(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023494
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】癌治療のためのエーテル型リン脂質類似体の分割投与
(51)【国際特許分類】
A61K 51/04 20060101AFI20240214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K51/04
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023203712
(22)【出願日】2023-12-01
(62)【分割の表示】P 2020555474の分割
【原出願日】2019-04-10
(31)【優先権主張番号】62/655,615
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517171163
【氏名又は名称】セレクター・バイオサイエンシズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】ジャロット ロングカー
(57)【要約】
【課題】癌の治療のための
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンの分割投与レジメンを、本明細書に開示する。
【解決手段】対象の癌を治療する方法であって、
a)有効量の
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩を投与することを含み、前記
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩を分割用量として投与する、方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の癌を治療する方法であって、
a)有効量の131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩を投与することを含み、前記131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩を分割用量として投与する、方法。
【請求項2】
前記131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩を、単回投薬サイクルに従って投与し、前記単回投薬サイクルは、1日目に単回用量を1回投与し4日目に単回用量を1回投与すること、1日目に単回用量を1回投与し5日目に単回用量を1回投与すること、1日目に単回用量を1回投与し6日目に単回用量を1回投与すること、1日目に単回用量を1回投与し7日目に単回用量を1回投与すること、1日目に単回用量を1回投与し8日目に単回用量を1回投与すること、1日目に単回用量を1回投与し9日目に単回用量を1回投与すること、1日目に単回用量を1回投与し10日目に単回用量を1回投与すること、1日目に単回用量を1回投与し11日目に単回用量を1回投与すること、1日目に単回用量を1回投与し12日目に単回用量を1回投与すること、および1日目に単回用量を1回投与し13日目に単回用量を1回投与することからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単回投薬サイクルが、1日目に単回用量を1回投与し8日目(1日目から7日後)に単回用量を1回投与することである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩が、対象の癌細胞に対して選択的である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩を、1mCi~100mCi/m2の用量範囲で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記用量が、対象の体重1kg当たり1mCi~100mCiである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が、多発性骨髄腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、肉腫、白血病、転移性腫瘍、肝臓がん、肺がん、脳腫瘍、膵臓がん、黒色腫、腺がん、DIPG、小児リンパ腫、または乳がんである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記癌が分割用量放射に適している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、化学療法、免疫療法、細胞療法、放射線増感療法、放射線防護療法、外部ビーム照射法、腫瘍切除術、切除療法、ならびに寒冷(低温)、熱(高温)、高周波、およびマイクロ波に基づく局所的な物理治療からなる群から選択される別の癌療法をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩を、1mCi~100mCi/m2の用量範囲で、1日目に単回用量としてかつ8日目(1日目から7日後)に単回用量として投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記用量が、対象の体重1kg当たり1mCi~100mCiであり、そして1日目に単回用量としてかつ8日目(1日目から7日後)に単回用量として投与される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許の相互参照
この出願は、2018年4月10日に出願の米国仮特許出願第62/655,615号の優先権を主張し、その内容の全体が参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
本開示は、癌の治療のために放射性標識されたリン脂質類似体の特定の投薬サイクルでの使用を対象とする。
【背景技術】
【0003】
様々なモデル系で放射性標識されたエーテル型リン脂質類似体を選択的に保持することは、放射性医薬品化合物が比較的速やかに排出されること、および/または非標的組織中にその化合物が蓄積することに関連する問題によって制約を受けてきた。非標的組織への取り込みは、例えば、放射線感受性組織が投与による放射能に過剰に曝露され、放射性医薬品による治療の有効性を低下させる可能性がある。
【0004】
腫瘍組織に対するその特異性と結合活性をそのまま保持しながら、非標的組織から速やかに排出され血漿中でより長い半減期を示す放射性医薬品への絶大な必要性が当技術分野では依然として存在している。このような薬剤があれば、悪性腫瘍組織を部位特異的に根絶するための細胞傷害性薬物の担体として機能するであろう。
【0005】
現在、癌細胞を優先的に標的とする化合物は僅かしか存在しないが、これら化合物の1つとしてCLR1404がある。一般的にCLR1404は、いくつかの腫瘍治療法の治療応答を監視するのに用いられる新規の有望な腫瘍選択性画像診断薬である。以下の構造
【化1】
を持つ第2世代のエーテル型リン脂質(「PLE」)類似体である放射性ヨウ素標識したCLR1404は、55/60異種移植片、同所性かつ遺伝形質転換性の癌、およびコア分子を抗癌剤送達媒体の理想的なプラットフォームとする動物モデル由来の癌幹細胞に、顕著な腫瘍選択性を示す。米国特許第8535641号、米国特許公開第2014/0030187号、およびWeichert, J.P.ら, Alkylphosphocholine analogs for broad-spectrum cancer imaging and therapy(広域スペクトル癌の画像化および治療のためのアルキルホスホコリン類似体), Sci Transl Med, 2014, Jun 11, 6(240), 240ra75を参照のこと。これら資料は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、有効量の131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩を投与する癌の治療方法を対象とし、この131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩を、分割用量(a fractionated dose)として投与する。