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特開2024-23455標的物質の流体からの除去のための収着剤として、粒子状固体支持体にグラフト化された変性ポリアミン
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  • 特開-標的物質の流体からの除去のための収着剤として、粒子状固体支持体にグラフト化された変性ポリアミン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023455
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】標的物質の流体からの除去のための収着剤として、粒子状固体支持体にグラフト化された変性ポリアミン
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20240214BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240214BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20240214BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B01J20/26 E
B01J20/26 G
B01J20/30
B01J20/34 G
B01D15/00 K
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023202152
(22)【出願日】2023-11-29
(62)【分割の表示】P 2021501108の分割
【原出願日】2019-03-28
(31)【優先権主張番号】1805058.3
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】520373110
【氏名又は名称】プラフィニティ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Puraffinity Ltd.
【住所又は居所原語表記】Translation & Innovation Hub Building, 80 Wood Lane, London W12 0BZ United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リーブ,ベンジャミン デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】リー,ウェン
(72)【発明者】
【氏名】リー,キャサリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ヨウ,アマンダ イー フェン
(72)【発明者】
【氏名】ヘイグマン,ヘンリック
(57)【要約】
【解決手段】標的物質を流体流から除去するための組成物であって、ポリアミンおよび共
有結合した疎水基を含み、ポリアミンが支持材料に共有結合している組成物が提供される
。標的物質を流体流から除去するためのプロセスであって、流体流をポリアミンおよび共
有結合した疎水基を含む組成物と接触させることを含み、ポリアミンが支持材料に共有結
合しているプロセスも提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的物質を流体流から除去するための組成物であって、ポリアミンおよび共有結合した
疎水基を含み、前記ポリアミンが支持材料に共有結合している組成物。
【請求項2】
前記支持材料が、リグノセルロース、バクテリアセルロース、微結晶性セルロース、ミ
クロフィブリル化セルロースおよびセルロース誘導体からなる群のうちの1種以上から選
択される材料から構成されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記支持材料が、セルロースまたはリグノセルロースの粉末あるいはパルプを含む、請
求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記セルロースまたはリグノセルロースの粉末あるいはパルプが、膜または膜様フィル
ターに組み込まれている、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記支持材料が、シリカ、シリカゲルおよびシリカ誘導体からなる群のうちの1種以上
から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記支持材料が多孔質、固体および粒子状であり、好ましくは、前記粒子の平均直径サ
イズが約0.01mm超で、約1mm未満である、請求項1、2または5のいずれか1項
に記載の組成物。
【請求項7】
前記粒子形状が、複数の顆粒、フレーク、ビーズ、ペレットおよびパスティルからなる
群のうちの1種以上を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリアミンが直鎖または分岐ポリアミンから選択される、請求項1~7のいずれか
1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリアミンが、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリプロピレンイミン(PPI)
、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(N-メチルビニルアミン)、ポ
リリジン、ポリ(4-アミノスチレン)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド
)、ポリヘキサメチレングアニジン、ポリヘキサニド、ポリ(メチレンco-グアニジン
)、またはポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)から
なる群から選択される直鎖または分岐ポリアミンから選択される、請求項8に記載の組成
物。
【請求項10】
疎水基が、C2~C22の分岐、直鎖、飽和もしくは不飽和、または環状アルキル、あ
るいはアリールから選択される基を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記C2~C22アルキル基が、ブチル、ヘキシルまたはオクチル基からなる群から選
択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記C2~C22アルキル基が、イソブチル、イソヘキシルまたはイソオクチル基から
なる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記C2~C22アルキル基が、シクロヘキシル、シクロへプチルおよびシクロオクチ
ル基からなる群から選択されるシクロアルキルから選択される、請求項10に記載の組成
物。
【請求項14】
前記アリール基が、フェノールまたはフェニル基から選択される、請求項10に記載の
組成物。
【請求項15】
疎水基がポリまたはパーフルオロアルキル基、好適にはC8パーフルオロオクタンまた
はC8ポリフッ素化、6:2フルオロテロマーを含む、請求項1~9のいずれか1項に記
載の組成物。
【請求項16】
収着剤分子が複数の疎水基を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリアミン基が、アミド結合、尿素結合、チオ尿素結合、イソチオウロニウム結合
、グアニジニウム結合および四級化(メンシュトキン)反応からなる群から選択される結
合を介して、前記疎水基と結合している、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物
【請求項18】
流体流をポリアミンおよび共有結合した疎水基を含む組成物と接触させることを含み、
前記ポリアミンが支持材に共有結合している、標的物質を流体流から除去するためのプロ
セス。
【請求項19】
前記流体が液体であり、前記液体が、水、有機溶媒、液体化石燃料、液体潤滑剤、イオ
ン液体、および作動流体から任意に選択される、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記標的物質が、1種以上のポリおよびパーフルオロ化アルキル物質(PFAS)を含
み、パーフルオロブタンスルホネート(PFBS)、パーフルオロブタン酸(PFBA)
、パーフルオロヘキサンスルホネート(PFHS)、パーフルオロヘキサン酸(PFHA
)、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロオクタンスルホネート(PFO
