(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023234
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ポリマーブラシ形成用組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 20/18 20060101AFI20240214BHJP
C08F 20/56 20060101ALI20240214BHJP
C08F 20/54 20060101ALI20240214BHJP
C08F 2/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08F20/18
C08F20/56
C08F20/54
C08F2/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】38
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023189285
(22)【出願日】2023-11-06
(62)【分割の表示】P 2021504569の分割
【原出願日】2019-04-10
(31)【優先権主張番号】PA201800153
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(71)【出願人】
【識別番号】523416427
【氏名又は名称】ラディサーフ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RadiSurf, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ウルス ニールセン
(72)【発明者】
【氏名】ミッケル スコルクヤエル コングスフェルト
(57)【要約】 (修正有)
【課題】固体部分の表面にポリマーブラシを形成するのに適した新規な薬液、前記薬液を用いて固体部分の表面にポリマーブラシを形成する方法、並びにその表面にコーティングされたポリマーブラシを有する固体部分、およびその使用方法を提供する。
【解決手段】固体部分の表面にポリマーブラシを形成するために使用される反応組成物は、少なくとも1つの重合組成物と、少なくとも1つの活性化剤と、(i)重合組成物の一部、(ii)活性化剤の一部、または(iii)別個の組成物、の1つまたは複数として提供される1つ以上の単量体と、を含む。前記少なくとも1つの重合組成物が、溶媒と、CuまたはFeから誘導される1つ以上の休止遷移金属触媒と、遷移金属と配位可能な配位子と、を含み、前記活性化剤が1つ以上の脱酸素剤を含み、前記少なくとも1つの重合組成物および前記少なくとも1つの活性化剤が、別個の組成物として提供される、反応組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの重合組成物と、少なくとも1つの活性化剤とを含む反応組成物であって、
前記少なくとも1つの重合組成物が1つ以上の休止遷移金属触媒を含み、
前記活性化剤が1つ以上の脱酸素剤を含む、反応組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの重合組成物および前記少なくとも1つの活性化剤が、別個の組成物として提供される、請求項1に記載の反応組成物。
【請求項3】
前記1つ以上の休止遷移金属触媒が、銅(Cu)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、カドミウム(Cd)、タングステン(W)、レニウム(Re)、ルテニウム(Ru)、プラチナ(Pt)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、サマリウム(Sm)またはパラジウム(Pd)、並びにこれらの組合せ由来である、請求項1または2に記載の反応組成物。
【請求項4】
前記銅(Cu)遷移金属触媒が、Cu2O、CuO、およびCu、並びにこれらの組合せから選択される、請求項3に記載の反応組成物。
【請求項5】
前記1つ以上の脱酸素剤が、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、次亜リン酸ナトリウム、鉄粉と塩化ナトリウムの混合物、炭酸水素、クエン酸、ピロガリック酸、並びにこれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の反応組成物。
【請求項6】
前記重合組成物および/または前記活性化剤が、1つ以上の単量体、1つ以上の配位子、または1つ以上の溶媒、並びにこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の反応組成物。
【請求項7】
前記単量体が、アクリレート、メタクリレート、ハロゲン置換アルケン、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびスチレン、並びにこれらの混合物から選択される、請求項6に記載の反応組成物。
【請求項8】
前記重合組成物と前記活性化剤とを混合することによって形成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の反応組成物。
【請求項9】
前記休止遷移金属触媒が、前記重合組成物と前記活性化剤とを混合することによって活性化される、請求項1~8のいずれか一項に記載の反応組成物。
【請求項10】
固体部分上にポリマーブラシを形成する方法であって、
前記固体部分の表面に固定化された重合開始剤を有する前記固体部分を提供し、
前記固体部分を、重合組成物と活性化剤とを混合することによって形成された反応組成物と接触させる、
方法。
【請求項11】
前記固体部分が前記反応組成物に浸漬される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応組成物が、前記固体部分上に噴霧または塗装される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記固体部分を前記重合組成物および前記活性化剤のいずれかと接触させ、次いで、前記重合組成物および前記活性化剤のうちの他方が添加される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記固体部分が、金属、合金、ガラス、セラミックス、プラスチック、炭素繊維、ガラス状炭素、グラフェン、グラファイト、および複合体材料などの炭素系材料、並びにそれらの組合せから選択される、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか1項に記載の方法により得ることができるポリマーブラシ被覆固体部分。
【請求項16】
1つ以上の休止遷移金属触媒を含む、重合組成物。
【請求項17】
請求項10~14に記載の製造されたポリマーブラシの使用であって、
高分子材料を金属に結合するための、
機能性熱可塑性樹脂をガラスに結合するための、
ポリマーブラシで機能化された複合体充填剤を、複合体材料としてのポリマーのマトリックスに結合するための、
ガラス、金属またはプラスチック材料上に機能性表面を生成するための、
ガラス、金属またはプラスチック材料上に低摩擦表面を生成するための、および
ガラス、金属またはプラスチック材料上にセルフクリーニング表面を生成するための、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体部分の表面上にポリマーブラシを形成するのに適した新規な薬液(反応組成物および重合組成物)に関する。本発明は、さらに、新規組成物を用いて固体部分の表面にポリマーブラシを形成する方法、並びに表面にコーティングされたポリマーブラシを有する固体部分に関する。このようなポリマーブラシ被覆固体部分の使用も包含される。
【背景技術】
【0002】
