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特開2024-23439筋ジストロフィーを治療するためのマイクロジストロフィンのアデノ随伴ウイルスベクター送達
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023439
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】筋ジストロフィーを治療するためのマイクロジストロフィンのアデノ随伴ウイルスベクター送達
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20240214BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240214BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240214BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20240214BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20240214BHJP
   A61K 38/17 20060101ALN20240214BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/12 ZNA
C12P21/02 C
A61P21/04
A61P21/00
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K35/76
A61P43/00 121
A61K47/59
A61K47/62
A61K38/17
A61K31/7105
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023201579
(22)【出願日】2023-11-29
(62)【分割の表示】P 2021190072の分割
【原出願日】2017-04-14
(31)【優先権主張番号】62/323,163
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/473,253
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】515289842
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート アット ネイションワイド チルドレンズ ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ルイーズ ロディノ-カラパック
(72)【発明者】
【氏名】ジェリー アール. メンデル
(57)【要約】
【課題】筋ジストロフィーを治療するためのマイクロジストロフィンのアデノ随伴ウイルスベクター送達の提供。
【解決手段】本発明は、小型化ヒトマイクロジストロフィン遺伝子を含む組換えAAVベクター、及び筋ジストロフィーに罹患している対象における線維症を軽減または予防するためにその組換えベクターを使用する方法を提供する。本発明は、マイクロRNA miR29を送達することによって結合組織の3つの主要成分(コラーゲン1、コラーゲン3、及びフィブロネクチン)を直接減少させる遺伝子療法を対象とする。このシステムにおいて、miR29はコラーゲン及びフィブロネクチン遺伝子の3’UTRに結合して発現を下方調節する。本発明は、マイクロRNAのガイド鎖miR29を発現する、遺伝子療法ベクター、例えばAAV、ならびに線維症を軽減及び/または予防するために筋肉にmiR29を送達する方法を対象とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年4月15日に出願された米国仮出願第62/323,163号及び2017年3月17日に出願された米国仮出願第62/473,253号の優先権を主張するものであり、その両方は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
技術分野
【0002】
本発明は、小型化ヒトマイクロジストロフィン遺伝子を発現する、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターのような遺伝子療法ベクター、ならびに筋ジストロフィーに罹患している対象における線維症を軽減及び予防するためにこれらのベクターを使用する方法を提供する。本発明はまた、筋線維を損傷から保護し、筋肉強度を増加する併用遺伝子療法を提供する。
【背景技術】
【0003】
運動及び呼吸などの日常活動、ならびに全身代謝のための筋肉量及び強度の重要性は疑う余地がない。筋機能の障害は、筋肉の衰弱及び消耗を特徴とし、生活の質に重大な影響を与える筋ジストロフィー(MD)を生じる。最もよく特徴付けられたMDは、ジストロフィン関連タンパク質複合体(DAPC)のメンバーをコードする遺伝子の突然変異から生じる。これらのMDは、DAPCによる筋鞘-細胞骨格テザリングの喪失に関連する膜の脆弱性に起因する。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、5000人に1人の新生男児に影響を与える最も壊滅的な筋肉疾患の1つである。
【0004】
本出願には、DMDの治療を開発するための2つの変換アプローチが含まれる。線維症浸潤はDMDにおいて深刻であり、いずれの潜在的な療法にとっても重大な障害である。DMDを有する非常に低年齢の小児に既に存在する線維症の重症度によって遺伝子置換のみが妨害されることを考慮することも重要である。実際、診断の通常の年齢、4~5歳での筋生検は、非常に顕著なレベルの線維症を示す。
【0005】
DMDは、mRNAの減少及びジストロフィン関連タンパク質複合体(DAPC)に関連する427kDの筋鞘タンパク質であるジストロフィンの非存在をもたらすDMD遺伝子の突然変異によって引き起こされる(Hoffman et al.,Cell 51(6):919-28,1987)。DAPCは、アクチン結合タンパク質であるジストロフィン及びラミニン結合タンパク質であるα-ジストログリカンを介して細胞外マトリックス(ECM)と細胞骨格との間の構造的連結を形成する筋鞘における複数のタンパク質からなる。これらの構造的連結は、収縮中に筋細胞膜を安定させ、収縮誘発性損傷から保護するように作用する。ジストロフィン喪失と共に、膜の脆弱性は、筋鞘断裂及びカルシウムの流入をもたらし、カルシウム活性化プロテアーゼ及び分節状線維壊死を誘発する(Straub et al.,Curr Opin.Neurol.10(2):168-75,1997)。筋肉変性及び再生のこの制御されていないサイクルは、最終的に筋幹細胞集団を枯渇させ(Sacco et al.,Cell,2010.143(7):p.1059-71、Wallace et al.,Annu Rev Physiol,2009.71:p.37-57)、進行性の筋力低下、筋内膜炎症、及び線維症瘢痕形成が生じる。
【0006】
ジストロフィンまたはマイクロジストロフィンからの膜安定化なしでは、DMDは組織損傷及び修復の制御されていないサイクルを示し、最終的に失われた筋線維を結合組織増殖によって線維症瘢痕組織で置換する。線維症は、コラーゲン及びエラスチンを含むECMマトリックスタンパク質の過剰沈着を特徴とする。ECMタンパク質は主に、ストレス及び炎症に応答する活性化線維芽細胞によって放出されるTGFβなどのサイトカインから産生される。DMDの主要な病理学的特徴は、筋線維の変性及び壊死であるが、病理学的結果としての線維症は、同等の影響を有する。線維症組織の過剰産生は筋再生を制限し、DMD患者の進行性筋力低下の一因となる。一研究では、初期DMD筋生検での線維症の存在は、10年間の追跡調査での運動転帰不良と非常に相関していた(Desguerre et al.,J Neuropathol Exp Neurol,2009.68(7):p.762-7)。これらの結果は、線維症がDMD筋機能不全の主な原因であることを指摘し、線維症組織を減少させる療法を開発する必要性を強調する。mdxマウスで試験されたほとんどの抗線維症療法は、TGFβ経路の阻害によって線維症サイトカインシグナル伝達をブロックするように作用する。マイクロRNA(miRNA)は、mRNAの3’UTR内の塩基との対合、翻訳の阻害、またはmRNA分解の促進により、転写後レベルで遺伝子サイレンシングを媒介する~22ヌクレオチドの一本鎖RNAである。miRNAの5’末端の7bpのシード配列はmiRNAを標的とし、追加の認識は、標的配列の残部、およびその二次構造によって提供される。miRNAは、筋疾患病理において重要な役割を果たし、問題の筋ジストロフィーのタイプに一意的に依存する発現プロファイルを示す(Eisenberg et al.Proc Natl Acad Sci U S A,2007.104(43):p.17016-21)。miRNAが心臓、肝臓、腎臓、及び肺を含む多くの器官における線維症プロセスに関与していることを示唆する証拠が増えている(Jiang et al.,Proc Natl
Acad Sci U S A,2007.104(43):p.17016-21)。最近、miR-29の下方調節は、心臓線維症の一因となることが示され(Cacchiarelli et al.,Cell Metab,2010.12(4):p.341-51)、miR-29の発現の減少は、ヒトDMD患者の筋肉と遺伝的に関連していた(Eisenberg et al.Proc Natl Acad Sci U S A,2007.104(43):p.17016-2)。miR-29ファミリーは、2つのバイシストロン性miRNAクラスターから発現する3つのファミリーメンバーからなる。MiR-29aは、miR-29b(miR-29b-1)と同時発現し、miR-29cは、miR-29bの第2のコピー(miR-29b-2)と同時発現する。miR-29ファミリーは保存されたシード配列を共有し、miR-29a及びmiR-29bはそれぞれmiR-29cから1塩基だけ異なる。さらに、mdxマウス筋肉へのmiR-29プラスミド(miR-29a及びmiR-29b-1のクラスター)のエレクトロポレーションは、ECM成分、コラーゲン、及びエラスチンの発現レベルを低下し、治療の25日以内に筋肉切片におけるコラーゲン沈着を大幅に減少させた(Cacchiarelli et al.,Cell Metab,2010.12(4):p.341-51)。
【0007】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、複製欠損パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムは、145ヌクレオチド逆方向末端反復(ITR)を含む約4.7kb長である。AAVの複数の血清型が存在する。AAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列が既知である。例えば、AAV血清型2(AAV2)ゲノムのヌクレオチド配列は、Ruffing
et al.,J Gen Virol,75:3385-3392(1994)によって修正されたSrivastava et al.,J Virol,45:555-564(1983)に提示されている。他の例としては、AAV-1の完全ゲノムは、GenBank受入番号NC_002077に提供されており、AAV-3の完全ゲノムは、GenBank受入番号NC_1829に提供されており、AAV-4の完全ゲノムは、GenBank受入番号NC_001829に提供されており、AAV-5ゲノムは、GenBank受入番号AF085716に提供されており、AAV-6の完全ゲノムは、GenBank受入番号NC_001862に提供されており、AAV-7及びAAV-8ゲノムの少なくとも一部分は、それぞれ、GenBank受入番号AX753246及びAX753249に提供されており(AAV-8に関して米国特許第7,282,199号及び第7,790,449号も参照)、AAV-9ゲノムは、Gao et al.,J.Virol.,78:6381-6388(2004)に提供されており、AAV-10ゲノムは、Mol.Ther.,13(1):67-76(2006)に提供されており、AAV-11ゲノムは、Virology,330(2):375-383(2004)に提供されている。AAVrh74血清型は、Rodino-Klapac et al.J.Trans.Med.5:45(2007)に記載されている。ウイルスDNA複製(rep)、カプシド形成/パッケージング、及び宿主細胞染色体組込みを指示するCis作用配列は、ITR内に含有される。3つのAAVプロモーター(それらの相対マップ位置に対してp5、p19、及びp40と名付けられる)は、rep及びcap遺伝子をコードする2つのAAV内部オープンリーディングフレームの発現を駆動する。単一AAVイントロンの差異的スプライシングにより(例えば、AAV2ヌクレオチド2107及び2227において)連結された2つのrepプロモーター(p5及びp19)は、rep遺伝子からの4つのrepタンパク質(rep78、rep68、rep52、及びrep40)の生成をもたらす。repタンパク質は、最終的にウイルスゲノムの複製に関与する複数の酵素特性を有する。cap遺伝子は、p40プロモーターから発現され、3つのカプシドタンパク質VP1、VP2、及びVP3をコードする。選択的スプライシング及び非コンセンサス翻訳開始部位は、3つの関連カプシドタンパク質の産生に関与する。単一コンセンサスポリアデニル化部位は、AAVゲノムのマップ位置95に位置する。AAVの生活環及び遺伝学は、Muzyczka,Current Topics in Microbiology and Immunology,158:97-129(1992)においてレビューされる。
【0008】
AAVは、例えば、遺伝子療法において、外来DNAを細胞に送達するためのベクターとして魅力的にする固有の特徴を有する。培養中の細胞のAAV感染は、非細胞変性であり、ヒト及び他の動物の自然感染は、サイレントかつ無症候性である。さらに、AAVは、多くの哺乳動物細胞を感染させ、インビボで多くの異なる組織を標的とする可能性を可能にする。さらに、AAVは、緩徐に分裂する細胞及び非分裂細胞を形質導入し、転写的に活性な核エピソーム(染色体外要素)として本質的にそれらの細胞の寿命にわたって存続し得る。AAVプロウイルスゲノムは、組換えゲノムの構築を実現可能にするプラスミド内のクローニングされたDNAとして感染性である。さらに、AAV複製、ゲノムカプシド形成、及び組込みを指示するシグナルが、AAVゲノムのITR内に含有されるため、内部約4.3kbのゲノム(複製及び構造カプシドタンパク質をコードする、rep-cap)の一部または全てが、プロモーター、目的のDNA、及びポリアデニル化シグナルを含有する遺伝子カセットのような外来DNAで置換されてもよい。rep及びcapタンパク質は、トランスで提供され得る。AAVの別の重要な特徴は、それが極めて安定した頑健なウイルスであることである。これは、アデノウイルスを不活性化するために使用される条件(56℃~65℃で数時間)に容易に耐え、AAVの低温保存の重要性を低くする。AAVは、凍結乾燥され得る。最後に、AAV感染細胞は、重複感染に耐性を示さない。
【0009】
