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特開2024-23284がんのスクリーニング、診断、治療、及び再発における巨細胞の核酸の特徴付けの使用方法
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  • 特開-がんのスクリーニング、診断、治療、及び再発における巨細胞の核酸の特徴付けの使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023284
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】がんのスクリーニング、診断、治療、及び再発における巨細胞の核酸の特徴付けの使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20240214BHJP
   C12Q 1/6827 20180101ALI20240214BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20240214BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6827 Z
G01N33/48 M
G01N33/53 Y
G01N33/48 P
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023192608
(22)【出願日】2023-11-10
(62)【分割の表示】P 2019553848の分割
【原出願日】2018-04-02
(31)【優先権主張番号】62/479,759
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517411139
【氏名又は名称】クレアティブ マイクロテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118382
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 央子
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(72)【発明者】
【氏名】アダムス ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】タン チャーメイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】がんのスクリーニング、診断、治療、及び再発のための、新しいより低侵襲な方法を提供する。
【解決手段】被検者の血液から分離されたがん関連細胞から得られた核酸を収集及び分析し、その核酸を分子分析に供し、その分析から得られたデータを、がんのスクリーニング、診断、治療、及び再発に用いる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを有する被験者の生物サンプルから巨細胞、巨大裸核、又はその両方を分離すること、その巨細胞のサイズを決定すること、並びにがん関連分子変化についてその巨細胞及び/又は巨大裸核を分析することを含み、以前にその被験者から得られた類似のサンプルからの巨細胞に比べてその巨細胞のサイズが増大し、及び以前にその被験者から得られた類似のサンプルからの細胞及び核とはがん関連分子変化が異なる場合、それらの変化はその被験者においてがんが進行していることを示す、巨細胞、巨大裸核、又はその両方をアッセイする方法。
【請求項2】
がんを有する被験者の生物サンプルから巨細胞、巨大裸核、又はその両方を分離すること、並びにその巨細胞及び/又は巨大裸核のがん関連分子変化の数を決定することを含み、がん関連分子変化の数が3又はそれより少ないと決定された場合、その決定は、その被験者が、4以上のがん関連分子変化を有する被験者より、無増悪生存期間(PFS)が長い可能性があるとの予測を示す、巨細胞、巨大裸核、又はその両方におけるがん関連分子変化をアッセイする方法。
【請求項3】
がん関連分子変化が、核酸におけるがん関連変異及び/又はエピジェネティックな修飾の数である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
巨細胞及び/又は巨大裸核が、(i)サイズ排除法、(ii)分析物捕獲エレメント、(iii)赤血球溶解、及び(iv)白血球枯渇、の1以上を用いて、生物サンプルから分離される、請求項1~3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
サイズ排除法が、8ミクロン以上の細胞を保持するフィルターである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
分析物捕獲エレメントが、巨細胞及び/又は巨大裸核の細胞表面又は細胞内マーカーを認識する抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
無傷の核酸、分解されていない核酸、又はそれらの組み合わせを巨細胞、巨大裸核、又はその両方から分離することをさらに含む、請求項1~6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
分析が、単一の巨細胞、2以上の巨細胞群、単一の巨大裸核、2以上の巨大裸核群、又はそれらの組み合わせについて行われる、請求項1~7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
循環腫瘍細胞(CTC)、循環内皮細胞(CEC)、及び上皮間葉転換細胞(EMT)の1以上におけるがん関連分子変化についてアッセイすることをさらに含み、ここで、前記CTC、CEC、及びEMTは、生物サンプルからの巨細胞及び/又は巨大裸核の分離と共に、生物サンプルから分離される、請求項1~8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
がんを有する被検者から得た生物サンプルを、8ミクロン以上の大きさの細胞及び裸核が収集され、収集された細胞及び裸核は巨細胞、巨大裸核、又はその両方を含む、サイズ排除法に供すること、並びに(i)細胞のサイズ、及び(ii)がん関連分子変化について収集された細胞及び裸核を分析し、それにより、(i)巨細胞のサイズ、及び(ii)巨細胞、巨大裸核、又はその両方のがん関連分子変化を分析することを含む、巨細胞、巨大裸核、又はその両方をアッセイする方法。
【請求項11】
がん関連分子変化が、遺伝子の変異、エピジェネティックな修飾、又はその両方である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
収集された細胞及び裸核は、CTC、CTCの裸核、CEC、CECの裸核、EMT、及びEMTの裸核の1以上を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
収集された全ての細胞及び裸核が、がん関連分子変化について分析される、請求項10~12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
がん関連分子変化の同定が、がん関連分子変化の固有性に基づく予後を示す、請求項10~12の何れかに記載の方法。
【請求項15】
がん関連分子変化の同定が、がん関連分子変化の固有性に基づく治療に対する応答の予測を示す、請求項10~12の何れかに記載の方法。
【請求項16】
がん関連分子変化についての分析の前に、細胞及び/又は裸核を、蛍光抗体染色及び/又は比色染色に供することをさらに含む、請求項1~15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
がん関連分子変化についての分析の前に、細胞及び/又は裸核を列挙することをさらに含む、請求項1~16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
分析が、被検者ががんを有することを示す、請求項10~17の何れかに記載の方法。
【請求項19】
がん関連分子変化が単一の分子変化であるか、又は2~5の分子変化である、請求項1~18の何れかに記載の方法。
