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特開2024-23289リガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023289
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】リガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240214BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240214BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K14/47
C12N15/12 ZNA
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023193146
(22)【出願日】2023-11-13
(62)【分割の表示】P 2020535059の分割
【原出願日】2018-12-20
(31)【優先権主張番号】17208924.5
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18160863.9
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18202544.5
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520217526
【氏名又は名称】ザンクト アンナ キンダークレプスフォルシュング
(71)【出願人】
【識別番号】519177828
【氏名又は名称】ウニベルジテート フュル ボーデンクルトゥル ウィーン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル トラックスルマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン オビンガー
(72)【発明者】
【氏名】シャルロッテ ブライ
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート レーナー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム、並びに診断及び治療、特に腫瘍治療におけるそれらの使用の提供。
【解決手段】リポカリン-フォールド分子をベースにしたリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムであって:(a)リポカリン-フォールド分子、(b)1500Da又はそれ以下の低分子量のリポカリン-フォールドリガンド、及び(c)リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを含み、リポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールドリガンドへ結合することができ、リポカリン-フォールドリガンドに結合したリポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへ、リポカリン-フォールドリガンドに結合しないリポカリン-フォールド分子の親和性よりも少なくとも10倍高い親和性で結合する、リガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムを提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポカリン-フォールド分子をベースにしたリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムであって:
(a)リポカリン-フォールド分子、
(b)1500Da又はそれ以下の低分子量のリポカリン-フォールドリガンド、及び
(c)リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー:を含み、
ここで、リポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールドリガンドへ結合することができ;並びに
ここで、リポカリン-フォールドリガンドに結合したリポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへ、リポカリン-フォールドリガンドに結合しないリポカリン-フォールド分子の親和性よりも少なくとも10倍高い親和性で結合し、
並びにここで、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、いずれかのリポカリン-フォールドリガンドの存在下で、いずれかの天然に生じるリポカリン-フォールド分子に対し親和性<10μMを有する天然に生じるタンパク質ではない、リガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【請求項2】
リポカリン-フォールド分子をベースにしたリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムであって:
(a)リポカリン-フォールド分子、
(b)1500Da又はそれ以下の低分子量のリポカリン-フォールドリガンド、及び
(c)リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー:を含み、
ここで、リポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールドリガンドがリポカリン-フォールド分子に結合されない場合には、少なくとも第一の高次構造を、及びリポカリン-フォールドリガンドがリポカリン-フォールド分子に結合される場合には、少なくとも第二の高次構造を有し;並びに
ここで、第二の高次構造でリポカリン-フォールドリガンドに結合したリポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへ、第一の高次構造のリポカリン-フォールドリガンドに結合しないリポカリン-フォールド分子の親和性よりも少なくとも10倍高い親和性で結合し、
並びにここで、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、いずれかのリポカリン-フォールドリガンドの存在下で、いずれかの天然に生じるリポカリン-フォールド分子に対し親和性<10μMを有する天然に生じるタンパク質ではない、リガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【請求項3】
リポカリン-フォールド分子は、天然に生じるiLBP(細胞内脂質結合性タンパク質)、天然に生じるリポカリンもしくはアンチカリンと同一である分子であるか、又は1~30のアミノ酸置換及び/又は1~50のアミノ酸欠失及び/又は1~50のアミノ酸挿入を伴う、これらの分子のいずれかの誘導体である、請求項1又は2記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【請求項4】
リポカリン-フォールド分子は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、25又は30のアミノ酸置換を伴う、天然に生じるリポカリン又はiLBPの誘導体である、請求項1~3のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【請求項5】
リポカリン-フォールド分子は、好ましくは:
-PDBエントリー1RBPにおいてアミノ酸残基番号付けスキームに従いヒトRBP4の構造上保存されたβストランドに隣接する領域を規定する、ヒトRBP4のアミノ酸残基1-20、31-40、48-51、59-70、79-84、89-101、110-113、121-131及び139-183;
-ヒトTLCの構造上保存されたβストランドに隣接する領域を規定する、Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985のアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒトTLCのアミノ酸残基1-13、24-36、44-47、55-61、70-75、80-83、92-95、103-110及び118-158;
-ヒトApoMの構造上保存されたβストランドに隣接する領域を規定する、Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985のアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒトApoMのアミノ酸残基1-43、54-68、76-80、88-95、104-109、114-118、127-130、138-141及び149-188;
-ヒトCRABPIIの構造上保存されたβストランドに隣接する領域を規定する、PDBエントリー2FS6におけるアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒトCRABPIIのアミノ酸残基1-4、13-40、46-49、55-60、66-70、74-80、88-92、97-107、113-118、125-128及び136-137;
-ヒトFABP1の構造上保存されたβストランドに隣接する領域を規定する、PDBエントリー2F73においてアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒトFABP1のアミノ酸残基1-4、13-38、44-47、53-58、64-68、72-78、86-90、95-98、104-108、115-118及び126-127:
から選択されたアミノ酸残基の領域に構造的に対応する、構造上保存されたβバレル構造の外側に、最大15、最大30、もしくは最大50のアミノ酸欠失及び/又は最大15、最大30、もしくは最大50のアミノ酸挿入を伴う、天然に生じるリポカリン又はiLBPの誘導体である、請求項1~4のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【請求項6】
リポカリン-フォールド分子が、βバレル構造において少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%の配列同一性を伴う、天然に生じるリポカリン又はiLBPの誘導体であって、これによりこのβバレル構造は、好ましくは:
-ヒトRBP4の構造上保存されたβストランドを規定する、PDBエントリー1RBPにおけるアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒトRBP4のアミノ酸残基21-30、41-47、52-58、71-78、85-88、102-109、114-120及び132-138;
-ヒトTLCの構造上保存されたβストランドを規定する、Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985により規定されたヒト涙液リポカリン(TLC)のアミノ酸残基14-23、37-43、48-54、62-69、76-79、84-91、96-102及び111-117;
-ヒトApoMの構造上保存されたβストランドを規定する、Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985により規定されたヒトアポリポタンパクM(ApoM)のアミノ酸残基44-53、69-75、81-87、96-103、110-113、119-126、131-137及び142-148;
-ヒトCRABPIIの構造上保存されたβストランドを規定する、PDBエントリー2FS6におけるアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒト細胞レチノイン酸結合性タンパク質II(CRABPII)のアミノ酸残基5-12、41-45、50-54、61-65、71-73、81-87、93-96、108-112、119-124及び129-135;
-ヒトFABP1の構造上保存されたβストランドを規定する、PDBエントリー2F73におけるアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒト脂肪酸結合性タンパク質1(FABP1)のアミノ酸残基5-12、39-43、48-52、59-63、69-71、79-85、91-94、99-103、109-114及び119-125:
から選択されたアミノ酸残基の領域に構造的に対応する領域として規定される、請求項1~5のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【請求項7】
リポカリン-フォールド分子が、少なくともリポカリン-フォールドの構造上保存されたβバレル構造に広がる、長さが少なくとも80、好ましくは少なくとも100、特に少なくとも120のアミノ酸を伴う、天然に生じるリポカリン又はその誘導体の断片であるか、又はリポカリン-フォールド分子が、少なくともリポカリン-フォールドの構造上保存されたβバレル構造に広がる、長さが少なくとも80、好ましくは少なくとも85、特に少なくとも90のアミノ酸を伴う、天然に生じるiLBP又はその誘導体の断片であり、
ここで構造上保存されたβバレル構造は、好ましくは:
-ヒトRBP4の構造上保存されたβストランドを規定する、PDBエントリー1RBPにおけるアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒトRBP4のアミノ酸残基21-30、41-47、52-58、71-78、85-88、102-109、114-120及び132-138;
-ヒトTLCの構造上保存されたβストランドを規定する、Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985により規定されたヒト涙液リポカリン(TLC)のアミノ酸残基14-23、37-43、48-54、62-69、76-79、84-91、96-102及び111-117;
-ヒトApoMの構造上保存されたβストランドを規定する、Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985により規定されたヒトアポリポタンパクM(ApoM)のアミノ酸残基44-53、69-75、81-87、96-103、110-113、119-126、131-137及び142-148;
-ヒトCRABPIIの構造上保存されたβストランドを規定する、PDBエントリー2FS6におけるアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒト細胞レチノイン酸結合性タンパク質II(CRABPII)のアミノ酸残基5-12、41-45、50-54、61-65、71-73、81-87、93-96、108-112、119-124及び129-135;
-ヒトFABP1の構造上保存されたβストランドを規定する、PDBエントリー2F73におけるアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒト脂肪酸結合性タンパク質1(FABP1)のアミノ酸残基5-12、39-43、48-52、59-63、69-71、79-85、91-94、99-103、109-114及び119-125:
から選択されるアミノ酸残基の領域に構造的に対応するアミノ酸位置を含む又はこれからなる、請求項1~6のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【請求項8】
リポカリン-フォールドリガンドに結合したリポカリン-フォールド分子が、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへ、リポカリン-フォールドリガンドに結合しないリポカリン-フォールド分子の親和性よりも、少なくとも20倍高い、好ましくは少なくとも50倍高い親和性で結合する、請求項1~7のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【請求項9】
リポカリン-フォールドリガンドに結合したリポカリン-フォールド分子が、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへ、リポカリン-フォールドリガンドに結合しないリポカリン-フォールド分子の親和性よりも、少なくとも100倍高い、好ましくは少なくとも200倍高い、特に少なくとも500倍高い親和性で結合する、請求項1~8のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【請求項10】
リポカリン-フォールドリガンドに結合したリポカリン-フォールド分子が、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへ、リポカリン-フォールドリガンドに結合しないリポカリン-フォールド分子の親和性よりも、少なくとも1000倍高い親和性で結合する、請求項1~9のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【請求項11】
リポカリン-フォールドリガンドは、分子量1500~75Da、好ましくは750Da~150Daを有する、請求項1~10のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【請求項12】
リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、抗原、細胞表面受容体、抗体、抗体断片、又は非-抗体ベースのスカフォールド、好ましくはアフィボディ、リポカリン-フォールド分子、好ましくはiLPBもしくはLCN、特にアンチカリン;アビマー、DARPin、ファイノマー、クニッツドメイン、ノッチン、モノボディ、Sso7dベースのバインダー、電荷が低下したSso7d(rcSso7d)-ベースのバインダー又はSac7d-ベースのバインダーであるか、又はリポカリン-フォールド分子及び/もしくはリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、これらを含む、請求項1~11のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【請求項13】
リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー及び/又はリポカリン-フォールド分子は、抗原、細胞表面受容体、抗体、抗体断片、又は非-抗体ベースのスカフォールド、好ましくはアフィボディ、リポカリン-フォールド分子、好ましくはiLPBもしくはLCN、特にアンチカリン;アビマー、DARPin、ファイノマー、クニッツドメイン、ノッチン、モノボディ、Sso7dベースのバインダー、電荷が低下したSso7d(rcSso7d)-ベースのバインダー又はSac7d-ベースのバインダーを含む、請求項1~12のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【請求項14】
リポカリン-フォールドリガンドは、リポカリン-フォールド分子に対し、1mM以下、好ましくは100μM以下、特に10μM以下の親和性を有する、請求項1~13のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【請求項15】
前記リポカリン-フォールドリガンドは、表1、好ましくは、フェンレチニド(15-[(4-ヒドロキシフェニル)アミノ]レチナール)、N-エチルレチナミド(PubChem CID:5288173)、オールトランス型レチノイン酸(PubChem CID:444795)、アキセルフテン(PubChem CID:5287722)、A1120(PubChem CID 25138295)及びその誘導体、1,4-ブタンジオール(Pubchem CID:8064)、スフィンゴシン-1-リン酸(Pubchem CID:5283560)、テトラデカン酸(Pubchem CID:11005)、インディカキサンチン(Pubchem CID:6096870及び12310796)、ブルガキサンチンI(Pubchem CID:5281217)、モンテルカスト(Pubchem CID:5281040)、シクランデレート(Pubchem CID:2893)、オキソラミン(Pubchem CID:13738)、マザチコール(PubchemCID:4019)、ブトクタミド(Pubchem CID:65780)、トナベルサット(Pubchem CID:6918324)、ノバジン(Pubchem CID:65734)、ジフェニドール(Pubchem CID:3055)、ネオボニバール、エルロチニブ(Pubchem CID:92131336)、タネスピマイシン(Pubchem CID:6505803)、LMI070(Pubchem CID:85471316)、アロクラミド(Pubchem CID:71837)、ジアセトロール(Pubchem CID:50894)、アコチアミド(Pubchem CID:5282338)、アコジボロール(Pubchem CID:44178354)、アキュマピモド(Pubchem CID:11338127)、アパルタミド(Pubchem CID:24872560)、ASP3026(Pubchem CID:25134326)、AZD1480(Pubchem CID:16659841)、BIIB021(Pubchem CID:16736529)、ブラナプラム(Pubchem CID:89971189)、ブレキナル(Pubchem CID:57030)、クロルプログアニル(Pubchem CID:9571037)、クリンダマイシン(Pubchem CID:446598)、エムリカサン(Pubchem CID:12000240)、エナシデニブ(Pubchem CID:89683805)、エノリカム(Pubchem CID:54679203)、フルラゼパム(Pubchem CID:3393)、ILX-295501(Pubchem CID:127737)、インディブリン(Pubchem CID:2929)、メトクロプラミド(Pubchem CID:12598248)、メバスタチン(Pubchem CID:64715)、MGGBYMDAPCCKCT-UHFFFAOYSA-N(Pubchem CID:25134326)、MK0686(Pubchem CID:16102897)、ナバリクシン(Pubchem CID:71587743)、ネファゾドン塩酸塩(Pubchem CID:54911)、パントプラゾール(Pubchem CID:4679)、パビネタント(Pubchem CID:23649245)、プロキサゾール(Pubchem CID:8590)、シッカニン(Pubchem CID:71902)、スルファグアノール(Pubchem CID:9571041)、スニチニブ(Pubchem CID:5329102)、スボレキサント(Pubchem CID:24965990)、チアプリド(Pubchem CID:5467)、トナベルサット(Pubchem CID:6918324)、VNBRGSXVFBYQNN-UHFFFAOYSA-N(Pubchem CID:24794418)、YUHNXUAATAMVKD-PZJWPPBQSA-N(Pubchem CID:44548240)、ウリモレリン(Pubchem CID:11526696)、キシパミド(Pubchem CID:26618)、トロペシン(Pubchem CID:47530)、トリクラベンダゾール(Pubchem CID:50248)、トリクラベンダゾールスルホキシド(Pubchem CID:127657)、トリクラベンダゾールスルホン(Pubchem CID:10340439)及びトラメチニブ(Pubchem CID:11707110)の群から選択されるリガンドである、請求項1~14のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【請求項16】
リポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、ポリペプチドである、請求項1~15のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【請求項17】
核酸は、好ましくはDNA又はRNAから、より好ましくはインビトロ転写されたRNA又はレトロウイルスにパッケージされたRNA、特にレンチウイルスにパッケージされたRNAから選択される、請求項1~16のいずれか一つ記載のリポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしているヌクレオチド配列を含む核酸分子。
【請求項18】
第一の核酸分子は、請求項16記載のリポカリン-フォールド分子をコードしているヌクレオチド配列を含み、及び第二の核酸分子は、請求項16記載のリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしている配列を含み、ここで核酸は、好ましくはDNA又はRNAから、より好ましくはインビトロ転写されたRNA又はレトロウイルスにパッケージされたRNA、特にレンチウイルスにパッケージされたRNAから選択される、少なくとも2種の核酸分子のキット。
【請求項19】
請求項17又は18記載の核酸分子又は核酸分子のキットを含むベクター。
【請求項20】
第一のベクターは、リポカリン-フォールド分子をコードしている核酸分子を含み、及び第二のベクターは、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしている核酸分子を含む、請求項18記載の核酸分子を含む少なくとも2種のベクターのキット。
【請求項21】
請求項1~16のいずれか一つ記載のリポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを作製するために、請求項17又は18記載の核酸分子もしくは核酸分子のキットによるか、又は請求項19又は20記載のベクターもしくはベクターのキットにより、インビトロ又はエクスビボにおいて修飾された細胞、あるいは2種以上の前記修飾された細胞を含むキット。
【請求項22】
請求項17又は18記載の核酸分子もしくは核酸分子のキット、及び/又は19又は20記載のベクターもしくはベクターのキット、及び/又は請求項21記載の細胞もしくは細胞のキットを含む、医薬製品。
【請求項23】
インビトロ又はエクスビボにおいて、請求項17又は18記載の核酸分子もしくは核酸分子のキット、又は請求項19又は20記載のベクターもしくはベクターのキットを、細胞へ導入する、好ましくは細胞のゲノムへ安定して組み込む工程を含む、請求項21記載の細胞を作製する方法。
【請求項24】
請求項21記載の細胞を含む、非ヒト動物。
【請求項25】
請求項21記載の細胞を含む、植物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム、並びに診断及び治療、特に腫瘍治療におけるそれらの使用を開示している。
【背景技術】
【0002】
タンパク質-タンパク質相互作用(PPI)は、疎水作用を含む静電力により操作された生化学的事象の結果としての、2種又はそれよりも多いタンパク質分子の間に確立された高い特異性の物理的接触である。多くは、特定の生体分子の状況において細胞中又は生体内で起こる鎖間の分子会合を伴う物理的接触である。PPIはまた、医薬目的で、特にヒト用医薬品において、スクリーニングシステム、又は規定されたスイッチを確立するために、先行技術において使用されている。
【0003】
PPIの具体例は、二量体化、特に低分子による化学誘導二量体化(CID)である。低分子によるタンパク質のCIDに関しては、いくつかのシステムが存在する。これらのシステムにおいて、PPI、すなわちホモ-又はヘテロ二量体化は、低分子の存在下でのみ起こり得、従って低分子は化学的ダイマライザー(dimerizer)として働く。ほとんどの場合において、二量体化タンパク質、又はそれらの各ドメインは、関心対象のタンパク質を含む融合構築体の一部として発現される。これらのシステムの一部は、細胞の内側のみではなく、細胞の外側の酸化的環境においても機能する。今日まで、CIDシステムは主に、例えば酵素機能、シグナル伝達、遺伝子転写、ゲノム編集(例えば、CRISPR/Casによる)、タンパク質安定性を制御するため、及び論理ゲート(logic gates)の作製のために使用されている。CIDシステムはまた、例えば、キメラ抗原受容体により改変されたT細胞の機能の制御のためとして、ますます臨床適用に関して検討されている。最も頻繁に使用されるシステムは、ヘテロ二量体化のためのFRB/FBKP-ドメイン又はホモ二量体化のための変異体FKBP-ドメインをベースにしている。いくつかのラパマイシン誘導体が開発されているが、これらは依然、同じ細胞内の2つのプロセスを同時に制御するという問題を解決していない。そのような機能性は、CIDシステムの最近の開発により導入されており、これは異なるタンパク質、同じく異なる低分子を基にしている。これらのシステムは、インビトロにおいては良好に働くが、それらのインビボにおける使用は限定されている。インビボ及び更には臨床適用にも適し、並びに複数のプロセスの同時制御に適しているCIDシステムの開発は、はるかに大きい影響があるであろう。現在のシステムは、この目的には適しておらず、その理由は、これらのシステムは、異種タンパク質を基にし、従って高い免疫原性が予想されること、並びに/又はこの低分子は、インビボ適用に適していないことである。
【0004】
ホモ二量体化のためのFKBP-ベースのシステムは、最も進んだシステムであり、かつ投与されたT細胞におけるアポトーシスの誘導のために数年間臨床使用されている。これは、ヒトタンパク質を基にし、不活性分子に左右され、かつ完全に生体直交型であり(orthogonalized)、すなわちこのダイマライザーは、内在性タンパク質には結合せず、かつ変異されたFKBPドメインは、合成ダイマライザーにのみ結合する。タンパク質リガンド対を遮断するこのプロセスは、「生体直交化(orthogonalization)」と称され、これは両方向で望ましくない相互作用を妨害し、かつ細胞システムにおけるCIDシステムの使用には必須である。ヘテロ二量体化の場合、例え最も進歩的なヒトタンパク質ベースのシステム(FKBP/FRB-システム)であっても、依然完全には生体直交しない。タンパク質結合ポケットの操作及び低分子の相補性は、ラパログのFRBとの相互作用にのみ働き、依然野生型FBKPドメインをベースにしているFKBPとは働かない。ラパログのFRB及びFKBP(構造については、PDB 1NSG参照)への結合様式のために、生体直交化のため及び薬物動態最適化のためのラパログの再設計は、重大な障害をもたらす。更にラパログの合成は、困難であり、ラパマイシンとの夾雑の可能性は危険であり、かつこれらの分子は臨床上承認されていない。
【0005】
CIDシステムの例は、WO 2014/127261 A1及びWO 2017/032777 A1に開示されている。Vossら(Curr. Op. Chem. Biol. 28 (2015): 194-201)は、化学誘導二量体化(CID)システム、主にラパマイシン-ベースのCIDシステム、並びにそのようなCIDを使用することによる細胞におけるタンパク質機能のそれらによる可逆的かつ時間空間的コントロールを開示している。しかし結果的に、これらの現在のCIDシステムは、例えこれらの進歩したラパマイシン-ベースのCIDシステムであっても、依然FKBP及びFRBの望ましくないヘテロ二量体化を誘導し得ることが報告された。DeRoseら(Europ. J. Physiol. 465 (2013): 409-417)は、細胞生物学における問題点を解決するためにCID技術を検証している。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、相互作用パートナーの二量体化を誘導するために低分子により制御されることができ、並びに現存するシステムと比べ有益である、リガンド制御したPPIシステム(LRPPI)を提供することである。より具体的には、新規LRPPIシステムは、有害反応のリスクがないか、又は少なくとも減少された有害反応を伴い、インビボにおいて、特にヒト患者の治療のために、適用可能でなければならない。更なる目的は、腫瘍治療の手段、特に腫瘍の治療のための免疫療法の概念を提供することである。
【0007】
従って、本発明は:
(a)リポカリン-フォールド分子、
(b)1500Da又はそれ以下の低分子量のリポカリン-フォールドリガンド、及び
(c)リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー:を含むリポカリン-フォールド分子をベースにしたリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムを提供し、
ここで、リポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールドリガンドに結合することができ;並びに
ここで、リポカリン-フォールドリガンドに結合したリポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールドリガンドに結合していないリポカリン-フォールド分子の親和性よりも、少なくとも10倍より高い親和性で、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーに結合し、
並びにここで、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、任意のリポカリン-フォールドリガンドの存在下で、任意の天然に生じるリポカリン-フォールド分子に対し<10μMの親和性を有する、天然に生じるタンパク質ではない。
【0008】
本発明はまた:
(a)リポカリン-フォールド分子、
(b)1500Da又はそれ以下の低分子量のリポカリン-フォールドリガンド、及び
(c)リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー:を含むリポカリン-フォールド分子をベースにしたリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムを指し、
ここで、リポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールドリガンドがリポカリン-フォールド分子に結合していない場合には、少なくとも第一の高次構造を、及びリポカリン-フォールドリガンドがリポカリン-フォールド分子に結合している場合には、少なくとも第二の高次構造を有し;並びに
ここで、第二の高次構造でリポカリン-フォールドリガンドに結合したリポカリン-フォールド分子は、第一の高次構造でリポカリン-フォールドリガンドに結合していないリポカリン-フォールド分子の親和性よりも、少なくとも10倍より高い親和性で、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへ結合し、
並びにここで、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、任意のリポカリン-フォールドリガンドの存在下で、任意の天然に生じるリポカリン-フォールド分子に対し<10μMの親和性を有する、天然に生じるタンパク質ではない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、他の分子、特に医薬物質として使用することができる低分子の関与を伴う又は伴わない、その結合パートナー(「リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー」)への結合に関する、リポカリン-フォールド分子システムの高い柔軟性を基にしている。このシステムは、天然に生じる対応物を基にしているが、本発明のシステムは人工的である。このことは、本システムの3種の必須成分(リポカリン-フォールド分子、リポカリン-フォールドリガンド及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー)の結合親和性及び特異性を、必要とされる結合特異性に対し、特にヒト患者への標的化されかつ特異的な医薬介入に必要とされるものに対し適合することにより、リポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、天然に生じるスカフォールドに由来し得ることを意味する。
