(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002323
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20231228BHJP
B62D 21/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B62D25/20 C
B62D21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101440
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA31
3D203AA33
3D203BA12
3D203BB12
3D203BB16
3D203BB17
3D203BB35
3D203BB43
3D203BC14
3D203CA23
3D203CA24
3D203CA29
3D203CA53
3D203DA22
3D203DB05
3D203DB07
(57)【要約】
【課題】複数の前面衝突形態において車体前部構造で衝突エネルギーを吸収させることにより、キャビンおよび電池パックの変形を防止できる。
【解決手段】フロントサイドフレーム100とクロスメンバ110との結合部の車幅方向外側に設置された柱状フレーム400と、柱状フレーム400の車両上方側に載置され、結合された結合フレーム410と、結合フレーム410の車両前方側および車幅方向外側に結合された補強ブラケット420と、を備え、柱状フレーム400は、フロントサイドフレーム100とサブフレーム200とを車両上下方向に結合し、結合フレーム410は、柱状フレーム400とアッパーフレーム300とを車両上下方向に結合し、補強ブラケット420は、結合フレーム410とアッパーフレーム300の車両後部側とを結合する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部車幅方向両側において車両前後方向に延在されたフロントサイドフレームと、車幅方向両側において前記フロントサイドフレームの車両下方側に設けられ、車両前後方向に延在されたサブフレームと、車幅方向両側において前記フロントサイドフレームの車両上方側に設けられ、車両前後方向に延在されたアッパーフレームと、車両前方側において車幅方向に延在して前記フロントサイドフレームと結合するクロスメンバと、を備えた車体前部構造であって、
前記フロントサイドフレームと前記クロスメンバとの結合部の車幅方向外側に設けられ、車両上下方向に延在した柱状フレームと、
前記柱状フレームの車両上方側に載置され、車両前方側および車幅方向外側が前記柱状フレームと結合された結合フレームと、
前記結合フレームの車両前方側および車幅方向外側に結合し、車両後方側において車両後部上側に突出した形状を成す補強ブラケットと、
を備え、
前記柱状フレームは、前記フロントサイドフレームと前記サブフレームとを車両上下方向に結合し、前記結合フレームは、前記柱状フレームと前記アッパーフレームとを車両上下方向に結合し、前記補強ブラケットは、前記結合フレームと前記アッパーフレームの車両後部側とを結合することを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記補強ブラケットと、前記結合フレームと、前記アッパーフレームと、に囲まれた開口部が車幅方向外側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の前面衝突においては、乗員の傷害を低減させる手段として乗員搭乗空間であるキャビンを変形させない事が有効であり、そのための様々な手段が設けられている。
これらの手段のひとつとして、近年、キャビンより前方の構造体で衝突エネルギーを吸収する構造が普及している。
一方で、車両がハイブリッド車両や電気自動車等の場合には、車両の動力源としての電池パックが、キャビン下部の床面に搭載されている場合がある。
電池パックには車両を駆動させる電力が蓄えられており、車両の前面衝突等により電池パックに変形や断線が発生した場合には、急激な異常反応が生じる虞もある。
そのため、ハイブリッド車両や電気自動車等の場合には、電池パックを損傷させないように、キャビンを変形させない構造に対する重要度が高まってきている。
【0003】
上記の要求に伴って、ハイブリッド車両や電気自動車等の電池を搭載した車両において前面衝突の衝撃が車両に加わった場合には、例えば、衝撃によるフロントサイドメンバの変形を制御することにより、衝突エネルギーが吸収されるとともに車両前部に備えられた駆動用モータを保護する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の前面衝突においては、例えば、車両の正面全面が衝突体に衝突するフルラップ衝突、車両の正面片側が衝突体に衝突するオフセット衝突、あるいは、オフセット率が25%程度のスモールオーバラップ衝突等、複数の衝突形態を考慮する必要がある。
