IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノンバージニア, インコーポレイテッドの特許一覧

特開2024-23244パーティション無しのデジタルPCR(dPCR)システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023244
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】パーティション無しのデジタルPCR(dPCR)システム
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6851 20180101AFI20240214BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023190170
(22)【出願日】2023-11-07
(62)【分割の表示】P 2021542523の分割
【原出願日】2020-01-22
(31)【優先権主張番号】62/795,392
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/947,393
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】520449345
【氏名又は名称】キヤノンバージニア, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Canon Virginia, Inc.
【住所又は居所原語表記】12000 Canon Blvd., Newport News, Virginia, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム, ハニオプ
(72)【発明者】
【氏名】ピッタルガ, ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】マイリック, ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】シュライバー, ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】サンドバーグ, スコット
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋一
(57)【要約】      (修正有)
【課題】分子のパーティション無しの定量化のための方法及びシステムを提供する。
【解決手段】提供される方法及びシステムは、個々の増幅スポットを分析して、増幅スポットを分離するために物理的分割を必要とせずに分子数を定量化することができるように、サンプルを増幅することを可能にする。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルをチャンバに導入することであって、前記サンプルは1つ以上の核酸を含み、前記核酸が前記チャンバにわたって分布する、導入することと、
前記サンプルと熱的に連通する熱システムを提供することと、
1つ以上の核酸サンプルと連絡する光学検出システムを提供することであって、前記光学検出システムは撮像システムを含む、提供することと、
前記1つ以上の核酸の増幅を実行することと、
増幅された前記核酸のうちの1つ以上の画像を取得することと、
前記チャンバにわたる蛍光分布に基づいて増幅された前記核酸をデジタル的に定量化することと、
の工程を含む、パーティション無しでの分子の定量化のための方法。
【請求項2】
前記増幅がポリメラーゼ連鎖反応及び等温増幅から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
増幅された前記サンプルの拡散を能動的に制御することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルの前記拡散を能動的に制御することが、前記サンプルに粘度増加剤を添加すること、増幅された分子サイズを増加させること、前記増幅の間に前記サンプルがさらされる温度を低下させること、及び前記増幅の時間の長さを短縮することからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記増幅の時間の前記長さを短縮することが、増幅サイクル数を最小化すること、又は高速サーマルサイクルを実行することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記増幅の時間の前記長さを短縮することにより、増幅された前記核酸が前記サンプル中の出発シード核酸に空間的に近接したままであるようにさせる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記粘度増加剤が、
チキソトロピック剤、皮膚軟化剤、ゲル化剤、架橋剤、並びに他のレオロジー改質剤及び増粘剤からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記チャンバが、深さが浅い1次元チャネル、深さが浅い2次元平面、及び3次元形状からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記チャンバが三次元形状であり、前記撮像システムは前記チャンバの空間セクションを独立して撮像するように構成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記チャンバが、出発シード分子の積み重ねを最小限にする断面寸法を有するマイクロ流体チャネルである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
分割された及び/又は増幅されたシード分子間の拡散を減少させるための、前記チャンバ内の前記サンプルの最小の流れが存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記チャンバが、前記チャンバ内の前記サンプルの対流を減少させるための均一な温度分布を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記増幅の時間の前記長さを減少させるための手段が、増幅プロセスの初期に増幅された前記核酸の画像を取得すること、前記サンプル中に高コントラストレポーター色素を提供すること、及び(i)熱気、(ii)光加熱法、(iii)インライン抵抗性ヒーター、(iv)誘導加熱、及び/又は(v)循環加熱流体を使用する熱システムを提供することからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
増幅された前記核酸の画像を前記増幅プロセスの初期に取得することが、増幅された前記核酸からの正の蛍光シグナルを検出するために低ノイズ撮像システムを使用することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
サーマルサイクリングを加速するための手段が、直接光放射、間接光放射又は電磁放射をベースとする加熱を利用する熱システムを提供することからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
融解分析を実行する工程を追加で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
増幅された前記1つ以上の核酸について融解曲線を取得することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上の核酸のジェノタイピングをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
野生型DNAコピーのバックグラウンドにおける突然変異DNAコピーの対立遺伝子頻度を提供するために、デジタル定量化及びジェノタイピングの結果を組み合わせる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリメラーゼ連鎖反応が高速PCRである、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
デジタル定量化が、増幅されたスポット又は増幅されていないスポットの数を計数し、チャンバ容積中に存在するDNAコピー数を計算するために統計を適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
デジタル定量化が、増幅された/増幅されていないスポットの全体面積を測定することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記光学検出システムが、蛍光撮像、又は増強された散乱若しくは位相差撮像によって補助される明視野又は暗視野撮像を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記撮像システムが、増幅の間又は増幅の終わりのいずれかにおいて、蛍光検出によって増幅されたスポットを可視化する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
増幅された前記スポットの可視化に続いて、蛍光の量が測定される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
デジタル定量化が、蛍光画像の全体的な蛍光強度、又は他の光学技術によって生成された正/負のシグナルの強度を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
デジタル定量化が、(i)増幅された/増幅されていないスポットを計数することと、(ii)蛍光又は他の光学技術によって生成されたスポット強度とを組み合わせることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
サーマルサイクラーと、
核酸サンプルを受け取るための領域を有する、前記サーマルサイクラーに分離可能に連結されたカートリッジであって、前記領域はパーティション無しである、カートリッジと、
蛍光を検出するための検出器と、
