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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024023536
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240214BHJP
   G03G 15/06 20060101ALI20240214BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20240214BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G03G21/00 384
G03G15/06 101
G03G15/08 235
G03G15/00 303
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023205027
(22)【出願日】2023-12-05
(62)【分割の表示】P 2019168981の分割
【原出願日】2019-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】富永 宜幸
(72)【発明者】
【氏名】山浦 正彰
(72)【発明者】
【氏名】荒木 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】野口 あゆみ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】種類の異なる媒体に画像を転写する態様において、媒体が転写性の低い種類であったとしても、種類の異なる媒体に対して同じ現像条件を採用する場合に比べて、像保持手段に保持された画像の媒体への転写性を良好に保つ。
【解決手段】現像制御手段4は、普通紙用の第一モードと、エンボス紙用の第二モードと、を有し、第一モードでは、連続して複数の普通紙への転写を目的とする画像を形成するに際し、第一の現像電圧を印加し、前記複数の普通紙の間に対応するインタイメージ領域に保守用画像を形成するに際し、前記第一の現像電圧よりも劣化現像剤の吐き出しが促進された第三の現像電圧を印加し、前記第二モードでは、エンボス紙への転写を目的とする画像を形成するに際し、前記第一の現像電圧よりも前記劣化現像剤の吐き出しが抑制された第二の現像電圧を印加する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を保持する像保持手段と、
前記像保持手段に対向する現像剤保持手段を有し、前記像保持手段と前記現像剤保持手段との間に交流成分が直流成分に重畳された現像電圧を印加し、前記像保持手段上に形成された静電潜像を前記現像剤保持手段に保持された現像剤にて現像する現像手段と、
前記現像手段にて現像された前記像保持手段上の画像を異なる種類の媒体に静電転写する転写手段と、
前記現像手段による現像動作を制御する現像制御手段と、
を備え、
前記現像制御手段は、
普通紙用の第一モードと、
エンボス紙用の第二モードと、を有し、
前記第一モードでは、連続して複数の普通紙への転写を目的とする画像を形成するに際し、第一の現像電圧を印加し、
前記複数の普通紙の間に対応するインタイメージ領域に保守用画像を形成するに際し、前記第一の現像電圧よりも劣化現像剤の吐き出しが促進された第三の現像電圧を印加し、
前記第二モードでは、エンボス紙への転写を目的とする画像を形成するに際し、前記第一の現像電圧よりも前記劣化現像剤の吐き出しが抑制された第二の現像電圧を印加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記現像制御手段は、前記第二モードでは、連続して複数のエンボス紙への転写を目的とする画像を形成し、前記複数のエンボス紙の間に対応するインタイメージ領域に保守用画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記現像制御手段は、前記第二モードでは、前記エンボス紙への転写を目的とする画像を形成するタイミングより前に保守用画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の画像形成装置において、
前記現像制御手段は、前記第二モードでは、前記保守用画像を形成するに際して前記第三の現像電圧を印加することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の画像形成装置としては例えば特許文献1~3に記載のものが既に知られている。
特許文献1には、普通紙印刷モードと、プロセススピードが遅い厚紙印刷モードとを有し、厚紙印刷モードにおける現像バイアスの交流成分のピークトゥピークを、普通紙印刷モードにおけるものより低く設定する画像形成装置が開示されている。
特許文献2には、画像形成装置が一定時間停止後に開始される画像形成動作時のカブリ等の不具合を防止するために、現像装置の停止時間に関する情報に基づいて、現像装置に対する現像用電圧の交流成分の印加を停止した状態で画像形成動作を実施する画像形成装置が開示されている。
特許文献3には、トナー作像量が少ない場合に、現像器内に劣化トナーが溜まってしまうことを防ぐために、予め設定した画像密度の画像の積算作像時間を読み、閾値を越えた場合は、トナー吐き出し(入れ替え)を行い、現像器内のトナー状態を良好に保つ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-161772号公報(発明を実施するための形態,図4
【特許文献2】特開2011-007982号公報(発明を実施するための形態,図4