そのため、それぞれの衝突形態において、キャビンあるいは電池パックより前方の構造体で衝突エネルギーを吸収することにより、キャビンおよび電池パックを変形させない構造が求められている。
【0006】
特許文献1に記載の技術においては、クロスメンバに設けられた脆弱部により、車両側面のフロントサイドメンバが車幅方向内側に折れ曲がることにより、複数の衝突形態で発生する衝突エネルギーをより確実に吸収する構造が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、クロスメンバより後方に設けられているキャビンあるいは電池パックの保護についての衝撃吸収構造に関する考慮がされていないため、車両の両側面に設けられているフロントサイドメンバの脆弱部より後方に衝突エネルギーが伝達された場合には、キャビンあるいは電池パックを変形させてしまう虞があるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、複数の前面衝突形態においても、キャビンおよび電池パックの変形を防止できる車体前部構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、車両の前部の車幅方向両側において前記車両の前後方向に延在された一対のフロントサイドフレームと、前記フロントサイドフレームの車両上方側に設けられ、車両前後方向に延在された一対のアッパーフレームと、前記フロントサイドフレームの車両方側に設けられ、車両前後方向に延在された一対のサブフレームと、車両前方側において車幅方向に延在して前記フロントサイドフレームと結合するクロスメンバと、を備えた車体前部構造であって、前記フロントサイドフレームと前記クロスメンバとの結合部の車幅方向外側において、前記フロントサイドフレームと前記サブフレームとの車幅方向外側に上下方向に延在した柱状フレームと、車両前方側および車幅方向外側に面し、前記柱状フレームの車両上方側に結合された結合フレームと、車両前方側および車幅方向外側に面し、車両後方側において車両後部上側に突出した形状を成す補強ブラケットと、を備え、前記柱状フレームは、前記フロントサイドフレームとサブフレームとを車両上下方向に結合し、前記結合フレームは、前記柱状フレームと前記アッパーフレームとを車両上下方向に結合し、前記補強ブラケットは、前記結合フレームと前記アッパーフレームとを車両後部上側方向に結合している車体前部構造を提案している。
【0009】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記補強ブラケットと、前記結合フレームと、前記アッパーフレームと、に囲まれた開口部が車幅方向外側に形成されている車体前部構造を提案している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、複数の前面衝突形態においても、キャビンおよび電池パックの変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両を上方から見た概略図である。
【
図2】
図1に示された車体前部構造を、上方から見た概略図である。
【
図3】
図2に示されたTS部を上方から見た斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る車体前部構造におけるフルラップ衝突時の車体前部構造の変形を上方から見た平面図であり、(a)は衝突前の平面図であり、(b)および(c)は前面衝突時の変形を時系列で示した平面図である。
【
図5】
図4に示されたFW部を上方から見た斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る車体前部構造におけるスモールラップ衝突時の車体前部構造の変形を上方から見た平面図であり、(a)は衝突前の平面図であり、(b)および(c)は前面衝突時の変形を時系列で示した平面図である。
【
図7】
図6に示されたSW部を上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1から
図7を用いて、本実施形態に係る車体前部構造Sが適用された車両Vについて説明する。なお、図面に適宜示される矢印FORは、
図1に示す車両前方(正面)を示し、矢印UPは正面視上方を示し、矢印LHは正面視左方を示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、正面視での上下方向、正面視での前後方向、正面視での左右方向を示すものとする。
