(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023279
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】抗生物質を使用した良性前立腺過形成の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240214BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240214BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/18 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/7036 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/546 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/431 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/65 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/43 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/4164 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/665 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/5383 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/4178 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/635 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P13/08
A61P43/00 121
A61K38/10
A61K31/18
A61K31/58
A61K31/517
A61K31/4985
A61K31/404
A61K31/7048
A61K31/7036
A61K31/546
A61K31/431
A61K31/65
A61K31/365
A61K31/43
A61K31/407
A61K31/4164
A61K31/496
A61K31/4375
A61K31/665
A61K31/5383
A61K31/437
A61K31/4709
A61K31/4178
A61K31/505
A61K31/635
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023192239
(22)【出願日】2023-11-10
(62)【分割の表示】P 2020543888の分割
【原出願日】2019-03-27
(31)【優先権主張番号】15/938,920
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517433430
【氏名又は名称】ナイモックス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NYMOX CORPORATION
【住所又は居所原語表記】777 Terrace Avenue Hasbrouck Heights,New Jersey 07604 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】アヴァーバック, ポール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】1つ以上の抗生物質を含有する組成物を使用して、BPHに罹患している哺乳動物の症状を改善する方法を提供する。
【解決手段】方法は、少なくとも1つの抗生物質を1コース以上単体でまたは担体と共に、筋肉内、経口、静脈内、髄腔内、腫瘍内、鼻腔内、局所および経皮からなる群から選択されるルートで、必要とする哺乳動物に投与する段階を備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BPHに罹患している哺乳動物の症状を改善する方法であって、
1つまたは複数の抗生物質を治療有効量含有する組成物を前記哺乳動物に投与する段階を備える方法。
【請求項2】
前記方法は、少なくとも2つの異なる抗生物質を治療有効量投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗生物質は、エリスロマイシン、キタサマイシン、ストレプトマイシン、セファロチン、セファゾリン、テトラサイクリン、グラミシジン、グリセオフルビン、ゲンタマイシン、ノボビオシン、アンピシリン、イミペネム、メトロニダゾール、セフトリアキソン、セファレキシン、シプロフロキサシン、ゲミフロキサシン、ホスホマイシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、ニトロフラントイン、オフロキサシン、トリメトプリム/スルファメトキサキソール、ならびに、これらの誘導体および塩からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗生物質は、アンピシリン、ゲンタマイシン、イミペネム、セファロチン、メトロニダゾール、シプロフロキサシン、ゲミフロキサシン、ホスホマイシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、ニトロフラントインおよびオフロキサシンからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
フルオロキノロン系抗生物質の1コースの投与、メトロニダゾールの1コースの投与、ならびに、イメペネム、ゲンタマイシンおよびセファロチンから選択される1つの抗生物質の筋肉内注射により、前記抗生物質の投与が行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記フルオロキノロン系抗生物質は、シプロフロキサシン、ゲミフロキサシン、ホスホマイシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシンおよびオフロキサシンからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
1年以内に平均国際前立腺症状スコア(IPSS)をベースラインから5~7ポイント下げることにより、前記IPPSを改善する段階を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
BPHの経口治療薬による平均IPSSの平均改善と比較して、平均IPSSスコアが最初の1年で約30%~150%改善する段階を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プラセボを投与した対照群と比較して、平均IPSSスコアが最初の1年で約75%~500%改善する段階を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
42ヶ月以内に平均国際前立腺症状スコア(IPSS)をベースラインから4~5ポイント下げることにより、前記IPPSを改善する段階を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
BPHの経口治療薬による平均IPSSの平均改善と比較して、平均IPSSスコアが42ヶ月以内に約0%~200%改善する段階を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
プラセボを投与した対照群と比較して、平均IPSSスコアが42ヶ月以内に約75%~350%改善する段階を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
最初の1年で最大尿流量を約1.3~3.0ml/秒増加させることにより、尿ピーク
流量(Qmax)を改善する段階を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
プラセボを投与した対照群と比較して、最初の1年で尿ピーク流量(Qmax)を最初の1年で約100%~325%改善する段階を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
フェキサポチドトリフルタートおよび薬学的に許容される担体を投与する段階、を更に備える請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記フェキサポチドトリフルタートは、筋肉内、経口、静脈内、髄腔内、腫瘍内、鼻腔内、局所および経皮からなる群から選択されるルートで投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
タムスロシン、フィナステリド、テラゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、タダラフィル、アルフゾシン、シロドシン、デュタステリド、デュタステリドとタムスロシンとの組み合わせ、ならびにこれらの混合物および組み合わせからなる群から選択される医薬活性剤を投与する段階を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
タムスロシン、フィナステリド、テラゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、タダラフィル、アルフゾシン、シロドシン、デュタステリド、デュタステリドとタムスロシンとの組み合わせ、ならびにこれらの混合物および組み合わせからなる群から選択される医薬活性剤を投与する段階を更に備える、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許出願第15/938,920号(出願日:2018年3月28日)に基づく優先権を主張するものであり、この米国特許出願の開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願はASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる。当該ASCII形式の書面は、2018年5月15日に作成されたものであるが、ファイル名が063307-0458312_SL.txtであり、そのサイズは749バイトである。
【0003】
本実施形態は、少なくとも1つの抗生物質を含む組成物を使用して良性前立腺過形成を治療する方法に関する。他の実施形態は、少なくとも1つの抗生物質、小ペプチドを基本とする1つ以上の化合物および薬学的に使用可能なキャリアを含む組成物を使用して、良性前立腺過形成を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
良性前立腺過形成(BPH)は、組織学的診断では前立腺の平滑筋と上皮細胞の非悪性増殖を指す。Lee C他、「良性の前立腺の成長を制御する内因性および外因性の要因」、Prostate、1997年; 31:131-138; Auffenberg
GB他、「良性前立腺肥大症のための確立された医学療法」、Urol Clin North Am、2009年;36:443-459。正確な病因は不明である。BPHの進行により、(病理学的に)前立腺の大きさによって診断される良性の前立腺肥大(BPE)が発生する可能性がある。組織学的にBPHの男性の約50%がBPEを発症する。BPEは最終的には膀胱出口部閉塞(BOO)を引き起こす可能性があり、BPEに関連している場合は良性前立腺閉塞(BPO)とも称される。BOOおよびBPOは尿流動態測定によって診断される。
【0005】
BPHの発症は、男性の老化現象である。出生時および思春期の前立腺の重量は数グラムであり、アンドロゲン誘発性の成長を経て、20歳までに成人サイズの20gに達する。前立腺は通常、約25年間、重量および組織学的特徴は安定した状態を保つ。50歳代になると、多くの男性において2番目の急成長が始まる。この第2成長期は、細胞の局所的な増殖として腺の尿道周囲に発生する。成長と肥大が進行し、残りの正常な腺が圧迫され、腺の大きさが大幅に増加する結果、尿路や直腸の閉塞を引き起こす可能性がある。
【0006】
良性前立腺過形成(BPH)は下部尿路機能の障害に関連する。症状としては、排尿後の残尿感、頻尿、尿線途絶、尿意切迫感、尿勢低下、腹圧排尿、夜間頻尿等が含まれる。前立腺の状態の診断には、鑑別診断において考慮される全ての状態、例えば、癌、感染症、良性肥大等が含まれ、その評価を行うには、技術および病歴、身体診察、画像検査、臨床検査等のデータを用いた有資格の臨床医による検査並びに評価が必要であり、特に、尿流量等の特殊な検査、その他の機能検査、内視鏡検査、生検、治療介および薬物への臨床反応等の評価も行われ得る。
【0007】