131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩を、単回投薬サイクルに従って投与してもよい。単回投薬サイクルでは、1日目に単回用量を1回投与して4日目(1日目から3日後)に単回用量を1回投与してもよく、1日目に単回用量を1回投与して5日目(1日目から4日後)に単回用量を1回投与してもよく、1日目に単回用量を1回投与して6日目(1日目から5日後)に単回用量を1回投与してもよく、1日目に単回用量を1回投与して7日目(1日目から6日後)に単回用量を1回投与してもよく、1日目に単回用量を1回投与して8日目(1日目から7日後)に単回用量を1回投与してもよく、1日目に単回用量を1回投与して9日目(1日目から8日後)に単回用量を1回投与してもよく、1日目に単回用量を1回投与して10日目(1日目から9日後)に単回用量を1回投与してもよく、1日目に単回用量を1回投与して11日目(1日目から10日後)に単回用量を1回投与してもよく、1日目に単回用量を1回投与して11日目(1日目から10日後)に単回用量を1回投与してもよく、1日目に単回用量を1回投与して12日目(1日目から11日後)に単回用量を1回投与してもよく、1日目に単回用量を1回投与して13日目(1日目から12日後)に単回用量を1回投与してもよい。単回投薬サイクルでは、1日目に単回用量を1回投与して7日目(1日目から6日後)に単回用量を1回投与する。1日目は、サイクルが開始する任意の日であってもよい。対象はヒトであってもよい。131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩は、対象の癌細胞に対して選択性がある。
【0007】
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩を、1mCi~100mCi/m2の用量の範囲で投与してもよい。この用量は、対象の体重1kg当たり1mCi~100mCiであってもよい。131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩を、1日目および8日目(1日目から7日後)に1mCi~100mCi/m2の用量の範囲で投与してもよい。この用量を、1日目および8日目(1日目から7日後)に対象の体重1kg当たり1mCi~100mCiで投与してもよい。癌は、多発性骨髄腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、腺がん、小児リンパ腫、小児脳幹部グリオーマ(DIPG)、肉腫、白血病、転移性腫瘍、肝臓がん、肺がん、脳腫瘍、膵臓がん、黒色腫、または乳がんであってもよい。癌は分割用量放射(fractionated dose radiation)に適している。方法はさらに、化学療法、免疫療法、細胞療法、放射線増感療法、放射線防護療法、外部ビーム照射法、腫瘍切除術、切除療法、ならびに寒冷(低温)、熱(高温)、高周波、およびマイクロ波に基づく局所的な物理治療からなる群から選択される異なる癌療法であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、投与群ごとの個々の腫瘍体積を示している。
図1Aは、媒体(生理食塩水)のみでの治療後の経時的な腫瘍体積を示す。
図1Bは、50μCiの
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンの単回投与での治療後の経時的な腫瘍体積を示す。
図1Cは、50μCiの
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンの複数回投与(1日目および8日目)での治療後の経時的な腫瘍体積を示す。
図1Dは、100μCiの
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンの単回投与での治療後の経時的な腫瘍体積を示す。
図1Eは、ボルテゾミブの複数回投与(1、4、8、および11日目)での治療後の経時的な腫瘍体積を示す。
【
図2】
図2は、媒体のみ、50μCiの
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンの単回投与、50μCiの
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンの複数回投与(1日目および8日目)、100μCiの
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンの単回投与、およびボルテゾミブの複数回投与(1、4、8、および11日目)による治療後の経時的な平均腫瘍体積を示す。
【
図3】
図3は、媒体のみ、50μCiの
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンの単回投与、50μCiの
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンの複数回投与(1日目および8日目)、100μCiの
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンの単回投与、およびボルテゾミブの複数回(1、4、8、および11日目)投与による治療後のOPM-2マウスモデルの生存率を示している。
【
図4】
図4は、媒体のみ、50μCiの
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンの単回投与、50μCiの
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンの複数回投与(1日目および8日目)、100μCiの
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンの単回投与、およびボルテゾミブの複数回投与(1、4、8、および11日目)による治療後の
図3のOPM-2マウスモデルの平均体重変化を示している。
【
図5】
図5は、媒体のみ、50μCiの
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンの単回投与、50μCiの
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンの複数回投与(1日目および8日目)、100μCiの
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンの単回投与、およびボルテゾミブの複数回投与(1、4、8、および11日目)による治療後の腫瘍の倍加時間を示す。
【
図6】
図6は、OPM-2モデル系でのCLR131(
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン)の分割投与(fractionated dosing)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本開示は、癌の治療のためにCLR1404を投与する投薬レジメンを提供する。本明細書に記載されるように、CLR1404の分割投与は、十分な耐性があり、CLR1404の同等量の単回投与よりも耐性が高い。第2世代のエーテル型リン脂質(「PLE」)類似体である放射性ヨウ素化されたCLR1404は、以下の構造
【化2】
によって表され、式中、Iは放射性標識形態のヨウ素(例えば、
122I、
123I、
124I、
125I、
131Iなど)である。本開示はまた、CLR1404の分割投与レジメンを通して癌を治療する方法を提供する。本明細書に記載のように、CLR1404は、
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンであるCLR131であってもよい。
1.定義
【0010】
本明細書で使用される用語「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含む(contain(s)」、およびそれらの変形語は、付加される行為または構造の可能性を排除しない非制限の移行句、用語、または単語であることを意図している。単数形の「a」、「an」、および「the」には、文脈で明確にそうではないとの指示がない限り、複数形の対象も含まれる。本開示はまた、明示的に記載されているかどうかに拘わらず、本明細書に提示される実施形態または要素を「含む」、それら「からなる」、およびそれら「から本質的になる」他の実施形態も意図している。