固体部分上のよく定義された高分子構造は、多くの技術においてますます重要になっている。このような高分子構造は、しばしばポリマーブラシと呼ばれる。基本的に、ポリマーブラシは、一端で基材に繋がれた高分子の集合体であり、典型的には、例えば、金属、プラスチック、セラミック、並びに他の固体物質から作られた固体部分である。新しい重合技術の出現は、厳密な分子制御および所望の特性を有するポリマーブラシの特定の設計および合成を容易にした。ポリマーブラシは、この20年の間に探索されてきたが、それらは、以前、長期の機械的安定性と化学的頑健性を示す機能的表面塗装としての用途が限られていた。しかしながら、近年、ポリマーブラシは、酸化還元活性から生体適合性および表面改質まで様々な幅広い用途を有するナノスケールの「構成単位」よりも多いことが見出されており、ポリマーブラシの柔軟性により、ポリマーブラシの高度に調整された薄膜を、成分組成、厚さ、グラフト密度およびアーキテクチャに関して作成することができる。
【0003】
実際、ポリマーブラシは、接着または他の従来のインターロック方法によって容易に組み合わせることができない非相溶性材料の組立における強力なツールである。ポリマーブラシは、実質的に目に見えない、透明なものであっても、材料の接合を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリマーブラシの形成および固体表面への付着は、専門的な作業であり、専門的な機器を必要とする。さらに、化学反応(重合)は時間がかかり、複雑である。このように、ポリマーブラシ被覆表面は、ほとんどが専門施設で調製される。主な課題の一つは、ポリマーブラシの形成に必要な反応混合物が不安定であるため、ポリマーブラシの形成と反応を制御するためには、厳密な不活性雰囲気や温度制御などの特別な反応条件が必要であることである。
【0005】
したがって、ポリマーブラシ被覆面のより容易で複雑でない製造のための方法および試薬を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本発明は、反応組成物に関する。反応組成物は、固体部分の表面にポリマーブラシを形成するために使用される。反応組成物は、少なくとも1つの重合組成物および少なくとも1つの活性化剤を含む。特に、重合組成物は、1つ以上の休止遷移金属触媒を含み、活性化剤は、1つ以上の脱酸素剤を含む。本発明による反応組成物の主な利点は、重合組成物が貯蔵時に安定にすることができ、さらに、重合組成物が活性化剤によって要求に応じて活性化され得ることである。
【0007】
反応組成物は、好ましくは、別個の組成物として提供される少なくとも1つの重合組成物および少なくとも1つの活性化剤を含む。それにより、重合組成物は、要求に応じて活性化され得る。
【0008】
第2の態様では、本発明は、固体部分上にポリマーブラシを形成する方法に関する。この方法は、固体部分の表面上に固定化された重合開始剤を有する固体部分を提供することを含み、固体部分を、重合組成物と活性化剤とを混合することによって形成された反応組成物と接触させることをさらに含む。
【0009】
ある実施形態では、本発明は、固体部分の表面に固定化された重合開始剤を有する固体部分上にポリマーブラシを形成するための方法に関し、この方法は、
重合組成物および活性化剤を提供する工程、
重合組成物および活性化剤を混合して反応組成物を形成する工程、および
反応組成物および固体部分を接触させ、それによって固体部分上で表面重合を開始し、それによって、固体部分の表面上に重合開始剤を介してポリマーブラシが形成される工程、
を含む。
【0010】
本発明はさらに、本発明による方法によって得ることができるポリマーブラシ被覆固体部分に関する。
【0011】
本発明はまた、固体部分の表面上にポリマーブラシを形成するための本発明による反応組成物の使用を企図する。
【0012】
本発明は、種々の目的のための様々な製品を調製するためのポリマーブラシ被覆固体部分の使用を可能にする。
【0013】
重合組成物もまた、本発明の一部を形成する。重合組成物は、1つ以上の休止(休眠)遷移金属触媒を含む。重合組成物は、一意安定性を有し、それにより、反応性能を保持しながら、ある期間にわたる貯蔵を可能にする。重合組成物は、1つ以上の休止遷移金属触媒の存在により、要求に応じて活性化され得る。
【0014】
本発明のある実施形態を添付図面に示す。図面は、決して本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】重合組成物のある種の適当な配位子(窒素含有化合物)を示す。
【
図4】表面での開始剤分子の1段階(シラングラフト)の固定化を示す。
【
図5】表面での開始剤分子の1段階(ジアゾニウムグラフト)固定化を示す。
【
図6】表面での開始剤分子の2段階(ジアゾニウムグラフト)固定化を示す。
【
図7】原子吸着分光法(ASS)を用いたCu触媒濃度とUV-VISピーク吸光度を示す。
【
図8】得られたPGMAポリマーブラシの厚さを、PGMAポリマーブラシの形成中の異なる酸素含有量での活性化剤としてCu触媒とアスコルビン酸ナトリウム(NaAsc)を用いて示す。
【
図9】同一固体部分上の第1および第2のポリマーブラシ形成のためのPGMAポリマーブラシ厚さを示す。
【
図10】種々のCu触媒濃度、NaAsc活性化剤、および21%酸素雰囲気下でのポリマーブラシの形成方法を用いたPGMAポリマーブラシ厚さを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明およびその態様は、以下でより詳細に記載される。
【0017】
本発明は、少なくとも1つの重合組成物、および少なくとも1つの活性化剤を含む反応組成物に関し、少なくとも1つの重合組成物は、1つ以上の休止遷移金属触媒を含み、活性化剤は、1つ以上の脱酸素剤を含む。
【0018】
重合組成物は、少なくとも1つの休止遷移金属触媒を含む。すなわち、重合組成物は、1つの休止遷移金属触媒、または1つ以上の休止遷移金属触媒を含むことができる。例えば、重合組成物は、2、3、4、5、またはそれ以上の休止遷移金属触媒を含むことができる。いくつかの実施形態では、2つ、3つ、または4つなどのいくつかの重合組成物が提供され得、1つ以上の遷移金属触媒を含む重合組成物の各々またはいくつかが提供され得る。
【0019】
休止遷移金属触媒は、適宜、銅(Cu)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、カドミウム(Cd)、タングステン(W)、レニウム(Re)、ルテニウム(Ru)、プラチナ(Pt)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、サマリウム(sm)、またはパラジウム(Pd)由来である。このような休止遷移金属触媒の組合せも包含される。休止遷移金属触媒の非限定的な例としては、以下の、
Cu:Cu2O、CuO、およびCu(O)
Fe:FeO、Fe2O3、Fe3O4
Sm:Sm2O3
Al:Al2O3
Cd:CdO
W:WO3
Re:ReO3、Re2O7
Ru:RuO2
Pt:PtO2
Ti:TiO2
Mn:MnO2
Ni:NiO
Pd:PdO
が挙げられる。
【0020】
休止(ドーマント)金属は、特に、遷移金属と配位することができる配位子(リガンド)と組合せて提供することができる。これにより、触媒効果が達成される。このように、遷移金属触媒を形成する配位子に関連した遷移金属は、休止または活性化され得る。
【0021】
通常、遷移金属は酸化されると休止状態(不活性)になる。
【0022】
一実施形態では、1つ以上の休止遷移金属触媒は、銅(Cu)由来である。特に、1つ以上の休止遷移金属触媒が銅(Cu)由来である場合、遷移金属触媒は、Cu2O、CuO、Cu(O)、およびCuSO4*5H2Oの中から選択され得る。このような遷移金属触媒の組合せも包含される。
【0023】
別の実施形態では、1つまたは複数の休止遷移金属触媒は、鉄(Fe)由来である。特に、1つ以上の休止遷移金属触媒が鉄(Fe)由来である場合、遷移金属触媒は、FeO、Fe2O3、およびFe3O4の中から選択されてもよい。このような遷移金属触媒の組合せも包含される。
【0024】
第3の実施形態では、休止遷移金属触媒は、銅(Cu)と鉄(Fe)とを併用して誘導(導出)される。したがって、休止遷移金属触媒は、Cu2O、CuO、Cu(O)、およびCuSO4*5H2O、並びに、FeO、Fe2O3、およびFe3O4の組合せとすることができる。
【0025】
休止状態の遷移金属触媒は、活性化すると重合を開始することができる。
【0026】