【0010】
リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、天然に生じるリポカリン-フォールド分子の天然に生じる結合性パートナーではないという特徴は、著しい交差反応性(これは医薬適用のために本発明の意図された用途にとって欠点である)を減少又は回避するために重要である。そのような交差反応性は、副作用へ繋がり得、これは最終的に重症となり得る(そのような副作用はまた、天然に生じるリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーが、リポカリン-フォールド分子をベースにした「オン-スイッチ」システムの一部である場合には、予測も困難である)。
【0011】
本発明の過程において、リポカリン-フォールド分子をベースにしたLRPPIシステムは、驚くべきことにヒトの医薬治療におけるインビボおいて働く能力をも有するLRPPIシステムを確立するために、それらを極めて適切なものとする有利な特性を有することがわかった。これは、特にマイクロモル及びナノモル範囲において、リポカリン-フォールドリガンドへのリポカリン-フォールド分子の親和性は容易に「調節可能」であるという事実を基にするだけでなく、リポカリン-フォールド分子の中心構造の頑強なアーキテクチュア(更に以下の「リポカリン-フォールド」の開示を参照)及び一部のリポカリン-フォールドリガンドのリポカリン-フォールド分子において結合する能力にも起因する。これらの優れた特性のために、本発明のLRPPIシステムは、ヒト医薬品における使用を可能にするように、非常に特異的で、頑強かつ感受性があるように設計することができる。
【0012】
従って本LRPPIシステムは、3つの必須成分を基にしている:リポカリン-フォールド分子(図1の「a」)、リポカリン-フォールドリガンド(図1の「b」)及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー(図1の「c」)。
【0013】
本発明の「リポカリン-フォールド分子」は、タンパク質構造分類(SCOP)データベース(バージョン1.75)のタンパク質の「リポカリン-フォールド」スーパーファミリーの一部である、任意の天然に生じるリポカリン-フォールド分子又はそれらの誘導型であることができる(Murzinら、J Mol Biol. 1995;247(4):536-540)。これは、本発明の柔軟性のあるLRPPIシステムの作製を可能にする「リポカリン-フォールド」タンパク質のこの構造モチーフである。従って、本発明のLRPPIシステム中にリポカリン-フォールド分子を含むことは、臨床用途のための生体直交型LRPPIシステムの柔軟性のある操作を可能にするために、重要な段階であった。本発明の過程において、このリポカリン-フォールドは、多種多様な構造が異なる低分子(本発明の「リポカリン-フォールドリガンド」(又は「リガンド」))へ本質的に結合することができ、かつ最初に捕獲されることができない低分子の結合のためであっても操作されることができる、独自の形をしたスカフォールドとして同定された。リポカリン-フォールドタンパク質は、小型の特徴的な8-又は10-ストランドのアップアンドダウンβバレルモチーフを含み、ここにおいて、逆平行のβストランドは、+1トポロジーで配置され、かつこれはほとんどの場合は疎水性の低分子リガンドの周りを包むように進化している(Lakshmiら、PLoS One. 2015;10(8): e0135507;Zhangら、PLoS One. 2012;7(5): e36772;Smathersら、Hum Genomics. 2011;5(3):170-191;Grzybら、J Plant Physiol. 2006;163(9):895-915;Flowerら、Biochim Biophys Acta. 2000;1482(1-2):9-24;Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985)。SCOPデータベース(バージョン1.75)において、リポカリン-フォールドは、リポカリンスーパーファミリーのみを含む(Lakshmiら、PLoS One. 2015;10(8): e0135507)。リポカリンスーパーファミリーに割当てられる9つのファミリーの中で、レチノール結合タンパク質様及び脂肪酸結合性タンパク質様のタンパク質は、各々、リポカリン(LCN)及び細胞内脂質結合性タンパク質(iLBP)を含み、かつ最も関係のあるファミリーである。LCNは、8-ストランド化されたβバレルタンパク質(分子質量およそ20kDa)であり(Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985)、及びiLBPは、10-ストランド化されたβバレルタンパク質(分子質量およそ15kDa)であり、これはFABP(脂肪酸結合性タンパク質)、CRBP(細胞レチノール結合タンパク質)及びCRABP(細胞レチノイン酸結合性タンパク質)を含む(Smathersら、Hum Genomics. 2011;5(3):170-191)。リポカリン-フォールドタンパク質は、多数の異なる低分子を捕獲するのに適合するよう遺伝子重複及び進化的分岐により共通の祖先から進化されると仮定される。LCNは既に、細菌において進化し(>600のLCNが、種間で説明されており;ヒトゲノムは、少なくとも15メンバーをコードしている)、かつiLBPは、真菌及び植物からの分岐後、動物において同様に進化している(ヒトゲノムは、10のFABP及び6のレチノイド結合性タンパク質をコードしている;Lakshmiら、PLoS One. 2015;10(8): e0135507;Zhangら、PLoS One. 2012;7(5): e36772;Smathersら、Hum Genomics. 2011;5(3):170-191)。全てのこれらのタンパク質は、非常に低い配列ホモロジー(一部のFABPに関しておよそ20%、及び多くのLCNに関して30%以下)にもかかわらず、顕著な構造ホモロジーを維持し、このことは、異なるリガンドの結合に適合するための構造の事実上全ての領域における変異に対する、リポカリンスーパーファミリーのβバレル構造の並外れて高い許容度(tolerance)を描いている。実際、リポカリンスーパーファミリーの全てのメンバー、すなわち特にリポカリンとiLBPに共通である任意の配列モチーフを規定することは不可能である(Flowerら、Biochim Biophys Acta. 2000;1482(1-2):9-24)。
【0014】
このリポカリン-フォールドの並外れて柔軟性のあるβバレル構造は、リポカリン-フォールドの疎水性ポケットへ挿入するリガンドにより制御され得るLRPPIシステムの新規ファミリーを作製するための、広範囲に及ぶプラットフォーム(「リポカリン-フォールド分子」をベースにした)として本発明で使用される。そのような制御性リポカリン-フォールドリガンドは、様々な特徴を持つ可能性のある分子の大きいプールから選択することができる。リガンド-結合したリポカリン-フォールド分子は、リガンド-依存様式で、別の操作されたタンパク質、すなわちリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーにより認識される標的分子として使用することができる。すなわちこの実施態様において、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、リガンドが疎水性ポケットへ挿入された場合に、比較的高い親和性でリポカリン-フォールド分子を特異的に認識するように操作される。この他の操作されたタンパク質は、非限定的に、抗体、抗体断片又は抗原結合のために操作され得る任意の他のタンパク質であることができる。あるいは、リガンド-結合したリポカリン-フォールド分子、すなわちそれらのリポカリン-フォールドは、リガンド-依存様式で別の分子、すなわちリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー(例えば、とりわけタンパク質、糖質、脂質)へ結合するように操作されてよい。すなわちこの実施態様において、リガンド-結合した状態において、操作されたリポカリン-フォールド分子は、強力に増強された親和性で他の相互作用パートナーへ結合することができる。結果として、このリガンドは、リポカリン-フォールド分子のリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーとの相互作用を制御するために使用することができる。
【0015】
これらの制御性リポカリン-フォールドリガンドは、有利な薬物動態を伴う、臨床適用可能な分子を含むことができる。更に、互いに生体直交したリポカリン-フォールドリガンドを選択することが可能であり、これにより並行して複数のプロセスを個別に制御することさえ可能である。これは全て、最初にそのカリックス様結合ポケット内に多数の異なるリガンドを本質的に収容するこのβバレル構造の能力、並びに第二に変異に対するその独自の許容度を認め、これは先に開示されたような非天然リガンドの広範囲に及ぶスペクトルに対し高い親和性及び特異性を操作することを可能にする(例えば、DE 19742706 A1、WO 99/016873 A1、EP 1017814 B1、WO 2012/065978 A1、WO 2016/113203 A1、Skerra、Biochim Biophys Acta. 2000;1482(1-2):337-350;Korndorferら、Proteins 2003;53(1):121-129;Korndorferら、J Mol Biol. 2003;330(2):385-396;Kimら、J Am Chem Soc. 2009;131(10):3565-3576;Schlehuberら、Biophys Chem. 2002;96(2-3):213-228)。βバレル構造の正にこれらの2つの独自の特徴は、リガンドを再設計する代わりに、高い親和性及び特異性でのリガンドの結合のために結合ポケットを操作することにより、生体直交化を可能にし、このことは臨床の参入障壁を著しく低下し、かつ可能性のある候補の大きいプールからの分子の選択を可能にする。追加される柔軟性及び特異性の程度は、リガンド-結合した状態でリポカリン(lipocalain)-フォールド分子を含むβバレルを特異的に認識するように操作されるリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーにより導入されてよい。この目的のために、リガンド-負荷した(loaded)βバレル(すなわち、リガンド-負荷したリポカリン-フォールド分子)は、好適なライブラリーからバインダーをスクリーニングするための抗原として使用されてよい。あるいはこのリポカリン-フォールドはまた、リガンド-依存型バインダーとしても操作されることができる。後者は、リポカリン-フォールド分子は、低分子結合のためのみではなく、大型タンパク質の結合のためにもに操作され得るという事実を基にしている。これは一方で、広範囲に及ぶタンパク質抗原を伴ういわゆる「アンチカリン」又は「リポカリンのムテイン」の形で例示され、かつキメラ抗原受容体における可溶性のブロック物質及び新規腫瘍結合部分の作製に適用されている(例えば、DE 19742706 A1、WO 99/016873 A1、EP 1017814 B1、WO 2012/065978 A1、WO 2016/113203 A1、Richterら、FEBS Lett. 2014;588(2):213-218;Schonfeldら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2009;106(20):8198-8203;Gebauerら、J Mol Biol 2013;425(4):780-802;Barinkaら、Protein Eng Des Sel. 2016;29(3):105-115)。従って、天然に生じるリポカリン及び操作されたリポカリン(「アンチカリン」、「リポカリンのムテイン」など)などの、本発明のLRPPIシステムに適用することができる先行技術において利用可能なリポカリン-フォールド分子の数多くの例が既に存在する。LCN-ベースのバインダースカフォールドの操作を基に提供される先行する戦略とは対照的に、本発明は、低分子の付加によるPPIを制御するための、リポカリン-フォールドをベースにしたLRPPIシステムの操作を提供する。
【0016】
従って、中心構造エレメントとしてリポカリン-フォールドを含む任意の分子を使用することができるか、又は本発明のLRPPIシステムにおいて使用されるように適合することができる。本発明のLRPPIシステムは、リポカリン-フォールド分子のリポカリン-フォールドリガンドに対する親和性に関して、並びに同じくリポカリン-フォールドリガンドの非存在及び存在下での、リポカリン-フォールド分子のリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーに対する親和性の差異に関して、容易に最適化しかつ調節することができる。本発明において、LRPPIシステムの「結合した」又は「結合していない」状態、すなわちリポカリン-フォールドリガンドに「結合した」又は「結合していない」リポカリン-フォールド分子とは、少なくとも10倍のリポカリン-フォールド分子のリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへの親和性の差異を指す。しかし好ましい実施態様は、リポカリン-フォールドリガンドの非存在及び存在下での、リポカリン-フォールド分子の(少なくとも)2つの状態の間の、更により顕著な親和性の差異を利用する。これは、親和性の差異が、好ましくは少なくとも20倍、特に少なくとも50倍である理由である。本発明は、例えば、より更に少なくとも100倍、少なくとも200倍、少なくとも500倍又は少なくとも1000倍に親和性の差異を設計及び調節することを可能にする。この親和性の差異の増加は、ヒト治療の環境において、特に望ましくない副作用又は毒性を排除するための安全性の方策として、特に有利である。
【0017】
本発明のLRPPIシステムは、天然に生じるリポカリン-フォールド分子の有利な特性を基にしているが、本発明のLRPPIシステムは、好適な医薬システムを提供するように設計された人工のシステムである。このことは、本発明のLRPPIシステムは、天然に生じる対応物(これは、本発明により意図された目的のためには使用することができないので(この天然のシステムは、それらの天然に意図された目的を満たさなければならないから))を有することはできないことを意味する。この状況において、本発明の過程における本発明のLRPPIシステムは、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの型(すなわち構造(又はフォールド))に関して、高度に柔軟性があるという、驚くべき知見がなされたことにここで注目することは、重要である。本発明の実施例1に説明されたLRPPIシステムは、構造的に非常に異なる結合部位を有する様々な種類のタンパク質(各々、強固なβストランド領域又はループ領域のいずれかに位置した)は、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーとして使用することができることを開示している。更に、実施例1においてリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーとして使用されるタンパク質は、任意の天然に生じるリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーではない(及びその変異体ではない)。代わりに、実施例1において使用されるリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、タンパク質Sso7d(古細菌スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)由来のDNA-結合性タンパク質)の変異型又はヒトフィブロネクチンIII型(FN3)の10番目のドメインの変異型のいずれかであり、これは、完全に異なる起源の機能を持つ分子に由来する構造的に異なるタンパク質(又はタンパク質ドメイン)は、本発明のリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーとして効率的に働くことができることを開示している。従って、天然に生じるPPIシステムからより独立しているLRPPIシステムを作製するため、及び内在性リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーとの有害な交差反応性のリスクを減少するために、本発明のLRPPIシステムにおけるリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、天然に生じるリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーではない(及び好ましくはそれに由来もしない)。より正確には、このリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー(又はリポカリン-フォールド分子への結合を媒介するその任意のドメイン)は、任意の天然に生じるリポカリン-フォールド分子に対し(任意のリポカリン-フォールドリガンドの存在下で)親和性<10μMを有する天然に生じるタンパク質ではなく、かつ好ましくはこれに由来することもなく、ここで「これに由来する」とは、その天然に生じるタンパク質の任意のセグメントのアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を持つ、少なくとも50の連続アミノ酸の少なくとも1つのセグメントを含み、かつこれは、任意の天然に生じるリポカリン-フォールド分子に対し(任意のリポカリン-フォールドリガンドの存在下で)<10μMの親和性を有することと定義される。
【0018】
従って、本発明のLRPPIシステムの好ましい実施態様は、天然に生じるタンパク質の任意のセグメントのアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を持つ少なくとも50の連続アミノ酸のセグメントを含まず、かつ特にリポカリン-フォールドリガンドの存在下、任意の天然に生じるリポカリン-フォールド分子に対し、<400nM、好ましくは<2μM、特に<10μMの親和性を有する、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを利用する。好ましくは、このリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、天然に生じるリポカリン-フォールド分子への結合を媒介する天然に生じるタンパク質のドメインを含まない。これは更に、交差反応性の欠如を擁護する。好ましくは、リポカリン-フォールドリガンドへ結合した場合又は第二の高次構造における、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー(本発明のLRPPIシステムにおいて使用される)のリポカリン-フォールド分子に対する親和性は、各々、10μM以下、好ましくは2μM以下、特に400nM以下である。
【0019】
ヒト患者における免疫原性のリスクを更に低下するために、本発明のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムは、好ましくは天然に生じるヒトリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーのヒトとは異なる種のホモログではないリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを含む。更により好ましくは、このリポカリン-フォールド分子は、天然に生じるヒトリポカリン-フォールド分子のヒトとは異なる種のホモログでさえない。
【0020】
本発明の好ましいリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムは、医薬環境において使用可能であるリポカリン-フォールドリガンドとしての分子に、好ましくはヒトへの適用に適しかつふさわしい分子に該当する。従って本発明の好ましい実施態様は、医薬としての活性分子であるリポカリン-フォールドリガンド、特にヒト患者における治療的活性を伴う医薬活性のある分子を含む。この結びつきにおいて、分子は、効果的に経口投与され得るリポカリン-フォールドリガンドとして好ましい。このことは、そのような分子は、経口投与に適し、かつ分子が腸管吸収を通じて投与される個体により服用されることを意味する。同じく分子は、効果的に静脈内投与され得るリポカリン-フォールドリガンドとして好ましい。このことは、この分子は、患者へ著しい副作用を伴わずに静脈内投与することができることを意味する。特に好ましいリポカリン-フォールドリガンドは、ヒト患者への、静脈内及び経口の両方の様式での効果的投与に適している。従って好ましいリポカリン-フォールドリガンドは、例えばEUもしくはUSのいずれか、又は両方において、それに関して例えば正当な製造承認(marketing authorisation)が存在する、ヒト使用に関する登録薬である(又は登録されている)分子である。
【0021】
本発明のLRPPIシステムのこの人工的特徴は、同じくインビボにおける(本発明の目的を解決するために必要とされるような)システム(例えば、低分子リガンドによる)の適切な制御を可能にする。特に好ましい実施態様において、本発明のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムの両方の主要システム成分、すなわち<10μM、好ましくは<2μM、特に<400nMの親和性で(リポカリン-フォールドリガンドの存在下)互いへの結合を媒介するリポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー、並びに/又はそれらの任意のドメインは、天然に生じるLRPPIシステムの一部ではなく、すなわちそこで生理的機能がそのようなシステムにより実行される生物学的経路ではない。従ってそのような好ましい実施態様において、リポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの両方は、その結果、天然に生じるタンパク質ではないが、変異されるか又は人工的に設計された非天然のタンパク質(すなわち、天然に存在する天然型対応物のないタンパク質)である。
【0022】
更に、天然に生じるLRPPIシステム又はPPIシステムとは無関係であるLRPPIシステムを設計するために、本発明のLRPPIシステムは、好ましくはリポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、親和性<10μMで互いに結合する天然に生じる分子に由来しない人工的なシステムである。これは、(1)本発明の所定のLRPPIシステムで使用されるリポカリン-フォールド分子が操作される場合、それが由来する天然に生じるリポカリン-フォールド分子は、そのLRPPIシステムで使用されるリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへ、親和性<10μMで結合しないか;あるいは、(2)本発明の所定のLRPPIシステムで使用されるリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーが操作される場合、このリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーが由来する天然に生じる分子は、そのLRPPIシステムで使用されるリポカリン-フォールド分子へ、親和性<10μMで結合しないか;あるいは、(3)本発明の所定のLRPPIシステムにおいて使用されるリポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの両方が操作される場合、リポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーが由来する天然に生じる分子は、各々、互いに親和性<10μMで結合しないことを意味する。
【0023】
更に何らかの不都合な交差反応性を避けるために、本発明の所定のLRPPIシステムにおいて使用されるリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、好ましくは任意の天然に生じるリポカリン-フォールド分子へ、親和性<1μMでは結合せず(リポカリン-フォールドリガンドが存在するか又は存在しないかを問わず)、但し:(1)そのLRPPIシステムにおいて使用される天然に生じるリポカリン-フォールド分子(天然に生じるリポカリン-フォールド分子が、そのLRPPIシステムにおいて使用される場合)、又はそのLRPPIシステムにおいて使用される操作されたリポカリン-フォールド分子のβバレル配列が由来する天然に生じるリポカリン-フォールド分子を除き、並びに(2)そのLRPPIシステムにおいて使用される天然に生じるリポカリン-フォールド分子のホモログである(すなわち、他の種由来のリポカリン-フォールド分子とホモログな)天然に生じるリポカリン-フォールド分子(天然に生じるリポカリン-フォールド分子が、そのLRPPIシステムにおいて使用される場合)、又はそのLRPPIシステムにおいて使用される操作されたリポカリン-フォールド分子のβバレル配列が由来する天然に生じるリポカリン-フォールド分子のホモログである天然に生じるリポカリン-フォールド分子を除く。
【0024】
本発明のリポカリン-フォールド分子をベースにしたLRPPIシステムの臨床適用に関する非常に魅力的な分野は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞機能を制御するためのホモ-及びヘテロ二量体化のためのFKBP-ベースのシステムを使用する代わりに、CARで、修飾されたT細胞の機能を制御することである。重要なことに、現在適用されるCARの機能は、臨床に適用可能な様式で制御されることができない。代わりに、CAR発現しているエフェクター細胞におけるアポトーシスの誘導は、現在まで、CAR分野において唯一の臨床的に適用可能な安全な機序である(Jonesら、Front Pharmacol. 2014;5:254)。CAR分子それ自身の機能の制御に関する最も進んだ戦略は、LRPPIに関して(WO 2014/127261 A1、WO 2015/017214 A1、EP 3087101 A1、US 2017/0081411 A1)又はタンパク質安定性の制御のいずれかに関して(WO 2017/032777 A1)、異なるバージョンのFRB/FKBP-ベースのシステムを利用する。しかし前述のように、FRB/FKBPシステムは、いずれか可能性のある臨床適用における重大な問題点と関連している(Sunら、Cell Res. 2015;25(12):1281-1282)。従って代わりに、本発明のリポカリン-フォールド分子ベースのLRPPIシステムは、低分子の投与による、CAR媒介した標的抗原認識の際のT細胞活性化をコントロールするための、CARへの組込みに関して、非常に魅力的である。比較的問題の多いFRB/FBKP-システムとは対照的に、本発明のリポカリン-フォールドベースのLRPPIシステムは、スイッチ可能なCARの広範囲に及ぶ臨床適用のための道を開くことができる。
【0025】
本発明の及び図1に示したLRPPIシステムは、原理上2つの戦略を用いて操作することができる:戦略Aにおいて、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”(これは好ましくはタンパク質“II”へ融合されてよい(±柔軟性のあるリンカー))は、バインダーであり、これはリポカリン-フォールドリガンド“b”が存在する場合に、より高い親和性で、リポカリン-フォールド分子“a”のバレル-収容構造へ結合する。リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”は、例えば、リガンド(“b”)-負荷したリポカリン-フォールド分子による動物の免疫化によるか、又はとりわけファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、哺乳動物細胞ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイもしくは共有結合型DNAディスプレイなどの、当該技術分野におけるタンパク質操作方法の状態によるかのいずれかにより、作製されることができる(Sergeevaら、Advanced Drug Delivery Reviews 2006;58:1622-1654)。戦略Bにおいて、リポカリン-フォールド分子“a”それ自身は、リポカリン-フォールドリガンド“b”による負荷後に、選択されたリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”(これは再度(好ましい実施態様に従い)、タンパク質“II”へ融合されることができるか、又はそれ自身タンパク質もしくは非-タンパク質抗原“II”(例えば腫瘍会合した抗原)である)へ、より高い親和性で結合することができるバインダーとして操作されることができる。リポカリン-フォールド分子“a”及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”は、N-末端もしくはC-末端へ、又は同じくタンパク質“I”及び“II”の内部部位へ融合されることができる(図1B参照)。リポカリン-フォールド分子“a”は、選択された低分子リポカリン-フォールドリガンド“b”への親和性を増大するように、及び/又は内在性天然リポカリン-フォールドリガンドへの親和性を減少するように、操作されてよい。更に、リポカリン-フォールド分子“a”のリポカリン-フォールド構造はまた、天然相互作用パートナーとの相互作用を防止又は減少するようにも操作されてよい。
【0026】
好ましくは、リポカリン-フォールドリガンドは、リポカリン-フォールド分子“a”に、高次構造の変化を誘導し、これはリガンド-依存型バインダー(リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー)“c”の選択(又は次にバインダーとして使用される場合には、同じくリガンド-依存型リポカリン-フォールド分子“a”の選択も)を促進する。リポカリン-フォールドリガンド“b”は、“c”又はタンパク質“II”と直接相互作用することができるが、必ずしもではない。しかし、分子“b”の結合が、むしろ限定された高次構造の選択を伴うリポカリン-フォールド分子“a”の構造の強剛化のみを生じる場合においては、“a”と“c”の相互作用の親和性を増加するための分子“b”の何らかの直接の寄与は、有益である。
【0027】
この適用に応じて、LRPPIシステムは-特定の実施態様に従い-2つの同一又は異なるリポカリン-フォールド分子の二量体化を制御することに関して、戦略的バリアントを更に利用することができる(第一のものは本発明のリポカリン-フォールド分子“a”であり、第二のものは本発明のシステムける“リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー”である(しかし“リポカリン-フォールド分子”であるならば、そのような第二のリポカリン-フォールド分子は、本発明の第一のリポカリン-フォールド分子の結合パートナーとして働くであろう))。従って、この特定の実施態様は、現存するLRPPIシステム(Rutkowskaら、Angew Chem Int Ed Engl. 2012;51(33):8166-8176)と同様に、2つの同じ又は異なるヘッド基を持つリポカリン-フォールドリガンド“b”を使用し、各々、2つのリポカリン-フォールド分子(異なる又は同じ(すなわち、ホモ二量体化又はヘテロ二量体化))を伴うLRPPIを形成する。次にこれら2つのリポカリン-フォールド分子の一方は、本発明のシステムの定義内で、(正式に)“リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー”として働く。
【0028】
既に先に概説したように、本発明のリポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールドの構造エレメントを含む、任意の好適な分子であってよい。本発明のリポカリン-フォールド分子(“a”)のリポカリン-フォールドは、LCNタンパク質ファミリーのいずれか公知のメンバーのβバレルに由来するか、又はiLBPタンパク質ファミリーのβバレルに由来することができる。これはまた、LCN-及びiLBP-バリアントを含み、これらは例えば一部のLCNに関して報告されているように原型アーキテクチュアから、βストランドの数が逸脱している(Papizら、Nature. 1986;324(6095):383-385;Spinelliら、Eur J Biochem. 2002;269(10):2449-2456;Sevvanaら、J Mol Biol. 2010;404(3):363-371)。LCNは、低分子の細胞外輸送に関して進化し、かつiLBPは、多くの同じ分子の細胞内輸送に関して進化し、これら2つのβバレルバリアントは、細胞の外側及び内側の酸化環境、対、還元環境における適用について異なる利点をもたらす。原則として、これらは非常に類似した構造を有し、かつ全て、非常に多様なリポカリン-フォールドリガンドをそれらの結合ポケット内に高い親和性で収容することができるので、両方のファミリーのリポカリン-フォールドは、本発明の柔軟性のあるLRPPIシステムに適している。しかし、公知のリポカリン-フォールドリガンドを伴うリポカリン-フォールド分子は、高次構造の順応を誘導し、並びにリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”との相互作用におけるリポカリン-フォールドリガンド“b”の直接の寄与を可能にするバリアントが、好ましい。このリポカリン-フォールド分子の起源の生物は、標的生物に従い選択することができ、その中のタンパク質は、最大レベルで及び正確な翻訳後修飾を伴い発現されるように仮定される。この状況において、LCNは、細菌において既に進化しているので、これらは利点を有する。しかし、βバレルベースのLRPPIシステムの意図された主要な利点は、それらの臨床の適用可能性であり、従ってヒトタンパク質起源のリポカリン-フォールド分子が好ましい。
【0029】
