(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023357
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】金属結合モチーフを有する複合ポリペプチド及びそれを備える分子構築物
(51)【国際特許分類】
C07K 2/00 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
C07K2/00 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197399
(22)【出願日】2023-11-21
(62)【分割の表示】P 2021556739の分割
【原出願日】2020-03-25
(31)【優先権主張番号】62/823,626
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】517405987
【氏名又は名称】イミュンワーク インク.
【氏名又は名称原語表記】Immunwork Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ツェ・ウェン
(72)【発明者】
【氏名】チュウ, シン・マオ
(72)【発明者】
【氏名】ティアン, ウェイ・ティング
(72)【発明者】
【氏名】ユー, ユー・フシアング
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機能的要素を生体分子、特にペプチドベースの分子の特異的な部位に効果的に結合する方法を提供する。
【解決手段】中心コアは、2~10個のリシン(K)残基を備え、K残基のうちの任意の2個は、相互に隣接し又はフィラーによって分離される。SH反応性基は、中心コアの最初又は最後のK残基にそれとアミド結合を形成することによって連結される。他の場合では、中心コアが末端スペーサーをさらに備え、SH反応性基は、末端スペーサーの末端アミノ酸残基にそれとアミド結合を形成することによって連結される。末端スペーサーは、最初のK残基のN末端に連結されたN末端スペーサー又は最後のK残基のC末端に連結されたC末端スペーサーであり得る。フィラー及び末端スペーサーの各々は、独立して、(1)1~12個の非Kアミノ酸残基又は(2)エチレングリコールユニットの1~12個の反復を有するPEG化アミノ酸を備える、リンカーユニット。
【選択図】
図7B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンカーユニットであって、
中心コアであって、
2~10個のリシン(K)残基と、
選択的に、1以上のフィラーであって、前記K残基のうちの任意の2個が相互に隣接し又は前記フィラーによって分離される、1以上のフィラーと、
選択的に、末端スペーサーであって、該末端スペーサーは、最初のK残基のN末端に連結されたN末端スペーサー又は最後のK残基のC末端に連結されたC末端スペーサーであり、前記フィラー及び前記末端スペーサーの各々は、独立して、(1)1~12個の非Kアミノ酸残基又は(2)エチレングリコール(EG)ユニットの1~12個の反復を有するPEG化アミノ酸を備える、末端スペーサーと、
前記中心コアの前記最初又は最後のK残基にそれとアミド結合を形成することによって連結されたSH反応性基、又は前記末端スペーサーが存在する場合、該末端スペーサーの末端アミノ酸残基にそれとアミド結合を形成することによって連結されたSH反応性基であって、前記中心コアは前記SH反応性基に連結されたアミノ酸残基に又はその付近に局在負電荷を担持する、SH反応性基と、
を備える中心コアと、
2~10個の標的化要素、エフェクター要素又は薬物動態的要素であって、
各標的化要素、エフェクター要素又は薬物動態的要素が前記コアのK残基に連結され、又は
前記リンカーユニットが2~10個の連結アームをさらに備える場合、各連結アームの一方の末端が前記K残基のε-アミノ基とアミド結合を形成することを介して前記コアのK残基に連結され、各連結アームの他方の末端が各標的化要素、エフェクター要素又は薬物動態的要素に連結され、前記連結アームは2~12個の非Kアミノ酸残基を備えるペプチド又はEGユニットの2~24個の反復を有するポリエチレングリコール(PEG)鎖である、
2~10個の標的化要素、エフェクター要素又は薬物動態的要素と、
を備えるリンカーユニット。
【請求項2】
前記中心コアは、前記SH反応性基に連結されたアミノ酸残基に又はその付近に少なくとも1つのグルタミン酸(E)残基又はアスパラギン酸(D)残基を有して前記負電荷を付与する、請求項1に記載のリンカーユニット。
【請求項3】
前記局在負電荷は、前記SH反応性基に連結されたアミノ酸残基から開始して最初の5~15個のアミノ酸残基に存在する、請求項1に記載のリンカーユニット。
【請求項4】
前記エフェクター要素は、負に帯電した化学部分である、請求項1に記載のリンカーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、亜鉛カチオンと錯体を形成することができる短いオリゴペプチドである金属結合モチーフを有する複合ポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオコンジュゲーションは、生体分子と、生体分子であってもよいし生体分子でなくてもよい他の分子との間に共有結合を形成するように使用される技術である。生体分子は、一般に、有機体に存在し生物学的プロセスに必須となる分子をいう。生体分子は、天然及び合成のポリペプチド又はタンパク質、炭水化物、脂質、核酸並びに代謝物を含む。
【0003】
抗体又は抗体フラグメントを、毒素(すなわち、抗体-毒素結合体、つまり「ATC」)、細胞毒性薬物(すなわち、抗体-薬物結合体、つまり「ADC」)及び放射性核種(すなわち、抗体-放射性核種結合体、つまり「ARC」)で武装させる概念は、1970年代に生じた。そのようなバイオコンジュゲートの合成は、表面接触可能なリシン、システイン又はチロシン残基のカップリング並びに表面接触可能なリシン若しくはトリプトファン残基又はN及びC末端の修飾などの結合反応を伴うことが多い。それでもなお、上記のアミノ酸残基は親抗体中に豊富にあり、結合反応は通常、ランダムなプロセスである。結果として、結合反応は、化学選択性及び効率を欠き、不均一な生成物をもたらすことが多い。例えば、マイタンシノイド-モノクローナル抗体免疫結合体であるhuN901-DM1に関する以前の研究は、リシン結合ADCサンプルは、0から6までの範囲の異なる薬物対抗体比(DAR)のADCを有し、450万を超える固有の分子を含む可能性があることを明らかにしている。
【0004】
前述を鑑み、機能的要素を生体分子、特にペプチドベースの分子の特異的な部位に効果的に結合することができる結合戦略に対するニーズが高まっている。本発明は、そのニーズに対する回答であると考えられる。
【発明の概要】
【0005】
以下に、基本的な理解を読者に与えるために開示の簡略化した概要を提示する。この概要は、開示の広範な概観ではなく、本発明の鍵となる/重要な要素を特定するものでも本発明の範囲を記述するものでもない。その専らの目的は、ここに開示される幾つかの概念を、後述のさらに詳細な説明の序章としての簡略な形態で提示することである。
【0006】
一態様では、本開示は、適切な条件下で亜鉛イオンと錯体を形成することができる金属結合モチーフに向けられる。
【0007】
本開示の一実施形態によると、金属結合モチーフはN末端からC末端の順に又はC末端からN末端の順にCX1X2HAのアミノ酸配列(SEQ ID No:(配列番号)1)を備え、X1はグリシン又はプロリンであり、X2はグリシン又はアラニンであり、金属結合モチーフは親ポリペプチドのN又はC末端に位置する。金属結合モチーフの例示は、これに限定されないが、CGGHA(配列番号2)、CPGHA(配列番号3)、CGAHA(配列番号4)、CPAHA(配列番号5)、GCGGHA(配列番号6)、ACPGHA(配列番号7)及びGCPGHA(配列番号8)を含む。
【0008】
他の態様では、本開示は、上記の態様/実施形態による金属結合モチーフを備える複合ポリペプチドに向けられる。したがって、複合ポリペプチドは、適切な条件下で金属結合モチーフを介して金属イオン(例えば、亜鉛イオン)と錯体を形成することができる。このように、金属イオンとの錯体におけるシステイン残基のスルフヒドリル基は、金属イオンと錯体化されていないシステイン残基のスルフヒドリル基よりも反応性が高い。理解され得るように、上記錯体は、部位特異的な態様で他の化学成分又は生体分子との化学結合を受けることによってバイオコンジュゲートを形成し得る。
【0009】
本開示の一実施形態によると、複合ポリペプチドは、親ポリペプチド及び当該親ポリペプチドのN又はC末端に位置する金属結合モチーフを備える。ある選択的実施例では、親ポリペプチドと金属結合モチーフとの間に1~10個のグリシン残基の介在配列があり、一方、他の実施例では、本金属結合モチーフは親ポリペプチドの直前又は直後となる。
【0010】
さらに他の態様では、1以上の機能的要素が、複合ポリペプチドの金属結合モチーフにおけるシステイン残基のスルフヒドリル(SH)基と反応することによって、本開示の上記態様/実施形態による複合ポリペプチドと共有結合することによって分子構築物(又はバイオコンジュゲート)を形成することができる。
【0011】
本開示の選択的実施形態によると、SH反応性基は、マレイミド、ヨードアセチル、ブロモアセチル、ビニルスルホン、モノスルホン、メチルスルホニルベンゾチアゾール又は2-ピリジルジチオール基である。
【0012】
ある選択的実施形態では、複合ポリペプチドは二量体の形態であり、例えば、複合ポリペプチドは、Fc領域、F(ab´)2又は抗体の部分を備え得る。これらの場合では、各複合ポリペプチド鎖は、それに結合された1つの機能的要素を有する。
【0013】
本開示の種々の実施形態によると、機能的要素は、治療効果を引き出すことができる小分子成分である。例えば、小分子成分は、細胞毒性薬物、Toll様受容体アゴニスト、又は放射性核種で錯体化されたキレート剤であり得る。あるいは、機能的要素は、全体として親ポリペプチド又は分子構築物の薬物動態的プロファイルを変更することができる脂肪酸鎖である。
【0014】
あるいは、機能的要素は、リンカーユニット(「バンドル」ともいう)の形態である。本発明の特定の実施形態によると、リンカーユニットは、中心コア、及び複数の標的化要素、エフェクター要素又は薬物動態的要素を備える。
【0015】
具体的には、中心コアは、2~10個のリシン(K)残基を備える。K残基のうちの任意の2個は、相互に隣接し、又はフィラーによって分離される。ある場合では、SH反応性基は、中心コアの最初又は最後のK残基にそれとアミド結合を形成することによって連結される。他の場合では、中心コアが末端スペーサーをさらに備え、SH反応性基は、末端スペーサーの末端アミノ酸残基にそれとアミド結合を形成することによって連結される。末端スペーサーは、最初のK残基のN末端に連結されたN末端スペーサー又は最後のK残基のC末端に連結されたC末端スペーサーであり得る。フィラー及び末端スペーサーの各々は、独立して、(1)1~12個の非Kアミノ酸残基又は(2)エチレングリコール(EG)ユニットの1~12個の反復を有するPEG化アミノ酸を備える。
【0016】
本開示のある実施形態によると、中心コアは、SH反応性基に連結されたアミノ酸残基に又はその付近に局在負電荷を担持する。例えば、局在負電荷は、SH反応性基に連結されたアミノ酸残基から開始するアミノ酸残基内で最初の5~15個のアミノ酸残基内に存在する。具体的には、局在負電荷は、SH反応性基に連結されたアミノ酸残基から開始して最初の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸残基内に存在する。局在負電荷は、アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)残基などのpH=7で負に帯電した1以上のアミノ酸残基を含むことによって付与可能である。あるいは、コアは、負に帯電した複数のエフェクター要素に結合され得る。
【0017】
