(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023501
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】BCL2ファミリータンパク質標的薬物に対する反応性予測方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240214BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 Y
G01N33/53 D
G01N33/53 N
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203884
(22)【出願日】2023-12-01
(62)【分割の表示】P 2021560871の分割
【原出願日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0162071
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0157961
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
3.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】519375468
【氏名又は名称】プロテイナ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ユン、 テ―ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ホンウォン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 ビョンサン
(72)【発明者】
【氏名】チャ、 ミンクォン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、 セム
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ヨンソ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、 チャング
(72)【発明者】
【氏名】コ、 ヨンギル
(72)【発明者】
【氏名】ユン、 ソン-ス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】BCL2ファミリータンパク質標的薬物に対する反応性予測方法、およびBCL2ファミリータンパク質標的薬物治療に適した対象の選別方法の提供。
【解決手段】試料内のアポトーシス抑制(anti-apoptotic)タンパク質とアポトーシス誘導(pro-apoptotic)タンパク質の間の相互作用を測定する段階(a1)および/または試料内のアポトーシス抑制タンパク質および/またはアポトーシス誘導タンパク質の水準(レベル)を測定する段階(a2)を含み得る。
【選択図】
図38c
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体のBCL2ファミリータンパク質標的薬物に対する反応性予測のために情報を提供する方法であって、
(a)次のうちから選択された少なくとも2つの段階の組み合せによる結果を取得する段階:
(i)試料内の第1タンパク質、および前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階であって、前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質は外部から供給されたタンパク質である、段階;
(ii)試料内の第1タンパク質、および前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階であって、前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質は試料内に存在するタンパク質である、段階;および
(iii)第1タンパク質、前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質、またはこれらすべての試料内のレベルを測定する段階、
および、
(b)段階(a)で得られた結果を基準値と比較する段階
を含み、
ここで、前記第1タンパク質はBCL2ファミリータンパク質のうちアポトーシス抑制(anti-apoptotic)タンパク質より選ばれた1種以上であり、前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質はBCL2ファミリータンパク質のうちアポトーシス誘導(pro-apoptotic)タンパク質からなる群より選ばれた1種以上であるか、または、前記第1タンパク質はBCL2ファミリータンパク質のうちアポトーシス誘導タンパク質より選ばれた1種以上であり、前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質はBCL2ファミリータンパク質のうちアポトーシス抑制タンパク質からなる群より選ばれた1種以上であり、
前記基準値は、BCL2ファミリータンパク質標的薬物治療が治療効果を発揮する患者から分離された効果群試料、またはBCL2ファミリータンパク質標的薬物治療が治療効果を発揮しない患者から分離された非効果群試料に段階を適用することにより得られた値であり、
前記試料は前記個体から分離された細胞または細胞溶解物を含む、方法。
【請求項2】
前記第1タンパク質はBCL2、BCLxL、BCLw、BFL1およびMCL1からなる群より選ばれた1種以上であり、前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質はBAD、BIM、NOXA、PUMA、BMF、tBID、BIK、HRK、BAX、BAKおよびBOKからなる群より選ばれた1種以上であるか、または
前記第1タンパク質はBAD、BIM、NOXA、PUMA、BMF、tBID、BIK、HRK、BAX、BAKおよびBOKからなる群より選ばれた1種以上であり、前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質はBCL2、BCLxL、BCLw、BFL1およびMCL1からなる群より選ばれた1種以上である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記段階(i)は、基板に固定した前記第1タンパク質に、外部から供給されて標識物質で標識された前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質(第1タンパク質相互作用タンパク質)を接触させ、前記試料内の第1タンパク質および外部から供給された第1タンパク質相互作用タンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階を含み;
前記段階(ii)は、表面に前記第1タンパク質と結合する結合物質を含む基板に、試料を接触させ、試料内の第1タンパク質および試料内の第1タンパク質相互作用タンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階を含み;
前記段階(iii)は、試料内の第1タンパク質、試料内の第1タンパク質相互作用タンパク質、またはこれらすべてのレベルを測定する段階を含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記段階(i)の測定する段階は、
(1)第1タンパク質の結合物質が含まれた基板に試料を供給して第1タンパク質を基板に固定させる段階;
(2-1)前記基板に、標識物質が付着した第1タンパク質相互作用タンパク質を外部から供給して、基板上の第1タンパク質と反応させる段階;および
(3)基板表面上の近接場領域内で前記標識物質が発生させる信号をTIRF顕微鏡(total internal reflection fluorescence microscope)を用いて測定する段階
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記段階(i)は、次の中から選ばれた一つ以上を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法:
(i-1)試料内のBCL2タンパク質および外部から供給されたBADタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-2)試料内のBCL2タンパク質および外部から供給されたBIMタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-3)試料内のBCL2タンパク質および外部から供給されたBAXタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-4)試料内のBCL2タンパク質および外部から供給されたBAKタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-5)試料内のBCLxlタンパク質および外部から供給されたBADタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-6)試料内のBCLxlタンパク質および外部から供給されたBIMタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-7)試料内のBCLxlタンパク質および外部から供給されたBAXタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-8)試料内のBCLxlタンパク質および外部から供給されたBAKタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-9)試料内のMCL1タンパク質および外部から供給されたNOXAタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-10)試料内のMCL1タンパク質および外部から供給されたBIMタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-11)試料内のMCL1タンパク質および外部から供給されたBAXタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;および
(i-12)試料内のMCL1タンパク質および外部から供給されたBAKタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階。
【請求項6】
前記段階(ii)の複合体のレベルを測定する段階は、
(1)第1タンパク質の結合物質が含まれた基板に試料を供給して第1タンパク質を基板に固定させる段階;
(2-2)標識物質が付着した第1タンパク質相互作用タンパク質の結合物質を前記基板に供給し、試料内の第1タンパク質と試料内の第1タンパク質相互作用タンパク質の間に形成された複合体中の、第1タンパク質相互作用タンパク質と反応させる段階;および
(3)基板表面上の近接場領域内で前記標識物質から発生する信号をTIRF顕微鏡(total internal reflection fluorescence microscope)を用いて測定する段階を含むか、または
(1’)第1タンパク質相互作用タンパク質の結合物質が含まれた基板に試料を供給して第1タンパク質相互作用タンパク質を基板に固定させる段階;
(2’-2)標識物質が付着した第1タンパク質結合物質を前記基板に供給し、試料内の第1タンパク質と試料内の第1タンパク質相互作用タンパク質の間に形成された複合体中の、第1タンパク質と反応させる段階;および
(3’)基板表面上の近接場領域内で前記標識物質から発生する信号をTIRF顕微鏡(total internal reflection fluorescence microscope)を用いて測定する段階を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記段階(ii)は次の中から選ばれた一つ以上を含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法:
(ii-1)試料内のBCL2タンパク質および試料内のBIMタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-2)試料内のBCL2タンパク質および試料内のBAXタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-3)試料内のBCL2タンパク質および試料内のBAKタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-4)試料内のBCLxlタンパク質および試料内のBADタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-5)試料内のBCLxlタンパク質および試料内のBIMタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-6)試料内のBCLxlタンパク質および試料内のBAXタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-7)試料内のBCLxlタンパク質および試料内のBAKタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-8)試料内のMCL1タンパク質および試料内のNOXAタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-9)試料内のMCL1タンパク質および試料内のBIMタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-10)試料内のMCL1タンパク質および試料内のBAXタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;および
(ii-11)試料内のMCL1タンパク質および試料内のBAKタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階。
【請求項8】
前記段階(iii)のタンパク質のレベルを測定する段階は、
第1タンパク質の捕獲物質、第1タンパク質相互作用タンパク質の捕獲物質、またはこれらすべてが含まれた基板に試料を供給し、前記第1タンパク質、第1タンパク質相互作用タンパク質、またはこれらすべてを基板に固定化させる段階;
標識物質が付着した第1タンパク質の検出物質、標識物質が付着した第1タンパク質相互作用タンパク質の検出物質、またはこれらすべてを前記基板に供給して反応させる段階;および
基板表面上の近接場領域内で前記標識物質が発現する信号をTIRF顕微鏡(total internal reflection fluorescence microscope)を用いて測定する段階
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記段階(iii)は次の中から選ばれた一つ以上を含む、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法:
(iii-1)試料内のBCL2タンパク質のレベルを測定する段階;
(iii-2)試料内のBCLxlタンパク質のレベルを測定する段階;
(iii-3)試料内のMCL1タンパク質のレベルを測定する段階;
(iii-4)試料内のBAXタンパク質のレベルを測定する段階;および
(iii-5)試料内のBAKタンパク質のレベルを測定する段階。
【請求項10】
次の段階(i-1)~(i-12)より選ばれた一つ以上および段階(ii-1)~(ii-11)より選ばれた一つ以上を含むか、段階(i-1)~(i-12)より選ばれた一つ以上および段階(iii-1)~(iii-5)より選ばれた一つ以上を含むか、段階(ii-1)~(ii-11)より選ばれた一つ以上および段階(iii-1)~(iii-5)より選ばれた一つ以上を含むか、段階(i-1)~(i-12)より選ばれた一つ以上、段階(ii-1)~(ii-11)より選ばれた一つ以上、および段階(iii-1)~(iii-5)より選ばれた一つ以上を含む、請求項2~9のいずれか一項に記載の方法:
(i-1)試料内のBCL2タンパク質および外部から供給されたBADタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-2)試料内のBCL2タンパク質および外部から供給されたBIMタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-3)試料内のBCL2タンパク質および外部から供給されたBAXタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-4)試料内のBCL2タンパク質および外部から供給されたBAKタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-5)試料内のBCLxlタンパク質および外部から供給されたBADタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-6)試料内のBCLxlタンパク質および外部から供給されたBIMタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-7)試料内のBCLxlタンパク質および外部から供給されたBAXタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-8)試料内のBCLxlタンパク質および外部から供給されたBAKタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-9)試料内のMCL1タンパク質および外部から供給されたNOXAタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-10)試料内のMCL1タンパク質および外部から供給されたBIMタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-11)試料内のMCL1タンパク質および外部から供給されたBAXタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(i-12)試料内のMCL1タンパク質および外部から供給されたBAKタンパク質の間に形成された複合体のレベルを測定する段階;
(ii-1)試料内のBCL2タンパク質および試料内のBIMタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-2)試料内のBCL2タンパク質および試料内のBAXタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-3)試料内のBCL2タンパク質および試料内のBAKタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-4)試料内のBCLxlタンパク質および試料内のBADタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-5)試料内のBCLxlタンパク質および試料内のBIMタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-6)試料内のBCLxlタンパク質および試料内のBAXタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-7)試料内のBCLxlタンパク質および試料内のBAKタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-8)試料内のMCL1タンパク質および試料内のNOXAタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-9)試料内のMCL1タンパク質および試料内のBIMタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-10)試料内のMCL1タンパク質および試料内のBAXタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(ii-11)試料内のMCL1タンパク質および試料内のBAKタンパク質の間に形成された複合体レベルを測定する段階;
(iii-1)試料内のBCL2タンパク質のレベルを測定する段階;
(iii-2)試料内のBCLxlタンパク質のレベルを測定する段階;
(iii-3)試料内のMCL1タンパク質のレベルを測定する段階;
(iii-4)試料内のBAXタンパク質のレベルを測定する段階;
(iii-5)試料内のBAKタンパク質のレベルを測定する段階。
【請求項11】
前記BCL2ファミリータンパク質標的薬物はベネトクラクス(Venetoclax)、ABT737、および抗BCL2抗体からなる群より選ばれたBCL2阻害剤である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記BCL2ファミリータンパク質標的薬物は抗MCL-1抗体、AMG-176、AZD5991、およびマリトクラックス(Maritoclax)からなる群より選ばれたMCL1阻害剤である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記BCL2ファミリータンパク質標的薬物は抗BCLxL抗体およびABT263からなる群より選ばれたBCLxL阻害剤である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記個体は癌患者であり、前記細胞は前記個体から分離された癌細胞である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記癌は血液癌である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
BCL2ファミリータンパク質標的薬物に対する反応性予測方法、およびBCL2ファ
ミリータンパク質標的薬物治療に適した対象選別方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
BCL2(B-cell lymphoma 2)ファミリータンパク質はアポトーシ
スを誘発(pro-apoptotic)または抑制(anti-apoptotic)
することでアポトーシス(apoptosis)を調節するタンパク質である。
【0003】
BCL2ファミリータンパク質は黒色腫、乳癌、前立腺癌、慢性リンパ球性白血病およ
び肺癌を含む多様な癌の原因として知られており、癌治療に対する抵抗性を誘発する原因
としても知られており、精神分裂症および自己免疫の原因である可能性も提示されている
。このような理由からBCL2ファミリータンパク質は抗癌剤の良い標的となっており、
BCL2ファミリータンパク質を標的とする多様な抑制剤(inhibitor)が開発
されている。
【0004】
このようなBCL2ファミリータンパク質の標的薬物が癌治療に効果的に適用されるた
めにBCL2ファミリータンパク質によるアポトーシス調節信号を定量的に把握できる手
段の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
信号伝達の媒介になるタンパク質の相互作用を定量的に測定して、BCL2ファミリー
タンパク質標的薬物の処方によって癌(例えば、血液癌)治療が可能な患者を確認できる
個別オーダーメード治療技術が提供される。
【0006】
一例で、個体のBCL2ファミリータンパク質標的薬物に対する反応性もしくは個体で
のBCL2ファミリータンパク質標的薬物の効能を予測する方法または前記予測のために
情報を提供する方法が提供される。
【0007】
他の例は、BCL2ファミリータンパク質標的薬物に対して反応性を有する対象または
BCL2ファミリータンパク質標的薬物が効能を示す個体またはBCL2ファミリータン
パク質標的薬物を適用するのに適した個体を選別(確認)する方法または前記選別(確認
)のために情報を提供する方法が提供される。
【0008】
前記方法は、前記薬物に対して反応性を有する個体、前記薬物が効能を示す個体、また
は前記薬物もしくは前記薬物を用いる治療を適用するのに適した個体に前記薬物を投与す
る段階をさらに含み得る。
【0009】
他の例は、BCL2ファミリータンパク質標的薬物を含み、BCL2ファミリータンパ
ク質標的薬物に対して反応性を有する個体、BCL2ファミリータンパク質標的薬物が効
能を示す個体、またはBCL2ファミリータンパク質標的薬物もしくはそれを用いた治療
を適用するのに適した個体の癌治療用組成物を提供する。
【0010】
他の例は、前記方法により確認されたBCL2ファミリータンパク質標的薬物に対して
反応性を有する個体、BCL2ファミリータンパク質標的薬物が効能を示す個体、または
BCL2ファミリータンパク質標的薬物もしくはそれを用いた治療を適用するのに適した
個体に前記BCL2ファミリータンパク質標的薬物の薬学的有効量を投与する段階を含む
、癌の治療方法が提供される。
【0011】
前記BCL2ファミリータンパク質標的薬物はBCL2ファミリータンパク質を標的と