前立腺炎の診断には、病歴と身体検査の慎重な検討、尿および前立腺分泌物の分析と培養、並びに、抗生物質の投与経過に対する治療反応が含まれる。前立腺炎の症状としては、非特異的な症状だけでなく、痛みという典型的な症状および炎症の兆候が含まれる。非特異的な症状には、尿意切迫感、頻尿、夜間頻尿、排尿障害等があり、これらはBPHに
も見られる。抗生物質と抗感染症薬は、BPHの承認された治療法とは見なされていない。
【0008】
BPHは、尿道壁内または尿道壁に隣接して存在する前立腺管および腺からなる内腺から発生すると考えられている。初期病変は通常、腺の構成要素が失われている緩い結合組織間質の小さな塊として構成される。しかしながら、結節が発生して成長するにつれて、腺組織が優勢になる。過形成プロセスが開始されると、正常な前立腺の全ての要素(間質、筋肉、腺)が様々な程度で進行性増殖に関与する。BPH患者のこれらの組織間の相対量を測定すると、線維筋組織の量が腺組織または上皮組織の量をはるかに超えることが示されている。線維筋性間質は、正常な前立腺では体積の約45%を構成するが、過形成腺では体積の約60%を占める。
【0009】
間質組織および腺(上皮)組織の肥大は、単独で生じるまたは併発することがある。結節の性質とその進行段階により、反応に変化が生じる。過形成性結節の腺は、新しい管と腺房を形成する能力を持っていると考えられる。間質性結節が大きなサイズに達することは稀であるが、臨床的に重要と考えられる肥大には、大きな腺状の組織が見られることが通常である。前立腺肥大は、しばしば腺器官の肥大にとして説明される。しかしながら、平滑筋も重要な要素である。前立腺被膜は、筋肉組織を高い割合で有する。
【0010】
良性前立腺肥大の主な症状は尿路閉塞である。尿道閉塞は、尿道の圧迫または伸長の結果として生じる。良性の結節性過形成のみであっても、尿道を物理的に閉塞したり、尿道括約筋への筋肉や神経が妨害されることによる尿路閉塞を引き起こす可能性がある。結節性過形成が生じる位置によって、閉塞性症状の進行速度と強度が異なる。前立腺嚢内に留まる大きな外側肥大よりも、影響が大きい位置に生じた小さな結節が閉塞を引き起こす可能性がある。前立腺肥大は尿道表面に拡張した静脈を伴う血管の成長であるため、血尿はBPHの一般的な症状である。その他の刺激性症状としては、頻尿や、尿意切迫感があげられる。前立腺肥大の最も深刻な合併症は、閉塞が上部尿路に及ぼす影響である。閉塞により、水腎症、重度の腎障害、致命的な尿毒症が引き起こされる可能性がある。
【0011】
現在、BPHの治療方法は複数あり、「第1章、良性前立腺肥過形成(BPH)の管理に関するガイドライン」、American Urological Association Education and Research、Inc.(2001);Oelke M他、European Association of Urology、Eur.Urol.2013年7月;64(1):118-40を参照されたい。ガイドラインには、症状を呈しているが投薬や外科的介入が必要ない男性に対する経過観察(WW)から、薬物治療、外科的介入までの様々な治療オプションについて説明がなされている。医学的治療が必要な場合は、α遮断薬またはアルファアドレナリン拮抗薬(例えば、アルフゾシン、ドキサゾシン、タムスロシン、テラゾシン、シロドシン)、5-α-レダクターゼ阻害剤5ARI(デュタステリド、フィナステリド)、抗ムスカリン薬(抗コリン薬)、PDE5阻害剤(タダラフィル)、およびこれらの組み合わせを使用することができる。低侵襲の治療法には、経尿道針アブレーション(TUNA)および経尿道マイクロ波温熱療法(TUMT)がある。侵襲性の外科手術には、開腹前立腺切除術、経尿道的ホルミウムレーザーアブレーション(HoLAP)またはレーザー除核術(HoLEP)、ホルミウムレーザー切除(HoLRP)、光選択式蒸散術(PVP)、前立腺の経尿道的切開(TUIP)、前立腺の経尿道的蒸散術(TUVP)、経尿道的前立腺切除術(TURP)がある。
【0012】
前立腺切除術は、BPHによる膀胱頸部閉塞を緩和するのに現在行われている治療である。外科的治療の目的は、腎不全、結石形成、感染症などの尿路閉塞の影響を低減させるまたは取り除くことである。そして、正常な間隔で制御された排尿および正常な性機能を
可能にすることにより、患者の生活の質(QOL)を改善することが望まれる。外科的前立腺切除術の適応には、次のような条件が含まれる。70歳未満の男性であること、腎臓は正常であること、膀胱の状態が良好であること、直腸検査において前立腺が顕著に肥大していることが確認されたこと、尿道閉塞と判定されたこと、4オンス以上の残尿、ならびに、頻尿、痛み、テネスムス、灼熱感、尿道熱の発作、精巣上体炎および血尿の症状。患者が重篤な症状を引き起こす膀胱頸部閉塞を有し、手術リスクが低い場合、通常、恥骨上、恥骨後、会陰または経尿道経路における閉塞性前立腺組織の除去が推奨される。
【0013】
開腹前立腺切除術の死亡率は異なる手法であっても基本的に同程度であり、死亡リスクは約1%前後である。TURPを受けた患者では、死亡リスクが低くなる。腎不全が認められた患者は、前立腺切除術のリスクが高いと見なされる。80歳以上の男性ではTURPの死亡率が増加することから、大きなリスクがあると言える。
【0014】
去勢がBPHを効果的に防ぐことはよく知られている。前立腺は、肥大であろうと正常であろうと、精巣摘除術後に萎縮し、腺管と管の残余物のみが存在する小さな線維性腫瘤に変化する。この手法は20年前まで行われていたが、閉塞組織の切除の方が有益であるとして行われなくなった。前立腺肥大を抑制しようとする試みの多くは、ホルモンステロイドの投与を中心としたものであり、これは、去勢により男性ホルモン刺激の主な原因が取り除かれたことにより症状が改善し前立腺サイズが減少したことに基づいている。特定の抗アンドロゲン療法は前立腺成長の抑制を目的とし、閉塞性尿路症状の発症を予防することによりまたは前立腺退縮および退縮を誘発することにより、閉塞症の症状を緩和することができる。
【0015】
アンドロゲン刺激を前立腺から取り除くことを目的とした取り組みは、黄体形成ホルモン(LH)のエストロゲン療法による抑制や抗アンドロゲン療法など、様々な手法がある。BPHのエストロゲン療法は、エストロゲンを適切な投与量で使用することで、テストステロンの血中濃度が低下することに基づいている。BPHを抑制することを目的とした医療的治療には、前立腺の成長を阻害するが有害な副作用を引き起こさない抗アンドロゲンの使用がある。抗アンドロゲン剤は、細胞受容体へのジヒドロテストステロンの結合を競合的に阻害し、男性のテストステロン濃度を去勢レベルまで下げることができる。ただし、抗アンドロゲン剤の投与を中止すると、過形成が再発する。したがって、この種の治療を受けている患者は、抗アンドロゲン療法の望ましくない副作用を伴う薬剤服用を生涯続けなければならない。この療法の一般的に報告されている副作用には、乳房肥大、乳首の圧痛、性欲の喪失、インポテンスおよびニキビがある。
【0016】
テストステロンは、5-α-レダクターゼの作用により前立腺でジヒドロテストステロンに変換されるプロホルモンである。そこで、酵素5-α-レダクターゼは、ジヒドロテストステロンのレベルを低下させる作用を有する自殺型阻害剤の標的として提案された。これは、良性の前立腺肥大を媒介することが知られている。ステロイドジアゾケトンは酵素5-α-レダクターゼに対する天然基質のユニークな類似体であり、ジアゾニウムアルキル化を通じて酵素の活性部位の中または近くに共有結合を形成することにより、酵素の触媒活性を阻害することが知られている。
【0017】
ケトコナゾールは、性腺および副腎のテストステロン産生を阻害する強力な阻害剤であることが知られているイミダゾール誘導体である。ケトコナゾールはLHの分泌については下垂体に影響を与えないようであるが、コレステロールの合成を阻害し、副腎および性腺のアンドロゲンレベルを臨床的に低下させる。毒性は低い。ケトコナゾールの投与により生じるホルモンの変化は、用量依存的で完全に可逆的である。性腺または副腎のステロイド産生を阻害することが有効である臨床条件において、薬が有用であることが示されている。ケトコナゾールは、テストステロン合成の強力な阻害剤であることが知られており
、BPHの管理において治療上の利点があるかもしれない。ケトコナゾール療法の潜在的な副作用には、性欲低下、インポテンス、女性化乳房、性腺機能低下症が含まれる。
【0018】
オルニチンデカルボキシラーゼは、ポリアミンであるプトレシン、スペルミジンおよびスペルミンの生合成に関与する酵素である。これらのポリアミンは、細胞の増長された成長および複製に関与していると考えられている。これらのポリアミンのレベルの上昇は、急速に増殖している前立腺および他の腺に見られる。DL-α-ジフルオロメチル-オルニチン(DFMO)等のオルニチンデカルボキシラーゼの強力な自殺阻害剤を合成すると、プトレシンとスペルミジンがその後枯渇することにより、前立腺のオルニチンデカルボキシラーゼのレベルが著しく低下することが知られている。動物では、オルニチンデカルボキシラーゼの自殺阻害剤であるDFMOを投与すると、前立腺の成長が阻害される。さらに、組織培養では、DFMOはDNA合成を阻害し、ヒト前立腺腺腫細胞の増殖を遅らせることが知られている。この化合物は前立腺腺腫の治療に応用できる可能性がある。
【0019】
BPHの医学的管理における外科的施術の代替となる療法としての試みには、性腺刺激ホルモンの脳下垂体放出を阻害することによりテストステロンの精巣産生を阻止する強力なLHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)アゴニストの使用がある。ヒトにおけるLHRHアゴニストの主要な効果として、血清テストステロンレベルを低下させる効果がある。ロイプロリドおよび酢酸ナファレリンは、男性のアンドロゲンおよびエストロゲンの血中濃度を3週間以内に去勢レベルまで低下させることが示されている。これらの化合物は、治療効果を有する用量で継続的に投与することにより下垂体を鈍化させ、性ステロイドホルモンの放出をブロックする。強力なLHRHアゴニストを使用することによりテストステロン抑制が達成され、閉塞性良性前立腺肥大症の治療に有効であることが示されている。アンドロゲン抑制は可逆的であり服用をやめれば過形成組織が再成長することから、この種の治療の欠点は、投薬を無期限に続ける必要があることである。さらに、副作用にはインポテンス、性欲低下、ほてりが含まれ、初期に閉塞性症状が増加する場合もある。
【0020】
非外科的手段によってBPHを予防または治療する他の取り組みとしては、α-1-アドレナリン遮断薬などの神経薬理学的薬剤の使用がある。プラゾシン、ハイトリン、フェントラミンおよびケタンセリンは、尿路括約筋の弛緩を目的とした抗アドレナリン作動薬である。α-アドレナリン遮断薬によるBPHの薬理学的治療は、外科的介入が必要ないまたは延期する必要がある前立腺過形成を患う多くの患者を支援する手段を提供している。様々なαアドレナリン遮断薬がBPHの治療に使用されており、フェノキシベンザミン(変異原性の可能性がある)、プラゾシン(ミニプレス)、フェントラミン(レギチン)、ニセルゴリン(セルミオン)、テラゾシン(ハイトリン)、チモキサミン等の化合物がある。副作用は、BPHのフェノキシベンザミンでの治療を行った患者の約30%に存在し、低血圧、めまい、失神、頻脈、脱力、逆行性射精または無射精等がある。治療が行われた全症例の約10%に、許容できない副作用が起き治療を中止する必要が生じる。プラゾシンとハイトリンは副作用が少ないと言われている。これらの薬剤の禁忌として、脳性低血圧または虚血が起こる可能性が挙げられる。フェントラミン等の速効性がある静脈内遮断薬は、特に高齢者のグループには注意して使用する必要がある。しかしながら、ニセルゴリンは脳血流に有益な効果があると考えられている。
【0021】
薬理学的なエビデンスとして、血清コレステロールの低下の後に、動物の前立腺サイズの減少が見られることが示されている。ポリエンマクロライドは、効果的で強力なコレステロール低下薬であることが知られている。ポリエンマクロライド類は、ステロールおよびステロール含有細胞膜に対して特定の物理化学的親和性を有する。動物実験における毒性試験によれば、ポリエンマクロライドは血清テストステロンレベルを低下させ、精巣機能を阻害し、前立腺組織学上の変化を誘発することが示されている。ポリエンマクロライ
ド抗真菌剤であるカンジシジンおよびアンフォテリシンBは、前立腺の体積を減少させることが示唆されているが、人体に対する臨床試験では、BPHによる閉塞性症状のために外科的介入を必要とする患者数の低減はみられなかった。米国特許第6,296,847号の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