ある実施例では、各標的化要素、エフェクター要素又は薬物動態的要素は、K残基のε-アミノ基とアミド結合を形成することを介してコアのK残基に連結される。他のある場合では、分子構築物は2~10個の連結アームをさらに備え、各連結アームの一方の末端がK残基のε-アミノ基とアミド結合を形成することを介してコアのK残基に連結され、各連結アームの他方の末端が各標的化要素、エフェクター要素又は薬物動態的要素に連結される。例えば、連結アームは、2~12個の非Kアミノ酸残基を備えるペプチド又はEGユニットの2~24個の反復を有するポリエチレングリコール(PEG)鎖であり得る。
【0018】
本発明のある実施形態によると、上述した複合ポリペプチドは、分子構築物を対象部位に方向付け又は分子構築物の相対レベルを対象部位において増加させることができる標的化要素として作用する。これらの場合、リンカーユニット(又はバンドル)は、上述した小分子成分などの複数のエフェクター要素を担持し得る。
【0019】
本発明のある実施形態によると、上述した複合ポリペプチドは、被検体において所望の治療効果を引き出すことができるエフェクター要素として作用する。これらの場合、リンカーユニット(又はバンドル)は、被検体において分子構築物又は複合ポリペプチドの薬物動態的プロファイルを変更又は最適化するように、C8-28脂肪酸誘導体又はC8-28二酸性脂肪酸誘導体のような複数の薬物動態的要素を担持し得る。本発明の種々の実施形態によると、K残基のε-アミノ基は、C8-28脂肪酸誘導体又はC8-28二酸性脂肪酸誘導体に連結される。脂肪酸分子は、血清アルブミンと結合することができ、したがって、修飾された親ポリペプチドの運動特性を生体内で向上することができる。
【0020】
また、上述したリンカーユニットも本発明の範囲内にあり、それは本複合ポリペプチドとともに分子構築物を形成することができる。
【0021】
さらに他の態様では、本発明は、本開示の上記態様/実施形態による複数の複合ポリペプチドを担持することができるリンカーユニットに向けられる。本開示の実施形態によると、その中心コアに共有結合で連結された複数の複合ポリペプチドを有するリンカーユニットをポリペプチドバンドルということもある。
【0022】
本発明の特定の実施形態によると、本リンカーユニットは、中心コア及び複数の連結アームを備える。
【0023】
具体的には、中心コアは、2~10個のリシン(K)残基及び結合基を備える。K残基のうちの任意の2個は、相互に隣接し又はフィラーによって分離される。ある場合では、結合基は、中心コアの最初又は最後のK残基にそれとアミド結合を形成することによって連結される。結合基の例は、これに限定されないが、アジド、アルキン、テトラジン、シクロオクテン及びシクロオクチン基を含む。他の例では、中心コアは末端スペーサーをさらに備え、結合基は末端スペーサーの末端アミノ酸残基にそれとアミド結合を形成することによって連結される。末端スペーサーは、最初のK残基のN末端に連結されたN末端スペーサー又は最後のK残基のC末端に連結されたC末端スペーサーであり得る。フィラー及び末端スペーサーの各々は、独立して、(1)1~12個の非Kアミノ酸残基又は(2)エチレングリコール(EG)ユニットの1~12個の反復を有するPEG化アミノ酸を備える。
【0024】
ある実施形態によると、各連結アームの一方の末端はK残基のε-アミノ基とのアミド結合を形成することを介してコアのK残基に連結され、一方で各連結アームの他方の末端はSH反応性基を有する。例えば、連結アームは、2~12個の非Kアミノ酸残基を備えるペプチド又はEGユニットの2~24個の反復を有するポリエチレングリコール(PEG)鎖であり得る。
【0025】
本発明のある実施形態によると、リンカーユニットは、上記態様/実施形態による2~10個の複合ポリペプチド、及び1つの機能的要素をさらに備える。各複合ポリペプチドは、SH反応性架橋化学作用を介して金属結合モチーフにおいてシステイン残基のチオール基に結合される。
【0026】
本発明のある選択的実施形態によると、各連結アームは、SH反応性基に連結されたアミノ酸残基に又はその付近に局在負電荷を担持する。具体的には、局在負電荷は、SH反応性基に連結されたアミノ酸残基から開始するアミノ酸残基内で最初の5~15個のアミノ酸残基内に存在する。例えば、局在負電荷は、SH反応性基に連結されたアミノ酸残基から開始して最初の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸残基内に存在する。局在負電荷は、アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)残基などのpH=7で負に帯電した1以上のアミノ酸残基を含むことによって付与可能である。
【0027】
本開示の付随する構成及び効果の多くは、添付図面との関連で検討される以下の詳細な説明を参照してより深く理解されることになる。
【0028】
本説明は、添付図面を考慮して読まれる以下の詳細な説明からより深く理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の効果的一実施例によるMal-ペプチド1中心コアのMALDI-TOFの結果である。
【
図2】
図2は、本発明の効果的一実施例によるMal-ペプチド2-DOTAバンドルの構造を示す。
【
図3A】
図3Aは、Mal-ペプチド2-DOTAバンドルの逆相分析用HPLC溶出プロファイルを示す。
【
図3B】
図3Bは、本発明の効果的一実施例によるMal-ペプチド2-DOTAバンドルのMALDI-TOFの結果である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の効果的一実施例による組換え2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1の構造を示す。
【
図4B】
図4Bは、本発明の効果的一実施例による組換え2鎖(V
L-V
H scFv α CD19)-Fc-MBM-1の非還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図5】
図5は、本発明の効果的一実施例による組換え2鎖(V
L-V
H scFv α CD19)-Fc-MBM-2の非還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図6】
図6は、本発明の効果的一実施例による組換え2鎖(V
L-V
H scFv α CD19)-Fc-MBM-3の非還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図7A】
図7Aは、本発明の効果的一実施例による抗CD19抗体-MBM-1又は抗CD19抗体-MBM-2の還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図7B】
図7Bは、本発明の効果的一実施例による抗CD19抗体-MBM-1又は抗CD19抗体-MBM-2の還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図8】
図8は、本発明の効果的一実施例による4個の(scFv α CD33)-Fc-MBM分子構築物の非還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図9】
図9は、本発明の効果的一実施例によるV
L-V
H及びV
H-V
L構成の双方における組換え(scFv α CD20)-Fc-MBM-1の非還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図10A】
図10Aは、本発明の効果的一実施例による組換え2鎖(V
H-V
L scFv α CD20)-Fc-MBM-2の非還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図10B】
図10Bは、本発明の効果的一実施例による組換え2鎖(V
L-V
H scFv α CD20)-Fc-MBM-3の非還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図11A】
図11Aは、本発明の効果的一実施例による組換え2鎖(V
L-V
H scFv α CA19-9)-Fc-MBM-1の非還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図11B】
図11Bは、本発明の効果的一実施例による組換え2鎖(V
L-V
H scFv α CA19-9)-Fc-MBM-2の非還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図12A】
図12Aは、本発明の効果的一実施例による組換え2鎖(V
L-V
H scFv α CC38)-Fc-MBM-1の非還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図12B】
図12Bは、本発明の効果的一実施例による組換え2鎖(V
L-V
H scFv α CC38)-Fc-MBM-2の非還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図13A】
図13Aは、本発明の効果的一実施例による組換え2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルの構造を示す。
【
図13B】
図13Bは、本発明の効果的一実施例による組換え2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルの非還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図14】
図14は、本発明の効果的一実施例による組換え2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-2×2DOTAバンドルの非還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図15】
図15は、組換え2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-3×2DOTAバンドルの非還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図16】
図16は、本発明の効果的一実施例による無傷の抗CD19抗体-MBM-1×2DOTAバンドルの還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図17】
図17は、本発明の効果的一実施例による無傷の抗CD19抗体-MBM-2×2DOTAバンドルfの還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図18】
図18は、本発明の効果的一実施例による組換え2鎖(scFv α CD33)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルの非還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図19】
図19は、本発明の効果的一実施例による組換え2鎖(scFv α CD20)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルの非還元SDS-PAGE分析を示す。
【
図20】
図20は、本発明の効果的一実施例による安定化2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルに対する陰イオン交換カラムのFPLC溶出プロファイルを示す。
【
図21】
図21は、本発明の効果的一実施例による安定化2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルに対する陰イオン交換カラムから採集された画分のSDS-PAGE分析を示す。
【
図22】
図22は、本発明の効果的一実施例による安定化2鎖(scFv α CD20)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルに対する陰イオン交換カラムから採集された画分のSDS-PAGE分析を示す。
【
図23】
図23は、本発明の効果的一実施例による安定化2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルのMALDI-TOFの結果である。
【
図24】