【0011】
本明細書での数値範囲の詳述に関して、同一の精度でその間に介在するそれぞれの数値が明らかに意図されている。例えば、6~9の範囲では、6および9に加えて7および8の数値が考えられ、6.0~7.0の範囲では、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、および7.0の数値が明らかに考えられる。
【0012】
本明細書で使用される用語「約」または「おおよそ」は、特定の数値に対し当業者が決定する許容可能な誤差範囲内を意味し、これは部分的に、数値がどのような方法で測定されるか、すなわち測定システムの限界能力に依存している。例えば、用語「約」は当技術分野の慣行に従って、3以内または3を超える標準偏差を意味していてもよい。あるいは、「約」は、所定の数値の最大20%、好ましくは最大10%、より好ましくは最大5%、より好ましくはさらに最大1%の範囲を意味していてもよい。あるいは、特に生体系または生体過程については、この用語は、数値の10倍以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味していてもよい。
【0013】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者が通常理解するのと同一の意味を有する。矛盾がある場合には、定義を含み本文書が優先される。好ましい方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に用いることができる。本明細書に記載の全ての刊行物、出願特許、特許、およびその他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれている。本明細書に開示される材料、方法、および実施例は、例示しているだけであり、限定を意図するものではない。
【0014】
本明細書で使用される用語「治療する」という用語は、癌の進行または再発の低減、抑制、および阻害を含む予防的治療ならびに疾患緩和治療を含む。本明細書で使用される用語「低減する」、「抑制する」、および「阻害する」は、緩和または減少という語句により一般的に理解される意味を有する。本明細書で使用される用語「進行」は、範囲または重症度の増大、進展、成長、または悪化を意味している。本明細書で使用される用語「再発」および「再発性の」は、寛解後の疾患の再来を指す。
【0015】
本明細書で使用される用語「投与する」は、患者の組織、器官、または細胞を、本発明の抗癌化合物と接触させることを指す。本明細書で使用される「投与」は、生体外(すなわち試験管内)または生体内(すなわち生物体、例えばヒトの細胞または組織内)で実施されてもよい。特定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の化合物および/または組成物を患者または対象に投与することを包含する。本明細書で互換的に使用される「患者」または「対象」は、(1)CLR1404(例えば、CLR131(131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン(CLR131)またはその塩))を投与して回復可能または治療可能な疾患を有する哺乳動物、あるいは(2)CLR1404(例えば、CLR131(131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン(CLR131)またはその塩))を投与して予防可能な疾患を患い易い哺乳動物、好ましくはヒトを指す。
【0016】
本明細書で使用される用語「有効量」は、限定はされないが、病気や疾患の徴候または症状の予防、縮小、寛解、または排除を含む有益な結果などの所望の生体効果に影響を及ぼすのに十分な量を指す。従って、医薬組成物または方法での各活性成分の総量は、対象に意義のある利益を示すのに十分な量である。このように、「有効量」は、それが投与されている背景に依存する。有効量は、1回以上の予防的または治療的な投薬として投与してもよい。
【0017】
本明細書で使用される用語「癌」は、転移が可能な細胞の非制御分裂に起因する任意の疾患を指す。
【0018】
用語「悪性腫瘍細胞」および「癌細胞」は、本明細書全体を通して互換的に使用される。用語「悪性腫瘍幹細胞」および「癌幹細胞」は、本明細書全体を通して互換的に使用される。
【0019】
本明細書で互換的に使用される「対象」および「患者」は、限定はされないが、哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、およびマウス、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザルまたはアカゲザル、チンパンジーなどのサル)、およびヒト)を含む任意の脊椎動物を指す。実施形態によっては、対象は、ヒトまたはヒト以外であってもよい。対象または患者は、他の形態の治療を受けていてもよい。
【0020】
「治療する」、「治療している」または「治療」はそれぞれ、本明細書では互換的に使用されて、その用語が適合するような疾患、またはその疾患の1つ以上の症状の進行を反転、緩和、または阻害することを述べている。対象の病気に依っては、この用語はまた、疾患の予防を指し、疾患の発症の予防、または疾患に関連する症状の予防を含む。治療は、急性あるいは慢性のいずれかの方法で実施してもよい。この用語はまた、疾患への罹患に先立って、その疾患に関連する病状または症状の重症度を軽減することを指す。罹患前の疾患のその予防または重症度の軽減とは、疾患に罹患して投与をまだ開始していない対象への本発明の抗体または医薬組成物の投与を指す。「予防する」はまた、疾患またはその疾患に関連する1つ以上の症状の再発を予防することを指す。「治療」および「治療的に」は、上述で定義された「治療する」と同じように治療する行為を指す。
【0021】
本発明の化合物の用語「治療有効量」は、任意の医学的治療に適用できる合理的な利益/リスクの比で、疾患を治療するのに十分な量の化合物を意味する。しかし当然のことながら、本発明の化合物および組成物の毎日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定される。任意の特定の患者に対する特定の治療有効用量水準は、治療される疾患および疾患の重症度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、通常の健康状態、性別、および食事;使用された特定の化合物の投与時間、投与経路、および排泄速度;治療期間;例えば使用される特定の化合物と組合わせてまたは同時に使用される薬物などの様々な因子に依存する。
【0022】
本発明は、有機酸および無機酸、例えばクエン酸および塩酸によるアミノ置換化合物の薬学的に許容可能な塩の使用を含む。適切な薬学的に許容可能な塩には、限定はされないが、例えば、アルキルホスホコリン類似体の溶液を、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、またはリン酸などの薬学的に許容可能な酸の溶液と混合して形成されてもよい酸付加塩が含まれる。本発明はまた、本明細書に記載の化合物のアミノ置換基のN-オキシドを含む。薬学的に許容可能な塩はまた、例えば水酸化ナトリウムなどの無機塩基で処理してフェノール化合物から調製することもできる。また、フェノール化合物のエステルは、例えば酢酸エステルおよび安息香酸エステルなどの脂肪酸および芳香族カルボン酸により生成することができる。本明細書で使用される用語「薬学的に許容可能な塩」は、塩基化合物から処方され、その塩基化合物と実質的に同一の医薬的な効果を達成する化合物を指す。
【0023】
本発明はさらに、抗癌化合物の誘導体を含む。用語「誘導体」は、限定はされないが、エーテル誘導体、酸誘導体、アミド誘導体、およびエステル誘導体などを含む。さらに本発明はまた、抗腫瘍化合物の水和物を利用する方法を含む。用語「水和物」は、限定はされないが、半水和物、一水和物、二水和物、および三水和物などを含む。
【0024】
本発明はさらに、抗癌化合物の代謝産物を含む。用語「代謝物」は、代謝または代謝過程によって別の物質から生成される任意の物質を意味する。
2.本発明の化合物
