(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023397
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】液状積層造形用組成物
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20240214BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240214BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20240214BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20240214BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20240214BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240214BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20240214BHJP
【FI】
C01B33/18 C
C08L101/00
C08K9/06
B29C64/124
B29C64/314
B33Y10/00
B33Y70/10
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023199290
(22)【出願日】2023-11-24
(62)【分割の表示】P 2022547163の分割
【原出願日】2021-02-03
(31)【優先権主張番号】62/970,124
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/088,142
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリー フォミチェブ
(72)【発明者】
【氏名】ポール エス.パルンボ
(72)【発明者】
【氏名】ジョディ エー.ベイツ
(72)【発明者】
【氏名】シアオフォン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル エイチ.ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ユージーン エヌ.ステップ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリー コルチェブ
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア エム.ウィンブル
(72)【発明者】
【氏名】パトリック サージェント
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン シンメラー
(57)【要約】
【課題】表面処理シリカ含有粒子を提供する。
【解決手段】表面処理シリカ含有粒子は、樹脂と組み合わされて、積層造形に使用する液体プレポリマー組成物を形成する。シリカ含有粒子への表面処理は、組成物の重合に関与してよい。シリカ含有粒子は、コロイダルシリカであってもよいし、シリカポリマー複合粒子であってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元物体を形成する方法であって、
a)基材をプレポリマー組成物のリザーバーと接触させることであって、前記プレポリマー組成物は、アクリレート、メタクリレート、ビニルポリマー、オレフィン、シリコーン、及びエポキシから選択されるポリマーのモノマー及びオリゴマーを含む樹脂と、i)少なくとも1つの表面処理剤で処理された5nm~600nmの粒子径を有する0.1~50wt%コロイダルシリカ粒子、及びii)10nm~3μmの粒子径を有し、少なくとも1つの表面処理剤で処理されたコロイダルシリカ粒子を含む0.1~50wt%シリカ-ポリマー複合粒子、から選択されるシリカ含有粒子を含み、前記表面処理剤は、オルガノポリシロキサン、オルガノシロキサン、オルガノシラン、ハロオルガノシラン、又はオルガノシラザンを含み、前記プレポリマー組成物は、25℃の温度及び100s-1の剪断速度でニート樹脂よりも最大500cP大きい粘度を有する、接触させること;
b)前記プレポリマー組成物を画像的に選択的に化学線に曝露して、前記基材に前記基材と平行な構築面を有する固体ポリマーを形成することであって、前記固体ポリマーは、前記三次元物体の連続的な部分である、曝露すること;
c)前記構築面を前記プレポリマー組成物と接触させること;
d)前記プレポリマー組成物を選択的に化学線に曝露して、前記固体ポリマーの質量を増加させることであって、追加のポリマーは、前記三次元物体の後続の連続的な部分である、曝露すること;及び
e)前記三次元物体が形成されるまで、工程c)及びd)を繰り返すこと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記表面処理剤が、7~14量体を有するヒドロキシ置換若しくは末端シロキサンオリゴマー、又は環内に4~14のケイ素原子を有する環状シロキサンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シロキサンオリゴマーが、ジメチルシロキサンオリゴマーである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記表面処理剤が、R1Si[(OR2)xR3
3-x]、ヘキサメチルジシラザン、又はジメチルジクロロシランを含み、R1は、C1-C30分枝アルキル及び直鎖アルキル、アルケニル、及びC3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、及びR4Qからなる群から選択され、R4は、n=0~10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基であり、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3である、請求項1-3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記表面処理剤が、[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qを含み、n=6~10である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記表面処理剤が、[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qを含み、Qがエポキシ基又はチオール基である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記表面処理剤が、4~3500cStの粘度を有する少なくとも1つの基[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qのポリシロキサンオリゴマー又はコオリゴマーを含み、R4は、n=0~10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基であり、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3である、請求項1-6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記Qが、置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリシロキサンオリゴマー又はコオリゴマーが、500~3500cStの粘度を有する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記シリカ含有粒子が、シリカ-ポリマー複合粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記シリカ-ポリマー複合粒子が、複数のシリカ粒子及びポリマーマトリックスを含み、前記シリカ粒子は、[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qを含む第1疎水化剤で表面改質されており、R4Qのうち、R4は、n=0~10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基であり、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プレポリマー組成物を断面上にコーティングすることが、前記断面に垂直な軸に沿って前記基材を移動させることを含む、請求項1-11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記工程c)及びd)が、段階的に実施される、請求項1-12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記工程c)及びd)が、前記プレポリマー組成物が重合している間に、前記プレポリマー組成物が前記断面上でコーティングされるように、段階的に又は同時に実施される、請求項1-12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1-14のいずれか一項に記載の方法によって調製される、ポリマー複合体。
【請求項16】
表面処理シリカ粒子を調製する方法であって、
5~600nmの平均粒子径及び第一のBET表面積を有し、約8~約11のpHを有する5~70%コロイダルシリカ粒子を含む水性シリカ分散液を提供すること;
前記水性シリカ分散液を、a)式[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qを有する0.4~10分子/nm2(前記第一のBET表面積に基づく)のアルコキシシラン処理剤、又はb)0.5~10R5基/nm2(前記第一のBET表面積に基づく)に相当する量で4~3500cStの粘度を有する少なくとも1つの基R5Si[(OR2)xR3
3-x]のポリシロキサンオリゴマー又はコオリゴマーと組み合わせて、50wt%以下の有機溶媒を含む反応混合物を提供することであって、R5は、C1-C10分枝アルキル及び直鎖アルキル、アルケニル、及びC3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、及びR4Qからなる群から選択され、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3であり、R4は、n=0~10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基である、組み合わせること;及び
a)前記表面処理シリカ粒子を前記反応混合物から直接乾燥させて粉末を形成すること、又はb)前記表面処理シリカ粒子を有機溶媒と水の混合物を含む溶媒に溶媒交換すること、のいずれか一方であって、前記水の量は、前記有機溶媒と水の共沸混合物中に存在する水の量より多くない、a)又はb)のいずれか一方
を含む、方法。
【請求項17】
前記反応混合物が、約8以上のpHを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アルコキシシラン処理剤が、式[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qを有し、a)n=6~10であり、b)Qはエポキシ基若しくはチオール基、又はその両方である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記R5がR4Qである、請求項16-18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記Qが、置換若しくは非置換ビニル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基である、請求項16-19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリシロキサンオリゴマーの前記粘度が、500~3500cStである、請求項16-21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの基R5Si[(OR2)xR3
3-x]のポリシロキサンオリゴマー又はコオリゴマーで表面処理されたコロイダルシリカ粒子を含み、R5は、C1-C10分枝アルキル及び直鎖アルキル、アルケニル、及びC3-C10シクロアルキル、及びC6-C10アリールからなる群から選択され、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3であり、R4Qのうち、R4は、n=0~10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基である、粒子組成物。
【請求項23】
