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特開2024-23230非天然NKG2D受容体に結合する非天然NKG2Dリガンドの改変A1-A2ドメイン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023230
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】非天然NKG2D受容体に結合する非天然NKG2Dリガンドの改変A1-A2ドメイン
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20240214BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C07K14/47 ZNA
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023188942
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2020551492の分割
【原出願日】2019-03-27
(31)【優先権主張番号】62/648,636
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518455871
【氏名又は名称】サイフォス、バイオサイエンシズ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】XYPHOS BIOSCIENCES INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(72)【発明者】
【氏名】キム、カマン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ランドグラフ、カイル イー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】非天然NKG2D受容体の非天然外部ドメインに特異的に結合するNKG2Dリガンドの改変α1-α2ドメインを含むポリペプチドを提供する。
【解決手段】本開示は、非天然NKG2D受容体の非天然外部ドメインに特異的に結合するNKG2Dリガンドの改変α1-α2ドメインを含むポリペプチドであって、異種分子がNKG2Dリガンドの改変1-2ドメインに結合しているポリペプチドの産生に関する。さらに、ポリペプチド、およびいくつかの実施態様において抗体または抗体のフラグメントを含む異種分子に結合したNKG2Dリガンドの改変α1-α2ドメインに関する。また、NKG2Dリガンドの非天然および天然型へのそれぞれ増強および減少した結合の組み合わせを提供するように操作されたNKG2D受容体の改変形態に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然α1-α2ドメインに対する少なくとも80%の同一性を含む天然NKG2Dリガンド分子の非天然改変α1-α2ドメインであって、改変α1-α2ドメインは天然α1-α2ドメインの5より多いアミノ酸が置換されており、改変は非天然NKG2D受容体外部ドメインに対するその結合親和性を増加させ、非天然NKG2D受容体の外部ドメインは、少なくとも1つの天然NKG2Dリガンドに対して、前記少なくとも天然NKG2Dリガンドに対する天然NKG2D受容体外部ドメインの親和性より低い親和性を有する、非天然改変α1-α2ドメイン。
【請求項2】
前記少なくとも1つの天然NKG2Dリガンドが、配列番号1~9のいずれか1つである、請求項1に記載の非天然改変α1-α2ドメイン。
【請求項3】
天然α1-α2ドメインから置換されるアミノ酸が、配列番号4の8位、80位、154位、155位、156位、157位、158位、および159位の3つ以上におけるものである、請求項1に記載の非天然改変α1-α2ドメイン。
【請求項4】
配列番号111、113、115および117からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の非天然改変α1-α2ドメイン。
【請求項5】
前記非天然NKG2D受容体外部ドメインが配列番号17のアミノ酸配列を含むが、その中で配列番号17の75位および122位におけるチロシンの両方が別のアミノ酸で置換されている、請求項1に記載の非天然改変α1-α2ドメイン。
【請求項6】
75位におけるチロシンを置換するアミノ酸がアラニンであり、かつ122位におけるチロシンを置換するアミノ酸がフェニルアラニンである、請求項5に記載の非天然改変α1-α2ドメイン。
【請求項7】
結合した原子または結合した異種分子をさらに含み、それによって二重特異性分子が作製される、請求項1に記載の非天然改変α1-α2ドメイン。
【請求項8】
前記異種分子がペプチドまたはポリペプチドである、請求項7に記載の非天然改変α1-α2ドメイン。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、抗体、抗体フラグメント、サイトカイン、リンホカイン、またはホルモンである、請求項8に記載の非天然改変α1-α2ドメイン。
【請求項10】
前記異種分子が、オリゴ糖、デンドリマー、ノッチン、ホルモン、核酸、または脂質である、請求項7に記載の非天然改変α1-α2ドメイン。
【請求項11】
請求項1に記載の非天然NKG2D受容体外部ドメインが結合されている哺乳動物細胞。
【請求項12】
前記哺乳動物細胞がリンパ球またはマクロファージである、請求項11に記載の哺乳動物細胞。
【請求項13】
前記哺乳動物細胞がヒトリンパ球またはヒトマクロファージである、請求項12に記載の哺乳動物細胞。
【請求項14】
前記非天然改変α1-α2ドメインが、結合された非天然NKG2D受容体外部ドメイ
ンを有する哺乳動物細胞と接触するときに、前記原子または異種分子が前記哺乳動物細胞に送達される、請求項7に記載の非天然改変α1-α2ドメイン。
【請求項15】
非天然NKG2D外部ドメインを発現する細胞の増強された活性化を示し、その結果、細胞に送達された天然NKG2Dリガンドまたは天然もしくはネイティブα1-α2ドメインを有する二重特異性分子が示すより高い標的細胞傷害能力を示す細胞をもたらす、請求項14に記載の非天然改変α1-α2ドメイン。
【請求項16】
天然NKG2D外部ドメインを発現する細胞の活性化より高い非天然NKG2D外部ドメインを発現する細胞の活性化を示し、その結果、天然NKG2D外部ドメインを発現する細胞が示すより高い標的細胞傷害能力を示す非天然NKG2D外部ドメインを発現する細胞をもたらす、請求項14に記載の非天然改変α1-α2ドメイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本出願は、一般に、非天然NKG2D受容体の非天然外部ドメインに特異的に結合するNKG2Dリガンドの改変α1-α2ドメインを含むポリペプチドであって、異種分子がNKG2Dリガンドの改変α1-α2ドメインに結合しているポリペプチドの産生に関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
NKG2Dは、ナチュラルキラー(NK)細胞および特定のT細胞の表面上にII型ホモダイマー内在性タンパク質として発現される活性化受容体である。主に、ストレスを受けている細胞の表面上で発現されているその8つの天然リガンドの1つに結合したときに、NKG2DはNK細胞を活性化して、ストレスを受けた細胞を傷害し、または、T細胞上の場合、リガンドに占有されたNKG2DはT細胞を同時刺激して、そのエフェクター機能を実行する。ヒト天然NKG2Dの外部ドメイン、その可溶性天然リガンドのいくつか、および、いくつかの場合、可溶性リガンドおよび受容体外部ドメインの結合複合体について、三次元構造が解明されている。NKG2Dリガンドのモノマーα1-α2ドメインは、天然NKG2Dホモダイマーの2つの外部ドメインに特異的に結合する。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、ポリペプチド、いくつかの実施態様において抗体または抗体のフラグメントを含む異種分子に結合したNKG2Dリガンドの改変α1-α2ドメインに関する。本発明はまた、NKG2Dリガンドの非天然および天然型へのそれぞれ増強および減少した結合の組み合わせを提供するように操作されたNKG2D受容体の改変形態に関する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1A】NKG2D.YA(配列番号18)およびNKG2D.AF(配列番号25)非天然バリアントとの天然NKG2D.wt外部ドメイン(配列番号17)のアラインメント。Y152およびY199の位置を示し、そして非天然バリアント中に存在する変異残基を灰色で強調する。
図1B】天然/野生型ULBP2のα1-α2ドメイン(配列番号4)およびULBP2の非天然バリアント(ULBP2.R80W(配列番号108)を含む)のアラインメント。非天然NKG2D.YAまたはNKG2D.AF受容体への非天然ULBP2バリアントの結合に重要な残基を灰色で強調する。NKG2D.YA(ULBP2.S3、配列番号127)またはNKG2D.AF(ULBP2.C、配列番号111;ULBP2.R、配列番号113;ULPB2.AA、配列番号115;およびULBP2.AB、配列番号117)に結合する直交性バリアントについて探索したM154-F159領域および残基R80の位置を示す。
図2】候補非天然Fc-eNKG2Dバリアント変異ならびに図3および4に示すサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定されたタンパク質凝集特性の概要。
図3】Akta HiLoad 16/600 Superdex 200カラム上で分析した非天然Fc-NKG2D融合タンパク質のサイズ排除クロマトグラフィー比較。適正にアセンブルされた材料の移動は、より高い体積で溶出される分離した対称的なピークによって例示され、一方、凝集した材料はより低い体積でより早く溶出された。改変の部位および性質を、アミノ酸番号Y152、Y199、または両方(図の上部から開始して、配列番号48、43、42、58、41、および40)によって示す。
図4】1つまたは2つのアミノ酸変化を有する非天然Fc-eNKG2Dバリアントのサイズ排除クロマトグラフィープロファイルを、Akta Superdex 200 Increase 10/300 GLカラム上で分析した。適正にアセンブルされた材料の移動は、より高い体積で溶出される分離した対称的なピークによって例示され、一方、凝集した材料(低振幅のブロードなピークまたは一連のピークによって特徴付けられる)はより低い体積で溶出された。括弧内の文字は、それぞれ152位および199位におけるアミノ酸を表す(上部から順に、配列番号57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、および40)。
図5】MICwed-MicAbodyまたはMIC25-MicAbodyのいずれかによる野生型NKG2D結合に対して規準化されたeNKG2Dバリアントの飽和百分率(Rmax)。野生型Fc-NKG2Dおよび各々のFc-eNKG2D受容体をAHCバイオセンサー上に捕捉し、次いで20nMのトラスツズマブ特異的MicAbodyに曝露した。解離速度をモニターし、そしてFc-eNKG2D融合物のRmax値を順位付けした。試験しなかったサンプル(nt)は、激しい凝集、または発現されたかもしくはSEC分画後に回収された材料の不十分な量のいずかに起因した。
図6】Fc-eNKG2D候補へのULBP2野生型、MICwed-およびMIC25-リツキシマブMicAbodyのELISA結合。キーを図の上部に示すが、曲線の多くは重なっているので、各々のグラフにおいて個々の曲線にラベルも付した。
図7図4に示すFc-eNKG2D ELISAについてのEC50値(nM)。nt=試験せず;nb=結合なし、または300nMでさえ非常に低い結合で、EC50値算出されず。
図8】野生型リガンドへのeNKG2Dバリアントの結合。野生型リガンド(全てFc融合物フォーマット)をOctet AHCバイオセンサー上に捕捉し、そしてFc融合物としての天然NKG2D、NKG2D.Y152A、またはeNKG2D5(Y152A/Y199F)の各々を300nMから0.41nMまでタイトレートした。最大結合応答をOctetによって定量した(各々グラフについて縦軸が異なることに留意のこと)。
図9】スポットELISAによって確認した、天然NKG2D.wtに対比してNKG2D.AFへの選択的結合を有するファージクローンをもたらしたULBP2内の組み合わせ変異のサブセット。変異を、選択されたファージの中での出現頻度によって順位付けした。
図10】Fc-NKG2D.AFへの選択的結合およびFc-NKG2D.wtへの低下または消失した結合を確認するための個別のファージバリアントのタイトレーションELISA。変異を図11において詳述する。
図11】リツキシマブ-MicAbodyフォーマットのNKG2D.AF選択されたULBP2バリアントの特異性は、定量的ELISAにより、NKG2D.AFへのその結合を保持した。各々のULBP2バリアントの特異的アミノ酸改変を、Fc-NKG2D.AF融合物に対比したFc-NKG2D.wt融合物へのその結合の比として示す。ULBP2のアミノ酸残基の位置は図1Bのものである。
図12】Y152A特異的ファージクローンをもたらした、ULBP2.R80W(図1B;配列番号108)の表示するアミノ酸位置における、選択された変異。
図13】NKG2D.wt、NKG2D.YA、およびNKG2D.AFに結合する4つの非天然α1-α2 ULBP2バリアントMicAbodyのELISAデータ。Fc-NKG2Dバリアントを捕捉物質として使用した。MicAbodyをHRP結合抗ヒトκ中でタイトレートし、そしてそれを用いて検出した。