するもの(例、BCL2タンパク質阻害剤またはMCL1タンパク質阻害剤)であり得る
。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書で提供される、個体のBCL2ファミリータンパク質標的薬物に対する反応性
もしくは個体でのBCL2ファミリータンパク質標的薬物の効能を予測する方法または前
記予測のために情報を提供する方法;および/またはBCL2ファミリータンパク質標的
薬物に対して反応性を有する個体もしくはBCL2ファミリータンパク質標的薬物が効能
を示す個体もしくはBCL2ファミリータンパク質標的薬物を適用するのに適した個体を
選択(確認)する方法または前記選択(確認)のために情報を提供する方法は、試料内の
アポトーシス抑制(anti-apoptotic)タンパク質とアポトーシス誘導(p
ro-apoptotic)タンパク質の間の相互作用を測定する段階(a1)(例えば
;下記の段階(i)および/または(ii))および/または試料内のアポトーシス抑制
タンパク質および/またはアポトーシス誘導タンパク質の水準(レベル)を測定する段階
(a2)(例えば、下記の段階(iii))を含み得る。
【0013】
一例で、本明細書で提供される方法は、次より選ばれた一つ以上(例、1個、2個、ま
たは3個)を含み得る:
(i)試料内の第1タンパク質および前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質の
間の相互作用を測定する段階として、前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質は外
部から供給されたタンパク質である段階(第1タンパク質-タンパク質相互作用の測定段
階);
(ii)試料内の第1タンパク質および前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質
の間の相互作用を測定する段階として、前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質は
試料内に存在するタンパク質である段階(第2タンパク質-タンパク質相互作用の測定段
階);および
(iii)第1タンパク質、前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質、またはこ
れらすべての試料内の水準を測定する段階。
【0014】
一例で、本明細書で提供される方法は、前記段階(i)、段階(ii)、または段階(
iii)を含み得る。他の例で、本明細書で提供される方法は、前記段階(i)および段
階(ii)の組み合わせ、段階(i)および段階(iii)の組み合わせ、段階(ii)
および段階(iii)の組み合わせ、または段階(i)、段階(ii)、および段階(i
ii)の組み合わせを含み得る。
【0015】
前記第1タンパク質および第1タンパク質と相互作用するタンパク質(以下、「第1タ
ンパク質と相互作用するタンパク質」を「第1タンパク質相互作用タンパク質」とも記載
する)はアポトーシス抑制(anti-apoptotic)サブタイプタンパク質と細
胞生存誘導サブタイプタンパク質より選ばれ得る。
【0016】
一例として、前記段階(i)~(iii)の第1タンパク質は、BCL2ファミリータ
ンパク質のうちの「細胞生存誘導(pro-survival)またはアポトーシス抑制
(anti-apoptotic)サブタイプタンパク質」(以下、「アポトーシス抑制
タンパク質」と記載する)より選ばれた1種以上であり得る。例えば、前記段階(i)~
(iii)の第1タンパク質は、互いに同一であるか異なってもよく、それぞれ独立して
、BCL2、BCLxL、BCLw、BFL1およびMCL1からなる群より選ばれた1
種以上(例、1種、2種または3種)であり得る。前記段階(i)~(iii)の第1タ
ンパク質と相互作用するタンパク質は、BCL2ファミリータンパク質のうちアポトーシ
ス誘導(pro-apoptotic)サブタイプタンパク質(以下、「細胞アポトーシ
ス誘導(pro-apoptotic)サブタイプタンパク質」を「アポトーシス誘導タ
ンパク質」と記載する)より選ばれた1種以上であり得る。一例で、段階(i)~(ii
i)の前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質は、互いに同一であるか異なっても
よく、それぞれ独立して、アポトーシス誘導タンパク質のうちBH3サブタイプ(BH3
-only)タンパク質(第2タンパク質)およびエフェクター(effector)サ
ブタイプタンパク質(第3タンパク質)からなる群より選ばれた1種以上であり得る。例
えば、前記第2タンパク質はBAD、BIM、PUMA、BMF、BID、tBID、B
IK、HRKおよびNOXAからなる群より選ばれた1種以上(例、1種、2種または3
種)であり、前記第3タンパク質はBAX、BOKおよびBAKからなる群より選ばれた
1種以上(例、1種または2種)であり得る。一例で、前記第1タンパク質と相互作用す
るタンパク質はBAD、BIM、PUMA、BMF、BID、tBID、BIK、HRK
、NOXA、BAX、BOKおよびBAKからなる群より選ばれた1種以上(例、1種、
2種、3種、4種または5種)であり得る。前記方法が段階(i)~(iii)のうち2
以上を含む場合、各段階での第1タンパク質と相互作用するタンパク質は互に同一または
異なってもよい。
【0017】
他の例で、前記段階(i)~(iii)の第1タンパク質はBCL2ファミリータンパ
ク質のうちのアポトーシス誘導(pro-apoptotic)タンパク質より選ばれた
1種以上であり得る。一例で、前記段階(i)~(iii)の第1タンパク質は、互いに
同一であるか異なってもよく、それぞれ独立して、BCL2ファミリータンパク質のうち
のアポトーシス誘導タンパク質のうちBH3サブタイプ(BH3-only)タンパク質
およびエフェクター(effector)サブタイプタンパク質からなる群より選ばれた
1種以上であり得る。例えば、前記BH3サブタイプ(BH3-only)タンパク質は
BAD、BIM、PUMA、BMF、tBID、BIK、HRKおよびNOXAからなる
群より選ばれた1種以上(例、1種、2種または3種)であり、前記エフェクター(ef
fector)サブタイプタンパク質はBAX、BOKおよびBAKからなる群より選ば
れた1種以上(例、1種または2種)であり得る。前記段階(i)~(iii)の第1タ
ンパク質と相互作用するタンパク質はBCL2ファミリータンパク質のうちアポトーシス
抑制(anti-apoptotic)タンパク質より選ばれた1種以上であり得る。例
えば、前記段階(i)~(iii)の第1タンパク質と相互作用するタンパク質は、互い
に同一であるか異なってもよく、それぞれ独立して、BCL2、BCLxL、BCLw、
BFL-1およびMCL1からなる群より選ばれた1種以上(例、1種、2種または3種
)であり得る。
【0018】
前記方法が段階(i)~(iii)のうち2以上を含む場合、各段階での第1タンパク
質および第1タンパク質と相互作用するタンパク質は互に同一または異なってもよい。
【0019】
本明細書で、用語の「試料(生物学的試料)」は個体(例えば、人間)から分離した細
胞または細胞溶解物を含むものであり得る。前記個体は疾病(例えば、癌)の治療を必要
とする個体として、BCL2ファミリータンパク質標的薬物の投与もしくはBCL2ファ
ミリータンパク質標的薬物を用いた治療法の適用対象個体またはBCL2ファミリータン
パク質標的薬物の投与もしくはBCL2ファミリータンパク質標的薬物を用いた治療法の
効能(薬物反応性)の確認を必要とする個体であり得る。一具体例で、前記個体は癌患者
(例えば、人間)であり、前記細胞は前記個体から分離した癌細胞であり得る。例えば、
前記個体は人間血液癌患者であり、前記試料は血液癌患者から分離した白血球(例、顆粒
白血球、リンパ球、および/または単核球(例、末梢血液単核球(peripheral
blood mononuclear cell;PBMC)など)など)、骨髄細胞
(例、造血幹細胞など)、前記細胞を含む血液、骨髄、バフィーコート(buffy c
oat)、およびこれらの溶解物などからなる群より選ばれた1種以上であり得る。本明
細書で提供される方法での選択または確認対象個体から得られた試料は、比較のための対
照試料(例えば、後述する比較のための基準値選定のための効果群試料または非効果群試
料)と区別するために「試験試料」と表す。
【0020】
本明細書で、用語の「外部から供給された(exogenous)タンパク質(例えば
、第1タンパク質と相互作用するタンパク質)」は、試料内に存在する内在の(endo
genous)タンパク質でない外部から添加したタンパク質を意味する。一例で、前記
外部から供給されたタンパク質は通常の標識物質(例えば、蛍光物質など)で標識された
ものであり得るが、これに制限されるものではない。
【0021】
一例で、前記段階(i)は試料内のBCL2ファミリータンパク質(第1タンパク質)
と外部から供給された(exogenous)BCL2ファミリータンパク質(第1タン
パク質と相互作用するタンパク質)の間の相互作用を測定する段階(第1タンパク質-タ
ンパク質相互作用の測定段階)として、基板に固定された第1タンパク質(試料内のタン
パク質)に、外部から供給されて標識物質で標識された前記第1タンパク質と相互作用す
るタンパク質を接触させ、前記第1タンパク質(試料内のタンパク質)およびこれと相互
作用するタンパク質(外部投入タンパク質)の間のタンパク質-タンパク質相互作用を測
定(例えば、第1タンパク質および第1タンパク質と相互作用するタンパク質の間に形成
された複合体水準の測定)する段階を含み得る。
【0022】
一例で、前記段階(ii)は試料内(endogenous)でのBCL2ファミリー
タンパク質の間の相互作用を測定する段階(第2タンパク質-タンパク質相互作用の測定
段階)として、前記第1タンパク質と結合する結合物質(例えば、第1タンパク質に対す
る抗体など)を含む基板に、第1タンパク質を含む試料を接触させ、前記第1タンパク質
(試料内のタンパク質)および第1タンパク質と相互作用するタンパク質(試料内のタン
パク質)の間のタンパク質-タンパク質相互作用を測定(例えば、第1タンパク質および
第1タンパク質と相互作用するタンパク質の間に形成された複合体水準を測定)する段階
を含み得る。
【0023】
一例で、前記段階(i)および/または(ii)において、第1タンパク質およびこれ
と相互作用するタンパク質の間に形成された複合体水準は、前記第1タンパク質と相互作
用するタンパク質(段階(i))または前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質に
結合する結合物質(段階(ii))に標識された標識物質から発生した信号強度で測定で
きるが、これに制限されるものではない。
【0024】
一例で、前記段階(iii)は、第1タンパク質、第1タンパク質と相互作用するタン
パク質、またはこれらすべての試料内の水準(Total expression le
vel)を測定する段階を含み得る。前記試料内の水準は試料内タンパク質の発現水準(
例えば、タンパク質濃度)、活性化されたタンパク質の発現水準(例えば、活性化された
タンパク質濃度)、リン酸化されたタンパク質の発現水準(例えば、リン酸化されたタン
パク質の濃度)、またはこれらのうち2以上の組み合わせであり得る。
【0025】
一具体例で、前記段階(i)(第1タンパク質-タンパク質相互作用の測定段階)は、
次の中から選ばれた一つ以上(例、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、
または12個)を含み得る:
(i-1)試料内のBCL2タンパク質および外部から供給されたBADタンパク質の
間のタンパク質-タンパク質相互作用を測定する段階;
(i-2)試料内のBCL2タンパク質および外部から供給されたBIMタンパク質の
間のタンパク質-タンパク質相互作用を測定する段階;
(i-3)試料内のBCL2タンパク質および外部から供給されたBAXタンパク質の
間のタンパク質-タンパク質相互作用を測定する段階;
(i-4)試料内のBCL2タンパク質および外部から供給されたBAKタンパク質の
間のタンパク質-タンパク質相互作用を測定する段階;
(i-5)試料内のBCLxlタンパク質および外部から供給されたBADタンパク質
の間のタンパク質-タンパク質相互作用を測定する段階;
(i-6)試料内のBCLxlタンパク質および外部から供給されたBIMタンパク質
の間のタンパク質-タンパク質相互作用を測定する段階;
(i-7)試料内のBCLxlタンパク質および外部から供給されたBAXタンパク質
の間のタンパク質-タンパク質相互作用を測定する段階;
(i-8)試料内のBCLxlタンパク質および外部から供給されたBAKタンパク質
の間のタンパク質-タンパク質相互作用を測定する段階;
(i-9)試料内のMCL1タンパク質および外部から供給されたNOXAタンパク質
の間のタンパク質-タンパク質相互作用を測定する段階;
(i-10)試料内のMCL1タンパク質および外部から供給されたBIMタンパク質
の間のタンパク質-タンパク質相互作用を測定する段階;
(i-11)試料内のMCL1タンパク質および外部から供給されたBAXタンパク質
の間のタンパク質-タンパク質相互作用を測定する段階;および
(i-12)試料内のMCL1タンパク質および外部から供給されたBAKタンパク質
の間のタンパク質-タンパク質相互作用を測定する段階。
【0026】
一具体例で、前記段階(i)(第1タンパク質-タンパク質相互作用の測定段階)のそ
れぞれのタンパク質-タンパク質相互作用の測定段階は、
(1)第1タンパク質の結合物質が含まれた基板に前記試料を供給して第1タンパク質
を基板に固定させる段階;
(2-1)前記基板に、標識物質が付着した第1タンパク質相互作用タンパク質を外部
から供給して基板上の第1タンパク質と反応させる段階;および
(3)基板表面上の近接場領域内で前記標識物質が発生させる信号をTIRF顕微鏡(
total internal reflection fluorescence m
icroscope)を用いて測定する段階
により行われた前記段階を含み得る。
【0027】
第1タンパク質-タンパク質相互作用の測定段階において、前記外部から供給されたタ
ンパク質(第1タンパク質相互作用タンパク質)は標識物質で標識された(標識物質が付
着した)ものであり得る。第1タンパク質-タンパク質相互作用の測定段階において、前
記タンパク質-タンパク質相互作用の測定は、第1タンパク質(試料内のタンパク質)お
よびこれと相互作用するタンパク質(外部タンパク質)の間に形成された複合体水準を測
定して行われることができ、一例で、前記複合体水準は第1タンパク質相互作用タンパク
質に付着した標識物質で発生する信号によって測定される。
【0028】
一具体例で、前記段階(ii)(第2タンパク質-タンパク質相互作用の測定段階)は
、次の中から選ばれた一つ以上(例、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、また
は11個)を含み得る:
(ii-1)試料内のBCL2タンパク質および試料内のBIMタンパク質の間のタン
パク質-タンパク質相互作用(例、形成された複合体水準)を測定する段階;
(ii-2)試料内のBCL2タンパク質および試料内のBAXタンパク質の間のタン
パク質-タンパク質相互作用(例、形成された複合体水準)を測定する段階;
(ii-3)試料内のBCL2タンパク質および試料内のBAKタンパク質の間のタン
パク質-タンパク質相互作用(例、形成された複合体水準)を測定する段階;
(ii-4)試料内のBCLxlタンパク質および試料内のBADタンパク質の間のタ
ンパク質-タンパク質相互作用(例、形成された複合体水準)を測定する段階;
(ii-5)試料内のBCLxlタンパク質および試料内のBIMタンパク質の間のタ
ンパク質-タンパク質相互作用(例、形成された複合体水準)を測定する段階;
(ii-6)試料内のBCLxlタンパク質および試料内のBAXタンパク質の間のタ
ンパク質-タンパク質相互作用(例、形成された複合体水準)を測定する段階;
(ii-7)試料内のBCLxlタンパク質および試料内のBAKタンパク質の間のタ
ンパク質-タンパク質相互作用(例、形成された複合体水準)を測定する段階;
(ii-8)試料内のMCL1タンパク質および試料内のNOXAタンパク質の間のタ
ンパク質-タンパク質相互作用を測定する段階;
(ii-9)試料内のMCL1タンパク質および試料内のBIMタンパク質の間のタン
パク質-タンパク質相互作用(例、形成された複合体水準)を測定する段階;
(ii-10)試料内のMCL1タンパク質および試料内のBAXタンパク質の間のタ
ンパク質-タンパク質相互作用(例、形成された複合体水準)を測定する段階;および
(ii-11)試料内のMCL1タンパク質および試料内のBAKタンパク質の間のタ
ンパク質-タンパク質相互作用(例、形成された複合体水準)を測定する段階。
【0029】
一具体例で、前記段階(ii)(第2タンパク質-タンパク質相互作用の測定段階)の
それぞれのタンパク質相互作用(例、形成された複合体水準)を測定する段階は、
(1)第1タンパク質の結合物質が含まれた基板に試料を供給(投入)して第1タンパ
ク質を基板に固定させる段階;
(2-2)標識物質が付着した第1タンパク質相互作用タンパク質の結合物質を前記基
板に供給し、第1タンパク質(試料内のタンパク質)と第1タンパク質相互作用タンパク
質(試料内のタンパク質)の間に形成された複合体(complex)のうち第1タンパ
ク質相互作用タンパク質と反応させる段階;および
(3)基板表面上の近接場領域内で前記標識物質から発生する信号をTIRF顕微鏡(
total internal reflection fluorescence m
icroscope)を用いて測定する段階
により行われた前記段階を含み得る。
【0030】
他の例で、前記段階(ii)(第2タンパク質-タンパク質相互作用の測定段階)のそ
れぞれのタンパク質相互作用(例、形成された複合体水準)を測定する段階は、
(1)第1タンパク質相互作用タンパク質の結合物質が含まれた基板に試料を供給(投
入)して第1タンパク質相互作用タンパク質を基板に固定させる段階;
(2-2)標識物質が付着した第1タンパク質の結合物質を前記基板に供給し、第1タ
ンパク質(試料内のタンパク質)と第1タンパク質相互作用タンパク質(試料内のタンパ
ク質)の間に形成された複合体(complex)のうち第1タンパク質と反応させる段
階;および
(3)基板表面上の近接場領域内で前記標識物質から発生する信号をTIRF顕微鏡(
total internal reflection fluorescence m
icroscope)を用いて測定する段階
により行われた前記段階を含み得る。
【0031】
第2タンパク質-タンパク質相互作用の測定段階において、前記複合体は試料内の第1
タンパク質と試料内の第1タンパク質相互作用タンパク質の間で内在的に形成されたもの
である。第2タンパク質-タンパク質相互作用の測定段階において、前記タンパク質-タ
ンパク質相互作用の測定は第1タンパク質(試料内のタンパク質)およびこれと相互作用
するタンパク質(試料内のタンパク質)の間に形成された複合体水準を測定して行われ得
、一例で、前記複合体水準は前記第1タンパク質相互作用タンパク質の結合物質または前
記第1タンパク質の結合物質に付着した標識物質で発生する信号によって測定され得る。
【0032】
一具体例で、前記段階(iii)は、次の中から選ばれた一つ以上を含み得る:
(iii-1)試料内のBCL2タンパク質の水準を測定する段階;
(iii-2)試料内のBCLxlタンパク質の水準を測定する段階;
(iii-3)試料内のMCL1タンパク質の水準を測定する段階;
(iii-4)試料内のBAXタンパク質の水準を測定する段階;および
(iii-5)試料内のBAKタンパク質の水準を測定する段階。
【0033】
前記段階(iii)のそれぞれの水準の測定段階は、
-第1タンパク質の結合物質(第1タンパク質の基板固定のための捕獲物質)、第1タ
ンパク質相互作用タンパク質の結合物質(第1タンパク質相互作用タンパク質の固定のた
めの捕獲物質)、またはこれらすべてが含まれた基板に試料を供給し、前記第1タンパク
質、第1タンパク質相互作用タンパク質、またはこれらすべてを基板に固定化させる段階
;
-標識物質が付着した第1タンパク質の結合物質(基板に第1タンパク質が固定化され
た場合、第1タンパク質検出のための検出物質)、標識物質が付着した第1タンパク質相
互作用タンパク質の結合物質(基板に第1タンパク質相互作用タンパク質が固定化された
場合、第1タンパク質相互作用タンパク質検出のための検出物質)、またはこれらすべて
(基板に第1タンパク質および第1タンパク質相互作用タンパク質が固定化された場合)
を前記基板に供給して反応させる段階;および
【0034】
-基板表面上の近接場領域内で前記マーカーが発現する信号をTIRF顕微鏡(tot
al internal reflection fluorescence micr
oscope)を用いて測定する段階
により行われたり前記段階を含み得る。
【0035】
前記捕獲物質と検出物質は同じ標的タンパク質に結合する互いに異なるタンパク質とし
て、前記標的タンパク質上の結合する部位が互いに完全に重複しないすべての結合物質(
例えば、抗体)のうちそれぞれ独立して選択される。
【0036】
前記段階(ii)および/または(iii)で使用された第1タンパク質の結合物質ま
たは第1タンパク質相互作用タンパク質の結合物質は、第1タンパク質または第1タンパ
ク質相互作用タンパク質に結合する物質(例えば、抗体、抗原結合断片、抗体類似体、ア
プタマー、小分子化合物など)であり得、標識物質で標識されたものであり得る。このと
き、前記第1タンパク質相互作用タンパク質の結合物質は第1タンパク質相互作用タンパ
ク質が第1タンパク質と相互作用(結合)する部位と相違する部位で第1タンパク質相互
作用タンパク質に結合する物質であり得る。
【0037】
一例で、段階(i)、(ii)または(iii)で第1タンパク質を基板に固定(pu
ll down)するための第1タンパク質の結合物質、段階(ii)で第1タンパク質
と第1タンパク質相互作用タンパク質の間に形成された複合体の検出(detectin
g)のための第1タンパク質相互作用タンパク質の結合物質、および/または段階(ii
i)で第1タンパク質または第1タンパク質相互作用タンパク質の検出(detecti
ng)のための第1タンパク質の結合物質または第1タンパク質相互作用タンパク質の結
合物質は各結合対象タンパク質に対して通常使用可能なすべての抗体より格別な制限なし
に選ばれた1種以上のものであり得る。前記段階(i)~(iii)のうち2以上が行わ
れて同じ第1タンパク質および/または第1タンパク質相互作用タンパク質が2以上の段
階で共通して使用される場合、同じタンパク質の固定(pull down)および/ま
たは検出(detecting)のために各段階で使用される結合物質は互いに同一また
は相違してもよい。本明細書に記載された第1タンパク質および第1タンパク質と相互作
用するタンパク質の結合物質は次のように例示することができる:
【0038】
アポトーシス抑制(anti-apoptotic)タンパク質
BCL2:ab32124、ab182858、ab238041、ab692(以上
、Abcam)、3498S、15071S、#4223(以上、CST)、BSM-5
2304R、BSM-10846M、BSM-33411M、BSM-52022M(以
上、Bioss)、NB100-56098(Novus)、12789-1-AP(P
roteintech)、LS-C159170-400(LSBio)、13-880
0(Thermo Fisher Scientific)、610538(BD)、s
c-509、sc-23960、sc-7382(以上、Santa cruz)、TA
806591、CF806589、UM800117、CF806639(以上、Ori
Gene)など;
BCL-XL:2764S、2762S、2870、3498S(以上、CST)、a
b77571、ab59348、ab32370、ab178844(以上、Abcam
)、MA5-11950、MA5-28637(以上、Invitrogen)、MA5
-15142(Thermo Fisher Scientific)、BSM-512
29M(Bioss)、sc-56021、sc-136207、sc-271121、
sc-70417、sc-23958(以上、Santa cruz)、ALX-804
-660-C100(Enzo)、66020-1-IG(Proteintech)、
NBP2-25240、NBP2-32810、NBP2-44416、NBP1-47
665(以上、Novus)、TA506188(OriGene)、H0000059
8-M01A(Abnova)など;
MCL1:ab32087(Abcam)、5453S、39224S、#94296
(以上、CST)、MA5-32060、14-6701-82、14-9047-82
、MA5-15236、14-6701-82、14-9047-82(以上、Invi
trogen)、SP2170P、TA500986、TA500990(以上、Ori
Gene)、16225-1-AP(Proteintech)、LS-C475-0.