過去40年間、この疾患を医学的に管理するために多くの試みがなされてきた。BPHに起因する症状を有する患者がしばしば診断機器のみによる診断を受けた後に、排尿症状の一時的な改善または緩和を経験する場合があり、これら試みの結果の解釈が複雑になっている。BPH治療の医薬品の有効性は、多くの場合、ベースラインからの国際前立腺症状スコア(IPSS)の平均改善に基づいて測定されている。報告された研究の多くは、医薬品の使用(単独または組み合わせ)によるIPSSの改善の平均が12か月以上の期間においてで約2ポイントから最大6ポイントの範囲内であること示している。Roehrborn他、「ベースライン変数が変化に及ぼす影響…」、GJUI Int、Vol.113、623-635ページ(2014年);ハッチソン他、「LUTS/BPHの治療における薬物の有効性、ヨーロッパ6か国での研究」、European Urology、Vol.51、pp207-216(2007)。FDA承認済の従来の経口BPH薬によるIPSSの平均改善の平均値は、約3~約5ポイントの範囲であると一般に知られている。
【0023】
ペプチドを基本とする薬剤のいくつかは破壊能力を有することが知られており、したがって、良性過形成前立腺細胞および組織等の有害なもしくは不要な細胞および組織の除去を促進するまたはさらなる増殖を阻害することができると考えられる。このような薬剤は、米国特許第6,924,266号、第7,241,738号、第7,317,077号、第7,408,021号、第7,745,572号、第8,067,378号、第8,293,703号、第8,569,446号および第8,716,247号広報、ならびに、米国特許出願公開第2017/0360885号、第2017/0020957号および第2016/0361380号明細書に開示されており、これらの開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。そのような薬剤の1つとしては、フェキサポチドトリフルタートが知られている。
【0024】
従来の薬物療法のリスクおよび副作用がなく、または、外科的介入なしにBPHの症状を改善できる治療法が必要とされている。
【0025】
関連技術の前述の説明を含めて、本明細書に記載されたすべての公に入手可能な文書(すべての米国特許および公開特許出願を含む)は、参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる。前述の関連技術の説明は、如何なる形であれ、係属中の米国特許出願を含む上記文書の何れかが本開示の先行技術であることを認めるものではない。更に、記載された製品、方法、および/または装置に関連する欠点についての本明細書における記載は、如何なるものであれ、実施形態を限定するものではない。実際、実施形態の態様は、記載された欠点による害を被ることなく、記載された製品、方法、および/または装置の特定の特徴を含んでもよい。
【発明の概要】
【0026】
BPHに苦しむ患者の生活の質を改善するべく、BPHに対する新規で毒性が少なく頻度の少ない(例えば、毎日または毎週薬を服用する必要性が回避される)治療法が求められている。
【0027】
本開示は、抗生物質を単独でまたはアミノ酸配列Ile-Asp-Gln-Gln-Val-Leu-Ser-Arg-Ile-Lys-Leu-Glu-Ile-Lys-Arg-Cys-Leu(SEQ ID NO:1)(フェキサポチドトリフルタート(F
exapotide Triflutate)または「FT」)で記述されるペプチドを含む特定のペプチドと組み合わせて投与した場合に、最初の一年は約4.0~8.0ポイントの範囲のIPSSの平均改善が見られ、BPHを治療できるという発見に一部基づく。
【0028】
この開示はまた、抗生物質を単独でまたはFTと組み合わせて投与することにより、BPHに罹患している男性の尿ピーク流量(Qmax)を改善するのに有効であるという発見に一部基づいている。Qmaxの平均改善は、約1.0から約4.0の範囲を得ることができる。
【0029】
抗生物質および必要に応じてFTは一緒にまたは別々に、エアロゾル、点滴、ボーラス注入法、埋め込み装置、徐放性製剤等によって、筋肉内、経口、静脈内、腹腔内、大脳内(柔組織内)、腫瘍内、病巣内、皮内、髄腔内、鼻腔内、眼内、動脈内、局所、経皮投与することができる。
【0030】
前述の一般的な説明および後述の詳細な説明は、例示的かつ説明的なものであり、特許請求される実施形態のさらなる説明を提供することが意図されている。他の目的、利点および特徴が、以下の各実施形態の詳細な説明から当業者に容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施形態を説明する前に、本発明は、説明されている特定の方法論、プロトコル、細胞株、ベクターおよび試薬に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用する用語は、専ら特定の実施形態を説明するためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の各実施形態の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0032】
本明細書で使用される用語および語句は、他に指示されない限り、以下に示すように定義される。本明細書を通して、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別の意味に規定される場合を除き、複数の指示対象への言及を含む。従って、例えば、「宿主細胞」への言及は、複数の宿主細胞を含み、「抗体」への言及は、1つまたは複数の抗体および当業者に知られているその均等物への言及である。
【0033】
本明細書で使用される「抗生物質」という用語は、抗生物質、防腐剤および殺菌・消毒剤を意味する。抗生物質の例としては、コハク酸エリスロマイシン、炭酸エチルエリスロマイシン、グルコヘプタン酸エリスロマイシン、ステアリン酸エリスロマイシン、ラウリル硫酸プロピオン酸エリスロマイシン、ラクトビオン酸エリスロマイシン、トリアセチルオレアンドマイシン、オレアンドマイシンリン酸塩、硫酸アミカシン、硫酸ベカナマイシン、アミノデオキシカナマイシン、カナマイシン一硫酸塩、トブラマイシン、アセチルキタサマイシン、キタサマイシン、コハク酸キタサマイシン、酒石酸塩キタサマイシン、クロラムフェニコール、クロラムフェニコールアルギニンコハク酸、クロラムフェニコールナトリウムコハク酸、クロラムフェニコールステアリン酸、クロラムフェニコールモルホリノ酢酸、クロラムフェニコールパルミチン酸、クロラムフェニコールステアロイルグリコレート、クロラムフェニコール硫酸モルホリノ酢酸、コリスチン塩酸、コリスチン、コリスチンナトリウムメタンスルホン酸、コリスチン硫酸塩、ジョサマイシン、ジョサマイシンプロピオネート、ジヒドロストレプトマイシン塩酸塩、ジヒドロストレプトマイシン硫酸塩、複合ストレプトマイシン、塩酸ストレプトマイシン、ストレプトマイシン塩化カルシウム塩酸塩、硫酸ストレプトマイシン、ストレプトマイシン硫酸イソニアゾン、セファセトリルナトリウム、セファゾリンナトリウム、セファピリンナトリウム、セファレキシン、セファグリシン、セファロチンナトリウム、セファロリジン、セフタゾールナトリウム、セフラジン、オキシテトラサイクリン塩酸塩、オキシテトラサイクリン、オキシテ
トラサイクリンカルシウム、クロロテトラサイクリン塩酸塩、クロロテトラサイクリン、テトラサイクリン塩酸塩、ロリテトラサイクリン硝酸塩、テトラサイクリンL-メチレン-リジン、テトラサイクリンメタリン酸塩、ロリテトラサイクリン、塩酸ジメチルクロロテトラサイクリン、ジメチルクロロテトラサイクリン、塩酸ドキシサイクリン、塩酸ミノサイクリン、塩酸メタサイクリン、アクチノマイシンD、アザロマイシンF、硫酸エンビオマイシン、塩酸エンラマイシン、オーレオスリシン、硫酸カプレオマイシン、カルジノフィリン、カルボマイシン、グラミシジン、塩酸グラミシジンS、グリセオフルビン、クロモマイシンA3、硫酸ゲンタマイシン、シクロセリン、サルコマイシン、シッカニン、硫酸ジベカシン、アセチルスピラマイシン、スピラマイシン、塩酸スペクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、トリコマイシン、ナイスタチン、ネオカルジノスタチン、ノボビオシンカルシウム、ノボビオシンナトリウム、硫酸ビオマイシン、バシトラシン、バリオチン、硫酸パロモマイシン、ピマリシン、ピロルニトリン、フシジン酸ナトリウム、パルミチン酸フラジオマイシン、硫酸フラジオマイシン、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、アンピシリン、アンピシリンナトリウム、イミペネム、メトロニダゾール、塩酸タランピシリン、カルベニシリンナトリウム、カルベニシリンインダニルナトリウム、カルベニシリンフェニルナトリウム、フェノキシメチルペニシリン、フェノキシメチルペニシリンカリウム、フェノキシメチルペニシリンカルシウム、フェノキシメチルペニシリンベンザチン、ペニシリンカリウム、ペニシリンナトリウム、ペニシリンカリウム、ペニシリンプロカイン、ベンジルペニシリンカリウム、ベンジルペニシリンナトリウム、ベンジルペニシリンプロカイン、ベンジルペニシリンベンザチン、ペニシリンカリウム化合物、ベンジルペニシリンカリウム化合物、ベンジルペニシリンナトリウム化合物、ベンジルペニシリンベンザチン化合物、塩酸クリンダマイシン、塩酸クリンダマイシン塩酸パルミチン酸、塩酸リンコマイシン、アモキシシリン、オキサシリンナトリウム、クロキサシリンナトリウム、シクラシリン、ジクロキサシリンナトリウム、スルベニシリンナトリウム、塩酸ピブメシナム、フェネチシリンカリウム、フルクロキサシリンナトリウム、プロピシリンカリウム、ヘタシリンカリウム、メチシリンナトリウム、ペンタマイシン、ポリミキシンB硫酸塩、マイトマイシンC、マリドマイシンプロピオン酸、ミカマイシン、ミデカマイシン、リファンピシン、硫酸リボスタマイシン、ピロールニトリン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシンおよびネオカルジノスタチンが挙げられる。その他の抗生物質には、シプロフロキサシン(シプロ)、ゲミフロキサシン(ファクティブ)、レボフロキサシン(レバキン)、モキシフロキサシン(アベロックス)、ノルフロキサシン(ノロキシン)、オフロキサシン(フロキシン)等のフルオロキノロン系抗生物質がある。防腐剤、消毒剤としては、アクリノール、アクリフラビン等の染料系医薬製剤、ニトロフラゾン等のフラン系製剤、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン性石鹸系医薬製剤、シクロヘキシジンおよびポビドンヨードを使用することが望ましい。一般に、2種以上の抗生物質を組み合わせることが好ましい。
【0034】
本明細書に記載されるアミノ酸およびアミノ酸残基は、以下の表に示される一般に認められた1文字または3文字のコードに従って参照され得る。
【表1】
【0035】
本明細書で使用されるフェキサポチドトリフルタート(「FT」)は、以下のアミノ酸配列を有する17量体ペプチドを表す:Ile-Asp-Gln-Gln-Val-Leu-Ser-Arg-Ile-Lys-Leu-Glu-Ile-Lys-Arg-Cys-Leu (SEQ ID NO.1)FTは米国特許第6,924,266号、第7,241,738号、第7,317,077号、第7,408,021号、第7,745,572号、第8,067,378号、第8,293,703号、第8,569,446号および第8,716,247号、ならびに、米国特許出願公開第2017/0360885号、第2017/0020957号、第2016/0361380号および第2016/0215031号明細書に開示されている。これらの特許および出願公開の開示内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
FTは、
SEQ ID NO.1(配列番号1):IDQQVLSRIKLEIKRCL または Ile-Asp-Gln-Gln-Val-Leu-Ser-Arg-Ile-Lys-Leu- Glu-Ile-Lys-Arg-Cys-Leuで表される。
【0036】
「フラグメント」という用語は、タンパク質またはペプチドのアミノ酸配列の連続した部分配列からなり、スプライス変異体などの天然に存在するフラグメントおよび天然に存在するインビボプロテアーゼ活性から生じるフラグメントを含むタンパク質またはポリペプチドを指す。こうしたフラグメントは、アミノ末端、カルボキシ末端、および/または内部(天然スプライシングによるなど)で、一部切除(truncated)されていてもよい。こうしたフラグメントは、アミノ末端メチオニンを伴いまたは伴わずに調製されてもよい。「フラグメント」という用語は、直接またはリンカーを介して連結される、共通のまたは共通でない隣接アミノ酸配列を含む、同じタンパク質またはペプチド由来の同一または異なるフラグメントを含む。当業者は、本明細書に概説されたガイドラインおよび手順を用いて、過度の実験をすることなく、実施形態で使用するのに適したフラグメントを選択することができるであろう。
【0037】
「変異体」という用語は、本明細書記載のタンパク質またはペプチドのアミノ酸配列に