デジタルPCRプロセスが含む前記領域において受け取られる前記核酸サンプルの前記デジタルPCRプロセスを実行するためのコントローラと、
を備える、分子の定量化のためのシステム。
【請求項29】
前記コントローラは、前記サーマルサイクラーを用いて、前記領域内の前記核酸サンプルを増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応プロセスを開始し、ここで、増幅された前記核酸サンプルは蛍光によって可視化される、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記コントローラは、前記検出器によって検出された蛍光に基づいて、パーティションの無い前記領域における前記サンプルからの増幅された核酸の分割を追加で決定する、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記コントローラは、検出された前記分割に基づいて、受け取られた前記核酸サンプルを定量化する、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
光加熱方法が、均一な光-熱変換を提供するために光熱媒体としてフォトニック金を使用することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項33】
1つ以上の標識プローブを提供することをさらに含み、ここで、前記サンプルの増幅に続いて、デジタル定量化は、増幅された前記核酸の1つ以上の遺伝子型を決定するために多色検出を使用することを追加で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
対立遺伝子頻度を決定することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に関する相互参照]
【0002】
本申請は、2019年1月22日付けの米国仮特許出願第62/795392号、及び2019年12月12日付けの米国仮特許出願第62/947393号に優先権を主張しており、これらの開示は、本明細書中に引用により組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
[背景技術]
【0004】
[技術分野]
【0005】
本開示は、パーティション無しのデジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)の実施に関する。デジタルPCRは、サンプルが、増幅が起こりうる前にまず個々の反応に分割されなければならないことを必要とする。本開示は、物理的分割又は障壁を用いずに使用サンプルを分割する方法、及びパーティション無しのデジタルPCRを実施する方法を提供する。
【0006】
[関連技術の説明]
【0007】
デジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)は、検量線や標準品を必要とせずに、サンプル中のDNAやRNAの量を測定する方法である。dPCRを実施するために、単一のPCR反応ミックスを、増幅が起こる前に個々の反応に分割し、その結果、最初の反応ミックスに含まれるコピーの数を推定するためにPCR増幅後に陽性反応を計数することができる。これは、標的が存在するか否かに基づくデジタル信号の形態をとることが多く、その結果、「1」又は「0」(正又は負)として読み落とされる。絶対数量化は、陽性反応と陰性反応の比に基づくポアソン統計量を用いて算出できる。感度と容易な再現性により、dPCRは臨床及び科学コミュニティの両方で普及しつつある。例えば、dPCRは、稀であり限定されたDNAがしばしば検出が困難である、腫瘍学の適用において有用である。これとは対照的に、従来のqPCR法では、精度の低い定量化(2倍程度の差しか見られない精度)のために、リアルタイム蛍光対温度曲線からのアナログ信号を利用し、定量結果を解釈するために標準曲線を必要とする。
【0008】
最新のdPCRシステムは、消耗品及び検出システムにおいて高度に複雑なマイクロ流体回路を必要とするdPCR消耗品中の数千の油中水滴又はマイクロ反応ウェルを生成することによってデジタル信号を達成するために、PCR試薬及びサンプル混合物の物理的分割を使用する。このようなシステムの高度な複雑さはまた、ユーザのための多くの実施工程又はより複雑な自動化工程を必要とする。さらに、陽性反応を計数するためにこの分割に基づくアプローチによって必要とされる洗練された検出システムには、フローサイトメーター又は反応チャンバ内の個々の物理的分割を認識するための高分解能撮像システムが含まれ得る。したがって、現在のdPCRシステムには多数の機器が関与しており、各実験を実施するには長いリードタイムを要するため、効率が悪く、臨床現場にdPCRを実装することは困難である。
【0009】
[発明の概要]
【0010】
本開示は、分子のパーティション無しでの定量化のための方法に関する。
【0011】
したがって、一態様では、本開示は、サンプルをチャンバに導入する工程であって、サンプルは1つ以上の核酸を含み、核酸がチャンバを横切って分布される、導入する工程と、サンプルとの熱連絡における熱システムを提供する工程と、1つ以上の核酸サンプルと通信する光学検出システムを提供する工程であって、光学検出システムが撮像システムを含む、提供する工程と、1つ以上の核酸の増幅を行う工程と、増幅された核酸の1つ以上の画像を得る工程と、チャンバを横切る蛍光分布に基づいて増幅された核酸をデジタル的に定量化する工程と、を含む方法を提供する。
【0012】
第2の態様において、本開示は、サーマルサイクラーと、核酸サンプルを受け取るためのパーティションの無い領域を有する、サーマルサイクラーに取り外し可能に連結されたカートリッジと、蛍光を検出するための検出器と、領域内で受け取った核酸サンプルのデジタルPCRプロセスを実施するためのコントローラと、を含む分子の定量化のためのシステムに関する。
【0013】
本開示のこれら及び他の実施形態、目的、特徴、及び利点は、添付の描画及び提供されたクレームと併せてとるとき、本開示の例示的な実施形態の以下の詳細な説明を読むと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
[図面の簡単な説明]
【0015】
本明細書に組み込まれ、明細書の一部を形成する添付の図は、本開示の様々な実施形態を例示する。この特許の申請には、カラー写真で実行される少なくとも1つの描画が含まれている。カラー写真付きのこの特許の写しは、特許商標庁が要求し、かつ、必要な手数料を納付することにより提供されるであろう。
【0016】
図1A】、及び
図1B】拡散制限PCR増幅後のパーティション無しデジタル分析の例を示す図。
【0017】
図2】78秒以内45サイクルの高速サーマルサイクルを使用する離散増幅スポットを示すPCRの蛍光画像である図。
【0018】
図3】3つのDNA濃度をもつチャネル軸に沿った蛍光強度プロファイルである図。歪んだ全強度プロファイルは、検出ハードウエアの照明パターンから得られる。
【0019】
図4】平均チャネル強度対直線回帰フィットを有するDNA濃度の散布図。各データポイントは、1 つのチャネルを表す。
【0020】
図5】本開示によるパーティション無しのプロセスを描いたフローチャート。
【0021】
図6】本開示によるシステムを描写するブラックボックス図。
【0022】
図7】RGBから蛍光への変換を描出した画像処理プロセスと画像のフローチャート。
【0023】
図8】画像処理プロセスと背景画像の差し引いた画像のフローチャート。
【0024】
図9】画像処理プロセスのフローチャート及び画素強度の正規化を示すグラフ。
【0025】
図10】各チャネルのデータの1列への低減を描いた画像処理プロセスと画像のフローチャート。
【0026】
図11】Savitzky-Golayフィルタの適用結果を描いた画像処理プロセスとグラフのフローチャート。
【0027】
図12】画像処理プロセスのフローチャートと、注釈された画像及びチャネルグラフを描いた画像及びグラフ。
【0028】
図13】実施例に記載されたシミュレーションによって、又はチャネルの長さにわたるFWHMクラスタ境界を示す画像の分析によって得られるデータを描写する図。
【0029】
図14】モンテカルロシミュレーションによって計算されたクラスタサイズ及びダイナミックレンジを示すチャート。
【0030】
図15】シミュレーション条件を示す図。
【0031】
図16】シミュレーションに用いた幅180μm、深さ20μmの矩形断面のマイクロチャネルを示す図。
【0032】
図17】シミュレーションに用いたStokes-Einstein方程式を詳述する図。
【0033】
図18】シミュレーションから得られた結果として生じるクラスタプロファイルのFWHM値を示すチャート。
【0034】
図19】5つの粒子サイズのそれぞれにおけるシミュレーションの出力を示すチャート。
【0035】
図20A】、
図20B】、
図20C】、及び
図20D】PVPに関するBioRadの結果を示すチャート。
【0036】
図21A】、
図21B】、
図21C】、及び
図21D】メチルセルロースのBioRadの結果を示すチャート。
【0037】
図22A】、
図22B】、
図22C】、及び
図22D】フィコールのBioRadの結果を示すチャート。
【0038】
図23A】、
図23B】、
図23C】、及び
図23D】ゼラチンのBioRadの結果を示すチャート。
【0039】
図24A】、
図24B】、
図24C】、及び
図24D】PCR効率の比較を示すチャート。
【0040】
図25A】、
図25B】、
図25C】、及び
図25D】テンプレートコントロールなしと比較した最大添加濃度を示すチャート。
【0041】
図26A】、
図26B】、
図26C】、及び
図26D】濃度勾配をもつPGPの結果を示すチャート。
【0042】
図27】グリセロール濃度の上昇に伴う融解温度シフトを示すチャート。
【0043】
図28A】、
図28B】、
図28C】、及び
図28D】2分後のMTHFRコーグアッセイのPVPによるDOE結果を示す画像及びチャート。
【0044】
図29A-C】、及び
