子と、
b)前記目的遺伝子に付随するイントロンエレメントであって、共有結合的に閉環し
た環状RNAをもたらすために細胞スプライシング機構によりバックスプライスされる、
イントロンエレメントと、
c)前記目的遺伝子から転写された翻訳可能なmRNAの翻訳を推進する配列内リボ
ソーム進入部位(IRES)と、
d)5’非翻訳領域(UTR)の内部且つ前記目的遺伝子に付随するイントロンエレ
メントの外部に位置するプロモーター領域と、
e)3’UTRの内部且つ前記目的遺伝子に付随するイントロンエレメントの外部に
位置する翻訳制御領域と
を含む核酸分子。
【請求項2】
(b)のイントロンエレメントが、配列番号_のうちのいずれかのヌクレオチド配列を
、その任意の組み合わせ並びに任意の重複数及び/又は比で含む、請求項1に記載の核酸
分子。
【請求項3】
(c)のIRESが、表5に記載されているウイルスIRES、表6に記載されている
細胞IRESを、その任意の組み合わせ並びに任意の重複数及び/又は比で含む、請求項
1に記載の核酸分子。
【請求項4】
(e)の翻訳制御領域が、ポリアデニル化(polyA)配列、及び/又はcircR
NAを安定化させる構造エレメントである、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項5】
AAV末端逆位反復配列(ITR)に挟まれた、請求項1~4のいずれか1項に記載の
核酸分子を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ゲノム。
【請求項6】
請求項5に記載のAAVゲノムを含むAAVカプシド又は粒子。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の核酸分子を含むAAVカプシド又は粒子。
【請求項8】
薬学的に許容される担体中に、請求項1~4のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項
5に記載のAAVゲノム、及び/又は請求項6若しくは7に記載のAAVカプシド若しく
は粒子を含む組成物。
【請求項9】
細胞内で、共有結合的に閉環した環状RNA分子を発現させる方法であって、前記共有
結合的に閉環した環状RNA分子が転写される条件下で、前記細胞中に請求項1~4のい
ずれか1項に記載の核酸分子を導入することを含む方法。
【請求項10】
細胞内で、共有結合的に閉環した環状RNA分子を発現させる方法であって、前記共有
結合的に閉環した環状RNA分子が転写される条件下で、前記細胞中に請求項5に記載の
AAVゲノムを導入することを含む方法。
【請求項11】
細胞内で、共有結合的に閉環した環状RNA分子を発現させる方法であって、前記共有
結合的に閉環した環状RNA分子が転写される条件下で、前記細胞中に、請求項6又は7
に記載のAAVカプシド又は粒子を導入することを含む方法。
【請求項12】
細胞内で、共有結合的に閉環した環状RNA分子を発現させる方法であって、前記共有
結合的に閉環した環状RNA分子が転写される条件下で、前記細胞中に、請求項8に記載
の組成物を導入することを含む方法。
【請求項13】
組織特異的及び/又は細胞特異的な方式で、共有結合的に閉環した環状RNA分子を発
現させる方法であって、前記共有結合的に閉環した環状RNA分子が発現する条件下で、
組織及び/又は細胞を、請求項1~4のいずれか1項に記載の核酸分子と接触させること
を含む方法。
【請求項14】
組織特異的及び/又は細胞特異的な方式で、共有結合的に閉環した環状RNA分子を発
現させる方法であって、前記共有結合的に閉環した環状RNA分子が発現する条件下で、
組織及び/又は細胞を、請求項5に記載のAAVゲノムと接触させることを含む方法。
【請求項15】
組織特異的及び/又は細胞特異的な方式で、共有結合的に閉環した環状RNA分子を発
現させる方法であって、前記共有結合的に閉環した環状RNA分子が発現する条件下で、
組織及び/又は細胞を、請求項6又は7に記載のAAVカプシド又は粒子と接触させるこ
とを含む方法。
【請求項16】
組織特異的及び/又は細胞特異的な方式で、共有結合的に閉環した環状RNA分子を発
現させる方法であって、前記共有結合的に閉環した環状RNA分子が発現する条件下で、
組織及び/又は細胞を、請求項8に記載の組成物と接触させることを含む方法。
【請求項17】
前記共有結合的に閉環した環状RNA分子が、タンパク質をコードする治療用mRNA
分子、RNA発現停止分子、ゲノムエレメントを標的とすることができるガイドRNA分
子、RNA転写物を標的とすることができるガイドRNA分子、tRNA分子、長鎖非コ
ーディングRNA分子、アンチセンスRNA分子、又は任意のこれらの組み合わせである
、請求項9~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞及び/又は組織が哺乳動物に由来するものである、請求項9~17のいずれか
1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の記載]
本出願は、35 U.S.C.§119(e)に基づき、2017年11月7日出願の
米国仮特許出願第62/582,796号の利益を主張し、その全内容が参照されて本明
細書の一部をなすものとする。
【0002】
[政府支援の記載]
本発明は、国立衛生研究所により授与された認可番号HL089221、HL1127
61、NS099371の下、政府の支援を得てなされた。政府は本発明において所定の
権利を有する。
【0003】
[配列リストの電子ファイリングに関する記載]
5470-829WO_ST25.txtと題する、サイズが18,110バイトであ
る、2018年11月7日に生成され、及びEFS-Web経由でファイルされた、37
C.F.R.§1.821に基づき提出されたASCIIテキストフォーマットでの配
列リストが、ペーパーコピーに代えて提出される。この配列リストは、それを開示する目
的で、参照されて本明細書の一部をなすものとする。
【0004】
本発明は、環状RNA発現用の組成物に関する。
【背景技術】
【0005】
環状RNA(circRNA)は、RNAが共有結合的に閉環して環を形成する非コー
ディングRNAの1クラスである。環状RNAは、古細菌からヒトに至るまで、種々の生
物において見出されている。後生動物では、環状RNAは、ダイレクトバックスプライシ
ングとして知られているプロセスを通じて主に形成され、そのプロセスではドナー部位が
、(正常なスプライシング方向とは逆に)上流アクセプター部位に対してスプライシング
される。多くの場合、circRNAは、環状化されたエクソンから構成される。このよ
うに、circRNA産物と直鎖状mRNA産物とは互いに競合するものであると理解す
ることができる。環状産物と直鎖状産物との比は遺伝子によって変化するが、いくつかの
遺伝子の場合、circRNAが主要なRNA産物である。所与のエクソンの環状化に影
響を及ぼすシグナルは、周辺のイントロン配列内にコードされていると思われる。ヒトで
は、逆方向反復(例えばAluエレメント等)の存在が環状化と関連することが明らかに
されている;更に、RNA結合タンパク質、例えばQuaking(QKI)等は、環状
化の制御に関与していることが公知である。
【0006】
最近の研究では、circRNAは、複数の細胞型及び組織型内で高度に発現している
ことが明らかにされている。しかし、大部分のcircRNAの機能は不明である。いく
つかの例外、例えばmiRNA-7及びMBLタンパク質スポンジとしてそれぞれ十分に
特徴付けられているciRS-7/Cdr1as及びcircMbl等も存在する。いく
つかの最近の研究では、内因性circRNAはコーディング能力を有し得ることが示唆
されたが、翻訳効率は最良でも極めて低く、その他の研究はcircRNAとリボソーム
との会合を明確なレベルで認めることができなかった。いずれにせよ、circRNAは
、circRNAに含まれるオープンリーディングフレームの翻訳を推進するIRES(
配列内リボソーム進入部位)配列を含有するように工学的に操作可能である。circR
NAの興味深い特性として、遊離末端を欠くことから、直鎖状のアイソフォームと比較し
てその安定性が強化されていることが挙げられる。いくつかの研究では、circRNA
は、直鎖状のカウンターパートよりも少なくとも2.5倍長い半減期を有することを明ら
かにした。本発明は、安定で持続的なRNA分子からのタンパク質の発現を可能にするc
ircRNAを提供する。このような特性から、circRNAは、例えば、長期遺伝子
発現が重要な関心事項である遺伝子送達用途において有用となる。
【発明の概要】
【0007】
本概要は、本明細書で開示される主題のいくつかの実施形態をリスト化し、また多くの
場合、これらの実施形態の変形形態及び置換形態をリスト化する。本概要は、非常に多く
の異なる実施形態の例示にすぎない。所与の実施形態において1つ又は複数の代表的な特
性が記載されるが、それも同様に例示的である。そのような実施形態は、記載された特性
(複数でもよい)を含め、又は含めずに一般的に存在し得るが、同様に、そのような特性
は、本概要にリスト化されている又はされていないに関わらず、本明細書に開示される主
題のその他の実施形態に適用され得る。過剰の反復を回避するため、本概要は、そのよう
な特性のすべての可能な組み合わせをリスト化する又は示唆するわけではない。
【0008】
1つの態様では、本発明は、共有結合的に閉環した環状RNA(circRNA)をコ
ードする核酸分子であって、a)非コーディングRNA又は翻訳可能なmRNAに転写さ
れ得る目的遺伝子と、b)前記目的遺伝子に付随するイントロンエレメントであって、共
有結合的に閉環した環状RNAをもたらすために細胞スプライシング機構によりバックス
プライスされるイントロンエレメントと、c)前記目的遺伝子から転写された翻訳可能な
mRNAの翻訳を推進する配列内リボソーム進入部位(IRES)と、d)5’非翻訳領
域(UTR)の内部且つ前記目的遺伝子に付随するイントロンエレメントの外部に位置す
るプロモーター領域と、e)3’UTRの内部且つ前記目的遺伝子に付随するイントロン
エレメントの外部に位置する翻訳制御領域とを含む核酸分子を提供する。
【0009】
本発明は、細胞内で、共有結合的に閉環した環状RNA分子を発現させる方法であって
、前記共有結合的に閉環した環状RNA分子が転写される条件下で、前記細胞中に本発明
の核酸分子、本発明のAAVゲノム、本発明のAAVカプシド又は粒子、及び/又は本発
明の組成物を導入することを含む方法を更に提供する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、組織特異的及び/又は細胞特異的な様式で、共有結合的
に閉環した環状RNA分子を発現させる方法であって、前記共有結合的に閉環した環状R
NA分子が発現する条件下で、組織及び/又は細胞を、本発明の核酸分子、本発明のAA
Vゲノム、本発明のAAVカプシド若しくは粒子、及び/又は本発明の組成物と接触させ
ることを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】スプライシングパターン及びレポーターアウトプットを示す概略図である。IRES-GFPコンストラクトに由来するRNAがCMVプロモーターから発現しており、かつ、その直鎖状アイソフォームではキャップ化及びポリアデニル化されている。コントロールIRES-GFP転写物は、EMCV-IRESを含有し、GFPがそれに後続する。
図1B】スプライシングパターン及びレポーターアウトプットを示す概略図である。ZKSCAN1スプリットGFP又はHIPK3スプリットGFPコンストラクトに由来するRNAがCMVプロモーターから発現しており、かつ、その直鎖状アイソフォームにおいてキャップ化及びポリアデニル化されている。前駆体スプリットGFP転写物は、ヒトZKSCAN1又はHIPK3遺伝子に由来するイントロン配列により挟まれた(flanked)スプリットGFPカセットを含有する。ドナー及びアクセプタースプライス部位はグレーの三角形により表されており、また点線はバックスプライスパターンを示す。GFP断片は、RNAが環状化した際に完全長GFPが発現するように、EMCV-IRESにより分離されている。
図2A-2B】神経膠芽腫の組織培養モデルにおいて、circRNAが発現していることを示す図である。(2A)細胞1個当たりベクターゲノム100,000個を用いて組換えAAV2ベクターを形質導入した後4日経過したときのIRES-GFP(左側)、ZKSCAN1スプリットGFP(中央)、又はHIPK3スプリットGFP(右側)を発現するU87細胞から発せられるGFP蛍光の代表的な画像。(2B)上記のように形質導入されたU87細胞のライセートにおけるGFP又はローディングコントロールのアクチンを検出するウェスタンブロットであり、(2C)で定量化されている。
図2C】神経膠芽腫の組織培養モデルにおいて、circRNAが発現していることを示す図である。(2B)上記のように形質導入されたU87細胞のライセートにおけるGFP又はローディングコントロールのアクチンを検出するウェスタンブロットであり、(2C)で定量化されている。
図2D】神経膠芽腫の組織培養モデルにおいて、circRNAが発現していることを示す図である。(2D)IRES-GFP、ZKSCAN1スプリットGFP、又はHIPK3スプリットGFPコンストラクトから発現した様々なRNA種を特徴付けるためにGFPに対してプローブされた全細胞RNAのノーザンブロッティング。18S rRNAの位置がサイズマーカーとして示されている。予想されるRNA種の模式図が表示されている。
図2E】神経膠芽腫の組織培養モデルにおいて、circRNAが発現していることを示す図である。circRNAバンドは、IRES-GFPのRNAのレベルに対して相対的な数値として定量化されて示されている。
図3A】マウス心臓組織において、circRNAが発現していることを示す図である。表示のコンストラクトを組換えAAV9ベクター中にパッケージングし、動物1匹当たり5.5e11個のベクターゲノムの用量でC57/BL6マウスの静脈内注射し、注射4週間後に採取した。(3A)心臓組織を切片化し、その後に免疫組織化学染色してGFP発現を視覚化した。
図3B-3C】マウス心臓組織において、circRNAが発現していることを示す図である。表示のコンストラクトを組換えAAV9ベクター中にパッケージングし、動物1匹当たり5.5e11個のベクターゲノムの用量でC57/BL6マウスの静脈内注射し、注射4週間後に採取した。(3B)染色した心臓切片中のGFP発現レベルを平均ピクセル強度により定量化した。(3C)CMVプロモーターに特異的なプライマーを用いたqPCRによる、各コホート内のウイルスゲノムコピー数の定量化。マウスラミンB2遺伝子座に対して正規化されている。
図3D-3F】マウス心臓組織において、circRNAが発現していることを示す図である。表示のコンストラクトを組換えAAV9ベクター中にパッケージングし、動物1匹当たり5.5e11個のベクターゲノムの用量でC57/BL6マウスの静脈内注射し、注射4週間後に採取した。(3D)RNAを心臓組織から抽出し、バックスプライス接合部をまたいで増幅するプライマーを用いてRT-PCRを実施した(概略図を参照)。これらのプライマーはIRES-GFP内で生成された完全長GFPも増幅する。(3E)定量的RT-PCRを、(3D)で規定するサンプル及びプライマーと同一のサンプル及びプライマーを用いて実施した。(3F)RNAを、RNAse Rで処理し、次にRT-PCRを(3D)と同様に実施した。
図4A】中枢神経系の組織において、circRNAが発現していることを示す図である。(4A)表示のコンストラクトを組換えAAV9ベクター中にパッケージングし、動物1匹当たり3.989e10個のベクターゲノムの用量で、C57/BL6マウスの左脳室内に注射し、注射6週間後に採取した。GFP発現は、脳切片を免疫組織化学的に染色することにより可視化した。皮質の代表的な画像を示す。
図4B-4C】中枢神経系の組織において、circRNAが発現していることを示す図である。(4B)(4A)で示したサンプル中のGFP陽性細胞の定量。(4C)表示のコンストラクトを組換えAAV9ベクター中にパッケージングし、動物1匹当たり1e10個のベクターゲノムの用量でC57/BL6マウスに硝子体内注射し、注射4週間後に採取した。切片化された網膜の代表的な画像を示す。グリーン:GFPの免疫蛍光染色。ブルー:細胞核のDAPI染色。
図4D-4E】中枢神経系の組織において、circRNAが発現していることを示す図である。(4D)補正後の平均蛍光によるGFP発現の定量化。(4E)RNAを注射した網膜から抽出し、バックスプライス接合部をまたいで増幅するプライマーセットを用いて定量的RT-PCRを実施した。
図5】組織培養モデルにおけるcircRNA発現。組換えAAV2ベクターを、細胞1個当たり100,000個のベクターゲノムで形質導入した後に、IRES-GFP(上部)、ZKSCAN1スプリットGFP(中央)、又はHIPK3スプリットGFP(下部)を発現するHEK293(左端)、Huh7(中央左側)、U87(中央右側)、又はNeuro2A(左端)細胞からのGFP蛍光の代表的な画像。
図6】マウス肝臓におけるcircRNA発現。表示のコンストラクトを組換えAAV9ベクター中にパッケージングし、動物1匹当たり5.5e11個のベクターゲノムの用量でC57/BL6マウスに静脈内注射し、注射4週間後に採取した。肝組織を切片化し、その後免疫組織化学染色してGFP発現を視覚化した。
図7A】スプリット及び非スプリットcircRNA発現ベクターの比較。(7A)前駆体スプリットGFP転写物は、ヒトZKSCAN1又はHIPK3遺伝子に由来するイントロン配列により挟まれたスプリットGFPカセットを含有する。ドナー及びアクセプタースプライス部位は、グレーの三角形により表し、点線はバックスプライスパターンを示す。
図7B-7C】スプリット及び非スプリットcircRNA発現ベクターの比較。(7B)組換えAAV2ベクターを、細胞1個当たり100,000個のベクターゲノムで形質導入した後4日経過したときのZKSCAN1 GFP(上部)、又はZKSCAN1スプリットGFP(下部)を発現するU87細胞からのGFP蛍光の代表的な画像。(7C)上記のように形質導入されたU87細胞のライセートにおけるGFP又はローディングコントロールのアクチンを検出するウェスタンブロットであり、(7D)で定量化されている。
図7D-7E】スプリット及び非スプリットcircRNA発現ベクターの比較。(7C)上記で示すように形質導入されたU87細胞のライセートにおけるGFP又はローディングコントロールのアクチンを検出するウェスタンブロットであり、(7D)で定量化されている。(7E)RNAを抽出し、定量的RT-PCRを、バックスプライス接合部をまたいで増幅するプライマーを用いて実施した。
図7F】スプリット及び非スプリットcircRNA発現ベクターの比較。(7F)表示のコンストラクトを組換えAAV9ベクター中にパッケージングし、動物1匹当たり5.5e11個のベクターゲノムの用量でC57/BL6マウスに静脈内注射し、注射4週間後に採取した。心臓組織を切片化し、その後免疫組織化学染色してGFP発現を視覚化した。
図8】環状RNAの形成及び翻訳をサポートする、異なるイントロンエレメントの能力を一覧表示するデータを示す図である。これらのデータは、環状RNAコーディングコンストラクトのモジュラーデザインを可能にし、補強する。ZKSCAN1、HIPK3、ラッカーゼ2、及びEPHB4遺伝子に由来するイントロンを用いて、CircRNA生成カセットを創出した。これらのコンストラクトをrAAV2にパッケージングし、100,000vg/細胞のMOIでU87細胞に形質導入するのに使用した。画像を4日目に取得した。
図9A】3’(右側)イントロン配列は挿入を許容することを示す図である。circRNA生成カセットの右側イントロンに配列を挿入しても、産生されるcircRNAの量を低下させない。(9A)代表的な蛍光画像。
図9B-9C】3’(右側)イントロン配列は挿入を許容することを示す図である。circRNA生成カセットの右側イントロンに配列を挿入しても、産生されるcircRNAの量を低下させない。(9B)環状RNAから翻訳されたGFP及びコントロールのアクチンに対するウェスタンブロット、データは正規化されており、また(9C)で定量化されている。
図9D】3’(右側)イントロン配列は挿入を許容することを示す図である。circRNA生成カセットの右側イントロンに配列を挿入しても、産生されるcircRNAの量を低下させない。(9D)GFPに対してプローブされたノーザンブロット。circRNAバンドについて示す。
図9E-9F】3’(右側)イントロン配列は挿入を許容することを示す図である。circRNA生成カセットの右側イントロンに配列を挿入しても、産生されるcircRNAの量を低下させない。(9E)ノーザン/環状RNA発現の定量化。(9F)右側(3’)イントロン内に挿入を有するAAVベクターゲノムによりコードされるRNA前駆体の概略図。長さ100~1000塩基の挿入は、環状RNAレベル又は環状RNAからGFPへの翻訳に影響を及ぼさない。1500塩基の挿入は環状RNAの翻訳を改善するが、但し環状RNAの発現を2倍までは改善しない。
図10A】5’(左側)イントロン配列は挿入を許容しないことを示す図である。circRNA生成カセットの左側イントロンに配列を挿入すると、生成されるcircRNAの量は低下する。(10A)代表的な蛍光画像。
図10B-10C】5’(左側)イントロン配列は挿入を許容しないことを示す図である。circRNA生成カセットの左側イントロンに配列を挿入すると、生成されるcircRNAの量は低下する。(10B)GFP及びアクチンに対するウェスタンブロット。(10C)で定量化されている。
図10D】5’(左側)イントロン配列は挿入を許容しないことを示す図である。circRNA生成カセットの左側イントロンに配列を挿入すると、生成されるcircRNAの量は低下する。(10D)GFPに対してプローブされたノーザンブロット。circRNAバンドについて示す。
図10E-10F】5’(左側)イントロン配列は挿入を許容しないことを示す図である。circRNA生成カセットの左側イントロンに配列を挿入すると、生成されるcircRNAの量は低下する。(10E)ノーザンブロットの定量化。(10F)左側(5’)イントロン内に挿入を有するAAVベクターゲノムによりコードされるRNA前駆体の概略図。長さ100~1500塩基の挿入は、環状RNAレベル又は環状RNAからGFPへの翻訳を顕著に低下させる。
図11A】(Alu反復エレメント及びスプライスアクセプター/ドナー部位は保存した状態で)左側イントロンにおいてイントロン配列を欠損させると、circRNA生成量の増加を引き起こすことを示す図である。右側イントロン内のこれらの配列が完全に欠損すると、circRNA形成不能となるが、より小さな欠損は許容される。(11A)代表的な蛍光画像。
図11B-11C】(Alu反復エレメント及びスプライスアクセプター/ドナー部位は保存した状態で)左側イントロンにおいてイントロン配列を欠損させると、circRNA生成量の増加を引き起こすことを示す図である。右側イントロン内のこれらの配列が完全に欠損すると、circRNA形成不能となるが、より小さな欠損は許容される。(11B)GFP及びアクチンに対するウェスタンブロットであり、(11C)で定量化されている。
図11D】(Alu反復エレメント及びスプライスアクセプター/ドナー部位は保存した状態で)左側イントロンにおいてイントロン配列を欠損させると、circRNA生成量の増加を引き起こすことを示す図である。右側イントロン内のこれらの配列が完全に欠損すると、circRNA形成不能となるが、より小さな欠損は許容される。(11D)GFPに対してプローブされたノーザンブロット。circRNAバンドについて示す。