比較した際、1以上のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入が存在している、タンパク質またはポリペプチドを指し、該用語には、こうして記載されるタンパク質またはペプチドの天然に存在するアレル変異体または選択的スプライシング変異体が含まれる。「変異体」という用語には、類似のまたは相同のアミノ酸(群)あるいは似ていないアミノ酸(群)による、ペプチド配列中の1つ以上のアミノ酸の置換が含まれる。どのアミノ酸を類似または相同と認定可能であるかに関する多くの基準がある(Gunnar von Heijne、Sequence Analysis in Molecular Biology、123-39頁(Academic Press、ニューヨーク州ニューヨーク、1987年)。好ましい変異体には、1つ以上のアミノ酸位置でのアラニン置換が含まれる。他の好ましい置換には、タンパク質の全体の正味電荷、極性、または疎水性に対してほとんどまたは全く影響しない、保存的置換が含まれる。保存的置換を、以下の表2に示す。
【表2】
表3は、アミノ酸置換の別のスキームを示す。
【表3】
【0038】
他の変異体は、より保存的でないアミノ酸置換からなることも可能であり、(a)例えばシートまたはらせんコンフォメーションとしての、置換領域のポリペプチド主鎖の構造、(b)標的部位での分子の電荷または疎水性、あるいは(c)側鎖の大きさの維持に対して、影響がより有意に異なる残基を選択することなどがある。一般的に、機能に対して、より有意な影響を有すると期待される置換は、(a)グリシンおよび/またはプロリンが別のアミノ酸に置換されるか、あるいは欠失されるかまたは挿入されるもの;(b)親水性残基、例えばセリルまたはスレオニルが、疎水性残基、例えばロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリル、またはアラニルに対して(またはこれらによって)置換されるもの;(c)システイン残基が任意の他の残基に対して(またはこれらによって)置換されるもの;(d)電気的陽性側鎖を有する残基、例えばリジル、アルギニル、またはヒスチジルが、陰性電荷を有する残基、例えばグルタミルまたはアスパルチルに対して(またはこれらによって)置換されるもの;あるいは(e)大きな側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンが、こうした側鎖を持たないもの、例えばグリシンに対して(またはこれらによって)置換されるものである。他の変異体には、新規グリコシル化部位および/またはリン酸化部位を生成するように設計されたもの、あるいは存在するグリコシル化部位および/またはリン酸化部位を欠失させるように設計されたもの何れかが含まれる。変異体には、グリコシル化部位、タンパク質分解的切断部位および/またはシステイン残基での少なくとも1つのアミノ酸置換が含まれる。変異体にはまた、リンカーペプチド上のタンパク質またはペプチド・アミノ酸配列の前または後に追加的なアミノ酸残基を含む、タンパク質およびペプチドも含まれる。例えば、ジスルフィド結合形成によるペプチドの環化を可能にするため、FTのペプチドのアミノ末端およびカルボキシ末端両方に、システイン残基を付加することも可能である。「変異体」という用語はまた、ペプチドの3’端または5’端の何れかに隣接する、少なくとも1つから25個まで、またはそれより多い追加的なアミノ酸を持つFTのアミノ酸配列を有するポリペプチドも含む。
【0039】
「誘導体」という用語は、プロセシングおよび他の翻訳後修飾などの天然プロセスによるだけでなく、例えば1以上のポリエチレングリコール分子、糖、ホスフェート、および/または他のこうした分子が、野生型タンパク質またはFTに天然に付着していない場合に、こうした分子を付加するなどの、化学的修飾技術によって化学的に修飾されている、化学的修飾タンパク質またはポリペプチドを指す。誘導体には塩が含まれる。こうした化
学的修飾は、基本的教科書に、そしてより詳細なモノグラフに、並びに多量の研究文献によく記載され、そしてこれらは当業者に周知である。同じ種類の修飾が、所定のタンパク質またはポリペプチドのいくつかの部位に同じ度合いでまたは異なる度合いで存在してもよいことが認識されるであろう。また、所定のタンパク質またはポリペプチドが、多くの種類の修飾を含有してもよい。修飾は、タンパク質またはポリペプチドのどの部位で生じることも可能であり、そうした部位には、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖、およびアミノ末端またはカルボキシ末端が含まれる。修飾には、例えば、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ-カルボキシ化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、ホスホリル化、プレニル化、ラセミ化、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化およびADP-リボシル化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化などのトランスファーRNAが仲介するタンパク質へのアミノ酸の付加、およびユビキチン化が含まれる。例えばProteins--Structure And Molecular Properties, 第2版,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,ニューヨーク(1993年)およびWold, F.,“Posttranslational Protein Modifications: Perspectives and Prospects,” Posttranslational Covalent Modification Of Proteins中,
1-12頁, B.C. Johnson監修,Academic Press, ニューヨーク(1983年); Seifterら,Meth.Enzymol.182:626-646(1990年)およびRattanら,“Protein Synthesis: Posttranslational Modifications and
Aging,”Ann.N.Y.Acad.Sci.663:48-62(1992年)を参照されたい。「誘導体」という用語には、分枝する、あるいは分枝して環状に、または分枝せずに環状になる、タンパク質またはポリペプチドを生じる化学的修飾が含まれる。環状、分枝および分枝環状タンパク質またはポリペプチドは、翻訳後天然プロセスから生じる可能性があり、そしてまた、完全に合成的な方法で作成することも可能である。
【0040】
「相同体」という用語は、2つのポリペプチドのアミノ酸の位における類似性を比較するのに一般的に用いられる標準法によって決定されるように、FTのアミノ酸配列と少なくとも60%同一であるタンパク質を指す。2つのタンパク質の間の類似性または同一性の度合いは、限定されるわけではないが、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.監修,Oxford Unversity Press,ニューヨーク,1988年;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.監修,Academic Press,ニューヨーク,1993年; Computer Analysis of Sequence Data,第I部,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.監修,Humana Press,ニュージャージー州,1994年; Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987年; Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.監修,M Stockton Press,ニューヨーク,1991年;ならびにCarillo H.and Lipman,D.,SIAM,J. Applied Math.,48:1073(1988年)に記載されるものを含む、既知の方法によって、容易に計算可能である。同一性を決定する好ましい方法は、試験する配列間で最大のマッチを生じさせるように設計される。同一性および類似性を決定
する方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムに体系化されている。
【0041】
2つの配列間の同一性および類似性を決定する際に有用な好ましいコンピュータプログラム法には、限定されるわけではないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J.ら, Nucleic Acids Research, 12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN、およびFASTA、Atschul,
S.F.ら, J. Molec. Biol., 215:403-410(1990)が含まれる。BLAST Xプログラムは、NCBIおよび他の供給源(BLAST
Manual、Altschul、S.ら、NCBI NLM NIH Bethesda、Md.20894;Altschul、S.ら、J.Mol.Biol.、215:403-410(1990年))から公的に入手可能である。例えば、GAP(ウィスコンシン大学遺伝子コンピュータグループ、ウィスコンシン州マディソン)などのコンピュータアルゴリズムを用いて、パーセント配列同一性を決定しようとする2つのタンパク質またはポリペプチドを、各々のアミノ酸が最適にマッチするように並列させる(アルゴリズムに決定されるような「マッチしたスパン」)。
【0042】
ギャップオープニングペナルティ(平均対角の3倍として計算;「平均対角」は、用いる比較マトリックスの対角の平均であり;「対角」は、特定の比較マトリックスによる、各完全アミノ酸マッチに割り当てられたスコアまたは数字である)およびギャップ伸長ペナルティ(通常、ギャップオープニングペナルティの1/10)、ならびにPAM250またはBLOSUM62などの比較マトリックスを、アルゴリズムと組み合わせて用いる。標準比較マトリックス(PAM250比較マトリックスに関しては、Dayhoffら:Atlas of Protein Sequence and Structure,vol.5, supp.3を参照されたい;BLOSUM62比較マトリックスに関しては、Henikoffら,Proc.Natl.Acad.Sci USA,89:10915-10919を参照されたい)もまた、アルゴリズムに使用可能である。
次いで、アルゴリズムによってパーセント同一性が計算される。相同体は、場合によって、対応するタンパク質またはペプチドと比較した際、典型的には1つ以上のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入を有するであろう。
【0043】
「融合タンパク質」という用語は、1つ以上のペプチドが、抗体、またはFabフラグメントまたは短鎖Fvのような抗体フラグメントなどの(これに制限されるわけではない)タンパク質に組換え融合しているまたは(共有結合および非共有結合を含めた)化学的に複合している(conjugated)タンパク質を意味する。「融合タンパク質」という用語は、更に、ペプチドの多量体(すなわち、二量体、三量体、四量体およびそれより多い多量体)を意味する。このような多量体は、1つのペプチドを含むホモマー多量体;2つ以上のペプチドを含むヘテロマー多量体;および少なくとも1つのペプチドおよび少なくとも1つの他のタンパク質を含むヘテロマー多量体を含む。このような多量体は、疎水性、親水性、イオン性および/または共有結合の会合、結合またはリンクの結果であってもよく、リンカー分子を用いた架橋結合によって形成されてもよく、または間接的に、例えば、リポソーム形成によって連結されていてもよい。
【0044】
「ペプチド模倣体(mimetic)」または「模倣体」という用語は、ペプチドまたはタンパク質の生物学的活性を模倣するが、もはや化学的性質はペプチド性でない、すなわちもはやペプチド結合(すなわちアミノ酸間のアミド結合)をまったく含有しない、生物学的活性化合物を指す。本明細書において、ペプチド模倣体という用語は、より広い意味で用いられ、事実上、もはや完全にペプチド性でない分子、例えば偽ペプチド、半ペプチドおよびペプトイドなどが含まれる。この、より広い意味でのペプチド模倣体の例(ペプチドの一部が、ペプチド結合を欠く構造と交換されている場合)を以下に記載する。
完全な非ペプチドであれ、または部分的な非ペプチドであれ、各実施形態によるペプチド
模倣体は、そのペプチド模倣体の基となるペプチドの活性基の三次元配置を緊密に真似る、反応性化学部分の空間的配置を提供する。活性部位の幾何学的形状がこのように類似である結果、ペプチド模倣体は、ペプチドの生物学的活性に似た、生物学的系に対する影響を有する。
【0045】