現在、ヒトLCNは、15種の良く特徴付けられたタンパク質及び2、3のまだ理解し難いメンバーを含む(Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985)。良く特徴付けられたLCNに関して、結合ポケットのサイズ及び形状の大きい多様性、並びに従ってリポカリン-フォールドリガンド、例えば単純な脂肪酸、糖脂質及びリン脂質、オールトランス型レチノール、コレステロール、バニリン、イマチニブ、スタウロスポリンなど、又は例えばバシリバクチン(bacillibactin)及びヘムなどの更に巨大な複合分子における、高度に多様なスペクトルが、説明されている。この順応性は、特にβバレルの侵入部位での4つのループの長さ及び配列に左右されることが認められている(Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985;Skerra、Biochim Biophys Acta. 2000;1482(1-2):337-350;Korndorferら、Proteins 2003;53(1):121-129;Korndorferら、J Mol Biol. 2003;330(2):385-396;Kimら、J Am Chem Soc. 2009;131(10):3565-3576;Schlehuberら、Biophys Chem. 2002;96(2-3):213-228;Richterら、FEBS Lett. 2014;588(2):213-218)。これまでに異なるリポカリン-フォールドリガンドの結合時の広範囲に及ぶ高次構造の変化は、ヒト及びウシのレチノール結合タンパク質4(RBP4)、ヒト涙液リポカリン(TLC)及びヒトアポリポタンパク質M(ApoM)について報告されている(Berniら、FEBS Lett. 1992;308(1):43-45;Zanottiら、J Biol Chem. 1993;268(33):24873-24879;Zanottiら、J Biol Chem. 1994;269(47):29613-29620;Pattanayekら、Protein Sci. 1999;8(10):2027-2032;Motaniら、J Biol Chem. 2009;284(12):7673-7680;Gasymovら、Biochim Biophys Acta. 1998;1386(1):145-156;Breustedtら、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr. 2009;65(Pt 10):1118-1125;Gasymovら、Biochemistry. 2012;51(14):2991-3002;Zhangら、Sci Rep. 2016;6:30655;Christoffersenら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2011;108(23):9613-9618)。中でも、ヒトTLCは、他のLCNと比較して、上昇された高次構造の柔軟性及び桁外れに柔軟性のある結合挙動により特徴付けられている(Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985;Breustedtら、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr. 2009;65(Pt 10):1118-1125;Gasymovら、Biochemistry. 2012;51(14):2991-3002)。特に良く特徴付けられた天然型ヒトRBP4の場合において、2つのループ領域が存在し、これはリポカリン-フォールドリガンド結合時に、高次構造の改変を受け、かつ天然相互作用パートナーのトランスチレチン(TTR)との(EFループを介した、残基89-101)及び受容体STRA6との(CDループを介した、残基59-68;Redondoら、FASEB J. 2008;22(4):1043-1054)相互作用に関与している。その一方で、ヒトRBP4に関するいくつかの天然及び合成のレチノイド並びに非-レチノイドのリポカリン-フォールドリガンドが、説明されており(すなわち、フェンレチニド、N-エチルレチナミド、オールトランス型レチノイン酸、酢酸レチニル、アキセルフテン、A1120(PubChem CID 25138295))、これらは高次構造の変化を誘導し、TTRからの解離を生じる(Berniら、FEBS Lett. 1992;308(1):43-45;Zanottiら、J Biol Chem. 1993;268(33):24873-24879;Zanottiら、J Biol Chem. 1994;269(47):29613-29620;Motaniら、J Biol Chem. 2009;284(12):7673-7680;Cowardら、Anal Biochem. 2009;384(2):312-320;Sharifら、Anal Biochem. 2009;392(2):162-168;)。報告されたヒトRBP4に関する結晶構造は、異なるリポカリン-フォールドリガンドは、LCNの個別のループ領域において異なる高次構造を誘導することができること(例えば、レチノール、A1120及びリノール酸について、各々、タンパク質データバンク(PDB)1RBP、3FMZ及び2WR6)を描いている。同様の作用が、ApoMについて報告されている(スフィンゴシン-1-リン酸、対、ミリスチン酸についてPDB 2YG2及び2WEW;Christoffersenら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2011;108(23):9613-9618)。
【0030】
本発明の好適なリポカリン-フォールド分子の選択に関して、グリコシル化部位、遊離システイン、ジスルフィド橋、オリゴマー化挙動、リガンドスペクトルなどの存在に関する差異、並びに天然タンパク質パートナー又は脂質膜との相互作用を防止するためのより多く又はより少なう特徴付けられた相互作用部位の除去の必要性を、考慮することができる(Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985)。中でもヒトLCN、RBP4、TLC及びApoM(各々、UniProt ID:P02753、P31025、及びO95445)は、既に公知のリポカリン-フォールドリガンドが誘導した高次構造の順応により特徴付けられ、従って本発明のLRPPIシステムを作製するためのリポカリンファミリーの好ましいメンバーである。一つの追加の好ましいリポカリン分子は、ヒト好中球ゼラチナーゼ-会合したリポカリン(NGAL)(UniProt ID:P80188)であり、これに関してアミノ酸残基との相互作用及び結合ポケット操作に関する非常に詳細な構造上の知識が、蓄積されている(Kimら、J Am Chem Soc. 2009;131(10):3565-3576;Schonfeldら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2009;106(20):8198-8203;Barinkaら、Protein Eng Des Sel. 2016;29(3):105-115;Gebauerら、J Mol Biol 2013;425(4):780-802;Baoら、RSC Adv. 2015;5(126):104363-104374;Eggensteinら、J Struct Biol. 2014;185(2):203-214)。これは特に、そのリガンド結合ポケットは、容易に修飾され得るという事実によるものであり、かつ異なるリガンドに対する高い親和性結合に関して操作された構造的に解明された(resolved)アンチカリンの基礎であった。
【0031】
重要なことに、LCNのβバレルは、LRPPIシステムの細胞外使用の選択肢であるだけではなく、細胞内使用の選択肢でもある。これは、全てのヒトLCNは、それらのβバレル構造中に少なくとも一つのジスルフィド橋を有するが、例えばヒトTLCのβバレルは、完全に還元された状態であっても機能しかつ十分に安定しているという事実を基にしている(Gasymovら、Biochim Biophys Acta. 2011;1814(5):671-683)。他のLCNは、還元条件下でより影響をうけ得るが、これらのタンパク質は、例えば安定化する変異の挿入により、安定化され得る。後者は、5つの変異A43L、A55V、A57I、H104W及びQ117Iの導入により安定化された、ヒトRBP4の亜鉛-結合性変異体で例証される(Skerra、Biochim Biophys Acta. 2000;1482(1-2):337-35049;Schmidt、Untersuchungen zur Protein-faltung durch Protein-Design am Retinol-Bindungsprotein. Vol. ISBN 3-89675-314-2. Munchen: Herbert Utz Verlag; 1998)。
【0032】
LCN由来のβバレルは、好ましくは完全長コード配列を表し;シグナルペプチドが配置されることができ;完全長又は整えられた(trimed)βバレル(すなわち、リポカリン分子)のN-末端及びC-末端の両方は、タンパク質パートナー(リンカー配列を伴う又は伴わずに)、タンパク質ドメイン、ペプチド又は単独のアミノ酸への融合に適しており、その理由はβバレルの末端は、リガンド結合に関与しないからである(Skerra、Biochim Biophys Acta. 2000;1482(1-2):337-35049)。
【0033】
可能性のある配列修飾は、以下を含む:
a)好ましくは、任意の種類のランダム変異誘発を含む、定向進化、並びにとりわけ、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、哺乳動物細胞ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ又は共有結合型DNAディスプレイなどの、それに続く選択又はスクリーニングのプロセスによる、選択されたリガンド“b”への親和性を増大し及び/又は他のリポカリン-フォールドリガンドへの親和性を低下するための、リポカリン-フォールド分子の結合ポケットの操作(Sergeevaら、Advanced Drug Delivery Reviews 2006;58:1622-1654)。あるいは、変異は、インシリコ計算を基にすることができ、及び引き続き部位指定変異誘発により導入されることができる(Whiteheadら、Methods Enzymol. 2013;523:1-19;Strauchら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2014 Jan 14;111(2):675-80)。そのような操作プロセスは、特定部位での限定された変異誘発のみを必要とすることができる。最初にリポカリン(lipopocalin)-フォールドに結合しない低分子が選択される場合、βバレルの結合ポケットの中心内部又はその近傍のより広範囲に及ぶ変異誘発は、結合能を持つ変異体を作製するために必要とされ得る(DE 19742706 A1に記載され、かつKorndorferら、Proteins 2003;53(1):121-129;Korndorferら、J Mol Biol. 2003;330(2):385-396;Kimら、J Am Chem Soc. 2009;131(10):3565-3576;Schlehuberら、Biophys Chem. 2002;96(2-3):213-228において、いくつかの低分子について例証)。好ましい場合において、このプロセスは、リポカリン-フォールドリガンドが誘導した高次構造の変化のスクリーニングと互換性がある。そのようなスクリーニングプロセスは、リポカリン-フォールド分子変異体の選択のために任意のリガンドの非存在下でこれらのリポカリン-フォールド分子へ結合するが、リポカリン-フォールドリガンド結合時に解離することができるタンパク質を利用することにより、実行可能であり、これは高次構造のスイッチ挙動を維持している。そのようなタンパク質は、RBP4の場合の天然タンパク質TTR又は各リポカリン-フォールド分子に結合する他の天然結合パートナーであることができる。あるいは、リガンドの非存在下での選択されたリポカリン-フォールド分子への結合のために個別に操作されているバインダーも、またそのようなスクリーニングプロセスのために使用されてよい。典型的スクリーニングプロセスにおいて、リポカリン-フォールド分子ライブラリーは、代わりに、任意のリガンドの非存在下で、これらのタンパク質に結合することが可能である変異体についてスクリーニングされる。次にリポカリン-フォールド分子のリポカリン-フォールドリガンド結合及び高次構造のスイッチングングの能力は、リポカリン-フォールドリガンドの存在下での、これらのタンパク質への非結合、又はより低い親和性による結合について、リポカリン-フォールド分子ライブラリーをスクリーニングすることにより同時に選択される。
b)リポカリン-フォールド分子のLRPPIシステムにおけるバインダーとしての使用(これを抗原として使用する代わり)が意図される場合、ループ領域に焦点を絞った(DE 19742706 A1記載のような)、追加の変異誘発(恐らく、リポカリン-フォールドリガンド結合のためのリポカリン-フォールド分子の結合ポケットの操作後であるが、必ずしもではない);好ましくは、リポカリン-フォールド分子は、任意の種類のランダム変異誘発を含む、定向進化、並びにとりわけ、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、哺乳動物細胞ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ又は共有結合型DNAディスプレイなどの、それに続く選択又はスクリーニングのプロセスにより、操作される(Sergeevaら、Advanced Drug Delivery Reviews 2006;58:1622-1654)。リポカリン-フォールド分子の低分子結合の能力の維持は、リポカリン-フォールドリガンドの存在下でのリポカリン-フォールド分子の抗原結合及びリポカリン-フォールドリガンドの非存在下での非結合(又はより低い親和性による結合)のスクリーニングに代えることにより、是認され得る。
c)二量体化又は他のタンパク質もしくは脂質膜との相互作用を防止するための、残基の変異/欠失/挿入(例えば、遊離システイン、ApoMのプロセッシングされないシグナルペプチド、RBP4のループCD残基59-68など;例えば、Skerra、Biochim Biophys Acta. 2000;1482(1-2):337-350;Zhangら、Sci Rep. 2016;6:30655;Redondoら、FASEB J. 2008;22(4):1043-1054参照)。
d)翻訳後タンパク質修飾を防止するための、残基の変異/欠失/挿入。
e)例えば、抗体断片について開示されているような細胞質における還元条件下での、安定性を向上するためのリポカリン-フォールド分子の操作(Wornら、J Biol Chem. 2000;275(4):2795-2803)。これは、例えば、安定化する変異の理論的設計によるか、又は向上された安定性を選択する定向進化実験により、達成することができる(Traxlmayrら、Biochim Biophys Acta. 2012;1824(4):542-549)。しかし、タンパク質を安定化する他の方法も、可能である。
【0034】
ヒト細胞内iLBPタンパク質ファミリーは、CRBP及びCRABPと称される6つのレチノイド結合性タンパク質並びに10の脂肪酸結合性タンパク質(FABP)の群を含む。iLBPは細胞内タンパク質であるが、その一部、例えばFABP4は、細胞外空間においても機能を有する(Hotamisligilら、Nat Rev Endocrinol. 2015;11(10):592-605)。全てのiLBPは、ストランドβAとβBの間に介在するヘリックス-ターン-ヘリックスモチーフを除いて、より多く又はより少なく延長されたループにより接続された10の逆平行βストランドと同じアーキテクチュアを有する(Lakshmiら、PLoS One. 2015;10(8): e0135507;Zhangら、PLoS One. 2012;7(5): e36772;Smathersら、Hum Genomics. 2011;5(3):170-191)。LCNと比べ、それらのバレル構造は、より小型であり、かつそれらのリガンドは、入口のヘリックス-ターン-ヘリックスモチーフによる遮蔽のために、溶媒にほとんど曝されない。しかしLCNのように、iLBPは、多様なスペクトルの特定の共有されるリガンドの結合に適合され、かつこれらはまた、一般には変異誘発に対する高い許容度を有する。後者は、バレル入口のヘリックス-ターン-ヘリックスモチーフの完全な欠失及び単純なループによる置換さえ含む(Curtoら、Protein Sci. 2009;18(4):735-746;Ogbayら、Protein Sci. 2004;13(5):1227-1237)。iLBPの中で、FABP1及びFABP6は、より高い骨格柔軟性及びより大きいリガンド入口により特徴付けられ、その結果嵩高な分子及び各々2つを収容するそれらの独自の能力を生じる。これまで試験されたリガンドの結合性は一般に、リガンド誘導した強剛性のために、小さい高次構造の変化のみを明らかにした(Yuら、Sci Rep. 2016;6:34171;Sharmaら、J Biol Chem. 2011;286(36):31924-31928;Caiら、Biophys J. 2012;102(11):2585-2594;Franzoniら、J Lipid Res. 2010;51(6):1332-1343;Vaezeslamiら、J Mol Biol. 2006;363(3):687-701;Gillilanら、J Mol Biol. 2007;372(5):1246-1260;Menozziら、J Struct Biol. 2017;197(3):330-339;Longら、Biophys J. 2010;98(12):3054-3061)。明らかに、これらの変化は、他のタンパク質との相互作用を制御し、かつ例えば、核輸送及び核受容体との相互作用などを媒介し、並びに例えば、CRBP-Iの場合細胞膜における受容体STRA6との相互作用の媒介により、細胞内のレチノイドをシャトル移動するのに十分である(Gillilanら、J Mol Biol. 2007;372(5):1246-1260;Armstrongら、J Biol Chem. 2014;289(21):14941-14954;Amber-Vitosら、PLoS One. 2015;10(8):e0132138;Berryら、Mol Cell Biol. 2012;32(15):3164-3175;Sesslerら、Mol Cell. 2005;18(3):343-353;Hoferら、J Biol Chem. 2015;290(30):18438-18453;Furuhashiら、Nat Rev Drug Discov. 2008;7(6):489-503)。これによりiLBPの一部は、カリックス入口のα2ヘリックス内での、構造的核移行シグナル(NLS)の形成/選択を介して、相互作用し、これは全てではない一部のそれらの低分子リガンドにより誘発される(Furuhashiら、Nat Rev Drug Discov. 2008;7(6):489-503)。
【0035】
LCN同様、iLBPのヒトバリアントは、ヒトインビボにおいて適用される場合、LRPPIシステムにおいて使用されることが好ましい。中でも、レチノイド結合性タンパク質、特に非常に良く特徴付けられたCRABP-II(UniProt ID P29373)が、それらのレチノイドリガンド特異性のために、好ましい(Zhangら、PLoS One. 2012;7(5): e36772;Franzoniら、J Lipid Res. 2010;51(6):1332-1343;Vaezeslamiら、J Mol Biol. 2006;363(3):687-701;Menozziら、J Struct Biol. 2017;197(3):330-339)。更に、ヘリックス-ターン-ヘリックス置換が実証されたFABP2(P12104)、及びいくつかの臨床承認された親油性薬物へのそれらの公知の低親和性のためにFABP1(P07148)は、臨床的に適用可能なリガンドを認識するための結合ポケットの操作に関して、同じく魅力的なiLBPメンバーである(Smathersら、Hum Genomics. 2011;5(3):170-191;Curtoら、Protein Sci. 2009;18(4):735-746;Ogbayら、Protein Sci. 2004;13(5):1227-1237;Velkov T、Chem Biol. 2007;14(4):453-465;Velkov T.、PPAR Res. 2013;2013:938401;Beringhelli T、PLoS One. 2015;10(7):e0132096;Chuang S、J Med Chem. 2008;51(13):3755-3764)。
【0036】
本発明のLRPPIシステムへの組込みに関して、iLBPのβバレルのタンパク質パートナー(リンカー配列を伴う又は伴わない)、タンパク質ドメイン、ペプチド又は単独のアミノ酸への融合は、(完全長又は整えられたiLBPタンパク質の)N-末端及びC-末端を介して可能である。これらの配列は、好ましくは、各相互作用する配列エレメントを修飾又は欠失することにより、細胞質内でのそれらの天然タンパク質パートナーとの望ましくない相互作用を防止するよう修飾されている(例えば、α2ヘリックス中に隠された構造的NLS及び他の相互作用部位を含むヘリックス-ターン-ヘリックスモチーフ;Gillilanら、J Mol Biol. 2007;372(5):1246-1260;Armstrongら、J Biol Chem. 2014;289(21):14941-14954;Amber-Vitosら、PLoS One. 2015;10(8):e0132138;Berryら、Mol Cell Biol. 2012;32(15):3164-3175;Sesslerら、Mol Cell. 2005;18(3):343-353)。選択されたリポカリン-フォールドリガンド(“b”)に対する親和性を増大し、及び/又はそれらの内在性低分子リガンドへの親和性を減少するために、iLBPは、LCNと同様に操作されてよい。リポカリン-フォールドリガンド依存型認識の操作を促進するために、ヘリックス-ターン-ヘリックスモチーフをループ配列により置換することは可能である(Curtoら及びOgbayらにより例証されているように(Curtoら、Protein Sci. 2009;18(4):735-746;Ogbayら、Protein Sci. 2004;13(5):1227-1237)。
【0037】
本発明のLRPPIシステム(すなわち、リポカリン-フォールド分子の「リポカリン-フォールド」を基にしている)の開発の論理的根拠は、リポカリン-フォールドリガンド(“b”)の選択に際し、選択の自由を最大化することである。この自由を可能にするための決定的な革新は、「リポカリン-フォールド」構造を含むリポカリンタンパク質スーパーファミリーのタンパク質を基にしている。それらの重要な特徴、すなわちカリックス様の形状及び高い構造上の柔軟性を伴う特徴的な深い結合ポケットは、本発明の柔軟性及び信頼性にとって決定的である。結果として、これらの結合ポケットは、多様な構造的及び生物物理的特徴を持つ広範な低分子リガンドへの結合のために、かなり少ない変異により操作することができる。これは、タンパク質BBP及びNGALにより実証されており、これらはフルオレセイン、ジゴキシゲニン、ジギトキシゲニン及びジアミンペンタ酢酸(DTPA)ベースのキレート剤などの本来非結合性の低分子へ高親和性で結合するために、12~17個のアミノ酸残基の置換により操作された(Korndorferら、Proteins 2003;53(1):121-129;Korndorferら、J Mol Biol. 2003;330(2):385-396;Kimら、J Am Chem Soc. 2009;131(10):3565-3576)。従って、現存するLRPPIシステムとは対照的に、本発明の新規システムは、リポカリン-フォールド含有タンパク質(すなわち、リポカリン-フォールド分子)を利用することにより規定され、並びに可能性のある低分子(すなわち、リポカリン-フォールドリガンド)のいずれか確定的リストによっても、そのような分子の特定の構造的及び化学的特性によっても、規定されない。
【0038】
本発明のリポカリン-フォールドリガンド“b”は、「低分子」であり、例えばリポカリン-フォールド分子などの、ポリペプチド及びタンパク質と比べて「小さい」。従って本発明のリポカリン-フォールドリガンドは、分子量1500Da以下、好ましくは1000Da以下、特に750Da以下を有する。これは、本発明のLRPPIシステム内で特異的結合(すなわち、リポカリン-フォールド分子への結合)が可能であるという条件で、これは例えばグリシン(75Da)と同じくらい小さいか、更にそれ以下であってもよい。従って本発明のリポカリン-フォールドリガンドの好ましいMw範囲は、50~1500Da、好ましくは75~1500Da、特に150~750Daである。好ましくは、リポカリン-フォールドリガンドは、リポカリン-フォールド構造のバレル領域及びループ領域により形成されるリポカリン-フォールド分子のカリックスにおいて結合することができる。リポカリン-フォールドリガンドは、リポカリン-フォールド分子(リポカリン-フォールド分子の少なくとも1つの高次構造)に対し実質的及び特異的親和性を有し、これは1mM以下、好ましくは100μM以下、特に10μM以下であってよい。そのような親和性は、リポカリン-フォールド分子の結合ポケットの定向進化により増大することができる。最大30の変異又はそれよりも多くが、所定のリポカリン-フォールド分子に適用されてよいが(例えば、Schonfeldら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2009;106(20):8198-8203参照)、所定のリポカリン-フォールドリガンドに対する親和性を著しく増加するために、25よりも多く又は20よりも多くを置換することは、通常不要である(例えば、Kimら、J Am Chem Soc. 2009;131(10):3565-3576;Korndorferら、Proteins 2003;53(1):121-129;Korndorferら、J Mol Biol. 2003;330(2):385-396;Gebauerら、J Mol Biol 2013;425(4):780-802参照)。リポカリン-フォールドリガンドに対する改善された親和性を持つリポカリン-フォールド分子を作製する方法は、当該技術分野において良く利用可能である(前記参照)。通常、わずかに2、3の変異が、例えば、ただ1つ、2以下、3以下、4以下、5以下、6以下、7以下、8以下、9以下、又は10以下の変異が、所定のリポカリン-フォールドリガンドに対する親和性の著しい増加に必要とされる。リポカリン-フォールドリガンド“b”のリポカリン-フォールド分子“a”における高次構造の改変を誘導する能力及び/又は直接相互作用によるリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”の親和性に正に作用する能力は、そのような機能を持つ現存する低分子リガンドからのファルマコフォアを用い、ある程度予測することができる。加えて、この機能的能力は、リポカリン-フォールド分子への高次構造特異性結合親和性を有する結合性タンパク質を利用することにより、スクリーニングすることができる(以下の実施例2、並びにCowardら、Anal Biochem. 2009;384(2):312-320、Sharifら、Anal Biochem. 2009;392(2):162-168、及びDobriら、Invest Ophthalmol Vis Sci. 2013;54(1):85-95の論文において詳述)。RBP4の場合、例えばTTRは、天然に生じる高次構造特異性結合性タンパク質として使用することができる。例えばリポカリン-フォールドリガンド依存性高次構造スイッチングを受けることも報告されているTLC又はApoMのように(Gasymovら、Biochim Biophys Acta. 1998;1386(1):145-156;Breustedtら、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr. 2009;65(Pt 10):1118-1125;Zhangら、Sci Rep. 2016;6:30655;Christoffersenら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2011;108(23):9613-9618)、そのような利用可能なタンパク質が存在しない場合は、リポカリン-フォールド分子の高次構造状態をシフトすることが分かっているリポカリン-フォールドリガンドの存在下では、リポカリン-フォールド分子へ結合せず(又は減少した親和性で結合する)、非存在下でこれへ結合する交互選択のプロセスにより、負荷されないリポカリン-フォールド分子と、すなわちリポカリン-フォールドリガンドの非存在下で相互作用するタンパク質-ベースのバインダーを最初に作製することは可能である。この交互選択戦略は、バインダーが選択されることを確実にし、これはリポカリン-フォールド分子の負荷しない状態(すなわち、いずれのリポカリン-フォールドリガンドも負荷しない)を特異的に認識する。実施例1において、本発明者らは、リポカリン-フォールドリガンドA1120の存在下では増大した親和性で、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー、すなわちRBP4(すなわち、リポカリン-フォールド分子)へ結合するタンパク質の選択とは反対の方向での、リポカリン-フォールドリガンド(A1120)の存在及び非存在下での、交互スクリーニングのこのプロセスを実証した。
【0039】
典型的には、リポカリン-フォールドリガンド分子を選択するプロセスは、以下から開始することができる:
1.最初の結合親和性を伴う又は伴わない、任意の所定の分子、
2.結合親和性及び/又は機能に関するハイスループットスクリーニングのための、任意の現存する化合物ライブラリー、
3.結合及び/又は機能に関するバーチャルスクリーニングにおいて使用することができる化合物の、任意の構造データベース。
【0040】
Ad1:最初の結合親和性は、このアプローチにおいては必要とされず、その理由は、リポカリン-フォールド分子の結合ポケットは、結合のために操作され得るからである(例えば、DE 19742706 A1参照)。自在な最初に結合しない分子への高親和性の結合のためのリポカリン-フォールド分子の操作の実現可能性は、フルオレセイン、ジゴキシゲニン及びDTPA-ベースのキレート剤の結合に関するBBP及びNGALの操作により実証されている(Korndorferら、Proteins 2003;53(1):121-129;Korndorferら、J Mol Biol. 2003;330(2):385-396;Kimら、J Am Chem Soc. 2009;131(10):3565-3576)。従って、臨床上魅力的なリポカリン-フォールドリガンド“b”の候補は、最初の結合親和性とは無関係に、ただ薬理学的特性、例えば忍容性、生物学的利用能、血漿レベル、薬物動態、組織浸透度などを考慮し、選択することができる。そのような分子は、例えばインディカキサンチン及びブルガキサンチンであることができ、これらは薬理学的に良く研究されかつ忍容性があり、並びに食用植物の小さい部分(narrow segment)中に十分に高い量で含まれる。しかし、特定のリポカリン-フォールド分子に結合することが既に明らかにされている臨床承認された薬物の数多くの例が存在する(例えば、ヒトFABP1;Smathersら、Hum Genomics. 2011;5(3):170-191;Velkovら、Chem Biol. 2007;14(4):453-465;Velkov T.、PPAR Res. 2013;2013:938401;Beringhelliら、PLoS One. 2015;10(7):e0132096;Chuangら、J Med Chem. 2008;51(13):3755-3764)。当然そのような分子は、魅力的な出発点である。最も魅力的な分子は、その高次構造の作用が証明されかつ臨床適用の可能性のある、非天然のリガンドである。例えば、RBP4に関して、これらのリガンドは、A1120及び数多くの誘導体並びに合成レチノイド、例えばフェンレチニド、N-エチルレチナミド、オールトランス型レチノイン酸、酢酸レチニル及びアキセルフテンなどである(Berniら、FEBS Lett. 1992;308(1):43-45;Zanottiら、J Biol Chem. 1993;268(33):24873-24879;Zanottiら、J Biol Chem. 1994;269(47):29613-29620;Motaniら、J Biol Chem. 2009;284(12):7673-7680lCioffiら、J Med Chem. 2014;57(18):7731-7757;Cioffiら、J Med Chem. 2015;58(15):5863-5888)。
【0041】
Ad2:結合親和性を持つ分子のための分子ライブラリーのハイスループットスクリーニングは、様々なアッセイにより行うことができる(Auldらの「HTS及び創薬のための受容体結合アッセイ(Receptor Binding Assays for HTS and Drug Discovery)」において検証、Sittampalamら編集、Assay Guidance Manual. Bethesda MD: Eli Lilly & Company and the National Center for Advancing Translational Sciences; 2004)。分子ライブラリーのスクリーニングは、例えば、A1120を、RBP4の高親和性リガンドとして同定するために利用された(Motaniら、J Biol Chem. 2009;284(12):7673-7680)、この戦略の結果は、同定されたリポカリン-フォールドリガンドは、既にいくらかの結合親和性を示し、従ってこれは、リガンド-依存型結合の媒介又はリポカリン-フォールド分子の先の結合ポケットの操作を必要としないバインダー“c”の解離について、更にアッセイすることができるということであった。注目すべきは、単独の工程で高次構造スイッチングを誘導するなど、結合及び機能に関するハイスループットスクリーニングを可能にする可能性が存在することである。RBP4の場合、例えば、TTRとの高次構造依存型相互作用を検出するための、FRETベースのアッセイにより、これを行うことができる(Cowardら、Anal Biochem. 2009;384(2):312-320;Sharifら、Anal Biochem. 2009;392(2):162-168;Dobriら、Invest Ophthalmol Vis Sci. 2013;54(1):85-95))。望ましいならば、リポカリン-フォールド分子の結合ポケットを操作すること(すなわち、変異誘発)により、各リポカリン-フォールドリガンドのリポカリン-フォールド分子への親和性は、更に増大することができる。
【0042】
Ad3:化合物データベースのバーチャルスクリーニングは、既知の低分子リガンドが存在する場合には魅力的であり、これはリポカリン-フォールド分子における高次構造の改変を媒介する。次に低分子のモデル化されたファルマコフォアを使用し、リポカリン-フォールド分子と同様に相互作用し、これにより類似の機能を示す分子をスクリーニングすることができる(ファルマコフォアモデリングを使用するバーチャルスクリーニングの検証については、Qingら、Journal of Receptor, Ligand and Channel Research 2014;7:81-92参照)。最適な場合において、モデル化された低分子リガンドが電子移動された(charged)リポカリン-フォールド分子の結晶構造も公知であり、その理由はこれは、予測アルゴリズムの精度の改善を助けるからである。低分子リガンドに結合したリポカリン-フォールド分子に関する公知の構造の例がいくつか存在する(Berniら、FEBS Lett. 1992;308(1):43-45;Zanottiら、J Biol Chem. 1993;268(33):24873-24879;Zanottiら、J Biol Chem. 1994;269(47):29613-29620;Pattanayekら、Protein Sci. 1999;8(10):2027-2032;Motaniら、J Biol Chem. 2009;284(12):7673-7680;Gasymovら、Biochim Biophys Acta. 1998;1386(1):145-156;Breustedtら、Acta Crystallogr D Biol Crystallogr. 2009;65(Pt 10):1118-1125;Gasymovら、Biochemistry. 2012;51(14):2991-3002;Zhangら、Sci Rep. 2016;6:30655;Christoffersenら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2011;108(23):9613-9618;Cowardら、Anal Biochem. 2009;384(2):312-320)。この戦略は、A1120が電子移動されたRBP4により下記の実施例セクションにおいて実証されており、これについて、機能試験及びRBP4の結合ポケットの操作に関して、分子を同定しかつ優先順位をつけるために、ファルマコフォアモデルが作製された(下記実施例2において説明)。重要なことに、ファルマコフォアアプローチは、ファルマコフォア法の限界のため(Qingら、Journal of Receptor, Ligand and Channel Research 2014;7:81-92において検証)、及び不完全で更新されないデータベースなどのために、潜在的に高次構造を誘導する分子の最終の完全リストを配信しない。更に同じくRBP4の高次構造を改変することが分かっている他の分子、例えばフェンレチニドが存在し、これについてファルマコフォアベースのアプローチは、化学空間における分子の更に別のセットの同定につながる。実際好ましい実施態様において、本発明のリポカリン-フォールド分子におけるリポカリン-フォールド構造の高度に柔軟性のある結合ポケットの定向進化との、機能に関する数百万の分子のインシリコでのフィルタリングは、完全な組合せであり、かつ新規LRPPIシステムの決定的な強度である。注目すべきは、バーチャルスクリーニングはまた、機能性分子の同定も可能にし、これは十分な最初の結合親和性は有さないが、リポカリン-フォールド分子の操作により親和性は容易に作出され得るので、このことは問題ではない。この場合、リポカリン-フォールド分子変異体は、公知の高次構造誘導性リガンドの非存在下ではリポカリン-フォールド分子変異体に結合するが、存在下では結合しない、高次構造特異的結合タンパク質の使用により、選択される。従ってこの高次構造特異的結合タンパク質の解離は、リポカリン-フォールド分子に結合しかつ同時に高次構造の改変を誘導する、リポカリン-フォールドリガンド候補の同定を可能にする(下記実施例2において詳述)。