図14-1】ULBP2.C(配列番号111)、ULBP2.R(配列番号113)、ULBP2.AA(配列番号115)、およびULBP2.AB(配列番号117)を、野生型ULBP2(配列番号4)と比較してのペプチド-MHCI免疫原性の変化について、NetMHC4.0 Serverを使用し、HLAスーパータイプ代表に対してクエリーして検討した。インプット配列については、各々のバリアントについての可変領域(図1Bにおけるアラインメントに従った残基154~159)を上流および下流の9残基とともに入れ(合計24残基)、9マーペプチドウインドウを予測免疫原性について検討した。濃灰色四角は、MHCIポケットに結合し(%順位<0.5を有するとして定義される)、それゆえ提示される強い見込みを有すると強く予測されるペプチドに対応する。淡灰色四角は、予測される弱い結合体に対応する(%順位<2)。さらなる詳細については実施例5本文を参照のこと。
図14-2】ULBP2.C(配列番号111)、ULBP2.R(配列番号113)、ULBP2.AA(配列番号115)、およびULBP2.AB(配列番号117)を、野生型ULBP2(配列番号4)と比較してのペプチド-MHCI免疫原性の変化について、NetMHC4.0 Serverを使用し、HLAスーパータイプ代表に対してクエリーして検討した。インプット配列については、各々のバリアントについての可変領域(図1Bにおけるアラインメントに従った残基154~159)を上流および下流の9残基とともに入れ(合計24残基)、9マーペプチドウインドウを予測免疫原性について検討した。濃灰色四角は、MHCIポケットに結合し(%順位<0.5を有するとして定義される)、それゆえ提示される強い見込みを有すると強く予測されるペプチドに対応する。淡灰色四角は、予測される弱い結合体に対応する(%順位<2)。さらなる詳細については実施例5本文を参照のこと。
図15-1】ULBP2.C(配列番号111)、ULBP2.R(配列番号113)、ULBP2.AA(配列番号115)、およびULBP2.AB(配列番号117)を、野生型ULBP2(配列番号4)と比較してのペプチド-MHCクラスII免疫原性の変化について、NetMHCII 2.3 Serverを使用し、HLA―DR、HLA-DQ、HLA-DPに対してクエリーして検討した。インプット配列については、各々のバリアントについての可変領域(図1Bにおけるアラインメントに従った残基154~159)を上流および下流の15残基とともに入れ(合計36残基)、15マーペプチドウインドウを予測免疫原性について検討した。濃灰色四角は、MHCIIポケットに結合し、それゆえ提示されそして免疫原性でありそうであると強く予測されるペプチドに対応する。淡灰色四角は、予測される弱い結合体に対応する。
図15-2】ULBP2.C(配列番号111)、ULBP2.R(配列番号113)、ULBP2.AA(配列番号115)、およびULBP2.AB(配列番号117)を、野生型ULBP2(配列番号4)と比較してのペプチド-MHCクラスII免疫原性の変化について、NetMHCII 2.3 Serverを使用し、HLA―DR、HLA-DQ、HLA-DPに対してクエリーして検討した。インプット配列については、各々のバリアントについての可変領域(図1Bにおけるアラインメントに従った残基154~159)を上流および下流の15残基とともに入れ(合計36残基)、15マーペプチドウインドウを予測免疫原性について検討した。濃灰色四角は、MHCIIポケットに結合し、それゆえ提示されそして免疫原性でありそうであると強く予測されるペプチドに対応する。淡灰色四角は、予測される弱い結合体に対応する。
図15-3】ULBP2.C(配列番号111)、ULBP2.R(配列番号113)、ULBP2.AA(配列番号115)、およびULBP2.AB(配列番号117)を、野生型ULBP2(配列番号4)と比較してのペプチド-MHCクラスII免疫原性の変化について、NetMHCII 2.3 Serverを使用し、HLA―DR、HLA-DQ、HLA-DPに対してクエリーして検討した。インプット配列については、各々のバリアントについての可変領域(図1Bにおけるアラインメントに従った残基154~159)を上流および下流の15残基とともに入れ(合計36残基)、15マーペプチドウインドウを予測免疫原性について検討した。濃灰色四角は、MHCIIポケットに結合し、それゆえ提示されそして免疫原性でありそうであると強く予測されるペプチドに対応する。淡灰色四角は、予測される弱い結合体に対応する。
図15-4】ULBP2.C(配列番号111)、ULBP2.R(配列番号113)、ULBP2.AA(配列番号115)、およびULBP2.AB(配列番号117)を、野生型ULBP2(配列番号4)と比較してのペプチド-MHCクラスII免疫原性の変化について、NetMHCII 2.3 Serverを使用し、HLA―DR、HLA-DQ、HLA-DPに対してクエリーして検討した。インプット配列については、各々のバリアントについての可変領域(図1Bにおけるアラインメントに従った残基154~159)を上流および下流の15残基とともに入れ(合計36残基)、15マーペプチドウインドウを予測免疫原性について検討した。濃灰色四角は、MHCIIポケットに結合し、それゆえ提示されそして免疫原性でありそうであると強く予測されるペプチドに対応する。淡灰色四角は、予測される弱い結合体に対応する。
図15-5】ULBP2.C(配列番号111)、ULBP2.R(配列番号113)、ULBP2.AA(配列番号115)、およびULBP2.AB(配列番号117)を、野生型ULBP2(配列番号4)と比較してのペプチド-MHCクラスII免疫原性の変化について、NetMHCII 2.3 Serverを使用し、HLA―DR、HLA-DQ、HLA-DPに対してクエリーして検討した。インプット配列については、各々のバリアントについての可変領域(図1Bにおけるアラインメントに従った残基154~159)を上流および下流の15残基とともに入れ(合計36残基)、15マーペプチドウインドウを予測免疫原性について検討した。濃灰色四角は、MHCIIポケットに結合し、それゆえ提示されそして免疫原性でありそうであると強く予測されるペプチドに対応する。淡灰色四角は、予測される弱い結合体に対応する。
図15-6】ULBP2.C(配列番号111)、ULBP2.R(配列番号113)、ULBP2.AA(配列番号115)、およびULBP2.AB(配列番号117)を、野生型ULBP2(配列番号4)と比較してのペプチド-MHCクラスII免疫原性の変化について、NetMHCII 2.3 Serverを使用し、HLA―DR、HLA-DQ、HLA-DPに対してクエリーして検討した。インプット配列については、各々のバリアントについての可変領域(図1Bにおけるアラインメントに従った残基154~159)を上流および下流の15残基とともに入れ(合計36残基)、15マーペプチドウインドウを予測免疫原性について検討した。濃灰色四角は、MHCIIポケットに結合し、それゆえ提示されそして免疫原性でありそうであると強く予測されるペプチドに対応する。淡灰色四角は、予測される弱い結合体に対応する。
図15-7】ULBP2.C(配列番号111)、ULBP2.R(配列番号113)、ULBP2.AA(配列番号115)、およびULBP2.AB(配列番号117)を、野生型ULBP2(配列番号4)と比較してのペプチド-MHCクラスII免疫原性の変化について、NetMHCII 2.3 Serverを使用し、HLA―DR、HLA-DQ、HLA-DPに対してクエリーして検討した。インプット配列については、各々のバリアントについての可変領域(図1Bにおけるアラインメントに従った残基154~159)を上流および下流の15残基とともに入れ(合計36残基)、15マーペプチドウインドウを予測免疫原性について検討した。濃灰色四角は、MHCIIポケットに結合し、それゆえ提示されそして免疫原性でありそうであると強く予測されるペプチドに対応する。淡灰色四角は、予測される弱い結合体に対応する。
図15-8】ULBP2.C(配列番号111)、ULBP2.R(配列番号113)、ULBP2.AA(配列番号115)、およびULBP2.AB(配列番号117)を、野生型ULBP2(配列番号4)と比較してのペプチド-MHCクラスII免疫原性の変化について、NetMHCII 2.3 Serverを使用し、HLA―DR、HLA-DQ、HLA-DPに対してクエリーして検討した。インプット配列については、各々のバリアントについての可変領域(図1Bにおけるアラインメントに従った残基154~159)を上流および下流の15残基とともに入れ(合計36残基)、15マーペプチドウインドウを予測免疫原性について検討した。濃灰色四角は、MHCIIポケットに結合し、それゆえ提示されそして免疫原性でありそうであると強く予測されるペプチドに対応する。淡灰色四角は、予測される弱い結合体に対応する。
図15-9】ULBP2.C(配列番号111)、ULBP2.R(配列番号113)、ULBP2.AA(配列番号115)、およびULBP2.AB(配列番号117)を、野生型ULBP2(配列番号4)と比較してのペプチド-MHCクラスII免疫原性の変化について、NetMHCII 2.3 Serverを使用し、HLA―DR、HLA-DQ、HLA-DPに対してクエリーして検討した。インプット配列については、各々のバリアントについての可変領域(図1Bにおけるアラインメントに従った残基154~159)を上流および下流の15残基とともに入れ(合計36残基)、15マーペプチドウインドウを予測免疫原性について検討した。濃灰色四角は、MHCIIポケットに結合し、それゆえ提示されそして免疫原性でありそうであると強く予測されるペプチドに対応する。淡灰色四角は、予測される弱い結合体に対応する。
図15-10】ULBP2.C(配列番号111)、ULBP2.R(配列番号113)、ULBP2.AA(配列番号115)、およびULBP2.AB(配列番号117)を、野生型ULBP2(配列番号4)と比較してのペプチド-MHCクラスII免疫原性の変化について、NetMHCII 2.3 Serverを使用し、HLA―DR、HLA-DQ、HLA-DPに対してクエリーして検討した。インプット配列については、各々のバリアントについての可変領域(図1Bにおけるアラインメントに従った残基154~159)を上流および下流の15残基とともに入れ(合計36残基)、15マーペプチドウインドウを予測免疫原性について検討した。濃灰色四角は、MHCIIポケットに結合し、それゆえ提示されそして免疫原性でありそうであると強く予測されるペプチドに対応する。淡灰色四角は、予測される弱い結合体に対応する。
図15-11】ULBP2.C(配列番号111)、ULBP2.R(配列番号113)、ULBP2.AA(配列番号115)、およびULBP2.AB(配列番号117)を、野生型ULBP2(配列番号4)と比較してのペプチド-MHCクラスII免疫原性の変化について、NetMHCII 2.3 Serverを使用し、HLA―DR、HLA-DQ、HLA-DPに対してクエリーして検討した。インプット配列については、各々のバリアントについての可変領域(図1Bにおけるアラインメントに従った残基154~159)を上流および下流の15残基とともに入れ(合計36残基)、15マーペプチドウインドウを予測免疫原性について検討した。濃灰色四角は、MHCIIポケットに結合し、それゆえ提示されそして免疫原性でありそうであると強く予測されるペプチドに対応する。淡灰色四角は、予測される弱い結合体に対応する。
図15-12】ULBP2.C(配列番号111)、ULBP2.R(配列番号113)、ULBP2.AA(配列番号115)、およびULBP2.AB(配列番号117)を、野生型ULBP2(配列番号4)と比較してのペプチド-MHCクラスII免疫原性の変化について、NetMHCII 2.3 Serverを使用し、HLA―DR、HLA-DQ、HLA-DPに対してクエリーして検討した。インプット配列については、各々のバリアントについての可変領域(図1Bにおけるアラインメントに従った残基154~159)を上流および下流の15残基とともに入れ(合計36残基)、15マーペプチドウインドウを予測免疫原性について検討した。濃灰色四角は、MHCIIポケットに結合し、それゆえ提示されそして免疫原性でありそうであると強く予測されるペプチドに対応する。淡灰色四角は、予測される弱い結合体に対応する。
図16】天然NKG2D.wt、NKG2D.YA、およびNKG2D.AFへの、ULBP2.wt(野生型)、ULBP2.R80W(野生型NKG2Dに対する増強された親和性を有する)、ULPB2.S3(NKG2D.YA選択された直交性バリアント)、またはULBP2.R(NKG2D.AF選択された直交性バリアント)を含むリツキシマブ-MicAbodyのELISA測定された結合。図16A:ELISA曲線。より高い濃度でのいくつかのアッセイについての458nm吸収の低下は、TMB-Ultra ELISA発色試薬の沈殿に起因して、より高い濃度の高親和性係合物についてしばしば見られるアーチファクトである。図16B図16Aにおける曲線に基づいてGraphPad Prismにおいて決定されたEC50値(nMで報告する)。nd=増加した濃度と結合との間の関係の欠如に起因して決定されず。
図17】形質導入されていないかまたは、CD8aヒンジ/膜貫通ドメインならびに細胞内4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達ドメインからなるNKG2D.wt、NKG2D.YA、もしくはNKG2D.AF CAR構築物を用いて形質導入されたかのいずれかのCD8エフェクター細胞を用いたインビトロ細胞溶解アッセイ。標的細胞にカルセインを前負荷し、そして漸増するエフェクター対標的(E:T)比でエフェクター細胞に曝露した。放出されたカルセインを5時間後に定量した。図17A:HeLa細胞の細胞溶解。図17B:表面ULBP1を過剰発現するようにトランスフェクトされたHeLa細胞の溶解。図17C:その表面上に非天然ULBP2.Rを発現するHeLa細胞の細胞溶解。エラーバーは、実験における技術的複製物の標準偏差に対応する。