【0025】
本発明の化合物例は、放射性ヨウ素化エーテル型リン脂質類似体であるCLR1404である。放射性ヨウ素化エーテル型リン脂質類似体は、131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン(CLR131)またはその塩であってもよい。本発明の化合物が選択的に腫瘍を標的とする根拠は、多くの正常細胞の原形質膜に比較して、癌細胞の原形質膜に差異があることに基づく。具体的には、癌の原形質膜は「脂質ラフト」が非常に豊富である。癌細胞は、健康な細胞より5~10倍の多くの脂質ラフトを有する。脂質ラフトは、高濃度のコレステローおよびスフィンゴ脂質を含み、かつ細胞表面と細胞内シグナル伝達分子(例えば、成長因子とサイトカイン受容体、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)/Akt生存経路)を組織化するように機能する膜リン脂質二重層の特殊な領域である。あるデータでは、脂質ラフトがPLEの侵入の入口として機能することを示唆している。非癌細胞に比較して癌細胞に対するこれらの化合物の顕著な選択性は、コレステロールに対するPLEの高い親和性、および癌細胞中のコレステロールに富む多量の脂質ラフトに起因している。脂質ラフトが果たす極めて重要な役割は、脂質ラフト構造が崩壊すると癌細胞内へのPLEの取り込みが抑制されるという事実によって明確にされている。脂質ラフトの形成が阻止されると、PLEの取り込みが60%まで減少することが示されている。
【0026】
55個を超える異種移植片および自発的腫瘍モデルで得られた結果は、本明細書に記載の化合物が腫瘍中に選択的に取り込まれ、かつ長期にわたり定着されることを全般的に示している。この化合物は肝臓内である程度代謝され、肝臓のバックグラウンドの放射能水準が高いので、本発明者らは肝腫瘍モデルでは早期の化合物の評価を避けるようにした。
【0027】
様々な腫瘍モデルで得られた結果は、CLR1404、例えば、131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンが、癌細胞および癌幹細胞によって隔絶されて、かつ選択的に定着されることを示している。本明細書に記載の化合物は、最大20日間まで癌細胞内に留まることが示されている。この化合物は、解剖学的な部位に関係なく、リンパ節に見られる病変を含み、原発性病変と転移性病変の両方に局在化する。
3.本発明の組成物
【0028】
別の側面では、本発明は、1種以上の薬学的に許容可能な担体と組合わせて、本発明の化合物(例えば、131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン)を含む医薬組成物を提供する。好ましい側面では、医薬組成物は、Kolliphor(登録商標)ELを含まない(KolliphorはBASF SEの登録商標である)。Kolliphor(登録商標)ELは、過去にはCremophor(登録商標)ELとして知られていた(CremophorはBASF SEの登録商標である)。
【0029】
本発明の治療用組成物中の有効成分の実投与量水準は、特定の患者、組成物、および投与の方式で、所望の治療応答を達成するのに有効な活性化合物量が得られるように変更できる。選定された投与量水準は、特定の化合物の活性、投与経路、治療される症状の重症度、および治療される患者の病状および既往歴に依存する。
【0030】
本発明はまた、1種以上の薬学的に許容可能な担体とともに処方された本発明の化合物を含む医薬組成物を提供する。この医薬組成物を、固体形態または液体形態による経口投与、非経口投与、または直腸内投与のために特別に処方してもよい。
【0031】
適切な任意の投与経路を用いて、本明細書に記載の組成物および化合物を対象に投与してもよい。化合物および組成物は、静脈内注射を介して対象に投与してもよい。開示された化合物および組成物は、経口、非経口、鼻腔内、舌下、直腸内、または経皮などのいずれかの適切な全身送達法を介して対象に投与してもよい。本発明の化合物および組成物は、ヒトおよび他の哺乳動物などの対象に、経口的に、直腸内に、非経口的に、嚢内に、膣内に、(例えば当て布を使用して)経皮的に、経粘膜的に、舌下的に、肺内に、腹腔内に、(粉末、軟膏、または液滴によって)局所的に、口腔内に、または経口または鼻スプレーによって投与できる。本明細書で使用される用語「非経口の」または「非経口的に」は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下、および関節内の注射および注入を含む投与方式を指す。
【0032】
別の側面では、本発明は、本発明の成分および生理学的に許容可能な希釈剤を含む医薬組成物を提供する。本発明は、特に、非経口注射、鼻腔内送達、固体形態または液体形態での経口投与、および直腸内投与または局所投与のために、本明細書で集合的には希釈剤と呼ばれる1種以上の生理学的に許容可能な希釈剤、担体、補助剤、または媒体と共に組成物中に処方された上記の1種以上の化合物を含む。
【0033】
非経口注射に適する組成物は、生理学的に許容可能な無菌の水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液または乳濁液、および無菌の注射用溶液または分散液中に再構成するための無菌粉末を含んでもよい。適切な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒、または媒体の例として、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなど)、植物油(オリーブ油など)、オレイン酸エチルなどの注射用有機エステル、およびそれらの適切な混合液が挙げられる。
【0034】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および調合剤などの補助剤を含んでもよい。微生物の作用は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実に防止できる。等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを含むことが、望ましい場合もある。注射用の薬剤形態での長期間での吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によって達成できる。
【0035】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタヒドロキシアルミニウム、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、またはこれらの物質の混合物などの懸濁剤を含んでもよい。
【0036】
注射用貯蔵形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に化合物または組成物のマイクロカプセル基質を生成して作製される。ポリマーに対する薬物の比率および使用される特定のポリマーの性質に依って、薬物放出の速度を制御できる。その他の生分解性ポリマーの例として、ポリオルトエステルおよび無水物重合体が挙げられる。注射用貯蔵製剤はまた、身体組織と適合性のあるリポソームまたはミクロ乳濁液中に薬物を封入して調製される。
【0037】
注射用製剤を、例えば、細菌保持フィルターを通して濾過して、あるいは滅菌水または他の滅菌注射用媒体中に溶解または分散できる滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を使用の直前に組込んで、滅菌することができる。
【0038】