【0043】
主に、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”は、抗体、抗体断片[とりわけ、例えば、単鎖可変断片(scFv)、抗原結合断片(Fab)、ナノボディ]を含む、任意の利用可能な分子バインダースカフォールド、及びアフィボディ、更なる(又は同じ)リポカリン-フォールド分子、好ましくはLCN、特にアンチカリン;とりわけ、アビマー、DARPins、ファイノマー、クニッツドメイン、ノッチン、モノボディ、Sso7dベースのバインダー、電荷低下したSso7d(rcSso7d)又はSac7dなどの非-抗体ベースのスカフォールドを基に、提供されるか又は操作されることができる(Simeonら、Protein Cell. 2017;Gilbrethら、Curr Opin Struct Biol. 2012;22(4):413-420;Koideら、ACS Chem Biol. 2009;4(5):325-334;Traxlmayrら、J Biol Chem. 2016;291(43):22496-22508)。その一方で、多くのより非-抗体結合性タンパク質が報告されており(Pluckthun、「代替スカフォールド:抗体選択肢の拡大(Alternative Scaffolds: Expanding the options of Antibodies)」、Little M編集、New York: Cambridge University Press; 2009:244-271;Chapmanら、Cell Chem Biol. 2016;23(5):543-553;Binzら、Nat Biotechnol. 2005;23(10):1257-1268;Vazquez-Lombardiら、Drug Discov Today. 2015;20(10):1271-1283)、実際、合成ライブラリーのデザイン及び選択が、任意のタンパク質へ適用され得、これも次にリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”として潜在的に働き得る(Pluckthun、「代替スカフォールド:抗体選択肢の拡大」、Little M編集、New York: Cambridge University Press; 2009:244-271)。本発明のLRPPIシステムの臨床適用可能性を目的として、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”は、好ましくは、できる限り低い免疫原性を維持するために、最小数の変異されたアミノ酸を伴う小型のヒト単独タンパク質ドメイン(例えば、フィブロネクチンIII型ドメイン(FN3)ベースのモノボディ)に由来する。当然、そのような更なる分子及びスカフォールドは、リポカリン-フォールド分子(又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー)へ結合することも可能である。
【0044】
従って本発明のリポカリン-フォールド分子は、それに(又はその中で)リポカリン-フォールドリガンドが結合し、並びにそれがリポカリン-フォールド分子のリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへの結合を可能にする、リポカリン-フォールドの構造モチーフを含む、任意のタンパク質であってよい。通常、本発明のリポカリン-フォールド分子は、所定のリポカリン-フォールドリガンドに対するある種の親和性を既に有し、及び/又はそれに対し機能的活性を伴う臨床的に魅力的なリガンドが、バーチャルスクリーニングにより同定され得る、「出発」リポカリン-フォールド分子を提供することにより、リポカリン-フォールド分子“a”/リポカリン-フォールドリガンド“b”/リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”のトライアングルにとって具体的な必要性に適合される。この出発リポカリン-フォールド分子は、次に、リポカリン-フォールドリガンド結合を最適化するために、並びにリポカリン-フォールドベースのLRPPIシステムの戦略Bの場合、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”への結合のために、1又は複数のアミノ酸置換、挿入及び/又は欠失により操作されてよい。戦略Aにおいて、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”は、(出発及び/又は操作された)リポカリン-フォールド分子(リポカリン-フォールドリガンドに結合した)に結合するように、タンパク質(すなわち、任意のリポカリン-フォールドリガンドの存在下で、親和性<10μMで任意の天然に生じるリポカリン-フォールド分子に元来結合することができない)を操作することにより、作製される。リポカリン-フォールドリガンド依存性リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを作製するための、タンパク質のそのような配列最適化は、本発明の実施例のセクションにおいて示され、かつ本明細書に含まれる開示により当業者に良く利用可能である。実際に、タンパク質操作の技術分野において、タンパク質スカフォールド(特に良く確立されたスカフォールド、例えば抗体及び非-抗体-ベースのスカフォールド、特にリポカリン)は、任意の生物学的分子(特にタンパク質)がバーチャルに結合され得るように適合され得ることが確立されている(例えば、(非-抗体スカフォールドに関して)Vasquez-Lombardiら、Drug Discov. Today 20 (2015), 1271-1283;Pluckthun、「代替スカフォールド:抗体選択肢の拡大」、Recombinant Antibodies for Immunotherapy, Melvyn Little, Cambridge University Press, New York (2009), pp. 244-271参照)。
【0045】
従ってこの(出発)リポカリン-フォールド分子は、好ましくは、リポカリン-フォールドスーパーファミリーの天然に生じるタンパク質の構造的リポカリン-フォールド(ヒト患者における臨床適用のため;好ましくは天然に生じるヒトリポカリン-フォールド分子)又はその公知のバリアント(例えば、「アンチカリン」又は「リポカリンのムテイン」及び同類のもの;非常に多いそのようなバリアントは、先行技術において既に開示されている)を含む。本発明のLRPPIシステムにおいて使用されるべきリポカリン-フォールド分子は、次に、先に開示されたような(例えば、a)からe))修飾の導入により、結合ポケット、βバレル構造中のアミノ酸位置、及び/もしくはβバレル構造のβストランドに隣接する領域内のアミノ酸位置の操作により(すなわち、アミノ酸の変更、挿入及び/もしくは欠失)、二量体化もしくは他の分子との相互作用を妨害するための残基の変異/欠失/挿入、翻訳後タンパク質修飾の妨害、並びに/又は改善された安定性のためのリポカリン-フォールドの操作により、リポカリン-フォールドリガンド/リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの特異性に適合されてよい。
【0046】
既に先に述べたように、リポカリン-フォールドのアーキテクチュアは、非常に頑強であり、かつ高い配列柔軟性を有し、これは、LCN及びiLBPを含む、リポカリンスーパーファミリーの全ての天然に生じるメンバーにおいて共通である、任意の配列モチーフを規定することは可能ではないという事実により明らかにされる(Lakshmiら、PLoS One. 2015;10(8): e0135507;Flowerら、Biochim Biophys Acta. 2000;1482(1-2):9-24)。リポカリンスーパーファミリーの天然に生じるメンバー内の一般に高い配列変動は別として、構造的に保存されたβストランドに隣接する領域は、配列における高い変動を示すのみではなく、構造においてもこれを示す(Flowerら、Biochim Biophys Acta. 2000;1482(1-2):9-24;Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985)。天然に生じるリポカリンスーパーファミリーメンバー中の広範囲に及ぶ配列変動及び/又はβストランドに隣接する領域中の構造変動が与えられるならば、従来のリポカリン分子は、特徴的βバレル構造の構造的に保存されたβストランドにおけるいかなる大きい構造変化も伴わずに、各タンパク質における全てのアミノ酸位置の15%よりも多くに相当する、30より多いアミノ酸位置での変異により、巧く操作されることは、驚くべきことではない(Schonfeldら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2009;106(20):8198-8203)。従ってリポカリン-フォールド分子は、全般的βバレルフォールドを損なうことなく、広範囲に及んで変異され得る(すなわち特にループ領域、しかしβバレルのβストランドも、かなりの数のアミノ酸の置換、挿入及び/又は欠失により、デザインすることができる)ことは、この分野において良く確立されている。従ってLRPPIシステムにおけるリポカリン-フォールド構造の使用を説明している本発明において、リポカリン-フォールド分子は、SCOPデータベース(バージョン1.75)においてリポカリンスーパーファミリーに分類される任意の天然に生じる分子、又はその変異体として定義される。しかし、限定された数のアミノ酸のみを置換することが好ましい。従って本発明のLRPPIシステムは、好ましくは、(1)リポカリンスーパーファミリーの天然に生じるメンバーと同一のリポカリン-フォールド分子、又は(2)既に存在しているそれらのバリアント(例えば、既に存在するアンチカリン、リポカリンムテイン、バレル入口のヘリックス-ターン-ヘリックスモチーフが完全に欠失したiLBPなど)、又は(3)それが由来するその対応物に対し少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%の配列同一性を伴う、(1)もしくは(2)の誘導体:を含む。
【0047】
好ましい実施態様に従い、このリポカリン-フォールド分子は、βバレル構造に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%の配列同一性を伴う、天然に生じる又は他に開示された(そのアミノ酸配列により)リポカリン-フォールド分子の誘導体であり、これによりこのβバレル構造は、ヒトRBP4(PDBエントリー1RBPのアミノ酸残基番号付けスキームに従う)のアミノ酸位置21-30、41-47、52-58、71-78、85-88、102-109、114-120及び132-138;又は、ヒト涙液リポカリン(TLC;Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985により規定)のアミノ酸位置14-23、37-43、48-54、62-69、76-79、84-91、96-102及び111-117;又は、ヒトアポリポタンパクM(ApoM;Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985により規定)のアミノ酸位置44-53、69-75、81-87、96-103、110-113、119-126、131-137及び142-148;又は、ヒト細胞レチノイン酸結合タンパク質II(CRABPII;PDBエントリー2FS6のアミノ酸残基番号付けスキームに従う)のアミノ酸位置5-12、41-45、50-54、61-65、71-73、81-87、93-96、108-112、119-124及び129-135;又は、ヒト脂肪酸結合性タンパク質1(FABP1;PDBエントリー2F73のアミノ酸残基番号付けスキームに従う)のアミノ酸位置5-12、39-43、48-52、59-63、69-71、79-85、91-94、99-103、109-114及び119-125:に構造的に対応する領域として定義される。本発明のリポカリン-フォールド分子の好ましい実施態様はまた、(少なくとも)リポカリン-フォールドを含みかつリポカリン-フォールドリガンド及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへ結合することができる、(1)、(2)もしくは(3)の1-30のアミノ酸置換及び/又は1-50のアミノ酸欠失及び/又は1-50のアミノ酸挿入を含むリポカリン-フォールド分子を含む。従ってこのリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムは好ましくは、リポカリン-フォールド分子として、天然に生じるiLBP(細胞内脂質結合性タンパク質)、天然に生じるリポカリン又はアンチカリンと同一の分子、並びに1-30のアミノ酸置換及び/又は1-50のアミノ酸欠失及び/又は1-50のアミノ酸挿入を伴うこれらの分子のいずれかの誘導体を含む。
【0048】
あるいは、本発明のLRPPIシステムはまた、リポカリン-フォールドの構造的に保存されたβバレル構造を少なくとも対象とする、(4)LCNの場合には、長さ少なくとも80、好ましくは少なくとも100、特に少なくとも120のアミノ酸[あるいは、iLBPの場合には(これは一般にLCNよりも小さいタンパク質である)、長さ少なくとも80、好ましくは少なくとも85、特に少なくとも90のアミノ酸]の、(1)又は(2)又は(3)の断片:も含んでよい。この構造的に保存されたβバレル構造は、ヒトRBP4(PDBエントリー1RBPのアミノ酸残基番号付けスキームに従う)のアミノ酸位置21-30、41-47、52-58、71-78、85-88、102-109、114-120及び132-138;又は、ヒト涙液リポカリン(TLC;Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985により規定)のアミノ酸位置14-23、37-43、48-54、62-69、76-79、84-91、96-102及び111-117;又は、ヒトアポリポタンパクM(ApoM;Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985により規定)のアミノ酸位置44-53、69-75、81-87、96-103、110-113、119-126、131-137及び142-148;又は、ヒト細胞レチノイン酸結合タンパク質II(CRABPII;PDBエントリー2FS6のアミノ酸残基番号付けスキームに従う)のアミノ酸位置5-12、41-45、50-54、61-65、71-73、81-87、93-96、108-112、119-124及び129-135;又は、ヒト脂肪酸結合性タンパク質1(FABP1;PDBエントリー2F73のアミノ酸残基番号付けスキームに従う)のアミノ酸位置5-12、39-43、48-52、59-63、69-71、79-85、91-94、99-103、109-114及び119-125:に構造的に対応するアミノ酸位置を含むか又はこれからなる。
【0049】
更に好ましい本発明のLRPPIシステムにおけるリポカリン-フォールド分子は、構造的に保存されたβバレル構造の外側に、最大15、最大30、もしくは最大50のアミノ酸欠失及び/又は最大15、最大30、もしくは最大50のアミノ酸挿入を伴う、天然に生じるリポカリン又はiLBPの誘導体である。構造的に保存されたβバレル構造の外側で、これらの分子は、アミノ酸変化に対し非常に柔軟性があり、従って変異、欠失及び挿入の組合せが、ヒトRBP4において構造的に保存されたβストランドに隣接する領域を規定する、ヒトRBP4(PDBエントリー1RBPのアミノ酸残基番号付けスキームに従う)のアミノ酸残基1-20、31-40、48-51、59-70、79-84、89-101、110-113、121-131及び139-183に構造的に対応する;又は、ヒトTLCにおいて構造的に保存されたβストランドに隣接する領域を規定する、ヒトTLC(Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985のアミノ酸残基番号付けスキームに従う)のアミノ酸残基1-13、24-36、44-47、55-61、70-75、80-83、92-95、103-110及び118-158の領域に構造的に対応する;又は、ヒトApoMにおいて構造的に保存されたβストランドに隣接する領域を規定する、ヒトApoM(Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985のアミノ酸残基番号付けスキームに従う)のアミノ酸残基1-43、54-68、76-80、88-95、104-109、114-118、127-130、138-141及び149-188の領域に構造的に対応する;又は、ヒトCRABPIIにおいて構造的に保存されたβストランドに隣接する領域を規定する、ヒトCRABPII(PDBエントリー2FS6のアミノ酸残基番号付けスキームに従う)のアミノ酸残基1-4、13-40、46-49、55-60、66-70、74-80、88-92、97-107、113-118、125-128及び136-137の領域に構造的に対応する;又は、ヒトFABP1において構造的に保存されたβ-ストランドに隣接する領域を規定する、ヒトFABP1(PDBエントリー2F73のアミノ酸残基番号付けスキームに従う)のアミノ酸残基1-4、13-38、44-47、53-58、64-68、72-78、86-90、95-98、104-108、115-118及び126-127の領域に構造的に対応する:これらの領域において可能である。
【0050】
好ましい実施態様において、本発明のLRPPIシステムは、リポカリン-フォールド分子として、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30のアミノ酸置換を伴う、リポカリンスーパーファミリーの天然に生じるメンバーの誘導体を含む。
【0051】
更なる好ましい実施態様に従い、本発明のLRPPIシステムにおいて使用されるリポカリン-フォールド分子は、リポカリン、すなわち、+1トポロジーで配置された8ストランドのアップアンドダウンβバレル、それに続く8番目のβストランドのC-末端の後のαヘリックスを含むタンパク質、又は1~30のアミノ酸置換及び/もしくは1~50のアミノ酸欠失及び/もしくは1~50のアミノ酸挿入を伴うリポカリンの誘導体である。
【0052】
本発明のリポカリン-フォールド分子の設計において、出発リポカリン-フォールド分子から所定のLRPPIシステムのために実際に最適化された分子までの誘導体化/変異プロセスにおいて著しく改善される1つのパラメータは、リポカリン-フォールドリガンド“b”に対する親和性である。加えて又は代わりに、リポカリン-フォールド分子それ自身がリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの代わりにバインダーとして操作される場合、改善するパラメータは、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”への結合に関する、リポカリン-フォールド分子の2つの状態(リポカリン-フォールドリガンドへの結合又は非結合)の間の親和性の差異の増大である。結合状態と非結合状態の間の構造の差異(好ましくは高次構造の改変から生じる)により優先的に特徴付けられるリポカリン-フォールド分子/リポカリン-フォールドリガンド対の選択は、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”に関する2つのリポカリン-フォールド分子の状態の最大親和性の差異の基礎である。リポカリン-フォールド分子が、抗原として使用される場合(すなわちリポカリン-フォールドベースのLRPPIシステムの戦略A)、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”は、リポカリン-フォールド分子の2つの状態の間の最大選択性、すなわち最大親和性の差異のために引き続き操作され得る。リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー及び/又はリポカリン-フォールド分子の操作は、リポカリン-フォールドリガンド-結合状態におけるリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーのリポカリン-フォールド分子に対する親和性が、非結合状態(すなわち、リポカリン-フォールドリガンドが存在しない)におけるリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーのリポカリン-フォールド分子への親和性よりも、少なくとも10倍高い、好ましくは少なくとも20倍高い、特に少なくとも50倍高いLRPPIシステムにつながる。本発明の過程において、一部のリガンドの結合時に高次構造の改変を受けることがわかっているヒトリポカリンRBP4は、原則として本発明の概念を証明するためにより詳細に研究されている。RBP4同様に、ヒトリポカリンTLC及びApoMも、著しいリガンドが誘導した高次構造の改変を受け、結果的に本発明のLRPPIシステムの作製に、リポカリン-フォールド分子として又は出発リポカリン-フォールド分子として、これら3つのリポカリンの1つを使用することが好ましいことが分かっている。
【0053】
従って本発明のLRPPIシステムの好ましい実施態様は、ヒトRBP4、TLC又はApoMの天然型バージョンと少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%の配列同一性を有するリポカリン-フォールド分子を適用する。
【0054】
好ましい実施態様に従い、本発明のリポカリン-フォールド分子は、PDBエントリー1RBPにおけるアミノ酸残基番号付けスキームに従いアミノ酸残基21-30、41-47、52-58、71-78、85-88、102-109、114-120及び132-138の領域を含む構造上保存されたβバレル構造、又は少なくとも80、好ましくは少なくとも100、特に少なくとも120のアミノ酸残基を伴い並びにヒトRBP4(PDBエントリー1RBPにおけるアミノ酸残基番号付けスキームに従う)のアミノ酸残基21-30、41-47、52-58、71-78、85-88、102-109、114-120及び132-138に対応する領域を含むそれらの断片において、ヒトRBP4との、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%の、配列同一性を有するか;あるいは、(2)このリポカリン-フォールド分子は、Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985により規定されたようなヒトTLCのアミノ酸残基14-23、37-43、48-54、62-69、76-79、84-91、96-102及び111-117の領域を含む構造上保存されたβバレル構造、又は少なくとも80、好ましくは少なくとも100、特に少なくとも120のアミノ酸残基を伴い並びにヒトTLCのアミノ酸残基14-23、37-43、48-54、62-69、76-79、84-91、96-102及び111-117に対応する領域を含むそれらの断片において、ヒト涙液リポカリン(TLC)と、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%の配列同一性を有するか;あるいは、(3)このリポカリン-フォールド分子は、Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985により規定されたようなヒトアポリポタンパクM(ApoM)のアミノ酸残基44-53、69-75、81-87、96-103、110-113、119-126、131-137及び142-148の領域を含む構造上保存されたβバレル構造、又は少なくとも80、好ましくは少なくとも100、特に少なくとも120のアミノ酸残基を伴い並びにヒトApoMのアミノ酸残基44-53、69-75、81-87、96-103、110-113、119-126、131-137及び142-148に対応する領域を含むそれらの断片において、ヒトApoMと、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0055】
好ましい実施態様において、本発明のLRPPIシステムのリポカリン-フォールド分子は、ヒトRBP4と、少なくとも95%の配列同一性、又はヒト涙液リポカリン(TLC)と少なくとも95%の配列同一性、又はヒトアポリポタンパクM(ApoM)と少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0056】
本発明のLRPPIシステムは、中心リポカリン-フォールド分子“a”/リポカリン-フォールドリガンド“b”/リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”のトライアングルからなる(図1A参照)。しかしこのトライアングルは、更なる部分の、リポカリン-フォールド分子“a”及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”への連結により、更に機能化され得る(例えば、図1B参照)。従って本発明のLRPPIトライアングルは、様々なアーキテクチュア、例えばCAR(以下に開示するような)へ拡大され得る。再度、本発明の「トライアングル」は、任意の天然に生じる(生理的)トライアングルとは異なることは、強調されてよく、その理由は、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー(又はリポカリン-フォールド分子への結合を媒介するそれの任意のドメイン)は、天然に生じるリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー(すなわち、任意のリポカリン-フォールドリガンドの存在下で、任意の天然に生じるリポカリン-フォールド分子に対し親和性<10μMを有するタンパク質)ではないからである。好ましくは、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーはまた、天然に生じるリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーに由来しない。「に由来する」とは、その天然に生じるタンパク質の任意のセグメントのアミノ酸配列と少なくとも98%同一であり、かつ任意の天然に生じるリポカリン-フォールド分子に対し<10μMの親和性を有する(任意のリポカリン-フォールドリガンドの存在下で)アミノ酸配列を持つ、少なくとも50の連続するアミノ酸の少なくとも1つのセグメントを含むと定義される。好ましくは、リポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの両方は、天然に生じる分子ではないが、人工的に設計された分子である(例えば、組換え技術及び/又は定向進化により設計される)。好ましい実施態様において、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、リポカリン-フォールド分子であるかもしくはこれを含み、及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、抗原、細胞表面受容体、抗体などを含む。
【0057】
本発明のLRPPIシステムに関してまた、リポカリン-フォールドリガンドのリポカリン-フォールド分子に対する親和性は、ヒト生体における生理的環境において達成され得るリポカリン-フォールドリガンド濃度でリポカリン-フォールドリガンドのリポカリン-フォールド分子への結合を可能にする範囲内であることも好ましい。従ってリポカリン-フォールドリガンドは、リポカリン-フォールド分子に対し1mM以下、好ましくは100μM以下、特に10μM以下の親和性を有することが、好ましい。リポカリン-フォールドリガンドとリポカリン-フォールド分子の間のこの親和性は、Kd(解離定数)値として規定され、かつ好ましくは自動化されたMicroCal PEAQ-ITC装置(Malvern Instruments)を使用する、等温滴定熱量測定(ITC)により決定される。
【0058】
本発明のLRPPIシステムは一般に、リポカリン-フォールドリガンド“b”が結合しているかどうかに応じた、リポカリン-フォールド分子“a”のリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”に対する親和性における実質的差異に頼っている。この親和性ウィンドウ(すなわち、各々、リポカリン-フォールドリガンドに結合した又は結合していない、リポカリン-フォールド分子に対するリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの親和性)は、生理的条件下でこのLRPPIシステムの制御を可能にする信頼できる親和性範囲内に存在することも、好ましい。従ってリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーのリガンド-結合状態のリポカリン-フォールド分子に対する親和性は、10μM以下、好ましくは2μM以下、特に400nM以下であることは、好ましい。リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーとリガンド-結合状態のリポカリン-フォールド分子の間のこの親和性は、Kd値と規定され、好ましくはBiacoreT200装置(GE healthcare)を使用する、表面プラズモン共鳴(SPR)により決定される。
【0059】
本発明のLRPPIシステムに関して、リポカリン-フォールドリガンドに結合状態/非結合状態の間のリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへのリポカリン-フォールド分子結合の親和性の差異は、できるだけ高くなければならない。これは、相互作用パートナーの定向進化及び好適な親和性差異のスクリーニング(増大した親和性差異に関して)により達成することができる。インビボ環境において適用可能であるために、リポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールドリガンドに対し十分に高い親和性を有さなければならない。これはまた、患者のインビボにおける本発明のLRPPIシステムの機能を可能にする。ここでこれはまた、血漿中の薬物濃度(例えば、リポカリン-フォールドリガンドに関して)は、通常2、3μMであることも考慮される。従ってリポカリン-フォールドリガンドのリポカリン-フォールド分子に対する親和性は、そのような血漿濃度がそのリガンドのリポカリン-フォールド分子への適切な結合を達成することができるのに十分に高くなければならない。更に本発明のLRPPIシステムは、他の物質のリポカリン-フォールド分子への関連する結合を最小化するように設計されなければならない(これは、有害反応を誘発するか、又はこのシステムにおけるインビボ機能の効果を妨げる(例えば、リポカリン-フォールド分子への結合と競合することにより))。
【0060】
リポカリン-フォールドベースのLRPPIシステムは、PPIの制御のために使用されるリポカリン-フォールドリガンドの選択に関して、最高の柔軟性を可能にする。本発明のある実施態様は、(ある)リポカリン-フォールド分子(複数可)に対しある親和性を有することが既に分かっている物質と共に働くにもかかわらず、同じくリポカリン-フォールド分子は、関心対象の低分子に結合し、これによりリポカリン-フォールド分子のそのような操作により、低分子がリポカリン-フォールドリガンドとなり始めることができるように設計されてよい。従って、医薬目的に関心があり、従って本発明のリポカリン-フォールドリガンド“b”(すなわち、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへのリポカリン-フォールド分子の結合を可能にする物質)として使用されることが好ましい、任意の関心対象の低分子は、本発明のLRPPIシステムに含まれることができる。本発明の好ましい実施態様に従い、リポカリン-フォールドリガンドは、以下である:フェンレチニド(PubChem CID:5288209)、N-エチルレチナミド(PubChem CID:5288173)、オールトランス型レチノイン酸(PubChem CID:444795)、アキセルフテン(PubChem CID:5287722)、A1120(PubChem CID 25138295)、A1120の誘導体(Cioffiら、J Med Chem. 2014;57(18):7731-7757;Cioffiら、J Med Chem. 2015;58(15):5863-5888))、1,4-ブタンジオール(Pubchem CID:8064)、スフィンゴシン-1-リン酸(Pubchem CID:5283560)、テトラデカン酸(Pubchem CID:11005)、インディカキサンチン(Pubchem CID:6096870及び12310796)、ブルガキサンチンI(Pubchem CID:5281217)、モンテルカスト(Pubchem CID:5281040)、シクランデレート(Pubchem CID:2893)、オキソラミン(Pubchem CID:13738)、マザチコール(PubchemCID:4019)、ブトクタミド(Pubchem CID:65780)、トナベルサット(Pubchem CID:6918324)、ノバジン(Novazin)(Pubchem CID:65734)、ジフェニドール(Pubchem CID:3055)、ネオボニバール、エルロチニブ(Pubchem CID:92131336)、タネスピマイシン(Pubchem CID:6505803)、LMI070(Pubchem CID:85471316)、アロクラミド(Pubchem CID:71837)、ジアセトロール(Pubchem CID:50894)、アコチアミド(Pubchem CID:5282338)、アコジボロール(Pubchem CID:44178354)、アキュマピモド(Acumapimod)(Pubchem CID:11338127)、アパルタミド(Pubchem CID:24872560)、ASP3026(Pubchem CID:25134326)、AZD1480(Pubchem CID:16659841)、BIIB021(Pubchem CID:16736529)、ブラナプラム(Pubchem CID:89971189)、ブレキナル(Pubchem CID:57030)、クロルプログアニル(Pubchem CID:9571037)、クリンダマイシン(Pubchem CID:446598)、エムリカサン(Pubchem CID:12000240)、エナシデニブ(Pubchem CID:89683805)、エノリカム(Pubchem CID:54679203)、フルラゼパム(Pubchem CID:3393)、ILX-295501(Pubchem CID:127737)、インディブリン(Indibulin)(Pubchem CID:2929)、メトクロプラミド(Pubchem CID:12598248)、メバスタチン(Pubchem CID:64715)、MGGBYMDAPCCKCT-UHFFFAOYSA-N(Pubchem CID:25134326)、MK0686(Pubchem CID:16102897)、ナバリクシン(Navarixin)(Pubchem CID:71587743)、ネファゾドン塩酸塩(Pubchem CID:54911)、パントプラゾール(Pubchem CID:4679)、パビネタント(Pavinetant)(Pubchem CID:23649245)、プロキサゾール(Pubchem CID:8590)、シッカニン(Pubchem CID:71902)、スルファグアノール(Pubchem CID:9571041)、スニチニブ(Pubchem CID:5329102)、スボレキサント(Pubchem CID:24965990)、チアプリド(Pubchem CID:5467)、トナベルサット(Pubchem CID:6918324)、VNBRGSXVFBYQNN-UHFFFAOYSA-N(Pubchem CID:24794418)、YUHNXUAATAMVKD-PZJWPPBQSA-N(Pubchem CID:44548240)、ウリモレリン(Pubchem CID:11526696)、キシパミド(Pubchem CID:26618)、トロペシン(Pubchem CID:47530)、トリクラベンダゾール(Pubchem CID:50248)、トリクラベンダゾールスルホキシド(Pubchem CID:127657)、トリクラベンダゾールスルホン(Pubchem CID:10340439)及びトラメチニブ(Pubchem CID:11707110)など。好ましい物質はまた、下記表1に提供している。
