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▶ モデルナ セラピューティクス インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023436
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】工学操作された核酸の送達および製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20240214BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240214BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K48/00 ZNA
A61P43/00 111
A61K9/08
A61K9/127
A61K9/14
A61K47/34
A61K31/7115
A61K31/7105
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201469
(22)【出願日】2023-11-29
(62)【分割の表示】P 2021024873の分割
【原出願日】2012-04-02
(31)【優先権主張番号】61/470,451
(32)【優先日】2011-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】513084469
【氏名又は名称】モデルナティエックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ModernaTX,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】シュラム、ジェイソン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】アフェヤン、ヌバール ビー.
(72)【発明者】
【氏名】シェッチキェヴィッチ、グレゴリー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】バンセル、ステファヌ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ フジェローレ、アントニン
(72)【発明者】
【氏名】エルバシール、セイダ エム.
(57)【要約】
【課題】修飾核酸などの生物学的部分を細胞内に送達してタンパク質発現を変調するための製剤および組成物を提供する。
【解決手段】本願発明に係る組成物および方法は、生物学的部分の送達を含み、タンパク質の産生に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的のポリペプチドを、それを必要とする哺乳動物対象の細胞、組織、または体液において産生する方法であって、
ポリヌクレオチドを含む医薬組成物を前記対象に投与することを含み、前記ポリヌクレオチドが、配列番号4、7、8、および12からなる群から選択される配列を含む方法。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチドが、5’Cap1構造および約160ヌクレオチド長のポリAテールをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記医薬組成物が製剤化される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
製剤が、生理食塩水製剤または脂質製剤から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記製剤が、生理食塩水製剤であり、かつ静脈内、筋肉内、皮下、および局所からなる群から選択される経路により投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記製剤が、脂質製剤であり、かつ静脈内、筋肉内、皮下、および局所からなる群から選択される経路により投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記製剤が、脂質製剤であり、かつリポソーム、リポプレックス、および脂質ナノ粒子からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
投与の前記経路が筋肉内または皮下であり、かつ前記脂質製剤がコポリマーを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記コポリマーがPLGAである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記投与が局所である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記医薬組成物が、約0.1mg/kg~約40mg/kgの全用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記投与が、1日3回、1日2回、1日1回、2日に1回、3日に1回、毎週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、および毎月1回からなる群から選択されるスケジュールに従って行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記全用量が複数回投与により投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記複数回投与が、1日3回、1日2回、1日1回、2日に1回、3日に1回、毎週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、および毎月1回からなる群から選択されるスケジュールに従って行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記目的のポリペプチドのレベルの増加が、組織または体液で8時間以内に観測される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記目的のポリペプチドのレベルの増加が、組織または体液で2時間以内に観測される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記目的のポリペプチドのレベルの増加が、肝臓、脾臓、腎臓、肺、心臓、腎周囲脂肪組織、胸腺、および筋肉からなる群から選択される組織で観測される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記体液が、末梢血、血清、血漿、腹水、尿、脳脊髄液(CSF)、痰、唾液、骨髄、滑液、房水、羊水、耳垢、母乳、気管支肺胞洗浄液、精液、前立腺液、カウパー液もしくは射精前液、汗、糞便、毛髪、涙、嚢胞液、胸水および腹水、心嚢液、リンパ液、糜粥、乳糜、胆汁、間質液、月経分泌物、膿、皮脂、嘔吐物、膣分泌物、粘膜分泌物、水様便、膵液、洞腔洗浄液、気管支肺吸引物、胞胚腔液、ならびに臍帯血からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリヌクレオチドが、ピリジン-4-オンリボヌクレオシド、5-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオウリジン、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシウリジン、3-メチルウリジン、5-カルボキシメチル-ウリジン、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチルウリジン、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン、1-タウリノメチル-4-チオ-ウリジン、5-メチル-ウリジン、1-メチル-プソイドウリジン、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、5-アザ-シチジン、プソイドイソシチジン、3-メチル-シチジン、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、N4-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、1-メチル-プソイドイソシチジン、ピロロ-シチジン、ピロロ-プソイドイソシチジン、2-チオ-シチジン、2-チオ-5-メチル-シチジン、4-チオ-プソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-プソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドイソシチジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドイソシチジン、ゼブラリン、5-アザ-ゼブラリン、5-メチル-ゼブラリン、5-アザ-2-チオ-ゼブラリン、2-チオ-ゼブラリン、2-メトキシ-シチジン、2-メトキシ-5-メチル-シチジン、4-メトキシ-プソイドイソシチジン、4-メトキシ-1-メチル-プソイドイソシチジン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-8-アザ-アデニン、7-デアザ-2-アミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、1-メチルアデノシン、N6-メチルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6-ジメチルアデノシン、7-メチルアデニン、2-メチルチオ-アデニン、および2-メトキシ-アデニン、イノシン、1-メチル-イノシン、ワイオシン、ワイブトシン、7-デアザ-グアノシン、7-デアザ-8-アザ-グアノシン、6-チオ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン、7-メチル-グアノシン、6-チオ-7-メチル-グアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシ-グアノシン、1-メチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、N2,N2-ジメチルグアノシン、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシン、1-メチル-6-チオ-グアノシン、N2-メチル-6-チオ-グアノシン、およびN2,N2-ジメチル-6-チオ-グアノシン、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の修飾を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
体液中の修飾ポリヌクレオチドのレベルが、エキソソーム中の修飾ポリヌクレオチドのレベルから決定される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
単離されたポリヌクレオチドであって、
前記ポリヌクレオチドが、配列番号4、7、8、および12からなる群から選択される配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項22】
5’Cap1構造および約160ヌクレオチド長のポリAテールをさらに含む、請求項21に記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
請求項22に記載のポリヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項24】
製剤化され、かつ製剤が生理食塩水製剤または脂質製剤から選択される、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記製剤が、脂質製剤であり、かつリポソーム、リポプレックス、および脂質ナノ粒子からなる群から選択される、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記ポリヌクレオチドが、ピリジン-4-オンリボヌクレオシド、5-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオウリジン、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシウリジン、3-メチルウリジン、5-カルボキシメチル-ウリジン、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチルウリジン、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン、1-タウリノメチル-4-チオ-ウリジン、5-メチル-ウリジン、1-メチル-プソイドウリジン、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、5-アザ-シチジン、プソイドイソシチジン、3-メチル-シチジン、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、N4-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、1-メチル-プソイドイソシチジン、ピロロ-シチジン、ピロロ-プソイドイソシチジン、2-チオ-シチジン、2-チオ-5-メチル-シチジン、4-チオ-プソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-プソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドイソシチジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドイソシチジン、ゼブラリン、5-アザ-ゼブラリン、5-メチル-ゼブラリン、5-アザ-2-チオ-ゼブラリン、2-チオ-ゼブラリン、2-メトキシ-シチジン、2-メトキシ-5-メチル-シチジン、4-メトキシ-プソイドイソシチジン、4-メトキシ-1-メチル-プソイドイソシチジン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-8-アザ-アデニン、7-デアザ-2-アミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、1-メチルアデノシン、N6-メチルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6-ジメチルアデノシン、7-メチルアデニン、2-メチルチオ-アデニン、および2-メトキシ-アデニン、イノシン、1-メチル-イノシン、ワイオシン、ワイブトシン、7-デアザ-グアノシン、7-デアザ-8-アザ-グアノシン、6-チオ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン、7-メチル-グアノシン、6-チオ-7-メチル-グアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシ-グアノシン、1-メチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、N2,N2-ジメチルグアノシン、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシン、1-メチル-6-チオ-グアノシン、N2-メチル-6-チオ-グアノシン、およびN2,N2-ジメチル-6-チオ-グアノシン、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上の修飾を含む、請求項22に記載のポリヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送達方法に関する。本方法は、修飾mRNA(mmRNA)などの修飾核酸の治療剤送達にとくに有用である。
【背景技術】
【0002】
治療剤用途およびバイオプロセス用途の両方で効果的なタンパク質発現を達成するための医薬組成物の従来の送達方法には、多くの問題が存在する。たとえば、導入されたDNAは、ある頻度で宿主細胞ゲノムDNA内に組み込まれて、宿主細胞ゲノムDNAに変化および/または損傷をもたらしうる。そのほか、細胞内に導入された異種デオキシリボ核酸(DNA)は、娘細胞(異種DNAが染色体中に組み込まれているか否かにかかわらず)または子孫に遺伝しうる。
【0003】
それに加えて、送達後ただしコードタンパク質の産生前、タンパク質発現を達成可能にする多くの工程が行われなければならない。細胞内に入った後、DNAは、核中に輸送されてRNAに転写されなければならない。次いで、DNAから転写されたRNAは、細胞質に入ってタンパク質に翻訳されなければならない。投与されたDNAからタンパク質までの多くのプロセス工程は、機能性タンパク質の産生前に遅延時間を形成するだけでなく、各工程は、誤差および細胞損傷の機会を与える。さらに、DNAは、細胞に進入するが発現されないかまたは適度な速度もしくは濃度で発現されないことが多いので、細胞内でDNA発現を達成するのは、困難であることが知られている。このことは、DNAが初代細胞または修飾細胞系に導入される場合、とくに問題となりうる。
【0004】
以上のことが適正に管理されたとしても、効果的に送達して臨床転帰をもたらすのに十分な時間にわたりタンパク質の治療上適切なレベルを達成するには、依然としてかなりの困難を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ポリペプチドをコードする核酸の細胞内での翻訳およびプロセスの変調を取り巻く隠れた困難に対処する生物学的治療剤の送達、ひいては送達された治療剤からのタンパク質発現の最適化の必要性が、当技術分野に存在する。
【0006】
本発明は、修飾mRNA(mmRNA)などの修飾核酸を含有しうる医薬組成物を送達することによりこの必要性に対処し、さらには、当技術分野の問題を回避する製剤を包含しうる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載されているのは、タンパク質発現を変調するために修飾核酸、工学操作されたメッセンジャーRNA、単離されたポリヌクレオチドなどの生物学的部分を細胞内に送達するための組成物および方法である。
【0008】
単離されたポリヌクレオチドは、配列番号4、7、8、12などの配列を含みうるが、これらに限定されるものではない。ポリヌクレオチドは、5’Cap1構造と約160ヌクレオチド長のポリAテールとをさらに含みうる。さらに、単離されたポリヌクレオチドは、医薬組成物中に製剤化されうる。
【0009】
目的のポリペプチドは、ポリヌクレオチドを含む医薬組成物を対象に投与することにより、それを必要とする対象の細胞内、組織内、または体液内で産生されうる。ポリヌクレオチドは、配列番号4、7、8、および12からなる群から選択される配列を含みうる。ポリヌクレオチドは、5’Cap1構造と約160ヌクレオチド長のポリAテールとをさらに含みうる。
【0010】
医薬組成物は、製剤化されうる。この製剤は、生理食塩水製剤または脂質製剤から選択されうるが、これらに限定されるものではない。医薬組成物は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、局所投与などの任意の投与経路により投与されうるが、これらに限定されるものではない。脂質製剤は、リポソーム、リポプレックス、コポリマーたとえばPLGA、脂質ナノ粒子などから選択されうるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
医薬組成物は、約0.1mg/kg~約40mg/kgの全用量で投与されうる。全用量は、複数回投与により投与されうる。投与および/または複数回投与は、1日3回、1日2回、1日1回、2日に1回、3日に1回、毎週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、毎月1回などのスケジュールで行われうるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
修飾ポリペプチドは、ヌクレオシド修飾などのポリヌクレオチド修飾を含みうる。ヌクレオシド修飾は、ピリジン-4-オンリボヌクレオシド、5-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオウリジン、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシウリジン、3-メチルウリジン、5-カルボキシメチル-ウリジン、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチルウリジン、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン、1-タウリノメチル-4-チオ-ウリジン、5-メチル-ウリジン、1-メチル-プソイドウリジン、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、5-アザ-シチジン、プソイドイソシチジン、3-メチル-シチジン、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、N4-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、1-メチル-プソイドイソシチジン、ピロロ-シチジン、ピロロ-プソイドイソシチジン、2-チオ-シチジン、2-チオ-5-メチル-シチジン、4-チオ-プソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-プソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドイソシチジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドイソシチジン、ゼブラリン、5-アザ-ゼブラリン、5-メチル-ゼブラリン、5-アザ-2-チオ-ゼブラリン、2-チオ-ゼブラリン、2-メトキシ-シチジン、2-メトキシ-5-メチル-シチジン、4-メトキシ-プソイドイソシチジン、4-メトキシ-1-メチル-プソイドイソシチジン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-8-アザ-アデニン、7-デアザ-2-アミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、1-メチルアデノシン、N6-メチルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6-ジメチルアデノシン、7-メチルアデニン、2-メチルチオ-アデニンおよび2-メトキシ-アデニン、イノシン、1-メチル-イノシン、ワイオシン、ワイブトシン、7-デアザ-グアノシン、7-デアザ-8-アザ-グアノシン、6-チオ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン、7-メチル-グアノシン、6-チオ-7-メチル-グアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシ-グアノシン、1-メチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、N2,N2-ジメチルグアノシン、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシン、1-メチル-6-チオ-グアノシン、N2-メチル-6-チオ-グアノシン、およびN2,N2-ジメチル-6-チオ-グアノシン、ならびにそれらの組合せを含みうるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
目的のポリペプチドのレベルの増加は、組織、たとえば、限定されるものではないが、肝臓、脾臓、腎臓、肺、心臓、腎周囲脂肪組織、胸腺、および筋肉で、ならびに/または体液、たとえば、限定されるものではないが、末梢血、血清、血漿、腹水、尿、脳脊髄液(CSF)、痰、唾液、骨髄、滑液、房水、羊水、耳垢、母乳、気管支肺胞洗浄液、精液、前立腺液、カウパー液もしくは射精前液、汗、糞便、毛髪、涙、嚢胞液、胸水および腹水、心嚢液、リンパ液、糜粥、乳糜、胆汁、間質液、月経分泌物、膿、皮脂、嘔吐物、膣分泌物、粘膜分泌物、水様便、膵液、洞腔洗浄液、気管支肺吸引物、胞胚腔液、および臍帯血で観測可能である。レベルの増加は、投与後2時間以内、8時間以内、および/または24時間以内に対象の組織および/または体液で観測可能である。さらに、レベルの増加は、エキソソーム中の修飾ポリペプチドのレベルから決定可能である。
【0014】
本発明の種々の実施形態の詳細は、以下の説明に示される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に有用な先行技術の脂質構造を示す図。示されているのは、98N12-5(TETA5-LAP)、DLin-DMA、DLin-K-DMA(2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]ジオキソラン)、DLin-KC2-DMA、DLin-MC3-DMA、およびC12-200の構造である。
図2】本明細書に教示されるIVT反応に有用な代表的プラスミドを示す図。プラスミドは、本発明者らにより設計されたインサート64818を含有する。
図3A】mCherry mmRNAを含有するDLin-KC2-DMAおよび98N12-15(精製の前および後)のナノ粒子製剤についてin vitroスクリーニング結果を示すヒストグラム。図3Aは、HEK293細胞でのスクリーニング結果を示している。
図3B】mCherry mmRNAを含有するDLin-KC2-DMAおよび98N12-15(精製の前および後)のナノ粒子製剤についてin vitroスクリーニング結果を示すヒストグラム。図3Bは、HepG2細胞でのスクリーニング結果を示している。
図4A】mCherry mmRNAを含有するDLin-KC2-DMAおよび98N12-15(精製の前および後)のナノ粒子製剤について平均蛍光強度のin vitroスクリーニング結果を示すヒストグラム。図4Aは、HEK293細胞でのスクリーニング結果を示している。
図4B】mCherry mmRNAを含有するDLin-KC2-DMAおよび98N12-15(精製の前および後)のナノ粒子製剤について平均蛍光強度のin vitroスクリーニング結果を示すヒストグラム。図4Bは、HepG2細胞でのスクリーニング結果を示している。
図5A】精製の前および後のDLin-KC2-DMAおよび98N12-15のナノ粒子製剤についてin vitroスクリーニング結果を示すヒストグラム。図5Aは、HEK293細胞での98N15-2のスクリーニング結果を示している。
図5B】精製の前および後のDLin-KC2-DMAおよび98N12-15のナノ粒子製剤についてin vitroスクリーニング結果を示すヒストグラム。図5Bは、HEK293細胞でのDLin-KC2-DMAのスクリーニング結果を示している。
図5C】精製の前および後のDLin-KC2-DMAおよび98N12-15のナノ粒子製剤についてin vitroスクリーニング結果を示すヒストグラム。図5Cは、HEK293細胞でのDLin-KC2-DMAのスクリーニング結果を示している。
図6A】mCherry mmRNAを含有するDLin-DMA、DLin-K-DMA、DLin-KC2-DMA、98N12-5、C12-200、およびDLin-MC3-DMAのナノ粒子製剤についてin vitroスクリーニング結果を示すヒストグラム。図6Aは、60ng/ウェルの修飾mCherry mRNAを含有するHEK293細胞でのmCherryの平均蛍光強度を示している。
図6B】mCherry mmRNAを含有するDLin-DMA、DLin-K-DMA、DLin-KC2-DMA、98N12-5、C12-200、およびDLin-MC3-DMAのナノ粒子製剤についてin vitroスクリーニング結果を示すヒストグラム。図6Bは、62.5ng/ウェルの濃度の修飾mCherry mRNAを有するナノ粒子製剤を含有するHEK293細胞でのmCherryの平均蛍光強度を示している。
図6C】mCherry mmRNAを含有するDLin-DMA、DLin-K-DMA、DLin-KC2-DMA、98N12-5、C12-200、およびDLin-MC3-DMAのナノ粒子製剤についてin vitroスクリーニング結果を示すヒストグラム。図6Cは、62.5ng/ウェルの濃度の修飾mCherry mRNAを有するナノ粒子製剤を含有するHEK293細胞でのmCherryの平均蛍光強度を示している。
図6D】mCherry mmRNAを含有するDLin-DMA、DLin-K-DMA、DLin-KC2-DMA、98N12-5、C12-200、およびDLin-MC3-DMAのナノ粒子製剤についてin vitroスクリーニング結果を示すヒストグラム。図6Dは、62.5ng/ウェルの濃度の修飾mCherry mRNAを有するナノ粒子製剤を含有するHepG2細胞でのmCherryの平均蛍光強度を示している。
図6E】mCherry mmRNAを含有するDLin-DMA、DLin-K-DMA、DLin-KC2-DMA、98N12-5、C12-200、およびDLin-MC3-DMAのナノ粒子製剤についてin vitroスクリーニング結果を示すヒストグラム。図6Eは、62.5ng/ウェルの濃度の修飾mCherry mRNAを有するナノ粒子製剤を含有するHepG2細胞でのmCherryの平均蛍光強度を示している。
図7A】マウスにおける修飾ヒトエリトロポイエチンmmRNAまたはルシフェラーゼmmRNAの投与後の血清中ヒトエリトロポイエチンのin vivoスクリーニング結果を示すヒストグラム。図7Aは、筋肉内投与後のヒトエリトロポイエチンのpg/ml単位の濃度を示している。
図7B】マウスにおける修飾ヒトエリトロポイエチンmmRNAまたはルシフェラーゼmmRNAの投与後の血清中ヒトエリトロポイエチンのin vivoスクリーニング結果を示すヒストグラム。図7Bは、皮下投与後のヒトエリトロポイエチンのpg/ml単位の濃度を示している。
図8A】バイオフォトイメージングによるin vivoスクリーニング結果のヒストグラム。図8Aは、左後肢中への5μgの筋肉内注射による生物発光(光子/秒)のヒストグラムである。
図8B】バイオフォトイメージングによるin vivoスクリーニング結果のヒストグラム。図8Bは、右後肢中への50μgの筋肉内注射による生物発光のヒストグラムである。
図8C】バイオフォトイメージングによるin vivoスクリーニング結果のヒストグラム。図8Cは、50μgの皮下注射後のバイオフォトイメージングによるin vivoスクリーニング結果を示すヒストグラムである。
図8D】バイオフォトイメージングによるin vivoスクリーニング結果のヒストグラム。図8Dは、50μgの静脈内投与後のバイオフォトイメージングによるin vivoスクリーニング結果を示すヒストグラムである。
図9】マウスにおいて筋肉内投与、皮下投与、または静脈内投与された修飾ヒトG-CSF mmRNAについてin vivoスクリーニング結果を示すヒストグラム。
図10】筋肉内投与、皮下投与、または静脈内投与された修飾G-CSFについてin vivoスクリーニング結果を示すヒストグラム。
図11A】マウスにおいて筋肉内投与または皮下投与された修飾ヒトG-CSF mmRNAのin vivoスクリーニング結果を示すヒストグラム。図13Aは、修飾G-CSFの筋肉内投与後の血清中ヒトG-CSFのpg/ml単位の濃度を示している。
図11B】マウスにおいて筋肉内投与または皮下投与された修飾ヒトG-CSF mmRNAのin vivoスクリーニング結果を示すヒストグラム。図13Bは、修飾G-CSFの皮下投与後の血清中ヒトG-CSFのpg/ml単位の濃度を示している。
図12】マウスにおいて筋肉内投与された修飾ヒトエリトロポイエチンmmRNAまたはルシフェラーゼmmRNAの投与後の血清中ヒトエリトロポイエチンのin vivoスクリーニング結果を示すヒストグラム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
とくに定義されていないかぎり、本明細書で用いられる科学技術用語はすべて、本発明が関連する技術分野の当業者に一般に理解されているものと同一の意味を有する。
本明細書に記載されているものは、タンパク質発現を変調するために修飾mRNA分子を送達するための組成物および方法である。
【0017】
本明細書ならびに2011年8月5日に出願された同時係属共同出願の国際出願PCT/US2011/046861号および2011年10月3日に出願された国際出願PCT/US2011/054636号(それらの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、これら修飾核酸分子は、それらが導入された細胞集団の先天性免疫活性を低減させることにより、その細胞集団におけるタンパク質産生の効率を増大させることが可能である。
【0018】
修飾mRNA(mmRNA)
本発明は、少なくとも1種のポリペプチドをコードするかつ1種以上の修飾ヌクレオシド(「修飾核酸」または「修飾核酸分子」または「工学操作された核酸」と称される)を含有する核酸(RNAとくにmRNAを含む)を提供する。この核酸は、mRNAが導入された細胞の先天性免疫反応の実質的誘導の欠如を含む有用な性質を有する。このmmRNAは、タンパク質産生の効率、核酸の細胞内保持率、および接触細胞の生存能を増強するとともに、低減された免疫原性を有するので、これらの性質を有するこの核酸は、本明細書では「増強」核酸または修飾RNAと称される。
【0019】
「核酸」という用語は、その最広義の意味では、ホスホジエステル(phospohdiester)結合を介して結合されたヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物および/または物質を含む。このポリマーは、多くの場合、オリゴヌクレオチドとして参照される。
【0020】
例示的な核酸は、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、またはそれらのハイブリッドを含む。それらはまた、RNAi誘導剤、RNAi剤、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、触媒DNA、tRNA、三重螺旋形成を誘導するRNA、アプタマー、ベクターなどを含みうる。
【0021】
好ましい実施形態では、核酸は、1種以上の修飾メッセンジャーRNA(mmRNA)である。本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、本発明に係るmmRNAは、mRNAが導入された細胞の先天性免疫反応を実質的に誘導しない。
【0022】
本発明に係るmmRNAは、1種以上のポリペプチドをコードしうる。一般的には、目的のポリペプチドは、哺乳動物ゲノム中に天然に存在するものである。
本発明によれば、本開示に係る修飾mRNA(本明細書では「mmRNA」)の最も短い長さは、ジペプチドをコードするのに十分でありうるmRNA配列の長さでありうる。他の実施形態では、mRNA配列の長さは、トリペプチドをコードするのに十分でありうる。他の実施形態では、mRNA配列の長さは、テトラペプチドをコードするのに十分でありうる。他の実施形態では、mRNA配列の長さは、ペンタペプチドをコードするのに十分でありうる。他の実施形態では、mRNA配列の長さは、ヘキサペプチドをコードするのに十分でありうる。他の実施形態では、mRNA配列の長さは、ヘプタペプチドをコードするのに十分でありうる。他の実施形態では、mRNA配列の長さは、オクタペプチドをコードするのに十分でありうる。他の実施形態では、mRNA配列の長さは、ノナペプチドをコードするのに十分でありうる。他の実施形態では、mRNA配列の長さは、デカペプチドをコードするのに十分でありうる。
【0023】
一般的には、本発明に係る修飾mRNAの長さは、約30ヌクレオチド超の長さである(たとえば、約35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,500、および3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000ヌクレオチド以上または100,000ヌクレオチド以下)。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明に係る修飾mRNAは、約30~約100,000ヌクレオチドを含む(たとえば、30~50、30~100、30~250、30~500、30~1,000、30~1,500、30~3,000、30~5,000、30~7,000、30~10,000、30~25,000、30~50,000、30~70,000、100~250、100~500、100~1,000、100~1,500、100~3,000、100~5,000、100~7,000、100~10,000、100~25,000、100~50,000、100~70,000、100~100,000、500~1,000、500~1,500、500~2,000、500~3,000、500~5,000、500~7,000、500~10,000、500~25,000、500~50,000、500~70,000、500~100,000、1,000~1,500、1,000~2,000、1,000~3,000、1,000~5,000、1,000~7,000、1,000~10,000、1,000~25,000、1,000~50,000、1,000~70,000、1,000~100,000、1,500~3,000、1,500~5,000、1,500~7,000、1,500~10,000、1,500~25,000、1,500~50,000、1,500~70,000、1,500~100,000、2,000~3,000、2,000~5,000、2,000~7,000、2,000~10,000、2,000~25,000、2,000~50,000、2,000~70,000、および2,000~100,000)。
【0025】
ポリペプチド変異体
本発明に係るmmRNAは、参照ポリペプチド配列(たとえば野生型mRNA)と特定の同一性を有する変異ポリペプチドをコードしうる。当技術分野で公知の「同一性」という用語は、配列比較により決定される2つ以上のペプチドの配列間の関係を意味する。当技術分野では、「同一性」はまた、2つ以上のアミノ酸残基の鎖間の一致数により決定されるペプチド間の配列関連度を意味する。「同一性」は、特定の数学的モデルまたはコンピュータープログラム(すなわち「アルゴリズム」)により扱われるギャップアライメント(もしあれば)を用いた2つ以上の配列のより小さい部分間の完全一致パーセントで見積られる。関連ペプチドの同一性は、公知の方法により容易に計算可能である。そのような方法としては、計算分子生物学(Computational Molecular Biology)、レスク,A.M.(Lesk,A.M.)編、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)、ニューヨーク、1988年、バイオコンピューティング:インフォマティクスおよびゲノムプロジェクト、スミス,D.W.(Smith,D.W.)編、アカデミックプレス(Academic Press)、ニューヨーク、1993年、配列データのコンピュータ解析(Computer Analysis of Sequence Data)、第1部、グリフィン,A.M.(Griffin,A.M.)およびグリフィン,H.G.(Griffin,H.G.)編、ヒューマナプレス(Humana Press)、ニュージャージ(New
Jersey)、1994年、分子生物学における配列解析(Sequence Analysis in Molecular Biology)、フォンハインジ,G.(von Heinje,G.)著、アカデミックプレス(Academic Press)、1987年、配列解析プライマー(Sequence Analysis Primer)、グリブスコフ,M.(Gribskov,M.)およびデベロー,J.(Devereux,J.)編、M.ストックトンプレス(M.Stockton Press)、ニューヨーク、1991年、ならびにカリロ(Carillo)ら著、SIAM応用数学誌(SIAM J.Applied Math.)、第48巻、1073頁(1988年)に記載のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
いくつかの実施形態では、ポリペプチド変異体は、参照ポリペプチドと同一または類似の活性を有する。他の選択肢として、変異体は、参照ポリペプチドに対して変化した活性(たとえば、増大または減少した)を有する。一般的には、本発明に係る特定のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの変異体は、本明細書に記載のおよび当業者に公知の配列アライメントプログラムおよびパラメーターにより決定した場合、特定の参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対して、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有するであろう。
【0027】
当業者であればわかるように、タンパク質断片、機能性タンパク質ドメイン、および相同タンパク質もまた、本発明の範囲内にあるとみなされる。たとえば、本明細書には、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100アミノ酸、または100アミノ酸超の長さの参照タンパク質の任意のタンパク質断片(参照ポリペプチド配列よりも少なくとも1アミノ酸残基短いがそれ以外は同一であるポリペプチド配列を意味する)が提供される。他の例では、本明細書に記載の配列のいずれかに対して約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、または約100%の同一性である約20、約30、約40、約50、または約100アミノ酸の伸長部を含む任意のタンパク質を、本発明に従って利用することが可能である。特定の実施形態では、本発明に従って利用されるタンパク質配列は、本明細書に提供されたまたはそこで参照された配列のいずれかに示されるように、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の突然変異を含む。
【0028】
標的化部分
本発明の実施形態では、mmRNAは、in vivoまたはin vitroのいずれかで、細胞が特定の組織間隙を標的とするようにまたは特定の部分と相互作用するように機能するタンパク質結合パートナまたはレセプターを細胞表面上に発現すべく、提供される。好適なタンパク質結合パートナは、抗体およびその機能性フラグメント、スキャフォールドタンパク質、またはペプチドを含む。
【0029】
細胞透過性ペプチド
本明細書に開示されるmmRNAは、細胞透過性ポリペプチドをコードしうる。本明細書で用いられる場合、「細胞透過性ポリペプチド」とは、分子の細胞内取込みを促進しうるポリペプチドを意味する。「CPP」が細胞透過ポリペプチドおよび細胞透過性ペプチドを意味することは、当技術分野で公知である。本明細書で用いられる場合、略語CPPが細胞透過性ポリペプチドまたは細胞透過性ペプチドのいずれを意味するかは、明らかであろう。
【0030】
本発明に係る細胞透過性ポリペプチドは、1種以上の検出可能な標識を含有していてもよい。ポリペプチドは、部分的に標識されていてもよいし、全体が完全に標識されていてもよい。mmRNAは、検出可能な標識を完全にまたは部分的にコードしていてもよいし、まったくコードしていなくてもよい。細胞透過性ペプチドはまた、シグナル配列を含んでいてもよい。本明細書で用いられる場合、「シグナル配列」とは、タンパク質翻訳時に新生タンパク質のアミノ末端に結合されるアミノ酸残基の配列を意味する。シグナル配列は、細胞透過性ポリペプチドの分泌シグナルを伝達するために使用されうる。
【0031】
融合タンパク質
修飾核酸およびmmRNAは、融合タンパク質をコードしうる。融合タンパク質は、荷電タンパク質を治療用タンパク質に機能可能に結合することにより形成されうる。本明細書で用いられる場合、「機能可能に結合」とは、細胞に導入された時に複合体の発現を可能にするような方法で治療用タンパク質および荷電タンパク質が結合されることを意味する。本明細書で用いられる場合、「荷電タンパク質」とは、正電荷、負電荷、全体として中性電荷を有するタンパク質を意味する。好ましくは、治療用タンパク質は、融合タンパク質の生成時に荷電タンパク質に共有結合されうる。全アミノ酸または表面アミノ酸に対する表面電荷の比は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、または0.9でありうる。
【0032】
修飾mRNAの合成
本発明に従って使用される核酸は、化学合成や酵素合成をはじめとする任意の利用可能な技術に従って調製可能であり、この技術は、一般的には、in vitro転写、より長い前駆体の酵素切断または化学切断などと称されるが、これらに限定されるものではない。RNAの合成方法は、当技術分野で公知である(たとえば、ガイト,M.J.(Gait,M.J.)編、オリゴヌクレオチド合成:実用的手法(Oligonucleotide synthesis:a practical approach)、オックスフォード[オックスフォードシャー]、ワシントンDC:IRLプレス(IRL Press)、1984年、およびヘルデウィン,P.(Herdewijn,P.)編、オリゴヌクレオチド合成:方法と応用(Oligonucleotide synthesis:methods and applications)、分子生物学の方法(Methods in Molecular Biology)、第288巻(クリフトン(Clifton),N.J.)トトワ(Totowa),N.J.、フマナプレス(Humana Press)、2005年(両方とも参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0033】
本明細書に開示される修飾RNAの合成に使用される修飾ヌクレオシドおよび修飾ヌクレオチドは、以下の一般的な方法および手順を用いて、容易に入手可能な出発材料から調製可能である。典型的なまたは好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応剤のモル比、溶媒、圧力など)が与えられているが、とくに明記されていないかぎり他のプロセス条件もまた使用可能であるとみなされる。最適反応条件は、使用される特定の反応剤および溶媒によって異なりうるが、そのような条件は、当業者であれば、慣例的な最適化手順により決定可能である。
【0034】
本明細書の製造プロセスは、当技術分野で公知の任意の好適な方法に従って監視可能である。たとえば、生成物形成は、核磁気共鳴分光法(たとえば、Hもしくは13C)、赤外分光法、分光測光法(たとえば、UV可視)、質量分析法などの分光学的手段により、または高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)や薄層クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーにより、監視可能である。
【0035】
mRNAの修飾
翻訳可能領域と、1、2、または2超の異なる修飾と、を含有するmmRNAを提供する。
【0036】
いくつかの実施形態では、化学修飾は、ヌクレオチドの核酸塩基上に位置しうる。
いくつかの実施形態では、化学修飾は、ヌクレオチドの糖部分上に位置しうる。
いくつかの実施形態では、化学修飾は、ヌクレオチドのリン酸骨格上に位置しうる。
【0037】
本発明に係る修飾RNAの製造または合成に使用される修飾ヌクレオシドおよび修飾ヌクレオチドの調製は、種々の化学基の保護および脱保護を含みうる。保護および脱保護の必要性ならびに適切な保護基の選択は、当業者であれば、容易に決定可能である。
【0038】
保護基の化学は、たとえば、グリーン(Greene)ら著、有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)、第2版、ワイリー・アンド・サンズ(Wiley & Sons)、1991年(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見いだしうる。
【0039】
修飾ヌクレオシドおよび修飾ヌクレオチドは、オガタ(Ogata)ら著、有機化学誌(Journal of Organic Chemistry)、第74巻:2585~2588頁、2009年、プルマル(Purmal)ら著、核酸研究(Nucleic
Acids Research)、第22巻(第1号):72~78頁、1994年、フクハラ(Fukuhara)ら著、生化学(Biochemistry)、第1巻(第4号):563~568頁、1962年、およびシュイ(Xu)ら著、テトラヘドロン(Tetrahedron)、第48巻(第9号):1729~1740頁、1992年(それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の合成方法に従って調製可能である。
【0040】
修飾mRNAは、分子の全長に沿って均一に修飾する必要はない。核酸中の種々の位置に異なるヌクレオチド修飾および/または骨格構造が存在してもよい。核酸の機能が実質的に低減されないように核酸の任意の位置にヌクレオチドアナログまたは他の修飾を配置しうることは、当業者であればわかるであろう。修飾はまた、5’または3’末端修飾でありうる。核酸は、最小で1つかつ最大で100%の修飾ヌクレオチド、または任意の中間のパーセント、たとえば、少なくとも50%の修飾ヌクレオチド、少なくとも80%の修飾ヌクレオチド、もしくは少なくとも90%の修飾ヌクレオチドを含有しうる。
【0041】
たとえば、mmRNAは、修飾ウラシルや修飾シトシンなどの修飾ピリミジンを含有しうる。いくつかの実施形態では、核酸中のウラシルの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%は、修飾ウラシルで置換え可能である。修飾ウラシルは、単一の特異構造を有する化合物で置換え可能であるか、または異なる構造(たとえば、2、3、4、もしくはそれ以上の特異構造)を有する複数の化合物で置換え可能である。いくつかの実施形態では、核酸中のシトシンの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%は、修飾シトシンで置換え可能である。修飾シトシンは、単一の特異構造を有する化合物で置換え可能であるか、または異なる構造(たとえば、2、3、4、もしくはそれ以上の特異構造)を有する複数の化合物で置換え可能である。
【0042】
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、ピリジン-4-オンリボヌクレオシド、5-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオウリジン、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシウリジン、3-メチルウリジン、5-カルボキシメチル-ウリジン、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチルウリジン、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン、1-タウリノメチル-4-チオ-ウリジン、5-メチル-ウリジン、1-メチル-プソイドウリジン、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、および4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジンを含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、5-アザ-シチジン、プソイドイソシチジン、3-メチル-シチジン、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、N4-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、1-メチル-プソイドイソシチジン、ピロロ-シチジン、ピロロ-プソイドイソシチジン、2-チオ-シチジン、2-チオ-5-メチル-シチジン、4-チオ-プソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-プソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドイソシチジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドイソシチジン、ゼブラリン、5-アザ-ゼブラリン、5-メチル-ゼブラリン、5-アザ-2-チオ-ゼブラリン、2-チオ-ゼブラリン、2-メトキシ-シチジン、2-メトキシ-5-メチル-シチジン、4-メトキシ-プソイドイソシチジン、および4-メトキシ-1-メチル-プソイドイソシチジンを含む。
【0043】
他の実施形態では、修飾ヌクレオシドは、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-8-アザ-アデニン、7-デアザ-2-アミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、1-メチルアデノシン、N6-メチルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-トレオニルカルボバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6-ジメチルアデノシン、7-メチルアデニン、2-メチルチオ-アデニン、および2-メトキシ-アデニンを含む。
【0044】
他の実施形態では、修飾ヌクレオシドは、イノシン、1-メチル-イノシン、ワイオシン、ワイブトシン、7-デアザ-グアノシン、7-デアザ-8-アザ-グアノシン、6-チオ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン、7-メチル-グアノシン、6-チオ-7-メチル-グアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシ-グアノシン、1-メチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、N2,N2-ジメチルグアノシン、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシン、1-メチル-6-チオ-グアノシン、N2-メチル-6-チオ-グアノシン、およびN2,N2-ジメチル-6-チオ-グアノシンを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは、主溝面上で修飾可能であり、かつウラシルのC-5上の水素をメチル基またはハロ基で置換え可能である。
特定の実施形態では、修飾ヌクレオシドは、5’-O-(1-チオホスフェート)-アデノシン、5’-O-(1-チオホスフェート)-シチジン、5’-O-(1-チオホスフェート)-グアノシン、5’-O-(1-チオホスフェート)-ウリジン、または5’-O-(1-チオホスフェート)-プソイドウリジンである。
【0046】
修飾ヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチド組合せのさらなる例は、以下のテーブル1に提供される。
【0047】
【表1】

