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特開2024-23407有効成分を含むマイクロニードルアレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023407
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】有効成分を含むマイクロニードルアレイ
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20240214BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61M37/00 530
A61M37/00 520
A61M37/00 505
A61K9/00
A61K45/00
A61K47/36
A61P25/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023199870
(22)【出願日】2023-11-27
(62)【分割の表示】P 2021507826の分割
【原出願日】2019-08-15
(31)【優先権主張番号】62/764,685
(32)【優先日】2018-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュー、フーティエン
(72)【発明者】
【氏名】ユー、シャオジエ
(72)【発明者】
【氏名】スチュワード、ランス イー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】マイクロニードルの少なくとも遠位端に形成されたシェル層に有効成分が局在するマイクロニードルアレイを提供する。
【解決手段】患者の皮膚表面を通して有効成分を導入するためのマイクロニードルアレイ10は、ベース層14、ベース層14から突出する複数のマイクロニードル12、および有効成分を含むシェル層20を含むことができる。マイクロニードル12のそれぞれは、近位部分18および遠位部分16を有する細長い本体を含み、近位部分18は、ベース層14に取り付けられている。マイクロニードル12のそれぞれはまた、少なくとも1つの溶解性ポリマーを含むことができる。有効成分は、細長い本体の少なくとも一部の周りに延びるシェル層20に組み込まれている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロニードルアレイであって、
ベース層と、
前記ベース層から突出する複数のマイクロニードルであって、前記マイクロニードルのそれぞれおよび前記ベース層は、第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスからなる単一の構造的に連続した構成要素であり、前記複数のマイクロニードルのそれぞれは、前記ベース層と連続する近位部分を有する細長い本体であり、前記細長い本体は、その前記近位部分から遠位部分に向かって概して先細になり、不規則な本体形状を画定する、複数のマイクロニードルと、
前記複数のマイクロニードルの前記細長い本体を少なくとも部分的に包み込んで、その周りに流れ込み、その前記不規則な本体形状に対して不規則な表面境界を画定する薬物運搬シェル層であって、それぞれの細長い本体のそれぞれの不規則な本体形状とは異なる事前定義された外側プロファイルをそれぞれが有して、前記アレイが一貫したマイクロニードルプロファイルを有することを可能にし、第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスに分散された神経毒を含む、薬物運搬シェル層と を含み、
前記薬物運搬シェル層および前記細長い本体は、前記不規則な表面境界にまたがる前記第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスおよび前記第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスの重なりを含む一体化されたヒアルロン酸ポリマーマトリックスを介して融合されている、マイクロニードルアレイ。
【請求項2】
前記第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスは前記第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスのポリマー濃度よりも高いポリマー濃度を有する、請求項1に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項3】
前記第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスは前記第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスの比重量よりも大きい比重量を有する、請求項1に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項4】
前記薬物運搬シェル層は前記細長い本体の前記遠位部分のみを覆う、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項5】
前記薬物運搬シェル層は前記マイクロニードルの前記細長い本体を完全に包み込む、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項6】
前記神経毒はボツリヌス毒素を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項7】
前記ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素血清型A(BoNT/A)、ボツリヌス毒素血清型B(BoNT/B)、ボツリヌス毒素血清型C1(BoNT/C1)、ボツリヌス毒素血清型D(BoNT/D)、ボツリヌス毒素血清型E(BoNT/E)、ボツリヌス毒素血清型F(BoNT/F)、ボツリヌス毒素血清型G(BoNT/G)、ボツリヌス毒素血清型H(BoNT/H)、ボツリヌス毒素血清型X(BoNT/X)、およびモザイクボツリヌス毒素および/またはその変異体からなる群から選択される、請求項6に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項8】
前記マイクロニードルアレイは、約0.01から約100U/cmの前記神経毒を患者に送達するように構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項9】
前記マイクロニードルアレイは約0.01から約100,000U/cmの範囲の神経毒の充填濃度(loading concentration)を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項10】
前記第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスは、約0.000001重量%から約0.01重量%の前記神経毒を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項11】
前記第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックス、前記第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックス、またはその両方は、非架橋ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水的に修飾されたヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項12】
前記第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスおよび前記第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスはそれぞれ独立して、約150kDaから約6MDaの範囲の分子量を有するヒアルロン酸を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項13】
前記第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックス、前記第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックス、またはその両方は、グリコサミノグリカン、多糖類、コラーゲン、エラスチン、フィブロイン、デンプン、グルコマンナン、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つをさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項14】
前記近位部分および前記ベース層は有効成分を含まない、請求項1から13のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項15】
前記第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスは、非架橋ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水的に修飾されたヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせからなる、請求項1から14のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項16】
前記複数のマイクロニードルのそれぞれは約25ミクロンから約3000ミクロンの範囲の長さを有する、請求項1から15のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項17】
前記複数のマイクロニードルのそれぞれは実質的に同じ長さを有する、請求項1から16のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項18】
前記複数のマイクロニードルのそれぞれは円錐形またはピラミッド形の形状を有する、請求項1から17のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項19】
前記複数のマイクロニードルのそれぞれは約1ミクロンから約30ミクロンの範囲の先端幅を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項20】
前記マイクロニードルアレイのマイクロニードルの密度は約5マイクロニードル/cmから約1000マイクロニードル/cmの範囲である、請求項1から19のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項21】
前記神経毒は前記薬物運搬シェル層に均一に分散している、請求項1から20のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項22】
マイクロニードルアレイを形成するための方法であって、
複数の細長いウェルを含むマイクロニードルアレイ型を提供するステップと、
神経毒および約1重量%から約40重量%のヒアルロン酸を含む第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を提供するステップと、
前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を前記細長いウェルのそれぞれの下部に分注するステップと、
約25重量%から約50重量%のヒアルロン酸を含む第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を提供するステップであって、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の粘度は前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液の粘度よりも高い、ステップと、
前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注した後に、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を前記細長いウェルのそれぞれに分注するステップであって、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の高い粘度により、前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液の少なくとも一部が前記細長いウェルの前記下部から移動し、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の周りを流れ、それによって神経毒含有外層を形成する、ステップと、
前記型内の前記第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を乾燥させて、そこから突出する複数のマイクロニードルを有するベース層を含むマイクロニードルアレイを形成するステップであって、各マイクロニードルは、細長い本体および前記神経毒含有外層を含む、ステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注した後、前記細長いウェルのそれぞれは部分的にのみ満たされ、前記細長いウェルのそれぞれの上部は満たされないままである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を前記細長いウェルのそれぞれに分注するステップは、前記細長いウェルを前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液で過剰に充填するステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記型内の前記第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を乾燥させるステップは、前記第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を前記型内にある間に加熱するステップを含む、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記型内の前記第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を乾燥させるステップは、前記第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を前記型内にある間に室温で乾燥させるステップを含む、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注した後、真空を適用するステップをさらに含む、請求項22から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注するステップは、前記第1のヒアルロン酸溶液を前記型に流し込むステップを含み、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注するステップは、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を前記第1のヒアルロン酸溶液上に流し込み、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液に外圧を加えるステップを含む、請求項22から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記圧力を加えるステップは、前記圧力を所定の時間維持するステップをさらに含み、それにより、前記第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液のそれぞれからのヒアルロン酸ポリマーの一部が、前記第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の界面で一体化される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液、またはその両方は、約6.0から約8.0の範囲のpHを有する水性緩衝液をさらに含む、請求項22から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記水性緩衝液はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはヒスチジン緩衝液である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の少なくとも一部は前記型の過剰充填部分またはベース部分に配置され、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液は前記型の前記過剰充填部分に配置され、それにより、前記型は前記マイクロニードルアレイの前記ベース層を画定する、請求項22から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記マイクロニードルアレイを前記マイクロニードルアレイ型から分離するステップをさらに含む、請求項22から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記神経毒含有外層は前記マイクロニードルの前記細長い本体の遠位部分のみを覆う、請求項22から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記神経毒含有外層は前記マイクロニードルの前記細長い本体を完全に包み込んでいる、請求項22から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記神経毒はボツリヌス毒素を含む、請求項22から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素血清型A(BoNT/A)、ボツリヌス毒素血清型B(BoNT/B)、ボツリヌス毒素血清型C1(BoNT/C1)、ボツリヌス毒素血清型D(BoNT/D)、ボツリヌス毒素血清型E(BoNT/E)、ボツリヌス毒素血清型F(BoNT/F)、ボツリヌス毒素血清型G(BoNT/G)、ボツリヌス毒素血清型H(BoNT/H)、ボツリヌス毒素血清型X(BoNT/X)、およびモザイクボツリヌス毒素および/またはその変異体からなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記マイクロニードルアレイは約0.01から約100U/cmの前記神経毒を患者に送達するように構成されている、請求項22から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記マイクロニードルアレイは約0.01から約100,000U/cmの範囲の神経毒の充填濃度を有する請求項22から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液は約0.00000001から約1.0mg/mLの前記神経毒を含む、請求項22から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液、またはその両方の前記ヒアルロン酸は、非架橋ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水的に修飾されたヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つである、請求項22から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液、またはその両方の前記ヒアルロン酸は、それぞれ独立して約50kDaから約6MDaの範囲の分子量を有する、請求項22から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液、またはその両方は、グリコサミノグリカン、多糖類、コラーゲン、エラスチン、フィブロイン、デンプン、グルコマンナン、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つをさらに含む、請求項22から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液は有効成分を含まない、請求項22から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記細長いウェルのそれぞれは約25ミクロンから約3000ミクロンの範囲の深さを有する、請求項22から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記細長いウェルのそれぞれは実質的に同じ深さを有する、請求項22から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
各前記細長いウェルは円錐形またはピラミッド形の形状を有する、請求項22から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
各マイクロニードルは約1ミクロンから約30ミクロンの範囲の先端幅を有する、請求項22から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記マイクロニードルアレイ型は、約5マイクロニードル/cmから約1000マイクロニードル/cmの範囲の前記マイクロニードルアレイのマイクロニードルの密度を生成するように構成されている、請求項22から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記神経毒は前記神経毒含有外層に均一に分散している、請求項22から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
請求項22から50のいずれか一項によって作成されたマイクロニードルアレイ。
【請求項52】
患者を治療するための方法であって、請求項1から21および51のいずれか1つのマイクロニードルアレイを提供するステップと、前記マイクロニードルアレイを患者の皮膚表面に適用して、前記皮膚表面に複数のマイクロニードルを埋め込むステップと、を含む、方法。
【請求項53】
外層の前記ヒアルロン酸の少なくとも一部は溶解し、前記マイクロニードルは前記皮膚表面に埋め込まれて前記神経毒を前記患者に放出する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記マイクロニードルアレイは、額のしわ、目じりのしわ、眉間のしわ、小じわ、多汗症、瘢痕、乾癬、炎症性皮膚疾患を治療するために使用される、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
マイクロニードルアレイであって、
ベース層と、
前記ベース層から突出する複数のマイクロニードルであって、前記複数のマイクロニードルのそれぞれは、前記ベース層と連続する近位部分を有する細長い本体であり、前記細長い本体は、概略、その前記近位部分から遠位部分に向かって先細になり、不規則な本体形状を画定する、複数のマイクロニードルと、
前記複数のマイクロニードルの前記細長い本体を少なくとも部分的に包み込んで、その周りに流れ込み、その前記不規則な本体形状に対して不規則な表面境界を画定する少なくとも1つの薬物運搬シェル層であって、それぞれの細長い本体のそれぞれの不規則な本体形状とは異なる事前定義された外側プロファイルを有し、有効成分を含む、少なくとも1つの薬物運搬シェル層と、
を含む、マイクロニードルアレイ。
【請求項56】
前記少なくとも1つの薬物運搬シェル層および前記細長い本体は一緒に融合される、請求項55に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項57】
前記有効成分は抗原、抗体、または毒素を含む、請求項55から56のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項58】
前記有効成分は神経毒である、請求項55から57のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項59】
前記神経毒はボツリヌス毒素である、請求項58に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項60】
前記複数のマイクロニードルは円錐形またはピラミッド形の形状を有する、請求項55から59のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項61】
前記円錐形またはピラミッド形の形状は、それらに関連するピッチ角を有し、その結果、前記複数のマイクロニードルは、点または先端に向かって先細になる、請求項60に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項62】
前記ベース層、前記複数のマイクロニードル、および前記薬物運搬シェル層はそれぞれ少なくとも1つのポリマーを含む、請求項55から61のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項63】
前記ベース層および前記複数のマイクロニードルは同じ少なくとも1つのポリマーを含む、請求項62に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項64】
前記有効成分はポリマーに分散している、請求項62に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項65】
前記少なくとも1つのポリマーは溶解可能である、請求項62に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項66】