前記ポリシロキサンオリゴマー又はコオリゴマーが、4~3500cStの粘度を有する、請求項22に記載の粒子組成物。
【請求項24】
前記R5がR4Qであり、Qが、置換若しくは非置換ビニル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基であり、前記ポリシロキサンオリゴマーが、500~3500cStの粘度を有する、請求項22又は23に記載の粒子組成物。
【請求項25】
前記粒子組成物が、乾燥粉末の形態である、請求項22-25のいずれか一項に記載の粒子組成物。
【請求項26】
光造形法、連続液体界面製造、又はデジタル光合成を介した三次元印刷用のプレポリマー組成物であって、
アクリレート、メタクリレート、ビニルポリマー、オレフィン、シリコーン、及びエポキシから選択されるポリマーのモノマー及びオリゴマーを含む樹脂、及び
i)少なくとも1つの表面処理剤で処理された5nm~600nmの粒子径を有する0.1~50wt%コロイダルシリカ粒子、及び
ii)10nm~3μmの粒子径を有し、少なくとも1つの表面処理剤で処理されたコロイダルシリカ粒子を含む0.1~50wt%シリカ-ポリマー複合粒子
から選択されるシリカ含有粒子を含み、
前記表面処理剤は、オルガノポリシロキサン、オルガノシロキサン、オルガノシラン、ハロオルガノシラン、又はオルガノシラザンを含み、前記プレポリマー組成物は、25℃の温度及び100s-1の剪断速度でニート樹脂よりも最大500cP大きい粘度を有する、プレポリマー組成物。
【請求項27】
前記表面処理剤が、7~14量体を有するヒドロキシ置換若しくは末端シロキサンオリゴマー、又は環内に4~14のケイ素原子を有する環状シロキサンを含む、請求項26に記載のプレポリマー組成物。
【請求項28】
前記シロキサンオリゴマーが、ジメチルシロキサンオリゴマーである、請求項27に記載のプレポリマー組成物。
【請求項29】
前記表面処理剤が、R1Si[(OR2)xR3
3-x]、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシランを含み、R1は、C1-C30分枝アルキル及び直鎖アルキル、アルケニル、及びC3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、及びR4Qからなる群から選択され、R4は、n=0~10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基であり、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3である、請求項26-28のいずれか一項に記載のプレポリマー組成物。
【請求項30】
前記表面処理剤が、[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qを含み、n=6~10である、請求項29に記載のプレポリマー組成物。
【請求項31】
前記表面処理剤が、[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qを含み、Qは、エポキシ基又はチオール基である、請求項29又は30に記載のプレポリマー組成物。
【請求項32】
前記表面処理剤が、4~3500cStの粘度を有する少なくとも1つの基[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qのポリシロキサンオリゴマー又はコオリゴマーを含み、R4は、n=0~10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基であり、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3である、請求項26-31のいずれか一項に記載のプレポリマー組成物。
【請求項33】
前記Qが、置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基である、請求項32に記載のプレポリマー組成物。
【請求項34】
前記ポリシロキサンオリゴマー又はコオリゴマーが、500~3500cStの粘度を有する、請求項32又は33に記載のプレポリマー組成物。
【請求項35】
前記シリカ含有粒子が、シリカ-ポリマー複合粒子である、請求項26-34のいずれか一項に記載のプレポリマー組成物。
【請求項36】
前記シリカ-ポリマー複合粒子が、複数のシリカ粒子及びポリマーマトリックスを含み、前記シリカ粒子は、[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qを含む第1の疎水化剤で表面改質されており、R4Qのうち、R4は、n=0~10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基であり、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3である、請求項35に記載のプレポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ系粒子を使用する液状積層造形を行って印刷部品を製造する方法及び組成物、並びに得られる印刷部品に関する。
【背景技術】
【0002】
光造形法は、光、例えば、紫外線レーザー又は投影ビームを使用して液状の光硬化性樹脂の層を硬化させる、液状積層造形工程である。硬化性樹脂のリザーバーは、局所的に硬化され、最終的な固体部分の層を形成する。各層がスキャンされた後、工程内部品は、光源からわずかな距離、例えば、ミリメートル単位で離され、表面に光硬化性樹脂の新しい層がコーティングされる。当該工程を複数回繰り返すことにより、完成品が層ごとの形状に徐々に作られる。連続液体界面製造(CLIP)及びデジタル光合成(DLS)などの代替の方法において、材料は層ごとの形状にではなく、連続的に加工対象物に追加される。
【0003】
これらの液状積層造形工程で典型的に使用される光硬化性樹脂は、所望の熱的特性を欠く、又はさもなければ、完成品の最終使用用途に最適化されない可能性もある脆性プラスチックをもたらす。したがって、硬化ポリマーの機械的特性及び熱安定性を改善し、完成品に他の恩恵をもたらし、又は製造条件を最適化することができる光硬化性樹脂用の添加剤を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態において、三次元物体を形成する方法は、
a)基材をプレポリマー組成物のリザーバーと接触させることであって、プレポリマー組成物は、アクリレート、メタクリレート、ビニルポリマー、オレフィン、シリコーン、及びエポキシから選択されるポリマーのモノマー及びオリゴマーを含む樹脂と、i)少なくとも1つの表面処理剤で処理された5nm~600nmの粒子径を有する0.1~50wt%コロイダルシリカ粒子、及びii)10nm~3μmの粒子径を有し、少なくとも1つの表面処理剤で処理されたコロイダルシリカ粒子を含む0.1~50wt%シリカ-ポリマー複合粒子、から選択されるシリカ含有粒子を含み、表面処理剤は、オルガノポリシロキサン、オルガノシロキサン、オルガノシラン、ハロオルガノシラン、又はオルガノシラザンを含み、プレポリマー組成物は、25℃の温度及び100s-1の剪断速度でニート樹脂よりも、最大500cP大きい粘度を有する、接触させること;
b)プレポリマー組成物を画像的に選択的に化学線に曝露して、基材に基材と平行な構築面を有する固体ポリマーを形成することであって、固体ポリマーは、三次元物体の連続的な部分である、曝露すること;
c)構築面をプレポリマー組成物と接触させること;
d)プレポリマー組成物を選択的に化学線に曝露して、固体ポリマーの質量を増加させることであって、追加のポリマーは、三次元物体の後続の連続的な部分である、曝露すること;及び
e)三次元物体が形成されるまで、工程c)及びd)を繰り返すこと、
を含む。
【0005】
表面処理剤は、7~14量体を有するヒドロキシ置換若しくは末端シロキサンオリゴマー、又は環内に4~14のケイ素原子を有する環状シロキサン、例えば、ジメチルシロキサンオリゴマーを含んでよい。
【0006】
代替として又は追加で、表面処理剤は、R1Si[(OR2)xR3
3-x]、ヘキサメチルジシラザン、又はジメチルジクロロシランを含んでよく、R1は、C1-C30分枝アルキル及び直鎖アルキル、アルケニル、及びC3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、及びR4Qからなる群から選択され、R4は、n=0~10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基であり、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3である。例えば、表面処理剤は、[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qを含んでよく、n=6~10である。代替として又は追加で、表面処理剤は、[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qを含んでよく、Qはエポキシ基又はチオール基である。
【0007】
代替として又は追加で、表面処理剤は、4~3500cStの粘度を有する少なくとも1つの基[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qのポリシロキサンオリゴマー又はコオリゴマーを含んでよく、R4は、n=0~10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基であり、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3である。例えば、Qは、置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基、及び/又は500~3500cStの粘度を有するポリシロキサンオリゴマー又はコオリゴマーであってよい。
【0008】
代替として又は追加で、シリカ含有粒子は、複数のシリカ粒子及びポリマーマトリックスを含んでよい、シリカ-ポリマー複合粒子であり、シリカ粒子は、[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qを含む第1疎水化剤で表面改質されており、R4Qのうち、R4は、n=0-10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基であり、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3である。
【0009】
これらの実施形態のいずれかにおいて、プレポリマー組成物を断面上にコーティングすることは、断面に垂直な軸に沿って基材を移動させることを含んでよい。代替として又は追加で、工程c)及びd)は、プレポリマー組成物が重合している間に、プレポリマー組成物が断面上でコーティングされるように、段階的に又は同時に実施されてよい。
【0010】
ポリマー複合体は、上述の実施形態のいずれかの組み合わせによって調製することができる。
【0011】
他の実施形態において、表面処理シリカ粒子を調製する方法は、5~600nmの平均粒子径及び第一のBET表面積を有し、約8~約11のpHを有する5~70%コロイダルシリカ粒子を含む水性シリカ分散液を提供することと、水性シリカ分散液を、a)式[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qを有する0.4~10分子/nm2(第一のBET表面積に基づく)のアルコキシシラン処理剤、又はb)0.5~10R5基/nm2(第一のBET表面積に基づく)に相当する量で4~3500cStの粘度を有する少なくとも1つの基R5Si[(OR2)xR3
3-x]のポリシロキサンオリゴマー又はコオリゴマーと組み合わせて、50wt%以下の有機溶媒を含む反応混合物を提供することであって、R5は、C1-C10分枝アルキル及び直鎖アルキル、アルケニル、及びC3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、及びR4Qからなる群から選択され、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3であり、R4は、n=0~10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基であり、及びa)表面処理シリカ粒子を反応混合物から直接乾燥させて粉末を形成すること、又はb)表面処理シリカ粒子を有機溶媒と水の混合物を含む溶媒に溶媒交換すること、のいずれか一方を含み、水の量は、有機溶媒と水の共沸混合物中に存在する水の量より多くない、方法である。反応混合物は、約8以上のpHを有してよい。代替として又は追加で、アルコキシシラン処理剤は、式[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qを有してよく、a)n=6~10であり、b)Qはエポキシ基若しくはチオール基、又はその両方である。代替として又は追加で、R5はR4Qであってよく、及び/又はQは、置換若しくは非置換ビニル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基である。ポリシロキサンオリゴマーの粘度は、500~3500cStであってよい。
