(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023365
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】細胞由来の小胞を含む組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/12 20150101AFI20240214BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240214BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240214BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240214BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240214BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240214BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20240214BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/164 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/56 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/685 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240214BHJP
A61K 31/728 20060101ALI20240214BHJP
A61K 38/43 20060101ALI20240214BHJP
A61K 35/22 20150101ALI20240214BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K35/12
A61P13/12
A61P11/00
A61P3/10
A61K38/02
A61K31/7105
A61K31/7088
A61K48/00
A61K38/19
A61K38/21
A61K31/164
A61K31/56
A61K31/685
A61K9/08
A61K31/728
A61K38/43
A61K35/22
A61K39/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023197853
(22)【出願日】2023-11-22
(62)【分割の表示】P 2021510443の分割
【原出願日】2019-08-28
(31)【優先権主張番号】62/725,651
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516108269
【氏名又は名称】プロキドニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラム, ティモシー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャイン, ディーパク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象における腎疾患を治療する方法を提供する。
【解決手段】本明細書では、とりわけ、腎細胞(生物活性腎細胞、例えば、選択腎細胞等)によって産生される細胞外産物(例えば、微小胞、例えばエクソソーム等の小胞)が提供される。細胞によって産生される小胞のコンポーネント(miRNA又はタンパク質等)を改変する方法、並びに様々な化合物を含む小胞を生産する方法も含まれる。診断方法及び治療方法も提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における腎疾患を治療する方法であって、単離された分泌された腎細胞小胞の有効量を前記対象に投与することを含み、前記小胞は、静脈内注射又は経カテーテル送達によって投与される、方法。
【請求項2】
前記小胞は、末梢血管へと静脈内注射される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記経カテーテル送達は、前記対象の左腎動脈又は右腎動脈への送達である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象は、慢性腎臓疾患を患っている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記慢性腎臓疾患は、ステージI、ステージII、ステージIII、ステージIV、又はステージVの腎臓疾患である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記腎疾患の治療は、前記対象における腎線維症を軽減又は予防することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象は、少なくとも1週間又は2週間にわたって1週間につき少なくとも1回、2回、又は3回透析を受けている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象は、II型糖尿病を患っている、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象は、先天性腎尿路異常(CAKUT)を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象は、90mL/分/1.73m2未満の糸球体濾過率(GFR)、ミクロアルブミン尿、又はマクロアルブミン尿を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象に細胞は投与されない、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記小胞は、微小胞を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記小胞は、約30nm~150nmの直径のエクソソームを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記小胞は、その外面上、その脂質二重層中、及び/又はその内腔中に化合物を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物は、1つ以上の細胞経路を減弱させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物は、タンパク質、小分子、又はポリヌクレオチドである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチドは、miRNA分子である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物は、天然に存在する腎細胞によって産生されない、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物は、サイトカインである、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物は、人工化合物である、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記化合物は、腎臓疾患の治療に使用される化合物である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記小胞は、プラスミノーゲン活性化阻害剤-1(PAI-1)シグナル伝達及び/又は形質転換増殖因子β(TGFβ)シグナル伝達を減弱させる化合物を含む、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記小胞は、古典的Wntシグナル伝達を減弱させる化合物を含む、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記小胞は、非古典的Wntシグナル伝達を減弱させる化合物を含む、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記小胞は、CXCR4媒介シグナル伝達を減弱させる化合物を含む、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記小胞は、炎症性サイトカインを下方制御する化合物を含む、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記炎症性サイトカインは、IL8である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記小胞は、Notchシグナル伝達を減弱させる化合物を含む、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物は、細胞の免疫表現型解析に使用される細胞表面分子である、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物は、CD9、CD63、CD81、CD133、CD146、CD326、CD40、CD42a、CD44、又はCD49eである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記化合物は、タンパク質受容体である、請求項14に記載の方法。
【請求項32】
前記タンパク質受容体は、レチノイド関連受容体(ROR4)である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記化合物は、発生段階マーカーである、請求項14に記載の方法。
【請求項34】
前記発生段階マーカーは、段階特異的胚性抗原-4(SSEA-4)である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記化合物は、ストレス保護タンパク質である、請求項14に記載の方法。
【請求項36】
前記ストレス保護タンパク質は、熱ショックタンパク質(HSP)70又はHSP90である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記化合物は、スキャフォールドタンパク質である、請求項14に記載の方法。
【請求項38】
前記スキャフォールドタンパク質は、TST101である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記化合物は、miRNAであり、前記小胞の内腔中にある、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記miRNAは、細胞周期調節miRNAである、請求項14~17又は請求項39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞周期調節miRNAは、let7a、miR-143、又はmiR22である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記miRNAは、細胞老化調節性miRNAである、請求項14~17又は請求項39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞老化調節性miRNAは、miR-34である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記miRNAは、細胞遊走調節性miRNAである、請求項14~17又は請求項39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞遊走調節性miRNAは、miR30-Cである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記miRNAは、細胞成長調節性miRNAである、請求項14~17又は請求項39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞成長調節性miRNAは、miR194-2である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記miRNAは、細胞シグナル経路調節性miRNAである、請求項14~17又は請求項39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞シグナル経路調節性miRNAは、miR-142である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記miRNAは、炎症調節性miRNAである、請求項14~17又は請求項39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記炎症調節性miRNAは、miR-10aである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記miRNAは、血管新生調節性miRNAである、請求項14~17又は請求項39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記血管新生調節性miRNAは、miR-296及び/又はmiR-146aである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記miRNAは、キナーゼ活性調節性miRNAである、請求項14~17又は請求項39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記キナーゼ活性調節性miRNAは、miR-83である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記化合物は、PAI-1、TGFβ、古典的Wntシグナル伝達、非古典的Wntシグナル伝達、CXCR4媒介シグナル伝達、及び/又はNotchシグナル伝達を阻害するmiRNAである、請求項14~17又は請求項39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
上皮-間葉転換(EMT)の阻害によって腎線維症が低減又は予防される、請求項6~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記小胞は、miR-145、miR-22、miR-7、miR-10a、miR-143、及び/又はlet7bを含む、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記小胞は、miR-1248、miR-3168、miR-7113-5p、miR-758-3p、miR-937-3p、miR-4455、miR-4521、miR-203a-3p、miR-22-3p、miR-574-3p、miR-181b-5p、miR-1260b、及び/又はmiR-181b-5pを含む、請求項1~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記小胞は、CD9、CD63、CD81、CD133、CD146、CD326、CD40、CD42a、CD44、CD49e、及び/又はSSEA-4を含む、請求項1~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記小胞は、CD63、CD9、及び/又はCD81を含み、前記CD63、前記CD9、及び/又は前記CD81は、前記小胞の外面上にある、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記小胞は、CD133、CD326、及び/又はCD49eを含み、前記CD133、前記CD326、及び/又は前記CD49eは、前記小胞の外面上にある、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記小胞と接触した腎細胞の増殖は、前記小胞と接触していない腎細胞と比較して増加する、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記小胞と接触した内皮細胞による血管形成は、前記小胞と接触していない内皮細胞と比較して増加する、請求項1~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記小胞と接触した腎細胞のネフロン尿細管形成は、前記小胞と接触していない腎細胞と比較して増加する、請求項1~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記小胞は、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロール、セラミド、及び/又はホスファチジルコリンを含む、請求項1~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記小胞は、薬学的に許容可能な担体を含む組成物中にある、請求項1~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記薬学的に許容可能な担体は、水溶液を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記小胞は、初代腎細胞集団によって分泌されたものである、請求項1~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記細胞は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、又は10回継代されている、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記小胞は、濃縮された腎細胞集団によって分泌されたものであり、ここで、前記濃縮された腎細胞集団は、生物活性腎細胞を含む、請求項1~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記集団は、
(a)尿細管細胞の濃縮された集団、又は、
(b)尿細管細胞並びに1つ以上の糸球体細胞及び血管細胞の濃縮された集団、
を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記集団は、出発腎臓細胞集団に由来し、前記出発集団と比較してより高いパーセンテージの尿細管細胞を含む、請求項71又は72に記載の方法。
【請求項74】
前記集団は、糸球体細胞を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記集団は、血管細胞を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記集団は、前記対象に対して非自家である、請求項69~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記集団は、前記対象に対して自家である、請求項69~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記集団は、同種異系である、請求項69~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記集団の細胞は、低酸素抵抗性及び/又はイオジキサノール抵抗性である、請求項70~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記集団中の細胞は、CK18及び/又はGGT1を発現する、請求項70~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記集団は、LAP酵素活性及び/又はGGT酵素活性を有する、請求項70~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記集団中の細胞の少なくとも80%は、GGT-1を発現する、請求項70~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記集団は、VEGF及び/又はKIM-1を発現する、請求項70~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記集団中の細胞の4.5%~81.2%はGGT-1を発現し、前記集団内の細胞の3.0%~53.7%はAQP2を発現し、前記集団内の細胞の81.1%~99.7%はCK18を発現する、請求項70~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記集団は、腎臓生検からの腎臓細胞の初代培養物と比較して腎尿細管細胞について濃縮されており、前記尿細管細胞は、in vitro及びin vivoの両方でヒアルロン酸シンターゼ-2(HAS-2)の作用を通じてより高分子量の種のヒアルロン酸(HA)を発現する、請求項70~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記生物活性腎細胞集団は、腎臓生検からの腎臓細胞の初代培養物と比較してより低い
割合の遠位尿細管細胞、集合管細胞、内分泌細胞、血管細胞、及び/又は前駆細胞様細胞を有する、請求項70~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
初代腎細胞によって分泌された小胞を前記対象に投与することを更に含む、請求項1~68又は請求項70~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
内皮細胞又は間葉系幹細胞によって分泌された小胞を前記対象に投与することを更に含む、請求項1~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
非腎細胞小胞を前記対象に投与することを更に含む、請求項1~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記非腎細胞小胞は、非腎内皮前駆細胞、非腎間葉系幹細胞、又は非腎脂肪由来前駆細胞によって分泌されたものである、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
小胞中の少なくとも1つの化合物を検出する方法であって、前記小胞を得ることと、前記少なくとも1つの化合物が前記小胞中にあるかどうかを検出することとを含み、
(i)前記少なくとも1つの化合物は、タンパク質であり、前記タンパク質は、CD9、CD81、CD146、CD326、CD40、CD42a、CD44、CD49e、及び/又はSSEA-4であり、
(ii)前記少なくとも1つの化合物は、miRNAを含み、ここで、前記miRNAは、miR-145、miR-22、miR-7、miR-10a、miR-143、及び/又はlet7bの少なくとも2つを含み、及び/又は、
(iii)前記少なくとも1つの化合物は、自然腎中の腎細胞によって発現又は産生されない、方法。
【請求項92】
前記小胞は、対象からの生体試料中で又は該生体試料から得られる、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記生体試料は、尿である、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記小胞は、腎細胞の培養物の上清中で又は該上清から得られる、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
前記小胞は、腎細胞によって分泌されたものである、請求項91~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記タンパク質が前記小胞中にあるかどうかの検出は、イムノアッセイを含む、請求項91~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記miRNAが前記小胞中にあるかどうかの検出は、前記小胞又は該小胞からの核酸を含むと疑われる処理された試料を、前記miRNAに相補的なプローブ又はプライマーと接触させることを含む、請求項91~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記miRNAが前記小胞中にあるかどうかの検出は、マイクロアレイ分析を含まない、請求項91~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記miRNAが前記小胞中にあるかどうかの検出は、1000種、500種、又は100種未満の異なるmiRNAに対するプローブを含むマイクロアレイを用いたマイクロアレイ分析を含む、請求項91~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記miRNAが前記小胞中にあるかどうかの検出は、ポリメラーゼ連鎖反応を含む、請求項91~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記化合物は、小分子である、請求項91~100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記化合物は、腎臓疾患の治療に使用される化合物である、請求項91~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
生物活性腎細胞集団が投与された対象における前記生物活性腎細胞集団による治療をモニターする方法であって、請求項91~102のいずれか一項に記載の方法に従って、少なくとも1つの化合物が前記対象からの小胞中に存在するかどうかを検出することを含む、方法。
【請求項104】
請求項91~102のいずれか一項に記載の方法に従って、第1の時点及び第2の時点において、少なくとも1つの化合物が前記対象からの小胞中に存在するかどうかを検出することを含む、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記第1の時点は、前記対象に前記生物活性腎細胞集団が投与される前であり、前記第2の時点は、前記対象に前記生物活性腎細胞集団が投与された後である、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記第1の時点及び前記第2の時点は、前記対象に前記生物活性腎細胞集団が投与された後である、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
前記化合物のレベルが前記第1の時点で前記第2の時点と比較してより高い場合に、前記対象における再生効果を判定することを更に含む、請求項104~106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
前記化合物のレベルがコントロールより高い場合に、前記対象における再生効果を判定することを更に含む、請求項104~106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記コントロールは、前記生物活性腎細胞集団が投与されていない対応する対象におけるレベルである、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
小胞が再生的であるかどうかを判定する方法であって、
(i)請求項49~58のいずれか一項に記載の方法に従って、タンパク質及び/又はmiRNAが前記小胞中にあるかどうかを検出することと、
(ii)前記タンパク質及び/又は前記miRNAが前記小胞中で検出された場合に前記小胞を再生的であると判定することと、
を含む、方法。
【請求項111】
生物活性腎細胞集団からの小胞中の少なくとも1つのmiRNAのレベルを検出する方法であって、
(i)以下のmiRNA分子:miR-1248、miR-3168、miR-362-5p、miR-7113-5p、miR-758-3p、miR-937-3p、miR-4455、miR-4521、miR-203a-3p、miR-22-3p、miR-574-3p、miR-181b-5p、miR-1260b、及び/又はmiR-181b-5pの1つ以上が前記小胞中でコントロールと比較して増加しているかどうかを検出することと、
(ii)以下のmiRNA分子:miR-1-3p、miR-1-3p、miR-143-3p、miR-150-5p、miR-509-3p、miR-653-5p、miR-204-5p、miR-192-5p、及び/又はmiR-363-3pの1つ以上が前記小胞中でコントロールと比較して減少しているかどうかを検出することと、
を含む、方法。
【請求項112】
前記生物活性腎細胞は、選択腎細胞である、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記コントロールは、初代腎細胞集団からの小胞中の前記1つ以上のmiRNA分子のレベルである、請求項111又は112に記載の方法。
【請求項114】
前記コントロールは、別の生物活性腎細胞集団からの小胞中の前記1つ以上のmiRNA分子のレベルである、請求項111又は112に記載の方法。
【請求項115】
対象における腎疾患を治療する方法であって、小胞調製物からの小胞を前記対象に有効量、投与することを含み、ここで、前記小胞調製物からの小胞は、請求項110に記載の方法に従って再生的であると特定されたものである、方法。
【請求項116】
対象における腎疾患を治療する方法であって、生物活性腎細胞集団によって分泌されたものではない腎細胞小胞が補充された生物活性腎細胞集団を含む組成物を前記対象に有効量、投与することを含む、方法。
【請求項117】
前記生物活性腎細胞集団は、選択腎細胞集団である、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記腎細胞小胞は、前記組成物中の前記生物活性腎細胞集団と同じ起源を有する及び/又は同じ細胞型を含む生物活性腎細胞集団によって分泌されたものである、請求項116又は117に記載の方法。
【請求項119】
生物活性腎細胞の集団によって産生される小胞中の少なくとも1つのmiRNA及び/又はタンパク質のレベルを変化させる方法であって、前記集団を低酸素条件下で培養することを含む、方法。
【請求項120】
前記集団の低酸素条件下での培養は、前記集団を5%未満の酸素の存在下で少なくとも約8時間、12時間、16時間、20時間、24時間、又は48時間培養することを含む、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記生物活性腎細胞を少なくとも約1回、2回、又は3回継代した後に、前記集団を低酸素条件下で培養することを更に含む、請求項119又は120に記載の方法。
【請求項122】
(a)前記少なくとも1つのmiRNAは、miR-145、miR-22、miR-7、miR-10a、miR-143、let7b、miR-1248、miR-3168、miR-7113-5p、miR-758-3p、miR-937-3p、miR-4455、miR-4521、miR-203a-3p、miR-22-3p、miR-574-3p、miR-181b-5p、miR-1260b、及び/又はmiR-181b-5pであり、及び/又は、
(b)前記少なくとも1つのタンパク質は、CD9、CD63、CD81、CD133、CD146、CD326、CD40、CD42a、CD44、CD49e、SSEA-4、TST101、HSP70、HSP90、及び/又はROR4である、請求項119又は120に記載の方法。
【請求項123】
自然腎中の腎細胞によって産生されない化合物を含む小胞。
【請求項124】
前記化合物は、タンパク質、小分子、又はポリヌクレオチドである、請求項123に記載の小胞。
【請求項125】
前記化合物は、前記化合物の不存在下で培養される初代腎細胞によって発現又は産生されない、請求項123又は124に記載の小胞。
【請求項126】
前記化合物は、人工化合物である、請求項125に記載の小胞。
【請求項127】
前記化合物は、腎臓疾患の治療に使用される化合物である、請求項123~126のいずれか一項に記載の小胞。
【請求項128】
微小胞である、請求項123~127のいずれか一項に記載の小胞。
【請求項129】
エクソソームである、請求項128に記載の小胞。
【請求項130】
前記小胞を産生した細胞を含む組成物中にある、請求項123~129のいずれか一項に記載の小胞。
【請求項131】
前記小胞を産生した細胞から単離されたものである、請求項123~129のいずれか一項に記載の小胞。
【請求項132】
腎小胞である、請求項123~131のいずれか一項に記載の小胞。
【請求項133】
生物活性腎細胞によって産生されたものである、請求項123~132のいずれか一項に記載の小胞。
【請求項134】
請求項123~133のいずれか一項に記載の小胞と、薬学的に許容可能な担体とを含む組成物。
【請求項135】
腎細胞小胞と非腎細胞小胞とを含む組成物。
【請求項136】
前記腎細胞小胞は、生物活性腎細胞によって分泌されたものである、請求項135に記載の組成物。
【請求項137】
前記非腎細胞小胞は、非腎内皮前駆細胞、非腎間葉系幹細胞、又は非腎脂肪由来前駆細胞によって分泌されたものである、請求項135又は136に記載の組成物。
【請求項138】
初代腎細胞によって産生された小胞と、選択腎細胞によって産生された小胞とを含む組成物。
【請求項139】
対象における腎疾患を治療する方法であって、請求項134~138のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に有効量、投与することを含む、方法。
【請求項140】
細胞から該細胞によって産生されない化合物を含むエクソソームを生産する方法であって、細胞培養上清から前記エクソソームを単離することを含み、ここで、前記細胞培養上清は、前記化合物と接触された細胞の培養物からの細胞培養上清である、方法。
【請求項141】
自然腎中の腎細胞によって産生されない化合物を含む腎エクソソームを生産する方法で
あって、腎細胞培養上清から小胞を単離することを含み、ここで、前記腎細胞培養上清は、前記化合物と接触された生物活性腎細胞集団を含む腎細胞の培養物からの細胞培養上清である、方法。
【請求項142】
前記化合物は、人工化合物である、請求項140又は141に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
細胞外小胞、中でも注目すべきはエクソソームの研究は急速に増加している。エクソソーム生合成(非特許文献1)、それらの診断及び予後診断の可能性(非特許文献2)並びに組織工学及び再生医療における潜在的な治療用途(非特許文献3)に関する多くの論文が発表されている。これらのmRNA、miRNA、タンパク質及び脂質メディエーターの運搬体は、標的細胞に作用して、細胞間コミュニケーション及び機能的遺伝情報の交換を促進することができる(非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0002】
【非特許文献1】Kowal et al., 2014, Curr Opin Cell Biol. 29C:116-125
【非特許文献2】Revenfeld et al., 2014, Clin Ther. 36(6):830-846
【非特許文献3】Lamichhane et al., 2014, Tissue Eng Part B Rev.
【非特許文献4】Simons and Raposo, 2009, Curr Opin Cell Biol. 21(4):575-581
【非特許文献5】Stoorvogel et al., 2002, Traffic 3(5):321-330
【非特許文献6】Nieuwland and Sturk, 2010, Thrombosis Research 125(Supplement 1):S49-S51
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、とりわけ、腎細胞(生物活性腎細胞、例えば、選択腎細胞等)によって産生される細胞外産物(例えば、微小胞、例えばエクソソーム等の小胞)が提供される。或る特定の実施の形態では、そのような産物は、慢性腎臓疾患等の腎疾患を治療するのに使用される。細胞によって産生される小胞のコンポーネント(miRNA又はタンパク質等)を改変する方法、及び様々な化合物を含む小胞を生産する方法も含まれる。診断方法及び治療方法も提供される。
【0004】
一態様では、本明細書において、対象における腎疾患を治療する方法が提供される。或る特定の実施の形態では、該方法は、単離された分泌された腎細胞小胞を前記対象に有効量、投与することを含み、ここで、前記小胞は、静脈内注射又は経カテーテル送達によって投与される。
【0005】
一態様では、本明細書において、小胞中の少なくとも1つの化合物を検出する方法が提供される。或る特定の実施の形態では、該方法は、前記小胞を得ることと、前記少なくとも1つの化合物が前記小胞中にあるかどうかを検出することとを含み、(i)前記少なくとも1つの化合物は、タンパク質であり、前記タンパク質は、CD9、CD81、CD146、CD326、CD40、CD42a、CD44、CD49e、及び/又はSSEA-4であり、(ii)前記少なくとも1つの化合物は、miRNAを含み、ここで、前記miRNAは、miR-145、miR-22、miR-7、miR-10a、miR-143、及び/又はlet7bの少なくとも2つを含み、及び/又は(iii)前記少なくとも1つの化合物は、自然腎中の腎細胞によって発現又は産生されない。
【0006】
一態様では、本明細書において、生物活性腎細胞集団が投与された対象における前記生物活性腎細胞集団による治療をモニターする方法が提供される。或る特定の実施の形態では、該方法は、本明細書に開示される方法に従って、少なくとも1つの化合物が前記対象からの小胞中に存在するかどうかを検出することを含む。
【0007】
一態様では、本明細書において、小胞が再生的であるかどうかを判定する方法が提供さ
れる。或る特定の実施の形態では、該方法は、(i)本明細書に開示される方法に従って、タンパク質及び/又はmiRNAが前記小胞中にあるかどうかを検出することと、(ii)前記タンパク質及び/又は前記miRNAが前記小胞中で検出された場合に前記小胞を再生的であると判定することとを含む。
【0008】