S)、パーフルオロノナン酸(PFNA)およびパーフルオロデカン酸(PFDA)、そ
して6:2フルオロテロマースルホン酸(6:2 FTSA)からなる群から選択される
1種以上を含む、パーフルオロ化アニオン性界面活性剤化合物から任意に選択される、請
求項18に記載のプロセス。
【請求項21】
前記標的物質が有価物質を含み、貴金属、希土類金属もしくは白金族金属、またはこれ
らの塩を任意で含む、請求項18に記載のプロセス。
【請求項22】
前記支持材料が、リグノセルロース、バクテリアセルロース、ミクロフィブリル化セル
ロース、微結晶性セルロースおよびセルロース誘導体からなる群のうちの1種以上を含む
、請求項18~21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記支持材料がセルロースまたはリグノセルロースの粉末あるいはパルプである、請求
項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記セルロースまたはリグノセルロースの粉末あるいはパルプが、膜または膜様フィル
ターに組み込まれている、請求項22に記載のプロセス。
【請求項25】
前記支持材料が、シリカ、シリカゲルおよびシリカ誘導体からなる群のうちの1種以上
から選択される、請求項18~21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記支持材料が、多孔質、固体および粒子状である、請求項18~22または25のい
ずれか1項に記載のプロセス。
【請求項27】
前記多孔質、固体、粒子状支持材が、顆粒、フレーク、ビーズ、ペレットおよびパステ
ィルからなる群のうちの1種以上の形態である、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記支持材料が床または充填カラム内に含まれ、前記流体流が前記床または充填カラム
を通って、またはその全域にわたって通過する、請求項18~27のいずれか1項に記載
のプロセス。
【請求項29】
前記ポリアミンが直鎖または分岐ポリアミンから選択される、請求項18~28のいず
れか1項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記直鎖または分岐ポリアミンが、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリプロピレンイ
ミン(PPI)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(N-メチルビニ
ルアミン)、ポリリジン、ポリ(4-アミノスチレン)、ポリ(ジアリルジメチルアンモ
ニウムクロリド)、ポリヘキサメチレングアニジン、ポリヘキサニド、ポリ(メチレンc
o-グアニジン)、またはポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウム
クロリド)からなる群から選択される、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
疎水基が、C2~C22の分岐、直鎖もしくは環状アルキル、またはアリールから選択
される基を含む、請求項18~30のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項32】
前記C2~C22アルキル基が、ブチル、ヘキシルまたはオクチル基から選択される、
請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
前記C2~C22アルキル基が、イソブチル、イソヘキシルまたはイソオクチル基から
選択される、請求項31に記載のプロセス。
【請求項34】
前記C2~C22アルキル基が、シクロヘキシル、シクロへプチルまたはシクロオクチ
ル基から選択されるシクロアルキルから選択される、請求項31に記載のプロセス。
【請求項35】
前記アリール基が、フェノールまたはフェニル基から選択される、請求項31に記載の
プロセス。
【請求項36】
疎水基がポリまたはパーフルオロアルキル基、好適にはC8パーフルオロオクタンまた
はC8ポリフッ素化、6:2フルオロテロマーを含む、請求項18~30のいずれか1項
に記載のプロセス。
【請求項37】
前記収着剤分子が複数の疎水基を含む、請求項18~36のいずれか1項に記載のプロ
セス。
【請求項38】
前記ポリアミン基が、アミド結合、尿素結合、チオ尿素結合、イソチオウロニウム結合
、グアニジニウム結合、または四級化(メンシュトキン)反応を介して、前記疎水基と結
合している、請求項18~37のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項39】
前記プロセスが、汚染物質を前記流体流から除去した後に前記組成物を再生することを
さらに含む、請求項18~38のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項40】
前記組成物を再生することが、1種以上の水性液体洗浄剤を前記組成物に適用すること
を含む、請求項39に記載のプロセス。
【請求項41】
前記液体洗浄剤のうちの1種以上が塩洗浄剤であり、前記塩が、塩化物、硫酸塩または
リン酸塩対イオンを有するナトリウム、カリウムまたはマグネシウム塩からなる群のうち
の1種以上から任意に選択される、請求項40に記載のプロセス。
【請求項42】
前記液体洗浄剤のうちの1種以上が酸性洗浄剤であり、前記酸が、塩酸、硫酸、硝酸、
リン酸、エタン二酸、ヘキサン酸、エタン二酸、またはクエン酸からなる群のうちの1種
以上から任意に選択される、請求項40または41に記載のプロセス。
【請求項43】
前記液体洗浄剤のうちの1種以上が塩基性洗浄剤であり、前記塩基が、水酸化アンモニ
ウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群のうちの1種以上から任意に選
択される、請求項40~42のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項44】
前記塩基性洗浄剤が水酸化アンモニウムを含む、請求項43に記載のプロセス。
【請求項45】
前記液体洗浄剤のうちの1種以上が9を超えるpHを有するpHを有する、請求項40
~44のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項46】
前記液体洗浄剤のうちの1種以上が5未満のpHを有するpHを有する、請求項40~
44のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項47】
汚染物質を流体流から除去するための組成物を製造する方法であって、
a.支持材料を用意することと、
b.前記支持材料を、ポリアミン基および共有結合した疎水基を含む汚染物質-収着
剤分子に共有結合させることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミンに基づいて化学的に変性された濾過材料を使用した、標的物質の
液体などの流体からの除去、ならびにそのような材料の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中での成長する工業化は、安価に製造された生成物への需要の高まりと組み合わさ
れて、水などの主要な溶媒の汚染された供給物の改善およびリサイクルの重要かつ進行中
のニーズに寄与している。単にそれらを処分するのではなく、既存のリソースを再使用し
て補充する必要があることへの認識がある。減少する淡水供給が、工業活動からの汚染に
よって脅かされているので、環境保護規制もますます厳しくなっている。
【0003】
工業および農業プロセスで使用される重要な流体としては、水だけでなく、溶媒、燃料
、潤滑剤、および作動流体が挙げられる。これらの液体は全て、意図的であれ偶然であれ
、工業プロセスでの通常の使用を通して、または廃棄物への曝露を介して、化学的汚染に
暴露され得る。例として、工業国では、典型的に、全ての水の消費量の最大3分の2が工
業のニーズに起因し得る。国際レベルでは、先進国および発展途上国が、責任ある水の使
用を含む持続可能な環境政策への取り組みを確実にするために、国連などの組織からの重
要な取り組みが存在することは当然のことである。特に、持続可能な成長を支援するため
に、消費される水の各単位からより多く得る、より良好な方法を開発することが不可欠で
ある。
【0004】
不適切に処分されている工業プラントおよび化学プロセス施設からの廃水、農業地域で
使用される肥料および農薬を含有する表面流出、ならびに消火用フォームで使用される洗
浄洗剤および難燃剤を含む、環境に有害な環境汚染物質の様々な発生源が存在する。多く
の工業化学汚染物質は、分解する前に何年も自然に残留し得、非常に低い濃度であっても