図11E-11F】(Alu反復エレメント及びスプライスアクセプター/ドナー部位は保存した状態で)左側イントロンにおいてイントロン配列を欠損させると、circRNA生成量の増加を引き起こすことを示す図である。右側イントロン内のこれらの配列が完全に欠損すると、circRNA形成不能となるが、より小さな欠損は許容される。(11E)ノーザンブロットの定量化。(11F)概略図。
図12A】左側及び右側イントロンにおいて欠損を組み合わせると、コンストラクトのcircRNA生成量が>5倍増加することを示す図である。(12A)代表的な蛍光画像。
図12B-12C】左側及び右側イントロンにおいて欠損を組み合わせると、コンストラクトのcircRNA生成量が>5倍増加することを示す図である。(12B)GFP及びアクチンに対するウェスタンブロットであり、(12C)で定量化されている。
図12D】左側及び右側イントロンにおいて欠損を組み合わせると、コンストラクトのcircRNA産生量が>5倍増加することを示す図である。(12D)GFPに対してプローブされたノーザンブロット。circRNAバンドについて示す。
図12E-12F】左側及び右側イントロンにおいて欠損を組み合わせると、コンストラクトのcircRNA産生量が>5倍増加することを示す図である。(12E)ノーザンブロットの定量化。(12F)概略図。
図13A】RΔフル及びRΔミニマルの間の差異は配列固有ではないことを示す図である。全長が同一であるが、異なる配列が残存する欠損(RΔ150)も許容される。(13A)代表的な蛍光画像。
図13B-13D】RΔフル及びRΔミニマルの間の差異は配列固有ではないことを示す図である。全長が同一であるが、異なる配列が残存する欠損(RΔ150)も許容される。(13B)GFP及びアクチンに対するウェスタンブロットであり、(13C)で定量化されている。(13D)概略図。
図14A】(14A)HIPK3について左側及び右側イントロン配列の配列を示す図である(左側:配列番号15;右側:配列番号16)。太字の領域は、識別された相補性を含む反復配列を示し、また下線付きの領域は、合成イントロンエレメントをもたらす許容可能な欠損を示す。HIPK3:(ホメオドメイン相互作用プロテインキナーゼ3)はタンパク質コーディング遺伝子である。その関連する経路として、とりわけ細胞性老化(KEGG)が挙げられる。この遺伝子と関連する遺伝子オントロジー(GO)アノテーションには、含リン基を移転させるトランスフェラーゼ活性及びタンパク質チロシンキナーゼ活性が含まれる。
図14B】(14B)ZKSCAN1について左側及び右側イントロン配列の配列を示す図である(左側:配列番号13;右側:配列番号14)。太字の領域は、識別された相補性を含む反復配列を示し、また下線付きの領域は、合成イントロンエレメントをもたらす許容可能な欠損を示す。ZKSCAN1:この遺伝子は、クルッペルC2H2型ジンクフィンガーファミリータンパク質のメンバーをコードする。これがコードするタンパク質は、脳内でGABA A型受容体の発現を制御する転写因子として機能し得る。この遺伝子からの転写物は、安定且つ豊富な環状RNAを形成することが明らかにされている。この遺伝子の発現増加が胃がんで認められており、またコードされたタンパク質は、ヒト胃がん細胞の移動及び浸潤を刺激し得る。
図14C】(14C)EPHB4について左側及び右側イントロン配列の配列を示す図である(左側:配列番号29;右側:配列番号30)。太字の領域は、識別された相補性を含む反復配列を示し、また下線付きの領域は、合成イントロンエレメントをもたらす許容可能な欠損を示す。EPHB4:(EPH受容体B4)は、タンパク質コーディング遺伝子である。EPHB4と関連する疾患として、胎児水腫、非免疫、及び/又は心房中隔欠損症、及び胎児水腫が挙げられる。その関連する経路として、とりわけERKシグナリング及びAktシグナリングが挙げられる。この遺伝子と関連する遺伝子オントロジー(GO)アノテーションには、含リン基を移転させるトランスフェラーゼ活性、及びタンパク質チロシンキナーゼ活性が含まれる。
図14D】(14D)ラッカーゼ2について左側及び右側イントロン配列の配列を示す図である(左側:配列番号31;右側:配列番号32)。太字の領域は、識別された相補性を含む反復配列を示し、また下線付きの領域は、合成イントロンエレメントをもたらす許容可能な欠損を示す。ラッカーゼ2:タンパク質コーディング遺伝子。その機能として、とりわけ銅イオン結合、フェロキシダーゼ活性、ショウジョウバエ(drosophila)におけるクチクラ発現及びイオン輸送が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本発明は、本発明の代表的な実施形態を示す添付図面を参照しながら記載され
る。但し、本発明は異なる形態で具体化される場合もあり、本明細書に記載する実施形態
に限定されるものと解釈すべきでない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が網羅的且
つ完全であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝達するように提供される。
【0013】
別途定義されなければ、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発
明が属する当業者により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書におい
て本発明の説明で使用される専門用語は、特定の実施形態を記載する目的に限定され、本
発明を制限するようには意図されない。本明細書に記載されるすべての公開資料、特許出
願、特許、及びその他の参考資料は、参考としてそのまま本明細書の一部をなすものとす
る。
【0014】
[定義]
下記の用語は、本明細書における説明及び添付の特許請求の範囲において使用可能であ
る:単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明示しない限り、複数形も
含まれるように意図され得る。
【0015】
更に、用語「約」は、本明細書で使用する場合、測定可能な数値、例えばポリヌクレオ
チド又はポリペプチド配列の長さ、用量、時間、温度等の量等を表すとき、所定量の±2
0%、±10%、±5%、±1%、±0.5%の変動、又は±0.1%の変動さえも含む
ことを意味し得る。
【0016】
また本明細書で使用する場合、「及び/又は」とは、関連するリスト化されている事項
のうちの1つ又は複数からなるあらゆるすべての可能な組み合わせ、並びに代替的に(「
又は」)解釈されるときには組み合わせを欠くことを意味し、それらを包含する。
【0017】
文脈が別途示唆しない限り、本明細書に記載する本発明の様々な特性は任意の組み合わ
せで使用可能であることが特に意図されている。
【0018】
更に、本発明は、本発明のいくつかの実施形態では、本明細書に記載する任意の特性又
は特性の組み合わせが除外又は省略可能であることについても検討する。
【0019】
更に例証するために、例えば、特定のアミノ酸がA、G、I、L、及び/又はVから選
択され得ることを本明細書が示唆する場合、この表現は、アミノ酸はこれらのアミノ酸(
複数でもよい)の任意のサブセット、例えば、A、G、I、又はL;A、G、I、又はV
;A又はG;Lのみ等から、あたかもそのような部分的組み合わせのそれぞれが本明細書
に明示的に記載されるかのように選択され得ることも示唆する。更に、そのような表現は
、特定されたアミノ酸のうちの1つ又は複数が否定され得ることも示唆する。例えば、特
定の実施形態では、アミノ酸は、A、G、又はIではない;Aではない;G又はVではな
い等、あたかもそのような可能な否定のそれぞれが本明細書に明示的に記載されるかのよ
うに否定される。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「~を低下させる(reduce)」、「~を低下させ
る(reduces)」、「低下(reduction)」、及び類似した用語は、少な
くとも約25%、35%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、
又はそれを超えての減少を意味し得る。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「~を増強する(enhance)」、「~を増強する
(enhances)」、「増強(enhancement)」、及び類似した用語は、
少なくとも約5%、10%、20%、25%、50%、75%、100%、150%、2
00%、300%、400%、500%、又はそれを超えての増加を示唆し得る。
【0022】
用語「パルボウイルス」は、本明細書で使用する場合、自立増殖パルボウイルス及びデ
ィペンドウイルスを含むパルボウイルス科(parvoviridae)を包含し得る。
自立性のパルボウイルスは、パルボウイルス(Parvovirus)属、エリスロウイ
ルス(Erythrovirus)属、デンソウイルス(Densovirus)属、イ
テラウイルス(Iteravirus)属、及びコントラウイルス(Contravir
us)属のメンバーを含み得る。代表的な自立性のパルボウイルスとして、これらに限定
されないが、マウスのマイニュートウイルス、ウシパルボウイルス、イヌパルボウイルス
、ニワトリパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス、ガチョ
ウパルボウイルス、HIパルボウイルス、ノバリケンパルボウイルス、B19ウイルス、
及び現在知られている、又は後に発見された任意のその他の自立性のパルボウイルスが挙
げられる。その他の自立性のパルボウイルスは当業者にとって公知である。例えば、BE
RNARD N.FIELDS et al,VIROLOGY,volume 2,c
hapter69(4th ed.,Lippincott-Raven Publis
hers)を参照。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「アデノ随伴ウイルス」(AAV)として、これらに限
定されないが、AAV1型、AAV2型、AAV3型(3A型及び3B型を含む)、AA
V4型、AAV5型、AAV6型、AAV7型、AAV8型、AAV9型、AAV10型
、AAV11型、AAV12型、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒ
ツジAAV、及び現在知られている又は後に発見された任意のその他のAAVが挙げられ
る。例えば、BERNARD N.FIELDS et al,VIROLOGY,vo
lume 2,chapter69(4th ed.,Lippincott-Rave
n Publishers)を参照。いくつかの比較的新しいAAV血清型及びクレード
が識別されている(例えば、Gao et al.(2004)J Virology
78:6381-6388;Moris et al.(2004)Virology
33-:375-383;及び表1を参照)。
【0024】
AAV及び自立性のパルボウイルスの様々な血清型のゲノム配列、並びに天然の末端反
復配列(TR)、Repタンパク質、及びカプシドサブユニットの配列は、当技術分野に
おいて公知である。そのような配列は、文献又は公開データベース、例えばGenBan
k(登録商標)データベース等に見出され得る。例えば、GenBank受託番号NC_
044927、NC_002077、NC_001401、NC_001729、NC_
001863、NC_001829、NC_001862、NC_000883、NC_
001701、NC_001510、NC_006152、NC_006261、AF0
63497、U89790、AF043303、AF028705、AF028704、
J02275、JO1901、J02275、X01457、AF288061、AH0
09962、AY028226、AY028223、NC_001358、NC_001
540、AF513851、AF513852、AY530579を参照;その開示は、
パルボウイルス及びAAVの核酸及びアミノ酸配列について教示するために、本明細書に
おいて参考として組み込まれている。例えば、Srivistava et al.(1
983)J Virology 45:555;Chiorini et al.(19
98)J.Virology 71:6823;Chiorini et al(199
9)J Virology 73:1309;Bantel-Schaal et al
.(1999)J.Virology 73:939;Xiao et al.(199
9)J.Virology 73:3994;Muramatsu et al.(19
96)Virology 221:208;Shade et al.(1986)J
Virol.58:921;Gao et al.(2002)Proc.Nat.Ac
ad.Sci.USA 99:1 1854;Moris et al.(2004)V
irology 33:375-383;国際公開第00/28061号、同第99/6
1601号、同第98/11244号;及び米国特許第6,156,303号も参照;そ
の開示は、パルボウイルス及びAAVの核酸及びアミノ酸配列について教示するために、
本明細書において参考として組み込まれている。表1も参照。
【0025】
自立性のパルボウイルス及びAAVのカプシド構造は、BERNARD N.FIEL
DS et al.,VIROLOGY,volume 2,chapters69 &
70(4th ed.,Lippincott-Raven Publishers)
により詳細に記載されている。AAV2の結晶構造の記載についても参照されたい(Xi
e et al.(2002)Proc.Nat.Acad.Sci.99:10405
-10),AAV4(Padron et al.(2005)J Virol.79:
5047-58),AAV5(Walters et al.(2004)J Viro
l.78:3361-71)、及びCPV(Xie et al.(1996)J Mo
l.Biol.6:497-520、及びTsao et al.(1991)Scie
nce 251:1456-64)。
【0026】
用語「トロピズム」とは、本明細書で使用する場合、ウイルスが特定の細胞又は組織中
に選好的に進入し、任意選択的に、細胞内でウイルスゲノムが有する配列(複数でもよい
)の発現(例えば、転写、及び任意選択的に翻訳)、例えば組換えウイルスの場合、目的
とする異種核酸(複数でもよい)の発現が後続することを意味し得る。当業者は、ウイル
スゲノムに由来する異種核酸配列の転写は、例えば誘導性プロモーター、さもなければ被
制御性の核酸配列に対するトランス作用因子が存在しない場合には開始されない可能性が
あることを認識する。rAAVゲノムの場合、ウイルスゲノムからの遺伝子発現は、安定
的に組み込まれたプロウイルスから、非組み込み型のエピソームから、並びにウイルスが
細胞内で採り得る任意のその他の形態から生じ得る。
【0027】
本明細書で使用する場合、「全身的なトロピズム」及び「全身的な形質導入」(及び同
等の用語)は、本発明のウイルスカプシド又はウイルスベクターが、身体全体にわたる組
織(例えば、脳、眼、肺、骨格筋、心臓、肝臓、腎臓、及び/又は膵臓)に対して、それ
ぞれトロピズムを示す、又は形質導入を引き起こすことを示唆し得る。本発明の複数の実
施形態では、筋肉組織(例えば、骨格筋、横隔膜筋、及び心筋)への全身的な形質導入が
認められる。その他の実施形態では、骨格筋組織への全身的な形質導入が達成される。例
えば、特定の実施形態では、身体全体にわたり、実質的にすべての骨格筋が形質導入され
る(但し、形質導入効率は筋肉型毎に変化し得る)。特別な実施形態では、四肢の筋肉、
心筋、及び横隔膜筋への全身性的な形質導入が達成される。任意選択的に、ウイルスカプ
シド又はウイルスベクターが全身的経路(例えば、静脈内、関節内、又はリンパ内等の全
身的経路)により投与され得る。
【0028】
或いは、その他の実施形態では、カプシド又はウイルスベクターは、局所的に送達され
る(例えば、足蹠、筋肉内、皮膚内、皮下、局部的)。更なる実施形態では、カプシド又
はウイルスベクターは、眼に送達される。複数の実施形態では、カプシド又はウイルスベ
クターは、硝子体中、網膜下、結膜下、眼球後、前房内、及び/又は上脈絡膜の経路によ
り投与される。
【0029】
別途明記しない限り、「有効な形質導入」又は「有効なトロピズム」、又は類似した用
語は、好適なコントロールを参照することにより決定可能である(例えば、コントロール
の少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又はそれを
超えてが、それぞれ形質導入される又はトロピズムを有する)。特定の実施形態では、ウ
イルスベクターは、骨格筋、心筋、横隔膜筋、膵臓(β-小島細胞を含む)、脾臓、胃腸
管(例えば、上皮及び/又は平滑筋)、中枢神経系の細胞、肺、関節細胞、腎臓、及び/
又は眼の細胞若しくは細胞層に有効に形質導入される、又はそれに対して有効なトロピズ
ムを有する。好適なコントロールは、所望のトロピズムプロファイルを含む様々な因子に
依存する。
【0030】
同様に、ウイルスが「有効に形質導入を引き起こさない」又は標的組織に対して「有効
なトロピズムを有さない」場合、又は類似した用語についても、好適なコントロールを参
照することにより決定可能である。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、肝臓、腎
臓、生殖腺、及び/又は生殖細胞に対して有効に形質導入を引き起こさない(すなわち、
有効なトロピズムを有さない)。特定の実施形態では、望ましくない組織(複数でもよい
)(例えば、肝臓)への形質導入は、望ましい標的組織(複数でもよい)(例えば、骨格
筋、横隔膜筋、心筋、及び/又は中枢神経系の細胞)への形質導入のレベルと比較して、
20%以下、10%以下、5%以下、1%以下、0.1%以下である。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「ポリペプチド」は、別途明記しない限りペプチド及び
タンパク質の両方を包含し得る。
【0032】
「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド塩基の配列であり得、またRNA、DNA又は
DNA-RNAハイブリッド配列(天然に存在する及び天然に存在しないヌクレオチドの
両方を含む)であり得るが、代表的な実施形態では、一本鎖又は二本鎖DNA配列である
【0033】
本明細書で使用する場合、「単離された」ポリヌクレオチド(例えば、「単離されたD
NA」又は「単離されたRNA」)は、天然に存在する生物又はウイルスの少なくともい
くつかのその他のコンポーネント、例えば、細胞若しくはウイルスの構造的コンポーネン
ト、又はその他のポリペプチド、又はポリヌクレオチドと付随して一般的に見出される核
酸から少なくとも部分的に分離したポリヌクレオチドを意味し得る。代表的な実施形態で
は、「単離された」ヌクレオチドは、出発物質と比較して、少なくとも約10倍、100
倍、1000倍、10,000倍、又はそれを超えて濃縮されている。
【0034】
同様に、「単離された」ポリペプチドは、天然に存在する生物又はウイルスの少なくと
もいくつかのその他のコンポーネント、例えば、細胞若しくはウイルスの構造的コンポー
ネント、又はその他のポリペプチド、又はポリペプチドと付随して一般的に見出される核
酸から少なくとも部分的に分離されたポリペプチドを意味し得る。代表的な実施形態では
、「単離された」ポリペプチドは、出発物質と比較して、少なくとも約10倍、100倍
、1000倍、10,000倍、又はそれを超えて濃縮されている。
【0035】
本明細書で使用する場合、ウイルスベクター「を単離する」又は「を精製する」(又は
文法的に同等の用語)とは、ウイルスベクターが、出発物質内の少なくともいくつかのそ
の他のコンポーネントから少なくとも部分的に分離されることを意味し得る。代表的な実
施形態では、「単離された」又は「精製された」ウイルスベクターは、出発物質と比較し
て、少なくとも約10倍、100倍、1000倍、10,000倍、又はそれを超えて濃
縮されている。
【0036】
「治療用タンパク質」は、細胞又は対象においてタンパク質が存在しないこと、又はそ
の欠陥に起因する症状を、緩和、低下、予防、遅延、及び/又は安定化させることができ
るタンパク質であり得るが、並びに/或いはさもなければ対象に利益を付与するタンパク
質である。
【0037】
「治療用RNA分子」又は「機能的RNA分子」は、本明細書で使用する場合、当技術
分野において公知であるように、アンチセンス核酸、リボザイム(例えば、米国特許第5
,877,022号に記載されるような)、スプライソソーム媒介式のトランススプライ
シングを有効にするRNA(Puttaraju et al.(1999)Natur
e Biotech.17:246;米国特許第6,013,487号;同第6,083
,702号を参照)、遺伝子発現の停止に関係するsiRNA、shRNA、又はmiR
NAを含む干渉RNA(RNAi)(Sharp et al.,(2000)Scie
nce 287:2431を参照)、及び任意のその他の非翻訳RNA、例えば「ガイド
」RNA等(Gorman et al.(1998)Proc.Nat.Acad.S
ci USA 95:4929;Yuan et al.の米国特許第5,869,24
8号)等であり得る。
【0038】
用語「治療」、「~を治療すること」、又は「~の治療」(及びその文法的変形形態)
とは、対象の状態の重症度が軽減され、少なくとも部分的に改善し、若しくは安定化する
こと、並びに/或いは少なくとも1つの臨床症状における何らかの軽減、緩和、減少、若
しくは安定化が達成され、及び/又は疾患若しくは障害の進行遅延が認められることを意
味し得る。
【0039】
用語「~を予防する」、「~を予防すること」、及び「予防」(及びその文法的変形形
態)は、対象における疾患、障害、及び/又は臨床症状(複数でもよい)の発現の予防及
び/又は遅延、並びに/或いは本発明の方法が存在しない場合に生ずるものと比較して、
疾患、障害、及び/又は臨床症状(複数でもよい)の発現の重症度の軽減を意味し得る。
予防は完全であり得、例えば、疾患、障害、及び/又は臨床症状(複数でもよい)が完全
に存在しない。予防は、対象における疾患、障害、及び/又は臨床症状(複数でもよい)
の発生及び/又は発現の重症度が、本発明が存在しない場合に生ずるものよりも低くなる
ように部分的であってもよい。
【0040】
「治療上有効な」量は、本明細書で使用する場合、対象に何らかの改善又は利益を提供
するのに十分な量であり得る。換言すれば、「治療上有効な」量は、対象内の少なくとも
1つの臨床症状において、何らかの軽減、緩和、減少、又は安定化を提供する量であり得
る。当業者は、対象に何らかの利益が提供される限り、治療効果は完全である必要も治癒
的である必要もないことを認識する。
【0041】
「予防上有効な」量は、本明細書で使用する場合、対象における疾患、障害、及び/又
は臨床症状の発現を予防し、及び/又は遅延させる、並びに/或いは対象における疾患、
障害、及び/又は臨床症状の発現の重症度を、本発明の方法が存在しない場合に生ずるも
のと比較して低下及び/又は遅延させるのに十分な量であり得る。当業者は、予防のレベ
ルは、何らかの利益が対象に提供される限り、完全である必要はないことを認識する。
【0042】
用語「異種ヌクレオチド配列」と「異種核酸分子」とは、本明細書では交換可能に使用
され、またウイルス内に天然には存在しない核酸配列を意味し得る。一般的に、異種核酸
は、タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム又は目的とする非翻訳RNA