図29D-F】10分での100bpアッセイのPVPによるDOE結果を示す画像及びチャート。
【0045】
図30A-C】、及び
図30D-F】10分後の272bpアッセイのPVPによるDOE結果を示す画像及びチャート。
【0046】
図31A】、及び
図31B】PVP対メチルセルロース対グリセロールのクラスタサイズ対PCR時間及び添加物を示すチャート。
【0047】
図32A-C】、
図32D-F】、
図32G-I】、及び
図32J-L】メチルセルロースについての2分間と3分間のPCR結果の比較を示すチャート。
【0048】
図33A-C】、
図33D-F】、
図33G-I】、及び
図33J-L】PVPに関する2分間と3分間のPCR結果の比較を示すチャート。
【0049】
図34A-C】、
図34D-F】、
図34G-I】、及び
図34J-L】フィコールの2分間と3分間のPCR結果の比較を示すチャート。
【0050】
図35】添加物による2分間PCRのCqの結果の比較を示したチャート。
【0051】
図36A-B】、及び
図36C-J】MTHFR1286のDNA濃度が低いメチルセルロースのHRM分析を描いた画像。
【0052】
図37A-B】、及び
図37C-J】MTHFR665のDNA濃度が低いメチルセルロースのHRM分析を描いた画像。
【0053】
図38A-C】、及び
図38D-F】メチルセルロースDOEについての51bpの結果を示す画像及びチャート。
【0054】
図39A-C】、及び
図39D-F】メチルセルロースDOEについての100bpの結果を示す画像及びチャート。
【0055】
図40A】、及び
図40B】メチルセルロース対グリセロールのクラスタサイズ対PCTR時間及び添加物を示すチャートである。
【0056】
図41A-C】、
図41D】、
図41E】、及び
図41F】4分後の51bpアッセイのPVPによるDOE結果を示す画像及びチャート。
【0057】
図42A-C】、
図42D】、
図42E】、及び
図42F】10分での51bpアッセイのPVPによるDOE結果を示す画像及びチャート。
【0058】
図43A-C】、
図43D】、
図43E】、及び
図43F】4分での272bpアッセイのPVPによるDOE結果を示す画像及びチャート。
【0059】
図44A-C】、
図44D】、
図44E】、及び
図44F】4分時点での100bpアッセイのPVPによるDOE結果を示す画像及びチャート。
【0060】
図全体を通じて、特に明記しない限り、同じ参照符号及び文字は、例示された実施形態の特徴、要素、構成要素又は一部のようなものを表すために使用される。さらに、ここでは、図を参照して主題の開示を詳細に説明するが、例示的な実施形態に関連してそう行われる。添付の請求項によって定義される主題開示の真の範囲及び精神から逸脱することなく、記載された例示的な実施形態に変更及び修正を加えることができることが意図されている。
【発明を実施するための形態】
【0061】
[実施形態の詳細な説明]
【0062】
本開示は、いくつかの実施形態を有し、当該技術分野の詳細について知られている特許、特許出願及び他の参考文献に依存する。したがって、特許、特許出願、又は他の参考文献が引用又は本明細書中で繰り返される場合、記載されている命題と同様に、すべての目的のためにその全体の中に参照によって組み込まれていることを理解すべきである。
【0063】
この説明においては、開示された事例の十分な理解を提供するため、具体的な詳細が記載される。他の例では、周知の方法、手順、構成要素及び回路は、本開示を不必要に延長しないよう、詳細に記載されていない。
【0064】
本開示の実施は、特に指示がない限り、従来の技術及び有機化学、ポリマー技術、分子生物学(組換え技術を含む)、細胞生物学、生化学、及び免疫学の記述を採用することができ、これらは当業者の技術範囲内である。こうした慣用的技術には、ポリマー・アレイ合成、ハイブリダイゼーション、連結、及び標識を用いたハイブリダイゼーションの検出が含まれる。適切な技術の具体的な例示は、本明細書の以下の実施例を参照することによって、得られ得る。しかし、もちろん、他の同等の慣用法も使用可能である。このような従来の技術及び記述は、Genome Analysis: Laboratory Manual Series(Vols,I-IV)、Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cells: A Laboratory Manual, PCR PRIMER: A Laboratory Manual, and Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Pressから全て)、Stryer, L., Biochemistry (第4版)(1995)、Freeman, N.Y., Gait, Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach、1984、IRL Press, London, Nelson and Cox (2000)、Lehninger、Principles of Biochemistry(第3版)、W.H. Freeman Pub., New York, N.Y, and Berg et al., Biochemistry(第5版)(2002), W.H. Freeman Pub., NewYork, N.Y.,などの標準的な実験マニュアルで見ることができ、そのうち全てがあらゆる目的のためにその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0065】
本明細書中で使用される「遺伝物質」は、DNA及びRNAを含む任意の核酸を意味する。したがって、遺伝物質は、遺伝子、遺伝子の一部、遺伝子群、多くの遺伝子の断片、DNA又はRNAの分子、DNA又はRNAの分子、DNA又はRNA分子の断片、又は多くのDNA又はRNA分子の断片を含んでもよい。遺伝物質とは、DNAやRNAの小さな断片から生物の全ゲノムに至る任意のものを指すことができる。
【0066】
[デジタル定量化]
【0067】
分子のデジタル定量化の最も一般的な形態は、デジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)である。dPCRは、標準的なポリメラーゼ連鎖反応の修正であり、ユーザが、サンプルの増幅に続いて存在する増幅された核酸鎖の量を定量することを可能にする。従来のdPCRは、少量の核酸が増幅前の各分割に存在するような出発物質の物理的分割に依存している。このような物理的分離は、物理的障壁又はパーティション、例えば、ウェルプレート又は複数の反応部位を有するマイクロ流体チップ若しくはカートリッジによって達成され得る。あるいは、この物理的分離は、液滴法を利用することによって達成することができ、それによって、少量の増幅されるサンプルが液滴内に封入され、例えば、油滴中の水を使用して、サンプルの残りから分離して保持される。
【0068】
[他の増幅法]
【0069】
デジタル定量化はPCRと関連することが最も多いが、多くの他の反応及び増幅方法は、デジタル定量化、したがって、本開示において提供されるパーティション無しの方法で使用することができる。
【0070】
このサンプルは、当技術分野で公知の増幅技術によって、及び具体的には核酸増幅反応によって増幅され得る。PCRに加えて、核酸増幅反応は、とりわけ、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、等温増幅及びループ媒介等温増幅を含んでもよい。このような増幅反応は、所定のサンプル内に存在する遺伝物質の量を、検出に適した量まで増幅する。増幅反応の結果のモニタリング及び/又は検出は、dPCR及びリアルタイムPCRの両方において一般的であるように、増幅反応が生じるのに対して同時に生じることができ、両者は、リアルタイムで進行する際に増幅反応をモニタ及び/又は検出するために使用されてもよい。
【0071】
遺伝物質含有サンプルは、所望の反応又は増幅の完了のために典型的な及び/又は必要な反応成分と混合することができる。このような反応成分には、当業者に公知の反応剤が含まれ得る。例えば、実施すべき増幅がPCRである1つの実施形態において、反応成分は、PCRプライマー、配列特異的蛍光DNAプローブ又はマーカー、塩、緩衝剤、表面不動態化試薬などを含んでもよい。
【0072】
増幅されたDNAの存在を示すために、いくつかの異なるリアルタイム検出化学作用が存在する。このような化学作用は、反応チャンバ内の増幅スポットのモニタが望まれる場合、本開示に適用可能である。これらの検出化学作用のほとんどは、PCRプロセスの結果として特性を変更させる蛍光インジケータに依存する。これらの検出化学作用の中には、二本鎖DNAへの結合時に蛍光効率を増加させるDNA結合色素(SYBRグリーンなど)がある。他のリアルタイム検出化学作用は、Foerster共鳴エネルギー移動(FRET)を利用し、この現象は、色素の蛍光効率が他の光吸収部分又は消光剤へのその近接に強く依存する。これらの色素及び消光剤は、典型的には、DNA配列特異的プローブ又はプライマーに結合される。FRETに基づく検出化学作用の中には、加水分解プローブとコンホメーションプローブがある。加水分解プローブ(TaqManプローブなど)は、オリゴヌクレオチドプローブに結合した消光剤色素分子からレポーター色素分子を切断するためにポリメラーゼ酵素を使用する。立体配座プローブ(例えば、分子ビーコン)は、オリゴヌクレオチドに結合した色素を利用し、その蛍光発光は、標的DNAにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの立体配座変化に応じて変化する。
【0073】