複数の研究は、筋肉内での長期(1.5年超)の組換えAAV媒介タンパク質発現を実証している。Clark et al.,Hum Gene Ther,8:659-669(1997)、Kessler et al.,Proc Nat.Acad Sc.USA,93:14082-14087(1996)、及びXiao et al.,J Virol,70:8098-8108(1996)を参照されたい。Chao et al.,Mol Ther,2:619-623(2000)及びChao et al.,Mol Ther,4:217-222(2001)も参照されたい。さらに、筋肉が高度に血管新生されるため、組換えAAV形質導入により、Herzog et al.,Proc Natl Acad Sci USA,94:5804-5809(1997)及びMurphy et al.,Proc Natl Acad Sci USA,94:13921-13926(1997)に記載されるように、筋肉内注射後に体循環に導入遺伝子産物の出現がもたらされた。さらに、Lewis et al.,J Virol,76:8769-8775(2002)は、骨格筋線維が、正しい抗体グリコシル化、折り畳み、及び分泌に必要な細胞因子を有することを実証し、筋肉が分泌タンパク質治療薬を安定して発現することができることを示す。
DMD及び他の筋ジストロフィーに罹患している患者における機能改善には、遺伝子回復及び線維症の軽減の両方が必要である。DMD及び他の筋ジストロフィーのより効果的な治療のための遺伝子回復法で修復され得る線維症を軽減する方法が必要とされている。miR29は、筋線維症を軽減するための潜在的な遺伝子調節因子であり、理想的な候補である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Hoffman et al.,Cell 51(6):919-28,1987
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、マイクロRNA miR29を送達することによって結合組織の3つの主要成分(コラーゲン1、コラーゲン3、及びフィブロネクチン)を直接減少させる遺伝子療法を対象とする。このシステムにおいて、miR29はコラーゲン及びフィブロネクチン遺伝子の3’UTRに結合して発現を下方調節する。本発明は、マイクロRNAのガイド鎖miR29を発現する、遺伝子療法ベクター、例えばAAV、ならびに線維症を軽減及び/または予防するために筋肉にmiR29を送達する方法を対象とする。
【0012】
さらに、本発明は、DMDで観察される遺伝子欠損に対処するマイクロジストロフィンと共に線維症を抑制するmiR-29を送達する遺伝子療法ベクターを用いて線維症を軽減及び予防するための併用療法及びアプローチを提供する。実施例5~7に示されるように、併用治療は、線維症のより大きな軽減、筋肉サイズの増大、及び筋力の増加をもたらした。
【0013】
一実施形態において、本発明は、miR-29を発現するrAAVベクターを提供する。例えば、rAAVベクターは、配列番号3のmiR-29c標的ガイド鎖、配列番号4のmiR-29cガイド鎖、ならびに天然miR-30及びステムループ(配列番号5)を含むヌクレオチド配列のようなmiR29cを発現するポリヌクレオチド配列を含む。miR-30骨格中のmiR-29c cDNAを含む例示的なポリヌクレオチド配列は、配列番号2として示される(図1)。
【0014】
本発明の例示的なrAAVは、配列番号1のヌクレオチド配列を含むpAAV.CMV.Mir29Cであり、CMVプロモーターはヌクレオチド120~526に及び、EF1aイントロンはヌクレオチド927~1087及びヌクレオチド1380~1854に及び、miR-29cのガイドスタンドはヌクレオチド1257~1284に及び、一次シード配列を有するshRNA-miR29-cはヌクレオチド1088~1375に及び、ポリA配列はヌクレオチド1896~2091に及ぶ。一態様では、本発明のrAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAVrh.74、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、またはAAV13である。
【0015】
本発明の別の例示的なrAAVは、配列番号12のヌクレオチド配列を含むpAAV.MHC.Mir29Cであり、MCKエンハンサーはヌクレオチド190~395に及び、MHCプロモーターはヌクレオチド396~753に及び、EF1aイントロンはヌクレオチド1155~1315及びヌクレオチド1609~2083に及び、miR-29cのガイド鎖はヌクレオチド1487~1512に及び、一次シード配列を有するshRNA-miR29-cはヌクレオチド1316~1608に及び、ポリA配列はヌクレオチド2094~2146に及ぶ。一態様では、本発明のrAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAVrh.74、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、またはAAV13である。
【0016】
別の態様では、本発明のrAAVベクターは、筋特異的制御要素に作動可能に連結され得る。例えば、筋特異的制御要素は、ヒト骨格アクチン遺伝子要素、心臓アクチン遺伝子要素、筋細胞特異的エンハンサー結合因子MEF、筋クレアチンキナーゼ(MCK)、tMCK(短縮MCK)、ミオシン重鎖(MHC)、C5-12(合成プロモーター)、マウスクレアチンキナーゼエンハンサー要素、骨格速筋トロポニンC遺伝子要素、遅筋心臓トロポニンC遺伝子要素、遅筋トロポニンI遺伝子要素、低酸素誘発性核因子、ステロイド誘発性要素、またはグルココルチコイド応答要素(GRE)である。
【0017】
例えば、本発明のrAAVベクターのいずれかは、配列番号10のMCKエンハンサーヌクレオチド配列及び/または配列番号11のMCKプロモーター配列を含む筋特異的制御要素に作動可能に連結される。
【0018】
本発明はまた、本発明のrAAVベクターのいずれかを含む薬学的組成物(または本明細書では単に「組成物」と称することもある)を提供する。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、本発明の任意のrAAVベクターでトランスフェクトされた細胞を培養することと、トランスフェクトされた細胞の上清からrAAV粒子を回収することとを含む、rAAVベクター粒子を産生する方法を提供する。本発明はまた、本発明の組換えAAVベクターのいずれかを含むウイルス粒子も提供する。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、治療有効量のmiR-29を発現する本発明の任意のrAAVベクターを投与することを含む、必要とする対象において線維症を軽減する方法を提供する。例えば、本発明のrAAVのいずれかは、筋ジストロフィーに罹患している対象に、線維症を軽減、特に対象の骨格筋または心筋における線維症を軽減するために投与される。これらの方法は、マイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターを投与するステップをさらに含むことができる。
【0021】
「線維症」とは、細胞外マトリックス(ECM)成分の過剰または未制御沈着ならびに骨格筋、心筋、肝臓、肺、腎臓、及び膵臓を含む損傷後の組織における異常な修復プロセスを指す。沈着するECM成分には、フィブロネクチン及びコラーゲン、例えば、コラーゲン1、コラーゲン2、またはコラーゲン3が含まれる。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、治療有効量のmiR-29を発現する本発明の任意の組換えAAVベクターを投与することを含む、必要とする対象において線維症を予防する方法を提供する。例えば、本発明のrAAVのいずれかは、筋ジストロフィーに罹患している対象に、線維症を予防するために投与され、例えば、miR-29を発現する本発明のrAAVは、対象において線維症が観察される前に投与される。さらに、miR-29を発現する本発明のrAAVは、筋ジストロフィー、例えば、DMDに罹患しているか、またはそう診断されているような、線維症を発症するリスクのある対象に投与される。本発明のrAAVは、筋ジストロフィーに罹患している対象に、これらの対象において新たな線維症を予防するために投与される。これらの方法は、マイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターを投与するステップをさらに含むことができる。
【0023】
本発明はまた、治療有効量のmiR-29を発現する本発明のrAAVベクターのいずれかを投与することを含む、筋ジストロフィーに罹患している対象において筋力及び/または筋肉量を増加する方法を提供する。これらの方法は、マイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターを投与するステップをさらに含むことができる。
「併用療法」及び「併用治療」という用語は、miR-29を発現する本発明のrAAVベクター及びマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターの投与を指す。
【0024】
本発明の方法のいずれにおいても、対象は、DMD、ベッカー型筋ジストロフィー、または任意の他のジストロフィン関連筋ジストロフィーのような筋ジストロフィーに罹患している可能性がある。加えて、本発明の方法のいずれにおいても、対象は、ジストロフィン異常症に罹患している可能性がある。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、マイクロジストロフィンタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む組換えAAVベクターを提供する。本発明は、a)配列番号7のヌクレオチド配列と少なくとも85%の同一性を有し、機能性マイクロジストロフィンタンパク質をコードするヌクレオチド配列、b)配列番号7のヌクレオチド配列、またはc)配列番号9のヌクレオチド配列を含むrAAVを提供する。
【0026】
本発明のマイクロジストロフィンを発現する例示的なrAAVは、配列番号9のヌクレオチド配列を含み、図10及び11に示されるpAAV.mck.マイクロジストロフィンである。このrAAVベクターは、MCKプロモーター、キメライントロン配列、マイクロジストロフィン遺伝子のコード配列、ポリA、アンピシリン耐性、及びpBR322起点または複製を有するpGEXプラスミド骨格を含む。一態様では、本発明の組換えAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAVrh.74、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、またはAAV13である。
【0027】
本発明は、例えば、配列番号8と少なくとも少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、または89%、より典型的には少なくとも90%、91%、92%、93%、または94%、さらにより典型的には少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性であるマイクロジストロフィンタンパク質をコードするrAAVベクターを提供し、タンパク質はマイクロジストロフィン活性を保持する。マイクロジストロフィンタンパク質は、筋肉収縮中に筋膜に安定性を提供し、例えば、マイクロジストロフィンは、筋肉収縮中に衝撃吸収材として作用する。
【0028】
本発明は、例えば、配列番号7と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、または89%、より典型的には少なくとも90%、91%、92%、93%、または94%、さらにより典型的には少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有し、機能性マイクロジストロフィンタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターを提供する。
【0029】
本発明は、ストリンジェントな条件下で配列番号7の核酸配列またはその補体にハイブリダイズし、機能性マイクロジストロフィンタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターを提供する。
【0030】
「ストリンジェントな」という用語は、ストリンジェントとして当該技術分野において一般に理解される条件を指すために使用される。ハイブリダイゼーションストリンジェシーは、主に、温度、イオン強度、及びホルムアミド等の変性剤の濃度によって決定される。ハイブリダイゼーション及び洗浄のためのストリンジェントな条件の例は、0.015Mの塩化ナトリウム、65~68℃の0.0015Mのクエン酸ナトリウムまたは0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウム、及び42℃の50%ホルムアミドである。Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,(Cold Spring Harbor,N.Y.1989)を参照されたい。よりストリンジェントな条件(より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤等)も使用され得るが、ハイブリダイゼーションの速度に影響が及ぼされるであろう。デオキシオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが懸念される例では、追加の例示のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、37℃(14塩基オリゴ)、48℃(17塩基オリゴ)、55℃(20塩基オリゴ)、及び60℃(23塩基オリゴ)での6×SSC 0.05%ピロリン酸ナトリウム中での洗浄が挙げられる。
【0031】
非特異的及び/またはバックグラウンドハイブリダイゼーションを低減する目的のために、他の薬剤がハイブリダイゼーション及び洗浄緩衝液中に含まれ得る。例には、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニル-ピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、NaDodSO4、(SDS)、フィコール、デンハルト溶液、超音波処理鮭精子DNA(または他の非相補的DNA)、及び硫酸デキストランがあるが、他の好適な薬剤を使用することもできる。これらの添加物の濃度及び種類は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を及ぼすことなく変化させることができる。ハイブリダイゼーション実験は、通常、6.8~7.4で行われるが、典型的なイオン強度条件では、ハイブリダイゼーションの速度は、pHとほぼ無関係である。Anderson et al.,Nucleic Acid Hybridisation:A Practical Approach,Ch.4,IRL Press Limited(Oxford,England)を参照されたい。ハイブリダイゼーション条件は、これらの可変物を適応し、かつ異なる配列関連性を有するDNAがハイブリッドを形成するのを可能にするために、当業者によって調整され得る。