【請求項20】
がん関連分子変化が2~5の分子変化である、請求項1~19の何れかに記載の方法。
【請求項21】
巨細胞のサイズの追加の決定、及びがん関連分子変化の追加のセットを得ることを少なくとも1回繰り返すこと、並びにそのサイズとその変化セットのそれぞれを比較することをさらに含み、経時的に巨細胞サイズが増大し、及びがん関連分子変化の数が増大する場合、それらの増大はその被験者においてがんが進行していることを示す、請求項1及び4~9の何れかに記載の方法。
【請求項22】
被験者が、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、NSCLC、肉腫、腎臓がん、膀胱がん、結腸がん、大腸がん、子宮肉腫、神経芽細胞腫、食道がん、卵巣がん、黒色腫、及び肝臓がんからなる群より選ばれるがんを有する、請求項1~21の何れかに記載の方法。
【請求項23】
がんの第1タイプが寛解した被験者の生物サンプルから巨細胞、巨大裸核、又はその両方を分離すること、がん関連分子変化についてその巨細胞及び/又は巨大裸核を分析すること、並びにそのがん関連分子変化を、そのがんの第1タイプの寛解より前にその被験者から分離された巨細胞、巨大裸核、又はその両方から得られたがん関連分子変化と比較することを含み、がん関連分子変化の固有性が異なるとき、その違いは、その被験者ががんの第2タイプを有することを示す、巨細胞、巨大裸核、又はその両方におけるがん関連分子変化をアッセイする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、被検者の血液中を循環するがん関連細胞から得られた核酸の特徴付け、及びがんのスクリーニング、診断、治療、及び再発におけるそのような特徴付けの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、細胞に選択的増殖の利点を与え、従ってがんの進展を促進する遺伝子内の変異と定義されるがんのドライバー変異は、典型的には腫瘍組織の分析を通じて見出される。変異の分析には、多くの利用可能な分子技術(すなわち、PCR、配列決定、in situハイブリダイゼーションなど)を使用できる。
【0003】
ドライバー変異は、細胞の不均一性及び亜集団における耐性能が存在するために、研究することが困難な場合がある。腫瘍の不均一性の場合、異なる変異を有する異なる細胞集団が腫瘍内に空間的に存在する。そのため、変異の分析に腫瘍組織の小片を使用する場合、その変異は、腫瘍集団全体に実際に存在する変異のごく一部にすぎない可能性がある。耐性亜集団の場合、経時的に及び治療の後に、薬物耐性変異を有する腫瘍細胞の亜集団が腫瘍領域内で増殖し始める。耐性は経時的に発生するため、変異を検査された元の組織には耐性の変異がない可能性があり、これはその疾患の進展において後に現れる。
【0004】
複数の方法を、不均一性を試験するため、及び耐性腫瘍亜集団を経時的に試験するために使用することができる。
【0005】
第1に、腫瘍組織は、生検から、又は手術後に外科的に切除された腫瘍から得ることができる。腫瘍組織を取得する利点は、適切な数の腫瘍細胞を提供し、そこから正確な変異分析を取得できることである。しかし、多くの潜在的な問題がある。組織を採取した後、腫瘍が変化するかもしれない。腫瘍生検の取得は困難である可能性があり、不可能かもしれず、危険で、費用がかかり、痛みを伴うかもしれない。さらに、再生検では、多数の異質な集団が存在するにも拘わらず、単一の亜集団だけを分離する場合がある。組織サンプルは腫瘍の全領域をカバーすることはできない。
【0006】
第2に、循環腫瘍DNA(ctDNA)は、細胞に関連しない血流中に見られる腫瘍由来の断片化されたDNAである。ctDNAは血液中に見出される遊離DNA(cfDNA)のごく一部にすぎず、cfDNAは血液中の全てのDNAからなり、腫瘍由来のDNAに限定されない。現在、臨床利用の領域のために、ctDNAを利用した、多数の研究、開発、及び商業的努力がなされている。
【0007】
血漿は、腫瘍分析のためのctDNAの供給源として使用される。ctDNAの利点は、リアルタイムで血漿を得ることができることである。しかし、多くの欠点がある。ctDNA分析は、しばしば、腫瘍に関連しない非悪性のバックグラウンド変異を誤認し、正常組織由来の、より一般的なバックグラウンド核酸の、より稀な腫瘍変異を特定できない可能性がある。人が年をとるにつれて、腫瘍に関連しない変異が自然に体内で発生し始め、それはctDNAにおいて誤って同定されるだろう。ctDNAを使用することの懸念のもう1つの原因は、ctDNAの濃度が身体の他からの細胞のDNAと比較して低いことである。
【0008】
Merker, JDらによる優れた論文「Circulating Tumor DNA Analysis in Patients with Cancer, American Society of Clinical Oncology and College of American Pathologists Joint Review, 2018(doi:10.5858/arpa.2018-0901-SA)」の早期リリースは、ctDNAを利用した応用の問題点を議論している。現時点では、固形腫瘍についてのctDNAの彼らの結論と、DNAの配列又はコピー数の変異体の分析は、次の通りである:ctDNAアッセイの幾つかは、進行がんの特定のタイプで臨床的妥当性及び有用性を示した。しかし、進行がんにおけるctDNAアッセイの大多数では臨床的妥当性と有用性の証拠は不十分である。証拠は、ctDNAアッセイの結果と腫瘍標本のジェノタイピングの結果の不一致を示し、ctDNAテストから検出されない結果を確認するための腫瘍組織のジェノタイピングを支持している。早期がん、治療モニタリング、又は残存疾患の検出におけるctDNAアッセイの臨床的有用性の証拠はなく、臨床的妥当性の証拠はほとんどない。臨床試験以外で、ctDNAアッセイががんスクリーニングに有用であることを示唆する臨床的妥当性と臨床的有用性の証拠はない。
【0009】
第3に、腫瘍関連細胞のサンプルの一般に認識されている潜在的な供給源は、固形腫瘍を有する患者の血液中の循環腫瘍細胞(CTC)である。しかし、十分な数のCTCが収集される場合にのみ、CTCはリアルタイムの腫瘍サンプルを提供できる。現在、営利企業や研究者による単一細胞からの配列分析の推奨がある。CTCを配列決定することの利点は、リアルタイムの変異分析を提供できることである。繰り返しになるが、多くの欠点もある。(i)大多数の固形腫瘍では、CTCは患者に見られない。より多くのCTCを有するがんは、主に乳がん、前立腺がん、大腸がんに限られている。(ii)これらの3つのタイプのがんでさえ、CTCは主に後期段階の患者に見られ、初期段階ではほとんど見られない。ステージ4の患者でさえ、CTCは約50%の確率で見出されるだけである。(iii)変異分析の精度は、CTCの数と配列決定方法に依存する。多数のがん変異の正確な分析に必要なCTCの数は、5~50である。(iv)CTCを正確に特定するための基準が不足している。
【0010】
従って、がん関連細胞の核酸を取得及び使用するためのさらなる手段が必要であることは明らかである。そのような手段の開発は、がんのスクリーニング、診断、治療、及び再発のための新しい、より低侵襲な方法を提供するであろう。本発明は、他の関連する目的とともに、そのような手段に向けられている。
【発明の概要】
【0011】
以下に詳細に説明するように、本発明は、一般に、被検者の血液から分離されたがん関連細胞から得られた核酸を収集及び分析し、その核酸を分子分析に供し、その分析から得られたデータを、がんのスクリーニング、診断、治療、及び再発に用いることに向けられている。がん関連細胞のエピジェネティックな修飾は、核酸分析と共に分析できる。
【0012】
核酸は、がん患者などの被検者の血液から分離された循環がん細胞、がん間質細胞、巨細胞から収集される。そのような細胞によって産生される裸核も被検者の血液から分離及び収集される。本発明は、(i)血液、リンパ循環、血清、骨髄、尿、唾液、脳脊髄液、及び他の体液に見られる、そのような細胞の裸核と共に、そのような細胞を収集するための方法、ツール、及び試薬、(ii)その細胞及び裸核から分子情報を取得するアッセイ法、(iii)その細胞及び裸核から分子情報を取得することの他の方法に対する利点、並びに(iv)分子情報の使用、を説明する。
