(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023459
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】放射線治療計画作成のための方法、コンピュータプログラム製品、およびコンピュータシステム、ならびに放射線治療送達システム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
A61N5/10 P
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023202383
(22)【出願日】2023-11-30
(62)【分割の表示】P 2022552375の分割
【原出願日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】20163840.0
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】522454806
【氏名又は名称】レイサーチ ラボラトリーズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】トラネウス,エリック
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン,ケル
(72)【発明者】
【氏名】ホルデマーク,ビョルン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】FLASH放射線治療処置計画を達成するための放射線治療処置計画作成方法を提供する。
【解決手段】特にリスク臓器にFLASH条件下で送達される照射の部分を最大化して、リスク臓器への損傷を最小化するように設計された最適化問題を規定するステップを使用して、計画を最適化することを伴う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者(81)のための放射線治療処置計画を作成するコンピュータベースの方法であって、前記方法は、コンピュータソフトウェアにより指令されるコンピュータによって自動的に行われ、前記放射線治療処置計画は40Gy/sより高い線量率を有するFLASH治療を伴い、前記FLASH治療は、ペンシルビーム走査によって行われる治療であり、各ボクセルは、所定の線量率よりも低い非FLASHレベルでの線量率を有する非FLASH部分および、前記所定の線量率以上であるFLASHレベルでの線量率を有するFLASH部分を受け、前記方法は、標的線量処方を含む所望の線量分布を規定することを含む、方法であり、
a.前記標的線量処方を含む所望の線量分布を達成することを狙いつつ、少なくとも1つのリスク臓器へのFLASH部分を最大化し、かつ前記少なくとも1つのリスク臓器への総実効線量を最小化するように設計された最適化問題を規定するステップと、
b.最適化問題を使用して前記放射線治療処置計画を最適化するステップと、
を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記最適化問題が、生物学的効果比(RBE)線量に関して最適化するように規定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最適化問題が、スポットサイズ、スポット形状、および/またはスポット配置を最適化または選択することによって、前記FLASH部分を最大化するか、または前記非FLASH部分を最小化するように規定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記最適化問題が、
・スポット重み、ならびに/または
・エネルギー、ビーム数、および/もしくはビームの方向に関するビーム構成
の少なくとも1つを最適化または選択することによって、前記FLASH部分を最大化するか、または前記非FLASH部分を最小化するように規定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記最適化問題は、スポットを走査する順序を最適化または選択することによって、FLASH成分を最大化するか、または非FLASH成分を最小化するように規定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記FLASH治療は、前記FLASHレベルの線量率で送達される第2のビームをさらに用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記放射線治療処置計画が、前記非FLASHレベルでの線量率を有する第2のビームによって行われる非FLASH治療を伴い、前記最適化問題が、少なくとも1つのリスク臓器における、前記FLASHレベルでの線量率を有する第1のビームおよび前記第2のビームの両方からの総実効線量を最小化するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