【0032】
別の態様では、マイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターは、筋特異的制御要素に作動可能に連結されたマイクロジストロフィン遺伝子のコード配列を含む。例えば、筋特異的制御要素は、ヒト骨格アクチン遺伝子要素、心臓アクチン遺伝子要素、筋細胞特異的エンハンサー結合因子MEF、筋クレアチンキナーゼ(MCK)、tMCK(短縮MCK)、ミオシン重鎖(MHC)、C5-12(合成プロモーター)、マウスクレアチンキナーゼエンハンサー要素、骨格速筋トロポニンC遺伝子要素、遅筋心臓トロポニンC遺伝子要素、遅筋トロポニンI遺伝子要素、低酸素誘発性核因子、ステロイド誘発性要素、またはグルココルチコイド応答要素(GRE)である。
【0033】
さらに、本発明は、配列番号10または配列番号11のヌクレオチド配列を含む筋特異的制御要素を含むマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターを提供する。
【0034】
本発明はまた、本発明のrAAVベクターのいずれかを含む薬学的組成物(または本明細書では単に「組成物」と称することもある)を提供する。
【0035】
別の実施形態では、本発明は、本発明の任意のrAAVベクターでトランスフェクトされた細胞を培養することと、トランスフェクトされた細胞の上清からrAAV粒子を回収することとを含む、rAAVベクター粒子を産生する方法を提供する。本発明はまた、本発明の組換えAAVベクターのいずれかを含むウイルス粒子も提供する。
【0036】
本発明はまた、宿主細胞を本発明のマイクロジストロフィンを発現する組換えAAVベクターで感染させることと、宿主細胞中に機能性マイクロジストロフィンタンパク質を発現させることとを含む、機能性マイクロジストロフィンタンパク質の産生方法を提供する。
【0037】
別の実施形態では、本発明は、治療有効量のマイクロジストロフィンを発現する本発明の任意のrAAVベクターを投与することを含む、必要とする対象において線維症を軽減する方法を提供する。例えば、本発明のrAAVのいずれかは、筋ジストロフィーまたはジストロフィン異常症に罹患している対象に、線維症を軽減、特に対象の骨格筋または心筋において線維症を軽減するために投与される。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、治療有効量のマイクロジストロフィンを発現する本発明の任意の組換えAAVベクターを投与することを含む、必要とする対象において線維症を予防する方法を提供する。例えば、本発明のrAAVのいずれかは、筋ジストロフィーまたはジストロフィン異常症に罹患している対象に、線維症を予防するために投与され、例えば、マイクロジストロフィンを発現する本発明のrAAVは、対象において線維症が観察される前に投与される。さらに、マイクロジストロフィンを発現する本発明のrAAVは、ジストロフィン異常症もしくは筋ジストロフィー、例えば、DMDもしくはベッカー型筋ジストロフィーに罹患しているか、またはそう診断されているような、線維症を発症するリスクのある対象に投与される。本発明のrAAVは、ジストロフィン異常症またはジストロフィン異常症筋ジストロフィーに罹患している対象に、これらの対象において新たな線維症を予防するために投与される。
【0039】
本発明はまた、治療有効量のmiR-29を発現する本発明のrAAVベクターのいずれかを投与することを含む、筋ジストロフィーまたはジストロフィン異常症に罹患している対象において筋力及び/または筋肉量を増加する方法を提供する。
【0040】
本発明のmiR-29cを発現するrAAVを投与するステップを含む前述の方法のいずれかは、本明細書に記載のマイクロジストロフィンを発現するrAAVのいずれかを投与するさらなるステップを含み得る。「併用療法」及び「併用治療」という用語は、miR-29を発現する本発明のrAAVベクター及びマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターの投与を指す。
【0041】
miR-29を発現するrAAVベクター及びマイクロジストロフィンタンパク質を発現するrAAVベクターを投与する方法において、これらのrAAVベクターは同時投与してもよく、またはマイクロジストロフィンタンパク質を発現するrAAVの直前にmiR29を発現するrAAVベクターを投与して連続投与してもよく、またはマイクロジストロフィンタンパク質を発現するrAAVの直後にmiR29を発現するrAAVベクターを投与して連続投与してもよい。あるいは、マイクロジストロフィンタンパク質を発現するAAVベクターがmiR-29を発現するrAAVの投与後の約1~5時間もしくは5~12時間もしくは12~15時間もしくは15~24時間以内に投与される本発明の方法が実施され、またはマイクロジストロフィンタンパク質を発現するAAVベクターがmiR-29cを発現するrAAVの投与前の約1~5時間もしくは5~12時間もしくは12~15時間もしくは15~24時間以内に投与される本発明の方法が実施される。あるいは、マイクロジストロフィンタンパク質を発現するAAVベクターがmiR-29を発現するrAAVの投与後の約1もしくは6もしくは12もしくは24時間以内に投与される本発明の方法が実施され、またはマイクロジストロフィンタンパク質を発現するAAVベクターがmiR-29cを発現するrAAVの投与前の約1もしくは6もしくは12もしくは24時間以内に投与される本発明の方法が実施される。
【0042】
本発明は、本発明のAAVベクターのいずれかを、DMDまたはベッカー型筋ジストロフィーのようなジストロフィン異常症または筋ジストロフィーと診断された患者に、対象において線維症が観察される前に、または対象において筋力が低下する前に、または対象において筋肉量が減少する前に投与することを企図する。
【0043】
本発明はまた、本発明のrAAVのいずれかを、DMDまたはベッカー型筋ジストロフィーのようなジストロフィン異常症または筋ジストロフィーに罹患し、既に線維症を発症している対象に、これらの対象において新たな線維症を予防するために投与することも企図する。本発明はまた、本発明のrAAVのいずれかを、筋ジストロフィーに罹患し、既に筋力が低下している、または筋肉量が減少している患者に、さらなる損傷から筋肉を保護するために投与することを提供する。
【0044】
本発明の方法のうちのいずれかでは、rAAVベクターは、筋肉内注射または静脈内注射により投与される。
【0045】
加えて、本発明の方法のうちのいずれかでは、rAAVベクターは、全身投与される。例えば、rAAVベクターまたは組成物は、注射、注入、または移植によって非経口投与される。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、miR29を発現するrAAVベクターのいずれかもしくはマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターのいずれかを含む、またはmiR-29を発現するrAAVベクター及びマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターの両方を含む、必要とする対象において線維症を軽減するための組成物を提供する。さらに、本発明は、miR29を発現する組換えAAVベクターのいずれかもしくはマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターのいずれかを含む、またはmiR-29を発現するrAAVベクター及びマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターの両方を含む、DMDまたはベッカー型筋ジストロフィーのようなジストロフィン異常症または筋ジストロフィーに罹患している患者において線維症を予防するための組成物を提供する。
【0047】
本発明はまた、miR29を発現する本発明のrAAVベクターのいずれかもしくはマイクロジストロフィンタンパク質を発現するrAAVベクターのいずれかを含む、またはmiR-29を発現するrAAVベクター及びマイクロジストロフィンタンパク質を発現するrAAVベクターの両方を含む、DMDまたはベッカー型筋ジストロフィーのような、ジストロフィン異常症または筋ジストロフィーに罹患している対象において筋力及び/または筋肉量を増加させるための組成物を提供する。
【0048】
さらなる実施形態では、本発明は、miR29を発現する本発明のrAAVベクターのいずれかもしくはマイクロジストロフィンタンパク質を発現するrAAVベクターのいずれかを含む、またはmiR-29を発現するrAAVベクター及びマイクロジストロフィンタンパク質を発現するrAAVベクターの両方を含む、DMDまたはベッカー型筋ジストロフィーのような、ジストロフィン異常症または筋ジストロフィーの治療のための組成物を提供する。
【0049】
本発明の組成物は、筋肉内注射または静脈内注射用に製剤化される。本発明の組成物はまた、注射、注入、または移植による非経口投与など、全身投与用に製剤化される。さらに、組成物のいずれかは、DMD、ベッカー型ジストロフィー、または任意の他のジストロフィン関連筋ジストロフィーのような、ジストロフィン異常症または筋ジストロフィーに罹患している対象への投与のために製剤化される。
【0050】
さらなる実施形態では、本発明は、miR29を発現する本発明のrAAVベクターもしくはマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターのいずれかの、またはmiR-29を発現するrAAVベクター及びマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターの両方を含む、必要とする対象において線維症を軽減するための薬剤の調製のための使用を提供する。例えば、対象は、DMD、ベッカー型筋ジストロフィー、または任意の他のジストロフィン関連筋ジストロフィーのような、ジストロフィン異常症または筋ジストロフィーに罹患し、治療を必要としている。
【0051】
別の実施形態では、本発明は、miR29を発現する本発明のrAAVベクターのいずれかもしくはマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターのいずれかの、またはmiR-29を発現するrAAVベクター及びマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターの両方を含む、筋ジストロフィーに罹患している対象において線維症を予防するための薬剤の調製のための使用を提供する提供する。加えて、本発明は、miR29を発現する本発明の組換えAAVベクターもしくはマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターのいずれかの、またはmiR-29を発現するrAAVベクター及びマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターの両方を含む、DMDまたはベッカー型筋ジストロフィーのような、ジストロフィン異常症または筋ジストロフィーに罹患している対象において筋力及び/または筋肉量を増加させるための薬剤の調製のための使用を提供する。
【0052】
本発明は、本発明のAAVベクターのいずれかの、DMDと診断された患者への、対象において線維症が観察される前、または対象において筋力が低下する前、または対象において筋肉量が減少する前の投与用の薬剤の調製のための使用を企図する。
【0053】
本発明はまた、本発明のAAVベクターのいずれかの、筋ジストロフィーに罹患し、既に線維症を発症している対象に、これらの対象において新たな線維症を予防するために投与する投与用の薬剤の調製のための使用を企図する。本発明はまた、本発明のrAAVのいずれかを、筋ジストロフィーに罹患し、既に筋力が低下している、または筋肉量が減少している患者に、さらなる損傷から筋肉を保護するために投与することを提供する。
【0054】
本発明はまた、miR296を発現する本発明のrAAVベクターもしくはマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターのいずれかの、またはmiR-29を発現するrAAVベクター及びマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターの両方を含む、筋ジストロフィーの治療用の薬剤の調製のための使用を提供する。
【0055】
本発明の使用のうちのいずれかにおいて、薬剤は、筋肉内注射用に製剤化される。さらに、薬剤のいずれかは、DMDまたは任意の他のジストロフィン関連筋ジストロフィーのような筋ジストロフィーに罹患している対象への投与のために調製され得る。
【0056】
さらに、本発明の薬剤のいずれかは、miR-29を発現するrAAVベクター及びマイクロジストロフィンを発現するrAAVベクターが同時投与される、またはマイクロジストロフィンを発現するrAAVの直前にmiR29を発現するrAAVベクターを投与して連続投与される、またはマイクロジストロフィンを発現するrAAVの直後にmiR29を発現するrAAVベクターを投与して連続投与される、併用療法であってもよい。あるいは、薬剤は、miR-29を発現するrAAVの投与後の約1~5時間以内に投与されマイクロジストロフィンを発現するAAVベクターの投与を含み、または薬剤は、miR-29cを発現するrAAVの投与前の約1~5時間以内に投与されるマイクロジストロフィンを発現するAAVベクターを含む。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
a)配列番号7のヌクレオチド配列と少なくとも85%の同一性を有し、機能性マイクロジストロフィンタンパク質をコードするヌクレオチド配列、
b)配列番号7のヌクレオチド配列、または
c)配列番号9のヌクレオチド配列を含む、組換えAAVベクター。
(項目2)
前記ベクターが、血清型AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAVrh74、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、またはAAV13である、項目1に記載の組換えAAVベクター。
(項目3)
前記ポリヌクレオチド配列が、筋特異的制御要素に作動可能に連結される、項目1または2に記載の組換えAAVベクター。
(項目4)
前記筋特異的制御要素が、ヒト骨格アクチン遺伝子要素、心臓アクチン遺伝子要素、筋細胞特異的エンハンサー結合因子mef、筋クレアチンキナーゼ(MCK)、短縮MCK(tMCK)、ミオシン重鎖(MHC)、C5-12、マウスクレアチンキナーゼエンハンサー要素、骨格速筋トロポニンC遺伝子要素、遅筋心臓トロポニンC遺伝子要素、遅筋トロポニンI遺伝子要素、低酸素誘発性核因子、ステロイド誘発性要素、またはグルココルチコイド応答要素(gre)である、項目3に記載の組換えAAVベクター。
(項目5)
前記筋特異的制御要素が、配列番号10または配列番号11のヌクレオチド配列を含む、項目3または4に記載の組換えAAVベクター。
(項目6)
項目1~5のいずれか一項に記載の組換えAAVベクターを含む、組成物。
(項目7)
治療有効量の項目1~5のいずれか一項に記載の組換えAAVベクターまたは項目6に記載の組成物を投与することを含む、筋ジストロフィーまたはジストロフィン異常症を治療する方法。