いくつかの実施形態では、シトシンの少なくとも25%は、式I-aで示される化合物で置き換えられる(たとえば、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%)。
【0048】
いくつかの実施形態では、ウラシルの少なくとも25%は、式I-aで示される化合物で置き換えられる(たとえば、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%)。
【0049】
いくつかの実施形態では、シトシンの少なくとも25%かつウラシルの少なくとも25%は、式I-aで示される化合物で置き換えられる(たとえば、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%)。
【0050】
核酸の他の成分は、任意選択であり、いくつかの実施形態では有利である。たとえば、一方または両方が独立して1つ以上の異なるヌクレオシド修飾を含有しうる5’非翻訳領域(UTR)および/または3’UTRが提供される。そのような実施形態では、ヌクレオシド修飾はまた、翻訳可能領域中に存在しうる。また、コザック(Kozak)配列を含有する核酸も提供される。
【0051】
リンカーおよびペイロード(payload)
mmRNA中に組み込まれうるヌクレオチドの核酸塩基は、検出可能剤や治療剤などのペイロードの任意の化学的に適切な位置に共有結合可能である。たとえば、核酸塩基としては、デアザ-アデノシンまたはデアザ-グアノシンが可能であり、リンカーは、デアザ-アデノシンまたはデアザ-グアノシンのC-7位またはC-8位に装着可能である。他の実施形態では、核酸塩基としては、シトシンまたはウラシルが可能であり、リンカーは、シトシンまたはウラシルのN-3位またはC-5位に装着可能である。
【0052】
リンカー
本明細書で用いられる「リンカー」という用語は、原子団(たとえば10~1,000原子)を意味し、炭素、アミノ、アルキルアミノ、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホニル、カルボニル、イミンなどの原子または基で構成可能であるが、これらに限定されるものではない。リンカーは、第1の末端を修飾ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオチドの核酸塩基上または糖部分上に、かつ第2の末端を検出可能剤や治療剤などのペイロードに、装着可能である。リンカーは、核酸配列中への組込みを妨害しない十分な長さでありうる。
【0053】
リンカー中に組込み可能な化学基の例としては、アルキル基、アルケン基、アルキン基、アミド基、エーテル基、チオエーテル基、またはエステル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。リンカー鎖はまた、多環式環およびヘテロ芳香環を含めて飽和環、不飽和環、または芳香環の一部を構成可能であり、この場合、ヘテロ芳香環は、1~4個のヘテロ原子N、O、またはSを含有するアリール基でありうる。リンカーの特定例としては、不飽和アルカン、ポリエチレングリコール、およびデキストランポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
たとえば、リンカーは、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのモノマー単位を含みうるし、例としては、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、メチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、またはテトラエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、リンカーは、二価のアルキル部分、アルケニル部分、および/またはアルキニル部分を含みうるが、これらに限定されるものではない。リンカーは、エステル部分、アミド部分、またはエーテル部分を含みうる。
【0055】
他の例は、たとえばジスルフィド結合(-S-S-)やアゾ結合(-N=N-)などの切断可能な部分をリンカー中に含んで還元剤または光分解を用いて切断可能であるが、これらに限定されるものではない。リンカー中に組み込まれて修飾ヌクレオチドに装着された切断可能な結合が切断された場合、ヌクレオチド上に短い「傷痕」または化学修飾を生じうる。たとえば、切断後、ヌクレオチド塩基上に生じた傷痕は、修飾ヌクレオチドの一部を形成してポリヌクレオチド鎖中に組み込まれるが、非反応性であり、化学的に中和する必要はない。これにより、核酸ポリマー鋳型の配列決定時、一段と容易に後続ヌクレオチドを組み込むことが可能となる。たとえば、条件には、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオトレイトール(DTT)、および/またはジスルフィド結合切断用の他の還元剤の使用が含まれる。アミド結合を含む選択的に切断可能な結合は、たとえば、TCEPもしくは他の還元剤および/または光分解を用いることにより切断可能である。エステル結合を含む選択的に切断可能な結合は、たとえば、酸加水分解または塩基加水分解により切断可能である。
【0056】
検出可能剤
本発明に係るmmRNAはまた、1種以上の検出可能剤に結合またはコンジュゲートさせることが可能である。検出可能な物質の例としては、種々の有機小分子、無機化合物、ナノ粒子、酵素もしくは酵素基質、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、化学発光材料、放射性材料、および造影剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
本開示によれば、本明細書に記載のもの以外の標識が考えられ、例として、他の光学的に検出可能な標識が挙げられるが、これに限定されるものではない。標識は、切断可能なリンカーが切断されると組み込まれた塩基から標識が除去可能になるように、標準的化学を用いて本開示に係る修飾ヌクレオチドの任意の位置に装着可能である。
【0058】
末端構造修飾:5’キャッピング
内因性真核細胞メッセンジャーRNA(mRNA)分子は、成熟mRNA分子の5’末端上に5’キャップ構造を含有する。5’キャップは、最も5’側のヌクレオチドとグアニンヌクレオチドとの間に5’-5’-三リン酸結合を含有する。コンジュゲート化グアニンヌクレオチドは、N7位がメチル化される。追加の修飾は、最後のおよび最後から2番目のほとんどの5’-ヌクレオチドの2’-ヒドロキシル基のメチル化を含む。5’キャップ構造は、mRNAの細胞内安定性および翻訳能を担うmRNAキャップ結合タンパク質(CBP)の結合に関与する。
【0059】
複数の個別5’キャップ構造を用いて、合成mRNA分子の5’キャップを生成することが可能である。共転写的に合成mRNA分子をキャッピングするために、多くの化学キャップアナログが使用される。たとえば、抗逆方向キャップアナログ(ARCA)キャップは、5’-5’-三リン酸グアニン-グアニン結合を含有し、一方のグアニンは、N7メチル基さらには3’-O-メチル基を含有する。化学キャップアナログは、RNA分子の同時キャッピングを可能にするが、転写物の20%超は、キャッピングされない状態で残存し、合成キャップアナログは、基準細胞mRNAの内因性5’キャップ構造と同一でない。このため、翻訳能の低下および細胞安定性の低下を招くおそれがある。
【0060】
また、より基準に近い5’キャップ構造の生成に関与する酵素を用いて、転写後に合成mRNA分子をキャッピングすることも可能である。本明細書で用いられる場合、「より基準に近い」という表現は、構造的または機能的のいずれかで内因性または野生型の特徴をよく反映または模倣している特徴を意味する。本発明に係るより基準に近い5’キャップ構造は、とくに、キャップ結合タンパク質の結合の増強、半減期の増大、5’エンドヌクレアーゼに対する感受性の低下、および/または5’デキャッピングの低下をもたらすものである。たとえば、組換えワクシニアウイルスキャッピング酵素および組換え2’-O-メチルトランスフェラーゼ酵素は、mRNAの最も5’側のヌクレオチドとグアニンヌクレオチドとの間にカノニカル5’-5’-三リン酸結合を形成可能であり、この場合、グアニンはN7メチル化を含有しかつ最後の5’-ヌクレオチドは2’-O-メチルを含有して、Cap1構造を生成する。この結果、より高い翻訳能および細胞安定性ならびに細胞炎症誘発性サイトカインの活性化の低減を有するキャップが得られる。合成mRNAは転写後にキャッピングされるので、化学キャップアナログを含有する合成mRNAの約80%とは対照的に、mRNA分子のほぼ100%がキャッピングされる。
【0061】
末端構造修飾:ポリAテール
RNAプロセシング時、通常、分子の安定性を増大させるために、アデニンヌクレオチドの長鎖(ポリAテール)がメッセンジャーRNA(mRNA)分子に付加される。転写直後、転写物の3’末端は、切断されて3’ヒドロキシルを遊離する。次いで、ポリAポリメラーゼは、アデニンヌクレオチド鎖をRNAに付加する。ポリアデニル化と呼ばれるこのプロセスは、100~250残基長のポリAテールを付加する。
【0062】
ユニークなポリAテール長は、本発明に係る修飾RNAに特定の利点を提供することが判明した。
一般的には、本発明に係るポリAテールの長さは、30ヌクレオチド超の長さである。他の実施形態では、ポリAテールは、35ヌクレオチド超の長さである。他の実施形態では、長さは少なくとも40ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも45ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも55ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも60ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも60ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも80ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも90ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも100ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも120ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも140ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも160ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも180ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも200ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも250ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも300ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも350ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも400ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも450ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも500ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも600ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも700ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも800ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも900ヌクレオチドである。他の実施形態では、長さは少なくとも1000ヌクレオチドである。
【0063】
一実施形態では、ポリAテールは、修飾RNA分子全体の長さを基準にして設計される。この設計は、修飾RNAのコード領域の長さ、修飾RNA(mRNAなど)の特定の特徴部もしくは領域の長さ、または修飾RNAから発現される最終産物の長さに基づきうる。これとの関連では、ポリAテールは、修飾RNAまたはその特徴部よりも10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%長くしうる。ポリAテールはまた、それが属する修飾RNAの一部として設計しうる。これとの関連では、ポリAテールは、構築物の全長または構築物の全長マイナスポリAテールの10、20、30、40、50、60、70、80、もしくは90%、またはそれ以上でありうる。
【0064】
修飾mRNAの使用
本発明に係るmmRNAは、研究、探索、治療、診断、ならびにキットおよび装置の多くの領域で使用されうる。
【0065】
治療
本明細書に記載のmmRNA(修飾RNA)およびmmRNAから翻訳されたタンパク質は、治療剤として使用可能である。たとえば、本明細書に記載のmmRNAは、対象に投与可能であり、この場合、mmRNAは、対象においてin vivoで翻訳されて治療用ポリペプチドを産生する。提供されているのは、ヒトおよび他の哺乳動物において疾患または病態を治療または予防するための組成物、方法、キット、および試薬である。本発明に係る活性治療剤は、mmRNA、mmRNAまたはmmRNAから翻訳されたポリペプチドを含有する細胞、mmRNAから翻訳されたポリペプチドを含む。
【0066】
本明細書に提供されているのは、本明細書に記載のmmRNAを用いて細胞集団において組換えポリペプチドの翻訳を誘導する方法である。そのような翻訳は、in vivo、ex vivo、培養下、またはin vitroでありうる。細胞集団は、少なくとも1つのヌクレオシド修飾と組換えポリペプチドをコードする翻訳可能領域とを有するmmRNAを含有する有効量の組成物に接触される。集団は、mmRNAが細胞集団の1つ以上の細胞内に局在化されて組換えポリペプチドが核酸から細胞内で翻訳されるような条件下で、接触される。
【0067】
有効量の組成物は、少なくとも部分的には、標的組織、標的細胞型、投与手段、核酸の物理的特性(たとえば、修飾ヌクレオシドのサイズおよび広がり)、ならびに他の決定要因に基づいて提供される。一般的には、有効量の組成物は、細胞内で効率的なタンパク質産生、好ましくは、対応する非修飾核酸を含有する組成物よりも効率的なタンパク質産生を提供する。効率の増大は、細胞トランスフェクション(すなわち、核酸でトランスフェクトされた細胞のパーセント)の増大、核酸からのタンパク質翻訳の増大、核酸分解の低減(たとえば、mmRNAからのタンパク質翻訳の持続期間の増大により実証される)、または宿主細胞の先天性免疫反応の低減により実証されうる。
【0068】
本発明の態様は、それを必要とする哺乳動物対象において組換えポリペプチドのin vivo翻訳を誘導する方法に関する。その場合、少なくとも1つのヌクレオシド修飾と組換えポリペプチドをコードする翻訳可能領域とを有するmmRNAを含有する有効量の組成物は、本明細書に記載の送達方法および分割投与レジメンを用いて対象に投与される。mmRNAは、核酸が対象の細胞内に局在化されて組換えポリペプチドがmmRNAから細胞内で翻訳されるような量および他の条件下で提供される。mmRNAが局在化された細胞またはその細胞が存在する組織は、1回またはそれ以上のmmRNA投与の標的となりうる。
【0069】
治療剤が投与される対象は、疾患、障害、または有害病態に罹患しているか、またはそれらを発症するリスクがある。提供されているのは、これらを基礎にして対象を同定、診断、および分類する方法であり、この方法は、臨床診断、バイオマーカーレベル、ゲノムワイド関連研究(GWAS)、および当技術分野で公知の他の方法を含みうる。
【0070】
特定の実施形態では、投与されたmmRNAは、組換えポリペプチドが翻訳される細胞内に実質的に不在の機能活性を提供する1種以上の組換えポリペプチドの産生を誘導する。たとえば、欠失した機能活性は、本質的に、酵素性、構造性、または遺伝子調節性でありうる。関連実施形態では、投与されたmmRNAは、存在するが組換えポリペプチドが翻訳される細胞内で実質的に欠損した機能活性を(たとえば相乗的に)増大させる1種以上の組換えポリペプチドの産生を誘導する。
【0071】
他の実施形態では、投与されたmmRNAは、組換えポリペプチドが翻訳される細胞内に実質的に不在のポリペプチド(または複数のポリペプチド)を代替する1種以上の組換えポリペプチドの産生を誘導する。そのような不在は、コード遺伝子の遺伝子突然変異またはその調節経路に起因しうる。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、細胞内の内因性タンパク質のレベルを望ましいレベルに増大させる。そのような増大は、内因性タンパク質のレベルを準正常レベルから正常レベルにまたは正常レベルから過正常レベルに上昇させうる。
【0072】
他の選択肢として、組換えポリペプチドは、細胞内もしくは細胞表面上に存在するかまたは細胞から分泌される内因性タンパク質の活性をアンタゴナイズするように機能する。通常、その内因性タンパク質の活性は、たとえば、内因性タンパク質の突然変異により活性改変または局在化をもたらすので、対象に有害である。そのほかに、組換えポリペプチドは、細胞内もしくは細胞表面上に存在するかまたは細胞から分泌される生物学的部分の活性を、直接的または間接的にアンタゴナイズする。アンタゴナイズされる生物学的部分の例としては、脂質(たとえばコレステロール)、リポタンパク質(たとえば低密度リポタンパク質)、核酸、炭水化物、志賀毒素や破傷風毒素などのタンパク質毒素、またはボツリヌス毒素、コレラ毒素、ジフテリア毒素などの小分子毒素が挙げられる。そのほかに、アンタゴナイズされる生物学的分子は、細胞傷害活性や細胞静止活性などの望ましくない活性を呈する内因性タンパク質でありうる。
【0073】
本明細書に記載のmmRNAによりコードされるポリペプチドは、細胞内(可能性としては核などの特定の区画内)に局在化すべく工学操作されるか、または細胞から分泌すべくもしくは細胞の形質膜に転位すべく工学操作される。
【0074】
本発明の一実施形態には、二機能性mmRNAが含まれる。名称から示唆されるように、二機能性mmRNAとは、少なくとも2つの機能を有するまたは発揮しうるmmRNAのことである。
【0075】
二機能性mmRNAの複数の機能性は、mRNAによりコードされうるか(機能は、コード産物が翻訳されるまで現れないであろう)、またはRNA自体の性質でありうる。それは、構造性または化学性でありうる。二機能性修飾RNAは、RNAと共有結合的に関連付けられるまたは静電的に関連付けられる機能を含みうる。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明に係る修飾mRNAおよびそのコードポリペプチドは、次のもの、すなわち、自己免疫障害(たとえば、糖尿病、狼瘡、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ)、炎症性障害(たとえば、関節炎、骨盤内炎症性疾患)、感染性疾患(たとえば、ウイルス感染症(たとえば、HIV、HCV、RSV)、細菌感染症、菌類感染症、敗血症)、神経障害(たとえば、アルツハイマー病、ハンチントン病、自閉症、デュシェンヌ筋ジストロフィー)、心臓血管障害(たとえば、アテローム硬化症、高コレステロール血症、血栓症、凝固障害、血管新生障害たとえば黄斑変性)、増殖性障害(たとえば、癌、良性新生物)、呼吸器障害(たとえば、慢性閉塞性肺疾患)、消化器障害(たとえば、炎症性腸疾患、潰瘍)、筋骨格障害(たとえば、線維筋痛症、関節炎)、内分泌、代謝、および栄養の障害(たとえば、糖尿病、骨粗鬆症)、泌尿器障害(たとえば、腎疾患)、精神障害(たとえば、抑鬱症、統合失調症)、皮膚障害(たとえば、創傷、湿疹)、血液およびリンパ系の障害(たとえば、貧血、血友病)などのうちの1つ以上を含むさまざまな疾患、障害、および/または病態のいずれかの治療に使用されうるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
先天性免疫反応の回避
「先天性免疫反応」という用語は、サイトカインとくにインターフェロンの発現および放出ならびに細胞死の誘導を含めて、一般的にはウイルス起源または細菌起源の外因性一本鎖核酸に対する細胞反応を含む。タンパク質合成もまた、先天性細胞免疫反応時に低減される。細胞内で先天性免疫反応を排除することが有利であるが、本発明は、そのような反応を完全には排除することなくインターフェロンシグナリングを含む免疫反応を実質的に低減する修飾mRNAを提供する。いくつかの実施形態では、免疫反応は、対応する非修飾核酸により誘導される免疫反応と比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、99.9%、または99.9%超低減される。そのような低減は、1型インターフェロンの発現もしくは活性レベルまたはtoll様レセプター(たとえば、TLR7およびTLR8)などのインターフェロン調節遺伝子の発現により、測定可能である。先天性免疫反応の低減はまた、修飾RNAを細胞集団に1回以上投与した後の細胞死の低減により測定可能である。たとえば、細胞死は、対応する非修飾核酸で観測される細胞死頻度よりも10%、25%、50%、75%、85%、90%、95%、または95%超少ない。さらに、細胞死は、mmRNAに接触した細胞の50%、40%、30%、20%、10%、5%、1%、0.1%、0.01%未満、または0.01%未満に影響を与えうる。
【0078】
本発明は、たとえば、ex vivo、in vivo、またはin vitroで、標的細胞集団へのmmRNAの繰返し導入(たとえば、トランスフェクション)の方法を提供する。細胞集団に接触させる工程は、1回以上繰返し可能である(たとえば、2、3、4、5回、または5回超)。いくつかの実施形態では、mmRNAを細胞集団に接触させる工程は、細胞集団でタンパク質翻訳の所定の効率が達成されるように十分な回数繰り返される。核酸修飾により提供される標的細胞集団の細胞傷害性の低減を考慮して、そのような繰返しトランスフェクションは、多様な一連の細胞型で達成可能である。
【0079】
タンパク質産生
本明細書に提供される方法は、細胞培養プロセスでタンパク質産物の収率を向上させるのに有用である。複数の宿主細胞を含有する細胞培養では、本明細書に記載の修飾mRNAの導入は、対応する非修飾核酸と比較してタンパク質産生の効率増大をもたらす。そのようなタンパク質産生の効率増大は、たとえば、細胞トランスフェクションの増大、核酸からのタンパク質翻訳の増大、核酸分解の低減、および/または宿主細胞の先天性免疫反応の低減を示すことにより、実証可能である。タンパク質産生は、ELISAにより測定可能であり、タンパク質活性は、当技術分野で公知の種々の機能アッセイにより測定可能である。タンパク質産生は、連続式またはフェドバッチ式の哺乳動物プロセスにより実施可能である。
【0080】
そのほかに、可能性のある対象の細胞系または一群の細胞系で、特定のポリペプチド、とくに工学操作されたタンパク質、たとえば既知の活性を有する参照タンパク質のタンパク質変異体の発現を最適化することが有用である。一実施形態では、複数の標的細胞型を提供して、工学操作されたポリペプチドをコードする修飾mRNAを複数の標的細胞型のそれぞれに独立して接触させることにより、標的細胞で工学操作されたタンパク質の発現を最適化する方法を提供する。そのほかに、培養条件を変化させてタンパク質産生効率を増大させることが可能である。続いて、複数の標的細胞型で工学操作されたポリペプチドの存在および/またはレベルを検出および/または定量して、効率的な標的細胞およびそれに関連する細胞培養条件の選択により、工学操作されたポリペプチドの発現の最適化を可能にする。そのような方法は、工学操作されたポリペプチドが1つ以上の翻訳後修飾を含むかまたは実質的な三次構造を有する場合、すなわち、効率的なタンパク質産生を複雑化することが多い状況で、とくに有用である。
【0081】
遺伝子サイレンシング
本明細書に記載の修飾mRNAは、細胞集団で1種以上の標的遺伝子の発現をサイレンシング(すなわち、防止または実質的に低減)するのに有用である。配列特異的ヒストンH3メチル化を誘導可能なポリペプチドをコードする修飾mRNAは、ポリペプチドが翻訳されてヒストンH3メチル化およびそれに続くヘテロクロマチン形成を介して標的遺伝子の遺伝子転写を低減するような条件下で、集団の細胞内に導入される。いくつかの実施形態では、サイレンシング機序は、哺乳動物対象に存在する細胞集団で行われる。例として、有用な標的遺伝子は、突然変異ヤヌスキナーゼ2ファミリーメンバーであり、この場合、哺乳動物対象は、この突然変異標的遺伝子を発現し、異常キナーゼ活性に起因する骨髄増殖性疾患に罹患している。ただし、これに限定されるものではない。
【0082】
修飾mRNAおよびsiRNAの共投与もまた、本明細書に提供される。酵母で実証されるように、配列特異的トランスサイレンシングは、細胞機能を変化させるのに効果的な機序である。分裂酵母は、siRNA媒介ヘテロクロマチン集合に2つのRNAi複合体、すなわち、RNA誘導転写サイレンシング(RITS)複合体およびRNA指向RNAポリメラーゼ複合体(RDRC)を必要とする(モタメディ(Motamedi)ら著、細胞(Cell)、2004年、第119巻、p.789~802)。分裂酵母では、RITS複合体は、siRNA結合アルゴノートファミリータンパク質Agol、クロモドメインタンパク質Chp1、およびTas3を含有する。分裂酵母RDRC複合体は、RNA依存性RNAポリメラーゼRdp1、推定RNAヘリカーゼHrr1、およびポリAポリメラーゼファミリータンパク質Cid12で構成される。これらの2つの複合体は、活性にDicerリボヌクレアーゼおよびClr4ヒストンH3メチルトランスフェラーゼを必要とする。全体として、Agolは、Rdp1共転写生成dsRNA転写物のDicer媒介切断を介して生成されたsiRNA分子に結合して、メチル化およびヒストン修飾およびそれに続く転写サイレンシングヘテロクロマチンへの緻密化の対象となるDNAの領域へのChp1、Tas3、Hrr1、およびClr4の配列特異的直接会合を可能にする。この機序は、DNAの動原体領域とシスで機能するが、DNAの特定領域に対する二本鎖siRNAとの共トランスフェクションおよびsiRNAリボヌクレアーゼEri1の付随的RNAi指向サイレンシングを介して、配列特異的トランスサイレンシングが可能である(ビューラー(Buhler)ら著、細胞(Cell)、2006年、第125巻、p.873~886)。
【0083】
生物学的経路の変調
細胞内に導入された修飾mRNAの迅速な翻訳は、標的生物学的経路を変調する望ましい機序を提供する。そのような変調は、所与の経路のアンタゴニズムまたはアゴニズムを含む。一実施形態では、核酸が細胞内に局在化されて組換えポリペプチドが細胞内で核酸から翻訳可能であり、その際、組換えポリペプチドが、生物学的経路で機能するポリペプチドの活性を阻害するような条件下で、組換えポリペプチドをコードする修飾核酸を含む有効量の組成物と細胞とを接触させることにより、細胞内で生物学的経路をアンタゴナイズする方法を提供する。例示的な生物学的経路は、自己免疫性または炎症性の障害、たとえば、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、紅斑性狼瘡、強直性脊椎炎、結腸炎、またはクローン病での欠陥経路であり、特定的には、IL-12およびIL-23のシグナリング経路のアンタゴニズムは、とくに有用である。(キクリー K(Kikly K)、リウ L(Liu L)、ナー S(Na S)、セジウィック JD(Sedgwick
JD)(2006年)免疫学の現状(Curr.Opin.Immunol.)第18巻(第6号):670-5頁を参照されたい)。
【0084】
さらに、ケモカインレセプターに対するアンタゴニストをコードする修飾核酸が提供され、ケモカインレセプターCXCR-4およびCCR-5は、たとえば、宿主細胞内へのHIV進入に必要とされる(ら著、(1996年)10月3日、第383巻(第6599号):400頁)。
【0085】
他の選択肢として、核酸が細胞内に局在化されて組換えポリペプチドが細胞内で核酸から翻訳可能であり、かつ組換えポリペプチドが、生物学的経路で機能するポリペプチドの活性を誘導するような条件下で、組換えポリペプチドをコードする有効量の修飾核酸と細胞とを接触させることにより、細胞内で生物学的経路をアゴナイズする方法を提供する。例示的なアゴナイズされる生物学的経路は、細胞運命決定を変調する経路を含む。そのようなアゴナイゼーションは、可逆的であるか、さもなければ不可逆的である。
【0086】
細胞内核酸送達
本発明に係る方法は、in vivo、ex vivo、または培養下で、細胞集団への核酸送達を増強する。たとえば、複数の宿主細胞(たとえば、酵母細胞や哺乳動物細胞などの真核細胞)を含有する細胞培養物を、少なくとも1つのヌクレオシド修飾と任意選択的な翻訳可能領域とを有する増強核酸を含有する組成物に接触させる。組成物はまた、一般的には、宿主細胞内への増強核酸取込みの効率を増大させるトランスフェクション試薬または他の化合物を含有する。増強核酸は、対応する非修飾核酸と比較して、細胞集団内で保持率増強を呈する。増強核酸の保持率は、非修飾核酸の保持率よりも大きい。いくつかの実施形態では、それは、非修飾核酸の保持率よりも少なくとも約50%、75%、90%、95%、100%、150%、200%、または200%超大きい。そのような保持率の利点は、増強核酸を用いた1回のトランスフェクションにより達成可能であるか、またはトランスフェクションを何回か繰り返した後で取得可能である。
【0087】
いくつかの実施形態では、増強核酸は、1つ以上の追加の核酸と共に標的細胞集団に送達される。そのような送達は、同時でありうるか、または増強核酸は、1つ以上の追加の核酸の送達前に送達される。追加の1つ以上の核酸は、修飾核酸または非修飾核酸でありうる。増強核酸の初期の存在は、細胞集団の先天性免疫応答を実質的に誘導せず、さらに、先天性免疫応答は、非修飾核酸の後続の存在により活性化されないものとする。これに関連して、標的細胞集団に存在することが望まれるタンパク質が非修飾核酸から翻訳される場合、増強核酸自体は、翻訳可能領域を含有していなくてもよい。
【0088】
細胞表面上でのリガンドまたはレセプターの発現
本明細書に記載のいくつかの態様およびその態様の実施形態では、修飾RNAを用いて細胞の表面上(たとえばホーミング(homing)部分)にリガンドまたはリガンドレセプターを発現することが可能である。細胞表面に装着されたリガンド部分またはリガンドレセプター部分により、in vivoで細胞と組織または作用剤との所望の生物学的相互作用を行わせることが可能である。リガンドは、抗体、抗体フラグメント、アプタマー、ペプチド、ビタミン、炭水化物、タンパク質もしくはポリペプチド、レセプターたとえば細胞表面レセプター、接着分子、糖タンパク質、糖残基、治療剤、薬剤、グリコサミノグリカン、またはそれらの任意の組合せでありうる。たとえば、リガンドは、癌細胞特異的抗原を認識することにより、細胞を腫瘍細胞と優先的に相互作用させて、修飾細胞の腫瘍特異的局在化を可能にする抗体でありうる。好ましいリガンドは、治療対象の組織の外面上の標的分子との相互作用を可能にしうるので、リガンドは、細胞組成物が治療対象の組織中に蓄積する能力を付与することが可能である。一般的には、他の組織に対して制限された交差反応性を有するリガンドが好ましい。
【0089】
いくつかの場合には、リガンドは、細胞が特定の組織を標的とするようにするまたは特異的リガンドと相互作用するようにするホーミング部分として作用可能である。そのようなホーミング部分としては、限定されるものではないが、特異的結合対、抗体、モノクローナル抗体、またはそれらの誘導体もしくは類似体の任意のメンバー、たとえば、限定されるものではないが、Fvフラグメント、一本鎖Fv(scFv)フラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、単一ドメイン抗体、ラクダ化抗体および抗体フラグメント、ヒト化抗体および抗体フラグメント、ならびに以上の多価種、多価結合試薬、たとえば、限定されるものではないが、ジスルフィド安定化Fvフラグメント、scFvタンデム((SCFV)2フラグメント)、ダイアボディー、トリボディー、テトラボディーなどの単一特異性または二重特異性の抗体(これらは、典型的には、共有結合されたまたは他の形で安定化された(すなわち、ロイシンジッパーまたはヘリックスで安定化された)scFv断片である)が挙げられうる。また、他のホーミング部分としては、たとえば、アプタマー、レセプター、および融合タンパク質が挙げられる。
【0090】
いくつかの実施形態では、ホーミング部分は、細胞標的特異性の調整を可能にしうる表面結合抗体でありうる。このことは、所望の標的部位の対象エピトープに対してかなり特異的な抗体が産生されうるので、とくに有用である。一実施形態では、複数の抗体が細胞の表面上で発現され、かつ各抗体は、所望の標的に対して異なる特異性を有しうる。そのような手法は、ホーミング相互作用の結合活性および特異性を増大させうる。
【0091】
当業者であれば、細胞の所望の局在化または機能に基づいて、任意のホーミング部分を選択可能であり、たとえば、タモキシフェンなどのエストロゲンレセプターリガンドにより、細胞は、細胞表面上のエストロゲンレセプター数が増大されたエストロゲン依存性乳癌細胞を標的とすることが可能である。リガンド/レセプター相互作用の他の例としては、CCRI(たとえば、関節リウマチおよび/または多発性硬化症で炎症を起こした関節組織または脳の治療のために)、CCR7、CCR8(たとえば、リンパ節組織を標的として)、CCR6、CCR9、CCR10(たとえば、腸組織を標的とするために)、CCR4、CCR10(たとえば、皮膚を標的とするために)、CXCR4(たとえば、一般的な遊出増大に対して)、HCELL(たとえば、炎症および炎症性障害、骨髄の治療のために)、α4β7(たとえば、腸粘膜標的化のために)、VLA-4/VCAM-1(たとえば、内皮を標的として)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般的には、本明細書に記載の方法および組成物で使用するために、標的化(たとえば癌転移)に関与する任意のレセプターを利用することが可能である。
【0092】
細胞死のメディエーター
一実施形態では、修飾核酸分子組成物は、デスレセプター、デスレセプターリガンド、またはそれらの組合せの発現を増大させることにより、細胞(たとえば癌細胞)内でアポトーシスを誘導するために使用可能である。この方法は、任意の所望の細胞で細胞死を誘導するために使用可能であり、細胞が天然アポトーシスシグナルを回避する癌の治療にはとくに有用である。
【0093】
アポトーシスは、腫瘍壊死因子(TNF)レセプター/リガンドスーパーファミリーに属するいくつかの「デスレセプター」とそれらのリガンドとの間の複数の相互作用で構成された最終エフェクター機序に収束する複数の独立したシグナリング経路により誘導可能である。最もよく特徴付けられたデスレセプターは、CD95(「Fas」)、TNFRI(p55)、デスレセプター3(DR3またはApo3/TRAMO)、DR4およびDR5(apo2-TRAIL-R2)である。アポトーシスの最終エフェクター機序は、カスパーゼと称される一連のプロテイナーゼの活性化でありうる。これらのカスパーゼの活性化の結果として、一連の生命にかかわる細胞タンパク質の切断および細胞死がもたらされる。デスレセプター/リガンド誘導アポトーシスの分子機序は、当技術分野で周知である。たとえば、Fas/FasL媒介アポトーシスは、C末端デスドメイン(DD)を介してFasレセプターの三量体化を誘導する3つのFasL分子の結合、そして次に、アダプタータンパク質FADD(デスドメインを有するFas会合タンパク質)およびカスパーゼ8の動員により、誘導される。この三分子複合体(Fas/FAIDD/カスパーゼ8)のオリゴマー化は、プロ酵素カスパーゼ8から活性カスパーゼ8へのタンパク質分解切断を引き起こし、そして次に、カスパーゼ3を含めて他の下流カスパーゼをタンパク質分解により活性化することによりアポトーシスプロセスを開始させる。デスリガンドは、一般的には、三量体以上の高次構造が形成された場合、アポトーシス性である。単量体としては、それらは、デスレセプターに結合するための三量体と競合することにより、抗アポトーシス剤として機能しうる。
【0094】
一実施形態では、修飾核酸分子組成物は、デスレセプター(たとえば、Fas、TRAIL、TRAMO、TNFR、TLRなど)をコードする。修飾RNAのトランスフェクションによりデスレセプターを発現するように作製された細胞は、そのレセプターを活性化するリガンドにより誘導される死を引き起こしやすくなる。同様に、たとえば表面上にデスリガンドを発現するように作製された細胞は、トランスフェクト細胞が標的細胞と接触した時、レセプターにより細胞死を誘導するであろう。他の実施形態では、修飾RNA組成物は、デスレセプターリガンド(たとえば、FasL、TNFなど)をコードする。他の実施形態では、修飾RNA組成物は、カスパーゼ(たとえば、カスパーゼ3、カスパーゼ8、カスパーゼ9など)をコードする。癌細胞が非増殖形態または抑制増殖形態に適正に分化できない状態を呈することが多い場合、他の実施形態では、合成修飾RNA組成物は、デスレセプターおよびその適切な活性化リガンドの両方をコードする。他の実施形態では、合成修飾RNA組成物は、癌幹細胞などの癌細胞内で発現された時、非病原性表現型もしくは非自己複製表現型(たとえば、低減された細胞増殖速度、低減された細胞分裂など)に分化するように細胞を誘導する、または休眠細胞期に入る(たとえば、G静止期に移行する)ように細胞を誘導する、分化因子をコードする。
【0095】
アポトーシス誘導技術を使用するには、修飾核酸分子が適切に腫瘍細胞などを標的として望ましくない広範にわたる細胞死を防止することが必要になりうることは、当業者であればわかるであろう。したがって、修飾核酸分子が癌細胞内のみで発現されるように、癌抗原を認識する送達機序(たとえば、リガンドまたは抗体、標的化リポソームなどに装着されたもの)を使用することが可能である。
【0096】
修飾mRNAの製剤
本明細書に提供されているのは、有効量のmmRNAを含有する製剤である。特定の実施形態では、製剤は、1種以上の細胞透過剤(たとえばトランスフェクション剤)を含む。特定の一実施形態では、mmRNAは、トランスフェクション剤(またはその混合物)と混合または混和され、得られた混合物は、細胞にトランスフェクトするために利用される。好ましいトランスフェクション剤は、カチオン性脂質組成物、特定的には、一価または多価のカチオン性脂質組成物、より特定的には、LIPOFECTIN(登録商標)、LIPOFECTACE(登録商標)、LIPOFECTAMINE(登録商標)、CELLFECTIN(登録商標)、DMRIE-C、DMRIE、DOTAP、DOSPA、およびDOSPER、ならびにデンドリマー組成物、特定的には、G5-G10デンドリマー(緻密スターデンドリマー、PAMAMデンドリマー、グラフトデンドリマー、ならびにデンドリグラフトおよびSUPERFECT(登録商標)として知られるデンドリマーを含む)である。
【0097】
第2の特定のトランスフェクション法では、核酸結合基、たとえばポリアミン、より特定的にはスペルミンにリボ核酸をコンジュゲートし、次いで、細胞内に導入するか、またはトランスフェクション剤(もしくはそれらの混合物)と混和し、得られた混合物を細胞にトランスフェクトするために利用する。第3の特定の実施形態では、膜融合ペプチドもしくはタンパク質、輸送もしくは移行ペプチドもしくはタンパク質、レセプター-リガンドペプチドもしくはタンパク質、または核局在化ペプチドもしくはタンパク質、および/またはそれらの修飾類似体(たとえば、スペルミン修飾ペプチドもしくはタンパク質)、あるいはそれらの組合せを含めて、1種以上のトランスフェクション増強ペプチド、タンパク質、またはタンパク質断片の混合物を、リボ核酸と混合または複合化して細胞内に導入し、任意選択的に、トランスフェクション剤と混和して、得られた混合物を細胞にトランスフェクトするために利用する。さらに、トランスフェクション剤の成分(たとえば、脂質、カチオン性脂質、またはデンドリマー)を、所定のペプチド、タンパク質、またはタンパク質断片に、直接にまたはリンク基もしくはスペーサー基を介して共有結合でコンジュゲートする。この実施形態でとくに興味深いのは、膜融合性、膜透過性、輸送性、もしくは移行性であるまたは細胞標的化の機能を有するペプチドまたはタンパク質である。ペプチドまたはタンパク質トランスフェクション剤複合体は、リボ核酸と組み合わされて、トランスフェクションに利用される。
【0098】
特定の実施形態では、製剤は、細胞を含有する標的組織内に有効量のmmRNAが実質的に保持されるようにする薬学的に許容可能な担体を含む。
特定の実施形態では、製剤は、少なくともmmRNAおよび送達剤を含みうる。いくつかの実施形態では、送達剤は、mmRNAの局所送達および全身送達を可能にするリピドイド系製剤を含みうる。
【0099】
また、工学操作されたリボヌクレオチドを含有するin vivoデポ剤を生成するための組成物も提供される。たとえば、組成物は、生体内分解性生体適合性ポリマーと、ポリマーを可塑化してそれと共にゲルを形成するのに有効な量で存在する溶媒と、工学操作されたリボ核酸と、を含有する。特定の実施形態では、組成物はまた、本明細書に記載の細胞透過剤を含む。他の実施形態では、組成物は、チキソトロピー組成物を形成するのに有効であるようにポリマーと混合可能なチキソトロピー量のチキソトロピー剤をも含有する。さらなる組成物は、安定化剤、バルキング剤、キレート化剤、または緩衝剤を含む。
【0100】
他の実施形態では、患者の環境(器官または組織の部位を意味する)へのmmRNAの投与などのために、持続放出送達デポ剤が提供される。そのようなデポ剤は、一般的には、mmRNAおよび可撓性鎖状ポリマーを含有し、mmRNAおよび可撓性鎖状ポリマーは両方とも、架橋マトリックスタンパク質の多孔性マトリックス内に閉じ込められる。通常、細孔サイズは、1mm未満、たとえば、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、100nm、または100nm未満である。通常、可撓性鎖状ポリマーは親水性である。通常、可撓性鎖状ポリマーは、少なくとも50kDa、たとえば、75kDa、100kDa、150kDa、200kDa、250kDa、300kDa、400kDa、500kDa、または500kDa超の分子量を有する。通常、可撓性鎖状ポリマーは、マトリックスタンパク質の持続長の10%未満、たとえば、9、8、7、6、5、4、3、2、1%、または1%未満の持続長を有する。通常、可撓性鎖状ポリマーは、マトリックスタンパク質に類似した電荷を有する。いくつかの実施形態では、可撓性鎖状ポリマーは、マトリックスから、mmRNAが進入しうる細胞を含む周囲組織中への、mmRNAの拡散を持続可能にするサイズになるように、架橋マトリックスタンパク質のマトリックスの有効細孔サイズを変化させる。
【0101】
リピドイド(lipidoid)を用いた製剤
本明細書に記載の医薬組成物は、mmRNAの局所送達および全身送達を可能にするリピドイド系製剤を含む。リピドイドの合成は、広範に記載されており、これらの化合物を含有する製剤は、ポリヌクレオチドの送達にとくに適している(マーン(Mahon)ら著、バイオコンジュゲート化学(Bioconjug Chem.)2010年 第21巻:1448-1454頁、シュレーダー(Schroeder)ら著、国際医学誌(J
Intern Med.)2010年 第267巻:9-21頁、アキンク(Akinc)ら著、自然生物工学(Nat Biotechnol.)2008年 第26巻:561-569頁、ラブ(Love)ら著、米国国立科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA.)2010年 第107巻:1864-1869頁、ジークバルト(Siegwart)ら著、米国国立科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA.)2011年 第108巻:12996-3001頁(それらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0102】
本発明によれば、これらのリピドイドを含有する複合体、ミセル、リポソーム、または粒子を調製可能であるので、局所および全身投与経路によるmmRNA製剤化リピドイドの注射後、コードタンパク質の産生により判断した場合、mmRNAの効果的送達がもたらされる。修飾mRNA-リピドイド複合体は、本明細書に開示される種々の手段により投与可能である。
【0103】
筋肉内経路または皮下経路に対して最適化されたリピドイド製剤の特徴は、標的細胞型および細胞外マトリックスを介する血流中への製剤の拡散能に有意に依存して異なりうる。効果的な肝細胞送達を行うには、内皮穿孔サイズに基づいて、150nm未満の粒子サイズが望まれるが(アキンク(Akinc)ら著、分子治療(Mol Ther.)2009年 第17巻:872-879頁(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)、内皮細胞、骨髄細胞、および筋細胞(これらに限定されるものではない)をはじめとする他の細胞型に製剤を送達するためのリピドイドオリゴヌクレオチドの使用は、同様なサイズ制限を受けない可能性がある。
【0104】
単球などの骨髄細胞への効果的送達の一態様では、リピドイド製剤は、類似の成分モル比を有しうる。リピドイドと、ジステロイルホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG-DMG(これらに限定されるものではない)をはじめとする他の成分と、のさまざまな比を用いて、肝細胞、骨髄細胞、筋細胞など(これらに限定されるものではない)をはじめとするさまざまな細胞型への送達のために、mmRNA分子の製剤を最適化しうる。たとえば、成分モル比としては、50%脂質、10%ジステロイルホスファチジルコリン、38.5%コレステロール、および1.5%PEGが挙げられるが、これに限定されるものではない。脂質は、DLin-DMA、DLin-K-DMA、DLin-KC2-DMA、98N12-5、C12-200(異性体および誘導体を含む)、DLin-MC3-DMA、ならびにそれらの類似体から選択されるが、これらに限定されるものではない。皮下送達または筋肉内送達のいずれかを介する細胞(たとえば、限定されるものではないが、脂肪細胞および筋細胞)への核酸の局所送達のためのリピドイド製剤の使用はまた、全身送達に必要とされうる製剤成分の必ずしもすべてを必要としないこともあり、したがって、リピドイドとmmRNAとを含みうる。
【0105】
さらなる実施形態では、さまざまなリピドイドの組合せを用いて、mmRNA指向タンパク質の有効性を改善しうる。
本発明によれば、修飾mRNAは、細胞への添加前に設定比でmmRNAをリピドイドと混合することにより製剤化されうる。in vivo製剤は、生体全体にわたり循環を促進するために追加の成分の添加を必要とすることもある。in vivo作用に好適な粒子を形成するこれらのリピドイドの能力を試験するために、siRNA-リピドイド製剤に使用される標準的製剤化プロセスを出発点として使用しうる。最初のmmRNA-リピドイド製剤は、42%リピドイド、48%コレステロール、および10%PEGを含む粒子で構成され、比のさらなる最適化が可能である。粒子形成後、mmRNAが添加されて、複合体に組み込まれる。カプセル化効率は、標準的色素排除アッセイを用いて決定される。
【0106】
核酸のin vivo送達は、製剤組成、粒子PEG化性、充填度、オリゴヌクレオチド対脂質比、および粒子サイズなどの生物物理学的パラメーターをはじめとする多くのパラメーターにより影響されうる(アキンク(Akinc)ら著、分子治療(Mol Ther.)2009年 第17巻:872-879頁(その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。一例として、ポリ(エチレングリコール)(PEG)脂質のアンカー鎖長がわずかに変化すると、in vivo有効性が有意な影響を受ける可能性がある。ペンタ[3-(1-ラウリルアミノプロピオニル)]-トリエチレンテトラミン塩酸塩(TETA-5LAP、別名98N12-5、ムルガイア(Murugaiah)ら著、分析生化学(Analytical Biochemistry)、第401巻:61頁(2010年)を参照されたい)、C12-200(誘導体および異性体を含む)、MD1、DLin-DMA、DLin-K-DMA、DLin-KC2-DMA、およびDLin-MC3-DMA(図1参照)(これらに限定されるものではない)をはじめとするさまざまなリピドイドを含む製剤を、in vivo活性に関して試験することが可能である。
【0107】
「98N12-5」として本明細書で参照されるリピドイドは、アキンク(Akinc)ら著、分子治療(Mol Ther.)2009年 第17巻:872-879頁により開示されており、その全体が参照により組み込まれる。(図1参照)
「C12-200」として本明細書で参照されるリピドイドは、ラブ(Love)ら著、米国国立科学アカデミー紀要(Proc Natl Acad Sci USA.)2010年 第107巻:1864-1869頁(図1参照)ならびにリウ(Liu)およびホワーン(Huang)著、分子治療(Molecular Therapy).2010年 669-670頁(図1参照)により開示されており、両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる。リピドイド製剤は、ポリヌクレオチド、一次構築物、またはmmRNAに加えて、3もしくは4のいずれかまたはそれ以上の成分を含む粒子を含みうる。一例として、特定のリピドイドを含む製剤は、限定されるものではないが98N12-5を含み、42%リピドイド、48%コレステロール、および10%PEG(C14アルキル鎖長)を含有しうる。他の例として、特定のリピドイドを含む製剤は、限定されるものではないがC12-200を含み、50%リピドイド、10%ジステロイルホスファチジルコリン、38.5%コレステロール、および1.5%PEG-DMGを含有しうる。
【0108】
in vitroトランスフェクションの試験に使用されるmmRNA対リピドイドの比は、経験に基づいてさまざまなリピドイド:mmRNA比で試験される。siRNAおよびリピドイドを用いた以前の研究では、2.5:1、5:1、10:1、および15:1のリピドイド:siRNA wt:wt比が利用された。siRNAに対してmmRNAの長さがより長いと仮定すれば、リピドイド対mmRNAのwt:wt比をより小さくしても、おそらく効果を発揮するであろう。また、それに加えて、比較のために、RNAiMax(インビトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA))またはTRANSIT-mRNA(ミラスバイオ(Mirus Bio)、ウィスコンシン州マジソン(Madison WI))のカチオン性脂質送達媒体を用いて、mmRNAを製剤化する。
【0109】
所望のタンパク質産物を発現するリピドイド製剤化mmRNAの能力は、ルシフェラーゼ発現に関しては発光、発現に関してはフローサイトメトリー、および分泌に関してはELISAにより確認可能である。
【0110】
mmRNAコードタンパク質の発現は、筋肉内または皮下組織内でも、全身的に血液ならびに他の器官および流体、たとえば、肝臓および脾臓、尿、唾液などでも、評価可能である。
【0111】
たとえば、単回用量研究では、所望の産物の発現の量、用量反応性、および寿命の評価が可能である。リピドイド製剤を用いたmmRNAの製剤化後、以上に記載したように、動物は、生理食塩水製剤またはいくつかの異なるmmRNAの1つを含有するリピドイド製剤のいずれかの投与を受ける群に分けられる。注射前、mmRNA含有リピドイド製剤は、PBS中に希釈され、動物は、50mg/kgから1ng/kg程度の低用量までの単回筋肉内用量の製剤化mmRNAが投与される。ただし、好ましい範囲は、10mg/kg~100ng/kgである。試験動物がマウスである場合、後肢内に1回投与するのであれば、最大用量は、約1mgのmmRNAまたは0.02ng程度の少量のmmRNAでありうる。皮下投与でも同様に、mmRNA含有リピドイド製剤は、PBS中に希釈され、その後、動物は、約400mg/kgから1ng/kg程度の低用量までの単回皮下用量の製剤化mmRNAが投与される。好ましい投与量範囲は、80mg/kg~100ng/kgを含む。試験動物がマウスである場合、用量が1回皮下投与されるのであれば、投与される最大用量は、約8mgのmmRNAまたは0.02ng程度の少量のmmRNAでありうる。
【0112】
20グラムのマウスでは、単回筋肉内注射液の量は、最大で0.025ml、単回皮下注射液の量は、最大で0.2mlであることが好ましい。動物に投与されるmmRNAの用量は、動物の体重に依存して計算される。mmRNA-リピドイドの投与後の種々の時点で、血清、組織、および組織溶解物を取得して、mmRNAコード産物のレベルを決定することが可能である。所望のタンパク質産物を発現するリピドイド製剤化mmRNAの能力は、ルシフェラーゼ発現の発光、フローサイトメトリー、およびELISAにより確認可能である。
【0113】
また、複数回用量レジメンの追加の研究を行って、mmRNAを用いて最大発現を決定しり、mmRNA駆動発現の飽和性を評価したり(並行的または逐次的に対照および活性mmRNA製剤を投与することにより達成される)、繰返し薬剤投与の実現可能性を決定したり(何週間かまたは何ヶ月間かの間隔で何回かmmRNAを投与してから、発現レベルが免疫原性などの因子により影響されるかを決定することにより)することも可能である。
【0114】
投与
本発明は、本発明に係る修飾mRNAまたは複合体を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。mmRNAもしくは複合体、またはそれらの医薬組成物、イメージング組成物、診断組成物、もしくは予防組成物は、疾患、障害、および/または病態(たとえば、作業記憶欠損に関連する疾患、障害、および/または病態)を予防、治療、診断、または画像化するのに有効でありうる任意の量および任意の投与経路を用いて、対象に投与されうる。厳密な必要量は、対象の種、年齢、および全身状態、疾患の重症度、特定の組成物、その投与形態、その活性形態など(これらに限定されるものではない)の因子に依存して、対象によって異なるであろう。
【0115】
送達されるmmRNA、および/またはその医薬組成物、予防組成物、診断組成物、もしくはイメージング組成物は、哺乳動物(たとえば、ヒト、家畜、ネコ、イヌ、マウス、ラットなど)などの動物に投与されうる。いくつかの実施形態では、その医薬組成物、予防組成物、診断組成物、またはイメージング組成物はヒトに投与される。
【0116】
mmRNAは、任意の経路により投与されうる。いくつかの実施形態では、mmRNAは、局所、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、皮下、脳室内、経真皮、皮膚層間、直腸、腟内、腹腔内、外用(たとえば、粉末剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、および/または滴剤による)、粘膜、鼻、頬腔内、腸内、硝子体、腫瘍内、舌下(これらに限定されるものではない)をはじめとするさまざまな経路の1つ以上により、気管内点滴注入、気管支点滴注入、および/または吸入により、経口スプレー、経鼻スプレー、および/またはエアロゾルとして、および/または門脈カテーテルを介して、投与される。
【0117】
いくつかの実施形態では、mmRNAは、全身性静脈内注射により投与されうる。特定の実施形態では、mmRNAは、静脈内投与および/または経口投与されうる。特定の実施形態では、mmRNAは、血液脳関門、血管関門、または他の上皮性関門をmmRNAが通過できるようにする方法で、投与されうる。
【0118】
注射用製剤、たとえば、無菌の注射可能な水性または油性のサスペンジョン剤は、好適な分散剤、湿潤剤、および/または懸濁化剤を用いて、公知の技術に従って製剤化されうる。無菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤および/または溶媒中の、たとえば、1,3-ブタンジオールの溶液としての、無菌の注射可能な溶液剤、サスペンジョン剤、および/またはエマルジョン剤でありうる。利用しうる許容可能な媒体および溶媒としては、水、リンゲル液(米国薬局方)、および生理食塩液がある。無菌固定油は、溶媒または懸濁媒体として従来方式で利用される。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油を利用することが可能である。オレイン酸などの脂肪酸を注射剤の調製に使用することが可能である。
【0119】
注射用製剤は、たとえば、細菌保持フィルターに通して濾過することにより、および/または使用前に無菌水または他の無菌注射用媒体に溶解可能または分散可能な無菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことにより、滅菌可能である。
【0120】
組成物の局所投与、外用投与、および/または経真皮投与に供される製剤は、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、粉末剤、溶液剤、スプレー剤、吸入剤、および/または貼付剤を含みうる。そのほかに、本発明では、経真皮パッチの使用が考えられる。これは、多くの場合、生体への化合物の制御送達を提供するという追加の長所を有する。そのような製剤は、たとえば、適正な媒体中に化合物を溶解および/または分配することにより調製されうる。他の選択肢としてまたは追加として、速度制御膜を提供することにより、ならびに/またはポリマーマトリックス中および/もしくはゲル中に化合物を分散させることにより、速度を制御しうる。
【0121】
外用投与に好適な製剤は、液体製剤および/または半液体製剤、たとえば、リニメント剤、ローション剤、水中油型および/もしくは油中水型エマルジョン剤、たとえば、クリーム剤、軟膏剤、および/もしくはペースト剤、ならびに/または溶液剤および/もしくはサスペンジョン剤を含むが、これらに限定されるものではない。外用投与可能な製剤は、たとえば、約1%~約10%(w/w)の活性成分を含みうるが、活性成分の濃度は、溶媒中への活性成分の溶解度限界程度に高くしうる。外用投与に供される製剤は、本明細書に記載の1つ以上の追加の成分をさらに含みうる。
【0122】
医薬組成物は、経眼投与に好適な製剤の形態で、調製、包装、および/または販売を行いうる。そのような製剤は、たとえば、水性または油性の液体賦形剤中の活性成分の0.1/1.0%(w/w)溶液および/またはサスペンジョンを含む点眼剤の形態をとりうる。そのような滴剤は、緩衝剤、塩、および/または本明細書に記載の任意の追加成分の他の1つ以上をさらに含みうる。有用な他の経眼投与可能な製剤は、微結晶形態でおよび/またはリポソーム調製物中に活性成分を含むものを含む。点耳剤および/または点眼剤は、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0123】
一般的には、最も適切な投与経路は、送達されるmmRNAの性質(たとえば、消化管、血流などの環境中でのその安定性)、患者の病態(たとえば、患者が特定の投与経路に耐えることができるか)などを含むさまざまな因子に依存するであろう。本発明は、薬剤送達の科学の進歩の可能性を考慮して、任意の適切な経路によるmmRNAの送達を包含する。
【0124】
特定の実施形態では、本発明に係る組成物は、所望の治療効果、診断効果、または予防効果を得るために、1日あたり対象体重基準で約0.0001mg/kg~約100mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.1mg/kg~約40mg/kg、約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、または約1mg/kg~約25mg/kgを送達するのに十分な投与レベルで、1日1回以上投与されうる。所望の投与量は、1日3回、1日2回、1日1回、2日1回、3日に1回、毎週1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回送達されうる。特定の実施形態では、所望の投与量は、複数回投与(たとえば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14回、またはそれ以上の投与)を用いて送達されうる。複数回投与を利用する場合、本明細書に記載されるような分割投与レジメンを使用しうる。
【0125】
本発明により、分割用量レジメンによるmmRNAの投与は、哺乳動物対象においてより高レベルのタンパク質を産生することが判明した。本明細書で用いられる場合、「分割用量(split dose)」とは、単回単位用量または全一日用量を2つ以上に分割した用量のことである。本明細書で用いられる場合、「単回単位用量」とは、1回で/一時点/一経路/一接触点で、すなわち単回投与イベントで、投与される任意の治療剤の用量のことである。本明細書で用いられる場合、「全一日用量」とは、24時間以内で投与または処方される量のことである。それは、単回単位用量として投与されうる。一実施形態では、本発明に係るmmRNAは、分割用量で対象に投与される。mmRNAは、緩衝液のみの形態でまたは本明細書に記載の製剤の形態で製剤化されうる。
【0126】
修飾核酸分子または複合体は、1種以上の他の治療剤、予防剤、診断剤、またはイメージング剤と組み合わせて使用または投与されうる。「と組み合わせて」とは、作用剤を同時に投与しなければならないことおよび/または一緒に送達すべく製剤化しなければならないことを示すことを意図したものではないが、これらの送達方法は、本開示の範囲内にある。組成物は、1種以上の他の所望の治療剤または医学的手順と同時に、その前に、またはその後に、投与することが可能である。一般的には、各作用剤は、その作用剤に対して決められた用量および/または時間スケジュールで投与されるであろう。いくつかの実施形態では、本開示は、生物学的利用能の改善、代謝の低減および/もしくは改変、排泄の阻害、ならびに/または生体内の分布の改変を行いうる作用剤と組み合わせた、医薬組成物、予防組成物、診断組成物、またはイメージング組成物の送達を包含する。
【0127】
さらに、組み合わせて利用される治療活性剤、予防活性剤、診断活性剤、またはイメージング活性剤は、単一組成物の形態で一緒に投与されうるか、または異なる組成物の形態で独立して投与されうることがわかるであろう。一般的には、組み合わせて利用される作用剤は、個別に利用されるレベルを超えないレベルで利用されることが予想されるであろう。いくつかの実施形態では、組み合わせて利用されるレベルは、個別に利用されるレベルよりも低いであろう。一実施形態では、組合せは、単独でまたは一緒に、本明細書に記載の分割投与レジメンに従って投与されうる。
【0128】
組合せレジメンで利用される治療(治療剤または手順)の特定の組合せは、所望の治療剤および/または手順の適合性ならびに達成される所望の治療効果を考慮に入れるであろう。また、利用される治療が、同一の障害に対して所望の効果を達成しうるか(たとえば、本発明に従って癌を治療するのに有用な組成物は、化学療法剤と同時に投与されうる)、または異なる効果を達成しうることは(たとえば、副作用の抑制)、わかるであろう。
【0129】
mmRNAを含有する組成物は、筋肉内に、経動脈的に、眼内に、経腟的に、経直腸的に、腹腔内に、静脈内に、鼻腔内に、皮下に、内視鏡下に、経真皮的に、筋肉内に、脳室内に、真皮内に、髄腔内に、外用として(たとえば、粉末剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、および/または滴剤により)、経粘膜的に、経鼻的に、経腸的に、腫瘍内に、気管内点滴注入、気管支点滴注入、および/もしくは吸入、経鼻スプレーおよび/もしくはエアロゾルにより、ならびに/または門脈カテーテルを介して、投与すべく製剤化される。
【0130】
また、組成物は、直接浸漬または沐浴する方法、カテーテルを介した方法、ゲル剤、粉末剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、および/または滴剤による方法、組成物で被覆または含浸された布や生分解性材料などの基材を用いた方法など(これらに限定されるものではない)をはじめとする当技術分野のいくつかの方法のいずれかで、器官または組織に直接送達すべく製剤化されうる。いくつかの実施形態では、組成物は、長期放出に供すべく製剤化される。特定の実施形態では、mmRNA分子もしくは複合体、ならびに/またはその医薬組成物、予防組成物、診断組成物、もしくはイメージング組成物は、mmRNA分子または複合体が血液脳関門、血管関門、または他の上皮性関門を通過するように、投与されうる。
【0131】
本発明のいくつかの態様では、核酸(特定的には、ポリペプチドをコードするリボ核酸)は、標的組織内にまたはそれに近接して空間的に保持される。提供されているのは、組成物とくに組成物の核酸成分が標的組織内に実質的に保持されるような条件下で、つまり、組成物の少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.9、99.99%、または99.99%超が標的組織内に保持されるような条件下で、標的組織(1つ以上の標的細胞を含有する)と組成物とを接触させることにより、哺乳動物対象の標的組織に組成物を提供する方法である。有利には、保持率は、1つ以上の標的細胞に進入する組成物中に存在する核酸の量を測定することにより決定される。たとえば、対象に投与された核酸の少なくとも1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.9、99.99%、または99.99%超は、投与後の一定の時点で細胞内に存在する。たとえば、哺乳動物対象への筋肉内注射は、リボ核酸およびトランスフェクション試薬を含有する水性組成物を用いて行われ、組成物の保持率は、筋細胞内に存在するリボ核酸の量を測定することにより決定される。
【0132】
本発明の態様は、組成物が実質的に標的組織内に保持されるような条件下で、標的組織(1つ以上の標的細胞を含有する)と組成物とを接触させることにより、哺乳動物対象の標的組織に組成物を提供する方法に関する。組成物は、目的のポリペプチドが少なくとも1つの標的細胞内で産生されるような条件下で、リボ核酸が進入する細胞の先天性免疫反応を回避するように工学操作された有効量のリボ核酸(このリボ核酸は、目的のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有する)を含有する。組成物は、一般的には、細胞透過剤(ただし、「裸の」核酸(たとえば、細胞透過剤や他の作用剤を伴わない核酸)もまた、考えられる)と、薬学的に許容可能な担体と、を含有する。
【0133】
いくつかの状況下では、組織内の細胞により産生されるタンパク質の量は、望ましくは増大される。好ましくは、タンパク質産生のこの増大は、標的組織内の細胞に空間的に制限される。したがって、哺乳動物対象の組織内の対象のタンパク質の産生を増大させる方法が提供される。リボ核酸が進入する細胞の先天性免疫反応を回避するように工学操作されかつ目的のポリペプチドをコードするリボ核酸を含有する組成物が提供される。この組成物は、標的組織の所定の体積内に含有される実質的パーセントの細胞内で目的のポリペプチドを産生するように組成物の単位量が決定されていることを特徴とする。いくつかの実施形態では、組成物は、複数の異なるリボ核酸を含み、リボ核酸の1つまたは2つ以上は、リボ核酸が進入する細胞の先天性免疫反応を回避するように工学操作され、かつリボ核酸の1つまたは2つ以上は、目的のポリペプチドをコードする。任意選択的に、組成物はまた、リボ核酸の細胞内送達を支援する細胞透過剤を含有する。標的組織の所定の体積内に含有される実質的パーセントの細胞内で目的のポリペプチドを産生するのに必要な組成物の用量の決定が行われる(一般的には、所定の体積に隣接するまたは標的組織に対して遠位にある組織内では、目的のポリペプチドの有意な産生を誘導しない)。この決定に続いて、決定された用量は、哺乳動物対象の組織内に直接導入される。
【0134】
筋肉内および/または皮下に投与されうる製剤は、ポリマー、コポリマー、およびゲル剤を含みうるが、これらに限定されるものではない。ポリマー、コポリマー、および/またはゲル剤は、分子量、粒子サイズ、ペイロード、および/または単量体比などの因子を調節することにより放出速度を改変すべく、さらに調整されうるが、これらに限定されるものではない。たとえば、筋肉内および/または皮下に投与される製剤は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)などのコポリマーを含みうるが、これに限定されるものではない。
【0135】
本明細書に記載の組成物の局所送達は、外用送達、経眼送達、経真皮送達などの方法により施行されうるが、これらに限定されるものではない。組成物はまた、限定されるものではないが、対象の身体が治療時に環境に開放されている場合などでは、局所送達に通常は利用可能でない身体の一部に局所投与されうる。組成物はさらに、組成物を用いて身体部分を沐浴、浸漬、および/または包囲することにより送達されうる。
【0136】
しかしながら、本発明は、薬剤送達の科学の進歩の可能性を考慮して、任意の適切な経路による、mmRNA分子もしくは複合体、および/またはその医薬組成物、予防組成物、診断組成物、またはイメージング組成物の送達を包含する。
【0137】
mmRNAのレベルまたは濃度は、エキソソームを用いて特徴付けられうる。エキソソーム中のmmRNAのレベルまたは濃度は、mmRNAの発現レベル、存在、不在、切断(トランケーション)、または変化を表しうる。レベルまたは濃度は、構築物特異的プローブ、サイトメトリー、qRT-PCR、リアルタイムPCR、PCR、フローサイトメトリー、電気泳動、質量分析、またはそれらの組合せを用いたアッセイなどの方法により決定されうるが、これらに限定されるものではない。さらに、レベルまたは濃度は、臨床表現型に関連付けられうる。分析のために、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法などの免疫組織化学的方法、サイズ排除クロマトグラフィー、密度勾配遠心分離、分画遠心分離、ナノ膜限外濾過、免疫吸着捕獲、アフィニティー精製、マイクロ流体分離、またはそれらの組合せなどの方法により、エキソソームを単離しうる。
【0138】
医薬組成物
対象に投与した時、本明細書に記載の医薬組成物は、修飾mRNAから産生されたタンパク質を提供しうる。医薬組成物は、任意選択的に、1つ以上の追加の治療活性物質を含んでいてもよい。いくつかの実施形態によれば、それを必要とする対象に送達される1つ以上のタンパク質を含む医薬組成物を投与する方法が提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、ヒト対象に投与される。さらなる実施形態では、組成物は、患者である対象に投与される。
【0139】
医薬組成物は、任意選択的に、1つ以上の追加の治療活性物質を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態では、組成物はヒトに投与される。本開示の目的では、「活性成分」という表現は、一般的には、本明細書に記載されるように送達されるmmRNを意味する。
【0140】
本明細書に提供される医薬組成物の説明は、主に、ヒトへの投与に好適な医薬組成物に関するものであるが、当業者であれば、そのような組成物がすべての種類の動物への投与に一般に好適であることは理解されよう。種々の動物への投与に好適な組成物にするための、ヒトへの投与に好適な医薬組成物の改変は、よく理解されており、通常の技能を有する獣医薬理学者であれば、かりに実験を行うとしても通常の実験を行うだけで、そのような改変を設計および/または実施することが可能である。医薬組成物の投与が考えられる対象は、ヒトおよび/もしくは他の霊長動物、哺乳動物(ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス、および/もしくはラットなどの商業関連の哺乳動物を含む)、ならびに/またはトリ(ニワトリ、アヒル、ガチョウ、および/もしくはシチメンチョウなどの商業関連のトリを含む)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0141】
本明細書に記載の医薬組成物の製剤は、薬理学技術分野で公知であるまたは今後開発される任意の方法により調製されうる。一般的には、そのような調製方法は、活性成分を賦形剤および/または1種以上の他の副成分と一体化させる工程と、次いで、必要であればおよび/または望ましければ、造形および/または包装を行って所望の単回または複数回用量ユニットにする工程と、を含む。
【0142】
本発明に係る医薬組成物は、単回単位用量としておよび/または複数の単回単位用量として、大量に、調製、包装、および/または販売を行いうる。本明細書で用いられる場合、「単位用量」とは、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別量のことである。活性成分の量は、一般的には、対象に投与される活性成分の投与量および/またはそのような投与量の便利な部分量たとえばそのような投与量の1/2もしくは1/3に等しい。
【0143】
本発明に係る医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容可能な賦形剤、および/または任意の追加の成分の相対量は、特性、サイズ、および/または治療される対象の病態に依存して、さらには組成物の投与経路に依存して、変化するであろう。例として、組成物は0.1%~100%(w/w)の活性成分を含みうる。
【0144】
医薬製剤は、薬学的に許容可能な賦形剤を追加的に含みうる。この賦形剤は、本明細書で用いられる場合、所望の特定の剤形に適したありとあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、または他の液体媒体、分散助剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固形結合剤、滑沢剤などを含む。レミングトンの薬学の科学と実際(Remington’s The Science and Practice of Pharmacy)、第21版、A.R.ゲナロ(A.R.Gennaro)著(リッピンコット,ウィリアムズ&ウィルキンス(Lippincott,Williams & Wilkins)、メリーランド州ボルチモア(Baltimore,MD)、2006年、参照により本明細書に組み込まれる)には、医薬組成物の製剤化で使用される種々の賦形剤およびその公知の調製技術が開示されている。従来の賦形媒体はいずれも、望ましくない生物学的作用を生じたり、さもなければ、医薬組成物のいずれかの他の成分と有害な形で相互作用したりして、物質またはその誘導体と不適合である場合を除いて、その使用は、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0145】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の純度である。いくつかの実施形態では、賦形剤は、ヒトでの使用および獣医学的使用が認可されている。
【0146】
いくつかの実施形態では、賦形剤は、米国食品医薬品局により認可されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は、医薬グレードである。いくつかの実施形態では、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、および/または国際薬局方の規格を満たす。
【0147】
医薬組成物の製造で使用される薬学的に許容可能な賦形剤は、不活性希釈剤、分散剤および/もしくは顆粒化剤、界面活性剤および/もしくは乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝剤、滑沢剤、ならびに/または油を含むが、これらに限定されるものではない。そのような賦形剤は、任意選択的に、医薬製剤に含まれうる。ココア脂や坐剤ワックスなどの賦形剤、着色剤、コーティング剤、甘味剤、風味剤、および/または香気剤は、配合業者の判断に基づいて、組成物中に存在させることが可能である。
【0148】
例示的な希釈剤は、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウムラクトース、スクロース、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、トウモロコシデンプン、粉末糖など、および/またはそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。
【0149】
例示的な顆粒化および/または分散剤は、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、ナトリウムデンプングリコレート、クレー、アルギン酸、グアーガム、シトラスパルプ、寒天、ベントナイト、セルロースおよび木製品、天然スポンジ、陽イオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニルピロリドン)(クロスポビドン)、ナトリウムカルボキシメチルデンプン(ナトリウムデンプングリコレート)、カルボキシメチルセルロース、架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース(クロスカルメロース)、メチルセルロース、α化デンプン(デンプン1500)、微結晶デンプン、水不溶性デンプン、カルシウムカルボキシメチルセルロース、ケイ酸マグネシウムアルミウニム(ビーガム(Veegum))、ナトリウムラウリルスルフェート、第四級アンモニウム化合物など、および/またはそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。
【0150】
例示的な界面活性剤および/または乳化剤は、天然乳化剤(たとえば、アカシア、寒天、アルギン酸、ナトリウムアルギネート、トラガカント、コンドラックス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ワックス、およびレシチン)、コロイドクレー(たとえば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]およびビーガム(Veegum)(登録商標)[ケイ酸マグネシウムアルミウニム])、長鎖状アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(たとえば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、トリアセチンモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、グリセリルモノステアレート、およびプロピレングリコールモノステアレート、ポリビニルアルコール)、カルボマー(たとえば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、およびカルボキシビニルポリマー)、カラゲナン、セルロース系誘導体(たとえば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(たとえば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート[トゥイーン(TWEEN)(登録商標)20]、ポリオキシエチレンソルビタン[トゥイーン(TWEEN)(登録商標)60]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート[トゥイーン(TWEEN)(登録商標)80]、ソルビタンモノパルミテート[スパン(SPAN)(登録商標)40]、ソルビタンモノステアレート[スパン(SPAN)(登録商標)60]、ソルビタントリステアレート[スパン(SPAN)(登録商標)65]、グリセリルモノオレエート、ソルビタンモノオレエート[スパン(SPAN)(登録商標)80])、ポリオキシエチレンエステル(たとえば、ポリオキシエチレンモノステアレート[ミルジ(MYRJ)(登録商標)45]、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレート、およびソルトール(SOLUTOL)(登録商標))、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(たとえば、クレモフォア(CREMOPHOR)(登録商標))、ポリオキシエチレンエーテル(たとえば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[ブリッジ(BRIJ)(登録商標)30])、ポリ(ビニルピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、ナトリウムオレエート、カリウムオレエート、エチルオレエート、オレイン酸、エチルラウレート、ナトリウムラウリルスルフェート、プルロニック(登録商標)F68、ポロキサマー(POLOXAMER)(登録商標)188、セトリモニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ドクセートナトリウムなど、および/またはそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。
【0151】
例示的な結合剤は、デンプン(たとえば、トウモロコシデンプンおよびデンプン糊)、ゼラチン、糖(たとえば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトール)、天然および合成のガム(たとえば、アカシア、ナトリウムアルギネート、トチャカ抽出物、パンワール(panwar)ガム、ガティガム、イサポール(isapol)皮粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、セルロースアセテート、ポリ(ビニルピロリドン)、ケイ酸マグネシウムアルミウニム(ビーガム(Veegum)(登録商標))、およびカラマツアラボガラクタン)、アルギネート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、無機カルシウム塩、ケイ酸、ポリメタクリレート、ワックス、水、アルコールなど、ならびにそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。
【0152】
例示的な保存剤は、抗酸化剤、キレート化剤、抗微生物保存剤、抗菌類保存剤、アルコール保存剤、酸性保存剤、および/または他の保存剤を含むが、これらに限定されるものではない。例示的な抗酸化剤は、αトコフェロール、アスコルビン酸、アコルビル(acorbyl)パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、プロピルガレート、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および/または亜硫酸ナトリウムを含むが、これらに限定されるものではない。例示的なキレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、ジナトリウムエデテート、ジカリウムエデテート、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、ナトリウムエデテート、酒石酸、および/またはトリナトリウムエデテートを含む。例示的な抗微生物保存剤は、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、セチルピリジニウムクロリド、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミドウレア、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、および/またはチメロサールを含むが、これらに限定されるものではない。例示的な抗菌類性保存剤は、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、カリウムベンゾエート、カリウムソルベート、ナトリウムベンゾエート、ナトリウムプロピオネート、および/またはソルビン酸を含むが、これらに限定されるものではない。例示的なアルコール保存剤は、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシベンゾエート、および/またはフェニルエチルアルコールを含むが、これらに限定されるものではない。例示的な酸性保存剤は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、および/またはフィチン酸を含むが、これらに限定されるものではない。他の保存剤は、トコフェロール、トコフェロールアセテート、デテロキシム(deteroxime)メシレート、セトリミド、ブチル化、ヒドロキシアニソール(BHA)ブチル化する、ヒドロキシトルエン化(BHT)エチレンジアミン、ナトリウムラウリルスルフェート(SLS)、ナトリウムラウリルエーテルスルフェート(SLES)、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、グライダント(GLYDANT)+(登録商標)、フェノニップ(PHENONIP)(登録商標)、メチルパラベン、ジェルマール(GERMALL)(登録商標)115、ゲルマベン(GERMABEN)(登録商標)II、ネオロン(NEOLONE)(登録商標)、ケーソン(KATHON)(登録商標)、および/またはオイクシール(EUXYL)(登録商標)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0153】
例示的な緩衝剤は、クエン酸緩衝溶液、酢酸緩衝溶液、リン酸緩衝溶液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、カルシウムグルコネート、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、第二リン酸カルシウム、リン酸、第三リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、リン酸一水素カリウム、第一リン酸カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、第一リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、発熱原非含有水、等張生理食塩水、リンゲル液、エチルアルコールなど、および/またはそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。
【0154】
例示的な滑沢剤は、マグネシウムステアレート、カルシウムステアレート、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、グリセリルベハネート(behanate)、水素化植物性油、ポリエチレングリコール、ナトリウムベンゾエート、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、マグネシウムラウリルスルフェート、ナトリウムラウリルスルフェートなど、およびそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。
【0155】
例示的な油は、アーモンド油、キョウニン油、アボカド油、ババス油、ベルガモット油、クロフサスグリ油、ボラージ油、カデ油、カモミール油、カノーラ油、キャラウェー油、カルナウバ油、カスター油、シナモン油、ココア脂油、ヤシ油、タラ肝油、コーヒー油、トウモロコシ油、綿実油、エミュー油、ユーカリ油、マツヨイグサ油、魚油、アマニ油、ゲラニオール油、ヒョウタン油、ブドウ種子油、ハシバミ油、ヒソップ油、イソプロピルミリステート、ホホバ油、ククイナッツ油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、アオモジ油、マカデミアナッツ(macademia nut)油、ゼニアオイ油、マンゴー種子油、メドウフォーム種子油、ミンク油、ナツメグ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラフィー油、パーム油、パーム核油、トウニン油、ラッカセイ油、ケシの実油、カボチャ種子油、ナタネ油、コメヌカ油、ローズマリー油、サフラワー油、ビャクダン油、サスクアナ(sasquana)油、セイボリー油、シーバックソーン油、ゴマ油、シアバター、シリコーン、ダイズ油、ヒマワリ油、ティーツリー油、アザミ油、ツバキ油、ベチベル油、クルミ油、およびコムギ胚芽油を含むが、これらに限定されるものではない。例示的な油は、ブチルステアレート、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、ジエチルセバケート、ジメチコン360、イソプロピルミリステート、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、および/またはそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。
【0156】
経口投与および非経口投与に供される液体投与製剤は、薬学的に許容可能なエマルジョン剤、マイクロエマルジョン剤、溶液剤、サスペンジョン剤、シロップ剤、および/またはエリキシル剤を含むが、これらに限定されるものではない。活性成分のほかに、液体投与製剤は、当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、たとえば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、たとえば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特定的には、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコ油シ、胚芽油、オリーブ油、カスター油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物などを含みうる。不活性希釈剤以外に、経口組成物は、補助剤、たとえば、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、風味剤、および/または香気剤を含みうる。非経口投与に供される特定の実施形態では、組成物は、可溶化剤、たとえば、クレモフォア(Cremophor)(登録商標)、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、および/またはそれらの組合せと混合される。
【0157】
医薬剤の製剤化および/または製造の一般的要件は、たとえば、レミングトン:薬学の科学と実際(Remington:The Science and Practice
of Pharmacy)、第21版、リッピンコット ウィリアムズ&ウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)、2005年(参照により本明細書に組み込まれる)に見いだしうる。
【0158】
活性成分の効果を延長するために、多くの場合、皮下注射または筋肉内注射から活性成分の吸収を遅らせることは望ましい。これは、水への溶解度が悪い結晶性材料またはアモルファス材料の液体サスペンジョンを用いることにより、達成可能である。その場合、薬剤の吸収速度は、その溶解速度に依存し、これは、結果的に、結晶サイズおよび結晶形に依存する。他の選択肢として、非経口投与薬剤形態の吸収遅延は、油媒体中に薬剤を溶解または懸濁させることにより、達成される。注射用デポ剤形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に薬剤のマイクロカプセマトリックスを形成することにより、作製される。薬剤とポリマーとの比および利用される特定のポリマーの性質に依存して、薬剤放出の速度を制御することが可能である。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(アンヒドリド)を含む。デポ注射用製剤は、体内組織と適合性があるリポソーム中またはマイクロエマルジョン中に薬剤を閉じ込めることにより、調製される。
【0159】
直腸投与または膣投与に供される組成物は、典型的には、周囲温度では固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸内または膣腔内では融解して活性成分を放出する、ココア脂、ポリエチレングリコール、坐剤ワックスなどの好適な非刺激性賦形剤と、組成物を、混合することにより調製可能な坐剤である。経口投与に供される固体製剤は、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤、および顆粒剤を含む。そのような固体製剤では、活性成分は、少なくとも1つの不活性な薬学的に許容可能な賦形剤、たとえば、ナトリウムシトレートまたはリン酸二カルシウムおよび/または充填剤または増量剤(たとえば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸)、結合剤(たとえば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシア)、湿潤剤(たとえば、グリセロール)、崩壊剤(たとえば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム)、溶解遅延剤(たとえば、パラフィン)、吸収促進剤(たとえば、第四級アンモニウム化合物)、湿潤剤(たとえば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート)、吸収剤(たとえば、カオリンおよびベントナイトクレー)、および滑沢剤(たとえば、タルク、スカルシウムステアレート、マグネシウムステアレート、固体ポリエチレングリコール、ナトリウムラウリルスルフェート)、あるいはそれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、製剤は、緩衝剤を含みうる。
