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特開2024-23272ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の結晶性粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023272
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の結晶性粒子
(51)【国際特許分類】
   C07C 215/40 20060101AFI20240214BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 39/04 20060101ALI20240214BHJP
   C07F 11/00 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C07C215/40 CSP
A61K31/14
A61K9/14
A61K9/28
A61K9/48
A61P3/00
A61P25/00
A61P39/04
C07F11/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023192004
(22)【出願日】2023-11-10
(62)【分割の表示】P 2020563821の分割
【原出願日】2019-02-06
(31)【優先権主張番号】62/627,071
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】520195811
【氏名又は名称】アレクシオン・ファーマ・インターナショナル・オペレーションズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ラーシュ・オルソン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴェカ・テー・オルトナル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩のより安定な固体単位投与形態を可能とする結晶性粒子、結晶性粒子を製造する方法、および固体単位投与形態を提供する。
【解決手段】一実施形態では、結晶性粒子は、少なくとも30μm、または少なくとも40μm、または30μm~70μmの粒子サイズの50パーセンタイル(D50)、および75μm~550μmの粒子サイズの90パーセンタイル(D90)を有する。固体単位投与形態としては、特に錠剤またはカプセルが提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも30μmの粒子サイズの50パーセンタイル(D50)を有する、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の結晶性粒子。
【請求項2】
前記D50が少なくとも40μmである、請求項1に記載の結晶性粒子。
【請求項3】
前記D50が30μm~90μmである、請求項2に記載の結晶性粒子。
【請求項4】
前記D50が30μm~70μmである、請求項3に記載の結晶性粒子。
【請求項5】
60μm~550μmの粒子サイズの90パーセンタイル(D90)を有する、請求項1~4のいずれかに記載の結晶性粒子。
【請求項6】
前記D90が400μm~550μmである、請求項5に記載の結晶性粒子。
【請求項7】
前記D90が75μm~135μmである、請求項5に記載の結晶性粒子。
【請求項8】
前記D90が75μm~100μmである、請求項7に記載の結晶性粒子。
【請求項9】
0.25平方メートル/グラム(m/g)未満の比表面積(SSA)を有する、請求項1~8のいずれかに記載の結晶性粒子。
【請求項10】
前記SSAが0.25m/g未満である、請求項9に記載の結晶性粒子。
【請求項11】
粒子の40%パーセント未満が100μmより大きい、請求項1~10のいずれかに記載の結晶性粒子。
【請求項12】
粒子の15および40パーセントが100μmより大きい、請求項11に記載の結晶性粒子。
【請求項13】
1質量パーセント未満のMo 2-のビス-コリン塩を有する請求項1~12のいずれかに記載の結晶性粒子を含む組成物。
【請求項14】
0.2質量パーセント未満のMo2-のビス-コリン塩を有する請求項1~13のいずれかに記載の結晶性粒子を含む組成物。
【請求項15】
Mo 2-および/またはMo2-のビス-コリン塩の質量パーセントが40℃および75パーセントの相対湿度における3~6日間の貯蔵後に測定される、請求項13または14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
0.5質量パーセント未満の総不純物を有する請求項1~12のいずれかに記載の結晶性粒子を含む組成物。
【請求項17】
前記総不純物が、TM1、TM2、TM3、Mo 2-、およびMo2-のビス-コリン塩の少なくとも1つを含む、請求項16に記載の結晶性粒子。
【請求項18】
3.0未満、任意選択的に2.5未満もしくは2.5に等しいまたは任意選択的に2.0未満のD90対D50比を有する、請求項1~17のいずれかに記載の結晶性粒子。
【請求項19】
50が35μm未満である、請求項1~18のいずれかに記載の結晶性粒子。
【請求項20】
90が75μm未満である、請求項1~19のいずれかに記載の結晶性粒子。
【請求項21】
15μm未満の粒子サイズの10パーセンタイル(D10)を有する、請求項1~20のいずれかに記載の結晶性粒子。
【請求項22】
ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩(BC-TTM)の結晶性粒子を製造する方法であって、
(a)少なくとも1つの溶媒中のBC-TTMの溶液を提供すること;
(b)BM-TTMの前記溶液を約35℃~50℃の第1の温度に加熱すること;
(b)少なくとも1時間、任意選択的に少なくとも2時間または2~4時間の期間にわたりBC-TTMの前記溶液にエタノールまたはイソプロパノールの少なくとも1つを徐々に加えること;
(c)BC-TTMの前記溶液を約10℃~25℃の第2の温度に冷却してBC-TTM結晶性粒子を製造すること;
(d)前記BC-TTM結晶性粒子を濾過すること;
(e)減圧下で約20℃~30℃の第3の温度において前記BC-TMM結晶性粒子を乾燥すること
を含む、方法。
【請求項23】
前記BC-TTM結晶性粒子を濾過した後かつ前記BC-TTM結晶性粒子を乾燥する前に、エタノール、任意選択的に無水エタノールを用いて前記BC-TTM結晶性粒子を洗浄することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記BC-TTM結晶性粒子を粉砕することをさらに含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
粉砕ステップにおいてコミルが使用される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