本発明の実施において有用であり得る色素は、核酸の鎖内に挿入するものを含む。このような色素の古典的な例は臭化エチジウムである。結合アッセイのための臭化エチジウムの例示的な使用は、例えば、核酸標的分子への試験分子の結合による臭化エチジウムからの蛍光発光の減少をモニターすることを含む(臭化エチジウム置換アッセイ)。例えば、Lee Mら(J Med Chem 36(7):863-870(1993))を参照されたい。変性の測定における核酸挿入剤の使用は、当技術分野のものには周知である。例えば、Haugland(Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,Inc.、Eugene、Oreg.(1996))を参照のこと。挿入以外のメカニズムによって核酸に結合する色素は、本発明の実施形態においても使用することができる。例えば、二本鎖DNAの副溝に結合する色素を用いて、温度による標的分子の分子展開/変性をモニタすることができる。適切な副溝結合色素の例は、Molecular Probes Inc.(Eugine、Oreg、USA)によって販売されている色素のSYBR Greenファミリーである。例えば、Haugland(Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals、Molecular Probes、Inc.、Eugine、Oreg、USA(1996))を参照のこと。SYBR Green色素はどの二本鎖DNA分子にも結合するであろう。SYBR Green色素が二本鎖DNAに結合すると、蛍光発光の強度が増す。温度の上昇により二本鎖DNAがより多く変性すると、SYBR Green色素シグナルは減少するだろう。別の適切な色素は、BioFire Technology, Inc.が販売するLCGreen Plusである。
【0074】
[パーティション無しの方法]
【0075】
本開示の実施形態は、パーティション無しベースの増幅及びdPCRシステムを含む分子のパーティション無しの定量化に向けられる。特に、本開示の例示的な実施形態は、反応チャンバ内の物理的分割を取り除き、代わりに開放された浅い増幅チャンバを使用する。物理的分割又は液滴の代わりに、仮想分割は、他のサンプル「シード」から離れた位置に遺伝物質を含むサンプルの少量を播種すること、及び図1に示すようにサンプルの増幅の間のサンプルシード間の拡散を制限することによって確立される。
【0076】
図1は、本開示のパーティション無しの増幅法の1次元及び2次元描写を提供する。播種位置ごとに少量の遺伝物質が存在するように、遺伝物質を含むサンプルがパーティション無しの反応室に播種される。出発物質は十分に離れて広がり、サンプルの各シードは他の周囲のシードと重ならないか、又は最小限の重なりを持っている。いくつかの実施形態において、遺伝物質の単一コピーが、各播種された位置においてサンプル中に存在し得る。播種されたサンプルについて増幅が行われ、遺伝物質の量は増加する一方で、播種された位置の周囲では制限された拡散が生じる。増幅の間及びその後に、図2に示すように、増幅をうまく行った各播種された位置に増幅スポットが存在する。パーティション無しのこの方法は、増幅されたスポット間の平均距離が、増幅された遺伝物質(アンプリコン)の複合拡散長によって決定される平均スポットサイズと同等かそれより大きいように、制限された拡散を提供する。このようにして、各スポットを独立して分析できるように、増幅後にシード出発物質の最初の離散性を維持することができる。2つ以上の増幅スポットが重複している場合は、グループとして解析することができる。
【0077】
本開示の1つの実施形態において、サンプル中(又はサンプルプラス反応物中)の遺伝物質のより多くのシード又はコピーは、増幅されたスポットの数の増加をもたらす。1つの実施形態において、チャンバ領域全体にわたる陽性スポットの領域又は数は、図3及び4に提供されるように、シード又はコピーの開始数に関係する。1つの実施形態において、陽性スポットの領域又は数を用いて、標的分子の濃度を計算することができる。いくつかの実施形態において、高いダイナミックレンジ(所定のチャンバサイズにおける分解可能なスポットの数)を確立するために、増幅されたスポットのサイズを制限することが望ましい。
【0078】
本開示の1つの実施形態において、出発物質は任意の遺伝物質であってもよい。別の実施形態では、出発物質はDNA、RNA、及びcDNAのいずれか1つ又は複数でよい。
【0079】
PCRは、分割なしの方法を適用することができる本開示の例示的な実施形態として提供されるが、他の増幅方法も利用することができる。したがって、本開示の実施形態は、標準PCRを越えた増幅又は反応への分割を伴わない方法の適用を含む。例えば、より低い速度の規則的なサーマルサイクルPCR、より速い速度のPCR、リガーゼ連鎖反応、鎖置換増幅、等温増幅及びループ媒介等温増幅も、とりわけ本明細書に記載されているパーティション無しの方法を用いて行うことができる。さらなる実施形態では、このような増幅及び他の反応も、デジタル的に分析し定量することができ、能動的拡散制御の使用を介することを含む。
【0080】
別の実施形態では、拡散長を制限することにより、増幅されたスポットのサイズが制限される。1つの実施形態において、パーティション無しのこの方法における播種された遺伝物質の制限された拡散は、能動的拡散制御の結果である。したがって、能動的拡散制御によって、播種された遺伝物質含有サンプルの拡散長を制限することができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、拡散長を制限することは、播種された出発物質間の平均距離を増加させることを含むことができる。たとえば、出発物質がDNAである場合、反応チャンバに播種されるDNAコピー数は、出発DNA濃度を下げることによって減少させることができ、播種されたDNAコピーが増幅されたスポット間のより大きな拡散に耐えられるようになる。
【0082】
[粘度の増加]
【0083】
1つの実施形態において、能動的拡散制御は、反応成分の粘度を増加させることを含む。1つの実施形態において、増幅又は他の反応試薬の濃度を増加させることができる。別の実施形態では、増幅又は他の反応試薬の架橋を開始することができる。さらなる実施形態では、粘度増加剤を反応物及び出発遺伝物質に加えることができる。
【0084】
粘度は分子構造と分子量に大きく依存する。粘度増加剤は、PVP、メチルセルロース、グリセロール及びゼラチンを含み得る。粘度増加剤は低濃度で粘性が高く、ゲルを容易に形成し、一方、所望の増幅や他の反応を阻害しないようにすべきである。本開示の実施において有用な他の粘度増加剤は、チキソトロピック剤、皮膚軟化剤、没食子剤、架橋剤及び他のレオロジー改質剤及び増粘剤を含むことができる。当業者は、本パーティション無しの方法において使用する他の粘度増加剤を同定することができるであろう。他の粘度増加剤の適合性を決定する因子には、本剤の粘度、粘度増加剤の適合性(例えば、PCR反応を実施する場合、剤はPCR阻害剤になり得ない)、及び本剤を使用した場合に観察される拡散量が含まれる。
【0085】
[PCR時間の低減]
【0086】
別の実施形態では、能動的拡散制御には、増幅又は反応の時間の長さの短縮を含めることができる。いくつかの実施形態において、例えば、実施すべき増幅がPCRであるか、さもなければサーマルサイクルを必要とする場合、このサーマルサイクルはより短いサイクル時間を有するように加速することができ、又はサイクル数を減少させることができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、サイクル又は増幅時間の減少を用いて、拡散長を制限することができる。実施すべき増幅がPCRであるこれらの例では、サイクル時間の減少には、増幅プロセスの早期に正の蛍光信号を検出するために低ノイズ撮像システムを使用すること、信号対雑音比を増加させPCRサイクルを早期に終了させるために高コントラストレポーター色素を使用すること、反応チャンバが各所望の温度に到達するまでの時間の量を減少させるために加熱及び冷却の方法を使用することが含まれる。いくつかの実施形態において、反応チャンバが所望の温度に到達するまでの時間を短縮することは、サーマルサイクルのための熱及び冷気を使用して、熱伝達物質又はデバイスを使用して、光加熱法を使用して、誘導加熱法を使用して、循環流体を使用して、線抵抗性ヒーターを使用して、ジュール及びノンジュール加熱法の組合せを用いて線抵抗性ヒーターを有するマイクロ流体チャネルを使用して、反応チャンバを能動的に冷却することを含むことができる。
【0088】
さらなる実施形態において、拡散長は、サーマルサイクリングを加速することによって減少させることができる。いくつかの実施形態では、サーマルサイクルを加速することは、直接的又は間接的な光放射又は電磁放射ベースの加熱方法を使用することを含むことができる。1つの非限定的な実施例では、フォトニック金は、高効率で均一な光-熱変換のための光熱媒体として使用することができる。いくつかの実施形態において、サーマルサイクリングを加速することは、反応チャンバが所望の温度に到達するまでの時間を短縮することによって引き起こされ、サーマルサイクリングのために熱及び冷気を使用して、熱伝達物質又はデバイスを使用して、ジュール及び非ジュール加熱方法の組合せを使用して、インライン抵抗性ヒーターを有するマイクロ流体チャネルを使用して、光加熱法を使用して、反応チャンバを能動的に冷却することを含むことができる。
【0089】
[PCRサイクリング/熱勾配の低減]
【0090】
いくつかの実施形態において、能動的拡散制御は、増幅中の高温段階を制限することを含むことができる。1つの実施形態において、このような能動的拡散制御は、増幅反応で使用される変性温度を標準より低い温度まで低下させることを含むことができるが、依然としてアッセイ耐性の範囲内である。
【0091】
本開示の別の実施形態では、拡散長を減少させるために、チャンバ内の流体流動を減少させることができる。1つの実施形態において、反応チャンバ内の均一な温度分布を確保することによって対流を減少させることができる。
【0092】
[チャンバ形状]
【0093】