図24は、本発明の効果的一実施例による
89Y
3+イオンでキレートされた安定化2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルのMALDI-TOFの結果である。
【
図25】
図25は、本発明の効果的一実施例による
175Lu
3+イオンでキレートされた安定化2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルのMALDI-TOFの結果である。
【
図26】
図26は、本発明の効果的一実施例による
111Inで標識化された安定化2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルの放射化学純度のTLC分析結果である。
【
図27】
図27は、本発明の効果的一実施例による
111In標識化された安定化2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルのウエスタンブロッティングによって分析された安定性試験の結果を示す。
【
図28A】
図28Aは、本発明の効果的一実施例による安定化2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルの染色分析の結果を示す。
【
図28B】
図28Bは、本発明の効果的一実施例による安定化2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルの染色分析の結果を示す。
【
図28C】
図28Cは、本発明の効果的一実施例による安定化2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルの染色分析の結果を示す。
【
図28D】
図28Dは、本発明の効果的一実施例による安定化2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルの染色分析の結果を示す。
【
図29】
図29は、本発明の効果的一実施例による安定化2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルのSDS-PAGEによって分析された安定性試験の結果を示す。
【
図30】
図30は、本発明の効果的一実施例による安定化2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルのTLCによって分析された安定性試験の結果を示す。
【
図31】
図31は、本発明の効果的一実施例による安定化2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルの半減期を示す。
【
図32】
図32は、本発明の効果的一実施例による安定化2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルのCD19発現異種移植腫瘍に対する標的化効果を示す。
【
図33】
図33は、本発明の効果的一実施例による安定化2鎖(scFv α CD19)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルのCD19発現異種移植腫瘍における生体内分布分析の結果を示す。
【
図34】
図34は、本発明の効果的一実施例によるAib-GLP-1アゴニスト-Cysの構造を示す概略図である。
【
図35】
図35は、本発明の効果的一実施例によるCys-オクトレオチドの構造を示す概略図である。
【
図36】
図36は、本発明の効果的一実施例によるCys-オクトレオチドのMALDI-TOF/TOFの結果を示す。
【
図37】
図37は、本発明の効果的一実施例によるCys-PSMAリガンドの構造を示す概略図である。
【
図38】
図38は、本発明の効果的一実施例によるCys-PSMAリガンドのESI-MSの結果を示す。
【
図39】
図39は、本発明の効果的一実施例によるカルシトニン-MBM-1の構造を示す概略図である。
【
図40】
図40は、本発明の効果的一実施例によるMal-ペプチド3-レナリドミドバンドルの構造を示す概略図である。
【
図41】
図41は、本発明の効果的一実施例によるMal-ペプチド3-レナリドミドバンドルのESI-MSの結果を示す。
【
図42】
図42は、本発明の効果的一実施例によるMal-ペプチド4-レナリドミドバンドルの構造を示す概略図である。
【
図43】
図43は、本発明の効果的一実施例によるMal-ペプチド5-脂肪酸バンドルの構造を示す概略図である。
【
図44】
図44は、本発明の効果的一実施例によるMal-ペプチド5-脂肪酸バンドルのESI-MSの結果を示す。
【
図45】
図45は、本発明の効果的一実施例による3-DOTAアームリンカーユニットの構造を示す概略図である。
【
図46】
図46は、本発明の効果的一実施例による3-DOTAアームリンカーユニットのESI-MSの結果を示す。
【
図47】
図47は、本発明の効果的一実施例によるMBM-1-IL-2のSDS-PAGE分析を示す。
【
図48】
図48は、本発明の効果的一実施例による2鎖(scFv α CD38)-Fc-MBM-1×2レナリドミドバンドルのSDS-PAGE分析を示す。
【
図49】
図49は、本発明の効果的一実施例によるオクトレオチド×脂肪酸バンドルの構造を示す概略図である。
【
図50A】
図50Aは、本発明の効果的一実施例によるAib-GLP-1アゴニスト×脂肪酸バンドルの構造を示す概略図である。
【
図50B】
図50Bは、本発明の効果的一実施例によるテリパラチド-MBM-1×脂肪酸バンドルの構造を示す概略図である。
【
図51A】
図51Aは、本発明の効果的一実施例によるロイプロリド-MBM-3×脂肪酸バンドルの構造を示す概略図である。
【
図51B】
図51Bは、本発明の効果的一実施例によるロイプロリド-MBM-3×脂肪酸バンドルのMALDI-TOFの結果を示す。
【
図52A】
図52Aは、本発明の効果的一実施例による3-DOTAアームリンカーユニット×3PSMAリガンドの構造を示す概略図である。
【
図52B】
図52Bは、本発明の効果的一実施例による3-DOTAアームリンカーユニット×3PSMAリガンドのESI-MSの結果を示す。
【
図53】
図53は、本発明の効果的一実施例による精製された2鎖(scFv α CA19-9)-Fc-MBM-1×2DOTAバンドルのSDS-PAGE分析を示す。
【
図54】
図54は、本発明の効果的一実施例による精製された2鎖(scFv α CD38)-Fc-MBM-1×2レナリドミドバンドルのSDS-PAGE分析を示す。
【
図55】
図55は、本発明の効果的一実施例による精製された2鎖(scFv α CD38)-Fc-MBM-1×2レナリドミドバンドルのMALDI-TOFの結果を示す。
【
図56A】
図56Aは、本発明の効果的一実施例による親抗CD38hIgG1.Fc抗体の半減期を示す。
【
図56B】
図56Bは、本発明の効果的一実施例による2鎖(scFv α CD38)-Fc-MBM-1×2レナリドミドバンドルの半減期を示す。
【
図57A】
図57Aは、本発明の効果的一実施例による2鎖(scFv α CD38)-Fc-MBM-1×2レナリドミドバンドルの標的化効果を示す。
【
図57B】
図57Bは、本発明の効果的一実施例による2鎖(scFv α CD38)-Fc-MBM-1×2レナリドミドバンドルの標的化効果を示す。
【
図57C】
図57Cは、本発明の効果的一実施例による2鎖(scFv α CD38)-Fc-MBM-1×2レナリドミドバンドルの標的化効果を示す。
【
図58A】
図58Aは、本発明の効果的一実施例による2鎖(scFv α CD38)-Fc-MBM-1×2レナリドミドバンドルのADCC効果を示す。
【
図58B】
図58Bは、本発明の効果的一実施例による2鎖(scFv α CD38)-Fc-MBM-1×2レナリドミドバンドルのADCC効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
添付図面との関連で以下に与えられる詳細な説明は、本実施例の説明としてのものであり、本実施例が構成又は利用され得る形態のみを示すものではない。その記載は、実施例の機能及び実施例を構成して動作させるためのステップの配列を説明する。ただし、同一又は同等の機能及び配列が、異なる実施例によっても実現され得る。
【0031】
便宜上、明細書、実施例及び付随する特許請求の範囲において採用される特定の用語をここにまとめる。ここで特に断りがない限り、本開示で採用される科学的及び技術的用語は、一般的に当業者に理解及び使用される意味を有するものとする。
【0032】
また、文脈によってそれ以外が必要とされない限り、単数形の用語はその複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとすることが理解される。また、ここで及び特許請求の範囲で使用されるように、用語「少なくとも1つの」及び「1以上の」は、同じ意味を有し、1、2、3又はそれ以上を含む。またさらに、本明細書及び付随する特許請求の範囲を通じて使用される文言「A、B及びCの少なくとも1つ」、「A、B又はCの少なくとも1つ」及び「A、B及び/又はCの少なくとも1つ」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びB双方、B及びC双方、A及びC双方、そしてA、B及びCの全てを含むことが意図されている。
【0033】
発明の広い範囲を説明する数値範囲及びパラメータは概数であるものの、具体的な実施例で説明される数値は可能な限り厳密に報告される。ただし、いずれの数値も、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的にもたらされる所定の誤差を本来的に含む。また、ここで使用されるように、用語「約」は、所与の値又は範囲の10%、5%、1%又は0.5%内を一般に意味する。あるいは、用語「約」は、当業者によって考慮される場合の平均の許容標準誤差内を意味する。有効な/効果的な実施例以外においても、明示の断りがない限り、ここに開示されるその材料の量、継続時間、温度、動作条件、量の比率などに対するものなどの数値範囲、量、値及び割合の全ては、いずれの場合においても用語「約」によって変更されるものとして理解されるべきである。したがって、逆のことが示されない限り、本開示及び添付の特許請求の範囲で説明される数値パラメータは、所望のように変化し得る概数である。少なくとも、各数値パラメータは、報告される有効数字の数を考慮してかつ通常の四捨五入手段を適用して少なくとも解釈されるべきである。範囲は、ここでは、ある終点から他の終端まで又は2つの終点間として表現され得る。ここに開示される全ての範囲は、特に断りがない限り終点を包含する。
【0034】
ここで使用されるように、用語「標的化要素」は、対象の標的(例えば、細胞表面の受容体又は組織内のタンパク質)に直接又は間接に結合することにより、対象の標的への本分子構築物の輸送を促進する分子構築物の部分をいう。ある実施例では、標的化要素は、分子構築物を標的細胞の付近に方向付けることができる。他の場合では、標的化要素は、標的細胞表面に存在する分子に対して、又は細胞表面に存在する分子に特異的に結合する第2の分子に対して、特異的に結合する。ある場合では、標的化要素は、それが対象の標的に結合されると、本分子構築物とともに内在化され得るので、標的細胞の細胞質ゾル内に移動される。標的化要素は、細胞表面受容体に対する抗体又はリガンドであってもよいし、そのような抗体又はリガンドに結合することによって本分子構築物を標的部位(例えば、選択した細胞の表面)に間接的に標的化する分子であってもよい。疾患部位におけるエフェクター(治療剤)の局在化は、標的化機能のない治療剤との比較として、本分子構築物で強化又は好適化される。局在化は程度又は相対比率の問題であり、疾患部位へのエフェクターの絶対的又は全局在化を意味するものではない。
【0035】
本発明によると、用語「エフェクター要素」は、分子構築物がその標的部位に方向付けられると、生物学的活性(例えば、免疫活性を誘発又は抑制すること、細胞毒性効果を発揮させること、酵素を阻害することなど)又は他の機能的活性(例えば、免疫細胞又は他の治療分子を与えること)を引き起こす分子構築物の部分をいう。「効果」は、治療的又は診断的であり得る。エフェクター要素は、細胞及び/又は細胞外免疫調整因子に結合するものを包含する。エフェクター要素は、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物、糖ペプチド、薬剤部分(小分子薬剤及び生物学的製剤の双方)、化合物、元素及び同位体並びにそれらフラグメントのような試剤を備える。