粒子サイズの50パーセンタイル(D50)が少なくとも30μmである、請求項22~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記D50が30μm~90μm、特に35μmである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つの溶媒が水を含む、請求項22~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
BC-TTMの前記溶液が、以前に1回または複数回結晶化された固体BC-TTMを溶解することにより製造される、請求項22~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
加熱の前にBC-TTMの前記溶液を研磨濾過することをさらに含む、請求項22~29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
エタノールが(b)において少なくとも2時間にわたり加えられる、請求項22~30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記第1の温度が40℃~45℃である、請求項22~31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記第2の温度が15℃である、請求項22~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記第3の温度が25℃である、請求項22~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1時間前記第1の温度において前記溶液を保持することを含む、請求項22~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1時間前記第2の温度において前記溶液を保持することを含む、請求項22~35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1時間前記第3の温度において前記溶液を保持することを含む、請求項22~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
請求項1~12のいずれかに記載のビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の結晶性粒子を含む固体単位投与形態。
【請求項39】
任意選択的に直接圧縮により調製された、錠剤を含み、前記錠剤が、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項38に記載の固体単位投与形態。
【請求項40】
前記錠剤がコーティングされている、請求項39に記載の固体単位投与形態。
【請求項41】
前記表(table)がプレコーティングおよびコーティングされている、請求項40に記載の固体単位投与形態。
【請求項42】
ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をカプセルに充填することにより調製された、請求項38に記載の固体単位投与形態。
【請求項43】
貯蔵および使用のために安定である、請求項38~42のいずれかに記載の固体単位投与形態。
【請求項44】
6質量パーセント(w/w)未満または6質量パーセント(w/w)に等しい総不純物を有する、請求項38~42のいずれかに記載の固体単位投与形態。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年2月6日に出願された米国仮特許出願第62/627,071号の優先権を主張し、該仮特許出願の開示は参照することにより全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ウィルソン病(WD)は、銅(Cu)代謝不全の常染色体劣性障害である。ATP7B遺伝子の突然変異は、CuトランスポーターATPase2の産生の欠損を結果としてもたらし、セルロプラスミンへのCuの取込み不全、Cuの胆汁排泄不全、遊離およびアルブミン結合Cuの増加、ならびに肝臓、脳、および他の組織におけるCu蓄積に繋がり、臓器損傷および機能障害を結果としてもたらす。WDの有病率は30,000人に1人と推定され、これは米国における約10,000個体および欧州連合における約15,000個体に対応する。
【0003】
ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩(BC-TTM)は、WD患者における1日1回の投与によりCu制御および肝臓機能の改善を提供することが実証されている。WDおよび他の状態の治療における使用を意図したものなどの、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩(BC-TTM)の成功裡の薬学的に許容される固体単位投与形態の製造は困難であり得、その理由は、BC-TTMは、貯蔵、強制分解条件下、特に錠剤化の帰結として、分解するためである。精製されたBC-TTMの調製物において不純物が経時的に形成されることが見出されている。したがって、より安定な固体単位投与形態を可能とするBC-TTMの形態に対する満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、BC-TTMの、新規の結晶性粒子、結晶性粒子を製造する方法、および固体単位投与形態、特に錠剤またはカプセルを提供する。BC-TTMは、構造:
【化1】
を有する。
【0005】
開示される組成物の一実施形態では、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の結晶性粒子は、少なくとも30μmの粒子サイズの50パーセンタイル(D50)を有する。他の実施形態では、結晶性粒子は少なくとも40μmのD50を有する。他の実施形態では、結晶性粒子は30μm~90μmのD50を有する。他の実施形態では、結晶性粒子は30μm~70μmのD50を有する。
【0006】
開示される組成物の一実施形態では、結晶性粒子は、少なくとも30μm、または少なくとも40μm、または30μm~70μmの粒子サイズの50パーセンタイル(D50)、および75μm~550μmの粒子サイズの90パーセンタイル(D90)を有する。他の実施形態では、D90は400μm~550μmである。他の実施形態では、D90は75μm~135μmである。他の実施形態では、D90は75μm~100μmである。
【0007】
本開示は、0.4平方メートル/グラム(m/g)未満または0.25m/g未満の比表面積(SSA)を有するBC-TTMの結晶性粒子をさらに提供する。開示される組成物の一実施形態では、粒子の40%パーセント未満は100μmより大きい。他の実施形態では、粒子の15および40パーセントは100μmより大きい。ある特定の実施形態では、BC-TTMの結晶性粒子の組成物は不純物をさらに含む。一実施形態では、BC-TTMの結晶性粒子の組成物は、1質量パーセント未満のMo 2-のビス-コリン塩を含む。一実施形態では、BC-TTMの結晶性粒子の組成物は、0.2質量パーセント未満のMo2-のビス-コリン塩を有する。一実施形態では、Mo 2-のビス-コリン塩および/またはMo2-のビス-コリン塩の質量パーセントは、BC-TTMが40℃および75パーセントの相対湿度において3~6日間貯蔵された後に測定される。