【0012】
他の実施形態において、粒子組成物は、少なくとも1つの基R5Si[(OR2)xR3
3-x]のポリシロキサンオリゴマー又はコオリゴマーで表面処理されたコロイダルシリカ粒子を含み、R5は、C1-C10分枝アルキル及び直鎖アルキル、アルケニル、及びC3-C10シクロアルキル、及びC6-C10アリールからなる群から選択され、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3であり、R4Qのうち、R4は、n=0~10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基である。ポリシロキサンオリゴマー又はコオリゴマーは、4~3500cStの粘度を有してよい。代替として又は追加で、R5はR4Qであってよく、Qは、置換若しくは非置換ビニル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基であり、ポリシロキサンオリゴマーは、500~3500cStの粘度を有する。粒子組成物は、乾燥粉末の形態であってよい。
【0013】
他の実施形態において、光造形法、連続液体界面製造、又はデジタル光合成を介した三次元印刷用のプレポリマー組成物は、アクリレート、メタクリレート、ビニルポリマー、オレフィン、シリコーン、及びエポキシから選択されるポリマーのモノマー及びオリゴマーを含む樹脂と、i)少なくとも1つの表面処理剤で処理された5nm~600nmの粒子径を有する0.1~50wt%コロイダルシリカ粒子、及びii)10nm~3μmの粒子径を有し、少なくとも1つの表面処理剤で処理されたコロイダルシリカ粒子を含む0.1~50wt%シリカ-ポリマー複合粒子から選択されるシリカ含有粒子を含み、表面処理剤は、オルガノポリシロキサン、オルガノシロキサン、オルガノシラン、ハロオルガノシラン、又はオルガノシラザンを含み、プレポリマー組成物は、25℃の温度及び100s-1の剪断速度でニート樹脂よりも、最大500cP大きい粘度を有する。
【0014】
表面処理剤は、7~14量体を有するヒドロキシ置換若しくは末端シロキサンオリゴマー、又は環内に4~14のケイ素原子を有する環状シロキサンを含んでよい。シロキサンオリゴマーは、ジメチルシロキサンオリゴマーであってよい。
【0015】
代替として又は追加で、表面処理剤は、R1Si[(OR2)xR3
3-x]、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシランを含んでよく、R1は、C1-C30分枝アルキル及び直鎖アルキル、アルケニル、及びC3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、及びR4Qからなる群から選択され、R4は、n=0~10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基であり、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3である。例えば、表面処理剤は、[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qを含んでよく、n=6~10であり、及び/又はQはエポキシ基又はチオール基である。
【0016】
代替として又は追加で、表面処理剤は、4~3500cStの粘度を有する少なくとも1つの基[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qのポリシロキサンオリゴマー又はコオリゴマーを含んでよく、R4は、n=0~10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基であり、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3である。例えば、Qは、置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基であってよく、及び/又はポリシロキサンオリゴマー又はコオリゴマーは、500~3500cStの粘度を有してよい。
【0017】
代替として又は追加で、シリカ含有粒子は、複数のシリカ粒子及びポリマーマトリックスを含んでよい、シリカ-ポリマー複合粒子であってよく、シリカ粒子は、[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qを含む第1疎水化剤で表面改質されており、R4Qのうち、R4は、n=0~10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基であり、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3である。
【0018】
前述の概要と以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に係る本発明の更なる説明を提供することを意図していることが理解される。
【0019】
本発明は、図面の幾つかの図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、様々な充填量での紫外線硬化アクリル樹脂のシリカ分散液の粘度を示すグラフである(×=フュームドシリカ;菱形=試料8-1;三角形=試料8-2)。
【0021】
【
図2A】
図2A、2B、2C及び2Dは、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理されたシリカ粒子を含む紫外線硬化アクリル樹脂の走査型電子顕微鏡である。
図2A及び2Bにおいて、シリカは、粉末として未硬化樹脂中に分散された。
図2C及び2Dにおいて、シリカは、アルコール系溶媒中の分散液として未硬化樹脂中に分散された。
【0022】
【
図2B】
図2A、2B、2C及び2Dは、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理されたシリカ粒子を含む紫外線硬化アクリル樹脂の走査型電子顕微鏡である。
図2A及び2Bにおいて、シリカは、粉末として未硬化樹脂中に分散された。
図2C及び2Dにおいて、シリカは、アルコール系溶媒中の分散液として未硬化樹脂中に分散された。
【0023】
【
図2C】
図2A、2B、2C及び2Dは、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理されたシリカ粒子を含む紫外線硬化アクリル樹脂の走査型電子顕微鏡である。
図2A及び2Bにおいて、シリカは、粉末として未硬化樹脂中に分散された。
図2C及び2Dにおいて、シリカは、アルコール系溶媒中の分散液として未硬化樹脂中に分散された。
【0024】
【
図2D】
図2A、2B、2C及び2Dは、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理されたシリカ粒子を含む紫外線硬化アクリル樹脂の走査型電子顕微鏡である。
図2A及び2Bにおいて、シリカは、粉末として未硬化樹脂中に分散された。
図2C及び2Dにおいて、シリカは、アルコール系溶媒中の分散液として未硬化樹脂中に分散された。
【0025】
【
図3A】
図3A、3B、3C、及び3Dは、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン(
図3A及び3B)及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(
図3C及び3D)で表面処理されたシリカ粒子を含むアクリル樹脂の走査型電子顕微鏡である。
【0026】
【
図3B】
図3A、3B、3C、及び3Dは、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン(
図3A及び3B)及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(
図3C及び3D)で表面処理されたシリカ粒子を含むアクリル樹脂の走査型電子顕微鏡である。
【0027】
【
図3C】
図3A、3B、3C、及び3Dは、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン(
図3A及び3B)及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(
図3C及び3D)で表面処理されたシリカ粒子を含むアクリル樹脂の走査型電子顕微鏡である。
【0028】
【
図3D】
図3A、3B、3C、及び3Dは、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン(
図3A及び3B)及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(
図3C及び3D)で表面処理されたシリカ粒子を含むアクリル樹脂の走査型電子顕微鏡である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
一実施形態において、プレポリマー組成物は、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、シリコーン、及びエポキシから選択されたポリマーのモノマー及びオリゴマーを含む、樹脂、及びモノマー及びオリゴマーの少なくとも一部と共重合することができる基を含むシラン剤で表面処理された5nm~600nmの粒子径を有する、0.1~50wt%コロイダルシリカ粒子を含み、当該プレポリマー組成物は、25℃の温度及び100S-1の剪断速度でニート樹脂の粘度よりも最大500cP大きい、例えば、最大450cP大きい、又は最大350cP大きい粘度を有する。例えば、コロイダルシリカ粒子は、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPS)で表面処理されてよい。代替として又は追加で、コロイダルシリカ粒子は、単官能性シラン剤で表面処理されてよく、疎水性官能基が表面に付着するようになるが、疎水性官能基は、モノマー又はオリゴマーと共重合する必要はない。
【0030】
このような粒子の使用は、ニート樹脂と比較して、液状積層造形工程によって製造された印刷部分の引張弾性率、引張強度、引張伸び、及び/又は曲げ弾性率の中の1つ以上を増加させることができる。このような利点は、製造中にポリマーが堆積される軸に対する加工対象物の配向とは独立して実現され得る。影響を受ける可能性のある他の機械的特性としては、曲げ弾性率、ヤング率、及び低温脆性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
コロイダルシリカは、ゾルゲル法によって製造することができる。コロイダルシリカ粒子は、多くの場合、非凝集の個別に分離した(一次)粒子であり、典型的に球形の形状、又はほぼ球形の形状であるが、他の形状(例えば、概ね楕円形、正方形、又は長方形の断面を有する形状)を有することができる。好ましくは、非凝集コロイダルシリカは、本明細書で提供される実施形態に使用される。コロイダルシリカは、市販されている又は様々な出発材料(例えば、湿式型シリカ)から既知の方法によって調製することができる。コロイダルシリカ粒子は、典型的に沈殿シリカ粒子と同様の方法(すなわち、沈殿シリカ粒子は、水性媒体から凝固される)で作られるが、液体媒体(多くの場合、水単独又は共溶媒及び/又は安定化剤と共に)中に分散したままである。シリカ粒子は、例えば、約9~約11のpHを有するケイ酸アルカリ溶液から得られるケイ酸から調製することができ、ケイ酸アニオンは、重合を受けて水性分散液の形態で所望の平均粒子径を有する分離シリカ粒子が生成される。典型的に、コロイダルシリカは、適切な溶媒中で、殆どの場合、水単独で、又は共溶媒及び/又は安定化剤と合わせて、コロイダルシリカの分散であるゾルとして利用可能になる。例えば、Stoeberらの、「Controlled Growth of Monodisperse Silica Spheres in the Micron Size Range,」Journal of Colloid and Interface Science,26,1968,pp.62-69、ヨシダアキトシの Silica Nucleation,Polymerization,and Growth Preparation of Monodispersed Sols,Colloidal Silica Fundamentals and Applications,pp47-56(H.E.Bergna&W.O.Roberts,eds.,CRC Press:Boca Raton,Florida,2006)、及びIler,R.K.のThe Chemistry of Silica,p866 John Wiley&Sons:New York,1979)に記載されている。液状積層造形における使用に適した市販のコロイダルシリカの非限定的な例としては、日産化学から入手可能なSNOWTEX(登録商標)製品、W.R.Grace&Co.から入手可能なLUDOX(登録商標)製品、AkzoNobelから入手可能なBINDZIL(登録商標)製品、Merck KGaAから入手可能なKLEBOSOL(登録商標)製品、Nyacol Nanotechnologies,Inc.から入手可能なNexSilNexSil ATMシリーズ製品、扶桑化学工業から入手可能なQuartronTM製品、及びAkzoNobelから入手可能なLevasil(登録商標)製品が挙げられる。