(例えば、細胞又は対象への送達用)を含む。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「ウイルスベクター(viral vector)」、
「ウイルスベクター(virus vector)」、「ベクター」、「ウイルス粒子」
、「粒子」、「組換えウイルスベクター(recombinant viral vec
tor)」、又は「遺伝子送達ベクター」とは、核酸送達媒体として機能することができ
、ビリオン内にパッケージングされたベクターゲノム(例えば、ウイルスDNA[vDN
A])を含むウイルス(例えば、AAV)粒子を意味する。
【0044】
或いは、いくつかの文脈では、用語「ベクター」は、ベクターゲノム/vDNA単独を
意味するのに使用され得る。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「カプシド」又は「ウイルスカプシド」とは、カプシド
タンパク質からなるカプシド構造を意味し、その場合、該カプシドは、ウイルスゲノム(
例えば、AAVカプシド内のAAVゲノム)等のゲノムであり得る核酸分子を含む。
【0046】
「rAAVベクターゲノム」又は「rAAVゲノム」は、1つ又は複数の異種核酸配列
を含むAAVゲノム(すなわち、vDNA)であり得る。rAAVベクターは、ウイルス
を生成するために、シスにおける末端反復(TR)(複数でもよい)のみを一般的に必要
とする。その他のすべてのウイルス配列は必ずしも必要でなく、またトランスで供給され
得る(Muzyczka(1992)Curr.Topics Microbiol.I
mmunol.158:97)。一般的に、rAAVベクターゲノムは、ベクターにより
有効にパッケージングされ得る導入遺伝子のサイズを最大化させるために1つ又は複数の
TR配列を保持するにすぎない。構造的及び非構造的タンパク質コーディング配列はトラ
ンスで提供され得る(例えば、プラスミド等のベクターから、又は配列をパッケージング
細胞に安定的に組み込むことにより)。本発明の複数の実施形態では、rAAVベクター
ゲノムは、少なくとも1つの末端反復(TR)配列(例えば、AAV-TR配列)、任意
選択的に2つのTR(例えば、2つのAAV-TR)を含み、それらは、一般的にベクタ
ーゲノムの5’及び3’末端に位置し、且つ異種核酸配列に隣接しているが、それと連続
している必要はない。TRは、同一であり得る、又は相互に相違し得る。
【0047】
用語「末端反復」又は「TR」は、ヘアピン構造を形成し、末端逆位反復配列として機
能する(すなわち、所望の機能、例えば複製、ウイルスのパッケージング、組み込み、及
び/又はプロウイルスレスキュー(pro virus rescue)等に関与する)
任意のウイルス末端反復配列又は合成配列を含み得る。TRは、AAVのTR又は非AA
VのTRであり得る。例えば、非AAVのTR配列、例えばその他のパルボウイルス(例
えば、イヌパルボウイルス(CPV)、マウスパルボウイルス(MVM)、ヒトパルボウ
イルスB-19)の配列等、又は任意のその他の適するウイルス配列(例えば、SV40
複製の起点として機能するSV40ヘアピン)は、TRとして使用可能であり、該TRは
トランケーション、置換、欠損、挿入、及び/又は付加により更に改変可能である。更に
、TRは、部分的又は完全に合成的であり得、例えばSamulskiらの米国特許第5
,478,745号に記載されるような「ダブルD配列」等であり得る。
【0048】
「AAV末端反復配列」又は「AAV-TR」は、これらに限定されないが、血清型1
、2、3、4、5、6、7、8、9、10、若しくは11を含む任意のAAV、又は現在
知られている、又は後に発見された任意のその他のAAV(例えば、表1を参照)に由来
し得る。AAV末端反復配列は、末端反復配列が所望の機能、例えば複製、ウイルスのパ
ッケージング、組み込み、及び/又はプロウイルスレスキュー等に関与する限り、天然の
末端反復配列を有する必要はない(例えば、天然のAAV-TR配列は、挿入、欠損、ト
ランケーション、及び/又はミスセンス突然変異により変化し得る)。
【0049】
本発明のウイルスベクターは、更に、国際特許公開番号国際公開第00/28004号
及びChao et al.(2000)Molecular Therapy 2:6
19に記載されるように、「標的化された」ウイルスベクター(例えば、狙いを定めたト
ロピズムを有する)、及び/又は「ハイブリッド」パルボウイルス(すなわち、ウイルス
TR及びウイルスカプシドが異なるパルボウイルスに由来する)であり得る。
【0050】
本発明のウイルスベクターは、更に、国際特許公開番号国際公開第01/92551号
(その開示は参考としてそのまま本明細書の一部をなすものとする)に記載されるように
二連のパルボウイルス粒子であり得る。従って、いくつかの実施形態では、二本鎖(二重
鎖(duplex))ゲノムは、本発明のウイルスカプシド中にパッケージングされ得る
【0051】
更に、ウイルスカプシド又はゲノムエレメントは、挿入、欠損、及び/又は置換を含む
その他の改変を含有し得る。
【0052】
本明細書で使用する場合、用語「アミノ酸」は、任意の天然に存在するアミノ酸、その
修飾された形態、及び合成アミノ酸を包含し得る。天然に存在する左旋性(L-)アミノ
酸を表2に示す。
【0053】
或いは、アミノ酸は、修飾されたアミノ酸残基(非限定的な例を表3に示す)であり得
、及び/又は翻訳後修飾により改変された(例えば、アセチル化、アミド化、ホルミル化
、ヒドロキシル化、メチル化、リン酸化、又はスルホン化(sulfatation))
アミノ酸であり得る。
【0054】
更に、天然に存在しないアミノ酸は、Wangら(Annu Rev Biophys
Biomol Struct.35:225-49(2006))により記載されるよ
うに、「非天然」アミノ酸であり得る。これらの非天然アミノ酸は、目的とする分子をA
AVカプシドタンパク質に化学的にリンクさせるのに有利に使用可能である。
【0055】
[核酸分子並びにそれを含むウイルスカプシド及びウイルスベクター]
1つの実施形態では、本発明は、共有結合的に閉環した環状RNA(circRNA)
をコードする核酸分子を提供し、該核酸分子は、a)非コーディングRNA又は翻訳可能
なmRNAに転写され得る目的遺伝子;b)前記目的遺伝子に付随する(flank)イ
ントロンエレメントであって、共有結合的に閉環した環状RNAをもたらすために細胞ス
プライシング機構によりバックスプライシングされるイントロンエレメント;c)前記目
的遺伝子から転写された翻訳可能なmRNAの翻訳を推進する配列内リボソーム進入部位
(IRES);d)5’非翻訳領域(UTR)の内部且つ前記目的遺伝子に付随するイン
トロンエレメントの外部に位置する、プロモーター領域;及びe)3’UTRの内部且つ
前記目的遺伝子に付随するイントロンエレメントの外部に位置する、翻訳制御領域を含む
【0056】
いくつかの実施形態では、(b)のイントロンエレメントは、任意の重複数及び/又は
比の任意の組み合わせの、任意の公知のイントロンエレメント(複数でもよい)からなる
群より選択される。イントロンエレメントの例として、Rybak-Wolf et a
l.Mol.Cell 58(5):870-885(2015)に記載されているもの
、及びcircBase環状RNAデータベース(Glazar et al.RNA
20:1666-1670(2014);及びwww.circbase.org)に記
載されているものが挙げられ、すべて本明細書において参考としてそのまま組み込まれて
いる。
【0057】
いくつかの実施形態では、(b)のイントロンエレメントは、配列番号13~24又は
29~32のいずれかのヌクレオチド配列を、任意の重複数及び/又は比の任意の組み合
わせで含み得る、それから実質的に構成され得る、又はそれから構成され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、(c)のIRESは、単独又は任意のこれらの組み合わせで
、及び/又は任意の重複数及び/又は比の、表5に記載されているウイルスIRES、表
6に記載されている細胞IRESであり得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、(e)の翻訳制御領域は、当技術分野において周知のように
、ポリアデニル化(polyA)配列及び/又はcircRNAを安定化させる構造エレ
メントを含み得る、それから実質的に構成され得る、及び/又はそれから構成され得る。
【0060】
1つの実施形態では、本発明は、AAV末端逆位反復配列(ITR)がいずれか片方の
側又は両方の側と隣接する、本発明の核酸分子を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ゲノ
ムを提供する。
【0061】
1つの実施形態では、本発明は、本発明のAAVゲノム及び/又は核酸分子を含むAA
Vカプシド又は粒子を提供する。AAVカプシド又は粒子は、AAVベクターであり得る
【0062】
本発明は、薬学的に許容される担体中に、本発明の核酸分子、本発明のAAVゲノム、
及び/又は本発明のAAVカプシド若しくは粒子若しくはベクターを含む組成物を更に提
供する。本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される」とは、有毒でない、さも
なければ忌避されない担体材料を意味し、すなわち、材料は、何らかの忌避される生物学
的効果を引き起こすことなく対象に投与され得る。
【0063】
本発明は、細胞内で、共有結合的に閉環した環状RNA分子を発現させる方法であって
、前記共有結合的に閉環した環状RNA分子が転写される条件下で、前記細胞中に本発明
の核酸分子、本発明のAAVゲノム、本発明のAAVカプシド若しくは粒子、及び/又は
本発明の組成物を導入するステップを含む方法を更に提供する。
【0064】
別の実施形態では、本発明は、組織特異的及び/又は細胞特異的な様式で、共有結合的
に閉環した環状RNA分子を発現させる方法であって、前記共有結合的に閉環した環状R
NA分子が発現する条件下で、組織及び/又は細胞を、本発明の核酸分子、本発明のAA
Vゲノム、本発明のAAVカプシド若しくは粒子、及び/又は本発明の組成物と接触させ
るステップを含む方法を提供する。
【0065】
いくつかの実施形態では、RNA分子は、治療用mRNA分子(例えば、タンパク質を
コードする治療用RNA分子)、RNA発現停止分子、ゲノムエレメントを標的とするこ
とができるガイドRNA分子、RNA転写物を標的とすることができるガイドRNA分子
、tRNA分子、長鎖非コーディングRNA分子、アンチセンスRNA分子、又は任意の
これらの組み合わせである。
【0066】
いくつかの実施形態では、細胞及び/又は組織は本発明の対象由来であり、該対象は哺
乳動物であり得る、またいくつかの実施形態ではヒトである。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の核酸分子は、直鎖状核酸分子又は環状核酸
分子であり得る。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であり得るRNA分子又はDNA分子で
あり得る。核酸分子は、対象の細胞若しくは組織中、及び/又は対象中にネイキッド核酸
分子として導入され得る、或いは核酸分子は、核酸コンストラクト、プラスミド、ベクタ
ー、ウイルスベクター、カプシド、又は粒子の一部分であり得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、本発明のcircRNA分子は、治療用RNAをコードする
ことができ、核酸配列からアミノ酸配列への翻訳を推進するためにIRESエレメントは
必要とされない。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明のcircRNA分子は、タンパク質をコードするこ
とができ、IRESエレメントは、circRNA分子中に存在し、核酸配列からアミノ
酸配列への翻訳を推進することができる。
【0070】
本発明の1つの態様は、例えば、療法又は有用なタンパク質のバイオ製造を目的として
、哺乳動物細胞又は動物中に、本発明のcircRNA分子をコードするAAVベクター
を投与するステップを含む。本方法は、真核細胞の内部でポリペプチドをコードする所望
のcircRNA(リボヌクレアーゼ及び塩基に対する抵抗性に起因して直鎖状RNAよ
りも長い半減期を有する)の産生を実現する際に有利である。
【0071】
本発明の別の態様は、例えば、療法又はタンパク質若しくは非コーディングRNAの製
造を目的として、哺乳動物細胞又は動物中に本発明のcircRNA分子を投与するステ
ップを含む。環状RNAは、そのままトランスフェクトされ得、又はDNAベクターの形
態でトランスフェクトされ、望み通りに細胞内で転写され得る。細胞の転写は、添加され
たポリメラーゼ若しくはそれをコードする核酸を使用することができ、又は好ましくは内
因性ポリメラーゼを使用することができる。真核細胞中の環状RNAの好ましい半減期は
、ハイブリダイゼーション又は定量的RT-PCR実験で測定するとき、少なくとも20
時間、30時間であり、又は少なくとも40時間でさえでもある。いくつかの実施形態で
は、本発明は、真核細胞内で少なくとも20時間の半減期を有する、又は真核細胞の内部
において直鎖状である同一のmRNAの少なくとも2倍の半減期を有する環状RNAを提
供する。
【0072】
1つの実施形態では、本発明は、IRES、5’UTR、目的とするコーディング配列
、3’UTR、及びポリアデニル化配列をその順序で有する、共有結合的に閉環した環状
RNA分子を提供する。翻訳増強特性及び相乗効果を有するこれらのRNAエレメントの
多くの異なる組み合わせが創出され得る。そのような組み合わせには、これらに限定され
ないが、IRES-ORF-3’UTR-polyA、IRES-ORF-3’UTR、
IRES-5’UTR-ORF-3’UTR等が含まれる。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明の環状RNA分子は、修飾されたRNAヌクレオチド
を含み得る。修飾されたリボヌクレオチド塩基の非限定的な例として、5-メチルシチジ
ン及びプソイドウリジンが挙げられる。これらのヌクレオチドは、追加の安定性及び免疫
活性化に対する抵抗性を提供する。
【0074】
本発明の別の実施形態は、本発明の環状RNA分子をコードするDNAテンプレートを
インビトロで転写することを含む。RNA分子の両端部に位置する逆イントロン自己スプ
ライシング配列は、追加の酵素を一切必要とせずに環状RNAの形成を促進する。
【0075】
本発明の追加の実施形態は、細胞内部での環状RNAの産生を含み、該環状RNAは、
バクテリオファージRNAポリメラーゼにより細胞質内で、又は宿主RNAポリメラーゼ
IIにより核内で、DNAテンプレートとは独立に転写され得る。
【0076】
本発明の1つの実施形態は、環状RNA分子によりコードされるポリペプチドが生物内
で発現するように、本発明の環状RNAを、ヒト又は動物等の生物に投与することから構
成される。ポリペプチドは、細胞内に存在することができ、又は分泌され得る。
【0077】
本発明の別の実施形態では、環状RNAは、目的とする所望のポリペプチドを発現させ
るために、組織培養物中の細胞の内部にトランスフェクトされ得る。特に、環状RNAは
、目的とする細胞内で細胞内タンパク質及び膜タンパク質を発現させることができる。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態では、RNAポリメラーゼプロモーター及びターミネータ
ーは、T7ウイルス、T6ウイルス、SP6ウイルス、T3ウイルス、又はT4ウイルス
に由来し得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明の3’UTRは、ヒトβグロビン、ヒトαグロビン、
アフリカツメガエル(Xenopus)βグロビン、アフリカツメガエルαグロビン、ヒ
トプロラクチン、ヒトGAP-43、ヒトeEF1a1、ヒトTau、ヒトTNFα、デ
ング熱ウイルス、ハンタウイルス小分子mRNA、ブニヤウイルス小分子mRNA、カブ
黄斑モザイクウイルス、C型肝炎ウイルス、風疹ウイルス、タバコモザイクウイルス、ヒ
トIL-8、ヒトアクチン、ヒトGAPDH、ヒトチューブリン、ハイビスカス退緑斑ウ
イルス、ウッドチャック肝炎ウイルスの翻訳後に制御されるエレメント、シンドビスウイ
ルス、カブクリンクルウイルス、タバコエッチ病ウイルス、又はベネズエラウマ脳炎ウイ
ルスに由来し得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明の5’UTRは、ヒトβグロビン、アフリカツメガエ
ル(Xenopus laevis)βグロビン、ヒトαグロビン、アフリカツメガエル
αグロビン、風疹ウイルス、タバコモザイクウイルス、マウスGtx、デング熱ウイルス
、ヒートショックタンパク質70kDaタンパク質1A、タバコアルコールデヒドロゲナ
ーゼ、タバコエッチ病ウイルス、カブクリンクルウイルス、又はアデノウイルス三分割リ
ーダー(adenovirus tripartite leader)に由来し得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明のpolyA配列は、少なくとも30ヌクレオチドの
長さ又は少なくとも60ヌクレオチドの長さである。
【0082】
本発明のIRESの非限定的な例として、本明細書の表5~表6に記載されているもの
、並びにタウラ症候群原因ウイルス(Taura syndrome virus)、ト
リアトーマウイルス、タイラー脳脊髄炎ウイルス(Theiler’s encepha
lomyelitis virus)、シミアンウイルス40、ヒアリ(Solenop
sis invicta)病原ウイルス1、ムギクビレアブラムシ腸管ウイルス(Rho
palosiphum padi virus)、細網内皮症ウイルス、ヒトポリオウイ
ルス1、チャバネアオカメムシ腸管ウイルス(Plautia stali intes
tine virus)、カシミール蜂ウイルス、ヒトライノウイルス2、ホマロジスカ
コアグラタ(Homalodisca coagulata)ウイルス-1、ヒト免疫不
全ウイルス1型、ホマロジスカコアグラタウイルス-1、ヒメトビPウイルス(Hime
tobi P virus)、C型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、肝炎GBウイルス
、口蹄疫ウイルス、ヒトエンテロウイルス71、ウマ鼻炎ウイルス、エクトロピス・オブ
リクア・ピコルナ様ウイルス(Ectropis obliqua picorna-l
ike virus)、脳心筋炎ウイルス、ドロソフィラCウイルス、ヒトコクサッキー
ウイルスB3、クルシファー・トバモウイルス(Crucifer tobamo vi
rus)、クリケット麻痺ウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス1、黒色女王蜂児病ウ
イルス(Black queen cell virus)、アブラムシ致死麻痺ウイル
ス、トリ脳脊髄炎ウイルス、急性蜂麻痺ウイルス、ハイビスカス退緑斑ウイルス、古典的
ブタ熱ウイルス、ヒトFGF2、ヒトSFTPA1、ヒトAML1/RUNX1、ドロソ
フィラ・アンテナペディア(Drosophila antennapedia)、ヒト
AQP4、ヒトAT1R、ヒトBAG-1、ヒトBCL2、ヒトBiP、ヒトc-IAP
1、ヒトc-myc、ヒトeIF4G、マウスNDST4L、ヒトLEF1、マウスHI
F1α、ヒトn.myc、マウスGtx、ヒトp27kip1、ヒトPDGF2/c-s
is、ヒトp53、ヒトPim-1、マウスRbm3、ドロソフィラ・リーパー(Dro
sophila reaper)、イヌ・スキャンパー、ドロソフィラUbx、ヒトUN
R、マウスUtrA、ヒトVEGF-A、ヒトXIAP、ドロソフィラ・ヘアレス(Dr
osophila hairless)、S.セレビシエ(S. cerevisiae
)TFIID、S.セレビシエYAP1、WO0155369、タバコエッチ病ウイルス
、カブクリンクルウイルスに由来するIRES、又はeIF4Gに対するアプタマーが挙
げられる。
【0083】
いくつかの実施形態では、本発明のIRESは、第2のIRES又は第3のIRESと
組み合わせることができ、追加の開始因子の導入、リボソームサブユニット結合、リボソ
ームシャンティング、リボソームベースペアリング、又はリボソームトランスロケーショ
ンを促進する。
【0084】
いくつかの実施形態では、本発明は、環状RNAを作成する方法であって、リボヌクレ
オチドトリホスフェート、無機ピロホスファターゼ、RNase阻害剤、及びRNAポリ
メラーゼを、しかるべき反応バッファー中の本発明のベクターに添加するステップと、前
記ベクターからRNAを転写するステップと、環状mRNAを生成するために前記転写さ
れたRNAの自己環化を可能にするステップとを含む方法を提供する。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明のリボヌクレオチドは、修飾されたリボヌクレオチド
m5C、m5U、m6A、s2U、.PSI.、又は2’-O-メチル-Uを含み得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の環状RNA及び/又はベクターを、それ
を必要としている対象に導入することを含む遺伝子療法を提供する。
【0087】
いくつかの実施形態では、本発明は、オープンリーディングフレーム(ORF)により
コードされるタンパク質を製造するために、本発明の環状RNA及び/又はベクターを真
核細胞又は哺乳動物に導入することを含む、タンパク質をバイオ製造する方法を提供する
【0088】
特別な実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、天然のAAVカプシドタンパク質
配列を有する、或いは天然のAAVカプシドタンパク質配列と少なくとも約90%、95
%、97%、98%、若しくは99%類似した、又はそれと同一であるアミノ酸配列を有
する。
【0089】
2つ又はそれを超えてのアミノ酸配列の間の配列類似性又は同一性を決定する方法は、
当技術分野において公知である。配列類似性又は同一性は、これらに限定されないが、S
mith & Waterman,Adv.Appl.Math.2,482(1981
)の局所的配列同一性アルゴリズム、Needleman & Wunsch J Mo
l.Biol.48,443(1970)の配列同一性アライメントアルゴリズム、Pe
arson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA85,
2444(1988)の相同性探索法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実
施(Genetics Computer Group、575 Science Dr
ive,Madison,WIのWisconsin Genetics Softwa
re Package内のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、
Devereux et al.Nucl.Acid Res.12,387-395(
1984)により記載されるベストフィット配列プログラムを含む、当技術分野において
公知の標準的な技術を使用して、又は検査により決定され得る。
【0090】
別の好適なアルゴリズムは、Altschul et al.J.Mol.Biol.