【0008】
開示される組成物の一実施形態では、結晶性粒子は、0.5質量パーセント未満の総不純物を有する。一実施形態では、総不純物は、TM1、TM2、TM3、Mo 2-およびMo2-の少なくとも1つを含む。一実施形態では、結晶性粒子は2.5未満のD90対D50比を有する。一実施形態では、D50は35μm未満である。一実施形態では、D90は75μm未満である。
【0009】
開示される組成物の一実施形態では、結晶性粒子は15μm未満の粒子サイズの10パーセンタイル(D10)を有する。
【0010】
本開示は、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩(BC-TTM)の結晶性粒子を製造する方法であって、(a)BC-TTMの溶液を提供すること;(b)BM-TTMの溶液を約35℃~50℃の第1の温度に加熱すること;(b)少なくとも1時間の期間にわたりBC-TTMの溶液にエタノールまたはイソプロパノールを徐々に加えること;(c)BC-TTMの溶液を約10℃~25℃の第2の温度に冷却して固体BC-TTMを製造すること;(d)固体BC-TTMを濾過すること;(e)減圧下で約20℃~30℃の第3の温度において固体BC-TMMを乾燥することを含む、方法をさらに提供する。
【0011】
本開示のある特定の実施形態では、方法は、固体BC-TTMを濾過した後かつ固体BC-TTMを乾燥する前にエタノールまたはイソプロパノールを用いて固体BC-TTMを洗浄することを含む。一実施形態では、方法は、任意選択的に円錐形スクリーンミルを使用して、結晶性粒子を粉砕することを含む。
【0012】
本開示の他の実施形態では、方法は、粒子サイズの50パーセンタイル(D50)が少なくとも35μmであるBC-TMMを提供する。さらに他の実施形態では、D50は少なくとも40μmである。一実施形態では、D50は40μm~90μmである。一実施形態では、溶媒は水を含む。一実施形態では、BC-TTMの溶液は、以前に1回または複数回結晶化されたBC-TTMを溶解することにより製造される。一実施形態では、方法は、加熱ステップの前にBC-TTMの溶液を研磨濾過(polish-filtering)することをさらに含む。一実施形態では、エタノールを加える期間は少なくとも2時間である。一実施形態では、第1の温度は40℃~45℃である。一実施形態では、第2の温度は15℃である。一実施形態では、第3の温度は25℃である。一実施形態では、方法は、少なくとも1時間第1の温度において溶液を保持することを含む。一実施形態では、方法は、少なくとも1時間第2の温度において溶液を保持することを含む。一実施形態では、方法は、少なくとも1時間第3の温度において溶液を保持することを含む。
【0013】
本開示は、開示される組成物の任意の実施形態において記載されるようなビス-コリン
テトラチオモリブデン酸塩の結晶性粒子を含む固体単位投与形態をさらに提供する。一実施形態では、固体単位投与形態は錠剤を含む。一実施形態では、本開示の錠剤は、任意選択的にコーティングされている、または任意選択的にプレコーティングおよびその後にコーティングされている、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩と薬学的に許容される賦形剤との混合物の直接圧縮により調製される。
【0014】
本開示の実施形態では、固体単位投与形態は、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩と薬学的に許容される賦形剤との混合物をカプセルに充填することにより調製される。本開示の固体単位投与形態の実施形態では、固体単位投与形態は貯蔵および使用のために安定である。一実施形態では、固体単位投与形態は6質量パーセント未満の総不純物を有する。一実施形態では、固体単位投与形態は1.5質量パーセント未満の総不純物を有する。
【0015】
本開示の追加の態様および実施形態は以下の詳細な記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩を含む組成物中の不純物を描写する。不純物は、図1においてイオンのビス-コリン塩の形態で存在する。
図2】バッチA-2における(塊状化)結晶性粒子のSEM画像を描写する。
図3】より高倍率でのバッチA-2における(塊状化)結晶性粒子のSEM画像を描写する。
図4】バッチB-3における結晶性粒子のSEM画像を描写する。
図5】より高倍率でのバッチB-3における結晶性粒子のSEM画像を描写する。
図6】バッチB-1における結晶性粒子のSEM画像を描写する。
図7】より高倍率でのバッチB-lにおける結晶性粒子のSEM画像を描写する。
図8】2~8℃の制御された条件における数か月の貯蔵にわたる総不純物のプロットを示し、最良直線フィットを破線で表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、BC-TTMの新規の結晶性粒子、BC-TTMの結晶性粒子の製造方法、および錠剤およびカプセルを含むBC-TTMの固体単位投与形態を提供する。本開示は、BC-TTMの結晶性粒子を製造する非限定的な、例示的な方法をさらに提供する。本開示のある特定の態様は、BC-TTMの結晶性粒子を製造する開示される方法は異なる粒子サイズ分布を結果としてもたらし、ある特定の粒子サイズ分布は貯蔵、強制分解、または錠剤化の下でのBC-TTMの化学分解に対する安定性の増加と相関するという驚くべき発見に基づく。
【0018】
1.1 ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の合成
チオモリブデン酸誘導体を調製する方法は、US2004/0019087(現在は「Thiomolybdate analogues and uses thereof」に対する米国特許第7,189,865号)(参照することにより全体が本明細書に組み込まれる)において開示されている。US2004/0019087はまた、ビス-コリン塩の形態のテトラチオモリブデン酸塩(BC-TTM)の合成方法であって、水酸化コリンが水性溶液中でモリブデン酸アンモニウムに加えられた後に、硫化水素気体が室温で溶液を通じてバブリングされる、方法を開示する。窒素気体を用いた溶液のパージ後に、溶媒(水)を減圧下で繰り返し除去してアンモニアを除去したこと、および、生成物を水中に再溶解し、濾過することにより不溶性の硫化モリブデンを除去したことが開示されている。US2004/0019087は、生成物を水およびイソプロパノールから再結晶化し、エタノールおよびジエチルエーテルを用いて洗浄して1.5gスケールにおいて90%の収率を得たことを開示する。BC-TTMはまた、BC-TTMの大規模製造に