図18】NKG2D-CAR CD8 T細胞による腫瘍株のMicAbody指図細胞溶解。図18A:Ramos細胞(リツキシマブの標的であるCD20を発現する)にカルセインを前負荷し、そして漸増濃度のULBP2.S2またはULBP2.Rリツキシマブ-Micabodyのいずれかとともに20:1のE:T比でNKG2D.AF-またはNKG2D.YA-CAR細胞に曝露した。2時間の共インキュベーションの後に細胞溶解のレベルを定量した。図18B:ヒトHer2を発現するようにトランスフェクトしたマウス腫瘍株CT26を、Ramos細胞と並行して細胞溶解標的として使用した。NKG2D.AF-CAR CD8 T細胞に飽和濃度(5nM)のリツキシマブ-ULBP2.R、トラスツズマブ-ULBP2.R、または2つのMicAbodyの等モル混合物を前付与した。非結合MicAbodyを洗浄によって除去し、そしてCD8細胞を標的細胞に2つの異なるE:T比で添加した。2時間後に細胞溶解を測定した。
【発明を実施するための形態】
【0005】
発明の詳細な説明
免疫系のナチュラルキラー(NK)細胞および特定の(CD8+αβおよびγδ)T細胞は、ヒトおよび他の哺乳動物において、新生物および感染細胞に対する第一線の生得的な防御として重要な役割を有している(Cerwenka, A., and L.L. Lanier. 2001. NK cells, viruses and cancer. Nat. Rev. Immunol. 1:41-49)。NK細胞および特定のT細胞
は、標的細胞の認識および病態細胞に対する生得的な防御の活性化を担う顕著なホモダイマー表面免疫受容体であるNKG2Dをその表面上に示す(Lanier, LL, 1998. NK cell receptors. Ann. Rev. Immunol. 16: 359-393; Houchins JP et al. 1991. DNA sequence analysis of NKG2, a family of related cDNA clones encoding type II integral membrane proteins on human NK cells. J. Exp. Med. 173: 1017-1020; Bauer, S et al.,
1999. Activation of NK cells and T cells by NKG2D, a receptor for stress-inducible MICA. Science 285: 727-730)。ヒトNKG2D分子は、その8つの異なる同族リガンドに結合するC型レクチン様細胞外(外部)ドメインを有しており、最も研究されているリガンドは84%配列同一または相同のモノマーMICAおよびMICB(主要組織適合性複合体(MHC)クラスI鎖関連糖タンパク質(MIC)の多型アナログ)である(Weis et al. 1998. The C-type lectin superfamily of the immune system. Immunol.
Rev. 163: 19-34; Bahram et al. 1994. A second lineage of mammalian MHC class I genes. PNAS 91:6259-6263; Bahram et al. 1996a. Nucleotide sequence of the human MHC class I MICA gene. Immunogenetics 44: 80-81; Bahram and Spies TA. 1996. Nucleotide sequence of human MHC class I MICB cDNA. Immunogenetics 43: 230-233)。MICAおよびMICBの非病態的発現は、腸上皮、ケラチノサイト、内皮細胞および単球に制限されているが、これらのMICタンパク質の異常な表面発現が、増殖、酸化および熱ショックのような多くの型の細胞ストレスに応答して生じ、そして細胞に病態的として印を付す(Groh et al. 1996. Cell stress-regulated human MHC class I gene expressed in GI epithelium. PNAS 93: 12445-12450; Groh et al. 1998. Recognition of stress-induced MHC molecules by intestinal γδ T cells. Science 279: 1737-1740; Zwirner et al. 1999. Differential expression of MICA by endothelial cells, fibroblasts, keratinocytes and monocytes. Human Immunol. 60: 323-330)。MICタンパク質の病態的発現はまた、いくつかの自己免疫疾患に関与しているようである(Ravetch, JV
and Lanier LL. 2000. Immune Inhibitory Receptors. Science 290: 84-89; Burgess, SJ. 2008. Immunol. Res. 40: 18-34)。多型MICAおよびMICBのようなNKG2Dリガンドの差次的調節は、所望されない攻撃から健常細胞を依然として防御しながら広範な緊急の合図を同定しそれに応答するための手段を免疫系に提供するために重要である(Stephens HA, (2001) MICA and MICB genes: can the enigma of their polymorphism be
resolved? Trends Immunol. 22: 378-85; Spies, T. 2008. Regulation of NKG2D ligands: a purposeful but delicate affair. Nature Immunol. 9: 1013-1015)。
【0006】
ウイルス感染は、MICタンパク質発現の一般的な誘導因子であり、NKまたはT細胞の攻撃のためにウイルス感染細胞を同定する(Groh et al. 1998; Groh et al. 2001. Co-stimulation of CD8+ αβT cells by NKG2D via engagement by MIC induced on virus-infected cells. Nat. Immunol. 2: 255-260; Cerwenka, A., and L.L. Lanier. 2001)。事実、その宿主細胞上でのそのような攻撃を回避するために、サイトメガロウイルスおよび他のウイルスは、自然免疫系による標的化から逃避するために、それが感染する細胞の表面上でのMICタンパク質の発現を防止する進化した機構を有する(Lodoen, M., K.
Ogasawara, J.A. Hamerman, H. Arase, J.P. Houchins, E.S. Mocarski, and L.L. Lanier. 2003. NKG2D-mediated NK cell protection against cytomegalovirus is impaired
by gp40 modulation of RAE-1 molecules. J. Exp. Med. 197:1245-1253; Stern-Ginossar et al., (2007) Host immune system gene targeting by viral miRNA. Science 317: 376-381; Stern-Ginossar et al., (2008) Human microRNAs regulate stress-induced
immune responses mediated by the receptor NKG2D. Nature Immunology 9: 1065-73; Slavuljica, I A Busche, M Babic , M Mitrovic, I Gasparovic, D Cekinovic, E Markova Car, EP Pugel, A Cikovic, VJ Lisnic, WJ Britt, U Koszinowski, M Messerle, A Krmpotic and S Jonjic. 2010. Recombinant mouse cytomegalovirus expressing a ligand for the NKG2D receptor is attenuated and has improved vaccine properties. J. Clin. Invest. 120: 4532-4545)。
【0007】
MICタンパク質の発現は多くの腫瘍細胞上でも誘導され、そこでその存在は、NK細胞による標的化および溶解に対してそれを感受性にし得る。驚くべきことではなく、MICタンパク質発現の不全は、それによって多くの悪性細胞(例えば、肺ガンおよびグリオブラストーマ脳ガンのもの)が自然免疫系から逃避し得る1つの手段を構成する(Busche, A et al. 2006, NK cell mediated rejection of experimental human lung cancer by
genetic over expression of MHC class I chain-related gene A. Human Gene Therapy
17: 135-146; Doubrovina, ES, MM Doubrovin, E Vider, RB Sisson, RJ O'Reilly, B Dupont, and YM Vyas, 2003. Evasion from NK Cell Immunity by MHC Class I Chain-Related Molecules Expressing Colon Adenocarcinoma (2003) J. Immunology 6891-99; Friese, M. et al. 2003. MICA/NKG2D-mediated immunogene therapy of experimental gliomas. Cancer Research 63: 8996-9006; Fuertes, MB, MV Girart, LL Molinero, CI Domaica, LE Rossi, MM Barrio, J Mordoh, GA Rabinovich and NW Zwirner. (2008) Intracellular Retention of the NKG2D Ligand MHC Class I Chain-Related Gene A in Human Melanomas Confers Immune Privilege and Prevents NK Cell-Mediated Cytotoxicity. J. Immunology, 180: 4606 -4614)。
【0008】
NKG2Dに結合したヒトMICAの高分解能構造が解明されており、それによってMICAのα3ドメインがNKG2Dとの直接的な相互作用を有しないことが実証されている(Li et al. 2001. Complex structure of the activating immunoreceptor NKG2D and
its MHC class I-like ligand MICA. Nature Immunol. 2: 443-451; Protein Data Bank
accession code 1HYR)。MICAのα3ドメインは、MICBのもののように、短い可動性のリンカーペプチドによってα1-α2プラットフォームドメインに連結されており、そしてそれ自体はプラットフォームとMIC発現細胞の表面との間の「スペーサー」と
して天然に配置されている。ヒトMICAおよびMICBα3ドメインの三次元構造はほぼ同一であり(94C-αα’s上二乗平均平方根距離<1Å)、そして機能的に互換的である(Holmes et al. 2001. Structural Studies of Allelic Diversity of the MHC Class I Homolog MICB, a Stress-Inducible Ligand for the Activating Immunoreceptor
NKG2D. J Immunol. 169: 1395-1400)。
【0009】
天然α1-α2ドメインより高い親和性で天然ヒトNKG2D受容体に結合するように改変されたNKG2Dリガンドの特定の非天然α1-α2ドメインが記載されている(Candice S. E. Lengyel, Lindsey J. Willis, Patrick Mann, David Baker, Tanja Kortemme, Roland K. Strong and Benjamin J. McFarland. Mutations Designed to Destabilize
the Receptor-Bound Conformation Increase MICA-NKG2D Association Rate and Affinity. Journal of Biological Chemistry Vol. 282, no. 42, pp. 30658-30666, 2007; Samuel H. Henager, Melissa A. Hale, Nicholas J. Maurice, Erin C. Dunnington, Carter
J. Swanson, Megan J. Peterson,Joseph J. Ban, David J. Culpepper, Luke D. Davies, Lisa K. Sanders, and Benjamin J. McFarland. Combining different design strategies for rational affinity maturation of the MICA-NKG2D interface. Protein Science 2012 VOL 21:1396-1402)。本明細書において、本発明者らは、非天然NKG2D受容