一態様では、本明細書において、生物活性腎細胞集団からの小胞中の少なくとも1つのmiRNAのレベルを検出する方法が提供される。或る特定の実施の形態では、該方法は、(i)以下のmiRNA分子:miR-1248、miR-3168、miR-7113-5p、miR-758-3p、miR-937-3p、miR-4455、miR-4521、miR-203a-3p、miR-22-3p、miR-574-3p、miR-181b-5p、miR-1260b、及び/又はmiR-181b-5pの1つ以上が前記小胞中でコントロールと比較して増加しているかどうかを検出することと、(ii)以下のmiRNA分子:miR-1-3p、miR-1-3p、miR-143-3p、miR-150-5p、miR-509-3p、miR-653-5p、miR-204-5p、miR-192-5p、及び/又はmiR-363-3pの1つ以上が前記小胞中でコントロールと比較して減少しているかどうかを検出することとを含む。或る特定の実施の形態では、miRNAは、ヒトmiRNA等の哺乳動物miRNAである。
【0009】
一態様では、本明細書において、対象における腎疾患を治療する方法が提供される。或る特定の実施の形態では、該方法は、小胞調製物からの小胞を前記対象に有効量、投与することを含み、ここで、前記小胞調製物からの小胞は、本明細書に開示される方法に従って再生的であると特定されたものである。
【0010】
或る特定の実施の形態では、本明細書において、対象における腎疾患を治療する方法であって、生物活性腎細胞集団によって分泌されたものではない腎細胞小胞が補充された生物活性腎細胞集団を含む組成物を前記対象に有効量、投与することを含む、方法が提供される。
【0011】
一態様では、本明細書において、生物活性腎細胞の集団によって産生される小胞中の少なくとも1つのmiRNA及び/又はタンパク質のレベルを変化させる方法であって、前記集団を低酸素条件下で培養することを含む、方法が提供される。
【0012】
一態様では、本明細書において、自然腎中の腎細胞によって産生されない化合物を含む小胞が提供される。
【0013】
一態様では、本明細書において、本明細書に開示される小胞と、薬学的に許容可能な担体とを含む組成物が提供される。
【0014】
一態様では、本明細書において、腎細胞小胞と非腎細胞小胞とを含む組成物が提供される。
【0015】
一態様では、本明細書において、初代腎細胞によって産生された小胞と、選択腎細胞によって産生された小胞とを含む組成物が提供される。
【0016】
一態様では、本明細書において、対象における腎疾患を治療する方法が提供される。或る特定の実施の形態では、該方法は、本明細書に開示される組成物を前記対象に有効量、投与することを含む。
【0017】
一態様では、本明細書において、細胞から該細胞によって産生されない化合物を含む小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)を生産する方法が提供される。或る特定の実施の
形態では、該方法は、細胞培養上清から小胞を単離することを含み、ここで、細胞培養上清は、化合物と接触された(例えば、化合物を含有する培地中でインキュベートされた)細胞の培養物からの細胞培養上清である。或る特定の実施の形態では、該方法は、細胞培養上清から小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)を単離した後に、エクソソーム膜を透過処理して化合物を侵入し易くすることによって(例えば、超音波処理、リポフェクション、エレクトロポレーション等によって)化合物を小胞中に取り込むことを含む。
【0018】
一態様では、本明細書において、自然腎中の腎細胞によって産生されない化合物を含む腎エクソソームを生産する方法が提供される。或る特定の実施の形態では、該方法は、腎細胞培養上清から小胞を単離することを含み、ここで、前記腎細胞培養上清は、前記化合物と接触された生物活性腎細胞集団を含む腎細胞の培養物からの腎細胞培養上清である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】全体的なNKAの製造方法の非限定的な例の流れ図である。
【
図2A-D】
図1に示される非限定的な例示的な方法の更なる詳細を示す流れ図である。
【
図3A-D】SRCからのエクソソームが補充されたNKAの生産の非限定的な例の流れ図である。
【
図4A-D】TCHK0012及びTCHK0013の両方から単離された分泌エクソソームの表面タンパク質分析を示すグラフを示す図である。この分析により、CD133、CD326及びCD49eは、BRCと比較してSRCについて発現が上方制御されていることが明らかになった。CD133の正確な機能は未知のままであるが、CD133は細胞膜トポロジーのオーガナイザーとして作用することが提唱されている。上皮細胞接着分子(EpCAM)(CD326としても知られる)は、上皮におけるCa
2+非依存性の同型細胞間接着を媒介する膜貫通型糖タンパク質である。EpCAMは、細胞のシグナル伝達、遊走、増殖、及び分化にも関与している。接着に加えて、CD49e等のインテグリンは細胞表面を介したシグナル伝達に関係することが知られている。BRC-3A及びSRCからのエクソソーム間の比較を強調するために、
図4B~
図4Dに矢印が加えられている。
【
図5】細胞へのエクソソーム融合のFACS分析からのグラフを示す図である。エクソソームから細胞膜への親油性色素の移送の指標である細胞の蛍光標識により、ヒストグラムの線の左から右へのシフトが起こる。エクソソームは、4℃では細胞膜に付着して統合することはない。これはネガティブコントロールである。37℃でインキュベートすることで、付着して統合することが可能となるため、細胞が蛍光標識され、それによりヒストグラムが左から右にシフトする。
【
図6】腎細胞集団を起源とするエクソソームの可変用量に反応する平均細胞数としての細胞増殖(y軸)を示すグラフ(1X=x ng/mlエクソソームでの用量/反応)を示す図である。
【
図7A-C】細胞の画像を示す図である。培養物を処理後9時間にわたりインキュベートした。A.無血清の成長因子不含の培地(ネガティブコントロール)。B.10
10個のエクソソームが補充された無血清の成長因子不含の培地(試験品)。C.成長因子が補充された無血清培地(ポジティブコントロール)。
【
図8】実験条件E1対D1のペア間で有意差があるmiRNA群をボルケーノプロットで示す図である。ボルケーノプロットは、倍率変化(x軸)及び有意性(y軸上のP値の負の対数)に応じた差次的発現を示すmiRNAの分布を示している。水平の点線はP値のカットオフ(0.05)であり、垂直の点線は倍率変化のカットオフ(|Log
2倍率変化|≧1)である。表11~表13も参照のこと。
【
図9】実験条件F1対A1のペア間で有意差があるmiRNA群をボルケーノプロットで示す図である。表14~表16も参照のこと。
【
図10】エクソソームの製造方法の非限定的な例の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書では、とりわけ、腎細胞(生物活性腎細胞、例えば、選択腎細胞等)によって産生される細胞外産物(例えば、微小胞、例えばエクソソーム等の小胞)が提供される。
【0021】
本開示全体を通して引用される全ての参考文献は明確に、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。限定されるものではないが、定義された用語、用語の用法、記載された技術等を含めて、引用することにより本明細書の一部をなす文献、特許及び同様の資料の1つ以上が本出願と異なる又は矛盾する場合に、本出願が優先される。
【0022】
定義
別段の規定がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。Principles of Tissue Engineering, 第3版(R Lanza、R Langer及びJ Vacanti編), 2007は、当業者に
本出願で使用される多くの用語への一般的な指針を与える。当業者は、本発明の実施において使用され得る、本明細書に記載されるものと類似又は同等の多くの方法及び材料を認識するであろう。実際、本発明は、決して記載された方法及び材料に限定されるものではない。
【0023】
本明細書で使用される場合に、単数形("a," "an," and "the")は、文脈上特に明記されていない限り、複数形も同様に含むことが意図される。本明細書で使用される場合に、「及び/又は」という用語は、関連する列挙された事項の1つ以上のあらゆる全ての組み合わせを含む。
【0024】
本開示では、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、及び「有する(having)」等は、米国特許法においてそれらに与えられた意味
を有することができ、「含む(includes)」、「含む(including)」等を意味すること
ができる。「本質的に~からなる(Consisting essentially of)」又は「本質的になる
(consists essentially)」は、同様に米国特許法で与えられる意味を有し、この用語はオープンエンド形式であり、列挙されるものの基本的又は新規の特質が列挙されるものより多くのものの存在により変更されない限り、列挙されるものより多くのものが存在することを許容するが、従来技術の実施形態は除外する。
【0025】
本明細書で使用される場合に、数値又は範囲の文脈における「約」という用語は、その文脈がより限定された範囲を必要としない限り、列挙又は特許請求の範囲に記載される数値又は範囲の±10%を意味する。
【0026】
本明細書で使用される「細胞集団」という用語は、適切な組織供給源、通常は哺乳動物から直接単離することによって得られる多くの細胞を指す。或る特定の実施形態では、単離された細胞集団は、引き続きin vitroで培養され得る。当業者は、本開示で使用される細胞集団を単離及び培養する様々な方法、並びに本開示での使用に適した細胞集団における様々な数の細胞を理解するであろう。或る特定の実施形態では、細胞集団は、臓器又は組織、例えば腎臓に由来する、未分画の不均一な細胞集団又は濃縮された均一な細胞集団であり得る。或る特定の実施形態では、不均一な細胞集団は、組織生検又は全臓器組織から単離され得る。或る特定の実施形態では、不均一な細胞集団は、組織生検又は全臓器組織から樹立された哺乳動物細胞のin vitro培養物に由来し得る。未分画の不均一な細胞集団は、濃縮されていない細胞集団とも呼称され得る。或る特定の実施形態では、細胞集団は生物活性細胞を含む。均一な細胞集団は、未分画の不均一な細胞集団と比較して、共通の表現型を共有する又は同様の物理的特性を有する同じ細胞型の細胞をより高い割合で含む。或る特定の実施形態では、均一な細胞集団は、不均一な腎臓細胞集
団から単離、抽出、又は濃縮され得る。或る特定の実施形態では、濃縮された細胞集団は、不均一な細胞懸濁物の密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離による分離を使用して、細胞画分として得られる。或る特定の実施形態では、濃縮された細胞集団は、不均一な細胞懸濁物の連続的又は不連続的な(単一段階又は多段階の)密度勾配分離を使用して、細胞画分として得られる。或る特定の実施形態では、細胞集団は、1種、2種、3種、4種又はそれ以上の腎臓細胞型を含み得る。或る特定の実施形態では、腎臓を起源とする均一又は不均一な細胞集団は、更なる制限なく、腎臓以外の組織又は臓器を起源とする均一又は不均一な細胞集団と組み合わされる。
【0027】
本明細書で使用される場合に、「生物活性」という用語は、薬理学的活性又は治療的活性等の「生物学的活性を有する」ことを意味する。或る特定の実施形態では、生物活性は、腎機能の増強及び/又は腎ホメオスタシスに対する効果である。或る特定の実施形態では、生物学的活性は、限定されるものではないが、鎮痛性、抗ウィルス性、抗炎症性、抗腫瘍性、免疫刺激性、免疫調節性、細胞生存力の増強、抗酸化、酸素担体、細胞動員、細胞付着、免疫抑制性、血管新生、創傷治癒活性、宿主幹細胞若しくは前駆細胞の動員、細胞増殖、損傷部位への細胞遊走の刺激、細胞線維化及び組織線維化の改善、上皮間葉シグナル伝達カスケードの阻害、サイトカイン、成長因子、タンパク質、核酸、エクソソーム、微小胞の分泌又はそれらの任意の組み合わせである。
【0028】
本明細書で使用される「生物活性腎細胞」又は「BRC」という用語は、対象の腎臓に投与されたときに以下の特性:慢性腎臓疾患又はその症状の悪化又は進行を低減する(例えば、遅延又は停止する)能力、腎機能を増強する能力、腎ホメオスタシスに影響を与える(それを改善する)能力、及び腎組織又は腎臓の治癒、修復及び/又は再生を促進する能力の1つ以上を有する腎細胞を指す。或る特定の実施形態では、BRCからの微小胞及び/又はBRCは、患者に投与され得て、ここで、BRCのハイプロタイプ(hyplotype
)は、患者のハプロタイプとは異なる。或る特定の実施形態では、BRCは、免疫学的拒絶なしに、腎機能を増強し、腎ホメオスタシスに影響を及ぼし(それを改善し)、及び/又は腎組織若しくは腎臓の治癒、修復及び/又は再生を促進することができる細胞である。或る特定の実施形態では、これらの細胞には、機能的尿細管細胞(例えば、クレアチニン排泄及びタンパク質保持の改善に基づく)、糸球体細胞(例えば、タンパク質保持の改善に基づく)、血管細胞及び/又は皮髄境界部の他の細胞が含まれ得る。或る特定の実施形態では、BRCは、腎臓に対して再生効果を有する。或る特定の実施形態では、BRCは、選択腎細胞(SRC)を含む、本質的に選択腎細胞(SRC)からなる、又は選択腎細胞(SRC)からなる。或る特定の実施形態では、BRCはSRCである。或る特定の実施形態では、BRCは、腎臓組織からの腎細胞の単離及び増殖から得られる。或る特定の実施形態では、BRCは、生物活性細胞(例えば、再生能力を有する細胞)を選択する方法を使用して、腎臓組織からの腎細胞の単離及び増殖から得られる。
【0029】
或る特定の実施形態では、SRCは、適切な腎組織供給源からの腎細胞の単離及び増殖から得られる細胞であり、ここで、SRCは、出発腎臓細胞集団と比較して、1つ以上の細胞型をより高いパーセンテージで含み、1つ以上の他の細胞型を欠いている又はより低いパーセンテージで有する。或る特定の実施形態では、SRCは、出発腎臓細胞集団と比較して、増加した割合のBRCを含む。或る特定の実施形態では、SRC集団は、腎臓疾患の治療に使用される、すなわち腎臓機能の安定化及び/又は改善及び/又は再生をもたらす、特定の生物活性コンポーネント及び/又は細胞型について濃縮され、及び/又は特定の不活性及び/又は不所望なコンポーネント若しくは細胞型が枯渇された単離された腎臓細胞の集団である。或る特定の実施形態では、SRCからの微小胞及び/又はSRCは、患者に投与され得て、ここで、SRCのハイプロタイプは、患者のハプロタイプとは異なる。或る特定の実施形態では、SRCは、腎臓機能の安定化及び/又は改善及び/又は再生をもたらすことができる。SRCは、出発集団と比較して、優れた治療転帰及び再生
転帰をもたらす。或る特定の実施形態では、SRCは、腎臓生検を介して患者の腎皮質組織から得られる。或る特定の実施形態では、SRCは、それらの1つ以上のマーカーの発現に基づいて(例えば、MACS又はFACSによって)選択される。或る特定の実施形態では、SRCは、細胞型に対する1つ以上のマーカーの発現に基づいて1つ以上の細胞型が(例えば、MACS又はFACSによって)枯渇される。或る特定の実施形態では、細胞の枯渇又は選択は、それらの細胞表面上に或る特定のタンパク質を有する細胞を取り出すためのビーズ/抗体カップリングを含む。或る特定の実施形態では、SRCは、生物活性腎細胞の集団から選択される。或る特定の実施形態では、SRCは、増殖された腎細胞の密度勾配分離によって選択される。或る特定の実施形態では、SRCは、密度境界、密度障壁、若しくは密度界面を越える遠心分離、又は単一段階の不連続的な密度勾配分離による増殖された腎細胞の分離によって選択される。或る特定の実施形態では、SRCは、低酸素条件下で培養された増殖された腎細胞の連続的又は不連続的な密度勾配分離によって選択される。或る特定の実施形態では、SRCは、低酸素条件下で少なくとも約8時間、12時間、16時間、20時間又は24時間培養された増殖された腎細胞の密度勾配分離によって選択される。或る特定の実施形態では、SRCは、低酸素条件下で培養された増殖された腎細胞の密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離による分離によって選択される。或る特定の実施形態では、SRCは、低酸素条件下で少なくとも約8時間、12時間、16時間、20時間又は24時間培養された増殖された腎細胞の密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離(例えば、単一段階の不連続的な密度勾配分離)による分離によって選択される。或る特定の実施形態では、SRCは、主に腎尿細管細胞から構成される。或る特定の実施形態では、SRC中に他の実質(例えば、血管)細胞及び間質(例えば、集合管)細胞が存在し得る。或る特定の実施形態では、SRCの集団中の細胞の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満が血管細胞である。或る特定の実施形態では、SRCの集団中の細胞の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満が集合管細胞である。或る特定の実施形態では、SRCの集団中の細胞の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満が血管細胞又は集合管細胞である。SRCを得る方法は、例えば、本明細書の実施例1、Presnellらによる国際公開第2010/056328号、Ilaganらによる国際出願PCT/US2011/036347号、及びJainらによる国際出願PCT/US2016/044866号に開示されている。
【0030】
「自然臓器」という用語は、生きている対象の臓器を意味するものとする。対象は、健康又は不健康であってもよい。不健康な対象は、その特定の臓器に関連する疾患を有し得る。
【0031】
「自然腎」という用語は、生きている対象の腎臓を意味するものとする。対象は、健康又は不健康であってもよい。不健康な対象は、腎臓疾患を有し得る。
【0032】
「再生効果」という用語は、腎臓等の自然臓器に利益をもたらす効果を意味するものとする。この効果には、限定されるものではないが、自然臓器への障害の程度の減少、又は自然臓器の機能若しくは構造の改善、回復、若しくは安定化が含まれ得る。腎障害は、線維化、炎症、糸球体肥大、萎縮等の形であり得て、対象における自然臓器に関連する疾患に関連し得る。
【0033】
「濃縮された」細胞集団又は調製物は、出発集団における特定の細胞型のパーセンテージより高いパーセンテージでその細胞型を含む出発細胞集団(例えば、腎臓等の臓器からの未分画の不均一な細胞集団)に由来する細胞集団を指す。例えば、出発腎臓細胞集団は、対象となる第1の細胞集団、第2の細胞集団、第3の細胞集団、第4の細胞集団、第5の細胞集団等について濃縮され得る。本明細書で使用される場合に、「細胞集団」、「細胞調製物」及び「細胞表現型」という用語は、区別なく使用される。
【0034】
本明細書で使用される「低酸素」培養条件という用語は、細胞が大気酸素レベル(約21%)で培養される標準的な培養条件と比較して、細胞が培養システムにおいて有効酸素レベルの減少に曝される培養条件、或る特定の実施形態では、培養システムにおける酸素レベルが15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満である低酸素培養条件を指す。
【0035】
本明細書で使用される「バイオマテリアル」という用語は、選択された生物活性細胞を生存可能な状態で支持する、生体組織への導入に適した天然又は合成の生体適合性材料を指す。天然のバイオマテリアルは、生物系によって作られる又はそれに由来する材料である。合成のバイオマテリアルは、生物系によって作られない又はそれに直接由来しない材料であるが、その代わりに、当業者によく知られる特定の化学的手法及びプロトコルによって合成又は構成される。本明細書に開示されるバイオマテリアルは、天然及び合成の生体適合性材料の組み合わせであり得る。本明細書で使用される場合に、バイオマテリアルには、例えば、ポリマーマトリックス及びスキャフォールドが含まれる。当業者は、バイオマテリアル(複数の場合もある)が、様々な形態で、例えば多孔性のフォーム、ゲル、液体、ビーズ、固体として構成され得て、1つ以上の天然又は合成の生体適合性材料を含み得ることを認識するであろう。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは、ヒドロゲルとなり得る溶液の液体形である。
【0036】
「ヒドロゲル」という用語は、本明細書では、有機ポリマー(天然又は合成)が共有結合、イオン結合、又は水素結合を介して架橋されて三次元構造(例えば、開格子構造)を生成し、これが水分子を閉じ込めてゲルを形成するときに形成される物質を指すために使用される。ヒドロゲルを形成するのに使用され得る材料の例には、張度によって(tonically)架橋されるアルギン酸塩等の多糖類、ポリホスファジン、及びポリアクリレート、
又はそれぞれ温度若しくはpHによって架橋されるPluronic(商標)若しくはTetronic(商標)等のブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロックコポリマーが含まれる。或る特定の実施形態では、ヒドロゲルは、生分解性のゼラチンベースのヒドロゲルである。
【0037】
或る特定の実施形態では、バイオマテリアルには、例えば、自然細胞集団が、当業者に知られる界面活性剤及び/又は他の化学的作用物質の適用によって排除されたヒト又は動物起源の既存の腎臓に由来する細胞外マトリックスが含まれる。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは、当業者に知られる三次元バイオプリンティング技法の適用により或る特定の細胞集団と一緒に又はそれを含まずに成層される、ヒドロゲルになることができる溶液の液体形である。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは、脱細胞化された腎臓の三次元フラクタル組織を模倣するように構成される。
【0038】
「放出調節」という用語又は「制御放出」、「遅延放出」若しくは「徐放」という同等の用語は、生物活性細胞等の活性作用物質を個体への投与後に長時間にわたって又は2つ以上の時点で放出する製剤を指す。製剤に応じて、例えば、数分、数時間、数日、数週間又はそれ以上の所望の時間の範囲にわたって起こり得る活性作用物質の放出調節は、実質的に全投与単位が投与直後に利用可能である製剤とは対照的である。或る特定の実施形態では、組織工学的用途及び再生医療用途の場合に、放出調節製剤は、局所投与(例えば、実質臓器への直接的な活性作用物質の投与)後の複数の時点で活性作用物質の放出をもたらす。例えば、生物活性細胞の放出調節製剤は、投与時点で直ちに細胞の初期放出をもたらし、その後、より後の時点で細胞の2回目の放出をもたらし得る。或る特定の実施形態では、活性作用物質の2回目の放出の時間遅延は、最初の投与から数分後、数時間後、又は数日後であり得る。一般に、放出の遅延の期間は、活性作用物質のバイオマテリアル担体がその構造的完全性を失うのにかかる期間に相当する。活性作用物質の遅延放出は、そ
のような完全性が低下し始めるとすぐに始まり、完全性が完全になくなるまでに完了する。当業者は、他の適切な放出機構を理解するであろう。
【0039】
「周囲温度」という用語は、本開示の製剤が対象に投与される温度を指す。一般に、周囲温度は温度制御された環境の温度である。周囲温度は約18℃~約30℃の範囲である。或る特定の実施形態では、周囲温度は、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、又は約30℃である。
【0040】
腎臓疾患の非限定的な例には、血液濾過並びに血液からの過剰な流体、電解質、及び老廃物の排除の機能を発揮する腎臓の能力の喪失をもたらす任意の段階又は程度の急性腎不全又は慢性腎不全に関連する障害が含まれる。或る特定の実施形態では、腎臓疾患にはまた、貧血(エリスロポエチン欠乏症)及びミネラル平衡異常(ビタミンD欠乏症)等の内分泌機能異常も含まれ得る。腎臓疾患は、腎臓に起因し得る、又は(限定されるものではないが)心不全、高血圧、糖尿病、自己免疫疾患、若しくは肝臓疾患を含む様々な状態に続発し得る。腎臓疾患は、腎臓への急性障害の後に発症する慢性腎不全の状態であり得る。例えば、虚血及び/又は毒物への曝露による腎臓の障害は、急性腎不全を引き起こし得る。急性腎臓障害後の不完全な回復は、慢性腎不全の発症につながり得る。
【0041】
「治療」という用語は、腎臓疾患、貧血、尿細管輸送障害、又は糸球体濾過障害の治療的処置及び予防措置又は防止措置の両方を指し、その目的は、標的とする障害を逆転、防止、又は減速(例えば、悪化を軽減)することである。治療を必要とする者には、腎臓疾患、貧血、尿細管輸送障害、又は糸球体濾過障害を既に有する者だけでなく、腎臓疾患、貧血、尿細管輸送障害、若しくは糸球体濾過障害に罹りやすい者若しくはそれらに罹るリスクがある者、又は腎臓疾患、貧血、尿細管輸送障害、若しくは糸球体濾過障害が防止されるべき者が含まれる。本明細書で使用される「治療」という用語には、腎臓機能の安定化及び/又は改善が含まれる。
【0042】
或る特定の実施形態では、自然臓器を活性作用物質(濃縮された細胞集団及び/又はその産物等)と「in vivoで接触させる」とは、活性作用物質と自然臓器との間のin vivoでの直接的な接触を指す。例えば、濃縮された腎細胞集団によって分泌された産物は、自然腎とin vivoで接触し得る(単独で又は細胞と一緒に、例えばコンストラクト中で)。或る特定の実施形態では、直接的なin vivoでの接触は、傍分泌、内分泌、又は接触分泌の性質であり得る。或る特定の実施形態では、分泌される産物は、本明細書に記載される種々の産物の不均一な集団であり得る。
【0043】
或る特定の実施形態では、本明細書において、バイオマテリアル(1つ以上の合成又は天然に存在する生体適合性材料でできたスキャフォールド又はマトリックス等)の表面上又はその中に堆積された1つ以上の細胞集団及び/又は1つ以上の細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)を含む「コンストラクト」又は「製剤」が提供される。或る特定の実施形態では、1つ以上の細胞集団は、1つ以上の合成又は天然に存在する生体適合性バイオマテリアル、ポリマー、タンパク質、又はペプチドでできたバイオマテリアルで被覆され、その上に堆積され、その中に埋設され、それに結合され、その中に播種され、又は捕捉され得る。或る特定の実施形態では、天然に存在するバイオマテリアルは、ヒト起源又は動物起源の脱細胞化された腎臓である。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは、三次元バイオプリンティングによって構造的に設計されている。或る特定の実施形態では、1つ以上の細胞集団及び/又は細胞産物は、in vitro又はin vivoで、バイオマテリアル又はスキャフォールド又はマトリックスと組み合わされ得る。或る特定の実施形態では、コンストラクト又は製剤を作製するのに使用される1つ以上のバイオマテリアルは、コンストラクトの細胞コンポーネントが内因性宿主組織と共に分散及び
/又は統合されるのを誘導、促進、若しくは可能にする、又はコンストラクト若しくは製剤の細胞コンポーネントの生存、移植、忍容、若しくは機能的性能を誘導、促進、若しくは可能にするように選択され得る。或る特定の実施形態では、スキャフォールド/バイオマテリアルを形成するのに使用される1つ以上の生体適合性材料は、その上に堆積された細胞集団の少なくとも1つの多細胞の三次元組織の形成を誘導、促進、又は可能にするように選択される。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは、限定されるものではないが、組織の極性を含む自然腎臓組織の様相を再現する規定の三次元細胞凝集体又はオルガノイドの集成を誘導、増進、又は促進する。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは、管腔を含む自然腎臓組織の様相を再現する規定の管状構造の集成を誘導する。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは、細胞集団からのタンパク質、核酸、及び微小胞の分泌を増進又は促進する。或る特定の実施形態では、コンストラクトを作製するのに使用される1つ以上のバイオマテリアルはまた、細胞集団の由来元となる生物学的環境に相当する自然腎又は腎実質内の特定の三次元組織又は環境的ニッチの様相を模倣又は再現するようにも選択され得る。特定の科学的理論に拘束されることなく、これらの細胞集団の供給元の生物学的ニッチの再現は、細胞の生存力及び効力を更に増進又は促進すると考えられる。
【0044】
「細胞凝集体」又は「スフェロイド」という用語は、単層としての成長ではなく、三次元的成長を可能にするように培養された細胞の凝集体又は集成体を指す。「スフェロイド」という用語は、凝集体が幾何学的な球であることを意味するわけではないことに留意される。或る特定の実施形態では、凝集体は、明確に定義された形態及び極性をもって高度に組織化されていてもよく、又は組織化されていない塊であってもよい。凝集体は、単一の細胞型又は2つ以上の細胞型を含み得る。或る特定の実施形態では、細胞は、初代分離株若しくは永久細胞系統、又はそれらの2つの組み合わせであり得る。この定義には、オルガノイド及び臓器型培養物が含まれる。或る特定の実施形態では、スフェロイド(例えば、細胞凝集体又はオルガノイド)は、スピナーフラスコ内で形成される。或る特定の実施形態では、スフェロイド(例えば、細胞凝集体又はオルガノイド)は、三次元マトリックス内で形成される。
【0045】
「Neo-Kidney Augment(NKA)」という用語は、ゼラチンベースのヒドロゲルから構成されるバイオマテリアル中で製剤化されたSRCから構成される注射可能な製品である生物活性細胞製剤を指す。「先進的細胞療法(Advance Cell Therapy)(ACT)」という用語も、NKAによる治療に関して使用される。或る特定の実施形態では、NKAは、ゼラチンベースのヒドロゲルから構成されるバイオマテリアル中で製剤化された免疫適合性腎細胞集団(例えば、免疫適合性SRC)を含む注射可能な製品である。或る特定の実施形態では、NKAは、ゼラチンベースのヒドロゲルから構成されるバイオマテリアル中で製剤化された免疫拒絶を起こし得ないゲノム改変された免疫特権がある均一なSRCから構成される注射可能な製品である。
【0046】
「対象」という用語は、腎臓疾患の1つ以上の兆候、症状、又はその他の指標を経ている又はそれを経た治療に適格な、患者を含む任意の単独のヒト対象を意味するものとする。そのような対象には、限定されるものではないが、新たに診断され又は以前に診断され、原因を問わず、再発若しくは再燃を現在経ている又は腎臓疾患のリスクがある対象が含まれる。対象は、腎臓疾患について以前に治療されていてもよく、又はこうして治療されていなくてもよい。
【0047】
「患者」という用語は、治療が望まれるあらゆる動物、より好ましくは哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、動物園の動物、ウシ、ブタ、ヒツジ及び非ヒト霊長類のような非ヒト動物を含む)を指す。最も好ましくは、患者はヒトである。
【0048】
「試料」又は「患者試料」又は「生体試料」という用語は一般的に、対象若しくは患者、体液、体組織、細胞系統、組織培養物、又はその他の供給源から得られるあらゆる生体試料を意味するものとする。この用語には、例えば、腎臓生検等の組織生検が含まれる。この用語には、例えば、培養された哺乳動物腎臓細胞等の培養された細胞が含まれる。哺乳動物から組織生検及び培養された細胞を得る方法は、当該技術分野でよく知られている。文脈に応じて、「試料」という用語が単独で使用される場合にも、「試料」が「生体試料」又は「患者試料」であることを意味するものとする、つまり、これらの用語は区別なく使用される。
【0049】
「試験試料」という用語は、本開示の方法により治療された対象からの試料を指す。試験試料は、限定されるものではないが、血液、精液、血清、尿、骨髄、粘膜、組織等を含む哺乳動物対象における様々な供給源に由来し得る。
【0050】
「コントロール」又は「コントロール試料」という用語は、陰性又は陽性の結果が試験試料での結果との相関に役立つものと期待されるネガティブコントロール又はポジティブコントロールを指す。本開示に適しているコントロールには、限定されるものではないが、正常な腎臓機能に特徴的な指標を示すことが既知の試料、腎臓疾患を有しないことが既知の対象から得られた試料、及び腎臓疾患を有することが既知の対象から得られた試料が含まれる。或る特定の実施形態では、コントロールは、本開示の方法によって治療される前の対象から得られる試料であり得る。或る特定の実施形態では、適切なコントロールは、任意の種類又は段階の腎臓疾患を有することが既知の対象から得られた試験試料、及び任意の種類又は段階の腎臓疾患を有しないことが既知の対象からの試料であり得る。コントロールは、正常の健康な適合されたコントロールであり得る。当業者は、本開示で使用するのに適したその他のコントロールを理解するであろう。
【0051】
「再生予後診断」、「再生的予後診断」、又は「再生に関する予後診断」は一般的に、本明細書に記載される細胞集団、細胞産物、又はコンストラクトの投与又は移植の辿り得る再生の経過又は転帰の予想又は予測を指す。再生予後診断については、予想又は予測は、以下:移植又は投与後の機能的臓器(例えば、腎臓)の改善、移植又は投与後の機能的腎臓の発達、移植又は投与後に改善された腎臓機能又は腎臓能力の発達、及び移植又は投与後の自然腎による或る特定のマーカーの発現の1つ以上によって知らされ得る。
【0052】
「再生された臓器」は、本明細書に記載される細胞集団、細胞産物、又はコンストラクトを移植又は投与した後の自然臓器を指す。或る特定の実施形態では、再生された臓器は、限定されるものではないが、自然臓器における機能又は能力の発達、自然臓器における機能又は能力の改善、疾患と関連する或る特定のマーカー及び生理学的指標の回復、及び/又は自然臓器における或る特定のマーカーの発現を含む様々な指標によって特徴付けられる。当業者は、その他の指標が再生された臓器を特徴付けるのに適し得ることを理解するであろう。
【0053】
「再生された腎臓」は、本明細書に記載される細胞集団、混合物、又はコンストラクトを移植又は投与した後の自然腎を指す。或る特定の実施形態では、再生された腎臓は、限定されるものではないが、自然腎における機能又は能力の発達、自然腎における機能又は能力の改善、腎疾患と関連する或る特定のマーカー及び生理学的指標の回復、並びに自然腎における或る特定のマーカーの発現を含む様々な指標によって特徴付けられる。当業者は、その他の指標が再生された腎臓を特徴付けるのに適し得ることを理解するであろう。
【0054】
「小分子」は、2000ダルトン未満の質量の化合物である。小分子の分子質量は、好ましくは1000ダルトン未満、より好ましくは600ダルトン未満であり、例えば、該化合物は500ダルトン、400ダルトン、300ダルトン、200ダルトン、又は10
0ダルトン未満である。或る特定の実施形態では、小分子は有機化合物である。
【0055】
「微小胞」は、30ナノメートル(nm)から1000ナノメートル(nm)の間の直径の細胞由来の膜状細胞外小胞である。「エクソソーム」は、約30nm~150nmの直径の細胞由来の膜状微小胞である。或る特定の実施形態では、エクソソームは、約50nm~100nmの直径の細胞由来の膜状微小胞である。エクソソームによって典型的に共有される更なる特徴は、当該技術分野で知られている。微小胞及びエクソソームと関連する非限定的な記載は、Zhang et al. (2016) Am J Physiol Renal Physiol. 311(5):F844-F851に示されており、その全内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0056】
本明細書で使用される場合に、治療剤(単独での又は生物活性腎細胞と組み合わせた微小胞、例えば、エクソソーム等)の量について言及する場合の「有効」は、本開示のように使用した場合に合理的なベネフィット/リスク比に見合った過度の有害副作用(毒性、刺激、又はアレルギー応答等)なく、所望の治療奏効を得るのに十分な治療剤の量を指す。
【0057】
分泌される産物
本明細書において、小胞等の生物活性腎細胞(例えば、SRC)によって分泌される産物が提供される。或る特定の実施形態では、小胞は微小胞を含む。
【0058】
或る特定の実施形態では、微小胞は、約30nm~150nm、30nm~200nm、30nm~500nm、30nm~1000nm、500nm~1000nm、50nm~1000nm、50nm~200nm、50nm~150nm、50nm~100nm、100nm~150nm、100nm~200nm、又は100nm~300nmの直径である。
【0059】
或る特定の実施形態では、小胞は、エクソソームを含む、本質的にエクソソームからなる、又はエクソソームからなる。或る特定の実施形態では、エクソソームは、約50nm~100nmの直径である。或る特定の実施形態では、エクソソームは、30nm~100nm、50nm~150nm、50nm~100nm、100nm~150nm、又は30nm~150nmの直径である。或る特定の実施形態では、エクソソームは、約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、又は60nm~約100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、又は150nmの直径である。
【0060】
或る特定の実施形態では、小胞は、その外面上、その脂質二重層中、及び/又はその内腔中に活性作用物質(化合物等)を含む。或る特定の実施形態では、化合物は、1つ以上の細胞経路を減弱させる。或る特定の実施形態では、化合物は、タンパク質、小分子、又はポリヌクレオチドである。或る特定の実施形態では、タンパク質は、小胞の膜中にある膜貫通型タンパク質である。或る特定の実施形態では、化合物は親油性であり、エクソソームの脂質二重層中にある。或る特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、miRNA分子である。
