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特開2024-2347内面に樹脂層を有する飲食料用缶、および樹脂層形成用塗料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002347
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】内面に樹脂層を有する飲食料用缶、および樹脂層形成用塗料
(51)【国際特許分類】
   B65D 8/00 20060101AFI20231228BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20231228BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B65D8/00 A
C09D7/63
C09D201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101478
(22)【出願日】2022-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】夏本 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄介
【テーマコード(参考)】
3E061
4J038
【Fターム(参考)】
3E061AA15
3E061AB05
3E061AB08
3E061AC02
3E061AC09
3E061BA01
3E061BA02
4J038BA212
4J038CB001
4J038CG001
4J038DB001
4J038DD001
4J038DG001
4J038KA06
4J038MA09
4J038MA12
4J038NA07
4J038PA06
4J038PA19
4J038PB04
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】本発明は、異物除去性および水切れ性が優れる飲食料用缶を提供することを目的とする。
【解決手段】缶胴と缶底とを有する飲食料用缶であって、少なくとも前記缶胴または缶底の内面に樹脂層を有し、前記樹脂層の表面における、水の付着エネルギーが27mJ/m以下である飲食料用缶により解決することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶胴と缶底とを有する飲食料用缶であって、
少なくとも前記缶胴または缶底の内面に樹脂層を有し、
前記樹脂層の表面における、水の付着エネルギーが27mJ/m以下である飲食料用缶。
【請求項2】
前記樹脂層表面の動摩擦係数が0.15以下であることを特徴とする請求項1に記載の飲食料用缶。
【請求項3】
前記樹脂層のゲル分率が85質量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の飲食料用缶。
【請求項4】
前記樹脂層が炭化水素系表面改質剤を含む、請求項1または2に記載の飲食料用缶。
【請求項5】
缶胴と缶底とを有する飲食料用缶の、
前記缶胴または缶底の内面に樹脂層を形成するための塗料であって、
前記樹脂層は前記塗料を塗装して得た塗膜からなり、
前記樹脂層の表面における、水の付着エネルギーが27mJ/m以下である、塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶胴または缶底の内面に樹脂層を有する飲食料用缶、およびその樹脂層を形成するための塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食料用缶は、製缶工場で生産されたのち梱包され、内容物の充填工場へ運搬される。内容物充填工場にて開梱された缶は充填ラインに供給され、リンサーと呼ばれる装置を用いて空缶内部に水を噴射して洗浄される。この洗浄工程において、空缶内の異物を確実に取り除き、かつ洗浄水を効率よく排除することが求められる。
【0003】
例えば特許文献1には、缶胴を洗浄する段階において、缶内面の異物をより確実に除去することを目的とする異物除去方法及び異物除去装置が開示されている。同文献には、洗浄前に除電エアを噴きつける工程を設けることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、節水が可能な容器洗浄設備及び容器洗浄方法が開示されている。同文献には、洗浄用水に周囲の空気を吸引混合させて噴射する気液混合ノズルを備えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-051897号公報
【特許文献2】特開2018-094462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献による洗浄工程によっても、異物を完全に除去することができず水圧により異物が押し当てられ、異物が残存する問題があった(以下、異物の除去しやすさを「異物除去性」と称す))。また、洗浄水が空缶内面に残留し歩留まりが低下する他、内容物の品質に悪影響を及ぼす問題があった(以下、洗浄水の排除しやすさを「水切れ性」と称す)。
