(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023460
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】AAVを検出するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240214BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240214BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20240214BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20240214BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240214BHJP
C12Q 1/37 20060101ALI20240214BHJP
C07K 14/015 20060101ALI20240214BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240214BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240214BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20240214BHJP
C12N 15/10 20060101ALN20240214BHJP
C12N 15/35 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 M ZNA
G01N27/62 V
G01N27/62 X
C12Q1/70
C12N7/01
C12Q1/37
C07K14/015
A61K35/76
A61K48/00
C12N15/864 100Z
C12N15/10 200Z
C12N15/35
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023202414
(22)【出願日】2023-11-30
(62)【分割の表示】P 2022014629の分割
【原出願日】2017-08-14
(31)【優先権主張番号】62/375,314
(32)【優先日】2016-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】シャオイン・ジン
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン・アール・オリオーダン
(72)【発明者】
【氏名】リン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】ケイト・チャン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ウイルス粒子の血清型を決定するための方法および/またはウイルス粒子(例えば、AAV粒子)の不均一性を決定するための方法を提供する。
【解決手段】ウイルス粒子の血清型を決定する方法であって、a)ウイルス粒子を変性させる工程と、b)変性したウイルス粒子を液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)に供する工程と、c)ウイルス粒子の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の質量を決定する工程とを含み;1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の質量の特定の組合せが、ウイルス血清型の指標である、方法を提供する。一部の実施形態では、1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の計算された質量は、1つまたはそれ以上のウイルス血清型の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の理論的質量に対して比較される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子の血清型を決定する方法であって、
a)該AAV粒子を変性させる工程と、
b)該変性したAAV粒子を液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)に供する工程と、
c)該AAV粒子のVP1、VP2およびVP3の質量を決定する工程と
を含み;
VP1、VP2およびVP3の質量の特定の組合せが、AAV血清型の指標である、前記方法。
【請求項2】
VP1、VP2およびVP3の計算された質量は、1つまたはそれ以上のAAV血清型のVP1、VP2およびVP3の理論的質量に対して比較される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
AAV粒子の不均一性を決定する方法であって、
a)該AAV粒子を変性させる工程と、
b)該変性したAAV粒子を液体クロマトグラフィー/質量分析/質量分析(LC/MS/MS)に供する工程と、
c)該AAV粒子のVP1、VP2およびVP3の質量を決定する工程と、
d)工程c)の質量を、AAV血清型のVP1、VP2およびVP3の理論的質量と比較する工程と
を含み;
VP1、VP2またはVP3の質量のうちの1つまたはそれ以上の偏差が、AAVカプシドの不均一性の指標である、前記方法。
【請求項4】
不均一性は、混合血清型、変異体カプシド、カプシドアミノ酸置換、切断型カプシド、または改変カプシドのうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
AAV粒子は、酢酸、塩酸グアニジンおよび/または有機溶媒により変性する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
液体クロマトグラフィーは、逆相液体クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィー、または陽イオン交換クロマトグラフィーである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
液体クロマトグラフィーは、逆相液体クロマトグラフィーである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
逆相クロマトグラフィーは、C4またはC8逆相クロマトグラフィーである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
クロマトグラフィーは、水中にギ酸を含む移動相Aを使用する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
移動相Aは、約0.1%のギ酸を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
クロマトグラフィーは、アセトニトリル中にギ酸を含む移動相Bを含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
移動相Bは、約0.1%のギ酸を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
クロマトグラフィーにおける移動相Bの割合は、経時的に増加する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
クロマトグラフィーにおける移動相Bの割合は、段階的に増加する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
移動相Bは、約10%から約20%まで、約20%から約30%まで、および約30%から約38%まで増加する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
移動相Bは、約6分間で約10%から約20%まで、約10分間で約20%から約30%まで、および約40分間で約30%から約38%まで増加する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
液体クロマトグラフィーは、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
マススペクトロメトリーは、約3.5kVのキャピラリー電圧を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
マススペクトロメトリーは、約45Vのサンプリングコーン電圧を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
マススペクトロメトリーは、支援付き校正を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ヨウ化ナトリウムは、校正物質として使用される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
VP1および/またはVP3のN末端は、アセチル化されている、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
AAV粒子は、組換えAAV(rAAV)粒子である、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
AAV粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド、AAV7カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8カプシド、AAV9カプシド、AAV10カプシド、AAVrh10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、AAV LK03カプシド、AAV2R471Aカプシド、AAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド、AAV DJ8カプシド、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、マウスAAVカプシド、rAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルスウイルス1)、AAV2HBKOカプシド、AAVPHP.BカプシドまたはAAVPHP.eBカプシドを含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
AAVカプシドは、チロシン突然変異またはヘパリン結合突然変異を含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
VP1、VP2およびVP3の質量は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド、AAV7カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8カプシド、AAV9カプシド、AAV10カプシド、AAVrh10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、AAV LK03カプシド、AAV2R471Aカプシド、AAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド、AAV DJ8カプシド、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、マウスAAVカプシド、rAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルスウイルス1)、AAV2HBKOカプシド、AAVPHP.BカプシドまたはAAVPHP.eBカプシドのうちの1つまたはそれ以上の理論的質量に対して比較される、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
ウイルス粒子は、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4
ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITR、またはAAV12 ITRを含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
AAV粒子は、異種導入遺伝子をコードするAAVベクターを含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子の血清型を決定する方法であって、
a)該AAV粒子を変性させる工程と、
b)該変性したAAV粒子を還元および/またはアルキル化に供する工程と、
c)該変性したAAV粒子を消化に供して、該AAV粒子のVP1、VP2および/またはVP3の断片を生成する工程と、
d)該VP1、VP2および/またはVP3の断片を液体クロマトグラフィー/質量分析-質量分析(LC/MS/MS)に供する工程と、
e)該AAV粒子のVP1、VP2およびVP3の断片の質量を決定する工程と
を含み;
VP1、VP2およびVP3の断片の質量の特定の組合せが、AAV血清型の指標である、前記方法。
【請求項30】
VP1、VP2および/またはVP3の断片の計算された質量は、1つまたはそれ以上のAAV血清型のVP1、VP2および/またはVP3の断片の理論的質量に対して比較される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
AAV粒子の血清型の不均一性を決定する方法であって、
a)該AAV粒子を変性させる工程と、
b)該変性したAAV粒子を還元および/またはアルキル化に供する工程と、
c)該変性したAAV粒子を消化に供して、該AAV粒子のVP1、VP2および/またはVP3の断片を生成する工程と、
d)該VP1、VP2および/またはVP3の断片を液体クロマトグラフィー/質量分析-質量分析(LC/MS/MS)に供する工程と、
e)該AAV粒子のVP1、VP2およびVP3の断片の質量を決定する工程と、
f)工程e)の質量を、AAV血清型のVP1、VP2およびVP3の断片の理論的質量と比較する工程と
を含み;
VP1、VP2またはVP3の質量のうちの1つまたはそれ以上の偏差が、AAVカプシ
ドの不均一性の指標である、前記方法。
【請求項32】
不均一性は、混合血清型、変異体カプシド、カプシドアミノ酸置換、切断型カプシド、または改変カプシドのうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
還元は、AAV粒子をジチオスレイトール、ベータメルカプトエタノール、またはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)に供することによる、請求項29~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
アルキル化は、AAV粒子をヨード酢酸、ヨードアセトアミド、または4-ビニルピリジンに供することによる、請求項29~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
消化は、酵素消化または化学的消化である、請求項29~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
酵素消化は、エンドペプチダーゼ消化である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
酵素消化は、トリプシン消化、LysC消化、Asp-N消化またはGlu-C消化である、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
化学的消化は、臭化シアン消化または酸消化である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
AAV粒子は、酢酸、塩酸グアニジンおよび/または有機溶媒により変性する、請求項29~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
液体クロマトグラフィーは、逆相液体クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィー、または陽イオン交換クロマトグラフィーである、請求項29~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
液体クロマトグラフィーは、逆相液体クロマトグラフィーである、請求項29~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
逆相クロマトグラフィーは、C18逆相クロマトグラフィーである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
クロマトグラフィーは、水中にギ酸を含む移動相Aを使用する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
移動相Aは、約0.1%のギ酸を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
クロマトグラフィーは、アセトニトリル中にギ酸を含む移動相Bを含む、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
移動相Bは、約0.1%のギ酸を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
クロマトグラフィーにおける移動相Bの割合は、経時的に増加する、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
移動相Bは、約2%から約60%まで増加する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
移動相Bは、約121分間で約2%から約60%まで増加する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
液体クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である、請求項29~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
質量分析は、約2.5kVの電源電圧を含む、請求項29~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
質量分析は、約275℃のキャピラリー温度を含む、請求項29~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
質量分析のS-レンズRFレベルは、約55%である、請求項29~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
VP1および/またはVP3のN末端は、アセチル化されている、請求項29~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
AAV粒子は、組換えAAV(rAAV)粒子である、請求項29~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
AAV粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド、AAV7カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8カプシド、AAV9カプシド、AAV10カプシド、AAVrh10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、AAV LK03カプシド、AAV2R471Aカプシド、AAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド、AAV DJ8カプシド、AAV2N 587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、マウスAAVカプシド、rAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルスウイルス1)、AAV2HBKOカプシド、AAVPHP.BカプシドまたはAAVPHP.eBカプシドを含む、請求項29~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
AAVカプシドは、チロシン突然変異、ヘパリン結合突然変異、またはHBKO突然変異を含む、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
VP1、VP2およびVP3の質量は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド、AAV7カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8カプシド、AAV9カプシド、AAV10カプシド、AAVrh10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、AAV LK03カプシド、AAV2R471Aカプシド、AAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド、AAV DJ8カプシド、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、マウスAAVカプシド、rAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルスウイルス1)、AAV2HBKOカプシド、AAVPHP.BカプシドまたはAAVPHP.eBカプシドのうちの1つまたはそれ以上の理論的質量に対して比較される、請求項29~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
ウイルス粒子は、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4
ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITR、またはAAV12 ITRを含む、請求項29~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
AAV粒子は、異種導入遺伝子をコードするAAVベクターを含む、請求項29~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
請求項29、30または32~59のいずれか1項に記載の方法と組み合わせた、請求項1、2または4~28のいずれか1項に記載の方法を含む、AAV粒子の血清型を決定する方法。
【請求項62】
請求項31~60のいずれか1項に記載の方法と組み合わせた、請求項3~28のいずれか1項に記載の方法を含む、AAV粒子の不均一性を決定する方法。
【請求項63】
組換えAAV(rAAV)粒子であって、親ポリペプチドのVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を含み;該VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較して、N末端アセチル化を変更する、前記組換えAAV粒子。
【請求項64】
置換は、より高い頻度のN末端アセチル化またはより低い頻度のN末端アセチル化をもたらす、請求項63に記載のrAAV粒子。
【請求項65】
VP1のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を含み;VP1のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較して、N末端アセチル化を変更する、請求項63または64に記載のrAAV粒子。
【請求項66】
VP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を含み;VP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、親AAV粒子のVP3のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較して、N末端アセチル化を変更する、請求項63~65のいずれか1項に記載のrAAV粒子。
【請求項67】
アミノ酸残基2は、Cys、Ser、Thr、Val、Gly、Asn、Asp,Glu、Ile、Leu、Phe、Gln、Lys、Met、ProまたはTyrで置換されている、請求項63~66のいずれか1項に記載のrAAV粒子。
【請求項68】
アミノ酸残基2は、Ser、AspまたはGluで置換されている、請求項67に記載のrAAV粒子。
【請求項69】
AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV LK03、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV
DJ、AAV DJ8カプシド、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、rAAV2/HBoV1血清型カプシド、AAV2HBKO、AAVPHP.BまたはAAVPHP.eB血清型カプシドを含む、請求項63~68のいずれか1項に記載のrAAV粒子。
【請求項70】
粒子のカプシド中にチロシン突然変異またはヘパリン結合突然変異を含む、請求項63
~69のいずれか1項に記載のrAAV粒子。
【請求項71】
rAAVベクターを含む、請求項63~70のいずれか1項に記載のrAAV粒子。
【請求項72】
rAAVベクターは、1つまたはそれ以上のAAV ITRを含む、請求項71に記載のrAAV粒子。
【請求項73】
rAAVベクターは、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10
ITR、AAV11 ITR、またはAAV12 ITRを含む、請求項71または72に記載のrAAV粒子。
【請求項74】
AAVカプシドおよびAAV ITRは、同じ血清型に由来する、請求項72または73に記載のrAAV粒子。
【請求項75】
AAVカプシドおよびAAV ITRは、異なる血清型に由来する、請求項72または73に記載のrAAV粒子。
【請求項76】
AAV粒子は、1つまたはそれ以上のAAV ITRに隣接した異種導入遺伝子をコードするAAVベクターを含む、請求項71~75のいずれか1項に記載のrAAV粒子。
【請求項77】
rAAVベクターは、自己相補的なベクターである、請求項71~76のいずれか1項に記載のrAAV粒子。
【請求項78】
rAAVベクターは、導入遺伝子をコードする第1の核酸配列および導入遺伝子の相補体をコードする第2の核酸配列を含み、該第1の核酸配列は、そのほとんどまたはすべての長さに沿って、該第2の核酸配列と鎖内塩基対を形成することができる、請求項77に記載のrAAV粒子。
【請求項79】
第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAV ITRにより連結され、突然変異したAAV ITRは、D領域の欠失を含み、末端解離配列の突然変異を含む、請求項78に記載のrAAV粒子。
【請求項80】
rAAVベクターをコードする核酸ならびにAAV repおよびcap機能をコードする核酸を宿主細胞にトランスフェクトし、AAVヘルパー機能をコードする核酸を提供することにより産生される、請求項63~79のいずれか1項に記載のrAAV粒子。
【請求項81】
AAVヘルパー機能は、AAVヘルパー機能をコードする核酸を宿主細胞にトランスフェクトすることにより提供される、請求項80に記載のrAAV粒子。
【請求項82】
AAVヘルバー機能は、AAVヘルパー機能を提供するAAVヘルパーウイルスに宿主細胞を感染させることにより提供される、請求項81に記載のrAAV粒子。
【請求項83】
AAVヘルパーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである、請求項82に記載のrAAV粒子。
【請求項84】
rAAVベクターをコードする核酸ならびにAAV repおよびcap機能をコードする核酸を含み、AAVヘルパー機能をコードする核酸を提供するAAV産生細胞により産生される、請求項63~79のいずれか1項に記載のrAAV粒子。
【請求項85】
AAV産生細胞は、AAVヘルパー機能をコードする核酸を含む、請求項84に記載のrAAV粒子。
【請求項86】
AAVヘルバー機能は、AAVヘルパー機能を提供するAAVヘルパーウイルスにAAV産生細胞を感染させることにより提供される、請求項84に記載のrAAV粒子。
【請求項87】
AAVヘルバーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである、請求項86に記載のrAAV粒子。
【請求項88】
AAV cap機能は、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を提供し、該VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較して、N末端アセチル化を変更する、請求項80~87のいずれか1項に記載のrAAV粒子。
【請求項89】
請求項63~88のいずれか1項に記載のrAAV粒子を含む、医薬組成物。
【請求項90】
請求項63~87のいずれか1項に記載のrAAV粒子または請求項89に記載の医薬組成物を含む、キット。
【請求項91】
請求項63~87のいずれか1項に記載のrAAV粒子または請求項89に記載の医薬組成物を含む、製造品。
【請求項92】
AAVカプシドタンパク質であって、親AAVカプシドタンパク質のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を含み;該アミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、親AAVカプシドタンパク質のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較して、N末端アセチル化を変更する、前記AAVカプシドタンパク質。
【請求項93】
置換は、より高い頻度のN末端アセチル化またはより低い頻度のN末端アセチル化をもたらす、請求項92に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項94】
VP1またはVP3である、請求項92または93に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項95】
アミノ酸残基2は、Cys、Ser、Thr、Val、Gly、Asn、Asp,Glu、Ile、Leu、Phe、Gln、Lys、Met、ProまたはTyrで置換されている、請求項92~94のいずれか1項に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項96】
アミノ酸残基2は、Ser、AspまたはGluで置換されている、請求項93に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項97】
アミノ酸置換は、AAVカプシドのより少ない脱アミド化をもたらす、請求項92~96のいずれか1項に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項98】
AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV LK03、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV
DJ、AAV DJ8カプシド、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシ
AAV、マウスAAV、rAAV2/HBoV1、AAV2HBKO、AAVPHP.BまたはAAVPHP.eB血清型カプシドを含む、請求項92~97のいずれか1項に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項99】
AAVカプシドタンパク質は、チロシン突然変異またはヘパリン結合突然変異をさらに含む、請求項92~98のいずれか1項に記載のrAAVカプシドタンパク質。
【請求項100】
rAAV粒子の安定性を改善する方法であって、親VP1および/またはVP3のVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2を置換する工程を含み;2位におけるアミノ酸を置換する工程が、親VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2と比較して、VP1および/またはVP3のN末端アセチル化を変更する、前記方法。
【請求項101】
細胞内のrAAV粒子のアセンブリを改善する方法であって、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2を置換する工程を含み;2位において置換されたアミノ酸は、親VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2と比較して、VP1および/またはVP3のN末端アセチル化を変更する、前記方法。
【請求項102】
細胞内のrAAV粒子の形質導入を改善する方法であって、親VP1および/またはVP3のVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2を置換する工程を含み、アミノ酸残基2を置換する工程が、親VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2と比較して、VP1および/またはVP3のN末端アセチル化を変更する、前記方法。
【請求項103】
アミノ酸残基2を置換する工程は、より高い頻度のN末端アセチル化またはより低い頻度のN末端アセチル化をもたらす、請求項100~102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
VP1のアミノ酸残基2が置換される、請求項100~103のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
VP3のアミノ酸残基2が置換される、請求項100~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
アミノ酸残基2は、Cys、Ser、Thr、Val、Gly、Asn、Asp,Glu、Ile、Leu、Phe、Gln、Lys、Met、ProまたはTyrで置換されている、請求項100~105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
アミノ酸残基2は、Ser、AspまたはGluで置換されている、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
AAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV LK03、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV DJ8カプシド、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、rAAV2/HBoV1、AAV2HBKO、AAVPHP.BまたはAAVPHP.eB血清型カプシドを含む、請求項100~107のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
rAAV粒子のカプシドは、チロシン突然変異またはヘパリン結合突然変異をさらに含む、請求項100~108のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
rAAV粒子は、rAAVベクターを含む、請求項100~109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項111】
rAAVベクターは、1つまたはそれ以上のAAV ITRを含む、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
rAAVベクターは、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10
ITR、AAV11 ITR、またはAAV12 ITRを含む、請求項110または111に記載の方法。
【請求項113】
AAVカプシドおよびAAV ITRは、同じ血清型に由来する、請求項110~112のいずれか1項に記載の方法。
【請求項114】
AAVカプシドおよびAAV ITRは、異なる血清型に由来する、請求項110~112のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
AAV粒子は、1つまたはそれ以上のAAV ITRに隣接した異種導入遺伝子をコードするAAVベクターを含む、請求項110~114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
rAAVベクターは、自己相補的なベクターである、請求項110~115のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
rAAVベクターは、導入遺伝子をコードする第1の核酸配列および導入遺伝子の相補体をコードする第2の核酸配列を含み、該第1の核酸配列は、そのほとんどまたはすべての長さに沿って、該第2の核酸配列と鎖内塩基対を形成することができる、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAV ITRにより連結され、突然変異したAAV ITRは、D領域の欠失を含み、末端解離配列の突然変異を含む、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸ならびにAAV repおよびcap機能をコードする核酸を宿主細胞にトランスフェクトし、AAVヘルパー機能をコードする核酸を提供することにより産生される、請求項100~118のいずれか1項に記載の方法。
【請求項120】
AAVヘルパー機能は、AAVヘルパー機能をコードする核酸を宿主細胞にトランスフェクトすることにより提供される、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
AAVヘルバー機能は、AAVヘルパー機能を提供するAAVヘルパーウイルスに宿主細胞を感染させることにより提供される、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
AAVヘルパーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸ならびにAAV repおよびcap機能をコードする核酸を含み、AAVヘルパー機能をコードする核酸を提供するAAV産生細胞により産生される、請求項100~118のいずれか1項に記載の方法。
【請求項124】
AAV産生細胞は、AAVヘルパー機能をコードする核酸を含む、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
AAVヘルバー機能は、AAVヘルパー機能を提供するAAVヘルパーウイルスにAAV産生細胞を感染させることにより提供される、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
AAVヘルバーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
AAV cap機能は、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を提供し、該VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較して、N末端アセチル化を変更する、請求項119~126のいずれか1項に記載の方法。
【請求項128】
ウイルス粒子の血清型を決定する方法であって、
a)該ウイルス粒子を変性させる工程と、
b)該変性したウイルス粒子を液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)に供する工程と、
c)該ウイルス粒子の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の質量を決定する工程と
を含み;
該1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の質量の特定の組合せが、ウイルス血清型の指標である、前記方法。
【請求項129】
1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の計算された質量は、1つまたはそれ以上のウイルス血清型の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の理論的質量に対して比較される、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
ウイルス粒子の不均一性を決定する方法であって、
a)該ウイルス粒子を変性させる工程と、
b)該変性したウイルス粒子を液体クロマトグラフィー/質量分析/質量分析(LC/MS/MS)に供する工程と、
c)該ウイルス粒子の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の質量を決定する工程と、
d)工程c)の質量を、ウイルス血清型の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の理論的質量と比較する工程と
を含み、
該1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の質量のうちの1つまたはそれ以上の偏差が、ウイルスカプシドの不均一性の指標である、前記方法。
【請求項131】
不均一性は、混合血清型、変異体カプシド、カプシドアミノ酸置換、切断型カプシド、または改変カプシドのうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
液体クロマトグラフィーは、逆相液体クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィー、または陽イオン交換クロマトグラフィーである、請求項128~131のいずれか1項に記載の方法。
【請求項133】
ウイルス粒子は、異種導入遺伝子をコードするウイルスベクターを含む、請求項128
~132のいずれか1項に記載の方法。