215,403-410,(1990)、及びKarlin et al.Proc.N
atl.Acad.Sci.USA90,5873-5787(1993)に記載されて
いるBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、Altsch
ul et al.Methods in Enzymology,266,460-4
80(1996);blast.wustl/edu/blast/README.ht
mlから得られたWU-BLAST-2プログラムである。WU-BLAST-2は、任
意選択的にデフォルト値に設定されるいくつかのサーチパラメーターを使用する。パラメ
ーターは、動的な数値であり、また具体的な配列の組成、及び具体的なデータベースの組
成に依存して、プログラムそのものにより規定され、その組成に対して目的とする配列が
調査される;但し、数値は、感度が増加するように調整され得る。更に、追加の有用なア
ルゴリズムとして、Altschul et al,(1997)Nucleic Ac
ids Res.25,3389-3402により報告されているように、ギャップ導入
BLASTが挙げられる。
【0091】
本発明は、本発明のAAVゲノムを含む、それから実質的になる、又はそれからなるウ
イルスカプシドも提供する。特定の実施形態では、ウイルスカプシドは、パルボウイルス
カプシドであり、それは更に自立性のパルボウイルスカプシド又はディペンドウイルスカ
プシドであり得る。任意選択的に、ウイルスカプシドはAAVカプシドである。特定の実
施形態では、AAVカプシドは、AAV1、AAV2、AAV3a、AAV3b、AAV
4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、若
しくは表1に示す任意のその他のAAVである、或いは1つ若しくは複数の挿入、置換、
及び/又は欠損による上記カプシドのいずれかに由来する。
【0092】
ウイルスカプシドは、例えば、米国特許第5,863,541号に記載されているよう
に、「カプシド媒体」として使用可能である。改変されたウイルスカプシドによりパッケ
ージングされ、細胞内に移入され得る分子として、異種のDNA、RNA、ポリペプチド
、小有機分子、金属、又はその組み合わせが挙げられる。
【0093】
異種分子は、AAV感染において天然に見出されない分子、例えば、野生型AAVゲノ
ムによりコードされない分子として定義され得る。更に、治療上有用な分子は、分子を宿
主標的細胞内に移入するために、キメラウイルスカプシドの外部と会合し得る。そのよう
な会合分子は、DNA、RNA、小有機分子、金属、炭水化物、脂質、及び/又はポリペ
プチドを含み得る。本発明の1つの実施形態では、治療上有用な分子は、カプシドタンパ
ク質に共有結合している(すなわち、コンジュゲートしている又は化学的にカップリング
している)。分子を共有結合的にリンクさせる方法は当業者にとって公知である。
【0094】
本発明のウイルスカプシドは、新規のカプシド構造に対する抗体の増加においても、そ
の使用を見出すことができる。更なる代替案として、外因性のアミノ酸配列が、細胞に抗
原提示させるために、例えば、対象に投与して外因性のアミノ酸配列に対する免疫応答を
生成するために、ウイルスカプシド内に挿入され得る。
【0095】
その他の実施形態では、ウイルスカプシドは、ポリペプチドをコードする核酸又は目的
とする機能的RNAを送達するウイルスベクターを投与する前に、及び/又はそれと同時
に(例えば、相互に数分間又は時間以内に)、特定の細胞の部位をブロックするために投
与され得る。例えば、本発明のカプシドは、特定の細胞上の細胞受容体をブロックするた
めに送達可能であり、送達ベクターがその後又は同時に投与可能であるが、その場合ブロ
ックされた細胞の形質導入を低下させ、その他の標的(例えば、CNS前駆細胞及び/又
は神経芽細胞)の形質導入を強化することができる。
【0096】
代表的な実施形態によれば、ウイルスカプシドは、本発明によるウイルスベクターの前
、及び/又はそれと同時に対象に投与され得る。更に、本発明は、本発明のウイルスカプ
シドを含む組成物及び医薬製剤を提供する;任意選択的に、該組成物は本発明のウイルス
ベクターも含む。
【0097】
本発明は、本発明のウイルスカプシド及びカプシドタンパク質をコードする核酸分子(
任意選択的に、単離された核酸分子)も提供する。核酸分子を含むベクター、並びに本発
明の核酸分子及び/又はベクターを含む(インビボ又は培養中の)細胞が更に提供される
。好適なベクターとして、非限定的にウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、AA
V、ヘルペスウイルス、ワクシニア、ポックスウイルス、バキュロウイルス等)、プラス
ミド、ファージ、YAC、BAC等が挙げられる。そのような核酸分子、ベクター、及び
細胞は、本明細書に記載されるようなウイルスカプシド又はウイルスベクターを製造する
ために、例えば試薬(例えば、ヘルパーパッケージングコンストラクト又はパッケージン
グ細胞)として使用可能である。
【0098】
本発明によるウイルスカプシドは、当技術分野において公知の任意の方法を使用して、
例えばバキュロウイルスからの発現により(Brown et al.(1994)Vi
rology 198:477-488)製造可能である。
【0099】
本発明のカプシドタンパク質及びカプシドは、現在知られている又は後に識別された任
意の改変を含み得る。
【0100】
例えば、本発明のAAVカプシドタンパク質及びウイルスカプシドは、別のウイルス、
任意選択的に、例えば国際特許公開番号国際公開第00/28004号に記載されるよう
な別のパルボウイルス又はAAVに由来するカプシドサブユニットの全部又は一部を含み
得るという点においてキメラであり得る。
【0101】
ウイルスカプシドは、所望の標的組織(複数でもよい)上に存在する細胞表面分子と相
互作用するようにウイルスカプシドを誘導する標的配列(例えば、置換された又はウイル
スカプシドに挿入された配列)を含む、標的化されたウイルスカプシドであり得る(例え
ば、国際特許公開番号国際公開第00/28004号及びHauck et al.(2
003)J Virology 77:2768-2774);Shi et al.H
uman Gene Therapy 17:353-361(2006)[AAVカプ
シドサブユニットの位置520及び/又は584におけるインテグリン受容体結合モチー
フRGDの挿入について記載する];及び米国特許第7,314,912号[AAV2カ
プシドサブユニットの位置447、534、573、及び587のアミノ酸の後にRGD
モチーフを含有するPIペプチドの挿入について記載する]を参照)。挿入を許容するA
AVカプシドサブユニット内のその他の位置は、当技術分野において公知である(例えば
、Grifman et al.Molecular Therapy 3:964-9
75(2001)に記載されている位置449及び588)。
【0102】
例えば、本発明のウイルスカプシドのいくつかは、目的とするほとんどの標的組織(例
えば、肝臓、骨格筋、心臓、横隔膜筋、腎臓、脳、胃、腸、皮膚、内皮細胞、及び/又は
肺)に対して比較的非効率的なトロピズムを有する。標的配列は、このような低形質導入
ベクターに有利に組み込み可能であり、これによりウイルスカプシドに所望のトロピズム
、また任意選択的に、特定の組織(複数でもよい)に対して選択的トロピズムを付与する
。標的配列を含むAAVカプシドタンパク質、カプシド、及びベクターは、例えば、国際
特許公開番号国際公開第00/28004号に記載されている。別の可能性として、1つ
又は複数の天然に存在しないアミノ酸が、Wangら(Annu Rev Biophy
s Biomol Struct.35:225-49(2006))に記載されるよう
に、低形質導入ベクターを所望の標的組織(複数でもよい)に再誘導する手段として、直
交部位においてAAVカプシドサブユニットに組み込み可能である。これらの非天然アミ
ノ酸は、目的とする分子を、AAVカプシドタンパク質(グリカン(マンノース-樹状細
胞の標的化);特定のがん細胞型に標的を定めて送達するためのRGD、ボンベシン、又
は神経ペプチド;特定の細胞表面受容体、例えば増殖因子受容体、インテグリン等に標的
を定めたファージディスプレーから選択されるRNAアプタマー又はペプチドを非限定的
に含む)に化学的にリンクさせるのに有利に使用可能である。アミノ酸を化学的に修飾す
る方法は当技術分野において公知である(例えば、Greg T.Hermanson,
Bioconjugate Techniques,1stedition,Acade
mic Press,1996を参照)。
【0103】
代表的な実施形態では、標的配列は、特定の細胞型(複数でもよい)に対して感染を生
じさせるウイルスカプシド配列(例えば、自立性のなパルボウイルスカプシド配列、AA
Vカプシド配列、又は任意のその他のウイルスカプシド配列)であり得る。
【0104】
別の非限定的な例として、得られた突然変異体に対してヘパリン結合部を付与するため
に、ヘパリン結合ドメイン(例えば、呼吸系発疹ウイルスヘパリン結合ドメイン)が、H
S受容体(例えば、AAV4、AAV5)とは一般的に結合しないカプシドサブユニット
中に挿入又は置換され得る。
【0105】
B19は、グロボシドをその受容体として使用して一次赤血球前駆細胞に感染する(B
rown et al.(1993)Science 262:114)。B19の構造
は、8オングストロームの分解能で決定されている(Agbandje-McKenna
et al.(1994)Virology203:106)。グロボシドと結合する
B19カプシドの領域は、アミノ酸399~406の間でマッピングされており(Cha
pman et al.(1993)Virology 194:419)、βバレル構
造E及びFの間でループアウトした領域である(Chipman et al.(199
6)Proc.Nat.Acad.Sci.USA93:7502)。従って、B19カ
プシドのグロボシド受容体結合ドメインは、それを含むウイルスカプシド又はウイルスベ
クターが赤血球細胞を標的とするように、AAVカプシドタンパク質中に置換され得る。
【0106】
代表的実施形態では、外因性標的配列は、改変されたAAVカプシドタンパク質を含む
ウイルスカプシド又はウイルスベクターのトロピズムを変化させるペプチドをコードする
任意のアミノ酸配列であり得る。特定の実施形態では、標的ペプチド又はタンパク質は、
天然に存在するものであり得る、或いは完全に又は部分的に合成的であり得る。例示的な
標的化配列として、細胞表面受容体及び糖タンパク質に結合するリガンド及びその他のペ
プチド、例えば、RGDペプチド配列、ブラジキニン、ホルモン、ペプチド増殖因子(例
えば、上皮増殖因子、神経増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、インス
リン様増殖因子I及びII等)、サイトカイン、メラニン細胞刺激ホルモン(例えば、α
、β、又はγ)、ニューロペプチド、及びエンドルフィン等、並びに細胞にその同族受容
体を標的化せしめる能力を保持するその断片が挙げられる。その他の例証的なペプチド及
びタンパク質として、サブスタンスP、ケラチノサイト増殖因子、ニューロペプチドY、
ガストリン放出ペプチド、インターロイキン2、ニワトリ卵白リゾチーム、エリスロポエ
チン、ゴナドリベリン、コルチコスタチン、β-エンドルフィン、ロイシンエンケファリ
ン、リモルフィン、α-ネオエンケファリン、アンジオテンシン、ニューマジン(pne
umadin)、血管作用性腸ペプチド、ニューロテンシン、モチリン、及びこれまでに
記載されたそれらの断片が挙げられる。なおも更なる代替案として、毒素(例えば、破傷
風毒素又は蛇毒、例えば、α-ブンガロトキシン等)由来の結合ドメインが、標的配列と
してカプシドタンパク質中に置換され得る。なおも更なる代表的実施形態では、AAVカ
プシドタンパク質は、Cleves(Current Biology 7:R318(
1997))により記載される「非古典的」インポート/エクスポートシグナルペプチド
(例えば、線維芽細胞増殖因子-1及び-2、インターロイキン1、HIV-1 Tat
タンパク質、ヘルペスウイルスVP22タンパク質等)のAAVカプシドタンパク質中へ
の置換によって改変され得る。特定の細胞による取り込みを指図するペプチドモチーフも
包含され、例えば、FVFLPペプチドモチーフは肝細胞による取り込みを惹起する。
【0107】
ファージディスプレー技術、並びに当分野において公知のその他の技術が、任意の目的
とする細胞型を認識するペプチドを同定するのに使用され得る。
【0108】
標的配列は、受容体(例えば、タンパク質、炭水化物、糖タンパク質、又はプロテオグ
リカン)を含む、細胞表面結合部位を標的とする任意のペプチドをコードし得る。細胞表
面結合部位の例として、これらに限定されないが、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、
及びその他のグリコサミノグリカン、シアル酸部分、ポリシアル酸部分、糖タンパク質、
及びガングリオシド、MHCI糖タンパク質、膜糖タンパク質上に見出される炭水化物成
分(マンノース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン、フコー
ス、ガラクトースを含む)等が挙げられる。
【0109】
なおも更なる代替案として、標的配列は、細胞中への進入を標的とする別の分子と化学
的にカップリングさせるために使用され得る(例えば、そのR基を介して化学的にカップ
リングされ得るアルギニン及び/又はリジン残基を含み得る)ペプチドであり得る。
【0110】
本発明の上記実施形態は、本明細書に記載されるように、異種核酸を細胞又は対象に送
達するために使用可能である。従って、1つの実施形態では、本発明は、核酸分子を細胞
中に導入する方法であって、細胞を本発明のウイルスベクター及び/又は組成物と接触さ
せるステップを含む方法を提供する。
【0111】
核酸分子を対象に送達する方法であって、対象に本発明のウイルスベクター及び/又は
本発明の組成物を投与するステップを含む方法が、本明細書に更に提示される。いくつか
の実施形態では、ウイルスベクター又は組成物は、対象の眼に投与される。いくつかの実
施形態では、投与は、硝子体中、網膜下、結膜下、眼球後、前房内、及び/又は上脈絡膜
の各経路による。
【0112】
表面にポリシアル酸を有する細胞に対して選択的に形質導入を引き起こす方法であって
、細胞を本発明のウイルスベクター及び/又は本発明の組成物と接触させるステップを含
む方法が、本明細書において追加的に提示される。
【0113】
本発明は、目的とする核酸分子を眼細胞に送達する方法であって、眼細胞又は層を本発
明のウイルスベクターと接触させることを含み、該ウイルスベクターが目的とする核酸分
子を含む方法を更に提供する。この方法のいくつかの実施形態では、目的とする核酸分子
は、治療用タンパク質又は治療用RNAをコードする。いくつかの実施形態では、治療用
タンパク質は、モノクロナール抗体又は融合タンパク質である。
【0114】
上記方法のいくつかの実施形態では、眼細胞又は層は対象内にあり得、いくつかの実施
形態では、対象はヒト対象であり得る。
【0115】
本発明は、対象における眼科障害又は欠陥を治療する方法であって、対象に本発明のウ
イルスベクターを投与するステップを含み、該ウイルスベクターが眼科障害又は欠陥を治
療するのに有効な治療用タンパク質又は治療用RNAをコードする核酸分子を含む方法を
更に提供する。この方法のいくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、硝子体中、網
膜下、結膜下、眼球後、前房内、及び/又は上脈絡膜の各経路により投与される。いくつ
かの実施形態では、眼科障害又は欠陥は、網膜色素変性、黄斑変性、又はレーバー先天性
黒内障、色覚障害、X連鎖性網膜分離症、視神経炎、コロイデレミア、視神経萎縮症、網
膜錐状体ジストロフィー、網膜症、網膜芽細胞腫、緑内障、バルデ・ビードル症候群、又
は色盲である。
【0116】
目的とする核酸分子(NOI)を中枢神経系前駆細胞及び/又は神経芽細胞に送達する
方法であって、前駆細胞及び/又は神経芽細胞をアデノ随伴ウイルス(AAV)血清型4
(AAV4)カプシドタンパク質を含むウイルスベクターと接触させることを含み、該カ
プシドタンパク質がK492、K503、及びN585において突然変異を含み、並びに
該ウイルスベクターが目的とする核酸分子を含む方法も本明細書において提示される。こ
の方法のいくつかの実施形態では、目的とする核酸分子は、治療用タンパク質又は治療用
RNAをコードすることができ、またいくつかの実施形態では、中枢神経系前駆細胞及び
/又は神経芽細胞は、対象内にあり得る。
【0117】
本発明の更なる実施形態では、対象における神経障害又は欠陥を治療する方法であって
、本発明のウイルスベクター及び/又は本発明の組成物を対象に投与することを含み、該
ウイルスベクターが神経障害又は欠陥の治療において有効な治療用タンパク質又は治療用
RNAをコードする核酸分子を含む方法が提供される。この方法のいくつかの実施形態で
は、ウイルスベクターは、脳室内(intracerebroventrical)、大
槽内、実質内、頭蓋骨内、及び/又は髄腔内の各経路により投与される。この方法のいく
つかの実施形態では、対象はヒト対象である。
【0118】
本発明は、本発明の核酸分子を含むウイルスベクターも包含する。特別な実施形態では
、ウイルスベクターは、パルボウイルスベクター(例えば、パルボウイルスカプシド及び
/又はベクターゲノムを含む)、例えば、AAVベクター(例えば、AAVカプシド及び
/又はベクターゲノムを含む)である。
【0119】
例えば、代表的な実施形態では、ウイルスベクターは、(a)ウイルスカプシド(例え
ば、AAVカプシド);及び(b)末端反復配列(例えば、AAV-TR)を含む核酸を
含み、その場合、該末端反復配列を含む核酸は、改変されたウイルスカプシドによりカプ
シド封入されている。核酸は、2つの末端反復配列(例えば、2つのAAV-TR)を任
意選択的に含むことができる。
【0120】
代表的な実施形態では、ウイルスベクターは、目的とするタンパク質又は機能的RNA
をコードする異種核酸分子を含む組換えウイルスベクターである。組換えウイルスベクタ
ーは、以下においてより詳細に記載されている。
【0121】
[ウイルスベクターを生成する方法]
本発明は、本発明のウイルスベクターを生成する方法を更に提供する。1つの代表的実
施形態では、本発明は、ウイルスベクターを生成する方法を提供し、この方法は、細胞に
対して、(a)少なくとも1つのTR配列(例えば、AAV-TR配列)を含む核酸テン
プレート、並びに(b)核酸テンプレートの複製及びAAVカプシド中への封入(enc
apsidation)に十分なAAV配列(例えば、本発明のAAVカプシドをコード
するAAVrep配列及びAAVcap配列)を提供するステップを含む。任意選択的に
、核酸テンプレートは、少なくとも1つの異種核酸配列を更に含む。特定の実施形態では
、核酸テンプレートは2つのAAV-ITR配列を含み、これらは、(存在する場合)異
種核酸配列に対して5’側及び3’側に位置するが、異種核酸配列と直接隣接している必
要はない。
【0122】
核酸テンプレート並びにAAVrep及びcap配列は、AAVカプシド内にパッケー
ジングされた核酸テンプレートを含むウイルスベクターが細胞中で生成されるような条件
下で提供される。本方法は、細胞からウイルスベクターを収集するステップを更に含み得
る。ウイルスベクターは、培地から及び/又は細胞を溶解することによって収集され得る
【0123】
細胞は、AAVウイルス複製を許容する細胞であり得る。当該技術分野で公知の任意の
好適な細胞が採用され得る。特定の実施形態では、細胞は哺乳動物細胞である。別の選択
肢として、細胞は、複製欠損性ヘルパーウイルスから取り除かれた機能を提供するトラン
ス補完性(trans-complementing)パッケージング細胞株、例えば、
293細胞又はその他のE1aトランス補完性細胞であり得る。
【0124】
AAV複製及びカプシド配列は、当技術分野で公知の任意の方法によって提供され得る
。現行のプロトコールは、単一のプラスミド上のAAV rep/cap遺伝子を発現さ
せるのが一般的である。AAV複製及びパッケージング配列は一緒に提供される必要はな
いが、そうすることが好都合であり得る。AAVrep及び/又はcap配列は、任意の
ウイルスベクター又は非ウイルスベクターによって提供され得る。例えば、rep/ca
p配列は、ハイブリッドアデノウイルス又はヘルペスウイルスベクターによって提供され
得る(例えば、欠損型アデノウイルスベクターのE1a領域又はE3領域中に挿入される
)。EBVベクターもまた、AAVcap及びrep遺伝子を発現させるために採用され
得る。この方法の1つの利点は、EBVベクターはエピソーマルであるが、連続する細胞
分裂全体を通じて、高コピー数をなおも維持することである(すなわち、「EBVベース
の核エピソーム(EBV based nuclear episome)」と称される
染色体外エレメントとして細胞中に安定に組み込まれる、Margolski(1992
)Curr.Top.Microbiol.Immun.158:67を参照)。
【0125】
更なる代替案として、rep/cap配列は細胞中に安定に組み込まれ得る。一般的に
は、AAVrep/cap配列には、これらの配列のレスキュー及び/又はパッケージン
グを阻止するために、TRを隣接させない。
【0126】
核酸テンプレートは、当技術分野で公知の任意の方法を使用して細胞に提供され得る。
例えば、テンプレートは、非ウイルスベクター(例えば、プラスミド)又はウイルスベク
ターによって供給され得る。特定の実施形態では、核酸テンプレートは、ヘルペスウイル
スベクター又はアデノウイルスベクターによって供給される(例えば、欠損型アデノウイ
ルスのE1a領域又はE3領域中に挿入される)。別の例証として、Palombo e
t al.(1998)J.Virology 72:5025は、AAV-TRにより
挟まれたレポーター遺伝子を有するバキュロウイルスベクターについて記載する。EBV
ベクターもまた、rep/cap遺伝子に関して上記したように、テンプレートを送達す
るために採用され得る。
【0127】
別の代表的実施形態では、核酸テンプレートは、複製性のrAAVウイルスによって提
供される。なおもその他の実施形態では、核酸テンプレートを含むAAVプロウイルスは
、細胞の染色体中に安定に組み込まれる。
【0128】
ウイルス力価を増強するために、増殖性AAV感染を促進するヘルパーウイルス機能(
例えば、アデノウイルス又はヘルペスウイルス)が細胞に提供され得る。AAV複製に必
要なヘルパーウイルス配列は、当技術分野で公知である。一般的には、これらの配列は、
ヘルパーアデノウイルスベクター又はヘルペスウイルスベクターによって提供される。或
いは、アデノウイルス配列又はヘルペスウイルス配列は、例えば、Ferrari et
al.(1997)Nature Med.3:1295;並びに米国特許第6,04
0,183号及び同第6,093,570号によって記載されるように、効率的なAAV
生成を促進するヘルパー遺伝子のすべてを有する非感染性アデノウイルスミニプラスミド
として、別の非ウイルスベクター又はウイルスベクターによって提供され得る。
【0129】
更に、ヘルパーウイルス機能は、染色体中に埋め込まれ、又は安定な染色体外エレメン
トとして維持されているヘルパー配列を有するパッケージング細胞によって提供され得る
。概して、ヘルパーウイルス配列はAAVビリオン中にパッケージングされ得ない、例え
ば、TRにより挟まれていない。
【0130】
単一のヘルパーコンストラクト上に、AAV複製及びカプシド配列、並びにヘルパーウ
イルス配列(例えば、アデノウイルス配列)を提供することが有利であり得ることを、当
業者は理解するであろう。このヘルパーコンストラクトは、非ウイルスコンストラクトで
あっても、またウイルスコンストラクトであってもよい。1つの非限定的例証として、ヘ
ルパーコンストラクトは、AAVrep/cap遺伝子を含むハイブリッドアデノウイル
ス又はハイブリッドヘルペスウイルスであり得る。
【0131】
1つの特定の実施形態では、AAVrep/cap配列及びアデノウイルスヘルパー配
列は、単一のアデノウイルスヘルパーベクターによって供給される。このベクターは、核
酸テンプレートを更に含み得る。AAVrep/cap配列及び/又はrAAVテンプレ
ートは、アデノウイルスの欠損した領域(例えば、E1a領域又はE3領域)中に挿入さ
れ得る。
【0132】
更なる実施形態では、AAVrep/cap配列及びアデノウイルスヘルパー配列は、
単一のアデノウイルスヘルパーベクターによって供給される。この実施形態によれば、r
AAVテンプレートは、プラスミドテンプレートとして提供され得る。
【0133】
別の例証的実施形態では、AAVrep/cap配列及びアデノウイルスヘルパー配列
は、単一のアデノウイルスヘルパーベクターによって提供され、rAAVテンプレートが
プロウイルスとして細胞中に組み込まれる。或いは、rAAVテンプレートは、染色体外
エレメント(例えば、EBVベースの核エピソーム)として細胞内で維持されるEBVベ
クターによって提供される。
【0134】
更なる例示的な実施形態では、AAVrep/cap配列及びアデノウイルスヘルパー
配列は、単一のアデノウイルスヘルパーによって提供される。rAAVテンプレートは、
別個の複製性のウイルスベクターとして提供され得る。例えば、rAAVテンプレートは
、rAAV粒子又は第2の組換えアデノウイルス粒子によって提供され得る。
【0135】
上記方法によれば、ハイブリッドアデノウイルスベクターは、アデノウイルスの複製及
びパッケージングに十分なアデノウイルス5’及び3’シス配列(すなわち、アデノウイ
ルス末端反復及びPAC配列)を一般的に含む。AAVrep/cap配列及び存在する
場合にはrAAVテンプレートは、アデノウイルスバックボーン中に埋め込まれ、5’及
び3’シス配列によって挟まれており、その結果これらの配列は、アデノウイルスカプシ
ド中にパッケージングされ得る。
【0136】
上記のように、アデノウイルスヘルパー配列及びAAVrep/cap配列は、これら
の配列がAAVビリオン中にパッケージングされないように、概してTRにより挟まれて
いない。
【0137】
Zhang et al.((2001)Gene Ther.18:704-12)
は、アデノウイルス、並びにAAVrep及びcap遺伝子の両方を含むキメラヘルパー
について記載する。
【0138】
ヘルペスウイルスもまた、AAVパッケージング法においてヘルパーウイルスとして使
用され得る。AAV-Repタンパク質(複数でもよい)をコードするハイブリッドヘル
ペスウイルスは、拡大縮小可能なAAVベクター生成スキームを有利に促進し得る。AA
V-2rep及びcap遺伝子を発現するハイブリッド単純ヘルペスウイルスI型(HS
V-1)ベクターが、Conway et al.(1999)Gene Therap
y 6:986及び国際公開第00/17377号に記載されている。
【0139】
更なる代替案として、本発明のウイルスベクターは、例えばUrabe et al.