いくつかの実施形態において、反応チャンバは、拡散長を最小にするために選択することができる。1つの実施形態において、反応チャンバは、1次元の長チャネル又は2次元の広い平面から選択することができる。あるいは、又は加えて、このチャンバの深さは、複数の播種された出発材料の垂直積層の機会を最小化するために、比較的浅くされる。いくつかの実施形態において、反応チャンバは、マイクロ流体チャネルであろう。他の実施形態では、このチャンバは、チャンバの空間セクションを独立に探査できる検出システムと併せて、任意の3次元形状とすることができる。例えば、共焦点顕微鏡又は光学シート照明を用いて、チャンバの全容積を光学的に探索することができる。さらなる実施形態において、3次元チャンバ又はチャネルは、10mm×10mm×10mm(より実際的には3mm×3mm×3mm)までの寸法を有し得る。2次元チャネルは最大0.1mm×100mm×100mm(より実際的には0.1mm×15mm×15mm)の寸法を有することができ、1次元チャネルは最大0.1mm×1mm×10000mm(より実際的には0.1mm×0.1mm×2000m)の寸法を有することができる。
【0094】
[熱制御]
【0095】
いくつかの実施形態において、所望の反応に従って反応チャンバの温度を上昇及び低下させることができる任意の制御可能なサーマルサイクル又は熱システムを、本開示の方法及びシステムとともに使用することができる。一実施形態では、温度制御器を介して反応チャンバ内の温度を制御するために、温度制御器又は熱システムを使用することができる。温度コントローラは、図6のコントローラ604のサブユニットであってもよいし、別の構成要素であってもよい。プログラムされたコンピュータ又は他のマイクロポンプ若しくはアナログ温度コントローラであり得る温度コントローラは、温度センサ(例えば、薄膜抵抗熱検出器(RTD)又は薄膜サーミスタ、又は薄膜熱電対温度計、又は非接触IR体温計などの1つ以上の温度センサを含み得る)によって決定された温度に基づいて、加温装置に信号を送る。このようにして、反応チャンバの温度を所望のレベルに維持することができ、又は規定されたシーケンスを介してサイクルさせることができる。本開示のいくつかの実施形態によれば、反応チャンバは冷却装置によって(例えば、チャネル温度を速やかに下げるために)冷却することもでき、これは温度コントローラによって制御されてもよい。一実施形態では、冷却装置は、例えば、ペルチェ式装置、ヒートシンク、又は強制対流空冷装置であってもよい。
【0096】
本開示の方法及びシステムに関連して使用することができるヒーターシステムの他の詳細は、「マイクロ流体システム及び熱制御のための方法」と題する米国出願公開第2011-0048547号に記載されており、その開示は、ここにその全体を参照によりここに組み込まれる。
【0097】
[画像取得]
【0098】
いくつかの実施形態において、増幅スポットは、挿入色素又は蛍光プローブのいずれかを用いる蛍光を通して可視化することができる。他の実施形態では、このスポットの可視化は、増強された散乱又は位相コントラスト撮像によって補助される明視野又は暗視野撮像のような他の光学技術を使用することができる。
【0099】
他の実施形態では、増幅されたスポットの検出は、単に増幅されたスポットを測定する必要があるだけであるため、従来の方法よりも単純であり、従来のdPCRにおけるものとは異なり、高分解能撮像を必要とする可能性がある各パーティション又は液滴を認識する必要はない。いくつかの実施形態において、低解像度撮像は、増幅されたスポットを撮像するのに十分であり、従来のリアルタイムPCRデータを取得する場合よりも、画像あたりの露光時間が短く、総PCR時間を減少させる。
【0100】
一実施形態によれば、画像取得は、反応チャンバと光学的に連絡する光学システムを利用することができる。光学系は、所望の構成に応じてレンズバレル及び/又はエクステンションチューブを有していてもよい1つ又は複数のセンサ(例えばカメラ)を含み得る。この光学系はまた、LED又は他の適切な光源のような1つ以上の励起源を含むことができる。1つによれば、検出器は、例えば毎秒最大20~30フレームのようなビデオフレームレートでデータを記録することができるデジタルカラーカメラであり得る。これに限定されない例として、キヤノンEOS 5DMkIIデジタル一眼レフカメラがある。レンズアセンブリは、適切な蛍光発光フィルタを含むことができる。この例示的な実施形態において、エミッションフィルタは、アイダホ技術からのDNA結合色素LC Green Plusのためのパスバンドを有するデュアルバンドパスフィルタであり得る。しかし、蛍光色素の適切な代替組合せの代わりに、代替フィルタを代用してもよい。
【0101】
本発明のシステム及び方法に関連して使用され得る撮像システムの他の詳細、並びにそれらの使用に関するさらなる詳細は、「高分解能熱溶融検出のための光学系」と題する米国仮特許出願第61/378,471号、及びそこから優先権を主張する米国特許出願第13/222,487号に記載されており、これらの開示は、本明細書にその全体を引用して組み込まれている。
【0102】
[熱融解]
【0103】
いくつかの実施形態において、パーティション無しの解析は、高分解能融解解析を含むが、これに限定されない融解解析と併せて、定量的DNA突然変異検出にも使用することができる。in-situ蛍光撮像は個々のアンプリコンスポット又はクラスタの融解曲線を収集することを可能にする。獲得融解曲線による遺伝子型決定並びにクラスタのデジタル定量化は、野生型DNAコピーのバックグラウンドにおける突然変異体コピーの対立遺伝子頻度を提供することができる。
【0104】
[ジェノタイピングと対立遺伝子頻度]
【0105】
別の実施形態では、増幅反応体は、1つ以上の標識プローブを含みうる。1つ以上の標識プローブの存在下での核酸の増幅に続いて、多色検出を用いて、増幅された核酸の1つ以上の遺伝子型を決定することができる。別の実施形態では、アレル頻度もまた、多色検出に基づいて決定される。当業者は、従来のdPCRをジェノタイピング及び対立遺伝子頻度解析に使用することができる方法を理解し、このような方法は、本開示において提供されるパーティション無しの方法で使用することができる。
【0106】
[画像処理]
【0107】
光学検出システムは、チャンバ内の核酸サンプルの画像を取得する。ある態様において、増幅の開始前、増幅中、及び増幅後に画像を得ることができる。別の態様において、増幅の各サイクルの間、並びに変性、アニーリング及び伸長の相のいずれか又は全ての段階において、1つ又は複数の画像を得ることができる。
【0108】
光学検出システムが核酸サンプルの画像を得た後、プロセス700のステップ701において、画像はコントローラユニットにエクスポートされ、アップロードされ、又は他の方法で読み出され、それが画像を処理する(図7)。ステップ702では、画像が切り出され、RGBから蛍光に変換される。
【数1】
ここで、f=蛍光、g=緑色RGB構成要素及びb=青色RGB構成要素である。ステップ703(図8)で背景画像を最終サイクル画像から減算し、ステップ704(図9)で画素強度を正規化する。ステップ705では各チャネルを1列に低減し(図10)、ステップ706ではSavitzky-Golayフィルタを適用する(図11)。
【0109】
Savitzky‐Golayフィルタは低域通過、有限インパルス応答(FIR)微分フィルタであり、生信号によるFIRフィルタパラメータの畳み込みを通して任意の動的信号へのそれらの適用が得られる。独立変数の間隔が均一な場合、フィルタされた結果は、独立変数均等物に対して従属変数の一次及び高次の微分を与えることができる。このようなフィルタの効果は、移動多項式フィットと同等であり、ウィンドウの中心で評価されるその多項式の導関数の評価が続く。フィルタ処理の程度は、多項式の順序とウインドウサイズ(又はポイント数)に依存する。ステップ706でSavitzky-Golayフィルタを使用すると、チャネル内の残りのノイズが除去され、分析に適したスムーズな曲線が得られる。
【0110】
ステップ707で、クラスタが位置し、全幅半値(FWHM)クラスタ境界が決定される(図12)。FWHMクラスタ境界は、チャンバ内の単一の増幅スポットを示す。この画像はステップ708で注釈付けされ、FWHMクラスタ境界内の画素に対する大きさ対位置を示すチャネルグラフとともに保存される。
【0111】
[定量法]
【0112】
ステップ708で提供されるチャネルグラフは、単一のパーティション内の粒子又は核酸の量の定量化を可能にするデータを提供することができる。図13は、実施例において説明されたシミュレーションによって、又は上述のように提供された画像の分析を通して、例えば図12に提供されたチャネルグラフによって得ることができる例示的なデータを提供する。FWHMクラスタの境界が重なると、クラスタの大きさを加算して結合シグナルを得ることができる。閾値は、正のシグナルを構成する大きさに応じて設定できる。その閾値をデータに適用することにより、チャネルの正(P)領域と負(N)領域が決定される。ポアソン分布方程式を用いて、全反応チャンバ幅に対する反応チャンバの負の部分(例えば、チャネル)の比を用いて、定量化を推定することができ(λ)、ここで、λは、単一の仕切り内の平均カウントである。
【0113】
【数2】
【0114】
λの値は、増幅されたスポットの数と組み合わせて用いると、サンプル内又はサンプルの一部の粒子又は核酸の総数を決定するために使用することができる。
【0115】
さらに、シミュレーションで使用する場合、λ値の範囲にわたってシミュレーションを繰り返すと、ダイナミックレンジを決定できる精度の高いカーブが生成される。所望の精度値(例えば、5、10、15又は20%)を選択することにより、精度曲線のグラフを横切って水平線を描くことができ、この精度曲線は、水平線が2点の曲線と交差していることになる。この2点で引いた縦線がx軸と交差し、交点のλ値を提供する。ラムダ値間の差がダイナミックレンジである。ポアソン分布のモンテカルロシミュレーションを使用して、様々なレベルの精度としてのダイナミックレンジを、所望の数のパーティションに対して計算することができる(図14)。ダイナミックレンジとクラスタサイズ(mm)をプロットすると、ユーザは希望するクラスタサイズを選択することができる。次に、ユーザは、所望のクラスタサイズをもたらすように、サンプル及び増幅反応のパラメータを調整することができる。
【0116】
[方法の概略]
【0117】
