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  • 特開-TGF-β受容体及び使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023497
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】TGF-β受容体及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20240214BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240214BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240214BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240214BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240214BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240214BHJP
   C07K 14/715 20060101ALN20240214BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20240214BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20240214BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C12N15/63 Z
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C12N5/10
A61P35/00
A61P1/16
A61K35/17
A61P35/02
C07K14/715
C07K14/705
C12N5/0783
C07K16/30
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023203733
(22)【出願日】2023-12-01
(62)【分割の表示】P 2021575501の分割
【原出願日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】62/865,063
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/951,217
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514266932
【氏名又は名称】カイト ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kite Pharma, Inc
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワイマン サラ
(72)【発明者】
【氏名】エムテージ ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ロマン ガブリエル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】サイトカインシグナル伝達に関与する操作された受容体を提供する。また、TGF-βシグナル伝達を調節するための操作された受容体、TGF-βシグナル伝達を調節する方法及びキメラ抗原受容体を使用してがんを治療する方法も提供する。
【解決手段】TGF-β受容体からの細胞外ドメイン(ECD)及び膜貫通ドメイン(TMD)を含む組換えポリペプチドであって、前記組換えポリペプチドが、野生型TGF-β受容体に存在するシグナル伝達及びリン酸化を担うアミノ酸残基を欠いている、組換えポリペプチドを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TGF-β受容体からの細胞外ドメイン(ECD)及び膜貫通ドメイン(TMD)を含む組換えポリペプチドであって、前記組換えポリペプチドが、野生型TGF-β受容体に存在するシグナル伝達及びリン酸化を担うアミノ酸残基を欠いている、組換えポリペプチド。
【請求項2】
前記ECDが、TGF-βRI又はTGF-βRIIから選択される、請求項1に記載の組換えポリペプチド。
【請求項3】
前記TMDが、TGF-βRI、TGF-βRII、PDGFR、CD4、CD8、CD28、CD127、CD132、CD3ζ、4-IBB、OX40、ICOS、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、IL-5、IL-7、IL-7Rα、BTLA、又はこれらのいずれかの変異体から選択される、請求項1又は2に記載の組換えポリペプチド。
【請求項4】
野生型TGF-β受容体に存在するシグナル伝達及びリン酸化を担うアミノ酸残基を欠いている異種細胞内ドメイン(ICD)を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項5】
前記ECDが、配列番号15に対して少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記TMDが、配列番号16に対して少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項6】
前記ICDが、配列番号6に対して少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、配列番号14に対して少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組換えポリペプチド。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、TGF-β1に結合する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸を含む、発現ベクター。
【請求項10】
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を更に含む、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項11】
前記CARが、CD19、CD20、PSMA、PCMA、CLL-1、又はGPC3を含む腫瘍抗原に結合する、請求項10に記載の発現ベクター。
【請求項12】
請求項8又は9に記載の発現ベクターで形質導入された、T細胞。
【請求項13】
がんを治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の請求項12に記載のT細胞を投与することを含む、方法。
【請求項14】
配列番号51のヌクレオチド配列を含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードする、組換え核酸。
【請求項15】
配列番号48のヌクレオチド配列を更に含む、請求項14に記載の組換え核酸。
【請求項16】
配列番号47のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、請求項15に記載の組換え核酸。
【請求項17】
請求項16に記載のポリペプチドをコードする核酸を含む、発現ベクター。
【請求項18】
前記CARが、GPC3を含む腫瘍抗原に結合する、請求項17に記載の発現ベクター。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の発現ベクターで形質導入された、T細胞。
【請求項20】
肝がんを治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の請求項19に記載のT細胞を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月21日に出願された米国仮特許出願第62/865,063号、及び2019年12月20日に出願された米国仮特許出願第62/951,217号の優先権を主張し、これらは両方とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表に関する記述
本出願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、「K1075_ST25」である。テキストファイルは109KBであり、2020年6月17日に作成され、本明細書の提出と同時にEFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0003】
技術分野
本開示は、TGF-βシグナル伝達に関与する操作された受容体に関する。本開示はまた、TGF-βシグナル伝達を調節するための操作されたTGF-β受容体、並びにTGF-βシグナル伝達、サイトカインシグナル伝達を調節する方法及びがんを治療する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
関連技術の説明
形質転換成長因子β(TGF-β)は、エフェクターT細胞の機能及び増殖の両方を制限する多くの細胞型によって分泌される多面的免疫抑制分子である。臨床及び前臨床データは、腫瘍細胞、間質細胞、及び制御性T細胞を含む抑制性免疫サブセットがTGF-βを分泌することを示唆しており、多くのグループが、TGF-βが腫瘍微小環境(tumor microenvironment、TME)におけるエフェクターT細胞機能及び増殖を阻害すると報告している(Thomas et al.,Cancer Cell,8(5):369-380(2005)、Yang et al.,Trends in Immunology,31(6)(2010)、及びPickup et al.,Nat Rev Cancer,13(11),788-799(2013))。
【0005】
TGF-βシグナル伝達経路は、2つの二量体の膜貫通型形質転換成長因子-βタンパク質受容体、TGF-β受容体I型(TGF-βRI)及びTGF-β受容体II型(TGF-βRII)(総称して「TGF-β受容体」)の内因性発現から開始される。T細胞において、TGF-βRIIは、構成的にリン酸化されている。TGF-βリガンドが結合すると、TGF-βRI及びTGF-βRIIのそれぞれ2つの分子が、ヘテロ-四量体受容体複合体を形成し、TGF-βRIタンパク質のアミノ酸(aa)185~205の間の4つの主要なスレオニン部位でTGF-βRIのTGF-βRIIトランス-リン酸化を誘導する(Heldin et al.,Cold Spring Harb Perspect Biol.Aug 1:8(8)(2016))。次に、リン酸化TGF-βRIは、受容体によって制御される一連のシグナル伝達タンパク質であるSMAD2及びSMAD3のリン酸化を開始する。pSMAD2及びpSMAD3の両方が、pSMAD4を有するヘテロ-三量体オリゴマーを形成する。次いで、得られた活性化SMAD複合体が核に入り、標的転写因子結合部位にドッキングして、免疫抑制を支持する標的遺伝子の発現を誘導する(Inman et al.,Mol Cell,10(2):283-294(2002))。
【0006】
いくつかの研究は、エフェクターT細胞機能に対するTGF-βの免疫抑制効果を制限
しようと試みている。これらには、TGFβ結合及びTGF-βシグナル伝達経路の小分子及び抗体ベースの阻害剤の使用が含まれる(Fabregat et al.,Current Pharmaceutical Design,20,1-14(2014))。また、TGFβ受容体分子が改変されたT細胞受容体(T cell receptor、TCR)
構築物が使用されている。一例は、TGF-βRIIの切断型であり、この場合、II型受容体の細胞内部分が除去されたことにより、下流のシグナル伝達事象が防止され、それによって操作されたT細胞におけるTGF-βシグナル伝達経路のドミナントネガティブ阻害剤として作用する(Wieser et al.,Molecular and Cellular Biology 13(12):7239-7247(1993)and Bollard et al.,Blood.99(9):3179-3187(2002))。それにもかかわらず、TGF-β阻害のみに基づく有効な治療はなく、いくつかの全身療法は、用量制限毒性を有する。したがって、TGF-βを阻害するための新しいモダリティを開発する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一実施形態は、TGF-β受容体からの細胞外ドメイン(extracellular domain、ECD)及び膜貫通ドメイン(transmembrane domain、TMD)を含む組換えポリペプチドであって、組換えポリペプチドは、野生型TGF-β受容体に存在するシグナル伝達及びリン酸化を担うアミノ酸残基を欠いている、組換えポリペプチドである。
【0008】
一態様では、ECDは、TGF-βRI又はTGF-βRIIから選択される。別の態様では、TMDは、TGF-βRI、TGF-βRII、PDGFR、CD4、CD8、CD28、CD127、CD132、CD3ζ、4-IBB、OX40、ICOS、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、IL-5、IL-7、IL-7Rα、BTLA、又は上記のいずれかの変異体から選択される。別の態様では、ポリペプチドは、野生型TGF-β受容体に存在するシグナル伝達及びリン酸化を担うアミノ酸残基を欠いている異種細胞内ドメイン(intracellular domain、ICD)を更に含む。更に別の態様では、ポリペプチドは、シグナル配列を更に含む。
【0009】
一態様では、ECDは、配列番号15に対して少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、TMDは、配列番号16に対して少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の態様では、ICDは、配列番号6に対して少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一態様では、ポリペプチドは、配列番号14に対して少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0010】
一態様では、ポリペプチドは、TGF-β1に結合する。
【0011】
本開示の別の態様は、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターである。別の態様では、発現ベクターは、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)をコードする核酸配列を更に含む。更に別の態様では、CARは、CD
19、PSMA、又はGPC3を含む腫瘍抗原に結合する。
【0012】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の発現ベクターで形質導入されたT細胞である。
【0013】
本開示の別の態様は、がんを治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の本明細書に記載のT細胞を投与することを含む方法である。
【0014】
本開示の別の実施形態では、配列番号51のヌクレオチド配列を含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードする組換えヌクレオチドである。一態様では、組換え核酸は、配列番号48のヌクレオチド配列を更に含む。別の態様では、組換え核酸配列は、配列番号47
のポリペプチドをコードする。本開示の別の態様では、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターである。
【0015】
別の態様では、CARは、GPC3を含む腫瘍抗原に結合する。本開示の別の態様は、本明細書に記載の発現ベクターで形質導入されたT細胞である。
【0016】
本開示の別の態様は、肝がんを治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の本明細書に記載のT細胞を投与することを含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】長期有効性及び腫瘍成長遅延を、初期体積の4倍に設定された腫瘍体積エンドポイントまでの生存に向けての進行によって決定した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、TGF-βシグナル伝達を調節するための操作された受容体及びTGF-βシグナル伝達を調節する方法に関する。ある特定の態様では、本開示は、TGF-β活性を調節するのに有用であり得るドミナントネガティブ阻害剤として機能し得る操作された受容体に関する。いくつかの態様では、本開示は、TGF-β活性を阻害するための、TGF-βI型(TGF-βRI)又はTGF-βII型(TGF-βRII)を含む、ドミナントネガティブTGF-β受容体に関する。一態様では、本開示は、T細胞免疫療法などの疾患又は障害を治療するためのドミナントネガティブTGF-β受容体の使用に関する。別の態様では、本開示は、TMEにおけるT細胞機能を増強し得るサイトカインシグナル伝達を刺激するためのドミナントネガティブTGF-β受容体の使用に関する。更に別の態様では、本開示は、他の免疫療法と組み合わせたドミナントネガティブTGF-β受容体の使用に関する。
【0019】
定義
別段に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。競合する場合、定義を含む本文書が優先される。方法及び材料を以下に記載するが、本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料を、本開示の実施又は試験に使用することができる。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。本明細書に開示される材料、方法、及び実施例は、単なる例示であり、限定することを意図するものではない。
【0020】
冠詞「a」、「an」、及び「the」は、冠詞の文法的目的語の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例として、「要素」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味することができる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「約」又は「およそ」という用語は、参照される数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さに対して30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%程度変化する数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを指す。いくつかの実施形態では、数値に先行するときの「約」又は「およそ」という用語は、値±15%、10%、5%、又は1%の範囲の値を示す。
【0022】
「活性化された」及び「活性化」という用語は、検出可能な細胞増殖を誘導するために十分に刺激されたT細胞の状態を指す。一実施形態では、活性化はまた、誘導されたサイトカイン産生、及び検出可能なエフェクター機能に関連し得る。「活性化T細胞」という用語は、とりわけ、増殖しているT細胞を指す。TCRのみを介して生成されたシグナル
は、T細胞の完全な活性化に不十分である可能性があり、1つ以上の二次又は共刺激シグナルも必要とされ得る。したがって、T細胞活性化は、TCR/CD3複合体を介した一次刺激シグナル及び1つ以上の二次共刺激シグナルを含む。共刺激は、TCR/CD3複合体を介した刺激などの一次活性化シグナルを受けたT細胞による増殖及び/又はサイトカイン産生によって証明され得る。
【0023】
「投与すること」は、当業者に公知の様々な方法及び送達システムのいずれかを使用した、対象への薬剤の物理的導入を指す。本明細書中に開示される製剤のための例示的な投与経路としては、例えば、注射又は注入による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄又は他の非経口投与経路が挙げられる。「非経口投与」という語句は、経腸及び局所投与以外の、通常は注射による投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内の注射及び注入、並びにインビボ電気穿孔を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、投与は、非経口でない(non-parenteral)経路を介して、例えば経口で行われる。他の非経口でない経路としては、局所、表皮又は粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、膣内、直腸、舌下、又は局所が挙げられる。投与はまた、例えば、1回、複数回、及び/又は1回以上の長期間にわたって行われ得る。
【0024】
「量」という用語は、臨床結果を含む有益な又は所望の予防的又は治療的結果を達成するために、遺伝子改変された治療用細胞、例えばT細胞などの薬剤の「有効量」又は「治療有効量」を指す。遺伝子改変された治療用細胞の「治療有効量」は、個体の病状、年齢、性別、及び体重などの要因、並びに個体における所望の応答を誘発するT細胞の能力に従って変化し得る。治療有効量はまた、治療的に有益な効果が、ウイルス又は形質導入された治療細胞の任意の毒性又は有害な効果を上回るものである。「治療有効量」という用語は、対象(例えば、患者)を「治療する」のに有効な量を含む。治療量が示される場合、投与される本開示の組成物の正確な量は、医師によって、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染症又は転移の程度、及び患者の状態の個体差を考慮して決定され得る。
【0025】
「抗体」(antibody、Ab)という用語は、抗原に特異的に結合する糖タンパク質免疫グロブリンを含むが、これに限定されない。概して、及び抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖、又はその抗原結合分子を含み得る。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つの定常ドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメインCLを含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(framework regions、FR)と呼ばれるより保存された領域に組み入れられている、相補性決
定領域(complementarity determining regions、CDR)と呼ばれる超可変領域に更に
細分することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4の順序で配置される3つのCDR及び4つのFRを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。Abの定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。一般に、ヒト抗体は、通例「Y字形状」構造と呼ばれるものに互いに会合する2つの同一の重質(H)鎖ポリペプチド(それぞれ約50kD)と、2つの同一の軽(L)鎖ポリペプチド(それぞれ約25kD)で構成される、約150kDの四量体剤である。重鎖及び軽鎖は、単一のジスルフィド結合によって互いに連結又は接続され、他の2つのジスルフィド結合が重鎖ヒンジ領域を互いに接続し、その結果、二量体が互いに接続されて、四量体が形成される。天然に産生された抗体も、例えばこのCH2ドメイン上で、グリコシル化される。
【0026】
「ヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン配列、又はそれとは区別できない配列から生成、組み立て、又は誘導された可変及び定常ドメイン配列を有する抗体を含むことを意図している。いくつかの実施形態では、抗体(又は抗体成分)は、それらのアミノ酸配列が、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされていない残基又は要素(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的変異誘発によって導入された又はインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を含むとしても、「ヒト」であるとみなされ得る。「ヒト化」という用語は、非ヒト種の可変ドメイン(例えば、マウス)に由来する配列を有する可変ドメインを有し、ヒト生殖細胞系コード化配列とより類似するように改変されている抗体を含むことが意図される。いくつかの実施形態では、「ヒト化」抗体は、実質的にヒトフレームワークドメインのアミノ酸配列を有する1つ以上のフレームワークドメインと、実質的に非ヒト抗体のアミノ酸配列を有する1つ以上の相補性決定領域とを含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、概してヒト免疫グロブリン定常ドメインのものを含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト重鎖定常ドメインのC1、ヒンジ、C2、C3、及び任意選択で、C4領域を含み得る。
【0027】
「モノクローナル抗体」は、Bリンパ球の単一クローンによって、又は単一の抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子がトランスフェクトされた細胞によって産生される抗体である。モノクローナル抗体は、例えば、骨髄腫細胞と免疫脾臓細胞との融合からハイブリッド抗体形成細胞を作製することによって、当業者に既知の方法によって産生される。モノクローナル抗体には、ヒト化モノクローナル抗体が含まれる。
【0028】
「キメラ抗体」は、ヒトなどの1つの種からのフレームワーク残基、及びマウスなどの別の種からのCDR(概して抗原結合を付与する)を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で企図されるCARは、キメラ抗体又はその抗原結合フラグメントである抗原特異的結合ドメインを含む。
【0029】
抗体としては、例えば、モノクローナル抗体、組換え産生された抗体、単一特異的抗体、多重特異的抗体(二重特異的抗体を含む)、ヒト抗体、操作された抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、免疫グロブリン、合成抗体、2つの重鎖分子と2つの軽鎖分子とを含む四量体抗体、抗体軽鎖単量体、抗体重鎖単量体、抗体軽鎖二量体、抗体重鎖二量体、抗体軽鎖-抗体重鎖対、イントラボディ、抗体融合物(本明細書では「抗体コンジュゲート」と呼ばれることもある)、ヘテロコンジュゲート抗体、単一ドメイン抗体、一価抗体、単鎖抗体又は一本鎖Fv(scFv)、ラクダ化(camelized)抗体、アフィボディ、Fabフ
ラグメント、F(ab’)フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、抗抗Id抗体を含む)、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書では「抗体ミメティック」と呼ばれることもある)、及び上記のいずれかの抗原結合フラグメントを挙げることができる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ポリクローナル抗体集団を指す。抗体はまた、例えば、Fab’フラグメント、Fd’フラグメント、Fdフラグメント、単離されたCDR、単鎖Fv、ポリペプチド-Fc融合体、単一ドメイン抗体(例えば、IgNAR又はそのフラグメントなどのサメ単一ドメイン抗体)、ラクダ科動物抗体、単鎖若しくはタンデムダイアボディ(TandAb(登録商標))、Anticalin(登録商標)、Nanobody(登録商標)ミニボディ、BiTE(登録商標)、アンキリン反復タンパク質又はDARPIN(登録商標)、Avimer(登録商標)、DART、TCR様抗体、Adnectin(登録商標)、Affilin(登録商標)、Trans-body(登録商標)、Affibody(登録商標)、TrimerX(登録商標)、マイクロプロテイン(MicroProtein)、Fynomer(登録商標)、Centyrin(登録商標)、及びKALBITOR(登録商標)を含み得る。
【0030】
免疫グロブリンは、IgA、分泌型IgA、IgG、IgE、及びIgMを含むがこれらに限定されない、一般的に既知のアイソタイプのうちのいずれかに由来し得る。IgGサブクラスはまた、当業者に周知であり、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含むが、これらに限定されない。「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされるAbクラス又はサブクラスを指す(例えば、IgM又はIgG1)。「抗体」という用語は、例として、天然に存在する抗体及び天然に存在しない抗体の両方、モノクローナル及びポリクローナル抗体、キメラ及びヒト化抗体、ヒト又は非ヒト抗体、全合成抗体、並びに単鎖抗体を含む。非ヒト抗体は、ヒトにおけるその免疫原性を低減させる組換え法によってヒト化され得る。明示的に述べられていない場合、また文脈が別段の指示をしない限り、「抗体」という用語は、前述の免疫グロブリンのうちのいずれかの抗原結合フラグメント又は抗原結合部分を含み、一価及び二価のフラグメント若しくは部分、及び単鎖抗体も含む。
【0031】
「抗原結合分子」、「抗原結合部分」、又は「抗体フラグメント」は、分子が由来する抗体の抗原結合部分(例えば、CDR)を含む任意の分子を指す。抗原結合分子は、抗原相補性決定領域(CDR)を含み得る。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvフラグメント、dAb、線状抗体、scFv抗体、及び抗原結合分子から形成された多重特異的抗体が挙げられるが、これらに限定されない。ペプチボディ(すなわち、ペプチド結合ドメインを含むFc融合分子)は、好適な抗原結合分子の別の例である。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、腫瘍細胞上の抗原に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、過剰増殖性疾患に関与する細胞上の抗原又はウイルス抗原若しくは細菌抗原に結合する。更なる実施形態では、抗原結合分子は、抗原に特異的に結合する抗体フラグメントであり、その相補性決定領域(CDR)のうちの1つ以上を含む。更なる実施形態では、抗原結合分子は、一本鎖可変フラグメント(single chain variable fragment、scFv)である。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、アビマーを含むか、又はアビマーからなる。
【0032】
場合によっては、CDRは、参照抗体及び/又は本開示で提供されるCDRの配列に見られるものと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、CDRは、参照CDR(例えば、本開示で提供されるCDR)と比較して、配列が同一であるという点、又は1、2、3、4、若しくは5(例えば1~5)個のアミノ酸置換を含有するという点のいずれかで、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、CDRは、参照CDRと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性(例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を示すという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、CDRは、参照CDRと少なくとも96%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を示すという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、CDRは、参照CDRと比較して、CDR内の1個のアミノ酸が欠失、付加、又は置換されているが、同時にCDRが、それ以外は参照CDRのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態では、CDRは、参照CDRと比較して、CDR内の2、3、4、又は5(例えば、2~5)個のアミノ酸が、欠失、付加、又は置換されているが、同時にCDRが、それ以外は参照CDRのアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRと実質的に同一である。様々な実施形態では、抗原結合フラグメントは、参照抗体と同じ抗原に結合する。
【0033】
抗原結合フラグメントは、任意の手段によって産生され得る。例えば、いくつかの実施形態では、抗原結合フラグメントは、無傷の抗体の断片化によって酵素的又は化学的に産
生され得る。いくつかの実施形態では、抗原結合フラグメントは、組換えにより産生され得る(すなわち、操作された核酸配列の発現によって)。いくつかの実施形態では、抗原結合フラグメントは、全体的又は部分的に合成により産生され得る。いくつかの実施形態では、抗原結合フラグメントは、少なくとも約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190アミノ酸以上の長さを有してもよく、いくつかの実施形態では、少なくとも約200アミノ酸(例えば、50~100、50~150、50~200、又は100~200アミノ酸)の長さを有してもよい。
【0034】
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、互換的に使用され、当該技術分野で一般的である。可変領域は、典型的には、抗体の一部、概して、軽鎖又は重鎖の一部、典型的には成熟重鎖のアミノ末端110~120アミノ酸及び成熟軽鎖の約90~115アミノ酸を指し、これらは抗体間で配列が大きく異なり、その特定の抗原に対する特定の抗体の結合及び特異性に使用される。配列の変動性は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる領域に集中し、可変ドメイン内のより高度に保存された領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。いかなる特定の機構又は理論にも束縛されることを望まないが、軽鎖及び重鎖のCDRは、抗原との抗体の相互作用及び特異性を主に担うと考えられている。ある特定の実施形態では、可変領域は、ヒト可変領域である。ある特定の実施形態では、可変領域は、げっ歯類又はマウスCDR及びヒトフレームワーク領域(FR)を含む。特定の実施形態では、可変領域は霊長類(例えば、非ヒト霊長類)可変領域である。ある特定の実施形態では、可変領域は、げっ歯類又はマウスCDR及び霊長類(例えば、非ヒト霊長類)フレームワーク領域(FR)を含む。
【0035】
「VL」及び「VLドメイン」という用語は、抗体又はその抗原結合分子の軽鎖可変領域を指すために互換的に使用される。
【0036】
「VH」又は「V」への言及は、抗体、Fv、scFv、dsFv、Fab、又は本明細書に開示される他の抗体フラグメントの可変領域を含む、免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「VL」又は「V」への言及は、抗体、Fv、scFv、dsFv、Fab、又は本明細書に開示される他の抗体フラグメントの可変領域を含む、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0037】
CDRの多くの定義が、一般に、使用されている:Kabat番号付け、Chothia番号付け、AbM番号付け、又は接触番号付け。AbM定義は、Oxford Molecular社のAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される2つの間の折衷案である。接触定義は、利用可能な複合結晶構造の分析に基づく。
【0038】
「Kabat番号付け」などの用語は、当該技術分野で認識されており、抗体又はその抗原結合分子の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸残基に番号付けするシステムを指す。あ
る特定の態様では、抗体のCDRは、Kabat番号付けシステムに従って決定できる(例えば、Kabat EA & Wu TT(1971)Ann NY Acad Sci 190:382-391及びKabat EA et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照されたい)。Kabat番号付けシステムを使用すると、抗体重鎖分子内のCDRは、典型的には、アミノ酸位置31~35(任意選択的に35に続いて1つ又は2つの追加のアミノ酸を含むことができる(Kabat番号付けスキームでは、35A及び35Bと呼ばれる))(CDR1)、アミノ酸位置50~65(CDR2)、及びアミノ酸位置95~102(CDR3)に存在する。Kabat番号付けシステムを使用すると、抗体軽鎖分子内のCDRは、典型的には、アミノ酸位置24~34(CDR1)、アミノ酸位置50~56(CDR2)、及びアミノ酸位置89~97(CDR3)に存在する。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体のCDRは、Kabat番号付けスキームに従って決定されている。
【0039】
ある特定の態様では、抗体のCDRは、免疫グロブリン構造ループの位置を指すChothia番号付けスキームに従って決定することができる(例えば、Chothia C
& Lesk AM,(1987),J Mol Biol 196:901-917、Al-Lazikani B et al.,(1997)J Mol Biol 273:927-948、Chothia C et al.,(1992)J Mol Biol 227:799-817、Tramontano A et al.,(1990)J Mol Biol 215(1):175-82、及び米国特許第7,709,226号を参照されたい)。典型的には、Kabat番号付け規則を使用する場合、Chothia CDR-H1ループは重鎖アミノ酸26~32、33、又は34に存在し、Chothia CDR-H2ループは重鎖アミノ酸52~56に存在し、Chothia CDR-H3ループは重鎖アミノ酸95~102に存在し、一方Chothia CDR-L1ループは軽鎖アミノ酸24~34に存在し、Chothia CDR-L2ループは軽鎖アミノ酸50~56に存在し、Chothia CDR-L3ループは軽鎖アミノ酸89~97に存在する。Kabat番号付け規則を使用して番号付けされた場合の、Chothia CDR-HIループの終了は、ループの長さに応じてH32とH34との間で変化する(これは、Kabat番号付けスキームがH35A及びH35Bに挿入を配置するためであり、35Aも35Bも存在しない場合、ループは32で終了し、35Aのみが存在する場合、ループは33で終了し、35A及び35Bの両方が存在する場合、ループは34で終了する)。
【0040】
「定常領域」及び「定常ドメイン」という用語は交換可能であり、当技術分野で一般的な意味を有する。定常領域は、抗体部分であり、例えば、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、Fc受容体との相互作用などの様々なエフェクター機能を示すことができる、軽鎖及び/又は重鎖のカルボキシル末端部分である。免疫グロブリン分子の定常領域は、概して、免疫グロブリン可変ドメインと比較してより保存されたアミノ酸配列を有する。
【0041】
抗体に関して使用される場合、「重鎖」という用語は、任意の異なるタイプ、例えば、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)及びミュー(μ)を指し得てもよく、これらのタイプは、IgGのサブクラス、例えば、IgG、IgG、IgG及びIgGを含む、抗体のIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMクラスをそれぞれ生成する。
【0042】
抗体に関して使用される場合、「軽鎖」という用語は、任意の異なるタイプ、例えば、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)又はラムダ(λ)を指してもよい
。軽鎖アミノ酸配列は、当該技術分野において周知である。特定の実施形態では、軽鎖は、ヒト軽鎖である。
【0043】
「抗原(Ag)」という用語は、ヒト又は動物に注入又は吸収される組成物(腫瘍特異的タンパク質を含むものなど)を含む、ヒト又は動物における抗体の産生又はT細胞応答を刺激し得る化合物、組成物、又は物質を指す。抗原は、開示された抗原などの異種抗原によって誘発されるものを含む、特定の体液性又は細胞性免疫の産物と反応する。「標的抗原」又は「目的の標的抗原」は、他の正常な(所望の)細胞の表面に実質的に見られず、本明細書で企図されるTCR又はCARの結合ドメインが結合するように設計されている抗原である。当業者は、事実上、すべてのタンパク質又はペプチドを含む任意の巨大分子が抗原として機能し得ることを容易に理解するであろう。抗原は、内因的に発現、すなわちゲノムDNAによって発現されても、組換えによって発現されてもよい。抗原は、がん細胞などのある特定の組織に特異的であることも、広く発現されることもできる。更に、より大きな分子のフラグメントが抗原として作用し得る。一実施形態では、抗原は、腫瘍抗原である。「標的」は、結合モチーフ、抗原結合系、又は結合剤、例えば抗体によって結合された任意の分子である。いくつかの実施形態では、標的は、本開示の抗原又はエピトープである。
【0044】
