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特開2024-23236変性ポリマ-、組成物、塗膜及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023236
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】変性ポリマ-、組成物、塗膜及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/06 20060101AFI20240214BHJP
   C08F 259/08 20060101ALI20240214BHJP
   C09D 127/12 20060101ALI20240214BHJP
   C09D 127/18 20060101ALI20240214BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240214BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08L51/06
C08F259/08
C09D127/12
C09D127/18
C09D7/63
B32B27/30 D
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023189449
(22)【出願日】2023-11-06
(62)【分割の表示】P 2021546569の分割
【原出願日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】201910874511.9
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518241908
【氏名又は名称】ダイキン・フルオロケミカルズ・(チャイナ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Daikin Fluorochemicals (China) Co., Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】李 文彬
(72)【発明者】
【氏名】曾 ▲金▼
(72)【発明者】
【氏名】中川 秀人
(57)【要約】      (修正有)
【課題】防汚性に優れる変性ポリマ-を提供する。
【解決手段】本開示は、(a)含フッ素ポリマ-からなる主鎖と、(b)式(b1’)及び/又は、式(b2’)で示される側鎖と、を有することを特徴とする変性ポリマ-に関する。
-CH-CRb1(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf(b1’)
(式中、Xは、水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、Yは、-O-または-NH-であり、Zは、直接結合または二価の有機基であり、Rfは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、Rb1は、水素原子、又は、一価の有機基である。)
-CH-CRb2(-R)-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-R(b2’)
(式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rb2は、水素原子、又は、一価の有機基であり、nは、3~200である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)含フッ素ポリマーからなる主鎖と、
(b)式(b1’)及び/又は、式(b2’)で示される側鎖と、
を有し、前記含フッ素ポリマーは、-CHR-(式中、Rは水素原子又は一価の有機基)で表される単位を有する変性ポリマーと、
エステル系溶媒、脂肪族炭化水素類、アルコール系溶媒及び環状エーテル系溶媒からなる群より選択される少なくとも一種の溶媒を含む、組成物。
-CH-CRb1(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf (b1’)
[式中、Xは、水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、
Yは、-O-または-NH-であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、
b1は、水素原子、又は、一価の有機基である。]
-CH-CRb2(-R)-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-R (b2’)
[式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、
は、水素原子またはメチル基であり、
b2は、水素原子、又は、一価の有機基であり、
nは、3~200である。]
【請求項2】
前記含フッ素ポリマーは、テトラフルオロエチレン又はクロロトリフルオロエチレンに基づく重合単位を含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
更に、硬化剤を含む請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
塗料である請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
氷結防止用及び/又は着霜防止用組成物である請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
(a)含フッ素ポリマーからなる主鎖と、
(b)式(b1’)及び/又は、式(b2’)で示される側鎖と、
を有し、前記含フッ素ポリマーは、-CHR-(式中、Rは水素原子又は一価の有機基)で表される単位を有する変性ポリマーと、
溶媒とを含む、塗料。
-CH-CRb1(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf (b1’)
[式中、Xは、水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、
Yは、-O-または-NH-であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、
b1は、水素原子、又は、一価の有機基である。]
-CH-CRb2(-R)-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-R (b2’)
[式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、
は、水素原子またはメチル基であり、
b2は、水素原子、又は、一価の有機基であり、
nは、3~200である。]
【請求項7】
前記含フッ素ポリマーは、テトラフルオロエチレン又はクロロトリフルオロエチレンに基づく重合単位を含む請求項6記載の塗料。
【請求項8】
更に、硬化剤を含む請求項6又は7記載の塗料。
【請求項9】
氷結防止用及び/又は着霜防止用組成物である請求項6~8のいずれかに記載の塗料。
【請求項10】
請求項1~5のいずれかに記載の組成物、又は、請求項6~9のいずれかに記載の塗料を塗布して得られた塗膜。
【請求項11】
対水接触角が95°以上であり、QUVB3000時間での光沢保持率が80%以上である請求項10記載の塗膜。
【請求項12】
QUVB1000時間での対水接触角が80°以上であり、QUVB1000時間での対油接触角が25°以上である請求項10又は11記載の塗膜。
【請求項13】
基材、及び、請求項10~12のいずれかに記載の塗膜を含む積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリマ-、組成物、塗膜及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素ポリマ-は、分子内のC-F結合の高い結合エネルギ-および低い分極率が故に耐候性などに優れている。しかし、建材等の用途では、耐候性等に加えて優れた防汚性が求められており、種々検討が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)官能基Xを含有する合成樹脂、(B)防汚成分および(C)硬化剤を含む組成物であって、防汚成分(B)が(B1)官能基XおよびZまたは硬化剤(C)と反応し得る官能基Yを有する液状のポリジアルキルシロキサン、または(B2) 官能基XおよびZまたは硬化剤(C)と反応し得る官能基Yを有する液状のフルオロポリエ-テルである塗料組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2004/067658号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、防汚性に優れる変性ポリマ-を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、(a)含フッ素ポリマ-からなる主鎖と、(b)式(b1’)及び/又は式(b2’)で示される側鎖と、を有することを特徴とする変性ポリマ-(以下「本開示の第1の変性ポリマ-」ともいう)を提供する。
-CH-CRb1(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf (b1’)
[式中、Xは、水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、Yは、-O-または-NH-であり、Zは、直接結合または二価の有機基であり、Rfは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、Rb1は、水素原子、又は、一価の有機基である。]
-CH-CRb2(-R)-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-R (b2’)
[式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rb2は、水素原子、又は、一価の有機基であり、nは、3~200である。]
【0007】
本開示はまた、(a)含フッ素ポリマ-と、(b)式(b1)及び/又は、式(b2)で示されるモノマ-とを、ラジカル重合開始剤の存在下、有機溶媒中で反応させて得られ、
前記含フッ素ポリマ-からなる主鎖、及び、前記モノマ-に基づく側鎖を有することを特徴とする変性ポリマ-(以下「本開示の第2の変性ポリマ-」ともいう)をも提供する。
CH=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf (b1)
[式中、Xは、水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、Yは、-O-または-NH-であり、Zは、直接結合または二価の有機基であり、Rfは、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。]
CH=C(-R)-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-R (b2)
[式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、水素原子またはメチル基であり、nは、3~200である。]
以下、特別のことわりなく単に「本開示の変性ポリマ-」と記載する場合、上記本開示の第1の変性ポリマ-及び第2の変性ポリマ-の両方を含む概念を意味する。
【0008】
上記含フッ素ポリマ-は、-CHR-(式中、Rは水素原子又は一価の有機基)で表される単位を有することが好ましい。
【0009】
上記含フッ素ポリマ-は、テトラフルオロエチレン又はクロロトリフルオロエチレンに基づく重合単位を含むことが好ましい。
【0010】
本開示はまた、上記変性ポリマ-を含む組成物を提供する。
【0011】
本開示の組成物は、更に、溶媒を含むことが好ましい。
【0012】
本開示の組成物は、更に、硬化剤を含むことが好ましい。
【0013】
本開示の組成物は、塗料であることが好ましい。
【0014】
本開示の組成物は、氷結防止用及び/又は着霜防止用組成物であることが好ましい。
【0015】
本開示は更に、上記組成物を塗布して得られた塗膜を提供する。
【0016】
本開示の塗膜は、対水接触角が95°以上であり、QUVB3000時間での光沢保持率が80%以上であることが好ましい。
【0017】
本開示の塗膜は、QUVB1000時間での対水接触角が80°以上であり、QUVB1000時間での対油接触角が25°以上であることが好ましい。
【0018】
本開示はそして、基材、及び、上記塗膜を含む積層体をも提供する。
【発明の効果】
【0019】
本開示の変性ポリマ-は、上記構成よりなるので防汚性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の変性ポリマ-を具体的に説明する。
【0021】
従来、特許文献1のように、合成樹脂に防汚成分を添加して防汚性を改善する手法は行われていたが、防汚性の改善が十分とはいえなかった。本開示の変性ポリマ-は、含フッ素ポリマ-からなる主鎖と、特定の側鎖とを有することによって、含フッ素ポリマ-に、優れた防汚性を付与することができることを見いだし完成したものである。
以下、本開示の変性ポリマ-についてより詳細に説明する。
【0022】
本開示の第1の変性ポリマ-は、含フッ素ポリマ-からなる主鎖(a)を有する。含フッ素ポリマ-は、優れた耐熱性、耐薬品性、耐候性等を有する樹脂として知られている。本開示の変性ポリマ-は、含フッ素ポリマ-が本来有する優れた耐熱性、耐薬品性、耐候性等に加えて、特定の側鎖(b)を有することによって、優れた防汚性をも獲得したものである。
【0023】
上記含フッ素ポリマ-は、-CHR-(式中、Rは水素原子、又は一価の有機基)で表される単位を有するものであることが好ましい。-CHR-結合は、主鎖に少なくとも1つ含まれていればよい。また、上記含フッ素ポリマ-は、-CH-CHR-の重合単位を含むことも好ましい。
【0024】
上記-CHR-で表される単位において、Rは、水素原子、又は一価の有機基である。
【0025】
上記の一価の有機基としては、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリ-ル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリ-ル基、
シアノ基、
ホルミル基、
RaO-、
RaCO-、
RaSO-、
RaCOO-、
RaNRaCO-、
RaCONRa-、
RaOCO-、RaOSO-、及び、
RaNRbSO
(これらの式中、Raは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリ-ル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリ-ル基、
Rbは、独立して、H又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)
を包含する。
上記有機基としては、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
【0026】
また、本明細書において、「置換基」は、置換可能な基を意味する。当該「置換基」の例は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、芳香族オキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、芳香族スルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、芳香族オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、芳香族スルフィニル基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、脂肪族オキシアミノ基、芳香族オキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、及び、ジ芳香族オキシホスフィニル基を包含する。
【0027】
上記脂肪族基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記脂肪族基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、カルバモイルメチル基等が挙げられる。
【0028】
上記芳香族基は、例えば、ニトロ基、ハロゲン原子、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記芳香族基としては、炭素数6~12、好ましくは総炭素原子数6~10のアリ-ル基、例えば、フェニル基、4-ニトロフェニル基、4-アセチルアミノフェニル基、4-メタンスルホニルフェニル基等が挙げられる。
【0029】
上記ヘテロ環基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記ヘテロ環基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~10の5~6員へテロ環、例えば2-テトラヒドロフリル基、2-ピリミジル基等が挙げられる。
【0030】
上記アシル基は、脂肪族カルボニル基、アリ-ルカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記アシル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアシル基、例えばアセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基、3-ピリジンカルボニル基等が挙げられる。
【0031】