【特許文献3】特開平11-295976号公報(発明の実施の形態,図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、種類の異なる媒体に画像を転写する態様において、媒体が転写性の低い種類であったとしても、種類の異なる媒体に対して同じ現像条件を採用する場合に比べて、像保持手段に保持された画像の媒体への転写性を良好に保つことが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、画像を保持する像保持手段と、前記像保持手段に対向する現像剤保持手段を有し、前記像保持手段と前記現像剤保持手段との間に交流成分が直流成分に重畳された現像電圧を印加し、前記像保持手段上に形成された静電潜像を前記現像剤保持手段に保持された現像剤にて現像する現像手段と、前記現像手段にて現像された前記像保持手段上の画像を異なる種類の媒体に静電転写する転写手段と、前記現像手段による現像動作を制御する現像制御手段と、を備え、前記現像制御手段は、普通紙用の第一モードと、エンボス紙用の第二モードと、を有し、前記第一モードでは、連続して複数の普通紙への転写を目的とする画像を形成するに際し、第一の現像電圧を印加し、前記複数の普通紙の間に対応するインタイメージ領域に保守用画像を形成するに際し、前記第一の現像電圧よりも劣化現像剤の吐き出しが促進された第三の現像電圧を印加し、前記第二モードでは、エンボス紙への転写を目的とする画像を形成するに際し、前記第一の現像電圧よりも前記劣化現像剤の吐き出しが抑制された第二の現像電圧を印加することを特徴とする画像形成装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る画像形成装置において、前記現像制御手段は、前記第二モードでは、連続して複数のエンボス紙への転写を目的とする画像を形成し、前記複数のエンボス紙の間に対応するインタイメージ領域に保守用画像を形成することを特徴とする画像形成装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る画像形成装置において、前記現像制御手段は、前記第二モードでは、前記エンボス紙への転写を目的とする画像を形成するタイミングより前に保守用画像を形成することを特徴とする画像形成装置である。
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に係る画像形成装置において、前記現像制御手段は、前記第二モードでは、前記保守用画像を形成するに際して前記第三の現像電圧を印加することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、種類の異なる媒体に画像を転写する態様において、媒体が転写性の低い種類であったとしても、種類の異なる媒体に対して同じ現像条件を採用する場合に比べて、像保持手段に保持された画像の媒体への転写性を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明が適用された画像形成装置の実施の形態の概要を示す説明図である。
図2】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
図3】実施の形態1で用いられる画像形成部及び二次転写装置周りの構成例及びその制御系を示す説明図である。
図4】(a)はトナーの経時使用に伴う劣化状態を示す説明図、(b)は現像装置の現像域での現像動作を模式的に示す説明図、(c)は二次転写装置の二次転写域での転写動作を模式的に示す説明図、(d)は媒体としての用紙がエンボス紙又はラフ紙であるときに現像条件を変更する理由を示す説明図である。
図5】(a)は普通紙に画像転写する条件で、トナー劣化レベルと転写画像の転写ムラとの関係を模式的に示す説明図、(b)はエンボス紙/ラフ紙に画像転写する条件で、トナー劣化レベルと転写ムラとの関係を模式的に示す説明図である。
図6】実施の形態1又は2において用いられる第一の作像モード乃至第三の作像モードの要部を示す説明図である。
図7】実施の形態1に係る画像形成装置で用いられる作像シーケンスを示すフローチャートである。
図8】(a)は第一の作像モード時の現像動作を模式的に示す説明図、(b)は第二の作像モード時の現像動作を模式的に示す説明図、(c)は第一の作像モード時の二次転写動作を模式的に示す説明図、(d)は第二の作像モード時の二次転写動作を模式的に示す説明図である。
図9】実施の形態2に係る画像形成装置で用いられる作像シーケンスを示すフローチャートである。
図10】実施例1で使用する各種用紙について、用紙平滑度及び密度と転写性との関係性を調べた一例を示す説明図である。
図11】実施例1で使用するエンボス紙について、外添埋没に対するエンボス紙の画質感度を調べた一例を示す説明図である。
図12】実施例1において、現像電圧の交流成分を変更したときの転写率感度の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
◎実施の形態の概要
図1は本発明が適用された画像形成装置の実施の形態の概要を示す。
同図において、画像形成装置は、画像を保持する像保持手段1と、像保持手段1に対向する現像剤保持手段2aを有し、像保持手段1と現像剤保持手段2aとの間に交流成分Vacが直流成分Vdcに重畳された現像電圧Vdを印加し、像保持手段1上に形成された静電潜像を現像剤保持手段2aに保持された現像剤にて現像する現像手段2と、現像手段2にて現像された像保持手段1上の画像を異なる種類の媒体Sに静電転写する転写手段3と、現像手段2による現像動作を制御する現像制御手段4と、を備え、現像制御手段4は、第一の媒体用の第一の制御モード4aと、第一の媒体より転写性の低い第二の媒体用の第二の制御モード4bとを有し、第一の制御モード4aでは、現像手段2の現像電圧Vdを予め決められた第一の現像条件に従って印加し、第二の制御モード4bでは、現像手段2の現像電圧Vdを第一の現像条件に比べて現像性が抑制された第二の現像条件に従って印加するものである。