【0013】
細胞及び裸核を収集する方法は、細胞の分子の特徴付け及び変異分析にも用いられ得る細胞特異的な抗原の使用と共に、ろ過やサイズ選択などのサイズに基づく分離技術の使用に基づいている。細胞は、被検者の組織、血液、及びその他の体液から分離でき、そこでは、細胞は、原発/二次腫瘍に関連する分子変化、又は腫瘍とは無関係であるが依然として関心のある臨床標的である分子変化を含む。典型的には、これらの変異は、がんの早期発見、予後、診断、又は予測の情報の決定に用いられる。巨細胞などの細胞の形成は、腫瘍の増殖、進行、拡大に直接関係するため、この細胞に見出される分子変化を検出する能力は、治療と直接相関するであろう。細胞及び裸核は、細胞及び裸核が分子の特徴付けを受けることができるように、ほとんどの固形悪性腫瘍、非固形腫瘍、及び前がん状態において、血液から精製できる。
【0014】
第1の実施態様では、本発明は、サイズ排除法により巨細胞及び巨大裸核を収集する方法からなる、固形腫瘍を有する患者サンプルから無傷の又は分解されていない核酸を収集する方法を含む。一つの局面において、本発明は、被検者から得られた生物サンプルをサイズ排除法に供して、生体試料から巨細胞、巨大裸核、又はその両方を収集することを含む、生体サンプルからの巨細胞、巨大裸核、又はその両方を収集する方法に向けられている。幾つかの局面において、本発明は、さらに、巨細胞、巨大裸核、又はその両方から無傷の又は分解されていない核酸を分離することを含んでもよい。幾つかの局面において、本発明は、また、さらに、巨細胞、巨大裸核、又はその両方からの無傷の又は分解されていない核酸におけるがん関連分子変化を分析することを含んでよい。幾つかの局面において、本発明は、さらに、収集した巨細胞の核酸の分析と共に、エピジェネティック修飾のために、収集した巨細胞を分析することを含んでよい。
【0015】
第2の実施態様において、本発明は、表面マーカーに基づく分析物捕獲エレメント、及び/又は細胞内マーカーに基づくに基づく分析物捕獲エレメントにより、巨細胞及び巨大裸核を収集する方法からなる、固体腫瘍を有する患者サンプルから無傷の又は分解されていない核酸を収集する方法を含む。一つの局面において、本発明は、被検者から得た生物サンプルを、巨細胞及び/又は巨大裸核の表面マーカーを使用する分析物捕獲法に供して、それにより生物サンプルから巨細胞、巨大裸核、又はその両方を収集することを含む、生物サンプルからの巨細胞、巨大裸核、又はその両方の収集方法に向けられている。幾つかの局面において、本発明は、さらに、巨細胞、巨大裸核、又はその両方からの無傷の又は分解されていない核酸を分離することを含んでよい。幾つかの局面において、本発明は、また、さらに、巨細胞、巨大裸核、又はその両方からの無傷の又は分解されていない核酸におけるがん関連分子変化を分析することを含んでよい。幾つかの局面において、本発明は、さらに、収集した巨細胞からの核酸の分析に加えて、エピジェネティックな修飾について収集された巨細胞を分析することを含んでよい。
【0016】
第3の実施態様において、本発明は、赤血球溶解及び白血球枯渇により巨細胞及び巨大裸核を収集する方法からなる、固形腫瘍を有する患者サンプルから無傷の又は分解されていない核酸を収集する方法を含む。赤血球溶解は、あるCAMLを溶解できる。白血球溶解は、あるCAMLを除去できる。一つの局面において、本発明は、被検者から得た生物サンプルを、赤血球溶解、白血球枯渇、又はその両方に供し、それにより、生物サンプルから巨細胞、巨大裸核、又はその両方を収集することを含む、生物サンプルから巨細胞、巨大裸核、又はその両方を収集する方法に向けられている。ある局面において、本発明は、さらに、巨細胞、巨大裸核、又はその両方から無傷の又は分解されていない核酸を分離することを含んでよい。ある局面において、本発明は、また、さらに、巨細胞、巨大裸核、又はその両方からの無傷の又は分解されていない核酸におけるがん関連分子変化を分析することを含んでよい。ある局面において、本発明は、さらに、収集した巨細胞からの核酸の分析に加えて、エピジェネティックな修飾について収集した巨細胞を分析することを含んでよい。
【0017】
もう一つの実施態様において、本発明は、がん関連分子変化について無傷の核酸を分析する方法を含む。単一の巨細胞、巨細胞群、単一の巨大裸核、巨大裸核群、及び巨大裸核を有する巨細胞について分析することができる。同様に、本発明の第1~第3の実施態様のあるもの、及びそれらの局面において、巨細胞及び/又は巨大裸核からの無傷の又は分解されていない核酸の分析は、単一の巨細胞、巨細胞群、単一の巨大裸核、巨大裸核群、又は巨細胞と巨大裸核の両方からの核酸の分析であってよい。本発明のある局面において、無傷の又は分解されていない核酸の分析は、巨細胞及び/又は巨大裸核からの無傷の又は分解されていない核酸の分析に限定されるであろう。本発明の他の局面において、巨細胞及び/又は巨大裸核が分離されたときにまた捕獲された、がんに関連しない他の細胞からの無傷の又は分解されていない核酸が、バックグランド又は汚染した核酸として分析に含まれるであろう。そのような他の細胞は、それには限定されないが、白血球を含む。ある局面において、本発明は、さらに、巨細胞からの核酸の分析に加えて、エピジェネティックな修飾について巨細胞を分析することを含んでよい。
【0018】
もう一つの局面において、本発明は、がん関連分子変化について無傷の核酸を分析する方法を含む。循環腫瘍細胞(CTC)と巨細胞、CTCと巨大裸核、CTC、循環内皮細胞(CEC)、上皮間葉転換細胞(EMT)、クラスター、及び他の細胞と共に巨細胞と巨大裸核の分析を行える。同様に、本発明の第1~第3の実施態様のあるもの、及びそれらの局面では、巨細胞及び/又は巨大裸核からの無傷の又は分解されていない核酸の分析は、さらに、単一の巨細胞、巨細胞群、単一の巨大裸核、巨大裸核群、又は巨細胞と巨大裸核の両方からの核酸の分析と共に、CTC、CEC、及びEMTの1以上からの無傷の又は分解されていない核酸の分析を含んでよい。本発明のある局面では、無傷の又は分解されていない核酸の分析は、巨細胞、CTC、CEC、及びEMT、並びに/又は巨大裸核からの無傷の又は分解されていない核酸の分析に限定されるであろう。本発明の他の局面では、巨細胞、CTC、CEC、及びEMT、並びに/又は巨大裸核が分離されたときにまた捕獲されたがんに関連しない他の細胞からの無傷の又は分解されていない核酸が、バックグランド又は汚染した核酸として分析に含まれるであろう。このような他の細胞は、それには限定されないが、白血球を含む。ある局面において、本発明は、さらに、細胞(例えば、巨細胞、CTC、CEC、EMTなど)からの核酸の分析に加えて、エピジェネティックな修飾についてこのような細胞を分析することを含んでよい。
【0019】
もう一つの実施態様において、本発明は、分子変化について、サイズ排除法により捕獲された全ての細胞からの核酸を分析する方法を含む。同様に、本発明の第1~第3の実施態様のあるもの、及びその局面において、巨細胞及び/又は巨大裸核からの無傷の又は分解されていない核酸の分析は、さらに、単一の巨細胞、巨細胞群、単一の巨大裸核、巨大裸核群、又は巨細胞と巨大裸核の両方からの核酸の分析と共に、サイズ排除法により捕獲された全ての細胞からの無傷の又は分解されていない核酸の分析を含んでよい。このような細胞は、それには限定されないが、CTC、CEC、EMT、及び白血球のようながんに関連しない細胞を含む。ある局面において、本発明は、さらに、収集された全ての細胞からの核酸の分析に加えて、エピジェネティックな修飾についてこのような細胞を分析することを含んでよい。
【0020】