、植物、動物、および人間に大きな害を及ぼす可能性がある。生態系への影響も深刻であ
り、持続的な環境汚染物質は、多くの場合、食物連鎖の上位にある生物の体内に濃縮され
る。1970年代後半にほとんどの工業国で禁止されたにもかかわらず、ポリ塩化ビフェ
ニル(PCB)は、多くの海洋動物の組織内で高レベルで検出され得、正常な内分泌プロ
セスの混乱を引き起こしている。
【0005】
環境に有害な環境汚染物質に加えて、工業、製薬、および農業プロセスで使用される流
体が、銀もしくは金を含む貴金属、パラジウムおよび白金族金属(Sharma et
al、2017、https://pubs.rsc.org/en/content/
articlehtml/2017/ra/c7ra10153h)、リチウムを含む他
の金属、または薬剤を含む小分子などの経済的に価値のある成分や化学物質を含有するこ
とも一般的である。多くの状況では、そのような化学物質はそれ自体で有害な汚染物質と
見なされ得ることがよくあるが、これらの内容物の除去および/または再生利用は、失わ
れるのではなく再利用できるという点でも価値があり得る。例えば、採鉱作業からの廃棄
物を通過する水(雨水など)は、溶解した鉱物を含有し得、それらは精製に値するには低
すぎる濃度で存在するが、環境に害を及ぼす可能性があり、採鉱の生産増加のための可能
な供給源を表し得る。
【0006】
したがって、汚染流体流、特に汚染水の改善の問題に対する新規で革新的な解決策を提
供する有意な必要性が存在する。
【0007】
持続的な環境汚染物質の1つの特定の種類には、ポリおよびパーフルオロ化アルキル物
質(PFAS)などのハロゲン化有機化合物が含まれる。PFASは、有機フッ素化合物
である。それらは化学的に不活性であると考えられているが、それらは環境に残留し、そ
れらの使用は、多くの国で国連気候変動枠組条約「京都議定書」によって規制されている
。PFASは、フルオロ界面活性剤、フルオロポリマー、および有機フッ素反応物を含む
、環境リスクを表す多くの誘導体化合物の製造の前駆物質としても使用される。パーフル
オロオクタンスルホネート(PFOS)およびパーフルオロオクタン酸(PFOA)は、
界面活性剤、ならびに消火用フォームおよび金属メッキプロセスの難燃剤として広く使用
されている有毒なPFAS化合物である。PFOSおよびPFOAはどちらも、非常に長
期間にわたって環境に残留し、世界の淡水供給のほとんどにおいて汚染物質として認識さ
れている。
【0008】
PFOSおよびPFOAなどのPFAS化合物の顆粒状活性炭への吸着は、汚染水から
除去するための現在の最良かつ推奨される解決策を表す。しかしながら、プロセスは非常
に遅く、非効率的である。特に、帯電した短鎖のPFAS環境汚染物質は、活性炭の床を
迅速に「突破」する。つまり、非常に大量の活性炭が必要であり、PFASで飽和すると
頻繁に交換する必要がある。吸着されたPFASは、「その場」での再生のために活性炭
から洗い流すことはできない。したがって、活性炭は、汚染水からPFASを除去する問
題に対する高価で使い捨ての解決策を表す。
【0009】
一部の変性セルロース材料は、より良好な除去を示すが、高濃度のパーフルオロ化界面
活性剤をより低いレベルに低減させることにのみ効果的であり、>1ppmレベルから規
制上の制限内(例えば、米国環境保護庁によって設定された、1兆分率で約70部:ht
tps://www.epa.gov/ground-water-and-drink
ing-water/drinking-water-health-advisori
es-pfoa-and-pfos)まで完全に洗浄するのではない。そのような材料は
、活性炭の寿命を延ばすための前処理としてのみ効果的であり、PFC除去の完全な解決
策としては効果的ではない。また、分散した凝集剤としても機能し、実施には複雑で独自
の装置が必要である(例えば、特許文献1:EP2763790B1を参照されたい)。
【0010】
特殊なイオン交換樹脂も、新しい解決策である。ここでは、第四級アンモニウムで変性
されたスチレンジビニルベンゼンポリマービーズが、活性炭の代替として充填床で使用さ
れている。これらの樹脂は、再生され得ないか、または有毒で可燃性の溶媒を用いてのみ
再生され得る(例えば、特許文献2:WO2017180346A1を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第2763790号明細書
【特許文献2】国際公開第2017/180346号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、低濃度(<1ppm)の標的物質、特に有価材料、または排水などの流体
流からのPFASなどの環境汚染物質の除去を可能にする経済的で再利用可能な組成物お
よびプロセスを提供する必要性が存在する。そのような目標は、現在の技術では特に困難
であることは明らかである。本発明は、現在の課題を克服し、これらの目的を満たすこと
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、標的物質を流体流から除去するための組成物であって、組成物
が、ポリアミンおよび共有結合した疎水基を含み、ポリアミンが、支持材料に共有結合し
ている、組成物を提供する。
【0014】
支持材料は、典型的には、多孔質、固体、および/または粒子状支持材であり得る。好
適には、支持材料は、セルロースを含み、リグノセルロース、微結晶性セルロース、ミク
ロフィブリル化セルロース、バクテリアセルロース、およびセルロース誘導体からなる群
のうちの1種以上から選択される材料から構成されている。任意に、支持材料は、セルロ
ースまたはリグノセルロースの粉末あるいはパルプなどの粉末またはパルプであり得る。
粒子形状の場合、支持材料は、例えば、複数の顆粒、フレーク、ビーズ、ペレット、およ
びパスティルからなる群のうちの1種以上を含み得る。
【0015】
支持材料はまた、シリカ、シリカゲル、およびシリカ誘導体からなる群のうちの1種以
上から選択され得る。
【0016】
本発明の一実施形態では、ポリアミンは、直鎖または分岐ポリアミンから選択される。
好適には、ポリアミンは、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリプロピレンイミン(PP
I)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(N-メチルビニルアミン)
ポリリジン、ポリ(4-アミノスチレン)から選択される直鎖または分岐ポリアミンから
選択される。
【0017】
本発明の代替の実施形態では、ポリアミンは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムク
ロリド)などのカチオン性ポリアミン、ポリヘキサメチレングアニジンもしくはポリヘキ
サニドなどのグアニジンポリアミン、またはポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジメ
チルアンモニウムクロリド)もしくはポリ(メチレンco-グアニジン)などのポリアミ
ンコポリマーから選択される。
【0018】
さらなる実施形態では、疎水基は、C2~C22の分岐、直鎖、もしくは環状、飽和も
しくは不飽和アルキル、またはアリールから選択される基を含む。典型的には、この基は
、C2~C22の分岐、直鎖、もしくは環状アルキル、またはアリールから選択される。
任意に、C2~C22の分岐または直鎖アルキル基は、ブチル、ヘキシル、またはオクチ
ル基から選択される。好適には、C2~C22直鎖アルキル基は、イソブチル、イソヘキ
シル、またはイソオクチル基から選択されるC4~C8の分岐または直鎖アルキルである
。本発明の特定の実施形態では、C2~C22アルキル基は、シクロヘキシル、シクロへ
プチル、またはシクロオクチル基から選択されるシクロアルキルである。さらなる実施形
態では、アリール基は、フェノール、ベンゼン、またはベンジルからなる群から選択され
る。さらなる実施形態では、疎水基は、C2~C22ポリまたはパーフルオロ化基、好適
には、C8パーフルオロオクタンまたはC8ポリフッ素化、6:2フルオロテロマーであ
る。任意に、収着剤分子は、複数の疎水基を含む。
【0019】
本発明の特定の実施形態によれば、ポリアミン基は、アミド結合を介して疎水基と結合
している。あるいは、ポリアミンおよび疎水基は、尿素結合、チオ尿素結合、イソチオウ
ロニウム結合、グアニジニウム結合を介して、または直接、アルキル化反応、または四級
化(メンシュトキン)反応を介して、結合し得る。
【0020】
本発明の第2の態様は、標的物質を流体流から除去するためのプロセスであって、流動
流を、ポリアミンおよび共有結合した疎水基を含む組成物と接触させることを含み、ポリ