「がん」という用語は、概して、異常な細胞が制御なしに分裂し、近くの組織に侵入し得る疾患又は状態のクラスに関連する。本開示の方法によって治療され得るがんの例としては、リンパ腫、白血病、骨髄腫及び他の白血球悪性腫瘍を含む免疫系のがんが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、例えば、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚又は眼内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、子宮がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰がん、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin's lymphoma、NHL)、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(primary mediastinal large B cell lymphoma、PMBC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large
B cell lymphoma、DLBCL)、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma、FL)、形
質転換型濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(splenic marginal zone lymphoma、SMZL)、食道がん、小腸がん、内分泌系のがん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部肉腫、尿道がん、陰茎がん、慢性又は急性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(acute lymphoblastic leukemia、ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)、小児期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎臓又は尿管のがん、腎盂がん、中枢神経系(central nervous system、CNS)の新生物、中枢神経系原発リンパ腫、腫瘍血管新生、脊椎軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されたものを含む環境的に誘発されたがん、他のB細胞悪性腫瘍、及び上記のがんの組み合わせに由来する腫瘍の腫瘍サイズを縮小するために使用され得る。一つの特定の実施形態では、がんは、多発性骨髄腫である。特定のがんは、化学療法又は放射線療法に反応性であり得、又は特定のがんは難治性であり得る。難治性がんは、外科的介入に適していないがんを指し、難治性がんは、最初から化学療法又は放射線療法に応答しないか、又はがんが時間の経過とともに非応答になるかのいずれかである。がんは更に、他に特定されないびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma、DLBCL)、2選択以上の全身療法後の縦隔原発大細胞型B細
胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、及び濾胞性リンパ腫から生じるDLBCLを含む、2選択以上の全身療法後の再発性又は難治性大細胞型B細胞リンパ腫を含む。
【0045】
「がん性細胞」、「がん細胞」、「腫瘍細胞」、又はそれらの変異体という用語は、がん腫又は組織の個々の細胞を指す。腫瘍とは、概して、細胞の異常な増殖によって形成される腫脹又は病変を指し、良性、前悪性、又は悪性であり得る。ほとんどのがんは腫瘍を
形成するが、例えば白血病などの一部のがんは、必ずしも腫瘍を形成しない。腫瘍を形成するがんの場合、がん(細胞)及び腫瘍(細胞)という用語は互換的に使用される。個体における腫瘍の量は、腫瘍の数、体積、又は重量として測定され得る「腫瘍量」である。文脈上他の意味に解釈する場合を除き、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」
、及び「含む(comprising)」という用語は、記載されたステップもしく要素又はステップ若しくは要素のグループを含むことを意味するが、任意の他のステップ若しくは要素又はステップ若しくは要素のグループを除外しないことが理解されるであろう。「からなる」とは、「からなる」という語句に続くもの全体を含み、それらに限定されることを意味する。したがって、「からなる」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在しない可能性があることを示す。「から本質的になる」とは、語句の後に列挙された任意の要素を含むことを意味し、列挙された要素について本開示で指定された活動又は作用を妨げないか、又はそれに寄与しない他の要素に限定される。
【0046】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。ある特定の実施形態では、CDR内又はその抗体又はその抗原結合分子のフレームワーク領域内の1つ以上のアミノ酸残基は、同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えることができる。一般に、2つの配列は、対応する位置に保存的アミノ酸置換を含有する場合、概して「実質的に同様」とみなされる。例えば、ある特定のアミノ酸は、概して、「疎水性」又は「親水性」アミノ酸として、及び/又は「極性」又は「非極性」側鎖を有するものとして分類される。同じ種類の別のアミノ酸の置換は、保存的置換とみなされ得る。例示的なアミノ酸分類を以下の表2及び表3に要約する。
【0047】
「減少する」又は「下げる」、又は「軽減する」、又は「低減する」又は「弱める」とは、概して、ビヒクル単独(すなわち、活性部分)又は対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、より低い生理学的応答(すなわち、下流効果)を生成するか、誘発するか、又は引き起こす、本明細書で企図される組成物の能力を指す。「減少」又は「低減された」量は、典型的には「統計的に有意な」量であり、対照組成物であるビヒクルによって生成される応答(参照応答)の、1.1、1.2、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、30倍、又はそれ以上(例えば、500倍、1000倍)(例えば、1.5、1.6、1.7.1.8などの1より上の、間にあるすべての整数及び少数を含む)の減少を含み得る。
【0048】
「ドミナントネガティブ」という用語は、変更された遺伝子産物が、未改変の遺伝子産物を介して通常伝達される下流のシグナル伝達機能を阻害するような、ポリペプチドコード配列の切断又は変異を指す。
【0049】
「増強する」又は「促進する」又は「増加する」又は「拡大する」という用語は、概して、ビヒクル又は対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、より大きな生理学的応答(例えば、下流効果)を生成するか、誘発するか、又は引き起こす、本明細書で企図される組成物の能力を指す。測定可能な生理学的応答は、当該技術分野の理解及び本明細書の説明から明らかなように、T細胞の拡大、活性化、持続性の増加、及び/又はがん細胞死の殺傷能力の増加を含み得る。「増加した」又は「増強された」量は、典型的には「統計的に有意な」量であり、ビヒクル又は対照組成物によって生成される応答の、1.1、1.2、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、15、20、30倍、又はそれ以上(例えば、500倍、1000倍)(例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などの1より上の、間にあるすべての整数及び小数点を含む)の増加を含み得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、結合剤が結合する抗原の領域を指す。エピトープは、例えば、ポリペプチドの連続アミノ酸(線形又は連続エピトープ)であり得るか、又はエピトープは、例えば、ポリペプチド又はポリペプチドの2つ以上の非連続領域(立体配座、非線形、不連続、又は非連続エピトープ)からの一緒になり得る。ある特定の実施形態では、抗体が結合するエピトープは、例えば、NMR分光法、X線回折結晶学研究、ELISAアッセイ、質量分析と組み合わせた水素/重水素交換(例えば、液体クロマトグラフィーエレクトロスプレー質量分析)、アレイベースのオリゴペプチドスキャンニングアッセイ、及び/又は変異誘発マッピング(例えば、部位特異的変異誘発マッピング)によって決定することができる。X線結晶学の場合、結晶化は、当該技術分野における既知の方法のいずれかを使用して達成され得る(例えば、Giege
R et al.,(1994)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 50(Pt4):339-350、McPherson A(1990)Eur J Biochem 189:1-23、Chayen NE(1997)Structure 5:1269-1274、McPherson A(1976)J Biol Chem 251:6300-6303)。抗体:抗原結晶は、周知のX線回折技術を使用して研究することができ、X-PLOR(Yale University、1992、Molecular Simulations Inc.によって配布されている、例えば、Meth Enzymol (1985)volumes 114 & 115,eds Wyckoff HW et al.,、米国特許出願公開第2004/0014194号)、及びBUSTER(Bricogne G(1993)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 49(Pt 1):37-60、Bricogne G(1997)Meth Enzymol
276A:361-423,ed Carter CW、Roversi P et al.,(2000)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 56(Pt 10):1316-1323を参照されたい)などのコンピュータソフトウェアを使用して精密化することができる。突然変異誘発マッピング研究は、当業者に知られている任意の方法を使用して達成され得る。例えば、アラニンスキャニング変異誘発技術を含む変異誘発技術の説明についてはChampe M etal.,(1995)J Biol Chem 270:1388-1394及びCunningham BC&Wells JA(1989)Science 244:1081-1085を参照されたい。
【0051】
「遺伝子操作された」又は「操作された」という用語は、限定するものではないが、コード領域若しくは非コード領域又はその一部を削除すること、又はコード領域若しくはその一部を挿入することなど、細胞のゲノムを改変する方法を指す。いくつかの実施形態では、改変された細胞は、リンパ球、例えば、T細胞であり、患者又はドナーのいずれかから得ることができる。細胞は、細胞のゲノムに組み込まれる外因性構築物、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)を発現するように改変されてもよい
。操作には、概して、人間の手による操作が含まれる。例えば、ポリヌクレオチドは、自然界ではその順序で連結又は接続されていない2つ以上の配列が、操作されたポリヌクレオチドにおいては互いに直接連結又は接続されるように人間の手によって操作される場合、「操作された」とみなされる。分子生物学の技術による細胞の操作という観点から、細胞又は生物は、その遺伝情報が変更されるように操作された場合、「操作された」とみなされる(例えば、以前に存在しない新しい遺伝物質が、形質転換、体細胞ハイブリダイゼーション、トランスフェクション、形質導入、又は他のメカニズムによって導入されているか、又は以前に存在した遺伝物質が、例えば、置換又は欠失変異によって、又は他のプロトコルによって変化又は除去される)。いくつかの実施形態では、結合剤(binding agent)は、改変されたリンパ球、例えば、T細胞であり、患者又はドナーのいずれかから
得ることができる。操作された細胞は、細胞のゲノムに組み込まれる外因性構築物、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)を発現するように改変されてもよい。操作されたポリヌクレオチド又は結合剤の子孫は、概して、実際の操作が前の実体で実行されたとしても、「操作された」と称される。いくつかの実施形態では、「操作された」は、設計及び製造された実体を指す。「設計された」という用語は、(i)その構造が人間の手によって選択されるか、又はそれによって選択された、(ii)人間の手を必要とするプロセスによって産生される、及び/又は(iii)天然物質及び他の既知の薬剤とは異なる、薬剤を指す。「T細胞受容体」又は「TCR」は、T細胞の表面上に存在する抗原認識分子を指す。正常なT細胞の発達中に、4つのTCR遺伝子、α、β、γ、及びδの各々は、再配列して非常に多様なTCRタンパク質をもたらすことができる。「遺伝子改変された細胞」、「改変された細胞」、及び「再指向された(redirected)細胞」という用語は、互換的に使用される。
【0052】
「免疫エフェクター細胞」は、1つ以上のエフェクター機能(例えば、細胞傷害性細胞殺傷活性、サイトカインの分泌、ADCC及び/又はCDCの誘導)を有する免疫系の任意の細胞である。本明細書で企図される例示的な免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球、例えば、panCD3T細胞、細胞傷害性T細胞(CTL;CD8T細胞)、TIL、及びヘルパーT細胞(HTL、CD4T細胞)である。
【0053】
「個体」及び「対象」という用語は、しばしば互換的に使用され、本明細書に開示される方法で治療され得る任意の動物を指す。好適な対象(例えば、患者)には、実験動物(マウス、ラット、ウサギ、又はモルモットなど)、家畜動物、及び飼育動物又はペット(ネコ又はイヌなど)が含まれる。非ヒト霊長類及びヒト患者が含まれる。一実施形態では、対象は、がんを有する、がんと診断された、がんを有することが疑われるか、又はがんのリスクがあるか若しくはがんを有している、ヒト患者を含み得る。本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、疾患又は状態の治療を受け得る対象を指す。
【0054】
「単離されたペプチド」又は「単離されたポリペプチド」などの用語は、細胞環境からの、及び細胞の他の成分との会合からのペプチド又はポリペプチド分子のインビトロでの単離及び/又は精製を指し、すなわち、それは、インビボ物質とは有意に関連していない。同様に、「単離された細胞」は、インビボの組織又は器官から得られ、細胞外マトリックスを実質的に含まない細胞を示す。
【0055】
「単離されたポリヌクレオチド」という用語は、天然に存在する状態でそれに隣接する配列から精製されたポリヌクレオチド、例えば、そのフラグメントに通常隣接する配列から取り出されたDNAフラグメントを指す。「単離されたポリヌクレオチド」はまた、相補的DNA(complementary DNA、cDNA)、組換えDNA、又は自然界に存在しない
、人間の手によって作製されている他のポリヌクレオチドを指す。
【0056】
「リンパ球」という用語には、ナチュラルキラー(natural killer、NK)細胞、T細
胞、又はB細胞が含まれる。NK細胞は、遺伝免疫系の主要構成要素を代表する細胞傷害性(細胞毒性)リンパ球の一種である。NK細胞は、腫瘍及びウイルスに感染した細胞を拒絶する。それは、アポトーシス又はプログラム細胞死の過程を通して作用する。それらは、細胞を死滅させるために活性化を必要としないので、「ナチュラルキラー」と呼ばれた。T細胞は、細胞媒介免疫(抗体の関与のない)において主要な役割を果たす。そのT細胞受容体(TCR)は、他のリンパ球型から分化する。免疫系の分化した器官である胸腺は、主にT細胞の成熟化を担う。6つのタイプのT細胞、すなわち、ヘルパーT細胞(例えば、CD4+細胞)、細胞傷害性T細胞(別名、TC、細胞傷害性Tリンパ球、CTL、Tキラー細胞、細胞溶解性T細胞、CD8T細胞又はキラーT細胞)、メモリT細胞((i)幹メモリTSCM細胞は、ナイーブ細胞と同様に、CD45RO、CCR7、CD45RA、CD62L(L-セレクチン)、CD27、CD28及びIL-7Rαであるが、大量のCD95、IL-2Rβ、CXCR3及びLFA-1もまた発現し、メモリ細胞に特有の多数の機能的属性を示す。)、(ii)セントラルメモリTCM細胞は、L-セレクチン及びCCR7を発現し、IL-2を分泌するが、IFNγ又はIL-4を分泌せず、(iii)ただし、エフェクターメモリTEM細胞は、L-セレクチン又はCCR7を発現しないが、IFNγ及びIL-4などのエフェクターサイトカインを産生する)、制御性T細胞(Treg、サプレッサーT細胞、又はCD4CD25制御性T細胞)、ナチュラルキラーT細胞(Natural Killer T-cells、NKT)、及びガンマデルタT細胞が存在する。T細胞は、ガンマデルタT細胞、胸腺細胞を含むpanCD3T細胞、ナイーブTリンパ球、未成熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、静止Tリンパ球、又は活性化Tリンパ球を含むことを意図している。T細胞は、Tヘルパー(T helper、Th)細胞、例えばTヘルパー1(T helper 1、Thl)又はTヘルパー2(T helper 2、Th2)細胞であり得る。T細胞は、ヘルパーT細胞(HTL、CD4T細胞)CD4T細胞、細胞傷害性T細胞(CTL;CD8T細胞)、腫瘍浸潤細胞傷害性T細胞(TIL;CD8T細胞)、CD4CD8T細胞、CD4CD8T細胞、又はT細胞の任意の他のサブセットであり得る。いくつかの実施形態での使用に好適なT細胞の他の例示的な集団には、ナイーブT細胞及びメモリT細胞が含まれる。一方、B細胞は、体液性免疫(抗体の関与を伴う)において主要な役割を果たす。B細胞は、抗体及び抗原を産生し、抗原提示細胞(antigen-presenting cells、APC)の役割を果たし、抗原相互作用による活性化後にメモリB細胞に変わる。哺乳動物では、未成熟B細胞は骨髄で形成され、その名称はここに由来する。
【0057】
「改変されたT細胞」という用語は、本明細書に記載の操作されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの導入によって改変されたT細胞を指す。改変されたT細胞は、遺伝的改変及び非遺伝的改変の両方の両方を含む(例えば、エピソーム又は染色体外のもの)。一実施形態では、改変されたT細胞は、本明細書に記載のTGF-β受容体又はCAR-DN TGF-β受容体を含み得る。
【0058】
「維持する」、「保存する」、又は「維持」、又は「変化なし」、又は「変化なし」、又は「実質的な変化なし」、又は「実質的に減少しない」とは、概して、ビヒクル、対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答と比較して、細胞においてより低い生理学的応答(すなわち、下流効果)を生成するか、誘発するか、又は引き起こす本明細書で企図される組成物の能力を指す。同等の応答は、参照応答と有意に異ならないか、又は測定可能なほど異ならないものである。
【0059】
「悪性」という用語は、腫瘍細胞の群が、制御されていない増殖(すなわち、正常限界を超える分裂)、浸潤(すなわち、隣接組織の侵入及び破壊)、及び転移(すなわち、リンパ又は血液を介して体内の他の場所に広がる)のうちの1つ以上を示すがんを指す。本明細書で使用される場合、「転移する」という用語は、体のある部から別の部分へのがんの広がりを指す。広がった細胞によって形成された腫瘍は、「転移性腫瘍」又は「転移」
と呼ばれる。転移性腫瘍は、元の(原発性(primacy))腫瘍と同様の細胞を含む。本明
細書で使用される場合、「良性」又は「非悪性」という用語は、より大きく増殖し得るが、身体の他の部分に広がらない腫瘍を指す。良性腫瘍は、自己限定的であり、典型的には、侵入又は転移しない。
【0060】
「増殖」という用語は、細胞の対称的又は非対称的な分裂のいずれかで、細胞分裂の増加を指す。いくつかの実施形態では、「増殖」は、T細胞の対称的又は非対称的な分裂を指す。「増殖増加」は、非処理試料中の細胞と比較して、処理された試料中の細胞数が増加すると発生する。
【0061】
「刺激」という用語は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)の同族リガンドとの結合によって誘発される一次応答を指し、それによって、TCR/CD3複合体を介したシグナル伝達を含むがこれらに限定されないシグナル伝達事象を媒介する。「刺激分子」は、同族刺激性リガンドと特異的に結合するT細胞上の分子を指す。本明細書で使用される「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞、B細胞など)上に存在する場合、T細胞上の同族結合パートナー(本明細書では「刺激分子」と呼ばれる)と特異的に結合し、それによって、限定するものではないが、活性化、免疫応答の開始、増殖などの、T細胞による一次応答を媒介し得るリガンドを意味する。刺激リガンドとしては、CD3リガンド、例えば、抗CD3抗体(OKT3など)及びCD2リガンド、例えば、抗CD2抗体、ペプチド、例えば、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus、
CMV)、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus、HBV)、及びエプスタイン-バー
ウイルス(Epstein-Barr virus、EBV)、ペプチドを負荷したMHCクラスI分子、スーパーアゴニスト抗CD2抗体、並びにスーパーアゴニスト抗CD28抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
「共刺激シグナル」は、TCR/CD3ライゲーションなどの一次シグナルと組み合わせて、T細胞増殖、サイトカイン産生、及び/又は分子(例えば、CD28)のアップレギュレーション若しくはダウンレギュレーションにつながるシグナルを指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、「共刺激リガンド」は、T細胞上の同族共刺激分子に特異的に結合する抗原提示細胞上の分子を含む。共刺激リガンドの結合は、限定するものではないが、増殖、活性化、分化などのT細胞応答を媒介するシグナルを提供する。共刺激リガンドは、刺激分子によって提供される一次シグナルに加えて、例えば、T細胞受容体(TCR)/CD3複合体と、ペプチドを負荷した主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex、MHC)分子との結合によって、シグナルを誘導する。共刺激リガンドとしては、限定するものではないが、3/TR6、4-1BBリガンド、Tollリガンド受容体に結合するアゴニスト又は抗体、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、CD30リガンド、CD40、CD7、CD70、CD83、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、ILT4、免疫グロブリン様転写物(ILT)3、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(intercellular adhesion molecule、ICAM)、B7-H3と特異的に結合する
リガンド、リンホトキシンβ受容体、MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MHC class I chain-related protein A、MICA)、MHCクラスI鎖関連タンパク質B(MHC class
I chain-related protein B、MICB)、OX40リガンド、PD-L2、又はプログラム死(programmed death、PD)L1を挙げることができる。共刺激リガンドとしては、限定するものではないが、T細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体、例えば、限定するものではないが、4-1BB、B7-H3、CD2、CD27、CD28、CD30、CD40、CD7、ICOS、CD83と特異的に結合するリガンド、リンパ球機能関連抗原1(lymphocyte function-associated antigen-1、LFA-1)、ナチュラルキラー細胞受容体C(natural killer cell receptor C、NKG2C)、OX40
、PD-1、又は腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14又はLIGHT)が挙げられる。
【0064】
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それによってT細胞による共刺激応答、例えば、限定するものではないが、増殖を媒介するT細胞上の同族結合パートナーである。共刺激分子には、それだけに限らないが、「共刺激分子」が、共刺激リガンドと特異的に結合し、それによってT細胞による共刺激応答、例えば限定するものではないが、増殖を媒介するT細胞上の同族結合パートナーであることが含まれる。共刺激分子としては、4-1BB/CD137、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD33、CD45、CD100(SEMA4D)、CD103、CD134、CD137、CD154、CD16、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD22、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3(アルファ、ベータ、デルタ、エプシロン、ガンマ、ゼータ)、CD30、CD37、CD4、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD5、CD64、CD69、CD7、CD80、CD83リガンド、CD84、CD86、CD8アルファ、CD8ベータ、CD9、CD96(Tactile)、CDl-
la、CDl-lb、CDl-lc、CDl-ld、CDS、CEACAM1、CRT AM、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICAM-1、ICOS、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、インテグリン、ITGA4、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、LFA-1、LFA-1、LIGHT、LIGHT(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14、TNFSF14)、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1(CD11a/CD18)、MHCクラスI分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX40、PAG/Cbp、PD-1、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、SLAMF4(CD244、2B4)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAMF7、SLP-76、TNF、TNFr、TNFR2、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、又はVLA-6、又はフラグメント、切断、又はそれらの組み合わせ、が含まれるがこれらに限定されない。
【0065】
「実質的に」という用語は、参照する数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量又は長さの80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上である数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量又は長さを指す。一実施形態では、「実質的に同じ」とは、参照する数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さとほぼ同じである効果、例えば、生理学的効果を生成する、数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「治療」又は「治療すること」は、疾患又は病的状態の症状又は病理に対する任意の有益な又は望ましい効果を含み、治療される疾患又は状態、例えば、がんの、1つ以上の測定可能なマーカーの最小限の減少さえも含み得る。治療は、任意選択的に、疾患若しくは状態の症状の低減又は改善、又は疾患若しくは状態の進行の遅延のいずれかを含み得る。「治療」は、疾患又は状態の完全な根絶又は治癒、又はそれらの関連する症状を必ずしも示すものではない。
【0067】
「ウイルス誘発性がん」という用語は、DNA又はRNAウイルスのいずれかによって
誘発される任意の悪性腫瘍を含む。そのようなウイルスは、限定されないが、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、B型肝炎ウイルス(HBV-肝臓細胞がん)、ヒトパピローマウイルス(HPV-扁平上皮細胞がん、子宮頸がん)、ヒトT-リンパ性ウイルス(HTLV-I-成人T-細胞白血病)、及びエプスタイン-バーウイルス(EBV-バーキットリンパ腫、鼻咽頭がん)を含み得る。
【0068】
「キメラ抗原受容体」又は「CAR」は、抗原結合時に結合モチーフ及び免疫細胞(例えば、ナイーブT細胞、中央メモリT細胞、エフェクターメモリT細胞、又はそれらの組み合わせなどのT細胞)を活性化する手段を含むように操作された分子を指す。CARは、人工T細胞受容体、キメラT細胞受容体、又はキメラ免疫受容体としても知られている。いくつかの実施形態では、CARは、結合モチーフ、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、1つ以上の共刺激ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む。キメラ抗原受容体を発現するように遺伝子操作されたT細胞は、CAR T細胞と称され得る。「細胞外ドメイン」(又は「ECD」)は、ポリペプチドが細胞膜に存在する場合、細胞膜の外側、細胞外空間に存在すると理解されるポリペプチドの一部を指す。
【0069】
「中和する」という用語は、リガンドに結合し、そのリガンドの生物学的作用を防止又は低減する抗原結合分子、scFv、抗体、又はそのフラグメントを指す。いくつかの実施形態では、抗原結合分子、scFv、抗体、又はそのフラグメントは、リガンド上の結合部位を直接遮断するか、さもなければ間接的手段(リガンドの構造的又はエネルギー的変化など)を介して結合するリガンドの能力を変化させる。いくつかの実施形態では、抗原結合分子、scFv、抗体、又はそのフラグメントは、それが結合しているタンパク質が生物学的機能を果たすのを妨げる。
【0070】
「自己」という用語は、後に再導入される同じ個体に由来する任意の材料を指す。例えば、本明細書に記載の操作された自己細胞療法(engineered autologous cell therapy、eACT(商標))の方法は、患者からのリンパ球の採取を含み、その後、そのリンパ球は、例えばCAR構築物を発現するように操作され、次いで、同じ患者に投与される。
【0071】
「同種異系」という用語は、1つの個体に由来し、次いで同じ種の別の個体に導入される任意の材料、例えば、同種異系T細胞移植を指す。
【0072】
「形質導入」及び「形質導入された」という用語は、外来DNAがウイルスベクターを介して細胞に導入される過程を指す(Jonesら、「Genetics:principles and analysis」、Boston:Jones&Bartlett
Publ.(1998)を参照)。いくつかの実施形態では、ベクターは、レトロウイルスベクター、DNAベクター、RNAベクター、アデノウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタインバーウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルス関連ベクター、レンチウイルスベクター、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0073】
「形質転換」は、外因性DNAが宿主細胞に導入される任意のプロセスを指す。変換は、様々な方法を使用して、天然又は人工条件下で起こり得る。形質転換は、原核生物又は真核宿主細胞への外来核酸配列の挿入のための任意の既知の方法を使用して達成され得る。いくつかの実施形態では、いくつかの形質転換方法論は、形質転換される宿主細胞及び/又は挿入される核酸に基づいて選択される。形質転換の方法は、ウイルス感染、エレクトロポレーション、及びリポフェクションを含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、「形質転換された」細胞は、挿入されたDNAが、自律的に複製するプラスミド又は宿主染色体の一部として複製することができるという点で安定的に形質転換される。いくつかの実施形態では、形質転換細胞は、導入された核酸を発現し得る。
【0074】
用語「ベクター」は、提供される核酸配列を含むか、又は組み込むように改変されたレシピエント核酸分子を指す。ベクターの1つのタイプは、追加のDNAがライゲーションされ得る環状二本鎖DNA分子を指す「プラスミド」である。別の種類のベクターは、ウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントは、ウイルスゲノムにライゲーションされ得る。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞で自律複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよく、それによって宿主ゲノムとともに複製される。更に、ある特定のベクターは、それらが作動可能に連結されている挿入遺伝子の発現を指示する配列を含む。そのようなベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称され得る。標準技術が、ベクターの操作に使用することができ、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))に見られ、これは、任意の目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
本明細書で使用される場合、「抗腫瘍効果」は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞の数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、転移の数の減少、全生存期間又は無増悪生存期間の増加、平均余命の延長、又は腫瘍に関連する様々な生理学的症状の改善として提示され得る生物学的効果を指す。抗腫瘍効果はまた、腫瘍の発生の予防、例えば、ワクチンを指し得る。
【0076】
本明細書で使用される場合、「サイトカイン」は、特定の抗原との接触に応答して1つの細胞によって放出される非抗体タンパク質を指し、サイトカインは第2の細胞と相互作用して第2の細胞における応答を媒介する。サイトカインは、細胞によって内因的に発現され得、又は対象に投与され得る。サイトカインは、免疫応答を伝播するために、マクロファージ、B細胞、T細胞、及び肥満細胞などの免疫細胞によって放出され得る。サイトカインは、レシピエント細胞において様々な応答を誘導し得る。サイトカインには、恒常性サイトカイン、ケモカイン、炎症誘発性サイトカイン、エフェクター、及び急性期タンパク質が含まれ得る。例えば、インターロイキン(interleukin、IL)7及びIL-1
5などの恒常性サイトカインは、免疫細胞の生存及び増殖を促進し、炎症誘発性サイトカインは、炎症応答を促進し得る。恒常性サイトカインの例としては、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-12p70、IL-15、及びインターフェロン(interferon、IFN)ガンマが挙げられるが、これらに限定されない。炎症誘発性サイトカインの例としては、IL-1a、IL-1b、IL-6、IL-13、IL-17a、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor、TNF)-アルファ
、TNF-ベータ、線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor、FGF)2、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte macrophage colony-stimulating factor、GM-CSF)、可溶性細胞間接着分子1(soluble intercellular adhesion molecule 1、sICAM-1)、可溶性血管接着分子1(vascular adhesion molecule 1、s
VCAM-1)、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)、VEGF-C、VEGF-D、及び胎盤増殖因子(placental growth factor、PLG
F)が挙げられるが、これらに限定されない。エフェクターの例としては、グランザイムA、グランザイムB、可溶性Fasリガンド(soluble Fas ligand、sFasL)、及びパーフォリンが挙げられるが、これらに限定されない。急性期タンパク質の例としては、C反応性タンパク質(C-reactive protein、CRP)及び血清アミロイドA(serum amyloid A、SAA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
「ケモカイン」は、細胞の走化性又は方向性運動を媒介するサイトカインの一種である。ケモカインの例としては、IL-8、IL-16、エオタキシン、エオタキシン-3、
マクロファージ由来ケモカイン(MDC又はCCL22)、単球走化性タンパク質1(MCP-1又はCCL2)、MCP-4、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α、MIP-1a)、MIP-1β(MIP-1b)、ガンマ誘導性タンパク質10(IP-10)、並びに胸腺及び活性化制御ケモカイン(TARC又はCCL17)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
「免疫応答」は、免疫系の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞及び好中球)及びこれらの細胞又は肝臓のいずれかによって産生される可溶性巨大分子(Ab、サイトカイン及び補体を含む)の作用であって、侵入している病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、がん性若しくは他の異常な細胞、又は自己免疫若しくは病理学的炎症の場合には正常なヒト細胞若しくは組織の、選択的標的化、結合、損傷、破壊、及び/又は脊椎動物の体からの排除をもたらす作用を指す。
【0079】
「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘導する、増強する、抑制する又は他の様態で改変すること、を含む、方法による、疾患に罹患しているか、又は疾患に罹患するか若しくは再発するリスクがある対象の治療を指す。免疫療法の例としては、限定するものではないが、T細胞療法が挙げられる。T細胞療法は、養子T細胞療法、腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocyte、TIL)免疫療法、自己細胞療法、操作された自己細
胞療法(eACT(商標))、及び同種T細胞移植を含み得る。しかしながら、当業者は、本明細書に開示される前処置方法が任意の移植T細胞療法の有効性を高めることを理解するであろう。T細胞療法の例は、米国特許出願公開第2014/0154228号及び同第2002/0006409号、米国特許第5,728,388号、及び国際公開第2008/081035号に記載されている。
【0080】
免疫療法のT細胞は、当技術分野で公知の任意の供給源に由来し得る。例えば、造血幹細胞集団からインビトロでT細胞を分化させることができ、又は対象からT細胞を得ることができる。T細胞は、例えば、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cells、PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍から得ることができる。更に、T細胞は、当技術分野で利用可能な1つ以上のT細胞株に由来し得る。T細胞はまた、FICOLL(商標)分離及び/又はアフェレーシスなどの当業者に公知の様々な技術を使用して、対象から採取された血液の単位から得ることができる。T細胞療法のためにT細胞を単離する更なる方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2013/0287748号に開示されている。
【0081】