コンピュータ(36)内のプロセッサ(33)上で走らされるときに、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法を前記プロセッサに実行させるコンピュータ可読コードを備えるコンピュータプログラム。
【請求項9】
プロセッサ(33)、少なくとも1つのデータメモリ(34、35)、およびプログラムメモリ(36)を備えるコンピュータシステム(31)であって、前記プログラムメモリ(36)が請求項8に記載のコンピュータプログラムを備えることを特徴とする、コンピュータシステム。
【請求項10】
ガントリ(87)内の放射線源(85)を備える、患者に放射線治療処置を送達するためのシステム(80)であって、前記放射線源は、前記患者に前記FLASH治療を提供するのに十分に高い線量率の放射線を提供するように構成され、前記システムは、前記システムを制御するためのコンピュータ(91)をさらに備え、前記コンピュータはプロセッサを備える、システムであり、前記コンピュータは、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法によって得られた放射線治療処置計画を含むメモリを備えることを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療計画作成に関し、具体的には、FLASH条件下での照射を伴う処置計画を作成するための放射線治療処置計画作成方法、そのような計画作成を実行するためのコンピュータプログラムおよびコンピュータシステム、ならびにそのような処置を患者に送達するための放射線治療送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療処置は、標的外で健康な組織またはリスク臓器に線量を送達することを常に伴い、したがって、健康な臓器または組織が放射線により損傷を受けるリスクが常に存在する。より少ない不要な損傷を伴うと思われる1つの新たな処置方法は、FLASH治療であり、これは、従来の治療よりはるかに高い線量率、例えば70Gy/sでの処置を伴う。FLASHに関する文献では、少なくとも40Gy/sまたは50Gy/sなどの、線量率の様々な下限が提唱されている。例えば、20Gyの線量が70Gy/sの線量率で送達される場合、全線量は、0.29sで送達されることになる。対照的に、従来の放射線治療処置は、はるかに低い線量率で送達され、従来の放射線治療処置の典型的な線量率は、毎分数Gyである。FLASH治療で特定の線量が健康な組織に与える損傷は、従来の治療より低い一方で、標的への効果、すなわち腫瘍組織応答は同じままであることが見出されているが、この背景にある機構はまだ十分に理解されていない。
【0003】
Vozeninら:The advantage of FLASH radiotherapy confirmed in mini-pig and cat-cancer patients、 HAL Id: hal-01812514、https://hal-univ-rennes1.archives-ouvertes.fr/hal-01812514v2は、以前にマウスで示された、FLASH治療を受けたときの正常組織と腫瘍との間の効果の差を、ブタおよびネコでも見ることができたことを確認した。
【0004】
FLASH条件下でリスク臓器に送達される線量は、約30%であり得る倍率でより少ない損傷を引き起こす。ゆえに、リスク臓器への等効果有害線量は物理的線量より高く、この例では物理的線量の1/0.7倍である。
【0005】
公開された米国特許出願第2019/0022411号も、同じ線量で低減された副作用を与えると言われているFLASH治療に関する。40Gy/s以上、500Gy/s超までの線量率が言及され、線量分割が数分の1秒で送達されることを可能とする。放射線は、異なる角度からいくつかのビームによって送達され得る。重なりがある領域への所望より高い線量をもたらす、標的付近でのビームの重なりの問題が論じられる。計画作成方法は、患者および標的ならびにビーム角度のジオメトリを考慮することによって、標的外でのビーム間の重なりを最小化することに着目している。