【0160】
ラクトースや乳糖さらには高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、軟質および硬質の充填ゼラチンカプセル中の充填剤として、類似のタイプの固体組成物を利用することが可能である。錠剤、糖衣剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティングや医薬製剤化技術で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて作製可能である。それらは、任意選択的に、不透明化剤を含んでいてもよく、かつ任意選択的に、遅延方式で、活性成分のみを放出するかまたは腸管の特定部分で優先的に放出する組成物でありうる。使用可能な埋込み組成物の例は、高分子物質およびワックスを含む。ラクトースや乳糖さらには高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、軟質および硬質の充填ゼラチンカプセル中の充填剤として、類似のタイプの固体組成物を利用することが可能である。
【0161】
組成物の外用投与および/または経真皮投与に供される製剤は、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、粉末剤、溶液剤、スプレー剤、吸入剤、および/または貼付剤を含みうる。一般的には、活性成分は、必要に応じて、薬学的に許容可能な賦形剤および/または任意の所要の保存剤および/または緩衝剤と無菌条件下で混合される。外用投与可能な製剤は、たとえば、約1%~約10%(w/w)の活性成分を含みうるが、活性成分の濃度は、溶媒中への活性成分の溶解度限界程度に高くしうる。外用投与に供される製剤は、本明細書に記載の1つ以上の追加の成分をさらに含みうる。
【0162】
医薬組成物は、頬側口腔を介する肺内投与に好適な製剤の形態で、調製、包装、および/または販売を行いうる。そのような製剤は、活性成分を含むかつ約0.5nm~約7nmまたは約1nm~約6nmの範囲内の直径を有する乾燥粒子を含みうる。そのような組成物は、好適には、粉末を分散するように噴射剤ストリームを方向付けることが可能な乾燥粉末貯蔵部を含む用具を用いて、ならびに/または密封容器内で低沸点噴射剤中に溶解および/もしくは懸濁された活性成分を含む用具などの自己噴射型溶媒/粉末分配容器を用いて、投与に供される乾燥粉末の形態をとる。そのような粉末剤は、重量基準で粒子の少なくとも98%が0.5nm超の直径を有する、かつ数基準で粒子の少なくとも95%が7nm未満の直径を有する、粒子を含む。他の選択肢として、重量基準で粒子の少なくとも95%は、1nm超の直径を有し、かつ数基準で粒子の少なくとも90%は、6nm未満の直径を有する。乾燥粉末組成物は、糖などの固体微粉末希釈剤を含んでいてもよく、ユニット製剤で適宜提供される。
【0163】
低沸点噴射剤は、一般的には、大気圧で18.3℃(65°F)未満の沸点を有する液体噴射剤を含む。一般的には、噴射剤は、組成物の50%~約99.9%(w/w)を構成可能であり、活性成分は、組成物の0.1%~約20%(w/w)を構成可能である。噴射剤はさらに、液体非イオン性界面活性剤および/または固体陰イオン性界面活性剤および/または固体希釈剤などの追加の成分(これは、活性成分を含む粒子と同程度の粒子サイズを有しうる)を含みうる。
【0164】
肺内送達に供すべく製剤化される医薬組成物は、溶液および/またはサスペンジョンのドロップレットの形態で活性成分を提供可能である。そのような製剤は、活性成分を含む、水性および/または希釈アルコール性の溶液剤および/またはサスペンジョン剤(任意選択的に無菌のもの)として、調製、包装、および/または販売を行うことが可能であり、任意のネブライゼーション用具および/またはアトマイゼーション用具を用いて適宜投与可能である。そのような製剤はさらに、サッカリンナトリウムなどの風味剤、揮発性油、緩衝剤、界面活性剤、および/またはメチルヒドロキシベンゾエートなどの保存剤を含む1つ以上の追加の成分を含みうるが、これらに限定されるものではない。この投与経路により提供されるドロップレットは、約0.1nm~約200nmの範囲内の平均直径を有しうる。
【0165】
肺内送達に有用である本明細書で説明した製剤は、医薬組成物の鼻腔内送達に有用である。鼻腔内投与に好適な他の製剤は、活性成分を含むかつ約0.2μm~500μmの平均粒子を有する粗粉末剤である。そのような製剤は、鼻呼吸する方法で、すなわち、鼻の近くに保持された粉末剤の容器から鼻道を介して迅速な吸入を行うことにより、投与される。
【0166】
経鼻投与に好適な製剤は、たとえば、約0.1%(w/w)程度の少量および100%(w/w)程度の大量の活性成分を含みうる。また、本明細書に記載の1つ以上の追加の成分を含みうる。医薬組成物は、頬腔内投与に好適な製剤の形態で、調製、包装、および/または販売を行いうる。そのような製剤は、たとえば、従来の方法を用いて作製される錠剤および/またはロゼンジ剤の形態をとることが可能であり、かつたとえば、0.1%~20%(w/w)の活性成分で、残分は、経口的に可溶性および/または分解性の組成物、任意選択的に、本明細書に記載の1つ以上の追加の成分でありうる。他の選択肢として、頬腔内投与に好適な製剤は、活性成分を含む粉末剤ならびに/またはエアロゾル化および/もしくはアトマイズ化溶液剤および/もしくはサスペンジョン剤を含みうる。そのような粉末状、エアロゾル化、および/またはエアロゾル化製剤は、分散時、約0.1nm~約200nmの範囲内の平均粒子サイズおよび/または平均ドロップレットサイズを有しうる。またさらに、本明細書に記載の1つ以上の任意の追加の成分を含みうる。
【0167】
医薬組成物の性質
本明細書に記載の医薬組成物は、以下の性質の1つ以上により特徴付け可能である。
生物学的利用能
mmRNA分子は、本明細書に記載の送達剤を含む組成物の形態に製剤化された場合、本明細書に記載の送達剤が欠如している組成物と比較して、生物学的利用能の増大を呈することが可能である。本明細書で用いられる場合、「生物学的利用能」という用語は、哺乳動物に投与されたmmRNA分子の所与の量の全身的利用能を意味する。生物学的利用能は、哺乳動物への化合物の投与後、変化していない形態の化合物の曲線下面積(AUC)または血清中もしくは血漿中の最大濃度(Cmax)を測定することにより、評価可能である。AUCは、横座標(X軸)に沿った時間に対して縦座標(Y軸)に沿った化合物の血清中または血漿中濃度をプロットした曲線の下側の面積の決定値である。一般的には、特定の化合物のAUCは、当業者に公知であるかつG.S.バンカー(G.S.Banker)著、現代の医薬品、薬剤、および薬学(Modern Pharmaceutics,Drugs and the Pharmaceutical Sciences)、第72巻、マーセル・デッカー社,ニューヨーク(Marcel Dekker,New York,Inc.)、1996年(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている方法を用いて、計算可能である。
【0168】
max値は、哺乳動物への化合物の投与後、哺乳動物の血清中または血漿中で達成される化合物の最大濃度である。特定の化合物のCmax値は、当業者に公知の方法を用いて測定可能である。「生物学的利用能の増大」または「薬動学的挙動の改善」という表現は、本明細書で用いられる場合、本明細書に記載の送達剤と共投与された場合、哺乳動物においてAUC、Cmax、またはCminとして測定される第1のmmRNA分子の全身的利用能が、そのような共投与が行われない場合よりも大きいことを意味する。いくつかの実施形態では、mmRNA分子の生物学的利用能は、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%増大可能である。
【0169】
治療ウィンドウ
mmRNA分子は、本明細書に記載の組成物の形態に製剤化された場合、本明細書に記載の送達剤が欠如して投与されたmmRNA分子組成物の治療ウィンドウと比較して、投与されたmmRNA分子組成物の治療ウィンドウの増大を呈しうる。本明細書で用いられる場合、「治療ウィンドウ」とは、作用部位における治療活性物質の血漿中濃度の範囲またはレベルの範囲であって、治療効果を誘発する可能性の高い濃度範囲またはレベル範囲を意味する。いくつかの実施形態では、mmRNA分子の治療ウィンドウは、本明細書に記載の送達剤と共投与された場合、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%増大可能である。
【0170】
分布容積
mmRNA分子は、本明細書に記載の組成物の形態に製剤化された場合、改善された分布容積(Vdist)を呈しうる。分布容積(Vdist)は、体内の薬剤の量を、血中または血漿中の薬剤の濃度に関連付ける。本明細書で用いられる場合、「分布容積」という用語は、体内の薬剤の全量を血液中または血漿中と同一の濃度で含有するのに必要とされるであろう流体体積を意味する。すなわち、Vdistは、体内の薬剤量/血液中または血漿中の薬剤濃度、に等しい。たとえば、用量10mgおよび血漿中濃度10mg/Lでは、分布容積は1リットルである。分布容積は、薬剤が血管外組織内に存在する程度を反映する。大きい分布容積は、血漿タンパク質結合と比較して組織成分に結合する化合物の傾向を反映する。臨床現場では、Vdistは、定常状態の濃度を達成する負荷用量を決定するために使用可能である。いくつかの実施形態では、mmRNA分子の分布容積は、本明細書に記載の送達剤と共投与した場合、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%低減可能である。
【0171】
複数回投与のための装置および方法
複数回投与のための方法および装置は、本明細書に教示される分割投与レジメンに従って本発明に係るmmRNAを送達するために利用されうる。そのような方法および装置は、以下に記載される。
【0172】
細胞、器官、および組織への複数回投与のための当技術分野で公知の方法および装置は、本発明の実施形態として本明細書に開示される方法および組成物と組み合わせて使用可能であると考えられる。これらは、たとえば、複数の針を有する方法および装置、ルーメンやカテーテルなどを利用したハイブリッド装置、さらには熱、電流、または放射線により駆動される機構を利用した装置を含む。
【0173】
本発明によれば、これらの複数回投与装置は、本明細書で想定されている分割用量を送達するために利用されうる。
本明細書に記載の真皮内医薬組成物送達で使用するための好適な用具は、短針用具、たとえば、米国特許第4,886,499号明細書、同第5,190,521号明細書、同第5,328,483号明細書、同第5,527,288号明細書、同第4,270,537号明細書、同第5,015,235号明細書、同第5,141,496号明細書、および同第5,417,662号明細書に記載されるものを含む。真皮内組成物は、皮膚中への針の有効進入長さを制限する用具により、たとえば、PCT国際公開第99/34850号に記載されるものおよびその機能的等価物により、投与可能である。液体ジェット注射器を介して、および/または角質層に突刺して真皮に達するジェットを生成する針を介して、真皮に液体組成物を送達するジェット式注射用具は、好適である。ジェット式注射用具は、たとえば、米国特許第5,480,381号明細書、同第5,599,302号明細書、同第5,334,144号明細書、同第5,993,412号明細書、同第5,649,912号明細書、同第5,569,189号明細書、同第5,704,911号明細書、同第5,383,851号明細書、同第5,893,397号明細書、同第5,466,220号明細書、同第5,339,163号明細書、同第5,312,335号明細書、同第5,503,627号明細書、同第5,064,413号明細書、同第5,520,639号明細書、同第4,596,556号明細書、同第4,790,824号明細書、同第4,941,880号明細書、同第4,940,460号明細書、ならびにPCT国際公開第97/37705号およびPCT国際公開第97/13537号に記載されている。皮膚の外層を介して真皮に粉末形態のワクチンを加速すべく圧縮ガスを使用するバリスティック粉末/粒子送達用具は、好適である。他の選択肢としてまたは追加として、従来の注射器を真皮内投与の古典的マントー法で使用してもよい。
【0174】
固形組織に治療剤を送達する方法は、バーラミ(Bahrami)らにより記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20110230839号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。バーラミ(Bahrami)によれば、一連の針が、各針の長さに沿って前記固形組織中の任意の位置に実質的に等しい量の流体を送達する装置中に組み込まれる。
【0175】
生体組織を通って生物学的物質を送達するための装置は、コジュレ(Kodgule)らにより記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20110172610号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。コジュレ(Kodgule)によれば、1種以上の金属で作製されたかつ約200マイクロメートル(ミクロン)~約350マイクロメートル(ミクロン)の外径および少なくとも100マイクロメートル(ミクロン)の長さを有する複数の中空極微針が、ペプチド、タンパク質、炭水化物、核酸分子、脂質、および他の医薬活性成分、またはそれらの組合せを送達する装置中に組み込まれる。
【0176】
組織に治療剤を送達するための送達プローブは、ガンデー(Gunday)らにより記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20110270184号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ガンデー(Gunday)によれば、複数の針が、装着されたカプセル剤を活性化位置と不活性化位置との間で移動させて針を介してカプセル剤から作用剤を押し出す装置中に組み込まれる。
【0177】
頻回注射用医療器具は、アッサフ(Assaf)により記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20110218497号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。アッサフ(Assaf)によれば、複数の針が、前記針の1つ以上に接続されたチャンバーと、各注射後、チャンバーに医用流体を連続的に再充填するための手段と、を有する装置中に組み込まれる。
【0178】
患者の身体、特定的には、陰茎勃起刺激系に物質を注射するために少なくとも部分的には留置可能なシステムは、フォーセル(Forsell)により記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20110196198号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。フォーセル(Forsell)によれば、複数の針が、患者の左右陰核海綿体に隣接する1つ以上のハウジングと共に留置される装置中に組み込まれる。貯蔵部およびポンプもまた、針を介して薬剤を供給するために留置される。
【0179】
治療有効量の鉄を経真皮送達するための方法は、ベレンソン(Berenson)により記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20100130910号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ベレンソン(Berenson)によれば、イオン泳動パッチ上のイオン鉄の経真皮送達を増強するために、角質層中に複数のマイクロチャネルを形成する複数の針が使用されうる。
【0180】
生体組織を通って生物学的物質を送達するための方法は、コジュレ(Kodgule)らにより記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20110196308号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。コジュレ(Kodgule)によれば、治療活性成分を含有する複数の生分解性極微針が、タンパク質、炭水化物、核酸分子、脂質、および他の医薬活性成分、またはそれらの組合せを送達する装置中に組み込まれる。
【0181】
ボツリヌス毒素組成物を含む経真皮パッチは、ドノバン(Donovan)により記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20080220020号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))に教示されている。ドノバン(Donovan)によれば、複数の針が、血管を破壊せずに皮膚の角質層を通って突出する前記針を介してボツリヌス毒素を角質層下に送達するパッチ中に組み込まれる。
【0182】
極低温処理の位置に活性剤を投与するためのクライオプローブは、トウビア(Toubia)により記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20080140061号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。トウビア(Toubia)によれば、複数の針が、チャンバー内に活性剤を収容して作用剤を組織に投与するプローブ中に組み込まれる。
【0183】
炎症を治療もしくは予防するまたは正常関節を促進する方法は、ストック(Stock)らにより記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20090155186号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ストック(Stock)によれば、複数の針が、シグナル伝達モジュレーター化合物を含有する組成物を投与する装置中に組み込まれる。
【0184】
多部位注射システムは、キンメル(Kimmell)らにより記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20100256594号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。キンメル(Kimmell)によれば、複数の針が、針を介して医薬を角質層中に送達する装置中に組み込まれる。
【0185】
インターフェロンを真皮内区画に送達する方法は、デッカー(Dekker)らにより記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20050181033号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。デッカー(Dekker)によれば、0~1mmの露出高さの出口部を有する複数の針が、物質を0.3mm~2mmの深さに送達することにより薬動学的挙動および生物学的利用能を改善する装置中に組み込まれる。
【0186】
遺伝子、酵素、および生物学的作用剤を組織細胞に送達する方法は、デサイ(Desai)により記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20030073908号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。デサイ(Desai)によれば、複数の針が、身体中に挿入されて前記針を介して医用流体を送達する装置中に組み込まれる。
【0187】
線維芽細胞で心不整脈を治療するための方法は、リー(Lee)らにより記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20040005295号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。リー(Lee)によれば、複数の針が、線維芽細胞を組織の局所領域内に送達する装置中に組み込まれる。
【0188】
脳腫瘍を処理するための磁気制御ポンプを用いた方法は、シャカル(Shachar)らにより記載されており、たとえば、米国特許第7,799,012号明細書(方法)および同第7,799,016号明細書(装置)(それらの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。シャカル(Shachar)によれば、複数の針が、針を介して医薬剤を制御速度で押し出すポンプ中に組み込まれる。
【0189】
哺乳動物雌において膀胱の機能障害を治療する方法は、ベルシ(Versi)らにより記載されており、たとえば、米国特許第8,029,496号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ベルシ(Versi)によれば、一連の極微針が、針を介して治療剤を膀胱三角中に直接送達する装置中に組み込まれる。
【0190】
極微針経真皮輸送装置は、エンジョル(Angel)らにより記載されており、たとえば、米国特許第7,364,568号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。エンジョル(Angel)によれば、複数の針が、異なる方向から表面中に挿入される針を介して身体表面中に物質を輸送する装置中に組み込まれる。
【0191】
皮下注入するための装置は、ダルトン(Dalton)らにより記載されており、たとえば、米国特許第7,150,726号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ダルトン(Dalton)によれば、複数の針が、針を介して流体を皮下組織中に送達する装置中に組み込まれる。
【0192】
マイクロカニューレを介してワクチンおよび遺伝子治療剤を皮内送達するための装置および方法は、ミクスズタ(Mikszta)らにより記載されており、たとえば、米国特許第7,473,247号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ミツスズタ(Mitszta)によれば、少なくとも1つの中空極微針が、対象の皮膚に0.025mm~2mmの深さでワクチンを送達する装置中に組み込まれる。
【0193】
インスリンを送達する方法は、ペティス(Pettis)らにより記載されており、たとえば、米国特許第7,722,595号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ペティス(Pettis)によれば、2つの針が、本質的に同時に両方の針を皮膚中に挿入して第1の針では2.5mm未満の深さで真皮内区画にインスリンを送達しかつ第2の針では2.5mm超かつ5.0mm未満の深さで皮下区画にインスリンを送達する装置中に組み込まれる。
【0194】
吸引下での皮膚注射送達は、コチャンバ(Kochamba)らにより記載されており、たとえば、米国特許第6,896,666号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。コチャンバ(Kochamba)によれば、互いに相対的に隣接した複数の針が、流体を皮膚層下に注射する装置中に組み込まれる。
【0195】
皮膚に通して物質を吸引または送達する装置は、ダウン(Down)らにより記載されており、たとえば、米国特許第6,607,513号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ダウン(Down)によれば、装置中に組み込まれる複数の皮膚透過部材は、約100マイクロメートル(ミクロン)~約2000マイクロメートル(ミクロン)の長さを有し、かつ約30~50ゲージである。
【0196】
物質を皮膚に送達するための装置は、パルマー(Palmer)らにより記載されており、たとえば、米国特許第6,537,242号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。パルマー(Palmer)によれば、一連の極微針が、皮膚と針との接触を増強しかつ物質のより均一な送達を提供するために伸張アセンブリーを使用する装置中に組み込まれる。
【0197】
局所薬剤送達用の灌流装置は、ザモイスキー(Zamoyski)により記載されており、たとえば、米国特許第6,468,247号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ザモイスキー(Zamoyski)によれば、複数の皮下注射針が、皮下注射液が吸い込まれる組織中に皮下注射液の内容物を注射する装置中に組み込まれる。
【0198】
極微針とヒト皮膚との間の相互作用を改善することによる組織を通る薬剤および生物学的分子の輸送を向上させる方法は、プラウスニッツ(Prausnitz)らにより記載されており、たとえば、米国特許第6,743,211号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。プラウスニッツ(Prausnitz)によれば、複数の極微針が、極微針が適用される、より高剛性かつより低変形性の表面を提示可能である装置中に組み込まれる。
【0199】
医薬剤を器官内投与するための装置は、ティング(Ting)らにより記載されており、たとえば、米国特許第6,077,251号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ティング(Ting)によれば、投与の向上のために側方開口を有する複数の針が、針チャンバーからのおよびその中への前記針の伸張および引込みにより医薬剤を貯蔵部から前記針中に押し出して前記医薬剤を標的器官中に注射する装置中に組み込まれる。
【0200】
マルチ持針器および皮下マルチチャネル注入口は、ブラウン(Brown)により記載されており、たとえば、米国特許第4,695,273号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ブラウン(Brown)によれば、持針器上の複数の針が、注入口の隔壁に通して挿入され、前記注入口の隔離室と連通する。
【0201】
デュアル皮下注射器は、ホーン(Horn)により記載されており、たとえば、米国特許第3,552,394号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ホーン(Horn)によれば、装置中に組み込まれる2つの針は、68mm未満離間しており、異なる形式および長さをとりうるので、異なる深さへの注入が可能である。
【0202】
複数の針および複数の流体区画を備えたシリンジは、ハーシュベルグ(Hershberg)により記載されており、たとえば、米国特許第3,572,336号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ハーシュベルグ(Hershberg)によれば、複数の針は、複数の流体区画を有するかつ1回の注射では混合不可能な不適合薬剤を同時に投与可能であるシリンジ中に組み込まれる。
【0203】
流体の皮内注射用の外科用装置は、エリスク(Eliscu)らにより記載されており、たとえば、米国特許第2,588,623号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。エリスク(Eliscu)によれば、複数の針が、流体をより広く分散させて皮内に注射する装置中に組み込まれる。
【0204】
物質を複数の乳管に同時送達するための装置は、ハング(Hung)により記載されており、たとえば、欧州特許第1818017号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ハング(Hung)によれば、複数のルーメンが、腺管網の開口を介して挿入して流体を腺管網に送達する装置中に組み込まれる。
【0205】
医薬剤を心臓または他の器官の組織に導入するためのカテーテルは、ツケブチャバ(Tkebuchava)により記載されており、たとえば、国際公開第2006138109号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ツケブチャバ(Tkebuchava)によれば、平坦軌道で器官壁に進入する2つの湾曲針が組み込まれる。
【0206】
医薬剤を送達するための装置は、マッケイ(Mckay)らにより記載されており、たとえば、国際公開第2006118804号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。マッケイ(Mckay)によれば、各針上に複数の開口を備えた複数の針が、脊椎円板の内側円板空間などの組織への局所送達を促進する装置中に組み込まれる。
【0207】
哺乳動物皮膚中の真皮内空間内に免疫調節物質を直接送達する方法は、ペティス(Pettis)により記載されており、たとえば、国際公開第2004020014号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ペティス(Pettis)によれば、複数の針が、針を介して0.3mm~2mmの深さに物質を送達する装置中に組み込まれる。
【0208】
全身的吸収および薬動学的挙動の改善のために物質を皮膚中の少なくとも2つの区画中に投与するための方法およびデバイスは、ペティス(Pettis)らにより記載されており、たとえば、国際公開第2003094995号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ペティス(Pettis)によれば、約300mm~約5mmの長さを有する複数の針が、真皮内区画および皮下組織区画に同時に送達する装置中に組み込まれる。
【0209】
針および回転体を備えた薬剤送達デバイスは、ジマーマン(Zimmerman)らにより記載されており、たとえば、国際公開第2012006259号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ジマーマン(Zimmerman)によれば、回転体中に定置された複数の中空針が、回転体が回転するとともに針を介して貯蔵部の内容物を送達する装置中に組み込まれる。
【0210】
カテーテルおよび/またはルーメンを利用した方法および装置
カテーテルおよびルーメンを用いた方法および装置は、分割投与スケジュールで本発明に係るmmRNAを投与するために利用されうる。そのような方法および装置は、以下に記載される。
【0211】
損傷心臓の心筋への骨格筋芽細胞のカテーテル利用送達は、ヤコビー(Jacoby)らにより記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20060263338号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ヤコビー(Jacoby)によれば、複数の針が、血管内に少なくとも一部が挿入されて針を介して細胞組成物を対象の心臓の局所領域中に送達する装置中に組み込まれる。
【0212】
神経毒を用いて喘息を治療するための装置は、ディーム(Deem)らにより記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20060225742号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ディーム(Deem)によれば、複数の針が、針を介して神経毒を気管支組織内に送達する装置中に組み込まれる。
【0213】
多成分治療を施す方法は、ナヤック(Nayak)により記載されており、たとえば、米国特許第7,699,803号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ナヤック(Nayak)によれば、頻回注射カニューレが、組織内に治療物質が送達される深さを制御するために深さスロットが含まれていてもよい装置中に組み込まれる。
【0214】
チャネルを除去形成して組織の所望の領域中に少なくとも1種の治療剤を送達するための外科装置は、マッキンタイル(Mclntyre)らにより記載されており、たとえば、米国特許第8,012,096号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。マッキンタイル(Mclntyre)によれば、複数の針が、チャネルの周囲の組織領域中に治療剤を分配するかつ経心筋血行再建手術にとくに好適である装置中に組み込まれる。
【0215】
哺乳動物雌において膀胱の機能障害を治療する方法は、ベルシ(Versi)らにより記載されており、たとえば、米国特許第8,029,496号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ベルシ(Versi)によれば、一連の極微針が、針を介して治療剤を膀胱三角中に直接送達する装置中に組み込まれる。
【0216】
可撓性生体内関門中に流体を送達する装置および方法は、イエシュラン(Yeshurun)らにより記載されており、たとえば、米国特許第7,998,119号明細書(装置)および同第8,007,466号明細書(方法)(それらの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。イエシュラン(Yeshurun)によれば、装置上の極微針が、可撓性生体内関門を貫通して延在し、流体が、中空極微針の孔を介して注射される。
【0217】
心外膜表面を有するかつ胴体内に位置する心臓の組織領域に物質を心外膜注射する方法は、ボナー(Bonner)らにより記載されており、たとえば、米国特許第7,628,780号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ボナー(Bonner)によれば、装置は、細長いシャフトと、針を組織中に押し込んで針を介して医薬剤を組織内に注射するための遠位注入頭と、を有する。
【0218】
穿刺を塞ぐための装置は、ニールセン(Nielsen)らにより記載されており、たとえば、米国特許第7,972,358号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ニールセン(Nielsen)によれば、複数の針が、閉塞剤を穿刺管の周囲の組織中に送達する装置中に組み込まれる。
【0219】
筋形成および血管新生のための方法は、チュー(Chiu)らにより記載されており、たとえば、米国特許第6,551,338号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。チュー(Chiu)によれば、少なくとも1.25mmの最大直径および6~20mmの穿刺深さを提供するのに有効な長さを有する5~15個の針が、心筋の近位に挿入して前記針の少なくとも一部内に存在する導管を介して外因性の血管新生因子または筋原性因子を前記心筋に供給する装置中に組み込まれる。
【0220】
前立腺組織の治療のための方法は、ボルムスジ(Bolmsj)らにより記載されており、たとえば、米国特許第6,524,270号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ボルムスジ(Bolmsj)によれば、尿道に通して挿入されるカテーテルを含む装置は、周囲前立腺組織内に延在可能な少なくとも1つの中空先端を有する。収斂薬および鎮痛薬が、前記先端を介して前記前立腺組織内に投与される。
【0221】
骨内部位に流体を注入する方法は、フィンドレー(Findlay)らにより記載されており、たとえば、米国特許第6,761,726号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。フィンドレー(Findlay)によれば、複数の針が、軟質材料層により覆われた硬質材料シェルを透過可能であるかつ前記硬質材料シェルの下方の所定の距離に流体を送達する装置中に組み込まれる。
【0222】
血管壁に医薬剤を注射するための装置は、ビギル(Vigil)らにより記載されており、たとえば、米国特許第5,713,863号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ビギル(Vigil)によれば、複数の注射器が、マルチルーメンカテーテルを介して医用流体をフレキシブルチューブ中に導入して注入のために前記注射器から血管壁中に導入する装置中の各フレキシブルチューブ上に取り付けられる。
【0223】
生体通路の周囲の組織に治療剤および/または診断剤を送達するためのカテーテルは、ファクソン(Faxon)らにより記載されており、たとえば、米国特許第5,464,395号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ファクソン(Faxon)によれば、少なくとも1つの針カニューレが、カテーテルの外側に突出する前記針を介して所望の作用剤を組織に送達するカテーテル中に組み込まれる。
【0224】
治療剤を送達するためのバルーンカテーテルは、オア(Orr)により記載されており、たとえば、国際公開第2010024871号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。オア(Orr)によれば、複数の針が、治療剤を組織内の異なる深さに送達する装置中に組み込まれる。
【0225】
電流を利用した方法および装置
電流を利用した方法および装置は、本明細書に教示される分割投与レジメンに従って本発明に係るmmRNAを送達するために利用されうる。そのような方法および装置は、以下に記載される。
【0226】
電気的コラーゲン導入治療装置は、マルケス(Marquez)により記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20090137945号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。マルケス(Marquez)によれば、複数の針が、繰り返して皮膚に穿刺して最初に皮膚に適用される物質の一部を皮膚中で吸引する装置中に組み込まれる。
【0227】
動電学的システムは、エサレッジ(Etheredge)らにより記載されており、たとえば、米国特許出願公開第20070185432号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。エサレッジ(Etheredge)によれば、極微針が、針を介して電流により医薬剤を標的治療部位に押し込む装置中に組み込まれる。
【0228】
イオン泳動装置は、マツムラらにより記載されており、たとえば、米国特許第7,437,189号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。マツムラによれば、複数の針が、より高速でまたはより高効率でイオン化性薬剤を生体内に送達可能な装置中に組み込まれる。
【0229】
無針注射および電気穿孔による生物学的活性剤の皮内送達は、ホフマン(Hoffmann)らにより記載されており、たとえば、米国特許第7,171,264号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ホフマン(Hoffmann)によれば、1つ以上の無針注射器が、電気穿孔装置中に組み込まれ、無針注入と電気穿孔とが組み合わされれば、作用剤を皮膚、筋肉、または粘膜の細胞内に導入するのに十分である。
【0230】
電気可透過化媒介細胞内送達のための方法は、ルンドクビスト(Lundkvist)らにより記載されており、たとえば、米国特許第6,625,486号明細書(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。ルンドクビスト(Lundkvist)によれば、一対の針電極が、カテーテル中に組み込まれる。前記カテーテルは、生体ルーメン中に配置され、続いて、前記針電極を伸張させて前記ルーメンの周囲の組織内に透過させる。次いで、装置は、前記針電極の少なくとも1つに作用剤を導入して、前記一対の針電極により電場を印加することにより、前記作用剤が細胞膜を通過して治療部位の細胞内に進入できるようにする。
【0231】
経真皮免疫化のための送達システムは、レビン(Levin)らにより記載されており、たとえば、国際公開第2006003659号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。レビン(Levin)によれば、複合電極が、電極間に電気エネルギーを印加して皮膚中のマイクロチャネルを形成することにより経真皮送達を促進する装置中に組み込まれる。
【0232】
皮膚中にRFエネルギーを送達する方法は、スコマッカー(Schomacker)により記載されており、たとえば、国際公開第2011163264号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。スコマッカー(Schomacker)によれば、複数の針が、真空を適用して皮膚をプレートと接触させることにより針をプレート上の孔に通して皮膚中に挿入しRFエネルギーを送達する装置中に組み込まれる。
【0233】
装置およびキット
装置はまた、本発明と組み合わせて使用されうる。一実施形態では、装置は、修飾mRNAの形態で投与されたタンパク質のレベルを評価するために使用される。装置は、血液、尿、または他の生体流体の試験を含みうる。それは、自動化集中実験プラットフォームまたは小型分散卓上装置を含む程度に大きいものでありうる。それは、ポイントオブケア装置またはハンドヘルド装置でありうる。装置は、コンパニオン診断剤としての創薬への取組みに有用でありうる。
【0234】
いくつかの実施形態では、装置は、内蔵型であり、任意選択的に、無線リモートアクセスにより、産生核酸の合成および/または分析のための説明書を取得することが可能である。装置は、少なくとも1種の核酸、好ましくは、無制限の異なる核酸配列の柔軟性のある合成が可能である。特定の実施形態では、装置は、1人または少人数で輸送が可能である。他の実施形態では、装置は、卓上または机上に収まる大きさである。他の実施形態では、装置は、スーツケース、バックパック、または類似のサイズの物体に収まる大きさである。さらなる実施形態では、装置は、車、トラック、救急車などの乗り物、または戦車、人員運搬車などの軍用車両の中に収まる大きさである。目的のタンパク質をコードする修飾mRNAを産生するのに必要な情報は、装置中に存在するコンピュータ可読媒体内に存在する。
【0235】
いくつかの実施形態では、装置は、核酸配列およびポリペプチド配列のデータベースとの通信(たとえば、無線通信)が可能である。装置は、1つ以上のサンプル容器を挿入するための少なくとも1つのサンプルブロックを含有する。そのようなサンプル容器は、鋳型DNA、ヌクレオチド、酵素、緩衝液、他の試薬などの任意の数の材料を液体または他の形態で収容可能である。サンプル容器はまた、サンプルブロックとの接触により加熱または冷却が可能である。サンプルブロックは、一般的には、少なくとも1つのサンプルブロックに対する1つ以上の電子制御装置を備えた装置基部と通信状態にある。サンプルブロックは、好ましくは、加熱モジュールを含有し、そのような加熱分子は、サンプル容器およびその内容物を約-20C~+100C超の温度に冷却および/または加熱することが可能である。装置基部は、電池や外部電圧電源などの電圧電源と通信状態にある。装置はまた、RNA合成のための材料を貯蔵および分配するための手段をも含有する。
【0236】
任意選択的に、サンプルブロックは、合成核酸を分離するためのモジュールを含有する。他の選択肢として、装置は、サンプルブロックに機能可能に結合された分離モジュールを含有する。好ましくは、装置は、合成核酸を分析するための手段を含有する。そのような分析は、配列同一性(ハイブリダイゼーションなどにより実証される)、望ましくない配列の不在、合成mRNAの完全性の測定(分光測光と組み合わされたマイクロ流体粘度測定などにより)、ならびに修飾RNAの濃度および/または効力(分光測光などにより)を含む。
【0237】
特定の実施形態では、装置は、対象から取得した生体材料中に存在する病原体を検出するための手段、たとえば、微生物同定用のIBIS PLEX-IDシステム(アボット(Abbott))と組み合わされる。
【0238】
本発明は、目的のタンパク質をコードするmmRNAが組み込まれた装置を提供する。この装置は、動物対象中に留置されうるか、またはカテーテルもしくはルーメンを介してmmRNA製剤を供給しうる。装置は、ポンプに接続されるか、またはそれを組み込みうる。そのような装置は、CNSなどの容易に到達できない生体領域にまたは血液脳関門に通して治療剤を送達可能なものを含む。この実施形態では、制御ポンプを用いて分割投与レジメンを実現することが可能である。
【0239】
キット
本発明は、本発明に係る方法を便宜的および/または効果的に行うためのさまざまなキットを提供する。典型的には、キットは、使用者が対象の複数の治療を行えるようにおよび/または複数の実験を行えるように、十分な量および/または数の成分を含むであろう。
【0240】
一態様では、本発明は、翻訳可能領域と核酸修飾とを含む第1の単離された核酸(ただし、この核酸は、第1の単離された核酸が導入されうる細胞の先天性免疫反応を回避可能である)と包装材料と説明書とを含む、タンパク質産生用のキットを提供する。キットは、製剤組成物を形成するために送達剤をさらに含みうる。送達組成物は、リピドイドを含みうる。このリポイドは、C12-200、98N12-5、MD1、DLin-DMA、DLin-K-DMA、DLin-KC2-DMA、DLin-MC3-DMA、およびその類似体から選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0241】
一態様では、本発明は、翻訳可能領域とヌクレオシド修飾とを含む第1の単離された核酸(ただし、この核酸は、細胞ヌクレアーゼによる分解の低減を呈する)と包装材料と説明書とを含む、タンパク質産生用のキットを提供する。
【0242】
一態様では、本発明は、翻訳可能領域と少なくとも2つの異なるヌクレオシド修飾とを含む第1の単離された核酸(ただし、この核酸は、細胞ヌクレアーゼによる分解の低減を呈する)と包装材料と説明書とを含む、タンパク質産生用のキットを提供する。
【0243】
いくつかの実施形態では、キットは、キットのmmRNAの分割投与を施すための分割用量または説明書を提供するであろう。
定義
本明細書中の種々の箇所で、本開示に係る化合物の置換基は、群または範囲で開示される。本開示は、そのような群および範囲のメンバーのあらゆる個別の部分的組合せを含むことがとくに意図されている。たとえば、「C1~6アルキル」という用語は、メチル、エチル、Cアルキル、Cアルキル、Cアルキル、およびCアルキルを個別に開示することがとくに意図されている。
【0244】
動物: 本明細書で用いられる場合、「動物」という用語は、動物界の任意のメンバーを意味する。いくつかの実施形態では、「動物」は、任意の発生段階のヒトを意味する。いくつかの実施形態では、「動物」は、任意の発生段階の非ヒト動物を意味する。特定の実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物(たとえば、齧歯動物、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長動物、またはブタ)である。いくつかの実施形態では、動物は、哺乳動物、トリ、爬虫動物、両生動物、魚、および虫を含むが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子工学操作動物、またはクローンである。
【0245】
およそ: 本明細書で用いられる場合、「およそ」または「約」という用語は、目的の1つ以上の値に適用される場合、明記された参照値に類似した値を意味する。特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、とくに明記されていないかぎりまたはとくに文脈から自明でないかぎり、明記された参照値のいずれの方向にも(より大きいまたはより小さい)、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれよりも少ない範囲内に入る値の範囲を意味する(そのような数が、可能な値の100%を超える場合を除く)。
【0246】
会合: 本明細書で用いられる場合、「会合」、「コンジュゲート」、「結合」、「装着」、および「テザー連結」という用語は、2つ以上の部分に対して用いられる場合、直接にまたはリンク剤として機能する1つ以上の追加の部分を介して、互いに物理的に会合または接続されて、構造が用いられる条件下で、たとえば、生理学的条件下で、これらの部分が、物理的に会合された状態を維持するように、十分に安定な構造を形成することを意味する。「会合」は、厳密に直接の共有化学結合を介する必要はない。また、それは、イオン結合、水素結合、または「会合」要素が物理的会合を維持するように十分に安定なハイブリダイゼーションに基づく結合をも示唆しうる。
【0247】
二機能性: 本明細書で用いられる場合、「二機能性」という用語は、少なくとも2つの機能が可能であるまたはそれを維持する任意の物質、分子、または部分を意味する。機能は、同一の転帰または異なる転帰をもたらしうる。機能を発揮する構造は、同一であっても異なっていてもよい。たとえば、本発明に係る二機能性修飾RNAは、細胞傷害性ペプチドをコードしうる(第1の機能)。一方、そのコードRNAを含むヌクレオシドは、本質的にそれ自体で細胞傷害性である(第2の機能)。この例では、癌細胞への二機能性修飾RNAの送達により、癌を寛解または治療用しうるペプチド分子またはタンパク質分子が産生されるだけでなく、修飾RNAの翻訳の代わりに分解が起これば、ヌクレオシドの細胞傷害性ペイロードが細胞に送達されるであろう。
【0248】
生物学的活性: 本明細書で用いられる場合、「生物学的活性」という表現は、生体系および/または生物で活性を有する任意の物質の特性を意味する。たとえば、生物に投与された時、その生物に対して生物学的作用を有する物質は、生物学的に活性であると考えられる。特定の実施形態では、核酸分子の一部であっても、生物学的に活性であれば、または生物学的関連性があるとみなされる活性を模倣するのであれば、本発明に係る核酸分子は、生物学的に活性であると考えられうる。
【0249】
化学用語: 本明細書で用いられる場合、「アルキル」という用語は、直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基を意味するものとする。例示的なアルキル基としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(たとえば、n-プロピルおよびイソプロピル)、ブチル(たとえば、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル)、ペンチル(たとえば、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)などが挙げられる。アルキル基は、1~約20、2~約20、1~約12、1~約8、1~約6、1~約4、または1~約3個の炭素原子を含有しうる。
【0250】
本明細書で用いられる場合、「アルケニル」とは、1つ以上の炭素炭素二重結合を有するアルキル基を意味する。例示的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニルなどが挙げられる。
【0251】
本明細書で用いられる場合、「アルコキシ」とは、-O-アルキル基を意味する。例示的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(たとえば、n-プロポキシおよびイソプロポキシ)、t-ブトキシなどが挙げられる。
【0252】
本明細書で用いられる場合、「アルケニル」とは、隣接炭素原子間に少なくとも1つの二重結合を含有する以上に定義したアルキルを意味する。アルケニルは、シスおよびトランスの両方の異性体を含む。代表的な直鎖状および分枝状アルケニルとしては、エチレニル、プロピレニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブチレニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニルなどが挙げられる。
【0253】
本明細書で用いられる場合、「アルキニル」とは、1つ以上の炭素炭素三重結合を有するアルキル基を意味する。例示的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニルなどが挙げられる。
【0254】
本明細書で用いられる場合、「アリール」とは、単環式または多環式(たとえば、2、3、または4個の縮合環を有する)の芳香族炭化水素、たとえば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、インダニル、インデニルなどを意味する。いくつかの実施形態では、アリール基は、6~約20個の炭素原子を有する。
【0255】
本明細書で用いられる場合、「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを含む。
化合物: 本明細書で用いられる場合、「化合物」という用語は、示された構造のすべての立体異性体、幾何異性体、互変異性体、および同位体を含むものとする。
【0256】
本明細書に記載の化合物は、非対称でありうる(たとえば、1つ以上のステレオ中心を有する)。とくに指定がないかぎり、エナンチオマーやジアステレオマーなどの立体異性体はすべて、対象となる。非対称置換炭素原子を含有する本開示に係る化合物は、光学活性形またはラセミ形で単離可能である。光学活性出発材料から光学活性形をいかに調製するかに関する方法は、当技術分野で公知であり、たとえば、ラセミ混合物の分割によるものまたは立体選択的合成によるものがある。オレフィンの多くの幾何異性体、C=N二重結合などもまた、本明細書に記載の化合物中に存在可能であり、そのような安定な異性体はすべて、本開示で利用可能と考えられる。本開示に係る化合物のシスおよびトランスの幾何異性体は、記載されており、異性体の混合物としてまたは分離された異性体形として単離されうる。
【0257】
本開示に係る化合物はまた、互変異性型を含む。互変異性型は、隣接二重結合を有する単結合の交換およびプロトンの付随的移動から生じる。互変異性型は、同一の実験式および全電荷を有する異性プロトン化状態であるプロトトロピー互変異性体を含む。例としてのプロトトロピー互変異性体は、ケトン-エノール対、アミド-イミド酸対、ラクタム-ラクチム対、アミド-イミド酸対、エナミン-イミン対、およびプロトンがヘテロ環系の2つ以上の位置を占有可能である環状形、たとえば、1H-および3H-イミダゾール、1H-、2H-、および4H-1,2,4-トリアゾール、1H-および2H-イソインドール、ならびに1H-および2H-ピラゾールを含む。互変異性型は、平衡状態をとることが可能であるか、または適切な置換により一形態に立体的にロックすることが可能である。
【0258】
本開示に係る化合物はまた、中間化合物中または最終化合物中に存在する原子の同位体のすべてを含む。「同位体」とは、同一の原子番号を有するが、原子核中の中性子数が異なることから生じる異なる質量数を有する原子を意味する。たとえば、水素の同位体としては、トリチウムおよびジュウテリウムが挙げられる。
【0259】
本開示に係る化合物および塩は、慣用的方法により、溶媒分子または水分子と組み合わせて溶媒和物および水和物を形成するように調製可能である。
保存: 本明細書で用いられる場合、「保存」という用語は、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列のヌクレオチド残基またはアミノ酸残基が、それぞれ、比較される2つ以上の配列の同一位置で不変で存在するものであることを意味する。比較的保存されるヌクレオチドまたはアミノ酸は、配列の他の箇所に現れるヌクレオチドまたはアミノ酸よりも関連性のある配列間で保存されるものである。
【0260】
いくつかの実施形態では、2つ以上の配列は、それらが互いに100%の同一性であれば、「完全に保存されている」と言われる。いくつかの実施形態では、2つ以上の配列は、それらが互いに少なくとも70%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性、に少なくとも95%の同一性であれば、「高度に保存されている」と言われる。いくつかの実施形態では、2つ以上の配列は、それらが互いに約70%の同一性、約80%の同一性、約90%の同一性、約95%、約98%、または約99%の同一性であれば、「高度に保存されている」と言われる。いくつかの実施形態では、2つ以上の配列は、それらが互いに少なくとも30%の同一性、少なくとも40%の同一性、少なくとも50%の同一性、少なくとも60%の同一性、少なくとも70%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性であれば、「保存されている」と言われる。いくつかの実施形態では、2つ以上の配列は、それらが互いに約30%の同一性、約40%の同一性、約50%の同一性、約60%の同一性、約70%の同一性、約80%の同一性、約90%の同一性、約95%の同一性、約98%の同一性、または約99%の同一性であれば、「保存されている」と言われる。配列の保存は、オリゴヌクレオチドまたはポリペプチドの全長に適用しうるか、またはその一部分、一領域、または一特徴部に適用しうる。
【0261】
送達: 本明細書で用いられる場合、「送達」とは、化合物、物質、要素、部分、カーゴ、またはペイロードを送達する行為または方式を意味する。
送達剤: 本明細書で用いられる場合、「送達剤」とは、少なくとも部分的に、標的細胞への核酸分子のin vivo送達を促進する任意の物質を意味する。
【0262】
検出可能な標識: 本明細書で用いられる場合、「検出可能な標識」とは、ラジオグラフィー、蛍光、化学発光、酵素活性、吸光度などをはじめとする当技術分野で公知の方法により容易に検出される他の要素に、装着、組込み、または会合が行われた、1つ以上のマーカー、シグナル、または部分を意味する。検出可能な標識としては、放射性同位体、発蛍光団、発色団、酵素、染料、金属イオン、リガンド(たとえば、ビオチン、アビジン、ストレパビジン(strepavidin)、およびハプテン)、量子ドットなどが挙げられる。検出可能な標識は、本明細書に開示されるペプチド中またはタンパク質中の任意の位置に配置されうる。それらは、アミノ酸中、ペプチド中、もしくはタンパク質中でありうるか、またはN末端もしくはC末端で配置されうる。
遠位: 本明細書で用いられる場合、「遠位」とは、対象の対称中心塊もしくは対称中心線または基準点から離れていることを意味する。肢の場合、それは、胴体から離れている。
【0263】
投与レジメン: 本明細書で用いられる場合、「投与レジメン」とは、投与のスケジュール、または医師が決定した治療、予防、もしくは緩和ケアのレジメンのことである。
用量分割因子(DSF)- 用量分割治療のPUDを、全一日用量または単回単位用量のPUDで割った比。この値は、投与レジメン群の比較から導出される。
【0264】
発現: 本明細書で用いられる場合、核酸配列の「発現」とは、次のイベント、すなわち、(1)DNA配列からのRNA鋳型の産生(たとえば、転写による)、(2)RNA転写物のプロセシング(たとえば、スプライシング、エディティング、5’キャップ形成、および/または3’末端プロセシングによる)、(3)ポリペプチドまたはタンパク質へのRNAの翻訳、ならびに(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾の1つ以上を意味する。
【0265】
製剤: 本明細書で用いられる場合、「製剤」は、少なくとも修飾核酸分子および送達剤を含む。
機能性: 本明細書で用いられる場合、「機能性」生物学的分子とは、特徴付けられる性質および/または活性を呈する形態の生物学的分子のことである。
【0266】
相同性: 本明細書で用いられる場合、「相同性」という用語は、高分子間、たとえば、核酸分子(たとえば、DNA分子および/またはRNA分子)間および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を意味する。いくつかの実施形態では、高分子は、それらの配列が少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の同一性であれば、互いに「相同である」と考えられる。いくつかの実施形態では、高分子は、それらの配列が少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の類似性であれば、互いに「相同である」と考えられる。「相同」という用語は、必然的に、少なくとも2つの配列(ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列)間の比較を意味する。
【0267】
本発明によれば、2つのポリヌクレオチド配列は、それらがコードするポリペプチドが、少なくとも約20アミノ酸の少なくとも1つの伸長に対して、少なくとも約50%の同一性、少なくとも約60%の同一性、少なくとも約70%の同一性、少なくとも約80%の同一性、または少なくとも約90%の同一性であれば、相同であると考えられる。
【0268】
いくつかの実施形態では、相同ポリヌクレオチド配列は、ユニークに特定された少なくとも4~5アミノ酸の伸長をコードする能力により特徴付けられる。60ヌクレオチド長未満のポリヌクレオチド配列では、相同性は、ユニークに特定された少なくとも4~5アミノ酸の伸長をコードする能力により決定される。本発明によれば、2つのタンパク質配列は、タンパク質が、少なくとも約20アミノ酸の少なくとも1つの伸長に対して、少なくとも約50%の同一性、少なくとも約60%の同一性、少なくとも約70%の同一性、少なくとも約80%の同一性、または少なくとも約90%の同一性であれば、相同であると考えられる。
【0269】
同一性: 本明細書で用いられる場合、「同一性」という用語は、高分子間、たとえば、オリゴヌクレオチド分子(たとえば、DNA分子および/またはRNA分子)間および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を意味する。たとえば、2つのポリヌクレオチド配列の同一性パーセントの計算は、最適比較目的で2つの配列をアライメントすることにより、行うことが可能である(たとえば、最適アライメントになるように第1および第2の核酸配列の一方または両方にギャップを導入することが可能であり、比較目的では異なる配列を無視することが可能である)。特定の実施形態では、比較目的でアライメントされる配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。次いで、対応するヌクレオチド位置のヌクレオチドを比較する。第1の配列の位置が第2の配列の対応する位置と同一のヌクレオチドにより占有される場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列が最適アライメントになるように導入する必要のあるギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、配列により共有される同一位置の数の関数である。配列の比較および2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成可能である。たとえば、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、計算分子生物学(Computational Molecular Biology)、レスク,A.M.(Lesk,A.M.)編、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)、ニューヨーク、1988年、バイオコンピューティング:インフォマティクスおよびゲノムプロジェクト(Biocomputing:Informatics and Genome Projects)、スミス,D.W.(Smith,D.W.)編、アカデミックプレス(Academic Press)、ニューヨーク、1993年、分子生物学における配列解析(Sequence Analysis in Molecular Biology)、フォンヘインジ,G.(von Heinje,G.)、アカデミックプレス(Academic Press)、1987年、配列データのコンピュータ解析(Computer Analysis of
Sequence Data)、第I部、グリフィン,A.M.(Griffin,A.M.)およびグリフィン,H.G.(Griffin,H.G.)編、ヒューマナプレス(Humana Press)、ニュージャージ、1994年、ならびに配列解析プライマー(Sequence Analysis Primer)、グリブスコフ,M.(Gribskov,M.)およびデベロー,J.(Devereux,J.)編、Mストックトンプレス(M Stockton Press)、ニューヨーク、1991年、(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような方法を用いて決定可能である。たとえば、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティー、および4のギャップペナルティーを用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているマイヤー(Meyers)およびミラー(Miller)のアルゴリズム(生物科学におけるコンピュータ利用(CABIOS)、1989年、第4巻、p.11~17)により、決定可能である。2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、他の選択肢として、NWSgapdna.CMPマトリックスを用いて、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムにより、決定可能である。配列間の同一性パーセントを決定するのに一般に利用される方法は、カリロ,H.(Carillo,H.)およびリップマン,D.(Lipman,D.)著、SIAM応用数学誌(SIAM J.Applied Math.)、第48巻、p.1073、1988年(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるものを含むが、これに限定されるものではない。同一性を決定するための技術は、公的に入手可能なコンピュータープログラムの形態で体系化されている。2つの配列間の相同性を決定する例示的なコンピュータソフトウェアは、GCGプログラムパッケージ(デベルー,J.(Devereux,J.)ら著、核酸研究(Nucleic Acids Research)、第12巻、第1号、p.387、1984年)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(アッチュル,S.F.(Atschul,S.F.)ら著、分子生物学誌(J.Molec.Biol.)、第215巻、p.403、1990年)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0270】
遺伝子発現の阻害: 本明細書で用いられる場合、「遺伝子発現の阻害」という表現は、遺伝子の発現産物の量の低減を引き起こすことを意味する。発現産物は、遺伝子から転写されるRNA(たとえば、mRNA)または遺伝子から転写されるmRNAから翻訳されるポリペプチドでありうる。典型的には、mRNAのレベルの低減は、それから翻訳されるポリペプチドのレベルの低減をもたらす。発現のレベルは、mRNAまたはタンパク質を測定するための標準的技術を用いて決定可能である。
【0271】
in vitro: 本明細書で用いられる場合、「in vitro」という用語は、生物(たとえば、動物、植物、または微生物)内ではなく、人工環境下、たとえば、試験管または反応容器、細胞培養物、ペトリ皿などで起こるイベントを意味する。
【0272】
in vivo: 本明細書で用いられる場合、「in vivo」という用語は、生物(たとえば、動物、植物、もしくは微生物、またはそれらの細胞)内に起こるイベントを意味する。
【0273】
単離: 本明細書で用いられる場合、「単離された」という用語は、一体化された成分(自然環境または実験現場のいずれであるかにかかわらず)の少なくとも一部から分離された物質または要素を意味する。単離された物質は、一体化されていた物質に対してさまざまなレベルの純度を有しうる。単離された物質および/または要素は、それが最初に会合していた他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはより多くから分離されうる。いくつかの実施形態では、単離された作用剤は、約80%超、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または、約99%超の純度である。本明細書で用いられる場合、物質は、それが他の成分を実質的に含まないのであれば、「純粋」である。
実質的に単離された: 「実質的に単離された」とは、生成または検出された環境から化合物が実質的に分離されていることを意味する。部分的な分離は、たとえば、本開示に係る化合物が富化された組成物を含みうる。実質的な分離は、重量基準で、本開示に係る化合物またはその塩の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%を含有する組成物を含みうる。化合物およびその塩を単離する方法は、当技術分野で慣用されているものである。
【0274】
修飾: 本明細書で用いられる場合、「修飾」とは、本発明に係る分子の変化した状態または構造を意味する。分子は、化学的、構造的、および機能的なものを含めて、多くの方法で修飾されうる。一実施形態では、本発明に係るmRNA分子は、非天然のヌクレオシドおよび/またはヌクレオチドの導入により修飾される。また、修飾mRNAに関して、修飾とは、野生型とは異なる任意の変化を意味しうる。
【0275】
天然に存在する: 本明細書で用いられる場合、「天然に存在する」とは、人為的な支援を受けることなく天然に存在することを意味する。
患者: 本明細書で用いられる場合、「患者」とは、治療を求めているもしくはそれが必要な状態にあると思われる、治療を必要とする、治療を受けている、または治療を受けるであろう対象、あるいは特定の疾患もしくは病態に対して訓練された専門家によるケアを受けている対象を意味する。
【0276】
ペプチド: 本明細書で用いられる場合、「ペプチド」は、50アミノ酸長以下、たとえば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸長である。
【0277】
プロドラッグ: 本開示はまた、本明細書に記載の化合物のプロドラッグを包含する。本明細書で用いられる場合、「プロドラッグ」とは、物質、分子、または要素が化学的または物理的な変化を受けたときに治療剤として作用するとみなされる形態をとる任意の物質、分子、または要素を意味する。プロドラッグは、共有結合されていても、なんらかの方法で捕獲されていてもよく、哺乳動物対象への投与前、投与時、または投与後、活性薬剤部分を放出するかまたはその形に変換される。プロドラッグは、慣例的な操作によりまたはin vivoで修飾が切断されて親化合物になるような方法で、化合物中に存在する官能基を修飾することにより、調製可能である。プロドラッグは、ヒドロキシル基、アミノ基、スルフヒドリル基、またはカルボキシル基が、哺乳動物対象に投与された時にそれぞれ遊離のヒドロキシル基、アミノ基、スルフヒドリル基、またはカルボキシル基を生成するように切断される任意の基に結合されている化合物を含む。プロドラッグの調製および使用は、T.ヒグチ(T.Higuchi)およびV.ステラ(V.Stella)著、「新規な送達系としてのプロドラッグ(Pro-drugs as Novel Delivery Systems)」、A.C.S.シンポジウムシリーズ(A.C.S.Symposium Series)の第14巻、ならびに薬剤設計における生体可逆性担体(Bioreversible Carriers in Drug Design)、エドワードB.ロッシュ(Edward B.Roche)編、米国薬剤師協会(American Pharmaceutical Association)およびパーガモンプレス(Pergamon Press)、1987年(両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる)で考察されている。
【0278】
増殖: 本明細書で用いられる場合、「増殖」という用語は、成長、拡張、もしくは増大すること、または迅速に成長、拡張、もしくは増大を引き起こすことを意味する。「増殖」は、増殖する能力を有することを意味する。「抗増殖」とは、増殖性に対抗するまたは不適である性質を有することを意味する。
【0279】
薬学的に許容可能: 「薬学的に許容可能」という表現は、本明細書では、妥当な便益/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、もしくは他の問題、または合併症を伴うことなく、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織に接触させて使用するのに好適な化合物、材料、組成物、および/または製剤を意味する。
【0280】
薬学的に許容可能な塩: 本開示はまた、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容可能な塩を包含する。本明細書で用いられる場合、「薬学的に許容可能な塩」とは、既存の酸部分または塩基部分をその塩形に変換することにより親化合物が修飾されている開示化合物の誘導体を意味する。薬学的に許容可能な塩の例としては、アミンなどの塩基残基の鉱酸塩または有機酸塩、カルボン酸などの酸残基のアルカリ塩または有機塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本開示に係る薬学的に許容可能な塩は、親化合物の従来型の非毒性塩、たとえば、非毒性の無機酸または有機酸から生成されたものを含む。本開示に係る薬学的に許容可能な塩は、塩基部分または酸部分を含有する親化合物から従来の化学的方法により合成可能である。一般的には、そのような塩は、水中もしくは有機溶媒中または両者の混合物中で、これらの化合物の遊離の酸形または塩基形と化学量論量の適切な塩基または酸とを反応させることにより、調製可能である。一般的には、エーテル、エチルアセテート、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。好適な塩の一覧は、レミングトンの薬学(Remington ’s Pharmaceutical Sciences)、第17巻、マック・パブリッシング・カンピニー(Mack Publishing Company)、ペンシルバニア州イーストン、1985年、p.1418、および薬学誌(Journal of Pharmaceutical Science)、第66巻、2頁(1977年)(それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見いだされる。
【0281】
ポリペプチド: 本明細書で用いられる場合、「ポリペプチド」とは、ペプチド結合により結合一体化されたアミノ酸残基のポリマーを意味する。この用語は、本明細書で用いられる場合、任意のサイズ、構造、または機能のタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを意味する。しかしながら、典型的には、ポリペプチドは、少なくとも50アミノ酸長であろう。いくつかの場合には、コードされたポリペプチドは、約50アミノ酸未満であり、このポリペプチドは、ペプチドと称される。ポリペプチドがペプチドであるならば、それは、少なくとも約5アミノ酸残基長であろう。したがって、ポリペプチドは、遺伝子産物、天然に存在するポリペプチド、合成ポリペプチド、同族体、オルソログ、パラログ、断片、ならびに以上の他の等価体、変異体、および類似体を含む。ポリペプチドは、単一分子であってもよいし、二量体、三量体、四量体などの多分子複合体であってもよい。ポリペプチドという用語はまた、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学類似体であるアミノ酸ポリマーにも適用されうる。
【0282】
単位薬剤あたりのポリペプチド(PUD): 本明細書で用いられる場合、PUDまたは単位薬剤あたりの産物とは、全一日用量の細分割部分として定義され、通常、体液中または組織中で測定される産物(たとえばポリペプチド)1mg、1pg、1kgなど(通常、pmol/mL、mmol/mLなどの濃度で定義される)を体液中の基準量で割り算したものである。
【0283】
近位: 本明細書で用いられる場合、「近位」とは、対象の対称中心塊もしくは対称中心線または基準点により近いことを意味する。肢の場合、それは、胴体により近い。
サンプル: 本明細書で用いられる場合、「サンプル」という用語は、その組織、細胞、または構成部分の一部を意味する(たとえば、末梢血、血清、血漿、腹水、尿、脳脊髄液(CSF)、痰、唾液、骨髄、滑液、房水、羊水、耳垢、母乳、気管支肺胞洗浄液、精液、前立腺液、カウパー液もしくは射精前液、汗、糞便、毛髪、涙、嚢胞液、胸水および腹水、心嚢液、リンパ液、糜粥、乳糜、胆汁、間質液、月経分泌物、膿、皮脂、嘔吐物、膣分泌物、粘膜分泌物、水様便、膵液、洞腔洗浄液、気管支肺吸引物、胞胚腔液、および臍帯血をはじめとする体液であるが、これらに限定されるものではない)。サンプルはさらに、全生物体、またはその組織、細胞、もしくは構成部分の一部、またはそれらの画分もしくは一部分、たとえば、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚の外側部分、呼吸管、腸管、または泌尿生殖管、涙、唾液、乳、血液細胞、腫瘍、器官から調製されるホモジネート、溶解物、または抽出物を含みうるが、これらに限定されるものではない。サンプルはさらに、タンパク質分子や核酸分子などの細胞成分を含有している可能性がある媒体、たとえば、栄養ブロスまたはゲルを意味する。
【0284】
類似性: 本明細書で用いられる場合、「類似性」という用語は、高分子間、たとえば、ポリヌクレオチド分子(たとえば、DNA分子および/またはRNA分子)間および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を意味する。互いの高分子の類似性パーセントの計算は、当技術分野で理解されている保存的置換を考慮して類似性パーセントを計算すること以外は、同一性パーセントの計算と同一の方式で実施可能である。
【0285】
安定: 本明細書で用いられる場合、「安定」とは、反応混合物から有用な純度への単離に耐えるのに十分なロバスト性のある、好ましくは、有効な治療剤への製剤化が可能である化合物を意味する。
【0286】
対象: 本明細書で用いられる場合、「対象」または「患者」という用語は、たとえば、実験、診断、予防、および/または治療の目的で、本発明に係る組成物が投与されうる任意の生物を意味する。典型的な対象は、動物(たとえば、哺乳動物、たとえば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長動物、およびヒト)および/または植物を含む。
【0287】
実質的: 本明細書で用いられる場合、「実質的」という用語は、目的の特徴または性質の全体またはほぼ全体の範囲または度合いを呈する定性的条件を意味する。生物学技術分野の当業者であれば、生物学的および化学的な現象が、最終状態に達することおよび/または完全に進行することまたは絶対的結果を達成もしくは回避することは、あってもまれであること理解されよう。したがって、「実質的」という用語は、多くの生物学的および化学的な現象に固有の完全性の欠如の可能性を取り込むべく、本明細書で用いられる。
【0288】
実質的に等しい: 用量間の時間差に関して本明細書で用いられる場合、この用語は、±2%を意味する。
実質的に同時: 複数の用量に関して本明細書で用いられる場合、この用語は、2秒以内を意味する。
【0289】
同時: 本明細書で用いられる場合、「同時」とは、科学的に再現可能な範囲内で同時であること意味する。
罹患: 疾患、障害、および/または病態に「罹患」している個体は、疾患、障害、および/または病態の1つ以上の症状で診断されてきたか、またはその症状を呈する。
【0290】
易罹患性: 疾患、障害、および/または病態に「罹患しやすい」個体は、疾患、障害、および/または病態の症状で診断されていないか、かつ/またはその症状を呈していなくてもよいが、疾患またはその症状を発症する傾向を有する。いくつかの実施形態では、疾患、障害、および/または病態(たとえば癌)に罹患しやすい個体は、次のもの、すなわち、(1)疾患、障害、および/または病態の発生に関連付けられる遺伝子突然変異、(2)疾患、障害、および/または病態の発生に関連付けられる遺伝子多型、(3)疾患、障害、および/または病態に関連付けられるタンパク質および/または核酸の発現および/または活性の増大および/または低減、(4)疾患、障害、および/または病態の発生に関連付けられる習性および/または生活習慣、(5)疾患、障害、および/または病態の家族歴、ならびに(6)疾患、障害、および/または病態の発生に関連付けられる微生物への暴露および/またはその感染の1つ以上により特徴付け可能である。いくつかの実施形態では、疾患、障害、および/または病態に罹患しやすい個体は、疾患、障害、および/または病態を発生するであろう。疾患、障害、および/または病態に罹患しやすい個体は、疾患、障害、および/または病態を発生しないであろう。
【0291】
合成: 「合成」という用語は、ヒトの手により産生、調製、および/または製造されることを意味する。本発明に係るポリヌクレオチドもしくはポリペプチドまたは他の分子の合成は、化学的もしくは酵素的でありうる。
【0292】
単回単位用量: 本明細書で用いられる場合、「単回単位用量」とは、1回で/一時点/一経路/一接触点で、すなわち単回投与イベントで、投与される任意の治療剤の用量のことである。
【0293】
全一日用量: 本明細書で用いられる場合、「全一日用量」とは、24時間以内で投与または処方される量のことである。それは、単回単位用量として投与されうる。
分割用量: 本明細書で用いられる場合、「分割用量」とは、単回単位用量または全一日用量を2つ以上に分割した用量のことである。
【0294】
標的細胞: 本明細書で用いられる場合、「標的細胞」とは、任意の1つ以上の目的の細胞を意味する。細胞は、in vitro、in vivo、in situ、または生物の組織もしくは器官で見いだされうる。生物は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト、最も好ましくは患者でありうる。
【0295】
治療剤: 「治療剤」という用語は、対象に投与した時、治療効果、診断効果、および/もしくは予防効果を有する、ならびに/または所望の生物学的効果および/もしくは薬理学的効果を誘発する、任意の作用剤を意味する。
【0296】
治療上有効量: 本明細書で用いられる場合、「治療上有効量」という用語は、疾患、障害、および/または病態に罹患しているまたは罹患しやすい対象に投与した時、疾患、障害、および/または病態を治療、その症状を改善、その発生を診断、予防、および/または遅延するのに十分な送達作用剤(たとえば、核酸、薬剤、治療剤、診断剤、予防剤など)の量を意味する。
【0297】
転写因子: 本明細書で用いられる場合、「転写因子」という用語は、たとえば、転写の活性化または抑圧により、DNAからRNAへの転写を調節するDNA結合タンパク質を意味する。いくつかの転写因子は、転写のみの調節を行うが、他のものは、他のタンパク質と協奏的に作用する。いくつかの転写因子は、特定の条件下で転写の活性化および抑制の両方を行うことが可能である。一般的には、転写因子は、標的遺伝子の調節領域の特定のコンセンサス配列にきわめて類似した1つもしくは複数の特異的標的配列に結合する。転写因子は、標的遺伝子の転写を単独でまたは他の分子との複合体で調節しうる。
【0298】
治療: 本明細書で用いられる場合、「治療」という用語、特定の疾患、障害、および/または病態の発生を部分的にまたは完全に緩和、寛解、改善、軽減、遅延すること、その進行を阻害すること、その重症度を低減すること、および/またはその1つ以上の症状もしくは特徴を低減することを意味する。たとえば、癌を「治療」することは、腫瘍の生存、増殖、および/または拡がりを阻害することを意味しうる。治療は、疾患、障害、および/もしくは病態の徴候を呈しない対象に、ならびに/または疾患、障害、および/もしくは病態に関連付けられる病変を発生するリスクを低減する目的で、疾患、障害、および/もしくは病態の早期徴候を呈する対象に、施すことが可能である。
【0299】
非修飾: 本明細書で用いられる場合、「非修飾」とは、なんらかの方法で変化させる前の任意の物質、化合物、または分子を意味する。非修飾とは、生体分子の野生型または未改変型を意味するが、常にそうであるとは限らない。分子は、一連の修飾を受けうるが、それにより、各修飾分子は、それに続く修飾のための「非修飾」出発分子として役立ちうる。
【0300】
等価形態および範囲
当業者であれば、通常の実験の域を出ることなく、本明細書に記載の本発明に係る特定の実施形態に対する多くの等価形態がわかるであろう。またはそれらを確認することができるであろう。本発明の範囲は、以上の説明に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に明記されるとおりである
特許請求の範囲では、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、相反する指示がないかぎりまたはとくに文脈から自明でないかぎり、1つ以上を意味しうる。グループの1つ以上のメンバー間に「or(または)」を含む特許請求の範囲または説明は、相反する指示がないかぎりまたはとくに文脈から自明でないかぎりに、グループメンバーの1つ、2つ以上、またはすべてが、所与のプロダクトまたはプロセスに存在するか、そこで利用されるか、またはそれ以外の形でそれに適合する場合、満たされると考えられる。本発明は、厳密にグループの1つのメンバーが、所与のプロダクトまたはプロセスに存在するか、そこで利用されるか、またはそれ以外の形でそれに適合する、実施形態を含む。本発明は、グループメンバーの2つ以上またはすべてが、所与のプロダクトまたはプロセスに存在するか、そこで利用されるか、またはそれ以外の形でそれに適合する、実施形態を含む。
【0301】
また、「comprising(~を含む)」という用語は、オープンであるとみなされ、かつ追加の要素または工程の組込みを許容するとみなされることに留意されたい。
範囲が与えられた場合、端点が含まれる。さらに、とくに指定がないかぎりまたはとくに文脈および当業者の理解から自明でないかぎり、範囲として表現された値は、文脈上明らかに異なる場合を除いて、範囲の下限の1/10単位まで、本発明のさまざまな実施形態で指定の範囲内の任意の特定の値または部分範囲を仮定しうるとみなされるものとする。
【0302】
それに加えて、先行技術に包含される本発明の特定の実施形態はいずれも、請求項の任意の1項以上から明示的に除外されうるとみなされるものとする。そのような実施形態は、当業者に公知であるとみなされるので、たとえ本明細書で明示的に除外が明記されていないとしても、それらは除外しうる。本発明に係る組成物の特定の実施形態(たとえば、任意の核酸、それによりコードされたタンパク質、任意の製造方法、任意の使用方法など)はいずれも、先行技術の存在の有無にかかわらず、任意の理由で、いずれか1項以上の請求項から除外しうる。
【0303】
とくに文脈上明確に示されてないかぎり、本明細書および特許請求の範囲で用いられる場合、単数形は、複数形表現を含み、その逆も同様である。操作例以外の場合またはとくに示されていない場合、本明細書で用いられる成分量または反応条件を表す数はすべて、いずれの場合も、「約」という用語で修飾されているとみなされるものとする。
【0304】
特許、遺伝子識別番号により特定されるオリゴヌクレオチド配列、および本明細書で特定される他の出版物はすべて、本発明に関連して使用しうるそのような出版物に記載の方法などを記載および開示することを目的として、参照により明示的に組み込まれる。これらの出版物は、単に本出願の出願日前に開示されたものとして提供されているにすぎない。これに関連する記載内容は、先行発明に基づいてまたは任意の他の理由でそのような開示に先行する権利が本発明者らに与えられないことを容認するものとみなされるべきものではない。日付けに関する記述またはこれらの文献の内容に関する表現はすべて、本出願人らが利用可能な情報に基づいており、日付けの正確さまたはこれらの文献の内容に関してはなんら容認するものではない。
【0305】
引用された出典、たとえば、本明細書に引用された参考文献、出版物、データベース、データベース項目、および技術はすべて、たとえ引用の中にはっきりと明記されていないとしても、参照により本出願に組み込まれる。引用された出典の記載内容と本出願の記載内容とが矛盾する場合、本出願の記載内容が優先するものとする。
【0306】
(実施例)
実施例1.修飾mRNAの産生
本発明に係る修飾mRNA(mmRNA)は、標準的な実験室法および材料を用いてを作製されうる。目的の遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)は、強力なコザック翻訳開始シグナルを含有する5’非翻訳領域(UTR)、および/または、ポリAテールの鋳型付加のためのオリゴ(dT)配列を含みうるα-グロビン3’UTR、によりフランキングされうる。修飾mRNAは、細胞先天性免疫反応を低減するように修飾されうる。細胞性応答を低減する修飾は、プソイドウリジン(ψ)および5-メチル-シチジン(5meCまたはmC)を含みうる。(カリコ,K(Kariko,K)ら著、免疫(Immunity)、第23巻、165~75頁、2005年、カリコ,K(Kariko,K)ら著、分子療法(Mol Ther)、第16巻、1833~40頁、2008年、アンダーソン,BR(Anderson BR)ら著、核酸研究(NAR)(2010年)(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0307】
ORFはまた、種々の上流側または下流の付加(たとえば、限定されるものではないが、β-グロビン、タグなど)を含んでいてもよく、限定されるものではないが、DNA2.0(カリフォルニア州メンロパーク(Menlo Park,CA))などの最適化サービスから注文してもよく、また、Xbal認識を有しうる複数のクローニング部位を含有してもよい。構築物を受け取った後、それを化学的コンピテント大腸菌(E.coli)中に再構成してトランスフォームさせうる。
【0308】
本発明では、NEB DH5-αコンピテント大腸菌(E.coli)が使用される。トランスフォーメーションは、100ngのプラスミドを用いてNEB社説明書に従って行われる。プロトコルは次のとおりである。
【0309】
1.NEB5-αコンピテント大腸菌(E.coli)細胞のチューブを氷上で10分間解凍する。
2.1pg~100ngのプラスミドDNAを含有する1~5μlを細胞混合物に添加する。注意深くチューブを4~5回軽く叩いて細胞とDNAとを混合する。ボルテックスしない。
【0310】
3.混合物を氷上に30分間配置する。混合しない。
4.42℃で正確に30秒間ヒートショックを与える。混合しない。
5.氷上に5分間配置する。混合しない。
【0311】
6.950μlの室温SOCを混合物中にピペット添加する。
7.37℃で60分間配置する。激しく(250rpm)振盪するかまたは回転させる。
【0312】
8.選択プレートを37℃に加温する。
9.チューブを軽く叩いたり逆さにしたりすることにより細胞を十分に混合する。
10.50~100μlの各希釈液を選択プレート上に展延し、37℃で一晩インキュベートする。他の選択肢として、30℃で24~36時間または25℃で48時間インキュベートする。
【0313】
次いで、単一のコロニーを用いて、適切な抗生物質を用いた5mlのLB増殖培地に接種し、次いで、5時間増殖させた(250RPM、37℃)。次いで、これを用いて、200ml培養培地に接種し、同一条件下で一晩増殖させた。
【0314】
プラスミド(850μgまで)を単離するために、製造業者の説明書に従って、インビトロジェン・ピュアリンクTM・ハイピュア・マキシプレップキット(Invitrogen PURELINKTM HiPure Maxiprep Kit)(カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA))を用いて、マキシプレップ(maxi prep)を行う。
【0315】
in vitro転写(IVT)用のcDNAを産生するために、最初に、Xbalなどの制限酵素を用いてプラスミド(その例は図2に示される)を線状化する。Xbalによる典型的な制限消化は、次のものを含むであろう。すなわち、プラスミド1.0μg;10×緩衝液1.0μl;Xbal 1.5μl;dHO 全量10μl;37℃で1時間インキュベート。実験室スケール(<5μg)で行う場合、製造業者の使用説明書に従って、インビトロジェン・ピュアリンクTM PCRマイクロキット(Invitrogen’s PURELINKTM PCR Micro Kit)(カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA))を用いて、反応系を精製する。より大スケールの精製は、インビトロジェン・スタンダード・ピュアリンクTM・PCRキット(Invitrogen’s standard PURELINKTM PCR Kit)(カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA))などのより大きい負荷容量を有する製品を用いて行う必要があろう。精製後、ナノドロップ(NanoDrop)を用いて線形化ベクターを定量し、そしてアガロースゲル電気泳動を用いて分析して線状化を確認する。
【0316】
たとえば、G-CSFは、目的のポリペプチドに対応しうるが、これに限定されるものではない。実施例1~5に概説される工程で使用される配列は、テーブル2に示される。開始コドン(ATG)は、テーブル2の各配列中で下線が付されていることに留意されたい。
【0317】
【表2】