養子細胞移入としても知られ「eACT(商標)」と略され得る「操作された自己細胞療法」という用語は、患者自身のT細胞を採取し、続いて1つ以上の特定の腫瘍細胞又は悪性腫瘍の細胞表面に発現される1つ以上の抗原を認識して標的化するように遺伝子改変するプロセスである。T細胞は、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)を発現するように操作され得る。CAR陽性(+)T細胞は、少なくとも1つの共刺激ドメイン及び少なくとも1つの活性化ドメインを含む細胞内シグナル伝達部分に連結された特定の腫瘍抗原に特異的な細胞外一本鎖可変フラグメント(scFv)を発現するように操作される。共刺激ドメインは、天然に存在する共刺激ドメイン、又はそのバリアント、例えば、切断されたヒンジドメイン(「truncated hinge domain、THD」)を有するバリアントに由来することができ、活性化ドメインは、例えば、CD3-ゼータに由来することができる。ある特定の実施形態では、CARは、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の共刺激ドメインを有するように設計されている。CAR scFvは、NHL、CLL、及び非T細胞ALLを含むがこれらに限定されない、すべての正常B細胞及びB細胞悪性度を含む、B細胞系統の細胞によって発現される膜貫通タンパク質である、例
えば、CD19を標的とするように設計することができる。いくつかの実施形態では、CARは、共刺激ドメインが別個のポリペプチド鎖として発現されるように操作される。例示的なCAR T細胞療法及び構築物は、米国特許出願公開第2013/0287748号、同第2014/0227237号、同第2014/0099309号、及び同第2014/0050708号に記載されており、これらの参考文献は参照によりその全体が組み込まれる。「養子細胞療法」又は「ACT」は、抗腫瘍活性を有する免疫細胞を対象、例えば、がん患者に移植することを含む。いくつかの実施形態では、ACTは、抗腫瘍活性を有するリンパ球(例えば、操作されたリンパ球)の使用を含む治療アプローチである。
【0082】
「抗原提示細胞」又は「APC」は、T細胞に対し抗原を処理し、提示する細胞を指す。例示的なAPCは、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、ある特定の活性化上皮細胞、並びにTCR刺激及び適切なT細胞共刺激が可能な他の細胞型を含む。
【0083】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基から構成される化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有し、タンパク質又はペプチドの配列を構成できるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いに結合した2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質を含む。本明細書で使用される場合、この用語は、例えば、当技術分野で一般にペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとも呼ばれる短鎖と、当技術分野で概してタンパク質と呼ばれる長鎖の両方を指し、そのうち多くの種類がある。「ポリペプチド」には、例えば、とりわけ、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、改変ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0084】
用語「同一性」とは、ポリマー分子間、例えば、核酸分子間(例えばDNA分子及び/又はRNA分子)、及び/又はポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。提供される2つのポリペプチド配列間の同一性パーセントを計算するための方法が知られている。例えば、2つの核酸又はポリペプチド配列の同一性パーセントの計算は、最適な比較目的のために2つの配列を整列させることによって実行され得る(例えば、ギャップは、最適なアラインメントのために第1及び第2の配列の一方又は両方に導入され得、非同一の配列は、比較目的で無視され得る)。次いで、対応する位置でのヌクレオチド又はアミノ酸が比較される。第1の配列の位置が第2の配列における対応する位置と同じ残基(例えば、ヌクレオチド又はアミノ酸)で占められている場合は、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、任意選択的に、ギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮して、配列によって共有される同一位置の数の関数であり、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があり得る。配列の比較又はアラインメント及び2つの配列間の同一性パーセントの決定は、BLAST(基本的なローカルアラインメント検索ツール)などの数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。いくつかの実施形態では、ポリマー分子は、それらの配列が、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%同一である場合(例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)、互いに「相同」であるとみなされる。
【0085】
同一性パーセントを計算するために、比較される配列は、典型的には、配列間の最大の一致を与える方法で整列される。同一性パーセントを決定するために使用することができるコンピュータプログラムの一例は、GCGプログラムパッケージであり、これにはGA
Pが含まれる(Devereux et al.,1984,Nucl.Acid Res.12:387、Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wis.)。コンピュータアルゴリズムGAPは、配列同一性パーセントが決定されるべき2つのポリペプチド又はポリヌクレオチドを整列させるために使用される。配列は、それぞれのアミノ酸又はヌクレオチド(アルゴリズムによって決定される「一致したスパン」)の最適なマッチングのために整列される。ある特定の実施形態では、標準比較マトリックス(PAM250比較マトリックスについては、Dayhoff et al.,1978,Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345~352、BLOSUM62比較マトリックスについては、Henikoff et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10915~10919を参照されたい)も、アルゴリズムで使用される。アミノ酸配列又は核酸配列の比較には他のアルゴリズムも利用可能であり、ヌクレオチド配列用のBLASTN及びアミノ酸配列用のBLASTP、gapped BLAST、及びPSI-BLASTなどの市販のコンピュータプログラムで利用可能なものを含む。例示的なそのようなプログラムは、Altschul,et al.,Basic local alignment search tool,J.Mol.Biol.,215(3):403~410,1990、Altschul,et al.,Methods in Enzymology、Altschul,et al.,「Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database
search programs,」Nucleic Acids Res.25:3389~3402,1997、Baxevanis,et al.,Bioinformatics:A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins,Wiley,1998、及びMisener,et al.,(eds.),Bioinformatics Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology,Vol.132),Humana Press,1999に記載されている。類似の配列を特定することに加えて、上記のプログラムは、概して、類似度の指標を提供する。いくつかの実施形態では、対応する残基の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又はそれ以上が、関連するひと続き(relevant stretch)の残基にわたって類似及び/又は同一である場合(例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)、2つの配列は、実質的に類似しているとみなされる。いくつかの実施形態では、関連するひと続きは完全な配列である。いくつかの実施形態では、関連するひと続きは、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、少なくとも325、少なくとも350、少なくとも375、少なくとも400、少なくとも425、少なくとも450、少なくとも475、少なくとも500以上の残基である。実質的な配列類似性を有する配列は、互いに相同体であり得る。
【0086】
「併用療法」は、対象が2つ以上の治療レジメン(例えば2つ以上の治療部分)に同時に曝露される状況を指す。いくつかの実施形態では、2つ以上のレジメンは、同時に投与され得、いくつかの実施形態では、そのようなレジメンは、連続して投与され得(例えば
、第1のレジメンのすべての「用量」は、第2のレジメンの任意の用量の投与前に投与される)、いくつかの実施形態では、そのような薬剤は、重複する投与レジメンで投与される。いくつかの実施形態では、併用療法の「投与」は、組み合わせにおいて他の薬剤又はモダリティの投与を受ける対象への1つ以上の薬剤又はモダリティの投与を含み得る。明確にするために、併用療法は、個々の薬剤が単一の組成物で一緒に(又は必然的に同時に)投与されることを必要としないが、いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤又はその活性部分が、組み合わせ組成物で、又は組み合わせ化合物(例えば、単一の化学錯体又は共有結合実体の一部として)でさえ一緒に投与され得る。
【0087】
「剤形」という用語は、対象に投与するための活性剤(例えば、抗原結合系又は抗体)の物理的に別個の単位を指すために使用され得る。概して、そのような各ユニットは、所定量の活性剤を含有する。いくつかの実施形態では、そのような量は、関連する集団に投与されたときに所望の又は有益な結果と相関することが決定された投与レジメンに従って投与するのに適切な単位投与量(その全部分)である。対象に投与される治療用組成物又は薬剤の総量は、1人以上の医師によって決定され、2つ以上の剤形の投与を含み得る。
【0088】
「投与レジメン」という用語は、対象に個別に投与される1つ以上の単位用量のセットを指すために使用され得る。いくつかの実施形態では、所与の治療薬は、1つ以上の用量を含み得る推奨投与レジメンを有する。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、それぞれが他の用量から時間的に離されている複数の用量を含む。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、複数の用量を含み、連続用量が、等しい長さの期間によって互いに離され、いくつかの実施形態では、投与レジメンは、複数の用量を含み、連続用量は、少なくとも2つの異なる長さの期間によって互いに離される。いくつかの実施形態では、投与レジメン内のすべての用量は、同じ単位用量量である。いくつかの実施形態では、投与レジメン内の異なる用量は、異なる量である。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、第1の用量量で第1の用量を含み、続いて、第1の用量量とは異なる第2の用量量で1つ以上の追加用量を含む。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、所望の又は有益な結果を達成するように定期的に調整される。
【0089】
「エフェクター機能」は、抗体Fc領域とFc受容体又はリガンドとの相互作用の生物学的結果を指す。エフェクター機能は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC)、抗体依存性細胞媒介性貪食作用(antibody-dependent cell-mediated phagocytosis、ADCP)、及び補体媒介性細胞傷害(complement-mediated cytotoxicity、CMC)を含むが、これらに限定されない。エフェクター機能は、抗原結合依存性、抗原結合非依存性、又はその両方であり得る。ADCCは、免疫エフェクター細胞による抗体結合標的細胞の溶解を指す。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、ADCCは、概して、Fc受容体(Fc receptor、Fc
R)を含む-エフェクター細胞が、抗体コーティングされた標的細胞(例えば、抗体が結合している抗原をその表面に発現する細胞)を認識し、その後死滅させることに関与すると理解されている。ADCCを媒介するエフェクター細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好中球、好酸球のうちの1つ以上を含むがこれらに更に限定されない免疫細胞を含み得る。
【0090】
「エフェクター細胞」は、1つ以上のFc受容体を発現し、1つ以上のエフェクター機能を媒介する免疫系の細胞を指す。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、マスト細胞、血小板、大顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、Tリンパ球、及びBリンパ球のうちの1つ以上を含み得るが、これらに限定されない。エフェクター細胞は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、及びサルを含むが、これらに限定されない任意の生物のものであり得る。
【0091】
「賦形剤」という用語は、例えば、所望の一貫性又は安定化効果を提供する又はそれらに寄与するために、組成物中に含まれ得る薬剤を指す。いくつかの実施形態では、好適な賦形剤は、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、マルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどを含み得る。
【0092】
本明細書に記載の材料又は実体の「フラグメント」又は「部分」は、例えば、物理的実体又は抽象的実体の、全体の個別の部分を含む構造を有する。いくつかの実施形態では、フラグメントは、全体に見られる1つ以上の部分を欠く。いくつかの実施形態では、フラグメントは、全体に見られる特徴的な構造的要素、ドメイン又は部分からなるか、又はそれらを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーフラグメントは、ポリマー全体に見られるように、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13,14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500以上の単量体単位(例えば、残基)を含むか、又はそれらからなる。いくつかの実施形態では、ポリマーフラグメントは、ポリマー全体に見られる単量体単位(例えば残基)のうちの少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、25%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上を含むか、又はそれらからなる(例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)。材料又は実体全体は、いくつかの実施形態では、フラグメントの「親」と称され得る。
【0093】
「融合ポリペプチド」又は「融合タンパク質」という用語は、概して、少なくとも2つのセグメントを含むポリペプチドを指す。概して、2つのセグメントが、(1)同じペプチドに、本質的に含まれていない部分、及び/又は(2)単一のポリペプチドに前もって互いに連結又は接続されていない部分、及び/又は(3)人間の手の作用を通じて互いに連結又は接続されている部分である場合、少なくとも2つのそのようなセグメントを含有するポリペプチドは融合ポリペプチドであるとみなされる。
【0094】
「単離された」という用語は、(1)物質が以前に会合していたか、又は別様には物質が会合していたであろう、少なくとも一部の成分から分離されている物質、及び/又は(2)限定された若しくは定義された量又は濃度の1つ以上の既知又は未知の汚染物質を含む組成物中に存在する物質を指す。単離された物質は、いくつかの実施形態では、物質が以前に会合していた、物質ではない他の成分、例えばその物質が以前に又は別様には会合したであろう他の成分又は汚染物質の、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約99%超(例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)から分離されてもよい。ある特定の例では、物質は、それが、限定された若しくは低減された量又は濃度の同じ又は類似の種類の分子を含む組成物中に存在する場合に、単離される。例えば、ある特定の例では、核酸、DNA、又はRNA物質は、それらが、限定された若しくは低減された量又は濃度の物質ではない核酸、DNA、又はRNA分子を含む組成物中に存在する場合に、単離される。例えば、ある特定の例では、ポリペプチド物質は、それが限定された若しくは低減された量又は濃度の物質ではないポリペプチド分子を含む組成物中に存在する場合に、単離される。ある特定の実施形態では、量
は、例えば組成物中に存在する所望の物質の量に対して測定された量であり得る。ある特定の実施形態では、限定された量は、組成物中の物質の量の100%以下である量、例えば、組成物中の物質の量の1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%以下(例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)である量であってもよい。ある特定の例では、組成物は、選択された物質に関して純粋又は実質的に純粋である。いくつかの実施形態では、単離された物質は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約99%超(例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)の純度である。物質は、他の成分又は汚染物質を実質的に含まない場合、「純粋」である。いくつかの実施形態では、物質は、例えば、1つ以上の担体又は賦形剤など(例えば、緩衝液、溶媒、水など)のある特定の他の成分と組み合わされた後であっても、「単離された」又は「純粋な」とみなされてもよく、そのような実施形態では、物質の単離又は純度パーセントは、そのような担体又は賦形剤を含まずに計算される。
【0095】
「核酸」は、ヌクレオチドの任意のポリマー鎖を指す。核酸は、DNA、RNA、又はそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の天然核酸残基を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の核酸類似体から構成される。いくつかの実施形態では、核酸は、天然源からの単離、相補的鋳型に基づく重合による酵素的合成(インビボ又はインビトロ)、組換え細胞又は系での再生、及び化学合成のうちの1つ以上によって調製される。いくつかの実施形態では、核酸は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、又はそれ以上の残基(例えば、20~100、20~500、20~1000、20~2000、又は20~5000、又はそれ以上の残基)の長さであるいくつかの実施形態では、核酸は、部分的又は全体的に一本鎖であり、いくつかの実施形態では、核酸は、部分的又は全体的に二本鎖である。いくつかの実施形態では、核酸は、ポリペプチドをコードする、又はポリペプチドをコードする配列の相補体である、少なくとも1つの要素を含むヌクレオチド配列を有する。
【0096】
「操作可能に連結された」とは、記載された構成要素がそれらの意図された様式で機能することを可能にする関係にある並置を指す。例えば、機能要素に「作動可能に連結された」制御要素は、機能要素の発現及び/又は活性が、制御要素と適合性のある条件下で達成されるように関連付けられる。
【0097】
「薬学的に許容される」という用語は、レシピエントに投与される場合、そのレシピエントに有害ではないか、又はそのレシピエントに対する利益が有害な影響を上回る、分子又は組成物を指す。本明細書に開示される組成物を製剤化するために使用される担体、希釈剤、又は賦形剤に関して、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤は、組成物の他の成分と適合でなければならず、そのレシピエントに有害ではないか、又はレシピエントに対する利益がいかなる有害な影響をも上回る必要がある。「薬学的に許容される担体」という用語は、体のある部分から別の部分への(例えば、ある臓器から別の臓器への)薬剤の運搬又は輸送に関与する、液体若しくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、又は溶媒封入材料(solvent encapsulating material)などの薬学的に許容される材料、組成物、又はビヒクルを意味する。医薬組成物中に存在する各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、患者に有害ではないという意味で「許容可能」でなければならず、又はレシピエント
に対する利益が有害な影響を上回る必要がある。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例は、ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン、セルロース、並びにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなどのその誘導体、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、カカオバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油などの油、プロピレングリコールなどのグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル、寒天、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、アルギン酸、発熱物質を含まない(pyrogen-free)水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、pH緩衝溶液、ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ無水物、並びに医薬製剤に用いられる他の非毒性の適合性物質、を含む。
【0098】
「医薬組成物」という用語は、活性剤が1つ以上の薬学的に許容される担体と一緒に製剤化される組成物を指す。いくつかの実施形態では、活性剤は、関連する対象又は集団に投与されたときに所定の治療効果を達成する統計的に有意な確率を示す治療レジメンにおける投与に適した単位用量量で存在する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、固体又は液体形態での投与のために製剤化されてもよく、これらに限定されないが、以下に対し適合された形態を含む:経口投与、例えば、水薬(水性又は非水溶液又は懸濁液)、錠剤、例えばバッカル、舌下、及び全身吸収を標的とするもの、ボーラス、粉末剤、顆粒剤、舌に適用するためのペースト;非経口投与、例えば、滅菌溶液若しくは懸濁液、又は持続放出製剤としての皮下、筋肉内、静脈内、又は硬膜外注射による;局所投与、例えば、皮膚、肺、又は口腔に塗布される、クリーム、軟膏、又は徐放性パッチ又はスプレーとして;膣内又は直腸内、例えば、ペッサリー、クリーム、又は泡状物質(foam)として;舌下;眼に対する;経皮的;又は経鼻的、肺、及び他の粘膜表面に対するもの。
【0099】
「参照」という用語は、比較が実施される標準又は対照を記載する。例えば、いくつかの実施形態では、目的の薬剤、動物、個体、集団、試料、配列、又は値は、薬剤、動物、個体、集団、試料、配列、又は値である参照又は対照と比較される。いくつかの実施形態では、参照又は対照は、目的の試験、測定、又は決定と実質的に同時に試験、測定、及び/又は決定される。いくつかの実施形態では、参照又は対照は、任意選択的に有形的媒体で具現化された過去からの参照又は対照である。概して、参照又は対照は、評価下にあるものと同等の条件又は状況下で決定又は特徴付けられる。類似性が、選択された参照又は対照に対する依存性及び/又はそれとの比較を正当とするのに十分である場合。
【0100】
本開示は、特に反対に示されない限り、当技術分野の技術の範囲内である、化学、生化学、有機化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、遺伝学、免疫学、及び細胞生物学の方法を用いることができ、その多くは、例示の目的で以下に記載される。そのような技術は、文献において完全に説明されている。例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001)、Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,updated July 2008)、Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience、Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(IRL Press,Oxford,1985)、Anand
,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992)、Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,Eds.,1984)、Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)、Harlow and Lane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998)Current Protocols in Immunology Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991)、Annual
Review of Immunology、及びにAdvances in Immunologyなどのジャーナルのモノグラフを参照されたい。
【0101】
本開示は、TMEにおけるTGF-βの免疫抑制効果を阻害するように設計されたドミナントネガティブTGF-β受容体の操作された構築物を記載する。これらの構築物はまた、サイトカインシグナル伝達を刺激して、TMEおけるT細胞機能を増強し得る。本明細書に記載の構築物は、TGF-β誘導性免疫抑制を阻害するために、単独で、又は互いに組み合わせて、及び/又は他の免疫療法と組み合わせて使用することができる。本明細書に開示される操作されたドミナントネガティブTGF-β受容体は、本明細書で提供される配列を含み得るか、それらから本質的になり得るか、又はそれらからなり得る。
【0102】
野生型TGF-β受容体I型(TGF-βRI)は、細胞内の抑制性pSMADシグナル伝達スキームを伝達するTGF-β受容体複合体の一部である。TGF-βRIの完全長の野生型核酸配列は、配列番号1に示されるように、1509ヌクレオチド長である。
【0103】
TGF-βRIの完全長の野生型アミノ酸配列(amino acid、aa)は、配列番号2に示されるように、503アミノ酸である。配列番号2の完全長TGF-βRIポリペプチドは、シグナルペプチド(およそアミノ酸1~33に)、細胞外ドメイン(およそアミノ酸34~126に)、膜貫通ドメイン(およそアミノ酸127~147に)及び細胞内ドメイン(およそアミノ酸148~503に)を含む。細胞内ドメインには、TGF-βRIの細胞内ドメインのアミノ酸185~204の間に位置する4つの重要なスレオニン部位が含まれ、pSMADシグナル伝達を開始する。
【0104】
細胞内シグナル伝達カスケードにおけるその役割のため、改変されたTGF-βRI構築物は、潜在的な治療標的であり得る。いかなる理論にも束縛されるものではないが、ドミナントネガティブTGF-βRI構築物は、リン酸化カスケードを阻害し、したがってT細胞機能におけるTGF-βの免疫抑制効果を制限するように設計することができると仮定されている。非機能的シグナル伝達経路をもたらすように、リン酸化の抑制又は低減をもたらす任意の切断又は改変が、本開示によって企図される。一実施形態では、DN TGF-βRIは、膜貫通ドメインの後に切断されるか、又は改変されてもよく、その結果ポリペプチドはシグナル伝達及びリン酸化を担う1つ以上のアミノ酸残基を欠いており、野生型受容体と比較して非機能的シグナル伝達経路をもたらす。いくつかの実施形態では、DN TGF-βRIは、配列番号2の細胞内ドメインのアミノ酸185のスレオニンの前に切断され得る。いくつかの実施形態では、DN TGF-βRIは、細胞内ドメインを有さないように切断され得る。他の実施形態では、DN TGF-βRIは、細胞内ドメインを、リン酸化シグナル伝達に関与するアミノ酸残基を含まない別の天然又は非天然に存在する配列と置き換えるように改変され得る。別の実施形態では、ポリペプチドは、リン酸化活性を低減するような方法で切断又は改変される。別の実施形態では、ポリペプチドは、リン酸化シグナル伝達分子がpSMAD分子と相互作用することを阻害するような方法で切断又は改変される。本開示は、野生型TGF-βRIの細胞内ドメインのリン酸化シグナル伝達に関与するアミノ酸を除去するように操作された切断型ドミナントネガティブTGF-βRI構築物(DN TGF-βRI)を記載する。
【0105】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、DN TGF-βRIは、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するTGF-βに結合するための細胞外リガンド結合ドメインを含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、配列番号3に対して少なくとも75%の配列同一性(例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するDN TGF-βRI細胞外リガ
ンド結合ドメインは、1つ以上の異種ポリペプチド配列に融合され得る。DN TGF-βRIの細胞外ドメインは、TGF-βRIIとDN TGF-βRIの複合体のオリゴマー化を開始するために、標的TGF-β分子を認識し、結合するように操作され得る。更に、本開示は、形質転換成長因子βI型(TGF-β1)、形質転換成長因子βII型(TGF-β2)、形質転換成長因子βIII型(TGF-β3)及び形質転換成長因子βIV型(TGF-β4)を含む、すべてのTGF-βアイソフォームへのDN TGF-βRIの結合を企図する。いくつかの実施形態では、DN TGF-βRIは、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3及び/又はTGF-β4に結合するように操作され得る。一実施形態では、DN TGF-βRIは、TGF-β1に結合する。
【0107】
本明細書に記載の別の実施形態では、DN TGF-βRIは、膜貫通ドメインに融合された細胞外結合ドメインを含む。DN TGF-βRIは、野生型TGF-βRI膜貫通ドメイン又はその一部に対して少なくとも75%の配列同一性(例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を含む膜貫通ドメインを含み得る。非限定的な例として、膜貫通ドメインは、野生型TGF-βRI膜貫通ドメインである配列番号4に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を含み得る。
他の実施形態では、膜貫通ドメインは、本明細書に記載の様々な膜貫通ドメインのうちのいずれかを含む、異種膜貫通ドメインである。DN TGF-βRIの膜貫通ドメインは、概して、膜の少なくとも一部にまたがり、DN TGF-βRIを細胞膜に固定するのを助け、DN TGF-βRI構築物の二量体化を促進する疎水性アルファヘリックスを含む。DN TGF-βRIの膜貫通ドメインは、TGF-β結合後、細胞内シグナルが、DN TGF-βRIを介して細胞内で伝達されないように設計することができる。非限定的な例として、DN TGF-βRIの膜貫通ドメインは、本明細書に開示される他の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインを有する、免疫細胞又はその前駆細胞で発現される任意の別のポリペプチドに由来し得る。別の実施形態では、膜貫通ドメインは、T細胞において天然に発現されるか、又は天然に発現されないポリペプチドに由来し得る。ポリペプチドの膜貫通ドメインを含むポリペプチドの部分は、必要に応じて、ポリペプチドからの追加の配列、例えば、膜貫通ドメインのN末端又はC末端に隣接する追加の配列、又はポリペプチドの他の領域を含み得ることが理解される。一実施形態では、DN TGF-βRIは、非限定的な例として、TGF-βRI、TGF-βRII、PDGFR、CD4、CD8、CD28、CD127、CD132、CD3ζ、4-IBB、OX40、ICOS、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、IL-5、IL-7、IL-7Rα、BTLA、又はそれらの変異体に由来する膜貫通ドメインを有し得る。本明細書に記載の一実施形態では、DN TGF-βRIは、配列番号5のアミノ酸配列に対して、少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞外リガンド結合ドメイン及び膜貫通ドメインを含む。
【0108】
本明細書に記載のDN TGF-βRI構築物は、任意の好適な細胞内ドメイン又はその一部分、又は細胞内ドメインなしで使用され得る。本明細書に記載の別の実施形態では、DN TGF-βRIは、細胞内ドメインに更に融合された膜貫通ドメインに融合された細胞外ドメインを含む。野生型TGF-βRIの細胞内ドメインは、pSMAD2/3活性化を介してT細胞機能を阻害するリン酸化シグナル伝達が発生する場合である。したがって、一実施形態では、本明細書に記載のDN TGF-βRIは、細胞の細胞内シグナル伝達が低減又は阻害されるように、配列番号2のアミノ酸147の後に切断された細胞内ドメインを含む。
【0109】
このような切断は、受容体タンパク質の長さを短縮し、T細胞抑制をもたらすであろうリン酸化カスケードを阻害するドミナントネガティブ効果をもたらす。結果として、DN
TGF-βRI細胞内ドメインは、受容体が膜内に固定され、細胞内シグナル伝達が発生するのを防ぐ限り、T細胞内で自然に又は自然に発現しない任意のポリペプチドに由来し得る。非限定的な例として、細胞内ドメインは、TGF-βRI、TGF-βRII、PDGFR、CD4、CD8、CD28、CD127、CD132、CD3ζ、4-IBB、OX40、ICOS、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、IL-5、IL-7、IL-7Rα、BTLA、又はそれらの変異体に由来し得る。
【0110】
本明細書に記載の一実施形態では、DN TGF-βRIは、配列番号6の細胞内ドメインを含み得る。
いくつかの実施形態では、DN TGF-βRIは、TGF-βRIの細胞外リガンド結合ドメイン、TGF-βRIの膜貫通ドメイン、及び配列番号6の細胞内結合ドメインを含み、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する。
【0111】
本明細書に記載の操作されたDN TGF-βRIはまた、DN TGF-βRIの細胞外リガンド結合ドメインのN末端にN末端シグナルペプチドを含み得る。一実施形態では、異種シグナルペプチドを使用することができる。DN TGF-βRIの細胞外ドメインは、新生タンパク質を小胞体に誘導し続いて細胞表面に移行させるリーダー又はシグナルペプチドに融合され得る。シグナルペプチドを含有するポリペプチドが細胞表面で発現されると、シグナルペプチドは、概して、小胞体内のポリペプチドのプロセシング及び細胞表面への移行中にタンパク質分解的に除去されることが理解される。したがって、DN TGF-βRIなどのポリペプチドは、概して、シグナルペプチドを欠く成熟タンパ
ク質として細胞表面で発現されるが、ポリペプチドの前駆体形態は、シグナルペプチドを含む。任意の好適なシグナル配列を使用することができる。本明細書に記載の一実施形態では、DN TGF-βRIは、配列番号8又はその一部に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を含む。
【0112】
シグナルペプチド又はリーダーは、DN TGF-βRIのグリコシル化を促進し得る。シグナル配列又はリーダーは、分泌経路への進入を指示する新たに合成されたタンパク質のN末端又はC末端のいずれかに概して存在するペプチド配列である。本開示において、シグナルペプチドは、融合タンパク質としてDN TGF-βRIの細胞外抗原結合ドメインのN末端に結合される。一実施形態では、DN TGF-βRIは、野生型TGF-βRIに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞外リガンド結合ドメインと、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞外ドメインTGF-βRIのN末端にあるシグナルペプチドとを含む。
【0113】
このシグナルペプチドの使用は例示的なものであることが理解される。当該技術分野で周知の任意の好適なシグナルペプチドを、DN TGF-βRIに適用して免疫細胞における細胞表面発現を提供することができる。有用なシグナルペプチドは、本明細書に開示されるポリペプチドのシグナルペプチドのうちのいずれかを含む、T細胞又はその前駆細胞で自然に発現される細胞表面タンパク質に由来し得る。したがって、任意の好適なシグナルペプチドを利用して、DN TGF-βRIをT細胞の細胞表面で発現させるように指示することができる。
【0114】
したがって、本明細書に記載の一実施形態は、操作されたDN TGF-βRIであり、野生型TGF-βRIに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するシグナルペプチド、野生型TGF-βRIに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞外ドメイン、TGF-βRIの膜貫通ドメイン、及び配列番号6の細胞内ドメインを含み、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する。
【0115】
TGF-βRIに加えて、TGF-βRIIはTGF-β受容体複合体の第2のメンバーである。野生型TGF-βRIとは異なり、野生型TGF-β受容体II型(TGF-βRII)は、構成的に活性である。TGF-βリガンドの結合及びTGF-βRI二量体/TGF-βRII二量体複合体の形成時に、TGF-βRIIの細胞質ドメインによりTGF-βRIがリン酸化される。したがって、TGF-βRIIは、TGF-βRIの活性化し、続いて細胞内シグナル伝達カスケードを開始してpSMADシグナル伝達をもたらす役割を果たす。TGF-βRIIの完全長の野生型核酸配列は、配列番号12に示されるように、1701ヌクレオチド長である。
【0116】
TGF-βRIIの完全長の野生型アミノ酸配列は、配列番号13に示されるように、567アミノ酸である。配列番号13の完全長TGF-βRIIポリペプチドは、シグナルペプチド(およそアミノ酸1~22に)、細胞外ドメイン(およそアミノ酸33~170に)、膜貫通ドメイン(およそアミノ酸171~201に)及び細胞内ドメイン(およそアミノ酸202~567に)を含む。
リガンドが結合すると、野生型TGF-βRIIの細胞内ドメインは、野生型TGF-βRIの細胞内ドメインとの相互作用、及び野生型TGF-βRIの細胞内ドメインのアミノ酸185~204の間に位置する4つの重要なスレオニン部位のリン酸化を担い、pSMADシグナル伝達を開始する。したがって、いかなる理論によっても拘束されることなく、本明細書に記載されるように、切断されたDN TGF-βRIは、TGF-βRIIと相互作用することができず、したがってpSMADシグナル伝達を抑制すると考えられる。
【0117】
同様に、DN TGF-βRIのリン酸化カスケードを開始する役割のために、操作された操作されたドミナントネガティブTGF-βRII(DN TGF-βRII)はまた、リン酸化のシグナル開始を担うアミノ酸配列を省略することによってDN TGF-βRIのリン酸化を開始することができず、したがってpSMADシグナル伝達も抑制する可能性があると仮定されている。非機能的シグナル伝達経路をもたらすように、リン酸化の抑制又は低減をもたらす任意の切断又は改変が、本開示によって企図される。一実施形態では、DN TGF-βRIIは、膜貫通ドメインの後に切断されるか、又は改変されてもよく、その結果ポリペプチドはシグナル伝達及びリン酸化を担う1つ以上のアミノ酸残基を欠いており、野生型受容体と比較して非機能的シグナル伝達経路をもたらす。いくつかの実施形態では、DN TGF-βRIIは、細胞内ドメインを有さないように切断され得る。他の実施形態では、DN TGF-βRIIは、細胞内ドメインを、リン酸化シグナル伝達に関与するアミノ酸残基を含まない別の天然又は非天然に存在する配列と置き換えるように改変され得る。別の実施形態では、ポリペプチドは、リン酸化活性を低減するような方法で切断又は改変される。別の実施形態では、ポリペプチドは、リン酸化シグナル伝達分子がpSMAD分子と相互作用することを阻害するような方法で切断又は改変される。したがって、本明細書に記載の一実施形態では、切断されたDN TGFβRIIであって、膜貫通ドメインの後にポリペプチドが切断され、以下の配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85