【0032】
コロイダルシリカ粒子は、約5nmから約500~600nmの平均一次粒子径を有してよい。一次粒子径は、少なくとも2000の粒子の透過型電子顕微鏡によって、又は非凝集粒子に対してはディスク遠心分離機沈降によって測定することができる。約20~40nmまでの大きさ、例えば、約5~約15nm、約10~約20nm、約15~約25nm、又は約25~約35nmの大きさの平均一次粒子径を有するシリカは、透明性が望まれる実施形態において、好ましいと考えられる。より大きなシリカ系粒子、例えば、約5nm~約200nm、約20nm~約150nm、又は約50nm~約100nmのシリカ系粒子は、機械的補強を提供し、引張強度及び曲げ強度及び引張弾性率などの特性を高めるために使用してよい。更に大きな粒子は、印刷部分に剛性及び/又は硬度を付与するために使用してよい。粒子径は、動的光散乱法によって測定することができる。概して、コロイダルシリカ粒子は、非凝集体であるが、コロイダルシリカ粒子は、5未満の、好ましくは2又は3のみの一次粒子を有する低構造の凝集体であってよい。
【0033】
本明細書で使用される用語「コロイド分散液」は、コロイド粒子(例えば、約600nm以下の平均一次粒子径を有する粒子)の分散液について言及する。このような分散液のコロイド安定性は、コロイド粒子の大部分が不可逆的に凝集することを防止する。粒子の凝集は、全体の平均粒子径の増加によって検出することができる。この点について、コロイド分散液は、安定化又は非安定化することができる。本明細書で使用される用語「安定化する」は、安定化成分、例えば、分散液の安定性を高めるのに十分な量の当該技術分野で既知の酸、塩基、又は他の安定化剤の添加について言及する。コロイド分散液を安定化させる方法は、当該技術分野で知られている。安定化されているかいないかに関わらず、本発明と共に使用されるコロイド分散液は、好ましくは、DLSによって測定されるコロイド粒子の全体の平均粒子径が、3週間以上(例えば、4週間以上、又は5週間以上)、より好ましくは6週間以上(例えば、7週間以上、又は8週間以上)、最も好ましくは10週間以上(例えば、12週間以上、又は16週間以上)の期間にわたって変化しない程度のコロイド安定性を有する。水性コロイダルシリカ分散液は、概ねわずかに塩基性のpH(例えば、約9~10)で市販されているが、中性及び酸性の分散液として入手することも可能である。
【0034】
コロイダルシリカ粒子は、表面処理剤で表面処理されてよい。例示的な処理方法は、US7811540、US10407571、及びUS8435474に記載されており、これら全ての内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。表面処理剤は、全体的に又は部分的に、シリカの界面化学的性質をシラノール基から表面処理剤によって提供される化学的性質に変化させる。特定の理論に束縛されることを望むものではなく、表面処理剤が、コロイド粒子の表面の表面ヒドロキシ基と反応して、親水基を他の化学基と効果的に置換すると考えられる。シリカ粒子に付与される電荷の種類及び程度は、使用する処理剤の種類及び量に応じて異なり、液状積層造形に使用する樹脂の種類に応じて変化させることができる。幾つかの実施形態において、表面処理剤は、0.4~10分子/nm2、例えば、0.1~6分子/nm2又は2~5分子/nm2(Brunauer-Emmett-Teller(BET)法によって測定された表面積)のレベルで存在する。表面の分子数は、表面処理された粒子中の炭素量から計算してよく、以下に詳述するCP/MAS NMRによって計算してもよい。多くの表面処理基は、表面シラノールを他のより疎水性の高い基で置換することにより、表面に疎水性を付与する。メタノール湿潤数によって測定される疎水性は、0~85、例えば、50未満又は40未満であってよい。
【0035】
コロイダルシリカの表面処理により、シリカ粒子の表面に付着した又はシリカ粒子の表面に間接的に付着した置換ケイ素原子の様々なパターンが生成される。これらの置換パターンは、文献中で、Mサイト、Dサイト、Tサイト、及びQサイトと呼ばれる。例えば、Sindorf、Dean Williamの、「Silicon-29 and Carbon-13 CP/MAS NMR Studies of Silica Gel and Bonded Silane Phases,」Department of Chemistry,Colorado State University,Fort Collins,Colo.,1982を参照されたい。CP/MAS 29Si NMRスペクトルの共鳴信号とMサイト、Dサイト、Tサイト、及びQサイトの相関は、Maciel,G.,Sindorf,D.W.,J.Am.Chem.Soc.102:7607-7608(1980),Sindorf,D.W.,Maciel,G.,J.Phys.Chem.,86:5208-5219(1982)、及びSindorf,D.W.,Maciel,G.,J.Am.Chem.Soc.,105:3767-3776(1983)で考察されている。
【0036】
本明細書で使用する場合、T1サイトとは、少なくとも1つが金属酸化物粒子表面にある、ケイ素原子に更に結合した酸素原子への1つの結合、シラノール(Si-OH)基を含む酸素原子への2つの結合、及び炭素原子への1つの結合を有するアルコキシシラン化合物に由来するケイ素原子が該当する。T2サイトは、式(I):R1-Si(OH)2-(OSi-P1)で表され、基R1は、アルコキシシラン化合物に対して本明細書で定義したとおりであり、P1は、粒子表面のケイ素原子への結合及び/又は他のケイ素含有分子のケイ素原子への結合を表す。T1サイトに対応するSi原子は、CP/MAS 29Si NMRスペクトルの-40ppm~-50ppmの範囲の化学シフトを有する共鳴信号と相関し、ppmでの化学シフトは、標準テトラメチルシランと比較して測定される。
【0037】
本明細書で使用する場合、T2サイトとは、少なくとも1つが金属酸化物粒子表面にある、ケイ素原子に更に結合した酸素原子への2つの結合、シラノール(Si-OH)基を含む酸素原子への1つの結合、及び炭素原子への1つの結合を有するアルコキシシラン化合物に由来するケイ素原子が該当する。T2サイトは、式(I):R1-Si(OH)-(OSi-P1)(OSiP2)で表され、基R1は、アルコキシシラン化合物に対して本明細書で定義したとおりであり、P1及びP2は、粒子表面のケイ素原子への結合及び/又は他のケイ素含有分子のケイ素原子への結合を別々に表す。T2サイトに対応するSi原子は、CP/MAS 29Si NMRスペクトルの-56ppm~-59ppmの範囲の化学シフトを有する共鳴信号と相関し、ppmでの化学シフトは、標準テトラメチルシランと比較して測定される。
【0038】
本明細書で使用する場合、T3サイトとは、ケイ素原子に更に結合した酸素原子への3つの結合を有するアルコキシシラン化合物に由来するケイ素原子が該当する。ケイ素原子の少なくとも1つは、粒子上のケイ素原子である。当該サイトは、式(II):R1-Si(OSi-P1)(OSi-P2)(OSi-P3)で表され、基R1は、アルコキシシラン化合物に対して本明細書で定義したとおりであり、P1、P2及びP3は、粒子表面のケイ素原子への結合及び/又は他のケイ素含有分子のケイ素原子への結合を別々に表す。T3サイトに対応するSi原子は、CP/MAS 29Si NMRスペクトルの-65ppm~-69ppmの範囲の化学シフトを有する共鳴信号と相関し、ppmでの化学シフトは、標準テトラメチルシランと比較して測定される。
【0039】
本明細書で使用する場合、Mサイトとは、炭素原子への3つの結合、及びシリカ粒子の表面との反応により、シリカ粒子の表面官能基と結合するケイ素原子と更に結合した酸素原子への1つの結合を有するシラザン化合物に由来するケイ素原子が該当する。Mサイトは、式(III):R’R’’R’’’-Si-OPで表され、R’、R’’、及びR’’’は、シラザン化合物のケイ素原子に結合したC1-C10基である。Mサイトに対応するSi原子は、CP/MAS 29Si NMRスペクトルの+7ppm~+18ppmの範囲の化学シフトを有する共鳴信号と相関し、ppmでの化学シフトは、標準テトラメチルシランと比較して測定される。
【0040】
本明細書で定義するように、T2は、CP/MAS 29Si NMRスペクトルにおいて-56ppm~-59ppmの範囲内を中心とする化学シフトを有するピークの積分強度である。T3は、CP/MAS 29Si NMRスペクトルにおいて-65ppm~-69ppmの範囲内を中心とする化学シフトを有するピークの積分強度である。合計Tは、CP/MAS 29Si NMRスペクトルの-40ppm~-70ppmの積分強度である。Mは、CP/MAS 29Si NMRスペクトルにおいて+7ppm~+18ppmの範囲内を中心とする化学シフトを有するピークの積分強度である。ピークの強度は、当業者によく知られた標準的な計算方法を使用して計算された、そのおおよその位置における信号の最大ピーク高さ又は列挙された範囲内で発生するピークの面積について言及する。
【0041】
適切な表面処理剤としては、オルガノポリシロキサン、オルガノシロキサン、オルガノシラン、ハロオルガノシラン、オルガノシラザン及びシリカ粒子の表面のシラノール基と反応及び/又は置換する他の薬剤が挙げられる。例えば、式R1Si[(OR2)xR3
3-x]を有するアルコキシシランが使用されてよく、R1は、C1-C30分枝アルキル及び直鎖アルキル、アルケニル、及びC3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、及びR4Qからなる群から選択され、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3である。好ましいアルコキシシランとしては、オクチルトリメトキシシラン及びオクチルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシランが挙げられる。代替の表面処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシラン、及びヒドロキシ置換若しくは末端ポリシロキサン、特にモノヒドロキシ末端オリゴマー若しくはジヒドロキシ末端オリゴマーを含む7~14量体を有するシロキサンオリゴマー、又は環内に4~14のケイ素原子を有する環状シロキサンが挙げられる。
【0042】
好ましくは、又は他の処理剤に加えて、表面処理剤は、液体樹脂のモノマー又はオリゴマーと反応させることができる。例えば、式[R3
3-x(OR2)x]SiR4Q(すなわち、R1=R4Q)を有するアルコキシシランについては、R2、R3及びxは、上記で定義され、R4は、n=0~10である、一般式CnH2nを有するアルキルリンカーであり、Qは、エポキシ基、チオール基、又は置換若しくは非置換ビニル基、アリル基、アクリレートエステル基、又はメタクリレートエステル基である。n=6~10であるアルコキシシラン、例えば、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン(MOS)又は8-メタクリロキシオクチルトリエトキシシランは、より長いリンガー基(linger group)が樹脂の処理粒子の分散を促進することができるため、n=0~5であるアルコキシシランよりも印刷部分の機械強度に対して更に大きな利益をもたらすことができる。例示的なアルコキシシランとしては、(3-アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPS)、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン(MOS)、8-メタクリロキシオクチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-ブテニルトリメトキシシラン、3-ブテニルトリエトキシシラン、4-ペンテニルトリエトキシシラン、4-ペンテニルトリメトキシシラン、5-ヘキセントリメトキシシラン、5-ヘキセンメチルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシ(7-オクテン-1-イル)シラン、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、トリメトキシオキシ[2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル)エチル]シラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び3-メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。代替として又は追加で、これらのアルコキシシランのいずれかの短鎖ポリシロキサンオリゴマー及びコオリゴマー、例えば、4~3500cSt、例えば、4~10cSt、4~20cStを有するものが使用されてよい。このようなオリゴマーは、シリカ表面への付着点として機能することができる多数のアルコキシ側鎖を有する。特に適切なオリゴマー及びコオリゴマーは、R5Si[(OR2)xR3