(項目8)
治療有効量の項目1~5のいずれか一項に記載の組換えAAVベクターまたは項目6に記載の組成物を投与することを含む、筋ジストロフィーまたはジストロフィン異常症に罹患している対象における線維症を軽減または予防する方法。
(項目9)
治療有効量の項目1~5のいずれか一項に記載の組換えAAVベクターまたは項目6に記載の組成物を投与することを含む、筋ジストロフィーまたはジストロフィン異常症に罹患している対象における筋力または筋肉量を増加する方法。
(項目10)
前記組換えAAVベクターまたは前記組成物が、筋肉内注射、静脈内注射、非経口投与、または全身投与により投与される、項目7~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記組換えAAVが、前記対象において線維症が観察される前に、または前記対象において筋力が減少する前に、または前記対象において筋肉量が減少する前に投与される、項目7~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記筋ジストロフィーが、デュシェンヌ型筋ジストロフィーまたはベッカー型筋ジストロフィーである、項目7~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
筋ジストロフィーの治療のための、項目1~5のいずれか一項に記載の組換えAAVベクターを含む組成物。
(項目14)
筋ジストロフィーに罹患している対象における線維症を軽減または予防するための、項目1~5のいずれか一項に記載の組換えAAVベクターを含む組成物。
(項目15)
筋ジストロフィーに罹患している対象における筋力を増加するための、項目1~5のいずれか一項に記載の組換えAAVベクターを含む組成物。
(項目16)
前記組成物が、前記対象において線維症が観察される前に、または前記対象において筋力が減少する前に、または前記対象において筋肉量が減少する前に投与される、項目13~15のいずれか一項に記載の組成物。
(項目17)
前記対象が、デュシェンヌ型筋ジストロフィーまたはベッカー型筋ジストロフィーに罹患している、項目13~16のいずれか一項に記載の組成物。
(項目18)
筋ジストロフィーの治療用の薬剤の調製のための、項目1~5のいずれか一項に記載の組換えAAVベクターまたは項目6に記載の組成物の使用。
(項目19)
筋ジストロフィーに罹患している対象における線維症の軽減または予防用の薬剤の調製のための、項目1~5のいずれか一項に記載の組換えAAVベクターまたは項目6に記載の組成物の使用。
(項目20)
筋ジストロフィーに罹患している対象における筋力または筋肉量の増加用の薬剤の調製のための、項目1~5のいずれか一項に記載の組換えAAVベクターまたは項目6に記載の組成物の使用。
(項目21)
前記薬剤が、前記対象において線維症が観察される前に、または前記対象において筋力が減少する前に、または前記対象において筋肉量が減少する前に投与される、項目16~18のいずれか一項に記載の使用。
(項目22)
前記対象が、デュシェンヌ型筋ジストロフィーまたはベッカー型筋ジストロフィーに罹患している、項目18~21のいずれか一項に記載の使用。
(項目23)
前記組成物または薬剤が、筋肉内投与、静脈内注射、非経口投与、または全身投与用に製剤化される、項目13~22のいずれか一項に記載の組成物または使用。
(項目21)
宿主細胞を項目1~5のいずれか一項に記載の組換えAAVベクターで感染させることと、前記宿主細胞中に機能性マイクロジストロフィンタンパク質を発現させることとを含む、機能性マイクロジストロフィンタンパク質の産生方法。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】rAAVベクターscAAVCrh.74.CMV.miR29cならびに天然miR-30骨格におけるmiR-29cのヌクレオチド配列及び予測ヘアピン構造のヌクレオチド配列の概略図を提供する。
図2A】筋肉へのmiR-29cの注射が筋肉全体のコラーゲンを減少させ、miR-29c発現を回復させることを示す。
図2B】同上。
図2C】同上。
図3A】miR-29cの注射が絶対筋力(パネルA)及び比筋力(パネルB)を改善するが、収縮誘発性損傷(パネルC)に対して保護しないことを示す。
図3B】同上。
図3C】同上。
図4A】導入遺伝子送達の有効性を測定する筋線維発現マイクロジストロフィンの数を示す。
図4B】同上。
図4C】同上。
図5A】マイクロジストロフィンとのmiR-29cの同時送達が、コラーゲン発現(パネルA)及び線維症誘発性ジストロフィン発現を減少させることを示す。
図5B】同上。
図5C】同上。
図6A】コラーゲン1アルファ(パネルA)、コラーゲン3アルファ(パネルB)、フィブロネクチン(パネルC)、及びTGF-β(パネルD)によって測定されるように、miR-29c/マイクロジストロフィンの筋肉内注射がmdx/utrn+/-マウスにおいて細胞外マトリックスを阻害することを示す。
図6B】同上。
図6C】同上。
図6D】同上。
図7A】miR-29cの筋肉内注射が筋肉における絶対力を増加し(パネルA)、比力を正常化し(パネルB)、収縮誘発性損傷からの保護を追加した(パネルC)ことを実証する。
図7B】同上。
図7C】同上。
図8】miR-29c/μ-dys併用が3ヶ月齢で治療されたマウスにおいて筋肉サイズを増加させることを示す。コラーゲンを染色するピクロシリウスレッドで染色された被治療及び未治療mdx/utrn+/-腓腹筋の切片を示す。線維症の領域はピンク色であり、無傷の筋肉は緑色である。巨視的なレベルでは、miR-29c/μ-dys併用は線維症を減少させ、総断面積を増加させる。
図9A】マイクロジストロフィンと共に同時送達されたmiR-29cでの治療が、単独で注射されたいずれか一方と比較して、注射された腓腹筋の全重量の増加(パネルA)、平均線維サイズの増加の増加(パネルB)、筋肉の断面積の増加(パネルD、未注射:24.6対miR-29c:26.3対マイクロジス:26.6対マイクロジス/miR-29c:33.1)、及び筋線維数の増加(パネルE)によって示されるように、筋肥大及び過形成を増加させたが、単位面積当たりの筋線維の数は影響を受けなかった(パネルF)ことを実証する。パネルCは、mdx/utrn+/-対照をmiR-29c/μ-dys治療mdx/utrn+/-と比較し、平均直径は25.96から30.97μmに増加した
図9B】同上。
図9C】同上。
図9D】同上。
図9E】同上。
図9F】同上。
図10A】AAV.miR-29c/マイクロジストロフィン併用療法の早期治療が線維症及びECM発現を減少させるのにより有効であることを示す。パネルAは、野生型、未注射、4~5週齢でAAV.miR-29c、AAV.マイクロジストロフィン、及びAAV.miR-29c/AAV.マイクロジストロフィンが注射され、注射の12週間後に取り出されたマウスのピクロシリウスレッド染色を示す。パネルBは、併用治療された筋肉が未注射GAS筋と比較してコラーゲンの51.1%減少を有したことを示す、ピクロシリウスレッド染色の定量化を提供する。パネルCは、qRT-PCRが被治療コホートにおけるmiR-29c転写物レベルの増加を確認することを実証する。半定量qRT-PCRは、反対側の肢及び単剤療法の各々と比較したAAV.miR-29c/AAV.マイクロジストロフィン治療筋肉におけるコラーゲンI及びIII(パネルd、e)、fbn(パネルf)、ならびにTGF-β1(パネルg)レベルの有意な減少を示す。エラーバー、n=5(scAAVrh.74.CMV.miR-29c)、n=5(scAAVrh.74.CMV.miR-29c/ssAAVrh.74.MCK.マイクロジストロフィン)、n=6(ssAAVrh.74.MCK.マイクロジストロフィン)、n=9(mdx/utrn+/-マウス)のSEM。一元配置ANOVA(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)
図10B】同上。
図10C】同上。
図10D】同上。
図10E】同上。
図10F】同上。
図10G】同上。
図11】早期併用療法が力を回復させ、収縮誘発性損傷に対して保護することを実証する。すべての3つの治療が注射されたGAS筋の強縮性収縮後の絶対(パネルA)及び正常化比力(パネルb)の測定は、未治療mdx/utrn+/-筋肉(パネルC)と比較して有意に増加した。筋肉は次いで反復伸張性収縮後の力の喪失について評価された。miR-29c/マイクロジストロフィンで併用治療及びマイクロジストロフィンで単剤治療されたマウスのみは、未治療mdx/utrn+¥-筋肉(青色)と比較して力の喪失からの保護を示した。二元配置分散分析は、減衰曲線における有意性を実証する。エラーバー、n=5(rAAVrh.74.CMV.miR-29c)、n=6(rAAVrh.74.CMV.miR-29c/rAAVrh.74.MCK.マイクロジストロフィン)、n=5(rAAVrh.74.MCK.マイクロジストロフィン)、n=15(mdx/utrn+/-マウス)のSEM。一元配置ANOVA(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。
図12】miR-29c/マイクロジストロフィン併用治療が1ヶ月齢で治療されたマウスにおいて筋肉サイズを増加させることを示す。被治療及び未治療mdx/utrn+/-GAS筋を切片化し、コラーゲンを染色するピクロシリウスレッドで染色した。線維症の領域はピンク色であり、無傷の筋肉は緑色である。巨視的なレベルでは、miR-29c/マイクロジストロフィンの組み合わせは線維症を減少させ、総断面積を増加させる。
図13A】AAV.MCK.miR-29c/マイクロジストロフィン併用療法の早期治療(4~5週)が線維症及びECM発現を減少させるのにより有効であることを示す。パネルAは、未注射及び4~5週齢でAAV.MCK.miR-29c/AAV.MCK.マイクロジストロフィンを注射され、注射の12週間後に取り出されたマウスのピクロシリウスレッド染色を提供する。元の倍率、20倍パネルBは、併用治療された筋肉が未治療GAS筋と比較してコラーゲンの50.9%減少を有したことを示す、ピクロシリウスレッド染色の定量化を提供する。パネルCは、被治療コホートにおけるmiR-29c転写物レベルの増加を確認するqRT-PCRを提供する。半定量qRT-PCRは、反対側の肢と比較したAAV.MCK.miR-29c/AAV.マイクロジストロフィン治療筋肉におけるコラーゲン1A(Col1A、パネルD)及びコラーゲン3A(Col3A、パネルE)、フィブロネクチン(Fbn、パネルF)、ならびにTgfβ1(パネルG)レベルの有意な減少を示す。(*p<0.05、****p<0.0001)。
図13B】同上。
図13C】同上。
図13D】同上。
図13E】同上。
図13F】同上。
図13G】同上。
図14A】AAV.MCK.miR-29c/マイクロジストロフィン併用療法による後期治療(12週での治療)が線維症及びECM発現を減少させるのに有効であることを示す。パネルAは、注射の12週間後の、未治療、AAV.MCK.miR-29c、及びAAV.MCK.miR-29c/AAV.マイクロジストロフィンのピクロシリウスレッド染色を提供する。元の倍率、20倍。パネルBは、併用治療された筋肉が未治療GAS筋と比較してコラーゲンの30.3%減少を有したことを示す、ピクロシリウスレッド染色の定量化を提供する。パネルCは、被治療コホートにおけるmiR-29c転写物レベルの増加を確認するqRT-PCRを提供する。半定量qRT-PCRは、反対側の肢と比較したAAV.miR-29c/AAV.マイクロジストロフィン治療筋肉におけるコラーゲン1A(Col1A、パネルD)、コラーゲン3A(Col3A、パネルE)、フィブロネクチン(Fbn、パネルF)、及びTgfβ1(パネルG)レベルの有意な減少を実証した。一元配置ANOVA。すべてのデータは平均±SEMを表す。(**p<0.01、****p<0.0001)。
図14B】同上。
図14C】同上。
図14D】同上。
図14E】同上。
図14F】同上。
図14G】同上。
図15A】早期併用療法(4~5週での治療)が力を回復し、収縮誘発性損傷に対して保護したことを実証する。MCK.miR-29c及びマイクロジストロフィンが注射されたGAS筋の強縮性収縮後の絶対(パネルA)及び正常化比力(パネルB)の測定は、未治療mdx/utrn+/-筋肉と比較して有意に増加した。(C)筋肉は次いで反復伸張性収縮後の力の喪失について評価された。miR-29c/マイクロジストロフィンで併用治療及びマイクロジストロフィンで単剤治療されたマウスは、未治療mdx/utrn+/-筋肉(赤色)と比較して力の喪失からの保護を示した。二元配置ANOVA。すべてのデータは平均±SEMを表す(****P<0.0001)。
図15B】同上。
図15C】同上。
図16A】後期併用療法が力を回復し、収縮誘発性損傷に対して保護したことを実証する。rAAV.MCK.miR-29c及びマイクロジストロフィンを発現するrAAVが注射されたGAS筋の強縮性収縮後の絶対(パネルA)及び正常化比力(パネルB)の測定は、未治療mdx/utrn+/-筋肉と比較して有意に増加した。パネルCでは、筋肉は次いで反復伸張性収縮後の力の喪失について評価された。rAAV.MCK.miR-29c/マイクロジストロフィンを発現するrAAVで併用治療されたマウスは、未治療mdx/utrn+/-筋肉(赤色)と比較して力の喪失からの保護を示した。二元配置ANOVA。すべてのデータは平均±SEMを表す(**p<0.01、****P<0.0001)。
図16B】同上。
図16C】同上。
図17A】併用治療が注射の3ヶ月後に筋肥大を増加させることを示す。パネルAはrAAVを示す。マイクロジストロフィンを発現するrAAVと同時送達されたMCK.miR-29cは、注射されたGASの全重量を増加させなかった。パネルBは、rAAV.MCK.miR-29c/マイクロジストロフィンを発現するrAAV併用治療が平均線維サイズの増加を誘発したことを実証する。mdx/utrn+/-対照をmiR-29c/マイクロジストロフィン治療mdx/utrn+/-と比較し、平均直径は28.96から36.03μmに増加した。パネルCは、同時送達が野生型線維サイズ分布へのシフトをもたらしたことを示す。パネルDは、miR-29c/マイクロジストロフィン併用治療における1mm当たりの筋線維の数が、未治療マウス及び野生型より有意に少なかったことを提供した(***p<0.01、**** p<0.0001)。
図17B】同上。
図17C】同上。
図17D】同上。
図18A】miR-29cの成熟ガイド鎖(ヌクレオチド1257~1284)及び天然mi-30骨格(ヌクレオチド1088~1375)を含む例示的なrAAVベクターの核酸配列(配列番号1 pAAV.CMV.Mir29C)を提供する。構築物はまた、CMVプロモーター(ヌクレオチド120~526)、ヌクレオチド927~1087及び1380~1854における2つのEF1aイントロン、ならびにヌクレオチド1896~2091におけるpolAを含む。
図18B】同上。
図19】rAAVベクターpAAV.MCK.マイクロジストロフィンの概略図を提供する。
図20A】マイクロジストロフィンを発現する例示的なrAAVベクターの核酸配列(配列番号9、pAAV.MCK.マイクロジストロフィン)を提供する。
図20B】同上。
図20C】同上。
図20D】同上。
図21A】ヒトマイクロジストロフィンヌクレオチド配列(配列番号7)のヌクレオチド配列を提供する。