本発明の実施形態のペプチド模倣体は、好ましくは、三次元形状および生物学的活性両方において、本明細書記載のペプチドに実質的に類似である。当該技術分野に知られるペプチドを構造的に修飾してペプチド模倣体を生成する方法の例には、D-アミノ酸残基構造を導く、主鎖キラル中心の反転が含まれ、D-アミノ酸残基構造は、特にN末端で、不都合に影響を及ぼす活性を伴わずに、タンパク質分解的分解に対して、増進した安定性を導く。この例は、論文“Tritriated D-ala1-Peptide T Binding”, Smith C.S.ら, Drug Development Res., 15, 371-379頁(1988年)に記載される。第二の方法は、NからCの鎖間イミドおよびラクタムなどの、安定性のための環状構造の改変である(Edeら, Smith and Rivier(監修)“Peptides: Chemistry and Biology”, Escom, Leiden(1991年)中,268-270頁)。これの一例は、米国特許第4,457,489号(1985年)、Goldstein、G.らに開示されるものなどの、コンフォメーション的に制限されたチモペンチン様化合物で与えられており、前記特許の開示は参照により全体として本明細書に組み込まれる。第三の方法は、ペプチド内のペプチド結合を、タンパク質分解に耐性を与える偽ペプチド結合により置換することである。
【0046】
ペプチド構造および生物学的活性に概して影響を与えない、いくつかの偽ペプチド結合が記載されている。このアプローチの1つの例は、逆反転(retro-inverso)偽ペプチド結合で置換することである(“Biologically active retroinverso analogues of thymopentin”, Sisto A.ら,Rivier,J.E. and Marshall,G.R.(監修)“Peptides, Chemistry, Structure and Biology”,Escom, Leiden(1990年)中,722-773頁,およびDalpozzoら(1993年),Int.J.Peptide Protein
Res., 41:561-566、本明細書に援用される)。
この修飾に従って、ペプチドのアミノ酸配列は、1つ以上のペプチド結合が、逆反転偽ペプチド結合と交換されていることを除いて、上述のペプチドの配列と同一であってもよい。好ましくは、最もN末端のペプチド結合が置換されており、これはこうした置換が、N末端に作用するエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対して、耐性を与えるであろうためである。アミノ酸の化学基を類似構造の他の化学基で置換することによって更に修飾することもできる。生物学的活性を全く損失させないか、またはほとんど損失させずに、酵素的切断に対する安定性を増進させることが知られる別の適切な偽ペプチド結合は、還元アイソスター偽ペプチド結合である(Couderら(1993年)、Int.J.Peptide Protein Res.、41:181-184、参照により全体として本明細書に組み込まれる)。
【0047】
従って、これらのペプチドのアミノ酸配列は、1つ以上のペプチド結合が、イソスター偽ペプチド結合によって交換されていることを除いて、FTの配列と同一であってもよい。好ましくは、最もN末端のペプチド結合が置換されており、これはこうした置換が、N末端に作用するエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対して、耐性を与えるであろうためである。1つ以上の還元アイソスター偽ペプチド結合を有するペプチドの合成が当該技術分野において知られている(Couderら(1993年)、上記引用)。他の例は、ケトメチレンまたはメチルスルフィド結合の導入によるペプチド結合の置換などである。
【0048】
本明細書記載のペプチドのペプトイド誘導体は、生物学的活性に重要な構造的決定基を保持するが、ペプチド結合が取り除かれ、それによってタンパク質分解に対する耐性が与えられた、別の種類のペプチド模倣体に相当する(Simonら,1992年,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:9367-9371、本明細書にその全体が援用される)。ペプトイドは、N-置換グリシンのオリゴマーである。いくつかのN-アルキル基が記載されており、各々は天然アミノ酸の側鎖に対応する(Simonら(1992年)、上記引用)。ペプチドのアミノ酸の一部または全てを、交換されるアミノ酸に対応するN-置換グリシンと交換することが可能である。
【0049】
「ペプチド模倣体」または「模倣体」という用語にはまた、以下に定義するような、逆Dペプチドおよび鏡像異性体も含まれる。
【0050】
「逆Dペプチド」という用語は、ペプチドのL-アミノ酸配列に比較した際、逆の順に配置されたD-アミノ酸からなる、生物学的活性タンパク質またはペプチドを指す。従って、L-アミノ酸ペプチドのカルボキシ末端残基は、D-アミノ酸ペプチドのアミノ末端になるなどである。例えば、ペプチド、ETESH(SEQ ID NO:2)は、Hd
SdEdTdEdになり、ここで、Ed、Hd、Sd、およびTdは、それぞれ、L-アミノ酸、E、H、S、およびTに対応するD-アミノ酸である。
【0051】
「鏡像異性体」という用語は、あるペプチドのアミノ酸配列中の1つ以上のL-アミノ酸残基が、対応するD-アミノ酸残基で置き換えられている生物学的に活性なタンパク質またはペプチドを意味する。
【0052】
本明細書中で用いられる「組成物」という言葉は、抗生物質および必要に応じてFTを含有する任意の組成物を広く意味する。その組成物は、乾燥配合物、水溶液、または滅菌組成物を含むことができる。必要に応じてFTを含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして用いることができる。それらプローブは、凍結乾燥された形で貯蔵することができ、また、炭水化物などの安定剤と会合させることができる。ハイブリダイゼーションの場合、プローブは、塩類、例えば、NaCl;界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);および他の成分、例えば、デンハート溶液、脱脂乳、サケ精子DNA等を含有する水溶液中に配置することができる。
【0053】
本開示はまた、抗生物質を単独でまたはFTと組み合わせて使用することによりBPHの症状を治療および/または改善でき、現在のFDA承認のBPH経口薬に匹敵するおよび優れた予期していなかった平均IPSSスコアの改善がもたらされるという発見に部分的に基づいている。特定の理論または操作に限定されることを意図していないが、発明者は、抗生物質を単独でまたはFTと組み合わせて投与することによりBPHに苦しむ患者の症状を劇的に改善し、尿のピーク流量を劇的に改善することを思いがけず発見した。
【0054】
任意の抗生物質またはそれらの組み合わせを実施形態で使用することができる。組成物は、尿路感染症に関連する細菌感染の発生を防止または低減するのに適した抗生物質を含むことが好ましい。使用される抗生物質は、大腸菌、大便連鎖球菌、プロテウス/緑膿菌種およびアグラーゼ陽性ブドウ球菌を含む尿路病原菌の一般的な細菌株に対して適切な効果を有するべきである。一実施形態では、本方法は、同じまたは異なる製剤中の、1つ、2つまたは3つ以上の種類の抗生物質を、同じまたは異なる投与経路で投与することを含む。実施形態で使用される抗生物質は、エリスロマイシン、キタサマイシン、ストレプトマイシン、セファロチン、セファゾリン、テトラサイクリン、グラミシジン、グリセオフルビン、ゲンタマイシン、ノボビオシン、アンピシリン、イミペネム、メトロニダゾール、セフトリアキソン、セフォキサシンフォミフロキサシン、セファレキシン、シプロキサ
シン、シプロファシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、ニトロフラントイン、オフロキサシン、トリメトプリム/スルファメトキサキソール、および、これらのうちのいずれかの誘導体および塩のうちの1つまたは複数から選択されてもよい。抗生物質はまた、アンピシリン、ゲンタマイシン、イミペネム、セファロチン、メトロニダゾール、シプロフロキサシン、ゲミフロキサシン、ホスホマイシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、ニトロフラントインおよびオフロキサシンのうちの1つまたは複数から選択されてもよい。前記抗生物質は2つまたは3つの異なるコースで投与されてもよく、例えば、フルオロキノロン抗生物質を1コース、メトロニダゾールを1コース、ならびに、イメペネム、ゲンタマイシンおよびセファロチンから選択される抗生物質の筋肉内注射からなる3つのコースで抗生物質を投与してもよい。
【0055】
本明細書に記載の組成物で治療された患者は、対照群を投与された場合と比較して、および、現在入手可能なFDA承認のBPH経口薬のIPSSの平均改善3~5ポイントと比較して、国際前立腺症状スコア(IPSS)の劇的な改善を示した(例えば、McConnell,JD他、「急性尿閉のリスクに対するフィナステリドの影響..」、NEJM、第338巻、557~63ページ(1998年);Roehrborn、CG他「デュタステリドとタムスロシンによる併用療法の効果…」、Eur Urol、11月、58(5):801(2010年))。実施形態では、約4~8ポイント、約5~7ポイントまたは約6~7ポイントの範囲内で、投与した最初の一年以内にIPSSの平均改善がもたらされる。BPHについて現在利用可能なFDA承認医薬品のIPSSの平均改善と比較すると、抗生物質の投与により、最初の一年で、平均IPSSが約20%~300%、約25%~200%または約30%~150%の大幅な改善が得られた。プラセボ単独でのIPSSの平均改善と比較すると(90日後に約1.5~3ポイント、1年で約1~1.5ポイントと報告されている)、抗生物質の投与では平均IPSSの初の一年の改善が約50%~600%、約75%~500%または約90%~350%になったと言える。
【0056】
実施形態では、42か月後にはIPSSの平均改善が約2~6ポイント、約3~5ポイントまたは約4~5ポイントの範囲内でもたらされる。BPHについて現在利用可能なFDA承認医薬品のIPSSの平均改善(約2~4ポイントと報告されている)と比較すると、抗生物質の投与により、42か月後には、平均IPSSが約0%~200%、約0%~150%または約0%~100%の大幅な改善が得られた。特に、抗生物質の使用がBPHの治療に有用または効果的であると従来では知られていなかったため、これらの結果は予想外である。抗生物質の使用が効果的であり、多くの場合、従来の経口薬よりもはるかに効果的であるという事実は、驚くべき発見である。プラセボ単独の場合のIPSSの平均改善と比較すると(42か月後に約1~2ポイントと報告されている)、抗生物質の投与では平均IPSSの42か月後の改善の程度が、約50%~400%、約75%~350%または約100%~300%になったと言える。
【0057】
また、本明細書に記載の組成物を使用して治療された患者は、BPHに罹患している男性における尿ピーク流量(Qmax)が改善した。実施形態によれば、最初の一年におけるQmaxの平均改善は、約1~4、約1.3~3.0、約1.5~2.5または約1.75~2.0の範囲である。BPHに対して現在利用可能なFDA承認医薬品によるQmaxの改善(90日後に約0.8から2.2、1年で約1.5から2.2と報告されている)と比較すると、抗生物質の投与では最初の1年で、約15%のわずかな減少から約150%の改善、約130%の改善または約50%の改善までのいずれかが見られた。プラセボ単独のQmaxの平均改善(約0.5から0.8の間と報告されている)と比較すると、抗生物質の投与では最初の1年でQmaxの改善が、約75%~350%、約100%~325%または約125%から300%と大幅な改善になった。
【0058】
実施形態は、BPHに罹患している哺乳動物を治療する方法を含み、当該方法は、少なくとも1つの抗生物質を単独でまたはFTと組み合わせて、哺乳動物に1回または2回以上投与することを含む。この方法には、抗生物質を含む組成物を、経口的に、静脈内に、腹腔内に、大脳内に(柔組織内に)、脳室内に、病巣内に、眼内に、動脈内に、髄腔内に、腫瘍内に、鼻腔内に、局所的に、経皮的に、皮下に、または皮内に、単独でまたは担体に複合された形で投与することが含まれるが、これらには限定されない。一実施形態では、哺乳動物に対して、フルオロキノロン抗生物質等の広域抗生物質の1コースの投与(通常7日間)、メトロニダゾール等の抗生物質の1コースの投与(通常7日間)および、イミペネン、ゲンタマイシンまたはセファロチンのような第3の広域抗生物質の筋肉内注射を行ってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、シプロフロキサシンまたはレボフロキサシン(等)のフルオロキノロンの投与は、約300~600mg、約400~550mgまたは約500mgを、1日2回、約5日間から約10日間経口投与することを含んでもよい。メトロニダゾール、セクニダゾールまたはチニダゾールの投与は、約300~600mg、約400~550mgまたは約500mgを1日3回、約5~10日間またはそれ以上経口投与することを含んでもよい。ゲンタマイシン等の投与は、筋肉内注射により、約50~200mg、約75~150mgまたは約100mgを1日1回、2日間以上投与することを含んでもよい。プリマキシン(イミペネム)またはインバンズ(エルタペネム)等の投与は、筋肉内注射により、約0.1~5g、約0.5~1.5gまたは1gを1日1回、1日以上投与することを含む。当業者であれば、抗生物質の種類に応じておよび本明細書に提供されるガイドラインを使用して、抗生物質の適切な量を決定することができるであろう。
