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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023347
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】TNFα関連疾患の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240214BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240214BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61P35/00
A61P37/04
C07K16/24
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196788
(22)【出願日】2023-11-20
(62)【分割の表示】P 2020512018の分割
【原出願日】2018-08-29
(31)【優先権主張番号】10-2017-0110426
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0144521
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0017449
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
2.TRITON
3.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】511237689
【氏名又は名称】セルトリオン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】キム、スン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ジ ヒェ
(72)【発明者】
【氏名】アン、ヒュン チュル
(72)【発明者】
【氏名】イ、スン ヨン
(57)【要約】
【課題】TNFα関連疾患の治療のために、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有する医薬組成物を対象に皮下投与する治療方法、前記医薬組成物、及び前記医薬組成物を含むキット;並びに、対象に皮下投与され、抗-TNFα抗体で治療可能な疾患を治療するための薬剤の製造における、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片の用途を提供する。
【解決手段】本発明は、TNFαに結合する抗体(抗-TNFα抗体)又はその抗原結合断片を皮下投与し、TNFα関連疾患を治療する方法に関する。本発明に係る治療方法、組成物、キット、又は用途は、静脈注射に比べて、投与時間が短く、患者が病院に留まる時間を短縮するため、利便性を改善するとともに生活の質を向上し、よって患者の満足度を高めるという利点を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有する医薬組成物を患者に投与する段階を含む、TNFα関連疾患の治療方法であって、患者に用量60~300mgの抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を1~8週間隔で皮下投与する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、TNFαに結合する抗体(抗-TNFα抗体)を皮下投与してTNFα関連疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子α(TNFα)は、全身性炎症に関与する細胞シグナル化タンパク質(サイトカイン)であり、急性期反応を形成するサイトカインの一つである。TNFαは敗血症、感染症、自己免疫疾患及び移植拒絶反応を含む様々な疾患や障害に関連している。TNFαは免疫反応を促進し、これは関節リウマチ、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、成人クローン病、小児クローン病、乾癬、乾癬性関節炎などの自己免疫異常と関連した多くの臨床的問題を引き起こす。これらの異常は、TNFα阻害剤を用いて治療することができる。
【0003】
インフリキシマブ(Infliximab)は、前記TNFα阻害剤の役割を果たすことのできるキメラモノクローナル抗体の一種であり、現在市販されている製品としては、レムシマ(Remsima)、レミケード(Remicade)、レンフレキシス(Renflexis)などがあるが、これらの製品は、すべて凍結乾燥粉末として製造され、これを再溶解及び希釈して各疾患の投与用法及び用量に応じて静脈注射する方式である。
【0004】
しかし、前記のような静脈投与方式は、患者が投薬のために来院する必要があり、待ち時間を含めて2~4時間ほど所要するため、患者にとってかなりの負担もしくは不便となる。また、投与者が医療教育を受けた人に制限されるという問題がある。
【0005】
したがって、代替的な投与経路として皮下(subcutaneous、SC)投与が提案される。皮下投与は、適切な訓練を受ければ患者が自ら投与でき、30~90分の投与時間を2~5分に短縮することができる。
【0006】
静脈投与用製剤とともに皮下投与用製剤としても開発されて市販中の製品としては、リツキサン(Rituxan)(リツキシマブ(Rituximab))、シンポニー(Simponi)(ゴリムマブ(Golimumab))、ハーセプチン(Herceptin)(トラスツズマブ(Trastuzumab))、アクテムラ(Actemra)(トシリズマブ(Tocilizumab))、ゾレア(Xolair)(オマリズマブ(Omalizumab))などがあるが、まだインフリキシマブの皮下投与用製剤はない。
【0007】
皮下投与のためには、抗体を高濃度で含有しつつも安定した液状製剤であることが求められ、臨床において有効性及び安全性が立証されなければならない。
【0008】
本出願人は、インフリキシマブ製剤の皮下投与において、従来の静脈投与用製剤と同等の有効性及び安全性を立証し、患者の投与における利便性を向上し、生活の質を改善した皮下投与療法を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、TNFα関連疾患の治療のために、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有する医薬組成物を対象に皮下投与する治療方法を提供することである。
【0010】
本発明が解決しようとする他の課題は、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有し、対象に皮下投与される、抗-TNFα抗体で治療可能な疾患の治療のための医薬組成物を提供することである。
【0011】
本発明が解決しようとする他の課題は、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有する医薬組成物、及び抗-TNFα抗体で治療可能な疾患を治療するために当該医薬組成物を対象に皮下投与することを指示する指示書を含むキットを提供することである。
【0012】
本発明が解決しようとする他の課題は、対象に皮下投与され、抗-TNFα抗体で治療可能な疾患を治療するための薬剤の製造における、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片の用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有する医薬組成物を対象に皮下投与する段階を含む、抗-TNFα抗体で治療可能な疾患の治療方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有し、対象に皮下投与される、抗-TNFα抗体で治療可能な疾患の治療のための医薬組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、(a)抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物;及び(b)抗-TNFα抗体で治療可能な疾患を治療するために当該医薬組成物を対象に皮下投与することを指示する指示書を含むキットを提供する。
【0016】
また、本発明は、対象に皮下投与され、抗-TNFα抗体で治療可能な疾患を治療するための医薬組成物の製造における、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片の用途を提供する。
【0017】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体は、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブ、及びこれらのバイオシミラーからなる群から選択される一つ以上を含んでもよい。
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体は、インフリキシマブであってもよい。
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体は、キメラヒト-マウスIgGモノクローナル抗体を含んでもよい。
【0018】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;及び配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含んでもよい。
【0019】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含んでもよい。
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含んでもよい。
【0020】
本発明の一実施形態において、組成物は、界面活性剤;糖またはその誘導体;及びアセテート又はヒスチジンを含む緩衝剤を含んでもよい。
本発明の一実施形態において、組成物は、界面活性剤として、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、又はこれらの混合物を含んでもよい。
本発明の一実施形態において、組成物の界面活性剤の濃度は、0.02~0.1%(w/v)であってもよい。
【0021】
本発明の一実施形態において、組成物は、糖またはその誘導体として、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、スクロース、又はこれらの混合物を含んでもよい。
本発明の一実施形態において、組成物の糖又はその誘導体の濃度は、1~10%(w/v)であってもよい。
【0022】
本発明の一実施形態において、組成物は、緩衝剤として、アセテートを含んでもよい。
本発明の一実施形態において、組成物の緩衝剤の濃度は、1~50mMであってもよい。
【0023】
本発明の一実施形態において、組成物のpHが、4.0~5.5であってもよい。
【0024】
本発明の一実施形態において、組成物は、(A)抗-TNFα抗体90~180mg/ml;(B)ポリソルベート0.02~0.1%(w/v);(C)ソルビトール1~10%(w/v);及び(D)アセテート又はヒスチジンを含む緩衝剤1~50mMを含んでもよい。
【0025】
本発明の一実施形態において、組成物は、アスパラギン酸、リシン、アルギニン、又はこれらの混合物を含まなくてもよい。
本発明の一実施形態において、組成物は、NaCl、KCl、NaF、KBr、NaBr、NaSO、NaSCN、KSO又はこれらの混合物を含まなくてもよい。
本発明の一実施形態において、組成物は、キレート剤を含まなくてもよい。
【0026】
本発明の一実施形態において、組成物は、温度40℃±2℃で1ヶ月後に測定した粘度が0.5cp~10.0cpであるか、又は温度5℃±3℃で6ヶ月後に測定した粘度が0.5cp~5cpであってもよい。
【0027】
本発明の一実施形態において、組成物は、使用前に再溶解(reconstitution)段階、希釈(dilution)段階、又は両段階とも経なくてもよい。
【0028】
本発明の一実施形態において、組成物は、プレフィルドシリンジ(pre-filled syringe)又は自動注射器(auto-injector)に充填されて、対象に投与されてもよい。
【0029】
本発明の一実施形態において、対象は、哺乳動物を含んでもよい。
本発明の一実施形態において、対象は、ヒトを含んでもよい。
【0030】
本発明の一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片が、60~300mg投与されてもよい。
本発明の一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片が、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、又は300mg投与されてもよい。
本発明の一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片が、90~180mg投与されてもよい。
本発明の一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片が、120~240mg投与されてもよい。
本発明の一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片が、80~100mg、110~130mg、170~190mg、又は230~250mg投与されてもよい。
本発明の一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片が、90mg、120mg、180mg、又は240mg投与されてもよい。
本発明の一実施形態において、前記抗体又はその抗原結合断片が、患者の体重が80kg未満の場合は90~180mg、80kg以上の場合は190~270mg投与されてもよい。
【0031】
本発明の一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片が、1~8週間隔で投与されてもよい。
本発明の一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片が、1、2、3、4、5、6、7、又は8週間隔で投与されてもよい。
本発明の一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片が、2又は4週間隔で投与されてもよい。
【0032】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体で治療可能な疾患は、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、及び強直性脊椎炎を含んでもよい。
【0033】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体の投与対象患者は、以下から選択される一つ以上の特性を有してもよい。
a)メトトレキサートを含む疾患修飾性抗リウマチ薬(disease-modifying anti rheumatic drugs、DMARD)に対して反応が不十分である。
b)メトトレキサート及びその他のDMARDによる治療歴がない。
c)一般的な治療に適正な反応を示さない、重症軸性症状及び炎症に関連する血清学的指標の上昇が見られる。
d)メトトレキサート、シクロスポリン、又は皮膚光化学療法(psoralen ultraviolet A therapy、PUVA)を含む全身療法に反応しないか、禁忌であるか、不耐性を有している。
e)コルチコステロイド剤、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、又は免疫抑制剤による治療に適切な反応を示さないか、忍容性がない、又はこのような治療方法が禁忌である。
f)抗生物質、排出法、又は免疫抑制治療を含む一般的な治療に反応を示さない。
【0034】
本発明の一実施形態において、患者は、皮下投与の前に、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を少なくとも1回以上静脈投与された患者であってもよい。