【0061】
或る特定の実施形態では、化合物は、生物活性腎細胞によって発現又は産生される。或る特定の実施形態では、化合物は、生物活性腎細胞によって発現又は産生されない。或る特定の実施形態では、化合物は、小胞を産生する細胞の培地に添加された(例えば、細胞は、化合物を含む培地中でインキュベートされた)。或る特定の実施形態では、化合物は細胞に侵入し、細胞によって作製された小胞中に含まれていた。或る特定の実施形態では、小胞は、細胞から精製又は単離された後に、化合物を含む溶液(例えば、培地)中でインキュベートされる。或る特定の実施形態では、小胞が細胞から単離又は精製された後に、小胞膜を透過処理して化合物を侵入し易くする技術によって(超音波処理、リポフェク
ション、エレクトロポレーション等によって)、化合物は小胞中に取り込まれる。
【0062】
或る特定の実施形態では、化合物は、天然に存在する腎細胞によって産生されない。或る特定の実施形態では、化合物はサイトカインである。或る特定の実施形態では、化合物は人工化合物である。或る特定の実施形態では、人工化合物は薬物である。或る特定の実施形態では、人工化合物は小分子である。或る特定の実施形態では、人工化合物は生物製剤である。或る特定の実施形態では、人工化合物は、自然腎中の腎細胞によって発現又は産生されない。或る特定の実施形態では、化合物は細胞生存剤である。或る特定の実施形態では、化合物は、疾患(腎臓疾患又は幾つかの他の疾患等)を治療するのに使用される化合物である。或る特定の実施形態では、化合物は、寛容原性又は抗炎症性である。
【0063】
或る特定の実施形態では、化合物は、米国食品医薬品局によって疾患の治療のためのヒトへの投与について承認されている。或る特定の実施形態では、化合物は、疾患の治癒、緩和、治療、又は予防に使用される。或る特定の実施形態では、化合物は、哺乳動物の細胞又は生物の構造又は機能を変えるのに使用される。
【0064】
或る特定の実施形態では、小胞は、プラスミノーゲン活性化阻害剤-1(PAI-1)シグナル伝達及び/又は形質転換増殖因子β(TGFβ)シグナル伝達を減弱させる化合物を含む。或る特定の実施形態では、小胞は、古典的Wntシグナル伝達を減弱させる化合物を含む。或る特定の実施形態では、小胞は、非古典的Wntシグナル伝達を減弱させる化合物を含む。或る特定の実施形態では、小胞は、CXCR4媒介シグナル伝達を減弱させる化合物を含む。或る特定の実施形態では、小胞は、炎症性サイトカインを下方制御する化合物を含む。或る特定の実施形態では、炎症性サイトカインは、IL8である。或る特定の実施形態では、小胞は、Notchシグナル伝達を減弱させる化合物を含む。
【0065】
或る特定の実施形態では、化合物は、細胞の免疫表現型解析に使用される細胞表面分子である。或る特定の実施形態では、化合物は、CD9、CD63、CD81、CD133、CD146、CD326、CD40、CD42a、CD44、又はCD49eである。
【0066】
或る特定の実施形態では、化合物は、タンパク質受容体である。或る特定の実施形態では、タンパク質受容体は、レチノイド関連受容体(ROR4)である。
【0067】
或る特定の実施形態では、化合物は、発生段階マーカーである。或る特定の実施形態では、発生段階マーカーは、段階特異的胚性抗原-4(SSEA-4)である。
【0068】
或る特定の実施形態では、化合物は、ストレス保護タンパク質である。或る特定の実施形態では、ストレス保護タンパク質は、熱ショックタンパク質(HSP)70又はHSP90である。
【0069】
或る特定の実施形態では、化合物は、スキャフォールドタンパク質である。或る特定の実施形態では、スキャフォールドタンパク質は、TST101である。
【0070】
或る特定の実施形態では、化合物は、miRNAであり、小胞の内腔中にある。
【0071】
或る特定の実施形態では、miRNAは、細胞周期調節miRNAである。或る特定の実施形態では、細胞周期調節miRNAは、let7a、miR-143、又はmiR22である。
【0072】
或る特定の実施形態では、miRNAは、細胞老化調節性miRNAである。或る特定の実施形態では、細胞老化調節性miRNAは、miR-34である。
【0073】
或る特定の実施形態では、miRNAは、細胞遊走調節性miRNAである。或る特定の実施形態では、細胞遊走調節性miRNAは、miR30-Cである。
【0074】
或る特定の実施形態では、miRNAは、細胞成長調節性miRNAである。或る特定の実施形態では、細胞成長調節性miRNAは、miR194-2である。
【0075】
或る特定の実施形態では、miRNAは、細胞シグナル経路調節性miRNAである。或る特定の実施形態では、細胞シグナル経路調節性miRNAは、miR-142である。
【0076】
或る特定の実施形態では、miRNAは、炎症調節性miRNAである。或る特定の実施形態では、炎症調節性miRNAは、miR-10aである。
【0077】
或る特定の実施形態では、miRNAは、血管新生調節性miRNAである。或る特定の実施形態では、血管新生調節性miRNAは、miR-296及び/又はmiR-146aである。
【0078】
或る特定の実施形態では、miRNAは、キナーゼ活性調節性miRNAである。或る特定の実施形態では、キナーゼ活性調節性miRNAは、miR-83である。
【0079】
或る特定の実施形態では、化合物は、PAI-1、TGFβ、古典的Wntシグナル伝達、非古典的Wntシグナル伝達、CXCR4媒介シグナル伝達、及び/又はNotchシグナル伝達を阻害するmiRNAである。
【0080】
或る特定の実施形態では、上皮-間葉転換(EMT)の阻害によって腎線維症が低減又は予防される。
【0081】
或る特定の実施形態では、本明細書で提供される小胞は、miR-145、miR-22、miR-7、miR-10a、miR-143、及び/又はlet7bを含む。
【0082】
或る特定の実施形態では、本明細書で提供される小胞は、miR-1248、miR-3168、miR-7113-5p、miR-758-3p、miR-937-3p、miR-4455、miR-4521、miR-203a-3p、miR-22-3p、miR-574-3p、miR-181b-5p、miR-1260b、及び/又はmiR-181b-5pを含む。
【0083】
或る特定の実施形態では、本明細書で提供される小胞は、CD9、CD63、CD81、CD133、CD146、CD326、CD40、CD42a、CD44、CD49e、及び/又はSSEA-4を含む。
【0084】
或る特定の実施形態では、本明細書で提供される小胞は、CD63、CD9、及び/又はCD81を含み、CD63、CD9、及び/又はCD81、又はその一部は、小胞の外面上にある。或る特定の実施形態では、これらのタンパク質の1つ以上の一部は、小胞の内側にある。
【0085】
或る特定の実施形態では、本明細書で提供される小胞は、CD133、CD326、及び/又はCD49eを含み、CD133、CD326、及び/又はCD49eは、小胞の外面上にある。
【0086】
或る特定の実施形態では、小胞と接触した腎細胞の増殖は、小胞と接触していない腎細胞と比較して増加する。或る特定の実施形態では、小胞と接触した内皮細胞による血管形成は、小胞と接触していない内皮細胞と比較して増加する。或る特定の実施形態では、小胞と接触した腎細胞のネフロン尿細管形成は、小胞と接触していない腎細胞と比較して増加する。
【0087】
或る特定の実施形態では、小胞は、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロール、セラミド、及び/又はホスファチジルコリンを含む。
【0088】
或る特定の実施形態では、小胞は、薬学的に許容可能な担体を含む組成物中にある。或る特定の実施形態では、薬学的に許容可能な担体は、水溶液を含む。或る特定の実施形態では、薬学的に許容可能な担体は温度感受性である。或る特定の実施形態では、薬学的に許容可能な担体はヒドロゲルである。或る特定の実施形態では、薬学的に許容可能な担体はゼラチンを含む。
【0089】
或る特定の実施形態では、小胞は、初代腎細胞等のBRCによって産生されたものである。或る特定の実施形態では、小胞は、SRCによって産生されたものである。本明細書において、初代腎細胞からの小胞及びSRCからの小胞を含む組成物が含まれる。また、内皮細胞又は間葉系幹細胞によって分泌される小胞を更に含む組成物も提供される。或る特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、非腎細胞小胞を含む。或る特定の実施形態では、非腎細胞小胞は、非腎内皮前駆細胞、非腎間葉系幹細胞、又は非腎脂肪由来前駆細胞によって分泌されたものである。
【0090】
一態様では、本明細書において、小胞中の少なくとも1つの化合物を検出する方法が提供される。或る特定の実施形態では、該方法は、小胞を得ることと、少なくとも1つの化合物が小胞内にあるかどうかを検出することとを含み、ここで、(i)少なくとも1つの化合物はタンパク質であり、該タンパク質はCD9、CD81、CD146、CD326、CD40、CD42a、CD44、CD49e、及び/又はSSEA-4であり、(ii)少なくとも1つの化合物はmiRNAを含み、該miRNAはmiR-145、miR-22、miR-7、miR-10a、miR-143、及び/又はlet7bの少なくとも2つを含み、及び/又は(iii)少なくとも1つの化合物は、自然腎中の腎細胞によって発現又は産生されない。
【0091】
或る特定の実施形態では、小胞は、対象からの生体試料中で又は該生体試料から得られる。或る特定の実施形態では、生体試料は尿である。或る特定の実施形態では、小胞は、腎細胞の培養物の上清中で又は該上清から得られる。或る特定の実施形態では、小胞は、腎細胞によって分泌されたものである。或る特定の実施形態では、腎細胞は生物活性腎細胞である。或る特定の実施形態では、腎細胞は選択腎細胞である。
【0092】
或る特定の実施形態では、タンパク質が小胞中にあるかどうかの検出は、イムノアッセイを含む。或る特定の実施形態では、タンパク質が小胞中にあるかどうかの検出は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、タンパク質免疫沈降、免疫電気泳動、ウェスタンブロット、又はタンパク質免疫染色を含む。或る特定の実施形態では、タンパク質が小胞中にあるかどうかの検出は、分光分析法を含む。或る特定の実施形態では、タンパク質が小胞中にあるかどうかの検出は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)又は液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC/MS)を含む。
【0093】
或る特定の実施形態では、miRNAが小胞中にあるかどうかの検出は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む。或る特定の実施形態では、miRNAが小胞中にあるかどうかの検出は、逆転写酵素PCRを含む。或る特定の実施形態では、miRNAが小胞中に
あるかどうかの検出は、マイクロアレイ分析を含む。或る特定の実施形態では、miRNAが小胞中にあるかどうかの検出は、RNAシーケンシングを含む。或る特定の実施形態では、miRNAが小胞中にあるかどうかの検出は、小胞又は小胞からの核酸を含むと疑われる処理された試料を、miRNAに相補的なプローブ又はプライマーと接触させることを含む。或る特定の実施形態では、miRNAが小胞中にあるかどうかの検出は、マイクロアレイ分析を含まない。或る特定の実施形態では、miRNAが小胞中にあるかどうかの検出は、1000種、500種、又は100種未満の異なるmiRNAに対するプローブを含むマイクロアレイを用いたマイクロアレイ分析を含む。
【0094】
或る特定の実施形態では、化合物は小分子である。
【0095】
或る特定の実施形態では、化合物は、生物活性腎細胞によって発現又は産生される。或る特定の実施形態では、化合物は、生物活性腎細胞によって発現又は産生されない。或る特定の実施形態では、化合物は、生物活性腎細胞によって発現又は産生される。或る特定の実施形態では、化合物は、生物活性腎細胞によって発現又は産生されない。或る特定の実施形態では、化合物は、小胞を産生する細胞の培地に添加された(例えば、細胞は、化合物を含む培地中でインキュベートされた)。或る特定の実施形態では、化合物は細胞に侵入し、細胞によって作製された小胞中に含まれていた。或る特定の実施形態では、小胞は、細胞から精製又は単離された後に、化合物を含む溶液(例えば、培地)中でインキュベートされる。或る特定の実施形態では、小胞は、細胞から単離又は精製され、次いで、エクソソーム膜を透過処理して化合物を侵入し易くする技術によって(超音波処理、リポフェクション、エレクトロポレーション等によって)、化合物は小胞中に取り込まれる。
【0096】
或る特定の実施形態では、化合物は、天然に存在する腎細胞によって産生されない。或る特定の実施形態では、化合物はサイトカインである。或る特定の実施形態では、化合物は人工化合物である。或る特定の実施形態では、化合物は薬物である。或る特定の実施形態では、人工化合物は、自然腎中の腎細胞によって発現又は産生されない。或る特定の実施形態では、化合物は細胞生存剤である。或る特定の実施形態では、化合物は、疾患(腎臓疾患又は幾つかの他の疾患等)を治療するのに使用される化合物である。或る特定の実施形態では、化合物は、寛容原性又は抗炎症性である。或る特定の実施形態では、化合物は、米国食品医薬品局によって疾患の治療のためのヒトへの投与について承認されている。或る特定の実施形態では、化合物は、疾患の治癒、緩和、治療、又は予防に使用される。或る特定の実施形態では、化合物は、哺乳動物の細胞又は生物の構造又は機能を変えるのに使用される。
【0097】
一態様では、本明細書において、生物活性腎細胞集団を投与した対象における生物活性腎細胞集団による治療をモニターする方法が提供される。或る特定の実施形態では、該方法は、少なくとも1つの化合物が対象からの小胞中に存在するかどうかを本明細書に開示される方法に従って検出することを含む。
【0098】
或る特定の実施形態では、上記方法は、本明細書に開示される方法に従って、第1の時点及び第2の時点において、少なくとも1つの化合物が対象からの小胞中に存在するかどうかを検出することを含む。或る特定の実施形態では、第1の時点は、対象に生物活性腎細胞集団が投与される前であり、第2の時点は、対象に生物活性腎細胞集団が投与された後である。或る特定の実施形態では、第1の時点及び第2の時点は、対象に生物活性腎細胞集団が投与された後である。或る特定の実施形態では、上記方法は、化合物のレベルが第1の時点で第2の時点と比較してより高い場合に、対象における再生効果を判定することを更に含む。
【0099】
或る特定の実施形態では、上記方法は、化合物のレベルがコントロールより高い場合に
、対象における再生効果を判定することを更に含む。或る特定の実施形態では、コントロールは、生物活性腎細胞集団が投与されていない対応する対象におけるレベルである。
【0100】
本明細書において、小胞が再生的であるかどうかを判定する方法も提供される。或る特定の実施形態では、該方法は、(i)本明細書に開示される方法に従って、タンパク質及び/又はmiRNAが小胞中にあるかどうかを検出することと、(ii)タンパク質及び/又はmiRNAが小胞中で検出された場合に小胞を再生的であると判定することとを含む。
【0101】
一態様では、本明細書において、生物活性腎細胞集団からの小胞中の少なくとも1つのmiRNAのレベルを検出する方法が提供される。或る特定の実施形態では、該方法は、(i)以下のmiRNA分子:miR-1248、miR-3168、miR-7113-5p、miR-758-3p、miR-937-3p、miR-4455、miR-4521、miR-203a-3p、miR-22-3p、miR-574-3p、miR-181b-5p、miR-1260b、及び/又はmiR-181b-5pの1つ以上が小胞中でコントロールと比較して増加しているかどうかを検出すること、及び/又は(ii)以下のmiRNA分子:miR-1-3p、miR-1-3p、miR-143-3p、miR-150-5p、miR-509-3p、miR-653-5p、miR-204-5p、miR-192-5p、及び/又はmiR-363-3pの1つ以上が小胞中でコントロールと比較して減少しているかどうかを検出することを含む。或る特定の実施形態では、生物活性腎細胞は、選択腎細胞である。或る特定の実施形態では、コントロールは、初代腎細胞集団からの小胞中の1つ以上のmiRNA分子のレベルである。或る特定の実施形態では、コントロールは、別の生物活性腎細胞集団からの小胞中の1つ以上のmiRNA分子のレベルである。
【0102】
本主題はまた、生物活性腎細胞の集団によって産生される小胞中の少なくとも1つのmiRNA及び/又はタンパク質のレベルを変化させる方法であって、該集団を低酸素条件下で培養することを含む、方法を提供する。或る特定の実施形態では、集団の低酸素条件下での培養は、該集団を約5%、4%、3%、2%、又は1%未満の酸素の存在下で、例えば8時間~72時間培養することを含む。或る特定の実施形態では、集団の低酸素条件下での培養は、該集団を約1%~5%、2%~5%、2%~4%、1%~3%、又は1.5%~2.5%の酸素の存在下で、例えば8時間~72時間培養することを含む。或る特定の実施形態では、集団の低酸素条件下での培養は、該集団を5%未満の酸素の存在下で少なくとも約8時間、12時間、16時間、20時間、24時間、又は48時間培養することを含む。或る特定の実施形態では、集団の低酸素条件下での培養は、該集団を約1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、又は5%の酸素の存在下で約8時間、12時間、16時間、20時間、24時間、又は48時間培養することを含む。
【0103】
或る特定の実施形態では、上記方法は、生物活性腎細胞を少なくとも約1回、2回、又は3回継代した後に、集団を低酸素条件下で培養することを更に含む。
【0104】
或る特定の実施形態では、(a)少なくとも1つのmiRNAは、miR-145、miR-22、miR-7、miR-10a、miR-143、let7b、miR-1248、miR-3168、miR-7113-5p、miR-758-3p、miR-937-3p、miR-4455、miR-4521、miR-203a-3p、miR-22-3p、miR-574-3p、miR-181b-5p、miR-1260b、及び/又はmiR-181b-5pであり、及び/又は(b)少なくとも1つのタンパク質は、CD9、CD63、CD81、CD133、CD146、CD326、CD40、CD42a、CD44、CD49e、SSEA-4、TST101、HSP70、HSP9
0、及び/又はROR4である。
【0105】
一態様では、本明細書において、細胞から該細胞によって産生されない化合物を含むエクソソームを生産する方法が提供される。或る特定の実施形態では、該方法は、細胞培養上清からエクソソームを単離することを含み、ここで、細胞培養上清は、化合物と接触された細胞の培養物からの細胞培養上清である。一態様では、本明細書において、腎エクソソームを生産する方法であって、該エクソソームが自然腎中の腎細胞によって産生されない化合物を含む、方法が提供される。或る特定の実施形態では、該方法は、腎細胞培養上清から小胞を単離することを含み、ここで、腎細胞培養上清は、化合物と接触された生物活性腎細胞集団を含む腎細胞の培養物からの細胞培養上清である。或る特定の実施形態では、化合物は人工化合物である。或る特定の実施形態では、化合物は小分子である。或る特定の実施形態では、化合物は細胞生存剤である。或る特定の実施形態では、化合物は薬物である。
【0106】
一態様では、本明細書において、自然腎中の腎細胞によって産生されない化合物を含む小胞(微小胞、例えば、エクソソーム等)が含まれる。
【0107】
或る特定の実施形態では、化合物は、タンパク質、小分子、又はポリヌクレオチドである。或る特定の実施形態では、化合物は、化合物の不存在下で培養される初代腎細胞によって発現又は産生されない。或る特定の実施形態では、化合物は、人工化合物である。
【0108】
或る特定の実施形態では、化合物(タンパク質又は小分子薬物等)は、例えば、細胞を化合物を含む培地と一緒にインキュベートすることによって、又は精製された小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)を化合物を含む培地と一緒にインキュベートすることによって、小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)中に「受動的に負荷」される。或る特定の実施形態では、化合物(タンパク質又は小分子薬物等)は、小胞膜を透過処理して化合物を侵入し易くすることによって(超音波処理、リポフェクション、エレクトロポレーション等によって)、精製又は単離された小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)中に「能動的に負荷」される。
【0109】
或る特定の実施形態では、小胞は、小胞を産生した細胞を含む組成物中に存在する。或る特定の実施形態では、小胞は、これを産生した細胞から単離されたものである。或る特定の実施形態では、小胞は腎小胞である。或る特定の実施形態では、小胞は、生物活性腎細胞によって産生されたものである。
【0110】
或る特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、腎細胞小胞と非腎細胞小胞とを含む。或る特定の実施形態では、腎細胞小胞は、生物活性腎細胞によって分泌されたものである。或る特定の実施形態では、非腎細胞小胞は、非腎内皮前駆細胞、非腎間葉系幹細胞、又は非腎脂肪由来前駆細胞によって分泌されたものである。
【0111】
或る特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、初代腎細胞によって産生された小胞と、選択腎細胞によって産生された小胞とを含む。
【0112】
或る特定の実施形態では、小胞は、薬学的に許容可能な担体を更に含む。
【0113】
或る特定の実施形態では、再生効果は、細胞によって、及び/又は生物活性腎細胞から分泌される産物(小胞等)によってもたらされ得る。或る特定の実施形態では、再生効果は、以下:上皮間葉転換の減少(これは、TGF-βシグナル伝達の減弱を介し得る)、腎線維症の軽減、腎炎の軽減、自然腎における幹細胞マーカーの差次的発現、移植された細胞及び/又は自然細胞の腎障害、例えば尿細管障害の部位への遊走、腎障害、例えば尿
細管障害の部位での移植された細胞の生着、(本明細書に記載される)腎臓機能の1つ以上の指標の安定化、腎発生に関連するS字体/C字体のde novo形成、腎尿細管又はネフロンのde novo形成、(本明細書に記載される)赤血球ホメオスタシスの回復、並びにそれらの任意の組み合わせの1つ以上によって特徴付けられ得る(Basu et al., 2011. Functional evaluation of primary renal cell/biomaterial neo-kidney augment prototypes for renal tissue engineering. Cell Transplantation 20: 1771-90、Bruce et al., 2015. Selected renal cells modulate disease progression in rodent models of chronic kidney disease via NF-κB and TGF-β1 pathways. Regenerative Medicine 10: 815-839も参照され、それぞれの全内容は、引用することにより本明細書の一部をなす)。
【0114】
或る特定の実施形態では、組織生検の代替として、治療を受けている対象における再生転帰は、体液、例えば、尿の検査から評価され得る。対象由来の尿供給源から得られた微小胞(例えば、エクソソーム)は、限定されるものではないが、治療によって影響される腎細胞集団に最終的に由来する特定のタンパク質及びmiRNAを含む或る特定のコンポーネントを含むことが見出された。これらのコンポーネントには、限定されるものではないが、幹細胞の複製及び分化、アポトーシス、炎症及び免疫調節、線維化、上皮間葉転換、TGF-βシグナル伝達、及び/又はPAI-1シグナル伝達に関与する因子が含まれ得る。或る特定の実施形態では、微小胞(例えば、エクソソーム)に関連するmiRNA/タンパク質発現パターンの時間的分析は、本開示の細胞集団、細胞産物、又はコンストラクトが投与される対象の腎臓内の再生転帰の連続的なモニターを可能にする。
【0115】
或る特定の実施形態では、本開示は、腎臓疾患(KD)患者が治療用製剤による治療に奏効するかどうかを評価する方法を提供する。或る特定の実施形態では、該方法は、療法薬で治療されたKD患者から得られた試験試料中の微小胞(又はそれらの内腔内容物)、例えば、エクソソームの量を、コントロール試料(例えば、療法薬による治療前の同じ患者に由来する試料)中の微小胞(エクソソーム等)の量と比較して又はその量に対して測定又は検出する工程を含み得て、ここで、試験試料中の微小胞(例えば、エクソソーム)又はそれらの内腔内容物の量がコントロール試料中の微小胞(例えば、エクソソーム)又はそれらの内腔内容物の量と比較してより多い又はより少ないことは、療法薬での治療に対する治療された患者の奏効性の指標である。
【0116】
或る特定の実施形態では、腎臓由来の微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は腎臓由来の微小胞(例えば、エクソソーム)の内腔内容物を、対象の尿中に放出させることができ、再生転帰又は治療有効性の指標であるバイオマーカーについて分析することができる。或る特定の実施形態では、本明細書で提供される非侵襲的予後診断法は、本明細書に記載される生物活性腎細胞集団、細胞産物、又はコンストラクトの投与又は移植の前及び/又は後に対象から尿試料を得る工程を含み得る。微小胞及びその他の分泌産物は、限定されるものではないが、不要のデブリを除去する遠心分離(Zhou et al. 2008. Kidney Int. 74(5):613-621、Skogらによる米国特許出願公開第20110053157号、それ
ぞれは、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)、尿から微小胞(例えば、エクソソーム)を分離する沈殿、特定の核酸を特定するポリメラーゼ連鎖反応及び核酸シーケンシング、並びに再生転帰と関連する特定のタンパク質を同定する質量分光法及び/又は2Dゲル電気泳動を含む標準的な技術を使用して尿試料から単離され得る。
【0117】
細胞集団
本明細書において、腎細胞集団(例えば、初代細胞及び/又はSRC等のBRC)によって産生される小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)を含む組成物及び製剤が含まれる。或る特定の実施形態では、小胞は、例えば、これらを産生しない細胞から単離され得る又は該細胞と組み合わされ得る。小胞の産生に有用なBRCの非限定的な例及び特徴は
本明細書に示される。
【0118】
或る特定の実施形態では、本明細書で提供される治療組成物又は製剤は、特定の生物活性コンポーネント又は細胞型について濃縮され、及び/又は特定の不活性又は不所望なコンポーネント又は細胞型が枯渇された単離された不均一な腎臓細胞集団によって分泌される微小胞(例えば、エクソソーム)を含有する。或る特定の実施形態では、本明細書で提供される治療組成物又は製剤は、特定の生物活性コンポーネント又は細胞型について濃縮され、及び/又は特定の不活性又は不所望なコンポーネント又は細胞型が枯渇された単離された不均一な腎臓細胞集団を含有する又は更に含有する。或る特定の実施形態では、そのような組成物及び製剤は、腎臓疾患の治療において使用され、例えば、腎臓機能及び/又は構造の安定化及び/又は改善及び/又は再生をもたらす。或る特定の実施形態では、該組成物は、健康な個体と比較して細胞コンポーネントを欠くが、治療特性を保持する、例えば、腎臓機能の安定化及び/又は改善及び/又は再生をもたらす、単離された腎細胞画分によって分泌される微小胞(例えば、エクソソーム)を含有する。或る特定の実施形態では、該組成物は、健康な個体と比較して細胞コンポーネントを欠くが、治療特性を保持する、例えば、腎臓機能の安定化及び/又は改善及び/又は再生をもたらす、単離された腎細胞画分を含有する。或る特定の実施形態では、本明細書に記載される細胞集団は、健康な個体、腎臓疾患を患う個体、又は本明細書に記載される対象に由来し得る。
【0119】
本明細書において、対象における標的臓器又は組織に投与される微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は選択腎細胞集団の治療用組成物が含まれる。或る特定の実施形態では、本明細書において、BRC(例えば、SRC)によって分泌される微小胞(例えば、エクソソーム)を含む組成物が提供される。或る特定の実施形態では、該組成物は、微小胞(例えば、エクソソーム)を分泌しなかったBRC(例えば、SRC)を更に含む。或る特定の実施形態では、該組成物は、微小胞が「スパイク」されたNKAを含む(例えば、エクソソーム等の微小胞をNKAに添加して、小胞が増強されたNKAが作製される)。或る特定の実施形態では、微小胞(例えば、エクソソーム)が得られ得るBRC(例えば、SRC)は、例えば、本明細書に開示される任意のBRC(例えば、SRC)を含む。或る特定の実施形態では、小胞は、実施例1に記載される方法に従って生産されたSRCから得られる。或る特定の実施形態では、本明細書で提供される製剤は、単離された小胞(微小胞、例えば、エクソソーム等)が添加されたNKAである(NKAに小胞が「スパイク」又は補充されている)。
【0120】
或る特定の実施形態では、選択された生物活性腎細胞集団は一般的に、対象への投与時に治療特性を潜在的に有する細胞集団を指す。或る特定の実施形態では、必要とする対象に投与すると、生物活性腎細胞集団は、対象における腎臓機能の安定化及び/又は改善及び/又は修復及び/又は再生をもたらし得る。或る特定の実施形態では、治療特性には、修復効果又は再生効果が含まれ得る。
【0121】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、腎臓に由来する、未分画の不均一な細胞集団又は濃縮された均一な細胞集団である。或る特定の実施形態では、不均一な細胞集団は、組織生検又は全臓器組織から単離される。或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、組織生検又は全臓器組織から樹立された哺乳動物細胞のin vitro培養物に由来する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、生物活性コンポーネント(例えば、生物活性腎細胞)について濃縮され、不活性又は不所望なコンポーネント又は細胞が枯渇された、不均一な腎細胞集団の亜画分又は亜集団を含む。
【0122】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団はGGT及びサイトケラチンを発現する。或る特定の実施形態では、GGTは、約10%、約15%、約18%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%を超える発
現のレベルを有する。或る特定の実施形態では、GGTはGGT-1である。或る特定の実施形態では、腎細胞集団の細胞はGGT-1、サイトケラチン、VEGF、及びKIM-1を発現する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団中の18%を超える細胞がGGT-1を発現する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団中の80%を超える細胞がサイトケラチンを発現する。或る特定の実施形態では、サイトケラチンは、CK8、CK18、CK19及びそれらの組み合わせから選択される。或る特定の実施形態では、サイトケラチンは、CK8、CK18、CK19、CK8/CK18、CK8/CK19、CK18/CK19又はCK8/CK18/CK19であり、「/」は、それに隣接するサイトケラチンの組み合わせを指す。或る特定の実施形態では、サイトケラチンは、約80%、約85%、約90%、又は約95%を超える発現のレベルを有する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団中の80%を超える細胞がサイトケラチンを発現する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団はAQP2を発現する。或る特定の実施形態では、40%未満の細胞がAQP2を発現する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団中の少なくとも3%の細胞がAQP2を発現する。
【0123】
或る特定の実施形態では、細胞集団内の18%を超える細胞がGGT-1を発現し、細胞集団内の80%を超える細胞がサイトケラチンを発現する。或る特定の実施形態では、サイトケラチンはCK18である。或る特定の実施形態では、細胞集団中の細胞の4.5%~81.2%がGGT-1を発現し、細胞集団内の細胞の3.0%~53.7%がAQP2を発現し、細胞集団内の細胞の81.1%~99.7%がCK18を発現する。
【0124】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、AQP1、AQP2、AQP4、カルビンジン、カルポニン、CD117、CD133、CD146、CD24、CD31(PECAM-1)、CD54(ICAM-1)、CD73、CK18、CK19、CK7、CK8、CK8、CK18、CK19、CK8、CK18及びCK19の組み合わせ、コネキシン43、キュビリン、CXCR4(フュージン)、DBA、E-カドヘリン(CD324)、EPO(エリスロポエチン)、GGT1、GLEPP1(糸球体上皮タンパク質1)、ハプトグロブリン、Itgbl、KIM-1(腎臓障害分子-1)、T1M-1(T細胞免疫グロブリン及びムチン含有分子)、MAP-2(微小管関連タンパク質2)、メガリン、N-カドヘリン、ネフリン、NKCC(Na-K-Cl-共輸送体)、OAT-1(有機陰イオン輸送体1)、オステオポンチン、パンカドヘリン、PCLP1(ポドカリキシン様1分子)、ポドシン、SMA(平滑筋α-アクチン)、シナプトポディン、THP(タム-ホースフォールタンパク質)、ビメンチン及びαGST-1(アルファグルタチオンS-トランスフェラーゼ)から選択されるバイオマーカーの任意の組み合わせの1つ以上を発現する細胞を含む。
【0125】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、腎臓組織生検又はその初代培養物における細胞集団等の出発集団と比較して、上皮細胞について濃縮されている(例えば、腎細胞集団は、出発集団より少なくとも約5%、10%、15%、20%、又は25%多い上皮細胞を含む)。或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、腎臓組織生検又はその初代培養物における細胞集団等の出発集団と比較して、尿細管細胞について濃縮されている(例えば、腎細胞集団は、出発集団より少なくとも約5%、10%、15%、20%、又は25%多い尿細管細胞を含む)。或る特定の実施形態では、尿細管細胞は近位尿細管細胞を含む。或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、出発集団と比較して、より低い割合の遠位尿細管細胞、集合管細胞、内分泌細胞、血管細胞、又は前駆細胞様細胞を有する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、出発集団と比較して、より低い割合の遠位尿細管細胞を有する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、出発集団と比較して、より低い割合の集合管細胞を有する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、出発集団と比較して、より低い割合の内分泌細胞を有する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、出発集団と比較して、より低い割合の血管細胞を有する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、出
発集団と比較して、より低い割合の前駆細胞様細胞を有する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、濃縮されていない集団(例えば、出発腎臓細胞集団)と比較して、より高い割合の尿細管細胞を有し、より低い割合のEPO産生細胞、糸球体細胞、及び血管細胞を有する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、濃縮されていない集団と比較して、より高い割合の尿細管細胞を有し、より低い割合のEPO産生細胞及び血管細胞を有する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、濃縮されていない集団と比較して、より高い割合の尿細管細胞を有し、より低い割合の糸球体細胞及び血管細胞を有する。