【0060】
FTと抗生物質とを組み合わせて投与することによりIPSSの更なる平均改善をえることができ、その更なる改善は、約1.0~5.0ポイント、約1.2~3.5ポイントまたは約1.5~3.0ポイントである。したがって、抗生物質の投与によるIPSSの平均改善が約6.2ポイントである場合、抗生物質とFTとの組み合わせ投与によるIPSSの平均改善は、約7.2~11.2ポイントになる。抗生物質とFTとの組み合わせ投与によるIPSSの平均改善は、約5.0~13.0ポイント、約6.0~11.0ポイント、約7.5~9.0ポイントまたは約8.0~9.0ポイントである。
【0061】
ヒト、マウス、ウサギ、イヌ、ヒツジおよび他の家畜、獣医、動物園の飼育係または野生動物保護職員による治療が行われるまたは治療可能な哺乳動物を含む、あらゆる哺乳動物に対して、本発明は有効である。好ましい哺乳動物としては、ヒト、ヒツジおよびイヌが挙げられる。本明細書では、「哺乳類」という言葉と「患者」という言葉とは、互換的に使用される。
【0062】
当業者には、FTの他より小さなフラグメントを、これらのペプチドが同じまたは類似の生物活性を有するように選択し得ることが明らかであろう。当業者は、NTPペプチドの他のフラグメントも、これらのペプチドが同じまたは類似の生物学的活性を有するように選択することができる。各実施形態のペプチドはこれらの他のフラグメントを包含する。一般に、各実施形態のペプチドは少なくとも4つのアミノ酸、好ましくは少なくとも5つのアミノ酸、更に好ましくは少なくとも6つのアミノ酸を有する。
【0063】
本発明の実施形態に包含されるFT並びにそのフラグメント、変異体、誘導体、相同体、融合タンパク質および模倣体は、当業者に公知の方法を用いて製造できる。例えば、組換えDNA技術、タンパク質合成、ならびに、天然のペプチド、タンパク質、変異体、誘導体および相同体の分離等の方法を用いることができる。FTならびにそのフラグメント、変異体、誘導体、相同体、融合タンパク質および模倣体は、当業者に公知の方法を用いて他のペプチド、タンパク質ならびにそれらのフラグメント、変異体、誘導体および相同
体から製造することができる。そのような方法は、ペプチドまたはタンパク質を切断してFTにするプロテアーゼの使用を含むが、これに限定されない。例えば、米国特許第6,924,266号、7,241,738号、第7,317,077号、第7,408,021号、第7,745,572号、第8,067,378号、第8,293,703号、第8,569,446号および第8,716,247号広報、ならびに米国特許出願公開第2017/0360885号、第2017/0020957号、第2016/0361380号、および第2016/0215031号明細書に開示されている任意の方法を使用して、本明細書に記載のFTペプチドを調製することができる。
【0064】
さらなる実施形態では、1つまたは複数の抗生物質、必要に応じてFTおよび必要に応じて付加的な活性剤を含む組成物の投与を含む。付加的な活性剤を使用する場合には、当該付加的な活性剤として、以下から選択される1つ以上の活性剤を使用できる。(i)抗癌活性剤(アルキル化剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、RNA/DNA代謝拮抗剤、および有糸分裂阻害剤など)、(ii)良性増殖を治療するための活性剤、例えば、抗ニキビおよび抗疣贅活性剤(サリチル酸)、(iii)抗アンドロゲン化合物(酢酸シプロテロン(1α、2β-メチレン-6-クロロ-17α-アセトキシ-6-デヒドロプロゲステロン)タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤)、(iv)α1-アドレナリン受容体遮断薬(タムスロシン、テラゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、ブナゾシン、インドラミン、アルフゾシン、シロドシン)、(v)5α-レダクターゼ阻害剤(フィナステリド、デュタステリド)、(vi)ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害剤(タダラフィル)およびそれらの組み合わせ。好ましくは、付加的な活性剤は、タムスロシン、フィナステリド、テラゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、タダラフィル、アルフゾシン、シロドシン、デュタステリド、デュタステリドとタムスロシンの組み合わせ、およびこれらの混合物および組み合わせからなる群から選択される。
【0065】
本明細書に記載される治療用組成物は、薬学的に許容される担体と混合された治療有効量の1つまたは複数の抗生物質を含み得る。いくつかの別の実施形態では、FTおよび/または付加的な活性剤は、抗生物質と同じ組成物に含有させて投与することができ、他の実施形態では、1つまたは複数の抗生物質を含有する組成物を、経口投与(ゲル、カプセル、錠剤、液体など)し、1つまたは複数の抗生物質を含む別個の組成物を注射で投与する。必要に応じて、FTは、生理学的に許容される1つ以上のキャリア、賦形剤または希釈剤と組み合わせて、精製されたFTペプチドを含む組成物の形態で投与される。中性緩衝生理食塩水または血清アルブミンを混合した生理食塩水は適当な担体の例である。好ましくは、製品は適当な賦形剤(例えば、ショ糖)を用いて凍結乾燥物として処方される。所望であれば他の標準的担体、希釈剤、および賦形剤を含んでもよい。必要に応じて、付加的に活性剤を経口投与することができる(ゲル、カプセル、錠剤、液体等)。各実施形態の組成物は、当業者に公知の適当な範囲のpH値を有する緩衝液、例えばpH約7.0から8.5のトリス緩衝液、またはpH約4.0から5.5の酢酸緩衝液も含み得る。これに更にソルビトールまたはその適切な代替物が加わってもよい。
【0066】
経口投与用の固体剤形は、カプセル、錠剤、ピル、散剤および顆粒剤を含むが、これらに限定されない。そのような固体剤形の場合、抗生物質ならびに必要に応じてFTおよび/または付加的な活性剤は、以下の少なくとも1つと混合され得る:(a)クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムのような1つ以上の不活性賦形剤(または担体);(b)デンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、およびケイ酸のような充填剤または増量剤;(c)カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖およびアカシアのような結合剤;(d)グリセロールのような保湿剤;(e)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種の複合ケイ酸塩、および炭酸ナトリウムのような崩壊剤;(f)パラフィンのような溶液凝固遅延剤;(g)第四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;(h)アセチルアル
コールおよびモノステアリン酸グリセロールのような湿潤剤;(i)カオリンおよびベントナイトのような吸着剤;および(j)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール類、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物のような滑沢剤。カプセル、錠剤、およびピルの場合、剤形は緩衝剤も含み得る。
【0067】
経口投与用の液体剤形は、製薬学的に許容しうるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルを含む。液体剤形は、活性化合物に加え、当該技術分野で通常使用されている不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤、および乳化剤を含み得る。乳化剤の例は、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類、例えば、綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール類、ソルビタンの脂肪酸エステル類、またはこれらの物質の混合物などである。
【0068】
そのような不活性希釈剤のほかに、該組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、風味料および着香料などのアジュバントを含むこともできる。
【0069】
特定の組成物および投与法において所望の治療的応答を得るのに有効な量の抗生物質ならびに必要に応じてFTおよび付加的な活性剤を得るように、本発明の組成物中の活性成分の実際の用量レベルは変化し得る。従って、選択される用量レベルは、所望の治療効果、投与経路、所望の治療期間、および他の要因によって決まる。
【0070】
ヒトを含む哺乳動物の場合、体表面積に基づいて有効量を投与できる。様々な大きさ、種の動物、およびヒトに関する用量の相互関係(mg/M2体表面積に基づく)は、E.
J.Freireichらによって、Cancer Chemother.Rep.,50(4):219(1966年)に報告されている。体表面積は、個体の身長および体重からおよそ決定できる(例えば、Scientific Tables、Geigy Pharmaceuticals、ニューヨーク州アーズリー、537-538頁(1970年)参照)。
【0071】
宿主に投与される抗生物質ならびに必要に応じてFTおよび任意に付加される活性剤の1日用量の総量は、1回で投与されても分割して投与されてもよい。用量単位組成物は、1日量を構成するのに使用され得るようなその量の約数に相当する量を含有し得る。しかしながら、任意の特定の患者に対する特定の用量レベルは、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間および経路、投与薬物の効力、吸収および排出速度、他の薬物との組合せ、および治療される特定の疾患の重症度などの様々な要因によって異なるであろうことは理解されよう。
【0072】
ある実施形態において、必要に応じて投与される少なくとも1つの活性剤は、以下の(1)-(40)からなる群から選択される:(1)5α-レダクターゼ阻害剤および/または抗エストロゲン、(2)5α-レダクターゼ阻害剤および/またはアロマターゼ阻害剤、(3)5α-レダクターゼ阻害剤および/または17β-HSD阻害剤、(4)5α-レダクターゼ阻害剤、抗エストロゲン、およびアロマターゼ阻害剤、(5)5α-レダクターゼ阻害剤、抗エストロゲン、および17β-HSD阻害剤、(6)5α-レダクターゼ阻害剤、アロマターゼ阻害剤、抗エストロゲン、および17β-HSD阻害剤、(7)5α-レダクターゼ阻害剤、抗アンドロゲン、および抗エストロゲン、(8)5α-レダクターゼ阻害剤、抗アンドロゲン、およびアロマターゼ阻害剤、(9)5α-レダクターゼ阻害剤、抗アンドロゲン、および17β-HSD阻害剤、(10)5α-レダクター