~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するものである:
【0118】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、DN TGF-βRIIは、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する野生型TGF-βRIIにTGF-βを結合するための細胞外リガンド結合ドメインを含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、配列番号15に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するDN TGF-βRII細胞外リガンド結合ドメインは、1つ以上の異種ポリペプチド配列に融合され得る。DN TGF-βRIIの細胞外ドメインは、本明細書に記載の野生型TGF-βRI又はDN TGF-βRIとのDN TGF-βRIIの複合体のオリゴマー化を開始するために、標的TGF-β分子を認識し、それに結合するように操作され得る。更に、本開示は、形質転換成長因子βI型(TGF-β1)、形質転換成長因子βII型(TGF-β2)、形質転換成長因子βIII型(TGF-β3)及び形質転換成長因子β型IV(TGF-β4)を含む、すべてのTGF-βアイソフォームへのDN TGF-βRIIの結合を企図する。いくつかの実施形態では、DN TGF-βRIIは、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3及び/又はTGF-β4に結合するように操作され得る。別の実施形態では、DN TGF-βRIIはTGF-β1に結合する。
【0120】
本明細書に記載の別の実施形態では、DN TGF-βRIIは、膜貫通ドメインに融合された細胞外結合ドメインを含む。DN TGF-βRIIは、野生型TGF-βRII膜貫通ドメイン又はその一部に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を含む膜貫通ドメインを含み得る。非限定的な例として、膜貫通ドメインは、野生型TGF-βRII膜貫通ドメインを含む配列番号16に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を含み得る。
他の実施形態では、膜貫通ドメインは、本明細書に記載の様々な膜貫通ドメインのうちのいずれかを含む、異種膜貫通ドメインである。DN TGF-βRIIの膜貫通ドメインは、概して、膜の少なくとも一部にまたがり、DN TGF-βRIIを膜に固定するのを助け、DN TGF-βRII構築物の二量体化を促進する疎水性アルファヘリックスを含む。DN TGF-βRIIの膜貫通ドメインは、TGF-β結合後、細胞内でDN TGF-βRIIを介して細胞内シグナルがTGF-βRI又はDN TGF-βRIに伝達されないように設計され得る。本明細書に記載の一実施形態では、DN TGF-βRIIは、配列番号17のアミノ酸配列に示されるように、野生型TGF-βRIIに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞外リガンド結合ドメインと及び膜貫通ドメインを含む。
【0121】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、DN TGF-βRIIの膜貫通ドメインは、野生型TGF-βRI又はDN TGF-βRIと相互作用する受容体の能力に影響を与え、したがってpSMADシグナル伝達を抑制し得ると仮定されている。膜貫通ドメインの変化はまた、pSMADシグナル伝達を抑制しながら有益なサイトカイン発現及びシグナル伝達を刺激し得ることが更に仮定される。したがって、非限定的な例として、DN TGF-βRIIの膜貫通ドメインは、本明細書に開示される他の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインを有する、免疫細胞又はその前駆細胞で発現される任意の別のポリペプチドに由来し得る。別の実施形態では、膜貫通ドメインは、T細胞において天然に発現されるか、又は天然に発現されないポリペプチドに由来し得る。ポリペプチドの膜貫通ドメインを含むポリペプチドの部分は、必要に応じて、ポリペプチドからの追加の配列、例えば、膜貫通ドメインのN末端又はC末端に隣接する追加の配列、又はポリペプチドの他の領域を含み得ることが理解される。一実施形態では、DN TGF-βRIIは、非限定的な例として、TGF-βRI、TGF-βRII、PDGFR、CD4、CD8、CD28、CD127、CD132、CD3ζ、4-IBB、OX40、ICOS、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、IL-5、IL-7、IL-7Rα、BTLA、又はそれらの変異体に由来する膜貫通ドメインを有し得る。
【0122】
本明細書に記載の一実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号18に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を含み、これは、野生型IL-7Rα膜貫通ドメインに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を含む。
本明細書に記載の別の実施形態では、DN TGF-βRIIは、野生型TGF-βRIIに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少
なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞外リガンド結合ドメイン、リンカー配列、及び配列番号18に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する膜貫通ドメインを含み、配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する。
【0123】
本明細書に記載の別の実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号20に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を含むことができ、これは、「CPT」のアミノ酸挿入を有する野生型IL-7Rα膜貫通ドメインである。
本明細書に記載の別の実施形態では、DN TGF-βRIIは、野生型TGF-βRIIに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞外リガンド結合ドメイン、リンカー配列、及び配列番号20に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する膜貫通ドメインを含み、配列番号21のアミノ酸配列に示されるものに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する。
【0124】
本明細書に記載のDN TGF-βRII構築物は、それら自体、又はその任意の好適な細胞内ドメイン若しくはその一部とともに、又は細胞内ドメインなしで使用され得、切断することができる。本明細書に記載の一実施形態では、本明細書に記載のDN TGF-βRII構築物は、配列番号6に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~1
00%、又は95~100%)を有する細胞内ドメインを含む。非限定的な例として、本明細書に記載のDN TGF-βRII構築物の細胞外ドメインは、TGF-βRI、TGF-βRII、PDGFR、CD4、CD8、CD28、CD127、CD132、CD3ζ、4-IBB、OX40、ICOS、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、IL-5、IL-7、IL-7Rα、BTLA、又はこれらのいずれかの変異体に由来し得る。本明細書に記載の一実施形態では、DN TGF-βRIIは、細胞内ドメインに更に融合された膜貫通ドメインに融合された細胞外ドメインを含む。本明細書に記載の別の実施形態では、本明細書に記載のDN TGF-βRIIは、配列番号22に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する野生型IL-7Rαの細胞内ドメインを含む。
【0125】
別の実施形態では、DN TGF-βRIIは、TGF-βRIIの野生型細胞外ドメインに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列、リンカー配列、配列番号18に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する膜貫通ドメイン、及び配列番号22に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞内ドメインを含み、配列番号23のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の配列同一性を有する(例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する。
【0126】
本明細書に記載の別の実施形態では、DN TGF-βRII構築物は、野生型TGF-βRIIに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞外ドメイン、リンカー配列、配列番号20に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する膜貫通ドメイン及び配列番号22に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞内ドメインを含み、配列番号24のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する。
【0127】
本明細書に記載の操作されたDN TGF-βRII構築物はまた、TGF-βRIIの細胞外リガンド結合ドメインのN末端にN末端シグナルペプチドを含み得る。一実施形態では、異種シグナルペプチドを使用することができる。DN TGF-βRIIの細胞外ドメインは、新生タンパク質を小胞体に誘導し続いて細胞表面に移行させるリーダー又はシグナルペプチドに融合され得る。シグナルペプチドを含有するポリペプチドが細胞表面で発現されると、シグナルペプチドは、概して、小胞体内のポリペプチドのプロセシング及び細胞表面への移行中にタンパク質分解的に除去されることが理解される。したがって、DN TGF-βRIIなどのポリペプチドは、概して、シグナルペプチドを欠く成熟タンパク質として細胞表面に見られるが、ポリペプチドの前駆体形態は、シグナルペプチドを含む。任意の好適なシグナル配列を使用することができる。本明細書に記載の一実施形態では、本明細書に記載のDN TGF-βRII構築物は、配列番号25のアミノ酸配列又はその一部に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するシグナル配列を含む。
別の実施形態では、シグナル配列は、配列番号26又はその一部に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)のアミノ酸配列を含むコ
ロニー刺激因子2受容体アルファサブユニット(Colony Stimulating
Factor 2 Receptor Alpha subunit、CSF2Rα)から誘導される。
本明細書に記載のシグナル配列はまた、任意選択的に、V5-タグ、mycタグ、HAタグ、スポットタグ、NEタグを含むがこれらに限定されない任意の好適なタンパク質タグとともに使用され得る。本明細書に記載の一実施形態では、シグナル配列及びタグは、配列番号27に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を含む。
【0128】
シグナルペプチド又はリーダーは、DN TGF-βRIIのグリコシル化を促進し得る。シグナル配列又はリーダーは、分泌経路への進入することを指示する新たに合成されたタンパク質のN末端又はC末端のいずれかに概して存在するペプチド配列である。本開示では、シグナルペプチドは、融合タンパク質としてDN TGF-βRIIの細胞外抗原結合ドメインのN末端に結合される。一実施形態では、DN TGF-βRIIは、野生型TGF-βRIIに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞外リガンド結合ドメインと、配列番号28のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する、細胞外ドメインのN末端にあるシグナルペプチドとを含む。
【0129】
一実施形態では、DN TGF-βRIIは、野生型TGF-βRIIに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞外リガンド結合ドメインと、細胞外ドメインTGF-βRIIのN末端にあるシグナルペプチド及びタグ配列であって、配列番号29に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する、シグナルペプチド及びタグ配列とを含む。
【0130】
このシグナルペプチドの使用は例示的なものであることが理解される。当該技術分野で周知の任意の好適なシグナルペプチドを、DN TGF-βRIIに適用して、免疫細胞における細胞表面発現を提供することができる。有用なシグナルペプチドは、本明細書に開示されるポリペプチドのシグナルペプチドのうちのいずれかを含む、T細胞又はその前駆細胞で自然に発現される細胞表面タンパク質に由来し得る。したがって、任意の好適なシグナルペプチドを利用して、DN TGF-βRIIをT細胞の細胞表面で発現させるように指示することができる。
【0131】
したがって、本明細書に記載の一実施形態は、操作されたDN TGF-βRIIであり、シグナルペプチド、野生型TGF-βRIIに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞外ドメイン、リンカー配列、配列番号18に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する膜貫通ドメイン及び配列番号22に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞内ドメインを含み、配列番号30に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列に示されるものである。
【0132】
したがって、本明細書に記載の別の実施形態では、操作されたDN TGF-βRIIであり、シグナルペプチド、タグ配列、野生型TGF-βRIIに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞外ドメイン、
リンカー配列、配列番号18に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する膜貫通ドメイン及び配列番号22に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞内ドメインを含み、配列番号31に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列に示されるものである。
【0133】
本明細書に記載の別の実施形態は、操作されたDN TGF-βRIIであり、シグナルペプチド、野生型TGF-βRIIに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞外ドメイン、リンカー配列、配列番号18に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する膜貫通ドメイン及び配列番号22に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞内ドメインを含み、配列番号32に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列に示されるものである。
【0134】
したがって、本明細書に記載の別の実施形態では、操作されたDN TGF-βRIIであり、シグナルペプチド、タグ配列、野生型TGF-βRIIに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞外ドメイン、リンカー配列、配列番号20に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する膜貫通ドメイン及び配列番号22に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞内ドメインを含み、配列番号33に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列に示されるものである。
【0135】
本明細書に記載の別の実施形態は、操作されたDN TGF-βRIIであり、シグナルペプチド、野生型TGF-βRIIに対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞外ドメイン、リンカー配列、配列番号20に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、
85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する膜貫通ドメイン及び配列番号22に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する細胞内ドメインを含み、配列番号34に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列に示されるものである。
【0136】
操作されたT細胞受容体(TCR)及びキメラ抗原受容体(CAR)療法の両方は、多種多様な悪性腫瘍の治療のためのT細胞の特異性及び免疫療法効果を利用している。いくつかの研究は、これらの療法がTGF-βによってT細胞抑制から生じるTMEの抑制因子の影響を受けやすい可能性があることを示唆している(Bendle et al.,J Immunol,191:3232~3239(2013)及びVong et al.,Blood,130:1791(2017))。本開示は、TGF-β抑制の存在下でTCR及び/又はCARの増殖を維持するか、又は場合によっては回復させる方法として、本明細書に記載のDN TGF-β受容体を、TCR又はCAR療法のいずれかと組み合わせて使用することを企図する。
【0137】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、腫瘍進行に対する別の治療アプローチを提供する。臨床的には、研究者は、CARの増殖及び持続性が治療効果と相関していることを実証している。いかなる理論にも束縛されるものではないが、TMEに見られるTGF-β抑制T細胞集団は、CAR療法に応答しない患者におけるCAR T細胞の増殖及び持続性を制限している可能性があると考えられている。結果として生じるTME中の阻害性サイトカインは、CAR細胞機能及び増殖を制限すると考えられている。したがって、TGF-βは治療用に操作されたT細胞の有効性を制限する可能性がある。
【0138】
TGF-β受容体は、細胞内の抑制的なpSMADシグナル伝達を担うため、改変されたTGF-βRI及びTGF-βRII構築物に焦点を当てている治療戦略には可能性がある。更に、既存の又は新しいTCR及びCAR療法でそのような構築物を使用することにより、これらの細胞療法が、がんを標的とする能力を高めることができる。したがって、本明細書に記載されるのは、TGF-βシグナル伝達を調節するために使用され得るドミナントネガティブTGF-β受容体である。いくつかの態様では、ドミナントネガティブTGF-β受容体は、TCR又はCAR構築物と共発現して、TMEにおけるTGF-βの抑制効果を制限することができる。
【0139】
本開示は、T細胞免疫療法で使用される操作されたT細胞受容体(TCR)とともに、
本明細書に記載のDN TGF-β受容体構築物の使用を企図する。TCRのライブラリは、標的抗原に対するそれらの選択性についてスクリーニングされ得る。このようにして、標的抗原に対する高い結合力及び反応性を有する天然TCRが選択され、クローン化され、続いて養子免疫療法に使用されるT細胞集団に導入され得る。本明細書に記載のDN
TGF-β受容体構築物も発現する操作されたTCRを有するT細胞は、TCR特異性に起因して特異的抗原を標的とするだけでなく、TGF-βの抑制効果からT細胞を保護することもできる。したがって、本明細書に記載のDN TGF-β受容体構築物とTCRを組み合わせることは、養子T細胞免疫療法の治療効果を維持する方法を提供し得る。本明細書に記載の一実施形態では、本明細書に記載のDN TGF-B受容体は、TCRと共発現される。
【0140】
本明細書に記載の一実施形態では、T細胞は、標的抗原を発現する腫瘍細胞に対するT細胞に特異性を付与するTCRを形成し得るTCRのサブユニットをコードするポリヌクレオチドを導入することによって改変される。いくつかの実施形態では、サブユニットが、トランスフェクトされたT細胞に付与されるTCRを形成する能力、標的細胞にホームする能力を保持し、免疫学的に関連するサイトカインシグナル伝達に関与する限り、サブユニットは、天然に存在するサブユニットと比較して、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、挿入、又は改変を有している。操作されたTCRはまた、関連する腫瘍関連ペプチドを高結合活性で表示する標的細胞にも結合し、任意選択で関連するペプチドをインビボで提示する標的細胞の効率的な死滅を媒介し得る。
【0141】
操作されたTCRをコードする核酸は、T細胞の(天然に存在する)染色体において自然な状況から単離され得、本明細書の他の箇所に記載されるように、好適なベクターに組み込まれ得る。核酸及びそれらを含むベクターの両方を細胞に移してもよく、その細胞はT細胞であってもよい。次いで、改変されたT細胞は、形質導入された核酸又は核酸によってコードされるTCRの1つ以上の鎖(及びいくつかの態様では2つの鎖)を発現することができる。いくつかの実施形態では、操作されたTCRは、導入されたTCRを通常は発現しないT細胞に導入されるため、外因性TCRである。操作されたTCRの本質的な態様は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)又は同様の免疫学的成分によって提示される腫瘍抗原に対して高いアビディティを有することである。操作されたTCRとは対照的に、CARは、MHC独立した様式で標的抗原に結合するように操作される。
【0142】
本明細書に記載の核酸によってコードされるタンパク質は、付着した追加のポリペプチドがα鎖又はβ鎖が機能的T細胞受容体を形成する能力及びMHC依存性抗原認識を妨げない限り、TCRのα鎖又はβ鎖のアミノ末端又はカルボキシル末端部分に結合した追加のポリペプチドで発現され得る。
【0143】
本明細書で企図される操作されたTCRによって認識される抗原には、血液がん及び固形腫瘍及びウイルス誘発性がんの両方の抗原を含むがん抗原が含まれるが、これらに限定されない。HPV誘発子宮頸がんの治療のためのTCR療法は、有望な関心領域である。したがって、腫瘍溶解性タンパク質HPV-16 E6及びHPV-16 E7は、TCRとともに使用するための潜在的な標的抗原であり得る。
【0144】
他の例示的な抗原としては、HPV-16 E6及びHPV-16 E7を含むHPV腫瘍性タンパク質、アルファ葉酸受容体、5T4、αβインテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD28、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD137(4-1BB)、CD138、CD171、CEA、CSPG4、CLL-1、EGFR、ErbB2(HERII)を含むEGFRファミリー、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、F
AP、胎児AchR、FRa、GD2、GD3、グリピカン-3(Glypican-3、GPC3)、HLA-Al+MAGEI、HLA-A2+MAGE1、HLAA3+MAGE1、HLA-Al+NY-ES0-1、HLA-A2+NY-ES0-1、HLA-A3+NY-ES0-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ、ルイス-Y、カッパ、メソセリン、Mucl、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ES0-1、PRAME、PSCA、PSMA、RORI、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、並びにVEGFRII、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
本明細書に記載される任意のTCR構築物を本開示のDN TGF-β受容体と組み合わせることは、TGF-β抑制によって障害されるTCR療法の治療効果を回復、維持、又は増強し得る。したがって、本明細書に記載の一実施形態では、DN TGF-β受容体は、HPVに対して指向されたTCRとT細胞中で共発現される。本明細書に記載の別の実施形態では、DN TGF-β受容体は、HPV-16 E6タンパク質に対して指向されたTCRとT細胞中で共発現される。本明細書に記載の別の実施形態では、DN TGF-β受容体は、HPV-16 E7タンパク質に対して指向されたTCRとT細胞中で共発現される。
【0146】
T細胞はまた、細胞傷害性を腫瘍細胞に再指向させるCARを発現するように設計されたベクターで遺伝子操作され得る。CARは、標的抗原(例えば、腫瘍抗原)に対する抗体ベースの特異性を、T細胞受容体活性化細胞内ドメインと組み合わせて、特定の抗腫瘍細胞免疫活性を示すキメラタンパク質を生成する分子である。本明細書で使用される場合、「キメラ」という用語は、異なる起源からの異なるタンパク質又はDNAの一部で構成されることを記載する。本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を伴う本明細書に記載のDN TGF-β受容体の使用を企図する。TCRの使用と同様に、DN TGF-β受容体とCARの共発現は、CARの増殖を促進し、TGF-β抑制によって攻撃されるCAR療法を保護し、場合によっては、回復させることができる。本明細書に記載の一実施形態では、DN TGF-β受容体は、本明細書に記載のCARと共発現される。
【0147】
本明細書で企図されるCARは、特定の標的抗原(結合ドメイン又は抗原特異的結合ドメインとも称される)に結合する細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む。CARの主要な特徴は、免疫エフェクター細胞特異性を再指向させるそれらの能力であり、それによって、増殖、サイトカイン産生、食作用、又は主要組織適合性(MHC)に依存しない方法で標的抗原発現細胞の細胞死を媒介し得る分子の産生をトリガし、モノクローナル抗体、可溶性リガンド、又は細胞特異的共受容体の細胞特異的標的化能力を利用する。
【0148】
いくつかの実施形態では、CARは、標的抗原に特異的に結合する、抗体又はその抗原結合フラグメント、テザーリガンド、又は共受容体の細胞外ドメインを含むがこれらに限定されない細胞外結合ドメインを含む。
【0149】
非限定的な例として、標的抗原には以下が含まれ得る:HPV-16 E6及びHPV-16 E7を含むHPV腫瘍性タンパク質、アルファ葉酸受容体、5T4、αβインテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD28、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD137(4-1BB)、CD138、CD171、CEA、CSPG4、CLL-1、EGFR、ErbB2(HERII)を含むEGFRファミリー、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、胎児AchR、FRa、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-Al+MAGEI、HLA-A2+MAGE1、HLAA3+MAGE1、HLA-Al+NY-ES0-1、HLA-A2+NY-ES0-1、HL
A-A3+NY-ES0-1、IL-llRα、IL-13Rα2、ラムダ、ルイス-Y、カッパ、メソセリン、Mucl、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NYE-S0-1、PRAME、PSCA、PSMA、RORI、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、並びにVEGFRII;1つ以上のヒンジドメイン又はスペーサードメイン;CD8α、CD4、CD45、PD-1、及びCD152からの膜貫通ドメインを含むがこれらに限定されない膜貫通ドメイン;CD28、CD54(ICAM)、CD134(OX40)、CD137(41BB)、CD152(CTLA4)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、及びCD278(ICOS)からの細胞内共刺激シグナル伝達ドメインを含むがこれらに限定されない、1つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン;並びにCD3ζ又はFcRγ由来の一次シグナル伝達ドメイン。本明細書に記載の一実施形態では、CARは、CLL-1、CD19、CD20、CD28、CD137(4-1BB)、グリピカン-3(GPC3)、PSCA、又はPSMAを含む腫瘍抗原に結合する。
【0150】
ヒンジは、天然の供給源又は合成の供給源に由来し得る。いくつかの実施形態では、本開示の抗原結合システムは、以下である、以下からの、又は以下から誘導した(例えば、これらのすべて又はフラグメントを含む)ヒンジを含むことができる、CD2、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD4、CD7、CD8アルファ、CD8ベータ、CD11a(ITGAL)、CD11b(ITGAM)、CD11c(ITGAX)、CD11d(ITGAD)、CD18(ITGB2)、CD19(B4)、CD27(TNFRSF7)、CD28、CD28T、CD29(ITGB1)、CD30(TNFRSF8)、CD40(TNFRSF5)、CD48(SLAMF2)、CD49a(ITGA1)、CD49d(ITGA4)、CD49f(ITGA6)、CD66a(CEACAM1)、CD66b(CEACAM8)、CD66c(CEACAM6)、CD66d(CEACAM3)、CD66e(CEACAM5)、CD69(CLEC2)、CD79A(B細胞抗原受容体複合体関連アルファ鎖)、CD79B(B細胞抗原受容体複合体関連ベータ鎖)、CD84(SLAMF5)、CD96(Tactile)、CD100(SEMA4D)、CD103(ITGAE)、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD158A(KIR2DL1)、CD158B1(KIR2DL2)、CD158B2(KIR2DL3)、CD158C(KIR3DP1)、CD158D(KIRDL4)、CD158F1(KIR2DL5A)、CD158F2(KIR2DL5B)、CD158K(KIR3DL2)、CD160(BY55)、CD162(SELPLG)、CD226(DNAM1)、CD229(SLAMF3)、CD244(SLAMF4)、CD247(CD3-ゼータ)、CD258(LIGHT)、CD268(BAFFR)、CD270(TNFSF14)、CD272(BTLA)、CD276(B7-H3)、CD279(PD-1)、CD314(NKG2D)、CD319(SLAMF7)、CD335(NK-p46)、CD336(NK-p44)、CD337(NK-p30)、CD352(SLAMF6)、CD353(SLAMF8)、CD355(CRTAM)、CD357(TNFRSF18)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、LFA-1(CD11a/CD18)、NKG2C,DAP-10、ICAM-1、NKp80(KLRF1)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、LFA1-1、SLAMF9、LAT、GADS(GrpL)、SLP-76(LCP2)、PAG1/CBP、CD83リガンド、Fcガンマ受容体、MHCクラス1分子、MHCクラス2分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリンタンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、活性化NK細胞受容体、又はTollリガンド受容体、又はそれらのフラグメント若しくは組み合わせ。ある特定の実施形態では、CARは、CD28ヒンジを含まない。
【0151】
膜貫通ドメインは、天然又は合成のいずれかの供給源に由来し得る。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質に由来し得る。例示
的な膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータ、又はゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD3デルタ、CD3ガンマ、CD45、CD4、CD5、CD7、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、CD9、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CD16、CD22、CD27、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、TNFSFR25、CD154、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD276(B7-H3)、CD29、CD30、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD84、CD96(Tactile)、CDS、CEACAM1、CRT AM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、LFA-1、LFA-1、CD83と結合するリガンド、LIGHT、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1、CD1-1a/CD18)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、SLAMF4(CD244、2B4)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、若しくはVLA-6、又はそれらのフラグメント、切断型、若しくは組み合わせに由来し得る(例えば、少なくとも膜貫通ドメインを含み得る)。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは合成であってよい(そして、例えば、ロイシンやバリンなどの主に疎水性の残基を含むことができる)。いくつかの実施形態では、フェニルアラニン、トリプトファン、及びバリンのトリプレットは、合成膜貫通ドメインの両端に含まれる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、細胞質ドメインに直接連結又は接続される。いくつかの実施形態では、短いオリゴ又はポリペプチドリンカー(例えば、2~10アミノ酸長)は、膜貫通ドメインと細胞内ドメインとの間の結合を形成し得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン-セリンダブレットである。
【0152】
いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメイン及び/又は活性化ドメインは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif、ITAM)を含む。細胞質シグナル伝達配列を含有するITAMの例は、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ゼータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dから誘導されたものを含み(例えば、Love et al.,Cold Spring Harb.Perspect.Biol.2:a002485(2010)、Smith-Garvin et al.,Annu.Rev.Immunol.27:591-619(2009)を参照されたい)。
【0153】
ある特定の実施形態では、適切なシグナル伝達ドメインは、限定されるものではないが、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3デルタ
、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、LFA-1、LFA-1、CD83に結合するリガンド、LIGHT、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、Ly108)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1、CD1-1a/CD18)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(Signaling Lymphocytic Activation Molecules、SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、SLAMF4(CD244、2B4)、SLAMF6(NTB-A、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、若しくはVLA-6、又はフラグメント、切断、若しくはそれらの組み合わせを含む。
【0154】
CARは、例えば、シグナル伝達効力を高めるために、共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。米国特許第7,741,465号、及び同第6,319,494号、並びにKrause et al.and Finney et al.(上記)、Song et al.,Blood 119:696-706(2012)、Kalos et al.,Sci Transl.Med.3:95(2011)、Porter et al.,N.Engl.J.Med.365:725-33(2011)、及びGross
et al.,Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.56:59-83(2016)を参照されたい。TCRのみを介して生成されたシグナルは、T細胞の完全な活性化に不十分である可能性があり、二次又は共刺激シグナルは活性化を増加させ得る。したがって、いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、1つ以上の免疫細胞エフェクター機能(例えば、本明細書に記載の天然免疫細胞エフェクター機能)を活性化する1つ以上の追加のシグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激シグナル伝達ドメイン)を更に含む。いくつかの実施形態では、そのような共刺激シグナル伝達ドメインの一部は、その部分がエフェクター機能シグナルを伝達する限り、使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞質ドメインは、T細胞共受容体(又はそのフラグメント)の1つ以上の細胞質配列を含む。そのようなT細胞共受容体の非限定的な例は、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、MYD88、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、及びCD83と結合するリガンドを含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書で企図されるCARは、腫瘍細胞上に発現される標的ポリペプチド、例えば標的抗原に特異的に結合する細胞外結合ドメインを含む。本明細書で使用される場合、用語、「結合ドメイン」、「細胞外ドメイン」、「細胞外結合ドメイン」、「抗原特異的結合ドメイン」、「抗原結合ドメイン」、及び「細胞外抗原特異的結合ドメイン」は、互換的に使用され、目的の標的抗原に特異的に結合する能力を有するCARを提供する。結合ドメインは、生物学的分子(例えば、細胞表面受容体又は腫瘍タンパク質、脂質、多糖類、又はそれらの他の細胞表面標的分子、又はそれらの成分)を特異的に認識して結合する能力を有する任意のタンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、又はペプチドを含み得る。結合ドメインは、目的の生物学的分子のための、天然で、合
成により、半合成により、又は組換えにより産生された結合パートナーを含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、CARの細胞外結合ドメインは、その抗体又は抗原結合フラグメントを含む。「抗体」とは、免疫細胞によって認識されるものなどの、抗原決定基を含有するペプチド、脂質、多糖類、又は核酸などの標的抗原のエピトープを特異的に認識して結合する、少なくとも軽鎖又は重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドである結合剤を指す。抗体には、その抗原結合フラグメントを含む。この用語はまた、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロ-コンジュゲート抗体(例えば、二重特異的抗体)及びその抗原結合フラグメントなどの遺伝子操作された形態を含む。Pierce