もう一つの実施態様において、本発明は、サンプル:(i)直接、分子分析、(ii)細胞が蛍光抗体または比色染色で染色された後に分子分析を行う、(iii)液体を載せることで顕微鏡のスライドグラスの上に載せられ、4℃の冷蔵庫に保存された細胞の分子分析を行う、からの巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核を収集した後に、異なる段階で分子分析を行うことを含む。同様に、本発明の第1~第3の実施態様のあるもの、及びそれらの局面において、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核からの無傷の又は分解されていない核酸の分析は、(i)生物サンプルから細胞及び/又は裸核を収集した後、(ii)(i)での収集の後であって、蛍光抗体又は比色染色により細胞及び/又は裸核が染色された後、又は(iii)(i)での収集の後に、任意に(ii)の染色を行った後であって、細胞及び/又は裸核が顕微鏡スライドの上に載せられ、任意に4℃で保存された後に行ってよい。ある局面において、本発明は、さらに、収集した細胞からの核酸の分析に加えて、エピジェネティックな修飾についてこのような細胞を分析することを含んでよい。
【0021】
もう一つの実施態様において、本発明は、患者サンプル中の、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核から得られた無傷の核酸から得られたがん関連分子変化を得ることによるがんの早期検出方法を含む。同様に、本発明の第1~第3の実施態様のあるもの、及びそれらの局面において、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核から得られた無傷の又は分解されていない核酸の分析が、その核酸におけるがん関連分子変化を明らかにするとき、その被検者はがんを有すると診断される。ある局面において、本発明は、さらに、このような細胞からの核酸の分析に加えて、エピジェネティックな修飾についてその細胞を分析することを含んでよい。
【0022】
もう一つの実施態様において、本発明は、患者サンプル中の、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核から得られた無傷の核酸を収集することから得られた新しいがん関連分子変化を得ることによりがん治療への耐性を決定する方法を含む。同様に、本発明の第1~第3の実施態様のあるもの、及びそれらの局面において、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核からの無傷の又は分解されていない核酸の分析が、がん治療前に被検者から収集された同様の生物サンプルから得られた核酸のがん関連分子変化の第1のセットと異なる、核酸のがん関連分子変化の第2のセットを明らかにするとき、被検者はそのがん治療に耐性であると決定される。ある局面において、本発明は、さらに、このような細胞からの核酸の分析に加えて、エピジェネティックな修飾についてその細胞を分析することを含んでよい。
【0023】
別の実施態様において、本発明は、患者サンプル中の、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核から得られた無傷の核酸を収集することから得られるがん関連分子変化の数を取得することにより、がんの予後を提供する方法を含む。同様に、本発明の第1~第3の実施態様のあるもの、及びそれらの局面において、その方法は、さらに、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核の核酸におけるがん関連分子変化の数に基づき、がんの予後を判定することを含んでよい。ある局面において、本発明は、さらに、このような細胞からの核酸の分析に加えて、エピジェネティックな修飾についてその細胞を分析することを含んでよい。
【0024】
もう一つの実施態様において、本発明は、患者サンプル中の、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核から得られた無傷の核酸を収集することから得られるがん関連分子変化の数の変化を取得することにより、がんの治療への反応を予測する方法を含む。同様に、本発明の第1~第3の実施態様のあるもの、及びそれらの局面において、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核の第1のサンプルからの核酸と、細胞及び/又は裸核の第2のサンプルからの核酸との間に、核酸のがん関連分子変化の数の変化が検出されるとき、がん治療へのその被検者の反応の予測がなされる。ある局面において、その被検者は、その被検者から細胞及び/又は裸核の第1及び第2のサンプルが得られた時点の間にがん治療を受ける。ある局面において、本発明は、さらに、このような細胞からの核酸の分析に加えて、エピジェネティックな修飾についてその細胞を分析することを含んでよい。
【0025】
もう一つの実施態様において、本発明は、患者サンプル中の、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核から得られた無傷の核酸を収集することから得られる、既知のがん関連分子変化の存在を決定することにより、残存するがんを検出する方法を含む。同様に、本発明の第1~第3の実施態様のあるもの、及びそれらの局面において、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核のサンプルからの核酸におけるがん関連分子変化のセットの固有性が、その被検者からの同様の生物サンプルから、より前に得られた、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核のサンプルからの核酸におけるがん関連分子変化のセットの固有性と同じであることが見出されたとき、その被検者に残存するがんが検出される。ある局面において、その被検者は、その被検者から細胞及び/又は裸核の第1及び第2のサンプルが得られた時点の間にがん治療を受ける。ある局面において、本発明は、さらに、このような細胞からの核酸の分析に加えて、エピジェネティックな修飾についてその細胞を分析することを含んでよい。
【0026】
もう一つの実施態様において、本発明は、患者サンプル中の、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核から得られた無傷の核酸を収集することから得られる、既知のがん関連分子変化の存在の再発を決定することにより、がん再発を検出する方法を含む。同様に、本発明の第1~第3の実施態様のあるもの、及びそれらの局面において、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核のサンプルからの核酸におけるがん関連分子変化のセットの固有性が、その被検者からの同様の生物サンプルから、より前に得られた、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核のサンプルからの核酸におけるがん関連分子変化のセットの固有性と同じであることが見出されたとき、がん再発がその被検者に検出される。ある局面において、その被検者は、その被検者から細胞及び/又は裸核の第1及び第2のサンプルが得られた時点の間にがん治療を受ける。ある局面において、本発明は、さらに、このような細胞からの核酸の分析に加えて、エピジェネティックな修飾についてその細胞を分析することを含んでよい。
【0027】
もう一つの実施態様において、本発明は、患者サンプル中の、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核から得られた無傷の核酸を収集することから得られる、新しいがん関連分子変化を得ることにより、寛解状態のがん患者の新しいがんを決定する方法を含む。同様に、本発明の第1~第3の実施態様のあるもの、及びそれらの局面において、被検者は寛解状態のがん患者であってよく、また、がん関連分子変化のセットは、がんに相当するがん関連分子変化のセットとは異なっており、そのためその患者は寛解状態にある。ある局面において、本発明は、さらに、このような細胞からの核酸の分析に加えて、エピジェネティックな修飾についてその細胞を分析することを含んでよい。
【0028】
もう一つの実施態様において、本発明は、患者サンプル中の、巨細胞及び/又は巨大裸核のような細胞及び/又は裸核から得られた無傷の核酸を収集することから得られる、がん関連分子変化情報を得ることにより、治療可能な前がん状態を検出する方法を含む。同様に、本発明の第1~第3の実施態様のあるもの、及びそれらの局面において、がんは治療可能な前がん状態である。ある局面において、本発明は、さらに、このような細胞からの核酸の分析に加えて、エピジェネティックな修飾についてその細胞を分析することを含んでよい。