図21B】同上。
図21C】同上。
図22A】miR-29cの成熟ガイド鎖(ヌクレオチド1487~1512)及び天然mi-30骨格(ヌクレオチド1088~1375)を含む例示的なrAAVベクターのヌクレオチド配列(配列番号12 pAAV.MCK.Mir29C)を提供する。構築物はまた、MCKエンハンサー(ヌクレオチド190~395)、MCKプロモーター(ヌクレオチド396~753)、ヌクレオチド1155~1315及び1609~2083における2つのEF1aイントロン、ならびにヌクレオチド2094~2148におけるpolAを含む。
図22B】同上。
図22C】同上。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明は、miR-29マイクロRNAを過剰発現する、遺伝子療法ベクター、例えば、rAAVベクター、ならびに筋ジストロフィー患者において線維症を軽減及び予防する方法を提供する。本発明はまた、DMD患者において欠失したマイクロジストロフィンを発現する遺伝子療法ベクターと組み合わせてmiR-29を発現する遺伝子療法ベクターを投与することを含む、併用遺伝子療法を提供する。
【0059】
DMDの診断の最若齢で採取された筋生検は、顕著な結合組織増殖を明らかにする。筋線維症は複数の点で有害である。これは結合組織関門を通る筋内膜栄養素の正常な運搬を減少させ、血流を減少させ、筋肉から血液由来栄養成分を奪い、機能的に四肢拘縮による早期歩行喪失の一因となる。時間の経過に伴い、筋肉における著しい線維症の結果として治療課題は倍増する。これは連続した時点で結合組織増殖を比較する筋生検で観察され得る。このプロセスは悪化し続けて歩行喪失を引き起こし、特に車椅子に依存している患者において、制御不能を加速する。
【0060】
線維症を軽減するための平行したアプローチなしでは、エクソンスキッピング、終止コドンリードスルー、または遺伝子置換療法の利益を完全に達成することができる可能性は低い。小分子またはタンパク質置換戦略でさえ、筋線維症を軽減するアプローチなしでは失敗する可能性が高い。AAV.マイクロジストロフィンで治療された既存の線維症を有する老齢のmdxマウスにおける以前の研究は、完全な機能回復を達成できなかったことを示した(Human molecular genetics 22,4929-4937(2013))。DMD心筋症の進行には、心室壁における瘢痕形成及び線維症が伴うことも知られている。マイクロRNA送達は、免疫バリアの欠如及び比較的容易な送達によって特に革新的である。マイクロRNAは小さく(~200bp)、したがって遺伝子欠損を補正または迂回する治療カセットと共にAAVにパッケージングすることができる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「AAV」という用語は、アデノ随伴ウイルスの一般的な略語である。アデノ随伴ウイルスは、ある特定の機能が同時感染ヘルパーウイルスによって提供される細胞内でのみ成長する一本鎖DNAパルボウイルスである。現在、特徴付けられているAAVの血清型が13存在する。AAVの一般的な情報及び概説は、例えば、Carter,1989,Handbook of Parvoviruses,Vol.1,pp.169-228、及びBerns,1990,Virology,pp.1743-1764,Raven Press,(New York)で見つけることができる。しかしながら、様々な血清型が遺伝子レベルでさえも構造的及び機能的の両方で非常に密接に関連していることがよく知られているため、これらの同じ原理が追加のAAV血清型に適用可能であることが十分に予想される。(例えば、Blacklowe,1988,pp.165-174 of Parvoviruses and Human Disease,J.R.Pattison,ed.、及びRose,Comprehensive Virology 3:1-61(1974)を参照されたい)。例えば、全てのAAV血清型は、相同rep遺伝子によって媒介される非常に類似した複製特性を明らかに呈し、これらは全て、AAV2で発現されたもの等の関連カプシドタンパク質を有する。関連性の程度は、ゲノムの長さに沿った遺伝子型間の広範な交差ハイブリダイゼーション、及び「逆方向末端反復配列」(ITR)に対応する末端における類似の自己アニーリングセグメントの存在を明らかにするヘテロ二本鎖分析によってさらに示唆される。類似の感染性パターンは、各血清型における複製機能が類似の調節制御下にあることも示唆する。
【0062】
本明細書で使用される「AAVベクター」とは、AAV末端反復配列(ITR)に隣接している1つ以上の目的とするポリヌクレオチド(またはトランス遺伝子)を指す。かかるAAVベクターは、rep及びcap遺伝子産物をコード及び発現するベクターでトランスフェクトされた宿主細胞中に存在する場合に、感染ウイルス粒子に複製及びパッケージングされ得る。
【0063】
「AAVビリオン」または「AAVウイルス粒子」または「AAVベクター粒子」とは、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質及びカプシド形成されたポリヌクレオチドAAVベクターから成るウイルス粒子を指す。粒子が異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳類細胞に送達されるトランス遺伝子等の野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、それは、典型的には、「AAVベクター粒子」または単に「AAVベクター」と称される。したがって、かかるベクターがAAVベクター粒子内に含有されるため、AAVベクター粒子の産生には、必然的にAAVベクターの産生が含まれる。
【0064】
AAV
本発明の組換えAAVゲノムは、本発明の核酸分子及び核酸分子に隣接する1つ以上のAAV ITRを含む。rAAVゲノム内のAAV DNAは、組換えウイルスが由来し得る任意のAAV血清型からであり得、AAV血清型 AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、及びAAV-13が挙げられるが、これらに限定されない。偽型rAAVの生成は、例えば、国際公開第01/83692号に開示される。他のタイプのrAAV変異体、例えば、カプシド変異を有するrAAVも企図される。例えば、Marsic et al.,Molecular Therapy,22(11):1900-1909(2014)を参照されたい。上記の背景部分に記載されるように、様々なAAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列が、当該技術分野において既知である。骨格筋特異的発現を促進するために、AAV1、AAV6、AAV8、またはAAVrh.74を使用することができる。
【0065】
本発明のDNAプラスミドは、本発明のrAAVゲノムを含む。DNAプラスミドは、rAAVゲノムの感染性ウイルス粒子への組込みのために、AAVのヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、E1欠失アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)の感染に許容される細胞に導入される。AAVゲノムがパッケージングされるrAAV粒子、rep及びcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能が細胞に提供されるrAAV粒子を産生する技法は、当該技術分野において標準である。rAAVの産生は、以下の成分、rAAVゲノム、rAAVゲノムから分離した(すなわち、その中に存在しない)AAV rep及びcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能が、単一細胞(本明細書でパッケージング細胞と表される)内に存在することを必要とする。AAV rep及びcap遺伝子は、組換えウイルスが由来し得る任意のAAV血清型であり得、rAAVゲノムITRとは異なるAAV血清型からであり得、AAV血清型AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAVrh.74、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、及びAAV-13が挙げられるが、これらに限定されない。偽型rAAVの生成は、例えば、国際公開第01/83692号に開示され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0066】
パッケージング細胞を生成する方法は、AAV粒子の産生に必要な成分を全て安定して発現する細胞株を作製することである。例えば、AAV rep及びcap遺伝子を欠くrAAVゲノム、rAAVゲノムから分離したAAV rep及びcap遺伝子、及びネオマイシン耐性遺伝子等の選択可能なマーカーを含むプラスミド(または複数のプラスミド)が、細胞のゲノムに組み込まれる。AAVゲノムは、GCテーリング(Samulski et al.,1982,Proc.Natl.Acad.S6.USA,79:2077-2081)、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含む合成リンカーの付加(Laughlin et al.,1983,Gene,23:65-73)、または直接平滑末端ライゲーション(Senapathy & Carter,1984,J.Biol.Chem.,259:4661-4666)等の手法によって細菌プラスミドに導入されている。その後、パッケージング細胞株は、アデノウイルス等のヘルパーウイルスに感染させられる。この方法の利点は、細胞が選択可能であり、rAAVの大規模産生に好適であることである。好適な方法の他の例は、rAAVゲノムならびに/またはrep及びcap遺伝子をパッケージング細胞に導入するためにプラスミドではなくアデノウイルスまたはバキュロウイルスを用いる。
【0067】
rAAV産生の一般的原理は、例えば、Carter,1992,Current Opinions in Biotechnology,1533-539、及びMuzyczka,1992,Curr.Topics in Microbial.and Immunol.,158:97-129)に概説されている。様々なアプローチが、Ratschin et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072(1984)、Hermonat et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6466(1984)、Tratschin et al.,Mo1.Cell.Biol.5:3251(1985)、McLaughlin et al.,J.Virol.,62:1963(1988)、及びLebkowski et al.,1988 Mol.Cell.Biol.,7:349(1988)に記載されている。Samulski et al.(1989,J.Virol.,63:3822-3828)、米国特許第5,173,414号、WO95/13365及び対応する米国特許第5,658.776号、WO95/13392、WO96/17947、PCT/US98/18600、WO97/09441(PCT/US96/14423)、WO97/08298(PCT/US96/13872)、WO97/21825(PCT/US96/20777)、WO97/06243(PCT/FR96/01064)、WO99/11764、Perrin et al.(1995)Vaccine 13:1244-1250、Paul et al.(1993)Human Gene Therapy 4:609-615、Clark et al.(1996)Gene Therapy 3:1124-1132、米国特許第5,786,211号、米国特許第5,871,982号、ならびに米国特許第6,258,595号。前述の文書は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれ、rAAV産生に関する文書の部分を特に強調する。
【0068】
したがって、本発明は、感染性rAAVを産生するパッケージング細胞を提供する。一実施形態では、パッケージング細胞は、HeLa細胞、293細胞、及びPerC.6細胞(同種293株)等の安定して形質転換された癌細胞であり得る。別の実施形態において、パッケージング細胞は、形質転換された癌細胞ではない細胞、例えば、低通路293細胞(アデノウイルスのE1で形質転換されたヒト胎児腎細胞)、MRC-5細胞(ヒト胎児線維芽細胞)、WI-38細胞(ヒト胎児線維芽細胞)、Vero細胞(サル腎細胞)、及びFRhL-2細胞(アカゲザル胎児肺細胞)である。
【0069】
本発明の組換えAAV(すなわち、感染性カプシド化rAAV粒子)は、rAAVゲノムを含む。例示的な実施形態において、両方のrAAVのゲノムは、AAV rep及びcap DNAを欠き、すなわち、ゲノムのITRの間にAAV repまたはcap DNAは存在しない。本発明の核酸分子を含むように構築することができるrAAVの例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際特許出願第PCT/US2012/047999号(WO2013/016352)に記載されている。
【0070】
rAAVは、当該技術分野で標準の方法によって、例えば、カラムクロマトグラフィーまたは塩化セシウム勾配によって精製され得る。rAAVベクターをヘルパーウイルスから精製するための方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、Clark et al.,Hum.Gene Ther.,10(6):1031-1039(1999)、Schenpp and Clark,Methods Mol.Med.,69 427-443(2002)、米国特許第6,566,118号、及びWO98/09657に開示されている方法が含まれる。
【0071】
別の実施形態では、本発明は、本発明のrAAVを含む組成物を企図する。本発明の組成物は、rAAV及び薬学的に許容される担体を含む。本組成物は、希釈剤及びアジュバント等の他の成分も含み得る。許容される担体、希釈剤、及びアジュバントは、レシピエントに非毒性であり、好ましくは、用いられる投薬量及び濃度で不活性であり、リン酸、クエン酸、もしくは他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸等の抗酸化剤;低分子量ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む、単糖、二糖、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトールもしくはソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;ならびに/またはTween、プルロニクス、もしくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0072】