本発明の一実施形態において、患者は、皮下投与の前に、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を1回あたり1~10mg/kg静脈投与された患者であってもよい。
【0035】
本発明の一実施形態において、最後の静脈投与から2~8週目に初回の皮下投与が行われてもよい。
本発明の一実施形態において、最後の静脈投与から4週目に初回の皮下投与が行われてもよい。
【0036】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有する組成物が、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブ、及びこれらのバイオシミラーからなる群から選択される一つ以上の投与と同時に、投与前に、又は投与後に投与されてもよい。
【0037】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有する組成物が、メトトレキサート、レフルノミド及びスルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、又はこれらの組み合わせの投与と同時に、投与前に、又は投与後に投与されてもよい。
【0038】
本発明の一実施形態において、皮下投与後の患者は、以下から選択される一つ以上の特性を有し得る。
a)DAS28(Disease Activity Score in28 joints)が少なくとも2.0以上減少した。
b)CDAI(Crohn’s disease activity index)が少なくとも70以上減少した。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る治療方法、組成物、キット、又は用途は、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を皮下投与し、TNFα関連疾患を治療することができる。また、本発明に係る治療方法、組成物、キット、又は用途は、静脈注射に比べて、投与時間が短く、患者が病院に留まる時間を短縮するため、利便性を改善するとともに生活の質を向上し、よって患者の満足度を高めるという利点を提供する。
【0040】
また、本発明に係る治療方法、組成物、キット、又は用途は、インフリキシマブの新しい治療オプションとして追加され、従来インフリキシマブを静脈注射によって投与されてきた患者や医療従事者に薬物変更に伴う負担や抵抗感を与えないという利点も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、関節リウマチ(RA)患者におけるインフリキシマブ皮下投与の臨床試験の設計概要を示す。
図2図2は、クローン病(CD)患者におけるインフリキシマブ皮下投与の臨床試験の設計概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有する医薬組成物を対象に皮下投与する段階を含む、抗-TNFα抗体で治療可能な疾患の治療方法に関する。
【0043】
本発明をより容易に理解するために、本発明で用いた用語を下記において定義する。
「TNFα」は、17kD分泌型(secreted form)及び26kD膜結合型(membrane associated form)として存在し、その生物学的活性形が17kD分子に非共有結合したトリマーからなるヒトサイトカインを指すと意図される。TNFαの構造は、例えば、文献[参照:Pennica,D.,et al.(1984)Nature312:724-729;Davis,J.M.,et al.(1987)Biochemistry26:1322-1326;及びJones,E.Y.,et al.(1989)Nature338:225-228]に記載されている。
【0044】
「抗体」は、2本の重鎖(Heavy Chain)及び2本の軽鎖(Light Chain)がジスルフィド結合によって相互に連結している4本のポリペプチド鎖からなる免疫グロブリン分子を指す。その他の変化した構造を有する自然発生抗体、例えば、カメリド抗体もこの定義に含まれる。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2、及びCH3)からなる。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)からなる。重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、さらに、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域とともに配置された、相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域に細分される。それぞれの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、3つのCDR及び4つのFRからなり、これらはアミノ末端からカルボキシ末端まで下記の順に配列されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0045】
「抗原結合断片」は、完全な抗体によって結合された抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体の一つ以上の断片を指す。例示的な抗原結合断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvなどが含まれるが、これに限定されない。
【0046】
「バイオシミラー(biosimilar)」は、FDAの承認を取得した生物学的製品(対照薬、reference drug)と非常に類似しており、薬物動態、薬力学、安全性、及び有効性の観点から参照製品と臨床的に有意な差のない生物学的生成物を意味する。
【0047】
「投与」は、治療目的(例えば、TNFα関連疾患の治療)を達成するために物質(例えば、抗-TNFα抗体)を投与することをいう。
【0048】
「TNFα関連疾患」は、TNFαが疾患の兆候を誘導する主な媒介因子である、局所及び/又は全身の生理学的疾患をいう。用語「TNFα関連疾患」、「抗-TNFαで治療可能な疾患」及び「TNFα活性が有害である疾患」は、本明細書において相互交換的に用いられる。
【0049】
「対象」は、すべてのヒト又は非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は、脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ、及びフェレット、齧歯類、例えば、マウス、ラット、及びモルモット、鳥類、例えば、ニワトリ、両生類、及び爬虫類を含むが、これに限定されない。好ましい実施態様において、対象は、哺乳類、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット、又は齧歯類である。より好ましい実施態様において、対象は、ヒトである。用語「対象」、「患者」、及び「個体」は、本明細書において相互交換的に用いられる。
【0050】
「IC50」は、所望の生物学的結果を抑制するために求められる、例えば、細胞毒性を中和するのに必要な阻害剤の濃度をいうと意図される。
【0051】
「キット」は、TNFα関連疾患の治療のために本発明のTNFα抗体を投与するための成分を含むパッケージ製品をいう。当該キットは、好ましくは、キットの成分を保持する容器又は箱を含む。箱又は容器は、食品医薬品局が承認したプロトコル又は標識が添付される。箱又は容器には、プラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン、又はプロピレン容器内に含有される本発明の成分が含まれる。当該容器は、蓋付きのチューブ又は瓶であってもよい。また、キットは、本発明のTNFα抗体を投与するための指示書を含む。
【0052】
本発明の様々な側面をさらに詳細に記述する。
・本発明の抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片
本発明の一実施形態において、抗体として、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組み換え抗体、一本鎖抗体、ハイブリッド抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はこれらの断片を含んでもよい。キメラ抗体は、ある一種からの重鎖及び軽鎖可変領域配列と、他種からの定常領域配列とを含む抗体を意味する。本発明の一実施形態において、抗体として、キメラヒト-マウスIgGモノクローナル抗体を含んでもよい。キメラヒト-マウスIgGモノクローナル抗体は、マウス重鎖及び軽鎖可変領域と、それに結合されたヒト重鎖及び軽鎖定常領域とからなる。キメラヒト-マウスIgGモノクローナル抗体は、当該技術分野で公知の方法により製造することができる。例えば、インフリキシマブの場合、米国特許第6,284,471号に記載された方法により製造することができる。
【0053】
本発明の一実施形態において、抗体として、TNFα又はTNFαのエピトープに結合する抗体を含んでもよい。TNFα又はTNFαのエピトープに結合する抗体として、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブ、及びこれらのバイオシミラーからなる群から選択される一つ以上を含んでもよい。本発明の一実施形態において、抗体として、インフリキシマブを含んでもよい。
【0054】
本発明の一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;及び配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含んでもよい。
【0055】
本発明の一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含んでもよい。
【0056】
本発明の一実施形態において、抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含んでもよい。
【0057】
・本発明の抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有する組成物
本明細書において、用語「本発明の抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有する組成物」は、「安定した液体医薬製剤」と相互交換的に用いられる。
【0058】
本発明に係る組成物は、(A)抗体又はその抗原結合断片;(B)界面活性剤;(C)糖又はその誘導体;及び(D)緩衝剤を含む。
【0059】
本出願の明細書において、用語「含まない」とは、該当成分を全く含まないことを意味する。また、該用語は、該当成分を実質的に含まないこと、即ち、抗体の活性、液体医薬製剤の安定性、及び粘度に影響を与えない範囲で含むこと、例えば、液体医薬製剤の全重量を基準に0~1%(w/v)、0~1ppm(w/v)、又は0~1ppb(w/v)で含むことを意味する。
【0060】
(A)抗体又はその抗原結合断片
本発明に係る組成物は、一実施形態において、上述した本発明の抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含んでもよい。
抗体又はその抗原結合断片の濃度は、本発明に係る組成物の安定性及び粘度に悪影響を実質的に及ぼさない範囲内で自由に調整してもよい。本発明の一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片の濃度は、10~200mg/mLであってもよい。本発明の他の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片の濃度は、50~200mg/mLであってもよい。本発明のまた他の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片の濃度は、80~150mg/mLであってもよい。本発明のまた他の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片の濃度は、90~145mg/mLであってもよい。本発明のまた他の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片の濃度は、110~130mg/mLであってもよい。抗体又はその抗原結合断片の濃度がこの範囲内であれば、抗体又はその抗原結合断片の高含量に応じて投与量及び投与周期の自由度を高めることができ、優れた長期安定性及び低粘度を示すことができる。
【0061】
(B)界面活性剤
界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリソルベート)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、Brij)、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(例えば、Triton-X)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(例えば、Poloxamer、Pluronic)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などを含むが、これに限定されるものではない。
【0062】
本発明の一実施形態において、前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)を含んでもよい。ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、又はこれらのうち2以上の混合物を含んでもよい。本発明の一実施形態において、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート80、又はこれらの混合物を含んでもよい。本発明の他の実施形態において、ポリソルベートは、ポリソルベート80を含んでもよい。
【0063】
本発明の一実施形態において、前記界面活性剤の濃度は、本発明に係る安定した液体医薬製剤の安定性及び粘度に悪影響を及ぼさない範囲内で自由に調整してもよい。例えば、界面活性剤の濃度は、0.001~5%(w/v)、0.01~1%(w/v)、又は0.02~0.1%(w/v)であってもよい。界面活性剤の濃度がこの範囲内であれば、優れた長期安定性及び低粘度を示すことができる。
【0064】
(C)糖または糖の誘導体
糖は、単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖類、又はこれらのうち2以上の混合物を含んでもよい。単糖類の例としては、グルコース、フルクトース、ガラクトースなどが挙げられるが、これらに限定されない。二糖類の例としては、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロースなどが挙げられるが、これらに限定されない。オリゴ糖の例としては、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖などが挙げられるが、これらに限定されない。多糖類の例としては、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン、ペクチンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
糖の誘導体は、糖アルコール、糖酸、又はこれらの混合物を含んでもよい。糖アルコールの例としては、グリセロール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトールなどが挙げられるが、これらに限定されない。糖酸の例としては、アルドン酸(グリセリン酸など)、ウロソン酸(ノイラミン酸など)、ウロン酸(グルクロン酸など)、アルダル酸(酒石酸など)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
本発明の一実施形態において、糖又はその誘導体として、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、スクロース、又はこれらのうち2以上の混合物を含んでもよい。