適合された方法を含む他の方法により調製されてもよい。開示は、BC-TTMを合成する他の非限定的な方法をさらに提供する。
【0019】
1.2 分析方法
BC-TTM調製物は、当該技術分野において公知の方法により特徴付けおよび定量化され得る。フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)、クーロメトリー、X線結晶学、および他の分析方法がBC-TTMを特徴付けるために使用されてもよい。BC-TTMのモリブデン含有量は、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP-AES)または他の分析方法により決定されてもよい。BC-TTMは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析および定量化されてもよい。例えば、液体クロマトグラフィーは、242または301ナノメートルでの検出と共に逆相イオン対液体クロマトグラフィーを使用してエチレンジアミン四酢酸(EDTA)複合体としてモリブデンイオンに対して行われ得る。本開示は、当該技術分野において公知の分析方法の任意の形態を包含する。
【0020】
1.3 BC-TTMの固体状態の特徴付け
本開示の一部の態様では、BC-TTMは、X線粉末回折(XRPD)、低角度光散乱(LALLS)、ブルナウアー-エメット-テラー(BET)法による比表面積の決定、または走査電子顕微鏡法(SEM)により特徴付けられる。本開示は、当該技術分野において公知の固体状態の特徴付けの任意の形態を包含する。詳細な方法は以下の実施例において提供される。
【0021】
2.1 ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の結晶性粒子
本明細書において使用される場合、BC-TTMの「結晶性粒子」は、任意の多形体の結晶状態のBC-TTMから本質的になる販売されている(sold)粒子を意味する。「結晶性粒子」の組成物は、様々な量の非晶性BC-TTMの他に、他の構成要素を含有してもよく、本明細書において使用される場合、「結晶性粒子」の特徴の記載は、非晶性BC-TTMおよび存在する任意の不純物を含む全体としての組成物の特徴付けを指す。BC-TTMの結晶性粒子は、90%もしくはより多く、95%もしくはより多く、または99%もしくはより多くの重量のBC-TTMを含有してもよく、そのような結晶性粒子中のBC-TTMの50%、60%、70%、80%、95%、または99%より多くは結晶形態にあってもよく、BC-TTMの残りの部分は1つまたは複数の非晶性形態にあってもよい。結晶性粒子は、塊状化していてもよく、塊状化していなくてもよく、または懸濁状態で提供されてもよい。
【0022】
2.2 結晶性粒子の製造方法
BC-TTMの結晶性粒子は、BC-TTMの溶液からの結晶の自発的な形成、または別の溶媒のBC-TTMの水性溶液への添加により誘発される(by be triggered)結晶化により形成されてもよい。BC-TTMの結晶化(crystalline)を引き起こすための適切な溶媒としては、エタノール、メタノール、およびイソプロパノールが挙げられるが、他の溶媒もまた適切であり得ることが理解される。
【0023】
結晶性粒子は、本明細書および以下の実施例において開示される任意の方法により製造されてもよい。一部の場合には、結晶性粒子は、以下の方法Aまたは方法Bまたは方法C、またはその任意のバリエーションにより製造される。以下の記載は非限定的なものであり、特定の方法ステップまたは変量の開示は、本開示により提供される例示的な実施形態を考慮して類似の結果を達成するために他のオプションが可能でないことを示唆することは意図されない。
【0024】
2.2.1 方法A
ある特定の実施形態では、結晶性粒子は、テトラチオモリブデン酸塩の水性溶液を<5℃に冷却し、溶液を<5℃において維持する速度で水酸化コリン溶液を加え、約30℃に加熱し、溶液を研磨濾過および約20℃に冷却し、エタノールまたはイソプロパノールを緩徐に加え、30分以上撹拌し、濾過により結晶性粒子を単離し、冷エタノールまたはイソプロパノールを用いて2回洗浄し、真空下25℃において結晶性粒子を乾燥することにより得られる。ある特定の実施形態では、真空が加熱後に適用される。
【0025】
2.2.2 方法B
さらに他の実施形態では、結晶性粒子は、反応容器中の予備冷却された水(15±5℃)にテトラチオモリブデン酸アンモニウム(1当量)を加え、水酸化コリン(水性、45%(w/w)、3.5~6.9当量)を加え、穏やかに加熱し(30±5°)、反応容器の圧力を低減し、≦7.5のpHが達成されるまでモニターした後、研磨濾過し、温度を周囲温度(20±5℃)に調整し、30分~1時間にわたりエタノールまたはイソプロパノールを加え、結果として生じたスラリーを冷却し(15±5℃)、フィルター上で結果として生じた結晶性粒子を単離し、エタノールまたはイソプロパノールを用いて残留物を洗浄した後、減圧下25±5°において乾燥し、円錐形スクリーンミルを使用してふるい分けすることにより得られる。乾燥の前に、結晶性残留物を水中に再溶解し、エタノールまたはイソプロパノールの添加により再結晶化させ、濾過し、エタノールまたはイソプロパノールにより再び洗浄することもできる。
【0026】
2.2.3 方法C
いっそうさらなる実施形態では、結晶性粒子は、反応容器中の予備冷却された水(15±5℃)にテトラチオモリブデン酸アンモニウム(1当量)を加え、容器に水酸化コリン(水性、45%(w/w)、3.5~6.9当量)を加え、圧力を低減しながら結果として生じた混合物を加熱(30±5°)することにより得られる。反応の進行は、湿潤pHスティックを使用して1時間毎にストリームから反応容器中に発生するアンモニアを測定することによりモニターされ得る。反応の進行につれてpHは減少し、≦7.5のpHは反応が完了したことを指し示す。反応の間の水損失が測定され、圧力が正常化された後に反応の終了時に水を添加することにより補填される。最終の反応混合物は次に研磨濾過され、結果として生じた溶液は35~50℃の温度に調整される。粗生成物を結晶化させるためにエタノールまたはイソプロパノールがチャージされ、スラリーは次に冷却(15±5℃)され、混合物は熟成される。結晶性粒子はフィルター上に単離され、エタノールまたはイソプロパノールを用いて2回洗浄される。単離された湿潤結晶性粒子は次に水中に再溶解され、結果として生じた溶液は研磨濾過され、35~50℃に調整される。生成物を結晶化させるためにエタノールは少なくとも2hにわたりチャージされ、スラリーは次に冷却(15±5℃)され、混合物は熟成される。結晶性粒子は濾過により単離され、エタノールまたはイソプロパノールを用いて2回洗浄される。結晶性粒子は次に、任意選択的に圧力下で、一定重量まで乾燥され得、結果として生じた乾燥固体は粉砕される。粉砕は、以下に限定されないが円錐形スクリーンミルを通じたふるい分けなどの当該技術分野において好適な任意の方法により行われてもよい。
【0027】