【0061】
細胞免疫療法の分野において満たされていない必要性は、臨床的に適用可能である低分子による、CAR機能の可逆的コントロールである。従って好ましい適用において、本発明のLRPPIシステムは、T細胞又は他のエフェクター細胞、例えばNK細胞などにおいて発現されるCARへ、組み込まれる。CAR機能のコントロールのためのLRPPIシステムの好ましいバージョンは、リポカリン-フォールドリガンド(“b”)-負荷したリポカリン-フォールド分子“a”が、バインダー“c”の抗原として使用される場合である(図2A及びBの略図参照)。このバージョンにおいて、標的細胞への結合を媒介するCAR構築体は、シグナル伝達を媒介するCAR構築体から分離され、これにより標的細胞への結合を媒介するCAR構築体は、エフェクター細胞により分泌され得るか、又は可溶性タンパク質(LRPPI-CAR戦略A)として外因性に投与/添加され得るか、又は膜に係留され得る(LRPPI-CAR戦略B)。標的細胞-結合性CAR構築体が、膜に係留される場合、これは、1又は複数の細胞内シグナル伝達ドメインも含んでよい。リポカリン-フォールドリガンド“b”の追加は、2種の構築体(リポカリン-フォールド分子“a”及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”を含む)の相互作用を誘導する。LRPPIシステムの成分“a”及び“c”は、2つのCAR構築体へ、細胞外に(好ましい)又は細胞内に(リンカー配列を伴うか又は伴わずに)組み込まれ得る。図2A及び2Bは、リポカリン-フォールド分子“a”の標的細胞結合を媒介するCAR構築体への融合、及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”のシグナル伝達構築体への融合であるが、しかしこれは、また逆であることができる。標的細胞への結合は、標的細胞表面上の選択された抗原への結合が可能な任意のタンパク質により媒介されることができる。代わりのバージョン(LRPPI-CAR戦略C)において、リポカリン-フォールド分子それ自身は、抗原へ直接結合することができ、これにより抗原は、LRPPIシステムの一部であり、かつリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”として働く。この場合リポカリン-フォールド分子“a”は、タンパク質操作技術を使用する、インビトロにおける定向進化、並びにそれに続くこの場合標的細胞の抗原であるリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”へのリポカリン-フォールドリガンド-依存型結合の選択により、操作される。
【0062】
CARアーキテクチュアの例は、当該技術分野において周知である(例えば、Abate-Dagaら、Mol Ther Oncolytics. 2016;3:16014により検証され、かつ例えば、WO 2014/127261 A1及びWO 2015017214 A1参照)。実施態様において、シグナル伝達構築体は、通常受容体CD27、CD28、CD134、CD137、ICOS、DAP12、活性化NK細胞受容体などの共刺激性シグナル伝達ドメインの1又は2(N-末端からC-末端へ任意の順番で)を、伝達シグナル1のドメイン(例えばCD3ゼータ)を伴い又は伴わずに含むか、あるいは、抑制性受容体PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、抑制性NK細胞受容体などの抑制性細胞質ドメインを含む。膜貫通ドメイン及び細胞外膜アンカーは、これらの受容体に由来するか又は他のタンパク質、例えばCD3ゼータ、CD8アルファ、CD28などに由来することができる。
【0063】
LRPPI-CAR戦略B(図2B)において、シグナル伝達ドメイン(複数可)は、必ずしも2つの構築体の一方に拘束されることを必要としないが、代わりに、それらを2つの異なるCAR構築体へ個別に融合することにより、互いに分離されることができる(示さず)。両方のCAR構築体、抗原結合鎖及び/又はシグナル伝達鎖は、シグナル伝達タンパク質の断片、又は例えばIgG-Fcドメインの断片で構成されたスペーサードメインを含むことができるという事実のために、更なる多様性が生じる。更に抗原結合ドメインは、単鎖Fv断片、内在性受容体ドメインもしくはリガンドドメイン(例えばNKG2D、IL13など)、又はいずれか他の利用可能なバインダースカフォールドを基にすることができる(Simeonら、Protein Cell. 2017; DOI 10.1007/s13238-017-0386-)。リポカリン-フォールド分子それ自身が、選択された標的抗原に結合するよう操作された結合ドメインである場合(LRPPI-CAR戦略C、図2C)、標的細胞それ自身の上の抗原は、LRPPIシステムの一部であり、すなわちリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”を表す。原則的に、CARの結合性ドメインは、非-タンパク質抗原を含む、任意の抗原に方向付けることができる。
【0064】
従って本発明のLRPPIシステムの好ましい実施態様は、リポカリン-フォールド分子が、キメラ抗原受容体のエクトドメインの一部であり、かつリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーが、細胞表面抗原である、システムである。
【0065】
本発明の性質のために、リポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、好ましくは、ポリペプチド、特に組換え技術により得られたポリペプチドとして提供される。本発明の分子は-少なくとも理論的には-化学合成によっても提供されることができるが;しかし、分子生物学技術は、当然、リポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを提供するための、実践上最も関連のある技術である。他方で、リポカリン-フォールドリガンドは、好ましくは、化学合成によるか又は天然起源からの抽出により作製される。
【0066】
従って本発明の別の態様は、本発明のリポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。本発明の核酸は、一部の実施態様において、例えば組換え発現ベクターを含む、DNA又はRNAである。本発明の核酸分子はまた、別の形で、例えばウイルスベクター内で提供されてよい。核酸分子は、細胞中で活性があるか又は条件付きで活性があってよく、かつ一部の実施態様において、RNAとして、例えばインビトロもしくはインビボ合成されたRNA又はレトロウイルス中にパッケージされたRNA、好ましくはレンチウイルス中にパッケージされたRNAとして、提示されるか又は提示する。
【0067】
場合によっては、本発明の核酸分子は、リポカリン-フォールド分子のみ(及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーではない)をコードしているヌクレオチド配列を含む。場合によっては、本発明の核酸分子は、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーのみ(及びリポカリン-フォールド分子ではなく)をコードしているヌクレオチド配列を含む。場合によっては、本開示の核酸分子は、本発明のリポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの両方をコードしているヌクレオチド配列(又は2つの個別のヌクレオチド配列)を含む。
【0068】
リポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーが、異なる核酸分子によりコードされる場合において、本発明は、少なくとも2つの核酸分子のキットを提供し、ここで第一の核酸分子は、本発明のリポカリン-フォールド分子をコードしているヌクレオチド配列を含み、かつここで第二の核酸分子は、本発明のリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしている配列を含み、ここで再度これらの核酸は、好ましくはDNA又はRNAから、より好ましくはインビトロにおいて転写されたRNA又はレトロウイルス中にパッケージされたRNA、特にレンチウイルス中にパッケージされたRNAから選択される。
【0069】
本発明はまた、本発明の核酸分子を含む(すなわち、リポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしている)、ベクター、例えば組換え発現ベクター、並びに/又は核酸分子(リポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしている)のキットも提供する。
【0070】
そのようなベクターは、選択マーカー、複製起点、並びにベクターの複製及び/又は維持を備える他の特徴を含むことができる。好適なベクターは、例えば、プラスミド、ウイルスベクターなどを含む。多数の好適なベクター及びプロモーターが、当業者に公知であり;本発明の組換え構築体を作製するために、多くが、市販されている。以下のベクターが、例として提供される。細菌系:pBs、phagescript、PsiX l74、pBluescript SK、pBs KS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene、ラホヤ、CA.、USA);pTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、及びpRIT5(Pharmacia、ウプスラ、スウェーデン)。真核生物系:pWLneo、pSV2cat、pOG44、PXRl、pSG(Stratagene) pSVK3、pBPV、pMSG及びpSVL(Pharmacia)。ベクターは一般に、異種タンパク質をコードしている核酸配列の挿入に備えるために、プロモーター配列の近傍に位置した、都合の良い制限部位を有することができる。発現宿主において機能する選択マーカーが、存在してよい。好適なベクターは、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルスがベースのウイルスベクター、レトロウイルスベクター(例えば、ネズミ白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、並びにラウス肉腫ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、及び乳腺腫瘍ウイルスなどのレトロウイルス由来のベクター);及び同類のもの)がある。好ましいベクターは、形質導入された細胞のゲノムへの効率的組込みの能力のために、レトロウイルスベクター、特にガンマ-レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクター、すなわちレトロウイルスゲノムの少なくとも一部由来のベクターである。好ましいレトロウイルスベクターの例は、自己不活型のレンチウイルスベクターである(Miloneら、Mol Ther. 2009;17(8):1453-1464において提供されたような)。臨床で使用することができるレンチウイルスベクターの他の例は、例えば、Oxford BioMedicaからのLENTIVECTOR(登録商標)遺伝子送達技術、LentigenからのLENTIMAX(商標)ベクターシステム及び同類のものを含む。非臨床型のレンチウイルスベクターも、利用可能であり、かつ当業者に公知であろう。形質導入された細胞のゲノムへ効率的に組み込まれ得る好ましいベクターの他の型は、トランスポゾンベクター、好ましくはPiggyBAC-ベースのベクター、及びSleeping beauty-ベースのベクターである。関心対象の遺伝子の細胞のゲノムへの組込みのための更に重要な非-ウイルス戦略は、位置特異的ヌクレアーゼ技術(例えば、Zn-フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)ベース又は転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN))をベースに、あるいはCRISPR/Cas-技術(例えば、Gajら、Trends Biotechnol. 2013;31(7):397-405;及び、Renら、Protein Cell, 2017;8(9):634-643)をベースにしている。これらの技術は、任意のDNA分子から規定されたヌクレオチド配列の組込み(一本鎖DNA又は二本鎖DNA;ベクター、PCRアンプリコンなどの形態で)を可能にし、かつ関心対象の遺伝子は、内在性プロモーターのゲノム下流にへ組み込まれ得るので、魅力的である(例えば、Eyquemら、Nature. 2017;543(7643):113-117に記載されたように)。
【0071】
本発明はまた、少なくとも2種のベクターのキットも提供し、ここで第一のベクターは、本発明のリポカリン-フォールド分子をコードしている核酸分子を含み、並びにここで第二のベクターは、本発明のリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしている核酸分子を含む。これら2種のベクターは、同じ又は異なる宿主システム(例えば、ベクターによる形質転換又は増殖後に、ベクターが、リポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを発現するのに適した細胞)における発現を達成するために、同じ又は異なる制御配列を備えてよい。
【0072】
本発明のベクター又はベクターのキットにおいて、リポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしている核酸分子は、転写制御エレメントへ機能的に連結され、発現ベクターを生じることができる。そのような転写制御エレメントは、例えば、プロモーター、エンハンサーなどであることができ、ここで好適なプロモーター及びエンハンサーエレメントは、当該技術分野において公知である。細菌細胞における発現のために、好適なプロモーターとしては、lac1、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダP及びtrcが挙げられる。真核細胞における発現のために、好適なプロモーターとしては、軽鎖及び/又は重鎖免疫グロブリン遺伝子プロモーター及びエンハンサーエレメント、サイトメガロウイルス最初期プロモーター、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーター、初期及び後期SV40プロモーター、レトロウイルス由来の末端反復配列に存在するプロモーター(例えば、ガンマレトロウイルスの5’-LTR、又はモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)の5’-LTRのサブエレメントR及びU3を含むプロモーター配列など)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)に存在するプロモーター、マウスメタロチオネイン-Iプロモーター、イントロンを伴う又は伴わないEF1-アルファ、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、及び様々な当該技術分野において公知の組織特異プロモーターが挙げられる。可逆誘導性プロモーターを含む、好適な可逆プロモーターは、当該技術分野において公知である。そのような可逆プロモーターは、例えば真核生物及び原核生物など、多くの生物から単離されても誘導されてもよい。例えば、第一の原核生物及び第二の真核生物、第一の真核生物及び第二の原核生物など、第二の生物において使用するための第一の生物由来の可逆プロモーターの修飾は、当該技術分野において周知である。そのような可逆プロモーター、及びそのような可逆プロモーターに基づくが、追加の制御タンパク質もまた含む系としては、アルコール制御プロモーター(例えば、アルコールデヒドロゲナーゼI(alcA)遺伝子プロモーター、アルコールトランス活性化因子タンパク質(AlcR)に応答性のプロモーターなど)、テトラサイクリン制御プロモーター(例えば、TetActivators、TetON、TetOFFを含むプロモーター系など)、ステロイド制御プロモーター(例えば、ラット糖質コルチコイド受容体プロモーター系、ヒトエストロゲン受容体プロモーター系、レチノイドプロモーター系、甲状腺プロモーター系、エクジソンプロモーター系、ミフェプリストンプロモーター系など)、金属制御プロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター系など)、病原性関連制御プロモーター(例えば、サリチル酸制御プロモーター、エチレン制御プロモーター、ベンゾチアジアゾール制御プロモーターなど)、温度制御プロモーター(例えば、熱ショック誘導性プロモーター(例えば、HSP-70、HSP-90、大豆熱ショックプロモーターなど)、光制御プロモーター、合成誘導性プロモーターなどがある。
【0073】
いくつかの場合において、好適なプロモーターを含む遺伝子座又は構築体又は導入遺伝子は、誘導性システムの誘導を通じて、不可逆的にスイッチングされ得る。不可逆スイッチの誘導のための好適なシステムは、当該技術分野において周知であり、例えば不可逆的スイッチの誘導は、Cre-lox-媒介した組換えの使用をもたらしてよい。当該技術分野において公知であるリコンビナーゼ、エンドヌクレアーゼ、リガーゼ、組換え部位などのいずれか好適な組合せは、不可逆的にスイッチ可能なプロモーターの作製において使用されてよい。本明細書別所記載の位置特異的組換えを実行する方法、機構、及び必要要件は、不可逆的にスイッチングされるプロモーターを作製する用途を認め、かつ当該技術分野において周知である。場合によっては、このプロモーターは、CD8細胞特異的プロモーター、CD4細胞特異的プロモーター、好中球特異的プロモーター、又はNK特異的プロモーターである。例えば、CD4遺伝子プロモーターを使用することができる。別の例として、CD8遺伝子プロモーターを使用することができる。NK細胞特異的発現は、Neri(p46)プロモーターの使用により達成することができる。一部の実施態様において、例えば酵母細胞における発現のために、好適なプロモーターとしては、構成的プロモーター、例えばADHlプロモーター、PGKlプロモーター、ENOプロモーター、PYKlプロモーター及び同類のもの;又は、制御プロモーター、例えばGALlプロモーター、GALlOプロモーター、ADH2プロモーター、PH05プロモーター、CUPlプロモーター、GAL7プロモーター、MET25プロモーター、MET3プロモーター、CYClプロモーター、HIS3プロモーター、ADHlプロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、ADClプロモーター、TRPlプロモーター、URA3プロモーター、LEU2プロモーター、ENOプロモーター、TPlプロモーター、及びAOXl(例えば、ピキアにおいて使用するため)が挙げられる。好適なベクター及びプロモーターの選択は、十分当該技術分野の一般的技術レベル内である。原核宿主細胞における使用のための好適なプロモーターとしては、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター;trpプロモーター;lacオペロンプロモーター;ハイブリッドプロモーター、例えばlac/tacハイブリッドプロモーター、tac/trcハイブリッドプロモーター、trp/lacプロモーター、T7/lacプロモーターなど;trcプロモーター;tacプロモーター、及び同類のもの;araBADプロモーター;インビボ制御プロモーター、例えばssaGプロモーターもしくは関連プロモーター、pagCプロモーター、nirBプロモーター、及び同類のもの;sigma70プロモーター、例えばコンセンサスsigma70プロモーター(例えば、GenBank寄託番号AX798980、AX798961、及びAX798183参照);定常期プロモーター、例えばdpsプロモーター、spvプロモーター、及び同類のもの;病原性アイランドSPI-2由来のプロモーター;actAプロモーター;rpsMプロモーター;tetプロモーター;SP6プロモーター;及び同類のものが挙げられる。大腸菌などの原核生物において使用するための好適な強力なプロモーターは、Trc、Tac、T5、T7、及びPラムダを含む。細菌宿主細胞において使用するためのオペレーターの例としては、乳糖プロモーターオペレーター(Laciリプレッサータンパク質は、乳糖と接触した場合に、高次構造を変化し、これによりLaciリプレッサータンパク質がオペレーターへ結合することを防ぐ)、トリプトファンプロモーターオペレーター(トリプトファンと複合された場合に、TrpRリプレッサータンパク質は、オペレーターへ結合する高次構造を有し;トリプトファンが存在しない場合、TrpRリプレッサータンパク質は、オペレーターへ結合しない高次構造を有する)、及びtacプロモーターオペレーターが挙げられる。
【0074】
本発明の好ましい実施態様に従い、ベクター、又は少なくとも2種のベクターのキット、又は少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種のベクター(キット内)は、リポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしているヌクレオチド配列へ機能的に連結されているTリンパ球特異的プロモーター又はNK細胞特異的プロモーターを含む。
【0075】
更なる態様に従い、本発明はまた、本発明のリポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを作製するように修飾された、遺伝子修飾された細胞にも関する。好ましくは、本発明のリポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの両方を作製するように修飾された細胞が提供される。代わりに本発明はまた、少なくとも2種の細胞のキットも提供し、ここで第一の細胞は、本発明のリポカリン-フォールド分子を作製するように遺伝子修飾され、並びにここで第二の細胞は、本発明のリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを作製するように遺伝子修飾される。
【0076】
本発明の細胞は、リポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを発現することが可能であるように設計される。本発明のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムにより、タンパク質相互作用は、そのような細胞内で制御されかつ操縦される。研究ツールとして、全ての細胞(これは原則として本発明の核酸分子により形質転換されることが可能である)並びにそのような細胞を含む生物は、多彩な生物学的及び生化学的問題点に対処するよう、本発明のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムにより設計されてよい。本発明の細胞はまた、本発明のベクター(例えばウイルス又はプラスミド上清)を作製するように使用されてよく、その後それから更にこれらのベクターが更に精製され、並びに増幅形及び精製形で提供される、
【0077】
好ましい実施態様に従い、細胞(又はキットの細胞)は、本発明のリポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを作製するよう遺伝子修飾された哺乳動物細胞である。好ましい哺乳動物細胞は、幹細胞、前駆細胞、又は幹細胞もしくは前駆細胞由来の細胞である。更に好ましい本発明に従い遺伝子修飾される細胞は、初代細胞及び不死化された細胞株である。医薬使用のためには、ヒト初代細胞及びヒト形質転換された細胞株が、特に好ましい。しかし同じく、非ヒト細胞及び細胞株は、例えば、非ヒト霊長類細胞株、齧歯類(例えば、マウス、ラット)細胞株、及び同類のものなどの、特に本発明のシステムの科学的問題点に対処するための、好適な細胞型であってよい。
【0078】
更に好ましい本発明の細胞は、HeLa細胞(例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)番号CCL-2)、CHO細胞(例えば、ATCC番号CRL9618、CCL61、CRL9096)、293細胞(例えば、ATCC番号CRL-1573)、Vero細胞、NIH3T3細胞(例えば、ATCC番号CRL-1658)、Huh-7細胞、BHK細胞(例えば、ATCC番号CCLlO)、PC12細胞(ATCC番号CRL1721)、COS細胞、COS-7細胞(ATCC番号CRL1651)、RATl細胞、マウスL細胞(ATCC番号CCLl.3)、ヒト胎児腎(HEK)細胞(ATCC番号CRL1573)、HLHepG2細胞、Hut-78、Jurkat、HL-60、NK細胞株(例えば、NKL、NK92、及びYTS)、及び同類のものであってよい。いくつかの好ましい例において、本発明の細胞は、不死化された細胞株ではないが、代わりに個体から得られた細胞(例えば初代細胞)である。例えば一部の場合において、細胞は、個体から得られた免疫細胞である。例として、細胞は、個体から得られたTリンパ球である。別の例として、細胞は、個体から得られた細胞傷害性細胞である。別の例として、細胞は、個体から得られた幹細胞又は前駆細胞である。
【0079】
具体的に好ましい実施態様に従い、本発明のリポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしているベクター又は少なくとも2種のベクターのキットにより形質転換される、本発明の哺乳動物細胞は、T細胞又はNK細胞である。
【0080】
更なる態様に従い、本発明は、本発明の核酸分子もしくは核酸分子のキット、本発明のキット、本発明のベクターもしくはベクターのキット、又は本発明の細胞もしくは細胞のキットを含む、医薬製品に関する。
【0081】
別の態様に従い、本発明はまた、リポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを発現することが可能であり、かつ結果的に例えば、リポカリン-フォールドリガンドの外部添加により、本発明のシステムを提供することができる、本発明の一つの細胞(又は複数の細胞)を含む非ヒト動物に関する。そのようなトランスジェニック動物モデルにより、リガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムを、科学的に及び様々な産業用途のための試験システムとしての両方で、様々な生物学的問題に対処するために、インビボモデルにおいて使用することができる。好ましい動物モデルは、霊長類、ブタ、ヒツジ、齧歯類、特にマウス、ウサギ及びラット;ニワトリ、カエル(Xenopus laevis)、昆虫、例えばショウジョウバエ;ゼブラフィッシュなど、典型的には科学的研究において使用されるものである。具体的な好ましい動物モデルは、特に本発明のシステムがCARにおいて確立される場合、ヒト免疫系に類似した免疫系を持つものである(前記参照)。リガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムの確立はまた、植物細胞においても可能である。従って、本発明の別の態様は、リポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを発現することが可能であり、結果的に本発明のシステムを提供することができる、本発明の一つの細胞(又は複数の細胞)を含む植物に関する。本発明のシステムが確立され得る好ましい植物は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)であるが、またトウモロコシ、小麦、ジャガイモ、トマト、大豆などの穀物植物でもある。他の好ましい生物は、酵母及び細菌である。
【0082】
本発明は、以下の実施例及び図面により更に説明されるが、それらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1図1は、リポカリン-フォールドをベースにしたLRPPIシステム(A)及びその好ましい実施態様(B)としての本発明の概略を示す。(A)リポカリン-フォールド分子(“a”)は、低分子リポカリン-フォールドリガンド(“b”)をそのカリックス内に収容することができ、かつ“b”の存在下で、より高い親和性で、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”へ、結合することができる;(B)リポカリン-フォールド分子(“a”)は、タンパク質“I”の末端部位又は内部部位へ、融合されてよく(±柔軟性のあるリンカー)、同じく低分子リポカリン-フォールドリガンド(“b”)をそのカリックス内に収容し、かつ“b”の存在下で、より高い親和性で、好ましくはタンパク質であってよい(更なるタンパク質の末端部位又は内部部位へ融合されてよい(±柔軟性のあるリンカー))リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”へ結合することができる。
【0084】
図2図2は、CARへ組み込まれた本発明のリポカリン-フォールド分子-ベースのLRPPIシステムの概略例を示す。“a”は、可溶性タンパク質(分泌されたか又は外部添加された)の一部又は膜貫通構築体の一部であってよく、並びに“c”は、シグナル伝達構築体の一部であることができる(A及びBにおいて示した)。当然“a”及び“c”は、構築体中に組み込まれることができ、その逆も同様である(示さず)。多くのより可能性のあるアレンジが存在する(示さず)。例えばシグナル伝達ドメインは、必ずしも2つの構築体の一方に拘束される必要はなく、並びに“a”及び“c”は交互に、構築体の細胞質ドメインの一部であることができる。(C)は、“c”が抗原である例を示す。
【0085】
図3図3は、酵母表面上に提示された異なるrcSso7d-及びFN3-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーに対する、漸増濃度のヒトRBP4のA1120依存型結合を示す。アッセイは、リポカリン-フォールドリガンドA1120の存在(5μM)又は非存在下で行った。RBP4-結合は、抗-ペンタ-His抗体により検出し、引き続きフローサイトメトリーにより分析した。
【0086】
図4図4は、rcSso7d-及びFN3-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー(酵母表面上に提示された)の、異なる低分子を負荷したRBP4への結合を示す。全ての低分子は、濃度5μMで存在した。RBP4-結合は、抗-ペンタ-His抗体により検出し、引き続きフローサイトメトリーにより分析した。
【0087】
図5A図5Aは、rcSso7d-及びFN3-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの配列を示す。本来のrcSso7d又はFN3配列と異なるアミノ酸は、青色で強調した。
図5B図5Bは、rcSso7d-及びFN3-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの配列を示す。本来のrcSso7d又はFN3配列と異なるアミノ酸は、青色で強調した。
【0088】
図6A図6Aは、シグナル伝達構築体、すなわちリポカリン-フォールド分子又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーのいずれかが、シグナル伝達ドメインに融合された、CARの一部の概略を示す。
図6B】6Bは、シグナル伝達構築体、すなわちリポカリン-フォールド分子又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーのいずれかが、シグナル伝達ドメインに融合された、CARの一部の概略を示す。
【0089】
図7A図7Aは、rcSso7d-及びFN3-ベースのRBP4結合性相互作用パートナーを含む、シグナル伝達CAR構築体の配列を示す。
図7B図7Bは、rcSso7d-及びFN3-ベースのRBP4結合性相互作用パートナーを含む、シグナル伝達CAR構築体の配列を示す。
図7C】7Cは、rcSso7d-及びFN3-ベースのRBP4結合性相互作用パートナーを含む、シグナル伝達CAR構築体の配列を示す。
図7D】7Dは、rcSso7d-及びFN3-ベースのRBP4結合性相互作用パートナーを含む、シグナル伝達CAR構築体の配列を示す。
【0090】
図8A図8Aは、初代T細胞におけるシグナル伝達CAR構築体の発現を示し、異なるrcSso7d-ベースのRBP4結合性相互作用パートナーを含む構築体の発現を示す。
図8B図8Bは、初代T細胞におけるシグナル伝達CAR構築体の発現を示し、異なるFN3-ベースのRBP4結合性相互作用パートナー又は代わりにシグナル伝達ドメインに融合したRBP4を含む構築体の発現を示す。
【0091】
図9図9は、異なる抗原結合CAR構築体、すなわち抗原結合ドメインがリポカリン-フォールド分子又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーに融合されたCARの一部分の、概略を示す。示した例において、CD19に方向付けられたscFv又はEGFRに方向付けられたrcSso7dのいずれかを、抗原結合ドメインとして使用した。
【0092】
図10-1】図10-1は、抗原結合CAR構築体の配列を示す。
図10-2】図10-2は、抗原結合CAR構築体の配列を示す。
【0093】
図11図11は、抗原結合構築体(融合タンパク質A-D)の、抗原発現している標的細胞(A)及びシグナル伝達CAR構築体発現している初代ヒトT細胞(B)への結合を示す:(A)切断型EGFR(tEGFR)の安定した発現を伴う又は伴わないCD19陽性Nalm-6細胞を示したように、融合タンパク質A-Dを発現しているJurkat細胞の上清と同時インキュベーションした;(B)融合タンパク質は、初代ヒトT細胞において同時発現されるか(“同時-電気穿孔される”)、又は融合タンパク質を発現したJurkat細胞から得られた上清として、初代T細胞へ添加されるか(“添加された上清”)のいずれかであった。初代T細胞は、示したように、RS3ショートCAR又はRS3ロングCARのいずれかであるシグナル伝達膜貫通CAR構築体を発現した。融合タンパク質結合の染色は、5μM A1120の存在下で行った。
【0094】
図12図12は、初代T細胞における様々なCARバリアントのリポカリン-フォールドリガンド(この場合5μM A1120)依存型機能を示し、これにより可溶性CAR構築体(融合タンパク質A及びB)は、Jurkat細胞において発現され、及びそれ由来の上清は、示したように、初代T細胞へ添加された。(A)及び(B)において、各々、IFN-γ産生及び細胞傷害性を誘起する能力を示す。