【0007】
そこで、本発明は、異物除去性および水切れ性が優れる飲食料用缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の飲食料用缶は、缶胴と缶底とを有する飲食料用缶であって、
少なくとも前記缶胴または缶底の内面に樹脂層を有し、
前記樹脂層の表面における、水の付着エネルギーが27mJ/m以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空缶内の異物を取り除き易く、かつ洗浄水の残留しにくい樹脂層を有するため、飲料や食品が缶に充填されても内容物の品質が劣化しにくい飲食料用缶を歩留まり良く提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されず、以下の例示が本発明を限定することはない。また、本発明の「飲食料用缶」とは「飲料用缶」および「食料用缶」の総称であり、本明細書においては単に「缶」と表記する場合もある。
【0011】
(缶の構成)
飲食料用缶は、缶の下面である缶底と、缶の胴体部である缶胴とを有している。缶は、缶底及び缶胴が一体化又は接合状態にある有底筒状であり、上部は食品又は飲料を充填後に蓋により密閉される。蓋はそれ自体が開封できる形態、または蓋の一部の領域に開封可能な開口部が形成された形態が好ましい。
上記缶は、成形性の点でスチール、又はアルミニウムを素材とする金属を用いることが好ましい。金属には、公知の化成処理層、めっき層、プライマー層等が設けられていても良い。
【0012】
(飲食料用缶の製造方法)
飲食料用缶の製造方法の一例について説明する。
缶体を形成する方法としては、絞りしごき加工により予め、金属板からなる有底筒状の缶体を形成する方法(得られた缶はツーピース缶と呼ばれる。)、及び、金属板を筒状に成形しその一方の開口部に下面となる缶底を巻き締めることで有底筒状の缶体を得る方法(得られた缶はスリーピース缶と呼ばれる。)が挙げられる。どちらの場合も、必要に応じて缶体外面の塗装又は印刷を行ったのち、缶体上部の開放端にフランジ加工をすることができる。また、金属板には、缶体を形成したのち、脱脂処理、化成処理等の、当該技術分野において行われる従来公知の処理を任意でおこなってもよい。
【0013】
缶内面に樹脂層を有する飲食料用缶を製造する場合、ツーピース缶では、有底筒状の缶体を形成した後、スプレー塗装により塗料を塗装し焼き付けを行うことで樹脂層を形成する。スリーピース缶の場合は、成形前の金属板の、缶内面となる予定の領域の一部又は全部に塗料を塗装し焼き付けを行うことで、樹脂層を予め形成することができる。
【0014】
塗料の塗装方法は、エアスプレー、エアレススプレー、静電スプレー等のスプレー塗装、ロールコーター塗装、浸漬塗装、電着塗装等が好ましく、ツーピース缶においてはスプレー塗装がより好ましく、スリーピース缶においてはロールコーター塗装がより好ましい。塗料の乾燥及び均一な樹脂層の形成のため、塗装の後、速やかに焼き付け処理を行うことが好ましい。
焼き付け工程における条件は、塗料の乾燥・樹脂層形成が可能な条件を適宜選択できる。例えば、150~280℃、10秒間~30分間程度で行うことができ、180~250℃、1分間~15分間程度で行ってもよい。
【0015】
一方、フィルムを缶内面に貼り付けて樹脂層を形成する方法も好ましい。
【0016】
(樹脂層)
[水の付着エネルギー]
缶胴又は缶底の内面に形成された樹脂層は、水の付着エネルギー(以下、単に「付着エネルギー」とも呼ぶ)が27mJ/m以下であって、25mJ/m以下が好ましく、22mJ/m以下がより好ましい。付着エネルギーが27mJ/m以下で、撥水性が向上し洗浄水を効率よく排除することができるため水切れ性が向上する。付着エネルギーが低いほど好ましいため、下限値は特に限定されない。付着エネルギーは、表面からの水の滑落のしやすさを表す指標であり、樹脂層の表面に水を滴下し、樹脂層を傾けたときの水が滑り出した時の滑落角αおよび液滴質量mを用いて下記式(1)に示す計算式から算出され、後述する実施例に記載の方法で求める。
水の表面付着エネルギーをEとすると、Eは、この滑落角αを用いて、以下に示す式で表される。ここで、mは液滴の質量、gは重力加速度、rは液滴の接触半径である。
E=(mgsinα)/2πr ・・・式(1)
式(1)における、各要素の単位は以下のとおりである。
E:mJ/m
m:mg
g:m/s
α:°
r:μm
【0017】
樹脂層の付着エネルギーは、例えば塗料に添加して用いる表面改質剤の粒子径及び種類により調整できる。樹脂層を形成する塗料の乾燥焼き付け工程において、塗膜表面に浮上した表面改質剤、あるいは塗膜厚より大きな粒径の表面改質剤が凸部を形成する。また、更に一部の表面改質剤は焼き付けにより溶融し塗膜に凹部を形成する。凹凸の形成により水の接触面積が減少し、付着エネルギーが低下する。