【0029】
巨細胞及び/又は巨大裸核は、がん患者の単一の分子変化、又は多数の分子変化を評価するために使用できる。本発明の第1~第3の実施態様のそれぞれ、及びそれらの局面において、がん関連分子変化は、単一の分子変化、2~5、6~10、11~15、16~20、又はそれより多い分子変化であり得る。
【0030】
巨細胞及び/又は巨大裸核は、分子分析のために、個別に拾い出すことができる。本発明の第1~第3の実施態様のそれぞれ、及びそれらの局面において、分析は、単一の巨細胞、又は単一の巨大裸核について行ってよい。
【0031】
フィルター上の全ての巨細胞及び巨大裸核は、同時に、分子変化の分析を行える。本発明の第1~第3の実施態様のそれぞれ、及びそれらの局面において、分析は、一つのサンプル中の各巨細胞又は各巨大裸核について行ってよい。
【0032】
がんの分子分析は、巨細胞及び巨大裸核の分析により、リアルタイム(順時的なタイムポイント)に得ることができる。本発明の第1~第3の実施態様のそれぞれ、及びそれらの局面において、分析は、被検者からの2以上の類似した生物サンプルについて繰り返してよい。
【0033】
巨細胞及び巨大裸核に検出される分子変化は、そのがんを治療するのに適した薬剤があれば、治療の決定の根拠として使用できる。同様に、本発明の第1~第3の実施態様のあるもの、及びそれらの局面において、その方法は、分析結果に基づき、被検者の治療を決定することをさらに含む。
【0034】
巨細胞は、活動性ウィルスが感染した血液中に見出されてきた。これらの患者の巨細胞の配列決定は、ウィルスの活動性と患者の状態についての情報を提供できる。同様に、本発明の第1~第3の実施態様のあるもの、及びそれらの局面において、この方法は、さらに、巨細胞及び/又は巨大裸核中のウィルス核酸を検出し、及び/又は配列決定することを含む。
【0035】
巨細胞は敗血症患者の血液中にも見出されてきた。分子アッセイ又は配列決定は、感染についての様々な情報を提供することができる。同様に、本発明の第1~第3の実施態様のあるもの、及びそれらの局面において、この方法は、さらに、細胞及び/又は巨大裸核中の細菌の核酸を検出し、及び/又は配列決定することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、核及び細胞質を示す異なる細胞質形態を有する4つの異なるCAML(A~D)の画像を示す。
図2図2は、核を失ったCAMLの細胞質、及びその隣に位置する押し出された核の画像を示す。
図3図3は、核の表面に細胞質がほとんどない、2つの異なる巨大裸核(A~B)の画像を示す。
図4図4は、CAMLサイズと細胞あたりのCEP17ドット数との関係を示す。
図5A図5Aは、同じデータについて、CAMLサイズに対して変異数をプロットする方法である。
図5B図5Bは、同じデータについて、CAMLサイズに対して変異数をプロットする図5Aとは異なる方法である。
図6図6は、CAML核酸の配列決定から得られた、変異が少ない患者より変異が多い患者で、無増悪生存期間が非常に短いことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
定義

ここで使用される「分子変化」という用語は、核酸における1以上の変異、及び1以上のエピジェネティックな修飾を意味する。
【0038】
ここで使用される「変異」という用語は、被検者のゲノムのヌクレオチド配列の永久的な変化を意味する。変異は、増幅、置換、挿入、欠失、融合、転座、染色体逆位、ヘテロ接合性の喪失、及びそれらの組み合わせの1つ以上であり得る。
【0039】
ここで使用される「エピジェネティック修飾」という用語は、DNAメチル化、ヒストン修飾、及びそれらの組み合わせを意味する。
【0040】
ここでいう核酸(巨細胞及び巨大裸核からのものを含む)の変異を分析するために使用できる分子技術及び方法は、核酸配列決定、PCR、発現クローニング、ゲル電気泳動、DNAマイクロアレイ、DNAチップ、マイクロサテライトエンリッチメント、ウエスタンブロッティング、FISH、ddPCR、及び当業者に知られているであろう他の適した技術及び方法を含む。エピジェネティックな変化の分析に適したその他の技術及び方法は、制限エンドヌクレアーゼ、バイサルファイト配列決定、1分子リアルタイム配列決定、及び当業者に知られているであろう他の適した技術及び方法を含む。
【0041】
循環CAMLは、がんを有する被検者の血液中に見られるがん関連間質細胞である。「がん関連マクロファージ様細胞(CAML)」という用語は、がん患者の血液中の倍数体巨細胞を意味する。CAMLのサイズは、典型的には通常25~300μmである。CAMLは腫瘍細胞と腫瘍破片を貪食するため、がんの変異をコードし、及び/又はエピジェネティックな修飾を示す核酸を含んでいる。それらは腫瘍細胞を貪食するため、多核である。CAMLは、単一の腫瘍細胞よりも多くの核を含む。CAMLは、検査された全ての固形腫瘍とがんの全てのステージに関連している。CAMLはそのサイズのために、ここでは巨大とも称される。CAMLはCD45(-)又はCD45(+)の何れかであり得、CD11c、CD14、及びCD31を発現でき、このことは、それらの起源が骨髄系列であることを確認する。それらは循環腫瘍細胞(CTC)と細胞破片を貪食する過程でしばしば見られる[1-7]。ctDNAと異なり、各CAMLは高品質の核酸だけでなく、個々の核酸の複数のコピーも提供する。
【0042】
ここで使用される「巨細胞」という用語は、CAMLを指す。それらは赤血球や白血球よりも大きい。多くの疾患が患者の血液中に巨細胞を生成する。CAMLは、固形腫瘍患者の血液に見られる巨細胞である。
【0043】
ここで使用される「裸核」という用語は、細胞から分離され、切り離された核を指す。ここで使用される「巨大裸核」という用語は、巨細胞から分離され、切り離された裸核を指す。巨大裸核は、細胞質を有さない単一のCTCの核より大きい。サイズは10~70μmの範囲である。CAMLから押し出された巨大裸核も、がん患者の血液中に高頻度で見出される。裸核は、それらが分離される細胞に関係なく、血液などの被験者から分離された生物サンプルに見出される、このように自然発生する裸核と、in vitroで細胞から調製された裸核との両方を含む。
【0044】
ここで使用される「ctDNA」という用語は、循環腫瘍DNAを意味する。ctDNAは、細胞に関連しない血流中の腫瘍由来の断片化されたDNAである。ctDNAは遊離DNA(cfDNA)と混同されるべきでない。遊離DNAは、血流中を自由に循環しているが必ずしも腫瘍起源ではないDNAを説明する、より広義の用語である。cfDNAは、正常なDNAとctDNAの両方を含む。組織生検と同じ診断情報を提供できる血液検査が求められている。採血は潜在的により便利であり、リスクが少なく、組織生検よりも低コストで実施できる。血液は連続方式で採取できる。ctDNAがこの役割を果たし、多くの臨床的有用性を提供できることが望まれる。前述のように、現在ctDNAの応用は限られている。主な理由は、cfDNAの中でもctDNAの量は限られており、ctDNAが通常断片化されていることである。
【0045】
ここで使用される「分析物」という用語は、分析を受けるあらゆる物質又は化学成分を指す。
【0046】
ここで使用される「分析物捕獲エレメント」という用語は、分析物を認識し、分析物に結合する結合部分を指す。分析物捕獲エレメントは、抗体、抗生物質、抗体分析物の抗原標的、細胞受容体タンパク質、アビジン、NeutrAvidin(登録商標)、ビオチン、核酸、又は核酸に関連するもの(例えば、オリゴヌクレオチド、in situハイブリダイゼーション、DNA、cDNA、マイクロRNA、mRNA、及びRNA)、リボプローブ、多糖、単糖、オリゴ糖、ポリ-L-リジン、ポリミキシンB、ダウノマイシン、アクリジン、スペルミン、アプタマー、Vectabond(商標)、アミノ-ccylシラン、Superfrost Plus(商標)、Maple's、NaOH/ポリ-L-リジン、ボザイム、酵素、リガンド、細胞、及び細胞断片、並びに他の生物粒子)であり得る。