【0095】
図13図13は、CAR構築体“RS3ロング”と一緒に初代T細胞において同時発現される場合に、可溶性融合タンパク質Bのリポカリン-フォールドリガンド(この場合5μM A1120)依存型機能を示す(“RS3ロング+co-elpo B”)。CARを伴わないT細胞(“無構築体”)及びシグナル伝達構築体のみを発現するが抗原結合構築体を発現しないT細胞(“RS3ロングのみ”)は、陰性対照として利用した。抗-CD19 CARを発現するT細胞は、陽性対照として利用した。(A)及び(B)において、各々、IFN-γ産生及び細胞傷害性を誘起する能力を示す。統計学的有意性は、特異的溶解及びIFN-γレベルについて、各々、対のある両側及び比率対のある(ratio paired)両側スチューデントt検定を用いて計算した(*=p<0.05;ns=p>0.05)。
【0096】
図14図14は、融解温度(Tm)の評価のための、示差走査熱量測定(DSC)による、RBP4結合性相互作用パートナーRS3、RS5及びRF2(この場合リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー)の分析を示す。
【0097】
図15図15は、表面プラズモン共鳴(SPR)による、RBP4結合性相互作用パートナーRS3のRBP4に対する親和性の分析を示す。(A)5μM A1120の存在下での、RS3のRBP4への結合。(B)及び(C)A1120の非存在下でのRS3のRBP4へのの結合。RS3の適用した濃度は、プロットにおいて示した。Kd値(解離定数)の定常状態分析は、A及びCの右側パネルにおいて示している。
【0098】
図16図16は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した、RBP4結合性相互作用パートナーRS1、RS3、RS5、RF1、RF2及びRF3の溶離プロファイルを示す。
【0099】
図17A図17Aは、等温滴定熱量測定(ITC)により決定した、A1120の存在(50μM)及び非存在下での、RBP4結合性相互作用パートナーRS3の、RBP4に対する親和性の分析を示す。
図17B図17Bは、等温滴定熱量測定(ITC)により決定した、A1120の存在(50μM)及び非存在下での、RBP4結合性相互作用パートナーRS5の、RBP4に対する親和性の分析を示す。
図17C図17Cは、等温滴定熱量測定(ITC)により決定した、A1120の存在(50μM)及び非存在下での、RBP4結合性相互作用パートナーRF2(C)の、RBP4に対する親和性の分析を示す。
【0100】
図18図18は、3種の異なる方法による、A1120の存在及び非存在下での、RBP4への結合に関するRBP4結合性相互作用パートナーRS3、RS5及びRF2の全ての実行した親和性測定の概要を示す(*n.a.、分析不可能)。
【0101】
図19図19Aは、酵母表面上に提示されたRBP4へのTTRの結合を示す。図19Bは、異なる能力のリポカリン-フォールドリガンドの存在(50μM)又は非存在(PBSA)下での、酵母-提示されたRBP4へのTTRの結合を示す。
【0102】
図20図20は、異なる能力のリポカリン-フォールドリガンドの存在(50μM)又は非存在(PBSA)下での、酵母-提示されたRBP4へのTTRの結合を示す。
【実施例0103】
実施例
実施例1:RBP4-ベースのLRPPIシステム
ウシ及びヒトRBP4に関して、ループ領域において高次構造の変化を誘導することがわかっている一連のリガンドが存在し、これらは天然のタンパク質パートナーTTRの解離を生じる(先に引用した先行技術参照)。本実施例において、ヒトRBP4及びその合成非-レチノイドリガンドA1120(PubChem CID 25138295)を使用することにより、そのようなリポカリン-フォールド分子のリガンド-誘導した高次構造のスイッチが、LRPPIのエレメントとしてどのように使用されるかが明らかにされる。この目的のために、His-タグ付き完全長RBP4(UniProt ID P02753)を、各々、A1120の存在(5μM)及び非存在下での、交互スクリーニングプロセスにおいて、抗原として利用し、ここでリガンド依存型リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを、非常に異なるタンパク質構造を持つ、2種のスカフォールド、すなわちFN3-及びSso7d-ベースのスカフォールドのライブラリーから選択した(Traxlmayrら、J Biol Chem. 2016;291(43):22496-22508;Chenら、Methods Enzymol. 2013;523:303-326)。以下に説明したように、このプロセスは、A1120依存様式でRBP4に結合するリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを生じた。図3は、RBP4-リガンドA1120の存在(5μM)及び非存在下での、これらのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの親和性を示す。図3の略図は、酵母表面上に提示された、選択されたrcSso7d-又はFN3-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーに対する、A1120の存在(5μM)及び非存在下での、ヒトRBP4の異なる濃度での結合強度のフローサイトメトリー分析を示す。RBP4-結合は、抗-ペンタ-His抗体(Qiagen)を使用し、引き続きフローサイトメトリー検出することにより検出された。rcSso7d-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、各々、RS1からRS5と称されるのに対し、FN3-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、RF1、RF2及びRF3と称される。計算したKd値は、略図の下側に表示している(3回の測定の平均)。図3のこれらのデータは、リポカリン-フォールド分子をベースにしたLRPPIシステムを操作することが可能であること、すなわちリポカリン-フォールド分子“a”(この場合RBP4)のリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー“c”(この場合タンパク質スカフォールドrcSso7d又はFN3をベースにした異なる変異体)への親和性が、リポカリン-フォールドリガンド“b”(この場合A1120)の存在下で増大されることを明確にに示す。更に、図3のデータはまた、リポカリン-フォールド分子をベースにしたLRPPIシステムは、構造的に非常に異なる結合部位を含む、構造的に多様なリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー(この実施例において、各々、rcSso7d又はFN3のいずれかをベースにした)により操作され得ることも示す(FN3-ベースのバインダーにおいて、結合部位は、ループ領域で構成されるのに対し、rcSso7d-ベースのバインダーにおいて、結合部位は、強固なβストランドにより構成される;(Traxlmayrら、J Biol Chem. 2016;291(43):22496-22508lChenら、Methods Enzymol. 2013;523:303-326))。これは、リポカリン-フォールド分子をベースにしたLRPPIシステムは、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの特定構造(すなわち、フォールド)に決定的には左右されず、従ってそのようなLRPPIシステムは、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの選択に関して、高度に柔軟性があることを意味する。
【0104】
1つのリポカリン-フォールドリガンドにより誘導されるが他のリポカリン-フォールドリガンドにより誘導された高次構造ではないかはるかに少ない(not or much less)、リポカリン-フォールド分子における高次構造の変化を特異的に認識することができるリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを操作する可能性は、互いに生体直交しかつ平行に働くことができる臨床適用可能なLRPPIシステムを操作する上で、重要な利点である。図4は、RBP4のA1120-誘導した高次構造について選択されたリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、実際、RBP4の高次構造のスイッチングを誘導することがわかっている他のリガンドが負荷されたRBP4に対する親和性が非常に低いのみか又は存在しないことを示す。これは、酵母表面に提示された、指定されたリガンドの存在(5μM)又は非存在下での、選択されたrcSso7d-又はFN3-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーに対する、異なる濃度のヒトRBP4の結合強度のフローサイトメトリー分析(3回の測定の平均)により決定された。各リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの配列は、図5A及び5Bに示す。
【0105】
ヒトRBP4の発現及び増幅
pPICZ-α-Aベクター中のヒトHis-タグ付きRBP4(残基19-201)は、John Findlayのご厚意により提供され(Marie Curie lab for Membrfane Proteins, Department of Biology, Maynooth University, Co Kildare, Ireland (Wysocka-Kapcinskaら、Pritein Expr Purif. 2010;71(1):28-32))、かつその配列は、サンガー配列決定法を用いて検証した。このタンパク質は、ピキア・パストリス(P. pastoris)株KM71Hにおいて発現させた。細胞を、ゼオシン(100μg/mL)を補充したYPG(2%ペプトン、1%酵母エキス、1%グリセロール)において、30℃及び180rpmで一晩培養した。細胞を、翌日希釈し、更にOD600が2に到達するまで培養した。タンパク質発現を、細胞の遠心分離により誘導し、1%メタノールを補充したYP培地中に再浮遊させ、更に20℃及び180rpmで3日間インキュベーションした。毎日新たなメタノールを、最終濃度1%まで添加し、タンパク質発現、それに続く分泌を増強した。3日後、上清を、2工程遠心分離(1500g、15分間、4℃、及び12200g、25分間、4℃)により収集し、各々、最初に細胞を、更に小型粒子を除去した。引き続き、ダイアフィルトレーションを行い、その培地を50mMリン酸緩衝液、pH7.5と交換した。続く精製プロトコールは、Wysocka-Kapcinskaらの論文(Protein Expr Purif. 2010;71(1):28-32)から改変した。
【0106】
簡単に述べると、ダイアフィルトレーションした上清に、5mMイミダゾールを補充し、AKTA FPLC精製システムに接続したHisTrap FFカラム(GE healthcare)に適用し、His-タグ付きRBP4のカラムへの結合を可能にした。50mMリン酸緩衝液(500mM NaCl及び5mMイミダゾールを含有するpH7.5)による洗浄後、直線的イミダゾール勾配(500mM NaCl及び500mMイミダゾールを含有する50mMリン酸緩衝液、pH7.5による5%から100%)を用い、溶離を行った。280nmでの吸光度を検出し、タンパク質の溶離を観察し、対応する画分をSDS-PAGEにより分析した。吸光度と予想されたサイズのタンパク質バンド(His-タグ付きRBP4に対応する22kDa)の存在の両方を示すこれらの画分をプールし、アミコンウルトラ-15 10K遠心分離フィルター(Merck Millipore)を用いて濃縮した。加えて、緩衝液を、リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)と交換し、スーパーデックス200カラム(10mm×300mm、GE Healthcare)による、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のためのタンパク質溶液を調製した。
【0107】
SECの前に、RBP4の画分を、EZ-リンクスルホ-NHS-LC-LC-ビオチンキット(Thermofisher Scientifc)を用い、ビオチンにより標識した。10mMビオチン溶液を5:1のモル濃度過剰で、タンパク質溶液へ添加し、室温で1時間、撹拌しながらインキュベーションした。後続の調製的SECを行い、残存する未結合のビオチン分子及び限定量のみで認められ得るRBP4の可能性のある凝集を除去した。
【0108】
酵母ディスプレイを使用するRBP4結合性相互作用パートナーのスクリーニング
2種の異なるスカフォールドを、RBP4結合性相互作用パートナー(“バインダー”)のスクリーニングに使用し、それらの一つは、その中の過剰な正電荷が先に最小化されている、スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)由来の小型(7kDa)熱安定性DNA-結合性タンパク質、電荷低下したSso7d(rcSso7d)である(Traxlmayrら、J Biol Chem. 2016;291(43):22496-22508)。第二のバインダースカフォールドは、分子量10kDaの10番目のヒトフィブロネクチンIII型ドメイン(FN3)である(Chenら、Methods Enzymol. 2013;523:303-326)。各々1.4×109個形質転換体を含むrcSso7d(rcSso7d-11及びrcSso7d-18)をベースにした酵母ライブラリー、及び2.5×108個形質転換体を含むFN3ドメインをベースにしたライブラリーG4(Hackelら、JMB 2010;401:84-96)を、使用した。S.セレビシアエ細胞(EBY100株)を、SD-CAA培地(20g/Lグルコース、6.7g/L酵母窒素塩基、5g/Lバクトカザミノ酸、11.85g/Lクエン酸ナトリウム二水和物、及び7.4g/Lクエン酸一水和物)において、振盪しながら、30℃で一晩成長させた。翌日、細胞を、SD-CAA中でOD600の1まで継代培養し、成長を、OD600を測定することにより、モニタリングした。最大OD600の4に到達した後、酵母細胞を遠心分離し、かつSG-CAA培地(2g/Lグルコース、20g/Lガラクトース、6.7g/L酵母窒素塩基、5g/Lカザミノ酸、10.2g/Lリン酸水素二ナトリウム、及び4.82g/L一塩基性リン酸ナトリウム)中に再浮遊させ、rcSso7d-又はFN3-変異体の表面発現を、各々、誘導した。細胞を、20℃で一晩、振盪しながらインキュベーションし、遠心分離により収集した。2サイクルのビーズ選択を、ビオチン化したRBP4を負荷した磁気ストレプトアビジン-コーティングしたDynabeads(Life technologies)により行った。非特異的バインダー又はストレプトアビジンに特異的であるバインダーの選択を避けるために、陰性選択(裸のビーズによる)を、陽性選択のサイクル間に行った。全てのビーズ選択において、RBP4リガンドA1120は、濃度5μMで存在した。2回目のビーズ-選択サイクル後、結合に寄与し得るrcSso7d遺伝子及びFN3遺伝子の変異を増大するために、エラープローンPCR(epPCR)を行った。プラスミドDNAを、ヌクレオチドアナログ(2μMの8-オキソ-2’-デオキシグアノシン-5’-三リン酸、8-オキソ-dGTP、及び2μMの2’-デオキシ-p-ヌクレオシド-5’-三リン酸、dPTP)、並びにrcSso7d-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーに関して、プライマーepSso_fwd(5’-GGCTCTGGTGGAGGCGGTAGCGGAGGCGGAGGGTCGGCTAGC-3’)及びepSso_rev(5’-CTATTACAAGTCCTCTTCAGAAATAAGCTTTTGTTCGGATCC-3’);並びに、FN3-ベースのリポカリン-フォールド結合相互作用パートナーに関してプライマーFN3_fwd(5’-CGACGATTGAAGGTAGATACCCATACGACGTTCCAGACTACGCTCTGCAG-3’)及びFN3_rev(5’-ATCTCGAGCTATTACAAGTCCTCTTCAGAAATAAGCTTTTGTTCGGATCC-3’)を使用する、PCRの19サイクルに供した。生じる生成物を、第二のPCRによる増幅のための鋳型として使用した。その後、EBY100細胞を、方形波プロトコール(シングルパルス、500V、15ミリ秒)及びBio-Rad Gene Pulser Xcell(Bio-Rad)を使用し、直線化したpCTCON2ベクター(Chaoら、Nat Protoc. 2006;1(2):755-768;Angeliniら、Methods Mol Biol. 2015;1319:3-36)及び挿入断片(PCR産物)により形質転換した。3回目のビーズ-選択ラウンド(3陰性及び1陽性選択を含む)後、ライブラリーを更に、蛍光標示式細胞分取器(FACS)によりエンリッチさせた。酵母細胞の染色は、5μM A1120(Sigma-Aldrich)の存在下、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を補充したPBSにおいて、300nMビオチン化した抗原(RBP4)及び5μg/mLマウス抗-c-myc抗体9E10(Thermo Fisher Scientific)を使用し、4℃で1時間振盪しながらインキュベーションし、行った。洗浄工程後、2回目の染色を、20μg/mLストレプトアビジン-アレクサフルオロ647及び20μg/mL抗-mIgG-AF488(両方共Thermo Fisher Scientific)により、振盪しながら4℃で20分間行った。最終洗浄工程後、細胞を、FACS Aria Fusion(BD)を用いて分取した。一部の分取ラウンドにおいて、細胞は、一次試薬として非-ビオチン化RBP4で染色し、引き続き1μg/mL抗-HA-アレクサフルオロ647(クローン16B12、BioLegend)及び5μg/mLペンタ-His-アレクサフルオロ488(Qiagen)により二次染色し、ビオチン化したエピトープを認識するバインダーのエンリッチメントを避けた。2回目及び3回目のFACS選択の間に、別のepPCRを行った。陰性選択の1ラウンドは、A1120の非存在で行い、強力に減少した結合性シグナルを持つ変異体を分取した。合計、6又は7ラウンドのFACSを、RBP4-結合性相互作用パートナーを選択するために行った。
【0109】
選択されたRBP4-結合性相互作用パートナーの可溶性発現
最後の選択ラウンドの後、96クローンを配列決定した。この配列を基に、16のRBP4-バインダー(9のrcSso7d-及び7のFN3-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー)を選択し、EBY100細胞の形質転換に使用した。単クローンの親和性を、フローサイトメトリー及びRBP4のタイトレーションにより決定した。親和性及び発現レベルを基に、8のバインダー(5のrcSso7d-及び3のFN3-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー)を、可溶性発現のために更に選択した。この目的に関して、バインダーを、pE-SUMO-ベクター(LifeSensors)へサブクローニングし、His6-タグ付き低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)タンパク質との融合タンパク質として発現した。Rosetta(DE3)大腸菌細胞(Merck Millipore)の配列検証したプラスミドによる形質転換の後、培養物を、カナマイシン(50μg/mL)及びクロラムフェニコール(34μg/mL)を補充したLB培地中で、37℃で一晩振盪しながらインキュベーションした。細胞を、カナマイシン(50μg/mL)及びクロラムフェニコール(34μg/mL)を補充したTerrificブロス(12g/Lトリプトン、24g/L酵母エキス、4%グリセロール、2,31g/L KH2PO4、及び16,43g/L K2HPO4・3H2O)中に希釈し、更にOD600 が2に達するまで、37℃でインキュベーションした。発現を、1mMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加により誘導し、細胞を更に一晩20℃で培養した。翌日、細胞を、遠心分離(5000g、20分間、4℃)で収集し、音波処理緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、3%グリセロール、1%トリトンX-100、pH8)中に再浮遊させた。音波処理(2×90秒、デューティサイクル50%、振幅設定5)及び遠心分離(20000g、30分間、4℃)後、HIS6-SUMO-融合タンパク質を含有する上清の精製を、TALON金属親和性樹脂(Clontech)を用いて行った。カラムへの適用前に、イミダゾールを、上清へ、最終濃度10mMとなるよう添加し、非特異的結合を避けた。その後、上清を、このカラムに2回適用し、引き続き漸増量のイミダゾール(5~15mM)を含有する平衡緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、pH8)による数回の洗浄工程を行った。溶離は、250mMイミダゾールを補充した平衡緩衝液により行った。この緩衝液を、アミコンウルトラ-15 10K遠心分離フィルター(Merck Millipore)を使用し、PBSへ交換し、並びにその濃度を、Nanodrop装置により、280nmでの吸光度を測定することにより、決定した。この融合-タンパク質の一部を、-80℃で直接凍結し、その一方で、残りは、SUMO-プロテアーゼ1(1mg酵素を、100mg融合-タンパク質に使用した)により、室温で一晩消化し、その結果それぞれのバインダーからの、ヘキサヒスチジンタグ及びSUMOタンパク質を切断した。消化したタンパク質を、再度TALON金属親和性樹脂(Clontech)により精製した。His-タグ付きSUMOタンパク質及びHis-タグ付きSUMOプロテアーゼ1は樹脂に結合する一方で、切断されたrcSso7d-又はFN3-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーはフロースルー中に認められ、これらは更にSDS-PAGEにより分析した。精製したrcSso7d-及びFN3-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの280nmでの吸光度を、Nanodrop分析により決定し、濃度を、対応する吸光係数を用いて計算した。生物物理的測定のために、この緩衝液を、アミコンウルトラ-15 3K遠心分離フィルター(Merck Millipore)を用いPBSと交換し、これらのタンパク質を-80℃で凍結した。
【0110】
RBP4-結合性相互作用パートナーの生物物理的特徴決定
RBP4-結合性相互作用パートナーの安定性を、MicroCal VP-DSCキャピラリーセルマイクロ熱量計(MicroCal)を用いる示差走査熱量測定(DSC)により、融解温度(Tm)を決定することにより、評価した。簡単に述べると、30μMタンパク質溶液を、1℃/分の加熱速度で、20~110℃の範囲で上昇する温度に曝した。緩衝液ベースラインを減算し、得られたデータを、タンパク質濃度について規準化し、引き続き非二状態(non-two-state)サーマルアンフォールディングモデルにフットさせた。
【0111】
表面プラズモン共鳴(SPR)を使用し、RBP4と、rcSso7d-又はFN3-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの間の相互作用の親和性を決定し、BiacoreT200(GE healthcare)により行った。抗原(RBP4)を、チップ上にコーティングさせ、PBS中の様々な濃度のバインダー溶液と共にインキュベーションし、それにPBSのみ中の解離相を続けた。全ての測定は、A1120又は他のリガンドの存在及び非存在の両方において行った。最後に、kon、koff及びKd値を、グローバルフィッティングにより得た。
【0112】
分析的SEC分析のために、ランニング緩衝液(200 mM NaClを含むPBS)中の総量25μgのrcSso7d又はFN3変異体を、0.1μmウルトラフリー-MCフィルター(Merck Millipore)を通して濾過し、HPLCプロミネンスLC20システム(Shimadzu)へ連結したスーパーデックス200 10/300 GLカラム(GE healthcare)へ適用し、流量0.75mL/分、25℃で溶離した。加えて、多角度光散乱(MALS)を使用し、WYATT Heleos Dawn8+プラスQELS、屈折率検出器RID-10A(Shimadzu)及びダイオードアレイ検出器SPD-M20A(Shimadzu)を用い、分子質量を決定した。
【0113】
RBP4と、rcSso7d-又はFN3-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの間の相互作用の熱力学的特徴決定のために、等温滴定熱量測定(ITC)を、自動MicroCal PEAQ-ITC装置(Malvern Instruments)を用いて行った。試料を遠心分離し(17,000g、10分間、20℃)、濾過した(0.1μmウルトラフリーMCフィルター、Merck Millipore)。RBP4タンパク質溶液を、サンプルセルに適用し、各バインダーを、変動する間隔で滴定した。RBP4及びバインダーの両方について様々な濃度を使用し、一部の実験においては、バインダーを、サンプルセルに適用し、RBP4を滴定した。これらの実験は、リガンドA1120又は他のリガンドの存在及び非存在下の両方で行った。データ解析は、MicroCal PEAQ-ITC解析ソフトウェアにより行った。
【0114】
実施例2:リポカリン-フォールドの高次構造スイッチングを誘導する能力を持つ臨床適用可能なリポカリン-フォールドリガンドの同定
ヒトRBP4及びその天然型相互作用パートナーTTRを使用することにより、本発明者らは、リポカリン-フォールドの高次構造スイッチングを誘導する能力を持つ新規リポカリン-フォールドリガンドを同定する戦略を例証した。臨床適用可能なリポカリン-フォールドリガンドを同定する目的で、本発明者らは、RBP4/A1120複合体から推定されるファルマコフォアモデル(PDB 3FMZ)を使用することにより、様々なストリンジェンシーでの、いくつかのデータベース(World Drug Index、KEGG Medicus、KEGG Ligands、DrugBank、Human Metabolome Database、ChEBI、ChEMBL、MDDR)のバーチャルスクリーニングを実施した。このバーチャルスクリーニングの結果を、表1に示し、これは臨床適用及び非臨床適用のために潜在的に魅力的な、一連の証明及び実験された薬物及び他の分子を含む。
【0115】
表1:
Nr データベースHMDB
1 ナフシリン
2 ゲルベリノール
3 モンテルカスト
4 フルラゼパム
5 キニジンバルビツレート
6 グリセオリンI
7 グリセオリンII
8 (-)-シンプテロカルピン
9 カンゾノールW
10 6α-ヒドロキシファセオリン
11 (1a,5b,6a)-7-プロトイルデン-1,5,6,14-テトロール14-(2,4-ジヒドロキシ-6-メチル安息香酸)
12 4'-O-メチルカゾノールW
13 シクロキエビトン
14 リコフラノン
15 アルミラチン
16 2-(4-メチル-3-ペンテニル)アントラキノン
17 ソラフェニブβ-D-グルクロニド
18 ヘテロフィリン
19 2'-O-メチルファセオリンイソフラボン
20 チアプリド
21 グルテンエキソルフィンC
22 ムルベロフランM
23 ダルキサントンG
24 スクラレオール
25 コルプドックスa
26 カンゾノールF
27 マンゴスチノン
28 ガンカオニンX
29 フブラフラボンD
30 シクロキエビトン水和物
31 グリセリジンII
32 シクランデレート
33 ダルキサントンE
34 モルシン
35 (E)-2',4,4'-トリヒドロキシ-3-プレニルカルコン
36 ダルキサントン H
37 Judeol
38 アルトニンE
39 カンゾノールT
40 Fragransol A
41 ダルキサントンF
42 ムルベロフランT
43 ガルシマンゴソンA
44 アルトニンB
45 アステルトキシン

データベースKEGG
46 オキシフェドリン
47 プロフルトリン
48 モンフルオロトリン
49 キシロイルスルファミン
50 塩酸セトチアミン水和物
51 塩酸ジセチアミン水和物
52 ジセタミン
53 オキソラミン
54 オクサラミン
55 クリスナトールメシラート
56 イオフルベンズアミドI
57 セリチニブ
58 ザイカディア
59 イミプロトリン
60 トリクラベンダゾール
61 ファシネックス
62 ブリバニブアラニナート
63 トランスフルトリン
64 エノリカムナトリウム
65 エノリカムナトリウム一水和物
66 ジブカイン
67 シンコカイン
68 ヌペルカイン
69 トラメチニブ

データベースWDI
70 フルクロキサシリン
71 S-ファルネシルチオサリチル酸
72 2-フルオロトロパプリド
73 ブルアンピシリン
74 ジクロキサシリン硫酸塩
75 フロキサシリン
76 イブシリン
77 プラゾシリン
78 サレタミド
79 テトラクロロサリチルアニリド
80 カルベニシリン
81 ジクロメチド
82 メチル-スルホメツロン
83 トリクロロサリチルアニリド
84 クロメトシリン
85 シストジチン-F
86 デタノサール
87 ジアルバロン
88 ジクロフロップ
89 エピフェネチシリン
90 フタリル-メデヨル
91 サレタミド塩酸塩
92 チアプリド塩酸塩
93 トランクリン-A
94 デオキシペンタレニルグルクロン
95 ラフルニマス
96 メラゾラム
97 ジブサドール
98 フェネチシリンカリウム
99 プラノサール
100 ダレホルミス
101 ジフェニシリン
102 フェノテロール塩酸塩
103 ギガン酸
104 ハロリトラリン-B
105 イソプロピシリン
106 プログアニル塩酸塩
107 ピラノクントン-B
108 ツベロシン
109 ゾフィエラミド-B
110 クロキサシリンナトリウム
111 レチミド塩酸塩
112 バイゲン-B
113 ビドウィロン-B
114 カルベニシリン二ナトリウム
115 ヒドロキシプロカイン
116 オクラトキシン-A
117 セロックス
118 マカランガフラバノン-B
119 メノキシマイシン-B
120 ペニシリン-S
121 プソラリジン
122 ルビギノン-C1
123 セコプソイドプテロシン-E
124 アサジスルフィド
125 バラングカド酸-A
126 BEPHEDON
127 メレドナル-B
128 ネラミノール
129 フォモプソリド-A
130 ロブスチン酸
131 ゾフィエラミド-A
132 シストジチン-B
133 ジクロキサシリン
134 フルオロプロプラノロール
135 イリシコリン-B
136 インジカニン-B
137 ジャカロイビン
138 コッタミド-C
139 メキソラミン
140 マイカペルオキシド-H
141 オトギリン
142 オキソラミン塩酸塩
143 オキソプロパリン-A
144 プルバラノール-A
145 ルビギノン-C2
146 ターアクリルシコニン
147 クロジナホップ-プロパルギル-エステル
148 マザチコール
149 セトキシジム
150 スルファグアノール
151 バラペリドン
152 フルクロキサシリンナトリウム
153 ゲオジアモリド-TA
154 ルカントン-スルホキシド
155 メレオリド-D
156 ナドキソロール塩酸塩
157 ベクロブリック酸-グルクロニド
158 クロキサシリン
159 ハイパーギノン-B
160 オリゴスポロール-A
161 プロポキシカイン塩酸塩
162 ロニフィブラート
163 スダン-ブルー-GN
164 トリコデルマミド-B
165 ボトリラミド-A
166 カルフェシリン
167 クレソジム
168 DUTADRUPINE
169 エピコクリオキノン-B-14
170 フルラゼパム
171 ヒドロキシフルクロキサシリン
172 リナカンチン-C
173 テフルベンズロン
174 キセニサラート
175 アンチマイシン-A8A
176 アルトインドネシアニン-U
177 ブロンコカイン
178 エノリカム
179 イパジリド
180 モルダント-ブラウン-1
181 プロプラノロールフェノバルビタール
182 プギニン-A
183 アンフィビン-H
184 アルミラル酸
185 カリンダシリン
186 クロロバイオケート
187 クロルプログアニル
188 シリンドロール-B
189 ECLIPTALBINE
190 GARCIGERRIN-A
191 O-デメチルクロルスリシン
192 サンゲノン-C
193 テトラプテロール-G
194 クロルスルフロン
195 デキサメタゾン-ジエチルアミノ酢酸塩
196 DIETHYXIME
197 ピリドベリシン
198 スベンダゾール
199 チオカイン
200 トラペジホリキサントン
201 トリクラザン
202 3',4'-ジクロロベンザミル
203 カエトビリジン-C
204 シクログレガチン
205 フルラゼパム一塩酸塩
206 フシジラクトン-B
207 グリセオケリン-メチル-エステル
208 イソブチル-シコニン
209 ミシニカート
210 アジュダゾール-B
211 シストジチン-E
212 デメチルプレカンソン-A
213 デストルキシン-A
214 ジフェニドールエンボン酸塩
215 ジスコキオリド-B
216 イルマノリド-2
217 ラクトキノマイシン
218 ネオボルニバール
219 サロトラレン-D
220 アビッシノン-V
221 アキシチローム
222 クロルフルアズロン
223 コンドリリジエン-18,20
224 オイグローバル-G2
225 イダルビシン塩酸塩
226 ムチシクマラノン-A
227 3-O-メチルカロポカルピン
228 アロクラミド塩酸塩
229 アノプテリン
230 ジオキサチオン
231 オイグローバル-IIC
232 イリシコリン-C
233 マイシノリド-II
234 スイリン
235 トコトリエノール-γ
236 インドマイシノン-β
237 イソチオルバミン
238 メベベリン
239 ムチシクマラノン-D
240 ニムフェオール-C
241 プルソカイン
242 ジメット-20-84
243 2,4-D-ブトキシプロピル
244 アビシノン-IV
245 バイゲン-A
246 クリソクラミン酸
247 エプロン-B
248 エトキシカイン
249 フルオレナミル
250 グアイアコール-メフェナム酸
251 マキシマ-イソフラボン-C
252 サルコジクチン-B
253 トリクラベンダゾール
254 ACHYOFURAN
255 アステリキノン
256 ジエチルグリコール酸-トリヒドラジド
257 MALLOTOPHILIPPENS-D
258 ナフトキサート
259 パキジクチオール-A-エポキシド
260 ラトジャドン
261 サルベリン塩酸塩
262 4-メナヒドロキノン
263 ボトリルアミド-C
264 エルサミシン
265 フェンフルスリン
266 ムチシフェノン-A
267 サンゲノン-A
268 シュワインフルチン-A
269 VANYLIDILOL
270 4-O-メチルメレオリド
271 アセチルビスミオネ-F
272 アルフェンタニル塩酸塩
273 アスペルテトロニン-A
274 β-ヒドロキシイソバレリルシコニン
275 カルビソカイン
276 クロルプログアニル塩酸塩
277 クリプトフィシン-52
278 ジデメチル-トコトリエノール
279 フルオソル-DA
280 ピリドキシフェン
281 チアゼシム塩酸塩
282 ブトクタミド
283 デオキシシコニン
284 ガンビエル酸-A
285 リコフラノン
286 プレドニリデン-ジエチルアミノ酢酸塩
287 プソイドプテロシン-G
288 トリケンジオール
289 ゾアパタノール
290 エルゴキニン-C
291 ペンタモキサン塩酸塩
292 スカンデニン
293 アクチノピロン-C
294 アミトン(als Bsp. fur Gift!)