1(LSBio)、MAB8825(Abnova)、sc-12756、sc-744
37、sc-74436、sc-377487、sc-69839、sc-69840、
sc-53951(以上、Santa cruz)など;
BCLw:MA5-15076(Invitrogen)、#2724(CST)、s
c-293236、sc-130701(以上、Santa cruz)、NBP2-6
1706(Novus)など;
BFL1:NBP2-67563、NBP2-46568CST(以上、Novus)
、#14093(CST)、MA5-11757(Invitrogen)、sc-16
6943(Santa cruz)など;
【0039】
アポトーシス誘導(pro-apoptotic)タンパク質
BAX:ab32503、ab182733、ab81083(以上、Abcam)、
#5023、2774S、2772S(以上、CST)、MA5-14003、MA5-
16322、35-9700(以上、Invitrogen)、BSM-52316R、
BSM-33279M(以上、Bioss)、50599-2-Ig(Proteint
ech)、SAB4502546(Merck)、NB100-56096(Novus
)、610982、610983(以上、BD)、sc-7480、sc-23959、
sc-70408(以上、Santa cruz)、CF810335、TA81033
4(以上、OriGene)、#633602(Biolegend)、LS-C357
719-20(LSBio)など;
BAK:ab238515、ab32371、ab69404、ab137646(以
上、Abcam)、6947S、12105S(以上、CST)、B5897(Merc
k)、06-536、AM03-100UGCN、SAB1305656(以上Sigm
a)、H00000578-M01A、MAB8753(Abnova)、sc-517
390、sc-518110(以上、Santa cruz)、MA5-36225(I
nvitrogen)、GTX10808(GeneTex)など;
BAD:9296S(CST)、sc-8044(Santa cruz)、MA5-
11117、MA5-15230(以上、Invitrogen)など;
NOXA:ab68523(Abcam)、sc-515840、sc-56169、
sc-398873(以上、Santa cruz)、など;
BIM:MA5-15763、MA5-15764(以上、Invitrogen)、
sc-374358(Santa cruz)、CF812441(OriGene)な
ど。
【0040】
前記列挙した抗体は例示のためのものであり、本発明はこれら抗体を使用することに制
限されるものではない。特定のタンパク質に対する結合活性が知られている抗体であれば
すべて使用可能であり、等しい効果を期待することができる。
【0041】
本明細書で、試料内のタンパク質-タンパク質相互作用の測定(段階(ii))で第1
タンパク質相互作用タンパク質または第1タンパク質の検出(detecting)のた
めに使用される第1タンパク質相互作用タンパク質または第1タンパク質の結合物質は、
標識物質で標識されたものであり得、前記結合物質が抗体である場合に、抗体に標識物質
が付着したり、前記抗体に結合する二次抗体に標識物質が付着することができる。
【0042】
本明細書で提供される方法は、前記BCL2ファミリータンパク質の間の相互作用を測
定する段階(a1)および/または試料内のBCL2ファミリータンパク質の水準を測定
する段階(a2)に加えて、
(b)前記段階(a1)で測定されたBCL2ファミリータンパク質の間の相互作用お
よび/または段階(a2)で測定された試料内のBCL2ファミリータンパク質水準を基
準値と比較する段階(b1)、および/または前記試料または前記試料が分離された個体
が前記BCL2ファミリータンパク質標的薬物に対して反応性を有する患者であることお
よび/または前記BCL2ファミリータンパク質標的薬物が前記試料または前記試料が分
離された個体で効果を発揮できるものであることを確認(または決定、判断)する段階、
および/または、前記個体を、BCL2ファミリータンパク質標的薬物を適用するのに適
した対象として選択(または確認、決定、判断)する段階(b2)をさらに含み得る。
【0043】
本明細書で提供される方法は、前記段階(b)(具体的には、b2)以後に、前記段階
(b)(具体的には、b2)でBCL2ファミリータンパク質標的薬物に対して反応性を
有するか前記薬物が効能を示すと確認された個体、または前記薬物を適用するのに適した
ものとして選ばれた個体に、前記BCL2ファミリータンパク質標的薬物を投与する段階
をさらに含み得る。
【0044】
前記BCL2ファミリータンパク質標的薬物に対する反応性または前記薬物の効能は、
前記薬物の標的タンパク質(例えば、BCL2タンパク質)を標的(例えば、阻害)する
ことで得られる病理学的効果を意味し、例えば、抗癌効果(癌(または癌細胞)の軽減、
減少、緩和、除去、治療、および/または進行および/または転移の抑制または遅延など
)、より具体的には、血液癌に対する抗癌効果であり得る。
【0045】
前記BCL2ファミリータンパク質標的薬物の投与または前記薬物を用いる治療に適し
た個体は、前記BCL2ファミリータンパク質標的薬物が疾病の治療効果を示し得る患者
を意味し、例えば、前記BCL2ファミリータンパク質標的薬物の投与または前記BCL
2ファミリータンパク質標的薬物を用いる治療によって抗癌効果(癌または癌細胞の軽減
、減少、緩和、除去、治療など)が発揮できる患者であり得る。
【0046】
前記段階(b)(具体的には、b1)で、基準値は、本明細書で提供される方法を用い
て既存の癌患者(例えば、血液癌患者)から得た情報に基づいて設定することができる。
一例として、前記基準値は、1)BCL2ファミリータンパク質標的薬物治療が効果を発
揮した(BCL2ファミリータンパク質標的薬物に対して反応性がある)患者もしくは患
者群、または前記患者もしくは患者群から分離した試料(効果群試料)に対して本明細書
で提供される方法(前記段階(a1)および/または(a2))を行って得られた測定値
、または2)BCL2ファミリータンパク質標的薬物治療が効果を発揮できない(BCL
2ファミリータンパク質標的薬物に対して反応性がない)患者もしくは患者群、または前
記患者もしくは患者群から分離した試料(非効果群試料)に対して本明細書で提供される
方法(前記段階(a1)および/または(a2))を行って得られた測定値であり得る。
【0047】
一例で、前記基準値が効果群試料から得られたものであるとき、試験試料内のBCL2
ファミリータンパク質の間の相互作用を測定する段階(a1)および/または試料内のB
CL2ファミリータンパク質の水準を測定する段階(a2)で得られた測定値が前記基準
値以上の場合(基準値と類似の範囲(例えば、同一または10%以内、5%以内、4%以
内、3%以内、2%以内、または1%以内の誤差範囲)または前記基準値を超える場合)
、前記試料または前記試料が得られた個体を、前記BCL2ファミリータンパク質標的薬
物に対して反応性を有する患者(またはBCL2ファミリータンパク質標的薬物治療(投
与)を適用するのに適した患者)として選択するか、前記試料または個体に前記BCL2
ファミリータンパク質標的薬物が効果を発揮するものと確認(または決定、判断)するこ
とができる(段階b2)。
【0048】
他の例で、前記基準値が非効果群試料から得られたものであるとき、試験試料内のBC
L2ファミリータンパク質の間の相互作用を測定する段階(a1)および/または試料内
のBCL2ファミリータンパク質の水準を測定する段階(a2)で得られた測定値が、前
記基準値と類似の範囲(例えば、同一または10%以内、5%以内、4%以内、3%以内
、2%以内、または1%以内の誤差範囲)または前記基準値未満の場合、前記試料または
前記試料が得られた個体を、前記BCL2ファミリータンパク質標的薬物に対して反応性
がない患者(またはBCL2ファミリータンパク質標的薬物治療(投与)が効果を示さな
い患者)として選択するか、前記試料または個体に前記BCL2ファミリータンパク質標
的薬物が効果を発揮しないものと確認(または決定、判断)することができる(段階b2
)。
【0049】
また他の一例として、前記基準値は、効果群に対して試料内のBCL2ファミリータン
パク質の間の相互作用を測定する段階(a1)および/または試料内のBCL2ファミリ
ータンパク質の水準を測定する段階(a2)で得られた測定値の最小値、または中間値ま
たは平均値と設定することができる。患者情報が追加されることにより基準値は調整され
得、様々な分析値から導き出された数式またはアルゴリズムにより基準値が調整されるこ
ともできる。本明細書で提供される方法の段階(b)で、段階(a1)および/または段
階(a2)の測定値が当該基準値より高い(類似の範囲および/または超過)場合、試験
試料または前記試料が得られた個体を、BCL2ファミリータンパク質標的薬物治療に効
果(反応性)がある患者またはBCL2ファミリータンパク質標的薬物治療(投与)に適
した患者として選定することができる。
【0050】
また他の例として、前記基準値は、非効果群に対して試料内のBCL2ファミリータン
パク質の間の相互作用を測定する段階(a1)および/または試料内のBCL2ファミリ
ータンパク質の水準を測定する段階(a2)で得られた測定値の最大値、または中間値ま
たは平均値と設定することができる。患者情報が追加されることにより基準値は調整され
得、様々な分析値から導き出された数式またはアルゴリズムにより基準値が調整されるこ
ともできる。本明細書で提供される方法の段階(b)で、段階(a1)および/または段
階(a2)の測定値が当該基準値より低い(類似の範囲および/または未満)場合、試験
試料または前記試料が得られた個体を、BCL2ファミリータンパク質標的薬物治療に効
果がない患者として選定することができる。
【0051】
他の例で、試料内の前記基準値は、比較タンパク質および前記比較タンパク質と相互作
用するタンパク質の間の相互作用および/または試料内の比較タンパク質および/または
前記比較タンパク質と相互作用するタンパク質の水準(発現量または濃度)であり得る。
前記比較タンパク質および比較タンパク質と相互作用するタンパク質はアポトーシス抑制
(anti-apoptotic)とアポトーシス誘導タンパク質より選ばれる。前記比
較タンパク質および比較タンパク質と相互作用するタンパク質は先立って説明した第1タ
ンパク質および第1タンパク質と相互作用するタンパク質とそれぞれ同一であるか相違す
るものであり得る。一例で、前記比較タンパク質は第1タンパク質と相違するものであり
得、前記比較タンパク質と相互作用するタンパク質は第1タンパク質相互作用タンパク質
と同一であるか相違するものであり得る。
【0052】
この場合、本明細書で提供される方法は、前記段階(b)以前に、次の段階(a1’)
および/または(a2’)をさらに含み得る:
(a1’)試料内の比較タンパク質および前記比較タンパク質と相互作用するタンパク
質の間の相互作用を測定する段階および/または(a2’)試料内の比較タンパク質およ
び/または比較タンパク質相互作用タンパク質の水準を測定する段階。
【0053】
他の例は、BCL2ファミリータンパク質標的薬物を次の個体に投与する段階を含む、
癌(例、血液癌)治療方法、およびBCL2ファミリータンパク質標的薬物を含む、次の
個体に適用(投与)するための癌(例、血液癌)治療用薬学組成物または次の個体の癌(
例、血液癌)を治療するための癌治療用薬学組成物を提供する:
個体から得られた(分離した)試料内のBCL2ファミリータンパク質の間の相互作用
(例えば、段階(a1)の(i)および/または(ii)によって測定される)および/
または試料内のBCL2ファミリータンパク質水準(例えば、段階(a2)で測定される
)が、前記基準値(例えば、効果群から得られた基準値)と類似の範囲または前記基準値
を超える個体(例えば、本明細書で提供されるBCL2ファミリータンパク質標的薬物に
対する反応性予測および/または前記薬物の効能予測方法によって前記BCL2ファミリ
ータンパク質標的薬物に対して反応性を有するか前記薬物が効能を発揮するものと確認さ
れた個体、および/または前記BCL2ファミリータンパク質標的薬物の投与またはそれ
を用いた治療に適した対象の選択方法によって前記BCL2ファミリータンパク質標的薬
物の投与またはBCL2ファミリータンパク質標的薬物を用いる治療に適した対象に選ば
れた個体)。
【0054】
前記BCL2ファミリータンパク質は、BCL-2相同性(BCL-2 homolo
gy;BH;BH1、BH2、BH3)ドメインを共有するタンパク質を総称し、アポト
ーシス(apoptosis;例えばミトコンドリアでのアポトーシス)を調節する。
【0055】
本明細書で使用されるものとして、第1タンパク質は、BCL2ファミリータンパク質
のうちアポトーシスを防ぐアポトーシス抑制(anti-apoptotic)タンパク
質として、アポトーシスタンパク質および/またはアポトーシス誘導タンパク質と相互作
用(結合)してアポトーシスタンパク質および/またはアポトーシス誘導タンパク質の機
能を阻害する機能を有するものであり得る。前記第1タンパク質は、個体から分離した生
物学的試料に含まれているか前記試料から分離した形態であり得る。一例で、前記第1タ
ンパク質は人間などの哺乳動物由来のタンパク質であり得、例えば、BCL2(例、NC
BI ref seq.NM_000633.2など)、BCLxL(例、NCBI r
ef seq.NM_138578.1など)、MCL1(例、NCBI ref se
q.NM_021960.3など)、BCLw(例、NCBI ref seq.NM_
001199839.2など)、BFL1(例、NCBI ref seq.NM_00
1114735.2など)などからなる群より選ばれた1種以上であり得る。
【0056】
前記第1タンパク質と相互作用するタンパク質は、BH3サブタイプ(BH3-onl
y)タンパク質(第2タンパク質);およびアポトーシスエフェクター(pro-apo
ptotic effector)タンパク質(第3タンパク質);からなる群より選ば
れた1種以上であり得る。
【0057】
本明細書で使用されるものとして、前記第2タンパク質(BH3サブタイプタンパク質
)は、BH3ドメインのみで構成されてBH3-onlyタンパク質ともいう。例えば、
前記第2タンパク質はBIM(例、NCBI ref seq.B033694)、BI
D(例、NCBI ref seq.NM_001196.2)またはtBID(例、N
CBI ref seq.NM_001196.2のN-terminal trunc
ated formなど)、BAD(例、NCBI ref seq.NM_00432
2.2など)、NOXA(例、NCBI ref seq.NM_001382616.
1など)、PUMA(例、NCBI ref seq.AAO16862.1など)、B
MF(例、NCBI ref seq.NM_001003940.2など)、BIK(
例、NCBI ref seq.1.NM_001197.5)、HRK(例、NCBI
ref seq.1.NM_003806.4など)などからなる群より選ばれた1種
以上であり得る。
【0058】
本明細書で使用されるものとして、第3タンパク質は、いくつかのBHドメインを含む
アポトーシス誘導(pro-apoptotic)タンパク質として、例えばBAX(例
、NCBI ref seq.NM_138761.3など)、BAK(例、NCBI
ref seq.NP_001179.1など)、BOK(例、NCBI ref se
q.NM_032515.5など)などからなる群より選ばれた1種以上であり得る。
【0059】
他の例で、前記第1タンパク質は先立って説明したようなBH3サブタイプ(BH3-
only)タンパク質(第2タンパク質);およびアポトーシスエフェクター(pro-
apoptotic effector)タンパク質(第3タンパク質)からなる群より
選ばれた1種以上であり、第1タンパク質と相互作用するタンパク質は先立って説明した
ようなアポトーシス抑制(anti-apoptotic)タンパク質より選ばれたもの
であり得る。
【0060】
本明細書で、外部から供給される第1タンパク質相互作用タンパク質は、野生型、また
は第1タンパク質との相互作用が可能であることを前提に、野生型と50%以上、60%
以上、70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、9
4%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の配列
相同性(identity or homology)を有する変異型タンパク質であり
得る。また、前記第1タンパク質相互作用タンパク質は人間由来のものであるが、人間由
来の第1タンパク質と相互作用可能な異種由来のものであり得る。
【0061】
前記個体は人間などの哺乳動物であり得、例えば、癌患者(血液癌、固形癌)、より具
体的には血液癌患者であり得る。また、基準値設定のために、前記個体は、BCL2ファ
ミリータンパク質標的薬物の投与または前記薬物の効能確認が必要な個体であり得る。
【0062】
本明細書で、血液癌は白血病(例、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、慢性骨
髄性白血病、慢性リンパ球性白血病など)、リンパ腫(例、悪性リンパ腫、B細胞リンパ
腫、小リンパ球性リンパ腫(small lymphocytic lymphoma;
SLL)など)、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群などからなる群より選ばれる。
【0063】
前記試料は前記患者から分離した(由来した)生物学的試料として、細胞、細胞溶解物
、組織、またはこれらの培養物、または確立された細胞株を含むものであり得、例えば、
前記細胞または組織は癌細胞または癌組織であり得、具体的には前記癌は血液癌または固
形癌(例えば、乳癌または肺癌(例:肺腺癌など)など)であり得る。一具体例で、前記
個体は人間血液癌患者であり、前記試料は血液癌または固形癌(例えば、乳癌または肺癌
(例:肺腺癌など)患者から分離した白血球(例、顆粒白血球、リンパ球、および/また
は単核球など)、骨髄細胞(例、造血幹細胞など)、前記細胞を含む血液、骨髄、バフィ
ーコート(buffy coat)、癌細胞、癌組織、またはこれらの溶解物などからな
る群より選ばれた1種以上であり得る。
【0064】
一例で、前記試料は血液癌または固形癌(例えば、乳癌または肺癌(例:肺腺癌など)
患者から分離した白血球(例、顆粒白血球、リンパ球、および/または単核球など)、骨
髄細胞(例、造血幹細胞など)、前記細胞を含む血液、骨髄、バフィーコート(buff
y coat)、癌細胞、癌組織などからなる群より選ばれた一つ以上の溶解物であり得
る。前記溶解物はHepes、NaCl、Glycerol、コレステロール系洗浄剤(
detergent;以下、界面活性剤とも記載する)、phosphatase in
hibitor cocktailなどからなる群より選ばれた1種以上を含む溶剤を使
用して得られたものであり得、このとき、コレステロール系洗浄剤(例えば、glyco
l-diosgenin(GDN)、ジギトニン(digitonin)など)、PEG
系洗浄剤(例えば、Triton x-100など)などが利用され得る。本明細書で使
用可能な洗浄剤(detergent)はGDN、ジギトニン(Digitonin)、
Triton x-100(TX-100)、またはこれらのうち2以上の組み合わせな
どを含み得る。例えば、GDNは、全体溶剤基準として、0.001~10%、0.00
5~5%、0.008~1.2%、0.01~10%、0.05~5%、0.08~1.