Catalog and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,IL)、Kuby,J.,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman & Co.,New York,1997も参照されたい。
【0157】
いくつかの実施形態では、標的抗原は以下のエピトープである:HPV-16 E6及びHPV-16 E7を含むHPV腫瘍性タンパク質、アルファ葉酸受容体、5T4、αβインテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD28、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD137(4-1BB)、CD138、CD171、CEA、CSPG4、CLL-1、EGFR、ErbB2(HERII)を含むEGFRファミリー、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、F AP、胎児AchR、FRa、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-Al+MAGEI、HLA-A2+MAGE1、HLAA3+MAGE1、HLA-Al+NY-ES0-1、HLA-A2+NY-ES0-1、HLA-A3+NY-ES0-1、IL-llRα、IL-13Rα2、ラムダ、ルイス-Y、カッパ、メソセリン、Mucl、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NYE-S0-1、PRAME、PSCA、PSMA、RORI、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、並びにVEGFRIIポリペプチド。本明細書に記載の一実施形態では、CARは、CD19、CD20、CD28、CD137(4-1BB)、CLL-1、グリピカン-3(GPC3)、PSCA又はPSMAを含む腫瘍抗原エピトープに結合する。
【0158】
肝細胞がん(Hepatocellular carcinoma、HCC)は、世界中で最も一般的ながんのうちの1つである(El-Serag,J Clin Gastroenterology
35: S72-78(2002))。これまでの肝細胞がんに関連する他の腫瘍抗原とは異なり、GPC3は、抗体指向療法にとって魅力的な大きな細胞外ドメインを有するグリコホスファチジルイノシチオール(glycophosphatidylinositiol)結合膜関連タンパク質である。したがって、GPC3の大きな細胞外ドメイン及び悪性HCC組織の細胞表面での比較的特異的発現により、HCC腫瘍免疫療法の魅力的な標的となっている。したがって、本開示によって企図される一実施形態は、本明細書に記載のDN TGF-β受容体とともに使用するためのGPC3に指向されたCARである。
【0159】
本明細書に記載の一実施形態では、CARは、配列番号37に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を含む。
【0160】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に、いずれかの配向(例えば、VL-VH又はVH-VL)で存在する。概して、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーを更に含み、それによって、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することが可能になる。scFvのレビューについては、例えば、Pluckthin,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York,1994),pp.269-315を参照されたい。本明細書に記載の一実施形態では、本明細書に記載のCARは、配列番号38に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するVHドメインを含む。
【0161】
本明細書に記載の別の実施形態では、本明細書に記載のCARは、配列番号39に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するVLドメインを含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、本明細書で企図されるCARは、がん細胞上に発現される抗原に結合するscFv(マウス、ヒト、又はヒト化scFv)であり得る抗原特異的結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、scFvは、HPV-16 E6及びHPV
-16 E7を含むHPV腫瘍性タンパク質、アルファ葉酸受容体、5T4、αβインテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD28、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD137(4-1BB)、CD138、CD171、CEA、CSPG4、CLL-1、EGFR、ErbB2(HERII)を含むEGFRファミリー、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、F AP、胎児AchR、FRa、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-Al+MAGEI、HLA-A2+MAGE1、HLAA3+MAGE1、HLA-Al+NY-ES0-1、HLA-A2+NY-ES0-1、HLA-A3+NY-ES0-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ、ルイス-Y、カッパ、メソセリン、Mucl、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NYE-S0-1、PRAME、PSCA、PSMA、RORI、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、並びにVEGFRIIに結合する。本明細書に記載の他の実施形態では、CARは、CD19、CD20、CD28、CD137(4-1BB)、CLL-1、グリピカン-3(GPC3)、PSCA又はPSMAに結合する抗原特異的結合ドメインscFvを含む。
【0163】
ある特定の実施形態では、本明細書で企図されるCARは、様々なドメイン間に、例えば、VHドメインとVLドメインとの間に、分子の適切な間隔立体配座のために追加されるリンカー残基を含み得る。本明細書で企図されるCARは、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ以上のリンカーを含み得る。いくつかの実施形態では、リンカーの長さは、約1~約25アミノ酸、約5~約20アミノ酸、又は約10~約20アミノ酸、又は任意の介在する長さのアミノ酸である。いくつかの実施形態では、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又はそれ以上のアミノ酸長である。
【0164】
リンカーの例示的な例としては、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(G1~51~5)n(式中、nは、少なくとも1、2、3、4、又は5の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、及び当該技術分野で既知の他のフレキシブルなリンカーが挙げられる。グリシン及びグリシン-セリンポリマーは、比較的構造化されておらず、したがって、本明細書に記載のCARなどの融合タンパク質のドメイン間の中性テザーとして機能することができる。グリシンは、更にアラニンよりもファイ-プサイ空間にアクセスし、より長い側鎖を有する残基よりもはるかに制限が少ない(Scheraga,Rev.Computational Chem.11173-142(1992)を参照されたい)。本明細書で企図される他のリンカーとしては、Whitlowリンカー(Whitlow,Protein Eng.6(8):989-95(1993)を参照されたい)が含まれる。当業者は、いくつかの実施形態におけるCARの設計が、すべて又は部分的にフレキシブルなリンカーを含み得、それにより、リンカーが、フレキシブルリンカー、並びに所望のCAR構造を提供するようにより低いフレキシブル構造を付与する1つ以上の部分を含み得ることを認識するであろう。一実施形態では、本明細書に記載の構築物のいずれかは、「GS」リンカーを含み得る。別の実施形態では、本明細書に記載の構築物のいずれかは、「GSG」リンカーを含む。別の実施形態では、本明細書に記載のCARは、配列番号40に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を含む。
【0165】
他の実施形態では、CARは、可変領域連結配列を更に含むscFvを含む。「可変領
域連結配列」は、重鎖可変領域を軽鎖可変領域に接続し、かつ得られたポリペプチドが同じ軽鎖及び重鎖可変領域を含む抗体と同じ標的分子への特異的結合親和性を保持するように、2つの亜結合ドメインの相互作用と適合性のあるスペーサ機能を提供するアミノ酸配列である。一実施形態では、可変領域連結配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又はそれ以上のアミノ酸長である。
【0166】
他の実施形態では、CARの結合ドメインに続く1つ以上の「スペーサードメイン」が続き、これは、抗原結合ドメインをエフェクター細胞表面から離れるように移動させて、適切な細胞/細胞接触、抗原結合、及び活性化を可能にする領域を指す(Patel et al.,Gene Therapy,1999;6:412~419)。スペーサードメインは、天然、合成、半合成、又は組換え供給源のいずれかに由来し得る。ある特定の実施形態では、スペーサードメインは、免疫グロブリンの一部であり、これには、1つ以上の重鎖定常領域、例えばCH2及びCH3が含まれるが、これらに限定されない。スペーサードメインは、天然に存在する免疫グロブリンヒンジ領域又は改変された免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列を含み得る。
【0167】
CARの結合ドメインは、概して、1つ以上の「ヒンジドメイン」が続くことができ、これは抗原結合ドメインをエフェクター細胞表面から離して位置付けて適切な細胞/細胞接触、抗原結合、及び活性化を可能にする役割を果たす。CARは、概して、結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に1つ以上のヒンジドメインを含む。ヒンジドメインは、天然、合成、半合成、又は組換え供給源のいずれかに由来し得る。ヒンジドメインは、天然に存在する免疫グロブリンヒンジ領域又は改変された免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列を含み得る。
【0168】
本明細書に記載のCARに使用するのに好適な例示的なヒンジドメインは、CD8α、CD4、CD28、及びCD7などの1型の膜タンパク質の細胞外領域に由来するヒンジ領域を含み、これらは、これらの分子の野生型ヒンジ領域であり得るか、又は変更され得、例えば、切断型CD28ヒンジドメインであってよい。ヒンジは、天然の供給源又は合成の供給源に由来し得る。いくつかの実施形態では、本開示の抗原結合システムは、以下である、以下からの、又は以下から誘導した(例えば、これらのすべて又はフラグメントを含む)ヒンジを含むことができる、CD2、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD4、CD7、CD8アルファ、CD8ベータ、CD11a(ITGAL)、CD11b(ITGAM)、CD11c(ITGAX)、CD11d(ITGAD)、CD18(ITGB2)、CD19(B4)、CD27(TNFRSF7)、CD28、CD28T、CD29(ITGB1)、CD30(TNFRSF8)、CD40(TNFRSF5)、CD48(SLAMF2)、CD49a(ITGA1)、CD49d(ITGA4)、CD49f(ITGA6)、CD66a(CEACAM1)、CD66b(CEACAM8)、CD66c(CEACAM6)、CD66d(CEACAM3)、CD66e(CEACAM5)、CD69(CLEC2)、CD79A(B細胞抗原受容体複合体関連アルファ鎖)、CD79B(B細胞抗原受容体複合体関連ベータ鎖)、CD84(SLAMF5)、CD96(Tactile)、CD100(SEMA4D)、CD103(ITGAE)、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD150(SLAMF1)、CD158A(KIR2DL1)、CD158B1(KIR2DL2)、CD158B2(KIR2DL3)、CD158C(KIR3DP1)、CD158D(KIRDL4)、CD158F1(KIR2DL5A)、CD158F2(KIR2DL5B)、CD158K(KIR3DL2)、CD160(BY55)、CD162(SELPLG)、CD226(DNAM1)、CD229(SLAMF3)、CD244(SLAMF4)、CD247(CD3-ゼータ)、CD258(LIGHT)、CD268(BAFFR)、CD270(TNFSF14)、CD272(BTLA)、CD27
6(B7-H3)、CD279(PD-1)、CD314(NKG2D)、CD319(SLAMF7)、CD335(NK-p46)、CD336(NK-p44)、CD337(NK-p30)、CD352(SLAMF6)、CD353(SLAMF8)、CD355(CRTAM)、CD357(TNFRSF18)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、LFA-1(CD11a/CD18)、NKG2C,DAP-10、ICAM-1、NKp80(KLRF1)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、LFA1-1、SLAMF9、LAT、GADS(GrpL)、SLP-76(LCP2)、PAG1/CBP、CD83リガンド、Fcガンマ受容体、MHCクラス1分子、MHCクラス2分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリンタンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、活性化NK細胞受容体、又はTollリガンド受容体、又はそれらのフラグメント若しくは組み合わせ。ある特定の実施形態では、CARは、CD28ヒンジを含まない。別の実施形態では、ヒンジドメインは、CD8αヒンジ領域を含む。別の実施形態では、本明細書に記載のCARは、配列番号41に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を有するCD8αからのヒンジドメインを含む。
【0169】
「膜貫通ドメイン」は、細胞外結合部分及び細胞内シグナル伝達ドメインを融合させ、CARを免疫エフェクター細胞の細胞膜に固定するCARの部分である。例示的な膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータ、又はゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD3デルタ、CD3ガンマ、CD45、CD4、CD5、CD7、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、CD9、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CD16、CD22、CD27、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、TNFSFR25、CD154、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD276(B7-H3)、CD29、CD30、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD84、CD96(Tactile)、CDS、CEACAM1、CRTAM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、LFA-1、LFA-1、CD83と結合するリガンド、LIGHT、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1、CD1-1a/CD18)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、SLAMF4(CD244、2B4)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、若しくはVLA-6、又はフラグメント、切断、若しくはそれらの組み合わせに由来し得る(例えば、少なくとも膜貫通ドメインを含み得る)。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは合成であってよく(並びに、例えば、ロイシン及びバリンなどの主に疎水性の残基を含むことができる)。いくつかの実施形態では、フェ
ニルアラニン、トリプトファン、及びバリンのトリプレットは、合成膜貫通ドメインの両端に含まれる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、細胞質ドメインに直接連結又は接続される。いくつかの実施形態では、短いオリゴ又はポリペプチドリンカー(例えば、2~10アミノ酸長)は、膜貫通ドメインと細胞内ドメインとの間の結合を形成し得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン-セリンダブレットである。一実施形態では、本明細書に記載のCARは、配列番号42に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を有するCD8αからの膜貫通ドメインを含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、本明細書で企図されるCARは、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、標的抗原に結合する効果的なCARのメッセージを免疫エフェクター細胞の内部に伝達して、CAR結合標的細胞への細胞傷害性因子の放出、又は細胞外CARドメインへの抗原結合で誘発された他の細胞応答を含む、エフェクター細胞機能、例えば、活性化、サイトカイン産生、増殖、及び細胞傷害性活性を誘発することに関与する、CARの一部を指す。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメイン及び/又は活性化ドメインは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含む。細胞質シグナル伝達配列を含有するITAMの例は、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ゼータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dから誘導されたものを含み(例えば、Love et al.,Cold Spring Harb.Perspect.Biol.2:a002485(2010)、Smith-Garvin
et al.,Annu.Rev.Immunol.27:591-619(2009)を参照されたい)。ある特定の実施形態では、適切なシグナル伝達ドメインは、限定されるものではないが、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGB1、KIRDS2、LAT、LFA-1、LFA-1、CD83に結合するリガンド、LIGHT、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、Ly108)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1、CD1-1a/CD18)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、SLAMF4(CD244、2B4)、SLAMF6(NTB-A、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、若しくはVLA-6、又はフラグメント、切断、若しくはそれらの組み合わせを含む。
【0171】
「エフェクター機能」という用語は、細胞の特殊な機能を指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性又はサイトカインの分泌を含む援助又は活性であり得る。したがって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞を特殊な機能を果たすように指示するタンパク質の部分を指す。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体が使用され得るが、多くの場合、ドメイン全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が使用される限りにおいて、そのような切断部分は、エフェクター機能シグナルを変換する限り、ドメイン全体の代わりに使用され得る。細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断部分を含むことを意味する。
【0172】
TCRのみを介して生成されたシグナルは、T細胞の完全な活性化に不十分であり、二次又は共刺激シグナルも必要とされ得ることが知られている。したがって、T細胞活性化は、2つの異なるクラスの細胞内シグナル伝達ドメインによって媒介されると言うことができ、TCRを介して抗原依存的に一次活性化を開始する一次シグナル伝達ドメイン(例えば、TCR/CD3複合体)と、抗原非依存的に作用して二次又は共刺激シグナルを提供する共刺激シグナル伝達ドメインである。いくつかの実施形態では、本明細書で企図されるCARは、1つ以上の「共刺激シグナル伝達ドメイン」及び「一次シグナル伝達ドメイン」を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0173】
本開示において有用な一次シグナル伝達ドメインを含有するITAMの例示的な例としては、TCRζ、FcRγ、FcRβ、DAP12、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dに由来するものが含まれる。いくつかの実施形態では、CARは、CD3ζ一次シグナル伝達ドメイン及び1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。細胞内一次シグナル伝達及び共刺激シグナル伝達ドメインは、膜貫通ドメインのカルボキシル末端にタンデムで任意の順序で連結され得る。一実施形態では、本明細書に記載のCARは、配列番号43に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を有するCD3ζドメインを有する。
【0174】
本明細書で企図されるCARは、CAR受容体を発現するT細胞の有効性及び増殖を増強するための1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。本明細書で使用される場合、「共刺激シグナル伝達ドメイン」又は「共刺激ドメイン」という用語は、共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを指す。いくつかの実施形態では、共刺激分子は、CD27、CD28、CD137(4-IBB)、OX40(CD134)、CD30、CD40、PD-I、ICOS(CD278)、CTLA4、LFA-1、CD2、CD7、LIGHT、TRIM、LCK3、SLAM、DAPIO、LAG3、HVEM、及びNKD2C、及びCD83を含み得る。一実施形態では、本明細書に記載のCARは、配列番号44に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を有する4-IBB共刺激ドメインを含む。
【0175】
本明細書に記載の操作されたCARはまた、scFv又は抗原結合ドメインのN末端にN末端シグナルペプチド又はタグを含み得る。一実施形態では、異種シグナルペプチドを使用することができる。抗原結合ドメイン又はscFVは、新生タンパク質を小胞体に誘導し続いて細胞表面に移行させるリーダー又はシグナルペプチドに融合され得る。シグナルペプチドを含有するポリペプチドが細胞表面で発現されると、シグナルペプチドは、概して、小胞体内のポリペプチドのプロセシング及び細胞表面への移行中にタンパク質分解的に除去されることが理解される。したがって、本明細書に記載のCAR構築物などのポリペプチドは、概して、シグナルペプチドを欠く成熟タンパク質として細胞表面で発現されるが、ポリペプチドの前駆体形態は、シグナルペプチドを含む。当該技術分野で既知の任意の好適なシグナル配列を使用することができる。同様に、当該技術分野で既知の任意の既知のタグ配列も使用することができる。
【0176】
本明細書に記載の一実施形態では、CAR構築物は、配列番号45に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を含む。
【0177】
本明細書に記載されるような任意のCAR構築物を本開示のDN TGF-β受容体のいずれかと組み合わせることは、TGF-β抑制によって攻撃されるCAR T療法の治療効果を回復、維持、又は増強し得る。したがって、本明細書に記載の一実施形態では、本明細書に記載のDN TGF-β受容体は、T細胞においてCARと共発現され、「CAR-DN TGF-β受容体構築物」を形成する。本明細書に記載の別の実施形態では、DN TGF-β受容体はいずれも、BCMA、CD19、CD20、CD28、CD137(4-1BB)、CLL-1、グリピカン-3(GPC3)、PSCA又はPSMAを含むがこれらに限定されない抗原に結合するCARと、T細胞で共発現される。本明細書に記載の一実施形態では、CAR-DN TGF-β受容体構築物のCAR部分は、配列番号37又は配列番号45に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を含む。本明細書に記載の別の実施形態では、CAR-DN TGF-β受容体構築物のDN TGF-β受容体部分は、配列番号10又は配列番号14に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、
少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を含む。
【0178】
本明細書に記載のT細胞におけるCAR-DN TGF-β受容体構築物の効率的な発現を促進するために、自己切断配列を使用して、それらを1つのオープンリーディングフレームで発現させることによって、複数の遺伝子構築物の共発現を等量ですることができる。任意の好適な切断ペプチド配列は、本明細書に記載の構築物、例えば、2A切断可能なペプチド(例えば、T2A)、2A様リンカー、又はそれらの機能的等価物、及びそれらの組み合わせとともに使用することができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、ピコルナウイルス2A様リンカー、ブタテッショウウイルス(P2A)、ウイルス(T2A)のCHYSEL配列、又はそれらの組み合わせ、バリアント、及び機能的等価物を含む。本明細書に記載の一実施形態では、CAR-DN TGF-β受容体構築物は、配列番号46に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を有する自己切断ドメインを有する。
【0179】
一実施形態では、本明細書に記載のCAR-DN TGF-β受容体構築物は、配列番号47に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するアミノ酸配列を含む。
【0180】
本明細書に記載の一実施形態では、本明細書で企図される1つ以上のDN TGF-β受容体又はCAR-DN TGF-β受容体構築物ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語は、メッセンジャーRNA(messenger RNA、mRNA)、RNA、ゲノムRN
A(genomic RNA、gRNA)、プラス鎖RNA(plus strand RNA、RNA(+))、マイナス鎖RNA(minus strand RNA、RNA(-))、相補的DNA(complementary DNA、cDNA)、又は組換えDNAを指す。ポリヌクレオチドには、一本鎖及び二本鎖ポ
リヌクレオチドが含まれる。本開示のポリヌクレオチドには、本明細書に記載の参照配列(例えば、配列表を参照されたい)のいずれかに対して、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド又はバリアントが含まれ、典型的には、バリアントは参照配列の少なくとも1つの生物学的活性を維持する。様々な例示的な実施形態では、本開示は、部分的には、発現ベクター、ウイルスベクター、及びトランスファープラスミドを含むポリヌクレオチド、及びそれらを含む組成物、及び細胞を企図する。
【0181】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本開示のポリペプチドの少なくとも約5、10、25、50、100、150、200、250、300、350、400、500、1000、1250、1500、1750、又は2000以上の連続するアミノ酸残基、並びにすべての中間の長さをコードする本開示によって提供される。この文脈において、「中間の長」は、引用された値の間の任意の長さ、例えば、6、7、8、9など、101、102、103など、151,152,153など、201,202,203などを意味することが容易に理解されるであろう。
【0182】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチドバリアント」及び「バリアント」などの用語は、参照ポリヌクレオチド配列又はポリヌクレオチドと実質的な配列同一性を示すポリヌクレオチド、又は以下に定義されるストリンジェントな条件下で参照配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。これらの用語には、参照ポリヌクレオチドと比較して、1つ以上のヌクレオチドが、付加されている又は欠失しているか、又は異なるヌクレオチドと置き換えられているポリヌクレオチドが含まれる。これに関して、突然変異、付加、欠失、及び置換を含むある特定の変更を参照ポリヌクレオチドに対して行うことができ、それによって発現された変更ポリヌクレオチドは、参照ポリヌクレオチドの生物学的機能又は活性を保持することが当該技術分野で十分に理解されている。
【0183】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」又は例えば、「50%同一の配列」という記載は、比較のウィンドウにわたって、配列がヌクレオチドごと、又はアミノ酸ごとに同一である範囲を指す。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較のウィンドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較することによって計算することができ、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)又は同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys及びMet)が両方の配列に存在する位置の数を決定して、一致した位置の数を算出し、一致した位置の数を比較のウィンドウ内の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で除算して、その結果に100を乗算して、配列同一性のパーセンテージを算出する。本明細書に記載の参照配列のいずれかに対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド及びポリペプチドが含まれ、典型的には、ポリペプチドバリアントが参照ポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を維持する、ヌクレオチド及びポリペプチドが含まれる。
【0184】
コード配列自体の長さに関係なく、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、他のDNA配列と組み合わせることができ、例えばプロモーター及び/又はエンハンサー、非翻訳領域(UTR)、コザック配列、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、複数のクローニング部位、内部リボソーム進入部位(IRES)、リコンビナーゼ認識部位(例え
ば、LoxP、FRT、及びAtt部位)、終結コドン、転写終結シグナル、及び自己切断ポリペプチド、エピトープタグをコードするポリヌクレオチドであり、本明細書の他の場所に開示されているように、又は当技術分野で知られているように、それらの全長はかなり変化し得る。したがって、ほぼ任意の長さのポリヌクレオチドフラグメントを使用することができ、全長は、意図された組換えDNAプロトコルにおける調製及び使用の容易さによって制限され得ることが企図される。
【0185】
ポリヌクレオチドは、当技術分野で既知であり、かつ利用可能な様々な十分に確立された技術のいずれかを使用して調製、操作、及び/又は発現され得る。所望のポリペプチドを発現するために、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を適切なベクターに挿入することができる。ベクターの例は、プラスミド、自律的複製配列、及び転移因子である。追加の例示的なベクターには、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工染色体、例えば、酵母人工染色体(yeast artificial chromosome、YAC)、細菌人工染色体(bacterial artificial chromosome、BAC)、又はP1-由来人工染色体(P1-derived artificial chromosome、PAC)、バクテリオファージ、例えばラムダファージ又はM13ファージ、及び動物ウイルスが含まれるが、これらに限定されない。ベクターとして有用な動物ウイルスのカテゴリの例としては、限定されないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノシン関連ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、及びパポーバウイルス(例えば、SV40)が挙げられる。発現ベクターの例は、哺乳動物細胞における発現のためのpClneoベクター(Promega)、レンチウイルス媒介遺伝子導入及び哺乳動物細胞における発現のためのpLenti4N5-DEST(商標)、pLenti6N5-DEST(商標)、及びpLenti6.2N5-GW/lacZ(Invitrogen)である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラタンパク質のコード配列は、哺乳動物細胞におけるキメラタンパク質の発現のためにそのような発現ベクターに連結され得る。
【0186】
発現ベクター中に存在する「制御要素」又は「調節配列」は、ベクターの非翻訳領域であって、複製起点、選択カセット、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(シャイン・ダルガノ配列若しくはコザック配列)、イントロン、ポリアデニル化配列、5’及び3’非翻訳領域であり、これらは宿主細胞タンパク質と相互作用して転写及び翻訳を実行する。そのような要素は、それらの強度及び特異性が変化し得る。利用されるベクター系及び宿主に応じて、遍在性プロモーター及び誘導性プロモーターを含む任意の数の好適な転写及び翻訳要素が使用され得る。
【0187】
他の実施形態では、発現ベクター及びウイルスベクターを含むがこれらに限定されない実施形態を実施する際に使用するためのベクターは、プロモーター及び/又はエンハンサーなどの外因性、内因性、又は異種配列を含む。「内因性」制御配列は、ゲノム中の所与の遺伝子と自然に連結されたものである。「外因性」制御配列は、遺伝子操作(すなわち、分子生物学的技術)によって遺伝子に並置されて配置され、その遺伝子の転写が連結エンハンサー/プロモーターによって指示される。「異種」配列は、遺伝子操作されているタンパク質又は細胞と同じ種の異なるタンパク質又は異なる種に由来し得る外因性配列である。
【0188】
本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼが結合するポリヌクレオチド(DNA又はRNA)の認識部位を指す。RNAポリメラーゼは、プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチドを開始及び転写する。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞において動作可能なプロモーターは、転写が開始される部位から約25~30塩基上流に位置するATリッチ領域、及び/又は転写開始から70~80塩基上流に見出される別の配列、CNCAAT領域(Nは任意のヌクレオチドであり得る)
を含む。
【0189】
「エンハンサー」という用語は、増強された転写を提供することができる配列を含むDNAのセグメントを指し、場合によっては、別の制御配列に対するそれらの配向とは独立して機能し得る。エンハンサーは、プロモーター及び/又は他のエンハンサー要素と協同的に又は付加的に機能し得る。「プロモーター/エンハンサー」という用語は、プロモーター機能及びエンハンサー機能の両方を提供することができる配列を含むDNAのセグメントを指す。
【0190】
「作動可能に連結された」という用語は、記載される構成要素が、それらが意図された様式で機能することを可能にする関係にある並置を指す。一実施形態では、この用語は、核酸発現制御配列(プロモーター及び/又はエンハンサーなど)と第2のポリヌクレオチド配列、例えば、目的のポリヌクレオチドとの間の機能的結合を指し、発現制御配列は、第2の配列に対応する核酸の転写を指示する。
【0191】
本明細書で使用される場合、「構成的発現制御配列」という用語は、作動可能に連結された配列の転写を継続的に又は連続的に可能にするプロモーター、エンハンサー、又は促進剤/エンハンサーを指す。構成的発現制御配列は、それぞれ、多種多様な細胞及び組織型において発現を可能にする「普遍的」プロモーター、エンハンサー、又はプロモーター/エンハンサーであっても、種類が制限された細胞及び組織型において発現を可能にする「細胞特異的」、「細胞型特異的」、「細胞系統特異的」、又は「組織特異的」プロモーター、エンハンサー、又はプロモーター/エンハンサーであってもよい。本開示は、以下を含むがこれらに限定されない、本明細書に記載の様々な構築物とともに使用するための任意の適切な細胞株の使用を企図する:CHO細胞、BHK細胞、MDCK細胞、C3H
10Tl/2細胞、FLY細胞、Flp-細胞、Psi-2細胞、BOSC23細胞、P A317細胞、WEHI細胞、COS細胞、BSC1細胞、BSC40細胞、BMT10細胞、Jurkat細胞、VERO細胞、W138細胞、MRC5細胞、A549細胞、HTI080細胞、Hep細胞、HEK細胞、iHPC細胞、293細胞、293T細胞、B-50細胞、3T3細胞、NIH3T3細胞、NK細胞、HepG2細胞、Saos-2細胞、Huh7細胞、HeLa細胞、W163細胞、211細胞、及び211A細胞又は任意の他の適切な細胞株。
【0192】
本開示のいくつかの実施形態における使用に好適な例示的な遍在的発現制御配列には、これらに限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)即時初期プロモーター、ウイルス性シミアンウイルス40(simian virus 40、SV40)(例えば、初期又は後期)
、モロニーウイルス白血病ウイルス(Moloney murine leukemia virus、MoMLV)L
TRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(Rous sarcoma virus、RSV)LTR、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus、HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーター、ワクシニアウイルス由来のHS、P7.5、及びP11プロモーター、伸長因子1-アルファ(elongation factor 1-alpha、EF1a)プロモーター、初期増殖応答1(early growth response 1、EGR1)、フェリチンH(ferritin H、FerH)、フェリチンL(ferritin L、FerL)、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase、GAPDH)、真核生物翻訳開始因子4Al(eukaryotic translation initiation factor 4Al、EIF4Al)、熱ショックタンパク質70kDa5(heat shock protein 90kDa beta、HSPA5)、熱ショックタンパク質9
0kDaベータ、メンバー1(HSP90Β 1)、熱ショックタンパク質70kDa(heat shock protein 70kDa、HSP70)、β-キネシン(β-kinesin、β-KIN)、ヒ
トROSA26遺伝子座(Irions et al.,Nature Biotechnology 25,1477-1482(2007))、ユビキチンCプロモーター(Ubiquitin C promoter、UBC)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-I(phosphoglycerate