尚、図1において、符号8は像保持手段1上に静電潜像を形成する潜像形成手段を示す。
【0010】
このような技術的手段において、像保持手段1は感光体、誘電体など静電潜像を形成可能なものであればよく、ドラム状、ベルト状など形態は問わない。
また、潜像形成手段8としては、像保持手段1上に静電潜像を形成するものを広く含み、像保持手段1が例えば感光体や誘電体であれば、像保持手段1を帯電する帯電手段と、当該帯電手段で帯電された像保持手段1上で静電潜像を書き込む潜像書込手段とを含む態様が挙げられる。
更に、現像手段2としては、現像剤保持手段2a、交流成分Vacが直流成分Vdcに重畳された現像電圧Vdを印加する現像電圧印加手段2bを有するものであれば、二成分現像剤を用いるものに限らず、一成分現像剤を用いるものを含む。
転写手段3については媒体Sに対して画像を転写するものを広く含み、像保持手段1上の画像を媒体に直接転写する直接転写型は勿論、中間転写体を用いた中間転写型にあっては、像保持手段1上の画像を中間転写体に一次転写する一次転写手段と、中間転写体上に一次転写された画像を媒体Sに二次転写する二次転写手段とを含むものである。
【0011】
また、現像制御手段4としては、第一の媒体用の第一の制御モード4aと、第二の媒体(第一の媒体よりも転写性の低い媒体)用の第二の制御モード4bとを有していればよく、第二の制御モード4bについては、現像手段2の現像電圧Vdを、第一の現像条件に比べて現像性が抑制された第二の現像条件に従って印加するものであればよい。ここで、現像性が抑制された第二の現像条件については、現像電圧Vdの交流成分Vacの現像パラメータ(ピークツウピーク電圧Vppや周波数Vf)を第一の現像条件に比べて抑制するように選定すればよい。
本例において、第一の制御モード4aとは別に第二の制御モード4bを設ける技術背景について補足しておくと、以下の通りである。つまり、現像剤に含まれるトナーには離型性や帯電性等を考慮して外添剤が添加されているが、現像手段2内に長く滞留すると、外添剤がトナー表面に埋没して劣化トナーになり、この種の劣化トナーは媒体Sへの転写性が悪く、特に、転写性の低い媒体(所謂エンボス紙、ラフ紙等)にあっては白抜け等の画質悪化感度が高いことを考慮したものであり、転写性の低い媒体を使用する場合には、転写すべき画像中に劣化トナーを極力含めないような現像条件を採用することを企図したものである。
【0012】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
ここで、転写性の低い媒体Sの代表的態様として、第二の媒体は、第一の媒体に比べて表面平滑度に関する情報が低いことを指標とするものが挙げられる。本例は、転写性が低い媒体Sであるか否かの指標として表面平滑度に関する情報を用いる態様であり、媒体本体9aの表面にエンボス(凹凸)9b加工を施した媒体S(所謂エンボス紙)であるか否かを区別するための指標である。ここでいう「表面平滑度に関する情報」とは、表面部の平滑度合を指標とするものであれば、JIS規格等による表面平滑度に限らず、媒体本体9aの厚みに対するエンボス9bの深さの比なども広く含む。
また、転写性の低い媒体Sの別の代表的態様として、第二の媒体は、第一の媒体に比べて密度に関する情報が低いことを指標とするものが挙げられる。本例は、転写性の低い媒体Sであるか否かの指標として密度に関する情報を用いる態様であり、粗い質感でラフな手触りの媒体(所謂ラフ紙)であるか否かを区別するための指標である。ここでいう「密度に関する情報」とは、密度を直接的に表記する場合に限らず、間接的に示す表記を広く含むものであり、透気度に関する情報や、坪量、連量に関する情報などが広く採用されている。
【0013】
また、現像制御手段の代表的態様としては、第一の制御モード4aと第二の制御モード4bとを媒体Sの種類を基準に選択する選択手段5を有する態様が挙げられる。本例は、第一、第二の制御モード4a,4bを選択するに当たって、媒体Sの種類を基準にする選択手段5を用いる態様である。ここで、「媒体Sの種類」については、転写性の低い媒体Sを区別するパラメータについて閾値を予め決めておいてもよいし、具体的な閾値を決めずに例えば媒体Sの種類を特定する選択モード(例えばエンボスモード等)を決めるようにしてもよい。
本例において、選択手段5の構成例としては、媒体Sが第二の媒体に属しないときには第一の制御モード4aを選択し、第二の媒体に属するときには第二の制御モード4bを選択するものが挙げられる。本例は、第二の媒体に属するか否かによって第一又は第二の制御モードを選択する態様である。
また、選択手段5の別の構成例としては、媒体Sが第二の媒体に属するか否かを判別する判別手段6を備え、選択手段5は判別手段6による判別信号に基づいて第一の制御モード4a又は第二の制御モード4bを選択するものが挙げられる。本例は、第二の媒体であるか否かを判別する判別手段6を用い、判別手段6の判別信号に基づいて第一又は第二の制御モード4a又は4bを選択する態様である。
【0014】
また、第一又は第二の制御モード4a又は4bの代表的態様としては、現像条件として、現像電圧Vdの交流成分Vacのピークツウピーク電圧Vppを用い、第二の制御モード4bによるピークツウピーク電圧Vppを、第一の制御モード4aによるピークツウピーク電圧Vppよりも低くなるように制御する態様が挙げられる。本例は、現像条件として、現像電圧Vdの交流成分Vacのピークツウピーク電圧Vppを制御対象とした態様である。