前記少なくとも1つのポリマーはヒアルロン酸である、請求項62に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項67】
前記ベース層は第1のポリマーを含み、前記複数のマイクロニードルは第2のポリマーを含み、前記薬物運搬シェル層は第3のポリマーを含む、請求項55から61のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項68】
マイクロニードルアレイであって、
ベース層と、
前記ベース層から突出する複数のマイクロニードルであって、前記複数のマイクロニードルのそれぞれは、第1のポリマーを含み、かつ前記ベース層と連続する近位部分を有する細長い本体であり、前記細長い本体は、一般に、その前記近位部分から遠位部分に向かって先細になり、不規則な本体形状を画定する、複数のマイクロニードルと、
前記複数のマイクロニードルの前記細長い本体を少なくとも部分的に包み込んで、その周りに流れ込み、その前記不規則な本体形状に対して不規則な表面境界を画定する少なくとも1つの薬物運搬シェル層であって、前記少なくとも1つの薬物運搬シェル層は、それぞれの細長い本体のそれぞれの不規則な本体形状とは異なる事前定義された外側プロファイルを有し、第2のポリマーに分散された有効成分を含む、少なくとも1つの薬物運搬シェル層と、
を含む、マイクロニードルアレイ。
【請求項69】
前記第1のポリマーは前記第2のポリマーよりも遅い速度で溶解する、請求項68に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項70】
前記細長い本体は有効成分をさらに含む、請求項68から69のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項71】
前記第2のポリマーは前記第1のポリマーよりも遅い速度で溶解する、請求項68から70のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項72】
前記第2のポリマーは、約0.1から約2重量%の濃度の高分子量ヒアルロン酸を含む、請求項71に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項73】
前記第1のポリマーは約5重量%から約40重量%の濃度の低分子量ヒアルロン酸を含む、請求項71に記載のマイクロニードルアレイ。
【請求項74】
マイクロニードルアレイを形成するための方法であって、
複数の細長いウェルを含むマイクロニードルアレイ型を提供するステップと、
有効成分を含む第1の流体を提供するステップと、
前記細長いウェルのそれぞれの下部に前記第1の流体を分注するステップと、
第2の流体の粘度が前記第1の流体の粘度よりも高い第2の流体を提供するステップと、
前記第1の流体を分注した後、前記第2の流体を前記各細長いウェルに分注するステップであって、前記第2の流体の前記高い粘度は、前記第1の流体の少なくとも一部を前記細長いウェルのそれぞれの前記下部から前記第2の流体の周りを流れるように変位させて、それにより、有効成分含有外層を形成する、ステップと、
前記型内の前記第1および第2の流体を乾燥させて、そこから突出する複数のマイクロニードルを有するベース層を含むマイクロニードルアレイを形成するステップであって、各マイクロニードルは、細長い本体および前記有効成分含有外層を含む、ステップと、
を含む、方法。
【請求項75】
前記第1の流体はヒアルロン酸ポリマー溶液を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記有効成分は神経毒を含む、請求項74から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記第2の流体は、溶媒と混合されたヒアルロン酸から本質的になるヒアルロン酸ポリマー溶液を含む、請求項74から76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記第2の流体は少なくとも1つのポリマーを含む、請求項74から77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記第2の流体は1つまたは複数の追加のポリマーをさらに含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記第2の流体は賦形剤をさらに含む、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
マイクロニードルアレイを形成するための方法であって、
複数の細長いウェルを含むマイクロニードルアレイ型を提供するステップと、
有効成分を含む第1の流体を提供するステップと、
前記型の上の下部に前記第1の流体を分注するステップと、
第2の流体の粘度が前記第1の流体の粘度よりも高い第2の流体を提供するステップと、
前記第1の流体を分注した後、前記第2の流体を前記第1の流体の上に流し込むステップと、
圧縮の第1の段階で前記第2の流体の上に圧力を加え、前記第1の流体を前記細長いウェルの中および前記第2の流体の周りに流し、それにより、マイクロニードルの細長い本体の周りに有効成分含有シェル層を形成するステップと、
圧縮の第2の段階で一定期間前記圧力を維持し、前記有効成分含有シェル層を前記マイクロニードルの前記細長い本体に結合するマトリックスを作成するステップと、
前記型内の前記第1および第2の流体を乾燥させて、そこから突出する複数のマイクロニードルを有するベース層を含むマイクロニードルアレイを形成するステップであって、各マイクロニードルは、細長い本体および前記有効成分含有シェル層を含む、ステップと、
を含む、方法。
【請求項82】
前記第2の流体を前記第1の流体の上に流し込むステップは、前記型の前記細長いウェルを過剰に満たし、前記型の前記細長いウェルの上に単一の連続層を形成する、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記第1の流体および前記第2の流体はヒアルロン酸ポリマー溶液を含む、請求項81から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記第1の流体は5重量%未満の160kDAヒアルロン酸を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記第1の流体を分注する前記ステップは真空下で行われる、請求項81から84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
マイクロニードルアレイを形成するための方法であって、
複数の細長いウェルを含むマイクロニードルアレイ型を提供するステップと、
有効成分を含む第1の流体を提供するステップと、
第2の流体の粘度が前記第1の流体の粘度よりも高い前記第2の流体を提供するステップと、
前記第1の流体および前記第2の流体を前記マイクロニードルアレイ型に同時に注入するステップと、
前記マイクロニードルアレイ型を圧縮して、前記第1の流体と前記第2の流体との間に一体の界面を形成するステップと、
前記型内の前記第1および第2の流体を乾燥させて、そこから突出する複数のマイクロニードルを有するベース層を含むマイクロニードルアレイを形成するステップであって、各マイクロニードルは、細長い本体および有効成分含有層を含む、ステップと、
を含む、方法。
【請求項87】
前記細長い本体および前記有効成分含有層は互いに構造的に一体化されている、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記第1の流体および第2の流体はポリマーを含む、請求項86から87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記細長い本体は、前記有効成分含有層のポリマーの濃度よりも高いポリマーの濃度を有する、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記細長い本体は前記有効成分含有層の比重よりも大きい比重を有する、請求項86から89のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で2018年8月15日出願の米国仮出願第62/764,685号からの優先権および利益を主張し、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、一般に、マイクロニードルアレイおよびマイクロニードルアレイを作製および使用するための方法、より具体的には、各マイクロニードルの少なくとも遠位端に形成されたシェル層に有効成分が局在するマイクロニードルアレイおよび関連する方法に関する。
【0003】
皮膚へのまたは皮膚を介した薬物送達は、多くの薬物が局所送達中に治療的に適切な速度および量で角質層を貫通することができないために制限される可能性がある。皮膚を通る薬物透過性を改善するために取られてきた1つのアプローチは、薬物分子が通過するのに十分な大きさの複数の開口を可逆的に作成することである。この目的のために、たとえば、化学的透過増強、イオントフォレーシス、エレクトロポレーション、超音波圧力波発生、ならびに高周波および/または熱アブレーションを含むいくつかの技術が採用されてきた。これらのアプローチは、場合によっては問題になることがあり、最も一般的なのは、作成される開口部のサイズが小さいことによる。たとえば、生物学的実体などのより大きな薬物分子は、これらの技術を使用して作成された開口部を通過するには大きすぎることがよくある。サイズが大きいため、生物学的実体はしばしば皮下注射によって投与されるが、これは患者にとって苦痛であり、特定の皮膚表面積を治療するために望ましくないことがある。
【0004】
皮膚に開口部を作成するための代替アプローチは、マイクロニードルアレイを利用する。マイクロニードルアレイを患者の皮膚表面に適用すると、複数の皮膚貫通により、薬物分子が通過できるようになる。マイクロニードルによって作成された開口部は、個々のマイクロニードルの断面サイズによって決定され、通常、幅が数ミクロンである。このため、マイクロニードルによって作成された開口部は、治療機能を実行するために、抗原、抗体、毒素などのより大きな薬物分子を皮膚を通して導入することを可能にすることができる。マイクロニードルアレイは、サイズが小さく、貫通深さが限られているため、皮下注射とは異なり、一般的に患者に著しい痛みを引き起こさない。
【0005】
マイクロニードルアレイは、皮膚を通して薬物分子を送達するためにいくつかの方法で利用することができる。「ポークアンドパッチ」アプローチでは、マイクロニードルアレイを皮膚に適用してから除去して開口部を作成し、次に薬物または薬物パッチを作成した開口部に局所的に適用する。開口部の急速な治癒は、このアプローチの有効性を制限する可能性がある。「ポークアンドフロー」アプローチでは、中空のマイクロニードルを使用して皮膚を貫通し、マイクロニードルを所定の位置に残して、皮膚を通して液体薬物を送達するための導管として機能させる。
【0006】
「コートアンドポーク」アプローチでは、薬物でコーティングされたマイクロニードルを使用して開口部を作成し、皮膚を通して薬物分子を送達する。このアプローチは、少量しか必要とされない薬物送達システムにとって魅力的である。ただし、コートアンドポークアプローチも問題になることがある。たとえば、マイクロニードルの薬物のコーティングは、コーティングできる量が制限される可能性があり、コーティングは、各マイクロニードル間の均一性を欠く傾向がある。これは、マイクロニードルアレイが所望の薬物用量を確実に送達することを困難にする。さらに、マイクロニードルの薬物コーティングは、不適切に取り扱われると、損傷や薬物の損失を起こしやすい可能性がある。さらに、薬物コーティングされたニードルは、コーティング中の薬物が熱、光、および酸化剤などの薬物分解剤にさらされるため、不安定性の問題に直面する。
【0007】
さらに、活性剤が毒素、たとえば神経毒である場合、少量のナノグラムサイズの用量のみが必要とされる可能性があるが、薬物がマイクロニードルアレイ全体に分散している場合、用量はタイムリーな方法で効果的に送達されない可能性がある。したがって、そのような場合、マイクロニードルは、マイクロニードルの表面で毒素の全用量を提供するように構成することが重要であり、それにより、少量の毒素が患者に送達されるために容易にアクセス可能であると同時に、送達のための「コートアンドポーク」アプローチの問題が回避される。
【発明の概要】
【0008】
本出願は、マイクロニードルアレイ、および一部の実施形態では、薬物分子が充填された分解性マイクロニードルが皮膚を貫通するために使用され、しばらくすると、薬物を充填したマイクロニードルは、その基質から外れ、皮膚に保持される「ポークアンドリリース」薬物送達用途に使用できるマイクロニードルアレイを開示する。一部の実施形態によれば、薬物分子または他の有効成分は、「ポークアンドパッチ」、「コートアンドポーク」、または「ポークアンドフロー」薬物送達用途を目的とする従来のマイクロニードルアレイよりも、本明細書の開示の態様を利用することにより、この「ポークアンドリリース」送達モチーフにおいてより効率的に利用することができる。
【0009】
本明細書に開示されるマイクロニードルアレイの一部の実施形態は、アレイによって運ばれる有効成分の本質的に全体が患者に送達可能であり、「ポークアンドパッチ」、「コートアンドポーク」、または「ポークアンドフロー」薬物送達用途を目的とする従来のマイクロニードルアレイよりも高い有効成分充填が達成可能であるような方法で有効成分を組み込む。さらに、本明細書で論じられるマイクロニードルアレイの一部の実施形態は、様々な状態を治療する際に利用することができ、毒素などの生物学的実体を患者に送達するのに特に効果的であり得る。
【0010】
一部の実施形態では、マイクロニードルは、毒素が分散された生分解性シェル層マトリックスに毒素を組み込み、さらに、アレイ内の各マイクロニードル間で薬物分布の均一性を提供する。このシェル層マトリックスは、マイクロニードルを部分的または完全に包み込むか、あるいはマイクロニードルのチップの少なくとも一部を覆う「キャップ」を形成することができる。マトリックスは、熱、光、酸化剤などの環境分解剤から毒素を保護するのに役立つが、迅速または制御された送達のために容易にアクセスできる針の表面に用量全体を維持もする。さらに、シェル層マトリックスはマイクロニードルの残りの部分と一体化されているため、「コートアンドポーク」ニードル構成よりも損傷を受けにくくなっている。
【0011】
一部の実施形態では、生分解性シェル層に毒素を組み込んだマイクロニードルを作製するための方法が提供される。従来の作製方法は、送達プラットフォームのすでに形成された針への薬液またはマトリックスのスプレーコーティングまたはオーバーモールドを含んでいたが、本明細書に開示される少なくとも一部の実施形態の態様によれば、ヒアルロン酸などの高分子量生分解性ポリマーの使用は、これらの方法が支持できないものになり得るという認識である。特に、高分子量ポリマーは、十分な濃度で添加されると、スプレーコーティングに好ましくない流動特性を有する粘性溶液を形成する。さらに、本明細書に開示される少なくとも一部の実施形態の態様によれば、すでに形成された針へのスプレーコーティングまたはオーバーモールドは、マイクロニードルの外面へのコーティングの結合または一体化が困難であるという認識である。さらに、本明細書に開示される少なくとも一部の実施形態の態様によれば、シェル層の厚さおよび空間分布(たとえば、部分的被覆または完全被覆)を制御することが困難である可能性があるという認識である。本明細書に記載の方法は、針本体のマトリックスと一体化されたマイクロニードル上の薬物含有外層(シェル層)の空間分布を制御しながら、粘性ポリマー溶液からマイクロニードルアレイを作製する方法を提供する。さらに、この方法は、作製中に薬物がマイクロニードルのコアまたは中央本体などのマイクロニードルに移動することなく、薬物を外層に維持する。
【0012】
したがって、本明細書に開示される少なくとも一部の実施形態は、マイクロニードルの本体と薬物含有外層との間の強化された結合を有利に提供し、薬物含有外層の厚さおよび分布を制御し、マイクロニードルによって運ばれる薬物の量が実際に効果的に患者に届けられることを確実にする傾向がある。これは、有効性を改善し、マイクロニードルアレイのコストを削減するだけでなく、薬物廃棄物とマイクロニードルアレイのコストも削減する。
【0013】
たとえば、薬物廃棄物の削減は、薬物の適切な適用および送達を妨げるのでアレイの有効性を低下させる、適用中の不十分な結合がマイクロニードルの表面から薬物を剪断するか別の方法で除去する、非効率的な薬物送達の代替方法と比較して達成することができる。さらに、薬物廃棄物の削減は、マイクロニードルまたはマイクロニードルチップ全体に薬物が注入されている(すなわち、コーティングされているだけでなく、マイクロニードルの本体に組み込まれている)代替方法と比較して達成することができるが、そのような代替方法では、薬物が注入されたマイクロニードルが患者に完全に注入または吸収されない場合、患者から取り出されたマイクロニードルアレイには、未使用で処分しなければならない相当なまたは有意の量の薬物が依然として含まれる。これらの非効率的な薬物送達の代替方法のいずれにおいても、マイクロニードルアレイはマイクロニードルアレイによって運ばれる実質的に全量の薬物を効果的に投与または送達することができないため、患者にとっての所望の用量は、所望の薬物用量を超える量の薬物をマイクロニードルアレイに充填することによってのみ達成することができる。対照的に、本明細書に開示されるデバイスおよび方法は、マイクロニードルアレイが所望の用量を運び、実質的にすべての所望の用量を患者に送達することを可能にし、それによりアレイおよび薬物廃棄物のコストを削減することができる。
【0014】
本明細書に開示される一部の実施形態によれば、有効成分が各マイクロニードルの薬物含有層に均一に、または各マイクロニードルの薬物含有シェル層に濃度勾配で分散または溶解され得るマイクロニードルアレイを提供することができる。たとえば、有効成分の濃度勾配は、各マイクロニードルの内側の薬物含有層から外側の薬物含有層まで、濃度の増加または減少、あるいは濃度の増加および減少の両方の異なる濃度の層を介して提供することができる。さらに、各マイクロニードルの細長い本体およびマイクロニードルアレイのベース層には有効成分がない。したがって、患者の皮膚表面への適用に続いてベース層からマイクロニードルを分離する際、ベース層がその後皮膚表面から除去されるときに、有効成分のいずれも無駄に失われることはない。各マイクロニードルは比較的小さく、少量の有効成分しか保持しないが、治療上有効な量の有効成分は、マイクロニードルの集合的な溶解または分解時に送達することができる。
【0015】
したがって、マイクロニードルアレイの一部の実施形態は、ベース層と、ベース層から突出する複数のマイクロニードルとを含むことができる。マイクロニードルのそれぞれは、近位部分および遠位部分を有する細長い本体を含み、近位部分は、ベース層に取り付けられている。マイクロニードルおよびベース層は溶解可能である。たとえば、マイクロニードルおよびベース層は、少なくとも1つの溶解性ポリマーを含むことができる。有効成分は、各マイクロニードルの細長い本体の少なくとも一部と一体化された外層を形成するポリマーマトリックスに組み込まれ、分散され、または溶解され得、有効成分は外シェル層にのみ存在する。有効成分は、外層に均一にまたは勾配的に配置することができる。
【0016】
一部の実施形態では、マイクロニードルアレイに存在する有効成分は、薬物分子または生体分子(すなわち、生物学的実体)を含む。一部の実施形態では、有効成分は、抗原、抗体、または毒素を含む。さらに一部の実施形態では、有効成分は、たとえば、ボツリヌス毒素などの神経毒である。タイプA、B、C、Dおよび/またはEのボツリヌス毒素は、マイクロニードルアレイに存在する可能性がある。一部の実施形態では、ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素血清型A(BoNT/A)、ボツリヌス毒素血清型B(BoNT/B)、ボツリヌス毒素血清型C1(BoNT/C1)、ボツリヌス毒素血清型D(BoNT/D)、ボツリヌス毒素血清型E(BoNT/E)、ボツリヌス毒素血清型F(BoNT/F)、ボツリヌス毒素血清型G(BoNT/G)、ボツリヌス毒素血清型H(BoNT/H)、ボツリヌス毒素血清型X(BoNT/X)、ボツリヌス毒素血清型J(BoNT/J)、およびモザイクボツリヌス毒素および/またはその変異体からなる群から選択される。モザイク毒素の例は、BoNT/DC、BoNT/CD、およびBoNT/FAを含む。一部の実施形態では、ボツリヌス毒素は、前述のボツリヌス毒素のいずれかのサブタイプであり得る。
【0017】
一部の実施形態では、少なくとも1つの溶解性ポリマーは、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水的に修飾されたヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0018】
一部の実施形態では、ベース層と、ベース層から突出する複数のマイクロニードルであって、マイクロニードルおよびベース層のそれぞれは、第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスからなる単一の構造的に連続した構成要素であり、複数のマイクロニードルのそれぞれは、ベース層と連続および隣接する近位部分を有する細長い本体であり、細長い本体は、一般に、その近位部分から遠位部分に向かって先細になり、不規則またはランダムな本体形状を画定する、複数のマイクロニードルと、複数のマイクロニードルの細長い本体を少なくとも部分的に包み込んで、その周りに流れ込み、その不規則な本体形状に対して不規則またはランダムな表面境界を画定する薬物運搬シェル層であって、それぞれの細長い本体のそれぞれの不規則な本体形状と異なる(varies from)事前定義された外側プロファイルをそれぞれが有して、アレイが一貫したマイクロニードルプロファイルを有することを可能にし、第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスに分散された神経毒を含む、薬物運搬シェル層と、を含む、マイクロニードルアレイが提供される。
【0019】
一部の実施形態では、細長い本体のそれぞれの周りに薬物運搬シェル層または神経毒含有外層を含むマイクロニードルアレイを形成するための方法が提供される。一部の実施形態では、この方法は、複数の細長いウェルを含むマイクロニードルアレイ型を提供するステップと、神経毒および約1重量%から約40重量%のヒアルロン酸を含む第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を提供するステップと、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を各細長いウェルの下部に分注するステップと、約25重量%から約50重量%のヒアルロン酸を含む第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を提供するステップであって、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の粘度は第1のヒアルロン酸ポリマー溶液の粘度よりも高い、ステップと、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注した後に、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を細長いウェルのそれぞれに分注するステップであって、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の高い粘度により、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液の少なくとも一部が細長いウェルの下部から移動し、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の周りを流れ、それによって神経毒含有外層を形成する、ステップと、型内の第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を乾燥させて、突出する複数のマイクロニードルを有するベース層を含むマイクロニードルアレイを形成するステップであって、各マイクロニードルは、細長い本体および神経毒含有外層を含む、ステップと、を含む。一部の実施形態では、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注した後、得られた型アセンブリ(すなわち、型に流し込まれた溶液)を圧縮して、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液の変位を支援および加速し、神経毒含有外層とベース層が一体的に形成されるように、2つのポリマー溶液を界面に沿って統合させることができる。
【0020】