【0036】
本発明によると、「薬物動態的要素」は、分子構築物の以下の特性:溶解性、浄化値、半減期及び生物学的利用能の少なくとも1つを変更することができる要素を意味するものである。例えば、薬物動態的要素は、約20000~50000ダルトンの分子量を有する長いPEG鎖を備え得る。あるいは、薬物動態的要素は、C8-28脂肪酸鎖又はC8-28二酸性脂肪酸鎖を備え得る。
【0037】
本発明による用語「バイオコンジュゲート」は、本発明の複合ポリペプチド及び1以上の機能的要素を備える分子構築物をいう。
【0038】
第1、第2、第3等の用語は、ここでは種々の要素、構成要素、領域及び/又は部分を記載するのに使用され得るが、これらの要素(並びに構成要素、領域及び/又は部分)はこれらの用語によって限定されるものではない。また、そのような序数の使用は、文脈によって明記されない限り、順列又は順序を示唆するものではない。逆に、これらの用語は、1つの要素を他の要素から区別するのに使用されるにすぎない。したがって、以下に記載する第1の要素は、例示的実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素と表記されてもよい。
【0039】
ここで、用語「連結する(link)」、「結合する(couple)」及び「結合する(conjugate)」は、2つの構成要素を2つの構成要素間の直接の連結を介して又は間接的な連結を介して接続する任意の手段をいうものとして互換可能に用いられる。
【0040】
ここで使用される用語「ポリペプチド」は、少なくとも2つのアミノ酸残基を有するポリマーをいう。通常、ポリペプチドは、長さ2~約200個の残基を範囲とするアミノ酸残基を備え、それでもそれは200個超のアミノ酸残基を有する高分子も包含する。アミノ酸配列がここに与えられる場合、L-、D-又はベータアミノ酸バージョンの配列も考慮される。ポリペプチドはまた、1以上のアミノ酸残基が対応の天然に生じるアミノ酸及び天然に生じるアミノ酸ポリマーの人工的な化学的類似体であるアミノ酸ポリマーを含む。さらに、当該用語は、ペプチド結合によって、又は例えば、ペプチド連結がα-エステル、β-エステル、チオアミド、ホスホルアミド、カルボメート、ヒドロキシレートなどによって置換される他の「修飾連結」によって接合されたアミノ酸に当てはまる。
【0041】
特定の実施形態では、ここに記載される配列のいずれかを備えるアミノ酸の保存的な置換が考慮される。種々の実施形態では、1、2、3、4又は5個の異なる残基が置換される。用語「保存的な置換」は、分子の活性(例えば、生物学的又は機能的な活性及び/又は特異性)を実質的に変更しないアミノ酸置換を反映するのに使用される。通常、保存的なアミノ酸置換は、1つのアミノ酸を類似の化学的特性(例えば、電荷又は疎水度)を有する他のアミノ酸に置換することを伴う。ある保存的な置換は、親残基から最小限に異なる非標準(例えば、希少性、合成など)のアミノ酸によって標準アミノ酸が置換される「類似置換」を含む。アミノ酸類似体は、親構造に対する大きな変化なく標準アミノ酸に合成的に由来するものであり、異性体であり、又は代謝物質前駆体である。本出願では、アミノ酸残基の(1)その側鎖にアミン基を含むリシン、(2)その側鎖にチオール基を含むシステイン、(3)それらの側鎖にヒドロキシル基を含むセリン及びスレオニン、並びに(4)それらの側鎖にカルボキシル基を含むアスパラギン酸及びグルタミン酸が、アミノ酸の特徴的な4基とみなされる。アミノ酸のこれらの4基の各々は、それらの側鎖において、種々の化学成分に結合するために応用され得る固有の官能基を含む。側鎖に同じ官能基を含む非天然アミノ酸が、同様の目的のために置換されてもよい。
【0042】
特定の実施形態では、ここに記載する配列のいずれかと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%又は90%、より好ましくは少なくとも95%又は98%の配列同一性を備えるポリペプチドも考慮される。
【0043】
ここで同定されるポリペプチド配列に関する「パーセンテージ(%)アミノ酸配列同一性」は、最大パーセントの配列同一性を得るように必要に応じて配列の整列及びギャップの導入を行った後、保存的置換を配列同一性の一部として考慮せずに、特定のペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるポリペプチド残基のパーセンテージとして定義される。パーセンテージ配列同一性を決定する目的のためのアライメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR社)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを用いる当技術内の種々の態様で達成可能である。当業者であれば、対比されている配列の全長にわたって最大アライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。ここでの目的のため、2つのポリペプチド酸配列間の配列比較は、国立生物工学情報センター(NCBI)によってオンラインで提供されるコンピュータプログラムBlastp(protein-protein BLAST)によって実行された。所与のポリペプチド酸配列Bに対する所与のポリペプチド酸配列Aのパーセンテージアミノ酸配列同一性(あるいは、所与のポリペプチド酸配列Bに対して所定%のアミノ酸配列同一性を有する所与のポリペプチド酸配列Aということもできる)は、以下の定式で計算される。
X/Y×100%
ここで、Xは、そのプログラムのA及びBのアライメントにおいて配列アライメントプログラムBLASTによる完全な一致としてスコアリングされたアミノ酸残基の数であり、Yは、いずれか短い方のA又はBにおけるアミノ酸残基の合計数である。
【0044】
ここで使用される用語「PEG化されたアミノ酸」は、1つのアミノ基及び1つのカルボキシル基を有するポリエチレングリコール(PEG)鎖をいう。一般に、PEG化されたアミノ酸は、NH2-(CH2CH2O)n-CO2Hの式を有する。本開示では、nの値は、1~20の範囲であり、好ましくは2~12の範囲である。
【0045】
ここで使用される用語「結合部分」は、化学的に反応性であり、他の化学ユニットに共有結合することができる1以上の官能基(「結合基」ともいう)を有する分子をいう。官能基の非限定的な例は、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、チオール、アミン、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、N-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)、SH反応性基(例えば、マレイミド、ハロアセチル、スルホン又はピリジルジスルフィド)、ヨード、ヨードアセトアミドアジド、アルキン、テトラジン、シクロオクテン及びシクロオクチン基を含む。本開示の実施形態によると、本分子構築物の結合部分は、2つの官能基を有し、一方は、結合部分がコアのN又はC末端アミノ酸残基に結合されるように、コアの末端アミノ酸残基のアルファアミノ又はカルボキシル基と、その間のアミド結合を形成することを介して結合するためのカルボキシル又はアミン基であり、他方は、SH反応性架橋化学作用を介して第2の元素と結合するためのSH反応性基である。
【0046】
ここで使用されるように、ポリペプチドに関する用語「末端」とは、ポリペプチドのN端又はC端におけるアミノ酸残基のことをいう。ポリマーに関しては、用語「末端」とは、ポリマー骨格の端部に位置するポリマー(例えば、本開示のポリエチレングリコール)の構成単位のことをいう。本明細書及び特許請求の範囲において、用語「遊離末端」は、末端アミノ酸残基又は構成単位が他のいずれの分子にも化学結合されていないことを意味するのに使用される。
【0047】
用語「抗原」又は「Ag」は互換可能に使用され、免疫反応を引き起こす分子のことをいう。この免疫反応は、分泌型、体液性及び/又は細胞性抗原特異的反応を伴い得る。本開示では、用語「抗原」は、タンパク質、ポリペプチド(その突然変異体又は生物学的に活性なフラグメントを含む)、多糖、糖タンパク質、糖脂質、核酸又はこれらの組合せのいずれかであり得る。
【0048】
本明細書及び特許請求の範囲において、用語「抗体」又は「抗体フラグメント」は、広義で使用され、完全にアセンブルされた抗体、抗原結合フラグメント(Fab/Fab´)、(ジスルフィド結合によって相互に連結された2つの抗原結合Fab部分を有する)F(ab´)2フラグメント、可変フラグメント(Fv)、一本鎖可変フラグメント(scFv)、二特異性一本鎖可変フラグメント(bi-scFv)、ナノボディ(シングルドメイン抗体sdAbともいう)、ユニボディ及びディアボディなど、抗原と結合する抗体フラグメントを包含する。「抗体フラグメント」は、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合領域又は可変領域を備える。抗体フラグメントは、ヒトγ4又はγ1免疫グロブリン由来の一対のCH2-CH3セグメントのN又はC末端に融合された一対のscFvを備え得る。通常、「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによって実質的にコードされた1以上のポリペプチドからなるタンパク質をいう。周知の免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン及びミュー定常域遺伝子、並びに多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、カッパ又はラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロンとして分類され、それは同様に免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEをそれぞれ定義する。標準的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体からなることが知られている。各四量体は、各対が1つの「軽」鎖(約25kDa)及び1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有して、2つの同一のポリペプチド鎖対で構成される。各鎖のN末端は、主に抗原認識を担う約100~110以上のアミノ酸の可変領域を定義する。可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)という用語は、それぞれそれらの軽鎖及び重鎖をいう。本開示の実施形態によると、抗体フラグメントは、天然抗体を修飾することによって又は組換えDNA法を用いたデノボ合成によって生成され得る。本開示の特定の実施形態によると、抗体及び/又は抗体フラグメントは、二特異性であってもよく、種々の構成のものであり得る。例えば、二特異性抗体は、2つの異なる抗原結合部分(可変領域)を備え得る。種々の実施形態において、二特異性抗体は、ハイブリドーマ技術又は組換えDNA技術によって生成され得る。特定の実施形態では、二特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する。抗体フラグメントを採用する分子構成の多くにおいて、抗体フラグメントは、抗体フラグメントと同じ抗原成分に結合する抗体模倣物に代替され得る。抗体模倣物は、アンチカリン、DARPin、アフィボディ、フィロマー、アンキリン、アビマー及びその他を含む。
【0049】
ここで使用される用語「特異的に結合する」は、約1×10-6M、1×10-7M、1×10-8M、1×10-9M、1×10-10M、1×10-11M、1×10-12M以下の解離定数(Kd)で抗原と結合し、及び/又は非特異抗原に対するその親和性よりも少なくとも2倍高い親和性で抗原に結合する、抗体又はその抗原結合フラグメントの能力をいう。
【0050】