2%、0.1~10%、0.5~5%、0.8~1.2%、または約1%(weight
for weight)の量で使用される。前記溶解物は、前記洗浄剤を用いて適切な
濃度で希釈して使用される。前記のようなコレステロール系洗浄剤および/またはPEG
系洗浄剤を使用する場合、他の系の洗浄剤を使用した場合と比較して、細胞外(in v
itro)での細胞の機能、活性、および/またはタンパク質3次構造を細胞内と同様に
安定的に維持できるため、実際の細胞内の環境でのタンパク質の構造および/または機能
を比較的正確に模写することができ、細胞内でのタンパク質固有の特性を細胞外で正確に
観測できるという利点を有することができる。
【0065】
前記段階(i)で外部から供給される、(exogenous)標識物質が付着した、
第1タンパク質と相互作用するタンパク質は、細胞溶解液形態で使用される。前記細胞溶
解液は、標識物質が付着した、第1タンパク質と相互作用するタンパク質を組換え的に発
現する細胞を、適切な溶剤、例えばTX-100またはコレステロール系洗浄剤を含む溶
剤を使用して溶解させて得られたものであり得る。例えば、TX-100は、全体溶剤基
準として、0.001%~1%または0.2~5%(weight for weigh
t)を含み得、好ましくは0.5~2%、さらに好ましくは0.8~1.2%、さらに好
ましくは1%を含み得る。前記製造された細胞溶解液は希釈後基板に供給されるが、この
とき細胞溶解液はTX-100を0.02~0.04%を含むように設定することが好ま
しい。前記TX-100濃度の臨界値を超えると、PEGでコートされている基板で起き
る非特異的な結合信号を減らすことができるが、第1タンパク質との特異的な相互作用に
より観測される、第1タンパク質と相互作用するタンパク質の測定値(信号値)が低く形
成されてタンパク質分析に容易でない。前記臨界値未満であれば、溶媒中のTX-100
の臨界ミセル濃度(Critical Micell Concentration;C
MC)未満の状態で存在するので第1タンパク質相互作用タンパク質の溶解状態が不安定
になり、PEGでコートされている基板で起きる第1タンパク質相互作用タンパク質の非
特異的な結合信号が増加して有効でない信号が測定されてタンパク質の分析において容易
でない。これはコレステロール系洗浄剤を使用することにおいても当該洗浄剤の臨界ミセ
ル濃度以上を使用することは同様に好ましい。
【0066】
前記第1タンパク質相互作用タンパク質を含む細胞溶解液内の、第1タンパク質相互作
用タンパク質の濃度は、10-2~103nMまたは10-1~102nMであり得るが
、これに制限されるものではなく、適宜調節することができる。
【0067】
本明細書で、前記BCL2ファミリータンパク質標的薬物は、上記したBCL2ファミ
リータンパク質(例えば、アポトーシス抑制(anti-apoptotic)タンパク
質)を認識および/または阻害するタンパク質(例えば、抗体、またはその類似体など)
、核酸分子(例えば、siRNAなど)、および小分子化合物からなる群より選ばれた1
種以上であり得、アポトーシス調節薬物(Apoptosis-Controlling
Drug)であり得、一具体例で抗癌効果、例えば血液癌に対して抗癌効果を有するこ
ともできる。例えば、BCL2標的薬物(例、BCL2阻害剤)の例として抗BCL2抗
体、Venetoclax、ABT737などが挙げられ、BCLxL標的薬物(例、B
CLxL阻害剤)の例として抗BCLxL抗体、ABT263などが挙げられ、MCL-
1標的薬物(例、MCL-1阻害剤)の例として抗MCL-1抗体、AMG-176、A
ZD5991、Maritoclaxなどが挙げられる。
【0068】
前記ベネトクラクス(Venclexta(登録商標) またはVenclyxto(
登録商標))は急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia;A
ML)、慢性リンパ球性白血病(chronic lymphocytic leuke
mia;CLL)、小リンパ球性リンパ腫(small lymphocytic ly
mphoma;SLL)などの治療に使用される。
【0069】
以下、より詳細に説明する。
【0070】
一例で、BCL2ファミリータンパク質標的薬物の代表的な例としてベネトクラクス(
Venetoclax)を挙げて説明する:
先立って説明した通り、本明細書において、遺伝子的特徴としては観測できないBCL
2ファミリータンパク質のアポトーシス抑制能力を、単分子タンパク質相互作用の測定方
法により定量的に把握し、これを血液癌患者の診断方法として活用することを提案する。
これのために核心的な技術は次のとおりである:(1)タンパク質相互作用の観測が、細
胞内に存在するBCL2ファミリータンパク質の多様な状態を反映、(2)多角的タンパ
ク質相互作用の観測およびタンパク質水準の観測の定量的な比較により、BCL2ファミ
リータンパク質標的薬物(一例としてベネトクラクス(Venetoclax)、AMG
176、またはAZD5991など)に敏感な細胞株および患者を選別可能。
【0071】
(1)細胞内の状態を保持してBCL2ファミリータンパク質を基板に捕獲
本明細書では、細胞内に存在するBCL2ファミリータンパク質の状態が保持された状
態で基板に捕獲されるかどうかを確認した。
【0072】
一実施例で、代表的な血液癌細胞株であるHL60(急性骨髄性白血病)またはOCI
-LY3(B細胞リンパ腫)細胞株を、細胞死誘導のためにベネトクラクス(Venet
oclax)で細胞培養中で処理する。その後、細胞死タンパク質であるBAXタンパク
質の活性化された形態(conformation)を示すN-末端があらわれた(露出
した)BAXを測定する実験を行う。このとき、ベネトクラクス(Venetoclax
)で処理することによりN-末端があらわれたBAXの量が増加することを見ることがで
きる。反面、細胞溶解液にTX-100の処理により人為的にBAXタンパク質のN-末
端が露出するようにした後同じ検査を行う場合、BAXの類似量が維持されることを確認
することができる。これは、BAXの発現量は変わらないが、ベネトクラクス処理時にN
-末端があらわれた活性化された形態のBAXタンパク質比率が増加することを意味する
(
図17参照)。
【0073】
このような結果により、本明細書に提案する方法は、BCL2ファミリータンパク質が
細胞内でなしている形態/PTM(Post-translational modif
ications)などをそのまま反映できることを立証する。
【0074】
(2)細胞内のBCL2ファミリータンパク質の状態変化が反映されるタンパク質間の相
互作用(PPI,Protein-Protein Interaction)の確認
本明細書で、細胞内に存在するBCL2ファミリータンパク質の状態変化がタンパク質
相互作用(PPI)の測定に反映されることを確認した。
【0075】
一実施例で、OCI-LY3細胞株やHL60細胞株を、それぞれBCL2阻害剤であ
るベネトクラクス(Venetoclax)、MCL1阻害剤であるAZD5991で処
理した後、BCL2ファミリータンパク質のタンパク質の間の相互作用(PPI)変化を
比較した。当該阻害剤は、BCL2、MCL1タンパク質と異なるタンパク質の間の相互
作用を選択的に阻害するため、当該薬物処理による細胞内のBCL2ファミリータンパク
質の状態変化(例えば複合体の形成程度)を期待することができる。実際、OCI-LY
3細胞株を培養中にベネトクラクス(Venetoclax)(BCL2阻害剤)とAZ
D5991(MCL-1阻害剤)でそれぞれ24時間処理した後、取得した細胞溶解液と
何ら処理をしていない状態の細胞溶解液(無処理群)をそれぞれ準備した後、当該細胞溶
解液で抽出されたBCL2、MCL1タンパク質とBAD、NOXA(マーカーGFPが
付着した)タンパク質の間の相互作用を測定したとき、ベネトクラクス(Venetoc
lax)で処理された細胞溶解液で測定されたBCL2-BADの間の相互作用(PPI
)が、無処理群で測定されたBCL2-BADの間の相互作用(PPI)より高いことが
確認された。また、AZD5991で処理された細胞溶解液から出たMCL1タンパク質
とNOXA(マーカー付着)タンパク質の相互作用が、無処理群で測定されたMCL1タ
ンパク質とNOXA(マーカー付着)タンパク質の相互作用より高いことが確認された。
反面、Venetoclax処理はMCL1-NOXA相互作用(PPI)に何ら影響を
及ぼさず、AZD5991処理はBCL2-BAD相互作用(PPI)に何ら影響を及ぼ
さなかった。また、本実験で使用された条件下では各薬物での処理がBCL2、MCL1
発現量に顕著な変化を起こさないことが証明された。
【0076】
すなわち、特定薬物に反応する特定タンパク質の状態変化を確認および/または前記特
定タンパク質以外の他のタンパク質は状態変化が起きないことを確認することによって、
本明細書で提供される方法が薬物処理による正確な状態変化を測定できることを確認した
。
【0077】
従来の多くの研究では、BCL2タンパク質の発現量を測定して、細胞内でBCL2が
アポトーシス作用を抑制する程度を計ったが、本明細書ではタンパク質の分子的形質が反
映されたPPI観測によりアポトーシス作用を抑制する程度を定量的に測定できることが
特徴である。
【0078】
(3)多角的タンパク質相互作用の観測およびタンパク質水準の観測によるBCL2ファ
ミリータンパク質標的薬物の敏感度予測
本明細書では、細胞や患者検体のアポトーシス誘導タンパク質とアポトーシス抑制タン
パク質が細胞死に及ぼす影響を、試料内タンパク質と外来タンパク質の間の相互作用の測
定(第1タンパク質-タンパク質相互作用の測定)、試料内タンパク質間の相互作用の測
定(第2タンパク質-タンパク質相互作用の測定)、および/またはタンパク質発現量の
測定などをそれぞれ定量的に行い、細胞死信号を複合的に分析し、これを用いてBCL2
ファミリータンパク質標的薬物(一例としてベネトクラクス(Venetoclax))
に対する敏感度を確認した。
【0079】
前記試料内タンパク質と外来タンパク質の間の相互作用の測定は、試料内のBCL2、
BCLxL、MCL1などアポトーシス抑制タンパク質と、BIM、BAD、NOXA、
BAX、BAKなど外部(試料外)から供給されたアポトーシス誘導タンパク質の間の相
互作用(第1タンパク質-タンパク質相互作用、以下第1PPI(Protein-Pr
otein Interaction)と定義する)を測定し、BCL2標的阻害剤(一
例としてベネトクラクス(Venetoclax))またはMCL1標的阻害剤(一例と
してAMG 176)反応性との相関関係を定量的に分析した。このとき、試料外から供
給されたアポトーシス誘導タンパク質はマーカーが付着している。
【0080】
前記試料内のタンパク質の間の相互作用(例えば、タンパク質複合体の形成)の測定は
、試料内のBCL2、BCLxL、MCL1などアポトーシス抑制タンパク質と同じ試料
内のBAX、BAK、BIM、BAD、NOXAなどアポトーシス誘導タンパク質の間の
相互作用(第2タンパク質-タンパク質相互作用、以下第2PPI(Protein-P
rotein Interaction)と定義する)を測定し、BCL2標的阻害剤(
一例としてベネトクラクス(Venetoclax))またはMCL1標的阻害剤(一例
としてAMG 176)感受性との相関関係を確認した。
【0081】
前記試料内タンパク質と外来タンパク質の間の相互作用(第1PPI)水準および/ま
たは試料内タンパク質間の相互作用(第2PPI)水準を比較分析することによって、B
CL2標的阻害剤(一例としてベネトクラクス(Venetoclax))またはMCL
1標的阻害剤(一例としてAMG 176)感受性との相関関係を分析した。前記比較分
析により試料内のBCL2、BCLxL、MCL1などアポトーシス抑制タンパク質の状
態を確認することができる。一例として、アポトーシス抑制タンパク質の、アポトーシス
誘導タンパク質と相互作用する活性サイトの露出程度を確認することができる。これによ
りタンパク質間の結合程度、結合強度、残余結合サイト、薬物敏感度などを間接的に予測
することができる。
【0082】
本明細書では、試料内のBCL2、BCLxL、MCL1などアポトーシス抑制タンパ
ク質またはBAX、BAKなどアポトーシス誘導タンパク質の水準を測定し、BCL2標
的阻害剤(一例としてベネトクラクス(Venetoclax))またはMCL1標的阻
害剤(一例としてAMG 176)感受性との相関関係を確認した。前記タンパク質の水
準は、タンパク質発現水準であり得、活性化されたタンパク質の発現水準であり得、リン
酸化されたタンパク質の発現水準であり得る。
【0083】
本明細書で提供されるタンパク質-タンパク質相互作用の測定は、single-mo
lecule pull-downおよび/またはco-immunoprecipit
ation(co-IP)を基盤とする。
【0084】
本明細書で使用された用語の「タンパク質-タンパク質相互作用(protein-p
rotein interaction:PPI)」は、第1タンパク質と第1タンパク
質相互作用タンパク質の間の物理的および/または化学結合または複合体形成を意味し、
例えば、結合頻度、接着強さ(強度)、および結合時間などの因子のうち一つ以上で測定
することができる。また、前記第1タンパク質と第1タンパク質相互作用タンパク質の間
の相互作用(結合)はこれらの間の直接的な相互作用(結合)だけでなく、中間に他のタ
ンパク質(信号伝達経路のうち第1タンパク質および第1タンパク質相互作用タンパク質
の間に位置するタンパク質)を媒介とした相互作用(結合)も含み得る。本明細書でのタ
ンパク質-タンパク質相互作用は、単分子(single molecule)反応(1
分子の第1タンパク質と1分子の第1タンパク質相互作用タンパク質の間の反応)であり
得る。
【0085】
先立って説明した通り、第1タンパク質は、BCL2ファミリータンパク質(Anti
-apoptoticタンパク質)として、BCL-2(例、NCBI ref seq
.NM_000633.2など)、BCLxL(例、NCBI ref seq.NM_
138578.1など)、またはMCL-1(例、NCBI ref seq.NM_0
21960.3など)であり得る。前記第1タンパク質相互作用タンパク質は、前記第1
タンパク質と相互作用するタンパク質として、BIM(例、NCBI ref seq.
B033694)、BID(例、NCBI ref seq.NM_001196.2)
またはtBID(例、NCBI ref seq.NM_001196.2のN-ter
minal truncated formなど)、BAD(例、NCBI ref s
eq.NM_004322.2など)、BAX(例、NCBI ref seq.NM_
138761.3など)、NOXA(例、NCBI ref seq.NM_00138
2616.1)、BAK(例、NCBI ref seq.NP_001179.1など
)などからなる群より選ばれた1種以上であり得る。
【0086】
本明細書で提供される方法で行われる第1タンパク質および第1タンパク質相互作用タ
ンパク質の間のタンパク質-タンパク質相互作用を測定する段階(a1;(i)および/
または(ii))は、分離された細胞または組織に対して生体外または細胞外(in v
itro)で行われるものであり得る。
【0087】
本発明による測定を段階別に詳細に説明する。
【0088】
段階(1):第1タンパク質が固定化された基板の準備段階(段階(i)および(ii)
共通)
前記段階(1)は、第1タンパク質または第1タンパク質を含む試験試料を、表面に前
記第1タンパク質に特異的に結合する物質を含む基板に加えて、第1タンパク質が固定さ
れた基板を準備する段階である。
【0089】
前記試料は個体(患者)から分離した細胞、組織、細胞または組織の溶解物、破砕物、
または抽出物、体液(例えば、血液(全血、血漿、または血清)、唾液など)であり得る
。前記患者は癌患者例えば血液癌患者であり得、前記試料は前記癌細胞(血液癌細胞)を
含むものであり得、その具体的な例は先立って説明したとおりである。
【0090】
前記基板は、表面に第1タンパク質を固定させるすべての材質および/またはすべての
構造を有するものであり得る(結晶質または非結晶質をいずれも使用可能)。一例で、前
記基板は、標識信号の検出容易性を考慮し、光の屈折率が生体物質の多くの部分を占める
水の屈折率(約1.3)以上の材質であり得る。一例で、前記基板は厚さが約0.1~約
1mm、約0.1~約0.5mm、0.1~約0.25mm、または約0.13~約0.