上記アシルアミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基等を有していてもよく、例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基等を有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~8のアシルアミノ基、総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基等が挙げられる。
【0032】
上記脂肪族オキシカルボニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記脂肪族オキシカルボニル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアルコキシカルボニル基、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、(t)-ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0033】
上記カルバモイル基は、脂肪族基、芳香族基、へテロ環基等を有していてもよい。上記カルバモイル基としては、無置換のカルバモイル基、総炭素数2~9のアルキルカルバモイル基、好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素原子数2~5のアルキルカルバモイル基、例えばN-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基等が挙げられる。
【0034】
上記脂肪族スルホニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記脂肪族スルホニル基としては、総炭素原子数1~6、好ましくは総炭素原子数1~4のアルキルスルホニル基、例えばメタンスルホニル等が挙げられる。
【0035】
上記芳香族スルホニル基は、ヒドロキシ基、脂肪族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基等を有していてもよい。上記芳香族スルホニル基としては、総炭素原子数6~10のアリ-ルスルホニル基、例えばベンゼンスルホニル等が挙げられる。
【0036】
上記アミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基等を有していてもよい。
【0037】
上記アシルアミノ基は、例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基等を有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは総炭素原子数2~8のアシルアミノ基、より好ましくは総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基等が挙げられる。
【0038】
上記脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基は、例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、2-ピリジンスルホンアミド基等であってもよい。
【0039】
上記スルファモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基等を有していてもよい。上記スルファモイル基としては、スルファモイル基、総炭素原子数1~9のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数2~10のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数7~13のアリ-ルスルファモイル基、総炭素原子数2~12のヘテロ環スルファモイル基、より好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1~7のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数3~6のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数6~11のアリ-ルスルファモイル基、総炭素原子数2~10のヘテロ環スルファモイル基、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基、4-ピリジンスルファモイル基等が挙げられる。
【0040】
上記脂肪族オキシ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、メトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基等を有していてもよい。上記脂肪族オキシ基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~6のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0041】
上記芳香族アミノ基、へテロ環アミノ基は、脂肪族基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、カルバモイル基、該アリ-ル基と縮環したヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、好ましくは総炭素原子数1~4の脂肪族基、総炭素原子数1~4の脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、総炭素原子数1~4のカルバモイル基、ニトロ基、総炭素原子数2~4の脂肪族オキシカルボニル基を有していてもよい。
【0042】
上記脂肪族チオ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、総炭素原子数1~8、より好ましくは総炭素原子数1~6のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、カルバモイルメチルチオ基、t-ブチルチオ基等が挙げられる。
【0043】
上記カルバモイルアミノ基は、脂肪族基、アリ-ル基、ヘテロ環基等を有していてもよい。上記カルバモイルアミノ基としては、カルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~9のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~13のアリ-ルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~12のヘテロ環カルバモイルアミノ基、好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~7のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~6のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~11のアリ-ルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のヘテロ環カルバモイルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、メチルカルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルカルバモイルアミノ基、フェニルカルバモイルアミノ、4-ピリジンカルバモイルアミノ基等が挙げられる。
【0044】
上記Rは、官能基含有基であることが好ましく、該官能基としては、例えば、水酸基(但し、カルボキシル基に含まれる水酸基は除く。以下、同じ。)、カルボキシル基、エステル結合(-OCO-)、-COOCO-で表される基、シアノ基、アミノ基、エポキシ基、シリル基等が挙げられる。なかでも、水酸基、カルボキシル基、エステル結合、-COOCO-で表される基、アミノ基、シアノ基、及び、シリル基からなる群より選択される少なくとも1種の基が好ましく、水酸基、カルボキシル基、エステル結合、アミノ基、及び、シリル基からなる群より選択される少なくとも1種の基がより好ましく、水酸基、カルボキシル基、エステル結合及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の基が更に好ましく、水酸基、エステル結合、及び、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の基が特に好ましい。上記Rとして具体的には、カルボキシル基、-O-R -OH(式中、Rは、鎖状又は分岐状の炭素数1~10のアルキレン基であり、pは0又は1であり、qは0又は1である。)、-OCO-R(式中、Rは、炭素数1~10の炭化水素基)等が挙げられる。上記Rとしては、鎖状又は分岐状の炭化水素基(例えば、アルキル基等)であってもよいし、環状の炭化水素基(例えばシクロアルキル基、フェニル基等)であってもよい。
上記Rは、硬化性官能基含有基であることが好ましく、硬化性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、-COOCO-で表される基、シアノ基、アミノ基、エポキシ基、シリル基等が挙げられる。なかでも、硬化反応性が良好な点から、水酸基、カルボキシル基、-COOCO-で表される基、アミノ基、シアノ基、及び、シリル基からなる群より選択される少なくとも1種の基が好ましく、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、及び、シリル基からなる群より選択される少なくとも1種の基がより好ましく、水酸基、カルボキシル基及びアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の基が更に好ましく、水酸基、及び、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の基が特に好ましい。これらの硬化性官能基は、通常、硬化性官能基を含有する単量体を共重合することにより含フッ素ポリマ-に導入される。
【0045】
上記含フッ素ポリマ-は、耐候性に優れることから、硬化性官能基含有含フッ素ポリマ-であることが好ましい。上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマ-としては、含フッ素ポリマ-に硬化性の官能基を導入したポリマ-が挙げられる。上記構成を有することによって、耐候性と防汚性とをより優れたレベルで両立させることができる。なお、硬化性官能基含有含フッ素ポリマ-には明確な融点を有する樹脂性のポリマ-、ゴム弾性を示すエラストマ-性のポリマ-、その中間の熱可塑性エラストマ-性のポリマ-が含まれる。
【0046】
上記含フッ素ポリマ-は、耐候性に優れること、また、エステル系溶媒にも容易に溶解することから、含フッ素単量体単位、水酸基及び芳香環のいずれをも含まないビニルエステル単位、及び、水酸基含有モノマ-単位を含むことが好ましい。上記構成を有することによって、耐候性と防汚性とをより優れたレベルで両立させることができる。
【0047】
上記含フッ素単量体単位を構成する上記含フッ素単量体としては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド、フルオロビニルエ-テル等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0048】
上記含フッ素単量体としては、なかでも、耐候性に優れることから、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、及び、ビニリデンフルオライドからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。上記構成を有することによって、耐候性と防汚性とをより優れたレベルで両立させることができる。
【0049】
上記ビニルエステル単位を構成するビニルエステルとしては、カルボン酸ビニルエステルが好ましく、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バ-サチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル及びシクロヘキシルカルボン酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、酢酸ビニル、バ-サチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル及びシクロヘキシルカルボン酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましく、酢酸ビニル及びバ-サチック酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。
【0050】
また、上記ビニルエステルとしては、密着性及び耐摩耗性により一層優れることから、カルボン酸の炭素数が6以上のカルボン酸ビニルエステルが好ましく、カルボン酸の炭素数が9以上のカルボン酸ビニルエステルがより好ましい。カルボン酸ビニルエステルにおけるカルボン酸の炭素数の上限は、20が好ましく、15がより好ましい。基材との密着性に優れることから、ネオノナン酸ビニルエステル、ネオデカン酸ビニルエステル等のバ-サチック酸ビニルが最も好ましい。
【0051】
なお、上記ビニルエステルは、水酸基及び芳香環のいずれをも含まない。また、上記ビニルエステルは、ハロゲン原子を含まないことが好ましい。
【0052】
上記水酸基含有モノマ-単位を構成する水酸基含有モノマ-としては、ヒドロキシアルキルビニルエ-テル、ヒドロキシアルキルアリルエ-テル、ヒドロキシカルボン酸ビニルエステル、ヒドロキシカルボン酸アリルエステル及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレ-トからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、ヒドロキシアルキルビニルエ-テル及びヒドロキシアルキルアリルエ-テルからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、ヒドロキシアルキルビニルエ-テルが更に好ましい。
【0053】
上記ヒドロキシアルキルビニルエ-テルとしては、2-ヒドロキシエチルビニルエ-テル、3-ヒドロキシプロピルビニルエ-テル、2-ヒドロキシプロピルビニルエ-テル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエ-テル、4-ヒドロキシブチルビニルエ-テル、4-ヒドロキシ-2-メチルブチルビニルエ-テル、5-ヒドロキシペンチルビニルエ-テル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエ-テル等が挙げられる。
【0054】
上記ヒドロキシアルキルアリルエ-テルとしては、2-ヒドロキシエチルアリルエ-テル、4-ヒドロキシブチルアリルエ-テル、グリセロ-ルモノアリルエ-テル等が挙げられる。
【0055】
上記ヒドロキシカルボン酸ビニルエステルとしては、ヒドロキシ酢酸ビニル、ヒドロキシプロパン酸ビニル、ヒドロキシブタン酸ビニル、ヒドロキシヘキサン酸ビニル、4-ヒドロキシシクロヘキシル酢酸ビニル等が挙げられる。
【0056】
上記ヒドロキシカルボン酸アリルエステルとしては、ヒドロキシ酢酸アリル、ヒドロキシプロパン酸アリル、ヒドロキシブタン酸アリル、ヒドロキシヘキサン酸アリル、4-ヒドロキシシクロヘキシル酢酸アリル等が挙げられる。
【0057】
上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレ-トとしては、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0058】
上記水酸基含有モノマ-としては、なかでも、
式(A):CH=CH-(CH-O-(CH-OH
(式中、lは0または1、mは2~20の整数)で示されるものが更に好ましく、4-ヒドロキシブチルビニルエ-テル、2-ヒドロキシエチルビニルエ-テル、2-ヒドロキシエチルアリルエ-テル及び4-ヒドロキシブチルアリルエ-テルからなる群より選択される少なくとも1種の単量体が特に好ましい。
【0059】
上記含フッ素単量体単位の含有量としては、含フッ素ポリマ-の全モノマ-単位に対して、30~60モル%が好ましく、40~55モル%がより好ましい。
【0060】
上記水酸基及び芳香環のいずれをも含まないビニルエステル単位の含有量としては、含フッ素ポリマ-の全モノマ-単位に対して、1~40モル%が好ましく、10~30モル%がより好ましい。
【0061】
上記水酸基含有モノマ-単位の含有量としては、含フッ素ポリマ-の全モノマ-単位に対して、15~40モル%が好ましく、20~35モル%がより好ましい。
【0062】
本明細書において、含フッ素ポリマ-を構成する上記各モノマ-単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析をモノマ-の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0063】
上記含フッ素ポリマ-は、数平均分子量が3000~100000であることが好ましい。上記数平均分子量は、5000以上であることがより好ましく、8000以上であることが更に好ましく、50000以下であることがより好ましく、35000以下であることが更に好ましい。数平均分子量が小さすぎると、耐候性、耐溶剤性及び耐汚染性に劣ると同時に、高い硬度を有する塗膜を形成することができないおそれがあり、数平均分子量が大きすぎると、塗料とした場合の粘度が大きくなり取扱いが困難になるおそれがある。上記数平均分子量は、テトラヒドロフランを溶離液として用いるゲルパ-ミエイションクロマトグラフィ-(GPC)により測定することができる。
【0064】
上記含フッ素ポリマ-は、示差走査熱量計(DSC)により求めるガラス転移温度(セカンドラン)が10~70℃であることが好ましく、15~60℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が小さすぎると、耐候性、耐溶剤性及び耐汚染性に劣ると同時に、高い硬度を有する塗膜を形成することができないおそれがあり、ガラス転移温度が大きすぎると、塗料とした場合の粘度が大きくなり取扱いが困難になるおそれがある。