体に結合するように改変されたNKG2Dリガンドの非天然α1-α2ドメインを記載し、それ自体は2つの特異的部位において変異されており、その各々はヒトNKG2Dリガンドの全ての現在知られている天然α1-α2ドメインへの結合の低下または喪失を単独でもたらす(David J. Culpepper, Michael K. Maddox, Andrew B. Caldwell, and Benjamin J. McFarland. Systematic mutation and thermodynamic analysis of central tyrosine pairs in polyspecific NKG2D receptor interactions. (Mol Immunol. 2011 January; 48(4): 516-523)。
【0010】
本発明は、(a)特異的に改変された非天然α1-α2ドメインおよび(b)特異的に標的化する異種分子(限定するものではないが、異種ペプチドまたはポリペプチドを含む)を含む二重特異性分子を作製した。二重特異性分子はキメラ抗原受容体(CAR)に結合することができ、ここでCARの受容体は、それが天然α1-α2ドメインに結合するよりも高い親和性でその同族改変α1-α2ドメインに結合する非天然NKG2D受容体外部ドメインを含む。二重特異性分子の第2の特異性は、それ自体のそれぞれの標的分子に特異的に結合する異種構成要素を含む。次いで、そのようなCARおよび同族二重特異性分子を含む免疫系の遺伝子操作された細胞は、既知の重篤な全身毒性、抗原逃避、ならびに現在のCAR-TおよびCAR-NK細胞療法の限定的かつ制御されない持続性を含む不利益の多くを克服することができる(Kalos M, Levine, BL, Porter, DL, Katz, S, Grupp, SA, Bagg, A and June, C.. T Cells with chimeric antigen receptors have potent antitumor effects and can establish memory in patients with advanced leukemia. Sci Transl Med 2011;3:95ra73; Morgan RA, Yang JC, Kitano M, Dudley ME, Laurencot CM, Rosenberg SA. Case report of a serious adverse event following the administration of T cells transduced with a chimeric antigen receptor recognizing ERBB2. Mol Ther 2010, 18:843-851)。
【0011】
T細胞およびNK細胞を、遺伝子移入技術を使用して、抗体から取得された結合ドメインによってT細胞に新たな抗原特性を付与する膜貫通シグナル伝達受容体をその表面上に直接的かつ安定に発現するように改変することができる(Saar Gill & Carl H. June. Going viral: chimeric antigen receptor T cell therapy for hematological malignancies. Immunological Reviews 2015. Vol. 263: 68-89; Wolfgang Glienke, Ruth Esser, Christoph Priesner, Julia D. Suerth, Axel Schambach, Winfried S. Wels, Manuel Grez, Stephan Kloess, Lubomir Arseniev and Ulrike Koehl. 2015. Advantages and applications of CAR-expressing natural killer cells. Front. Pharmacol. doi: 10.3389/f
phar.2015.00021)。そのようなキメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)は、特
異的抗体の抗原認識ドメインと、CD3-ζ鎖の細胞内ドメイン(これは、内在性T細胞抗原受容体(TCR)からのシグナルの主要なトランスミッターである)とを、同時刺激分子(例えば、CD27、CD28、ICOS、4-1BB、またはOX40)由来の細胞質ポリペプチド配列とともに単一のキメラタンパク質に組み合わせる、このアプローチの応用である。そのように構築されたCARは、内在性T細胞受容体と同様に、しかし主要組織適合性複合体(MHC)非依存的に、標的にされた抗原の結合に際してT細胞活性化を誘発することができる。
【0012】
本明細書において使用する場合、「可溶性MICタンパク質」、「可溶性MICA」および「可溶性MICB」は、MICタンパク質のα1、α2、およびα3ドメインを含むが、膜貫通または細胞内ドメインを含まないMICタンパク質を指す。NKG2DリガンドであるULBP1~6は、天然にはα3ドメインを有しない(Cerwenka A, Lanier LL.
2004. NKG2D ligands: unconventional MHC class I-like molecules exploited by viruses and cancer. Tissue Antigens 61 (5): 335-43. doi:10.1034/j.1399-0039.2003.00070.x. PMID 12753652)。NKG2Dリガンドの「α1-α2ドメイン」は、NKG2D受容体に結合するリガンドのタンパク質ドメインを指す。
【0013】
いくつかの実施態様において、本発明の非天然NKG2Dリガンドタンパク質のα1-α2ドメインは、NKG2Dリガンドのネイティブまたは天然α1-α2ドメインに対して少なくとも80%同一または相同である(MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、ULBP6、およびOMCPについてそれぞれ配列番号1~9)。他の実施態様において、改変α1-α2ドメインは、NKG2Dリガンドのネイティブまたは天然α1-α2ドメインに対して少なくとも85%同一である。さらに他の実施態様において、改変α1-α2ドメインは、天然NKG2Dリガンドタンパク質のネイティブまたは天然α1-α2ドメインに対して少なくとも90%同一であり、かつ非天然NKG2Dに結合する。
【0014】
好ましくは、本発明の非天然MICタンパク質の改変または非天然α1-α2ドメインは、OMPCのネイティブもしくは天然α1-α2ドメイン(配列番号9)、または8つの既知のヒトNKG2Dリガンドタンパク質(配列番号1~8)の1つに対して少なくとも80%同一または相同であり、かつ非天然NKG2D外部ドメインに結合する。いくつかの実施態様において、非天然α1-α2ドメインは、NKG2Dリガンドタンパク質のネイティブまたは天然α1-α2ドメインに対して少なくとも85%同一であり、かつ非天然NKG2Dに結合する。他の実施態様において、非天然α1-α2プラットフォームドメインは、ヒト天然α1-α2ドメインタンパク質のネイティブまたは天然α1-α2プラットフォームに対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であり、かつ非天然NKG2Dに結合する。
【0015】
いくつかの実施態様において、可溶性MICタンパク質の精製を補助するために、異種分子タグを可溶性MICタンパク質の非天然α1-α2ドメインのN末端またはC末端に融合してもよい。タグ配列としては、ペプチド、例えば、ポリヒスチジン、mycペプチド、FLAGタグ、ストレプトアビジン様タグ、または小分子、例えばビオチンが挙げられる。そのようなタグを、当業者に公知の方法によってMIC分子の単離後に除去してもよい。
【0016】
本発明の他の実施態様において、NKG2Dリガンドのα1-α2ドメインにおける特異的変異を行って、非天然NKG2D受容体に結合し、それ自体は天然NKG2Dリガンドに対する低下した親和性を有するように操作されている非天然α1-α2ドメインを作製することができる。これを、例えば、遺伝子操作を通して行うことができる。そのよう
に改変された非天然NKG2D受容体を使用して、NK細胞、T細胞、または他の免疫系の細胞の表面上に、本発明の非天然α1-α2ドメインを含む分子に優先的に結合し、それによって活性化されることができるNKG2Dベースのキメラ抗原受容体(CAR)を作製することができる。非天然NKG2D受容体と本発明のその同族非天然NKG2Dリガンドとのこれらの対は、下記のように、現在のCAR-T細胞およびCAR-NK細胞と比較して、ガンおよびウイルス感染の処置のために重要な安全性、効力、および製造有利性を提供する。
【0017】
CARを用いたT細胞の操作はガンのための養子T細胞療法に対する有望なアプローチとして登場し、そして多くの異なる分子を標的にするCARがCAR-T細胞において悪性腫瘍のための治療薬として試験されている(Porter DL, Levine BL, Kalos M, Bagg A,
June CH., 2011. Chimeric antigen receptor-modified T cells in chronic lymphoid leukemia. N Engl J Med. 365:725-733.)。顕著な臨床効力が、CD19特異的キメラ抗原受容体を発現するT細胞の養子移入を受けた数百人の患者において観察されているが、特異的抗原を標的にするためのCARのカスタム操作、患者からの自己T細胞の単離、個人別のCARを発現させるための自己T細胞の遺伝子操作、インビトロでの改変細胞の拡大、およびその産生の品質管理のプロセスは、全て煩雑かつ高価であった。
【0018】
一旦自己CAR-T細胞がドナー患者中に注入して戻されると、インビボでのその拡大を制御することはできず、効力との用量反応関係を実証しない「生存療法(living therapy)」と称されるものを生み出す(Gill & June, 2015)。さらに、CAR-T細胞から
の腫瘍の逃避が、腫瘍細胞上の抗原喪失を通して生じ得る(Stephan A. Grupp, M.D., Ph.D., Michael Kalos, Ph.D., David Barrett, M.D., Ph.D., Richard Aplenc, M.D., Ph.D., David L. Porter, M.D., Susan R. Rheingold, M.D., David T. Teachey, M.D., Anne Chew, Ph.D., Bernd Hauck, Ph.D., J. Fraser Wright, Ph.D., Michael C. Milone, M.D., Ph.D., Bruce L. Levine, Ph.D., and Carl H. June, M.D. Chimeric Antigen Receptor-Modified T Cells for Acute Lymphoid Leukemia. N Engl J Med 2013;368:1509-1518)。この逃避経路には、異なって標的化されたCAR-T細胞を用いる逐次的治療によって、または2つ以上の特異性のCARを含むT細胞産物の初回注入によって取り組むことができるが、そのような工程は、製造プロセス、品質管理および費用をかなりさらに拡大させる。
【0019】
単鎖抗体結合ドメイン(scFv)を用いて腫瘍を標的にするCAR-T細胞に加えて、NKG2D受容体のリガンド結合ドメインを用いるCAR-T細胞が、動物において、そして最近ヒトにおいて研究されている(Sentman CL, Meehan KR. NKG2D CARs as cell therapy for cancer. Cancer J. 2014 Mar-Apr;20(2):156-9. doi: 10.1097/PPO.0000000000000029; Manfred Lehner, Gabriel Gotz, Julia Proff, Niels Schaft, Jan Dorrie, Florian Full, Armin Ensser, Yves A. Muller, Adelheid Cerwenka, Hinrich Abken, Ornella Parolini, Peter F. Ambros, Heinrich Kovar, Wolfgang Holter. Redirecting T Cells to Ewing's Sarcoma Family of Tumors by a Chimeric NKG2D Receptor Expressed
by Lentiviral Transduction or mRNA Transfection. Research Article | published 15 Feb 2012 | PLOS ONE 10.1371/journal.pone.0031210; www.clinicaltrials.gov NCT02203825)。NKG2Dリガンド発現はストレスを受けた細胞(例えば、腫瘍細胞)の表面上で増加するので、このファミリーの天然NKG2Dリガンドは、ガン免疫療法のための標的としてかなりの関心を持たれている(Spear P, Wu MR, Sentman ML, Sentman CL. NKG2D ligands as therapeutic targets. Cancer Immun. 2013 May 1;13:8.; Song DG, Ye Q, Santoro S, Fang C, Best A, Powell DJ Jr., Chimeric NKG2D CAR-expressing T cell-mediated attack of human ovarian cancer is enhanced by histone deacetylase inhibition. Hum Gene Ther. 2013 Mar;24(3):295-305)。1つのNKG2D CARは、完全長NKG2D受容体とCD3ζとの融合物であった(NKG2Dζ);別のものは、C