使用されるヒアルロン酸の性質(たとえば、分子量濃度など)に応じて、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液は、かなり粘性であり得る。したがって、一部の実施形態では、鋳造プロセスを使用して、型内の所望の場所への流体の分注を促進することができる。鋳造プロセスは、各細長いウェルの下部または底部への第1の流体の分注を助け、結果として生じるマイクロニードルの形成を促進することができる。一部の実施形態では、鋳造プロセスは、圧力を加えること(圧縮)、溶液の分注中に真空を適用すること、遠心分離、振とう、および/または振動を含むことができる。一部の実施形態では、細長いウェルのそれぞれの下部に、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を堆積、移動、または流し込むことによって、細長いウェルのそれぞれの下部を第1のヒアルロン酸ポリマー溶液で満たすことができる。同様に、細長いウェルの残りの部分は、堆積、移動、または流し込みによって、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液で過剰に満たすことができる。一部の実施形態では、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液は、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液の上に、型内に、および/または細長いウェルのそれぞれの中に流し込むことができる。
【0021】
マイクロニードルアレイを使用して患者を治療するための方法の一部の実施形態もまた、本明細書に開示される。この方法は、患者の皮膚表面を介した有効成分の「ポークアンドリリース」送達を含み得る。より具体的には、そのような方法は、本明細書に記載のマイクロニードルアレイを提供するステップと、マイクロニードルアレイを患者の皮膚表面に適用し、それによって皮膚表面を貫通し、複数のマイクロニードルを皮膚に埋め込むステップと、を含む。マイクロニードルアレイは、ベース層と、ベース層から突出する複数のマイクロニードルと、有効成分とを含む。マイクロニードルのそれぞれは、近位部分および遠位部分を有する細長い本体を含むことができ、近位部分は、ベース層と構造的に連続している。マイクロニードルおよびベース層は、少なくとも1つの溶解性ポリマーを含む。有効成分は、各マイクロニードルの細長い本体に組み込まれ、有効成分は、各細長い本体の遠位部分にのみ、そして遠位部分の少なくとも内部に存在する。
【0022】
患者の皮膚表面に埋め込まれると、少なくとも1つの溶解性ポリマーは、生理学的条件下で時間とともに溶解または分解して、有効成分を患者に放出することができる。
【0023】
少なくとも1つの溶解性ポリマーが溶解または分解し、それによってマイクロニードルをベース層から放出した後、ベース層を患者の皮膚表面から除去することができる。その後、マイクロニードルおよびそれらに組み込まれた有効成分は、患者の体内に留まり、所望の効果を提供することができる。
【0024】
主題の技術の追加の特徴および利点は、以下の説明に記載され、説明から部分的に明らかになるか、または主題の技術の実践によって学習され得る。主題の技術の利点は、本書の書面による説明および実施形態、ならびに添付の図面で特に指摘された構造によって実現および達成されるであろう。
【0025】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方が例示的かつ説明的であり、主題の技術のさらなる説明を提供することを意図していることを理解されたい。
【0026】
本開示の例示的な実施形態の様々な特徴を、図面を参照して以下に説明する。図示の実施形態は、本開示を例示することを意図しているが、これに限定するものではない。図面は以下の図を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】一部の実施形態による、マイクロニードルアレイの側面図を提供する。
【0028】
図1B】一部の実施形態による、図1Aに示されるアレイのマイクロニードルの側面断面図を提供する。
【0029】
図2A】一部の実施形態による、別のマイクロニードルアレイの側面図を提供する。
【0030】
図2B】一部の実施形態による、図2Aに示されるアレイのマイクロニードルの側面断面図を提供する。
【0031】
図3】浸漬法またはスプレーコーティング法で予想されるマイクロニードルアレイ構成の側面断面図を示す。
【0032】
図4】一部の実施形態による、マイクロニードルアレイの上面図を提供する。
【0033】
図5A】一部の実施形態による、マイクロニードルアレイが作製される、側面から観察された例示的なプロセス概略図を示す。
図5B】一部の実施形態による、マイクロニードルアレイが作製される、側面から観察された例示的なプロセス概略図を示す。
図5C】一部の実施形態による、マイクロニードルアレイが作製される、側面から観察された例示的なプロセス概略図を示す。
図5D】一部の実施形態による、マイクロニードルアレイが作製される、側面から観察された例示的なプロセス概略図を示す。
【0034】
図6A】一部の実施形態による、本開示のマイクロニードルアレイが患者を治療するためにどのように使用されるかを示す例示的な概略図を示す。
図6B】一部の実施形態による、本開示のマイクロニードルアレイが患者を治療するためにどのように使用されるかを示す例示的な概略図を示す。
図6C】一部の実施形態による、本開示のマイクロニードルアレイが患者を治療するためにどのように使用されるかを示す例示的な概略図を示す。
【0035】
図7】一部の実施形態による、マイクロニードルアレイの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0036】
図8】一部の実施形態による、マイクロニードルアレイのX線マイクロコンピュータ断層撮影(CT)画像を示す。
【0037】
図9】一部の実施形態による、トリパンブルーを運ぶマイクロニードルの遠位部分に沿って外シェル層を有するマイクロニードルアレイの画像を示す。
【0038】
図10】一部の実施形態による、資生堂から得られる市販のマイクロニードルアレイと比較した、本明細書に開示される実施形態におけるヒアルロン酸マイクロニードルアレイの力応答対プローブ移動距離のプロットを示す。
【0039】
図11A】一部の実施形態による、本明細書に記載の色素標識マイクロニードルアレイで処理された皮膚サンプルの写真を示す。
【0040】
図11B】一部の実施形態による、皮膚サンプルの貫通の前に撮影された例示的なマイクロニードルアレイの顕微鏡写真を示す。
【0041】
図11C】一部の実施形態による、皮膚サンプルの貫通5分後に撮影された、図9Bのマイクロニードルアレイの顕微鏡写真を示す。
【0042】
図12】一部の実施形態による、ヒト死体皮膚を介した免疫グロブリンG(IgG)皮膚浸透を含む研究の結果を示す。
【0043】
図13A】マイクロニードルにトリパンブルー色素が充填された層を有するマイクロニードルアレイの顕微鏡写真画像を示す。
【0044】
図13B】マイクロニードルにトリパンブルー色素が充填された層を有するマイクロニードルアレイの断面顕微鏡写真画像を示す。
【0045】
図13C】マイクロニードルにトリパンブルー色素が充填された層を有する第2のマイクロニードルアレイの顕微鏡写真画像を示す。
【0046】
図14A】本明細書に記載の毒素充填マイクロニードルアレイパッチのラット指外転スコア(DAS)アッセイの結果を示す。
図14B】本明細書に記載の毒素充填マイクロニードルアレイパッチのラット指外転スコア(DAS)アッセイの結果を示す。
図14C】本明細書に記載の毒素充填マイクロニードルアレイパッチのラット指外転スコア(DAS)アッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下の詳細な説明では、主題の技術を完全に理解するために、多くの具体的な詳細が示されている。主題の技術は、これらの特定の詳細の一部なしで実践される可能性があることを理解されたい。他の例では、主題の技術を曖昧にしないように、よく知られた構造および技術は詳細に示されていない。本説明は、様々な実施形態の特定の詳細を記載しているが、説明は例示にすぎず、限定として解釈されるべきでは決してないことが理解されよう。さらに、当業者が考えつき得るそのような実施形態の様々な適用およびそれに対する修正もまた、本明細書に記載の一般的な概念に含まれる。
【0048】
本開示は、「ポークアンドパッチ」、「コートアンドポーク」、または「ポークアンドフロー」薬物送達用途での使用を目的とした従来のマイクロニードルアレイに関連するいくつかの課題に対処する。具体的には、マイクロニードルアレイの一部の実施形態は、マイクロニードルのそれぞれのポリマーマトリックスから形成された薬物運搬シェル層内に有効成分を局所的に組み込むことができる。これらの機能により、有効成分をより効率的に使用できると同時に、一般的なマイクロニードルコーティング手法に関連する問題を回避できる。さらに有利なことに、マイクロニードルアレイの少なくとも一部の実施形態は、神経毒などの潜在的に危険な有効成分の廃棄物処理の問題を回避することができる。
【0049】
さらに、本開示は、様々な装置および方法に関するものであり、その特徴は、2018年2月16日に出願された同時係属中の米国特許出願第15/932,365号の態様も組み込むことができ、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
本開示のいくつかの態様を説明するために、一部の実施形態と一致するマイクロニードルアレイをさらに詳細に説明する。図1A図2Bは、ベース層14から突出する複数のマイクロニードル12を含むマイクロニードルアレイ10の側面図を提供する。図1Aに示されるアレイと図2Aに示されるアレイの主な違いは、マイクロニードルのそれぞれの薬物運搬層、カプセル、またはシェルの適用範囲である。ただし、簡潔さのために、アレイの様々な側面をいずれかのアレイまたは他のアレイに実装できる。したがって、本開示は、図の1つを参照して特定の特徴を参照し得るが、その特徴の議論は、本開示の他の態様にも適用することができる。
【0051】
一般に図1A図2Bを参照すると、マイクロニードル12のそれぞれは、ベース層14との単一の構造的に連続した構成要素である細長い本体13を含むことができる。少なくとも一部の実施形態によれば、構造的連続性は、ポリマーを型に適用し、ポリマーを流動させて、ベース層14とベース層14から延びる複数のマイクロニードル12との両方を有する形状に硬化させることによって達成することができる。
【0052】
マイクロニードル12のそれぞれの細長い本体13は、遠位部分16および近位部分18を含むことができる。近位部分18は、ベース層14と構造的に連続しており、遠位部分16は、近位部分18を介してベース層14から離されている。たとえば、図示のように、マイクロニードル12の少なくとも一部は、単一の一体の構成要素または部分としてベース層14とともに形成することができる。一部の実施形態では、マイクロニードル12の少なくとも一部は、本明細書でさらに論じられるように、ベース層14を形成するために使用されるのと同じステップの間に形成され得る。近位部分18および遠位部分16の相対的な長さは、広範囲にわたって変化する可能性があり、図1A図2Bに示される特定の配置は、例示的かつ非限定的であると見なされるべきである。
【0053】
本開示の一部の実施形態によれば、有効成分または第1の成分は、マイクロニードル12によって、マイクロニードルのそれぞれの薬物運搬層、カプセル、またはシェル内でのみ運搬され得る。たとえば、図1A図2Bを参照すると、マイクロニードル12の細長い本体13は、薬物運搬シェル層20、22を含む。図1Aおよび図1Bに示される実施形態では、薬物運搬シェル層20は、マイクロニードル12の細長い本体13を完全にまたはほぼ完全に包み込みまたは覆うことができる。しかしながら、シェル層は、マイクロニードル12の細長い本体13の一部のみを包み込みまたは覆うことができる。
【0054】
たとえば、図2A図2Bに示される実施形態では、マイクロニードル12の細長い本体13は、その遠位端部分に沿ってなど、細長い本体13の表面を部分的にのみ覆う薬物運搬シェル層22を含む(ただし、シェル層22は、細長い本体13の遠位端部分を露出させたまま、その近位端部分のみを取り囲むこともできる)。この構成では、薬物運搬シェル層22は、細長い本体13の上部を取り囲む細長い本体13の先端に「キャップ」を形成する。
【0055】
したがって、少なくとも一部の実施形態では、薬物運搬シェル層20、22の有効成分または第1の成分は、ベース層14から離して配置することができ、ベース層14には存在し得ない。さらに、本明細書で論じられるように、細長い本体13はまた、有効成分または第1の成分を欠いている可能性がある。有効成分または第1の成分は、薬物運搬層20、22において均一にまたは勾配的に配置することができる。たとえば、一部の実施形態では、有効成分の勾配分布は、異なる有効成分濃度のアリコートを順次堆積させて、マイクロニードル12のシェル層20、22を形成することによって作成することができる。さらに、少なくとも一部の実施形態では、薬物運搬シェル層は、シェル層の一部を形成する1つまたは複数の異なる有効成分を含むことができる。
【0056】
マイクロニードル12の細長い本体13および薬物運搬シェル層20、22は、ポリマーマトリックス間の界面24によってさらに画定される。この界面は、細長い本体のポリマーマトリックスと薬物運搬シェル層20、22の分子間結合との間の分子間結合を含むことができる。さらに、細長い本体13は、一般に、近位部分18から遠位部分16に向かって先細になっており、不規則またはランダムな本体形状を有することができる。すなわち、細長い本体13の本体形状は、マイクロニードル12の間で形状または形態の変動またはランダム性を示すことができる。形状または形態におけるこの変動またはランダム性は、たとえば、様々な画像化装置のいずれかを使用して、アレイのマイクロニードル12を比較することによって視覚的に検出することができる。一部の実施形態によれば、形状または形態の変動またはランダム性は、成形時に型壁または表面によって成形または制限されない細長い本体13の不規則な本体形状を指すが、細長い本体13の一部は、成形中に型壁に接触する可能性がある。界面に沿った不規則な形状は、浸漬法またはスプレーコーティング法から予想される形状と対比させるとさらに理解できる。図3をさらに参照すると、溶液、懸濁液、または樹脂に浸漬することによって、またはマイクロニードル32上にスプレーコーティングすることによって、マイクロニードル32上に外層30が形成されたマイクロニードルの予想される構成が示されている。内側のマイクロニードル本体32は、一般的に規則的な本体形状をもたらす予備成形された形状を有する。コーティングは、界面に沿って順応して規則的な内面層の形状を形成するが、コーティングの外面は、スプレーコーティングおよび/または浸漬プロセスに関連するランダム性の結果として不規則な形状を有する。
【0057】
実際、以下に説明するように、細長い本体13の不規則な本体形状は、部分的に、より粘性の高い材料がより粘性の低い材料に自由に流れ、それらの間にランダムな界面24が作成されることから生じる可能性がある。これらの界面24は、細長い本体13を形成するために適用される高粘度ポリマー溶液が、硬化すると細長い本体13の少なくとも一部の周りに、あるいはこれを包み込んでシェル層20、22を形成する、低粘度の薬物運搬ポリマー溶液の全部または一部を置換する鋳造プロセス中に作成される。置換された低粘度溶液は、複数のマイクロニードル12の細長い本体13の周りをランダムに流れ、したがって、細長い本体13の不規則な本体形状に対して不規則な表面境界または界面24を画定する。したがって、マイクロニードル型のウェル内に空隙または容量が存在すると、細長い本体13の材料がマイクロニードル型のウェルに入ることが可能になる傾向があり、細長い本体13に使用される材料に対して加えられる背圧は、すでにウェルに堆積されているシェル層20、22の材料を移動させる。さらに、細長い本体13の形状は事前に決定されていないが、代わりに、プロセスが実行されるときにランダムに展開される。
【0058】
対照的に、薬物運搬シェル層20、22はそれぞれ、事前定義された外側プロファイル(たとえば、形状、サイズ、および/または形態)を有する。この事前定義された外側プロファイルは、マイクロニードルアレイ型の細長いウェルの内面に対応する。したがって、細長い本体13の内側は不規則な本体形状を示すが、薬物運搬シェル層20、22は、細長いウェルの形状によって決定される所定のプロファイルを画定する。シェル層の所定の外側プロファイルは、マイクロニードルアレイが一貫したマイクロニードルプロファイルを有することを可能にする。型の細長いウェルは、すべてのウェルに示される単一の一定のウェルプロファイル(たとえば、形状、サイズ、および/または形態)を有するか、または様々なプロファイル(たとえば、形状、サイズ、および/または形態)のウェルを有することができる。実際、シェル層20、22の外側プロファイルは事前に決定することができるが、それぞれのシェル層20、22のそれぞれに使用される材料の体積は、シェル層20、22がその周りに形成されるそれぞれの細長い本体13の形状に応じて変化し得る。一般的な原理として、シェル層20、22の材料の体積と組み合わされた細長い本体13の材料の体積は、型のウェルの総体積に等しくなる。しかしながら、材料の体積の相対的分布は、本明細書で論じられるように、マイクロニードルごとに変化し得る。
【0059】
したがって、一部の実施形態では、マイクロニードル12のそれぞれの細長い本体13の遠位部分および近位部分16、18の配置、サイズ、または形状は、一定のサイズのマイクロニードル12を有するアレイ10の間でさえ、相対的な長さの範囲にわたって変化し得る。好ましくは、マイクロニードルの細長い本体は、各シェル層を支持することができる「バックボーン」または「コア」構造を提供することができる。一般に、細長い本体13は、マイクロニードル12の長さの少なくとも1%から約99%を構成することができ、長さのバランスは、シェル層20、22によって画定される。したがって、一般に、シェル層20、22は、各マイクロニードル12の長さの少なくとも1%から約99%を構成することができる。
【0060】
さらに、一部の実施形態では、近位部分18は、細長い本体13の長さの約1%から約10%の間、約10%から約20%の間、約20%から約30%の間、約30%から約40%の間、約40%から約50%の間、約50%から約60%の間、約60%から約70%の間、約70%から約80%の間、または約80%から約90%の間を含み得る。いずれの場合も、遠位部分16は全長のバランスを埋める。したがって、本明細書に開示される少なくとも一部の実施形態では、細長い本体13とシェル層20、22との間の内部界面は、各それぞれのマイクロニードル12内でランダムに配向することができるので、マイクロニードル12の唯一のプリセットまたは所定のパラメータは、型のウェルの内部プロファイルに基づくそれらの外側のサイズ、形状、および/または長さであり得る。
【0061】
一部の実施形態では、マイクロニードル12のそれぞれは、約25ミクロンから約3000ミクロンの範囲の長さを有することができる。一部の実施形態では、マイクロニードル12のそれぞれは、約25ミクロンから約1000ミクロンの範囲の長さを有することができる。一部の実施形態では、すべてのマイクロニードル12は、実質的に同じ長さを有することができる。前述の範囲内のマイクロニードルの長さは、本明細書でさらに論じられるように、患者の皮膚表面を貫通し、有効成分を真皮に送達するのに効果的であり得る。真皮への有効成分の送達は、皮膚の質を改善し、美容および臨床の両方で皮膚に影響を与える様々な状態を治療することができる。
【0062】
一部の実施形態では、マイクロニードル12のそれぞれは、皮膚を穿孔するのに適した円錐形またはピラミッド形の形状を有することができる。円錐形またはピラミッド形の形状は、それらに関連するピッチ角を有し、その結果、マイクロニードル12は、皮膚を穿孔するのに適した点または先端に向かって先細になる。
【0063】
一部の実施形態では、マイクロニードル12は、約1ミクロンから約30ミクロンの範囲の先端幅を有することができる。一部の実施形態では、マイクロニードル12は、約4ミクロンから約25ミクロンの範囲の先端幅を有することができる。前述のマイクロニードル幅は、マイクロニードル12が一部の実施形態である点に向かって先細になっているとすると、マイクロニードルの最遠位端または点で、または近位部分18がベース層14から突出する位置に関して測定することができる。前述のサイズ範囲内のマイクロニードル先端幅は、皮膚に適切なサイズの開口部を生成して、生体分子を含む広いサイズ範囲にわたって変化する有効成分を送達することができる。
【0064】
上に示したように、マイクロニードルアレイ10のマイクロニードル12の数、寸法、長さ、幅、および形状は、特に制限されているとは見なされない。同様に、一部の実施形態では、マイクロニードルアレイ10のマイクロニードル12の密度は、約5マイクロニードル/cmから約1000マイクロニードル/cm以上の範囲であり得る。
【0065】
本開示の一部の実施形態によれば、マイクロニードル12およびベース層14は、マイクロニードル12がベース層14と連続し、そこから突出するように、溶解性ポリマーから形成することができる。したがって、一部の実施形態では、マイクロニードル12とベース層14との間に構造的な不連続性はない。一部の実施形態では、マイクロニードル12の溶解性ポリマーは、ベース層14の溶解性ポリマーに溶け込む。
【0066】
上に示したように、マイクロニードル12の細長い本体13およびベース層14は、薬物運搬シェル層20、22の有効成分を欠くことができる。一部の実施形態では、ベース層14は、マイクロニードル12に存在する同じおよび/または異なる溶解性ポリマーを任意選択で含むことができる。たとえば、少なくとも一部の実施形態では、アレイ10は、低粘度を有する第1の材料を型に堆積させ、その後、第1の材料よりも高い粘度を有する第2の材料を型に堆積させ、最後に第3の材料を第2の材料の上に堆積させることによって形成することができる。第1の材料はシェル層を形成することができ、第2の材料は細長い本体を形成することができ、第3の材料はアレイのベース層を形成することができる。第2および第3の材料は同じでも異なっていてもかまわない。さらに、および少なくとも一部の実施形態では、第2および第3の材料は、必要に応じて、追加の材料または薬物を含むことができる。
【0067】
一部の実施形態では、マイクロニードル12は、遠位部分16および近位部分18の両方が第1の溶解性ポリマーを含むように、第1の溶解性ポリマーを含むことができる。一部の実施形態では、有効成分は、薬物運搬シェル層20、22の第1の溶解性ポリマーのマトリックス内にのみ組み込むことができる。一部の実施形態では、ベース層14はまた、第1の溶解性ポリマーを含むことができる。あるいは、ベース層14は、マイクロニードル12を含む第1の溶解性ポリマーとは異なる第2の溶解性ポリマーを含むことができる。
【0068】
一部の実施形態では、マイクロニードル12および/またはベース層14はそれぞれ、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のポリマーまたは層を含むことができ、これは、溶解性ポリマーを含むことができる。たとえば、マイクロニードル12は、遠位部分16が第1の溶解性ポリマーを含み、近位部分18が第2の溶解性ポリマーを含むように、第1の溶解性ポリマーおよび第2の溶解性ポリマーを含むことができる。したがって、そのような実施形態では、有効成分は、第1の溶解性ポリマーのマトリックス内の遠位部分16に組み込むことができる。さらに、一部の実施形態では、細長い本体13の遠位部分または近位部分16、18内の第2の溶解性ポリマーに実質的にいかなる有効成分も存在しなくてもよい。一部の実施形態では、ベース層14は、第1の溶解性ポリマーおよび/または第2の溶解性ポリマーを含むことができる。一部の実施形態では、ベース層14は、第2の溶解性ポリマーのみを含む。あるいは、ベース層14は、マイクロニードル12の第1の溶解性ポリマーおよび/または第2の溶解性ポリマーとは異なる第3の溶解性ポリマーを含むことができる。溶解性ポリマーの特定の組み合わせは、たとえば、所望の放出プロファイル、混合プロファイル、および/または機械的強度を提供するなど、所望の用途に合わせてマイクロニードル特性を調整するように選択することができる。たとえば、より速く分解する溶解性ポリマーは、マイクロニードル12の近位部分に存在し、マイクロニードル12の遠位部分をベース層14から放出して、アレイ10が取り外されたときに、マイクロニードル12のシェル層の有効成分が患者に残ることを確実にすることができる。
【0069】
一部の実施形態では、細長い本体13は、薬物運搬シェル層20、22とは異なる濃度の同じ活性剤または異なる活性剤を含み、薬物運搬シェル層20、22よりも遅い速度で溶解するように構成される。この場合、薬物運搬シェル層20、22の溶解後、マイクロニードルの細長い本体13は皮膚に残り、ゆっくりと溶解して、持続放出および長期効果を提供する。
【0070】
他の実施形態では、薬物運搬シェル層20、22が細長い本体13よりも遅い速度で溶解し、それによって長期作用効果を提供するマイクロニードルアレイが提供される。よりゆっくりと溶解する薬物運搬外層は、約0.1から約2重量%の濃度の高分子量(すなわち、3MDaを超える)ヒアルロン酸を含む神経毒含有ポリマー溶液から形成することができる。より速く溶解する細長い本体13は、約5重量%から約40重量%の範囲の濃度で低分子量(すなわち、50,000Daから1×10Da)を含む、場合により毒素を含むポリマー溶液から形成することができる。2つの溶液中のヒアルロン酸の正確な分子量は、細長い本体13および薬物運搬外層20、22の所望の溶解速度に依存する。2つの溶液中のヒアルロン酸の濃度は、溶液の所望の粘度に依存するが、薬物運搬シェル層20、22を形成する溶液は、細長い本体13を形成するものよりも低い粘度を持たなければならない。
【0071】
任意選択で、マイクロニードル12およびベース層14の両方は、同じタイプの溶解性ポリマーを含む。マイクロニードル12およびベース層14の両方に同じ溶解性ポリマーが存在することにより、異なる特性を有する溶解性ポリマー間の潜在的な非相溶性を回避することができる。たとえば、マイクロニードル12およびベース層14が同じ溶解性ポリマーから形成されるようにマイクロニードルアレイ10を構成することにより、層間剥離によるマイクロニードル12の早期放出を回避または排除することができる。しかしながら、一部の実施形態では、異なる溶解性ポリマーが望ましく、本開示の文脈内のいくつかの用途を含むいくつかの用途に有利に使用することができる。