【発明の概要】
【0006】
標的における応答を維持しながら健康な組織への損傷を低減することによって、可能な限り最良の方法でこの治療形態の良い効果を利用するFLASH治療を提供することが、本発明の目的である。
【0007】
本発明は、患者のための放射線治療処置計画を作成するコンピュータベースの方法に関し、前記計画は、照射の一部がFLASH照射として送達されるような少なくとも第1のビームとして提供されるFLASH治療を伴い、前記方法は、標的線量処方を含む所望の線量分布を規定することと、標的線量処方に配慮しながら、少なくとも1つのリスク臓器への線量を最小化する一方で少なくとも1つのリスク臓器への線量のFLASH部分を最大化するように設計された最適化問題を使用して、計画を最適化することとを含む。
【0008】
以下で説明されるように、患者にFLASH治療を送達する場合、線量送達の性質のため、照射線量の一部は、より低い非FLASH線量率で各ボクセルに送達されることになる。総実効線量(TED)は、FLASH部分および非FLASH部分からの等効果線量の合計と定義される。上で説明されたように、FLASH線量は、例えば40Gy/s、または50Gy/s、またはさらには500Gy/s超までの、従来の治療よりはるかに高い線量率を伴う。これは、患者への典型的な線量を従来の治療よりはるかに速く送達することができることを意味する。FLASH条件下で送達される照射は、同じ線量で、従来の非FLASH照射より少ない組織への損傷を引き起こすため、本発明は、少なくとも1つのリスク臓器にFLASH条件下で送達される照射の部分を最大化することを目指す。これは、線量が同じままであると仮定すると、リスク臓器への損傷を最小化するであろう。同時に、最適化は、標的が処方線量を受け取ることも確実にしなければならない。
【0009】
線量計画作成の重要な要素は、所望の線量分布と最も良く一致する患者内の線量分布を達成する方法である。線量分布に基づいて最適化することは、典型的には、ビーム間の重なりを回避するために患者ジオメトリおよびビームジオメトリのみを考慮することより最適な線量分布を達成する。ゆえに、本発明に係る方法は、先行技術で知られている方法より良好な処置計画をもたらすであろう。
【0010】
以下で論じられるように、線量送達の線量率および時間構造は両方とも、FLASH治療の効果の達成に重要である。
【0011】
陽子放射線を用いる好ましい実施形態では、最適化問題は、線量を生物学的効果比-RBE-に関して最適化するように規定される。RBEは、基準線量と比較して特定の線量によって引き起こされる損傷の尺度であり、放射線のタイプによって異なり、FLASHと非FLASHとでそれぞれ異なる。非FLASH条件下の光子では、RBEは1である。非FLASH陽子治療では、現在の臨床診療は係数1.1を使用することになり、これは、非FLASH陽子放射線として送達される70Gyが、非FLASH光子放射線として送達される77Gyに相当することを意味する。
【0012】
いくつかの実施形態では、最適化問題は、計画のFLASH部分を最大化するように設計された目的関数を含む。あるいは、最適化問題は、計画の非FLASH部分を最小化するように設計された目的関数を含む。理解されるように、総線量はFLASH部分と非FLASH部分との合計となるため、これは、同じ目的を表現するただ2つの異なる方法である。
【0013】
最適化問題は、場合により、以下:
・スポットサイズ
・スポット形状
・スポット配置
・スポットの重み
・エネルギー、ビーム数、および/もしくはビームの方向に関するビーム構成
の1つ以上を最適化または選択することによって、FLASH部分を最大化するか、または非FLASH部分を最小化するように設計され得る。
【0014】
代替または追加として、最適化問題は、スポットの走査順序を最適化または選択することによって、FLASH部分を最大化するか、または非FLASH部分を最小化するように規定され得る。
【0015】
両方のビームがFLASH部分を含む少なくとも第1のビームおよび第2のビームを有する計画を、最適化することが可能である。これらは、回転ガントリ、または互いから角度をなして配置された2つの放射線源によって送達され得る。後者の場合、2つのビームは、FLASH効果を高めるために、それらの間の間隔を非常に短くして送達され得る。