21mm程度であり得、屈折率が約1.3~約2、約1.3~約1.8、約1.3~約1
.6、または約1.5~約1.54程度であり得る。前記基板は前記屈折率範囲を満足さ
せるすべての材質であり得、例えばガラス(屈折率:約1.52)、石英などからなる群
より選ばれた材質から得られたものであり得るが、これに制限されるものではない。前記
基板は生物試料観察に通常使用されるすべての形態を有するものであり得、例えば、ウェ
ル型、スライド型、チャネル型、アレイ型、微少流体チップ、微細管(キャピラリ)など
であり得るが、これに制限されるものではない。蛍光顕微鏡観察時、前記試料が適用され
た基板の上にカバーガラスを取り付けて観察することができ、カバーガラスの材質は先立
って基板の説明で記載したとおりであり、厚さは基板の説明で記載した範囲またはこれよ
り薄くてもよい(例えば、屈折率1.52、厚さ0.17mmであり得るがこれに制限さ
れるものではない)。
【0091】
前記第1タンパク質に特異的に結合する物質は、第1タンパク質、すなわち、BCL2
、BCLxL、MCL1またはこれらすべてと特異的に結合できるすべての物質から選ば
れたものであり得、例えば、BCL2、BCLxL、MCL1、またはこれらすべてに特
異的に結合する抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗体のscFv、(scFv)2
、scFv-Fc、Fab、Fab’およびF(ab’)2など)、アプタマー(タンパ
ク質または核酸分子)、小分子化合物などからなる群より選ばれた1種以上であり得る。
このとき、前記第1タンパク質(BCL2、BCLxL、MCL1、またはこれらすべて
)に特異的に結合する物質は、第1タンパク質と第1タンパク質相互作用タンパク質との
相互作用を妨げない部位、すなわち、第1タンパク質と第1タンパク質相互作用タンパク
質が相互作用(結合)する部位でない部位で第1タンパク質と結合するものであり得る。
【0092】
一例で、前記基板は、前記第1タンパク質に特異的に結合する生物学的物質(例えば、
抗体など)を表面に含む(固定する)ために適宜表面改質されたり、表面に直接、前記第
1タンパク質に特異的に結合する物質が固定されたものであり得る。前記基板が表面改質
された場合、前記基板は一面に、前記第1タンパク質に特異的に結合する生物学的物質(
例えば、抗体など)を固定化させる官能基を有するあらゆる化合物で処理(例えば、塗布
)され得、例えば、アルデヒド基、カルボキシル基およびアミン基からなる群より選ばれ
た官能基を含む化合物で処理することができる。一具体例で、前記アルデヒド基、カルボ
キシル基およびアミン基からなる群より選ばれた官能基を含む化合物は、ビオチン(bi
otin)、ウシ血清アルブミン(Bovine serum albumin;BSA
)、ビオチンが結合されたウシ血清アルブミン、ポリエチレングリコール(polyet
hylene glycol;PEG)、ビオチンが結合されたPEG(ポリエチレング
リコール-ビオチン;PEG-biotin)、ポリソルベート(e.g.,Tween
20)などからなる群より選ばれた1種以上であり得るが、これに制限されるものではな
い。前記表面処理された基板はニュートラアビジン(neutravidin)、ストレ
プトアビジン(streptavidin)、アビジン(avidin)などからなる群
より選ばれた1種以上が追加で処理(例えば、塗布)され得る。
【0093】
段階(2):第1タンパク質と第1タンパク質相互作用タンパク質を反応させる段階
前記段階(2)では、下記段階(2-1)および/または(2-2)を実施することが
できる。
【0094】
段階(2-1):試料内のタンパク質および試料外のタンパク質の間のタンパク質-タン
パク質相互作用(段階(i)の第1タンパク質-タンパク質相互作用)
前記段階(2-1)は、前記第1タンパク質(試料内のタンパク質)が固定された基板
(例えば、前記段階(1)で準備される)に、標識物質で標識された(標識物質が付着し
た)第1タンパク質相互作用タンパク質(試料外のタンパク質)を添加して前記第1タン
パク質と反応させる段階である。前記標識物質から生成された信号を測定することによっ
て、試料内のタンパク質と試料外のタンパク質の間の複合体形成水準を確認することがで
き、これにより試料内のタンパク質と試料外のタンパク質の間のタンパク質-タンパク質
相互作用水準を測定することができる。
【0095】
前記標識された第1タンパク質相互作用タンパク質は、第1タンパク質相互作用タンパ
ク質が検出可能な信号を発生させる標識物質で標識されたり(標識物質が、例えば、化学
的(例えば、共有的または非共有的)、組換え的、または物理的に、結合されたり)、標
識物質が結合されるtagが付着した形態を意味する。前記検出可能な信号は通常の酵素
反応、蛍光、発光、および/または放射線検出により測定できるすべての信号(例えば、
光、放射線など)より選択することができる。前記標識物質は前記標識信号を発生させる
すべての小分子化合物、タンパク質、ペプチド、核酸分子などからなる群より選ばれた1
種以上であり得、例えば、蛍光染料(小分子化合物;Cyanine、Alex、Dyl
ight、Fluoprobesなど)、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質
(GFP,enhanced GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青緑色蛍光タ
ンパク質(CFP)、青色蛍光タンパク質(BPF)、赤色蛍光タンパク質(RPF)、
mcherryなど)などからなる群より選ばれた1種以上であり得る。前記tagはH
is-tag/Ni-NTAなどのように通常使用されるすべての種類より選ばれた1種
以上であり得る。前記標識物質の使用濃度は、ノイズを発生させず正確で容易な検出を可
能にするために、約1uM以下の範囲で適宜決定することができ、例えば、1nM~10
00nM、1nM~500nM、1nM~100nM、10nM~1000nM、10n
M~500nM、または10nM~100nM程度であり得るが、これに制限されるもの
ではない。前記のような標識物質から発生する信号は、これを検出または測定するために
通常使用されるすべての信号検出手段(例えば、通常の蛍光顕微鏡、蛍光カメラ、蛍光強
度測定(定量)装置など)によって測定することができる。
【0096】
段階(2-2):試料内のタンパク質間のタンパク質-タンパク質相互作用(段階(ii
)の第2タンパク質-タンパク質相互作用)
前記段階(2-2)は、前記第1タンパク質が固定された基板(例えば、前記段階(1
)で準備される)に、第1タンパク質相互作用タンパク質の結合物質(前記結合物質は標
識物質が付着する)を供給し、第1タンパク質(試料内)と第1タンパク質相互作用タン
パク質(試料内)の間に形成された複合体(complex)のうち第1タンパク質相互
作用タンパク質と反応させる段階である。前記標識物質から生成された信号を測定するこ
とによって試料内のタンパク質複合体形成水準を確認することができ、これにより試料内
のタンパク質-タンパク質相互作用の水準を測定することができる。
【0097】
前記第1タンパク質相互作用タンパク質結合物質は、検出可能な信号を発生させる標識
物質で標識されたり(標識物質が、例えば、化学的(例えば、共有的または非共有的)、
組換え的、または物理的に、結合されたり)、標識物質が結合できるtagが付着した形
態を意味する。前記検出可能な信号は通常の酵素反応、蛍光、発光、および/または放射
線検出により測定できるすべての信号(例えば、光、放射線など)より選択することがで
きる。前記標識物質は前記標識信号を発生させるすべての小分子化合物、タンパク質、ペ
プチド、核酸分子などからなる群より選ばれた1種以上であり得、例えば、蛍光染料(小
分子化合物、有機蛍光染料(organic fluorescent dye);Cy
anine、Alex、Dylight、Fluoprobesなど)、蛍光タンパク質
(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP,enhanced GFP)、黄色蛍光タンパ
ク質(YFP)、青緑色蛍光タンパク質(CFP)、青色蛍光タンパク質(BPF)、赤
色蛍光タンパク質(RPF)、mcherryなど)などからなる群より選ばれた1種以
上であり得る。前記tagはHis-tag/Ni-NTAなどのように通常使用される
すべての種類より選ばれた1種以上であり得る。前記標識物質の使用濃度は、ノイズを発
生させず正確で容易な検出を可能にするために、約1uM以下の範囲で適宜決定すること
ができ、例えば、1nM~1000nM、1nM~500nM、1nM~100nM、1
0nM~1000nM、10nM~500nM、または10nM~100nM程度であり
得るが、これに制限されるものではない。前記のような標識物質から発生する信号は、こ
れを検出または測定するために通常使用されるすべての信号検出手段(例えば、通常の蛍
光顕微鏡、蛍光カメラ、蛍光強度測定(定量)装置など)によって測定することができる
。
【0098】
タンパク質の相互作用をより正確に測定するために、反応させる段階(段階(2))と
後続するタンパク質-タンパク質相互作用の測定段階(段階(3))の間に、前記反応が
起きた基板を通常の方法で洗浄する段階をさらに含み得る。
【0099】
段階(3):タンパク質-タンパク質相互作用の測定段階
前記段階(3)は、前記段階(2)(すなわち、(2-1)および/または(2-2)
)で得られた反応物から信号を測定する段階である。前記信号測定は、段階(2)で使用
された標識信号(例えば、酵素反応、蛍光、発光、または放射線検出などの通常の方法に
より測定可能な信号)を検出(または測定または確認)できるあらゆる手段を用いて行わ
れ得る。
【0100】
一例で、段階(3)でのタンパク質-タンパク質相互作用の測定はリアルタイム分析に
よるものであり得る。
【0101】
一例で、前記標識信号が蛍光信号である場合、前記信号検出は、前記蛍光信号を発生さ
せる標識物質が吸収する光源を供給して、発生する蛍光信号を、例えば、蛍光顕微鏡、蛍
光(測定)カメラ、および/または蛍光強度測定(定量)装置などを用いて、映像化およ
び/または定量することができる。
【0102】
前記信号が蛍光信号である場合、段階(3)(タンパク質-タンパク質相互作用の測定
段階)は、
(i)前記段階(2)の反応物に光源を供給する段階;および
(ii)前記供給された光源によって発生した蛍光信号を検出する段階
を含み得る。
【0103】
前記段階(i)の光源を供給する段階は、前記段階(2)で得られた第1タンパク質と
第1タンパク質相互作用タンパク質の反応物に光源を供給する段階として、このような目
的を達成できれば、光源の供給時期は特に制限されない。例えば、前記光源は段階(1)
以前、同時、または以後から段階(2)以後まで持続的に供給されたり、段階(2)直前
、同時、または直後に所定の時間の間供給され得るが、これに制限されるものではない。
【0104】
前記光源は蛍光信号に該当する波長を有するあらゆる光源であり得、例えば、レーザ、
ハロゲンランプなどであり得る。
【0105】
一具体例で、段階(3)のタンパク質-タンパク質相互作用の測定段階は、全反射蛍光
顕微鏡(Total Internal Reflection Fluorescen
ce(TIRF)microscope)または共焦点顕微鏡などを用いて光源を供給し
、通常の方法で蛍光信号を観察して行われることができる。他の例で、前記全反射蛍光顕
微鏡に、信号映像化のための蛍光(測定)カメラ、例えば、EMCCD(Electro
n-multiplying charge-coupled device)またはC
MOS(Complementary metal oxide semiconduc
tor)を取り付けて用いることによって、光源供給および蛍光信号の映像化および/ま
たは定量を遂行することができる。
【0106】
次は、段階(3)のタンパク質-タンパク質相互作用の測定段階を、全反射顕微鏡およ
び蛍光(測定)カメラを用いて行う場合を例に挙げてより詳細に説明する:
【0107】
イ)前記段階(1)または段階(2)の基板を全反射顕微鏡に取り付ける。全反射顕微
鏡で光源の供給位置は通常、観測しようとする基板側であり、レンズの位置は光源供給位
置と関係ない。
【0108】
ロ)光源はレーザであり得、光源の強度は約0.5mW~約5mW、約0.5mW~約
4.5mW、約0.5mW~約4mW、約0.5mW~約3.5mW、約0.5mW~約
3mW、約0.5mW~約2.5mW、約0.5mW~約2mW、約1mW~約5mW、
約1mW~約4.5mW、約1mW~約4mW、約1mW~約3.5mW、約1mW~約
3mW、約1mW~約2.5mW、約1mW~約2mW、約1.5mW~約5mW、約1
.5mW~約4.5mW、約1.5mW~約4mW、約1.5mW~約3.5mW、約1
.5mW~約3mW、約1.5mW~約2.5mW、または約1.5mW~約2mW、例
えば、約2mWであり得、光源の波長は先立って説明した通り、蛍光信号または使用され
た標識物質、および/または装備の構成(例えば減衰フィルタを用いる場合は強度が強い
光源を使用できる)によって適宜選択することができる。
【0109】
ハ)前記光源供給によって発生した蛍光信号を蛍光(測定)カメラで撮影して映像化お
よび/または定量することができる。
【0110】
前記蛍光信号の撮影(または映像化)は、標識物質の蛍光信号発生維持時間(発光時間
、lifetime)を考慮し、光源供給と同時または前記信号発生維持時間以内に遂行
することができる。
【0111】
蛍光(測定)カメラ(例えば、EMCCDカメラ)で蛍光信号を撮影(または映像化)
することにおいて、1フレーム当たり露出時間、レーザパワー、カメラgain値、総撮
影フレームなどを適宜調節することができる。例えば、1フレーム当たり露出時間が短い
ほど1フレームに累積する信号が減り、これを相殺するためにレーザパワーを高めたり、
蛍光カメラの感度を高めることができる。一例で、1フレーム当たり露出時間を約0.0
01秒~約5秒、約0.001秒~約3秒、約0.001秒~約2秒、約0.001秒~
約1秒、約0.001秒~約0.5秒、約0.001秒~約0.3秒、約0.001秒~
約0.1秒、約0.01秒~約5秒、約0.01秒~約3秒、約0.01秒~約2秒、約
0.01秒~約1秒、約0.01秒~約0.5秒、約0.01秒~約0.3秒、約0.0
1秒~約0.1秒、約0.05秒~約5秒、約0.05秒~約3秒、約0.05秒~約2
秒、約0.05秒~約1秒、約0.05秒~約0.5秒、約0.05秒~約0.3秒、約
0.05秒~約0.1秒、約0.07秒~約5秒、約0.07秒~約3秒、約0.07秒
~約2秒、約0.07秒~約1秒、約0.07秒~約0.5秒、約0.07秒~約0.3
秒、約0.07秒~約0.1秒、約0.1秒~約5秒、約0.1秒~約3秒、約0.1秒
~約2秒、約0.1秒~約1秒、約0.1秒~約0.5秒、または約0.1秒~約0.3
秒、例えば約0.1秒にすることができるが、これに制限されるものではない。
【0112】
例えば、EMCCDカメラを用いる場合、標識物質(例えば、eGFP)から生成され
た光子(photon)はEMCCDの素子により電子に変わって計測される(光電効果
、photoelectric effect)。このとき、光子1個当たり生成される
電子の個数をgain値により変更することができる。設定されたgain値が高いほど
光子1個当たり生成される電子の個数が増え、EMCCDカメラの感度が高まると同時に
background noiseも共に増加するのでsignal-to-noise
比率が重要である。一具体例で、優れたsignal-to-noise比率を得るため
に、gain値を約10~約100、約10~約80、約10~約60、約10~約50
、約20~約100、約20~約80、約20~約60、約20~約50、約30~約1
00、約30~約80、約30~約60、または約30~約50、例えば、約40程度に
定めることができるが、これに限定されずカメラの感度、寿命、装備構築現況、ノイズ、
試験条件などを考慮して適宜選択されることができる。
【0113】
総撮影フレーム個数と露出時間を乗ずると総撮影時間が得られる(露出時間*総撮影フ
レーム個数=撮影時間)。蛍光物質の発光時間(lifetime)以後には蛍光信号が
消えるので、前記撮影時間が発光時間内に行われるように総撮影フレーム個数および/ま
たは露出時間を調節することができる。
【0114】
タンパク質-タンパク質相互作用の測定結果の正確度を高めるために、前記映像化を、
一つ以上、例えば、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、7個以上、または10個
以上(上限値は基板の大きさおよび映像化可能な面積によって決定される)の基板または
それを含む一つ以上のチャネル(各チャネルは2個以上の基板を含む)で行い、信号が現
れた領域(spot)、具体的にはイメージのうち明るい領域(PPI complex
ともいう)の個数(PPI count)を求め、前記得られた蛍光信号を定量化するこ
とができ、これはタンパク質-タンパク質相互作用を定量化したものと見ることができる
。
【0115】
他の例で、段階(3)で測定された蛍光強度を、通常の装置を用いて数値化することに
よってタンパク質-タンパク質相互作用を定量することもできる。このとき、結果の正確
性のために、前記結果を、試料量または試料内のタンパク質量を基準として標準化(no
rmalization)することができる。
【0116】
第1タンパク質および/または第1タンパク質相互作用タンパク質を2種以上使用する
場合、段階(1)~(3)はそれぞれの第1タンパク質と第1タンパク質相互作用タンパ
ク質の組み合わせに対してそれぞれ行われることができる(すなわち、段階(1)~(3
)は第1タンパク質と第1タンパク質相互作用タンパク質の組み合わせの数だけ繰り返し
行われることができる)。
【0117】
本明細書で提供される方法は、次の段階(4)をさらに含み得る:
【0118】
段階(4):比較する段階(段階(b)、具体的には(b1))
段階(4)は、前記段階(3)で得られた結果(タンパク質-タンパク質相互作用の水
準)を、第1比較タンパク質と第1比較タンパク質相互作用タンパク質の間のタンパク質
-タンパク質相互作用水準と比較したり基準値と比較する段階である。前記第1比較タン
パク質と第1比較タンパク質相互作用タンパク質、および基準値は先立って説明したとお
りである。
【0119】
本明細書に使用される用語の「BCL2ファミリータンパク質を標的とする」とは、B
CL2ファミリータンパク質を認識(特異的結合)するかおよび/または活性を阻害する
ことを意味する。BCL2ファミリータンパク質の活性の阻害は、BCL2ファミリータ
ンパク質と結合したり、および/またはBCL2ファミリータンパク質を分解および/ま
たは構造的変形を行い固有の機能、例えばアポトーシス抑制機能を減少させたり除去する
ことであり得る。
【0120】
本明細書に使用された用語の「薬物」は、薬理的効果を示すすべての物質、例えば、小
分子化合物、タンパク質(例えば、抗体、抗体断片、またはその類似体など)、ペプチド
、核酸分子(例えば、DNA、RNA(例えば、siRNA、microRNA、shR
NAなど)、PNA(peptide nucleic acid)、アプタマー、など
)、植物抽出物、動物抽出物、細胞抽出物などからなる群より1種以上選択されるもので
あり得る。
【0121】
本明細書で、第1タンパク質と相互作用するタンパク質、標識物質として蛍光タンパク
質、結合物質として抗体などの、すべての外部から供給されるタンパク質は、組換え的合
成または化学的合成により生産されたものであり得るが、これに制限されるものではない
。一例で、前記組換え的生産は、前記タンパク質をコードする遺伝子またはそれを含むベ
クターを、HEK293細胞のような哺乳類細胞(mammalian cell)に形
質導入(transfection)により発現したり、SF9のような昆虫細胞(in