D28由来の膜貫通および細胞内ドメインならびにCD3ζのシグナル伝達ドメインから構成される第2世代CARスキャフォールドに融合されたNKG2Dの外部ドメインのみを有するものであった(NKG2D28ζ)。NKG2Dの活性化はDAP10の存在に依存するので、DAP10がNKG2Dζと同時発現されるCAR-T細胞もまた構築された(NKG2Dζ10)。上記のNKG2D CARのいずれかを発現するT細胞は、NKG2Dリガンド刺激に応答してIFNγおよびTNFαを産生し、そしてNKG2Dリガンドを発現する腫瘍標的をインビトロで効率的に傷害した(Heather VanSeggelen, Joanne A. Hammill, Anna Dvorkin-Gheva, Daniela G.M. Tantalo, Jacek M. Kwiecien, Galina F. Denisova, Brian Rabinovich, Yonghong Wan, Jonathan L. Bramson, T cells engineered with chimeric antigen receptors targeting NKG2D ligands display lethal toxicity in mice, Molecular Therapy 2015 Oct; 23(20):1600-10; doi:10.1038/mt.2015.119)。広範囲の腫瘍サブタイプに対するNK細胞の細胞傷害性能力もまた、NKG
2D-DAP10-CD3ζに基づくCARの発現によって顕著に増強され得た(Yu-Hsiang Chang, John Connolly, Noriko Shimasaki, Kousaku Mimura, Koji Kono, and Dario
Campana. Chimeric Receptor with NKG2D Specificity Enhances Natural Killer Cell Activation and Killing of Tumor Cells. Cancer Res; 73(6) March 15, 2013)。
【0020】
しかし、同系マウス宿主中への注入の後、天然NKG2D受容体の天然リガンドに結合し、それによって活性化されるこれらのCAR-T構築物を用いて、有意な毒性が生じた。弱った身体状態、曲がった姿勢、呼吸困難、および低下した深部体温を含む毒性の徴候が、非処置対照マウスと比較して、NKG2DベースのCAR-T細胞を用いて処置された腫瘍有りおよび腫瘍無しのマウスにおいて観察された。NKG2D CAR-T細胞毒性の重篤度は変動しており、NKG2Dζ10は重篤に毒性であり、NKG2D28ζは中程度の毒性を示し、そしてNKG2Dζは耐容可能であった。マウスが、NKG2D CARのいずれかを発現するT細胞の養子移入の前に化学療法を受けた場合、毒性の臨床症状および死亡率は悪化した(VanSeggelen et al. 2015)。化学療法および放射線照射
は、その他の点で健常な組織の上にNKG2Dリガンドを誘導することが知られている(Xiulong Xu, Geetha S Rao, Veronika Groh, Thomas Spies, Paolo Gattuso, Howard L Kaufman, Janet Plate and Richard A Prinz. Major histocompatibility complex class
I-related chain A/B (MICA/B) expression in tumor tissue and serum of pancreatic
cancer: Role of uric acid accumulation in gemcitabine-induced MICA/B expression. BMC Cancer 2011, 11:194 doi:10.1186/1471-2407-11-194; Gannage M, Buzyn A, Bogiatzi SI, Lambert M, Soumelis V, Dal Cortivo L, Cavazzana-Calvo M, Brousse N, Caillat-Zucman Induction of NKG2D ligands by gamma radiation and tumor necrosis factor-alpha may participate in the tissue damage during acute graft-versus-host disease. Transplantation. 2008 Mar 27;85(6):911-5. doi: 10.1097/TP.0b013e31816691ef.)。さらなる特徴付けによって、毒性が、全身性サイトカインストームおよび肺内で
の致死レベルの炎症と同時に起こることが明らかにされた。これらのデータは、標的化免疫療法のために天然NKG2Dリガンドを使用する場合には非常に注意しなければならないことを警告し、そしてそのようなリガンドを標的にするCAR(特に強く活性化するCAR)のT細胞発現はインビボで有害であり得ることを実証する(VanSeggelen et al. 2015)。
【0021】
天然NKG2Dリガンドに結合しないかまたは弱くのみ結合する非天然NKG2D受容体の外部ドメインを含むCAR-TまたはCAR-NK細胞は、上記の形態の活性化に供されず、従って、天然NKG2D受容体に基づくCARを発現する細胞ほど毒素産生性でない。さらに、細胞上の非天然NKG2D受容体の外部ドメインは、可溶性フォーマットのまたは骨髄由来抑制細胞(MDSC)上の天然NKG2Dリガンドによるダウンレギュレーションに供されない(Deng W, Gowen BG, Zhang L, Wang L, Lau S, Iannello A, Xu
J, Rovis TL, Xiong N,Raulet DH, 2015. Antitumor immunity. A shed NKG2D ligand t
hat promotes natural killer cell activation and tumor rejection. Science. 2015 Apr 3;348(6230):136-9. doi: 10.1126/science.1258867. Epub 2015 Mar 5)。しかし、
非天然NKG2D受容体の外部ドメインを有するそのようなCAR細胞が、本発明の同族非天然α1-α2ドメイン、およびその意図される標的を見出しそしてそれに結合したその異種標的化モチーフと、二重特異性分子によって係合させられると、CARは活性化され、そしてCAR細胞のエフェクター機能が発現される。
【0022】
非天然NKG2D受容体外部ドメインを含むCAR-TまたはCAR-NK細胞のサイトカイン放出および細胞溶解活性は、同族非天然α1-α2ドメインを含む係合した二重特異性分子(ここで、二重特異性分子は、一連のその標的にも係合している)の存在下以外では開始されないので、その活性化を、二重特異性分子(これは、バイオ医薬として、当該分野でよく知られた薬物動態および薬力学を示す)の投与によって制御することができる。有害事象が発生する場合には、医師は、現在行われているような注入されたCAR細胞を破壊するための誘導自殺機構を配備しなければならないというよりむしろ、単に、投与される二重特異性分子の投与計画を修正することができる(Monica Casucci and Attilio Bondanza. Suicide Gene Therapy to Increase the Safety of Chimeric Antigen Receptor-Redirected T Lymphocytes. J Cancer. 2011; 2: 378-382)。さらに、異なる特異的標的化モチーフを有するそのような二重特異性分子を、同時にまたは逐次的に投与して、複数の異なる自己CAR細胞を作製、拡大および注入しなければならないことはなしに、標的抗原喪失の結果としての腫瘍耐性および逃避への取り組みを補助することができる(Gill & June, 2015)。全てのCAR構築を全てのCAR細胞について同一にするこ
とができ、そして標的化特異性は、単純に、投与される本発明の二重特異性分子の標的化モチーフによって決定されるので、CAR細胞製造プロセスは単純化され、より高価でなくなる。
【0023】
NKG2Dリガンドの非天然α1-α2ドメインへの結合のための候補である親またはレシピエントタンパク質またはポリペプチドの例としては、限定するものではないが、抗体、Ig折りたたみ構造またはIgドメインを含むタンパク質(天然分子をリクルートするかまたは天然分子をリクルートしないかもしくは天然分子に結合しない改変Fcドメインを含む)、グロブリン、アルブミン、フィブロネクチンおよびフィブロネクチンドメイン、インテグリン、蛍光タンパク質、酵素、外膜タンパク質、受容体タンパク質、T細胞受容体、キメラ抗原受容体、ウイルス抗原、ウイルスカプシド、細胞受容体に対するウイルスリガンド、ヒストン、ホルモン、サイトカインおよび改変サイトカイン(例えば、インターロイキン)、ノッチン、環状ペプチドまたはポリペプチド、主要組織適合性(MHC)ファミリータンパク質、MICタンパク質、レクチン、およびレクチンのリガンドが挙げられる。多糖、デンドリマー、ポリグリコール、ペプチドグリカン、抗生物質、およびポリケチドのような非タンパク質分子を結合させて、NKG2Dリガンドのα1-α2ドメインを改変することも可能である。
【0024】
このように、本発明は、これらの現在の認識されている困難性の多くを克服しながら、CAR-T細胞、CAR-NK細胞、およびCAR-マクロファージ様細胞を用いるガンの管理に対するこの顕著で非常に有望な免疫学的アプローチの多様性および実用性を拡大する。
【0025】
本明細書において使用する場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」は、互換的に使用され;そして「異種分子」、「異種ペプチド」、「異種配列」または「異種原子」は、対象分子と物理的に結合して天然または通常には見出されない、それぞれ、分子、ペプチド、核酸もしくはアミノ酸配列、または原子である。本明細書において使用する場合、「非天然」および「改変」は互換的に使用される。本明細書において使用する場合、「天然」、「ネイティブ」、および「野生型」は互換的に使用され、そして
「NKG2D」および「NKG2D受容体」は互換的に使用される。本明細書において用語「抗体」は、それが所望の生物学的活性を示す限り、最も広い意味で使用され、そしてモノクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体フラグメントを具体的にカバーする。「抗体フラグメント」は、抗体の部分(好ましくはその抗原結合領域を含む)を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、Fvフラグメントおよび挿入可能Fv(insertible Fv);ダイアボディ;直鎖
抗体;単鎖抗体分子;および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられる。「抗体フラグメント」は、抗体のFc部分も含み得る。
【0026】
「含む(including)」、「含む(containing)」および「によって特徴付けられる」
と互換的に使用される用語「含む(comprising)」は、包括的なまたは制限のない語であり、そして追加の記載されていない要素または方法工程を排除しない。用語「からなる」は、クレームにおいて特定されていないいかなる要素、工程、または成分をも排除する。用語「本質的にからなる」は、クレームの範囲を、特定された材料または工程およびクレームされた発明の基本的な新規の特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。本開示は、これらの用語の各々の範囲に対応する本発明の組成物および方法の実施態様を意図する。従って、記載された要素または工程を含む組成物または方法は、その中で組成物または方法が、本質的にそれらの要素または工程からなるかまたはそれらの要素または工程からなる特定の実施態様を意図する。
【0027】
本明細書において引用される全ての参考文献は、以前に特定して組み込まれているか否かにかかわらず、その全体が本明細書に参照により組み込まれる。本明細書において使用する場合、用語「a」、「an」、および「any」は各々、単数形および複数形の両方を含むことが意図される。
【0028】
本発明をここで十分に記載したが、それを、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、そして過度な実験なしに、広範な同等のパラメーター、濃度、および条件内で実施できることを当業者は認識する。本発明をその特定の実施態様に関連して記載したが、さらなる改変が可能であることが理解される。本出願は、一般に、本発明の原理に従った、そして本発明が関係し、そして上述の本質的な特徴が適用され得る技術分野内で既知のまたは慣習的な実行の範囲内にある本開示からの逸脱を含む、本発明の任意の変形、使用、または応用をカバーすることを意図する。
【実施例0029】
改変NKG2D受容体外部ドメインおよびNKG2Dリガンドの改変α1-α2ドメイン
実施例1.不活性NKG2D外部ドメインを作製するためのヒトNKG2D受容体のチロシン152のアラニンへの(Y152A)およびチロシン199のフェニルアラニンへの(Y199F)の改変
ヒトNKG2Dにおけるチロシン152またはチロシン199(NKG2D外部ドメインの75位および122位と同等)における変異(図1A、配列番号17)が天然リガンドMICAへの結合を大いに低下させ得ることが他者によって実証されている(David J.