本発明の方法で投与されるrAAVの力価は、例えば、特定のrAAV、投与モード、治療目標、標的される個体、及び細胞型(複数可)に応じて異なり、当該技術分野における標準の方法によって決定され得る。rAAVの力価は、1mL当たり約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、約1×1010、約1×1011、約1×1012、約1×1013~約1×1014以上のDNase耐性粒子(DRP)の範囲であり得る。投薬量は、ウイルスゲノム(vg)の単位で表されてもよい。
【0073】
インビボまたはインビトロでのrAAVで標的細胞を形質導入する方法が、本発明によって企図される。インビボ方法は、本発明のrAAVを含む組成物の有効用量または有効複数回用量を、それを必要とする動物(ヒトを含む)に投与するステップを含む。用量が障害/疾患の発症前に投与される場合、投与は予防的である。用量が障害/疾患の発症後に投与される場合、投与は治療的である。本発明の実施形態において、「有効用量」は、治療される障害/疾患状態と関連付けられる少なくとも1つの症状を軽減する(排除または低減する)、障害/疾患状態への進行を遅らせるか、もしくは予防する、障害/疾患状態の進行を遅らせるか、もしくは予防する、疾患の程度を縮小させる、疾患の緩解(部分的または完全)をもたらす、及び/または生存を延長する、用量である。本発明の方法による予防または治療のために企図される疾患の例は、FSHDである。
【0074】
併用療法も本発明によって企図される。本明細書で使用される併用療法は、同時治療及び連続治療を含む。新規の療法との併用等の本発明の方法と標準の医療処置(例えば、コルチコステロイド)との併用が特に企図される。
【0075】
本組成物の有効用量の投与は、筋肉内、非経口、静脈内、経口、口腔、鼻腔、肺、頭蓋内、骨内、眼内、直腸、または膣内を含むが、これらに限定されない当該技術分野で標準の経路により得る。本発明のrAAVのAAV成分(具体的には、AAV ITR及びカプシドタンパク質)の投与経路(複数可)及び血清型(複数可)は、治療される感染症及び/または疾患状態、ならびにmiR-29 miRNA及び/またはマイクロジストロフィンを発現する標的細胞/組織(複数可)を考慮して、当業者によって選択及び/または適合され得る。
【0076】
本発明は、有効用量の、本発明の併用療法を含む本発明のrAAV及び組成物の局所投与及び全身投与を提供する。例えば、全身投与は、体全体が影響を受けるように循環系への投与である。全身投与には、胃腸管を通した吸収のような経腸投与及び注射、注入、または移植による非経口投与が含まれる。
【0077】
具体的には、本発明のrAAVの実際の投与は、rAAV組換えベクターを動物の標的組織に輸送する任意の物理的方法を使用することによって達成され得る。本発明による投与としては、筋肉内への注入、血流への注入、及び/または肝臓への直接注入が挙げられるが、これらに限定されない。リン酸緩衝生理食塩水中にrAAVを単に再懸濁させることが、筋組織発現に有用なビヒクルを提供するのに十分であることが実証されており、rAAVと同時投与され得る担体または他の成分に対する既知の制限はない(が、DNAを分解する組成物がrAAVとの通常の方法で避けられるべきである)。rAAVのカプシドタンパク質は、rAAVが筋肉等の目的とする特定の標的組織を標的とするように修飾され得る。例えば、開示が参照により本明細書に組み込まれる、WO02/053703を参照されたい。薬学的組成物は、注射可能な製剤として、または経皮輸送によって筋肉に送達される局所製剤として調製され得る。筋肉内注射及び経皮輸送の両方のための多数の製剤が以前に開発されており、本発明を実施する際に使用され得る。rAAVは、投与及び取扱い易くするために、任意の薬学的に許容される担体とともに使用され得る。
【0078】
本明細書に開示される方法で投与されるrAAVの用量は、例えば、特定のrAAV、投与モード、治療目標、標的される個体、及び細胞型(複数可)に応じて異なり、当該技術分野における標準の方法によって決定され得る。投与される各rAAVの力価は、1ml当たり約1×106、約1×107、約1×108、約1×109、約1×1010、約1×1011、約1×1012、約1×1013、約1×1014、または約1×1015以上のDNase耐性粒子(DRP)の範囲であり得る。投薬量は、ウイルスゲノム(vg)の単位(すなわち、それぞれ1x10vg、1x10vg、1x10vg、1x1010vg、1x1011vg、1x1012vg、1x1013vg、1x1014vg、1×1015vg)で表されてもよい。投薬量は、体重1キログラム(kg)当たりのウイルスゲノム(vg)の単位(すなわち、それぞれ1x1010vg/kg、1x1011vg/kg、1x1012vg/kg、1x1013vg/kg、1x1014vg/kg、1×1015vg/kg)で表されてもよい。AAVを滴定する方法は、Clark et al.,Hum.Gene Ther.,10:1031-1039(1999)に記載されている。
【0079】
具体的には、本発明のrAAVの実際の投与は、rAAV組換えベクターを動物の標的組織に輸送する任意の物理的方法を使用することによって達成され得る。本発明による投与としては、筋肉内への注入、血流への注入、及び/または肝臓への直接注入が挙げられるが、これらに限定されない。リン酸緩衝生理食塩水中にrAAVを単に再懸濁させることが、筋組織発現に有用なビヒクルを提供するのに十分であることが実証されており、rAAVと同時投与され得る担体または他の成分に対する既知の制限はない(が、DNAを分解する組成物がrAAVとの通常の方法で避けられるべきである)。rAAVのカプシドタンパク質は、rAAVが筋肉等の目的とする特定の標的組織を標的とするように修飾され得る。例えば、開示が参照により本明細書に組み込まれる、WO02/053703を参照されたい。薬学的組成物は、注射可能な製剤として、または経皮輸送によって筋肉に送達される局所製剤として調製され得る。筋肉内注射及び経皮輸送の両方のための多数の製剤が以前に開発されており、本発明を実施する際に使用され得る。rAAVは、投与及び取扱い易くするために、任意の薬学的に許容される担体とともに使用され得る。
【0080】
筋肉内注射の目的のために、例えば、ゴマ油もしくはピーナッツ油等のアジュバント中の溶液、または水性プロピレングリコール中の溶液、ならびに滅菌水溶液が用いられ得る。かかる水溶液は、所望の場合、緩衝され、液体希釈剤は、最初に生理食塩水またはグルコースで等張性にする。遊離酸としてのrAAV溶液(DNAが酸性リン酸基を含有する)または薬理学的に許容される塩は、ヒドロキシプロピルセルロース等の界面活性剤と好適に混合された水中で調製され得る。rAAV分散剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中、ならびに油中でも調製され得る。通常の保管及び使用条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を阻止するために防腐剤を含有する。これに関連して、用いられる滅菌水性媒体は全て、当業者に周知の標準の技法によって容易に得ることが可能である。
【0081】
注射可能な使用に好適な薬学的担体、希釈剤、または賦形剤としては、滅菌水溶液または分散剤、及び注射可能な滅菌溶液または分散剤の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。あらゆる場合において、この形態は、滅菌でなければならず、容易なシリンジ注射可能性(syringability)が存在する程度に流動性でなければならない。これは、製造及び保管条件下で安定していなければならず、細菌及び真菌等の微生物の混入作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、それらの好適な混合物、及び植物油を含有する溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散の場合には必要な粒径の維持によって、かつ界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の保護は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等の様々な抗細菌剤及び抗真菌剤によってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらされ得る。
【0082】
注射可能な滅菌溶液は、必要に応じて、必要量のrAAVを、上に列挙される様々な他の成分を有する適切な溶媒に組み込み、その後、濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散剤は、滅菌活性成分を、塩基性分散媒体及び上に列挙されるものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。注射可能な滅菌溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分に加えて、その以前に滅菌濾過された溶液からの任意の追加の所望の成分の粉末を産生する、真空乾燥及びフリーズドライ技法である。
【0083】
rAAVでの形質導入もインビトロで行われ得る。一実施形態では、所望の標的筋細胞は、対象から除去され、rAAVで形質導入され、対象に再導入される。あるいは、同系または異種筋細胞が対象において不適切な免疫応答を生成しない場合、同系または異種筋細胞が使用され得る。
【0084】
対象への形質導入細胞の形質導入及び再導入のための好適な方法は、当該技術分野で既知である。一実施形態では、細胞は、例えば適切な培地中でrAAVを筋細胞と組み合わせ、サザンブロット及び/またはPCR等の従来の技法を使用して目的とするDNAを持つ細胞についてスクリーニングすることによって、または選択可能なマーカーを使用することによってインビトロで形質導入され得る。その後、形質導入された細胞は、薬学的組成物に製剤化され得、この組成物は、筋肉内、静脈内、皮下、及び腹腔内注射等の様々な技法によって、または例えばカテーテルを使用して、平滑心筋に注射することによって対象に導入される。
【0085】
本発明のrAAVでの細胞の形質導入は、miR-29またはマイクロジストロフィンの持続発現をもたらす。したがって、本発明は、miR-29及びまたはマイクロジストロフィンを発現するrAAVを動物、好ましくはヒトに投与/送達する方法を提供する。これらの方法は、本発明の1つ以上のrAAVでの形質導入組織(筋肉等の組織、肝臓及び脳等の器官、ならびに唾液腺等の腺を含むが、これらに限定されない)を含む。形質導入は、組織特異的制御要素を含む遺伝子カセットで行われ得る。例えば、本発明の一実施形態は、これらに限定されないが、アクチン及びミオシン遺伝子ファミリー、例えばmyoD遺伝子ファミリーに由来するもの[Weintraub et al.,Science,251:761-766(1991)を参照されたい]、筋細胞特異的エンハンサー結合因子MEF-2[Cserjesi and Olson,Mol.Cell.Biol.,11:4854-4862(1991)]、ヒト骨格筋アクチン遺伝子[Muscat et al.,Mol.Cell.Biol.,7:4089-4099(1987)]、心筋アクチン遺伝子、筋クレアチンキナーゼ配列要素[Johnson et al.,Mol.Cell.Biol.,9:3393-3399(1989)を参照されたい]、及びマウスクレアチンキナーゼエンハンサー(mCK)要素に由来する制御要素、骨格速筋トロポニンC遺伝子、遅筋心臓トロポニンC遺伝子、及び遅筋トロポニンI遺伝子に由来する制御要素:低酸素誘発性核内因子(Semenza et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:5680-5684(1991))、ステロイド誘発性要素、及びグルココルチコイド応答要素(GRE)を含むプロモーター(Mader and White,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5603-5607(1993)を参照されたい)、ならびに他の制御要素を含む、筋特異的制御要素によって誘導される筋細胞及び筋組織を形質導入する方法を提供する。
【0086】
筋組織は、重要な器官ではなく、アクセスが容易であるため、インビボDNA送達のための魅力的な標的である。本発明は、形質導入筋原線維由来のmiRNAの持続発現を企図する。
【0087】
「筋細胞」または「筋組織」とは、任意の種類の筋肉(例えば、消化管、膀胱、血管、または心臓組織由来の、例えば、骨格筋及び平滑筋)に由来する細胞または細胞群を意味する。かかる筋細胞は、筋芽細胞、筋細胞、筋管、心筋細胞、及び心筋芽細胞等の分化または未分化のものであり得る。
【0088】
「形質導入」という用語は、レシピエント細胞によるmiR29またはマイクロジストロフィンの発現をもたらす、本発明の複製欠損rAAVを介するインビボまたはインビトロのいずれかでのレシピエント細胞へのmiiR29ガイド鎖またはマイクロジストロフィンのコード領域の投与/送達を指すために使用される。
【0089】
したがって、本発明は、有効用量(または本質的に同時に投与される用量もしくはある間隔で与えられる用量)の、miR29及び/またはマイクロジストロフィンをコードするrAAVを、それを必要とする患者に投与する方法を提供する。
【実施例0090】
実施例1
デュシェンヌ型筋ジストロフィーモデルの確認
mdxマウスは、DMD病因を研究するための、便利だがまだ不完全な、動物モデルを提供する。このモデルは、mdxマウスとユートロフィン遺伝子のヘテロ接合型ノックアウトとの交配(mdx:utrn+/-)であり、増加した線維症を呈し、ヒトDMDの病理をより忠実に再現する。Mdxマウスは、比較的軽度の表現型及びほぼ正常な寿命をもたらすDMDのエクソン23にナンセンス突然変異を有する。3週齢までに、mdxマウスの横隔膜及び四肢筋は、筋内膜炎症の徴候を発現する。これらの症状は、マウスが成体期に達した後の四肢筋では鎮静するが、横隔膜筋における炎症は徐々に悪化し続ける。テロメラーゼを欠くmdxマウスでは、筋ジストロフィーは齢と共に次第に悪化し、ユートロフィンを欠くmdxマウス(DKO)は、早期発症筋力低下、重度線維症、及び早期死亡を伴うヒトDMDにより特徴的な表現型を有する。ジストロフィンの常染色体パラログであるユートロフィンは、二重KO(ジストロフィン+ユートロフィン)のmdxマウスにおけるジストロフィンの欠如を補い得る高度の配列相同性を共有し、早期死亡を伴う重度の表現型が観察される。DKOマウスにおける早期死亡は炎症及び線維症の進行を排除するが、mdx:utrn+/-マウスは、顕著な程度の線維症、及びDKOよりも長い生存期間を示す、ヒト疾患との類似性を有するモデルを提示し、提案する変換研究のためのより良好なモデルを提供する。最近の報告では、mdx:utrn+/-マウスの使用は、DMDとの関連で線維症を研究するのに理想的なモデルとして確認されている。本研究では、シリウスレッド染色により測定される線維症の増加は、コラーゲン転写物レベルの増加及びmir29cレベルの減少を伴った。
【0091】
実施例2
DMDマウスへのmiR29の送達は線維症を軽減する