実施例2:cDNA産生のためのPCR
cDNA調製のためのPCR手順は、カパ・バイオシステムズ(Kapa Biosystems)(マサチューセッツ州ウォバーン(Woburn,MA))製の2×カパHIFITMホットスタート・レディーミックス(KAPA HIFITM HotStart ReadyMix)を用いて行われる。このシステムは、2×カパ・レディーミックス(KAPA ReadyMix)12.5μl;フォワードプライマー(10μM)0.75μl;リバースプライマー(10μM)0.75μl;鋳型cDNA 100ng;およびdHO(25.0μlに希釈)、を含む。反応条件は、95℃で5分間;および、98℃で20秒間、次いで58℃で15秒間、次いで72℃で45秒間、次いで72℃で5分間の25サイクル;次いで4℃で終了、である。
【0318】
本発明に係るリバースプライマーは、mRNA中にポリ-A120のためのポリ-T120が組み込まれている。より長いまたはより短いポリ(T)系を有する他のリバースプライマーを用いて、mRNA中のポリ(A)テールの長さを調整することが可能である。
【0319】
製造業者の使用説明書に従って、インビトロジェン・ピュアリンクTM PCRマイクロキット(Invitrogen’s PURELINKTM PCR Micro Kit)(カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA))を用いて、反応系を精製する(5μgまで)。より大量の反応は、より大きい容量を有する製品を用いた精製を必要とするであろう。精製後、ナノドロップ(NanoDrop)を用いてcDNAを定量し、そしてアガロースゲル電気泳動により分析してcDNAが予想サイズであることを確認する。次いで、cDNAを配列分析に付し、その後、in vitro転写反応に進む。
【0320】
実施例3.in vitro転写(IVT)
in vitro転写反応は、修飾ヌクレオチドまたは修飾RNAを含有するmRNAを産生する。供給ヌクレオチド三リン酸(NTP)混合物は、天然および非天然NTPを用い作製される。
【0321】
典型的なin vitro転写反応は、次のものを含む。
1.鋳型cDNA 1.0μg
2.10×転写緩衝液(400mM Tris-HCl pH8.0、190mM MgCl、50mM DTT、10mMスペルミジン) 2.0μl
3.カスタムNTP(各25mM) 7.2μl
4.RNアーゼ阻害剤 20U
5.T7 RNAポリメラーゼ 3000U
6.dHO 20.0μlまで および
7.37℃で3時間~5時間のインキュベーション。
【0322】
未精製のIVT混合物は、翌日の精製のために4℃で一晩貯蔵可能である。次いで、1UのRNアーゼフリーDNアーゼを用いて元の鋳型を消化する。37℃で15分間インキュベートした後、製造業者の説明書に従って、アンビオン・メガクリアーTM・キット(Ambion’s MEGACLEARTM Kit)(テキサス州オースティン(Austin,TX))を用いて、mRNAを精製する。このキットは、500μgまでのRNAを精製可能である。精製後、ナノドロップ(NanoDrop)を用いてRNAを定量し、そしてアガロースゲル電気泳動により分析してRNAが適正なサイズであることおよびRNAの分解が起こらなかったことを確認する。
【0323】
実施例4.mRNAの酵素キャッピング
mRNAのキャッピングは、次のように行われる。この場合、混合物は、60μg~180μgのIVT RNA、およびdHO(72μlまで)を含む。混合物を65℃で5分間インキュベートしてRNAを変性させ、次いで、直ちに氷に移す。
【0324】
次いで、プロトコルは、10×キャッピング緩衝液(0.5M Tris-HCl(pH8.0)、60mM KCl、12.5mM MgCl)(10.0μl)20mM
GTP(5.0μl)、20mM S-アデノシルメチオニン(2.5μl)、RNアーゼ阻害剤(100U)、2’-O-メチルトランスフェラーゼ(400U)、ワクシニアキャッピング酵素(グアニリルトランスフェラーゼ)(40U)、dH2O(28μlまで)の混合、および60μg RNAに対して37℃で30分間または180μg RNAに対して2時間までのインキュベーションを含む。
【0325】
次いで、製造業者の説明書に従って、アンビオン・メガクリアーTM・キット(Ambion’s MEGACLEARTM Kit)(テキサス州オースティン(Austin,TX))を用いて、mRNAを精製する。精製後、ナノドロップTM(NanoDropTM)(サーモ・フィッシャー(ThermoFisher)、マサチューセッツ州ウォルサム(Waltham,MA))を用いてRNAを定量し、そしてアガロースゲル電気泳動により分析してRNAが適正なサイズであることおよびRNAの分解が起こらなかったことを確認する。RNA産物はまた、逆転写PCRを行って配列決定のためのcDNAを産生することにより、配列決定することも可能である。
【0326】
実施例5.ポリAテーリング反応
cDNA中にポリTがない場合、最終生成物の精製前にポリAテーリング反応を行われなければならい。これは、キャップ化IVT RNA(100μl)、RNアーゼ阻害剤(20U)、10×テーリング緩衝液(0.5M Tris-HCl(pH8.0)、2.5M NaCl、100mM MgCl)(12.0μl)、20mMのATP(6.0μl)、ポリAポリメラーゼ(20U)、dH2O(123.5μlまで)の混合、および37℃で30分間のインキュベーションにより行われる。ポリAテールがすでに転写物中に存在する場合、テーリング反応をスキップして、アンビオン・メガクリアーTM・キット(Ambion’s MEGACLEARTM Kit)(テキサス州オースティン(Austin,TX))(500までμg)を用いて直ちに精製に移ることが可能である。ポリAポリメラーゼは、好ましくは、酵母中で発現される組換え酵素である。
【0327】
実施された本明細書に記載の研究では、ポリAテールは、160ヌクレオチド長を含むようにIVT鋳型中にコードされる。しかしながら、ポリAテーリング反応のプロセシング性または完全性は、常に正確に160ヌクレオチドをもたらすとは限らないことを理解されたい。そのため、約160ヌクレオチドのポリAテールの、たとえば、約150~165、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、または165は、本発明の範囲内である。
【0328】
実施例6.リピドイドを使用した修飾mRNAの製剤
製造業者のプロトコルに従って、次の化学RNAキャップアナログ、すなわち、3’-OMe-m7G(5’)ppp(5’)G[(ARCA)キャップ]、G(5’)ppp(5’)A、G(5’)ppp(5’)G、m7G(5’)ppp(5’)A、m7G(5’)ppp(5’)G(ニューイングランド・バイオラボ(New England BioLabs)(イプスウィッチ(Ipswich),MA))を用いて、in vitro転写反応と同時に、修飾RNAの5’キャッピングを行って、5’グアノシンキャップ構造を生成することが可能である。ワクシニアウイルスキャッピング酵素を用いて、修飾RNAの5’キャッピングを転写後に終了させ、「Cap0」構造:m7G(5’)ppp(5’)G(ニューイングランド・バイオラボ(New England BioLabs)(イプスウィッチ(Ipswich),MA))を生成することが可能である。ワクシニアウイルスキャッピング酵素および2’-O-メチルトランスフェラーゼの両方を用いて、Cap1構造を生成することが可能である。m7G(5’)ppp(5’)G-2’-O-メチル。Cap1に続いて、2’-O-メチルトランスフェラーゼを用いて、5’末端から三番目のヌクレオチドを2’-O-メチル化することにより、Cap2構造を生成することが可能である。Cap2に続いて、2’-O-メチルトランスフェラーゼを用いて、5’末端から四番目のヌクレオチドを2’-O-メチル化することにより、Cap3構造を生成することが可能である。酵素は、好ましくは、組換え起源に由来する。
【0329】
哺乳動物細胞中にトランスフェクトした場合、修飾mRNAは、12~18時間または18時間超、たとえば、24、36、48、60、72時間、または72時間超の安定性を有する。
【0330】
実施例7.キャッピング
A.タンパク質発現アッセイ
ARCA(3’-OMe-m7G(5’)ppp(5’)G)キャップアナログまたはCap1構造を含有するヒトG-CSF(配列番号1に示されるcDNA)をコードする合成mRNAは、等しい濃度でヒト初代角化細胞中にトランスフェクト可能である。トランスフェクションの6、12、24、および36時間後、培養培地中に分泌されたG-CSFの量は、ELISAによりアッセイすることが可能である。より高レベルのG-CSFを培地中に分泌する合成mRNAは、より高い翻訳能を有するキャップ構造を用いた合成mRNAに対応するであろう。
【0331】
B.純度分析合成
ARCAキャップアナログまたはCap1構造粗合成生成物を含有するヒトG-CSF(配列番号1に示されるcDNA)をコードするmRNAは、変性アガロース尿素ゲル電気泳動またはHPLC分析を用いて純度の比較が可能である。電気泳動による単一統合バンドを有する合成mRNAは、複数バンドまたは縞状バンドを有する合成mRNAと比較してより高純度の生成物に対応する。単一HPLCピークを有する合成mRNAもまた、より高純度の生成物に対応するであろう。より高効率を有するキャッピング反応は、より高純度のmRNA集団を提供するであろう。
【0332】
C.サイトカイン分析
ARCAキャップアナログまたはCap1構造を含有するヒトG-CSF(配列番号1に示されるcDNA)をコードする合成mRNAは、複数の濃度でヒト初代角化細胞中にトランスフェクトすることが可能である。トランスフェクションの6、12、24、および36時間後、培養培地中に分泌されたTNFαやIFNβなどの炎症誘発性サイトカインの量は、ELISAによりアッセイすることが可能である。より高レベルの炎症誘発性サイトカインを培地中に分泌する合成mRNAは、免疫活性化キャップ構造を含有する合成mRNAに対応するであろう。
【0333】
D.キャッピング反応効率
ARCAキャップアナログまたはCap1構造を含有するヒトG-CSF(配列番号1に示されるcDNA)をコードする合成mRNAは、キャップ化mRNAヌクレアーゼ処理後、LC-MSによりキャッピング反応効率に関して分析することが可能である。キャップ化mRNAのヌクレアーゼ処理は、遊離ヌクレオチドとLC-MSにより検出可能なキャップ化5’-5-三リン酸キャップ構造との混合物を生成するであろう。LC-MSスペクトルに基づくキャップ化生成物の量は、反応からの全mRNAを基準にしたパーセントとして表すことが可能であり、キャッピング反応効率に対応するであろう。より高いキャッピング反応効率を有するキャップ構造は、LC-MSによればより多量のキャップ化生成物を有するであろう。
【0334】
実施例8.リピドイドを使用した修飾mRNAの製剤
修飾mRNA(mmRNA)は、細胞への添加前に、mmRNAとリピドイドとを設定比で混合することにより、in vitro実験用として製剤化される。in vivo製剤は、生体全体にわたる循環を促進するために追加の成分の添加を必要とすることもある。in vivo作用に好適な粒子を形成するこれらのリピドイドの能力を試験するために、siRNA-リピドイド製剤に使用される標準的製剤化プロセスを出発点として使用した。最初のmmRNA-リピドイド製剤は、42%リピドイド、48%コレステロール、および10%PEGを含む粒子で構成可能であり、比のさらなる最適化が可能である。粒子形成後、mmRNAが添加されて、複合体に組み込まれる。カプセル化効率は、標準的色素排除アッセイを用いて決定される。
【0335】
実施例9~13のための材料および方法
A.脂質合成
修飾RNAを用いて製剤化されるために、当技術分野に概説される方法により、6種の脂質DLin-DMA、DLin-K-DMA、DLin-KC2-DMA、98N12-5、C12-200、およびDLin-MC3-DMAを合成した。DLin-DMAおよび前駆体は、ヘイエス(Heyes)ら著、制御放出誌(J.Control Release)、2005年、第107巻、276-287頁に記載されるように合成した。DLin-K-DMAおよびDLin-KC2-DMAおよび前駆体は、センペル(Semple)ら著、自然生物工学(Nature Biotechnology)、2010年、第28巻、172-176頁に記載されるように合成した。98N12-5および前駆体は、アキンク(Akinc)ら著、自然生物工学(Nature Biotechnology)、2008年、第26巻、561-569頁に記載されるように合成した。
【0336】
C12-200および前駆体は、ラブ(Love)ら著、米国国立科学アカデミー紀要(PNAS)、2010年、第107巻、1864-1869頁に概説された方法に従って合成した。アミン200(0.723g、3.36mmol、1eq)および撹拌子を含有するバイアルに2-エポキシドデカン(5.10g、27.7mmol、8.2eq)を添加した。バイアルを密閉し80℃に加温した。反応系を80℃で4日間攪拌した。次いで、純粋ジクロロメタン(DCM)からDCM:MeOH98:2までのグラジエントを用いてシリカゲルクロマトグラフィーにより、混合物を精製した。目標化合物をRP-HPLCによりさらに精製して、所望の化合物を得た。
【0337】
DLin-MC3-DMAおよび前駆体は、国際公開第2010054401号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の手順に従って合成した。10mLのDMF中のジリノレイルメタノール(1.5g、2.8mmol、1eq)、N,N-ジメチルアミノ酪酸(1.5g、2.8mmol、leq)、DIPEA(0.73mL、4.2mmol、1.5eq)、およびTBTU(1.35g、4.2mmol、1.5eq)の混合物を室温で10時間攪拌した。次いで、反応混合物をエーテルで希釈し、水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、そして減圧下で濃縮した。DCMからDCM:MeOH(98:2)へのグラジエントを用いてシリカゲルクロマトグラフィーにより、粗生成物を精製した。続いて、目標化合物を追加のRP-HPLC精製に付した。これをYMC-パックC4(YMC-Pack C4)カラムにより行って、目標化合物を得た。
【0338】
B.修飾RNAナノ粒子の製剤
合成脂質1、2-ジステアロイル-3-ホスファチジルコリン(DSPC)(アバンティ・ポーラ・リピッド(Avanti Polar Lipids)、アラバマ州アラバスター(Alabaster,AL))、コレステロール(シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、独国タウフキルヘン(Taufkirchen,Germany))、およびα-[3’-(1,2-ジミリストイル-3-プロパンオキシ)-カルボキサミドプロピル]-ω-メトキシポリオキシエチレン(PEGc- DOMG)(NOF、ベルギー国ボウェルベン(Bouwelven,Belgium))の溶液をエタノール中に50mMの濃度で調製して、-20℃で貯蔵した。脂質を組み合わせて50:10:38.5:1.5(脂質:DSPC:コレステロール:PEGc-DOMG)のモル比を取得し、そしてエタノールで希釈して25mMの最終脂質濃度にした。水中1~2mg/mLの濃度の修飾mRNAの溶液をpH3の50mMクエン酸ナトリウム緩衝液で希釈して、ストック修飾mRNA溶液を形成した。合成脂質溶液と修飾mRNA溶液とを10:1、15:1、20:1、および30:1の全脂質対修飾mRNA重量比で組み合わせることにより、脂質および修飾mRNAの製剤を調製した。脂質エタノール性溶液を迅速に水性修飾mRNA溶液に注入して33%エタノールを含有する懸濁液を得た。溶液を手動(MI)でまたはシリンジポンプ(SP)(Harvard Pump 33 Dual Syringe Pump Harvard Apparatus Holliston, MA)の助けを借りて注入した。
【0339】
エタノールを除去して緩衝液交換を達成するために、10kDの分子量カットオフ(MWCO)を有するスライド-A-ライザー(Slide-A-Lyzer)カセット(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック・インコーポレーテッド(Thermo Fisher Scientific Inc.) 、イリノイ州ロックフォード(Rockford,IL))を用いて、一次生成物の200倍の体積のpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で製剤を2回透析した。最初の透析を室温で3時間行い、次いで、製剤を4℃で一晩透析した。得られたナノ粒子懸濁液を0.2μm無菌フィルター(サルステッド(Sarstedt)、独国ヌンブレヒト(Numbrecht,Germany))に通してガラスバイアル中に濾過し、クリンプクロージャーで密閉した。
【0340】
C.製剤の特性解析
ゼタサイザー・ナノZS(Zetasizer Nano ZS)(モルバン・インストラメンツ・リミテッド(Malvern Instruments Ltd)、英国ウースターシャー州モルバン(Malvern,Worcestershire,UK))を用いて、粒子サイズの決定では1×PBS中で、およびζ電位の決定では15mM PBS中で、修飾mRNAナノ粒子の粒子サイズ、多分散性指数(PDI)、およびζ電位を決定した。
【0341】
紫外可視分光法を用いて、修飾mRNAナノ粒子製剤の濃度を決定した。1×PBS中希釈製剤100μLを、メタノールとクロロホルムとの4:1(v/v)混合液900μLに添加した。混合後、DU800分光光度計(ベックマン・コールター(Beckman Coulter)、ベックマン・コールター・インコーポレーテッド(Beckman Coulter,Inc.)、カリフォルニア州ブレア(Brea,CA))を用いて、溶液の吸収スペクトルを230nm~330nmで記録した。製剤で使用される修飾RNAの吸光係数、および、260nm波長の吸光度と330nm波長でのベースライン値との差に基づいて、ナノ粒子製剤中の修飾RNA濃度を計算した。
【0342】
クォント-ITTMリボグリーン(登録商標)RNAアッセイ(QUANT-ITTM
RIBOGREEN(登録商標)RNA assay)(インビトロジェン・コーポレーション(Invitrogen Corporation)、カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA))を用いて、ナノ粒子による修飾RNAのカプセル化を評価した。サンプルをTE緩衝液(10mM Tris-HCl、1mM EDTA、pH7.5)中に約5μg/mLの濃度で希釈した。50μLの希釈サンプルをポリスチレン96ウェルプレートに移し、次いで、50μlのTE緩衝液または50μLの2%トリトンX-100(Triton X-100)溶液のいずれかを添加した。プレートを37℃の温度で15分間インキュベートした。リボグーン(RIBOGREEN)(登録商標)試薬をTE緩衝液で1:100に希釈し、100μlのこの溶液を各ウェルに添加した。約480nmの励起波長および約520nmの発光波長で蛍光プレート読取り機(ワラック・ビクター1420マルチラベル・カウンター(Wallac Victor
1420 Multilablel Counter)、パーキン・エルマー(Perkin Elmer)、マサチューセッツ州ウォルサム(Waltham,MA))を用いて、蛍光強度を測定した。各サンプルの値から試薬ブランクの蛍光値を引き算し、そしてインタクトなサンプル(トリトンX-100(Triton X-100)の添加無し)の蛍光強度を、破壊されたサンプル(トリトンX-100(Triton X-100)の添加により引き起こされた)の蛍光値で割り算することにより、遊離の修飾RNAのパーセントを決定した。
【0343】
D.in vitroインキュベーション
ヒト胚性腎臓上皮(HEK293)細胞および肝細胞癌上皮(HepG2)細胞(LGC standards GmbH, Wesel, Germany)を96ウェルプレート(Greiner Bio-one GmbH, Frickenhausen,
Germany)上に接種した。また、HEK293細胞のプレートは、1型コラーゲンでプレコーティングされたものであった。100μl細胞培養培地中に、HEK293を30,000細胞/ウェルの密度で接種し、そしてHepG2を35,000細胞/ウェルの密度で接種した。HEK293では、細胞培養培地は、2mM L-グルタミン、1mMナトリウムピルベート、および1×非必須アミノ酸(バイワクロム(AGBiochrom AG)、独国ベルリン(Berlin,Germany))、および1.2mg/ml重炭酸ナトリウム(シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、独国ミュンヘン(Munich,Germany))が添加されたDMEM、10%FCSであり、HepG2では、培養培地は、2mM L-グルタミン、1mMナトリウムピルベート、および1×非必須アミノ酸(バイワクロム(AGBiochrom AG)、独国ベルリン(Berlin,Germany))が添加されたMEM(ギブコ・ライフ・テクノロジーズ(Gibco Life Technologies)、独国ダルムシュタット(Darmstadt,Germany))、10%FCSであった。細胞の接種直後、mCherry mRNA(配列番号5に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)を含有する製剤を四重試験方式で添加して、インキュベートした。in vitro転写(IVT)で使用した、T7プロモーター、5’非翻訳(UTR)、および3’UTRを有するmCherry cDNAは、配列番号6に与えられている。
【0344】
培養培地上清を96ウェルのプロバインド(Pro-Bind)U底プレート(ベックトン・ディッキンソン・ゲーエムベーハー(Beckton Dickinson GmbH)、独国ハイデルベルグ(Heidelberg,Germany))に移すことにより、細胞を採取した。細胞を1/2体積のトリプシン/EDTA(バイオクロム・アーゲー(Biochrom AG)、独国ベルリン(Berlin,Germany))でトリプシン処理し、それぞれの上清を用いてプールし、1体積のPBS/2%FCS(両方ともバイオクロム・アーゲー(Biochrom AG)、独国ベルリン(Berlin,Germany))/0.5%ホルムアルデヒド(メルク(Merck)、独国ダルムシュタット(Darmstadt,Germany))を添加することにより固定した。次いで、LSRII血球計(ベックトン・ディッキンソン・ゲーエムベーハー(Beckton Dickinson GmbH)、独国ハイデルベルグ(Heidelberg,Germany))により、PE-テキサスレッド(PE-Texas Red)に対して532nm励起レーザーおよび610/20フィルターを用いて、サンプルをフローサイトメーター測定に付した。分析サンプルに対して、すべてのイベントの平均蛍光強度(MFI)および4つの独立したウェルの標準偏差を提示した。
【0345】
実施例9.ナノ粒子製剤上の精製
修飾RNAに対する脂質の比および/または精製に、平均蛍光強度(MFI)が依存するかを調べるために、HEK293およびHepG2においてDLin-KC2-DMAおよび98N12-5のナノ粒子製剤を試験した。テーブル3に記載の仕様書に対してシリンジポンプを用いて、DLin-KC2-DMAの3つの製剤および98N12-5の2つの製剤を作製した。精製サンプルは、セファデックス(登録商標) G-25(SEPHADEX(登録商標) G-25) DNAグレード(GEヘルスケア(GE Healthcare)、スウェーデン国(Swede)n)により精製された。24ウェルプレートにおいて、250ng修飾RNA/ウェルの濃度で、精製の前および後(aP)の各製剤を試験した。各製剤およびバックグラウンドサンプルに対してフローサイトメーターにより分析したときのFL4チャネルでマーカー陽性の細胞のパーセント(%FL4陽性)は、図3Aおよび3Bに示されており、各製剤およびバックグラウンドサンプルに対するFL4チャネルのマーカーのMFIは、図4Aおよび4Bに示されている。精製された製剤は、精製前に試験された製剤よりもわずかに高いMFIを有していた。
【0346】
【表3】