Culpepper, Michael K. Maddox, Andrew B. Caldwell, and Benjamin J. McFarland. Systematic mutation and thermodynamic analysis of central tyrosine pairs in polyspecific NKG2D receptor interactions. Mol Immunol. 2011 January; 48(4): 516-523)
。本発明者らは、いずれかのチロシン残基の変異はNKG2Dがその天然リガンドに結合する能力に大いに影響を及ぼすが、チロシン152(Y152)およびチロシン199(Y199)の両方における同時変異は全てのネイティブリガンドを係合させる受容体の能力を実質的に消失させるであろうと推論した。それゆえ、本発明者らは、いかなる天然リガンドをも係合させることができない単一および二重両方の変異バリアントを同定する目的で、個別のおよび組み合わせのY152およびY199置換の探索およびその生化学的
挙動に関するそれらの特徴付けに努めた。良好に発現およびアセンブルもされるバリアントに特に着目した。なぜならこれらは、分析のためにより容易に産生され得る不活性リガンドであることを意味したからである。
【0030】
天然NKG2D(野生型)外部ドメイン(NKG2D.wt、配列番号17)および候補非天然NKG2Dバリアント外部ドメイン(配列番号18~35)(「操作NKG2D」または「eNKG2D」とも称する)を、短い第Xa因子認識可能Ile-Glu-Gly-Argリンカーを介して、ヒトIgG1 Fc(Fabドメインなし)のC末端への融合物としてクローン化した(配列番号38)。それらを互換的にFc-NKG2D.wtまたはNKG2D.wtおよびFc-eNKG2DまたはeNKG2Dという(配列番号40~58)。MHCIシグナル配列(配列番号36および37)、リンカーを有するヒトIgG1 Fc(配列番号39)、およびNKG2D外部ドメインバリアント(配列番号59~77)に対応するgBlocks(登録商標)DNA Fragments(Integrated DNA Technologies, San Diego, CA)を合成し、そしてpD2610-V12(ATUM, Newark, CA)中に挿入した。Y152、Y199、またはY152/Y199変異の組み合わせにおける置換を探索するDNA構築物(図2)を、Expi293(商標)細胞(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA)において一過性に発現させ、そして分泌されたタンパク質をプロテインAアフィニティクロマトグラフィー(cat. no. 20334, Pierce Biotechnology, Rockford, IL)によって精製した。溶出された材料をAkta
Pur Superdexカラム上でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって特徴付け、そして適正にアセンブルされたサイズが適切な材料を、アッセイに含める前に凝集物ピークから分画および単離した。
【0031】
精製されたNKG2D.Y199A-Fc融合物のSEC特徴付けによって、優勢に凝集された材料の組成が明らかとなった(図3)。比較として、天然Fc-NKG2D融合物およびFc-NKG2D.Y152A融合物材料の両方を、より迅速に移動する凝集物から容易に区別される分離した非凝集ピークによって区別した。凝集に対するY199A変異の効果は、Y152A/Y199A二重変異Fc-NKG2D融合バリアントにおいても明白であった。このことは、それがタンパク質ミスフォールディングに対する主要な影響を有することを示す(図3)。NKG2DバリアントにおいてY152変異の任意の組み合わせとともにY199Aを含めるこの態様は、それゆえ、その後の操作努力に必要な材料の産生についての課題を提示し、細胞表面上でのアセンブリおよび提示についての懸念を起こした。結果として、より強固な分子を生じるように組み合わされ得るY152およびY199における他の置換を探索する努力をした。eNKG2D組み合わせY152およびY199変異体候補をFc融合物として検討し、図2に詳述した。さらに、全ての精製および発現されたFc-eNKG2D融合物候補をSECによってプロファイリングし、そのクロマトグラムによって、変動するレベルの凝集体形成が明らかとなった(図2~4)。残基152において探索した単一アミノ酸置換の中で、アラニン、セリン、スレオニン、およびバリンの全てはFc-NKG2D分子のアセンブリに影響を及ぼさなかったが、Y152-ロイシン(Y152L)は、高度に凝集した材料をもたらした。アラニンと同様に、グルタミン酸もアスパラギン酸も199位において耐容されなかったが、フェニルアラニンのみが凝集体形成を中程度に増加させた。探索した変異の組み合わせのうち、Y152A/Y199F、Y152S/Y199F、Y152T/Y199F、およびY152F/Y199Fは所望のダイマー形成に負に影響を及ぼすことはなかったが、他の組み合わせは凝集の増加をもたらした(図2~4)。
【0032】
実施例2:非天然NKG2Dリガンドバリアントを用いた抗体ベースの二重特異性分子「MicAbody」の生成
ヒトIgG1に融合した非天然MicAバリアントを生成するために、例えば、MICwed(配列番号79)およびMIC25(配列番号81)のα1-α2ドメインをコー
ドするDNAポリヌクレオチドを、ヒトIgG1の、C末端κ軽鎖(配列番号84)への融合のためのAPTSSSGGGGSリンカー、またはC末端重鎖(配列番号82)への融合のためのGGGSリンカーのいずれかをコードするポリヌクレオチドもまた導入するプライマーを使用してPCR増幅した。さらに、重鎖のCH2ドメイン中に、全てのFcγR受容体への結合を低下させ、従って、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を消失させる2つの変異、D265A/N297A(Kabat番号付け)を導入した(Shields et al., 2001 JBC, 276:6591-6604)。GPI結合なしの野生型ULBP2(ULBP2
.wt)のα1-α2ドメインをコードするポリヌクレオチド(配列番号12)を同様にクローン化し、そしてリンカーおよびIgG1重鎖または軽鎖をコードするDNAポリヌクレオチドと融合させた。これらの二重特異性抗体(単数で「MicAbody(商標)」、複数で「MicAbodies」と称する)は、融合α1-α2ドメインについて二価である。eNKG2D操作を探索する目的でMicAbodyを生成するために使用した抗体の例としては、限定するものではないが、トラスツズマブ(配列番号94および96)ならびにリツキシマブ(配列番号98および100)が挙げられ、これらをその後それぞれ「トラスツズマブ-MicAbody」(例えば、配列番号102および104)ならびに「リツキシマブ-MicAbody」(例えば、配列番号106)と称した。融合構築物を、Gibson cloning(New England Biolabs Inc., Ipswich, MA
)を介して個別にpD2610-V12(ATUM, Newark, CA)中に挿入した。特異的抗原を認識する所定の抗体のために、重鎖をコードするプラスミドおよび天然または非天然いずれかのNKG2Dリガンドに融合した軽鎖をコードするプラスミドを、Expi293(商標)細胞(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA)における一過性発現のために同時トランスフェクトした。あるいは、天然または非天然いずれかのNKG2Dリガンドに融合した重鎖をコードするプラスミドおよび軽鎖のためのプラスミドを同時トランスフェクトした。分泌された二重特異性抗体をプロテインAアフィニティクロマトグラフィー(cat. no. 20334, Pierce Biotechnology, Rockford, IL)によって精製し、溶出された材料をAkta Pur Superdexカラム上でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって特徴付けし、そして必要に応じて分画を行った。さらに、融合重鎖および融合軽鎖種の予想分子量を確認するために、精製されたサンプルに対してSDS-PAGE分析を行った。
【0033】
実施例3:野生型NKG2Dへの増強された結合を有する、天然NKG2D結合リガンドまたは非天然リガンドのいずれかに結合できない改変NKG2Dバリアントの同定
天然(野生型)NKG2Dおよび非天然eNKG2Dタンパク質の細胞外ドメインへのα1-α2バリアントの結合親和性を、プレートベースのELISA法を使用して分析した。SEC分画された天然Fc-NKG2Dおよび非天然Fc-eNKG2D融合物の各々を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中1μg/mLのコーティング濃度を使用して、Nunc Maxisorp 96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)の別々のウェル上に一晩4℃でコートした。プレートを3回PBS/0.05
%Tween-20(PBS-T)中で20~22℃で洗浄し、そしてPBS中0.5%ウシ血清アルブミン(PBS-B)を用いて2時間20~22℃でブロッキングした。MicAbodyを、プレートに結合した天然または非天然Fc-NKG2D融合物に対して60分間20~22℃でPBS/0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)/0.05%Tween-20(PBS-BT)中でタイトレートし、3回PBS-Tで20~22℃で洗浄し、結合した二重特異性タンパク質をPBS-BT中のHRP結合抗ヒトκ(Abcam, Cambridge MA)を使用して検出し、1-Step(商標)Ultra TMB EL
ISA Substrate Solution(Thermo Fisher Scientific, Waltham,
MA)を用いて発色させた。ULBP2.wtリツキシマブ-MicAbody(配列番
号98および106)の結合は、野生型NKG2DとeNKG2Dバリアントとを、後者に対する結合の低下で判別し、そしてリガンドバリアント(MICwed(配列番号96および102)ならびにMIC25(配列番号96および104))は、リガンド結合が
消滅したeNKG2Dバリアントの同定においてより厳密であった。3つ全ての二重特異性リガンドに対する各々のeNKG2Dバリアントについての結合挙動によって、野生型およびバリアントリガンドの結合における最大の低下を導いたNKG2D改変の組み合わせが明らかとなり、そしてリード不活性NKG2Dバリアントの選択が可能になった。
【0034】
eNKG2Dバリアントのリガンドへの結合のさらなる生物物理学的分析もまた、ForteBio Octetシステムを使用したBio-Layer Interferometry(BLI)(全てForteBio LLC, Fremont, CA)を用いて行った。これらの実
験のために、ヒトNKG2DリガンドであるMICA-Fc、MICB-Fc、ULBP1-Fc、ULBP2-Fc、ULBP3-Fc、およびULBP4-FcをR&D Systems, Inc.(Minneapolis, MN)から購入した。MicAbodyフォーマットのリガンドを、抗ヒトIgG Fcキャプチャー(AHC)バイオセンサーチップ上に捕捉した。ベースラインを確立した後、チップを、300nM~0.41nMの範囲のFc-eNKG2D融合タンパク質のタイトレーションシリーズに曝露し、そして会合/解離速度をモニターした(全ての工程をPBS-BT中で行った)。その後、Fc-eNKG2D融合タンパク質をAHCチップ上に捕捉し、そしてMicAbodyをタイトレートして、結合速度を特徴付けた。
【0035】