本発明の一実施形態において、糖又はその誘導体の濃度は、本発明に係る液体医薬製剤の安定性及び粘度に悪影響を実質的に及ぼさない範囲内で自由に調整してもよい。例えば、糖又はその誘導体の濃度は、0.1~30%(w/v)、1~20%(w/v)、又は1~10%(w/v)であってもよい。糖又はその誘導体の濃度がこの範囲内であれば、優れた長期安定性及び低粘度を示すことができる。
【0067】
(D)緩衝剤
【0068】
緩衝剤は、酸やアルカリによるpHの変化を最小限に抑える中和性物質であり、緩衝剤の例としては、ホスフェート(phosphate)、アセテート(acetate)、スクシネート(succinate)、グルコネート(gluconate)、グルタメート(glutamate)、シトレート(citrate)、ヒスチジン(histidine)などが挙げられる。本発明の一実施形態において、緩衝剤は、アセテート又はヒスチジンを含んでもよい。緩衝剤としてアセテート及びヒスチジンの両方を含む場合には、安定性が低下し得る。
【0069】
本発明の一実施形態において、緩衝剤は、アセテートを含んでもよい。アセテートの例としては、酢酸ナトリウム、酢酸亜鉛、酢酸アルミニウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。pH調整のために酸、例えば、酢酸をさらに含んでもよい。緩衝剤としてアセテートを含むことが、pH調整及び安定性の側面で最も好ましい。
【0070】
本発明の一実施形態において、緩衝剤は、ヒスチジンを含んでもよい。緩衝剤としてヒスチジンを用いる場合、ヒスチジン塩、例えば、ヒスチジンクロリド、ヒスチジンアセテート、ヒスチジンホスフェート、ヒスチジンスルフェートなどが含まれてもよい。pH調整のために酸、例えば、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸などを含んでもよい。
【0071】
本発明の一実施形態において、安定した液体医薬製剤は、シトレート(クエン酸塩)、ホスフェート(リン酸塩)、又はこれらの混合物を含まなくてもよい。
【0072】
本発明の一実施形態において、緩衝剤(又は緩衝剤の陰イオン)の含有量は、本発明に係る液体医薬製剤の安定性及び粘度に悪影響を実質的に及ぼさない範囲内で自由に調整してもよい。例えば、緩衝剤又はその陰イオンの含有量は、1~50mM、5~30mM、又は10~25mMであってもよい。緩衝剤又はその陰イオンの含有量がこの範囲内であれば、優れた長期安定性及び低粘度を示すことができる。
【0073】
(E)pH
本発明の一実施形態において、安定した液体医薬組成物のpHは、4.0~5.5又は4.7~5.3であってもよい。pHがこの範囲内であれば、優れた長期安定性及び低粘度を示すことができる。pHは、緩衝剤を用いて調整することができる。言い換えれば、緩衝剤を所定の含有量で含む場合、別途のpH調整剤がなくても前記範囲のpHを示すことができる。シトレート、ホスフェート、又はこれらの混合物を緩衝剤として用いる場合には、前記範囲のpHを示すのが困難な場合がある。別途のpH調整剤として酸(例えば、塩酸)又は塩基(例えば、水酸化ナトリウム)をさらに含む場合には、抗体の安定性が低下し得る。
【0074】
(F)その他の成分
本発明の一実施形態において、安定した液体医薬製剤は、アスパラギン酸、リシン、アルギニン、又はこれらの混合物を含まなくてもよい。これらのアミノ酸を含む場合、その製剤が固体状態になり得る。本発明の一実施形態において、安定した液体医薬製剤は、前記3種のアミノ酸を除いた残りのアミノ酸のうち一つ以上を含んでもよい。この場合、前記アミノ酸を5%(w/v)以内の範囲、例えば、0.001~5%(w/v)の範囲、0.001~1%(w/v)の範囲、0.01~5%(w/v)の範囲、0.01~1%(w/v)の範囲、0.1~5%(w/v)の範囲、又は0.1~1%(w/v)の範囲で含んでもよい。
【0075】
本発明の他の実施形態において、安定した液体医薬製剤は、タウリンを含んでもよい。この場合、前記タウリンを5%(w/v)以内の範囲、例えば、0.001~5%(w/v)の範囲、0.001~1%(w/v)の範囲、0.01~5%(w/v)の範囲、0.01~1%(w/v)の範囲、0.1~5%(w/v)の範囲、又は0.1~1%(w/v)の範囲で含んでもよい。
【0076】
本発明の一実施形態において、安定した液体医薬製剤は、金属塩としてNaCl、KCl、NaF、KBr、NaBr、NaSO、NaSCN、KSOなどを含まなくてもよい。これらの金属塩を含む場合には、沈殿現象が発生し、その製剤がゼラチン形状を有して安定性が低下し得る。
【0077】
本発明の一実施形態において、安定した液体医薬製剤は、キレート剤(例えば、EDTA)を含まなくてもよい。キレート剤を含む場合には、酸化率が増加し得る。
【0078】
本発明の一実施形態において、安定した液体医薬製剤は、保存剤を含まなくてもよい。保存剤の例としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、フェノール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン、カテコール、レソルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、m-クレゾールなどが挙げられる。保存剤を含む場合には、安定性の改善に役立たないことがある。
【0079】
本発明の一実施形態において、本発明の安定した液体医薬製剤において、抗体の活性、製剤の安定性、及び低粘度に悪影響を実質的に及ぼさない範囲内で、当該技術分野で公知の添加剤をさらに含んでもよい。例えば、水性担体、酸化防止剤、又はこれらのうち2以上の混合物をさらに含んでもよい。水性担体は、製薬上許容され(ヒトに投与する際に安全で非毒性であり)、液体医薬製剤の製造に有用な担体である。水性担体の例としては、滅菌注射用水(SWFI)、静菌注射用水(BWFI)、滅菌塩水溶液、リンガー液、デキストロースなどが挙げられるが、これらに限定されない。酸化防止剤としては、アスコルビン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
(G)「安定した」液体医薬製剤
本発明の「安定した」液体医薬製剤における用語「安定した」とは、本発明に係る抗体が、製造工程中及び/又は保管/保存時にその物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を実質的に保持することを意味する。抗体の安定性を測定する様々な分析的技術は、当該技術分野において容易に利用することができる。
【0081】
物理的安定性は、当該技術分野で公知の方法により評価することができ、これらの方法は、光(吸光又は光学密度)のサンプル見掛けの減衰測定を含む。このような光の減衰測定は、製剤の濁度と関連している。また、物理的安定性に対し、高分子量成分の含有量、低分子量成分の含有量、無傷のタンパク質量、不溶性異物粒子数などを測定することができる。
【0082】
化学的安定性は、例えば、化学的に変化した形態の抗体を検出して定量することにより、評価することができる。化学的安定性は、例えば、イオン交換クロマトグラフィーにより評価できる荷電変化(例えば、脱アミド化又は酸化の結果として発生)を含む。化学的安定性に対し、電荷変異体(酸性又は塩基性ピーク)などを測定することができる。
【0083】
生物学的活性は、当該技術分野で公知の方法により評価することができ、例えば、ELISAにより抗原結合親和性を測定することができる。
【0084】
本発明の一実施形態において、液体医薬製剤は、長期間にわたって安定することができる。
本発明の一実施形態において、用語「安定した」液体医薬製剤は、次のうち一つ以上を満たす液体医薬製剤を意味する。
【0085】
濁度
‐温度40℃±2℃で4週間保管した後に分光光度計により測定した吸光度A600が、0~0.0300又は0~0.0700である液体医薬製剤;
【0086】
‐温度40℃±2℃、相対湿度75±5%、及び密閉条件で4週間保管した後に分光光度計により測定した吸光度A600が、0~0.0300又は0~0.0700である液体医薬製剤;
【0087】
主成分の含有量(メインピーク)
‐温度40℃±2℃で4週間保管した後にSE-HPLCにより測定した主成分が、98%~100%である液体医薬製剤;
‐温度40℃±2℃、相対湿度75±5%、及び密閉条件で4週間保管した後にSE-HPLCにより測定した主成分が、98~100%である液体医薬製剤;
【0088】
高分子量成分(メインピーク(無傷のIgG)を基準に滞留時間(retention time)が前側であるピーク)
‐温度5℃±3℃で12ヶ月間保管した後にSE-HPLCにより測定した高分子量成分が、0~1.00%である液体医薬製剤;
‐温度5℃±3℃及び密閉条件で12ヶ月間保管した後にSE-HPLCにより測定した高分子量成分が、0~1.00%である液体医薬製剤;
【0089】
低分子量成分(メインピーク(無傷のIgG)を基準に滞留時間(retention time)が後側であるピーク)
‐温度5℃±3℃で12ヶ月間保管した後にSE-HPLCにより測定した低分子量成分が、0~0.40%である液体医薬製剤;
‐温度5℃±3℃及び密閉条件で12ヶ月間保管した後にSE-HPLCにより測定した低分子量成分が、0~0.40%である液体医薬製剤;
【0090】
無傷の免疫グロブリンGの含有量
‐温度5℃±3℃で12ヶ月間保管した後に非還元CE-SDSにより測定した無傷の免疫グロブリンGの含有量(Intact IgG%)が、94.0%~100%である液体医薬製剤;
‐温度5℃±3℃及び密閉条件で12ヶ月間保管した後に非還元CE-SDSにより測定した無傷の免疫グロブリンGの含有量(Intact IgG%)が、94.0%~100%である液体医薬製剤;
‐温度40℃±2℃で4週間保管した後に非還元CE-SDSにより測定した無傷の免疫グロブリンGの含有量(Intact IgG%)が、94.0%~100%である液体医薬製剤;
‐温度40℃±2℃、相対湿度75±5%、及び密閉条件で4週間保管した後に非還元CE-SDSにより測定した無傷の免疫グロブリンGの含有量(Intact IgG%)が、94.0%~100%である液体医薬製剤;
【0091】
無傷の重鎖及び軽鎖の含有量
‐温度5℃±3℃で12ヶ月間保管した後に還元CE-SDSにより測定した無傷の重鎖及び軽鎖の含有量(Intact HC+ LC%)が、99.0%~100%である液体医薬製剤;
‐温度5℃±3℃及び密閉条件で12ヶ月間保管した後に還元CE-SDSにより測定した無傷の重鎖及び軽鎖の含有量(Intact HC+ LC%)が、99.0%~100%である液体医薬製剤;
‐温度40℃±2℃で4週間保管した後に還元CE-SDSにより測定した無傷の重鎖及び軽鎖の含有量(Intact HC+ LC%)が、98.0%~100%である液体医薬製剤;
‐温度40℃±2℃、相対湿度75±5%、及び密閉条件で4週間保管した後に還元CE-SDSにより測定した無傷の重鎖及び軽鎖の含有量(Intact HC+ LC%)が、98.0%~100%である液体医薬製剤;
【0092】
不溶性異物粒子数
‐温度5℃±3℃で12ヶ月間保管した後にHIACにより測定した不溶性異物粒子(10.00μm≦、<400.00μm)の数が、0~1,000個である液体医薬製剤;
‐温度5℃±3℃及び密閉条件で12ヶ月間保管した後にHIACにより測定した不溶性異物粒子(10.00μm≦、<400.00μm)の数が、0~1000個である液体医薬製剤;
‐温度40℃±2℃で4週間保管した後にMFIにより測定した不溶性異物粒子(1.00μm≦、<100.00μm)の数が、0~30,000個である液体医薬製剤;
‐温度40℃±2℃、相対湿度75±5%、及び密閉条件で4週間保管した後にMFIにより測定した不溶性異物粒子(1.00μm≦、<100.00μm)の数が、0~30,000個である液体医薬製剤;
‐温度40℃±2℃で4週間保管した後にMFIにより測定した不溶性異物粒子(10.00μm≦、<100.00μm)の数が、0~200個である液体医薬製剤;
‐温度40℃±2℃、相対湿度75±5%、及び密閉条件で4週間保管した後にMFIにより測定した不溶性異物粒子(10.00μm≦、<100.00μm)の数が、0~200個である液体医薬製剤;
‐温度40℃±2℃で6週間保管した後にMFIにより測定した不溶性異物粒子(10.00μm≦、<100.00μm)の数が、0~500個である液体医薬製剤;
‐温度40℃±2℃、相対湿度75±5%、及び密閉条件で6週間保管した後にMFIにより測定した不溶性異物粒子(10.00μm≦、<100.00μm)の数が、0~500個である液体医薬製剤;
【0093】
酸化率
‐温度40℃±2℃で4週間保管した後にLC-MSにより測定した重鎖Met255の酸化率が、0%~2.5%である液体医薬製剤;
‐温度40℃±2℃、相対湿度75±5%、及び密閉条件で4週間保管した後にLC-MSにより測定した重鎖Met255の酸化率が、0%~2.5%である液体医薬製剤;
【0094】
電荷変異体
‐温度40℃±2℃で4週間保管した後にIEC-HPLCにより測定した酸性ピークが、20%~35%である液体医薬製剤;
‐温度40℃±2℃、相対湿度75±5%、及び密閉条件で4週間保管した後にIEC-HPLCにより測定した酸性ピークが、20%~35%である液体医薬製剤;
‐温度40℃±2℃で4週間保管した後にIEC-HPLCにより測定した塩基性ピークが、33%~40%である液体医薬製剤;
‐温度40℃±2℃、相対湿度75±5%、及び密閉条件で4週間保管した後にIEC-HPLCにより測定した塩基性ピークが、33%~40%である液体医薬製剤;
【0095】
TNFα結合親和性
‐温度5℃±3℃で12ヶ月間保管した後にELISAにより測定したTNFα結合親和性が、80%~120%である液体医薬製剤;及び
‐温度5℃±3℃及び密閉条件で12ヶ月間保管した後にELISAにより測定したTNFαの結合親和性が、80%~120%である液体医薬製剤。
【0096】
本発明の一実施形態において、温度40℃±2℃で1ヶ月後に測定した粘度が0.5cp~10.0cpであってもよい。本発明の他の実施形態において、温度5℃±3℃で6ヶ月後に測定した粘度が0.5cp~5.0cpであってもよい。
【0097】
(H)安定した液体医薬製剤の製造方法
本発明の安定した液体医薬製剤は、公知の方法により製造することができ、特定の方法に限定されない。例えば、界面活性剤、及び糖又はその誘導体を含む溶液に緩衝剤を添加しつつpHを調整した後、該混合溶液に抗体を入れて液体医薬製剤を製造することができる。また、精製工程の最終段階において、一部賦形剤を含む溶液を製造した後、残りの成分を添加して液体医薬製剤を製造することができる。例えば、精製工程の最終段階において、抗体、緩衝剤、及び糖又はその誘導体を含む溶液を製造した後、該溶液に界面活性剤を添加して液体医薬製剤を製造することができる。
【0098】
また、前記製剤は、製造する際に、凍結乾燥工程を含まなくてもよく、含んでいてもよい。
凍結乾燥工程を含まない場合には、例えば、本発明の液体医薬製剤を製造し滅菌などの処理後に直ちに密閉容器に入れることができる。
【0099】
凍結乾燥工程を含む場合には、例えば、本発明の液体医薬製剤を製造し凍結乾燥した後、又は、本発明の液体医薬製剤を製造し凍結乾燥して保管/保存した後に、凍結乾燥及び/又は保管/保存により除去又は変形された成分を補充するか又は交替して、本発明に係る液体医薬製剤を製造することができる。また、本発明の液体医薬製剤のうち凍結乾燥及び/又は保管/保存により除去又は変形され得る成分が除外された成分のみを凍結乾燥した後、又はその成分のみを凍結乾燥して保管/保存した後、前記除外された成分を添加して、本発明に係る液体医薬製剤を製造することができる。
【0100】
本出願人の既出願特許である韓国特許出願第10-2017-0081814号は、本発明の明細書に参照として組み入れられる。
【0101】
・本発明の抗-TNFα抗体で治療可能な疾患の治療方法
本発明は、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有する医薬組成物を対象に皮下投与する段階を含む、抗-TNFαで治療可能な疾患の治療方法を提供する。
【0102】
本発明の一実施形態において、抗体は、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、ゴリムマブ、及びこれらのバイオシミラーからなる群から選択される一つ以上を含んでもよい。