3-x]を用いて製造することができ、R5は、C1-C30分枝アルキル及び直鎖アルキル、アルケニル、及びC3-C10シクロアルキル、及びC6-C10アリールからなる群から選択され、R2及びR3は、独立してメチル又はエチルであり、xは、1、2、又は3であり、R4Qについては、R4及びQは上記で定義され、好ましくは、Qはビニル、アクリレートエステル又はメタクリレートエステルである。例示的なポリシロキサンオリゴマーとしては、ビニルトリメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、及びこれらのいずれかのコポリマー、のオリゴマーヒドロシレート(hydrosylates)が挙げられ、Gelestから市販されている。一実施形態において、ポリシロキサンオリゴマーは、500~3500cStの粘度を有するメタクリロキシプロピルトリメトキシシランのオリゴマーヒドロシレート(hydrosylate)である。ポリシロキサンオリゴマーが使用される場合、0.4~10基R5/nm2、例えば、1~6基R5/nm2又は2~5基R5/nm2を提供するために十分な量で表面に存在することができる。
【0043】
上述のような、基Qを有するアルコキシシラン又はポリシロキサンオリゴマーでコロイダルシリカを表面処理する例示的な方法は、水性反応混合物によって行われる。反応混合物は、適切な量のQ含有アルコキシシラン又はオリゴマーとインキュベートされ、乾燥される。Q含有アルコキシシラン又はオリゴマーの量は、約0.4~10Q基/nm2のシリカを付着させるために十分である。アルコキシシランモノマーの場合、0.4~10分子/nm2のシリカに相当する。水性反応混合物中のシリカの量は、反応混合物の総重量を基準にして約5~70wt%である。典型的に、反応混合物中のシリカの量は、約20wt%以上(例えば、約25wt%以上)、あるいは約35wt%以上(例えば、約40wt%以上)である。したがって、反応混合物中のシリカの量は、約10~65wt%(例えば、約15~60wt%)、又は約20~50wt%(例えば、約25~45wt%)とすることができる。
【0044】
反応混合物は、約50wt%以下の有機溶媒、例えば、約20wt%以下の有機溶媒を含む。適切な有機溶媒としては、水混和性有機溶媒が挙げられ、好ましくは、アルコキシシランが少なくとも部分的に溶解するものである。水混和性有機溶媒の非限定的な例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、テトラヒドロフラン、アセトン、及び類似の溶媒が挙げられる。反応混合物は、典型的に塩基性であり、好ましくは、8~11、例えば、8.5~10又は9~9.5のpHを有する。あるいは、反応混合物は、酸性であってもよく、例えば、2~6、又は4~5.5のpHを有する。
【0045】
水性コロイダルシリカ分散液及びQ含有アルコキシシラン又はオリゴマーは、反応混合物を適切な方法によって提供するために組み合わせることができる。一実施形態において、Q含有アルコキシシラン又はオリゴマー及び水性コロイダルシリカ分散液は、混合又は撹拌しながら組み合わされ、シリカ粒子と処理剤との間の接触が促進される。混合又は撹拌は、混合装置又は撹拌装置を使用するなどの方法によって達成することができる。適切な装置の例としては、パドルスターラー、放射状流羽根車又は軸流羽根車、ホモジナイザー、ボールミル、及び類似の装置が挙げられる。Q含有アルコキシシラン又はオリゴマーは、一度に添加してもよく、又はそれぞれが別々に反応することを可能にした2以上の分割量で添加してもよい。
【0046】
反応混合物は、Q含有アルコキシシラン又はオリゴマー処理剤がコロイダルシリカと反応(例えば、シリカ粒子の表面のシラノール基と反応)することを可能にする温度で維持することができる。理論に束縛されることを望むものではなく、反応条件下でアルコキシシラン基が加水分解してシラノールを生成し、次に、シラノールがシリカの表面のシラノール及び/又は加水分解した処理剤の他の分子と縮合する、と仮定される。結果として、シリカの表面には、表面に付着した単一分子に加えて、加水分解したアルコキシシランのオリゴマー及びポリマー又はシロキサンオリゴマーが含まれてよい。概して、反応混合物は、約15℃~80℃、又は約20℃~70℃などの、約5℃~100℃の温度で、約5分以上(例えば、約30分以上)、又は約60分以上(例えば、約120分以上、又は約180分以上)維持される。より長い反応時間(例えば、5~10時間、10~20時間、又は20時間より更に長い、例えば、20~30時間)が、使用する特定の反応条件(例えば、温度及び試薬の濃度)に応じて必要とされる場合がある。
【0047】
表面処理シリカ粒子は、反応混合物から単離させ、乾燥させることができる。表面処理シリカ粒子に関して本明細書で使用する用語「乾燥させる(dry)」及び「乾燥させる(dried)」は、水及び他の液相溶媒、反応物、副産物、及び存在し得る他の液体成分を含む、反応混合物の液体成分が実質的に又は完全にないことを意味する。同様に、本明細書で使用する用語「乾燥(drying)」は、表面処理シリカ粒子から反応混合物の液体成分を除去する工程について言及する。
【0048】
表面処理シリカ粒子は、乾燥前に反応混合物から単離することができ、又は表面処理シリカ粒子は、反応混合物から直接乾燥させることができる。表面処理シリカ粒子を反応混合物から単離するために、適切な方法を使用することができる。適切な方法としては、濾過、遠心分離、及び当業者に知られている他の方法が挙げられる。当該粒子は、透析濾過又は透析によって精製されてよい。あるいは、表面処理されたシリカ粒子は、分散液の形態で使用されてよい。例えば、共沸蒸留技術を使用して、表面処理されたシリカ粒子をアルコールなどの有機溶媒に溶媒交換してもよい。
【0049】
表面処理シリカ粒子は、反応混合物から単離した後、又は反応混合物から直接、表面処理シリカ粒子から反応混合物の揮発性成分を蒸発させることにより、乾燥させることができる。反応混合物の揮発性成分の蒸発は、熱及び/又は減圧を使用して達成することができる。熱を使用する場合、表面処理シリカ粒子は、例えば、オーブン又は他の同様の装置を使用して、適切な乾燥温度まで加熱することができる。選択された乾燥温度は、少なくとも部分的には、蒸発を必要とする反応混合物の特定の成分次第である。典型的に、乾燥温度は、約70℃以上(例えば、約80℃以上)、又は約120℃以上(例えば、約130℃以上)などの約40℃以上(例えば、約50℃以上)である。したがって、乾燥温度は、約60℃~200℃(例えば、約70℃~175℃)、又は約80℃~150℃(例えば、約90℃~130℃)などの約40℃~250℃(例えば、約50℃~200℃)の範囲内に概ね収まる。
【0050】
表面処理シリカ粒子は、有用な蒸発速度を提供する圧力で乾燥させることができる。約120℃以上(例えば、約120℃~約150℃)の乾燥温度を使用する場合、約125kPa以下(例えば、約75kPa~約125kPa)の乾燥圧力が適切である。約120℃未満の乾燥温度(例えば、約40℃~120℃)では、約100kPa以下(例えば、約75kPa以下)の乾燥圧力が有用である。当然ながら、反応混合物の揮発性成分を蒸発させるための唯一の方法として、減圧(例えば、約100kPa以下、75kPa以下、又は50kPa以下の圧力)を使用することができる。
【0051】
表面処理シリカ粒子は、他の方法で乾燥することもできる。例えば、噴霧乾燥を使用して表面処理シリカ粒子を乾燥させることができる。噴霧乾燥は、表面処理シリカ粒子を含む反応混合物又はその一部を微細な霧として乾燥室内に噴霧することを含み、微細な霧を熱風と接触させて、反応混合物の揮発性成分の蒸発を引き起こす。あるいは、表面処理シリカ粒子は、凍結乾燥によって乾燥させることができ、反応混合物の液体成分は、固相に変換(すなわち凍結)され、その後、真空を適用することによって気相に変換される。例えば、表面処理シリカ粒子を含む反応混合物を適切な温度(例えば、約-20℃以下、又は約-10℃以下、あるいは-5℃以下)にもっていき、反応混合物の液体成分を凍らせることができ、真空を適用して反応混合物の液体成分を蒸発させて、乾燥疎水性シリカ粒子を提供することができる。
【0052】
代替として又は追加で、コロイダルシリカ粒子は、両方の全内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8895145号及び/又は米国特許第6830811号に記載されるシロキサン表面処理剤で修飾されてよく、又は当業者に知られている方法を使用して他のシロキサンで修飾されてもよい。
【0053】
代替として又は追加で、シリカ-ポリマー複合粒子は、液状積層造形のためのプレポリマー組成物において使用されてよい。例示的なシリカ-ポリマー複合粒子としては、全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、US9568847、US2010160491、US20190264127に記載のもの、及びシリカ-ポリマー複合粒子の表面の少なくとも一部で露出したシリカを有するシリカ-ポリマー複合粒子をもたらす、当業者に知られている他の方法が挙げられる。
【0054】
例えば、US9586847では、シリカ-ポリマー複合粒子は、第1疎水化剤とコロイダルシリカ分散液とを組み合わせることによって製造される。疎水化及び液状積層造形法におけるその後の使用のために本明細書に記載されるコロイダルシリカのいずれかを使用して、シリカ-ポリマー複合粒子を製造することができる。液状積層造形用途の場合、第1疎水化剤は、好ましくは式[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qを有し、R2、R3、R4、Q及びxは、上記で定義される。適切な第1疎水化剤としては、上記の[R3
3-x(OR2)x]SiR4Qの説明に関連して列挙した例示的なアルコキシシラン及び当業者に知られている他のものが挙げられる。シリカ粒子は、第1疎水化剤とインキュベートされ、その後、第1疎水化剤は、適切な開始剤の添加によって重合される。得られたシリカ-ポリマー複合粒子は、その表面に基Qを有する。代替として又は追加で、シリカ粒子は、第1疎水化剤の前に、又はシラン処理剤については第1疎水化剤と同時に、上述の表面処理剤のいずれかを使用して、表面処理剤で表面処理されてよい。
【0055】
シリカ-ポリマー複合粒子は、上述の表面処理剤のいずれかを使用して表面処理されてよい。例えば、シリカ-ポリマー複合粒子は、コロイダルシリカについて上述の表面処理剤で表面処理されてよい。シリカ-ポリマー複合粒子の好ましい表面処理剤は、上述のような基Q、例えば、メタクリルオキシ基、アクリルオキシ基、ビニル基を有するものである。
【0056】
粒子組成物は、乾燥粒子組成物(例えば、乾燥粉末)として、又はシリカ系(コロイダルシリカ又はシリカ-ポリマー複合)粒子を含む分散液として配合することができる。分散液は、適切な溶媒、例えば、水単独、又は水と共溶媒、処理剤、又は処理されたシリカ粒子の分散液に一般的に使用されるいずれかの種類の添加剤とを含むことができる。代替として又は追加で、分散液は、液状積層造形工程で使用される樹脂のオリゴマーに分散された、又は樹脂の適切な希釈剤に分散されたシリカ系粒子を含んでよい。実施例に示されるように、シリカ系粒子の溶媒分散液を積層造形の液体樹脂と組み合わせることにより、分散液の品質が促進される。特定の理論に束縛されることなく、十分に分散された溶媒分散液を樹脂に混合することにより、粉末形態のシリカ系粒子を樹脂に完全に分散させるために必要な剪断が低減又は回避されると考えられている。任意の適切な溶媒を使用してよい。好ましくは、溶媒は、液状積層造形工程に使用される樹脂のための良溶媒でもある。例示的な溶媒としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、テトラヒドロフラン、及びアセトンなどの極性溶媒が挙げられる。
【0057】
樹脂は、光造形法、CLIP、DLS、又は他の液状積層造形工程に適したいずれかの樹脂であってよい。樹脂の典型的な種類としては、メタクリレート樹脂、エポキシ樹脂及びオキセタン樹脂などのフリーラジカル硬化性樹脂、並びにヒドロキシ末端ポリエーテルなどのヒドロキシ含有樹脂、ポリエステル、及びポリウレタンなどの反応性樹脂が挙げられる。あるいは、反応性樹脂は、ビニル基、アクリレート基、又はメタクリレート基で終端されてよい(例えば、メタクリル終端ポリウレタン)。これらの樹脂類は、単独で使用してよく、又は互いにいずれかの組み合わせで使用してもよい。シリコーン樹脂も同様に使用してよい。
【0058】