【0013】
<実施形態>
図1~
図3を用いて、車両Vに備えられた本実施形態に係る車体前部構造Sの構成について説明する。
【0014】
<車両Vの構成>
車両Vは、例えば、パワーユニット部20を駆動源とした電気自動車である。なお、車両Vは、例えば、エンジンとパワーユニット部20との複数の駆動源を有するハイブリッド電気自動車であってもよい。
【0015】
図1に示すように、車両Vは車体VSの内部に、前輪10と、パワーユニット部20と、電池パック30と、トーボード40と、トルクボックス50と、サイドシル60と、車体前部構造S(
図1の一点鎖線で囲まれた斜線部)と、を含んで構成されている。
【0016】
パワーユニット部20は、前輪10を駆動する図示しないモータ、変速機、クラッチ、駆動軸等で構成された駆動装置である。パワーユニット部20は、後述するフロントサイドフレーム100およびサブフレーム200に挟まれた空間に設置され、フロントサイドフレーム100の上面側に載置された状態で固定されている。
【0017】
電池パック30は、例えば、扁平した箱状に形成されている。電池パック30の内部には、多数の電池セルが直列に接続されており、パワーユニット部20へ供給する高電圧の出力が可能であり、車両の走行に必要な電力を蓄える。電池パック30は、後述するトルクボックス50およびサイドシル60等の頑強なフレームに囲まれた空間に設置されている。電池パック30は、例えば、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)等の車両で利用される。
【0018】
トーボード40は、キャビンCAの前方部の上下方向に立ち上げられ、車両Vの前輪駆動装置とキャビンCAとを隔てる隔壁である。トーボード40は、後述するフロントサイドフレーム100の車両後部側に溶接等により結合されている。
【0019】
トルクボックス50は、後述するフロントサイドフレーム100とサイドシル60との間に介在し、フロントサイドフレーム100とサイドシル60とを連結する部材である。トルクボックス50は、車両Vの底面に車幅方向に延在された骨格であり、トルクボックス50に対して、車幅方向それぞれのフロントサイドフレーム100の一端部に溶接等により結合されている。トルクボックス50は、高剛性を有する金属等により形成され、略矩形閉断面形状を成している。トルクボックス50は、電池パック30の前方に位置し、トルクボックス50の端部は、トルクボックス50に対して、車幅方向両側それぞれのサイドシル60の一端部と溶接等により結合されている。
また、トルクボックス50の前面側および上面側には、後述するトルクボックス50に対して、車幅方向それぞれのフロントサイドフレーム100の一端部が溶接等により結合されている。
なお、トルクボックス50よりも車両後方側は、保護領域PAであり、保護領域PAの上方に位置するキャビンCAおよび下方に位置する電池パック30の変形を防止する領域である。
【0020】
サイドシル60は、車幅方向両側の側方底面に設けられている。サイドシル60は、前後方向に延在された骨格であり、高剛性を有する金属等により形成され、略矩形閉断面形状を成している。サイドシル60は、保護領域PAの両側の底辺を構成している。
【0021】
ストラットタワー70(ストラットタワー70A、70B)は、サスペンションを取付ける車体側の支えであり、トーボード40の車両前方側に車幅方向両側に設けられている。ストラットタワー70は、車幅方向上部外側から、車両下部内側に向けて傾斜を有した骨格であり、高剛性を有する金属等により形成され、略矩形閉断面形状を成している。ストラットタワー70は、車両上部外側において、後述するアッパーフレーム300と結合している。
【0022】
車体前部構造Sは、トルクボックス50よりも前方の車両前部室FAの内部に構成されている。なお、車体前部構造Sの構成については後述する。
【0023】
<車体前部構造Sの構成>
本実施形態に係る車体前部構造Sについて、
図2および
図3を用いて説明する。
本実施形態に係る車体前部構造Sは、
図2に示すように、フロントサイドフレーム100(フロントサイドフレーム100A、100B)と、クロスメンバ110と、サブフレーム200(サブフレーム200A、200B)と、サブクロスメンバ210と、アッパーフレーム300(アッパーフレーム300A、300B)と、バンパビーム310と、柱状フレーム400(柱状フレーム400A、400B)と、結合フレーム410(結合フレーム410A、410B)と、補強ブラケット420(補強ブラケット420A、420B)と、を含んで構成されている。車体前部構造Sは、車幅方向において左右対称に構成されている。