kinase-I、PGK)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-
アクチン(CAG)プロモーター、β-アクチンプロモーター及び骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、陰性対照領域欠失、dl587revプライマー結合部位置換(MND)プロモーター(Challita et al.,JViral.69(2):748-55(1995))が含まれる。
【0193】
本明細書に記載の別の実施形態では、本明細書に記載のDN TGF-β受容体を含むポリヌクレオチドを、T細胞において安定した長期発現を提供するプロモーターから、T細胞を標的抗原を発現する細胞に再指向させるのに十分なレベルで、操作されたTCR又はCARと共発現することが望ましい場合がある。
【0194】
本明細書で使用される場合、「条件付き発現」は、誘導性発現、抑制性発現、生理学的、生物学的、又は疾患状態などを有する細胞又は組織における発現を含むが、これらに限定されない任意のタイプの条件付き発現を指し得る。この定義は、細胞型又は組織特異的発現を除外することを意図するものではない。本明細書に記載のある特定の実施形態は、目的のポリヌクレオチドの条件付き発現を提供し、例えば、発現が、細胞、組織、生物などを、ポリヌクレオチドを発現させる又は目的のポリヌクレオチドによってコードされるポリヌクレオチドの発現の増加若しくは減少させる治療又は状態に供することによって制御される。
【0195】
誘導性プロモーター/システムの例示的な例としては、グルココルチコイド又はエストロゲン受容体をコードする遺伝子のプロモーターなどのステロイド誘導性プロモーター(対応するホルモンでの治療によって誘導可能)、メタロチオニンプロモーター(様々な重金属での治療によって誘導可能)、MX-1プロモーター(インターフェロンによって誘導可能)、「遺伝子スイッチ」ミフェプリストーン調節可能系(Sirin et al.,2003,Gene,323:67)、クミン酸誘導性遺伝子スイッチ(国際公開第2002/088346号)、テトラサイクリン依存性調節系などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0196】
条件付き発現はまた、部位特異的DNAリコンビナーゼを使用することによって達成され得る。本開示のある特定の実施形態によれば、ベクターは、部位特異的リコンビナーゼによって媒介される組換えのための少なくとも1つの(典型的には2つの)部位を含む。本明細書で使用される場合、「リコンビナーゼ」又は「部位特異的リコンビナーゼ」という用語は、1つ以上の組換え部位(例えば、2、3、4、5、7、10、12、15、20、30、50など)が関与する組換え反応に関与する、除去又は統合タンパク質、酵素、補因子、又は関連タンパク質を含み、野生型タンパク質(Landy,Current
Opinion in Biotechnology 3:699-707(1993)を参照されたい)又はそれらの変異体、誘導体(例えば、組換えタンパク質配列又はそのフラグメントを含む融合タンパク質)、フラグメント、及び変異体であり得る。本開示のいくつかの実施形態における使用に適したリコンビナーゼの例示的な例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Cre、Int、IHF、Xis、Flp、Fis、Hin、Gin、ΦC31、Cin、Tn3リゾルバーゼ、TndX、XerC、XerD、TnpX、Hjc、Gin、SpCCEl、及びParA。
【0197】
本開示は、本明細書に記載の操作されたDN TGF-β受容体を含むポリヌクレオチドと、本明細書に記載のCAR-DN TGF-β受容体構築物及びそのフラグメントを含む、操作されたTCR及びCARポリペプチド構築物との共発現、それを含む細胞及び組成物、並びにポリペプチドを発現するベクターを企図している。「ポリペプチド」、「ポリペプチドフラグメント」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、反対に特定されない限り、従来の意味に従って、すなわち、アミノ酸の配列としてのものである。ポリペプ
チドは、特定の長さに限定されず、例えば、完全長タンパク質配列又は完全長タンパク質のフラグメントを含み得、ポリペプチドの後翻訳改変、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など、並びに自然発生及び非自然発生の両方で当該技術分野で知られている他の改変を含み得る。様々な実施形態において、本明細書で企図されるポリペプチドは、タンパク質のN末端部にシグナル(又はリーダー)配列を含み、これは、同時翻訳又は翻訳後にタンパク質の移動を指示する。本明細書に開示されるのに有用な好適なシグナル配列の例示的な例としては、IgG1重鎖シグナル配列及びCD8αシグナル配列が挙げられるが、これらに限定されない。ポリペプチドは、様々な周知の組換え及び/又は合成技術のいずれかを使用して調製され得る。本明細書で企図されるポリペプチドは、具体的には、本開示の操作されたDN TGF-β受容体、操作されたTCR及びCAR、又は本明細書で企図されるポリペプチドの1つ以上のアミノ酸から欠失、付加、及び/又は置換を有する配列を含む。
【0198】
ポリペプチドには、「ポリペプチドバリアント」が含まれる。ポリペプチドバリアントは、1つ以上の置換、欠失、付加、及び/又は挿入において天然に存在するポリペプチドとは異なり得る。そのような変異体は、天然に存在し得るか、又は例えば、上記のポリペプチド配列のうちの1つ以上を改変することによって合成により生成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上の置換、欠失、付加、及び/又は挿入を導入することによって、操作されたDN TGF-β受容体、TCR又はCARの結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。好ましくは、本開示のポリペプチドは、それに対して少なくとも約50%、60%、65%、70%、75%、85%、90%、95%、98%、又は99%のアミノ酸同一性を有するポリペプチドを含む。本開示のポリペプチドには、本明細書に記載の参照配列(例えば、配列表を参照されたい)のいずれかに対して、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するバリアントが含まれ、典型的には、バリアントは参照配列の少なくとも1つの生物学的活性を維持する。ポリペプチドには、「ポリペプチドフラグメント」が含まれる。ポリペプチドフラグメントは、アミノ末端欠失、カルボキシル末端欠失、及び/又は天然に存在する若しくは組換え産生されたポリペプチドの内部欠失若しくは置換を有する単量体又は多量体であり得るポリペプチドを指す。ある特定の実施形態では、ポリペプチドフラグメントは、少なくとも5~約500アミノ酸長のアミノ酸鎖を含み得る。ある特定の実施形態では、フラグメントは、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、又は450アミノ酸長であることが理解されよう。
【0199】
ポリペプチドはまた、ポリペプチド(例えば、ポリ-His)の合成、精製、又は同定を容易にするため、又はポリペプチドの固体支持体への結合を増強するために、リンカー若しくは他の配列にインフレームで融合又はコンジュゲートさせることもできる。
【0200】
上記のように、本開示のポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失、切断、及び挿入を含む様々な方法で変更され得る。そのような操作のための方法は、概して当該技術分野で既知である。例えば、参照ポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、DNA中の変異によって調製され得る。変異誘発及びヌクレオチド配列の変化のための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Kunkel(1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.82:488-492)、Kunkel et al.,(1987,Methods in Enzymol,154:367-382)、米国特許第4,873,192号、Watson,J.D.et al.,(Molecular Biolo
gy of the Gene,Fourth Edition,Benjamin/Cummings,Menlo Park,Calif.,1987)及びそれらの中で引用された参考文献を参照されたい。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を与えない適切なアミノ酸置換に対するガイダンスは、Dayhoff et al.,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルに見出すことができる。
【0201】
ある特定の実施形態では、変異体は、保存的置換を含む。「保存的置換」は、ペプチド化学の当業者がポリペプチドの二次構造及びヒドロパシー特性が実質的に変化しないことを予想するように、アミノ酸が類似の特性を有する別のアミノ酸に置換されているものである。改変を、本開示のポリヌクレオチド及びポリペプチドの構造に加えることができ、それでも望ましい特性を有するバリアント又は誘導体ポリペプチドをコードする機能性分子を得ることができる。
【0202】
ポリペプチドバリアントには、グリコシル化形態、他の分子との凝集性コンジュゲート、及び無関係な化学部分(例えば、ペグ化分子)を有する共有結合コンジュゲートが更に含まれる。共有結合バリアントは、当技術分野で知られているように、アミノ酸鎖又はN-若しくはC-末端残基に見られる官能基を連結することによって調製され得る。変異体には、対立遺伝子バリアント、種バリアント、及びムテインも含まれる。タンパク質の機能的活性に影響を与えない領域の切断又は欠失もまたバリアントである。
【0203】
2つ以上のポリペプチドの発現が望ましい場合、それらをコードするポリヌクレオチド配列は、本明細書の他の箇所で論じられるように、IRES配列によって分離され得る。別の実施形態では、2つ以上のポリペプチドは、1つ以上の自己切断ポリペプチド配列を含む融合タンパク質として発現され得る。
【0204】
本開示のポリペプチドは、融合ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチド及び融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。融合ポリペプチド及び融合タンパク質は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以上のポリペプチドセグメントを有するポリペプチドを指す。融合ポリペプチドは、典型的には、C末端からN末端に連結されているが、それらはまた、C末端からC末端に連結され、N末端からN末端、又はN-末端からC末端に連結され得る。融合タンパク質のポリペプチドは、任意の順序又は特定の順序であり得る。融合ポリペプチド又は融合タンパク質はまた、融合ポリペプチドの所望の転写活性が保存される限り、保存的に改変されたバリアント、多型バリアント、対立遺伝子、変異体、部分配列、及び種間相同体を含み得る。融合ポリペプチドは、化学合成法によって、又は2つの部分間の化学結合によって産生されてもよく、他の一般的な技術を使用して概して調製されてもよい。融合ポリペプチドを含む連結されたDNA配列は、本明細書の他の箇所で論じられるように、好適な転写又は翻訳制御要素に作動可能に連結される。
【0205】
一実施形態では、融合パートナーは、天然組換えタンパク質よりも高い収率でタンパク質(発現エンハンサー)を発現するのを助ける配列を含む。他の融合パートナーは、タンパク質の溶解度を増加させるように、又はタンパク質を所望の細胞内区画に標的化することを可能にするように、又は細胞膜を通る融合タンパク質の輸送を促進するように選択され得る。
【0206】
融合ポリペプチドは、本明細書に記載のポリペプチドドメインの各々の間にポリペプチド切断シグナルを更に含み得る。更に、ポリペプチド部位は、任意のリンカーペプチド配列に入れられ得る。例示的なポリペプチド切断シグナルとしては、ポリペプチド切断認識
部位、例えばプロテアーゼ切断部位、ヌクレアーゼ切断部位(例えば、稀な制限酵素認識部位、自己切断リボザイム認識部位)、及び自己切断ウイルスオリゴペプチドが挙げられる(deFelipe and Ryan,2004.Traffic,5(8);616-26を参照されたい)。
【0207】
好適なプロテアーゼ切断部位及びセルフ切断ペプチドは、当業者に既知である(例えば、Ryan et al.,1997.J Gener.Viral.78:699-722、Scymczak et al.(2004)Nature Biotech.5,589-594を参照されたい)。例示的なプロテアーゼ切断部位としては、ポチウイルスのNiaプロテアーゼ(例えば、タバコエッチ病ウイルスプロテアーゼ)、ポチウイルスHCプロテアーゼ、ポチウイルスPl(P35)プロテアーゼ、ビオウイルス(byovirus)Niaプロテアーゼ、ビオウイルスRNA-2-コード化プロテアーゼ、アフトウイルスLプロテアーゼ、エンテロウイルス2Aプロテアーゼ、ライノウイルス2Aプロテアーゼ、ピコマ(picoma)3Cプロテアーゼ、コモウイルス24Kプロテアーゼ、ネポウイルス24Kプロテアーゼ、RTSV(イネツングロ病球状ウイルス)3C-様プロテアーゼ、PYVF(パースニップ黄色斑点ウイルス)3C-様プロテアーゼ、ヘパリン、トロンビン、第Xa因子、及びエンテロキナーゼの切断部位が挙げられるが、これらに限定されない。その高い切断ストリンジェンシーのために、TEV(タバコエッチ病ウイルス)プロテアーゼ切断部位が使用され得る。他の実施形態では、自己切断ペプチドは、ポチウイルス及びカルジオウイルス2Aペプチド、FMDV(口蹄疫ウイルス)、ウマ鼻炎Aウイルス、Thosea asignaウイルス、及びブタテッショウイルスから得られたポリペプチド配列を含み得る。他の実施形態では、自己切断ポリペプチド部位は、2A又は2Aの同様の部位、配列又はドメインを含む(Donnelly et al.,2001.J Gen.Viral.82:1027-1041)。
【0208】
概して、任意の適切なウイルスベクターが、本明細書に記載の操作された構築物の形質導入に使用され得ることが理解される。本明細書に記載の一実施形態では、細胞(例えば、T細胞)は、本明細書に記載の操作されたDN TGF-β受容体構築物及び操作されたTCR若しくはCAR構築物をコードするレトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターで形質導入される。形質導入されたT細胞は、安定した長期的な、及び持続的なT細胞応答を誘発する。
【0209】
本明細書で使用される場合、「レトロウイルス」という用語は、そのゲノムRNAを直鎖状二本鎖DNAコピーに逆転写し、続いてそのゲノムDNAを宿主ゲノムに共有結合的に統合するRNAウイルスを指す。いくつかの実施形態での使用に好適な例示的なレトロウイルスには、以下が含まれるが、これらに限定されない:モロニーマウス白血病ウイルス(Moloney murine leukemia virus、M-MuLV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(Moloney murine sarcoma virus、MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(murine mammary tumor virus、HaMuSV)、マウス乳がんウイルス(MuM TV)、テナガ
ザル白血病ウイルス(gibbon ape leukemia virus、GaLV)、ネコ白血病ウイルス(feline leukemia virus、FLV)、スプーマウイルス、フレンドマウス白血病ウイルス、マウス幹細胞ウイルス(Murine Stem Cell Virus、MSCV)、ラウス肉腫ウイルス(Rous Sarcoma Virus、RSV)及びレンチウイルス。
【0210】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルス」という用語は、複合体レトロウイルスのグループ(又は属)を指す。例示的なレンチウイルスには、以下が含まれるが、これらに限定されない:HIV(ヒト免疫不全ウイルス、HIV1型、及びHIV2型を含む)、ビスナ・マエディウイルス(visna-maedi virus、VMV)ウイルス、ヤギ関節炎脳炎
ウイルス(caprine arthritis encephalitis virus、CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(equine infectious anemia virus、EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(feline imm
unodeficiency virus、FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(bovine immune deficiency virus、BIV)、及びサル免疫不全ウイルス(simian immunodeficiency virus、SIV)。
【0211】
「ベクター」という用語は、本明細書では、別の核酸分子を移動又は輸送することができる核酸分子を指すために使用される。移された核酸は、概して、ベクター核酸分子に連結され、例えば、ベクター核酸分子に挿入される。ベクターは、細胞内で自律複製を指示する配列を含み得るか、又は宿主細胞DNAへの組込みを可能にするのに十分な配列を含み得る。有用なベクターには、例えば、プラスミド(例えば、DNAプラスミド又はRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、細菌人工染色体、及びウイルスベクターが含まれる。有用なウイルスベクターには、例えば、複製欠損レトロウイルス及びレンチウイルスが含まれる。
【0212】
当業者には明らかであるように、「ウイルスベクター」という用語は、核酸分子の移動又は細胞のゲノムへの組込みを容易にするウイルス由来の核酸要素を含む核酸分子(例えば、トランスファープラスミド)、あるいは核酸移動を媒介するウイルス粒子のいずれかを指すのに広く使用されている。ウイルス粒子は、典型的には、核酸に加えて、様々なウイルス成分及び時には宿主細胞成分も含む。
【0213】
ウイルスベクターという用語は、核酸を細胞に移すことができるウイルス若しくはウイルス粒子又は移された核酸自体のいずれかを指し得る。ウイルスベクター及びトランスファープラスミドは、主にウイルスに由来する構造的及び/又は機能的遺伝的要素を含有する。「レトロウイルスベクター」という用語は、主にレトロウイルスに由来する構造的及び機能的遺伝的要素、又はその一部を含むウイルスベクター又はプラスミドを指す。「レンチウイルスベクター」という用語は、主にレンチウイルスに由来するLTRを含む、構造的及び機能的遺伝的要素、又はその一部を含むウイルスベクター又はプラスミドを指す。「ハイブリッドベクター」という用語は、レトロウイルス、例えば、レンチウイルス、配列、及び非レトロウイルスのウイルス配列の両方を含有するベクター、LTR、又は他の核酸を指す。一実施形態では、ハイブリッドベクターは、レトロウイルス、例えば、レンチウイルス、逆転写、複製、積分、及び/又はパッケージングのための配列を含む、ベクター又はトランスファープラスミドを指す。
【0214】
いくつかの実施形態では、「レンチウイルスベクター」、「レンチウイルス発現ベクター」という用語は、レンチウイルストランスファープラスミド及び/又は感染性レンチウイルス粒子を指すために使用され得る。本明細書で、クローニング部位、プロモーター、調節要素、異種核酸などの要素に対して言及される場合、これらの要素の配列は、本開示のレンチウイルス粒子中にRNA形態で存在し、本開示のDNAプラスミド中にDNA形態で存在することを理解されたい。本明細書に記載の一実施形態では、発現ベクターは、レンチウイルス発現ベクターである。
【0215】
プロウイルスの両端には、「長い末端反復」又は「LTR」と呼ばれる構造がある。「長い末端反復(long terminal repeat、LTR)」という用語は、レトロウイルスDNAの末端に位置する塩基対のドメインを指し、これは、それらの天然の配列構成において、ダイレクトリピートであり、U3、R及びU5領域を含有する。LTRは、概して、レトロウイルス遺伝子の発現(例えば、遺伝子転写物の促進、開始、及びポリアデニル化)及びウイルス複製に対する基本的な機能を提供する。LTRは、転写制御要素、ポリアデニル化シグナル、及びウイルスゲノムの複製及び組込みに必要な配列を含む多数の調節シグナルを含有する。ウイルスLTRは、U3、R、及びU5と呼ばれる3つの領域に分割される。U3領域は、エンハンサー及びプロモーター要素を含有する。U5領域は、プライマー結合部位とR領域との間の配列であり、ポリアデニル化配列を含有する。R(繰り返
し)領域は、U3及びU5領域に隣接している。LTRは、U3、R及びU5領域で構成され、ウイルスゲノムの5’及び3’末端の両方に現れる。5’LTRに隣接しているのは、ゲノムの逆転写(tRNAプライマー結合部位)、及びウイルスRNAの粒子への効率的なパッケージング(Psi部位)に必要な配列である。
【0216】
本明細書で使用される場合、「パッケージングシグナル」又は「パッケージング配列」という用語は、ウイルスRNAのウイルスキャプシド又は粒子への挿入に必要なレトロウイルスゲノム内に位置する配列を指し、例えば、Clever et al.,1995.J of Virology,Vol.69,No.4;pp.2101-2109を参照されたい。いくつかのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムのキャプシド形成に必要な最小パッケージングシグナル(psi[’P]配列とも呼ばれる)を使用する。したがって、本明細書で使用される場合、「パッケージング配列」、「パッケージングシグナル」、「psi」、及び記号「’P」という用語は、ウイルス粒子形成中のレトロウイルスRNA鎖のキャプシド形成に必要な非コード配列に関連して使用される。
【0217】
様々な実施形態では、ベクターは、改変された5’LTR及び/又は3’LTRを含む。LTRのいずれか又は両方は、1つ以上の欠失、挿入、又は置換を含むがこれらに限定されない1つ以上の改変を含み得る。3’LTRの改変は、ウイルスの複製を欠陥にすることによってレンチウイルス又はレトロウイルス系の安全性を改善するためにしばしば行われる。本明細書で使用される場合、「複製欠陥」という用語は、感染性ビリオンが産生されないように完全で効果的な複製できないウイルス(例えば、複製欠陥レンチウイルス子孫)を指す。「複製能のある」という用語は、ウイルスのウイルス複製が感染背ビリオン(例えば、複製能のあるレンチウイルス子孫)を産生することができるように、複製が可能な野生型ウイルス又は変異ウイルスを指す。
【0218】
「自己不活性化」(Self-inactivating、SIN)ベクターは、U3領域として知られ
ている右(3’)LTRエンハンサー-プロモーター領域が、ウイルス複製の最初のラウンドを超えるウイルスの転写を防ぐように改変されている(例えば、欠失又は置換によって)、複製欠陥ベクター、例えばレトロウイルス又はレンチウイルスベクターを指す。これは、ウイルス複製中に、右(3’)LTR U3領域が左(5’)LTR U3領域の鋳型として使用され、したがって、U3エンハンサー-プロモーターなしではウイルス転写物が作製することができないためである。本開示の更なる実施形態では、3’LTRは、U5領域が、例えば、理想的なポリ(A)配列で置き換えられるように改変される。3’LTR、5’LTR、又は3’及び5’LTRの両方への改変などのLTRへの改変もまた、本明細書で企図されることに留意されたい。
【0219】
5’LTRのU3領域を異種プロモーターで置き換えてウイルス粒子の産生中にウイルスゲノムの転写を駆動することによって、更に安全性が強化される。使用され得る異種プロモーターの例としては、例えば、ウイルス性シミアンウイルス40(SV40)(例えば、初期又は後期)、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、即時初期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、及び単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーターが挙げられる。典型的なプロモーターは、Tat非依存的な方法で高レベルの転写を駆動することができる。ウイルス産生システムに完全なU3配列がないため、この置換により、組換えによって複製能のあるウイルスが生成される可能性が低減する。ある特定の実施形態では、異種プロモーターは、ウイルスゲノムが転写される様式を制御する際に追加の利点を有する。例えば、異種プロモーターは、誘導因子が存在する場合にのみ、ウイルスゲノムの全部又は一部の転写が発生するように誘導性であり得る。誘導因子には、1つ以上の化学化合物、又は宿主細胞が培養される温度若しくはpHなどの生理学的条件が含まれるが、これらに限定されない。
【0220】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、TAR要素を含む。「TAR」という用語は、レンチウイルス(例えば、HIV)LTRのR領域に位置する「トランス活性化応答」遺伝的要素を指す。この要素は、レンチウイルストランス活性化因子(trans-activator、tat)遺伝的要素と相互作用して、ウイルス複製を増強する。
【0221】
「R領域」は、キャッピンググループの開始時に始まり(すなわち、転写開始)、ポリAトラクトの開始直前に終了するレトロウイルスLTR内の領域を指す。R領域はまた、U3及びU5領域に隣接するものとして定義される。R領域は、逆転写中に、ゲノムの一方の末端からもう一方の末端への新生DNAの移動を可能にする役割を果たす。
【0222】
本明細書で使用される場合、「FLAP要素」という用語は、配列に、レトロウイルス、例えば、HIV-I又はHIV-2の中央ポリプリン管及び中央終端配列(cPPT及びCTS)が含まれる核酸を指す。好適なFLAP要素は、米国特許第6,682,907号及びZennou,et al.,2000,Cell,101:173に記載されている。HIV-I逆転写中、中央ポリプリン管(central polypurine tract、cPPT)でのプラス鎖DNAの中央開始及び中央終端配列(central termination sequence、CTS)における中央終端により3本鎖DNA構造の形成をもたらす:HIV-I中央DNAフラップ。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、DNAフラップは、レンチウイルスゲノム核内移行のシス活性決定因子として作用し得、かつ/又はウイルスの力価を増加させ得る。
【0223】
一実施形態では、レトロウイルス又はレンチウイルストランスファーベクターは、1つ以上の輸出要素を含む。「輸出要素」という用語は、細胞の核から細胞質へのRNA転写物の輸送を調節するシス作用転写後調節要素を指す。RNA輸出要素の例としては、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus、HIV)rev応答要素(rev response element、RRE)(例えば、Cullen et al.,1991.J Virol.65:1053、及びCullen et al.,1991.Cell 58:423参照されたい)、及びB型肝炎ウイルスの転写後調節要素(hepatitis B virus post-transcriptional regulatory element、HPRE)が挙げられるが、これらに限定さ
れない。概して、RNA輸出要素は、遺伝子の3’UTR内に配置され、1つ又は複数のコピーとして挿入され得る。
【0224】
他の実施形態では、ウイルスベクターにおける異種配列の発現は、転写後調節要素、効率的なポリアデニル化部位、及び任意選択で転写終結シグナルをベクターに組み込むことによって増加する。様々な転写後調節要素が、タンパク質での異種核酸の発現を増加させる可能性があり、例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE、Zufferey et al.,1999,J Virol.,73:2886)、B型肝炎ウイルス(HPRE)に存在する転写後調節要素(Huang et al.,Mol.Cell.Biol.,5:3864)、など(Liu et al.,1995,Genes Dev.,9:1766)である。
【0225】
いくつかの実施形態では、ベクターは、転写又は翻訳調節活性を有する調節オリゴヌクレオチドを含み得る。そのようなオリゴヌクレオチドは、発現の制御を調節するための様々な遺伝子発現構成で使用することができる。転写調節オリゴヌクレオチドは、組換え発現構築物の発現レベルを増加(増強)又は減少(サイレンシング)させることができる。調節オリゴヌクレオチドは、例えば、構成的又は誘導性の発現を含む、ポリヌクレオチドの組織特異的、発生段階特異的、又は同様の発現を付与するためのものを含む、文脈特異的様式での発現を選択的に調節することができる。本開示の調節オリゴヌクレオチドはまた、発現ベクターの成分又は発現可能なポリヌクレオチドに作動可能に連結された調節オ
リゴヌクレオチドを含む組換え核酸分子であり得る。調節要素は、数ヌクレオチドから数百ヌクレオチドまでの様々な長さであり得る。
【0226】
異種核酸転写物の効率的な終結及びポリアデニル化を指示する要素は、異種遺伝子発現を増加させる。転写終結シグナルは、概して、ポリアデニル化シグナルの下流に見られる。いくつかの実施形態では、ベクターは、発現されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの3’のポリアデニル化配列を含む。本明細書で使用される「ポリA部位」又は「ポリA配列」という用語は、RNAポリメラーゼIIによる新生RNA転写物の終結及びポリアデニル化の両方を誘導するDNA配列を示す。ポリアデニル化配列は、コード配列の3’末端にポリAテールを添加することによってmRNAの安定性を促進し得、したがって、翻訳効率の増加に寄与し得る。組換え転写物の効率的なポリアデニル化は、ポリAテールを欠く転写物が不安定であり、急速に劣化するため、望ましい。本開示のベクターで使用され得るポリAシグナルの例示的な例としては、理想的なポリA配列(例えば、AATAAA、ATTAAA、AGTAAA)、ウシ成長ホルモンポリA配列(BGHpA)、ウサギβ-グロビンポリA配列(rβgpA)、又は当該技術分野で既知の別の適切な異種若しくは内因性ポリA配列が挙げられる。
【0227】
本明細書に記載の一実施形態では、本明細書に記載のベクターは、操作されたDN TGF-β受容体をコードし、TCR又はCARポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む。本明細書に記載の一実施形態では、発現ベクターは、細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインを発現するポリペプチドをコードする、配列番号11に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する核酸配列を含み、細胞外ドメインは、配列番号3に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有し、膜貫通ドメインは、配列番号4に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する。
【0228】
本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号11に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する、操作されたTCRをコードする核酸配列に作動可能に連結された核酸配列を含む。本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号11に対して少なくとも75%の配列同
一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する、操作されたCARをコードする核酸配列に作動可能に連結された核酸配列を含む。本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号11に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する核酸配列を含み、操作されたTCR又は操作されたCARをコードする核酸配列と同じプロモーターの制御下にある。
【0229】
本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインを発現するポリペプチドをコードする、配列番号48に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する核酸配列を含み、細胞外ドメインは、配列番号15に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有し、膜貫通ドメインは、配列番号16に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する。
【0230】
本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号48に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する、操作されたTCRをコードする核酸配列に作動可能に連結された核酸配列を含む。本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号48に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する、操作されたCARをコード
する核酸配列に作動可能に連結された核酸配列を含む。本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号48に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する核酸配列を含み、操作されたTCR又は操作されたCARをコードする核酸配列と同じプロモーターの制御下にある。
【0231】
本明細書に記載の一実施形態では、発現ベクターは、細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインを発現するポリペプチドをコードする、配列番号35に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する核酸配列を含み、細胞外ドメインは、配列番号15に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有し、膜貫通ドメインは、配列番号18に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する。
【0232】
本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号35に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する、操作されたTCRをコードする核酸配列に作動可能に連結された核酸配列を含む。本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号35に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する、操作されたCARをコードする核酸配列に作動可能に連結された核酸配列を含む。本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号35に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一
性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する核酸配列を含み、操作されたTCR又は操作されたCARをコードする核酸配列と同じプロモーターの制御下にある。
【0233】
本明細書に記載の一実施形態では、発現ベクターは、細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインを発現するポリペプチドをコードする、配列番号36に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する核酸配列を含み、細胞外ドメインは、配列番号15に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有し、膜貫通ドメインは、配列番号20に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する。
【0234】
本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、GPC3を標的とするCAR構築物(「GPC3-CAR」)を発現するポリペプチドをコードする、配列番号49に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する核酸配列を含む。
【0235】
本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号49に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する、DN TGF-β受容体をコードする核酸配列に作動可能に連結された核酸配列を含む。本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号49に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する、操作されたCARを
コードする核酸配列に作動可能に連結された核酸配列を含む。本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号49に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する核酸配列を含み、操作されたDN TGF-β受容体をコードする核酸配列と同じプロモーターの制御下にある。本明細書に記載の一実施形態では、発現ベクターは、配列番号50に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するCAR-DN TGF-β受容体構築物の核酸配列を含む。
【0236】
本明細書には、「コドン最適化」核酸も記載されている。「コドン最適化」核酸は、コドンが特定のシステム(特定の種又は種の群など)における発現に最適であるように変更された核酸配列を指す。例えば、核酸配列は、哺乳動物細胞又は特定の哺乳動物種(ヒト細胞など)における発現のために、天然配列のコドンのうちの少なくとも1つ、2つ以上、又はかなりの数を、その種の遺伝子においてより頻繁に又は最も頻繁に使用されるコドンで置き換えることによって、最適化され得る。コドン最適化は、コード化タンパク質のアミノ酸配列を変更しない。
【0237】
本開示に提示されるコドン最適化ヌクレオチド配列は、発現有効性に関連する改善された特性を提示することができる。いくつかの実施形態では、転写されるDNA配列は、より効率的な転写及び/又は翻訳を促進するように最適化され得る。いくつかの実施形態では、DNA配列は、シス調節要素(例えば、TATAボックス、終結シグナル、及びタンパク質結合部位)、人工組換え部位、カイ部位、CpGジヌクレオチド含有量、陰性CpGアイランド、GC含有量、ポリメラーゼ滑り部位、及び/又は転写に関連する他の要素に関して最適化され得る。DNA配列は、潜在(cryptic)スプライス部位、mRNA二
次構造、mRNAの安定した遊離エネルギー、反復配列、RNA不安定性モチーフ、及び/又はmRNAプロセシング及び安定性に関連する他の要素に関して最適化され得る。DNA配列は、コドン使用バイアス、コドン適合性、内部カイ部位、リボソーム結合部位(例えば、IRES)、未成熟ポリA部位、シャイン・ダルガノ(Shine-Dalgarno、SD)配列、及び/又は翻訳に関連する他の要素に関して最適化されてもよく、かつ/又はDNA配列は、コドンコンテキスト、コドン-アンチコドン相互作用、翻訳休止部位、及び/又はタンパク質フォールディング関連する他の要素に関して最適化されてもよい。
【0238】
本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、GPC3-CAR構築物(「CAR1」)を発現するポリペプチドをコードする配列番号51に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するコドン最適化核酸配列を含む。
【0239】
本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号51に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する、DN TGF-β受容体をコードする核酸配列に作動可能に連結されたコドン最適化核酸配列を含む。本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号51に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する、操作さ
れたCARをコードする核酸配列に作動可能に連結されたコドン最適化核酸配列を含む。本明細書に記載の別の実施形態では、発現ベクターは、配列番号51に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するコドン最適化核酸配列を含み、操作されたDN TGF-β受容体をコードする核酸配列と同じプロモーターの制御下にある。本明細書に記載の一実施形態では、発現ベクターは、配列番号52(「CAR DNR A」)に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有するCAR-DN TGF-β受容体構築物のコドン最適化核酸配列を含む。