プレポリマー組成物は、樹脂の種類に応じて、開始剤、例えば、カチオン開始剤又はフリーラジカル開始剤、若しくはその両方を更に含んでよい。重合中の光収率を増加させる増感剤を使用してもよい。当業者であれば、プレポリマー組成物の樹脂と共に使用するための適切な開始剤を容易に選択する。本明細書に記載のシリカ及びシリカ-ポリマー複合粒子(集合的に「シリカ系粒子」)と共に使用するために適した樹脂及び開始剤は、両方の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、US5972563及びUS9457515に記載のものを含む。
【0059】
液状積層造形のためのプレポリマー組成物に有用であり得る追加の成分としては、衝撃改良剤、レオロジー改良剤、染料、顔料、酸化防止剤、湿潤剤、フリーラジカル連鎖移動剤、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤、本明細書で提供されるシリカ系粒子以外の追加の充填剤、及び当業者に知られている他の添加剤が挙げられる。
【0060】
積層造形は、複雑な形状のポリマー成形品を製造するために長い間使用されてきた。得られる物品の重要な特性は、最終使用用途によって異なるが、引張、圧縮、又は剪断強度などの機械的特性、耐薬品性、及び熱的特性を含んでよい。さらに、液状積層造形に使用される未硬化樹脂システムは、独自の性能要件を有する。例えば、光造形法では、各層が堆積した後、新しい樹脂層が加工対象物の下に素早く流れるように、未硬化樹脂の粘度を十分に低くする必要がある。同様に低い粘度又はより低い粘度が、連続工程に必要とされる。樹脂は、加工対象物に添加するために、好ましくはその形状を大きく歪ませることなく、適切に硬化しなければならない。本明細書で提供されるシリカ系粒子は、液状積層造形のためのプレポリマー系において、これら及び他の所望の特性を促進することができる。
【0061】
一実施形態において、シリカ系粒子は、重合中にプレポリマー組成物の架橋に関与することができる。例えば、シリカ系粒子は、重合に関与することができる表面に、基Q、例えば、アクリレート及び他の二重結合含有基を有してよい。これにより、粒子と周囲のポリマーとの間に共有結合相互作用が提供される。トリアクリレート及び他の多官能基も同様に架橋を促進することができる。このような架橋は、表面に存在する反応性基を有しない粒子によって提供される以上の追加の機械的強度を提供することができる。
【0062】
代替として又は追加で、基Qは、積層造形後に行われる反応に関与してよい。例えば、プレポリマー組成物は、異なる機構を経由して重合する2つ以上の異なるモノマー又はオリゴマーを有してよい。第1モノマー又はオリゴマーは、例えば、光重合開始剤を使用して、光造形法、CLIP、DLS、又は同様の方法中に重合されてよい。第2モノマー又はオリゴマーは、例えば、熱活性化開始剤を使用して、堆積後工程中に重合されてよい。基Qは、この第2重合工程で重合し得る。この工程のための例示的な基Qとしては、エポキシ基、イソシアネート基、及びヒドロキシ基が挙げられる。
【0063】
代替として又は追加で、基Qは、追加のコモノマーを、それがなければプレポリマー組成物の他の成分との溶解性又は混和性が低い可能性があるプレポリマー組成物に供給してよい。異なるモノマー及びオリゴマーが混和できる場合でも、硬化ポリマーは混和できない場合があり、シリカは重合中の相分離を防止するための界面活性剤として作用する場合がある。
【0064】
代替として又は追加で、シリカ系粒子は、重合に関与する以外に加工対象物に他の機能性をもたらす反応種で表面処理されてよい。例えば、プレポリマー組成物が縮合重合を受ける場合、シリカ系粒子は、さもなければ逆(解重合)反応を促進する種で表面処理されてよい。このような粒子は、樹脂の分解又は腐食を遅らせることによって、完成品の高温安定性を促進することができる。
【0065】
代替として又は追加で、シリカ系粒子は、単に熱を吸収することによって、印刷部品の熱劣化を防止することに役立つ可能性がある。このような用途は、追加の熱容量を提供するために、より高い粒子充填量から利益を得ることができる。非凝集コロイダルシリカは、それ自体又はシリカ-ポリマー複合体のいずれかであっても、同様の表面処理を行った場合においても、フュームドシリカ粒子又は焼成シリカ粒子よりも粘度上昇への寄与が少なくなる。より高い充填量による追加の補強又は剛性は、完成品が高温での変形に耐えることに役立つこともできる。
【0066】
本明細書に記載のシリカ系粒子の使用は、重合樹脂に機械的補強を提供することもできる。シリカ系粒子は、0.1~50wt%、例えば、1~40%、2~30%、又は5~25%の充填レベルで組み込むことができる。このような補強は、引張及び/又は曲げ弾性率、引張及び/又は曲げ強度、及び破断伸びなどの特性を向上させることができる。例えば、表面処理コロイダルシリカ粒子を5%の充填レベルで使用すると、アクリル樹脂で製造された部品の引張弾性率を、このような粒子を使用せずに製造された部品に対して、少なくとも7%、例えば、7%~10%、又は7%~15%向上させることができる。同様に、曲げ弾性率は、少なくとも3.5%、例えば3.5%~5%、又は3.5%~8%向上させることができる。シリカ-ポリマー複合粒子を5%の充填レベルで使用すると、このような粒子を含まないアクリル樹脂に対して、引張破断伸びを少なくとも20%、例えば20%~30%、又は25%~35%又は40%増加させることができる。シリカ系粒子とポリマーとの相互作用は、ポリマーの選択及びシリカの表面処理によって調整することができる。シリカ系粒子の基Qとポリマーとの間の化学的相互作用により、ポリマーを架橋させることができる。このような相互作用の頻度及び濃度に応じて、粒子は樹脂に従来の補強と組み合わせて追加の架橋を提供することができる。例えば、架橋がない場合でも、粒子は亀裂伝播を中断することによって、破壊靭性及び耐衝撃性を向上させることができる。幾つかの実施形態において、Qについての反応性基の選択により提供される追加の架橋は、製造された部品における引張特性を改善することができる。さらに、粒子がポリマー鎖の動きを変化させるため、シリカ系粒子を使用して、ガラス転移温度、低温脆性、熱膨張係数、又は融点などの熱特性を調整する、あるいは熱偏向性能を向上させることができる。ポリマーマトリックスと相互作用できる表面処理は、未処理の粒子と比較して、シリカ系粒子の補強効果を向上させることができる。幾つかの実施形態において、nが6~10である基Qを使用する表面処理は、基Qを使用しない表面処理又はnが5以下である基Qを使用する表面処理に関して、改善された機械的特性を提供する。
【0067】
それにも関わらず、シリカは、好ましくは、未硬化樹脂の粘度を劇的に増加させない。このような粘度の増加により、樹脂をSLA、CLIP、又は同様の方法を使用して処理することがより困難になる。特定の実施形態において、シリカの使用は、未充填樹脂に対して、樹脂の粘度を500cP、例えば、450cP又は350cPを超えて増加させない。
【0068】
代替として又は追加で、表面処理剤は、樹脂、プレポリマー又はその両方とのシリカ系粒子の親和性及び/又は分散性を向上させることができる。これによって、シリカ系粒子が加工対象物の表面外観及び他の特性に影響を及ぼすことを助けることができる。シリカ系粒子によって提供される補強は、印刷部品の耐傷性を向上させることができる。プレポリマー組成物の流動特性を変化させることにより、より滑らかな表面仕上げを可能にし、個々のポリマー層間の差異を低減させることもできる。
【0069】
表面処理は、他の特性を向上させることもできる。例えば、疎水化されたシリカ系粒子は、完成部品への水分の移行を遅らせて、湿潤環境での膨潤を低減することもできる。界面化学は、例えば、印刷部品と接触することが予想される化学物質と混和しない、又は混和性若しくは溶解性が制限されている表面処理を選択することによって、耐薬品性を提供するように調整することもできる。代替として又は追加で、シリカ系粒子は、完成品に表面粗さ又は艶消し仕上げを付与するために、十分に高い充填量で使用することができる。
【0070】
シリカ系粒子は、プレポリマー組成物のレベリングを促進することもできる。シリカ系粒子によって提供されるレオロジー制御は、加工対象物の下にプレポリマーの滑らかな層を迅速に形成することを可能にする。これにより、層が堆積された後、追加のプレポリマー組成物が加工対象物の下に流れる時間を減少させることによって、処理能力を向上させる。より薄いポリマーの層を堆積させることを可能にすることによって、より高い解像度の形状を形成することもできる。連続工程において、レベリングの向上は、プレポリマー組成物の不均一な流れによる最終製品の欠陥を防止することによって、処理能力及び解像度を向上させる。
【0071】
シリカ系粒子は、プレポリマー製剤の異なる成分を分散させるために使用することもできる。例えば、コロイダルシリカは、例えば、粒子安定化エマルションの形成によって、さもなければ混和しない可能性がある異なるモノマー又はオリゴマーの混合物を安定化させるために使用されてもよい。代替として又は追加で、シリカ系粒子は、プレポリマー組成物の他の固体添加剤の分散を安定化するために使用されてよい。例えば、シリカ系粒子は、固体添加剤とプレポリマー組成物のモノマー及び/又はオリゴマーとの間の界面エネルギーを低下させ、それによって、分散剤として作用する表面処理を有してよい。このような添加剤は、ガラスフィラー、アルミナ、ジルコニア、チタニア、チタン酸ジルコン酸鉛、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化スズ、硫酸マグネシウムなどのセラミックス、金属フィラー、ポリマー繊維、粘土、セルロース、及び当業者に知られている他の添加剤を含んでよい。このような添加剤は、比較的等軸の粒子の形態又はウィスカーの形態であってよい。アドマテックス社のADMAFINE製品などのより大きなシリカ粒子は、粉末として入手可能であり、本明細書に記載の液状積層造形工程における使用に対しても適している。
【0072】
シリカ系粒子は、硬化プレポリマー組成物の微細構造を上手に処理するために使用されてもよい。例えば、シリカ系粒子は、開始剤を捕捉するアミンなどの基で表面処理されてよい。このことは、開始剤を粒子に集結させ、粒子からの距離の関数として、硬化ポリマーの分子量を変化させる。幾つかの実施形態において、表面付近の分子量は、材料の大部分よりも著しく低い可能性があり、完成品にコアシェル形態を提供する。あるいは、液状積層造形のための成分の保存可能期間を改善するために、同じ化学を使用してよい。例えば、開始剤含有シリカが、使用直前にプレポリマー組成物の残りの成分と混合される場合、液体成分は、保存中の重合により抵抗することができる可能性がある。
【0073】
シリカ系粒子は、液状積層造形工程で通常使用される他の成分と組み合わせて使用することができる。例えば、上記の1つ又は複数の添加剤は、本明細書で提供されるシリカ系粒子以外の他の機構によって分散される場合であっても、使用することができる。代替として又は追加で、プレポリマーは、レベリング剤、界面活性剤、可塑剤、又は他のポリマーを含んでよい。
【0074】
シリカ系粒子は、光造形法、CLIP、又はDLSでの使用に適したプレポリマー組成物に使用することができる。これらの工程は異なるが、類似の原理で作動する。基材をプレポリマー組成物と接触させて、例えば、リザーバー内に置き、基材と平行な表面を有する固体ポリマーの層を基材上に形成することによって、加工対象物を開始するために、化学線への曝露によってプレポリマー組成物を画像形式で重合させる。放射線は加工対象物の表面上を直線的に、又は二次元的なパターンでラスター化されるレーザーなどの光源によって放出することができる。SLAなどの層ごとの工程において、加工対象物は、次にリザーバーから取り出される。追加のプレポリマー組成物をリザーバーに充填し、加工対象物をリザーバーに入れ替え、造形面がプレポリマー組成物に接触するようにし、プレポリマー組成物を再び画像形式で硬化させ、加工対象物に追加の固体ポリマーを堆積させる。固化したプレポリマーの表面は、加工対象物及び最終的な3D印刷部品の造形面を画定し、当該部品は、断面を横断する軸に沿って、順次層を構築することによって造形される。当該工程の各反復は、三次元物体の連続した部分を加工対象物に堆積させる。連続工程において、加工対象物は、三次元物体が形成されるまで、リザーバーから取り出す必要はない。むしろ、プレポリマー組成物は、リザーバーへの新たなプレポリマー組成物の再供給と同時に、画像形式で硬化される。加工対象物は、基材及び断面を横断する軸に沿ってリザーバーから離れるように移動される。したがって、液体プレポリマー組成物は、三次元物体の各後続の連続部分が組成物の重合によって形成されるときでさえ、常に加工対象物と接触している。結果として、プレポリマー組成物が重合して固体を形成すると同時に、新たなプレポリマー組成物が、露出した造形表面に接触することになる。加工対象物は、逐次的方法で構築されるが、個々の「層」は区別がつかない。積層造形を行う例示的な方法は、US10589512、US10792855、US5015424、US5151813、及びUS9034236に記載されており、これらの両方の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