【0047】
ここで使用される「サンプル」、「生物サンプル」、及び「患者サンプル」という用語は同義語であり、細胞又は核酸を含んでよく、被検者から得られるサンプルを意味することを意図している。このようなサンプルは主に液状である。最も有用な患者サンプルは血液であるが、適したサンプルは、リンパ組織、リンパ循環、血清、骨髄、尿、唾液、羊水、胆汁、痰、腹水、胸水、子宮頸部膣液、卵巣嚢胞液、子宮内膜液、子宮洗浄液、リンパ浮腫、脳脊髄液、並びに巨細胞のような細胞及び/又は巨大裸核のような核酸を含むか、又は含むかもしれない他の体液も含む。サンプルは、巨細胞などの増殖細胞を混ぜた増殖培地でもあり得る。本発明の方法を使用して分析される適切なサンプル量は、方法が実施されるサンプルの固有性、及び方法の実施に使用される手段の影響を受ける。しかし、サンプルが血液である場合、適した容量は一般的に1~100mlの範囲であろう。一つの局面において、容量は3~50mlの範囲であろう。特に適した容量は、それには限定されないが、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10 ml又はそれより多いであろう。
【0048】
ここで使用される「被検者」という用語は、それには限定されないが、ヒト、類人猿、犬、猫、馬、牛、羊のような哺乳類、又は魚を指す。ここで使用される「患者」という用語は、がんを有する被検者、寛解中の被検者のような以前にがんを有していた被検者、又は未だがんと診断されていないがんを有する疑いのある被検者を指す。
【0049】
現在、腫瘍部位から一貫して生成し、また腫瘍の分子変化の分析に使用できる血液中の分析物を特定すること、及びこのような分析物を収集する方法が望まれている。がんのスクリーニング及び診断用途で血液から変異情報を得るために現在広く採用されている方法は、ctDNAを使用することであり、これには多くの制限がある。DNAメチル化における変化(即ち、エピジェネティックな修飾)も血液及び便中のがんを検出するために使用されてきた。CTCはPCRおよび変異分析を行うために広く使用されてきた。しかし、CTCは、主に乳がん、前立腺がん、大腸がんの末期に見出されるが、同じがんの初期には見出されず、他の固形腫瘍にはほとんど見出されない。全ての場合において、間質細胞に関連する変異は分析の一部ではない。
【0050】
このように、がん細胞関連核酸に対する分子変化を、特に経時的に容易かつ再現性良く分析する能力は、がんのスクリーニング、診断、治療、及び再発の新しい方法の基礎として役立ち得る。本発明は、このような目的に向けられている。特に、ここで説明されるのは、がんのスクリーニング、診断、治療、及び再発に関連する方法における、巨細胞からの核酸、及び体液からの巨大裸核の使用である。
【0051】
Daniel Adams[1-7]により同定された巨細胞(例えば、CAML)は、原発腫瘍部位から精製し、主にがんの存在の結果として存在することが知られている。巨細胞は、タンパク質、核酸、及び無傷の腫瘍細胞を貪食することが知られている。それらは、原発腫瘍マーカーと一致すると説明されてきた大量の腫瘍特異的マーカーを有している。巨細胞の分子変化の精製と同定は、予後の判定と予測的な薬物治療に適用できる。
【0052】
図1A~1Dは、4つの典型的なCAMLを示している。それらは、赤血球、白血球、及びCTCよりもはるかに大きい。それらは異なる形態を有するが、それらは全て、1以上の拡大した融合核及び/又は散在した個々の核と共に、倍数体の核を有する。融合核のサイズは10~70μmであり得る。CAMLでのマーカーの発現は、がんと患者により異なり得る。
【0053】
図2は、CAMLの核が時々押し出され得ることを示す。図2は、細胞質だけ有するCAMLとそれに隣り合う巨大裸核を示しており[4]、同じ画像に両方が見られる珍しい観察結果である。しかし、CAMLが見出されるとき、裸核が一般的に見出される。図3A~3Bは、幾らかの細胞質が核の表面の周りにあるが、それらを細胞として識別するのに十分ではないことを示している。
【0054】
図1~3は、CAML中の巨大核が、複数の細胞からのDNAを含むことに関係していることを示唆している。CAMLは、貪食された核の数の指標である染色体プローブ17(CEP17)ドットの数について評価される。図4は、CEP17に対してCAMLサイズをプロットしたものであり、巨大CAMLが多くの細胞からDNAを得たことを示している。図4は、50μmを超えるサイズのCAMLは、25~50μmの間のサイズのCAMLよりも、より多くのCEP17ドットを有することを示している。
【0055】
上述のように、本発明は、ステージI及び前がん状態の多くの時期さえ含む、がんの全ての段階における全ての主要な固形腫瘍のための血液検査による分析のために、無傷の核DNAの多コピーを含むCAMLからの核酸を提供する。本発明は、また、RNA、及び核酸のエピジェネティック分析を提供する。ここで説明するのは、DNA、RNA、及びエピジェネティクスの分析に十分な量の核酸を収集する方法である。ここで説明されるのは、また、核物質に基づく臨床応用である。
【0056】
CAMLは、がん患者のリアルタイム分子分析に理想的である。CAMLは、これまでに評価された16の全ての固形腫瘍:乳がん、前立腺がん、膵臓がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、肉腫、腎臓がん、膀胱がん、大腸がん、子宮肉腫、神経芽細胞腫、食道がん、卵巣がん、黒色腫、及び肝臓がん、の血液で見出された。従って、本発明の各方法に関連して言及されるがんには、これらのがんの1以上が含まれる。CAMLは他の固形腫瘍と関連して発見されることも予期される。CAMLは、7.5mLの血液のほとんどにおけるステージI期さえ含む、がんの全ての段階で見出される。CAMLは、例えば3~50mLの血液を収集することで分離できる。50mLは、細胞を分離するための許容量である。単一のCAML細胞は、倍数体であるため、正確に配列決定されよう。
【0057】
後期段階の乳がん、前立腺がん、及び大腸がんの患者は、しばしば循環腫瘍細胞(CTC)を有し、CTCは有糸分裂中でない限り単核を有する[8-17]。CTCクラスターは、これら3種類のがんのステージIVの患者に見られることがある。CTCは初期段階では一般的ではなく、他のタイプの固形腫瘍では一般的ではない。
【0058】
上皮間葉転換(EMT)細胞は、がん患者の血液中にしばしば、そして通常はクラスターで見られる。EMTは、がんマーカーとがんDNAを有している。
【0059】
循環内皮細胞(CEC)のサブタイプであるがん関連血管内皮細胞(CAVE)も、がんに関連する同じ変異を有する[16]。
【0060】
方法

全ての赤血球及び大部分の白血球を除去し、8ミクロンより大きい細胞を保持するサイズ排除法は、巨細胞及び巨大裸核を収集するのに適した手段である。多くの適切なサイズ排除法がある。唯一の目的が核酸を取得することであれば、サイズ排除法のタイプは、その方法が巨細胞又は巨大裸核の幾つかを失わない限り、重要ではない。従って、本発明の方法で使用されるサイズ排除法は、一般にサイズが5ミクロンを超える大きさの細胞を保持するものである。本発明の方法で特に使用されるサイズ排除法は、サイズが5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又はそれより大きい細胞を保持するものである。
【0061】
細胞溶解及び核酸分析の前に患者サンプルから分離された巨細胞のマーカー情報、細胞数およびサイズ測定情報を取得することも望まれるのであれば、巨細胞を捕獲するための濾過技術の使用が好ましいサイズ排除プラットフォームである。患者のサンプルはフィルターを通過する。ほとんどの白血球(WBC)と赤血球(RBC)はフィルターの細孔を通過する一方、大細胞はフィルターに捕捉される。
【0062】
巨細胞、巨大裸核、及びCTC、EMT、CAVEのような他の細胞、並びに細胞クラスターは、全てフィルター上に保持され得、次いで視覚化され、カウントされる。細胞がCAMLのマーカーを標的とする蛍光標識抗体で染色されるか、又は比色染色で染色される場合、染色強度を測定し、サイズを決定できる。フィルターを顕微鏡スライドに載せることができ、細胞を画像にすることができる。スライド上のフィルターは、後に分析するために4℃で保存することもできる。