【請求項134】
ウイルス粒子の血清型を決定する方法であって、
a)該ウイルス粒子を変性させる工程と、
b)該変性したウイルス粒子を還元および/またはアルキル化に供する工程と、
c)該変性したウイルス粒子を消化に供して、ウイルス粒子の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片を生成する工程と、
d)該1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片を液体クロマトグラフィー/質量分析-質量分析(LC/MS/MS)に供する工程と、
e)該ウイルス粒子の該1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片の質量を決定する工程と
を含み;
該1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片の質量の特定の組合せが、ウイルス血清型の指標である、前記方法。
【請求項135】
1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片の計算された質量は、1つまたはそれ以上のウイルス血清型の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片の理論的質量に対して比較される、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
ウイルス粒子の血清型の不均一性を決定する方法であって、
a)該ウイルス粒子を変性させる工程と、
b)該変性したウイルス粒子を還元および/またはアルキル化に供する工程と、
c)該変性したウイルス粒子を消化に供して、該ウイルス粒子の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片を生成する工程と、
d)該1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片を液体クロマトグラフィー/質量分析-質量分析(LC/MS/MS)に供する工程と、
e)該ウイルス粒子の該1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片の質量を決定する工程と、
f)工程e)の質量を、ウイルス血清型の該1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片の理論的質量と比較する工程と
を含み;
該1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の質量のうちの1つまたはそれ以上の偏差が、ウイルスカプシドの不均一性の指標である、前記方法。
【請求項137】
不均一性は、混合血清型、変異体カプシド、カプシドアミノ酸置換、切断型カプシド、または改変カプシドのうちの1つまたはそれ以上を含む、請求項136に記載の方法。
【請求項138】
液体クロマトグラフィーは、逆相液体クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィー、または陽イオン交換クロマトグラフィーである、請求項134~137のいずれか1項に記載の方法。
【請求項139】
ウイルス粒子は、異種導入遺伝子をコードするウイルスベクターを含む、請求項134~138のいずれか1項に記載の方法。
【請求項140】
ウイルス粒子は、アデノウイルス科、パルボウイルス科、レトロウイルス科、バキュロウイルス科、およびヘルペスウイルス科からなる群から選択されるウイルス科に属する、請求項128~139のいずれか1項に記載の方法。
【請求項141】
ウイルス粒子は、アタデノウイルス属、アビアデノウイルス属、イクタデノウイルス属、マストアデノウイルス属、シアデノウイルス属、アンビデンソウイルス属、ブレビデン
ソウイルス属、ヘパンデンソウイルス属、イテラデンソウイルス属、ペンスチルデンソウイルス属、アムドパルボウイルス属、アベパルボウイルス属、ボカパルボウイルス属、コピパルボウイルス属、デペンドパルボウイルス属、エリスロパルボウイルス属、プロトパルボウイルス属、テトラパルボウイルス属、アルファレトロウイルス属、ベータレトロウイルス属、デルタレトロウイルス属、イプシロンレトロウイルス属、ガンマレトロウイルス属、レンチウイルス属、スプマウイルス属、アルファバキュロウイルス属、ベータバキュロウイルス属、デルタバキュロウイルス属、ガンマバキュロウイルス属、イルトウイルス属、マルディウイルス属、シンプレックスウイルス属、バリセロウイルス属、サイトメガロウイルス属、ムロメガロウイルス属、プロボシウイルス属、ロゼオロウイルス属、リンホクリプトウイルス属、マカウイルス属、ペルカウイルス属、およびラジノウイルス属からなる群から選択されるウイルス属に属する、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
組換えAAV(rAAV)粒子であって、親AAV粒子のVP1またはVP3のアミノ酸残基A35、N57、G58、N382、G383、N511、G512、N715、またはG716における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、残基の番号付けはAAV2のVP1に基づき;1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、該親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、脱アミド化を変更する、前記組換えAAV粒子。
【請求項143】
1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、またはVP3のG716のアミノ酸残基にあり、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、脱アミド化を変更する、請求項142に記載のrAAV粒子。
【請求項144】
1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP1のN57、VP3のN382、VP3のN511、またはVP3のN715におけるAspの置換を含み、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、より高い頻度の脱アミド化をもたらす、請求項142に記載のrAAV粒子。
【請求項145】
1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、N57KまたはN57Q置換を含み、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、より低い頻度の脱アミド化をもたらす、請求項142に記載のrAAV粒子。
【請求項146】
1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP1のA35におけるAsnの置換を含み、親AAV粒子のVP1の脱アミド化と比較して、より高い頻度の脱アミド化をもたらす、請求項142に記載のrAAV粒子。
【請求項147】
1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP1のG58、VP3のG383、VP3のG512、またはVP3のG716にあり、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、より低い頻度の脱アミド化をもたらす、請求項142に記載のrAAV粒子。
【請求項148】
VP1のG58は、Aspで置換されている、請求項147に記載のrAAV粒子。
【請求項149】
rAAV粒子は、AAV1粒子またはAAV2粒子である、請求項142~148のいずれか1項に記載のrAAV粒子。
【請求項150】
請求項142~149のいずれか1項に記載のrAAV粒子を含む、医薬組成物。
【請求項151】
請求項142~149のいずれか1項に記載のrAAV粒子または請求項150に記載の医薬組成物を含む、キット。
【請求項152】
請求項142~149のいずれか1項に記載のrAAV粒子または請求項150に記載の医薬組成物を含む、製造品。
【請求項153】
AAVカプシドタンパク質であって、親AAVカプシドタンパク質のアミノ酸置換を含み;該アミノ酸置換は、親AAVカプシドタンパク質と比較して、カプシドの脱アミド化を変更する、前記AAVカプシドタンパク質。
【請求項154】
rAAV粒子の安定性を改善する方法であって、親VP1および/またはVP3のVP1および/またはVP3の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を置換する工程を含み、該1つまたはそれ以上のアミノ酸残基は、A35、N57、G58、N382、G383、N511、G512、N715、またはG716であり、残基の番号付けはAAV2のVP1に基づき;アミノ酸置換は、親VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2と比較して、脱アミド化を変更する、前記方法。
【請求項155】
細胞内のrAAV粒子のアセンブリを改善する方法であって、VP1および/またはVP3の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を置換する工程を含み、該1つまたはそれ以上のアミノ酸残基は、A35、N57、G58、N382、G383、N511、G512、N715、またはG716であり、残基の番号付けはAAV2のVP1に基づき;アミノ酸置換は、親VP1および/またはVP3のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、脱アミド化を変更する、前記方法。
【請求項156】
細胞内のrAAV粒子の形質導入を改善する方法であって、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を置換する工程を含み、該1つまたはそれ以上のアミノ酸残基は、A35、N57、G58、N382、G383、N511、G512、N715、またはG716であり、残基の番号付けはAAV2のVP1に基づき;アミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、脱アミド化を変更する、前記方法。
【請求項157】
1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、またはVP3のG716にあり;該アミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、脱アミド化を変更する、請求項154~156のいずれか1項に記載の方法。
【請求項158】
VP1の35位における親Ala残基は、Asnで置換されている、請求項154~157のいずれか1項に記載の方法。
【請求項159】
VP1の58位における親Gly残基は、Aspで置換されている、請求項154~158のいずれか1項に記載の方法。
【請求項160】
AAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV LK03、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV DJ8カプシド、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、rAAV2/HBoV1、AAV2HBKO、AAVPHP.BまたはAAVPHP.eB血清型カプシドを含む、請求項154~159のいずれか1項に記載の方法。
【請求項161】
rAAV粒子のカプシドは、チロシン突然変異またはヘパリン結合突然変異をさらに含む、請求項154~160のいずれか1項に記載の方法。
【請求項162】
rAAV粒子は、AAV1粒子またはAAV2粒子である、請求項154~160のいずれか1項に記載の方法。
【請求項163】
rAAV粒子は、rAAVベクターを含む、請求項154~162のいずれか1項に記載の方法。
【請求項164】
rAAVベクターは、1つまたはそれ以上のAAV ITRを含む、請求項163に記載の方法。
【請求項165】
rAAVベクターは、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10
ITR、AAV11 ITR、またはAAV12 ITRを含む、請求項163または164に記載の方法。
【請求項166】
AAVカプシドおよびAAV ITRは、同じ血清型に由来する、請求項164~165のいずれか1項に記載の方法。
【請求項167】
AAVカプシドおよびAAV ITRは、異なる血清型に由来する、請求項164~166のいずれか1項に記載の方法。
【請求項168】
AAV粒子は、1つまたはそれ以上のAAV ITRに隣接した異種導入遺伝子をコードするAAVベクターを含む、請求項164~167のいずれか1項に記載の方法。
【請求項169】
rAAVベクターは、自己相補的なベクターである、請求項164~168のいずれか1項に記載の方法。
【請求項170】
rAAVベクターは、導入遺伝子をコードする第1の核酸配列および導入遺伝子の相補体をコードする第2の核酸配列を含み、該第1の核酸配列は、そのほとんどまたはすべての長さに沿って、該第2の核酸配列と鎖内塩基対を形成することができる、請求項169に記載の方法。
【請求項171】
第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAV ITRにより連結され、突然変異したAAV ITRは、D領域の欠失を含み、末端解離配列の突然変異を含む、請求項170に記載の方法。
【請求項172】
rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸ならびにAAV repおよびcap機能をコードする核酸を宿主細胞にトランスフェクトし、AAVヘルパー機能をコードする核酸を提供することにより産生される、請求項164~171のいずれか1項に記載の方法。
【請求項173】
AAVヘルパー機能は、AAVヘルパー機能をコードする核酸を宿主細胞にトランスフェクトすることにより提供される、請求項172に記載の方法。
【請求項174】
AAVヘルバー機能は、AAVヘルパー機能を提供するAAVヘルパーウイルスに宿主細胞を感染させることにより提供される、請求項173に記載の方法。
【請求項175】
AAVヘルパーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである、請求項174に記載の方法。
【請求項176】
rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸ならびにAAV repおよびcap機能をコードする核酸を含み、AAVヘルパー機能をコードする核酸を提供するAAV産生細胞により産生される、請求項164~175のいずれか1項に記載の方法。
【請求項177】
AAV産生細胞は、AAVヘルパー機能をコードする核酸を含む、請求項176に記載の方法。
【請求項178】
AAVヘルバー機能は、AAVヘルパー機能を提供するAAVヘルパーウイルスにAAV産生細胞を感染させることにより提供される、請求項177に記載の方法。
【請求項179】
AAVヘルバーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである、請求項178に記載の方法。
【請求項180】
AAV cap機能は、VP1および/またはVP3のアミノ酸置換を提供し、該VP1および/またはVP3のアミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、脱アミド化を変更する、請求項172~179のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によってその全体を本明細書に組み入れる2016年8月15日出願の米国仮出願第62/375,314号の優先権の利益を主張する。
【0002】
配列表
ASCIIテキストファイルによる以下の提出の内容は、参照によってその全体を本明細書に組み入れる:配列表のコンピュータ読取り可能な形式(CRF)(ファイル名:159792014140SEQLIST.txt、記録日:2017年8月14日、サイズ:51KB)。
【0003】
本発明は、質量決定を使用する、例えば、液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(LC/MS)または液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー-マススペクトロメトリー(LC/MS/MS)を採用することによる、ウイルス粒子(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子)の血清型判定および/または不均一性の決定のための方法に関する。一部の態様では、本発明は、AAV粒子の安定性を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ウイルスカプシドタンパク質(VP)はウイルス感染性にとって重要であるため、その配列および翻訳後修飾を含む、ウイルスベクター(例えば、AAVベクター)のウイルスカプシドタンパク質の完全な特徴付けが、遺伝子治療の研究および開発において望まれる。
【0005】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)産物のようなウイルスベクター産物は、典型的に、核酸導入遺伝子を標的とする分子ツールを使用して同定される。これらの方法は、導入遺伝子に特異的な配列を標的とするポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および制限断片長多型(RFLP)技術を含む。rAAVテクノロジーが発展するにつれ、多くの施設が標的とされた組織の指向性を改善するための努力においてその治療的導入遺伝子をコードする複数のAAVカプシド血清型の調査を開始している。
【0006】
伝統的な分子同定方法は、独特な導入遺伝子を含有する産物を同定するが、異なるAAVカプシドの血清型を有するものを識別することはできない。現在、ほとんどのAAV血清型同一性試験は、SDS-PAGEのバンドパターン、抗体ベースのELISA、またはウェスタンブロットアッセイに基づく。しかしながら、バンドパターンおよび抗体は、異なるAAV血清型を区別するためには十分に特異的でない。ゲル-LC/MS/MSは、カプシド血清型の同定方法として報告されている。しかしながら、この方法は、SDS-PAGE、ゲル内消化およびLC/MS/MSを含む複数の工程を含み、よって、分析に何日も必要である一方、提供する配列の適用範囲は限られている。rAAVベクターのようなベクターを同定するための方法は、遺伝子治療用ベクターにとって興味深い(例えば、特許文献1を参照されたい)。よって、ウイルス粒子を特徴付けする改善された方法は有用であろう。
【0007】
特許出願および特許出願公開を含む、本明細書において引用されるすべての参考文献は、参照によってその全体を組み入れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国付与前特許出願公開第20110275529号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例としてrAAVを使用して本明細書に記載されるのは、異なるウイルスカプシド血清型(例えば、rAAVカプシド血清型)を特異的に同定するための分析ツールとしてのLC/MSの使用である。ウイルスの特徴付けの一部として、LC/MSは、分子同定方法を増強するために使用される。この分析の組合せは、製品の治療的導入遺伝子の同一性およびカプシド血清型の同一性の両方を識別することにより、規制上の要件を満たすことができる。この方法は、例えば、AAV血清型の同一性試験としてまたは組換えAAV遺伝子治療の開発におけるウイルスカプシドタンパク質の不均一性をモニターするために使用することができる。これは、カプシド工学研究においてVP配列を確認するためにも使用することができる。加えて、この技術は、ウイルスカプシドタンパク質のN末端アセチル化のような翻訳後修飾の、トランスフェクション能力および細胞内タンパク質輸送に対する影響を研究するためにも使用することができる。
【0010】
本明細書に記載の方法は、例えば、2位のアミノ酸が野生型AAVカプシドと比較してより高い程度までアセチル化されるように、AAVカプシドのVP1および/またはVP3の2位のアミノ酸残基を変更することにより、より大きな安定性および/または改善された形質導入効率のためにAAV粒子をデザインするためにも使用される。一部の実施形態では、方法は、例えば、2位のアミノ酸が野生型AAVカプシドと比較してより高いまたはより低い程度まで脱アセチル化されるように、AAVカプシドのVP1および/またはVP3の2位のアミノ酸残基を変更することにより、低減された形質導入効率を有するAAV粒子をデザインするために使用される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一部の態様では、本発明は、ウイルス粒子の血清型を決定する方法であって、a)ウイルス粒子を変性させる工程と、b)変性したウイルス粒子を液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)に供する工程と、c)ウイルス粒子の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の質量を決定する工程とを含み;1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の質量の特定の組合せが、ウイルス血清型の指標である、方法を提供する。一部の実施形態では、1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の計算された質量は、1つまたはそれ以上のウイルス血清型の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の理論的質量に対して比較される。
【0012】
一部の態様では、本発明は、ウイルス粒子の不均一性を決定する方法であって、a)ウイルス粒子を変性させる工程と、b)変性したウイルス粒子を液体クロマトグラフィー/質量分析/質量分析(LC/MS/MS)に供する工程と、c)ウイルス粒子の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の質量を決定する工程と、d)工程c)の質量を、ウイルス血清型の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の理論的質量と比較する工程とを含み;1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の質量のうちの1つまたはそれ以上の偏差が、ウイルスカプシドの不均一性の指標である、方法を提供する。一部の実施形態では、不均一性は、混合血清型、変異体カプシド、カプシドアミノ酸置換、切断型カプシド、または改変カプシドのうちの1つまたはそれ以上を含む。
【0013】
上記態様の一部の実施形態では、液体クロマトグラフィーは、逆相液体クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィー、または陽イオン交換クロマトグラフィー(cation exchange chromatography)である。一部の実施形態では、ウイルス粒子は、異種導入遺伝子をコード
するウイルスベクターを含む。
【0014】
一部の態様では、本発明は、ウイルス粒子の血清型を決定する方法であって、a)ウイルス粒子を変性させる工程と、b)変性したウイルス粒子を還元および/またはアルキル化に供する工程と、c)変性したウイルス粒子を消化に供して、ウイルス粒子の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片を生成する工程と、d)1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片を液体クロマトグラフィー/質量分析-質量分析(LC/MS/MS)に供する工程と、e)ウイルス粒子の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片の質量を決定する工程とを含み;1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片の質量の特定の組合せが、ウイルス血清型の指標である、方法を提供する。一部の実施形態では、1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片の計算された質量が、1つまたはそれ以上のウイルス血清型の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片の理論的質量に対して比較される。
【0015】
一部の態様では、本発明は、ウイルス粒子の血清型の不均一性を決定する方法であって、a)ウイルス粒子を変性させる工程と、b)変性したウイルス粒子を還元および/またはアルキル化に供する工程と、c)変性したウイルス粒子を消化に供して、ウイルス粒子の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片を生成する工程と、d)1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片を液体クロマトグラフィー/質量分析-質量分析(LC/MS/MS)に供する工程と、e)ウイルス粒子の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片の質量を決定する工程と、f)工程e)の質量を、ウイルス血清型の1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の断片の理論的質量と比較する工程とを含み;1種またはそれ以上のカプシドタンパク質の質量のうちの1つまたはそれ以上の偏差が、ウイルスカプシドの不均一性の指標である、方法を提供する。一部の実施形態では、不均一性は、混合血清型、変異体カプシド、カプシドアミノ酸置換、切断型カプシド、または改変カプシドのうちの1つまたはそれ以上を含む。一部の実施形態では、液体クロマトグラフィーは、逆相液体クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィー、または陽イオン交換クロマトグラフィーである。
【0016】
本明細書に示されるとおり、方法は、ゲル分離工程(例えば、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE))の非存在下で実行される。
【0017】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、ウイルス粒子は、異種導入遺伝子をコードするウイルスベクターを含む。一部の実施形態では、ウイルス粒子は、アデノウイルス科(Adenoviridae)、パルボウイルス科(Parvoviridae)、レトロウイルス科(Retroviridae)、バキュロウイルス科(Baculoviridae)、およびヘルペスウイルス科(Herpesviridae)からなる群から選択されるウイルス科に属する。一部の実施形態では、ウイルス粒子は、アタデノウイルス属(Atadenovirus)、アビアデノウイルス属(Aviadenovirus)、イクタデノウイルス属(Ichtadenovirus)、マストアデノウイルス属(Mastadenovirus)、シアデノウイルス属(Siadenovirus)、アンビデンソウイルス属(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス属(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス属(Hepandensovirus)、イテラデンソウイルス属(Iteradensovirus)、ペンスチルデンソウイルス属(Penstyldensovirus)、アムドパルボウイルス属(Amdoparvovirus)、アベパルボウイルス属(Aveparvovirus)、ボカパルボウイルス属(Bocaparvovirus)、コピパルボウイルス属(Copiparvovirus)、デペンドパルボウイルス属(Dependoparvovirus)、エリスロパルボウイルス属(Erythroparvovirus)、プロトパルボウイルス属(Protoparvovirus)、テトラパルボウ
イルス属(Tetraparvovirus)、アルファレトロウイルス属(Alpharetrovirus)、ベータレトロウイルス属(Betaretrovirus)、デルタレトロウイルス属(Deltaretrovirus)、イプシロンレトロウイルス属(Epsilonretrovirus)、ガンマレトロウイルス属(Gammaretrovirus)、レンチウイルス属(Lentivirus)、スプマウイルス属(Spumavirus)、アルファバキュロウイルス属(Alphabaculovirus)、ベータバキュロウイルス属(Betabaculovirus)、デルタバキュロウイルス属(Deltabaculovirus)、ガンマバキュロウイルス属(Gammabaculovirus)、イルトウイルス属(Iltovirus)、マルディウイルス属(Mardivirus)、シンプレックスウイルス属(Simplexvirus)、バリセロウイルス属(Varicellovirus)、サイトメガロウイルス属(Cytomegalovirus)、ムロメガロウイルス属(Muromegalovirus)、プロボシウイルス属(Proboscivirus)、ロゼオロウイルス属(Roseolovirus)、リンホクリプトウイルス属(Lymphocryptovirus)、マカウイルス属(Macavirus)、ペルカウイルス属(Percavirus)、およびラジノウイルス属(Rhadinovirus)からなる群から選択されるウイルス属に属する。
【0018】
一部の態様では、本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子の血清型を決定する方法であって、a)AAV粒子を変性させる工程と、b)変性したAAV粒子を液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)に供する工程と、c)AAV粒子のVP1、VP2およびVP3の質量を決定する工程とを含み;VP1、VP2およびVP3の質量の特定の組合せが、AAV血清型の指標である、方法を提供する。一部の実施形態では、VP1、VP2およびVP3の計算された質量が、1つまたはそれ以上のAAV血清型のVP1、VP2およびVP3の理論的質量に対して比較される。
【0019】
一部の態様では、本発明は、AAV粒子の不均一性を決定する方法であって、a)AAV粒子を変性させる工程と、b)変性したAAV粒子を液体クロマトグラフィー/質量分析/質量分析(LC/MS/MS)に供する工程と、c)AAV粒子のVP1、VP2およびVP3の質量を決定する工程と、d)工程c)の質量を、AAV血清型のVP1、VP2およびVP3の理論的質量と比較する工程とを含み;VP1、VP2またはVP3の質量のうちの1つまたはそれ以上の偏差が、AAVカプシドの不均一性の指標である、方法を提供する。一部の実施形態では、不均一性は、混合血清型、変異体カプシド、カプシドアミノ酸置換、切断型カプシド、または改変カプシドのうちの1つまたはそれ以上を含む。
【0020】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、AAV粒子は酢酸、塩酸グアニジンおよび/または有機溶媒により変性する。一部の実施形態では、液体クロマトグラフィーは、逆相液体クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィー、または陽イオン交換クロマトグラフィーである。一部の実施形態では、液体クロマトグラフィーは、逆相液体クロマトグラフィーである。一部の実施形態では、逆相クロマトグラフィーは、C4またはC8逆相クロマトグラフィーである。一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、水中にギ酸を含む移動相Aを使用する。一部の実施形態では、移動相Aは、約0.1%のギ酸を含む。一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、アセトニトリル中にギ酸を含む移動相Bを含む。一部の実施形態では、移動相Bは、約0.1%のギ酸を含む。一部の実施形態では、クロマトグラフィーにおける移動相Bの割合は経時的に増加する。一部の実施形態では、クロマトグラフィーにおける移動相Bの割合は段階的に増加する。一部の実施形態では、移動相Bは、約10%から約20%まで、約20%から約30%まで、および約30%から約38%まで増加する。一部の実施形態では、移動相Bは、約6分間で約10%から約20%まで、約10分間で約20%
から約30%まで、および約40分間で約30%から約38%まで増加する。一部の実施形態では、液体クロマトグラフィーは、超高速液体クロマトグラフィー(ultra-performance liquid chromatography)(UPLC)である。
【0021】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、マススペクトロメトリーは、約3.5kVのキャピラリー電圧を含む。一部の実施形態では、マススペクトロメトリーは、約45Vのサンプリングコーン電圧を含む。一部の実施形態では、マススペクトロメトリーは、支援付き校正を含む。一部の実施形態では、ヨウ化ナトリウムは、校正物質として使用される。
【0022】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、VP1および/またはVP3のN末端はアセチル化されている。一部の実施形態では、AAV粒子は組換えAAV(rAAV)粒子である。一部の実施形態では、AAV粒子はAAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド、AAV7カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8カプシド、AAV9カプシド、AAV10カプシド、AAVrh10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、AAV LK03カプシド、AAV2R471Aカプシド、AAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド、AAV DJ8カプシド、AAV2 N587Aカプシド、AAV2
E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、またはマウスAAVカプシド、rAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルスウイルス1)を含む。一部の実施形態では、AAVカプシドは、チロシン突然変異またはヘパリン結合突然変異を含む。一部の実施形態では、VP1、VP2およびVP3の質量が、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド、AAV7カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8カプシド、AAV9カプシド、AAV10カプシド、AAVrh10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、AAV LK03カプシド、AAV2R471Aカプシド、AAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド、AAV DJ8カプシド、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、またはマウスAAVカプシド、rAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルスウイルス1)、AAV2HBKOカプシド、AAVPHP.BカプシドまたはAAVPHP.eBカプシドのうちの1つまたはそれ以上の理論的質量に対して比較される。
【0023】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、ウイルス粒子は、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6
ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITR、またはAAV12 ITRを含む。一部の実施形態では、AAV粒子は異種導入遺伝子をコードするAAVベクターを含む。
【0024】
一部の態様では、本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子の血清型を決定する方法であって、a)AAV粒子を変性させる工程と、b)変性したAAV粒子を還元および/またはアルキル化に供する工程と、c)変性したAAV粒子を消化に供して、AAV粒子のVP1、VP2および/またはVP3の断片を生成する工程と、d)VP1、VP2および/またはVP3の断片を液体クロマトグラフィー/質量分析-質量分析(LC/MS/MS)に供する工程と、e)AAV粒子のVP1、VP2およびVP3の断片の質量を決定する工程とを含み;VP1、VP2およびVP3の断片の質量の特定の組合せが、
AAV血清型の指標である、方法を提供する。一部の実施形態では、VP1、VP2および/またはVP3の断片の計算された質量が、1つまたはそれ以上のAAV血清型のVP1、VP2および/またはVP3の断片の理論的質量に対して比較される。
【0025】
一部の態様では、本発明は、AAV粒子の血清型の不均一性を決定する方法であって、a)AAV粒子を変性させる工程と、b)変性したAAV粒子を還元および/またはアルキル化に供する工程と、c)変性したAAV粒子を消化に供して、AAV粒子のVP1、VP2および/またはVP3の断片を生成する工程と、d)VP1、VP2および/またはVP3の断片を液体クロマトグラフィー/質量分析-質量分析(LC/MS/MS)に供する工程と、e)AAV粒子のVP1、VP2およびVP3の断片の質量を決定する工程と、f)工程e)の質量を、AAV血清型のVP1、VP2およびVP3の断片の理論的質量と比較する工程とを含み;VP1、VP2またはVP3の質量のうちの1つまたはそれ以上の偏差が、AAVカプシドの不均一性の指標である、方法を提供する。一部の実施形態では、不均一性は、混合血清型、変異体カプシド、カプシドアミノ酸置換、切断型カプシド、または改変カプシドのうちの1つまたはそれ以上を含む。一部の実施形態では、還元は、AAV粒子をジチオスレイトール、ベータメルカプトエタノール、またはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)に供することによる。一部の実施形態では、アルキル化は、AAV粒子をヨード酢酸、ヨードアセトアミド、または4-ビニルピリジンに供することによる。一部の実施形態では、消化は、酵素消化または化学的消化である。一部の実施形態では、酵素消化は、エンドペプチダーゼ消化である。一部の実施形態では、酵素消化は、トリプシン消化、LysC消化、Asp-N消化またはGlu-C消化である。一部の実施形態では、化学的消化は、臭化シアン消化または酸消化である。一部の実施形態では、AAV粒子は、酢酸、塩酸グアニジンおよび/または有機溶媒により変性する。
【0026】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、液体クロマトグラフィーは、逆相液体クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィー、または陽イオン交換クロマトグラフィーである。一部の実施形態では、液体クロマトグラフィーは、逆相液体クロマトグラフィーである。一部の実施形態では、逆相液体クロマトグラフィーは、C18逆相クロマトグラフィーである。一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、水中にギ酸を含む移動相Aを使用する。一部の実施形態では、移動相Aは、約0.1%のギ酸を含む。一部の実施形態では、クロマトグラフィーは、アセトニトリル中にギ酸を含む移動相Bを含む。一部の実施形態では、移動相Bは、約0.1%のギ酸を含む。一部の実施形態では、クロマトグラフィーにおける移動相Bの割合は経時的に増加する。一部の実施形態では、移動相Bは、約2%から約60%まで増加する。一部の実施形態では、移動相Bは、約121分間で約2%から約60%まで増加する。一部の実施形態では、液体クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である。
【0027】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、マススペクトロメトリーは、約3.5kVのキャピラリー電圧を含む。一部の実施形態では、マススペクトロメトリーは、約45Vのサンプリングコーン電圧を含む。一部の実施形態では、マススペクトロメトリーは、支援付き校正を含む。一部の実施形態では、ヨウ化ナトリウムは、校正物質として使用される。
【0028】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、VP1および/またはVP3のN末端はアセチル化されている。一部の実施形態では、AAV粒子は組換えAAV(rAAV)粒子である。一部の実施形態では、AAV粒子はAAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド、AAV7カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8カプシド、AAV9カプシド、AAV10カ
プシド、AAVrh10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、AAV LK03カプシド、AAV2R471Aカプシド、AAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド、AAV DJ8カプシド、AAV2 N587Aカプシド、AAV2