本発明の反応組成物の一実施形態では、1または複数の重合組成物、および1または複数の活性化剤は、別個の溶液、紛体または粒子調製物として提供される。重合組成物および活性化剤を別々のまたは別々の溶液、紛体、または粒子状の調製物として提供することは、休止状態の遷移金属触媒を活性化剤の存在なしにはその活性形態に変換または再生することができないので、重合組成物の有益な安定性を保証する。
【0027】
活性化剤または薬剤は、1つ以上の脱酸素剤を含む。活性化剤の脱酸素剤は、水溶液から酸素を消費することにより、重合組成物の休止遷移金属触媒を活性化することができる。したがって、酸素の除去は、休止状態の金属触媒が活性金属触媒に再生することを可能にする。脱酸素剤の一部は、休止金属触媒を活性金属触媒に直接還元することもできる。上述したように、休止金属触媒は、遷移金属と配位子との間に形成される。
【0028】
いくつかの実施形態において、活性化剤の脱酸素剤は、アスコルビン酸ナトリウム(NaAsc)、アスコルビン酸、ヒドラジン水和物、次亜リン酸ナトリウム、鉄粉および塩化ナトリウムの混合物、炭酸水素塩、クエン酸、およびピロガル酸、並びにこれらの混合物から選択される。ある態様において、脱酸素剤は、アスコルビン酸ナトリウムおよび/またはアスコルビン酸から選択される。特に、脱酸素剤は、液剤、紛体剤または微粒子調製物として提供することができる。
【0029】
重合反応を進行させるために、反応組成物は、1つ以上の単量体(モノマー)をさらに含む。1つ以上の単量体は、重合組成物の一部として、および/または活性化剤の一部として提供され得る。さらに、1つ以上の単量体は、重合組成物および活性化剤と混合される、分離された組成物または別個の組成物として提供され得、それによって反応組成物を形成する。単量体の非限定的な例としては、アクリル酸塩、メタクリレート、ハロゲン置換アルケン、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびスチレン、並びにこれらの混合物が挙げられる。単量体は、任意に、活性遷移金属触媒の不均化を助ける官能基を有していてもよい。官能基の非限定的な例としては、アミド、スルホキシド、カーボネート、およびオニウムが挙げられる。
【0030】
具体的なアクリル酸塩単量体としては、メチルアクリレート、およびエチルアクリレート、ラウリルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。特異的なメタクリル酸単量体には、メタクリル酸メチル(MMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、グリシジルメタアクリレート(GMA)、エチルメタクリレート、およびメタクリル酸ブチル、ラウリルメタクリレートが含まれるが、これらに限定されない。具体的なハロゲン置換アルケン単量体としては、塩化ビニル、二フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロピレンが挙げられるが、これらに限定されない。具体的なアクリルアミド単量体としては、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、およびN-ヒドロキシエチルアクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。特定のメタクリルアミドモノマーとしては、N-イソプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリレート、およびN-ヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。具体的なスチレンモノマーとしては、スチレン、4-メチルスチレン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン、p-ジビニルベンゼン、および4-クロロスチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
上述のように、反応組成物は、遷移金属と結合する1つ以上の配位子をさらに含むことができる。1つ以上の配位子は、重合組成物の一部として、および/または活性化剤の一部として提供され得る。さらに、1つ以上の配位子は、重合組成物および活性化剤と混合される、分離された溶液または別個の溶液として提供され得、それによって反応組成物を形成し得る。配位子は、遷移金属のための配位子の十分な利用可能性を確保するために、好ましくは、過剰に添加される。具体的な配位子としては、N,N,N’,N’’,N’’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン(Me6TREN)、トリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)、トリス(2-ピリジルメチル)アミン(TPMA)、および2,2’-ビピリジル(BiPy)などの窒素含有配位子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
反応組成物は、1つ以上の溶媒をさらに含むことができる。1つ以上の溶媒は、重合組成物の一部として、および/または活性化剤の一部として提供され得る。さらに、1つ以上の溶媒は、重合組成物および活性化剤とそれぞれ混合され、それによって反応組成物を形成するための、分離された溶液または別個の溶液として提供されてもよい。具体的な溶媒としては、アルコール、双極性非プロトン性溶媒、メチレンカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルラクテートアルコール、イオン性液体、および水、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。メチルアルコール(メタノール)およびエチルアルコール(エタノール)は、単量体が重合組成物中に存在する場合、休止遷移金属触媒および任意に単量体のための好適な担体として作用することができるので、重合組成物の場合、メチルアルコールおよび/またはエチルアルコールが好適な溶媒であり得る。活性化剤の場合、水は適切な溶媒であり得る。組成物/薬剤中の各成分または化合物の濃度は、典型的には0.1nM~35Mの範囲である。具体例としては、1nM、5nM、10nM、50nM、1M、5M、10M、20M、および30Mが挙げられるが、これらに限定されない。各成分または化合物の濃度は、同一であっても異なっていてもよいことを理解されたい。特定の実施形態では、単量体濃度は0.01M~5Mであり得る。特定の実施形態において、脱酸素剤の濃度は、0.010~0.045Mであり得る。ある実施形態では、配位子の濃度は0.046Mである。ある態様において、溶媒の濃度は、0.1~35Mである。特定の実施形態において、触媒の濃度は、1.0ppb~500.0ppmである。
【0033】
したがって、本発明の反応組成物は、休止遷移金属触媒が、重合組成物および活性化剤を混合することによって活性化されるようなものである。上述のように、重合組成物および/または活性化剤は、任意に、単量体、配位子、溶媒、またはこれらの混合物などの追加の化合物を含み得る。これらの追加の化合物は、任意に、重合組成物および/または活性化剤と混合される個別の組成物として提供され得る。
【0034】
重合組成物は、いくつかの方法で、休止遷移金属触媒を適当な溶媒に添加することによって適当に調製することができる、例えば、(1)遷移金属触媒をナノ粒子紛体として添加し、次いで、紛体を、主に大気によって酸化させて休眠形態にする、(2)遷移金属触媒を遷移金属触媒の塩類の不均化からその場で調製し、続いて大気によって酸化して主に休眠形態を作り出す、(3)遷移金属触媒の固体形態を溶媒に添加し、混合物をスピン(撹拌)して遷移金属触媒のナノ粒子を溶媒中に生成および遊離させ、続いて金属粒子を大気によって酸化させる、(4)流動状態でCuチューブまたはCu充填層反応器に通す、などである。重合組成物の調製は、好ましくは室温で行うことができる。
【0035】
活性化剤は、様々な構成要素を混合し、場合によっては撹拌することにより適宜調製することができる。活性化剤の調製は、好ましくは室温で行われ得るが、任意の温度が適切であり得る。
【0036】