(2002)Human Gene Therapy 13:1935-43に記載され
るように、rep/cap遺伝子及びrAAVテンプレートを送達するためのバキュロウ
イルスベクターを使用して、昆虫細胞中で生成され得る。
【0140】
夾雑性のヘルパーウイルスを含まないAAVベクターストックが、当技術分野で公知の
任意の方法によって取得されてよい。例えば、AAV及びヘルパーウイルスは、サイズに
基づいて容易に識別され得る。AAVはまた、ヘパリン基材に対する親和性に基づいてヘ
ルパーウイルスからも分離され得る(Zolotukhin et al.(1999)
Gene Therapy 6:973)。いかなる夾雑性のヘルパーウイルスも複製コ
ンピテントとならないように、欠失型の複製欠損性ヘルパーウイルスが使用され得る。A
AVウイルスのパッケージングを媒介するためにアデノウイルスの初期遺伝子発現のみが
必要とされるので、更なる代替案として、後期遺伝子発現を欠くアデノウイルスヘルパー
が採用され得る。後期遺伝子発現が欠損しているアデノウイルス変異体は当技術分野で公
知である(例えば、ts100K及びts149アデノウイルス変異体)。
【0141】
[組換えウイルスベクター]
本発明のウイルスベクター、カプシド、及び粒子は、インビトロ、エクスビボ、及びイ
ンビボで核酸を細胞に送達するために有用である。特に、ウイルスベクターは、哺乳動物
、細胞を含む動物に核酸を送達又は移入するために有利に採用され得る。
【0142】
目的とする任意の異種核酸配列(複数でもよい)は、本発明のウイルスベクター、カプ
シド、及び/又は粒子中に送達され得る。目的とする核酸として、治療的(例えば、医療
用又は獣医学用)若しくは免疫原性(例えば、ワクチン用)タンパク質を含むポリペプチ
ドをコードする核酸、及び/又は機能的若しくは治療的RNA分子が挙げられる。
【0143】
治療的ポリペプチドとして、これらに限定されないが、嚢胞性線維症膜貫通調節タンパ
ク質(cystic fibrosis transmembrane regulat
or protein)(CFTR)、ジストロフィン(ミニジストロフィン及びマイク
ロジストロフィンを含む、例えば、Vincent et al.(1993)Natu
re Genetics 5:130;米国特許公開第2003/017131号;国際
公開番号国際公開第2008/088895号、Wang et al.Proc.Na
tl.Acad.Sci.USA 97:13714-13719(2000);及びG
regorevic et al.Mol.Ther.16:657-64(2008)
を参照)、ミオスタチンプロペプチド、フォリスタチン、アクチビンII型可溶性受容体
、IGF-1、抗炎症性ポリペプチド、例えばIκB優性変異体、サルコスパン、ユート
ロフィン(Tinsley et al.(1996)Nature 384:349)
、ミニユートロフィン、凝固因子(例えば、第VIII因子、第IX因子、第X因子等)
、エリスロポエチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、カタラーゼ、チロシンヒドロ
キシラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、LDL受容体、リポタンパク質
リパーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、β-グロビン、α-グロビン、スペクト
リン、α-アンチトリプシン、アデノシンデアミナーゼ、ヒポキサンチングアニンホス
ホリボシルトランスフェラーゼ、β-グルコセレブロシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ
、リソソームヘキソサミニダーゼA、分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ、RP65タンパク
質、サイトカイン(例えば、α-インターフェロン、β-インターフェロン、インターフ
ェロン-γ、インターロイキン-2、インターロイキン-4、顆粒球マクロファージコロ
ニー刺激因子、リンホトキシン等)、ペプチド増殖因子、神経栄養因子及びホルモン(例
えば、ソマトトロピン、インスリン、インスリン様増殖因子1及び2、血小板由来増殖因
子、上皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、神経増殖因子、神経栄養因子-3及び-4、脳
由来神経栄養因子、骨形態形成タンパク質(bone morphogenic pro
tein)[RANKL及びVEGFを含む]、グリア由来増殖因子、形質転換増殖因子
-α及び-β等)、リソソーム酸α-グルコシダーゼ、α-ガラクトシダーゼA、受容体
(例えば、腫瘍壊死増殖因子α可溶性受容体)、S100A1、パルブアルブミン、アデ
ニリルシクラーゼ6型、カルシウムハンドリングを調節する分子(例えば、SERCA
、PP1の阻害剤1及びその断片[例えば、国際公開第2006/029319号及び
同第2007/100465号])、短縮型の構成的に活性なbARKct等の、Gタン
パク質共役型受容体キナーゼ2型ノックダウンを有効にする分子、IRAP等の抗炎症性
因子、抗ミオスタチンタンパク質、アスパルトアシラーゼ、モノクロナール抗体(単鎖モ
ノクロナール抗体を含む;例示的なMabは、Herceptin(登録商標)Mabで
ある)、ニューロペプチド及びその断片(例えば、ガラニン、ニューロペプチドY(米国
特許第7,071,172号を参照)、バソヒビン等の血管新生阻害剤及びその他のVE
GF阻害剤(例えば、バソヒビン2[国際公開第JP2006/073052号を参照]
)が挙げられる。その他の例証的な異種核酸配列は、自殺遺伝子産物(例えば、チミジン
キナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ジフテリア毒素、及び腫瘍壊死因子)、がん療法で使
用される薬物に対する耐性を付与するタンパク質、腫瘍抑制遺伝子産物(例えば、p53
、Rb、Wt-1)、TRAIL、FAS-リガンド、及びそれを必要とする対象におい
て治療効果を有する任意のその他のポリペプチドをコードする。AAVベクターは、モノ
クロナール抗体及び抗体断片、例えば、ミオスタチンを標的とする抗体又は抗体断片を送
達するためにも使用され得る(例えば、Fang et al.Nature Biot
echnology 23:584-590(2005)を参照)。AAVベクターは、
CRISPR/Cas複合体の1つ若しくは複数のコンポーネント、又はその他の遺伝子
編集システムで使用されるコンポーネントを提供するためにも使用され得る。更に、AA
Vベクターは、分泌型治療薬、例えば融合タンパク質(エタネルセプト)を提供するため
にも使用され得る。分泌型治療薬を提供するために使用される場合、分泌型治療薬が目的
とする標的組織に到達可能な限り、ウイルスの広範囲に及ぶ発現は必要とされない。
【0144】
ポリペプチドをコードする異種核酸配列として、レポーターポリペプチド(例えば酵素
)をコードするものが挙げられる。レポーターポリペプチドは当技術分野で公知であり、
これらに限定されないが、緑色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスフ
ァターゼ、ルシフェラーゼ、及びクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝
子が含まれる。
【0145】
任意選択的に、異種核酸は、分泌型ポリペプチド(例えば、その天然の状態において分
泌型ポリペプチドであるポリペプチド、又は例えば当技術分野で公知の分泌シグナル配列
を作動可能に付随させることによって、分泌されるように遺伝子工学的に改変されたポリ
ペプチド)をコードする。
【0146】
或いは、本発明の特定の実施形態では、異種核酸は、アンチセンス核酸、リボザイム(
例えば、米国特許第5,877,022号に記載されている)、スプライソソーム媒介性
のトランススプライシングを有効にするRNA(Puttaraju et al.(1
999)Nature Biotech.17:246;米国特許第6,013,487
号;同第6,083,702号を参照)、遺伝子発現抑制に関与するsiRNA、shR
NA、又はmiRNAを含む干渉RNA(RNAi)(Sharp et al.(20
00)Science 287:2431を参照)、及び「ガイド」RNA等のその他の
非翻訳RNA(Gorman et al.(1998)Proc.Nat.Acad.
Sci.USA 95:4929;Yuan et al.の米国特許第5,869,2
48号)等をコードし得る。例示的な非翻訳RNAとして、多剤耐性(MDR)遺伝子産
物に対するRNAi(例えば、腫瘍を治療及び/又は予防するため、並びに/或いは化学
療法による障害を予防するための心臓への投与用)、ミオスタチンに対するRNAi(例
えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー用)、VEGFに対するRNAi(例えば、腫瘍
を治療及び/又は予防するため)、ホスホランバンに対するRNAi(例えば、心血管疾
患を治療するため、例えば、Andino et al.J.Gene Med.10:
132-142(2008)、及びLi et al.Acta Pharmacol
Sin.26:51-55(2005)を参照);ホスホランバンS16E等のホスホラ
ンバン阻害分子又はドミナントネガティブ分子(例えば、心血管疾患を治療するため、例
えば、Hoshijima et al.Nat.Med.8:864-871(200
2)を参照)、アデノシンキナーゼに対するRNAi(例えば、癲癇用)、並びに病原性
生物及びウイルス(例えば、B型及び/又はC型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、
CMV、単純ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス等)を標的とするRNAiが挙
げられる。
【0147】
更に、選択的スプライシングを指令する核酸配列が送達され得る。例証するために、ジ
ストロフィンエクソン51の5’及び/又は3’スプライス部位に対して相補的なアンチ
センス配列(又はその他の阻害配列)が、このエクソンのスキッピングを誘導するために
、U1又はU7低分子核内(sn)RNAプロモーターと連携して送達され得る。例えば
、アンチセンス/阻害配列(複数でもよい)に対して5’側に位置するU1又はU7 s
nRNAプロモーターを含むDNA配列が、本発明の改変されたカプシド中にパッケージ
ング及び送達され得る。
【0148】
ウイルスベクターは、宿主染色体上の遺伝子座と相同性を共有し、それと組み替わる異
種核酸も含み得る。このアプローチは、例えば、宿主細胞中の遺伝的欠陥を修正するため
に利用され得る。
【0149】
本発明は、例えばワクチン接種のための免疫原性ポリペプチドを発現するウイルスベク
ターも提供する。核酸は、これらに限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、
サル免疫不全ウイルス(SIV)、インフルエンザウイルス、HIV又はSIVのgag
タンパク質、腫瘍抗原、がん抗原、細菌抗原、ウイルス抗原等に由来する免疫原を含む、
当技術分野で公知の任意の目的とする免疫原をコードし得る。
【0150】
ワクチンベクターとしてのパルボウイルスの使用は当技術分野で公知である(例えば、
Miyamura et al.(1994)Proc.Nat.Acad.Sci U
SA 91:8507;Young et al.の米国特許第5,916,563号、
Mazzara et al.の米国特許第5,905,040号、米国特許第5,88
2,652号、Samulski et al.の米国特許第5,863,541号を参
照)。抗原は、パルボウイルスカプシド中に存在し得る。或いは、抗原は、組換えベクタ
ーゲノム中に導入された異種核酸から発現され得る。本明細書に記載され及び/又は当技
術分野で公知の目的とする任意の免疫原は、本発明のウイルスベクターによって提供され
得る。
【0151】
免疫原性ポリペプチドは、免疫応答を惹起するのに好適な、並びに/或いはこれらに限
定されないが、微生物、細菌、原生動物、寄生生物、真菌及び/又はウイルスの感染及び
疾患を含む、感染及び/又は疾患から対象を防御するのに好適な任意のポリペプチドであ
り得る。例えば、免疫原性ポリペプチドは、オルソミクソウイルス免疫原(例えば、イン
フルエンザウイルス免疫原、例えばインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)表面
タンパク質若しくはインフルエンザウイルス核タンパク質、又はウマインフルエンザウイ
ルス免疫原等)、又はレンチウイルス免疫原(例えば、ウマ感染性貧血ウイルス免疫原、
サル免疫不全ウイルス(SIV)免疫原、又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)免疫原、
例えばHIV若しくはSIVのエンベロープGP160タンパク質、HIV若しくはSI
Vのマトリックス/カプシドタンパク質、並びにHIV若しくはSIVのgag、pol
、及びenv遺伝子産物等)であり得る。免疫原性ポリペプチドは、アレナウイルス免疫
原(例えば、ラッサ熱ウイルス免疫原、例えばラッサ熱ウイルス核カプシドタンパク質及
びラッサ熱エンベロープ糖タンパク質等)、ポックスウイルス免疫原(例えば、ワクシニ
アウイルス免疫原、例えばワクシニアL1又はL8遺伝子産物等)、フラビウイルス免疫
原(例えば、黄熱病ウイルス免疫原又は日本脳炎ウイルス免疫原)、フィロウイルス免疫
原(例えば、エボラウイルス免疫原又はマールブルグウイルス免疫原、NP及びGP遺伝
子産物等)、ブニヤウイルス免疫原(例えば、RVFV、CCHF及び/又はSFSウイ
ルス免疫原)、又はコロナウイルス免疫原(例えば、感染性ヒトコロナウイルス免疫原、
例えばヒトコロナウイルスエンベロープ糖タンパク質等、又はブタ伝染性胃腸炎ウイルス
免疫原、又はトリ感染性気管支炎ウイルス免疫原等)でもあり得る。免疫原性ポリペプチ
ドは更に、ポリオ免疫原、ヘルペス免疫原(例えば、CMV、EBV、HSV免疫原)、
流行性耳下腺炎免疫原、麻疹免疫原、風疹免疫原、ジフテリア毒素若しくはその他のジフ
テリア免疫原、百日咳抗原、肝炎(例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎等)免疫原、
及び/又は当技術分野で現在知られている若しくは免疫原として後に同定された任意のそ
の他のワクチン免疫原であり得る。
【0152】
或いは、免疫原性ポリペプチドは、任意の腫瘍細胞又はがん細胞の抗原であり得る。任
意選択的に、腫瘍抗原又はがん抗原は、がん細胞の表面上に発現される。
【0153】
例示的ながん及び腫瘍細胞の抗原は、S.A.Rosenberg(Immunity
10:281(1991))に記載されている。その他の例証的ながん抗原及び腫瘍抗
原として、これらに限定されないが、BRCA1遺伝子産物、BRCA2遺伝子産物、g
p100、チロシナーゼ、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、LAGE、NY-E
SO-1、CDK-4、β-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205
、HPVE、SART-1、PRAME、p15、メラノーマ腫瘍抗原(Kawakam
i et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:
3515;Kawakami et al.(1994)J.Exp.Med.180:
347;Kawakami et al.(1994)Cancer Res.54:3
124)、MART-1、gp100 MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、C
EA、TRP-1、TRP-2、P-15、チロシナーゼ(Brichard et a
l.(1993)J.Exp.Med.178:489);HER-2/neu遺伝子産
物(米国特許第4,968,603号)、CA125、LK26、FB5(エンドシアリ
ン)、TAG72、AFP、CA19-9、NSE、DU-PAN-2、CA50、SP
an-1、CA72-4、HCG、STN(シアリルTn抗原)、c-erbB-2タン
パク質、PSA、L-CanAg、エストロゲン受容体、乳脂肪グロブリン、p53腫瘍
抑制因子タンパク質(Levine、(1993)Ann.Rev.Biochem.6
2:623);ムチン抗原(国際特許公開番号国際公開第90/05142号);テロメ
ラーゼ;核マトリックスタンパク質;前立腺酸性ホスファターゼ;パピローマウイルス抗
原;及び/又は現在知られている抗原、若しくは以下のがん、すなわちメラノーマ、腺が
ん、胸腺腫、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫)、肉腫、肺が
ん、肝臓がん、結腸がん、白血病、子宮がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頚が
ん、膀胱がん、腎臓がん、膵臓がん、脳がんに関連することが後に発見された抗原、及び
現在知られている、若しくは後に同定された任意のその他のがん若しくは悪性状態(例え
ば、Rosenberg、(1996)Ann.Rev.Med.47:481~91頁
を参照)が挙げられる。
【0154】
更なる代替案として、異種核酸は、インビトロ、エクスビボ又はインビボにおいて、細
胞中で産生されることが望ましい任意のポリペプチドをコードし得る。例えば、ウイルス
ベクターは、培養細胞中に導入され得、発現した遺伝子産物がそこから単離され得る。
【0155】
目的とする異種核酸(複数でもよい)には適切な制御配列が作動可能に付随し得ること
が、当業者に理解されよう。例えば、異種核酸には、発現制御エレメント、例えば転写/
翻訳制御シグナル、複製起点、ポリアデニル化シグナル、配列内リボソーム進入部位(I
RES)、プロモーター、及び/又はエンハンサー等と作動可能に付随し得る。
【0156】
更に、目的とする異種核酸(複数でもよい)の調節された発現が、例えば、オリゴヌク
レオチド、小分子、及び/又は特定の部位におけるスプライシング活性を選択的にブロッ
クするその他の化合物(例えば、国際公開第2006/119137号に記載される)の
存在又は非存在により、異なるイントロンの選択的スプライシングを調節することによっ
て、転写後レベルで達成され得る。
【0157】
種々のプロモーター/エンハンサーエレメントが、望まれるレベル及び組織特異的発現
に応じて使用され得ることを、当業者は理解するであろう。プロモーター/エンハンサー
は、望まれる発現パターンに応じて構成的又は誘導性であり得る。プロモーター/エンハ
ンサーは、先天的又は外来性であり得、天然配列又は合成配列であり得る。外来とは、転
写開始領域が導入される野生型宿主において、転写開始領域が見出されないことが意図さ
れている。
【0158】
特定の実施形態では、プロモーター/エンハンサーエレメントは、標的細胞又は治療さ
れる対象にとって先天的であり得る。代表的実施形態では、プロモーター/エンハンサー
エレメントは、異種核酸配列にとって先天的であり得る。プロモーター/エンハンサーエ
レメントは、それが目的とする標的細胞(複数でもよい)において機能するように一般に
選択される。更に、特定の実施形態では、プロモーター/エンハンサーエレメントは、哺
乳動物のプロモーター/エンハンサーエレメントである。プロモーター/エンハンサーエ
レメントは、構成的であっても誘導性であってもよい。
【0159】
誘導性発現制御エレメントは、異種核酸配列(複数でもよい)の発現に対して調節を提
供することが望ましい用途において一般的に有利である。遺伝子送達のための誘導性プロ
モーター/エンハンサーエレメントは、組織特異的又は選好的プロモーター/エンハンサ
ーエレメントであり得、筋特異的若しくは選好的(心筋、骨格筋、及び/又は平滑筋特異
的若しくは選好的を含む)、神経組織特異的若しくは選好的(脳特異的又は選好的を含む
)、眼特異的若しくは選好的(網膜特異的及び角膜特異的を含む)、肝臓特異的若しくは
選好的、骨髄特異的若しくは選好的、膵臓特異的若しくは選好的、脾臓特異的若しくは選
好的、及び肺特異的若しくは選好的プロモーター/エンハンサーエレメントを含む。その
他の誘導性プロモーター/エンハンサーエレメントとして、ホルモン誘導性エレメント及
び金属誘導性エレメントが挙げられる。例示的な誘導性プロモーター/エンハンサーエレ
メントとして、これらに限定されないがTetオン/オフエレメント、RU486誘導性
プロモーター、エクジソン誘導性プロモーター、ラパマイシン誘導性プロモーター、及び
メタロチオネインプロモーターが挙げられる。
【0160】
異種核酸配列(複数でもよい)が標的細胞内で転写され、次いで翻訳される実施形態で
は、特異的開始シグナルが、挿入されたタンパク質コード配列の効率的な翻訳のために一
般に含まれる。このような外因性の翻訳制御配列は、ATG開始コドン及び隣接配列を含
む場合もあり、天然及び合成のいずれでもあり得る様々な起源の配列であり得る。
【0161】
本発明によるウイルスベクター、カプシド、及び粒子は、分裂細胞及び非分裂細胞を含
む広範囲にわたる細胞中に異種核酸を送達する手段を提供する。いくつかの実施形態では
、例えば、インビトロでポリペプチドを製造するため、又はエクスビボでの遺伝子療法を
目的として、ウイルスベクターは、インビトロで目的とする核酸を細胞に送達するために
採用され得る。ウイルスベクターは、例えば、免疫原性若しくは治療用ポリペプチド又は
機能的RNAを発現させるために、それを必要とする対象に核酸を送達する方法において
更に有用である。このように、ポリペプチド又は機能的RNAは、対象においてインビボ
で産生され得る。対象ではポリペプチドが欠損しているので、そのポリペプチドを必要と
し得るが、ポリペプチドは遺伝子療法プロトコールにより対象に投与され得る。更に、対
象におけるポリペプチド又は機能的RNAの生成は何らかの有益な効果を付与し得るので
、この方法が実践され得る。
【0162】
本発明のウイルスベクター、カプシド、及び粒子は、培養細胞又は対象において、目的
とするポリペプチド又は機能的RNAを生成させるためにも使用され得る(例えば、スク
リーニング法と連携しながら、例えばポリペプチドを生成させるため又は対象に対する機
能的RNAの影響を観察するためのバイオリアクターとして対象を使用して)。
【0163】
一般的に、本発明のウイルスベクター、カプシド、及び粒子は、ポリペプチド又は機能
的RNAをコードする異種核酸を送達して、治療用ポリペプチド又は機能的RNAを送達
することが有利なあらゆる疾患状態を治療及び/又は予防するために採用され得る。例証
的な疾患状態として、これらに限定されないが、嚢胞性線維症(嚢胞性線維症膜貫通調節
タンパク質)及びその他の肺の疾患、血友病A(第VIII因子)、血友病B(第IX因
子)、サラセミア(β-グロビン)、貧血(エリスロポエチン)、及びその他の血液障害
、アルツハイマー病(GDF;ネプリライシン)、多発性硬化症(β-インターフェロン
)、パーキンソン病(グリア細胞株由来神経栄養因子[GDNF])、ハンチントン病(
反復を除去するためのRNAi)、筋萎縮性側索硬化症、癲癇(ガラニン、神経栄養因子
)、及びその他の神経学的障害、がん(エンドスタチン、アンジオスタチン、TRAIL
、FAS-リガンド、インターフェロンを含むサイトカイン;VEGF又は多剤耐性遺伝
子産物に対するRNAiを含むRNAi、mir-26a[例えば、肝細胞がんに関する
])、真正糖尿病(インスリン)、デュシェンヌ型(ジストロフィン、ミニジストロフィ
ン、インスリン様増殖因子I、サルコグリカン[例えば、α、β、γ]、ミオスタチンに
対するRNAi、ミオスタチンプロペプチド、フォリスタチン、アクチビンII型可溶性
受容体、抗炎症性ポリペプチド、例えばIκB優性変異体等、サルコスパン、ユートロフ
ィン、ミニユートロフィン、エクソンスキッピングを誘発するためのジストロフィン遺伝
子中のスプライスジャンクションに対するアンチセンス又はRNAi[例えば、国際公開
第2003/095647号を参照]、エクソンスキッピングを誘発するためのU7 s