経口投与用の固体剤形には、カプセル、錠剤、ピル、粉末、および顆粒が含まれる。その固体剤形では、活性化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの少なくとも1つの不活性で薬学的に許容可能な賦形剤または担体、および/または(a)デンプン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤または増量剤;(b)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、およびアカシアなどの結合剤;(c)グリセリンなどの保湿剤;(d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカのデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(e)パラフィンなどの溶液遅延剤;(f)第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(g)セチルアルコールやモノステアリン酸グリセリンなどの湿潤剤;(h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤;および(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの潤滑剤とともに混合される。カプセル、錠剤、およびピルの場合は、この剤形はさらに緩衝剤を含んでもよい。
【0039】
類似型の固体組成物はまた、ラクトースすなわち乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、軟質および硬質の充填ゼラチンカプセル中に充填剤として使用されてもよい。
【0040】
錠剤、糖衣錠、カプセル、ピル、および顆粒の固体剤形は、腸溶性皮膜および医薬製剤分野で周知の他の皮膜などの被覆膜および外皮を用いて調製されてもよい。これらは、任意に不透明化剤を含んでもよく、かつこれらが有効成分のみを、優先的に腸管の特定の部分で任意に遅延した方式で放出するような組成物から構成されてもよい。使用可能な包埋用組成物の例として、高分子物質およびワックスが挙げられる。
【0041】
活性化合物はまた、必要な場合には、1種以上の上記の賦形剤とともにマイクロカプセル化された形態であってもよい。
【0042】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容可能な乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤が含まれる。活性化合物に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤、およびエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、コム油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、およびそれらの混合物などの乳化剤など、当技術分野で一般的に用いられる不活性の希釈剤を含んでもよい。
【0043】
不活性の希釈剤に加えて、任意の経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香味料、および芳香剤などの補助剤を含んでもよい。
【0044】
直腸内投与または膣内投与用の組成物は、好ましくは、本発明の化合物を、室温では固体であるが体温では液体であるカカオバター、ポリエチレングリコール、または坐剤ワックスなどの適切な非刺激性賦形剤または担体と混合して調製され、それにより直腸腔または膣腔で溶解して活性化合物を放出できる坐剤である。
【0045】
本発明の化合物はまた、リポソームの形態で投与できる。当技術分野で既知のように、リポソームは、通常リン脂質またはその他の脂質物質に由来する。リポソームは、水性媒体中に分散された単層または多層の水和液晶によって生成されている。リポソームを生成できる生理学に許容可能で代謝可能な任意の脂質を用いてもよい。リポソーム形態の本組成物は、本発明の化合物に加えて、安定剤、防腐剤、賦形剤などを含んでもよい。好ましい脂質は、個別にまたは共に使用される天然リン脂質、合成リン脂質、およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを生成する方法は当技術分野で既知である。例えば、Prescott, Ed.; Methods in Cell Biology ,Volume XIV, Academic Press, New York, N.Y. (1976), p. 33 et seq.を参照のこと。この組成物は、物理状態、溶解性、安定性、生体内での放出速度、および生体内での排出速度に影響を及ぼす。
【0046】
本発明の一方法では、医薬組成物を徐放システムで送達できる。例えば化合物または組成物は、静脈内注入、移植型浸透圧ポンプ、経皮当て布、リポソーム、またはその他の投与様式を用いて投与できる。一実施形態では、ポンプを使用できる(Langer, supra; Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987)、Buchwaldら, Surgery 88:507 (1980)、およびSaudekら, N. Engl. J. Med. 321:574 (1989)を参照のこと)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用できる。さらに別の実施形態では、徐放システムを、治療の標的、例えば肝臓の近傍に配置することが可能であり、これにより全身用量のごく一部しか必要としない(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115-P8 (1984)を参照のこと)。その他の徐放システムは、Langer (Science 249:1527-1533 (1990)によって詳述されている。
【0047】
別の側面では、本発明は、有効量の本発明の化合物を対象に投与することを含む、対象の疾患または病気を治療する方法に関する。
【0048】
一般に本発明は、任意の特定の疾患または病気の治療に限定せず、その機序が本発明の化合物によって影響を受ける可能性がある任意の疾患または病気の治療を包含する。
4.分割投与
【0049】
別の態様では、本発明は、癌の治療でのCLR1404の使用のための分割投与レジメンを提供する。CLR1404は、131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン(CLR131)であってもよい。本明細書で使用される放射線療法の「分画(fraction)」または「分割(fractionation)」とは、放射線療法での総用量を、より少な目の経時的に送達されるいくつかの用量に分割したものである。総投与量は、例えば、正常細胞に回復する時間を与えるように、ある治療中に細胞周期の比較的放射線耐性の高い段階にあった腫瘍細胞が次の分割投与が実施される前に細胞周期の感受性の高い段階に回帰するように、あるいは分割投与の間に低酸素の腫瘍細胞に再び酸素注入することを可能として腫瘍細胞の死滅を促進するように、分割されていてもよい。個々の分割用量の総量値は、合計すると、処方された放射線療法のほぼ全用量にすることができる。
【0050】
用量は、平方メートル当たり(m2)または体重当たり(例えばkg)に基づいて投与してもよい。131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩は、例えば、1mCi~100mCi/m2、5mCi~90mCi/m2、10mCi~80mCi/m2、20mCi~70mCi/m2、30mCi~60mCi/m2、または40mCi~50mCi/m2の用量範囲で投与されてもよい。この用量は、例えば、10mCi/m2、20mCi/m2、30mCi/m2、40mCi/m2、50mCi/m2、60mCi/m2、70mCi/m2、80mCi/m2、90mCi/m2、または100mCi/m2であってもよい。
【0051】
131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩は、例えば、1mCi~100mCi/kg、5mCi~90mCi/kg、10mCi~80mCi/kg、20mCi~70mCi/kg、30mCi~60mCi/kg、または40mCi~50mCi/kgの用量範囲で投与されてもよい。この用量は、例えば、10mCi/kg、20mCi/kg、30mCi/kg、40mCi/kg、50mCi/kg、60mCi/kg、70mCi/kg、80mCi/kg、90mCi/kg、または100mCi/kgであってもよい。
【0052】
一側面では、化合物または組成物は、それを必要とする対象に2つ以上の分画での分割用量として投与される。別の実施形態では、化合物または組成物は、多分割療法での分割用量として投与される。別の側面では、化合物または組成物は、促進分割療法での分割用量として投与される。