【0072】
図4は、マイクロニードルアレイ10の対応する上面図を示している。図4には8x8のアレイが示されているが、特定の用途の要件に合わせてアレイの寸法を変更できることを認識しておく必要がある。さらに、図4に示されるように、アレイの寸法は必ずしも同じ数の行と列を有する必要はない。一般に、アレイ10は、所与の意図された用途に適した行および列の任意の組み合わせを含むことができる。さらに、マイクロニードルアレイは、図4に示されるように、長方形の構成に限定されない。他の例示的なマイクロニードルアレイの形状は、たとえば、平面構成であろうと三次元構成であろうと、円形、卵形、楕円形、三日月形、または不規則な形状さえ含むことができる。たとえば、一部の実施形態は、顔または体の他の領域の治療における使用を容易にする輪郭を提供するために使用することができる。
【0073】
一部の実施形態では、デバイスは、治療される皮膚の第1の部分を覆うようにサイズ設定および/または成形された第1の領域、および第1の領域に隣接および接続された第2の領域を含むことができ、第2の領域は、治療される皮膚の第2の部分を覆うようなサイズ設定および/または形状である。一部の実施形態では、第1の領域は、基板から突出し、かつ第1の長さを有する第1のマイクロニードルを含み、第2の領域は、基板から突出し、かつ第1の領域から突出する第1の長さとは異なる第2の長さを有する第2のマイクロニードルを有し、第2のマイクロニードルは、第1の高さとは異なる第2の高さを有し、第2の領域から突出する。一部の実施形態では、第1の長さは、第2の長さよりも長さが少なくとも約1%長い。
【0074】
たとえば、一部の実施形態では、第1の長さは、第2の長さよりも長さが少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約500%、少なくとも約800%、または少なくとも約1000%長い。一部の実施形態では、第1のマイクロニードルは、第2のマイクロニードルの長さよりも少なくとも約10%から約200%長い長さを有し得る。たとえば、第1のマイクロニードルは、第2のマイクロニードルの長さよりも約30%、または約40%、または約50%、または約60%、または約70%、または約80%、または約90%、または約100%、または約110%、または約120%、または約130%、または約140%、または約150%、または約160%、または約170%、または約180%、または約190%、または約200%またはそれ以上長い長さを有する。
【0075】
一部の実施形態では、第1のアレイは、第1の長さを有するマイクロニードルを含み、第2のアレイは、第1の長さとは異なる第2の長さを有するマイクロニードルを含む。他の実施形態では、第1のアレイは、第1の間隔を有するマイクロニードルを含み、第2のアレイは、第1の間隔とは異なる第2の間隔を有するマイクロニードルを含む。
【0076】
マイクロニードル12が患者の皮膚表面を効果的に貫通するためには、少なくとも1つの溶解性ポリマーの十分な機械的強度が望ましい。それらの比較的良好な機械的特性のために、本開示の一部の実施形態で利用するのに適した溶解性ポリマーは、たとえば、グリコサミノグリカン、多糖類、コラーゲン、エラスチン、フィブロイン、デンプン、グルコマンナン、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水的に修飾されたヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む。他のタイプの溶解性ポリマーも適切であり得、任意選択で、単独で、または前述の溶解性ポリマーと組み合わせて使用することができる。たとえば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、およびポリビニルアルコールは、本開示で利用することができる他のタイプの溶解性ポリマーである。特定の実施形態では、ヒアルロン酸は、前述の溶解性ポリマーのいずれかと混合することができる。
【0077】
一部の実施形態では、ベース層14、マイクロニードル12の細長い本体13、および薬物運搬シェル層20、22のポリマーマトリックスはそれぞれ、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水的に修飾されたヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む。ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、または疎水的に修飾されたヒアルロン酸の様々な特性を調節して、マイクロニードルアレイ10を患者の皮膚表面に適用する際の、マイクロニードル12からの有効成分の放出プロファイルを調整することができる。他の溶解性ポリマーもヒアルロン酸と混合して、これらの特性をさらに調節することができる。一部の実施形態によれば、様々な有効成分を組み込むそれらの能力に加えて、ヒアルロン酸および修飾されたヒアルロン酸は、それら自身の有益な特性を患者の皮膚に運ぶことができる。
【0078】
ヒアルロン酸(HA)は、細胞外マトリックスの脊椎動物組織に見られる生体多糖類である。ヒアルロン酸はむしろ、構造に示されているように、β(1→4)およびβ(1→3)グルコシド結合によって接続されたD-グルクロン酸およびN-アセチル-D-グルコサミンという2つの単糖単位からなるグリコサミノグリカンであるため、ヒアルロン酸という名前は少し誤解を招くと見なすことができる。
【化1】
【0079】
生理学的条件下では、HAは塩、つまりヒアルロン酸ナトリウムのように作用する。HAの最も強い酸性基であるカルボン酸基のpKa値は2.87である。これは、カルボン酸基が生理学的条件下で脱プロトン化されることを意味する。分子の負電荷は、体内で、正に帯電したイオンや分子、主にNaと相互作用する。このポリアニオン電荷のために、およびHA分子が分岐していないため、分子は堅く拡張されたコンフォメーションを有する。ただし、溶液では、HA分子はランダムコイルコンフォメーションになる傾向があり、これは組織からHAを抽出するときに見つかったコンフォメーションである。
【0080】
固体HAは、生理学的条件下または水性媒体中で溶解または分解する可能性がある。水性媒体は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはヒスチジン緩衝液であり得る。PBSまたはヒスチジン緩衝液は、約4.0から約10.0、約4.5から約9.5、約5から約8、約5.5から約7.5、約6から約8、約6.5から約7.5、約6.8から約7.8、または約7.0から約7.8の範囲のpHを有することができる。HAはさらに、約10℃から約50℃、約15℃から約45℃、約20℃から約40℃、約25℃約45℃、約30℃から約40℃、約35℃から約45℃、または約35℃から約40℃の範囲の温度で、pH7.4のPBSまたはヒスチジンに溶解する。
【0081】
HAは、水分子を結合する優れた能力があり、ランダムコイルはほぼ99%の結合水を含む。高度に希釈された溶液でも、拡張された分子が絡み合い、溶液に大きな弾力性および粘度を与える。HA溶液の弾性および粘性特性は、ポリマーの平均分子量、濃度、およびコンフォメーションによって異なる。コンフォメーションは、pHや温度などの様々な条件で異なる可能性がある。これは、粘度を含むポリマーの特性が、溶液中の条件に依存することを意味する。
【0082】
流体の粘度は、流束で発生する内部抵抗の測定値であり、せん断速度(g)に対するせん断応力(τ)として定義される。この関係は、ニュートンの方程式で与えられる。
【数1】
【0083】
流体は、様々な方法でせん断応力に応答できる。流体の挙動に基づいて、ニュートン流体または非ニュートン流体に分類できる。ニュートン流体の場合、せん断応力と変形との間には直接的な相関関係がある。この線形依存性は、せん断応力に関係なく粘度が一定に保たれることを意味する。非ニュートン流体の場合、通常、ずり流動化または増粘を行うことができるため、応答は逆になる。これに関連して、粘度は応力下で減少または増加する可能性がある。HAは非ニュートン流体の挙動を示す。つまり、応力がかかると、ずり流動化挙動を示す。
【0084】
高粘度の液体は、低粘度の液体に比べて抵抗が高いため、流れが遅くなる。分子のサイズは粘度に大きな影響を与える。したがって、ポリマーは、非常に低い濃度でも粘度に大きく影響する。伸ばされた高分子は、コイル状に巻かれた分子と比較して、より高い粘度を引き起こす。
【0085】
HA溶液を使用する場合は、固有粘度を考慮すると便利である。固有粘度[η]は、高分子の流体力学的特性を説明するために使用されるパラメータである。これは1/濃度として定義され、単位Pa・sの粘度と比較できる。[η]を決定するために、固有粘度または比粘度を測定できる。一方、[η]は、これらの値を無限希釈に外挿することによって推定される。固有粘度[η]とHAの分子量(M)との関係は、マーク・ハウインクの式M=k・ηαで与えられ、kおよびαの値は、問題のポリマーの性質によって異なる。
【0086】
したがって、ヒアルロン酸ポリマー溶液の粘度は、溶液中のヒアルロン酸の平均分子量および濃度を変化させることによって制御することができる。たとえば、高粘度は、わずか5~10重量%の溶液でより高分子量(たとえば、6MDa)のHAを使用することによって達成することができる。対照的に、分子量が150kDaのHAの場合、高粘度の溶液を達成するために、約30重量%のより高い濃度が必要である。次に、これらのパラメータは同様にポリマー溶液の密度に影響を及ぼし、乾燥すると、マトリックス中に存在するポリマーの量およびポリマーマトリックスの比重量(すなわち、単位体積あたりの重量)に影響を与える。
【0087】
一部の実施形態では、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、または疎水的に修飾されたヒアルロン酸は、約10kDaから約6000kDaの範囲の分子量を有することができる。一部の実施形態では、少なくとも1つの溶解性ポリマーは、約100kDaから約6000kDaの範囲の分子量を有する非架橋ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、または疎水的に修飾されたヒアルロン酸を含む。一部の実施形態では、ヒアルロン酸は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、およびカルシウムから選択されるヒアルロン酸塩である。
【0088】
一部の実施形態では、架橋ヒアルロン酸は、約100Paから約3000Paの貯蔵弾性率(G’)を有することができる。架橋ヒアルロン酸を形成するための適切な架橋剤は、たとえば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、ジビニルスルホン(DVS)、または少なくとも2つのアミン基を含む分子などのエポキシ架橋剤を含む。一部の実施形態では、架橋ヒアルロン酸は、チオール-マイケル付加反応を介して形成され得る。たとえば、チオール化ヒアルロン酸は、マレイミド、ビニルスルホン、または(メタ)アクリレートで修飾されたヒアルロン酸で架橋することができる。有効成分の存在下でのポリマー架橋は、本明細書に開示される一部の実施形態で使用するための十分に混合された第1の流体をもたらす。
【0089】
一部の実施形態では、疎水的に修飾されたヒアルロン酸は、アルキルまたはアシル基、特にアルキル基で官能化されたヒアルロン酸を含み得る。疎水的に修飾されたヒアルロン酸を形成するのに適したアルキル基は、たとえば、エチル、プロピル、ベンジル、およびオクチル基を含み、これらは、線状または分枝状であり得る。
【0090】
一部の実施形態では、疎水的に修飾されたヒアルロン酸は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはジメチルスルホキシド(DMSO)の存在下で膨潤させることができる。他のヒアルロン酸化合物は、様々な実施形態で使用するために同様に膨潤させることができる。
【0091】
マイクロニードルアレイを形成するのに十分な機械的強度を有する溶解性ポリマーは、溶媒に配置されるか、または溶媒と混合されると、非常に粘性のある流体を生成する可能性がある。高い流体粘度は、本開示のマイクロニードルアレイを形成するためのマイクロニードルアレイ型への導入を困難にする可能性がある。マイクロニードルアレイを形成する際の過剰な流体粘度に対処するための適切な方法は、以下でより詳細に論じられる。したがって、本開示のマイクロニードルアレイは、広範囲の溶解性ポリマーを組み込むことができる。さらに、本開示は、一連の活物質と互換性があり、その例示的な例を以下で論じる。
【0092】
本明細書で使用される場合、「有効成分」という用語は、皮膚を通して患者に投与されたときに治療的に望ましい効果を有する任意の物質を指す。一部の実施形態では、マイクロニードルアレイ内の有効成分は、マイクロニードルアレイ内に存在する溶解性ポリマーとは異なり得る。特定の実施形態では、本開示のマイクロニードルアレイに適した活物質は、抗原、抗体、および毒素を含む。本開示のマイクロニードルアレイは、ベース層に活物質を欠いているので、これらの生物学的実体を本開示のマイクロニードルアレイに組み込む場合、潜在的なバイオハザード廃棄物処理の問題を回避することができる。
【0093】
神経毒、特にボツリヌス毒素は、本明細書に開示されるマイクロニードルアレイの少なくとも一部の実施形態にとって特に望ましい可能性がある。ボツリヌス毒素タイプA、B、C、D、Eのいずれか、またはそれらの任意の組み合わせは、本開示のマイクロニードルアレイによって運ぶことができる。一部の実施形態では、ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素血清型A(BoNT/A)、ボツリヌス毒素血清型B(BoNT/B)、ボツリヌス毒素血清型C1(BoNT/C1)、ボツリヌス毒素血清型D(BoNT/D)、ボツリヌス毒素血清型E(BoNT/E)、ボツリヌス毒素血清型F(BoNT/F)、ボツリヌス毒素血清型G(BoNT/G)、ボツリヌス毒素血清型H(BoNT/H)、ボツリヌス毒素血清型X(BoNT/X)、ボツリヌス毒素血清型J(BoNT/J)、およびモザイクボツリヌス毒素および/またはその変異体からなる群から選択される。モザイク毒素の例は、BoNT/DC、BoNT/CD、およびBoNT/FAを含む。一部の実施形態では、ボツリヌス毒素は、前述のボツリヌス毒素のいずれかのサブタイプであり得る。
【0094】
マイクロニードルアレイに組み込まれる有効成分の量は変動する可能性があり、有効成分の種類、意図される適用領域、実施される治療の種類、送達される用量、およびデバイスからホストに有効成分を送達する効率を含むがこれらに限定されないいくつかの要因に依存し得る。一部の実施形態では、マイクロニードルアレイは、有効成分のマイクロニードルアレイ全体の0.001重量%から約15重量%、約0.001重量%から約10重量%、約0.001重量%から約3重量%、約0.001重量%から約1重量%、約0.001重量%から約0.5重量%、または0.001重量%から約0.1重量%を含むことができる。
【0095】
一部の実施形態では、有効成分は、マイクロニードルアレイのマイクロニードルのそれぞれの遠位部分にのみ存在する。そのような構成では、マイクロニードルのそれぞれの遠位部分は、有効成分の遠位部分の約0.001重量%から約15重量%、約0.001重量%から約10重量%、約0.001重量%から約3重量%、約0.001重量%から約1重量%、約0.001重量%から約0.5重量%、または0.001重量%から約0.1重量%を含むことができる。一部の実施形態では、マイクロニードルアレイのマイクロニードルのそれぞれの遠位部分のみに存在する有効成分は神経毒である。一部の実施形態では、マイクロニードルのそれぞれの遠位部分は、神経毒の遠位部分の約0.000001重量%から約0.015重量%、約0.000001重量%から約0.001重量%、約0.000001重量%から約0.0001重量%、約0.000001重量%から約0.00001重量%を含むことができる。一部の実施形態では、有効成分は生物学的製剤である。一部の実施形態では、生物学的製剤は、ワクチン、ホルモン、または治療用ペプチドである。一部の実施形態では、マイクロニードルアレイのマイクロニードルのそれぞれの遠位部分は、生物学的製剤の約0.000001重量%から約1重量%を含むことができる。
【0096】
一部の実施形態では、マイクロニードルアレイは、有効成分を送達するためのパッチに構成することができる。一部の実施形態では、パッチは、有効量の有効成分を送達するように構成される。
【0097】
用量の送達は、1平方センチメートルあたりの単位(U)で測定できる。毒物学では、特定の毒素の単位は、毒素のLD50によって決定でき、これは、テスト母集団の半分に致命的である必要がある用量である。一部の実施形態では、パッチは、約0.01から約100U/cm、約0.05から約95U/cm、約0.10から約90U/cm、約0.20から約85U/cm、約0.25から約80U/cm、約0.50から約75U/cm、約0.75から約70U/cm、約1.0から約65U/cm、約2.0から約60U/cm、約3.0から約55U/cm、約4.0から約50U/cm、約5.0から約45U/cm、約5.0から約40U/cm、約5.0から約35U/cm、約5.0から約30U/cm、約5.0から約25U/cm、約0.01から約20U/cm、約0.01から約15U/cm、約0.01から約10U/cm、約0.01から約5U/cm、約0.10から約15U/cm、約0.10から約10U/cm、約0.05から約10U/cm、約0.01から約3.0U/cm、約0.10から約3.0U/cm、または約0.05から約3.0U/cmの量の毒素を送達するように構成される。
【0098】
一部の実施形態では、有効成分は、非効率的な送達を補うために、意図された送達用量を超える充填濃度を有する。たとえば、0.1%の送達効率(患者に送達される組成物に含まれる全薬物のパーセント)を有する0.1U/cmの用量を送達するように構成された組成物の場合、充填濃度は約100U/cmである。一部の実施形態では、充填濃度は、約0.01から約100,000U/cm、約0.10から約80,000U/cm、約0.50から約50,000U/cm、約1.0から約25,000U/cm、約2.0から約15,000U/cm、約0.10から約20,000U/cm、約0.10から約15,000U/cm、約0.10から約10,000U/cm、約0.10から約8,000U/cm、約0.10から約5,000U/cm、約0.10から約1,000U/cm、約5.0から約1,000U/cm、約5.0から約10,000U/cm、約10から約100,000U/cm、約10から約90,000U/cm、約10から約75,000U/cm、約10から約50,000U/cm、約10から約25,000U/cm、約10から約10,000U/cm、約10から約1,000U/cm、約10から約500U/cm、約10から約250U/cm、約10から約100U/cm、または約10から約50U/cmの範囲にある。
【0099】
本明細書に開示されるマイクロニードルアレイの一部の実施形態の利点は、様々な生物学的実体または他の有効成分に対する皮膚透過性の増加を含み、局所的または全身的拡散からの合併症を低減しながらゆっくりとした治療的放出を実現することを可能にし、単一部位注射と比較して広い治療領域を提供し、活物質の皮下投与と比較して患者の痛みが少ない。一部の実施形態では、マイクロニードルアレイは、任意選択で、1つまたは複数の賦形剤とともにヒアルロン酸を含むことができる。適切な分子量(たとえば、150kDaから6000kDa)のヒアルロン酸は、マイクロニードルの完全性を維持するためのベース材料として機能し、一方、たとえば、スクロース、マルトース、ポリエチレングリコール、または低分子量ポリマー(たとえば、分子量が100kDaより少ないヒアルロン酸)などの賦形剤は、皮膚にすばやく分解して、有効成分のより良い送達を促進することができる。一部の実施形態では、賦形剤は、約5kDa、約10kDa、約15kDa、約20kDa、約25kDa、約30kDa、約35kDa、約40kDa、約45kDa、約50kDa、約55kDa、約60kDa、約65kDa、約70kDa、約75kDa、約80kDa、約85kDa、約90kdA、または約95kDaの分子量を有する低分子量ヒアルロン酸であり得る。
【0100】
上記で論じたマイクロニードルアレイを作製するための容易な方法もまた、本明細書で説明されている。図5A図5Dは、薬物運搬シェル層を備えたマイクロニードルアレイを作製することができる、側面から観察された例示的なプロセスを示している。図5Aに示されるように、マイクロニードルアレイ110を作製するための方法は、最初に、複数の細長いウェル122を含むマイクロニードルアレイ型120を提供するステップを含む。細長いウェル122のそれぞれは、下部124および上部126を含むことができる。
【0101】
図5Bを参照すると、第1のHAポリマー溶液などの第1の流体は、ヒアルロン酸を含むことができ、次に、神経毒などの有効成分が調製または提供される。次に、第1のHAポリマー溶液を使用して、細長いウェル122のそれぞれを部分的に満たす。この第1のHAポリマー/神経毒溶液は、好ましい流動特性を持ち、かつ必要に応じて移動できるように、比較的低粘度でなければならない。具体的には、第1のHAポリマー溶液は、細長いウェル122のそれぞれの下部124を満たし、それにより、上部126を未充填のままにする。示されるように、ウェル122の少なくとも一部は、以下で議論されるように、追加の流体を受け取る能力を有する。鋳造または堆積プロセスを必要に応じて利用して、第1のHAポリマー溶液を細長いウェル122の底に堆積させることができる。鋳造プロセス中に沈降が発生する可能性がある。いずれの場合でも、有効成分または神経毒は、細長いウェル122のそれぞれの下部124内の第1のHAポリマー溶液のHAのマトリックス全体に組み込まれたままである。ポリマーを流し込む適切な方法は、米国特許出願公開第2016/0279401号に記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、米国特許出願公開第2016/0279401号も、本明細書の開示の1つまたは複数の特徴と組み合わせることができるマイクロニードルアレイの追加機能について論じている。
【0102】
たとえば、本明細書に開示される薬物分子または他の有効成分のいずれかは、薬物運搬シェル層のポリマーマトリックスに均一に埋め込まれるか、または組み込まれ得る。ポリマーマトリックスに均一に組み込まれた薬物または他の活性剤でマイクロニードルを形成することにより、薬物または活性剤の放出速度を注意深く制御することができる。さらに、薬物または活性剤の組み込みは、薬物または活性剤が表面にコーティングされている針には見られない、均一性のさらなる利点を提供し得る。さらに、組み込むことにより、マイクロニードルの表面からの剥離による活性剤の損失を防ぐことができる。
【0103】
図5Bを参照すると、第2のHAポリマー溶液などの第2の流体が調製または提供されるが、これは、第1の流体の有効成分または他の任意の有効成分を欠いている。一部の実施形態では、第2のHAポリマー溶液は、溶媒と混合されたヒアルロン酸からなるか、または本質的にそれからなることができる。第2のHAポリマー溶液は、機械的強度を提供し、かつ溶解速度の制御を助ける追加のポリマーおよび賦形剤をさらに含むことができる。第2のHAポリマー溶液は、第1のHAポリマー溶液と比較して比較的高い粘度を有する。次に、第2の流体を使用して、細長いウェル122の残りの部分、具体的には、細長いウェル122のそれぞれの上部126を充填する。図5Cおよび図5Dに見られるように、このより高い粘度は、第2のHAポリマー溶液が、細長いウェルの下部124から第1のHAポリマー溶液を置換し、高粘度の第2のHAポリマー溶液の周りおよび細長いウェルの内壁に沿って流れることを可能にし、それにより、第2のHAポリマー溶液の周りに薬物運搬シェル層が形成される。さらに、高粘度は、ベース層および細長い本体13が、マイクロニードルに機械的強度を提供するのに十分なポリマー密度および比重量を有することを確実にするために重要である。
【0104】
あるいは、マイクロニードルアレイは、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を型の上に分注することによって作製することができる。次に、より高粘度のヒアルロン酸ポリマー溶液を第1のヒアルロン酸溶液上に流し込み、圧力または圧縮を第2のヒアルロン酸溶液の上に加える。圧縮の第1の段階では、低粘度の第1のヒアルロン酸溶液が型の細長いウェルに流れ込み、次に高粘度の第2のヒアルロン酸溶液の周囲に流れ込む。圧縮の第2の段階では、圧力を一定期間さらに維持することにより、ヒアルロン酸が2つの溶液間およびそれらの間に形成された界面で拡散する可能性がある。この拡散により、薬物運搬シェル層をマイクロニードルの細長い本体に結合または融合する、一体化されたヒアルロン酸マトリックスが作成される。重要なことに、薬物または有効成分(たとえば、毒素)の高粘度の第2のヒアルロン酸ポリマー溶液への拡散は、このプロセス中には発生しない。したがって、シェル層および細長い本体を形成する薬物運搬材料は、第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスおよび第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスがそれぞれと重なり合うかまたは不規則な表面境界に沿って拡散する統合されたヒアルロン酸ポリマーマトリックスを介して拡散、混合、または融合される。