重合組成物および活性化剤を調製したら、使用するまで保存することができる。それぞれが休止状態、すなわち化学反応が起こらないため、数カ月から数年間の優れた貯蔵安定性が予想される。重合組成物および活性化剤は、任意の適切な温度で保存することができる。いくつかの実施形態において、それらは、例えば、5℃未満または8℃未満などの低下した温度で貯蔵され得る。
【0037】
本発明の重要な態様は、固体部分上にポリマーブラシを形成する方法であって、本方法は、
固体部分の表面上に固定化された重合開始剤を有する固体部分を提供する工程を含み、
本方法は、
重合組成物と活性化剤とを混合することによって形成される、本明細書に定義されるような反応組成物と固体部分を接触させる工程をさらに含む。
【0038】
本方法の特別な実施形態では、本方法は、
本明細書に定義される重合組成物を提供し、
本明細書に定義される活性化剤を提供し、
重合組成物と活性化剤とを混合して、本明細書に定義される反応組成物を形成し、
反応組成物と固体部分とを接触させ、それによって表面重合を開始し、それによって、固体部分の表面上に、重合開始剤を介してポリマーブラシが形成されることを含む。
【0039】
本発明による方法のいくつかの実施形態において、酸素の存在は、ポリマーブラシの形成を容易にするために減少され得る。酸素の存在は、例えば、70%、75%、80%、85%、90%または95%などのように、70%以上、適切に低減され得る。しかしながら、ポリマーブラシの形成は、0~100%の酸素濃度を有する雰囲気中で行うことができる。ある実施形態では、ポリマーブラシの形成は、通常の大気条件下で行われる。
【0040】
固体部分は、金属(例えば、アルミニウム、鋼板、チタン、ニッケル、金、銀、プラチナ、クロム、銅、鉄、および各種金属の合金)、ガラス、カーボンもしくはグラファイト、セラミック、複合体、またはプラスチック、またはそのような材料の外側塗装を含む材料から好適に作製され得る。固体部分は、導電性または非導電性であってもよい。
【0041】
固体部分は、表面上に固定化された重合開始剤を有する。これにより、固体部分が活性化される(活性化固体部分)。このような重合開始剤を結合させる方法は、当技術分野において周知である。重合開始剤を固定化する方法は、例えば、国際公開第2014/075695A1号に記載されている。一般に、重合開始剤は、固体部分の面に共有結合することができるようなものである。
【0042】
重合開始剤は、固体部分が作られる材料に応じて、また形成されるポリマーブラシの特性に応じて、固体部分の表面上への固定化を可能にするように、予め定義された表面化学を用いて作ることができる。開始剤の固定は、通常、自然グラフトまたは電気グラフトによる固体部分の表面への有機分子の結合を含む。自然グラフトのタイプには、シラン、ホスホン酸、およびジアゾニウムグラフトが含まれるが、これらに限定されない。電気グラフトの種類には、ジアゾニウム、ヨードニウム、およびスルホニウムグラフトが含まれるが、これらに限定されない。そのような化合物の一般的なグラフト化は、
図3Aおよび
図3Bに見ることができる。
【0043】
重合開始剤の表面への結合は、1ステップまたは2ステップのいずれかの方法で行うことができる。1ステップ法では、ジアゾニウムグラフトまたはシラングラフトによる、表面への、ハロゲン化ベンジル(ほとんどがベンジルクロライド)部分のグラフトを使用する(シラングラフトバージョンについては
図4および
図5参照)。ハロゲン化ベンジル部分はグラフト層の重合開始剤として作用する。2ステップ法は、第1ステップで有機化合物を求核基で表面グラフトし、第2ステップで求核基を用いて開始剤部分を結合させる方法である(ヒドロキシジアゾニウムバージョンについては
図6参照)。求核剤は、ヒドロキシル基またはアミン基を含むことができるが、これらに限定されない。第2ステップでは、求核剤を求電子剤と反応させて開始剤部分を付加し、両者の間に共有結合を形成する。固定化は、以下にさらに記載される。
【0044】
シラングラフト1ステップ:
開始剤は、トリアルコキシシランをハロゲン化ベンジル基でシラングラフトすることにより、1ステップで表面上に固定化することができる(
図4参照)。
【0045】
シラングラフトは通常、蒸着法または溶液グラフト法の2つの方法のいずれかで行われる。
【0046】
ジアゾニウムグラフト1ステップ:
開始剤は、ジアゾニウム塩をハロゲン化ベンジル基でジアゾニウムグラフトすることにより、1ステップで表面上に固定化することができる(
図5参照)。
【0047】
ジアゾニウムグラフトは通常、電気化学的、自然発生的、または化学的グラフトの3つの方法のいずれかで行われる。
【0048】
ジアゾニウムグラフト2ステップ:
開始剤固定化のもう一つの経路は、2ステップのプロセスである(
図6参照)。第1ステップは求核基(OH)を含むジアゾニウム塩類のジアゾニウムグラフトである。第2ステップでは、求核アシル置換反応によりハロゲン含有基が付加され、固定化重合開始剤が得られる。
【0049】
開始剤を固定化する他の方法は、当技術分野で周知である。
【0050】
本発明の方法により、表面上に固定化された重合開始剤を有する固体部分を、重合組成物および活性化剤と接触させる。重合組成物と活性化剤との混合は、反応組成物の形成をもたらし、これは、重合開始剤が固定化された固体部分(すなわち、活性化固体部分)との接触の際に、固体部分の表面上の重合開始剤を介してポリマーブラシの形成を可能にする。他の成分または溶液もまた、重合組成物および活性化剤、例えば単量体、配位子などと混合され得ることを理解され、上記したように、理解されるべきである。これらの追加の成分または化合物は、重合組成物または活性化剤の一部であってもよく、または個別の溶液または成分として提供されてもよい。さらに、重合組成物、活性化剤、および任意に他の溶液または成分を、固体部分と接触する前に混合してもよく、または固体部分と接触する際に混合してもよいことを理解されたい。
【0051】
適切な重合組成物、活性化剤、および任意の他の溶液または成分は、上記に明記されたものである。
【0052】
本発明の方法の一実施形態において、重合開始剤が固定化された固体部分は、反応組成物中に浸漬される。ポリマーブラシの形成は、周囲条件(温度、雰囲気)で行われ得る。
【0053】
本発明の方法の別の実施形態では、反応組成物は、固体部分上に噴霧または塗装される。反応組成物は、例えば、いわゆるスピンコーティングおよびドロップコーティング技術等を適用することにより、重合開始剤が固定された固体部分の表面に液体膜を適用することにより、固体部分とさらに接触させることができる。
【0054】
特定の実施形態では、固体部分は、金属または合金、ガラス、セラミックス、プラスチック、炭素系材料、および複合体材料、またはこれらの組み合わせから選択される。非限定的な例は、ステンレススチール、ガラス状炭素、および熱可塑性樹脂である。
【0055】
いくつかの態様において、反応組成物は、固体部分との接触前または接触中に、冷却または加熱され得る。室温(約20℃)~120℃など、適切な温度は-20℃~120℃である。具体的な温度は、-20℃、0℃、室温(約20℃)、30℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃であるが、これらに限定されない。
【0056】
その上に固定化された重合開始剤を有する固体部分および反応組成物は、典型的には、0.1秒~5時間などの適当な期間、互いに接した状態に保たれる。適当な時間は、1秒、2秒、30秒、1分、5分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間および5時間を含むが、これらに限定されない。
【0057】
いくつかの用途では、本発明の方法は、既存の上にポリマーブラシの別の層を形成するために繰り返されてもよい。これにより、いわゆるブロックポリマーを固体部分上に形成することができる。繰り返される方法は、ポリマーブラシの第1の層を形成するときに使用されるものとは異なるポリマーを含むことができることを理解されたい。本発明の方法は、ポリマーブラシのより複雑な性質を調製するために、複数回繰り返すことができる。ブロックポリマーを調製するために、先に形成されたポリマーブラシ上のハロゲン原子が、ポリマーブラシのさらなる形成のために好適に使用され得る。
【0058】
