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特開2024-23317二重特異性抗体の組成物及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023317
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】二重特異性抗体の組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20240214BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240214BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20240214BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C12N15/63 Z
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61P1/16
A61P1/04
A61P1/18
A61P11/00
A61P1/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K33/243
A61K31/7068
A61K31/4745
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023194941
(22)【出願日】2023-11-16
(62)【分割の表示】P 2020564668の分割
【原出願日】2019-05-15
(31)【優先権主張番号】62/672,325
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518242019
【氏名又は名称】アーベル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ARBELE LIMITED
【住所又は居所原語表記】#522, Biotech Center 2, 11 Science Park West Ave., Shatin, N.T. Hong Kong (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ストーントン, ドナルド イー.
(72)【発明者】
【氏名】ルク, ジョン, ムーンチン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】がん治療のための抗体、医薬組成物および治療方法を提供する。
【解決手段】N末端とC末端を有する抗体であって、重鎖と軽鎖を含み、前記重鎖は、N末端からC末端へタンデムに、重鎖可変ドメイン、CH1、CH2、CH3、重鎖リンカー及び重鎖scFvを含み、前記軽鎖は、N末端からC末端へタンデムに、軽鎖可変ドメイン、及びCLドメインを含み、前記重鎖可変ドメイン及び前記軽鎖可変ドメインは、それぞれ独立して第一の標的に対する特異性を有し、前記重鎖scFvは、第二の標的に対する特異性を有し、及び前記第一の標的及び前記第二の標的は、CDH17、CD3、TROP2、GPC3、及びHER2を含む群から独立して選択される、抗体を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端とC末端を有する抗体であって、重鎖と軽鎖を含み、
前記重鎖は、N末端からC末端へタンデムに、重鎖scFvドメインを含む可変要素、重鎖リンカー、CH1、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含み、
前記軽鎖は、N末端からC末端へタンデムに、軽鎖scFvドメインを含む可変要素、軽鎖リンカー、CLドメインを含み、
前記重鎖scFvは、第一の標的に対する特異性を有し、
前記軽鎖scFvは、第二の標的に対する特異性を有し、及び
前記第一の標的及び前記第二の標的は、CDH17、CD3、TROP2、GPC3、及びHER2を含む群から独立して選択される、抗体。
【請求項2】
N末端とC末端を有する抗体であって、重鎖と軽鎖を含み、
前記重鎖は、N末端からC末端へタンデムに、重鎖可変ドメイン、CH1、CH2、CH3、重鎖リンカー及び重鎖scFvを含み、
前記軽鎖は、N末端からC末端へタンデムに、軽鎖可変ドメイン、及びCLドメインを含み、
前記重鎖可変ドメイン及び前記軽鎖可変ドメインは、それぞれ独立して第一の標的に対する特異性を有し、
前記重鎖scFvは、第二の標的に対する特異性を有し、及び
前記第一の標的及び前記第二の標的は、CDH17、CD3、TROP2、GPC3、及びHER2を含む群から独立して選択される、抗体。
【請求項3】
N末端とC末端を有する抗体であって、N末端からC末端へタンデムに、第一のscFvドメイン、第二のscFvドイマン、ヒンジ、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、
前記第一のscFvドメインは、第一の標的に対する特異性を有し、
前記第二のscFvドメインは、第二の標的に対する特異性を有し、及び
前記第一の標的及び前記第二の標的は、CDH17、CD3、TROP2、GPC3、及びHER2を含む群から独立して選択される、抗体。
【請求項4】
第一の標的及び第二の標的に対する特異性を有する抗体であって、前記第一の標的及び前記第二の標的が、CDH17、CD3、TROP2、GPC3、及びHER2を含む群から独立して選択され、且つ前記抗体はモノクローナル抗体である、抗体。
【請求項5】
CDH17がCDH17エクトドメインD1、D2、D3、D4、D5、D6及びD7を含む、請求項1~4の抗体。
【請求項6】
配列番号15~33と少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~4の抗体。
【請求項7】
第一の標的に対して特異性を有する第一のscFvドメイン、及び第二の標的に対して特異性を有する第二のscFvドメインを含む、請求項4の抗体。
【請求項8】
前記抗体が、2セットの前記第一のscFvドメインを含む、請求項7の抗体。
【請求項9】
前記抗体が、2セットの前記第二のscFvドメインを含む、請求項8の抗体。
【請求項10】
軽鎖定常領域を有する請求項9の抗体であって、前記第一のscFvドメイン及び前記第二のscFvドメインの両方が前記軽鎖定常領域に動作可能に取り付けられている、抗体。
【請求項11】
軽鎖定常領域と重鎖定常領域を有する請求項7の抗体であって、前記第一のscFvドメインが前記軽鎖定常領域に動作可能に取り付けられ、及び前記第二のscFvドメインが前記重鎖定常領域に動作可能に取り付けられている、抗体。
【請求項12】
前記抗体がマウス抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体である、請求項4~11の抗体。
【請求項13】
前記抗体がファージライブラリースクリーニングから単離されたヒト抗体である、請求項4~11の記載の抗体。
【請求項14】
コンジュゲート細胞傷害性部位をさらに含む、請求項1~11の抗体。
【請求項15】
前記コンジュゲート細胞傷害性部位がイリノテカン、オーリスタチン類、PBD類、メイタンシン類、アマンチン類、スプライソソーム阻害剤、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~11の抗体。
【請求項16】
前記コンジュゲート細胞傷害性部位が化学療法剤を含む、請求項14の抗体。
【請求項17】
細胞傷害性T細胞又はNK細胞の細胞受容体、又は免疫チェックポイント阻害剤に対する特異性を有する、請求項16の抗体。
【請求項18】
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD-1、TIM-3、LAG-3、TIGIT、CTLA-4、PD-L1、BTLA、VISTA、又はそれらの組み合わせを含む、請求項17の抗体。
【請求項19】
血管新生因子に対する特異性を有する、請求項17の抗体。
【請求項20】
前記血管新生因子がVEGFを含む、請求項19の抗体。
【請求項21】
請求項1~21の抗体の単離核酸を含む、発現ベクター。
【請求項22】
前記ベクターが細胞内で発現可能である、請求項21の発現ベクター。
【請求項23】
請求項1~20の抗体の核酸を含む、宿主細胞。
【請求項24】
請求項22の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項25】
前記宿主細胞が原核細胞又は真核細胞である、請求項24の宿主細胞。
【請求項26】
請求項1~20の抗体及び細胞傷害剤を含有する、医薬組成物。
【請求項27】
前記細胞傷害剤がシスプラチン、ゲムシタビン、イリノテカン、又は抗腫瘍抗体を含む、請求項26の医薬組成物。
【請求項28】
請求項1~20の抗体及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項29】
がんを有する対象の治療方法であって、前記対象に有効量の請求項1~20の抗体を投与する工程を含む、方法。
【請求項30】
前記がんが肝臓がん、胃がん、結腸がん、膵臓がん、肺がん、食道がん又はそれらの組み合わせである、請求項30の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は35 U.S.C. 119(e)に基づき2018年5月16日に出願された米国仮出願第62/672,325号の出願日の利益を主張し、その開示の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本明細書の開示は、典型的には、がん免疫療法の技術分野に関し、より詳細には、がん治療のためのカドヘリン-17(CDH17)特異的抗体及び細胞傷害性細胞に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書に別段の記載がない限り、本セクションに記載された材料は、本願の特許請求の範囲に対する先行技術ではなく、本セクションに含めることにより先行技術であることを認めない。
【0004】
創薬及び臨床画像化における最近の進歩にもかかわらず、がんは、依然としてヒトにおいて最も死亡率の高い疾患の1つである。腫瘍がどのようにして発生し、ストレス下で生存し、遠くの臓器や部位にコロニー化/転移し、薬剤に耐性を有すようになるのかについての理解はまだ限られている。米国がん協会は、2014年に米国で新たに発生したがんの症例数を160万人と推定しており、主要ながんの大部分については治癒治療が承認されていない。
【0005】