ここで使用される用語「処置/治療/処理」は予防的(例えば、予防の)治癒的又は緩和的な処置/治療/処理を含み、ここで使用される用語「処置/治療/処理している」も予防的(例えば、予防の)治癒的又は緩和的な処置/治療/処理を含む。特に、ここで使用される用語「処置/治療/処理している」は、上記特定の疾患、障害及び/又は状態の1以上の症状又は特徴の部分的又は完全な軽減、改善、解放、発症の遅延、進行の阻害、重症度の低減及び/又は発症率の低減を目的で、医学的状態、医学的状態に関連する症状、医学的状態に対して二次的な疾患若しくは障害、又は医学的状態に対する素質を有する被検体への本分子構築物又は当該分子構築物を備える薬学的組成物の適用又は投与をいう。処置/治療/処理は、疾患、障害及び/若しくは病状に関連する進展する病理のリスクを減少させる目的のために、疾患、障害及び/若しくは病状の兆候を示さない被検体、又は疾患、障害及び/若しくは病状の初期の兆候のみを示す被検体に施され得る。
【0051】
ここで使用される用語「有効量」は、所望の治療上の反応をもたらすのに充分な量の本分子構築物をいう。薬剤の有効量は、疾患又は状態を治癒することは要件とされないが、疾患又は病状の発症が遅延、阻害若しくは防止され又は疾患及び病状の症状が改善されるように疾患又は状態に対する処置を与える。有効量は、指定された期間を通して1、2又はそれ以上の回数に投与される適切な形態で1、2又はそれ以上の投与量に分割され得る。具体的な有効な又は充分な量は、処置されている特定の状態、患者の肉体的状態(例えば、患者の体重、年齢又は性別)、処置されている被検体の種類、処置の継続期間、(それがある場合には)併用療法の性質、並びに採用される具体的処方及び化合物又はその誘導体の構造といった要因で変化することになる。有効量は、例えば、活性成分の合計質量(例えば、グラム、ミリグラム又はマイクログラム)又は体重に対する活性成分の質量の比、例えば、キログラムあたりのミリグラム(mg/kg)として表現され得る。
【0052】
用語「適用」及び「投与」は、ここでは、その処置を必要とする被検体への本発明の分子構築物又は薬学的成分の適用を意味するものとして互換可能に使用される。
【0053】
用語「被検体」及び「患者」は、ここでは互換可能に使用され、本発明の分子構築物、薬学的組成物及び/又は方法によって処置可能なヒト種を含む動物を意味することが意図される。用語「被検体」又は「患者」は、一方の性別が具体的に示されない限り、雄及び雌の両方の性別をいうものとする。したがって、用語「被検体」又は「患者」は、本開示の処置方法から利益を受け得る任意の哺乳動物を含む。「被検体」又は「患者」の例は、これに限定されないが、ヒト、ラット、マウス、モルモット、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、トリ及び家禽を含む。例示的実施形態では、患者はヒトである。用語「哺乳動物」は、ヒト、霊長類、ウサギ、ブタ、ヒツジ及び畜牛などの家畜及び農場動物、並びに動物園、スポーツ又はペットの動物、マウス及びラットなどの齧歯類を含む哺乳類の全てのメンバーをいう。用語「非ヒト哺乳動物」は、ヒト以外の哺乳類の全てのメンバーをいう。
【0054】
本発明の種々の実施形態によると、用語「金属結合モチーフ」は、Zn2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+又はCu2+などの金属イオンを結合することができる短いオリゴペプチドのことをいう。ある実施形態では、亜鉛イオンを結合することができる金属結合モチーフを「亜鉛結合モチーフ」ともいい、それでも当業者には分かるように、そのようなタグは、亜鉛イオンと同様の物理的及び/又は化学的特性の他の金属イオンとも結合し得る。
【0055】
本開示は、少なくとも、親ポリペプチドのN又はC末端に融合可能な幾つかの新規な金属結合モチーフの設計に基づく。本金属結合モチーフは、幾つかの態様においてバイオコンジュゲートの構築に対して有利である。第1に、本金属結合モチーフは、ヒト由来の配列であるので、ヒトゲノムの部分ではない従来の金属結合モチーフと比較して免疫原性が低い。第2に、本金属結合モチーフを有する複合ポリペプチドの発現収率は望ましいものであり、結果として発現した複合ポリペプチドは保存、結合及び精製プロセス中に非常に安定的である。第3に、本金属結合モチーフは、親ポリペプチドのシステイン残基がほとんど不活性である条件下で、金属結合モチーフのシステイン残基のSH基と機能的要素のSH反応性基との間の容易な部位特異的結合反応を可能とする。そこで、本発明は、多機能バイオコンジュゲートを構築するための多様な手段を与える。本発明の態様及び実施形態を以下に与える。
【0056】
(I)金属結合モチーフ
本開示の第1の態様は、適切な条件下でZn2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+又はCu2+などの金属イオンと錯体を形成可能な金属結合モチーフに向けられる。
【0057】
本開示の一実施形態によると、金属結合モチーフは、X1がグリシン又はプロリンであり、X2がグリシン又はアラニンであるとして、N末端からC末端の順又はC末端からN末端の順でCX1X2HA(配列番号1)のアミノ酸配列を備える。金属結合モチーフの例示は、これに限定されないが、CGGHA(配列番号2)、CPGHA(配列番号3)、CGAHA(配列番号4)、CPAHA(配列番号5)、GCGGHA(配列番号6)、ACPGHA(配列番号7)及びGCPGHA(配列番号8)を含む。
【0058】
(II)金属結合モチーフを含む複合ポリペプチド
他の態様では、本開示は、上記の態様/実施形態による金属結合モチーフを備える複合ポリペプチドに向けられる。したがって、複合ポリペプチドは、適切な条件下で金属結合モチーフを介して金属イオンと錯体を形成することができる。
【0059】
本開示の一実施形態によると、複合ポリペプチドは、本発明の上記態様/実施形態による親ポリペプチド及び金属結合モチーフを備える。種々の実施形態では、金属結合モチーフは、親ポリペプチドのN又はC末端に、直接又は1以上の介在するアミノ酸残基とともに融合される。選択的な実施形態では、介在する配列は、2~10個のグリシン残基を有し得る。
【0060】
本開示の種々の実施形態によると、金属結合モチーフが親ポリペプチドのN末端に位置する場合、金属結合モチーフは、X1がグリシン又はプロリンであり、X2がグリシン又はアラニンであるとして、N末端からC末端の順又はC末端からN末端の順で配列CX1X2HA(配列番号1)を有し得る。同様に、金属結合モチーフが親ポリペプチドのC末端に位置する場合、金属結合モチーフは、X1がグリシン又はプロリンであり、X2がグリシン又はアラニンであるとして、N末端からC末端への順又はC末端からN末端への順でCX1X2HA(配列番号1)の配列を有し得る。
【0061】
本開示の種々の実施形態によると、親ポリペプチドは、ペプチドホルモン又はその同等物であり得る。ペプチドホルモンの同等物は、当業者に周知である機能的フラグメント、前駆体、類似体又は誘導体を含む。ここでの使用に適切なペプチドホルモンの非限定的な例は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アミリン、アンジオテンシン、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、カルシトニン、コレシストキニン(CCK)、ガストリン、グレリン、グルカゴン、成長ホルモン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、インスリン、レプチン、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、オキシトシン、副甲状腺ホルモン(PTH)、プロラクチン、レニン、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、チロトロピン放出ホルモン(TRH)、バソプレシン及び血管作動性腸管ペプチドを含む。例えば、インスリンの同等物は、これに限定されないが、リスプロ、アスパルト、グルリジン、デテミル、デグルデク及びグラルギンを含む。カルシトニンの同等物は、これに限定されないが、プロカルシトニン及びアドレノメデュリンを含む。ソマトスタチンの同等物は、これに限定されないが、オクトレオチド及びランレオチドを含む。
【0062】
特定の実施形態では、親ポリペプチドは、細胞表面受容体に結合するペプチド模倣リガンドであり得る。ペプチド模倣体は、ペプチドを模倣するように設計された小さなタンパク質様の鎖である。例えば、PSMA-結合親和性を有する一連のグルタミン酸-尿素-リシンベースのペプチド模倣体が設計されている。
【0063】
選択的な実施形態では、親ポリペプチドは、モノクローナル抗体、免疫グロブリンA(IgA)、IgD、IgE、IgG又はIgMなどの抗体であり得る。抗体全体の機能的フラグメント又は誘導体もまた本開示の範囲によって包含され、その例は、これに限定されないが、二重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体(scAb)、単鎖可変フラグメント(scFv)、タンデム ジ-scFv、タンデム トリ-scFv、ダイアボディ、トライアボディ、テトラボディ、Fabフラグメント、F(ab´)2フラグメント、Fd、ドメイン抗体及びミニボディを含む。
【0064】
代替的に、親ポリペプチドは、サイトカイン又はその同等物であり得る。サイトカインの同等物は、当業者に周知である機能的フラグメント、前駆体、類似体又は誘導体を含む。サイトカインの例示は、これに限定されないが、インターロイキン-2(IL-2)、IL-10、IL-12、インターフェロンアルファ(IFN-α)、IFN-γ、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)及び腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を含む。
【0065】
ある実施形態では、親ポリペプチドは、単一ドメイン抗体(sdAb)、一本鎖抗体(scAb)、一本鎖可変フラグメント(scFv)、二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)、タンデム ジ-scFv及びタンデム トリ-scFvなどの単鎖抗体フラグメントであり得る。他のある実施形態では、親ポリペプチドは、免疫グロブリンの重鎖又は軽鎖に由来する抗体フラグメントであってもよく、本複合ポリペプチドは、全長抗体の一部、フラグメント結晶化可能領域(Fc領域)、フラグメント抗原結合フラグメント(Fab)、Fab´、F(ab´)2、Fab´、Fv、(scFv)2、sc(Fv)2、ダイアボディ、Fd、Fd´又はミニボディを備える。免疫グロブリンは、免疫グロブリンD(IgD)、IgE又はIgGに由来し得る。抗体は、二重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体であり得る。
【0066】
特定の実施形態では、抗体(及びその機能的フラグメント)は、びまん性腫瘍に関連し、及び/又はびまん性腫瘍上に過剰発現する細胞表面抗原に特異的である。そのような細胞表面抗原の例示は、CD5、CD19、CD20、CD22、CD23、CD27、CD30、CD33、CD34、CD37、CD38、CD43、CD72a、CD78、CD79a、CD79b、CD86、CD134、CD137、CD138、CD319を含む。これらの細胞表面抗原に対する抗体(又はそのフラグメント若しくは誘導体)は、それを備える分子構築物を疾患部位に方向付けることができる標的化要素として使用可能である。他の選択的な実施形態では、抗体(及びその機能的フラグメント又は誘導体)は他の細胞表面抗原に特異的であり、そのような抗体は人体内で治療効果を引き起こすことができ、そのような細胞表面抗原の例はCD3、CD16a、CD28、CD134、細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、プログラム細胞死1(PD-1)及びプログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)を含む。さらに代替的に、抗体(又はそのフラグメント)は、ヒト上皮成長因子受容体(HER1)、HER2、HER3、HER4、炭水化物抗原19-9(CA19-9)、CA125、癌胎児性抗原(CEA)、ムチン1(MUC1)、ガングリオシドGD2、メラノーマ関連抗原(MAGE)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、メソテリン、ムチン関連Tn、シアリルTn、グロボH、ステージ特異的胎児性抗原-4(SSEA-4)及び上皮細胞接着分子(EpCAM)などの腫瘍関連抗原(TAA)に特異的であり得る。各TAAは1以上のタイプの固形腫瘍の細胞表面上に過剰発現することが多く、そのようなTAAに対する抗体はここに提案される分子構築物の一部として標的化要素として使用可能である。他のある選択的な実施形態では、抗体(又はそのフラグメント)は、上皮成長因子(EGF)、突然変異体EGF、エピレグリン、ヘパリン結合性上皮成長因子(HB-EGF)、血管内皮成長因子A(VEGF-A)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)及び肝細胞成長因子(HGF)からなる群から選択される成長因子に特異的である。ある実施形態では、抗体(又はそのフラグメント)は、上記のサイトカインに特異的である。