sect cell)に形質導入により発現したり、E.coliのような細菌に形質導
入により発現させる段階を含み得る。このとき、前記発現したタンパク質は追加的な精製
(purification)過程を経るが、それは必須ではなく、精製されたタンパク
質またはタンパク質を発現した細胞溶解液をそのまま使用してタンパク質-タンパク質測
定を遂行することができる。
【0122】
本明細書に使用される用語の「BCL2ファミリータンパク質を標的とする治療または
BCL2ファミリータンパク質標的薬物を使用する治療」は、互いに等価的意味で互換可
能であり、第1タンパク質の活性を阻害するすべての医学的および/または薬学的行為を
意味し、例えば、先立って説明したようなBCL2ファミリータンパク質の活性を阻害す
る薬物を、BCL2ファミリータンパク質の活性を阻害することを必要とする対象に処方
および/または投与するものであり得る。より具体的には、「BCL2ファミリータンパ
ク質を標的とする治療」は、BCL2ファミリータンパク質と結合したり、および/また
はBCL2ファミリータンパク質を分解および/または構造的変形を行い固有の機能、例
えば、アポトーシス抑制機能を減少させたり除去する薬物を、これを必要とする対象に処
方および/または投与するものであり得る。
【0123】
前記投与は経口または非経口の経路で行われる。非経口投与である場合は静脈内注入、
皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、病変部位局所投与、鼻内投与、肺内投与、ま
たは直腸内投与などの経路で行われることができる。
【0124】
前記個体、患者または対象はすべての哺乳類、例えば人間、猿などの霊長類、マウス、
ラットなどの齧歯類などであり得、例えば第1タンパク質と関連した疾病を有する患者で
あり得る。前記第1タンパク質と関連する疾病は、第1タンパク質の過発現または第1タ
ンパク質が関与する細胞または組織内の信号伝達経路の活性化と関連する疾病であり得、
例えば、癌、より具体的には血液癌であり得る。具体的例で、前記個体、患者または対象
は癌患者、具体的には血液癌患者であり得る。
【0125】
本明細書に使用された用語の「薬物に対する反応性」は薬物の投与を受けた個体で前記
薬物が効果を発揮する程度を意味する。
【0126】
本明細書に使用された用語の「効能または効果」は、薬物または治療が処置対象におい
て達成しようとする医学的および/または薬学的効果を意味し、処置対象が有する疾病の
予防および/または治療、および/または症状の緩和および/または改善などを意味する
。例えば、前記薬物が抗癌剤であり、治療が抗癌治療であり、前記処置対象が癌患者であ
る場合、前記効果は抗癌効果(癌の予防および/または治療効果)であり得、前記抗癌効
果は癌細胞の成長を抑制する効果だけでなく、移動(migration)、侵襲(in
vasion)、および/または転移(metastasis)などを抑制、および/ま
たは癌の悪化を抑制、および/または抵抗性を減少または除去する効果などを含むことで
あり得る。
【0127】
他の例で、先立って説明したBCL2ファミリータンパク質標的薬物の効果予測および
/またはBCL2ファミリータンパク質標的薬物治療に使用するための、分析装置を提供
する。
【0128】
前記分析装置は、
第1タンパク質に特異的に結合する第1タンパク質の捕獲用物質または第1タンパク質
を含む反応部を含むか、
これに加えて、第1タンパク質相互作用タンパク質検出用製剤および/または信号検出
手段をさらに含むものであり得る。前記第1タンパク質相互作用タンパク質検出用製剤お
よび第1タンパク質相互作用タンパク質に(特異的に)結合する結合物質を含むものとし
て、前記結合物質は、第1タンパク質相互作用タンパク質が第1タンパク質と相互作用(
結合)する部位と相違する部位に結合する物質(例えば、抗体、抗原結合断片、抗体類似
体、アプタマー、小分子化合物など)であり得、標識物質で標識されたものであり得る。
【0129】
前記第1タンパク質は先立って説明したとおりであり、精製されたタンパク質またはそ
れを含む細胞もしくは前記細胞の溶解物形態で使用され得、前記反応部は前記第1タンパ
ク質、それを含む細胞、または前記細胞の溶解物、またはこれらが固定化された基板を含
むものであり得る。
【0130】
前記分析装置は第1タンパク質と第1タンパク質相互作用タンパク質の間の相互作用(
結合)の有無および/または程度を測定するためのものであり得る。
【0131】
前記反応部は、表面に第1タンパク質捕獲用物質が固定化されたり、前記第1タンパク
質が捕獲用物質によるかまたはよらずに(直接的に)固定化された基板を含み得る。前記
第1タンパク質捕獲用物質は、第1タンパク質に特異的に結合する物質、例えば、抗体ま
たはその抗原結合断片であり得る。前記反応部はウェル(例えば、マルチウェル)タイプ
、スライド型、チャネル型、アレイ型、微少流体チップ、微細管(キャピラリ)などであ
り得るが、これに制限されるものではない。
【0132】
前記分析装置は、第1タンパク質と第1タンパク質相互作用タンパク質の間のタンパク
質-タンパク質相互作用を測定する装置であり得、これのために、前記第1タンパク質と
相互作用するタンパク質をさらに含み得る。一例で、前記第1タンパク質相互作用タンパ
ク質は、検出可能な信号を発生させる標識物質で標識されたり(標識物質が、例えば、化
学的(例えば、共有的または非共有的)、組換え的、または物理的に、結合されたり)、
標識物質が結合できるtagが付着した形態であり得る。
【0133】
また、前記タンパク質-タンパク質相互作用測定用装置は、信号検出手段で測定された
信号値を第1タンパク質の水準に正常化(normalization)させるために、
第1タンパク質に結合する探知用物質および前記探知用物質に結合する標識用物質をさら
に含み得る。前記第1タンパク質に結合する探知用物質は、先立って説明したマルチウェ
ルに含まれた、第1タンパク質の捕獲用物質と相違する部位で第1タンパク質と結合する
生物分子(例えば、抗体)であり得、前記標識用物質は検出可能な信号を発生させる標識
物質で標識され(標識物質が、例えば、化学的(例えば、共有的または非共有的に結合)
)前記第1タンパク質に結合する探知用物質に結合可能な生物分子(例えば、抗体)であ
り得る。
【0134】
前記信号検出手段は、使用された標識物質で発生させる信号に応じて通常使用されるあ
らゆる信号検出手段であり得る。例えば、前記信号検出手段は、信号刺激部および信号検
出部を含み得、これに加えて、測定された信号を分析(例えば、定量または映像化)する
信号分析部をさらに含み得る。一例で、信号刺激、信号検出、および信号分析はそれぞれ
他の部位で行われたり、これらのうち少なくとも二つ以上が一つの部位で同時にまたは連
続して行われ得る。一例で、前記標識が蛍光物質である場合、前記信号検出手段は、蛍光
信号を発生および検出できるすべての手段より選ばれ得、例えば、蛍光信号刺激部(例え
ば、光源)、および蛍光信号検出部、および/または蛍光信号分析部を含み得る。一具体
例で、前記信号検出手段は、全反射蛍光顕微鏡(Total Internal Ref
lection Fluorescence(TIRF)microscope)または
共焦点顕微鏡(光源および蛍光信号検出用)を含むか、これに加えて、蛍光カメラ、例え
ばEMCCD(Electron-multiplying charge-coupl
ed device)またはCMOS(Complementary metal ox
ide semiconductor)をさらに含み、光源供給および蛍光信号の映像化
および/または定量を遂行することができる。前記光源の波長、強度、蛍光カメラ測定条
件(例えば、1フレーム当たり露出時間、レーザパワー、カメラgain値、総撮影フレ
ームなど)は先立って説明したとおりである。
【0135】
本明細書に提供されたタンパク質-タンパク質相互作用測定用装置は、少量の試料での
第1タンパク質と第1タンパク質相互作用タンパク質の間の相互作用および/または第1
タンパク質と第1タンパク質の発現水準を、正確かつ効率的に観察、分析、検出、および
/または測定できる利点を有する。したがって、前記マルチウェルまたはこれを用いる分
析方法は生検(例えば、needle biopsy)、血中癌細胞試料のように非常に
少量の試料に対しても有用であり、効果的に適用することができる。
【発明の効果】
【0136】
ベネトクラクス(Venetoclax)などのBCL2ファミリータンパク質標的薬
物は様々な血液癌患者の治療に使用することができる。例えば、ベネトクラクス(Ven
etoclax)は、慢性白血病以外にも、薬物によるはやい好転が必要な急性白血病お
よび骨髄癌の治療に適用できるが、患者の負担を最小限に減らすためにはやく薬物の効能
を予想できる診断技法が必要である。BCL2単一タンパク質の発現量および突然変異遺
伝子の有無を確認する従来の方法では、ベネトクラクス(Venetoclax)などの
BCL2ファミリータンパク質標的薬物の効能を成功的に予測できないことに対し、本明
細書で提供されるタンパク質-タンパク質相互作用および/またはタンパク質発現測定に
基づく診断方法は、個別患者の多様な種類の血液癌にベネトクラクス(Venetocl
ax)などのBCL2ファミリータンパク質標的薬物がよく作用するかどうかをはやくか
つ特定的に予測することができ、より迅速かつ効果的に個別オーダーメード血液癌治療を
遂行できるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【
図1】基板に付着した個別抗体と標的タンパク質の間の結合を測定した図面であり、
図1aはBCL2、BCLxL、MCL1に関するものであり、
図1bはBCL-W、Bfl-1に関するものである。
【
図2】
図2aは、試料内のBCL2、MCL1、BCLxLと外部から投入(Input)したBIM、NOXA、BADの相互作用を測定(PPI count)したものである。
図2bは、試料内のBCL2、BCL-XLと外部から投入したtBIDの相互作用を測定(PPI count)したものである。
図2cは、試料内のBCL2、MCL1、BCL-XLと外部から投入したBAX、BAKの相互作用を測定(PPI count)したものである。
図2dは、試料内のBCL2、BCL-XL、MCL1と外部から投入したBIMタンパク質のBH3ドメインのみを検査タンパク質として使用して相互作用を測定したものである。
【
図3】第1タンパク質相互作用タンパク質の濃度による相互作用測定値の変化を、試料内のBCL2と外部から投入したBADの相互作用を測定して示す図である。
【
図4】外部から投入される溶液に含まれる界面活性剤の種類および濃度による相互作用測定値の変化を、試料内のBCL2と外部から投入したBADの相互作用を測定して示す図である。
【
図5】外部から投入される溶液に含まれる界面活性剤Triton X-100の濃度による相互作用測定値の変化を、試料内のBCL2と外部から投入したBADの相互作用を測定して示す図である。
【
図6】外部から投入される検査タンパク質BIMに対して、種(species)間の保存性に優れるアミノ酸(highly conserved amino acids)に変異が発生する場合にBCL-XLまたはBCL2との相互作用測定値に違いが生じることを確認した図である。
【
図7】試料(HL60、OCI-LY3)内のBCL2、MCL1、BCL-XLとBIMの複合体(complex)水準を測定した図である。
【
図8】試料(OCI-LY3)内のBCL2とBAXの複合体(complex)水準を測定した図である。
【
図9】試料(OCI-LY3)内のBCL2、BCL-XL、MCL1とBAKの複合体(complex)水準を測定した図である。
【
図10】試料(HL60、OCI-LY3、SUDHL8)内のBCL-XLとBADの複合体(complex)水準、MCL1とNOXAの複合体水準を測定した図である。
【
図11】タンパク質複合体(complex)水準を測定することにおいて、第1タンパク質と第1タンパク質相互作用タンパク質が互いに互換できることを確認した図である。
【
図12】
図12aは、二種のBAK抗体がいずれもBAKに結合できることを示した結果である。
図12bは、それぞれ[MCL1,BAK]、[BCL-XL,BAK]、[BCL2,BAK]を共発現(co-transfected)させた細胞(HEK293)に対して、明示された沈降抗体(pull down Ab)を用いて信号を測定した結果である。これにより、BAKに結合されるD4E4クローン(clone)のBAK抗体は、BCL2ファミリータンパク質が共発現された場合は結合されないことを検証した図である。
図12cは、
図12aで使用された抗体の一つであるAT38E2を用いて、先立って使用した共発現(co-transfected)されたBAKが検出されることを検証した図である。
【
図13】試料内のMCL1、BCL-XL、BCL2の発現量を測定した図である。
【
図14】試料内のBAX、BAKの発現量を測定した図である。
【
図15】aは、GDN(Glycoldiosgenin)で処理した試料に治療剤(Staurosporine、Venetoclax)を投入した後、BAXの発現量を検出抗体で測定したものであり、bは、Triton X-100で処理した試料に治療剤(Staurosporine、Venetoclax)を投入した後、BAXの発現量を検出抗体で測定したのである。cは、GDNで処理した試料に治療剤(Staurosporine、Venetoclax)を投入した後、BAXの発現量を検出抗体で測定したものであり、bは、Triton X-100で処理した試料に治療剤(Staurosporine、Venetoclax)を投入した後、BAXの発現量を検出抗体で測定したのである。
【
図16】検体内のBAX発現量を測定した図である。
図16のa、cは特定の折り畳み形態のBAXの発現量をvenetoclax処理時間に応じて測定した図であり、
図16のb、dは同一検体をTriton X-100で処理した後に測定した結果である。
【
図17】aは試料(HL60)のBCL2と外部から投入したBADの相互作用を、venetoclax、AMG176で処理した後に測定した図であり、bは試料(OCI-LY3)のBCL2と外部から投入したBADの相互作用を、venetoclax、AMG176で処理した後に測定した図である。
【
図18】aは試料(HL60)のMCL1と外部から投入したNOXAの相互作用を、venetoclax、AMG176で処理した後に測定した図であり、bは試料(OCI-LY3)のMCL1と外部から投入したNOXAの相互作用を、venetoclax、AMG176で処理した後に測定した図である。
【
図19】aは試料(HL60)のBCL-XLと外部から投入したBADの相互作用を、venetoclax、AMG176で処理した後に測定した図面であり、bは試料(OCI-LY3)のBCL-XLと外部から投入したBADの相互作用を、venetoclax、AMG176で処理した後に測定した図である。
【
図20】aは試料(HL60)内のBCL2、MCL1、BCL-XL発現量を、venetoclax、AMG176処理後測定した図であり、bは試料(OCI-LY3)内のBCL2、MCL1、BCL-XL発現量を、venetoclax、AMG176処理後測定した図である。
【
図21】aは、試料(HL60)内のBCL2、MCL1、BCL-XLとBIMの複合体(complex)水準を、venetoclax、AMG176処理後測定した図であり、bは、試料(OCI-LY3)内のBCL2、MCL1、BCL-XLとBIMの複合体水準を、venetoclax、AMG176処理後測定した図である。
【
図22】aは、試料(HL60)内のMCL1とNOXAの複合体(complex)水準を、venetoclax、AMG176処理後に測定した図であり、bは、試料(OCI-LY3)内のMCL1とNOXAの複合体水準を、venetoclax、AMG176処理後に測定した図である。
【
図23】aは試料(HL60)内のBCL-XLとBADの複合体(complex)水準をvenetoclax、AMG176処理後に測定した図であり、bは試料(OCI-LY3)内のBCL-XLとBADの複合体水準をvenetoclax、AMG176処理後に測定した図である。
【
図24】aは、試料(HL60)内のBCL2とBAXの複合体(complex)水準を、Venetoclax処理時間(hour)に応じて測定したものであり、bは、試料(OCI-LY3)内のBCL2とBAXの複合体水準を、Venetoclax処理時間に応じて測定した図である。
【
図25】aは、試料(HL60)内のBAX発現量を、Venetoclax処理時間(hour)に応じて測定したものであり、bは、試料(OCI-LY3)内のBAX発現量を、Venetoclax処理時間に応じて測定した図である。
【
図26】aは、試料(HL60)内のBAK発現量を、Venetoclax処理時間(hour)に応じて測定したものであり、bは、試料(OCI-LY3)内のBAK発現量を、Venetoclax処理時間に応じて測定した図である。
【
図27】試料(HL60)内のBCL2と外部から投入したBIMの相互作用を、Venetoclax、AZD5991がそれぞれ共存する状態で処理濃度に応じて測定した図である。
【
図28】試料(HL60)内のMCL1と外部から投入したBIMの相互作用を、Venetoclax、AZD5991がそれぞれ共存する状態で処理濃度に応じて測定した図である。
【
図29】AML患者(n=32)検体に対してすべてのパラメータ(相互作用(第1PPI)、複合体(Complex)(第2PPI)、発現量(Expression Level))を測定した後、Z-coreヒットマップで示す図である。
【
図30】乳癌(breast cancer)患者(n=302)検体のBCL2発現量(level)を定量的に測定した図である。
【
図31】肺腺癌患者(Patients)(n=15)検体のBCL2発現量を定量的に測定した図である。
【
図32】試料(Sample:OCI-LY3)をvenetoclaxで処理(treatment)した後、処理時間(hour)に応じて、試料内のBCL2と外部から投入したBIMの相互作用水準変化、および試料内のBCL2とBIMの複合体(complex)水準変化を測定した図である。
【
図33】試料(Sample:OCI-LY3)をAZD5991で処理(treatment)した時間(hour)に応じて、試料内のMCL1と外部から投入したNOXAの相互作用水準変化、および試料内のMCL1とNOXAの複合体(complex)水準変化を測定した図である。
【
図34】患者1の試料内のBCL2、MCL1、BCL-XLと外部から投入したBIMの間の相互作用水準を、i)診断当時(At diagnosis)抽出された骨髄(bone marrow)、ii)FLT3標的抗癌剤(quizartinib)処方後に再抽出された骨髄、iii)venetoclaxとLDAC処方後に取得した全血検体(peripheral blood)から測定した図である。
【
図35】患者2の試料内のBCL2、MCL1、BCL-XLと外部から投入したBIMの間の相互作用水準を、i)診断当時(At relapse)抽出された骨髄(bone marrow)、ii)FLT3標的抗癌剤(quizartinib)処方後に再抽出された骨髄、iii)venetoclaxとLDAC処方後に取得した全血検体(peripheral blood)から測定した図である。
【
図36】a~cは、AML患者検体(n=32)から、venetoclax反応性(縦軸)とPPI(第1PPI)、複合体(第2PPI)、発現量など21種類測定値の間の相関関係を分析した結果である。
【
図37】AML患者検体からvenetoclax反応性とBCL2-BIMPPI(第1PPI)およびBCL2-BIM複合体(第2PPI)測定値の間の相関関係を分析した結果である。
【
図38】指標(parameter)を組み合わせてvenetoclax反応性を予測する結果に関するものであり、