消化器(GI)がん(大腸がん、胃がん、膵臓がん、食道がん、胆管がん、肝臓がん)は、世界的に病的状態及び死亡率の主な原因となっている。大腸がん(CRC)だけでも、全てのがん診断の約10%を占め、世界全体のがん死亡原因の第2位である。中国では、肝臓がんと胃がんは世界の悪性腫瘍の中で最も致死的なものの一つであり、診断された発生率の半分以上を占め、グローバルで年間142万人を超える死亡原因となっており、その原因は、ウイルス/細菌の流行(B型肝炎ウイルス[HBV]及びヘリコバクター・ピロリの感染)、化学物質中毒、環境汚染、食品コンタミネーションに起因すると考えられる。有効な治療法はない。従って、これらのアグレッシブながんに対する潜在的な薬剤開発には、新しいバイオマーカーと治療標的が必要である。これらのがんの増殖を除去又は抑制できる実績のある分子標的薬は、重要な臨床的価値を持ち、市場に大きな影響を与えることになる。これらの腫瘍は、早期に診断されれば、手術によって効果的に切除できる。残念なことに、非常に多くの場合、ほとんどのGIがんは無症状であり、クリニックで診断されたときには非常に進行した段階で発見される。効果的な治療を行わなければ、これらの患者は診断後まもなく死亡するか、又は救済療法の後に再発する。
【0006】
CDH17は、肝臓がんと胃がんの両方で過剰発現していることを特徴とする有名ながんバイオマーカーであるが、健康な成人の正常組織では発現していない。抗CDH17モノクローナル抗体は、肝臓や胃の腫瘍細胞に対して増殖抑制効果を示す。CDH17は転移性のがんでは高発現しており、CDH17の発現と機能を遮断することで、肝細胞がん(HCC)の肺転移を顕著に抑制できる。これらの観察結果は、ヒト化抗CDH17抗体が、腫瘍組織及び/又は血清サンプル中のCDH17バイオマーカーを示すがん患者を治療するための抗体治療薬として開発され得ることを示唆している。
【0007】
モノクローナル抗体ががん細胞に結合することを特徴とする抗体治療薬とは対照的に、多重特異性抗体治療薬は、T細胞に結合し、がん細胞に対する細胞傷害性を媒介し得る。二重特異性抗体は、血液悪性腫瘍の治療には有効であるが、固形腫瘍を標的とした治療の成功は限られている。考えられる障壁は、活性化細胞傷害性免疫細胞が適切なバイオマーカーを欠くこと、及び固形腫瘍細胞へのアクセスが少ないことである。
【発明の概要】
【0008】
本明細書の開示は、CDH17を標的とする多重特異性抗体及び細胞傷害性細胞の組成物、並びに本明細書に開示の組成物及び抗体(又はその断片)を用いてがんを治療するための方法を提供する。
【0009】
一態様において、本明細書の開示は、消化器特異的バイオマーカー及びCD3の両方を標的とする多重特異性抗体の組成物に関する。いくつかの実施形態では、抗体は、CDH17xCD3二重特異性抗体である。この抗体は、T細胞を活性化し、CDH17陽性細胞を安全に標的とできる。一実施形態では、CDH17xCD3二重特異性抗体は、CDH17陽性がん患者を治療するために臨床的に使用できる。
【0010】
一実施形態では、本明細書の開示は、配列番号15~33から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%(又はその間の任意の他の数)の相同性を有する重鎖又は軽鎖アミノ酸配列を含む、CDH17に対する特異性を有する抗体を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。一実施形態では、モノクローナル抗体は、マウス抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体であってもよい。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、ファージライブラリースクリーニングから単離されたヒト抗体であってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗体は、軽鎖の可変領域(VL)、重鎖の可変領域(VH)、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。一実施形態では、VLは、配列番号2、4、6、8、10及び12から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%(又はその間の任意の他の数)の相同性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号1、3、5、7、9及び11から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%(又はその間の任意の他の数)の相同性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗体は、コンジュゲート細胞傷害性部位を含んでもよい。いくつかの実施形態では、コンジュゲート細胞傷害性部位は、イリノテカン、オーリスタチン類、PBD類、メイタンシン類、アマンチン類、スプライソソーム阻害剤、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、コンジュゲート細胞傷害性部位は、化学療法剤を含んでもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗体は二重特異性抗体である。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗体は、細胞傷害性T細胞又はNK細胞由来の細胞受容体に対する特異性を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗体は、CDH17及びCD3の両方に対する特異性を有する二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、細胞受容体は、KIR2D52、KIR2D53、KIR2D54、KIR2D55、KIR3D51、CD16a、CD27、CD94、CD96、CD100、CD160、CD244、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80、NKG2D、DNAM1、CRTAM、PSGL1、CEACAM1、NTB-A、SLAMF7、OX40、CD137、ICOS、CD28、TIM1、及びTIM3、又はそれらの誘導体又は組み合わせを含んでもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗体は、CDH17に対する特異性を有する第一の一本鎖可変フラグメント(scFv)、及びCD3又はTROP2に対する特異性を有する第二の一本鎖可変フラグメント(scFv)を含んでもよい。一実施形態では、第一のscFvは、第一のVH(可変重鎖)及び第一のVL(可変軽鎖)を含んでもよい。一実施形態では、第二のscFvは、第二のVH及び第二のVLを含んでもよい。いくつかの実施形態では、第一のVHは、配列番号1、3、5、7から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%(又はその間の任意の他の数)の相同性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第一のVLは、配列番号2、4、6、8から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%(又はその間の任意の他の数)の相同性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、第二のVHは、アミノ酸配列番号9、11、13から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%(又はその間の任意の他の数)の相同性を有するアミノ酸配列の対応する部分を含んでもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、第二のVLは、アミノ酸配列番号10、12、14と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%(又はその間の任意の他の数)の相同性を有するアミノ酸配列の対応する部分を含んでもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗体は、免疫チェックポイント阻害剤に対する特異性を有してもよい。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、CTL-A4、TIM3、LAG3、BTLA、CD96、TIGIT、CD226、又はVISTA、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗体は、血管新生因子に対する特異性を有していてもよい。いくつかの実施形態では、血管新生因子は、VEGFを含んでもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗体は、CDH17ドメイン6のRGD部位のインテグリンへの結合に拮抗するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、インテグリンは、アルファ2ベータ1を含んでもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、抗体は、CDH17エクトドメイン5、ドメイン6又はドメイン7に結合して、CDH17放出に拮抗するように構成されていてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体のためのIgG重鎖に関する。一実施形態では、抗体は、配列番号15、16、17、20、21、22、24、25、26、28、29、30、31、32、33と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%(又はその間の任意の他の数字)の相同性を有する鎖を含むIgGを有していてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、抗体の軽鎖に関する。一実施形態では、抗体は、配列番号18、19、23、27と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%(又はその間の任意の他の番号)の相同性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖を有していてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態は、抗体の可変ドメインに関する。一実施形態では、可変ドメインは、配列番号1~14の少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%(又はその間の任意の他の数)の相同性を有するアミノ酸を有していてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、CDH17に対する特異性を有するscFv又はFabに関する。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号34、35、36、37、38、39、40から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%(又はその間の任意の他の数)の相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、scFv又はFabは、細胞傷害性T細胞又はNK細胞由来の細胞受容体に対する特異性を含んでもよい。いくつかの実施形態では、scFv又はFabは、免疫チェックポイント阻害剤に対する特異性を含んでもよい。いくつかの実施形態では、scFv又はFabは、血管新生因子に対する特異性を含んでもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、CDH17に対する特異性を有するT又はNK細胞に関する。一実施形態では、T又はNK細胞は、キメラ抗原受容体を含んでもよい。一実施形態では、キメラ抗原受容体は、配列番号41、42、43、44、45から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%(又はその間の任意の他の数字)の相同性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。