【0024】
(フロントサイドフレーム100について)
フロントサイドフレーム100は、車両前部の車幅方向に一対となって設けられ、車両Vの前輪を駆動するパワーユニット部20の側面側に位置し、車両前後方向に延在している。フロントサイドフレーム100は、車両Vの骨格を構成し、高剛性を有する金属等により形成され略矩形閉断面形状を成している。フロントサイドフレーム100の車両前部下側面部には、後述するサブクロスメンバ210と溶接等により結合されている。また、フロントサイドフレーム100の車両後方端部は、トルクボックス50に溶接等により結合されている。
【0025】
(クロスメンバ110について)
クロスメンバ110は、フロントサイドフレーム100の車両前方端部を車幅方向に延在している。クロスメンバ110の両端部は、車幅方向両側のフロントサイドフレーム100と溶接等により結合されている。クロスメンバ110は、金属等により形成され、略矩形閉断面形状を成している。
【0026】
(サブフレーム200について)
サブフレーム200は、
図3に示すように、フロントサイドフレーム100の車両下方側の車両前後方向に延在し、車幅方向両側に一対となって設けられている。サブフレーム200は、車両前部の車幅方向両側において、高剛性を有する金属等により形成され、略矩形閉断面形状を成している。サブフレーム200の車両後方端部は、トルクボックス50に溶接等により結合されている。
【0027】
(サブクロスメンバ210について)
サブクロスメンバ210は、サブフレーム200の車両前方端部を車幅方向に延在している。サブクロスメンバ210は、金属等により形成され、略矩形閉断面形状を成している。サブクロスメンバ210は、車幅方向外側端部において車両上方側に向けて略直角に屈曲している。サブクロスメンバ210は、屈曲部の車両後方側面において、車幅方向両側のサブフレーム200の車両前方端部と溶接等により結合されている。また、サブクロスメンバ210の屈曲した車両上方側端部は、フロントサイドフレーム100と溶接等により結合されている。
【0028】
(アッパーフレーム300について)
アッパーフレーム300は、
図2に示すように、車幅方向両側に車両前後方向に延在され、フロントサイドフレーム100の車両上方側に設けられている。アッパーフレーム300は、金属等により形成され、略矩形閉断面形状を成している。アッパーフレーム300は、車両後方側において、トーボード40およびストラットタワー70と結合され、車両前方端部において、後述するバンパビーム310と結合されている。アッパーフレーム300には、車両前部外側の上方側面においては、略矩形平板形状のカバー320(カバー320A、320B)が一体化されて設けられている。
【0029】
(バンパビーム310について)
バンパビーム310は、車両前方端部に車幅方向に延在され、車両前方端部における骨格を構成している。バンパビーム310は、金属等により形成され、略矩形閉断面形状を成している。バンパビーム310は、車幅方向両側のアッパーフレーム300の車両前方端部において溶接等により結合されている。また、
図3に示すように、バンパビーム310の車両前部外側両側には、車両内側面に車両下方側に延材する支柱330(支柱330A、330B)が結合されている。そして、その支柱330の車両下方側は、フロントサイドフレーム100の車幅方向内側面と結合されている。
【0030】
車体前部構造Sには、車幅方向両側のフロントサイドフレーム100と、クロスメンバ110と、サブフレーム200と、サブクロスメンバ210と、アッパーフレーム300と、バンパビーム310と、トルクボックス50と、サイドシル60と、ストラットタワー70とが結合されていることにより、井桁形状を有する強固な骨格が形成されている。
【0031】
(柱状フレーム400について)
柱状フレーム400は、
図3に示すように、フロントサイドフレーム100とクロスメンバ110との結合部の車幅方向外側において、車両上下方向に延在した柱である。柱状フレーム400は、フロントサイドフレーム100とサブフレーム200とを車両上下方向に結合させる。具体的には、柱状フレーム400は、車両上方側における車幅方向内側面がフロントサイドフレーム100の車両外側面と溶接等により結合され、車両下方側において、車幅方向内側面がサブフレーム200の車両外側面と溶接等により結合されている。また、柱状フレーム400は、前面からのスモールオーバラップ衝突が発生した場合においても、柱状フレーム400が衝突を受け止めることができる位置に設けられている。具体的には、例えば、柱状フレーム400の車両前方側面の中心は、車両Vの車幅方向内側の25%以内の距離に位置するように構成されている。