本発明は、本質的に例示に過ぎないことを意図する以下の実施例によって更に明らかにされる。
【実施例0076】
実施例1
本実施例において、コロイダルシリカは、メタクリレート基を有するアルコキシシランで表面処理された。
【0077】
三つ口フラスコに、547gのコロイダルシリカ分散液(直径115nm、pH9.3、固形分40%)、469gの脱イオン水、及び573mLのイソプロピルアルコールを充填し、続いて2.7gの3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPS)を充填した。当該混合物を、周囲温度で200~250rpmで4時間撹拌した。次に、45分かけて60℃まで加熱昇温し、撹拌しながら1時間45分維持した後、追加で10.9gのMPSを添加し、当該混合物を60℃で更に6時間インキュベートした。当該混合物を一晩冷却し、大型結晶皿に移し、追加のイソプロピルアルコールでフラスコの全内容を確実に除去した。当該混合物をホットプレート上で120℃で数時間時々手動で撹拌しながら加熱し、次に、さらに撹拌することなく90℃で一晩乾燥させた。更なる乾燥を、120℃で6時間、オーブンで行った。得られた白色粉末をIKA M20 Universal Mill(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC)で粉砕した。
【0078】
実施例2
本実施例において、様々なコロイダルシリカ及びシリカポリマー混合物の性能を、市販のSLA法で評価した。
【0079】
5wt%の試料を形成するために、7.5gのTG-C191オクチルトリメトキシシラン処理コロイダルシリカ(直径110~115nm、Cabot Corporation)、TG-C110ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)処理コロイダルシリカ(直径110~115nm、Cabot Corporation)、実施例1のMPS処理コロイダルシリカ(これは粒径80nmを有し、米国特許第9568847号に従って製造され、第1疎水化剤としてMPSが使用され、第2疎水化剤は使用されていないシリカ-ポリマー複合粒子である。)、及びHMDZ表面処理を有するAtlas100シリカ-ポリマー複合粒子(Cabot Corporation)を、Cole-Parmer超音波プロセッサーを使用して、30%の振幅、2sのパルス間隔、及び5秒のパルス時間で光造形法用透明アクリル樹脂(Formlabs、透明樹脂LPGPCL04)の別々の試料142.5gに分散させた。分散品質を向上させるため、シリカ系試料を、全てのシリカ系粉末を取り込ませるまで、約5分間隔で少しずつ樹脂に添加した。混合物を約15分間放置して冷却した後、光造形3Dプリンター(Formlabs Form2)の樹脂タンクに移した。25wt%の試料は、37.5gのシリカ系粒子及び112.5gの樹脂を使用して、同様の方法で調製した。同様に、少なくとも150gの樹脂を3Dプリンターのタンクに充填し、ニート樹脂試料も調製した。厚さ約12mm~13mm及び長さ6.4mm~7mmのドッグボーン形状及びバー形状の試料を、印刷軸が試料をひずませた角度に対して垂直で、試料の平面内にあるように調製した。
【0080】
5wt%の複合粒子を充填した試料は、半透明であり、5%のコロイダルシリカで調製した試料は、不透明であった。しかし、粒子は、両方の試料において、肉眼ではよく分散しているように見えた。同様に、25wt%のコロイダルシリカを充填した試料において、良好な分散状態が観察された。シリカ-ポリマー複合体粒子は25wt%充填では分散が十分ではなかったが、追加で超音波処理を行うことにより、分散が改善される可能性があると考えられる。
【0081】
ドッグボーン試料は、引張試験に供され、滑らかな破断面を持つ脆性破壊を示した。コロイダルシリカ及びHMDZ処理シリカポリマー複合粒子の添加により、引張強度及び引張弾性率は増加したが、破断伸びは、概ね減少した。さらに、コロイダルシリカ及びシリカ-ポリマー複合粒子の使用により、それぞれ曲げ弾性率が増加した。これらの結果は、コロイダルシリカの5%及び25%充填と複合粒子の5%充填の両方で観察された。5%充填では、MPSで処理したコロイド粒子は、オクチルトリメチルシランで処理したコロイド粒子と比較して、優れた破断伸度、引張弾性率及び引張強度を提供した。25%充填時の複合粒子の分散不良が、機械的性能に影響を及ぼしたものと仮定される。
【0082】
コロイダルシリカ及びシリカ-ポリマー複合粒子を使用した場合、それぞれショアA硬さに殆ど影響を及ぼさないことが分かった。
【0083】
実施例3
本実施例において、コロイダルシリカは、メルカプトプロピルトリメトキシシランで修飾される。
【0084】
メルカプトプロピルトリメトキシシラン(7.07g)を、177.8g(45%固形分)のLudox CL-Xコロイダルシリカ分散液(110~115m2/g、Sigma-Aldrichから入手可能)、64gの水、及び160gのメタノールの撹拌混合物に添加する。次に、当該混合物を50℃で90時間加熱する。当該混合物を室温まで冷却し、窒素下で撹拌せずに90℃で一晩、窒素下で乾燥させる。更なる乾燥を、窒素下で120℃で6時間、オーブンで行う。得られた白色粉末を、IKA M20 Universal Mill(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC)で粉砕する。
【0085】
実施例4
本実施例において、コロイダルシリカは、メタクリレート基を有するアルコキシシランで修飾される。
【0086】
三つ口フラスコに、547gのコロイダルシリカ分散液(直径100nm、pH9.3~9.6、固形分40%)、469gの脱イオン水、及び573gのイソプロピルアルコールを充填し、続いて2.7gの3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPS)を充填する。当該混合物を、周囲温度で200~250rpmで4時間撹拌する。次に、45分かけて60℃まで加熱昇温し、撹拌しながら1時間45分維持した後、追加で10.9gのMPSを添加し、混合物を60℃で更に6時間インキュベートする。当該混合物を一晩冷却し、大型結晶皿に移し、追加のイソプロピルアルコールでフラスコの全内容を確実に除去する。当該混合物をホットプレート上で120℃で数時間時々手動で撹拌しながら加熱し、次に、更に撹拌することなく90℃で一晩乾燥させる。更なる乾燥を、120℃で6時間、オーブンで行う。得られた白色粉末をIKA M20 Universal Mill(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC)で粉砕する。
【0087】
実施例5
本実施例において、コロイダルシリカは、メタクリレート基を有するアルコキシシランで表面処理された。
【0088】
三つ口フラスコに、500gのコロイダルシリカ分散液(直径50nm、pH9.3~9.6、固形分44%)、516.5mLの脱イオン水、及び573mLのイソプロピルアルコールを充填し、続いて3.6gの3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPS)を充填した。当該混合物を、周囲温度で200~250rpmで4時間撹拌した。次に、45分かけて60℃まで加熱昇温し、撹拌しながら1時間45分維持した後、追加で14.6gのMPSをシリンジポンプで1mL/minで添加し、混合物を60℃で更に6時間インキュベートした。当該混合物を一晩冷却し、大型結晶皿に移し、追加のイソプロピルアルコールでフラスコの全内容を確実に除去した。当該混合物をホットプレート上で120℃で数時間時々手動で撹拌しながら加熱し、次に、更に撹拌することなく90℃で一晩乾燥させた。更なる乾燥を、110℃で6時間、オーブンで行った。得られた白色粉末をIKA M20 Universal Mill(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC)で粉砕した。
【0089】
実施例6
本実施例において、コロイダルシリカは、メタクリレート基を有するアルコキシシランで表面処理された。
【0090】
三つ口フラスコに、851gのコロイダルシリカ分散液(直径115nm、pH9.3、固形分40%)及び470mLのイソプロピルアルコールを充填し、続いて2.5gの3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPS)を充填した。当該混合物を、周囲温度で200~250rpmで4時間撹拌した。次に、45分かけて60℃まで加熱昇温し、撹拌しながら1時間45分維持した後、追加で9.7gのMPSを5分かけて添加し、混合物を60℃で更に6時間インキュベートした。当該混合物を噴霧乾燥して、1.1wt%の炭素含有量(Leco C-200炭素分析装置)を有する粉末を得た。
【0091】
実施例7
本実施例において、光造形用樹脂にシリカ系粒子を充填し、機械試験用部品を形成した。
【0092】
25wt%のマスターバッチを形成するために、実施例1のMPS処理コロイダルシリカ、及び粒径80nmを有し、米国特許第9568847号に従って製造され、第1疎水化剤としてMPSが使用され、第2疎水化剤は使用されていない80nmシリカ-ポリマー複合粒子の各11gを、別々の33gの光造形用透明アクリル樹脂(Formlabs、FLGPCL04透明樹脂)試料に、手動混合で樹脂に少量の粒子を添加し、その後、約45分間追加で手動混合を行うことによって、分散させた。次に、Cole-Parmer社の超音波プロセッサーを使用して、30%の振幅、2sのパルス間隔、及び5秒のパルス時間で処理し、その後、2分間の手動混合を行った。超音波+手動の混合順番で5回実施した。5%のシリカ系粒子を含むレットダウン(let down)を、36gのマスターバッチの十分なニート樹脂を組み合わせて180gの混合物を作成し、少なくとも20分間手動で撹拌することによって調製した。次に、マスターバッチに使用した超音波処理を、レットダウンに対して繰り返した。次に、当該組成物を、光造形3Dプリンター(Formlabs Form2、解像度100μm)の樹脂タンクに移した。同様に、少なくとも150gの樹脂を3Dプリンターのタンクに充填し、ニート樹脂試料も調製した。寸法が64.00mm×12.80mm×6.40mmであるバー状の試料は、曲げ試験のために、長軸が印刷軸と平行になるように調製した。寸法が57.15mm×9.53mm×2.03mmであるドッグボーン形状の試料を、その長軸を印刷軸に対して約45°に傾け、試料自体は印刷軸の平面内にある状態で調製した。MPS処理コロイダルシリカを含む試料は、引張弾性率(1900MPa)がニート樹脂(1760MPa)より改善され、曲げ弾性率(43433MPa)がニート樹脂(41685MPa)より改善された。シリカ-ポリマー複合粒子を含む試料は、引張破断伸び(6.4%)がニート樹脂(5.0%)に対して改善された。曲げ強度、曲げ伸び、引張強度は、いずれの実験試料も有意な変化を示さなかった。
【0093】
実施例8
粒子径23nm、115nm、330nmを有するコロイダルシリカの水性分散液を使用した(表1)。三つ口フラスコに、表2に規定されるように、コロイダルシリカ分散液、脱イオン水、水酸化アンモニウム、及びイソプロピルアルコールをその順序で充填し、その後、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPS)又は8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン(MOS)のいずれかの第1処理剤(TA)充填を行った(表3参照)。当該混合物を、周囲温度で200~250rpmで4時間撹拌した。次に、30分かけて60℃まで加熱昇温し、撹拌しながら1時間30分維持した後、表2に規定するように第2TA充填を添加し、混合物を60℃で更に6時間インキュベートした。添加した処理剤の総量は、全シリカ表面積1nm
2あたり4分子のTAに相当する。当該混合物を一晩冷却し、大型結晶皿に移し、追加のイソプロピルアルコールでフラスコの全内容を確実に除去した。試料8-1、8-2及び8-5については、当該混合物をホットプレート上で120℃で時々手動で撹拌しながら数時間加熱し、その後、更に撹拌することなく90℃で一晩乾燥させた。得られた白色固形物をIKA M20 Universal Mill(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC)で粉砕した。試料8-3及び8-4については、当該試料は、IPA(各150mL)の複数回の添加から繰り返し濃縮され、毎回、次のIPA部分を添加する前に、水の共沸除去によって試料を湿潤ペーストにすることが行われた。これを合計6回行い、最後のIPAを添加した後、水を殆ど含まないIPA分散液を得た。得られた分散液中のシリカの濃度を表2に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0094】