【0065】
上記含フッ素ポリマ-は、ポリイソシアネ-ト化合物や顔料等との相溶性が良好な点から、酸価が0.6~50mgKOH/gであることが好ましく、2~30mgKOH/gであることがより好ましい。
【0066】
上記含フッ素ポリマ-は、更に、含フッ素単量体単位、上記水酸基及び芳香環のいずれをも含まないビニルエステル単位及び水酸基含有モノマ-単位とは異なるモノマ-単位を含むものであってもよい。例えば、上記含フッ素ポリマ-は、芳香環を含み水酸基を含まないカルボン酸ビニルエステル、カルボキシル基含有モノマ-、アミノ基含有モノマ-、加水分解性シリル基含有モノマ-、水酸基を含まないアルキルビニルエ-テル、ハロゲン原子及び水酸基を含まないオレフィン等の単位を含むものであってもよい。これらのモノマ-単位の含有量は、上記含フッ素ポリマ-の全モノマ-単位に対して、0~10モル%であってよく、0.1~5モル%が好ましく、0.5~3モル%がより好ましい。
【0067】
上記の芳香環を含み水酸基を含まないカルボン酸ビニルエステルとしては、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル等が挙げられる。
【0068】
上記カルボキシル基含有モノマ-としては、
式(B):R1a2aC=CR3a-(CH-COOH
(式中、R1a、R2aおよびR3aは、同じかまたは異なり、いずれも水素原子または炭素数1~10の直鎖または分岐鎖状のアルキル基;nは0以上の整数)で示されるものが好ましく、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデシレン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸、ノナデセン酸、エイコセン酸、22-トリコセン酸等が挙げられる。なかでも、アクリル酸、クロトン酸及びウンデシレン酸からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、アクリル酸及びクロトン酸からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0069】
また、上記カルボキシル基含有モノマ-としては、桂皮酸、3-アリルオキシプロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル、シトラコン酸、メサコン酸、アコニット酸等も挙げられる。
【0070】
上記アミノ基含有モノマ-としては、例えばCH=CH-O-(CH-NH(x=0~10)で示されるアミノビニルエ-テル類;CH=CH-O-CO(CH-NH(x=1~10)で示されるアミン類;そのほかアミノメチルスチレン、ビニルアミン、アクリルアミド、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド等が挙げられる。
【0071】
上記加水分解性シリル基含有モノマ-としては、例えばCH=CHCO(CHSi(OCH、CH=CHCO(CHSi(OC、CH=C(CH)CO(CHSi(OCH、CH=C(CH)CO(CHSi(OC、CH=CHCO(CHSiCH(OC、CH=C(CH)CO(CHSiC(OCH、CH=C(CH)CO(CHSi(CH(OC)、CH=C(CH)CO(CHSi(CHOH、CH=CH(CHSi(OCOCH、CH=C(CH)CO(CHSiC(OCOCH、CH=C(CH)CO(CHSiCH(N(CH)COCH、CH=CHCO(CHSiCH〔ON(CH)C、CH=C(CH)CO(CHSiC〔ON(CH)C等の(メタ)アクリル酸エステル類;CH=CHSi[ON=C(CH)(C)]、CH=CHSi(OCH、CH=CHSi(OC、CH=CHSiCH(OCH、CH=CHSi(OCOCH、CH=CHSi(CH(OC)、CH=CHSi(CHSiCH(OCH、CH=CHSiC(OCOCH、CH=CHSiCH〔ON(CH)C、ビニルトリクロロシランまたはこれらの部分加水分解物等のビニルシラン類;トリメトキシシリルエチルビニルエ-テル、トリエトキシシリルエチルビニルエ-テル、トリメトキシシリルブチルビニルエ-テル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエ-テル、トリメトキシシリルプロピルビニルエ-テル、トリエトキシシリルプロピルビニルエ-テル等のビニルエ-テル類等が例示される。
【0072】
上記の水酸基を含まないアルキルビニルエ-テルとしては、メチルビニルエ-テル、エチルビニルエ-テル、n-プロピルビニルエ-テル、n-ブチルビニルエ-テル、オクタデシルビニルエ-テル、2-エチルヘキシルビニルエ-テル、シクロヘキシルビニルエ-テル、イソプロピルビニルエ-テル、イソブチルビニルエ-テル等が挙げられ、なかでも、エチルビニルエ-テル及びシクロヘキシルビニルエ-テルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0073】
上記オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブテンなどの非フッ素系のオレフィン等が挙げられる。
【0074】
上記含フッ素ポリマ-は、水酸基価が50mgKOH/g以上であることが好ましい。上記水酸基価としては、55mgKOH/g以上がより好ましく、60mgKOH/g以上がより好ましく、80mgKOH/g以上が更に好ましく、100mgKOH/g以上が特に好ましく、また、180mgKOH/g以下が好ましく、170mgKOH/g以下がより好ましく、160mgKOH/g以下が更に好ましく、150mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0075】
上記水酸基価は、上記含フッ素ポリマ-の重量と-OH基のモル数より計算にて求める。-OH基のモル数は、NMR測定、IR測定、滴定、元素分析等により求めることができる。
【0076】
上記含フッ素ポリマ-は、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、または塊重合法で製造することができるが、なかでも溶液重合法で得られたものが好ましい。
【0077】
上記含フッ素ポリマ-は、上記単位を与えるモノマ-を有機溶媒や重合開始剤を用いる溶液重合法により重合して製造することが好ましい。重合温度は、通常0~150℃、好ましくは5~95℃である。重合圧は通常0.1~10MPaG(1~100kgf/cmG)である。
【0078】
上記有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸tert-ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素類;メタノ-ル、エタノ-ル、tert-ブタノ-ル、iso-プロパノ-ル、エチレングリコ-ルモノアルキルエ-テルなどのアルコ-ル類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどの環状エ-テル類;ジメチルスルホキシドなど、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0079】
上記重合開始剤としては、たとえば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩類(さらに必要に応じて亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリンなどの還元剤も併用できる);酸化剤(たとえば過酸化アンモニウム、過酸化カリウムなど)と還元剤(たとえば亜硫酸ナトリウムなど)および遷移金属塩(たとえば硫酸鉄など)からなるレドックス開始剤類;アセチルパ-オキサイド、ベンゾイルパ-オキサイドなどのジアシルパ-オキサイド類;イソプロポキシカルボニルパ-オキサイド、tert-ブトキシカルボニルパ-オキサイドなどのジアルコキシカルボニルパ-オキサイド類;メチルエチルケトンパ-オキサイド、シクロヘキサノンパ-オキサイドなどのケトンパ-オキサイド類;過酸化水素、tert-ブチルハイドロパ-オキサイド、クメンハイドロパ-オキサイドなどのハイドロパ-オキサイド類;ジ-tert-ブチルパ-オキサイド、ジクミルパ-オキサイドなどのジアルキルパ-オキサイド類;tert-ブチルパ-オキシアセテ-ト、tert-ブチルパ-オキシピバレ-トなどのアルキルパ-オキシエステル類;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、4,4’-アゾビス(4-シアノペンテン酸)などのアゾ系化合物などが使用できる。
【0080】
本開示の第1の変性ポリマ-は、下記式(b1’)及び/又は式(b2’)で示される側鎖(b)を有する。
-CH-CRb1(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf (b1’)
[式中、Xは、水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、
Yは、-O-または-NH-であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、
b1は、水素原子、又は、一価の有機基である。]
-CH-CRb2(-R)-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-R (b2’)
[式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、
は、水素原子またはメチル基であり、
b2は、水素原子、又は、一価の有機基であり、
nは、3~200である。]
上記特定の側鎖(b)を有することによって、含フッ素ポリマ-に優れた防汚性を付与することができる。
【0081】
式(b1’)において、Xは水素原子、メチル基又はハロゲン原子である。Xは、水素原子、メチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であってもよい。
【0082】
Yは、-O-であることが好ましい。
【0083】
Zは、例えば、直接結合、炭素数1~20の直鎖状または分岐状脂肪族基(特に、アルキレン基)、例えば、式-(CH-(式中、xは1~10である。)で示される基、あるいは、式-R(R)N-SO-または式-R(R)N-CO-で示される基(式中、Rは、炭素数1~10のアルキル基であり、Rは、炭素数1~10の直鎖アルキレン基または分枝状アルキレン基である。)、あるいは、式-CHCH(OR)CH-(Ar-O)-(式中、Rは、水素原子、または、炭素数1~10のアシル基(例えば、ホルミルまたはアセチルなど)、Arは、置換基を必要により有するアリ-レン基、pは0または1を表す。)で示される基、あるいは、式-CH-Ar-(O)-(式中、Arは、置換基を必要により有するアリ-レン基、qは0または1である。)で示される基、-(CH-SO-(CH-基または-(CH-S-(CH-基(但し、mは1~10、nは0~10、である)であってよい。
Zは、炭素数1~10の脂肪族基、炭素数6~18の芳香族基または環状脂肪族基、-CHCHN(R)SO-基(但し、Rは炭素数1~4のアルキル基である。)、-CHCH(OZ)CH-(Ph-O)-基(但し、Zは水素原子またはアセチル基、Phはフェニレン基、pは0または1である。)、-(CH-Ph-O-基(但し、Phはフェニレン基、nは0~10である。)、-(CH-SO-(CH-基または -(CH-S-(CH-基(但し、mは1~10、nは0~10、である)であることが好ましい。脂肪族基は、アルキレン基(特に炭素数は1~4、例えば1または2である。)であることが好ましい。芳香族基または環状脂肪族基は、置換または非置換であってよい。S基またはSO基はRf基に直接に結合していてよい。
【0084】
Rf基はパ-フルオロアルキル基であることが好ましい。Rf基の炭素数は、1~20、好ましくは1~6、より好ましくは4~6、特に6である。Rf基の炭素数が1~20である含フッ素単量体を使用してもよいが、含フッ素単量体は、Rf基が炭素数4~6、特に6である化合物のみからなることが好ましい。Rf基の例は、-CF、-CFCF、-CFCFCF、-CF(CF、-CFCFCFCF、-CFCF(CF、-C(CF、-(CFCF、-(CFCF(CF、-CFC(CF、-CF(CF)CFCFCF、-(CFCF、-(CFCF(CF、-(CFCF(CF、-C17等である。
【0085】
b1は、水素原子、又は、一価の有機基であり、好ましくは水素原子である。上記一価の有機基は、下記式(b1”)又は式(b2”)で表されるものであってもよい。
-CH-CH(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf (b1”)
[式中、Xは、水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、
Yは、-O-または-NH-であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。]
-CH-CH(-R)-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-R (b2”)
[式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、
は、水素原子またはメチル基であり、
nは、3~200である。]
【0086】
式(b1’)で示される側鎖の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
-CH-CH-C(=O)-O-(CH-Rf
-CH-CH-C(=O)-O-C-Rf
-CH-CH-C(=O)-O-(CHN(-CH)SO-Rf
-CH-CH-C(=O)-O-(CHN(-C)SO-Rf
-CH-CH-C(=O)-O-CHCH(-OH)CH-Rf
【0087】
-CH-CH-C(=O)-O-CHCH(-OCOCH)CH-Rf
-CH-CH-C(=O)-O-(CH-S-Rf
-CH-CH-C(=O)-O-(CH-S-(CH-Rf
-CH-CH-C(=O)-O-(CH-SO-Rf
-CH-CH-C(=O)-O-(CH-SO-(CH-Rf
-CH-CH-C(=O)-NH-(CH-Rf
[上記式中、Rfは、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。]
【0088】
次に、式(b2’)で示される側鎖について説明する。
【0089】
上記式(b2’)において、Rは、水素原子またはメチル基であり、好ましくは水素原子である。
【0090】
上記式(b2’)において、上記Rは、水素原子またはメチル基であり、好ましくはメチル基である。
上記式(b2’)において、上記Rb2は、水素原子、又は、一価の有機基であり、好ましくは、水素原子である。また、上記一価の有機基は、下記式(b1”)又は式(b2”)で表されるものであってもよい。
-CH-CH(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf (b1”)
[式中、Xは、水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、
Yは、-O-または-NH-であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。]
-CH-CH(-R)-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-R (b2”)
[式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、
は、水素原子またはメチル基であり、
nは、3~200である。]
【0091】
上記nは3~200である。上記nは、好ましくは5~200であり、より好ましくは9~200である。
上記式(b2’)で示される側鎖としては、低分子量でも高分子量でもよい。相溶性の観点からは低分子量が好ましく、低分子量である場合、nは3~100が好ましく、5~80がより好ましく、9~70が更に好ましい。撥水撥油性の観点からは高分子量が好ましく、高分子量である場合、nは100~200であることが好ましく、120~200がより好ましく、140~200が更に好ましい。
【0092】
上記式(b2’)の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
-CH-CH-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-H
-CH-CH-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-CH
-CH-CH(-CH)-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-H
-CH-CH(-CH)-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-CH
[上記式中、nは、3~200である。]
【0093】
上記側鎖(b)の重量平均分子量は、300以上であることが好ましい。より好ましくは400以上であり、更に好ましくは600以上であり、特に好ましくは800以上である。また、上記側鎖(b)の分子量は、20000以下が好ましく、15000以下がより好ましく、10000以下が更に好ましい。
【0094】
本開示の第1の変性ポリマ-は、主鎖(a)を構成する含フッ素ポリマ-の炭素原子に、上記側鎖(b)が結合しているものであればよい。例えば、主鎖(a)を構成する含フッ素ポリマ-の炭素原子に結合した水素原子の一つが側鎖(b)に置換したものであることが好ましい。
本開示の第1の変性ポリマ-は、例えば、主鎖(a)中に-CHR-又は-CRR-で表される単位(式中、Rは側鎖(b)を表す。Rは前記と同じ。)を有することが好ましい。
【0095】
本開示の第1の変性ポリマ-において、式(b1’)で示される側鎖のRb1及び式(b2’)で示される側鎖のRb2は、非フッ素架橋性単量体(c)に基づく一価の有機基Rであってもよい。
【0096】
上記非フッ素架橋性単量体(c)は非フッ素架橋性(メタ)アクリレ-トまたは(メタ)アクリルアミド単量体であることが好ましい。