MICwedまたはMIC25のいずれかへの天然NKG2Dの結合によって定義される最大応答を決定するために、天然Fc-NKG2D融合物をAHCバイオセンサー上に捕捉し、そして20nMのトラスツズマブ-MICwedまたは20nMのトラスツズマブ-MIC25 MicAbodyを2分間インキュベートし、次いで解離速度を30秒間観察した。次いで、同じ条件下での結合分析を、捕捉物質としてFc-eNKG2D融合受容体を用いて行い、各々のeNKG2Dについての結合レベルを、Fc-NKG2D.wtによって確立された最大結合応答の百分率として順位付けした(図5)。MICwedについては、Y199F以外の全ての単一変異Fc-eNKG2Dバリアントの応答は50%に減少した。Y199Fは100%の結合応答を維持した。しかし、全ての二重変異Fc-eNKG2DバリアントはMICwedへの結合を完全に失った。MIC25については、全ての単一変異Fc-eNKG2DバリアントおよびY152V/Y199Fは、野生型Fc-NKG2D結合と比較して100%の結合応答を維持した。しかし、Y152A/Y199F、Y152S/Y199F、およびY152T/Y199Fを含む二重変異Fc-eNKG2Dバリアントのいくつかについて結合は50%に低下した。
【0036】
捕捉物質としてFc-eNKG2D融合物を用いるELISAアッセイを、300nMで開始してタイトレートしたULBP2.wt、MICwed、MIC25 MicAbodyを用いて行った(図6)。可能な場合、GraphPad Prismを使用してEC50値を算出した(図7)。天然NKG2Dは、ULBP2、MICwed、およびMIC25ベースのMicAbodyに、それぞれ1.4、0.007、および0.005nMのKd値として算出される親和性で結合した。全ての単一変異eNKG2D候補についてULBP2およびMICwed MicAbodyに対する親和性は減少したが、eNKG2D候補へのMIC25の結合は保持された。しかし、全ての二重変異eNKG2D候補は、Micabodyフォーマットの3つ全てのリガンド(ULBP2、MICwed、およびMIC25)への、消失したかまたは有意に低下した結合を有していた。
【0037】
eNKG2DバリアントであるeNKG2D5(Y152A/Y199F)、eNKG2D7(Y152S/Y199F)、eNKG2D8(Y152T/Y199F)、およびeNKG2D9(Y152V/Y199F)は、Octet分析およびELISAの両方によって、ULBP2、MICwed、およびMIC25ベースのMicAbodyへの、低下または消失した結合を有していた(図5および7)。さらに、eNKG2D5、7、および8は最小量の凝集を有しており、このことは、293T発現に際してのより強
固なタンパク質アセンブリを示唆する(図2)。eNKG2D5(配列番号48)を、Octet AHCチップ上に捕捉されたMicAbodyとしての野生型リガンドへの結合についてより厳密に検討した。単一変異Fc-NKG2D.Y152A(配列番号41)は、天然(配列番号40)NKG2Dと比較して、全ての天然リガンドへの低下した結合を有していた(図8)。eNKG2D5(Y152A/Y199F)の結合についての応答曲線は、Y152A eNKG2Dと比較してさらに低下した。eNKG2D5(Y152A/Y199F、以降「AF」または「NKG2D.AF」という)を、それについて同族選択的、直交性、非天然リガンドを操作するためのリードNKG2Dバリアントとして選択した。
【0038】
実施例4:非天然NKG2D.AF外部ドメインへの選択的結合を有する直交性非天然α1-α2ドメインの構築
本発明者らは、Fc-NKG2D AF(配列番号48)受容体への選択的結合を示す直交性非天然α1-α2ドメインを操作するために、ファージディスプレイを用いた。出発点として、天然野生型NKG2D(NKG2D.wt)外部ドメインに対する高い親和性を有する非天然ULBP2.R80W α1-α2ドメイン(図1B;配列番号108)を、さらなる変異誘発およびファージディスプレイによるスクリーニングのための親ドメインとして選択した。ジスルフィド結合の潜在性を除くためにさらにC8S変異を有するULBP2.R80Wのα1-α2ドメイン(配列番号108)について合成DNAライブラリーを生成した。結合状態で天然NKG2D受容体上のY152位およびY199位に近接して配置されるリガンドのアミノ酸残基のコドンをNNKコドンに置換した;ライブラリーは154~159位におけるNNKコドンからなった(図1B、配列番号110)。ライブラリーを、M13ファージのpIIIマイナーコートタンパク質への融合物としてクローン化し、そして変異誘発されたα1-α2ドメインバリアントを提示するファージ粒子を標準的な方法に従ってSS320 E.coli細胞中で産生した(Andris-Widhopf, J., Steinberger, P., Fuller, R., Rader, C., and Barbas, C. F., 3rd. (2011))。これらのα1-α2ファージディスプレイライブラリーを、非ビオチン化天然Fc-NKG2D.wt競合タンパク質の存在下でビオチン化Fc-NKG2D.AFタンパク質に結合したファージクローンを選択的に捕捉することによって、非天然NKG2D.AF受容体に対する高結合親和性についてソートした。非ビオチン化天然Fc-NKG2Dの濃度を漸増させながら競合選択を複数回繰り返すことによって選択的クローンを富化した。
【0039】
4回の選択の後、ファージクローンを個別に96ウェルフォーマットで整列させ、スポットELISAを行って、NKG2D.wtに対比しての、プレート結合した非天然NKG2D.AFへの優先的差次的結合を確認した。結合したファージを、ビオチン化M13ファージコートタンパク質モノクローナル抗体E1(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA)、ストレプトアビジンーHRP検出(R&D Systems, Minneapolis, MN)、および1-Step Ultra TMB ELISA発色(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA)を用いて検出した。各々のクローンについてのスポットELISAシグナルを、NKG2D.wt結合ファージに対するNKG2D.AF結合ファージの比として表した。14以上の比を有するファージを配列決定して、NNK変異誘発領域内の特異的変異を同定した。図9は、NKG2D.AFに選択的に結合した各々のα1-α2ファージバリアントについての選択されたアミノ酸残基を示す。同じ配列を表す複数のクローンが同定された場合、ELISAシグナルの比をプロットし、そしてファージクローンの一貫性をデータポイントのクラスタリングによって確認した(データは示さず)。
【0040】
ELISAにおいて同定されたバリアントの30個を個別の単独培養において拡大して、ファージの高力価マイクロバッチを生成した。精製ファージ濃度をOD268=0.5に規準化し、次いでプレート結合したFc-NKG2D.AFまたはFc-NKG2D.
wtに対する1:3希釈シリーズに供し、ファージ検出およびELISA発色を上記のように行った。このようにしてアッセイした30個のバリアントの全ては、アッセイしたファージの最高濃度においてさえ、NKG2D.wtにほとんど~全く結合せず、NKG2D.AFへの選択的結合を一貫して示した(図10)。選択されたファージはまた、NKG2D.AFとNKG2D.wtとの間で最大半量の結合を達成するファージ濃度の2以上の対数のシフトを示した。
【0041】
NKG2D.AF選択的α1-α2ドメインバリアントが抗体融合物の文脈で特異的結合特性を保持していることを確認するために、21個のバリアント(図11、例えば、配列番号111~118)をリツキシマブ抗体の軽鎖へのAPTSSSGGGGSリンカーを有するC末端融合物としてクローン化した(配列番号119~126)。得られた融合物を、Gibson cloning(New England Biolabs Inc., Ipswich, MA)を介
して哺乳動物発現ベクターpD2610-V12(ATUM, Newark, CA)中にクローン化し、対合した完全なIgG抗体として、親抗体の重鎖(配列番号99)とともに同時発現させた。一過性発現を製造業者のプロトコルに従ってExpi293(商標)細胞(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA)において行い、そして標準的なプロテインAアフィニティクロマトグラフィー(cat. no. 20334, Pierce Biotechnology, Rockford, IL)を使用して精製した。非天然Fc-NKG2D.AFおよび天然Fc-NKG2D.wtへの各バリアントULBP2 α1-α2抗体融合物の結合を測定するELISAによって、天然NKG2D.wtと比較して有意に高いNKG2D.AFに向けたその結合親和性が実証された(図11)。まとめると、これらのデータは、非天然NKG2D.AF受容体への高親和性結合、および天然NKG2D受容体に対する有意に低下した結合親和性を有する非天然直交性α1-α2ドメインの発明を実証する。さらに、これらの直交性α1-α2ドメインの抗体ポリペプチドへの融合物は、その選択的結合特性を保持しており、そしてこれを、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞の文脈において、特異的抗原に向けて非天然NKG2D.AF受容体を再方向付けするために使用した。
【0042】
実施例5:一方または他方に選択的に結合することによって非天然NKG2D受容体バリアントを判別できる非天然NKG2Dリガンドの同定
NKG2D.Y152A(以降NKG2D.YAという)受容体への選択的結合を有する直交性非天然α1-α2ドメインを操作するためのファージディスプレイを、上記のように出発点として非天然ULBP2.R80W α1-α2ドメイン(配列番号108)を用いて行った。α1-α2ファージディスプレイライブラリーを、非ビオチン化天然Fc-NKG2D.wt(配列番号40)競合タンパク質の存在下でビオチン化Fc-NKG2D.YA(配列番号41)タンパク質に結合したファージクローンを選択的に捕捉することによって、非天然Fc-NKG2D.YA受容体に対する高結合親和性についてパニングした。さらなるファージクローン検証研究によって、Fc-NKG2D.wtに対比してFc-NKG2D.YAに優先的な結合を有するバリアントが同定された(図12)。例えば、ULBP2.S3(配列番号127)は、ELISAおよびOctet分析(両方ともモノマーのHisタグ付加および二重特異性抗体融合フォーマットで)によって、天然NKG2D.wtと比較して非天然NKG2D.YAへの選択的結合を一貫して示した。このことは、非天然NKG2D受容体(実施例4におけるNKG2D.AFに対して、この場合はNKG2D.YA)への高親和性結合を有する非天然直交性α1-α2ドメインの発明の異なる形態を表す。さらに、直交性α1-α2ドメインの抗体ポリペプチドへの融合物は、その選択的結合特性を保持しており、そしてこれを、抗体のような融合異種ペプチドによって決定される特異的分子に向けて非天然NKG2D受容体を選択的に再方向付けするために使用した。
【0043】
NKG2D.YAへの選択的結合を有する非天然α1-α2ドメイン(ULBP2.S3、配列番号127)およびNKG2D.AFへの選択的結合を有する非天然α1-α2
ドメインが、これら2つの非天然受容体バリアントを判別することができるかどうかを決定するために、タイトレーションELISAを行った。NKGD2.AFに結合した、21個の選択されたα1-α2バリアントの全てを、NKG2D.YAに対比したNKG2D.AFへの結合について直接比較した。これらのうち、4つが、NKG2D.wtへの結合不能、NKG2D.AFに対する強い親和性、およびNKG2D.AFと比較して大いに低下したか(15~20倍)または消失したNKG2D.YAへの結合の特性を示した(図13)。また、これら4つの非天然ULBP2 α1-α2バリアント(ULBP2.C、ULBP2.R、ULBP2.AA、およびULBP2.AB(配列番号111、113、115、および117))を、野生型ULBP2ペプチド配列(配列番号4)と比較しての予測免疫原性プロファイルの変化について、NetMHC4.0 Server(9マーペプチド分析を用いる全てのHLAスーパータイプ代表に対してクエリーするペプチド-MHCクラスI結合用;http://www.cbs.dtu.dk/services/NetMHC/)およびNetMHCII 2.3 Server(15マーペプチド分析を用いるHLA-DR、HLA-DQ、HLA-DPハロタイプに対してクエリーするペプチド-MHCクラスII結合用;http://www.cbs.dtu.dk/services/NetMHCII/)(両方のアルゴリズムはTechnical University of Denmarkによって開発された(http://www.bioinformatics.dtu.dk/; Andreatta M and Nielsen M, Gapped sequence alignment using artificial neural networks: application to the MHC class I system, 2016 Bioinformatics, 32:511, PMID: 26515819; Jensen KK, Andreatta M, Marcatili P, Buus S, Greenbaum JA, Yan Z, Sette A, Peters B, and Nielsen M, Improved methods for predicting peptide binding