更に、第二の制御モード4bの好ましい態様としては、現像電圧Vdの交流成分Vacのピークツウピーク電圧Vppに加えて、現像電圧Vdの直流成分Vdcを制御対象とするものが挙げられる。本例は、現像条件として、現像電圧Vdの交流成分Vacのピークツウピーク電圧Vppに加えて、直流成分Vdcをも制御対象とした態様であり、直流成分Vdcを制御対象とすることで像保持手段1上に現像される画像の濃度品質を確保する上で有効である。
【0015】
また、現像制御手段4の好ましい態様としては、媒体S上に形成されない画像を作像するときには、第一の制御モード4aを実施する態様が挙げられる。本例において、「媒体S上に形成されない画像」は、インタイメージ領域に形成されるプロセスコントロール用画像などを指す。第二の制御モード4bを実施すると、劣化現像剤が現像に供されないことから、現像手段2中に劣化現像剤が滞留し続ける可能性があるが、媒体S上に形成されない画像を現像するときには、媒体S上に画像を形成する場合に比べて画像品質が問われないことから、劣化現像剤の吐き出しを優先させたものである。
【0016】
更に、現像制御手段4の好ましい態様としては、現像電圧Vdの交流成分Vacのピークツウピーク電圧Vppを、第一の制御モード4aによるピークツウピーク電圧Vppよりも高くなるように制御する第三の制御モード4cを備え、媒体S上に形成されない画像を作像するときには、第三の制御モード4cを実施する態様が挙げられる。本例は、第一、第二の制御モード4a,4bに加えて、第三の制御モード4cを備え、現像手段2から劣化現像剤の吐き出しを優先させる際に、第三の制御モード4cを有効に利用し、第一の制御モード4aを利用する場合よりも更に劣化現像剤の吐き出し量を増加させる態様である。
【0017】
更に、本実施の形態に係る画像形成装置の好ましい態様としては、現像制御手段4が第一の制御モード4a又は第二の制御モード4bを実施したときに、転写手段3の転写条件を変更するように制御する図示外の転写制御手段を備える態様が挙げられる。本例は、現像制御手段4による現像制御に加えて、媒体Sの種類に適した転写条件を実施する態様である。
【0018】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す。
-画像形成装置の全体構成-
同図において、画像形成装置は、図示外の装置筐体内に、複数の色成分(本実施の形態ではイエロ、マゼンタ、シアン、ブラック)画像を形成する画像形成部20(具体的には20a~20d)と、各画像形成部20にて形成された各色成分画像を順次転写(一次転写)保持するベルト状の中間転写体30と、中間転写体30上に転写された各色成分画像を媒体としての用紙Sに二次転写(一括転写)する二次転写装置(一括転写装置)40と、二次転写された画像を用紙S上に定着させる定着装置50と、を備えている。
【0019】
<画像形成部>
本実施の形態において、各画像形成部20(20a~20d)は、夫々ドラム状の感光体21を有し、各感光体21の周囲には、感光体21が帯電される帯電装置22、帯電された感光体21上に静電潜像が書き込まれるレーザ走査装置等の露光装置23、感光体21上に書き込まれた静電潜像が各色成分トナーにて現像される現像装置24、感光体21上のトナー画像が中間転写体30に転写される転写ロール等の一次転写装置25及び感光体21上の残留トナーが清掃される清掃装置26を夫々配設したものである。
【0020】
<中間転写体>
中間転写体30は、複数(本実施の形態では四つ)の張架ロール31~34に掛け渡されており、例えば張架ロール31が図示外の駆動モータにて駆動される駆動ロールとして用いられ、当該駆動ロールにて循環移動するようになっている。更に、張架ロール32~34はいずれも従動ロールとして用いられ、張架ロール33は中間転写体30に対して所定の張力を付与するテンションロールとして機能するようになっている。更にまた、中間転写体30の周面のうち張架ロール31に対向した部位には二次転写後の中間転写体30上の残留トナーを除去するための中間転写体清掃装置35が設けられている。
【0021】
<二次転写装置(一括転写装置)>
更に、二次転写装置(一括転写装置)40は、中間転写体30の周囲のうち張架ロール34に対向する部位には転写ロール41を中間転写体30の表面に接触するように配置し、張架ロール34を対向電極として転写ロール41と張架ロール34との間に所定の転写電界を作用させるようになっている。
本例では、転写ロール41は金属製シャフトの周囲に発泡ウレタンゴムやEPDMにカーボンブラック等が配合された弾性層を被覆した構成になっており、金属製シャフトが設置される一方、図3に示すように、対向電極である張架ロール34には給電ロール42が接触して配置され、この給電ロール42には転写電圧Vtを印加する転写用電源43が接続されている。
【0022】
<定着装置>
定着装置50は、例えば用紙Sの画像保持面側に接触して配置される駆動回転可能な加熱定着ロール51と、当該加熱定着ロール51に対向して圧接配置され、加熱定着ロール51に追従して回転する加圧定着ロール52とを有し、両定着ロール51,52間の転写領域に用紙S上に保持された画像を通過させ、当該画像を加熱加圧定着するものである。
【0023】
-帯電装置の構成例-
本実施の形態において、帯電装置22は、図3に示すように、感光体21に対向した部位が開口する帯電筐体61を有し、この帯電筐体61内に感光体21の表面に接触する帯電部材としての帯電ロール62を配設すると共に、この帯電ロール62を清掃するための清掃ロール63を配設したものである。
ここで、帯電ロール62は、例えば導電性の金属製軸を有し、この軸の両端支持部を除いた箇所に帯電層を形成したものであるが、これに限られるものではなく、適宜設計変更して差し支えない。