非フッ素架橋性単量体(c)は、反応性基を有する(メタ)アクリレ-トまたは(メタ)アクリルアミドであることが好ましい。反応性基は、活性水素含有基または活性水素反応性基、例えば、水酸基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックイソシアネ-ト基、アミノ基、カルボキシル基、ケトン基、ヒドラジド基およびメラミン基であることが好ましい。非フッ素架橋性単量体(c)は、活性水素含有単量体(例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ケトン基、ヒドラジド基および/またはメラミン基を有する単量体)または活性水素反応性基含有単量体(例えば、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックイソシアネ-ト基、カルボキシル基および/またはヒドラジド基を有する単量体)であることが好ましく、活性水素含有単量体であることがより好ましい。特に好ましい反応性基は、水酸基である。
【0097】
反応性基を有する(メタ)アクリレ-トまたは(メタ)アクリルアミドに基づく一価の有機基Rとしては、式:
-CH-CHX-C(=O)-Y-Z-W
[式中、Xは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
は、-O-または-NH-であり、
は、直接結合または二価の有機基であり、
Wは、水酸基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックイソシアネ-ト基、アミノ基、カルボキシル基、ケトン基、ヒドラジド基またはメラミン基である。]
で表される基であることが好ましい。
【0098】
水酸基を有する(メタ)アクリレ-トまたは(メタ)アクリルアミドに基づく一価の有機基Rとしては、式:
-CH-CHX-C(=O)-Y-Z-OH
[式中、Xは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
は、-O-または-NH-であり、
は、直接結合または二価の有機基である。]
で表される基であることが特に好ましい。
は、例えば、炭素数1~20の直鎖状または分岐状脂肪族基(特に、アルキレン基)、例えば、式-(CH-(式中、xは1~10である。)で示される基であってよい。
非フッ素架橋性単量体(c)としては、例えば、N-メチロ-ル(メタ)アクリルアミド、N-2-プロパロ-ル(メタ)アクリルアミド、N-ブチロ-ル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ-ト、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレ-ト、グリシジル(メタ)アクリレ-トなどが例示される。
【0099】
非フッ素架橋性単量体(c)としては、架橋密度を上げて塗膜強度を高めるという点から、水酸基含有モノマ-が好ましい。水酸基含有モノマ-としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ-トが好ましい。
【0100】
非フッ素架橋性単量体(c)としては、溶剤などとの相溶性を上げるという点から、エポキシ基含有モノマ-が好ましい。エポキシ基含有モノマ-としては、グリシジル(メタ)アクリレ-トが好ましい。
【0101】
本開示の第1の変性ポリマ-は、主鎖(a)を構成する含フッ素ポリマ-の炭素原子に、上記一価の有機基Rが結合しているものであってよく、主鎖(a)を構成する含フッ素ポリマ-の炭素原子に結合した水素原子の一つが一価の有機基Rに置換したものであってよい。
本開示の第1の変性ポリマ-は、例えば、主鎖(a)中に-CHR-又は-CRR-で表される単位(式中、R及びRは前記と同じ。)を有していてもよい。
【0102】
本開示の第1の変性ポリマ-は、上記主鎖(a)と側鎖(b)との質量比(主鎖(a)/側鎖(b))が、50/1~50/50であることが好ましい。上記質量比(主鎖(a)/側鎖(b))は、50/1~50/30であることがより好ましく、50/1~50/10であることが更に好ましい。
【0103】
本開示の第1の変性ポリマ-は、上記主鎖(a)と側鎖(c)との質量比(主鎖(a)/側鎖(c))が、50/1~50/50であることが好ましい。上記質量比(主鎖(a)/側鎖(b))は、50/1~50/30であることがより好ましく、50/1~50/10であることが更に好ましい。
【0104】
本開示の第1の変性ポリマ-は、主鎖(a)1本に対して、側鎖(b)が1~10本であることが好ましい。また、より好ましくは、8本以下であり、更に好ましくは、5本以下である。
【0105】
本開示の第1の変性ポリマ-は、数平均分子量が300~15000であることが好ましい。上記数平均分子量は、400以上であることがより好ましく、800以上であることが更に好ましく、12000以下であることがより好ましく、9000以下であることが更に好ましい。数平均分子量が小さすぎると、耐候性、耐溶剤性及び耐汚染性に優れると同時に、高い硬度を有する塗膜を形成することができないおそれがあり、数平均分子量が大きすぎると、塗料とした場合の粘度が大きくなり取扱いが困難になるおそれがある。上記数平均分子量は、テトラヒドロフランを溶離液として用いるゲルパ-ミエイションクロマトグラフィ-(GPC)により測定することができる。
【0106】
本開示の第1の変性ポリマ-は、後述する本開示の第2の変性ポリマ-と同様の方法により製造することができる。
従って、後述する本開示の第2の変性ポリマ-において記載した事項は、本開示の第1の変性ポリマ-においても採用できる。また、本開示の第1の変性ポリマ-において記載した事項は、本開示の第2の変性ポリマ-においても採用できる。
【0107】
本開示の第2の変性ポリマ-は、(a)含フッ素ポリマ-と、(b)式(b1)及び/又は式(b2)で示されるモノマ-とを、ラジカル重合開始剤の存在下、有機溶媒中で反応させて得られ、含フッ素ポリマ-(a)に基づく主鎖と、式(b1)及び/又は、式(b2)で示されるモノマ-(b)に基づく側鎖とを有する。
CH=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf (b1)
[式中、Xは、水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、
Yは、-O-または-NH-であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。]
CH=C(-R)-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-R (b2)
[式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、
は、水素原子またはメチル基であり、
nは、3~200である。]
【0108】
上記含フッ素ポリマ-は、本開示の第1の変性ポリマ-において記載した含フッ素ポリマ-と同じである。
【0109】
上記式(b1)で示されるモノマ-(b1)は、式:
CH=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf (b1)
[式中、Xは、水素原子、メチル基又はハロゲン原子であり、
Yは、-O-または-NH-であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。]
で示される化合物である。
【0110】
上記式(b1)において、X、Y、Z及びRfは前述した式(b1’)におけるX、Y、Z及びRfと同じであり、好適な態様も同様に採用できる。
【0111】
上記モノマ-(b1)の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH=C(-H)-C(=O)-O-(CH-Rf
CH=C(-H)-C(=O)-O-C-Rf
CH=C(-H)-C(=O)-O-(CHN(-CH)SO-Rf
CH=C(-H)-C(=O)-O-(CHN(-C)SO-Rf
CH=C(-H)-C(=O)-O-CHCH(-OH)CH-Rf
【0112】
CH=C(-H)-C(=O)-O-CHCH(-OCOCH)CH-Rf
CH=C(-H)-C(=O)-O-(CH-S-Rf
CH=C(-H)-C(=O)-O-(CH-S-(CH-Rf
CH=C(-H)-C(=O)-O-(CH-SO-Rf
CH=C(-H)-C(=O)-O-(CH-SO-(CH-Rf
CH=C(-H)-C(=O)-NH-(CH-Rf
[上記式中、Rfは、炭素数1~20のフルオロアルキル基である。]
【0113】
上記式(b2)で示されるモノマ-(b2)は、式:CH=C(-R)-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-R (b2)
[式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、水素原子またはメチル基であり、nは、3~200である。]で示される単量体である。
【0114】
上記式(b2)におけるR、R及びnは、前述した式(b2’)におけるR、R及びnと同じであり、好適な態様も同様に採用できる。
【0115】
上記式(b2)で示されるモノマ-(b2)の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH=C(-H)-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-H
CH=C(-H)-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-CH
CH=C(-CH)-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-H
CH=C(-CH)-C(=O)-O-Si(-CH-[O-Si(-CH-O-Si(-CH-CH
[上記式中、nは、3~200である。]
【0116】
上記モノマ-(b)の重量平均分子量は、300以上であることが好ましい。より好ましくは400以上であり、更に好ましくは600以上であり、特に好ましくは800以上である。また、上記モノマ-(b)の分子量は、20000以下が好ましく、15000以下がより好ましく、10000以下が更に好ましい。
【0117】
本開示の第2の変性ポリマ-は、更に、非フッ素架橋性単量体(c)を反応させて得られるものであることも好ましい。上記非フッ素架橋性単量体(c)としては、本開示の第1の変性ポリマ-にて例示したものと同じである。
【0118】
例えば、非フッ素架橋性単量体(c)として、反応性基を有する(メタ)アクリレ-トまたは(メタ)アクリルアミドは、式:CH=CX-C(=O)-Y-Z-W
[式中、Xは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
は、-O-または-NH-であり、
は、直接結合または二価の有機基であり、
Wは、水酸基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックイソシアネ-ト基、アミノ基、カルボキシル基、ケトン基、ヒドラジド基またはメラミン基である。]
で表される化合物であることが好ましい。
【0119】
また、非フッ素架橋性単量体(c)として、水酸基を有する(メタ)アクリレ-トまたは(メタ)アクリルアミドは、式:CH=CX-C(=O)-Y-Z-OH
[式中、Xは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
は、-O-または-NH-であり、
は、直接結合または二価の有機基である。]
で示される化合物であることが特に好ましい。
は、例えば、炭素数1~20の直鎖状または分岐状脂肪族基(特に、アルキレン基)、例えば、式-(CH-(式中、xは1~10である。)で示される基であってよい。
非フッ素架橋性単量体(c)としては、例えば、N-メチロ-ル(メタ)アクリルアミド、N-2-プロパロ-ル(メタ)アクリルアミド、N-ブチロ-ル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ-ト、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレ-ト、グリシジル(メタ)アクリレ-トなどが例示される。
【0120】
上記のように、含フッ素ポリマ-と上記モノマ-とをラジカル重合開始剤の存在下、有機溶媒中で反応させることで、上記含フッ素ポリマ-からなる主鎖及び上記モノマ-に基づく側鎖を有する変性ポリマ-を得ることができる。
上記反応により、上記モノマ-が1個又は2個以上結合した側鎖が得られる。上記モノマ-が2個以上結合したものでもよい。上記モノマ-の結合数は3以下が好ましく、2以下がより好ましい。
【0121】
上記反応の温度は、特に、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。また、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、135℃以下が更に好ましい。
【0122】
上記反応において、上記モノマ-(b)の量は、含フッ素ポリマ-(a)100質量部に対して、1~30質量部であることが好ましい。より好ましくは、1~20質量部であり、更に好ましくは、2~10質量部である。
【0123】
上記反応において、上記モノマ-(c)の量は、含フッ素ポリマ-(a)100質量部に対して、1~30質量部であることが好ましい。より好ましくは、1~20質量部であり、更に好ましくは、2~10質量部である。
【0124】
上記反応において、含フッ素ポリマ-とモノマ-(b)、モノマ-(c)を同時に反応させても良く、含フッ素ポリマ-とモノマ-(b)を反応させてから更にモノマ-(c)を反応させてもよい。含フッ素ポリマ-とモノマ-(b)、モノマ-(c)を同時に反応させることが好ましい。
【0125】
上記有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸tert-ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素類;メタノ-ル、エタノ-ル、tert-ブタノ-ル、iso-プロパノ-ル、エチレングリコ-ルモノアルキルエ-テルなどのアルコ-ル類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどの環状エ-テル類;ジメチルスルホキシドなど、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0126】
上記ラジカル重合開始剤としては、たとえば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩類(さらに必要に応じて亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリンなどの還元剤も併用できる);酸化剤(たとえば過酸化アンモニウム、過酸化カリウムなど)と還元剤(たとえば亜硫酸ナトリウムなど)および遷移金属塩(たとえば硫酸鉄など)からなるレドックス開始剤類;アセチルパ-オキサイド、ベンゾイルパ-オキサイド〔BPO〕などのジアシルパ-オキサイド類;イソプロポキシカルボニルパ-オキサイド、tert-ブトキシカルボニルパ-オキサイドなどのジアルコキシカルボニルパ-オキサイド類;メチルエチルケトンパ-オキサイド、シクロヘキサノンパ-オキサイドなどのケトンパ-オキサイド類;過酸化水素、tert-ブチルハイドロパ-オキサイド、クメンハイドロパ-オキサイドなどのハイドロパ-オキサイド類;ジ-tert-ブチルパ-オキサイド、ジクミルパ-オキサイドなどのジアルキルパ-オキサイド類;tert-ブチルパ-オキシアセテ-ト、tert-ブチルパ-オキシピバレ-トなどのアルキルパ-オキシエステル類;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、4,4’-アゾビス(4-シアノペンテン酸)などのアゾ系化合物などが使用できる。
【0127】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマ-総量に対して、0.01~0.5質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.05質量部以上であり、更に好ましくは、0.1質量部以上であり、また、より好ましくは、0.3質量部以下であり、更に好ましくは、0.2質量部以下である。
【0128】
上記反応は、更に、連鎖移動剤の存在下で行うことが好ましい。上記連鎖移動剤としては、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、チオグリコ-ル、チオグリセロ-ルなどのメルカプタン基含有化合物(特に、(例えば炭素数1~30の)アルキルメルカプタン)、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの無機塩などである。連鎖移動剤の使用量は、モノマ-の総量100質量部に対して、0.1~50質量部、例えば2~20質量部の範囲で用いてよい。
【0129】
上記反応は、含フッ素ポリマ-、モノマ-(b1)及び/又は(b2)、有機溶媒、及び、ラジカル重合開始剤を含む混合物を攪拌することで行うことが好ましい。
【0130】
本開示の第2の変性ポリマ-を得るための具体的な方法としては、例えば、反応容器に、含フッ素ポリマ-と有機溶媒とを添加し、80~90℃に昇温し、必要に応じて攪拌し、その後、上記モノマ-(b1)及び/又は(b2)を添加し、連鎖移動剤及びラジカル重合開始剤を添加し、その後、攪拌する方法が挙げられる。
【0131】
本開示の変性ポリマ-は、含フッ素ポリマ-の主鎖と、特定の構造を有する側鎖とを有することによって、含フッ素ポリマ-が有する耐候性等の特性に加え、優れた防汚性を付与することができる。
【0132】
本開示はまた、本開示の変性ポリマ-を含む組成物を提供する。
【0133】