E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、またはマウスAAVカプシド、rAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルスウイルス1)を含む。一部の実施形態では、AAVカプシドは、チロシン突然変異またはヘパリン結合突然変異を含む。一部の実施形態では、VP1、VP2およびVP3の質量が、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド、AAV7カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8カプシド、AAV9カプシド、AAV10カプシド、AAVrh10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、AAV LK03カプシド、AAV2R471Aカプシド、AAV2/2-7m8カプシド、AAV DJカプシド、AAV DJ8カプシド、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、またはマウスAAVカプシド、rAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルスウイルス1)のうちの1つまたはそれ以上の理論的質量に対して比較される。
【0029】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、ウイルス粒子は、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6
ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITR、またはAAV12 ITRを含む。一部の実施形態では、AAV粒子は異種導入遺伝子をコードするAAVベクターを含む。
【0030】
一部の実施形態では、本発明は、組換えAAV(rAAV)粒子であって、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を含み;VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較して、N末端アセチル化を変更する、組換えAAV粒子を提供する。一部の実施形態では、置換は、より高い頻度のN末端アセチル化またはより低い頻度のN末端アセチル化をもたらす。一部の実施形態では、rAAV粒子は、VP1のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を含み;VP1のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較して、N末端アセチル化を変更する。一部の実施形態では、rAAV粒子は、VP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を含み;VP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、親AAV粒子のVP3のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較して、N末端アセチル化を変更する。一部の実施形態では、アミノ酸残基2は、Cys、Ser、Thr、Val、Gly、Asn、Asp,Glu、Ile、Leu、Phe、Gln、Lys、Met、ProまたはTyrで置換されている。一部の実施形態では、アミノ酸残基2は、Ser、AspまたはGluで置換されている。
【0031】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、AAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV LK03、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV DJ8カプシド、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、rAAV2/HBoV1、AAV2HBKO、AAVPHP.BまたはAAVPHP.eB血清型カプシドを含む。一部の実施形態では、AAVカプシドは、チロシン突然変異ま
たはヘパリン結合突然変異をさらに含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、rAAVベクターを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターは、1つまたはそれ以上のAAV ITRを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターは、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITR、またはAAV12 ITRを含む。一部の実施形態では、AAVカプシドおよびAAV ITRは、同じ血清型に由来する。一部の実施形態では、AAVカプシドおよびAAV ITRは、異なる血清型に由来する。一部の実施形態では、AAV粒子は、1つまたはそれ以上のAAV ITRに隣接した異種導入遺伝子をコードするAAVベクターを含む。
【0032】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、rAAVベクターは自己相補的なベクターである。一部の実施形態では、rAAVベクターは、導入遺伝子をコードする第1の核酸配列および導入遺伝子の相補体をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、そのほとんどまたはすべての長さに沿って、第2の核酸配列と鎖内塩基対を形成することができる。一部の実施形態では、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAV ITRにより連結され、突然変異したAAV ITRは、D領域の欠失を含み、末端解離配列(terminal resolution sequence)の突然変異を含む。
【0033】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸ならびにAAV repおよびcap機能をコードする核酸を宿主細胞にトランスフェクトし、AAVヘルパー機能をコードする核酸を提供することにより産生される。一部の実施形態では、AAVヘルパー機能は、AAVヘルパー機能をコードする核酸を宿主細胞にトランスフェクトすることにより提供される。一部の実施形態では、AAVヘルバー機能は、AAVヘルパー機能を提供するAAVヘルパーウイルスに宿主細胞を感染させることにより提供される。一部の実施形態では、AAVヘルパーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである。一部の実施形態では、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸ならびにAAV repおよびcap機能をコードする核酸を含み、AAVヘルパー機能をコードする核酸を提供するAAV産生細胞(producer cell)により産生される。一部の実施形態では、AAV産生細胞は、AAVヘルパー機能をコードする核酸を含む。一部の実施形態では、AAVヘルパー機能は、AAVヘルパー機能を提供するAAVヘルパーウイルスにAAV産生細胞を感染させることにより提供される。一部の実施形態では、AAVヘルパーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである。一部の実施形態では、AAV cap機能は、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を提供し、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較して、N末端アセチル化を変更する。
【0034】
一部の態様では、本発明は、本明細書に記載のrAAV粒子を含む医薬組成物を提供する。一部の態様では、本発明は、本明細書に記載のrAAV粒子または医薬組成物を含むキットを提供する。一部の態様では、本発明は、本明細書に記載のrAAV粒子または医薬組成物を含む製造品を提供する。
【0035】
一部の態様では、本発明は、AAVカプシドタンパク質であって、親AAVカプシドタンパク質のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を含み;アミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、親AAVカプシドタンパク質のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較して、N末端アセチル化を変更する、AAVカプシドタンパク質を提供する。一部の実施形態では、置換は、より高い頻度のN末端アセチル化またはより低い頻度のN末端アセ
チル化をもたらす。一部の実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、VP1またはVP3である。一部の実施形態では、AAVカプシドタンパク質のアミノ酸残基2は、Cys、Ser、Thr、Val、Gly、Asn、Asp,Glu、Ile、Leu、Phe、Gln、Lys、Met、ProまたはTyrで置換されている。一部の実施形態では、AAVカプシドタンパク質のアミノ酸残基2は、Ser、AspまたはGluで置換されている。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、AAVカプシドのより少ない脱アミド化をもたらす。
【0036】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、AAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV LK03、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV DJ8カプシド、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、rAAV2/HBoV1、AAV2HBKO、AAVPHP.BまたはAAVPHP.eB血清型カプシドを含む。一部の実施形態では、AAVカプシドは、チロシン突然変異またはヘパリン結合突然変異をさらに含む。
【0037】
一部の態様では、本発明は、rAAV粒子の安定性を改善する方法であって、親VP1および/またはVP3のVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2を置換する工程を含み;アミノ酸残基2を置換する工程が、親VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2と比較して、VP1および/またはVP3のN末端アセチル化を変更する、方法を提供する。一部の態様では、本発明は、細胞内のrAAV粒子のアセンブリを改善する方法であって、親VP1および/またはVP3のVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2を置換する工程を含み;2位におけるアミノ酸を置換する工程が、親VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2と比較して、VP1および/またはVP3のN末端アセチル化を変更する、方法を提供する。一部の態様では、本発明は、細胞内のrAAV粒子の形質導入を改善する方法であって、親VP1および/またはVP3のVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2を置換する工程を含み、アミノ酸残基2を置換する工程が、親VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2と比較して、VP1および/またはVP3のN末端アセチル化を変更する、方法を提供する。一部の実施形態では、置換されたアミノ酸は、より高い頻度のN末端アセチル化またはより低い頻度のN末端アセチル化をもたらす。一部の実施形態では、VP1のアミノ酸残基2におけるアミノ酸が置換されている。一部の実施形態では、VP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸が置換されている。一部の実施形態では、アミノ酸残基2が、Cys、Ser、Thr、Val、Gly、Asn、Asp,Glu、Ile、Leu、Phe、Gln、Lys、Met、ProまたはTyrで置換されている。一部の実施形態では、アミノ酸残基2は、Ser、AspまたはGluで置換されている。一部の態様では、本発明は、細胞内のrAAV粒子の形質導入を低減させる方法であって、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2を置換する工程を含み;2位において置換されたアミノ酸が、親VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2と比較して、VP1および/またはVP3のN末端アセチル化を変更する、方法を提供する。
【0038】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、AAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV LK03、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV DJ8カプシド、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、rAAV2/HBoV1、AAV2HBKO、AAVPHP.BまたはAAVPHP.e
B血清型カプシドを含む。一部の実施形態では、AAVカプシドは、チロシン突然変異またはヘパリン結合突然変異をさらに含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、rAAVベクターを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターは、1つまたはそれ以上のAAV ITRを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターは、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITR、またはAAV12 ITRを含む。一部の実施形態では、AAVカプシドおよびAAV ITRは、同じ血清型に由来する。一部の実施形態では、AAVカプシドおよびAAV ITRは、異なる血清型に由来する。一部の実施形態では、AAV粒子は、1つまたはそれ以上のAAV ITRに隣接した異種導入遺伝子をコードするAAVベクターを含む。
【0039】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、rAAVベクターは自己相補的なベクターである。一部の実施形態では、rAAVベクターは、導入遺伝子をコードする第1の核酸配列および導入遺伝子の相補体をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、そのほとんどまたはすべての長さに沿って、第2の核酸配列と鎖内塩基対を形成することができる。一部の実施形態では、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAV ITRにより連結され、突然変異したAAV ITRは、D領域の欠失を含み、末端解離配列の突然変異を含む。
【0040】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸ならびにAAV repおよびcap機能をコードする核酸を宿主細胞にトランスフェクトし、AAVヘルパー機能をコードする核酸を提供することにより産生される。一部の実施形態では、AAVヘルパー機能は、AAVヘルパー機能をコードする核酸を宿主細胞にトランスフェクトすることにより提供される。一部の実施形態では、AAVヘルバー機能は、AAVヘルパー機能を提供するAAVヘルパーウイルスに宿主細胞を感染させることにより提供される。一部の実施形態では、AAVヘルパーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである。一部の実施形態では、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸ならびにAAV repおよびcap機能をコードする核酸を含み、AAVヘルパー機能をコードする核酸を提供するAAV産生細胞により産生される。一部の実施形態では、AAV産生細胞は、AAVヘルパー機能をコードする核酸を含む。一部の実施形態では、AAVヘルパー機能は、AAVヘルパー機能を提供するAAVヘルパーウイルスにAAV産生細胞を感染させることにより提供される。一部の実施形態では、AAVヘルパーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである。一部の実施形態では、AAV cap機能は、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を提供し、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較して、N末端アセチル化を変更する。
【0041】
一部の態様では、本発明は、組換えAAV(rAAV)粒子であって、親粒子のVP1またはVP3のアミノ酸残基A35、N57、G58、N382、G383、N511、G512、N715、またはG716における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、残基の番号付けはAAV2のVP1に基づき;1つまたはそれ以上のアミノ酸置換が、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、脱アミド化を変更する、組換えAAV粒子を提供する。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP1のA35、N57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、またはVP3のG716のアミノ酸残基にあり、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、脱アミド化を変更する。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のアミノ酸置
換は、VP1のN57、VP3のN382、VP3のN511、またはVP3のN715におけるAspの置換を含み;親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、より高い頻度の脱アミド化をもたらす。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、N57KまたはN57Q置換を含み、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、より低い頻度の脱アミド化をもたらす。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP1のA35におけるAspの置換を含み、親AAV粒子のVP1の脱アミド化と比較して、より高い頻度の脱アミド化をもたらす。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP1のG58、VP3のG383、VP3のG512、またはVP3のG716にあり、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、より低い頻度の脱アミド化をもたらす。一部の実施形態では、VP1のG58はAspで置換されている。一部の実施形態では、rAAV粒子は、AAV1粒子またはAAV2粒子である。
【0042】
一部の態様では、本発明は、VP1またはVP3のアミノ酸残基A35、N57、G58、N382、G383、N511、G512、N715、またはG716における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含むAAV粒子を含む、医薬組成物であって、残基の番号付けはAAV2のVP1に基づき;アミノ酸置換が、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、脱アミド化を変更する、医薬組成物を提供する。一部の態様では、本発明は、AAV粒子またはAAV粒子を含む組成物を含むキットであって、AAV粒子は、VP1またはVP3のアミノ酸残基A35、N57、G58、N382、G383、N511、G512、N715、またはG716における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み、残基の番号付けはAAV2のVP1に基づき;アミノ酸置換が、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、脱アミド化を変更する、キットを提供する。一部の態様では、本発明は、AAV粒子またはAAV粒子を含む組成物を含む製造品であって、AAV粒子は、VP1またはVP3のアミノ酸残基A35、N57、G58、N382、G383、N511、G512、N715、またはG716における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含み;アミノ酸置換が、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、脱アミド化を変更する、製造品を提供する。一部の態様では、本発明は、AAVカプシドタンパク質であって、親AAVカプシドタンパク質のアミノ酸置換を含み;アミノ酸置換が、親AAVカプシドタンパク質と比較して、カプシドの脱アミド化を変更する、AAVカプシドタンパク質を提供する。
【0043】
一部の態様では、本発明は、rAAV粒子の安定性を改善する方法であって、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を置換する工程を含み、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が、A35、N57、G58、N382、G383、N511、G512、N715、またはG716であり、残基の番号付けはAAV2のVP1に基づき;アミノ酸置換が、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、脱アミド化を変更する、方法を提供する。一部の態様では、本発明は、細胞内のrAAV粒子のアセンブリを改善する方法であって、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を置換する工程を含み、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が、A35、N57、G58、N382、G383、N511、G512、N715、またはG716であり、残基の番号付けはAAV2のVP1に基づき;アミノ酸置換が、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、脱アミド化を変更する、方法を提供する。一部の態様では、本発明は、細胞内のrAAV粒子の形質導入を改善する方法であって、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を置換する工程を含み、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が、A35、N57、G58、N382、G383、N511、G512、N715、またはG716であり、残基の番号付けはAAV2のVP1に基づき;アミノ酸置換が、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、脱アミド化を変更する、方法を提供する。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP1のA35、VP1のN57、
VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、またはVP3のG716にあり;アミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、脱アミド化を変更する。一部の実施形態では、VP1の35位における親Ala残基は、Asnで置換されている。一部の実施形態では、VP1の58位における親Gly残基は、Aspで置換されている。一部の実施形態では、rAAV粒子は、AAV1粒子またはAAV2粒子である。
【0044】
一部の実施形態では、本発明は、rAAV粒子の安定性、アセンブリおよび/または形質導入効率を改善する方法であって、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を置換する工程を含み、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が、A35、N57、G58、N382、G383、N511、G512、N715、またはG716であり、残基の番号付けはAAV2のVP1に基づき;アミノ酸置換が、上記の親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、脱アミド化を変更し、AAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV
LK03、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV DJ8カプシド、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、またはrAAV2/HBoV1血清型カプシドを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、AAVカプシドは、チロシン突然変異またはヘパリン結合突然変異をさらに含む。一部の実施形態では、rAAV粒子は、rAAVベクターを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターは、1つまたはそれ以上のAAV ITRを含む。一部の実施形態では、rAAVベクターは、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAVrh8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAVrh10 ITR、AAV11 ITR、またはAAV12 ITRを含む。一部の実施形態では、AAVカプシドおよびAAV ITRは、同じ血清型に由来する。一部の実施形態では、AAVカプシドおよびAAV ITRは、異なる血清型に由来する。一部の実施形態では、AAV粒子は、1つまたはそれ以上のAAV ITRに隣接した異種導入遺伝子をコードするAAVベクターを含む。
【0045】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、rAAVベクターは自己相補的なベクターである。一部の実施形態では、rAAVベクターは、導入遺伝子をコードする第1の核酸配列および導入遺伝子の相補体をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、そのほとんどまたはすべての長さに沿って、第2の核酸配列と鎖内塩基対を形成することができる。一部の実施形態では、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、突然変異したAAV ITRにより連結され、突然変異したAAV ITRは、D領域の欠失を含み、末端解離配列の突然変異を含む。
【0046】
上記態様および実施形態の一部の実施形態では、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸ならびにAAV repおよびcap機能をコードする核酸を宿主細胞にトランスフェクトし、AAVヘルパー機能をコードする核酸を提供することにより産生される。一部の実施形態では、AAVヘルパー機能は、AAVヘルパー機能をコードする核酸を宿主細胞にトランスフェクトすることにより提供される。一部の実施形態では、AAVヘルバー機能は、AAVヘルパー機能を提供するAAVヘルパーウイルスに宿主細胞を感染させることにより提供される。一部の実施形態では、AAVヘルパーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである。一部の実施形態では、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸ならびにAAV repおよびcap機能をコードする核酸を含み、AAVヘルパー機能をコードする核酸を提供するAAV産生細胞により産生される。一部の実施形態では、AAV産生細胞は、AAVヘルパ
ー機能をコードする核酸を含む。一部の実施形態では、AAVヘルパー機能は、AAVヘルパー機能を提供するAAVヘルパーウイルスにAAV産生細胞を感染させることにより提供される。一部の実施形態では、AAVヘルパーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである。一部の実施形態では、AAV cap機能は、VP1および/またはVP3のアミノ酸置換を提供し、アミノ酸置換は、親AAV粒子と比較して、カプシドの脱アミド化を調節する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1-1】
図1A~Dは、AAV2のVPのLC/MSの全イオンクロマトグラムを示す図である。
図1A:1.7%/分のグラジエントを有する、長さ10cmのBEHC 4カラム、
図1B:0.5%/分のグラジエントを有する、長さ10cmのBEH C4カラム、;
図1C:0.5%/分のグラジエントを有する、長さ15cmのBEH C4カラム、
図1D:0.5%/分のグラジエントを有する、長さ15cmのBEH C8カラム。
【
図3】AAV2 VP1の配列(配列番号3)の適用範囲を示す図である:緑色、トリプシンペプチド、青色、Lys-Cペプチド、ピンク、Asp-Nペプチド。
【
図4A】AAV2 VPのN末端ペプチドのMS/MSスペクトルを示す図である。
図4A:VP1のN末端のトリプシンペプチドA(Ac)ADGYLPDWLEDTLSEGIR(配列番号4)。
【
図4B】AAV2 VPのN末端ペプチドのMS/MSスペクトルを示す図である。
図4B;VP2のN末端のAsp-NペプチドAPGKKRPVEHSPVEP(配列番号15)。
【
図4C】AAV2 VPのN末端ペプチドのMS/MSスペクトルを示す図である。
図4C:VP-3のN末端のAsp-Nに由来するペプチドA(Ac)TGSGAPM(配列番号5)。
【
図5A】13種のAAV血清型の配列アラインメントを示す図である。白地に黒字:非類似;青地に青字:保存的;緑地に黒字:同様なブロック;黄地に赤字:同一の;白地に緑字:わずかに同様。AAVRh10(配列番号17);AAV10(配列番号18);AAV8(配列番号19);AAV7(配列番号20);AAV1(配列番号21);AAV6(配列番号22);AAV2(配列番号23);AAV3(配列番号24);AAV11(配列番号25);AAV12(配列番号26);AAV4(配列番号27);AAV5(配列番号28);AAV9(配列番号29);コンセンサス(配列番号30)。
【
図5B】13種のAAV血清型の配列アラインメントを示す図である。白地に黒字:非類似;青地に青字:保存的;緑地に黒字:同様なブロック;黄地に赤字:同一の;白地に緑字:わずかに同様。AAVRh10(配列番号17);AAV10(配列番号18);AAV8(配列番号19);AAV7(配列番号20);AAV1(配列番号21);AAV6(配列番号22);AAV2(配列番号23);AAV3(配列番号24);AAV11(配列番号25);AAV12(配列番号26);AAV4(配列番号27);AAV5(配列番号28);AAV9(配列番号29);コンセンサス(配列番号30)。
【
図5C】13種のAAV血清型の配列アラインメントを示す図である。白地に黒字:非類似;青地に青字:保存的;緑地に黒字:同様なブロック;黄地に赤字:同一の;白地に緑字:わずかに同様。AAVRh10(配列番号17);AAV10(配列番号18);AAV8(配列番号19);AAV7(配列番号20);AAV1(配列番号21);AAV6(配列番号22);AAV2(配列番号23);AAV3(配列番号24);AAV11(配列番号25);AAV12(配列番号26);AAV4(配列番号27);AAV5(配列番号28);AAV9(配列番号29);コンセンサス(配列番号30)。
【
図6A】TTxおよびPCL方法により産生されたAAV1およびAAV2粒子における脱アミド化のパーセンテージを比較するLC/MS/MS分析の結果を示す図である。T9ペプチドYLGPF
NGLDK(配列番号9)を使用して、AAV1およびAAV2の両方における潜在的な脱アミド化部位N57をモニターした。
【
図6B】TTxおよびPCL方法により産生されたAAV1およびAAV2粒子における脱アミド化のパーセンテージを比較するLC/MS/MS分析の結果を示す図である。T9ペプチドYLGPF
NGLDK(配列番号9)を使用して、AAV1およびAAV2の両方における潜在的な脱アミド化部位N57をモニターした。
【
図7A】TTxおよびPCL方法により産生されたAAV1およびAAV2粒子における脱アミド化のパーセンテージを比較するLC/MS/MS分析の結果を示す図である。T49ペプチドYNL
NGR(配列番号11)およびYHL
NGR(配列番号12)を使用して、AAV1およびAAV2のそれぞれにおける潜在的な脱アミド化部位N511をモニターした。
【
図7B】TTxおよびPCL方法により産生されたAAV1およびAAV2粒子における脱アミド化のパーセンテージを比較するLC/MS/MS分析の結果を示す図である。T49ペプチドYNL
NGR(配列番号11)およびYHL
NGR(配列番号12)を使用して、AAV1およびAAV2のそれぞれにおける潜在的な脱アミド化部位N511をモニターした。
【
図8A】TTxおよびPCL方法により産生されたAAV1およびAAV2粒子における脱アミド化のパーセンテージを比較するLC/MS/MS分析の結果を示す図である。T67ペプチドSANVDFTVDN
NGLYTEPR(配列番号13)およびSVNVDFTVDT
NGVYSEPR(配列番号14)を使用して、AAV1およびAAV2のそれぞれにおける潜在的な脱アミド化部位N715をモニターした。
【
図8B】TTxおよびPCL方法により産生されたAAV1およびAAV2粒子における脱アミド化のパーセンテージを比較するLC/MS/MS分析の結果を示す図である。T67ペプチドSANVDFTVDN
NGLYTEPR(配列番号13)およびSVNVDFTVDT
NGVYSEPR(配列番号14)を使用して、AAV1およびAAV2のそれぞれにおける潜在的な脱アミド化部位N715をモニターした。
【
図9】AAV5の脱アセチル化された突然変異体の産生およびVP1:VP2:VP3比のSYPROタンパク質ゲル分析の結果を示す図である。
【
図10】AAV5の脱アセチル化された変異体の形質導入の有効度を試験するためのインビトロにおける形質導入アッセイを例示する図である。
【
図11】指示されたAAV5の脱アセチル化された変異体または改変されていない親AAV5による細胞侵入の有効度を、ベクターゲノムのコピー/μgタンパク質により測定して示す図である。3種の細胞系統:293、HeLa、およびHuH7を使用した。
【
図12】指示されたAAV5の脱アセチル化された変異体を形質導入された細胞によるeGFP発現(ELISAにより測定された)を、改変されていない親AAV5形質導入と比較して示す図である。3種の細胞系統:293、HeLa、およびHuH7を使用した。
【
図13】13種のAAVの血清型の配列アラインメントを、AAV2中の保存されたN57G58脱アミド化部位およびA35残基を強調して示す図である。AAVRh10(配列番号31);AAV10(配列番号31);AAV8(配列番号32);AAV7(配列番号33);AAV1(配列番号31);AAV6(配列番号31);AAV2(配列番号34);AAV3(配列番号35);AAV11(配列番号31);AAV12(配列番号36);AAV4(配列番号37);AAV5(配列番号38);AAV9(配列番号39);コンセンサス(配列番号40)。
【
図14】PCLまたはTTx方法により産生されたAAV1またはAAV2粒子からのVP1、VP2、およびVP3カプシドタンパク質のタンパク質ゲルを示す図である。
*は先端を切られたVP1(tVP1)タンパク質の印である。
【
図15】指示されたAAV2の突然変異体の脱アミド化のLC/MS分析結果を、対照AAV2カプシドと比較して示す図である。
【
図16】AAV2脱アミド化突然変異体の産生およびVP1:VP2:VP3比のSYPROタンパク質ゲル分析の結果を示す図である。
【
図17】AAV2脱アミド化変異体の形質導入の有効度を試験するためのインビトロにおける形質導入アッセイを例示する図である。
【
図18】指示されたAAV2脱アミド化変異体または改変されていない親AAV2による細胞侵入の有効度を、ベクターゲノムコピー/μgタンパク質で測定して示す図である。3種の細胞系統:293、HeLa、およびHuH7を使用した。
【
図19】指示されたAAV2脱アミド化変異体を形質導入された細胞によるeGFP発現(ELISAにより測定された)を、改変されていない親AAV2を形質導入と比較して示す図である。3種の細胞系統:293、HeLa、およびHuH7を使用した。
【発明を実施するための形態】
【0048】
一部の態様では、本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子の血清型を決定する方法であって:a)AAV粒子を変性させる工程と、b)変性したAAV粒子を液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)に供する工程と、c)AAV粒子のVP1、VP2およびVP3の質量を決定する工程とを含み;VP1、VP2およびVP3の質量の特定の組合せが、AAV血清型の指標である、方法を提供する。
【0049】
他の態様では、本発明は、AAV粒子の不均一性を決定する方法であって:a)AAV粒子を変性させる工程と、b)変性したAAV粒子を液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)に供する工程と、c)AAV粒子のVP1、VP2およびVP3の質量を決定する工程と、d)工程c)の質量を、AAV血清型のVP1、VP2およびVP3の理論的質量と比較する工程とを含み;VP1、VP2またはVP3の質量のうちの1つまたはそれ以上の偏差が、AAVカプシドの不均一性の指標である、方法を提供する。
【0050】
他の態様では、本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子の血清型を決定する方法であって、a)AAV粒子を変性させる工程と、b)変性したAAV粒子を還元および/またはアルキル化に供する工程と、c)変性したAAV粒子を消化に供して、AAV粒子のVP1、VP2および/またはVP3の断片を生成する工程と、d)VP1、VP2および/またはVP3の断片を液体クロマトグラフィー/質量分析-質量分析(LC/MS/MS)に供する工程と、e)AAV粒子のVP1、VP2およびVP3の断片の質量を決定する工程とを含み;VP1、VP2およびVP3の断片の質量の特定の組合せが、AAV血清型の指標である、方法を提供する。
【0051】
他の態様では、本発明は、AAV粒子の血清型の不均一性を決定する方法であって:a)AAV粒子を変性させる工程と、b)変性したAAV粒子を還元および/またはアルキル化に供する工程と、c)変性したAAV粒子を消化に供して、AAV粒子のVP1、VP2および/またはVP3の断片を生成する工程と、d)VP1、VP2および/またはVP3の断片を液体クロマトグラフィー/質量分析-質量分析(LC/MS/MS)に供する工程と、e)AAV粒子のVP1、VP2およびVP3の断片の質量を決定する工程と、f)工程e)の質量を、AAV血清型のVP1、VP2およびVP3の断片の理論的質量と比較する工程とを含み;VP1、VP2またはVP3の質量のうちの1つまたはそれ以上の偏差が、AAVカプシドの不均一性の指標である、方法を提供する。
【0052】
一部の態様では、本発明は、組換えAAV(rAAV)粒子であって、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を含み;VP1および/またはVP
3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較して、N末端アセチル化を変更する、組換えAAV粒子を提供する。
【0053】
一部の態様では、本発明は、細胞内のrAAV粒子のアセンブリを改善する方法であって、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2を置換する工程を含み;2位において置換されたアミノ酸が、親VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2よりも高い頻度でN-アセチル化される、方法を提供する。一部の態様では、本発明は、細胞内のrAAV粒子の形質導入を改善する方法であって、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2を置換する工程を含み、2位において置換されたアミノ酸が、親VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2よりも高い頻度でN-アセチル化される、方法を提供する。
【0054】
I. 一般的技術
本明細書において記載されまたは参照される技術および手順は、一般に、当業者によりよく理解され、例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」(Sambrookら、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, N.Y., 2012);「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M. Ausubelら編、2003);Methods in Enzymologyシリーズ(Academic Press, Inc.);「PCR 2: A Practical Approach」(M.J. MacPherson、B.D. HamesおよびG.R. Taylor編、1995);「Antibodies, A Laboratory Manual」(HarlowおよびLane編、1988);「Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications」(R.I. Freshney,第6版、J.