したがって、図5に示すように、サンプルを調製すること(ステップ501)と、サンプルをチャンバに導入すること(ステップ503)であって、サンプルが1つ以上の核酸を含み、核酸がチャンバを横切って分布する、導入することと、サンプルとの熱連絡における熱システムを提供することと、1つ以上の核酸サンプルと通信する光学検出システムを提供することであって、光学検出システムが撮像システムを含む、導入することと、1つ以上の核酸の増幅を行うこと(ステップ504)と、増幅された核酸の1つ以上の画像を取得すること(ステップ506)と、画像を処理すること(ステップ508)と、チャンバを横切る蛍光分布に基づいて増幅された核酸をデジタル的に定量すること(ステップ509)と、の工程を含む、パーティション無しの分子の定量法500が提供される。
【0118】
増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、等温増幅及びループ媒介等温増幅、並びにこれらの増幅反応の高速バージョンから選択され、ここでは、サイクル数が減少し、サイクルに要する時間の長さが減少し、増幅によって必要とされる温度が減少し、又はそれらの任意の組合せである。例えば、より速いポリメラーゼ連鎖反応は、本明細書に引用により組み込まれている米国特許出願公開第20180111125号に記載されている。
【0119】
いくつかの実施形態において、本開示は、ステップ505のようにサンプルの拡散を能動的に制御することに関する。場合によっては、サンプルの拡散を能動的に制御することは、サンプルに粘度増加剤を添加すること(ステップ502)、増幅中にサンプルが受ける温度を低下させること、増幅分子サイズを増加させること、及び増幅の時間の長さを短縮することを含むことができる。いくつかの実施形態において、粘度増加剤は、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、グリセロール、ゼラチン、架橋試薬、増加したサンプル分子濃度などを含むことができ、これらには本明細書に記載されている、又は当業者によって同定されているものが含まれる。本開示の実施において有用な他の粘度増加剤は、チキソトロピック剤、皮膚軟化剤、没食子剤、架橋剤並びに他のレオロジー改質剤及び増粘剤を含むことができる。
【0120】
さらなる実施形態において、増幅の時間の長さを減少させることは、増幅サイクルの数を最小化すること、又は高速サーマルサイクル(ステップ505)を実施することを含む。なおさらなる実施形態において、増幅の時間の長さを短縮することは、増幅された核酸を、サンプル中の出発シード核酸に空間的に近接したままにする。
【0121】
いくつかの実施形態において、増幅の時間の長さを減少させることは、増幅プロセスの初期に増幅スポットの画像(ステップ506)を得ること、サンプル中に高コントラストレポーター色素を提供すること、又は所望の温度に迅速に到達することを可能にする熱システムを提供することによって達成される。
【0122】
いくつかの実施形態において、増幅されたスポットの画像(ステップ506)は、増幅された核酸からの正の蛍光シグナルを検出するために、低ノイズ撮像システムを使用して増幅プロセスの初期に得られる。いくつかの実施形態において、増幅されたスポットの画像(ステップ506)は、増幅(本質的に、任意の増幅スポット時間チャンバの画像を生じる)の前に、増幅サイクル当たり1回以上、及び/又は1回の増幅が完了した後に撮られる。
【0123】
他の実施形態では、加速サーマルサイクリングは、直接光、間接光、電磁放射線、熱伝達物質若しくは装置、インライン抵抗性ヒーター、熱気、誘導加熱、循環加熱流体、インライン抵抗性ヒーターを有するマイクロ流体チャネル、又はジュール若しくは非ジュール加熱法を利用する熱システムを提供することを含み、単独で、又は任意の組合せで、反応チャンバが必要な温度まで加熱又は冷却されるのに要する時間の量を減少させる。
【0124】
いくつかの実施形態において、パーティション無しの定量化は、さらに、1以上の増幅された核酸について融解分析及び/又は融解曲線を得ることを含む。さらなる実施形態では、1以上の核酸の遺伝子型が同定される。他の実施形態では、デジタル定量化及びジェノタイピングの結果を組み合わせて、野生型DNAコピーのバックグラウンドにおける突然変異DNAコピーの対立遺伝子頻度を提供する。
【0125】
さらなる実施形態において、デジタル定量化は、増幅されたスポット又は増幅されていないスポットの数を計数し、チャンバ容積中に存在するDNAコピー数を計算するために統計を適用することを含む。いくつかの実施形態において、デジタル定量化は、増幅/非増幅スポットの全体面積を測定することを含む。さらに別の実施形態では、光学検出システムは、蛍光画像、又は増強された散乱若しくは位相差画像によって補助される明視野又は暗視野画像を含む。他の実施形態において、撮像システムは、増幅中又は増幅の終わりのいずれかにおいて、蛍光検出によって増幅されたスポットを可視化する。他の実施形態では、増幅されたスポットの可視化に続いて、蛍光の量が測定される。他の実施形態において、デジタル定量化は、蛍光画像の全体的な蛍光強度、又は他の光学技術によって生成された正/負のシグナルの強度を測定することを含む。代わりに、又は加えて、デジタル定量化は、(i)増幅された/増幅されていないスポットを計数することと、(ii)蛍光又は他の光学技術によって生成されたスポット強度とを組み合わせることを含み得る。
【0126】
[増幅のためのシステム]
【0127】
いくつかの実施形態において、そして、図6に一般的に示されるように、サーマルサイクル装置602、領域が分割されていない核酸サンプルを受け取るための領域を有するサーマルサイクル装置602に分離可能に連結された反応チャンバ又はカートリッジ601、蛍光を検出するための検出器603、及び領域内で受け取った核酸サンプルのデジタルPCR処理を実施するためのコントローラ604を含む分子の定量化のためのシステム600が提供される。いくつかの実施形態において、カートリッジ601は、反応ミックスの物理的分割を必要としない簡略化された消費可能な設計である。他の実施形態では、システム600は、別個分割工程なしで簡略化されたワークフローを使用して機能し、システム設計を簡素化し、ユーザの実施工程を低減し、ワークフローの長さを有意に短縮する。
【0128】
他の実施形態では、コントローラ604は、サーマルサイクラー602を用いて、領域内の核酸サンプルを増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応プロセスを開始し、ここで、増幅された核酸サンプルは、光学検出システム603を使用して蛍光によって視覚化される。いくつかの実施形態において、コントローラ604は、検出器603によって検出された蛍光に基づいて、パーティションの無い領域におけるサンプルからの増幅された核酸の分布をさらに決定する。さらに他の実施形態では、コントローラ604は、検出された分布に基づいて受け取られた核酸サンプルをデジタル的に定量化する。いくつかの実施形態において、デジタル定量化は、蛍光画像の全体的な蛍光強度、又は他の光学技術によって生成された正/負のシグナルの強度を測定することを含む。
【0129】
本開示の目的のために、本実施例に記載されているすべての増幅及び/又は熱融解実験は、2019年7月30日付の米国特許第10,363,558号に記載されているシステムで実施され、その開示はその全体を引用により本明細書に組み込まれている。
【0130】
本開示のシステム及び方法に関連して使用され得る装置は、上記の機能以外の特徴を含み、又はこれらに加えてもよい。
【0131】
[定義]
【0132】
要素又は部分が、本明細書中で、他の要素又は部分「上に」、「反対に」、「に連結されている」、又は「に結合されている」場合、それは、他の要素又は部分に対して、直接上に、反対に、連結され、若しくは結合され、又は介在する要素又は部分が存在しうることを理解すべきである。対照的に、要素が、他の要素又は部分に「直接連結」、又は「直接結合」されている場合、介在する要素又は部分は存在しない。使用される場合には、用語、「及び/又は」は、提供される場合、関連するリストの項目の1つ以上の組合せのいずれか及び全てを含む。
【0133】
「下」、「上」、「下」、「上」、「近位」、「遠位」などの空間的に相対的な用語は、様々な図に示されているように、1つの要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明するために本明細書で使用することができる。しかしながら、空間的に相対的な用語は、図に示されている向きに加えて、使用又は動作中のデバイスの異なる向きを包含することが意図されていることが理解されるべきである。例えば、図に示されているデバイスがひっくり返される場合、他の要素又は特徴の「下」又は「下」として記載されている要素は、他の要素又は特徴の「上」に向けられる。したがって、「下」のような相対的な空間的な用語は、上及び下の向きの両方を包含することができる。デバイスは、そうでなければ、向き(90度回転又は他の向き)であってもよく、本明細書で使用されている空間的に相対的な記述子は、同様に、相対的空間用語「近位」及び「遠位」も、適用可能な場合、交換可能であってもよい。
【0134】
本明細書中で使用される用語「クラスタ」は、シード分子の位置を囲む増幅された分子のグループ化を意味するために使用されるように、「スポット」という単語と互換可能である。
【0135】
本明細書中で使用される用語「約」は、例えば10%以内、5%以内又はそれ以下を意味する。いくつかの実施形態において、「約」という用語は、測定誤差内を意味してもよい。
【0136】
第1、第2、第3などの用語は、様々な要素、構成要素、領域、部分及び/又はセクションを記述するために本明細書中で使用されてもよい。これらの要素、構成要素、領域、部分及び/又はセクションは、これらの用語によって限定されるべきではないことを理解しておくべきである。これらの用語は、一つの要素、構成要素、領域、部分又はセクションを他の領域、部分又はセクションから区別するためにのみ使用されている。したがって、以下で論じる第1の要素、構成要素、領域、部分、又はセクションは、本明細書の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、部分、又はセクションと呼ぶことができる。