実施例10.濃度反応曲線
用量範囲にわたり、FL4またはmCherry(配列番号5に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)のMFIを決定するために、98N12-5(NPA-005)およびDLin-KC2-DMA(NPA-003)のナノ粒子製剤をさまざまな濃度で試験した。試験した製剤は、テーブル4にまとめられている。98N12-5のナノ粒子製剤の最適濃度を決定するために、さまざまな濃度の製剤化修飾RNA(100ng、10ng、1.0ng、0.1ng、および0.01ng/ウェル)をHEK293の24ウェルプレートで試験し、各用量のFL4 MFIの結果を図5Aに示す。同様に、DLin-KC2-DMAのナノ粒子製剤の最適濃度を決定するために、さまざまな濃度の製剤化修飾RNA(250ng 100ng、10ng、1.0ng、0.1ng、および0.01ng/ウェル)をHEK293の24ウェルプレートで試験し、各用量のFL4 MFIの結果を図5Bに示す。また、HEK293の24ウェルプレート中で、製剤化修飾RNA(250ng、100ng、および30ng/ウェル)のさまざまな濃度で、DLin-KC2-DMAのナノ粒子製剤を試験した。各用量のFL4 MFIの結果は、図5Cに示される。98N12-5では1ng/ウェルの用量およびDLinK2-DMAでは10ng/ウェルの用量が、バックグラウンドのFL4 MFIに類似していることが判明した。
【0347】
濃度がバックグラウンドにどの程度類似しているかを調べるために、我々は、mCherry発現の検出に対して最適化されたフィルターセットによるフローサイトメーターを利用し、バックグラウンドレベルと対比して増大された感度を有する結果を得ることが可能であった。98N12-5(NPA-005)およびDLin-K2-DMA(NPA-003)に対して、25ng/ウェル、0.25ng/ウェル、0.025ng/ウェル、および0.0025ng/ウェルの用量を分析して、mCherryのMFIを決定した。テーブル5に示されるように、0.025ng/ウェルの濃度およびそれ未満の濃度は、約386.125であるmCherryのバックグラウンドMFIレベルに類似している。
【0348】
【表4】
【0349】
【表5】