一方、清掃ロール63は、例えば導電性の金属製軸を有し、この軸の周囲に例えば清掃材としてのスポンジ材を螺旋状に巻き付けることでスポンジ層を形成したものである。この種のスポンジ層は、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド又はポリプロピレン等の発泡性の樹脂又はゴムを材質としたものより選択される。尚、清掃ロール63の構成についてはこれに限られるものではなく、適宜設計変更して差し支えない。
【0024】
-現像装置の構成例-
現像装置24は、感光体21に対向した部位が開口して例えばトナー及びキャリアを含む現像剤が収容される現像容器71を有し、この現像容器71の開口に面した部位には現像剤が保持可能な現像ロール72を配設すると共に、現像容器71の現像ロール72の背面側には現像剤が撹拌されて循環搬送可能な撹拌搬送部材73,74を配設し、更に、現像ロール72に対向した部位には現像ロール72に保持可能な現像剤の層厚が規制される層厚規制部材75を設けたものである。
本例において、現像ロール72には現像用電源76が接続されている。この現像用電源76は、例えば直流電源77と交流電源78とを直列接続したもので、いずれの電源77,78も可変調整可能に構成されている。このため、現像ロール72には直流成分Vdcに交流成分Vacが重畳した現像電圧Vdが印加されるようになっている。
また、本例の現像剤は、トナー及びキャリア以外に、ステアリン酸亜鉛(ZnSt)やシリカを含む各種外添剤が添加されている。ここで、ZnStは主として潤滑調整剤として適量添加され、また、シリカは帯電調整剤として適量添加されている。
【0025】
-清掃装置の構成例-
清掃装置26は、図3に示すように、感光体21に対向する部位が開口する清掃容器81を有し、この清掃容器81の長手方向に沿う開口に面した部位には感光体21に弾性的に接触する板状の清掃部材82を配置すると共に、清掃容器81内には清掃部材82で掻き取ったトナー等の残留物を当該清掃容器81の長手方向に沿って搬送して外部に排出する搬送部材83を配設したものである。
【0026】
-用紙種-
本実施の形態では、用紙Sには表面平滑度及び密度が予め決められた範囲に属する普通紙のみならず、エンボス紙やラフ紙等の特殊紙も渾然一体となって使用される。
本例では、図3に示すように、用紙種を指示する用紙種指示器111や用紙種を判別する用紙種判別器112が設けられている。
<用紙種指示器>
ここでいう「用紙種指示器111」としては、例えば用紙Sの表面平滑度や密度に関する情報に基づいて、使用可能な種類の用紙を後述する制御装置110内のRAMに事前に登録した用紙種テーブルを用意し、ユーザが使用する用紙Sを用紙種テーブル内から検索して指示する態様が挙げられる。尚、未登録の用紙Sについては逐次登録可能として用紙種テーブルを更新することが好ましい。
【0027】
<用紙種判別器>
本例において、「用紙種判別器112」としては、使用する用紙Sがエンボス紙であるか否かを判別する場合には、用紙Sの表面平滑度に関する情報を検出可能な光学検出器(図示せず)を用紙搬送路面に対向して配置し、用紙S表面からの反射光量に基づいて表面平滑度を割り出してエンボス紙に属するか否かを判別するようにしたものが挙げられる。また、使用する用紙Sがラフ紙であるか否かを判別する場合には、用紙Sの密度に関する情報を測定可能な測定器具(図示せず)を設置し、測定器具の測定結果に基づいて用紙Sがラフ紙に属するか否かを判別するようにしたものが挙げられる。更に、図示外の用紙供給容器が複数設けられ、例えばエンボス紙やラフ紙の収容箇所が予め決められた用紙供給容器であるような場合には、エンボス紙等が収容された用紙供給容器から供給された用紙Sであることを検出する位置検出器を配置し、この位置検出器からの検出結果に基づいてエンボス紙等であるか否かを判別するようにしてもよい。
【0028】
-エンボス紙/ラフ紙に対する画像品質低下の要因-
本実施の形態では、用紙Sには普通紙のみならずエンボス紙やラフ紙等の特殊紙も渾然一体となって使用されている。ところが、エンボス紙やラフ紙を使用する場合には、普通紙と同様な作像モードで作像処理を実施すると、転写画像に一部白抜けが生ずる転写画像品質が低下する現象が確認された。
このような転写画像品質が低下する要因を本発明者らが検討したところ、現像装置24内に滞留する劣化現像剤に含まれる劣化トナーが要因になっているのではないかということを突き止めた。
より具体的に説明すると、現像剤に含まれるトナーTは、図4(a)に示すように、樹脂バインダや顔料、ワックス等のトナー粒子90の表面に帯電特性や潤滑性を調整する外添剤91(例えばステアリン酸亜鉛やシリカ等)が添加されている。このとき、新規なトナーTにあっては、外添剤91はトナー粒子90の表面に保持されているが、現像装置24内に長期に亘って滞留すると、トナー粒子90内に外添剤91が次第に埋没し、その埋没度合が顕著になると、外添剤91による帯電特性等が不安定になり、例えば帯電特性の低い劣化トナーT’に変化する事態に至ってしまう。
このため、現像装置24内には帯電特性等が正常なトナーTと共に、劣化トナーT’とが混在しているものと推測される。
【0029】
また、図4(b)に示すように、現像装置24の現像ロール72には直流成分Vdcが重畳した交流成分Vacが印加されているため、現像ロール72と感光体21との間には現像電界Edが作用し、現像ロール72上にキャリアを介して保持されたトナーTは感光体21上の静電潜像に向かって飛翔し、静電潜像を可視像化する。このとき、現像電界Edを強くすれば、その分、トナーに対する現像性が活発化して正常なトナーTのみならず、劣化トナーT’も現像に供されて飛翔する傾向にある。
更に、図4(c)に示すように、二次転写装置40の二次転写域TRにおいて、中間転写体30上のトナー画像が転写ロール41と対向する張架ロール34との間の二次転写電界Etによって用紙Sに転写される。
【0030】