【0105】
マイクロニードルアレイ110のマイクロニードル112間の接続性を達成するために、細長いウェル122は、第2のHAポリマー溶液で過剰に充填され得る。それにより、過剰に充填された第2のHAポリマー溶液は、マイクロニードルアレイ型120の細長いウェル122の上の単一の連続層130に融合することができる。第2のHAポリマー溶液は、必要に応じて、第2の鋳造または堆積プロセスを利用することによって沈降させて、第2のHAポリマー溶液を細長いウェル122により深く堆積させることができる。沈降力は、第2のHAポリマー溶液から第1のHAポリマー溶液にさらに伝達されて、細長いウェル122のさらなる移動、堆積または充填、および/またはマイクロニードル112の緻密化をもたらすことができる。その後、連続層130は、固化時にベース層114になることができ、第2のHAポリマー溶液中の溶解性ポリマーは、その後、ベース層114を画定する。最後に、凝固後、ベース層114およびマイクロニードルアレイ110の残りの部分は、マイクロニードルアレイ型120から解放または除去することができる。
【0106】
第1のHAポリマー溶液および第2のHAポリマー溶液がマイクロニードルアレイ型120内に配置されると、型120およびマイクロニードルアレイ110を加熱して流体を乾燥させるか、または溶媒を追い出して、溶解したヒアルロン酸ポリマーおよび有効成分を残しておきながら、マイクロニードルアレイ110を形成することができる。あるいは、第1および第2のHAポリマー溶液を、室温で蒸発または乾燥させて、溶解したヒアルロン酸ポリマーおよび有効成分をマイクロニードルアレイ110の形態で残すことができる。形成後、マイクロニードルアレイ110は、ベース層114と、薬物運搬シェル層132とともにベース層114から突出する複数のマイクロニードル112とを含む。マイクロニードルアレイ型120から解放されると、マイクロニードルアレイ110は、さらなる使用の準備ができている。
【0107】
さらに図5Dを参照し、さらに図1Aおよび図2Aを参照すると、マイクロニードル112およびベース層114は、互いに構造的に連続しているか、または単一の一体の構成要素として形成されていることがわかる。たとえば、ベース層114の材料は、ベース層114とマイクロニードル112との間に構造的不連続性がないように、マイクロニードル112のそれぞれに、またはマイクロニードル112のそれぞれとともに連続的に流れる。具体的には、近位部分116およびベース層114は、互いに連続している。一部の実施形態では、近位部分116およびベース層114は、組成的に実質的に同じである。図1A図2Bに関して上で論じたように、近位部分116およびベース層114の両方は、薬物運搬シェル層の有効成分または他の有効成分を欠いている可能性がある。対照的に、マイクロニードル112の薬物運搬シェル層132は、ヒアルロン酸のマトリックス全体に組み込まれた有効成分を含むことができる。一部の実施形態では、有効成分は、ヒアルロン酸ポリマーと第1のHAポリマー溶液中の有効成分との間の緊密な混合により、コーティングアプローチによって達成されるよりも、マイクロニードル112により強固かつ均一に付着させることができる。一部の実施形態では、第1のHAポリマー溶液または複数の第1のHAポリマー溶液(たとえば、第1、第2、第3、またはそれ以上の溶液)を型120に導入して、有効成分の濃度勾配、溶解または分解勾配、または遠位部分118のその他の化学的または機械的特性を導入することができる。
【0108】
本明細書に開示されるマイクロニードルアレイの一部の実施形態を作製する際に使用されるマイクロニードルアレイ型は、任意の様々なサイズ、形状、ウェルの深さまたは寸法、あるいは組成を有することができる。一部の実施形態では、型は、作製後のマイクロニードルアレイの解放を容易にすることができるシリコン型であり得る。他の材料もまた、マイクロニードルアレイ型からのマイクロニードルアレイの解放を容易にすることができ、本明細書の開示において適切に使用することができる。たとえば、一部の実施形態では、マイクロニードルアレイ型は、型からのマイクロニードルアレイの解放を容易にするために、シリコンコーティングまたはポリテトラフルオロエチレンコーティングすることができる。
【0109】
一般に、マイクロニードルアレイ型は、所望の特性を有するマイクロニードルアレイの形成を促進するために、所望の寸法および数の細長いウェルを含むことができる。さらに、マイクロニードルアレイ型は、細長いウェルを過剰に充填したときに第2のHAポリマー溶液を収容するための領域を含む。たとえば、一部の実施形態では、リップは、マイクロニードルアレイ型の周りに存在して、過剰に充填された量の第2のHAポリマー溶液のプールを、細長いウェルの上の連続層として含むかまたは可能にすることができる。本明細書で論じられるように、マイクロニードルアレイ型の第2のHAポリマー溶液の過剰に充填された量またはその一部は、マイクロニードルアレイを形成する際にベース層に変えることができる。
【0110】
第1のHAポリマー溶液および第2のHAポリマー溶液をマイクロニードルアレイ型の細長いウェルに導入するために、任意の適切な技術を使用することができる。特定の溶解性ポリマー、特にヒアルロン酸または架橋ヒアルロン酸は、第1のHAポリマー溶液および/または第2のHAポリマー溶液にかなりの粘度を与えることができるので、第1のHAポリマー溶液および/または第2のHAポリマー溶液をマイクロニードルアレイ型の細長いウェルに導入することが難しい場合がある。したがって、本明細書に開示される方法の一部の実施形態では、鋳造プロセスは、マイクロニードルアレイ型と接触しているときに、第1のHAポリマー溶液、第2のHAポリマー溶液、またはその両方に適用することができる。例示的な実施形態では、鋳造プロセスは、振動機構または鋳造機構を利用して、マイクロニードルアレイ型の細長いウェルへのより深いHAポリマー溶液の浸透を促進することができる。
【0111】
より低粘度(たとえば、160kDA HAの5重量%未満)のHAポリマー溶液の場合、鋳造プロセスは、遠心力または同様の技術を利用して、第1のHAポリマー溶液または第2のHAポリマー溶液をマイクロニードルアレイ型の細長いウェルにより深く押し込むことができる。他のタイプの鋳造プロセスも同様に利用して、HAポリマー溶液の型への完全な浸透を促進することができる。
【0112】
第1および第2のHAポリマー溶液をマイクロニードルアレイ型に導入した後、第1および第2のHAポリマー溶液を室温で加熱、乾燥、および/または蒸発させて、そこから溶媒を追い出し、その結果、第1のポリマーおよび第2のポリマーがマイクロニードルアレイ型内で形成される。型を加熱するための技術は、たとえば、直接放射加熱、抵抗加熱、加熱空気循環、マイクロ波加熱、他の適切な技術、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0113】
図1B図2B、および図5Dに示されるような薬物含有層を有するマイクロニードルアレイの作製には、アレイ型に流し込まれるポリマー溶液の粘度を注意深く制御する必要がある。一部の実施形態では、本開示の積層方法は、オーバーモールディング技術とは異なる場合がある。たとえば、オーバーモールディング技術は、ポリマー塗布技術での積層効果の効果的な使用である。このプロセスは、既存の構成要素に形状と構造の層を追加するための液体樹脂の使用を中心としている。
【0114】
対照的に、少なくとも一部の実施形態では、本明細書で提供されるアレイおよび方法は、ポリマー鋳造溶液の相対粘度または密度を、両方が液体状態にある間に操作することによって作成されるシェル層を有する。したがって、そのような実施形態では、薬物含有層は、既存の形状に追加されていない。上で説明したように、これらの革新的なアレイおよび方法を使用すると、機械的安定性の向上、薬剤の無駄の削減、コストの削減など、様々な利点が可能になる。
【0115】
一部の実施形態では、マイクロニードルアレイを形成するための方法は、神経毒および約1重量%から約40重量%のヒアルロン酸を含む第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を、マイクロニードルアレイ型の細長いウェルのそれぞれに分注するステップを含む。一部の実施形態では、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液は、約5重量%から約30重量%のヒアルロン酸を含む。他の実施形態では、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液は、約5重量%から約20重量%のヒアルロン酸を含む。さらに他の実施形態では、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液は、約5重量%から約15重量%のヒアルロン酸を含む。さらに他の実施形態では、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液は、約1重量%から約10重量%のヒアルロン酸を含む。第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を細長いウェルの底に濃縮するために、真空下で分注を行うことができる。この第1のヒアルロン酸ポリマー溶液は、最終的に、マイクロニードルの細長い本体の表面に神経毒含有層またはキャップを形成する。神経毒含有層が細長い本体を覆う程度は、細長いウェルに分注される第1のヒアルロン酸ポリマー溶液の量を増減することによって制御することができる。
【0116】
第1のヒアルロン酸ポリマー溶液が細長いウェルに分注された後、約25重量%から約50重量%のヒアルロン酸を含む第2のヒアルロン酸ポリマー溶液が、マイクロニードルアレイ型の細長いウェルに分注される。一部の実施形態では、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液は、約30重量%から約45重量%のヒアルロン酸を含む。他の実施形態では、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液は、約5重量%から約20重量%の範囲の濃度で、約500kDaから約5MDaの分子量を有する高分子量ヒアルロン酸を含む。第1および第2のヒアルロン酸溶液のそれぞれにおける適切な分子量および濃度の選択は、細長い本体および外層の所望の組成に基づいて当業者には明らかであろう。
【0117】
少なくとも一部の実施形態によれば、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の粘度は、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液の粘度よりも高い。第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を細長いウェルに分注すると、密度の違いとも相関し得るこの粘度の違いにより、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液が第1のヒアルロン酸ポリマー溶液の全部または一部を置換する。置換された第1のヒアルロン酸ポリマー溶液は、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液と細長いウェルの壁との間を上方向に流れ、それにより、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の周りに層を形成する。第2のヒアルロン酸ポリマー溶液のより高い粘度は、より粘度の低い第1のヒアルロン酸溶液が置換中に第2の溶液と混合することをさらに防ぐ。したがって、神経毒は外層で維持される。
【0118】
一部の実施形態では、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液および第2のヒアルロン酸溶液は、共成形される。共成形では、ある材料を別の材料に対する追加の層として配置するのではなく、異なる粘性材料を同時に型に射出する。言い換えれば、サンドイッチのような構造が作成され、両方の材料が異種の液体として互いに成形される。
【0119】
次に、マイクロニードルアレイ型内の組み合わされた溶液を圧縮にかけることができる。このステップは、乾燥前に第1の溶液と第2の溶液との間に一体型の界面を形成するのに役立つ。圧縮および乾燥後、得られた神経毒含有層および細長い本体は互いに構造的に一体化され、ポリマー間の強力な分子間結合を含む。より高い粘度の溶液から形成される細長い本体は、神経毒含有層で形成されるマトリックスよりも、乾燥後に形成されるマトリックス中のポリマーの濃度が高くなる可能性がある。したがって、細長い本体は、外層よりも大きい比重、または単位体積あたりの質量を有することができる。外層も同様に、神経毒が分散したヒアルロン酸ポリマーマトリックスに形成される。分散は均一にすることができる。このポリマーマトリックスは、神経毒を分解剤から保護するのに役立ち、取り扱いおよび投与中の損傷の傾向が減少した強力で安定した外層を形成し、さらに神経毒の放出速度を制御するのに役立つ。
【0120】
本開示のマイクロニードルアレイは、様々な治療方法で使用することができる。一般に、治療方法は、本開示のマイクロニードルアレイを患者の皮膚表面に適用して、皮膚表面に複数のマイクロニードルを埋め込むステップを含むことができる。皮膚表面に埋め込まれると、マイクロニードルは表皮を貫通して真皮に入ることができる。少なくとも一部の実施形態によれば、マイクロニードルアレイは、シェル層がマイクロニードルから放出されるのに十分な時間、皮膚表面に適用されたままであり得る。さらに、マイクロニードルアレイはまた、有効成分の少なくとも一部がシェル層から真皮に放出されるのに十分な時間、皮膚表面に適用されたままであり得る。
【0121】
さらに、一部の実施形態では、マイクロニードルアレイは、十分な溶解性ポリマーが溶解してベース層からのマイクロニードルの放出に作用するまで皮膚表面に適用されたままであり得、したがって、皮膚表面からのベース層の除去後もマイクロニードルを表皮または真皮に残す。マイクロニードルアレイが皮膚表面から除去されるまでにそれらがまだ完全に分解されていない場合、マイクロニードルはマイクロニードルに沿った弱点でベース層から壊れ、皮膚に残り、時間とともに分解してそれらの活物質を患者に放出し得る。
【0122】
本開示のマイクロニードルアレイで治療することができる状態には、額のしわ、目じりのしわ、眉間のしわ、小じわ、多汗症、瘢痕、乾癬、炎症性皮膚疾患などが含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
たとえば、図6A図6Cは、本開示のマイクロニードルアレイが患者を治療するためにどのように使用されるかを示す例示的な概略図を示している。図6Aに示されるように、マイクロニードルアレイ200は、患者の皮膚表面202に適用することができる。皮膚表面202は、表皮204および真皮206を含む。皮膚表面202に適用されると、マイクロニードル212は表皮204を貫通し、マイクロニードル212のそれぞれの薬物運搬シェル層218は、少なくとも部分的に真皮206に入る。図6Bでは、各マイクロニードル212の薬物運搬シェル層218は、真皮206に完全に入る。この時点で、マイクロニードルアレイ200は、薬物運搬シェル層218が溶解を開始する、および/またはマイクロニードル212および/またはベース層214から分離するのに少なくとも十分な時間、皮膚表面202上の所定の位置に留まることができる。図6Cに示されるように、薬物運搬シェル層218(およびおそらくマイクロニードル212)は、そこからベース層214(および残りのマイクロニードル212)を除去する前に、皮膚表面202、真皮206、または表皮204内で完全に溶解することができる。ただし、ポリマーの完全な分解または溶解は必要ない。薬物運搬シェル層218が分解されると、有効成分220は、治療機能を実行するために真皮206に放出される。
【0124】

例1:分子量500kDaの乾燥ヒアルロン酸繊維をリン酸緩衝生理食塩水で水和することにより、ヒアルロン酸の高粘度流体を調製した。粘性流体を1mLシリンジに移し、4000rpmで10分間遠心分離して、気泡を除去した。この例では有効成分は使用されていない。
【0125】
気泡を除去した後、0.20gの粘性流体をシリコンマイクロニードル型に配置した。適用された流体を、薄膜に流し込んだ。流体を流し込んだ後、湿ったフィルムおよび型をオーブンに入れ、40℃で2.5時間加熱した。加熱後、ピンセットを使用して自立型マイクロニードルアレイを型から取り外した。ベース層の厚さを、異なる量の粘性流体を金型に流し込むことによって調整した。
【0126】
図7および図8は、例1に関して上で論じたものを含む、本明細書の作製方法の一部の実施形態を使用して作製された典型的なマイクロニードルアレイの画像を示している。図7は、マイクロニードルアレイの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示し、図8は、マイクロニードルアレイのX線マイクロコンピュータ断層撮影(CT)画像を示している。
【0127】
例2:ヒアルロン酸の代わりに架橋ヒアルロン酸を使用したことを除いて、例1と同様の方法でマイクロニードルアレイを調製した。具体的には、Juvederm Ultra Plusゲルを凍結乾燥し、ヒアルロン酸濃度が120mg/mLの濃厚な液体に再構成した。ヒアルロン酸とコラーゲンの混合物、またはヒアルロン酸とフィブロインの混合物も同様に使用された。この例では有効成分は使用されていない。
【0128】
例3:疎水的に修飾されたヒアルロン酸を使用したことを除いて、例1と同様の方法でマイクロニードルアレイを調製した。具体的には、ベンジル化度が80%のベンジル化ヒアルロン酸をジメチルスルホキシドと混合して、20重量%のヒアルロン酸を含む粘稠なペーストを形成した。この場合、乾燥は45℃のオーブンで24時間行われた。この例では有効成分は使用されていない。
【0129】
例4:この例では、トリパンブルー(MW=873)を、マイクロニードルアレイを形成する際にヒアルロン酸を配合するためのモデル有効成分として使用した。トリパンブルーとヒアルロン酸をPBSに溶解し、粘稠なペーストを形成した。次に、粘稠なペーストをシリコン型に流し込んだ。トリパンブルー/ヒアルロン酸を型に流し込んだ後、ヒアルロン酸を含むがトリパンブルーを含まない同様のペーストを、型内に最初に置いたペーストの上に流し込んだ。続いて、45℃で2.5時間加熱した。
【0130】
マイクロニードルの遠位部分によって優先的に運ばれるトリパンブルーを有するマイクロニードルアレイが得られた。図9は、マイクロニードルの遠位部分によって運ばれるトリパンブルーを有するマイクロニードルアレイの画像を示している。
【0131】
例5:トリパンブルーの代わりにフルオレセインイソチオシアネート(FITC)/ヒト血清アルブミン(HSA)を使用するマイクロニードルアレイを、例4と同様の方法で形成した。
【0132】
例6:トリパンブルーの代わりにボツリヌス毒素タイプA(BoNT/A)を使用するマイクロニードルアレイも、例4と同様の方法で形成した。
【0133】
例7:例1のマイクロニードルアレイの機械的特性を、安定マイクロシステムテクスチャーアナライザーを使用して測定した。これらの測定を行う際に、マイクロニードルアレイをマイクロニードルを上に向けて測定面に配置した。テクスチャーアナライザーからのプローブをマイクロニードルと接触させ、マイクロニードルに対して軸方向に動かした。次に、プローブの移動距離の関数としての力応答を記録した。図10は、資生堂から得られる市販のマイクロニードルアレイと比較した、ヒアルロン酸マイクロニードルアレイの力応答対プローブ移動距離のプロットを示している。図10に示されるように、ヒアルロン酸マイクロニードルアレイの機械的強度ははるかに高かった。
【0134】
例8:皮膚穿孔試験を、ヒト死体皮膚および例5のマイクロニードルアレイを使用して実施した。マイクロニードルアレイをマイクロニードルを下に向けて皮膚に置き、2kgの重りで約1分間手動で圧力をかけた。次に、190gの重りをマイクロニードルアレイのアプリケーターに置き、重りを60分間所定の位置に保持した。次に、重りおよびアプリケーターを皮膚に対して外側に引っ張ることにより取り除いた。次に、皮膚に残っているマイクロニードルの共焦点画像分析を行った。共焦点画像分析は、皮膚内の約100μmの深さへの貫通を示した。これは、いくつかの表面的な用途に適している可能性がある。図11Aは、色素標識マイクロニードルアレイで処理された皮膚サンプルの写真を示している。マイクロニードルが皮膚サンプルに均一に分布していることがわかる。図11Bは、皮膚サンプルの貫通前に撮影されたマイクロニードルアレイの顕微鏡写真を示し、図11Cは、皮膚サンプルの貫通の5分後に撮影された図11Bのマイクロニードルアレイの顕微鏡写真を示している。マイクロニードルが皮膚に溶解し始めていることがわかる。
【0135】
皮膚透過試験もフランツ細胞アッセイを使用して実施した。皮膚浸透試験は、例1~6に記載されている方法と同様の方法で調製された、免疫グロブリンG(IgG)を充填したヒアルロン酸マイクロニードルパッチを使用して実施した。パッチには、2.8(±0.24)μgのIgG/パッチが含まれていた。
【0136】
フランツ細胞(Logan Instruments社)を、室温で磁気撹拌しながら、PBS中の5mLの5%ウシ血清アルブミン(BSA)ビヒクルで一晩前処理した。翌日、5mLのビヒクルを1xプロテイナーゼ阻害剤を含むPBS中の5mLの1%BSAと交換し、32℃に予熱した。ヒト死体皮膚を室温の水で1時間解凍し、1つのマイクロニードルパッチに合うように細かく切断してから、ピンでプラスチックフォームに固定した。皮膚を伸ばして平らな表面にし、拭いて皮膚の水分を取り除いた。アプリケーターを使用してパッチを皮膚に1分間適用し、次に300gの重りをパッチに置き、4分間放置した(5分間の検討)。第2の皮膚サンプルも同様に30分間放置した。皮膚サンプルを、角質層を上に向けてフランツ細胞に適用した。次に、1%BSAビヒクルをサンプル全体に拡散させ、0.4mLのアリコートをフランツ細胞の受容体アームから選択した間隔で採取した。アリコートを採取するたびに、1xプロテイナーゼ阻害剤を含む0.4mLの新鮮な1%BSAビヒクルを細胞に加えた。
【0137】
次に、アリコートを収集し、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して検討した。皮膚サンプルから残留IgGを回収するために、各皮膚サンプルの重さを量り、小片に切断した。断片を、1xプロテイナーゼ阻害剤を含む1%BSA(PBS中)1mLあたり50mgの皮膚の懸濁液中で4℃で少なくとも4時間インキュベートした。次に、組織を均質化させ、ロッカーで5℃で一晩回転させた後、4700xg、5℃で15分間遠心分離して、上清を回収した。次に、ELISAを使用して上清を分析した。皮膚サンプルを介したIgG浸透の時間依存性の結果を図12に示す。この約14~17ngのIgGは、70時間後にヒト死体皮膚を透過した。
【0138】
例9:毒素(900kDa)を充填したHAマイクロニードルパッチを、0.46mg/mlの濃度(効力4.70E+7(U/mg))を有するBoNT/A(900kDa)、160kDaヒアルロン酸、pH6.0の20mMヒスチジンの緩衝液を使用して調製した。36μLの毒素溶液を100mlの20mMヒスチジン緩衝液に加えた。希釈後の濃度は0.000166μg/μlだった。次に、109mgのHAファイバー(160kDa)を5mlのNorm-Ject社のHSWシリンジに加えることにより、HA毒素ゲル(12重量%)を調製した。803.14mgの毒素溶液を、第2の5mlをNorm-Ject社のHSWシリンジに加えた。次に、2つのシリンジをメス-メスシリンジコネクタを使用して接続し、毒素溶液をHAファイバーとともにシリンジに静かに注入した。混合物を10サイクル前後に混合し、この混合を5分ごとに合計7回繰り返した。裏打ち層(ベース)を作るために第2のゲルを調製した。400mgの160kDa HAを1000mgのpH6.0 20mMヒスチジン緩衝液と混合した。最終的なHA濃度は28.57重量%だった。
【0139】
次に、毒素を充填したマイクロニードルアレイパッチを調製した。18.2mgのHA毒素ゲル(12重量%HA、毒素濃度0.1458ng/mg)をシリコンマイクロニードル型に量り入れた。125mgのHAゲル(20mMヒスチジン緩衝液中の28.57重量%HA)を別々に秤量し、2枚のテフロン(登録商標)シートを使用して湿ったペーストにプレスした。次に、HAペーストをシリコンマイクロニードル型上にあるHa毒素溶液に流し込んだ。上記の手順と同様に、第2の毒素(150kDa)を充填したHAマイクロニードルパッチを調製した。毒素(900kDa)を充填したHAマイクロニードルと毒素(150kDa)を充填したマイクロニードルパッチを、質量回収、細胞ベースの効力アッセイ(CBPA)、および軽鎖(LC)活性アッセイによってさらに分析した。
【0140】
質量回収は、捕捉抗体としてF12-3-8モノクローナル抗体、検出抗体としてポリクローナル検出抗体を用いたELISAアッセイを使用して決定した。合計5つのパッチを分析したところ、毒素の質量回収率は、目標充填量の80(±11.9)%であることがわかった。
【0141】
本明細書に記載のマイクロニードルアレイにおける150/900kDa BoNT/A複合体の効力を評価するためにCBPA検討も実施した。
【0142】
特殊化:神経芽細胞腫細胞を、トリシアロガングリオシドおよび神経サプリメントの存在下で約72時間培養し、神経毒の取り込みに対する細胞の感受性を高めた。
【0143】
薬物治療:細胞を薬物とともに24時間インキュベートし、その間に神経毒素が細胞表面受容体に結合し、内在化され、軽鎖エンドペプチダーゼドメインがサイトゾルに移動し、そこでアミノ酸197と198との間でSNAP25206を切断した。