【0240】
ベクターは、1つ以上のLTRを有してもよく、いずれのLTRも、1つ以上のヌクレオチド置換、付加、又は欠失などの1つ以上の改変を含む。ベクターは、形質導入効率(例えば、cPPT/FLAP)、ウイルスパッケージング(例えば、Psi(Ψ)パッケージングシグナル、RRE)、及び/又は治療用遺伝子発現(例えば、ポリ(A)配列)を増加させる他の要素を増加させるための1つ以上のアクセサリ要素を更に含み得、任意選択でWPRE又はHPREを含み得る。当業者は、多くの他の異なる実施形態が本開示の既存の実施形態から形成され得ることを理解するであろう。
【0241】
「宿主細胞」は、本開示の組換えベクター又はポリヌクレオチドで、インビボ、エクスビボ、又はインビトロでトランスフェクトされた、感染された、又は形質導入された細胞を含む。宿主細胞は、パッケージング細胞、プロデューサー細胞、及びウイルスベクターに感染した細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、本開示のウイルスベクターに感染した宿主細胞は、治療を必要とする対象に投与される。ある特定の実施形態では、「標的細胞」という用語は、宿主細胞と互換的に使用され、所望の細胞型のトランスフェクトされた細胞、感染された細胞、又は形質導入された細胞を指す。いくつかの実施形態では、標的細胞はT細胞である。
【0242】
多くの場合、妥当なウイルス力価を達成するために、大規模なウイルス粒子産生が必要である。ウイルス粒子は、ウイルス構造遺伝子及び/又はアクセサリ遺伝子、例えば、gag、pol、env、tat、rev、vif、vpr、vpu、vpx、又はnef遺伝子又は他のレトロウイルス遺伝子を含むパッケージング細胞株にトランスファーベクターを、トランスフェクトすることによって産生される。
【0243】
本明細書で使用される場合、「パッケージングベクター」という用語は、パッケージングシグナルを欠き、1つ、2つ、3つ、4つ以上のウイルス構造及び/又はアクセサリ遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター又はウイルスベクターを指す。通常、パッケージングベクターは、パッケージング細胞に含まれ、トランスフェクション、形質導入、又は感染を介して細胞に導入される。トランスフェクション、形質導入、又は感染のための方法は、当業者によって周知である。本開示のレトロウイルス/レンチウイルストランスファーベクターは、トランスフェクション、形質導入、又は感染を介してパッケージング細胞株に導入されて、プロデューサー細胞又は細胞株を生成し得る。本開示のパッケージングベクターは、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポフェクション、又はエレクトロポレーションを含む一般的な方法によってヒト細胞又は細胞株に導入され得る。いくつかの実施形態では、パッケージングベクターは、ネオマイシン、ハイグロマイシン、ピューロマイシン、ブラストシジン、ゼオシン、チミジンキナーゼ、DHFR、Glnシンテターゼ、又はADAなどの優性選択可能マーカーとともに細胞に導入され、その後、適切な薬物の存在下で選択し、クローンを単離する。選択可能なマーカー遺伝子は、パッケージングベクターによって、例えば、IRES又はSelf-切断ウイルスペプチドによって、コードされる遺伝子に物理的に結合され得る。
【0244】
ウイルスエンベロープタンパク質(env)は、細胞株から生成された組換えレトロウイルスによって最終的に感染及び形質転換され得る宿主細胞の範囲を決定する。HIV-1、HIV-2、SIV、FIV、及びEIVなどのレンチウイルスの場合、envタンパク質はgp41及びgp120を含む。いくつかの実施形態では、本開示のパッケージング細胞によって発現されるウイルスenvタンパク質は、前述のように、ウイルスgag及びpol遺伝子とは別個のベクター上にコードされる。
【0245】
本明細書に記載の実施形態で用いられ得るレトロウイルス由来env遺伝子の例示的な例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:MLVエンベロープ、IOAIエンベロープ、BAEV、FeLV-B、RDI 14、SSAV、Ebola、Se
ndai、FPV(トリペストウイルス)、及びインフルエンザウイルスエンベロープ。同様に、RNAウイルス(例えば、Picomaviridae、Calciviridae、Astroviridae、Togaviridae、Flaviviridae、Coronaviridae、Paramyxoviridae、Rhabdoviridae、Filoviridae、Orthomyxoviridae、Bunyaviridae、Arenaviridae、Reoviridae、Bimaviridae、RetroviridaeのRNAウイルスファミリー)由来並びにDNAウイルス(Hepadnaviridae、Circoviridae、Parvoviridae、Papovaviridae、Adenoviridae、Herpesviridae、Poxyiridae、及びIridoviridaeファミリー)由来のエンベロープをコードする遺伝子を利用することができる。代表的な例としては、FeLV、VEE、HFVW、WDSV、SFV、Rabies、ALV、BIV、BL V、EBV、CAEV、SNV、ChTL V、STLV、MPMV SMRV、RAV、FuSV、MH2、AEV、AMV、CTIO、及びEIAVが挙げられる。
【0246】
他の実施形態では、本開示のウイルスをシュードタイピングするためのエンベロープタンパク質には、以下のウイルスのいずれかが含まれるが、これらに限定されない:A型インフルエンザウイルス例えば、H1N1、H1N2、H3N2、及びH5Nl(トリインフルエンザ)、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ロタウイルス、ノーウォークウイルスグループの任意のウイルス、腸内アデノウイルス、パルボウイルス、デング熱ウイルス、サル痘、モノネガウイルス目(Mononegavirales)
、リッサウイルス例えば狂犬病ウイルス、ラゴスコウモリウイルス、モコラウイルス(Mokola virus)、デュベンヘイジウイルス、ヨーロッパコウモリウイルス1及び2、オーストラリアコウモリウイルス、エフェメロウイルス、ベジクロウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ヘルペスウイルス例えば単純ヘルペスウイルス1型及び2型、水痘帯状疱疹、サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルス(Epstein-Barr virus、EBV)、ヒトヘルペスウイルス(human herpesviruses、HHV)、ヒトヘルペスウイルス6
型及び8型、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、乳頭腫ウイルス、ネズミガンマヘルペスウイルス、アレナウイルス、例えばアルゼンチン出血熱ウイルス、ボリビア出血熱ウイルス、サビア関連出血熱ウイルス、ベネズエラ出血熱ウイルス、ラッサ熱ウイルス、マチュポウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(Lymphocytic choriomeningitis virus、LCMV)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridiae)例えばクリミア・コンゴ出血熱ウイルス
、ハンタウイルス(Hantavirus)、腎症候群を引き起こす出血熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、エボラ出血熱及びマールブルグ出血熱を含むフィロウイルス科(Filoviridae)(フィロウイルス)、カイサヌール(Kaysanur)森林病ウイルス、オムスク出血熱ウ
イルス、ダニ媒介性脳炎を引き起こすウイルスを含むフラビウイルス科(Flaviviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)例えば、ヘンドラウイルス、ニパウイルス
、大痘瘡及び小痘瘡(天然痘)、アルファウイルス例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、SARS関連コロナウイルス(SARS-Co V)、西ナイルウイルス、又はいずれかの脳炎を引き起こすウイルス。
【0247】
本明細書で使用される「偽型」又は「偽型タイピング」という用語は、ウイルスエンベロープタンパク質が他の特徴を有する別のウイルスのもので置換されているウイルスを指す。例えば、HIVは、水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(vesicular stomatitis virus G-protein、VSV-G)エンベロープタンパク質で偽型化され得、これにより、HIVエンベロープタンパク質(env遺伝子によってコードされる)が通常ウイルスをCD4+提示細胞に標的化するため、HIVはより広範囲の細胞に感染することができる。
【0248】
本明細書で使用される場合、「パッケージング細胞株」という用語は、パッケージング
シグナルを含まないが、ウイルス粒子の正しいパッケージングに必要なウイルス構造タンパク質及び複製酵素(例えば、gag、pol、及びenv)を安定的に又は一時的に発現する細胞株に関して使用される。任意の好適な細胞株を用いて、本開示のパッケージング細胞を調製することができる。概して、細胞は哺乳動物細胞である。別の実施形態では、パッケージング細胞株を産生するために使用される細胞は、ヒト細胞である。パッケージング細胞株を生成するために使用され得る好適な細胞株としては、例えば、CHO細胞、BHK細胞、MDCK細胞、C3H 10Tl/2細胞、FLY細胞、Psi-2細胞、BOSC23細胞、P A317細胞、WEHI細胞、COS細胞、BSC1細胞、BSC40細胞、BMT 10細胞、VERO細胞、W138細胞、MRC5細胞、A549細胞、HTI080細胞、293細胞、293T細胞、B-50細胞、3T3細胞、NIH3T3細胞、HepG2細胞、Saos-2細胞、Huh7細胞、HeLa細胞、W163細胞、211細胞、及び211A細胞が挙げられる。
【0249】
本明細書で使用される場合、「プロデューサー細胞株」という用語は、パッケージング細胞株及びパッケージングシグナルを含む転写ベクター構築物を含む組換えレトロウイルス粒子を産生することができる細胞株を指す。感染性ウイルス粒子及びウイルス原液の生成は、従来の技術を使用して実行され得る。ウイルス原液を調製する方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、Y.Soneoka et al.(1995)Nucl.Acids Res.23:628-633、及びN.R.Landau et al.(1992)J Virol.66:5110-5113に示されている。感染性ウイルス粒子は、従来の技術を使用してパッケージング細胞から収集され得る。例えば、感染性粒子は、当該技術分野で知られているように、細胞溶解、又は細胞培養物の上清の収集によって収集され得る。必要に応じて、収集されたウイルス粒子を精製してもよい。好適な精製技術は、当業者に周知である。
【0250】
トランスフェクションではなく、ウイルス感染によるレトロウイルス又はレンチウイルスベクターを使用する遺伝子又は他のポリヌクレオチド配列の送達は、「形質導入」と呼ばれる。一実施形態では、レトロウイルスベクターは、感染及びプロウイルス組込みを介して細胞に形質導入される。ある特定の実施形態では、標的細胞、例えば、T細胞は、ウイルス又はレトロウイルスベクターを使用する感染によって細胞に送達される遺伝子又は他のポリヌクレオチド配列を含む場合、「形質導入される」。いくつかの実施形態では、形質導入細胞は、その細胞ゲノム中のレトロウイルス又はレンチウイルスベクターによって送達される1つ以上の遺伝子又は他のポリヌクレオチド配列を含む。本明細書に記載の一実施形態では、T細胞は、配列番号11に対して少なくとも75%の配列同一性(少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の同一性など、例えば、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、又は95~100%)を有する、核酸配列を含む発現ペクターで形質導入される。
【0251】
いくつかの実施形態では、本開示のDN TGF-β受容体構築物を操作されたTCR及び/又はCARと共発現する宿主細胞が提供される。宿主細胞は、本開示のDN TGF-β受容体構築物及び操作されたTCR及び/又はCARを発現する1つ以上のポリペプチドをコードする核酸配列を含む1つ以上のウイルスベクターで形質導入され得る。宿主細胞は、T細胞悪性腫瘍を治療及び/又は予防するために対象に投与され得る。本開示のある特定の実施形態に従って利用され得る遺伝子療法におけるウイルスベクターの使用に関連する他の方法は、例えば、Kay,M.A.(1997)Chest 111(6
Supp.):138S-142S;Ferry,N.and Heard,J.M.(1998)Hum.Gene Ther.9:1975-81、Shiratory,Y.et al.,(1999)Liver 19:265-74、Oka,K.et al.,(2000)Curr.Opin.Lipidol.11:179-86、Th
ule,P.M.and Liu,J.M.(2000)Gene Ther.7:1744-52、Yang,N.S.(1992)Crit.Rev.Biotechnol.12:335-56、Alt,M.(1995)J Hepatol.23:746-58、Brody,S.L.and Crystal,R.G.(1994)Ann.NY Acad.Sci.716:90-101、Strayer,D.S.(1999)Expert Opin.Investig.Drugs 8:2159-2172、Smith-Arica,J.R.and Bartlett,J.S.(2001)Curr.Cardiol.Rep.3:43-49、及びLee,H.C.et al.,(2000)Nature 408:483-8に見出され得る。
【0252】
本明細書に記載の組成物は、本明細書で企図されるように、1つ以上のポリヌクレオチド、ポリペプチド、それらを含むベクター、及びT細胞組成物を含み得る。本明細書に記載の一実施形態は、本明細書に記載の1つ以上の操作されたDN TGF-β受容体を操作されたTCR及び/又はCARと共発現する改変されたT細胞を含む組成物である。組成物には、医薬組成物が含まれるが、これらに限定されない。「医薬組成物」は、単独で、又は1つ以上の他の治療法と組み合わせて、細胞又は動物に投与するための薬学的に許容されるか又は生理学的に許容される溶液に製剤化された組成物を指す。必要に応じて、本開示の組成物は、例えば、サイトカイン、成長因子、ホルモン、小分子、化学療法薬、プロドラッグ、薬物、抗体、又は他の様々な薬剤活性剤などの他の薬剤と組み合わせて投与され得ることも理解されるであろう。追加の薬剤が、意図された療法を送達する組成物の能力に悪影響を及ぼさない限り、組成物に含まれ得る他の成分は実質的に制限されない。
【0253】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書では、合理的な利益/リスク比に相応する、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしに、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適した、健全な医学的判断の範囲内にあるこれらの化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために用いられる。
【0254】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤」には、限定されないが、米国食品医薬品局によって、ヒト又は家畜での使用が許容されるものとして承認されている、任意のアジュバント、担体、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、染料/着色剤、風味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒、界面活性剤、又は乳化剤が含まれる。例示的な薬学的に許容される担体には、ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン、セルロース、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのその誘導体、トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、カカオバター、ワックス、動物及び植物性脂肪、パラフィン、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、酸化亜鉛、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コム油(com oil)、及び大豆油などの油、プロピレングリコールなどのグリコール、グ
リセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル、寒天、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、アルギン酸、発熱物質を含まない(pyrogen-free)水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、リン酸緩衝液、並びに医薬製剤で使用される任意の他の適合性物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0255】
本明細書に記載の一実施形態では、本開示の組成物は、本明細書で企図される量の改変されたT細胞を含む。本明細書で企図されるT細胞を含む医薬組成物は、10~1010細胞/kg体重、10~10細胞/kg体重、10~10細胞/kg体重、10~10細胞/kg体重、10~10細胞/kg体重、又は10~10細胞/kg体重(これらの範囲内のすべての整数値を含む)の投与量で投与され得ると概して
述べることができる。細胞の数は、その中に含まれる細胞の種類と同様に、組成物が意図される最終的な使用に依存するであろう。操作されたTCR又はCARを発現するように改変されたT細胞は、これらの範囲内の投与量で複数回投与され得る。細胞は、治療を受けている患者に対して同種異系であっても、同系であっても、異種であっても、自家であってもよい。所望される場合、治療はまた、注入されたT細胞の生着及び機能を増強するため、本明細書に記載されるように、マイトジェン(例えば、PHA)又はリンホカイン、サイトカイン、及び/又はケモカインIFN-γ、IL-2、IL-7、IL-15、IL-12、TNF-アルファ、IL-18、及びTNF-ベータ、GM-CSF、IL-4、IL-13、Flt3-L、RANTES、MIP1α、など)の投与も含まれ得る。
【0256】
概して、本明細書に記載されるように活性化及び増殖された細胞を含む組成物は、免疫無防備状態又は免疫抑制状態にある個体において生じる疾患の治療及び予防に利用され得る。いくつかの、本明細書で企図される改変されたT細胞を含む組成物は、がんの治療に使用される。本明細書に記載の改変されたT細胞は、単独で、又は担体、希釈剤、賦形剤、及び/又はIL-2、IL-7、及び/若しくはIL-15若しくは他のサイトカイン若しくは細胞集団などの他の成分と組み合わせて医薬組成物として投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で企図される医薬組成物は、1つ以上の薬学的又は生理学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と組み合わせて、ある量の遺伝子改変されたT細胞を含む。
【0257】
本明細書で企図される改変されたT細胞を含む医薬組成物は、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝液、グルコース、マンノース、スクロース、又はデキストラン、マンニトールなどの炭水化物、タンパク質、グリシンなどのポリペプチド又はアミノ酸、酸化防止剤、EDTA又はグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、及び防腐剤、を更に含み得る。本開示の組成物は、非経口投与、例えば、血管内(静脈内又は動脈内)、腹腔内又は筋肉内投与用に製剤化され得る。
【0258】
液体医薬組成物は、溶液、懸濁液、又は他の同様の形態であるかにかかわらず、以下のうちの1つ以上を含み得る:注射用の水などの滅菌希釈剤、生理食塩水、リンゲル液、等張塩化ナトリウムなどの生理食塩水、溶媒又は懸濁媒体として機能し得る合成モノ又はジグリセリドなどの固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の溶媒、ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤、エチレンジアミン酸四酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩、又はホスフェートなどの緩衝液、及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張度を調整するための薬剤。非経口調製物は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器又は複数回投与バイアルに封入され得る。滅菌注射用医薬組成物も含まれる。
【0259】
いくつかの実施形態では、本明細書で企図される組成物は、単独で又は1つ以上の治療薬と組み合わせて、有効量の増殖改変されたT細胞組成物を含む。したがって、T細胞組成物は、単独で、又は放射線療法、化学療法、移植、免疫療法、ホルモン療法、光動的療法などの他の既知のがん治療と組み合わせて投与され得る。組成物はまた、抗生物質及び抗ウイルス剤と組み合わせて投与され得る。そのような治療薬は、がんなどの本明細書に記載の疾患状態の治療として当該技術分野で受け入れられ得る。一実施形態では、本明細書で企図される組成物はまた、TGF-βの阻害剤、例えば、小分子阻害剤LY55299とともに投与され得る。企図される例示的な治療薬としては、サイトカイン、増殖因子、ステロイド、NSAID、DMARD、抗炎症薬、化学療法薬、放射線治療薬、治療用抗体、又は他の活性及び補助剤が挙げられる。
【0260】
ある特定の実施形態では、本明細書で企図されるT細胞を含む組成物は、任意の数の化学療法剤と組み合わせて投与することができる。化学療法剤の例には、限定されないが、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))などのアルキル化剤、アルキルスルホネート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドパ、カルボコン、メトレドパ、ウレドパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスファミド、トリメチロメラミンレジュームを含むエチレンイミン及びメチルアメラミン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロロフォスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プ
レドニムスチン、トロフォスファミド(Trofosfamide)、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトレビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサート、及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗アドレナリン、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えば、フロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルホルミチン;酢酸エリプチニウム;トグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)及びドキセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer、Antony、France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えば、シスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼロダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RPS2000;ジフルオロメチルオミチン(DMFO);Targretin(商標)(ベキサロテン)、Panretin(商標)(アリトレチノイン)などのレチノイン酸誘導体、ONTAK(商標)(デニロイキンジフチトクス)、エスペラマイシン;カペシタビン;及び上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体が挙げられる。また、この定義には、例えば、タモキシフェン、ラ
ロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲンなどの腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、並びに、抗アンドロゲン剤、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド、及びゴセレリン;並びに、上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体も含まれる。
【0261】
様々な追加の治療薬を、本明細書中に記載の組成物又は薬剤/治療と併せて使用することができる。一実施形態では、T細胞を含む組成物は、抗炎症剤とともに投与される。抗炎症剤又は薬物としては、ステロイド及びグルココルチコイド(ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンを含む)、アスピリンを含む非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、イブプロフェン、ナプロキセン、メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド、抗TNF薬、シクロホスファミド、及びミコフェノール酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0262】
いくつかの実施形態では、NSAIDは、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、VIOXX(登録商標)(ロフェコキシブ)及びCELEBREX(登録商標)(セレコキシブ)などのCox-2阻害剤、並びにシアリレート(sialylate)か
らなる群から選択される。例示的な鎮痛剤は、アセトアミノフェン、オキシコドン、トラマドール、又はプロポキシフェン塩酸塩からなる群から選択される。例示的なグルココルチコイドは、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、又はプレドニゾンからなる群から選択される。例示的な生物学的応答調節剤としては、細胞表面マーカーに対して指向された分子(例えば、CD4、CD5など)、サイトカイン阻害剤、例えば、TNFアンタゴニスト(例えば、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))及びインフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、ケモカイン阻害剤、及び接着分子阻害剤が挙げられる。生物学的応答調節剤としては、モノクローナル抗体並びに分子の組換え形態が挙げられる。例示的な疾患改変性抗リウマチ薬(DMARD)としては、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、ペニシラミン、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、金(経口(オーラノフィン)及び筋肉内)、及びミノサイクリンが挙げられる。
【0263】
他の実施形態では、本明細書で企図されるCAR改変T細胞との組み合わせに好適な治療用抗体としては、アバゴボマブ、アデカツムマブ、アフツズマブ、アレムツズマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブ、アルシツモマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、カンツズマブ、カツマキソマブ、セツキシマブ、シタツズマブ、シクスツムマブ、クリバツズマブ、コナツムマブ、ダラツムマブ、ドロジツマブ、デュリゴツマブ、デュシギツマブ、デツモマブ、ダセツズマブ、ダロツズマブ、エクロメキシマブ、エロツズマブ、エンシツキマブ(ensituximab)、エルツマキソマブ(ertumaxomab)、エタラシズマブ、ファリエツズマブ(farietuzumab)、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フツキシマブ、ガニツマブ、ゲムツズマブ、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブ、イブリツモマブ、イゴボマブ、イマツズマブ、インダツキシマブ、イノツズマブ、インテツムマブ、イピリムマブ、イラツムマブ、ラベツズマブ、レキサツムマブ、リンツズマブ、ロルボツズマブ、ルカツムマブ、マパツムマブ、マツズマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モキセツモマブ、ナマツマブ、ナプツモマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ、ノフェツモマブ、オカラツズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オナツズマブ、オポルツズマブ、オレゴボマブ、パニツムマブ、パルサツズマブ、パトリツマブ、ペムツモマブ、ペルツズマブ、ピンツモマブ、プリツムマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、リロツムマ
ブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、サツモマブ、シブロツズマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、ソリトマブ、タカツズマブ、タプリツモマブ、テナツモマブ、テプロツムマブ、チガツズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、ツコツズマブ、ウブリツキシマブ、ベルツズマブ、ボルセツズマブ、ボツムマブ(votumumab)、ザルツムマブ(zalutumumab)、CC49及び3F8、が含まれるがこれらに限定されない。
【0264】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される組成物は、サイトカインとともに投与される。本明細書で使用される場合、「サイトカイン」は、細胞間メディエーターとして別の細胞に作用する1つの細胞集団によって放出されるタンパク質の総称を意味する。サイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン、及び従来のポリペプチドホルモンである。サイトカインには、成長ホルモン、例えば、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH);肝増殖因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-アルファ及び-ベータ;ミュラー管抑制因子;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子(NGF)、例えば、NGF-ベータ;血小板増殖因子;形質転換増殖因子(TGF)、例えば、TGF-α及びTGF-β;インスリン様成長因子-I及び成長因子-II;エリスロポエチン(EPO)、骨誘導因子;インターフェロン、例えば、インターフェロン-アルファ、ベータ、及びガンマ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、マクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球マクロファージCSF(GM-CSF);及び顆粒球CSF(G-CSF);インターロイキン(IL)、例えば、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12;IL-15、腫瘍壊死因子、例えば、TNF-アルファ又はTNF-ベータ;及びLIF及びkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。本明細書で使用される場合、サイトカインという用語には、天然源又は組換え細胞培養物由来のタンパク質、及び天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物が含まれる。
【0265】
本開示は、標的細胞、例えば、腫瘍又はがん細胞に再指向され、本明細書に記載のDN
TGF-β受容体と、細胞上の標的抗原に結合する結合ドメインを有する操作されたTCR又はCARとを含む、部分的に遺伝子改変されたT細胞を企図し、本明細書に記載のCAR-DN TGF-β受容体が含まれる。がん細胞はまた、血液及びリンパ系を通して身体の他の部分に広がり得る。がんにはいくつかの主要なタイプがある。がん腫は、皮膚又は内臓を裏打ち又は覆う組織で発生するがんである。肉腫は、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、又は他の結合組織若しくは支持組織で発生するがんである。白血病は、骨髄などの造血組織で発生し、異常な血球を大量に産生して血液に入り込むがんである。リンパ腫及び多発性骨髄腫は、免疫系の細胞から発生するがんである。中枢神経系のがんは、脳及び脊髄の組織から発生するがんである。
【0266】
一実施形態では、標的細胞は、抗原、例えば標的抗原を発現する。一実施形態では、標的細胞は、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、ニューロン、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、グリア細胞、脂肪細胞(fat cell)、骨細胞、軟骨細胞、膵島細胞、CNS細胞、PNS細胞、肝臓細胞、脂肪細胞(adipose cell)、肝細胞、腎細胞、肺細胞、皮膚細胞、卵巣細胞、濾胞性細胞、上皮細胞、免疫細胞、又は内皮細胞である。
【0267】
ある特定の実施形態では、標的細胞は、膵組織、神経組織、心臓組織、骨髄、筋肉組織、骨組織、皮膚組織、肝臓組織、毛包、血管組織、脂肪組織、肺組織、及び腎臓組織の一
部である。
【0268】
一実施形態では、標的細胞は腫瘍細胞である。別の実施形態では、標的細胞は、がんを有する患者の細胞などのがん細胞である。開示された方法で死滅し得る例示的な細胞は、以下の腫瘍の細胞を含む:急性白血病(急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、及び骨髄芽球性、前骨髄球性、単球性及び赤血白血病など)、慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病及び慢性リンパ性白血病など)などの白血病、真性多血症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、重鎖疾患などの液体腫瘍。
【0269】
別の実施形態では、細胞は、固形腫瘍細胞であり、例えば、肉腫及びがん腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、及び他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞がん、結腸直腸がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん(例えば、膵臓、結腸、卵巣、肺、乳房、胃、前立腺、頸部、又は食道の腺がん)、汗腺がん、脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、髄様がん、気管支原性肺がん、腎細胞がん、肝細胞がん、胆管がん、絨毛がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、膀胱がん、CNS腫瘍(神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫)である。
【0270】
一実施形態では、がんは、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、神経内分泌腫瘍、膠芽腫、神経芽細胞腫、黒色腫、皮膚がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、前立腺がん、肝臓がん、腎がん、膵がん、肺がん、胆道がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、頭頸部がん、髄質甲状腺がん、卵巣がん、神経膠腫、リンパ腫、白血病、骨髄腫、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、及び膀胱がんを含み得る。
【0271】
一実施形態では、標的細胞は、肝臓、膵臓、肺、乳房、膀胱、脳、骨、甲状腺、腎臓、皮膚、及び造血系の悪性細胞である。別の実施形態では、標的細胞は、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、膀胱がん、脳がん、骨がん、甲状腺がん、腎臓がん、皮膚がん、又は血液がんにおける細胞である。別の実施形態では、標的細胞は、細胞、例えば、CMV、HPV、及びEBVを含むがこれらに限定されない、ウイルスに感染したがん細胞である。
【0272】
一実施形態では、標的抗原は、HPV-16 E6及びHPV-16 E7を含むHPV腫瘍性タンパク質、アルファ葉酸受容体、5T4、αβインテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD28、CD30、CD33、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD79a、CD79b、CD123、CD137(4-1BB)、CD138、CD171、CEA、CSPG4、CLL-1、EGFR、ErbB2(HERII)を含むEGFRファミリー、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、EpCAM、F AP、胎児AchR、FRa、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-Al+MAGEI、HLA-A2+MAGE1、HLAA3+MAGE1、HLA-Al+NY-ES0-1、HLA-A2+NY-ES0-1、HLA-A3+NY-ES0-1、IL-llRα、IL-13Rα2、ラムダ、ルイス-Y、カッパ、メソセリン、Mucl、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NYE-S0-1、PRAME、PSCA、PSMA、RORI、SSX、サバイビン、TAG72、TEM、並びにVEGFRIIに指向されているか、又はそのエピトープである。
【0273】
本明細書で企図される改変されたT細胞は、がん、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性
疾患、及び免疫不全を含む、様々な状態の治療に使用するための改善された養子免疫療法を提供する。いくつかの実施形態では、初代T細胞の特異性は、操作されたDN TGF-β受容体と本明細書で企図されるTCR又はCARを共発現するように操作された初代T細胞を遺伝子改変することによって、腫瘍又はがん細胞に再指向される。例えば、本明細書に記載のCAR-DN TGF-β受容体構築物では、CARのscFvの抗原結合ドメインは、T細胞を腫瘍抗原を発現する細胞に指向させ、本明細書に記載のTGF-β受容体構築物は、TGF-βの抑制効果を阻害することによって、そのようなT細胞の集団を保護する。
【0274】
本開示の一実施形態には、T細胞が、標的抗原を発現するがん細胞を標的とする、本明細書に記載のCAR-DN TGF-β受容体構築物を含む操作されたTCR又はCARと、操作されたDN TGF-β受容体を共発現するように改変され、改変されたT細胞がそれを必要とするレシピエントに注入されるタイプの細胞療法が含まれる。したがって、注入された細胞は、TGF-β抑制からの影響を最小限しか受けずに、レシピエント内の腫瘍細胞を死滅させることができる。
【0275】