予備研究は、ヒトDMD患者及びmdx/utrn+/-マウスにおいて、コラーゲンについてのシリウスレッド染色の有意な増加及びmiR-29cレベルの減少があることを実証している。筋特異的AAVベクターを用いたmiR-29の遺伝子送達は、潜在的に安全かつ効率的である。本明細書においてrAAVrh.74.CMV.miR29cと称されるrAAVベクターを生成するために、22ヌクレオチドmiR29c配列(標的鎖配列番号3及びガイド鎖配列番号4)を、CMVプロモーターによって駆動されるmiR-30スカフォールドにクローニングした。発現カセット(配列番号2)を自己相補的AAVプラスミドにクローニングし、筋肉中でよく発現することが知られている血清型AAVrh.74を用いてパッケージングした。miR-29c cDNAは、miR-30骨格にmiR-30c標的(センス)鎖、miR-30ステムループ、及びmiR-29cガイド(アンチセンス)鎖を含むカスタムプライマーを用いて合成した。miR-29c配列の3つの塩基を改変した。次いで、この配列を、CMVプロモーター及びポリA配列によって駆動される自己相補的AAV ITR含有プラスミドにクローニングした。
【0092】
図1に示すように、pAAV.CMV.miR29Cプラスミドは、AAV2逆方向末端反復配列(ITR)に隣接するmiR-30ステムループ骨格にmir29c cDNAを含む。AAVrh.74ビリオンにカプシド化されたのはこの配列である。さらに、miR-29c標的配列内のいくつかのヌクレオチドは、shRNA-miR(luc)のように、この部位でワトソン-クリック対合を模倣するように変更された。ShRNA-luc設計に従って、ヘアピンはその長さ全体にわたって完全に相補的でなければならない。加えて、パッセンジャー鎖への変更が多いほど、ステムを介してmiRNAを認識することができるmiR-29プロセシングを調節する内在性機構の排除の可能性が高い。ガイド鎖の19番目の塩基をシトシンに改変して、天然mi-29c配列の切断部位に先行するヌクレオチドを模倣し、他方の鎖上の対応する塩基を変更して対合を保存した。
【0093】
遺伝子療法ベクターscrAAVrh.74.CMV.miR29c(1×1011vg)を3ヶ月齢のmdx/utrn+/-マウスの四頭筋に注射した。四頭筋をシリウスレッド染色により注射の3ヶ月後に分析し、Nevo et al.(PloS One,6:e18049(2011))に記載されているようにNIH ImageJフトウェアにより分析した。MiR29c、コラーゲン、及びエラスチンレベルをRT-PCRによって定量化した。若齢のmdx/utrn+/-マウスへのmiR-29cの送達は、6ヶ月齢のmdx/utrn+/-マウス(注射の3ヶ月後)の四頭筋において、mir-29cレベルを有意に増加させ、シリウスレッド染色を有意に減少させる。RT-PCRによって評価した場合、被治療筋肉におけるコラーゲン及びエラスチンレベルの減少があった。
【0094】
mdx/utrn+/-マウス及びジストロフィン欠損患者における線維症の増加及びmiR29発現の減少の実証は、ヒト疾患の代表としてのマウスモデルの有効性を認める。抗線維症療法としてAAVで送達されたmiR29を使用した初期の結果は、線維症の重要な要因である、シリウスレッド染色ならびにコラーゲン及びエラスチンレベルの減少に有意な有益な効果があることを示唆している。
【0095】
実施例3
MiR-29cの注射はコラーゲンを減少させ、miR-29cを回復させる
rAAVrh.74.CMV.MiR-29cが線維症を軽減することができるかを決定するために、12週齢のmdx/utrn+¥-マウスは、左腓腹(GAS)筋に5x1011vgのrAAVrh.74.CMV.MiR-29cの筋肉内注射を受けた。注射の12週間後にマウスを分析した。ピクロシリウスレッド染色は、未治療反対側mdx/utrn+/-GAS筋と比較して、GAS筋(図2a)全体にわたるコラーゲン染色の有意な減少を明らかにした。ピクロシリウスレッド染色の定量化は、被治療筋肉が未治療筋肉と比較してコラーゲンの18.3%減少を有したことを示す(被治療-23.3%±1.3対未治療-29.5%±0.7)(図2b)。被治療筋肉におけるmiR-29cの過剰発現を確認するために、24週齢のWT、miR-29c治療マウス、及びmdx/utrn+/-マウスからのGAS筋から全RNAを抽出し、miR-29c発現についての定量逆転写PCR(qRT-PCR)分析に供した。結果は、未治療マウスと比較して、被治療マウスのGAS筋においてmiR-29cが有意に増加したことを示した(図2d)。
【0096】
実施例4
MiR-29cは絶対及び比筋力を改善するが、収縮誘発性損傷に対して保護しない
線維症が筋機能に影響を与え得ることは分かっているので、MiR-29cの発現を増加させることによる線維症の軽減が収縮誘発性損傷からmdx/utrn+/-筋肉を保護し、全体的な力を増加させるかを試験したかった。rAAVrh.74.CMV.MiR-29cで治療されたmdx/utrn+/-マウスからの腓腹筋の機能特性を評価した。注射の12週間後、GASを単離してインビボ力測定を行った。
【0097】
GAS手順は、横腹筋生理を分析するためにHakim et al.(Methods Mol Biol.709:75-89、2011)に列挙されたプロトコルに従うが、GASに適合させる。簡潔には、ケタミン/キシラジン混合物を用いてマウスを麻酔した。後肢の皮膚を除去して、GAS筋及びアキレス腱を露出させた。遠位腱を切除し、できるだけ筋肉の近くで4-0縫合糸を腱の周りで二重本結びにし、第1の結び目のすぐ隣に別の第2の二重本結びを作り、次いで腱を切断した。露出した筋肉は常に生理食塩水で湿らせた。次いで、マウスを熱制御プラットフォームに移し、37℃に維持した。膝を膝蓋腱に通した針でプラットフォームに固定し、腱を力変換器(Aurora Scientific,Aurora,ON,Canada)のレベルアームに縫合し、足をテープで固定した。双極性白金電極を介して坐骨神経を刺激することにより、GAS筋収縮を誘発した。筋肉が安定化されたら、最大収縮力が達成されるまで筋肉を漸増伸長することにより、最適長さを決定した。3分の休止期間後、GASを、各刺激間に1分の休止期間を設けて、50、100、150、及び200Hzで刺激して、最大強縮力を決定した。筋肉の長さを測定した。5分の休止後、収縮誘発性損傷に対するGAS筋の感受性を評価した。500msの刺激後、筋肉は最適長さの10%長くなった。これは150Hzで700msにわたり筋肉を刺激することからなった。刺激後、筋肉は最適長さに戻った。このサイクルを1分毎に合計5サイクル繰り返した。比力は、最大強縮力をGAS筋断面積で割ることによって計算した。伸張性収縮後、マウスを次に安楽死させ、GAS筋を切除し、秤量し、分析のために凍結した。
【0098】
各GASは一連の反復伸張性収縮を受けた。第1の収縮に対する各収縮の力比を比較することにより、第5の収縮後、未治療筋肉は、被治療0.50±0.04に対して0.56±0.05に減衰したことが明らかになった(P≦0.0001)。被注射群は、0.92±0.02に減衰したWT対照と比較して保護の程度のわずかな減少を示した(図3c)。このデータは、miR-29cの発現を増加させることによる線維症の軽減が、絶対力及び比力の両方を増加させるが、筋肉を収縮誘発性損傷から有意に保護しないことを示す。
【0099】
rAAVrh.74.MiR-29c治療GAS筋は、未治療mdx/utrn+/-GAS筋と比較した場合に絶対力の有意な改善を示し(rAAV.miR-29c-2277±161.7対mdx/utrn+/-未治療-1722±145.7、図3a)、また未治療GAS筋と比較した場合にrAAVrh.74.miR-29c治療GAS筋特異的改善において比力を正常化した(rAAV.miR-29c-204.7±11.7対mdx/utrn+/-未治療-151.6±14.5、図3b)。野生型対照と比較した場合、力は依然として有意に低下した(rAAV.miR-29c-204.7±11.7対野生型-312.0±34.1)。
【0100】
実施例5
マイクロジストロフィンとの同時送達は線維症をさらに軽減する
miR-29c/マイクロジストロフィン併用遺伝子療法アプローチが線維症を軽減するのにより有益であるかを決定するために、12週齢のmdx/utrn+¥-マウスは、左腓腹筋に5x1011vgのrAAVrh.74.CMV.MiR-29cの筋肉内注射を受けた。以下の遺伝子療法ベクター:scAAVrh.74.CMV.miR-29c単独、rAAVrh.74.MCK.マイクロジストロフィンとの同時送達、及びrAAVrh.74.MCK.マイクロジストロフィン単独を、3ヶ月齢のmdx/utrn+/-マウス、DMDマウスモデルの左腓腹筋(GAS)筋への筋肉内注射(IM)によって投与した。
【0101】
pAAV.MCK.マイクロジストロフィンプラスミドは、図10に示すように、AAV2逆方向末端反復配列(ITR)に隣接するヒトマイクロジストロフィンcDNA発現カセットを含む。AAVrh.74ビリオンにカプシド化されたのはこの配列である。Rodino-Klapac et al.(Mol Ther.2010 Jan;18(1):109-17)に記載されているように、コドン最適化ヒトマイクロジストロフィンcDNA配列を駆動するMCK発現カセットをAAVクローニングベクターに挿入することにより、pAAV.MCK.マイクロジストロフィンプラスミドを構築した。MCKプロモーター/エンハンサー配列は、筋特異的遺伝子発現を駆動するのに使用され、351bpのMCKコアプロモーター(近位)に融合したマウスMCKコアエンハンサー(206bp)からなる。コアプロモーターの後、53bpの内因性マウスMCK Exon1(非翻訳)が効率的な転写開始のために存在し、SV40後期16S/19Sスプライスシグナル(97bp)及び小さな5’UTR(61bp)が続く。イントロン及び5’UTRはプラスミドpCMVβ(Clontech)に由来する。マイクロジストロフィンカセットは、ATG開始の直前にコンセンサスKozak及びmRNA終結のための小さな53bpの合成ポリAシグナルを有する。ヒトマイクロジストロフィンカセットは、(R4-R23/Δ71-78)ドメインを含む。相補的DNAは、ヒト使用のためにコドン最適化され、GenScript(Piscataway,NJ)によって合成された。
【0102】
注射の12週間後及び24週間後にマウスを分析した。まず、マイクロジストロフィンを発現する筋線維の数を用いて、導入遺伝子送達の有効性を評価し、各群で同様のレベルのマイクロジストロフィンが発現するようにした。マイクロジストロフィンは、miR-29c/マイクロジストロフィン併用療法(75.03±1.91%)と比較して、マイクロジストロフィン単独(71.85±2.25%)で治療されたコホート間では差がないことが見出された(図4)。
【0103】
GAS筋を注射の12ヶ月後に分析して、シリウスレッド染色及びその後のImageJでの定量化によりコラーゲン蓄積を評価した。さらなる結果には、miR-29c及びコラーゲン転写物レベル、GAS筋における力測定、線維直径測定、ならびに筋肉再生に関与するタンパク質(MyoD、ミオゲニン)のウエスタンブロット分析が含まれた。線維症の量はピクロシリウスレッド染色によって分析され、未治療反対側mdx/utrn+/-GAS筋またはマイクロジストロフィン単独と比較して、すべての治療群においてGAS筋全体にわたるコラーゲン染色の有意な減少を明らかにした(図5a)。ピクロシリウスレッド染色の定量化は、併用治療筋肉が未治療筋肉と比較してコラーゲンの40.8%減少を有したことを示す(被治療-17.47%±0.75対未治療-29.5%±0.7)(図5b)。miR-29cの発現を確認するために、qRT-PCRをGAS筋で行い、すべての治療群は、未治療筋肉と比較してmiR-29cの増加を有した(図5c)。
【0104】
DMD組織と類似して、mdx/utrn+/-筋肉におけるmiR-29cレベルの有意な減少が観察され、ピクロシリウスレッド染色によって測定された線維症の増加と相関した。scAAV.miR-29c単独での治療の3ヶ月後、GAS筋における線維症の有意な減少(被治療-23.5%±1.3対未治療-27.8%±0.6)があった。マイクロジストロフィンと同時送達された場合、ピクロシリウスレッド染色により、コラーゲンのさらなる減少(41%)が観察された(併用治療:17.47%±0.75対未治療:29.5%±0.7)(p<0.0001)(図5b)。miR-29cの発現を確認するために、qRT-PCRをGAS筋で行い、すべての治療群は、未治療筋肉と比較してmiR-29cの増加を有した(図5b)。
【0105】
注射の24週間後、結果は注射の12週間後に観察された結果と類似していた。未治療筋肉と比較してピクロシリウスレッド染色によるコラーゲンの47%減少(併用療法:16.5±1.23対未治療:31.07±0.93、p<0.0001)及び同時にmiR-29c転写物レベルの増加があった。
【0106】
ピクロシリウスレッド染色により観察されたコラーゲンの減少をさらに検証するために、qRT-PCRを筋肉で行い、Col1A、Col3A、及びまた別のECM成分であるフィブロネクチン(Fbn)の転写物レベルを定量化した。qRT-PCR分析は、各治療後のCol1A及びCol3Aの減少を検出したが、マイクロジストロフィン及びmiR-29cの両方で治療されたコホートのみが有意な減少を示した(図6a及び6b)。分析は、併用治療コホートにおいてのみFbnが有意に減少したことを明らかにした(図6c)。
【0107】
TGF-β1は、ジストロフィー筋において上方調節されることが以前に示されており、線維症カスケードの開始に関与する可能性が高い。TGF-β1は、miR-29cを下方調節し、コラーゲン及び筋線維形成の増加を伴う筋芽細胞の筋線維芽細胞への変換を担う、既知の線維症促進性サイトカインである。qRT-PCR分析は、併用治療された筋肉が、未注射筋肉及びいずれかの単剤治療と比較して有意に低いレベルのTGF-β1を有したことを示す(図6d)。注射の6ヵ月後、併用治療された筋肉は、Col1A、Col3A、Fbn、及びTGF-β1レベルの低下を示し続けたが、miR-29及びマイクロジストロフィンのみの群ではCol1A mRNAレベルのごくわずかな減少が観察された。
【0108】
未治療四肢と比較してmiR-29c単独で治療された筋肉では、比力及び絶対力の増加が観察され、マイクロジストロフィンと組み合わせた場合、野生型と有意な差がない絶対力及び比力をもたらした。また、併用治療された筋肉における腓腹筋重量の有意な増加が観察された。
【0109】
rAAV.miR-29cを抗線維症療法として使用した初期の結果は、線維症の主要な原因であるコラーゲンレベルの低下に有益な効果があることを示唆している。さらに、膜安定性を改善するためにマイクロジストロフィンと組み合わせると、miR29上方調節は筋力を正常化した。
【0110】
実施例6
絶対力のさらなる増加及び収縮誘発性損傷からの保護の追加
miR-29治療筋肉が絶対力及び比力の控えめだが有意な増加を有したことがわかったので、miR-29c過剰発現及びマイクロジストロフィン遺伝子置換の併用療法の筋機能への影響を調べた。注射の12週間後、GASを単離し、インビボ力測定を行った。実施例2で上記したrAAVrh.74.MiR-29cベクター及びrAAV
【0111】
併用治療のrAAVrh.74.MiR-29c及びマイクロジスを発現するrAAVで治療されたGAS筋は、未治療mdx/utrn+/-GAS筋と比較した場合に絶対力の有意な改善を示し(併用治療-3582.4±79.4nM対mdx/utrn+/-未治療-1722±145.7nM対野生型-3005±167.3nM)(図7)、また未治療GAS筋と比較した場合のrAAVrh.74.miR-29c/マイクロジス被治療GAS筋に特異的な改善において比力を正常化した(併用治療マウス-244.2±6.6nM/mm対mdx/utrn+/-未治療-151.6±14.5nM/mm対312.0±34.1nM/mm)(図7)。絶対力及び比力の両方は野生型対照と有意な差がなかった。