【0030】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載の抗体、IgG重鎖、軽鎖、可変鎖、又はscFvもしくはFabをコードする単離された核酸に関する。
【0031】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の単離された核酸を含む発現ベクターに関する。いくつかの実施形態では、ベクターは細胞内で発現可能である。
【0032】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸を含む宿主細胞に関する。いくつかの実施形態は、本明細書に記載されている発現ベクターを含む宿主細胞に関する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞である。
【0033】
一態様において、本願は、がんを治療するための医薬組成物を提供する。一実施形態では、薬学的組成物は、抗体及び細胞傷害性剤を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性剤は、シスプラチン、ゲムシタビン、イリノテカン、又は抗腫瘍抗体を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の抗体及び薬学的に許容される担体を含んでもよい。さらなる局面では、本願は、がんを有する対象を治療するための方法を提供する。一実施形態では、方法は、対象に有効量の抗体又はT細胞又はNK細胞を投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、有効量は、がんを治療し得る、症状を緩和し得る、がんの治療を助けるためにバイオマーカーを変化させ得る、又はそれらの組み合わせの量であってもよい。対象は、ヒト又は動物であってもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、がんは、肝臓がん、胃がん、結腸がん、膵臓がん、肺がん、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0037】
本明細書の開示の目的及び利点は、添付の図面に関連するその実施形態の以下の詳細な説明から明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本明細書の開示による実施形態は、図を参照して説明することができ、ここで、同様の参照番号は、同様の要素を示す。
図1図1は、scFv4-Ig又はtB(テトラB)、IgG-scFv又はfL(全長)、及びtaFv-Fc又はFc(バイト-Fc)として指定されたCDH17及びCD3に対する例示的な二重特異性抗体の構造的バリアントを示す。
図2図2は、配列番号1~8のヒト化CDH17抗体、配列番号9及び10のTROP2抗体、及び配列番号11及び12のCD3抗体の例示的な可変ドメインの配列アラインメントを示す。
図3図3は、実施例におけるCDH17xCD3二重特異性抗体ARB201 (h3G1Fc)を用いたDLD-1(結腸がん)及びAGS(胃がん)の腫瘍細胞株におけるCDH17の発現、及びフローサイトメトリー解析を示す。
図4図4は、DLD-1スフェロイドに対するARB201抗体誘導リターゲティングT細胞の細胞傷害性のライブセル画像を示す。DLD-1細胞をCellBriteTM Greenで染色し、スフェロイドとして増殖させた。細胞は、PBMCs及び/又はARB201(Ab)の存在下又は非存在下で48時間インキュベートした。リターゲティングT細胞の細胞傷害性を、死標的細胞の赤色蛍光染色;明視野、緑色:GFPフィルターセット;赤:PIフィルターセット;によってモニターし、及びライブセル画像を取得し、自動蛍光イメージャーで分析した。
図5図5は、2D及び3D DLD-1モデルにおけるARB201の濃度応答を示す。DLD-1細胞は、ARB201の異なる濃度の存在下で新鮮なPBMCとインキュベートした。DLD-1細胞死は48時間で評価した。リターゲティングT細胞の細胞傷害性をデッドレッド色素でモニターした。IC50値をシグモイド4点、4パラメータログ-ロジスティック用量応答モデルへの非線形回帰フィットデータを使用して計算した。
図6図6は、2D及び3D AGSモデルにおけるARB201の濃度応答を示す。AGS細胞を、ARB201の異なる濃度の存在下で新鮮なPBMCとともにインキュベートした。AGS細胞死は16時間で評価した。リターゲティングT細胞の細胞傷害性は、デッドレッド色素でモニターした。IC50値は、シグモイド4点、4パラメータログ-ロジスティック用量応答モデルへの非線形回帰フィットデータを使用して計算した。
図7図7は、ARB201リターゲティングT細胞傷害性の図を示す。A)ARB201は、T細胞(赤)と腫瘍細胞(緑)の両方に結合し、T細胞と腫瘍標的細胞の接触をサポートする。B)明視野。及びC)CD3/TCRへのARB201の結合は、それぞれ、ポア生成及びアポトーシス誘発をするパーフォリン及びグランザイムの放出を伴う細胞傷害性T細胞応答を刺激する。
図8図8は、ELISAにより決定された例示的CDH17xCD3二重特異性抗体h5G1fL及びh5G4fLのCDH17への結合を示す。
図9図9は、例示的CDH17xCD3二重特異性抗体h5G1fL及びh5G4fLのJurkat T細胞上のCD3に対する結合を示す。
図10図10は、ELISAにより決定される例示的CDH17xCD3二重特異性抗体h10G1fL及びh10G4fLのCDH17に対する結合を示す。
図11図11は、例示的CDh17xCD3二重特異性抗体、h10G1fL及びh10G4fLのJurkat T細胞上のCD3に対する結合を示す。
図12図12は、例示的CDH17xCD3二重特異性抗体h10G1tB及びh10G4tBのCD3に対する結合を示す。
図13図13は、例示的CDH17xCD3二重特異性抗体h10G1tB及びh10G4tBのJurkat T細胞上のCD3に対する結合を示す。
図14図14は、例示的CDH17xCD3二重特異性抗体h10G1fL、h10G4fL、h10G4tB、及びh3G4tBの腫瘍細胞の非存在下でT細胞を活性化しないという安全性の特徴を示す。
図15図15は、PBMC及びAsPC1腫瘍細胞を用いた例示的CDH17xCD3二重特異性抗体h10G4fLによる腫瘍細胞依存性T細胞活性化を示す。
図16図16は、CDH17陽性膵臓がん細胞株及び結腸がん細胞株へのT細胞細胞傷害性を濃度依存的にリダイレクトする例示的CDH17xCD3二重特異性抗体h10G4fLを示す。
図17図17は、例示的CDH17xCD3二重特異性抗体h10G4fLの静脈内注射後の血清濃度の薬物動態解析を示す。A)3mg/kgのマウス(A)、及びB)3mg/kg及び10mg/kgの非ヒト霊長類(NHP)モデル。
図18図18は、(A)ネクロプシーサンプル及び(B)インビボモデルからのNHP結腸及び膵臓における例示的CDH17xCD3二重特異性抗体h10G4fLの病理組織学的解析を示す。
図19図19は、例示的CDH17xCD3二重特異性抗体ARB202が、AsPC-1細胞由来膵臓がんのマウスモデルにおいて腫瘍成長を阻害できることを示している。A:腫瘍内投与による示された時点での、RPMI(ビヒクル)、PBMC由来の活性化T細胞(T細胞)、T細胞プラス0.05mg/kg ARB202、又はT細胞プラス0.5mg/kg ARB202で処置したマウスにおける4週間の時間にわたる腫瘍体積の決定。及びB:ARB202を用いた処置のみが、血漿中のヒトIL-2のレベルの増加をもたらした。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本願は、カドヘリン-17(CDH17)及びCD3の両方に特異的な抗体、腫瘍細胞を標的とする抗体、及びそのような抗体を用いた抗腫瘍免疫療法を提供する。そのような免疫療法には、細胞傷害性の異なるモードを有する抗体、又はT細胞又はNK細胞の細胞傷害性を刺激するキメラ抗原受容体を含む。
【0040】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本明細書の開示が属する当技術分野の通常の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書の開示の実施又は試験において、本明細書に記載されたものと類似又は同等の任意の方法及び材料を使用できるが、方法及び材料は記載される。本明細書の開示の目的のために、以下の用語を定義する。
【0041】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的対象の1つ又は複数(即ち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は1つ以上の要素を意味する。
【0042】
「約」は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、サイズ、大きさ、重量又は長さに対して、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%程度変化する量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、サイズ、大きさ、重量又は長さを意味する。