アミンが、支持材料に共有結合している、プロセスを提供する。
【0021】
典型的には、流体は、液体であり、任意に、液体は、水、有機溶媒、液体化石燃料、液
体潤滑剤、および作動流体から選択される。
【0022】
本発明の特定の実施形態では、標的物質は汚染物質である。汚染物質は、1種以上のポ
リおよびパーフルオロ化アルキル物質(PFAS)を含み得、任意に、パーフルオロオク
タン酸(PFOA)、パーフルオロブタンスルホネート(PFBS)、パーフルオロブタ
ン酸(PFBA)、パーフルオロヘキサンスルホネート(PFHS)、パーフルオロヘキ
サン酸(PFHA)、パーフルオロオクタンスルホネート(PFOS)、パーフルオロノ
ナン酸(PFNA)、およびパーフルオロデカン酸(PFDA)からなる群から選択され
る1種以上を含む、パーフルオロ化アニオン性界面活性剤化合物から選択される。あるい
は、汚染物質は、有機化合物、任意に、ジクロフェナク、エリスロマイシン、エストロゲ
ン、オキサジアゾン、およびチアメトキサムの群から選択される1種以上を含む、医薬品
分子または農薬分子を含み得る。
【0023】
あるいは、汚染物質は、銅、鉄、鉛、水銀、クロム酸塩、またはヒ酸塩から任意に選択
される金属または半金属イオンであり得る。
【0024】
本発明の別の実施形態では、標的物質は、有価物質を含み、任意に、金、銀、希土類金
属、もしくは白金族金属、またはこれらの塩を含む。
【0025】
特定の実施形態では、支持材料は、床または充填カラム内に配置され、流体流が、床ま
たは充填カラムを通ってまたはその全域にわたって通過する。
【0026】
本発明のさらなる実施形態によれば、プロセスは、標的物質を流体流から除去した後に
、組成物を再生することをさらに含む。好適には、組成物を再生する工程は、水性洗浄剤
を、収着剤材料または一連の洗浄剤に適用することを含む。任意に、支持材料の再生は、
塩洗浄剤、または酸性洗浄剤もしくは塩基性洗浄を、組成物に適用することを含む。洗浄
液は、9を超えるpH、あるいは5未満のpHを有する液体を含み得る。いくつかの実施
形態では、支持材料の再生は、他の塩、塩基性、または酸性洗浄剤に加えて、またはその
代わりに、水性水酸化アンモニウム洗浄剤、水性塩化アンモニウム洗浄剤、または水性硫
酸アンモニウム洗浄剤を組成物に適用することを含む。
【0027】
本発明の第3の態様は、標的物質を流体流から除去するための組成物の製造方法であっ
て、支持材料を用意することと、この支持材料を、a.ポリアミン基、およびb.共有結
合した疎水基を含む標的物質収着剤分子に共有結合させることと、を含む、方法を提供す
る。
【0028】
上記の記述は、以下でさらに詳細に説明される実施形態と併せて読まれる必要があるこ
とが理解されるであろう。本発明の各実施形態は、別段の指定がない限り、単独で、また
は他の実施形態と組み合わせて利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態による組成物の電子顕微鏡写真を示す。
図2】本発明による組成物(CGM)と歴青顆粒状活性炭(GAC)との間のPFAS化合物の吸着速度を比較するグラフを示す。
図3】歴青顆粒状活性炭(GAC)およびアンバーライトアニオン交換樹脂と比較して、本発明による組成物(CGM)によって示される競合する有機酸を含む模擬廃水中のPFAS化合物の改善された結合能力を実証する。
図4】ある範囲のpH値でのバッチ試験からのPFOAおよびPFHSの吸着における本発明による組成物の性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
別段の指示のない限り、本発明の実施は、化学、材料科学、およびプロセス工学の従来
技術を用いるものであり、これらは当業者の能力の範囲内である。
【0031】
本発明を説明する前に、本発明の理解を助ける多くの定義が提供される。本明細書で引
用される全ての参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。別段の定義がない限り
、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当
業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、記載される要素のいずれかが必ず
含まれ、他の要素も同様に任意選択的に含まれ得ることを意味する。「~から本質的にな
る」は、記載される要素が必ず含まれ、列挙される要素の基本的および新規の特性に実質
的に影響を及ぼす要素が除外され、他の要素が任意選択的に含まれ得ることを意味する。
「~からなる」は、列挙されるもの以外の全ての要素が除外されることを意味する。これ
らの用語の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0033】
「標的」または「標的物質」という用語は、本明細書では、流体から除去または単離す
ることが望ましい物質または化合物を指す。標的物質は、流体に溶解(すなわち、溶質)
、懸濁、乳化、分散され得るか、さもなければ運ばれ得る、したがって、流体に可溶、部
分的に可溶、または不溶であってよい。以下で論じられるように、標的物質は、標的流体
から除去、場合によっては回収することが望まれる汚染物質および/または有価物質を含
み得る。
【0034】
本明細書で企図される標的物質は、「汚染物質(contaminants)」または
「汚染物質(contaminant substances)」を含み得る。本発明の
文脈において、「汚染物質」は、人間もしくは動物の健康、または環境に有害であり得る
物質を包含することが意図されている。その結果、それに応じて派生語が定義される、例
えば、汚染流体は、汚染物質を含む流体である。典型的には、汚染物質は、1種以上のパ
ーフルオロおよびポリフルオロアルキル物質(PFAS)、典型的には、1種以上のパー
フルオロカーボンを含み、任意に、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロ
ブタンスルホネート(PFBS)、パーフルオロヘキサンスルホネート(PFHS)、パ
ーフルオロヘキサン酸(PFHA)、パーフルオロオクタンスルホネート(PFOS)、
パーフルオロノナン酸(PFNA)、およびパーフルオロデカン酸(PFDA)、6:2
フルオロテロマースルホン酸(6:2 FTSA)からなる群から選択される1種以上を
含む、パーフルオロ化アニオン性界面活性剤化合物から選択される。いくつかの実施形態
では、汚染物質は、有機化合物、任意に、ジクロフェナク、エリスロマイシン、エストロ
ゲン、オキサジアゾン、およびチアメトキサムからなる群から選択される1種以上を含む
、医薬品分子または農薬分子を含む。汚染物質は、いくつかの実施形態では、銅、鉄、鉛
、水銀、クロム酸塩、またはヒ酸塩から任意に選択される金属または半金属イオンであり
得る。
【0035】
標的物質は、有価物質であり得る。希少元素または分子を含有する場合、製造が困難で
ある複雑な分子である場合、または任意の他の方法で流体から回収したいほど経済的に価
値がある場合、その物質は価値があり得る。製造、精製、採鉱、純化、または回収プロセ
スの結果として、有価物質が流体中に存在する場合がある。場合によっては、例えば、人
間もしくは動物の健康、または環境に有害である場合、有価物質自体が汚染物質である可
能性もある。有価物質は、好適には、貴金属、希土類金属、卑金属、または白金族金属、
またはこれらの塩であり得る。貴金属としては、金および銀を挙げることができる。白金
族金属としては、特に白金およびパラジウムを挙げることができる。有価物質は、いくつ
かの実施形態では、薬剤またはファインケミカルなどの小分子であり得る。
【0036】
「流体流」または「流体」という用語は、標的物質が、溶解、懸濁、乳化、分散される
か、さもなければの運ばれる流動性物質を指す。流体は、例えば、液体または気体であり
得る。好適には、流体は、液体であり、任意に、液体は、水、有機溶媒、液体化石燃料、
液体潤滑剤、イオン液体、作動流体、およびこれらの混合物から選択される。
【0037】
「セルロース」という用語は、β(1→4)グリコシド結合と結合したグルコースモノ
マーから構成される直鎖多糖類である生物学的ポリマーを指す。セルロースはまた、ヘミ
セルロース、グルコースおよび他の単糖類から構成される多糖類をさらに含み、分岐して
おり、セルロースに見られるよりも短い鎖を有する材料を指す場合がある。
【0038】
リグノセルロース、またはリグノセルロース系バイオマスとは、セルロースおよびリグ
ニンを含む生物学的材料を指し、ヘミセルロースおよびペクチンも含み得る。リグノセル
ロースは、植物のバイオマスの多くを構成しているため、その高い利用可能性と分解に対