このとき、用紙Sがエンボス紙である場合には、図4(c)に示すように、媒体本体95の表面のエンボス96の存在により、二次転写電界Etの一部がエンボス96の凹部97領域で異常放電し易くなり、特に、中間転写体30への付着力が高い劣化トナーT’は用紙Sの凹部97には転写され難い。また、用紙Sがラフ紙である場合には、媒体本体95内の紙繊維(図示せず)の密度が低いことから、媒体本体95内に微小空隙(図示せず)が存在し、この微小空隙内で異常放電し易くなり、特に、中間転写体30への付着力が高い劣化トナーT’は用紙S側に転写され難い。
このように、用紙Sがエンボス紙やラフ紙である場合には、中間転写体30上に保持されたトナー画像TG1(劣化トナーT’を含む)は二次転写域TRにおいて用紙S側に転写され難く、白抜きなどの画像品質低下につながる虞れがある。
【0031】
<用紙種に対するトナー劣化レベルと転写ムラとの関係>
次に、用紙種に対するトナー劣化レベルと転写ムラ(本例では、転写画像品質を評価するパラメータの一例として、低周波ノイズ(LFN:Low Frequency Noiseの略)を使用)との関係を調べたところ、図5(a)(b)に示す結果が得られた。
図5(a)は普通紙に対するトナー劣化レベルとLFNとの関係を示す。
同図において、横軸はトナー粒子の外添剤が埋没する程度が大きくなるにつれてレベル値が増加するトナー劣化レベルであり、縦軸が転写画像品質を評価する指標としてのLFNである。尚、図中Athは転写画像品質が良好である上限許容値を示す。
同図によれば、用紙Sが普通紙の場合には、トナー劣化レベルがある程度大きくてもLFNは許容値Ath以下であることが把握され、トナー画像を形成するトナーにトナー劣化レベルがある程度大きい劣化トナーが含まれていても、当該トナーを用いたトナー画像を用紙Sに転写する場合には、転写画像品質は維持されることが理解される。
【0032】
また、図5(b)はエンボス紙(あるいはラフ紙)に対するトナー劣化レベルとLFNとの関係を示す。尚、横軸、縦軸は図5(a)と同様である。
同図によれば、用紙Sがエンボス紙やラフ紙である場合には、トナー劣化レベルがあまり進んでいない条件でLFNは許容値Ath以下であることが把握され、トナー画像を形成するトナーにトナー劣化レベルがある程度大きい劣化トナーが含まれた場合には、当該トナーを用いたトナー画像をエンボス紙等の用紙Sに転写する場合には、白抜け等の転写画像品質の低下が生ずることが理解される。つまり、劣化トナーによる転写画像品質の低下は、エンボス紙等の転写性の低い用紙の方が普通紙と比べて、感度が高いことがわかる。
【0033】
-転写画像品質の改善策-
図4(a)~(c)及び図5(a)(b)に示す事実を踏まえ、本件発明者らは、用紙Sがエンボス紙やラフ紙のように転写性の低い用紙である場合には、画像品質低下の要因が劣化トナーT’の存在にあるものと予測し、図4(d)に示すように、用紙Sが転写性の低い用紙である場合には、現像画像(現像により形成されるトナー画像に相当)の劣化トナーT’の割合を低減させるように、現像条件を変更すればよいという着想を得たものである。
本例においては、用紙Sが普通紙を対象とする場合には、第一の作像モードIM1を実施し、用紙Sがエンボス紙等のように転写性の低い用紙を対象とする場合には、第二の作像モードIM2を実施するものとする。
本例においては、第一の作像モードIM1では、図6に示すように、現像装置24の現像条件を第一の制御モード、つまり、現像電圧Vdの交流成分Vacのピークツウピーク電圧VppをVpp1に設定し、また、第二の作像モードIM2では、図6に示すように、現像装置24の現像条件を第二の制御モード、つまり、現像電圧Vdの交流成分Vacのピークツウピーク電圧VppをVpp2(Vpp2<Vpp1)に設定する手法が採用されている。
ここで、Vpp1,Vpp2の設定に際しては、各画像形成装置の仕様を踏まえ、転写画像品質が許容範囲に収まるように、最適な範囲を実験等を経て選定するようにすればよい。
【0034】
-画像形成装置の制御系-
画像形成装置の制御系は、図3に示すように、例えばCPU、RAM、ROM及び入出力ポートを含むマイクロコンピュータからなる制御装置110を有し、この制御装置110のROMには作像シーケンス用プログラム(例えば図7参照)を予めインストールしておき、また、制御装置110には用紙種指示器111や用紙種判別器112が接続されると共に、現像装置24の現像用電源76や二次転写装置40の転写用電源43が接続され、CPUで用紙種指示器111や用紙種判別器112から使用する用紙情報を取り込むと共に、前述した作像シーケンス用プログラムを実行し、現像装置24の現像用電源76等に制御信号を送出するようにしたものである。
【0035】
-画像形成装置の作動-
本実施の形態では、画像形成装置による作像シーケンスを開始する場合には、図2に示すように、使用する用紙Sを選定した後、図示外のスタートスイッチをオン操作するようにすればよい。
このとき、各画像形成部20で形成された各色成分トナー画像は一次転写装置25にて中間転写体30に一次転写された後、二次転写装置40にて用紙Sに二次転写され、二次転写された用紙Sは定着装置50による定着処理を経た後、図示外の用紙排出受けに排出される。
本例では、制御装置110は、図3及び図7に示すように、先ず、用紙S上を作像領域とするか否かを判別する。つまり、本ステップは、用紙Sに画像を印刷して出力する通常印刷モードか、用紙Sに画像を印刷することなく、画像形成装置の保守のために例えばプロセスコントロール用画像としてのバンド画像等の保守用画像を形成して図示外の濃度検出器(例えば中間転写体30の周囲に設置)で保守用画像の濃度検出を行う保守モードかを判別するものである。
【0036】
そして、通常印刷モードである場合には、用紙種指示器111や用紙種判別器112からの信号に基づいて、使用する用紙Sがエンボス紙/ラフ紙であるか否かをチェックする。