【0043】
「コード配列」は、遺伝子のポリペプチド産物のコードに寄与する任意の核酸配列を意味する。対照的に、「非コーディング配列」という用語は、遺伝子のポリペプチド産物のコードに寄与しない任意の核酸配列を意味する。
【0044】
本明細書を通して、文脈が別段の要求をしない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」という語は、記載された工程又は要素又は工程又は要素のグループを含むことを意味するが、他の工程又は要素又は工程又は要素のグループを排除することを意味しないと理解され得る。
【0045】
「からなる(consisting of)」は、「からなる」というフレーズに続くものを含み、これに限定されることを意味する。従って、「からなる」というフレーズは、記載された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在しない可能性があることを示す。
【0046】
「本質的にからなる」とは、フレーズの後にリストされた任意の要素を含むことを意味し、リストされた要素の開示で特定されたアクティビティ又はアクションを妨害又は寄与しない他の要素に限定される。従って、「本質的にからなる」というフレーズは、リストされた要素が必要又は必須であることを示すが、これらの他の要素はオプションであり、リストされた要素のアクティビティ又はアクションに影響を与えるかどうかに応じて存在する場合と存在しない場合がある。
【0047】
「相補的」及び「相補性」という用語は、塩基対規則によって関連するポリヌクレオチド(即ち、ヌクレオチドの配列)を指す。例えば、配列「A-G-T」は、配列「T-C-A」に相補的である。相補性は、「部分的」であってもよく、このとき、塩基対規則に従って核酸の塩基の一部のみが一致する。あるいは、核酸間に「完全な」相補性又は「全体的な」相補性が存在してもよい。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率や強度に大きな影響を与える。
【0048】
「対応する(corresponds to)」又は「対応する(corresponding to)」は、(a)参照ポリヌクレオチド配列の全部又は一部と実質的に同一又は相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、又はペプチド又は蛋白質のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、又は(b)参照ペプチド又は蛋白質のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するペプチド又はポリペプチドを意味する。
【0049】
本明細書で使用される「機能」及び「機能的」などの用語は、生物学的、結合、又は治療機能を指す。
【0050】
「遺伝子」は、染色体上の特定の遺伝子座を占め、且つ転写及び/又は翻訳制御配列及び/又はコード領域及び/又は非翻訳配列(イントロン、5'及び3'非翻訳配列)からなる遺伝の単位を意味する。
【0051】
「相同性」とは、同一又は保存的置換を構成するアミノ酸の割合数を意味する。相同性は、GAP (Deveraux et al., 1984, Nucleic Acids Research 12, 387-395)のような配列比較プログラムを用いて決定でき、参照により本明細書に組み込まれる。このようにして、本明細書に引用されたものと類似又は実質的に異なる長さの配列は、アラインメントへのギャップの挿入によって比較され得、そのようなギャップは、例えば、GAPによって使用される比較アルゴリズムによって決定される。
【0052】
用語「宿主細胞」は、本明細書の開示の任意の組換えベクター又は単離されたポリヌクレオチドのレシピエントであり得るか、又はそのレシピエントであったことがある個々の細胞又は細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一の宿主細胞の子孫を含み、その子孫は、自然、偶発的、又は意図的な変異及び/又は変化のために、必ずしも元の親細胞と完全に同一(形態的に又は総DNA相補体において)であるとは限らない。宿主細胞は、本明細書の開示の組換えベクター又はポリヌクレオチドをインビボ又はインビトロでトランスフェクト又は感染させた細胞を含む。本明細書の開示の組換えベクターを含む宿主細胞は、組換え宿主細胞である。
【0053】
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から同定され、分離及び/又は回収された抗体である。その自然環境のコンタミネーション成分は、抗体の診断的又は治療的使用を妨げ得る物質であり、酵素、ホルモン、及び他の蛋白質性又は非蛋白質性の溶質を含んでもよい。
【0054】
「単離された」核酸分子は、抗体核酸の天然源において通常関連する少なくとも1つのコンタミネーション核酸分子から同定及び分離された核酸分子である。単離された核酸分子は、自然界で見出されている形態又は設定以外のものである。従って、単離された核酸分子は、天然細胞内に存在する核酸分子とは区別される。
【0055】
しかしながら、単離された核酸分子には、典型的には、抗体を発現する細胞に含まれる核酸分子が含まれ、ここで、例えば、核酸分子が天然細胞のそれとは異なる染色体の位置にある場合がある。
【0056】
ここで、「制御配列」という表現は、特定の宿主生物における動作可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を意味する。原核生物に適した制御配列としては、例えば、プロモーター、任意に動作可能な配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを利用することが知られている。
【0057】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれたときに「動作可能に連結」される。例えば、プレシークエンス又は分泌リーダーのためのDNAは、ポリペプチドの分泌に参加するプレ蛋白質として発現される場合、ポリペプチドのためのDNAと動作可能に連結される。プロモーター又はエンハンサーが、配列の転写に影響を与える場合、コード配列に動作可能に連結しており、又はリボソーム結合部位が翻訳を促進にするように配置されている場合、コーディング配列に動作可能に連結している。典型的には、「動作可能に連結」しているとは、連結されているDNA配列が連続していることを意味し、分泌リーダーの場合には、連続しており、リーディングフェイズにあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは必ずしも連続している必要はない。リンクは、便利な制限部位でのライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが従来の慣例に従って使用される。
【0058】
本明細書で使用される呼称「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、mRNA、RNA、cRNA、rRNA、cDNA又はDNAを指す。この用語は、典型的には、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチド、又はいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾された形態の少なくとも10塩基の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。この用語は、DNA及びRNAの一本鎖形態及び二本鎖形態を含む。
【0059】
「ポリヌクレオチドバリアント」及び「バリアント」などの用語は、参照ポリヌクレオチド配列と実質的な配列同一性を示すポリヌクレオチド、又は以下に定義されるストリンジェントな条件下で参照配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。これらの用語はまた、少なくとも1つのヌクレオチドの付加、欠失又は置換によって参照ポリヌクレオチドと区別されるポリヌクレオチドを包含する。従って、用語「ポリヌクレオチドバリアント」及び「バリアント」には、1つ以上のヌクレオチドが付加又は欠失された、又は異なるヌクレオチドで置換されたポリヌクレオチドを含む。この点において、変異、付加、欠失及び置換を含む特定の改変が参照ポリヌクレオチドに対して行われ得ることは、当技術分野でよく理解されており、それにより、改変されたポリヌクレオチドは参照ポリヌクレオチドの生物学的機能又は活性を保持するか、又は参照ポリヌクレオチドに関連して活性を増大させる(即ち、最適化される)ことができる。ポリヌクレオチドバリアントは、例えば、本明細書に記載された参照ポリヌクレオチド配列に対して少なくとも50%(及び少なくとも51%~少なくとも99%及びその間の全ての整数%、例えば、90%、95%、又は98%)の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む。また、用語「ポリヌクレオチドバリアント」及び「バリアント」はこれらの酵素をコードする天然に存在するアレリックバリアント及びオルソログを含む。
【0060】
「ポリペプチド」、「ポリペプチドフラグメント」、「ペプチド」及び「蛋白質」は、アミノ酸残基のポリマー、並びにそのバリアント及び合成アナログを指すために、本明細書において言い換え可能なものとして使用される。従って、これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の化学的アナログのような合成非天然存在アミノ酸であるアミノ酸ポリマー、及び天然存在アミノ酸ポリマーに適用される。特定の局面において、ポリペプチドは、典型的には様々な化学反応を触媒する(即ち、速度を増加させる)酵素ポリペプチド、又は「酵素」を含んでもよい。
【0061】
ポリペプチド「バリアント」は、少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失、又は置換によって参照ポリペプチド配列から区別されるポリペプチドを指す。特定の実施形態では、ポリペプチドのバリアントは、保存的であっても非保存的であってもよい1つ以上の置換によって参照ポリペプチドから区別される。特定の実施形態では、ポリペプチドバリアントは、保存的な置換を含み、この点に関して、いくつかのアミノ酸は、ポリペプチドの活性の性質を変えることなく、広く類似した性質を有する他のアミノ酸に変更され得ることは、当技術分野でよく理解される。また、ポリペプチドバリアントは1つ以上のアミノ酸が付加もしくは欠失された、又は異なるアミノ酸残基で置換されたポリペプチドを包含する。