【0016】
第1のビームがFLASH部分を含み、第2のビームが従来の非FLASH照射のみを含む、少なくとも第1のビームおよび第2のビームを含む計画を、最適化することも可能である。この場合、最適化問題は、好ましくは、少なくとも1つのリスク臓器における、第1のビームおよび第2のビームのFLASH治療部分および従来の治療部分の両方からの総実効線量を最小化するように構成される。
【0017】
本発明はまた、コンピュータ内のプロセッサ上で走らされるときに、上述の実施形態のいずれか1つに係る方法をプロセッサに実行させるコンピュータ可読コードを備えるコンピュータプログラム製品に関する。コンピュータプログラム製品は、そこに格納されたコードを有する非一時的なストレージ手段を含み得る。本発明はまた、プロセッサ、少なくとも1つのデータメモリ、およびプログラムメモリを備えるコンピュータシステムに関し、プログラムメモリはそのようなコンピュータプログラム製品を備える。
【0018】
本発明はまた、放射線源を備える、患者に放射線治療処置を送達するためのシステムに関する。放射線源は、任意の好適な様態に、例えばガントリ内に配置されてよいか、または固定ビームラインによって実現されてよく、放射線源は、患者にFLASH処置を提供するのに十分に高い線量率の放射線を提供するように構成され、前記システムは、システムを制御するためのコンピュータをさらに備え、コンピュータは、プロセッサ、および上述の方法の実施形態によって得られる処置計画を含むメモリを備える。
【0019】
本発明は、例として、かつ添付図面を参照して、以下でより詳細に記載されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】ペンシルビーム走査による線量送達の時間構造を例として例解する。
【
図3】本発明に係る線量計画作成に使用され得るコンピュータシステムを概略的に例解する。
【
図4】本発明に係る線量送達のために使用され得る送達システムを例解する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
FLASH治療では、全治療セッションの放射線量は、1秒未満での1つの超高線量として、または高線量率でありかつ短い時間間隔で送達されるいくつかのビームとして、送達され得る。この文脈における短いとは、通常は約30秒である、ガントリをあるビーム角度から別のビーム角度に回転させるのに必要な通常の時間よりはるかに短いことを意味すると解釈されるべきである。この文脈における高線量率とは、40Gy/s超と仮定されるが、かなり高くてもよい。これは、FLASH治療でのある線量の送達時間が、従来の治療よりかなり低くなることを意味する。例えば、従来の治療では、2Gyの線量は、約1分の期間にわたる連続放射線として送達され得るが、2GyのFLASH線量は、数分の1秒で、線量率が40Gy/sである場合には1/20秒で送達されることになる。FLASH治療は、標的への実効線量は物理的線量に近いが、周囲の健康な組織への実効線量は、30%であり得る倍率でより低いことを意味するため、そのような治療は、健康な組織への損傷を低減するという点で有利である。FLASH線量送達のタイムフレームは、ミリ秒~秒のオーダーのどこかにあるべきである。
【0022】
図1は、例として、患者における1つの個々のボクセル、例えばリスク臓器内のボクセルのFLASH照射のための時間構造を、時間単位毎の線量率(cGy/s)として例解する。照射は、ペンシルビーム走査として送達され、これは、送達の一部がボクセルに部分的にのみ当たる一方で、他の部分がボクセルの中心の近くに当たることを意味する。ボクセルに部分的にのみ当たるものは、ボクセルに、より低い線量率、したがってより低い線量、典型的には非FLASHレベルをもたらすことになる一方で、ボクセルの中心の近くに当たるものは、ボクセルへのより高い実効線量率を有し、したがってより高い線量を与えることになり、これがFLASH成分を構成することになる。
図1に示された例では、第1の非FLASH成分が0.1sに存在し、次いで、この例では瞬間的に約7000Gy/sにまで達する、FLASH照射を構成するのに十分に高い線量率を有する2つのより高いピークが、0.18~0.2sに存在し、最後に、より低い非FLASH成分が0.22s辺りに存在する。理解されるように、より多数またはより少数のFLASH成分および非FLASH成分の両方が存在してよいが、実際には、各々の少なくとも1つが常に存在することになる。従来の非FLASH線量送達のための同様の時間構造は、例えば、より長い期間、例えば1分間で2Gyの、実質的な直線になる。