Wiley and Sons、2010);「Oligonucleotide Synthesis」(M.J. Gait編、1984);「Methods in Molecular Biology」、Humana Press;「Cell Biology: A Laboratory Notebook」(J.E. Cellis編、Academic Press、1998);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P. MatherおよびP.E. Roberts、Plenum Press、1998);「Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures」(A. Doyle、J.B. GriffithsおよびD.G. Newell編、J. Wiley and Sons、1993~8頁);「Handbook of Experimental Immunology」(D.M. WeirおよびC.C. Blackwell編、1996);「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(J.M. MillerおよびM.P. Calos編、1987);「PCR:The Polymerase Chain Reaction」(Mullisら編、1994);「Current Protocols
in Immunology」(J.E. Coliganら編、1991);「Short Protocols in Molecular Biology」(Ausubelら編、J. Wiley and Sons、2002);「Immunobiology」(C.A. Janewayら、2004);「Antibodies」(P. Finch、1997);「Antibodies: A Practical Approach」(D. Catty編、IRL Press、1988~1989頁);「Monoclonal Antibodies: A Practical Approach」(P. ShepherdおよびC. Dean編、Oxford University Press、2000);「Using Antibodies: A
Laboratory Manual」(E. HarlowおよびD. Lane、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);「The Antibodies」(M. ZanettiおよびJ.D. Capra編、Harwood Academic Publishers、1995);および「Cancer: Principles and Practice of Oncology」(V.T. DeVitaら編、J.B. Lippincott Company、2011)に記載の広く利用される方法論のような慣用の方法論を使用して、一般的に採用される。
【0055】
II. 定義
本明細書中で使用される場合、「ベクター」は、in vitroまたはin vivoのいずれかで宿主細胞中へ送達されるべき核酸を含む、組換えプラスミドまたはウイルスを指す。
【0056】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドいずれかの、任意の長さのヌクレオチドの多量体形態を指す。よって、この用語は、それに限定されることなく、一本鎖、二本鎖もしくは多重鎖DNAまたはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリンおよびピリミジン塩基、または他の自然の、化学的もしくは生化学的に修飾された、非自然の、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーを含む。核酸の主鎖は、(RNAまたはDNAにおいて典型的に見出されるとおり)糖およびリン酸基、または修飾されたもしくは置換された糖もしくはリン酸基を含む。あるいは、核酸の主鎖は、ホスホラミデートのような合成サブユニットのポリマーを含むことができ、よって、オリゴデオキシヌクレオシドホスホラミデート(P-NH2)またはホスホラミデート-ホスホジエステル混成オリゴマーであることができる。加えて、二本鎖核酸は、相補鎖を合成し、適切な条件下で鎖をアニーリングすることによるかまたは適切なプライマーとともにDNAポリメラーゼを使用して、de novoで相補鎖を合成することによる、化学合成の一本鎖ポリヌクレオチド産物から得られる。
【0057】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために互換的に使用され、最小の長さに限定されない。アミノ酸残基のそのようなポリマーは、自然のまたは非自然のアミノ酸残基を含み、それに限定されることなく、ペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸残基の二量体、三量体および多量体を含む。完全長タンパク質およびその断片の両方が、この定義に包含される。この用語は、ポリペプチドの翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、シアル化、アセチル化、リン酸化なども含む。さらに、本発明の目的のためには、「ポリペプチド」は、所望の活性をタンパク質が維持する限り、天然の配列への(一般には事実上保存的な)欠失、付加および置換のような修飾を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的突然変異生成による計画的なものであるか、またはタンパク質を産生する宿主の突然変異によるかまたはPCR増幅によるエラーのような偶発的なものである。
【0058】
「組換えウイルスベクター」は、1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、ウイルス起源でない核酸配列)を含む、組換えポリヌクレオチドベクターを指す。組換えAAVベクターの場合、組換え核酸は、少なくとも1つ、例えば、2つの末端逆位反復配列(ITR)に隣接している。
【0059】
「組換えAAVベクター(rAAVベクター)」は、少なくとも1つ、例えば、2つのAAV末端逆位反復配列(ITR)に隣接した1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、AAV起源のものでない核酸配列)を含む、ポリヌクレオチドベクターを指す。そのようなrAAVベクターは、好適なヘルパーウイルス(または好適なヘルパー機能を発現し
ているもの)に感染し、AAV repおよびcap遺伝子産物(すなわち、AAV RepおよびCapタンパク質)を発現している宿主細胞中に存在する場合、複製され、感染性ウイルス粒子中にパッケージングされる。rAAVベクターがより大きなポリヌクレオチド中(例えば、染色体中またはクローニングもしくはトランスフェクションのために使用されるプラスミドのような別のベクター中)に組み込まれる場合、rAAVベクターは、AAVパッケージング機能および好適なヘルパー機能の存在下での複製およびカプシド形成により「レスキュー」されることのできる「プロベクター」と呼ばれる。rAAVベクターは、それに限定されないが、脂質と複合化され、リポソーム内に密封され、実施形態では、ウイルス粒子、特に、AAV粒子中でカプシド形成されたプラスミド、線状の人工染色体を含む、多数の形態のいずれかであることができる。rAAVベクターは、AAVウイルスカプシド中にパッケージングされて、「組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV粒子)」を生成することができる。
【0060】
「rAAVウイルス」または「rAAVウイルス粒子」は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質およびカプシド形成されたrAAVベクターゲノムからなるウイルス粒子を指す。
【0061】
N-アセチル化および/または脱アミド化を比較することの関係で本明細書中で使用される場合、「親AAV粒子」および「親AAVカプシドタンパク質」は、その中へアミノ酸修飾が導入されて、N-アセチル化および/または脱アミド化を調節するAAV粒子またはカプシドタンパク質(例えば、主題の発明のAAV粒子/カプシドと同じまたはそれに類似しているが、本明細書に記載のN-アセチル化および/または脱アミド化を調節/変更する突然変異を含まない、AAV粒子/カプシドタンパク質)を指す。一部の実施形態では、親AAV粒子は、組換えAAVゲノムを含む組換えAAV粒子である。一部の実施形態では、親AAVカプシド粒子または親AAVカプシドタンパク質は、AAV粒子の他の態様に影響を与えるアミノ酸置換を含む。例えば、親AAV粒子は、AAV2のヘパリン硫酸プロテオグリカンへの結合に影響を与えるような、AAVのその受容体への結合に影響を与えるアミノ酸置換を含むことができる(例えば、AAV2 HBKO粒子)。AAV2 HBKO粒子は、N-アセチル化および/または脱アミド化を調節するアミノ酸置換を導入するために、突然変異させることができる。次いで、そのような突然変異したAAV粒子は、本明細書に記載の本発明の態様において、親AAV2 HBKOに対して比較される。親AAVカプシドタンパク質は、親VP1カプシドタンパク質、親VP2カプシドタンパク質、またはVP3カプシドタンパク質を含む。
【0062】
本明細書中で使用される場合、親分子に関して、用語「調節する」または「変更する」は、親分子の特徴を変化させることを意味する。例えば、N-アセチル化の変更されたAAV粒子は、親AAV粒子と比較して、増加したまたは減少したN-アセチル化を示し、脱アミド化の変更されたAAV粒子は、親AAV粒子と比較して、増加したまたは減少した脱アミド化を示す。
【0063】
「異種性」は、それが比較される実体またはそれが導入されるかもしくは組み込まれる実体のその他の部分とは遺伝子型が異なる実体に由来することを意味する。例えば、遺伝子工学技術により異なる細胞型に導入された核酸は、異種核酸である(そして、発現されるときには、異種ポリペプチドをコードする)。同様に、ウイルスベクターに組み込まれる細胞の配列(例えば、遺伝子またはその一部)は、ベクターに対して異種ヌクレオチド配列である。
【0064】
用語「導入遺伝子」は、細胞に導入され、適切な条件下でRNAに転写され、場合により、翻訳されおよび/または発現されることができる核酸を指す。態様では、それが導入された細胞に所望の性質を付与するか、または所望の治療的もしくは診断的アウトカムに
導く。別の態様では、これは、siRNAのようなRNA干渉を仲介する分子に転写される。
【0065】
ウイルス力価に関して使用される場合、用語「ゲノム粒子(gp)」、「ゲノム等価物」または「ゲノムコピー」は、感染性または機能性に関係なく、組換えAAV DNAゲノムを含有するビリオンの数を指す。具体的なベクター調製物中のゲノム粒子の数は、本明細書中の実施例、または例えば、Clarkら、(1999) Hum. Gene Ther.、10:1031~1039頁;Veldwijkら、(2002)Mol.
Ther.、6:272~278頁に記載されたような手順により測定される。
【0066】
ウイルス力価に関して使用される場合、用語「感染単位(iu)」、「感染性粒子」または「複製単位」は、例えば、McLaughlinら、(1988)J. Virol.、62:1963~1973頁に記載の複製中心アッセイとしても知られる感染中心アッセイにより測定した、感染性かつ複製コンピテントな組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0067】
ウイルス力価に関して使用される場合、用語「形質導入単位(transducing
unit)(tu)」は、本明細書中の実施例、または例えば、Xiaoら、(1997)Exp. Neurobiol.、144:113~124頁;もしくはFisherら、(1996)J. Virol.、70:520~532頁(LFUアッセイ)に記載されたような機能アッセイにおいて測定された機能的導入遺伝子産物の産生をもたらす感染性の組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0068】
「末端逆位反復」または「ITR」配列は、当分野でよく理解されており、反対方向のウイルスゲノムの末端に見出される比較的短い配列を指す。
【0069】
当分野でよく理解されている用語「AAV末端逆位反復(ITR)」配列は、天然の一本鎖AAVゲノムの両末端に存在するおよそ145ヌクレオチドの配列である。ITRの最も外側の125ヌクレオチドは、2つの代替的な方向付けのいずれかで存在し、異なるAAVゲノムの間および単一のAAVゲノムの2つの末端の間の不均一性をもたらす。最も外側の125ヌクレオチドは、(A、A’、B、B’、C、C’およびD領域と名付けられた)自己相補的なより短い数個の領域も含有し、ITRのこの部分内に鎖内塩基対形成が起こることを可能とする。
【0070】
「末端解離配列」または「trs」は、ウイルスDNAの複製の間にAAV repタンパク質により切断されるAAV ITRのD領域中の配列である。突然変異体末端解離配列は、AAV repタンパク質による切断に対して不応性である。「AAVヘルパー機能」は、宿主細胞によりAAVが複製され、パッケージングされることを可能とする機能を指す。AAVヘルパー機能は、AAVの複製およびパッケージングを助けるヘルパーウイルスまたはヘルパーウイルス遺伝子を含むがそれに限定されない、多くの形態のうちのいずれにおいても提供される。他のAAVヘルパー機能は、遺伝毒性物質のように当分野で公知である。
【0071】
「AAVヘルパー機能」は、宿主細胞によりAAVが複製され、パッケージングされることを可能とする機能を指す。AAVヘルパー機能は、AAVの複製およびパッケージングを助けるヘルパーウイルスまたはヘルパーウイルス遺伝子を含むがそれに限定されない、多くの形態のうちのいずれにおいても提供される。他のAAVヘルパー機能は、遺伝毒性物質のように当分野で公知である。
【0072】
AAVのための「ヘルパーウイルス」は、(欠損パルボウイルスである)AAVが宿主
細胞により複製され、パッケージングされることを可能とするウイルスを指す。アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアのようなポックスウイルス、およびバキュロウイルスを含むそのようなヘルパーウイルスが多数同定されている。アデノウイルスは、多くの異なる亜群を包含するが、C亜群の5型アデノウイルス(Ad5)が最も一般に使用されている。ヒト、非ヒト哺乳動物および鳥類起源の多数のアデノウイルスが公知であり、ATCCのような寄託機関からも入手可能である。ATCCのような寄託機関からも入手可能なヘルペス科のウイルスは、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)および偽性狂犬病ウイルス(PRV)を含む。寄託機関から入手可能なバキュロウイルスは、オートグラファ・カリフォルニカ核多角体病ウイルスを含む。
【0073】
参照ポリペプチドまたは核酸配列に対する「配列同一性パーセント(%)」は、配列をアラインさせ、必要に応じてギャップを導入して最大の配列同一性パーセントを達成した後の、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮しない、参照ポリペプチドまたは核酸配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドと同一の、候補配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドのパーセンテージとして定義される。アミノ酸または核酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、当業者の能力の範囲内の様々な方法、例えば、公的に利用可能なコンピュータソフトウェアプログラム、例えば、「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubelら編、1987)、補遺30、セクション7.7.18、表7.7.1)に記載され、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを含むものを使用して達成可能である。可能性のあるアラインメントプログラムは、ALIGN Plus(Scientific and Educational Software、Pennsylvania)である。当業者は、比較されている配列の完全長にわたり最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。本明細書の目的のために、所与のアミノ酸配列Aの所与のアミノ酸配列Bへの、それとのまたはそれに対するアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、それとのまたはそれに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するかまたは構成する所与のアミノ酸配列Aとも表現される)は、以下のように計算される:分数X/Yを100倍し、ここで、Xは、プログラムのAおよびBのアラインメントにおける配列アラインメントプログラムにより同一マッチとしてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、ここで、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%とは等しくないことは理解されるだろう。本明細書の目的のために、所与の核酸配列Cの所与の核酸配列Dへの、それとのまたはそれに対する核酸配列同一性%(あるいは、所与の核酸配列Dへの、それとのまたはそれに対するある特定の核酸配列同一性%を有するかまたは構成する所与の核酸配列Cとも表現される)は、以下のように計算される:分数W/Zを100倍し、ここで、Wは、プログラムのCおよびDのアラインメントにおける配列アラインメントプログラムにより同一マッチとしてスコア化されたヌクレオチドの数であり、ここで、Zは、D中のヌクレオチドの総数である。核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さに等しくない場合、Dに対するCの核酸配列同一性%は、Cに対するDの核酸配列同一性%とは等しくないことは理解されるだろう。
【0074】
「単離された」分子(例えば、核酸もしくはタンパク質)または細胞は、それが同定され、その自然の環境の構成要素から分離および/または回収されたことを意味する。
【0075】
「質量分析」は、気相イオンの質量対電荷比および存在量を測定することにより、化合物(例えば、ポリペプチド)の量および/または種類を同定する分析化学的技術を指す。用語「質量分析」は、本明細書中で互換的に使用される。
【0076】
AAVカプシドに関して使用される場合、「不均一性」は、VP1、VP2および/またはVP3ポリペプチドもしくはその断片の参照質量から逸脱することが観察された1種またはそれ以上のカプシドポリペプチドを特徴とする、AAVカプシドを指す。参照質量は、制限なく、例えば、公知のAAV血清型のVP1、VP2および/またはVP3ポリペプチドの理論的な、予測される、または期待される質量を含む。例えば、AAVカプシドは、以下の性質(制限なく):混合血清型、変異体カプシド、カプシドアミノ酸置換、切断型カプシド、または改変カプシドのうちの1つまたはそれ以上を表示する場合に、不均一性を呈すると言われる。
【0077】
本明細書中の「約」ある値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーター自体に向けた実施形態を含む(そして記述する)。例えば、「約X」に言及する記述は、「X」の記述を含む。
【0078】
本明細書中で使用される場合、物品の単数形「a」、「an」および「the」は、別段の指示のない限り、複数の指示物を含む。
【0079】
本明細書に記載の本発明の態様および実施形態は、態様および実施形態「を含んでいる」、「からなる」および/または「から本質的になる」ことを含むと理解される。
【0080】
III. 方法
本開示のある態様は、ウイルス粒子の血清型を決定する方法に関する。本開示の他の態様は、ウイルス粒子の不均一性を決定する方法に関する。下に記載されるように、各AAV血清型のVP1、VP2およびVP3の正確な質量は固有であり、AAVカプシド血清型を同定または区別するために使用することができる。これらの方法は、変性後の異なる型のAAVの直接LC/MSを、完全なタンパク質レベルにおける正確な質量測定で、タンパク質配列および翻訳後修飾をモニターするために使用することができるという本明細書に記載されている発見に一部は基づく。さらに、VP1およびVP3のN末端のアセチル化も、異なるAAV血清型で同定および/またはモニターすることができる。これらのAAV結果および本明細書で提供される指針に基づいて、そのような方法は、プロファイルの種々のウイルスの、例えば、本開示の科、亜科、および属のウイルスの特徴を分析するために容易に適用することができると考えられる。本開示の方法は、例えば、VPの発現、翻訳後修飾、および先端切断をモニターするため、ならびにVLP産生時における生成物の一貫性を確実にするため、ならびに部位特異的突然変異生成もしくはカプシドタンパク質の操作の適用のための構造の特徴付けを確認するため、ならびに/またはウイルス粒子または調製の不均一性をモニターもしくは検出するためのVPのプロファイルにおける使用を見出すことができる。
【0081】
一部の実施形態では、該方法は、ウイルス粒子を変性させることを含む。一部の実施形態では、AAV粒子などのウイルス粒子は、洗剤、熱、高塩、または低または高pHを用いる緩衝を使用して変性することができる。ある実施形態では、AAV粒子は、酢酸またはグアニジン塩酸塩を使用して変性させることができる。当業者は、タンパク質変性を促進および/またはモニターするために役立つ種々の方法が当技術分野で利用可能であることを認識しており、液体クロマトグラフィー/質量分析と適合性の変性方法を適当に選択することができる。例えば、熱変性が使用されるならば、タンパク質の沈殿および逆相カラムの詰まりを避けるために注意を払うこともできる。同様に、高塩変性では、LC/MSまたはLC/MS/MSの前に、脱塩工程と結合する(couple)こともできる。他の実施形態では、高pH変性、低pH変性、または有機溶媒を使用する変性が使用される。
【0082】
一部の実施形態では、方法は、本開示の変性したウイルス粒子を、液体クロマトグラフ
ィー/質量分析(LC/MS)に供することを含む。当技術分野で公知であるように、LC/MSは、イオンを物理的に分離するために液体クロマトグラフィーを、およびイオンからの質量スペクトルのデータを発生させるために質量分析を利用する。そのような質量スペクトルのデータは、例えば、分子量または構造、質量による粒子の同定、量、純度等々を決定するために使用することができる。これらのデータは、経時的なシグナル強度(例えば、存在量)(例えば、保持時間)、または質量対電荷の比に関する相対存在量などの検出されたイオンの性質を表すこともできる。
【0083】
一部の実施形態では、液体クロマトグラフィー(例えば、本明細書に記載されているようにLC/MSで使用される)は、超高速液体クロマトグラフィー(本明細書では、UPLC;用語「超高速液体クロマトグラフィー」またはUHPLCが互換的に使用される)。UPLCは、減小した粒子サイズ(例えば、2μm未満)を有するカラムおよび増大した流速に依存してクロマトグラフィーの分解能、有効度、ピーク容量、および感度が改善されたLC技法として当技術分野で公知である(例えば、Plumb、R.ら(2004) Rapid Commun.Mass Spectrom.18:2331~2337頁を参照されたい)。一部の実施形態では、UPLCは、液体クロマトグラフィーにおける粒子サイズが2μm未満のカラムの使用を指す。一部の実施形態では、UPLCは、液体クロマトグラフィーにおける溶媒の高い線速度(例えば、6000psi以上で作動するときに観察される)の使用を指す。典型的なUPLC装置は市販されている(例えば、Waters;Milford、マサチューセッツ州からのACQUITY UPLC(登録商標))。
【0084】
一部の実施形態では、質量分析(例えば、本明細書に記載されているようにLC/MSで使用される)は、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)を指すことがある。ESI-MSは、質量分析を使用して溶液から誘導されるイオンを分析するために電気エネルギーを使用する技法として、当技術分野で公知である(例えば、Yamashita、M.and Fenn、J.B。(1984) J.Phys.Chem.88:4451~4459頁を参照されたい)。イオン種(または溶液もしくは気相でイオン化される中性種)は、荷電液滴のエアロゾルで分散されることにより溶液から気相に移動し、続いて溶媒が蒸発し、荷電液滴のサイズが縮小して、溶液が細いキャピラリーを通過するときに、アース(例えば、周囲チャンバーの壁)に対する電圧で、試料のイオンが荷電液滴から射出される。一部の実施形態では、キャピラリー電圧は、約2kVから約10kV、または約2.5kVから約6.0kVである。ある実施形態では、液体クロマトグラフィー(例えば、本明細書に記載されているようにLC/MSで使用される)は、約3.5kVのキャピラリー電圧を使用する。一部の実施形態では、キャピラリー電圧は、約1kVから約10kVの範囲である。他の実施形態では、質量分析(例えば、本明細書に記載されているようにLC/MSで使用される)は、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)を指すこともある。
【0085】
一部の実施形態では、質量分析(例えば、本明細書に記載されているようにLC/MSで使用される)は、イオンが分析計に入る前に通るサンプリングコーンおよび/またはスキマーを使用する。一部の実施形態では、例えば、上で記載されたようにキャピラリーに電圧をかけたときに、サンプリングコーンは、キャピラリー電圧より低い電圧に保たれる。ある実施形態では、液体クロマトグラフィー(例えば、本明細書に記載されているようにLC/MSで使用される)は、約45Vのサンプリングコーン電圧を使用する。一部の実施形態にでは、サンプリングコーン電圧は、約0Vから約200Vの範囲である。
【0086】
一部の実施形態では、質量分析(例えば、本明細書に記載されているようにLC/MSで使用される)は、支援付き校正を使用する。校正は、質量分析に関して使用される場合に、質量の検出(例えば、m/z測定)に関して装置を校正する目的のための1種または
それ以上の公知の質量を有する化合物(例えば標準)の導入を含む。一部の実施形態では、支援付き校正とは、公知の標準(例えば、校正物質)のピークおよび/または位置を、特定の質量対電荷(m/z)比と関係づけるソフトウェアの使用を指す。一旦校正されたら、次に、使用者は、1種またはそれ以上の未知の化合物、または未知の濃度で存在する化合物を含む試料について、例えば、以前のまたは公知の実験条件と比較して、ある程度の正確度もしくは誤差および/または所望のレベルの再現性内で、質量分析を実行することができる。ヨウ化ナトリウム、ヨウ化ナトリウムセシウム、ポリエチレングリコール、およびペルフルオロトリブチルアミンを含むが、これらに限定されない種々の校正物質が、当技術分野で公知である。ある実施形態では、ヨウ化ナトリウムが校正物質として使用される。一部の実施形態では、校正物質は、LC/MS操作時に質量を固定するグル-1-フィブリノペプチドBおよびロイシンエンケファリンペプチドである。
【0087】
一部の実施形態では、方法は、本開示の変性したウイルス粒子、または本開示の変性したウイルス粒子の消化された断片を、液体クロマトグラフィー/質量分析-質量分析(LC/MS/MS)に供することを含む。当技術分野で公知であるように、LC/MS/MS(本明細書では、用語「液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析」が互換的に使用されることもある)は、イオンを物理的に分離するために液体クロマトグラフィーを、およびイオンから質量スペクトルのデータを発生させるために質量分析を利用し、ここで、質量分析は、典型的には、断片化工程により分離された、複数の段階の質量(例えば、m/z)分離を使用する。例えば、m/zの範囲内の対象のイオンが、MSの第1ラウンドで分離されて断片化され、次に、MSの第2のラウンドで個々のm/zに基づいてさらに分離される。イオンの断片化は、衝突誘発解離(CID)、高エネルギー衝突解離(HCD)、電子捕捉解離(ECD)、または電子移動解離(ETD)などの技法を含むが、これらに限定されない。
【0088】
一部の実施形態では、方法は、本開示の変性したウイルス粒子を還元および/またはアルキル化することを含む。ウイルス粒子を還元する手段は、ジチオスレイトール、β-メルカプトエタノール、またはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を用いる処理を含むが、これらに限定されない。ウイルス粒子をアルキル化する手段は、AAV粒子をヨード酢酸、ヨードアセトアミド、または4-ビニルピリジンで処理することを含むが、これらに限定されない。
【0089】
一部の実施形態では、方法は、本開示の変性したウイルス粒子を消化に供して、例えば、AAV粒子のVP1、VP2および/またはVP3の断片を発生させることを含む。例えば、変性したAAV粒子は、消化に供することができてペプチド断片を発生し、例えば、分析のための分離およびMS/MSのためにLCを使用してその断片を分析することができる(より詳しい説明については下を参照されたい)。一部の実施形態では、消化は酵素的消化である。一部の実施形態では、消化は、機器による断片化のCNBr処理などの化学的消化を使用する(例えば、トップダウン)。一部の実施形態では、消化は、酸消化などの化学的消化を使用する。
【0090】
一部の実施形態では、酵素的消化は、エンドペプチダーゼ消化である。エンドペプチダーゼは、ポリペプチドの非末端アミノ酸のペプチド結合のタンパク質分解を触媒する任意のペプチダーゼを含む。公知のエンドペプチダーゼは、トリプシン、キモトリプシン、AspN、Glu-C、LysC、ペプシン、テルモリシン、グルタミルエンドペプチダーゼ、エラスターゼ、およびネプリリシンを含むが、これらに限定されない。ある実施形態では、酵素的消化は、トリプシン消化またはLysC消化である。
【0091】
一部の実施形態では、液体クロマトグラフィー(例えば、本明細書に記載されているようにLC/MSまたはLC/MS/MSで使用される)は、逆相液体クロマトグラフィー
である(「逆相液体クロマトグラフィー(reversed phase liquid chromatography)」またはRPLCという用語は、本明細書では逆相液体クロマトグラフィー(reverse phase liquid chromatography)と互換的に使用される)。当技術分野で公知であるように、逆