本発明の一実施形態において、抗体は、インフリキシマブを含んでもよい。
本発明の一実施形態において、抗体は、キメラヒト-マウスIgGモノクローナル抗体を含んでもよい。
【0103】
本発明の一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;及び配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含んでもよい。
【0104】
本発明の一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含んでもよい。
【0105】
本発明の一実施形態において、抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含んでもよい。
【0106】
本発明の一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片の濃度は、10~200mg/mLであってもよい。
【0107】
本発明は、また、(A)抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片;(B)界面活性剤;(C)糖又はその誘導体;(D)緩衝剤を含む組成物を対象に皮下投与する段階を含む、抗-TNFαで治療可能な疾患の治療方法を提供する。
【0108】
本発明の一実施形態において、(B)界面活性剤は、ポリソルベート、ポロキサマー、又はこれらの混合物を含んでもよい。
本発明の一実施形態において、(B)界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、又はこれらのうち2以上の混合物を含んでもよい。
本発明の一実施形態において、(B)界面活性剤は、ポリソルベート80を含んでもよい。
本発明の一実施形態において、(B)界面活性剤の濃度は、0.02~0.1%(w/v)であってもよい。
【0109】
本発明の一実施形態において、(C)糖は、単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖類、又はこれらのうち2以上の混合物を含み、糖の誘導体は、糖アルコール、糖酸、又はこれらの混合物を含んでもよい。
本発明の一実施形態において、(C)糖又はその誘導体は、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、スクロース、又はこれらのうち2以上の混合物を含んでもよい。
本発明の一実施形態において、(C)糖又はその誘導体の濃度は、1~10%(w/v)であってもよい。
【0110】
本発明の一実施形態において、(D)緩衝剤は、アセテート又はヒスチジンを含んでもよい。
本発明の一実施形態において、(D)緩衝剤の含有量は、1~50mMであってもよい。
【0111】
本発明の一実施形態において、前記組成物のpHが、4.0~5.5であってもよい。
【0112】
本発明の一実施形態において、前記組成物は、アスパラギン酸、リシン、アルギニン、又はこれらの混合物を含まなくてもよい。
本発明の一実施形態において、前記組成物は、NaCl、KCl、NaF、KBr、NaBr、NaSO、NaSCN、KSO、又はこれらの混合物を含まなくてもよい。
本発明の一実施形態において、前記組成物は、キレート剤を含まなくてもよい。
本発明の一実施形態において、前記組成物は、保存剤を含まなくてもよい。
【0113】
本発明の一実施形態において、前記組成物は、さらに、水性担体、酸化防止剤、又はこれらのうち2以上の混合物を含んでもよい。
【0114】
本発明の一実施形態において、前記組成物は、温度40℃±2℃で1ヶ月後に測定した粘度が0.5cp~10.0cpであるか、又は5℃±3℃で6ヶ月後に測定した粘度が0.5cp~5.0cpであってもよい。
【0115】
本発明の一実施形態において、前記組成物は、(A)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;及び配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含む、抗体又はその抗原結合断片;(B)界面活性剤;(C)糖又はその誘導体;及び(D)アセテート又はヒスチジンを含む緩衝剤を含んでもよい。
【0116】
本発明の一実施形態において、前記組成物は、(A)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;及び配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含む、抗体又はその抗原結合断片90~180mg/ml;(B)界面活性剤0.02~0.1%(w/v);(C)糖又はその誘導体1~10%(w/v);及び(D)アセテート又はヒスチジンを含む緩衝剤1~50mMを含んでもよい。
【0117】
本発明の一実施形態において、前記組成物を皮下投与してもよい。
【0118】
本発明の一実施形態において、前記組成物は、使用前に再溶解(reconstitution)段階、希釈(dilution)段階、又は両段階とも経なくてもよい。
本発明の一実施形態において、前記安定した組成物は、使用前にプレフィルドシリンジ(pre-filled syringe)内に充填されてもよい。
本発明の一実施形態において、前記組成物は、使用前に自動注射器(auto-injector)内に含まれてもよい。
【0119】
抗-TNFα抗体で治療可能な疾患
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体で治療可能な疾患は、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、新生児溶血性疾患、炎症性腸疾患、多発性硬化症、臓器移植における拒絶反応、非ホジキンリンパ腫、転移性癌、未熟児網膜症、卵巣癌、胃癌、頭頸部癌、骨粗しょう症、発作性夜間血色素尿症、侵襲性カンジダ症、乳癌、黒色腫、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腎細胞癌、結腸癌、直腸癌、喘息、鼻咽頭癌、出血性ショック、黄色ブドウ球菌感染症、及び濾胞性リンパ腫からなる群から選択される。
【0120】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体で治療可能な疾患は、インフリキシマブの静脈投与により治療可能な疾患であり得る。
【0121】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体で治療可能な疾患は、インフリキシマブの静脈投与により治療可能な関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、又は強直性脊椎炎であり得る。
【0122】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体の投与対象は、メトトレキサートを含む疾患修飾性抗リウマチ薬(disease-modifying anti rheumatic drugs、DMARD)に対して反応が不十分な患者である。
【0123】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体の投与対象は、メトトレキサート及びその他のDMARDによる治療歴のない患者である。
【0124】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体の投与対象は、一般的な治療に適正な反応を示さない、重症軸性症状及び炎症に関連する血清学的指標の上昇が見られる患者である。
【0125】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体の投与対象は、メトトレキサート、シクロスポリン、又は皮膚光化学療法(psoralen ultraviolet A therapy、PUVA)を含む全身療法に反応しないか、禁忌であるか、不耐性を有する患者である。
【0126】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体の投与対象は、コルチコステロイド剤、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、又は免疫抑制剤の治療に適切な反応を示さないか、忍容性がない、又はこのような治療方法が禁忌である患者である。
【0127】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体の投与対象は、抗生物質、排出法、又は免疫抑制治療を含む一般的な治療に反応を示さない患者である。
【0128】
投与量及び投与間隔
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体又はその結合断片は、60~300mg投与されてもよい。具体的には、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、又は300mg投与されてもよい。
【0129】
本発明の他の一実施形態において、抗-TNFα抗体又はその結合断片は、90~180mg投与されてもよい。また他の実施形態において、抗-TNFα抗体又はその結合断片は、120~240mg投与されてもよい。また他の実施形態において、抗-TNFα抗体又はその結合断片は、120~240mg投与されてもよい。
【0130】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体又はその結合断片は、患者の体重が80kg未満の場合は90~180mg、80kg以上の場合は190~270mg投与されてもよい。
【0131】
本発明の一実施形態において、抗-TNFα抗体又はその結合断片は、1~8週間隔で投与されてもよい。具体的には、1週、1.5週、2週、2.5週、3週、3.5週、4週、4.5週、5週、5.5週、6週、6.5週、7週、7.5週、又は8週間隔で投与されてもよい。
【0132】
本発明の他の一実施形態において、抗-TNFα抗体又はその結合断片は、2~4週間隔で投与されてもよい。
【0133】
事前投与
抗-TNFα抗体又はその結合断片の皮下投与段階の前に、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片が静脈投与される段階が含まれてもよい。
【0134】
本発明の一実施形態において、皮下投与段階の前に、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片が1~10mg/kg静脈内投与される段階が含まれてもよい。具体的には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10mg/kg静脈投与される段階が含まれてもよい。
【0135】
本発明のまた他の一実施形態において、皮下投与段階の前に、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片が2~8mg/kg静脈投与される段階が含まれてもよい。本発明のまた他の一実施形態において、皮下投与段階の前に、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片が3~5mg/kg静脈投与される段階が含まれてもよい。
【0136】
本発明の一実施形態において、皮下投与段階の前に、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片が1~8週間隔で静脈投与される段階が含まれてもよい。具体的には、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、又は8週間隔で静脈投与される段階が含まれてもよい。
【0137】
本発明のまた他の一実施形態において、皮下投与段階の前に、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片が2~4週間隔で静脈投与される段階が含まれてもよい。
【0138】
本発明の一実施形態において、前記皮下投与段階の前に、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片が静脈投与される段階が含まれるが、最後の静脈投与と初回の皮下投与との間隔が1~8週である段階が含まれてもよい。具体的には、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、又は8週間隔で投与される段階が含まれてもよい。
【0139】
本発明のまた他の一実施形態において、前記皮下投与段階の前に、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片が静脈投与される段階が含まれるが、最後の静脈投与と初回の皮下投与との間隔が2~4週である段階が含まれてもよい。
【0140】
併用投与
本発明の抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片とともに、他の生物製剤又は化学療法剤が投与されてもよい。
投与は、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片の投与と同時に、その前に、又はその後に投与される。
【0141】
本発明の一実施形態において、併用投与される生物製剤は、エタネルセプト(Etanercept)、インフリキシマブ(Infliximab)、アダリムマブ(Adalimumab)、セルトリズマブペゴル(Sertolizumab pegol)、ゴリムマブ(Golimumab)、又はこれらの組み合わせをを含んでもよい。
【0142】
本発明の一実施形態において、併用投与される化学療法剤は、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)を含んでもよい。
【0143】
本発明の一実施形態において、併用投与される化学療法剤は、メトトレキサート(Methotrexate)、レフルノミド(Leflunomide)、スルファサラジン(Sulfasalazine)、ヒドロキシクロロキン(Hydroxychloroquine)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0144】
・製品
本発明は、また、抗-TNFα抗体又はその結合断片を含有する組成物;及び前記組成物を密閉した状態で収容する容器を含む製品を提供する。
【0145】
前記抗-TNFα抗体又はその結合断片を含有する組成物は、上述した通りである。
【0146】
本発明の一実施形態において、前記容器は、ガラス、ポリマー(プラスチック)、金属などの物質から形成されてもよいが、これに限定されない。本発明の一実施形態において、前記容器は、瓶、バイアル、カートリッジ、注射器(プレフィルドシリンジ、自動注射器)、又はチューブであるが、これに限定されない。本発明の一実施形態において、前記容器は、ガラス又はポリマーバイアル、又は、ガラス又はポリマープレフィルドシリンジであってもよい。
【0147】
前記バイアル、カートリッジ、プレフィルドシリンジ、自動注射器などの具体的な製品形態と、前記安定した液体医薬製剤を前記バイアル、カートリッジ、プレフィルドシリンジ、自動注射器などに充填する方法は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば容易に入手又は実施することができる。例えば、米国特許第4,861,335号、第6,331,174号などは、プレフィルドシリンジの具体的な製品形態及び充填方法を開示している。例えば、米国特許第5,085,642号、第5,681,291号などは、自動注射器の具体的な製品形態及び組立方法を開示している。前記バイアル、カートリッジ、プレフィルドシリンジ、自動注射器などとしては、商品化された製品をそのまま用いるか、又は前記抗-TNFα抗体又はその結合断片を含有する組成物の物性、投与部位、投与量などを考慮して、個別に注文製作したものを用いてもよい。
【0148】
本発明の一実施形態において、前記容器の内部にシリコーンオイルがコーティングされていなくてもよい。シリコーンオイルがコーティングされている場合には、安定性が低下し得る。前記容器は、1回投与用又は数回投与用であってもよい。
【0149】