【0062】
用語「参照配列」は、一般に、別の配列と比較される核酸コード配列又はアミノ酸配列を指す。本明細書に記載された全てのポリペプチド及びポリヌクレオチド配列は、参照配列として含まれる。
【0063】
本明細書で使用される「配列同一性」又は例えば、「配列の50%同一性」を含む呼称は、比較窓にわたって配列がヌクレオチド-ヌクレオチドベース又はアミノ酸-アミノ酸ベースで同一である程度を指す。従って、「配列同一性のパーセンテージ」は、2つの最適にアラインメントされた配列を比較窓にわたって比較し、一致する位置の数を得るために両方の配列で同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)又は同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、及びMet)が発生する位置の数を決定し、一致する位置の数を比較窓の位置の合計数で除算し、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算されてもよい。含まれるのは、本明細書に記載された参照配列のいずれかに対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド及びポリペプチドであり(例えば、配列表参照)、典型的には、ポリペプチドバリアントが参照ポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を維持している。
【0064】
「統計的に有意」とは、結果が偶然に発生した可能性が低いことを意味する。統計的有意性は、当技術分野で知られている任意の方法によって決定できる。有意性の一般的に使用される尺度には、帰無仮説が真であった場合に観察された事象が発生する頻度又は確率であるp値を含む。得られたp値が有意水準よりも小さければ、帰無仮説は棄却される。単純なケースでは、有意水準は0.05以下のp値で定義される。
【0065】
「実質的に」又は「本質的に」は、ほぼ完全に又は完全に、例えば、特定の量の95%、96%、97%、98%、99%又はそれら以上を意味する。
【0066】
「治療(Treating)」又は「治療(treatment)」又は「緩和」は、治療的処置と予防的又は防止的処置の両方を意味する。ここで、目的は、標的とされた病理学的状態又は障害を予防又は遅らせる(減少させる)ことである。例えば、がんの場合、がん細胞の数の減少又はがん細胞の不存在、腫瘍の大きさの減少、腫瘍転移の阻害(即ち、ある程度まで遅くすること、好ましくは停止すること)、腫瘍の成長のある程度の阻害、特定のがんに関連する症状のうちの1つ以上の症状のある程度の寛解及び/又は緩和の長さの増加、病的状態及び死亡率の減少、及びQOL問題の改善。疾患の徴候又は症状の減少もまた、患者によって感じられることがある。治療は、がんの全ての徴候の消失として定義される完全奏効、又は部分奏効を達成できる。ここで、腫瘍の大きさは、好ましくは50%超、より好ましくは75%超減少する。また、患者が安定した疾患を経験する場合、治療されたとみなされる。一実施形態では、患者は、1年後、好ましくは15ヶ月後にもがんの無増悪状態にある。治療の成功及び疾患の改善を評価するためのこれらのパラメータは、当技術分野の適切な技術を有する医師に周知のルーチン手順によって容易に測定可能である。
【0067】
用語「調節する」及び「変化する」ことは、典型的には、対照と比較して統計的に有意な量又は生理学的に有意な量又は程度で、「増加する」及び「増強する」、並びに「減少する」又は「低減する」ことが含まれる。特定の実施形態では、血液代替物の移植に関連する免疫学的拒絶反応は、未改変又は改変幹細胞と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又は少なくとも1000%減少する。
【0068】
「増加した」又は「増強した」量は、典型的には「統計的に有意」な量であり、本明細書に記載された量又はレベルの1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、又は50倍又はそれ以上(例えば、100倍、500倍、1000倍)(1超の間の全ての整数及び小数点を含み、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など)の増加を含んでもよい。
【0069】
「減少した」又は「低減した」又は「より少ない」量は、典型的には「統計的に有意」な量であり、本明細書に記載された量又はレベルの約1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、又は50倍又はそれ以上(例えば、100倍、500倍、1000倍)(1超の間の全ての整数及び小数点を含み、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8など)の減少を含んでもよい。
【0070】
「から得られる」は、例えば、ポリヌクレオチド又はポリペプチドのようなサンプルが、所望の生物又は所望の生物内の特定の組織のような特定の供給源から単離される又は由来することを意味する。また、「から得られる」は、ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列が、所望の生物又は所望の生物内の特定の組織などの特定の供給源から単離される又は由来する状況を指すこともできる。例えば、本明細書に記載された参照ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、様々な原核生物又は真核生物から、又は特定の真核生物内の特定の組織又は細胞から単離されてもよい。「治療上有効な量」は、対象の疾患又は障害を「治療する」のに有効な抗体又は薬剤の量を指す。がんの場合、治療上有効な量の薬剤は、がん細胞の数を減少させてもよく、腫瘍の大きさを減少させてもよく、末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害してもよく(即ち、ある程度遅くし、好ましくは停止させる)、腫瘍転移を阻害してもよく(即ち、ある程度まで遅く、好ましくは停止する)、腫瘍増殖をある程度抑制してもよく、及び/又はがんに関連する症状のうちの1つ以上をある程度緩和してもよい。上記の「治療」の定義を参照。
【0071】
「慢性」投与とは、最初の治療効果(活性)を長期間維持するために、急性モードとは対照的に、継続的なモードで本剤を投与することを指す。「断続的」投与とは、中断することなく連続的に行われるのではなく、むしろ周期的に行われる治療を意味する。
【0072】
「ベクター」は、シャトル及び発現ベクターを含む。典型的には、プラスミドコンストラクトは、細菌におけるプラスミドの複製及び選択のための複製起源(例えば、ColE1複製起源)及び選択可能マーカー(例えば、アンピシリン又はテトラサイクリン耐性)をそれぞれ含む。「発現ベクター」とは、本明細書の開示の抗体フラグメントを含む抗体を細菌又は真核生物細胞で発現させるために必要なコントロール配列又は制御要素を含むベクターを指す。好適なベクターを後述する。
【0073】
用語「抗体」は、最も広い意味で使用されており、所望の生物学的活性又は機能を示す限り、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントを具体的に包含する。
【0074】
「抗体フラグメント」は、全長抗体の一部、一般的には抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv断片;ダイアボディ;リニア抗体;一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多特異性抗体を含む。
【0075】
「Fv」は、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。このフラグメントは、1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインが非共有結合で緊密に結合したダイマーからなる。これら2つのドメインのフォールディングからは、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗体に抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(H鎖とL鎖からそれぞれ3つのループ)が生まれる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つの相補性決定領域(CDR)のみを含むFvの半分)であっても、全結合部位よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識及び結合する能力を有する。
【0076】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に一様な抗体の集団から得られる抗体を指し、即ち、集団を構成する個々の抗体は、わずかな量で存在する可能性のある自然発生的な変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原性部位に対する特異性が高い。さらに、典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体製剤とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。修飾語「モノクローナル」は、実質的に一様な抗体の集団から得られる抗体の性質を示し、任意の特定の方法による抗体の生産を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本明細書の開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256:495 (1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてもよく、又は組換えDNA法によって作製されてもよい(例えば、U.S. Pat. No. 4,816,567参照)。また、「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson et al., Nature 352:624-628 (1991)及びMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
【0077】