【0032】
(結合フレーム410について)
結合フレーム410は、柱状フレーム400の車両上方側に載置され、車両前方側の下辺と車幅方向外側の下辺とが柱状フレーム400と結合されている。結合フレーム410は、車両前方側および車幅方向外側に面する略L字平板状を成している。結合フレーム410は、柱状フレーム400とアッパーフレーム300とを車両上下方向に結合させる。具体的には、結合フレーム410の車両上方側には、アッパーフレーム300の上方側面に結合されたカバー320が、結合フレーム410の車両上面側を覆うように結合している。また、結合フレーム410は、柱状フレーム400の車両上部前側と、車幅方向上部外側とに面一を成して結合されている。
【0033】
(補強ブラケット420について)
補強ブラケット420は、車両前方側および車幅方向外側に面する略L字平板状に形成され、車両後方側において車両後部上側に突出した形状を成している。補強ブラケット420は、結合フレーム410とアッパーフレーム300の車両後部側とを結合させる。具体的には、補強ブラケット420は、結合フレーム410の車両前方側と車幅方向外側とにおいて、溶接等により結合されている。また、補強ブラケット420は、ストラットタワー70とアッパーフレーム300との結合部に向かって突出し、アッパーフレーム300の車両後部外側面において結合されている。
また、補強ブラケット420の車両上方側には、結合フレーム410の車両後方側辺と、アッパーフレーム300の車両後部下側辺と、補強ブラケット420の車両上方側辺とに囲まれた開口部OA(開口部OAA、OAB)が形成されている。開口部OAは、側面視で略三角形が形成されており、脆弱部として設けられている。
【0034】
<作用・効果>
上記のように構成された本実施形態に係る車体前部構造Sは、フルラップ衝突の場合には、衝突物は、車両前面両側に衝突し、オーバーラップ衝突およびスモールオーバラップ衝突の場合には、衝突物は車両車幅方向どちらかの片側に衝突する。以下、
図4(a)~(c)および
図5を用いて、フルラップ衝突が発生した場合の作用について説明する。
【0035】
(フルラップ衝突の場合)
衝突物FBが車両Vにフルラップ衝突する場合には、
図4(a)に示すように、矢印Aに示す方向から車両Vに対して、衝突エネルギーが発生する。
【0036】
図4(b)に示すように、矢印Aで示す車両Vの前面からの衝突エネルギーは、フロントサイドフレーム100、サブフレーム200およびバンパビーム310を介してアッパーフレーム300に伝達される。
フロントサイドフレーム100には、矢印B(矢印BL、BR)に示す方向に、衝突エネルギーが車両前方側から後方側に向けて伝達される。そして、フロントサイドフレーム100の車両前方端部が衝突エネルギーにより圧壊されることにより、衝突エネルギーは、フロントサイドフレーム100の変形によって吸収される。
サブフレーム200には、矢印Bに示す方向に衝突エネルギーが伝達される。サブフレーム200の車両前方側には、サブクロスメンバ210が配設されているため、矢印Bに示す方向から伝達される衝突エネルギーは、サブクロスメンバ210を車両後方側に押し変形させながら、サブフレーム200を圧壊させる。そして、サブフレーム200の車両前方端部が衝突エネルギーにより圧壊されることにより、衝突エネルギーは、サブフレーム200の変形によって吸収される。
アッパーフレーム300には、矢印Bに示す方向に衝突エネルギーが伝達される。アッパーフレーム300の車両前方側には、バンパビーム310が配設されているため、矢印Bに示す方向から伝達される衝突エネルギーは、バンパビーム310を車両後方側に押し変形させながら、アッパーフレーム300を圧壊させる。そして、アッパーフレーム300の車両前方端部が衝突エネルギーにより圧壊されることにより、衝突エネルギーは、バンパビーム310およびアッパーフレーム300の変形によって吸収される。
【0037】
さらに衝突エネルギーが大きくなると、
図4(c)に示すように、フロントサイドフレーム100、サブフレーム200およびアッパーフレーム300は、矢印Bに示す方向から伝達される衝突エネルギーにより、柱状フレーム400の位置まで圧壊および変形が進む。
柱状フレーム400は、矢印C(矢印CL、CR)に示す方向から伝達される衝突エネルギーにより、フロントサイドフレーム100およびサブフレーム200を車両後方部に向けて押す。結合フレーム410は、車両前方側の上辺部が矢印Cに示す方向に変形し、車幅方向外側の上辺部が矢印D(矢印DL、DR)に示す方向に変形する。