本発明の一実施形態において、前記製品は、前記抗-TNFα抗体又はその結合断片を含有する組成物の使用方法、保管方法、又はその両方を提供する指示事項をさらに含んでもよい。前記使用方法は、TNFα活性が有害な疾患の治療法を含み、投与経路、投与量、及び投与時期を含んでもよい。
【0150】
本発明の一実施形態において、前記製品は、商業的および使用者の観点で必要なその他の道具、例えば、針、注射器などを含んでもよい。
【0151】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。下記実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲が下記実施例によって限定されるものではない。
【0152】
実施例1.関節リウマチ(RA)患者におけるインフリキシマブ皮下投与時の安全性及び有効性評価
本インフリキシマブ臨床試験は、3ヶ月以上に渡ってメトトレキサート(Methotrexate、MTX)単独療法に対して十分な反応を示さない活動性関節リウマチ患者において、MTX、葉酸と併用投与時の皮下投与用インフリキシマブ(インフリキシマブSC)と静脈投与用インフリキシマブ(インフリキシマブIV)間の有効性、薬物動態、及び安全性を評価するために設計された、無作為化、多施設共同、平行群間、第1/3相試験であり、本臨床は2つのパートで構成されている。
【0153】
パート1は、インフリキシマブSCの最適用量を確認するために設計されており、第22週と第30週の間の定常状態の濃度-時間曲線下面積(AUCτ)によって最初の30週間にわたる3mg/kgインフリキシマブIVに相応するインフリキシマブSCの最適用量を確認した。パート1の臨床試験の期間は、スクリーニング(最大3週間)から臨床試験終了の訪問まで含めて、最大65週間であった。
【0154】
パート2は、インフリキシマブSCとインフリキシマブIV間の有効性の非劣性を証明するために設計されている。第22週において28個の関節数を用いた疾患活動性スコア(DAS28;Disease Activity Score in 28 joints)(C反応性蛋白[C-Reactive Protein、CRP])のベースラインからの変化に応じた臨床反応により、有効性の面でインフリキシマブSCがインフリキシマブIVより劣っていないことを証明する。パート2におけるインフリキシマブSCの投与量及び投与間隔は、120mgを2週ごとに投与すると設定した。
【0155】
パート1
患者は、以下の基準を全て満たす場合、本臨床試験に登録することができた。
*28個の関節のうち少なくとも6個以上の腫脹関節(swollen joint)と圧痛関節(tender joint)、及び血清C-reactive protein(CRP)濃度>0.6mg/dLで定義された活動性疾患を患っている。
*試験薬の投与(0日)前に少なくとも3ヶ月間メトトレキサート12.5~25mg/週(又は韓国内の患者は、10~25mg/週)の治療を受けており、最後の4週間は同じ用量で治療を受けている。
【0156】
患者は、以下の基準のいずれかに一つでも該当すれば、臨床試験に登録することができなかった。
*以前RAの治療のために生物学的製剤及び/又は他の疾患の治療のためにTNFα阻害剤を投与されたことがある。
*インフリキシマブ又はその他すべてのミュリン及び/又はヒトタンパク質の賦形剤に対してアレルギーがある患者、又は免疫グロブリン製品に対して過敏症がある。
【0157】
本臨床試験は、スクリーニング、投与期間、臨床試験終了の3つの臨床試験期間で構成された。スクリーニングは、試験薬の初回投与の21日前と1日前の間に行われ、患者の研究に対する適格性を評価した。B型、C型、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2)感染、妊娠可能な女性における尿及び血清妊娠検査、リウマチ因子、抗環状シトルリン化ペプチド(anti-cyclic citrullinated peptide)、12誘導心電図、臨床試験室検査などを含むすべての検査を行った。また、結核患者を排除するためのインターフェロン-γ遊離試験(IGRA)と胸部X線検査も行った。
【0158】
臨床試験に登録されたすべての患者に第0週と第2週に1回用量ずつインフリキシマブIVを投与した。葉酸は、MTXの副作用に関する有害事象(adverse event)を最小限に抑えるか又は予防するために、MTX、試験薬と併用投与され、MTXの用量は、臨床試験の開始から終了時まで維持しながら服用するように指示した。また、患者は、試験薬に対する過敏反応を予防するために、試験者の裁量で、試験薬の投与を開始する30~60分前の時点で次のように予備投薬を受けることができた(例:抗ヒスタミン剤[2~4mgクロルフェニラミン等価用量]、ヒドロコルチゾン、パラセタモール及び/又は鎮静作用のない抗ヒスタミン剤[10mgセチリジン等価用量]、ただし、これらに限定されない)。
【0159】
2回の完全な用量が投与され、試験者の裁量に基づいて、安全性に懸念のない患者は、投与の42日前にインフリキシマブSC又はインフリキシマブIV投与群に無作為に割り付けられた。投与の無作為割付は、国、第2週での血清CRP濃度(0.6mg/dL以下又は0.6mg/dL超過)、及び第6週での体重(70kg以下又は70kg超過)によって層別化された。合計50人の活動性関節リウマチ患者が登録され、そのうち48人が4つの臨床試験コホートに1:1:1:1の比率で無作為に割り付けられ、第54週まで試験薬が投与された(表1)。
【0160】
【表1】
【0161】
コホート1に割り付けられた患者には、追加で7回用量のインフリキシマブIVが第6週及びその後8週(第14、22、30、38、46、及び54週)ごとに投与された。コホート2、3及び4に割り付けられた患者には、インフリキシマブSCの初回投与は第6週に行われ、インフリキシマブSCの追加投与は第54週まで2週ごとに行われた。コホート2、3及び4のすべての患者に最初に割り付けられた用量は、用量の確認後、最適用量に調整された。その後、最適用量による追加のSC注射は、第54週まで投与された。インフリキシマブSCは、各試験機関を訪問する際(第6、8、10、14、22、24、26、28、30、38、46、54週)には、医療関係者が注射し、その他の週(第12、16、18、20、32、34、36、40、42、44、48、50、52週)には、適切な注射法の訓練を受けており、試験者が適切であると認めた場合は、患者が自己注射することができた。
【0162】
患者は、臨床評価及び採血のために、事前に決められた時間間隔で試験機関を訪問した。各訪問において、患者は、有害事象(AE)や併用薬物に関する質問を受け、TBの臨床徴候及び症状についてモニタリングを受けた。一次薬物動態の評価項目は、第22週から第30週までの維持段階期間中に評価され、二次薬物動態の評価項目は、第54週までの投与期間中に評価され、分析用血液検体、有効性、PD、及び安全性評価は、評価スケジュールに記載された時点で採取及び評価が行われた。
【0163】
臨床試験終了の訪問は、維持段階の終了時もしくは患者が途中で脱落した時には最後の投与から8週間後の時点で行われた。患者が最後の投与を受けた後、8週となる時点ですべての臨床試験を終了するようにあらゆる努力を傾けた。
【0164】
パート2
パート2は、パート1で確認された最初の30週間にわたるPK、有効性、PD、及び安全性データを含むPKモデリングのレポートデータに関する独立データ安全性モニタリング委員会の検討に基づいて開始された。
【0165】
パート2は、スクリーニング、第30週までの二重盲検期間後の24週間の公開期間を含む投与期間、及び臨床試験終了を含む3つの臨床試験期間で構成された。スクリーニングは、試験薬の初回投与の42日前と0日前の間に行われ、患者の研究に対する適格性を評価した。B型、C型、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2)感染、妊娠可能な女性における尿及び血清妊娠検査、リウマチ因子、抗環状シトルリン化ペプチド(anti-cyclic citrullinated peptide)、12誘導心電図、臨床試験室検査などを含むすべての検査を行った。また、結核患者を排除するためのインターフェロン-γ遊離試験(IGRA)と胸部X線検査も行った。
【0166】
臨床試験に登録されたすべての患者に第0週と第2週に1回用量ずつインフリキシマブIVを投与した。葉酸は、MTXの副作用に関する有害事象(adverse event)を最小限に抑えるか又は予防するために、MTX、試験薬と併用投与され、MTXの用量は、臨床試験の開始から終了時まで維持しながら服用するように指示した。患者は、試験薬に対する過敏反応を予防するために、試験者の裁量で、試験薬の投与を開始する30~60分前の時点で次のように予備投薬を受けることができた(例:抗ヒスタミン剤[2~4mgクロルフェニラミン等価用量]、ヒドロコルチゾン、パラセタモール及び/又は鎮静作用のない抗ヒスタミン剤[10mgセチリジン等価用量]、ただし、これに限定されない)。
【0167】
2回の完全な用量が投与され、試験者の裁量に基づいて、安全性に懸念のない患者は、投与の42日前にプレフィルドシリンジ(PFS、Pre-filled syringe)で投与されるインフリキシマブSCとプラセボIV、又は、インフリキシマブIVとプラセボSC(PFS)投与群に無作為に割り付けられた。投与の無作為割付は、国、第2週での血清CRP濃度(0.6mg/dL以下又は0.6mg/dL超過)、及び第6週での体重(100kg以下又は100kg超過)によって層別化された。最低218人の活動性関節リウマチ患者が2つの臨床試験群に1:1の比率で無作為に割り付けられ、第54週まで試験薬が投与された。第30週まで盲検を維持するために、二重プラセボ設計が用いられた(表2)。
【0168】
【表2】
【0169】
1群に割り付けられた患者には、追加で3回用量のインフリキシマブIVが第6週及びその後第22週まで8週(第14週及び第22週)ごとに投与され、プラセボSCは第6週及びその後第28週まで2週ごとに投与された。その後インフリキシマブIVは、第30週にインフリキシマブSC(PFS)に切り替えられた。インフリキシマブSC(PFS)は、第54週まで投与された。2群に割り付けられた患者には、インフリキシマブSC(PFS)が第6週に初回投与され、その後2週ごとの投与が第54週まで続けられた。プラセボIVは、第6、14、及び22週に投与された。
【0170】
インフリキシマブSC(二重盲検期間はプラセボSC)は、各試験機関を訪問する際(第6、14、22、24~28[PK評価のための訪問をする患者]、30、38、46、54週)には、医療関係者が注射し、その他のすべての週(第8、10、12、16、18、20、24~28[PK評価のための訪問をしない患者]、32、34、36、40、42、44、48、50、52週)には、適切な注射法の訓練を受けており、試験者が適切であると認めた場合は、患者が自己注射することができた。
【0171】
特定の国では、第46週から2週ごとにインフリキシマブSCがオートインジェクター(AI、auto-injector)により自己投与された。インフリキシマブSC(AI)の使用可能性(Usability)を評価するために、自己投薬の前後に診断アンケート、自己投薬の診断チェックリスト、潜在的リスクのチェックリストの評価を行った。
【0172】
パート2の臨床評価、採血、及び臨床試験の種類別訪問は、パート1と同様に行われ、評価スケジュールに記載された時点で採取及び評価が行われた。
【0173】
結果
1-1.安全性評価
有害事象のまとめ
安全性評価は、パート1における二次評価項目として、免疫原性、過敏反応のモニタリング(遅延型過敏反応のモニタリングを含む)、バイタルサインの測定(血圧、心拍数及び呼吸数、体温を含む)、体重、インターフェロン-γ遊離試験、胸部X線、B型、C型、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2)の感染状態、身体検査の所見、12誘導心電図、有害事象(重大な有害事象を含む)、特別関心対象の有害事象(注入関連反応/過敏反応/アナフィラキシー反応[投薬関連反応]、遅延型過敏反応、注射部位反応、感染症、及び悪性腫瘍)、結核の兆候及び症状、臨床試験室分析、妊娠検査、過去の薬物歴、及び現在の併用薬物、局所部位の痛み(10cm視覚的アナログ尺度(Visual Analogue Scale、VAS)による評価)などについて評価を行った。
【0174】
本研究の累積安全性データは、臨床試験終了の訪問まで臨床薬との相関関係なく発生した有害事象(そして深刻な有害事象)が含まれており、維持段階(第6週~第54週)中に発生した治療後の有害事象の全般的なまとめは、表3に示した。全般的に109件の治療後の有害事象が33人(68.8%)の患者で発生しており、IVコホート(コホート1)で9人(69.2%)、SCコホート全体(コホート2、3、4)で24人(68.6%)であり、SCコホート全体でIVコホートと類似した割合を示した。また、ほとんどの治療後の有害事象のレベルは、1等級もしくは2等級であり、すべての治療後の有害事象のうち、合計23人(47.9%)の患者で発生した有害事象が本剤と関連しているものとみなされた。
【0175】
治療後の重大な有害事象は、合計6人(12.5%)の患者で発生しており、それぞれIVコホート(コホート1)で1人(7.7%)、SCコホート全体(コホート2、4)で5人(14.3%)発生した。SCコホートのうちコホート3では、治療後の重大な有害事例が発生しなかった。治療後の重大な有害事象のレベルは、2等級もしくは3等級であり、このうち本剤と関連しているとみなされる患者は、コホート4で2人(16.7%)報告された。また、すべての治療後の重大な有害事象のうち、重要な医療事故という研究者の判断の下、コホート2で1人(9.1%)が第30週の投与後に、コホート3で2人(16.7%)がそれぞれ第30週と第32週の投与後に、本剤の投与を中断された。
【0176】
治療後の有害事象として投薬関連反応は、注入関連反応、過敏症、又はアナフィラキシーが、合計4人(8.3%)の患者で発生しており、IVコホート(コホート1)で1人(7.7%)、SCコホート全体(コホート2、3)では3人(8.6%)発生した。SCコホートのうちコホート4では、治療後の有害事象としての投薬関連反応である、注入関連反応、過敏症、又はアナフィラキシーが発生しなかった。インフリキシマブの投薬関連反応は、薬物に対する抗体(ADA)と関連するため(Remsima SmPC2017)、投薬関連反応を示した患者には、薬物に対する抗体(ADA)有無を調査した。薬物に対する抗体(ADA)及び中和抗体(NAb)に陽性反応を示した患者は、合計2人(コホート1、2でそれぞれ1人ずつ)であった。コホート2の患者1人は、用量負荷期間である第0週及び第2週で2回のインフリキシマブIVの投与を受け、第6週と第8週で合計2回インフリキシマブSCを投与された。投薬関連反応は、第6週と第8週で発生し、第6週及び臨床試験終了の訪問(第8週訪問から10週間後に行われた)で薬物に対する抗体及び中和抗体で陽性が確認された。コホート1の患者1人は、第38週で投薬関連反応が発生し、第30週と第38週、そして臨床試験終了の訪問(第38週訪問から10週間後に行われた)で薬物に対する抗体及び中和抗体で陽性が確認された。
【0177】
治療後の有害事象(注射部位反応)は、SCコホート全体(コホート2、3、4)で合計5人(14.3%)発生しており、レベルは、すべて1等級又は2等級であった。IVコホート(コホート1)では、治療後の有害事象(注射部位反応)が報告されなかった。注射部位反応を示した患者に対しても薬に対する抗体(ADA)有無を評価し、5人のうち1人(コホート2)が、注射部位反応が発生する1日前である第6週訪問で薬に対する抗体(ADA)及び中和抗体(NAb)に陽性反応を示した。
【0178】
治療後の有害事象(感染)は、IVコホート(コホート1)で5人(38.5%)、SCコホート全体(コホート2、3、4)では13人(37.1%)発生した。
【0179】
治療後の有害事象により本剤の投与を中止したケースは、SCコホート(コホート2、3、4)で6人(17.1%)であり、報告された有害事象は、抗リン脂質抗体症候群、注射部位反応、投薬関連反応、肺結核、及び潜伏結核感染症であった。IVコホートでは、治療後の有害事象(感染)が発生しなかった。
臨床試験期間中に報告された死亡例はなかった。
【0180】
【表3-1】