表面改質剤によって樹脂層の付着エネルギーを低下させるためには表面改質剤の粒子径が大きいことが好ましい。また、塗膜形成に用いる他の樹脂種と比べて表面改質剤の比重が小さいことや、表面改質剤成分の疎水性が高いことも好ましい。
また、樹脂層の付着エネルギーは、樹脂層を形成する樹脂の疎水性を調整することによっても調整できる。樹脂が疎水性であると付着エネルギーが低下するため、用いる樹脂は疎水性であることが好ましい。一方、水性塗料を用いる場合には、水への溶解・または分散性のため親水性の樹脂を用いることがある。親水性の樹脂を用いる場合には、疎水性の樹脂と混合あるいは反応により複合化するか、または上述した表面改質剤を使用することで付着エネルギーを低減させることが好ましい。
【0018】
[動摩擦係数]
樹脂層表面の動摩擦係数は、0.15以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。動摩擦係数がかかる範囲内であれば樹脂層表面のすべり性が向上し異物除去性および水切れ性が向上する。動摩擦係数は後述する実施例に記載の方法で求める。
【0019】
[ゲル分率]
樹脂層のゲル分率は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。樹脂層のゲル分率がかかる範囲内であれば内容物である食品や飲料中への樹脂層成分の溶出が軽減する。ゲル分率は後述する実施例に記載の方法で求める。
【0020】
樹脂層の単位面積当たりの乾燥質量は12~480mg/dmが好ましく、より好ましくは36~120mg/dmである。
樹脂層は、缶胴内面又は缶底内面の一部又は全部に設けられることが好ましく、缶胴内面の一部又は全部であることも好ましい。塗料を用いて樹脂層を形成する場合、樹脂層は、塗布された塗料を乾燥、焼き付けさせた後の層であることを意味する。
【0021】
(塗料)
樹脂層を形成するための塗料について説明する。
塗料は、樹脂を必須成分として含み、溶媒または分散媒を含んでもよい。溶媒および分散媒は有機溶剤、または水のいずれであってもよい。溶媒または分散媒を含む場合には、塗料を塗布した後、溶媒または分散媒を揮発させ、焼き付けることによって樹脂層が形成される。
【0022】
樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、及びオレフィン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を使用することができる。複数種の樹脂を組み合わせて使用してもよいし、反応により異なる種類の樹脂を複合化させてもよい。これらを用いることで、缶の素材であるアルミニウムやスチールへの密着性が向上する。
【0023】
エポキシ樹脂を用いる場合は、ビスフェノール型、ノボラック型、ナフタレン型、ビフェニル型等のエポキシ樹脂が好ましい。これらの中でも、塗膜にした際の加工性、耐レトルト性、金属密着性を考慮すると、ビスフェノール型エポキシ樹脂がより好ましい。
ビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、三菱ケミカル(株)製のJER1007、JER1009、JER1010等が挙げられる。
【0024】
アクリル樹脂は、エチレン性不飽和モノマーを開始重合剤により重合してなる。本発明においては、エチレン性不飽和モノマーは、金属密着性の向上を目的に、カルボキシル基含有モノマーを含むことが好ましい。
カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸〔「アクリル酸」と「メタクリル酸」とを併せて「(メタ)アクリル酸」と表記する。以下同様。〕、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。なお、2つのカルボキシル基から脱水されて生成する酸無水物基含有モノマーも、本発明におけるカルボキシル基含有モノマーに含む。
その他のエチレン性不飽和モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、
ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー、
スチレン、メチルスチレン等の芳香族系モノマー、
N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(n-,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-(n-、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマーが挙げられる。