【0053】
特定の実施形態では、本開示の方法および組成物は、癌の治療に有用である。送達様式またはレジメンは、例えば、従来の分割療法、多分割、少分割、および促進分割療法を含んでもよい。
【0054】
一実施形態では、治療レジメンは多分割療法である。多分割療法では、臨床的に許容可能な長期的な組織損傷の水準を維持しながら、より高い用量が腫瘍に送達される。分画当たりの用量を低減しながら、1日毎の用量を変化させないか僅かに増加させ、全体的な治療時間は一定に保つ。
【0055】
一実施形態では、治療レジメンは、促進分割療法である。促進分割療法では、1日の用量を増加させながら分画当たりの用量は変えずに、治療の合計時間を短縮する。
【0056】
一実施形態では、治療レジメンは、連続的な多分割促進放射線療法(CHART)である。(CHART)療法は、複数の1日の分画が短縮した期間内に投与される集中的な治療計画である。
【0057】
放射線療法の分割用量は、間隔を置いて投与されてもよい。特定の実施形態では、分割用量は、数分、数時間、または数週間、例えば1~26週間、例えば約1~15週間、例えば2~12週間に亘って投与される。特定の実施形態では、分割用量は、約15週間未満、例えば約14週間未満、例えば約13週間未満、例えば約12週間未満、例えば約11週間未満、例えば約10週間未満、例えば約9週間未満、例えば約8週間未満、例えば約7週間未満、例えば約6週間未満、例えば約5週間未満、例えば約4週間未満の期間に亘って投与される。特定の実施形態では、累積の外部照射量は、細胞を死滅させる治療有効量の放射線である。CLR1404(例えばCLR131:131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン)の分割用量を、1日目に単回用量として1回投与し、7日後(8日目)に単回用量として再び投与してもよい。1日目に単回用量として1回投与し、7日後に単回用量として再び投与するCLR1404(例えばCLR131:131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン)の分割投与を、単回投与サイクルとしてもよい。CLR1404(例えばCLR131:131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン)の分割用量を、1日目に単回用量として1回投与し、4日後(5日目)に単回用量として再び投与してもよい。CLR1404(例えばCLR131:131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン)の分割用量を、1日目に単回用量として1回投与し、5日後(6日目)に単回用量として再び投与してもよい。CLR1404(例えばCLR131:131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン)の分割用量を、1日目に単回用量として1回投与し、6日後(7日目)に単回用量として再び投与してもよい。CLR1404(例えばCLR131:131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン)の分割用量を、1日目に単回用量として1回投与し、8日後(9日目)に単回用量として再び投与してもよい。CLR1404(例えばCLR131:131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン)の分割用量を、1日目に単回用量として1回投与し、9日後(10日目)に単回用量として再び投与してもよい。CLR1404(例えばCLR131:131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン)の分割用量を、1日目に単回用量として1回投与し、10日後(11日目)に単回用量として再び投与してもよい。CLR1404(例えばCLR131:131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン)の分割用量を、1日目に単回用量として1回投与し、11日後(12日目)に単回用量として再び投与してもよい。CLR1404(例えばCLR131:131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン)の分割用量を、1日目に単回用量として1回投与し、12日後(13日目)に単回用量として再び投与してもよい。CLR1404(例えばCLR131:131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン)の分割用量を、1日目に単回用量として1回投与し、13日後(14日目)に単回用量として再び投与してもよい。1日目を、CLR1404(例えばCLR131:131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン)による治療の最初の日としてもよい。
a.併用療法
【0058】
複数の化学療法剤は、本明細書に記載のように、CLR1404系の放射線療法、例えば131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン系の療法の効果をさらに高めることができる。一態様では、本開示の側面および実施形態は、既存の化学療法様式との併用療法として利用できる。(連続または並列の)併用療法は、同時投与または同時処方としてもよい。
【0059】
患者が例えばCLR1404系の療法に加えて複数の形態の放射線療法を受ける実施形態では、患者は、1回以上の追加形態の放射線療法を同時にまたは順番に受けてもよく、分割用量を同時に、分割用量を順番に、分割用量を交互に、および/またはそれらの任意の組合せにより受けてもよい。特定の実施形態では、一手術内の放射線療法は、外科手術の前、その最中、および/またはその後に施され、第2の形態の放射線療法は、外科手術の数時間後、および/または外科手術の数日後、および/または外科手術の数週間後などの後の時点に施される。手術中の放射線および/または第2の形態の放射線は、CLR-1404系(例えば、131I標識18-(p-ヨード-フェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩)であってもよい。特定の実施形態では、患者は、放射線療法、例えばCLR-1404系の療法(例えば、131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩)により、手術の数時間前、手術の数日前、および/または手術の数週間前などに治療されて、その後に手術を受けることになる。
【0060】
CLR1404系(例えばCLR131:131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリン)の放射線療法は、1種以上のその他の療法と組合わせてもよく、これによりCLR1404療法による癌の縮小は、その他の治療と同時に、その後に、またはその前に生じることになる。例えば、その他の治療は、放射線療法、化学療法、腫瘍切除術、切除療法、ならびに/または寒冷(低温)、熱(高温)、高周波、およびマイクロ波に基づく局所的な物理治療であってもよい。CLR1404系の放射線療法は、温熱療法、すなわち熱の使用と組合わせて使用してもよい。特定の実施形態では、熱および放射線の組合わせは、いくつかの腫瘍への応答率を増大できる。
【0061】