一部の場合には、BC-TTMの結晶性粒子は、BM-TTMの溶液を約35℃~50℃に加熱し、少なくとも1時間にわたりBC-TTMの溶液にエタノールまたはイソプロパノールを徐々に加え、BC-TTMの溶液を約10℃および25℃に冷却して固体BC-TTMを製造し、固体BC-TTMを濾過し、減圧下約20℃~30℃において固体BC-TMMを乾燥することにより製造される。結果として生じる固体は次に、上記のように粉砕されてもよい。
【0028】
加熱ステップは、30~40℃、40~50℃、30~35℃、35~40℃、40~45℃、または45~50℃において行われ得る。一部の場合には、加熱ステップは、3
5℃よりわずかに低いまたは50℃よりわずかに高い温度において行われてもよい。乾燥ステップは、20~30℃、20~25℃、または25~30℃において行われ得る。一部の場合には、加熱ステップは40℃~45℃において行われ、冷却ステップは15℃において行われ、かつ、乾燥ステップは25℃において行われる。
【0029】
エタノールまたはイソプロパノールの徐々の添加は、純粋なエタノール溶液または最高で5%、10%、もしくは15%の水を含有する(contained)エタノール溶液を用いて行われてもよい。それは、純粋なイソプロパノールまたは最高で5%、10%、もしくは15%の水を含有するイソプロパノール溶液を用いて行われてもよい。ある程度の水を含んでもよいエタノールとイソプロパノールとの混合物もまた、製造方法のこのステップのために使用され得る。
【0030】
2.3 結晶性粒子の特徴の非限定的な記載
一部の場合には、BC-TTMの結晶性粒子は、10、15、20、25、または30μm未満の粒子サイズの10パーセンタイル(D10)を有してもよい。
【0031】
一部の場合には、BC-TTMの結晶性粒子は、少なくとも25、30、35、40、45、50、55 60、65、70、75、80、85、または90μm、またはそれらの値の間の任意の数、例えば、少なくとも30、31、32、33、34、35、36、37、38、49、または40μmの粒子サイズの50パーセンタイル(D50)を有してもよい。一部の場合には、D50は、30~90μm、30~70μm、または30~60μmであってもよい。一部の場合には、D50は、30~35、32~37、35~40、37~42、40~45、42~47、45~50、47~52、47~55、50~55、50~60、50~65、または50~70μmであってもよい。
【0032】
一部の場合には、BC-TTMの結晶性粒子は、少なくとも60、70、80、90、または100μmの粒子サイズの90パーセンタイル(D90)を有してもよい。一部の場合には、D90は、少なくとも400、420、440、460、480、または500μmである。一部の場合には、D90は、少なくとも75、80、85、90、95、または100μmである。一部の場合には、D90は、60~550μm、または400~550μm、または75~135μm、または75~100であってもよい。他の場合には、D90は、70~80、70~75、70~80、70~90、75~80、75~85、75~90、75~95、80~85、80~90、80~95、80~100、85~90、85~95、85~100、90~95、または90~100μmであってもよい。
【0033】
ある特定の実施形態では、BC-TTM粒子は、上記のようなD50およびD90の粒子サイズを有してもよい。一部の場合には、D50が30~90μm、35~80μm、または40~60μmであり、かつ、D90が75~120μm、80~110μm、または85~105μmであるBC-TTMの結晶性粒子を製造することが有利である。
【0034】
90対D50比がある特定の範囲内であるBC-TTMの結晶性粒子を製造することもまた有利なことがある。本明細書において使用される場合、D90対D50比は、D50値に対するD90値の比を指す。非限定的な例として、D90が75μmかつD50が50μmの場合、D90対D50比は1.5(75:50)となる。一部の場合には、D90対D50比は1.3~3、またはそれらの値の間の任意の比である。一部の場合には、D90対D50比は、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、または3である。
【0035】
一部の場合には、比表面積(SSA)が測定され、SSAが0.25平方メートル/グラム(m/g)未満、または0.4m/g未満、または.7m/g未満となるように制御される(control)。一部の場合には、SSAは、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、または0.4m/g未満である。一部の場合には、SSAは、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、または0.3m/g未満(less)である。
【0036】
一部の場合には、100μmより大きいサイズの粒子のパーセンテージは、20%、30%、40%、または50%未満である。一部の場合には、100μmより大きいサイズの粒子のパーセンテージは、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、または45%未満である。一部の場合には、2μm未満のサイズの粒子のパーセンテージは、1%、2%、3%、4%、5%、6%、または7%未満である。
【0037】
本開示の任意の組成物において、結晶性粒子の組成物は、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0.5%未満、特に6%未満もしくは6%に等しい総不純物(図1に示す、TM1、TM2、TM3、Mo 2-およびMo2-のビス-コリン塩の質量パーセンテージの合計として定義される)を含んでもよい。一部の場合には、Mo 2-のビス-コリン塩の質量パーセンテージは、2%、1.75%、1.5%、1.25%、1%、1.75%、0.5%、または0.25%未満である。一部の場合には、Mo2-の質量パーセンテージは、2%、1.75%、1.5%、1.25%、1%、1.75%、0.5%、または0.25%未満である。そのような不純物は、結晶化もしくは錠剤化の直後、または、0℃未満、4℃未満、周囲温度、30℃、35℃、40℃、もしくはより高い温度での組成物もしくは錠剤の貯蔵後に存在し、測定されてもよい。測定前の貯蔵の長さは、1日程度の短さまたは3年程度の長さであってもよい。不純物はまた、結晶性組成物または錠剤が、40℃および75パーセントの相対湿度における3~6日間の貯蔵などの、加速条件下で貯蔵された後に前記組成物または錠剤のいずれかにおいて測定され得る。
【0038】
2.4 ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の固体単位投与形態
BC-TTMの結晶性粒子は、Remington:The Science and