本発明においてカルボキシル基含有モノマーは、エチレン性不飽和モノマーの合計100モル%のうち5~70モル%含むことが好ましく、10~60モル%含むことがより好ましい。カルボキシル基含有モノマーがかかる範囲であれば、内容物による腐食への耐性や加工性と水切れ性・異物除去性の要求を満たしやすくなる。
【0025】
ポリエステル樹脂は、ポリカルボン酸およびポリオールを反応させてなり、塗膜にした際の加工性、耐内容物汚染性を考慮すると、ポリカルボン酸としてテレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸からなる群より選ばれるいずれかの単量体を含むことが好ましい。
ポリカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸以外の芳香族二塩基酸、脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸およびα、β-不飽和ジカルボン酸、ならびにこれらの酸無水物やアルキルエステルを使用できる。
前記芳香族二塩基酸は、例えばオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、およびビフェニルジカルボン酸等が挙げられる。
前記脂肪族二塩基酸は、例えばコハク酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、およびダイマー酸等が挙げられる。
前記脂環式二塩基酸は、例えば1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、および1,2-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
前記α、β-不飽和ジカルボン酸は、例えばフマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
【0026】
ポリエステル樹脂は分岐構造を有してもよい。そのため二塩基酸に加えて、3官能以上の酸を使用してもよい。その例としては、例えば、(無水)トリメリット酸〔トリメリット酸と無水トリメリット酸とを併せて「(無水)トリメリット酸」と表記する。以下同様。〕、(無水)ピロメリット酸、およびエチレングリコールビストリメリテート二無水物等が挙げられる。
さらに、必要に応じて、1官能の酸を使用してもよい。
本発明においてポリカルボン酸およびポリオールの平均炭素数は4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。炭素数がかかる範囲であれば、内容物による腐食への耐性や金属密着性と水切れ性・異物除去性の要求を満たしやすい。
【0027】
ポリウレタン樹脂は、好ましくはポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とからなり、ポリエステルポリオールは上記ポリエステル樹脂についての説明で示したものと同様の構成であることが好ましい。
前記イソシアネート化合物は、例えばトリメチレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、メチレンビス(4、1-フェニレン)=ジイソシアネート(MDI)、3-イソシアネートメチル-3、5、5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のジイソシアネート、ならびにこれらジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ならびにこれらジイソシアネートの三量体であるイソシアヌレート体、ならびにこれらジイソシアネートのビューレット結合体、ポリメリックジイソシアネート等が挙げられる。
本発明においてイソシアネート化合物は、内容物による腐食への耐性や金属密着性と水切れ性・異物除去性の要求を満たすために、MDI、IPDI、またはその三量体、ポリメリックジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0028】
(表面改質剤)
上述の塗料には、表面改質剤を含むことが好ましい。本発明における表面改質剤とは、好ましくは樹脂層表面に露出して樹脂層表面の付着エネルギーを低下させる添加物を意味し、比重が1.1以下であることが好ましい。
表面改質剤として有用な、比重が1.1以下の化合物としては、長鎖脂肪酸系化合物、長鎖アルコール系化合物、炭化水素系化合物等の、直鎖炭化水素構造を多く有する化合物が挙げられる。
また、塗料の焼き付け工程において融解し表面に浮上することが可能であるということから、常温で固体かつ融点を有するワックスを用いることがより好ましい。ワックスとしては天然ワックスと合成ワックスとを挙げることができる。ワックスの融点としては、80℃~180℃であることが好ましい。
なお、常温とは25℃のことをいう。
【0029】