試料8-1~8-5は、以下のように光硬化性樹脂と組み合わせた。試料8-1、8-2、及び8-5については、30gのシリカを、ガラススライド上に落としたわずかな試料に対する光学顕微鏡を用いた目視検査によって、試料が分散していることが明らかになるまで、真空機能付きFlackTek DAC600 Speedmixerで、570gのFormlabs V4透明光樹脂と結合させた。具体的には、6つの15mmのイットリア安定化ジルコニア粉砕媒体(FlackTek社)、85gの樹脂、5gのシリカをMax250カップに充填した。カップに蓋をして、800rpmで30秒間混合した後、カップの側面に沿って蓄積した材料を洗浄し、樹脂に戻した。30s/800rpm/洗浄の手順を繰り返し、その後、樹脂混合物を2300rpmで2分ずつ3サイクル混合し、各混合サイクルの後に2分の冷却時間をおいた。次に、樹脂混合物を30mBar又は最大真空力下で、1500rpmで30秒かつ1000rpmで7分の2サイクルで脱気し、各1000rpmで混合した後に、樹脂混合物を2分間冷却した。125μmのペイントスクリーンを使用してセラミック媒体を取り除き、混合物を5%のシリカに希釈するために十分な樹脂を加えた。レットダウンを、1500rpmで30秒、その後、1000rpmで7分間混合した。この手順を繰り返すことにより、SLAによって積層造形に十分な5%シリカ/樹脂混合物を得た。実施例8-4及び8-5については、570gのFormlabs V4透明光樹脂を大型結晶皿に充填し、これに最終IPAフリー樹脂組成物中の5%固形分充填量を提供するために十分なシリカ分散液を添加した。当該混合物を磁気的に撹拌し、結晶皿の上部を掃除する窒素ガスをわずかに流しながら、光から保護された60℃で一晩維持した。
【0095】
MPSで処理されたフュームドシリカ(Evonik Industries社製Aerosil R711シリカ)を使用して、アクリル樹脂に5wt%の分散液を調製した。30gのシリカを、ガラススライド上に落としたわずかな試料の光学顕微鏡を用いた目視検査によって、試料が分散していることが明らかになるまで、真空機能付きFlackTek DAC600 Speedmixerで、570gのFormlabs V4透明光樹脂と結合させた。具体的には、95gの樹脂、及び5gのシリカをMax250カップに充填した。カップに蓋をして、1500rpmで30秒間混合した後、カップの側面に沿って蓄積した材料を洗浄し、樹脂に戻した。30s/1500rpm/洗浄の手順を繰り返した。一度、シリカが完全にウェットアウトした後、6つの15mmのイットリア安定化ジルコニア粉砕メディア(FlackTek社)を、分散液に添加した。樹脂混合物を2300rpmで2分ずつ3サイクル更に混合し、各混合サイクルの後に2分の冷却時間をおいた。最後に、125μmのペイントスクリーンを使用してセラミック媒体を取り除いた。この手順を、SLAによって積層造形に十分な5%シリカ/樹脂混合物を約600g得るまで繰り返した。
【0096】
未硬化樹脂混合物の粘度特性を、40mm 2°コーンを使用するAR2000exレオメーター(TA Instruments社)で、25℃及び35℃で0.01~1000s
-1の剪断速度で測定し、表4に示す。樹脂混合物は、ASTM D638-14(引張試験及び伸び試験)、ASTM D790-03(曲げ特性)、及びASTM D256-04(アイゾット衝撃)による機械試験に必要な形状を形成するために、製造業者の指示に従い、Form3 SLA 3Dプリンター(Formlabs社)で印刷された。引張試験については、165mm(ゲージ長50mm)の長さ(製造時のz軸)、13mmの幅、3.2mmの厚さのドッグボーン形状の試料を5つ用意した。3個の長方形試料(長さ=127mm、幅=12.7mm、厚さ=3.2mm)を、曲げ試験用として用意した。10個の長方形試料(長さ=63.5mm、幅=12.7mm、厚さ=6mm)を、アイゾット衝撃試験用として用意した。アイゾット衝撃試験については、再現性を高めるために、ASTM規格で規定された大きさを有する切り込みで印刷され、印刷物に切り込みはなかった。印刷部品は、Form Wash装置(Formlabs社)で、印刷部品の粘着性がなくなるまで、イソプロピルアルコールで10~15分間洗浄した。30分間の空気乾燥の後、印刷部品をForm Cure装置(Formlabs社)で65℃、30分間、後硬化し、追加で405nmの光照射を行った。
【表4】
【0097】
表4のデータより、表面処理コロイダルシリカを使用することによって、樹脂粘度に著しく悪影響を及ぼすことなく、印刷部品の機械的性能が概ね向上したことを示す。対照的に、MPS処理フュームドシリカは、室温での樹脂の粘度を劇的に上昇させた。コロイダルシリカのMOSによる表面処理は、23nm及び115nmのコアシリカ粒子に対する耐衝撃性の改善において、MPSよりも優れた。曲げ弾性率は、粒子径の減少(表面積の増加)に伴い増加し、MOSは、115nmのコアシリカにおいてMPSよりも優れた性能を発揮した。引張弾性率は、全てのシリカ試料で透明樹脂に対して増加した。
【0098】
上記の方法を使用して、10%及び15%充填量の試料8-1及び8-2並びにMPS処理フュームドシリカで追加の分散液を製造したが、樹脂の量は適切に調整した。これらの分散液の25℃、剪断速度100s
-1における粘度を
図1に示し(x=フュームドシリカ、菱形=試料8-1、三角形=試料8-2)、フュームドシリカのチキソトロピー効果により、充填量を増やすと粘度が劇的に上昇することを示す一方で、コロイダルシリカの樹脂分散液は、充填量による粘度の変化が比較的少ないことを示す。20%充填量の試料8-1を含む追加の分散液を、規模は小さいが上記と同様の方法を使用して調製し、約1250cPの、同様に低い粘度を示した。
【0099】
樹脂のシリカ分散液の品質を、印刷3D部分のSEM画像によって評価した。試料は、断面を露出するように切断され、その後、SPI PON812エポキシに埋め込まれて硬化された。切断面は、一連の炭化ケイ素研磨ディスク(Ted Pella,Inc)及びアルミナ研磨スラリー(5μm以上の仕上げ品質用)(Pace Technologies社製)を使用して、50nmの最終仕上げに研磨された。試料はバス超音波処理を行い、流水で洗浄して研磨の残渣を除去した。イソプロパノールで最終洗浄し、乾燥させた後、Denton Desk Vスパッタコーターを使用して、SEM画像中に導電性を付与するために十分な量の白金で表面をスパッタコーティングした。インレンズ二次電子SEM画像は、Zeiss UltraPlus Field Emission SEMを使用して、1kV/30um開口部、~3-3.5mm作動距離で撮影した。画像は、1024×768ピクセルの解像度で、TIFF形式で保存した。低倍率画像(1000X)は、SEMのLine Integration設定を使用して、スキャン速度6、ノイズ除去のためにN=30で収集された。5K画像及び25K画像は、Frame Integration設定、スキャンスピード3、N=50で撮影された。これによって、画素の滞留時間を短縮し、線積分の場合に見られる帯電効果及びビームダメージ/コンタミネーションの沈着を抑えた。MPS処理コロイダルシリカのIPA分散液から調製した樹脂(試料8-3)は、本質的に凝集が見られない、非常によく分散した単一粒子を示した(
図2A及び2B)。乾燥シリカ(例:試料8-1)の樹脂への分散は、良好な分散に達するために機械的な高剪断混合を強く必要とするが、幾つかの凝集体が依然として硬化部品に見られる可能性がある(
図2C及び2D)。MOS処理した115nm粒子(
図3A及び3B)は、対応するMPS処理した115nm粒子(
図3C及び3D)(試料8-3及び4)よりも樹脂中に容易に分散する。
【0100】
実施例9
試料8-1のコロイダルシリカ及びTG-C110シリカを、実施例8でシリカとV4樹脂を組み合わせるために使用した際の同じ方法及び割合で、Formlabs Flexible80A樹脂と組み合わせた。未硬化樹脂の粘度を、実施例8に記載したように、25℃及び35℃で、100s
-1及び1000s
-1で測定した(表5)。実施例8に記載したように、3D印刷試料を製造した。
【表5】
【0101】
柔軟な樹脂にシリカを添加すると粘度が増加するが、その増加は樹脂が印刷できないほど大きくはない。得られた3D印刷部品は、シリカ補強(コロイダルシリカを含む約6.1~約6.2MPa対含まない4.9MPa)の結果として、ニート樹脂で印刷した部品に関して増加した剛性(弾性率)を示すが、試料8-1を含む印刷部品は、TG-C110シリカを含む部品よりも高い引張強度を示した。
【0102】
実施例10
本実施例において、コロイダルシリカは、メタクリレート基を有するアルコキシシラン加水分解物で表面処理された。
【0103】
3つ口フラスコに、382gのコロイダルシリカ分散液(直径115nm、pH2.5、固形分31.4%)、10gの脱イオン水、その後3.12gの5N NH4OHを充填した。最終的なpHは、9.5~9.8であった。この撹拌混合物に196mLのイソプロピルアルコールを添加し、続いて、6gのメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、オリゴマー加水分解物(H-MPS、1000~3000cSt、Gelest)を添加した。当該混合物を、周囲温度で200~250rpmで4時間撹拌した。次に、45分かけて60℃まで加熱昇温し、撹拌しながら7時間30分維持した。当該混合物を一晩冷却し、大型結晶皿に移し、追加のイソプロピルアルコールでフラスコの全内容を確実に除去した。当該混合物をホットプレート上で120℃で数時間時々手動で撹拌しながら加熱し、次に、さらに撹拌することなく120℃で一晩乾燥させた。得られた白色粉末をIKA M20 Universal Mill(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC)で粉砕し、約125gの微細な白色粉末を生成した。
【0104】
実施例11
本実施例において、コロイダルシリカは、メタクリレート基を有するアルコキシシランで低いpHで表面処理された。
【0105】
3つ口フラスコに、382gのイオン交換コロイダルシリカ分散液(直径115nm、pH2、固形分31.4%)、10gの脱イオン水、及び196mLのイソプロピルアルコールを充填し、続いて4.7gの3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPS)を充填した。当該混合物を、周囲温度で200~250rpmで4時間撹拌した。次に、45分かけて60℃まで加熱昇温し、撹拌しながら7時間30分維持した。当該混合物を一晩冷却し、大型結晶皿に移し、追加のイソプロピルアルコールでフラスコの全内容を確実に除去した。当該混合物をホットプレート上で120℃で数時間時々手動で撹拌しながら加熱し、次に、更に撹拌することなく120℃で一晩乾燥させた。得られた白色粉末をIKA M20 Universal Mill(IKA Works,Inc.,Wilmington,NC)で粉砕した。
【0106】
実施例12
表6に示されるような試料の固体状態
29Si交差偏極電磁角回転 (CP/MAS) NMRスペクトルは、4mm二重共鳴MASプローブを有するBruker Avance II-400分光器を使用して、9.4T(
29Siに対して79.49MHz及び
1Hに対して400.19MHz) で記録した。8kHzのマジック角度回転速度において、良好で安定したHartmann-Hahnマッチング条件を得るために、交差偏光接触時間中に、70%~100%のプロトンチャンネルRF振幅のリニアランプを使用した。Hartmann-Hahnマッチに最適化された
29Si RFフィールドは、49KHzである。
29Si CP/MAS測定の接触時間は、10msと設定した。データ取得期間中は、42kHzの磁場強度を持つ複合パルスプロトンデカップリング(TPPM)を適用した。典型的に、3秒のリサイクル遅延で2000回の繰り返しスキャンを行い、データを取得した。NMR測定の全てを、室温で行った。
29Si化学シフトは、トリス(トリメチルシリル)シランの外部標準を使用するテトラメチルシランを基準としている。表6の結果(単位=シリカ表面1nm
2あたりの処理化学薬品の分子)は、表面処理剤がシロキサン結合によってシリカに共有結合していることを示す。
【表6】
【0107】
本発明の好ましい実施形態に関する前述の説明は、例示かつ説明の目的で提示されたものである。それは、網羅的であること、又は開示された正確な形態に本発明を限定することを意図していない。修正及び変形は、上記の教示の観点から可能であり、又は本発明の実施から獲得することができる。実施形態は、当業者が、想定される特定の用途に適するように、様々な実施形態で、様々な修正を加えて本発明を利用できるように、本発明の原理及びその実用化を説明するために選択され、説明された。本発明の範囲は、本書に添付された特許請求の範囲及びその同等物によって定義されることが意図される。
【0108】
特許請求の範囲に記載された内容は、以下のとおりである。