295 クラトキシアルボレノン-C
296 シモポール
297 ドキシサイクリン塩酸塩
298 フラビデュロール-C
299 フラン-12
300 ミリアポロン-3
301 オリノシノリド
302 トナベルサット
303 ビスミオーネ-B
304 アミケリン
305 ブタモキサン塩酸塩
306 クロロビオシン
307 シクロコンムニン
308 フェナザフロール
309 ビスミオーネ-D
310 3-トリクロルメタホス
311 アミノプロピロンフェニルブタゾン
312 ジオクレノール
313 グリフォリン
314 ヒペルジョビノール-A
315 タモラリジン
316 トメントール
317 トランス-δ-トコトリエノール酸
318 ジアセトロール塩酸塩
319 デュトマイシン
320 リグロブストシド-O
321 RAISPAILOL-B
322 エレクトキオン-A
323 サロトラレン-A
324 シタマキン
325 トリコポリン-II
326 3-ヒドロキシトルファゼパム
327 ジメトプラミド
328 フェノテロール臭化水素酸塩
329 フェンカプトン
330 カルトキシアルボレノン-B
331 エトモキサン塩酸塩
332 ISOCENTRATHERIN
333 カリマンタシン-A
334 ヒスパグラブリジン-A
335 ランカサイクリノール
336 マクラキサンタン
337 ピバンピシリン塩酸塩
338 プルラフラビン-A
339 シグモイジン-I
340 フェナラミド
341 ヒドロキシアクラシノマイシン-M,2
342 ソフォラジン
343 アスコクロリン
344 β-ヒドロキシサンショール
345 ビストラミド-K
346 クロルテトラサイクリンホウ酸エステル
347 デヒドロアスコクロリン-8+,9+
348 塩酸ジメチアリウム
349 マカランギン
350 マルセロマイシン
351 ベンゾイルゴミシン-H
352 クリンダマイシン塩酸塩
353 ヒドロキシアスコクロリン-8+
354 ネオカルジリン-A
355 ケトビリジン-B
356 クロルテトラサイクリン硫酸水素塩
357 ナピラジオマイシン-C1
358 サロアスピジン-B
359 サラシン
360 ERECTONE-B
361 ホモハルジアン酸
362 アステリキノン-B1
363 デタミド
364 ルブラキサントン
365 ドラスタチン-19
366 エデトール
367 ファセオリジン
368 ゲドカルニル
369 マヌマイシン-B
370 サンタロール-β-サリチル酸塩
371 COWANIN
372 インジブリン
373 コワノール
374 KARATAVICIN
375 ピクロキシジン
376 プロキサゾール
377 ストロビルリン-E
378 エレクトキオン-B
379 スリカイニド
380 ジエチルアミノメチルルチン
381 トロペシン
382 ピクロキシジン塩酸塩
383 HEX-1
384 デクロバニロビオシン

データベースMDDR
385 ルビギノンC2
386 フロブフェン
387 テトロノチオジン
388 ラフルニムス
389 マイカペルオキシドA
390 フルラゼパム塩酸塩
391 ルビギノンC1
392 クリスナトールメシラート
393 ドラスタチンD
394 エポラクタエン
395 レキシパファント

データベースCHEMBL
396 カルベニシリン
397 ジクロホップ
398 エピフェニチシリン
399 フロブフェン
400 ギガン酸
401 フェネチシリンカリウム
402 ジフェニシリン

データベースPubchem
403 アコチアミド
404 アコジボロール
405 アキュマピモド
406 アパルタミドt
407 ASP3026
408 AZD1480
409 BIIB021
410 ブラナプラム
411 ブレキナル
412 クロルプログアニル
413 エムリカサン
414 エナシデニブ
415 エノリカム
416 フルラゼパム
417 ILX295501
418 インディブリン
419 メトクロプラミド
420 メバスタチン
421 MK0686
422 ナバリクシン
423 ネファゾドン
424 パントプラゾール
425 パビネタント
426 SCYX-7158
427 シッカニン
428 スルホグアノール
429 スニチニブ
430 スボレキサント
431 チアプリド
432 トナベルサット
433 ウリモレリン
434 キシパミド
435 MGGBYMDAPCCKCT-UHFFFAOYSA-N
436 VNBRGSXVFBYQNN-UHFFFAOYSA-N
437 YUHNXUAATAMVKD-PZJWPPBQSA-N
438 LMI070
439 エルロチニブ
440 タネスピマイシン
【0116】
RBP4の高次構造スイッチングを誘導するいくつかのこれらのリガンドの能力は、RBP4の高次構造スイッチングを誘導する能力を持つリガンドにより阻害される、TTRの高次構造依存型結合を活用することにより検出した。
【0117】
RBP4のリガンド誘導した高次構造スイッチングのフローサイトメトリー検出
RBP4-コードしているDNAを、zymoprep酵母プラスミドミニプレップキットII(Zymo Research)を使用し、P.パストリスから単離し、引き続きプライマーpicZalpha_fwd(5’-ATTGCCAGCATTGCTGCTAAAGAAG-3’)及びpicZalpha_rev(5’-GCAAATGGCATTCTGACATCC-3’)を使用するPCRにより増幅した。DNAを、イラストラGFX PCR DNA及びゲルバンド精製キット(GE healthcare)を用いて精製し、配列決定した。ベクターpCTCon2へのクローニングのために、RBP4-コードしているDNAを、このベクターに相同なNheI/BamHI制限部位をコードしているプライマーを用い、PCRにより増幅した。NheI及びBamHI(両方共New England Biolabs)による消化後、RBP4コード配列を、直線化したベクターへライゲーションし、かつこの配列の検証のために大腸菌において電気穿孔した。得られる融合タンパク質の様々なドメインは、順にAga2p-HAタグ-(Gly4Ser)3リンカー-RBP4-c-mycタグを有する。次にS.セレビシアエ株EBY100を、クイックアンドイージー形質転換キット(Takara)により形質転換した。
【0118】
この細胞を、SG-CAA培地(2g/Lグルコース、20g/Lガラクトース、6.7g/L酵母窒素塩基、5g/Lカザミノ酸、10.2g/Lリン酸水素二ナトリウム、及び4.82g/L一塩基性リン酸ナトリウム)において、一晩、20℃及び180rpmで培養することにより、酵母におけるRBP4の発現を誘導した。酵母細胞の表面上のRBP4発現の検出のために、細胞を、マウス抗-c-myc抗体9E10(Thermo Fisher Scientific)による染色、それに続く抗-mIgG-AF488(Thermo Fisher Scientific)によるか、又は抗-HA-アレクサフルオロ647(BioLegend)による二次染色のいずれかにより染色した。
【0119】
RBP4のリガンド誘導した高次構造スイッチングのフローサイトメトリー検出は、TTRの高次構造依存型結合挙動の使用を基にした。ここで、組換えTTR(アレクサフルオロ488 NHSエステルキットで標識した、Thermo Fisher Scientific)を、染色緩衝液(0.1%BSA補充したPBS)中の、異なる濃度の様々な低分子リガンドの非存在又は存在下で、RBP4-発現している酵母へ添加した。
【0120】
実施例3:RBP4-ベースのLRPPIシステムのCARへの組込み
第三の実施例は、実施例1において説明した、RBP4-ベースのLRPPIシステムを使用する、CAR機能の制御のための、LCN-フォールドベースのLRPPIの適用可能性を明らかにする。図6A、6B及び9に示したCAR構築体の概略は、そのようなリポカリン-フォールドベースのLRPPIのCARへの組込みのいくつかの試験した可能性を図示している。図7A、7B、7C、7D及び10は、試験した構築体の配列を示し、並びに図8A、8B及び8Cは、初代ヒトT細胞におけるシグナル伝達CAR構築体の発現を図示している。初代ヒトT細胞は、各構築体について5μg mRNAにより電気穿孔し、かつCAR発現は、電気穿孔法の20時間後、Strep IIタグを介してか、又は“c-mycタグを伴わないRS3 CARロング”及び“RF2ロングCAR”の場合、Fcドメインを介して、一次抗体としてビオチン化した抗-ヒト-IgG1-抗体を及び二次染色試薬としてPE-複合ストレプトアビジンを使用することにより検出した。図11A及び11Bは、5μM A1120の存在下で、抗原結合ドメイン(融合タンパク質A-D、組み込まれたHisタグにより検出)を含むCAR構築体の、標的細胞への及び様々な膜貫通CARシグナル伝達構築体を発現している初代ヒトT細胞への結合を示す(5μg mRNAの電気穿孔の20時間後)。融合タンパク質は、初代T細胞において同時発現されるか、又はこの融合タンパク質を発現したJurkat細胞から得られた上清として初代T細胞へ添加されるかのいずれかであった。5μM A1120の非存在及び存在下での、初代ヒトT細胞の細胞傷害性及びサイトカイン産生の誘導により決定される、生じるCARのリガンド依存型機能は、図12及び13に示している。
【0121】
CARの設計
選択されたrcSso7d-及びFN3-ベースのRBP4-結合性相互作用パートナーを、CD8スターク、4-1BB共刺激ドメイン及びCD3ゼータシグナル伝達ドメイン(“8a-BBz”)、又はCD28共刺激性ドメイン及びCD3ゼータシグナル伝達ドメインに融合したIgG-Fcスペーサー(“Fc-28z”)を含む第二世代のCARシグナル伝達バックボーンへ、各々組み込んだ。rcSso7d(RS1-RS5)及びフィブロネクチン(RF1-RF3)をベースにしたRBP4-結合性相互作用パートナーを、リンカーとしてStrep-タグ、及びG4S(4×グリシン及び1×セリン)アミノ酸残基の1又は2の反復配列を介して、CARバックボーンに融合した。これらの構築体の組成を、図6A及び6Bの概略的に示し、かつそれらの配列は、図7A、7B、7C及び7Dに示した。分泌された抗原結合CAR構築体は、ヒトCD19に対し方向付けられたFMC63-ベースのscFv、又はIgG1-Fc-RBP4、もしくはRBP4のいずれかに融合されたヒトEGFRに対し方向付けられたrcSso7d、あるいはリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーrcSso7d RS3のいずれかを含んだ。これらの概略及び配列は、各々、図9及び10に示されている。CAR構築体は、集成のために各々、0.02~0.5pmolの2-3のPCR-増幅したDNA断片及び0.2~1pmolの4-6のPCR-増幅したDNA断片を使用することにより、Gibson Assembly(NEB)により構築された。生じた構築体は、PCRにより増幅し、引き続きインビトロ転写に使用した。
【0122】
mRNAのインビトロ転写及び電気穿孔
インビトロ転写を、mMessage mMachine T7ウルトラキット(Ambion)を製造業者の指示に従って使用し、50~200ngの精製したPCR産物により行った。生じたmRNAを、RNeasyキット(Qiagen)を使用し、適合したプロトコールにより、カラム精製した。このプロトコールに従い、キットのRLT緩衝液及び1%β-メルカプトエタノールを添加し、引き続き無水エタノールを添加した。この混合物を、RNeasyカラム上に装加し、かつ精製を製造業者のプロトコールに従い行った。精製したmRNAを、電気穿孔まで、-80℃で凍結した。CAR発現のために、Jurkat細胞及び初代T細胞を、Gene Pulser(Biorad)(方形波プロトコール、500V、5ミリ秒、4mmキュベット)を使用し、5又は10μg mRNAで電気穿孔した。
【0123】
シグナル伝達CAR構築体の発現の検出
rcSso7d-及びFN3-ベースのCARの発現を、一次抗体として抗-Strep-IIタグ抗体(クローン5A9F9、GenScript)を及びPE-複合二次抗体(eBioscience)を使用し、Strep-IIタグを介して検出した。IgGスペーサーを含むCARを、一次抗体としてビオチン化した抗-ヒト-IgG1-抗体を及び二次染色試薬としてPE-複合ストレプトアビジンを用いて検出した。最後に、細胞を、フローサイトメトリーにより分析した。
【0124】
抗原結合CAR構築体の融合タンパク質A-Dの結合の検出
シグナル伝達CAR構築体と同時発現されるか、又はJurkat細胞により生成されるかのいずれかの、融合タンパク質A-Dの結合を、フローサイトメトリーにより検出した。従って、25×103個細胞は、最初に融合タンパク質-含有上清と共に、5μM A1120(Sigma-Aldrich)の存在下4℃で45分間、インキュベーションし、その後抗-ペンタ-His抗体(Qiagen)による第二工程染色の前に、5μM A1120の存在下で洗浄するか、又は抗ペンタ-His抗体により4℃で25分間直接染色するかのいずれかを行った。フローサイトメトリー分析前に、A1120の存在下で2回の洗浄工程を、再度行った。
【0125】
細胞傷害性アッセイ
CAR T細胞の細胞傷害能の分析を、ルシフェラーゼ-ベースの細胞傷害性アッセイにより行った。従って、ルシフェラーゼ-発現している腫瘍標的細胞を、CAR T細胞と、様々なエフェクター:標的細胞比(1:1、2:1、5:1、10:1、25:1、100:1)で、丸底96ウェルプレート内で、37℃で、4時間又は24時間同時培養した。その後残存する生存細胞を、ルシフェリン(最終濃度150μg/mL;Perkin Elmer)の添加により定量し、ルシフェラーゼ活性を、ENSPIREマルチモードプレートリーダーを用いて測定した。特異的溶解の割合を、下記式により決定した:
死滅率(%)=100-((エフェクター及び標的細胞を同時培養したウェルのRLU)/(標的細胞のみのウェルのRLU)×100))。
【0126】
CAR T細胞及びCAR-発現しているJurkat細胞によるサイトカイン放出
上清へのサイトカインの分泌を、エフェクター:標的(E:T)比1:1又は2:1での、標的細胞のエフェクター細胞との、平底96ウェルプレート内、37℃で、4時間又は24時間の同時培養により評価した。上清を遠心分離し(1600rpm、7分間)、残存する細胞を除去し、-20℃で凍結した。分泌されたサイトカインの分析のために、IFN-γELISAを、ヒトIFNγELISA Ready-SET-Go!(登録商標)(eBioscience)を製造業者の指示に従い用いて行った。分泌されたIL-8を、IL-8 Ready-SET-Go!(登録商標)ELISA(Thermo Fisher Scientific) により定量した。測定は、ENSPIREマルチモードプレートリーダーを使用し行った。
【0127】
実施例4:RBP4結合性相互作用パートナーの生物物理特徴決定
実施例1のRBP4結合性相互作用パートナー(この場合リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー)を、様々な生物物理学的方法により更に特徴付けた。DSC分析は、RBP4結合性相互作用パートナーRS3、RS5及びRF2は、安定したタンパク質であることを明確に示した。更に、SEC分析は、RBP4結合性相互作用パートナーRS3、RS5及びRF2は、良くフォールディングされた、単量体タンパク質であることを示した。
【0128】
更に、RBP4結合性相互作用パートナー(RS3、RS5及びRF2)とRBP4の間の親和性を、等温滴定熱量測定(ITC)及び表面プラズモン共鳴(SPR)により分析した。これらの測定は、それらのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー(この場合RS3、RS5及びRF2)のリポカリン-フォールド分子(この場合RBP4)への親和性は、リポカリン-フォールドリガンド(この場合A1120)の存在によって強力に左右されることを明らかに示した。図15、17及び18は、リポカリン-フォールドリガンドA1120の添加は、それらのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーとリポカリン-フォールド分子RPB4の間の親和性を、数百倍まで増大することを示している。
【0129】
DSCによるRBP4結合性相互作用パートナーの特徴決定
RBP4結合性相互作用パートナーの熱安定性は、PEAQ自動示差走査熱量計(Malvern Panalytical)を使用する、示差走査熱量測定(DSC)により、融解温度(Tm)を決定することにより、評価した。簡単に述べると、80μMタンパク質溶液を、20~110℃の範囲で、1℃/分の加熱速度で上昇する温度範囲に曝した。緩衝液ベースラインを減算し、得られるデータを、タンパク質濃度について規準化し、引き続き非二状態サーマルアンフォールディングモデルにフィットさせた。図14は、RBP4結合性相互作用パートナーRS3、RS5及びRF2に関して決定されたTm値を示す(3つの独立した実験の平均±s.d.)。
【0130】
SPRによるRBP4結合性相互作用パートナーとRBP4の間の相互作用の特徴決定
表面プラズモン共鳴(SPR)を使用し、RBP4とrcSso7d-又はFN3-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの間の相互作用の親和性を決定し、BiacoreT200(GE Healthcare)により行った。抗原(RBP4)は、CM5チップ(GE Healthcare)上にコーティングし、HBS-EP(GE Healthcare)において様々な濃度のリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー溶液と共にインキュベーションし、引き続きHBS-EPにおいて解離相とした。全ての測定値は、A1120の存在(5μM)及び非存在の両方において行った。最後に、Kd値(解離定数)を、定常状態分析により得た。図15Aは、センサーチップ上に固定されたRBP4、及び5μM A1120の存在下での、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーRS3による滴定のシングルサイクルカイネティクス(SCK)法のSPR実験を示す。図15Bは、(A)で使用したものと同じRS3濃度による、A1120非存在下での、SCK実験を示す。これらの濃度でほとんどシグナルは認められないので、これらは上昇した。図15Cは、A1120の非存在下で、より高いRS3濃度による、SCK実験を示す。KD値は、定常状態分析により計算した(A及びCの右側略図)。4回の独立した実験のうちの1回の代表的実験を示している。
【0131】
SECによるRBP4結合性相互作用パートナーの特徴決定
分析的SEC分析のために、ランニング緩衝液(200mM NaClを含むPBS)中の総量25μgのRBP4結合性相互作用パートナーを、0.1μmウルトラフリー-MCフィルター(Merck Millipore)を通して濾過し、HPLCプロミネンスLC20システム(Shimadzu)に接続したスーパーデックス200 10/300 GLカラム(GE healthcare)へ適用し、25℃で、流量0.75mL/分で溶離した。図16は、6種の異なるRBP4結合性相互作用パートナー(RS1、RS3、RS5、RF1、RF2及びRF3)の溶離プロファイルを示す。
【0132】
ITCによるRBP4結合性相互作用パートナーとRBP4の間の相互作用の特徴決定
RBP4とrcSso7d-又はFN3-ベースのリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー(この場合RBP4結合性相互作用パートナー)の間の相互作用の熱力学的特徴決定のために、等温滴定熱量測定(ITC)を、PEAQ自動等温滴定熱量計(Malvern Panalytical)を用いて行った。試料を遠心分離し(17000g、10分間、20℃)、同じ緩衝液(PBS)に対して透析した。RBP4タンパク質溶液を、サンプルセルに適用し、各RBP4結合性相互作用パートナーを、変動する間隔で滴定した。様々な濃度のRBP4及びRBP4結合性相互作用パートナーの両方を使用した。これらの実験は、リポカリン-フォールドリガンドA1120の存在及び非存在の両方において行った。A1120が存在する実験において、このリガンドは、RBP4タンパク質及びRBP4結合性相互作用パートナーの両方の溶液へ添加し、同じ緩衝液組成を達成した。データ解析は、MicroCal PEAQ-ITC解析ソフトウェアにより行い、得られたデータは、ワンセットオブサイト(one-set-of-sites)結合モデルにフィットさせた。図17Aは、ITCにより決定された、A1120存在(50μM)及び非存在下での、1つのRBP4結合性相互作用パートナー(RS3)のRBP4との相互作用の分析を示す。インテグレートされたデータは、ワンセットオブサイト結合モデルにフィットさせ、図18において示したKD値を計算した。シグネチャプロットは、RBP4とRS3の間の相互作用の熱力学的パラメータを示す。4回の独立した実験のうちの1回の代表的実験を示している。図17Bは、A1120の存在(50μM)及び非存在下での、RBP4結合性相互作用パートナーRS5及びRF2のRBP4への結合を示す。インテグレートされたデータは、ワンセットオブサイト結合モデルにフィットさせ、図18において示したKD 値を計算した。シグネチャプロットは、この相互作用の熱力学的パラメータを示す。4回の独立した実験のうちの1回の代表的実験を示している。
【0133】
図18は、酵母表面ディスプレイ(n=3)、SPR(n=4)及びITC(n=4)による、RBP4と、RBP4結合性相互作用パートナーRS3、RS5及びRF2に関する親和性の測定値をまとめている。平均値±s.d.を示した。
【0134】
実施例5:リポカリン-フォールド分子における高次構造スイッチングを誘導する能力を伴う臨床的に適用可能なリポカリン-フォールドリガンドのスクリーニング
実施例2に説明されたいくつかのリガンドのRBP4の高次構造スイッチングを誘導する能力を、TTRのRBP4への高次構造依存型結合を調べることにより検出した。すなわち、リポカリン-フォールドリガンドがRBP4において高次構造のスイッチを誘導すると、RBP4へのTTR親和性の減少(又は上昇)を生じることができ、これはTTR結合のフローサイトメトリー分析により、検出することができる。
【0135】
RBP4のベクターpCTCON2へのサブコローニング及び酵母の形質転換
RBP4-コードしているDNAを、zymoprep酵母プラスミドミニプレップキットII(Zymo Research)を使用し、P.パストリスから単離し、引き続きプライマーpicZalpha_fwd(5’-ATTGCCAGCATTGCTGCTAAAGAAG-3’)及びpicZalpha_rev(5’-GCAAATGGCATTCTGACATCC-3’)を用いて、PCR増幅した。このDNAを、イラストラGFX PCR DNA及びゲルバンド精製キット(GE healthcare)を用いて精製し、配列決定した。ベクターpCTCON2へのクローニングのために、RBP4-コードしているDNAを、NheI/BamHI制限部位をコードしているプライマーを使用するPCRにより増幅した。NheI及びBamHI(両方共New England Biolabs)による消化後、RBP4コードしている配列を、直線化したベクターへライゲーションし、配列の検証のために、大腸菌細胞を生じた構築体により電気穿孔した。生じた融合タンパク質の異なる部分は、順に、Aga2p-HAタグ-(Gly4Ser)3リンカー-RBP4-c-mycタグを有する。その後S.セレビシアエ株EBY100を、配列検証した構築体により、クイックアンドイージー形質転換キット(Takara)を用い、形質転換した。
【0136】
酵母の表面上のRBP4の発現は、細胞の、SG-CAA培地(2g/Lグルコース、20g/Lガラクトース、6.7g/L酵母窒素塩基、5g/Lカザミノ酸、10.2g/Lリン酸水素二ナトリウム、及び4.82g/L一塩基性リン酸ナトリウム)中で、20℃及び180rpmで一晩の培養により、誘導した。酵母細胞表面上のRBP4発現の検出のために、細胞を、マウス抗-c-myc抗体9E10(Thermo Fisher Scientific)、それに続く抗-マウスIgG-AF488(Thermo Fisher Scientific)によるか、あるいは抗-HA-アレクサフルオロ647(BioLegend)による二次染色のいずれかで染色した。
【0137】
TTRの発現及び精製
ヒトStrepII-タグ付きTTRを、pET52b+ベクターへクローニングし、大腸菌pLys細胞を、この構築体で形質転換した。発現のために、アンピシリン(100μg/mL)を含有するLB培地(10g/Lペプトン、5g/L酵母エキス及び5g/L塩化ナトリウムからなる)に、配列-検証したプラスミドを含む大腸菌細胞を接種し、37℃で一晩、振盪しながら(180rpm)培養した。細胞を、翌朝希釈し、更にOD600が1に到達するまで培養した。タンパク質発現の誘導は、IPTG(イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド、1mM)の添加により行った。加えて、温度を、20℃に低下し、細胞を、一晩、180rpmで培養した。細胞を、遠心分離(5000g、15分間)により収集し、ペレットを、溶解緩衝液(150mM NaCl、10mMイミダゾール、5mM β-メルカプトエタノールを補充したPBS、pH7.4)中に再浮遊させ、タンパク質分解を防ぐために、プロテアーゼインヒビターPMSF(フッ化フェニルメチルスルホニル、1mM)を添加した。細胞を、Vibra Cell音波処理装置(Sonics&Materials Inc.)を使用する音波処理(周波数50kHz、2×90秒、振幅:5)により溶解し、引き続き遠心分離(10000g、20分間)した。上清を、0.45μmフィルター(Merck Millipore)を通して濾過した。AKTA FPLC精製システムに接続したStrepTrap HPカラム(GE Healthcare)を、結合緩衝液(150mM NaClを補充したPBS、pH7.4)により平衡とし、試料を、流量1mL/分で装加した。結合緩衝液による洗浄後、溶離緩衝液(2.5mMデスチオビオチンを含む結合緩衝液)により溶離を行い、画分を、NanoDrop及びSDS-PAGEにより分析した。吸光度280nm及び予想されたサイズのタンパク質バンドの存在の両方を示すそれらの画分をプールし、アミコンウルトラ-15 10K遠心分離フィルター(Merck Millipore)を用いて濃縮した。
【0138】
リポカリン-フォールドリガンド-誘導したRBP4の高次構造スイッチングのフローサイトメトリー検出
リポカリン-フォールドリガンドが誘導したRBP4の高次構造のスイッチングのフローサイトメトリー検出は、RBP4-高次構造に依存したRBP4-TTR相互作用を利用することを基にしている。この目的のために、RBP4を提示している1×106個酵母細胞を、100μMの可能性のあるリポカリン-フォールドリガンドを含有するPBSA(0.1%BSAを補充したPBS)と共にインキュベーションし、かつ振盪しながら、4℃で20分間インキュベーションした。その後、可能性のあるリポカリン-フォールドリガンドの存在(50μM)又は非存在下で、異なる濃度の精製したTTR(0~1000nMの範囲)を添加し、振盪しながら、4℃で1時間インキュベーションした。2回の洗浄工程を行い、引き続きStrepII-タグ付きTTRを認識する、ビオチン化した抗-Strep II抗体(Genscript)と共にインキュベーション(4℃で25分間)した。2回の洗浄工程の後、ストレプトアビジン-PE(Biolegend)及び抗-HA-アレクサフルオロ 488(Biolegend)を使用し、かつ4℃で25分間インキュベーションする、三次染色を行った。2回の最終洗浄工程の後、細胞を、ペレットとして保持し、フローサイトメトリー分析の直前に、PBSA中に再浮遊させた。図19Aは、RBP4を提示しかつTTRへ結合する染色された酵母細胞による、1回の代表的実験のドットプロットを示す。図19Bは、異なる可能性のあるリポカリン-フォールドリガンドの存在(50μM)又はあらゆるリポカリン-フォールドリガンドの非存在(PBSA)下での、酵母表面上に提示されたRBP4へのTTRの結合の1回の測定値(蛍光強度の中央値)を示す。
【0139】
図20は、2つの異なる濃度のTTR(100及び300nM)での、様々な可能性のあるリポカリン-フォールドリガンドの存在(50μM)又はあらゆるリポカリン-フォールドリガンドの非存在(PBSA)下での、酵母表面上に提示されたRBP4へのTTRの結合(蛍光強度の中央値)を示す。3回の測定値の平均値±s.d.を示す。
【0140】
従って、本発明は、以下の好ましい実施態様を開示する:
1.リポカリン-フォールド分子をベースにしたリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムであって:
(a)リポカリン-フォールド分子、
(b)1500Da又はそれ以下の低分子量のリポカリン-フォールドリガンド、及び
(c)リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー:を含み、
ここで、リポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールドリガンドへ結合することができ;並びに
ここで、リポカリン-フォールドリガンドに結合したリポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへ、リポカリン-フォールドリガンドに結合しないリポカリン-フォールド分子の親和性よりも少なくとも10倍高い親和性で結合し、
並びにここで、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、いずれかのリポカリン-フォールドリガンドの存在下で、いずれかの天然に生じるリポカリン-フォールド分子に対し親和性<10μMを有する天然に生じるタンパク質ではない、リガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0141】
2.リポカリン-フォールド分子をベースにしたリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムであって:
(a)リポカリン-フォールド分子、
(b)1500Da又はそれ以下の低分子量のリポカリン-フォールドリガンド、及び
(c)リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー:を含み、
ここで、リポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールドリガンドがリポカリン-フォールド分子に結合されない場合には、少なくとも第一の高次構造を、及びリポカリン-フォールドリガンドがリポカリン-フォールド分子に結合される場合には、少なくとも第二の高次構造を有し;並びに
ここで、第二の高次構造でリポカリン-フォールドリガンドに結合したリポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへ、第一の高次構造のリポカリン-フォールドリガンドに結合しないリポカリン-フォールド分子の親和性よりも少なくとも10倍高い親和性で結合し、
並びにここで、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、いずれかのリポカリン-フォールドリガンドの存在下で、いずれかの天然に生じるリポカリン-フォールド分子に対し親和性<10μMを有する天然に生じるタンパク質ではない、リガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0142】
3.リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーが、特にリポカリン-フォールドリガンドの存在下で、いずれかの天然に生じるリポカリン-フォールド分子に対し親和性<10μMを有する天然に生じるタンパク質のいずれかのセグメントのアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を伴う、少なくとも50個の連続したアミノ酸のいずれかのセグメントを含まない、実施態様1又は2記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0143】
4.リポカリン-フォールドリガンドへ結合した場合、又は第二の高次構造である場合の各々における、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーのリポカリン-フォールド分子への親和性は、10μM以下、好ましくは2μM以下、特に400nM以下である、実施態様1~3のいずれか一つに記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0144】
5.リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーが、天然に生じるタンパク質のいずれかのセグメントのアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を伴う、少なくとも50個の連続したアミノ酸のいずれかのセグメントを含まず、かつここでこの少なくとも50個の連続したアミノ酸のセグメントは、特にリポカリン-フォールドリガンドの存在下で、いずれかの天然に生じるリポカリン-フォールド分子に対し親和性<400nMを有する、実施態様1~4のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0145】
6.リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーが、天然に生じるタンパク質のいずれかのセグメントのアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を伴う、少なくとも50個の連続したアミノ酸のいずれかのセグメントを含まず、かつここでこの少なくとも50個の連続したアミノ酸のセグメントは、特にリポカリン-フォールドリガンドの存在下で、いずれかの天然に生じるリポカリン-フォールド分子に対し親和性<2μMを有する、実施態様1~4のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0146】
7.リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーが、天然に生じるタンパク質のいずれかのセグメントのアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を伴う、少なくとも50個の連続したアミノ酸のいずれかのセグメントを含まず、かつここでこの少なくとも50個の連続したアミノ酸のセグメントは、特にリポカリン-フォールドリガンドの存在下で、いずれかの天然に生じるリポカリン-フォールド分子に対し親和性<10μMを有する、実施態様1~4のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0147】
8.リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、天然に生じるヒトリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーのヒトとは異なる種のホモログではない、実施態様1~7のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0148】
9.リポカリン-フォールド分子は、天然の対応物を有さない、人工的なリポカリン-フォールド分子である、実施態様1~8のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0149】
10.リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、リポカリン-フォールド分子がリポカリン-フォールドリガンドに結合される場合に、リポカリン-フォールドリガンドに結合していないリポカリン-フォールド分子に対する親和性と比べ、より高い親和性でリポカリン-フォールド分子を特異的に認識するように操作され、かつここでリポカリン-フォールド分子は、任意にリポカリン-フォールドリガンドに対しより高い親和性で結合するように操作される、実施態様1~9のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0150】
11.リポカリン-フォールド分子は、天然に生じるヒトリポカリン-フォールド分子のヒトとは異なる種のホモログではない、実施態様1~10のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0151】