【0137】
本明細書中で使用される用語は、特定の実施態様のみを記述する目的であり、限定することを意図するものではない。「a」及び「an」及び「the」という用語の使用、及び(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)本開示を説明する文脈における類似の指示対象は、本明細書中に別段の指示がない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーするものと解釈されるべきであり、「備える」、「有する」、「含む」、及び「包含する」という用語は、特に断らない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むが、限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書中の数値範囲の列挙は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する別個の値それぞれを個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、別個の値それぞれは、本明細書中で個々に列挙されるかのように、明細書に組み込まれる。例えば、範囲10-15が開示されている場合、11、12、13、及び14も開示される。本明細書で記載した全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、或いは明らかに文脈に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行され得る。本明細書に提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、開示をよりよく照明することを意図するだけであり、特に主張しない限り、開示の範囲に制限をもたらさない。明細書中のどの言語も、開示の実践に必須であると主張されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0138】
本開示の方法及び組成物は、様々な実施形態で組み込むことができ、そのうちのわずか数個のみを本明細書に開示することができることは理解されるであろう。これらの実施形態のバリエーションは、上述の説明を読むことにより、当業者にとって明らかになり得る。本発明者は、当業者がそのような適切なバリエーションを採用することを期待しており、発明者は、本明細書に特に記載されているように、開示が別の方法で実施されることを意図している。さらに、これらの可能性のある全ての変化における上記要素の任意の組合せは、特に指示されない限り、又は別途文脈によって明らかに矛盾しない限り、開示に包含される。
【0139】
さらに、上記の処理と図に示した処理は一連の工程として示されているが、これは図解のためだけに行われたものである。したがって、いくつかの工程が追加されてよく、いくつかの工程が省略されてよく、その工程の順序が再配置されてもよいと考えられる。
【0140】
[実施例]
【0141】
[シミュレーション]
【0142】
チャネル内の単一の核酸コピーのシナリオに対するdPCR結果を、3ステップPCR反応(変性、アニーリング及び拡張)による30サイクルの統合的ランダム拡散と、拡張期間のエンドの現在の位置におけるすべての粒子の重複と比較するために、Pythonシミュレーションを作成した。このシミュレーションの出力は、得られたクラスタ又はスポットのサイズを推定するために使用された、チャネルの長さ(x軸)に沿った粒子分布プロファイルであった。図15は、シミュレーション条件を示す図である。
【0143】
このシミュレーションには、幅180μm、深さ20μmの矩形断面の、長さに制限のない長いマイクロチャネルを利用した(図16)。シミュレーション開始時には、反応混合物中の水中のグリセロールを粘度を調整するための添加剤として、単一のDNAコピーを想定した。PCRは一本鎖コピーから始まり、反応の効率は100%であると仮定した。全拡散長に寄与しなかったため、反応のホットスタートは提供されなかった。コピーはy方向とz方向の両方でチャネル壁を反跳すると仮定した。時間増分は0.1秒で固定した。温度上昇は、PCRの全所要時間に依存して変化した。各シミュレーション工程における粒子の拡散は、図17に示されるように、Stokes-Einstein方程式に従って計算された。
【0144】
合計75のシミュレーションのために、3種類のグリセロール濃度(0、12.5、25%)の各々で、5種類のPCR反応長(1、4、7、10、13分)の各々で、合計5種類の粒子サイズ(50、100、250、500及び1000塩基対)をシミュレートした。図19は、5つの粒子サイズのそれぞれにおける出力を示す図である。得られた(大部分がガウス分布の)クラスタプロファイルのFWHM値の計算を用いて、クラスタサイズを測定した(図18)。
【0145】
[概念の証明]
【0146】
提案した概念の実現可能性を示すために、チップに組み込まれた抵抗性ヒータを用いて高速サーマルサイクル能力を有する1-D長マイクロ流体PCRチャンバで概念実証実験を行った。これにより、PCR時間を短縮して能動的に拡散を制限するための適切なテストケースが得られた。PCRチャンバの寸法は、幅180μm、深さ20μmの矩形断面の長いマイクロチャネルとした。全観察可能チャネル長は7.5mmまでであった。各カートリッジは複数のPCR反応を同時に実行できる8つのチャネルを有していた。各PCRチャネルに、異なるDNA濃度(0、1、1.3、2ng/μL最終濃度)のPCR混合物を入れ、45サイクルのサーマルサイクルを、混合物中のLC緑介在色素を使用してPCR進行をモニタリングするために撮った蛍光画像で実施した。この高速サーマルサイクルシステムは、78秒以内に45回のPCRサイクルを完了した。図2は、73秒間のPCR後に撮影された蛍光画像であり、PCR増幅後に離散性の明るいクラスタパッチを示す。
【0147】
個々のクラスタパッチは、高速サーマルサイクルがPCR増幅後のPCRミックスで広がった個々のコピーのデジタル署名を維持できることを示唆した。個々のコピー周辺の増幅は、制限された拡散のため局在化し、すべての蛍光パッチは、その位置における最初のシード核酸コピーの存在を表した。
【0148】
蛍光により可視化されたこの局所的増幅は、蛍光画像のデジタル分析により反応チャンバ中の開始コピー数を推定するために使用できた。蛍光パッチと開始濃度の関係を確認するために2つの分析法が適用された。まず、図3に示すように、各チャネルの水平強度プロファイルから、チャネル軸に沿って蛍光ピークが観察された。歪んだ全強度プロファイルは、検出ハードウエアの照明パターンから得られる。最も高い2ng/μl濃度チャネルは、チャネル軸に沿った単一ディップで広い強度プロファイルを有し、一方、より低い濃度反応はより離散したピークを示した。この傾向は、より低いDNA濃度がシードDNAコピーをさらに互いに分離するゆえに予想された。この結果に基づいて、明るい蛍光をもつチャネル長の割合は、ピーク強度の高さを考慮せずに出発コピー数と関係づけることができる。
【0149】
さらに、全体のチャネル蛍光強度と開始DNA濃度との関係を考察した。全体的な蛍光強度は、チャネルのどの部分がアンプリコンクラスタパッチで覆われているかを反映していると考えられた。図4は直線回帰フィットの結果を示しており、適合度は78.5%のR-square値で良好に見えることから、本アプリケーションで想定されたような開始DNA濃度に対する全体的な蛍光強度の関係が確認された。
【0150】
[粘度の増加]
【0151】
[添加物試験]
【0152】
最初の試験は、溶液の粘度を増加させるために、既知のPCR添加物であるグリセロール(1,2,3-プロパントリオール)を使用して行われた。アンプリコンクラスタサイズは減少したが、グリセロールは図27に示すようにアンプリコンの融解Tmに大きなシフトをもたらし、さらに反応体積の抑制により粘度をさらに増加させることはできなかった。添加剤ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、メチルセルロース、フィコール、アルギン酸ナトリウム塩、ゼラチン、コロイドシリカ、及びシルクフィブロイン(表1)が試験のために追加的に選択された。それぞれの化学物質は、0.5%の溶液から始めて核相フリーH2O(NF HO)に分解された。標準ピペットでサンプルを正確にピペットできなくなるまで、濃度をゆっくりと上げた。これを、これらの実験に対する各添加剤の最大溶液濃度と決定した。NF HOを熱板を用いて煮沸し、絶えずかき混ぜながらビーカーに化学物質をゆっくりと加えた。濃度を上げる前の粘度を適切に調べるために、サンプルを完全に冷却した。最高濃度が決定されたら、溶液をバルク50mLとし、必要に応じて保存した。各サンプルの粘度は後日、粘度計(A05チップ付きRheosense Micro VISC、0-100cP)で測定した。粘度データは、より大きく、より複雑な分子構造とより高分子量のポリマーが、溶液中のより低い濃度でより高い粘度を生じるという理論と整合する。
【0153】
表1 粘度増加添加剤
【表1】
【0154】
表2 各添加剤の最大溶液濃度及び粘度
【表2】
【0155】
各溶液の最大濃度を決定した後、添加物を個々にPCR反応に添加し、PCRとの適合性を確認するためにBioRad CFX96で試験した。2ステップPCR(表3)、ヒトゲノムDNA及びMTHFR665プライマーを使用して試験を実施した。PCR緩衝液のマスターミックスは、Initial PCR Chemistry Table(表3A)に従って2倍濃度で作成し、各添加剤の様々な濃度と混合する場合には1倍に希釈された。表3に示すようにウェルプレートを調製し、各96ウェルプレート上で2種類の添加剤を試験し、各ウェルに10μLのPCRミックスを混合した。各添加剤は、各添加剤がPCRを阻害し始める濃度を測定するための濃度勾配を有していた。最初の試験ではテンプレートコントロール(NTC)は使用しなかった。高い粘度を達成するためのPCR効率(最低Cq)、Tm(最小シフト)、最低濃度(w/v)を観測した。