nRNAに対するアンチセンス[例えば、国際公開第2006/021724号を参照]
、及びミオスタチン又はミオスタチンプロペプチドに対する抗体又は抗体断片)及びベッ
カー型を含む筋ジストロフィー、ゴーシェ病(グルコセレブロシダーゼ)、ハーラー病(
α-L-イズロニダーゼ)、アデノシンデアミナーゼ欠乏症(アデノシンデアミナーゼ)
、グリコーゲン貯蔵疾患(例えば、ファブリー病[α-ガラクトシダーゼ]及びポンペ病
[リソソーム酸α-グルコシダーゼ])、及びその他の代謝障害、先天性肺気腫(α1-
アンチトリプシン)、レッシュ・ナイハン症候群(ヒポキサンチングアニンホスホリボシ
ルトランスフェラーゼ)、ニーマン・ピック病(スフィンゴミエリナーゼ)、テイ・サッ
クス病(Tays Sachs disease)(リソソームヘキソサミニダーゼA)
、メープルシロップ尿症(分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ)、網膜変性疾患(及び眼と網
膜のその他の疾患;例えば、黄斑変性症におけるPDGF、及び/又は例えばI型糖尿病
における網膜障害を治療/予防するためのバソヒビン若しくはVEGFのその他の阻害剤
、若しくはその他の血管新生阻害剤)、固形臓器の疾患、例えば脳(パーキンソン病[G
DNF]、星状細胞腫[エンドスタチン、アンジオスタチン、及び/又はVEGFに対す
るRNAi]、膠芽腫[エンドスタチン、アンジオスタチン、及び/又はVEGFに対す
るRNAi]を含む)、肝臓、腎臓、うっ血性心不全又は末梢動脈疾患(PAD)を含む
心臓(例えば、プロテインホスファターゼ阻害剤I(I-1)及びその断片(例えば、I
1C)、serca2a、ホスホランバン遺伝子を調節するジンクフィンガータンパク質
、Barkct、P2アドレナリン受容体、p2アドレナリン受容体キナーゼ(BARK
)、ホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3キナーゼ)、S100A1、パルブアルブミ
ン、アデニリルシクラーゼ6型、短縮型の構成的に活性なbARKct等のGタンパク質
共役型受容体キナーゼ2型ノックダウンを有効にする分子;カルサルシン(calsar
cin)、ホスホランバンに対するRNAi;ホスホランバンS16E等のホスホランバ
ン阻害分子又はドミナントネガティブ分子等を送達することによる)、関節炎(インスリ
ン様増殖因子)、関節障害(インスリン様増殖因子1及び/又は2)、内膜過形成(例え
ば、enos、inosを送達することによる)、心臓移植物の生存の改善(スーパーオ
キシドジスムターゼ)、AIDS(可溶性CD4)、筋消耗(インスリン様増殖因子I)
、腎臓欠乏症(kidney deficiency)(エリスロポエチン)、貧血(エ
リスロポエチン)、関節炎(IRAP及びTNFα可溶性受容体等の抗炎症因子)、肝炎
(α-インターフェロン)、LDL受容体欠乏症(LDL受容体)、高アンモニア血症(
オルニチントランスカルバミラーゼ)、クラッベ病(ガラクトセレブロシダーゼ)、バッ
テン病、SCA1、SCA2、及びSCA3を含む脊髄性大脳性運動失調症(spina
l cerebral ataxias)、フェニルケトン尿症(フェニルアラニンヒド
ロキシラーゼ)、自己免疫疾患等が挙げられる。本発明は、移植の奏功率を高めるため、
及び/又は臓器移植若しくは補助療法の有害な副作用を低減させるために、臓器移植後に
更に使用され得る(例えば、サイトカイン生成を遮断するために免疫抑制剤又は阻害性核
酸を投与することによって)。別の例として、骨形態形成タンパク質(BNP2、7等、
RANKL及び/又はVEGFを含む)が、例えば、がん患者における破壊(break
)又は外科的除去後に、骨同種移植片と共に投与され得る。
【0164】
本発明は、誘導多能性幹細胞(iPS)を生成するためにも使用され得る。例えば、本
発明のウイルスベクターは、非多能性細胞、例えば成人線維芽細胞、皮膚細胞、肝細胞、
腎細胞、脂肪細胞、心臓細胞、神経細胞、上皮細胞、内皮細胞等に、幹細胞関連核酸(複
数でもよい)を送達するために使用され得る。
【0165】
幹細胞に関連する因子をコードする核酸は当技術分野で公知である。幹細胞及び多能性
に関連するかかる因子の非限定的な例として、Oct-3/4、SOXファミリー(例え
ば、SOX1、SOX2、SOX3、及び/又はSOX15)、Klfファミリー(例え
ば、Klf1、Klf2、Klf4、及び/又はKlf5)、Mycファミリー(例えば
、C-myc、L-myc、及び/又はN-myc)、NANOG、及び/又はLIN2
8が挙げられる。
【0166】
本発明は、癲癇、脳卒中、外傷性脳損傷、認知障害、行動障害、精神障害、ハンチント
ン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、並びに軸索/ニューロンの再
生若しくは修復から利益を得る、又はそれを必要とするその他のあらゆる神経変性状態を
治療及び/又は予防するためにも実践され得る。
【0167】
特定の実施形態では、本発明は、例えば幹細胞の分化及びリプログラミング因子、例え
ばFoxJl、Fox2、NeuroD2、NG2、若しくはOlig2等、及び/又は
マイクロRNA、例えばmiR-137、MiR124等、並びに任意のその他の因子、
又はニューロンの発達及び分化に関わるmiRNAの標的化された制御又は過剰発現によ
り、軸索再生及びニューロン修復を促進し、回路を復元し、及び/又は失われたニューロ
ンを補充するために、矯正療法として実践され得る。
【0168】
遺伝子移入は、疾患状態に対する療法を理解し提供するための実質的潜在的用途を有す
る。欠損した遺伝子が既知であり、クローニングされているいくつかの遺伝性疾患が存在
する。一般的に、上記疾患状態は2つのクラスに該当する:劣性様式で一般に遺伝する、
通常は酵素の欠乏状態、及び、調節タンパク質又は構造タンパク質が関与し得る、一般的
には優性様式で遺伝するバランスを欠いた状態。欠乏状態の疾患の場合、補充療法を目的
として罹患組織中に正常な遺伝子をもたらすため、並びにアンチセンス突然変異を使用し
て疾患に対する動物モデルを創出するために、遺伝子移入が使用され得る。バランスを欠
いた疾患状態の場合、遺伝子移入は、モデル系内で疾患状態を創出するために使用され得
るが、このモデル系は次に疾患状態に対抗する努力において使用され得る。従って、本発
明によるウイルスベクターは、遺伝疾患の治療及び/又は予防を可能にする。
【0169】
本発明によるウイルスベクター、カプシド、及び粒子は、インビトロ又はインビボで機
能的RNAを細胞に提供するためにも採用され得る。細胞内で機能的RNAを発現させる
と、例えば、細胞による特定の標的タンパク質の発現を低下させることができる。従って
、機能的RNAは、それを必要とする対象において特定のタンパク質の発現を減少させる
ために投与され得る。機能的RNAはまた、遺伝子発現及び/又は細胞の生理学を調節し
て、例えば、細胞若しくは組織培養系を最適化するために、又はスクリーニング法におい
て、インビトロで細胞に投与され得る。
【0170】
更に、本発明によるウイルスベクター、カプシド、及び粒子は、診断法及びスクリーニ
ング法においてその用途を見出し、それにより、目的とする核酸が、細胞培養系において
、或いはトランスジェニック動物モデルにおいて、一過的に又は安定に発現される。
【0171】
本発明のウイルスベクター、カプシド、及び粒子は、当業者にとって明らかなように、
これらに限定されないが、遺伝子の標的化、クリアランス、転写、翻訳等を評価するため
のプロトコールにおける使用を含む、様々な非治療目的で使用され得る。ウイルスベクタ
ー、カプシド、及び粒子は、安全性(伝播、毒性、免疫原性など)を評価する目的でも使
用され得る。かかるデータは、例えば、臨床的有効性の評価を行う前に、規制承認プロセ
スの一環として、米国食品医薬品局によって検討される。
【0172】
更なる態様として、本発明のウイルスベクター、カプシド、及び粒子は、対象において
免疫応答を生み出すために使用され得る。この実施形態によれば、免疫原性ポリペプチド
をコードする異種核酸配列を含むウイルスベクター、カプシド、及び粒子が対象に投与さ
れ得、能動免疫応答が、対象によって該免疫原性ポリペプチドに対して開始される。免疫
原性ポリペプチドは、本明細書において上記した通りである。いくつかの実施形態では、
防御的免疫応答が惹起される。
【0173】
或いは、ウイルスベクター、カプシド、及び粒子は、エクスビボで細胞に投与され得、
その変更された細胞が対象に投与される。異種核酸を含むウイルスベクター、カプシド、
及び粒子が細胞中に導入され、該細胞が対象に投与され、そこで免疫原をコードする異種
核酸が発現され、対象において該免疫原に対して免疫応答を誘発し得る。特定の実施形態
では、細胞は抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)である。
【0174】
「能動免疫応答」又は「能動免疫」は、「免疫原と遭遇した後の宿主組織及び細胞の関
与」により特徴付けられる。これは、抗体の合成又は細胞媒介型の反応性の発現、又はそ
の両方を引き起こす、リンパ細網組織における免疫担当細胞の分化及び増殖に関係する。
Herbert B.Herscowitz、Immunophysiology:Ce
ll Function and Cellular Interactions in
Antibody Formation、IMMUNOLOGY:BASIC PRO
CESSES 117(Joseph A.Bellanti ed.,1985)。換
言すれば、能動免疫応答は、感染又はワクチン接種により免疫原に曝露した後に宿主によ
って開始される。能動免疫は受動免疫と対比され得るが、受動免疫は、「能動的に免疫化
された宿主から非免疫宿主への、事前形成された物質(抗体、トランスファー因子、胸腺
移植片、インターロイキン-2)の移入」を介して獲得される(同文献)。
【0175】
「防御的」免疫応答又は「防御的」免疫とは、本明細書中で使用される場合、疾患を予
防する又はその発生率を低下させるという点で、免疫応答が対象に対して何らかの利益を
付与することを表す。或いは、防御的免疫応答又は防御的免疫は、疾患、特にがん又は腫
瘍の治療及び/又は予防において有用であり得る(例えば、がん若しくは腫瘍の形成を予
防することによって、がん若しくは腫瘍の退縮を引き起こすことによって、及び/又は転
移を予防することによって、及び/又は転移性小結節の増殖を予防することによって)。
防御的効果は、治療の利益がそのあらゆる不利益を凌駕する限り、完全であってもまた部
分的であってもよい。
【0176】
特定の実施形態では、異種核酸を含むウイルスベクター、カプシド、粒子、又は細胞は
、本明細書中に記載される免疫原的に有効な量で投与され得る。
【0177】
本発明のウイルスベクター、カプシド、及び粒子は、1つ若しくは複数のがん細胞抗原
(又は免疫学的に類似の分子)、又はがん細胞に対する免疫応答を生成する任意のその他
の免疫原を発現するウイルスベクターの投与によるがん免疫療法を目的として投与される
場合もある。例証として、例えばがんを有する患者を治療するため及び/又は対象におい
てがんの発症を予防するために、がん細胞抗原をコードする異種核酸を含むウイルスベク
ターを投与することによって、対象においてがん細胞抗原に対して免疫応答が生成され得
る。ウイルスベクターは、本明細書中で記載されるように、インビボで又はエクスビボ法
を使用することによって、対象に投与され得る。
【0178】
或いは、がん抗原は、ウイルスカプシドの一部として発現され得るか、さもなければウ
イルスカプシドと会合し得る(例えば、上記されるように)。
【0179】
別の代替案として、当技術分野で公知の任意のその他の治療用核酸(例えば、RNAi
)又はポリペプチド(例えば、サイトカイン)が、がんを治療及び/又は予防するために
投与され得る。
【0180】
本明細書中で使用する場合、用語「がん」は、腫瘍形成がんを包含し得る。同様に、用
語「がん性組織」は腫瘍を包含する。「がん細胞抗原」は腫瘍抗原を包含する。
【0181】
用語「がん」は、当技術分野で理解される意味、例えば、身体の離れた部位に伝播する
能力を有する(すなわち、転移する)組織の非制御増殖という意味を有する。例示的なが
んとして、これらに限定されないが、メラノーマ、腺がん、胸腺腫、リンパ腫(例えば、
非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫)、肉腫、肺がん、肝臓がん、結腸がん、白血病
、子宮がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頚がん、膀胱がん、腎臓がん、膵臓が
ん、脳がん、及び現在知られている又は後に同定された任意のその他のがん又は悪性状態
が挙げられる。代表的実施形態では、本発明は、腫瘍形成がんを治療及び/又は予防する
方法を提供する。
【0182】
用語「腫瘍」も、例えば、多細胞生物内の未分化細胞の異常な塊として、当技術分野で
理解されている。腫瘍は悪性又は良性であり得る。代表的実施形態では、本明細書におい
て開示される方法は、悪性腫瘍を予防及び治療するために使用される。
【0183】
用語「がんを治療すること」、「がんの治療」、及び同等の用語では、がんの重症度が
抑えられる、又は少なくとも部分的に排除されること、並びに/或いは疾患の進行が減速
及び/又は制御されること、並びに/或いは疾患が安定化することが意図されている。特
定の実施形態では、これらの用語は、がんの転移が予防され、又は抑えられ、又は少なく
とも部分的に排除されること、並びに/或いは転移性小結節の増殖が予防され、又は抑え
られ、又は少なくとも部分的に排除されることを表す。
【0184】
用語「がんの予防」又は「がんを予防すること」及び同等の用語では、方法が、がん発
症の発生率及び/又は重症度を少なくとも部分的に排除し、又は低下させ、及び/又は遅
延させることが意図されている。換言すれば、対象におけるがんの発症は、尤度若しくは
確率において低減され得る、及び/又は遅延され得る。
【0185】
特定の実施形態では、細胞は、がんを有する対象から取り出され、本発明によるがん細
胞抗原を発現するウイルスベクターと接触され得る。次いで、改変された細胞が対象に投
与され、それにより、がん細胞抗原に対する免疫応答が惹起される。この方法は、インビ
ボで十分な免疫応答を開始できない(すなわち、十分な量で促進抗体を産生できない)免
疫不全状態の対象で有利に使用され得る。
【0186】
免疫応答は、免疫調節性サイトカイン(例えば、α-インターフェロン、β-インター
フェロン、γ-インターフェロン、ω-インターフェロン、τ-インターフェロン、イン
ターロイキン-1α、インターロイキン-1β、インターロイキン-2、インターロイキ
ン-3、インターロイキン-4、インターロイキン5、インターロイキン-6、インター
ロイキン-7、インターロイキン-8、インターロイキン-9、インターロイキン-10
、インターロイキン-11、インターロイキン12、インターロイキン-13、インター
ロイキン-14、インターロイキン-18、B細胞増殖因子、CD40リガンド、腫瘍壊
死因子-α、腫瘍壊死因子-β、単球走化性因子タンパク質-1、顆粒球マクロファージ
コロニー刺激因子、及びリンホトキシン)によって増強され得ることが、当技術分野で公
知である。従って、免疫調節性サイトカイン(好ましくは、CTL誘導性サイトカイン)
が、ウイルスベクターと連携して対象に投与され得る。
【0187】
サイトカインは、当技術分野で公知の任意の方法によって投与され得る。外因性サイト
カインが対象に投与され得る、或いはサイトカインをコードする核酸が好適なベクターを
使用して対象に送達され、サイトカインがインビボで生成され得る。
【0188】
[対象、医薬製剤、及び投与様式]
本発明によるウイルスベクター、カプシド、及び粒子は、獣医学的用途及び医学的用途
の両方においてその使用を見出す。好適な対象としてトリ及び哺乳動物の両方が挙げられ
る。用語「トリ」として、本明細書中で使用する場合、これらに限定されないがニワトリ
、アヒル、ガチョウ、ウズラ、シチメンチョウ、キジ、オウム、インコ等が挙げられる。
用語「哺乳動物」として、本明細書中で使用する場合、これらに限定されないがヒト、ヒ
ト以外の霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ等が挙げられる。ヒト
対象として、新生児、乳幼児、未成年、成人、及び老人の対象が挙げられる。
【0189】
代表的実施形態では、対象は、本発明の方法「を必要としている」。
【0190】
特定の実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体中に本発明のウイルスベクタ
ー及び/又はカプシド及び/又は粒子、並びに任意選択的に、その他の薬剤、医薬品、安
定化剤、バッファー、担体、補助剤、希釈剤等を含む医薬組成物を提供する。注射剤の場
合、担体は一般的には液体である。その他の投与方法では、担体は固体又は液体のいずれ
かであり得る。吸入式投与の場合、担体は呼吸可能であり、任意選択的に、固体又は液体
の粒状形態であり得る。
【0191】
「薬学的に許容される」とは、毒性でない、さもなければ忌避されない材料であること
、すなわち該材料は、忌避される生物学的効果を一切引き起こすことなく対象に投与され
得ることを意味する。
【0192】
本発明の1つの態様は、インビトロで核酸を細胞に移入する方法である。ウイルスベク
ター、カプシド、又は粒子は、特定の標的細胞に適した標準的形質導入法に従って、しか
るべき感染多重度で細胞中に導入され得る。投与するためのウイルスベクターの力価は、
標的細胞の型及び数、並びに具体的なウイルスベクターに依存して変動し得、過度の実験
を実施することなしに当業者によって決定され得る。代表的実施形態では、少なくとも約
10感染単位、任意選択的に、少なくとも約10感染単位が、細胞に導入される。
【0193】
ウイルスベクター、カプシド、及び粒子が導入される細胞(複数でもよい)は、任意の
型の細胞であり得、これらに限定されないが、神経細胞(末梢神経系及び中枢神経系の細
胞、特に、ニューロン及びオリゴデンドロサイト等の脳細胞を含む)、肺細胞、眼の細胞
(網膜細胞、網膜色素上皮、及び角膜細胞を含む)、上皮細胞(例えば、腸及び呼吸器の
上皮細胞)、筋細胞(例えば、骨格筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、及び/又は横隔膜筋
細胞)、樹状細胞、膵臓細胞(島細胞を含む)、肝細胞、心筋細胞、骨細胞(例えば、骨
髄幹細胞)、造血幹細胞、脾臓細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、内皮細胞、前立腺細
胞、生殖細胞等が挙げられる。代表的実施形態では、細胞は任意の前駆細胞であり得る。
更なる可能性として、細胞は幹細胞(例えば、神経幹細胞、肝臓幹細胞)であり得る。な
お更なる代替案として、細胞はがん細胞又は腫瘍細胞であり得る。更に、細胞は、上記し
たように、あらゆる種に由来し得る。
【0194】
ウイルスベクター、カプシド、及び粒子は、改変された細胞を対象に投与する目的で、
インビトロで細胞中に導入され得る。特定の実施形態では、細胞は、対象からすでに取り
出されており、ウイルスベクター、カプシド、及び粒子がその細胞に導入され、次いで該
細胞が対象中に再び投与される。エクスビボで操作するために対象から細胞を取り出し、
その後該対象中に再び導入する方法は、当技術分野において公知である(例えば、米国特
許第5,399,346号を参照)。或いは、ウイルスベクター、カプシド、及び粒子は
、ドナー対象由来の細胞中に、培養細胞中に、又は任意のその他の好適な供給源に由来す
る細胞中に導入され得、該細胞は、それを必要とする対象(すなわち、「レシピエント」
対象)に投与される。
【0195】
エクスビボで核酸送達するための好適な細胞は上記した通りである。対象に投与する細
胞の投薬量は、対象の年齢、状態及び種、細胞の型、細胞により発現される核酸、投与様
式等に応じて変動する。一般的には、薬学的に許容される担体中、1用量当たり、少なく
とも約10~約10個の細胞、又は少なくとも約10~約10個の細胞が投与さ
れる。特定の実施形態では、ウイルスベクターで形質導入された細胞は、薬学的担体と組
み合わせて、治療有効量又は予防有効量で対象に投与される。
【0196】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターが細胞中に導入され、送達されたポリペプ
チドに対する免疫原性応答が惹起されるように、該細胞が対象に投与され得る(例えば、
導入遺伝子として、又はカプシド中で発現される)。一般的には、免疫原的に有効な量の
ポリペプチドを発現する細胞の量が、薬学的に許容される担体と組み合わせて投与される
。「免疫原的に有効な量」は、医薬製剤が投与される対象において、ポリペプチドに対す
る能動免疫応答を誘発するのに十分な発現後ポリペプチドの量である。特定の実施形態で
は、投薬量は、防御的免疫応答(上記定義の通り)を生成するのに十分である。免疫原性
ポリペプチドを投与することの利益がそのあらゆる不利益を凌駕する限り、付与される防
御の程度は、完全である必要も永続的である必要もない。
【0197】
本発明の更なる態様は、ウイルスベクター及び/又はウイルスカプシドを対象に投与す
る方法である。本発明によるウイルスベクター及び/又はカプシドを、それを必要とする
ヒト対象又は動物に投与することは、当技術分野で公知の任意の手段によって可能である
。任意選択的に、ウイルスベクター及び/又はカプシドは、薬学的に許容される担体にお
いて治療有効用量又は予防有効用量で送達され得る。
【0198】
本発明のウイルスベクター及び/又はカプシドは、免疫原性応答を惹起するために(例
えば、ワクチンとして)、更に投与され得る。一般的には、本発明の免疫原性組成物は、
薬学的に許容される担体と組み合わせて、免疫原的に有効な量のウイルスベクター及び/
又はカプシドを含む。任意選択的に、投薬量は、防御的免疫応答(上記定義の通り)を生
成するのに十分である。免疫原性ポリペプチドを投与することの利益がそのあらゆる不利
益を凌駕する限り、付与される防御の程度は、完全又は永続的である必要はない。対象及
び免疫原性は上記した通りである。
【0199】
対象に投与されるウイルスベクター及び/又はカプシドの投薬量は、投与様式、治療及
び/又は予防される疾患又は状態、個々の対象の状態、具体的なウイルスベクター又はカ
プシド、送達される核酸等に依存し、慣用的な様式で決定され得る。治療効果を実現する
ための例示的な用量は、少なくとも約10、10、10、10、10、10
、1011、1012、10、1014、1015形質導入単位(すなわち、ベクタ
ーゲノムコピー数)、任意選択的に約10~1013形質導入単位の力価である。
【0200】
特定の実施形態では、2回以上の投与(例えば、2回、3回、4回、又はそれ以上の投
与回数)が、例えば、1日に1回、1週間に1回、1ヶ月に1回、1年に1回等の様々な
間隔の期間にわたり、所望の遺伝子発現レベルを実現するために使用され得る。
【0201】
例示的な投与様式として、経口、直腸、経粘膜、鼻腔内、吸入(例えば、エアロゾルを
介して)、口腔(例えば、舌下)、膣、髄腔内、眼内、経皮、子宮内(又は胚内)、非経
口(例えば、静脈内、皮下、皮内、筋内[骨格筋、横隔膜筋、及び/又は心筋への投与を
含む]、皮内、胸膜内、脳内、経心室、及び関節内)、局部的(例えば、皮膚及び気道表
面を含む粘膜表面の両方に対して、並びに経皮投与)、リンパ内等、並びに直接的な組織
又は臓器への注射(例えば、肝臓、骨格筋、心筋、横隔膜筋、又は脳に対する)が挙げら
れる。投与は、眼に対してもなされ得る(例えば、硝子体中、網膜下、結膜下、眼球後、
前房内、及び/又は上脈絡膜の各経路による投与)。また、投与は腫瘍への投与でもあり
得る(例えば、腫瘍又はリンパ節の中又は近傍)。任意の所与のケースにおける最も好適
な経路は、治療及び/又は予防される状態の性質及び重症度、並びに使用されている具体
的なベクターの性質に依存する。
【0202】
標的組織への送達は、ウイルスベクター及び/又はカプシドを含むデポを送達すること
によっても実現され得る。代表的実施形態では、ウイルスベクター及び/又はカプシドを
含むデポは、骨格筋、心筋、及び/又は横隔膜筋の組織中に移植され、或いは組織が、ウ