図5に示すように、結合フレーム410の上部を覆っているカバー320は、結合フレーム410に押され、矢印E(矢印EL、ER)に示す方向に変形する。結合フレーム410の車両後方外側には、開口部OAが形成されている。衝突エネルギーが、矢印Cに示す方向から伝達されると、開口部OAは、周囲の略矩形閉断面形状と比較し脆弱であるため、開口部OAの車両上方側のアッパーフレーム300は、矢印Eに示す方向に変形する。また、開口部OAの車両下方側の補強ブラケット420は、矢印F(矢印FL、FR)に示す方向に変形する。結合フレーム410、補強ブラケット420およびアッパーフレーム300の変形によって、衝突エネルギーは吸収される。
また、フロントサイドフレーム100を矢印G(矢印GL、GR)に示す方向に伝達される衝突エネルギーおよびサブフレーム200を矢印H(矢印HL、HR)に示す方向に伝達される衝突エネルギーは、フロントサイドフレーム100およびサブフレーム200を変形させるとともに、トルクボックス50およびサイドシル60に分散される。アッパーフレーム300を矢印I(矢印IL、IR)に示す方向に伝達される衝突エネルギーは、アッパーフレーム300を変形させるとともに、トーボード40、トルクボックス50およびサイドシル60およびストラットタワー70に分散される。
以上のように、車幅方向両側のフロントサイドフレーム100と、クロスメンバ110と、サブフレーム200と、サブクロスメンバ210と、アッパーフレーム300と、バンパビーム310と、トルクボックス50と、サイドシル60と、ストラットタワー70とが結合されて井桁形状を有する強固な骨格を形成しているため、衝突エネルギーは、井桁形状の骨格に分散されるとともに、井桁形状の骨格の変形により吸収される。
【0038】
衝突エネルギーの入力が終了し、フロントサイドフレーム100、サブフレーム200およびアッパーフレーム300への衝突エネルギー伝達が終了することにより、車体前部構造Sの変形による衝突エネルギーの吸収は終了する。
【0039】
(スモールラップ衝突の場合)
一方、スモールラップ衝突の場合には、衝突物FBが車両車幅方向どちらかの片側に衝突し、矢印SAに示す方向から衝突エネルギーが発生する。以下、
図6(a)~(c)および
図7を用いて、車両Vの正面視で右側に衝突した場合を説明する。
衝突物FBが車両Vにスモールラップ衝突する場合には、
図6(a)に示すように、矢印SAに示す方向から車両Vに対して、衝突エネルギーが発生する。
【0040】
図6(b)に示すように、矢印SAで示す車両Vの前面からの衝突エネルギーは、柱状フレーム400A、結合フレーム410Aおよび補強ブラケット420Aを介して、フロントサイドフレーム100A、サブフレーム200Aおよびアッパーフレーム300Aに伝達される。
柱状フレーム400Aは、矢印SCに示す方向から伝達される衝突エネルギーにより、フロントサイドフレーム100Aおよびサブフレーム200Aを車両後方部に向けて押す。
図7に示すように、結合フレーム410Aは、車両前方側の上辺部が車両後方側に向けて変形し、また、車幅方向外側の上辺部が矢印SDに示す方向に変形する。結合フレーム410Aの上部を覆っているカバー320Aは、結合フレーム410Aに押され、矢印SEに示す方向に変形する。結合フレーム410Aの車両後方外側には、開口部OAAが形成されている。衝突エネルギーが、矢印SCに示す方向から伝達されると、開口部OAAは、周囲の略矩形閉断面形状と比較し脆弱であるため、開口部OAAの車両上方側のアッパーフレーム300Aは、矢印SEに示す方向に変形する。また、開口部OAAの車両下方側の補強ブラケット420Aは、矢印SFに示す方向に変形する。そして、衝突エネルギーは、結合フレーム410A、補強ブラケット420Aおよびアッパーフレーム300Aが変形することよって吸収される。
【0041】
さらに衝突エネルギーが大きい場合には、
図6(c)に示すように、フロントサイドフレーム100A、サブフレーム200Aおよびアッパーフレーム300Aは、矢印SBおよび矢印SCに示す方向から伝達される衝突エネルギーにより、柱状フレーム400Aの車両後方側まで圧壊および変形が進む。
フロントサイドフレーム100Aには、矢印SBに示す方向に、衝突エネルギーが車両前方側から後方側に向けて伝達される。クロスメンバ110は、フロントサイドフレーム100Aから矢印SJに示す方向に衝突エネルギーを伝達される。一方、フロントサイドフレーム100Aは、矢印SBに示す方向への変形が進むため、フロントサイドフレーム100Aとクロスメンバ110との結合部は、車両後方側に移動する。そのため、衝突が発生した反対側のフロントサイドフレーム100Bとクロスメンバ110との結合部には、矢印SK1に示す方向に引っ張る力が発生し、変形が始まる。そして、衝突エネルギーは、フロントサイドフレーム100Bが変形することによって吸収される。