【0023】
一般的な場合では、リスク臓器への総実効線量TEDは、以下の方程式:
TED=x*D(非FLASH)+y*D(FLASH)
で表され得、式中、D(非FLASH)は、ボクセルへの物理的非FLASH線量成分であり、D(FLASH)は、物理的FLASH線量成分であり、xおよびyは、それぞれの成分についてRBEをモデル化する係数である。これは、xおよびyが、それぞれ、非FLASH成分およびFLASH成分の物理的線量に対するそれらの成分からの総実効線量を表すことを意味する。yの典型的な値は0.7である。光子では、x=1であり、荷電粒子では、xは1より若干高く、例えば陽子では1.1である。
【0024】
したがって、本発明によれば、FLASH治療処置は、周囲の組織への総実効線量を任意のリスク臓器を含む健康な組織の許容レベルに維持しながら、短期間、典型的には1s未満で、上で論じられたような高い線量率で、標的に所望の線量を提供するように設計された最適化問題を最適化することによって計画される。これは、部分的には、それぞれの実際の線量成分に対する、FLASH成分からの総実効線量が、非FLASH成分からの総実効線量より低いという事実を利用することによって行われる。線量は、1つのビームとして、またはいくつかのビームとして送達されてよい。これを達成するために、最適化問題は、少なくとも1つのリスク臓器におけるFLASH成分を最大化するように設計された目的関数を含む。理解されるように、これはまた、少なくとも1つのリスク臓器における非FLASH成分を最小化するように定式化され得る。当該技術分野で一般的であるように、この目的は、以下の1つ以上を最適化することを含む様々な方法で達成され得る:
・スポット走査順序、ならびに/または
・スポット配置、ならびに/または
・スポットの重み、ならびに/または
・エネルギー、方向、および/もしくはビーム数に関するビーム構成
・スポット形状
【0025】
図2は、本発明に係る方法の概略流れ図である。第1のステップS21で、特定の患者の所望の線量分布が規定される。第2のステップS22で、最適化問題が規定される。第3のステップS13で、最適化問題に基づいて、線量最適化が実行される。
【0026】
第1の実施形態では、最適化問題は、FLASH治療のみのための計画を出力するように設計される。FLASH治療は、同じかまたは異なる角度からの1つ以上のビームで送達され得る。第2の実施形態では、最適化問題は、FLASH治療を伴う少なくとも1つのビームと、従来の非FLASH線量率での少なくとも1つのビームとを組み合わせる計画を出力するように設計される。
【0027】
具体的には、最適化は、リスク臓器が存在する領域においてFLASH成分を含む処置計画をもたらすべきである。これらの領域で従来の処置をFLASH処置に置き換えることによって、これらの領域における組織への損傷を低減することができる。これは、1つ以上のリスク臓器への損傷が予想され得るほど線量が高い領域で特に重要である。リスクは、異なる角度から標的に向けられたビームが重なり得る標的付近で特に高い。
【0028】
上で論じられたように、最適化問題は、好ましくは、標的線量処方に配慮しながらFLASH効果が最大化されるように設計される。陽子照射については、これは、最適化問題が、FLASH治療では、放射線の線量率および時間構造の両方、ならびに組織タイプおよび照射のタイプなどの他の要素の関数である、線量の生物学的効果比(RBE)も考慮するように設計され得ることを意味する。他の要素も考慮され得る。線量送達のタイムフレームは、ミリ秒~秒のオーダーのどこかにあるべきである。
【0029】
処置計画最適化の狙いは、少なくとも1つのリスク臓器における総実効線量を最小化しながら、標的における所望の線量を達成することであり、総実効線量は、FLASH効果係数で調整されたFLASH線量成分と、処置の従来の治療成分との合計である。これを実装する1つの方法は、線量エンジンにおいて異なるタイプのスコアラーを使用することであろう。例えば、モンテカルロ線量エンジンでは、これは、以下を点数化することを伴う。
-例えばおおよそミリ秒の時間ビンに分解された、ボクセル毎のエネルギー蓄積の時間追跡。
-ダーティ(dirty)線量の概念。この文脈におけるダーティとは、リスク臓器における非FLASH線量を意味し得る。
【0030】