イルスベクター及び/又はカプシドを含むフィルム又はその他のマトリックスと接触され
得る。かかる移植可能なマトリックス又は基材は、米国特許第7,201,898号に記
載されている。
【0203】
特定の実施形態では、本発明によるウイルスベクター及び/又はウイルスカプシドは、
骨格筋、横隔膜筋、及び/又は心筋に投与される(例えば、筋ジストロフィー、心疾患[
例えば、PAD又はうっ血性心不全]を治療及び/又は予防するために)。
【0204】
本発明は、全身送達用のアンチセンスRNA、RNAi、又はその他の機能的RNA(
例えば、リボザイム)を生成するためにも実践され得る。
【0205】
注射剤は、液体溶液若しくは懸濁液、注射前に液体中で溶液若しくは懸濁液にするのに
好適な固体形態、又はエマルジョンとして、従来の形態で調製され得る。或いは、本発明
のウイルスベクター及び/又はウイルスカプシドを、全身方式ではなく局所的に、例えば
、デポ又は徐放性製剤として投与し得る。更に、ウイルスベクター及び/又はウイルスカ
プシドは、外科的に移植可能なマトリックスに付着した状態で送達され得る(例えば、米
国特許公開第2004-0013645-A1号に記載される)。
【0206】
ウイルスベクター及びウイルスカプシドは、CNSの組織(例えば、脳、眼)に投与さ
れ得、本発明の非存在下で観察されるであろうものよりも広い分布のウイルスベクター又
はカプシドを有利にもたらし得る。
【0207】
特定の実施形態では、本発明の送達ベクターは、遺伝的障害、神経変性疾患、精神障害
、及び腫瘍を含む、CNSの疾患を治療するために投与され得る。
【0208】
CNSの例証的疾患として、これらに限定されないが、アルツハイマー病、パーキンソ
ン病、ハンチントン病、カナバン病、リー病、レフサム病、トゥレット症候群、原発性側
索硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性筋萎縮症、ピック病、筋ジストロフィ
ー、多発性硬化症、重症筋無力症、ビンスワンガー病、脊髄及び/又は頭部の損傷に起因
する外傷(例えば外傷性脳損傷)、テイ・サックス病、レッシュ・ナイハン病、癲癇、脳
卒中、脳梗塞、気分障害を含む精神障害(例えば、うつ病、双極性情動障害、遷延性情動
障害、二次的気分障害)、統合失調症、薬物依存症(例えば、アルコール依存症及びその
他の物質依存症)、神経症(例えば、不安症、強迫障害、身体表現性障害、解離性障害、
悲嘆、産後うつ病)、精神病(例えば、幻覚及び妄想)、認知症、パラノイア、注意欠陥
障害、精神性的障害、軸索/ニューロンの再生及び/又は修復から利益を得る、又はそれ
を必要とし得るあらゆる神経変性状態、認知障害、行動障害、睡眠障害、疼痛性障害、摂
食若しくは体重障害(例えば、肥満症、悪液質、神経性食欲不振症、及び過食症)、並び
にCNSのがん及び腫瘍(例えば、下垂体腫瘍)が挙げられる。
【0209】
CNSの障害として、網膜、後方路、及び視神経に関わる眼科障害(例えば、網膜色素
変性症、糖尿病性網膜症、及びその他の網膜変性疾患、ブドウ膜炎、加齢性黄斑変性症、
緑内障)が挙げられる。
【0210】
すべてではなくとも、ほとんどの眼科の疾患及び障害は、3種類の兆候、すなわち(1
)血管新生、(2)炎症、及び(3)変性のうち1つ又は複数と関連する。本発明の送達
ベクターは、抗血管新生因子;抗炎症性因子;細胞変性を遅延させ、細胞節約(cell
sparing)を促進し、又は細胞増殖を促進する因子、及び上記の組み合わせを送
達するために採用され得る。
【0211】
例えば、糖尿病性網膜症は血管新生によって特徴付けられる。糖尿病性網膜症は、眼内
(例えば、硝子体中)又は眼窩周囲(例えば、テノン下領域中)に、1つ又は複数の抗血
管新生因子を送達することによって治療され得る。1つ又は複数の神経栄養因子も、眼内
(例えば、硝子体内)又は眼窩周囲に同時送達され得る。
【0212】
ブドウ膜炎は炎症に関係する。1つ又は複数の抗炎症因子が、本発明の送達ベクターの
眼内(例えば、硝子体又は前房)投与によって投与され得る。
【0213】
比較として、網膜色素変性症は、網膜変性によって特徴付けられる。代表的実施形態で
は、網膜色素変性症は、1つ又は複数の神経栄養因子をコードする送達ベクターの眼内投
与(例えば、硝子体投与)によって治療され得る。
【0214】
加齢性黄斑変性症は、血管新生及び網膜変性の両方に関与する。この障害は、1つ若し
くは複数の神経栄養因子をコードする本発明の送達ベクターを眼内(例えば、硝子体内)
に、及び/又は1つ若しくは複数の抗血管新生因子をコードする本発明の送達ベクターを
眼内若しくは眼窩周囲(例えば、テノン下領域中)に投与することによって治療され得る
【0215】
緑内障は、眼圧の増加及び網膜神経節細胞の喪失によって特徴付けられる。緑内障の治
療には、本発明の送達ベクターを使用して、興奮毒性障害から細胞を保護する1つ又は複
数の神経保護剤の投与が含まれる。かかる薬剤として、眼内に、任意選択的に硝子体内に
送達されるN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニスト、サイトカイン
、及び神経栄養因子が挙げられる。
【0216】
その他の実施形態では、本発明は、発作を治療するため、例えば、発作の発現、発生率
、又は重症度を低下させるために使用され得る。発作の治療的処置の有効性は、行動的手
段(例えば、眼又は口の震え、ティック(tick))及び/又は電気記録手段(ほとん
どの発作は、特有の電気記録上の異常を有する)によって評価され得る。従って、本発明
は、長期にわたる複数の発作を特徴とする癲癇を治療するためにも使用され得る。
【0217】
1つの代表的実施形態では、ソマトスタチン(又はその活性断片)が、下垂体腫瘍を治
療するために、本発明の送達ベクターを使用して脳に投与される。この実施形態によれば
、ソマトスタチン(又はその活性断片)をコードする送達ベクターは、微量注入によって
下垂体中に投与される。同様に、かかる治療は、先端巨大症(下垂体からの異常な成長ホ
ルモン分泌)を治療するために使用され得る。ソマトスタチンの核酸配列(例えば、Ge
nBank受託番号J00306)及びアミノ酸配列(例えば、GenBank受託番号
P01166;プロセシングされた活性ペプチドのソマトスタチン-28及びソマトスタ
チン-14を含む)は、当技術分野で公知である。
【0218】
特定の実施形態では、ベクターは、米国特許第7,071,172号に記載されている
分泌シグナルを含み得る。
【0219】
本発明の代表的実施形態では、ウイルスベクター及び/又はウイルスカプシドは、CN
Sに(例えば、脳又は眼に対して)投与される。ウイルスベクター及び/又はカプシドは
、脊髄、脳幹(延髄、脳橋)、中脳(視床下部、視床、視床上部、下垂体、黒質、松果体
)、小脳、終脳(線条体、後頭葉、側頭葉、頭頂葉、及び前頭葉、皮質、基底核、海馬、
並びに扁桃体(portaamygdala)を含む大脳)、辺縁系、新皮質、線条体、
大脳、及び下丘中に導入され得る。ウイルスベクター及び/又はカプシドは、網膜、角膜
、及び/又は視神経等の眼の異なる領域にも投与され得る。ウイルス及び/又はカプシド
は、硝子体中、網膜下、結膜下、眼球後、前房内、又は上脈絡膜の各経路により投与され
得る。
【0220】
ウイルスベクター及び/又はカプシドは、送達ベクターをより分散させて投与するため
に、脳脊髄液中に(例えば、腰椎穿刺によって)送達され得る。ウイルスベクター及び/
又はカプシドは、血液脳関門が撹乱された状況(例えば、脳腫瘍又は脳梗塞)では、更に
CNSに対して血管内投与され得る。
【0221】
ウイルスベクター及び/又はカプシドは、これらに限定されないが、側脳室内、大槽内
、実質内、頭蓋骨内、髄腔内、眼球内、脳内、脳室内、静脈内(例えば、糖、例えばマン
ニトール等の存在下)、鼻腔内、耳内、眼内(例えば、硝子体内、網膜下、前房)、及び
眼窩周囲(例えば、テノン下領域)送達、並びに運動ニューロンへの逆行性送達を伴う筋
内送達を含む、当技術分野で公知の任意の経路によって、CNSの所望の領域(複数でも
よい)に投与され得る。
【0222】
特定の実施形態では、ウイルスベクター及び/又はカプシドは、CNS内の所望の領域
又はコンパートメントへの直接注射(例えば、定位注射)によって、液体製剤の状態で投
与される。その他の実施形態では、ウイルスベクター及び/又はカプシドは、所望の領域
への局部的適用によって、又はエアロゾル製剤の鼻腔内投与によって提供され得る。眼へ
の投与は、液滴の局部的適用によるものであり得る。更なる代替案として、ウイルスベク
ター及び/又はカプシドは、固体の持続放出製剤として投与され得る(例えば、米国特許
第7,201,898号を参照)。
【0223】
なおも更なる実施形態では、ウイルスベクターは、運動ニューロンに関わる疾患及び障
害(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS);脊髄性筋萎縮症(SMA)等)を治療及び
/又は予防するための逆行性輸送に使用され得る。例えば、ウイルスベクターは筋肉組織
に送達可能であり、そこからニューロン中に移動し得る。
【0224】
本発明を説明してきたが、同発明は以下の実施例においてより詳細に説明され、該実施
例は例証目的に限定して本明細書中に含まれるものであり、本発明に対して制限を設ける
ようには意図されない。
【0225】
ここで、本発明の主題は、添付の実施例を参照しながら以後より完全に記載されるが、
該実施例では、今ここに開示される主題の代表的な実施形態が示される。しかし、今ここ
に開示される主題は異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態
に限定されるものと解釈すべきでない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が網羅的且
つ完全であり、また今ここに開示される主題の範囲を当業者に十分に伝達するように提供
される。
【実施例0226】
下記の実施例は、例証的実施形態を提供する。下記の実施例の特定の態様は、実施形態
の実践において十分に機能するように、本発明者らにより見出された又は検討された技術
及び手順について開示されている。本開示及び当業者の一般的レベルに照らし、当業者は
、下記の実施例は、例示目的に限定されるように意図されていること、及び今ここに主張
される主題の範囲から逸脱せずに非常に多くの変更、修正、及び改変が採用され得ること
を認識する。
【0227】
[実施例1]
プラスミド。ヒトZKSCAN1及びHIPK3遺伝子の一部分を含有するプラスミド
を、本明細書に記載される実験で使用した。イントロン配列を増幅し、マルチクローニン
グサイトにより隔てられたプラスミドバックボーン中にクローニングすることによりクロ
ーニングベクターを構築した。EMCV-IRES及びGFP(直鎖状又はスプリット)
を含有するカセットを、これらのイントロン配列の間にクローン化した。使用したスプリ
ットGFPカセットは、circGFPプラスミドに由来した。更に、IRES-直鎖状
GFPカセットも、コントロールとしてプラスミドバックボーン中にクローン化した。す
べてのプラスミドを、CMVプロモーター、SV40ポリアデニル化シグナル、及びAA
V2ゲノムに由来する末端逆位反復配列を含有するバックボーン中で構築した。
【0228】
組換えAAVベクターの生成。最新のトリプルプラスミドトランスフェクションプロト
コールを組換えAAVベクターを生成するのに使用した。手短に述べると、トランスフェ
クション混合物は、(i)pXRヘルパープラスミド;(ii)アデノウイルスヘルパー
プラスミドpXX6-80;及び(iii)AAV2ゲノムに由来する末端逆位反復配列
に挟まれた、CMVプロモーターにより駆動される表示の導入遺伝子を含有した。ベクタ
ーの精製は、イオジキサノールグラジエント超遠心分離プロトコールを使用して実施し、
Zeba Spin Esaltingカラム(40K MWCO、Thermo Sc
ientific社)を使用して脱塩した。AAV2末端逆位反復配列と選択的に結合す
るように設計されたプライマー(フォアワード、5’-AAC ATG CTA CGC
AGA GAG GGA GTG G-3’、配列番号1;リバース、5’-CAT
GAG ACA AGG AAC CCC TAG TGA TGG AG-3’、配列
番号2)を使用する定量的PCR(Lightcycler 480、Roche Ap
plied Sciences社、Pleasanton、CA)により、Vg力価を取
得した。
【0229】
細胞培養。HEK293細胞を、10%FBS(Millipore-Sigma社)
及び1%ゲンタマイシン/カナマイシンが補充されたダルベッコ変法イーグル培地(Gi
bco社/Life technologies社)内で培養した。Huh7及びU87
細胞を5%FBS(Millipore-Sigma社)及び1%ゲンタマイシン/カナ
マイシンが補充されたダルベッコ変法イーグル培地(Gibco社/Life tech
nologies社)内で培養した。Neuro2A細胞を、10%FBS(Milli
pore-Sigma社)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンが補充されたMEM
(Gibco社/Life technologies社)内で培養した。すべての細胞
を37℃及び5%COにおいて維持した。
【0230】
蛍光顕微鏡検査。細胞を約70%の集密度において播種し、その後に表示のrAAVベ
クターを用いて形質導入を行った。細胞を形質導入後の6、4、4、又は13日目におい
て画像化した(HEK293、Huh7、U87、及びNeuro2A細胞のそれぞれに
ついて)。GFPライトキューブ(励起470nm、発光510nm)を備えたEVOS
FL落射蛍光細胞画像化システム(AMC社/Life technologies社
)を使用して細胞を画像化した。
【0231】
RNA抽出。Trizol試薬を使用し、製造業者のプロトコールに従って、RNAL
aterに保管された凍結組織又は接着細胞からRNAを抽出した。組織サンプルの場合
、Tissue Lyser II(Qiagen社)を使用してTrizol内で組織
を最初にホモジナイズした。
【0232】
ウェスタンブロッティング。ライセートを、1×Passive Lysis Buf
fer(Promega社、Madison、WI)を使用して回収し、-80℃で保管
した。サンプルを100℃まで加熱した後、10%トリス-グリシンゲル上で分離し、ニ
トロセルロース膜に転写した。5%脱脂乳を含むTBST中、4℃、オーバーナイトで膜
をブロックした。GFP(1:1000 Santa Cruz社、SC9996)又は
アクチン(1:10000、GeneTex社、GT5512)に対する一次抗体を用い
て膜をブロットした。安定化ペルオキシダーゼコンジュゲートヒツジ抗マウス抗体を、二
次抗体として使用した(1:3000、GE Healthcare社、NA931V)
。SuperSignal West Femto基質(Thermo Scienti
fic社/Life technologies社)を使用してブロットを現像し、定量
化するために、オートラジオグラフィーにより、又はChemiDoc XRS+(Bi
oRad社)上での化学発光高感度プロトコールにより可視化した。
【0233】
ノーザンブロッティング。10μgのRNAを変性バッファー(67%脱イオン化ホル
ムアミド、6.7%ホルムアルデヒド、1×MOPS泳動バッファー)中に再懸濁し、6
0℃で10分間インキュベートし、氷上で冷却した。サンプルを1.2%変性アガロース
ゲル上で分離し、その後Hybond N+膜に転写した(GE Healthcare
社)。放射標識されたプローブを、製造業者の指示に基づき、Prime-It IIラ
ンダムプライマーラベリングキット(Agilent Technologies社)を
使用して生成した。下記のGFP増幅プライマー(5’-GCATGCTCTTCTCA
GGAGCGCACCATCTTCTTCAAGGACGACGG-3’、配列番号3、
5’-GCATGCTCTTCTTACCTGGACGTAGCCTTCGGGCATG
GC-3’、配列番号4)を用いたPCRにより、プローブラベリング用のDNAテンプ
レートを生成した。放射標識されたプローブは、製造業者のプロトコールに基づき、il
lustra MicroSpin G-50カラム(GE Healthcare社)
を使用して精製した。次に、プローブを、Rapid-Hybバッファー(GE Hea
lthcare社)中で膜にハイブリダイズさせた。ブロットをフィルムへの曝露により
可視化し、放射標識シグナルを、PhosphorImagerスクリーンへの曝露によ
り数値化した。
【0234】
静脈内投与。この試験において報告された動物実験を、UNC施設内実験動物飼育使用
委員会(IACUC)により承認されたNIHガイドラインに基づき、繁殖及び維持した
C57/Bl6マウスを用いて実施した。尾静脈を通じて、5.5×1011vg/動物
で動物に静脈内注射した。注射後4週間目に、トリブロモエタノール(アバチン)(1.
25%溶液10g当たり0.2ml)を、腹腔内経路によりマウスに過量投与した。この
後、リン酸緩衝化生理食塩水の経心潅流が続いた。採取した臓器の一部を裁断してRNA
later溶液(Invitrogen社)中で保管し、残りは4%パラホルムアルデヒ
ド中で事後固定化した。
【0235】
ICV投与。この試験で報告された動物実験を、UNC施設内実験動物飼育使用委員会
(IACUC)により承認されたNIHガイドラインに基づき繁殖及び維持したC57/
Bl6マウスを用いて実施した。出生後第1~2日目の仔を氷上で2分間速やかに麻酔し
、定位固定のICV注射が後続した。特に、異なる導入遺伝子をパッケージングするベク
ターを、左側脳室(総容積<3μl)内に、KOPF-900小動物定位固定装置(KO
PF instruments社、Tujunga、CA)に連結した、26sゲージ針
を備えたHamilton700シリーズシリンジ(Sigma-Aldrich社、S
t.Louis、MO)を使用して注射した。すべての新生児注射を矢状静脈洞に対して
0.5mm、横静脈洞に対して2mm頭側、及び深さ1.5mmにおいて実施した。ベク
ターの投与後、マウスを加熱ランプ下で回復させ、床敷き内で摩擦した後、母親の下に再
配置した。注射後6週間目に、トリブロモエタノール(アバチン)(1.25%溶液10
g当たり0.2ml)を、腹腔内経路によりマウスに過量投与した。この後、リン酸緩衝
化生理食塩水中、4%パラホルムアルデヒドの経心潅流が続いた。脳を採取し、4%パラ
ホルムアルデヒド中で24時間、事後固定化した。
【0236】
組織の処理及び免疫組織化学。固定された組織を用い、Leica VT 1,200
S振動翼ミクロトーム(Leica Biosystems社、Buffalo Gro
ve、IL)を使用して、厚さ50μmの切片を取得した。GFP発現の免疫組織化学分
析を、製造業者のプロトコールに基づき、Vectastain ABC-HRPキット
(ウサギIgG PK-4001キット、Vector biolabs社、Burli
ngame、CA)を使用して実施した。Zeiss CLSM 700共焦点レーザー
走査型顕微鏡を、免疫染色後の異なる臓器の切片を画像化するのに使用した(Micro
scopy Services Laboratory社、UNC)。ImageJにお
いて定量化を実施した。切片を16ビット画像に変換し、反転させ、その後にローリング
ボール法によるバックグラウンド除去が続いた。各セクション、並びに無染色コントロー
ル切片についても、積分された密度及び面積を測定した。密度を面積に対して正規化し、
バックグラウンド値(無染色コントロールに由来)を差し引いた。
【0237】
ベクターゲノムの定量化。ゲノムDNAを、QiaAmp DNA FFPE組織キッ
ト(Qiagen社)を使用して固定された組織の切片から抽出した。ウイルスゲノムコ
ピー数を計算するために、CMVプロモーターに対して特異的なプライマー(5’-CA
AGTACGCCCCCTATTGAC-3’、配列番号5、及び5’-AAGTCCC
GTTGATTTTGGTG-3’、配列番号6)を用いて定量的PCRを実施した。ベ
クターゲノムコピー数を、ハウスキーピング遺伝子(プライマー5’-GGACCCAA
GGACTACCTCAAGGG-3’、配列番号7、及び5’-AGGGCACCTC
CATCTCGGAAAC-3’、配列番号8)としてのマウスラミンB2遺伝子座に対
して正規化した。
【0238】
硝子体内投与。この試験で報告された動物実験を、UNC施設内実験動物飼育使用委員
会(IACUC)により承認されたNIHガイドラインに基づき繁殖及び維持したC57
/Bl6マウスを用いて実施した。注射前に、1%アトロピン及び2.5%フェニレフリ
ンHCl(Akorn Inc社、Lake Forest、IL)眼科用溶液を用いて
眼を拡張させた。マウスを200mg/kgのトリブロモエタノール(アベルチン)を使
用して麻酔した。30G針を用いて眼の角膜輪部に小さな穴を設け、次に1μLのウイル
スを、Hamiltonガスタイトシリンジ上の34G針を用いてゆっくりと送達した。
注射後4週間目に、CO吸入によりマウスを屠殺した。位置決めを容易にするために、
各眼の最上部において角膜輪部にマーキングした。この後、4%パラホルムアルデヒド中
に眼球を摘出し、4℃、オーバーナイトでインキュベートした。角膜を眼杯から切り離し
、次に眼杯を30%スクロース中で3時間浸漬し、最適な切断温度化合物(Optima
l Cutting Temperature compound)(Sakura F
inetek社、Torrance、CA)中で凍害を防止し、20℃で保管した。明記
する場合、眼杯は、後のRNA抽出用としてRNAlater(Invitrogen社
)に保管した。
【0239】
組織免疫蛍光検査法。12μM網膜切片を、Leica CM3050クリオスタット
(Leica Biosystems Inc.社、Buffalo Grove、IL
)上で切断した。スライドを、次に1×PBS(Gibco社、Gaithersbur
g、MD)で3回リンスした。スライド上の網膜切片を、0.5%トリトンX-100及
び1%BSA(Fisher Scientific社、Waltham社、MA)で、
各1時間カバーした。ウサギ抗GFP(Invitrogen社、G10362)を、1
%BSA+0.3%トリトンX-100中で1:750に希釈し、切片と共に、4℃、オ
ーバーナイトでインキュベートした。スライドを1×PBSを用いてリンスし、Alex
a Fluorヤギ抗ウサギ488(1:500、Invitrogen社、A-110
08)と共に室温でインキュベートした。水洗後、封入剤を含有するProLong G
old DAPI(Life technologies社、Waltham、MA)を
適用し、スライドをカバーガラスで覆った。蛍光を、補正式総蛍光法(correcte
d total fluorescence method)によりImageJにおい
て数値化した。
【0240】
RT-PCR。5μgのRNAを、Turbo DNAフリーキット(Ambion社
/Life technologies社)を使用してDNase処理した。ナノグラム
量が等しい、DNase処理したRNAを、High Capacity RNA-to
-cDNAキット(Applied Biosystems社/Life techno
logies社)を使用してcDNAに変換した。この逆転写反応の生成物を、GFP(
5’-ctgcttgtcggccatgatatagacgttgtggc-3’、配
列番号9、5’-caagctgaccctgaagttcatctgcaccacc-
3’、配列番号10)及びグリセルアルデヒド3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GA
PDH)(5’-CCACTCCTCCACCTTTGAC-3’、配列番号11、5’
-ACCCTGTTGCTGTAGCC-3’、配列番号12)に対する遺伝子特異的プ
ライマーを使用するPCR(又は定量的PCR)用のテンプレートとして利用した。非定
量的PCR産物をアガロースゲル上で可視化した。RNAseR実験の場合、5マイクロ
グラムのRNAを、5ユニットのRNaseR(Epicentre社)を用いて、37
℃で10分間処理した。酵素を95℃で5分間不活性化した。上記のように、得られたR