ゼ阻害剤、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、およびアロマターゼ阻害剤、(11)5α-レダクターゼ阻害剤、抗アンドロゲン、アロマターゼ阻害剤、および17β-HSD阻害剤、(12)5α-レダクターゼ阻害剤、抗アンドロゲン、アロマターゼ阻害剤、抗エストロゲン、および17β-HSD阻害剤、(13)17β-HSD阻害剤、および抗エストロゲン、(14)17β-HSD阻害剤、およびアロマターゼ阻害剤、(15)17β-HSD阻害剤、アロマターゼ阻害剤、および抗エストロゲン、(16)17β-HSD阻害剤、抗アンドロゲン、および抗エストロゲン、(17)17β-HSD阻害剤、抗アンドロゲン、およびアロマターゼ阻害剤、(18)17β-HSD阻害剤、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、およびアロマターゼ阻害剤、(19)抗エストロゲン、およびアロマターゼ阻害剤、(20)抗エストロゲン、アロマターゼ阻害剤、および抗アンドロゲン、(21)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、5α-レダクターゼ阻害剤、および抗エストロゲン、(22)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、5α-レダクターゼ阻害剤、およびアロマターゼ阻害剤、(23)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、5α-レダクターゼ阻害剤、および17β-HSD阻害剤、(24)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、5α-レダクターゼ阻害剤、抗エストロゲン、およびアロマターゼ阻害剤、(25)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、5α-レダクターゼ阻害剤、抗エストロゲン、および17β-HSD阻害剤、(26)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、5α-レダクターゼ阻害剤、アロマターゼ阻害剤、抗エストロゲン、および17β-HSD阻害剤、(27)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、5α-レダクターゼ阻害剤、抗アンドロゲン、および抗エストロゲン、(28)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、5α-レダクターゼ阻害剤、抗アンドロゲン、およびアロマターゼ阻害剤、(29)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、5α-レダクターゼ阻害剤、抗アンドロゲン、および17β-HSD阻害剤、(30)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、5α-レダクターゼ阻害剤、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、およびアロマターゼ阻害剤、(31)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、5α-レダクターゼ阻害剤、抗アンドロゲン、アロマターゼ阻害剤、および17β-HSD阻害剤、(32)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、5α-レダクターゼ阻害剤、抗アンドロゲン、アロマターゼ阻害剤、抗エストロゲン、および17β-HSD阻害剤、(33)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、17β-HSD阻害剤、および抗エストロゲン、(34)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、17β-HSD阻害剤、およびアロマターゼ阻害剤、(35)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、17β-HSD阻害剤、アロマターゼ阻害剤、および抗エストロゲン、(36)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、17β-HSD阻害剤、抗アンドロゲン、および抗エストロゲン、(37)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、17β-HSD阻害剤、抗アンドロゲン、およびアロマターゼ阻害剤、(38)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、17β-HSD阻害剤、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、およびアロマターゼ阻害剤、(39)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、抗エストロゲン、およびアロマターゼ阻害剤、および(40)LHRHアゴニストまたはアンタゴニスト、抗エストロゲン、アロマターゼ阻害剤、および抗アンドロゲン。
【0073】
以下の実施例は本発明を説明するために提供する。しかしながら、各実施形態はこれらの実施例に記載されている特定の条件または詳細に限定されるものではないことが理解されるべきである。本明細書全体を通じて、米国特許を含む公的に入手可能な文献への何れかまたは全ての参照は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。特に、本実施形態は、米国特許第6,924,266号、第7,241,738号、第7,317,077号、第7,408,021号、第7,745,572号、第8,067,378号、第8,293,703号、第8,569,446号および第8,716,247号、ならびに、米国特許出願公開第2017/0360885号、第2017/0020957号、第2016/0361380号および第2016/0215031号明細書に開示されている実施例を参照により組み込む。
【0074】
[実施例1]
診療室環境における泌尿器科医による超音波誘導下の二重盲検条件下で、BPHを患う患者に、a)NX-1207含有のpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)またはb)PBS単独、の何れかの前立腺内注射を行った。治療薬またはプラセボの投与の前に、各患者は、7日間のフルオロキノロン系の抗生物質の投与、7日間のメトロニダゾールの投与および第3の広域抗生物質(イミペネム、ゲンタマイシン、セファロチン等)の筋肉内注射で構成される広域抗生物質の投与1コースを開始した。それぞれの患者を、1年以上、定期的な身体診断、臨床検査、および症状の評価について追跡した。症状の評価は、前立腺症状の改善または悪化を評価するために使用される定量的尺度である国際前立腺症状スコア(IPSS)によって測定した。IPSSは以下を定量化している。1)残尿感。2)頻尿。3)尿線途絶。4)尿意切迫感。5)尿勢低下。6)腹圧排尿。7)夜間頻尿。ベースラインIPSSからの差分を、NX-1207を投与した患者とPBSのみを投与した患者との比較した。驚くべきことに、抗生物質とプラセボとのみを投与された患者では、90日後にBPH症状スコアが改善され、従来の経口BPH薬で通常見られる改善よりも優れていることが分かった。これらの試験の結果を表4に示す。
【表4】
【0075】
表4に示すように、1つ以上の抗生物質で治療した患者は、治療の90日後の測定において、従来の経口BPH薬物治療と比較して平均IPSSが約34%~123%改善した。したがって、1つ以上の抗生物質の投与は、BPHの治療用のFDA承認の経口薬よりも、より大きなBPH患者のIPSSの平均改善をもたらす。この改善は、抗生物質がBPHの治療に有効であることが以前には知られていなかったことを考えると、予想外である。
【0076】
[実施例2]
診療室環境における泌尿器科医による超音波誘導下の二重盲検条件下で、BPHを患う患者に、a)NX-1207含有のpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)またはb)PBS単独、の何れかの前立腺内注射を行った。治療薬またはプラセボの投与の前に、各患者は、7日間のフルオロキノロン系の抗生物質の投与、7日間のメトロニダゾールの投与および第3の広域抗生物質(イミペネム、ゲンタマイシン、セファロチン等)の筋肉内注射で構成される広域抗生物質の投与1コースを開始した。それぞれの患者を、1年以上、定期的な身体診断、臨床検査、および症状の評価について追跡した。症状の評価は、前立腺症状の改善または悪化を評価するために使用される定量的尺度である国際前立腺症状スコア(IPSS)によって測定した。IPSSは以下を定量化している。1)残尿感。2)頻尿。3)尿線途絶。4)尿意切迫感。5)尿勢低下。6)腹圧排尿。7)夜間頻尿。ベースラインIPSSからの差分を、NX-1207を投与した患者とPBSのみを投与した患者との比較した。驚くべきことに、抗生物質とプラセボとのみを投与された患者では、12か月後にBPH症状スコアが改善され、従来の経口BPH薬で通常見られる改善よりも優れていることが分かった。これらの試験結果をまとめたものを表5に示す。
【表5】
【0077】
表5に示すように、1つ以上の抗生物質で治療した患者は、治療の1年後の測定において、従来の経口BPH薬物治療と比較して平均IPSSが約55%~210%改善した。したがって、1つ以上の抗生物質の投与は、BPHの治療用のFDA承認の経口薬よりも、より大きなBPH患者のIPSSの平均改善をもたらす。このような改善がみられることは予期されていなかった。
【0078】
[実施例3]
診療室環境における泌尿器科医による超音波誘導下の二重盲検条件下で、BPHを患う患者に、a)NX-1207含有のpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)またはb)PBS単独、の何れかの前立腺内注射を行った。治療薬またはプラセボの投与の前に、各患者は、7日間のフルオロキノロン系の抗生物質の投与、7日間のメトロニダゾールの投与および第3の広域抗生物質(イミペネム、ゲンタマイシン、セファロチン等)の筋肉内注射で構成される広域抗生物質の投与1コースを開始した。それぞれの患者を、1年以上、定期的な身体診断、臨床検査、および症状の評価について追跡した。尿ピーク流量(Qmax)は、最大尿流量をmL/秒単位で電子的記録値を出力する流量計を使用して測定された。NX-1207を投与した患者とPBSのみを投与した患者とのQmaxを比較した。驚くべきことに、抗生物質とプラセボとのみを投与された患者では、3か月後に最大尿流量が改善され、従来の経口BPH薬で通常見られる改善と同程度または優れた改善がもたらされることが分かった。これらの試験結果をまとめたものを表6に示す。
【表6】
【0079】
表6の結果は、1つ以上の抗生物質の投与により治療された患者が、従来の薬物療法で通常見られるも改善と同等かそれ以上のQmaxの平均改善がもたらされたことを示している。1つ以上の抗生物質を投与して3か月後のQmaxは、従来のBPH経口薬物治療と比較して、-13%~137%の平均改善が見られた。
【0080】
[実施例4]
診療室環境における泌尿器科医による超音波誘導下の二重盲検条件下で、BPHを患う患者に、a)NX-1207含有のpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)またはb)PBS単独、の何れかの前立腺内注射を行った。治療薬またはプラセボの投与の前に、各患者は、7日間のフルオロキノロン系の抗生物質の投与、7日間のメトロニダゾールの投与および第3の広域抗生物質(イミペネム、ゲンタマイシン、セファロチン等)
の筋肉内注射で構成される広域抗生物質の投与1コースを開始した。それぞれの患者を、1年以上、定期的な身体診断、臨床検査、および症状の評価について追跡した。尿ピーク流量(Qmax)は、最大尿流量の電子的記録値を出力する流量計を使用して測定された。NX-1207を投与した患者とPBSのみを投与した患者とのQmaxを比較した。驚くべきことに、抗生物質とプラセボとのみを投与された患者では、12か月後に最大尿流量が改善され、従来の経口BPH薬で通常見られる改善と同程度の改善がもたらされることが分かった。これらの試験結果をまとめたものを表7に示す。
【表7】
【0081】
表7の結果は、1つ以上の抗生物質の投与により治療された患者が、従来の薬物療法で通常見られるも改善と同等かそれ以上のQmaxの平均改善がもたらされたことを示している。1つ以上の抗生物質を投与して1年後のQmaxは、従来のBPH経口薬物治療と比較して、-13%~27%の平均改善が見られた。
【0082】
[実施例5]
診療室環境における泌尿器科医による超音波誘導下の二重盲検条件下で、BPHを患う患者に、a)NX-1207含有のpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)またはb)PBS単独、の何れかの前立腺内注射を行った。治療薬またはプラセボの投与の前に、各患者は、7日間のフルオロキノロン系の抗生物質の投与、7日間のメトロニダゾールの投与および第3の広域抗生物質(イミペネム、ゲンタマイシン、セファロチン等)の筋肉内注射で構成される広域抗生物質の投与1コースを開始した。それぞれの患者を、1年以上、定期的な身体診断、臨床検査、および症状の評価について追跡した。症状の評価は、前立腺症状の改善または悪化を評価するために使用される定量的尺度である国際前立腺症状スコア(IPSS)によって測定した。IPSSは以下を定量化している。1)残尿感。2)頻尿。3)尿線途絶。4)尿意切迫感。5)尿勢低下。6)腹圧排尿。7)夜間頻尿。ベースラインIPSSからの差分を、NX-1207を投与した患者とPBSのみを投与した患者との比較した。驚くべきことに、抗生物質とプラセボとのみを投与された患者では、90日後のBPH症状スコアが改善され、経口プラセボ薬のみを投与したBPHの臨床試験で通常見られる改善よりも優れていることが分かった。これらの試験結果をまとめたものを表8に示す。
【表8】
【0083】
表8に示すように、1つ以上の抗生物質で治療した患者は、治療の90日後の測定において、プラセボ単体の投薬と比較して平均IPSSが約123%~350%改善した。したがって、1つ以上の抗生物質の投与は、BPHの治療用のFDA承認の経口薬よりも、
より大きなBPH患者のIPSSの平均改善をもたらす。このような改善がみられることは予期されていなかった。
【0084】
[実施例6]