【表3-2】

*各まとめ内容において、患者1人あたり1件を超える有害事象が報告された場合は、1件として算出し、かつ最も深刻な場合のみ算出した。各事象は、「可能な(Possible)」、「蓋然性のある(Probable)」、又は「確実な(Definite)」関連性が認められた場合のみ、関連ありと判断した。
【0181】
免疫原性
一般的に、薬物に対する抗体(ADA)に陽性を示す患者の割合は、SCコホートで低く、第54週では、ほとんどの患者が薬物に対する抗体(ADA)に陰性を示した。また、SCの用量が増加するほど、薬物に対する抗体(ADA)に陽性を示す割合が低い傾向にあった。第54週で薬物に対する抗体(ADA)に陽性を示した患者数は、コホート1から4までそれぞれ9人(69.2%)、4人(36.4%)、2人(16.7%)、そして2人(16.7%)であった(表4)。
【0182】
【表4-1】

【表4-2】

*略語:ADA、薬物に対する抗体
NAb、中和抗体
**第6週の投与前に一度も薬物に対する抗体と中和抗体で陽性が確認されたことのない患者のうち、第6週の投与後に一度でも薬物に対する抗体と中和抗体で陽性が確認されたことのある患者を算出した。
【0183】
視覚的アナログ尺度(VAS)による局所部位の痛みの評価
視覚的アナログ尺度(VAS)の範囲は、0~100mmであり、スコアが高いほど、より深刻な痛みを示す。初回のSC投与(第6週)では、IVコホート(コホート1)よりSCコホート(コホート2、3、4)の方で少し高いレベルの局所部位の痛みが観察された。しかし、SCの投与が繰り返されるにつれ、局所部位の痛みは徐々に減少し、SCコホート(コホート2、3、4)でIVコホート(コホート1)より少し低いレベルの痛みが報告された。SCコホートの中では、SC90mg製剤を2回投与されなければならないコホート4が、他の2つのSCコホートに比べて痛みが強いと示されたが、IVコホート(コホート1)よりは低いレベルの痛みが報告される傾向にあった(表5)。
【0184】
【表5-1】

【表5-2】
【0185】
1-2.治療効果の評価
DAS28によって測定された疾患活動性
二次有効性の評価項目として、ベースラインと比べた第2、6、14、22、30、及び54週のDAS28(C reactive protein;CRP)、DAS28(erythrocyte sedimentation rate;ESR)を分析した結果、3つの異なる用量のインフリキシマブSCとインフリキシマブIVコホート間に、臨床的に大きな差はなく、時間が経つにつれ実際値が減る傾向にあることを確認した。
【0186】
DAS28によって測定された疾患活動性の実際値とベースラインからの変化値が、表6(CRP)と表7(ESR)にまとめられている。各コホートで、第2、6、14、22、30、及び54週にDAS28で測定した疾患活動性の平均スコアは、ベースラインに比べて減少した。DAS28(CRP)の場合は第22週から、DAS28(ESR)の場合は第30週から全SCコホートがIVコホートよりも低いDAS28スコアを示し、これは、SCコホートでより高く示されたCtroughと一貫している。
【0187】
【表6-1】

【表6-2】

【表6-3】
【0188】
【表7-1】

【表7-2】

【表7-3】
【0189】
EULAR反応評価
DAS28(CRP)に基づいて分類されたEULAR(European League Against Rheumatism)反応評価において、良好な反応又は重症度反応を示した患者の割合は、各治療群間で類似していた(表8)。DAS28(ESR)に基づいて分類されたEULAR反応評価の結果も各治療群間で類似していた(表9)。
【0190】
【表8-1】

【表8-2】
【0191】
【表9-1】

【表9-2】
【0192】
ACR20による臨床的反応を達成した患者の割合
第14週から第54週までのACR20(American College of Rheumatology 20% improvement)分類基準に基づく臨床的反応を満した患者の割合は、IVコホート(コホート1)とSCコホート(コホート2、3、4)間で類似していた(表10)。
【0193】
【表10】
【0194】
実施例2.関節リウマチ(RA)患者におけるインフリキシマブの皮下投与に関するモデリング
PK-PDモデルの構築
インフリキシマブの皮下投与(SC)に関する薬物動態ー薬力学(PK-PD)モデルは、将来の投与量及びレジメンのPKをシミュレーションするだけでなく、インフリキシマブSCの有効性及び安全性をシミュレーションするための定量的薬物動態(PK)モデルとの統合のために確立された。薬物動態ー薬力学モデルは、健康な対象者、強直性脊椎炎(Ankylosing Spondylitis、AS)患者、関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis、RA)及びクローン病(Crohn’s disease、CD)患者のインフリキシマブ静脈投与データと、クローン病(CD)患者、リウマチ関節炎(RA)患者、及び健康な対象者(Healthy volunteer)のインフリキシマブ皮下投与データを基にした(Clinicaltrials.gov 識別記号NCT01220518、NCT01217086、NCT02096861)。
【0195】
前記のようなデータを基に構築されたPK-PDモデルは、インフリキシマブの適応症(関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、又は強直性脊椎炎)患者に対する皮下投与の結果をシミュレーションするのに用いることができる。
【0196】
PK-PDモデリング分析は、非線形混合効果モデリングアプローチ法を使って行われた。データ分析は、比例誤差モデルの比例除去を含む1-コンパートメントモデルから始まり、最終モデルは、中央区画からの線形除去(linear elimination)を有する2-コンパートメントモデルで行われた。薬物動態のすべてのモデルは、クリアランス(CL)及び分布容積(volumes)の側面で変数化された。
【0197】
最終PKモデルは、インフリキシマブ臨床試験の各濃度-時間曲線下面積(AUCtau;area under the concentration-time curve)及び最低血中濃度(Ctrough;minimum concentration immediately before the next application)パラメータの推定値をそれぞれの実際の用量、用法、及び投与経路に適用してプロフィールを予想し、前記データは、中央値と90%信頼区間により記述した。また、固定の用量、用法、及び投与経路に対する各体重別の有効性を評価するために、追加のシミュレーションを行った。皮下用量のPK-PDモデリング及びシミュレーションは、NONMEM v7.2により行われた。
【0198】
関節リウマチ(RA)患者におけるモデリングのための皮下(SC)剤形の用量及びレジメン(regimen)シナリオ
以下のようなシミュレーション(simulation)シナリオを基に薬物動態の側面を予測し、これを基に有効性(efficacy)と安全性(safety)を予測して、維持量3mg/kgを8週間隔で投与するインフリキシマブ静脈(IV)注射法と比較評価した(表11)。
【0199】
【表11】
【0200】
関節リウマチ患者の体重別インフリキシマブSC用量・用法に関するインフリキシマブ曝露パラメータ推定値
インフリキシマブSC用量・用法の曝露(exposure)薬物動態パラメータ(AUCτ、Ctrough、及びCmax)は、体重50~130kgの範囲において10kgずつに分けてシミュレーションされ、体重別インフリキシマブSC曝露(exposure)の最低血中濃度(Ctrough)、濃度-時間曲線下面積(AUCτ)の推定値は、薬物投与量との相関関係を示した(表12)。
【0201】
【表12-1】