【0067】
(III)機能的要素及び金属結合モチーフを含む複合ポリペプチドの分子構築物
さらに他の態様では、1以上の機能的要素を、複合ポリペプチドの金属結合モチーフ中のシステイン残基のスルフヒドリル(SH)基と反応させることにより、本開示の上記態様/実施形態による複合ポリペプチドと共有結合することができ、それによりこの発明による分子構築物(又はバイオコンジュゲート)を形成する。特に、複合ポリペプチドの金属結合活性は、部位特異的結合を可能とし、それにより均質な分子構築物をもたらす。
【0068】
本開示の選択的な実施形態によると、SH反応性基は、マレイミド、ヨードアセチル、ブロモアセチル、ビニルスルホン、モノスルホン、メチルスルホニルベンゾチアゾール又は2-ピリジルジチオール基である。
【0069】
理解され得るように、機能的要素は、被検体の体内で所望の治療効果を引き起こすことができるエフェクター分子であり得る。代替的に、機能的要素は、分子構築物を被検体の体内の標的部位に方向付けることができる標的化要素であり得る。さらに代替的に、機能的要素は、被検体の体内での分子構築物の薬物動態的プロファイルを変更可能な薬物動態的要素である。さらに代替的に、機能的要素は、リンカーユニット又はバンドルの形態である。本発明の特定の実施形態によると、リンカーユニットは、中心コア、及び複数の標的化要素、エフェクター要素又は薬物動態的要素を備え、上記リンカーユニットの構造を以下の章(IV)で説明する。
【0070】
本発明で使用可能なエフェクター分子の例は、これに限定されないが、(単独又は放射性核種と錯体化された)細胞毒性薬物、Toll様受容体(TLR)アゴニスト又はキレート剤を含む。
【0071】
理解され得るように、特定の細胞に対して細胞毒性効果を表す細胞毒性薬物は、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン及びメゲストロール)、LHRHアゴニスト(例えば、ゴスクルクリン及びロイプロリド)、抗アンドロゲン(例えば、フルタミド及びビカルタミド)、光線力学的療法(例えば、ベルトポルフィン、フタロシアニン、光増感剤Pc4及びデメトキシ-ヒポクレリンA)、ナイトロジェンマスタード類(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、クロラムブシル、エストラムスチン及びメルファラン)、ニトロソウレア類(例えば、カルムスチン及びロムスチン)、アルキルスルホン酸塩(例えば、ブスルファン及びトレオスルファン)、トリアゼン類(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド)、白金含有化合物(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン)、ビンカアルカロイド類(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン及びビノレルビン)、タキソイド類(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル及びタキソール)、エピポドフィリン類(例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、トポテカン、9-アミノカンプトテシン、カンプトイリノテカン、イリノテカン、クリスナトール、ミトマイシンC)、抗代謝物、DHFR阻害剤(例えば、メトトレキサート、ジクロロメトトレキサート、トリメトレキサート、エダトレキサート)、IMPデヒドロゲナーゼ阻害剤(例えば、ミコフェノール酸、チアゾフリン、リバビリン及びEICAR)、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤(例、ヒドロキシウレア及びデフェロキサミン)、ウラシル類似体(例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラチトレキセド、テガフール-ウラシル、カペシタビン)、シトシン類似体(例えば、シタラビン(araC)、シトシンアラビノシド及びフルダラビン)、プリン類似体(例えば、メルカプトプリン及びチオグアニン)、ビタミンD3類似体(例えば、EB1089、CB1093及びKH1060)、イソプレニル化阻害剤(例えば、ロバスタチン)、ドーパミン作動性神経毒素(例えば、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン)、細胞周期阻害剤(例えば、スタウロスポリン)、アクチノマイシン(例えば、アクチノマイシンD、ダクチノマイシン)、ブレオマイシン(例えば、ブレオマイシンA2、ブレオマイシンB2、ペプロマイシン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ゾルビシン、ミトキサントロン)、MDR阻害剤(例えば、ベラパミル)、Ca2+ ATPase阻害剤(例えば、タプシガルギン)、イマチニブ、サリドマイド、レナリドミド、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、アキシチニブ、ボスチニブ、セディラニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レスタウルチニブ、ネラチニブ、ニロチニブ、セマキサニブ、スニチニブ、トセラニブ、バンデタニブ、バタラニブ、リツキシマブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、エベロリムス、テムシロリムス)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス及びリダフォロリムス)、オブリメルセン、ゲムシタビン、カルミノマイシン、ロイコボリン、ペメトレキセド、シクロホスファミド、ダカルバジン、プロカルビジン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、カンパテテシン、プリカマイシン、アスパラギナーゼ、アミノプテリン、メトプテリン、ポルフィロマイシン、メルファラン、ロイロシジン、ロイロシン、クロラムブシル、トラベクテジン、プロカルバジン、ディスコデルモリド、カルミノマイシン、アミノプテリン又はヘキサメチルメラミンであり得る。本開示の具体的な一実施形態によると、細胞毒性薬物は、メルタンシン、オーリスタチン、メイタンシン、ドキソルビシン、カリケアマイシン又はカンプトテシンである。
【0072】
Toll様受容体アゴニストの例示は、リポテイコ酸、グルカン、モトリモド、イミキモド、レシキモド、ガルジキモド、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG DON)、リポ多糖(LPS)、モノホスホリルリピドA及びザイモサンを含む。
【0073】
種々の実施形態では、キレート剤は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N´,N´´,N´´´-四酢酸(DOTA)、N,N´´-ビス[2-ヒドロキシ-5-(カルボキシエチル)ベンジル]エチレンジアミン-N,N´´-二酢酸(HBED-CC)、1,4,7-トリアザシクロ-ノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)、2-(4,7-ビス(カルボキシメチル)-1,4,7-トリアゾナン-1-イル)ペンタン二酸(NODAGA)、2-(4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)ペンタン二酸(DOTAGA)、1,4,7-トリアザシクロ-ノナンホスフィン酸(TRAP)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-[メチル(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸]-4,7-ビス[メチル(2-ヒドロキシメチル)ホスフィン酸](NOPO)、3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1.]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9-三酢酸(=PCTA)、N´{5-[アセチル(ヒドロキシ)アミノ]ペンチル}-N-[5-({4-[(5-アミノペンチル)(ヒドロキシ)アミノ]-4-オキソブタノイル}アミノ)ペンチル]-N-ヒドロキシスクシンアミド(DFO)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トランス-シクロヘキシル-ジエチレントリアミン五酢酸(CHX-DTPA)、1-オキサ-4,7,10-トリアザシクロドデカン-4,7,10-三酢酸(オキソ-Do3A)、p-イソチオシアナトベンジル-DTPA(SCN-Bz-DTPA)、1-(p-イソチオシアナトベンジル)-3-メチル-DTPA(1B3M)、2-(p-イソチオシアナトベンジル)-4-メチル-DTPA(1M3B)及び1-(2)-メチル-4-イソシアナトベンジル-DTPA(MX-DTPA)からなる群から選択される。ある実施形態では、放射性核種は111In、131I又は177Luであり、他の実施形態では、放射性核種は90Y、68Ga、99mTc、64Cu、153Gd、155Gd、157Gd、213Bi、225Ac又はFeであり得る。
【0074】
他の実施形態では、この発明の分子構築物に対するエフェクター要素の選択はまた、(1)(TNF-α、IL-12/IL-23、IL-17、IL-1、IL-6、BAFFのような)炎症性サイトカインに特異的な抗体フラグメント、(2)RANKLに特異的な抗体フラグメント、(3)T細胞及びNK細胞上に発現されるCD3及びCD16aに対する抗体フラグメント、(4)PD-1、PD-L1、CTLA-4及び他の免疫チェックポイントに特異的な抗体フラグメント、並びに(5)免疫増強サイトカイン(IFN-α、IFN-γ、IL-2、TNF-α)を含む、広範囲のペプチドベースの分子を包含する。
【0075】
本発明の実施形態での使用による標的化要素は、処置される疾患に応じて選択され得る。例えば、種々の疾患を処置するための標的化要素は、(1)I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、V型コラーゲン、VII型コラーゲン、IX型コラーゲン、XI型コラーゲン、α-アグリカン及びオステオネクチンなどの、関節、皮膚又は骨の細胞外マトリクスの成分に特異的な抗体フラグメント、(2)CD19、CD20、CD22、CD30、CD52、CD79a、CD79b;CD38、CD56、CD74、CD78、CD138;CD319、CD5、CD4、CD7、CD8、CD30;又はCD13、CD14、CD15、CD33、CD34、CD36、CD37、CD41、CD61、CD64、CD65及びCD11cなどの分化マーカーのクラスターに特異的な抗体フラグメント、並びにリンパ性及び骨髄性系統の細胞及び形質細胞の他の表面抗原、又は(3)ヒト上皮成長因子受容体(HER1)、HER2/Neu、HER3、Tn、グロボH、ガングリオシドGD-2、CA125、CA19-9及び癌胎児性抗原(CEA)などの、固形腫瘍の細胞表面上に過剰発現される受容体又は抗原に特異的な抗体フラグメントを含む。