診療室環境における泌尿器科医による超音波誘導下の二重盲検条件下で、BPHを患う患者に、a)NX-1207含有のpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)またはb)PBS単独、の何れかの前立腺内注射を行った。治療薬またはプラセボの投与の前に、各患者は、7日間のフルオロキノロン系の抗生物質の投与、7日間のメトロニダゾールの投与および第3の広域抗生物質(イミペネム、ゲンタマイシン、セファロチン等)の筋肉内注射で構成される広域抗生物質の投与1コースを開始した。それぞれの患者を、1年以上、定期的な身体診断、臨床検査、および症状の評価について追跡した。症状の評価は、前立腺症状の改善または悪化を評価するために使用される定量的尺度である国際前立腺症状スコア(IPSS)によって測定した。IPSSは以下を定量化している。1)残尿感。2)頻尿。3)尿線途絶。4)尿意切迫感。5)尿勢低下。6)腹圧排尿。7)夜間頻尿。ベースラインIPSSからの差分を、NX-1207を投与した患者とPBSのみを投与した患者との比較した。驚くべきことに、抗生物質とプラセボとのみを投与された患者では、12ヶ月後のBPH症状スコアが改善され、経口プラセボ薬のみを投与したBPHの臨床試験で通常見られる改善よりも優れていることが分かった。これらの試験結果をまとめたものを表9に示す。
【表9】
【0085】
表9に示すように、1つ以上の抗生物質で治療した患者は、治療の1年後の測定において、プラセボ単体の投薬と比較して平均IPSSが約313%~520%改善した。したがって、1つ以上の抗生物質の投与は、BPHの治療用のFDA承認の経口薬よりも、より大きなBPH患者のIPSSの平均改善をもたらす。このような改善がみられることは予期されていなかった。
【0086】
[実施例7]
診療室環境における泌尿器科医による超音波誘導下の二重盲検条件下で、BPHを患う患者に、a)NX-1207含有のpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)またはb)PBS単独、の何れかの前立腺内注射を行った。治療薬またはプラセボの投与の前に、各患者は、7日間のフルオロキノロン系の抗生物質の投与、7日間のメトロニダゾールの投与および第3の広域抗生物質(イミペネム、ゲンタマイシン、セファロチン等)の筋肉内注射で構成される広域抗生物質の投与1コースを開始した。それぞれの患者を、1年以上、定期的な身体診断、臨床検査、および症状の評価について追跡した。尿ピーク流量(Qmax)は、最大尿流量の電子的記録値を出力する流量計を使用して測定された。NX-1207を投与した患者とPBSのみを投与した患者とのQmaxを比較した。驚くべきことに、抗生物質とプラセボとのみを投与された患者では、3ヶ月後の尿最大流量が改善され、経口プラセボ薬のみを投与したBPHの臨床試験で通常見られる改善よりも優れていることが分かった。これらの試験結果をまとめたものを表10に示す。
【表10】
【0087】
表10の結果は、1つ以上の抗生物質の投与により治療された患者が、従来の薬物療法で通常見られるも改善と同等かそれ以上のQmaxの平均改善がもたらされたことを示している。1つ以上の抗生物質を投与して3か月後のQmaxは、プラセボ単体の投与の場合と比較して、約138%~280%の平均改善が見られた。
【0088】
[実施例8]
診療室環境における泌尿器科医による超音波誘導下の二重盲検条件下で、BPHを患う患者に、a)NX-1207含有のpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)またはb)PBS単独、の何れかの前立腺内注射を行った。治療薬またはプラセボの投与の前に、各患者は、7日間のフルオロキノロン系の抗生物質の投与、7日間のメトロニダゾールの投与および第3の広域抗生物質(イミペネム、ゲンタマイシン、セファロチン等)の筋肉内注射で構成される広域抗生物質の投与1コースを開始した。それぞれの患者を、1年以上、定期的な身体診断、臨床検査、および症状の評価について追跡した。尿ピーク流量(Qmax)は、最大尿流量の電子的記録値を出力する流量計を使用して測定された。NX-1207を投与した患者とPBSのみを投与した患者とのQmaxを比較した。驚くべきことに、抗生物質とプラセボとのみを投与された患者では、12ヶ月後の尿最大流量が改善され、経口プラセボ薬のみを投与したBPHの臨床試験で通常見られる改善よりも優れていることが分かった。これらの試験結果をまとめたものを表11に示す。
【表11】
【0089】
表11の結果は、1つ以上の抗生物質の投与を受けた患者には、プラセボ単独の経口投与を受けたBPHの臨床試験において通常見られる改善よりも優れたQmaxの平均改善がもたらされたことを示している。1つ以上の抗生物質を投与した場合の1年後のQmaxは、対照群のプラセボ単体投与の場合と比較して、約138%~280%の平均改善が見られた。
【0090】
[実施例9]
診療室環境における泌尿器科医による超音波誘導下の二重盲検条件下で、BPHを患う患者に、a)NX-1207含有のpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)またはb)PBS単独、の何れかの前立腺内注射を行った。治療薬またはプラセボの投与の前に、各患者は、7日間のフルオロキノロン系の抗生物質の投与、7日間のメトロニダゾールの投与および第3の広域抗生物質(イミペネム、ゲンタマイシン、セファロチン等)
の筋肉内注射で構成される広域抗生物質の投与1コースを開始した。それぞれの患者を、1年以上、定期的な身体診断、臨床検査、および症状の評価について追跡した。症状の評価は、前立腺症状の改善または悪化を評価するために使用される定量的尺度である国際前立腺症状スコア(IPSS)によって測定した。IPSSは以下を定量化している。1)残尿感。2)頻尿。3)尿線途絶。4)尿意切迫感。5)尿勢低下。6)腹圧排尿。7)夜間頻尿。ベースラインIPSSからの差分を、NX-1207を投与した患者とPBSのみを投与した患者との比較した。驚くべきことに、抗生物質とプラセボとのみを投与された患者では、長期間経過(平均42ヶ月)後にBPH症状スコアが改善され、従来の経口BPH薬で通常見られる改善と同程度またはそれよりも優れていることが分かった。これらの試験結果をまとめたものを表12に示す。
【表12】
【0091】
表12に示すように、1つ以上の抗生物質で治療した患者は、治療の42ヶ月後の測定において、従来の経口BPH薬物治療と比較して平均IPSSが約0%~100%改善した。したがって、1つ以上の抗生物質の投与は、従来の経口BPH薬で通常見られる改善の程度と同等またはそれ以上のBPH患者におけるIPSSの平均改善を提供する。このような結果は予期されていなかった。
【0092】
[実施例10]
診療室環境における泌尿器科医による超音波誘導下の二重盲検条件下で、BPHを患う患者に、a)NX-1207含有のpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)またはb)PBS単独、の何れかの前立腺内注射を行った。治療薬またはプラセボの投与の前に、各患者は、7日間のフルオロキノロン系抗生物質の投与、7日間のメトロニダゾールの投与および第3の広域抗生物質(イミペネム、ゲンタマイシン、セファロチン等)の筋肉内注射で構成される広域抗生物質の投与1コースを開始した。それぞれの患者を、1年以上、定期的な身体診断、臨床検査、および症状の評価について追跡した。症状の評価は、前立腺症状の改善または悪化を評価するために使用される定量的尺度である国際前立腺症状スコア(IPSS)によって測定した。IPSSは以下を定量化している。1)残尿感。2)頻尿。3)尿線途絶。4)尿意切迫感。5)尿勢低下。6)腹圧排尿。7)夜間頻尿。ベースラインIPSSからの差分を、NX-1207を投与した患者とPBSのみを投与した患者との比較した。驚くべきことに、抗生物質とプラセボとのみを投与された患者では、長期間経過(平均42ヶ月)後のBPH症状スコアが改善され、経口プラセボ薬のみを投与した場合に通常見られる改善よりも優れていることが分かった。これらの試験結果をまとめたものを表13に示す。
【表13】
【0093】
表13に示すように、1つ以上の抗生物質で治療した患者は、治療の42ヶ月後の測定において、プラセボ単体の投薬と比較して平均IPSSが約100%~300%改善した。したがって、1つ以上の抗生物質の投与は、プラセボ薬単体の経口投与で通常見られる改善の程度以上のBPH患者におけるIPSSの平均改善を提供する。
【0094】
上記の表で参照された公開済論文には、以下の1つ以上が含まれる。McConnell、JD他「急性尿閉のリスクに対するフィナステリドの影響…」NEJM、Vol.338、pp.557-63(1998年);Roehrborn、CG他「デュタステリドおよびタムスロシンによる併用療法の効果…」Eur Urol.11月、58(5):801(2010年);Lukacs、B他「関連する下部尿路症状の管理…」Eur
Urol.、2月、64、pp.493-501(2013年);および、Cindolo、L他「薬物療法中の患者における服薬順守および臨床転帰…」Eur Urol.、2月、68、pp418-425(2015年)。
【0095】
上述の実施例の結果は、抗生物質の使用が、BPHに苦しむ患者のIPSSおよびQmaxの改善に予想外に優れた効果を有することを示している。当業者には、本発明の方法および組成物において、本発明の精神または範囲に反することなく多様な変更および変形が可能であることは明白であろう。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)シプロフロキサシンおよびレボフロキサシンから成る群より選択された少なくとも1つのフルオロキノロン系抗生物質を治療有効量含有する第1組成物と、
b)メトロニダゾールを含有する第2組成物と、
c)イミペネムおよびゲンタマイシンからなる群から選択される抗生物質を含有する第3組成物と、
を含むキットであって、
前記キットは、良性前立腺過形成(BPH)に罹患している哺乳動物の症状を改善するために用いられ、300~600mgの前記第1組成物が1日2回、5日間から10日間投与され、その後300~600mgの前記第2組成物が1日3回、5日間から10日間投与され、その後筋肉内注射によって前記第3組成物として0.1~1.5gのイミペネムが1日1回、1日間以上または50~200mgのゲンタマイシンが1日2回、2日間以上投与されることにより、BPHに罹患している哺乳動物の症状は、国際前立腺症状スコア(IPSS)によって測定すると、プラセボ対照と比較して、またはBPH治療用の経口治療薬と比較して、改善する、キット。
【請求項2】
BPHに罹患している哺乳動物の症状は、国際前立腺症状スコア(IPSS)によって測定すると、1年以内に平均IPSSがベースラインから5~7ポイント低下することによって改善する、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
IPSSの平均改善は、BPHの経口治療薬によるIPSSの平均改善と比較して、最初の1年で30%~150%だけ大きい、請求項1に記載のキット。
【請求項4】
IPSSの平均改善は、プラセボ対照によるIPSSの平均改善と比較して、最初の1年で75%~500%だけ大きい、請求項1に記載のキット。
【請求項5】
42ヶ月以内に平均IPSSがベースラインから4~5ポイント低下する、請求項2に記載のキット。
【請求項6】
BPHの経口治療薬によるIPSSの平均改善と比較して、IPSSの平均改善が42ヶ月以内に200%以下だけ大きくなる、請求項3に記載のキット。
【請求項7】
プラセボ対照によるIPSSの平均改善と比較して、IPSSの平均改善が42ヶ月以内に75%~350%だけ大きくなる、請求項5に記載のキット。
【請求項8】
最初の1年で最大尿流量を1.3~3.0ml/秒増加させることにより、尿ピーク流量(Qmax)を改善する、請求項1に記載のキット。
【請求項9】
プラセボを投与した対照群と比較して、最初の1年で尿ピーク流量(Qmax)を100%~325%改善する、請求項1に記載のキット。
【請求項10】
d)治療有効量のフェキサポチドトリフルタートおよび薬学的に許容される担体を含有する組成物
をさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項11】
タムスロシン、フィナステリド、テラゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、タダラフィル、アルフゾシン、シロドシン、デュタステリド、デュタステリドとタムスロシンとの組み合わせ、ならびにこれらの混合物および組み合わせからなる群から選択される医薬活性剤を治療有効量含有する組成物をさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項12】
e)タムスロシン、フィナステリド、テラゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、タダラフィル、アルフゾシン、シロドシン、デュタステリド、デュタステリドとタムスロシンとの組み合わせ、ならびにこれらの混合物および組み合わせからなる群から選択される医薬活性剤を治療有効量含有する組成物をさらに含む、請求項10に記載のキット。
【外国語明細書】