【0126】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団の細胞はヒアルロン酸(HA)を発現する。或る特定の実施形態では、HAのサイズ範囲は、約5kDa~約20000kDaである。或る特定の実施形態では、HAは、5kDa、60kDa、800kDa、及び/又は3000kDaの分子量を有する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、特に腎内移植後に、ヒアルロン酸シンターゼ2(HAS-2)の発現を通じて高分子量のHAを合成する及び/又はその合成を刺激する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団の細胞は、HAS-2の作用を通じてin vitro及び/又はin vivoで、より高分子量の種のHAを発現する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団の細胞は、HAS-2の作用を通じてin vitro及びin vivoの両方で、より高分子量の種のHAを発現する。或る特定の実施形態では、より高分子量の種のHAは、少なくとも100kDaの分子量を有するHAである。或る特定の実施形態では、より高分子量の種のHAは、約800kDa~約3500kDaの分子量を有するHAである。或る特定の実施形態では、より高分子量の種のHAは、約800kDa~約3000kDaの分子量を有するHAである。或る特定の実施形態では、より高分子量の種のHAは、少なくとも800kDaの分子量を有するHAである。或る特定の実施形態では、より高分子量の種のHAは、少なくとも3000kDaの分子量を有するHAである。或る特定の実施形態では、より高分子量の種のHAは、約800kDaの分子量を有するHAである。或る特定の実施形態では、より高分子量の種のHAは、約3000kDaの分子量を有するHAである。或る特定の実施形態では、HAS-2は、2×105Da~2×106Daの分子量を有するHAを合成する。或る特定の実施形態では、より小さな種のHAは、分解性ヒアルロニダーゼの作用によって形成される。或る特定の実施形態では、より高分子量の種のHAは、約200kDa~約2000kDaの分子量を有するHAである。或る特定の実施形態では、より高分子量の種のHAは、約200kDaの分子量を有するHAである。或る特定の実施形態では、より高分子量の種のHAは、約2000kDaの分子量を有するHAである。或る特定の実施形態では、より高分子量の種のHAは、少なくとも200kDaの分子量を有するHAである。或る特定の実施形態では、より高分子量の種のHAは、少なくとも2000kDaの分子量を有するHAである。或る特定の実施形態では、より高分子量の種のHAは、少なくとも5000kDaの分子量を有するHAである。或る特定の実施形態では、より高分子量の種のHAは、少なくとも10000kDaの分子量を有するHAである。或る特定の実施形態では、より高分子量の種のHAは、少なくとも15000kDaの分子量を有するHAである。或る特定の実施形態では、より高分子量の種のHAは、約20000kDaの分子量を有するHAである。
【0127】
或る特定の実施形態では、集団は、受容体を介したアルブミン輸送の能力を有する細胞を含む。
【0128】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団の細胞は低酸素抵抗性である。
【0129】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、メガリン、キュビリン、N-カドヘリン、E-カドヘリン、アクアポリン-1、及びアクアポリン-2の任意の組み合わせの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0130】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、メガリン、キュビリン、ヒアルロン酸シンターゼ2(HAS2)、ビタミンD3 25-ヒドロキシラーゼ(CYP2D25)、N-カドヘリン(Ncad)、E-カドヘリン(Ecad)、アクアポリン-1(Aqp1)、アクアポリン-2(Aqp2)、RAB17、RAS癌遺伝子ファミリーメンバー(Rab17)、GATA結合タンパク質3(Gata3)、FXYDドメイン含有イオン輸送制御因子4(Fxyd4)、溶質輸送体ファミリー9(ナトリウム/水素交換体)メンバー4(Slc9a4)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ3ファミリーメンバーB1(Aldh3b1)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1ファミリーメンバーA3(Aldh1a3)、及びカルパイン-8(Capn8)の任意の組み合わせの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0131】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、メガリン、キュビリン、ヒアルロン酸シンターゼ2(HAS2)、ビタミンD3 25-ヒドロキシラーゼ(CYP2D25)、N-カドヘリン(Ncad)、E-カドヘリン(Ecad)、アクアポリン-1(Aqp1)、アクアポリン-2(Aqp2)、RAB17、RAS癌遺伝子ファミリーメンバー(Rab17)、GATA結合タンパク質3(Gata3)、FXYDドメイン含有イオン輸送制御因子4(Fxyd4)、溶質輸送体ファミリー9(ナトリウム/水素交換体)メンバー4(Slc9a4)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ3ファミリーメンバー81(Aldh3b1)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1ファミリーメンバーA3(Aldh1a3)、及びカルパイン-8(Capn8)及びアクアポリン-4(Aqp4)の任意の組み合わせの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0132】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、アクアポリン-7(Aqp7)、FXYDドメイン含有イオン輸送制御因子2(Fxyd2)、溶質輸送体ファミリー17(リン酸ナトリウム)メンバー3(Slc17a3)、溶質輸送体ファミリー3メンバー1(Slc3a1)、クローディン2(Cldn2)、napsin Aアスパラギン酸ペプチダーゼ(Napsa)、溶質輸送体ファミリー2(促進型グルコース輸送体)メンバー2(Slc2a2)、アラニル(膜)アミノペプチダーゼ(Anpep)、膜貫通タンパク質27(Tmem27)、アシル-CoAシンターゼ中鎖ファミリーメンバー2(Acsm2)、グルタチオンペルオキシダーゼ3(Gpx3)、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ1(Fbp1)、アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ2(Agxt2)、血小板内皮細胞接着分子(Pecam)、及びポドシン(Podn)の任意の組み合わせの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0133】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、PECAM、VEGF、KDR、HIF1a、CD31、CD146、ポドシン(Podn)、及びネフリン(Neph)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体4(Cxcr4)、エンドセリン受容体B型(Ednrb)、V型コラーゲンα2(Col5a2)、カドヘリン5(Cdh5)、組織プラスミノーゲン活性化因子(Plat)、アンジオポエチン2(Angpt2)、キナーゼ挿入ドメインタンパク質受容体(Kdr)、分泌型システインリッチ酸性タンパク質(オステオネクチン)(Sparc)、セルグリシン(Srgn)、TIMPメタロペプチダーゼインヒビター3(Timp3)、ウィルムス腫瘍1(Wt1)、ウイングレス型MMTV組み込み部位ファミリーメンバー4(Wnt4)、Gタンパク質シグナル伝達制御因子4(Rgs4)、エリスロポエチン(EPO)の任意の組み合わせの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0134】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、PECAM、vEGF、KDR、HIF1a、ポドシン、ネフリン、EPO、CK7、CK8/18/19の任意の組み合わせの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0135】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、PECAM、vEGF、KDR、HIF1a、CD31及びCD146の任意の組み合わせの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0136】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、ポドシン(Podn)及びネフリン(Neph)の任意の組み合わせの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0137】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、PECAM、vEGF、KDR、HIF1a及びEPOの任意の組み合わせの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0138】
或る特定の実施形態では、試料又は細胞集団中の様々なバイオマーカーの存在(例えば、発現)及び/又はレベル/量は、多くの技法によって分析することができ、その技法の多くは当該技術分野で知られており、当業者に理解されており、限定されるものではないが、該技法には、免疫組織化学(「IHC」)、ウェスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化セルソーティング(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、生化学的酵素活性アッセイ、in situハイブリダイゼーション、サザン解析、ノーザン解析、全ゲノムシーケンシング、定量的リアルタイムPCR(「qRT-PCR」)及び他の増幅型検出法(例えば、分岐DNA法、SISBA、TMA等)を含むポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)、RNA-Seq、FISH、マイクロアレイ解析、遺伝子発現プロファイリング、及び/又は遺伝子発現連続解析(「SAGE」)、並びにタンパク質、遺伝子、及び/又は組織アレイ解析によって実施され得る多岐にわたるアッセイのいずれか1つが含まれる。遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価するプロトコルの非限定的な例には、ノーザンブロット法、サザンブロット法、ウェスタンブロット法、免疫ブロット法、及びPCR分析が含まれる。或る特定の実施形態では、Rules Based Medicine社又はMeso Scale Discovery社から入手可能であるようなマルチプレックスイムノアッセイを使用することもできる。或る特定の実施形態では、試料又は細胞集団中の様々なバイオマーカーの存在(例えば、発現)及び/又はレベル/量は、多くの技法によって分析することができ、その技法の多くは当該技術分野で知られており、当業者に理解されており、限定されるものではないが、該技法には、ゲノムワイドトランスクリプトミクス、プロテオミクス、セクレトミクス、リピドミクス、ホスファトミクス、エクソソミクス等の「-オミクス(-omics)」プラットフォームが含まれ、ここで、ハイスループットな技法は、計算生物学及びバイオインフォマティクス技術と連動して、検討中の細胞集団によって発現される及び/又は発現されない遺伝子、miRNA、タンパク質、分泌型タンパク質、脂質、微小胞等の完全な生物学的シグネチャーを明らかにする。
【0139】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団中の2つ以上のバイオマーカーの存在を検出する方法は、抗体とそのコグネートなリガンド(すなわち、バイオマーカー)との結合を可能にする条件下で、集団を含む試料をバイオマーカーに対する抗体と接触させることと、例えば、抗体とバイオマーカーとの間で複合体が形成されるかどうかを検出することによって、結合された抗体の存在を検出することとを含む。或る特定の実施形態では、1つ以上のバイオマーカーの存在は、免疫組織化学によって検出される。或る特定の実施形態では、微小胞(エクソソーム等)中又はその上のバイオマーカーの存在を検出する方法は、抗体とそのコグネートなリガンド(すなわち、バイオマーカー)との結合を可能にする条件下で、微小胞の試料(例えば、微小胞を含むと疑われる試料又は微小胞を含むと考えられた試料)をバイオマーカーに対する抗体と接触させることと、例えば、抗体とバイオマーカーとの間で複合体が形成されるかどうかを検出することによって、結合された抗体の存在を検出することとを含む。
【0140】
本明細書で使用される「検出する」という用語は、定量的検出及び/又は定性的検出を
含む。
【0141】
或る特定の実施形態では、バイオマーカーは、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体によって検出される。
【0142】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、本明細書に開示されるバイオマーカー、例えば、AQP1、AQP2、AQP4、カルビンジン、カルポニン、CD117、CD133、CD146、CD24、CD31(PECAM-1)、CD54(ICAM-1)、CD73、CK18、CK19、CK7、CK8、CK8/18、CK8/18/19、コネキシン43、キュビリン、CXCR4(フュージン)、DBA、E-カドヘリン(CD324)、EPO(エリスロポエチン)、GGT1、GLEPP1(糸球体上皮タンパク質1)、ハプトグロブリン、Itgbl(インテグリンp)、KIM-1(腎臓障害分子-1)、T1M-1(T細胞免疫グロブリン及びムチン含有分子)、MAP-2(微小管関連タンパク質2)、メガリン、N-カドヘリン、ネフリン、NKCC(Na-K-Cl-共輸送体)、OAT-1(有機陰イオン輸送体1)、オステオポンチン、パンカドヘリン、PCLP1(ポドカリキシン様1分子)、ポドシン、SMA(平滑筋α-アクチン)、シナプトポディン、THP(タム-ホースフォールタンパク質)、ビメンチン及びαGST-1(アルファグルタチオン5-トランスフェラーゼ)の検出を可能にする1つ以上の試薬で特定される。
【0143】
或る特定の実施形態では、細胞の供給源は、意図される標的臓器又は組織と同じである。或る特定の実施形態では、BRC又はSRCは、腎臓に投与される製剤に使用するために腎臓を起源とすることができる。或る特定の実施形態では、細胞集団は腎臓生検に由来する。或る特定の実施形態では、細胞集団は全腎臓組織に由来する。或る特定の実施形態では、細胞集団は、腎臓生検又は全腎臓組織から樹立された哺乳動物腎臓細胞のin vitro培養物に由来する。
【0144】
或る特定の実施形態では、BRC又はSRCは、生物活性腎細胞の不均一な混合物又は画分を含む。或る特定の実施形態では、BRC又はSRCは、健康な個体に由来し得る、又は健康な個体からの腎細胞画分自体である。或る特定の実施形態では、本明細書において、(例えば、腎臓又はその生検において)健康な個体の腎細胞集団と比較して或る特定の細胞型を欠いている場合がある不健康な個体から得られた腎細胞集団又は画分が含まれる。或る特定の実施形態では、本明細書において、健康な個体と比較して細胞型を欠いている治療的活性のある細胞集団だけでなく、該集団によって分泌される微小胞(例えば、エクソソーム)も提供される。そのような細胞及び微小胞(例えば、エクソソーム)を検出する方法も提供される。或る特定の実施形態では、細胞集団は、自家細胞集団から単離及び増殖される。
【0145】
或る特定の実施形態では、SRCは、腎臓生検を介して患者の腎皮質組織からの腎細胞の単離及び増殖から得られる。或る特定の実施形態では、腎細胞は酵素消化によって腎臓組織から単離され、標準的な細胞培養技術によって増殖され、増殖された腎細胞から密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離によって選択される。或る特定の実施形態では、腎細胞は酵素消化によって腎臓組織から単離され、標準的な細胞培養技術によって増殖され、増殖された腎細胞から連続的又は不連続的な単一段階又は多段階の密度勾配遠心分離によって選択される。或る特定の実施形態では、SRCは、主として再生能力について知られている腎上皮細胞から構成される。或る特定の実施形態では、その他の実質(血管)細胞及び間質細胞が自家SRC集団中に存在していてもよい。
【0146】
或る特定の実施形態では、BRCは、腎臓の修復及び再生に天然に関与する再生腎細胞の単離された集団である。或る特定の実施形態では、BRCは、腎臓組織から酵素消化に
よって単離され、標準的な細胞培養技術によって増殖された腎細胞から得られる。或る特定の実施形態では、細胞培養培地は、再生能力を有する生物活性腎細胞を増殖させるように設計され得る。或る特定の実施形態では、細胞培養培地は、分化因子を一切含有しない。或る特定の実施形態では、増殖された不均一な腎細胞集団は、再生能力を有する細胞の組成を更に濃縮するために低酸素条件下で培養される。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、以下の現象:1)低酸素培養期間の間の特定の細胞コンポーネントの選択的な生存、死、又は増殖、2)低酸素培養に応答して細胞の粒度及び/又はサイズが変化し、それにより浮遊密度の変化に引き続き、密度勾配分離の間の局在性の変化がもたらされること、並びに3)低酸素培養期間に応答して細胞遺伝子/タンパク質発現が変化し、それにより単離及び増殖された集団内の細胞の種々の特質が生ずることの1つ以上に起因し得る。
【0147】
或る特定の実施形態では、生物活性腎細胞集団は、腎臓再生を可能にする細胞について濃縮する培養条件下での腎臓組織(生検から得られる組織等)からの腎細胞の単離及び増殖から得られる。
【0148】
或る特定の実施形態では、腎臓組織(生検から得られる組織等)からの腎細胞を1回、2回、3回、4回、5回又はそれ以上の回数、継代して、増殖された生物活性腎細胞(腎臓再生を可能にする細胞について濃縮された細胞集団等)が作製される。或る特定の実施形態では、腎臓組織(生検から得られる組織等)からの腎細胞を1回継代して、増殖された生物活性腎細胞が作製される。或る特定の実施形態では、腎臓組織(生検から得られる組織等)からの腎細胞を2回継代して、増殖された生物活性腎細胞が作製される。或る特定の実施形態では、腎臓組織(生検から得られる組織等)からの腎細胞を3回継代して、増殖された生物活性腎細胞が作製される。或る特定の実施形態では、腎臓組織(生検から得られる組織等)からの腎細胞を4回継代して、増殖された生物活性腎細胞が作製される。或る特定の実施形態では、腎臓組織(生検から得られる組織等)からの腎細胞を5回継代して、増殖された生物活性腎細胞が作製される。或る特定の実施形態では、細胞を継代すると、非生物活性腎細胞の細胞集団が枯渇する。或る特定の実施形態では、細胞を継代すると、少なくとも1つの細胞型の細胞集団が枯渇する。或る特定の実施形態では、細胞を継代すると、1.095g/mlを超える密度を有する細胞の細胞集団が枯渇する。或る特定の実施形態では、細胞を継代すると、低い粒度の小さい細胞の細胞集団が枯渇する。或る特定の実施形態では、細胞を継代すると、赤血球よりも小さい細胞の細胞集団が枯渇する。或る特定の実施形態では、細胞を継代すると、6μm未満の直径を有する細胞の細胞集団が枯渇する。或る特定の実施形態では、細胞を継代すると、2μm未満の直径を有する細胞の細胞集団が枯渇する。或る特定の実施形態では、細胞を継代すると、赤血球よりも低い粒度を有する細胞の細胞集団が枯渇する。或る特定の実施形態では、細胞集団の生存力は、1回以上の継代後に増加する。或る特定の実施形態では、小さい細胞及び低い粒度という記載は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって、例えば、細胞の出現箇所の散布図のX-Y軸を用いて細胞を分析するときに使用される。
【0149】
或る特定の実施形態では、増殖された生物活性腎細胞を、低酸素条件下で少なくとも約6時間、9時間、10時間、12時間、若しくは24時間であるが48時間未満にわたり、又は6時間~9時間、若しくは6時間~48時間、若しくは約12時間~約15時間、若しくは約8時間、若しくは約12時間、若しくは約24時間、若しくは約36時間、若しくは約48時間にわたり成長させる。或る特定の実施形態では、低酸素条件下で成長した細胞を密度に基づいて選択する。或る特定の実施形態では、生物活性腎細胞集団は、増殖された腎細胞の連続的又は不連続的な(単一段階又は多段階の)密度勾配分離後(例えば、低酸素条件下での継代及び/又は培養の後)に得られるSRC集団である。或る特定の実施形態では、生物活性腎細胞集団は、増殖された腎細胞の密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離による分離後(例えば、低酸素条件下での継代及び/又は培養
の後)に得られるSRC集団である。或る特定の実施形態では、低酸素培養条件は、細胞が大気酸素レベル(約21%)で培養される標準的な培養条件と比較して、細胞が培養システムにおいて有効酸素レベルの減少に曝される培養条件である。或る特定の実施形態では、低酸素培養条件下で培養された細胞は、約5%~約15%、若しくは約5%~約10%、若しくは約2%~約5%、若しくは約2%~約7%、又は約2%、若しくは約3%、若しくは約4%、若しくは約5%の酸素レベルで培養される。或る特定の実施形態では、SRCは、約1.0419g/mLを超える浮遊密度を示す。或る特定の実施形態では、SRCは、約1.04g/mLを超える浮遊密度を示す。或る特定の実施形態では、SRCは、約1.045g/mLを超える浮遊密度を示す。或る特定の実施形態では、BRC又はSRCは、出発腎臓細胞集団と比較して、1つ以上の細胞集団をより高いパーセンテージで含有し、その他の1つ以上の細胞集団を欠いている又はそれらが少ない。
【0150】
或る特定の実施形態では、増殖された生物活性腎細胞を密度勾配分離に供して、SRCを得ることができる。或る特定の実施形態では、BRCを低酸素培養条件及び密度勾配分離の両方に供して、SRCが得られる。或る特定の実施形態では、連続的又は不連続的な単一段階又は多段階の密度勾配遠心分離を使用して、採取された腎細胞集団を細胞浮遊密度に基づいて分離する。或る特定の実施形態では、増殖された生物活性腎細胞を密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離によって分離して、SRCを得ることができる。或る特定の実施形態では、密度境界又は密度界面を越える遠心分離を使用して、採取された腎細胞集団を細胞浮遊密度に基づいて分離する。或る特定の実施形態では、SRCは、非イオン性ヨウ素化合物のイオジキサノールの60%(重量/容量)水溶液を含むOPTIPREP(Axis-Shield社)培地を一部で使用することによって作製される。しか
しながら、当業者は、その他の培地、密度勾配(連続的又は不連続的)、密度境界、密度障壁、密度界面、又は他の手段、例えば、本明細書に記載される細胞集団の単離に必要な特徴を有する当該技術分野で知られる細胞表面マーカーを使用した免疫学的分離を使用して、生物活性腎細胞を得ることができることを理解するであろう。或る特定の実施形態では、約1.04g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が遠心分離後に別個のペレットとして収集される。或る特定の実施形態では、1.04g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。或る特定の実施形態では、約1.0419g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が遠心分離後に別個のペレットとして収集される。或る特定の実施形態では、1.0419g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。或る特定の実施形態では、約1.045g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が遠心分離後に別個のペレットとして収集される。或る特定の実施形態では、1.045g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。
【0151】
或る特定の実施形態では、細胞浮遊密度を使用して、SRC集団を得る及び/又は腎細胞集団が生物活性腎細胞集団であるかどうかを決定する。或る特定の実施形態では、細胞浮遊密度を使用して、生物活性腎細胞を単離する。或る特定の実施形態では、細胞浮遊密度は、単一段階のOptiPrep(7%イオジキサノール、OptiMEM中60%(重量/容量))密度界面を越える遠心分離(単一段階の不連続的な密度勾配)によって決定される。Optiprepは、イオジキサノールの60%(重量/容量)水溶液である。例示的な密度界面又は単一段階の不連続的な密度勾配で使用される場合に、OptiprepをOptiMEM(細胞培養基本培地)で希釈して、イオジキサノールの7%の最終溶液(水中及びOptiMEM中)を形成する。OptiMEMの配合は、HEPES及び重炭酸ナトリウムで緩衝化され、ヒポキサンチン、チミジン、ピルビン酸ナトリウム、L-グルタミン又はGLUTAMAX、微量元素、及び成長因子が補充されたイーグル最小必須培地の改変である。タンパク質レベルは最小(15μg/mL)であり、ここで、インスリン及びトランスフェリンが唯一のタンパク質サプリメントである。pH指示薬としてフェノールレッドが低濃度で含まれている。或る特定の実施形態では、使用前にOptiMEMに2-メルカプトエタノールが補充され得る。
【0152】
或る特定の実施形態では、OptiPrep溶液を調製し、使用前に所望の密度の指標となる屈折率を測定する(屈折率1.3456±0.0004)。或る特定の実施形態では、その溶液上に腎細胞が成層される。或る特定の実施形態では、密度界面又は単一段階の不連続的な密度勾配は、遠心分離チューブ(例えば、50ml容のコニカルチューブ)又は細胞処理装置(例えば、COBE 2991)のいずれかにおいて、室温(ブレーキなし)にて800gで20分間遠心分離される。或る特定の実施形態では、約1.04g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が遠心分離後に別個のペレットとして収集される。或る特定の実施形態では、1.04g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。或る特定の実施形態では、約1.0419g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が遠心分離後に別個のペレットとして収集される。或る特定の実施形態では、1.0419g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。或る特定の実施形態では、約1.045g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が遠心分離後に別個のペレットとして収集される。或る特定の実施形態では、1.045g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。或る特定の実施形態では、細胞密度の評価又は密度に基づく選択の前に、細胞は、それらが少なくとも50%コンフルエントとなるまで培養され、2%酸素に設定された低酸素インキュベーターにおいて5%のCO2環境下で37℃にて一晩(例えば、少なくとも約8時間又は12時間)インキュベートされる。
【0153】
或る特定の実施形態では、腎臓試料から得られた細胞を増殖させた後に、処理(例えば、低酸素及び遠心分離による)して、SRC集団が得られる。或る特定の実施形態では、SRC集団は、本明細書に記載される試薬及び手法を使用して作製される。或る特定の実施形態では、SRC集団からの細胞の試料を生存力について試験した後に、該集団の細胞を対象に投与する。或る特定の実施形態では、SRC集団からの細胞の試料を本明細書に開示されるマーカーの1つ以上の発現について試験した後に、該集団の細胞を対象に投与する。
【0154】
或る特定の実施形態では、SRCは、初代腎細胞を増殖させ(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、又はそれ以上の回数の継代によって)、増殖された腎細胞を低酸素条件下で培養し、次いで該細胞を腎毒素(イオジキサノール、例えば、7%イオジキサノール等)と接触させることを含むプロセスによって作製される。或る特定の実施形態では、SRCは、初代腎細胞を増殖させ(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、又はそれ以上の回数の継代によって)、増殖された腎細胞を低酸素条件下で培養し、次いで本明細書に開示される密度勾配を用いて細胞を選択することを含むプロセスによって作製される。或る特定の実施形態では、SRCは、初代腎細胞を増殖させ(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、又はそれ以上の回数の継代によって)、増殖された腎細胞を低酸素条件下で培養し、次いで該細胞から尿細管細胞を濃縮する及び/又は低酸素条件下で培養された増殖細胞から血管細胞若しくは集合管細胞を枯渇させることを含むプロセスによって作製される。
【0155】
SRCを作製する組成物及び方法の非限定的な例は、米国特許出願公開第2017/0281684号に開示されており、その全内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0156】
或る特定の実施形態では、BRC又はSRCは、天然の自家又は同種異系の腎臓試料に由来する。或る特定の実施形態では、BRC又はSRCは、非自家の腎臓試料に由来する。或る特定の実施形態では、試料を腎臓生検によって得ることができる。
【0157】
或る特定の実施形態では、腎細胞の単離及び増殖により、腎上皮細胞及び間質細胞を含
む腎細胞型の混合物が得られる。或る特定の実施形態では、SRCは、増殖された腎細胞の連続的又は不連続的な密度勾配分離によって得られる。或る特定の実施形態では、密度勾配分離されたSRC集団における初代細胞型は、尿細管上皮表現型である。或る特定の実施形態では、SRCは、密度境界、密度障壁、若しくは密度界面を越える遠心分離による増殖された腎細胞の分離によって得られる。或る特定の実施形態では、密度境界/密度障壁/密度界面を越えて分離されたSRC集団における初代細胞型は、尿細管上皮表現型である。或る特定の実施形態では、増殖された腎細胞から得られたSRCの特質は、多方面からのアプローチを使用して評価される。或る特定の実施形態では、腎細胞増殖過程の間に細胞形態、増殖動態、及び細胞生存力がモニターされる。或る特定の実施形態では、SRCの浮遊密度及び生存力は、密度勾配媒体上での又は密度勾配媒体を介した遠心分離及びトリパンブルー排除によって特徴付けられる。或る特定の実施形態では、SRC表現型はフローサイトメトリーによって特徴付けられ、SRC機能はVEGF及びKIM-1の発現によって示される。或る特定の実施形態では、SRCの細胞機能のプレフォーミュレーションは、腎臓近位尿細管に見られる2つの特定の酵素、GGT(γ-グルタミルトランスペプチダーゼ)及びLAP(ロイシンアミノペプチダーゼ)の活性を測定することによっても評価され得る。
【0158】
或る特定の実施形態では、密度媒体を介した細胞亜集団の分離に寄与する細胞の特徴(サイズ及び粒度)を利用して、細胞亜集団を、フローサイトメトリーを介して分離することができる(前方散乱=フローサイトメトリーによるサイズを反映、及び側方散乱=粒度を反映)。或る特定の実施形態では、密度勾配媒体又は分離媒体は、対象となる特定の細胞に対して低い毒性を有するべきである。或る特定の実施形態では、密度媒体は、対象となる特定の細胞に対して低い毒性を有するべきである一方で、本開示は、対象となる細胞の選択過程での役割を担う媒体の使用を検討している。或る特定の実施形態では、理論に拘束されることを望むものではないが、負荷工程と回収工程との間で細胞の相当な損失があるので、イオジキサノールを含む媒体によって回収された本明細書に開示される細胞集団はイオジキサノール抵抗性であると思われ、密度勾配、又は密度境界、密度障壁若しくは密度界面の条件下でのイオジキサノールに対する曝露が、或る特定の細胞の排除をもたらすことが示唆される。或る特定の実施形態では、イオジキサノール密度勾配又は密度界面分離後に現れる細胞は、イオジキサノール及び/又は密度勾配若しくは界面曝露のあらゆる有害作用に対して抵抗性である。或る特定の実施形態では、軽度から中程度までの腎毒素を含む造影剤が、例えばSRC集団等の細胞集団の単離及び/又は選択に使用される。或る特定の実施形態では、「軽度の」腎毒性は、標準的な生/死色素排除細胞生存アッセイによって評価されて、細胞を7%(重量/容量)の腎毒素が補充された標準培地配合物中で12時間インキュベートした場合に、初代腎細胞の10%以下を死滅させる腎毒素である。或る特定の実施形態では、SRCはイオジキサノール抵抗性である。或る特定の実施形態では、密度媒体は、ヒト血漿中のタンパク質に結合すべきでない、又は対象となる細胞の主要な機能に悪影響を及ぼすべきではない。
【0159】
或る特定の実施形態では、細胞集団は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)を使用して1つ以上の腎臓細胞型が濃縮及び/又は枯渇されている。或る特定の実施形態では、BD FACSAria(商標)又は同等物を使用して腎臓細胞型を濃縮及び/又は枯渇させることができる。或る特定の実施形態では、FACSAria III(商標)又は同等物を使用して腎臓細胞型を濃縮及び/又は枯渇させることができる。
【0160】
或る特定の実施形態では、細胞集団は、磁気セルソーティングを使用して1つ以上の腎臓細胞型が濃縮及び/又は枯渇されている。或る特定の実施形態では、Miltenyi社のautoMACS(商標)システム又は同等物を使用して1つ以上の腎臓細胞型を濃縮及び/又は枯渇させることができる。
【0161】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団は三次元培養に供されている。或る特定の実施形態では、細胞集団を培養する方法は、連続灌流によるものである。或る特定の実施形態では、三次元培養及び連続灌流を介して培養された細胞集団は、静置培養された細胞集団と比較してより高い細胞充実性及び相互結合性を示す。或る特定の実施形態では、三次元培養及び連続灌流を介して培養された細胞集団は、そのような細胞集団の静置培養物と比較してより高いEPOの発現だけでなく、E-カドヘリン等の腎尿細管関連遺伝子の発現強化を示す。或る特定の実施形態では、連続灌流を介して培養された細胞集団は、静置培養された細胞集団と比較してより高いレベルのグルコース及びグルタミンの消費を示す。
【0162】
或る特定の実施形態では、本明細書に提供される細胞集団を作製する方法で低い酸素条件又は低酸素条件を使用することができる。或る特定の実施形態では、細胞集団を作製する方法は、低い酸素条件にする工程なしで使用され得る。或る特定の実施形態では、正常酸素圧条件を使用することができる。
【0163】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団は腎臓組織から単離及び/又は培養されたものである。腎臓疾患、貧血、EPO欠乏症、尿細管輸送障害、及び糸球体濾過障害の治療を含む治療用の製剤に使用される腎細胞コンポーネント、例えば濃縮された細胞集団を分離及び単離する方法の非限定的な例を本明細書に開示する。或る特定の実施形態では、細胞集団は、新たに消化された、すなわち機械的若しくは酵素的に消化された腎臓組織から、又は哺乳動物腎臓細胞の不均一なin vitro培養物から単離される。
【0164】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、EPO産生腎臓細胞を含む。或る特定の実施形態では、対象は、貧血及び/又はEPO欠乏症を有する。或る特定の実施形態では、EPO産生腎臓細胞集団は、EPOの発現及び酸素に対する生物学的反応性を特徴とするため、培養システムの酸素圧の低下の結果として、EPOの発現の誘導がもたらされる。或る特定の実施形態では、EPO産生細胞集団は、EPO産生細胞について濃縮されている。或る特定の実施形態では、標準大気(約21%)レベルの有効酸素で培養された細胞集団と比較して、細胞が培養システムにおいて有効酸素レベルの低下に曝される条件下で細胞集団を培養した場合に、EPO発現が誘導される。或る特定の実施形態では、より低い酸素条件で培養されたEPO産生細胞は、通常の酸素条件で培養されたEPO産生細胞と比較して、より高いレベルのEPOを発現する。一般的に、低下したレベルの有効酸素(低酸素培養条件とも呼称される)での細胞の培養とは、低下した酸素のレベルが、標準大気レベルの有効酸素(標準培養条件又は正常酸素圧培養条件とも呼称される)での細胞培養と比較して低下していることを意味する。或る特定の実施形態では、低酸素細胞培養条件は、細胞を約1%未満の酸素、約2%未満の酸素、約3%未満の酸素、約4%未満の酸素、又は約5%未満の酸素で培養することを含む。或る特定の実施形態では、培養条件は、細胞を約10%の酸素、約12%の酸素、約13%の酸素、約14%の酸素、約15%の酸素、約16%の酸素、約17%の酸素、約18%の酸素、約19%の酸素、約20%の酸素、又は約21%の酸素で培養することを含む。
【0165】
或る特定の実施形態では、細胞を約5%未満の有効酸素で培養し、EPO発現レベルを大気(約21%)酸素で培養された細胞と比較することによって、EPOの誘導又は発現の増加を得て、これらを観察することができる。或る特定の実施形態では、EPOを発現することができる細胞の培養物において、細胞の培養物が幾らかの期間にわたり大気酸素(約21%)で培養される第1培養期と、有効酸素レベルを低下させて同じ細胞を約5%未満の有効酸素で培養する第2培養期とを含む方法によって、EPOの誘導が得られる。或る特定の実施形態では、低酸素条件に応答するEPO発現は、HIF1αによって調節される。或る特定の実施形態では、本明細書に記載される細胞のために、当該技術分野で知られる他の酸素操作培養条件を使用することができる。