本開示の組成物は、更に溶媒を含むことが好ましい。上記溶媒としては、水又は有機溶媒が好ましい。上記有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコ-ルメチルエ-テルアセテ-トなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エ-テル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;プロピレングリコ-ルメチルエ-テルなどのアルコ-ル類;ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素類;これらの混合溶媒などがあげられる。また、弱溶剤と呼ばれる、労働安全衛生法の第三種有機溶剤およびそれに相当する溶剤もあげられる。有機溶媒溶液とする場合は、本開示の変性ポリマ-の濃度を5~95質量%、好ましくは10~80質量%とすればよい。
本開示の組成物は、上記のように溶媒を含むことによって塗料として好適に使用することができる。
【0134】
上記組成物は、更に、硬化剤を含むことが好ましい。上記組成物が上記含フッ素ポリマ-として上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマ-を含む場合に、上記組成物は特に硬化剤を含むことが好ましい。
【0135】
上記硬化剤としては、上記硬化性官能基含有含フッ素ポリマ-の硬化性官能基と反応して架橋する化合物であり、たとえばイソシアネ-ト類やアミノ樹脂類、酸無水物類、ポリエポキシ化合物、イソシアネ-ト基含有シラン化合物などが通常用いられる。なかでも、イソシアネ-ト類が好ましい。
【0136】
上記イソシアネ-ト類の具体例としては、たとえば2,4-トリレンジイソシアネ-ト、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネ-ト、キシリレンジイソシアネ-ト、イソホロンジイソシアネ-ト、リジンメチルエステルジイソシアネ-ト、メチルシクロヘキシルジイソシアネ-ト、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ-ト、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト、n-ペンタン-1,4-ジイソシアネ-ト、これらの三量体、これらのアダクト体、ビュウレット体やイソシアヌレ-ト体、これらの重合体で2個以上のイソシアネ-ト基を有するもの、さらにブロック化されたイソシアネ-ト類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なかでも、イソシアヌレ-ト体が好ましい。
【0137】
上記アミノ樹脂類の具体例としては、たとえば尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコ-ルウリル樹脂のほか、メラミンをメチロ-ル化したメチロ-ル化メラミン樹脂、メチロ-ル化メラミンをメタノ-ル、エタノ-ル、ブタノ-ルなどのアルコ-ル類でエ-テル化したアルキルエ-テル化メラミン樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0138】
上記酸無水物類の具体例としては、たとえば無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水メリット酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0139】
ポリエポキシ化合物やイソシアネ-ト基含有シラン化合物としては、たとえば特開平2-232250号公報、特開平2-232251号公報などに記載されているものが使用できる。好適な例としては、たとえば
【化1】
などが挙げられる。
【0140】
上記ポリイソシアネ-ト化合物としては、キシリレンジイソシアネ-ト(XDI)及びビス(イソシアネ-トメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)からなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネ-トから誘導されるポリイソシアネ-ト化合物、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト(HDI)に基づくブロックイソシアネ-ト化合物、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト(HDI)から誘導されるポリイソシアネ-ト化合物、イソホロンジイソシアネ-ト(IPDI)から誘導されるポリイソシアネ-ト化合物、及び、水分散性ポリイソシアネ-ト化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0141】
上記ポリイソシアネ-ト化合物として、キシリレンジイソシアネ-ト(XDI)及びビス(イソシアネ-トメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)からなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネ-ト(以下、イソシアネ-ト(i)ともいう。)から誘導されるポリイソシアネ-ト化合物(以下、ポリイソシアネ-ト化合物(I)ともいう。)を用いた場合、密着性がより優れたものになる。
【0142】
上記ポリイソシアネ-ト化合物(I)としては、例えば、上記イソシアネ-ト(i)と3価以上の脂肪族多価アルコ-ルとを付加重合して得られるアダクト、上記イソシアネ-ト(i)からなるイソシアヌレ-ト構造体(ヌレ-ト構造体)、及び、上記イソシアネ-ト(i)からなるビウレットを挙げることができる。
【0143】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(1):
【0144】
【化2】
【0145】
(式中、Rは、炭素数3~20の脂肪族炭化水素基を表す。Rは、フェニレン基又はシクロヘキシレン基を表す。kは、3~20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(1)中のRは、上記三価以上の脂肪族多価アルコ-ルに基づく炭化水素基であり、炭素数3~10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3~6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記Rがフェニレン基である場合、1,2-フェニレン基(o-フェニレン基)、1,3-フェニレン基(m-フェニレン基)、及び、1,4-フェニレン基(p-フェニレン基)のいずれであってもよい。中でも、1,3-フェニレン基(m-フェニレン基)が好ましい。また、上記一般式(1)中の全てのRが同じフェニレン基であってもよく、2種以上が混在していてもよい。
上記Rがシクロヘキシレン基である場合、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、及び、1,4-シクロヘキシレン基のいずれであってもよい。中でも、1,3-シクロヘキシレン基が好ましい。また、上記一般式(1)中の全てのRが同じシクロヘキシレン基であってもよく、2種以上が混在していてもよい。
上記kは、三価以上の脂肪族多価アルコ-ルの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3~10の整数であり、更に好ましくは3~6の整数である。
【0146】
上記イソシアヌレ-ト構造体は、分子中に、下記一般式(2):
【0147】
【化3】
【0148】
で表されるイソシアヌレ-ト環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレ-ト構造体としては、上記イソシアネ-トの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
中でも、下記一般式(3):
【0149】
【化4】
【0150】
(式中、Rは、一般式(1)中のRと同じである。)で表される三量体が好ましい。すなわち、上記イソシアヌレ-ト構造体は、キシリレンジイソシアネ-ト及びビス(イソシアネ-トメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネ-トの三量体であることが好ましい。
【0151】
上記ビウレットは、下記一般式(4):
【0152】
【化5】
【0153】
(式中、Rは、一般式(1)中のRと同じである。)で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレ-ト構造体を得る場合とは異なる条件下で、上記イソシアネ-トを三量化することにより、得ることができる。
【0154】
上記ポリイソシアネ-ト化合物(I)としては、中でも、上記アダクト、すなわち、キシリレンジイソシアネ-ト及びビス(イソシアネ-トメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネ-トと、三価以上の脂肪族多価アルコ-ルと、を付加重合して得られるものであることが好ましい。
【0155】
上記ポリイソシアネ-ト化合物(I)が、上記イソシアネ-ト(i)と三価以上の脂肪族多価アルコ-ルとのアダクトである場合、該三価以上の脂肪族多価アルコ-ルとしては、具体的には、グリセロ-ル、トリメチロ-ルプロパン(TMP)、1,2,6-ヘキサントリオ-ル、トリメチロ-ルエタン、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1-トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタノ-ル-3等の三価アルコ-ル;ペンタエリスリト-ル、ジグリセロ-ル等の四価アルコ-ル;アラビット、リビト-ル、キシリト-ル等の五価アルコ-ル(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチト-ル、アロズルシット等の六価アルコ-ル(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロ-ルプロパン、ペンタエリスリト-ルが特に好ましい。
【0156】
また、上記アダクトの構成成分として用いられるキシリレンジイソシアネ-ト(XDI)としては、1,3-キシリレンジイソシアネ-ト(m-キシリレンジイソシアネ-ト)、1,2-キシリレンジイソシアネ-ト(o-キシリレンジイソシアネ-ト)、1,4-キシリレンジイソシアネ-ト(p-キシリレンジイソシアネ-ト)が挙げられるが、中でも、1,3-キシリレンジイソシアネ-ト(m-キシリレンジイソシアネ-ト)が好ましい。
【0157】
また、上記アダクトの構成成分として用いられるビス(イソシアネ-トメチル)シクロヘキサン(水素化XDI、H6XDI)としては、1,3-ビス(イソシアネ-トメチル)シクロヘキサン、1,2-ビス(イソシアネ-トメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネ-トメチル)シクロヘキサンが挙げられるが、中でも、1,3-ビス(イソシアネ-トメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0158】
キシリレンジイソシアネ-ト及びビス(イソシアネ-トメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネ-トと、上記のような三価以上の脂肪族多価アルコ-ルと、を付加重合することにより、アダクトが得られる。
【0159】
上記アダクトとして、具体的には、例えば下記一般式(5):
【0160】
【化6】
【0161】
(式中、Rは、フェニレン基又はシクロヘキシレン基を表す。)で表わされる化合物、すなわち、キシリレンジイソシアネ-ト及びビス(イソシアネ-トメチル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも1種のイソシアネ-トと、トリメチロ-ルプロパン(TMP)と、を付加重合することにより得られるポリイソシアネ-ト化合物を挙げることができる。
上記一般式(5)中のRで表されるフェニレン基又はシクロヘキシレン基については、上記一般式(1)におけるRについて述べたとおりである。
【0162】
上記一般式(5)で表されるポリイソシアネ-ト化合物の市販品としては、タケネ-トD110N(三井化学社製、XDIとTMPとのアダクト、NCO含有量11.8%)、タケネ-トD120N(三井化学社製、H6XDIとTMPとのアダクト、NCO含有量11.0%)等が挙げられる。
【0163】
上記ポリイソシアネ-ト化合物(I)が、イソシアヌレ-ト構造体である場合の具体例としては、タケネ-トD121N(三井化学社製、H6XDIヌレ-ト、NCO含有量14.0%)、タケネ-トD127N(三井化学社製、H6XDIヌレ-ト、H6XDIの3量体、NCO含有量13.5%)等が挙げられる。
【0164】
上記ポリイソシアネ-ト化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト(HDI)に基づくブロックイソシアネ-ト(以下、単にブロックイソシアネ-トともいう。)を用いることにより、上記組成物が充分なポットライフ(可使時間)を有するものとなる。
上記ブロックイソシアネ-トとしては、ヘキサメチレンジイソシアネ-トから誘導されるポリイソシアネ-ト化合物(以下、ポリイソシアネ-ト化合物(II)ともいう。)をブロック化剤で反応させて得られるものが好ましい。
上記ポリイソシアネ-ト化合物(II)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネ-トと三価以上の脂肪族多価アルコ-ルとを付加重合して得られるアダクト、ヘキサメチレンジイソシアネ-トからなるイソシアヌレ-ト構造体(ヌレ-ト構造体)、及び、ヘキサメチレンジイソシアネ-トからなるビウレットを挙げることができる。
【0165】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(6):
【0166】
【化7】
【0167】
(式中、Rは、炭素数3~20の脂肪族炭化水素基を表す。kは、3~20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(6)中のRは、上記三価以上の脂肪族多価アルコ-ルに基づく炭化水素基であり、炭素数3~10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3~6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記kは、三価以上の脂肪族多価アルコ-ルの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3~10の整数であり、更に好ましくは3~6の整数である。
【0168】
上記イソシアヌレ-ト構造体は、分子中に、下記一般式(2):
【0169】
【化8】
【0170】
で表されるイソシアヌレ-ト環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレ-ト構造体としては、上記イソシアネ-トの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
中でも、下記一般式(7):
【0171】
【化9】
【0172】
で表される三量体が好ましい。
【0173】
上記ビウレットは、下記一般式(8):
【0174】
【化10】
【0175】
で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレ-ト構造体を得る場合とは異なる条件下で、ヘキサメチレンジイソシアネ-トを三量化することにより、得ることができる。
【0176】
上記ブロック化剤としては、活性水素を有する化合物を用いることが好ましい。上記活性水素を有する化合物としては、例えば、アルコ-ル類、オキシム類、ラクタム類、活性メチレン化合物、及び、ピラゾ-ル化合物からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0177】
このように、上記ブロックイソシアネ-トがヘキサメチレンジイソシアネ-トから誘導されるポリイソシアネ-ト化合物をブロック化剤で反応させて得られるものであり、上記ブロック化剤は、アルコ-ル類、オキシム類、ラクタム類、活性メチレン化合物、及び、ピラゾ-ル化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0178】
上記ブロックイソシアネ-トを得るためのポリイソシアネ-ト化合物(II)が、ヘキサメチレンジイソシアネ-トと三価以上の脂肪族多価アルコ-ルとのアダクトである場合、該三価以上の脂肪族多価アルコ-ルとしては、具体的には、グリセロ-ル、トリメチロ-ルプロパン(TMP)、1,2,6-ヘキサントリオ-ル、トリメチロ-ルエタン、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1-トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタノ-ル-3等の三価アルコ-ル;ペンタエリスリト-ル、ジグリセロ-ル等の四価アルコ-ル;アラビット、リビト-ル、キシリト-ル等の五価アルコ-ル(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチト-ル、アロズルシット等の六価アルコ-ル(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロ-ルプロパン、ペンタエリスリト-ルが特に好ましい。
ヘキサメチレンジイソシアネ-トと、上記のような三価以上の脂肪族多価アルコ-ルとを付加重合することにより、上記アダクトが得られる。
【0179】
上記ポリイソシアネ-ト化合物(II)と反応させる、活性水素を有する化合物としては、具体的には、メタノ-ル、エタノ-ル、n-プロパノ-ル、イソプロパノ-ル、メトキシプロパノ-ル等のアルコ-ル類;アセトンオキシム、2-ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;ε-カプロラクタム等のラクタム類;アセト酢酸メチル、マロン酸エチル等の活性メチレン化合物;3-メチルピラゾ-ル、3,5-ジメチルピラゾ-ル、3,5-ジエチルピラゾ-ル等のピラゾ-ル化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