CLR-1404系(例えばCLR131:131I標識18-(p-ヨード-フェニル)オクタデシルホスホコリン)放射線療法と組合わせて、放射線増感剤を追加の薬剤と組合わせて投与してもよい。例えば、ニトロイミダゾールを、標的化剤、化学療法剤、または第2の放射線増感剤などの追加の薬剤と組合わせて投与してもよい。標的化剤には、癌細胞を標的とする抗体などの任意の適切な薬剤が含まれる。ニトロイミダゾールは、共有結合または非共有結合を介して標的化剤に結合できる。例えば、2-ニトロイミダゾールなどのニトロイミダゾールは、生分解性リンカーなどのリンカーを介して標的化剤に結合されていてもよい。あるいは、ニトロイミダゾールは、イオン相互作用を介して標的化剤に結合されていてもよい。特定の実施形態では、本発明の放射線増感剤および追加の薬剤は、リポソーム内に封入されていてもよい。これらの化学療法剤は、それらの作用機序によって、例えば、以下の群に分類できる。それらの群は、ピリミジン類似体(5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビン、およびシタラビン)およびプリン類似体、葉酸拮抗剤および関連の阻害薬(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、および2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))などの抗代謝剤/抗癌剤;ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)などの天然産物、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン、およびナベルビン、エピジポドフィロトキシン(テニポシド)などの微小管破壊剤、DNA損傷剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラシクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロランブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミン、オキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メルクロレタミン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、パクリタキセル、プリカマイシン、プロカルバジン、テニポシド、トリエチレンチオホスホルアミド、およびエトポシド(VP16))を含む抗増殖/抗有糸分裂剤;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびマイトマイシンなどの抗生物質;酵素(L-アスパラギンを全身で代謝し、それら独自のアスパラギンを合成する能力を持たない細胞を欠乏させるL-アスパラギナーゼ);抗血小板剤;窒素マスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、スルホン酸アルキル(ブスルファン)、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン(例えばダカルバジニン(DTIC))などの抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤;葉酸類似体(メトトレキサート)などの抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗剤;白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド、)およびアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩、およびその他のトロンビン阻害剤);血栓溶解剤(組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、およびウロキナーゼなど)、アスピリン、COX-2阻害剤、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走剤;抗分泌剤(ブレベルジン);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(TNP-470、ゲニスタイン)および成長因子阻害剤(血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤、線維芽細胞増殖因子(FGF)阻害剤、上皮増殖因子(EGF)阻害剤);アンジオテンシン受容体遮断薬;一酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ);細胞周期阻害剤および分化誘導剤(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン(CPT-11)およびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、およびプレドニゾロン);成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能障害誘導物質およびカスパーゼ活性化因子;およびクロマチン攪乱物質である。
【0062】
放射線防護剤を、本明細書に記載の方法と組合わせて患者に投与してもよい。放射線保護剤とも呼ばれる放射線防護剤は、放射線療法がもたらす損傷から正常な(非癌性の)細胞を保護する薬剤のことである。これらの薬剤は、放射線に曝露された正常細胞の修復を促進する。放射線防護剤の例としては、アミホスチンが挙げられる。
【0063】
特定の実施形態では、本発明の方法はさらに、サルモネラ菌またはその遺伝子操作された変異体などの細菌の投与を含む。研究によると、放射線療法のサルモネラ菌との併用は、特に好中球と呼ばれる炎症細胞の存在で、腫瘍を抑制する有効性を高めることが示されている。ニトロイミダゾールをサルモネラ菌などの細菌およびCLR1404系の放射線療法と組合わせる治療法は、腫瘍の抑制を増強できる。
【0064】
本発明の放射線増感剤を、1つ以上の生理学的に許容可能な担体または賦形剤を用いて、従来の方法で処方してもよい。例えば、本発明の化合物ならびにそれらの生理学的に許容可能な塩および溶媒和物は、例えば、注射(例えば、皮下、筋肉内、非経口注射)、(口または鼻のいずれかを通しての)吸入または吹送による投与用に、あるいは経口、口腔内、舌下、経皮、経鼻、非経口、または直腸内の投与用に処方されてもよい。一実施形態では、本発明の化合物を、腫瘍細胞が存在する部位、すなわち特定の組織、器官、または体液(例えば血液、脳脊髄液など)に局所的に投与してもよい。典型的には、本発明の化合物および組成物は、静脈内に投与される。
b.癌
【0065】
本発明の化合物および組成物により任意の癌を治療できる。本明細書に記載の化合物および組成物で治療できる癌には、限定はされないが、以下が含まれる。これら癌は、多発性骨髄腫、リンパ腫、転移性がん、肉腫、神経芽細胞腫、白血病、雄性乳がんを含む乳がん;腺がん、小児脳幹部グリオーマ(DIPG)、小児リンパ腫;肛門がん、虫垂がん、肝外胆管がん、消化管カルチノイド、結腸がん、食道がん、胆嚢がん、胃がん、消化管間質性腫瘍(GIST)、膵島細胞腫瘍、成人原発性肝がん、小児肝がん、膵臓がん、直腸がん、小腸がん、および胃がんを含む消化器/胃腸がん;膵臓腺がん、副腎皮質がん、膵臓神経内分泌腫瘍、メルケル細胞がん、非小細胞肺神経内分泌腫瘍、小細胞肺神経内分泌腫瘍、副甲状腺がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍および甲状腺がんを含む内分泌がんおよび神経内分泌がん;眼内黒色腫および網膜芽細胞腫を含む眼がん;膀胱がん、腎臓(腎細胞)がん、陰茎がん、前立腺がん、移行細胞腎盂がんおよび尿管がん、精巣がん、尿道がん、およびウィルムス腫瘍を含む泌尿生殖器がん;小児中枢神経系がん、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚性細胞腫瘍、卵巣胚性細胞腫瘍、および精巣がんを含む胚細胞がん;子宮頸がん、子宮内膜がん、妊娠性絨毛腫瘍、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞腫瘍、子宮肉腫、膣がん、および外陰がんを含む婦人科がん;下咽頭がん、喉頭がん、口唇がんおよび口腔がん、潜伏性原発を伴う転移性扁平上皮頸部がん、口腔がん、鼻咽頭がん、中咽頭がん、鼻傍洞がんおよび鼻腔がん、副甲状腺がん、咽頭がん、唾液腺がん、および咽喉がんを含む頭頸部がん;成人急性リンパ芽球性白血病、小児急性リンパ芽球性白血病、成人急性骨髄性白血病、小児急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、および有毛細胞白血病を含む白血病;AIDS関連リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、成人ホジキンリンパ腫、小児ホジキンリンパ腫、妊娠中のホジキンリンパ腫、菌状息肉腫、成人非ホジキンリンパ腫、小児非ホジキンリンパ腫、妊娠中の非ホジキンリンパ腫、原発性中枢性リンパ腫、セザリー症候群、およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含むリンパ腫;ユーイング肉腫、骨肉腫および骨の悪性線維性組織球腫、小児横紋筋肉腫、および軟部肉腫を含む筋骨格系がん;成人脳腫瘍、小児脳腫瘍、星状細胞腫、脳幹神経膠腫、中枢神経系非定型奇形腫瘍/横紋筋肉腫様腫瘍、中枢神経系胚性腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、神経芽細胞腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫を含む神経系がん; 非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫、胸腺腫および胸腺がん含む呼吸器/胸部がん;およびカポジ肉腫、黒色腫、および扁平上皮がんを含む皮膚がんである。