する耐性で知られている。この耐性は、リグニン分子が、エステル結合およびエーテル結
合を通してセルロース鎖とヘミセルロース鎖との間に架橋を作成した結果である。リグノ
セルロースは、目的のために収穫される任意の陸生植物、または農業、林業、建設、紙パ
ルプ生成、およびバイオ燃料生成などの供給源から生成される工業関連の供給原料もしく
は廃棄物バイオマスを含む、多くの供給源から得ることができる。典型的には、リグノセ
ルロースは、小さな種子、さや、殻、および茎葉(穀物の収穫後に廃棄された葉および茎
)などの農業廃棄物から得られる。特に、リグノセルロースは、ナッツの殻、または果実
の小さな種子、核、種子、または膜孔に由来し得る。リグノセルロースは乾燥され、次い
で粉砕され、所定の粒子サイズにふるい分けられる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「バクテリアセルロース」、「微生物セルロース」、「ナ
ノセルロース」、「バクテリア産生セルロース」、および「バクテリア産生ナノセルロー
ス」という用語は同義であり、Gluconacetobacter属の種などの細菌ま
たは微生物によって産生されるセルロースを指し、高い引張強度、高い引張剛性、高い化
学的純度、生体適合性、および高い水対セルロース比を特徴とする。好適には、そのよう
なバクテリアナノセルロースは、リグニンなどの植物由来のセルロースに典型的に存在す
る関連分子を実質的に含まない。「ミクロフィブリル化セルロース」とは、酵素的または
化学的前処理を伴うまたは伴わない機械的処理によって処理されたセルロースを指す。材
料は、長さが数マイクロメートルの長く細い繊維からなる。「微結晶性セルロース」とは
、物理的、化学的、または酵素的手段を介して、セルロースの非晶質領域を分解して、結
晶ドメインを残すことによって生成される高純度部分解重合セルロースを指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「変性セルロース」または「変性リグノセルロース」とい
う用語における「変性」という用語は、化学化合物の付加によって変性されたセルロース
またはリグノセルロースを指す。これらの化合物は、共有結合、イオン結合、静電結合、
または親和性相互作用によって、セルロースまたはリグノセルロースに結合し得る。変性
は、セルロースまたはリグノセルロースに結合した化学化合物が、その後、別の化合物と
の反応によってそれ自体が変性される場合などを含み得る。特に、セルロースは、標的物
質収着剤分子の付加によって、変性され得ることが想定される。変性の他の可能性として
は、ポリアミン基、典型的にはポリエチレンイミンの付加が挙げられる。ポリアミン基は
、直鎖または分岐であってよく、好適には分岐ポリエチレンイミンである。ポリアミン基
自体は、炭化水素基などのさらなる化学基の付加によってさらに変性され得る。
【0041】
「シリカ」という用語は、式SiO2を有する二酸化ケイ素から構成されている材料を
指す。これらは水和されていてもされていなくてもよく、「シリカゲル」と称される顆粒
状の多孔質形態であり得る。あるいは、シリカ系材料は、ケイ酸ナトリウムなどのケイ酸
塩鉱物であり得る。
【0042】
本明細書で定義される場合、「収着剤材料」という用語は、収着剤官能基をさらに含む
支持材料を含む材料を指す。収着剤材料は、PFASであり得る汚染物質などの標的物質
を含む流体流と接触するのに好適であり、それによって標的物質が、収着剤材料上に吸着
、収着剤材料内に吸着、さもなければ収着剤材料によって取り込まれる。好適には、収着
剤材料は、床または充填カラム内に配置され、流体流は、床または充填カラムを通ってま
たはその全域にわたって通過する。収着剤材料は、顆粒状活性炭またはイオン交換樹脂な
どの別の吸着剤材料と組み合わされた混合床内に配置され得る。一実施形態では、収着剤
材料は、カートリッジなどの準備された構成要素内に含まれるので、使用済み収着剤材料
は好都合に収容され得、同様に、必要に応じて、新鮮なまたは再生収着剤材料と交換また
は補充され得る。あるいは、収着剤材料は、分散液として流体に添加され得る。収着材料
は、粒子状、言い換えると顆粒、フレーク、ビーズ、ペレット、またはパスティルの形態
であり得る。収着剤材料は、粉末またはパルプ、特にセルロース、ミクロフィブリル化セ
ルロース、微結晶性セルロース、またはリグノセルロースの粉末あるいはパルプであり得
、これらは、より高いアクセス可能な表面積を有益に提供し得る。収着剤材料は、膜、ま
たは膜様フィルターに組み込まれ得る。特に、パルプは、膜または膜様生成物を作製する
ために使用され得、フィルターを作製するために使用され得る。この種のフィルターの有
益性は、特定の厚さおよび大きな表面積で作製され得ると同時に、流体流路に適切に取り
付けられた場合、流体が通過することも確実にすることである。典型的には、収着剤材料
は、粒子状または顆粒状形態であり、好適には、粒子または顆粒の平均直径サイズ(粒子
の最大直径によって測定される)は、約0.01mm超、好適には、約0.1mm超、典
型的には、約1mm未満、任意に、約500μm未満である。
【0043】
本明細書で使用される場合、「収着」、「収着する」、「収着剤」という用語、および
派生語は、前記標的物質と前述の変性された支持材料との会合による汚染物質などの標的
物質の流体流からの除去を指す。材料による収着は、例えば、材料の表面への吸着など、
任意の手段によって発生し得、これは、静電引力、共有結合の形成、結紮、キレート化、
ファンデルワールス力、水素結合、またはその他を含む、標的物質と支持材料との間の化
学結合の作成による可能性がある。「収着」とは、物質への標的物質の吸収も指す。標的
物質は、物質内の分子間空間、細孔、または他の空隙内に物理的に閉じ込められる可能性
がある。特に、収着は、標的物質分子と、収着剤材料が変性された収着剤分子との間の化
学的相互作用の形成によって生じる吸着であり得る。そのような化学的相互作用は、収着
剤材料内への、かつ流体流外への標的物質の隔離をもたらす。本明細書での「吸着」とい
う用語またはその派生語の使用は、理論的な制限に拘束されることを意図するものではな
く、特に指定がない限り、上記で定義された他の手段による収着を含むことを意図する。
【0044】
本発明の一実施形態では、標的物質および/または汚染物質の流体流からの除去のため
の組成物が提供される。組成物は、標的物質収着剤分子に共有結合した支持材料を含む収
着剤材料を含む。支持材料は、高い表面積対体積の比を有し、したがって、標的物質の収
着剤として機能し得る分子に効率的な支援を提供する。顆粒状収着剤粒子は、標準的な充
填床での廃水処理用の収着剤媒体として配置されるように設計されている。顆粒は、ある
程度の多孔性を有しているが、硬く、耐久性があり、分解に対して耐性がある。
【0045】
収着剤材料がセルロースを含む場合、粒子は、茎葉、小さな種子、および殻などの農業
廃棄物から生成され、破砕およびふるい分けによって顆粒状粒子に加工され得る。以下で
論じられるように、標的物質収着剤分子を用いて化学変性した後に、この方法で配置され
る他の媒体(顆粒状活性炭またはイオン交換樹脂)と同様に、収着剤顆粒は、標準の充填
濾過ベッドまたはカラムに配置され得る。それらは、標的物質を含む廃水などの流体流と
接触するように位置付けられ得る。流体流は、重力供給、またはポンプ、真空引き、また
はさもなければ任意の好適な手段によって流体流を推進することによる実施など、正圧ま
たは負圧によって、顆粒の上または中を流動し得る。顆粒状収着剤材料による標的物質の
収着が起こり、したがって、水が流動して標的物質を除去する間、標的物質はその場に留
まる。濾過ベッドまたはカラムは、流量を低減させる有機物質または石灰のスケールなど
の閉塞の蓄積を取り除くために、時々バックフラッシュされ得る。
【0046】
本発明の一態様によれば、収着剤分子は、ポリアミン基を含む。ポリアミンは、3つ以
上のアミノ基を含む化合物である。典型的には、収着剤分子は、典型的には500~50
,000ダルトン(Da)の分子量範囲のポリアミンに基づくポリマーを含む。例えば、
ポリマーの最小平均分子量は、典型的には、少なくとも500、少なくとも1000、少
なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも5000、好適には、少なくとも1
0,000Daであり得る。ポリマーの最大平均分子量は、好適には、50,000以下
、45,000以下、40,000以下、35,000以下、典型的には、30,000
Da以下であり得る。これらのポリマーは、直鎖または分岐であり得る。典型的には「デ
ンドリマー」と称される高度に分岐したポリアミンポリマーは、各ポリマー分子上に複数
の第一級アミノ基を含む。特定の実施形態では、本発明の収着剤分子で利用されるポリア