【0063】
幾つかのサイズ排除法は、捕獲された細胞を溶液に放出する。幾つかの方法は、細胞をフィルター又はチップ上に保持する。巨細胞の特徴を決定する必要がないのであれば、細胞は、捕獲後直ぐに核酸分析のために溶解できる。
【0064】
以下のステップからなる、細胞情報を必要とする、血液の濾過技術の、より詳細な説明。プロセスは、フィルターホルダーにフィルターを配置することから始まる。血液のような被検者からの生物サンプルは、血液がサンプルの場合、CellSave(商標)チューブなどの中に収集される。血液は、細胞を僅かに硬くして、細胞がフィルターの孔に無理に入ったり、溶解したりするのを防ぐために、温和な前固定バッファー中で前固定される。前固定された血液は、細胞溶解を減らすために陰圧により再びフィルターを通過させられる。細胞をPBSを用いてフィルター上で洗浄する。細胞情報が必要でない場合は、細胞溶解を直ぐに実行し、核酸を、変異及び/又はエピジェネティック修飾の分子分析に供することができる。
【0065】
細胞情報が必要な場合は、後固定を行い、その後PBSで洗浄すればよい。細胞膜は透過処理に供し、その後PBSで洗浄することができる。細胞染色を行い、その後さらにPBSで洗浄することができる。フィルターを、マウント液とカバーガラスを用いてスライドガラスの上に載せることができる。細胞は、次いで、フィルターの上で画像化され得る。画像化の後、細胞は、4℃で保存して、分子分析のために数年以内にいつでも溶解させることができる。
【0066】
巨細胞はまた、「ポリマー精密ろ過装置、その製造方法、及び精密ろ過装置の使用」と題する国際特許出願公開番号WO13/078409の図28に説明及び示される装置を用いて、被検者からろ過により直接収集することができる。巨細胞の分子分析は、細胞捕獲又は抗体染色の直後に行える。
【0067】
巨細胞は、赤血球溶解によっても収集できる。しかし、WBCの数がサンプル内の巨細胞及び巨大裸核の数を圧倒する可能性があるため、注意しなければならい。
【0068】
巨細胞は、白血球の枯渇によっても得ることができる。しかし、このような枯渇により一部の巨細胞が失われるかもしれないため、再度、注意しなければならい。
【0069】
巨細胞は、CD14、CD31、及び/又は巨細胞における他のマーカーのような、細胞表面上のマーカーを標的とする分析物捕獲エレメント(上記で定義)によっても収集できる。抗体のような捕獲エレメントを、磁気ビーズ、磁気ナノ粒子、及びその他の様々な粒子上にコーティングすることができる。粒子はサンプルと混合される。粒子を集めると、巨細胞が濃縮される。この技術は、サンプルから細胞を分離し、そして、他に細胞を特徴付けすることなく、細胞の核酸の分子分析を直接行うのに特に適している。この方法は、巨大裸核を捕獲しない。
【0070】
分析物捕獲エレメントは、表面、カラム、及び他の構造上にコーティングすることができる。サンプルは、捕獲エレメントでコーティングされた表面、又はカラム若しくは構造の周囲を流れる。
【0071】
上記示唆したように、細胞及び/又は裸核の分子分析は、単一の細胞、又は複数の細胞、単一の裸核、又は複数の裸核について行える。通常、細胞は巨細胞であるが、特定の捕獲方法は巨細胞に加えて細胞を捕獲するため、WBC、CTC、CAVES、EMTなどを含むことができる。これらの細胞は、求められている変異やエピジェネティックな修飾を含まないかもしれないため、「汚染」細胞とみなされるかもしれない。これはWBCの場合であるが、サンプル中のそれらの存在は、通常、巨細胞からの核酸の分子分析を妨害しないであろう。同様に、巨大裸核は、通常、巨細胞に由来するが、WBC、CTC、CAVES、EMTなどの他の細胞にも由来することができる。
【0072】
巨細胞は、がんに応じて、その中に、核酸、ミトコンドリアDNA、タンパク質、細菌、ウイルス、胞子、胞嚢体、細胞、細胞断片、受容体、オリゴヌクレオチド、抗体、酵素、抗生物質、ペプチド、炭水化物、ホルモン、毒素、疾患マーカー、DNA、cDNA、miRNA、mRNA、RNA、天然有機化合物、殺虫剤のような合成有機化合物、医薬品、食品添加物、染料、及び無機化合物を含んでよい。
【0073】
巨細胞を捕獲し、培養して分析物を拡大することができる。巨細胞内の腫瘍分子変化を増幅する巨細胞増殖が見出されている。一部のウィルス、バクテリア、及びその他の病原体は、培養中に巨細胞が増殖するにつれて巨細胞内で増殖することができ、これも興味深いかもしれない。
【0074】
ツール

上記説明した方法を可能にするツールの発明は、捕獲エレメント認識エレメントでコーティングされた又はされていない、多様なサイズのフィルターであり、シリンジ、ポンプ、真空吸引を用いて、手動、半手動で行って、又は自動化された器具で、サンプルはそれを通過する。
【実施例0075】
3人の結腸がん、3人の乳がん、3人の肺がんを含む9人のがん患者の血液から分離された巨細胞の核酸の分子変化を検出するために実験が行われた。巨細胞を収集して溶解し、がんの変異について核酸を配列決定した。さらに、3人の患者からの巨細胞核酸を2つの時点で一時的に分析して、特定された変異の安定性を決定した。全血を前固定し、ろ過した。ろ過後、フィルター上の細胞を後固定し、透過処理し、バイオマーカーのDAPI、CD45、及びサイトケラチンについて染色して、巨細胞の固有性を確認した。

・実験1- 巨細胞を有する9人の患者からのろ過されたサンプルを溶解に供し、50遺伝子腫瘍パネルに対して核酸を分析した(表1)。検査された9サンプルのそれぞれでがん変異が見出された。
・実験2- 3人の患者が2つの時点(3~4週間間隔)で採血され、巨細胞が溶解され、核酸が50遺伝子パネルに対して分析され(表1)、変異が比較された。両方の時点で、同じ患者サンプルで同じ変異が見出された。
【0076】
詳細な実験手順は以下の通りである。7.5mLの全血サンプルを前固定バッファーと1:1で混合し、15分間インキュベートした。CellSieve(商標)フィルター(Creatv MicroTech、Potomac、MD)をフィルターホルダーに入れ、5mlのPBSで洗浄した。血液をそのフィルターで3分間超ろ過し、フィルターを5mLのPBSで洗浄した。CellSieve(商標)フィルター上の細胞を後固定した後、洗浄した。CellSieve(商標)フィルター上の細胞を透過処理した後、洗浄した。抗CD45抗体、抗サイトケラチン8、18、及び19抗体を含む抗体溶液を添加し、1時間インキュベートした。フィルターを10ml PBSTで洗浄し、顕微鏡スライド上に置き、DAPIおよびFluoromountで標本化した。フィルターを、拡大した、しばしば倍数体の核構造を持つ巨細胞(>25ミクロンのサイズ)について分析した。細胞をマイクロビーズで溶解した。以下を参照のこと。
【0077】
分析物捕獲後の変異の検出は、様々な形式をとることができる。
【0078】
細胞捕獲後に核酸分析を行うために、細胞をフィルター上で直接溶解することができる。細胞又は病原体から核酸を抽出するためのプロトコールは多数ある。以下は、マイクロビーズチューブ内に配置されたフィルターを使用してプロトコールを僅かに変更した、Biostic(商標)Bacteremia DNA Isolation Kit(MO Bio Laboratories, Inc.)を使用した説明である。プロトコールは以下からなる。
1. フィルターと「細胞溶解/阻害剤溶液」をマイクロビーズチューブに加え、サンプルを加熱及びボルテックスしてDNAを放出させる。
2. 上清を除去し、DNAを分析する。
【0079】
(i)巨細胞(CAML)溶解物及び(ii)血漿からのDNAを配列決定し、知見を比較した。上記示したように、3つのサンプルは同じ患者の連続した時点からのものであった(結腸がん-04B及び結腸がん-04C;B6A及びB6B;NSCLC 12B及びNSCLC 12C)。サンプルは配列決定会社に知らされていなかった。配列決定は、表1に示す50遺伝子パネルに基づいた。
【表1】
【0080】