【0166】
或る特定の実施形態では、製剤は、灌流条件に対する生体反応性(例えば、EPO発現)を特徴とするEPO産生哺乳動物細胞の濃縮された集団を含有する。或る特定の実施形態では、灌流条件には、一過性、間欠性、又は連続性の流体流動(灌流)が含まれる。或る特定の実施形態では、細胞を培養する培地を、流動を介して細胞に動的な力が伝えられるように間欠的又は連続的に循環又は撹拌した場合に、EPO発現が機械的に誘導される。或る特定の実施形態では、一過性、間欠性、又は連続性の流体流動に曝された細胞を培養することで、これらの細胞は、三次元構造の形成のための骨格及び/又は空隙を提供する材料中又は材料上に三次元構造として存在する。或る特定の実施形態では、細胞は多孔質ビーズ上で培養され、揺動プラットフォーム、軌道旋回プラットフォーム、又はスピナーフラスコによって、間欠的又は連続的な流体流動に曝される。或る特定の実施形態では、細胞は三次元スキャフォールド上で培養され、スキャフォールドを固定し、流体がスキャフォールドを通過して又は横切って指向的に流れるデバイス中に配置される。当業者は、本明細書に記載される細胞のために、当該技術分野で知られる他の灌流培養条件を使用することができることを理解するであろう。
【0167】
或る特定の実施形態では、細胞集団は腎臓生検に由来する。或る特定の実施形態では、細胞集団は全腎臓組織に由来する。或る特定の実施形態では、細胞集団は、腎臓生検又は全腎臓組織から樹立された哺乳動物腎臓細胞のin vitro培養物に由来する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団は、SRC集団である。或る特定の実施形態では、細胞集団は、本明細書で濃縮されていない細胞集団とも呼称される未分画細胞集団である。
【0168】
様々な活性作用物質(例えば、腎細胞又は微小胞以外)を含有する組成物は本明細書に含まれる。或る特定の実施形態では、本明細書で提供される微小胞(例えば、エクソソーム)は、微小胞(例えば、エクソソーム)を分泌した腎細胞集団の培養培地中に存在した化合物を含む。或る特定の実施形態では、本明細書で提供される微小胞(例えば、エクソソーム)は、微小胞(例えば、エクソソーム)を分泌した腎細胞集団中に存在した化合物を含む。
【0169】
適切な活性作用物質の非限定的な例には、限定されるものではないが、細胞凝集体、無細胞バイオマテリアル、生物活性細胞からの分泌産物、高分子療法薬及び低分子療法薬、並びにそれらの組み合わせが含まれる。例えば、或る生物活性細胞型を、治療用分子又は別の生物活性細胞型と共に又はそれらなしで、バイオマテリアルベースのマイクロキャリアと組み合わせることができる。或る特定の実施形態では、付着していない細胞を無細胞粒子と組み合わせることができる。
【0170】
或る特定の実施形態では、腎細胞集団の細胞はスフェロイド内に存在する。或る特定の実施形態では、腎細胞集団はスフェロイドの形で存在する。或る特定の実施形態では、生物活性腎細胞を含むスフェロイドは対象に投与される。或る特定の実施形態では、スフェロイドは、少なくとも1つの非腎細胞型又は細胞集団を含む。或る特定の実施形態では、スフェロイドは、(i)生物活性腎細胞集団及び非腎細胞集団を組み合わせることと、(ii)その生物活性腎細胞集団及び非腎細胞集団を、スフェロイドが形成されるまでスピナーフラスコを含む三次元培養システムにおいて培養することとを含む方法で作製される。
【0171】
或る特定の実施形態では、非腎細胞集団は、内皮細胞集団及び内皮前駆細胞集団を含む。或る特定の実施形態では、生物活性細胞集団は内皮細胞集団である。或る特定の実施形態では、内皮細胞集団は細胞系統である。或る特定の実施形態では、内皮細胞集団は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を含む。或る特定の実施形態では、非腎細胞集団は、間葉系幹細胞集団である。或る特定の実施形態では、非腎細胞集団は、造血系起源、乳房起源、腸起源、胎盤起源、肺起源、骨髄起源、血液起源、臍帯起源、内皮起源、歯髄起源
、脂肪起源、神経起源、嗅覚器起源、神経堤起源、又は精巣起源の幹細胞集団である。或る特定の実施形態では、非腎細胞集団は、脂肪由来の前駆細胞集団である。或る特定の実施形態では、細胞集団は、異種、同系、同種異系、自家の細胞集団、又はそれらの組み合わせである。或る特定の実施形態では、生物活性腎細胞集団及び非腎細胞集団は、0.1:9.9~9.9:0.1の比率で培養される。或る特定の実施形態では、生物活性腎細胞集団及び非腎細胞集団は、約1:1の比率で培養される。或る特定の実施形態では、腎細胞集団及び生物活性細胞集団は成長培地中に懸濁される。
【0172】
増殖された生物活性腎細胞を連続的又は不連続的な密度媒体分離に更に供して、SRCを得ることができる。特に、連続的又は不連続的な単一段階又は多段階の密度勾配遠心分離を使用して、採取された腎細胞集団を細胞浮遊密度に基づいて分離する。或る特定の実施形態では、増殖された生物活性腎細胞を、密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離による分離に更に供して、SRCを得ることができる。特に、密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離を使用して、採取された腎細胞集団を細胞浮遊密度に基づいて分離する。或る特定の実施形態では、SRCは、非イオン性ヨウ素化合物のイオジキサノールの60%水溶液を含むOPTIPREP(Axis-Shield社)培地を一部で使
用することによって作製される。しかしながら、当業者は、特定の媒体若しくは他の手段、例えば、本開示の細胞集団の単離に必要な特徴を有する当該技術分野で知られる細胞表面マーカーを用いた免疫学的分離に限らず、任意の密度勾配媒体を本開示に従って使用することができることを認識するであろう。例えば、Percoll(商標)(ポリビニルピロリドン(PVP)で被覆された15nm~30nmの直径のコロイダルシリカ粒子(水中23%(重量/重量)))又はショ糖を使用して、密度勾配又は密度境界を形成することができる。或る特定の実施形態では、約1.04g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が、遠心分離後に別個のペレットとして収集される。或る特定の実施形態では、1.04g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。或る特定の実施形態では、約1.0419g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が、遠心分離後に別個のペレットとして収集される。或る特定の実施形態では、1.0419g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。或る特定の実施形態では、約1.045g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が、遠心分離後に別個のペレットとして収集される。或る特定の実施形態では、1.045g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。
【0173】
或る特定の実施形態では、本開示の治療用組成物及びその製剤は、腎臓疾患の治療、すなわち、腎臓機能及び/又は構造の安定化及び/又は改善及び/又は再生をもたらすのに使用される(i)特定の生物活性コンポーネント又は細胞型について濃縮され、及び/又は特定の不活性又は不所望なコンポーネント又は細胞型が枯渇された単離された不均一な腎臓細胞集団、及び/又は(ii)そのような細胞によって分泌された微小胞(例えば、エクソソーム)を含有し得る。そのような安定化及び/又は改善をもたらすための細胞の非限定的な例は、以前にPresnellらによる米国特許第8,318,484号及びIlaganらによる国際出願PCT/US2011/036347号及びJainらによる国際出願PCT/US2016/044866号に記載されており、それぞれの全内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。或る特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、健康な個体と比較して細胞コンポーネントを欠くが、治療特性を保持する、すなわち、腎臓機能の安定化及び/又は改善及び/又は再生をもたらす、単離された腎細胞画分を含有し得る。或る特定の実施形態では、本明細書に記載される細胞集団、細胞画分、及び/又は細胞の分泌産物は、健康な個体、腎臓疾患を患っている個体、又は本明細書に記載される対象に由来し得る。
【0174】
或る特定の実施形態では、細胞の供給源は、意図される標的臓器又は組織と同じである。例えば、BRC及び/又はSRCは、腎臓に投与される製剤に使用するために腎臓を起
源とすることができる。或る特定の実施形態では、細胞集団は腎臓生検に由来する。或る特定の実施形態では、細胞集団は全腎臓組織に由来する。或る特定の実施形態では、細胞集団は、腎臓生検又は全腎臓組織から樹立された哺乳動物腎臓細胞のin vitro培養物に由来する。或る特定の実施形態では、BRC及び/又はSRCは、生物活性腎細胞の不均一な混合物又は画分を含む。BRC及び/又はSRCは、健康な個体に由来し得る、又は健康な個体からの腎細胞画分自体である。さらに、本開示は、不健康な個体から得られる腎細胞画分であって、健康な個体の対応する腎細胞画分と比較して或る特定の細胞コンポーネントを欠き得るが、それでも依然として治療特性を維持し得る、腎細胞画分を提供する。本開示はまた、健康な個体と比較して細胞コンポーネントを欠いた治療活性のある細胞集団であって、或る特定の実施形態では、様々な疾患状態での自家の供給源から単離及び増殖され得る、細胞集団を提供する。
【0175】
或る特定の実施形態では、SRCは、腎臓生検を介して患者の腎皮質組織からの腎細胞の単離及び増殖から得られる。腎細胞は酵素消化によって腎臓組織から単離され、標準的な細胞培養技術によって増殖され、密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える増殖された腎細胞の遠心分離によって選択される。この実施形態では、SRCは、その再生能力について知られる腎尿細管上皮細胞から主として構成される(Bonventre JV. Dedifferentiation and proliferation of surviving epithelial cells in acute renal failure. J Am Soc Nephrol. 2003;14(Suppl. 1):S55-61、Humphreys BD, Czerniak S, DiRocco DP, et al. Repair of injured proximal tubule does not involve specialized progenitors. PNAS. 2011;108:9226-31、Humphreys BD, Valerius MT, Kobayashi A, et al. Intrinsic epithelial cells repair the kidney after injury. Cell Stem Cell. 2008;2:284-91)。その他の実質(血管)細胞及び間質細胞が、自家SRC集団中に存在していてもよい。或る特定の実施形態では、腎細胞は、連続的又は不連続的な単一段階又は多段階の勾配を通じた遠心分離によって選択される。
【0176】
本明細書において、小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)及び選択腎細胞の両方を含む治療用組成物が含まれる。或る特定の実施形態では、小胞及び細胞の組み合わせは、対象における腎臓機能の安定化及び/又は改善及び/又は修復及び/又は再生をもたらす。治療特性には、修復効果又は再生効果が含まれ得る。
【0177】
或る特定の実施形態では、細胞は、遺伝子改変された(例えば、ゲノム改変及び/又はRNAiを介して改変された)免疫特権があるBRC(SRC等)である。
【0178】
或る特定の実施形態では、小胞は、遺伝子改変された(例えば、ゲノム改変及び/又はRNAiを介して改変された)免疫特権があるBRC(SRC等)から得られる。
【0179】
或る特定の実施形態では、遺伝子改変されたBRCは、ゲノム改変されたBRC(すなわち、そのゲノム内に遺伝子改変を有するBRC)である。或る特定の実施形態では、遺伝子改変されたBRCは、BRCにおけるゲノム免疫原性遺伝子の発現を低下させるRNA干渉(RNAi)分子を発現する外因性ポリヌクレオチド(プラスミド又はウイルスベクター等)を含む。或る特定の実施形態では、RNAi分子は、低分子干渉RNA分子又は低分子ヘアピンRNA分子である。或る特定の実施形態では、上記方法は、BRCにおけるゲノム免疫原性遺伝子を遺伝子改変することを含む。
【0180】
或る特定の実施形態では、上記遺伝子は、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子又はMHCクラスII分子内のタンパク質をコードする。或る特定の実施形態では、上記遺伝子は、ベータ-2ミクログロブリン(B2M、β2Mとしても知られている)遺伝子、ヒト白血球抗原(HLA)-A遺伝子、HLA-B遺伝子、HLA-C遺伝子、HLA-DRA遺伝子、HLA-DRB1遺伝子、HLA-DRB3遺伝子、HLA-DRB
4遺伝子、HLA-DRB5遺伝子、HLA-DPA1遺伝子、HLA-DPA2遺伝子、HLA-DQA1遺伝子、又はHLA-DQB1遺伝子である。
【0181】
或る特定の実施形態では、上記遺伝子は、マイナー組織適合性抗原(MiHA又はmHA)をコードする。或る特定の実施形態では、上記遺伝子は、HA-1遺伝子、HA-2遺伝子、HA-8遺伝子、HB-1遺伝子、HY-A1遺伝子、HY-A2遺伝子、HY-B7遺伝子、HY-B8遺伝子、HY-B60遺伝子、又はHY-DQ5遺伝子である。
【0182】
或る特定の実施形態では、本明細書で述べられるHLA遺伝子、B2M遺伝子、又はmHA遺伝子の任意のアレル変異体は、改変(例えば、欠失)され得る又はRNA干渉で標的化され得る。
【0183】
或る特定の実施形態では、遺伝子の遺伝子改変は、遺伝子の突然変異を含む。或る特定の実施形態では、遺伝子の突然変異は、遺伝子又はその一部の欠失を含む。
【0184】
或る特定の実施形態では、細胞の遺伝子改変には、B2M遺伝子、HLA-A遺伝子、HLA-B遺伝子、HLA-C遺伝子、HLA-DRA遺伝子、HLA-DRB1遺伝子、HLA-DRB3遺伝子、HLA-DRB4遺伝子、HLA-DRB5遺伝子、HLA-DPA1遺伝子、HLA-DPA2遺伝子、HLA-DQA1遺伝子、及び/又はHLA-DQB1遺伝子の2つ以上の任意の組み合わせの突然変異が含まれる。
【0185】
或る特定の実施形態では、遺伝子改変されたBRCは、遺伝子改変された初代腎細胞である。或る特定の実施形態では、遺伝子改変された初代腎細胞は、遺伝子改変の前又は後に少なくとも約1回、2回、3回、4回、5回又はそれ以上の回数継代されている。或る特定の実施形態では、上記方法は、遺伝子改変されたBRCからSRCを得ることを更に含む。或る特定の実施形態では、SRCを得て、その後に遺伝子改変する。
【0186】
或る特定の実施形態では、BRCはSRCである。本明細書には、SRCの様々な非限定的な例が開示されている。
【0187】
或る特定の実施形態では、BRCは、BRCの集団内にある間に遺伝子改変され、BRCの集団における全ての細胞より少ない細胞が遺伝子改変されることとなる。或る特定の実施形態では、上記方法は、遺伝子改変されたBRCをBRCの集団から単離又は濃縮することを更に含む。或る特定の実施形態では、上記方法は、遺伝子改変されたSRCをSRCの集団から単離又は濃縮することを更に含む。或る特定の実施形態では、BRC(例えば、SRC)の集団を遺伝子改変に供して、一部の細胞が遺伝子改変され、他の細胞は遺伝子改変されていないBRCの集団を得る。或る特定の実施形態では、遺伝子改変された細胞の一部は、その改変についてホモ接合性である。或る特定の実施形態では、遺伝子改変された細胞の一部は、その改変についてヘテロ接合性である。或る特定の実施形態では、改変についてホモ接合性である細胞が濃縮又は選択される。或る特定の実施形態では、改変についてヘテロ接合性である細胞が濃縮又は選択される。或る特定の実施形態では、改変についてホモ接合性又はヘテロ接合性である細胞が濃縮又は選択される。或る特定の実施形態では、改変は、遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を低減させる突然変異である。或る特定の実施形態では、突然変異は、改変された細胞の表面上のタンパク質のレベルを低下させる。或る特定の実施形態では、タンパク質を発現する細胞が枯渇又は排除される。或る特定の実施形態では、突然変異は、細胞の表面上のMHCクラスI分子及び/又はMHCクラスII分子のレベルを低下させる。或る特定の実施形態では、突然変異を有する細胞は、その表面上にMHCクラスI分子及び/又はMHCクラスII分子を有しない。或る特定の実施形態では、その表面上にMHCクラスI分子を発現する
細胞が枯渇又は排除される。或る特定の実施形態では、その表面上にMHCクラスII分子を発現する細胞が枯渇又は排除される。或る特定の実施形態では、セルソーティング法を使用して、タンパク質、MHCクラスI分子、及び/又はMHCクラスII分子を発現する細胞を集団から取り出す。或る特定の実施形態では、セルソーティング法は、タンパク質、MHCクラスI分子、及び/又はMHCクラスII分子に結合する作用物質(抗体等)を含む。或る特定の実施形態では、細胞の枯渇又は選択は、それらの細胞表面上に或る特定のタンパク質を有する細胞を取り出すためのビーズ/抗体カップリングを含む。或る特定の実施形態では、セルソーティング法は、磁気活性化セルソーティング(MACS)又は蛍光活性化セルソーティング(FACS)である。或る特定の実施形態では、遺伝子改変のために選択される遺伝子は、そのタンパク質が細胞表面上に発現される遺伝子であり、こうして、FACS技術及び/又はMACS技術により、生細胞が(例えば、表面上に結合する抗体に基づいて)分別され得る。或る特定の実施形態では、MACSを使用して、MHC分子(MHCクラスI分子又はMHCクラスII分子等)を発現する細胞を、発現しない細胞から取り出す。或る特定の実施形態では、組み込みベクター又は非組み込みベクターを使用して、別のHLA成分ポリペプチドを発現させて、獲得免疫系又は自然免疫系を、例えばナチュラルキラー(NK)細胞による標的化及び溶解を防ぐように更に改変又は調節することができる。
【0188】
或る特定の実施形態では、遺伝子の遺伝子改変(例えば、突然変異)は、(i)BRCにおいて遺伝子編集タンパク質を発現させること、又は(ii)BRCの細胞膜を越えて遺伝子編集タンパク質を送達することを含む。或る特定の実施形態では、遺伝子編集タンパク質は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、megaTAL、又はRNA誘導型エンドヌクレアーゼである。或る特定の実施形態では、RNA誘導型エンドヌクレアーゼは、Casタンパク質である。或る特定の実施形態では、Casタンパク質はCas9タンパク質である。或る特定の実施形態では、遺伝子の遺伝子改変は、(i)BRCにおいてシングルガイドのガイドRNA(gRNA)を発現すること、又は(ii)BRCの細胞膜を越えてシングルガイドのガイドRNA(gRNA)を送達することを更に含む。或る特定の実施形態では、Cas9タンパク質及びgRNAはリボヌクレオタンパク質複合体の部分である。
【0189】
或る特定の実施形態では、遺伝子の遺伝子改変は、細胞の表面上のMHCクラスIの量を減少させる。或る特定の実施形態では、遺伝子の遺伝子改変は、細胞の表面上のMHCクラスIIの量を減少させる。或る特定の実施形態では、上記方法は、2つ以上の遺伝子を遺伝子改変することを含み、ここで、該遺伝子の少なくとも1つはMHCクラスI分子内のタンパク質をコードし、該遺伝子の少なくとも1つはMHCクラスII分子内のタンパク質をコードする。或る特定の実施形態では、該遺伝子の少なくとも1つはHLA遺伝子である。
【0190】
遺伝子改変されたBRCに関する非限定的な記載は、製造方法を含めて、2018年6月21日に出願された国際出願PCT/US18/38801号に記載されている。
【0191】
或る特定の実施形態では、細胞の供給源は、同じ又は異なる供給源からの意図される標的臓器又は組織と同じである。例えば、BRC及び/又はSRCは、(小胞と一緒に又は小胞とは別個に)腎臓に投与される製剤に使用するために腎臓を起源とすることができる。或る特定の実施形態では、BRC及び/又はSRCは、腎臓に投与される小胞の産生に使用するために腎臓を起源とすることができる。或る特定の実施形態では、細胞集団は腎臓生検に由来する。或る特定の実施形態では、細胞集団は全腎臓組織に由来する。或る特定の実施形態では、細胞集団は、腎臓生検又は全腎臓組織から樹立された哺乳動物腎臓細胞のin vitro培養物に由来する。或る特定の実施形態では、BRC及び/又はSRCは、遺伝子改変された(例えば、ゲノム改変及び/又はRNAiを介して改変された
)免疫特権がある生物活性腎細胞の不均一な混合物又は画分を含む。BRC及び/又はSRCは、健康な個体に由来し得る、又は健康な個体からの腎細胞画分自体である。さらに、本発明は、不健康な個体から得られる腎細胞画分であって、健康な個体の対応する腎細胞画分と比較して或る特定の細胞コンポーネントを欠き得るが、それでも依然として治療特性を維持し得る、腎細胞画分を提供する。本発明はまた、健康な個体と比較して細胞コンポーネントを欠いた治療活性のある細胞集団であって、一実施形態では、様々な哺乳動物を起源とする腎臓から単離及び増殖され得る、細胞集団を提供する。
【0192】
或る特定の実施形態では、SRCは、腎生検を介して種々の患者の腎皮質組織からの腎細胞の単離及び増殖から得られる。或る特定の実施形態では、腎細胞は酵素消化によって腎臓組織から単離され、標準的な細胞培養技術によって増殖され、増殖された腎細胞から密度勾配遠心分離によって選択される。或る特定の実施形態では、SRCは、主として免疫特権能及び再生能力について知られる腎上皮細胞から構成される。その他の実質(血管)細胞及び間質細胞が、SRC集団中にまばらに存在していてもよい。
【0193】
本明細書に記載されるように、本発明は、部分的に、生物活性コンポーネントについて濃縮され、不活性又は不所望なコンポーネントが枯渇された腎細胞の不均一な集団の或る特定の亜画分が、出発集団より優れた治療転帰及び再生転帰をもたらすという驚くべき知見に基づいている。
【0194】
或る特定の実施形態では、腎細胞の単離及び増殖により、腎上皮細胞及び間質細胞を含む腎細胞型の混合物が得られる。或る特定の実施形態では、SRCは、増殖された腎細胞の密度勾配分離によって得られる。或る特定の実施形態では、密度勾配分離されたSRC集団における初代細胞型は、尿細管上皮表現型である。或る特定の実施形態では、SRC表現型はフローサイトメトリーによって特徴付けられ、SRC機能はVEGF及びKIM-1の発現によって示される。
【0195】
当業者は、本明細書に記載される細胞のために、当該技術分野で知られる他の単離方法及び培養方法を使用することができることを理解するであろう。当業者はまた、生物活性細胞集団が、具体的に上記で列挙されたもの以外の、限定されるものではないが、腎臓、体液及び脂肪以外の組織及び臓器を含む供給源に由来し得ることも理解するであろう。
【0196】
SRC表現型
或る特定の実施形態では、SRCによって分泌される微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又はSRCは、腎臓疾患を患っている又は腎臓疾患のリスクがある対象に投与される。
【0197】
或る特定の実施形態では、細胞表現型は、フローサイトメトリーを使用する腎細胞マーカーの発現分析によってモニターされる。細胞の表現型分析は、分析される細胞型に特異的な抗原マーカーの使用に基づいている。フローサイトメトリー分析は、分析される抗原マーカーを発現する試料集団における細胞の定量的指標を与える。
【0198】
腎尿細管上皮細胞の表現型の特性評価に有用な様々なマーカーが文献に報告されている:(i)サイトケラチン、(ii)輸送膜タンパク質(アクアポリン及びキュビリン)、(iii)細胞結合分子(アドヘリン及び分化抗原群及びレクチン)、及び(iv)代謝酵素(グルタチオン及びγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT))(表1)。全腎臓消化物から得られる培養物中に見られる細胞の大部分は上皮細胞及び内皮細胞であるので、検査されるマーカーは、これら2つの群に特異的なタンパク質の発現に焦点を当てている。
【0199】
【0200】
表2は、SRC集団における表現型の選択されたマーカー、範囲、及び平均パーセンテージ値、並びにそれらの選択の原理を示している。
【0201】
【0202】
細胞機能
SRCは、馴化培地の分析によって検出され得るタンパク質を活発に分泌する。細胞機能は、細胞がPrestoBlueを代謝し、VEGF(血管内皮増殖因子)及びKIM-1(腎臓障害分子1)を分泌する能力によって評価される。
【0203】
表3は、腎細胞及びSRC培養物からの馴化培地中に存在するVEGF及びKIM-1の量を示す。腎細胞を、ほぼコンフルエンスになるまで培養した。腎細胞培養物への一晩の曝露からの馴化培地をVEGF及びKIM-1について試験した。
【0204】
【0205】
SRC酵素活性
SRCの細胞機能のプレフォーミュレーションは、腎臓近位尿細管に見られる2つの特定の酵素、GGT(γ-グルタミルトランスペプチダーゼ)及びLAP(ロイシンアミノペプチダーゼ)の活性を測定することによっても評価され得る。
【0206】
微小胞(例えば、エクソソーム)及び選択腎細胞組成物が本明細書に記載されているが、本発明は、様々な他の活性作用物質を含有する組成物を検討している。他の適切な活性作用物質には、限定されるものではないが、細胞凝集体、無細胞バイオマテリアル、高分子療法薬及び低分子療法薬、並びにそれらの組み合わせが含まれる。例えば、或る生物活性細胞型を、治療用分子又は別の生物活性細胞型と共に又はそれらなしで、バイオマテリアルベースのマイクロキャリアと組み合わせることができ、付着していない細胞を無細胞粒子と組み合わせることができる。
【0207】
細胞凝集体
一態様では、本開示の製剤は、細胞凝集体若しくはスフェロイド及び/又はそのような凝集体若しくはスフェロイドによって分泌される微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は凝集体若しくはスフェロイド中に存在しない生物活性細胞によって分泌される微小胞(例えば、エクソソーム)を含有する。
【0208】
或る特定の実施形態では、細胞凝集体は、本明細書に記載される生物活性細胞集団を含む。或る特定の実施形態では、細胞凝集体は、例えば、腎細胞混合物、濃縮された腎細胞集団等の生物活性腎細胞、並びに腎細胞画分及び腎細胞の混合物と、間葉系幹細胞、内皮前駆細胞、脂肪の間質血管画分に由来する細胞、又は任意のその他の非腎細胞集団との組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。
【0209】
或る特定の実施形態では、本開示の生物活性腎細胞は、本明細書で更に記載される3D形式で培養され得る。或る特定の実施形態では、「オルガノイド」という用語は、自然腎の様相を再現する表現型及び/又は機能を有する細胞の集積物を指す。或る特定の実施形態では、オルガノイドは、典型的には所与の組織内にin vivoで見られる様々な系譜の細胞の混合集団を含む。或る特定の実施形態では、本開示のオルガノイドは、in vitroで任意の手段によって形成され、それにより、本開示の細胞は凝集体を形成し、それはまたスフェロイド、オルガノイド、又はそれらの組み合わせを形成し得る。そのような凝集体、スフェロイド又はオルガノイドは、或る特定の実施形態では、特定の臓器と一致した構造を取る。或る特定の実施形態では、このような凝集体、スフェロイド、又はオルガノイドは、典型的には特定の臓器の細胞によって発現される表面マーカーを発現する。或る特定の実施形態では、このような凝集体、スフェロイド、又はオルガノイドは、典型的には特定の臓器の細胞によって発現される化合物又は物質を産生する。或る特定の実施形態では、本開示の細胞は、天然基材、例えばゼラチン上で培養され得る。或る特定の実施形態では、本開示の細胞は、合成基材、例えばPLGA上で培養され得る。
【0210】
バイオマテリアル
様々なバイオマテリアルを活性作用物質と組み合わせて、本開示の治療用製剤を得ることができる。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは、任意の適切な形状(例えば、ビーズ)又は形態(例えば、液体、ゲル等)をとることができる。ポリマーマトリックスの形の適切なバイオマテリアルは、Bertramらによる米国特許出願公開第200702
76507号(引用することにより、その全体が本明細書の一部をなす)に記載されている。或る特定の実施形態では、ポリマーマトリックス又はスキャフォールドを、たくさんの望ましい構成に形作ることで、たくさんの全体的な系、形状、又は空間の制限を満たすことができる。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは、液体懸濁液の形で存在する。或る特定の実施形態では、本開示のマトリックス又はスキャフォールドは、三次元であり、臓器又は組織構造の寸法及び形状に一致するように賦形され得る。例えば、腎臓疾患、尿細管輸送障害、又は糸球体濾過障害を治療するための高分子スキャフォールドの使用において、自然腎臓組織構造及び組織化の様相又はその全体だけでなく、腎実質の様相又はその全体を再現する三次元(3-D)マトリックスが使用され得る。
【0211】
様々な異なる形状の3-Dスキャフォールドを使用することができる。当然ながら、ポリマーマトリックスは、サイズの異なる患者に合わせて、様々なサイズ及び形状に賦形され得る。ポリマーマトリックスはまた、患者の特別な要求に対応するために他の様式で賦形され得る。或る特定の実施形態では、ポリマーマトリックス又はスキャフォールドは、生体適合性材料(多孔質高分子スキャフォールド等)であり得る。スキャフォールドは、多様な合成材料又は天然に存在する材料から形成することができ、これらの材料には、限定されるものではないが、連続気泡(open-cell)ポリ乳酸(OPLA(商標))、セル
ロースエーテル、セルロース、セルロースエステル、フッ素化ポリエチレン、フェノール類、ポリ-4-メチルペンテン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリベンゾオキサゾール、ポリカーボネート、ポリシアノアリールエーテル、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリフルオロオレフィン、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリオキサジアゾール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリチオエーテル、ポリトリアゾール、ポリウレタン、ポリビニル、ポリフッ化ビニリデン、再生セルロース、シリコーン、尿素ホルムアルデヒド、コラーゲン、ゼラチン、アルギン酸塩、ラミニン、フィブロネクチン、シルク、エラスチン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、アガロース、又はそれらのコポリマー若しくは物理的ブレンドが含まれる。スキャフォールド構成物は、柔らかい多孔質のスキャフォールドから硬質の形状を保持する多孔質のスキャフォールドまでの多岐にわたり得る。或る特定の実施形態では、スキャフォールドは、ヒドロゲルとなることができる液体溶液、例えば、融点を上回っているヒドロゲルとして構成される。
【0212】
或る特定の実施形態では、スキャフォールドは、自然細胞集団が、当業者に知られる界面活性作用物質及び/又は他の化学的作用物質及び/又は他の酵素的技法及び/又は物理的技法の適用によって排除されたヒト起源又は動物起源の既存の腎臓又は他の臓器に由来する。この実施形態では、起源とする臓器の天然の三次元構造は、全ての関連する細胞外マトリックス成分と一緒にそれらの天然の生物活性のある状況で保持される。或る特定の実施形態では、スキャフォールドは、ヒト又は動物の腎臓又は他の臓器に由来する細胞外マトリックスである。或る特定の実施形態では、その構成物は三次元バイオプリンティング技法を適用することによって集成されて組織様構造となる。或る特定の実施形態では、その構成物は、ヒドロゲルとなり得る溶液の液体形である。
【0213】
或る特定の実施形態では、バイオマテリアルはヒドロゲルである。ヒドロゲルは、様々なポリマー材料から形成され得て、様々な生物医学的用途に有用である。ヒドロゲルは、
物理的には親水性ポリマーの三次元網目構造として説明され得る。ヒドロゲルの種類に応じて、ヒドロゲルは、様々なパーセンテージの水を含有するものの、概して水中に溶解しない。それらの高い含水量にもかかわらず、ヒドロゲルは、親水性残基の存在のため、大容量の液体を更に結合することができる。ヒドロゲルは、そのゼラチン状の構造を変えることなく広範囲に膨潤する。ヒドロゲルの基本的な物理的特徴は、使用されるポリマーの特性及びヒドロゲルを投与するのに使用されるデバイスに従って特別に変更され得る。
【0214】
ヒドロゲル材料は、好ましくは炎症反応を誘発しない。ヒドロゲルを形成するのに使用され得る他の材料の例には、(a)変性アルギン酸塩、(b)一価陽イオンへの曝露によりゲル化する多糖類(例えば、ジェランガム及びカラギーナン)、(c)非常に粘性のある液体であり又は揺変性であり、ストラクチャーのゆっくりとした発生によって時間とともにゲルを形成する多糖類(例えば、ヒアルロン酸)、(d)ゼラチン又はコラーゲン、及び(e)ヒドロゲルポリマー前駆物質(例えば、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロックコポリマー及びタンパク質)が含まれる。米国特許第6,224,893号は、本開示に従ってヒドロゲルを作製するのに適した様々なポリマー及びそのようなポリマーの化学的特性の詳細な説明を提供する。
【0215】
或る特定の実施形態では、本開示のバイオマテリアルを製剤化するために使用されるヒドロゲルは、ゼラチンベースである。ゼラチンは、コラーゲン由来の非毒性で生分解性の水溶性タンパク質であり、間葉組織細胞外マトリックス(ECM)の主要な構成成分である。コラーゲンは、動物の身体の様々な結合組織内の細胞外空間における主要な構造タンパク質である。コラーゲンは、結合組織の主成分として、哺乳動物において最も豊富なタンパク質であり、全身のタンパク質含有量の25%~35%を構成している。石灰化の程度に応じて、コラーゲン組織は、硬質であり得る(骨)、伸展性であり得る(腱)、又は硬質から伸展性までの勾配を有し得る(軟骨)。細長い小線維の形のコラーゲンは、主として腱、靭帯、及び皮膚等の線維組織中に見られる。コラーゲンは、角膜、軟骨、骨、血管、消化管、椎間板、及び歯の象牙質にも豊富にある。筋肉組織では、コラーゲンは、筋内膜の主成分としての役割を果たす。コラーゲンは筋肉組織の1%~2%を構成し、強力な腱の筋肉の重量の6%を占める。コラーゲンは身体全体の多くの場所に存在する。しかしながら、人体のコラーゲンの90%より多くはI型である。
【0216】
これまでに、28種類のコラーゲンが同定され、記載されている。コラーゲンは、これらが形成する構造に従って幾つかの群に分けることができる:線維性(I型、II型、III型、V型、XI型)、非線維性FACIT(中断された三重らせんを有する線維結合性コラーゲン(Fibril Associated Collagens with Interrupted Triple Helices))(
IX型、XII型、XIV型、XVI型、XIX型)、短鎖(VIII型、X型)、基底膜(IV型)、マルチプレキシン(複数の中断を有する多数の三重らせんドメイン(Multiple Triple Helix domains with Interruptions))(XV型、XVIII型)、MACIT(中断された三重らせんを有する膜結合性コラーゲン(Membrane Associated Collagens with Interrupted Triple Helices))(XIII型、XVII型)、その他(VI
型、VII型)。最も一般的な5つの型は以下の通りである:I型:皮膚、腱、血管、靭帯、臓器、骨(骨の有機部分の主成分)、II型:軟骨(軟骨の主要コラーゲン成分)、III型:細網(細網線維の主成分)(通常I型と共存する)、IV型:基底層(上皮が分泌する基底膜の層)を形成、V型:細胞表面、毛髪、及び胎盤。
【0217】
ゼラチンはアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)配列を含む情報シグナルを保持し、これは細胞接着、増殖、及び幹細胞分化を促進する。ゼラチンの特徴的な特性は、それが上限臨界溶液温度挙動(UCST)を示すことである。或る特定の実施形態では、40℃の特定の温度閾値を上回ると、ゼラチンは、フレキシブルでランダムな一重らせんを形成することによって水に溶解することができる。冷却すると、水素結合及びファ
ンデルワールス相互作用が生じる結果として、三重らせんの形成がもたらされる。これらのコラーゲン様三重らせんは接合領域として作用するため、ゾル-ゲル転移を引き起こす。ゼラチンは薬学用途及び医学用途に広く使用されている。
【0218】
或る特定の実施形態では、本明細書で注射可能な細胞組成物を製剤化するのに使用されるヒドロゲルはブタゼラチンに基づくものであり、これはブタの皮膚を起源とすることができ、例えば、Nitta Gelatin NA Inc社(米国、ノースカロライナ州)又はGelita USA Inc.社(米国、アイオワ州)から市販されている。ゼラチンは、例えば、ダルベッコリン