天然ワックスとしては、例えば蜜蝋、ラノリンワックス、鯨蝋、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、ホホバ油等の動植物系ワックスを挙げることができる。また、モンタンワックス、オゾゲライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の鉱物、石油系ワックス等を挙げることができる。これらの中でも、洗浄水や異物の残留しにくさを考慮すると、カルナバワックス、キャンデリラワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスが好ましい。
【0030】
合成ワックスとしては、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス(PE)、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の炭化水素系ワックス、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス、硬化ヒマシ油、硬化ヒマシ油誘導体等の水素化ワックス等が挙げられる。洗浄水や異物の残留しにくさを考慮すると、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス誘導体が好ましい。
【0031】
表面改質剤として、焼き付け温度よりも低い軟化点および融点を持たないものを使用しても良い。焼き付け温度よりも低い軟化点および融点を持たない表面改質剤としては、例えば、シリカまたは酸化チタンが挙げられる。
【0032】
表面改質剤の配合方法としては、粉末状の表面改質剤を直接配合する方法、または予め表面改質剤分散体を作製した後、配合する方法が挙げられる。これらの中でも凝集物の発生を抑制できる点で後者の方法が好ましい。表面改質剤分散体は、例えば表面改質剤、水を配合して強制乳化させる方法、または、表面改質剤を加熱溶融した液体、または溶媒に溶解させた溶液を攪拌しながら水を少量ずつ滴下して転相乳化させる方法等の公知の方法で作製できる。表面改質剤分散体の不揮発分濃度は、20~50質量%程度である。必要に応じて分散剤を用いてもよい。
【0033】
本発明における表面改質剤の市販品としては、ShamrockTechnologies社製のS-232(ポリエチレン/カルナバ)、S-379(フィッシャートロプシュ)、S-368N5T(ポリエチレン)、S-395N1(ポリエチレン)、SPP15(ポリプロピレン)、BYK社製のCERAFAK100(エチレン-酢酸ビニル共重合体)、CERAFLOUR925N(変性ポリエチレン)、CERAFLOUR962(変性ポリエチレン)、CERAFLOUR970(ポリプロピレン)、CERAFLOUR991(ポリエチレン)、CERAFLOUR964(アマイド)、CERAFLOUR994(アマイド)、MICROPOWDERS社製のMPP-611(ポリエチレン)、PROPYLTEX 325S(ポリプロピレン)、MICROMIDE 520(アマイド)、MICROKLEAR 116(ポリエチレン/カルナバ)等が例示できる。
【0034】
本発明における表面改質剤分散体の市販品としては、ShamrockTechnologies社製のHydrocer257(ポリエチレン)、Hydrocer600(マイクロクリスタリン/ポリエチレン)、Hydrocer901(ポリエチレン/パラフィン)、HydrocerEC98(カルナバ)、HydrocerEP91(パラフィン)、BYK社製のAQUACER497(パラフィン)、AQUACER526(変性エチレン酢酸-ビニル共重合体)、AQUACER1540(カルナバ)、AQUACER1547(ポリエチレン)、CERACOL79(カルナバ)、CERACOL604(カルナバ)、CERACOL609N(ラノリン)、CERACOL615(マイクロクリスタリン)、CERAFAK127N(フィッシャートロプシュ)、CERAMAT250(ポリエチレン)、エレメンティス社製のSL506(カルナバ)、東邦化学工業社製のハイテックE-5403P(ポリエチレン)、ハイテックE-8237(ポリエチレン)、三井化学社製のケミパールW200(ポリエチレン)、ケミパールW400(ポリエチレン)、MICROPOWDERS社製のMicrospersion215-50(ポリエチレン)、Microspersion250(ポリエチレン)、AQUAKLEAN 418(カルナバ)等が例示できる。
【0035】
上記の表面改質剤としては、炭化水素系化合物を含むことがさらに好ましい。炭化水素系化合物を含むことにより、塗料から形成した樹脂層の疎水性が向上するため、洗浄水を効率よく排除することができる。炭化水素系化合物は、特に限定されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2-ブテン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等の炭素数2~6のアルケンからなる重合体が好ましい。この中で、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン等の炭素数2~4のアルケンの重合体がより好ましく、エチレン、プロピレンの重合体がさらに好ましい。これらは共重合されていてもよく、それぞれの重合体が混合されていてもよい。また、エチレン等からなるオレフィン重合体が酸変性された酸変性炭化水素系化合物を含んでいてもよい。