Practice of Pharmacy,2lst ed.(2006)において記載されるような、様々な固体投与形態において配合されてもよい。ある特定の実施形態では、結晶性BC-TTMは、錠剤またはカプセルに製造される。ある特定の実施形態では、粒子は、以下に限定されないが界面活性剤、ポリマー、電解質、および非電解質、およびその混合物などの、1つまたは複数の賦形剤または安定化剤の存在下でサイズを低減され得る。代替的に、粒子は、サイズを低減された後に1つまたは複数の賦形剤または安定化剤と接触させられ得る。本開示の粒子は、薬物物質を液体分散媒体に分散させるステップ、および摩砕媒体の存在下で機械的手段を適用して薬物物質の粒子サイズを所望のサイズまで低減するステップを含む方法において調製され得る。錠剤は、コーティングされてもよく、またはプレコーティングおよび次に追加のコートを用いてコーティングされてもよい。コーティングは、腸溶性コーティングまたは制御放出コーティングであってもよい。ある特定の実施形態では、固体単位投与形態は、BC-TTM、および任意選択的に好適な賦形剤を含むカプセルである。カプセルは、以下に限定されないがゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのハードシェルカプセルであってもよい。
【0039】
2.5 治療方法
本開示はまた、BC-TTMの結晶性粒子またはそのような粒子の固体単位投与形態を投与することによりそれを必要とする患者においてウィルソン病を治療することを想定す
る。特に、本開示は、本明細書に開示される粒子サイズ、安定性、および不純物レベルを有する結晶性粒子の形態の1日当たり15~90mgのBC-TTMまたは2日毎の15mgのBC-TTMを投与することに関する。ウィルソン病の治療の例示的な方法は、例えば、PCT/EP2018/083551およびその優先権書類(全体が本明細書に組み込まれる)において提供される。がん、異常な血管新生、および他の状態のためにテトラチオモリブデン酸塩化合物を使用するさらなる方法は、米国特許第6,703,050号明細書および同第6,855,340号明細書、ならびに米国特許出願公開第US2004/0019043号明細書により提供される。本開示は、本開示の組成物または固体単位投与形態のいずれかを用いるがんおよび様々なCu蓄積障害のいずれかの治療を想定する。
【0040】
3.定義
本明細書において使用される場合、「スケール」という用語は、BC-TTMの合成方法のキログラム(kg)でのおおよその収量を指す。「バッチ」は、BC-TTMの合成方法の結果としてもたらされる、任意の不純物を含むBC-TTM材料を指す。
【0041】
本明細書において使用される場合、「Dx(10)/μm」という用語は、マイクロメートル(μm)で測定される粒子サイズの10パーセンタイル(D10)を指す。本明細書において使用される場合、「Dx(50)/μm」または「メジアン粒子サイズ」という用語は、50パーセンタイル粒子サイズ(D50)を指す。本明細書において使用される場合、「Dx(90)/μm」という用語は、粒子サイズの90パーセンタイル(D90)を指す。
【0042】
本明細書において使用される場合、「<2μm(%)」という用語は、2μm未満の粒子のパーセンテージ(%)を指す。本明細書において使用される場合、「>100μm(%)」という用語は、100μmより大きい粒子のパーセンテージ(%)を指す。本明細書において使用される場合、粒子のパーセンテージは、粒子の集団、または数に基づくパーセンテージを指す。
【0043】
本明細書において使用される場合、「SSA(m/g)」という用語は、平方メートル(m)/グラム(g)で測定される比表面積(SSA)を指す。SSAは、実施例4に記載する方法にしたがってBETにより測定された。BETのための他の方法またはSSAの分析決定のための他の方法が使用されてもよく、同等の結果を与える。
【0044】
本明細書において使用される場合、「WTX101」という用語は、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩を指し、BC-TTMと略記される。
【0045】
本開示において、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲、または整数範囲は、他に指し示さなければ、記載される範囲内の任意の整数の値、および適切な場合、その小数(例えば、整数の10分の1および100分の1)を含むことが理解される。
【0046】
本開示において、「約」という用語は、数または数値の直前にある場合、その数または数値はプラスまたはマイナス10%の範囲に及ぶことを意味する。
【0047】
本開示において、本明細書において使用される「a」および「an」という用語は、他に指し示さなければ、列挙された成分の「1つまたは複数」を指す。選択肢(例えば、「または」)の使用は、選択肢の1つ、両方、またはその任意の組合せのいずれかを意味することが理解されるべきである。「および/または」という用語は、選択肢の1つ、または両方を意味することが理解されるべきである。
【0048】
本明細書において使用される場合、「含む」(include)および「含む」(comprise)という用語は同義に使用される。
【0049】
本明細書において記載される全ての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が参照することにより組み込まれることを特におよび個々に指し示されたかのように参照することにより全体が本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、本明細書における任意の定義を含めて、本出願が優先される。しかしながら、本明細書において参照される任意の参考文献、論文、刊行物、特許、特許出願公開、および特許出願への言及は、それらが世界の任意の国において有効な先行技術を構成することまたは技術常識の部分を形成することの承認、または任意の形態の示唆ではなく、そのように解釈されるべきではない。
【0050】
本明細書において使用されるセクションの見出しは、編集上の目的のものに過ぎず、記載される主題を限定するものとして解されるべきではない。
【0051】
本開示を以下の実施例においてさらに記載し、該実施例は、記載されるおよび請求項において主張される本発明の範囲を限定しない。
【実施例0052】
実施例1:バッチA-lおよびA-2の合成
出発材料テトラチオモリブデン酸アンモニウム(ATTM)を水に分散させ、結果として生じた溶液を<5℃に冷却した。水酸化コリン溶液を次に、<5℃に溶液を維持する速度においてチャージした。水酸化コリンのチャージの完了後に溶液を得た後、それを約30℃に加熱した。真空を印加してアンモニアを放出させ、反応混合物から除去した。湿潤pHスティックを用いて排出蒸気のpHをチェックすることにより反応をモニターした。
【0053】
反応が完了した後に、溶液を研磨濾過し、約20℃に冷却した。エタノールを緩徐に加えて温度の増加を回避し、エタノールの添加によりBC-TTMの結晶化を開始させた。エタノール添加の完了後に、溶液を少なくとも30分間撹拌した。粗結晶性粒子を濾過により単離し、冷エタノールを用いて2回洗浄した。粗結晶性粒子を真空下25℃において乾燥した。典型的な収率は3~12kgのバッチについて約80~90%であった。
【0054】
記載した方法にしたがって合成方法を追加の回数行った。結果として生じた結晶性粒子の2バッチにそれぞれ識別記号A-lおよびA-2を割り当て、それを本開示を通じてこれらのバッチを同定するために使用する。