結果は表2に示されており、変異対立遺伝子画分は括弧内に示されている。同じ患者からの連続したサンプルに見い出される同一の変異は、正確性の指標である。これはCAMLのケースであった(表2:太字と下線)。これらの結果は、CAMLが変異分析に十分な量のDNAを提供することを確認した。血漿のctDNAとCAMLの変異が一致したケースはほとんどなかった(表2:太字、下線、斜体)。これらの結果は、CAMLが、この目的のための血漿中のctDNAより、変異解析のためのDNAのより信頼できるソースであることを示している。
【表2】
【0081】
現在、データは2以上のCAMLを使用するが、フィルター上のCTCは使用せずに取得される。サンプルNSCLC 12B及び12Cの良好な相関結果は、2つのCAMLを使用した。これは、1つのCAMLでも正確な結果を提供できることを示している。
【0082】
表2のデータは、フィルター上のすべての細胞を溶解することにより得られた。フィルター上の白血球から生成されるバックグラウンドは、正確性に影響しなかった。
【0083】
CAML、ctDNA、及び腫瘍組織の配列決定

がん変異を検出するもう一つの実験では、3人のがん患者の血液から巨細胞を単離し、上記説明した分析に供した。発見された変異を、対応する原発腫瘍生検で見出された変異と比較した。特に、3人の肺がん患者からの肺生検は、50遺伝子変異パネルでスクリーニングした(表1)。治療を開始する前に、同じ3人の肺がん患者から巨細胞と血漿を分離した。CAMLについて血液サンプルを実行する前に、血液サンプルから血漿を除去し、別々に配列決定した。血漿を除去した後、全血を前固定し、ろ過した。ろ過後、フィルター上の細胞を後固定し、透過処理し、バイオマーカーDAPI、CD45、サイトケラチンについて染色して、巨細胞の固有性を確認した。巨細胞を溶解し、配列決定した。
【表3】
【0084】
結果を表3に示す。ここでは、変異対立遺伝子画分が括弧内に示されており、生検からの変異は頻度について評価されていない。生検とCAML溶解物の両方で見出された同一の変異の例が、肺がん15の患者で見出された(表3:太字と下線)。これらの結果は、CAMLが、同じ患者の腫瘍で見出される変異と一致し得る変異分析に十分な量のDNAを提供することを確認した。血漿中のctDNAとCAMLの変異が一致するケースがあった(表2及び表3:太字と斜体)。これらの結果は、CAMLが、腫瘍生検からの変異に対応できる変異分析及び/又は血漿からの変異に対応できる変異分析のための、信頼できるDNA源であることを示している。
【0085】
変異分析と患者情報

以前の実験で得られたデータは、CAMLサイズが重要な予後情報を有することを実証した。末梢血7.5 mlで見出された最も大きいCAMLが50μmより大きい場合、見出された最も大きいCAMLが50μmより小さい場合より、全生存期間(OS)は短く、無増悪生存期間(PFS)ははるかに短い。
【0086】
図5Aは、溶解したCAMLで見出された、がん変異の数に対するCAMLサイズの分析である。表1の遺伝子パネルは、がんの全ての変異をカバーしていなかった。CAMLが小さいほどがん変異が少なく、CAMLが大きいほどがん変異が多い傾向がある。図5Bは、サイズと変異の数との相関を示す異なる方法であり、変異の数は、図4に示される50μmサイズ情報に基づいてプロットされている。より大きなCAMLがより多くの変異を有することが明らかである。
【0087】
図6は、肺がん患者30人の無増悪生存期間(PFS)と比較した、50遺伝子パネル(表1)を使用したCAML溶解物の配列決定から得られたがん変異の数の分析である。血液サンプルは治療開始前に収集された。図6は、がん患者に4以上の変異があった場合、その患者は、CAML溶解物に0~3の変異がある患者と比較して、増加した速度で進行したことを示す。
【0088】
臨床的有用性

CAMLは、がんの全ての段階、及び全ての主要ながんで見出される。配列決定されたCAMLからの核酸は、がんに関連する分子変化を示す。このように、患者サンプルから巨細胞と巨大裸核を収集し、続いて分子分析を行い、がん関連分子変化を検出することは、固形腫瘍がんの存在を示す。がんのスクリーニングは、巨細胞及び巨大裸核の列挙と、列挙後のがん関連分子変化の検出との組み合わせにも基づき得る。
【0089】
新しいがん関連分子変化は、特定の変異に対する薬物治療についての薬物耐性の指標であることが、組織生検に基づいて、よく知られている。変異の固有性及び/又は数の変化は、患者のサンプルから巨細胞と巨大裸核を収集し、続いて分子分析を行うことにより、順次取得できる。このように、がん治療に対する耐性の決定は、患者サンプルからの巨細胞及び巨大裸核から得られる新しいがん関連分子変化の出現によって得られる。耐性の検出は、巨細胞及び巨大裸核の列挙と、列挙後のがん関連分子変化の検出との組み合わせにも基づき得る。
【0090】
図4及び5は、がん患者の血液からの巨細胞及び巨大裸核から得られた変異の数が、がんの予後を提供できることを示している。予後は、巨細胞のサイズと、巨細胞及び巨大裸核からの変異検出数との組み合わせに基づき得る。
【0091】
図5に示すように、より多くの変異を持つ患者では、PFSは短くなる。同様に、ここに示されているのは、サイズが増大しているCAMLを有する患者は、疾患の進行の指標であることである。図4において、より大きいCAMLからより多くの変異が見出される。がん患者の血液からの巨細胞及び巨大裸核から得られるがん関連分子変化の数の増加は、がんの進行を示している。疾患の進行もまた、巨細胞のサイズと、がん患者の血液からの巨細胞及び巨大裸核から得られるがん関連分子変化の数の増加との組み合わせに基づき得る。CAML及びがん関連分子変化の完全な消失は、成功した治療への反応の指標である。
【0092】
例えば手術後、放射線化学療法後、又は他の治療後のように、治療を止めたとき、残存する病変がまだ残っているかどうかを決定するための正確な方法は常には存在しない。CT又はMRIは、小さな残存腫瘍の情報を常には提供できない。残存疾患があれば、がんは再発するだろう。がん専門医が残存病変があると知らされた場合、そのがん専門医はその残存病変を除去する治療を提供できるかもしれない。残存がんは、患者サンプルからの巨細胞及び巨大裸核から得られる、既知のがん関連分子変化の存在によって検出できる。残存病変は、巨細胞の存在と、患者サンプルからの巨細胞及び巨大裸核から得られるがん関連分子変化の検出との組み合わせにも基づき得る。
【0093】
多くのがん患者では、治療後にがんが消失し得る。彼らは残りの生存期間まで数ヶ月間寛解することができる。それらの患者は、彼らががんが消失したままであることを知ることに非常に関心を示す。患者の血液サンプル中の巨細胞及び巨大裸核から得られる無傷の核酸を収集することから得られるがん関連分子変化の検出は、がんの指標である。分子変化がその患者の以前のがん関連分子変化と同じであれば、患者は以前のがんの再発を起こしている。再発の検出は、巨細胞の列挙と、患者サンプルからの巨細胞及び巨大裸核から検出されるがん関連分子変化との組み合わせにも基づき得る。
【0094】
寛解期の患者で検出されたがん関連分子変化が以前のがん関連分子変化と異なる場合、患者は再発ではなく新しいがんを発症している。寛解期にある患者の新しいがんの検出は、巨細胞の列挙と、患者サンプルからの巨細胞及び巨大裸核から検出されるがん関連分子変化との組み合わせにも基づき得る。
【0095】
ほとんどのがんは、例えば、乳がんの非浸潤性乳管がん(DCIS)のような、ステージIにまだ成熟していない固形腫瘍の前がん状態を伴う。DCISがステージIの乳がんに進行する可能性は低い。 DCISには様々なグレードがあり、あるものはステージIに進む可能性が高い。D.L. Adamsの論文[1]に示されるように、CAMLはそれらの患者で検出された。前がん状態のそれらの患者の一部は、がんの進行を防ぐために治療を受けることを希望するかもしれない。固形腫瘍の前がん状態の検出は、患者のサンプルからの巨細胞及び巨大裸核からのがん関連分子変化の検出に基づき得る。前がん状態の検出は、巨細胞の列挙と、患者サンプルからの巨細胞及び巨大裸核から検出されるがん関連分子変化の検出との組み合わせにも基づき得る。

引用
【表4】


【表5】

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6