【0036】
塗料中の表面改質剤の含有量は、塗料の不揮発分100質量%中に好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~30質量%、さらに好ましくは10~20質量%である。塗料中の表面改質剤の含有量を上記の範囲にすることにより、水の付着エネルギーを27mJ/m以下に制御しやすくなる。
【0037】
塗料は、樹脂の他に有機溶剤や水等の任意の溶媒または分散媒を含んでも良く、塗装方式に合致した粘度に調整されることが好ましい。
有機溶剤としては、樹脂を溶解ないし分散できるものが使用でき、具体的には、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、1,2-ジエチルベンゼン、1,3-ジエチルベンゼン、1,4-ジエチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、2,6-ジメチルナフタレン、p-シメン、スチレン、テトラリン、α-ピネン、β-ピネン、ドデシルベンゼン、トルエン、メシテレンなどの他、スワゾール1000、スワゾール1500(以上、丸善石油化学社製)、T-SOL100FLUID、T-SOL150FLUID(以上、JXTGエネルギー社製)等の炭化水素系溶剤;
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;
酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、コハク酸ジメチルエステル、グルタル酸ジメチルエステル、アジピン酸ジメチルエステルなどの他、FlexiSolvDBEesters(INVISTA社製)等のエステル系溶剤;
メタノール、エタノール、n-アミルアルコール、s-アミルアルコール、t-アミルアルコール、イソアミルアルコール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、2-エチルブタノール、2-エチルヘキサノール、2-オクタノール、n-オクタノール、ネオペンチルアルコール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、1-プロパノール、n-ヘキサノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-ヘプタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、4-メチル-2-ペンタノール等のアルコール系溶剤;
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール系溶剤などを挙げることができ、これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
また、塗料は、当該技術分野において使用される硬化剤や添加剤等のその他の成分を任意に含んでいてもよい。
【実施例0038】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の「部」及び「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」に基づく値である。
【0039】
(製造例1)
(アクリル樹脂溶液Aの調製)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、スチレン75部、アクリル酸エチル15部、メタクリル酸メチル45部、メタクリル酸165部、エチレングリコールモノブチルエーテル400部、n-ブタノール300部、及び過酸化ベンゾイル4部からなる混合物の1/4を仕込み、窒素ガス雰囲気下、80~90℃に加熱し、その温度に保ちつつ残りの全量を2時間かけて滴下した。滴下終了から2時間撹拌後冷却し、不揮発分濃度30%のアクリル樹脂溶液Aを得た。
【0040】
(製造例2)
(エポキシアクリル系エマルジョンBの調製)
製造例1と同様の反応容器に、JER1009(三菱ケミカル社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を60部、エチレングリコールモノブチルエーテル20部及び製造例1で得たアクリル樹脂溶液Aを70部仕込んで、窒素ガス雰囲気下、120℃まで昇温して溶解させた。溶解確認後に90℃まで冷却し、続いて、ジメチルアミノエタノール1部、水1部を混合して添加し、90℃で1時間撹拌し、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との反応を行った。反応終了後に冷却し、ジメチルアミノエタノール4部を添加して10分間撹拌した後、水239部を1時間かけて滴下し、不揮発分濃度20%のエポキシアクリル系エマルジョンB(表1、表2の配合表における「B」)を得た。