【0076】
標的化要素はまた、ホルモン、成長因子又はサイトカインの抗体であってもよく、ホルモン、成長因子又はサイトカインの受容体は、腫瘍細胞又は他の疾患細胞上に発現される。他の幾つかの選択的な実施形態では、本分子構築物の標的化要素は、成長因子である。
【0077】
本開示のある実施形態によると、本開示の親ポリペプチド及び機能的要素の少なくとも一方は、成長因子に特異的な抗体フラグメントである。ある実施形態では、成長因子は、上皮成長因子(EGF)、突然変異体EGF、エピレグリン、ヘパリン結合性上皮成長因子(HB-EGF)、血管内皮成長因子A(VEGF-A)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)及び肝細胞成長因子(HGF)からなる群から選択される。上記と同様の概念で、標的化要素が成長因子(例えば、EGF)である場合、本分子構築物は、受容体を発現する細胞/組織/器官(例えば、EGF受容体がその上に発現される腫瘍細胞)を特異的に標的化することができる。エフェクター要素が成長因子(例えば、VEGF-A)に特異的な抗体フラグメントである場合、それは、成長因子関連シグナル伝達経路(例えば、VEGF-A誘導性血管新生)を捕捉及び中和し得る。効果的一実施例によると、本分子構築物は、エフェクター要素がVEGF-Aに特異的な抗体フラグメントである固形腫瘍の処置に有用である。
【0078】
薬物動態的要素の例は、C8-28脂肪酸誘導体又はC8-28二酸性脂肪酸誘導体である。各薬物動態的要素は、K残基のε-アミノ酸基を介してK残基の1つと連結される。本開示の種々の実施形態によると、機能的要素は、オクタン酸、ペラルゴン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンエイコサン酸、ベヘン酸、トリコサン酸、リグノセリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸又はバクセン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)に由来する脂肪酸誘導体である。本開示の特定の実施形態によると、機能的要素は、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラッシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、タプシン酸、ヘプタデカン二酸又はオクタデカン二酸に由来する二酸性脂肪酸誘導体である。ある実施形態では、本機能的要素は、ミリスチン酸又はパルミチン酸に由来する。他の実施形態では、本機能的要素は、テトラデカン二酸又はタプシン酸に由来する。
【0079】
(IV)金属結合モチーフを含む複合ポリペプチドと結合するためのリンカーユニット
ある選択的な実施形態では、上記複合ポリペプチドと結合された機能的要素は、バンドル又はリンカーユニットの形態となる。本発明の特定の実施形態によると、リンカーユニットは、中心コア、及び複数の標的化要素、エフェクター要素又は薬物動態的要素を備える。理解され得るように、そのようなリンカーユニットもまた、本開示の保護範囲に含まれる。
【0080】
本発明の特定の実施形態によると、リンカーユニットは、上記態様/実施形態による中心コア、及び複数の標的化要素、エフェクター要素又は薬物動態的要素を備える。
【0081】
具体的には、中心コアは、3~120アミノ酸残基長を有するポリペプチドであり、2~10個のリシン(K)残基を備え、例えば、本コアは、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のK残基を備え得る。K残基の任意の2個は相互に隣接し、又はフィラーによって分離される。ある場合では、SH反応性基は、中心コアの最初又は最後のK残基に、それとアミド結合を形成することによって連結される。他の場合では、中心コアは末端スペーサーをさらに備え、SH反応性基は末端スペーサーの末端アミノ酸残基に、それとアミド結合を形成することによって連結される。このようにして、親ポリペプチドのシステイン残基がほとんど不活性である条件下で、本リンカーユニットの末端SH反応性基を複合ポリペプチドの金属結合モチーフのシステイン残基のSH基と結合させ、それにより均質な分子構築物をもたらす部位特異的な結合を達成することが実行可能である。
【0082】
末端スペーサーは、最初のK残基のN末端に連結されるN末端スペーサー又は最後のK残基のC末端に連結されるC末端スペーサーであり得る。フィラー及び末端スペーサーの各々は、(1)1~12個の非Kアミノ酸残基又は(2)エチレングリコール(EG)ユニットの1~12個の反復を有するPEG化アミノ酸を独立して備える。
【0083】
リンカーユニットが連結アームを有しない場合では、各標的化要素、エフェクター要素又は薬物動態的要素は、K残基のε-アミノ基とアミド結合を形成することを介してコアのK残基に連結される。一方、分子構築物のリンカーユニットが2~10個の連結アームをさらに備える場合、各連結アームの一方の末端がK残基のε-アミノ基とアミド結合を形成することを介してコアのK残基に連結され、各連結アームの他方の末端が各標的化要素、エフェクター要素又は薬物動態的要素に連結される。例えば、連結アームは、2~10個の非Kアミノ酸残基を備えるペプチド又はEGユニットの2~24個の反復を有するポリエチレングリコール(PEG)鎖であり得る。
【0084】
本開示の選択的な実施形態によると、標的化要素、エフェクター要素又は薬物動態的要素と結合される前に、連結アームの遊離末端(すなわち、中心コアのリシン残基に連結されていない端)は、アミン、カルボキシル、N-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)、アジド、アルキン、シクロオクチン、テトラジン及びシクロオクテン基からなる群から選択される連結基を担持し得る。リシン残基の側鎖アミノ基を(連結アームが存在しない場合において)修飾する連結基(すなわち、アミン、カルボキシル、NHS、アジド、アルキン、シクロオクチン、テトラジン又はシクロオクテン基)又は連結アームの遊離末端に存在する連結基に応じて、機能的要素が以下の化学反応のいずれかを介して連結アームの遊離末端と連結され得るように(標的化要素、治療エフェクター要素又は薬物動態的要素などの)機能的要素を対応する官能基で設計することが実行可能である。
(1)それらの間のアミド結合の形成:この場合、連結基がアミン、カルボキシル又はNHS基であり、機能的要素がアミン又はカルボキシル基を有する、
(2)銅(I)触媒によるアルキン-アジド環状付加反応(CuAAC反応):連結基及び官能基の一方がアジド又はピコリルアジド基を有するのに対して、他方がアルキン基を有する、
(3)逆電子要求Diels-Alder(iEDDA)反応:連結基及び官能基の一方がテトラジン基を有するのに対して、他方がシクロオクテン基(例えば、TCO又はノルボルネン基)を有する、又は
(4)歪み促進型アジド-アルキンクリックケミストリー(SPAAC)反応:結合基及び官能基の一方がアジド基を有するのに対して、他方がシクロオクチン基を有する。
【0085】
本開示の種々の実施形態によると、テトラジン基は1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、1,2,4,5-テトラジン又はその誘導体であり、シクロオクテン基はノルボルネン又はトランスシクロオクテン(TCO)基であり、シクロオクチン基はジベンゾシクロオクチン(DIBO)、二フッ化シクロオクチン(DIFO)、ビシクロノニン(BCN)及びジベンゾアザシクロオクチン(DIBAC又はDBCO)からなる群から選択される。本開示の一実施形態によると、テトラジン基は、6-メチルテトラジンである。
【0086】
本発明のある選択的な実施形態によると、中心コアは、SH反応性基と連結されるアミノ酸残基又はその近傍に局在負電荷を担持する。具体的には、局在負電荷は、SH反応性基と連結されるアミノ酸残基から始まるアミノ酸残基内の最初の5~15個のアミノ酸残基内に存在する。例えば、局在負電荷は、SH反応性基と連結されるアミノ酸残基から始まる最初の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸残基内に存在する。局在負電荷は、アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)残基などのpH=7で負に帯電した1以上のアミノ酸残基を含むことによって付与可能である。
【0087】
代替的には、コアは、中心コアがSH反応性基又はその近傍に局在負電荷を担持するように、負に帯電した複数のエフェクター要素と結合され得る。例えば、エフェクター要素は、リンカーユニットの正味の負電荷を全体として増加させることができるキレート剤(例えば、DOTA、DOTAGAなど)を備え得る。
【0088】
上記の章(III)で説明した標的化要素、エフェクター要素及び薬物動態的要素は、章(IV)の実施形態において適用可能であり、簡潔にするため、ここではその詳細な説明を省略する。種々の実施形態では、複数のエフェクター要素を担持するリンカーユニットを「エフェクターバンドル」又は「薬物バンドル」といい、複数のキレート剤を担持するリンカーユニットを「キレート剤バンドル」といい、複数の標的化要素を担持するリンカーユニットを「標的化バンドル」といい、複数のscFvを担持するリンカーユニットを「scFvバンドル」といい、複数の薬物動態的要素を担持するリンカーユニットを「薬物動態的(PK)バンドル」といい、複数の脂肪酸及び/又は二酸性脂肪酸鎖を担持するリンカーユニットを「脂肪酸(FA)バンドル」という。
【0089】
特定の実施形態では、脂肪酸(又は二酸性脂肪酸)誘導体は、化学的に修飾された脂肪酸分子(又は二酸性脂肪酸)である。例えば、脂肪酸分子のカルボキシル基(又は二酸性脂肪酸分子のカルボキシル基の1個)は、一方の官能基が(それにより、(二酸性)脂肪酸分子と共有結合を形成する)カルボキシル反応性であるのに対して他方がリシン残基の側鎖アミノ基と反応可能な官能基である、2個の官能基を有する化学部分と反応する。本開示の選択的な実施形態によると、(二酸性)脂肪酸分子を修飾する化学成分はグルタミン酸残基、アスパラギン酸残基、アミノ-EG2-酸又はガンマ-アミノ酪酸などであるが、本開示はそれに限定されない。
【0090】
理解され得るように、親ポリペプチドにおいてスルフヒドリル基を含みシステイン残基又は他のアミノ酸残基が存在しない場合では、末端システイン残基を末端金属結合モチーフの代わりに導入して複合ポリペプチドを形成してもよく、本リンカーユニットは、そのような複合ポリペプチドとの結合を末端のシステイン残基を介して形成することができる。
【0091】
(V)金属結合モチーフを含む複数の複合ポリペプチドを担持するリンカーユニット
さらに他の態様では、本発明は、本開示の上記態様/実施形態による複数の複合ポリペプチドを担持することができるリンカーユニットに向けられる。ある実施形態では、そのようなリンカーユニットを「ペプチドバンドル」という。
【0092】
本発明の特定の実施形態によると、リンカーユニットは、上記態様/実施形態による中心コア、2~10個の連結アーム、及び2~10個の複合ポリペプチドを備える。そのようなリンカーユニットの連結アームはその遊離末端にSH反応性基を有し、各複合ポリペプチドは本金属結合モチーフを有するので、親ポリペプチドのシステイン残基がほとんど非活性である条件下で、部位特異的な態様において、複合ポリペプチドを連結アームに結合させることができる。
【0093】
具体的には、中心コアは、3~120アミノ酸残基長を有するポリペプチドであり、コアは2~10個のリシン(K)残基を備え、例えば、本コアは、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のK残基及び結合基を備え得る。K残基のいずれか2個は相互に隣接し、又はフィラーによって分離される。
【0094】
ある場合では、中心コアは、中心コアの最初又は最後のK残基に、それとアミド結合を形成することによって連結される結合基をさらに備える。結合基の例は、これに限定されないが、アジド、アルキン、テトラジン、シクロオクテン及びシクロオクチン基を含む。