図38aは指標を1から10個まで増やすときの相関係数値を示した結果であり、
図38bは、二つ指標を組み合わせたときの相関分析結果を、単独指標時の結果と比較して示すグラフであり、
図38cは、五つの主な指標が組み合わされた時の相関分析結果である。
【
図39】
図39a~39cは、AML患者検体(n=26)からAZD5991反応性とPPI(第1PPI)、複合体(第2PPI)、発現量など21種類の測定値の間の相関関係を分析した結果である。
【
図40】四つの主な指標を結合してAZD5991反応性を予測した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0138】
本発明を下記実施例を挙げてより詳しく説明するが、本発明の権利範囲は下記実施例に
限定される意図ではない。
【実施例0139】
実施例1.試料内タンパク質および試料外タンパク質の間のタンパク質-タンパク質相互
作用(PPI)の測定
【0140】
1.1.分析溶解液(試料)の準備
慢性リンパ球性白血病(CLL)および急性骨髄性白血病など多様な血液癌患者から得
られた骨髄サンプルから、Ficolle gradientのprotocol(GE
healthcare Ficoll-paque plus 17-1440-03
)を用いてBuffy coatのみを選別的に収集した。
【0141】
分離したBuffy coatのペレットをdPBSでWashingした後、dPB
S 500gで5min間分離した。当該過程を二回繰り返し、細胞に残っている赤血球
と血小板を最大限に除去できるようにした。このように分離したBuffy coatか
ら由来した血液癌細胞を107個ずつ小分し、以後の実験に使用できるように窒素にSn
ap-freezeした後、-80℃で保管した。
【0142】
血液癌細胞株(細胞株銀行およびATCC;HL-60(CVCL_0002)、OC
I-LY3(CVCL_8800))、Ramos(CVCL_0597)、U937、
THP1、SUDHL8)および患者のBuffy coatから由来した癌細胞のペレ
ットは、lysis buffer(Hepes 50mM Nacl 150mM G
lycerol 10%(w/v)GDN(Digitonin)1%(w/v)wit
h 2%(w/v)phosphatase inhibitor cocktail2
,3(P5726,P0044))を用いてサスペンションし、10分に一回ずつ総3回
にわたってvortexingした。30分後、ペレットを溶かしたlysis buf
ferを15000gで10分間遠心分離して上層液を分離し、これを以後の実験で基板
に適用するための分析溶解液として使用した。
【0143】
1.2.標識物質で標識された第1タンパク質相互作用タンパク質の準備
標識物質で標識された第1タンパク質相互作用タンパク質(マーカー(probe)タ
ンパク質)は一時的トランスフェクションにより生産した。より具体的には、pEGFP
-C1(Addgene:PT3028-5)に制限酵素処理後、各タンパク質遺伝子B
IM(Sino biological:HG13819-G)、NOXA(Sino
biological:HG16548-U)、BAD(Sino biologica
l:HG10020-M)を挿入して、GFP発現タンパク質ベクターを製造した。製造
された発現ベクターを、Polyethylenimineを用いてHEK293T細胞
(ATCC;CRL-3216)に一時的トランスフェクションして、過発現されたGF
P-標識(GFP-labeled)タンパク質を取得した。
【0144】
GFP-標識タンパク質が発現したHEK293T細胞を、1% TX100 lys
is bufferで溶解させ、細胞溶解液サンプルを準備した。前記準備された細胞溶
解液を、1% TX100 lysis bufferを使用して165nMに希釈した
後、小分してSnap-freezeし、実験前に解凍して使用した。最終的に、標識さ
れた第1タンパク質相互作用タンパク質を含む細胞溶解液は0.03%のTX-100を
含むように準備した。
【0145】
本発明の方法でBID、またはBIM、BAX、BAKのうちBH3ドメイン(dom
ain)のみを選別的に使用して、標識された第1タンパク質相互作用タンパク質を準備
した。次の表1は下記の実施例で使用された第1タンパク質相互作用タンパク質(人間由
来)およびこれらのUniprot IDと使用されたアミノ酸部位を例示する。
【0146】
【0147】
前記第1タンパク質相互作用タンパク質のマーカー(probe)としては緑色蛍光タ
ンパク質(green fluorescent protein、以下GFP;pEG
FP-C1 vector(clontech)使用して標識)を使用し、前記第1タン
パク質相互作用タンパク質のC-末端にeGFPが連結された形態を準備した。
【0148】
1.3.基板の準備
45mm*60mm Glass cover slipを、biotin PEG:
mPEGの比率を3:100(w:w)にしてコートした。
【0149】
前記基板のPEGコートされた面でBCL2ファミリータンパク質(第1タンパク質)
を沈降させるために、NTV(Neutravidin;Thermo、A2666)と
Biotinが標識されたGoat anti-rabbit secondary(1
11-065-046 Jackson immunoresearch)抗体を使用し
た。
【0150】
NTVおよび二次抗体を、PEGコートされた基板上に結合させた後、各BCL2ファ
ミリータンパク質(第1タンパク質)を沈降(pull down)させるための抗体(
一次抗体)として、次の表2に例示した抗体を使用した。
【0151】
患者細胞および細胞株(韓国細胞株バンクおよびATCC;HL-60、U937、T
HP1、OCI-LY3、SUDHL8)の溶解物(lysate)を、それぞれ観測し
ようとするタンパク質を沈降させ得る抗体(表2参照)がコートされたwellに10u
lずつ入れて、室温で1時間反応後、Washing buffer(Hepes 50
mM Nacl 150mM Glycerol 1% GDN 0.03%)で残余l
ysateを洗浄した。
【0152】
【0153】
前記表2に例示した抗体の性能を、GFPと融合した第1タンパク質を用いて基板に固
定される程度として測定した。具体的には、GFPと融合したBCL2タンパク質1nM
を、前記提示された抗体が備えられた基板に注入した後に反応させた後、洗浄過程を経て
残っているGFPの量を測定した。BCL-XL、MCL1、BCLw、およびBFL1
に対しても同じ試験を行った。前記得られた結果を
図1aおよび1bに示した。
図1aお
よび1bに示すように、前記表2に提示された個別抗体は標的になるタンパク質を基板に
成功的に固定させ得ることを確認した。
【0154】
1.4.試料内タンパク質と試料外タンパク質の間の相互作用測定
前記実施例1.2で準備された、標識物質が付着した第1タンパク質相互作用タンパク
質を含む細胞溶解物を、実施例1.3で準備された基板に供給した。より具体的には、前
記実施例1.2の細胞溶解物をウェルに10ulずつ入れて室温で15分間反応させた後
、Washing buffer(Hepes 50mM Nacl 150mM Gl
ycerol 1% GDN 0.03%)で残余物を洗浄した。その後、次のようにタ
ンパク質相互作用(PPI)を測定した:
【0155】
全反射蛍光顕微鏡に基板を固定させてイメージングし、タンパク質の間の相互作用(結
合)についてのデータを得た。結果の正確性を高めるために、同一条件で合計10個の異
なる位置でイメージを取得し、それを平均して代表値として使用した。
【0156】
蛍光イメージは16bit unsigned integer形式で保存した。蛍光
信号に合わせて信号観測のためのレーザの波長を調節し(GFPの場合488nm)、発
光時間を11秒程度維持させるためにレーザパワーを2mWに調節して使用した。
【0157】
全体フレーム(10フレーム)のうち、序盤フレームを捨てて、3個のフレーム(7-
9回目フレーム)のイメージを平均して一つのイメージを生成し、このような過程をウェ
ルの中で位置を移りながら繰り返し行って、合計10個のイメージを取得して下記の過程
を行った。EMCCD(Electron-multiplying charge-c
oupled device;Andor iXon Ultra 897 EX2(D
U-897U-CS0-EXF))カメラを用いて1フレーム当たり露出時間を0.1秒
にし、EMCCD gain値は40にして蛍光イメージを得た。
【0158】
蛍光タンパク質から出る信号は、特定位置に集まっている形態(localized
point spread function(PSF))で発生するが、このPSF個
数(物理的な値)が、測定しようとするBCL2ファミリータンパク質とこれと相互作用
(結合)するタンパク質の間のPPI数字(生物学的な値)である。前記PSF値は、下
記のような過程を経て生物学的な値であるPPI値に転換させた:
【0159】
(a)Local maximumの位置を求めた(例えば、i番目row、j番目c
olumn pixel)。先立って記述した通り、単分子蛍光信号は512×512ピ
クセルのうち特定位置(現在の観測装備下で概ね5×5ピクセルサイズ、1pixel=
0.167マイクロメーター)に集まって形成されるので、local maximum
を見つけると個別PSFを選別することができる。これはMatlabで提供されるto
olkitを用いて求めることができる。
【0160】
(b)前記(a)で求めたlocal maximumが実際のPSFから発生したも
のであるかどうかに対する判別過程を経る。まずlocal maximumの最小値(
minimum intensity value)を定義し、前記得られたlocal
maximumのうちこの最小値より大きい場合のみ分析に使用した。本実施例で使用
された最小値は75であり、この値はレーザパワー/露出時間/装備構築状況によって変
わる。最終的に得られたlocal maximum座標を中心に5×5ピクセルの情報
を呼び出した後、この5×5ピクセルで明るさに対する中心を求めた(centroid
of intensity)。このとき、求めた明るさの中心が既存のlocal m
aximum座標に対して0.5pixel以上外れると(PSF形に対する2D対称が
消えると)、正常でない蛍光信号であると判断して分析から除外した。
【0161】
(c)すべての条件を通過したPSFのみを最終的に選別して、座標と全体個数を求め
た。このとき得られたPSF全体個数がPPIの個数(PPI count)となる。
【0162】
同じ条件下で撮影されたすべてのファイルに対して前記過程を行ってPSF個数を求め
た後、これを集合して平均と標準偏差を求めた。この値が最終的に特定条件でPPIの個
数を示す値になる。本実施で、PPIの個数により、試料内第1タンパク質と試料外第1
タンパク質相互作用タンパク質の間に形成された複合体を測定することができる。
【0163】
前記得られたPPIの個数(PPI count)測定結果を
図2a(第1タンパク質
および第1タンパク質相互作用タンパク質の種類に応じた結果)、2b(細胞株の種類に
応じた結果)、2c(第1タンパク質および細胞株の種類に応じた結果)、および2d(
第1タンパク質および細胞株の種類に応じた結果)に示した。
【0164】
また、本実施例の試料内タンパク質および試料外タンパク質の間の相互作用の測定結果
に影響を及ぼす要素を確認するために、(i)分析溶解液(extracts)(試料)濃度、およ
び標識物質が付着した第1タンパク質相互作用タンパク質の濃度(concentration)によ
るPPI強度(strength)(測定された蛍光信号強度)(
図3)、(ii)分析溶解液(e
xtracts)(試料)濃度、および標識物質が付着した第1タンパク質相互作用タンパク質を
含む細胞溶解液に含まれる界面活性剤(Detergent)の種類(class)に応じたPPI cou
nt(
図4)および濃度(concentration)に応じたPPI count(
図5)を測定し
た。大体において分析溶解液(試料)濃度および第1タンパク質相互作用タンパク質の濃
度が増加することによりPPI countも増加する傾向を示した。
【0165】
また、第1タンパク質相互作用タンパク質の変異に応じたPPI countを測定し
て
図6に示した。
【0166】
実施例2.試料内タンパク質間の相互作用の測定(複合体(Complex)の測定)
本実施例では、同じ試料内第1タンパク質と第1相互作用タンパク質の間の相互作用測
定を行った。具体的には、前記相互作用は、分析溶解液内で第1タンパク質と第1タンパ
ク質相互作用タンパク質が結合された状態で存在する第1タンパク質-第1タンパク質相
互作用タンパク質複合体を検出して測定した。本実施例で測定された第1タンパク質-第
1タンパク質相互作用タンパク質の間複合体を下記の表3に例示した:
【0167】
【0168】
前記表3に示した図面の結果は、第1タンパク質と第1タンパク質相互作用タンパク質
のうち、第1タンパク質が基板に固定され、標識された第1タンパク質相互作用タンパク
質結合物質を用いてこれらの間に形成された複合体を測定した結果である。逆に第1タン
パク質相互作用タンパク質が基板に固定され、標識された第1タンパク質結合物質を用い
てこれらの間に形成された複合体(complex count、PPI count)
を測定することもできる(この場合、第1タンパク質相互作用タンパク質に対する抗体を
プルダウン(pull down)抗体として、第1タンパク質に対する抗体を検出(d
etection)抗体として使用する)(
図11)。
図7~
図11で確認されるように
、第1タンパク質と第1タンパク質相互作用タンパク質のうちどれを基板に固定させるか
に関係なく等しい検出効果を得ることができる。
【0169】
前記のような結果は、次のように試料内の第1タンパク質-第1タンパク質相互作用タ
ンパク質の間の相互作用を測定して得られたものである:
【0170】
まず、前記実施例1.1と同一に準備された分析溶解液を、実施例1.3を参照して準
備された基板に供給した。
【0171】
試料内のタンパク質複合体検出のための結合物質として、第1タンパク質相互作用タン
パク質に対する抗体を検出抗体(detecting antibody)として使用し
、前記検出抗体を標識するために、蛍光が標識されたCy3 AffiniPure D
onkey Anti-Mouse IgG(jackson ImmunoReser
ach:715-165-151)抗体(二次抗体)を希釈して準備した。
【0172】
前記準備された検出抗体を、前記準備された基板に供給した。検出抗体はウェルに10
ulずつ入れて室温で15分間反応させた後、Washing buffer(Hepe
s 50mM Nacl 150mM Glycerol 1% GDN 0.03%)
で残余抗体を洗浄した。その後、蛍光が標識されたCy3 AffiniPure Do
nkey Anti-Mouse IgG(jackson ImmunoResera
ch:715-165-151)抗体を2000倍希釈してウェル当たり10ulずつ1
0分間反応させた後、Washing buffer(Hepes 50mM Nacl
150mM Glycerol 1% GDN 0.03%)で残余抗体を洗浄した。
その次にタンパク質相互作用(complex)を測定した。測定方法は前記実施例1-
4と同一に実施した。
【0173】
本実施例に使用された結合物質(抗体)情報を下記表4に例示した:
【表4】
【0174】
前記叙述したように、第1タンパク質と第1タンパク質相互作用タンパク質は互いに相
互交換が可能である。また、使用された抗体がモノクローナルの場合、同等なクローンで
あれば他の製造会社の製品も使用可能である。
【0175】
前記抗体リストは本実施例を説明するために例示的に記載しただけであり、本発明の範
囲を制限するものとして解釈されない。
【0176】
本発明で複合体を形成する第1タンパク質または第1タンパク質相互作用タンパク質に
対する抗体、またはタンパク質特異的結合物質の使用について格別な制限は存在しない。
ただし、二つのタンパク質の複合体形成にとって主要であると知られている部位を抗体あ
るいは結合物質の認識部位として使用する場合には複合体検出ができなくなる。一実施形
態で、BAKと複合体を形成するBCL2、BCL-XL、MCL1を検出するためには
、BAKのBH3部位を除いた他の部位(例えば、脂質膜を通過しない(膜貫通ドメイン
でない)、helix 1番からhelix 4番までの部位など)を認識する抗体を使
用した方が良い(
図12)。
【0177】
実施例3.試料内タンパク質発現水準の測定
本実施例では、分析溶解液内に存在する特定タンパク質の量を定量的に測定した。前記
特定タンパク質はBCL2、BCL-XL、MCL1、BAX、およびBAKである。
【0178】
これのために、前記実施例1-1と同様の方法で分析溶解液を準備し、実施例1-3と
同様に準備された基板に供給した。その後、前記基板に、実施例2のように準備された標
識された検出抗体(蛍光が標識されたCy3 AffiniPure Donkey A
nti-Mouse IgG(jackson ImmunoReserach:715
-165-151)抗体で標識される)を添加した。その後、実施例1-4と同様の方法
を行って、蛍光信号測定により分析溶解液内の分析対象タンパク質とその検出抗体の間の
結合を測定した。
【0179】
本実施例で、分析対象タンパク質を基板に固定するための捕獲(pull down)
抗体と検出するための検出(detecting)抗体は互いに抗原が同一であるが、抗
原の互いに異なる部位に結合するものを選ぶべきである。
【0180】
本実施例に使用された抗体情報を次の表5に例示した:
【表5】
【0181】
前記第1結合物質は基板に固定される抗体であり、第2結合物質は、分析溶解液が注入
された後標的タンパク質検出のために供給される抗体である。このとき、前記第1結合物
質と第2結合物質は互いに変えて使用することが可能である。例えば、第2結合物質を基
板に固定して、分析溶解液、第1結合物質の順に基板に供給しても同様に標的タンパク質
の定量分析が可能である。前記提示された抗体は本発明の範囲を限定しない。ただし、第
1結合物質と第2結合物質の抗原認識部位(epitope)は互いに完全に重複するべ
きではない。
【0182】
実施例4.特定折り畳み形態(Conformation-specific)のタンパ
ク質の測定
本実施例は、タンパク質折り畳み形態によって特異的に認知できる抗体または結合物質
を用いて、検体内に存在する特定折り畳み形態(conformation)のタンパク
質を検出する方法に適用することができる。一実施形態でタンパク質折り畳み形態の特異
的検出はBAX、BAKを含む。
【0183】
従来の発見によれば、BAXタンパク質は細胞内で多様な折り畳み形態を維持すること
ができる。そのうちN-末端に属する約20個程度のアミノ酸の露出(exposure
)は、BAXタンパク質が細胞死を起こし得る形態への折り畳み時に発生すると知られて
いる(Yi-Te Hsu et al., J. Bio. Chem. 272, (1997), Michael A. Dengler et al., Ce
ll Rep. 27 (2019))。またはBAKタンパク質は、ミトコンドリア脂質膜への移動の際
に多様な折り畳み形態変化を起こして細胞死を誘導する(Mark Xiang Li et al., PNAS 1
14 (2017))。このように特定折り畳み形態でのみ露出する部位を認識できる抗体または
結合物質を用いると前記実施形態を実現することができる。
【0184】
一例として、BAXタンパク質のN-末端を認知するように知られている抗体と、どの
折り畳み形態でも露出する部位を認知する抗体を用いる場合、検体内の細胞死を誘導する
ように活性化された状態のBAXタンパク質を検出することができる。また他の例として
、BAKタンパク質のBH3部位を選択的に認識する抗体といかなる状態でも露出するB