さらに、本発明は、本明細書に記載の方法により得ることができるポリマーブラシ被覆固体部分に関する。本発明による方法によって調製されたポリマーブラシ被覆表面を有するこのような固体部分は、多くの用途を見出す。非限定的な例は、密着性、耐食性のため、抗菌面または低摩擦面を提供するため、および装飾的デザインを調製するためのものである。
【0059】
本発明の方法の原理を
図2に示す。図から分かるように、重合開始剤が固定された固体部分(活性化固体部分)が提供される。そのように活性化された固体部分を反応組成物と接触させる(重合組成物および活性化剤を混合することによって得られる)。示されるように、重合組成物および活性化剤(またはその両方)の各々は、1つ以上の個別の溶液を含み得る。混合すると、反応組成物が形成される。反応組成物と固体部分とが(適切な温度で、適切な時間)接触されると、ポリマーブラシが固体部分の表面上に形成される。
【0060】
ポリマーブラシ(ポリマーブラシ構造)は、封止用途のための金属への高分子材料の結合、センサ部用途のための機能性熱可塑性プラスチックのガラスへの結合、機能性表面、例えば抗菌性表面、ガラス上の低摩擦表面または超疎水性のセルフクリーニング表面(自己洗浄表面)、金属、プラスチックなどを作り出すための、カーボンファイバー、グラフェン、粒子などのポリマーブラシ被覆複合体充填剤のポリマー、例えば、熱可塑性材料のマトリックスへの効率的な結合を含むが、これらに限定されない様々な用途に使用することができる。
【0061】
したがって、上記によれば、本発明は、高分子材料の金属への結合、機能性熱可塑性プラスチックのガラスへの結合、複合体材料としてのポリマーブラシ機能化複合体充填剤のポリマーマトリックスへの結合、ガラス、金属またはプラスチック材料上に機能性表面を形成するため、ガラス、金属またはプラスチック材料上に低摩擦表面を形成するため、およびガラス、金属またはプラスチック材料上にセルフクリーニング表面を形成するために、本明細書に開示される方法に従って調製されるポリマーブラシの使用に関する。
【0062】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
実施例
【0063】
実施例1
メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)からのポリマーブラシの調製
重合組成物の調製:
12mLの水、6mLのメチルアルコール(MeOH)、12mLのHEMA、および0.2208mLのN,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA-配位子)をフラスコ中で混合し、フラスコにCuワイヤラップしたテフロン(登録商標)マグネットを加え、Cuスパイスの所望濃度に応じて400rpmで2または5時間、フラスコ中で回転させた。2つの異なる任意のCu濃度を「2/5」および「5/5」と表記した。その後、Cuワイヤで包まれたテフロン磁石を取り除き、溶液を使用するまで2~5℃で保存した。
【0064】
5/5溶液中での重合:
5/5重合組成物5mLを3分間アルゴンパージした。次に、重合組成物に9mg/mLのNaAsc(活性化剤)を添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に40分間撹拌した。
【0065】
重合後、今度はポリマーブラシで被覆された固体部分を液から取り出し、アセトンで洗浄した。この処理により、厚さ28.0nmの均一に形成されたポリマーブラシが得られた。
【0066】
2/5溶液中での重合:
5mLの2/5重合組成物を3分間アルゴンパージした。次に、重合組成物に9mg/mLのNaAsc(活性化剤)を添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌した。
【0067】
重合後、今度はポリマーブラシで被覆された固体部分を液から取り出し、アセトンで洗浄した。この処理により、厚さ33.6nmの均等に分布したポリマーブラシが得られた。
【0068】
表面の液膜による重合:
4mLの5/5重合組成物を3分間アルゴンパージした。次に、紛体としてのNaAsc(活性化剤)の特定量(2mg/mL、5mg/mL、および9mg/mL)を重合組成物に添加し、反応組成物を形成した。反応組成物の薄膜(0.02mL/cm2)を活性化固体部分(ガラス状炭素)の表面に置き、10分間反応させた後、1)脱塩水、2)アセトン、および3)ペンタンで洗浄した。この反応組成物の薄膜を活性化固体部分の表面に添加し、反応、洗浄を3回繰り返した。
【0069】
重合後、液膜を、今度はポリマーブラシでコーティングされた固体部分から洗浄した。固体部分上に均一に形成されたポリマーブラシの層が観察された。
【0070】
スプレー重合:
5/5重合組成物6mLを3分間アルゴンパージした。次に、溶液をスプレーに移し、NaAsc(活性化剤)の特定量(それぞれ2mg/mL、5mg/mL、および9mg/mL)を添加して、スプレー形態の反応組成物を得た。活性化固体部分(ガラス状炭素)を表面上に反応組成物でスプレーコートした。スプレーコーティングされた表面を10分間反応させた後、洗い落とした。スプレー塗装、反応、洗浄の工程を4回繰り返した。
【0071】
重合後、1)脱塩水、2)HPLC‐アセトン、および3)ペンタン中で超音波処理によりポリマーブラシ被覆固形分を洗浄した。
【0072】
ポリマーブラシ被覆固体部分を検査し、固体部分上にポリマーブラシの均等に分布した層が形成されることを観察した。
【0073】
触媒としてCuナノ粒子(NP’s)を用いた重合:
12mLの水、6mLのメチルアルコール(MeOH)、12mLのHEMA、0.2208mLのN,N,N’,N’’、N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA-配位子)、および1mgのCu2Oナノ粒子(NP)(直径250nm未満)(重合組成物)をフラスコ中で混合する。当該溶液を使用するまで2~5℃で保存する。
【0074】
上記重合組成物5mLをアルゴンパージして3分間処理する。現在、紛体として9mg/mLのNaAsc(活性化剤)を添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と共に反応組成物を形成している。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌する。
【0075】
重合後、1)脱塩水、2)HPLC‐アセトン、および3)ペンタン中で超音波処理することにより、ポリマーブラシ被覆固体部分を洗浄する。
【0076】
実施例2
グリシジルメタアクリレート(GMA)単量体からのポリマーブラシの調製
Cu濃度の異なる重合組成物の調製:
5mLのDI-水および0.050mLのPMDETAの溶液中で、Cuワイヤで包まれたテフロン磁石を30分間撹拌した。その後、CuワイヤラップしたテフロンマグネットをHPLC-アセトンでフラッシュし、別のガラス製容器に移した。
【0077】
ここで、準備されたCuワイヤラップしたテフロン磁石32.46mlのMeOH、32.46mlのDI-水、および0.729mlのN,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA-配位子)の第2ガラス製容器に加えた。Cuワイヤラップ磁石を溶液中で、400rpmで十分な時間撹拌し、所望の濃度のCu触媒スパイスを得た。その後、Cuワイヤで包んだテフロン磁石を取り除き、9.99mlのGMAを加え、溶液を使用するまで2~5℃で保存した。
【0078】
各溶液中のCu触媒の濃度を、原子吸着分光法(AAS)を用いて測定した。AASから決定した濃度はUV‐VISピーク強度と相関し、Cu触媒の濃度を容易に決定した。
図7は、異なるCu触媒濃度を有する溶液についてのCu濃度対UV-VISピーク強度を示す。
【0079】
活性化剤9mg/mLを用いた5/5溶液中での重合:
5/5重合組成物5mLを3分間アルゴンパージした。次に、重合組成物に9mg/mLのNaAsc(活性化剤)を添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌した。
【0080】
重合後、今度はポリマーブラシでコーティングされた固体部分を反応組成物から取り出し、アセトンで洗浄した。