このとき、制御装置110は、用紙Sが普通紙であると判断すると、第一の作像モードIM1を実施する。つまり、現像装置24の現像条件を第一の制御モード、現像電圧Vdの交流成分Vacのピークツウピーク電圧VppをVpp1に設定する。
このとき、第一の作像モード時の現像動作に着目すると、図8(a)に示すように、現像電圧Vdは直流成分Vdcに交流成分Vac(Vpp1)が重畳したものであり、現像装置24によって感光体21上の静電潜像Zを現像したトナー画像TG1には劣化していない正常なトナーTに加えて劣化トナーT’もある程度含まれている。
この状態において、第一の作像モード時の転写動作としては、図8(c)に示すように、トナー画像TG1が二次転写域TRに至ると、二次転写電界Etによって中間転写体30に保持されたトナー画像TG1は用紙S側に転写される。このとき、普通紙からなる用紙Sに転写されたトナー画像TG1には劣化トナーT’もある程度含まれているが、普通紙からなる用紙Sにあっては、劣化トナーT’による転写画像品質の低下に対する感度が低いことから、白抜け等の転写画像品質の低下には至らない。
【0037】
一方、制御装置110は、用紙Sがエンボス紙/ラフ紙であると判断すると、第二の作像モードIM2を実施する。つまり、現像装置24の現像条件を第二の制御モード、現像電圧Vdの交流成分Vacのピークツウピーク電圧VppをVpp2(Vpp2<Vpp1)に設定する。
このとき、第二の作像モード時の現像動作に着目すると、図8(b)に示すように、現像電圧Vdは直流成分Vdcに交流成分Vac(Vpp2<Vpp1)が重畳したものであり、現像装置24によって感光体21上の静電潜像Zを現像したトナー画像TG2には劣化していない正常なトナーTが多く含まれ、劣化トナーT’はほとんど含まれていない。
この状態において、第二の作像モード時の転写動作としては、図8(d)に示すように、トナー画像TG2が二次転写域TRに至ると、二次転写電界Etによって中間転写体30に保持されたトナー画像TG2は用紙S側に転写される。このとき、エンボス紙等の用紙Sに転写されたトナー画像TG2には劣化トナーT’がほとんど含まれず、劣化していない正常なトナーTが多くを占めた状態にある。本例において、エンボス紙等の用紙Sにあっては、劣化トナーT’による転写画像品質の低下に対する感度が高いものの、トナー画像TG2には劣化トナーT’がほとんど含まれていないことから、白抜け等の転写画像品質の低下には至らない。
【0038】
<保守モード>
本例において、保守モードは通常印刷モードとは別のタイミングで実施されることもあるし、あるいは、連続枚数の通常印刷モードを実施する途中に介在して並行して実施されることもある。特に、後者の場合には、中間転写体30上の用紙Sに対応するインタイメージ領域の間に保守用画像を形成することが行われる。
このとき、本例では、図7に示すように、第一の作像モードIM1が実施されるため、図8(a)に示すように、劣化トナーT’を含むトナー画像TG1が感光体21上に形成されるが、このトナー画像TG1は図示外の濃度検出器で濃度検出された後、中間転写体清掃装置35によって清掃される。
従って、本例においては、保守モードで形成されたトナー画像TG1は、用紙Sに転写されることなく、中間転写体清掃装置35にて清掃されることから、トナー画像TG1に劣化トナーT’が含まれていたとしても、当該トナー画像TG1が転写画像品質を低下させる要因につながる懸念はない。
本例では、保守モード時には、第二の作像モードIM2ではなく、第一の作像モードIM1を採用することから、現像装置24内に滞留する劣化トナーT’の吐き出し量は、第二の作像モードIM2を採用する場合よりも多く、現像装置24内に劣化トナーT’が不必要に滞留する事態は抑えられる。
【0039】
◎変形の形態1-1
本実施の形態では、第二の作像モードIM2としては、現像装置24の現像条件として、現像電圧Vdの交流成分Vacのピークツウピーク電圧VppをVpp2(<Vpp1)に変更するようにしたが、これに限られるものではなく、第一の作像モードIM1よりも現像性を抑制するという観点を満たすものであれば、ピークツウピーク電圧Vppに加えて交流成分Vacの周波数Vfを変更するようにしてもよいし、ピークツウピーク電圧Vppに代えて交流成分Vacの周波数Vfだけを変更するようにしてもよい。
◎変形の形態1-2
また、本実施の形態では、第二の作像モードIM2では、現像装置24の現像条件として、現像電圧Vdの交流成分Vacのピークツウピーク電圧Vppを変更するようにしているが、これに限られず、現像電圧Vdの直流成分Vdcを合わせて変更するようにしてもよい。ここで、現像電圧Vdの直流成分Vdcを合わせて変化させると、ピークツウピーク電圧Vpp2は、同Vpp1よりも小さくなるため、その分、現像性は抑制されることになるが、現像電圧Vdの直流成分Vdcと画像部電位Vとの間の差分の絶対値を大きくするように当該直流成分Vdcを変更するようにすれば、現像画像濃度の低減は抑えられ、その分、トナー画像の濃度特性を良好に維持することが可能である点で好ましい。
◎変形の形態1-3
本実施の形態では、第二の作像モードIM2時には、図7に示すように、第一の作像モードIM1に比べて、現像装置24の現像条件を変更する方式が採用されており、二次転写装置40の転写用電源43の転写条件については第一の作像モードIM1と同様に取り扱っているが、これに限られるものではなく、転写用電源43の転写電圧Vtを用紙種に合わせて変更し、用紙種(用紙Sの各種パラメータ、例えば体積抵抗率等)に適した転写条件を設定するようにしてもよい。
【0040】
◎実施の形態2
図9は実施の形態2に係る画像形成装置による作像シーケンスの要部を示すフローチャートである。