サブフレーム200Aには、矢印SBに示す方向に、衝突エネルギーが車両前方側から後方側に向けて伝達される。サブクロスメンバ210には、サブフレーム200Aが矢印SBに示す方向の変形が進むため、サブフレーム200Aとサブクロスメンバ210との結合部は、車両後方側に移動する。そのため、衝突が発生した反対側のサブフレーム200Bとサブクロスメンバ210との結合部には、矢印SK3に示す方向に引っ張る力が発生し、変形が始まる。そして、衝突エネルギーは、サブフレーム200Bが変形することによって吸収される。
アッパーフレーム300Aには、矢印SBに示す方向に、衝突エネルギーが車両前方側から後方側に向けて伝達される。バンパビーム310には、アッパーフレーム300が矢印SBに示す方向の変形が進むため、アッパーフレーム300Aとバンパビーム310との結合部は、車両後方側に移動する。そのため、衝突が発生した反対側のアッパーフレーム300Bとバンパビーム310との結合部には、矢印SK2に示す方向に引っ張る力が発生し、変形が始まる。そして、衝突エネルギーは、アッパーフレーム300Bが変形することによって吸収される。
また、
図7に示すように、フロントサイドフレーム100Aを矢印SGに示す方向に伝達される衝突エネルギーおよびサブフレーム200Aを矢印SHに示す方向に伝達される衝突エネルギーは、フロントサイドフレーム100Aおよびサブフレーム200Aを変形させるとともに、トルクボックス50およびサイドシル60に分散される。アッパーフレーム300Aを矢印SIに示す方向に伝達される衝突エネルギーは、アッパーフレーム300Aを変形させるとともに、トーボード40には矢印SLに示す方向に、ストラットタワー70Aには矢印SMに示す方向に分散される。
また、フロントサイドフレーム100A、サブフレーム200Aおよびアッパーフレーム300Aを車両後方側へ押す力と、クロスメンバ110、サブクロスメンバ210およびバンパビーム310を車幅方向内側に引っ張る力と、トーボード40およびストラットタワー70Aに分散する力と、によって、車体前部構造Sには、衝突が発生した側の柱状フレーム400Aを中心に矢印SNに示す方向に押す回転力が発生する。
以上のように、車体前部構造Sは、井桁形状を有する強固な骨格を形成しているため、衝突エネルギーは、井桁形状の骨格に分散されるとともに、井桁形状の骨格の変形によって吸収される。また、車体前部構造Sは、衝突が発生した側の柱状フレーム400Aを中心に矢印SNの方向に回転するため、保護領域PAは、衝突物FBから離れる方向に回転する。
【0042】
衝突エネルギーの入力が終了し、柱状フレーム400A、結合フレーム410Aおよび補強ブラケット420Aへの衝突エネルギー伝達が終了することにより、車体前部構造Sの変形による衝突エネルギーの吸収は終了する。
【0043】
以上、本実施形態に係る車体前部構造Sは、車両前部の車幅方向両側において車両前後方向に延在されたフロントサイドフレーム100と、車幅方向両側においてフロントサイドフレーム100の車両下方側に設けられ、車両前後方向に延在されたサブフレーム200と、車幅方向両側においてフロントサイドフレーム100の車両上方側に設けられ、車両前後方向に延在されたアッパーフレーム300と、車両前方側において車幅方向に延在してフロントサイドフレーム100と結合するクロスメンバ110と、を備えた車体前部構造Sであって、フロントサイドフレーム100とクロスメンバ110との結合部の車幅方向外側において、車両上下方向に延在した四角柱状の柱状フレーム400と、柱状フレーム400の車両上方側に載置され、車両前方側および車幅方向外側が柱状フレーム400と結合されたL字形状の結合フレーム410と、結合フレーム410の車両前方側および車幅方向外側に結合され、車両後方側において車両後部上側に突出した形状を成すL字状の補強ブラケット420と、を備え、柱状フレーム400は、フロントサイドフレーム100とサブフレーム200とを車両上下方向に結合し、結合フレーム410は、柱状フレーム400とアッパーフレーム300とを車両上下方向に結合し、補強ブラケット420は、結合フレーム410とアッパーフレーム300の車両後部側とを結合している。