相液体クロマトグラフィーは、極性の移動相中の疎水性分子を吸着する疎水性固定相(例えば、カラムなどの支持体または基材)を使用するクロマトグラフィーの分離を指すこともある。移動相の極性を低下させることにより(例えば、有機溶媒を添加することにより)、疎水性による分子のグラジエント分離を達成することができて、それは、より疎水性の分子は、カラムとのより強い疎水性相互作用に基づいて、より高い濃度の有機溶媒でカラムにとどまるからである。一部の実施形態では、分離は、キャピラリー電気泳動(CE)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、カチオン交換クロマトグラフィーなどのイオン交換クロマトグラフィー(IEC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)によるが、オンラインLC/MSに限定されず、MS前にオフライン分離;例えば、チップ、カラム;プレートまたはカートリッジなどによる。
【0092】
一般的に、逆相液体クロマトグラフィーのために適当な固定相(例えば、疎水性部分)は、粒子またはビーズ(例えば、多孔性シリカ粒子またはポリスチレン)を充填されたカラムまたは樹脂を含むが、これらに限定されない支持体に結合される。疎水性アルキル鎖、オクチルまたはオクタデシルシリル部分、シアノ部分、およびアミノ部分を含むが、これらに限定されない種々の疎水性固定相が当技術分野で公知である。一部の実施形態では、固定相は、C4、C8、またはC18などの特定の長さの疎水性アルキル鎖を含むことができる。ある実施形態では、逆相クロマトグラフィーは、C4またはC8逆相クロマトグラフィー(例えば、C4またはC8固定相を利用する逆相クロマトグラフィー)である。当業者は、対象の分子(例えば、変性したAAV粒子またはそれらの断片)に基づいて固定相を適当に選択することができる。
【0093】
逆相液体クロマトグラフィーのために適当な種々の移動相が当技術分野で公知である。上で記載されたように、逆相液体クロマトグラフィーの移動相は、有機溶媒(例えば、疎水性)および水性溶媒(例えば、極性)の混合物を含むことができる。有機溶媒の比率を上げると、疎水性化合物を固定相から溶出させるその能力が増大する。化合物の保持および/または選択性は、例えば、固定相のタイプまたは露出を変更することにより、末端封止試薬などの極性試薬を付加することにより、温度を変更することにより、および/または有機溶媒の比率、pH、緩衝剤、および使用される有機溶媒のタイプなどの移動相の特性を変更することによって変更することができる。一部の実施形態では、移動相の極性の構成要素は、水または緩衝水溶液を含むことができるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、移動相の極性の構成要素は、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン(THF)、およびギ酸を含むことができるが、これらに限定されない。
【0094】
一部の実施形態では、2種以上の移動相を(例えば、移動相A、移動相B、その他)目的のグラジエントまたは比率で使用することができる。ある実施形態では、クロマトグラフィーは、水中にギ酸を含む移動相Aを使用する。ある実施形態では、移動相Aは、約0.1%のギ酸を含む。ある実施形態では、移動相Aは、約0.1%から約5%のギ酸を含む。ある実施形態では、クロマトグラフィーは、アセトニトリル中にギ酸を含む移動相Bを使用する。ある実施形態では、移動相Bは、約0.1%のギ酸を含む。
【0095】
一部の実施形態では、クロマトグラフィー中における移動相Bの比率は、経時的に増大する。例えば、クロマトグラフィー中における移動相Bの比率は、段階的様式で増大することができる。ある実施形態では、移動相Bは、約10%から約20%に、約20%から約30%に、および約30%から約38%に増大する。他の実施形態では、移動相Bは、
約2%から約60%に増大する。他の実施形態では、移動相Bは、約2%から約100%に約1分から約200分で増大する。一部の実施形態では、移動相の残余は、本開示の第2の移動相、例えば、移動相Aである。ある実施形態では、移動相Bは、約10%から約20%に約6分で、約20%から約30%に約10分で、および約30%から約38%に約40分で増大する。他の実施形態では、移動相Bは、約2%から約60%に約121分で増大する。当業者は、対象の移動相および使用されるグラジエントのタイミングを、所望のクロマトグラフィーの分離および/または対象分析物に基づいて適当に調節することができる。
【0096】
一部の実施形態では、液体クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である。HPLCは、試料を含有する液体溶媒が固体相を含有するカラムを通過するときに加圧されている液体クロマトグラフィーの形態として、当技術分野で公知である。伝統的なまたは低圧のLCは、移動相を固体相を通して通すために重力を使用するが、HPLCは、ポンプを使用して移動相に圧力をかけて、典型的には、粒子がより小さい固体相を使用して分解能を向上させる。一部の実施形態では、HPLCは、約50バールと約350バールの間の圧力を使用する。一部の実施形態では、逆相HPLCは、MS分析のためにタンパク質(例えば、AAVカプシドタンパク質)を濃縮および/または脱塩するために使用されることもある。
【0097】
一部の実施形態では、電源電圧、キャピラリー温度、ESI電圧(ESI-MSを使用する場合)、CIDエネルギー、およびMS/MS事象の数を含むが、これらに限定されない1種またはそれ以上のパラメーターが、例えば、本明細書において使用されるLC/MS/MSでは、本明細書に記載されている発見に基づいて調節される。一部の実施形態では、質量分析(例えば、本明細書に記載されているLC/MS/MSで使用される)は、約2.5kVの電源電圧(例えば、キャピラリー電圧)を使用する。一部の実施形態では、質量分析(例えば、本明細書に記載されているLC/MS/MSで使用される)は、約275℃のキャピラリー温度を使用する。一部の実施形態では、キャピラリー温度の範囲は約20℃から約400℃である。
【0098】
飛行時間(TOF)分析計、四極子質量フィルター、四極子TOF(QTOF)、およびイオントラップ(例えば、フーリエ変換に基づく質量分析計またはOrbitrap)を含むが、これらに限定されない、LC/MSおよび/またはLC/MS/MSのために適当な種々の質量分析計が、当技術分野で公知である。Orbitrapでは、遠心力と静電力のバランスにより閉じ込められて、中心軸に沿って振幅して、中心電極の周りで楕円形に回転する軌道でイオンを捕捉するために、アース電位の樽状の外部電極および紡錘状の中心電極が使用される。そのような装置の使用は、イメージ電流の検出から時間ドメインのシグナル(例えば、頻度)を高分解能の質量測定に変換するフーリエ変換操作を使用する(例えば、ナノLC/MS/MS)。さらなる説明および詳細は、例えば、Scheltema、R.A.ら(2014)Mol.Cell Proteomics 13:3698~3708頁;Perry、R.H.ら(2008)Mass. Spectrom. Rev 27:661~699頁;およびScigelova、M.ら(2011)Mol.Cell Proteomics 10:M111.009431で見出すことができる。
【0099】
上で記載されたように、一部の実施形態では、MSは、例えば、Orbitrap質量分析計を使用するナノLC/MS/MSを備える。一部の実施形態では、イオン源は、積層式の環イオンガイドまたはSレンズを備えることができる。当技術分野で公知であるように、Sレンズは、ラジオ周波数(RF)を使用してイオンビームの焦点を結ばせることができて、それによりイオンの装置への透過を増大させる。これは、感度(例えば、低強度のイオンについて)および/または走査速度を改善することができる。ある実施形態で
は、質量分析のSレンズのRFレベルは約55%である。ある実施形態では、質量分析のSレンズのRFレベルは約20%から約100%である。
【0100】
一部の実施形態では、ウイルスのカプシドタンパク質の質量は、例えば、LC/MSおよび/またはLC/MS/MSのデータに基づいて決定することができる。一部の実施形態では、AAV粒子のVP1、VP2およびVP3、またはAAV粒子のVP1、VP2およびVP3の断片の質量は、例えば、LC/MSおよび/またはLC/MS/MSデータに基づいて決定することができる。MSデータからタンパク質質量および/または同一性を決定する種々の方法が、当技術分野で公知である。例えば、ペプチドの質量指紋をMSデータに基づいてタンパク質配列を決定するために使用することができるか、またはタンパク質を1種またはそれ以上の構成成分のペプチドに関するMS/MSデータに基づいて同定することができる。タンデムMSを使用する場合、生成物のイオン走査を、対象のタンパク質の1種またはそれ以上のペプチドに関するm/zデータを分析するために使用することができる。その場合、当技術分野で公知のソフトウェアを、例えば、同定されるピークを参照ピークまたは公知のピークと一致させて、ピークをアイソトポマーエンベロープにグループ分けするため等々に使用することができる。ペプチドの質量の値は、公知のペプチド配列のデータベースと比較することができる。例えば、Mascotは、観察されたペプチドを、例えば、特定の消化パターンのインシリコのタンパク質データベースに対する適用から生ずる理論的データベースペプチドと一致させるために使用することができる。他の適当なソフトウェアには、Proteome Discoverer、ProteinProspector、X!Tandem、Pepfinder、Bonics、またはMassLynx(商標)(Waters)が含まれるが、これらに限定されない。MSデータ分析の種々の工程のために適当な他のソフトウェアは、例えば、www.ms-utils.org/wiki/pmwiki.php/Main/SoftwareListに見出すことができる。
【0101】
一部の実施形態では、本開示の決定または計算された質量(例えば、AAV粒子のVP1、VP2および/またはVP3の決定または計算された質量)を、1種またはそれ以上のAAV血清型のVP1、VP2、および/またはVP3の参照質量、例えば、理論的質量と比較することができる。本開示の参照は、本明細書に記載されているAAV血清型のVP1、VP2、および/またはVP3の1種またはそれ以上のいずれかの理論的質量を含むことができる。例えば、一部の実施形態では、VP1、VP2、および/またはVP3の質量は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド、AAV7カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8カプシド、AAV9カプシド、AAV10カプシド、AAVrh10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、AAVLK03カプシド(米国特許第9,169,299号を参照されたい)、AAV2R471Aカプシド、AAV2/2~7m8のカプシド、AAV DJカプシド(米国特許第7,588,772号を参照されたい)、AAV DJ8カプシド、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、またはマウスAAVカプシドrAAV2/HBoV1(キメラAAV/ヒトボカウイルスウイルス1)、AAV2HBKOカプシド、AAVPHP.BカプシドまたはAAVPHP.eBカプシドの1種またはそれ以上の理論的質量に対して比較される。一部の実施形態では、本開示の決定または計算された質量(例えば、AAV粒子のVP1、VP2および/またはVP3の決定または計算された質量)は、対応するAAV血清型のVP1、VP2、および/またはVP3の理論的質量と比較することができる。
【0102】
一部の実施形態では、本開示の方法は、AAV粒子の不均一性を決定することを含む。一部の実施形態では、VP1、VP2および/またはVP3の質量の1つまたはそれ以上
の偏差(例えば、理論的な、予測される、または期待される質量などの参照質量からの)が、AAVカプシドの不均一性を示す。一部の実施形態では、不均一性は、以下の:混合血清型、変異体カプシド、カプシドアミノ酸置換、末端が切断されたカプシド、または改変されたカプシドの1種またはそれ以上を含むが、これらに限定されない。
【0103】
一部の実施形態では、本明細書に記載されたLC/MSおよびLC/MS/MSの使用を組み合わせることができる。一部の実施形態では、AAV粒子の血清型を決定する方法は、変性したAAV粒子をLC/MS(例えば、本明細書に記載された)に供し、AAV粒子のVP1、VP2およびVP3の質量を決定する工程;ならびにVP1、VP2および/またはVP3の断片をLC/MS/MSに供し、AAV粒子のVP1、VP2およびVP3の断片の質量を決定する工程(VP1、VP2およびVP3の断片の質量の特定の組合せがAAV血清型を示す)を含むことができる。一部の実施形態では、AAV粒子の不均一性を決定する方法は、変性したAAV粒子をLC/MS(例えば、本明細書に記載された)に供し、AAV粒子のVP1、VP2およびVP3の質量を決定し、これらの質量をAAV血清型のVP1、VP2およびVP3の理論的質量と比較する工程;ならびにVP1、VP2およびVP3の断片をLC/MS/MSに供し、AAV粒子のVP1、VP2およびVP3の断片の質量を決定し、これらの質量をAAV血清型のVP1、VP2およびVP3の理論的質量と比較する工程(VP1、VP2またはVP3の質量の1つまたはそれ以上の偏差がAAVカプシドの不均一性を示す)を含むことができる。
【0104】
一部の実施形態では、本開示のAAV粒子は、アセチル化されていることがある。例えば、一部の実施形態では、VP1および/またはVP3のN末端がアセチル化されている。下でさらに詳細に説明するように、AAVカプシドタンパク質のメチオニン(iMet
X)から数えて2番目の位置にあるアミノ酸は、N末端(Nt-)アセチル化に対するその効果、ならびにAAV粒子のトラフィッキング、形質導入、および/または翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、ユビキチン化等々)に対して影響するNt-アセチル化の機能的意義を決定するために突然変異させることができる。一部の実施形態では、AAVカプシドタンパク質(例えば、VP1またはVP3)のN末端は、場合によっては、例えば、Met-アミノペプチダーゼによって除去されることもあるメチオニンから数えて最初のアミノ酸を指すこともある。
【0105】
一部の実施形態では、本開示のAAV粒子(例えば、組換えAAVまたはrAAV粒子)は、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、参照(例えば、アミノ酸置換前の親AAV粒子、または異なるVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2を有するAAV粒子)と比較してN末端アセチル化の異なる頻度または比率を有するVP1および/またはVP3を生ずる。一部の実施形態では、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換はN末端アセチル化を、親AAV粒子のVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較して変更する。例えば、ある実施形態では、VP1のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換はN末端アセチル化を、親AAV粒子のVP1のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較して変更する。ある実施形態では、VP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換はN末端アセチル化を、親AAV粒子のVP3のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較して変更する。一部の実施形態では、N末端アセチル化を「変更する」アミノ酸置換(例えば、VP1またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換)は、例えば、親VP1またはVP3などの置換されていないVP1またはVP3と比較して、より高い頻度のN末端アセチル化またはより低い頻度のN末端アセチル化をもたらす。VP1および/またはVP3は、本明細書に記載された典型的なAAVの血清型のいずれかに属して、変異体またはそれらのハイブリッド(例えば、チロシン突然変異またはヘパリン結合突然変異を有する)を含むこともある。N末端アセチル化の典型的アッセイは、質
量分析、同位体標識(例えば、同位体で標識されたアセチル基またはそれらの前駆体で)、アセチル化特異的抗体を用いるウェスタンブロット法等々を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、AAVカプシドタンパク質(例えば、VP1またはVP3)のアミノ酸残基2が、Cys、Ser、Thr、Val、Gly、Asn、Asp、Glu、Ile、Leu、Phe、Gln、Lys、Met、ProまたはTyrで置換される。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、AAVカプシドのより少ない脱アミド化を生ずる。
【0106】
一部の実施形態では、本開示のAAV粒子は、脱アミド化されていることもある。例えば、一部の実施形態では、VP1のN57および/またはVP3のN382、N511、および/またはN715は脱アミド化されている。下でさらに詳細に説明するように、AAVカプシドタンパク質(例えば、VP1またはVP3)のVP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、またはVP3のG716から選択されるアミノ酸は、脱アミド化に対するその効果、ならびにAAV粒子のトラフィッキング、形質導入、および/または翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、ユビキチン化等々)に対して影響する脱アミド化の機能的意義を決定するために突然変異させることができる。
【0107】
一部の実施形態では、本開示のAAV粒子(例えば、組換えAAVまたはrAAV粒子)は、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、およびVP3のG716から選択される1種またはそれ以上のアミノ酸残基におけるアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、および/またはVP3のG716におけるアミノ酸置換は、参照(例えば、アミノ酸置換前の親AAV粒子、または異なる対応するアミノ酸残基2を有するAAV粒子)と比較して、脱アミド化の異なる頻度または比率を有するVP1および/またはVP3を生じさせる。一部の実施形態では、脱アミド化を「変更する」アミノ酸置換(例えば、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、またはVP3のG716におけるアミノ酸置換)は、例えば、親VP1またはVP3などの置換されていないVP1またはVP3と比較して、より高い頻度の脱アミド化またはより低い頻度の脱アミドをもたらす。VP1および/またはVP3は、本明細書に記載されている典型的AAV血清型のいずれかに属して、変異体またはそれらのハイブリッド(例えば、チロシン突然変異またはヘパリン結合突然変異を有する)を含むこともある。脱アミド化の典型的アッセイは、質量分析、HPLC(例えば、PromegaからのISOQUANT(登録商標)イソアスパルテート検出キットを参照されたい)等々を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、VP1のN57、VP3のN382、VP3のN511、および/またはVP3のN715がAspで置換されており、該アミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較してより高い頻度の脱アミド化をもたらす。他の実施形態では、アミノ酸置換はN57KまたはN57Qであり、該アミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較してより低い頻度の脱アミド化をもたらす。さらに他の実施形態では、VP1のG58、VP3のG383、VP3のG512、および/またはVP3のG716が、Glyでないアミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはVal)で置換されて、該アミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、より低い頻度の脱アミド化をもたらす。さらに他の実施形態では、VP1のA35がAsnで置換されて、親粒子のVP1の脱アミド化と比較してより高い頻度の脱アミド化をもたらす。
【0108】
本明細書において使用する「N-アセチル化」とは、アセチル基がタンパク質のN末端アミノ酸のアミノ基に共有結合で付加されるプロセスを指す。典型的には、N末端アセチルトランスフェラーゼ(NAT)が、アセチル基をアセチル補酵素A(Ac-CoA)からタンパク質の第1アミノ酸残基のα-アミノ基に移動させる。
【0109】
本明細書で使用される「脱アミド化」とは、アルパラギンまたはグルタミンの側鎖におけるアミド官能基が除去されるかまたは別の官能基に変換される化学反応を指す。例えば、アルパラギンは、アスパラギン酸またはイソアスパラギン酸に変換される。他の例では、グルタミンは、グルタミン酸またはピログルタミン酸(5-オキソプロリン)に変換される。
【0110】
一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAVカプシドタンパク質と比較して、より高い程度でN-アセチル化される。一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAV粒子と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のいずれかを超えるN-アセチル基を含む。一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAV粒子と比較して、約5%~10%、10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~55%、45%~50%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、95%~100%、5~25%、25~50%、50~75%、75%~100%、5~50%または50%~100%の間いずれかを超えるN-アセチル基を含む。一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAV粒子と比較して約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、500倍、または1000倍を超えるいずれかのN-アセチル基を含む。一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAV粒子と比較して約2倍から3倍、3倍から4倍、4倍から5倍、5倍から10倍、10倍から25倍、25倍から50倍、50倍から100倍、100倍から500倍、500倍から1000倍、2倍から10倍、10倍から100倍、または100倍から1000倍を超えるいずれかのN-アセチル基を含む。
【0111】
一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAVカプシドタンパク質と比較してより低い程度でN-アセチル化される。一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAV粒子と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のいずれかを超えて少ないN-アセチル基を含む。一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAV粒子と比較して、約5%~10%、10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~55%、45%~50%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、95%~100%、5~25%、25~50%、50~75%、75%~100%、5~50%または50%~100%の間のいずれかで少ないN-アセチル基を含む。一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAV粒子と比較して約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、500倍、または1000倍のいずれかを超えて少ないN-アセチル基を含む。一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAV粒子と比較して、2倍から3倍、3倍から4倍、4倍から5倍、5倍から10倍、10倍から25倍、25倍から50倍、50倍から100倍、100倍から500倍、500倍から1000倍、2倍から10倍、10倍から100倍、または100倍から1000倍のいずれかの間で少ないN-アセチル基を含む。
【0112】
一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAV粒子と比較してより高い程度で脱アミド化される。一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAV粒子と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のいずれかを超えて多く脱アミド化される。一部の実施形態では、AAV粒子は、約5%~10%、10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~55%、45%~50%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、95%~100%、5~25%、25~50%、50~75%、75%~100%、5~50%または50%~100%の間のいずれかで、親AAV粒子より多く脱アミド化される。一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAV粒子と比較して、約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、500倍、または1000倍のいずれかを超えて脱アミド化される。一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAV粒子よりも、約2倍から3倍、3倍から4倍、4倍から5倍、5倍から10倍、10倍から25倍、25倍から50倍、50倍から100倍、100倍から500倍、500倍から1000倍、2倍から10倍、10倍から100倍、または100倍から1000倍の間のいずれかで脱アミド化される。
【0113】
一部の実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、親AAVカプシドタンパク質と比較してより低い程度で脱アミド化される。一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAV粒子と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のいずれかを超えて少なく脱アミド化される。一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAV粒子よりも、約5%~10%、10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~55%、45%~50%、50%~55%、55%~60%、60%~65%、65%~70%、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、95%~100%、5~25%、25~50%、50~75%、75%~100%、5~50%または50%~100%の間のいずれかで少なく脱アミド化される。一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAV粒子よりも、約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、500倍、または1000倍のいずれかを超えて少なく脱アミド化される。一部の実施形態では、AAV粒子は、親AAV粒子より、約2倍から3倍、3倍から4倍、4倍から5倍、5倍から10倍、10倍から25倍、25倍から50倍、50倍から100倍、100倍から500倍、500倍から1000倍、2倍から10倍、10倍から100倍、または100倍から1000倍の間のいずれかで少なく脱アミド化される。
【0114】
本発明は、N-アセチル化および脱アミド化の任意の組合せを提供する。例えば、AAVカプシドタンパク質が、親AAVカプシドタンパク質より高い程度でN-アセチルされて、親AAVカプシドタンパク質より高い程度で脱アミド化されることもあり、AAVカプシドタンパク質が、親AAVカプシドタンパク質より高い程度でN-アセチル化されて、親AAVカプシドタンパク質と同じ程度で脱アミド化されることもあり、AAVカプシドタンパク質が、親AAVカプシドタンパク質より高い程度でN-アセチル化されて、親AAVカプシドタンパク質より低い程度で脱アミド化されることもあり、AAVカプシドタンパク質が、親AAVカプシドタンパク質と同じ程度でN-アセチル化されて、親AAVカプシドタンパク質より高い程度で脱アミド化されることもあり、AAVカプシドタンパク質が、親AAVカプシドタンパク質と同じ程度でN-アセチル化されて、親AAVカプシドタンパク質と同じ程度で脱アミド化されることもあり、AAVカプシドタンパク質が、親AAVカプシドタンパク質と同じ程度でN-アセチル化されて、親AAVカプシドタンパク質より低い程度で脱アミド化されることもあり、AAVカプシドタンパク質が、
親AAVカプシドタンパク質より低い程度でN-アセチル化されて、親AAVカプシドタンパク質より高い程度で脱アミド化されることもあり、AAVカプシドタンパク質が、親AAVカプシドタンパク質より低い程度でN-アセチル化されて、親AAVカプシドタンパク質と同じ程度で脱アミド化されることもあり、またはAAVカプシドタンパク質が、親AAVカプシドタンパク質より低い程度でN-アセチル化されて、親AAVカプシドタンパク質より低い程度で脱アミド化されることもある。
【0115】
IV. ベクター
ある態様で、本発明は、任意の本明細書に記載されている方法で使用するために適当なウイルス粒子に関し、該ウイルス粒子はAAVベクター(例えば、rAAVベクター)または別のウイルスに由来するベクターを含むこともある。一部の実施形態では、該ウイルス粒子は異種核酸、例えば、異種導入遺伝子をコードするベクターを含む。一部の実施形態では、AAV粒子は、異種核酸、例えば、異種導入遺伝子をコードするAAVベクターゲノムを含む。
【0116】
本発明は、rAAVウイルス粒子中にパッケージングするための治療用ポリペプチドおよび/または核酸をコードする1種またはそれ以上の核酸配列を導入するための組換えウイルスゲノムの使用を考慮する。組換えウイルスゲノムは、治療用ポリペプチドおよび/または核酸、例えば、プロモーター、本開示のITR、リボソーム結合要素、ターミネーター、エンハンサー、選択マーカー、イントロン、ポリAシグナル、および/または複製の起源の発現を確立するための任意の要素を含むことができる。