用語「可変」は、可変ドメイン(Vドメイン)の特定のセグメントが抗体間で広範囲に配列が異なるという事実を指す。Vドメインは抗原結合を媒介し、特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定義する。しかし、可変ドメインの10~アミノ酸スパンに均等に分布しているわけではない。その代わりに、V領域は、それぞれ9~12アミノ酸の長さの「超可変領域」と呼ばれる極端な変動性を有す短い領域で区切られている、15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FRs)と呼ばれる比較的不変なストレッチからなる。ネイティブな重鎖と軽鎖の可変ドメインは、それぞれ4つのフレームワーク領域(FRs)を含み、大部分がβシート構造を採用しており、3つの超可変領域によって接続されており、これらは接続するループを形成し、場合によってはβシート構造の一部を形成している。各鎖の超可変領域は、FRsによって近接して保持され、他の鎖の超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)参照)。定常ドメインは、抗体を抗原に直接結合させることには関与しないが、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)への抗体の参加のような様々なエフェクター機能を発揮する。
【0078】
本明細書で使用される用語「超可変領域」は、抗原結合に重要な抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に、CDRのアミノ酸残基(例えば、VLでは約残基24~34(L1)、50~56(L2)及び89~97(L3)付近、及びVHでは約残基31~35B(H1)、50~65(H2)及び95~102(H3)付近(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))及び/又は「超可変ループ」からのそれらの残基(例えば、VLでは残基26~32(L1)、50~52(L2)、及び91~96(L3)、及びVHでは残基26~32(H1)、52A~55(H2)、及び96~101(H3)(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)))を含む。
【0079】
「キメラ」抗体(免疫グロブリン)は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同であり、一方、鎖の残りの部分は、所望の生物学的活性を示す限り、別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同であり、また、そのような抗体の断片も同様である(U.S. Pat. No. 4,816,567、及びMorrison et al. Proc. Natl Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。本明細書で使用されるヒト化抗体は、キメラ抗体のサブセットである。
【0080】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むキメラ抗体である。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域残基が、所望の特異性、親和性、及びキャパシティを有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)由来の超可変領域残基で置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント又はアクセプター抗体)である。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト細胞又はヒト抗体遺伝子を発現するトランスジェニック動物(典型的にはマウス)に由来する抗体である。
【0081】
一態様において、本明細書で提供される抗体又はその抗原結合断片は、CDH17に対する特異性を有する抗体又はその抗原結合断片である。腫瘍関連抗原は、その腫瘍増殖促進活性を阻害することにより、及び腫瘍細胞への細胞傷害性活性を誘導することにより、抗腫瘍免疫療法の標的として機能し得る。CDH17は、細胞接着分子のカドヘリンスーパーファミリーに属するタイプ1のインテグラル膜貫通糖蛋白質である。CDH17は、エクトドメインに7つのカドヘリン又はカドヘリン様リピートを持つ非古典的なカドヘリンである。CDH17は腫瘍関連抗原であり、腫瘍の増殖に関与している。CDH17の発現は典型的には、結腸、小腸、膵管の腸上皮細胞に限定されているが、結腸腺がん、胃腺がん、肝細胞がん、胆管がん、食道腺がん、膵臓腺がんなどのいくつかの腫瘍で過剰発現している。腫瘍増殖促進活性は、CDH17ドメイン6のRGDモチーフとα2β1などのインテグリンとの結合に関与している可能性がある。血中及びエクソソーム中のCDH17レベルの異常な増加は、がんの予後マーカーとして機能し得る。
【0082】
プロテオミクス及びオンコゲノミクスのアプローチを使用し、広範な研究を通じて、治療標的である肝臓-腸カドヘリン又はCDH17が本明細書に開示されている。この標的は、胃がん(GC)及び肝細胞がん(HCC)の大部分、並びに膵臓がん(panCA)、結腸がん(CRC)、卵巣がん及び肺がんにおいて過剰発現している。CDH17遺伝子のRNAiサイレンシングは、確立されたHCCマウスモデル(異種移植及び同種移植の両方)において、腫瘍の増殖と転移の広がりを抑制することができた。抗腫瘍メカニズムは、腫瘍抑制経路の再活性化に伴うWntシグナルの不活性化に基づいている。
【0083】
本願に記載の抗CDH17抗体は、肝臓がん及び胃がんの複数のインビトロ及びインビボ系において抗腫瘍効果を示した。そのような抗体は、インビトロ及びインビボでの精製、検出、診断及び治療用途を有する。そのような抗体は、腫瘍細胞に選択的に結合することによって抗腫瘍活性を支持し、補体固定、抗体依存性細胞傷害性、結合薬剤によって媒介される細胞傷害性、リンパ球によって媒介される細胞傷害性、及びNKによって媒介される細胞傷害性を刺激するように開発されてもよい。本明細書では、以下に示す対応する配列番号のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む抗体及びヒト化抗体、抗原結合断片又はキメラ抗体蛋白質が提供される。
【0084】
CDH17抗体配列は、種々のタイプの抗体、例えば、マウス抗体(5F6、9B5、9C6、10C12、8B5)及びそれらのヒト化バリアント(図1及び図2)、即ち種々の人工抗体断片(Fab、scFv、ダイアボディ等)を含む二重特異性抗体を含んでもよい。例示的な形態としては、「tB」、「fL」、及び「Fc」を含む(図1)。
【0085】
いくつかの実施形態では、ヒト化CDH17xCD3二重特異性抗体、h5G1fL、h5G4fL、h10G1fL、h10G4fL、h10G1tB、及びh5G4tBは、図8、10、及び12に示すように、ELISAアッセイにおいてCDH17に結合する能力を示す。CD3に結合する能力は、図9図11、及び図13のフローサイトフルオロメトリーによって示された。
【0086】
別の態様において、特定のCDH17xCD3二重特異性抗体、h10G1fL、h10G4fL、h10G4tB、及びh3G4tBは、腫瘍細胞の非存在下でPBMCとインキュベートしたときに細胞傷害性T細胞応答を誘発しないという安全性の特徴を示す(図14)。
【0087】
一実施形態では、CDH17のC末端エクトドメイン、例えば、D5、D6又はD7のいずれかに結合する抗体が同定されてもよい。この結合は、CDH17が切断及び細断されることを防ぎ、新規な機構のユニークな治療活性を可能にしてもよい。そのような抗CDH17抗体は、CDH17の放出を防止し、一方で腫瘍細胞のT細胞又はNKの殺傷を支持する二重特異性又は三重特異性抗体の構築に利用され得る。このような抗体の第二特異性又は第三特異性は、CD3又はNK細胞受容体であってもよい。
【実施例0088】
本明細書の開示を以下の実施例を参照してさらに説明する。この実施例は、例示のみを目的として提供され、別段の定めがない限り、限定することを意図していない。従って、本明細書の開示は、以下の実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになるあらゆる変形を包含するように解釈されるべきである。
【0089】
実施例1. CDH17xCD3二重特異性抗体の構築
CDH17xCD3二重特異性抗体を生成し、それらの構造形態に基づいてグループ化した(図1及び表1に記載のscFv4-Ig又はtB(テトラB)、IgG-scFv又はfL(全長)、及びtaFv-Fc又はFc(バイト-Fc))。3種類のデザインすべてが、CD3への結合特異性を有すヒト化UCHT-1のscFvであるU1を含んでいる。fL(全長)はヒト化抗CDH17抗体のグループであり、一方、tB(テトラB)及びFc(バイト-Fc)は、抗CDH17 scFv及びヒト化UCHT-1のscFvをそれぞれ含む。図2に示すように、CDH17マウス抗体m5F6、m9B5、m9C6、及びm10C12、並びにTROP2マウス抗体m8B5の可変ドメインを、相同なヒト生殖細胞系列配列及びヒト化VH及びVL配列、h5F6、h9B5、h9C6、h10C12、及びh8B5とアラインメントした。ヒト化配列は、任意の位置「X」にマウス又はヒト生殖細胞列配残基を有していてもよい変異を含む。変異は、1つ以上の位置に置換を有していてもよい。抗CD3抗体UCHT-1の可変ドメイン、即ち、配列番号11及び12は、1992年に最初にヒト化された(Beverley 1981 and Shalaby 1992)。「X」で指定された部位のアミノ酸は、CD3エプシロンと水素結合を形成する(Arnett 2004)。これらの残基の特定の置換は、CD3に対する親和性の低下をもたらす可能性がある。
【0090】
実施例2. CDH17xCD3二重特異性抗体のh3/Fcグループの特性評価
表1に記載された全てのCDH17xCD3二重特異性抗体のうち、h10G4fLはARB202と命名され、ARB202の一重特異性バージョンはARB102と命名された。ARB201はh3G1Fcと同じものであり、ヒト化可変ドメインh3又はLic3の配列がWO2017/120557A1に開示されているため、表1には記載されていない。しかしながら、ARB201は、フローサイトメトリー解析(図3)において、DLD-1(結腸がん)及びAGS(胃がん)の腫瘍細胞株においてCDH17が発現していることを示すために使用された。
【0091】