affinity to MHC class I molecules, 2018 Immunology, PMID: 29315598))を使用し
て検討した。ULBP2.C、ULBP2.R、およびULBP2.ABに組み込まれた変異は予測免疫原性を増加させなかったが、ULPB2.AAの予測免疫原性は少しのハロタイプについてわずかに増加した(図14および15)。NKG2D.AFに対するULBP2.Rの特異性およびその予測免疫原性の欠如の結果として、ULBP2.RをさらなるELISA分析のために選択して、その結合挙動を、ULBP2.S3(NKG2D.YA選択された非天然直交性リガンド)、ULBP2.R80W(野生型NKG2Dに対する増強された親和性を有する非天然リガンド)、および野生型ULBP2(ULBP2.wt)のものと直接比較した。4つのリツキシマブ-MicAbody試薬(それぞれ、ULBP2.R、ULBP2.S3、ULBP2.R80W、およびULBP2.wtについて重鎖および軽鎖として配列番号98および121、98および129、131および100、ならびに98および106)を、野生型NKG2D(NKG2D.wt)ならびに2つの不活性非天然バリアントNKG2D.YAおよびNKG2D.AFに対してアッセイした(図16Aおよび16B)。データは、MicAbodyとしてのNKG2D.YA選択されたバリアントULBP2.S3は、NKG2D.YAに高親和性で結合するが、NKG2D.AFまたは天然NKG2Dを係合させないことを実証した。さらに、MicAbodyフォーマットのNKG2D.AF選択されたバリアントULBP2.Rは、NKG2D.AFに高親和性で結合したが、NKG2D.YAまたは天然NKG2Dを係合させなかった。これらの結果は、NKG2D-MICリガンド軸の探索、および新規で選択的な非天然NKG2D受容体とそのそれぞれの同族非天然MICリガンド結合パートナーとの特有の対の開発の、非常に大きな可能性を実証する。
【0044】
実施例6:非天然NKG2D.AF外部ドメインを発現するCAR-T細胞の標的化および傷害活性は異種標的化ポリペプチドに融合された直交性α1-α2ドメインによって制御される
CAR-T細胞療法を選択的に制御する手段が、毒性の軽減および腫瘍に対する効力改善のために非常に求められている(Gill and June, 前出)。CD16の外部ドメイン(
これは、次いで、治療用モノクローナル抗体のFcドメインを介して係合されて、CAR-T標的化の抗体ベースの制御を可能にする)を使用してCARを開発する試みが以前になされた(Chang et al., 前出)。しかし、CD16ベースのCAR-T細胞は血液およ
び組織中のほぼ全ての内在性抗体分子を認識し得、そしてこれらの細胞を制御するために使用される治療用抗体は、NK細胞、PMN、単球およびマクロファージ上の内在性CD16受容体からの競合に遭遇する。これらの特徴の両方は、それぞれオフ腫瘍(off-tumor)毒性および乏しい薬物動態の問題に寄与する。
【0045】
天然NKG2Dリガンドは、特定の健常組織および多くのストレスを受けた組織上に存在し、現在のNKG2D CARアプローチを使用した毒性に非常に大きなリスクを生み出している(VanSeggelen et al. 2015)。Y152A非天然NKG2D受容体は非天然
α1-α2ドメインNKG2Dリガンドに特異的に結合し、それによって非天然NKG2D CARの活性が、本発明のNKG2Dリガンドの非天然α1-α2ドメインを含む二重特異性タンパク質を使用して選択的に制御され得る手段の例を構成する。
【0046】
本発明者らは、NKG2Dの改変Y152A/Y199F(「AF」)外部ドメイン(これは、全ての天然NKG2DリガンドまたはY152A改変NKG2D(NKG2D.YA)に直交性および同族の以前に記載された非天然α1-α2ドメインへの結合を欠く)を含む受容体を用いてCAR-T細胞を操作した。本発明の同族非天然α1-α2ドメインは、非天然NKG2D.AF外部ドメインに高親和性で結合し、そして天然NKG2D外部ドメインおよびNKG2D.YA外部ドメインへの結合を回避した。従って、天然NKG2Dおよび非天然NKG2D.YAと比較して非天然NKG2D.AF外部ドメインに対する強い選択性を示した操作したα1-α2ドメインは、非天然NKG2D CAR受容体、または本発明の非天然α1-α2ドメインによって選択的に係合され得る非天然NKG2D外部ドメインに融合された任意の受容体もしくはタンパク質の選択的制御のための理想的な系を表す。本発明はさらに、各々が明白に異なる細胞内ドメインを用いてシグナル伝達する、2つの異なるCAR(1つはNKG2D.YAを含み、他方はNKG2D.AFを含む)を発現する単一細胞を可能にする。これらの異なるCARは、それぞれの同族直交性MicAbodyまたは別の非抗体融合ポリペプチドへの細胞外曝露による細胞の活性の独立した二重制御を有する。
【0047】
非天然NKG2D.AF外部ドメインを配置したキメラ受容体を用いて構築されたCAR-T細胞の選択的制御を実証するために、本発明者らは、4-1BB/CD3ζ CAR構築物を使用した以前の研究(Campana特許第8,399,645号)に基づき、それ
ぞれのNKG2D外部ドメインをCARのCD8ヒンジ領域に融合して、天然NKG2D.wt(配列番号135)、非天然NKG2D.YA(配列番号137)、または非天然NKG2D.AF(配列番号139)外部ドメインのいずれかを用いてCARを構築した(配列番号151、153、155)。これらの構築物(配列番号152、154、156)をレンチウイルスベクター中にクローン化し、そしてレンチウイルス形質導入を使用して初代ヒトCD8陽性T細胞において発現させた。HeLa細胞はその表面上に構成的にアップレギュレートされたレベルのMICリガンド(MICA,MICB、ULBP3、およびULBP2/5/6(これを確認するために使用した抗体はこれら3つのULBPを区別することができない;Human ULBP-2/5/6 Antibody, R&D Systems, Minneapolis, MN)を含む)を有する。HeLa細胞を、その表面上に天然ULBP1またはNKG2D.AF選択されたバリアントULBP2.Rのいずれかをも過剰発現するようにトランスフェクトし、そしてこれらの細胞をインビトロ傷害アッセイのための標的として使用した。HeLa標的細胞にカルセインを前負荷し、NKG2D.wt-CAR、NKG2D.YA-CAR、または NKG2D.AF-CAR CD8細胞に、漸増するエフェクター対標的(E:T)比で5時間曝露し、その後、上清中に放出されたカルセインの量を定量し、界面活性剤処理に際して放出された総カルセインに対して規準化した(図17A~17C)。HeLa細胞の表面上に天然に発現される上昇したレベルのMICリガンドに起因して、CARとして天然NKG2D(NKG2D.wt)を発現するCD8細胞は、この過剰発現された天然リガンドを介してHeLa細胞を係
合させ、そして細胞溶解をもたらした。しかし、NKGD.YA-およびNKG2D.AF-CAR形質導入したCD8細胞は両方とも、高E:T比でさえ天然HeLa細胞の非常に少しの溶解しか示さなかった(非形質導入CD8 T細胞と同等の活性レベル)。ULBP1をHeLa細胞の表面上で過剰発現させた場合、NKG2D.wt-CAR CD8 T細胞のみがそれを有意に溶解させた。NKG2D.YA-CAR細胞について高いE:T比でいくらかのさらなる傷害が存在するが、これはNKG2D.AF-CAR細胞については存在せず、このことは、二重変異Y152A/Y199Fが、単一Y152A変異よりも、NKG2Dをいっそう不活性にすることを示す。NKG2D.AF選択された非天然ULBP2.Rを過剰発現するHeLa細胞において、NKG2D.wt-CAR細胞は溶解を指図し(内在性MICリガンドの認識に起因して)、一方、NKG2D.AF-CAR細胞は、受容体およびその選択的リガンドの係合と一致して、有意なレベルの溶解を指図した。
【0048】
NKG2D.YA-またはNKG2D.AF-CAR細胞のいずれかの溶解が、適切な同族標的化MicAbodyによってのみ指図され得ることを実証するために、Ramos細胞を、非天然ULBP2.S3またはULBP2.R直交性リガンドのいずれかに結合したリツキシマブベースのMicAbodyと組み合わせて、細胞溶解の標的として使用した。図18Aにおいて実証されるように、リツキシマブ-ULBP2.S3 MicAbodyは、NKG2D.YA-CAR CD8細胞の細胞傷害活性を指図することができたが、NKG2D.AF-CAR細胞の細胞傷害活性を指図することはできず、一方、リツキシマブ-ULBP2.R MicAbodyは、NKG2D.AF-CAR細胞の活性を指図することができたが、NKG2D.YA-CAR細胞の活性を指図することはできなかった。このことは、2つの非天然ULBP2バリアントの、それについてそれらが優先的なパートナーとして操作されたその同族非天然NKG2Dバリアントについての選択性をさらに実証する。MicAbodyの抗体部分の特異性を実証するために、MicAbodyの飽和総濃度の、リツキシマブ-ULBP2.R、トラスツズマブ-ULBP2.R(それぞれ、配列番号95および133、重鎖および軽鎖)、または2つの等モルの組み合わせのいずれかとのインキュベーションによって前付与されたNKG2D.AF-CAR CD8細胞を用いて、インビトロ傷害アッセイを行った。非結合MicAbodyを洗浄によって除去した後、カルセインを前負荷したRamos細胞(リツキシマブの標的であるCD20を発現する)またはCT26-Her2(ヒトHer2を発現するようにトランスフェクトされたマウス細胞株)のいずれかにCD8細胞を供した。2つの異なるE:T比での2時間のインキュベーションの後、放出されたカルセインの量を定量した。図18Bに示すように、細胞にリツキシマブ-MicAbodyを前付与した場合、Ramos細胞のみが溶解され、一方、トラスツズマブ-MicAbodyはCT26-Her2細胞に対してのみ細胞溶解活性を指図した。しかし、NKG2D.AF-CAR CD8細胞にリツキシマブ-およびトラスツズマブ-ULBP2.R MicAbodyの両方を同時に前付与した場合、両方の標的細胞株は溶解され、このことは、これらのCAR細胞が(受容体とリガンドとの間で操作された選択的で特権を与えられたパートナリングによって)容易に多重化され、それによって異なる腫瘍標的を同時に係合させるよう指図されたことを実証する。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図15-1】
図15-2】
図15-3】
図15-4】
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図15-8】
図15-9】
図15-10】
図15-11】
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図16
図17
図18
【配列表】
2024023230000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-12-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然α1-α2ドメインに対する少なくとも80%の同一性を含む天然NKG2Dリガンド分子の非天然改変α1-α2ドメインであって、改変α1-α2ドメインは天然α1-α2ドメインの5より多いアミノ酸が置換されており、改変は非天然NKG2D受容体外部ドメインに対するその結合親和性を増加させ、非天然NKG2D受容体の外部ドメインは、少なくとも1つの天然NKG2Dリガンドに対して、前記少なくとも天然NKG2Dリガンドに対する天然NKG2D受容体外部ドメインの親和性より低い親和性を有する、非天然改変α1-α2ドメイン。
【外国語明細書】