【0117】
一部の実施形態では、異種核酸は、治療用ポリペプチドをコードする。治療用ポリペプチドは、例えば、細胞または生物体中に存在しないかまたは低下したレベルで存在するポリペプチドおよび/または酵素活性を供給することができる。あるいは、治療用ポリペプチドは、細胞または生物体における不均衡を、間接的に解消するポリペプチドおよび/または酵素活性を供給することができる。例えば、代謝酵素または活性における欠損により引き起こされた代謝物の蓄積に関係する障害のための治療用ポリペプチドは、消失した代謝酵素または活性を供給することができるか、またはそれは、代謝物の低減を導く代替する代謝酵素または活性を供給することができる。治療用ポリペプチドは、例えば、優性阻害ポリペプチドとして作用することにより、ポリペプチド(例えば、機能獲得突然変異により過発現して活性化されたか、または活性の調節が狂って他の状態になったポリペプチド)の活性を低下させるためにも使用することができる。
【0118】
本発明の核酸は、細胞内タンパク質で、細胞膜に固定されて細胞内にとどまっているか、または本発明のベクターを形質導入された細胞により分泌されるポリペプチドをコードすることができる。ベクターを受け入れた細胞により分泌されるポリペプチドについて;ポリペプチドは、可溶性であることができる(すなわち、細胞に取り付けられて(attached)いない)。例えば、可溶性ポリペプチドは膜貫通領域を欠いて、細胞から分泌される。膜貫通ドメインをコードする核酸配列を同定して除去する技法は、当技術分野で公知である。
【0119】
本発明の核酸は(例えばAAVベクターのゲノム)、導入遺伝子として、CNS関連障害を調節または処置するタンパク質または機能的RNAをコードする核酸を含むことがある。以下は、CNS関連障害と関連する遺伝子の非限定的リストである:ニューロンのアポトーシス阻害タンパク質(NAIP)、神経成長因子(NGF)、神経膠誘導成長因子(GDNF)、脳由来成長因子(BDNF)、毛様神経栄養因子(CNTF)、チロシンヒドロキシラーゼ(TM)、GTP-シクロヒドロラーゼ(GTPCH)、アスパルトアシラーゼ(ASPA)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)、抗酸化性物質、抗血管形成ポリペプチド、抗炎症性ポリペプチド、およびアミノ酸デカルボキシラーゼ(A
ADC)。例えば、パーキンソン病の処置に有用な導入遺伝子は、ドーパミンの合成において律速酵素であるTHをコードする。TII補助因子のテトラヒドロビオプテリンを発生するGTPCIIをコードする導入遺伝子も、パーキンソン病の処置に使用することができる。L-DopaのDAへの転換を助長するGDNFまたはBDNF、またはAADCをコードする導入遺伝子も、パーキンソン病の処置のために使用することができる。ALSの処置のために有用な導入遺伝子は、GDNF、BDNFまたはCNTFをコードすることができる。ALSの処置のためにも、有用な導入遺伝子は、機能的RNA、例えば、SOD1の発現を阻害するshRNA、miRNAをコードすることができる。虚血の処置のために有用な導入遺伝子は、NAIPまたはNGFをコードすることができる。ベータ-グルクロニダーゼ(GUS)をコードする導入遺伝子は、ある種のリソソーム貯蔵疾患(例えば、VII型ムコ多糖症タイプ(MPS VII))の処置のために有用である。プロドラッグ活性化遺伝子をコードする導入遺伝子、例えば、ガンシクロビルを、DNA合成を撹乱して細胞死を生じさせる毒性ヌクレオチドに変換するHSV-チミジンキナーゼは、例えばプロドラッグとの組合せで投与すると、ある種の癌を処置するために役立つことがある。β-エンドルフィンなどの内因性オピオイドをコードする導入遺伝子は、疼痛を処置するために有用である場合がある。酸化防止剤の例は、SOD1;SOD2;カタラーゼ;サーチュイン1、3、4、または5;NRF2;PGC1a;GCL(触媒的サブユニット);GCL(変更子サブユニット);アジポネクチン;グルタチオンペルオキシダーゼ1;およびニューログロビンを含むが、これらに限定されない。抗血管形成ポリペプチドの例は、アンジオスタチン、エンドスタチン、PEDF、可溶性VEGF受容体、および可溶性PDGF受容体を含むが、これらに限定されない。抗炎症性ポリペプチドの例は、IL-10、可溶性IL17R、可溶性TNF-R、TNF-R-Ig、IL-1阻害剤、およびIL18阻害剤を含むが、これらに限定されない。本発明のrAAVベクターで使用することができる導入遺伝子の他の例は、当業者には明らかであろう(例えば、Costantini L Cら、Gene Therapy(2000)7、93~109頁を参照されたい)。
【0120】
一部の実施形態では、異種核酸が治療用核酸をコードする。一部の実施形態では、治療用核酸は、siRNA、shRNA、RNAi、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイムまたはDNAザイムを含むことができるが、これらに限定されない。そのようなものとして、治療用核酸は、ベクターの核酸から転写されたときに、本発明の障害と関連する異常なまたは過剰なタンパク質の翻訳または転写に干渉することにより、障害を処置することができるRNAをコードすることができる。例えば、本発明の核酸は、異常なおよび/または過剰なタンパク質をコードするmRNAの高度に特異的排除または低減により、障害を処置するRNAをコードすることができる。治療用RNA配列は、異常なおよび/または過剰なタンパク質をコードするmRNAの高度に特異的な排除または低減により障害を処置することができるRNAi、小さい阻害RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、および/またはリボザイム(ハンマーヘッド型およびヘアピンリボザイムなど)を含む。
【0121】
一部の実施形態では、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸は、CNSの障害を処置するために使用される。理論に拘束されることは望まず、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸は、機能獲得が障害と関連しているポリペプチドの発現および/もしくは活性を低減もしくは排除するために、または障害と関連している欠損を補足するポリペプチドの発現および/もしくは活性を強化するために使用することができると考えられる(例えば、発現が同様なまたは関係する活性を示す遺伝子における突然変異)。本発明の治療用ポリペプチドまたは治療用核酸により処置される本発明の障害の非限定的な例(標的とされるかまたは補われる典型的遺伝子は、各障害について括弧内に記載してある)は、脳卒中(例えば、カスパーゼ-3、Beclin1、Ask1、PAR1、HIF1α、PUMA、および/またはFukuda、A.M.and Badaut、J.(2013)Gen
es(Basel)4:435~456頁に記載されている任意の遺伝子)、ハンチントン病(突然変異体HTT)、癲癇(例えば、SCN1A、NMDAR、ADK、および/またはBoison、D.(2010) Epilepsia 51:1659~1668頁に記載されている任意の遺伝子)、パーキンソン病(アルファ-シヌクレイン)、ルー・ゲーリック病(筋萎縮性側索硬化症としても公知である;SOD1)、アルツハイマー病(タウ、アミロイド前駆体タンパク質)、大脳皮質基底核変性症またはCBD(タウ)、大脳皮質基底核神経節変性またはCBGD(タウ)、前頭側頭型認知症またはFTD(タウ)、進行性核上麻痺またはPSP(タウ)、多系統萎縮症またはMSA(アルファ-シヌクレイン)、脳癌(例えば、脳癌に関与する突然変異体または過発現した発癌遺伝子)、およびリソソーム貯蔵疾患(LSD)を含む。本発明の障害は、皮質の大きい領域、例えば、皮質の1箇所以上の機能的領域、皮質の1箇所以上の葉、および/または皮質全体に関与する障害を含むことがある。本発明の治療用ポリペプチドまたは治療用核酸により処置することができる本発明の障害の他の非限定的な例は、外傷性の脳損傷、酵素機能不全障害、精神医学的障害(外傷後ストレス症候群を含む)、神経変性性疾患、および認知障害(認知症、自閉症、およびうつ病を含む)を含む。酵素機能不全障害は、大脳白質萎縮症(カナバン病を含む)および下に記載した任意のリソソーム貯蔵疾患を含むが、これらに限定されない。
【0122】
一部の実施形態では、治療用ポリペプチドまたは治療用核酸は、リソソーム貯蔵疾患を処置するために使用される。当技術分野で公知であるように、リソソーム貯蔵疾患は、リソソーム機能における欠陥により特徴づけられる稀な遺伝性の代謝性障害である。そのような障害は、しばしば適切なムコ多糖、糖タンパク質、および/または脂質代謝のために必要な酵素の欠損により惹起されて、リソソームに貯蔵される細胞材料の病理学的蓄積に至る。本発明の治療用ポリペプチドまたは治療用核酸(標的とされるかまたは補われる典型的遺伝子は各障害について括弧内に記載した)により処置される本発明のリソソーム貯蔵疾患の非限定的な例は、2型または3型ゴシェ病(酸性ベータ-グルコシダーゼ、GBA)、GM1ガングリオシドーシス(ベータ-ガラクトシダーゼ-1、GLB1)、ハンター病(イズロネート2-スルファターゼ、IDS)、クラッベ病(ガラクトシルセラミダーゼ、GALC)、マンノース症疾患(アルファ-D-マンノシダーゼなどのマンノシダーゼ、MAN2B1)、βマンノース症疾患(ベータ-マンノシダーゼ、MANBA)、異染性白質ジストロフィー疾患(シュードアリールスルファターゼA、ARSA)、ムコ脂質症II/III疾患(N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ、GNPTAB)、ニーマン・ピック病A型(酸性スフィンゴミエリナーゼ、ASM)、ニューマン・ピック病C型(ニューマン・ピックCタンパク質、NPC1)、ポンペ病(酸性アルファ-1,4-グルコシダーゼ、GAA)、サンドホフ病(ヘキソスアミニダーゼベータサブユニット、HEXB)、サンフィリッポ病A型(N-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ、MPS3A)、サンフィリッポ病B型(N-アルファ-アセチルグルコサミニダーゼ、NAGLU)、サンフィリッポ病C型(ヘパリンアセチル-CoA:アルファ-グルコサミニダーゼN-アセチルトランスフェラーゼ、MPS3C)、サンフィリッポ病D型(N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ、GNS)、シンドラー病(アルファ-N-アセチルガラクトサミニダーゼ、NAGA)、スライ病(ベータ-グルクロニダーゼ、GUSB)、テイ-サックス病(ヘキソスアミニダーゼアルファサブユニット、HEXA)、およびウォルマン病(リソソーム酸リパーゼ、LIPA)を含む。
【0123】
追加のリソソーム貯蔵疾患、ならびに各疾患と関連する欠陥酵素を下の表1でリストにした。一部の実施形態では、下の表でリストにした疾患は、対応する酵素欠陥を補完するかまたは他の方法で補償する本発明の治療用ポリペプチドまたは治療用核酸によって処置される。
【0124】
【0125】
一部の実施形態では、異種核酸は、プロモーターに作動的に連結される。典型的プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)即時型初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセレートキナーゼ-1(PGK)プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーターおよびCK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異
的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAGプロモーター;Niwaら、Gene、1991、108(2):193~9頁)および伸張因子1-アルファプロモーター(EFl-アルファ)プロモーター(Kim et al.、Gene、1990、91(2):217~23頁およびGuoら、Gene Ther.、1996、3(9):802~10頁)を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、プロモーターは、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーターまたはニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターに連結されたサイトメガロウイルスエンハンサーを含む。プロモーターは、構成性、誘発性または抑制性プロモーターであることができる。一部の実施形態では、本発明は、CBAプロモーターに作動的に連結された本開示の異種導入遺伝子をコードする核酸を含む組換えベクターを提供する。典型的プロモーターおよび説明は、例えば、米国特許付与公開第20140335054号に見出すことができる。
【0126】
構成性プロモーターの例には、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合によりRSVエンハンサーと共に)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合により、CMVエンハンサーと共に)[例えば、Boshartら、Cell、41:521~530頁(1985)を参照されたい]、SV40プロモーター、ジヒドロフォレートレダクターゼプロモーター、13-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEFlaプロモーター[Invitrogen]が含まれるが、これらに限定されない。
【0127】
誘発性プロモーターは、遺伝子発現の調節を可能にして、外部から供給された化合物、温度などの環境因子、または細胞の特定の生理学的状態の存在、例えば、急性相、特定の分化状態により、または複製中の細胞でのみ調節することができる。誘発性プロモーターおよび誘発性システムは、Invitrogen、ClontechおよびAriadを含むが、これらに限定されない種々の商業的供給源から入手可能である。多くの他のシステムが記載されており、当業者により容易に選択される。外部から供給されるプロモーターにより調節される誘発性プロモーターの例には、亜鉛誘発性のヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘発性マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーターシステム(WO第98/10088号);エクジソン昆虫プロモーター(No et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:3346~3351頁(1996))、テトラサイクリン抑制性システム(Gossenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:5547~5551頁(1992))、テトラサイクリン誘発性システム(Gossenら、Science、268:1766~1769頁(1995)、Harveyら、Curr.Opin.Chem.Biol.、2:512~518頁(1998)も参照されたい)、RU486誘発性システム(Wangら、Nat.Biotech.、15:239~243頁(1997)およびWangら、Gene Ther.、4:432~441頁(1997))およびラパマイシン誘発性システム(Magariら、J.Clin.Invest.、100:2865~2872頁(1997))が含まれる。この関係で役立つことができるさらに他の型の誘発性プロモーターは、特定の生理学的状態、例えば、温度、急性相、細胞の特定の分化状態により、または複製中の細胞でのみ調節されるプロモーターである。
【0128】
別の実施形態では、導入遺伝子のための自然のままのプロモーター、またはそれらの断片が使用されるであろう。自然のままのプロモーターは、導入遺伝子の発現が、自然のままの発現を模倣するべきことが望まれる場合に、使用することができる。自然のままのプロモーターは、導入遺伝子の発現が、一時的にまたは発達上、または組織特異的様式で、または特異的な転写の刺激に応答して調節されなければならない場合に、使用することが
できる。さらなる実施形態では、エンハンサー要素、ポリアデニル化部位またはコザックのコンセンサス配列などの他の自然のままの発現制御要素は、自然のままの発現を模倣するために使用することもできる。
【0129】
一部の実施形態では、調節配列は、組織特異的遺伝子発現能力を与える。一部の場合では、組織特異的調節配列は、組織特異的様式で転写を誘発する組織特異的転写因子に結合する。そのような組織特異的調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、その他)は当技術分野で周知である。
【0130】
一部の実施形態では、ベクターはイントロンを含む。例えば、一部の実施形態では、イントロンは、ニワトリベータ-アクチンおよびウサギベータ-グロビンに由来するキメライントロンである。一部の実施形態では、イントロンは、マウス(MVM)イントロンの微小ウイルスである。
【0131】
一部の実施形態では、ベクターはポリアデニル化(ポリA)配列を含む。ウシ成長ホルモン(BGH)ポリ(A)配列(例えば、受入番号EF592533を参照されたい)、SV40ポリアデニル化配列、およびHSV TK pAポリアデニル化配列などのポリアデニル化配列の多数の例が、当技術分野で公知である。
【0132】
V. ウイルス粒子およびウイルス粒子を産生する方法
本開示のある態様は、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV粒子)に関する。
【0133】
本明細書で提供される指針に基づいて、本開示の技法は、種々の異なるウイルスによる使用のために当業者により適当に適合される。
【0134】
一部の実施形態では、ウイルスはアデノウイルス科のものであり、それは、典型的にはアデノウイルスとして公知である、非エンベロープ付きウイルスを含む。一部の実施形態では、該ウイルスは、アタデノウイルス属、アビアデノウイルス属、イクタデノウイルス属、マストアデノウイルス属、またはシアデノウイルス属のものである。
【0135】
一部の実施形態では、ウイルスはパルボウイルス科のものであり、それらはAAVおよびボカパルボウイルスなどの非エンベロープ付きウイルスを含む。一部の実施形態では、ウイルスはデンソウイルス亜科のものである。一部の実施形態では、ウイルスは、アンビデンソウイルス属、ブレビデンソウイルス属、ヘパンデンソウイルス属、イテラデンソウイルス属、またはペンスチルデンソウイルス属のものである。一部の実施形態では、ウイルスは、パルボウイルス亜科のものである。一部の実施形態では、ウイルスは、アムドパルボウイルス属、アベパルボウイルス属、ボカパルボウイルス属、コピパルボウイルス属、デペンドパルボウイルス属、エリスロパルボウイルス属、プロトパルボウイルス属、またはテトラパルボウイルス属のものである。
【0136】
一部の実施形態では、ウイルスは、レトロウイルス科のものであり、それらは、レンチウイルスを含むエンベロープ付きウイルスを含む。一部の実施形態では、ウイルスは、オルトレトロウイルス亜科のものである。一部の実施形態では、ウイルスは、アルファレトロウイルス属、ベータレトロウイルス属、デルタレトロウイルス属、イプシロンレトロウイルス属、ガンマレトロウイルス属、またはレンチウイルス属のものである。一部の実施形態では、ウイルスはスプマレトロウイルス亜科のものである。一部の実施形態では、ウイルスはスプマウイルス属のものである。
【0137】
一部の実施形態では、ウイルスは、バキュロウイルス科のものであり、アルファバキュロウイルスを含むエンベロープ付きウイルスを含む。一部の実施形態では、ウイルスは、
アルファバキュロウイルス属、ベータバキュロウイルス属、デルタバキュロウイルス属、またはガンマバキュロウイルス属のものである。
【0138】
一部の実施形態では、ウイルスは、ヘルペスウイルス科のものであり、単純ウイルスHSV-1およびHSV-2などのエンベロープ付きウイルスを含む。一部の実施形態では、ウイルスは、アルファヘルペスウイルス亜科のものである。一部の実施形態では、ウイルスは、イルトウイルス属、マルディウイルス属、単純ウイルス属、またはバリセロウイルス属のものである。一部の実施形態では、ウイルスは、ベータヘルペスウイルス亜科のものである。一部の実施形態では、ウイルスは、サイトメガロウイルス属、ムロメガロウイルス属、プロボスキウイルス属(Proboscivirus)、またはロゼオロウイルス属のものである。一部の実施形態では、ウイルスは、ガンマヘルペスウイルス亜科のものである。一部の実施形態では、ウイルスは、リンホクリプトウイルス属、マカウイルス属、ペルカウイルス属、またはラジノウイルス属のものである。
【0139】
一部の実施形態では、ウイルスは、AAVウイルスである。AAV粒子では、核酸はAAV粒子中でカプシド形成している。AAV粒子はカプシドタンパク質も含む。一部の実施形態では、核酸は、異種核酸および/または、転写の方向で作動的に連結された以下の構成要素の1つまたはそれ以上、転写開始および停止配列を含む制御配列を含み、それにより発現カセットを形成する。
【0140】
一部の実施形態では、ウイルス粒子は、AAV ITR配列を含む。例えば、発現カセットでは、少なくとも1つの機能的AAV ITR配列が、5’および3’末端に隣接することができる。「機能的AAV ITR配列」により、ITR配列がAAVビリオンの救出、複製およびパッケージングのために意図されて機能することが意味される。すべて参照によってその全体を本明細書に組み入れる、Davidsonら、PNAS、2000、97(7)3428~32頁;Passiniら、J.Virol.、2003、77(12):7034~40頁;およびPechanら、Gene Ther.、2009、16:10~16頁を参照されたい。本発明の一部の態様を実行するために、組換えベクターは、カプシド形成のために必須のAAVの配列の少なくともすべておよびrAAVによる感染のための物理的構造を含む。本発明のベクター中で使用するためのAAV ITRは、野生型ヌクレオチド配列を有する必要はなく(例えば、Kotin、Hum.Gene Ther.、1994、5:793~801頁に記載されているように)、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換により変更することができ、またはAAV ITRは任意の数種のAAV血清型から誘導することができる。AAVの40種を超える血清型が現在公知であり、新しい血清型および既存の血清型の変異体の同定が続いている。Gaoら、PNAS、2002、99頁(18):11854~6;Gaoら、PNAS、2003、100(10):6081~6頁;およびBossisら、J.Virol.、2003、77(12):6799~810頁を参照されたい。任意のAAV血清型の使用が本発明の範囲内で考慮される。一部の実施形態では、rAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAVLK03、AAV2R471A、AAV DJ、AAV DJ8、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV ITR等を含むが、これらに限定されないAAV血清型に由来するベクターである。一部の実施形態では、AAV(例えば、rAAVベクター)中の核酸は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAVLK03、AAV2R471A、AAV DJ、AAV DJ8、ヤギAAV、ウシAAVのITR、またはマウスAAVのITR等を含む。一部の実施形態では、AAV粒子は、1種またはそれ以上のAAV ITRに隣接した異種導入遺伝子をコードするAAVベクターを含む。
【0141】
一部の実施形態では、rAAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6から選択されるカプセル化タンパク質(例えば、野生型AAV6カプシド、または米国特許付与公開第2012/0164106号に記載されたShH10などの変異体AAV6カプシド)、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9から選択されカプセル化タンパク質(例えば、野生型AAV9カプシド、または米国特許付与公開第2013/0323226号に記載された改変されたAAV9カプシド)、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、チロシンのカプシド突然変異体、ヘパリン結合のカプシド突然変異体、AAV2R471Aカプシド、AAVAAV2/2-7m8カプシド、AAVLK03カプシド、AAVDJカプシド(例えば、AAV-DJ/8カプシド、AAV-DJ/9カプシド、または米国特許付与公開第2012/0066783号に記載された任意の他のカプシド)、AAV2 N587Aカプシド、AAV2 E548Aカプシド、AAV2 N708Aカプシド、AAV V708Kカプシド、ヤギAAVカプシド、AAV1/AAV2キメラカプシド、ウシAAVカプシド、マウスAAVカプシド、rAAV2/HBoV1カプシド、AAV2HBKOカプシド、AAVPHP.BカプシドまたはAAVPHP.eBカプシド、または米国特許第8,283,151号または国際公開第WO/2003/042397号に記載されたAAVカプシドを含む。さらなる実施形態では、rAAV粒子は、クレードA~FからのAAV血清型のカプシドタンパク質を含む。
【0142】
本開示のある態様は、アミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を含むAAV(例えば、rAAV)カプシドタンパク質に関する。一部の実施形態では、アミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、親AAVカプシドタンパク質のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較してN末端アセチル化を変更する。本明細書に記載されているように、AAVカプシドタンパク質のメチオニン(iMet X)から数えて2番目の位置にあるアミノ酸を、N末端アセチル化、トラフィッキング、形質導入、および/または他の翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、ユビキチン化等々)に対する効果について検討することができる。アセチル化、またはAAV粒子に関するその機能的影響を検討するために本明細書に記載されている任意のアッセイを使用して、N末端アセチル化を査定することができる。一部の実施形態では、AAVカプシドタンパク質(例えば、VP1またはVP3)のアミノ酸残基2が、Cys、Ser、Thr、Val、Gly、Asn、Asp、Glu、Ile、Leu、Phe、Gln、Lys、Met、ProまたはTyrで置換される。一部の実施形態では、アミノ酸置換はAAVカプシドのより少ない脱アミド化を生ずる。
【0143】
本開示の他の態様は、脱アミド化を変更するアミノ酸置換を含むAAV(例えば、rAAV)カプシドタンパク質に関する。一部の実施形態では、脱アミド化を「変更する」アミノ酸置換(例えば、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、またはVP3のG716におけるアミノ酸置換)は、例えば、親VP1またはVP3などの置換されていないVP1またはVP3と比較して、より高い頻度の脱アミド化またはより低い頻度の脱アミド化をもたらす。本明細書に記載されているように、AAVカプシドタンパク質(例えば、VP1またはVP3)の潜在的な脱アミド化部位は、脱アミド化、トラフィッキング、形質導入、および/または他の翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、ユビキチン化等々)に対する効果について検討することができる。脱アミド化、またはAAV粒子に関するその機能的影響を検討するための本明細書に記載されている任意のアッセイを使用して、脱アミド化を査定することができる。
【0144】
数カ所の潜在的な脱アミド化部位が本明細書に記載されている。一部の実施形態では、脱アミド化を変更するアミノ酸置換は、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP
3のN715、またはVP3のG716から選択される。例えば、一部の実施形態では、VP1のN57、VP3のN382、VP3のN511、および/またはVP3のN715がAspで置換されて、該アミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較してより高い頻度の脱アミド化をもたらす。他の実施形態では、アミノ酸置換はN57KまたはN57Qであり、該アミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、より低い頻度の脱アミド化をもたらす。さらに他の実施形態では、VP1のG58、VP3のG383、VP3のG512、および/またはVP3のG716が、Glyでないアミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはVal)で置換され、該アミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3の脱アミド化と比較して、より低い頻度の脱アミド化をもたらす。
【0145】
一部の実施形態では、AAVカプシドタンパク質はVP1、VP2、またはVP3である。AAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV LK03、AAV2R471A、AAV2/2~7m8、AAV DJ、AAV DJ8、AAV2N587A、AAV2E548A、AAV2N708A、AAVV708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、またはrAAV2/HBoV1などの本明細書に記載されている任意の典型的なAAVカプシド血清型を含むことができる。AAVカプシドタンパク質は、チロシンおよび/またはヘパリン結合突然変異体などの本明細書に記載されている任意のカプシドタンパク質突然変異体をさらに含むことができる。
【0146】