【0112】
各GASは一連の反復伸張性収縮を受けた。第1の収縮に対する各収縮の力比を比較することにより、第5の収縮後、未治療筋肉は、併用治療0.66±0.04に対して0.54±0.06に減衰したことが明らかになり(P≦0.0001)、マイクロジストロフィン単独でも0.66±0.04に減衰したので、これはマイクロジストロフィンに起因し得る。被治療群は、0.92±0.02に減衰した野生型よりも依然として有意に低かった(図7c)。注射の24週間後に同様の所見が認められた。このデータは、線維症の軽減及び遺伝子置換が、絶対力及び比力の両方を増加させ、筋肉を収縮誘発性損傷から有意に保護することを示す。
【0113】
実施例7
併用療法は筋肥大及び過形成を増加させる
マイクロジストロフィンと同時送達されたMiR-29cは、3ヶ月齢で単独で注射されたいずれか一方と比較して、被注射腓腹筋の全重量を増加させた(図8図9a)。筋肉量の増加の原因を調べるために、筋線維直径を測定する。miR-29c/μ-dys併用治療は、平均線維サイズの増加を示した。mdx/utrn+/-対照をmiR-29c/μ-dys治療mdx/utrn+/-と比較して、平均直径は25.96から30.97μmに増加した(図9b)。同時送達は野生型線維サイズ分布へのシフトをもたらした(図9c)。平均線維サイズは増加したが、総筋肉重量の~30%増加は説明されない。筋肉の総断面積も測定した。すべての群からの腓腹筋をフルスライドスキャンし、総面積を測定した。マイクロジス/miR-29cで併用治療された筋肉は、未治療及びいずれかの単剤治療と比較して断面積の有意な増加を有した(未注射:24.6対miR-29c:26.3対マイクロジス:26.6対マイクロジス/miR-29c:33.1)(図8図9d)。
【0114】
miR-29cはmyoD/Pax7/ミオゲニン経路において役割を果たすことが報告されており、miR-29cは筋原性系列において分化する衛星細胞(筋幹細胞)の再生及び活性化に影響している可能性があるという仮説が立てられた。これを試験するために、フルスライドスキャン画像からの筋線維の総数を数えた。miR-29c/μ-dys併用治療後の筋線維の数の増加(図9e)。最後に、mdx/utrn+/-マウスにおける筋線維直径が多くの小径線維及びいくつかの肥大線維とは異なることを考慮して、単位面積当たりの線維数(細胞/mm2)が治療によって影響を受けるかが決定された。miR-29c/μ-dys併用治療は野生型と変わらなかった(図9f)。
【0115】
実施例8
早期併用治療は線維症を予防する
DMDの予防療法としてのコンビナトリアルmiR-29c及びマイクロジストロフィンの潜在的重要性を考慮して、より若齢のmdx/utrn+/-マウスのコホートを4週齢で治療した。本明細書に記載の他の群と同じパラダイムを用いて、以下の治療:同じ用量のscAAVrh.74.CMV.miR-29c単独、ssAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィン+scAAVrh74.CMV.miR-29c併用療法、またはssAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィン単独を、GASの筋肉内注射による線維症予防の有効性について比較した。注射の12週間後にマウスを剖検した。未治療反対側mdx/utrn+/-GAS筋と比較して、すべての被治療群においてGAS筋全体にわたるコラーゲン染色の有意な減少が観察された(図10A)。ピクロシリウスレッド染色の定量化は、マイクロジストロフィン/miR-29cで併用治療された筋肉が未治療筋肉と比較してコラーゲンの51%減少を有したことを示し(被治療-11.32%±1.18対未治療-23.15%±0.90)(p<0.0001)(図10)、pRT-PCRは、コンビナトリアル療法後にCol1A、Col3A、Fbn、及びTGF-β1の減少を確認した(図10D及びE)。
【0116】
実施例9
早期併用療法は後期治療よりも良好に力を回復し、収縮誘発性損傷から保護する
インビボ力測定を、実施例8に記載されているように併用療法で早期に治療されたマウスのGASについて行った。4週齢のmdx/utrn+/-マウスにおいて、miR-29c/マイクロジストロフィンを用いた併用療法は、未治療mdx/utrn+/-マウスと比較した場合、絶対力の有意な改善を示し、野生型との差はなかった(併用治療:2908±129.5mN対未治療:1639.4±116.9mN対野生型:3369.73±154.1mN)。比力もまた、コンビナトリアル療法後に野生型レベルまで正常化した(併用治療338.9±22.34mN/mm2対未治療184.3±13.42mN/mm対WT364.3±7.79mN/mm)(図11A及びBならびに12)。
【0117】
次に、各GASは一連の反復伸張性収縮を受けた。第5の収縮による各収縮の力比を比較することにより、未治療筋肉は、併用治療0.82±0.04に対して0.53±0.04に減衰した(P≦0.0001)。コンビナトリアル治療群は、0.93±0.01に減衰した野生型よりもわずかに低かったが、有意な差はなかった(図11C)。これらのデータは、線維症の軽減及び遺伝子置換が、絶対力及び比力の両方を増加させ、筋肉を収縮誘発性損傷から有意に保護することを示す。
【0118】
これらの実験は、遺伝子置換を新生児期に開始すべきであることを示唆している。取り組みは明らかに、新生児期にDMD及び他の筋ジストロフィーを特定する方向に向かっている。Ohio Newborn Screening Studyは、同じ乾燥血液スポット上でのDNA確認を伴うバイオマーカー(>2000U/L)としてCK 7 Neurol.を用いた新生児におけるDMDの特定の可能性を示す(Mendell et al.,Ann.Neurol.71:304-313,2012)。この方法論は現在、米国(PPMD2016年5月16日:Next Steps with Newborn Screening)ならびに他の国、特に英国(UK National Screening Committee)及び中国(Perkin Elmer(商標)が中国でスクリーニングを開始)において拡張されている。
【0119】
miR-29はまた、心臓、肺、及び肝臓線維症のための治療モダリティとしての有望性を示している。マウス及びヒトにおける心筋梗塞は、miR-29下方調節に関連する。Rooij et al.(Proc.Natl.Acad.Sci,USA 105:13027-13032,2008)は、線維芽細胞をmiR-29b模倣体に曝露することが、コラーゲン転写物を減少させ、心臓線維症の臨床的変換のための経路を提供することを実証した。その後の研究は、ブレオマイシン誘発性肺線維症マウスモデルにおいて、miR-29bのSleeping Beauty(SB)トランスポゾンシステムに基づく送達を用いて線維症の減弱を達成できることを示した。14現在、miR-29b模倣体は、健康なボランティアでの臨床Phase 1 Safety-Tolerability局所経皮試験中である(miRagen Therapeutics(商標)MRG-201)。オリゴヌクレオチドの半減期に関連する反復投与を必要とするmiR-29オリゴヌクレオチド送達と比較して、AAV遺伝子療法は、単一送達遺伝子導入のための経路を潜在的に提供することができる。
【0120】
実施例10
miR-29及びマイクロジストロフィンの筋特異的発現による治療は線維症及びECM発現を減少させた
miR29c配列及び筋特異的プロモーターMCKを含むAAVベクターも生成し、マイクロジストロフィンを発現するAAVベクターとの併用療法として試験した。本明細書においてrAAV.MCK.miR29cと称されるrAAVベクターを生成するために、22ヌクレオチドmiR29c配列(標的鎖配列番号3及びガイド鎖配列番号4)を、MCKプロモーターによって駆動されるmiR-30スカフォールド(配列番号11)にクローニングした。発現カセット(配列番号12)を一本鎖AAVプラスミドにクローニングし、筋肉中でよく発現することが知られている血清型AAVrh74を用いてパッケージングした。miR-29c cDNAは、miR-30骨格にmiR-30c標的(センス)鎖、miR-30ステムループ、及びmiR-29cガイド(アンチセンス)鎖を含むカスタムプライマーを用いて合成した。miR-29c配列の3つの塩基を改変した。次いで、この配列を、MCKプロモーター及びポリA配列によって駆動される一本鎖AAV ITR含有プラスミドにクローニングした。
【0121】
pAAV.MCK.miR29Cプラスミドは、AAV2逆方向末端反復配列(ITR)に隣接するmiR-30ステムループ骨格にmir29c cDNAを含む。AAVrh74ビリオンにカプシド化されたのはこの配列である。さらに、miR-29c標的配列内のいくつかのヌクレオチドは、shRNA-miR(luc)のように、この部位でワトソン-クリック対合を模倣するように変更された。ShRNA-luc設計に従って、ヘアピンはその長さ全体にわたって完全に相補的でなければならない。加えて、パッセンジャー鎖の変化が多いほど、ステムを介してmiRNAを認識することができるmiR-29プロセシングを調節する内在性機構の排除の可能性がある。ガイド鎖の19番目の塩基をシトシンに改変して、天然mi-29c配列の切断部位に先行するヌクレオチドを模倣し、他方の鎖上の対応する塩基を変更して対合を保存した。
【0122】
AAV.MCK.miR-29c/マイクロジストロフィン併用療法の早期治療は、線維症及びECM発現を減少させるのにより有効であった。4~5週齢のmdx/utrn+¥-マウスは、実施例5に記載されているように、左腓腹筋に5x1011vgのrAAVrh.74.MCK.MiR-29c及びrAAVrh74.MCK.マイクロジストロフィンの筋肉内注射を受けた。筋肉を注射の12週間後に採取した。未注射及びrAAV.MCK.miR-29c/rAAV.MCK.マイクロジストロフィンの併用療法で注射されたマウスから採取した筋肉のピクロシリウスレッド染色は、併用治療筋肉が未治療GAS筋と比較してコラーゲンの50.9%減少を有したことを示し(図13a及び13b参照)、qRT-PCRは、被治療コホートにおけるmiR-29c転写物レベルの増加を確認した(図13c)。半定量qRT-PCRは、反対側の肢の療法と比較したAAV.MCK.miR-29c/AAV.マイクロジストロフィン治療筋肉におけるコラーゲン1A及びコラーゲン3A(図13d、e)、フィブロネクチン(図13f)、ならびにTgfβ1(図13g)レベルの有意な減少を示した。(*p<0.05,****p<0.0001)。AAV.MCK.miR-29c/マイクロジストロフィン併用療法の後期治療は、線維症及びECM発現を減少させるのに有効である。3ヶ月齢のmdx/utrn+¥-マウスは、実施例5に記載されているように、左腓腹筋に5x1011vgのrAAVrh.74.MCK.MiR-29c及びrAAVrh.74.MCK.マイクロジストロフィンの筋肉内注射を受けた。筋肉を注射の12週間後に採取した。未治療、AAV.MCK.miR-29c、及びAAV.MCK.miR-29c/AAV.マイクロジストロフィン治療筋肉のピクロシリウスレッド染色は、併用治療筋肉が未治療GAS筋と比較してコラーゲンの30.3%減少を有したことを示し(図14a及び14b参照)、qRT-PCRは、被治療コホートにおけるmiR-29c転写物レベルの増加を確認した(図14c)。半定量qRT-PCRは、反対側の肢と比較したAAV.miR-29c/AAV.マイクロジストロフィン治療筋肉におけるコラーゲン1A及びコラーゲン3A(図14d、e)、フィブロネクチン(図14f)、ならびにTgfβ1(図14g)レベルの有意な減少を示す。一元配置ANOVA。すべてのデータは平均±SEMを表す。(**p<0.01、****p<0.0001)。
【0123】
実施例11
早期併用療法は後期治療よりも良好に力を回復し、収縮誘発性損傷から保護する
インビボ力測定を、実施例8及び9に記載されているように、miR-29及びマイクロジストロフィンの筋特異的発現で早期に治療されたマウスのGASについて行った。4週齢のmdx/utrn+/-マウスにおいて、rAAV.MCK.miR-29c/及びマイクロジストロフィンを発現するrAAVを用いた併用療法は、未治療mdx/utrn+/-マウスと比較した場合、絶対力の有意な改善を示し、野生型との差はなかった(図15a)。比力もまた、併用療法後に野生型レベルまで正常化した(図15b)。
【0124】
筋肉は次いで、実施例9に記載されているように、反復伸張性収縮後の力の喪失について評価された。rAAV.miR-29c/rAAV.MCK.マイクロジストロフィンで併用治療及びrAAV.MCK.マイクロジストロフィンで単剤治療されたマウスは、未治療mdx/utrn+¥-筋肉と比較して力の喪失からの保護を示した(図15c)。
【0125】
12週齢のmdx/utrn+/-マウスでは、rAAV.MCK.miR-29c/及びマイクロジストロフィンを発現するrAAVを用いた併用治療は、力を回復させ、収縮誘発性損傷に対して保護した。rAAV.MCK.miR-29c及びマイクロジストロフィンを発現するrAAVが注射されたGAS筋の強縮性収縮後の絶対力(図16a)及び正常化比力(図16b)の測定は、未治療mdx/utrn+/-筋肉と比較して有意に増加した。その後、筋肉は、実施例9に記載されているように、反復伸張性収縮後の力の喪失について評価された。MCK.miR-29c/マイクロジストロフィンで併用治療されたマウスは、未治療mdx/utrn+¥-筋肉と比較して力の喪失からの保護を示した(図16c)。これらのデータは、線維症の軽減及び遺伝子置換が、絶対力及び比力の両方を増加させ、筋肉を収縮誘発性損傷から有意に保護することを示す。
【0126】
実施例12
早期併用治療は筋肥大及び過形成を増加させる
マイクロジストロフィンを発現するrAAVとのrAAV.MCK.miR-29の同時送達は、注射の3ヶ月後、単独で注射されたいずれか一方と比較して、被注射腓腹筋の全重量を増加させなかった(図17a)。筋線維直径も測定した。miR-29c/マイクロジストロフィン併用治療は、平均線維サイズの増加を示した。mdx/utrn+/-対照をmiR-29c/マイクロジストロフィン治療mdx/utrn+/-と比較し、平均直径は28.96から36.03μmに増加した(図17b)。同時送達は野生型線維サイズ分布へのシフトをもたらした(図17c)。miR-29c/マイクロジストロフィン併用治療における1mm当たりの筋線維の数は、未治療マウス及び野生型より有意に少なかった(図17d、***p<0.01、****p<0.0001)。
【0127】
参考文献
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図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図13G
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図19
図20A
図20B
図20C
図20D
図21A
図21B
図21C
図22A
図22B
図22C
【配列表】
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【外国語明細書】