実施例11.手動注射製剤およびシリンジポンプ製剤
DLin-KC2-DMAおよび98N12-5の2つの製剤を手動注射(MI)およびシリンジポンプ注射(SP)により調製し、そしてバックグラウンドサンプルと共に分析して、さまざまな製剤のmCherry(配列番号5に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)のMFIを比較した。テーブル5は、同一の脂質および脂質/RNA比の手動注射製剤と比較して、シリンジポンプ製剤がより高いMFIを有していたことを示している。
【0350】
【表6】

実施例12.製剤のmCherry蛍光
HEK293細胞のプレートでは60ng/ウェルまたは62.5ng/ウェルおよびHepG2細胞のプレートでは62.5ng/ウェルの濃度で、DLin-DMA、DLin-K-DMA、DLin-KC2-DMA、98N12-5、C12-200、およびDLin-MC3-DMAの製剤を24時間インキュベートして、各製剤のmCherry(配列番号5に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)のMFIを調べた。試験した製剤は、以下のテーブル6にまとめられている。60ng/ウェルに対しては図6Aならびに62.5ng/ウェルに対しては図6B、6C、6D、および6Eに示されるように、NPA-003およびNPA-018の製剤は、最も高いmCherry MFIを有し、NPA-008、NPA-010、およびNPA-013の製剤は、バックグラウンドサンプルmCherry MFI値とほぼ同様である。
【0351】
【表7】