【0156】
表3 BioRad CFX96のPCR添加剤試験用ウェルプレートマップ
【表3】
【0157】
表3A PCR化学作用
【0158】
【表4】
【0159】
図21に示すように、メチルセルロースは効率的な添加剤であった。メチルセルロースはPCRにはほとんど影響を及ぼさず、Tmのシフトを有さなかった。PVP、フィコール、ゼラチンはいずれも最高濃度でPCR反応をわずかに阻害し始めるようであった(図20、22、23)。0%コントロールと比較した場合、Cq値のわずかな増加が観察された(図25)。アルギン酸、コロイド状シリカ、PEG、及び絹はいずれも、試験した濃度で種々のレベルのPCR阻害及び/又はTmのシフトを示した。すべての添加剤の中で、メチルセルロースは、図24に示すように、0%コントロールと比較した場合、Cq値を減少させる唯一のものであった。メチルセルロース、PVP、フィコール、及びゼラチンをさらなる分析のために選択した。
【0160】
最後の4つの添加物をNTC添加BioRad及び0%コントロールで再度試験し、添加物がいかなる非特異的増幅にも至らないことを確認した。同じ化学作用、プライマーセット、DNAを用いた。各添加物は、0%コントロールとして1列、DNA添加最大濃度として1列、最大濃度NTCとして1列を用いて、同じウェルプレート上で泳動した。アニール/伸長段階を単一温度72℃で保持した以外は、サンプルは同じ2段階PCRプロトコルで泳動した。NTCによる結果を図26に示す。NTCは37サイクル付近で増幅し始めたが、それらは以前の実験からの0%添加物によるNTCで見られた非特異的産物であり、示されたデータを阻害しなかった。
【0161】
表3B-PCR設定
【表5】
4分及び10分のPCR設定は、シミュレーション結果に合わせて30回の温度サイクル用に設計されているため、40サイクル(又は35サイクル)の合計PCR時間と一致しない。アンプリコンクラスタは、試験中30サイクル後には十分に明るくならなかったため、35度目のPCRサイクル後に解析を行った。
表4A-PGP泳動のウェルプレート設定
【表6】
表4B-PGPのウェルプレート設定
【表7】
【0162】
[PGP-PCR速度の増加]
【0163】
添加物がPGPで働き、NTCが清浄であることを確認した後、PCR反応を高速化した。各添加剤の最大濃度を0%コントロールとともに用いた。両プライマーを2つの別個の試験に分割して、並列比較のために同じカートリッジ内で2つの異なるPCR速度を達成した。これを行うために、プライマーは、1回目の試験ではチャネル1~4に、2回目の試験ではチャネル5~8にのみ使用した。PCRは、テーブル3B(2分間PCR設定及び3分間PCR設定)に示すように2分間及び3分間で完了した。結果を図32-34に示す。
【0164】
メチルセルロース、フィコール、PVPはいずれも0%添加剤コントロールと同様の結果であった。3種類の添加剤はいずれも、無添加剤コントロールと比較した場合、2分間PCRのCq値がわずかに良好であった(図35)。3種の添加剤はいずれも、効率への影響が最小限で、より迅速なPCRの負荷に耐えることが可能であると思われた。PCR実行が3つの残りの添加剤を分離するために使用できなかったので、メチルセルロースは、このような低濃度で観察された高い粘度の結果さらなる試験のために選択された。
【0165】
[PGP-メチルセルロースによるLow対High DNA]
【0166】
DNAを以前の反応で用いた10ng/μLから0.5ng/μLに希釈し、低DNA濃度サンプルを作成した。高DNA濃度サンプルは、以前用いた10ng/μLを維持し、コントロールとして用いた。これらの試験では動的スラグ制御をオフにした。これにより、DNA濃度の低いチャネル内にクラスタが形成されると考えられる。MTHFR1286及びMTHFR665はいずれも、添加剤を含まない4つのチャネル及び0.5%メチルセルロースを含む4つのチャネルを用いて試験され、3つのチャネルは低DNA、1つは高DNA濃度であった(テーブル4Bでは2分間のメチルセルロース設定)。これにより、メチルセルロースを用いた低DNAサンプルで生成されたクラスタを、同じカートリッジ上で泳動する0%コントロールと比較することが可能となった。この実験には、2分間PCR反応からのPGP設定と同じものを用いた。再現性のある結果を得るために2つの試験を行った。DNA検出のないチャネルが少数あったが、濃度の低さ、及び解析される関心領域(ROI)の小ささから、これは予想されていた。HRM解析は、小ROIではなく全チャネルの解析が可能な、特注のHRM解析ソフトウエアを用いて行った。すべてのクラスタは同じ融解Tmを有しており、いくつかのチャネルで複数のクラスタが見られる(図36、37)。このチャネルは元のプレートマップと比較すると逆順である(すなわち、分析ソフトウェアのチャネル1は実際にはチャネル8である)。一度目及び35度目のPCRサイクルからのPCR画像を同定し、クラスタサイズ解析を行った。0%及び0.5%メチルセルロースサンプルを比較した場合、クラスタサイズの差は有意ではなかった。しかし、このデータはより速いPCRサイクルで得られ、拡散が差をつくるまでの時間が少なくなった。
【0167】
CSP1遺伝子を標的とする新しいプライマーでPCR化学作用を調製した。プライマーはすべて同じ遺伝子座を標的とするが、51、100及び272bpの4つの異なる産物サイズを生成する。迅速なPCRを容易にするために、LC Green濃度を1倍から2倍に増加させ、KlenTaq濃度を0.04から0.15 U/μLに増加させたこと(表3AのDOE Chemistry)を除いて、化学作用は以前の試験と同じであった。データのバルクには、51及び100bpのCSP1アッセイを使用した。この泳動は、2つの検査法と表3Bの4分及び10分のPCR設定の間で無作為に行った。0.5%メチルセルロース及び0%コントロールは、いずれも前回の試験での低及び高DNA濃度(テーブル4Bの4/10分メチルセルロース設定)で使用した。
【0168】
図38と39に低DNA濃度DOEのクラスタサイズ解析を示し、その結果を図40にまとめた。使用したプログラムでは、クラスタがあまりにも近接していたため(たとえば、図38の4分間51bpからのチャネル8)、時にクラスタ間を区別することができなかった。図40のグラフでは、複数のクラスタが明確に統合された場合(肩又は二重のピークを伴うヒストグラム)、又はクラスタが画像の右側に遠すぎた場合(強度が低すぎた場合)には、そのクラスタは無視された。制限された領域を伴う解析方法は、収集されたデータポイントをほとんどもたらさなかった。この結果に基づいて、メチルセルロースがスポットサイズを一貫して減少させたかどうかは確定的ではなかった。メチルセルロースによるサンプルのスポットサイズ範囲は1.3mm~1.8mmであった。このサイズは0%添加剤チャネルと比較するとほぼ同じである。これらのクラスタサイズは、メチルセルロースに関して行われた研究及び粘度測定に基づくと、予想よりもはるかに大きかった。
【0169】
[PGP-Low対High DNA]
【0170】
PVPを添加剤として生成したクラスタサイズを決定するために、同じ実験方法と化学作用を使用した(テーブル4Bの4/10分のPVP設定)。1回の実験の後、より多くのクラスタが出現するように試みてDNA濃度を1ng/μLに増加させた。まとめると、両回の実験から得られたクラスタサイズが平均された。PVPは0%コントロールよりもクラスタサイズが小さく、以前に試験された25%グリセロール泳動であった。図28~30、41~44は、各実験条件の分析画像に加えて、MTHFRプライマー(665及び1286)を試験する追加の2分間のPCRを示す。図31は、無添加、2.5% PVP、0.5%メチルセルロース、25%グリセロールを用いた4分及び10分PCR設定における3つのCSP1アッセイの平均クラスタサイズを示している。図31は、無添加及び2.5% PVPのMTHFRアッセイの平均クラスタサイズを示す。DNA濃度が高くても(10ng/μL)、クラスタが形成されていることは明らかである。これは図30におけるチャネル7に最も多く見られる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図20C
図20D
図21A
図21B
図21C
図21D
図22A
図22B
図22C
図22D
図23A
図23B
図23C
図23D
図24A
図24B
図24C
図24D
図25A
図25B
図25C
図25D
図26A
図26B
図26C
図26D
図27
図28A
図28B
図28C
図28D
図29A-C】
図29D-F】
図30A-C】
図30D-F】
図31A
図31B
図32A-C】
図32D-F】
図32G-I】
図32J-L】
図33A-C】
図33D-F】
図33G-I】
図33J-L】
図34A-C】
図34D-F】
図34G-I】
図34J-L】
図35
図36A-B】
図36C-J】
図37A-B】
図37C-J】
図38A-C】
図38D-F】
図39A-C】
図39D-F】
図40A
図40B
図41A-C】
図41D
図41E
図41F
図42A-C】
図42D
図42E
図42F
図43A-C】
図43D
図43E
図43F
図44A-C】
図44D
図44E
図44F
【手続補正書】
【提出日】2023-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルをチャンバに導入することであって、前記サンプルは1つ以上の核酸を含み、前記核酸が前記チャンバにわたって分布する、導入することと、
前記サンプルと熱的に連通する熱システムを提供することと、
1つ以上の核酸サンプルと連絡する光学検出システムを提供することであって、前記光学検出システムは撮像システムを含む、提供することと、
前記1つ以上の核酸の増幅を実行することと、
増幅された前記核酸のうちの1つ以上の画像を取得することと、
前記チャンバにわたる蛍光分布に基づいて増幅された前記核酸をデジタル的に定量化することと、
の工程を含む、パーティション無しでの分子の定量化のための方法。
【外国語明細書】