多発性骨髄腫(MM)は、固形組織中ではなく循環血液細胞(すなわち血漿B細胞)中に発生する一種の癌である。多発性骨髄腫は、血液の悪性腫瘍のうちの15%、全ての癌のうちの1%を占める一般的に致命的な疾患である。診断からの生存期間の中央値は5~7年である。ボルテゾミブやレナリドマイドなどの新薬が治療に対して高い応答性を示していたが、患者は必ず再発して、治療が効かなくなってしまう。
【実施例0066】
5.実施例
例示の目的で提示される以下の実施例を参照することで上述の内容の理解が深まるが、それら実施例は、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明は、以下の非限定的な実施例によって説明される複数の側面を有する。
実施例1
【0067】
OPM-2細胞株(ヒト多発性骨髄腫)を、米国培養細胞系統保存機関(ATCC, Rockville, MD)から購入して、10%のウシ胎児血清を補充したマッコイ5a培地中に保持した。約5~7週齢のメスのCB17 SCIDマウスに(約100μLのダルベッコPBS中の)1×107個の生細胞を右脇腹内に皮下注射した。腫瘍の大きさが所定の寸法(約150~200mm3)に到達した時を検討の開始点とした。0.1%濃度のヨウ化カリウムを含む飲料水をマウスに与えて、注射の3日前から注射後の2週間まで継続して製剤中の潜在的な遊離ヨウ化物を遮断した。マウスを無作為に各用量群に割当てた。研究過程中に腫瘍体積をノギスで測定した。腫瘍の倍加時間の計算式は、TDT=D×log(2)/log(1+r/100)であり、式中、Dは各測定間の日数に等しく、rは成長率であり、r/100=(V2-V1/V1)×100%である。統計解析は、一元配置分散分析、かつダネット検定に基づいた。
【0068】
【0069】
CLR131の反復/分割投与は、十分な耐性があり、かつ同等量の単回投与よりも耐性が高い。CLR131の全ての用量は、このモデルの多発性骨髄腫で顕著な抗腫瘍活性を示した。単回用量の注入は、ボルテゾミブに類似のMMの抑制効果を示した。分割投与は、26日後に対照に比較して腫瘍体積の統計的に有意な縮小を示した。分割投与は、52日目に他の全ての治療に比較して腫瘍体積の統計的に有意な縮小を示した(p<0.05)。腫瘍の倍加時間は、他の全ての治療に比較して、分割投与で著しく延長された。分割投与は、統計的に有意な延命効果を示した。
実施例3
【0070】
表2に示されるように、分割投与(群5)では、単回ボーラス投与(群4)よりも、患者に送達されるミリキュリーの実際の投与量の測定値として、18%多くの薬物を提供した。しかし、より多くの薬剤が患者に提供されていても、有害事象の平均重症度は低く、またその重症度の中央値は同一のままであった。さらに、有効性評価ではまた、単回ボーラス投与と分割投与レジメンの間には向上が見られた。全生存期間の中央値は、6.5か月(ボーラス投与)から7.4か月(分割投与)に延長され、分割投与群の全生存期間の中央値の評価はまだ継続中である。無増悪生存期間の平均値は、それぞれ2.8か月から2.9か月に延長され、分割投与群での評価はさらに継続中である。効能の代用マーカーの減少の平均値の差は大きく、単回ボーラス投与を受けた患者群では平均29%の代用マーカーの減少であったのに対して、分割投与を受けた患者群では平均40%の減少であった。
【0071】
投与量は、体表面積すなわちBSAに基づき、ミリキュリー/平方メートル(mCi/m2)で表される。患者は、1日目に31.25mCi/m2の30分間の単回注入を受けるか、または1日目かつその後8日目に15.625mCi/m2の30分間の分割注入を受けた。
【0072】
【0073】
完全性を目的として、本発明の様々な側面を、以下の付番された項目に記載する。
【0074】
項目1:対象の癌を治療する方法であって、
a)有効量の131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩を投与することを含み、前記131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩は、分割用量として投与される、方法。
【0075】
項目2:前記131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩を、単回投薬サイクルに従って投与し、前記単回投薬サイクルは、1日目に単回用量を1回投与し4日目に単回用量を1回投与すること、1日目に単回用量を1回投与し5日目に単回用量を1回投与すること、1日目に単回用量を1回投与し6日目に単回用量を1回投与すること、1日目に単回用量を1回投与し7日目に単回用量を1回投与すること、1日目に単回用量を1回投与し8日目に単回用量を1回投与すること、1日目に単回用量を1回投与し9日目に単回用量を1回投与すること、1日目に単回用量を1回投与し10日目に単回用量を1回投与すること、1日目に単回用量を1回投与し11日目に単回用量を1回投与すること、1日目に単回用量を1回投与し12日目に単回用量を1回投与すること、および1日目に単回用量を1回投与し13日目に単回用量を1回投与することからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
【0076】
項目3:前記単回投薬サイクルが、1日目に単回用量を1回投与し8日目(1日目から7日後)に単回用量を1回投与することである、項目2に記載の方法。
【0077】
項目4:前記対象がヒトである、項目1に記載の方法。
【0078】
項目5:前記131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩が、対象の癌細胞に対して選択的である、項目1に記載の方法。
【0079】
項目6:前記131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩を、1mCi~100mCi/m2の用量範囲で、1日目および8日目(1日目から7日後)に投与する、項目1に記載の方法。
【0080】
項目7:前記用量が、対象の体重1kg当たり1mCi~100mCiである、項目1に記載の方法。
【0081】
項目8:前記癌が、多発性骨髄腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、肉腫、白血病、転移性腫瘍、肝臓がん、肺がん、脳腫瘍、膵臓がん、黒色腫、腺がん、小児リンパ腫、小児脳幹部グリオーマ(DIPG)、または乳がんである、項目1に記載の方法。
【0082】
項目9:前記癌が分割用量放射に適している、項目1に記載の方法。
【0083】
項目10:前記方法が、化学療法、免疫療法、細胞療法、放射線増感療法、放射線防護療法、外部ビーム照射法、腫瘍切除術、切除療法、ならびに寒冷(低温)、熱(高温)、高周波、およびマイクロ波に基づく局所的な物理治療からなる群から選択される別の癌療法をさらに含む、項目1に記載の方法。
【0084】
項目11:前記131I標識18-(p-ヨードフェニル)オクタデシルホスホコリンまたはその塩を、1mCi~100mCi/m2の用量範囲で、1日目に単回用量としてかつ8日目(1日目から7日後)に単回用量として投与する、項目6に記載の方法。
【0085】
項目12:前記用量が、対象の体重1kg当たり1mCi~100mCiであり、そして1日目に単回用量としてかつ8日目(1日目から7日後)に単回用量として投与される、項目7に記載の方法。