NAをRT-PCR用として使用した。
【0241】
ここでは、アデノ随伴ウイルス(AAV)が、環状RNAをインビボで発現する導入遺
伝子カセットを送達するのに使用可能であることを示す。レポーターデザインは、ヒトZ
KSCAN1及びHIPK3遺伝子に由来するイントロン配列に基づいた。ZKSCAN
1のmRNAのエクソン2及び3、並びにHIPK3のmRNAのエクソン2は、自然に
バックスプライスされてcircRNAを形成する。レポーターコンストラクトを創出す
るために、内因的環化エクソンに付随するイントロン配列の一部分をベクター中に配置し
た。イントロン配列の間に、スプリットGFPオープンリーディングフレームを、環状R
NA内でのみ再構成されるように配置した。EMCV-IRESも、環状の状況内での翻
訳を推進するためにGFPの前に配置した。これを両方のイントロン配列を用いて実施し
、ZKSCAN1スプリットGFP及びHIPK3スプリットGFPコンストラクトを創
出した。IRES依存性翻訳用のコントロールとして、EMCV-IRES及びGFPか
らなるカセットを、バックスプライシングを促進するためのイントロン配列を欠いている
ベクター中にクローン化した(図1A~1B)。
【0242】
circRNA発現ベクターのインビトロでの特徴付け。異なるカセットを検証するた
めに、コンストラクトを組換えAAV2ベクター中にパッケージングしたが、その血清型
は培養中のほとんどの細胞に形質導入を引き起こす。様々な細胞型に形質導入を行うため
にウイルスベクターを使用した(図5)。これらのうち、U87ヒト神経膠芽腫細胞系が
最も強固な発現を示し、それを更なる分析用として選択した。蛍光画像では、直鎖状のコ
ントロールが最低の発現を示した一方、2つの環状カセットはほぼ等しい発現を示した(
図2A)。これをGFP発現のウェスタンブロット分析により検証した(図2B図2C
で定量化されている)。コンストラクトを更に特徴付けるために、RNAを細胞から抽出
し、ノーザンブロットを実施するのに使用した。GFP含有配列についてプローブしたと
き、IRES-GFPコンストラクトは、このコンストラクトから転写されたmRNAに
ついて期待されるサイズにおいて1つのバンドを示した。対照的に、以下の2つのスプリ
ットGFPベクターは2つのバンドを含有した:スプライシングされていないプレmRN
Aに対応するサイズにおいて1つのバンド、及びスプライシングされたcircRNAに
対応するサイズにおいて1つのバンド(図2D)。ブロットの定量化から、ZKSCAN
1スプリットGFP及びHIPK3スプリットGFPから生成したcircRNAのレベ
ルは有意に相違しないことが判明し、これはタンパク質レベルの結果を確認した(図2E
)。興味深いことに、circRNAのレベルは、IRES-GFPのRNAと有意に異
ならなかった。これは、直鎖状IRES含有RNAは、おそらくcap依存性の翻訳とI
RES媒介式の翻訳の間の干渉に起因して、環状RNAよりも低い効率で翻訳されたこと
を示唆している。これらの細胞培養実験から、本発明者らのベクターは、翻訳可能な環状
RNAを送達及び発現するために、AAV中に成功裏にパッケージングされ得ることの妥
当性が確認された。
【0243】
静脈内送達後のcircRNA発現。細胞培養物において認められる効果はインビボで
の事象を必ずしも再現するものではないことが公知である。従って、次に本発明者らのコ
ンストラクトをマウスにおいて試験した。コンストラクトを組換えAAV9ベクター中に
パッケージングしたが、その血清型はインビボで十分に形質導入を引き起こすことが公知
である。最初の試験として、マウスにウイルスベクターを静脈内注射し、心臓組織を分析
用に採取した。相対的レベル及びGFP発現の局在化を確認するために、GFPに対する
免疫組織化学染色を実施した。コントロールの直鎖状IRES-GFPコンストラクトで
は、心臓組織内でGFP陽性細胞が認められなかったが、それは驚くべき結果であった。
しかし、2つのcircRNAベクターは、心臓全体を通じて心筋細胞内での発現を示し
た。ZKSCAN1スプリットGFPは強固な発現を示し、多量のGFP陽性筋肉細胞が
認められた。HIPK3スプリットGFP組織も、ZKSCAN1イントロンを用いたと
きに認められた数よりは少ないものの、GFP陽性細胞を有した(図3A)。これは、染
色切片の平均ピクセル強度分析により確認された(図3B)。すべての動物は等しい数の
ベクターゲノムの投与を受けたので、発現の差異は投薬量に起因しないことが更に確認さ
れた(図3C)。
【0244】
RNAレベルで発現を評価するために、circRNAスプライスジャンクションをま
たいで増幅するプライマーを用いてRT-PCRを実施した(このプライマーはIRES
-GFPのRNAも増幅することに留意すること)。この分析によりIRES-GFPの
RNAについてバンドが検出されなかったが、スプリットGFPコンストラクトのいずれ
もcircRNAの発現を示した(図3D)。より高感度で発現を調べるために、同一サ
ンプルにおいて定量的RT-PCRを実施した。この分析により、IRES-GFPのR
NA発現は、極めて低レベルではあるものの検出可能であった。対照的に、ZKSCAN
1スプリットGFP及びHIPK3スプリットGFPは、心臓組織においてGAPDHと
同等又はそれ以上のレベルで強固な発現を示した。ZKSCAN1駆動コンストラクトか
らは、HIPK3駆動コンストラクトよりも27倍高い発現が認められた(図3E)。い
ずれのベクターも、等しい効率で転写及び翻訳されるはずなので、これは、ZKSCAN
1イントロン配列は、心臓組織内ではHIPK3イントロンよりも高い効率で環状化を推
進することを示唆する。最終的に、RNAse Rアッセイを実施し、スプリットGFP
ベクターの両方に対応するRT-PCRバンドは、その切断に対して抵抗性であり、その
環状化の証拠となった(図3F)。
【0245】
次に、これらのcircRNA発現ベクターが、その他の組織型において発現を示すか
調べたいと考えた。上記と同様の注射から、肝組織を採取及び処理した。GFPに対する
免疫組織化学染色を実施し、すべてのコンストラクトは肝臓内では極めて低い発現レベル
しか示さないことを明らかにした。3つのうち、ZKSCAN1スプリットGFPが最も
多くの発現を示し、次いでHIPK3スプリットGFP、次にIRES-GFPであった
。しかし、3つすべてはバックグラウンド近傍であったので、差異は大きくなかった(図
6)。AAV9は、肝臓において十分な形質導入を引き起こすことが公知のベクターであ
るので、この効果はベクターのトロピズムに起因するものではない。従って、これも本発
明者らの細胞培養データと一致した(図5、Huh7細胞)。これまでの研究では、内因
性のZKSCAN1-circRNAは肝臓内で発現していることを示しているので、こ
れはいささか驚くべき結果である。可能な説明として2つ挙げられる。第1に、おそらく
は環状化のために少量のイントロンしか使用できないことに起因して、ベクターは肝臓内
では十分に環状化できない可能性がある。第2に、これまでの研究では、その他のIRE
Sと比較して、EMCV-IRESの肝臓内発現は低いことが明らかにされているので、
このIRESは高レベルで翻訳を推進しない可能性がある。
【0246】
スプリットGFPベクターは正確に代表的なものである。この発現ベクターは環状生成
物を生み出すが、スプライシングされていないプレmRNAも、少なくとも細胞培養物中
に明らかなレベルでなおも見出されている(図2C)。更に、環特異的タンパク質発現の
みを示すために、これまでスプリットレポーターを使用してきたが、このシステムをその
他の目的とするタンパク質にまで拡張するには、非スプリットORFを使用することが有
利である。この場合、タンパク質が直鎖状のスプライシングされていないRNAからも発
現され得ることが可能となる。これを試験するために、GFPオープンリーディングフレ
ームがスプリットされていない、ZKSCAN1レポーターの別のバージョンを創出した
。このレポーターは、イントロン配列により挟まれたIRES-GFPカセットを含有す
る(図7A)。このベクターは、「ZKSCAN1 GFP」と名付けられ、初期細胞培
養試験用としてrAAV2ベクター中にパッケージングされた。U87細胞では、ZKS
CAN1 GFP及びZKSCAN1スプリットGFPに由来するGFP蛍光は、有意に
相違するようには見えなかった(図7B);これはウェスタンブロット分析により確認さ
れた(図7C図7Dで定量化されている)。両方のベクターに由来するRNAレベルが
有意に相違しなかったことも確認した(図7E)。circRNA及びタンパク質のレベ
ルは2ベクター間で等しいので、これはプレmRNAからの有意な翻訳上の寄付は存在し
ないことを示唆する。次に、HIPK3 GFPの非スプリットバージョンも創出した。
組換えAAV9ベクターを創出するために両方のコンストラクトを使用し、心臓組織での
発現を確認するために静脈内注射した。スプリットGFPコンストラクトを用いたときの
結果は、直鎖状GFPコンストラクトを用いたときの結果を再現した。ZKSCAN1
GFP及びHIPK3 GFPは、いずれも心臓内での強固な発現を示したが、ZKSC
AN1 GFPの発現レベルの方がより高かった(図7F)。これらコンストラクト内の
発現のレベル及び範囲は、スプリットバージョンとは目立つ程には相違せず、本発明者ら
のスプリットGFPレポーターベクターは代表的な発現を示すことを示唆している。
【0247】
神経系におけるcircRNA発現。本発明者らの細胞培養実験及びcircRNA発
現に関する公表されたデータの両方から、神経系の組織では、circRNAが多量に発
現していると思われる。従って、仔マウスの左脳室中にウイルスベクターを注射した。脳
を採取し、GFP発現を視覚化するために、再度免疫組織化学染色を実施した。コントロ
ールのIRES-GFPカセットは、脳内では発現を示さなかった(図4A)。スプリッ
トGFPベクターのいずれも、大脳皮質に限定されたものの、脳内での発現を示した。A
AV9ベクターは脳内で汎領域的に発現することが公知であるので、この領域特異的発現
は、circRNAに固有のものである可能性がある(環状化又はIRES媒介型の翻訳
に起因する)。更に、GFP発現は主にアストロサイト内であり、ニューロンでの発現は
ほとんど検出されない。これまでの実験とは対照的に、HIPK3スプリットGFP発現
組織は、脳内でZKSCAN1スプリットGFP発現組織よりも多くのGFP陽性細胞を
有した(図4B)。これは、環状化を推進するイントロン配列の能力に組織特異的な相違
がある証拠である。
【0248】
発現について試験した最後の組織は、眼の網膜であった。同一のrAAV9ベクターを
マウスの眼の硝子体に注射した。眼杯を除去し、網膜を切片化し、その後に発現を視覚化
するために免疫蛍光検査法が続いた。やはり、試験したすべてのその他のマウス組織と整
合して、IRES-GFPコンストラクトは検出可能なGFP発現を示さなかった。しか
し、ZKSCAN1スプリットGFP及びHIPK3スプリットGFPのいずれも、網膜
の長さ全体を通じて、広範囲にわたるGFPシグナルを示した(図4C図4Dで定量化
されている)。この場合、HIPK3-スプリットGFP発現はより多くの広がりを示し
た。この文脈において、GFP発現は、主として光受容体細胞及びレチノイド色素上皮(
retinoid pigment epithelium)内に見出され、その他の細
胞型には存在しなかった(挿入図を参照)。RNAを、定量的RT-PCR分析用として
第2の注射コホートから抽出した(図4E)。バックグラウンドより高いものの、IRE
S-GFPのRNAに対するシグナルは極めて低く、タンパク質レベルのデータを実証す
る。ZKSCAN1スプリットGFP及びHIPK3スプリットGFPは、IRES-G
FPと比較して、いずれも発現が増加する傾向を示したが、但し各状態における潜在的外
れ値に起因して有意ではなかった。
【0249】
これらの試験から、circRNAは様々な組織型において導入遺伝子を発現させるた
めに使用可能であることが明らかにされた。circRNAは主として神経系の組織にお
いて発現していることが明らかにされているが、本発明者らのカセットは心臓組織におけ
る発現も推進することができた。しかし、肝臓内では発現はほとんど認められなかった。
AAVベクターは肝臓を標的とすることが公知であるので、これには注目すべきである。
circRNA発現を示した組織内でさえも、細胞型特異性が認められた。例えば、脳内
では、本発明者らのベクターは、ニューロン中ではなく、アストロサイト中においてのみ
発現を示した。いくつもの研究が、ニューロンにおけるcircRNA発現を明らかにし
ており、また多くのcircRNAはニューロンプロセスにおいて機能すると考えられて
いるので、これは驚くべきことであった。従って、circRNAが発現することができ
る細胞型は、これまでに知られているものよりも幅広い可能性がある。更に、特定の細胞
型、具体的には光受容体及びレチノイド色素上皮も眼内での発現の標的となった。これら
の試験で使用された組換えAAVベクターは、動物のほとんどの組織全般において発現す
る血清型のベクターであるが、異なるトロピズムを有する多くのベクターが生成されてい
る。従って、特異性に関する2因子システムとして、異なるベクター内でこれらのcir
cRNA発現コンストラクトを試験することは興味深い。この試験で使用されたコンスト
ラクトは、相互に比較したとき、発現レベルにおいて組織特異的な相違を示したが、本研
究では2つの異なるイントロンの対についてのみ試験した。多様な研究において同定され
た多数の公知circRNAを踏まえ、その発現レベルや組織特異性について試験され得
るより多くのイントロンの対が存在する。従って、所望の組織や細胞型に対する標的を定
めた発現を用いたイントロンの対からなるツールキットを創出することが可能であり得る
【0250】
circRNAの際立った特性の1つとして、ほとんどの直鎖状mRNAと比較して、
その安定性の向上が挙げられる。本試験では、発現用として一時点においてのみ組織を採
取した。しかし、RNAの安定性が高まったことから、直鎖状のメッセージとの比較にお
いて、発現レベルを経時的に増加させることが可能である。従って、タイムコース試験が
将来的な試験において興味深いものとなる。更に、RNA安定性が向上すれば、強固な発
現に必要とされる用量を減らすことができる。発現には、高用量rAAVベクターが多く
の場合必要とされ、導入遺伝子発現のアブレーションを引き起こす炎症性応答を誘発する
おそれがあるので、これは特に重要である(ref)。従って、タイムコース試験に加え
て、用量比較試験が、circRNA発現ベクターの有用性を特徴付けるのに必要である
【0251】
本試験のために、circRNA発現のプロキシとしてGFP発現を利用した。但し、
使用されるウイルスIRESも、特定の細胞型において発現を制限し得る。従って、ci
rcRNA発現の程度は、ここで認められたものより大きい可能性がある。タンパク質レ
ベルの発現に対する異なるIRES配列の効果を更に試験することは興味深いものとなろ
う。タンパク質の発現は別として、機能的RNAを発現させるためにcircRNAベク
ターを使用する余地が存在する。様々な公知の非コーディングRNAが、lncRNAを
含め、本発明者らのシステムによりおそらくは発現され得る。更に、circRNAは、
デザイナーRNAを発現させるためのプラットフォームとしての潜在能力を有する。これ
には、デザイナーmiRNAスポンジが含まれ得る(特に、内因性のcircRNAがm
iRNAスポンジとして十分に特徴付けられているので)。更に、RNAは、様々な用途
において、RNA結合タンパク質に対する結合部位を有するように設計され得る。これら
を総じて考慮すると、circRNAは、様々な組織及び細胞型において、コーディング
RNA及び非コーディングRNAの両方を発現させるための新規方法を代表する。
【0252】
[実施例2]
バックスプライシングに対するイントロン要件を調査するために、両方のイントロン(
左側及び右側)上のAluエレメントとスプライス部位の間の距離が異なる一連のコンス
トラクトを創出した。最初に、配列を左側イントロンに挿入した;これは、塩基対形成す
る能力をほとんど有さない、GC含有量が内因性HIPK3イントロンのGC含有量と一
致するランダム化された配列から構成された。100bp~1.5kbpの一連のサイズ
を、スプライス部位から100nt離れたポイントにおいて挿入した。これらの挿入は大
きな効果を有した;100ヌクレオチドの挿入さえも環形成及びGFP発現を劇的に低下
させ、一方、長さがより長ければ発現は完全に消滅した(図8)。
【0253】
次に、ポリピリミジントラクトから325nt離れて位置する、左側イントロン中への
第2の一連の挿入を創出した。これらのコンストラクトも同一の効果を示し(図9A~9
F)、左側イントロン内のAluエレメントとスプライス部位の間の距離が増すと、環状
RNA形成にとって有害となることを示唆する。重要なこととして、HIPK3コンスト
ラクトの右側イントロンにランダム化した配列を挿入した(図10A~10F)。右側イ
ントロンに対する効果は、左側イントロンにおける効果とは完全に異なった。最大1.5
kbまでのすべての挿入は、環状RNAレベル又はGFP発現に対して効果を有すること
なく許容された。従って、所望の配列が、circRNA形成に影響を及ぼすことなく右
側イントロンに挿入可能であった。指摘すべき重要事項として、異なるエレメント、例え
ば環状RNAコンストラクトの右側イントロン内のその他の非コードRNAであるマイク
ロRNA等の多重化を可能にすることが挙げられる。
【0254】
次に、Aluエレメントとスプライス部位の間の距離を短縮する調査を行いたいと考え
た。従って、Aluとスプライス部位の間の配列がすべて欠損した左側及び右側イントロ
ン両方の欠損体を創出した。左側イントロンでは、すべてのポリピリミジントラクトを残
した。右側イントロンでは、コンセンサススプライスドナー部位まですべてを欠損させた
。別の約100ntを残して最低限度の欠損も設けた(左側イントロン内のポリピリミジ
ントラクトについてほぼ同一の量を残した)。左側イントロンの欠損は十分に許容され、
実際に、circRNAレベル及びGFP発現の2~3倍の増加が認められた。これは、
距離の増加は有害であったという結果と一致する(図8、9A~9F)。しかし、右側イ
ントロン内ですべて欠損するとcircRNA形成が不能となり、一方、右側イントロン
内の欠損が最低限度であれば、欠損がない場合と等しいcircRNA及びGFPレベル
をもたらした。従って、右側イントロンの場合、ある最低限度の距離が必要とされる(図
11A~11F)。
【0255】
右側イントロン内の配列が重要であるか;すなわち、距離が増加したために、又は含ま
れている実際の配列が理由で、最低限度のコンストラクトが機能したのかについても試験
した。従って、最低限度の欠損として、Aluとスプライス部位の間の距離を同一に保持
するが、異なる配列(イントロンの異なる部分に由来)を含む、右側イントロン内の別の
欠損を創出した。このコンストラクトは、オリジナルの最低限度の右側欠損と同様の挙動
を示し、無欠損コンストラクトに等しいGFP及びcircRNAレベルを有した(図1
3A~13D)。左側欠損及び最低限度の右側欠損はいずれも許容されるので、これら2
つの欠損を合理的に組み合わせてダブル欠損コンストラクトを作成することを決定した。
重要なこととして、このダブル欠損コンストラクトは、単一の欠損のいずれよりも良好で
あり、circRNA及びGFP発現量はオリジナルのコンストラクトよりも約5~6倍
高かった(図12A~12F)。これらの知見は、circRNA形成を支援することが
できる合成イントロンを設計するための根拠を提供する。
【0256】
ダブル欠損コンストラクトを用いることで、HIPK3イントロンから、左側イントロ
ン内の226nt及び右側イントロン内の497ntに分割された合計723ヌクレオチ
ドを欠損させることが可能であった。これらの結果に基づき、circRNA形成で使用
されるその他のイントロンにおいて類似した欠損を設けることができると仮定した。EP
HB4、ZKSCAN1、及びラッカーゼ2イントロンの対内に欠損を含む合成イントロ
ンの理論的デザインを示す(図14A~D)。これらの合成イントロンは、AAVベクタ
ー内にその他のゲノムエレメントを組み込むためのより多くの空間を提供することに留意
することもまた重要である。
【0257】
まとめとして、これらの基礎的試験は、小型の合成バックスプライシングイントロンは
、circRNAを効率的に生み出すために生成可能であることを実証する。更に、挿入
又は欠損を有する合成イントロンエレメントについて、その異なる順列の組み合わせが、
AAVベクターを使用して異なるゲノムエレメントの多重化した発現を実現するために生
成可能である。
【0258】
これまでの記載は本発明の例証であり、その制限とは解釈されない。本発明は、下記の
特許請求の範囲により定義され、特許請求の範囲の均等物も本明細書に含まれる。
【0259】
<代表的なイントロンのエレメント>
配列1:ZKSCAN1
左側
【化1】
(配列番号13)
【0260】
右側
【化2】
(配列番号14)
【0261】
配列2:HIPK3
左側
【化3】
(配列番号15)
【0262】
右側
【化4】
(配列番号16)
【0263】
<欠損を含む合成イントロンの配列>
>HIPK3ΔL
【化5】
(配列番号17)
【0264】
>HIPK3ΔR
【化6】
(配列番号18)
【0265】
>ZKSCAN1ΔL
【化7】
(配列番号19)
【0266】
>ZKSCAN1ΔR
【化8】
(配列番号20)
【0267】
>ラッカーゼ2ΔL
【化9】
(配列番号21)
【0268】
>ラッカーゼ2ΔR
【化10】
(配列番号22)
【0269】
>EPHB4ΔL
【化11】
(配列番号23)
【0270】
>EPHB4ΔR
【化12】
(配列番号24)
【0271】
<代表的なIRESエレメント>
配列1:脳心筋炎ウイルスIRES
【化13】
(配列番号25)
【0272】
配列2:ポリオウイルスIRES
【化14】
(配列番号26)
【0273】
<代表的なプロモーターエレメント>
CMVプロモーター
【化15】
(配列番号27)
【0274】
<代表的なポリA配列エレメント>
SV40 poly-A
【化16】
(配列番号28)
【0275】
これまでの記載は本発明の例証であり、その制限とは解釈されない。本発明は、下記の
特許請求の範囲により定義され、特許請求の範囲の均等物も本明細書に含まれる。
【0276】
【表1A】
【表1B】
【0277】
【表2】
【0278】
【表3】
【0279】
【表4】
【0280】
【表5A】
【表5B】
【0281】
【表6A】
【表6B】
図1A
図1B
図2A-2B】
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B-3C】
図3D-3F】
図4A
図4B-4C】
図4D-4E】
図5
図6
図7A
図7B-7C】
図7D-7E】
図7F
図8
図9A
図9B-9C】
図9D
図9E-9F】
図10A
図10B-10C】
図10D
図10E-10F】
図11A
図11B-11C】
図11D
図11E-11F】
図12A
図12B-12C】
図12D
図12E-12F】
図13A
図13B-13D】
図14A
図14B
図14C
図14D
【配列表】
2024023220000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共有結合的に閉環した環状RNA(circRNA)をコードする核酸分子であって、
a)非コーディングRNA又は翻訳可能なmRNAに転写され得る、目的遺伝子と、
b)前記目的遺伝子に付随するイントロンエレメントであって、共有結合的に閉環した環状RNAをもたらすために細胞スプライシング機構によりバックスプライスされる、イントロンエレメントと、
c)前記目的遺伝子から転写された翻訳可能なmRNAの翻訳を推進する配列内リボソーム進入部位(IRES)と、
d)5’非翻訳領域(UTR)の内部且つ前記目的遺伝子に付随するイントロンエレメントの外部に位置するプロモーター領域と、
e)3’UTRの内部且つ前記目的遺伝子に付随するイントロンエレメントの外部に位置する翻訳制御領域と
を含む核酸分子。
【外国語明細書】