ミンが、少なくとも1つの末端アミンを含む場合、典型的には、デンドリマーポリアミン
は、複数の末端アミンを含むことが有益である。好適には、収着剤分子は、各々が飽和2
炭素スペーサーと結合した複数のアミン基から構成されるポリマーである、ポリエチレン
イミン「PEI」(ポリアジリジンとしても知られる)を含む。典型的には、ポリエチレ
ンイミン分子は分岐している、すなわち、それらは分岐点に第三級アミン基、各分岐の末
端に第一級アミン基を含有する。分岐ポリアミンは、より低い融点、およびより高い溶解
度を有し、生成プロセスで有益性を提供する。収着剤組成物において、それらは、標的分
子との協同的相互作用を可能にするために、空間的に配置されたアミンを用いる立体的な
有益性を有し得る。さらなる実施形態では、ポリアミンは、直鎖または分岐ポリプロピレ
ンイミン(PPI)を含み得る。本発明のその上さらなる実施形態では、ポリアミンは、
ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(N-メチルビニルアミン)ポリリ
ジン、およびポリ(4-アミノスチレン)などであるがこれらに限定されない直鎖ポリア
ミンを含み得る。本発明の代替の実施形態では、ポリアミンは、ポリ(ジアリルジメチル
アンモニウムクロリド)などのカチオン性ポリアミン、ポリヘキサメチレングアニジンも
しくはポリヘキサニドなどのグアニジンポリアミン、またはポリ(アクリルアミド-co
-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)などのポリアミンコポリマーから選択される
【0047】
水処理では、固体支持材料に結合したポリアミンが、重金属および染料の除去に効果的
であることが示されている(例えば、CN103041780Bを参照されたい)。しか
しながら、アニオン性界面活性剤を水から除去することにおけるそれらの効果は驚くべき
ことである。特に、本発明の実施形態による可撓性分岐ポリアミンで変性された収着剤顆
粒は、活性炭よりも速く、より効率的な収着、および特殊イオン交換樹脂よりも低いコス
トで、規制限界までPFASを排水から除去し得る。加えて、活性炭および樹脂の場合と
は異なり、収着剤材料は、次いで、水性液体洗浄剤で再生されて、環境汚染物質を回収し
て、収着剤材料を再使用し得る。可撓性分岐ポリアミンは、これらの標的環境汚染物質と
のより強力でより特異的な相互作用を可能にする。加えて、分岐ポリアミンは、後続の化
学置換が可能な複数のアミン基を提供し、セルロース自体の高レベルの化学変性を必要と
せずに、高度な置換を可能にする。これにより、標的物質の収着能力が向上する傾向があ
る。
【0048】
標的物質収着剤分子の添加前に、支持基材を活性化することが必要または望ましい場合
がある。この活性化は、セルロースまたはシリカ表面への官能基の付加を含む。後続の反
応では、次いで、標的物質収着剤分子は、活性化中に付加された官能基との結合を形成し
、支持材料に結合する。共有結合は、エステル、エーテル、カルバメート、またはチオカ
ルバメート結合を介していてもよい。いくつかの実施形態において、セルロース支持体は
、ハロゲン化アシルハライド、典型的には臭化ブロモアセチルとの反応によって活性化さ
れる。異なる鎖長の化学的に関連する基(メチル、プロピル、ブチル、ペンチルなど)も
、この活性化での使用が検討されている。他の実施形態では、セルロースは、カルボニル
ジイミダゾール、またはグルタルアルデヒドもしくはエピクロロヒドリンなどの架橋剤と
の反応によって活性化される。これらの活性化官能基は、セルロースが最終的に変性され
る標的物質結合分子に化学結合点を提供する。これらの結合点は、支持体と標的物質結合
分子との間に短いリンカーの存在をもたらし得る。このリンカーは、例えば、上記のハロ
ゲン化アシルハライド(-C(=O)-C-)を用いるアシル化によって残されたもので
あり得る。
【0049】
別の実施形態では、顆粒状の多孔質シリカゲル基材が、(3-クロロプロピル)トリク
ロロシランを用いる反応によって活性化され得る。これにより、後続の工程で選択したポ
リアミンへの共有結合の形成のための化学結合点が提供される。
【0050】
本発明によれば、収着剤分子は、好適には短鎖疎水基であるさらなる化学基の付加によ
って、それ自体が変性されるポリアミン基を含む。典型的には、このさらなる化学基は、
アルキル、またはアリール酸ハライド、または無水物と、ポリアミン基のアミン基との反
応により付加されて、ポリアミンと疎水基との間にアミド結合を形成する。任意に、反応
は、疎水基とポリアミン分子内に含まれる末端第一級アミン基との間である。本発明の実
施形態では、複数の疎水基が、ポリアミン分子内の複数のアミン基と反応する。いくつか
の実施形態では、ポリアミン分子内に存在する実質的に全ての末端第一級アミン基は、疎
水基と反応する。
【0051】
得られた収着剤分子は、収着剤材料の特定の要件に合わせて調整され得る収着性の独特
の特性を有する。したがって、収着剤分子の化学的性質を変性することによって、収着剤
材料が、流体流内の特定の物質および/または汚染物質を標的とするように容易に最適化
され得ることは、本発明の有益性である。
【0052】
廃水処理の主要な標的は、PFOA、PFOS、PFHA、PFHS、PFBA、PF
BS、および6:2 FTSAなどのポリまたはパーフルオロ化界面活性剤である。
【0053】
他の標的物質、汚染物質、または有価物質(例えば、採鉱、純化、または製造プロセス
からの廃水中に存在する貴金属または希土類金属を含む)を除去するための廃水処理、ま
たは有機溶媒および油などの他の流体の処理、または液体生成物流からの不純物の除去が
可能であることも想定されている。加えて、本発明による収着剤材料は、標的物質を気体
から除去する収着剤として使用され得る。
【0054】
この方法で有機環境汚染物質用に配置される他の収着剤とは異なり、顆粒状収着剤材料
は、水性液体洗浄剤を用いて、その場で効果的に再生され得る。液体洗浄剤は、塩洗浄剤
、酸性洗浄剤、塩基性洗浄剤、または塩洗浄剤および酸性洗浄剤などの組み合わせを含み
得る。好適には、洗浄液は、9を超えるpH、あるいは5未満のpHを有する液体を含み
得る。任意に、洗浄剤溶液は、水酸化アンモニウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液、ま
たは硫酸アンモニウム水溶液を含む。再生の可能性は、それがリサイクル、回収、または
安全な廃棄のための標的物質の除去を可能にするとともに、収着剤材料の再使用を可能に
するという点で、特に有益である。この方法で、標的物質を除去するために提案された方
法は、さらにコストが削減され、使用済み収着材材料の形態で廃棄物が生成される。
【0055】
再生プロセスは、収着剤材料を流体流から除去することと、それを酸、塩基、および/
または塩の水溶液と接触させることと、を好適に含む。酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸
を含む無機酸、あるいはエタン二酸、ヘキサン酸、エタン二酸、またはクエン酸から好適
に選択される有機酸から好適に選択される。塩は、塩化物、硫酸塩、またはリン酸塩対イ
オンを有するナトリウム、カリウム、またはマグネシウム塩から好適に選択される。いく
つかの実施形態では、洗浄液は、5未満、好適には4未満、3未満、または2未満のpH
を有する。
【0056】
好適には、再生プロセスは、代わりに、収着剤材料を塩基性溶液、典型的には水酸化ア
ンモニウム水溶液と接触させることを含み得る。他の好適なアルカリ溶液は、水酸化ナト
リウムまたは水酸化カリウムから選択され得る。いくつかの実施形態では、洗浄液液体は
、8を超える、好適には9を超える、または10を超えるのpHを有する。
【0057】
理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載される組成物への標的物
質の吸着は、主にポリアミンとの静電的相互作用と、共有結合した疎水基との疎水性-疎
水性相互作用との組み合わせの結果と思われる。再生水性洗浄剤溶液中では、塩化物、硫
酸塩、または水酸化物などの洗浄剤中のアニオンとの相互作用が、アニオン性標的物質と
の静電的相互作用の代わりになり、洗浄中に標的物質を放出する。pHを上げたりまたは
下げたりすると、ポリアミンのプロトン化が変化し、吸着された標的化合物との静電的結
合相互作用がさらに低減し得る。アンモニウムなどの他のイオンの存在は、吸着された標
的化合物の溶解度を向上させ、再生水性洗浄液中でそれらの除去をさらに増加させ得る。
【0058】
本系の別の顕著な有益性は、その低コストおよび生成の容易さである。比較的低コスト
のポリアミン(PEI)および非常に低コストの支持材料(リグノセルロース)を用いる