12.リポカリン-フォールドリガンドは、医薬的活性分子、特にヒト患者において治療活性を持つ医薬的活性分子である、実施態様1~11のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0152】
13.リポカリン-フォールドリガンドは、効果的に経口投与され得る分子である、実施態様1~12のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0153】
14.リポカリン-フォールドリガンドは、効果的に静脈内に投与され得る分子である、実施態様1~12のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0154】
15.リポカリン-フォールドリガンドは、ヒト患者へ、効果的に静脈内及び/又は経口投与され得る分子である、実施態様1~14のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0155】
16.リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、特にリポカリン-フォールドリガンドの存在下で、親和性<10μMでの天然に生じるリポカリン-フォールド分子への結合を媒介する天然に生じるタンパク質のドメインを含まない、実施態様1~15のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0156】
17.リポカリン-フォールド分子は、天然に生じるiLBP(細胞内脂質結合性タンパク質)、天然に生じるリポカリンもしくはアンチカリンと同一である分子であるか、又は1~30のアミノ酸置換及び/又は1~50のアミノ酸欠失及び/又は1~50のアミノ酸挿入を伴う、これらの分子のいずれかの誘導体である、実施態様1~16のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0157】
18.リポカリン-フォールド分子は、βバレル構造に少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%の配列同一性を伴う、天然に生じるか又はそうでなければ開示されたリポカリン-フォールド分子の誘導体である、実施態様1~17のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0158】
19.リポカリン-フォールド分子は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、25又は30のアミノ酸置換を伴う、天然に生じるリポカリン又はiLBPの誘導体である、実施態様1~18のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0159】
20.リポカリン-フォールド分子は、好ましくは:
-PDBエントリー1RBPにおいてアミノ酸残基番号付けスキームに従いヒトRBP4の構造上保存されたβストランドに隣接する領域を規定する、ヒトRBP4のアミノ酸残基1-20、31-40、48-51、59-70、79-84、89-101、110-113、121-131及び139-183;
-ヒトTLCの構造上保存されたβストランドに隣接する領域を規定する、Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985のアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒトTLCのアミノ酸残基1-13、24-36、44-47、55-61、70-75、80-83、92-95、103-110及び118-158;
-ヒトApoMの構造上保存されたβストランドに隣接する領域を規定する、Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985のアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒトApoMのアミノ酸残基1-43、54-68、76-80、88-95、104-109、114-118、127-130、138-141及び149-188;
-ヒトCRABPIIの構造上保存されたβストランドに隣接する領域を規定する、PDBエントリー2FS6におけるアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒトCRABPIIのアミノ酸残基1-4、13-40、46-49、55-60、66-70、74-80、88-92、97-107、113-118、125-128及び136-137;
-ヒトFABP1の構造上保存されたβストランドに隣接する領域を規定する、PDBエントリー2F73においてアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒトFABP1のアミノ酸残基1-4、13-38、44-47、53-58、64-68、72-78、86-90、95-98、104-108、115-118及び126-127:
から選択されたアミノ酸残基の領域に構造的に対応する、構造上保存されたβバレル構造の外側に、最大15、最大30、もしくは最大50のアミノ酸欠失及び/又は最大15、最大30、もしくは最大50のアミノ酸挿入を伴う、天然に生じるリポカリン又はiLBPの誘導体である、実施態様1~19のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0160】
21.リポカリン-フォールド分子が、βバレル構造において少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%の配列同一性を伴う、天然に生じるリポカリン又はiLBPの誘導体であって、これによりこのβバレル構造は、好ましくは:
-ヒトRBP4の構造上保存されたβストランドを規定する、PDBエントリー1RBPにおけるアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒトRBP4のアミノ酸残基21-30、41-47、52-58、71-78、85-88、102-109、114-120及び132-138;
-ヒトTLCの構造上保存されたβストランドを規定する、Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985により規定されたヒト涙液リポカリン(TLC)のアミノ酸残基14-23、37-43、48-54、62-69、76-79、84-91、96-102及び111-117;
-ヒトApoMの構造上保存されたβストランドを規定する、Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985により規定されたヒトアポリポタンパクM(ApoM)のアミノ酸残基44-53、69-75、81-87、96-103、110-113、119-126、131-137及び142-148;
-ヒトCRABPIIの構造上保存されたβストランドを規定する、PDBエントリー2FS6におけるアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒト細胞レチノイン酸結合性タンパク質II(CRABPII)のアミノ酸残基5-12、41-45、50-54、61-65、71-73、81-87、93-96、108-112、119-124及び129-135;
-ヒトFABP1の構造上保存されたβストランドを規定する、PDBエントリー2F73におけるアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒト脂肪酸結合性タンパク質1(FABP1)のアミノ酸残基5-12、39-43、48-52、59-63、69-71、79-85、91-94、99-103、109-114及び119-125:
から選択されたアミノ酸残基の領域に構造的に対応する領域として規定される、実施態様1~20のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0161】
22.リポカリン-フォールド分子が、少なくともリポカリン-フォールドの構造上保存されたβバレル構造に広がる、長さが少なくとも80、好ましくは少なくとも100、特に少なくとも120のアミノ酸を伴う、天然に生じるリポカリン又はその誘導体の断片であるか、又はリポカリン-フォールド分子が、少なくともリポカリン-フォールドの構造上保存されたβバレル構造に広がる、長さが少なくとも80、好ましくは少なくとも85、特に少なくとも90のアミノ酸を伴う、天然に生じるiLBP又はその誘導体の断片であり、
ここで構造上保存されたβバレル構造は、好ましくは:
-ヒトRBP4の構造上保存されたβストランドを規定する、PDBエントリー1RBPにおけるアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒトRBP4のアミノ酸残基21-30、41-47、52-58、71-78、85-88、102-109、114-120及び132-138;
-ヒトTLCの構造上保存されたβストランドを規定する、Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985により規定されたヒト涙液リポカリン(TLC)のアミノ酸残基14-23、37-43、48-54、62-69、76-79、84-91、96-102及び111-117;
-ヒトApoMの構造上保存されたβストランドを規定する、Schiefnerら、Acc Chem Res. 2015;48(4):976-985により規定されたヒトアポリポタンパクM(ApoM)のアミノ酸残基44-53、69-75、81-87、96-103、110-113、119-126、131-137及び142-148;
-ヒトCRABPIIの構造上保存されたβストランドを規定する、PDBエントリー2FS6におけるアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒト細胞レチノイン酸結合性タンパク質II(CRABPII)のアミノ酸残基5-12、41-45、50-54、61-65、71-73、81-87、93-96、108-112、119-124及び129-135;
-ヒトFABP1の構造上保存されたβストランドを規定する、PDBエントリー2F73におけるアミノ酸残基番号付けスキームに従う、ヒト脂肪酸結合性タンパク質1(FABP1)のアミノ酸残基5-12、39-43、48-52、59-63、69-71、79-85、91-94、99-103、109-114及び119-125:
から選択されるアミノ酸残基の領域に構造的に対応するアミノ酸位置を含む又はこれからなる、実施態様1~21のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0162】
23.リポカリン-フォールドリガンドに結合したリポカリン-フォールド分子が、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへ、リポカリン-フォールドリガンドに結合しないリポカリン-フォールド分子の親和性よりも、少なくとも20倍高い、好ましくは少なくとも50倍高い親和性で結合する、実施態様1~22のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0163】
24.リポカリン-フォールドリガンドに結合したリポカリン-フォールド分子が、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへ、リポカリン-フォールドリガンドに結合しないリポカリン-フォールド分子の親和性よりも、少なくとも100倍高い、好ましくは少なくとも200倍高い、特に少なくとも500倍高い親和性で結合する、実施態様1~23のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0164】
25.リポカリン-フォールドリガンドに結合したリポカリン-フォールド分子が、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへ、リポカリン-フォールドリガンドに結合しないリポカリン-フォールド分子の親和性よりも、少なくとも1000倍高い親和性で結合する、実施態様1~24のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0165】
26.リポカリン-フォールドリガンドは、分子量1500~75Da、好ましくは750Da~150Daを有する、実施態様1~25のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0166】
27.リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、抗原、細胞表面受容体、抗体、抗体断片、又は非-抗体ベースのスカフォールド、好ましくはアフィボディ、リポカリン-フォールド分子、好ましくはiLPBもしくはLCN、特にアンチカリン;アビマー、DARPin、ファイノマー、クニッツドメイン、ノッチン、モノボディ、Sso7dベースのバインダー、電荷が低下したSso7d(rcSso7d)-ベースのバインダー又はSac7d-ベースのバインダーであるか、又はリポカリン-フォールド分子及び/もしくはリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、これらを含む、実施態様1~26のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0167】
28.リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー及び/又はリポカリン-フォールド分子は、抗原、細胞表面受容体、抗体、抗体断片、又は非-抗体ベースのスカフォールド、好ましくはアフィボディ、リポカリン-フォールド分子、好ましくはiLPBもしくはLCN、特にアンチカリン;アビマー、DARPin、ファイノマー、クニッツドメイン、ノッチン、モノボディ、Sso7dベースのバインダー、電荷が低下したSso7d(rcSso7d)-ベースのバインダー又はSac7d-ベースのバインダーを含む、実施態様1~27のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0168】
29.リポカリン-フォールドリガンドは、リポカリン-フォールド分子に対し、1mM以下、好ましくは100μM以下、特に10μM以下の親和性を有する、実施態様1~28のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0169】
30.リポカリン-フォールドリガンドが、表1から選択されるリガンド、特にフェンレチニド(15-[(4-ヒドロキシフェニル)アミノ]レチナール)、N-エチルレチナミド(PubChem CID:5288173)、オールトランス型レチノイン酸(PubChem CID:444795)、アキセルフテン(PubChem CID:5287722)、A1120(PubChem CID 25138295)及びその誘導体、1,4-ブタンジオール(Pubchem CID:8064)、スフィンゴシン-1-リン酸(Pubchem CID:5283560)、テトラデカン酸(Pubchem CID:11005)、インディカキサンチン(Pubchem CID:6096870及び12310796)、ブルガキサンチンI(Pubchem CID:5281217)、モンテルカスト(Pubchem CID:5281040)、シクランデレート(Pubchem CID:2893)、オキソラミン(Pubchem CID:13738)、マザチコール(PubchemCID:4019)、ブトクタミド(Pubchem CID:65780)、トナベルサット(Pubchem CID:6918324)、ノバジン(Pubchem CID:65734)、ジフェニドール(Pubchem CID:3055)、ネオボニバール、エルロチニブ(Pubchem CID:92131336)、タネスピマイシン(Pubchem CID:6505803)、LMI070(Pubchem CID:85471316)、アロクラミド(Pubchem CID:71837)、ジアセトロール(Pubchem CID:50894)、アコチアミド(Pubchem CID:5282338)、アコジボロール(Pubchem CID:44178354)、アキュマピモド(Pubchem CID:11338127)、アパルタミド(Pubchem CID:24872560)、ASP3026(Pubchem CID:25134326)、AZD1480(Pubchem CID:16659841)、BIIB021(Pubchem CID:16736529)、ブラナプラム(Pubchem CID:89971189)、ブレキナル(Pubchem CID:57030)、クロルプログアニル(Pubchem CID:9571037)、クリンダマイシン(Pubchem CID:446598)、エムリカサン(Pubchem CID:12000240)、エナシデニブ(Pubchem CID:89683805)、エノリカム(Pubchem CID:54679203)、フルラゼパム(Pubchem CID:3393)、ILX-295501(Pubchem CID:127737)、インディブリン(Pubchem CID:2929)、メトクロプラミド(Pubchem CID:12598248)、メバスタチン(Pubchem CID:64715)、MGGBYMDAPCCKCT-UHFFFAOYSA-N(Pubchem CID:25134326)、MK0686(Pubchem CID:16102897)、ナバリクシン(Pubchem CID:71587743)、ネファゾドン塩酸塩(Pubchem CID:54911)、パントプラゾール(Pubchem CID:4679)、パビネタント(Pubchem CID:23649245)、プロキサゾール(Pubchem CID:8590)、シッカニン(Pubchem CID:71902)、スルファグアノール(Pubchem CID:9571041)、スニチニブ(Pubchem CID:5329102)、スボレキサント(Pubchem CID:24965990)、チアプリド(Pubchem CID:5467)、トナベルサット(Pubchem CID:6918324)、VNBRGSXVFBYQNN-UHFFFAOYSA-N(Pubchem CID:24794418)、YUHNXUAATAMVKD-PZJWPPBQSA-N(Pubchem CID:44548240)、ウリモレリン(Pubchem CID:11526696)、キシパミド(Pubchem CID:26618)、トロペシン(Pubchem CID:47530)、トリクラベンダゾール(Pubchem CID:50248)、トリクラベンダゾールスルホキシド(Pubchem CID:127657)、トリクラベンダゾールスルホン(Pubchem CID:10340439)及びトラメチニブ(Pubchem CID:11707110)である、実施態様1~29のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0170】
31.リポカリン-フォールド分子は、キメラ抗原受容体のエクトドメインの一部であり、及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、細胞表面抗原である、実施態様1~30のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0171】
32.リポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、キメラ抗原受容体の細胞内及び/又は細胞外ドメインの一部である、実施態様1~30のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0172】
33.リポカリン-フォールド分子は、1~30のアミノ酸置換及び/又は1~50のアミノ酸欠失及び/又は1~50のアミノ酸挿入を伴う、リポカリン又はその誘導体である、実施態様1~32のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0173】
34.リポカリン-フォールド分子は、ヒトRBP4と少なくとも95%の配列同一性を有する、実施態様1~33のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0174】
35.リポカリン-フォールド分子は、ヒト涙液リポカリン(TLC)と少なくとも95%の配列同一性を有する、実施態様1~33のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0175】
36.リポカリン-フォールド分子は、ヒトアポリポタンパクM(ApoM)と少なくとも95%の配列同一性を有する、実施態様1~33のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0176】
37.リポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーの両方は、天然に生じるリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムの一部ではない、実施態様1~36のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0177】
38.リポカリン-フォールドリガンドは、フェンレチニド(15-[(4-ヒドロキシフェニル)アミノ]レチナール)、N-エチルレチナミド(PubChem CID:5288173)、オールトランス型レチノイン酸(PubChem CID:444795)、アキセルフテン(PubChem CID:5287722)、A1120(PubChem CID 25138295)及びその誘導体、1,4-ブタンジオール(Pubchem CID:8064)、スフィンゴシン-1-リン酸(Pubchem CID:5283560)、テトラデカン酸(Pubchem CID:11005)、インディカキサンチン(Pubchem CID:6096870及び12310796)、ブルガキサンチンI(Pubchem CID:5281217)、モンテルカスト(Pubchem CID:5281040)、シクランデレート(Pubchem CID:2893)、オキソラミン(Pubchem CID:13738)、マザチコール(PubchemCID:4019)、ブトクタミド(Pubchem CID:65780)、トナベルサット(Pubchem CID:6918324)、ノバジン(Pubchem CID:65734)、ジフェニドール(Pubchem CID:3055)、ネオボニバール、エルロチニブ(Pubchem CID:92131336)、タネスピマイシン(Pubchem CID:6505803)、LMI070(Pubchem CID:85471316)、アロクラミド(Pubchem CID:71837)、ジアセトロール(Pubchem CID:50894)、アコチアミド(Pubchem CID:5282338)、アコジボロール(Pubchem CID:44178354)、アキュマピモド(Pubchem CID:11338127)、アパルタミド(Pubchem CID:24872560)、ASP3026(Pubchem CID:25134326)、AZD1480(Pubchem CID:16659841)、BIIB021(Pubchem CID:16736529)、ブラナプラム(Pubchem CID:89971189)、ブレキナル(Pubchem CID:57030)、クロルプログアニル(Pubchem CID:9571037)、クリンダマイシン(Pubchem CID:446598)、エムリカサン(Pubchem CID:12000240)、エナシデニブ(Pubchem CID:89683805)、エノリカム(Pubchem CID:54679203)、フルラゼパム(Pubchem CID:3393)、ILX-295501(Pubchem CID:127737)、インディブリン(Pubchem CID:2929)、メトクロプラミド(Pubchem CID:12598248)、メバスタチン(Pubchem CID:64715)、MGGBYMDAPCCKCT-UHFFFAOYSA-N(Pubchem CID:25134326)、MK0686(Pubchem CID:16102897)、ナバリクシン(Pubchem CID:71587743)、ネファゾドン塩酸塩(Pubchem CID:54911)、パントプラゾール(Pubchem CID:4679)、パビネタント(Pubchem CID:23649245)、プロキサゾール(Pubchem CID:8590)、シッカニン(Pubchem CID:71902)、スルファグアノール(Pubchem CID:9571041)、スニチニブ(Pubchem CID:5329102)、スボレキサント(Pubchem CID:24965990)、チアプリド(Pubchem CID:5467)、トナベルサット(Pubchem CID:6918324)、VNBRGSXVFBYQNN-UHFFFAOYSA-N(Pubchem CID:24794418)、YUHNXUAATAMVKD-PZJWPPBQSA-N(Pubchem CID:44548240)、ウリモレリン(Pubchem CID:11526696)、キシパミド(Pubchem CID:26618)、トロペシン(Pubchem CID:47530)、トリクラベンダゾール(Pubchem CID:50248)、トリクラベンダゾールスルホキシド(Pubchem CID:127657)、トリクラベンダゾールスルホン(Pubchem CID:10340439)及びトラメチニブ(Pubchem CID:11707110)の群から選択される、実施態様1~37のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0178】
39.リポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、ポリペプチドである、実施態様1~38のいずれか一つ記載のリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【0179】
40.核酸は、好ましくはDNA又はRNAから、より好ましくはインビトロ転写されたRNA又はレトロウイルスにパッケージされたRNA、特にレンチウイルスにパッケージされたRNAから選択される、実施態様1~39のいずれか一つ記載のリポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしているヌクレオチド配列を含む核酸分子。
【0180】
41.第一の核酸分子は、実施態様39記載のリポカリン-フォールド分子をコードしているヌクレオチド配列を含み、及び第二の核酸分子は、実施態様39記載のリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしている配列を含み、ここで核酸は、好ましくはDNA又はRNAから、より好ましくはインビトロ転写されたRNA又はレトロウイルスにパッケージされたRNA、特にレンチウイルスにパッケージされたRNAから選択される、少なくとも2種の核酸分子のキット。
【0181】
42.核酸分子は、ベクター中に存在し、かつ好ましくは感染性ウイルス粒子へDNA又はRNAとしてパッケージされている、実施態様40又は41記載の核酸分子又は核酸分子のキット。
【0182】
43.核酸配列は、リンパ球において強力で安定した導入遺伝子の発現を媒介する配列へ連結されており、ここでそのような配列は、好ましくは、ガンマレトロウイルスの5’-LTR、又はモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)5’-LTRのサブエレメントR及びU3、又はマウス幹細胞ウイルス(MSCV)のプロモーター、又はホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)のプロモーター、又は更により好ましくはヒト伸長因子1(EF-1)αプロモーターを含む、実施態様40~42のいずれか一つ記載の核酸分子又は核酸分子のキット。
【0183】
44.実施態様40記載の核酸分子又は実施態様41記載の核酸分子のキットを含む、組換え発現ベクター。
【0184】
45.第一の組換え発現ベクターは、実施態様40記載のリポカリン-フォールド分子をコードしている核酸分子を含み、及び第二の組換え発現ベクターは、実施態様40記載のリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしている核酸分子を含む、少なくとも2つの組換え発現ベクターのキット。
【0185】
46.ベクター又は少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのベクターは、実施態様39記載のリポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしているヌクレオチド配列へ機能的に連結されるTリンパ球-特異的プロモーター又はNK細胞-特異的プロモーターを含む、組換え発現ベクター又は少なくとも2つの組換え発現ベクターのキット。
【0186】
47.実施態様40~43のいずれか一つ記載の核酸分子又は核酸分子のキットを含む、ベクター。
【0187】
48.第一のベクターは、リポカリン-フォールド分子をコードしている核酸分子を含み、及び第二のベクターは、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしている核酸分子を含む、実施態様41~43のいずれか一つ記載の核酸分子を含む少なくとも2つのベクターのキット。
【0188】
49.ベクターは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターもしくはトランスポゾンベクター、好ましくはスリーピングビューティトランスポゾンベクターもしくはPiggyBacトランスポゾンベクターであるか、又はベクターは、レトロウイルスベクター、好ましくはガンマレトロウイルスベクターもしくはレンチウイルスベクターである、実施態様47又は48記載のベクター又はベクターのキット。
【0189】
50.ベクター又は少なくとも1、好ましくは少なくとも2のベクターは、発現ベクター、好ましくは実施態様1~39のいずれか一つ記載のリポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしているヌクレオチド配列は、リンパ球において強力で安定した導入遺伝子の発現を媒介する配列へ機能的に連結される発現ベクターであり、ここでそのような配列は、好ましくは、γレトロウイルスの5’-LTR、又はモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)5’-LTRのサブエレメントR及びU3、又はマウス幹細胞ウイルス(MSCV)のプロモーター、又はホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)のプロモーター、又は更により好ましくはヒト伸長因子1(EF-1)αプロモーターを含む、実施態様47~49のいずれか一つ記載のベクター又は少なくとも2つのベクターのキット。
【0190】
51.実施態様39記載のリポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを作製するように遺伝子修飾された細胞。
【0191】
52.実施態様39記載のリポカリン-フォールド分子及びリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを作製するように遺伝子修飾された細胞。
【0192】
53.実施態様1~39のいずれか一つ記載のリポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを作製するために、実施態様40~43のいずれか一つ記載の核酸分子もしくは核酸分子のキットによるか、又は実施態様47~50のいずれか一つ記載のベクターもしくはベクターのキットにより、インビトロ又はエクスビボにおいて修飾された細胞、又は2種以上の該修飾された細胞を含むキット。
【0193】
54.第一の細胞は、実施態様39記載のリポカリン-フォールド分子を作製するように遺伝子修飾され、及び第二の細胞は、実施態様39記載のリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーを作製するよう遺伝子修飾されている、実施態様53記載の少なくとも2種の細胞のキット。
【0194】
55.細胞は、原核細胞又は真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくは造血幹細胞、前駆細胞、又は造血幹細胞もしくは前駆細胞由来の細胞、特にT細胞又はNK細胞である、実施態様53記載の細胞、又は実施態様53又は54記載の細胞のキット。
【0195】
56.細胞は、実施態様47~50のいずれか一つ記載のベクター又は少なくとも2つのベクターのキットにより形質導入又は形質転換されている、実施態様53~55のいずれか一つ記載の細胞又は細胞のキット。
【0196】
57.細胞が、リポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしているヌクレオチド配列を、そのゲノムへ安定して組み込んでいる、実施態様53~56のいずれか一つ記載の細胞又は細胞のキット。
【0197】
58.細胞が、位置指定ヌクレアーゼ技術の使用、好ましくはジンクフィンガーヌクレアーゼ又はTALENs、又は更により好ましくはCRISPR/Cas技術の使用により、リポカリン-フォールド分子及び/又はリポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーをコードしているヌクレオチド配列を、そのゲノムへ安定して組み込んでいる、実施態様53~57のいずれか一つ記載の細胞又は細胞のキット。
【0198】
59.好ましくは哺乳動物細胞、特にT細胞又はNK細胞である、実施態様44~46のいずれか一つ記載の組換え発現ベクター又は少なくとも2つの組換え発現ベクターのキットにより形質転換された細胞。
【0199】
60.実施態様40~43のいずれか一つ記載の核酸分子もしくは核酸分子のキット、及び/又は実施態様47~50のいずれか一つ記載のベクターもしくはベクターのキット、及び/又は実施態様53~58のいずれか一つ記載の細胞もしくは細胞のキットを含む、医薬製品。
【0200】
61.ベクターが、感染性ウイルス粒子に含まれる、実施態様60記載の医薬製品。
【0201】
62.方法が、インビトロ又はエクスビボにおいて、実施態様40~43のいずれか一つ記載の核酸分子もしくは核酸分子のキット、又は実施態様47~50のいずれか一つ記載のベクターもしくはベクターのキットを、細胞へ導入する、好ましくは細胞のゲノムへ安定して組み込む工程を含む、実施態様53~58のいずれか一つ記載の細胞を作製する方法。
【0202】
63.実施態様53~58のいずれか一つ記載の細胞を含む、非ヒト動物。
【0203】
64.実施態様53~58のいずれか一つ記載の細胞を含む、植物。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9
図10-1】
図10-2】
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20
【配列表】
2024023289000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポカリン-フォールド分子をベースにしたリガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システムであって:
(a)リポカリン-フォールド分子、
(b)1500Da又はそれ以下の低分子量のリポカリン-フォールドリガンド、及び
(c)リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナー:を含み、
ここで、リポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールドリガンドへ結合することができ;並びに
ここで、リポカリン-フォールドリガンドに結合したリポカリン-フォールド分子は、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーへ、リポカリン-フォールドリガンドに結合しないリポカリン-フォールド分子の親和性よりも少なくとも10倍高い親和性で結合し、
並びにここで、リポカリン-フォールド結合性相互作用パートナーは、いずれかのリポカリン-フォールドリガンドの存在下で、いずれかの天然に生じるリポカリン-フォールド分子に対し親和性<10μMを有する天然に生じるタンパク質ではない、リガンド制御したタンパク質-タンパク質相互作用システム。
【外国語明細書】