中でも、活性メチレン化合物、オキシム類が好ましく、活性メチレン化合物がより好ましい。
【0180】
上記ブロックイソシアネ-トの市販品としては、デュラネ-トK6000(旭化成ケミカルズ社製、HDIの活性メチレン化合物ブロックイソシアネ-ト)、デュラネ-トTPA-B80E(旭化成ケミカルズ社製)、デュラネ-トMF-B60X(旭化成ケミカルズ社製)、デュラネ-ト17B-60PX(旭化成ケミカルズ社製)、コロネ-ト2507(日本ポリウレタン工業社製)、コロネ-ト2513(日本ポリウレタン工業社製)、コロネ-ト2515(日本ポリウレタン工業社製)、スミジュ-ルBL-3175(住化バイエルウレタン社製)、LuxateHC1170(オリン・ケミカルズ社製)、LuxateHC2170(オリン・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0181】
上記ポリイソシアネ-ト化合物として、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト(HDI)から誘導されるポリイソシアネ-ト化合物(以下、ポリイソシアネ-ト化合物(III)ともいう。)を用いることもできる。ポリイソシアネ-ト化合物(III)としては、ポリイソシアネ-ト化合物(II)として上述したものが挙げられる。
【0182】
ポリイソシアネ-ト化合物(III)の具体例としては、コロネ-トHX(日本ポリウレタン工業社製、ヘキサメチレンジイソシアネ-トのイソシアヌレ-ト構造体、NCO含有量21.1%)、スミジュ-ルN3300(住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネ-トのイソシアヌレ-ト構造体)、タケネ-トD170N(三井化学社製、ヘキサメチレンジイソシアネ-トのイソシアヌレ-ト構造体)、スミジュ-ルN3800(住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネ-トのイソシアヌレ-ト構造体プレポリマ-タイプ)、デスモジュ-ルN3390(住化バイエルウレタン社製、NCO含有量19.6%)、D-370N(三井化学社製、NCO含有量25.0%)、AE-700(旭化成社製、NCO含有量11.9%)、D-201(三井化学社製、NCO含有量15.8%)等が挙げられる。
【0183】
上記ポリイソシアネ-ト化合物として、イソホロンジイソシアネ-ト(IPDI)から誘導されるポリイソシアネ-ト化合物(以下、ポリイソシアネ-ト化合物(IV)ともいう。)を用いることもできる。
【0184】
上記ポリイソシアネ-ト化合物(IV)としては、例えば、イソホロンジイソシアネ-トと三価以上の脂肪族多価アルコ-ルとを付加重合して得られるアダクト、イソホロンジイソシアネ-トからなるイソシアヌレ-ト構造体(ヌレ-ト構造体)、及び、イソホロンジイソシアネ-トからなるビウレットを挙げることができる。
【0185】
上記アダクトとしては、例えば、下記一般式(9):
【0186】
【化11】
【0187】
(式中、Rは、炭素数3~20の脂肪族炭化水素基を表す。Rは、下記一般式(10):
【0188】
【化12】
【0189】
で表される基である。kは、3~20の整数である。)で表される構造を有するものが好ましい。
上記一般式(9)中のRは、上記三価以上の脂肪族多価アルコ-ルに基づく炭化水素基であり、炭素数3~10の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数3~6の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
上記kは、三価以上の脂肪族多価アルコ-ルの価数に対応する数である。上記kとして、より好ましくは3~10の整数であり、更に好ましくは3~6の整数である。
【0190】
上記イソシアヌレ-ト構造体は、分子中に、下記一般式(2):
【0191】
【化13】
【0192】
で表されるイソシアヌレ-ト環を1個又は2個以上有するものである。
上記イソシアヌレ-ト構造体としては、イソホロンジイソシアネ-トの三量化反応により得られる三量体、五量化反応により得られる五量体、七量化反応により得られる七量体等を挙げることができる。
中でも、下記一般式(11):
【0193】
【化14】
【0194】
(式中、Rは、一般式(9)中のRと同じである。)で表される三量体が好ましい。すなわち、上記イソシアヌレ-ト構造体は、イソホロンジイソシアネ-トの三量体であることが好ましい。
【0195】
上記ビウレットは、下記一般式(12):
【0196】
【化15】
【0197】
(式中、Rは、一般式(9)中のRと同じである。)で表される構造を有する化合物であり、上記イソシアヌレ-ト構造体を得る場合とは異なる条件下で、イソホロンジイソシアネ-トを三量化することにより、得ることができる。
【0198】
上記ポリイソシアネ-ト化合物(IV)としては、中でも、上記アダクト及び上記イソシアヌレ-ト構造体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、上記ポリイソシアネ-ト化合物(IV)は、イソホロンジイソシアネ-トと、三価以上の脂肪族多価アルコ-ルと、を付加重合して得られるアダクト、及び、イソホロンジイソシアネ-トからなるイソシアヌレ-ト構造体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0199】
上記ポリイソシアネ-ト化合物(IV)が、イソホロンジイソシアネ-トと三価以上の脂肪族多価アルコ-ルとのアダクトである場合、該三価以上の脂肪族多価アルコ-ルとしては、具体的には、グリセロ-ル、トリメチロ-ルプロパン(TMP)、1,2,6-ヘキサントリオ-ル、トリメチロ-ルエタン、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1-トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタノ-ル-3等の三価アルコ-ル;ペンタエリスリト-ル、ジグリセロ-ル等の四価アルコ-ル;アラビット、リビト-ル、キシリト-ル等の五価アルコ-ル(ペンチット);ソルビット、マンニット、ガラクチト-ル、アロズルシット等の六価アルコ-ル(ヘキシット)等が挙げられる。中でも、トリメチロ-ルプロパン、ペンタエリスリト-ルが特に好ましい。
【0200】
イソホロンジイソシアネ-トと、上記のような三価以上の脂肪族多価アルコ-ルと、を付加重合することにより、本発明で好適に用いられるアダクトが得られる。
【0201】
本発明で好ましく用いられるアダクトとして、具体的には、例えば下記一般式(13):
【0202】
【化16】
【0203】
(式中、Rは、下記一般式(10):
【0204】
【化17】
【0205】
で表される基である。)で表される化合物、すなわち、イソホロンジイソシアネ-トとトリメチロ-ルプロパン(TMP)とを付加重合することにより得られるポリイソシアネ-ト化合物を挙げることができる。
【0206】
上記一般式(10)で表されるポリイソシアネ-ト化合物(イソホロンジイソシアネ-トのTMPアダクト体)の市販品としては、タケネ-トD140N(三井化学社製、NCO含有量11%)等が挙げられる。
【0207】
イソホロンジイソシアネ-トからなるイソシアヌレ-ト構造体の市販品としては、デスモジュ-ルZ4470(住化バイエルウレタン社製、NCO含有量11%)等が挙げられる。
【0208】
上記ポリイソシアネ-ト化合物として、水分散性ポリイソシアネ-ト化合物を用いることもできる。上記水分散性ポリイソシアネ-ト化合物とは、水性媒体中に加えて攪拌したときに水分散体を形成しうるポリイソシアネ-ト化合物をいう。このような水分散性ポリイソシアネ-ト化合物としては、例えば、(1)疎水性ポリイソシアネ-トと親水性基を有するポリイソシアネ-トとの混合物、(2)疎水性ポリイソシアネ-トとイソシアネ-ト基を有さず親水性基を有する分散剤との混合物、(3)親水性基を有するポリイソシアネ-トのみ等が挙げられる。なお、本発明において、親水性基とはアニオン性基、カチオン性基又はノニオン性基をいう。上記水分散性ポリイソシアネ-ト化合物としては、親水性基を有するポリイソシアネ-トであることが特に好ましい。
【0209】
上記疎水性ポリイソシアネ-トとは、親水性基を有さないものであり、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネ-ト、エチル(2,6-ジイソシアナ-ト)ヘキサノエ-ト、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネ-ト、1,12-ドデカメチレンジイソシアネ-ト、2,2,4-または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ-ト等の脂肪族ジイソシアネ-ト;1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネ-ト、1,8-ジイソシアナ-ト-4-イソシアナ-トメチルオクタン、2-イソシアナ-トエチル(2,6-ジイソシアナ-ト)ヘキサノエ-ト等の脂肪族トリイソシアネ-ト;1,3-ビス(イソシアナ-トメチルシクロヘキサン)、1,4-ビス(イソシアナ-トメチルシクロヘキサン)、1,3-ジイソシアナ-トシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナ-トシクロヘキサン、3,5,5-トリメチル(3-イソシアナ-トメチル)シクロヘキシルイソシアネ-ト、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネ-ト、2,5-ジイソシアナ-トメチルノルボルナン、2,6-ジイソシアナ-トメチルノルボルナン等の脂環族ジイソシアネ-ト;2,5-ジイソシアナ-トメチル-2-イソシネ-トプロピルノルボルナン、2,6-ジイソシアナ-トメチル-2-イソシネ-トプロピルノルボルナン等の脂環族トリイソシアネ-ト;m-キシリレンジイソシアネ-ト、α,α,α’α’-テトラメチル-m-キシリレンジイソシアネ-ト等のアラルキレンジイソシアネ-ト;m-またはp-フェニレンジイソシアネ-ト、トリレン-2,4-ジイソシアネ-ト、トリレン-2,6-ジイソシアネ-ト、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネ-ト、ナフタレン-1,5-ジイソシアネ-ト、ジフェニル-4,4’-ジイソシアネ-ト、4,4’-ジイソシアナ-ト-3,3’-ジメチルジフェニル、3-メチル-ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネ-ト、ジフェニルエ-テル-4,4’-ジイソシアネ-ト等の芳香族ジイソシアネ-ト;トリフェニルメタントリイソシアネ-ト、トリス(イソシアナ-トフェニル)チオホスフェ-ト等の芳香族トリイソシアネ-ト;上記のジイソシアネ-ト又はトリイソシアネ-トのイソシアネ-ト基同士を環化二量化して得られるウレトジオン構造を有するポリイソシアネ-ト;上記のジイソシアネ-ト又はトリイソシアネ-トのイソシアネ-ト基同士を環化三量化して得られるイソシアヌレ-ト構造を有するポリイソシアネ-ト;上記のジイソシアネ-ト又はトリイソシアネ-トを水と反応させることにより得られるビュレット構造を有するポリイソシアネ-ト;上記のジイソシアネ-ト又はトリイソシアネ-トを二酸化炭素と反応させて得られるオキサダイアジントリオン構造を有するポリイソシアネ-ト;アロファネ-ト構造を有するポリイソシアネ-トなどが挙げられる。これらの中でも、緻密な架橋塗膜を形成し、硬化塗膜の耐アルコ-ル性をより向上することができることから、イソシアヌレ-ト構造を有するポリイソシアネ-トが好ましい。
【0210】
上記親水性基を有するポリイソシアネ-トとしては、例えば、親水性基及びイソシアネ-ト基を有するポリエ-テル、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル重合体、アルキド樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、水分散性が良好であることから、親水性基とイソシアネ-ト基とを有するポリエ-テル又はビニル重合体が好ましく、親水性基とイソシアネ-ト基を有するポリエ-テルがより好ましい。これらの親水性基を有するポリイソシアネ-トは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0211】
水分散性ポリイソシアネ-ト化合物の市販品としては、バイヒジュ-ル XP 2700(住化バイエルウレタン社製)、バイヒジュ-ル3100(住化バイエルウレタン社製)等が挙げられる。
【0212】
上記ポリイソシアネ-ト化合物としては、なかでも、デスモジュ-ルN3390(住化バイエルウレタン社製、NCO含有量19.6%)、タケネ-トD120N(三井化学社製、NCO含有量11%)、スミジュ-ルN3300(住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネ-トのイソシアヌレ-ト構造体)がより好ましい。
【0213】
本開示の組成物は、更にポリイソシアネ-ト化合物を含み、上記ポリイソシアネ-ト化合物が有するイソシアネ-ト基(NCO)と上記変性ポリマ-が有する水酸基(OH)との当量比(NCO/OH)が1.0未満であることが好ましい。
【0214】
上記当量比としては、より一層優れた密着性及び耐摩耗性が得られることから、0.90以下が好ましく、0.85以下がより好ましく、0.20以上が好ましく、0.30以上がより好ましい。
【0215】
上記組成物は、更に、上記変性ポリマ-以外の樹脂を含むことも好ましい。他の樹脂としては、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネ-ト系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂(たとえば塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体など)、ケトン樹脂、石油樹脂のほか、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン類の塩素化物などの有機系樹脂;シリカゲルやケイ酸などの無機系樹脂;変性ポリマ-以外の各種フッ素樹脂(たとえばテトラフルオロエチレンやクロロトリフルオロエチレンの単独重合体またはこれらと他の単量体との共重合体など)等が挙げられる。他の樹脂の割合は、変性ポリマ-100質量部に対し、900質量部以下、好ましくは500質量部以下である。下限は目的とする特性を得るのに必要な量であり、樹脂の種類によって決まる。(メタ)アクリル系樹脂の場合は通常5質量部以上、好ましくは10質量部以上である。
【0216】
上記組成物は、これらの樹脂のうち、特に相溶性に優れた(メタ)アクリル系樹脂を含むことが好ましく、得られる塗膜に高光沢、高硬度、仕上り外観のよさを与える。
【0217】
(メタ)アクリル系樹脂としては、従来より塗料用に使用されている(メタ)アクリル系重合体があげられるが、特に(i)(メタ)アクリル酸の炭素数1~10のアルキルエステルの単独重合体または共重合体、および(ii)側鎖および/または主鎖末端に硬化性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましく採用される。
【0218】
上記(i)の(メタ)アクリル系重合体としては、たとえば、n-ブチル(メタ)アクリレ-ト、イソブチル(メタ)アクリレ-ト、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレ-トなどの(メタ)アクリル酸の炭素数1~10のアルキルエステルの単独重合体および共重合体、あるいはこれらと共重合可能なエチレン性不飽和単量体との共重合体があげられる。
【0219】
上記共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、芳香族基を有する(メタ)アクリレ-ト類、α位にフッ素原子または塩素原子を有する(メタ)アクリレ-ト類、アルキル基がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル(メタ)アクリレ-ト類、ビニルエ-テル類、ビニルエステル類、スチレンなどの芳香族ビニルモノマ-類、エチレン、プロピレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのオレフィン類、フマル酸ジエステル類、マレイン酸ジエステル類、(メタ)アクリロニトリルなどがあげられる。
【0220】
上記(ii)の(メタ)アクリル系重合体としては、上記(i)で説明した(メタ)アクリル系重合体を与える単量体と共に、硬化性官能基を有する単量体を共重合したものが例示できる。硬化性官能基含有単量体としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基などを有する単量体があげられる。上記(ii)の(メタ)アクリル系重合体の具体例としては、たとえば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシエチルビニルエ-テル、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレ-ト、2-アミノエチル(メタ)アクリレ-ト、2-アミノプロピル(メタ)アクリレ-トなどの硬化性官能基を有する単量体と上記(メタ)アクリル酸の炭素数1~10のアルキルエステルとの共重合体、または、これらと上記共重合可能なエチレン性不飽和単量体との共重合体があげられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0221】
(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量はGPCで測定して1000~200000であることが好ましく、2000~100000であることがより好ましい。大きくなると溶剤溶解性が低下する傾向にあり、小さくなると耐候性に問題が生じる傾向にある。
【0222】