【0144】
切断されたSNAP25197の蓄積:SNAP25197の蓄積を可能にするために、細胞をさらに72時間インキュベートした。
【0145】
エレクトロケミルミネッセンス(ECL)-ELISAによるSNAP25197の定量化:細胞溶解物を収集し、SNAP25197をSNAP25ECL-ELISAで定量化した。参照標準のECL-ELISA信号は、相対光単位で、処理濃度に対してプロットされ、試験サンプルの効力は標準曲線の式から外挿推定される。
【0146】
上記の手順では、参照標準はボトックス標準016(3U/mL-0.0938U/mL)である。実験対照は、パッチの作成に使用されたDS2 900kDa原薬ロット(2U/mL)だった。この検討の結果は、平均回収率が69.3(±5.96)%であることを示した。
【0147】
例10:900kDaのBoNT/A毒素を充填したヒアルロン酸パッチの評価もまた、軽鎖活性高速液体クロマトグラフィー(LCA-HPLC)アッセイで完了した。これらの検討は、以下に説明する軽鎖活性HPLCアッセイを使用して、溶解したヒアルロン酸パッチからの900kDa BoNT/A毒素の回収率を決定するために実施された。
【0148】
4つのパッチを評価した。各パッチを5mLエッペンドルフプロテインLoBindチューブに入れた。4mLの消化バッファー(50mM HEPES、pH7.4中の0.5mM酢酸亜鉛、0.05%Tween20、2mM DTT)を各チューブに添加した。パッチを周囲室温で1.5時間溶解した。1.5時間の間、チューブをシェーカー(200rpm)に置いた。各パッチ溶解チューブからの350μLの3倍量を、テストのために0.6mLのAxygenチューブに移した。
【0149】
HAパッチの調製に使用した900kDa BoNT/A毒素と同じ材料を使用して、0.05、0.1、0.5、および1ng/mLの標準曲線濃度を調製した。標準曲線は消化バッファーで作成した。各標準曲線濃度の350μLの3倍量を、テストのために0.6mLのAxygenチューブに移した。
【0150】
サンプルの減少を促進するために、サンプルを37℃で30分間インキュベートした。50μLのSNAPtide基質を各サンプルチューブに加えた。サンプルチューブを周囲室温で72時間インキュベートして、基質の切断を可能にした。72時間後、25μLの5%トリフルオロ酢酸(TFA)を各サンプルチューブに加え、基質の切断を停止した。次に、各チューブの内容物を分析のためにHPLCバイアルに移した。蛍光標識された切断産物を分離し、Waters 2695 XE分離モジュール(Waters社のSymmetry300 C18、3.5μm、4.6x150mmカラム)およびWaters2475Multiλ蛍光検出器を使用したRP-HPLCメソッドで検出した。Waters社のEmpower Proソフトウェアを介してデータを収集し、分析した。標準曲線は、BoNT/A標準曲線濃度(x軸)とBoNT/A切断産物のピーク面積(y軸)をプロットすることによって作成された。パッチ濃度は曲線から外挿推定された。各パッチに含まれるBoNT/Aの濃度は、BoNT/Aパッチの濃度に4(希釈係数)を乗じることによって決定された。
【0151】
得られたテストデータを表1に示す。平均毒素回収率は、2.48±0.77ng/パッチだった。毒素パッチの平均効力は、パッチあたり116.6ユニットに相当する。
【表1】
【0152】
例11:薬物層先端を有するマイクロニードルアレイをトリパンブルー(MW=873g/モル)で作製して、マイクロニードルの表面上の薬物運搬シェル層の分布を示した。最初に90mgのHA(MW 160kDa)を5mlシリンジに加えることにより、第1のポリマー溶液(10重量%HA)を調製した。別の5mlシリンジに、193μlの0.4%トリパンブルー溶液および616μlの20mM、pH6.0ヒスチジン緩衝液を加えた。2つのシリンジをメス-メスコネクタを介して接続し、1時間完全に混合した。得られた粘稠な溶液を1つのシリンジに収集し、蓋をして、次に3000rpmで5分間遠心分離した。
【0153】
第2のポリマー溶液(33.3重量%HA)は、1.0gの160kDa HAファイバーを5mlシリンジに追加し、2.0gmのpH6.0mlの20mM、pH6.0ヒスチジンバフを別の5mlシリンジに追加することによって調製した。2つのシリンジをシリンジコネクタを介して接続した。緩衝液をHA繊維を含むシリンジに押し込み、HA繊維を放置して緩衝液を2時間吸収させ、次にシリンジを10サイクル前後に押して混合した。得られた高粘度のHAペーストを1つのシリンジに収集し、蓋をして、4000rpmで30分間遠心分離した。
【0154】
次に、トリパンブルーを含む第1のHA溶液9mgをマイクロニードル型に流し込むことにより、トリパンブルーを充填したHAマイクロニードルアレイを調製した。次に、50mgの33.3重量%HAを直径2cmの丸いテフロン(登録商標)シート上に置き、別のテフロン(登録商標)シートをHAゲルの上に置いた。次に、シートを2枚のスライドガラスの間に挟み、圧縮して湿ったHAフィルムを形成した。次に、テフロン(登録商標)フィルムの1つを取り外して、圧縮された湿ったHAフィルムを露出させた。次に、HAフィルムをその上に有するシートを裏返して、HAフィルムをマイクロニードル型内のHA/トリパンブルー溶液上に置いた。
【0155】
次に、型内の溶液を、45kgの力、0.1mm/秒の速度の圧縮パラメータの下で実行される圧縮ステップにかけ、その後、圧力を60秒保持時間維持した。圧縮が完了した後、ピンセットを使用してテフロン(登録商標)フィルムを剥がし、HAマイクロニードルパッチを室温で3時間乾燥させた。
【0156】
次に、トリパンブルーを充填したマイクロニードルアレイを光学顕微鏡で検査し、顕微鏡写真を図13Aおよび図13Bに示す。マイクロニードルは、先端に青いシェル層304を示し、マイクロニードル本体302の表面に沿って下に伸びている(図13A、これは、マイクロニードル本体302およびアレイ306の薬物運搬シェル層304の視覚化を容易にするための縁線および等高線を含む)。針の断面(図13B)は、表面またはシェル層304のみが青色であり、コアまたはマイクロニードル本体302は青色ではないことを示した。これは、マイクロニードル表面のみがトリパンブルーで覆われており、鋳造プロセス中に染料がマイクロニードル本体302に拡散しなかったことを示している。これらの結果は、同様の手順が使用される場合、毒素がHAマイクロニードル表面にコーティングされることを示している。
【0157】
図13Cを参照すると、HAが500kDaの分子量を有し、濃度が16重量%であったことを除いて、第2のマイクロニードルアレイ330を同様の方法で作製した。この方法で作製したマイクロニードルアレイ330の顕微鏡写真を図13Cに見ることができ、マイクロニードル本体332の先端および表面に形成されたシェル層334を示している。
【0158】
真空成形技術と圧縮成形技術の組み合わせを使用した、HAマイクロニードル表面に毒素を充填した毒素充填HAマイクロニードルの調製。0.46mg/mlのBoNT/A(MW=900kDa)の濃度と4.70x10U/mgの効力を持つ毒素溶液を調製した。マイクロニードルパッチは、100ユニット/パッチの目標充填を持つように設計された。20mM、pH6.0のヒスチジン緩衝液100mlが入っている容器に、36μLの毒素溶液を加えた。希釈後の毒素濃度は0.000166μg/μlだった。
【0159】
次に、バイオセーフティフード内で、8.8mgのHAファイバー(160kDa)を5mlのNorm-Ject社のHSWシリンジに加えることにより、HA毒素ポリマー溶液(1重量%HA)を調製した。別の5ml Norm-Ject社のHSWシリンジに、192.72mgの毒素溶液(0.000166μg/μl)と追加の616mgの20mM、pH6.0ヒスチジン緩衝液を加えた。2つのシリンジをメス-メスシリンジコネクタを使用して接続し、毒素含有シリンジのプランジャーを静かに押して、毒素溶液をHAファイバー含有シリンジに通した。混合物を静かに10サイクル前後に通過させ、この混合プロセスを5分ごとに合計7回繰り返した。次に、混合物を単一のシリンジに収集し、5℃で一晩保持した。
【0160】
HAマイクロニードル裏打ち層を形成するための第2のHAポリマー溶液を調製した。400mgの160kDa HAを800mgのpH6.0、20mMヒスチジン緩衝液と混合した。HA溶液の最終HA濃度は33.3重量%だった。
【0161】
9μlのHA/毒素溶液をマイクロニードル型にピペットで移した。次に、真空を適用して、HA/毒素溶液がマイクロニードル型の空洞を満たすことを可能にした。次に、50mgの33.3重量%HAを型に適用し、45kgの力、0.1mm/秒の速度で圧縮し、30秒間保持した。次に、型を、バイオセーフティフード内で真空下、室温で3時間乾燥させた。
【0162】
追加のマイクロニードルアレイを、上記と同様の方法で作製した。これらのアレイの詳細は、以下の表2に要約されている。これらのアレイでは、900kDaの毒素と150kDaの毒素の両方がHAマイクロニードルアレイに正常に充填された。毒素は、針の長さや針の密度など、様々な設計のマイクロニードルに充填された。得られた毒素充填HAマイクロニードルアレイをさらにELISA、CBPA(細胞ベースの効力アッセイ)、およびLC(軽鎖)活性アッセイによる質量回収に供して毒素活性を決定し、これらはすべて以下の表2に示すように充填の成功を示した。
【表2】
【0163】
例12:代替鋳造法:圧縮および遠心分離。HAマイクロニードルアレイを、例11に記載の方法と同様だが、圧縮の代わりに遠心分離プロセスを使用して作製したが、遠心分離では、溶液をマイクロニードル型空洞に充填するために溶液の粘度を低くする必要があることがわかった。特定の分子量(たとえば、10,000Daを超える)のHAは、低濃度(たとえば、1重量%)でも非常に粘性がある。マイクロニードルアレイを形成するには、複数の遠心分離ステップが必要である。このプロセスは長くて効率が悪く、特に毒素が存在する場合、汚染や流出の可能性が高くなる。
【0164】
したがって、HAマイクロニードルアレイは、HA濃度が5重量%を超える場合、4000rpmの速度および最大30分の遠心分離時間の遠心分離プロセスによって作製することはできない。HA濃度が1重量%未満に大幅に低下した場合、HAマイクロニードルアレイは遠心分離を使用して作製できるが、堅牢なHAマイクロニードルを形成するには、複数の遠心分離を実行する必要がある。そうしないと、欠陥があるか、弱いマイクロニードルアレイにつながる非常に薄い裏打ち層を有するマイクロニードルになる。
【0165】
例13:ラット指外転スコア検討(DAS)。HAおよび毒素含有パッチを、1.13cmのサイズ、300マイクロニードル/cmのマイクロニードル密度、および700μmのニードル長で、例9に記載の方法に従って作製した。100ユニット/パッチ、30ユニット/パッチ、10ユニット/パッチ、および3ユニット/パッチのそれぞれの毒素充填の4つのパッチを調製した。次に、パッチを、以下に説明するようにDAS検討で使用した。
【0166】
神経毒製剤の効力は、動物の後肢の筋肉への注射後の神経毒の局所的な筋肉弱化効果を測定する指外転スコア(DAS)アッセイを使用して規定どおりに評価することができる。ラットDASでは、動物はラットである。ラットの指外転は、0が正常で4が指外転の最大の減少である、5段階でスコア付けされる。ラットの外転アッセイでは、外転の喪失が治療された四肢の1本の指で観察された場合、通常、DASスコア「1」が割り当てられる。DASスコア「2」は治療された四肢の3本の指の喪失で与えられ、スコア「3」は治療された肢の4本の指の外転の喪失で与えられる。最後に、治療された四肢の5本の指すべてで外転が失われると、ラットは「4」のスコアを受け取る。
【0167】
本検討では、すべてのDASアッセイは、各マイクロニードルアレイパッチの6匹のラットに対してクラスIIタイプA2バイオセーフティキャビネット(BSC)で実行された。「0日目」に、ラットをケタミン/キシラジンカクテル(75mg/kgのケタミン、10mg/kgのキシラジン)で麻酔した。十分に麻酔をかけたら、毒素を充填したマイクロニードルパッチを各ラットの右前脛骨(TA)筋の皮膚に塗布した。次に、衝撃の強いスプリングアプリケーター(Micropoint Technologies社、シンガポール)を使用して投与を行い、マイクロニードルが皮膚に確実に浸透するようにした。アプリケーターを、最小の圧力で、適用されたパッチ上で1~5分間所定の位置に保持した。適用期間が完了した後、パッチを取り外して適切に保管するか、漂白した。
【0168】
DASスコアは、1日目以降記録される。図14Aから図14Cに示されるように、100Uパッチの適用により応答が飽和した。さらに、そのグループのすべてのラットは、全身毒性の初期の兆候を示した。30Uパッチのスコアも4であった。10Uパッチの適用により、DASスコアは約2になった。このスコアは約10日目まで持続し、その時点でDASスコアは徐々に低下し始めた。3Uパッチのスコアは1から2の間であった。したがって、結果は、毒素を充填したHAマイクロニードルパッチが、制御された用量と放出で機能的な毒素を送達できることを明確に示した。
【0169】
例14:マイクロニードルアレイは、毒素含有ポリマー溶液が3x10Daを超える分子量を有する0.1から2重量%のヒアルロン酸を含み、ベース層およびマイクロニードルの細長い本体の形成に使用されたポリマー溶液が、50,000Daから約1x10Daの範囲の分子量を有する5から40重量%のヒアルロン酸を含んでいたことを除いて、例9のステップに従って作製された。得られたマイクロニードルアレイは、細長い本体が毒素含有シェル層の溶解速度よりもはるかに速い溶解速度を有することを示した。したがって、毒素含有外層は、より遅い溶解速度を有するように設計することができ、それにより、インビボでの毒素の放出を制御し、長時間作用する効果を提供する。
【0170】
さらなる考慮事項
一部の実施形態では、本明細書の節のいずれも、独立節のいずれか1つまたは従属節のいずれか1つに依存し得る。一態様では、任意の節(たとえば、従属節または独立節)を、他の任意の1つまたは複数の節(たとえば、従属節または独立節)と組み合わせることができる。一態様では、請求項は、節、文、句、または段落に記載されている単語(たとえば、ステップ、操作、手段、または構成要素)の一部またはすべてを含み得る。一態様では、請求項は、1つまたは複数の節、文、句、または段落に記載されている単語の一部またはすべてを含み得る。一態様では、節、文、句、または段落のそれぞれの一部の単語が削除される場合がある。一態様では、追加の単語または要素を、節、文、句、または段落に追加することができる。一態様では、主題技術は、本明細書に記載の構成要素、要素、機能、または操作のいくつかを利用せずに実施することができる。一態様では、主題技術は、追加の構成要素、要素、機能、または操作を利用して実装することができる。
【0171】
主題技術は、たとえば、以下に説明する様々な態様に従って示されている。主題技術の態様の様々な例は、便宜上、番号付きの節(1、2、3など)として説明されている。これらは例として提供されており、主題技術を制限するものではない。従属節のいずれかを任意の組み合わせで組み合わせて、それぞれの独立節、たとえば、節1または節20に配置することができることに留意されたい。他の節も同様の方法で提示できる。
【0172】
節1。マイクロニードルアレイであって、ベース層と、ベース層から突出する複数のマイクロニードルであって、マイクロニードルおよびベース層のそれぞれは、第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスからなる単一の構造的に連続した構成要素であり、複数のマイクロニードルのそれぞれは、ベース層と連続する近位部分を有する細長い本体であり、細長い本体は、一般に、その近位部分から遠位部分に向かって先細になり、不規則な本体形状を画定する、複数のマイクロニードルと、複数のマイクロニードルの細長い本体を少なくとも部分的に包み込んで、その周りに流れ込む、その不規則な本体形状に対して不規則な表面境界を画定する薬物運搬シェル層であって、アレイが一貫したマイクロニードルプロファイルを有することを可能にするために、それぞれの細長い本体のそれぞれの不規則な本体形状とは異なる事前定義された外側プロファイルをそれぞれが有する、薬物運搬シェル層と、を含み、薬物運搬シェル層は、第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスに分散された神経毒を含み、ここで、薬物運搬シェル層および細長い本体は、不規則な表面境界にまたがる第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスおよび第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスの重なりを含む一体化されたヒアルロン酸ポリマーマトリックスを介して一緒に融合される、マイクロニードルアレイ。
【0173】
節2。第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスは第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスのポリマー濃度よりも高いポリマー濃度を有する、節1に記載のマイクロニードルアレイ。
【0174】
節3。第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスは第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスの比重量よりも大きい比重量を有する、節1に記載のマイクロニードルアレイ。
【0175】
節4。薬物運搬シェル層は細長い本体の遠位部分のみを覆う、前述の節のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0176】
節5。薬物運搬シェル層はマイクロニードルの細長い本体を完全に包み込む、節1から3のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0177】
節6。神経毒はボツリヌス毒素を含む、前述の節のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0178】
節7。ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素血清型A(BoNT/A)、ボツリヌス毒素血清型B(BoNT/B)、ボツリヌス毒素血清型C1(BoNT/C1)、ボツリヌス毒素血清型D(BoNT/D)、ボツリヌス毒素血清型E(BoNT/E)、ボツリヌス毒素血清型F(BoNT/F)、ボツリヌス毒素血清型G(BoNT/G)、ボツリヌス毒素血清型H(BoNT/H)、ボツリヌス毒素血清型X(BoNT/X)、およびモザイクボツリヌス毒素および/またはその変異体からなる群から選択される、節6に記載のマイクロニードルアレイ。
【0179】
節8。マイクロニードルアレイは約0.01から約100U/cm2の神経毒を患者に送達するように構成されている、前述の節のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0180】
節9。マイクロニードルアレイは約0.01から約100,000U/cm2の範囲の神経毒の充填濃度を有する、前述の節のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0181】
節10。第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスは約0.000001重量%から約0.01重量%の神経毒を含む、前述の節のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0182】
節11。第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックス、第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックス、またはその両方は、非架橋ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水的に修飾されたヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、前述の節のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0183】
節12。第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスおよび第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスはそれぞれ独立して、約150kDaから約6MDaの範囲の分子量を有するヒアルロン酸を含む、前述の節のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0184】
節13。第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックス、第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックス、またはその両方は、グリコサミノグリカン、多糖類、コラーゲン、エラスチン、フィブロイン、デンプン、グルコマンナン、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つをさらに含む、前述の節のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0185】
節14。近位部分およびベース層は有効成分を含まない、前述の節のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0186】
節15。第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスは、非架橋ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水的に修飾されたヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせからなる、前述の節のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0187】
節16。複数のマイクロニードルのそれぞれは約25ミクロンから約3000ミクロンの範囲の長さを有する、前述の節のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0188】
節17。複数のマイクロニードルのそれぞれは実質的に同じ長さを有する、前述の節のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0189】
節18。複数のマイクロニードルのそれぞれは円錐形またはピラミッド形の形状を有する、前述の節のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0190】
節19。複数のマイクロニードルのそれぞれは約1ミクロンから約30ミクロンの範囲の先端幅を有する、前述の節のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0191】
節20。マイクロニードルアレイのマイクロニードルの密度は約5マイクロニードル/cm2から約1000マイクロニードル/cm2の範囲である、前述の節のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0192】
節21。神経毒は薬物運搬シェル層に均一に分散している、前述の節のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0193】
節22。マイクロニードルアレイを形成するための方法であって、複数の細長いウェルを含むマイクロニードルアレイ型を提供するステップと、神経毒および約1重量%から約40重量%のヒアルロン酸を含む第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を提供するステップと、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を細長いウェルのそれぞれの下部に分注するステップと、約25重量%から約50重量%のヒアルロン酸を含む第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を提供するステップであって、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の粘度は第1のヒアルロン酸ポリマー溶液の粘度よりも高い、ステップと、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注した後に、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を細長いウェルのそれぞれに分注するステップであって、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の高い粘度により、第1のヒアルロン酸ポリマー溶液の少なくとも一部が細長いウェルの下部から移動し、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の周りを流れ、それによって神経毒含有外層を形成する、ステップと、型内の第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を乾燥させて、そこから突出する複数のマイクロニードルを有するベース層を含むマイクロニードルアレイを形成するステップであって、各マイクロニードルは、細長い本体および神経毒含有外層を含む、ステップと、を含む、方法。