酸緩衝食塩水(DPBS)中に溶解して、種々の温度でゲル化及び液化し得る熱反応性ヒドロゲルを形成することができる。或る特定の実施形態では、本明細書で注射可能な細胞組成物を製剤化するのに使用されるヒドロゲルは、当業者に知られる技法によって発現されて精製された組換えのヒトゼラチン又は動物ゼラチンに基づくものである。或る特定の実施形態では、I型のαIヒトコラーゲンについてのcDNAの全て又は一部を含む発現ベクターは、酵母ピキア・パストリス(Pichia pastoris)において発現される。他の発
現ベクター系及び生物は当業者に知られている。特定の実施形態では、本開示のゼラチンベースのヒドロゲルは室温(22℃~28℃)以上で液体であり、冷蔵温度(2℃~8℃)に冷却するとゲル化する。
【0219】
当業者は、当該技術分野で知られる他の種類の合成材料又は天然に存在する材料を使用して、本明細書に記載されるスキャフォールドを形成することができることを理解するであろう。
【0220】
或る特定の実施形態では、本開示に従って使用されるバイオマテリアルは、5.1kDaから2×105kDa超までのサイズ範囲のHA分子を含むヒドロゲルの形のヒアルロン酸(HA)から構成されている。HAは、関連する生物活性細胞集団の分岐形態形成及び三次元自己組織化を促進し得る。或る特定の実施形態では、本開示に従って使用されるバイオマテリアルは、やはり5.1kDaから2×105kDa超までのサイズ範囲のHA分子を含む多孔質フォームの形のヒアルロン酸から構成されている。或る特定の実施形態では、ヒドロゲルは、腎臓又は任意のその他の組織若しくは臓器を起源とする細胞外マトリックスに由来する又はそれを含有するが、それらに限定されるものではない。更に別の実施形態では、本開示に従って使用されるバイオマテリアルは、連続気泡構造及び約50ミクロン~約300ミクロンの細孔サイズを有するポリ乳酸(PLA)ベースのフォームから構成される。
【0221】
温度感受性バイオマテリアル
本明細書に記載されるバイオマテリアルはまた、例えばin vitro又はin vivoで、或る特定の外部条件に反応するように設計又は適合され得る。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは温度感受性である(例えば、in vitroとin vivoのどちらでも)。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは酵素分解への曝露に反応するように適合される(例えば、in vitroとin vivoのどちらでも)。バイオマテリアルの外部条件への反応は、本明細書に記載されるように微調整され得る。記載される製剤の温度感受性は、製剤中のバイオマテリアルの割合を調整することによって変化させることができる。例えば、溶液中のゼラチンのパーセンテージを調整して、最終製剤中のゼラチンの温度感受性を調節することができる(例えば、液体、ゲル、ビーズ等)。代替的に、バイオマテリアルを化学的に架橋して、酵素分解に対してより高い抵抗性を与えることができる。例えば、カルボジイミド架橋剤を使用して、ゼラチンビーズを化学的に架橋することによって、内在性酵素に対する感受性の低下をもたらすことができる。
【0222】
一態様では、本明細書に記載される製剤は、対象に投与される微小胞(例えば、エクソ
ソーム)及び/又は生物活性腎細胞等の活性作用物質のために好ましい環境を作り出す特性を有するバイオマテリアルを含む。或る特定の実施形態では、該製剤は、活性作用物質をバイオマテリアルと一緒に製剤化した時点から対象に投与される時点まで好ましい環境をもたらす第1のバイオマテリアルを含有する。或る特定の実施形態では、好ましい環境とは、対象に投与する前の(本明細書に記載される)流体中の細胞に対して、実質的に固体状態で懸濁された生物活性細胞を有することの優位性に関係する。或る特定の実施形態では、第1のバイオマテリアルは、温度感受性バイオマテリアルである。温度感受性バイオマテリアルは、(i)約8℃以下で実質的に固体状態、及び(ii)周囲温度以上で実質的に液体状態を有し得る。或る特定の実施形態では、周囲温度は、ほぼ室温である。
【0223】
或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは、温度に応じて少なくとも2つの異なる相又は状態を維持することができる温度感受性バイオマテリアルである。バイオマテリアルは、第1の温度で第1の状態を維持することができ、第2の温度で第2の状態を維持することができ、及び/又は第3の温度で第3の状態を維持することができる。第1の状態、第2の状態、又は第3の状態は、実質的に固体状態、実質的に液体状態、又は実質的に半固体状態若しくは半液体状態であり得る。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは、第1の温度で第1の状態を有し、第2の温度で第2の状態を有し、ここで、第1の温度は第2の温度より低い。
【0224】
或る特定の実施形態では、温度感受性バイオマテリアルの状態は、約8℃以下の温度で実質的に固体の状態である。或る特定の実施形態では、実質的に固体の状態は、約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、又は約8℃で維持される。或る特定の実施形態では、実質的に固体の状態はゲルの形態を有する。或る特定の実施形態では、温度感受性バイオマテリアルの状態は、周囲温度以上で実質的に液体の状態である。或る特定の実施形態では、実質的に液体の状態は、約25℃、約25.5℃、約26℃、約26.5℃、約27℃、約27.5℃、約28℃、約28.5℃、約29℃、約29.5℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、又は約37℃で維持される。或る特定の実施形態では、周囲温度は、ほぼ室温である。
【0225】
或る特定の実施形態では、温度感受性バイオマテリアルの状態は、ほぼ周囲温度以下の温度で実質的に固体の状態である。或る特定の実施形態では、周囲温度は、ほぼ室温である。或る特定の実施形態では、実質的に固体の状態は、約17℃、約16℃、約15℃、約14℃、約13℃、約12℃、約11℃、約10℃、約9℃、約8℃、約7℃、約6℃、約5℃、約4℃、約3℃、約2℃、又は約1℃で維持される。或る特定の実施形態では、実質的に固体の状態はビーズの形態を有する。或る特定の実施形態では、温度感受性バイオマテリアルの状態は、約37℃以上の温度で実質的に液体の状態である。或る特定の実施形態では、実質的に固体の状態は、約37℃、約38℃、約39℃、又は約40℃で維持される。
【0226】
温度感受性バイオマテリアルは、溶液の形で、固体の形で、ビーズの形で、又は本明細書に記載される及び/又は当業者に知られる他の適切な形で提供され得る。本明細書に記載される微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は細胞集団及び調製物は、温度感受性バイオマテリアルで被覆され、その上に堆積され、その中に包埋され、それに結合され、その中に播種され、その中に懸濁され、又はその中に捕捉され得る。或る特定の実施形態では、本明細書に記載される細胞集団は、温度感受性バイオマテリアルと複合体を形成する前に、三次元細胞凝集体若しくはオルガノイド又は三次元管状構造物として集成され得る、又は温度感受性バイオマテリアルと複合体を形成する際にそのように集成され得る。或る特定の実施形態では、温度感受性バイオマテリアルは、一切細胞なしで、例えばスペーサービーズの形で提供され得る。この実施形態では、温度感受性バイオマテリアルが純粋に受動的な役割で機能することで、再生的生物活性、例えば、血管新生又は宿主細胞集
団の浸潤及び遊走のために標的臓器内に空間が作り出される。
【0227】
或る特定の実施形態では、温度感受性バイオマテリアルは、第1の状態と第2の状態との間の遷移状態を有する。或る特定の実施形態では、遷移状態は、約8℃の温度からほぼ周囲温度の間で固-液遷移状態である。或る特定の実施形態では、周囲温度は、ほぼ室温である。或る特定の実施形態では、固-液遷移状態は、約8℃、約9℃、約10℃、約11℃、約12℃、約13℃、約14℃、約15℃、約16℃、約17℃、及び約18℃の1つ以上の温度で生ずる。
【0228】
温度感受性バイオマテリアルは、センチポアズ(cP)で測定される所与の温度での或る特定の粘度を有する。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは、約1cP~約5cP、約1.1cP~約4.5cP、約1.2cP~約4cP、約1.3cP~約3.5cP、約1.4cP~約3.5cP、約1.5cP~約3cP、約1.55cP~約2.5cP、又は約1.6cP~約2cPの25℃での粘度を有する。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは、約1.0cP~約1.15cPの37℃での粘度を有する。37℃での粘度は、約1.0cP、約1.01cP、約1.02cP、約1.03cP、約1.04cP、約1.05cP、約1.06cP、約1.07cP、約1.08cP、約1.09cP、約1.10cP、約1.11cP、約1.12cP、約1.13cP、約1.14cP、又は約1.15cPであり得る。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルはゼラチン溶液である。ゼラチンは、溶液中に約0.5%、約0.55%、約0.6%、約0.65%、約0.7%、約0.75%、約0.8%、約0.85%、約0.9%、約0.95%、又は約1%(重量/容量)で存在する。一例では、バイオマテリアルは、PBS中の0.75%(重量/容量)ゼラチン溶液である。或る特定の実施形態では、0.75%(重量/容量)溶液は、25℃で約1.6cP~約2cPの粘度を有する。或る特定の実施形態では、0.75%(重量/容量)溶液は、37℃で約1.07cP~約1.08cPの粘度を有する。ゼラチン溶液は、PBS、DMEM、又は別の適切な溶媒中で提供され得る。
【0229】
一態様では、上記製剤は、製剤化の時点から対象に投与した後の時点まで微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は細胞の組み合わせにとって好ましい環境をもたらす第2のバイオマテリアルと組み合わされた微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は生物活性細胞を含有する。或る特定の実施形態では、第2のバイオマテリアルによってもたらされる好ましい環境とは、対象に投与する時点までと投与後の期間にわたって構造的完全性を保持するバイオマテリアル中の微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は細胞を投与することの優位性に関係する。或る特定の実施形態では、移植後の第2のバイオマテリアルの構造的完全性は、数分、数時間、数日、又は数週間である。或る特定の実施形態では、構造的完全性は1ヶ月未満、1週間未満、1日未満、又は1時間未満である。比較的短期間の構造的完全性は、活性作用物質及びバイオマテリアルを、組み込まれた要素とその要素が内部に配置された組織又は臓器との相互作用に対する妨害又は障害とならずに、制御された取り扱い、配置、又は分散によって組織又は臓器内の標的部位に送達することができる製剤をもたらす。
【0230】
或る特定の実施形態では、第2のバイオマテリアルは、第1のバイオマテリアルとは異なる感受性を有する温度感受性バイオマテリアルである。第2のバイオマテリアルは、(i)ほぼ周囲温度以下で実質的に固体の状態、及び(ii)約37℃以上で実質的に液体の状態を有し得る。或る特定の実施形態では、周囲温度は、ほぼ室温である。
【0231】
或る特定の実施形態では、第2のバイオマテリアルは、架橋されたビーズである。架橋されたビーズは、本明細書に記載されるように、架橋の程度に応じて微調整可能なin vivoでの滞留時間を有し得る。或る特定の実施形態では、架橋されたビーズは、微小
胞(例えば、エクソソーム)及び/又は生物活性細胞を含み、本明細書に記載される酵素分解に抵抗性である。或る特定の実施形態では、本開示の製剤は、活性作用物質、例えば微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は生物活性細胞と組み合わされた第2のバイオマテリアルを有する又は有しない、活性作用物質、例えば微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は生物活性細胞と組み合わされた第1のバイオマテリアルを含み得る。或る特定の実施形態では、製剤が第2のバイオマテリアルを含む場合に、第2のバイオマテリアルは温度感受性ビーズ及び/又は架橋されたビーズであり得る。
【0232】
一態様では、本開示は、数分、数時間、又は数日の規模の期間をかけて分解するバイオマテリアルを含有する製剤を提供する。これは、数日、数週間、又は数ヶ月をかけてゆっくりと分解する固体材料の移植に焦点を当てた数多くの研究とは対照的である。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは、以下の特質の1つ以上を有する:生体適合性、生分解性/生体吸収性、対象への移植の前及びその間の実質的に固体の状態、移植後の構造的完全性(実質的に固体の状態)の喪失、並びに細胞生存力及び増殖を支持する細胞適合性のある環境。移植された粒子間の間隔を移植の間に空けたままにするバイオマテリアルの能力は、天然組織の内部成長を増進する。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルはまた、固体製剤の移植を促進する。或る特定の実施形態では、固体ユニットの挿入は移植の間に送達された材料が組織内で分散しないようにする手助けとなるので、バイオマテリアルは本明細書に記載される製剤の局在化をもたらす。細胞ベースの製剤の場合に、固体バイオマテリアルはまた、流体中に懸濁された細胞と比較して、足場依存性細胞の安定性及び生存力を改善する。しかしながら、構造的完全性の短い持続時間は、移植直後にバイオマテリアルが、組織の内部成長又は送達された細胞/材料と宿主組織との統合に対して重大な障害をもたらさないことを意味する。
【0233】
一態様では、本開示は、実質的に固体の形で移植された後に液化/融解されるか、又は体内に移植した後に別の形で構造的完全性を失うバイオマテリアルを含有する製剤を提供する。これは、液体として注射された後に体内で固化し得る材料の使用に焦点を当てた多数の研究とは対照的である。
【0234】
生体適合性ビーズ
一態様では、上記製剤は、本明細書に記載される温度感受性バイオマテリアルと、バイオマテリアルを含有する生体適合性ビーズの集団とを含む。或る特定の実施形態では、ビーズは架橋される。架橋は、当業者に既知の任意の好適な架橋剤、例えばカルボジイミド類;アルデヒド類(例えば、フルフラール、アクロレイン、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリセリルアルデヒド)、スクシンイミド系架橋剤(ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS3)、ジスクシンイミジルグルタレート(DSG)、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)、ビス(スルホスクシンイミジル)グルタレート(BS2G)、ジスクシンイミジルタルトレート(DST));エポキシド類(エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル);糖類(グルコース及びアルドース糖);スルホン酸及びp-トルエンスルホン酸;カルボニルジイミダゾール;ゲニピン;イミン類;ケトン類;ジフェニルホスホリルアジド(DDPA);テレフタロイルクロリド;硝酸セシウム(III)六水和物;微生物性トランスグルタミナーゼ;並びに過酸化水素を用いて達成され得る。当業者は、本開示による使用に適したその他の架橋剤及び架橋方法を理解するであろう。
【0235】
或る特定の実施形態では、ビーズはカルボジイミド架橋されたビーズである。或る特定の実施形態では、カルボジイミド架橋されたビーズは、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)、DCC(N,N’-ジシクロヘキシ
ルカルボジイミド(DCC))及びN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)からなる群から選択されるカルボジイミドで架橋され得る。低濃度のEDCで処理されたビーズほど、多数の遊離第一級アミンを有すると予想されるのに対して、高濃度の架橋剤で処理された試料では、ほとんどの第一級アミンがアミド結合に携わることとなる。第一級アミンとピクリルスルホン酸との間の共有結合によって発色する、分光光度法で335nmにて検出可能である橙色の強度は、試料中に存在する第一級アミンの数と比例する。試料中に存在するタンパク質のミリグラム数に対して正規化すると、存在する遊離アミンの数と架橋に使用されるEDCの初期濃度との間に逆相関が観察され得る。この結果はビーズ架橋の差の指標であり、これは反応に使用されるカルボジイミドの量によって規定される。一般的に、架橋されたビーズは、架橋されていないビーズと比べて遊離の第一級アミン数の減少を示す。
【0236】
或る特定の実施形態では、架橋されたビーズは、架橋されていない生体適合性ビーズと比べて、酵素分解への受けやすさが低下しており、それにより、in vivoでの滞留時間を微調整することができるビーズが得られる。或る特定の実施形態では、架橋されたビーズは、コラゲナーゼ等の内在性酵素に抵抗性である。或る特定の実施形態では、架橋されたビーズの供給は、以下の1つ以上を促進する送達系の一部である:(a)付着した細胞を所望の部位に送達し、天然組織の再生及び内部成長並びに血管供給のための空間を作り出すこと、(b)細胞がその微小環境を確立し、機能し、再構築し、その細胞自身の細胞外マトリックス(ECM)を分泌するのを可能にするほど十分に長い間、その部位で存続することができること、(c)移植された細胞と周囲組織との統合の促進、(d)細胞を実質的に固体の形で移植することができること、(e)組織の内部成長、de novoでの血管新生、又は送達された細胞/材料と宿主組織との統合に対して重大な障害をもたらさない短期的な構造的完全性、(f)実質的に固体の形での局所的なin vivo送達により、移植の間に組織内での細胞の分散を防ぐこと、(g)流体中に懸濁された細胞と比較した、足場依存性細胞の安定性及び生存力の改善、並びに(h)細胞が1)(例えば、ビーズに付着された)実質的に固体の形で、及び2)(例えば、液体中に懸濁された)実質的に液体の形で送達される場合の2段階放出プロファイル、(i)生物活性細胞集団の由来元となる三次元生物学的ニッチ又は腎実質の再現及び模倣。
【0237】
或る特定の実施形態では、本開示はゼラチンを含有する架橋されたビーズを提供する。或る特定の実施形態では、架橋されていないゼラチンビーズは、これらが急速に完全性を失い、細胞が注射部位から散逸するため、生物活性細胞製剤に適していない。或る特定の実施形態では、高度に架橋されたゼラチンビーズは、過度に長く注射部位で存続する可能性があり、de novoでのECM分泌、細胞統合、血管新生、及び組織再生を妨げる恐れがある。本開示は、架橋されたビーズのin vivoでの滞留時間を微調整することを可能にする。バイオマテリアルの生分解性の適合のために、種々の架橋剤濃度のカルボジイミドが使用されるが、全ての試料について反応条件全体は一定に保たれる。例えば、カルボジイミド架橋されたビーズの酵素感受性は、架橋剤の濃度を約0Mから約1Mまで変化させることによって微調整され得る。或る特定の実施形態では、濃度は、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、約25mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、約30mM、約31mM、約32mM、約33mM、約34mM、約35mM、約36mM、約37mM、約38mM、約39mM、約40mM、約41mM、約42mM、約43mM、約44mM、約45mM、約46mM、約47mM、約48mM、約49mM、約50mM、約55mM、約60mM、約65mM、約70mM、約75mM、約80mM、約85mM、約90mM、約95mM、又は約100mMである。架橋剤の濃度はまた、約0.15M、約0.2M、約0.25M、約0.3M、約0.35M、約0.4M、約0.45M、約0.5M、約0.55
M、約0.6M、約0.65M、約0.7M、約0.75M、約0.8M、約0.85M、約0.9M、約0.95M、又は約1Mであり得る。或る特定の実施形態では、架橋剤は、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)である。或る特定の実施形態では、EDC架橋されたビーズはゼラチンビーズである。ビーズの分解の%は、架橋剤の濃度に応じて微調整され得る。或る特定の実施形態では、ゼラチンビーズをゼラチン以外(例えば、限定されるものではないが、アルギン酸塩又はHA)のビーズ又はマイクロ粒子と混合して、送達される生物活性細胞集団の効力を更に促すことができる。
【0238】
架橋されたビーズは、生物活性細胞集団及び/又は微小胞(例えば、エクソソーム)の播種、付着、又は被包に有利な或る特定の特質を有し得る。例えば、該ビーズは、多孔質表面を有し得る及び/又は実質的に中空であり得る。或る特定の実施形態では、細孔の存在は、非多孔質、すなわち平滑な表面と比較してより多数の細胞の付着を可能にする細胞付着表面の増加をもたらす。さらに、細孔構造は、de novoの組織の形成を支持する多孔質ビーズとの宿主組織の統合を支持し得る。或る特定の実施形態では、ビーズは、一般的な粒子分布パターンに対応するワイブルプロットに当てはめることができるサイズ分布を有する。或る特定の実施形態では、架橋されたビーズは、約120μm、約115μm、約110μm、約109μm、約108μm、約107μm、約106μm、約105μm、約104μm、約103μm、約102μm、約101μm、約100μm、約99μm、約98μm、約97μm、約96μm、約95μm、約94μm、約93μm、約92μm、約91μm、又は約90μm未満の平均直径を有する。或る特定の実施形態では、架橋されたビーズの特質は、キャスティング法に応じて変動する。或る特定の実施形態では、気流を使用して液体ゼラチン溶液をエアロゾル化し、それを薄層クロマトグラフィー試薬噴霧器(ACE Glassware社)により液体窒素中に噴霧する方法を使用して
、上述の特質を有するビーズが得られる。当業者は、キャスティング法のパラメーターの調節により、ビーズの種々の特質、例えば種々のサイズ分布を適合させる機会が与えられることを理解するであろう。或る特定の実施形態では、ビーズのマイクロトポグラフィー、表面及び内部の特質を更に変更して、細胞付着を促すことができる。
【0239】
或る特定の実施形態では、架橋されたビーズの細胞適合性は、最終的な生物活性細胞製剤に対応する細胞とともにビーズを培養する細胞培養技術を使用して製剤化前にin vitroで評価される。或る特定の実施形態では、生物活性腎細胞製剤の作製前にビーズを初代腎細胞とともに培養し、生/死細胞アッセイを使用して細胞適合性を確認する。細胞の生存力に加えて、細胞の代謝活性、或る特定の主要なサイトカイン及び成長因子及びエクソソームの分泌、並びに機能的生物活性腎細胞集団と関連するmiRNAを含む或る特定の主要なタンパク質マーカー及び核酸マーカーの発現を測定する特定の機能性試験は当業者によく知られており、架橋されたビーズを用いて製剤化したときの細胞能力を確認するために更に使用される。
【0240】
或る特定の製剤では、生体適合性の架橋されたビーズは、溶液の容量の約5%(重量/重量)~約15%(重量/重量)で溶液中の温度感受性バイオマテリアルと組み合わせられる。架橋ビーズは、溶液の容量の約5%(重量/重量)、約5.5%(重量/重量)、約6%(重量/重量)、約6.5%(重量/重量)、約7%(重量/重量)、約7.5%(重量/重量)、約8%(重量/重量)、約8.5%(重量/重量)、約9%(重量/重量)、約9.5%(重量/重量)、約10%(重量/重量)、約10.5%(重量/重量)、約11%(重量/重量)、約11.5%(重量/重量)、約12%(重量/重量)、約12.5%(重量/重量)、約13%(重量/重量)、約13.5%(重量/重量)、約14%(重量/重量)、約14.5%(重量/重量)、又は約15%(重量/重量)で存在し得る。
【0241】
一態様では、本開示は、数分、数時間、又は数日の規模の期間をかけて分解するバイオマテリアルを含有する製剤を提供する。これは、数日、数週間、又は数ヶ月をかけてゆっくりと分解する固体材料の移植に焦点を当てた数多くの研究とは対照的である。
【0242】
一態様では、本開示は、生物活性細胞が播種された生体適合性の架橋されたビーズと一緒に送達マトリックスを有する製剤を提供する。或る特定の実施形態では、送達マトリックスは、以下の特質の1つ以上を有する:生体適合性、生分解性/生体吸収性、対象への移植の前及びその間の実質的に固体の状態、移植後の構造的完全性(実質的に固体の状態)の喪失、並びに細胞生存力を支持する細胞適合性のある環境。或る特定の実施形態では、移植された粒子(例えば、架橋されたビーズ)間の間隔を移植の間に空けたままにする送達マトリックスの能力は、天然組織の内部成長を増進する。或る特定の実施形態では、送達マトリックスがないと、移植の間の細胞化されたビーズの圧縮により、十分な組織の内部成長には不向きな空間がもたらされ得る。或る特定の実施形態では、送達マトリックスはまた、固体製剤の移植を促進する。或る特定の実施形態では、構造的完全性の短い持続時間は、移植直後に、該マトリックスが、組織の内部成長、de novoでの血管新生、又は送達された細胞/材料と宿主組織との統合に対して重大な障害をもたらさないことを意味する。或る特定の実施形態では、固体ユニットの挿入は移植の間に送達された材料が組織内で分散しないようにする手助けとなるので、送達マトリックスは本明細書に記載される製剤の局在化をもたらす。或る特定の実施形態では、本明細書に記載される送達マトリックスの適用は、腎実質に送達されたときに排尿を通じて移植された細胞が急速に失われるのを防ぐ手助けとなる。或る特定の実施形態では、細胞ベースの製剤の場合に、固体の送達マトリックスは、流体中に懸濁された細胞と比較して、足場依存性細胞の安定性及び生存力を改善する。
【0243】
或る特定の実施形態では、送達マトリックスは、細胞が播種されていない生体適合性ビーズの集団である。或る特定の実施形態では、個々の細胞が播種されたビーズ全体にわたってその間に、播種されていないビーズが分散配置されている。或る特定の実施形態では、播種されていないビーズは、移植の前及びその直後に、細胞が播種されたビーズの間で「スペーサービーズ」としての役割を果たす。或る特定の実施形態では、スペーサービーズは、第1の温度で実質的に固体の状態を有し、第2の温度で実質的に液体の状態を有し、第1の温度が第2の温度より低い温度感受性のバイオマテリアルを含有する。例えば、スペーサービーズは、ほぼ周囲温度以下で実質的に固体の状態を有し、約37℃で実質的に液体の状態を有するバイオマテリアル、例えば、本明細書に記載されるバイオマテリアルを含有する。或る特定の実施形態では、周囲温度は、ほぼ室温である。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルはゼラチン溶液である。或る特定の実施形態では、ゼラチン溶液は、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%、約10%、約10.5%、又は約11%(重量/容量)で存在する。或る特定の実施形態では、ゼラチン溶液は、PBS、細胞培養培地(例えば、DMEM)、又は別の適切な溶媒中で提供され得る。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルはヒアルロン酸である。或る特定の実施形態では、バイオマテリアルは、ヒドロゲルとして更に再構成され得るヒト又は動物の腎臓を起源とする脱細胞化された細胞外マトリックスである。
【0244】
一態様では、本開示は、実質的に固体の形(例えば、スペーサービーズ)で移植された後に液化/融解されるか、又は体内に移植した後に別の形で構造的完全性を喪失するバイオマテリアルを含有する製剤を提供する。これは、液体として注射された後に体内で固化し得る材料の使用に焦点を当てた多数の研究とは対照的である。
【0245】
スペーサービーズの温度感受性は、製剤化前にin vitroで評価され得る。例えば、或る特定の実施形態では、スペーサービーズを標識し、未標識の温度非感受性ビーズ
と混合することができる。次いで、その混合物を37℃でインキュベートし、物理的遷移における変化を観察する。より高温での標識された温度感受性ビーズの形崩れを経時的に観察する。例えば、温度感受性ゼラチンビーズは、物理的遷移のマーカーとして働くようにアルシアンブルー色素を用いて作製され得る。青色のゼラチンビーズを架橋されたビーズ(白色)と混合し、カテーテル内に装填した後に、押し出して、1×PBS(pH7.4)中で37℃にてインキュベートする。青色のゼラチンビーズの形崩れを種々の時点で顕微鏡検査により追跡する。青色のゼラチンビーズの物理的状態の変化は30分後に視認可能となり、インキュベート時間を延長することでより一層顕著になる。材料の粘性のため、ビーズは完全には散逸しない。
【0246】
放出調節製剤
一態様では、本開示の製剤は放出調節製剤として提供される。一般的に、放出調節は、投与したときの第1の活性作用物質の初期放出に続く、少なくとも1回の追加の後続の第2の活性作用物質の放出を特徴とする。第1の活性作用物質及び第2の活性作用物質は、同じであってもよく、又はこれらは異なっていてもよい。或る特定の実施形態では、該製剤は、同じ製剤中の複数の成分によって放出調節をもたらす。或る特定の実施形態では、放出調節製剤は、活性作用物質が製剤の体積全体にわたって自由に移動することを可能にすることにより、投与されると標的部位での即時放出を可能にする第1の成分の一部として活性作用物質を含有する。第1の成分は、実質的に液相及び実質的に固相を有する温度感受性バイオマテリアルであり得て、ここで、第1の成分は、投与の時点では実質的に液相である。或る特定の実施形態では、活性作用物質は、製剤の体積全体にわたって実質的に移動が自由であるように実質的に液相で存在するため、投与されると標的部位に即時放出される。
【0247】
或る特定の実施形態では、放出調節製剤は、第2の成分の一部として、第2の成分に付着し、その上に堆積され、それで被覆され、その中に包埋され、その上に播種され、又はその中に捕捉されており、標的部位への投与前及びその後に存続する活性作用物質を有する。第2の成分は、活性作用物質を会合させることができ、それにより投与の時点で第2の成分から活性作用物質が即時放出されるのを妨げる構造要素を含有している。例えば、第2の成分は、実質的に固体の形で提供され、例えば、架橋することでin vivoでの酵素分解を防ぐ又は遅らせることができる生体適合性ビーズである。或る特定の実施形態では、実質的に固相である活性作用物質は、投与の前及びその後で製剤内でその構造的完全性を保持するため、投与されても直ちに活性作用物質を標的部位に放出しない。放出調節製剤に適した担体は本明細書に記載されているが、当業者は、本開示で使用するのに適切な他の担体を理解するであろう。
【0248】
或る特定の実施形態では、上記製剤は、細胞、微小胞(例えば、エクソソーム)、ナノ粒子、治療用分子等を含む送達される要素の最初の迅速な送達/放出に続いて、その後の要素の遅延放出をもたらす。或る特定の実施形態では、該製剤は、微小胞(例えば、エクソソーム)、miRNA、及び可溶性であり、腎細胞集団又は他の細胞集団を起源とする分泌される生物活性産物である他の生物活性核酸又はタンパク質分子の最初の迅速な送達/放出をもたらす。再生的生物活性と関連する他の分子又は治療剤は、当業者によって理解されるであろう。本開示の製剤は、送達される作用物質が、付着されていない形(例えば、溶液中の微小胞及び/又は細胞)及び付着された形(例えば、ビーズ又は別の適切な担体と一緒の微小胞及び/又は細胞)の両方で提供されるような2段階放出プロファイルのために設計され得る。最初の投与に際して、動きが妨げられていない作用物質は送達部位に直ちに供給される一方で、動きが妨げられた作用物質の放出は、担体(例えば、ビーズ)の構造的完全性が損なわれるまで遅延され、その時点で事前に付着していた作用物質が放出される。以下に論じられるように、その他の適切な放出メカニズムは、当業者によって理解されるであろう。
【0249】
或る特定の実施形態では、放出の遅延時間は、活性作用物質の性質に基づいて調整され得る。例えば、微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は生物活性細胞製剤における放出の遅延時間は、数秒、数分、数時間、又は数日の規模であり得る。或る特定の実施形態では、数週間の規模での遅延が適切であり得る。或る特定の実施形態では、小分子又は大分子等の他の活性作用物質については、製剤における放出の遅延時間は、数秒、数分、数時間、数日、数週間、又は数ヶ月の規模であり得る。製剤は、異なる時間遅延放出プロファイルを与える異なるバイオマテリアルを含有することも可能である。例えば、第1の活性作用物質を有する第1のバイオマテリアルは、第1の放出時間を示し得て、第2の活性作用物質を有する第2のバイオマテリアルは、第2の放出時間を示し得る。第1の活性作用物質及び第2の活性作用物質は、同じ又は異なっていてもよい。
【0250】
或る特定の実施形態では、遅延放出の期間は、一般的に、バイオマテリアルが構造的完全性を失う時間に相当し得る。しかしながら、当業者は、他の遅延放出機構を理解するであろう。例えば、活性作用物質は、任意の特定のバイオマテリアルの分解時間と無関係に、例えば、ポリマーマトリックスからの薬物の拡散で長時間にわたって連続的に放出され得る。さらに、微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は生物活性細胞は、バイオマテリアル及び生物活性細胞を含有する製剤から出て天然組織へと遊走し得る。或る特定の実施形態では、生物活性細胞はバイオマテリアル、例えばビーズから天然組織へと遊走する。或る特定の実施形態では、生物活性細胞はバイオマテリアルから天然組織へと遊走し、成長因子、サイトカイン、エクソソーム、miRNA並びに再生的生物活性と関連するその他の核酸及びタンパク質の分泌を誘導する。或る特定の実施形態では、エクソソーム及び他の細胞外微小胞、並びにmiRNA、他の生物活性核酸及びタンパク質はバイオマテリアルから出て遊走する。或る特定の実施形態では、生物活性細胞はバイオマテリアルから天然組織へと遊走して、宿主の幹細胞及び前駆細胞の動員を媒介し、その後にこれらが損傷部位又は病変部位に向かって遊走又はホーミングする。
【0251】
或る特定の実施形態では、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸等の生分解性で生体適合性のポリマーを使用することができる。製剤中に吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンを含めることによって、注射可能な製剤の持続的吸収がもたらされ得る。そのような製剤を作製する多くの方法は特許化されており、又は当業者に一般的に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照のこと。ポリペプチド作用物質の制御放出又は持続放出に適用可能な更なる方法は、例えば、米国特許第6,306,406号及び同第6,346,274号とともに、例えば米国特許出願公開第20020182254号及び米国特許出願公開第20020051808号にも記載されており、その全ては、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0252】
例示的な生物活性細胞製剤
或る特定の実施形態では、本明細書で提供される小胞(微小胞、例えば、エクソソーム等)は生物活性細胞製剤に含まれる。代替的に又は付加的に、小胞は生物活性細胞製剤の前に、それと同時に、又はその後に投与され得る。
【0253】
或る特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤は、治療を必要とする対象における腎臓疾患の治療のための、本明細書に記載された生物活性腎細胞を有する上記参照のバイオマテリアルから作製された移植可能なコンストラクトを含有する。或る特定の実施形態では、本明細書で提供される生物活性細胞製剤は、小胞(例えば、生物活性腎細胞によって分泌されるエクソソーム等の微小胞)を更に含む。
【0254】
或る特定の実施形態では、コンストラクトは、生体適合性材料又はバイオマテリアル、1つ以上の合成又は天然に存在する生体適合性材料から構成されるスキャフォールド又はマトリックスと、付着及び/又は捕捉によってスキャフォールドの表面上に堆積された又はその表面に包埋された本明細書に記載される1つ以上の細胞集団又は微小胞(例えば、エクソソーム)とから作製される。或る特定の実施形態では、コンストラクトは、バイオマテリアルと、バイオマテリアル成分(複数の場合もある)で被覆され、その上に堆積され、その中に堆積され、そこに付着され、その中に捕捉され、その中に包埋され、播種され、又はそれと組み合わされた本明細書に記載される1つ以上の細胞集団又はその産物(微小胞、例えばエクソソーム等)とから作製される。本明細書に記載される微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は細胞集団のいずれかをマトリックスと組み合わせて使用して、コンストラクトを形成することができる。
【0255】