【0041】
(製造例3)
(フェノール樹脂溶液Cの調製)
製造例1と同様の反応容器に、石炭酸9.3部、37%ホルマリン36.5部を仕込み、撹拌しながら、25%水酸化ナトリウム水溶液を3.2部添加し、80℃で3時間反応した後、n-ブタノールを30部加え冷却した後、20%塩酸3.7部を加え水酸化ナトリウムを中和した。水層を分離し、フェノール樹脂の溶液層を取り出し、水洗を行い、脱水、濃縮し不揮発分濃度50%のフェノール樹脂溶液Cを得た。
【0042】
(製造例4)
(エポキシアクリルフェノール系エマルジョンDの調製)
製造例1と同様の反応容器に、エポキシアクリル系エマルジョンBを100部、フェノール樹脂溶液Cを0.8部仕込み撹拌して、不揮発分濃度21%のエポキシアクリルフェノール系エマルジョンD(表1、表2の配合表における「D」)を得た。
【0043】
(製造例5)
(アクリル樹脂分散液Eの調製)
製造例1と同様の反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル8部、イオン交換水18.2部を仕込み、窒素ガス雰囲気下、約100℃で還流するまで加熱した。還流を維持したまま、メタクリル酸10部、スチレン6部、アクリル酸エチル4部、および過酸化ベンゾイル0.3部の混合物を滴下槽から4時間にわたって滴下した。滴下終了から1時間後、および2時間後に過酸化ベンゾイル0.03部をそれぞれ添加し、滴下終了から3時間還流を維持した。次いで加熱を停止し、ジメチルアミノエタノール5.2部を添加して10分間撹拌した後、イオン交換水46.3部を加え、不揮発分濃度20%のアクリル樹脂分散液Eを得た。
【0044】
(製造例6)
(アクリルエマルジョンFの調製)
製造例1と同様の反応容器に、製造例5で得られたアクリル樹脂分散液Eを45部、イオン交換水18.5部を仕込み、窒素ガス雰囲気下、撹拌しながら70℃まで加熱した。別途、滴下槽1にスチレン7.92部、アクリル酸エチル13.64部、N-ブトキシメチルアクリルアミド0.44部を仕込んだ。また、滴下槽2に1%過酸化水素水0.74部を、滴下槽3に1%エリソルビン酸ナトリウム水溶液0.92部を仕込んだ。反応容器を70℃に保持し撹拌しながら、それぞれの滴下槽から3時間かけて滴下した。滴下終了から2時間70℃を維持し、不揮発分20%濃度のアクリルエマルジョンF(表1、表2の配合表における「F」)を得た。
【0045】
(製造例7)
(ポリエステル・フェノール系樹脂溶液Gの調製)
撹拌機、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、バイロンGK360(東洋紡社製ポリエステル樹脂)を20部、シクロヘキサノン40部、スワゾール1000(丸善石油化学社製芳香族炭化水素系溶剤)40部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で80℃まで加熱し、ポリエステルが溶解するまで撹拌した。溶解確認後冷却し、PHENODUR PR 517/60B(Allnex社製フェノール樹脂、不揮発分濃度60%)10部を撹拌しながら添加し、不揮発分濃度24%のポリエステル・フェノール系樹脂溶液G(表1、表2の配合表における「G」)を得た。
【0046】
(実施例・比較例)
製造例にて得られた樹脂溶液やエマルジョンを撹拌しながら表1、表2に示す割合で表面改質剤分散体を添加した(比較例1~3においては添加せず)。得られた塗料を、缶底及び胴部を有するアルミニウム製の容器(350ml容)の胴部内面の全面にスプレー塗装により塗装し、続けて200℃で2分間加熱し、各実施例・比較例に係る缶を得た。
缶内面に形成された樹脂層の乾燥質量は50mg/dmであった。
なお、市販されている表面改質剤が水などに分散した状態である場合にはそのまま用い、粉体である場合には、ブチルセロソルブ80部に対し表面改質剤20部を撹拌しながら混合し、不揮発分濃度20%の表面改質剤分散体として用いた。
【0047】
(缶の評価)
以下のようにして、実施例及び比較例で得られた缶内面の樹脂層について、水の付着エネルギー、動摩擦係数、ゲル分率、原子濃度比C/O、融点・融解熱量、水切れ性、異物除去性を評価した。
【0048】
[水の付着エネルギー]
得られた缶を切り開き、缶底部を取り除き、缶胴部を平板状としたものを測定試料〔(測定試料(1)〕とし、その樹脂層表面について、自動接触角計(協和界面科学社製社製Dmo-502)を用いて、滑落角の測定をおこなった。得られた滑落角の値を用いて、式(1)にもとづき水の付着エネルギーEを算出した。
なお、測定は試料表面の任意の5箇所についておこない、それらの平均値を採用した。
【0049】
[ゲル分率]
測定試料(1)を15cm四方の大きさに切り出しテストパネルとした。