本開示の他の態様は、rAAV粒子の安定性を改善する方法に関する。一部の実施形態では、該方法は、例えば、本明細書に記載されているように、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2を置換する工程を含む。例えば、一部の実施形態では、VP1のアミノ酸残基2が置換される。他の実施形態では、VP3のアミノ酸残基2が置換される。一部の実施形態では、2位において置換されたアミノ酸は、例えば、本明細書に記載されているように、親VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2より高い頻度でN-アセチル化されている。一部の実施形態では、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2の置換は、rAAV粒子の安定性を、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%改善する。一部の実施形態では、2位において置換されたアミノ酸を有するrAAV粒子の安定性は、野生型または親AAVカプシド、例えば、同じ血清型のAAVカプシドと比較することができる。例えば、一部の実施形態では、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2の置換は、rAAV粒子の安定性を、例えば、野生型カプシドを含むrAAV粒子の安定性と比較して、約10%から約100%、約20%から約100%、約30%から約100%、約40%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約90%から約100%、約10%から約90%、約20%から約90%、約30%から約90%、約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約80%から約90%、約10%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、約60%から約80%、約70%から約80%、約10%から約70%、約20%から約70%、約30%から約70%、約40%から約70%、約50%から約70%、約60%から約70%、約10%から約60%、約20%から約60%、約30%から約60
%、約40%から約60%、約50%から約60%、約10%から約50%、約20%から約50%、約30%から約50%、約40%から約50%、約10%から約40%、約20%から約40%、約30%から約40%、約10%から約30%、約20%から約30%、または約10%から約20%のいずれかの比率で改善する。AAV粒子の安定性は、示差走査蛍光測定(DSF)、示差走査熱量測定(DSC)、他の熱変性アッセイ、タンパク質の分解に対する感受性、変性を観察する撮像または構造分析(例えば、電子顕微鏡を使用して)、形質導入の有効度または別の機能的アッセイを含むが、これらに限定されない、当技術分野で公知の種々のアッセイを使用して、指定された時間間隔で特定の温度(例えば、熱的安定性のために、室温または4℃)に保たれた、または特定のpH(例えば、pH安定性)で処理された等のAAV粒子組成物について測定することができる。
【0147】
本開示の他の態様は、rAAV粒子のアセンブリを改善する方法に関する。一部の実施形態では、該方法は、例えば、本明細書に記載されているように、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2を置換する工程を含む。例えば、一部の実施形態では、VP1のアミノ酸残基2が置換される。他の実施形態では、VP3のアミノ酸残基2が置換される。一部の実施形態では、2位において置換されたアミノ酸は、例えば、本明細書に記載されているように、親VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2より高い頻度でN-アセチル化される。一部の実施形態では、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2の置換は、rAAV粒子のアセンブリを、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%改善する。一部の実施形態では、2位において置換されたアミノ酸を有するrAAV粒子のアセンブリは、野生型または親AAVカプシド、例えば、同じ血清型のAAVカプシドと比較することができる。例えば、一部の実施形態では、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2の置換は、rAAV粒子のアセンブリを、例えば、野生型カプシドを含むrAAV粒子のアセンブリと比較して、約10%から約100%、約20%から約100%、約30%から約100%、約40%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約90%から約100%、約10%から約90%、約20%から約90%、約30%から約90%、約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約80%から約90%、約10%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、約60%から約80%、約70%から約80%、約10%から約70%、約20%から約70%、約30%から約70%、約40%から約70%、約50%から約70%、約60%から約70%、約10%から約60%、約20%から約60%、約30%から約60%、約40%から約60%、約50%から約60%、約10%から約50%、約20%から約50%、約30%から約50%、約40%から約50%、約10%から約40%、約20%から約40%、約30%から約40%、約10%から約30%、約20%から約30%、または約10%から約20%のいずれかの比率で改善する。AAV粒子アセンブリは、粒子産生量および/または速度の測定、カプシド産生の定量(例えば、本明細書に記載されている方法のいずれかを使用して精製した後)、完全なベクターに対する空のカプシドの産生のアッセイ、形質導入の有効度の測定、粒子形成を観察する撮像または構造分析(例えば、電子顕微鏡を使用して)、AAVカプシドタンパク質の産生(例えば、ウェスタンブロット法によりアッセイされる)等を含むが、これらに限定されない当技術分野で公知の種々のアッセイを使用して測定することができる。
【0148】
本開示の他の態様は、rAAV粒子の形質導入を改善する方法に関する。一部の実施形態では、該方法は、例えば、本明細書に記載されているように、VP1および/またはV
P3のアミノ酸残基2を置換する工程を含む。例えば、一部の実施形態では、VP1のアミノ酸残基2が置換される。他の実施形態では、VP3のアミノ酸残基2が置換される。一部の実施形態では、2位において置換されたアミノ酸は、例えば、本明細書に記載されているように、親のVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2より高い頻度でN-アセチル化される。一部の実施形態では、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2の置換は、rAAV粒子の形質導入を、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%改善する。一部の実施形態では、2位において置換されたアミノ酸を有するrAAV粒子の形質導入は、野生型または親AAVカプシド、例えば、同じ血清型のAAVカプシドと比較することができる。例えば、一部の実施形態では、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2の置換は、rAAV粒子の形質導入を、例えば、野生型カプシドを含むrAAV粒子の形質導入と比較して、約10%から約100%、約20%から約100%、約30%から約100%、約40%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約90%から約100%、約10%から約90%、約20%から約90%、約30%から約90%、約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約80%から約90%、約10%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、約60%から約80%、約70%から約80%、約10%から約70%、約20%から約70%、約30%から約70%、約40%から約70%、約50%から約70%、約60%から約70%、約10%から約60%、約20%から約60%、約30%から約60%、約40%から約60%、約50%から約60%、約10%から約50%、約20%から約50%、約30%から約50%、約40%から約50%、約10%から約40%、約20%から約40%、約30%から約40%、約10%から約30%、約20%から約30%、または約10%から約20%のいずれかの比率で改善する。AAV粒子の形質導入は、本明細書に記載されている形質導入の有効度のアッセイを含むが、これらに限定されない当技術分野で公知の種々のアッセイを使用して測定することができる。一部の実施形態では、本発明は、例えば、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2を置換することにより、rAAV粒子の形質導入を減少させる方法を提供する。
【0149】
本開示の他の態様は、rAAV粒子の安定性を改善する方法に関する。一部の実施形態では、該方法は、例えば、本明細書に記載されているように、脱アミド化を変更する、VP1および/またはVP3のアミノ酸を置換する工程を含む。例えば、一部の実施形態では、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、またはVP3のG716が置換される。一部の実施形態では、置換されたアミノ酸は、例えば、本明細書に記載されているように、親VP1および/またはVP3のアミノ酸残基より高い頻度で脱アミド化される。一部の実施形態では、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、および/またはVP3のG716の置換は、rAAV粒子の安定性を、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%改善する。一部の実施形態では、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN
715、またはVP3のG716が置換されたrAAV粒子の安定性を、野生型または親AAVカプシド、例えば、同じ血清型のAAVカプシドと比較することができる。例えば、一部の実施形態では、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、および/またはVP3のG716の置換は、rAAV粒子の安定性を、例えば、野生型カプシドを含むrAAV粒子の安定性と比較して、約10%から約100%、約20%から約100%、約30%から約100%、約40%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約90%から約100%、約10%から約90%、約20%から約90%、約30%から約90%、約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約80%から約90%、約10%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、約60%から約80%、約70%から約80%、約10%から約70%、約20%から約70%、約30%から約70%、約40%から約70%、約50%から約70%、約60%から約70%、約10%から約60%、約20%から約60%、約30%から約60%、約40%から約60%、約50%から約60%、約10%から約50%、約20%から約50%、約30%から約50%、約40%から約50%、約10%から約40%、約20%から約40%、約30%から約40%、約10%から約30%、約20%から約30%、または約10%から約20%のいずれかの比率で改善する。AAV粒子の安定性は、示差走査蛍光測定(DSF)、示差走査熱量測定(DSC)、他の熱変性アッセイ、タンパク質の分解に対する感受性、変性を観察する撮像または構造分析(例えば、電子顕微鏡を使用して)、形質導入の有効度または別の機能的アッセイを含むが、これらに限定されない、当技術分野で公知の種々のアッセイを使用して、指定された時間間隔で特定の温度(例えば、熱的安定性のために、室温または4℃)に保たれた、または特定のpH(例えば、pH安定性)で処理された等のAAV粒子組成物について測定することができる。
【0150】
本開示の他の態様は、rAAV粒子のアセンブリを改善する方法に関する。一部の実施形態では、該方法は、例えば、本明細書に記載されているように、脱アミド化を変更する、VP1および/またはVP3のアミノ酸を置換する工程を含む。例えば、一部の実施形態では、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、またはVP3のG716が置換される。一部の実施形態では、置換されたアミノ酸は、例えば、本明細書に記載されているように、親VP1および/またはVP3のアミノ酸残基より高い頻度で脱アミド化される。一部の実施形態では、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、および/またはVP3のG716の置換は、rAAV粒子のアセンブリを、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%改善する。一部の実施形態では、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、またはVP3のG716が置換されたrAAV粒子の安定性を、野生型または親AAVカプシド、例えば、同じ血清型のAAVカプシドと比較することができる。例えば、一部の実施形態では、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、および/またはVP3のG716の置換は、rAAV粒子のアセンブリを、例えば、野生型カプシドを含むrAAV粒子のアセンブリと比較して、約10%から約100%、約20%から約100%、約30%から約100%、約40%から約100%、約5
0%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約90%から約100%、約10%から約90%、約20%から約90%、約30%から約90%、約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約80%から約90%、約10%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、約60%から約80%、約70%から約80%、約10%から約70%、約20%から約70%、約30%から約70%、約40%から約70%、約50%から約70%、約60%から約70%、約10%から約60%、約20%から約60%、約30%から約60%、約40%から約60%、約50%から約60%、約10%から約50%、約20%から約50%、約30%から約50%、約40%から約50%、約10%から約40%、約20%から約40%、約30%から約40%、約10%から約30%、約20%から約30%、または約10%から約20%のいずれかの比率で改善する。AAV粒子アセンブリは、粒子産生量および/または速度の測定、カプシド産生の定量(例えば、本明細書に記載されている方法のいずれかを使用して精製した後)、完全なベクターに対する空のカプシドの産生のアッセイ、形質導入の有効度の測定、粒子形成を観察する撮像または構造分析(例えば、電子顕微鏡を使用して)、AAVカプシドタンパク質の産生(例えば、ウェスタンブロット法によりアッセイされる)等を含むが、これらに限定されない当技術分野で公知の種々のアッセイを使用して測定することができる。
【0151】
本開示の他の態様は、rAAV粒子の形質導入を改善する方法に関する。一部の実施形態では、該方法は、例えば、本明細書に記載されているように、脱アミド化を変更する、VP1および/またはVP3のアミノ酸を置換する工程を含む。例えば、一部の実施形態では、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、またはVP3のG716が置換される。一部の実施形態では、置換されたアミノ酸は、例えば、本明細書に記載されているように、親VP1および/またはVP3のアミノ酸残基より高い頻度で脱アミド化される。一部の実施形態では、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、および/またはVP3のG716の置換は、rAAV粒子の形質導入を、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%改善する。一部の実施形態では、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、またはVP3のG716が置換されたrAAV粒子の安定性を、野生型または親AAVカプシド、例えば、同じ血清型のAAVカプシドと比較することができる。例えば、一部の実施形態では、VP1のA35、VP1のN57、VP1のG58、VP3のN382、VP3のG383、VP3のN511、VP3のG512、VP3のN715、および/またはVP3のG716の置換は、rAAV粒子の形質導入を、例えば、野生型カプシドを含むrAAV粒子の形質導入と比較して、約10%から約100%、約20%から約100%、約30%から約100%、約40%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約90%から約100%、約10%から約90%、約20%から約90%、約30%から約90%、約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約80%から約90%、約10%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、約60%から約80%、約70%から約80%、約10%から約70%、約20%から約70%、約30%から約70%、約40%から約70%、約50%から約70%、約60%から
約70%、約10%から約60%、約20%から約60%、約30%から約60%、約40%から約60%、約50%から約60%、約10%から約50%、約20%から約50%、約30%から約50%、約40%から約50%、約10%から約40%、約20%から約40%、約30%から約40%、約10%から約30%、約20%から約30%、または約10%から約20%のいずれかの比率で改善する。AAV粒子の形質導入は、本明細書に記載されている形質導入の有効度のアッセイを含むが、これらに限定されない当技術分野で公知の種々のアッセイを使用して測定することができる。
【0152】
一部の態様では、本発明は、組換え自己補完ゲノム(例えば、自己相補性または自己補完するrAAVベクター)を含むウイルス粒子を提供する。自己補完するベクターゲノムを有するAAVウイルス粒子および自己補完するAAVゲノムの使用方法は、各々が参照によってその全体を本明細書に組み入れる、米国特許第6,596,535号;第7,125,717号;第7,465,583号;第7,785,888号;第7,790,154号;第7,846,729号;第8,093,054号;および第8,361,457号;およびWang Z.ら、(2003)Gene Ther 10:2105~2111頁に記載されている。自己補完するゲノムを含むrAAVは、その部分的に補完する配列(例えば、異種核酸のコードする、およびコードしない鎖を補完する)の力で二本鎖DNA分子を速やかに形成する。一部の実施形態では、ベクターは、異種核酸をコードする第1の核酸配列および核酸の相補体をコードする第2の核酸配列を含み、第1の核酸配列は、そのほとんどまたはすべての長さに沿って、第2の核酸配列と鎖内塩基対を形成することができる。
【0153】
一部の実施形態では、第1の異種核酸配列と第2の異種核酸配列が、突然変異ITR(例えば、右ITR)によって連結される。一部の実施形態では、該ITRは、ポリヌクレオチド配列5’-CACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGAGGCCGGGCGACCAAAGGTCGCCCACGCCCGGGCTTTGCCCGGGCG-3’(配列番号8)を含む。突然変異したITRは、末端解離配列を含むD領域の欠失を含む。その結果、AAVウイルスゲノムを複製したときに、repタンパク質はウイルスゲノムを突然変異ITRで切断されず、それなりに:AAV ITR、調節配列を含む第1の異種ポリヌクレオチド配列、突然変異したAAV ITR、第1の異種ポリヌクレオチドと逆方向の第2の異種ポリヌクレオチド、および第3のAAV ITRを5’から3’への順で含む組換えウイルスゲノムが、ウイルスのカプシドにパッケージングされるであろう。
【0154】
異なるAAV血清型が、特定の標的細胞の形質導入を最適化するために、または特定の標的組織(例えば、病変組織)内の特定の細胞型を標的とするために使用される。rAAV粒子は、同じ血清型または混合血清型のウイルスタンパク質およびウイルス核酸を含むことができる。例えば、rAAV粒子は、同じAAV血清型に由来する1種もしくはそれ以上のITRおよびカプシドを含有することができるが、またはrAAV粒子は、rAAV粒子のカプシドと異なるAAV血清型に由来する1種もしくはそれ以上のITRを含有することもできる。
【0155】
一部の実施形態では、AAVカプシドは、突然変異を含み、例えば、カプシドは、突然変異体のカプシドタンパク質を含む。一部の実施形態では、突然変異は、チロシン突然変異またはヘパリン結合突然変異である。一部の実施形態では、突然変異体のカプシドタンパク質は、AAVカプシドを形成する能力を維持する。一部の実施形態では、rAAV粒子は、Y444またはY730(AAV2に従った番号付け)における突然変異などのAAV2またはAAV5のチロシン突然変異体のカプシドを含む(例えば、ZhongL.ら、(2008) Proc Natl Acad Sci USA 105(22):7827~7832頁を参照されたい)。さらなる実施形態では、rAAV粒子は、クレ
ードA~FからのAAV血清型のカプシドタンパク質を含む(Gaoら、J.Virol.2004、78(12):6381頁)。
【0156】
一部の実施形態では、カプシドタンパク質は、ヘパリン硫酸塩プロテオグリカンと相互作用する1箇所またはそれ以上の位置で、またはAAV2のVP1の番号付けに基づく番号付けでアミノ酸484、487、527、532、585または588に対応する1箇所またはそれ以上の位置で、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。ヘパラン硫酸塩プロテオグリカン(HSPG)は、AAV2粒子のために細胞受容体として作用することが当技術分野で公知である(Summerford、C.and Samulski、R. J.(1998)J.Virol.72(2):1438~45頁)。細胞膜におけるAAV2粒子とHSPGの間の結合は、粒子を細胞に取り付けることに役立つ。線維芽細胞成長因子受容体およびαvβ5インテグリンなどの他の細胞表面のタンパク質も、細胞感染を容易にすることができる。結合後、AAV2粒子は、クラスリンでコートされた穴を通る受容体に媒介されるエンドサイトーシスを含む機構により細胞に進入することができる。AAV2粒子は、エンドソームの酸性化でエンドサイトーシスの小胞から放出される。このことは、AAV2粒子が核周囲の領域に、次に細胞核に移行することを可能にする。AAV3粒子もヘパリンに結合することが公知である(Rabinowitz、J.E.ら、(2002) J.Virol.76(2):791~801頁)。
【0157】
AAV2カプシドタンパク質とHSPGの間の結合は、塩基性AAV2カプシドタンパク質残基と負に荷電したグリコサミノグリカン残基の間の静電的相互作用により起こることが公知である(Opie、SRら、(2003) J.Virol.77:6995~7006頁;Kern、Aら、(2003) J.Virol.77:11072~11081頁)。これらの相互作用に影響される特定のカプシド残基は、R484、R487、K527、K532、R585、およびR588を含む。これらの残基における突然変異は、Hela細胞およびヘパリン自体に対するAAV2結合を弱めることが知られている(Opie、SRら、(2003) J.Virol.77:6995~7006頁;Kern、Aら、(2003) J.Virol.77:11072~11081頁;WO第2004/027019号A2、米国特許第7,629,322号)。さらに、理論に拘束されることは望まず、AAV2のVP1の番号付けに基づく番号付けでアミノ酸484、487、527、532、585または588に対応する1つまたはそれ以上の残基におけるアミノ酸置換が、HSPGに結合しないAAVカプシド型の形質導入の性質を調整することができるか、またはHSPGに結合するそれらの能力とは独立のAAVカプシド型の形質導入の性質を調整することができると考えられる。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、VP1、VP2および/またはVP3の位置R484、R487、K527、K532、R585および/またはR588における置換を含み、番号付けはAAV2のVP1に基づく。
【0158】
一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換が、rAAV粒子のヘパリン硫酸塩プロテオグリカンに対する結合を、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約100%低下させる。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパリン硫酸塩プロテオグリカンに対する結合を、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%低下させる(野生型カプシドを含むrAAV粒子の結合と比較して)。一部の実施形態では、1箇所またはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子のヘパリン硫酸塩プロテオグリカンに対する結合を、約10%から約100%のいずれか1つの比
率で低下させる。約20%から約100%、約30%から約100%、約40%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約90%から約100%、約10%から約90%、約20%から約90%、約30%から約90%、約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約80%から約90%、約10%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、約60%から約80%、約70%から約80%、約10%から約70%、約20%から約70%、約30%から約70%、約40%から約70%、約50%から約70%、約60%から約70%、約10%から約60%、約20%から約60%、約30%から約60%、約40%から約60%、約50%から約60%、約10%から約50%、約20%から約50%、約30%から約50%、約40%から約50%、約10%から約40%、約20%から約40%、約30%から約40%、約10%から約30%、約20%から約30%、または約10%から約20%(野生型カプシドを含むrAAV粒子の結合と比較して)。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、野生型rAAV粒子の結合と比較して、ヘパリン硫酸塩プロテオグリカンへrAAV粒子の検出可能な結合を生じない。HSPGに対するAAV粒子の結合を測定する手段は当技術分野で公知であり;例えば、ヘパリン硫酸塩クロマトグラフィーの媒体への結合、またはその表面にHSPGを発現することが公知である細胞への結合である。例えば、Opie、SRら、(2003) J.Virol.77:6995~7006頁およびKern、Aら、(2003) J.Virol.77:11072~11081頁を参照されたい。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子の細胞(例えば、眼またはCNS中の細胞)への形質導入の有効度を、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約100%(野生型カプシドを含むrAAV粒子の形質導入の有効度と比較して)改善する。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上のアミノ酸置換は、rAAV粒子の細胞(例えば、眼またはCNS中の細胞)への形質導入の有効度を、約10%から約100%のいずれか1つの比率で改善する。約20%から約100%、約30%から約100%、約40%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約90%から約100%、約10%から約90%、約20%から約90%、約30%から約90%、約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約80%から約90%、約10%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、約60%から約80%、約70%から約80%、約10%から約70%、約20%から約70%、約30%から約70%、約40%から約70%、約50%から約70%、約60%から約70%、約10%から約60%、約20%から約60%、約30%から約60%、約40%から約60%、約50%から約60%、約10%から約50%、約20%から約50%、約30%から約50%、約40%から約50%、約10%から約40%、約20%から約40%、約30%から約40%、約10%から約30%、約20%から約30%、または約10%から約20%(野生型カプシドを含むrAAV粒子の形質導入の有効度と比較して)。AAV粒子の細胞(例えば、培養または組織の一部における細胞)への形質導入の有効度を測定する手段は当技術分野で公知である。例えば、細胞の集団(例えば、培養または組織の一部における)を、細胞で発現されたときにアッセイ可能な受容体(例えば、GFP蛍光、sFLT産生、その他)を産生するベクターを含有するrAAV粒子の濃度で感染させることができる。
【0159】
AAVカプシドタンパク質
一部の態様では、本発明は、アミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を含むAAVカプシドタンパク質を提供し;アミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、親AAVカプシドタンパク質のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較してN末端アセチル化を変更する。一部の実施形態では、AAVカプシドタンパク質はVP1またはVP3である。一部の実施形態では、AAVカプシドタンパク質(例えば、VP1またはVP3)のアミノ酸残基2は、Cys、Ser、Thr、Val、Gly、Asn、Asp、Glu、Ile、Leu、Phe、Gln、Lys、Met、ProまたはTyrで置換される。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、AAVカプシドタンパク質のより少ない脱アミド化を生ずる。本発明のAAVカプシドタンパク質の非限定的な例は、以下のAAV血清型:AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV LK03、AAV2R471A、AAV2/2~7m8、AAV DJ、AAV DJ8、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAV、またはrAAV2/HBoV1血清型カプシドのいずれかのVP1および/またはVP3を含む。一部の実施形態では、AAVカプシドは、チロシン突然変異またはヘパリン結合突然変異をさらに含む。