ARB201が腫瘍細胞に対するリターゲティングT細胞細胞傷害性を媒介するのに十分であるかどうかを決定するために、標準的2次元(2D)腫瘍細胞及び3次元(3D)腫瘍細胞スフェロイドモデルを用いた。CDH17を発現する大腸がん細胞(DLD-1)をCellBriteTM Green(Biotium、カタログ番号30021)で標識し、RPMIと%FCSを添加したマイクロタイターウエルにプレートした。末梢血単核細胞(PBMC)を健康なドナーから単離し、Ficoll-PaqueTM Plus (GE Healthcare)を用いた密度勾配遠心分離により分離し、エフェクター細胞として使用した。3Dモデルにおいて、腫瘍細胞は、pHEMAヒドロゲルでプレコートされたSQ 384ウェルElplasiaTMプレート中のRPMI、5% FBS、2mM L-アラニル-L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン培地中で播種した後、スフェロイドを形成した。本アッセイでは、スフェロイドが形成されるまで、細胞を16~48時間、ARB201の存在下又は非存在下でインキュベートした。死細胞は血漿膜が損なわれているため、赤色蛍光色素キット(EthD-III、Biotium、カタログ番号30002)で染色した。1時間後、蛍光イメージャーを用いて、明視野、GFP及びTexas Red(R)フィルターセットの下で細胞分析を行った。ARB201のIC50は、図5に示すように、2Dモデルでは0.002μg/ml、3Dモデルでは0.008μg/mlであった。このデータは、3Dモデル(47pM)では2Dモデルと比較して4倍の減少しかなく、高い有効性を示している。3Dモデルは、固形腫瘍の細胞傷害性について2Dモデルよりも予測性が高い可能性がある。この結果は、ARB201が腫瘍細胞へのリターゲティングT細胞傷害性を媒介することが可能であることを示す。
【0092】
DLD-1細胞モデルに加えて、胃がん細胞(AGS)をCellBriteTM Greenで標識し、アッセイを16時間後に測定したことを除き、DLD-1細胞について説明したように、2D及び3D腫瘍モデルでアッセイを行った。図6に示すように、このアッセイにおけるARB201のIC50は、2Dモデル及び3Dモデルの両方において0.001μg/mlであった。このデータは、2Dモデルと比較して3Dモデルの有効性が低下することなく高い有効性を示す。さらに、ライブイメージング研究では、図7に示すように、ARB201の添加は、個々のT細胞及び腫瘍細胞を効率的に一緒に引き付けるように見られた。この知見は、ARB201が、それぞれ、ポア生成及びアポトーシス誘発をするパーフォリン及びグランザイムの放出を伴う細胞傷害性T細胞応答を刺激することを支持している。
【0093】
このように、CDH17xCD3二重特異性抗体のFcグループであるARB201は、CRC及びGC腫瘍細胞を用いた2D及び3D腫瘍モデルの両方において高い有効性(低pM IC50)を有している。GCの3Dモデルでは有効性の低下は見られず、CRCの3Dモデルでは4倍の低下しか見られなかった。3Dモデルでの効率的な殺傷は、固形腫瘍に対する臨床的有効性に変換できる。
【0094】
実施例3. CDH17xCD3二重特異性抗体のh5/fLグループの特性評価
CDH17xCD3二重特異性抗体h5G1fL及びh5G4fLを用いて、h5/fLグループ抗体の特性評価を行った。結合特異性を決定するために、CHO細胞を用いて、それぞれh5G1fL及びh5G4fLの発現及び生産を行った。異なるクローンを、組換えCDH17又は抗ヒトIgGでコーティングしたマイクロタイターウエル中の条件培地でインキュベートした。ELISAを使用した。CDH17又は抗ヒトIgG(生産を決定するため)のいずれかへのh5G1fL及びh5G4fLの結合を、ELISA中の抗ヒトFc-HRPコンジュゲートを用いて検出した。図8に示すように、相対的な結合活性を測定し、比較できる。その結果、h5/fLグループの抗体は、対照の抗CDH17抗体と同等のCDH17に対する結合特異性を有していることが示された。
【0095】
次に、h5G1fL及びh5G4fLをそれぞれJurkat T細胞とインキュベートした。その後、図9に示すように、フローサイトフルオリメトリー分析において、抗ヒトIgG Alexa647コンジュゲートの続く結合により結合が検出され、抗CD3 scFvが完全に機能していることが示された。
【0096】
実施例4. CDH17xCD3二重特異性抗体のh10/fLグループの特性評価
CDH17xCD3二重特異性抗体h10G1fL及びh10G4fLを用いて、h10/fLグループ抗体の特性評価を行った。結合特異性を決定するために、CHO細胞を用いて、それぞれh10G1fL及びh10G4fLの発現及び生産を行った。異なるクローンを、組換えCDH17又は抗ヒトIgGでコーティングしたマイクロタイターウエル中の条件培地でインキュベートした。ELISAを使用した。CDH17又は抗ヒトIgG(生産を決定するため)のいずれかへのh10G1fL及びh10G4fLの結合を、ELISA中の抗ヒトFc-HRPコンジュゲートを用いて検出した。図10に示すように、相対的な結合活性を測定し、比較できる。その結果、h10/fLグループの抗体は、対照の抗CDH17抗体と同等のCDH17に対する結合特異性を有していることが示された。
【0097】
次に、h10G1fL及びh10G4fLをそれぞれJurkat T細胞とインキュベートした。図11に示すように、フローサイトフルオリメトリー分析において、抗ヒトIgG Alexa647コンジュゲートの続く結合により結合が検出され、抗CD3 scFvが完全に機能していることが示された。
【0098】
実施例5. CDH17xCD3二重特異性抗体のh10/tBグループの特性評価
CDH17xCD3二重特異性抗体h10G1tB及びh10G4tBを用いて、h10/tBグループ抗体の特性評価を行った。結合特異性を決定するために、CHO細胞を用いて、それぞれh10G1tB及びh10G4tBの発現及び生産を行った。異なるクローンを、組換えCDH17又は抗ヒトIgGでコーティングしたマイクロタイターウエル中の条件培地でインキュベートした。ELISAを使用した。CDH17又は抗ヒトIgG(生産を決定するため)のいずれかへのh10G1tB及びh10G4tBの結合を、ELISA中の抗ヒトFc-HRPコンジュゲートを用いて検出した。図12に示すように、相対的な結合活性を測定し、比較できる。その結果、h10/tBグループの抗体は、対照の抗CDH17抗体と同等のCDH17に対する結合特異性を有していることが示された。
【0099】
次に、h10G1fL及びh5G4fLをそれぞれJurkat T細胞とインキュベートした。図13に示すように、フローサイトフルオリメトリー分析において、抗ヒトIgG Alexa647コンジュゲートの続く結合により結合が検出され、抗CD3 scFvが完全に機能していることが示された。
【0100】
実施例6. IgG4アイソタイプを有するCDH17xCD3二重特異性抗体は腫瘍細胞の非存在下でT細胞を活性化しない
CDH17xCD3二重特異性抗体h10G1fL、h10G4fL、h10G4tB、及びh3G4tBを本分析に使用した。新鮮なPBMCを、0~4ug/mlの濃度範囲の4つのCDH17xCD3二重特異性抗体のそれぞれとマイクロタイターウエル中で37℃で24時間インキュベートした。T細胞活性化及び細胞傷害性反応を、フローサイトフルオリメトリーで抗CD107a抗体及び抗mIgG蛍光コンジュゲートで細胞を染色することによって決定した。細胞傷害性T細胞活性化を示すCD107a陽性細胞の割合を抗体濃度に対してプロットした。
【0101】
図14に示すように、fL及びIgG4 tB抗体はCD107a発現を誘導せず、IgG1アイソタイプを有するtBのみがCD107a発現を誘導した。この結果は、ユニークなサブ構造形態を持つCDH17xCD3二重特異性抗体は、腫瘍細胞が存在しない状態でPBMCとインキュベートしても、CD107a発現によって決定されるような細胞傷害性T細胞応答を誘導しないという安全性の特徴を示している。
【0102】
実施例7. CDH17xCD3二重特異性抗体h10G4fLは腫瘍細胞依存性T細胞活性化を媒介する
CDH17xCD3二重特異性抗体による腫瘍細胞依存性T細胞活性化の特性評価のために、PBMC及びh10G4fLを腫瘍細胞株AsPC1の有り又は無しで、5:1の比率で16時間インキュベートした。T細胞活性化は、定量的ELISAキットを用いてIL2生産を測定することにより決定した。図15に示すように、AsPC1の存在下では、IL2はEC50=30pM(A)でh10G4fL濃度依存的に誘導され、AsPC1の非存在下では、IL2はEC50>18,720pMで誘導された(B)。このように、CDH17xCD3二重特異性抗体h10G4fLは、600倍超の潜在的治療インデックスを示した。
【0103】
実施例8. h10G4fLはT細胞細胞傷害性をCDH17陽性腫瘍細胞へリダイレクトする
h10G4fLの機能をさらに特性評価するために、CDH17陽性及び陰性腫瘍細胞の両方を使用して、T細胞細胞傷害性をリダイレクトする能力を評価した。ヒトPBMC由来活性化T細胞及びh10G4fL(又は抗体なし)を標識腫瘍細胞と5:1の比率で16時間、共培養した。培養終了時に、各混合物を洗浄し、基質を添加して、残存する生細胞を定量し、殺傷率を計算した。T細胞活性化は、定量的ELISAキットを用いてIL2生産を測定することにより決定した。図16に示すように、結果は、h10G4fLが、CDH17陽性ルシフェラーゼ標識膵臓細胞株及び結腸細胞株(図16A及び16B)に対しては濃度依存的な細胞傷害性を示したが(図16A及び16B)、CDH17陰性結腸腫瘍細胞株SW40(図16D)に対しては示さなかったことを示している。但し、SW40におけるCDH17のエクトピック発現は、h10G4fL依存性殺傷に対する感受性を付与し(図16C)、標的腫瘍細胞に対する特異性を実証した。
【0104】
実施例9. h10G4fL/ARB202の薬物動態学的及び毒性学的分析
h10G4fLの薬物動態を決定するために、マウス及び非ヒト霊長類を小動物及び大動物モデルとして使用した。図17は、マウス(図17A)及び非ヒト霊長類(NHP)モデル(図17B)への3mg/kgの静脈内注射後のh10G4fL/ARB202の血清濃度の経時的変化を示す。h10G4fL/ARB202のアイソタイプバリアントであるh10G1/ARB102を、マウス(図17A)では1mg/kg、NHP(図17B)では10mg/kgで比較のために使用した。
【0105】
次に、h10G4fL/ARB202、及びh10G1/ARB102の両方を、チャールズリバーラボラトリーズの前臨床カニクイザル猿毒性試験に使用した。この試験は14日間の単回投与試験としてデザインした。CDH17xCD3二重特異性抗体は、細胞トランスフェクタントを用いてカニクイザルCDH17を認識及び結合できることが以前に決定されていた。また、この抗体は免疫組織化学(IHC)分析で示されるように、ネクロプシー結腸組織中のサルCDH17にも結合する。しかしながら、CDH17xCD3二重特異性抗体が、生活段階の結腸内でCDH17にアクセス及び結合できるという証拠はなかった。この問題は、図18に示すように、ネクロプシー後の結腸組織及び抗ヒトIgG抗体をIHC分析に使用することによって対処した。さらに、抗体治療に関連した炎症性組織損傷の指標となりうる下痢や用量依存性の便潜血は認められなかった。全体的に、病理学的報告書では、本試験に割り付けられた動物には、病的状態はなく、ARB102及びARB202のいずれにも起因する肉眼的及び顕微鏡的所見は認められなかったと結論付けられた。このデータは、CDH17又は少なくともそのエピトープが正常な結腸ではアクセスできず、治療的処置が正常な組織を免れ得るという安全性の概念を支持するものである。