、顆粒またはパルプなどの他の形態の収着剤材料の生成によって、大規模(バッチあたり
約1000kg)で費用効果の高い材料の生成が可能になり、大量の廃水用途(メガリッ
トル/日の流量)への展開を可能にする。加えて、セルロース基材と標的物質収着剤分子
との結合に関連する反応は、大規模で、経済的に、室温および大気圧で実施され得る。
【0059】
本発明の特定の実施形態によれば、液体流からのPFASの濾過および除去において、
特に有用な誘導体生成物を生成するために、次いで、両親媒性基で変性されるリグノセル
ロースエステルの調製のためのプロセスが提供される。本発明のこの実施形態の生成物の
特定の有益性は、室温で行うことができるため、プロセスが高温を必要とせず、反応が、
高価な触媒、特に金属含有触媒を必要としないことである。したがって、生成物の調製の
ためのプロセスは、比較的エネルギー効率が高く、リソース集約型ではないため、生成の
経済性が向上する。さらに、プロセスは、得られた生成物が使用後に再生され得、生成物
の全体的な消費量が削減され、同等の収着剤よりも有効作業寿命が延長され、さらに、処
理された流体流から除去された任意の有価物質の回収が可能になるという追加の有益性を
示す。
【0060】
本発明の実施形態において、リグノセルロース/セルロース支持材料は、以下の反応ス
キームIによる、ジメチルホルムアミド(DMF)の存在下、室温で臭化ブロモアセチル
を用いたエステル化によって活性化される。
【0061】
【化1】
【0062】
代替の実施形態では、他のハロゲン化アシルハライド、好適には、クロロアセチルクロ
リド、クロロアセチルブロミド、およびブロモアセチルクロリド、またはハロゲン化プロ
ピオニルハライドもしくはハロゲン化ブチリルハライドなどの、異なる反応物が使用され
て、同様の反応でセルロースをエステル化し得ることが理解されるであろう。
【0063】
高度に置換されたリグノセルロース誘導体を得るために、リグノセルロースのブロモア
セチル化形態が、DMFの存在下でも、室温でポリアミンとさらに反応する。本発明の本
実施形態では、反応の第2の工程で利用されるアミンは、以下の反応スキームIIによる
分岐ポリエチレンイミン(PEI)である:
【0064】
【化2】
【0065】
ポリプロピレンイミン(PPI)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポ
リ(N-メチルビニルアミン)、ポリリジン、ポリ(4-アミノスチレン)、ポリ(ジア
リルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリヘキサメチレングアニジン、ポリヘキサニド
、ポリ(メチレンco-グアニジン)、またはポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジ
メチルアンモニウムクロリド)などの他のポリアミンと同様に、直鎖(線状)PEIも使
用され得ることが理解されるであろう。
【0066】
別の実施形態では、粒子状支持材は、シリカゲルである。この実施形態では、シリカ表
面は水和され、次いで、ヘキサン溶媒中でのトリクロロ(3-クロロプロピル)シランと
の反応によって活性化される。生成物を乾燥させ、次いで、以下の反応スキームIIIに
よるメタノール溶媒中での反応によって、ポリアミンを共有結合させる。
【0067】
【化3】
【0068】
置換された粒子状固体支持生成物は、第3の工程で、例えば、アシル化剤、好適には、
アシルまたはアリール酸ハライドとさらに反応する。本発明の本実施形態では、ヘキサノ
イルクロリドは、固体支持体に結合したPEI基内の第一級アミンのアシル置換において
使用される。ヘキサノイルクロリドを、ジクロロメタン(DCM)に溶解し、以下の反応
スキームIVに示すように、塩基および触媒のジイソプロピルエチルアミン(DIPEA
)の存在下、室温でも反応が実施され、疎水基は、アミド結合を介してポリアミンと結合
する。
【0069】
【化4】
【0070】
本発明の代替の実施形態では、アシル化剤は、以下の式の化合物を含み得ることが理解
されるであろう。
【0071】
【化5】
【0072】
式中、
は、C2~C22の分岐、直鎖、もしくは環状アルキル、またはアリール基である

は、ハライドである。
【0073】
典型的には、Rは、C2~C22の、好適には、C4~C8の直鎖飽和または不飽和
アルキル基から選択され、最も好適には、ブチル、ヘキシル、またはオクチル基から選択
される。任意に、Rは、イソプロピル、イソブチル、またはイソヘキシル基から選択さ
れる。Rは、シクロブチルまたはシクロヘキシル基から選択されるシクロアルキルを含
み得る。Rがアリールである場合、典型的には、アリールは、フェノールまたはベンジ
ル基から選択される。
【0074】
は、典型的には、塩化物または臭化物から選択される。
【0075】
あるいは、顆粒状固体支持材料に共有結合されたポリアミンは、以下の反応のうちの1
つによるC2~C22の疎水基の共有結合付加によって変性され得る。
【0076】
ポリアミン基が尿素結合を介して疎水基に結合するスキームVによる反応。式中、R
NHは、ポリアミン基を表し、R=C2~C22である。反応は、非プロトン性溶
媒系において塩基性条件下で実施される。
【0077】
【化6】
【0078】
あるいは、尿素単位は、スキームVIに示される反応によって形成され得、式中、R
NHは、ポリアミン基を表し、R=C2~C22であり、R=Hである。反応は
、カルボニルジイミダゾール誘導体を用いて、非プロトン性溶媒系において塩基性条件下
で実施される。
【0079】
【化7】
【0080】
あるいは、尿素単位は、スキームVIIに示される反応によって形成され得、式中、R
NHは、ポリアミン基を表し、R=C2~C22であり、R=Hであり、R
=炭化水素単位である。反応は、非プロトン性溶媒系において塩基性条件下で実施される
【0081】
【化8】
【0082】
尿素単位は、スキームVIIIに示される反応によって形成され得、式中、R
Hは、ポリアミン基を表し、R=C2~C22である。反応は、非プロトン性溶媒系お
よび工程1のアジド含有試薬において塩基性条件下で実施される。
【0083】
【化9】
【0084】
あるいは、C2~C22の疎水基は、四級化(メンシュトキン)反応を介してポリアミ
ンに共有結合し得、ポリアミンの窒素が、最大3つのC2~C22の疎水基への結合をも
たらす。これは、スキームIXに示される反応による可能性があり、式中、X=ハライド
であり、R=C2~C22の疎水基であり、R=ポリアミン分子の一部であり、かつ
およびR=R、またはRNによって表されるポリアミン分子の一部で
ある。
【0085】
【化10】
【0086】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに例示される。
【0087】
実施例1
本発明の新規なカスタム顆粒状媒体(CGM)組成物は、それらの独特の構造(図1
参照されたい)に起因して、部分的に、PFASの吸着のための有意に改善された能力を
実証する。この図は、ヘキサノイルクロリドとの反応を介して、複数のC6の疎水基に共
有結合したポリエチレンイミン(平均分子量、25,000)に共有結合した多孔質、固
体、粒子状、リグノセルロース材料を含む組成物の電子顕微鏡写真を示す。この組成物は
、マイクロメートルスケールで表面粗さを示し、大量のPFASの吸着を可能にする。
【0088】
本発明のCGM組成物の吸収速度を、従来の歴青顆粒状活性炭(GAC)媒体と比較し
た。アッセイでは、0.05gの各吸着剤(平均直径1mmの顆粒)を、DI水中の50
ppbのPFOAまたはPFHSの40mLに浸漬させた。特定の時点で、溶液のアリコ
ートを採取し、PFAS濃度を、液体クロマトグラフィー-質量分析/質量分析(LC-
MS/MS)を使用して定量化した。結果を図2に示す。CGMは、PFOA吸着とPF
HS吸着の両方で、GACと比較してはるかに速い速度を有することがわかる。実際には
、CGMで見られるはるかに優れた速度は、処理のための有意に低減した接触時間につな
がり、より速い流体流速度またはより小さな槽の使用を可能にする。さらに、改善された
速度によって、任意の必要な前処理または後処理に適合する柔軟な油圧負荷要件が可能に
なる。
【0089】
実施例2
本発明のCGM組成物のPFASの結合能力を、GACおよびAmberlite(登
録商標)アニオン交換樹脂と比較して模擬廃水で試験した。0.05gの吸着剤顆粒を、
250ppmの競合する有機酸を含有するDI水中の2.5ppmのPFOS、PFOA
、PFBS、およびPFBAの40mLに浸漬させるバッチ試験を実施した。24時間後
、各溶液中のPFAS濃度を、実施例1と同様にLC-MS/MSを使用して定量化した