【0194】
節23。第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注した後、細長いウェルのそれぞれは部分的にのみ満たされ、細長いウェルのそれぞれの上部は満たされないままである、節22に記載の方法。
【0195】
節24。第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を細長いウェルのそれぞれに分注するステップは、細長いウェルを第2のヒアルロン酸ポリマー溶液で過剰に充填するステップを含む、節22に記載の方法。
【0196】
節25。型内の第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を乾燥させるステップは、第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を型内にある間に加熱するステップを含む、節22から24のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
節26。型内の第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を乾燥させるステップは、第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を型内にある間に室温で乾燥させるステップを含む、節22から24のいずれか1つに記載の方法。
【0198】
節27。第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注した後、真空を適用するステップをさらに含む、節22から26のいずれか1つに記載の方法。
【0199】
節28。第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注するステップは、第1のヒアルロン酸溶液を型に流し込むステップを含み、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注するステップは、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を第1のヒアルロン酸溶液上に流し込み、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液に外圧を加えるステップを含む、節22から26のいずれか1つに記載の方法。
【0200】
節29。圧力を加えるステップは、圧力を所定の時間維持するステップをさらに含み、それにより、第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液のそれぞれからのヒアルロン酸ポリマーの一部が、第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の界面で統合される、節28に記載の方法。
【0201】
節30。第1のヒアルロン酸ポリマー溶液、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液、またはその両方は、約6.0から約8.0の範囲のpHを有する水性緩衝液をさらに含む、節22から29のいずれか1つに記載の方法。
【0202】
節31。水性緩衝液はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはヒスチジン緩衝液である、節30に記載の方法。
【0203】
節32。第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の少なくとも一部は型の過剰充填部分またはベース部分に配置され、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液は型の過剰充填部分に配置され、それにより、型はマイクロニードルアレイのベース層を画定する、節22から31のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
節33。マイクロニードルアレイをマイクロニードルアレイ型から分離するステップをさらに含む、節22から32のいずれか1つに記載の方法。
【0205】
節34。神経毒含有外層はマイクロニードルの細長い本体の遠位部分のみを覆う、節22から33のいずれか1つに記載の方法。
【0206】
節35。神経毒含有外層はマイクロニードルの細長い本体を完全に包み込む、節22から33のいずれか1つに記載の方法。
【0207】
節36。神経毒はボツリヌス毒素を含む、節22から35のいずれか1つに記載の方法。
【0208】
節37。ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素血清型A(BoNT/A)、ボツリヌス毒素血清型B(BoNT/B)、ボツリヌス毒素血清型C1(BoNT/C1)、ボツリヌス毒素血清型D(BoNT/D)、ボツリヌス毒素血清型E(BoNT/E)、ボツリヌス毒素血清型F(BoNT/F)、ボツリヌス毒素血清型G(BoNT/G)、ボツリヌス毒素血清型H(BoNT/H)、ボツリヌス毒素血清型X(BoNT/X)、およびモザイクボツリヌス毒素および/またはその変異体からなる群から選択される、節36に記載の方法。
【0209】
節38。マイクロニードルアレイは約0.01から約100U/cm2の神経毒を患者に送達するように構成されている、節22から37のいずれか1つに記載の方法。
【0210】
節39。マイクロニードルアレイは約0.01から約100,000U/cm2の範囲の神経毒の充填濃度を有する節22から38のいずれか1つに記載の方法。
【0211】
節40。第2のヒアルロン酸ポリマー溶液は約0.00000001から約1.0mg/mLの神経毒を含む、節22から39のいずれか1つに記載の方法。
【0212】
節41。第1のヒアルロン酸ポリマー溶液、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液、またはその両方のヒアルロン酸は、非架橋ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水的に修飾されたヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つである、節22から40のいずれか1つに記載の方法。
【0213】
節42。第1のヒアルロン酸ポリマー溶液、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液、またはその両方のヒアルロン酸は、それぞれ独立して約50kDaから約6MDaの範囲の分子量を有する、節22から41のいずれか1つに記載の方法。
【0214】
節43。第1のヒアルロン酸ポリマー溶液、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液、またはその両方は、グリコサミノグリカン、多糖類、コラーゲン、エラスチン、フィブロイン、デンプン、グルコマンナン、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つをさらに含む、節22から42のいずれか1つに記載の方法。
【0215】
節44。第2のヒアルロン酸ポリマー溶液は有効成分を含まない、節22から43のいずれか1つに記載の方法。
【0216】
節45。細長いウェルのそれぞれは約25ミクロンから約3000ミクロンの範囲の深さを有する、節22から44のいずれか1つに記載の方法。
【0217】
節46。細長いウェルのそれぞれは実質的に同じ深さを有する、節22から45のいずれか1つに記載の方法。
【0218】
節47。各細長いウェルは円錐形またはピラミッド形の形状を有する、節22から46のいずれか1つに記載の方法。
【0219】
節48。各マイクロニードルは約1ミクロンから約30ミクロンの範囲の先端幅を有する、節22から47のいずれか1つに記載の方法。
【0220】
節49。マイクロニードルアレイ型は、約5マイクロニードル/cm2から約1000マイクロニードル/cm2の範囲のマイクロニードルアレイのマイクロニードルの密度を生成するように構成されている、節22から48のいずれか1つに記載の方法。
【0221】
節50。神経毒は神経毒含有外層に均一に分散している、節22から49のいずれか1つに記載の方法。
【0222】
節51。節22から50のいずれか1つによって作成されたマイクロニードルアレイ。
【0223】
節52。患者を治療するための方法であって、節1から21および51のいずれか1つのマイクロニードルアレイを提供するステップと、マイクロニードルアレイを患者の皮膚表面に適用して、皮膚表面に複数のマイクロニードルを埋め込むステップと、を含む、方法。
【0224】
第53節。外層のヒアルロン酸の少なくとも一部は溶解し、マイクロニードルは皮膚表面に埋め込まれて神経毒を患者に放出する、節52に記載の方法。
【0225】
節54。マイクロニードルアレイは、額のしわ、目じりのしわ、眉間のしわ、小じわ、多汗症、瘢痕、乾癬、炎症性皮膚疾患を治療するために使用される、節52または53に記載の方法。
【0226】
節55。マイクロニードルアレイであって、ベース層と、ベース層から突出する複数のマイクロニードルであって、複数のマイクロニードルのそれぞれは、ベース層と連続する近位部分を有する細長い本体であり、細長い本体は、一般に、その近位部分から遠位部分に向かって先細になり、不規則な本体形状を画定する、複数のマイクロニードルと、複数のマイクロニードルの細長い本体を少なくとも部分的に包み込んで、その周りに流れ込み、その不規則な本体形状に対して不規則な表面境界を画定する少なくとも1つの薬物運搬シェル層であって、少なくとも1つの薬物運搬シェル層は、それぞれの細長い本体形状のそれぞれの不規則な本体形状とは異なる事前定義された外側プロファイルを有し、少なくとも1つの薬物運搬シェル層は、有効成分を含む、少なくとも1つの薬物運搬シェル層と、を含む、マイクロニードルアレイ。
【0227】
節56。少なくとも1つの薬物運搬シェル層および細長い本体は融合される、節55に記載のマイクロニードルアレイ。
【0228】
節57。有効成分は抗原、抗体、または毒素を含む、節55から56のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0229】
節58。有効成分は神経毒である、節55から57のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0230】
節59。神経毒はボツリヌス毒素である、節58に記載のマイクロニードルアレイ。
【0231】
節60。複数のマイクロニードルは円錐形またはピラミッド形の形状を有する、節55から59のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0232】
節61。円錐形またはピラミッド形の形状は、それらに関連するピッチ角を有し、その結果、複数のマイクロニードルは、点または先端に向かって先細になる、節60に記載のマイクロニードルアレイ。
【0233】
節62。ベース層、複数のマイクロニードル、および薬物運搬シェル層はそれぞれ少なくとも1つのポリマーを含む、節55から61のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0234】
節63。ベース層および複数のマイクロニードルは同じ少なくとも1つのポリマーを含む、節62に記載のマイクロニードルアレイ。
【0235】
節64。有効成分はポリマーに分散している、節62に記載のマイクロニードルアレイ。
【0236】
節65。少なくとも1つのポリマーは溶解可能である、節62に記載のマイクロニードルアレイ。
【0237】
節66。少なくとも1つのポリマーはヒアルロン酸である、節62に記載のマイクロニードルアレイ。
【0238】
節67。ベース層は第1のポリマーを含み、複数のマイクロニードルは第2のポリマーを含み、薬物運搬シェル層は第3のポリマーを含む、節55から61のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0239】
節68。マイクロニードルアレイであって、ベース層と、ベース層から突出する複数のマイクロニードルであって、複数のマイクロニードルのそれぞれは、第1のポリマーを含み、かつベース層と連続する近位部分を有する細長い本体であり、細長い本体は、一般に、その近位部分から遠位部分に向かって先細になり、不規則な本体形状を画定する、複数のマイクロニードルと、複数のマイクロニードルの細長い本体を少なくとも部分的に包み込んで、その周りに流れ込み、その不規則な本体形状に対して不規則な表面境界を画定する少なくとも1つの薬物運搬シェル層であって、少なくとも1つの薬物運搬シェル層は、それぞれの細長い本体形状のそれぞれの不規則な本体形状とは異なる事前定義された外側プロファイルを有し、少なくとも1つの薬物運搬シェル層は、第2のポリマーに分散された有効成分を含む、少なくとも1つの薬物運搬シェル層と、を含むマイクロニードルアレイ。
【0240】
節69。第1のポリマーは第2のポリマーよりも遅い速度で溶解する、節68に記載のマイクロニードルアレイ。
【0241】
節70。細長い本体は有効成分をさらに含む、節68から69のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0242】
節71。第2のポリマーは第1のポリマーよりも遅い速度で溶解する、節68から70のいずれか1つに記載のマイクロニードルアレイ。
【0243】
節72。第2のポリマーは、約0.1から約2重量%の濃度の高分子量ヒアルロン酸を含む、節71に記載のマイクロニードルアレイ。
【0244】
節73。第1のポリマーは約5重量%から約40重量%の濃度の低分子量ヒアルロン酸を含む、節71に記載のマイクロニードルアレイ。
【0245】
節74。マイクロニードルアレイを形成するための方法であって、複数の細長いウェルを含むマイクロニードルアレイ型を提供するステップと、有効成分を含む第1の流体を提供するステップと、細長いウェルのそれぞれの下部に第1の流体を分注するステップと、第2の流体の粘度が第1の流体の粘度よりも高い第2の流体を提供するステップと、第1の流体を分注した後、第2の流体を各細長いウェルに分注するステップであって、第2の流体の高い粘度は、第1の流体の少なくとも一部を細長いウェルのそれぞれの下部から第2の流体の周りを流れるように変位させて、それにより、有効成分含有外層を形成する、ステップと、型内の第1および第2の流体を乾燥させて、そこから突出する複数のマイクロニードルを有するベース層を含むマイクロニードルアレイを形成するステップであって、各マイクロニードルは、細長い本体および有効成分含有外層を含む、ステップと、を含む、方法。
【0246】
節75。第1の流体はヒアルロン酸ポリマー溶液を含む、節74に記載の方法。
【0247】
節76。有効成分は神経毒を含む、節74から75のいずれか1つに記載の方法。
【0248】
節77。第2の流体は、溶媒と混合されたヒアルロン酸から本質的になるヒアルロン酸ポリマー溶液を含む、節74から76のいずれか1つに記載の方法。
【0249】
節78。第2の流体は少なくとも1つのポリマーを含む、節74から77のいずれか1つに記載の方法。
【0250】
節79。第2の流体は1つまたは複数の追加のポリマーをさらに含む、節78に記載の方法。
【0251】
節80。第2の流体は賦形剤をさらに含む、節78に記載の方法。
【0252】
節81。マイクロニードルアレイを形成するための方法であって、複数の細長いウェルを含むマイクロニードルアレイ型を提供するステップと、有効成分を含む第1の流体を提供するステップと、型の上の下部に第1の流体を分注するステップと、第2の流体の粘度が第1の流体の粘度よりも高い第2の流体を提供するステップと、第1の流体を分注した後、第2の流体を第1の流体の上に流し込むステップと、圧縮の第1の段階で第2の流体の上に圧力を加え、第1の流体を細長いウェルの中および第2の流体の周りに流し、それにより、マイクロニードルの細長い本体の周りに有効成分含有シェル層を形成するステップと、圧縮の第2の段階で一定期間圧力を維持し、有効成分含有シェル層をマイクロニードルの細長い本体に結合するマトリックスを作成するステップと、型内の第1および第2の流体を乾燥させて、そこから突出する複数のマイクロニードルを有するベース層を含むマイクロニードルアレイを形成するステップであって、各マイクロニードルは、細長い本体および有効成分含有シェル層を含む、ステップと、を含む、方法。
【0253】
節82。第2の流体を第1の流体の上に流し込むステップは、型の細長いウェルを過剰に満たし、型の細長いウェルの上に単一の連続層を形成する、節81に記載の方法。
【0254】
節83。第1の流体および第2の流体はヒアルロン酸ポリマー溶液を含む、節81から82のいずれか1つに記載の方法。
【0255】
節84。第1の流体は5重量%未満の160kDAヒアルロン酸を含む、節83に記載の方法。
【0256】
節85。第1の流体を分注するステップは真空下で行われる、節81から84のいずれか1つに記載の方法。
【0257】
節86。マイクロニードルアレイを形成するための方法であって、複数の細長いウェルを含むマイクロニードルアレイ型を提供するステップと、有効成分を含む第1の流体を提供するステップと、第2の流体の粘度が第1の流体の粘度よりも高い第2の流体を提供するステップと、第1の流体および第2の流体をマイクロニードルアレイ型に同時に注入するステップと、マイクロニードルアレイ型を圧縮して、第1の流体と第2の流体との間に一体の界面を形成するステップと、型内の第1および第2の流体を乾燥させて、そこから突出する複数のマイクロニードルを有するベース層を含むマイクロニードルアレイを形成するステップであって、各マイクロニードルは、細長い本体および有効成分含有層を含む、ステップと、を含む、方法。
【0258】
節87。細長い本体および有効成分含有層は互いに構造的に一体化されている、節86に記載の方法。
【0259】
節88。第1の流体および第2の流体はポリマーを含む、節86から87のいずれか1つに記載の方法。
【0260】
節89。細長い本体は、有効成分含有層のポリマーの濃度よりも高いポリマー濃度を有する、節88に記載の方法。
【0261】
節90。細長い本体は有効成分含有層の比重よりも大きい比重を有する、節86から89のいずれか1つに記載の方法。
【0262】
前述の説明は、当業者が本明細書に記載の様々な構成を実践できるようにするために提供されている。主題技術を、様々な図および構成を参照して特に説明してきたが、これらは説明のみを目的としており、主題技術の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0263】
主題技術を実装する方法は他にも多くある。本明細書で説明される様々な機能および要素は、主題技術の範囲から逸脱することなく、示されるものとは異なって分割され得る。これらの構成に対する様々な修正は当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理を他の構成に適用することができる。したがって、主題技術の範囲から逸脱することなく、当業者によって、主題技術に多くの変更および修正を加えることができる。
【0264】
開示されたプロセスにおけるステップの特定の順序または階層は、例示的な手法の実例であることが理解される。設計の好みに基づいて、プロセスにおけるステップの特定の順序または階層を再配置できることが理解される。一部のステップは同時に実行できる。付随する方法は、サンプル順序で様々なステップの要素を提示することを主張し、提示される特定の順序または階層に限定されることを意味するものではない。
【0265】
本明細書で使用される場合、一連の項目の前にある「少なくとも1つ」という句は、項目のいずれかを区切る「および」または「または」という用語とともに、リストの各メンバー(つまり、各項目)ではなく、リスト全体を変更する。「少なくとも1つ」という句は、リストされている各項目の少なくとも1つを選択する必要はなく、むしろ、この句は、項目のいずれか1つのうちの少なくとも1つ、および/または項目の任意の組み合わせのうちの少なくとも1つ、および/または項目のそれぞれのうちの少なくとも1つを含む意味を可能にする。例として、「A、B、およびCの少なくとも1つ」または「A、B、またはCの少なくとも1つ」という句は、それぞれ、Aのみ、Bのみ、またはCのみ、A、B、およびCの任意の組み合わせ、および/またはA、B、およびCのそれぞれの少なくとも1つを指す。
【0266】
本開示で使用される「上部」、「下部」、「前部」、「後部」などの用語は、通常の重力基準系ではなく、任意の基準系を指すものとして理解されるべきである。したがって、上面、下面、前面、および背面は、重力基準系において上向き、下向き、斜め、または水平方向に延びることができる。
【0267】
さらに、「含む」、「有する」などの用語が説明または特許請求の範囲で使用される限り、そのような用語は、特許請求の範囲で過渡的な単語として使用された場合に、「含む」という用語が「含む」という用語として解釈されるのと同様の方法で包括的であることを意図する。
【0268】
「例示的」という言葉は、本明細書では、「例、実例、または例示として役立つ」ことを意味するために使用される。本明細書で「例示的」として記載される任意の実施形態は、一部の実施形態よりも好ましいまたは有利であると必ずしも解釈される必要はない。
【0269】
単数形の要素への言及は、特に明記されていない限り、「1つだけ」を意味するのではなく、「1つ以上」を意味する。男性の代名詞(たとえば、彼)には、女性および中性の性別(たとえば、彼女およびその)が含まれ、その逆も同様である。「いくつか」という用語は、1つまたは複数を指す。下線および/または斜体の見出しおよび小見出しは、便宜上使用されており、主題技術を制限するものではなく、主題技術の説明の解釈に関連して参照されていない。当業者に知られている、または後に知られるようになる、本開示を通して記載される様々な構成の要素のすべての構造的および機能的同等物は、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、主題技術に含まれることを意図する。さらに、本明細書に開示されるものは、そのような開示が上記の説明に明示的に記載されているかどうかにかかわらず、公衆に捧げられることを意図するものではない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
【手続補正書】
【提出日】2023-12-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の[1]から[90]のいずれかに記載のマイクロニードルアレイ、または方法:
[1]
マイクロニードルアレイであって、
ベース層と、
前記ベース層から突出する複数のマイクロニードルであって、前記マイクロニードルのそれぞれおよび前記ベース層は、第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスからなる単一の構造的に連続した構成要素であり、前記複数のマイクロニードルのそれぞれは、前記ベース層と連続する近位部分を有する細長い本体であり、前記細長い本体は、その前記近位部分から遠位部分に向かって概して先細になり、不規則な本体形状を画定する、複数のマイクロニードルと、
前記複数のマイクロニードルの前記細長い本体を少なくとも部分的に包み込んで、その周りに流れ込み、その前記不規則な本体形状に対して不規則な表面境界を画定する薬物運搬シェル層であって、それぞれの細長い本体のそれぞれの不規則な本体形状とは異なる事前定義された外側プロファイルをそれぞれが有して、前記アレイが一貫したマイクロニードルプロファイルを有することを可能にし、第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスに分散された神経毒を含む、薬物運搬シェル層と を含み、
前記薬物運搬シェル層および前記細長い本体は、前記不規則な表面境界にまたがる前記第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスおよび前記第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスの重なりを含む一体化されたヒアルロン酸ポリマーマトリックスを介して融合されている、マイクロニードルアレイ。
[2]
前記第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスは前記第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスのポリマー濃度よりも高いポリマー濃度を有する、[1]に記載のマイクロニードルアレイ。
[3]
前記第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスは前記第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスの比重量よりも大きい比重量を有する、[1]に記載のマイクロニードルアレイ。
[4]
前記薬物運搬シェル層は前記細長い本体の前記遠位部分のみを覆う、[1]から[3]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[5]
前記薬物運搬シェル層は前記マイクロニードルの前記細長い本体を完全に包み込む、[1]から[3]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[6]
前記神経毒はボツリヌス毒素を含む、[1]から[5]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[7]