実施例13.in vivo製剤研究
修飾mRNAおよび脂質を含有する単回用量の製剤をマウス(n=5)に静脈内投与した。マウスに投与される修飾mRNAは、G-CSF(配列番号4に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)、エリトロポイエチン(EPO)(配列番号7に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)、第IX因子(配列番号8に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)、またはmCherry(配列番号5に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)から選択される。in vitro転写(IVT)で使用した、T7プロモーター、5’非翻訳(UTR)、および3’UTRを有するエリトロポイエチンcDNAは、配列番号9に与えられている。
【0352】
また、各製剤は、DLin-DMA、DLin-K-DMA、DLin-KC2-DMA、98N12-5、C12-200、またはDLin-MC3-DMAの1つから選択される脂質を含有する。100μg、10μgまたは1μgの製剤化修飾mRNAをマウスに注射して、製剤投与の8時間後、屠殺する。ヒトG-CSF修飾mRNAを含有する製剤が投与されたマウスの血清を、特異的G-CSF ELISAにより測定し、ヒト第IX因子修飾RNAが投与されたマウスの血清を、特異的第IX因子ELISAまたは色素原性アッセイにより分析する。mCherry修飾mRNAが投与されたマウスの肝臓および脾臓を、免疫組織化学(IHC)または蛍光標示式細胞分取(FACS)により分析する。対照として、1群のマウスにはいずれの製剤をも注射せずに、それらの血清および組織を採取してELISA、FACS、および/またはIHCにより分析する。
【0353】
実施例14.in vitro発現およびin vivo発現
A.A.リピドイド製剤を使用したヒト細胞でのin vitro発現
in vitroトランスフェクションの試験に使用されるmmRNA対リピドイドの比は、経験に基づいてさまざまなリピドイド:mmRNA比で試験される。siRNAおよびリピドイドを用いた以前の研究では、2.5:1、5:1、10:1、および15:1のリピドイド:siRNA wt:wt比が利用された。siRNAよりもmmRNAの長さが長いと仮定すれば、リピドイドに対するmmRNAのwt:wt比についてより小さい比で効果を発揮しうる。また、それに加えて、比較のために、RNAIMAXTM(インビトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA))またはTRANSIT-mRNA(ミラスバイオ(Mirus Bio)、ウィスコンシン州マジソン(Madison WI))のカチオン性脂質送達媒体を用いて、mmRNAを製剤化した。リピドイド製剤化ルシフェラーゼ(配列番号10に示されるIVT cDNA配列)、緑色蛍光タンパク質(GFP)(配列番号11に示されるIVT cDNA配列)、G-CSF(配列番号4に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)、および、所望のタンパク質産物を発現するEPO mmRNA(配列番号7に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)の能力を、ルシフェラーゼ発現に関しては発光、GFP発現に関してはフローサイトメトリー、ならびに、G-CSFおよびエリトロポイエチン(EPO)の分泌に関してはELISAにより、確認することが可能である。
【0354】
B.静脈内注射後のin vivo発現
98N12-5、C12-200、およびMD1をはじめとする多種多様なリピドイドを用いて、製剤の全身性静脈内投与を施すが、これらに限定されるものではない。
【0355】
mmRNAを含有するリピドイド製剤は、動物に静脈内注射される。修飾mRNA(mmRNA)コードタンパク質の発現は、血液サンプルならびに/または動物から採取された肝臓および脾臓(これらに限定されるものではない)をはじめとする他の器官サンプルで評価される。また、単回用量静脈内研究を行えば、所望の産物の発現の量、用量反応性、および寿命の評価が可能になるであろう。
【0356】
一実施形態では、98N12-5、C12-200、MD1、および他のリピドイドのリピドイド系製剤を用いて、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、mCherry蛍光タンパク質、分泌型アルカリホスファターゼ(sAP)、ヒトG-CSF、ヒト第IX因子、またはヒトエリトロポイエチン(EPO)mmRNAを動物中に送達する。以上に記載されたように脂質を用いてmmRNAを製剤化した後、生理食塩水製剤またはさまざまなmmRNAの1つを含有するリピドイド製剤のいずれかの投与を受けるように、動物をグループに分ける。mmRNAの1つは、ルシフェラーゼ、GFP、mCherry、sAP、ヒトG-CSF、ヒト第IX因子、およびヒトEPOから選択される。動物に注射する前、mmRNA含有リピドイド製剤をPBS中に希釈する。次いで、10mg/kgの用量から1ng/kg程度の低い用量までにわたり、単回用量(1回分)の製剤化mmRNAを動物に投与するが、好ましい範囲は、10mg/kg~100ng/kgであり、mmRNAの用量は、動物の体重に依存し、たとえば、20グラムのマウスは、最大で0.2mlの製剤の投与を受ける(投与は、体重1kgあたりのmmRNAに基づく)。mmRNA-リピドイド製剤の投与後、血清、組織、および/または組織溶解物を取得して、mmRNAコード製剤のレベルを単一および/または一連の時間間隔で決定する。リピドイド製剤化ルシフェラーゼ、GFP、mCherry、sAP、G-CSF、第IX因子、および、所望のタンパク質産物を発現するEPO mmRNAの能力を、ルシフェラーゼの発現に関しては発光により、GFP発現およびmCherry発現に関してはフローサイトメトリーにより、または、sAPに関しては酵素活性により、G-CSF、第IX因子、および/もしくはEPOの分泌に関してはELISAにより、確認する。
【0357】
また、複数回用量(複数回投与)レジメンのさらなる研究を行って、mmRNAの最大発現を決定したり、mmRNA駆動発現の飽和性を評価したり(並行的または逐次的に対照および活性mmRNA製剤を投与することにより)、繰返し薬剤投与の実現可能性を決定したり(何週間かまたは何ヶ月間かの間隔で何回かmmRNAを投与してから、発現レベルが免疫原性などの因子により影響されるかを決定することにより)することも可能である。また、G-CSFやEPOなどのタンパク質の生理学的機能の評価は、それぞれ、試験動物のサンプルの分析ならびに顆粒球および赤血球のカウント数増大の検出を介して決定される。また、動物における第IX因子などの発現タンパク質産物の活性は、第IX因子酵素活性(たとえば、活性化部分トロンボプラスチン時間)および凝血時間の影響を分析することにより評価可能である。
【0358】
C.筋肉内注射後および/または皮下注射後のin vitro発現
筋肉内経路または皮下注射経路を介してオリゴヌクレオチド(mRNAを含む)を送達するためのリピドイド製剤の使用は、これまで報告されていないので、評価する必要がある。mmRNAの筋肉内注射および/または皮下注射を評価して、mmRNA含有リピドイド製剤が所望のタンパク質(portiens)の局所発現および全身発現の両方を引き起こしうるかを調べる。
【0359】
ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、mCherry蛍光タンパク質、分泌型アルカリホスファターゼ(sAP)、ヒトG-CSF、ヒト第IX因子、またはヒトエリトロポイエチン(EPO)のmmRNAから選択されるmmRNAを含有する98N12-5、C12-200およびMD1のリピドイド製剤を動物中に筋肉内注射および/または皮下注射する。mmRNAコードタンパク質の発現は、筋肉内または皮下組織内でも、全身的に血液ならびに他の器官たとえば肝臓および脾臓でも、評価される。単回用量研究では、所望の産物の発現の量、用量反応性、および寿命の評価が可能である。
【0360】
生理食塩水製剤または修飾mRNAを含有する製剤のいずれかの投与を受けるグループに動物を分ける。注射前、mmRNA含有リピドイド製剤をPBS中に希釈する。50mg/kgから1ngkg程度の低い用量までにわたり、製剤化mmRNAの単回筋肉内用量を動物に投与するが、好ましい範囲は、10mg/kg~100ngkgである。筋肉内投与の最大用量は、マウスで、マウスの後肢中への筋肉内注射に供する場合、約1mg
mmRNAまたは0.02ng mmRNA程度に低い。皮下投与に供する場合、動物は、400mg/kgから1ng/kg程度の低用量までの単回筋肉内用量の製剤化mmRNAが投与される。ただし、好ましい範囲は、80mg/kg~100ng/kgである。皮下投与の最大用量は、マウスでは、約8mg mmRNA、または0.02ng mmRNA程度に低い。
【0361】
20グラムのマウスでは、単回筋肉内注射の量は、最大で0.025mlであり、単回皮下注射では、最大で0.2mlである。投与されるmmRNAの最適用量は、動物の体重から計算される。mmRNA-リピドイドの投与後の種々の時点で、血清、組織、および組織溶解物を取得して、mmRNAコード産物のレベルを決定する。リピドイド製剤化ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、mCherry蛍光タンパク質、分泌型アルカリホスファターゼ(sAP)、ヒトG-CSF、ヒト第IX因子、または、所望のタンパク質産物を発現するヒトエリトロポイエチン(EPO)のmmRNAの能力は、ルシフェラーゼ発現に関しては発光により、GFPおよびmCherryの発現に関してはフローサイトメトリー、sAPに関しては酵素活性により、およびG-CSF、第IX因子、およびエリトロポイエチン(EPO)の分泌に関してはELISAにより、確認される。
【0362】
また、複数回用量レジメンの追加の研究を行って、mmRNAを用いて最大発現を決定したり、mmRNA駆動発現の飽和性を評価したり(並行的または逐次的に対照および活性mmRNA製剤を投与することにより達成される)、繰返し薬剤投与の実現可能性を決定したり(何週間かまたは何ヶ月間かの間隔で何回かmmRNAを投与してから、発現レベルが免疫原性などの因子により影響されるかを決定することにより)する。また、一時点で複数の皮下注射部位または筋肉内注射部位を利用する研究を利用して、mmRNA薬剤への暴露をさらに増大させたり、タンパク質産生を改善したりする。GFP、mCherry、sAP、ヒトG-CSF、ヒト第IX因子、およびヒトEPOなどのタンパク質の生理学的機能の評価は、試験動物のサンプルの分析ならびに顆粒球および/または赤血球のカウント数の変化の検出を介して決定される。また、動物における第IX因子などの発現タンパク質産物の活性は、第IX因子酵素活性(たとえば、活性化部分トロンボプラスチン時間)および凝血時間の影響を分析することにより評価可能である。
【0363】
実施例15.分割用量研究
一時点で複数の皮下注射部位または筋肉内注射部位を利用する研究を設計および実施して、mmRNA薬剤への暴露を増大させたり、タンパク質産生を改善したりする方法を研究する。発現タンパク質産物の検出に加えて、タンパク質の生理学的機能の評価もまた、試験動物のサンプルの分析により決定した。
【0364】
驚くべきことに、mmRNAの分割投与は、単回単位投与または複数回投与のスキームによりもたらされるよりも大きいタンパク質産生および表現型反応をもたらすことが確認された。
【0365】
単回単位用量、複数回用量、および分割用量の実験の設計は、緩衝液のみに加えて投与されるヒトエリトロポイエチン(EPO)mmRNA(配列番号7に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)を使用することを含んでいた。投与媒体(F.緩衝液)は、150mM NaCl、2mM CaCl、2mM Na-ホスフェート(1.4mM第一リン酸ナトリウム、0.6mM第二リン酸ナトリウム)、および0.5mM EDTA、pH6.5で構成された。水酸化ナトリウムを用いてpHを調整し、最終溶液を濾過滅菌した。mmRNAは、各シトシン部位では5meC置換および各ウリジン部位でプソイドウリジン置換により修飾した。
【0366】
100μgの単回単位用量で動物(n=5)にIM(筋肉内)注射した。複数回投与では、3回の100μg投与および6回の100μg投与の2つのスケジュールを使用した。分割投与スキームでは、3回の33.3μg mmRNA投与および6回の16.5μg mmRNA投与の2つのスケジュールを使用した。対照投与は、6回の緩衝液のみの使用を含んでいた。対照mmRNAは、100μgで6倍に投与された、ルシフェラーゼmmRNA(配列番号10に示されるIVT cDNA配列)の使用を含んでいた。注射の13時間後、血液および筋肉組織を評価した。
【0367】
緩衝液中EPO mmRNAのI.M.単回、複数回、または分割投与の13時間後、ヒトEPOタンパク質をマウス血清中で測定した。7つのマウスグループ(n=マウス5匹/グループ)を処置および評価した。結果はテーブル7に示される。
【0368】
【表8】

分割因子は、単位薬剤あたりの産物を単位薬剤あたりの単回用量産物で割り算したものとして定義される(PUD)。たとえば、治療グループ2では、値 .28または単位薬剤(mmRNA)あたりの産物(EPO)を単位薬剤あたりの単回用量産物0.14で割り算する。結果は2である。同様に、治療グループ4では、値1.1または単位薬剤(mmRNA)あたりの産物(EPO)を単位薬剤あたりの単回用量産物0.14で割り算する。結果は7.9である。その結果、用量分割因子(DSF)は、分割用量レジメンの有効性の指標として使用されうる。全一日用量の任意の単回投与では、DSFは1に等しいはずである。したがって、分割用量レジメンでこの値よりも大きいDSFはいずれも、有効性の増大の指標である。
【0369】
用量反応の傾向、注射部位の影響、および注射のタイミングの影響を調べるために、研究を行う。これらの研究では、1μg、5μg、10μg、25μg、50μg、およびそれらの間の値を含むさまざまな用量を用いて、用量反応の転帰を調べる。100μgの全用量に対する分割投与は、1.6μg、4.2μg、8.3μg、16.6μg、または所定の全用量の投与と等しい値および全用量の3または6回投与を含む。
【0370】
注射部位は、肢または注射に好適な十分な領域を呈する任意の身体表面から選択される。これはまた、真皮(真皮内)、表皮(表皮)、皮下組織(SC)、または筋肉(IM)を標的とするために、注射深さの選択を含みうる。注射角度は、標的送達部位によって異なるであろう。真皮内部位を標的とする注射では皮膚の表面の平面から10~15度の角度であり、皮下注射では皮膚の表面の平面から20~45度であり、実質的に筋肉中への注射では60~90度の角度である。
【0371】
実施例16:用量反応および注射部位選択およびタイミング
用量反応の傾向、注射部位の影響、および注射のタイミングの影響を調べるために、実施例15に概説されるプロトコルに従って研究を行う。これらの研究では、1μg、5μg、10μg、25μg、50μg、およびそれらの間の値を含むさまざまな用量を用いて、用量反応の転帰を調べる。100μgの全用量に対する分割投与は、1.6μg、4.2μg、8.3μg、16.6μg、または所定の全用量の投与と等しい値および全用量の3または6回投与を含む。
【0372】
注射部位は、肢または注射に好適な十分な領域を呈する任意の身体表面から選択される。これはまた、真皮(真皮内)、表皮(表皮)、皮下組織(SC)、または筋肉(IM)を標的とするために、注射深さの選択を含みうる。注射角度は、標的送達部位によって異なるであろう。真皮内部位を標的とする注射では皮膚の表面の平面から10~15度の角度であり、皮下注射では皮膚の表面の平面から20~45度であり、実質的に筋肉中への注射では60~90度の角度である。RNAIMAXTM
実施例17.投与経路
さまざまな投与経路を用いた投与を研究するために、さらなる研究を行った。実施例15に概説されるプロトコルに従って、テーブル8に概説される投与チャートにより、各グループあたり4匹のマウスの筋肉内(I.M.)、静脈内(IV)、または皮下(S.C.)に投与した。注射の13時間後、すべてのマウスから血清を採取し、筋肉内および皮下のグループからは、注射部位の組織を採取し、静脈内グループからは、脾臓、肝臓、および腎臓を採取した。筋肉内グループの結果は、図7Aに示されており、皮下グループの結果は、図7Bに示されている。
【0373】
【表9】

実施例18:修飾mRNAのin vivo送達
修飾RNAをC57/BL6マウスの筋肉内、皮下、または静脈内に送達して、ルシフェラーゼを用いた修飾RNAの生体内分布を評価した。すべての送達方法で使用した製剤緩衝液は、150mM塩化ナトリウム、2mM塩化カルシウム、2mM Na+リン酸塩(1.4mM第一リン酸ナトリウムおよび0.6mM第二リン酸ナトリウムを含んでいた)、および0.5mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有していた。最終pH6.5に達するように、水酸化ナトリウムを用いて調整した後、濾過および滅菌を行った。送達緩衝液として1×濃度を使用した。マウスに送達するリポプレックス化溶液を形成するために、第1のバイアル内で、50μgのRNAを送達緩衝液中、室温で10分間平衡化させ、第2のバイアル内で、10μlのRNAiMAX TMを送達緩衝液中、室温で10分間平衡化させた。平衡後、バイアルを合わせて、100μlの最終体積に達するように送達緩衝液を添加し、次いで、室温で20分間インキュベートした。各マウスに150mg/kgで腹腔内注射(IP)を行うことによりルシフェリンを投与し、その後、ルシフェリン暴露曲線のプラトー期(15~30分間)にイメージングを行った。ルシフェリンを形成するために、1g D-ルシフェリンカリウム塩またはナトリウム塩を66.6mlの蒸留リン酸緩衝溶液(DPBS)(Mg2+もCa2+も含まれていない)中に溶解させて、15mg/ml溶液を作製した。溶液を穏やかに混合して0.2μmシリンジフィルターに通し、その後、窒素でパージし、分注し、そしてできるかぎり光から保護しながら-80℃で凍結させた。ルシフェリンが溶解しなかった場合、水浴を用いて溶体を解凍し、穏やかに混合し、そして投与日に氷上に保持した。
【0374】
投与の2、8、および24時間後、各マウスの全身像を取得した。投与の24時間後、各マウスから組織像および血清を取得した。静脈内投与を受けたマウスでは、それらの肝臓、脾臓、腎臓、肺、心臓、腎周囲脂肪組織、および胸腺のイメージングを行った。筋肉内投与または皮下投与を受けたマウスでは、それらの肝臓、脾臓、腎臓、肺、腎周囲脂肪組織、および筋肉が注射部位であった。各投与経路および投与レジメンで、全身像から生物発光をフォトン/秒単位で測定した。
【0375】
A.筋肉内投与
修飾ルシフェラーゼmRNA(配列番号10に示されるIVT cDNA配列)(裸のLuc)、リポプレックス化修飾ルシフェラーゼmRNA(リポプレックス-luc)、リポプレックス化修飾顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)mRNA(配列番号4に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)(リポプレックス-サイトカイン)、または形成緩衝液のいずれかを、右後肢では各製剤につき50μlの注射量で50μgの修飾RNAの単回用量で、および左後肢では50μlの注射量で5μgの修飾RNAの単回用量で、マウスに筋肉内(I.M.)投与した。投与の2、8、および24時間後の各グループのルシフェラーゼ発現シグナルの生物発光平均を、左後肢では図8Aにおよび右後肢では図8Bに示す。生物発光は、リポプレックスを含有するおよび含有しない5μgおよび50μgの修飾RNA製剤の注射部位で陽性シグナルを示した。
【0376】
B.皮下投与
修飾ルシフェラーゼmRNA(裸のLuc)、リポプレックス化修飾ルシフェラーゼmRNA(リポプレックス-luc)、リポプレックス化修飾G-CSF mRNA(リポプレックス-G-CSF)、または形成緩衝液を、各製剤につき100μlの注射量で50μgの修飾mRNAの単回用量で、マウスに皮下(S.C.)投与した。投与の2、8、および24時間後の各グループのルシフェラーゼ発現シグナルの生物発光平均を、図8Cに示す。生物発光は、リポプレックスを含有するおよび含有しない50μgの修飾mRNA製剤の注射部位で陽性シグナルを示した。
【0377】
C.静脈内投与
修飾ルシフェラーゼmRNA(裸のLuc)、リポプレックス化修飾ルシフェラーゼmRNA(リポプレックス-luc)、リポプレックス化修飾G-CSF mRNA(リポプレックス-G-CSF)、または形成緩衝液を、各製剤につき100μlの注射量で50μgの修飾mRNAの単回用量で、マウスに静脈内(I.V.)投与した。投与の2時間後の各グループの脾臓のルシフェラーゼ発現シグナルの生物発光平均を図8Dに示す。生物発光は、リポプレックスを含有する50μgの修飾mRNA製剤の脾臓で陽性シグナルを示した。
【0378】
実施例19:リポプレックスを用いたin vivo送達
A.ヒトEPO修飾RNAリポプレックス
100μgの修飾ヒトエリトロポイエチンmRNA(配列番号7に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)(EPO、完全修飾5-メチルシトシン、N1-メチルプソイドウリジン)を含有する製剤を、30体積%のRNAIMAX TMでリポプレックス化し(リポプレックス-h-Epo-46、生成2またはGen2)、4匹のC57BL6マウスに50~70μLで筋肉内送達した。他のグループは、30体積%のRNAIMAXTMでリポプレックス化された100μgの修飾ルシフェラーゼmRNAを含有する対照として機能するリポプレックス化修飾ルシフェラーゼmRNA(リポプレックス-luc)(配列番号10に示されるIVT cDNA配列)の注射を受けるマウス、または65μlの投与量で陰性対照として製剤緩衝液の注射を受けるマウスで構成される。筋肉内注射の13時間後、各マウスから血清を採取して、ヒトEPO ELISAによりマウス血清中のヒトEPOタンパク質の量を測定した。結果を図9に示す。
【0379】
B.ヒトG-CSF修飾RNAリポプレックス
修飾ヒトG-CSF mRNA(配列番号4に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)(5-メチルシトシンおよびプソイドウリジンで完全に修飾されたG-CSF(G-CSF)または5-メチルシトシンおよびN1メチル-プソイドウリジンで完全に修飾されたG-CSF(G-CSF-N1))の2つのタイプの一方を100μg含有する製剤を、30体積%のRNAIMAXTMでリポプレックス化し、筋肉内(I.M)では150μL、皮下(S.C)では150μL、および静脈内(l.V)では225μLを、C57/BL6マウスに送達する。3つの対照グループでは、筋肉内で100μgの修飾ルシフェラーゼmRNA(配列番号10に示されるIVT cDNA配列)(Luc-unsp I.M.)または静脈内に150μgの修飾ルシフェラーゼmRNA(Luc-unsp I.V.)または筋肉内に150μLの製剤緩衝液(緩衝液I.M.)のいずれかを投与した。製剤の投与の6時間後、各マウスから血清を採取して、ヒトG-CSF ELISAによりマウス血清中のヒトG-CSFタンパク質の量を測定した。結果を図10に示す。
【0380】
C.ヒトG-CSF修飾RNAリポプレックスの比較
30体積%のRNAIMAXTMでリポプレックス化された5-メチルシトシン(5mc)修飾およびプソイドウリジン(ψ)修飾を有する修飾ヒトG-CSF mRNA(G-CSF-Gen1-リポプレックス)、生理食塩水中の5mc修飾およびψ修飾を有する修飾ヒトG-CSF mRNA(G-CSF-Gen1-生理食塩水)、30体積%のRNAIMAXTMでリポプレックス化されたN15-メチルシトシン(N1-5mc)修飾およびψ修飾を有する修飾ヒトG-CSF mRNA(G-CSF-Gen2-リポプレックス)、生理食塩水中のN1-5mc修飾およびψ修飾を有する修飾ヒトG-CSF mRNA(G-CSF-Gen2-生理食塩水)、30体積%のRNAIMAXTMでリポプレックス化された5mc修飾およびψ修飾を有する修飾ルシフェラーゼ(Luc-リポプレックス)、または生理食塩水中の5mc修飾およびψ修飾を有する修飾ルシフェラーゼmRNA(Luc-生理食塩水)のいずれかを100μg含有する製剤を筋肉内(I.M.)または皮下(S.C.)に送達し、そして各投与方法の対照グループでは、80μLの用量の製剤緩衝液(F.緩衝液)をC57/BL6マウスに投与した。注射の13時間後、各マウスの注射部位から血清および組織を採取してG-CSF ELISAにより分析し、ヒトG-CSFタンパク質レベルを比較した。筋肉内投与のマウス血清中のヒトG-CSFタンパク質の結果は、図11Aに示され、皮下投与の結果は、図11Bに示される。
【0381】
D.mCherry修飾RNAリポプレックスの比較
筋肉内投与および皮下投与
30体積%のRNAIMAXTMでリポプレックス化された100μgの修飾mCherry mRNA(配列番号5に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール、;5’キャップ、Cap1)または生理食塩水中の修飾mCherry mRNAのいずれかを含有する製剤を、マウスに筋肉内送達および皮下送達する。また、対照グループのマウスには、製剤緩衝液を筋肉内投与または皮下投与する。注射の17時間後、マウスの注射部位を採取して、切片を切り出すことにより、タンパク質の産生に関与する細胞型を決定しうる。
【0382】
硝子体内投与
RNAIMAXTMでリポプレックス化された修飾mCherry mRNA、製剤緩衝液中の修飾mCherry mRNA、RNAMAXTMでリポプレックス化された修飾ルシフェラーゼmRNA、製剤緩衝液中の修飾ルシフェラーゼmRNAのいずれかを10μg含有する製剤は、5μl/眼の投与量では硝子体内注射(IVT)によりラットに投与可能である。また、ラットの対照グループには、5μl/眼の投与量で製剤緩衝液をIVTにより投与する。注射の18時間後、処置されたラットから眼を採取して、切片の切出しおよび溶解を行うことにより、in vivoで効果的にmmRNAを眼に送達してタンパク質産生をもたらしうるかを調べたり、in vivoでタンパク質産生に関与する細胞型を調べたりすることが可能である。
【0383】
鼻腔内投与
30体積%のRNAIMAXTMでリポプレックス化された修飾mCherry mRNA、生理食塩水中の修飾mCherry mRNA、30体積%のRNAIMAXTMでリポプレックス化された修飾ルシフェラーゼmRNA、または生理食塩水中の修飾ルシフェラーゼmRNAのいずれかを100μg含有する製剤を鼻腔内送達する。また、対照グループには製剤緩衝液を鼻腔内投与する。点滴注入の約13時間後、肺を採取して切片の切出し(mCherry mRNAの投与を受けたもの)またはホモジナイゼーション(ルシフェラーゼmRNAの投与を受けたもの)に供しうる。これらのサンプルは、in
vivoで効果的にmmRNAを肺に送達してタンパク質産生をもたらしうるかを調べたり、in vivoでタンパク質の産生に関与する細胞型を調べたりするために使用されるであろう。
【0384】
実施例20:さまざまな脂質比を用いたin vivo送達
修飾mRNAをC57/BL6マウスに送達して、さまざまな脂質比および得られたタンパク質発現を評価した。10%、30%、もしくは50%RNAIMAXTMでリポプレックス化された100μg修飾ヒトEPO mRNA(配列番号7に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)、10%、30%、もしくは50%のRNAIMAXTMでリポプレックス化された100μg修飾ルシフェラーゼmRNA(配列番号10に示されるIVT cDNA配列)、または製剤緩衝液の製剤を、単回70μl用量でマウスに筋肉内投与した。注射の13時間後、血清を採取してヒトEPO ELISAを行うことにより、各マウス中のヒトEPOタンパク質レベルを決定した。図12に示される、ヒトEPO ELISAの結果は、筋肉中で発現される修飾ヒトEPOが、さまざまなパーセントのRNAIMAXTMのそれぞれで血清中に分泌されることを示している。
【0385】
実施例21:哺乳動物における筋肉内および皮下in vivo送達
生理食塩水中に製剤化された修飾ヒトEPO mRNA(配列番号7に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)を、C57/BL6マウスまたはスプラーグドーリーラットのいずれかに送達して、ヒトEPO産生への用量依存性を評価した。テーブル9の投与チャートに記載されるように、50μlの修飾ヒトEPO mRNA(h-EPO)、修飾ルシフェラーゼmRNA(Luc)(配列番号10に示されるIVT cDNA配列)、または製剤緩衝液(F.緩衝液)を、ラットの筋肉内に注射した。
【0386】
テーブル10の投与チャートに記載されるように、50μlの修飾ヒトEPO mRNA(h-EPO)、修飾ルシフェラーゼmRNA(Luc)、または製剤緩衝液(F.Buffer)を、マウスの筋肉内または皮下に注射した。注射の13時間後、血液を採取して血清を分析することにより、各マウスまたはラットでヒトEPOの量を決定した。pg/ml単位の平均および幾何平均もまた、ラット研究のために、テーブル9に示されている。
【0387】
【表10】
【0388】
【表11】