上記組成物は、更に、添加剤を含むこともできる。添加剤としては、硬化促進剤、顔料、分散剤、流動性改善剤、レベリング剤、消泡剤、ゲル化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、親水化剤、つや消し剤、密着改良剤、難燃剤等が挙げられる。
【0223】
上記顔料としては、二酸化チタンが挙げられる。上記二酸化チタンとしては、特に限定されず、ルチル型、アナタ-ゼ型のいずれであってもよいが、耐候性の面からルチル型が好ましい。また、上記二酸化チタンとして、二酸化チタン微粒子の表面を無機処理した二酸化チタンや有機処理した二酸化チタン、あるいは無機および有機の両方で処理した二酸化チタンであってもよい。無機処理した二酸化チタンとしては、例えば、二酸化チタン微粒子の表面をアルミナ(Al)又はシリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)で被覆したものが挙げられる。有機処理した二酸化チタンとしては、シランカップリング剤により表面処理されたものや、有機シロキサンにより表面処理されたもの、有機ポリオ-ルにより表面処理されたもの、アルキルアミンにより表面処理されたもの等が挙げられる。更に、二酸化チタンは、滴定法により得られる塩基価が酸価よりも高いものが、好ましい。
【0224】
上記二酸化チタンの市販品としては、例えば、D-918(堺化学工業社製)、R-960、R-706、R-931(デュポン社製)、PFC-105(石原産業社製)等が挙げられる。
【0225】
上記二酸化チタンの含有量としては、変性ポリマ-100質量部に対して1~500質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、紫外線を遮蔽できないおそれがある。500質量部を超えると、紫外線による黄変、劣化のおそれがある。上記二酸化チタンの含有量としては、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましく、300質量部以下がより好ましく、200質量部以下が更に好ましい。
【0226】
上記顔料としては、また、カ-ボンブラックが挙げられる。上記カ-ボンブラックとしては、特に限定されず一般に公知のものが挙げられる。上記カ-ボンブラックは、紫外線遮蔽効果の点で、平均粒子径が10~150nmであることが好ましく、20~100nmであることがより好ましい。上記平均粒子径は、電子顕微鏡での観察により得られる値である。
【0227】
上記カ-ボンブラックは、上記組成物中で凝集していてもよいが、この場合の平均粒径は、紫外線遮蔽効果の点で50~1000nmが好ましく、100~700nmがより好ましく、100~500nmがさらに好ましい。上記平均粒径は、レ-ザ-回折散乱式粒度分布計での測定により得られる値である。
【0228】
上記カ-ボンブラックの含有量は、変性ポリマ-100質量部に対して0.5~80質量部であることが好ましい。カ-ボンブラックの含有量が上述の範囲内であると、上記組成物中によく分散できる。上記カ-ボンブラックの含有量は、変性ポリマ-100質量部に対して3質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましく、60質量部以下がより好ましく、50質量部以下が更に好ましい。
上記カ-ボンブラックの市販品としては、例えば、MA-100(三菱化学社製)、Raven-420(コロンビアカ-ボン社製)等が挙げられる。
【0229】
上記組成物が上記顔料を含む場合、後述する分散剤又は流動性改善剤を更に含むことが好ましい。
【0230】
上記分散剤としては、酸基を有する(但し、不飽和基を有するものを除く)化合物が挙げられる。上記酸基としては、リン酸基、カルボン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。なかでも、より長期にわたり顔料の凝集を防止し、上記組成物の貯蔵安定性に優れる点で、リン酸基及びカルボン酸基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基がより好ましい。上記分散剤はまた、不飽和基を有しない化合物からなる。不飽和基を有しないため、紫外線曝露による化合物の変性が生じにくい。
【0231】
上記分散剤は、重量平均分子量が300~1000000であることが好ましい。300未満であると、吸着樹脂層の立体安定化が不十分で、二酸化チタンの凝集を防止できないおそれがある。1000000を超えると、色別れや、耐候性の低下をまねくおそれがある。上記重量平均分子量は1000以上であることがより好ましく、100000以下であることがより好ましい。上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ-(GPC)(ポリスチレン換算)により測定することができる。
【0232】
上記分散剤は、二酸化チタン表面に効果的に吸着する点で、酸価が3~2000mgKOH/gであることが好ましい。酸価は、5mgKOH/g以上がより好ましく、10mgKOH/g以上が更に好ましく、1000mgKOH/g以下がより好ましく、500mgKOH/g以下が更に好ましい。上記酸価は、塩基性物質を用いた酸塩基滴定法により測定することができる。
【0233】
上記分散剤は、更に、塩基を有していてもよい。上記塩基としては、例えば、アミノ基等が挙げられる。
【0234】
上記分散剤の塩基価は、分散剤の長期の貯蔵安定性が良好となる点で、15mgKOH/g以下が好ましく、5mgKOH/g以下がより好ましい。上記分散剤の酸価が15mgKOH/g以下である場合、塩基価は5mgKOH/g未満であることが更に好ましい。
上記分散剤は、実質的に塩基を含まないことが更に好ましい。なお、実質的に塩基を含まないとは、コンタミネ-ション、反応残査、測定誤差等を考慮し、測定値として塩基価が0.5mgKOH/g以下をいう。上記塩基価は、酸性物質を用いた酸塩基滴定法により測定することができる。
【0235】
上記分散剤として、市販品を使用してもよい。例えば、ディスパロン2150、ディスパロンDA-325、DA-375、DA-1200(商品名、楠本化成社製)、フロ-レンG-700、G-900(商品名、共栄社化学社製)、SOLSPERSE26000、32000、36000、36600、41000、55000(商品名、日本ル-ブリゾ-ル社製)、DISPERBYK-102、106、110、111、140、142、145、170、171、174、180(商品名、ビックケミ-・ジャパン社製)等を挙げることができる。なかでも、長期の貯蔵安定性が良好となる点で、ディスパロンDA-375、フロ-レンG-700、SOLSPERSE36000が好ましく、ディスパロンDA-375がより好ましい。
【0236】
上記分散剤は、上記二酸化チタンと共に使用することが好ましい。上記分散剤の含有量は、二酸化チタン100質量部に対して0.1~100質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると、顔料沈降防止効果が得られないおそれがある。100質量部を超えると、色別れや、耐候性の低下をまねくおそれがある。上記分散剤の含有量は、0.5質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることが更に好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが更に好ましい。
【0237】
上記流動性改善剤としては、酸基及び塩基を有する会合型アクリル系ポリマ-が挙げられる。上記会合型アクリル系ポリマ-とは、アクリル系ポリマ-鎖に含有される極性基が、ポリマ-鎖内、あるいはポリマ-鎖間の水素結合あるいは電気的相互作用による部分的吸着等により、構造を形成し、結果、液の粘度を増加させる効果を持つものである。
【0238】
上記アクリル系ポリマ-としては、例えば、主たるモノマ-成分として、メチル(メタ)アクリレ-ト、エチル(メタ)アクリレ-ト、n-ブチル(メタ)アクリレ-ト、イソブチル(メタ)アクリレ-ト、t-ブチル(メタ)アクリレ-ト、n-オクチル(メタ)アクリレ-ト、イソオクチル(メタ)アクリレ-ト、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレ-ト、イソノニル(メタ)アクリレ-ト、シクロヘキシル(メタ)アクリレ-ト等の(メタ)アクリレ-トからなる共重合体が挙げられる。なお、「(メタ)アクリレ-ト」とは、アクリレ-ト及びメタクリレ-トを含む。
【0239】
上記酸基としては、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基が好ましい。なかでも、より長期にわたり顔料の凝集を防止し、上記組成物の貯蔵安定性を維持できる点で、カルボン酸基が好ましい。上記塩基としては、アミノ基が挙げられる。
【0240】
また、上記流動性改善剤は、カルボン酸と、ヒドロキシアミンもしくはヒドロキシイミンの窒素含有化合物との反応物であってもよい。反応させるカルボン酸と窒素含有化合物の比率は、1:1が最も好ましい。カルボン酸としては、ジカルボン酸、酸無水物が挙げられる。上記ヒドロキシアミンとしては、例えば、モノエタノ-ルアミン、プロパノ-ルアミン、ジエタノ-ルアミン、トリエタノ-ルアミン、n-ブチルジエタノ-ルアミン等の1級、2級、3級アルカノ-ルアミンやその混合物を挙げることができる。上記ヒドロキシイミンとしては、例えば、オキサゾリン構造をもつもの、具体的には、Alkaterge T(商品名、Angus Chemical社製)等を挙げることができる。
【0241】
上記流動性改善剤は、重量平均分子量が1000~1000000であることが好ましい。1000未満であると、会合による構造形成が不十分で二酸化チタンの沈降を防止できないおそれがある。1000000を超えると、液の粘度が増加し過ぎ、塗装性を損なうおそれがある。上記重量平均分子量は5000以上であることがより好ましく、100000以下であることがより好ましい。上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ-(GPC)(ポリスチレン換算)により測定することができる。
【0242】
上記流動性改善剤として、市販品を使用してもよい。例えば、SOLTHIX250(商品名、日本ル-ブリゾ-ル社製)等を挙げることができる。
【0243】
上記流動性改善剤の含有量は、上記組成物中0.05~20質量%であることが好ましい。0.05質量%未満であると、二酸化チタンの沈降を防止できないおそれがある。20質量%を超えると分離や色別れのおそれがある。上記流動性改善剤の含有量は、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。
【0244】
上記難燃剤としては、燃焼初期において非燃焼性のガスを発生して、燃焼性ガスの希釈及び/又は酸素遮断により難燃性を発揮するものであることが好ましい。
【0245】
上記難燃剤としては、周期律表5B族を含む化合物、周期律表7B族のハロゲン化合物を含む化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0246】
周期律表7B族のハロゲン化合物を含む化合物としては、脂肪族、脂環族、芳香族有機ハロゲン化合物、例えば臭素系のテトラブロモビスフェノ-ルA(TBA)、デカブロモジフェニルエ-テル(DBDPE)、オクタブロモジフェニルエ-テル(OBDPE)、TBAエポキシ/フェノキシオリゴマ-、臭素化架橋ポリスチレン、塩素系の塩素化バラフィン、パ-クロロシクロペンタデカンなどが挙げられる。
【0247】
周期律表5B族を含む化合物としては、リン化合物としては例えばリン酸エステル、ポリリン酸塩系などが挙げられる。また、アンチモン化合物がハロゲン化合物と組み合わせて使用することが好ましく、例えば三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどが挙げられる。このほか、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化モリブデンも使用できる。
これらの難燃剤は変性ポリマ-の種類に応じて、少なくとも1種と配合量を任意に選ぶことができ、これらに限定されるものではない。
【0248】
上記難燃剤としては、具体的には、リン窒素含有組成物(A)、又は、臭素含有化合物とアンチモン含有化合物との混合物(B)がより好ましい。変性ポリマ-にこれらの難燃剤を組み合わせることにより、高い難燃性が発揮される。
【0249】
上記リン窒素含有組成物(A)は、ピロリン酸ピペラジンとメラミンシアヌレ-トの混合物であることが好ましい。ピロリン酸ピペラジンとしては、例えば、特開昭48-088791号公報や米国特許第4599375号に開示されるものが挙げられる。メラミンシアヌレ-トとしては、メラミンとシアヌ-ル酸との反応生成物を粉末化したもの等が挙げられる。上記メラミンとシアヌ-ル酸との反応生成物は、その構造内に多量の窒素原子を有し、約350℃以上の高温にさらされると窒素ガスを発生して燃焼を阻害する働きを示す。
【0250】
上記リン窒素含有組成物(A)は、上記ピロリン酸ピペラジンに対するメラミンシアヌレ-トの質量比が0.014~3.000の範囲であることが好ましい。メラミンシアヌレ-トが上述の範囲であると難燃性が向上し、塗膜のブロッキング性も良好となる。上記ピロリン酸ピペラジンに対するメラミンシアヌレ-トの質量比は、混合物中0.04以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましく、1.4以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。
【0251】
上記リン窒素含有組成物(A)として使用可能な市販品としては、例えば、SCFR-200(堺化学工業社製)、SCFR-110(堺化学工業社製)等が挙げられる。
【0252】
上記臭素含有化合物としては、臭素含有率が65%以上であり、融点が200℃以上で、かつ、5%分解温度が340℃以上の芳香族系化合物であることが好ましい。
具体的には、上記臭素含有化合物は、デカブロモジフェニルオキサイド、1,2-ビス(2,3,4,5,6-ペンタブロモフェニル)エタン、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、エチレンビステトラブロモフタロイミド、ポリブロモフェニルインダン、臭素化フェニレンオキサイド、及び、ポリペンタブロモベンジルアクリレ-トからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0253】
なかでも、融点が高く、塗膜を加熱硬化した場合にも融解、ブリ-ドアウトしない点で、式(a)で表される1,2-ビス(2,3,4,5,6-ペンタブロモフェニル)エタンがより好ましい。
【化18】
【0254】
上記臭素含有化合物として、市販品を用いてもよく、例えば、SAYTEX8010(アルベマ-ル社製)等が挙げられる。
【0255】
上記アンチモン含有化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモンが挙げられる。なかでも、安価に入手できる点で、三酸化アンチモンが好ましい。
【0256】
上記難燃剤の含有量は、上記変性ポリマ-100質量部に対して1~45質量部であることが好ましい。上記難燃剤の含有量が上述の範囲であると、上記組成物への良好な分散性と上記組成物から得られる塗膜の難燃性の向上が期待できる。上記難燃剤の含有量が1質量部未満では難燃性の向上が期待できないおそれがあり、45質量部を超えると組成物や塗膜の物性を維持するのが困難となるおそれがある。上記難燃剤の含有量は、上記変性ポリマ-100質量部に対して30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましく、15質量部以下が特に好ましい。また、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上が更に好ましい。
【0257】
上記難燃剤が上記リン窒素含有組成物(A)である場合、その含有量は、上記変性ポリマ-100質量部に対して8~19質量部であることが好ましい。上記リン窒素含有組成物(A)の含有量は、上記変性ポリマ-100質量部に対して9質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましく、17質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましい。
【0258】
上記難燃剤が上記臭素含有化合物とアンチモン含有化合物との混合物(B)である場合、その含有量は、上記変性ポリマ-100質量部に対して、臭化含有化合物の含有量が1~30質量部であることが好ましく、アンチモン含有化合物の含有量が0.5~15質量部であることが好ましい。上記臭素含有化合物の含有量は、上記変性ポリマ-100質量部に対して、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上が更に好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましい。上記アンチモン化合物の含有量は、上記変性ポリマ-100質量部に対して、1.5質量部以上がより好ましく、2.5質量部以上が更に好ましく、10質量部以下がより好ましく、7.5質量部以下が更に好ましい。
【0259】
上記硬化促進剤としては、たとえば有機スズ化合物、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルとアミンとの反応物、飽和または不飽和の多価カルボン酸またはその酸無水物、有機チタネ-ト化合物、アミン系化合物、オクチル酸鉛などがあげられる。
【0260】
上記有機スズ化合物の具体例としては、ジブチルスズジラウレ-ト、ジブチルスズマレエ-ト、ジオクチルスズマレエ-ト、ジブチルスズジアセテ-ト、ジブチルスズフタレ-ト、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ジブチルスズメトキシドなどがあげられる。
【0261】
また上記酸性リン酸エステルとは、
【化19】
部分を含むリン酸エステルのことであり、たとえば
(R-O)-P(=O)-(OH)3-b
(式中、bは1または2、Rは有機残基を示す)で示される有機酸性リン酸エステルなどがあげられる。