同図において、画像形成装置の作像シーケンスは、通常作像モードで採用される第一の作像モードIM1、第二の作像モードIM2が実施の形態1と略同様であるが、保守モードに対しては実施の形態1と異なる構成を備えている。
本例において、作像シーケンス用プログラムは、図6に示すように、現像電圧Vdの交流成分Vacのピークツウピーク電圧Vppを、第一の作像モードIM1によるピークツウピーク電圧Vpp1よりも高いVpp3になるように制御する第三の作像モードIM3を備え、制御装置110は、用紙S上に画像を形成しない「保守モード」では第三の作像モードIM3を実施するようになっている。
このため、本例では、実施の形態1において第一の作像モードIM1を実施する場合に比べて、現像装置24中の劣化トナーT’の吐き出しを更に促進することが可能になり、現像装置24中に劣化トナーT’が滞留し続ける事態はより改善される。
【実施例0041】
◎実施例1
実施例1は、実施の形態1に係る画像形成装置を具現化するに当たって、以下の項目の具体例を示すものである。
・「転写性の低い用紙」の選別
・「転写性の低い用紙」に対する画像品質低下の要因となる劣化トナーの解析
・第二の作像モード時における現像条件の変更例
【0042】
-「転写性の低い用紙」の選別-
用紙平滑度及び密度の異なる以下に示す各用紙に対して、第一の作像モードIM1を実施し、転写画像品質を評価した。
用紙種
・サガンGA(210kg/ナチュラル)
・サガンGA(210kg/ダークグレー)
・ファーストヴィンテージ(172kg/ベージュ)
・ファーストヴィンテージ(172kg/ダークグレー)
・ファーストヴィンテージ(103kg/ベージュ)
・ファーストヴィンテージ(103kg/ダークグレー)
・モダンクラフト(197.5kg/茶)
・Arcoprint Milk(300gsm)
・ケンラン(264kg/ぐんじょう)
・ケンラン(360kg/淡クリーム)
・紀州色上質(超厚口/204gsm/クリーム)
・紀州色上質(超厚口/204gsm/ブルー)
・紀州色上質(薄口/60.5gsm/クリーム)
・エアラス(93gsm)
【0043】
各用紙に対して第一の作像モードIM1を実施した結果を図10に示す。
同図によれば、図10中の矩形枠で囲まれた範囲内の特性を有する用紙については、白抜けなどの画像品質低下が見られ、転写性が悪い領域であったのに対し、図10中の矩形枠で囲まれた範囲外の特性を有する用紙については、白抜け等の画像品質低下が見られなかった。このため、図10中の矩形枠で囲まれた範囲内の特性を有する用紙を「転写性の低い用紙」として捉え、例えば表面平滑度が予め決められた閾値よりも低い(粗い)用紙、また、密度が予め決められた閾値よりも低い用紙を「転写性の低い用紙」としてグループ分け可能であることが理解される。
【0044】
-「転写性の低い用紙」に対する画像品質低下の要因となる劣化トナーの解析-
また、「転写性の低い用紙」に属するエンボス紙(例えばボス雪186gsm黒)に対して外添埋没グレードの異なる劣化トナーを用いて画像転写動作を実施したところ、図11に示す結果が得られた。
同図において、横軸は、外添剤の埋没程度が異なるトナーを埋没程度が進むにつれて数値が大きくなる外添埋没グレード(図中「外添埋没G」で表記)であり、外添埋没グレードの異なるトナーによる画像作製に当たっては、現像装置において現像剤の撹拌搬送の連続動作時間を変えることで現像装置内に外添埋没Gの異なるトナー群を作製し、夫々の外添埋没Gのトナー群を含む現像装置を用いて第一の作像モードによる現像動作を実施するようにしたものである。
また、同図の縦軸は、転写画像としてブラックトナーでCin50%のハーフトーン画像を作製し、予め選定された外添埋没Gのトナーによる転写ムラの程度を、転写画像品質の評価パラメータの一例として、低周波ノイズ(LFN:Low Frequency Noiseの略)で評価したものである。
【0045】
同図によれば、外添埋没グレードが閾値α以下であれば、LFNは許容値であるAth以下であることが把握され、外添埋没グレードが閾値αを超えた付近のトナーを使用すると、LFNが許容値であるAthを超えることが把握される。
してみると、本例では、外添埋没グレードが閾値αを超えるトナーを使用すると、当該トナーが劣化トナーとして転写し難くなり、これが白抜け等の画像品質低下の要因になっているものと推測される。よって、「転写性の低い用紙」に対しては転写画像として劣化トナーを極力含まないように現像条件を変更することが必要であり、第一の作像モードIM1とは異なる第二の作像モードIM2を採用することが有効であることが理解される。
【0046】
-第二の作像モード時における現像条件の変更例-
本実施例では、第一の作像モードと第二の作像モードとで、現像条件として、現像電圧Vdの交流成分Vacのピークツウピーク電圧Vppを変更したときの転写率(%)の変化を調べたところ、図12に示す結果が得られた。
同図において、第一の作像モードIM1では、現像条件として、ピークツウピーク電圧Vppを960Vとしたところ、転写率は89%であった。これに対し、第二の作像モードIM2では、現像条件として、ピークツウピーク電圧Vppを600Vにしたところ、転写率は94%に上昇し、転写性能が改善されることが確認された。
この結果から、「転写性の低い用紙」に対しては、第一の作像モードIM1とは異なる第二の作像モードIM2を実施することが有効であることが理解される。
【符号の説明】
【0047】
1…像保持手段,2…現像手段,2a…現像剤保持手段,2b…現像電圧印加手段,3…転写手段,4…現像制御手段,4a…第一の制御モード,4b…第二の制御モード,4c…第三の制御モード,5…選択手段,6…判別手段,8…潜像形成手段,9a…媒体本体,9b…エンボス,S…媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12