【0095】
他の場合では、中心コアは末端スペーサーをさらに備え、結合基は末端スペーサーの末端アミノ酸残基に、それとアミド結合を形成することによって連結される。末端スペーサーは、最初のK残基のN末端に連結されるN末端スペーサー又は最後のK残基のC末端に連結されるC末端スペーサーであり得る。
【0096】
フィラー及び末端スペーサーの各々は、(1)1~12個の非Kアミノ酸残基又は(2)エチレングリコール(EG)ユニットの1~12個の反復を有するPEG化アミノ酸を独立して備える。一般に、上記の末端スペーサー又はフィラーは、(1)Kアミノ酸残基以外の1~12(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12)個のオリゴペプチド又は(2)1~12個のEGユニットを有する(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個のEGユニットを有する)PEG化アミノ酸であり得る。具体的には、本コアが複数のK残基を備える場合では、末端スペーサー又はフィラーは2~12個のEGユニットを有するPEG化アミノ酸を備えていてもよいし、1~12個の非Kアミノ酸残基を備えてもよく、非Kアミノ酸残基の各々はグリシン(G)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、セリン(S)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)、スレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、プロリン(P)、アラニン(A)、バリン(V)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)及びトリプトファン(W)残基からなる群からそれぞれ選択され、好ましくは、非Kアミノ酸残基の各々はG、S、R、H、T、N、Q、P、A、V、I、L、M、F、Y及びWからなる群からそれぞれ選択され、より好ましくは、非Kアミノ酸残基の各々はそれぞれG及び/又はS残基である。
【0097】
ある実施形態によると、各連結アームの一方の末端はK残基のε-アミノ基とアミド結合を形成することを介してコアのK残基に連結されるのに対して、各連結アームの他方の末端はスルフヒドリル(SH)反応性基を有する。例えば、連結アームは、2~12個の非Kアミノ酸残基を備えるペプチド又はEGユニットの2~24個の反復を有するポリエチレングリコール(PEG)鎖であり得る。
【0098】
例示的なSH反応性基は、マレイミド、ハロアセチル(例えば、ヨードアセチル又はブロモアセチル)、スルホン(例えば、ビニルスルホン、モノスルホン、メチルスルホニルベンゾチアゾール)及びピリジルジスルフィド(例えば、2-ピリジルジチオール)基を含む。
【0099】
本開示のある実施形態によると、連結アームは、Kアミノ酸残基以外の、2~12(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12)個のアミノ酸残基(それらの各々が天然又は非天然アミノ酸残基であり得る)を備えるペプチドである。例えば、連結アームは、G、E、D、S、R、H、T、N、Q、P、A、V、I、L、M、F、Y及びW残基からなる群から独立して選択される2~12個のアミノ酸残基を備えるペプチドである。効果的一実施例によると、連結アームは、G、S、E及びR残基からなる群から独立して選択される5~10個のアミノ酸残基を備えるペプチドである。代替的に、連結アームは、EGユニットの2~24(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24)個の反復、好ましくは、EGユニットの5~15個の反復、より好ましくは、EGユニットの6~12個の反復を有するPEG鎖であり得る。理解され得るように、連結アームのペプチド又はPEG鎖は、略同一長のポリマーで置換され得る。炭水化物又は他の親水性ビルディングブロックを備えるポリマーは、連結アームとしての使用に適切である。
【0100】
本発明のある実施形態によると、各連結アームは、SH反応性基と連結されるアミノ酸残基又はその近傍に局在負電荷を担持する。具体的には、局在負電荷は、SH反応性基と連結されるアミノ酸残基から開始するアミノ酸残基内の最初の5~15個のアミノ酸残基内に存在する。例えば、局在負電荷は、SH反応性基と連結されるアミノ酸残基から開始する最初の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸残基内に存在する。局在負電荷は、アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)残基などのpH=7で負に帯電した1以上のアミノ酸残基を含むことによって付与可能である。
【0101】
理解され得るように、本コアが少なくとも2つの末端スペーサー又はフィラーを備える場合、末端スペーサー又はフィラーの各々は同一又は異なってもよく、すなわち、各末端スペーサー又はフィラーは同一又は異なるアミノ酸配列及び/又はEGユニットを備え得る。本開示の一実施形態によると、本コアは、スペーサーの1つがEGユニットの8個の反復を有するPEG化アミノ酸であり、他の2つのスペーサーがそれぞれ1個のS残基及び1個のG残基である、3個のフィラーを備える。本開示の他の実施形態によると、本コアは、スペーサーの1つが4個のG及び2個のS残基からなり、一方で他の4個のスペーサーがそれぞれ1個のG及び1個のS残基からなる、1つの末端スペーサー及び4個のフィラーを備える。本開示のさらに他の実施形態によると、本コアは、2つの末端スペーサー及び3個のフィラーを備え、各々がEGユニットの4個の反復を有するPEG化アミノ酸である。
【0102】
本発明の選択的な実施形態によると、複数の複合ポリペプチドを備える上記のリンカーユニット(又はペプチドバンドル)は、中心コアの結合基と反応して分子構築物を形成することにより、追加のリンカーユニットと結合され得る。例えば、上記追加のリンカーユニットは、エフェクターバンドル、標的化バンドル又はPKバンドルであり得る。例えば、追加のリンカーユニットは、出願人の以前に提出した特許出願に記載されるものと同様の構造物を採用し得る。簡潔には、追加のリンカーユニットは、末端のSH反応性基がペプチドバンドルの結合基に対応する結合基と置換されることを除き、上述の章(III)に説明されるものと同様の構造物を有し得る。
【0103】
上記追加のリンカーユニットによって担持される標的化要素又はエフェクター要素がペプチドベースの要素である実施形態では、上記ペプチドベースの要素は上記の亜鉛結合モチーフを有してもよく、追加のリンカーユニットは本ペプチドバンドルの構造物を採用して、それにより異なる種類の機能的要素を担持する2つのペプチドバンドルから構成される分子構築物を形成し得る。
【0104】
ある選択的な実施形態では、結合基は、末端アミノ酸残基(すなわち、N末端スペーサーの最初の連結アミノ酸残基又はN末端アミノ酸残基)のα-アミノ基(-NH2)又は末端アミノ酸残基(すなわち、C末端スペーサーの最後の連結アミノ酸残基又はC末端アミノ酸残基)のカルボキシル基(-COOH)と共有結合を形成可能な官能基を有する結合部分の一部であり、それにより、結合部分がそこに連結される。特定の実施形態において、コアは、N及びC末端スペーサーの一方のみを有していてもよく、(末端スペーサーの末端連結アミノ酸残基又は末端アミノ酸残基であり得る)2個の末端アミノ酸残基にそれぞれ連結される第1及び第2の結合部分の双方を有する。コアがN及びC末端スペーサーの双方を備え、2つの結合部分が2つの末端スペーサーの末端アミノ酸残基にそれぞれ連結される実施形態もまた存在する。好ましい実施形態では、結合部分と末端アミノ酸残基の間に形成される共有結合は、アミド結合である。理解され得るように、得られたバンドルの均質性を確保するために、1つの結合部分はα-アミノ基又はカルボキシル基のいずれかと反応可能である1つの官能基のみを有することが重要である。
【0105】
選択的に、結合部分は、カルボキシル又はアミノ基及び結合基を接続するEGユニットの2~10(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)個の反復を有するPEG鎖をさらに備え、例えば、PEG鎖はEGユニットの4、6、7又は8個の反復を有し得る。
【0106】
本開示の種々の実施形態によると、2つの結合部分は、同一の反応性又は異なる反応性を有し得る。好ましくは、結合部分の第2の結合基がアジド、アルキン又はシクロオクチン基である場合には、第2の結合基と連結基の間の反応を回避するように連結アームの連結基はアジド、アルキン又はシクロオクチン基のいずれとなることもなく、むしろ、連結基はテトラジン、シクロオクテン、アミン、カルボキシル又はN-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)基であり得る。代替的に、第2の結合基がテトラジン又はシクロオクテン基である場合、連結基はテトラジン又はシクロオクテン基のいずれとなることもなく、代わりに、連結基は、アジド、アルキン、シクロオクチン、アミン、カルボキシル又はN-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)基であり得る。
【0107】
理解され得るように、コアに連結される選択的な連結アームの数は、主にコアに備わる連結アミノ酸残基(すなわち、K残基)の数によって決定される。本コアに備えられる少なくとも2個の連結アミノ酸残基が存在するので、本標的化バンドル又はエフェクターバンドルは複数の連結アームを備え得る。
【0108】
理解され得るように、エフェクター要素、標的化要素又は薬物動態的要素に関する説明は、それ以外を文脈が明示しない限り、そのような要素を伴う全ての態様/実施形態に適用可能である。
【0109】
理解され得るように、ペプチド中心コアの固相合成中に、コアが合成された後に機能的要素をコアに付着させる代わりに、特異的な機能的要素で修飾されたKアミノ酸残基をペプチド鎖内に組み込むことも実行可能である。したがって、種々の実施形態によると、異なる機能的要素で修飾されたK残基は、均質な薬物動態的バンドルのバッチを与えるように、固相合成中に連続的に付加されてもよく、各薬物動態的バンドルは、そこに連結される2以上の異なる機能的要素を有し得る。
【0110】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を明瞭にして本発明の実施の際に当業者を補助するように提供される。これらの実施例は、いかなる態様においても発明の範囲を限定するものとしてみなされるべきではない。更なる詳述なしに、当業者であれば、ここでの説明に基づいて、本発明をその最大の範囲で利用することができると考えられる。
【実施例0111】
Mal-ペプチド1中心コアの合成
この実施例では、5個のリシン残基を有するペプチドが本発明者によって設計され、その製造をKareBay Co.,Ltd.(米国、モンマンスジャンクション)に外注した。このペプチドは、リンカーユニット又は機能的バンドルを構築するために中心コアとして使用可能である。Mal-ペプチド1(マレイミド-エチル-GGSGGSKGSKGSKGSKGSK;配列番号11)を、標準的Fmocに基づく固相法を用いて合成した。Mal-ペプチド1は、95.67%の純度を有していた。
【0112】
結果として合成されたペプチドの同定を、質量分光法MALDI-TOFを用いて実施した。質量分光分析を、Institute of Molecular Biology(IMB)、Academia Sinica、台湾、台北のMass Core Facilityによって実施した。測定を、Bruker Autoflex III MALDI-TOF/TOF質量分光計(Bruker Daltonics、独国、ブレーメン)において行った。
【0113】
図1は質量分光法MALDI-TOFの結果を示し、Mal-ペプチド1は1790.916ダルトンの分子量を有することを示す。
中心コアとして用いたMal-ペプチド2(マレイミド-エチル-GGSGGSGKGGSGGSGKGGSGGSGK、配列番号12)を、標準的Fmocに基づく固相合成を用いて合成し、その後にDOTA分子を、液相合成を用いて中心コアに結合させた。