【0262】
具体的には
【化20】
などがあげられる。
【0263】
上記有機チタネ-ト化合物としては、たとえばテトラブチルチタネ-ト、テトライソプロピルチタネ-ト、トリエタノ-ルアミンチタネ-トなどのチタン酸エステルがあげられる。市販品としては、たとえばマツモトファインケミカル社製のオルガチックスTC-100、TC-750、TC-760、TA-30などがあげられる。
【0264】
さらに上記アミン系化合物の具体例としては、たとえばブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノ-ルアミン、ジエタノ-ルアミン、トリエタノ-ルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノ-ル、モルホリン、N-メチルモルホリン、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7(DBU)などのアミン系化合物、さらにはそれらのカルボン酸などの塩、過剰のポリアミンと多塩基酸よりえられる低分子量ポリアミド樹脂、過剰のポリアミンとエポキシ化合物の反応生成物などがあげられる。
【0265】
上記硬化促進剤は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記硬化促進剤の配合割合は変性ポリマ-100質量部に対して1.0×10-6~1.0×10-2質量部程度が好ましく、5.0×10-5~1.0×10-3質量部程度がさらに好ましい。
【0266】
顔料の具体例としては、たとえば二酸化チタン、炭酸カルシウムもしくはカ-ボンブラックなどの無機顔料;フタロシアニン系、キナクリドン系もしくはアゾ系などの有機顔料などがあげられるが、これらのみに限定されるものではない。顔料の添加量の上限は、通常変性ポリマ-100質量部に対して約200質量部までである。
【0267】
上記親水化剤としては、メチルシリケ-ト、エチルシリケ-ト、フルオロアルキルシリケ-ト、それらの縮合体が使用できる。市販品としては、たとえばコルコ-ト社製のET40、ET48など、三菱化学社製のMS56、MS56S、MS57など、ダイキン工業社製のGH700、GH701などがあげられる。
【0268】
上記つや消し剤としては、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタンなどが挙げられる。上記つや消し剤の添加量は、変性ポリマ-に対して、1~100質量%であることが好ましい。市販品としては、たとえば冨士シリシア社製のサイリシア350、サイリシア436、サイリシア446、サイロホ-ビック100、サイロホ-ビック200、グレ-ス社製のサイロイドED2、サイロイドED30、サイロイドED50などがあげられる。
【0269】
上記密着改良剤としては、ポリエステルポリオ-ル、ポリカ-ボネ-トポリオ-ル、ポリエ-テルポリオ-ル、ポリブタジエンポリオ-ルなどの各種ポリオ-ル系添加剤、シランカップリング剤などがあげられる。上記密着改良剤の添加量は、変性ポリマ-に対して、0.1~50質量%であることが好ましい。市販品としては、たとえば楠本化成社製のフレクソレッゾ148、フレクソレッゾ188、フレクソレッゾA308、宇部興産社製のETERNACOLL UH-50、ETERNACOLL UM-90、ADEKA社製のアデカポリエ-テルP-400、アデカポリオ-ルBPX-21、日本曹達社製のNISSO-PB GI-1000、GI-2000、GI-3000、宇部興産社製のPH-50、PH-100、クロ-ダジャパン社製のPriplast-1838、Priplast-3192などがあげられる。
【0270】
上記組成物は、建材、内装材などの屋内用あるいは建材、自動車、航空機、船舶(甲板、デッキ、船底など)、電車、タンク、橋梁などの屋外用の塗料として金属、コンクリ-ト、プラスチックなどに直接、あるいはウォッシュプライマ-、錆止め塗料、エポキシ塗料、アクリル樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料などの下塗り塗料または下塗り/中塗りの塗装仕様の上に重ねて塗装することができる。さらにシ-リング剤やフィルム形成剤としても使用できる。
【0271】
上記組成物又は上記組成物から得られるフィルムは、金属、コンクリ-ト、プラスチック、石材、木材、紙等からなる基材に適用することができる。また、プライマ-層や下塗り層を介在させて基材に適用することもできる。上記プライマ-としては、公知のプライマ-が使用でき、たとえばエポキシ系プライマ-、ジンクリッチプライマ-などが例示できる。上記下塗りを形成するための塗料としては、たとえばアクリル系塗料、ウレタン系塗料、ポリエステル系塗料、エポキシ系塗料などが例示できる。
【0272】
上記組成物は、上記以外に、例えば、太陽電池バックシ-ト及びフロントシ-ト、ゴルフボ-ルなどのコ-ティング剤や防汚(屋外で汚れがつきにくい塗膜または汚れが拭き取り易いコ-ティング剤など)、防藻または抗菌活性を持つ塗膜・コ-ティング剤として適用することができる。
【0273】
本開示はまた、上記変性ポリマ-を含むことを特徴とする塗膜を提供する。上記塗膜は、この特徴によって、防汚性に優れている。また、耐候性等にも優れる。更に、基材との密着性にも優れる。上記塗膜は、硬化塗膜であることが好ましい。
【0274】
本開示は、また、上記組成物を塗布して得られる塗膜を提供する。上記塗膜は、この特徴によって、防汚性に優れている。また、耐候性等にも優れる。更に、基材との密着性にも優れる。
【0275】
上記塗膜は、上記組成物を基材等に塗布し、所望により乾燥及び硬化させることにより形成できる。上記乾燥及び硬化は、10~300℃、通常は100~200℃で、30秒から3日間行うことができる。上記乾燥及び硬化させた後、養生してもよく、上記養生は、通常、20~300℃にて1分間~3日間で完了する。
【0276】
上記塗膜は、膜厚が5μm以上であることが、隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から好ましい。より好ましくは7μm以上、更に好ましくは10μm以上である。上限は、余り厚くすると軽量化効果が得られなくなるので、1000μm程度が好ましく、100μm程度がより好ましい。膜厚としては、特に10~40μmが好ましい。
【0277】
上記塗膜は、対水接触角が95°以上であり、QUVB3000時間での光沢保持率が80%以上であることが好ましい。対水接触角は、97°以上がより好ましく、99°以上が更に好ましい。
上記QUVB3000時間での光沢保持率は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。上記塗膜は、QUVB1000時間での対水接触角が80°以上であることが好ましく、85°以上がより好ましく、90°以上が更に好ましい。
上記塗膜はまた、対油接触角が10°以上であることが好ましく、15°以上がより好ましく、50°以上が更に好ましい。
上記塗膜は更に、QUVB1000時間での対油接触角が25°以上であることが好ましく、30°以上がより好ましく、40°以上が更に好ましい。
【0278】
上記塗膜は、各種の基材上に設けることができる。上記基材と上記塗膜との間にプライマ-層を設けてもよいが、上記塗膜が密着性に優れることから、上記基材と上記塗膜とを充分な接着強度で直接接着させることが可能である。上記塗膜及び上記基材を備える積層体も、本開示の好適な態様の1つである。
【0279】
上記基材の材料としては、金属、セラミック、樹脂、ガラス等が挙げられる。
【0280】
上記金属としては、鉄;SUS304、SUS316L、SUS403等のステンレス;アルミニウム;亜鉛メッキ、アルミニウムメッキ等を施したメッキ鋼鈑等が挙げられる。上記セラミックとしては、陶器、磁器、アルミナ材、ジルコニア材、酸化ケイ素材等が挙げられる。上記樹脂としては、ポリエチレンテレフタレ-ト樹脂、ポリカ-ボネ-ト樹脂、シリコ-ン樹脂、フルオロシリコ-ン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フェノ-ル樹脂、アクリル樹脂、ポリエ-テルスルホン樹脂等が挙げられる。
【0281】
上記基材としては水不透過性シ-トも使用できる。上記水不透過性シ-トは、部材に水分が透過しないように設けられる層であり、水が実質的に透過しない材料であれば使用できる。上記水不透過性シ-トの材料としては、例えば、ポリカ-ボネ-ト樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ABS樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリハロゲン化ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリブチレンテレフタレ-ト等)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66、MXDナイロン(メタキシレンジアミン-アジピン酸共重合体)等)、置換基を有するオレフィンの重合体(ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコ-ル等)、EVA(エチレン-ビニルアルコ-ル共重合体)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等の共重合体が挙げられる。これらの材料を2種以上を併用してもよい。
【0282】
上記積層体に含まれる上記基材の材料としては、上述した材料が挙げられるが、なかでも、ポリエチレンテレフタレ-ト樹脂が好ましい。
【0283】
上記積層体は、建材、内装材、自動車、航空機、船舶(甲板、デッキ、船底など)、電車、タンク、橋梁等に使用することができる。本開示の積層体は、耐候性及び撥水撥油性に優れることから、例えば、建材として極めて有用である。本開示の積層体はまた、耐候性及び撥水撥油性に優れ、耐候性及び撥水撥油性の耐久性にも優れることから、撥水性を活かした氷結防止用途及び着霜防止用途に極めて有用である。氷結防止用途及び着霜防止用途では、例えば、風力発電の羽根、鉄道車両連結部EPDMの防汚用途、道路橋案内板の防汚氷結防止用途、送電線の氷結防止用途、空調熱交換器の着霜遅延用途として好適に使用できる。
【0284】
上記積層体は、太陽電池モジュ-ルのバックシ-トとしても好適に使用できる。
【実施例0285】
つぎに本開示を実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0286】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0287】
重合体を構成する各モノマ-単位の含有量
元素分析から測定したフッ素含有量(質量%)とHNMRスペクトルによる組成分析から各モノマ-単位の含有量(モル%)を算出した。
【0288】
水酸基価
重合時の水酸基含有モノマ-の実仕込量と固形分濃度を使用して計算から算出した。
【0289】
合成参考例1(含フッ素重合体1)
容量6000mlのステンレス製オ-トクレ-ブに酢酸ブチル2891g、ネオノナン酸ビニルエステル638.0g、4-ヒドロキシブチルビニルエ-テル(HBVE)156.7gを投入し、減圧窒素置換の操作を行い、テトラフルオロエチレン(TFE)481.7gを仕込んだ。過酸化物系重合開始剤12.5gを仕込み重合を開始した。同時にネオノナン酸ビニルエステル639.0gとHBVE156.7gの混合物を1.5時間で連続に仕込んだ。その温度で開始剤を仕込んでから3時間反応させ、過酸化物系重合開始剤を12.5g追加で仕込んだ。さらにその温度で4時間反応させ、反応器内圧が1.4MPaG(14.5kgf/cmG)から0.2MPaG(2.1kgf/cmG)へ低下した時点で反応を停止し、重合物を含む溶液を得た。
得られた重合物の水酸基価は63mgKOH/gであった。
【0290】
合成参考例2(含フッ素重合体2)
容量6000mlのステンレス製オ-トクレ-ブに酢酸ブチル2500g、ネオノナン酸ビニルエステル584g、4-ヒドロキシブチルビニルエ-テル(HBVE)527gを投入し、減圧窒素置換の操作を行い、テトラフルオロエチレン(TFE)658gを仕込んだ。過酸化物系重合開始剤30gを仕込み重合を開始した。反応器内圧が1.0MPaGから0.4MPaGへ低下した時点で反応を停止し、重合物を含む溶液を得た。得られた重合物の水酸基価は130mgKOH/gであった。
【0291】
合成参考例3(含フッ素重合体3)
容量6000mlのステンレス製オ-トクレ-ブを窒素置換した後に、酢酸ブチル2000g、酢酸ビニル196.0g、4-ヒドロキシブチルビニルエ-テル(HBVE)55.2g、ウンデシレン酸5.6gを加えた。その後、クロロトリフルオロエチレン400gを仕込んだ。過酸化物系重合開始剤 9.6gを仕込み反応を開始した。重合開始6時間後に槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、重合物を含む溶液を得た。得られた重合物の水酸基価は50mgKOH/g、酸価3.2mgKOH/gであった。
【0292】
合成参考例4(Fモノマ-1ホモ重合体)
1Lの反応容器に酢酸ブチル(90g)を添加し、90℃に昇温し、30分撹拌した。その後、Fモノマ-1(6.5g)、連鎖移動剤(0.0975g)、開始剤(0.0845g)、酢酸ブチル(15g)の混合溶液を1時間かけて滴加した。その後、90℃で2時間撹拌して合成参考例4のポリマ-溶液を合成した。
なお、上記Fモノマ-1は、CH=CHCOOCHCH13で表される化合物である。
【0293】
合成参考例5(Siモノマ-1ホモ重合体)
1Lの反応容器に酢酸ブチル(90g)を添加し、90℃に昇温し、30分撹拌した。その後、Siモノマ-1(3.9g)、連鎖移動剤(0.0429g)、開始剤(0.0507g)、酢酸ブチル(15g)の混合溶液を1時間かけて滴加した。その後、90℃で2時間撹拌して合成参考例5のポリマ-溶液を合成した。
なお、上記Siモノマ-1は、下記式で示される化合物である。
【化21】
(式中、Rは水素原子、RはCH、nの平均値は60)
【0294】
合成参考例6(Ac-F重合体)
1Lの反応容器に酢酸ブチル(90g)を添加し、90℃に昇温し、30分撹拌した。その後、Fモノマ-1(6.5g)、水酸基含有モノマ-として4-ヒドロキシブチルアクリレ-ト(HBA)(1.3g)、エポキシ基含有モノマ-としてグリシジルメタクリレ-ト(GMA)(1.3g)、連鎖移動剤(0.1365g)、開始剤(0.1183g)、酢酸ブチル(15g)の混合溶液を1時間かけて滴加した。その後、90℃で2時間撹拌して合成参考例6のポリマ-溶液を合成した。
【0295】
合成参考例7(Ac-Si重合体)
1Lの反応容器に酢酸ブチル(90g)を添加し、90℃に昇温し、30分撹拌した。その後、Siモノマ-1(3.9g)、水酸基含有モノマ-HBA(0.78g)、連鎖移動剤(0.05148g)、開始剤(0.06048g)、酢酸ブチル(15g)の混合溶液を1時間かけて滴加した。その後、90℃で2時間撹拌して合成参考例7のポリマ-溶液を合成した。
【0296】
実施例1
1Lの反応容器に主鎖用反応物溶液の含フッ素重合体1(200g)と酢酸ブチル(20g)を添加し、90℃に昇温し、30分撹拌した。その後、側鎖用反応物Fモノマ-1(6.5g)、連鎖移動剤(0.0975g)、開始剤(0.0845g)、酢酸ブチル(15g)の混合溶液を1時間かけて滴加した。その後、90℃で2時間撹拌して実施例1のポリマ-溶液を合成した。
その後、表に記載の条件に従い、合成したポリマ-溶液(100g)に住友バイエルウレタン(株)製の硬化剤デスモジュ-ルN3390(12g)、酢酸ブチル(40g)を加え、室温で30分撹拌した後、ブリキ板に塗布、80℃で3時間乾燥し、乾燥膜厚25μの評価用塗板を作成、別途記載の各種評価をした。
【0297】
実施例2
ポリマ-溶液の合成において、側鎖用反応物Fモノマ-1(6.5g)、連鎖移動剤(0.1365g)、開始剤(0.1183g)、酢酸ブチル(15g)の混合溶液に、さらに水酸基含有モノマ-としてHBA(1.3g)、エポキシ基含有モノマ-としてGMA(1.3g)を加えて、混合溶液を滴下する以外は、実施例1と同様にポリマ-溶液の合成、塗板作成及び各種評価を実施した。
【0298】
実施例3~17
各材料を表1~2に記載の種類、量に変更した以外は、実施例1又は2と同様にポリマ-溶液の合成、塗板作成及び各種評価を実施した。
なお、Fモノマ-2はCH=C(CH)COOCHCH13で表される化合物である。
Siモノマ-2は、下記式で示される化合物である。
【化22】
(式中、Rは水素原子、RはCH、nの平均値は160)
【0299】
比較例1~5
含フッ素重合体1、含フッ素重合体2、含フッ素重合体3、Ac-F重合体又はAc-Si重合体の固形分100質量部に対して、表1に記載の割合で硬化剤及び希釈剤となるようにして塗料を得て、塗板作成及び各種評価を実施した。
【0300】
比較例6
各材料を表3に記載の条件に従い、1Lの反応容器に含フッ素重合体1(200g)を添加し、90℃に昇温し、30分撹拌した。その後、Fモノマ-1ホモ重合体(10g)を1時間かけて滴加した。その後、90℃で2時間撹拌して比較例6のポリマ-溶液を作成した。
その後、表1~3に記載の条件に従い、作成したポリマ-溶液(100g)に硬化剤N3390(12g)、酢酸ブチル(40g)を加え、室温で30分撹拌した後、ブリキ板に塗布、80℃で3時間乾燥し、乾燥膜厚25μの評価用塗板を作成、別途記載の各種評価をした。
【0301】
比較例7~11
各材料を表3に記載の量に変更した以外は、比較例6と同様にポリマ-溶液の作成、塗板作成及び各種評価を実施した。
【0302】
評価項目
対水対油接触角:共和社製G-1型接触角測定器を用いて接触角を測定した。
油性ペン拭き取り:ZEBRA社製黒油性マ-カ-を用いて、乾拭き後、目視で痕残りを評価した。
QUVB:QLAB社製老化加速試験機を用いて、照射強度0.63W/cm、照射4時間(60度)、非照射4時間のサイクル運転で促進耐候性試験を実施した。
光沢保持率:BYK社製AG-4442を用いて60度光沢を測定した。
色差:コニカ社製DP-400、CR-400色差計を用いて色差を測定した。
【0303】
【表1】
【0304】
【表2】
【0305】
【表3】