【0160】
AAV粒子の産生
トランスフェクション、安定な細胞系統の産生、ならびにアデノウイルス-AAVハイブリッド、ヘルペスウイルス-AAVハイブリッド(Conway、JEら、(1997) J.Virology 71(11):8780~8789頁)およびバキュロウイルス-AAVハイブリッド(Urabe、M.ら、(2002) Human Gene
Therapy 13(16):1935~1943頁;Kotin、R.(2011) Hum Mol Genet.20(R1):R2~R6)を含む感染性ハイブリッドウイルス産生システムを含む、rAAVベクターを産生するための多くの方法が当技術分野で公知である。rAAVウイルス粒子を産生するためのrAAV産生培養は;1)適当な宿主細胞、2)適当なヘルパーウイルス機能、3)AAV repおよびcap遺伝子および遺伝子産物;4)少なくとも1つのAAV ITR配列(例えば、GNPTABをコードするAAVゲノム)に隣接した核酸(治療用核酸など);および5)rAAV産生を支持する適当な培地および培地構成要素のすべてを必要とする。一部の実施形態では、適当な宿主細胞は、霊長類の宿主細胞である。一部の実施形態では、適当な宿主細胞は、HeLa、A549、293、またはPerc.6細胞などのヒトに由来する細胞系統である。一部の実施形態では、適当なヘルパーウイルス機能は、野生型または突然変異体のアデノウイルス(感温性アデノウイルスなど)、ヘルペスウイルス(HSV)、バキュロウイルス、またはヘルパー機能を提供するプラスミド構造により提供される。一部の実施形態では、AAV repおよびcap遺伝子産物は任意のAAV血清型から可能である。一般的に、しかし必ずではなく、AAV rep遺伝子産物は、rep遺伝子産物がrAAVゲノムを複製およびパッケージングするように機能することができる限り、rAAVベクターゲノムのITRと同じ血清型のものである。当技術分野で公知の適当な培地は、rAAVベクターの産生のために使用することができる。これらの培地は、Hyclone LaboratoriesおよびJRHにより産生される、改変Eagle培地(MEM)、Dulbeccoの改変Eagle培地(DMEM)、特に組換えAAVベクターの産生に使用するための慣行の培地製剤に関する、各々その全体が参照によって本明細書に組み入れる米国特許第6,566,118号に記載されたもの、および米国特許第6,723,551号に記載されたSf-900IISFM培地などの慣行の製剤を含む培地を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、AAVヘルパー機能は、アデノウイルスまたはHSVによって提供される。一部の実施形態では、AAVヘルパー機能は、バキュロウイルスにより提供されて、宿主細胞は昆虫細胞(例えば、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda(Sf9)の細胞)である。一部の実施形
態では、AAV cap機能は、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換を提供し、VP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるアミノ酸置換は、親AAV粒子のVP1および/またはVP3のアミノ酸残基2におけるN末端アセチル化と比較してN末端アセチル化を変更する。一部の実施形態では、AAVカプシドタンパク質(例えば、VP1またはVP3)のアミノ酸残基2は、Cys、Ser、Thr、Val、Gly、Asn、Asp、Glu、Ile、Leu、Phe、Gln、Lys、Met、ProまたはTyrで置換される。一部の実施形態では、アミノ酸置換はAAVカプシドのより少ない脱アミド化を生ずる。
【0161】
rAAV粒子を産生する1つの方法は、三重トランスフェクション法である。簡単に説明すると、rep遺伝子およびカプシド遺伝子をヘルパーアデノウイルスプラスミドと一緒に含有するプラスミドは、細胞系統(例えば、HEK-293細胞)にトランスフェクトすることができ(例えば、リン酸カルシウム法を使用して)、ウイルスを収集して、場合により精製することができる。そのように、一部の実施形態では、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸、AAV repおよびcapをコードする核酸、およびAAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸の宿主細胞への三重トランスフェクションにより産生され、該核酸の宿主細胞へのトランスフェクションは、rAAV粒子を産生することができる宿主細胞を発生させる。
【0162】
一部の実施形態では、rAAV粒子は、産生細胞系統法により産生することができる(Martinら、(2013) Human Gene Therapy Methods 24:253~269頁;米国特許付与公開第2004/0224411号;およびLiu、X.L.ら(1999) Gene Ther.6:293~299頁を参照されたい)。簡単に説明すると、ある細胞系統(例えば、HeLa、293、A549、またはPerc.6細胞系統)には、rep遺伝子、カプシド遺伝子、およびプロモーター-異種核酸配列を含むベクターゲノム(例えば、GNPTAB)を含有するプラスミドを、安定にトランスフェクトすることができる。細胞系統は、rAAV産生のためのリードクローンを選択するためにスクリーニングされて、次にそれを産生バイオリアクターに拡大して、ヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルスまたはHSV)に感染させて、rAAV産生を開始させる。その後、ウイルスを収穫して、アデノウイルスを不活性化(例えば、加熱により)および/または除去して、rAAV粒子を精製することができる。そのように、一部の実施形態では、rAAV粒子は、rAAVベクター、AAV repおよびcapをコードする核酸、およびAAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸の1種またはそれ以上を含む産生細胞系統により産生された。本明細書に記載されているように、産生細胞系統法は、三重トランスフェクション法と比較して、大きすぎるゲノムを有するrAAV粒子の産生に有利なこともある。
【0163】
一部の実施形態では、AAV repおよびcap遺伝子および/またはrAAVゲノムをコードする核酸は、産生細胞系統で安定に維持される。一部の実施形態では、AAV
repおよびcap遺伝子および/またはrAAVゲノムをコードする核酸は、1種またはそれ以上のプラスミドに載せて細胞系統に導入されて産生細胞系統を発生する。一部の実施形態では、AAV rep、AAV cap、およびrAAVゲノムが、同じプラスミドで細胞中に導入される。他の実施形態では、AAV rep、AAV capおよびrAAVゲノムが、異なるプラスミドで細胞中に導入される。一部の実施形態では、プラスミドで安定にトランスフェクトされた細胞系統は、該細胞系統の複数の継代(例えば、該細胞の5、10、20、30、40、50代または50代を超える継代)の間該プラスミドを維持する。例えば、プラスミドは、細胞が複製されるときに複製されるか、またはプラスミドが細胞ゲノム中に組み込まれることもある。プラスミドが細胞中(例えば、ヒトの細胞)で自律的に複製されることを可能にする種々の配列が同定されている(例えば、Krysan、P.J.ら(1989) Mol.Cell Biol.9:102
6~1033頁を参照されたい)。一部の実施形態では、プラスミドは、プラスミドを維持する細胞の選択を可能にする選択可能なマーカー(例えば、抗生物質耐性マーカー)を含有することもできる。哺乳動物の細胞で一般的に使用される選択可能なマーカーは、ブラスチシジン、G418、ハイグロマイシンB、ゼオシン、ピューロマイシン、およびそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。核酸を細胞に導入する方法は当技術分野で公知であり、ウイルスの形質導入、カチオン性トランスフェクション(例えば、DEAE-デキストランなどのカチオン性ポリマーまたはリポフェクタミンなどのカチオン性脂質を使用する)、リン酸カルシウムトランスフェクション、マイクロインジェクション、粒子衝撃、電気穿孔、およびナノ粒子トランスフェクションを含むが、これらに限定されない(さらなる詳細については、例えば、Kim, T.K. and Eberwine, J.H.(2010) Anal.Bioanal.Chem.397:3173~3178頁を参照されたい)。
【0164】
一部の実施形態では、AAV repおよびcap遺伝子および/またはrAAVゲノムをコードする核酸は、産生細胞系統のゲノム中に安定に組み込まれる。一部の実施形態では、AAV repおよびcap遺伝子および/またはrAAVゲノムをコードする核酸は、1種またはそれ以上のプラスミドに載せて細胞系統中に導入され、産生細胞系統を発生する。一部の実施形態では、AAV rep、AAV cap、およびrAAVゲノムは、同じプラスミドで細胞に導入される。他の実施形態では、AAV rep、AAV
cap、およびrAAVゲノムは、異なるプラスミドで細胞に導入される。一部の実施形態では、プラスミドは、プラスミドを維持する細胞の選択を可能にする選択可能なマーカー(例えば、抗生物質耐性のマーカー)を含有することができる。核酸を種々の宿主細胞系統に安定に組み込む方法は、当技術分野で公知である。例えば、繰り返される選択(例えば、選択可能なマーカーの使用により)は、選択可能なマーカー(およびAAV capおよびrep遺伝子および/またはrAAVゲノム)を含有する核酸が組み込まれた細胞を選択するために使用することができる。他の実施形態では、核酸は、部位特異的様式で細胞系統に組み込まれて、産生細胞系統を発生することができる。FLP/FRT(例えば、O’Gorman、S.ら(1991) Science 251:1351~1355頁を参照されたい)、Cre/loxP(例えば、Sauer、B. and Henderson、N.(1988) Proc.Natl.Acad.Sci.85:5166~5170頁を参照されたい)、およびphi C31-att(例えば、Groth、A.C. et al.(2000) Proc.Natl.Acad.Sci.97:5995~6000頁を参照されたい)などの数通りの部位特異的組換えシステムが当技術分野で公知である。
【0165】
一部の実施形態では、産生細胞系統は、霊長類の細胞系統(例えば、VeroまたはFRhL-2細胞系統などの非ヒト霊長類細胞系統)から誘導される。一部の実施形態では、細胞系統はヒト細胞系統から誘導される。一部の実施形態では、産生細胞系統は、HeLa、293、A549、またはPERC.6(登録商標)(Crucell)細胞に由来する。例えば、産生細胞系統を発生するための、AAV repおよびcap遺伝子および/または大きすぎるrAAVゲノムをコードする核酸の細胞系統中への導入および/または安定維持/組み込みに当たって、細胞系統はHeLa、293、A549、またはPERC.6(登録商標)(Crucell)細胞系統、またはそれらの誘導体である。
【0166】
一部の実施形態では、産生細胞系統は、懸濁液中における成長に適合されている。当技術分野で公知であるように、固定に依存する細胞は、典型的には、微小担体ビーズなどの基材なしでは懸濁液中で成長することができない。細胞系統を懸濁液中で成長するように適合させることは、例えば、凝集防止のためにカルシウムおよびマグネシウムイオンを欠く培養培地(および場合により消泡剤)を使用し、シリコーン処理化合物でコートした培養容器を使用し、各継代で培養する細胞を選択し、攪拌棒で攪拌するスピナー培養で(大
きい凝集塊または容器の側面におけるよりむしろ)、細胞系統を成長させることを含む。さらなる説明については、例えば、ATCC frequently asked questions document(the world wide web at atcc.org/Global/FAQs/9/1/Adapting%20a%20monolayer%20cell%20line%20to%20suspension-40.aspxで利用できる)およびそこで引用されている参考文献を参照されたい。
【0167】
本発明の適当なAAV産生培養培地は、血清または血清に由来する組換えタンパク質を、0.5%~20%(v/vまたはw/v)のレベルで補完されている。あるいは、当技術分野で公知であるように、AAVベクターは、動物由来の産物を含まない培地ということもできる無血清条件で産生することもできる。当業者は、AAVベクターの産生を支持するようにデザインされた市販のまたは慣行の培地が、産生培養におけるAAVの力価を増大させるために、グルコース、ビタミン、アミノ酸、およびまたは成長因子を含むが、これらに限定されない当技術分野で公知である1種またはそれ以上の細胞培養構成要素で補完されていることもあることを認識することができる。
【0168】
AAV産生培養物は、利用される特定の宿主細胞に適した種々の条件下で(広い温度範囲にわたって、時間の長さを変えて等)成長させることができる。当技術分野で公知であるように、AAV産生培養は、例えば、ローラー瓶、中空繊維フィルター、微小担体、および充填床または流動床のバイオリアクターなどの適当な取り付け依存性容器中で培養することができる取り付け依存性培養を含む。AAVベクター産生培養は、例えば、スピナーフラスコ、攪拌槽バイオリアクター、およびWaveバッグシステムなどの使い捨てシステムを含む種々の方法で培養することができるHeLa、293、およびSF-9細胞などの懸濁に適合された宿主細胞も含むことができる。
【0169】
本発明のAAVベクター粒子は、AAV産生培養から、産生培養の宿主細胞の溶解により、または米国特許第6,566,118号にさらに完全に記載されているように、完全な細胞からAAV粒子を培地中に放出させる当技術分野で公知である条件下で、細胞が培養されるならば、産生培養から使用の終わった培地を収穫することにより収穫することができる。細胞を溶解する適当な方法も、当技術分野で公知であり、例えば複数回の凍結/融解サイクル、超音波処置、微小流動化、および洗剤および/またはプロテアーゼなどの化学物質を用いる処理を含む。
【0170】
さらなる実施形態では、AAV粒子は精製される。本明細書において使用する用語「精製される」は、AAV粒子が天然で生ずるかまたは最初に調製される場合にも存在することがある少なくとも一部の他の構成要素が取り去られたAAV粒子の調製を含む。したがって、例えば、単離されたAAV粒子は、培養溶解物または産生培養上清などの供給源混合物から富化される精製技法を使用して調製することができる。富化は、例えば、溶液中に存在するDNアーゼ耐性粒子(DRP)またはゲノムコピー(gc)の比率により、または感染性によるなどの種々の方法で測定することができるか、またはそれは、第2の、供給源混合物中に存在する可能性のある、ヘルパーウイルス、培地構成要素等を含む産生培養の汚染物質またはプロセス中の汚染物質を含む汚染物質などの妨害物質に関して測定することができる。
【0171】
一部の実施形態では、AAV産生培養収穫物は宿主細胞デブリを除去して清浄化される。一部の実施形態では、産生培養収穫物は、例えば、規格DOHCのMillipore
Millistak+HC Podフィルター、規格A1HCのMillipore Millistak HC Podフィルター、および0.2μmフィルターOpticap XL1O Millipore Express SHC親水性膜フィルターを含む一連のデプスフィルターを通す濾過により清浄化される。清浄化は、遠心分離または当
技術分野で公知の0.2μm以上の細孔サイズの任意の酢酸セルロースフィルターを通す濾過などの当技術分野で公知である種々の他の標準技法によっても達成することができる。
【0172】
一部の実施形態では、AAV産生培養収穫物を、ベンゾナーゼ(登録商標)でさらに処理して、産生培養物中に存在するいかなる高分子量DNAも消化する。一部の実施形態では、ベンゾナーゼ(登録商標)消化は、例えば、1~2.5単位/mlのベンゾナーゼ(登録商標)の最終濃度、周囲温度から37℃の温度範囲で30分から数時間の間を含む当技術分野で公知の標準条件下で実行される。
【0173】
AAV粒子は、以下の精製工程:平衡遠心分離;流通アニオン性交換濾過;AAV粒子を濃縮するための接線流濾過(TFF);アパタイトクロマトグラフィーによるAAV捕捉;ヘルパーウイルスの加熱不活性化;疎水性相互作用クロマトグラフィーによるAAV捕捉;サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による緩衝交換;ナノ濾過;およびアニオン性交換クロマトグラフィー、カチオン性交換クロマトグラフィー、または親和性クロマトグラフィーによるAAV捕捉の1種またはそれ以上を使用して、単離または精製することができる。これらの工程は、単独で、種々の組合せで、または異なる順序で使用することができる。一部の実施形態では、方法は、下に記載される順ですべての工程を含む。AAV粒子を精製する方法は、例えば、Xiaoら、(1998) Journal of Virology 72:2224~2232頁;米国特許第6,989,264号および第8,137,948号;および国際公開WO2010/148143号に見出される。
【0174】
医薬組成物
一部の実施形態では、本開示のAAV粒子(例えば、rAAV粒子)は医薬組成物中にある。該医薬組成物は、本明細書に記載されているまたは当技術分野で公知である任意の様式の投与に適することができる。一部の実施形態では、該医薬組成物は、安定性を改善するように、および/またはrAAV粒子の形質導入の有効度を改善するように;例えば、VP1および/またはVP3の位置2におけるアミノ酸残基を、rAAVカプシドタンパク質のアセチル化を改善するように置換することに使用するために改変されたrAAV粒子を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、安定性および/またはrAAV粒子の形質導入の有効度を調整するように(例えば、安定性および/または形質導入の有効度を増大させるかまたは安定性および/または形質導入の有効度を低下させる);例えば、脱アミド化を調整する(例えば、脱アミド化を増大させるかまたは脱アミド化を減少させる)アミノ酸残基の置換に使用するために改変されたrAAV粒子を含む。
【0175】
一部の実施形態では、rAAV粒子は、薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物中にある。当技術分野で周知のように、薬学的に許容される賦形剤は、薬理学的に効果的な物質の投与を容易にする比較的不活性な物質であり、液体溶液または懸濁液として、エマルションとして、または使用前に液体に溶解または懸濁するために適当な固体形態として供給することができる。例えば、賦形剤は、形態または形を保持している状態を与えるか、または希釈剤として役立つことができる。適当な賦形剤には、安定剤、加湿および乳化剤、浸透圧を変えるための塩、カプセル化剤、pH緩衝物質、および緩衝剤が含まれるが、これらに限定されない。そのような賦形剤は、過度の毒性がなく投与することができる、眼に直接送達するために適当な任意の医薬品を含む。薬学的に許容される賦形剤は、ソルビトール、任意の種々のツイーン化合物、および水、食塩水、グリセロールおよびエタノールなどの液体が含むが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩は、それらに含めることができ、例えば、塩酸塩、臭素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸塩である。薬学的に許容される賦形剤の詳細な考察は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL
SCIENCES(Mack Pub.Co.、ニュージャージー州、1991)で利用できる。一部の実施形態では、本明細書に記載されているrAAV粒子および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物は、ヒトに投与するために適する。そのような担体は当技術分野で周知である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第15版、1035~1038頁および1570~1580頁を参照されたい)。
【0176】
そのような薬学的に許容される担体は、水およびピーナツ油、ダイズ油、ミネラル油などの石油、動物、植物または合成起源の油を含む油などの滅菌液体であることができる。食塩水溶液およびデキストロース水溶液、ポリエチレングリコール(PEG)およびグリセロール溶液も、液体担体として、特に注射用溶液のために使用することができる。医薬組成物は、追加の成分、例えば防腐剤、緩衝剤、等張剤、酸化防止剤および安定剤、非イオン性の加湿または浄化剤、増粘剤等をさらに含むことができる。本明細書に記載されている医薬組成物は、単一の投薬単位または多回投与形態で包装することができる。組成物は、一般的に滅菌および実質的に等張の溶液として製剤化される。
【0177】
キットおよび製造品
本発明は、本開示のrAAV粒子のいずれかおよび/または医薬組成物を含むキットまたは製造品も提供する。キットまたは製造品は、本発明の任意のrAAV粒子またはrAAV粒子組成物を含むことができる。一部の実施形態では、キットは、安定性を改善するために、および/またはrAAV粒子の形質導入の有効度を改善するために使用される;例えば、rAAVカプシドタンパク質のアセチル化を改善するためにVP1および/またはVP3の位置2におけるアミノ酸残基を置換することに使用するために使用される。一部の実施形態では、キットは、rAAV粒子の安定性および/または形質導入の有効度を調整するために使用される(例えば、安定性および/もしくは形質導入の有効度を向上させるために、または安定性および/もしくは形質導入の有効度を低下させるために);例えば、脱アミド化を調整する(例えば、脱アミド化を増大させるかまたは脱アミド化を減少させる)アミノ酸残基の置換のために使用される。
【0178】
一部の実施形態では、キットまたは製造品は、rAAV粒子の組成物を投与するための使用説明書をさらに含む。本明細書に記載されているキットまたは製造品は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、注射針、注射器、および任意の本明細書に記載されている方法を実行するための使用説明書を含む包装挿入物を含む、商業的なおよび使用者の立場から望ましい他の材料をさらに含むことができる。適当な包装材料は、例えば、バイアル(封止されたバイアルなど)、容器、アンプル、瓶、ジャー、可撓性包装(例えば、封止されたMylarまたはプラスチックバッグ)等を含む当技術分野で公知である任意の包装材料に含まれることもあり、それらであることもできる。これらの製造の物品は、さらに滅菌され、および/または封止されていることもある。
【0179】
一部の実施形態では、キットまたは製造品は、本明細書に記載されている緩衝剤および/または薬学的に許容される賦形剤の1種またはそれ以上(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub.Co.、ニュージャージー州、1991に記載されているような)をさらに含有する。一部の実施形態では、キットまたは製造品は1種またはそれ以上の本明細書に記載されている薬学的に許容される賦形剤、担体、溶液、および/または追加の成分を含む。本明細書に記載されているキットまたは製造品は、単一の単位投薬または多回投与形態で包装することができる。キットまたは製造品の内容物は、一般的に滅菌されて製剤化され、凍結乾燥されるかまたは実質的に等張の溶液として提供することができる。
【実施例0180】
本発明は、以下の実施例を参照することによりさらに完全に理解されるであろう。しかしながら、それらは、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。本明細書に記載されている実施例および実施形態は、例示の目的のためだけであること、およびそれらに照らした種々の改変または変化が、当業者に示唆されており、本出願の精神および趣旨および添付の請求項の範囲内に含まれるべきであることは理解される。
AAVは、二十面体のシェルにカプセル化された単鎖DNAゲノムを有する小さいおよびエンベロープのないパルボウイルスである。カプシドの各々は、3種のウイルスカプシドタンパク質、VP1(87kDa)、VP2(73kDa)およびVP3(62kDa)の60コピーを約1:1:10比で含む。3種のウイルスカプシドタンパク質は、同じオープンリーディングフレームから選択的スプライシングおよび非定型開始コドンを使用することにより発現されて、したがって重なる配列を有する。VP1は、VP3と比較して約137個の追加のN末端アミノ酸残基を有し、一方、VP2は、VP3と比較して約65個の追加のN末端アミノ酸残基を有する。少なくとも13種のAAV血清型および約150通りの遺伝子配列が、ヒトおよび非ヒト霊長類組織から単離されており;AAV血清型は、ウイルスカプシドタンパク質のアミノ酸配列および標的とするそれらの対応する細胞受容体および共受容体が異なる。
AAVカプシドは、ゲノムの内部を保護することに加えて、受容体結合、ウイルスのエンドソームからの脱出、およびウイルスDNAの核中への輸送を媒介することで、ウイルスの感染サイクルにおいて重要な役割を演じて、したがって、ウイルスの感染性に直接強く影響する。VP1のN末端は、ホスホリパーゼPLA2ドメイン(a.a.52~97)を含有することが示されており、そのことは、ウイルスのエンドソーム脱出に決定的に重要である[1~3]。VP1およびVP2のN末端は、3個の塩基性アミノ酸クラスターも、核局在化シグナルとして含有する。これらの配列は、異なるAAV血清型の間で高度に保存されている。これらのアミノ酸の突然変異は、感染性を完全に低下させるかまたは無効にすることが示されている[4]。それに加えて、各AAV血清型は、対応する配列に特異的な受容体および共受容体を有する。例えば、ヘパリン硫酸塩プロテオグリカンは、AAV2の主要な受容体として同定されており、および、αVβ5インテグリン、線維芽細胞増殖因子受容体1、および肝細胞成長受容体を含む数種類の他の共受容体が同定されている[5~8]。AAV2カプシドタンパク質の突然変異の分析により、塩基性アミノ酸(アルギニン484、487、585、およびリシン532)の群が、ヘパリンおよびHeLa細胞結合に寄与するヘパリン結合モチーフとして同定された[9]。AAV2中のNGRドメインは、ウイルスの細胞侵入のために必須のインテグリンα5β1結合ドメインとして同定された[10]。まとめると、ウイルス感染サイクルにおいて、ウイルスカプシドタンパク質配列は、細胞のターゲティングおよびトラフィッキングで重要である。異なる産生条件が、ウイルスカプシドタンパク質の異なる発現レベル、翻訳後修飾、および先端切断の原因になるので、ウイルスカプシドタンパク質は、遺伝子治療の開発プログラムにおいて生成物の一貫性を確実にするために、特徴付けされてモニターされる必要がある。
伝統的に、SDS-PAGEが、AAVウイルスカプシドタンパク質を特徴付けして、およその分子量情報を87kDa、73kDaおよび62kDaなどと提供するために使用されてきた。おそらく、VP2以外のウイルスカプシドタンパク質の封鎖されたN末端のために、エドマン配列決定から配列情報は得られなかった。複数のAAVのX線構造が解析されたが、VP3領域の配列が結晶構造で観察されただけであった。VP3の15種のN末端アミノ酸残基が、おそらくその固有の障害のために、X線構造でまだ不明であった[11~13]。原子構造におけるVP1およびVP2のN末端領域の情報の欠如が、カプシドにおけるVP1およびVP2の低い化学量論に基づくことはあり得る。それに加えて、一部の文献で報告されたように、VP1およびVP2のN末端は、カプシドの内側に埋め込まれていて、自然のままの状態では、抗体に近づくことができない[3、14、15]。従来、ゲル-LC/MSの方法(SDS-PAGE、ゲル中のトリプシンによる消化およびLC/MS/MS)がVPの特徴付けで使用された[16~18]。しかしながら、VP1、VP2およびVP3のN末端は、これらの手法を使用しても確認されず、その理由は、これらの方法は、ゲルからのペプチドの回収が限定されたために、VPの100%の配列適用範囲を得ることができなかったことにある。
MALDI-TOF MSを使用した直接分析が、有機酸を用いた解離後のタバコモザイクウイルスU2を含む数種類のウイルスカプシドタンパク質について報告された[19]。アミド水素交換後の直接ペプチドマッピングおよびマススペクトロメトリーが、ブロモモザイクウイルス(BMV)のカプシドにおけるpHに誘発される構造変化を研究するために使用された[20]。AAVは、カプシドタンパク質およびゲノムのみを含有するエンベロープのないウイルスであるから、AAVカプシドは、タンパク質のRP-LC/MSおよびペプチドマッピングのLC/MS/MSによって直接分析することができて、SDS-PAGE分離をしないでカプシド解離後の100%の配列適用範囲が得られた。DNA断片は、空隙体積で溶出することができ、したがってLC/MSによるタンパク質/ペプチドの検出に干渉しなかった。これらの方法を検討するために、変性後の異なる型のAAVの直接LC/MSを使用して、AAVカプシドタンパク質のタンパク質配列および翻訳後修飾をモニターした。本明細書に記載されているように、AAVのVP1、VP2およびVP3のN末端は、マススペクトロメトリーにより確認されている。VP1およびVP3のN末端アセチル化は、異なる血清型のAAVでも同定された。AAVの直接LC/MS/MSによるペプチドマッピングが、VP1、VP2およびVP3の配列適用範囲を提供してVP1およびVP3のN末端アセチル化を確認するために開発された。
velosのための供給源のパラメーターは以下の通りであった:電源電圧:2.5kv、キャピラリー温度275℃;SレンズRFレベル:55%。データは、正確な1msを60,000に分割して、イオントラップで10個のMS/MSを用いてトップテンデータに依存的な方法を使用して得た。AAV2ウイルスカプシドタンパク質配列に対するデータベース検索のために、Mascotを使用した。データベース検索のために10ppmのMS許容差および0.8Daのms/ms許容差を使用した。
各血清型のVP1、VP2およびVP3の正確な質量は固有であり、それ故、完全タンパク質の分析は、AAVカプシド血清型を区別するための同一性試験として使用することができる。表4~6は、13種の一般的なAAV血清型の間のVPの質量の相違を示す。通常のフォントで示したのは、10を超えるデルタ質量であり、10未満のデルタ質量は太字にした。
これらの結果は、完全タンパク質の分析およびLC/MS/MSは、VPをプロファイルして、VPの発現、翻訳後修飾、および先端切断をモニターして、VLP産生時における生成物の一貫性を確実にするために使用することができることを示す。これらの2通りの分析は、部位特異的突然変異生成またはカプシドタンパク質の遺伝子操作の適用のための構造の特徴付けを確認するために使用することもできる。