【表12-2】

【表12-3】

【表12-4】

【表12-5】

【表12-6】
【0202】
実施例3.クローン病(CD)又は潰瘍性大腸炎(UC)患者におけるインフリキシマブ皮下投与時の安全性及び治療効果の評価
本インフリキシマブ臨床試験は、第54週まで活動性クローン病又は活動性潰瘍性大腸炎患者において、インフリキシマブSCとインフリキシマブIV間の薬物動態、有効性、及び安全性を評価するために設計された、公開、無作為化、多施設共同、並行群間、第1相試験であり、本臨床は、2つのパートで構成されている。
【0203】
パート1は、クローン病(CD)患者においてインフリキシマブSCの最適用量を確認するために設計されており、第22週と第30週の間の定常状態の濃度-時間曲線下面積(AUCτ)によって最初の30週間にわたる5mg/kgインフリキシマブIVに相応するインフリキシマブSCの最適用量を確認した。パート1の臨床試験の期間は、スクリーニング(最大3週間)から臨床試験終了の訪問まで含めて、最大65週間であった。
【0204】
パート2は、クローン病(CD)又は潰瘍性大腸炎(UC)患者において、インフリキシマブSCがインフリキシマブIVより薬物動態学的に劣っていないことを確認するために設計されており、第22週における投与前濃度(Ctrough)により証明する。パート2での5mg/kgインフリキシマブIVに相応するインフリキシマブSCの最適投与量及び投与間隔は、パート1の最初の30週間にわたる薬物動態及び有効性、薬力学、安全性データを基に、独立データ安全性モニタリング委員会(Data Safety Monitoring Board、DSMB)によって、次のように決定された。
●体重80kg未満の患者:インフリキシマブSC120mgを2週間隔で投与
●体重80kg以上の患者:インフリキシマブSC240mgを2週間隔で
【0205】
パート1
患者は、以下の基準を全て満たす場合、本臨床試験に登録することができた。
*クローン病活動指数(CDAI)スコアが220~450点で活動性疾患を患っている
*試験薬の初回投与の少なくとも3ヶ月以上前からクローン病と診断されている
*活動性クローン病の治療を受けたが、コルチコステロイド及び/又は免疫抑制剤療法の適切な全過程を投与されたにもかかわらず、反応を示していないか、忍容性がないか、医学的禁忌を有している
【0206】
患者は、以下の基準のいずれかに一つでも該当すれば、臨床試験に登録することができなかった。
*以前クローン病又は潰瘍性大腸炎の治療のために生物学的製剤及び/又は他の疾患の治療のためにTNFα阻害剤を投与されたことがある
*インフリキシマブ、その他すべてのミュリン及び/又はヒトタンパク質の賦形剤に対してアレルギーがある、又は免疫グロブリン製品に対して過敏症がある
*試験薬の初回投与(第0日)前の6ヶ月以内に活動性の腸膀胱瘻、後腹膜瘻、腸皮瘻、及び腸膣瘻がある。試験者の見解に基づき、臨床的に有意な症状のない腸瘻及び排液に問題のない肛門部瘻孔は可
*試験薬の初回投与(第0日)前に3回を超える小腸切除術を受けている
【0207】
本臨床試験は、スクリーニング、投与期間、臨床試験終了の3つの臨床試験期間で構成された。スクリーニングは、試験薬の初回投与の21日前と1日前の間に行われ、患者の研究に対する適格性を評価した。B型、C型、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2)感染、妊娠可能な女性における尿及び血清妊娠検査、大腸内視鏡、CRP、12誘導心電図、臨床試験室検査などを含むすべての検査を行った。また、結核患者を排除するためのインターフェロン-γ遊離試験(IGRA)と胸部X線検査も行った。
【0208】
第0週、0日に、すべての選定基準を満たし、除外基準のいずれにも該当しない患者が臨床試験に登録され、すべての登録患者に第0週と第2週の2回に渡って1回用量ずつインフリキシマブIVを投与した。患者は、試験薬に対する過敏反応を予防するために、試験者の裁量で、試験薬の投与を開始する30~60分前の時点で次のように予備投薬を受けることができた(例:抗ヒスタミン剤[2~4mgクロルフェニラミン等価用量]、ヒドロコルチゾン、パラセタモール及び/又は鎮静作用のない抗ヒスタミン剤[10mgセチリジン等価用量]、ただし、これらに限定されない)。
【0209】
2回の完全な用量が投与され、試験者の裁量に基づいて、安全性に懸念のない患者は、投与の42日前にインフリキシマブSC又はインフリキシマブIV投与群に無作為に割り付けられた。投与の無作為割付は、地域(ヨーロッパ又は非ヨーロッパ)、現時点におけるアザチオプリン、6-メルカプトプリン、又はMTXの治療への使用、第6週でのCDAI-70による臨床反応、及び第6週での体重(70kg以下又は70kg超過)によって層別化された。45人の活動性クローン病患者が登録され、そのうち44人の患者が4つの臨床試験コホートに1:1:1:1の比率で無作為に割り付けられ、第54週まで試験薬が投与された(表13)。
【0210】
【表13】
【0211】
コホート1に割り付けられた患者には、追加で7回用量のインフリキシマブIVが第6週及びその後8週(第14、22、30、38、46、及び54週)ごとに投与された。コホート2、3及び4に割り付けられた患者には、インフリキシマブSCの初回投与は第6週に行われ、インフリキシマブSCの追加投与は第54週まで2週ごとに行われた。コホート2、3及び4のすべての患者に最初に割り付けられた用量は、用量の確認後、最適用量に調整された。その後、最適用量による追加のSC注射は、第54週まで投与された。インフリキシマブSCは、各試験機関を訪問する際(第6、8、10、14、22、24、26、28、30、38、46、54週)には、医療関係者が注射し、その他の週(第12、16、18、20、32、34、36、40、42、44、48、50、52週)には、適切な注射法の訓練を受けており、試験者が適切であると認めた場合は、患者が自己注射することができた。
【0212】
患者は、臨床評価及び採血のために、事前に決められた時間間隔で試験機関を訪問した。各訪問において、患者は、有害事象(AE)や併用薬物に関する質問を受け、TBの臨床徴候及び症状についてモニタリングを受けた。一次薬物動態の評価項目は、第22週から第30週までの維持段階期間中に評価され、二次薬物動態の評価項目は、第54週までの投与期間中に評価され、分析用血液検体、有効性、PD、及び安全性評価は、評価スケジュールに記載された時点で採取及び評価が行われた。
【0213】
臨床試験終了の訪問は、維持段階の終了時から8週間後に行った。ただ、患者が途中で臨床試験を中止することとなった場合には、最後の投与から8週間後の時点で行った。中途脱落した患者の場合は、中途脱落日又は中途脱落した翌日にすべての臨床試験手順を実施し、患者が最後の投与を受けた後、8週となる時点ですべての臨床試験を終了するようにあらゆる努力を傾けた。
【0214】
パート2
パート2は、パート1で確認された最初の30週間にわたるPK、有効性、PD、及び安全性データを含むPKモデリングのレポートデータに関する独立データ安全性モニタリング委員会の検討に基づいて開始される。
【0215】
患者は、以下の基準を全て満たす場合、本臨床試験のパート2に登録することができる。
【0216】
活動性クローン病患者
*クローン病活動指数(CDAI)スコアが220~450点で活動性疾患を患っている
*試験薬の初回投与日の少なくとも3ヶ月以上前からクローン病と診断されている
*活動性クローン病の治療を受けたが、コルチコステロイド及び/又は免疫抑制剤療法の適切な全過程を投与されたにもかかわらず、反応を示していないか、忍容性がないか、医学的禁忌を有している
*以下の項目を一つ以上満たしている
‐血清CRP(C-reactive protein)濃度が0.5mg/dLを超える
‐糞便中カルプロテクチン濃度が100μg/gを超える
‐回腸結腸クローン病患者において大腸内視鏡検査(SES-CD)のスコアが6点以上、又は、回腸もしくは結腸クローン病患者において4点以上であり、少なくとも1ヶ所の潰瘍スコアがある
【0217】
活動性潰瘍性大腸炎患者
*Total Mayoスコアが6~12点、内視鏡検査スコアが2点以上で、活動性疾患を患っている
*試験薬の初回投与日の少なくとも3ヶ月以上前から潰瘍性大腸炎と診断されている
*活動潰瘍性大腸炎の治療を受けた、コルチコステロイド及び/又は6-メルカプトプリン又はアザチオプリンなどの一般的な治療薬剤に対して反応を示さなかったか、忍容性がないか、医学的禁忌を有している
【0218】
患者は、以下の基準のいずれかに一つでも該当すれば、臨床試験のパート2に登録することができない。
*以前クローン病又は潰瘍性大腸炎の治療のために生物学的製剤及び/又は他の疾患の治療のために、TNFα阻害剤を投与されたことがある
*インフリキシマブ、その他すべてのミュリン及び/又はヒトタンパク質の賦形剤に対してアレルギーがある、又は免疫グロブリン製品に対して過敏症がある
*試験薬の初回投与(第0日)前の6ヶ月以内に活動性の腸膀胱瘻、後腹膜瘻、腸皮瘻、及び腸膣瘻があるクローン病患者。試験者の見解に基づき、臨床的に有意な症状のない腸瘻及び排液に問題のない肛門部瘻孔は可
*試験薬の初回投与(第0日)前に3回を超える小腸切除術を受けたクローン病患者
*スクリーニング前の2週間以内にコルチコステロイド又は5-アミノサリチル酸を投与された潰瘍性大腸炎患者
【0219】
パート2は、スクリーニング、投与期間、臨床試験終了の3つの臨床試験期間で構成される。スクリーニングは、試験薬の初回投与の42日前と0日前の間に行われ、患者の研究に対する適格性を評価するものである。B型、C型、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2)感染、妊娠可能な女性における尿及び血清妊娠検査、大腸内視鏡(クローン病患者)は、直腸S状結腸鏡検査(潰瘍性大腸炎患者)、CRP、12誘導心電図、臨床試験室検査などを含むすべての検査を行う。また、結核患者を排除するためのインターフェロン-γ遊離試験(IGRA)と胸部X線検査も行う。
【0220】
第0週、0日に、すべての選定基準を満たし、除外基準のいずれにも該当しない患者が臨床試験に登録され、すべての登録患者に第0週と第2週の2回に渡って1回用量ずつインフリキシマブIVを投与する。患者は、試験薬に対する過敏反応を予防するために、試験者の裁量で、試験薬の投与を開始する30~60分前の時点で次のように予備投薬を受けることができる(例:抗ヒスタミン剤[2~4mgクロルフェニラミン等価用量]、ヒドロコルチゾン、パラセタモール及び/又は鎮静作用のない抗ヒスタミン剤[10mgセチリジン等価用量]、ただし、これらに限定されない)。
【0221】
2回の完全な用量が投与され、試験者の裁量に基づいて、安全性に懸念のない患者は、投与の42日前にインフリキシマブSC又はインフリキシマブIV投与群に無作為に割り付けられる。投与の無作為割付は、現時点におけるアザチオプリン、6-メルカプトプリン、又はMTXの治療への使用有無、疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎)、第6週でのCDAI-70によるクローン病の臨床反応又は部分Mayoスコアによる潰瘍性大腸炎の臨床反応、及び第6週での体重(80kg未満又は80kg以上)により層別化される。最低130人の活動性クローン病患者又は活動性潰瘍性大腸炎患者が2つの臨床試験群に1:1の比率で無作為に割り付けられ、第54週まで試験薬が投与される(表14)。
【0222】
【表14】
【0223】
1群に割り付けられた患者には、追加のインフリキシマブIVが第6週及びその後第22週まで8週(第14週及び第22週)ごとに投与され、その後第30週からインフリキシマブSCの投与に切り替えられ、第30週での体重を基にSCの用量が決められる。この用量が第54週まで2週ごとに投与される。2群に割り付けられた患者には、第6週での体重を基にインフリキシマブSCの用量が決められ、この用量が第6週から第54週まで2週ごとに投与される。用量の増量は、試験者の判断により第30週以降から許容される。インフリキシマブSCは、各試験機関を訪問する際(第6、14、22、24、26、28、30、38、46、54週)には、医療関係者が注射し、その他の週には、適切な注射法の訓練を受けており、試験者が適切であると認めた場合には、患者が自己注射することができる。
【0224】
一次薬物動態の評価項目は、第22週に評価され、二次薬物動態の評価項目は、第22週から第30週までの維持段階期間中及び第54週までの投与期間中に評価される。分析用の血液検体、有効性、PD、及び安全性評価は、評価スケジュールに記載された時点で採取及び評価を行う。
【0225】
臨床試験終了の訪問は、維持段階の終了時から2週間後に行う。ただ、患者が途中でSC投与後に臨床試験を中止することとなった場合には、最後の投与から2週間後の時点で行う。患者が途中でIV投与後に臨床試験を中止することとなった場合には、最後の投与から8週間後の時点で行う。中途脱落した患者の場合は、中途脱落日又は中途脱落の翌日にすべての臨床試験手順を実施し、患者が最後の投与を受けた後、決められた時点ですべての臨床試験を終了できるようにあらゆる努力を傾ける。
【0226】
パート2の臨床評価、採血、及び臨床試験の種類別訪問は、パート1と同様に行われ、評価スケジュールに記載された時点で採取及び評価を行う。
【0227】
結論
3-1.安全性評価
有害事象のまとめ
安全性評価は、パート1の二次評価項目として、免疫原性、過敏反応のモニタリング(遅延型過敏反応のモニタリングを含む)、バイタルサインの測定(血圧、心拍数及び呼吸数、体温を含む)、体重、インターフェロン-γ遊離試験、胸部X線、B型、C型、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2)感染状態、身体検査の所見、12誘導心電図、有害事象(重大な有害事象を含む)、特別関心対象の有害事象(注入関連反応/過敏反応/アナフィラキシー反応[投薬関連反応]、遅延型過敏反応、注射部位反応、感染症、及び悪性腫瘍)、結核の兆候及び症状、臨床試験室分析、妊娠検査、過去の薬物歴、及び現在の併用薬物、局所部位の痛み(100mm視覚的アナログ尺度(Visual Analogue Scale、VAS)による評価)などについて評価を行った。
【0228】
本研究の累積安全性データは、第30週まで含まれており、維持段階(第6週~第30週)中に発生した治療後の有害事象の全般的なまとめは、表15に示した。全般的に70件の治療後の有害事象が28人(63.6%)の患者で発生しており、IVコホート(コホート1)で8人(61.5%)、SCコホート全体(コホート2-4)で20人(64.5%)発生し、両グループで類似した割合を示した。また、ほとんどの治療後の有害事象のレベルは、1等級もしくは2等級であり、すべての治療後の有害事象のうち9人(20.5%)の患者で発生した有害事象が本剤と関連しているものとみなされた。
【0229】
治療後の重大な有害事象は、8人(18.2%)の患者で発生しており、IVコホート(コホート1)で2人(15.4%)、SCコホート全体(コホート2-4)で6人(19.4%)発生した。そのすべては、本剤と関連しないものとみなされた。
【0230】
治療後の有害事象として投薬関連反応は、注入関連反応、過敏症、又はアナフィラキシーが、IVコホート(コホート1)で1人(第30週、投与当日)、SCコホート(コホート4)で1人(第6週、投与2日後)報告された。インフリキシマブの投薬関連反応は、薬物に対する抗体(ADA)と関連するため(Remsima SmPC 2017)、投薬関連反応を示した患者には、薬物に対する抗体(ADA)有無を調査した。薬物に対する抗体(ADA)及び中和抗体(NAb)に陽性反応を示した患者は、たった1人(IVコホート[コホート1])であり、用量負荷期間に投与した後、維持段階で第6週と第14週にIV製剤を投薬され、第22週から陽性が確認されており、第30週に投与関連反応が発生した。
【0231】
治療後の有害事象として注射部位反応は、SCコホート(コホート2-4)の4人(12.9%)の患者で発生したが、レベルは、すべて1等級又は2等級であった。注射部位反応を示した患者に対しても、薬に対する抗体(ADA)有無を評価し、4人のうち2人が臨床期間中に薬に対する抗体(ADA)及び中和抗体(NAb)に陽性反応を示した。
【0232】
治療後の有害事象として感染は、IVコホート(コホート1)で2人(15.4%)、SCコホート(コホート2-4)で7人(22.6%)発生した。
【0233】
治療後の有害事象により本剤の投与を中止したケースは、IVコホート(コホート1)で1人(7.7%)、SCコホート(コホート2-4)で4人(12.9%)であった。このうち本剤と関連するとみなされた治療後の有害事象は、コホート3の1人のみであり、有害事象は1等級の潜伏結核であった。
【0234】
臨床試験期間中に報告された死亡例は2件(コホート1とコホート3でそれぞれ1人)であった。IVコホート(コホート1)で患者1人が第6週の投薬を完了した後、約1ヶ月後に自宅で心臓突然死(Sudden cardiac death)したが、本剤とは関連していないことが報告された。該患者は、高血圧と慢性心不全を患っていた。また、SCコホート(コホート3)で患者1人が第30週の投薬後、当日の夜に自宅で突然死(Sudden death)したが、本剤とは関連していないことが報告された。該患者は、慢性大動脈石灰化、糖尿病、肥満、及び代謝症候群を患っていた。
【0235】
【表15-1】