実施例22:ラットにおける筋肉内in vivo送達後の活性持続期間
生理食塩水中で製剤化された修飾ヒトEPO mRNA(配列番号7に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)をスプラーグドーリーラットに送達して、用量反応期間を調べた。テーブル11の投与チャートに記載されるように、50μlの修飾ヒトEPO mRNA(h-EPO)、修飾ルシフェラーゼmRNA(配列番号10に示されるIVT cDNA配列)、または製剤緩衝液(F.緩衝液)を、ラットの筋肉内に注射した。筋肉内注射の2、6、12、24、48、および72時間後、ラットから採血して所定の時間で血清中のヒトEPOの濃度を調べた。pg/ml単位の平均および幾何平均もまた、この研究のために、テーブル11に示されている。
【0389】
【表12】

実施例23.VEGF-Aのin vitroトランスフェクション
リバーストランスフェクションによって、ヒト血管内皮増殖因子アイソフォームA(VEGF-A)修飾mRNA(配列番号12に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)を、24マルチウェルプレート中でヒト角化細胞内にトランスフェクトした。50~70%の集密度に達するまで、インビトロジェン(Invitrogen)(カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA))製のサプリメントS7を含むEPILIFE(登録商標)培地中でヒト角化細胞を増殖させた。インビトロジェン(Invitrogen)(カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA))製のRNAIMAXTMで複合化されたVEGF-Aをコードする0、46.875、93.75、187.5、375、750、および1500ngの修飾mRNA(mmRNA)を細胞にトランスフェクトした。最初に、5×体積希釈でサプリメントフリーEPILIFE(登録商標)培地を用いて、RNAを室温で10分間インキュベートすることにより、RNA:RNAiMAXTM複合体を生成した。第2のバイアル中で、10×体積希釈でサプリメントフリーEPILIFE(登録商標)培地を用いて、RNAIMAXTM試薬を室温で10分間インキュベートした。次いで、RNAバイアルをRNAIMAXTMバイアルと混合して、室温で20~30分間インキュベートし、その後、細胞に滴下した。
【0390】
ヒト角化細胞にトランスフェクトされたVEGF-Aをコードする完全最適化mRNAは、天然ヌクレオシド三リン酸(NTP)、各ウリジン部位にプソイドウリジンおよび各シトシン部位に5-メチルシトシン(プソイドU/5mC)、ならびに各ウリジン部位にN1-メチル-プソイドウリジンおよび各シトシン部位に5-メチルシトシン(N1-メチル-プソイドU/5mC)などの翻訳時の修飾を含んでいた。VEGF-AをコードするmmRNAを細胞にトランスフェクトし、そしてトランスフェクションの6、12、24、および48時間後、製造業者推奨説明書に従って、インビトロジェン(Invitrogen)(カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA))製のELISAキットを用いて、各濃度について、培養培地中に分泌されたVEGF-A濃度(pg/ml)を測定した。テーブル12に示されるこれらのデータは、VEGF-Aをコードする修飾mRNAがヒト角化細胞内で翻訳可能であり、かつVEGF-Aが細胞から輸送されて細胞外環境中に放出されることを示している。
【0391】
【表13】

実施例24.第IX因子のin vivo研究
生理食塩水中に製剤化されたヒト第IX因子mmRNA(配列番号8に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)(Gen1、完全修飾5-メチルシトシン(methycytosine)およびプソイドウリジン)を筋肉内注射によりマウスに送達した。その結果から、投与の13時間後に測定されるように、第IX因子タンパク質は、血清中で増加することが実証される。
【0392】
本研究では、50μlの第IX因子mmRNA(配列番号8に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)、ルシフェラーゼ(配列番号10に示されるIVTのためのcDNA配列)、または製剤緩衝液(F.緩衝液)を、マウス(第IX因子ではN=5、ルシフェラーゼ対照または緩衝液対照ではN=3)に、2×100μg/マウスで筋肉内注射した。筋肉内注射の13時間後、マウスから採血して血清中のヒトポリペプチドの濃度をpg/mL単位で決定した。その結果から、第IX因子mmRNAの投与は、ルシフェラーゼまたは緩衝液の対照投与ではいずれも100pg/mL未満の第IX因子であることとは対照的に、13時間で1600pg/mLのレベルを生じることが判明した。
【0393】
実施例25.複数部位投与
Gen1またはGen2(5-メチルシトシン(5mc)およびプソイドウリジン(ψ)修飾、G-CSF-Gen1;またはN1-5-メチルシトシン(N1-5mc)およびψ修飾、G-CSF-Gen2)のいずれかで修飾され、かつ生理食塩水中で製剤化された、ヒトG-CSF mmRNA(配列番号4に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)を、筋肉内(IM)注射または皮下(SC)注射によりマウスに送達した。3日間(24時間間隔)にわたり毎日、4回または2×50μg(2つの部位)の注射を行った。4回目は、血液採取およびCBC分析の6時間前に投与した。対照は、ルシフェラーゼ(配列番号10に示されるIVTのためのcDNA配列)または製剤緩衝液(F.緩衝液)を含んでいた。1回目のmmRNA注射の72時間後(最後のmmRNAの6時間後)、マウスから採血して、好中球数に及ぼすmmRNAコードヒトG-CSFの影響を調べた。投与レジメンは、テーブル13に示されており、得られた好中球数(1000/μL)も示されている。アステリスクは、p<0.05で統計的に有意であることを示す。
【0394】
筋肉内投与の場合、3日目において、Gen1 G-CSF mmRNAでは好中球数が対照の4倍に増大し、Gen2 G-CSF mmRNAでは2倍に増大することが、データから明らかである。皮下投与の場合、3日目において、データは、Gen2 G-CSF mmRNAでは好中球数が対照の2倍に増大することが、データから明らかである。
【0395】
【表14】

実施例26.静脈内投与
5-メチルシトシン(5mc)およびプソイドウリジン(ψ)で修飾されたまたは修飾を有しない、かつ10%のリポプレックス(RNAIMAXTM)中で製剤化されたヒトG-CSF mmRNA(配列番号4に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)を、0、2、および4日目に、50μg RNAの用量および100μlの量で、静脈内(IV)注射を介してマウスに送達した。1、5、および8日目に、好中球数を測定した。対照は、非特異的哺乳動物RNAまたは製剤緩衝液単独(F.緩衝液)を含んでいた。1、5、および8日目に、マウスから採血して、好中球数を増加させるmmRNAコードヒトG-CSFの効果を調べた。投与レジメンは、テーブル14に示されており、得られた好中球数(1000/μL、K/μL)も示されている。
【0396】
静脈内投与の場合、5日目において、G-CSF mmRNAでは、好中球数が対照の5倍に増大するが、非修飾G-CSF mRNA対照または非特異的対照では、増大しないことが、データから明らかである。血球数は、最後の注射の4日後、ベースラインに戻った。白血球集団の他の変化は、観測されなかった。アステリスクは、緩衝液と比較してp<0.001で統計的に有意であることを示している。
【0397】
【表15】

実施例27.生理食塩水製剤:筋肉内投与
ヒトG-CSF mmRNA(配列番号4に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)およびヒトEPO mmRNA(配列番号7に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)、G-CSF mmRNA(5-メチルシトシン(5mc)およびプソイドウリジン(ψ)で修飾)およびEPO mmRNA(N1-5-メチルシトシン(N1-5mc)およびψ修飾で修飾)を生理食塩水中で製剤化し、100μgの用量で筋肉内(筋肉内)注射を介して、マウスに送達した。
【0398】
対照は、ルシフェラーゼ(配列番号10に示されるIVT cDNA配列)または製剤緩衝液(F.緩衝液)を含んでいた。注射の13時間後、マウスから採血して、pg/mL単位で血清中ヒトポリペプチドの濃度を決定した(G-CSFグループでは、マウス血清中のヒトG-CSFを測定し、EPOグループでは、マウス血清中でヒトEPOを測定した)。データをテーブル15に示す。
【0399】
【表16】

実施例28.EPO複数回用量/複数回投与
一時点で複数の筋肉内注射部位を利用する研究を設計および実施した。
【0400】
単回複数回用量(投与)実験の設計は、生理食塩水に加えて投与される、ヒトエリトロポイエチン(EPO)mmRNA(配列番号7に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)またはG-CSF(配列番号4に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)を使用することを含むものであった。投与媒体(F.緩衝液)を対照として使用した。EPOおよびG-CSF mmRNAを、各シトシン部位では5-メチルシトシン置換および各ウリジン部位ではプソイドウリジン置換で修飾した。
【0401】
動物(n=5)(スプラーグドーリーラット)に100μgの単回単位用量(一方の大腿に送達)でIM(筋肉内)注射を行った。複数回投与では、EPOおよびG-CSF mmRNAの両方で、100μgの6回投与(両方の大腿に送達)を使用した。対照投与は、単回投与で、緩衝液の使用を含んでいた。注射の13時間後、ヒトEPOの血中レベルを評価した。
【0402】
I.M.の13時間後、ヒトEPOタンパク質をラット血清中で測定した。5つのグループのラットを処置および評価した。結果はテーブル16に示される。
【0403】
【表17】

実施例29.シグナル配列交換研究
修飾ヌクレオチドのプソイドウリジンおよび5-メチルシトシン(プソイドU/5mC)を用いて、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)(配列番号4に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)をコードするmmRNAのいくつかの変異体を合成した。これらの変異体は、野生型N末端分泌シグナルペプチド配列(MAGPATQSPMKLMALQLLLWHSALWTVQEA;配列番号13)をコードするG-CSF構築物、分泌シグナルペプチド配列をコードしないG-CSF構築物、または他のmRNAから取り出され分泌シグナルペプチド配列をコードするG-CSF構築物を含んでいた。これらは、野生型GCSFシグナルペプチド配列が、ヒトα-1-抗トリプシン(MMPSSVSWGILLLAGLCCLVPVSLA、配列番号14)、ヒト第IX因子(MQRVNMIMAESPSLITICLLGYLLSAECTVFLDHENANKILNRP R、配列番号15)、ヒトプロラクチン(MKGSLLLLLVSNLLLCQSVAP、配列番号16)、またはヒトアルブミン(MKWVTFISLLFLFSSAYSRGVFRR、配列番号17)のいずれかのシグナルペプチド配列と置き換えられた配列を含んでいた。
【0404】
1μlのリポフェクタミン2000(Lipofectamine 2000)(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies))を用いて、24ウェルプレート(各ウェルは300,000細胞を含有する)中で、各G-CSF変異体をコードする250ngの修飾mRNAを、HEK293A(表中の293A)、マウス筋芽細胞(表中のMM)(C2C12、CRL-1772、ATCC)、およびラット筋芽細胞(表中のRM)(L6系、CRL-1458、ATCC)細胞系にトランスフェクトした。24時間後、上清を採取し、そして、ヒトG-CSF ELISAキット(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies))を用いたELISAにより、分泌されたG-CSFタンパク質を分析した。テーブル17に示されるデータから、アルブミンシグナルペプチドをコードするG-CSF mmRNAでトランスフェクトされた細胞は、その野生型対応物の少なくとも12倍のG-CSFタンパク質を分泌することが明らかである。
【0405】
【表18】

実施例30.サイトカイン研究:PBMC
PBMC単離物および培地: 2名のドナーに由来する50mLのヒト血液を、ヘパリンナトリウムチューブ中で、リサーチ・ブラッド・コンポーネンツ(Research Blood Components)(ロットKP30928およびP30931)から入手した。ドナーごとに、血液をプールし、DPBS(SAFCバイオサイエンス(SAFC Bioscience)59331C、ロット071M8408)で70mLに希釈し、2つの50mLコニカルチューブに等しく分割した。10mLのフィコールパック(Ficoll Paque)(GEヘルスケア(GE Healthcare)17-5442-03、ロット10074400)を血液層の下に穏やかに供給した。低加速および低ブレーキで、2000rpmで30分間チューブを遠心分離した。チューブを取り出し、バフィーコートPMBC層を穏やかに新しい50mLコニカルに移し、そしてDPBSで洗浄した。チューブを1450rpmで10分間遠心分離した。
【0406】
上清を吸引し、PBMCペレットを再懸濁させ、50mLのDPBS中で洗浄した。チューブを1250rpmで10分間遠心分離した。この洗浄工程を繰り返し、PBMCペレットを19mLのオプティメンI(Optimem I)(ギブコ(Gibco)11058、ロット1072088)中に再懸濁させ、そしてカウントした。細胞懸濁液を3.0×10細胞/mL生細胞の濃度に調整した。
【0407】
次いで、これらの細胞をドナーごとに、5つの96ウェル組織培養処理丸底プレート(コスター3799(Costar 3799))上に、50μL/ウェルでプレーティングした。30分以内に、トランスフェクション混合物を50μL/ウェルの体積で各ウェルに添加した。トランスフェクションの4時間後、10μLのウシ胎仔血清(ギブコ10082(Gibco 10082)、ロット101236))を培地に追加した。
【0408】
トランスフェクション調製物: ヒトG-CSFをコードするmmRNA(配列番号4に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)((1)天然NTP、(2)5-メチルシチジンおよびプソイドウリジンで100%置換、または(3)5-メチルシチジンおよびN1-メチルプソイドウリジンで100%置換のいずれかを含有する)、ルシフェラーゼをコードするmmRNA(配列番号10に示されるIVT cDNA配列)((1)天然NTPまたは(2)5-メチルシチジンおよびプソイドウリジンで100%置換のいずれかを含有する)、およびTLRアゴニストR848(Invivogen tlrl-r848)を、最終体積2500μLのオプティメンI(Optimem I)中で38.4ng/μLに希釈した。
【0409】
独立して、432μLのリポフェクタミン2000(Lipofectamine 2000)(インビトロジェン(Invitrogen)1166-027、ロット1070962)を13.1mLのオプティメンI(Optimem I)で希釈した。96ウェルプレート中で、各mmRNAの135μLの9アリコート、陽性対照(R-848)、または陰性対照(オプティメンI(Optimem I))を135μLの希釈リポフェクタミン2000(Lipofectamine 2000)に添加した。トランスフェクトされる材料を含有するプレートを20分間インキュベートした。次いで、トランスフェクション混合物を50μL/ウェルでヒトPBMCプレートのそれぞれに移した。次いで、プレートを37Cでインキュベートした。2、4、8、20、および44時間で、各プレートをインキュベーターから取り出して、上清を凍結させた。
【0410】
最後のプレートを取り出した後、ヒトG-CSF ELISAキット(インビトロジェンHC2032(Invitrogen HC2032))およびヒトIFNαELISAキット(サーモサイエンィフィック41105-2(Thermo Scientific 41105-2))を用いて、上清をアッセイした。各条件は、二重試験方式で行った。
【0411】
結果: コードされたタンパク質を産生する非修飾および修飾mRNA(mmRNA)の能力を経時的に評価し(G-CSF産生)、同様に、インターフェロンα産生により測定される先天性免疫認識を引き起こすmRNAの能力も評価した。in vitro PBMC培養物の使用は、オリゴヌクレオチドの免疫刺激能を測定する一般に認められた方法である(ロビンス(Robbins)ら著、オリゴヌクレオチド(Oligonucleotides)2009年 第19巻:89-102頁)。
【0412】
4パラメーターロジスティック曲線当てはめを用いて、各ELISAプレートの標準曲線に対して結果を補間した。テーブル18および19に示されるのは、特異的ELISAにより測定したときの経時的なG-CSFおよびIFN-αの産生の2つの個別のPBMCドナーからの平均である。
【0413】
G-CSF ELISAでは、未処置条件のリポフェクタミン2000(Lipofectamine 2000)からのバックグラウンドシグナルを各時点で引き算した。このデータから、ヒト末梢血単核によるヒトG-CSFタンパク質の特異的産生は、天然NTP、5-メチルシチジンおよびプソイドウリジンによる100%置換、または5-メチルシチジンおよびN1-メチルプソイドウリジンによる100%置換を含有するG-CSF mRNAで見られることが実証された。G-CSFの産生は、修飾mRNAの使用により、非修飾mRNAと対比して有意に増大され、5-メチルシチジンおよびN1-メチルプソイドウリジンを含有するG-CSF mmRNAは、最高レベルのG-CSF産生を示した。先天性免疫認識に関して、非修飾mRNAは、実質的なIFNα産生をもたらすが、修飾mRNAは、主にインターフェロン-α産生を防止した。
【0414】
【表19】
【0415】
【表20】

実施例31.エキソソーム中の定量
本発明に係るmmRNAの量および局在化は、単離されたエキソソーム中で量(初期、中間、または最終)を測定することにより決定可能である。本研究では、mmRNAは、典型的には、コドンが最適化されており、かつ内因性mRNAと配列が異なるので、mmRNAのレベルは、ギビングス(Gibbings)の方法(国際出願PCT/IB2009/005878号(それらの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる))を用いて、天然または野生型mRNAの内因性レベルと比較して定量される。
【0416】
これらの研究では、この方法は、最初に、エキソソームまたはベシクル(好ましくは、本発明に係るポリヌクレオチド、一次構築物、またはmmRNAですでに治療された患者の体液に由来するもの)を単離することと、次いで、前記エキソソーム中のポリヌクレオチド、一次構築物、またはmmRNAのレベルを、mRNAマイクロアレイ、qRT-PCR、または、好適な抗体法もしくは免疫組織化学的方法によるものを含む当技術分野の他のRNA測定手段により、測定することによって行われる。
【0417】
実施例32:二機能性mmRNA
本明細書に記載の教示および合成方法を用いて、修飾RNAは、二機能性になるように設計および合成され、それにより、1つ以上の細胞傷害性タンパク質分子をコードしたり、さらには細胞傷害性ヌクレオシドを用いて合成されたりするようになる。
【0418】
二機能性修飾mRNAの投与は、生理食塩水または脂質担体のいずれかを用いて行われる。投与されると、二機能性修飾mRNAは、翻訳されて、コード細胞傷害性ペプチドを産生する。送達された修飾mRNAが分解されると、細胞傷害性ヌクレオシドが放出されて、それもまた、対象に対して治療効果を発揮する。
【0419】
実施例33.修飾mRNAの合成
修飾mRNAは、市販のT7 RNAポリメラーゼ転写キット(メガスクリプト(登録商標)・ハイイールド・トランスフェクトョン・キット(MEGASCRIPT(登録商標)High Yield Transcription KIT)、アンビオン(AMBIONR)、テキサス州オースティン(Austin,TX);ムスクリプトTM・mRNAプロダンクション・キット(MSCRIPTTM mRNA Production Kit)、エピセンター(登録商標)(EPICENTRE(登録商標))、バイオテクノロジーズ(Biotechnologies)、ウィスコンシン州マジソン(Madison,Wl))を用いて、T7 RNAポリメラーゼプロモーター配列を含有するcDNA鋳型から産生される。in vitro転写反応は、1~2μgの線形化プラスミドの形態の鋳型DNA、PCR産物、または二本鎖ポリメラーゼプロモーター領域を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを含有する。鋳型DNAは、強いコンセンサスコザック配列またはEMCV IRESを含む最適化高発現IRESなどの強い翻訳開始配列をコードする。反応空間は、20~40μlであり、決められた修飾アデニン、グアニン、シチジン、およびウリジンリボヌクレオチドアナログの最適化リボヌクレオチド混合物に加えて3’-OMe-m7-G(5’)ppp(5’)G ARCAキャップアナログ(ニューイングランド・バイオラボ(NEW ENGLAND BIOLABS)(登録商標))を含有する。ヌクレオチドの最終反応濃度は、キャップアナログが6mMであり、他のヌクレオチドのそれぞれが1.5~7.5 mMである。in vitro転写反応の温度および持続期間は、効率、忠実度、および収率に関して最適化される。反応は、37℃で3~6時間から16時間までインキュベートされうる。in vitro転写反応後、キャップ化mRNAは、市販のポリAテーリングキット(エピセンター(EPICENTRE)(登録商標)バイオテクノロジーズ(Biotechnologies)、ウィスコンシン州マジソン(Madison,WI))を用いてポリアデニル化を受ける。得られたキャップ化およびポリアデニル化された合成mRNAは、次いで、全長産物の産生を確認するために、変性アガロースゲル電気泳動により精製され、任意の分解産物を除去するために、続いて、スピンカラム濾過に付される(RNeasyキット、キアゲン(Qiagen)、カリフォルニア州バレンシア(Valencia,CA)、メガクリアTMアンビオン(登録商標)(MEGACLEARTM AMBION(登録商標))、テキサス州オースティン(Austin,TX))。精製された合成mRNAは、RNアーゼ阻害剤(RNASIN(登録商標)プラスRNアーゼ阻害剤、プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マジソン(Madison,WI))を含有するRNアーゼフリー水中で再懸濁され、ナノドロップTM(NANODROP)TM(サーモサイエンティフィック(Thermo Scientific)、ユタ州ローガン(Logan,UT))により定量され、-20℃で貯蔵される。
【0420】
実施例34:細胞培養物中への修飾mRNAのバルクトランスフェクション
A.カチオン性脂質送達媒体
RNAトランスフェクションは、RNAIMAX(インビトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA))またはTRANSIT-mRNA(ミラスバイオ(Mirus Bio)、ウィスコンシン州マジソン(Madison WI))のカチオン性脂質送達媒体を用いて、行われる。RNAおよび試薬は、最初に、オプティメン(Opti-MEM)基礎培地(インビトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA))中で希釈される。100ng/μL RNAは、5×希釈され、1μgのRNAあたり5μLのRNAIMaxは、10×希釈される。希釈された成分は、プールされ、培養培地に分配される前に室温で15分間インキュベートされる。TRANSIT-mRNAトランスフェクションでは、100ng/μL RNAは、Opti-MEM中に10×希釈され、BOOST試薬が添加され(1μgのRNAあたり2の濃度で)、TRANSIT-mRNAが添加され(1μgのRNAあたり2μLの濃度で)、次いで、室温で2分間インキュベートした後、RNA脂質複合体が培養培地に送達される。RNAトランスフェクションは、RiPS誘導では、ニュートリステム(Nutristem)キセノフリーhES媒体(ステムセンター(STEMGENTR)、マサチューセッツ州ケンブリッジ(Cambridge,MA))中で行われ、角化細胞実験では、真皮細胞基礎培地プラス角化細胞増殖キット(ATCC)で行われ、そしてすべての他の実験では、Opti-MEMプラス2%FBSで行われる。宿主細胞中での修飾mRNA(mmRNA)の奏効的導入は、種々の公知の方法を用いて、たとえば、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光マーカーを用いて、モニター可能である。修飾mRNAの奏効的トランスフェクションもまた、たとえば、ウェスタンブロッティングまたは免疫細胞化学により、標的ポリペプチドのタンパク質発現レベルを測定することにより、決定可能である。類似のRNA-脂質複合体比に従って、1リットル超(5~10,000L)の大量培養にスケールアップするために、類似の方法に従いうる。
【0421】
B.外因性合成mRNA転写物の電気穿孔(エレクトロポレーション)送達
電気穿孔パラメーターは、in vitro合成修飾mRNA(mmRNA)転写物を用いてMRC-5線維芽細胞をトランスフェクトしてから、外因性転写物を特異的に検出するように設計されたプライマーを用いた定量的RT-PCRによりトランスフェクション効率を測定することにより、最適化される。標準的電気穿孔キュベット内で、150uF充電キャパシターを放電して、50μlのOpti-MEM(インビトロジェン(Invitrogen)、カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA))中に懸濁された2.5×10細胞中に導入する。高い生存能(>70%)を維持しながら、標準曲線法を用いて決定したときに1細胞あたり10,000コピー超の修飾mRNA転写物が繰返し送達されるようにするのに、2mmのギャップで十分である。さらなる実験によれば、mmRNA転写物を細胞に効率的にトランスフェクトするのに必要な電圧は、電気穿孔時の細胞密度に依存しうることが明らかにされよう。細胞密度は、1×10細胞/50μlから2.5×10の密度までさまざまであろう。また、転写コピー数/細胞で測定される類似の効率で細胞をトランスフェクトするには110V~145Vが必要となろう。何リットルもの大量(5~10,000L)の電気穿孔は、以上に記載の制約のある記載の方法に類似した大量フローエレクトロポレーション戦略と同様に行われうる(リー(Li)ら著、2002年;ゲング(Geng)ら著、2010年)。
【0422】
実施例35.樹立CHO細胞系におけるセラミド輸送タンパク質の過剰発現による治療用抗体タンパク質産生の増大
A.バッチ培養
ヒト化治療用IgG抗体を分泌する抗体産生CHO細胞系(CHO DG44)は、脂質カチオン性送達剤単独(対照)、または野生型セラミド輸送タンパク質(CERT)をコードする合成mRNA転写物、または非リン酸化コンピテントなSer132A CERT突然変異体で、1回トランスフェクトされる。配列は、たとえば、米国特許出願第13/252,049号明細書(それらの内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に教示されている。CERTは、哺乳動物細胞内の必須サイトゾルタンパク質であり、スフィンゴ脂質セラミドを小胞体からゴルジ体に移動させ、そこで、スフィンゴ脂質セラミドはスフィンゴミエリンに変換される(ハナダ(Hanada)ら、2003年)。CERTの過剰発現は、形質膜への分泌タンパク質の輸送を有意に増強し、真核細胞から分泌経路を介して輸送されるタンパク質の産生を改善し、それにより培養培地中へのタンパク質の分泌を増強する。合成mRNA転写物は、2~5:1の担体:RNA比で脂質カチオン性送達剤と予備混合される。初期接種密度は、約2×10個の生存可能細胞/mLである。合成mRNA転写物は、指数関数的培養増殖期の初期培養接種後に送達されて、1細胞あたり10×10~10×10個の最終合成mRNAコピー数に達する。すべての相の細胞接種物の生成におよびバイオリアクター内での培養物の増殖に使用される基礎細胞培養培地は、グルタミン、重炭酸ナトリウム、インスリン、およびメトトレキセートを含有する改変CD-CHO培地であった。培地のpHは、すべての成分を添加した後、1N HClまたは1N NaOHを用いて、7.0に調整された。培養運転期間は、7、14、21、または28日目+で終了した。製造レベルの50Lスケールリアクター(2つの海洋インペラーを備えたステンレス鋼リアクター)が使用された。また、10,000Lを超えるステンレス鋼リアクター(2002年12月23日出願の同一譲受人の米国特許出願第60/436,050号明細書、および米国特許出願第10/740,645号明細書に記載されている)に拡張可能である。データ取得システム(インテルーション・フィックス32(Intellution Fix 32))は、全運転期間を通じて、温度、pH、および溶存酸素(DO)を記録した。ガス流量は、ロータメーターにより制御された。CO除去のため、浸漬フリット(5μm細孔サイズ)を介しかつリアクターヘッドスペースを通じて空気がスパージングされた。DO制御のために、同一のフリットを介して分子状酸素がスパージングされた。COは、pH調整に使用される場合、同一のフリットを介してスパージングされた。細胞のサンプルは、リアクターから毎日取り出された。細胞計数に使用されたサンプルは、トリパンブルー(ジクマ(Sigma)(セントルイス,Mo.(St.Louis,Mo.)))で染色された。細胞数および細胞生存能の決定は、顕微鏡を用いた血球計算法により行われた。代謝物の分析では、細胞分離のために、追加サンプルを2000rpm(4℃)で20分間遠心分離した。次のパラメーター、すなわち、力価、シアル酸、グルコース、乳酸、グルタミン、グルタミン酸、pH、pO、pCO、アンモニア、および任意選択的に乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)に関して、上清を分析した。追加のバックアップサンプルを-20℃で凍結した。分泌ヒト化IgG抗体力価を測定するために、すべての安定な細胞プールのシードストック培養物から上清を取得し、ELISAによりIgG力価を決定し、細胞の平均数で割り算して特異的生産性を計算する。最高値は、Ser132A CERT突然変異体を有する細胞プールであり、続いて、野生型CERTである。両方とも、IgG発現は、担体単独または非トランスフェクト細胞と比較して著しく増強される。
【0423】
連続培養またはバッチフェド培養
ヒト化IgG抗体を分泌する抗体産生CHO細胞系(CHO DG44)は、脂質カチオン性送達剤単独(対照)、または野生型セラミド輸送タンパク質をコードする合成mRNA転写物、または非リン酸化コンピテントSer132A CERT突然変異体でトランスフェクトされる。合成mRNA転写物は、2~5:1の担体:RNA比で脂質カチオン性送達剤と予備混合される。初期接種密度は、約2×10個の生存可能細胞/mLであった。合成mRNA転写物は、指数関数的培養増殖期の初期培養接種後に送達されて、1細胞あたり10×10~10×10個の最終合成mRNAコピー数に達する。すべての相の細胞接種物の生成におよびバイオリアクター内での培養物の増殖に使用される基礎細胞培養培地は、グルタミン、重炭酸ナトリウム、インスリン、およびメトトレキセートを含有する改変CD-CHO培地であった。培地のpHは、すべての成分を添加した後、1N HClまたは1N NaOHを用いて、7.0に調整された。最大CERTタンパク質産生および分泌ヒト化IgG抗体曲線を得るために、5Lスケール(1つの海洋インペラーを備えたガラスリアクター)のバイオリアクターを使用した。連続培養またはフェドバッチ培養では、運転時に新しい培地で1日1回以上(または連続的に)培養培地を補うことにより、培養運転期間が延長される。連続供給レジメンおよびフェドバッチ供給レジメンでは、培養物は、培養物中で適切量の合成mRNA:担体を達成かつ維持するために、時限方式、規則方式、および/またはプログラム方式で、連続供給注入または培養物への他の自動添加として、供給培地を受け取る。好ましい方法は、培養運転の開始日から細胞の収集日まで、毎日の培養運転で、合成mRNA:担体を含有する供給媒体で1日1回のポーラス供給を行う供給レジメンである。1日供給量は、バッチシート上に記録された。製造レベルの50Lスケールリアクター(2つの海洋インペラーを備えたステンレス鋼リアクター)を使用することが可能であり、10,000Lを超えるステンレス鋼リアクターに拡張可能である。データ取得システム(インテルーション・フィックス32(Intellution Fix 32))は、全運転期間を通じて、温度、pH、および溶存酸素(DO)を記録した。ガス流量は、ロータメーターにより制御された。CO除去のため、浸漬フリット(5μm細孔サイズ)を介しかつリアクターヘッドスペースを通じて空気がスパージングされた。DO制御のために、同一のフリットを介して分子状酸素がスパージングされた。COは、pH調整に使用される場合、同一のフリットを介してスパージングされた。細胞のサンプルは、リアクターから毎日取り出された。細胞計数に使用されたサンプルは、トリパンブルー(ジクマ(Sigma)(セントルイス,Mo.(St.Louis,Mo.)))で染色された。細胞数および細胞生存能の決定は、顕微鏡を用いた血球計算法により行われた。代謝物の分析では、細胞分離のために、追加サンプルを2000rpm(4℃)で20分間遠心分離した。次のパラメーター、すなわち、力価、シアル酸、グルコース、乳酸、グルタミン、グルタミン酸、pH、pO、pCO、アンモニア、および任意選択的に乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)に関して、上清を分析した。追加のバックアップサンプルを-20℃で凍結した。分泌ヒト化IgG抗体力価を測定するために、すべての安定な細胞プールのシードストック培養物から上清を取得し、ELISAによりIgG力価を決定し、細胞の平均数で割り算して特異的生産性を計算する。最高値は、Ser132A CERT突然変異体を有する細胞プールであり、続いて、野生型CERTである。両方とも、IgG発現は、担体単独または非トランスフェクト細胞と比較して著しく増強される。
【0424】
実施例36.治療剤としてのヒトエリトロポイエチンを発現する哺乳動物細胞系のde
novo産生
A.バッチ培養
この実施例は、培養初代CHO細胞からのヒトエリトロポイエチンタンパク質(EPO)の産生を記述する。エリトロポイエチンは、赤血球合成のために必要とされる糖タンパク質ホルモンである。EPOタンパク質は、治療剤として、癌、心不全、慢性腎疾患、および骨髄形成異常に起因する貧血に使用されうる。初代CHO細胞は、記載のとおり単離および培養される(ツジオ(Tjio)およびパック(Puck)著、1958年)。次いで、T-75フラスコ(コーニング(Corning)、ニューヨーク州コーニング(Corning,N.Y.))ならびに250および500mLスピナー(Bellco,Vineland, N.J.)を用いて、グルタミン、重炭酸ナトリウム、インスリンおよびメトトレキセート(実施例35参照)を含有する修飾CD-CHO培地中で、初代CHO細胞を増殖させた。6%CO中、37℃でTフラスコおよびスピナーをインキュベートした。十分な接種物を生成させた後、以上に記載の5Lまたは50Lバイオリアクターのいずれかに、培養物を移した(実施例35参照)。ヒトエリトロポイエチンタンパク質をコードする合成mRNA転写物を、最小限1%全培養量で2~5:1の担体:RNA比で脂質カチオン性送達剤と予備混合する。初期接種密度は、約2×10個の生存可能細胞/mLである。合成mRNA転写物は、指数関数的培養増殖期の初期培養接種後に送達されて、1細胞あたり10×10~10×10個の最終合成mRNAコピー数に達する。培養増殖および分析は以上に記載したように行われた(実施例34参照)。
【0425】
B.連続培養またはバッチフェド培養
以上に記載したように誘導および増殖させた初代CHO細胞系(実施例参照36a)を、脂質カチオン性送達剤単独で(対照)、またはヒトエリトロポイエチンタンパク質をコードする合成mRNA転写物)で、トランスフェクトした。合成mRNA転写物は、2~5:1の担体:RNA比で脂質カチオン性送達剤と予備混合される。初期接種密度は、約2×10個の生存可能細胞/mLであった。合成mRNA転写物は、指数関数的培養増殖期の初期培養接種後に送達されて、1細胞あたり10×10~10×10個の最終合成mRNAコピー数に達する。培養条件は、記載のとおりであった(実施例35a)。連続培養またはフェドバッチ培養では、運転時に新しい培地で1日1回以上(または連続的に)培養培地を補うことにより、培養運転期間が延長される。連続供給レジメンおよびフェドバッチ供給レジメンでは、培養物は、培養物中で適切量の合成mRNA:担体を達成かつ維持するために、時限方式、規則方式、および/またはプログラム方式で、連続供給注入または培養物への他の自動添加として、供給培地を受け取る。好ましい方法は、培養運転の開始日から細胞の収集日まで、毎日の培養運転で、合成mRNA:担体を含有する供給媒体で1日1回のポーラス供給を行う供給レジメンである。1日供給量は、バッチシート上に記録された。製造レベルの50Lスケールリアクター(2つの海洋インペラーを備えたステンレス鋼リアクター)を使用することが可能であり、10,000Lを超えるステンレス鋼リアクターに拡張可能である。培養増殖および分析は、本明細書に記載されるように行った(実施例35参照)。
【0426】
使用されてきた語は、限定ではなく説明を行う語であり、本発明の真の範囲および趣旨から逸脱することなく、そのより広い態様で、添付の特許請求の範囲内で、変更を加えうることを理解されたい。
【0427】
いくつかの記載の実施形態に関してかなり詳細にかなり具体的に記載してきたが、いかなるそのような特定事項もしくは実施形態またはいかなる特定の実施形態にも限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲を参照しながら、先行技術を考慮して、そのような特許請求の範囲の可能なかぎり最広義の解釈を提供するように、したがって、本発明の意図された範囲を効果的に包含するように、解釈されるものとする。
【0428】
本明細書に記載の刊行物、特許出願、特許、および他の引用文献はすべて、それらの全体が参照により組み込まれる。矛盾を生じた場合、定義を含む本明細書に従うものとする。それに加えて、見出し項目、材料、方法、および実施例は、例示的なものにすぎず、それらに限定しようとするものではない。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11A
図11B
図12
【配列表】
2024023436000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
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