車体前部構造Sは、車両Vの前面衝突により発生した衝突エネルギーを、フルラップ衝突の場合には、フロントサイドフレーム100、サブフレーム200およびバンパビーム310を介してアッパーフレーム300に伝達し、フロントサイドフレーム100、サブフレーム200、サブクロスメンバ210、アッパーフレーム300、バンパビーム310を変形させる。さらに衝突エネルギーが大きくなると、柱状フレーム400、結合フレーム410および補強ブラケット420を介して、フロントサイドフレーム100、サブフレーム200およびアッパーフレーム300にさらに伝達する。柱状フレーム400は、フロントサイドフレーム100およびサブフレーム200を車両後方部に向けて押し変形させる。結合フレーム410は、車両前方側の上辺部が車両後方側に向けて変形し、結合フレーム410の上部を覆っているカバー320および補強ブラケット420を介してアッパーフレーム300を変形させる。スモールラップ衝突の場合には、車体前部構造Sは、衝突エネルギーを柱状フレーム400、結合フレーム410および補強ブラケット420を介して、フロントサイドフレーム100、サブフレーム200およびアッパーフレーム300に伝達する。そして、車体前部構造Sは、車幅方向両側のフロントサイドフレーム100と、クロスメンバ110と、サブフレーム200と、サブクロスメンバ210と、アッパーフレーム300と、バンパビーム310と、トルクボックス50と、サイドシル60と、ストラットタワー70とが結合されて井桁形状を有する強固な骨格に衝突エネルギーを分散させるとともに、井桁形状の骨格を変形させる。また、車体前部構造Sには、フロントサイドフレーム100、サブフレーム200およびアッパーフレーム300を車両後方側へ押す力と、クロスメンバ110、サブクロスメンバ210およびバンパビーム310を車幅方向内側に引っ張る力と、トーボード40およびストラットタワー70に分散する力と、によって、衝突が発生した側の柱状フレーム400を中心に矢印SNに示す方向に押す回転力が発生する。
つまり、車体前部構造Sは、柱状フレーム400、結合フレーム410および補強ブラケット420を介して、井桁形状を有する強固な骨格に分散させるとともに、井桁形状の骨格を変形させることによって、衝突エネルギーを吸収させることができる。したがって、車両前部室FAの内部において衝突エネルギーを吸収させることができる。また、スモールラップ衝突が発生した場合には、車体前部構造Sは、フロントサイドフレーム100、サブフレーム200およびアッパーフレーム300を車両後方側へ押す力と、クロスメンバ110、サブクロスメンバ210およびバンパビーム310を車幅方向内側に引っ張る力と、トーボード40およびストラットタワー70に分散する力と、によって、柱状フレーム400を中心に保護領域PAを衝突物FBから離れる方向に回転させることができる。
そのため、保護領域PAに存在するキャビンCAおよび電池パック30の変形を防止することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る車体前部構造Sは、補強ブラケット420と、結合フレーム410と、アッパーフレーム300と、に囲まれた開口部が車両側面側に形成されている。
車両前面からの衝突が発生した場合には、結合フレーム410は、衝突エネルギーによって、車両前方側の上辺部が車両後方側に向けて変形し、また、車幅方向外側の上辺部が車幅方向外側に向けて変形する。結合フレーム410の上部を覆っているカバー320は、結合フレーム410に押されることによって、矢印Eに示す方向に変形する。また、開口部OAは、周囲の略矩形閉断面形状と比較し脆弱であるため、開口部OAの車両上方側のアッパーフレーム300は、衝突エネルギーによって、車両下方側に変形する。また、開口部OAの車両下方側の補強ブラケット420は、衝突エネルギーによって、車幅方向外側に変形する。結合フレーム410、補強ブラケット420およびアッパーフレーム300の変形によって、衝突エネルギーは吸収される。
つまり、車体前部構造Sは、周囲の略矩形閉断面形状と比較し脆弱となる開口部OAを形成することによって、結合フレーム410、補強ブラケット420、アッパーフレーム300およびカバー320を変形させ、衝突エネルギーを吸収させることができる。したがって、車両前部室FAの内部において衝突エネルギーを吸収させることができる。
そのため、保護領域PAに存在するキャビンCAおよび電池パック30の変形を防止することができる。
【0045】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1;車両
10;前輪
20;パワーユニット部
30;電池パック
40;トーボード
60;サイドシル
70;ストラットタワー
100A;フロントサイドフレーム
100B;フロントサイドフレーム
110;クロスメンバ
200A;サブフレーム
200B;サブフレーム
210;サブクロスメンバ
300;アッパーフレーム
310;バンパビーム
320;カバー
330;支柱
400A;柱状フレーム
400B;柱状フレーム
410A;結合フレーム
410B;結合フレーム
420A;補強ブラケット
420B;補強ブラケット
CA;キャビン(乗員室)
FA;車両前部室
OA;開口部
PA;保護領域
S;車体前部構造