【0081】
2mg/mL活性化剤による5/5溶液中での重合:
5/5重合組成物5mLを3分間アルゴンパージした。次に、重合組成物に2mg/mLのNaAsc(活性化剤)を添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌した。
【0082】
重合後、今度はポリマーブラシでコーティングされた固体部分を反応組成物から取り出し、アセトンで洗浄した。
【0083】
活性化剤2mg/mLを用いた5/5溶液中での重合:
5/5重合組成物5mLを3分間アルゴンパージした。次に、2mg/mLのNaAsc(活性化剤)を重合組成物に添加し、したがって、活性化固体部分(ガラス状炭素)と共に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌した。
【0084】
重合後、今度はポリマーブラシでコーティングされた固体部分を反応組成物から除去し、アセトンで洗浄した。
【0085】
活性化剤9mg/mLを用いた4/5溶液中での重合:
5mLの4/5重合組成物を3分間アルゴンパージした。次に、紛体として9mg/mLのNaAsc(活性化剤)を重合組成物に添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌した。
【0086】
重合後、今度はポリマーブラシでコーティングされた固体部分を反応組成物から取り出し、アセトンで洗浄した。
【0087】
活性化剤5mg/mLを用いた4/5溶液中での重合:
5mLの4/5重合組成物を3分間アルゴンパージした。次に、紛体として5mg/mLのNaAsc(活性化剤)を重合組成物に添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌した。
【0088】
重合後、今度はポリマーブラシでコーティングされた固体部分を反応組成物から取り出し、アセトンで洗浄した。
【0089】
活性化溶液2mg/mLによる4/5溶液中での重合:
5mLの4/5重合組成物を3分間アルゴンパージした。次に、2mg/mLのNaAsc(活性化液)を重合組成物に添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と共に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌した。
【0090】
重合後、今度はポリマーブラシでコーティングされた固体部分を反応組成物から取り出し、アセトンで洗浄した。
【0091】
活性化剤9mg/mLを用いた3/5溶液中での重合:
5mLの3/5重合組成物を3分間アルゴンパージした。次に、紛体として9mg/mLのNaAsc(活性化剤)を重合組成物に添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌した。
【0092】
重合後、今度はポリマーブラシでコーティングされた固体部分を反応組成物から取り出し、アセトンで洗浄した。
【0093】
活性化剤5mg/mLを用いた3/5溶液中での重合:
5mLの3/5重合組成物を3分間アルゴンパージした。次に、紛体として5mg/mLのNaAsc(活性化剤)を重合組成物に添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌した。
【0094】
重合後、今度はポリマーブラシでコーティングされた固体部分を反応組成物から取り出し、アセトンで洗浄した。
【0095】
活性化剤2mg/mLによる3/5溶液中での重合:
5mLの3/5重合組成物を3分間アルゴンパージした。次に、紛体として2mg/mLのNaAsc(活性化剤)を重合組成物に添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌した。
【0096】
重合後、今度はポリマーブラシでコーティングされた固体部分を反応組成物から取り出し、アセトンで洗浄した。
【0097】
9mg/mL活性化溶液による2/5溶液中での重合:
5mLの2/5重合組成物を3分間アルゴンパージした。次に、紛体として9mg/mLのNaAsc(活性化剤)を重合組成物に添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌した。
【0098】
重合後、今度はポリマーブラシでコーティングされた固体部分を反応組成物から除去し、アセトンで洗浄した。
【0099】
活性化剤5mg/mLを用いた2/5溶液中での重合:
5mLの2/5重合組成物を3分間アルゴンパージした。次に、紛体として5mg/mLのNaAsc(活性化剤)を重合組成物に添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌した。
【0100】
重合後、今度はポリマーブラシでコーティングされた固体部分を反応組成物から取り出し、アセトンで洗浄した。
【0101】
活性化剤2mg/mLによる2/5溶液中での重合:
5mLの2/5重合組成物を3分間アルゴンパージした。次に、紛体として2mg/mLのNaAsc(活性化剤)を重合組成物に添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌した。
【0102】
重合後、今度はポリマーブラシでコーティングされた固体部分を反応組成物から取り出し、アセトンで洗浄した。
【0103】
1/5溶液中での9mg/mL活性化剤による重合:
5mLの1/5重合組成物を3分間アルゴンパージした。次に、紛体として9mg/mLのNaAsc(活性化剤)を重合組成物に添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌した。
【0104】
重合後、今度はポリマーブラシでコーティングされた固体部分を反応組成物から取り出し、アセトンで洗浄した。
【0105】
1/5溶液中での5mg/mL活性化剤による重合:
5mLの1/5重合組成物を3分間アルゴンパージした。次に、紛体として5mg/mLのNaAsc(活性化剤)を重合組成物に添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌した。
【0106】
重合後、今度はポリマーブラシでコーティングされた固体部分を反応組成物から取り出し、アセトンで洗浄した。
【0107】
活性化剤2mg/mLによる1/5溶液中での重合:
5mLの1/5重合組成物を3分間アルゴンパージした。次に、紛体として2mg/mLのNaAsc(活性化溶液)を重合組成物に添加し、活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分と共に40分間撹拌した。
【0108】
重合後、今度はポリマーブラシでコーティングされた固体部分を反応組成物から除去し、アセトンで洗浄した。
【0109】
CuおよびNaAsc濃度の異なるGMA単量体を用いて調製したポリマーブラシのポリマーブラシ厚さ(nm)を表1に示す。
【0110】
【0111】
以下に、5.5mg/LのCu触媒濃度を有する重合組成物を記載のように調製した。重合組成物を以下の実験に使用した。
【0112】
触媒濃度と活性化剤の効果:
テフロン磁石を備えた試験管に、5mLの重合組成物(それぞれ1.6、5.5、12.3、27.1および70.6mg/L触媒)を添加し、次いでアルゴンガスで3分間パージした。続いて、紛体として2、5、または9mg/mLのNaAsc(活性化剤)を添加した。20~25秒後(ヘッドスペースでのアルゴンガスパージで)、開始剤終端試料(ガラス状炭素-固体部分)を懸垂し(すなわち、固体部分を適当な保持メカニズムに配置し、撹拌磁石との接触を避けるために反応組成物中に浸漬し)、反応組成物を500rpmで40分間撹拌し、ポリマーブラシの形成を得た。
【0113】
その後、得られたポリマーブラシ被覆固体部分をアセトンでフラッシュした後、洗浄操作としてアセトン中で5分間超音波処理した。
【0114】
異なる既知のCuおよびNaAsc濃度を有するGMAの重合のための上記方法を用いて得られたポリマーブラシ厚さ(nm)を表2に示す。
【0115】
【0116】
図7に、種々の適用された反応物についての、AASからのCu触媒濃度対UV-VIS吸光度を示す。