AK部位を認識する抗体対を用いる場合は、BH3が露出した折り畳み形態のBAKタン
パク質を検体から検出することができる。下記表6はこのような発明を実現するために使
用された抗体対を提示する。下記抗体は本発明の範囲を限定するものではない。また、モ
ノクローナル抗体の場合は製造会社と関係ない。
【0185】
【0186】
前記表で、抗体1は基板の表面に、抗体2は検出のために注入される抗体を意味する。
二つの抗体の役割が変わっても結果は等しい。例えば、抗体2を基板表面に固定し、抗体
1を検出抗体として注入しても等しい効果を期待することができる。
【0187】
前記方法の実現のためには、実施例1で実現したもののように分析溶解液を準備する。
【0188】
本実施例でタンパク質量の定量分析のための測定方法は、実施例2または実施例3で提
示した方法と同様の方法であり得る。例えば、使用される抗体またはタンパク質特異的結
合物質がいずれも同じ抗原または標的タンパク質に結合されるように形成されている。た
だし、二つの抗体あるいはタンパク質特異的結合物質の標的タンパク質結合部位は互いに
異なるべきである。また、抗体を使用する場合、二つの抗体の宿主(host)は当該抗
体に直接的にマーカーが備えられていない限り異なることが推奨される。
【0189】
本実施例は実施例2または3で提案した方法を参照して遂行する。例えば、抗体1、検
体、抗体2の順に注入して特定の折り畳み形態の標的タンパク質を検出することができる
。
【0190】
本実施例の実現のために、人為的に細胞死を誘導して検体を準備することができる。例
えば細胞をStaurosporineで1時間処理して細胞死を誘導したりvenet
oclaxで24時間処理して細胞死を誘導した状態の検体を準備する。この検体を、G
DNが含まれた溶解液で溶解して分析溶解液(extracts)を作った後、N-末端が露出した
BAXを検出すると信号が増加することを確認することができる(
図14)。同じ検体に
ついて、Triton X-100が含まれた溶解液で分析溶解液を準備する場合、非イ
オン系の界面活性剤であるTriton X-100によって強制的にN-末端を誘導す
ることができる。この分析溶解液からN-末端が露出したBAXを検出する(
図15)。
細胞死が誘導された検体で、GDNを用いて分析溶解液を準備した後、検出抗体を用いて
N-末端が露出したBAXを測定する場合は、増加することを見ることができる。反面、
Triton X-100を用いて人為的にN-末端が露出するようにする場合、細胞死
誘導の有無に関係なく一定の値で示されることを見ることができる。
【0191】
また他の例として、AML細胞であるHL60やDLBCL細胞であるOCI-LY3
をベネトクラクス(Venetoclax)で処理して細胞死を誘導して、BAX N-
末端が露出する比率を測定することができる。100nM濃度のベネトクラクス(Ven
etoclax)で2、4、8、24時間処理した後取得された検体について、GDNが
含まれた溶解液で分析溶解液を準備する。その後BAXを検出すると、ベネトクラクス(
Venetoclax)処理時間によりBAX検出信号が変わることを確認することがで
きる(
図16)。反面、同じ分析溶解液に最終的に1%濃度のTriton X-100
になるように追加で混ぜてN-末端露出を誘導した後同じ分析を行う場合、時間によって
BAX量の変化が殆どないことを見ることができる。
【0192】
これにより、本発明で提示する折り畳み形態の特異的タンパク質検出方法は、細胞の状
態、例えば細胞死程度の分析に役に立つ指標を提供することができる。
【0193】
実施例5.BCL2ファミリータンパク質標的阻害剤処理による細胞内のBCL2ファミ
リー信号伝達経路変化の測定
本実施例は、BCL2ファミリータンパク質の標的阻害剤処理による細胞内の信号伝達
変化を測定できる方法を提供する。より具体的にはBCL2標的阻害剤であるベネトクラ
クス(Venetoclax)、またはMCL1標的阻害剤であるAZD5991で処理
しながら、細胞内に存在する多様なBCL2ファミリータンパク質(例えば、BCL2、
BCL-XL、MCL1)の試料間のタンパク質相互作用の強度、試料内のタンパク質相
互作用の強度(複合体測定)、タンパク質発現量の変化を包括的に分析できる方法を提供
する。
【0194】
本実施例の実現のために、試料間のタンパク質相互作用の測定は実施例1、試料内のタ
ンパク質複合体の測定は実施例2、発現量変化の測定は実施例3、4と同一であり得る。
【0195】
一例として、細胞を処理する標的阻害剤ベネトクラクス(venetoclax)また
はAZD5991の濃度は100nMであり、時間は24時間であり得る。対照群として
同じ条件でDMSOで処理したものを準備する。
【0196】
本実施例で分析した内容は下記の表7および表8に整理した:
【0197】
【0198】
(前記表7において、
BIM*は、BIMのうちBH3ドメインのみを切り出したタンパク質にGFPマーカ
ーが備えられた形態であり、
第1タンパク質は、分析溶解液に含まれたタンパク質であり、基板表面に結合されるタ
ンパク質である)
【0199】
【0200】
前記表で、複合体を形成する第1タンパク質および第1タンパク質相互作用(結合)タ
ンパク質はいずれも分析溶解液に含まれたタンパク質である。二つのタンパク質のうちど
のタンパク質が基板表面に固定されても結果は等しい。例えば、基板の表面に固定される
抗体は第1タンパク質の抗体であり得、第1タンパク質相互作用(結合)タンパク質の抗
体でもあり得る。
【0201】
一例として、本実施例で提案する方法により、BCL2標的阻害剤で処理される前/後
のBCL2ファミリータンパク質のPPI強度変化および複合体の形成程度変化を定量的
に測定することができる。これを実現するために、HL60またはOCI-LY3細胞株
をDMSO、Venetoclax 100nM(BCL2標的阻害剤)、AMG176
100nM(MCL1標的阻害剤)で24時間処理した後、それぞれの検体から分析溶
解液を生成して、前記提示された指標を測定する。Venetoclaxで処理した場合
、HL60やOCI-LY3のすべてにおいてBCL2-BADPPI強度が増加するこ
とを確認することができる(
図17)。反面、MCL1標的阻害剤であるAMG176で
処理した場合、BCL2-BADPPIの変化は殆どなかった。これはvenetocl
ax-BCL2のみに限定されるものではない。MCL1-NOXAPPIの場合、AM
G176で処理したとき選択的に増加することを確認することができる(
図18)。BC
L-XLの場合、venetoclax/AMG176いずれにも反応せず、BCL-X
L発現量に応じてPPI強度が変わることにより、BCL2、MCL1標的阻害剤による
当該タンパク質のPPI強度が選別的に発生することを確認することができる(
図19、
20)。
【0202】
また他の例として、BCL2標的阻害剤処理による複合体形成変化の測定が挙げられる
。前記PPI測定と同一条件下で収集された検体を分析して、BCL2ファミリーとBI
M複合体の形成程度変化(
図21)、MCL1-NOXA複合体変化(
図22)、BCL
XL-BAD複合体変化(
図23)の測定に用いられる。さらに、BCL2-BAX複合
体変化(
図24)、BAXおよびBAK発現量変化(
図25、
図26)の測定にも適用す
ることができる。
【0203】
本実施例は、使用される標的阻害剤とBCL2ファミリータンパク質および関連する信
号伝達タンパク質の間の直接的な関係の測定にも使用することができる。これを実現する
ために、第1タンパク質はBCL2またはMCL1タンパク質を用いて、第1タンパク質
相互作用タンパク質としてはBIM-GFPタンパク質を用いる。基板の表面に第1タン
パク質が固定された状態で、第1タンパク質相互作用タンパク質と共に多様な濃度の標的
阻害剤、venetoclaxまたはAZD5991(MCL1標的阻害剤)を注入して
PPI強度変化の測定にも使用することができる。BCL2-BIMPPI強度は、BC
L2標的阻害剤であるvenetoclaxがある場合にのみ減少し、AZD5991は
ほとんど影響を及ぼさない(
図27)。反面、MCL1が第1タンパク質である場合は、
AZD5991によってのみMCL1-BIMPPI強度が減少することを見ることがで
きる(
図28)。
【0204】
これをまとめると、本発明で提案する方法により、検体がBCL2ファミリー標的阻害
剤で処理されたとき現れるBCL2ファミリータンパク質の特性(PPI強度、複合体形
成、発現量など)を定量的に分析することができる。また、PPI強度変化は薬物によっ
て直接的に調節される現象であることを確認することができる。結論的に、本発明により
提案される方法は、BCL2標的阻害剤処理によるBCL2ファミリータンパク質の変化
を測定できる方法であり、検体の分子診断技法として用いられることができる。
【0205】
実施例6.実際の患者検体の分析方法
本実施例で例示する方法は、患者(例えば急性骨髄性白血病(Acute Myelo
id Leukemia,AML)または乳癌)から由来した検体でBCL2ファミリー
タンパク質の特性を測定することである。
【0206】
患者検体間の同等な比較のために、準備された患者検体分析溶解液の全体タンパク質濃
度を、Bradford技法、lowry技法、赤外線吸光度などより選ばれた一つ以上
の方法で決定することができる。基板に注入される検体の濃度を一定に維持し、検体間の
定量的な比較を可能にする。AML患者検体としては、患者の血液または骨髄から抽出さ
れた検体を使用することができる。固形癌組織の場合、手術、針生検(needle b
iopsy)などから取得された検体を使用することができる。
【0207】
患者検体は実施例1、2、3に提示されたすべての分析が可能であり、これに限定され
るものではない。これは血液癌、固形癌に拘らずすべて適用することが可能である。
【0208】
一例として、AML血液癌患者32名から取得された検体を分析してBCL2ファミリ
ーのPPI(実施例1参照)、複合体(実施例2参照)、発現量(実施例3参照)を総合
的に分析する方法を提供することができる(
図29)。
【0209】
また他の例として、乳癌患者302名から取得された検体を分析して、検体内存在する
BCL2タンパク質の発現量を定量的に測定するために使用することができる(
図30)
。
【0210】
また他の例として、肺腺癌(lung adenocarcinoma)患者検体15
個から、検体内に存在するBCL2タンパク質の発現量の測定に適用することができる(
図31)。
【0211】
実施例7.実施例1の相互作用測定と実施例2の複合体測定の比較
本実施例で提案する二つの方法、第1タンパク質相互作用タンパク質を用いるPPI強
度測定(実施例1)と第1タンパク質結合タンパク質との複合体形成測定(実施例2)は
互いに異なる情報を提供することができる。
【0212】
より具体的には、OCI-LY3細胞培養中にVenetoclax 100nMまた
はAZD5991 100nMで処理する方法により、薬物処理前/後のBCL2ファミ
リータンパク質のPPI強度および複合体の形成程度の変化を本発明の方法により測定す
ることができる。一例として、BCL2-BIMPPIの場合、venetoclaxで
処理された検体で高まる傾向を示すが、BCL2-BIM複合体は減少すると確認される
(
図32)。また他の例として、MCL1-NOXAPPIの場合はAZD5991で処
理された検体で高まったが、MCL1-NOXA複合体は減少した(
図33)。このよう
な例により、実施例1により具現されるPPI強度測定と実施例2により具現される複合
体形成測定は根本的に異なる測定値であることがわかる。
【0213】
実施例8.薬物投与を決定するためにBCL2系タンパク質の相互作用変化観測により患
者状態の追跡をする方法
本実施例で提案する方法により、患者の分子的状態を時系列で追跡する方法を提供する
ことができる。より具体的には、血液癌患者の骨髄または血液検体を時間に応じて採集し
て、相互作用分析によりBCL2ファミリータンパク質の依存程度および該当標的抗癌剤
処方の有無を決定するのに役に立つ情報を提供することができる。これを実現するために
、患者1において、i)診断当時の骨髄を抽出してBCL2、MCL1、BCL-XLと
BIM-GFPの間の相互作用(PPI)分析、ii)FLT3標的抗癌剤であるqui
zartinib処方後骨髄を再抽出して同じ分析、iii)前記ii)段階で取得され
た相互作用(PPI)情報に基づいて、venetoclaxとLow-dose cy
tarabine(LDAC)を処方した後取得した全血検体で同じ分析を行った(
図3
4)。診断当時患者のBCL2-BIMPPIは低いためvenetoclax処方根拠
が不足したが、FLT3標的阻害剤であるquizartinib処方以後、BCL2-
BIMPPIが急激に高まる信号伝達経路再設定(signal rewiring)が
発生し、これに基づいてvenetoclaxとLDACを併用処方してBCL2-BI
MPPIが再び低くなることを確認した。また、臨床的所見としてはquizartin
ib処方以後に急激な白血球(WBC)数値上昇が発生したが、venetoclax+LD
ACの併用処方以後に再び安定した白血球数値を示して、venetoclaxの薬効を
臨床的レベルでも確認することができた。以後、臍帯血抽出幹細胞移植(Cord bl
ood stem cell transplantation)により、当該患者は完
全寛解(complete remission)を達成することができた。
【0214】
また他の例として、患者2番に対しても患者1と同様の方法で時系列診断を行った(図
35)。当該患者もFLT3標的阻害剤処方ではBCL2ファミリータンパク質の信号伝
達経路を調節できなかったが、venetoclaxとLDACの併用処方以後にはBC
L2-BIMPPIが急激に減少したことを確認することができた。これは、白血球(WBC
)数値検査においても同様にquizartinib処方以後に約3倍程白血球数値が増
加したことから、quizartinib処方は臨床的効果がなかったと判断される。
【0215】
実施例9.BCL2標的阻害剤反応性予測方法の開発
本実施例で提案される方法により、急性骨髄性白血病(Acute myeloid
leukemia)患者の、BCL2標的阻害剤ベネトクラクス(venetoclax
)に対する感受性を予測することができる。
【0216】
具体的には、実施例6によりAML患者から抽出した検体(骨髄または血液)において
、BCL2ファミリータンパク質のうち6種に対してPPI測定(実施例1)、6種に対
して発現量測定(実施例3)および9種に対して複合体測定(実施例2)を行った(下記
表9参照)。
【0217】
【0218】
Venetoclax反応性測定のために、患者から分離した検体をそれぞれ0、30
、100、300、1000nMのvenetoclaxで24時間処理した後、生きて
いる細胞の量をフローサイトメーターを用いて測定する。残余生存細胞量に対する容量反
応曲線を描いた後、グラフ下部面積(AUC,Area under the curv
e)の逆数値を用いて個別患者のvenetoclax反応性を定量する。
【0219】
個別測定値についてのvenetoclax反応性との線形相関関係の分析により、最
も予測力が高い指標を取得することができる(
図36a-c)。定量的比較のための線形
相関係数(R、pearson correlation coefficient)を
取得する。合計21個の指標のうちR値が0.65以上で測定されるに値は、BCL2-
BADPPI、BCL2-BIMPPI、BCL2発現量およびBCL2-BAX複合体
形成が含まれる(
図36a-cの四角で表した四つの指標)。前記選ばれた指標は、ve
netoclax反応性測定モデル樹立にあたり発明の範囲(例えば予測モデルに含まれ
る指標の種類)を制限するものではない。
【0220】
PPIと形成された複合体が互いに異なる指標であることを確認するために、BCL2
-BIMPPIとBCL2-BIM複合体の形成程度をそれぞれvenetoclax反
応性と比較することができる(
図37)。BCL2-BIMPPIの場合、veneto
clax反応性とR=0.74で高い相関関係を示すが、BCL2-BIM複合体形成は
R=0.41で低い相関係数を示す。これによりPPI測定と複合体形成の測定は互いに
異なる指標であることを推論することができ、PPI測定により高い正確度でvenet
oclax反応性の予測が可能であることを示す。
【0221】
測定値の結合(組合せ)によって、よりvenetoclax反応性予測の正確度を向
上させることができる。測定値を組み合わせる方法は、多変数線形回帰(multipl
e linear regression)、ロジスティック回帰(logistic
regression)、サポートベクターマシン(support vector m
achine)など多様な方法があり、本発明の実施例では多変数回帰方式を用いたが、
本発明の範囲はこれに制限されるものではない。単一変数(指標)を用いる場合R=0.
75程度が最も高い値であったが、結合される変数の個数(Number of parameters combin
ed)が多くなるほどこれは増加する(
図38a)。
【0222】
21個の変数(指標)を結合する場合、最大2,097,151個の変数結合が生成さ
れる。最適なモデル探索には生物学的妥当性、数学的妥当性など多様な変数が考慮される
。
【0223】
一例として、単独指標より2以上の指標を組み合わせる場合、より上昇された分析結果
が得られることを示すために、BCL2-BAXまたはBCL2-BIM複合体の形成程
度とvenetoclax反応性との相関関係を
図38bの上段に示し、BCL2-BA
XまたはBCL2-BIM複合体の形成程度とBCL2-BADPPIを結合した結果と
venetoclax反応性との相関関係を
図38bの下段にそれぞれ示した。
図38b
に示すように、BCL2-BAXまたはBCL2-BIM複合体の形成程度を測定した場
合、R値がそれぞれ0.67および0.41であったことに比べて、BCL2-BADP
PIを結合した場合のR値はそれぞれ0.76および0.75で、二つの指標を組み合わ
せた場合より改善された薬物反応性予測結果が得られることを確認した。
【0224】
他の例として、合計5個の変数が結合されたモデルを用いる場合、線形相関係数が0.
85に増加することを確認することができる(
図38c)。このとき含まれる変数は下記
表10のとおりであり、これは多様な変数の組み合わせのうち最も有意な結果を示す。
【0225】
【0226】
実施例10.MCL1標的阻害剤反応性予測方法の実現
実施例9で行ったものと同様に、MCL1標的阻害剤に対する反応性予測方法が提供さ
れ得る。一例としてMCL1標的阻害剤はAZD5991を用いたが、類似の薬物作用機
構(mechanism of action)を有する標的阻害剤であれば同等に使用
され得る。使用された薬物の種類は本発明の範囲を制限しない。
【0227】
実施例9のように単一指標に対する線形相関分析を行うことができ、これによりMCL
1-BIMPPI、BCLXL-BIMPPI、BAX発現量、BAK発現量などがAZ
D5991反応性と相関関係があることを確認することができる(
図39a-c)。
【0228】
反応性予測の正確度を上昇させるために、実施例9のように多様な変数結合を用いるこ
とができる。一例として下記表11に示した変数を結合してAZD5991反応性との相
関分析を行うとR=0.78という値を取得し得(
図40)、これは多様な変数の組み合
わせのうち最も有意な結果を示す。
【0229】
【0230】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須
特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。これと関
連し、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、いかなる場合にも限定
的なものとして解釈されない。