いずれの細胞も、本開示のポリヌクレオチド、ベクター、又はポリペプチドのための宿主細胞として使用することができる。いくつかの実施形態では、細胞は、原核細胞、真菌細胞、酵母細胞、又は哺乳動物細胞などのより高等な真核細胞であり得る。好適な原核細胞には、限定されないが、グラム陰性又はグラム陽性生物などの真性細菌、例えば、Enterobactehaceae、例として、Escherichia、例えばE.coli;Enterobacter;Erwinia;Klebsiella;Proteus;Salmonella、例えばSalmonella typhimurium;Serratia、例えばSerratia marcescans、及びShigella;Bacilli、例えばB.subtilis及びB.licheniformis;Pseudomonas例えばP.Aeruginosa;並びにStreptomycesが含まれる。いくつかの実施形態では、細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は免疫細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞、B細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、TCR発現細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞、顆粒球、自然リンパ細胞、巨核球、単球、マクロファージ、血小板、胸腺細胞、及び骨髄細胞からなる群から選択される。一実施形態では、免疫細胞はT細胞である。別の実施形態では、免疫細胞はNK細胞である。ある特定の実施形態では、T細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、自己T細胞、操作された自己T細胞(eACT(商標))、同種T細胞、異種T細胞、又はそれらの任意の組み合わせである。抗体療法又はスタンドアロンのTCR若しくはCAR改変T細胞とは異なり、本明細書に記載の操作されたDN TGF-β受容体を、操作されたTCR又はCARと共発現するように改変されたT細胞(又は上記の任意の細胞)は、インビボで複製することができ、したがって持続的ながん療法につながる可能性がある長期持続性に寄与するだけでなく、TGF-βの抑制衝撃を回避するという追加の利点を有する。したがって、本明細書に記載の一実施形態では、TGF-βの活性を阻害する方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に記載のDN TGF-β受容体及びTCR若しくはCARを共発現する改変T細胞の治療有効量を投与することを含む、方法である。
【0276】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、本明細書に記載の改変されたT細胞の投与は、TGF-βリガンドがTGF-βRI二量体-DN TGF二量体-βRII二量体複合体に結合しているのにもかかわらず、細胞内pSMADシグナル伝達を開始するリン酸化カスケードを阻害するDN TGF-β受容体をもたらし、同時に、T細胞が標的抗原の特異性を保持することを可能にすることが理解される。別の実施形態では、TGF-βの活性を阻害する方法は、非形質導入T細胞におけるpSMAD2及びpSMAD3のレベルと比較して、pSMAD2及びpSMAD3のレベルの低減を含む。
【0277】
本明細書に記載の一実施形態では、本明細書に記載の改変されたT細胞の投与は、pSMAD2及びpSMAD3のレベルの約10%~約100%、約20%~約90%、約30%~約80%、約40%~約70%、又は約50%~約60%の低減をもたらす。本明細書に記載の別の実施形態では、pSMAD2の低減は、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約100%であり得る。本明細書に記載の別の実施形態では、pSMAD3の低減は、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約100%であり得る。
【0278】
本明細書に記載の別の実施形態では、本明細書に記載の改変されたT細胞の投与は10%~約100%、約20%~約90%、約30%~約80%、約40%~約70%、又は約50%~約60%の、TGF-β1の存在下でのサイトカイン分泌の増加をもたらす。本明細書に記載の別の実施形態では、本明細書に記載の改変されたT細胞の投与は、約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約100%のTGF-β1の存在下でのサイトカイン分泌の増加をもたらす。
【0279】
別の実施形態では、本明細書に記載される操作されたTCR又はCARとDN TGF-β受容体を共発現するT細胞は、治療用T細胞の集団が、長期間まで維持又は持続し得るように、T細胞増殖をさせることができる。したがって、本明細書に記載の別の実施形態は、T細胞の集団を増殖させる方法であり、それを必要とする対象に、治療有効量の本明細書に記載のT細胞を投与することを含む。
【0280】
本明細書に記載の一実施形態では、T細胞の集団は、7日後に約50%~約100%の間、7日後に約60%~約90%の間、又は7日後に約70%~約80%の間のままである。本明細書に記載の別の実施形態では、T細胞の集団は、7日後に約50%、7日後に約60%、7日後に約70%、7日後に約80%、7日後に約90%又は7日後に約100%のままである。
【0281】
本明細書に記載の別の実施形態では、本明細書に記載の改変されたT細胞の投与は、TGF-β1の存在下で、約10%~約100%、約20%~約90%、又は約30%~約80%の形質導入されたT細胞の増殖をもたらす。本明細書に記載の別の実施形態では、本明細書に記載の改変T細胞の投与は、TGF-β1の存在下で約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%の形質導入されたT細胞の増殖をもたらす。
【0282】
本明細書に記載の一実施形態では、本明細書に記載されるコドン最適化配列からの改変されたT細胞の投与は、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%の発現効率の増加をもたらす。本明細書に記載の別の実施形態では、本明細書に記載されるコドン最適化配列からの改変されたT細胞の投与は、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%の形質導入効率の増加をもたらす。
【0283】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、CAR T細胞療法の有望な使用にもかかわらず、腫瘍抗原の非存在下での構成的な強壮性(tonic)シグナル伝達は、有効性が
低下し、CAR T細胞の生存及び毒性が低下する可能性がある(Ajina et al.Mol Cancer Ther.,17(9):1795-1815(2018)
)。したがって、強壮性シグナル伝達を低減するCAR T細胞療法は、優れた性能をもたらす。本明細書に記載の一実施形態では、腫瘍抗原の非存在下で本明細書に記載されるコドン最適化配列からの改変されたT細胞の投与は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%のサイトカイン放出の低下をもたらす。本明細書に記載の一実施形態では、腫瘍抗原の非存在下でのコドン最適化配列からの改変されたT細胞の投与は、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%のサイトカイン放出の低下をもたらす。
【0284】
別の実施形態では、本明細書に記載されるコドン最適化配列からの改変されたT細胞の投与は、約50%~約10%~約100%、約20%~約90%、又は約30%~約80%の腫瘍体積の低下をもたらす。別の実施形態では、腫瘍体積の低下は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%である。
【0285】
本明細書に記載の別の実施形態は、本明細書に記載のDN TGF-β受容体とTCR若しくはCARを共発現するT細胞を含む組成物の有効量、例えば、治療有効量を投与することを含む、治療を必要とする対象のがんを治療する方法である。投与の量及び頻度は、患者の状態、患者の疾患の種類及び重症度などの要因によって決定されるが、適切な投与量は、臨床試験によって決定され得る。
【0286】
本明細書に記載の別の実施形態は、本明細書に記載のCAR-DN TGF-β受容体構築物を含む、本明細書に記載のDN TGF-β受容体及びTCR又はCARを共発現するT細胞を含む組成物の有効量、例えば、治療有効量を投与することを含む、治療を必要とする対象の肝がんを治療する方法である。投与の量及び頻度は、患者の状態、患者の疾患の種類及び重症度などの要因によって決定されるが、適切な投与量は、臨床試験によって決定され得る。
【0287】
他の実施形態では、DN TGF-β受容体をコードするポリヌクレオチド及び本明細書に記載のCAR-DN TGF-β受容体構築物を含むTCR又はCARをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクターで遺伝子改変されたT細胞を含む組成物は、肝臓がん、膵がん、肺がん、乳がん、膀胱がん、脳がん、骨がん、甲状腺がん、腎臓がん、皮膚がん又はウイルス誘発性がんを含むが、これらに限定されない、固形腫瘍又はがんの治療に使用される。
【0288】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCAR-DN TGF-β受容体構築物を含む、DN TGF-β受容体をコードするポリヌクレオチド及びTCR又はCARをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクターで遺伝子改変されたT細胞を含む組成物は、BCMA、CD19、CD20、CD28、CD137(4-1BB)、CLL-1、GPC3、PCMA、又はPSMAのエピトープに結合する抗原特異的結合ドメインを含み、様々ながんの治療に使用される。
【0289】
他の実施形態では、本明細書で企図される治療有効量の改変されたT細胞又はそれを含む組成物を、単独で、又は1つ以上の治療薬と組み合わせて、それを必要とする患者に投与することを含む、方法が提供される。ある特定の実施形態では、本開示の細胞は、がんを発症するリスクのある患者の治療に使用される。したがって、本開示は、がんの治療又は予防のための方法を提供し、それを必要とする対象に、治療有効量の本開示の改変T細胞を投与することを含む。
【0290】
当業者は、所望の治療を行うために本開示の組成物の複数回の投与が必要とされ得ることを認識するであろう。例えば、組成物は、1週間、2週間、3週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、1年、2年、5年、10年、又はそれ以上のスパンにわたって1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回以上投与され得る。
【0291】
ある特定の実施形態では、活性化T細胞を対象に投与し、次いで、血液を再採取し(又はアフェレーシスを行う)、本開示に従ってそこからT細胞を活性化し、これらの活性化及び増殖されたT細胞を患者再注入することが望ましい場合がある。このプロセスは、数週間毎に複数回実行され得る。ある特定の実施形態では、T細胞は、10cc~400ccの採血から活性化され得る。理論に束縛されるものではないが、この複数の採血/複数の再注入プロトコルを使用して、T細胞のある特定の集団を選択するのに役立ち得る。
【0292】
本明細書で企図される組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸血、移植、又は移植を含む、任意の便利な方法で実施され得る。いくつかの実施形態では、組成物は非経口的に投与される。本明細書で使用される場合、「非経口投与」及び「非経口的に投与される」という語句は、経腸及び局所投与以外の、通常は注射による投与様式を意味し、血管内、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、腫瘍内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、及び、胸骨下の注射及び注入、を含むが、これらに限定されない。一実施形態では、本明細書で企図される組成物は、腫瘍、リンパ節、又は感染部位への直接注射によって対象に投与される。
【0293】
一実施形態では、それを必要とする対象は、対象におけるがんに対する細胞免疫応答を増加させるために有効量の組成物を投与される。免疫応答は、感染細胞を死滅させることができる細胞傷害性T細胞、制御性T細胞、及びヘルパーT細胞応答によって媒介される細胞免疫応答を含み得る。したがって、抗体産生をもたらすB細胞を活性化することができるヘルパーT細胞によって主に媒介される体液性免疫応答も誘導され得る。本開示の組成物によって誘発される免疫応答のタイプを分析するために、当該技術分野で十分に説明されている様々な技術を使用することができ、例えば、Current Protocols in Immunology,Edited by:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margualis,Ethan.M.Shevach,Warren Strober(2001)John Wiley&Sons,NY,N.Y.に記載されている。
【0294】
T細胞媒介性殺傷の場合、CAR-リガンド結合は、T細胞へのCARシグナル伝達を開始し、T細胞が、様々な機構によって標的細胞アポトーシスを誘導することができるタンパク質を産生する又は放出するように誘導する、様々なT細胞シグナル伝達経路の活性化をもたらす。これらのT細胞媒介メカニズムには、T細胞からの標的細胞への細胞内細胞傷害性顆粒の移動、標的細胞殺滅を直接的に誘導し得る炎症誘発性サイトカインのT細胞分泌(又は他のキラーエフェクター細胞の動員を介して間接的に)、及び標的細胞上のそれらの同族死受容体(例えばFas)への結合後に標的細胞アポトーシスを誘導するT細胞表面上の死受容体リガンド(例えば、FasL)のアップレギュレーションが含まれる(しかし、これらに限定されない)。
【0295】
本明細書に記載の一実施形態は、がんと診断された対象を治療する方法であって、対象からT細胞を取り出すことと、本明細書に記載のCAR-DN TGF-β受容体構築物を含む、本明細書で企図される操作されたDN TGF-β受容体及びTCR又はCARをコードする核酸を含むベクターで当該T細胞を遺伝子改変することと、それによって改変されたT細胞の集団を産生することと、改変されたT細胞の集団を同じ対象に投与することと、を含む、方法である。
【0296】
ある特定の実施形態では、本開示はまた、本明細書に記載のCAR-DN TGF-β受容体構築物を含む、操作されたDN TGF-β受容体及びTCR又はCAR分子をコードする核酸構築物を発現する免疫エフェクター細胞集団を対象に投与するステップを含む、対象における標的細胞集団に対するエフェクター細胞媒介免疫調節剤応答を刺激するための方法を提供する。
【0297】
本明細書に記載の細胞組成物を投与するための方法は、対象において操作されたTCR又はCARを直接発現するか、又は対象に導入すると操作されたTCR又はCARを発現する成熟免疫エフェクター細胞に分化する免疫エフェクター細胞の遺伝子改変前駆細胞の再導入時のいずれかで、エクスビボで遺伝子改変された免疫エフェクター細胞の再導入をもたらすのに効果的である任意の方法を含む。1つの方法は、エクスビボで末梢血T細胞を本開示による核酸構築物で形質導入し、形質導入された細胞を対象に戻すことを含む。
【0298】
前述の開示は、理解を明確にするために、例示及び例としてある程度詳細に説明されているが、本開示の教示に照らして、当業者には、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく、ある特定の変更及び改変を加えることができることが容易に明らかになるであろう。以下の実施例は、限定するものではなく、例示としてのみ提供される。当業者は、本質的に同様の結果をもたらすために変更又は改変され得る様々な非重要なパラメータを容易に認識するであろう。
【実施例0299】
実施例1
操作された、ドミナントネガティブTGF-β受容体タイプ1(DN TGF-βRI)構築物を、配列番号10の配列に従って設計及び合成した。この構築物は、長さが152アミノ酸であり、野生型TGF-βRIのアミノ酸1~33のシグナルペプチドドメイン、野生型TGF-βRIのアミノ酸34~126の細胞外ドメイン、野生型TGF-βRIのアミノ酸127~147の膜貫通ドメイン、及びTGFβ-RIIのアミノ酸148~152の細胞内ドメインを含む。構築物は、細胞内pSMADシグナル伝達のための重要なリン酸化部位を除くように設計されている。細胞内ドメインは、TGFβ-RIIに特異的に由来し、5つのアミノ酸を含む。
【0300】
加えて、操作された、切断された、ドミナントTGF-β受容体タイプ2(DN TGF-βRII)も配列番号14の配列に従って設計及び合成した。
【0301】
以下の実施例で使用されるTCR及びCAR構築物は、当該技術分野で既知の一般的な技術を使用して設計及び作製された。2つの異なる共刺激ドメイン(CD28及び4-1BB)を有する2つの異なるCAR構築物を以下に示す。
a.CD19:(FMC63 scFv+CD28細胞内ドメイン+CD3ζ細胞内ドメイン)
b.PSMA:(PSMA scFv+4-1BB細胞内ドメイン+CD3ζ細胞内ドメイン)。
【0302】
レンチウイルスベクターをすべてのT細胞形質導入に使用した。EF1Aプロモーターを、作製及び試験されたすべての構築物で使用した。
【0303】
STEMCELL(商標)Technologies(Vancouver、Canada)から得られたCD3細胞を、健康なドナーから得られた末梢血単核細胞から単離し、CryoStor(登録商標)細胞凍結保存培地(Sigma Aldrich(登録商標))で凍結した。レンチウイルス形質導入前に、CD3 pan T細胞を解凍し、製造業者の推奨に従ってCD3/CD28 Dynabeads(登録商標)(ThermoFisher Scientific)で活性化し、一晩静置した。翌日、本明細書に記載されるように、ドミナントネガティブ受容体(DNR)を有する及び有しないmycタグ付きCAR構築物を含むレンチウイルスを細胞に形質導入した。細胞を5%ヒト血清を含むTC培地(X-VIVO(商標)、Lonza)で14日間増殖させ、100国際単位/mlのインターロイキン-2(IL-2)を週に3回補充した。14日間の細胞培養後、フローサイトメトリーによる測定で、すべての試験の細胞は、導入遺伝子に対して約50~80%陽性であった。
【0304】
すべてのフローサイトメトリーデータを、BD FACSDiva(商標)ソフトウェアを用いてLSR-Fortessa(BD LSR Fortessa(商標))で収集し、データをFlowJo(すべてBD Sciences)を使用して分析した。すべての抗体染色を、1%BSAを含有するPBS中で4℃で行った。BioLegend及びCell Signaling Technologyの試薬を使用して、細胞を生存率、CD3、CD4、CD8及び抗myc活性について評価し一般的な技術を使用してCAR陽性%を決定した。増殖アッセイでは、CAR細胞を、ThermoFisher Scientificのカウンティングビーズで数えた。
【0305】
同数のT細胞を血清を含まないX-VIVO(商標)培地で2時間培養した後、メーカー(R&D Systems)の推奨にしたがって酸で再構成された1又は5ng/mLの可溶性組換えTGF-β1で30分間刺激した。次に、細胞を遠心分離によって収集し、RIPA緩衝液+プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤(ThermoFisher
Scientific)で溶解してから、pSMAD2及びpSMAD3のLuminex(登録商標)分析を行った。
【0306】
切断型のTGF-βRI(DN TGF-βRI)を発現させることでTGF-βの抑制効果からT細胞を救済することができるかどうかを調査するために、構築物は、CD19及びPSMAに特異的なscFvを有するCAR、続いてT2A自己切断ペプチドを用いて配列番号10のDN TGF-βRIをコードするように設計された。配列番号14のDN TGF-βRIIは陽性対照として機能した。
【0307】
抑制的なpSMADシグナル伝達を伝達するTGF-βRI分子の細胞内部分を排除することによって、短縮型のTGF-βRI(DN TGF-βRI)が内因性の野生型TGF-βRIがTGF-βRIIに結合するのを打ち負かしそれによって、シグナル伝達を遮断し、TGF-β1によって誘導される抑制性pSMADシグナル伝達を制限し、したがってCAR細胞機能を救済することを示唆するTGF-βは、pSMADシグナル伝達経路を介してT細胞における抑制シグナル伝達を媒介する。本明細書に記載の切断されたドミナントネガティブ受容体が、pSMAD誘導を制限することができるかどうかを決定するために、CD3細胞を、初代ヒト末梢血単核細胞(PBMC)から単離し、CD19 CARのみ(FMC63 scFv+CD28細胞内ドメイン+CD3ζ細胞内ドメイン)、CD19 CAR+DN TGF-βRI又はCD19 CAR+DN TGF-βRIIを含む構築物で形質導入した。次に、全T細胞を1ng/mLのTGF-β1で30分間刺激し、全細胞溶解物を調製し、pSMAD2及びpSMAD3を定量化し
た。結果を表4aに記載する。
【0308】
すべての操作されたTにおけるpSMAD2及びpSMAD3レベルのバックグラウンドレベルを表4aに示す。CD19 CARのみを発現するTGF-β1で刺激されたT細胞は、pSMAD2及びpSMAD3を、それぞれ10,000倍及び2,500倍誘導したがCD19 CAR+DN TGF-βRI又はCD19 CAR+DN TGF-βRIIで形質導入されたTGFβ1で刺激された細胞は、pSMAD2及びpSMAD3の誘導が少なかった(pSMAD2の誘導はおよそ4倍少ない及びpSMAD3の誘導2倍少ない、p-値<0.01)。更に、CD19 CAR+DN TGF-βRI又はCD19 CAR+DN TGF-βRIIで形質導入された処理されたTGF-β1で処理されたT細胞中のpSMAD2及びpSMAD3誘導のレベルは、TGFβ1及びTGF-βRI LY57299の小分子阻害剤で共処理された対照形質導入T細胞におけるpSMAD2及びpSMAD3レベルと同等であった。このデータは、DN TGF-βRI及びDN TGF-βRIIが、TGF-β1によって誘導されるT細胞における抑制性pSMADシグナル伝達を制限することを確認する。
【0309】
PSMA CAR(PSMA scFv+4-1BB細胞内ドメイン+CD3ζ細胞内ドメイン)、続いてDN TGF-βRI又はDN TGF-βRIIを発現する第2の構築物を作製した。切断型、ドミナントネガティブ受容体がこのCARコンテキストでpSMAD誘導を制限できるかどうかを決定するためにCD3細胞を、初代ヒト末梢血単核細胞(PBMC)から単離し、PSMA CARのみ、PSMA CAR+DN TGF-βRI、又はPSMA CAR+DN TGF-βRIIを含む構築物で形質導入した。全T細胞をTGF-β1(5ng/mL、30分)で刺激した。全細胞溶解物を調製し、及びLUMINEX(登録商標)によってpSMAD2及びpSMAD3を定量化した。結果を表4bに記載する。
【0310】
PSMA CARのみを発現するTGF-β1で刺激されたT細胞は、pSMAD2及びpSMAD3を、それぞれ8,500倍及び2,200倍誘導したが、一方で、PSMA CAR+DN TGF-βRI又はPSMA CAR+DN TGF-βRIIで形質導入された、TGF-β1で刺激された細胞は、pSMAD2及びpSMAD3誘導が少なかった(誘導がおよそ2倍少ない、p-値<0.05)。したがって、表4a及び4bのデータは、DN TGF-βRI及びDN TGF-βRIIが、2つの異なるscFvを発現し、CD28及び4-1BBの両方の共刺激と組み合わせて、CAR T細胞においてTGF-β1が媒介するpSMADシグナル伝達を制限することを確認する。
【0311】
実施例2
CD19 CAR陽性T細胞を、マイトマイシン(Sigma Aldrich)で共培養し、American Type Culture Company(ATCC、Manassas、VA)からのNalm6標的細胞を1:1の比率で7日間処理した。ビーズのカウント及びフローサイトメトリーによって測定されたCART細胞の数に基づいて1:1の比率で、1日おきに標的細胞を添加した。TGFβ1処理群の場合、酸活性化TGFβ1(5ng/mL)を1日おきに共培養培地(RPMI+10%FBS)に添加した。
【0312】
マウス腫瘍モデルにおけるインビボCAR T細胞の有効性は、概して、臨床的有効性を予測するためのゴールドスタンダード考えられているが、長期的なインビトロ死滅アッセイで標的を反復刺激するとインビボの結果と相関することが多いと判断されている。したがって、連続刺激アッセイを使用して、CD19 CAR T細胞の増殖を測定し、DN TGF-βRI及びDN TGF-βRIIが、このアッセイにおいてTGF-β1の抑制効果を制限できるかどうかを試験した。
【0313】
CD19 CAR T細胞機能に対するTGF-β1の影響を調べるためにCD19 CAR T細胞をCD19Nalm6標的細胞で1週間に3回刺激し標的を介したCAR T細胞増殖を測定した。結果を表5に記載する。
【0314】
結果は、TGF-β1が、ビヒクル処理単独と比較して、アッセイにおいて、CD19
CAR T細胞の増殖を約7倍抑制することを示す。DN TGF-βRI又はDN TGF-βRIIが、TGF-β1を用いたこの反復刺激アッセイでCD19 CAR T細胞機能を救済することができるかどうかを判断するために、T細胞にCD19 CAR+TGF-βRI又はCD19 CAR+TGF-βRIIを形質導入し、それらの増殖を、TGF-β1の存在下及び非存在下での連続標的刺激による7日後に測定した。結果は、TGF-βRIが、CD19 CAR T細胞増殖に対するTGF-β1の抑制効果を救済することを示している。
【0315】
実施例3
CAR陽性T細胞は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を発現するように操作されたAmerican Type Culture Company(ATCC、Manassas、VA)から入手したK562標的細胞と共培養した。96時間共培養し、細胞を遠心沈殿させ、上清を収集した。上清を、LUMINEX(登録商標)マルチプレックスア
ッセイでインターフェロンγ(IFNγ)について分析し、及びLUMINEX(登録商標)システムで分析した(ThermoFisher Scientific)。いくつかのグループでは、試験開始時に、培養培地に酸活性化TGF-β1を、5ng/mLで添加した。
【0316】
CAR T細胞は、IFNγを含む細胞傷害性分子の分泌により、腫瘍細胞に対する細胞溶解効果を媒介する。外因性TGF-β1の効果は、PSMA標的細胞と培養したPSMA CAR T細胞からのIFNγ産生に対して試験された結果を表6に記載する。
【0317】
2日ごとに5ng/mLの外因性TGF-β1を投与すると、CAR T細胞によるIFNγの産生が、96時間にわたって3倍以上低下すことが見出された。更に、PSMA
CAR+DN TGF-βRI又はPSMA CAR+DN TGF-βRIIで形質導入されたTGF-β処理されたT細胞は、PSMA+標的細胞に応答してIFNγ産生の低下がなく、TGF-β1で処理され、PSMA+標的細胞で共培養されたPSMA CAR T細胞よりも多くのIFNγを産生したことがわかった。このデータは、DN TGF-β受容体が、TGF-β1抑制によってチャレンジされたCD19 CAR T細胞及びPSMA CAR T細胞の両方の機能的特性を回復させることを示唆している。
【0318】
実施例4
更なる試験は、配列番号10のDN TGF-βRI及び配列番号14のDN TGF-βRIIを使用してそれぞれ以下に示されるCAR構築物を使用して実施した:
a.GPC3:(GPC3 scFV+CD28細胞内ドメイン+CD3ζ細胞内ドメイン)、かつ
b.GPC3:配列番号45の(GPC3 scFV+4-1BB細胞内ドメイン+CD3ζ細胞内ドメイン)。前の試験と同様に、CD3細胞を初代ヒト末梢血単核細胞(PBMC)から単離し、上記のGPC3構築物で形質導入した。すべての操作されたT細胞におけるpSMAD2及びpSMAD3レベルのバックグラウンドレベルを表7に示す。GPC3 CARのみを発現するTGF-βで刺激されたT細胞は、pSMAD2及びpSMAD3をそれぞれ10,000倍及び700倍誘導したが、一方、GPC3 CAR+DN TGF-βRIIで形質導入されたTGF-β1刺激でされた細胞(配列番号47に示す)では、pSMAD2及びpSMAD3誘導が有意に低かった(pSMAD2の誘導がおよそ20倍少ない及びpSMAD3の誘導が4倍少ない、p-値<0.01)。GPC3 CAR+DN TGF-βRIは、pSMAD2及びpSMAD3誘導を制限した(4-1BB共刺激によるpSMAD2の誘導はおよそ3倍少ない、及び4-1BB共刺激によるpSMAD3の誘導は1.3倍少ない)。結果を表7に記載する。
【0319】
更に、GPC3 CAR陽性T細胞は、American Type Culture
Company(ATCC、Manassas、VA.)からのHep3B標的細胞と共培養した。標的細胞を、週に2回3~4日間毎に追加し、ビーズのカウント及びフローサイトメトリーによってCAR T細胞の数を測定した。TGF-β1の場合、処理群では、酸活性化TGF-β1(5ng/mL)を、3~4日間毎に週に2回共培養培地(RPMI+10%FBS)に添加した。結果を表8に記載する。
【0320】
実施例5
上記実験に加えて、本明細書に記載のCD19、PSMA、及びGPC3構築物におけるDN TGF-βRI及びDN TGF-βRIIの活性は、インビボ動物モデルで評価される。この研究は、本明細書に記載されるように、pSMAD減少、CAR細胞増殖、及びサイトカイン産生における受容体を評価する。
【0321】
実施例6
配列番号33の配列に従って、操作されたドミナントネガティブTGF-β受容体タイプ2(DN TGF-βRII)構築物を作製した。この構築物は、394アミノ酸長であり、アミノ酸1~22のシグナルペプチドドメイン、アミノ酸23~32のタグ配列、野生型TGF-βRIIのアミノ酸33~169の細胞外ドメイン、アミノ酸170~171のリンカー配列、「CPT」挿入を有する配列番号20のアミノ酸172~194のIL-7Rαの膜貫通ドメイン、及びIL-7Rαのアミノ酸195~394の細胞内ドメイン。
【0322】
ヒトPBMCから単離されたCD3細胞に、配列番号33のアミノ酸配列を含む構築物で形質導入した。T細胞を血清を含まないX-VIVO(商標)培地で2時間培養した後、メーカー(R&D Systems)の推奨にしたがって酸で再構成された1ng/mLの可溶性組換えTGF-β1で30分間刺激した。次いで、細胞を遠心分離によって収集し、RIPA緩衝液+プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤(ThermoFisher Scientific)で溶解してから、pSMAD2、pSMAD3、pERK、及びpSTAT5のLUMINEX(登録商標)分析を行った。すべての操作されたT細胞におけるpSMAD2及びpSMAD3レベルのバックグラウンドレベルは、非常に低かった。TGF-β1で刺激されたT細胞は、pSMAD2及びpSMAD3を、それぞれ4,000倍及び1,500倍誘導したが、DN TGF-βRII構築物で形質導入されたTGF-β1で刺激された細胞は、pSMAD2及びpSMAD3誘導が有意に低かった(pSMAD2誘導がおよそ25倍少なく、及びpSMAD3の誘導が11倍少ない、p-値<0.01)、一方pERK及びpSTAT5シグナル伝達は、キメラ形質導入T細胞で上昇した(pERKで28倍高く、pSTAT5ほぼ80倍高い)。pERK及びpSTATシグナル伝達の増加は、TGF-β1への曝露に依存せず、IL-7Rαを介した構成的シグナル伝達による曝露の有無にかかわらず上昇した。結果を表9に記載する。
【0323】
実施例7
配列番号51(CAR1)のCAR構築物を標的とするGPC3のコドン最適化配列をCAR構築物を標的とする2つの追加のGPC3と比較した。試験は、以下に示すようにCAR構築物を生成することによって行われた。
a.構築物CAR 1:(GPC3 scFv+4-1BB細胞内ドメイン+CD3ζ細胞内ドメイン)配列番号51のコドン最適化配列に示されている。
【0324】
b.構築物CAR 2:(Li,Gastroenterology,2020及び国際公開第2019/094482(A1)号に記載されているGPC3 scFv+4-1BB細胞内ドメイン+CD3ζ細胞内ドメイン)配列番号53に示されるヌクレオチド配列を有する。
c.構築物CAR 3:(CAR 2と同じアミノ酸配列を有するが、ヌクレオチド配列が、スプライシング及びリピートを最小限に抑えるように最適化されている導入遺伝子を有する構築物)、配列番号54に示されるもの。
【0325】
前の試験と同様に、CD3細胞を、初代ヒト末梢血単核細胞(PBMC)から単離し、Jurkat細胞における発現力価に基づいて、ポリブレンの存在下で、及び2の感染多重度で上記のGPC3 CAR構築物で形質導入した。製造の最後に、細胞をCryostor(登録商標)CS5で凍結し、解凍まで液体窒素中に貯蔵した。解凍時に、細胞を、100UI/mLのIL-2を含むT細胞培養培地中で一晩静置し、洗浄し、30分間4℃で、PBS中、1:1000で希釈したLive/Dead(商標)Violet、1:200で希釈したDyLight(商標)650で蛍光標識した組換えヒトGPC
3(rhGPC3)、及び1:100での抗CD3 BV650を用いて染色した。1×10細胞のペレットのDNAをQuickExtract(商標)Bufferで抽出し、凍結し、及び液滴デジタルPCRによって平均ベクトルコピー数(VCN)を測定するために使用し、細胞当たりの組込みウイルスの頻度を定量化する。CAR細胞の割合は、Live/Dead(商標)陰性、CD3陽性細胞、及びCARの平均蛍光強度(MFI)の中で、rhGPC3で染色されている細胞の割合として定義され、ベクターコピー数(VCN)は実施例に示される。表10に見られるように、より高いVCN、%CAR構築物CAR1は、その形質導入効率が構築物CAR2及びCAR3の形質導入効率よりも高いことを示唆している。構築物CAR1はまた、CAR細胞のMFIがより高く、これは、rhGPC3に対するCARのより効率的な発現又はより高い親和性を示している可能性がある。
【0326】
実施例8
前述のように製造、凍結、休止、及び染色されたCART細胞(5×10)を、HCC標的細胞(5×10)と48時間共培養し、サイトカイン放出を誘導し、上清を-80℃で凍結した。インターフェロンガンマ(IFNγ)濃度を、PBSで上清を500倍に希釈した後、Millipore MILLIPLEX(登録商標)Map Human High SensitivityT細胞パネル(カタログ番号HSTCMAG-28PMX13BK)を使用して測定した。表11のデータは、GPC3細胞株Hep3B GPC3 KO及びSk-Hep1の存在下で、構築物CAR1が構築物CAR2及びCAR3よりも少ないIFNγを分泌することを示す。このデータは、CAR 1構築物がCAR 2及びCAR 3構築物よりも低い強壮性活性化を誘発することを示唆している。
【0327】
実施例9
構築物CAR 1、CAR 2、及びCAR 3で形質導入されたT細胞、又は非形質導入のもの(UT)を上記のように製造し、NSGマウスのHep3B異種移植モデルにおいて、インビボで試験した。2×10のHep3B 2.1-7細胞の細胞を、実験の初日にNSGマウスに移植した。その後3~4日ごとに、キャリパーを使用して腫瘍体積を測定した。14日目に、腫瘍が平均サイズ149mmに達したとき動物を群に分け、静脈内注射を介してPBSビヒクル、非形質導入T細胞、6×10CAR細胞又は2×10CAR細胞のいずれかで構築物CAR 1、CAR 2、又はCAR 3によって作製されたGPC3 CAR T細胞、のいずれかで処理した。研究全体の腫瘍体積を以下の表12~19に記載する。腫瘍増殖の制御によって証明されるように、構築物CAR 1で作製されたCAR T細胞は、6×10及び2×10の用量で構築物C
AR 2及びCAR 3よりもより強力であった。
【0328】
実施例10
GPC3 CAR-DN TGF-βRII構築物を配列番号47に示すように作製し、Hep3B腫瘍細胞で試験した。2×10Hep3B 2.1-7細胞を、実験の初日にNOD-SCID IL-2Rガンマヌル(NSG)マウスに移植した。その後3~4日ごとに、キャリパーを使用して腫瘍体積を測定した。14日目に、腫瘍が平均サイズ
150mmに達したとき動物を群に分け、PBSビヒクル、非形質導入T細胞、GPC3 CAR T細胞又はGPC3 CAR+DN TGF-βRII T細胞のいずれかで、4×10 CAR細胞又は1×10CAR細胞のいずれかで、静脈内注射を介して処理した。2000mmの腫瘍体積の研究エンドポイントを超える動物は試験から除外した。研究全体の腫瘍体積を以下の表20~25に記載する。DN TGF-βRIIの追加により、GPC3 scFvの効力が改善され、1×10CAR細胞用量以上での腫瘍抑制が改善された。
【0329】
実施例11
実施例10の構築物を使用して、すべてのコホートが無傷であった最終日(33日目)で、抗腫瘍効果の有意性を、テューキーの多重比較検定を用いた一元配置分散分析によって評価した、これは表26に含まれる。長期有効性及び腫瘍増殖遅延を、初期体積を4倍に設定された腫瘍体積エンドポイントへの生存に向けた進行によって決定され(図1、表27)、統計的有意性をログランク(マンテル-コックス)検定によって決定した(表28)。
表10~15の33日目の腫瘍体積データを、すべての群間のテューキーの事後検定による分散分析を使用して、すべての群にわたって統計的有意性について評価した。比較間の有意性(p<0.05)は、「あり」で示し、nsは有意でない比較を示す。
初期体積の4倍に設定された腫瘍エンドポイントまでの統計生存率は、各動物とそれが発生する研究日によって表される。長期有効性は、このエンドポイントに到達しなかったことにより定義されNR(未到達)によって示される。
表16からの生存データを、ログランク(マンテル-コックス)ペアワイズ比較を使用して統計的有意性について評価した。比較間の有意性(p<0.05)は、「あり」で示し、nsは有意でない比較を示す。
【0330】
33日目に、GPC3 CARは腫瘍体積を制御するのに有効であり、表26に示すように、用量依存的効果があった。1×10CARでは、DN TGF-βRIIの追加が、腫瘍効果に有意な影響を与えた。この効果は、4×10の用量で33日目に見られず、より高い用量でCARに大きな効果が観察された。しかしながら、初期腫瘍体積の4倍までの腫瘍増殖遅延を評価すると(表27及び表28)。DN TGF-βRIIの添加は1×10及び4×10 CAR用量の両方で長期有効性に有意な影響を及ぼした。
【0331】
実施例12
コドン最適化配列から生成されたCAR-DN TGF-βRII構築物と非コドン最適化配列から生成された同様の構築物と比較するために更なる実験を行った。以下のCAR-DN TGF-βRII構築物が生成された:
a.構築物CAR DNR A:配列番号52に示す(GPC3 scFv+4-1BB細胞内ドメイン+CD3ζ細胞内ドメイン、T2A自己切断モチーフ、及びDN TGF-βRII)。
b.構築物CAR DNR B:配列番号55の(Li,Gastroenterology,2020及び国際公開第2019/094482(A1)号に記載されているGPC3 scFv+4-1BB細胞内ドメイン+CD3ζ細胞内ドメイン、T2A及びDN TGF-βRII)。
【0332】
前の試験と同様に、CD3細胞を、初代ヒト末梢血単核細胞(PBMC)から単離し、Jurkat細胞における発現力価に基づいて、ポリブレンの存在下で、及び2の感染多重度で上記のGPC3 CAR構築物を形質導入した。製造の最後に、細胞をCryostor(登録商標)CS5で凍結し、解凍まで液体窒素中に貯蔵した。解凍時に、細胞を、100UI/mLのIL-2を含むT細胞培養培地に一晩静置し、洗浄し、1:1000で希釈したLive/Dead(商標)Violetと、1:200で希釈したDyLight(商標)650で蛍光標識した組換えヒトGPC3(rhGPC3)と、抗TGF-βRII-PEと、1:100の抗CD3 BV650とをPBS中で4℃で30分間染色した。1×10細胞のDNAペレットをQuickExtract(商標)Bufferで抽出し、凍結し、及び液滴デジタルPCRによって平均ベクトルコピー数(VCN)を測定するために使用し、細胞当たりの組込みウイルスの頻度を定量化する。CAR細胞の割合は、Live/Dead(商標)陰性、CD3細胞、及びCARの平均蛍光強度(MFI)の中で、rhGPC3で染色されている細胞の割合として定義され、並びにベクターコピー数(VCN)が実施例に示される。構築物CAR DNR Aはまた、CAR細胞のMFIが高く、これはrhGPC3に対するCARのより効率的な発現又はより高い親和性を示している可能性がある。
【0333】
実施例13
前述のように製造、凍結、休止、及び染色されたCART細胞(5×10)を、HCC標的細胞(5×10)と48時間共培養し、サイトカイン放出を誘導し、上清を-80℃で凍結した。インターフェロンガンマ(IFNγ)濃度を、PBSで上清を500倍に希釈した後、Milliplex(登録商標)Map Human High SensitivityT細胞パネル(カタログ番号HSTCMAG-28PMX13BK)を使用して測定した。表30のデータは、GPC3細胞株Hep3B GPC3 KO及びSk-Hep1の存在下で、構築物CAR DNR Aが構築物CAR DNR Bよりも少ないIFNγを分泌することを示す。このデータは、CAR DNR AがCAR DNR BよりもCARによって媒介される強壮性活性化がより低いことを示唆している。
【0334】
一般に、以下の特許請求の範囲では、使用される用語は、本明細書及び特許請求の範囲に開示される特定の実施形態に特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲とともに、すべての可能な実施形態を含むと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
図1
【配列表】
2024023497000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-12-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TGF-β受容体からの細胞外ドメイン(ECD)及び膜貫通ドメイン(TMD)を含む組換えポリペプチドであって、前記組換えポリペプチドが、野生型TGF-β受容体に存在するシグナル伝達及びリン酸化を担うアミノ酸残基を欠いている、組換えポリペプチド。
【外国語明細書】