このテストパネルの質量を測定した(質量をW1(g)とする)。次いでテストパネルを80℃にて還流させたメチルエチルケトン(MEK)中に60分間浸漬し、風乾後の質量を測定した(質量をW2(g)とする)。その後、テストパネルを濃硫酸に浸漬し水洗して樹脂層を剥離したテストパネルを得た(質量をW3(g)とする)。下記式(2)からゲル分率を算出した。
ゲル分率[%]=(W2-W3)/(W1-W3)×100 ・・・式(2)
【0050】
[原子濃度比C/O]
測定試料(1)の樹脂層表面についてESCA分析を次の条件で行い、炭素原子数、酸素原子数から原子濃度比C/Oを算出した。下記に測定条件を示す。
装置:AXIS-HS(島津製作所社製/Kratos)
試料チャンバー内真空度:1×10-8Torr以下
X線源:Dual(Mg)15kV,5mAPassenergy80eV
Step:0.1eV/Step
Speed:120秒/元素
Dell:300、積算回数:5
光電子取り出し角:試料表面に対して90度
結合エネルギー:C1s主ピークを284.6eVとしてシフト補正
C(1s)ピーク領域:280~296eV
O(1s)ピーク領域:529~535eV
上記ピーク領域に出現したピークを直線法にてベースラインを引き、各原子の原子濃度「AtomicConc」から酸素原子数に対する炭素原子数の割合C/Oを算出した。
C/O=C(1s)の原子濃度/O(1s)の原子濃度
なお、測定は試料表面の任意の5箇所についておこない、それらの平均値を採用した。
【0051】
[融点・融解熱量]
示差走査熱量計(TAインスツルメント社製DSC2500)を用いて、融点および融解熱量を以下の条件で測定した。
(i)測定試料(1)から採取した樹脂層約5mgを精秤して入れたアルミニウムパンと、リファレンスである空のアルミニウムパンとをDSC測定ホルダーにセットし、窒素気流中で室温から0℃まで降温し、降温完了後5分間保持した。
(ii)次いで、0℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、昇温完了後5分間保持した。
(iii)次いで、再度0℃まで降温し、降温完了後5分間保持した。
(iv)次いで、再度0℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温し、昇温完了後5分間保持した。このときに結晶の融解ピークが観察される温度を融点とした。また、得られたピークとベースラインに囲まれた部分の面積とアルミニウムパンに精秤して入れたサンプル質量から融解熱量を算出した。
【0052】
[動摩擦係数]
3個の鋼球がついた重さ1kgの錘を、鋼球が測定試料(1)の樹脂層面と接するようにして乗せ、この錘を150cm/分の速さで引っ張り、このときの動摩擦係数を測定した。動摩擦係数が小さいほど滑り性は良好である。
【0053】
[水切れ性]
測定試料(1)の樹脂層に、イオン交換水を20μL滴下し、試料を水平面から45°に傾けたときに水が流れ落ちる様子を目視観察した。
(評価基準)
◎:水が即座に流れ落ちる
〇:水がゆっくり流れ落ちる
×:水が残る
【0054】
[異物除去性]
測定試料(1)の樹脂層の中央部付近に、1cm×1cmのポリエチレンフィルム(厚さ0.1mm)を押し付けて付着させた。試料を水平面から45°に傾けて固定し、付着させたポリエチレンフィルムの上端より上部に位置する樹脂層部にポリスポイトを用いてイオン交換水0.5mLを滴下した。ポリエチレンフィルムが流れ落ちない場合、さらに同様にイオン交換水0.5mLを滴下した。イオン交換水の滴下を合計4回繰り返し、ポリエチレンフィルムが樹脂層から流れ落ちるまでの回数をカウントした。
(評価基準)
◎:イオン交換水の滴下1~2回でポリエチレンフィルムが流れ落ちる
〇:イオン交換水の滴下3~4回でポリエチレンフィルムが流れ落ちる
×:ポリエチレンフィルムが流れ落ちない
【0055】
表1、表2に示されるとおり、実施例の缶はいずれも水切れや異物除去性が良好であった。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表1、表2における表面改質剤の品名、樹脂種の内容は以下のとおりである。
CERACOL79:BYK社製(エチレングリコールモノメチルエーテルを分散媒とするカルナバ分散体)
CERACOL604:BYK社製(ブチルグリコールを分散媒とするカルナバ分散体)
CERAFLOUR994:BYK社製(アマイド)
CERAFLOUR964:BYK社製(アマイド)
CERAFLOUR925N:BYK社製(変性PE)
CERAFAK100:BYK社製(エチレン-酢酸ビニル共重合体)
CERACOL615:BYK社製(ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを分散媒とするマイクロクリスタリン分散体)
PE:ポリエチレン
EVA:エチレン-酢酸ビニル共重合体
マイクロ:マイクロクリスタリン