或る特定の実施形態では、生物活性細胞製剤は、免疫原性を低下させるように遺伝子改変され、バイオマテリアル(例えば、ゼラチンベースのヒドロゲル)中で製剤化されたSRCから構成される注射可能な製品である。一態様では、同種異系SRCは、腎臓生検を介したドナー患者の腎皮質組織からの腎細胞の単離及び増殖、遺伝子編集技術を使用するSRCの遺伝子改変、並びに増殖された腎細胞からの密度勾配遠心分離による選択から得られる。或る特定の実施形態では、SRCは、主として再生能力についてよく知られる腎上皮細胞から構成される(Humphreys et al. (2008) Intrinsic epithelial cells repair the kidney after injury. Cell Stem Cell. 2(3):284-91)。或る特定の実施形態では、SRC集団中に他の実質(血管)細胞及び間質(集合管)細胞がまばらに存在し得る。レシピエントの腎臓へとSRCを注射すると、非臨床試験において動物の生存率、尿中濃度、及び濾過機能の大幅な改善がもたらされた。しかしながら、SRCは限られた保存寿命及び安定性を有する。ゼラチンベースのヒドロゲルバイオマテリアル中でSRCを製剤化すると、細胞の安定性の増強がもたらされ、こうして製品の保存寿命が延び、臨床的有用性のために腎臓皮質へと輸送及び送達する間の安定性が改善される。
【0256】
一態様では、生物活性細胞製剤は、臨床ケア基準の腎臓生検手順を使用してドナーから腎皮質組織を最初に得ることによって製造される。腎細胞は、腎臓組織から酵素消化によって単離され、標準的な細胞培養技術を使用して増殖される。細胞培養培地は、初代腎細胞を増殖させるように設計されており、分化因子を一切含まない。採取された腎細胞を密度勾配分離に供して、SRCを得る。SRCの免疫原性を変更するための遺伝子編集技術の使用は、密度勾配分離の前又はその後のいずれかで行われ得る。
【0257】
或る特定の実施形態では、製剤化された細胞集団及び/又は微小胞(例えば、エクソソーム)は、ほぼ周囲温度以上でバイオマテリアルの体積全体にわたって実質的に移動が自由である。細胞集団がより低い温度で実質的に固相中に懸濁されていることで、流体中の細胞と比較して、足場依存性細胞等の細胞に安定性の利点がもたらされる。さらに、微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は細胞が実質的に固体の状態で懸濁されていることで、以下の利点の1つ以上がもたらされる:i)微小胞及び/又は細胞の沈降を防ぐこと、ii)懸濁された状態で細胞をバイオマテリアルに固定させたままにすること、iii)微小胞及び/又は細胞をバイオマテリアルの体積全体にわたってより均一に分散させたままにすること、iv)微小胞及び/又は細胞凝集体の形成を防ぐこと、並びにv)製剤の貯蔵及び輸送の間の微小胞及び/又は細胞のより良好な保護を提供すること。対象への投与に至るまでそのような特徴を保持することができる製剤は、少なくとも該製剤中の細胞の健康全般がより良好であり、より均一で一貫した投与量の細胞が投与されるため有利である。
【0258】
或る特定の実施形態では、SRCの製剤化に使用されるゼラチンベースのヒドロゲルバイオマテリアルは、緩衝液中に溶解されると熱応答性ヒドロゲルを形成するブタゼラチン
である。或る特定の実施形態では、このヒドロゲルは、室温では流体であるが、冷蔵温度(2℃~8℃)に冷却されるとゲル化する。或る特定の実施形態では、SRCを、ヒドロゲルとともに製剤化し、冷却によりゲル化させて、冷蔵温度下(2℃~8℃)で診療所に輸送する。或る特定の実施形態では、臨床現場では、製品を室温に温めてから、患者の腎臓に注射する。或る特定の実施形態では、生物活性細胞製剤(例えば、生物活性腎細胞からのエクソソーム等の微小胞が補充される)は、経皮的手法又は腹腔鏡的手法による送達に適した針及び注射器を使用して腎臓皮質中に移植される。
【0259】
例示的なNeo-Kidney Augment組成物の説明及び組成
或る特定の実施形態では、生物活性細胞製剤は、Neo-Kidney Augment(NKA)であり、これはバイオマテリアル(ゼラチンベースのヒドロゲル)中で製剤化された自家選択腎細胞(SRC)から構成される注射可能な製品である。或る特定の実施形態では、NKAには、小胞(例えば、生物活性腎細胞によって分泌されるエクソソーム等の微小胞)が増強又は補充されている。
【0260】
一態様では、自家SRCは、腎臓生検を介して患者の腎皮質組織から腎細胞を単離及び増殖させて、増殖された腎細胞を密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離により選択することで得られる。或る特定の実施形態では、自家SRCは、腎臓生検を介して患者の腎皮質組織から腎細胞を単離及び増殖させて、増殖された腎細胞を連続的又は不連続的な単一段階又は多段階の密度勾配に対して選択することで得られる。SRCは、主として再生能力についてよく知られる腎尿細管上皮細胞から構成される(Humphreys et al. (2008) Intrinsic epithelial cells repair the kidney after injury. Cell Stem Cell. 2(3):284-91)。その他の実質(血管)細胞及び間質(集合管)細胞が、自家SRC集団中にまばらに存在していてもよい。
【0261】
或る特定の実施形態では、NKAには、SRC集団から産生及び単離された微小胞(例えば、エクソソーム)が補充される。
【0262】
レシピエントの腎臓へとSRCを注入すると、前臨床試験において動物の生存率、尿中濃度、及び濾過機能の大幅な改善がもたらされた。しかしながら、SRCは限られた保存寿命及び安定性を有する。ゼラチンベースのヒドロゲルバイオマテリアル中でSRCを製剤化すると、細胞の安定性の増強がもたらされ、こうして製品の保存寿命が延び、臨床的有用性のために腎臓皮質へとNKAを輸送及び送達する間のNKAの安定性が改善される。
【0263】
一態様では、NKAは、臨床ケア基準の腎臓生検手順を使用してドナー/レシピエントから腎皮質組織を最初に得ることによって製造される。或る特定の実施形態では、腎細胞は、腎臓組織から酵素消化によって単離され、標準的な細胞培養技術を使用して増殖される。或る特定の実施形態では、細胞培養培地は、初代腎細胞を増殖させるように設計されており、分化因子を一切含まない。或る特定の実施形態では、採取された腎細胞を密度境界又は密度界面又は密度勾配を越える分離に供して、SRCを得る。或る特定の実施形態では、SRCは、本開示に従って遺伝子改変される。
【0264】
本明細書において、本明細書に記載される外部条件に反応するように設計又は適合されたバイオマテリアルから作製された製剤が含まれる。結果として、生物活性細胞集団及び微小胞(例えば、エクソソーム)等の他の活性作用物質とコンストラクト中のバイオマテリアルとの会合の性質は、外部条件に応じて変化することとなる。例えば、細胞集団と温度感受性バイオマテリアルとの会合は温度に伴って変化する。或る特定の実施形態では、コンストラクトは、生物活性腎細胞集団と、約8℃以下で実質的に固体の状態及びほぼ周囲温度以上で実質的に液体の状態を有するバイオマテリアルとを含有し、ここで、細胞集
団は、約8℃以下でバイオマテリアル中に懸濁されている。しかしながら、細胞集団は、ほぼ周囲温度以上でバイオマテリアルの体積全体にわたって実質的に移動が自由である。細胞集団がより低い温度で実質的に固相中に懸濁されていることで、流体中の細胞と比較して、足場依存性細胞等の細胞に安定性の利点がもたらされる。さらに、微小胞(例えば、エクソソーム)及び細胞が実質的に固体の状態で懸濁されていることで、以下の利点の1つ以上がもたらされる:i)微小胞及び細胞の沈降を防ぐこと、ii)懸濁された状態で細胞をバイオマテリアルに固定させたままにすること、iii)微小胞及び細胞をバイオマテリアルの体積全体にわたってより均一に分散させたままにすること、iv)微小胞又は細胞凝集体の形成を防ぐこと、並びにv)製剤の貯蔵及び輸送の間の微小胞及び細胞のより良好な保護を提供すること。或る特定の実施形態では、対象への投与に至るまでそのような特徴を保持することができる製剤は、少なくとも該製剤中の細胞の健康全般がより良好であり、より均一で一貫した投与量の細胞が投与されるため有利である。
【0265】
或る特定の実施形態では、SRCをNKAへと製剤化するのに使用されるゼラチンベースのヒドロゲルバイオマテリアルは、緩衝液中に溶解されると熱応答性ヒドロゲルを形成するブタゼラチンである。このヒドロゲルは、室温では流体であるが、冷蔵温度(2℃~8℃)に冷却されるとゲル化する。SRCをヒドロゲルとともに製剤化して、NKAが得られる。NKAは冷却によりゲル化されて、冷蔵温度下(2℃~8℃)で診療所に輸送される。NKAは3日の保存寿命を有する。臨床現場では、製品を室温に温めてから、患者の腎臓に注射する。NKAは、経皮的手法又は腹腔鏡的手法によるNKAの送達に適した針及び注射器を使用して腎臓皮質中に移植される。或る特定の実施形態では、ヒドロゲルは、ゼラチン又は組換え起源の別の細胞外マトリックスタンパク質に由来する。或る特定の実施形態では、ヒドロゲルは、腎臓又は別の組織若しくは臓器を起源とする細胞外マトリックスに由来する。或る特定の実施形態では、ヒドロゲルは、組換え細胞外マトリックスタンパク質に由来する。或る特定の実施形態では、ヒドロゲルは、組換えコラーゲンに由来するゼラチン(すなわち、組換えゼラチン)を含む。
【0266】
細胞生存剤
一態様では、生物活性細胞製剤は細胞生存剤も含む。或る特定の実施形態では、本明細書で提供される小胞は細胞生存剤を含む。或る特定の実施形態では、細胞生存剤は、酸化防止剤、酸素担体、免疫調節因子、細胞動員因子、細胞接着因子、抗炎症剤、血管新生因子、マトリックスメタロプロテアーゼ、創傷治癒因子、及び生物活性細胞から分泌された産物からなる群から選択される。
【0267】
一態様では、微小胞(エクソソーム等)は、(例えば、その内腔内、その脂質二重層内、又はその表面上に)細胞生存剤を含む。或る特定の実施形態では、微小胞は、細胞生存剤の存在下で培養された細胞によって分泌された。
【0268】
或る特定の実施形態では、細胞生存剤は、酸化防止剤、酸素担体、免疫調節因子、細胞動員因子、細胞接着因子、抗炎症剤、血管新生因子、マトリックスメタロプロテアーゼ、創傷治癒因子、及び生物活性細胞から分泌された産物からなる群から選択される。
【0269】
酸化防止剤は、他の分子の酸化を阻害する能力を特徴とする。酸化防止剤には、限定されるものではないが、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox(商標))、カロテノイド類、フラボノイド類、イソフラボン類、ユビキノン、グルタチオン、リポ酸、スーパーオキシドジスムターゼ、アスコルビン酸、ビタミンE、ビタミンA、混合カロテノイド類(例えばβカロテン、αカロテン、γカロテン、ルテイン、リコペン、フィトペン、フィトフルエン、及びアスタキサンチン)、セレン、コエンザイムQ10、インドール-3-カルビノール、プロアントシアニジン類、レスベラトロール、ケルセチン、カテキン類、サリチル酸、クルクミン、ビリルビン、
シュウ酸、フィチン酸、リポ酸、バニリン酸、ポリフェノール類、フェルラ酸、テアフラビン類、及びそれらの誘導体の1つ以上が含まれる。当業者は、他の適切な酸化防止剤を本開示の或る特定の実施形態で使用することができることを理解するであろう。
【0270】
酸素担体は、酸素を運搬して放出する能力を特徴とする作用物質である。酸素担体には、限定されるものではないが、パーフルオロカーボン及びパーフルオロカーボンを含有する医薬品が含まれる。好適なパーフルオロカーボン系酸素担体には、限定されるものではないが、パーフルオロオクチルブロミド(C8F17Br)、パーフルオロジクロロオクタン(C8F16Cl2)、パーフルオロデシルブロミド、パーフルブロン、パーフルオロデカリン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロメチルシクロピペリジン、Fluosol(商標)(パーフルオロデカリン及びパーフルオロトリプロピルアミン)、Perftoran(商標)(パーフルオロデカリン及びパーフルオロメチルシクロピペリジン)、Oxygent(商標)(パーフルオロデシルブロミド及びパーフルブロン)、Ocycyte(商標)(パーフルオロ(tert-ブチルシクロヘキサン))が含まれる。当業者は、他の適切なパーフルオロカーボン系酸素担体を本開示の或る特定の実施形態で使用することができることを理解するであろう。
【0271】
免疫調節因子には、限定されるものではないが、オステオポンチン、FASリガンド因子、インターロイキン、形質転換増殖因子β、血小板由来増殖因子、クラステリン、トランスフェリン、作用時に調節され、正常T細胞で発現される分泌タンパク質(regulated upon action, normal T-cell expressed, secreted protein)(RANTES)、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤-1(Pai-1)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン6(IL-6)、α-1-ミクログロブリン、及びβ-2-ミクログロブリンが含まれる。当業者は、他の適切な免疫調節因子を本開示の或る特定の実施形態で使用することができることを理解するであろう。
【0272】
抗炎症剤又は免疫抑制剤(下記)が製剤の一部であってもよい。当業者は、他の適切な酸化防止剤を本開示の或る特定の実施形態で使用することができることを理解するであろう。
【0273】
細胞動員因子には、限定されるものではないが、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、及びCXCL-1が含まれる。当業者は、他の適切な細胞動員因子を本開示の或る特定の実施形態で使用することができることを理解するであろう。
【0274】
細胞接着因子には、限定されるものではないが、フィブロネクチン、プロコラーゲン、コラーゲン、ICAM-1、結合組織増殖因子、ラミニン、プロテオグリカン類、RGD及びYSIGR等の特定の細胞接着ペプチドが含まれる。当業者は、他の適切な細胞接着因子を本開示の或る特定の実施形態で使用することができることを理解するであろう。
【0275】
血管新生因子には、限定されるものではないが、血管内皮増殖因子F(VEGF)及びアンジオポエチン-2(ANG-2)が含まれる。当業者は、他の適切な血管新生因子を本開示の或る特定の実施形態で使用することができることを理解するであろう。
【0276】
マトリックスメタロプロテアーゼには、限定されるものではないが、マトリックスメタロプロテアーゼ1(MMP1)、マトリックスメタロプロテアーゼ2(MMP2)、マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP-9)、並びに組織阻害剤及びメタロプロテアーゼ-1(TIMP-1)が含まれる。
【0277】
創傷治癒因子には、限定されるものではないが、ケラチノサイト増殖因子1(KGF-1)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、カルビンジン、クラステリン、シス
タチンC、トレフォイル因子3が含まれる。当業者は、他の適切な創傷治癒因子を本開示の或る特定の実施形態で使用することができることを理解するであろう。
【0278】
本明細書に記載される生物活性細胞から分泌された産物を、細胞生存剤として生物活性細胞製剤に添加することもできる。
【0279】
限定されるものではないが、ヒト血漿、ヒト血小板溶解物、ウシ胎児血漿又はウシ下垂体抽出物を含むヒト供給源又は動物供給源からの体液、組織、又は臓器を起源とする組成物を、細胞生存剤として生物活性細胞製剤に添加することもできる。
【0280】
当業者は、細胞集団をバイオマテリアルに堆積させて又は他に細胞集団をバイオマテリアルと組み合わせてコンストラクトを形成する幾つかの適切な方法が存在することを理解するであろう。
【0281】
或る特定の実施形態では、細胞生存剤を含む培地中で培養されたBRC(SRC等)は、細胞生存剤を含む小胞を産生する。
【0282】
使用方法
一態様では、本明細書において、対象における腎疾患を治療する方法が提供される。或る特定の実施形態では、該方法は、単離された分泌された腎細胞小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)を対象に有効量、投与することを含む。或る特定の実施形態では、小胞は、小胞を作り出す細胞によって産生されない化合物を含む。或る特定の実施形態では、小胞は、本明細書に開示される組成物又は製剤内に存在する。
【0283】
一態様では、本明細書において、対象における腎疾患を治療する方法が提供される。或る特定の実施形態では、該方法は、小胞調製物からの小胞を対象に有効量、投与することを含み、ここで、小胞調製物からの小胞は本明細書に開示される方法に従って再生的であると特定されている。
【0284】
一態様では、本明細書において、対象における腎疾患を治療する方法が提供される。或る特定の実施形態では、該方法は、生物活性腎細胞集団によって分泌されたものではない腎細胞小胞が補充された生物活性腎細胞集団を含む組成物を対象に有効量、投与することを含む。
【0285】
或る特定の実施形態では、上記組成物は、静脈内注射によって投与される。或る特定の実施形態では、上記組成物は、経カテーテル送達によって投与される。或る特定の実施形態では、小胞は、末梢血管へと静脈内注射される。或る特定の実施形態では、経カテーテル送達は、対象の左腎動脈又は右腎動脈への送達である。
【0286】
或る特定の実施形態では、対象は慢性腎臓疾患を患っている。或る特定の実施形態では、慢性腎臓疾患は、ステージI、ステージII、ステージIII、ステージIV、又はステージVの腎臓疾患である。
【0287】
或る特定の実施形態では、腎疾患の治療は、対象における腎線維症を軽減又は予防することを含む。
【0288】
或る特定の実施形態では、対象は、少なくとも1週間又は2週間にわたって1週間につき少なくとも1回、2回、又は3回透析を受けている。
【0289】
或る特定の実施形態では、対象はII型糖尿病を患っている。
【0290】
或る特定の実施形態では、対象は、先天性腎尿路異常(CAKUT)を有している。
【0291】
或る特定の実施形態では、対象は、90mL/分/1.73m2未満の糸球体濾過率(GFR)、ミクロアルブミン尿、又はマクロアルブミン尿を有している。
【0292】
或る特定の実施形態では、対象に細胞は投与されない。或る特定の実施形態では、対象に細胞(例えば、SRC等のBRC)が投与される。或る特定の実施形態では、小胞は、細胞とは別個に投与される。或る特定の実施形態では、小胞は、細胞の前、細胞と同時に、又は細胞の後に投与される。或る特定の実施形態では、単離された小胞は、細胞(例えば、小胞が単離された細胞とは別の細胞)を更に含む組成物中で投与される。或る特定の実施形態では、腎細胞小胞は、組成物中の生物活性腎細胞集団と同じ起源を有する及び/又は同じ細胞型を含む生物活性腎細胞集団によって分泌されたものである。
【0293】
或る特定の実施形態では、小胞は、BRC集団によって産生されたものである。或る特定の実施形態では、BRC集団はSRC集団である。
【0294】
或る特定の実施形態では、初代腎細胞によって分泌された小胞が対象に投与される。或る特定の実施形態では、初代腎細胞によって分泌された小胞及びSRCによって分泌された小胞が対象に投与される。
【0295】
或る特定の実施形態では、内皮細胞又は間葉系幹細胞によって分泌された小胞も対象に投与される。
【0296】
或る特定の実施形態では、非腎細胞小胞も対象に投与される。或る特定の実施形態では、非腎細胞小胞は、非腎内皮前駆細胞、非腎間葉系幹細胞、又は非腎脂肪由来前駆細胞によって分泌されたものである。
【0297】
或る特定の実施形態では、小胞の有効量は、生物活性腎細胞の投与がない場合に有効な量(例えば、生物活性腎細胞の投与なしでの治療に十分な量)である。或る特定の実施形態では、生物活性腎細胞の有効量は、小胞の投与がない場合に有効な量(例えば、小胞の投与なしでの治療に十分な量)である。或る特定の実施形態では、小胞の有効量は、生物活性腎細胞を同時投与しない場合の有効な量より少ない量である。或る特定の実施形態では、生物活性腎細胞の有効量は、小胞を同時投与しない場合の有効な量より少ない量である。
【0298】
本発明の微小胞(例えば、エクソソーム)、細胞、及び製剤は、本明細書に記載される使用方法での使用に適している。或る特定の実施形態では、本発明の製剤は、腎臓疾患の治療のために投与され得る。或る特定の実施形態では、微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は生物活性細胞は、本明細書に記載される製剤の部分として自然臓器に投与され得る。或る特定の実施形態では、微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は生物活性細胞は、投与対象である自然臓器又は標的自然臓器ではない供給源を起源とし得る。
【0299】
或る特定の実施形態では、本開示は、治療を必要とする対象における腎臓疾患を、本明細書に記載される微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は生物活性腎細胞集団を含む製剤を用いて治療する方法を提供する。或る特定の実施形態では、製剤は、腎臓機能の改善を必要とする対象に投与するのに適している。
【0300】
一態様では、本開示の方法による対象における腎臓疾患の有効な治療は、腎臓機能の様々な指標を通して観察され得る。或る特定の実施形態では、腎臓機能の指標には、限定さ
れるものではないが、血清アルブミン、アルブミン対グロブリン比(A/G比)、血清リン、血清ナトリウム、腎臓サイズ(超音波により測定可能)、血清カルシウム、リン:カルシウム比、血清カリウム、タンパク尿、尿クレアチニン、血清クレアチニン、血中尿素窒素(BUN)、コレステロール値、トリグリセリド値、及び糸球体濾過率(GFR)が含まれる。さらに、健康全般及びウェルビーイングの幾つかの指標には、限定されるものではないが、体重の増減、生存率、血圧(平均全身血圧、拡張期血圧、又は収縮期血圧)、及び身体持久能力が含まれる。
【0301】
一態様では、製剤による有効な治療は、腎臓機能の1つ以上の指標の安定化によって証明される。或る特定の実施形態では、腎臓機能の安定化は、本開示の方法によって治療されていない対象における指標と比較して、本開示の方法によって治療された対象における同じ指標の変化を観察することによって実証される。或る特定の実施形態では、腎臓機能の安定化は、治療前の対象における指標と比較して、本開示の方法によって治療された同じ対象における同じ指標の変化を観察することによって実証され得る。1つ目の指標の変化は、値の増加又は減少であり得る。或る特定の実施形態では、本開示により提供される治療には、対象における血清クレアチニン及び/又は血中尿素窒素(BUN)値の安定化が含まれ得て、ここで、この対象で観察されるBUN値は、本開示の方法によって治療されていない同様の病態を有する対象と比較してより低い。或る特定の実施形態では、該治療には、対象における血清クレアチニン値の安定化が含まれ得て、ここで、この対象で観察される血清クレアチニン値は、本開示の方法によって治療されていない同様の病態を有する対象と比較してより低い。
【0302】
当業者は、本明細書に記載される又は当該技術分野で知られる1つ以上の更なる指標を測定して、対象における腎臓疾患の有効な治療を決定することができることを理解するであろう。
【0303】
或る特定の実施形態では、製剤による有効な治療は、腎臓構造及び/又は腎臓機能の1つ以上の指標の改善によって証明される。或る特定の実施形態では、微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は生物活性腎細胞は、血清クレアチニン値及び/又は血中尿素窒素(BUN)値の改善をもたらす。或る特定の実施形態では、微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は生物活性腎細胞は、血清中のタンパク質保持の改善をもたらす。或る特定の実施形態では、微小胞(例えば、エクソソーム)及び濃縮された生物活性腎細胞は、濃縮されていない細胞集団又は微小胞(例えば、エクソソーム)が加えられていない細胞と比較して、血清アルブミン値の改善をもたらす。或る特定の実施形態では、微小胞(例えば、エクソソーム)は、生物活性腎細胞と比較して、血清アルブミン値の改善をもたらす。或る特定の実施形態では、微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は濃縮された生物活性腎細胞集団は、濃縮されていない細胞集団と比較して、A:G比の改善をもたらす。或る特定の実施形態では、生物活性腎細胞集団は、血清コレステロール値及び/又はトリグリセリド値の改善をもたらす。或る特定の実施形態では、微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は生物活性腎細胞集団は、ビタミンD値の改善をもたらす。或る特定の実施形態では、微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は濃縮された生物活性腎細胞集団は、濃縮されていない細胞集団と比較して、リン:カルシウム比の改善をもたらす。或る特定の実施形態では、微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は生物活性腎細胞集団は、濃縮されていない細胞集団と比較して、ヘモグロビン値の改善をもたらす。或る特定の実施形態では、微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は生物活性腎細胞集団は、濃縮されていない細胞集団と比較して、血清クレアチニン値の改善をもたらす。或る特定の実施形態では、微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は濃縮された生物活性腎細胞集団は、濃縮されていない細胞集団と比較して、ヘマトクリット値の改善をもたらす。或る特定の実施形態では、腎臓機能の上記指標の1つ以上の改善は、微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は選択腎細胞製剤による治療の結果である。一実施形態では、腎臓機能の上
記指標の1つ以上の改善は、微小胞(例えば、エクソソーム)及び/又は選択腎細胞製剤による治療の結果である。
【0304】
一態様では、本開示は、再生を必要とする対象における自然腎を再生する方法に使用される製剤を提供する。或る特定の実施形態では、該方法は、本明細書に記載される生物活性細胞集団、細胞産物、又はコンストラクトを対象に投与又は移植する工程を含む。再生された自然腎は、限定されるものではないが、自然腎における機能又は能力の発達、自然腎における機能又は能力の改善、及び自然腎における或る特定のマーカーの発現を含む多くの指標によって特徴付けられ得る。或る特定の実施形態では、機能又は能力の発達又は改善は、上記の腎臓機能の様々な指標に基づいて観察され得る。或る特定の実施形態では、再生された腎臓は、1つ以上の幹細胞マーカーの差次的発現によって特徴付けられる。幹細胞マーカーは、以下の1つ以上であり得る:SRY(性決定領域Y)-ボックス2(Sox2)、未分化胚性細胞転写因子(UTF1)、マウス由来Nodalホモログ(NODAL)、プロミニン1(PROM1)又はCD133(CD133)、CD24、及びそれらの任意の組み合わせ(Ilaganらによる国際出願PCT/US2011/036347号(引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)を参照)(Genheimer et
al., 2012. Molecular characterization of the regenerative response induced by intrarenal transplantation of selected renal cells in a rodent model of chronic kidney disease. Cells Tissue Organs 196: 374-384(引用することによりその全体が本
明細書の一部をなす)も参照)。或る特定の実施形態では、幹細胞マーカー(複数の場合もある)の発現は、コントロールと比較して上方制御されている。
【0305】
一態様では、本明細書において、対象における腎臓疾患を治療する方法であって、本明細書に開示される製剤、組成物、細胞集団、又は微小胞(例えば、エクソソーム)を対象へと注射することを含む、方法が提供される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、18ゲージ~30ゲージの針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、20ゲージより小さい針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、21ゲージより小さい針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、22ゲージより小さい針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、23ゲージより小さい針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、24ゲージより小さい針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、25ゲージより小さい針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、26ゲージより小さい針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、27ゲージより小さい針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、28ゲージより小さい針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、29ゲージより小さい針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、約20ゲージの針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、約21ゲージの針を通して注射される。
【0306】
或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、約22ゲージの針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製
剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、約23ゲージの針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、約24ゲージの針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、約25ゲージの針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、約26ゲージの針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、約27ゲージの針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、約28ゲージの針を通して注射される。或る特定の実施形態では、製剤、組成物、細胞集団、又は細胞産物(微小胞、例えばエクソソーム等)は、約29ゲージの針を通して注射される。
【0307】
或る特定の実施形態では、針の内径は0.84mm未満である。或る特定の実施形態では、針の内径は0.61mm未満である。或る特定の実施形態では、針の内径は0.51mm未満である。或る特定の実施形態では、針の内径は0.41mm未満である。或る特定の実施形態では、針の内径は0.33mm未満である。或る特定の実施形態では、針の内径は0.25mm未満である。或る特定の実施形態では、針の内径は0.20mm未満である。或る特定の実施形態では、針の内径は0.15mm未満である。或る特定の実施形態では、針の外径は1.27mm未満である。或る特定の実施形態では、針の外径は0.91mm未満である。或る特定の実施形態では、針の外径は0.81mm未満である。或る特定の実施形態では、針の外径は0.71mm未満である。或る特定の実施形態では、針の外径は0.64mm未満である。或る特定の実施形態では、針の外径は0.51mm未満である。或る特定の実施形態では、針の外径は0.41mm未満である。或る特定の実施形態では、針の外径は0.30mm未満である。或る特定の実施形態では、針は以下の表中のサイズの1つを有する:
【0308】
【0309】
投与方法及び投与経路
或る特定の実施形態では、小胞(例えば、腎エクソソーム等の微小胞)は、細胞(例えば、SRC等のBRC)の不存在下で投与される。或る特定の実施形態では、小胞は、細
胞と一緒に投与される。或る特定の実施形態では、小胞は、細胞と同じ組成物中で投与されるだけでなく、細胞とは別個にも投与される。或る特定の実施形態では、小胞及び細胞は、異なる投与経路によって投与される。或る特定の実施形態では、小胞及び細胞は、或る投与経路によって投与され、また小胞は別の投与経路によって別個に投与される。或る特定の実施形態では、小胞は、細胞よりも頻繁に投与される。
【0310】
或る特定の実施形態では、小胞は、静脈内投与される。或る特定の実施形態では、小胞は、末梢血管へと静脈内投与される。或る特定の実施形態では、小胞は、経カテーテル送達によって投与される。或る特定の実施形態では、経カテーテル送達は、対象の左腎動脈又は右腎動脈への送達である。
【0311】
本発明の製剤は、単独で又は他の生物活性コンポーネントと組み合わせて投与され得る。或る特定の実施形態では、該製剤は、組み込まれた組織工学要素を実質臓器の内部に注射又は移植して、組織を再生するのに適している。或る特定の実施形態では、該製剤は、組織工学要素を中空臓器の壁部に注射又は移植して、組織を再生させるために使用される。或る特定の実施形態では、このような製剤は、全身送達又は経カテーテル送達に適した追加の製剤と組み合わせて投与される。
【0312】
一態様では、本発明は、供給を必要とする対象に本明細書に記載される生物活性細胞製剤を供給する方法を提供する。或る特定の実施形態では、生物活性細胞製剤には小胞が補充されている。或る特定の実施形態では、生物活性細胞製剤には小胞は補充されておらず、対象には小胞を含む別個の製剤が投与される。或る特定の実施形態では、生物活性細胞及び/又は小胞の供給源は、同種異系又は同系、及びそれらの任意の組み合わせであり得る。或る特定の実施形態では、該方法は、免疫抑制剤の投与を含み得る(例えば、米国特許第7,563,822号を参照)。
【0313】
或る特定の実施形態では、主題発明の治療方法は、本明細書に記載される生物活性細胞製剤の送達を含む。或る特定の実施形態では、利益を意図する部位に細胞及び/又は小胞が直接投与される。必要とする対象はまた、自然腎を、1つ以上の濃縮された腎細胞集団から分泌された産物、及び/又は該産物を含有する混合物若しくはコンストラクトと一緒に、本明細書に記載される生物活性細胞製剤とin vivoで接触させることによっても治療され得る。in vivoでの接触工程は、自然腎に再生効果をもたらす。或る特定の実施形態では、単離された小胞(例えば、細胞の不存在下での小胞)は、生物活性細胞製剤の前に、それと同時に、又はその後に(例えば、同じ又は異なる投与経路を介して)投与される。
【0314】
選択腎細胞の組成物を対象に投与する様々な手段は、本明細書を踏まえて、当業者には明らかであろう。そのような方法には、対象における標的部位への細胞の注射が含まれる。
【0315】
送達媒体
或る特定の実施形態では、細胞及び/又は分泌産物は、対象へと注射又は移植することによる導入を促進する送達デバイス又は送達媒体中に挿入され得る。或る特定の実施形態では、送達媒体は、天然材料を含み得る。或る特定の実施形態では、送達媒体は、合成材料を含み得る。或る特定の実施形態では、送達媒体は、臓器構造を模倣する又は臓器構造に適切に適合する構造物をもたらす。或る特定の実施形態では、送達媒体は、流体状の性質である。そのような送達デバイスには、レシピエント対象の体内へと細胞及び流体を注射するチューブ、例えばカテーテルが含まれ得る。或る特定の実施形態では、チューブは更に、本発明の細胞を対象へと所望の位置に導入することができる針、例えば注射器を有する。或る特定の実施形態では、哺乳動物の腎臓由来の細胞集団は、カテーテルを介して
血管内に投与するために製剤化される(ここで、「カテーテル」という用語は、血管に物質を送達する様々なチューブ様のシステムのいずれかを含むことが意図される)。或る特定の実施形態では、細胞は、限定されるものではないが、織物、編物、組物、メッシュ、及び不織布等のテキスタイル、有孔フィルム、スポンジ及びフォーム、並びに中実ビーズ又は多孔質ビーズ、マイクロ粒子、ナノ粒子等のビーズ(例えば、Cultispher-Sゼラチンビーズ、Sigma社)を含むバイオマテリアル又はスキャフォールド中又は上
に挿入され得る。細胞は、送達のために様々な異なる形で調製され得る。或る特定の実施形態では、細胞は、溶液又はゲル中に懸濁され得る。或る特定の実施形態では、細胞は、本発明の細胞が生存可能な状態を維持する薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と混合され得る。
【0316】
薬学的に許容可能な担体及び希釈剤には、生理食塩水、水性緩衝溶液、溶媒、及び/又は分散媒が含まれる。このような担体及び希釈剤の使用は、当該技術分野でよく知られている。溶液は、好ましくは無菌であり、かつ流体であり、しばしば等張性である。好ましくは、溶液は、製造及び貯蔵の条件下で安定であり、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサ-ル等の使用によって細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対して保存される。当業者は、本発明の細胞集団及びその混合物の送達において使用される送達媒体は、上述の特質の組み合わせを含み得ることを理解するであろう。
【0317】
或る特定の実施形態では、対象には、(i)小胞を含む製剤、(ii)生物活性腎細胞を含む製剤、及び/又は(iii)生物活性腎細胞及び小胞の両方を含む製剤が投与される。
【0318】