【0055】
実施例2:バッチB-1、B-2、B-3、B-4の合成
テトラチオモリブデン酸アンモニウム(1当量)を反応容器中の予備冷却された水(15±5℃)に加えた。水酸化コリン(水性、45%(w/w)、3.5~6.9当量)を次に加え、結果として生じた混合物を穏やかに加熱(30±5°)し、反応容器中の圧力を真空ポンプを使用して低減させた。湿潤pHスティックを使用して1時間毎に1回ストリームから反応容器中に発生するアンモニアを測定することにより反応の進行をモニターした。反応の進行につれてpHは減少した。≦7.5のpHは反応が完了したことを指し示した。
【0056】
反応の間に、水の一部は圧力の低減に起因して蒸発した。この水損失を測定し、圧力を正常化した後に反応の終了時に水の添加により補填した。最終の反応混合物を次に研磨濾過し、結果として生じた溶液を周囲温度(20±5℃)に調整した。エタノールを30分~lhにわたりチャージして粗生成物を結晶化させ、スラリーを次に冷却(15±5℃)し、混合物を熟成させた。粗結晶性粒子をフィルター上に単離し、エタノールを用いて2回洗浄した。
【0057】
単離した湿潤粗結晶性粒子を次に水に再溶解し、結果として生じた溶液を研磨濾過し、周囲温度(20±5℃)に調整した。エタノールを30分~1時間にわたり加えて生成物を結晶化させ、スラリーを次に冷却(15±5℃)し、混合物を熟成させた。結晶性粒子をフィルター上に単離し、エタノールを用いて2回洗浄した。
【0058】
結果として生じた結晶性粒子をフィルターから外し、プラスチックホイルで覆った金属プレートに置き、乾燥キャビネット中で一定重量まで減圧下25±5°において乾燥した。乾燥固体を次に円錐形スクリーンミルを使用してふるい分けした後にプラスチックバッグに詰めた。プラスチックバッグをケーブルタイを用いて密封し、各バッグを乾燥剤バッグと共により大きいアルミニウムバッグの内側に置いた。アルミニウムバッグをヒートシールし、<-18℃において貯蔵した。
【0059】
記載した方法にしたがって合成方法を追加の3回行った。結果として生じた結晶性粒子の4バッチにそれぞれ識別記号B-1、B-2、B-3、およびB-4を割り当て、それを本開示を通じてこれらのバッチを同定するために使用する。
【0060】
実施例3:バッチC-1の合成
テトラチオモリブデン酸アンモニウム(1当量)を反応容器中の予備冷却された水(15±5℃)に加えた。水酸化コリン(水性、45%(w/w)、3.5~6.9当量)を次に加え、結果として生じた混合物を穏やかに加熱(30±5°)し、反応容器中の圧力を真空ポンプを使用して低減させた。湿潤pHスティックを使用して1時間毎に1回ストリームから反応容器中に発生するアンモニアを測定することにより反応の進行をモニターした。反応の進行につれてpHは減少した。≦7.5のpHは反応が完了したことを指し示した。
【0061】
反応の間に、水の一部は圧力の低減に起因して蒸発した。この水損失を測定し、圧力を正常化した後に反応の終了時に水の添加により補填した。最終の反応混合物を次に研磨濾過し、結果として生じた溶液を45±3℃の温度に調整した。エタノールをチャージして粗生成物を結晶化させ、スラリーを次に冷却(15±5℃)し、混合物を熟成させた。結晶性粒子をフィルター上に単離し、エタノールを用いて2回洗浄した。
【0062】
単離した湿潤結晶性粒子を次に水に再溶解し、結果として生じた溶液を研磨濾過し、45±3℃に調整した。エタノールを2.5時間にわたりチャージして生成物を結晶化させ、スラリーを次に冷却(15±5℃)し、混合物を熟成させた。結晶性粒子をフィルター上に単離し、エタノールを用いて2回洗浄した。
【0063】
結晶性粒子をフィルターから外し、プラスチックホイルで覆った金属プレートに置き、乾燥キャビネット中で一定重量まで減圧下25±5°において乾燥した。乾燥固体を次に円錐形スクリーンミルを使用してふるい分けした後にプラスチックバッグに詰めた。プラスチックバッグをケーブルタイを用いて密封し、各バッグを乾燥剤バッグと共により大きいアルミニウムバッグの内側に置いた。アルミニウムバッグをヒートシールし、<-18℃において貯蔵した。
【0064】
結果として生じた結晶性粒子のバッチに識別記号C-1を割り当て、それを本開示を通じてこのバッチを同定するために使用する。追加のバッチをこの方法により製造し、識別記号C-2およびC-3を割り当てた。
【0065】
実施例5:結晶化度
Cu-アノード(45kV/40mA)、Kα-lモノクロメーターおよびケイ素ベー
スの位置感受性1D検出器(Malvern Panalytical、X’celerator(商標))を使用してX線粉末回折(XRPD)により結晶化度を分析した。2シータ範囲は、0.02°/sの走査速度および0.017°のステップサイズを使用して2~35°であった。スロースピニング試料ホルダーを使用した。各バッチから得た試料を逐次的に分析した。各試料をテフロン棒を使用して塗り付け、ケイ素(Si)のゼロバックグラウンドウェーハ上に平坦な粉末化表面を作った。プログラム可能な入射発散スリットを使用して測定を行った。
【0066】
Panalytical HighScore Plus(商標)ソフトウェアを使用して結晶化度を評価した(The HighScore suite; T.Degen,M.Sadki,E.Bron,U.Konig,G.Nenert; Powder
Diffraction,Volume 29,Supplement S2,December 2014,pp S13-S18)。この方法は以下のステップに基づく:1)試料の結晶性部分からのシグナルの正味面積の算出。この面積は「AREAcryst」として定義される。2)正味総面積、すなわち、非晶性「ハンプ」(humps)からの面積とステップ1からの正味ピーク面積との和の算出。この面積は「AREAtotal」として定義される。上記の面積の算出において、空の試料ホルダーについて収集したデータを使用することによりバックグラウンドの自動的な補正を行う。3)試料の結晶化度のパーセントを(AREAcryst/AREAtotal)×100として算出する。
【0067】
各バッチについてのXRPD結晶化度の結果を表1に報告する。
【表1】
【0068】
実施例4:粒子サイズ分布および比表面積
小体積自動化液体試料分散ユニット(Malvern、Hydro MV(商標))を有する300mm逆フーリエレンズを備えた商用のレーザー粒子サイズ分析機器(Malvern Instruments Ltd.Mastersizer 3000(商標))でのLALLSにより粒子サイズ分布(PSD)を分析した。試料分散媒体はパラフィン油であった。各バッチから得た試料を逐次的に分析した。各試料を小体積試料分散ユニットに直接的に導入して撹拌のみでの影響下の分解を研究した。その後に超音波処理を60秒の低出力(20%)において適用した。安定な読取りが得られるまでこれを繰り返した。
【0069】
以下の設定を使用してPSD測定を行った:バックグラウンド測定時間、20秒(s);試料測定時間、20s;分散剤屈折率、1.45;粒子屈折率、N/A(フラウンホーファー)、吸収、N/A(フラウンホーファー);撹拌器速度、2500rpm;分析モデル:汎用。