前記ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素血清型A(BoNT/A)、ボツリヌス毒素血清型B(BoNT/B)、ボツリヌス毒素血清型C1(BoNT/C1)、ボツリヌス毒素血清型D(BoNT/D)、ボツリヌス毒素血清型E(BoNT/E)、ボツリヌス毒素血清型F(BoNT/F)、ボツリヌス毒素血清型G(BoNT/G)、ボツリヌス毒素血清型H(BoNT/H)、ボツリヌス毒素血清型X(BoNT/X)、およびモザイクボツリヌス毒素および/またはその変異体からなる群から選択される、[6]に記載のマイクロニードルアレイ。
[8]
前記マイクロニードルアレイは、約0.01から約100U/cmの前記神経毒を患者に送達するように構成されている、[1]から[7]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[9]
前記マイクロニードルアレイは約0.01から約100,000U/cmの範囲の神経毒の充填濃度(loading concentration)を有する、[1]から[8]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[10]
前記第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスは、約0.000001重量%から約0.01重量%の前記神経毒を含む、[1]から[9]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[11]
前記第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックス、前記第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックス、またはその両方は、非架橋ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水的に修飾されたヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む、[1]から[10]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[12]
前記第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスおよび前記第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックスはそれぞれ独立して、約150kDaから約6MDaの範囲の分子量を有するヒアルロン酸を含む、[1]から[11]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[13]
前記第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックス、前記第2のヒアルロン酸ポリマーマトリックス、またはその両方は、グリコサミノグリカン、多糖類、コラーゲン、エラスチン、フィブロイン、デンプン、グルコマンナン、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つをさらに含む、[1]から[12]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[14]
前記近位部分および前記ベース層は有効成分を含まない、[1]から[13]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[15]
前記第1のヒアルロン酸ポリマーマトリックスは、非架橋ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水的に修飾されたヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせからなる、[1]から[14]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[16]
前記複数のマイクロニードルのそれぞれは約25ミクロンから約3000ミクロンの範囲の長さを有する、[1]から[15]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[17]
前記複数のマイクロニードルのそれぞれは実質的に同じ長さを有する、[1]から[16]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[18]
前記複数のマイクロニードルのそれぞれは円錐形またはピラミッド形の形状を有する、[1]から[17]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[19]
前記複数のマイクロニードルのそれぞれは約1ミクロンから約30ミクロンの範囲の先端幅を有する、[1]から[18]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[20]
前記マイクロニードルアレイのマイクロニードルの密度は約5マイクロニードル/cmから約1000マイクロニードル/cmの範囲である、[1]から[19]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[21]
前記神経毒は前記薬物運搬シェル層に均一に分散している、[1]から[20]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[22]
マイクロニードルアレイを形成するための方法であって、
複数の細長いウェルを含むマイクロニードルアレイ型を提供するステップと、
神経毒および約1重量%から約40重量%のヒアルロン酸を含む第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を提供するステップと、
前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を前記細長いウェルのそれぞれの下部に分注するステップと、
約25重量%から約50重量%のヒアルロン酸を含む第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を提供するステップであって、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の粘度は前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液の粘度よりも高い、ステップと、
前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注した後に、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を前記細長いウェルのそれぞれに分注するステップであって、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の高い粘度により、前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液の少なくとも一部が前記細長いウェルの前記下部から移動し、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の周りを流れ、それによって神経毒含有外層を形成する、ステップと、
前記型内の前記第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を乾燥させて、そこから突出する複数のマイクロニードルを有するベース層を含むマイクロニードルアレイを形成するステップであって、各マイクロニードルは、細長い本体および前記神経毒含有外層を含む、ステップと、
を含む、方法。
[23]
前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注した後、前記細長いウェルのそれぞれは部分的にのみ満たされ、前記細長いウェルのそれぞれの上部は満たされないままである、[22]に記載の方法。
[24]
前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を前記細長いウェルのそれぞれに分注するステップは、前記細長いウェルを前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液で過剰に充填するステップを含む、[22]に記載の方法。
[25]
前記型内の前記第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を乾燥させるステップは、前記第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を前記型内にある間に加熱するステップを含む、[22]から[24]のいずれか一項に記載の方法。
[26]
前記型内の前記第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を乾燥させるステップは、前記第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を前記型内にある間に室温で乾燥させるステップを含む、[22]から[24]のいずれか一項に記載の方法。
[27]
前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注した後、真空を適用するステップをさらに含む、[22]から[26]のいずれか一項に記載の方法。
[28]
前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注するステップは、前記第1のヒアルロン酸溶液を前記型に流し込むステップを含み、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を分注するステップは、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液を前記第1のヒアルロン酸溶液上に流し込み、第2のヒアルロン酸ポリマー溶液に外圧を加えるステップを含む、[22]から[26]のいずれか一項に記載の方法。
[29]
前記圧力を加えるステップは、前記圧力を所定の時間維持するステップをさらに含み、それにより、前記第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液のそれぞれからのヒアルロン酸ポリマーの一部が、前記第1および第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の界面で一体化される、[28]に記載の方法。
[30]
前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液、またはその両方は、約6.0から約8.0の範囲のpHを有する水性緩衝液をさらに含む、[22]から[29]のいずれか一項に記載の方法。
[31]
前記水性緩衝液はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはヒスチジン緩衝液である、[30]に記載の方法。
[32]
前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液の少なくとも一部は前記型の過剰充填部分またはベース部分に配置され、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液は前記型の前記過剰充填部分に配置され、それにより、前記型は前記マイクロニードルアレイの前記ベース層を画定する、[22]から[31]のいずれか一項に記載の方法。
[33]
前記マイクロニードルアレイを前記マイクロニードルアレイ型から分離するステップをさらに含む、[22]から[32]のいずれか一項に記載の方法。
[34]
前記神経毒含有外層は前記マイクロニードルの前記細長い本体の遠位部分のみを覆う、[22]から[33]のいずれか一項に記載の方法。
[35]
前記神経毒含有外層は前記マイクロニードルの前記細長い本体を完全に包み込んでいる、[22]から[33]のいずれか一項に記載の方法。
[36]
前記神経毒はボツリヌス毒素を含む、[22]から[35]のいずれか一項に記載の方法。
[37]
前記ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素血清型A(BoNT/A)、ボツリヌス毒素血清型B(BoNT/B)、ボツリヌス毒素血清型C1(BoNT/C1)、ボツリヌス毒素血清型D(BoNT/D)、ボツリヌス毒素血清型E(BoNT/E)、ボツリヌス毒素血清型F(BoNT/F)、ボツリヌス毒素血清型G(BoNT/G)、ボツリヌス毒素血清型H(BoNT/H)、ボツリヌス毒素血清型X(BoNT/X)、およびモザイクボツリヌス毒素および/またはその変異体からなる群から選択される、[36]に記載の方法。
[38]
前記マイクロニードルアレイは約0.01から約100U/cmの前記神経毒を患者に送達するように構成されている、[22]から[37]のいずれか一項に記載の方法。
[39]
前記マイクロニードルアレイは約0.01から約100,000U/cmの範囲の神経毒の充填濃度を有する[22]から[38]のいずれか一項に記載の方法。
[40]
前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液は約0.00000001から約1.0mg/mLの前記神経毒を含む、[22]から[39]のいずれか一項に記載の方法。
[41]
前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液、またはその両方の前記ヒアルロン酸は、非架橋ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、疎水的に修飾されたヒアルロン酸、またはそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つである、[22]から[40]のいずれか一項に記載の方法。
[42]
前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液、またはその両方の前記ヒアルロン酸は、それぞれ独立して約50kDaから約6MDaの範囲の分子量を有する、[22]から[41]のいずれか一項に記載の方法。
[43]
前記第1のヒアルロン酸ポリマー溶液、前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液、またはその両方は、グリコサミノグリカン、多糖類、コラーゲン、エラスチン、フィブロイン、デンプン、グルコマンナン、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つをさらに含む、[22]から[42]のいずれか一項に記載の方法。
[44]
前記第2のヒアルロン酸ポリマー溶液は有効成分を含まない、[22]から[43]のいずれか一項に記載の方法。
[45]
前記細長いウェルのそれぞれは約25ミクロンから約3000ミクロンの範囲の深さを有する、[22]から[44]のいずれか一項に記載の方法。
[46]
前記細長いウェルのそれぞれは実質的に同じ深さを有する、[22]から[45]のいずれか一項に記載の方法。
[47]
各前記細長いウェルは円錐形またはピラミッド形の形状を有する、[22]から[46]のいずれか一項に記載の方法。
[48]
各マイクロニードルは約1ミクロンから約30ミクロンの範囲の先端幅を有する、[22]から[47]のいずれか一項に記載の方法。
[49]
前記マイクロニードルアレイ型は、約5マイクロニードル/cmから約1000マイクロニードル/cmの範囲の前記マイクロニードルアレイのマイクロニードルの密度を生成するように構成されている、[22]から[48]のいずれか一項に記載の方法。
[50]
前記神経毒は前記神経毒含有外層に均一に分散している、[22]から[49]のいずれか一項に記載の方法。
[51]
[22]から[50]のいずれか一項によって作成されたマイクロニードルアレイ。
[52]
患者を治療するための方法であって、[1]から[21]および[51]のいずれか1つのマイクロニードルアレイを提供するステップと、前記マイクロニードルアレイを患者の皮膚表面に適用して、前記皮膚表面に複数のマイクロニードルを埋め込むステップと、を含む、方法。
[53]
外層の前記ヒアルロン酸の少なくとも一部は溶解し、前記マイクロニードルは前記皮膚表面に埋め込まれて前記神経毒を前記患者に放出する、[52]に記載の方法。
[54]
前記マイクロニードルアレイは、額のしわ、目じりのしわ、眉間のしわ、小じわ、多汗症、瘢痕、乾癬、炎症性皮膚疾患を治療するために使用される、[52]または[53]に記載の方法。
[55]
マイクロニードルアレイであって、
ベース層と、
前記ベース層から突出する複数のマイクロニードルであって、前記複数のマイクロニードルのそれぞれは、前記ベース層と連続する近位部分を有する細長い本体であり、前記細長い本体は、概略、その前記近位部分から遠位部分に向かって先細になり、不規則な本体形状を画定する、複数のマイクロニードルと、
前記複数のマイクロニードルの前記細長い本体を少なくとも部分的に包み込んで、その周りに流れ込み、その前記不規則な本体形状に対して不規則な表面境界を画定する少なくとも1つの薬物運搬シェル層であって、それぞれの細長い本体のそれぞれの不規則な本体形状とは異なる事前定義された外側プロファイルを有し、有効成分を含む、少なくとも1つの薬物運搬シェル層と、
を含む、マイクロニードルアレイ。
[56]
前記少なくとも1つの薬物運搬シェル層および前記細長い本体は一緒に融合される、[55]に記載のマイクロニードルアレイ。
[57]
前記有効成分は抗原、抗体、または毒素を含む、[55]から[56]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[58]
前記有効成分は神経毒である、[55]から[57]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[59]
前記神経毒はボツリヌス毒素である、[58]に記載のマイクロニードルアレイ。
[60]
前記複数のマイクロニードルは円錐形またはピラミッド形の形状を有する、[55]から[59]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[61]
前記円錐形またはピラミッド形の形状は、それらに関連するピッチ角を有し、その結果、前記複数のマイクロニードルは、点または先端に向かって先細になる、[60]に記載のマイクロニードルアレイ。
[62]
前記ベース層、前記複数のマイクロニードル、および前記薬物運搬シェル層はそれぞれ少なくとも1つのポリマーを含む、[55]から[61]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[63]
前記ベース層および前記複数のマイクロニードルは同じ少なくとも1つのポリマーを含む、[62]に記載のマイクロニードルアレイ。
[64]
前記有効成分はポリマーに分散している、[62]に記載のマイクロニードルアレイ。
[65]
前記少なくとも1つのポリマーは溶解可能である、[62]に記載のマイクロニードルアレイ。
[66]
前記少なくとも1つのポリマーはヒアルロン酸である、[62]に記載のマイクロニードルアレイ。
[67]
前記ベース層は第1のポリマーを含み、前記複数のマイクロニードルは第2のポリマーを含み、前記薬物運搬シェル層は第3のポリマーを含む、[55]から[61]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[68]
マイクロニードルアレイであって、
ベース層と、
前記ベース層から突出する複数のマイクロニードルであって、前記複数のマイクロニードルのそれぞれは、第1のポリマーを含み、かつ前記ベース層と連続する近位部分を有する細長い本体であり、前記細長い本体は、一般に、その前記近位部分から遠位部分に向かって先細になり、不規則な本体形状を画定する、複数のマイクロニードルと、
前記複数のマイクロニードルの前記細長い本体を少なくとも部分的に包み込んで、その周りに流れ込み、その前記不規則な本体形状に対して不規則な表面境界を画定する少なくとも1つの薬物運搬シェル層であって、前記少なくとも1つの薬物運搬シェル層は、それぞれの細長い本体のそれぞれの不規則な本体形状とは異なる事前定義された外側プロファイルを有し、第2のポリマーに分散された有効成分を含む、少なくとも1つの薬物運搬シェル層と、
を含む、マイクロニードルアレイ。
[69]
前記第1のポリマーは前記第2のポリマーよりも遅い速度で溶解する、[68]に記載のマイクロニードルアレイ。
[70]
前記細長い本体は有効成分をさらに含む、[68]から[69]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[71]
前記第2のポリマーは前記第1のポリマーよりも遅い速度で溶解する、[68]から[70]のいずれか一項に記載のマイクロニードルアレイ。
[72]
前記第2のポリマーは、約0.1から約2重量%の濃度の高分子量ヒアルロン酸を含む、[71]に記載のマイクロニードルアレイ。
[73]
前記第1のポリマーは約5重量%から約40重量%の濃度の低分子量ヒアルロン酸を含む、[71]に記載のマイクロニードルアレイ。
[74]
マイクロニードルアレイを形成するための方法であって、
複数の細長いウェルを含むマイクロニードルアレイ型を提供するステップと、
有効成分を含む第1の流体を提供するステップと、
前記細長いウェルのそれぞれの下部に前記第1の流体を分注するステップと、
第2の流体の粘度が前記第1の流体の粘度よりも高い第2の流体を提供するステップと、
前記第1の流体を分注した後、前記第2の流体を前記各細長いウェルに分注するステップであって、前記第2の流体の前記高い粘度は、前記第1の流体の少なくとも一部を前記細長いウェルのそれぞれの前記下部から前記第2の流体の周りを流れるように変位させて、それにより、有効成分含有外層を形成する、ステップと、
前記型内の前記第1および第2の流体を乾燥させて、そこから突出する複数のマイクロニードルを有するベース層を含むマイクロニードルアレイを形成するステップであって、各マイクロニードルは、細長い本体および前記有効成分含有外層を含む、ステップと、
を含む、方法。
[75]
前記第1の流体はヒアルロン酸ポリマー溶液を含む、[74]に記載の方法。
[76]
前記有効成分は神経毒を含む、[74]から[75]のいずれか一項に記載の方法。
[77]
前記第2の流体は、溶媒と混合されたヒアルロン酸から本質的になるヒアルロン酸ポリマー溶液を含む、[74]から[76]のいずれか一項に記載の方法。
[78]
前記第2の流体は少なくとも1つのポリマーを含む、[74]から[77]のいずれか一項に記載の方法。
[79]
前記第2の流体は1つまたは複数の追加のポリマーをさらに含む、[78]に記載の方法。
[80]
前記第2の流体は賦形剤をさらに含む、[78]に記載の方法。
[81]
マイクロニードルアレイを形成するための方法であって、
複数の細長いウェルを含むマイクロニードルアレイ型を提供するステップと、
有効成分を含む第1の流体を提供するステップと、
前記型の上の下部に前記第1の流体を分注するステップと、
第2の流体の粘度が前記第1の流体の粘度よりも高い第2の流体を提供するステップと、
前記第1の流体を分注した後、前記第2の流体を前記第1の流体の上に流し込むステップと、
圧縮の第1の段階で前記第2の流体の上に圧力を加え、前記第1の流体を前記細長いウェルの中および前記第2の流体の周りに流し、それにより、マイクロニードルの細長い本体の周りに有効成分含有シェル層を形成するステップと、
圧縮の第2の段階で一定期間前記圧力を維持し、前記有効成分含有シェル層を前記マイクロニードルの前記細長い本体に結合するマトリックスを作成するステップと、
前記型内の前記第1および第2の流体を乾燥させて、そこから突出する複数のマイクロニードルを有するベース層を含むマイクロニードルアレイを形成するステップであって、各マイクロニードルは、細長い本体および前記有効成分含有シェル層を含む、ステップと、
を含む、方法。
[82]
前記第2の流体を前記第1の流体の上に流し込むステップは、前記型の前記細長いウェルを過剰に満たし、前記型の前記細長いウェルの上に単一の連続層を形成する、[81]に記載の方法。
[83]
前記第1の流体および前記第2の流体はヒアルロン酸ポリマー溶液を含む、[81]から[82]のいずれか一項に記載の方法。
[84]
前記第1の流体は5重量%未満の160kDAヒアルロン酸を含む、[83]に記載の方法。
[85]
前記第1の流体を分注する前記ステップは真空下で行われる、[81]から[84]のいずれか一項に記載の方法。
[86]
マイクロニードルアレイを形成するための方法であって、
複数の細長いウェルを含むマイクロニードルアレイ型を提供するステップと、
有効成分を含む第1の流体を提供するステップと、
第2の流体の粘度が前記第1の流体の粘度よりも高い前記第2の流体を提供するステップと、
前記第1の流体および前記第2の流体を前記マイクロニードルアレイ型に同時に注入するステップと、
前記マイクロニードルアレイ型を圧縮して、前記第1の流体と前記第2の流体との間に一体の界面を形成するステップと、
前記型内の前記第1および第2の流体を乾燥させて、そこから突出する複数のマイクロニードルを有するベース層を含むマイクロニードルアレイを形成するステップであって、各マイクロニードルは、細長い本体および有効成分含有層を含む、ステップと、
を含む、方法。
[87]
前記細長い本体および前記有効成分含有層は互いに構造的に一体化されている、[86]に記載の方法。
[88]
前記第1の流体および第2の流体はポリマーを含む、[86]から[87]のいずれか一項に記載の方法。
[89]
前記細長い本体は、前記有効成分含有層のポリマーの濃度よりも高いポリマーの濃度を有する、[88]に記載の方法。
[90]
前記細長い本体は前記有効成分含有層の比重よりも大きい比重を有する、[86]から[89]のいずれか一項に記載の方法。
【外国語明細書】