モンテカルロシミュレーションは、粒子の方向およびエネルギー、粒子のタイプ、ならびに粒子の物理的効果を含めて異なる粒子の経路に従う。当業者は、これを、他のタイプの線量エンジンに実装することができるであろう。
【0031】
図3は、発明の方法が実行され得るコンピュータシステムの概略図である。コンピュータ31は、プロセッサ33、第1および第2のデータメモリ34、35、ならびにプログラムメモリ36を備える。好ましくは、キーボード、マウス、ジョイスティック、音声認識手段、または任意の他の利用可能なユーザ入力手段の形態の、1つ以上のユーザ入力手段38、39も存在する。ユーザ入力手段38、39はまた、外部メモリユニットからデータを受信するように構成され得る。
【0032】
第1のデータメモリ34は、典型的には所望の線量分布およびセグメント化された患者画像を含む、方法を実行するのに必要なデータを備える。第2のデータメモリ35は、RBE情報などの他のデータを保持する。第1のプログラムメモリは、本発明のいくつかの実施形態に係る方法ステップをコンピュータに実行させるように構成されたコンピュータプログラムを保持する。
【0033】
理解されるように、データメモリ34、35およびプログラムメモリ36は、概略的に図示され論じられている。各々1つ以上の異なるタイプのデータを保持するいくつかのデータメモリユニット、またはすべてのデータを好適に構造化された様態で保持する1つのデータメモリが存在してよく、同じことがプログラムメモリにも当てはまる。プログラムおよびデータは両方とも、コンピュータシステム内の1つ以上のメモリ、またはコンピュータシステムからアクセス可能である別のユニットの中に見つけることができる。
【0034】
図4は、放射線治療処置および/または処置計画作成のためのシステム80の概要である。理解されるように、そのようなシステムは、任意の好適な様態に設計されてよく、
図4に示された設計は、単なる例である。患者81は、処置カウチ83上に配置される。システムは、カウチ83上に配置された患者に向けて放射線を放出するためのガントリ87に取り付けられた放射線源85を有するイメージング/処置ユニットを備える。典型的には、カウチ83およびガントリ87は、患者81に可能な限り柔軟かつ正確に放射線を提供するために、互いに対していくつかの次元に移動可能である。これらの部分およびそれらの機能は、当業者によく知られている。本発明に関連して使用されるシステムと、従来の放射線治療送達システムとの間の主な違いは、本発明に係るシステムが、従来の放射線治療に従ってなされるものよりはるかに高い線量率を送達するように適合されることである。線量率の好適な大きさは、上で論じられている。
【0035】
ビームを横方向および深さ方向に成形するために設けられるいくつかのパッシブデバイスが典型的には存在するが、ここではさらに詳細には論じられない。手段は、例えばグリッドブロックの形態のビームのグリッド、またはペンシルビームを提供するための手段を提供するために構成される。システムはまた、放射線治療処置計画作成のためおよび/または放射線治療処置の制御のために使用され得るコンピュータ91を備える。理解されるように、コンピュータ91は、イメージング/処置ユニットに接続されない別個のユニットであり得る。
【0036】
コンピュータ91は、プロセッサ93、データメモリ94、およびプログラムメモリ95を備える。好ましくは、キーボード、マウス、ジョイスティック、音声認識手段、または任意の他の利用可能なユーザ入力手段の形態の、1つ以上のユーザ入力手段98、99も存在する。ユーザ入力手段はまた、外部メモリユニットからデータを受信するように構成され得る。
【0037】
データメモリ94は、治療計画を得るのに使用されるか、または計画自体に関連する、臨床データおよび/または他の情報を備える。典型的には、データメモリ94は、本発明の実施形態に係る処置計画作成に使用される1つ以上の患者画像を備える。プログラムメモリ95は、最適化された処置計画に従って送達システムをプロセッサに制御させるように構成された少なくとも1つのコンピュータプログラムを保持する。
【0038】
理解されるように、データメモリ94およびプログラムメモリ95は、概略的にのみ図示され論じられている。各々1つ以上の異なるタイプのデータを保持するいくつかのデータメモリユニット、またはすべてのデータを好適に構造化された様態で保持する1つのデータメモリが存在してよく、同じことがプログラムメモリにも当てはまる。1つ以上のメモリはまた、他のコンピュータ上に格納されてよい。コンピュータはまた、最適化を実行するように構成され得る。