図7に示した結果から、Cuワイヤ磁石撹拌時間を変えることにより、触媒濃度の異なる組成物を得ることが可能であることが明らかになった。
【0117】
0~100%酸素雰囲気下での表面重合:
テフロン磁石を備えた試験管に、5mLの重合組成物(5.5mg/L触媒)を添加した。重合組成物を酸素/アルゴンガス混合物(O2濃度:0%、11%、21%(大気大気)、34%、58%、および100%)で3分間パージした。その後、反応組成物を形成する各々の重合組成物に25.0mgのNaAsc(活性化剤)を添加し、20~25秒後(ヘッドスペース中でのアルゴンガスパージを伴って)、上記のように開始剤終了(ガラス状炭素-固体部分)組成物を吊り下げて添加し、反応組成物を500rpmで種々の時間(それぞれ5、10、20、および40分)撹拌しながらポリマーブラシを形成した。
【0118】
反応後、ここで、ポリマーブラシでコーティングされた固体部分をアセトンでフラッシュし、続いて洗浄手順としてアセトン中で5分間超音波処理した。
【0119】
図8は、異なる雰囲気条件下での種々の期間の重合から得られたPGMAポリマーブラシの厚さを示す。
図8は、酸素含有量の異なる雰囲気下でCu触媒濃度5.5mg/LおよびNaAsc活性化剤濃度5mg/mLを用いて重合して得られたPGMAポリマーブラシ厚さ(nm)を示す。
【0120】
得られた結果は、ポリマーブラシの形成が、重合中に0%~100%の酸素含有量の広い範囲の条件下で得ることができることを明らかに示した。
【0121】
ポリマーブラシ試料の再開始によるブロックポリマーブラシの形成:
「0~100%酸素雰囲気下での表面重合」に記載のポリマーブラシの形成方法を用いて、予め作製した(21%酸素雰囲気下で、上記を参照)2つのPGMAポリマーブラシ被覆ガラス状炭素固体部分(それぞれ5分間および10分間重合)を21%酸素雰囲気下で10分間、再重合し、単量体としてGMAを用いた。重合組成物および活性化剤を、ポリマーブラシの形成に使用する前に、2~5℃で6~8ヶ月間保存した。
【0122】
図9は、第1および第2の重合後のPGMAポリマーブラシの厚さをそれぞれ示す。
【0123】
さらに、重合組成物および活性化剤の貯蔵安定性は優れていることが観察された。なぜなら、使用前6~8か月の貯蔵はポリマーブラシの形成に悪影響を及ぼさなかったからである。重合組成物および活性化剤を別個の容器に保存した。したがって、期待される安定性が明確に実証された。
【0124】
21%酸素含有量での重合速度に対する触媒濃度効果:
21%酸素雰囲気下で3種の触媒濃度(前述のように作製)で重合したPGMAポリマーブラシ被覆ガラス状炭素固体部分を作製した。重合組成物および活性化剤を、ポリマーブラシの形成に使用する前に、2~5℃で6~8ヶ月間保存した。
【0125】
図10は、3つの異なる濃度の触媒を用いた、異なる時間の重合から得られたPGMAポリマーブラシの厚さを示す。Cu触媒濃度1.6、5.5、および16.65mg/Lを用いて得られた種々の重合時間に対するPGMAポリマーブラシ厚さ(nm)およびNaAsc活性剤(21%酸素雰囲気下での活性剤濃度5mg/mL)を示した。
【0126】
さらに、重合組成物および活性化剤の貯蔵安定性は優れていることが観察された。なぜなら、使用前6~8か月の貯蔵はポリマーブラシの形成に悪影響を及ぼさなかったからである。したがって、期待される安定性が明確に実証された。
【0127】
実施例3
メタクリル酸メチル(MMA)からのポリマーブラシの調製:
重合組成物の調製:
6mLのイソ-プロパノールおよび0.088mLのN,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA-配位子)をCuワイヤで包んだテフロンマグネットで2時間45分間撹拌した。続いて、6mLのMMAを溶液に添加し、Cuワイヤで包んだテフロン磁石を除去した。得られた重合組成物は、使用するまで2~5℃で保存した。
【0128】
溶液中での重合:
5mlの上記重合組成物を3分間アルゴンパージした。続いて、紛体として5mg/mLのNaAsc(活性化剤)を重合組成物に添加し、活性化表面と共に反応組成物を形成した。反応組成物を活性化固体部分(ガラス状炭素)と一緒に60分間撹拌した。
【0129】
重合後、今度はポリマーブラシで被覆された固体部分を溶液から取り出し、HPLC-アセトン中で超音波処理することにより洗浄した。
【0130】
形成されたポリマーブラシを検査したところ、固体部分(ガラス状炭素)がポリマーブラシで均等に被覆されていることが分かった。
【0131】
炭素繊維上のMMAの重合:
Cuワイヤ(活性化剤を形成するための)で包まれたテフロン磁石を、5mLのiPrOH(溶媒)と0.105mLのトレン(配位子)の溶液中で30分間撹拌する。その後、銅線で包まれたテフロンマグネットをHPLC-アセトンでフラッシュし、別のガラス製容器に移す。次に、5mLのMMA(重合組成物)を溶液に添加する。
【0132】
上記の重合組成物5mlを3分間アルゴンパージし、70℃に加熱する。次いで、紛体として5mg/mLのNaAsc(活性化剤)を重合組成物に添加し、活性化表面と共に反応組成物を形成する。反応組成物を活性化固体部分(炭素繊維)と一緒に120分間撹拌した。
【0133】
重合後、今度はポリマーブラシで被覆された固体部分を反応組成物から取り出し、HPLC-アセトン中で超音波処理することによって洗浄した。
【0134】
実施例4
ポリマーブラシのさらなる形成:
表3は、先に示したものと同等の方法を用いて、表面上に重合させることに成功した他の単量体を示している。溶剤系、休止遷移金属-配位子触媒および活性化剤は、各単量体についてさらに開示される。
【0135】
実施例2の「グリシジルメタアクリレート(GMA)単量体からのポリマーブラシの調製」の項に記載された方法を用いて、重合組成物、活性化剤および反応組成物を調製した。実施例2の「触媒濃度および活性化剤の効果」の項に記載された方法に従って、反応時間の変化および0%酸素雰囲気の時々の使用と共に、ポリマーブラシを固体部分上に形成した。
【0136】
【0137】
溶媒:
DMSO=ジメチルスルホキシド
H2O=水
iPrOH=イソプロパノール
MeOH=メチルアルコール
【0138】
単量体:
A:スチレン
B:2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン
C:アクリルアミド
D:3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩
E:[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)水酸化アンモニウム
F:ポリ(エチレングリコール)メタクリレート
G:3-(フルオロスルホニル)プロピルメタクリレート
H:エチレングリコールジメタクリレート
【0139】
固体部分:
Alu:アルミニウム
SS:ステンレス鋼
GC:ガラス状炭素
【0140】
すべての試料1~12について、水接触角測定とエリプソメトリーの組合せを用いて、ポリマーブラシの形成を目視検査した。ポリマーブラシは均一に分布していることが観察され、ポリマーブラシは幅広い単量体、溶媒、配位子および活性化剤を用いて形成できることが実証された。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの重合組成物と、少なくとも1つの活性化剤と、
(i)重合組成物の一部、(ii)活性化剤の一部、または(iii)別個の組成物、の1つまたは複数として提供される1つ以上の単量体と、を含む、
表面に固定化された重合開始剤を有する固体部分上にポリマーブラシを形成するための反応組成物であって、
前記少なくとも1つの重合組成物が、
溶媒と、
CuまたはFeから誘導される1つ以上の休止遷移金属触媒と、
遷移金属と配位可能な配位子と、
を含み、
前記活性化剤が1つ以上の脱酸素剤を含み、
前記少なくとも1つの重合組成物および前記少なくとも1つの活性化剤が、別個の組成物として提供される、反応組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの重合組成物および前記少なくとも1つの活性化剤のそれぞれが、使用されるまで保存される、請求項1に記載の反応組成物。
【請求項3】