【表15-2】

*各まとめ内容において、患者1人あたり1件を超える有害事象が報告された場合は、1件として算出し、かつ最も深刻な場合のみ算出した。各事象は、「可能な(Possible)」、「蓋然性のある(Probable)」、又は「確実な(Definite)」関連性が認められた場合のみ、関連ありと判断した。
【0236】
免疫原性
一般的に、薬物に対する抗体(ADA)に陽性を示す患者の割合は、SCコホートで低く、第30週では、ほとんどの患者が薬物に対する抗体(ADA)に陰性を示した。第30週で薬物に対する抗体(ADA)に陽性を示した患者数は、コホート1から4までそれぞれ8人(61.5%)、0人(0.0%)、3人(25.0%)、そして1人(12.5%)であった(表16)。
【0237】
【表16】

*略語:ADA、薬物に対する抗体
NAb、中和抗体
*訪問別パーセンテージは、無作為に割り付けられた患者数を分母として計算された。
分母:第0週と第6週でADA陰性を示した患者数
分子:第14週と第30週に一回でもADAもしくはNAb陽性を示した患者数
【0238】
視覚的アナログ尺度(VAS)による局所部位の痛みの評価
視覚的アナログ尺度(VAS)の範囲は、0~100mmであり、スコアが高いほど、より深刻な痛みを示す。1回の訪問あたり2回注射しなければならないコホート3及び4では、他のコホートより少し高いレベルの局所部位の痛みが観察された。全体的に、すべてのコホートにおいて、低いレベルの局所部位の痛みが観察された(平均21.05mm以下)(表17)。
【0239】
【表17】
【0240】
3-2.治療効果の評価
CDAIによって測定された疾患活動性
二次有効性の評価項目として、ベースラインと比べた第2、6、14、22、及び30週のCDAI(Crohn’s disease activity index)スコアを分析した結果、各コホートにおいて、時間が経つにつれ実際値が減る傾向にあることを確認した。無作為割付の層化変数の一つである、第6週におけるCDAI-70基準に反応した患者の割合は、コホート2が他のコホートよりも若干高く、これを考慮して有効性の解釈に注意を払った。
【0241】
CDAIによって測定された疾患活動性の実際値とベースラインからの変化値を表18にまとめた。
【0242】
【表18-1】

【表18-2】
【0243】
CDAI-70、CDAI-100反応基準に基づく反応評価
CDAIスコアに基づいて、CDAI-70反応基準(ベースライン値に比べてCDAIスコアが70点以上減少した患者)に反応を示した患者の割合は、各治療群間で類似していた(表19)。CDAI-100反応基準(ベースライン値に比べてCDAIスコアが100点以上減少した患者)に反応を示した患者の割合も、各治療群間で類似していた(表20)。
【0244】
【表19】
【0245】
【表20】
【0246】
臨床的寛解の評価
臨床的寛解(CDAI絶対スコアが150未満である患者)を達成した患者の割合は、各治療群間で類似していた。投薬維持期間(第6週~第30週)にコホート2で臨床的寛解を達成した患者が比較的高い割合で観察されたが、コホート2で6人(54.5%)の患者が既に第6週で臨床的寛解を達成しており、ほとんどの患者が第30週まで臨床的寛解状態を維持した(表21)。
【0247】
【表21】
【0248】
実施例4.クローン病(CD)患者におけるインフリキシマブ皮下投与に関するモデリング
PK-PDモデルの構築
実施例2の方法と同様に行われた。
クローン病(CD)患者におけるモデリングのための皮下(SC)剤形の用量及びレジメン(regimen)シナリオ
以下のようなシミュレーション(simulation)シナリオを基に薬物動態の側面を予測し、これを基に有効性(efficacy)と安全性(safety)を予測して、維持量5mg/kgを8週間隔で投与するインフリキシマブ静脈(IV)注射法と比較評価した(表22)。
【0249】
【表22】
【0250】
クローン病(CD)患者の体重別インフリキシマブSC用量・用法に関するインフリキシマブ曝露パラメータ推定値
インフリキシマブSC用量・用法の曝露(exposure)薬物動態パラメータは、体重50~130kgの範囲において10kgずつ分けてシミュレーションされ、SC曝露(exposure)の最低血中濃度(Ctrough)、濃度-時間曲線下面積(AUCτ)の推定値は、薬物投与量との相関関係を示した(表23)。
【0251】
【表23-1】

【表23-2】

【表23-3】

【表23-4】
【0252】
(付記)
本開示は以下の態様を含む。
項1:抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有する医薬組成物を患者に投与する段階を含む、TNFα関連疾患の治療方法であって、患者に用量60~300mgの抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を1~8週間隔で皮下投与する、方法。
項2:TNFα関連疾患は、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、及び強直性脊椎炎からなる群から選択される、項1に記載の方法。
項3:TNFα関連疾患は、関節リウマチである、項2に記載の方法。
項4:患者に用量90~180mgの抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を投与する、項3に記載の方法。
項5:TNFα関連疾患は、潰瘍性大腸炎、クローン病、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、及び強直性脊椎炎からなる群から選択される、項2に記載の方法。
項6:患者に用量120~240mgの抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を投与する、項5に記載の方法。
項7:患者に用量80~100mg、110~130mg、170~190mg、又は230~250mgの抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を投与する、項1に記載の方法。
項8:患者に用量90mg、120mg、180mg、又は240mgの抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を投与する、項7に記載の方法。
項9:患者の体重に応じて投与量を決定する段階をさらに含み、患者の体重が80kg未満の場合は90~180mg、80kg以上の場合は190~270mgの抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を投与する、項1に記載の方法。
項10:患者に抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を1、2、3、4、5、6、7、又は8週間隔で投与する、項1に記載の方法。
項11:患者に抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を2又は4週間隔で投与する、項10に記載の方法。
項12:抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片は、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)と併用投与される、項1に記載の方法。
項13:前記疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)は、メトトレキサート(Methotrexate)、レフルノミド(Leflunomide)、スルファサラジン(Sulfasalazine)、及びヒドロキシクロロキン(Hydroxychloroquine)からなる群から選択されるものである、項12に記載の方法。
項14:患者は、皮下投与の前に、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を少なくとも1回以上静脈投与された患者である、項1に記載の方法。
項15:患者は、1回あたり用量1~10mg/kgの抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を投与された患者である、項14に記載の方法。
項16:最後の静脈投与から2~8週目に初回の皮下投与が行われる、項14に記載の方法。
項17:患者に皮下投与した後、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片の最低血中濃度(Ctrough)が3~16μg/mLに保持される、項1に記載の方法。
項18:患者に皮下投与した後、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片の最低血中濃度(Ctrough)が9~32μg/mLに保持される、項1に記載の方法。
項19:皮下投与後の患者は、下記特性のうち一つ以上を有する、項1に記載の方法:
a)DAS28(Disease Activity Score in 28 joints)が少なくとも2.0以上減少した;又は
b)CDAI(Crohn’s disease activity index)が少なくとも70以上減少した。
項20: 皮下投与前の患者は、下記特性のうち一つ以上を有する、項1に記載の方法:
a)メトトレキサートを含む疾患修飾性抗リウマチ薬(disease-modifying anti rheumatic drugs、DMARD)に対して反応が不十分である;
b)メトトレキサート及びその他のDMARDによる治療歴がない;
c)一般的な治療に適正な反応を示さず、重症軸性症状及び炎症に関連する血清学的指標の上昇が見られる;又は
d)メトトレキサート、シクロスポリン(Cyclosporine)、又は皮膚光化学療法(psoralen ultraviolet A therapy、PUVA)を含む全身療法に反応しないか、禁忌であるか、不耐性を有している。
項21:皮下投与前の患者は、下記特性のうち一つ以上を有する、項1に記載の方法:
a)コルチコステロイド剤(Corticosteroid)、6-メルカプトプリン(6-Mercaptopurine)、アザチオプリン(Azathioprine)、又は免疫抑制剤の治療に適切な反応を示さないか、忍容性がない、又はこのような治療方法が禁忌である;又は
b)抗生物質、排出法、又は免疫抑制治療を含む一般的な治療に反応を示さない。
項22:抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片は、
配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域;及び
配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域を含むものである、項1に記載の方法。
項23:抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片は、
配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び
配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含むものである、項1に記載の方法。
項24:抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片は、
配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖;及び
配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含むものである、項1に記載の方法。
項25:抗-TNFα抗体は、インフリキシマブである、項1に記載の方法。
項26:抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有する組成物は、(A)抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片90~180mg/ml;(B)ポリソルベート0.02~0.1%(w/v);(C)ソルビトール1~10%(w/v);及び(D)アセテートを含む緩衝剤1~50mMを含む、項1に記載の方法。
項27:抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有する組成物は、プレフィルドシリンジ(pre-filled syringe)又は自動注射器(auto-injector)に充填されて患者に投与される、項1に記載の方法。
項28:抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有するTNFα関連疾患治療用の医薬組成物であって、
用量60~300mgの抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を1~8週間隔で皮下投与する、TNFα関連疾患治療用の医薬組成物。
項29:(a)抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を含有する医薬組成物;及び
(b)TNFα関連疾患患者を治療するために、用量60~300mgの抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片を1~8週間隔で皮下投与することを指示する指示書を含む、キット。
項30:患者に投与してTNFα関連疾患を治療するための医薬組成物の製造における、抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片の用途であって、用量60~300mgの抗-TNFα抗体又はその抗原結合断片が1~8週間隔で皮下投与される、用途。
【0253】
配列表
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】
図1
図2
【配列表】
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