【0070】
表面積分析機(Micromeritics Instrument Corp.のG
emini 2375(商標))でのBETにより比表面積(SSA)を分析した。各バッチから得た試料を逐次的に分析した。各試料をガラスチューブに充填し、外表面上のおよび材料中の潜在的なチャネルからの全てのゆるく結合した分子を除去するために連続的なN(g)流れ下で1h、30℃において「脱気」した。同時に、使用した液体窒素についての飽和圧力を決定した。脱気試料を計量した後に、脱気試料を-196℃(液体窒素の沸点)において測定位置に挿入し、真空化した後、吸着モード下でほぼ0から1近くまでの全範囲を基本的にカバーする分圧の範囲に曝露した。より低い圧力をSSA決定のために使用した。より高い圧力を潜在的な微小孔決定のために使用した。窒素の正しい量を物質に帰するために、窒素吸着前にヘリウム気体を用いてチューブ中の遊離体積を測定した。吸着層の適切な厚さの値(吸収が微小孔中でこれ以上起こらない上限点)をt-プロットから決定した後に、これを使用して、吸着した窒素分子を潜在的な孔様構造(「微小孔体積」)への吸収または実際の外表面への吸着のいずれかに分離することにより算出を補正した。
【0071】
各バッチのPSDおよびSSA測定値を表2に報告する。
【表2】
【0072】
実施例5:顕微鏡画像
スパッタコーター(Cressington Scientific Instruments、Cressington 208A(商標))および電子顕微鏡(Tescan(登録商標) Mira 3(商標))を使用して走査電子顕微鏡(SEM)により顕微鏡画像を取得した。スパッタのパラメーターは40mAおよびl5nmであった。イメージングモードは後方散乱および二次電子イメージングであった。試料条件は5kV、WD:10mm、X27-X7000であった。バッチから得た試料を逐次的に分析した。各試料をSEM試料ホルダースタブ上の粘着性カーボンテープに広げた。試料を次にスパッタコーティングチャンバー中で白金/パラジウム(Pt/Pd)のl5nmの層によりコーティングして導電面を生成した。試料を異なるレベルの倍率においてSEMを用いて調べることにより粒子および塊状化の形態の概要ならびに一次粒子の表面構造の詳細な像の両方を得た。
【0073】
代表的なSEM画像を図2~7に示す。
実施例6:錠剤化
錠剤を結晶性粒子から調製した。バッチB-lおよびC-lを以下のように逐次的に錠剤化した。各バッチからの結晶性粒子を乾燥粉末ブレンド物中の賦形剤と個々に配合した後に乾燥顆粒化を行った。顆粒を直接圧縮により錠剤化した後、錠剤コアのコーティングを行った。コーティングは、プレコートおよびその後の腸溶性コートからなるものであっ
た。錠剤を熱成形ブリスターパッケージに包装した。
【0074】
実施例7:純度分析
242または301nmに設定した吸光度検出器と共にAgilent(登録商標)1100シリーズHPLCシステムおよび逆相カラム(Aquasil Cl 8、4.6×250mm、5μm)を25°で使用して逆相高速液体クロマトグラフィー(HLPC)により純度を分析した。モリブデン酸二ナトリウム二水和物またはビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩を参照標準物質として使用した。試料溶液中のBC-TTMおよび不純物の量を回帰直線および試料クロマトグラムにおける標準ピークの面積により決定した。観察されたクロマトグラムピークの素性を表3に開示する。不純物の化学構造を図1に開示する。
【表3】
【0075】
40℃および75%の相対湿度での3日にわたる強制的な分解後に安定性分析を結晶性粒子に対して行った。結果を表4に示す。
【表4】
【0076】
バッチB-lおよびC-lの結晶性粒子から製造した15mgの錠剤に対して分析を行った。結果を表5に示す。
【表5】
【0077】
実施例8:貯蔵安定性分析
ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の安定性についての粒子サイズの影響力は、2~8℃の制御条件における長期貯蔵からのデータにより例示された。分解速度は、より大きい粒子を有しかつ開示される方法により製造されたロットC-1についてよりも、全体的により小さい粒子サイズを有するロットB-lについて有意に高かった(図8;表6)。
【表6】
【0078】
実施例9:方法のバリエーションの影響力
結晶化の間の温度、エタノールチャージング時間および撹拌/物質移動のバリエーションが単離される粒子サイズ、不純物レベル、およびビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の収率にどのように影響するかを調べるために方法Cの結晶化条件をさらに調べた(表7)。表7の実施例1~7および9において、5gの粗WTX101を17mLの精製水に溶解した。各混合物を次に研磨濾過用の一連の0.45および0.22μm HPLCフィルターを介して250mLの実験室用反応器に移し、2×1mLの水をすすぎのために使用した(加えた水の総量:19mL;これは80/20のエタノール/水の最終比について76mLのエタノール量を与える)。ジャケット温度(35℃、45℃、50℃または55℃)を訂正するための混合物の加熱後に、エタノール(76mL)を1、2.5または4時間チャージした。50mLプラスチックシリンジに接続されたシリンジポンプをチャージングのために使用した。直線の冷却プロファイルを次に適用し、全ての実施例を0.333℃/分の速度で15℃まで冷却した。全ての混合物を15℃においてさらに10分間撹拌した後、P3ガラスフィルター漏斗において固体を単離した。実施例8において、上記と同じ条件を使用したが実験室用反応器の撹拌器の速度を2倍にした。実施例10において、上記と同じ条件を使用したが、実験室用反応器における物質移動を増加させる異なる種類の撹拌器を使用した。
【表7】
【0079】
単離された収率およびアッセイは全ての実験について類似しており、それぞれ89~94%および99.4~100.0%の範囲に及んだ。
【0080】
本出願の全体を通じて参照される全ての文献、特許、特許出願、刊行物、製品説明、およびプロトコールは参照することにより全体が全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0081】
本明細書において説明および議論される実施形態は、本発明を製造および使用するために本発明者らが知っている最良の方法を当業者に教示することのみを意図する。上記の教示に照らして当業者により理解されるように、本発明の上記の実施形態の改変およびバリエーションが本発明から離れることなく可能である。したがって、請求項およびその均等物の範囲内において、本発明は、特に記載した以外に実施されてもよいことが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも30μmの粒子サイズの50パーセンタイル(D50)を有する、ビス-コリンテトラチオモリブデン酸塩の結晶性粒子。