或る特定の実施形態では、対象には、生物活性腎細胞(選択腎細胞等)が1回~3回投与される。或る特定の実施形態では、対象には、生物活性腎細胞(選択腎細胞等)が1回投与される。或る特定の実施形態では、対象には、生物活性腎細胞(選択腎細胞等)が2回投与される。或る特定の実施形態では、対象には、生物活性腎細胞(選択腎細胞等)が3回投与される。
【0319】
或る特定の実施形態では、対象には、腎小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)が1回~10回投与される。或る特定の実施形態では、対象には、腎小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)が1回投与される。或る特定の実施形態では、対象には、腎小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)が2回投与される。或る特定の実施形態では、対象には、腎小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)が3回投与される。或る特定の実施形態では、対象には、腎小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)が4回投与される。或る特定の実施形態では、対象には、腎小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)が5回投与される。或る特定の実施形態では、対象には、腎小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)が6回投与される。或る特定の実施形態では、対象には、腎小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)が7回投与される。或る特定の実施形態では、対象には、腎小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)が8回投与される。或る特定の実施形態では、対象には、腎小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)が9回投与される。或る特定の実施形態では、対象には、腎小胞(例えば、エクソソーム等の微小胞)が10回投与される。
【0320】
投与方式
製剤の投与方式には、限定されるものではないが、全身注射、腎内(例えば、実質)注射、静脈内注射又は動脈内注射、経カテーテル送達、及び意図された活性部位での組織への直接的な注射が含まれる。或る特定の実施形態では、本発明に従って使用される投与方式には、直接開腹術による、直接腹腔鏡検査による、経腹的、又は経皮的な単回注射又は頻回注射が含まれる。或る特定の実施形態では、本発明に従って使用される投与方式には
、例えば、逆行注入及び腎盂尿管注入が含まれる。外科的な投与手段には、限定されるものではないが、部分腎切除術及びコンストラクト移植、部分腎切除術、部分腎盂切除術、網±腹膜を用いた血管新生、多病巣の生検針追跡、円錐形又はピラミッド形から円筒形への腎極状の置換等の1段階手法だけでなく、例えば、再移植用のオルガノイド-体内バイオリアクターを含む2段階手法も含まれる。或る特定の実施形態では、細胞及び小胞の混合物を含有する製剤は、同時に同じ経路を介して送達される。或る特定の実施形態では、細胞組成物及び小胞組成物は、本明細書に記載される方法の1つ以上によって、同時に又は一時的に制御された様式のいずれかで、特定の位置に又は特定の技法を介して別々に送達される。或る特定の実施形態では、選択腎細胞は、腎臓の腎皮質へと経皮的に注射される。或る特定の実施形態では、誘導用カニューレは経皮的に挿入され、組成物を腎臓に注射する前に腎臓被膜を穿刺するために使用される。或る特定の実施形態では、小胞は、静脈内注射又は経カテーテル送達によって投与される。
【0321】
腹腔鏡的技術又は経皮的技術を使用して、(例えば、小胞と一緒に又は小胞とは別個に)製剤化されたBRC集団又はSRC集団の注射のために腎臓にアクセスすることができる。腹腔鏡手術の技術を使用すると、腎臓を直接視覚化することができるため、注射の間に何らかの出血又はその他の有害事象を突き止めてすぐに対処することができる。腎臓への経皮的アプローチの使用は、主に腎内腫瘤を切除するために10年以上にわたって使用されている。これらの手法は、腎臓内の規定の腫瘤中に電極又は極低温針を挿入し、病変の切除の間に(典型的に)10分間~20分間接触したままにする。治療用製剤の注射の場合に、経皮的装置はそれほど大きくも複雑でもなく、このアプローチは手術を伴わない(腹部の穿刺創傷及びガスによる膨張が避けられる)という安全上の利点を提供し、拘束時間も最低限に抑えられる。さらに、重大な出血の可能性を更に低下させるために、アクセス路には、止血用の生分解性材料が留置されてもよい。
【0322】
注射による送達の或る特定の実施形態では、治療用の生物活性細胞製剤(小胞が補充されてもよく又は補充されていなくてもよい)は、腎皮質中に注射される。或る特定の実施形態では、治療用製剤を腎皮質内にできる限り広く分布させることが重要であり、それは、例えば、腎皮質内への治療用製剤の配置を可能にする角度で腎皮質に穿刺し、できる限り広く分布させることにより実現可能である。これには、個々の患者特質に応じて、超音波ガイダンスを使用する縦方向若しくは横方向のアプローチで、又はアキシャルコンピュータ断層映像(CT)画像化法により、腎臓を画像化する必要がある。注射は、注射針/カニューレが徐々に引き抜かれる際に複数回の配置を伴うことが理想的である。治療用製剤の全容量は、単一又は複数の穿刺点で配置され得る。或る特定の実施形態では、最大2つの穿刺点を使用して、治療用製剤の全容量が腎臓内に配置され得る。或る特定の実施形態では、1つ以上の穿刺点、例えば1つ又は2つの穿刺点を使用して単一の腎臓に注射を施すことができる。或る特定の実施形態では、それぞれの腎臓に1つ以上の穿刺点、例えば1つ又は2つの穿刺点を使用して、両方の腎臓に注射される。
【0323】
上記の説明は、当業者が本発明を実施可能にするのに十分であるとみなされる。本発明は好ましい実施形態及び任意の特徴によって具体的に開示されてはいるが、本明細書に開示される概念の変更及び変化は当業者に委ねることができ、そのような変更及び変化は添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内に含まれるとみなされると理解されるべきである。以下の実施例は、例示の目的で提供されるにすぎず、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。実際、上記の説明から本明細書で示され記載されたこと以外に本発明の様々な変更が当業者には明らかになるであろうが、これらは添付の特許請求の範囲内に含まれる。
【0324】
本明細書で引用された全ての特許、特許出願、及び参考文献は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。
【実施例0325】
実施例1:SRCを生産する方法及び組成物の非限定的な例
実施例1.1-溶液の調製
この実施例のセクションは、この実施例で不均一な腎細胞集団の単離及び特性評価並びに再生治療製品の製造に使用される様々な培地配合物及び溶液の組成を示す。
【0326】
【0327】
全ての細胞洗浄にダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)を使用した。
【0328】
実施例1.2-不均一な未分画の腎細胞集団の単離
この実施例のセクションは、ヒトからの未分画(UNFX)の不均一な腎細胞集団の単離を示す。最初に組織の解離を行って、ヒト腎臓組織から不均一な細胞懸濁物を作製した。
【0329】
腎臓生検を介した腎組織は、不均一な腎細胞集団のための原料をもたらした。皮質、皮髄境界部又は髄質組織の1つ以上を含む腎組織を使用することができる。皮髄境界部組織を使用することが好ましい。瘢痕組織を避けて、CKD腎臓からの複数の生検コア(最低2個)が必要であった。最終NKAの計画された移植のおよそ4週間前に、腎組織を臨床現場で臨床研究者によって患者から得た。その組織を、実施例1.1の組織輸送培地中で輸送した。
【0330】
次いで、その組織を実施例1.1の組織洗浄溶液で洗浄して、侵入するバイオバーデンを減らした後に、組織を処理して細胞を取り出した。
【0331】
腎組織を切り刻み、重さを量り、実施例1.1の消化溶液中で解離させた。得られた細胞懸濁物をダルベッコ改変イーグル培地(D-MEM)+10%ウシ胎仔血清(FBS)
(Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド)中で中和し、洗浄し、無血清のサプリメント不含のケラチノサイト培地(KSFM)(Invitrogen社)中に再懸濁した。次いで、細胞懸濁物を、15%(重量/容量)イオジキサノール(OptiPrep(商標)、Sigma社)密度境界を越えて遠心分離して、赤血球及びデブリを取り除いた後に、組織
培養処理されたポリスチレンフラスコ又はディッシュ上で実施例1.1の腎細胞成長培地中25000細胞/cm2の密度で培養を開始した。例えば、T500 Nuncフラスコの表面上に、150mlの50:50培地中で25×106細胞/フラスコで細胞を播種することができる。
【0332】
実施例1.3-単離された腎細胞集団の細胞増殖
腎細胞の増殖は、受領した組織の量、及び納入した組織からの腎細胞の単離の成功に左右される。単離された細胞は必要に応じて凍結保存することができる(上記参照)。腎細胞の成長動態は、個々の患者から単離された細胞に固有のばらつきのため、試料ごとに変動し得る。
【0333】
表7の納入した組織のばらつきに起因する細胞回収率の範囲に対応する規定の細胞増殖法を開発した。腎細胞の増殖は、規定の細胞培養手法を用いて、閉じた培養容器(例えば、Tフラスコ、Cell Factories、HyperStacks(商標))において、表6の腎細胞成長培地中での連続継代を必要とする。
【0334】
ヒト臨床試験のためにBPE不含培地を開発して、BPEの使用に伴う固有のリスクを排除した。細胞成長、表現型(CK18)、及び細胞機能(GGT及びLAPの酵素活性)をBPE不含培地中で評価し、動物実験で使用されたBPE含有培地と比較した。腎細胞成長、表現型及び機能は2つの培地において同等であった(データは示していない)。
【0335】
【0336】
最初のTフラスコ内で細胞成長が観察され(継代0)、目に見えるコンタミネーションの徴候がなければ、培養培地を取り替えて、その後2日~4日ごとに交換した(
図2B)。顕微鏡下で培養物を目視観察することによって、細胞を評価して腎細胞の形態を検証した。培養物は、細胞の密集に起因して、密着した舗装用材又は丸石の外観を特徴的に示した。これらの形態学的特質は増殖の間に変化し、全ての継代では存在しない可能性がある。細胞培養コンフルエンスは、細胞増殖全体にわたって使用される培養容器において様々なコンフルエンスレベルで推定された。
【0337】
培養容器が少なくとも50%コンフルエントとなったら、腎細胞をトリプシン処理によって継代させた(
図2B)。剥離された細胞を、腎細胞成長培地を収容する容器内に収集し、計数し、細胞生存率を計算した。各細胞継代では、細胞数をNKAの製剤化に必要とされる細胞数まで増殖させるのに十分な数の培養容器内で500細胞/cm
2~4000細胞/cm
2で細胞を播種した(
図2B)。培養容器を37℃のインキュベーター内で5%CO
2の環境に置いた。上記のように、細胞形態及びコンフルエンスをモニターし、組織培養培地を2日~4日ごとに取り替えた。表8は、ヒトドナーからの6つの腎臓生検の細胞単離及び増殖の間に観察されたヒト腎細胞の生存率を列記している。
【0338】
【0339】
異なる患者からの組織の固有のばらつきにより、培養における細胞収率の差がもたらされた。したがって、細胞継代のタイミング、又は目標細胞数を達成するために各継代で必要とされる培養容器の数及び種類を厳密に規定することは現実的でない。典型的には、腎細胞は2回又は3回の継代を経るが、培養期間及び細胞収率は、細胞成長速度に応じて変動し得る。
【0340】
細胞を、採取又は継代のためにEDTAを含む0.25%トリプシン(Invitrogen社)で剥離した。生存率をトリパンブルー色素排除によって評価し、血球計を使用して手作業で又は自動式Cellometer(商標)計数システム(Nexcelom Bioscience社、マ
サチューセッツ州ローレンス)を使用して計数を行った。
【0341】
実施例1.4 培養された細胞の凍結保存
増殖された腎細胞は通常のように凍結保存されて、個別の患者からの細胞成長の固有のばらつきに適合され、製品は予め決められた臨床的スケジュールで配送された。凍結保存された細胞はまた、別のNKAが必要とされる場合に(例えば、患者の病気による遅延、予期せぬ経過事象等)予備の細胞供給源を提供する。細胞を凍結保存し、融解時に生存能力のある機能的な細胞を回復するために使用される条件を確立した。
【0342】
凍結保存のために、細胞を凍結保存溶液(実施例1.1を参照)中で懸濁して、約50×106細胞/mLの最終濃度にし、バイアル中に分注した。約50×106細胞/mLを収容する1ml容バイアルを、コントロールレートフリーザーの冷凍室に入れ、予めプログラムされた速度で凍結させた。凍結後に、細胞を工程間貯蔵のために液体窒素フリーザーに移した。
【0343】
実施例1.5 SRC細胞集団の作製
選択腎細胞(SRC)は、スケジューリングに応じて、凍結保存された細胞から成長させた最終培養容器から又は直接的に増殖培養物から作製され得る(
図2B)。
【0344】
凍結保存された細胞を使用する場合には、細胞を融解し、最後の1段階の増殖工程のために組織培養容器上に播種した。最終培養容器がおよそ50%~100%コンフルエントとなったら、細胞はSRC分離のための処理を行う準備が整っている。NKAの培地交換及び最終洗浄により、最終産物中に残留する凍結保存溶液は全て希釈される。
【0345】
最後の細胞培養容器が少なくとも50%コンフルエンスに達したら、その培養容器を37℃にて5%CO
2の環境で2%酸素に設定された低酸素インキュベーターに移し(
図2C)、一晩培養した。細胞は48時間ほどの長さにわたり2%酸素に設定された酸素制御インキュベーター内に保持され得る。より生理学的に関連している低酸素(2%)環境に曝露することで、細胞分離効率は向上し、VEGF等の低酸素誘導マーカーのより多くの検出が可能となった。
【0346】
細胞を十分な時間(例えば、一晩ないし48時間)低酸素条件に曝露した後に、EDTAを含む0.25%トリプシン(Invitrogen社)を用いて細胞を剥離した。生存率をトリパンブルー色素排除によって評価し、血球計を使用して手作業で又は自動式Cellometer(商標)計数システム(Nexcelom Bioscience社、マサチューセッツ州ローレン
ス)を使用して計数を行った。細胞をDPBSで1回洗浄し、DPBS中で約850×106細胞/mLまで再懸濁した。
【0347】
密度境界/密度界面を越える遠心分離を使用して、採取された腎細胞集団を細胞浮遊密度に基づいて分離した。腎細胞懸濁物を、7%イオジキサノール溶液を越える遠心分離によって分離した(OptiPrep、OptiMEM中60%(重量/容量)、実施例1.1を参照)。
【0348】
7%のOptiPrep密度界面溶液を調製し、使用前に所望の密度の指標となる屈折率を測定した(屈折率1.3456±0.0004)。採取した腎細胞をその溶液上に成層させた。密度界面を、遠心分離チューブ又は細胞処理装置(例えば、COBE 2991)のいずれかにおいて、室温(ブレーキなし)にて800gで20分間遠心分離した。およそ1.045g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が、遠心分離後に別個のペレットとして収集された。1.045g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞を除外して廃棄した。
【0349】
SRCペレットをDPBS中に再懸濁した(
図2C)。4回のDPBS洗浄及び1回のゼラチン溶液工程によって、最終製品への残留するOptiPrep、FBS、培養培地、及び補助材料の持ち越しは最小限に抑えられる。
【0350】
実施例2:腎臓疾患及び機能の治療のためのエクソソーム組成物及びその使用
実施例2.1-技術分野
この実施例は、腎臓の修復及び機能への組織工学的用途及び再生医療用途を含む使用のための腎臓細胞のエクソソーム組成物及びその作製に関する。
【0351】
実施例2.2-総評
かなりの研究が、疾患のバイオマーカーのために生体液中のエクソソームを利用することに着目し続けている。エクソソームの治療可能性はごく最近に取り組まれており、そのほとんどは癌免疫療法、ワクチン開発、自己免疫疾患治療、及び治療剤(化合物、siRNA)の送達に集中している。組織再生における重要な要素である新血管形成を調節する潜在的な療法薬としてのエクソソームは、過去7年間にわたって注目を集めている(7、8)。
【0352】
エクソソーム等の分泌細胞外小胞(EV)には、細胞型特異的であるだけでなく、細胞環境に応じて異なって産生及び分泌される強力な修復促進タンパク質(pro-repair proteins)及びRNAカーゴが詰まっている。腎臓疾患に直接関連するこの主題に関する優れ
たレビューはZhangら(Am J Physiol Renal Physiol. 2016 Nov 1;311 (5):F844-F851. doi: 10.1152/ajprenal.00429.2016. Epub 2016 Aug 31. Extracellular vesicles in diagnosis and therapy of kidney diseases. Zhang W, Zhou X, Zhang H, Yao Q, Liu Y, Dong Z.)によって発表されている。
【0353】
慢性腎臓疾患(CKD)は世界的な健康問題であり、移植を待っている患者数と実際に移植された臓器との間の差の拡大は、腎機能を回復する新しい治療法の必要性を浮き彫りにしている。再生医療は有望なアプローチであり、そこから臓器レベルの障害の治療法が出現し、診療所に反映されている。生分解性材料とex vivoで単離及び増殖された自家細胞とから構成される再生テンプレートは、移植後の天然と同様の臓器組織再生を刺
激する。
【0354】
最近の研究では、細胞-細胞又は細胞間のコミュニケーションを媒介するEVの新たな役割が実証されている(9、10)。EVの特有の生物学的活性は、細胞機能障害の矯正、ひいては疾患の療法に潜在的な利益を発揮している(11)。EVは、バイオデリバリー、特に臨床用途におけるドラッグデリバリーにとって理想的なナノベクターであるとも考えられている(12)。腎臓では、腎EVは腎臓細胞によって産生及び分泌され、腎機能及び腎疾患に関与している(10)。
【0355】
機構的に、幾つかの研究は、腎臓疾患に対するEVの保護効果を、主にそれらのRNA含有量、特にマイクロRNAによるものとしている(13、14)。
【0356】
CKDのバイオマーカーとしてのEVの可能性に対する集中的な研究が存在する。対照的に、CKDにおけるEVの治療効果について知られていることは非常に限られている。科学的理論に何ら限定されるものではないが、本発明者らのSRCによるCKDの治療における成功は、少なくとも部分的に、SRCの低酸素処理により移植された細胞から「調整された」EVが分泌され、それが更に罹患細胞を「レスキュー」し、それによりこれらの機能が改善することによるものであると、本発明者らは合理的に解釈している。
【0357】
或る特定の実施形態では、エクソソーム単離の前の勾配バンディングによる選択腎細胞の低酸素調整が、EVに増強された再生特性をもたらす。
【0358】
実施例2.3-エクソソームの単離-定量化及びサイズ決定
使用される精製方法(15)に基づいて、エクソソームは、範囲が30nm~150nm(16、17)であり、分析に使用される密度勾配材料(ショ糖又はOptiPrep)に応じて近似密度が1.10g/mL~1.20g/mL(18、19)であることが記載されている。微小胞はエクソソームよりも大きいと記載されており、しばしば直径サイズが100nm~300nmであると記載されている。これらのクラスのEVのサイズの重複の程度は、出版物及び測定に使用される技術に応じて変動する。本明細書で使用される場合に、「微小胞」という用語は、30ナノメートル(nm)から1000ナノメートル(nm)の間の直径の細胞由来の膜状細胞外小胞を意味する。本明細書で使用される場合に、「エクソソーム」という用語は、約30nm~150nmの直径の細胞由来の膜状微小胞を意味する。したがって、本明細書で使用される場合に、「微小胞」という用語は、エクソソームだけでなく、より大きな小胞も包含する。2014年後半と2015年とに国際細胞外小胞学会(ISEV)内の主要なオピニオンリーダーによって見解表明(20)が発表されたが、エクソソームを単離し、サイズ評価し、そして特性評価する最善の方法についてはまだ統一見解がない。特に生物学的機能の範囲でこの分野が進展を見せるにつれ、どの方法が所望の生物学的効果を与えるかによって、最良に粒子を単離、サイズ評価し、そして特性評価する技術が推進されることが予想される。或る特定の実施形態では、エクソソームを含むEVは、EV含有培養培地を3000×gで20分間遠心分離して細胞デブリをペレット化し、続いて清澄化された上清を100000×gで超遠心分離して、EVをペレット化する方法によって得られる。これらの調製物が目下、生物学的活性を示している(以下の増殖及び尿細管形成アッセイを参照)。
【0359】
細胞を無血清培養培地中で24時間成長させる。培地を収集する。エクソソームを単離するために、収集された無血清馴化培地を、1)3000×g、20分で細胞デブリを除去し、2)100000×g、2時間でエクソソームをペレット化する2つの工程で遠心分離にかける。エクソソームをDPBS中で再懸濁し、使用するまで-80℃で貯蔵する。
【0360】
エクソソームのサイズ分布及び濃度を決定するために、47mmの広がりのNP150ナノポアメンブレンを使用して、調整可能な抵抗パルスセンシング(TRPS;(qNano、Izon Science Ltd社))によって試料を分析した。1.0×1013粒子/mLの濃度で114nmのカルボキシル化ポリスチレンビーズを用いたマルチ圧力較正(multi-pressure calibration)を使用して、粒子の濃度を標準化した。分析直前に試料をDPBS中で1:100に希釈した。4つの異なるロットについて、結果及び収量を以下の表(表9)に示す。ロット間でサイズ及び濃度にばらつきがあるが、全てのロットについての粒子サイズは、十分にエクソソームの操作的定義(30nm~150nm)の範囲内にある。
【0361】
【0362】
この実施例及び他の実施例では、「BRC-0」は、継代されていない初代細胞である生物活性腎細胞である。「BRC-1」は、1回継代された生物活性腎細胞である。「BRC-2」は、2回継代された生物活性腎細胞である。「BRC-3」は、3回継代された生物活性腎細胞である。「BRC-3A」は、3回継代された後に、低酸素条件下で培養された生物活性腎細胞(低酸素培養の完了後の細胞を示す)である。「SRC」は、選択腎細胞を示す。
【0363】
実施例2.4-SRCエクソソームのマイクロRNA(miRNA)の特性評価
エクソソームカーゴの内容物には、タンパク質、代謝産物及びRNAを含む幾つかの分析物が含まれ得るため、SRC由来のエクソソームに関連して見出されたマイクロRNAを特定評価した。マイクロRNA(miRNA)は、およそ18ヌクレオチド~23ヌクレオチドを含む小さな非コーディングRNAであり、これはメッセンジャーRNAの3’非翻訳領域に結合して翻訳を抑制又は分解を促進する。miRNAプロファイルは、様々な生理学的状態及び病理学的状態を反映している。miRNAは組織特異的又は細胞特異的に発現される。miRNAの発現レベルは様々な生理学的プロセスに応じて変化し、ヒ
トのタンパク質をコードする遺伝子のほとんどはmiRNAの標的となると考えられている。
【0364】
miRNAの機能は本質的に負性である、つまり、おそらく競合的結合又は分解促進によりRNA翻訳が抑制されるので、miRNAは、細胞の成長及び増殖を調節するグローバルな機能を有している。例えば、細胞増殖の促進には、成長抑制タンパク質の翻訳、したがって発現を阻害するように機能するmiRNAが関与し得る。その一方で、成長促進タンパク質の翻訳/発現を阻害すると、細胞増殖を阻害することができる。
【0365】
これらのmiRNAの機能は、癌細胞及び他の病態で見られるような異常な細胞成長を研究することによって主に突き止められたことを認識せねばならない。そのため、正常細胞におけるそれらの機能の推定は注意深く評価する必要がある。例えば、miRNAが癌細胞において上昇又は抑制されていることが分かったことだけをもって、必ずしもそれらが単独で細胞の形質転換を促進するように機能することを意味するわけではない。癌細胞では、細胞増殖と成長抑制との間のバランスは、細胞増殖にシフトしている。これを念頭に置くと、上記のmiRNAの大部分がこれらの腎臓細胞において同定されたことは驚くに値しない。
【0366】
実験概要:
およそ18ヌクレオチド(nt)以上のRNAを含むトータルRNAの精製を可能にするmiRNeasy Mini Kitを使用して、各試料からのmiRNAを単離した。NanoDrop分光光度計を使用してmiRNAを定量化した。
提供されたシーケンシングサービス:Small RNA-Seq。シーケンシングプラットフォーム:Illumina社のNextSeq 500。シーケンシングプラットフォーム試薬:NextSeq Mid Output Kit v2。ライブラリー作製に使用した製品:Norgen Biotek社のSmall RNA Library Prep Ki
t。使用したSmall RNA-Seqデータ分析ワークフロー:exceRpt small RNA-seqパイプライン(v4.6.2)。(ウェブリンク:genboree.org/theCommons/projects/exrnatools-may2014/wiki/Small_RNA-seq_Pipeline)。低分子
RNA参照配列のソース:miRNAs miRBase version 21;tRNAs gtRNAdb、piRNAs、RNAdb、Genome Gencode version 21(hg38)。
【0367】
結果:
得られた配列のコンピューター分析により、SRCによって分泌されるエクソソームにおいて差次的発現を示す以下のmiRNAが明らかになる:
miR-145(腫瘍抑制因子であると仮定される)
mir-22(腫瘍抑制因子として機能し得る)
miR-7(発生の間と成熟時とに制限された時空間的発現を示す高度に保存されたmiRNAであり、細胞成長/腫瘍抑制因子としても機能し得る)
miR-10a(腎障害のマーカーである炎症誘発性の表現型を調節する。miR-10aがヒトHOXA1遺伝子及びHOXA3遺伝子を下方制御することが実験的に検証されている。miR-10によるHox遺伝子の制御は、このマイクロRNAが発生において重要な役割を担い得ることを示唆している)
miR-143(腫瘍抑制因子、成長阻害因子)
let7b(ヒトの癌及び癌幹細胞ではlet-7メンバーの発現レベルが著しく低いことを考えると、let-7遺伝子の主な機能は発生における最終分化及び腫瘍抑制を促進することであり得る)。
【0368】
実施例2.5-エクソソームのMACSplexでの表面標識
EV上に存在すると報告されている39個の表面マーカーについてのFACS分析から構成されるマルチプレックスアッセイを使用して、エクソソーム表面マーカーの特性評価を実施した。
【0369】
実験概要:
エクソソームを、培養された細胞(BRC-0、BRC-3、BRC-3A、SRC)の馴化培地から超遠心分離により単離した。
47mmの広がりのNP150ナノポアメンブレンを使用して、調整可能な抵抗パルスセンシング(TRPS;(qNano、Izon Science Ltd社))によって、粒径及び濃度を評価した。1.1×1013粒子/mLの濃度で110nmのカルボキシル化ポリスチレンビーズを用いたマルチ圧力較正を使用して、粒子の濃度を標準化した。
各試料につき、1×1010個の粒子を使用した。
CD63、CD9、及びCD81のカクテルを使用して、エクソソームを免疫隔離する。
次いで、この集団を37個の異なるマーカーの発現についてスクリーニングする。
【0370】
結果:
図4を参照
TCHK0012及びTCHK0013の両方から単離されたエクソソームにおいて、以下は、BRCと比較してSRCについて発現が上方制御される。
CD133(正確な機能は未知のままであるが、CD133は細胞膜トポロジーのオーガナイザーとして作用することが提唱されている)
CD326(上皮細胞接着分子(EpCAM)は、上皮におけるCa
2+非依存性の同型細胞間接着を媒介する膜貫通型糖タンパク質である。EpCAMは、細胞のシグナル伝達、遊走、増殖、及び分化にも関与している)
CD49e(接着に加えて、インテグリンは細胞表面を介したシグナル伝達に関係することが知られている)。
【0371】
実施例2.6-腎臓細胞へのエクソソームを媒介した親油性色素の転移
エクソソームがそれらのタンパク質又は核酸カーゴを送達するためには、そのためにエクソソームがレシピエントの細胞膜に付着して融合しなければならないと想定されている。エクソソームを媒介した親油性色素の細胞膜への送達は、レシピエント細胞とのエクソソームの融合を実証する1つの方法である(21)。
【0372】
実験概要:
色素転移。エクソソームがそれらのカーゴを送達する能力を評価するために、フローサイトメトリーによって、エクソソームが培養物中の腎臓細胞に親油性色素を転移させる能力をモニターした。
エクソソーム(BRC-0、BRC-3、SRC)のアリコートをVybrant DiI細胞標識溶液で37℃にて20分間標識した。
超遠心分離による余分の色素の除去に続いて、5×109個の標識されたエクソソームを6ウェルのディッシュの各ウェルに加えた。各ウェルには、およそ250000細胞/ウェルが含まれている。
4℃又は37℃のいずれかで4時間インキュベートした後に、培養物を洗浄して、取り込まれなかった全ての標識エクソソームを除去した。
次いで、回収された細胞を回収して、FACSによって分析した。
エクソソームから細胞膜への親油性色素の転移の指標である蛍光標識された細胞により、ヒストグラムの線の左から右へのシフトがもたらされる。
【0373】
結果:
図5を参照
予想通り、親油性色素の転移がないことにより指摘されるように、4度ではエクソソー
ムの結合は観察されなかった。これは、細胞がエクソソームを取り込むために生物学的に活性である必要があるという見解を裏付けている。
また予想通りに、エクソソームなしのコントロールのヒストグラムでは、4度でのヒストグラムと比較して右へのシフトはない。
ヒストグラム間の矢印で示される領域は、色素を取り込んだ細胞の集団を示した。
この実験に基づくと、BRC-0(最大)とBRC-3及びSRC(ほぼ同程度の結合)との間でエクソソーム結合に差があるように見える。
【0374】
実施例2.7-細胞増殖アッセイ
エクソソームが腎臓組織の修復及び再生に役割を担うには、腎臓細胞の増殖を刺激する能力を有することが望ましい機能であると言うことができる。
【0375】
実験概要:
ヒト腎臓細胞を、12ウェルプレート上に50000細胞/ウェルで播種した。
示された細胞上清からエクソソームを単離した。
それぞれのウェルに25μL、50μL、100μL(1×、2×、4×)のエクソソーム容量を加えた。
試料を二連で試験した。
処理の3日後にArrayScanを使用してプレートを計数した。
SF=無血清培地(ネガティブコントロール)。
成長培地=血清含有培地(ポジティブコントロール)。
【0376】
結果:
図6を参照
TCHK006のBRC-3及びSRCの全ての処理希釈液では、細胞増殖がネガティブコントロールよりも高いほぼ同じレベルまで増加した。
TCHK004のBRC-3及びSRCの処理希釈液では、増殖に対する用量的な作用が示され、4×の容量のSRCだけがネガティブコントロールよりも高く増殖を増加させた。
【0377】
実施例2.7-尿細管形成/血管新生アッセイ
血管新生を刺激する能力はまた、組織工学/再生医療製品にとって望ましい機能であると想定されている。血管新生の再編成段階をモデル化するのに最も広く使用されるin vitroアッセイの1つは、管腔形成アッセイである。このアッセイは、適切な細胞外マトリックス支持体を用いてサブコンフルエントな密度で播種された内皮細胞が毛細血管様構造物(別名、管腔)を形成する能力を測定する。科学者は通常、このアッセイを使用して、管腔形成を促進又は阻害する様々な化合物の能力を決定する。播種すると、内皮細胞は周囲の細胞外支持マトリックスに付着して機械的な力を発生し、細胞遊走を促進する通路又は誘導経路を作り出す。生じた細胞索は最終的に中空の管腔を形成する。
【0378】
管腔形成を阻害し得る化合物は、癌等の様々な疾患で有用であり得る。ここで、腫瘍は新生血管形成を刺激して、酸素及び栄養素を受け取ることで比較的小さいサイズを超えて成長する。対照的に、管腔形成を刺激し得る化合物又は生物製剤(すなわち、エクソソーム)は、組織工学的用途/再生医療用途に有用であり得る。
【0379】
実験概要:
48ウェルプレートにおいて細胞外マトリックス(GelTrex)上に50000個の血管内皮細胞を播種した。
ポジティブコントロールとして、成長因子が補充された無血清成長培地中で細胞をインキュベートした。
ネガティブコントロールとして、無血清の成長因子不含の培地中で細胞をインキュベー
トした。
エクソソーム(TCHK004、SRC、1010個の粒子)が補充された無血清かつ成長因子不含の培地中でインキュベートした細胞が試験品である。
【0380】
結果:
図7を参照
ポジティブコントロールでは尿細管形成がより迅速に起こったが(T=2時間までに尿細管が視認可能になる)、T=9時間までに、エクソソーム処理された細胞について頑健な尿細管形成が観察された。
尿細管の形成の支持において、エクソソームがhEGF、bFGF、IGF-1、及びVEGFを含む規定の成長因子カクテルに置き換わることに成功した。
【0381】
培養物を、処理後9時間にわたりインキュベートした。A.無血清の成長因子不含の培地(ネガティブコントロール)。B.1010個のエクソソームが補充された無血清の成長因子不含の培地(試験品)。C.成長因子が補充された無血清培地(ポジティブコントロール)。
【0382】
実施例2.8-参考文献
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【0383】
実施例3:ヒトSRC、BRC3/3A及びBRC0の分泌エクソソーム及び細胞内小胞中に存在するmiRNAのプロファイリング
SRCが分泌したタンパク質及びエクソソームmiRNAのバイオインフォマティクス分析により、SRC由来の因子による活性化又は不活性化の際にCKDの進行を調節し得る特定のシグナル伝達経路が特定される。これらのシグナル伝達経路をin vitroで活用することができるのは、推定されるSRCのMOA及び/又は特定されたタンパク質/miRNAに直接関連付けられた定量的な効力アッセイを効力についての代用として適用し、馴化培地からのELISA/PCRベースの技法によって評価することができる
ためである。このアプローチは、エクソソーム及び他の分泌微小胞要素の活性によりドナーから宿主細胞に移送された分泌された生物学的に活性なリガンド及びmiRNAの活性を活用する傍分泌機構を介した腎疾患の進行及びSRCのMOA機能に関与するシグナル伝達経路の特定につながる。
【0384】
分泌された培地又は細胞内ニッチから精製されたエクソソームから、miRNAを単離した。n=6の独立したドナーを使用して、以下のBRC3/3A及びBRC0/SRCについて統計的に厳密な比較を行うことができた。これらの製造中間体を識別するmiRNAが同定された。
【0385】
アプローチ
1.細胞セクレトームへの計算論的アプローチ/バイオインフォマティクスアプローチの適用
SRC及びSRCの製造中間体(n=6)からのセクレトーム及びmiRNAのプロファイル(細胞内及びエクソソーム)の特性評価を行った。データセットをバイオインフォマティクス技法によって連続的に分析して、SRCによって生成された分泌タンパク質又はmiRNAによって直接影響を受ける疾患関連の及び再生に関連するシグナル伝達ネットワークを計算論的に判定する。
【0386】
現在まで、これらのデータは、BRC3-BRC3A遷移(低酸素工程)がBRC細胞集団のバイオシグネチャーに大きな変化をもたらすため、製造最終製品(SRC)が出発物質(BRC0)と明確に区別可能であることを示している。
【0387】
2.ヒトSRC、BRC3/3A及びBRC0の分泌エクソソーム及び細胞内小胞中に存在するmiRNAのプロファイリング
分泌された培地又は細胞内ニッチから精製されたエクソソームから、miRNAを単離した。n=6の独立したドナーを使用して、以下のBRC3/3A及びBRC0/SRCについて統計的に厳密な比較を連続的に行う。
【0388】
これらの製造中間体を識別するmiRNAが同定された。標準的な表現型の説明及び機能的分析とは異なって、SRC及びBRC-0細胞のセクレトーム並びにmiRNAを特性評価するアプローチにより、SRCがどれほどBRC-0と相違するかの理解が深まるだけでなく、効力アッセイに特有の有用なアプローチも提供される。本発明者らが収集したデータにより、SRCとBRC-0とは明確に区別された。科学的理論に何ら拘束されるものではないが、BRC-3、BRC-3A、及びSRCの間にも差異があるため、差異の多くは低酸素工程が原因である可能性が最も高い。
【0389】
実施例3.1:実験設計
【0390】
【0391】
実施例3.2-差次的発現を示すmiRNA
実験設計に基づいて、各比較についての差次的発現を示すmiRNAの数を以下の表に示す。差次的発現を示すmiRNAを判定する標準的な選択基準は以下の通りである:|Loge倍率変化|≧1及びP値<0.05。
【0392】
【0393】
以下の表では、「hsa-」は、ヒトmiRNAを示す。
【0394】
【0395】
【0396】
【0397】
【0398】
【0399】
【0400】
図8において、実験条件E1対D1のペア間で有意差があるmiRNA群をボルケーノプロットで示している。
図9において、実験条件F1対A1のペア間で有意差があるmiRNA群をボルケーノプロットで示している。