前記1つ以上の脱酸素剤が、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、次亜リン酸ナトリウム、鉄粉と塩化ナトリウムの混合物、炭酸水素、クエン酸、ピロガリック酸、並びにこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の反応組成物。
【請求項4】
前記活性化剤が1つ以上の溶媒をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の反応組成物。
【請求項5】
前記単量体が、アクリレート、メタクリレート、ハロゲン置換アルケン、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびスチレン、並びにこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の反応組成物。
【請求項6】
重合組成物と活性化剤との混合により、重合開始剤が固定化された固体部分との接触の際に、固体部分の表面上の重合開始剤を介してポリマーブラシの形成を可能にする反応組成物が形成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の反応組成物。
【請求項7】
前記休止遷移金属触媒が、前記重合組成物と前記活性化剤とを混合することによって活性化される、請求項1~6のいずれか一項に記載の反応組成物。
【請求項8】
前記保存の温度が5℃未満である、請求項2に記載の反応組成物。
【請求項9】
前記保存の温度が8℃未満である、請求項2に記載の反応組成物。
【請求項10】
前記活性化剤は、休止金属触媒を活性金属触媒に直接還元する、請求項1に記載の反応組成物。
【請求項11】
前記配位子は窒素含有配位子である、請求項1に記載の反応組成物。
【請求項12】
前記素含有配位子は、N,N,N’,N’’,N’’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン(Me6TREN)、トリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)、トリス(2-ピリジルメチル)アミン(TPMA)、および2,2’-ビピリジル(BiPy)、からなる群から選択される、請求項11に記載の反応組成物。
【請求項13】
前記溶媒は、重合組成物の一部、活性化剤の一部である、または別個の溶液として提供される、請求項4に記載の反応組成物。
【請求項14】
前記溶媒は、重合組成物の一部、活性化剤の一部、および別個の溶液として提供される、請求項4に記載の反応組成物。
【請求項15】
各成分の濃度は0.1nM~35Mの範囲である、請求項1に記載の反応組成物。
【請求項16】
前記単量体の濃度は、0.01M~5Mであり、
前記脱酸素剤の濃度は、0.010~0.045Mであり、かつ、
前記休止遷移金属触媒の濃度は、1.0ppb~500.0ppmである、
請求項15に記載の反応組成物。
【請求項17】
前記重合組成物および残りの溶液または成分は、前記固体部分との接触前に混合され、または固体部分との接触時に混合され、反応組成物の形成をもたらす、請求項1に記載の反応組成物。
【請求項18】
前記休止遷移金属触媒が、Cu2O、CuO、Cu、CuSO4*5H2O、FeO、Fe2O3、Fe3O4、またはこれらの組み合わせに由来する、請求項1に記載の反応組成物。
【請求項19】
固体部分上にポリマーブラシを形成する方法であって、
表面に固定化された重合開始剤を有する前記固体部分を提供することと、
重合組成物、活性化剤、および(i)重合組成物の一部、(ii)活性化剤の一部、または(iii)別個の組成物、の1つまたは複数として提供される1つ以上の単量体を混合して反応組成物を形成することと、
前記固体部分との接触前に混合された、または、前記固体部分との接触時に混合された前記反応組成物と前記固体部分とを接触させ、これにより、固体部分の表面に重合開始剤を介してポリマーブラシを形成することと、
を含み、
前記重合組成物は、溶媒と、CuまたはFeから誘導される1つ以上の休止遷移金属触媒と、遷移金属と配位可能な配位子と、を含み、
前記活性化剤が1つ以上の脱酸素剤を含む、方法。
【請求項20】
前記固体部分が前記反応組成物に浸漬される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記反応組成物が、前記固体部分上に噴霧または塗装される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記固体部分を前記重合組成物および前記活性化剤のいずれかと接触させ、次いで、前記重合組成物および前記活性化剤のうちの他方が添加される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記固体部分が、金属、合金、ガラス、セラミックス、プラスチック、炭素系材料、並びにそれらの組合せから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記炭素系材料が、炭素繊維、ガラス状炭素、グラフェンまたはグラファイトから選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ポリマーブラシの既存の層の上に、ポリマーブラシの別のブロックを形成するために前記方法が繰り返される、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリマーブラシの形成が大気条件下で行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記休止遷移金属触媒が、Cu2O、CuO、Cu、CuSO4*5H2O、FeO、Fe2O3、Fe3O4、またはこれらの組み合わせに由来する、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
溶媒と、
CuまたはFeから誘導される1つ以上の休止遷移金属触媒と、
遷移金属と配位可能な配位子と、
を含む、脱酸素剤と組み合わせて用いられる、表面に固定化された重合開始剤を有する固体部分上にポリマーブラシを形成するための重合組成物であって、
前記休止遷移金属触媒は、前記脱酸素剤によって活性化される、重合組成物。
【請求項29】
更に1つ以上の単量体を含む、請求項28に記載の重合組成物。
【請求項30】
前記重合組成物は休止状態にあり、化学反応が起こらない、請求項28に記載の重合組成物。
【請求項31】
前記重合組成物と前記脱酸素剤との混合により、重合開始剤が固定化された固体部分との接触の際に、固体部分の表面上の重合開始剤を介してポリマーブラシの形成を可能にする、活性化された遷移金属触媒を含む反応組成物が形成される、請求項28に記載の重合組成物。
【請求項32】
前記配位子は窒素含有配位子である、請求項28に記載の重合組成物。
【請求項33】
前記窒素含有配位子は、N,N,N’,N’’,N’’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン(Me6TREN)、トリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)、トリス(2-ピリジルメチル)アミン(TPMA)、および2,2’-ビピリジル(BiPy)、からなる群から選択される、請求項32に記載の重合組成物。
【請求項34】
前記単量体が、アクリレート、メタクリレート、ハロゲン置換アルケン、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびスチレン、並びにこれらの混合物から選択される、請求項29記載の重合組成物。
【請求項35】
各成分の濃度は0.1nM~35Mの範囲である、請求項28に記載の重合組成物。
【請求項36】
前記単量体の濃度は、0.01M~5Mであり、かつ、
前記休止遷移金属触媒の濃度は、1.0ppb~500.0ppmである、
請求項35に記載の重合組成物。
【請求項37】
前記配位子は、前記遷移金属に対して過剰に存在する、請求項28に記載の重合組成物。
【請求項38】
前記休止遷移金属触媒が、Cu2O、CuO、Cu、CuSO4*5H2O、FeO、Fe2O3、Fe3O4、またはこれらの組み合わせに由来する、請求項28に記載の重合組成物。
【外国語明細書】