。試験結果を図3に記載する。全ての場合において、本発明の組成物であるCGMは、従
来の収着剤媒体よりも優れていた。
【0090】
実施例3
本発明のCGM組成物を、工業または農業供給源からの廃液で遭遇する可能性があるよ
うに、酸性から塩基性条件までのpH範囲にわたる吸着性能について試験した。このアッ
セイによれば、0.05gの吸着剤顆粒を、2.5ppmのPFOAまたはPFHSのD
I水溶液40mLに浸漬させ、pHをNaOHまたはHClで適宜調整した。24時間後
、溶液中のPFAS濃度を、実施例1に従ってLC-MS/MSを使用して定量化した。
結果を図4に示す。このように、PFAS吸着の高レベル(>97%)が観察され、試験
された全てのpH範囲にわたって驚くほど安定したままである。
【0091】
実施例4
本発明のCGM組成物を、汚染物質PFHSの除去のための急速小規模カラム試験で試
験した。汚染水流入液(供給)には、500ppbのPFHSが含有されており、CGM
組成物および競争相手の顆粒状活性炭(GAC)の小さな充填床にポンプで送った。接触
時間は22秒、線速度は7.5m/時であった。流出溶液の試料を採取し、PFHSをL
C-MS/MSで定量化した。結果を図5に示す。CGM組成物は、処理されている流入
溶液の20,000床体積(BV)にわたって検出不能レベルまでの標的汚染物質の除去
を示した。これはGACでは達成されなかった。そこでは、従来の収着剤媒体は、約50
ppbまで急速に上昇した流出物濃度を示した。
【0092】
実施例5
本発明のCGM組成物を、バッチ試験において、PFOA、PFBA、およびPFBS
を含有する汚染溶液と混合した。CGM組成物は、材料1グラムあたり50μgの総汚染
物質を吸着した(50μg/g装填)。次いで、装填されたCGM培地を、8mlの充填
床に充填した。3%の水酸化アンモニウム水溶液の再生溶液を、15分の接触時間でポン
プで送った。カラムを通過した総再生溶液を収集し、2床体積(8ml)ごとにサンプリ
ングした。PFOA、PFBA、およびPFBS濃度をLC-MS/MSで定量化し、化
合物の総回収量を、初期装填量に基づいて計算した。結果を図6に示す。短鎖のPFBA
およびPFBSを迅速に回収し、6床体積の再生剤溶液の後、全ての標的物質を収着剤組
成物から回収し、それらは、使用済み再生剤溶液に存在する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-12-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流から汚染物質を除去するための組成物の使用であって、
前記組成物は、収着剤分子を含み、前記収着剤分子は、分岐ポリアミンを含み、前記分岐ポリアミンが複数の疎水基と共有結合しており、
前記流体流を前記組成物に接触させることを含む、PFASを除去するための組成物の使用
【請求項2】
前記分岐ポリアミンが、ポリエチレンイミン(PEI)であり、PEIの分子量が500~50,000Daであってもよい、請求項1に記載のPFASを除去するための組成物の使用
【請求項3】
前記疎水基が、ブチル、ヘキシルオクチル、イソブチル、イソヘキシルおよびイソオクチル基からなる群から選択されるC2~C8アルキル基を有していてもよく、または、
前記疎水基が、ポリもしくはパーフルオロ化基、C8パーフルオロオクタン、またはC8ポリフッ素化6:2フルオロテロマーを有していてもよい、請求項1または2に記載のPFASを除去するための組成物の使用
【請求項4】
前記汚染物質が、1種以上のポリおよびパーフルオロ化アルキル物質(PFAS)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のPFASを除去するための組成物の使用
【請求項5】
前記PFASが、パーフルオロブタンスルホン酸(PFBS)、パーフルオロブタン酸(PFBA)、パーフルオロヘキサンスルホン酸(PFHS)、パーフルオロヘキサン酸(PFHA)、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、パーフルオロノナン酸(PFNA)、パーフルオロデカン酸(PFDA)、および6:2フルオロテロマースルホン酸(6:2FTSA)からなる群から選択される1種以上パーフルオロ化アニオン性界面活性剤化合物を含む、請求項に記載のPFASを除去するための組成物の使用
【請求項6】
汚染物質を前記流体流から除去した後に前記組成物を再生することをさらに含む、請求項に記載のPFASを除去するための組成物の使用
【請求項7】
前記組成物を再生することが、前記組成物に1種以上の水性洗浄剤を適用することを含み、前記水性洗浄剤が、塩洗浄剤、酸性洗浄剤および塩基性洗浄剤からなる群から選択される1種以上の水性洗浄剤を含んでいてもよい、請求項6に記載のPFASを除去するための組成物の使用
【請求項8】
流体流から1種以上のポリおよびパーフルオロ化アルキル物質(PFAS)を除去するためのプロセスであって、
前記流体流を収着剤組成物と接触させることを含み、
前記収着剤組成物が、分岐ポリアミンと前記分岐ポリアミンに共有結合した複数の疎水基とを含み、前記分岐ポリアミンが支持材料に共有結合しており、
前記支持材料が、多孔質、固体、および粒子状であり、
前記共有結合した複数の疎水基が、C2~C22であって、分岐、直鎖もしくは環状のアルキル基、またはアリール基の疎水基である、PFASを除去するためのプロセス。
【請求項9】
前記分岐ポリアミンが、ポリエチレンイミン(PEI)であり、前記PEIの分子量が500~50,000Daである、請求項記載のプロセス
【請求項10】
前記疎水基が、ブチル、ヘキシルオクチル、イソブチル、イソヘキシルおよびイソオクチル基からなる群から選択されるC2~C8アルキル基を有していてもよく、または、
前記疎水基が、ポリもしくはパーフルオロ化基、C8パーフルオロオクタン、またはC8ポリフッ素化6:2フルオロテロマーを有していてもよい、請求項9記載のプロセス。
【請求項11】
前記支持材料が床または充填カラム内に含まれ、前記流体流が前記床または充填カラムを通って、またはその全域にわたって通過する、請求項9または10に記載のプロセス。
【請求項12】
流体流から汚染物質の除去に使用するための組成物であって、
前記組成物は、多孔性、固体および粒子状の支持材料、
前記支持材料に共有結合している分岐ポリアミンを有する収着剤分子、および、
前記分岐ポリアミンに共有結合している複数の疎水基、を有するPFASを除去するための組成物。
【請求項13】
前記分岐ポリアミンが、ポリエチレンイミン(PEI)であり、
(1)PEIの分子量が500~50,000Daであり、および/または、
(2)前記疎水基が、ブチル、ヘキシルオクチル、イソブチル、イソヘキシルおよびイソオクチル基からなる群から選択されるC2~C8アルキル基を有していてもよく、または、
前記疎水基が、ポリもしくはパーフルオロ化基、C8パーフルオロオクタン、またはC8ポリフッ素化6:2フルオロテロマーを有していてもよい、請求項12記載のPFASを除去するための組成物。
【請求項14】
請求項12または13に記載の収着剤分子を含む、流体流から汚染物質の除去に使用するための床または充填カラム。
【請求項15】
前記汚染物質が、1種以上のポリおよびパーフルオロ化アルキル物質(PFAS)を含み、前記PFASが、パーフルオロブタンスルホン酸(PFBS)、パーフルオロブタン酸(PFBA)、パーフルオロヘキサンスルホン酸(PFHS)、パーフルオロヘキサン酸(PFHA)、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、パーフルオロノナン酸(PFNA)、パーフルオロデカン酸(PFDA)、および6:2フルオロテロメルスルホン酸(6:2FTSA)からなる群から選択される1種以上のパーフルオロ化アニオン性界面活性剤化合物を含んでいてもよい、請求項14記載の床または充填カラム
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
図1】本発明の実施形態による組成物の電子顕微鏡写真を示す。
図2】本発明による組成物(CGM)と歴青顆粒状活性炭(GAC)との間のPFAS化合物の吸着速度を比較するグラフを示す。
図3】歴青顆粒状活性炭(GAC)およびアンバーライトアニオン交換樹脂と比較して、本発明による組成物(CGM)によって示される競合する有機酸を含む模擬廃水中のPFAS化合物の改善された結合能力を実証する。
図4】ある範囲のpH値でのバッチ試験からのPFOAおよびPFHSの吸着における本発明による組成物の性能を示す。
図5】小規模カラム試験での本発明による組成物(CGM)と歴青顆粒状活性炭(GAC)のPFHS除去性能を示す。
図6】PFOA、PFBAおよびPFBSの本発明による組成物(CGM)からの回収性能を示す。
【外国語明細書】