【0106】
実施例10. ARB202の有効性解析
CDH17陽性腫瘍のインビボ治療に対するARB202の有効性を決定するために、マウスの異種移植モデルを使用した。膵臓腫瘍モデルをAsPC-1膵臓腫瘍細胞の皮下注射を介してNSBマウスで樹立した。次に、マウスを図19に示されるように各時点でビヒクル(RPMI)、T細胞、T細胞プラス0.05mg/kg ARB202又はT細胞プラス0.5mg/kg ARB202の腫瘍内投与を介して処置した。腫瘍体積を4週間にわたって決定した。結果は、低用量及び高用量のARB202のみが、ビヒクルと比較して有意な腫瘍成長の減少をもたらしたことを示している(RPMI注入と比較して、P<0.05)。T細胞単独で観察された腫瘍成長の統計的に有意でない減少は、エクスパンドT細胞集団における高いNK活性とAsPC-1のNK感受性によるものと考えられる。この過程におけるT細胞の活性化をさらにバリデーションするために、血清IL-2を分析した。その結果、ARB202での処置のみが、血漿中のヒトIL-2のレベルの増加をもたらしたことが示された。このように、ARB202は、CDH17xCD3二重特異性抗体がCDh17陽性腫瘍の治療に使用できるというコンセプトの証明を提供する。
【0107】
医薬組成物
用語「有効量」は、所望の効果を達成するのに有効な薬剤の量、例えば、対象の疾患を改善するのに有効な量を指す。疾患ががんである場合、薬剤の有効量は、限定されないが、がん細胞増殖、がん細胞分裂、がん細胞運動性、がん細胞の末梢器官への浸潤、腫瘍転移、及び腫瘍増殖の1つ異常の特性を阻害する(例えば、ある程度遅くする、阻害する、又は停止する)ことができる。疾患ががんである場合、薬剤の有効量は、対象に投与されたときに、代替的に、腫瘍増殖を遅らせる又は停止させる、腫瘍の大きさ(例えば、ボリューム又はマス)を減少させる、がんに関連する症状の1つ又は複数をある程度緩和させる、無増悪生存期間を延長させる、客観的奏効(例えば、部分奏効又は完全奏効を含む)をもたらす、及び全生存期間を延長させるの1つ以上のことを行うことができる。薬物が増殖を阻止し、及び/又は既存のがん細胞を死滅させることができる範囲で、それは細胞増殖抑制性及び/又は細胞傷害性を有する。
【0108】
治療を必要とするヒト患者のような対象への投与に適した組成物の製剤化に関して、本明細書に開示の抗体は、選択された投与経路に依存して、当技術分野で知られている薬学的に許容される担体と混合又は組み合わせてもよい。本明細書に開示の抗体の投与方法には特に制限はなく、適切な投与経路及び適切な組成物の選択は、当技術分野で知られており、過度の実験を行うことなく行うことができる。
【0109】
多くの投与形態が可能であるが、例示的な投与形態は、注射のための溶液、特に静脈内又は動脈内注射のための溶液であり得る。通常、注射用の適切な医薬組成物は、限定されないが、緩衝剤、界面活性剤、又は安定化剤のような薬学的に適切な担体又は賦形剤を含んでもよい。例示的な緩衝剤は、限定されないが、アセテート、ホスフェート又はシトレートバッファーを含んでもよい。例示的な界面活性剤は、限定されないが、ポリソルベートを含んでもよい。例示的な安定化剤は、限定されないが、ヒトアルブミンを含んでもよい。
【0110】
同様に、当業者は、がんなどの状態を効果的に治療するために、そこに開示された抗体の有効量又は濃度を決定する能力を有する。医薬組成物の様々な成分の割合、投与用量、及び頻度のような他のパラメータは、当業者によって、過度の実験を行うことなく得られ得る。例えば、注射に適した溶液は、限定されないが、1ml当たり約1~約20、約1~約10mgの抗体を含んでもよい。例示的な投与量は、限定されないが、約0.1~約20、約1~約5mg/Kg体重であってもよい。例示的な投与頻度は、限定されないが、1日1回又は1週間に3回であり得る。
【0111】
本明細書の開示は、特定の実施形態又は例を参照して記載されているが、実施形態は例示的なものであり、開示範囲はそれほど限定されないことが理解され得る。本明細書の開示の代替的な実施形態は、本明細書の開示が適用される当業者には明らかになり得る。そのような代替実施形態は、本明細書の開示の範囲内に包含されると見なされる。従って、本明細書の開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義され、前述の説明によって支持される。
【0112】
要約すると、本明細書には、CDH17及びCD3を標的とする二重特異性抗体であるARB201のリターゲティングT細胞傷害性の研究のための2D/3Dプラットフォームが記載される。ARB201は、2Dモデルでは0.002μg/ml、3Dモデルでは0.008μg/mlのIC50で、DLD-1大腸腺がん細胞においてリターゲティングT細胞傷害性を誘導した。AGS胃腺がん細胞においても、ARB201は2Dモデルと3Dモデルの両方で0.001μg/mlのIC50でリターゲティングT細胞を誘導した。この研究は、ARB201が2Dモデルとほぼ同じ効率で3Dモデルで腫瘍細胞を効率的かつ革新的に死滅させることを実証した。3Dモデルでの効率的な殺傷は、固形腫瘍に対する臨床的有効性に変換できる。
【0113】
本明細書の開示は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、実施形態は例示的なものであり、開示範囲はそれほど限定されないことが理解され得る。本明細書の開示の代替的な実施形態は、本明細書の開示が適用される当業者には明らかになるであろう。そのような代替実施形態は、本明細書の開示の範囲内に包含されると見なされる。従って、本明細書の開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義され、前述の説明によって支持される。
【0114】
実施形態は、単に本明細書の開示を例示するためのものであり、開示範囲を限定することを意図したものではない。特定の改変及び改良が行われてもよく、本明細書の開示の原則から逸脱することなく、本明細書の開示の保護の下で考慮されるべきであることは、当業者にとって理解されるべきである。
【表1】

【表2】

【表3】


図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【配列表】
2024023317000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端とC末端を有する抗体であって、重鎖と軽鎖を含み、
前記重鎖は、N末端からC末端へタンデムに、重鎖可変ドメイン、CH1、CH2、CH3、重鎖リンカー及び重鎖scFvを含み、
前記軽鎖は、N末端からC末端へタンデムに、軽鎖可変ドメイン、及びCLドメインを含み、
前記重鎖可変ドメイン及び前記軽鎖可変ドメインは、それぞれ独立して第一の標的に対する特異性を有し、
前記重鎖scFvは、第二の標的に対する特異性を有し、及び
前記第一の標的及び前記第二の標的は、CDH17、CD3、TROP2、GPC3、及びHER2を含む群から独立して選択される、抗体。
【請求項2】
CDH17がCDH17エクトドメインD1、D2、D3、D4、D5、D6及びD7を含む、請求項1の抗体。
【請求項3】
配列番号15~33と少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1の抗体。
【請求項4】
前記抗体がマウス抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体がファージライブラリースクリーニングから単離されたヒト抗体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
コンジュゲート細胞傷害性部位をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
前記コンジュゲート細胞傷害性部位がイリノテカン、オーリスタチン類、PBD類、メイタンシン類、アマンチン類、スプライソソーム阻害剤、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
前記コンジュゲート細胞傷害性部位が化学療法剤を含む、請求項6の抗体。
【請求項9】
細胞傷害性T細胞又はNK細胞の細胞受容体、又は免疫チェックポイント阻害剤に対する特異性を有する、請求項8の抗体。
【請求項10】
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD-1、TIM-3、LAG-3、TIGIT、CTLA-4、PD-L1、BTLA、VISTA、又はそれらの組み合わせを含む、請求項9の抗体。
【請求項11】
血管新生因子に対する特異性を有する、請求項9の抗体。
【請求項12】
前記血管新生因子がVEGFを含む、請求項11の抗体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体の単離核酸を含む、発現ベクター。
【請求項14】
前記ベクターが細胞内で発現可能である、請求項13の発現ベクター。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体の核酸を含む、宿主細胞。
【請求項16】
請求項14の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項17】
前記宿主細胞が原核細胞又は真核細胞である、請求項16の宿主細胞。
【請求項18】
請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体及び細胞傷害剤を含有する、医薬組成物。
【請求項19】
前記細胞傷害剤がシスプラチン、ゲムシタビン、イリノテカン、又は抗腫瘍抗体を含む、請求項18の医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項21】
がんを有する対象の治療方法であって、前記対象に有効量の請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体を投与する工程を含む、方法。
【請求項22】
前記がんが肝臓がん、胃がん、結腸がん、膵臓がん、肺がん、食道がん又はそれらの組み合わせである、請求項21の方法。
【外国語明細書】